★女同士の壮絶なバトル Round4★at EROPARO
★女同士の壮絶なバトル Round4★ - 暇つぶし2ch350:オフィスレイブ    5/11
09/04/18 23:56:54 0jFsAmWh

真琴が指定したのは地下の倉庫だった。
音が漏れず、十分な広さがある。高みから強烈なライトに照らされたそこはリングのようだった。
真琴は資材のひとつに腰掛け、缶コーヒーを傾けた。
興奮の為かひどく喉が渇く。
「ごめん、待たせたかな」
その時、倉庫の扉を押し開いて亜由美が姿を現した。
亜由美は気持ちの整理をつけてきたのだろうか、穏やかな表情だ。
「夜も遅いから簡潔に話そうか。私はね、七瀬」
亜由美はそう切り出そうとし、真琴が自分へ向けて缶を放ったのを見て口ごもる。
オレンジジュースだ。
軽やかに缶を受け止め、亜由美は戸惑いを浮かべた。
彼女の中には、真琴が気を利かせてジュースを奢るなどという想定はなかったのだろう。
「……あらぁ、悪いね!」
亜由美は無邪気に笑みを浮かべる。
このままいけばいくぶん和やかな空気になるだろう。ともすれば親密な関係を築けるかもしれない。
真琴がなにもしなければ。

しかし、それには真琴は亜由美を嫌いすぎていた。
見目良くスタイルもよく、情に篤くて人望まである、そんな亜由美を妬みすぎていたし、
何より今まさに缶を傾けて果汁を飲もうとする亜由美は、無防備に過ぎた。
対話をする気など端からない。ジュースの差し入れは親睦の為ではない。
それを飲むときの大きな隙をつくる為、
喧嘩慣れしているらしい亜由美に、コーヒー缶をひしゃげさせる右拳を確実にぶち込む為だ。
真琴は奥歯を噛み締めた。
何千回、何万回と夢想してきた瞬間だ。
重心を低くし、しっかりと地を踏みしめ、指立て伏せで鍛え上げた握力をもって拳を石ほどに固める。
腰の捻りを加え、放つのは渾身のストレートだ。
「ふぅ、おいし…」
缶から口を離した亜由美の顔面へ、入れ替わるように叩き込まれる拳。
―鍛えすぎたかな。
そう思ってしまうほどあっけなく、手の甲にぐちゃっと何かの潰れる感触が伝わってきた。
何か? 亜由美の鼻だ。
あの綺麗に筋の通った、顔の美しさを纏め上げる部分だ。


351:オフィスレイブ    6/11
09/04/18 23:57:25 0jFsAmWh

「げほっ!ぐ、ぐふ、う!うぶううっっ!!!」
亜由美は缶を取り落としながら鼻を手で覆った。
指の間から黄色い果汁と鼻水、血の混じった混合液が滴り落ちる。
「…こ……この、野郎……ッ!!」
目から涙を流しながら亜由美が睨みつけてくる。
「あら、良い眼。いつもの善人ぶった目よりよっぽど好きですよ、そのガラの悪い目つき。
結局、それが本性みたいですね」
真琴は血に塗れたコーヒー缶を投げ捨てて言った。
事実、今の亜由美の目には不快さではなく、今まで感じたことのない凄みを感じた。
「うるさい!アンタ何のつもりよ、先輩に手あげるのはクビを覚悟の上ででしょうね!」
尚も鼻を押さえて叫ぶ亜由美に、真琴は淡々と返した。
「あら、このこと外に漏らすおつもりですか?」
「…………!!」
真琴の言葉に、亜由美ははっと息を呑む。

真琴は亜由美の性格を良く知っていた。
『出来る』人間にありがちなように、彼女は人に弱みを見せない。
仕事の協力を請うようなことは基本的にしないし、弱音を吐いているのも見た事がない。
昔から姉御肌の一匹狼を気取っている亜由美は、暴力を振るわれた、鼻を折られたという
事実があってもそれを漏らさない。
ましてやそれが屈強な男にであればまだしも、小柄で地味な目下の者からとなれば、
気の強さで鳴らす亜由美のプライドが話すことを赦さないだろう。

「最低ね、あんた……」
ようやく鼻血の止まった亜由美が唇を噛んで拳を握る。
円状に赤い筋の走ったその顔が痛快で、真琴はこの数年で久々の笑みを浮かべた。

352:オフィスレイブ    7/11
09/04/18 23:58:09 0jFsAmWh

真琴の勝算は十分にあるはずだった。
亜由美の喧嘩の強さは聞いていたし、自分に格闘経験がそうある訳でもない。
それでも今この状況でなら勝ち得た。
「歯ぁ食い縛んなっ!!」
眼光も鋭く挑みかかろうとした亜由美は、しかし三歩と歩けずにたたらを踏む。
しまった、という表情がありありと見える。
理由は靴だ。彼女は仕事のままハイヒールを履いており、まともに走れない。
周到なことに真琴は安全靴だ。
「食い縛りますよ、この通りね!!」
その安全靴の固いつま先でもって、真琴は正しく歯を食いしばっての蹴りを放つ。
余裕があるため想定どおりの綺麗なフォームだ。
亜由美のほうなど無残なもので、腹筋に力が入らない、それどころか重心さえ傾いた状態で
その蹴りを喰らうことになった。
「おう゛ぇ…っ!」
目を開き、口から漏れた声は真琴の想像より低く苦しげだった。
「きたない声。」
人の腹筋を痛めているという感覚が真琴の臀部に染み渡る。

そして、それでは終わらない。
よろめく亜由美を追って真琴は一歩踏み出し、低空でのローを放った。
狙いは亜由美の左の踝、踏み潰すように蹴り込む。
ぐきり、とはっきりとした感触がする。
「うあ゛あああああああ!!!!!!」
亜由美はたまらず屈み込んだ。捻挫だ。
ブーツの不安定さとよろけた姿勢を狙っての蹴りが、無残にも亜由美の足を挫く。
亜由美は目をきつく閉じて丸まったまま震えた。

 ―なんだ…つまらない。
真琴は感じた。上手くいきすぎ、このままでは目論見よりずっと簡単に亜由美を壊せてしまう。
なら、少しは遊ぶか。
真琴はうずくまる亜由美に近寄り、おもむろにその黒髪を掴んだ。
ふわりとシャンプーの心地よい香りが漂う。
社内で綺麗だと散々噂される髪だ、なるほど確かに絹のように手触りがいい。
せっかくだからいくつか引きちぎろうか。
真琴がそう考え、髪を掴む手に力を込めた瞬間。がしりとその手首が掴まれた。
ぎょっとしたのも一瞬、即座に肩の根元も押し込まれ、腕が伸びきる。
そして亜由美の身体が後転するように回った後…真琴の右肘と肩を、弾けるような痛みが襲った。

353:オフィスレイブ    8/11
09/04/18 23:58:46 0jFsAmWh

「い、痛いいぃっ!!」
真琴は反射的に腕を振り上げ、かろうじて致命的な感覚から逃れた。
右肘を電気のような痺れが壮絶に渦巻いている。
折れてはいないようだが、手のひらを握るということが叶わない。
そして肘の痛み以上に、真琴は心に衝撃を受けていた。
不用意に出した腕を掴んで固定し、身体ごと回転させて蹴り上げる。
反応が遅ければ肘が壊されていただろう。そんな動きは、想定にはなかった。
「砕けてれば、おあいこだったんだけどね」
亜由美が立ち上がる。
完全に左足を痛めたらしく、身体が左へ傾いている。
それでも両足はハイヒールを脱ぎ捨てて身軽になり、何より瞳が死んでいない。
2人は一瞬硬直し、先に動いたのは経験に勝る亜由美だった。
振り回すようなフックを素早く真琴の脇腹に打ち込む。ドッといい音がした。
「う、ん!」
真琴はその痛みに息を詰まらせながらも、冷静に怒りを組み立てていた。
容姿の壁によって味わった様々な理不尽さを思い出す。
そうすると、おもわず拳から音が鳴るほどに強く握り締めることができた。
その硬さで亜由美を殴りつける。
鍛え、鍛えて、鍛えた腕は、やはり面白いほどの威力を誇った。
「あぐ!」
亜由美の頬肉が歪み、鼻が殊更にひしゃげ、頭がぐるんと仰け反って黒髪が真琴の手を撫でる。
亜由美は右足だけでは堪えきれずに倒れ込んだ。
あの亜由美が這いつくばっている、真琴はその情景を振りぬいた姿勢のまま焼きつけた。
「あう、がふっ…!!」
亜由美は再び鼻を押さえた。また血が噴出したのだろうか。
必死な様子だが、真琴は今度は油断しない。危うく腕を折られかけた苦い経験からだ。

かくして、それは正しかった。
亜由美は立ち上がりざま、目にも止まらぬスピードでの裏拳を放つ。
風を切る音がかろうじて聞こえるだけの一打だ。
うかつに近づいていればガードなど叶わず、綺麗に頭に貰っていただろう。
ぞっとした。
ぞっとして、戦いのさなかに真琴は動きを止めた。それが経験の浅さだ。
亜由美はその隙を見逃さない。無事な右足で踏み込み、冷静に真琴の顔に拳を打ち込む。
ワン・ツーだ、と真琴はわかった。
距離を測る1打目で顔面へ水を飛沫きかけられたような感覚が襲い、眼球が少し痛んだ瞬間、
2発目が鼻と逆の目を抉り込んできた。

354:オフィスレイブ    9/11
09/04/18 23:59:18 0jFsAmWh

頭が真っ白になる、とはこの事で、真琴は棒立ちになっていた。
感覚としては少しずつ前に倒れ込んでいるようなのだが、一向に地面につかない。
棒立ちはまずい、そう感じたときには、当たり前だが遅かった。
ずん、という音が聞こえる衝撃で背骨が軋み、腹筋に痛みが降りてくる。ボディだ。
身体がくの字に折れ、喉からはそれが楽だというようにかふ、と自然に息が漏れる。
その直後、再び続けざまに同じ衝撃。ボディだ。
肺の辺りに岩ができたような苦しさのあと、ひく、ひくとその上部が喘ぎ、押し出すように食道を遡る。
「こぷっ」
身体が揺れる衝撃で眼鏡が地に落ちる。直後、口からほんの僅か、感じたよりは僅かな胃液がこぼれ出た。その事にまた頭が真っ白になる。
「は、吐いちゃった……」
誰に言うともなく真琴は呟き、落ちた眼鏡の傍に膝をついた。胸が熱く張る。
胃液とはこうも容易く溢れるものなのか。いや違う、それを搾り出した亜由美が強いのだ。
「吐いちゃったね。私に対してちょっとオイタが過ぎたわよ、あんた」
亜由美は真琴の襟首を掴み、片手で捻り上げた。もう片手は垂直に身体の向こうに控えている。
どこを殴られる。顔ならばいい、潰れてしまうかもしれないが顔ならばいい。
胸や腹部だったら自分は、きっと耐えられない。
真琴は震えた。亜由美の引き絞った右手が死神の鎌に思える。
この恐怖を怒りに変えなければ、しかし、それは無理だ。それにも経験が要る。
ならばなんとかしなくては。なんとか、彼女の攻撃を止める方法を……。
そのとき、真琴の目には映った。自分を締め上げる亜由美の折れた左足首。ここだ。
「うああー!!」
無我夢中で蹴った。慈悲など微塵もない。遅い来る猛獣に銃を放つほどの必死さで脚を振った。
目は瞑っていた。弾が当たったのかどうかは、獣の声で判別するほかない。
「ぎっ!」
それはまさしく獣の声だった。
虎や獅子ではない、小動物の断末魔のような声。
「い、いいぎぃいあぁああ----------------っ!!!!!!!」
甲高い叫びを上げ、亜由美の拘束は離された。
亜由美はまず膝から崩れ落ち、痛みから飛び跳ねて、横ざまに倒れ込む。
「あ…足が、足があ……ッ!」
呻き、左の足首を抱えていよいよ深刻な汗を流す。
助かった、と真琴は安堵した。
すると現金なもので、その途端に恐怖に塗りつぶされた怒りが沸々と沸いてくるのである。

355:オフィスレイブ    10/11
09/04/19 00:00:01 0jFsAmWh

「よくも……吐いちゃったじゃ、ないですか!!」
真琴は怒りをそのままに、安全靴を履いた足で亜由美の腹部を穿つ。
「うごおぉっ!!」
亜由美はそれどころでない時に蹴りを受け、まったく対処が出来ない。
勝った、とこのとき真琴は感じた。緊張が解けたわけではない、ただ、もう亜由美はダメだろう、
そういったどこかしら同情にも似た予感を持った。
実際、亜由美は絶望的なほどに不利だった。
真琴はさらに腹部を狙う。今度はさすがに腕でガードする亜由美だが、何しろ安全靴だ。
防いだ腕に顔が引き攣るほどの痛みが走り、しかももう立ち上がることが出来ないようなので
弱点である左足が狙われ放題となる。
「う、うぐ、ぐ……!!う、ぢぐ…しょう………っ!!」
腕のガードが破壊され、左足を執拗に踏まれ、想像を絶する痛みに亜由美の抵抗は
目に見えて弱まっていった。
根性がないと言われるだろうか。だがこの間に亜由美が上げていた声の悲痛さを聞けば、
きっと誰もがそのようなことは言えない筈だ。
その声を浴びながら尚も腹責めを続ける真琴は、自分でもイカれていると解っていた。
しかし、その倒錯がひどく快感だった。
皮膚の下の男性ホルモンが活性化し、亜由美の悲鳴で猛り、男根があれば狂おしいほどに屹立していることだろうと感じた。
実際、真琴はこの後で亜由美を嬲りつくすことに決めていた。
当初は敗北の言葉でも吐かせて終わりにしようと思っていたが、今はもう収まりがつかなくなっている。
まずはこの後。
何としても自分と同じ恥辱、嘔吐をこの女に味合わせてからだ。

安全靴は重い、そして亜由美の身体も力をなくして真琴の足にしなだれかかるようになっている。
蹴りは効率が悪く、真琴は拳を亜由美の腹に叩き付けた。
「もう、もぉ……ひ……う、うぉおえ゛え゛え゛ええ…!」
声だけは凄いが、中々内容物が出ない。
「らあっ!さっさと吐きなよ!」
真琴はさらに拳を振るう。そうして双方汗まみれで揉みあっているうち、ふと真琴は倉庫の扉が薄く開いていることに気がついた。
ぎょっとしたが、そこにいる人物を認めて口を歪に歪める。
「あら、ねえ先輩、可愛いギャラリーがいますよ」
その言葉に、亜由美もはっと顔を上げ、目を見開いた。
ただ一人の観客は美穂だ。亜由美が心配になって見に来たのだろう。
亜由美としては醜態を後輩にさらすという、この上なく屈辱的な状況になるだけだが。

356:オフィスレイブ    10/11
09/04/19 00:01:27 0jFsAmWh

そして、確かな瞬間はついに訪れた。
十数発目の拳が腹部に突き刺さった瞬間、亜由美が小さく息を吸い、下唇を痙攣させた。
 ―来た!
真琴はそう確信する。
「…み………み……らい、れぇえ…………!」
その囁きが終わらないうちに、真琴の肩の入ったパンチが亜由美の細腰をくの字に折る。
亜由美とてもう限界だった。
「おえぇええ゛え゛っ!!ひっぐ、うっ、うえええ゛え゛え゛え゛っっ!!!!!!!」
我慢して、我慢していたのだろう。
小さな口から溢れ出る吐瀉物を床にぶちまけ、えづきながら、嗚咽していた。

覗いている美穂はもはや言葉もない。
目の前の事が受け入れられていないのか、それとも受け入れたうえで呆けているのか。
彼女に見られたのは真琴にとっては誤算だったが、誰かに密告するような度胸はないだろう。
「美穂」
「は、はい!」
真琴はいつもの冷ややかな声で告げた。美穂が背筋を伸ばす。
「この場の片付けをしておきなさい。これも仕事の内です」
真琴はそういい、気絶した亜由美の体を背負った。
美穂はうろたえながら、精一杯の勇気でもって尋ねる。
「…はい。…そ、それで、あの……これから、どちらに?」
美穂の問いに、真琴はやはり冷ややかな眼で答えた。

「亜由美先輩には、暫くの有休を取って頂きます」

                                  

357:名無しさん@ピンキー
09/04/19 11:23:58 woJCBxSj
久々にGJ

358:名無しさん@ピンキー
09/04/19 18:33:59 pPGq/Har
GJ!

359:名無しさん@ピンキー
09/04/19 19:15:29 Q4grTqhV
GJ

360:名無しさん@ピンキー
09/04/19 22:25:51 LJlbAHpW
超GJ

361:名無しさん@ピンキー
09/04/20 01:23:14 AN8ibKTZ
乙~

362:名無しさん@ピンキー
09/04/20 01:55:27 13HXO3VW
GJ!
こういう悲鳴は大好きだ。

363:名無しさん@ピンキー
09/04/20 04:54:43 K6hYnvOZ
感想有難うです。
以下、おまけにして本編↓

※スカ表現あり、NTR風味、6レス

364:オフィスレイブ(事後)  1/6
09/04/20 04:56:45 K6hYnvOZ

「ねぇ聞いた?亜由美先輩引き抜きだって」
「え、どこに!?」
「海外のかなり大きい会社らしいよ。造船から製薬から、何でも手がけてるってさ」
「でもさ、ネットで見たんだけど、なんか裏の企業とも繋がってるって噂あるよ?
 子会社がAV撮ってるとか……」
「所詮ネットの噂でしょ。亜由美さんがそんな怪しい所行くと思うの?」
「あそっか、ウチで一番縁遠いよねぇ」
「…縁遠いっていえば、別の意味で真琴さんもそういう事に無縁そうだったけど…」
「うん。でも今は、なんか雰囲気違うよね……」

女子社員の噂する中、真琴は颯爽とオフィスを歩く。
少年のように貧相な身体と黒縁眼鏡は変わらないが、その顔には笑みが零れていた。
「あっ、真琴さん!おはようござぁーっす!!」
「はよござーぁーっっすっ!!」
真琴を見つけた男性社員がやはり満面の笑みで頭を下げる。
一人ではなく、その後ろの者も。
真琴はその彼らに意味深な笑みで応えつつ、美穂のデスクの前で止まる。
「あ……おはよう、ございます……」
美穂は脅えた様子で真琴を見上げた。つぶらな瞳の下にはくっきりと隈ができている。
「おはよう美穂。あのDVDの続き、持ってきたよ」
真琴はそう言い、美穂の机の上にディスクの入った袋を置いた。
「ありがとう、ございます…」
美穂は一応の笑みを浮かべる。しかしその笑みには影があった。
「今じゃもうすっかり良い先輩よね」
「ホント。あれも亜由美先輩がガツンと言ったかららしいよ」
「やっぱり亜由美さんって凄いよねー。あたしも亜由美派、入ろっかな…」


・・・・・・もう、やめて・・・・・・・。


活気づくオフィスでのたった一言。
美穂のその呟きを聞いたものは、居なかった。

365:オフィスレイブ(事後)  2/6
09/04/20 04:58:06 K6hYnvOZ


金曜の22時。
誰もいなくなった社内では2人だけが居残るのが常だった。
人事部の真琴と美穂だ。
人事部では週末の仕事が多く、その居残り自体は奇妙なことではない。
だが彼女らのすることは業務ではなかった。

「この間の連休は長かったでしょう。たっぷり楽しめたわ」
会議室の革椅子に腰掛け、素の声になった真琴がぽつぽつと呟く。
聞く者まで沈痛な気分にさせる重いトーンだ。
美穂は真琴の隣に腰掛け、その話に耳を傾けながらも正面のスクリーン映像から目を離せずにいた。


映像の中では亜由美のむちりとした太腿がのたうち回っていた。
丸裸だ。
肉感的な桜色の身体を仰向けに横たえたまま、首を真琴に抱えられ、腹部を脚で締められていた。
両腕は床と彼女自身の背に挟み潰され、豊かな胸を迫り出させている。
極まっていた。
亜由美の顔は真琴の肩に隠れて顎しか見えないが、それでも苦しんでいるのが解った。

「ドラゴンスリーパー……胴を挟んで動けなくして、頚動脈を圧迫するの。
 真綿で首を絞めるような技ね。カエルみたいにひっくり返すから見応えあるでしょう」
真琴は淡々と解説した。映像の中の彼女も実に冷ややかだ。
逆に亜由美は苦渋の極致にいるようだった。
足を壊れるほどにばたつかせ、隠すもののない若草を覗かせる。
右足首に絡みついたショーツがやけに艶かしい。
亜由美がレイプされている。
美穂には想像だに出来なかった情景が、その絵からは容易く想い起こされた。
しかし亜由美の苦しみは、スリーパーによる窒息だけではないらしい。
おそらく主たる要因は、真琴の足で絞められた胴から響く、ごるる…という雷轟にも似た音だ。

『抜いて、抜いてえええぇっ!!トイレに…もおトイレに行かせてよおおぉっ!!!』
突如、映像の中で亜由美の叫び声がした。
「浣腸してやったの、ムカついたから2リットル以上はぶち込んだかな」
真琴が言う。その「ムカついた」を証明するように、映像内の真琴がドスの聞いた声を発した。
『だから、嫌なら自力で逃げなさいって何度も言ってるじゃないですか。
 理解力ない女って嫌いなんです、心底』
『無理、無理よおっ!!出来たらしてるわよ、なんでこんなに……強い、のよぉ……!』
亜由美は泣いているようだった。心はもう折れているように見えた。

366:オフィスレイブ(事後)  3/6
09/04/20 04:58:44 K6hYnvOZ

「一応フェアな戦いだったのよ。だいぶ調教も進んでたんだけど、一度アイツがブチ切れてね。
、…何だったかしら。
 ああ、営業課のあいつの椅子に縛り付けて、綿棒で徹底的に尿道を開発してあげたときよ。
 面白かったわ。初めの、痛いんだけど唇噛んで堪えてるブッサイクな面も傑作だったし、
 だんだん感じてきたらしくてクリトリスがビンビンに勃ちあがっちゃったりもしてね。
 自分の席ってことでプライドでもあるのか、背筋しゃんと伸ばして凛々しい顔してんだけど、
 愛液なんか駄々漏れだし、そのうち私もコツ掴んで潮噴かせまくって、机の書類全部だめにしてやった。
 これは契約書だから粗末にしちゃダメですよ、って念押して机の前に貼り付けるんだけど、
 それでもびゅっびゅ潮噴くんだもん。自業自得よね。」
真琴はそうまくし立て、情景を思い出したように陰惨な笑みを浮かべた。
「……とにかく、それでアイツが文句言ってきたわけ。
 もうこりごりだ、殴り飛ばして白黒つけてやる、ってヤンキー臭い言い分でね。
 でもアイツその時調教のせいでフラフラで、そんな奴に勝っても嬉しくないじゃない。
 だから一週間猶予を与えたの。
 私にとっても、の猶予だけどね。苛ついたから鍛えまくったよ。血が出るまで鍛えた。
 そして一週間後が、コレ」
真琴はそう言ってスクリーンを指す。
そこでは変わらず、亜由美が鳴動する腹を真琴に締め上げられ悶絶している。
「コレは2回ほど殴り倒して意識飛ばした後、引き摺り起こして浣腸したあとよ。
 圧勝だった。初戦で感じた不安がバカみたいに思えるほどにね。
 自惚れじゃないけど、私才能があるよ。亜由美をギタギタにする才能」
真琴は椅子に腰掛けたまま拳を握る。
美穂は息を呑んだ。
真琴は相も変わらず小柄で、病的に色白く、眼鏡をかけた陰気な女だ。
しかしその拳は、手の甲側の指付け根に分厚い血ダコが出来ていた。
殺せる、と美穂は思った。この拳は女を充分に殺しうる。
亜由美もそれを知らなかったわけではないだろう。彼女は本当に、よくやった。


367:オフィスレイブ(事後)  4/6
09/04/20 04:59:32 K6hYnvOZ

『お願いよおぉっ!!お、お腹が苦しくて、おかしくなっちゃいそう!!
 もう離してぇ、ぜったい逆らわない、何だってします!!だから、だから……』
『だから?』
『と、トイレに……!』
『トイレ?…ねぇ何ですかそれ、別の言葉で言うようにって教えましたよね』
『…………っ!!』
『嫌ならいいんですよ、本当に限界を超えたならどうしたって溢れるものですし。
 でもそこまで膨らませたエネマバルーンだと、おしりは引き裂けるでしょうね』
『……う、うっ……!!おね…がい、です……!!う、
           …………うんち、させてくださぃ……!!!』
亜由美は、堕ちた。その瞬間、映像内の真琴が亜由美の首を絞める手を緩め、
自由になった左手で風船のようなものを握り込んだ。
しゅううっと何かが抜ける音がする。驚くほど勢いよく、長く。
『あああっ、だめっだめえぇーーー!!我慢できない、で、出ちゃう―――!!!!』
亜由美の叫びも同じほど悲痛で長い。
その叫びが尻切れになり、腹筋が緩んだ瞬間。
バスッという音と共に黒いゴム製のアナルプラグが亜由美の股座から弾けとび、
続いて透明な放物線がフローリングの床に露の線を成した。
その線は次第にうっすらと色がつき、気付いた時には茶色に濁りきった汚液と化していた。
ぶりゅいいいっ!!びちっ、ブビィイイィッッ!!!!
音にすればそんなもの、いや、もっとおぞましく複雑だ。
『おお臭い臭い。涼しい顔して、目元もぱっちりで、すらっとしたスレンダーな体つきで、
 そんなあなたでも中身はこんなものなんですね。まるで本物の畜生です。
 不細工な私だってここまで臭い排泄は経験がありませんよ。』
真琴はなじりながら、再び亜由美の首と胴を締め上げる。うえっと亜由美の声がする。
 
腐りきりドロドロになった熱い臓腑を全てぶちまけるかのように、排泄は長く続いた。
汚液は四方に飛び散り、汚物は場の寒さに逆らって湯気を立ち昇らせる。
その排泄は相当に苦しいのだろう、亜由美の桜色の脚は尻を突き出したまま爪先立ちになり、
両足の指はぶるぶると震え、内腿からは降るような汗が滴っていた。

「汚いもの見てショック受けた?」
現実の真琴が椅子を軋ませて笑みを浮かべる。美穂は言葉もなかった。
「…ちなみに、これが昨日の“亜由美”よ」


368:オフィスレイブ(事後)  5/6
09/04/20 05:00:11 K6hYnvOZ

真琴がパソコンを操作すると、映像は汗まみれで失神する亜由美から別の場面に移った。
次に映ったのは女性の下半身だ。
「あんたなら解るでしょ、亜由美よ。あんたも社内の男連中も、ミニスカから覗くこの脚をよく見てたものね」
真琴は自嘲気味に言った。
美穂は導かれるままに画面を眺める。

映像では背景に石灰の壁があり、その中心にある穴に亜由美の括れた腰が収まっている。
まるでギロチンかマジックショーだ。
「ちなみに、壁の向こうじゃ亜由美、口を使って奉仕してるの。
 外人に負けないディープスロートの練習ね。
 フェラチオって嫌いだから映してないけど、そっちも苦しいはずよ。
 手首壁に繋がれて口枷まで嵌めてるから抵抗できないし、客人はウチの男共。
 単に惚れてる位ならいいけど、腕相撲で負けた、セクハラ摘発された…とか恨みある奴も多いしね。
 今朝も報告が来たよ。えづくときの喉奥が最高だったとか、初めて涙流すところ見たとか」
よく聞けば、カメラは確かに微かなえづき声を拾っているらしかった。

壁に阻まれ、映像からは亜由美のすらりとした下半身しか見えない。
だがそれで充分な衝撃だった。
女である美穂が見惚れるほど綺麗なヒップ、だがその中心にはバルブのようなものが埋め込まれており、
聞くだけで不安になる重い音で唸っている。
「この映像を撮る代わりに、って借り受けた米産のヘビーアナルファックマシンよ。
 迫力あるでしょ。30歳からって年齢制限ついてるぐらいだしね。
 ゆくゆくは亜由美も海外に出す気だから、今のうちにアナルに慣らしとかなきゃ。
 洋物っていえばアナルにディープスロートだもんね」
真琴が淡々と解説する間も、それをかき消すようにマシンは唸りを上げる。

マシンは馬が駆けるように凄まじくうねりたくっているが、外れる事は望めない。
マシンの淵からは幾本ものゴム帯が伸びており、亜由美の腰ベルトにしかと繋がれているからだ。
尻穴に刺さる突起部は異様に太い、直径6cmは下らないだろう。
それを埋められた菊輪は皺もなくなるほど伸びきりピンク色に充血していた。
そして穿たれている。
「太くて長くて適度に堅い。黒人の勃起しきったペニスを型にしたらしいよ。
 本当に大きいから、直腸ってあるじゃない。MAXだとあれより奥に入るんだって。
 アメリカ女でそれなんだから、日本人にはどうなんだろうね。
 ああ、当たり前だけど亜由美には、慣れない程度にMAXを堪能して貰ってるわ」
真琴は舐めるように語る。
映像では確かにマシンが暴虐的な唸りを見せていた。
どちゅ、どちゅ、どちゅっ………
マシンはローションでも使っているのだろうか、やけに湿った音で抽迭を繰り返す。
亜由美の後孔はそれに追従するように喘ぎ、接合部から黄色い液を噴き出していた。
その尿か糞便か判別のつかない汚液は、亜由美がトイレに行くことも赦されぬまま穿たれ続けている事を如実に物語る。


369:オフィスレイブ(事後)  6/6
09/04/20 05:00:48 K6hYnvOZ
「すごい画だよね。上場企業の看板嬢になれそうな上玉が、暴走した機械にアナル責めされて汚物を漏らしてる。
 音も凄いし、所在無く踏み変えられる脚だって、悔しいけどそそるじゃない。
 これ、試しにビデオに撮って海外サイトに乗っけたんだけどさ、もう5万アクセス超えてるよ」
「…これを……流したん、ですか……。」
「ええ。でも、そんなに酷い事でもないわ。撮るって言うのは本人も了承済みよ。その上で、ほら」
映像では、ちょうど真琴が現れ、何か声をかけながら亜由美の秘部に手を差し伸べていた。
美穂は息を呑む。
散々に使い込まれたらしいそこは、だらしなく襞を開いて汁を泌ちさせていた。
そして蕩けるように真琴の指を飲み込み、手の甲を迎え入れ………手首までの蹂躙を赦した。
「すごいでしょ、このとき子宮に触ってるのよ。でも、痛がらない。
 想像できた?…あなたには無理でしょう、美穂。
 もう亜由美は、あなたの知っている亜由美ではないの。」
真琴はそう言うとぷつりと映像を止めた。あ、と美穂が声を上げる。
真琴はそれを見て、笑った。
それはいわゆる人間の笑みではなく、もっと何か異質の、蝙蝠の啼きような。

「可愛そうねぇ美穂、じゃあせめて、あなたには昔の亜由美をあげるわ。
 まだ私と並び立てたころ……たぶん、一番美しかったころの映像をね」

真琴は今まで見ていたディスクを取り出し、代わりに古いディスクを差し込んだ。
日付は2ヶ月前の金曜日。あの、決闘の日の夜だ。


暗い画面が映る。どこかの家の風呂場だろうか。
そこには2人の女がいた。スーツ姿の真琴と、全裸の亜由美。
左足の包帯が痛々しい。あの日の彼女だ。
亜由美は後ろ手に縛られ、その縄の先をフックに通して宙吊りにされている。
そしてその細い身体はやや前屈みになっていた。
『んっ……っは………………っぁ、ぁっ…………は…ぁっ………!』
荒い息に混じり、微かな、微かな声が漏れ聞こえる。
『いい声が出てくるようになりましたね、先輩、ね』
淡々とした口調で言うのは真琴だ。
彼女は左手にローションのボトルを持ち、それを手袋をした右手にたっぷりと注ぎつつ
事務的に亜由美の秘所への愛撫を続けていた。

それは音もなく、激しい動きもない単調なものだ。
しかし見ている美穂は体中が痒くて仕方なかった。それほど女にとって恐ろしい嬲り。
女の身体を知る女だからこそ為しえ、女を心底憎む女だからこそ徹底できる地獄の責め。
亜由美の両脚の内側が余すところなく濡れ光っていることからも、それがとうに常識的なレベルを超えているのがわかる。
それでも、亜由美は屈していなかった。
『思ひ知らせてやる……!!……ッ……んたに、かららず……思ひ知らせてやる………ッ!!!』
淫核の皮をやわらかく剥かれながら、身体をぐらつかせ、唾を一杯に垂らし、
それでも亜由美は闘っていた。


                        オフィスレイブ END


370:名無しさん@ピンキー
09/04/20 11:13:50 NAxRtwln
エロだけかと思ったら最後の最後にスレらしいしーがあって良かった
GJ!

371:名無しさん@ピンキー
09/04/20 12:20:48 3IIyrcJf
GJ

372:名無しさん@ピンキー
09/04/20 19:09:48 aS3QiChD
乙~

373:名無しさん@ピンキー
09/04/21 00:27:30 iz7UjenA
超GJ

374:名無しさん@ピンキー
09/04/21 00:51:36 aeV86r30
GJとしかいいようがない!

375:名無しさん@ピンキー
09/04/21 07:38:46 v7fMMxxc
GJ!

376:名無しさん@ピンキー
09/04/21 12:25:06 MrjmfY+q
GJです。

377:名無しさん@ピンキー
09/04/21 13:30:23 Ghwk80CX
GJこういうの良いな
続きそうな予感があって更にテンション上がった
勝って負けて繰り返して最後は泥沼ってのが一番好きだ

378:名無しさん@ピンキー
09/04/21 18:25:50 FhacZ+ek
GJだ

379:名無しさん@ピンキー
09/04/21 19:36:21 5zRC0CAO
GJ!

380:名無しさん@ピンキー
09/04/21 20:54:38 LIIwSPqK
GJGJGJ!

381:名無しさん@ピンキー
09/04/21 20:55:27 LIIwSPqK
GJ! GJ! GJ!

382:名無しさん@ピンキー
09/04/22 05:11:28 IOmMiCC8
GJ!

383:名無しさん@ピンキー
09/04/22 22:02:44 xvt+SIob
愚痴スレだったかな

GJ!だけ連呼されても困る
という書き手さんがいた

何がGJなのかわからなくて、次が書けないって
結局書くのを止めてしまったそうだ

384:名無しさん@ピンキー
09/04/22 22:17:26 nyrf0r2o
GJの連呼と言っても今日にも落ちていたかもしれない超廃墟スレでの13連呼だ
これを絶賛といわず何という!

385:名無しさん@ピンキー
09/04/23 14:06:50 y8qhP20b
上手く表現できたらそら自分だって書いてみたいさ
文章を書ける人にとっちゃ物足りないんだろうな
イイと思うからGJと言ってしまうんだけど・・・

386:名無しさん@ピンキー
09/04/23 14:56:26 WRgzGCMR
気にするな。
一応俺も物書きなんだが、他人に感想つけるときは感動しまくっててもGJとしか言えない。

387:名無しさん@ピンキー
09/04/23 18:55:22 l+mKEV/H
GJだけで十分じゃないか
GJ! GJ! GJ!

388:名無しさん@ピンキー
09/04/23 20:25:21 l1QRvbmZ
まぁ確かにGJっていう単語を便利に使ったという反省はあるかな
ただ読んで感想が漠然とこれは良いものという事しか無かった訳で…
でも良かったっていうのは伝えたかったんだよな
まあじゃあなら最初からそういう感想を書けとか言われそうな訳だが

389:名無しさん@ピンキー
09/04/24 00:21:43 WME50fyn
正直いえば俺のGJはスレを廃れさせないための義理
でも投下してくれただけでも称賛する価値はあると信じてる


390:名無しさん@ピンキー
09/04/24 04:29:50 K4O8xYTG
>>502
>何がGJなのかわからなくて、次が書けないって
>結局書くのを止めてしまったそうだ

別に非難とかじゃなく単純に疑問に思ったんだが
……気になった時は思い切って具体的に聞いちゃえばいいんじゃね?

391:名無しさん@ピンキー
09/04/24 08:06:08 ifG+dYB+
自分擁護多すぎでフイタ
結局GJ!の言い訳ばっかりで、いまだ内容に関するレスゼロって酷いな

投下しただけでGJ!なんてレスもあるけど、内容評価ゼロでそんなこと言われたら
「投下されればなんでも良かったのか」なんてネガティブに捉えられてるかもしれんぞ

せめて「~で抜いた」ぐらい言おうぜ

392:名無しさん@ピンキー
09/04/24 10:43:10 pEpgkC+H
もっと感想文が必要だと思うなら、そう思った人が感想書けばいいだけの話。
投下しただけでGJってのが1つ2つあっても、
分母の数が圧倒的だから気にする事もないと思う。

ところで、これ以上感想のつけ方に関する話がしたいのなら下記スレでどうぞ。
よく出てる話題だし。

書き手⇔読み手 ちょっと聞きたいことがある5
スレリンク(eroparo板)

SS書きの控え室92号室
スレリンク(eroparo板)

ともあれ、>>482はGJ!
最後のまだ屈してなかったうちが好きだーw

393:名無しさん@ピンキー
09/04/24 12:33:43 SjLdgeH8
GJって言っときゃまた書いてくれるかもしれん
とにかく連呼しようぜ

394:名無しさん@ピンキー
09/04/24 15:58:11 Ak6xhbnS
エッジは百戦錬磨の書き手だから感想がないくらいでへそ曲げたりしないさ

395:名無しさん@ピンキー
09/04/24 20:16:22 WME50fyn
>分母の数が圧倒的だから気にする事もないと思う

ひょっとして気づいてるかもしれんが>>477-479、>>490-492、>>494は俺が一人でやった。
感想がないのは序盤の男性ホルモン注射の辺りで話が好みじゃなくて読むのをやめたから。
久々の投稿なので自分の好みじゃなくても職人をおだてておこうと思ったんだが今考えるとマズかったかもしれん。
スマン・・・

396:名無しさん@ピンキー
09/04/25 00:28:28 /1OgjAPn
なかなか正直な告白・・・
次回からは正直に書いたほうが書き手さんもむしろ嬉しいんじゃ?

俺は良いと感じてはいるのに、感想を書くだけで20~30分掛かってしまいそうな
勢いだからとりあえずGJで終わらせてしまう・・・

397:名無しさん@ピンキー
09/04/25 01:12:30 6PTPZ4yO
正直なとこ俺も気持ち悪い設定だなと思ってた。
こんなこと妄想出来る奴の気がしれない

398:名無しさん@ピンキー
09/04/25 07:45:07 ZC+pJUjl
>>510
少しは言葉をオブラートで包むのを覚えろよw
全部の投下作品が良い悪いで区別できる訳じゃないんだよ
GJはそれを棚上げにできる魔法の言葉なんだよ

399:名無しさん@ピンキー
09/04/25 11:54:13 XqAzUTnh
実はオレも>>498-500で自演しちゃったけどな
たとえ義理でもGJしとくのは悪いはずないんだからドンマイだろ

400:名無しさん@ピンキー
09/04/25 14:07:19 vZ4yXeym
義理GJはともかく自演GJの連発はやめた方がいい
相手からしたらバカにされたように感じるんもしれんし

401:名無しさん@ピンキー
09/04/25 15:30:32 6PTPZ4yO
13個もGJ貰ったと浮かれてたら実は2・3人の自演だった訳かW
作者半泣きだな

402:名無しさん@ピンキー
09/04/25 16:03:19 /1OgjAPn
何も書かずにハァハァしてるのが圧倒的に多いと思うけど。
画像や動画をうpして、DL数の割にコメント数の少ないのには毎回おったまげる
まぁ3個GJが付けば満足なレベルかな

403:名無しさん@ピンキー
09/04/25 19:48:24 3Y/R0rXG
とにかくGJ連呼しとく方が得策なんだよ

404:名無しさん@ピンキー
09/04/25 21:13:49 XkLh6ZjN
だから何も書かなくていいんだって
作者連中は「何も書かずにハァハァしてるのが圧倒的に多い」と思いたがってんだからw

405:名無しさん@ピンキー
09/04/26 02:03:38 mz1XS/1+
圧倒的に多いのは、相変わらず気持ち悪いのが粘着してんなぁと思いつつ
スルーしてる人達
に1票






そんなスルーしてる人達に申し訳ないと思いつつ、ID変えながらの努力に期待してます

406:名無しさん@ピンキー
09/04/26 11:37:22 b9CBylGB
このスレ、こんなに人いないだろ
また誰か自演してんじゃね?

407:名無しさん@ピンキー
09/04/26 14:31:10 h+xbEhyr
書き手=妄想を勝手に垂れ流した挙げ句に称賛を期待する真性基地外

408:名無しさん@ピンキー
09/04/26 19:04:18 BSw5DsOi
で作者全体をけなす523のような馬鹿は何でこのスレにいるの?

409:名無しさん@ピンキー
09/04/29 14:15:56 +5F04+ik
実戦派を自負する女格闘家が澄ました顔のお嬢様アイドルファイターに横面がへしゃげるくらいのパンチくらうようなリョナ絵であるようなシチュの話が読みたいな


410:名無しさん@ピンキー
09/04/29 15:38:55 C90T53S5
【リョナ】
テレビゲームやアニメ、映画などの戦う女性がやられた時の苦痛の声やピンチシーンなど、
直接的な性行為を伴わないが、性的興奮を感じるシーンを指すインターネット上のスラング。

411:Night Party
09/05/02 21:09:15 wAZa4l0M
大分遅くなったけど、投下します。
22時くらいかな。
エロはないですけどねー。

412:Night Party(アイの章)
09/05/02 22:27:33 wAZa4l0M
 自分にあるのは空手だった。
 空手だけだった。
 それ以外の何もかもは、ただ知っていることでしかなくて。
 
 真実―自分の身につけている、自分のものだと言えるものは。

 父より受け継いだ空手だけだった。
 だから。

 彼女が、マイがただひとつだけ手に入れて、自分のものだと、自分自身だと唯一胸を張っていえるモノであるその空手をつれて、彼女はこの夜宴に降り立ったのだった。




 Night Party(マイの章)




 専門の道場を持てる流派というのは少数派である。
 多くの流派が自治体の運営する青少年センターや公民館などを使って、週に二度か三度の割合で指導しているということが多い。
 だから、という訳でもないがマイがその公民館を訪れた時は、何処か懐かしくなった。
 小さな公民館である。
 三階建てではあるがワンフロアの広さはたいしたことはない。二十畳ほどの広さだ。
(どこもにたようなものなんだ)
 ごく当たり前のことではあるが、入ってから見廻してそう思う。
 マイが父に指導を受けていたのは、やはりこのような公民館だった。こんなところで多くて十数人か、少なくて五人ほどの門下生と共に稽古をしていたのである。
 電器がついてても何処か薄暗いそこの真ん中にまで歩き出すと、マイは胴着を調える。
 真っ白な空手の胴着だ。
 流派名をプリントした自分のは使えない。だから、新調した。真新しい胴着の匂いというのは何処か落ち着かなかった。
 この公民館まで胴着を着て歩いてきたが、別に誰も不審な顔をすることはなかった。
 今時でも武道を習う人間は多い。実際、やはり同じような胴着の少年少女とすれ違ってもいた。
(あの人たちは多分、少林寺拳法だよね)
 この辺りに空手の道場があるとかいう話は聞いたことがなかった。多分、少林寺拳法かさもなくば日本拳法か。
(あんまり気にしても仕方ないけど)
 集中しよう、と両手で腰の帯を掴む。
 そして。

 かっ

 こっ

 呼吸法。
 自然に両手は帯から離れて、掌はそれぞれが上下で大きく円を描くように動いていた。
 転掌。
 那覇手の流れを汲む剛柔流の開祖・宮城長順の創案になるという受けの型である。
 マイの父は首里手を極めるのにその精魂を傾けたが、最初に習ったのは剛柔流系の道場であった。
 剛柔流の型も自分の中にとりこみ、ことの他、この転掌と三戦を重視していた。
『試合の前に、これをすると落ち着く』
 生前に、父はそういっていた。
 呼吸と動きの一致がなければ、この型は上手くこなせない。
 全ての動きが終わると、拍手が鳴った。

413:Night Party(アイの章)
09/05/02 22:28:19 wAZa4l0M
 
「貴女が私の相手ですか?」

 振り向いた先はこのフロアの入り口であり、そこに立つのは一人の少女であった。
 ブレザーの制服のまま、少女は中に入る。
「ええ」
「―合気道ですね」
 一瞥して、マイはそう言った。
 ブレザーの少女―アイは、足を止めてマイの顔を凝視する。
 マイは幼い顔に精一杯の凶悪な笑みを浮かべ、自然体に構えた。
「あと五分です」
 アナログの時計が壁にかかっていて、静かに音を上げて時間を切り刻んでいた。


 アイは靴下を脱ぎ、公民館の真ん中へと歩いていく。
 傍目には落ち着いているように見えたが、そうではなかった。
(こちらの流儀を見抜かれた……昔の武芸者なら、そういうことがわりと簡単に出来たらしいけど)
 まるで時代劇だと思った。
 互いに剣を構えた状態でにらみ合っただけで相手の流派を識別し合うのである。
 今の自分は構えどころか服装も学生服のままであるが。
 合気道の源流である大東流合気柔術の名人・武田惣角は、一瞥でその人間の学んだ流派は元より、そこに集団で習いに来ていたら、その集団の中で誰がどういう格付けであるのかを瞬時に見抜くことができたという。
 さすがに惣角のような真似はそうそうあるできる話ではないが、別の流派の人間がとある流派を学びにきた際に、申告してないのに僅かな動きや姿勢などで流派を見抜いたなどということは聞く話である。
 人間の身体というのは訓練に応じて特殊化していく。
 空手家には空手家の筋肉のつき方があり、柔道家には柔道の試合にふさわしい筋肉のつき方がある。
 陸上選手でも、長距離走の選手などは脈拍が長くなるという。
 だから、観察眼に優れた人間ならば相手の微かな動きから相手の流派を見抜くことは可能なのだろう。
 アイ自身にも似たようなことができるという自信はある。
 あるが、それを口にすることはない。
 間違っていると恥ずかしいからであるが。
(この子、よほどに確信があったのね)
 そもそも合気道家の動きの特徴というのはどういうものか、それを知っていたとすると―
(この年で、かなりの経験を積んでいる……)
 マイはどうみても中学生に入りたて程度にしか見えなかった。
 つい去年まで小学生だったような、小さな女の子だ。
 しかし決して長身といえない自分よりも、なお頭半分小さなこの女の子が、絶対に油断のできない相手なのだとアイは確信していた。
 さきほど見せた転掌の型、そして今の自分の流派を見抜いたという言動。
 こちらを動揺させようとしたのたのだろう。
 この子は兵法というものを心得ている。
 
 ―達人

 きっと、このようなことが簡単に出来る人間のことを、そう呼ぶのだ。



414:Night Party(アイの章)
09/05/02 22:32:32 wAZa4l0M
(かなり、使えそうです)
 マイは自分の目の前の二メートルの位置に立つアイを見て、そう思う。
 重心が据わっている。
 そして歩く姿も綺麗だった。
 肩がちっとも上下しない。
 するすると滑るように前進していた。
(まるで父さんみたい)
 と素直に思った。
 それはマイにしてみたら、最大限の賛辞であった。
 互いに右前の自然体で向かい合う。
 秒針の音が聞こえる。
 あと二十秒…十秒…。

 かちり

 日付が変わった。

 ナイトパーティーが始まった。

 
 ナイトパーティー。
 それは誰が始めたのかも解らない、戦いの夜宴だ。
 時に学校で。
 時に公民館で。
 時に武道館で。
 深夜零時に行われる闘争の舞台。
 参加者が全員でどれだけ、果たしてどんな人が参加しているのかの全容は知れない。どのような機構がそれを成立させているのかも判然としない。
 ただ、その存在は武道・格闘技の世界に携わる者の一部の間に都市伝説じみた胡散臭さで伝わっている。
 そのような戦いがあるということは、マイは父から聞いていた。
 マイというのは、この場に赴くために作った彼女の呼び名である。
 非合法なこの戦いでは、多くの者が本名を名乗らないという。マイもそうしたまでだった。
 よもや、自分がそれに参加することになろうとは、ちっとも思っていなかったけれど。
(父さんは、現在の合戦場のようなものだろうとは言ってたけど)
 合戦場というのは、かつて沖縄で空手家同士が決闘していた場所のことだというが。
 そんな場所で喧嘩同然に試合することを『掛け試し』と言っていたらしい。
 琉球王国が明治になって日本にとりこまれた一時期、治安の悪化した頃に特に流行っていたが、詳細はほとんど知られていない。
 年嵩のいった名人はそのような風潮を批判していたともいうが、若き日はその彼らもそこで戦って技を磨いていたともいう。
 マイの父は、幕末の頃に中国より伝わった拳術が、その掛け試しによって「唐手」として完成していったのだと語っていた。
 それは自分の得た実感によるものだろうとマイは推測している。
 彼女の父親は、あの人は恐らく古伝空手における最後の実戦の名人だったろうから―
 戦いが始まってからも静かに佇んでいるアイを見ていたマイは、その悠然たる立ち姿に、父のそれを見出していた。
(強い……かなり、強い)
 マイはまだ十代前半の少女だった。
 少女だったが、目付けには自信があった。
 父と父に付き従う数少ない弟子たちの稽古を見ていたからである。
 武道において、修行の環境には重大な意味がある。特に周囲の人間のレベルが高いと、自然とレベルの高い動きを目で見て覚えることになる。脳はそのイメージを元に動きを再現しようと身体に指令を送るのだ。
 勿論、達人の動きを簡単に再現できるものではないが。
 そのように指導者の動きを目で見て覚えるのを、見取り稽古という。
 マイは日常の生活と道場での修業とで、自分の父とその弟子たちがどれほどの使い手であるのかを認識していた。
 その弟子の中には元合気道家や中国拳法、柔道でひとかどの使い手だった者も多い。
 そのことから目の前の少女の流儀を合気道だと看破できたのだ。
 そして、アイという少女がそれに近い、あるいはそれ以上の境地にいるということもはっきりと悟っていた。
(流派は合気道―だけど)
 少なくとも、父の弟子の元合気道家だった人よりも上だと思った。
 だからと言って。
(ここで引けない)
 構える。



415:Night Party(アイの章)
09/05/02 22:37:50 wAZa4l0M
 ◆ ◆ ◆


(どうみても、中学とかだよね……)
 改めてアイは思った。
 下手したら、小学生かも知れない。
 アイはそう見て取った。
 女の子の成長はだいたい十二、三歳の時分には、ほぼピークに達する。
 骨格はそこで完成し、ホルモンの作用によって肉付きなどが変化していくのだ。
 目の前の空手使いと思しき少女は、アイの眼から見ても十代をどれほどを過ぎたようにも見えなかった。
 そして、驚くべきはそんな歳でありながらも完成された風格が感じられることだった。
(空手と戦うのは始めてじゃないけど、この子が使うのは多分、古流)
 確かあの〝転掌〟の型は、那覇手に属していたと聞いているが……。
 両手を構えたマイを見て、アイは微かに眉をひそめた。
(あれは)
 脇を締めたままに右手を前にして左手を右手の肘の辺りに添えた、手の甲を下に向けた構えだった。
 やや腰を落とした右前の立ち方になっていた。
(やっぱり伝統派とかじゃない)
 アイも歩き出し―
 
 派手な音をたて、手と手が交叉した。

 いつの間にか間合いを詰めていたマイの右手がアイのコメカミを狙い、それをアイの左手が受けたのである。
 そこからアイの手がマイの手に絡み付こうとしたのに間をおかずマイの添えられた左拳は摺りあがり。
 撥ねるようにアイは後ろに飛び退いた。
 マイはそこから間合いを詰めようとしたが、アイが隙なく着地したのを見届けると静かに息を吐く。
 
(今、一瞬で間合いを詰められた)
 恐らく、膝の力を抜くことによる重心の落下―そのことによる筋肉を極力使わない移動法だ。
 古武道の世界ではたまに聞く。
 相手に気づかれずに接近する技法である。
 人間の脳は相手の動き目で見て判断しているが、実際に見ている情報が脳内で映像となるには若干のタイムラグが生じる。そのタイムラグを埋めるために、脳は視覚情報を元に映像を捏造する。
 そう。
 人間が見ているものは、実際のそれとは異なるものなのだ。
 その捏造情報は、しかし捏造とは言っても例えば相手の筋肉の動きなどの既知の経験から予想されたものであり、多くの場合はほぼ正確なものである。そういう脳の辻褄あわせによって、本来は捉え切れない速度のボールを打ち返し、見えないはずの打撃を回避し得るのである。
 無拍子というのは、その人間の脳のメカニズムを利用した技だ。
 筋肉を使わない、重心落下による移動という日常にありえない動作を使われると、脳は認知できない。できても滅多に無いことによる処理をすることによって速度は遅くなる。
 倒地法ともいう。
 勿論、これは結局は「見慣れない動作」ということに集約されるものであり、経験されると通じなくなる。
 アイがマイの打撃を受けられたのは、以前に同様の技法を仕掛けられての稽古をしたことがあるからだった。
 それでも、アイ以外のどれほどの人間が同様のことができたか。
 マイの手は自然な動きであり、その上で鞭のような速度としなりを持っていたのだ。
「凄いです」
 とマイが笑っていた。
 幼い顔立ちに似合わない、凶悪な笑み。
「痛い」
 アイはそれだけを言い返した。



416:Night Party(アイの章)
09/05/02 22:51:24 wAZa4l0M


(今のを受けられるとは思わなかった)
 マイは精一杯怖く見せた笑顔を浮かべつつ、内心で驚いていた。
 倒地法からの打ち込みは、父が生前に得意としていた打撃で、古くは沖縄空手の実戦派の名人、本部朝基が大正時代にボクサーを相手に仕掛けたという技である。
 観客も仕掛けられた方も、朝基がどのような技を使ったのかがよく解らなかったといわれる―それほどの早業だ。
 そこから受けられて手首の関節を捕られ掛けたが、咄嗟に外せた。
 今の打を受けられた上にそんなことを仕掛けられるのは、まったくマイにとっては未知の事態である。
 相手が飛び退いてくれたが、こちらも攻め切れたかどうか、確信が持てなかった。
(危なかった)
 ちょっと焦っていたから。
 焦りは容易に隙となるからだ。


 お互いがお互いを脅威と見ていた。


 アイはそれでも呼吸を乱さずに静かに前と進み。

 マイもまた、最初と同様に足を踏み出した。


(勝てないかもしれない)
 マイは思う。
 今のを受けられたということは、こちらの攻撃が読めるということである。
 合気道の技法をマイは熟知している訳ではないが、父の弟子だった元合気道家の人はこう言っていた。
『合気道の技は、相手の動きを高確率で察知していないと使いにくい』
 そのために手刀受けなどで相手の動きを察知する訓練をするのだという。
 そんな程度のことで相手の打撃に反応できるのかということについては、かつてグレイシー柔術が世間に出始めた頃のホイスの対打撃の訓練などを例に挙げて説明していた。
『パートナーに両手のパンチを一分ほど繰り出してもらって、それを捌くという訓練をする。それだけで対打撃の訓練になってたそうだ』
 要するに、相手の動きを読み取る目付けを身につけるためのものであり、古い時代の古流における組太刀や約束組手なども同様の効果を狙っていたのだろう、とその人は言っていた。
 しかし、合気道の手刀受けにしてもグレイシー柔術のその訓練にしても、最近の打撃技術の発達についていけるのかということについて疑問があり、その人は空手の研究を始め―いつの間にか、空手家として父の元で学んでいたのだという。
 父の空手は、その人がそれまで学んでいた合気道と共通する技術があり、そしてより素晴らしい技術と理念があるのだと。
『型、そして鍛錬法は伝統を受け継ぎながらも最新の科学の成果をも踏まえたものです。武術のメソッドとして、現在の私の知る合気道を含めたあらゆる武術より完成している』
 だが、とその人は言っていた。
『メソッドの完成度とは関係なしに、その何千人もの修行者のいる格闘体系の中には、一人や二人はその理論を体現できる天才児がいる』
 合気道の世界にもいるのだと言った。
 相手の打撃がどんなものだろうと察知し、捌き切るような達人が。
『何せ開祖はピストルの弾を予測してかわしたなんて伝説があるからなあ』
 その人はそこで笑った。
 さすがにそれはただの伝説なのだと思っているらしい。
 だけど、とマイは思う。
 目の前の、今のを初見で捌き切るような人がいるのなら、その延長に、その果てに、そういうことができる人が出てくるかも知れないと。
 だけど。
 だけど。
 だけど。
(だからって、負けられない)
 負けてなんかられないと、マイは拳を作った。
 父に伝えられた最初のこと。
 それは、空手のティジクン(鉄拳)だった。



417:Night Party(アイの章)
09/05/02 22:55:24 wAZa4l0M
 マイの父親は空手家であったが、世間にはほとんど知られていなかった。
 当たり前である。
 沖縄の武士(ブサー)の出というわけでもない、大学生から空手を始めたという人で、大会などに出てもいいところ二回戦突破程度にしか進められなかったと言う、何処にでもいるような空手選手だったからだ。
 就職してからも、一応は大学に指導しにきていた師範がやっていた講習会に参加していたが、それこそ趣味の範囲である。たまにある連休などを利用しての合宿などには参加する程度には熱心だったが、結婚してからはその合宿にも参加しなくなっていた。
 そんな程度の、ありふれた空手家と名乗るのもはばかられるような若者だった。
 そんな父が変わったのは、結婚して三年目、講習会に特別に招待されていた流派の総帥の師匠と言う、沖縄の空手の先生に出会ってからである。
 総帥の師匠、というのはつまり総帥はその先生の元で学んでから独立して流派を立てたということであるが、総帥とその先生との間は良好であり続けていた、らしい。
 その総帥にしてもさらにその先生にしても、マイが物心ついた頃には亡くなっていたので、どういう関係であったのかということは彼女もよく知らない。
 父がたまに語ってくれていたことをまとめると、総帥は沖縄の古伝に学びながらも、本土で空手家として流派をやっていくには全空連に加盟に参加していた方が有利だからとそこに入り、「伝統派」として古伝をゆがめざるを得なくなったということである。
 奇妙に聞こえるかもしれないが、いわゆる伝統派空手というのは古流の空手とは言い難い。
 勿論、流派内では一部の人間にその流派の理念を伝えるべく型を研鑽し、伝えていたりもするが―
 指導者として、選手として評価を受けるには、試合で勝てるようにならなくてはいけないのだ。
 試合と実戦とは違う、とはよく言われる言説ではあるが、少なくとも空手においては実戦の中から編み出された型の技は、試合ではほとんど活かされることはない。
 まったく使えないということでもないのだが、そのような技はほぼ例外と考えてもいい。
 試合にはルールがあり、ルールがその試合での戦法を形作っていく。
 ボクシングやレスリングなどは、そのルールの名前と呼んでも過言ではない。スポーツ格闘技というものはそういうものなのである。
 しかし、空手はスポーツではない。
 武道である。
 試合は試合であり、別のものなのだ。
 総帥は、少なくともそう考えていたのだと、父は言っていた。
 スポーツ格闘技としてのカラテは、それでも青少年の育成という教育者の立場からは肯定せざるを得ず、流派を維持するためには選手を試合に出し、そのために指導する他はないのだ。
 それでも、ある程度の年配の人間のための空手として、自分の学んだ古伝を伝えることは出来る―
 そんな理念があったのだろうと。
 全ては父の推測である。あるいは理想であり、もっといえば妄想なのかも知れなかった。
 総帥もその先生も亡くなってから十年もたたずして、その流派は普通の伝統派空手として現在も試合に選手を輩出し続けているのだから。
 だけど、父がそんなことを考えていても仕方ないのだとマイは思う。
 それだけ、父にとってのその先生との出会いは運命的であり、以降の自分の人生を決定付ける出来事であったのだから。
『うん。筋がいい』
 父は不器用というほどでもなかったが、器用だとか天才的だとか言われるような選手ではなかった。
 ただ、型をやりこんでいた。
 型の演武も試合の一分野としてあるからだ。
 三十を目前にして試合出ることも億劫になっていた父は、演武の方にウエイトを移していた。
 勿論、組手で体を痛めていては仕事に差し支えるなどという理由もあったが。
 たまたまその講習会で型を重視しているのが父だけだったのか、先生は流派の原型である「那覇手」としての型を伝授した。
 それは幾つかあるが、特に転掌と三戦をである。
 試合に対する情熱もなくなり、あくまで趣味としての空手をやろうとしていた父は、この型の空手に熱中した。
 魅入られたのだと言ってもよかった。
 型をやりこみ、分解し、解説を受けてそれを試す。
 この頃に父の空手の基本は完成したと思っていい。

418:Night Party(アイの章)
09/05/02 23:03:55 wAZa4l0M
 そして次の転機は間もなく訪れた。
 休日に母と出かけた父は、その出先でたまたまチンピラに絡まれ―咄嗟に三戦の型の技で反撃してしまったのである。
 その時にチンピラの一人は数日間の意識不明となって、その男の実家がそこそこの家柄であることもあって、父は訴えられた。
 身重だった母を護るためであり、向こうが先に手出しをしてきたということもあって、裁判では正当防衛が認められたが。
 しかし、正当防衛を認められたとは言え、あくまでも暴力事件で裁判沙汰になったということで会社は父に退社を迫り、流派もまた裁判の決着がつくまではほとんど破門状態で出入りが禁止され、結審した後に講習会に出ても何処か腫れ物に触るような扱いを受けた。
 父は孤立した。
 会社を退社して実家に戻り、数ヶ月思案した後に父がとった行動は、空手を極めるということである。
 どういう葛藤があったのか、マイはよく解らない。自分なら、人に怪我を負わせてしまったのならば正当防衛であろうとも空手をやめてしまったのではないかとも思う。
 後から考えると、父はこの時に目覚めたのではないのか。
 趣味に空手をやるのではなく、その人生を空手に捧げる武道家として。
 臨月の母を連れて沖縄に移住した父は、その地で首里手の名人と出会い、弟子入りした。
 そして自分が生まれ―そこからの十年間が、自分の人生で一番幸せではなかったかとマイは思っている。
 沖縄にいたのは五歳までだったが、本土に戻ってからも父は自分の空手を練り、そして遂に流派を立てた。
 流派とは言っても、ほとんど門弟などがいないという弱小流派だった。
 日本に現存する武道の流派というのは、多くがそのようなものである。
 沖縄古伝と称して公民館で教えていたが、一人の月謝はいいところ五千円か一万円というのが相場だ。父が設定したのは五千円であるが、それはより数を集めるということを意図したものだろう。
 ただ、毎回稽古にくる面子というのは限られていたし、月謝を払ってくれるのはその面子よりも多かったが、それでも全員で十五人程度である。
 公民館を借りるのにも金がいるし、その程度ではとうてい生活はたちゆかない。
 父も母も仕事に出ていた。
 世間的に見て、空手は副業でしかなかった。
 そんな訳で、本土に戻ってからの最初の五年間は、貧しいとまではいかなくても、何処か質素な生活をしていたとマイは記憶している。
 それでも楽しかったのは、父は充実した日々を送っていたからであり、母はそんな父にたまに愚痴をこぼしながらも、たいした不満もなく生活していたからであろう。
 しかし、いつの頃からか父は変わった。 
 大金を持ち帰るようになり、酒の量が増えた。
 雰囲気が何処か荒んでいた。家族や弟子に当り散らすようなことは無かったが、何処か近寄りがたいものを感じ始めた。
 それがどういう意味なのかをマイが知るのは、ずっと後の……今から半年前、念願の道場を建てた直後に、父が交通事故で死んでからである。
『借金を払ってもらいたい』

419:Night Party(アイの章)
09/05/02 23:04:43 wAZa4l0M
 葬式が終わった直後にそういってきたのは、弟子の一人ではあるが週に一度くらいしか出てこなかった男である。
 その男が暴力団指定こそは受けていないものの、いわゆるヤクザであるというのはその時に初めて知った。
 人当たりも良く、自分をよく可愛がってくれていたこの男を、マイはそれほど嫌いではなかった。だが思い返せば、父の雰囲気が荒みだしたのは、この男が入門した直後ではなかったか。
 男は父が自分たちに指導し、時に組と組の間で行われるトトカルチョ―いわゆる賭博行為に選手として参加していたということを語った。
 どういう経緯があってそのようなことになったのかは、後で知ったが、弟子の一人が組の人間と揉めて、それを解決しようとして関わった挙句のことであったらしい。
 武道家とやくざの繋がりは古来からあるものだが、父はできるだけそういうものとは無縁でいようとしていた。
 だが、弟子がヤクザと揉めた時に、それでも見捨てられなかった。
 もしかしたら、過去に自分が揉め事を起こしたを時、組織が護ってくれなかったというのがトラウマになっていたのかもしれない。
 ともあれ、父はやくざと関係を持った。
 そのことによって、実は父はそれほど不利益を蒙っていない。
 賭け試合は大使館などによって行われていて警察が介入することはなかったし、報酬はたいしたものがあった。
 試合は確かに危険な相手とすることになっていたのだが、負けたからといって制裁を受けるでもないし、そもそもからして父は確かに名人で、ほぼなんでもありの試合で後れを取ることは無かった。
 やくざ達の方も、先生先生と優遇していたらしい。
 自分たちに利益をもたらしてくれる相手なのだから当然である。
 道場建設の準備金を用意するほどに、入れ込んでくれていた。
 しかし―
 父は死んだ。
 予定されていた収入は見込めなくなった。
 そうなると、彼らはとりあえず資金を回収しなくてはならない。
 まず借金のカタに道場の権利を確保し、あとは父の弟子の誰かを立てて……という絵図面を立てていたようだ。
 残されたマイとその母親も、別に無理に働かせる必要もないし、もっと言えばマイは「宗家の娘」であり、空手の腕前は天才的だった。
 今後マスコミに売り込みにかけるのにも有利な材料になると彼らが考えても不思議ではない。
 実際にそういうプランも提示されている。
 だけど。
 だけど、マイにも母にもそれは受け入れ難いものだった。
 経済的には父を亡くした自分たちのためにもなる。
 流派としてもやくざが手を回してくれるのならば、マスメディアに宣伝もできる。
 それでも。
 それでも。
 それでも。
 マイは、父の残してくれた空手をそのようなことに使うのはイヤだったのだ。
 それはあるいは少女らしい潔癖さゆえだったのかもしれない。
 しかし、やくざを道場から手を引かせるためには大金がいる。

 そんな時に、あの女が現れたのである。

(相手が誰だろうと、負けられない)

420:Night Party(アイの章)
09/05/02 23:11:08 wAZa4l0M
 あと一歩という近接した間合いで。
 アイの動きが止まった。
 と見るや、マイは前蹴りを出す。
 相手の股間を狙った危険な蹴りだ。
 女性は金的のような絶対的な急所ではないが、やはり股間は急所の一つであり、強打されたらただではすまない。
 アイがそれに対してマイの右側に回り込もうとしたのは、かわしざまに足を掬い上げようとしたからであったが、想いもかけずマイの蹴り足は上がらずに床に踏みおろされていた。
 フェイント。
 そして足が下ろされる直前にマイの左拳が肘を曲げられたままで振り回すようにアイの肩めがけて叩き込まれる。
 フックに似た突き―鉤突きだ。
 その速度というよりも鋭さに咄嗟に下がったアイだが、まだ余裕のある動きだった。
 続けて繰り出された上段の右正拳突きもまた速く、鋭い。
 マイの身長はアイよりも低くて、上段突きで繰り出されてもアイの胸の上部辺りめがけての攻撃となるのだが、アイはそれを左手を上げて捌きながら踏み込む。入り身。合気道は相手に合わせて入り込むという、入り身が身上の武道だ。
 そこから右手でマイの左手を掴むか、さもなくば顎をすりあげるかして投げに持込もうとしていたが―
 マイの左手は下段から掬い上げるように打ち込まれている。
 フルコンタクト系の空手で多用されている下段の下突きである。
 当たった。
「!―ッッッ!」
 苦鳴を噛み潰したアイは、それでも動きを止めることなく左手を振りぬいた。
 入り身の機に合わせ損なったそれは、ただの掌打だ。
 それでも瞬間的に「臂力」を掛けた打撃はマイの顎を跳ね上げて押し飛ばす。
 それは大したダメージになるような打撃ではなかった。その場で倒されたマイは即座に足を上げて跳ね起きるが、その時にはアイは間合いを五メートルほど作っていた。
「効いたでしょう」
 マイは笑った。
 精一杯作った、嘲る笑顔だ。
「結構ね」
 アイは撃たれた右脇腹の下部に手を当て、言う。
「かなり、速い。それが、ムチミの使われた突きってやつなんだ」
「……………!」
 マイの顔から笑みが消えた。


421:Night Party(アイの章)
09/05/02 23:17:13 wAZa4l0M
 ◆ ◆ ◆


『古い空手には、ガマク、ムチミ、チンクチがあるという』
『師範クン、いきなり解らない言葉を出さなくてもいいと思うわよ』
『……姐さんは茶々いれないの』

 アイは生暖かい目で二人の夫婦漫才を眺めていた。
 そう。
 この時は、二人はそうなるものだと思っていたから。

『まあつまり、空手の、特に首里手とかあたりで重要になる身体技術なんだけどな。型とは、また違う』
『空手は型だって教わったけど?』
『型は技のエッセンスであり、分解し、理解することによって使えるが、それを真に活かそうとしたら、それが必要になる。まあそれも型によって練るんだが』
『まあ要するに、中国武術で言う勁道とか発力なんだけどね』
『姐さん……』
 
 兄であり師範でもあるその若者は、溜め息を吐いてから解説を続けた。

『まずガマクというのは、肋骨と骨盤の間あたりだという話だ。流派やら解釈からで大雑把に丹田とか解釈されている場合もあるが、そんな大仰なもんじゃない。腰という程度の意味だ』
『中国でも腰の位置は日本より上の部分をさしているそうよ。沖縄は中国文化の影響が強いし、空手も原型は拳法だものね』
『……まあ要するに脇腹あたりの筋肉操作なんだがな。空手でいう場合のガマクは』
『より厳密には腰方形筋の操作にあたるわ。沖縄舞踊では古くから重視されていたし、ダンスでもこのあたりの操作は欠かせないのよ』
『…………ダンスの場合は複式呼吸で鍛錬するそうだ。丹田と解釈している人はそのことからの誤解だろうなー』
『ガマクを操作することによって重心をある程度移動させることができるのよ。前に傾いた状態でも安定して立ったりとかね』
『………………沖縄空手ではセーサンの型とかで練るそうだが』
『打撃の反発に負けないように、ガマクを入れて身体を固めるとかもするようね』

 続いてムチミ、と兄は言った。

『簡単に言うとボクシングでいうとジャブとかに近い感じ』
『はあ……』
『腰を微かに震わせて、拳を飛ばすように打ち込むんだ』
『当てる瞬間に強く握りこむので、ジャブみたいなものと師範クンは言ったのね。ただ、どっちかというと通背拳に似た感じもするけど』
『……主に首里手の用語だというがな』
 
 最後にチンクチ、となんだか投げやりに言う。

『一寸力とも書く。これも流派によって解釈は異なるが、那覇手系統では脇腹から背中にかけての筋肉を使っての打撃であるともいい、首里手では体重を掛けて威力を増すこととだという』
『恐らくは中国武術でいうところの発勁のことだと思うわ。あちらも門派によって勁の出し方が異なるから』
『……首里手ではナイファンチなどで鍛える。波返しとかの足を踏みおろす動作で、その時に膝を抜き、体重を拳にかける』
『拳を当ててから体重を掛けるので、自然と威力が増すのね』

 なるほど、とアイは頷いた。

『ガマクを入れて重心を操作し、チンクチを掛けて体重を乗せ、ムチミを使って拳を打ち込む』

 およそ打撃系において、威力を出すのにこの上ない組み合わせだと言った。

『しかし』

『合気道も、棄てたもんじゃないぞ』

『合気道は当身が七分に、投げが三分と言われてるわ』

『気を合わせる武道と書いて合気道だ』

422:Night Party(アイの章)
09/05/02 23:19:23 wAZa4l0M
「合気武道の当身も、見せてあげる」

 アイは笑った。


『あとハッタリも重要な』

 兄はそうも言っていたのだと、思い出していた。  
 
 
 ◆ ◆ ◆



423:Night Party(アイの章)
09/05/02 23:24:54 wAZa4l0M

(合気道の当身……)
 マイは思い出そうとする。
 かつて父の弟子として学んでいた元合気道家の人は、何を言っていただろうか。
 合気道における当身を、どういうものだと言っていただろうか。
 よく思い出せない。
 いや。
 合気道における当身は、その指導体系においてメソッドとして欠けているから、空手を学んだと言っていたのではないのか。
(手刀とか投げの時に当てて崩すとか、そういうのだったと思うけど)
 いずれ単発だったと記憶している。
 ハッタリだ―と思った先から、先ほどの掌打を思い出す。
 下から顎をものすごい力で押し上げられた。
 速さがなかったので打撃としてのダメージとはならなかったが、その場に倒されたのは確かだ。
 もしも自分の下突きが先に決まっていなかったら、どうなっただろうか。
(―関係ない)
 敵の技を必要以上に恐れてはいけないのだと思った。
 先に自分の技を決めてしまえばいい。
 空手に先手なし、というが。
 それは本土において精神論として発達した言葉なのだと父は言っていた。
 あらゆる武術は先手をとることを目的としている。
 後の先という言葉があるが、それは相手の動きを「先に」見極めているからこそできることなのだと。
 マイが前に出した右足をの爪先を立てた猫足立ちに静かにアイの接近を待ったのは、先ほどの攻防で自分の打撃の方がより速く、自分の反応の方がより迅いと見切ったがゆえである。
(間合いに入ったら即座に打つ)
 合気道の当身というものがどういうものなのかは解らないが、同時に打撃を使えばムチミの分だけこちらが速いはずだ。
 向こうのほうが身長も高いしリーチもあるだろうが、そんなことは関係ない。
 ―と。
 アイは進み、彼女の打撃の間に入る。
 アイの拳なら届く距離である。
 マイにとってはあと十数cmが必要な距離。
 そこから淀みなく、さらに進む。
(――!)
 突いた。
 中段の逆突きだ。
 ムチミを使った打ち込みは腰を僅かに震わせて弾丸のように拳を飛ばす。
 腰の回転ではなく震えから出される突きは予備動作が見えにくい。そして猫足立ちは重心を後ろに落としているように見えながらも、ガマクを効かせて見た目より重心は前に傾いていた。そして着弾の刹那後に猫足立ちの前に出した足の踵が床に下りて威力とするチンクチ。
 古伝空手―首里手の基本と真髄の集約された一撃だった。
 それでもこの人には通じないかも知れないとマイは思っている。
 最初のこめかみを狙った打もこれの応用だったからだ。
 しかし、それでもいいとマイは思っていた。
 拳を捌かれようが続いての体捌きで相手を「型」にハメる。
 練り上げられた「型」の技と体捌きは、ただの踊りではない。
 そこの応用変化の中にはめこめば、相手はなす術もないはずだった。
 合気道だろうとなんだろうと。
 マイの拳はアイの臍の辺りを打ち―

 気がついたときには、マイの体は弾き飛ばされていた。

424:Night Party(マイの章)
09/05/02 23:31:11 wAZa4l0M
「――!?」

 床に倒されてから跳ね起き、さらに後方へと飛んだ。
 アイはただ立っていた。
 マイが立ち上がるのを見ると、再び歩き出す。
「………ッ」
 マイは臆面もなく後ろに下がった。
 何をされたのかちっとも解らない。
 確かに拳は目の前のアイという人のお腹を打ったはずだった。
 拳の感触と踵を踏みおろし―かけた感触は残っている。
(踵が床についた瞬間に、なんか飛ばされていた……)
 投げられたのだろうか?
 即座に否定する。
 自分の触れた拳面以外の場所はあの人には触っていない。
 それは確かだった。
「どうしたの?」
「―――!」
 アイとの距離がまた詰まっていた。
(打たれる前に)
 前蹴り。
 古い空手では、帯から上を打たなかったという。
 打てなかったのではない。
 打つ必要がなかったのだ。
 首里手ではナイファンチの型にある波返しという動きがあり、その時に倒れこむことを学ぶ。
 この動きはそのままチンクチの養成となり、足腰を鍛える鍛錬ともなるという、首里手の中でも最も重要な型としてナイファンチが上げられるのも無理からぬことなのだ。
 この波返しの動きを蹴り技に応用したのが首里手の蹴りである。
 その際にガマクをかけることによって倒れながらも重心を保持し、倒れ掛かる瞬間に前へと重心を移動せることによってチンクチとなす。
 近代の空手の試合では、前蹴りは相手の距離を開けるときに多用されるが、古伝の空手ではまさに必倒の威力を持つ技なのだ。
 ましてマイの体は小さい。
 体重の上下は威力を左右するが、体格の大小は攻防を左右する。
 小柄なマイの前蹴りが狙ったのはアイの膝である。
 合気道では下半身を防御する動きはほとんどないはずであった。
 手で払おうにも低空の蹴りは捕るためにはしゃがまなくてはならない。
 そんな僅かな行為ですらもが勝敗を別つ要因たりするのである。
 そして。
 その瞬間、マイは確かにそれを見た。
 自分の足が上がったか―と見えた瞬間、アイの歩みが加速したのを。
 インパクトの瞬間、またもや後ろに飛ばされた。
 今度もまた跳ね起きて、間合いを保つ。
 アイは微笑みすら浮かべて歩み寄ってきた。
(この人は……!)
 完全にこちらの動きを、インパクトのタイミングを掴み取っている。
 マイはそう悟らざるを得なかった。
 

425:名無しさん@ピンキー
09/05/02 23:38:37 NGKJsboz
GJ

426:Night Party(マイの章)
09/05/02 23:40:01 wAZa4l0M
 ◆ ◆ ◆


『合気道の真髄は、呼吸力と集中力だ』
 アイの兄は、そう言っていた。


 日本武道―特に近代に生まれた流派では、その用語は具体性を欠いてることが多い。
 それは明治維新などによって従来の東洋思想などが時代遅れとして棄てられたためかもしれない。
 明治以降の武道家たちの多くは、先人たちのように台密や五行思想などからの借り物ではなく、自分たちで新たに言葉を積み上げねばならず、必然、生まれた言葉も抽象的にならざるを得なかった。
 合気道もまた然りである。
 開祖が教派神道の思想的な影響を受けて作り出した用語は、多くの弟子たちにとっては難解であり、そのために解釈も多様なものとなっている。師範、いや、修行者の一人一人に別の定義があると考えてもいいほどだ。
 その中では、まだ呼吸力と集中力は比較的に解りやすい部類に入る。
 それでも多様かつ包括的な言葉であるには違いない。
 呼吸力とは『技法の源となる力』という程度に使われる言葉であり、修行者によって多義的に解釈されているが、純粋に身体操作技術として考えた場合、「脱力状態から無駄なく力を発揮すること」と考えて問題はない。
 そのための修行メソッドが確立されてないがゆえに胡散臭い解釈がされることが多いが、「ロスなくエネルギーを伝達する」ための技術と手法であれば、全て呼吸力と考えてもいいくらいである。
 中国武術でいうところの「発勁」の概念が近い。
 近いが、まったく同じではない。
 そこには戦う相手との関係性も含めた観念を持っており、間合、拍子、などの空間的、生理的な作用も同時に意味している。
「無駄なく力を発揮する」というのは、「相手にどう技を効かせるのか」が常に念頭に置かれているということだ。
 そして「集中力」は、その「呼吸力」を一点に集中させて作用させるための技術である。
「集中力」も「呼吸力」の中に含めて考えてもいいのだが、ある会派ではその辺りを区別していた。
 無理に中国武術を当てはめるのならば「呼吸力」は「発勁」であり、同時に「聴勁」や「看勁」などといった戦いの際に必要になる感覚的な技術も含めて一つの用語としてまとめていて。
「集中力」はその「発勁」を作用させるための方法である「運勁」を意味していると考えてよい。
 それらのことを踏まえて、アイがやったことを解説すると―

 マイの打撃が最大威力を発揮する距離とタイミングを「呼吸力」を以って見切り、その直前に接触して力が乗り切る前に「集中力」で抑えこんだ。

 ―ということになる。

427:Night Party(マイの章)
09/05/02 23:45:10 wAZa4l0M
 その際に反作用で自分の方が負けないように重心を前に傾けて体中の伸筋を伸ばして……ということもしているのだが、このあたりは首里手における『ガマクを入れる』というのに近い作用がある。
 とまあ、難しいことを延々と書き連ねたが、要はアイはマイの打撃を完全に見切っているという、それだけのことだった。
(……勝てない)
 諦観に支配され、心が折れそうになる。
 いや。
「かっ」
 脇を締めて右足を一つ分だけ前に出し、爪先を内側に寄せる―いわゆる三戦立ちをとり、息吹する。
 三戦とは那覇手の基本であるといわれるこの型であるが、幕末から明治にかけて活躍した名人・松村宗棍の頃の古伝では、首里手でも教えられていたという。
 そして脇を締めたままに右手を前にして左手を右手の肘の辺りに添えた、手の甲を下に向けた構えをとる。
 立ち方はいつの間にか三戦立ちからナイファンチ立ちを捻った、右前の立ち方になっていた。
 本部流でいう夫婦手であり、十文字立ちである。
 最初にアイに対峙したときの構えでもある。
(父さんの得意だった、父さんの本当の構え)
 那覇手と首里手とを学び、数々の戦いを経たマイの父が辿りついた構えが、泊手と首里手を学んだ実戦の名手・本部朝基のそれと同様のものとなったとしても、なんら不思議ではあるまい。
 三戦で姿勢と心を安定させ、そこから父を想起させる構えをとってから。
(だから、もう……)
 構えを解いた。


428:名無しさん@ピンキー
09/05/02 23:46:40 dRYkMne2
GJ!

429:Night Party(マイの章)
09/05/02 23:46:59 wAZa4l0M


(へえ)
 アイはマイが両手を下ろしたのを、何処か感慨深そうに見た。
(そうなるんだ)
 そうしてから、やや膝を緩めて微かに腰を落とした、踵から踏み込む歩法で歩きだす。
 腰の高さは変わらず、滑るようで安定したそれは。
(自然な動きだ)
 沖縄に古くから伝わるとされる古武術に、本部御殿手というものがある。
 その歩法は膝を曲げずに踵から踏み出すというものだと聞いている。
 正中線を保持したその姿勢は変幻自在の動きが可能であるという。 
 マイのそれは御殿手に近いものだった。
 首里手を極めたある名人は、歩く姿がナイファンチだったという話があったが、本部御殿の出の者は首里手を学んでいることが多いことから考えても、何某か御殿手と首里手とは関連があるのかもしれない。
 アイもまた歩き出す。
 合気道もまた、歩法を重視する武術である。
 現代武道の中で唯一、多人数との戦いを想定されてた。
 その運足は開祖が新陰流の【転(まろばし)】より取り入れたとも、古くから伝わるものだとも言われている。
 こちらも変転自在を旨とする術理であった。

 つまり二人の少女は、別々の流儀を学びながらも、同じ戦術をとったのだ。

 マイはアイに自分の打撃の機が掴まれているということを察知した時、今の自分の実力では及ばないと見切った時、一度、全てを諦めた。
 諦めたということは心が折れたということであり、心が折れたということは死んだということである。
 ならばここで降伏しても打倒されても同じであり、至る結末は同じだということだった。
 道場はやくざ者たちの手に落ち。
 自分は敗北の代償を払わされる。
 仕方の無いことだ。
 今の自分では勝てないのだから。

 その時、悟った。

 今の自分で勝てないのなら。
 ―別の自分になればよい。
 
 今の自分にあるのは空手だった。
 父より伝えられた空手だけだった。
 
 ならば、簡単だ。

 父の空手を捨てれば、今の自分ではなくなる。
 それが道理だ。
 
 だから、父の空手の構えをとったのは、亡くなった父のための供養であり。
 それを解いたのは、父の空手を捨てる決別であった。

 そうして進みだした時、彼女の心は無想だった。 

 自分の持っていたただ一つだけのものを捨てたのだから、もう何も考える必要はないのだとマイは思っていた。 
 だから何も考えないようにしよう。何も想わないようにしよう。
 そして新たな自分がここから始まっていくのだと。
 
 歩いていた。


430:Night Party(マイの章)
09/05/02 23:53:03 wAZa4l0M
(凄い。完全に脱力してる)

 アイはマイが歩き出した時、数瞬遅れて進んだ。
 どうしてそうしたのかよく解らないが、そうすべきだと考える。
(あの歩法は……)
 話に聞く御殿手のそれなのか、見ただけでは判別できない。
 ただ、このまま待ち受けてもいいものではないというのだけは解る。
 全身から余分な力の抜けた空手使いの少女は、目の前でまったく新しい何かに変わったようだった。
 ならば自分はどうするべきか―
 何も思い浮かばない。
 そもそも、考えても仕方がないことだと思う。
 自分はそう余裕のある立場ではない。
 打たれた痛みをやわらげるために分泌された脳内物質は精神の集中を高め、一時的にアイのコンセントレーションを高めていた。
 古い時代の武士の果し合いにおいて、先に浅く傷をつけられた者が勝つことが多かったというのも、そのような脳内物質の作用による。
 アドレナリンやらドーパーミンは、脳の機能を飛躍的に高める。
 それが故にあの「呼吸投げ」は可能になったのだ。
 相手の打撃を投げ返す、合気道における当身技。
 それを打撃の使いに対して正面から使用などというのは、相手の機を掴み、自分の最大限の力を発揮できる瞬間を把握できる―「呼吸力」を高めている者のみが可能にできる達人の領域の技である。
 しかし、それだっていつまで続くか……。
(仕方ないなあ)
 苦笑する。
 痛みをごまかすために浮かべていた笑みではなく、心底から出たものだ。
 自分は手負いで、相手はなんだか解らないが戦いの最中にパワーアップときた。
 まるで漫画だ。
 と思う。
(兄さんに聞いたことはあるけどね)
 戦いの最中に、まれに集中力の高まりなど色々とあって、その潜在能力を発揮するなどということが、漫画のようなフィクションではなくてありえると。
 今のこの子は、そういうのでもないような気はするが。
(何か悟るところがあったのかも)
 ゆっくりと回り込むように移動すると、踵を軸につま先を向けてこちらに方向を修正された。
 その様のあまりの自然さに、アイは背筋を走る震えを感じた。
(まいったなあ)
 そう思いながら、しかし彼女は進む。
 ここで負ける訳にはいかない。
 しかしなんだか、勝てる気がしなかった。
 勝算がなく戦う武術家などはいない。
 それでもやっぱり戦う他はない。
(ああ、だったら、悔いは残さない)
 相手が怪物だろうと達人だろうとなんだろうと、構わない。

 覚悟を、決めた。

431:名無しさん@ピンキー
09/05/03 00:00:38 DgbtpDBl
よしよし、いいぞ。
その調子でどんどん書き進めなさい連載マシーンw


432:Night Party(マイの章)
09/05/03 00:04:26 3tZfn7qg
 自分の全てで挑もう。
 自分のありったけで戦おう。
 立ち止まり、両手を臍の下、数センチのところに重ねて目を閉じる。
 
 呼吸。

 吸って、吐いて。

 再び歩き出した時、彼女は無心だった。

 全てを出しきるのに、全てをかけて戦うのに、迷うような心は不要だから。
 心とは迷うものであり、惑うものである。
 だからアイは心を無くした。
 心を無くして自然となった。
 思いのままに泣き、笑い、怒り、戦う、ひとでない何かになった。

 心のない者は、すでに人間とは言えまい。

 ならば、何も思わざる無想のマイも、人間ではなくなっている。

 無想のマイも。
 無心のアイも。
 
 お互いの歩法の詳細は異なれど、身体操作技術の極限に達した自然の運足で歩み寄り、そして奇しくも最初の位置、二人が最初に交差した場所に立った。
 僅かに背の高いアイにとっては必殺の間合いであり、微かに手の短いマイにとっては半歩にて必倒を可能とする距離だ。
 自然と二人の視線は絡み合い。
 
 無想のマイはアイを見て、何も思わなかった。
 無心のアイはマイを見て、可愛いなと思った。

433:Night Party(マイの章)
09/05/03 00:17:14 3tZfn7qg
 太い眉と大きな目と小さな唇とを。
 アイは可愛いと思ったまま、両手を伸ばしてマイの頭を掴んで。
 引き寄せる。

 口づけた。

(え――)

 唇に感じた未知の感触に、マイは目を見開いた。
 
 ―この瞬間、マイの無想は崩れた!

 両手を伸ばしてアイの肩を引き離したのは考えも想いない、ただの反射的な動きだ。
 それでも焦燥と狼狽によって衝動的に出た動きだ。
 
 無心のアイは自分から離れたマイの両手を掴んだ。
 下から手首を握った。

 そこからの動きをなしたのは、何千もの日数積み重ねられた稽古の成果であったろう。

 アイの右手はマイの左手を掴みて上に挙げ。
 アイの左手はマイの右手を下に引いた。
 
 そのままマイの両足のつま先を正三角形の底辺とする二点から生じる、三っつ目の方向へと、力を導く―

 受身もとれず、マイの目の中に火花がいっぱいに咲いた。
(あ……)
 そして真っ白になった視界は刹那の後にブラックアウトする。

 合気道に云う、天地投げ。

 

 かくて今宵の夜宴は終わり、夜艶へと続く。 
 
 

 
 つづく。

434:Night Party
09/05/03 00:25:19 3tZfn7qg
というわけで今回はこれで終了。
最後のほうがまとまらなかったので、自分を追い詰めるために投下しながら書いてた。
どうせ誰も見てないだろうと思っていたのでだらついた投下になってしまいましたが。
どうも長々とすみませんでした。

えーと、上の方でバリツ使いのシャーリーの章と予告してたんですが、まあ色々とあって空手少女マイの章ということに。
理由はというと、中○生レズ調教とかの方が書きたいから!という程度のもんですが。
エロ編はできれば今月中にかけたらいーなーと。

なんだか達人の戦いとかは薀蓄でページ埋められるので楽なんですが、もーちっと多様性のあるバトルが書きたいので、
次の戦いはアイの犬になったボクサーのケイと、達人とまではいかない柔術使いの少女ユミの戦いと予告しておきますです。
当然、予定は未定で、決定ではないわけですが。
もしかしたら別の書くかもです。

それでは。また。

435:名無しさん@ピンキー
09/05/03 00:32:04 46M0RUs/
連載マシーン?
予告してたのから2ヶ月以上も遅れてるのに連載マシーンってありえんww

エロもねえし

436:Night Party
09/05/03 00:37:04 3tZfn7qg
追記。これもまとめてちょこっと修正してアルカディアさんところに放り込もうかと思ってたり。
そちらは気が向けば作中の格闘技知識とかの注釈とか書いた設定集付け加える予定です。
一応書いておきますが、作中の技法とかそういうものはことごとくが架空のものです。
そう思ってください。
ガマクとかムチミとかの解釈は主に今野敏氏の「虎の道 竜の門」のそれを参考にしましたけど、
伝承者によっては全然解釈が異なる…。
特にチンクチなんかはまったく別のことを述べているとしか思えませんでしたから、いろいろと
考えた結果として「一寸力とは発勁的なもの」としました。ウチナンチューの分類は大雑把だから
案外それで正解かもと思ったりしますが、正確なところはわかりません。
集中力とか呼吸力とかはもっと適当というか開祖様は神懸かりなお方でしたので、
解釈に手間がかかります。作中のそれも私の独自解釈です。
あと無心と無想の違いは意図して別のものとしましたが、
実際は大して意味かわんないだろうなあと。

ではまあ今度こそ。
予告から二ヶ月以上遅らせてすいませんでした。

それではー。


437:名無しさん@ピンキー
09/05/03 01:09:21 yfus7ZyH
予告から遅れてでも投下してくれることが何より有り難い。
エロスキーとしてはまだGJはつけずにおきたいが、最大限の乙を送らせて頂く。

乙ッッ

438:名無しさん@ピンキー
09/05/03 10:46:24 6IJAKyJ9
遅れるのはしょうがない
エロも次回以降に期待できる
だが自分の格闘技の知識をひけらかしてる感がうざすぎ
誰もお前の技の解釈なんて知りたくねえんだよ
マイナーな技の解釈を得意げにひけらかされてもねえって感じ
ていうかそんな解説むしろ萎える
そんなウンチク披露に労力と文章量使うくらいならもっとエロ入れたりした方がいいっつーの

439:名無しさん@ピンキー
09/05/03 11:51:18 MwxIeyv+
>>557

ちょwwwww

思わず同意しそうになっちまったじゃねーかwwwwwww


440:名無しさん@ピンキー
09/05/03 13:16:43 //PzKKT8
GJ!
いかにもアルカディア向けの力作だね。創作発表板とかに該当スレがあれば…

まぁこのスレから手放したくはないがw

441:名無しさん@ピンキー
09/05/03 14:15:42 3tZfn7qg
>>557
まったくだw
と書いた当人が言ってみる。
自分的にもなんか格闘技薀蓄がうざいと思ったので、次回以降はそういうのはできるだけ省く方向で。
アルカディアさんで発表する前提なんだから、格闘技解説とか別に出すことにします。
そしてそんなうざいのでも最後まで読んでくださってありがとうございます。
エロは…えーと、中○生レズ調教編をあんまり期待しないでお待ちください。

>>559
エロ抜いたのをアルカディアさんのオリジナルに投下していたのですが、今日気が向いたのでエロシーン付け加えたら「いや、xxx板だろう」といわれてxxx板に移動させました。
今のところここに投下したのをまとめただけなんで代わり映えはしないですが、気がむきゃ読んでみてください。
ではー。

442:名無しさん@ピンキー
09/05/03 16:32:05 uQavtMj3
この流れ、どうせ自演だろ?
昨日投下したばっかですぐ感想が集まるなんて普通思わんしな

443:名無しさん@ピンキー
09/05/03 18:30:59 etlJx/vr
積極的に書き込むことはないにしても、毎日チェックしてる奴は多いって事さ
まぁ雑談ででも盛り上がってくれた方が嬉しいけどな

444:名無しさん@ピンキー
09/05/03 19:15:59 /0nwDJIv
「毎日チェックしてる奴は多い」なんてピンとこないけど
推定何人ぐらいだと思うんだ?

445:名無しさん@ピンキー
09/05/04 00:52:31 WMXGk7j0
半年かかってやっとスレ半分消化するような過疎ぶりだぞ
住人なんてたかがしれてると思うが

446:名無しさん@ピンキー
09/05/04 01:04:55 6HcOgnbA
そこでゴキブリ理論ですよ

447:名無しさん@ピンキー
09/05/04 02:37:19 V+ix01xw
>561
理想郷の一日あたりの閲覧数を舐めてるな。
ちょっと気のきいたSSならすぐに感想がつくぞ。

448:名無しさん@ピンキー
09/05/04 09:57:53 EiyG0m9B
みんな連休中なんだから暇あるのさ

449:名無しさん@ピンキー
09/05/06 14:58:22 2LQSdRRX
投下がなくてすぐ過疎る~狂気の女バトルスレ~

450:名無しさん@ピンキー
09/05/12 11:15:38 CkV98nLU
保守

451:名無しさん@ピンキー
09/05/13 21:39:31 CpCANy8d
チルミルッ
チルミルッ元気チルミルッ
元気だおッッッ

452:名無しさん@ピンキー
09/05/22 22:58:16 3TPSNzoy
AGE

453:名無しさん@ピンキー
09/05/23 04:27:10 m6T7o3o6
sage

454:名無しさん@ピンキー
09/05/27 02:08:26 sTbIESJ5
ここホントに「レスもないのに毎日チェックされてる」スレなのかい?

455:名無しさん@ピンキー
09/05/27 02:10:26 y0WT2zs5
ほい。今チェックしますた

456:名無しさん@ピンキー
09/05/27 03:29:41 UBiSOsDS
もちろんPC立ち上げた日には、専ブラのお気に入りに入ってるから漏らさずチェックしてる

457:名無しさん@ピンキー
09/05/27 09:50:22 e83395cX
だな

458:名無しさん@ピンキー
09/05/27 22:37:34 KyXcKohP
正直な所もっと雑談が欲しい

459:名無しさん@ピンキー
09/05/27 23:21:22 UBiSOsDS
それは賛否分かれそう
・・・ってこの発言も雑談なんだけどw

投下が始まったら終わるまで私語厳禁って感じで節度をわきまえればいいかなとは思う
うpが完了したのか、たまーに迷うことがあるからうp主も合図送ってほしいけど

460:名無しさん@ピンキー
09/05/28 00:04:22 DuZK/U6q
執拗にクレクレするのは駄目だろうけど、こんなシチュが見たいとか、こんなキャラどう?って提案するのは良いんじゃないかな。
それをきっかけにして書いてみようって人が現れるかもしれないし。

461:名無しさん@ピンキー
09/05/28 13:30:17 ddYzSbLU
他力本願の考える事はいつも同じだな
くだらんw

462:名無しさん@ピンキー
09/05/28 14:23:53 orRQPpsR
お前はエッジか?ナイトパーティーか?
その辺の奴でないとそんな偉そうな事言う資格ないぞ

463:名無しさん@ピンキー
09/05/28 22:15:48 nDg2UlSp
乞食が乞食に説教かよw

464:名無しさん@ピンキー
09/06/03 14:51:16 pKRNe0nS
上げハイキック

465:名無しさん@ピンキー
09/06/03 21:25:43 q7pyywwI
ぐはぁッ

466:名無しさん@ピンキー
09/06/03 21:36:04 Qd2kLQJW
下げソバット…

467:名無しさん@ピンキー
09/06/03 23:33:09 QDeNGHuw
やっぱり『壮絶』じゃ無いと駄目なんですかね?

468:名無しさん@ピンキー
09/06/04 10:36:02 SstGkT93
そもそもそんなに壮絶なバトルって今まであったか?


469:名無しさん@ピンキー
09/06/04 14:17:12 AwDc4Pd3
そりゃもういっぱい

470:名無しさん@ピンキー
09/06/05 04:48:20 TJcxDKrl
まぁ、何をもって壮絶と評するかって話になるんで、主観によりけりだろうけど

471:名無しさん@ピンキー
09/06/06 09:14:32 eFhaLgwq
壮絶

472:名無しさん@ピンキー
09/06/06 15:46:29 Tr29+O/e
確かに壮絶かどうかってのは難しいよな。
ここまで過疎ってる訳だし、とりあえず女同士で戦ってればOKみたいに敷居を下げてみるのも一つの手かも

473:名無しさん@ピンキー
09/06/14 22:10:17 oVYyw7+C
互いにの左手首を紐で繋いだビキニ姿の女闘士が超近接間合いでバイブ片手でイカせ合うバトル

474:名無しさん@ピンキー
09/06/20 15:18:55 o6QUNv03
バイブバラーンス(グラグラ

ドゴオオオオ

475:名無しさん@ピンキー
09/06/21 00:30:31 qEzo4K/T
最強だと息巻いてた白人おねーさまがアフリカとかの現地人に負けて儀式の生贄にされる話とか…見たい

476:名無しさん@ピンキー
09/06/28 23:13:49 Bwh+S2Ko
上げ保守

477:名無しさん@ピンキー
09/06/28 23:51:04 yB5VhK1o
俺は大和撫子が白人姉さんに負かされるのが好きだな
デキシ×零子とかカオス(またはコーディ)×ゆっことか超ツボ

478:名無しさん@ピンキー
09/06/28 23:59:13 Bwh+S2Ko
技量に自信を持った大和撫子が白人の身体能力に頼ったパワーに押し切られちゃうってのは良いよね

479:名無しさん@ピンキー
09/07/01 17:03:03 z+egsUMS
逆転ってのは重要な要素だよな。
一方的にガッシボカでやられるより、油断に奇襲で返す、お約束ほしい。

書くってのは難しい。書きながら自分で興奮すれば成功なんだ。

480:名無しさん@ピンキー
09/07/01 23:03:11 OdCSJxph
かわいい女の子同士が互角の力比べするシチュに萌える
マイノリティなのは承知だ

481:名無しさん@ピンキー
09/07/02 05:15:54 AigOivQH
別に可愛い女の子同士が互角に力比べでも構わないんだ
ただ、それがヌルってるとダレるから需要は別方向からしか来ないんだよね

482:名無しさん@ピンキー
09/07/14 16:49:10 j7CjfxCk
もうこのスレは落としていいよな?

483:名無しさん@ピンキー
09/07/15 15:29:51 jY3d8guf
だな

484:名無しさん@ピンキー
09/07/15 16:39:45 z9rTQ3qM
>>601

ぉk

485:名無しさん@ピンキー
09/07/15 19:45:21 w1cD0HM3
ほらね
やっぱ住人なんかろくにいなかったんじゃん
何がゴキブリ理論だよw

486:名無しさん@ピンキー
09/07/15 21:11:23 QnH+6/2/
何がほらね、なのかまるで意味が判らんのだが。
落ちたら落ちたで構わんし、残ったら残ったでチェックはする。
それだけの事ですなぁ。

487:名無しさん@ピンキー
09/07/16 04:17:02 U0NtHogf
誰かが作品投下するとか誰かがスレ盛り上げるとかすりゃいいのに
ホント使えないなお前らは

488:名無しさん@ピンキー
09/07/16 05:46:54 2gshRUgb
そうは言ってもなぁ
ニッチだもん、ネタがなかなか沸いてこねぇしよぉ
沸いたら沸いたでテメーら怖えーし

489:名無しさん@ピンキー
09/07/16 11:30:38 PU8AS4EA
エッヂレベルの書き手がフルボッコにされるスレへ誰が投下すると言うのか

490:名無しさん@ピンキー
09/07/16 13:07:23 UxC1jRmU
皆の感想意見をフルボッコとか受けとれん書き手を誰が賞賛すると言うのか

491:名無しさん@ピンキー
09/07/16 23:11:14 vn/1F86s
物書きは褒めて褒めて褒めまくれと誰かが言ってた。褒められれば嬉しいし、けなされれば辛いんだよ
お前達がエッヂを追い込んだんだ!

492:名無しさん@ピンキー
09/07/17 01:31:26 Ch4MBeK5
褒められる事だけ期待して投下しちゃいかんよ・・・

493:名無しさん@ピンキー
09/07/17 01:34:47 jRG1oA46
いやでも別の過疎スレで時々投下してるけど、褒められるのってかなり励みになるよ
幸い過疎スレだから投下しただけで喜ばれてしまって駄文でもけなされたことはないけど、
もしけなされたらへこんで即投下止めるかもしれんw

494:名無しさん@ピンキー
09/07/17 02:24:53 dIgoBS12
まあ人間だしそういう事もあるだろ


495:お嬢様ファイト  1/7
09/07/17 22:02:33 KhzHYiEp
>>597さん、こんなのはどうですかね?


「野蛮ですわね」 その言葉は突然掛けられた。
私はその声をかけた相手のほうをじっと見つめる。
そこには‘欧羅巴,特有の金色の髪の毛に青い目をした少しばかり気の強そうな少女が制服に身を包んで立っていた。
「……ええと、サヤ―、サヤ・アユハラさん、貴方の国の格闘技『ジューツツ』でしたかしら?それは野蛮だと言ったのです」
言われた言葉が分からなく答えられない物と彼女は思ったのであろう、もう一度同じ言葉をゆっくりと繰り返した。
私は言葉ではなく、彼女の言葉の中身がわからずに再び怪訝そうな表情を浮かべジッと彼女の顔を見つめ、この事態を少し頭の中で整理していた。



まだ諸外国と交流を始めたばかりの私の国にとって学ぶべき物は山の様に在り、そのすべてを出来る限り吸収して行きたい、そんな思いを秘めて世界に冠するこの国へと遣ってきた私をこの‘学園,の人達は奇異が半分混じりながらも優しく迎え入れてくれた。

『私貴方の国の絵画ええと、‘写楽,だっけ?何枚か持ってるわよ』
『ねえねえ、貴方も魚を生で食べたりするの?』
『凄く綺麗ね、貴方のその黒くて長い髪に黒い瞳、貴方の国の人は皆そうなの?』

等々、それらの質問に答え、そして、また私自身もみなに質問をして行くとみなは快く答えて言ってくれた。
一番驚いたのは、この学園の生徒は皆女性であると言うことであった。
私の国では女性が集まって習い事をするなど無かったので、逆に少し気恥ずかしい物があった。
そして、ある一人の質問により空気が一変する。
「あなた、なにか体を動かす事をしてるの?」
その人はやおら私の腕を掴むと何かを確かめるようにさすり始めた。
「はい、柔術という物を……」
「ジウーツツ?」
「はい……」
私は腕をさすられたまま柔術の成り立ちから、どのような武芸かまで、言葉を選びながら説明をした、
と、
「野蛮ですわ」
私が回想を始める原因となった、言葉を彼女は口にした。


496:お嬢様ファイト  2/7
09/07/17 22:03:12 KhzHYiEp
「なぜ……野蛮なのです?」
今思えば私もこの言葉を口にしたとき、もっと考えるべきだったのではと思う。
だが、まだ修行の身の私としては、先祖代々続く我が流派を馬鹿にされたと思ってしまった。
「私の‘ボクシング,と違い貴方のは、倒れた相手をまだ攻撃したり、腕や足を痛めつけて動けなくする……野蛮な物ですわ」
……『ぼくしんぐ』 耳慣れない言葉ではあったが、それが『拳術』の事だと彼女の話で分かった。
聞けば皮布を手に巻きどちらかが起き上がれなくなるまで殴りあうのだと言う。
「ですが……その‘ぼクしんグ,の方がよほど野蛮なのではないですか?」
思うところをそのまま口にしたところ、セシリア殿の顔は見る見る赤くなって行った。
「なっ!? ボ、ボクシングが野蛮ですって!!?」
じっと私を見つめる目が怒りに震えているのが分かる
「ボクシングを馬鹿にすると言う事はお父様と、お母様を侮辱するのと一緒ですわ!」
―― どうやら彼女のご両親も武門の家で、『拳術』 をよくなされるらしい。
バン!!
今までジッと様子を見守っていた周囲の者たちが震え上がるほど大きな音を立てて、
セシリア殿が壁を叩いた。 壁は彼女の手の形に大きくひび割れる。
「決闘よ! 貴方と私、どっちが正しいか闘って決めましょう!!」
周囲がざわつき始め、私に視線が集まってくるのを感じる。

―― 「スイマセン、少し言葉の使い方を間違えてしまったようです」 ――

そうお詫びすれば、恐らく自体は収まったのであろう。
だが、

「わかりました、お受けいたします」
謝罪の言葉を口にするには、まだ私は未熟で、
父母より柔術を習い代々続く流派を受け継いで行く身としては、
この挑戦を受け無いわけにはいかなかった。



勝負当日となり私は学園の中に設置された闘技用の舞台の上に立っていた。
『リング』 と言うらしいそれは、外に簡単に出れないように周りをロープと呼ばれる特殊な綱で張り巡らし、足元にはマットと呼ばれる畳より少し硬い物を引いてある。


497:お嬢様ファイト  3/7
09/07/17 22:03:55 KhzHYiEp
別段この事を予想していたわけではないが私は日本から持ってきた胴衣に身を包み、
邪魔にならないように髪の毛を後ろに一つにして束ねていた。
コーナーと呼ばれる鉄柱に背中を預けながら、
『慣れない環境で、慣れない場所にて未知の格闘技の使い手と他流試合をするこの私を父母が見たらなんというのであろうか?』
などと言う事をふと考えていた。
リングの周りには話を聞いた、学園の生徒たちが大勢集まっている。

『日本から来た格闘家と、学園最強の女王が互いの誇りを掛けて勝負する』

そんな謳い文句が彼女達の興味を引いてるらしい。
(私は別にそんなつもりではないのに) そんな事を思っていると、
「待たせたわね」
そう言って私の対戦相手のセシリアがロープを飛び越えリングへと入ってくる。
その身軽な動きに集まった人達より一斉に歓声が上がる。
「どちらが正しいのかはっきりさせてあげる」
そう言って私の前に立つ彼女の姿を見て、私は驚きを隠せず思わず声を上げる。
「セ、セシリア殿、貴方そのような格好で闘うのですか?」
ただもう絶句するしかない、なぜなら彼女の格好は、上下共に薄い下着しか身につけていなかったのだ。
「ただのタンクトップと、ホットパンツじゃない? 何かおかしいの?」
何を言われたか分からないと言うように自分自身の格好を彼女は確認する。
「は、は、破廉恥だといってるのです!!」
「な!? この格好の何処が!」
彼女自身は左程感じていないようだが、余りにも露出が高いその姿と言ったら………
同姓しかいないとは言え、こんなに大勢の前に立てるのが私には信じられなかった。
青と、赤と白の線で彩られたそれはどうやら、この国の国旗を模したらしい。
怪訝そうな顔をする彼女に私はもうそれ以上何かを言うのは止めた。

立会人が一人リングの上に立っている。
「いい、ルールは参ったをするか、立てなくなるまで、後はレフェリーが危険と感じたら止めるわよ」
「分かりました」
立会人に呼ばれてリングの真ん中に立つ私に、同じく真ん中に立った彼女が腰に手を当てながら私の顔をじっと睨みつけてくる。
改めて並んでみると其れほど私と身長差は無い事が分かる


498:お嬢様ファイト  4/7
09/07/17 22:04:31 KhzHYiEp
説明を受けながら彼女は何度も自分の手に巻かれた皮布の具合を確かめている。
もう一度彼女の全身をじっくりと観察する。 先ほどはその露出度に驚いたが、冷静に見ると衣服の生地が少ないので、掴める部分が圧倒的に少ない。
作戦かとも思ったがそれならば柔術についてあんなに反応するわけが無い。
そして何よりその体つき、腕やお腹など見えている部分はしっかりと鍛えられて、
打撃技のための細くシッカリとした、筋肉がついていた。
「何とかしないと……」
何とか対策を考えていると。
「それではこれより、セシリア・レイフィールドVSサヤ・アユハラの親善試合を行います」
大声で立会人が告げ、
カーン!
どこかで試合開始を告げるためであろう鐘の音が鳴った。

その瞬間、

ヒュン!

鋭い風を感じた。

だがそれは風などではなく、鼻先をぎりぎり掠める彼女の拳であった。
半歩の半、後ろに下がり何とか感覚だけで拳をかわす。見えていたわけでも、来ると分かったわけでもない。何か嫌な気配が私を退かせたただそれだけだ。
その動作は、当たれば間違いなく一撃必殺であったろう拳をかわす結果になった。
「へえ、ヤルわね!」 彼女はさらに深く踏み込んでくる。
必殺の拳が再び私の前を横切り紙一重で空を切る。
『今!』
思うより早く身体が動き、
バン!! 
次の瞬間、
激しい音と共に彼女の体は空中で一回転し、そのまま背中よりマットの上に落ちていった。
繰り出してくる手を掴むと其のまま勢いを殺さずに掴んで投げる。
彼女の拳の速さに私の投げるスピードが乗り、叩きつけられた勢いで、
うっ、と、彼女は苦悶の表情を浮かべる。
それは彼女にとって今までには無い痛みであったのだろう。


499:お嬢様ファイト  5/7
09/07/17 22:05:07 KhzHYiEp
私は腕を掴んだままその腕を固めに入る。だがそれよりも素早い動作で彼女は腕を引っ込めるとそのまま私との間合いを離すために後ろに交代してゆく。
「ま、まだまだ!!」
金色の髪が馬の鬣のように揺れ、彼女が再び突進してくる。
ヒュン、ヒュン、ヒュン。
何発もの拳が私めがけて襲い掛かってくる。
短い放物線を描いて飛んでくる物、顔を狙ってくる物、撃つと見せかけて途中で止まる物、
そのほか多くの拳が飛んでくる、それら全てを避けて、避けて、かわし続ける。
鍛え上げられた筋肉は見た目の細さよりも遥かに敏捷さと打撃力を備えている。
パシン! 「!?」
かわしたと思った一撃は、胴衣をわずかに掠める。
ピシ、ピシ、ピシ。
段々と避けきれなかった拳の数が多くなり、胴衣に当たる数が多くなり。
(少し距離を取らないと)
そう考えたとき。 トン、背中に何かが当たった。
「まず……」 『い』 そう思ったまさにその時。
バス!! 
「あ、ぐぅぅううう………」 
闘技場の端へと追い込まれていた私はロープと彼女に挟み込まれる形で逃げ場を失い、彼女の必殺の一撃を腹部へとまともに受けてしまう。
その瞬間次々と彼女の拳が私の体へと突き刺さってゆく。
「!! ………っ! ……!!」
悲鳴に成らない悲鳴を上げて、何とか逃れようとする私の体に無数の拳が終わることなく降り注いでくる。まさに袋叩きという物のソレ。
脇腹、鳩尾、胸、体の前面を、顔を、拳が降り注ぎ、その集中砲火が収まったときに私はゆっくりとマットの上に崩れ落ちていっていた。

真っ暗闇の中なにかが聞こえてくる。

「ミス・サヤ、どう? 負けを認めます?」
薄っすらと目を明けると、少し離れたところ彼女が立ちこちらを見つめていた。

「いいえ……まだ……続けます」
やっと開いた口ではっきりと――とは言えないが何とか告げゆっくりと立ち上がり、構えを取る。


500:お嬢様ファイト  6/7
09/07/17 22:05:45 KhzHYiEp
『ボクシングは立ち上がる意志さえあれば、続けれる』
『倒れて立ち上がろうとするものに攻撃をしかけてはいけない』
この決まりがあるからこそ、だからこそこの国で広く愛されている
『最強の格闘技』 なのだろう。
「いい根性ですわ、ですがもう闘う力は無いようですわね」
感心したような顔をした後、再び険しい顔をして、
ばねのような筋肉を生かし、彼女は再び私に止めをさすべく距離をつめてくる。
圧倒的な速さとそれに付随する打撃力。
何発かはかわせても、いつかは捕まってしまう。先ほどのように腕を掴もうにもとてもついていけない。 
「失礼の無い様に全力でいきますわよ!」

(父上、母上、不甲斐無い私を赦してください)頭だけでも何とか守ろうと手で庇うがそれ以外の体に先ほどのように何打も拳が叩き込まれる。
「せ、せめて、一撃だけでも……」 倒れまいとこらえるだけでも限界近くまで身体が悲鳴を上げている。 歯を食いしばり何とか耐えているが、足にも腰にも力が入らない。
「レスト・イン・ピース」
少しはなれたところで、軽く胸の前で十字を切る。
それは彼女が私に止めをさすべく最後の一撃を叩き込む前の準備段階なのであるとはっきりと分かった。
「ここまで耐えたのは貴方が始めてよ」
そう言うと

シュン。

今までの中で一番重く、そして速い一撃が飛んできた。



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