【ドラマ】セクシーボイスアンドロボ5【マンガ】at EROPARO
【ドラマ】セクシーボイスアンドロボ5【マンガ】 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
08/09/19 04:18:07 FMBLUhEa
書き込めた…かな?
乙ですー

3:名無しさん@ピンキー
08/09/19 08:32:04 WlOZ1qpm
!(σ゚∀゚)σ 小倉優子 おっぱい丸出しでプールで遊んでる!
URLリンク(photo.1pa2.info)
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4:名無しさん@ピンキー
08/09/19 08:38:13 zvD3DQOM
保守
乙です!

5:名無しさん@ピンキー
08/09/19 17:06:27 WBVpT8/g
>>1
スレたて乙です

この良きスレがマターリ続くことを願う

6:名無しさん@ピンキー
08/09/20 20:38:19 fHfFquyf
>>1
乙です!
即死回避!

7:熱帯夜 1/6
08/09/21 21:51:44 G1uomT4V
前スレ>>442のその後のふたり。エロ要素薄めですがそれらしき描写あり。
新スレになっての投下になってしまい中途半端ですみません。

××××××××××××××

うだるような熱さが支配する部屋の一角で怒り渦巻く嵐が容赦なく叩き付ける。
「もう、信じらんないッ。ロボのバカ!サイテー!
ほんとはあたしなんていないほうがよかったんでしょ!?」
絶対そうだ!とプイッと横を向いて膨れるニコの乱雑に崩れた髪、
鮮やかだった着衣は埃に塗れて薄汚れ、擦りむけて赤く血が滲む白い脚。
こんなはずではなかったのに。
夏祭りデートのロマンチックな気分そのままに濃密な夜のひとときを過ごすはずが。なぜ?

「と、とにかく怪我の治療しようよ」
「あたし、自分でやるからいい」
ひどくトゲのある言い方にビクつきながら、そうはさせてはなるものかと
「いいから、おとなしくしてなさいッ」
と、救急箱を手にやたら偉そうな口振りの俺にムッとするニコを
ベッドに押し付けて座らせ不慣れな手付きで傷口の消毒をしたまではよかったのだが。

「……っ!」
「ごめん、しみる……?」
細い指がぎゅっと捲り上げられた裾を掴み、目を閉じて僅かに表情を歪ませる。
なのに、俺ってヤツは。本当にどうしようもない男で。
治療のためとはいえそのあまりにも無防備に明かりの下に晒されたニコの白い素足の艶かしさに
元来のスケベ心が邪魔をして俺は釘付けになってしまって、
その結果、鈍い動作は余計に疎かになってしまった。
触りたいなぁ。いやいや、今はダメでしょ~。怒鳴られるだけじゃすまないもんな。
ああ、余裕でスルーできない自分が悲しい。
「ちょっと、どこ見てるのよ?」
そんな俺の煩悩を見透かしたように届く抑制の効いた低音にハッと我に返る。
「え、えっ、どこって、俺は純粋に傷の治療をですね……。決してやましいことなんかッ」
「スケベ」
確信をついた一言を突きつけられ俺は返す言葉もなくただただ愛想笑いを浮かべて
床に跪いたまま項垂れるばかり。


8:熱帯夜 2/6
08/09/21 21:52:39 G1uomT4V
わかってるよ。充分すぎるほどわかってる。この失態は簡単に言い逃れできる問題じゃないって。
ニコが不機嫌になるのも当然といえば当然で、すべての原因はこの俺にあるのだから。


数年ぶりに出かけた夏祭り、しかも好きな女の子と一緒というシチュエーションに繋いだ手には
変な汗を湿らせ、チラっと盗み見たニコのつやつやと光る唇にドキドキしたり、
いつにもましてそわそわと落ち着きがない俺はそのつどニコに窘められたりしていた。
が、露店が立ち並ぶ喧騒に触れた途端、幼い頃の熱き魂が呼び覚まされニコそっちのけで夢中になり
そんな俺に彼女は振り回されてはぐれてしまい疲れ果てて、華やかな明るさを放つ雑踏の渦に
ひとり巻き込まれてしまった。
姿が見えないことに気付き、焦りまくって探しまわりようやく見つけた俺は
呆然と立ち尽くすニコのありえない惨状?に動転して、苦情は後で受付けるから!と
MAXダッシュで家へと連れて帰った。
ずっと黙り込んで俯いたままのニコの顔色を窺いながら。

心弾ませてやって来た夏祭りはこうして笑顔の花を咲かせることなく後味悪く終わったのだった。


憮然としている横顔を前にここはもう誠心誠意、謝るしかない。ただそれだけ。
「ニコ、ごめん。頭下げて済む問題じゃないけど、本当にすみませんでした」
ひたすら額を床に擦りつけて。
どれくらい時間が過ぎただろうか、しばらく経って一呼吸おいたニコが沈黙を破り
「あの…さ、別にそこまで大げさにしなくていいよ。かすり傷だし大した怪我じゃないから」
先程とは違った穏やかな声につられて俺は顔を上げた。
「でも……」
そういうわけにはと続けようとした俺を遮って
「そりゃあ、思い出しただけで頭にくるし、どう言い訳しても問答無用で一発お見舞いしてやるッとか
ここへ帰る間に色々考えてたわけよ。
でもね、ロボだって必死であたしを探してくれたでしょ。汗だくになってさ。
今もこうやって真っ先に手当てしてくれてるし」
そんなあたりまえのことどうして言うんだよ。
ニコに何かあったらって居てもたってもいられなかったんだよ、俺は。
自分勝手に行動して、そのせいでニコに怪我させて。
「つらい思いなんてさせたくなかったのに…」
情けない気持ちが口をついて出て、へこみまくる俺に二コは時折視線を寄越しながら、
ひとつひとつ静かに言葉を連ねる。


9:熱帯夜 3/6
08/09/21 21:53:40 G1uomT4V
「ありがと、ロボ。あのね、これはこれで嬉しいんだよ?
ほんの少し血が出ちゃっただけの怪我なのに気遣って労わってくれて。
そして同じようにあたしの不安や憤りも癒してくれた。
ロボは心の痛みがわかる人だから。
けど、もう一方ではやらしーこと考えてたりするでしょ?
なんか自分だけ怒ってばっかりで馬鹿馬鹿しく思えてきて、拍子抜けしたっていうか…。
やっぱりそこがロボがロボたる所以だよねーって」
俺が何?やらしいってこと?それは否定できないけど。
「よくよく考えたらあの状況下に置かれたロボが熱中しすぎてまわりを
顧みなくなってしまうなんてこと予想できたはずだったのに、
ツメが甘かったってことだよねぇ、あたしも。まだまだだなぁ」
と、ひとり大きく頷くニコの表情はそれまでにあったわだかまりはすでに消えたように見えた。
……もしかして?もしかしなくても。
「…ニコ、許してくれるんだ?」
「んー、今日だけ特別にね。でも、こんなこともう二度と御免だからねッ」
軽く俺の鼻先を弾いてしかたないといったふうに口元を綻ばせた。
和らいだ笑みに胸を撫で下ろして、許してもらった安堵感に嬉しさのあまりニコに抱きつく。
「ありがとう~、ニコ~」
「んもう、何よー。そんなにくっ付かれたら暑いんですけど」
俺にとっては喜びに満ちるときでさえニコは相変わらずのクールな言動で、
天と地ほどの温度差を感じさせる。
でも、いいんだ。だってさ、それはあくまでも表面上だけのもので、
天邪鬼な彼女の本心はわかってるつもりだから。


「あのね季節は夏だよ、夏!暑いのはあたりまえでしょ。
男と女はね、そんなこと関係なくふれ合うことが大切なんだよッ。わかる!?」
「ロボは今だけじゃなくて年中そうなんじゃないの?」
うぅ…冷静に痛いところをついてくる。
「な、何言ってんだよ!暑いからこそ、理性という名の衣服を脱ぎ捨てて
迸る情熱をぶつけてアドレナリン全開で燃え上がるんだよッ。
それが夏の醍醐味ってやつだ!」
「いや~、なんかそれってこじつけじゃん?
あっ、でも一海ちゃんも似たようなこと言ってたな。意外と間違ったことでもないのかなぁ?」
「そうだよ!」
ベッドに腰を下ろしたまま可愛らしく小首を傾げるニコと膝をついて立つ俺とお互いの吐息が鼻に
かかりそうなほどの目線の高さで、それをいいことに俺はじわりと頬を重ねて
「だから……ね?」
襟元から色っぽく覗かせてそそるそこを啄ばむように唇をあてた。
「ちょっ、ダメだって!」
「いいじゃん」
俺を押し戻そうとするニコを制止して、実にいいタイミングではだけている浴衣の裾から、
手を滑りこませると傷口を避けてふくらはぎから太ももを撫で上げる。


10:熱帯夜 4/6
08/09/21 21:54:38 G1uomT4V
「ん…いや、ロボ、やめて…よ」
否定の声は完全なものではなく、虚勢の中に甘さを含み俺を昂らせる。
「待って…あたし、まだシャワーしてないから…」
「気にすることないよ。どうせ汗掻くんだから」
自らを恥じるように身を捩り逃れようとするニコを唇が追いかけ、ときに鼻をくすぐる
柔らかい匂いに虜になり、欲望が溢れだす指先は更に奥を目指して進む。
我慢ならなくなって、脚を割り入れゆっくり体重をかけていった矢先。

「いやー、もーっ!調子にのるんじゃないッ!!」
「いてててッ、ちょっ、痛いってば!」
すべすべした太ももの感触を余すところ無く味わっていた手を思いっきり抓られて
本日二度目の手酷いしっぺ返しをくらう。
「何すんだよ~、ニコ」
ヒリヒリと感じる痛みを胸に庇いながら、ささやかな抗議をしてみたものの
「がっつくんじゃないの、バカ!少しは自重しなさいッ」
「え~、そんな俺、がっついてなんか…!」
冷たく見下ろす眼差しに怯んで口を噤む。
「ふーん、あっそう。じゃあ、あそこの引き出しに大量に仕舞いこんでいるものは何?」
へ?あそこ?何だ?とニコの指差すほうへ目をやると……
「あ~、見たんだ…」
「ええ、見ましたとも、しっかりと。ロボが熟睡してる間にね。
ハサミが見当たらなかったから、あのあたりを探し回ってたら偶然に……」
そっか。バレちゃったのか。
つい先日買い込んだあるモノ。
営業の途中で立ち寄ったドラッグストアで手にした特売品のアレの小箱。
でも、これはさ弁解することではないでしょ?俺達にとって必要なモノなんだから。
「ほら、もう残り少なかったし、ニコだって知ってるだろ?」
「え?あ、まあ、それは……」
突然投げかけられた問いに戸惑ったようなどことなく気恥ずかしそうな表情を浮かべた。
まずいこと言っちゃった?そんなつもりはなかったんだけどね。
「だからって、あんなにたくさん…」
「あって困るものではないよ?第一一晩で使ってしまえる数じゃないし、
さすがに俺もそこまで体力が持たないからなぁ」
「あ、あたりまえじゃんッ」
声を荒げてニコが言い返す。耳まで赤くして。照れてるんだ?ニコらしい。

「だったら試してみようよ~。ねえ~、ニコぉ」
と、懲りずに触れようと伸ばした腕を払いのけられる。
「うるさい!このスケベオタク!」
ああもう君はなぜそんなに横暴なわけ?目をつり上げてさ、可愛い顔が台無しだよ?
って俺がそうさせているのはまぎれもない事実なのだけど。
「何よ!?」
「いえ、何でもありません」
鋭い睨みを利かせた威圧感に臆してあえなく降参。
今日は、というか今に始まったことではないけど怒られてばっかりだな、俺。
自業自得とはいえ本能の赴くままに突っ走るのは楽じゃない。
ったくとブツブツと文句をこぼして、乱れた裾を整えるニコを未練がましく見届けながら
心の中で切ない溜息を飲み込む。
空振りにおわったこの続きは後で必ず達成してみせる!と密かな誓いをたてて
俺はへばりつく汗を流そうとバスルームへ向かった。


11:熱帯夜 5/6
08/09/21 21:56:58 G1uomT4V
暖かい柔肌の記憶が残る掌を水しぶきに浸すとひんやりとした刺激が走る。
それは一瞬だけの冷たさで一度湧き上がった熱いものは俺の身体をなかなか鎮めてはくれない。


「あのさぁ、ロボー」
「んー、何?」
遠くからニコの声が扉を隔てて耳に響く。いつもと変わらないトーンで。
「何か着る物貸して」
つい数分前に落ちたカミナリがウソみたいだと思いながら、
「お好きなのどうぞ~」
自分も同様にゆったりと返事をする。

毎度毎度、ニコと違った意味で口より先に手が出てしまう俺をしょうがないヤツだと
憐れんだのか諦めたのか。
とにかくニコの中ではなかったことにしてくれたんだ。と、おめでたい俺はいいように解釈して
ほっとしながらシャツを脱いでベルトに手をかけたが
「あっと、タオルがないや」
そういえば昼間、ニコが畳んでくれてたっけと暢気に口笛を吹きながら、
特に気に留めることもなく一旦戻った俺は目前に映し出された思わぬ光景に歩みを止めた。
「えーっと、タオ……えっ…あ」
止めざるを得なかったのだ。

そこには、ほどかれた帯がベッドの上から床へと流れ落ちるように置かれていて
こちらに背中をむけたニコのしなやかな肢体が外気に晒され、全貌が明らかになろうとしていた。
束ねられていた髪が無造作に下ろされて肩にかかり揺れる黒髪と浴衣の深い青とが相まって
肌の白さを強調させていて、目が眩みそうなほど。
「えっ、あ、ロボ!?」
俺の存在に驚いたニコが慌てて浴衣の襟を合わせた。
「あ、あのね、浴衣汚れちゃってたから着替えたほうがいいかなぁと思って、だから、その…
これ借りていいかな?」
立ちすくんだまま無言を貫く俺に耐え切れなくなったのかニコは掛けてあったTシャツを拡げて
もう一度問いかける。
「……あの、ロボ?」
心捉えられ熱を帯び沸騰する意識は理性とともにどこかへ飛んでしまい、何も耳に入らない。
白い誘惑に俺はフラフラと吸い寄せられ近付くと迷うことなく力の限り抱きすくめた。
「ど、どうしたの……?」
全身を強張らせるニコに構わずに耳たぶから首筋と唇を落とし、同時に鎖骨に指を這わせる。
「待ってよ、ロボ」
「……ダメだよ。ニコが誘ったんだから」
今度は逃がさない、止められるもんか。
「そんな…ちがっ」
弱々しい反論を唇で塞いで退けるとしだいに小刻みに震え始めたニコを支え、
羽織っただけの浴衣をなんなく脱がせて足元へ落とす。
しっとりと汗ばむ背中を弄り始めた熱い掌に
「ロボ、ね…ぇ…明かりは消して……」
頬を紅潮させ呟くニコは、やや強引に進んでいく一方的な行為を咎めるすべもなく、
もうなんの抵抗もみせずに力なくもたれて俺に身を委ねる。
暗闇に濡れたキスの音が紛れて待ちきれずニコの邪魔なものを残らず剥ぎ取り、ベッドへと沈む。

夜だというのに凍りつくことを知らないむせ返るような熱気は部屋の温度を更に上昇させて、
互いの感情をさらけ出し、玉のような汗が雫となって流れ落ちる。
「やぁ…ん……は…ぁ」
切なげに喘ぎ響くニコの声、絡み合い共鳴する肌と肌。
淫らな感覚が俺を違う世界へと誘う。
離れたくない、離したくない。
蕩けるほどの甘い蜜を滴らせ融合する繋がりを。
「んああぁ…ロボッ……!」
とめどなく押し寄せる熱い波に身体中すべてが侵食され溶けていき
どこまでも途切れることのない快楽に幾度も昇りつめ溺れていった。


12:熱帯夜 6/6
08/09/21 21:58:03 G1uomT4V
月明かりのおぼろげな光りに照らされて、甘美な夢の余韻に息をつき寄り添う。
「あたしね心細かったんだ。ロボがいなくなちゃって…
耳をすませば聞き慣れた声は入ってくるのに、ロボの影は見えなくて。
皆が思い思いに楽しんでいる夜にひとりぼっちになるのはイヤだったの」
俺の胸に顔を埋めニコは閉じていた瞳を開けたかと思うとまた再びゆっくりと閉じる。
「ロボといると強くもなれるけど、こんなにも弱い人間にもなっちゃうんだ。あたしは」
乱れて頬に纏わりつく髪を一本一本撫で梳かし慈しむ。そっと優しく。
「俺、ニコを一人にしたりしないよ。たとえこの先ニコの姿が消えてしまったとしても
俺は絶対、探しだす自信はあるんだ」
「…ほんとに?」
うん、絶対に。
どんなに寂しくて苦しくて憂鬱で眠れない夜でもニコがいるだけで色褪せない景色があることを知った今、
神の配剤のごとく、再び巡りあった天使を見失って彷徨うだけなんてできるはずがない。
「ニコは耳がいいだろ?俺は鼻でニコを見つけだすんだ。嗅覚で発見!確保ってね」
「えー、犬じゃないんだからさぁ。なんか変。
あたしがまるで追われてる容疑者みたいだよ。全く根拠ないでしょ?それ」
くぐもって聞こえる呆れ返った声に細い身体にまわした腕を解いて覗き込み、
「あ、バカにしたな~。ほんとにほんとにウソじゃないんだからね!」
なんてうそぶきながら。
ごめんね、本当はちょっとだけニコに対抗してみたんだ。
そう告げたら、彼女はまたご機嫌ナナメになりそうなのでやめておこう。
だけど、半分は本気だよ。非科学的とか痛いヤツだと言われるかもしれないけど
俺自身知りえない力がどこかに隠されていて、二コのためならいつか必ず発揮されるはずだと
真剣に考えている自分がいる。

「まあいいや、ロボがそう思ってるんだったら、あたしだけでも信じてあげないとね」
よしよしと意地を張る子供をなだめるみたいにニコは俺の頭を撫でて笑う。
「言ったな~。そのうち君は俺の凄まじい才能を目の当たりにして、
神と崇めるようになるんだ。くれぐれも覚えておきたまえ!」
「はいはい。えらいえらい、すごいねぇ」
「くぅ~」
結局、また適当にあしらわれてしまった。小憎たらしいヤツ。でも、愛しくてたまらない彼女。
傍目から見ればどうってことない些細なやりとりに緩やかに浸って、幸せに酔いしれる。
確かめあったばかりの存在を深く心に刻み込むかのように再び熱い抱擁を交わし
「来年も一緒に夏祭りに行こうな」
「うん。約束ね」
どちらともなく指きりをして願う。次の年もその次の年もずっと永遠に。

「ニコ」
微笑み顔を寄せてくっつけたあった額に口づけるとニコはうっとり俺を見つめて潤んだ瞳と唇で訴える。
「ねえ、ロボ…もっとキスして」
君が望むなら何度も何回も飽きるほどキスをしよう。
小さな蕾のようにどこか儚げで、ときに大胆に俺を惑わせる不埒な唇。
ふたつの鼓動が重なり合って火照る肌にキスの雨を降り注ぎ、闇を焦がす灼熱の世界は果てしなく続く。
無限に広がる宇宙の片隅で。


終わり


13:名無しさん@ピンキー
08/09/22 00:52:22 3Ofkrp7X
超GJ!
陰と陽の使い分けがすごいです!
文学作品読んでるみたいだった・・・

14:名無しさん@ピンキー
08/09/23 00:42:45 /DuFk/qc
ロボは良くも悪くも、熱中すると周りが見えなくなるんだよな~
そこが魅力でもあるんだけど
もうニコを探し出さなくてもいいように捕まえててね…
新スレ初投下乙そしてGJです!

15:名無しさん@ピンキー
08/09/25 23:20:50 PKPavTPD
しばらくご無沙汰しているあいだに新スレですね!
只今更新滞り気味の保管庫管理人であります。(すみません!)
1さん乙です&7の職人さまGJです。
保管庫もテンプレに加えていただきありがとうございました。

前スレで少し話にでていた本スレに書き込みのあった続編話?ですが
まとめに保管させてもらったらまずいでしょうか?(過去ログに埋もれたままなのも惜しいので)
作者の方にご連絡とれて了解いただくのがいいんですけどね…。
では長々と失礼しました。
5スレ目も楽しくマターリやっていけたらいいですね。

16:名無しさん@ピンキー
08/10/01 02:32:19 1yXyz9et
落ちちゃイヤなのだー!
取りあえずほしゅしておくでつ!


17:名無しさん@ピンキー
08/10/02 11:51:49 J9EYI0rw
前スレ落ちてたのね‥orz

18:名無しさん@ピンキー
08/10/02 22:49:43 FJIN27bU
保守age

19:名無しさん@ピンキー
08/10/03 07:02:10 D6gmaJ++
保守

20:神様のいない日(前編)1/7
08/10/04 13:50:19 wu9428KL
エロ無し一応スパイ物。
むーちゃん絡みですが少しばかり悲しいお話になってしまいました。ファンの方ごめんなさい…
あとかなり長いので3回に分けて投下します。適当に間を見てしますので他の書き手様も
気になさらず投下があればお願いします。

* * * * * * *

【prologue】

 朝の林家は忙しい。
 朝食の用意をする母、それを摂るのもそこそこにメイクにかかりっきりの姉。そんな中
身支度をさっさと整えてニコが席に着くと、父はコーヒー片手にテレビを見ている。
『……こちらの教会では、未明建物の前に現金で1億円相当が置かれてあったとの事でした。
 また別の養護施設でも同様に現金で8千万入りのバッグが……』
「ああ、またか。最近流行りの『足長おじさん』てやつだな」
「えっ?何それ」
「いや、そういう施設なんかにな、ポンと大金を置いていく事件?つうのが何件かあるんだと。
 きっとどっかの金持ちの仕業だな。盗難届けもないそうだからねずみ小僧じゃなくて
 足長おじさんって言われてるんだそうだ。何だ二湖知らないのか?」
「知らない」
 姉の一海はそれを聞いて
「素敵よねぇ。そんな大金を惜しげもなくポンと寄付するなんて、名前も告げない所が
 いいわよねー。どっかの資産家とか、富豪とか?ジョニー・デップみたいな人だったら……きゃー」
なんて騒いでいる。
「ないない」
 それを見てこっそり突っ込むニコ。


21:神様のいない日(前編)2/7
08/10/04 13:52:02 wu9428KL
「そうねえ、きっとどっかの物好きのお金持ちにしたって、きっとおじいちゃんよぉ。
 そんな映画みたいな話……あったらどうしましょ?ねえお父さん」
「どうしようって……何お母さん、自分がどうこうするつもり?なに急に顔塗りたくって、ねぇ」
「えっ!?いや、やあだそんな……」
「ちょっとなに考えてんの?ってお母さん、私の口紅使わないでー!」
「おい俺を忘れ……」
「いいじゃない貸してよ、新色」
 相変わらず騒がしい家族だ、と思う。化粧品を巡って騒ぐ母娘、そばでおたおたする父。
 もうとっくに変わってしまった画面を眺めながら何となく、昔読んだ物語を思い出す。
「足長おじさんか……」
 イメージしていた通りの挿し絵にあった、長い手足に高い背丈の紳士。

「ちょっと似てたかなぁ……あいつに」

 元気かな、と想う。心の片隅の輝きを。


* * *

 ガッシャアアアン!!!

 やった。やってしまった、と思った。
 信号待ちで歩き出した途端に躓いて、得意先に運ぶ途中の部品をバラまいてしまった。
「うあぁぁぁ……やってしまったっ!!」
 渡り急ぐ人の足に慌てながら彼は大事な商品を拾い集めていた。
 チラチラと同情的な視線を送りながらも他人には構っていられない人間の、何と多い事か。
 わかってはいても
「みんな冷たいよなあ……」
と愚痴の1つでもこぼしたくなるのも無理のない話だろう。
 その時、彼の目に地面に落ちた物を拾う華奢な白い手が映った。
「大丈夫ですか?あの、これで全部ですよね?」
「あ、ああ、すっすいません。ありがとうございマックス」
「マッ……?あ、いえ、それじゃあ」
 箱に拾った部品を入れると、その手の主は微笑んで小走りに去っていった。
「可愛いなあ……きっとデートだろうな。遅れなきゃいいけど」
 悪い事しちゃったなぁ、と呟きながら肩を落としてまた足を速めた。



22:神様のいない日(前編)3/7
08/10/04 13:53:28 wu9428KL
「うう、また騙された……」
 公園のベンチにどんよりとした空気をしょって座る男が1人。
 須藤威一郎27歳独身。金無し、オタク、彼女無しの三重苦である。
「オタクで悪いかっ!?」
 ……あ、すいません。と、語りに対するツッコミはさておき、また出会いの為の
某手段に失敗した模様。
 あーあ、と手元で愛してやまないマックスロボをいじりながら
「よし、こうなったら再度挑戦するのみ!」
と気合いを入れて立ち上がろうとしたその時、歩いてきた2人組に目が止まった。
 女子高生が仲良く喋りながらこちらへ向かってくる。
 何気にその顔を見ると
「あっ」
と思わず声を上げた。
 言われた相手も声の主をちらりと見て同じように驚き、声を出す。
「ああ、あなたこの前……」
 そうだ、この前助けて貰った……いやしかし、と彼は思う。
 それよりも、その側にいるもう1人に目を奪われていた。
「に、ニコ!?」
 同時に彼女も驚きを隠せないようだった。
「ロボ?」

 もうすぐ4年。会わなくなった、あの日から。


「まさかニコの知り合いだったなんて……」
 片側にロボ、反対側にはニコとその友達という女の子が座っていた。
「へえ、むーちゃんが言ってたドジサラリーマンてロボの事だったんだぁ」
「ニコってば……」
「ドジ!?ドジって言ったな!それ絶対今、今付け足しただろう?」
「何よ。何か間違ってる?」
「いいえ……」
 間違ってないんだから仕方がない、とそれ以上は逆らわずに口を尖らせてそっぽを向いた。
 だが、こっそりとロボは微笑んでいた。約4年の隙間などなかったかのように
ニコはニコらしく、その姿を失ってはいなかったから。
「あの、今日はここで誰かと?」
 むーちゃん、と呼ばれた彼女は場を取りなすようにロボに話を振った。制服だと
随分印象は変わる。
「あ、いやあの、一応待ち合わせしてたんだけど……」
「来ないの?電話すりゃいいじゃん」
 ニコの言葉に、そうなんだけど、と小声で呟きながら気まずそうに目を逸らす。


23:神様のいない日(前編)4/7
08/10/04 13:54:59 wu9428KL
「ああ、初対面だからだ?」
 全てを見透かしたようなニコに返す言葉もなく、ぬるくなりかけた缶ジュースを啜りつつ
『あ、また呆れてる……』
と、若干の情けなさを感じながらも何故かその方が良かったような気がしてしまっていた。
「あ、家から……ちょっとゴメン」
 ふいに鳴りだした携帯にニコは席を立った。残されたのはロボとニコの友達、むーちゃん。
『何を話したらいいんだ?女の子と2人なんてそうないからなぁ……。しかし可愛いなぁ』
 ニコなら変に意識しないで自然に話せるのに、なんて考えていると、彼女の方から
声が掛かった。
「あの、それ持ち歩いてるんですか?」
「あ、ああこれ?マックスロボって言うんだよ。他にも色々あるんだけど、こいつは
 特別なんだ」
「へえ、レア物、とか?」
「うん、それもあるけど、これはニコのお陰で手に入ったんだよね。言わば友情の
 証というか……とにかく大事な物なんだよ」
「宝物なんですね」
 微笑むその顔は、ロボには何だか嬉しそうに見えた。
「ニコとは随分久しぶりなんですよね……可愛くなりました?」
 ぶっ!とロボは飲んでいたジュースを吹きそうになってむせた。
「なん……」
「高校生になってから何度か告白されたみたいですよ。結構もてるみたい」
「あ、そうなんだ。ニコがねえ……ふ~ん」
「気になります?」
 悪戯っぽく笑いながらむーちゃんはロボの表情を確かめる。
 ロボは落ち着かない様子でマックスロボを握り締めるが、無意識に力がこもった。
「ふふふ、大丈夫。安心して下さい。私もずっと何で彼氏作らないのかなって思ってたん
 ですけど、多分自分でも気が付いてないだけなんじゃないかな。あんまり男の子と喋る
 方じゃないんですけど、ロボさん?でしたよね、何だか納得したって感じ、うん。
 だから頑張って下さいねっ」
「は、はあ……」
 知らぬ間に励まされながら、何だかロボの気持ちは複雑に絡まっていった。


24:神様のいない日(前編)5/7
08/10/04 14:06:43 wu9428KL
「あ、メール……ごめんなさい」
 今度はむーちゃんが携帯を手にした。急に訪れた沈黙が今のロボにとっては救いだった。
「ごめんね。お待たせ」
 戻ってきたニコの姿を改めて見ると、確かにあの頃とは違い、伸びた背丈と大人びた
顔つきや短めのスカートから伸びた脚に、無意識にロボの気持ちがかき乱されていた。
「なに?」
「あ、いや、別に」
 どうしよう、変に意識してしまう。
 ロボの喉はからからに渇き、あっという間に缶は空になっていった。
「あ、ニコごめん。彼からなんだけど、この近くにいるみたいで、その……」
「いいよ。デート?」
 ニコの言葉に顔を赤らめて頷くと
「あの、じゃあ私これで……ロボさん、後はよろしくお願いしますね♪」
 ニコッと笑うとむーちゃんは2人を残して行った。
「なに?何なの?……変なの」
「さ、さあ?」
 いきなりニコが違う女の子に思えてきて、ロボは戸惑いながらも必死で平静を装っていた。

 いざ2人きりになると何となく落ち着かなくなって、ロボはニコを促して歩き出した。
 特に何をするわけでもなくブラブラしていたが、
「あっ」
とニコが小さく叫んだのを聞いてその方向へ目を向けた。
 むーちゃんとその彼氏らしい男を見たのだ。メールを受けた時のように彼女の顔は赤く、
優しい笑顔をしていた。
「むーちゃんいいコでしょ?」
「え?うん、そうだな」
「あたしね、ロボと会わなくなってから色々あって、ちょっとクラスから浮いたり
 した事あるんだよね。でもその時支えてくれたものの1つがむーちゃんだったんだ。
 最初は戸惑ってたけど、結局は味方でいてくれた」
「そうか……いい友達だな」
 きっと色々あったんだな、俺の知らない辛いことや、悲しいこと。
「他にも何かあったの?御守りとか」
「えっ!?あ……うん、まあね」
 でもロボには内緒。
 そう言ってニコは先を歩き、笑った。
「そんな事言われると……気になるじゃないかぁ!」
 後を追って走るロボとふざけ合いながら、ニコの心も急速に過ぎた時間を取り戻していった。


25:神様のいない日(前編)6/7
08/10/04 14:09:12 wu9428KL
「ロボいる?」
「わかってんでしょ?」
 それからまたニコがロボの部屋に足を運ぶようになるのにも、時間は掛からなかった。
 ロボは相変わらずのロボット貧乏で、更に増えたフィギュアに狭さを増した部屋で
1日中一緒に過ごす事もごく自然な事だった。ニコも当たり前のように部屋を自由に使っている。

 そんなある日。
「あ、雨降ってきた?」
「えっ?……あ、俺さっき手すりに洗濯物干した!!」
 慌ててロボがベッドに乗っかって窓を開けると、いきなり強く降り始めた雨が
吹き込んでくる。
「うわっ、濡れる~!!」
「大丈夫?手伝うよ」
 2人で慌てて掛けてあった衣類を取り込んでホッと一息ついた時だった。
「ニコありが……うわっ!?」
「きゃっ!!」
 洗濯物の絡まったピンチに躓いてよろけた拍子に、ロボのその体はバランスを
崩して前のめりに倒れてしまった。
 そして気が付くと目の前にニコの顔があった。
 しばらくの間固まったままどちらも動けずにいた。
「……っ!?ごっごめん!」
 やっと我にかえるとロボは慌ててニコの上から飛び退いた。
「あ、うん……」
 偶然とはいえ、ニコを組み敷く形になってしまっていたのだ。
 ニコは再会してからベッドにむやみに乗っからなくなった。互いに何となく無意識に
避けていた領域で起きた必要以上の接近という出来事に、今までにない緊張感が生まれていた。
「あ……あたし、もう帰ろっかな」
「あ、うん。遅いから送るよ」
 その後家までニコを送り届けたロボは、密かにある決意をした。
「ニコ、来週さ、空けといてくれる?」
 2人にとってその日がどんな意味を持つ物か、ニコにもわからない筈はなかった。
 静かに頷いて手を振るニコを見つめながら、ロボは拳を握り締める。自分を奮い立た
せるために……。

 だが、この日こそが後々重大な意味を持つことになってしまうとは、どちらも知る由はなかった。


26:神様のいない日(前編)7/7
08/10/04 14:23:38 wu9428KL
 約束の日を明日に控えたその日、ロボは普段より遅い時間に帰路についていた。
「はあ~、疲れたなぁ……。でも今日休日出勤したから明日は休めるぞ。いや、何がなんでも
 休んでやる!」
 大事なその日を無事に迎えるために、残りの仕事を頑張ったのだ。
 その時だった。
「キャーッ!だ、誰か!!」
 すぐ近くで女性の悲鳴がした。
 その方向へ足を走らせると、突き飛ばされて地面に倒れ込んだ女性がいる。
「あ、あの男が後ろからぶつかってきて……」
 見ると走り去る人影があった。慌ててその後を追う。
「待てー!」
 必死で走り、相手に追い付くと肩を掴み、その勢いで転倒した。
 だがその顔を見て怯んでしまい、一瞬の隙を突いて逃げられてしまった。
「そんな……」
 ロボは中身のぶちまけられた男の物と思われるバッグをそのままに、呆然とその場を立ち去った。

 その夜遅く、ロボを訪ねる者があった。
「須藤さんですね?定期落としてましたよ」
 ロボは静かにそれを受け取る。
「側にあったバッグの中身なんですが……」
 無言のままロボは首を振った。


 翌日ニコは約束の場所でロボを待っていた。
 だが時間を過ぎても一向に現れる事はなく、携帯も全く通じなかった。
「何してんのよ、もう!」
 2時間を過ぎた所でとうとう痺れを切らしたニコは店を後にした。

 まっすぐ向かったロボの部屋で目にした物は、信じられない光景だった。
 いつかの様に白い布だらけの主を失った部屋は、冷たく暗かった。
 ショックを隠しきれずに、へなへなと階段に座り込むと無表情のまま俯いた。

 涙も出ない。

 だが、しばらくしてその耳に届いたのは、更に衝撃的な内容だった。
『……ちょっと変わってるけど、いい人そうだったのに』
『ねえ。でもあれでしょ、ああいう人形とかって結構高いらしいじゃない?噂じゃ
 とんでもない額つぎ込んでたらしいわよ』
『人は見掛けによらないわね』

「そんな……!?」

 信じない。そんな話、信じられるわけがない。
「ロボが、警察に……」

 もう一度ガラス戸越にテーブルに置かれたマックスロボを見つめた。


** 中編へ続く **


27:名無しさん@ピンキー
08/10/05 04:15:10 PXh09wxi
続きが気になるよー
wktk

28:神様のいない日(中編)1/5
08/10/05 12:50:35 LiDkefZ2
 ロボがそんな事をやらかすような人間でないのは自分がわかっている。
 どんなに貧乏でも、そんな事をするくらいなら道端の草を摘んででも頑張るような男なのだ。
 ニコはその足で、吸い寄せられるようにとある場所へ向かっていた。
『地蔵堂』
 主を失ったこの場所もまた、ニコの心を切なく締め上げる。
「結局あたしって、1人じゃ何もできないんだなぁ……」
 誰かと関わっている。どうしようもなく世の中と関わっているのに、こんな時
どうやってそれを生かしていいのかわからない。
 佇んで唇を噛みながら俯くニコの耳に、聞き覚えのある歌声が届いた。
「よお、久しぶりだな。何か面白い事になってるみたいじゃん」
 懐かしいその姿に思わず過ぎた時間を忘れて走り寄った。
「ロボを助けたいの!力を貸して、お願い……よっちゃん!!」
 髭面を弛ませて彼は笑った。


「本当にお前がやったんじゃないのか?」
「ち、違います!」
「でもこれはお前のだな?」
 ロボは今警察にいた。
 あの時定期を現場に落としたのに気づかぬまま帰宅し、それを証拠品として出された。
「じゃあ先週の日曜、どこにいた?」
「日曜……は、家に」
「誰か証明する者は?」
 あの日一緒にいたのは……。
「いません。僕1人でした」
 もう何度もこの繰り返しだ。数時間に及ぶやり取りにかなり疲れていた。
 あの時の女性もまともに顔を見ていない為に、逃げたのがロボではないのだと
いう証明もできない。
「いい加減に……」
 その時ドアが開いて入ってきた刑事の耳打ちに取り調べ官の顔色が変わった。
「……面会だそうだ。とりあえず一旦終わりだ」
 わけがわからず連れて行かれた部屋で待っていたのは。
「あ……あ、な、何でっ!?」
「何でとは何だよ。せっかく差し入れ持ってきてやったのに。お前こそ何てザマだよ」
「よっちゃん……」
 周りを確認すると声を低くしてロボに詰め寄った。
「正直に話せ。ニコが心配してる」
 ロボはその言葉に涙を堪えた。




29:神様のいない日(中編)2/5
08/10/05 12:52:05 LiDkefZ2
 ニコは1人、学校の屋上で手すりにもたれて佇んでいた。
「バテレン、レンコン、トマトはマーックス……」
 拳を振り上げて呟くが、徐々に声は力無くか細くなってゆく。
「ロボ……どうして?」
 旅先に社長の真境名を残してきたと言う名梨。
『お前等の事は常々社長も気にしててさ、時々調べさせて貰ってたんだよ。大事な
 スパイ仲間だからな』
 まるでニコには救世主のように思えた。その真境名の名を使い彼は警察で
ロボの事も調べた。
 何かを隠している事はわかった。だが、ロボから聞き出したはずの答えを教えてはくれないのだ。
『俺がお前に話しちゃったら、あいつを裏切る事になるんだよ』
 でも知りたい。何故ロボは私には何も話してくれないのだろう、とニコは途方に暮れた。
「ニコ、ここにいたんだ?」
「むーちゃん」
 声を掛けられて初めて気が付いた。
 近づく足音さえ聞き取れない程、今のニコは沈んでいた。

「ねえニコ、さっきのって時々呟いてるよね?あれってなんかのおまじないなの?」
 紙パックの牛乳を飲みながら、2人は並んで手すりにもたれて座っている。
「ああ、あれ?あれは……まあ、そんなもんかな。ある人に教えて貰ったんだ。
 でも出鱈目なんだよ?適当に他の人のために作ったやつなんだって」
「ふーん。……でもニコにとっては大事な言葉なんだよね?」
「まあね」
 ずっとむーちゃんと並んで支えてくれた、ロボには内緒のもう一つの物。
「ところでロボさんは元気?」
「へっ!?」
「だってそれはロボさんの言葉なんでしょ?」
「なんで、わかるの……?」
 話した事ないのに。ロボの存在だって、再会したあの日まで教えてなかったのに。
「わかるよそれ位。ニコの事話すあの人って、すごく優しくて綺麗な目してたの。
 そんな人と一緒にいた時のニコも、私でさえ見たことない位自然で……きっと
 すごく信頼しあってるんだろうなって思ったんだ」


30:神様のいない日(中編)3/5
08/10/05 12:54:02 LiDkefZ2
「そうかな」
「そうだよ。あの人もニコをずっと忘れなかったようにニコの中にもあの人がいたんだよ。
 あの言葉……あれを時々呟くようになって、少しずつニコ自身も強くなっていった気が
 するの。ロボさんが護ってくれてたんだね」
 そうだ。自分はロボを忘れた事は1日だってなかった。それは確かに挫けそうな時、ニコを
奮い立たせてくれた魔法のような物だと思ってきた。
「好きなんでしょ?素直になればいいのに」
「えっ!?そんなこと……だってあっちは10歳上なんだよ?あたしの事なんか未だに
 子供としか思ってないかもしれないし、友達だし。それよりむーちゃんこそ、
 ちゃんと紹介してよ」
 すると今まで明るくはしゃいでいた彼女は急に寂しげな目をして俯いた。
「……なんかね、私の片想いぽいんだよね。仕事の事とか、住んでる場所とかあまり
 話してくれないの」
「そうなの?どこで知り合ったの、そんな人」
「この前学校帰りに携帯落としたのね。で、慌てて来た道を戻って探したんだけど
 なかなか見つからなくて……そしたら拾ってくれてたの。返して貰ってその時は
 それだけだったんだけど、それから何日かしてまた道端で会って、今度は私が彼の
 落とし物を拾ったの。すごく慌てていて『助かった』って。その時のアリガトウ、
 が何だか嬉しかったの。一目惚れ、かな」
 恋は理屈ではないという。何がきっかけになるかわからないのだ。
 ロボとあの人もそうだったのだろうか、とニコは何気に考えて、今までになく
ロボの事を想う心が痛むのを感じた。
 チャイムがなり2人は屋上を後にする。
「ねえニコ、ロボさんてさあ……」

 続く言葉にニコは思わず飲み干した紙パックを握り締めた。


『ニコか、どうした?』
 人影のない廊下の隅で電話を掛ける。
「……知りたいの。助けたいの」
『お前には酷かもしれねえ。知ってしまうと後戻りできない……それでもいいんだな?』
「あたしが今度はロボを護りたいの。だから何でもする!」
 電話の相手―名梨の言葉に、ニコは力強く頷いた。




31:神様のいない日(中編)4/5
08/10/05 12:56:07 LiDkefZ2
『……尚任意同行を求め事情を聞いている会社員は容疑を否認しており……』
 テレビでは連日「足長おじさん逮捕」のニュースが流れている。
 あれからロボの家の周辺に時々足を運んではみたが、手がかりなど得られるはずもなく。
ニコは詳細を調査中の名梨からの連絡を待っていた。
 ロボが警察に拘束されてしまってから、例の事件はぴたりと治まってしまった。だから尚更
疑いは深まってゆく一方なのである。それ故にニコも焦っていた。たが、どうにもできない。
 ふとテレビを見るとお金が置かれていた教会が映っていた。
「神様……」
 何気に呟いた自分の言葉に何かを思い付くと、座っていた椅子から立ち上がった。
「二湖、どこいくの?もうすぐご飯よ」
「どこ行くんだ?」
「……約束」
 父の質問に独り言のように答えてドアを開ける。
「一海はまたデートか?……お母さん、肉余るかな?」
「もう!いやしいわね」
「いやらしいとは何だ!」
「誰も言ってないでしょー」
 変わらない日常。その中にあってニコの世界は確実に変化を遂げようとしていた。

「神様、どうかロボを返して下さい。……ううん、きっと助けます」
 神様との約束。
 神社で必死に手を合わせながらニコは祈った。
「あたし何でもします。頑張りますから、だから……」
ロボを返して欲しい。
「本当に何でもするか?」
 背後からの低い声。
「よっちゃん……」
「ちょっと面白い事が解ったんだ。来い、話はそれからだ」
 顎をしゃくって促すと階段を降りてゆく。その後にニコも続いた。
「どこ行くの?」
「元・地蔵堂」


 以前とは違い、がらんとした店内にぽつんと置かれた机を挟んで2人は1枚の 地図を見ていた。
「この赤い×印がお金の置かれてた施設ね?」
「ああ、で、こっちが金額のリスト」
 置かれていたというそれぞれの大金の額の書かれた紙を渡され、それを眺めていたニコの
目にふとある物が留まった。
「なに?この日付」
 よく見ると地図の×印のそばに書かれている小さな日付とは別に、青い△印が幾つかあり
それにも日付が付いている。それが金額リストにもあるのだ。


32:神様のいない日(中編)5/5
08/10/05 12:58:04 LiDkefZ2
「お、気付いたか」
「ていうかこのリストの日付、地図のと同じのがあるよ?ねえこの△印ってなに?」
「惜しいな。何か気づかないかな?ん?」
「何かって……」
「んじゃヒント」
 そういうともう1枚住所と名前、その肩書きの書いた紙が渡される。
「まだあんの!?……んーと、あれ?この日付と住所多分一致してる?それにこれってみんな
 どっかの事務所とか偉い人の家とかばっかり……」
 まさか。
「正解。つまり、その金額リストの通りの額がそこの△印の場所から消えている。つまりこれは」
「……盗んだお金?でもだったら警察が」
「だから、内緒にしときたいお・か・ねなわけだよ。下手に届けたら自分らもヤバいからな」
「じゃあそれをわかってて……」
「だから捕まえられないんだよ」
 痛い腹探られたくないからな、と名梨は呟く。
 リストを無言で眺めながら、ニコはある事に気付いた。
「あ、盗難のあった日とお金が置かれてあった日ってよく見たらみんな……土日に集中 
 してるよ。そっか会社は休みだし、外出してたら自宅でも……」
 そう言いつつある日付に目が止まる。
 約束を交わした日。その日も日曜日だった。
「5月15日……」
 翌週の日曜日、待っても待っても来なかったロボ。そしてそのまま……。
「あれ?」
 その日もとある場所で大金が無くなっている。が、問題はその時間帯。
「15日……って、あの日はずっとあたしといたよ?それ以外の日も、ここにある日付は
 ほとんど。時間だって……」
 犯行時刻もほぼ絞り込んであった。その時間帯のほとんどはロボは自分といたであろう
時間だ。だったらアリバイが……。
「なんで?ロボ……」
「それを証明しようぜ」
 名梨が肩を叩いて言った言葉に、無言のままニコは頷いた。

** 後編に続く **

33:名無しさん@ピンキー
08/10/05 21:07:46 LiDkefZ2
最後投下します。長くてすみません…

今更ですが、某誌のロボのヒトの言葉から思いついたものです。もう少しだけお付き合い下さい。


34:神様のいない日(後編)1/7
08/10/05 21:08:46 LiDkefZ2
 カチャリ、と音がして扉は開いた。暗闇の中で息遣いだけが聞こえる。自らのそれさえ耳障りに
思いながら男は中を開け放つ―が。
「なん、だ、と……?」
 その瞬間パッと明かりが灯り、机の並ぶ事務所に人影が浮かび上がった。

「よぉ、流石だ。これだけの金庫をあんな短時間で破るとはな。……ま、俺のプロフェッ
 ショナルな腕前には負けるけどよ」
「ちょっとー何言ってんの?あたしだって役に立ったじゃん!」
「まあまあ。確かにお前がいたらあれは必要ねえなー」
 髭面の男が、外された壁の額縁裏の空の金庫の前に呆然と立ち尽くす賊の首にかかる
聴診器を指さしてニヤリとする。その視線の先にいるのはまだ若い女。
「なんだお前ら……?」
「正義の味方?つか、まあスパイとか言われてっけど。そろそろこの辺りに来ると睨んだ俺の勘も
 まだまだサビちゃいねえな。……ところでそちらも良かったらお顔を拝見できませんかねぇ?」
「くそっ!」
 賊は逃げようと女スパイの脇をすり抜けた。
「きゃっ!?」
 だがそれより早く男が身を翻し、賊を捕まえ床に押し倒し帽子を剥ぐとマスクを取った。
「く、そっ……」
 悔しげに呻いて上げた顔を見て、暫くの間訝しそうに見ていた女が
「あっ」
と声をあげた。
「あ、あなた……嘘っ!?」
 女―ニコは驚愕の表情を浮かべて晒された賊の顔を見ていた。それを怪訝そうに見ていた
賊が今度は顔色を変えた。
「お前……は」
 互いに苦しげな顔で見つめ合う2人の間で男スパイ名梨は吐き捨てるように呟く。
「足長おじさんつうよりねずみ小僧だな。大した義賊だよ……。ニコ。これが俺の言ってた
 酷なことってやつなんだよ」
「……あたし、むーちゃんに何て言えばいいの?」
 震える唇からやっとの思いでニコの絞り出した言葉に、親友の恋人である筈の男はただ
黙って俯くばかりだった。


35:神様のいない日(後編)2/7
08/10/05 21:10:23 LiDkefZ2
「どうしてこんな……」
「は?何だよ。どうせこんな金、汚い事に使われるんだ。その証拠に警察に届け出る事も
 出来ねえんだ。だったら役に立ててやった方が金も人間も喜ぶだろ?いいじゃねえか。
 ……それで助かるんなら」
「そうかもしれないけど。でもそんなお金で幸せになんてなりたいって思うのかな?
 貰った子供とか、感謝してると思うんだよね。……この前、通った施設の庭で聞こえたんだ。
 ありがとうって言いながら、あなたに届くかわからない手紙や絵を書いてる子達の嬉しそうな
 声。もしそれがこういう事だって知ったら……」
「お前に何がわかるんだよ!!」
 いきなり大声をあげてニコを睨みつけた。その顔は若いであろう年齢にはそぐわない程
疲れているように感じられた。
「何がわかるんだよ……お前にも、あの娘にも」
「あの娘って……」
 ニコの脳裏に親友の恋する笑顔が浮かび上がる。
「……俺は、あの教会で育ったんだ」
「あの教会って、ニュースで出てた?」
「ああ。産まれてすぐにあの前で捨てられてたらしい。孤児院もやっててな、そこでそのまま
 でかくなった。神父様は優しかったよ。みんな仲良くてあそこは幸せな場所だった」
 名梨も黙って腕を組んだまま男の話を聞いている。
「……でもな、世間は自分らより足りない奴らを見下して踏みつけたり傷付けたりしなきゃ
 気が済まねえんだよ。俺もずっと外では蔑まれバカにされてやってらんねえって思った。
 親がいねえのは俺のせいじゃねぇ、施設育ちだって……。そういうのが何もかも嫌んなって
 グレて、挙げ句あそこを飛び出しちまった」
「そんで、あっちの道に入っちまったわけか」
「……生きていかなきゃなんなかったからな。元々手先は器用なんだ。飛び出した原因も
 ケチな万引きだしな。絶対失敗した事無かったのに、仲間がしくじりやがった」
 自嘲気味に笑いながら伏せた目は、ニコには辛く重く刺さった。


36:神様のいない日(後編)3/7
08/10/05 21:12:33 LiDkefZ2
「なんでこんな事しようと思ったの?」
「ある日ふらっとこの街に戻ってきたら、教会が借金に追われて潰されそうになってるって
 知った。確かに俺がいた時からギリギリだった筈なんだ。ワルになったのはそれもあるしな……。
 だがあそこが無くなったらみんな行く所がなくて、父さんが……神父様が悲しむだろ?
 だから、手近な腹黒社長の裏金を今みたいにして贈っておいたんだ」
「じゃあ、それでやめときゃ良かったんじゃねぇか?」
「ああ。そのつもりだったさ。……けどよ、神父様がさっさとそれをサツに届け出やがったん
 だよ!ったく、ばか正直なんだからよ。だからまた違う所捜してやってやった」
「ねえ、他の施設は?」
「あんまりやると教会そのものが疑われっからな。だから同じ様な施設捜して同じ様に……。
 ついでだよ、ついで。だからマスコミで良いように取り上げられてとんだ美談にされちまって
 こっちも迷惑してんだ。笑っちまうぜ『足長おじさん』」
 ふはは、と膝を抱えて渇いた笑いを浮かべる賊の頬をニコが張った。
 バシッ!
「てっ!何しやが……」
「これ見てよ」
 ニコが差し出した白い紙。それを頬をさすりながら渋々受け取り睨み返しつつ広げると、
じっと見つめたまま動きを止めた。
「あたしが聞いた施設の子にお願いして貰ってきたの。絶対届けてあげるからって」
 昼間とある建物の前を通りかかった時、風に偶然運ばれてきたそれを拾い上げたニコは
小さな女の子の落とし主に頼み貰い受けた。
 嬉しかったのだろう。『きっと届けてね』って笑っていた。
「あなたのしたのは決して正しい事じゃない。だけどそれで救われた人も確実にいるの」
「……だから何だよ。何だってんだよ!!俺はただの金庫破りだ。足長おじさんなんかじゃ
 なくてねずみ小僧みたいな真の義賊でもねえ、ただのこそ泥だぞ!?それを知っても
 俺の事有り難いとか、嬉しいとか言えんのかよ?どうせどこにいたって俺を必要とする
 やつなんかいやしねぇよ!」
「そんな事ないよ!」
 ニコは叫ぶ。


37:神様のいない日(後編)4/7
08/10/05 21:15:09 LiDkefZ2
「なんだよ」
「まだわかんないの?あなたに感謝してる人いっぱい……きっといっぱいいるよ。誰かが
 自分たちのためにこんな事してくれた、って。それに、あなたの事理屈抜きで大切に想って
 る人だって……」
「あのよ。お前の身替わりになってる間抜け野郎いんだろ?あれな、俺らの仲間なんだよな」
 それを聞くとハッとして名梨を見たが、すぐに
「……んなの知るかよ。わかってんなら助ける位出来んだろ?」
と答えた。
「ところがあいつ、言わねえんだよ。お前の顔だって見てるはずなのにな、黙ってんだ。
 ……わかんだろ?庇ってんだよ」
「……何でだよ。何で」
「ニコ、お前の大事な人のためだ。つまりは……お前のためだ。お前が悲しまない
 ためにな」
「そんな……ロボ」
「俺にも親はいねえ。だからお前の気持ちもわかんなくはねえ……。けど俺はそれに負けない
 位信じられる物を見つけられたよ」
 ニコは黙って名梨と共に男の顔を見ていたが、やがてぽつりと漏らした。
「あなたの事、本当に好きなんだよ。理屈抜きに大切に想ってるんだよ……むーちゃんは」
「…………」
 静かに男は立ち上がると、出口に向かった。
「あなたの事何にも知らないって言ってた。だけど、それでも好きなんだよ?」
「……」
「大切な人がどこかにいるって想うだけで生きていけるんだよ。人を想うと強くなれるの」
「……俺は」
「あなただってそれになれるんだよ!」
 唇を噛んでドアを勢いよく開けると何も言わず男は飛び出した。
「待っ……!」
「行かせとけ」
 追おうとするニコの腕を名梨は掴む。
「あいつは多分逃げねえ。もし逃げても俺らの方が上だ。……それよりお前にはそろそろ
 話しておくよ」
「……よっちゃん?」
 とりあえず、と促されて地蔵堂へ向かった。


 教会の中、十字架の前で跪き俯く若い男がいた。
「……お帰り」
 はっとその声に振り向いた男の目の前に初老の神父の姿があった。
「父さん……」
「やっと帰ってきてくれたんだな」
「いや……これからまた行くんだ。いつまた帰れるかわかんねえよ」
「そうか」


38:神様のいない日(後編)5/7
08/10/05 21:17:49 LiDkefZ2
「ああ。今度はもう少しまともになって帰るから……」
「……待ってるよ。お前の帰る家はここだ。だから必ず帰ってきなさい」
「……ありがとう。父さん……」
「どこにいても必ず神様はいるよ。必ず、お前を見守って下さるから」
 跪いたままの頭の上にゆっくりと優しい手が載せられる。
 その時、足元には小さな雫がぽつんと落ちた。


 地蔵堂でニコは名梨から話を聞いていた。
「ロボはな、あいつに自首させたくて黙ってんだ。サツに踏み込まれた方が騒ぎも大きくなる。
 その方がお前の友達も余計傷つくと考えたんだよ。ま、他にも理由はあるみたいだが、
 ……どっちにしろ大した罪にはなんねえよ」
「なんで?」
「不法侵入した先になんも無かったから盗みは未遂だろ?他は届け出てないし、むしろ
 内緒にしといた方が互いの為ってな。ロボが疑われたのも、あんな大金落としゃ普通怪しまれて
 当然だろ?ま、あれも届け出はないからそのまま謎の落とし物って事に」
「……バカなんだから。もしあの人が自首なんかしてくれなかったらどうすんだろ。
 ……だけどきっと信じてる。ロボはそういう奴だもん」
 2人は呆れた顔を見合わせて笑った。

 夜が明けてから警察署の前でニコは名梨と待っていた。胸にマックスロボを抱き締めて。
「ねえ、結局あの教会どうなるのかな?」
「それなら心配要らねえ。社長の名前で無利子無期限無催促で全部立て替えてやった」
「えっそうなんだ!……でもあの社長がそれで納得すんの?それに他の施設だって……」
「勿論返す当てがあるからに決まってんじゃん。あの教会含めてあんな金に落とし主が現れる
 と思うか?」
「思わない……あっ!そういう事!?……でもそれだけじゃチャラってだけで何の得もしない
 んじゃないの?」
「あの空の金庫の金はどこに行ったか言わなかったよな?」
「……まさか」
「おっと誤解すんなよ?俺はただ金庫の持ち主から盗難を防いだ礼を頂いただけだぜ。交渉
 済みで」
 転んでも只では起きない人間達の事だ、とニコは納得した。もう慣れたもんである。
「あ、でもあたしはどうしたらいいの?」
 元々はニコがロボを取り戻すために今回の事件解決があったのだ。


39:神様のいない日(後編)6/7
08/10/05 21:19:23 LiDkefZ2
「その報酬はあいつから貰う約束になってる」
 名梨が顎でしゃくった先を見ると、とぼとぼと歩いてくるロボがいた。とん、とニコの
肩を押すと
「行けよ」
とニヤリと口元を弛ませる。

 ロボがふとうなだれていた頭を上げると、マックスロボを抱き締めて待っているニコがいた。
今にも泣き崩れてしまいそうに見えるその顔を目にして立ち止まるが、ニコはニコで戸惑った
様子で相変わらず立ち尽くしている。
 と、次の瞬間ロボは思わぬ行動に出た。
「はぁ!?」
 ニコの驚くのも無理はないのか。
 だってロボが数メートル先に両手を一杯に広げて大の字になって待っているのだ。満面の
笑みを浮かべながら。
「ばっか……何やってんだっつうの!」
 膨れっ面で物凄い勢いで向かってくるニコを抱き止めようとする。が、ロボの胸元に
マックスロボを押し付けると脇をすり抜けられてしまい、勢い余って前のめりに倒れそうに
なったロボはそのままがっくりと肩を落としてまたうなだれた。
 だが、ふと背中に感じる温もりに気付く。と同時にウエストに回された自分より華奢な白い
腕に自らの手をマックスロボごと重ねる。
「……どうせならさあ、前においでよ~」
「いやだ」
「そんなじゃさあ、顔見れないじゃん」
「いい!見なくて」
「ニコぉ~」
 そう言いつつも口元は自然と弛んでゆく。背中に感じる熱と雫の感触に、彼女がどんな顔を
しているのかなんて本当はよくわかるから。

 その時バイクの音がして、2人はそっちに意識を向けた。
「ありがとう!」
 ニコの叫びに軽く手を挙げて返すと、ゆっくりと走り出した。
「……よっちゃん!またな、また帰って来いよな!」
 軽く挙げた手を振りながら去っていく。
「約束、必ず守るからーー!!」
 小さくなるバイクを見送りながらニコは聞いた。
「ねえ、何約束って?」
「内緒。男同士の話」
 ずるい!と怒るニコの頭を優しく撫でながらその言葉を思い出す。

『二度とニコを泣かさないこと』

 一生を掛けても払うと約束した報酬を。



40:神様のいない日(後編)7/7
08/10/05 21:21:26 LiDkefZ2
【epilogue】

 結局いつの間にか「足長おじさん」は不思議な事件として迷宮入りし、流れの速い世間
からはすぐに忘れ去られてしまった。
 ロボが釈放されたのは勿論真犯人が自首したからだが、それも報道はされずに処理されている。
ロボが捕まったあの晩の大金の真相も、真境名の名で何らかの力に闇へ流れたのだろうか……。

「ねー二湖どこ行くの?お弁当なんか作って……あっデート?そうなんでしょ!」
「何二湖がデートだって?相手は誰だっ!誰なん」
「あらやだお父さん取り乱しちゃって……ってそうなの?二湖」
 どう見ても2人分の食事の入ったバスケットを見て、一海をはじめ両親まで出しゃばってくる。
『あたしじゃそんなに珍しいかな……』
 一海ならそうでもないのだろうが。
「誕生日、一緒に祝えなかったからね」
 ニコの言葉に3人ともしばしぽかんとするが、やがてその顔は驚愕?に変わる。
「えーーーーーっ!?」
 その声を聞きながら
「行ってきまーす♪」
と玄関を後にする。

 新緑の眩しい道を歩きながら、あの時のロボの言葉を思い出す。

『ニコに助けて貰ったら確かにすぐ帰れたかもしれない。でもそうすると、今度はまだ高校生の
 ニコがあれこれ言われる事で、傷が付く事になるって。だけど俺はこれでも少しは世間を
 知った大人だから……ニコを守りたかった。会わない4年間、俺はマックスを通して
 ニコに励まされてきたんだから』
 何かに縋るのは悪い事ではないと真境名は言った。確かにそれに心を預ける事で、自分が
強くなる事も出来るのだ。
 車にもたれて待つロボを見つけると、向こうもニコを見つけて駆けてくる。
「待った?」
「ううん。で、どこ行く?俺思い付かなかった~」
「あたしも」
「んじゃとりあえず乗って」

 むーちゃんはその後、一時落ち込みはしたものの何とか元気を取り戻した。
『遠くへ行く事になってしまった。君の事は忘れません。ありがとう。君に恥じない人間に
 なります』
 最後の電話を心に刻み込んで。

 ニコは今ロボの隣で風になびく髪を撫でながら、彼女があの日屋上で言った言葉を思い出す。

『ロボさんてさあ、ニコにとって神様のような人なんだね』

* * * * * * *終


41:名無しさん@ピンキー
08/10/06 00:03:58 h/bKFsyE
GJでした。ありがとう。
前編が投下されてから楽しみにここをのぞいてました。
ドラマ本編っぽい二人の描写もよかったし、切ない別れ方を
しちゃったけどむーちゃんもよかったです。
ロボとニコ、やっぱり好きだなぁ。

42:名無しさん@ピンキー
08/10/06 13:50:28 u1ef7WAj
GJ!
ドキドキハラハラな展開でしたね
ロボニコ、よっちゃんの変わらない信頼関係がイイ!
むーちゃんも頑張れー


43:名無しさん@ピンキー
08/10/07 02:41:04 iJhGk1s/
ロボは神様のような人かあ・・・
最後にお~って唸ってしまいました・・・
なんか気の利かない感想でごめんなさい
とにかくおもしろかったです
GJでした!

44:名無しさん@ピンキー
08/10/15 07:54:11 J5Nf5/xA
待機

45:名無しさん@ピンキー
08/10/22 18:17:01 rKWiPc+m
本スレで妄想語る人こっちくればいいのにね‥
ともかくほしゅ

46:名無しさん@ピンキー
08/10/25 14:58:40 QE5PxMIu
ロボとニコ再会後、友達以上恋人未満な二人&ロボ母ちゃんのお話。
エロ無しなうえ少し長めです。

×××××××××××××

「あれー、今、帰り?ロボ」
日も落ちかけた秋の夕暮れ時、駅の改札を出るとばったりと制服姿のニコに出くわした。
「うん、ニコも?」
半年ほど前、ニコと数年ぶりの再会を果たし、それまで言葉を交わすことのなかった日々が
嘘のように、付かず離れずな不思議な関係を取り戻していた。
「ねぇ、土日は特に予定ないよね?家にいる?あたし、遊びに行ってもいい?」
畳み掛けて自分から、聞いといて
「あ、返事はいいや。どうせこれといった予定もなくてヒマしてるだろうから、適当な時間に覗くわ」
昔ながらの少しばかり生意気な性格はちっとも変わっていない。
それでも少女らしい可愛さの中に女らしい雰囲気が感じられるようになったのは俺も認めざるを得ない。

「ロボんちのお母さん、元気にしてるの?もうそろそろ訪ねてくる頃なんじゃない?」
「それは言わないでくれ……」
近頃の母ちゃんは愛しのカン様のファンの集いはもちろんだが、
それ以外たいした用事があるわけでもないのに気まぐれに我が家に顔を出す。
ヒマを持て余しているのか?
「いつも何かしら文句言ってるけどさ、ロボの世話焼くの楽しそうだよ」
とニコは屈託なく笑って言うけれど。
頻繁にやって来るということは、当然ニコとも鉢合わせするわけだが、
俺が若い娘をたぶらかして部屋に連れ込むなんて考えは毛頭持ち合わせていないらしく
それどころか母ちゃんはニコとは気が合うようで何かといえば彼女の肩を持つ。
まあ、仲が良くてなによりってことだけどさ。

「じゃ、ここで。また、あした」
「ん、気をつけて帰れよ」
バイバイと手を振るニコと別れて、馴染みの店で調達した惣菜の袋を提げて商店街を歩きながら
今夜はどのロボットのご機嫌を窺おうかと頭を捻っていると、ポンと後ろから誰かが俺の肩を軽く叩く。
「え…あ、ああぁ~~~!で、出たぁ~!!」
そこらじゅうに響き渡る叫び声をあげる俺。
「なんて驚き方してるんだ、人をバケモノみたいに」
振り向いた先には、ニコが予言したある人物が澄ました顔して佇んでいた。
「母ちゃん!!」
「はいはい、そのとおり母ちゃんだよ。またまたお邪魔するよ。
それより威一郎、その手にぶら提げている小さな包みは晩御飯かい?」
うんと頷く俺に母ちゃんは大きな溜息を吐いて
「給料日までまだ日にちはあるっていうのに例のおもちゃにつぎ込んで、とっくにお金が底をついて、
ロクなもの食べてないんだろ?社会人として情けなくはないのかい?おまえは」
ズバッと言い当てられ、通りの真ん中で説教される始末。
「母ちゃんが栄養のつくうまいもの食べさせてやるから、さっさと帰るよッ
ほら、荷物持っておくれ。重たくて仕方ないんだよ」
母ちゃんのカバンの重量まで俺のせいにされそうで、不満たらたらに帰路につく。


47:あかるい家族計画 2/10
08/10/25 15:00:09 QE5PxMIu
突如来襲した母ちゃんによって、ロボット達と共に過ごす有意義な週末は脆くも崩れ去った。
「こら、威一郎!テレビばっかりに集中しないでよく噛んで食べなきゃダメだろッ」
朝から忙しなく動きまわり、俺のペースは乱れっぱなし。
「あーっ、何で切っちゃうんだよ!今、いいとこだったのに~」
ふいに視界から行方を晦ませたマックスロボにご飯粒を飛ばしながらの抗議もどこ吹く風。
「早いとこすませるんだよ。なかなか片付かないじゃないか。朝どころかもうお昼だっていうのに。
お天道様もとうにお目覚めだよ」
ブツブツ言いながら母ちゃんは卓袱台に頬杖をつくと
「休みだからって、ダラダラといつまでも布団の中にいるような堕落した生活は改めなきゃいけないね。
ま、しばらくやっかいになるから、母ちゃんがおまえの緩みきった根性を叩き直してやるよ」
「しばらくって、いつまで居るんだよ?」
「なんだい、不満なのかい?30近いいい歳した息子の面倒をみてやろうっていう
こんな優しい母親がどこにいるっていうんだ。贅沢いうもんじゃないよ!」
「う……」
それを言われると…。母ちゃんに心配かけっぱなしなのはわかっちゃいるけどさ。

母ちゃんの愛しい永遠の君、カン様とやらに対する未だ冷めやらぬ熱烈ぶりはうちに来ても
いつ何時お構いなく発揮され、当然テレビは四六時中カン様に占領される。
時の流れは残酷で世間では一時的に持ちはやされてとっくに忘れ去られた過去のモノに扱われがちで。
現に母ちゃんのファン仲間もかなり減ったらしいけど、ニコに言わせれば
「周囲に惑わされずにずっとひとつのことを好きでいられるロボのお母さんは素敵で格好いい」
のだそうだ。そんなもんなのか?
なら俺だってずーっとロボット一筋だけど?
まあそれは置いといて、あと数日は母ちゃんがここに居座っているというのは変えようのない事実。
ああ、さよなら俺の穏やかな日常。


「それはそうと今日はニコちゃんは来るのかい?」
「多分。来るとは言ってたし、母ちゃんのことは一応連絡はしといたけど。何、ニコに用事でもあんの?」
「ん?まあ、ちょっとね。……フフフ」
……ゾクッ。
うわッ。ど、どうしたんだ?全身に寒気が…。
ヤバいな。何か妙なこと企んでるんじゃないだろうな?
茶碗を持つ手にごく小さな緊張を覚えながら、意味深な微笑を浮かべる母ちゃんに眉をひそめる。

「威一郎、おかわりは?」
「あ、うん」
言われるがまま、差し出して戻ってきた茶碗を受け取ろうとした時
軽快なリズムで階段を駆け上がってくる音がして、
「こんにちはー」
とニコが爽やかな挨拶で玄関の扉を開けた。
「あらー、いらっしゃいニコちゃん。また一段と可愛くなって。さあ、あがってこっちへお座んなさい。
ほら、おまえはよそ見してないでさっさと食べる!」
おじゃましますと一言告げて、丁寧に靴を揃えているニコの動きをぼーっと
目で追っていた俺に母ちゃんのゲキが飛ぶ。
ちぇっ。どうでもいい扱いされてるよな、俺って。


48:あかるい家族計画 3/10
08/10/25 15:01:00 QE5PxMIu
「ロボ、今お昼なの?うわぁ、おいしそうなのがたくさん並んでる~」
ニコは卓袱台の上をひとしきり見渡したあと、俺を見てぷっと声を漏らして表情を崩す。
「ご飯粒ついてるよ、ロボ」
「へ、どこに?」
ここにとふいに伸びてきた手が顎のあたりに触れたかと思ったら、ニコがそれを躊躇うことなく
自分の口の中へと運んだ。
「え!?」
ちょっと待ってくれッ。それはマズいでしょ!?
こういうの子供の頃母ちゃんにしかされたことないから、どう切り返したらいいかわかんないよ~。
なんかドキドキしてきた。
なのに緩やかに脈打つ動悸を加速させた張本人は何食わぬ顔をして、ちょこんと座っていて
明らかに俺だけが焦っている。
「あらあら、本当に子供みたいだねぇ、おまえは。
今からニコちゃんの手を煩わせるなんて、先が思いやられるよ」
あ、そうだった。母ちゃんがいたんだ。お、落ち着け、俺!
ん?今からって、どういうこと?

「ニコちゃんは食事はすませてきたのかしら?よかったら、一緒にどう?」
「えー、いいんですか?実を言うとこの時間帯を狙って来てたりして…」
と、小さく呟くと可愛く舌を出して笑った。
「抜け目ないなぁ、ニコ」
素直に感心する俺に向かって
「だってさ、ロボのお母さんの作る料理はどれもこれもおいしいんだよ」
「まあまあ、どうしようかしら。そんなに褒められて」
「ほんとですよ。ロボも料理はうまいけど、それはお母さんゆずりだから、あたりまえのことなんですよねー」
「うまいわねぇ、ニコちゃんたら」
用意してきたニコの分の器を手渡しながら嬉しそうな母ちゃんは艶のある顔色で
「その言葉、素直にありがたく貰っておくわね。…そのかわりと言ってはなんだけど、
後で私の頼みを聞いてくれるかしら?」
「何ですか?痛いとか怖い思いするとか余程のことじゃなかったら構いませんけど」
「ありがとう。それほど苦痛なことじゃないよ。詳しくはこの後でね。さあ、食べて」
「はい、いただきます」
頼みってなんだろう?イヤな予感がするんだよなぁ。うーん……。
気分がモヤモヤして晴れないまま、途切れることのない会話は次第に二人だけのものになり
「あの、この間教えて貰った筑前煮、家で作ってみたんです」
「あら、そう。どうだった、ご家族の評判は?」
俺の存在は無視されて和やかに談笑は続く。
「あたし的にはイマイチかなと思ったんですけど、他の皆はおいしいって言ってくれて」
「ニコちゃんは元々素質があるのよ」
「いやー、そんなことないですよ~」
楽しそうに話に花を咲かせるニコと母ちゃんは友達のようで親子にも見えて。


49:あかるい家族計画 4/10
08/10/25 15:01:55 QE5PxMIu
「ロボ、今お昼なの?うわぁ、おいしそうなのがたくさん並んでる~」
ニコは卓袱台の上をひとしきり見渡したあと、俺を見てぷっと声を漏らして表情を崩す。
「ご飯粒ついてるよ、ロボ」
「へ、どこに?」
ここにとふいに伸びてきた手が顎のあたりに触れたかと思ったら、ニコがそれを躊躇うことなく
自分の口の中へと運んだ。
「え!?」
ちょっと待ってくれッ。それはマズいでしょ!?
こういうの子供の頃母ちゃんにしかされたことないから、どう切り返したらいいかわかんないよ~。
なんかドキドキしてきた。
なのに緩やかに脈打つ動悸を加速させた張本人は何食わぬ顔をして、ちょこんと座っていて
明らかに俺だけが焦っている。
「あらあら、本当に子供みたいだねぇ、おまえは。
今からニコちゃんの手を煩わせるなんて、先が思いやられるよ」
あ、そうだった。母ちゃんがいたんだ。お、落ち着け、俺!
ん?今からって、どういうこと?

「ニコちゃんは食事はすませてきたのかしら?よかったら、一緒にどう?」
「えー、いいんですか?実を言うとこの時間帯を狙って来てたりして…」
と、小さく呟くと可愛く舌を出して笑った。
「抜け目ないなぁ、ニコ」
素直に感心する俺に向かって
「だってさ、ロボのお母さんの作る料理はどれもこれもおいしいんだよ」
「まあまあ、どうしようかしら。そんなに褒められて」
「ほんとですよ。ロボも料理はうまいけど、それはお母さんゆずりだから、あたりまえのことなんですよねー」
「うまいわねぇ、ニコちゃんたら」
用意してきたニコの分の器を手渡しながら嬉しそうな母ちゃんは艶のある顔色で
「その言葉、素直にありがたく貰っておくわね。…そのかわりと言ってはなんだけど、
後で私の頼みを聞いてくれるかしら?」
「何ですか?痛いとか怖い思いするとか余程のことじゃなかったら構いませんけど」
「ありがとう。それほど苦痛なことじゃないよ。詳しくはこの後でね。さあ、食べて」
「はい、いただきます」
頼みってなんだろう?イヤな予感がするんだよなぁ。うーん……。
気分がモヤモヤして晴れないまま、途切れることのない会話は次第に二人だけのものになり
「あの、この間教えて貰った筑前煮、家で作ってみたんです」
「あら、そう。どうだった、ご家族の評判は?」
俺の存在は無視されて和やかに談笑は続く。
「あたし的にはイマイチかなと思ったんですけど、他の皆はおいしいって言ってくれて」
「ニコちゃんは元々素質があるのよ」
「いやー、そんなことないですよ~」
楽しそうに話に花を咲かせるニコと母ちゃんは友達のようで親子にも見えて。


50:あかるい家族計画 4/10
08/10/25 15:10:03 QE5PxMIu
先月だったか、仕事が終わって家に帰ると何の連絡もなしに来ていた母ちゃんとニコが一緒に
台所に立っていてビビったことがあったっけ。
こういう状況で微妙な空気を醸し出していたら、やっぱ大変じゃん?
会社の結婚している同僚の話では男は右往左往するばかりで、気苦労が耐えなくて
すげー敏感な問題みたいだからなぁ、嫁姑の関係って。
…はっ!?いやいやいやッ、ちがーう!嫁姑って、ナンだ!?おかしいだろ!?
だいだい俺とニコはまだ付き合ってもいないだろ~。
うわーっ、まだって何だよ、まだって!?
「…威一郎、おまえ、何やってるんだい?とうとう頭がおかしくなったのか」
慌てふためく心の内を打ち消すように激しく首を振る俺に母ちゃんの呆れた視線が突き刺さる。
「べ、別に!何でもないよ。大丈夫」
「そうかい、だったらいいけど」
少し怪訝そうな面持ちでそう言うと再びニコと話は弾んで、やがてその合間にカン様なる単語が
ちらほらと紛れるようになり、母ちゃんのボルテージが段々と増していくようになると、
勘の鋭いニコは何かを察知したのか、相槌をうちながら俺のほうへ度々目で合図を送る。
これはまずいと隙を狙って、母ちゃんに呼び掛けてはみたものの
「話かけるんじゃないよッ。今、カン様の魅力をニコちゃんに説明している
大事ところなんだから、邪魔するな!」
あえなく一蹴され、やっぱり相手にされない。

「はあ~、ニコちゃんとお喋りしていたら、楽しくて時が経つのも忘れてしまうわ。
やっぱり持つべきものは女の子よねぇ。うちは男だけの一人っ子だから、余計にそう思うわ。
小さな頃は可愛いけど、大きくなったらなんの面白味もないからね」
チラリと俺を見て、あてつけがましく言い放つと
「でもいいわ。いずれニコちゃんがうちのお嫁さんに来てくれるんだから、
私にも待ちに待った娘ができるわ」
「え?」
「は?」
ほとんど同時に声が被る。
たった今、聞き捨てならないことを言ったような……?
「あ、あの、母ちゃん?その今なんて言っ…」
「なんだい、食べ終わったのかい?ニコちゃんも?じゃあ済まないけど後片付け手伝ってくれるかしら」
俺の質問には耳を貸さずにニコを伴い素早く立ち上がる。

そうこうしているうちに台所仕事を終えた母ちゃんは姿勢を正すとようやく本題を切り出す。
「それで、ニコちゃん。頼みって言うのはね…」
「はい、どうぞ」
「ちょっと、あっちへ行きましょうか」
奥の部屋を指差してニコの動きを急かす。
「威一郎、母ちゃんがいいって言うまで部屋を覗くんじゃないよ」
俺にはしっかりとクギをさして。
「え、あぁ…うん」
母ちゃんの意図することが、全く理解できないのだけれど一応返事だけはしておく。


51:あかるい家族計画 5/10
08/10/25 15:10:35 QE5PxMIu
次の指示を待ちながら、俺は仕方なく食事中に消されたマックスロボの続きに見入っていた。
背後から襲ってくるなんとも形容しがたい不穏な空気を感じながら。

「おい、威一郎!おまえはこれに着替えといておくれ」
突然、降りかかった声に顔を向けると何やらコートらしき衣装を渡される。
それに、青いマフラーとメガネ……?これはいったい??
「そうそう、これも忘れてたよ」
「わッ!?」
茶色い物体が母ちゃんの手から、飛んできて顔面を直撃して落下した。
「何だよ、もう~。……て、え?これはまさか……ヅラ?」
拾い上げたそれは、まさしく疑いようもないカン様のヅラだった。

「ああッ、カン様~!カン様~!!」
保存版の宝物『冬のソナチネ』ポスターを広げて見ているこっちが恥ずかしいぐらいに
黄色い歓声をあげ、頬を摺り寄せている母ちゃんに唖然とするより他はない。
「ほーら、早く着替えて。つっ立ってる場合じゃないだろ」
「あのさ、このポスターのマフラーと俺にくれたやつ色が違うんじゃない?
これじゃ、完璧なカン様にはなれないよ?だから母ちゃんの要望に答えられないと思うんだけど」
「つべこべ言うんじゃないよッ。今日はこれでいいんだよ。
そうだ、ほっぺにもホクロ書いとかなきゃいけないね。はい、じっとして。これでカン様に変身変身と」
「ちょっ…やめろって!」
驚異的なパワーで押しまくる母ちゃんと決死の攻防を繰り広げている最中
「あの~、こんな感じでいいでしょうか……?」
戸惑いがちに間に割って入ったニコの声に振り返ると
「あぁ~~!ニコちゃん!すごいわッ」
「ええ~~~!!?」
な、な、何が起こってるんだ!?
俺の目の前に現れたのはニコであってニコじゃない……。
そのどこかで見覚えのある容姿はもしかして?

「ステキだわ!よく似合ってる。まさしくヨジンそのもの!」
そう今のニコはこのポスターのカン様に寄り添う女性・ヨジンのそっくりの衣装を身につけていて
「あ、はあ、そうですか…似合ってますか…」
「母ちゃん!何のマネだよ、これは~」
詰め寄る俺にどさくさに紛れてメガネとヅラを強引に装着させ、してやったりの母ちゃん。
「何のマネって、カン様の恋人のヨジンじゃないか」
「だ~か~ら~」
こんなものわざわざ用意してきたのかよ!?まさか今回の目的はこれか!

「この間から、冬のソナチネを観ていたら、ヨジンの少し俯いた横顔がニコちゃんに似ていると思ってね。
どうして今まで気付かなかったんだろうねぇ」
「似てないだろッ」
つい口答えしてしまった俺に眉間に皺を寄せて
「いつまでもネチネチと往生際が悪いよ。男らしくないぞッ、威一郎!」
「そういう問題じゃない!」
「ならどういう問題なんだい?言ってみろ。さあ、早く」
俺の反発は口先だけのものだと最初からわかりきっている母ちゃんは屈するこもとなく
ピクリともせず睨みを利かせている。


52:あかるい家族計画 6/10
08/10/25 15:12:47 QE5PxMIu
「あのッ、ロボもお母さんも程ほどにしておいたほうが…ケンカはよくないです」
なかなかケリがつきそうにない諍いを見るに見かねた(呆れた?)ニコが俺達親子を嗜める。

「ニコ、イヤならイヤだって言わなきゃダメだろッ。
甘い顔するとすぐつけあがるんだからな、うちの母ちゃんは」
「まーた、おまえは生意気にそうやって知ったふうな口を聞く」
「何年親子やってると思ってるんだよ。母ちゃんの性格なんてイタイほど身にしみてるんだからな」
おかげで何度ヒドイめにあったことか。
「もう、ダメダメダメ!ロボ、あたし全然平気だから、お母さん責めないのッ」
少しきつい口調で二人の間隔を遠ざけると、俺を見て
「正直いうとコレに着替えてって言われたとき、変なコスプレでもさせられるのかなって一瞬考えてさ。
やっぱりロボのお母さんだな、血は争えないなぁて思ってたんだ。
だけど、渡された服を見たら、予想に反して普通のモノだったから安心したっていうのがホントのところで
まさか女優さんに変身するなんてびっくり」
「そんなこと思ってたの?コスプレだなんて、私は威一郎とは違うよ」
心外とでも言いたそうに俺を流し見た後、ニコをそっと覗き込む。
似たようなもんだろと口に出してブチまけたいけれど、ここはグッと我慢して心の中で悪態をつく。
「でも、やっぱり似てます。なんて言うかうまく説明できないけどホントはお互いわかりあってて
物凄くあったかいところとか、お母さんとロボみたいな関係……あたし好きです」

「ありがとう。私はともかく、世の中からズレてるようなバカ息子をわかってくれるのは貴女だけよ」
にっこりと微笑み、ニコのヨジン仕様の服装を綺麗に整える。
その姿は知らない人が見たら、本当に仲睦まじい母と娘に映るかもしれない。
そんな二人を前にしていたら、さっき母ちゃんが言った“お嫁さん”という言葉がふっと脳裏をよぎって、
変に意識してしまい、カァと身体中の血が熱くたぎる気がして
「そ、それで母ちゃんッ、この後どうすんの?俺とニコにこんな扮装させてさ。
これで気が済んだんなら、もう脱いでもいいだろ?」
早々に終わらせようと母ちゃんをせっつく。
「まあ、待て。そう慌てるもんじゃないよ。まず記念撮影は忘れちゃいかん。
それで最後のメーンイベントは……」
不気味な笑みをこぼしてテレビの前に陣取ると慣れた手付きで再生ボタンを押す。

「あ、カン様……ス・テ・キ」
窒息でもするんじゃないかと思うほど、微動だにせずに恍惚として見つめる先には
その名に偽りなくのカン様の姿が。
「ああ~、これこれ、ここだよ」
母ちゃんが指さした画面には、その昔、大事な大事なマックスロボのビデオに重ね撮りされた
冬のソナチネのとあるシーンが流れていた。
「ここが私が一番のお気に入りなんだよ。この場面をおまえとニコちゃんに再現してほしくてね」
はい?幻聴?再現って…
「えーっ!お母さん、あたしとロボがやるんですか?このドラマの二人を!?」
「そうよ。お願いできない?」
予想外の申し出に目を丸くするニコに母ちゃんは臆面もなく答える。


53:あかるい家族計画 7/10
08/10/25 15:13:42 QE5PxMIu
「いいかげんにしろよ、母ちゃん!俺達、役者でもなんでもないんだぞッ」
「いいじゃないか。本物に会うのは無理だから、似ている人間でもいいんだ。
母ちゃんだって夢みたいんだよ。親孝行だと思ってさ」
マジですか?あのシーンの二人って、どの角度から見ても抱き合ってるだろ…
あれをやれと?勘弁してくれよ~。
「あ、ほらほらニコちゃんの立ち位置はこっちだね。で、おまえはこう背中を向けて…」
って、おいおい、やるなんて誰も言ってないのに早速指導かよッ。

「よし、準備OK!そうだ、一回セリフの確認をしとかないとね」
リモコン片手に朗々としている母ちゃんを視界の隅に置きながら
「どうするよ、ニコ?本当にやるのかよ。無理しないで今のうちに逃げてもいいんだぞ?
何も母ちゃんに気使うことないんだからな」
さすがのニコもこの展開は選択肢にはなかったようだが、時間が経つにつれ落ち着いてきたのか
「うん…。でも、ここまできたら今更、後に引けないというか…。
本物じゃないのはお母さんの承知してるんだし、さわりだけやっても納得してくれるんじゃないかなぁ」
「いいの?ウソだろ?」
ヒソヒソと小声で囁きあう俺達に母ちゃんの気合の入った声が掛かる。
「じゃあ、このシーンからいくよ。……よーい、スタート!」
…名監督気取りだな。あーもう、こうなりゃヤケだ!


『お願い。チュンサン…』
てな、ニコ=ヨジンの懇願するセリフがあって、こう俺が振り返ってだな…
あれ?えーっと、次どうするんだったっけ?そうそう、抱きしめるんだったよな?抱きしめる……。
い、いいのか?いいんだよな?演技だから、仕方ないし。うん。
そう自分に言い聞かせると、ええいッ、なるようになれッ!とニコの背中に腕をまわして引き寄せた。
女の子と…ていうかニコと触れ合えるなんて、振って湧いたまたとないチャンスなのに
何が悲しくて母ちゃんの前でラブシーンをやらなきゃいけないんだよ~。
なんて羞恥プレイ……!
ニコも同様に緊張しているのか、微かに震えているように思う。
腕の中にいるニコは暖かくて想像していたよりも華奢でとてもいい匂いがして。
なんだろう?柑橘系の甘くて優しい香り……。
ああ~、このまま時が止まってしまえばいいのに。

「ロ…ロボ…」
胸のあたりで息苦しそうなニコの呼吸が夢見心地の俺を呼び覚ます。
「な、なに?」
「…セリフ、抜かしてるよ」
へ?セリフ?このシーンはまだだった?早すぎたのか。は、恥ずかしすぎる…。バカな俺。
「はい、ストップ!ダメだろ、威一郎。ここぞというときにセリフを忘れるなんて。NGだよNG。
使えない子だねぇ、まったく」
「うるさいなぁ~。しょうがないだろう」
素人の演技にケチつけるなんて、見当違いだっつーの。
「今はチュンサンとヨジンに成りきるんだよ。
熱い抱擁なり接吻なりは後で素に戻った時に思う存分いくらでもやっておくれ」
げッ、何言いだすんだよ~、この母親は!


54:あかるい家族計画 8/10
08/10/25 15:14:37 QE5PxMIu
「ちょっと!こっち来てくれ」
「あぁ?どこに行くっていうんだい?」
慌ててニコのそばから引き離して奥へと連れて行くと、不服そうな母ちゃんに
「あのな、母ちゃん。俺は息子だからさ、こんな柄でもない芝居の真似事なんて百歩譲って我慢するよ。
でも、ニコは関係ないだろ?変なことに巻き込まないでくれよ」
「おまえは妙なとこで頭が固いんだからニコちゃんはもう少し経ったら私の娘になる子だよ。家族も同然じゃないか」
あの、さっきからお嫁さんとか娘とかいったい??
「ニコちゃんみたいないいお嬢さんがおまえとお付き合いしてくれるなんて、奇跡としかいいようがないよ」
待て。いつ、どこで、誰がニコと付き合ってるなんて言ったよ!?
いくらなんでも飛躍しすぎだよ、母ちゃん……。

「数年後には二人が結婚して、新しい命が授かって可愛い孫に恵まれる。そんな日が待ち遠しいんだよ。
まあ、おまえがヘマして逃げられないことが大前提だけどな。
それまでは母ちゃんはカン様で夢見とくんだよ」
肝心な当事者たちは置き去りにして、意気揚々と独りよがりな将来設計をひけらかす母ちゃん。
危ない。こりゃ暴走する前に訂正しておくべきだなと口を開きかけたら、何か物体が落下した鈍い音が響いて、
その方向へと意識を傾けると
「あ…ご、ごめん。マックスロボ落としちゃって……あはは…」
手が滑ったのかニコは足元に落ちているマックスを拾おうとするが取りこぼしてまた床に転がる。
見るからに動揺しているようで、ごめんねと謝罪を繰り返すその視線は落ち着きなく泳ぐ。
あー、聞こえちゃったかな、今の話。低く小声で喋っていたつもりだったけど、ニコに筒抜けか。
「ニコちゃん、そんなおもちゃは放っておきなさい。邪魔になる所に置いている威一郎が悪いんだよ」
「母ちゃん!あいつにはなぁ、魂が宿ってるんだぞ!それをおもちゃなんてッ」
よく知りもしないで勝手なことを~!俺にとっては本当にただのロボットじゃないんだからな!
「訳がわからない事言うんじゃないよ。……おっと、電話じゃないか」
俺の憤りなんか眼中にないようで、はいはい、ちょっと待っておくれよと独り言を呟きながら、
自分のカバンから携帯を探り出す。
「おや、これはカン様の愛のテーマ。父ちゃんからだな。ハイ、もしもし」
愛のテーマ?へぇ~、それを父ちゃんからの着信にしてるんだ。
なんだかんだいって仲いいよなぁ、父ちゃんと母ちゃんは。
俺もああいうふうになりたいなって、最近特にそう思う。
それはニコの存在が俺の中で必要不可欠になっているからだと気付いたから。
だから、母ちゃんの誤解もありがたくはあるけど複雑な気持ちで、あの豪快な懐の持ち主に
首突っ込んで引っ掻き回されたら、まとまるものもまとまらないですべてが空回りしそうな気がする。
いや、ちょっと違うか。そう考えるより先に俺自身が一歩踏み出さなくてはいけないはずで。

「ちょいと突然で悪いけど、これから家へ帰ることにしたから」
「え、どうしたんだよ。何かあったの?父ちゃん?」
急なことに事態を飲み込めずにいる俺に母ちゃんは
「ああ、腰をやったんだとさ。もう若くないんだから、無理するなって言ってるのに。
息子の世話はおろか父ちゃんまでとは、なかなか楽じゃないねぇ」
やれやれといった顔でそう言うと慌ただしく荷造りを始める。


55:あかるい家族計画 9/10
08/10/25 15:15:29 QE5PxMIu
見送りはいいからと頑な母ちゃんを、じゃあ階段下までと言い伏せて
「バタバタして迷惑かけてごめんなさいね、ニコちゃん。
今度来たときにゆっくり貴女のご両親に挨拶に伺うわ」
「え、あ、はあ」
「あー、母ちゃん、忘れ物ない?」
帰り際のいきなりな言動に困惑して、曖昧にそれに頷くニコから話を逸らそうと咄嗟に聞いた俺には目もくれず
「ニコちゃん、頼りない息子でどうしようもないだけど、いたらないところがあったら遠慮しないで厳しくやって頂戴。
貴女がそばにいてくれたら私は何も心配することはないわ。どうか末永くよろしく頼むわね」
ま、また、母ちゃん!そういうふうに押し付けられたらニコが困るだろ…
「……はい、お母さん」
え…?はいって…ニコ?
すぐ隣で微笑みあうニコと母ちゃんには女同士にしかわからない相通じるものがあるのか
要領を得ない俺はただ漠然と二人を眺めていた。

「威一郎、おもちゃ…もとい、ロボット弄りもいいがニコちゃんも大事にしてあげるんだよ。
いざというときに好きな女も守れないような男は本物の男とはいえないからなッ」
と肩を握り締めた拳でつかれて
「うぐぅ……いってーなぁ、少しは手加減しろよな~」
相変わらず半端ないなぁ。わかってるよ、そんなの。
「大丈夫です、お母さん。ロボは情けないときのほうが多いけど、困ってる人は絶対見て見ぬ振りなんてできないし
少なくともあたしには信頼できて頼りになる人です」
「ニコ」
そう語りながら彼女のまっすぐに俺に向けられる真剣な眼差しが何を表しているのか
女心に疎い自分でも気付かないはずはなくて。
気持ちは通じ合ってる?これからも同じ道を歩んでいける?
じっと逸らすことのないニコのはにかんだような柔らかい笑顔にぼんやりとした予感は確信に変わり、
俺の顔も自然と綻ぶ。

「あんたたちー、ケンカしないで仲良くするんだよ~!」
距離をおいてこだまする声にハッとしてすぐそばにいた影を捜す。
「母ちゃん!風邪ひくなよー、身体に気をつけろよー」
「また、来てくださいねー。待ってますからぁ!」
振り返ることなく上げた手を左右に振って小さくなっていく後姿は凛として格好よかった。
「あっというまに行っちゃった。口ではああ言ってたけどさ、
お父さんのこと心配でたまらないんだろうな。お母さんらしいね」
「そうだな」
好き勝手やっているようにみえるけど、それなりに微妙なバランスを保っていて家庭円満だよなと
いつまでも見送りながら、つくづく思っていた。


一夜限りとはいえ、俺とロボット達の生活を脅かした元凶はあっけなく消えて平穏を取り戻したというのに
なぜだか気の抜けたような、落ち着かないガランとした部屋が物足りなく感じた。
「ロボ、お母さん帰っちゃって寂しいんでしょ?そう顔に書いてあるよ」
「はあ!?なあに、バカなこと言ってくれてんのかなぁ。冗談でしょ?うるさいのがいなくなって、清々するよ」
「そうなんだ、ふーん」
ニヤニヤしながら俺の反応を探るニコにはすべてがお見通しのようで。
だったらと軽くお返し。
「俺はニコが居てくれるなら、それでいい。寂しくなんかないよ。ずっと一緒にいたい」
間違いなく嘘偽りのない本心をこのときとばかり告げてみる。
案の定、ニコは顔どころか耳まで赤く染まっていく。
「あの、その…あ、そうだ、今日の夕食はお母さんの代わりにあたしが腕を奮っちゃおうかな!」
照れ隠しなのかわざとらしい大声をだして、冷蔵庫を漁り始めて、あれこれと献立を組み立てている。


56:あかるい家族計画 10/10
08/10/25 15:16:23 QE5PxMIu
「俺、ニコが作った筑前煮が食べたいな。うまくできなくて自信ないみたいなこと言ってたけど
これまでニコが作ってくれた料理でまずいものなんて何一つなかったよ。だから、食べたい」
「…ほんとに?じゃあ、わかった。そのかわり万が一まずくても全部食べてよね。
絶対だからね!残したら許さないから」
勢いよく身体をこちらへ翻したニコはまだちょっぴり頬が赤い。
そのくせ勝気な笑みは絶やさずに俺に念を押す。
するとニコがあっと表情を変えて
「…ねえ、ロボ。あたしら、すっごい変じゃない?」
「変?」
どこが?とニコの問いかけに内心首を捻りつつもしばし互いを観察しあう。
数秒後、思いっきり吹き出した。
それもそのはず、俺達は冬のソナチネコスプレのまま不自由さを感じることもなく過ごしていたのだった。
いやに身体に馴染んでてすっかり忘れてた!いつまでこの格好してんだよッ。
「母ちゃんがいたら大喜びしそうなシチュエーションだなぁ」
「そうかも」
渇いた笑いを交わしながらそそくさと普段の姿に戻るはめに。


「んじゃ、あたし買出し行ってくる」
玄関先で靴を履きかけるニコの後に続くと
「俺も行くよ。ニコ一人じゃ寂しいでしょ、俺がいないとね~」
「な!そんなことないよ。それはロボのほうじゃん!もう、早く行くよッ。ほら、テレビ消して」
「はいはい」
やや乱暴に背中を押されて、リモコンを向けた画面には幸せそうな家族の映像が。
若い両親との小さな小さな愛の結晶。
「可愛いねぇ、赤ちゃんって」
そのまま見とれていた俺の横でいつのまにかニコが目を細めている。
「うん、ちっちゃくて可愛いよな」
目前の情景が未来の自分とニコに重なって、ふとある言葉を思い起こす。

『二人が結婚して、新しい命を授かって可愛い孫に恵まれる』

母ちゃんの思い込みから生まれた家族計画がまるっきりの夢物語じゃなくなる日も遠くないのかもしれない。
どうして俺とニコがデキてると思ったのか聞きそびれてしまったけど、今となってはもうその必要はないか。
そのうち機会があれば聞いてみようか。などとあれこれ考えていたら
「ロボ。今、このテレビ画面を邪まな気持ちで見てたでしょ!?」
「エッ?言ってる意味がびた一文わかりません」
唇を尖らせて、問い詰めるニコに何が何やら。
「可愛いって言いながら、赤ちゃんじゃなくて若くて美人で綺麗なお母さんのほうに目線がいってた」
「はあ?そんなことないよ、あるわけないだろう?バカも休み休み言えよ~」
そりゃ見ていたのは否定しないけど、それはニコと重ねて見ていたからで
やましい感情なんてこれっぽっちもありませんてばッ!

「何よ…バカって!いいもんッ、お母さんに言いつけてやるー!」
「えぇ!?ちょっ、ニコ!」
恐ろしい捨てゼリフを残して走り去るニコを追いかけて、もつれそうになる脚を引きずりながら
部屋を駆け出していく。

この先、俺はニコと母ちゃんの強力タッグに頭を悩ませることになるのだろう。
けど、それもある意味理想の形で幸せの巡り合わせに思えてくるからおもしろい。

「おーい、ニコ~、待ってくれよ~!」

あかるい未来はすぐそこに?


終わり


57:名無しさん@ピンキー
08/10/25 15:24:18 QE5PxMIu
あー、もうなんか色々とすみません!
初っ端からタイトル忘れるわ、3を4としてダブって投下してしまうわ…
本当に本当に失礼しました!

58:名無しさん@ピンキー
08/10/25 15:29:51 g604V6jy
そんな些細なこと気にしてないぜ!
Good Job!

59:名無しさん@ピンキー
08/10/25 15:36:47 vK2rNdfz
おお、リアルタイム遭遇!!
>>57
大丈夫ですよWちゃんと最後まで楽しませていただきました
ロボ母ちゃんのやや強引な思考がそれっぽい。
もっと喝を入れてやってください、ロボにW
GJでした!ニコとも仲良し母ちゃん大好き


60:名無しさん@ピンキー
08/11/01 18:40:47 8wJfWdQu
保守

61:名無しさん@ピンキー
08/11/02 16:08:47 r0q7DkAo
以前、ねずみ男を書いたものです
新作を日を開けながら投下していくので、どうぞ職人さんは気にせず投下を

62:パンダ男前編
08/11/02 16:11:57 r0q7DkAo
○学校

○クラス
ムーちゃんのカバンにアップ
その側をニコが通る
ニコ「ん?あれ?むーちゃんさ、カバン変えた?」
むーちゃん「さすが我が友!よくぞ気づいた!!」
ニコ「しかもこれ今すごい流行ってるやつじゃん!!」
むーちゃん「そだよ~!このパンダのがかわいいでしょ」
そのカバンには愛ラブパンダと描かれている
続々と集まってくるクラスの女子達
女子1「うわ~かわいい!」
女子2「いいなぁ~!」
ニコNA「女の子にとって、流行についていくことは大事なことだ。
とみんなは思っているかもしれないが、私は別に思わない」

○街

○店
ムーちゃん「ここで、買ったんだぁ」
近くの品々を手に取るニコ。
ちょっとした小物を見る
ニコ「わっ!高っ!」
ムーちゃん「ちょっとニコ!・・・声でかい」
ニコ(小声で)「ごめん。だってさ、これなんかこんなちっちゃいのに4000円もするんだよ?」
ムーちゃん「貧乏臭いこと言うのやめなさいよ。ブランドなんてこんくらいするって」
ニコ「ふーん。私には無縁だなぁ」
ムーちゃん「ニコもこんなのつけたらかわいいのに」
パンダの飾りのついた髪留めをニコにつけるムーちゃん
ムーちゃん「似合ってるよ」
ニコ「ちょっと笑ってるじゃん」
少し怒るニコ
ムーちゃん「ムスっとしないの!」
ニコ「ごめん・・」
ニコNA「みんないつかは捨てるくせに、他人を気にして流行に飛び乗っては高いものをたくさん買うのだ」


63:パンダ男前編2
08/11/02 16:12:36 r0q7DkAo
○ロボの家の前
歩いているニコ
ロボのマーックスという声が外まで響く

○ロボの家
ニコ「う る さ い!!」
ロボ「んあ?にこ?」
ニコ「外まで響く大声出さないの!」
ロボ「ご~めん~。ちょっとはしゃいじゃってさ!」
ニコ「何?なんかあったの?」
ロボ「いや、ん・・」
ニコ「ちょっと言いなさいよ」
ロボ「新しいロボット買ったんだ~」
呆れるニコ
ニコ「もう~。お金ないのになんで買うかな」
ロボ「だってこのロボ流行ってるんだよ?」
ニコ「もうロボなんか知らない」
ロボ「ご~め~ん~ってば~に~こ~!」
ニコNa「みんなして、流行がどうだのといいだして、馬鹿みたいだ」

○ニコの部屋
ニコ「あ~。少し言い過ぎたかな」
携帯液晶にロボの文字
ニコ「謝ろっかな~・・まぁ・・・でもなぁ~
いっか、たまに叱るくらい」

○ニコの家(リビング)
ニコの父「あれ?一海は?」
ニコの母「あら、いないわね。
ニコー!!一海知らないー?」
二階に問いかける母
ニコ「しらなーい!」
ニコの父「なんて?」
ニコの母「知らないって」
ニコの父「遅いなぁ、ご飯食べちゃおうか?」
ニコの母「う~ん・・・そうね」


64:パンダ男前編3
08/11/02 16:13:10 r0q7DkAo
○ロボの家
ロボ「なんで怒られたんだろ?」
液晶画面にニコの文字
ロボ「何かあったのかな~、聞こうかな~」

○ニコの家
二階から降りてくるニコ
ニコ「一海ちゃん遅いね」
ニコの母「そうね、どうしてかしら」
ニコ「また、どうせ、男でしょ?」
冷蔵庫をあけながらニコ
ニコの父「・・・・・・」
ニコの母「あなた一海だって大人なんだから、何もムスっとすることないじゃない」
ニコ「そうそう。一海ちゃんモテるんだし」
ニコの父「ニコはそんなことないよな?男と出来てるなんて」
ニコ「な、なにいってんの?あるわけ無いでしょ」
ニコの父「あるのか?あるんならお父さん、お父さん辞めるぞ?」
ニコ「無いって。安心してよ」
ニコNa「私がここで、ロボと付き合ってるなんて言い出したらどうなるのだろう?
お父さんは気を失ってしまうかもしれない。言い換えればそれだけ私のことを気にしてくれているということだが」

○地蔵堂
社長「よっちゃ~ん!ちょっとここにホコリが溜まってるんだけど!」
よっちゃん「はいは~い」
下から上がってくるよっちゃん
ほうきを持っている
社長「あら、仕事の速いこと」
よっちゃん「社長の言いそうなことならなんとなく分かりますから」
社長「わかるんなら先に掃除しておきなさいよ」
よっちゃん「・・は~い」
ニコNa「なんでみんなそんなに他人や世間のことを気にし続けられるのだろうか?
昔はこんなこと思わなかったのに、今思ってる自分がいた」


65:パンダ男前編4
08/11/02 16:13:43 r0q7DkAo
○ニコの家(リビング)
3人でなべをつつく
ニコ「これおいしいね」
ニコの母「でしょ?ちょっと奮発していいお肉買っちゃった」
ニコの父「俺の稼いだ金で食う肉は旨いなぁ!」
ニコの母「やだお父さん!みすぼらしいこと言わないで」
ニコの父「なにがみすぼらしいんだ!誇りに思いなさいよ。誇りに」
ニコ「お父さん、ありがとうございます」
ニコの父「なんだか、・・・照れるな」
テレビではニュースをやっている
ニュースキャスター「では、続いてのニュースです。
昨夜未明から、都内のパチンコ店で、男が押し入り現金約300万円を奪い
未だ逃走中とのことです。男はパンダの柄の入ったTシャツを着ており、
そこには愛ラブパンダと書いてあるそうです。
ニコの母「あら、やだ、物騒ね」
ニュースキャスター「ちょ、ちょっと待ってください
えー、只今入りました情報によりますと、人質を独り連れて逃走中とのことです
しゃ、しゃしん?写真があるそうなので
えー、こちらです」
でかでかと移る一海ちゃんの写真
ニュースキャスター「都内在住、林一海さん、25歳 とのことです」
ニコ「ん?」
ニコの母「ん?」
ニコの父「ん?」

○ニコの家(外観)
3人「エエエエエエエエエエエエエ!!!!!?」
揺れる家

○ニコの家(リビング)
ニコ「嘘でしょ!?」
ニコの母「ちょっとお父さん?」
気絶する父
ニコ「警察!警察!」
ニコNa「そういえば、私は他人のことを考えないなんてカッコをつけれるほど大人じゃなかった。
くだらないことを考えていた自分が嫌になるくらい一海ちゃんのことを心配している自分がいた。」



タイトル「セクシーボイスアンドロボ2」



66:パンダ男前編5
08/11/02 16:14:28 r0q7DkAo
○地蔵堂(外観)
地蔵堂の前を走り去るトラクター
それと入れ違いにフレームインしてくるニコ

○地蔵堂
まだ掃除をしているよっちゃん
どたどたと入り込んでくるニコ
よっちゃん「おい!はしりまわるんじゃねぇよ!
掃除したばっかなんだからよ!」
ニコ「それどこじゃないの!!」
社長「なに?どうしたの?大声出しちゃって・・・」
ニコ「一海ちゃんが・・・一海ちゃんが・・・!」

○ロボの家
携帯の画面を見ているロボ
ロボ「あー、どうしよっかな・・・何があったか気になるな・・
・・・・
・・よし!聞こう!!」

○地蔵堂
ニコの携帯が鳴る
ニコ「一海ちゃん!?・・・なんだ、ロボか」

○ロボの家
ロボ「あのさ、ニコ?今日・・」

○地蔵堂
ニコ「ロボ!!いいから早く地蔵堂に来て!!!」

○ロボの家
ロボ「ええ!?いきなし何!?」

○地蔵堂
ニコ「理由は後で話すから!」

67:パンダ男前編6
08/11/02 16:15:00 r0q7DkAo
○車内(トラクター)
一海「ちょっと!離しなさいよ!!あんた自分で何してんのか分かってんの?!」
両手を縄で縛られている一海
パンダ柄の男「っるせぇよ!ちょっと黙っとけ!!」
一海「そっちこそ黙んなさいよ!!パンダ野郎!何!?逆恨み!?」
パンダ野郎「今、流行ってんだよ!このブランド!」
一海「女物じゃない!それ!」
パンダ野郎「し・・・知ってるよ!馬鹿野郎!男が着たら逆におしゃれなんだよ!」
一海「あんた昔っからそういうとこあるよね」
パンダ野郎「いいから黙っとけ!」
一海「あっ・・・!」
パンダ野郎「なんだよ!?」
一海「こっち環七出れないよ!」
パンダ野郎「ああ!?てめぇがこっちって・・・馬鹿野郎!!」

○地蔵堂(外観)
地蔵堂の前をさっきと逆方向に走り去るトラクター
それと入れ違いにフレームインするロボ

○地蔵堂
ロボ「なに!?どーしたの!?」
ニコ「か、一海ちゃんが誘拐されちゃった!!!」
ロボ「えええええ!?嘘でしょ!?ど、ど、どどどうすんの?」
よっちゃん「落ち着けよ。警察の馬鹿に任せてる暇あるんなら俺たちで探したほうが早いぜ」
ニコ「いま、社長に探してもらってるの」
ロボ「探すって、ど、ど、どうやって?」
後ろのほうで電話をかけている社長
電話を切るとすぐにこっちを向く、ピントが社長に合う
社長「白いトラクターに乗ってるって。まだ、この近くにいるらしいわ!」
ニコ「さすが!ロボ行くよ!!」
ロボ「ロボ出動します!!!」

○ロボの車
ロボ「ちょ、狭い狭い!!みんな乗んなくてもいいでしょ!」
ニコ「早く!ロボ!」
社長「とりあえず真っ直ぐ行ってでっかい通りに出なさい」
ロボ「でもせま・・・」
よっちゃん「いいから早く出せよ!」

○地蔵堂(外観)
トラクターとさっきと同じ方向に動き出すロボの車


68:パンダ男前編7
08/11/02 16:16:36 r0q7DkAo
○車内(トラクター)
一海「あんた、何?さっきの銃本物?」
パンダ野郎「本物だよ、騒いだらぶっ放すからな」
一海「なんでこんなことしてんのよ」
パンダ野郎「うっるせぇなぁ、運転に集中できねぇだろ馬鹿野郎」
一海「ってゆーかこの縄はずしなさいよ!」
パンダ野郎「外したら逃げんだろうが」
一海「逃げないから」
パンダ野郎「……それ付けてないとてめぇ共犯扱いされっぞ」
一海「・・・・・・。あっそ」
パトカーの音が聞こえる
パンダ野郎「くっそ、こりゃカーチェイスになるんかな?」
一海「安全運転しなさいよ!」
パンダ野郎「ゆっくり走って捕まったら終わりじゃねぇか!」
一海「なら私を巻き込まないでよ!」
パンダ野郎「ああ、もううっせぇな、人質いたほうが犯人っぽいだろうが」
一海「ほんとあんた何にも変わってない」
パンダ野郎「るせぇよ」

○ロボの車
ロボ「ニコ?あのさ、一海ちゃんの声とか聞こえる方向わかんないの?」
ニコ「しーっ!今やってる」
静かになる車内
ごみごみとした街の音と映像が点滅する
ニコ「だめ。ノイズが多すぎてわかんない」
ロボ「くっそー。どっち行きゃいいかわかんないよ!」
社長が窓の外を見ている
社長「あら、あそこのあれ?」
よっちゃん「あ!あれ、白いトラクターじゃん!」
前の道路を白いトラクターが走り去る
ニコ「ちょっと待って。」
再び聴覚を集中させるニコ
一海とパンダ野郎の会話が途切れ途切れ聞こえる
ニコ「一海ちゃんの声が聞こえる!間違いない!あれよ!」
ロボ「よーっし!マックスッっっ!スターット!!」
社長「あ!そういえば・・・これつけていい?」
パトランプを取り出す社長
よっちゃん「さすが社長!準備がいい!」
社長「ありがとう、よっちゃん」
よっちゃん「そんな、お礼なんて・・」
ニコ「いいから行くよ!」


○大通り
サイレンを鳴らし、追跡するシトロエン・2CV
それから逃げるトラクター


69:パンダ男前編8
08/11/02 16:19:10 r0q7DkAo
○車内(トラクター)
パンダ野郎「んがああ!!くそっ!!
どけっ!どけっ!」
右へ左へ車体を揺らしながらスピードを出し逃げる
一海がそれにつられ左右に揺れる
パンダ野郎「なんで分かったんだよ!」
ミラーから車を確認するパンダ野郎
パンダ野郎「んあ?あれ面パトじゃねぇか!」
一海「ちょ・・・ちょっと!スピード出しす・・・気持ち悪い・・」
窓から顔を出す一海

○ロボの車
後部座席から身を乗り出す社長とよっちゃん
ニコ「あれ!?一海ちゃんだ!ほら」
社長「あらほんと」
よっちゃん「ロボぉおおお!!いけええええ!!」
ロボ「マックスダーッシュ!!」
窓から顔を出し、手を振るニコ
ニコ「一海ちゃーん!!」

○車内(トラクター)
一海「ん・・・?ニコ!?」

○路上(歩道)
取締りを行っている警官2人
警官1「君ねぇ・・・いくら急いでるからって言っても
こんな大通りでスピード違反なんて、みっともないよ?
俺たちだって他の仕事あるんだからさあ」
取締りを受けている男はずっとよそ見をしている
警官2「てめぇどこ見て・・」
そう言った瞬間警官2人の後ろを猛スピードで走りぬける2台の車体
警官2人の帽子が飛ぶ
取締りを受けている男「警官さん!早く!捕まえないとあいつら!」

○警視庁(外観)

○警視庁
鳴っている電話
それをとる刑事A
刑事A「え!?なにぃ?うん、おう、おう!分かった今行く!」

○警視庁(外観)
数台のパトカーが建物から出ていく


70:パンダ男前編9
08/11/02 16:20:03 r0q7DkAo
○ニコの家(外観)

○ニコの家
ニコの母「ええ。そうです。ええ、うちの娘が。はい」
ニコの父「ねぇ、なんて?見つかったって?」
ニコの母「ちょっと!静かにしてよ!何言ってるか分からなくなるでしょ!」
ニコの父「もう~!心配なんだよ~!」
ニコの母「なら静かにして!」
喧嘩を続ける2人

○大通り
サイレンを鳴らし、追跡するシトロエン・2CV
それから逃げるトラクター
さらに後ろから来るパトカー

○パトカー
刑事1「なんだぁ!?こんな大通りでバカ騒ぎか!?
あの面パトはどこのだ!?」
刑事2「あんな面パトいないっス!」
刑事1「なぁにぃ?なおさらだ捕まえろッッ!!」

○ロボの車
バックミラーを覗くロボ
ロボ「あれ?パトカー来てない?」

○パトカー
スピーカーを使って叫ぶ刑事
刑事1「おい!そこのエセ警察!止まれ!!捕まえるぞ!」

○ロボの車
ロボ&ニコ「ええええええええ!?」
ニコ「まずいんじゃないの!?ロボ!」
ロボ「俺に言うなよぉ!!」
社長「しーらないっと」





71:名無しさん@ピンキー
08/11/03 01:29:09 IZVJp2kg
続き待ってます!

72:名無しさん@ピンキー
08/11/11 02:44:48 Requ3C5B


73:名無しさん@ピンキー
08/11/14 11:04:20 4vg6c3Jd


74:名無しさん@ピンキー
08/11/17 09:42:06 M/MWdzwK
投下まちの繋ぎ保守小ネタ
勢いだけで書きました、エロ無し(エッチしたいロボと受けニコ)


‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

ちゅっ。
「ニコが欲しい…」
「ロボ…」
ごそごそ。
「ん、どうしたの?」
「ん…あの、や、やっぱりその」
「…怖い?」
こくん。
「あのさ、嫌じゃないんだよ?ロボならいいって思ってる。でも今はまだ…」
「ん~…」
「ごめん」
「わかった。ニコが大丈夫って思えるまでしない。高校生のうちは我慢したっていい」
「ロボ…」
「俺ニコの事本ッ当に好きだから。だから、結婚するまで待てってんなら、ま、待つよ(ツライけどぉ~)」
「うん、ありが…えっ!?」
ぎゅっ。
「だから、絶対俺と結婚してね」
「……」
「ニコ?」
「いやだ」
「えっ!?」
ガーーーーーン!!
「ロボ…」
「……orz」
「…そこまでは、私の方が待てないよ」
「♪」
イチャイチャ。


《おわり》


75:名無しさん@ピンキー
08/11/17 18:53:57 6mClMZ/r
♪~
いつもピンク板永久規制のdionなのでレスできませんが
堪忍袋の緒がきれそうなので金のかかるモバイルで...




はやくしてぇ�・

76:名無しさん@ピンキー
08/11/17 23:36:25 BhwKqNph
>>74
会話がまんまニコロボみたいだw
ナイス!小ネタ
よかったらまた書いてください!

77:名無しさん@ピンキー
08/11/23 23:41:27 wPFR613N
ほしゅ

78:名無しさん@ピンキー
08/11/27 13:19:08 7SQkoXGx
保守小ネタ:幸子のおねがい


‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡

しくしく。
「ん?どうしたの、さっちゃん。ママに叱られたのかな?」
「あ、よっちゃんのおじちゃん。あのね、ママがパパに『ロボのバカー!!』ってね、ひっく」
「なんだ夫婦喧嘩か」
「ううん。パパはずーっと『ごめんなさい』って。あたらしいおともだちがくることかくしてたから、
ママがおこっちゃったんだって」
「(相変わらずだなロボ…)そうか、ママも色々大変なんだよ」
「さちこ、パパもママもだいすきだから、なかよくしてほしいのに…うぇーん」
「Σああっ、ほら泣かないで!よしよーし(しょうがねえなぁあいつら…)おっ、
そうだ。おじちゃ…お兄さんにいい考えがあるぞ」
ひそひそ…
「うん、わかった。ありがとうよっちゃんのおじちゃん」
「あ、ああ、じゃあ頑張るんだよ」
「うん。ありがとう、よっちゃんのおじちゃんバイバーイ」
「じゃあねー(せめてよっちゃんだけで呼んで欲しいよ…)ロボに注意しとくか」
※幸子には弱いよっちゃんだった。


*その夜*

「さっちゃん何書いてるの?」
「あ、ママ。あのね、サンタさんにおてがみかいてるの。あしたようちえんに
もってきなさいって」
「へぇー何て書いてるの?」
「はい」つ手紙
「……」


*翌朝*

「オハヨウございマックス!!」
「せんせえ~」
「おはようございます。あらー幸子ちゃん今日はパパに連れてきて貰ったの?」
「うん。けさはパパはママとラブラブだったんだよぉ~」
「あ、あら良かったわねぇ」
「ハハハ。こらぁ幸子、はずかしいだろぉ~。パパとママはいつだって仲良しだぞぉ!
じゃあパパ行ってくるからね~」
「はぁい。あ、せんせ、はいサンタさんへのおてがみー」
「はいはい。幸子ちゃんは何をお願いしたのかし…えっ?(赤面)」
「パパいってらっしゃーい」
「~~~♪」スキップるんるん。
「…幸子ちゃんのお願い叶うと良いわね」
「うん♪」


『さんたさんへ おとうとかいもうとがほしいです。  ゆりぐみ すどうさちこ』


《おわり》



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