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199X年、地球は、核の炎に包まれなかった。
それから時は流れて、西暦2110年。
地球は、温暖化現象により多くの国が水没し、全人口の80%が地球の外、宇宙コロニーへと移民していた。
この頃、地球人類の文化には大きな二つの革命が起こった。
一つは、前述の通り、宇宙科学の進歩である。宇宙コロニーを建造し、地球外へ生活圏を移したことだ。
もう一つが、人類が『衣服』という文化を捨てたことである。
その二つの革命は、共に同じ理由によるものだ。
温暖化により大陸の水没が危惧されたことが宇宙科学の進化を加速させたし、
地球の気温が軒並み上昇してしまったことによって人々はどんどんと薄着になっていった。
そして2110年においては、男女ともが全裸でいることがあたりまえの世界となった。
高校二年生である少女、小野田明美(あけみ)は、その日もまた、学校へ登校するために自宅を出た。
四月のこの日は新学期最初の日であり、二年生にあがったばかりの明美は、昨年とは違う、新しい制服で学校に向かった。
「今日から二年生かー。」
そういって明美は、自分の制服に手をやった。
高校二年生の少女らしい細い首、そこに一本のリボンが、チョーカーのように巻かれている。
これが、制服だ。
それ以外はもちろん、一枚も衣服をまとっていない。
足下は、学校指定のビーチサンダルを履いているため、裸足である。
同年代にしては豊満な胸を包むブラジャーや、少女の大事な部分を隠すショーツなども、ない。
全裸の少女が唯一身につける布地といえば、子の制服であるリボン一本なのだ。
このリボンには、その色や柄、結び方などの情報によって学校や学年などが判別できるようになっている。
ひと昔の、全身に着込んでいた制服一式が持つ情報量を、この一本で済ませているのだ。
「アケミ、おはよー!」
道の角を曲がったところで、友人の春子に出会った。
彼女も、おそろいの新しい制服姿だ。
「今日も暑いねー。」
そういって明美が、首のリボンを、暑苦しそうにひらひらと揺らす。
「もう、こんな暑苦しい制服、だるいよねぇ?」
同じように春子も、いまにもリボンをほどいてしまうくらいに引っ張った。
そして二人は道を同じくして歩き出した。