08/09/23 00:45:25 D97ODtl4
明け方、岸壁の風は強く、素子は風に煽られる髪が鬱陶しかった。
バトーの車が停まった。
「私、振られちゃったわ」
バトーは風上に立った。
「だろうな」
「もしかして、イシカワは知っていた?」
「ああ。送られてくる視覚データの殆どは、女船長の姿だったらしい」
「イシカワも酷いヤツだ」
「お前が言うな」
バトーは、背中から素子を抱いた。
「ごめん、バトー」
子供のような謝り方だった。
「連休は今日からだろ。お前の部屋で仕切り直しだ」
素子は振り返り、バトーの首を抱き寄せた。
「忘れさせて……。あの人の事を……」
囁いて、そしてキスした。
---おわり---
おまけ
その頃、公安9課。
「全く、お前らはなにをしている」
荒巻は、まだ明けぬ空に向かってそうこぼした。
「今回の事は、全くの機械の不備、事故にしてしまうより他にないだろう」
「申し訳ありません、課長」
イシカワは、ただ頭を下げて謝罪するしか無かった。
「全く、困った娘を持ったな」
夜景の広がる窓ガラスに映る荒巻の顔に笑みが浮かんでいるのを、
イシカワは見逃さなかった。
「ダイビングに行ったようだな。
低気圧があるのに、天気予報も見ないのか、全く」
とりあえず、今日は休日である。