08/10/11 22:27:33 duodEMKq
とても綺麗な月の夜だった。
欠け一つ見当たらぬ満月。
こんな良き宵にあんな所で燻っているのは馬鹿のすべき事だ。
口端の筋肉を自然と持ち上げながら、二振りの刀を手に取り
今回の獲物を思案する。
長髪……月の様に明るい金髪がいい。今宵は金髪にしよう。
そう思っている内に、足は勝手に八雲紫の住み家にやって来ていた。
灯りは一つ、扇子を扇ぐ他に物音もしない。
どうやら式は式の式の所へ行っており、現在此処には主しか居ない訳だ。
「―くく」
なんと。なんという好都合。
これは神が与えたもうた幸運か、それとも悪魔の悪戯か。
早く、早く。あの綺麗なモノを――ヤリタイ。
酷く渇き、疼く身体を抑え切れず、音も無く住居に侵入し
そいつの居る部屋の前で足が止まる。
さて……どう料理したものか。
考えるまでも無い。何時も通りの犯り方で良いじゃないか。
現に、もう手は襖をぼすぼすと叩いていた。
「あら？」
アイツの声。
たまらない。早くこの戸を開けてくれ。
直ぐに終わらせてやる。一瞬の内に、愉しみ抜いて――
がらり。
戸が、開かれてしまった。
「あら、妖夢。どうし――」
そこから先は聞けなかった。
何故なら、もう既に八雲紫は首と胴体がおさらばしていたから。
「は、はは、はははははははは！！」
捌く。裁つ。断つ。絶つ。切る。斬る。伐る。
一辺も余す所無く。全力で、芸術的に、美しく殺し切る。
「ひゃははっ！はははっははははぁ！！」
血が叫んでいる。脳髄が今まで求めていた衝動。
身体は歓喜に打震えるも、紫に対する求愛行動を一切止めはしない。
効率の良い斬り方。
人殺しの為の手法。
ありったけくれてやる。
みるみる内に美しかったモノは朱色に染まり、
八雲紫は完全に只の十七つの肉片と化していた。
「ぐっ………ぅ、ん……？」
そこで。
「あ、あ―ア」
私は。
漸く、自分が何をしていたかを、知った。
「うわぁぁぁああああああああああァアアアアアアア！！！？？」