( ∴)攻殻機動隊でエロ4th GIG(∴ ) at EROPARO
( ∴)攻殻機動隊でエロ4th GIG(∴ ) - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
08/09/15 00:59:47 zk3FB4oA
「は・・・はは・・・」
タバコを持つ手が震える。変な笑いが漏れちまう。
「だから、昨夜はお前が帰った後でバトーにお灸をすえてから来たんだ。
 それに、そのことは昨夜もここで話しただろ?忘れたのか?」
「いや・・・あの・・・酔っていた上に、眠かったものですから・・・」
さっきとは立場がまるで逆になってしまった。敬語が口から出てしまう。
嬉しくて、冷静に考えられねえ。
俺はバトーに飽きたから誘われたわけじゃないってことか?
それに俺を愛している・・・ってどういうことだ?素直に喜んでもいいのか?
「からかっている」のか?それとも「本気」か?
後者だな。そう思わなきゃ、気分が乗らねえ!
俺は素子を両腕で抱きしめた。


終わり

なんか、話が軽くてごめんねー。(汗)
しかも、あと1話ってところで書き込めなくなるしorz



3:名無しさん@ピンキー
08/09/15 03:30:20 2mMKBl+Y
>>2
スレ立て、SS乙!

4:名無しさん@ピンキー
08/09/16 01:10:04 +BWMYKdf
前スレの住人さん達は、ここまでたどりつけるかな?
容量オーバーは、スレ始まって以来の事。
他スレでは、よくあるんだけどね。


5:名無しさん@ピンキー
08/09/16 15:47:45 CLgIxH3T
よし!あげて目立たせるお!

6:名無しさん@ピンキー
08/09/16 20:02:11 +BWMYKdf
【草薙】攻殻機動隊のエロ【素子】
スレリンク(eroparo板)

( ∴)攻殻機動隊でエロ2nd GIG(∴ )
スレリンク(eroparo板)

過去ログ追加しとく

>>5
いい子だ。ナデナデ・・・

7:名無しさん@ピンキー
08/09/16 23:22:00 +BWMYKdf
(∴)ノさんっはい!
しょうさのほうまんな~ばすとあんどひっぷ♪
ヽ(∴)人(∴)人(∴)人(∴)人(∴)人(∴)ノ

誰も来ないので、もう一回保守しとこう。
保守といえば、やはりこれしか思いつかない。


8:名無しさん@ピンキー
08/09/18 18:12:40 Ufuza4bA
保守しとく

9:名無しさん@ピンキー
08/09/20 00:33:23 q4SWwSPf
保守

10:名無しさん@ピンキー
08/09/22 11:30:28 PvZicINx
保守!

11:白雪姫 0
08/09/23 00:34:08 D97ODtl4
バド×素×クゼです。
女々しい少佐、ダメな方、どうかスルーで。

12:白雪姫 1
08/09/23 00:35:10 D97ODtl4
 素子が女友達とデパートのギャラリーに出向くのは、もちろん素子の趣味ではなかった。
 公安の幹部の奥様が、そこで個展を開いたためだった。
 立場上、本来荒巻が行くところだが、無骨な荒巻ではとても不似合いな創作人形展
だったのだから仕方がない。本来は細君が顔を出して署名すれば済む話なのだが、
配偶者を持たない荒巻には、その名代を頼めるのは、9課においては唯一の女性、
素子をおいてほかにはいない。
 素子はその日、仕事を早めに切り上げ、カフェに待たせた友人の元に急いだ。
 「付き合わせて悪いわね」
 彼女とて、公安の他の部署のキャリアである。
 「ま、うちのボスもおたくと似たような立場だし、お互いさまよ」
 二人して早速ギャラリーに向かう。
 素子は、ビスクドールやら、布製の手縫いの人形やらを想像してきたのだが、個展の内容は全く違った。
 高級着せ替え人形のためのオリジナルの手作り服の展示会だったのである。
 素材から顔の造形、メイクや身体の動きなど、子供向けに売られているそれとは格段の手間と
お金と技術を持ってつくられた、一体十万は下らない着せ替え人形。
 人形の大きさ自体は、バービーほどだろうか。
 やや小さいかもしれない。
 高級プレタポルテが、そのままサイズを小さくして並ぶ。
 手の込んだしたてであるのは一目瞭然。
 刺繍や、ステッチまで見事に再現されている。
 ふわふわのペチコートを覆うドレスは、幾重にもレースで飾られ、小さなヘッドドレスやら、
バッグやら、小物にも手抜かりはない。
 素子は、自分とは無縁のその世界のもののはずの人形たちに見とれてしまっていた。
その時、ふと記憶の扉を押したような気がした。
 個展そのものはもちろん人形服のみだったが、会場の出口のところで、メーカーのショップブースがあり、そして気がつくと、素子は、人形と服のセットで十五万円をカードで落としていた。
 「へえ、素子、意外とそんな趣味あるんだ」
 「いいえ、本来そんな私じゃない……、はずなんだけど、忙しくて夏のボーナス、
使い時失って口座にそのままだから、つい財布が緩んじゃったのよ」
 素子は苦笑した。
 素子自身、どうして、それをそんなお金を出してまで欲しいと思ったのか、
分からなかったから。
 

13:白雪姫 2
08/09/23 00:36:14 D97ODtl4
 翌朝、素子は今回の案件の資料を確認に調査機関に出向き、そして9課に
出勤してきたのは昼前の頃だった。
 ドアを開けて一歩踏み出した時、少しみんなの様子が違うと感じたのは気のせいではなかった。
 「9課に加わる新しい仕事」
 トグサは、ファイルを差し出した。
 素子は、そのファイルを見て、一瞬目を疑った。
 「これは……クゼ?…」
 「9課で、彼を監視することになった」
 「生きていたの?」
 「死んだ事になっている。
 いや、確かに一度死んだ。でも、電脳の脳幹が生きていた。
 内閣府は要人へのテロに備えて、某大学の研究機関と共に、秘密裏に事故や暗殺などで
損傷を受けた電脳から、オリジナルの記憶とゴーストを再生する技術を研究していた。
 技術そのものは確立していたが、緊急延命と再生の両方を実際に行う必要があったらしく、
たまたま、緊急に回収できるところで暗殺されたクゼが実験体として利用され、
彼に延命・再生措置が施された。彼には身よりがないし、秘密裏に事を進めるには、
まことに好都合だからね。
 それで、何回かの再生手術やら、リハビリやら何やらで、二年。ようやく現世に復帰ってわけさ。
 現在は彼の記憶とゴーストが、リハビリ後も完全に復活して、社会生活に影響がないかを
実験中だ。そのモニタリングだよ。我々の仕事は。
 彼の電脳は、常に研究所のサーバーとリンクし、彼の行動、および、見た物、聞いた事など、
電脳で直接アクセスしたサイトまで、すべての行動がデータとして集積されている。
 もちろん、CIAには秘密裏に行わなくてはならないし、そして何よりも、
記憶とゴーストの再生が上手くいっているとするなら、彼は、今もテロリストの思想を
捨てないでいる危険性がある。
 現在は、海洋調査船に甲板部員として別の名前で乗り組んでいる。
 その方が、サンプルの行動や、接触する者を管理しやすいらしい。
 我々は、元々の彼を知っているし、そして、何かあったら、措置を講じることが
出来る上に、CIAもブロックできる。他のどの機関よりも適任らしい。
 この件の責任者は、イシカワさんに一任されている。
 要するに、殆どデータの監視だから、実務的なものは一切ない。
一応、少佐にも話を通しておくようにと、課長が」
 「そう……」
 素子は、心が動揺するのを隠してファイルを開き、すぐに閉じると、自分の机の上に置き、
課内に残っている全員をブリーフィングルームに集合させた。そして、現在進行中の
捜査の進捗状況をパズから聞く。
 『彼』の事を、意識に上らせてはならない。
 その生存を聞いただけで、胸が熱くなる。
 今はひとまず現在の仕事に集中して、自分の心を消してしまおう。
 「コーヒー」
 「あら、ありがとう」
 遅れて来たバトーが差し出したマグカップをいつもと変わらぬ笑顔で受け取り、
少し熱いのもかまわず飲み下す。
 バトーには、隠しきれないかもしれない。
 そう思うと、一瞬前に向けた笑顔を、もうバトーに向ける事ができなかった。
 サイトーは淡々と状況を説明する。
 そして、素子は、今朝受け取った資料と現況を付き合わせ、今後のプランを練る。
 素子の気持ちが、仕事向けに切り替わる。
 大丈夫。もう、私は9課の草薙。
 「バトー、ここ、もう一度洗ってくれる?」
 ホワイトボードに書かれた会議のメモの一部を指し、まっすぐバトーを見た。
 「分かった」
 今日は、バトーも言葉少ない。
 素子が気づくほどだから、向こうが気づいてしまうのは、仕方のない事なのかもしれない。
 


14:白雪姫 3
08/09/23 00:37:35 D97ODtl4
 深夜、素子が自室に戻ると、昨日買った人形が、袋ごとテーブルに投げ出されている。
 個展の後、他課の女子グループと合流し、そこから何件かはしごした。
 素子のような実働部隊に配属される女子は数少ないが、後方で調査、支援を行う彼女たちは、
素子にとっても必要不可欠な存在で、調査対象が被ったりした場合のデータの共有や、
捜査協力のための担当者とのパイプ役など、仕事を進める上では非常に有り難い。
 こういった場で親睦を深めておくのも、大切な事だった。
 それに、たまになら、むさ苦しい9課の男どもと親睦を深めるよりは、遙かに華やかで楽しい。
 人形の事など、家にたどり着いた時にはすっかり忘れていて、
放り出してすぐシャワーを浴びて寝てしまったことを思い出した。
 箱から人形を出し、服を着せる。
 女の子たちの笑顔が浮かぶ。
 私も、あの事故が無ければ、あちらの側に居たのだろうか?
 人形をギュッと握りしめる。
 高級素材で出来た人形の肌は弾力があり、関節も柔軟でそんな事では砕けはしない。
 『そうだ、私が人形を手に取ったのは、人形が欲しかったから』
 義体化直後のリハビリの時に、私は大切にしていた人形を握りつぶしてしまった。
 ─親から贈られた、最後のプレゼントを。
 握力を調整する事ができなかったのに、義体になって物が掴める嬉しさに舞い上がり、
大切なものを、一番最初に掴みたかっただけなのに。
 もっと上手く掴めるようになったら、また人形を買おうと思っていた。
 そう思いながら、素子は、以後人形を買うことは無かった。
 義体が身体に馴染み始めた時には、もう、素子は少女ではなかったから。
 事故の記憶を消してしまうために、素子は少女の頃の記憶を封印せねばならなかった。

 「だから、クゼなのか」
 素子は、ひとり、つぶやいた。
 彼が生きている。
 熱い思いが、胸を焼いた。
 「会いた……」
 会って、彼の腕の中で涙をこぼせたら、どれほど楽になれるのだろう。
 クゼの近辺はモニタリングされている。物理的に、それはできない。
 素子の中によみがえった『素子』が居る。
 封印されていた、少女が目覚める。
 こんな深夜、職務から解放されたその時間に、素子がその男の事を思う事ぐらい、
許されてかまわないだろう。
 あの時間の、彼の声、彼の腕の中、あの凍り付いた記憶が蘇る。
 あの時、私たちは解り合った。
 お互いを共有し、一つになった。
 その記憶の奔流の中に、素子は自分を投げ出した。

15:白雪姫 4
08/09/23 00:38:11 D97ODtl4
 「バトー、ボーマがおもしろい物拾ってきた」
 イシカワの専用ブースに、バトーを呼び入れた。
 「何てことはない代物だが、あまりの幼稚さに、見事に騙されてたぞ、俺たちは」
 今回の捜査の一件で、対象のアリバイにどうしても不合理な点が生じ、イシカワは
ボーマに街路カメラのシステムの点検を命じていた。
 『バーチャル・フィールド』ってゲームソフトあるだろ。
 あれを改変して、監視システムの途中に噛ませてあった。
 本物のビデオデータから、そのデータを少しだけ改変して、あり得ない情景を作るソフト。
 アレを使って、街路カメラのデータに偽データを作り、保存させたようだ」
 「ほお。
 なら、街路カメラのデータの無効を証明すればいいわけだな」
 「そういう事だ。
 ま、引き続きがんばれ」
 イシカワは、冷めたコーヒーを口にした。
 「ところで、バトー。
 今日、少佐には会ったか?」
 「いや、今日は出先に直行だ」
 「例の件は、お前しか居ない」
 イシカワは声をひそめて云った。
 「え?」
 「バトー、お前のその腕で、しっかり捕まえておいてやらないと、
俺たちはお姫様を失いかねん」
 「姫?少佐の事?
 あれが?」
 「公安9課が、他課のお嬢ちゃんたちから何て云われているか知っているか?
 白雪姫と七人の小人だと。
 白馬に乗った王子様にキスでもされたら、お姫様はかっ攫われる」
 イシカワは、一つの専用モニターを見上げた。
 「真っ白いよな、この海洋調査船は」
 件の男のデータが随時更新されている。
 「少佐は、あれで女だぞ。
 本人が忘れているだけでな」
 バトーは、わざと考えないようにしていた事をイシカワに云われて、
穏やかでいられるはずが無かった。
 昨日の朝、トグサからクゼの生存を告げられた時、素子の瞳孔が開き、そして、
その後にコーヒーを渡した時、笑顔で受け取ったのを見たときから、
自分にはもう勝ち目はないと諦めたはずだ。クゼに動揺したからこそ、
あの時わざわざ笑顔を作ったのだ。
 もし、素子があの男にはもう関知せず、バトーと個人的な時間を持つほうを選んだら、
その時はそれで変わりなく受け入れる。
 こっちから何かする事は何もない。
 だが、気持ちは釈然としない。
 イシカワに指摘されるまでもなく、バトーは素子を愛していた。
 出来れば、素子をその腕に抱き、お前を誰にも渡さない。俺だけを見ろと云いたいのだ。
 トレーニングルームでサンドバッグを殴る。
 バトーは、バックアップの立場から踏み出しかねる自分を殴りたいのか。
 自分の感情が素子を縛る事がないように、あくまで、素子が見えない背後を預かる立場。
 ─公私ともに。
 それでいいんじゃないのか?


16:白雪姫 5
08/09/23 00:39:11 D97ODtl4

 素子が出先から帰ってきた。
 イシカワは、さきほどバトーにした報告と同じ内容を、素子にも報告した。
 バトーは、デスクで書類を片付けながら、素子から目を離せないでいた。
 素子があいつのモニターを全く見ないのか、もしくは、注視してしまうのか。
 バトーは、度し難い自分の感情をもてあましていた。
 「旦那、一息いれたら」
 トグサがコーヒーを差し出した。
 「この案件が片付いたら、みんな一斉に連休が取れそうだ。
 うちは夏休みに海、行きそびれちゃってさ。リゾートホテルに家族旅行なんて、妥当かな、と思って」
 たわいもない話を振ってきたのは、様子を見かねたからだろう。
 「いいんじゃね。ドライブがてら行ってきたら。
 また、出来る時に家族サービスしておかないと、運動会だってどうなるか解らないだろ」
 バトーは、トグサの向けた話に縋るように返した。

 ボーマの掴んだ代物が一連の事件を一気に解決に導き、9課は珍しく全員が週末休める事になった。
 気がつけば、素子のダイビング用のセーフハウスで、ビール片手に夜の海を眺めている。
 ダイビングに行くから付き合えと、9課のガレージで素子に云われたのは、
つい四時間ほど前の事だった。
 犬の自動給餌機をセットして、ドライブしながら、途中、二人でスーパーで食料と酒を仕入れて。
 週末を素子と過ごす時の、通常のコース。
 避けられていると思っていたので、それがバトーには意外だったが、二人は普段通り変わりなく、
現在の時刻に至る。
 ただ、二人とも、決してあの事には触れないまま。
 素子が浴びるシャワーの音が漏れ聞こえる。
 少し風があるのか、波が騒がしい。
 バトーは迷っていた。
 このまま、普段のように素子を抱き、朝まで共に過ごすのか?
 それとも、素子の内心を問いだたすのか。
 素子が、自分の心の内を外にさらけ出すような事が無いなら、
その必然が訪れるまで見守ることも男としての道だ。
 だが、突然に断たれたはずの思いが遂げられるかもしれないという望みと、
そして職務上の自分を律するべきであるという感情は両立しない。どちらかを消し、
どちらかを生かす。
 だが、悩めば思いはつのるだろう。
 恋心というものは、状況が不利なほど燃え上がるものだ。
 素子が、薄いワンピースを風になびかせてバルコニーに現れた。
 その姿は、男に抱かれるための支度だ。
 「結構な風だぞ。
 明日、大丈夫か?」
 「ダメならダメで構わない。
 一人で過ごすのが嫌だったから」
 そんな、男に媚びた姿の素子を見るのは辛かった。
 「今のお前は、俺の知っている素子じゃない」
 バトーは振り返り、素子の顎を指でしゃくった。
 もう片方の手で素子を抱き寄せると、言い訳がましく半開きになった素子の唇に激しく吸い付いた。
 ビールの缶が手から滑り落ちたが、そんな事は構わない。
 その時バトーは、無性に腹立たしく、そして素子が愛しく、─憎かった。

17:白雪姫 6
08/09/23 00:39:46 D97ODtl4
 どうして、バトーを誘ってしまったのか。
 素子の頭から離れぬあの男の事を考え、数日眠れぬ夜を過ごした。
 「今のお前は、俺の知っている素子じゃない」
 バトーに云われて、素子は自分の狡さを後悔した。
 荒々しい口づけに、息もできぬほど激しく揺さぶられながら、自分がこの男の優しさに
つけ込んでいる事を意識した。
 「バトー、私は……」
 謝るのか?
 それで、済むのか?
 バトーに抱きすくめられ、ベッドにつれて来られた。
 優しい男が、激しく怒っている。
 なぜ、彼を巻き込んでしまったのだろう。バトーは、もう、素子の心の内など、
とっくに看過しているだろうに。
 「バトー、許して。
 私は、彼が、クゼが好きだ。自分の感情が抑えられない」
 素子は、自分の気持ちを試すために、バトーをここに連れてきたのだ。
 思いを胸に押し込めたままで、バトーの優しさに甘えて過ごしていく事ができるかを。
 素子は、両足を堅く閉じ、丸くなっていた。
 「なぜ、俺ではダメなんだ、素子」
 バトーは止まらなかった。
 素子の手首を掴み、広げてベッドに押しつけた。
 再びキスして、乱暴に身体を開いてゆく。
 ドレスがまくり上げられ、裸身が露わになる。
 誘ったのは自分だから、と、途中から抵抗する意志は失せていた。
 乳房を揉みしだかれ、乳首を嬲られ、バトーの愛撫は素子の肌を噛むようで痛い。
 「素子、俺だって変になってる」
 耳たぶを甘噛みされながら聞いた。
 「お前を、壊したくてしょうがない」
 背中から抱きかかえられ、太い指が、素子の秘所を押し広げる。
 指が差し込まれ、そこが充分に濡れていることを確認したようだった。
 
 pppp……
 休止モードにした電通のメール着信音だ。
 バトーの耳元で鳴った。
 「ちくしょう、誰だよ、こんな時に」
 発信元はイシカワ。
 バトーは、渋々素子を離し、電脳内のメールを開いた。
 『バトー、マズい。
 大変な事になった。例のデータ改変ソフト、サンプルとしてディスクコピーするつもりが、クゼのモニタリングシステムの方に流しちまったようだ。
 このままだと、クゼのモニタリングが受け取れない。
 修正しようにも、メインコンピュータへのアクセスを、休日だから切ってある。
 アクセスキーは、少佐と課長しか持ってないんだよなあ。
 で、少佐もどこで男とハメてんだか、電脳回線そのものが繋がらない。
 六時間おきに纏めてデータが送られるシステムだから、そうだな、午前三時までには何とかしないと、内閣府の方もマズい事になるな。
 しかし、こんな夜中に課長にご足労願うのもな~~。
 でも、始末書一枚で済むかな~~』
 微塵も緊迫感のないメールだ。
 「あのオヤジ、ワザとだろ」
 

18:白雪姫7
08/09/23 00:40:55 D97ODtl4
 バトーから解放され、そのまま横たわるシーツの波は、彼の心の乱れのようだった。
 ご都合主義の自分を嗤えばいいのかしら。
 バトーとの、限りなく対等に近いものに傷をつけてしまった気がした。
 「おい、少佐、イシカワからだ。電通開けよ」
 バトーは、イシカワからのメールを転送してきた。
 「そう。
 じゃ、私行ってあげないと……」
 「イシカワのところには、俺が行く。
 一時間後に、……埠頭にヤツの調査船が着く。
 調査船も三日の停泊のようだから、乗員は全部家に帰るだろう。
 クゼ、今は違う名だが、ヤツはいつも一人で船番しているらしい」
 素子は、驚きの顔でバトーを見た。
 「イシカワはな、お前の為に泥被ってやろうって云ってんだよ。
 行って、ヤツに会って、お前の気持ちをぶつけてきたらいいだろ。
 お前を、かけがえもなく大切に思っているのは、俺だけじゃないって云ってんだ!!」
 バトーは怒りにまかせて、素子を怒鳴りつけた。
 「今、十時だ。調査船の乗組員が船を離れるのを待ったとしても、二、三時間あれば
足りるだろう。
 俺は、お前を埠頭に置いて、その足で9課に向かう。
 途中でガス欠になったり、イシカワに差し入れ買ったりもするだろう。
 だから……終わったら、俺を呼べ」
 素子の中で、何かが弾けた。
 素子は、折り鶴の少年を求めた時のように、もう孤独ではないのだ。

19:白雪姫 8
08/09/23 00:41:29 D97ODtl4
 夜更けて港に入ってくる一隻の船がある。
 強烈なライトが岸壁を照らすが、光は輪のなかにとどまり、あたりの闇を退けるほどではない。
 むしろ、強い光が夜の淡い光を退けて、余計に深い色の闇を作る。
 七百トンの海洋調査船「あほうどり」は、デッキに五百メートルほどの潜水能力を持つ
小型潜水艇を搭載している最新鋭の調査船である。
 スピーカーから女の声で操船指示が出されるが、小動物の鼓動のようなリズムを刻む
エンジン音にかき消され、まるで無音であるかのように着岸する。
 20分もした頃、後片付けを終えた船員が次々と降りてくると、闇に紛れるように
待機していたそれぞれの迎えの車に乗る。
 「じゃ、私も帰るから、船番頼むわね。
 いつも悪いわね。一人にしちゃって」
 「いいえ、気にしないでください。
 どうせ独り者だし、いちいち身の回り品纏めるのも面倒臭いんで。
 それじゃ、船長、夜分ですから車まで送ります」
 間もなく船の明かりが消えて、やや離れた道路沿いの街灯の光を受けて、むしろ辺りは明るくなる。
 足場として置かれた木の板を小走りに、船長と呼ばれた女が先に降りて行き、それを男が追う。
 男女は、岸壁から少し離れた倉庫脇の駐車場まで歩いて行った。
 素子は一連の事を、赤錆がついて朽ちかけた、古いコンテナの影から見守っていた。
 月も星も無い、漆黒の闇。
 車が行ってしまうと、男はテールランプを見えなくなるまで見送った。
 そして、男は向きを変え、まっすぐ素子のほうに歩いてくる。
 「俺に何か?」
 クゼが口を開いた。
 普通の義体とは違う、表面にコーティングされた皮膚、そして、表情の乏しい顔。
 以前のクゼの顔ではない。
 いや、これが本来の彼の顔である。素子が知る少年が成長したら成ったであろう顔つき。
 潜水作業用に特化された義体は、表情のコントロールが普通の義体ほど繊細ではない。
 潜水時の気圧変化や、潜水、浮上の為の特殊機構のために、
通常の義体の機能をかなり犠牲にしているからだ。
 「クゼ。久しぶりだな。  
 工作活動の容疑がかかっている。
 真面目に働いているようだが、一応調べさせてもらう」
 素子はワザと嘘をついた。
 「そんなこと、ありようがない。
 俺は監視付きだ。すべての事を記録されている。
 犯罪を犯す余裕などない」
 「あなたに、会いたかっただけよ。
 今、あなたの監視システムにバグが入ってね。モニタリングできないわ。
 だから、私が来たの」
 素子の姿を見つめるクゼの表情は、船の明かりの影になって、伺うことはできなかった。
 嬉しそうにしてくれただろうか?
 それならいいと思った。
 「中で話そう」
 クゼは素子を船内に伴った。 
 

20:白雪姫 9
08/09/23 00:42:28 D97ODtl4
 クゼは素子に居住区のリビングで待たせ、階段を昇っていった。
 それから間もなく、船のエンジン音が止まるとともに、船内の蛍光灯が消えて、
予備電源と思われるREDライトが点灯した。
 「船はエンジンを止めると、電源も落ちるんだ。
 予備電源で冷蔵庫と水道ポンプは最低限の環境で維持されるが」
 三畳程度の広さの部屋の真ん中に、大きな作り付けのテーブルがあり、その周りを
取り囲むように、壁を背に利用した作り付けのベンチが据えられている。
 「缶コーヒーでも?」
 「いらないわ」
 エンジン音の消えた船内は、一層の静寂で、素子とクゼの声がやけに響く。
 「じゃ、俺の部屋に」
 リビングから出ると、廊下になっており、外への扉と浴室などの水周りがあり、
そして船員の個室が4つばかり並んでいる。
 クゼは、その中の、一番奥の扉を開いた。
 そこもREDランプが灯っており、通常の幅よりやや細めのベッド、足元にクローゼット、
その横に小型冷蔵庫、さらに手前に机があり、机の上にテレビがある。
 クゼは素子をベッドに座らせると、自分は椅子に座った。
 私物らしいものは机上のペンと雑誌が1冊。
 あとはクローゼットに入れてあるのか、元々持ち物がないのか、まるで生活の気配がない。
 「何故来た」
 クゼが尋ねた。
 「あなたに会いたかったから、ではいけない?」
 「そうだな。俺もお前に会いたかった。
 だが、たぶん、俺とお前では理由が違う」
 クゼの表情のない顔でそう云った。
 コーン、コーンと、船が岸壁に当たる音が時折船内に響く。
 岸壁と船にはさまれるように、タイヤが置いてあるにしても、金属の箱である船の中では、
あまりにも響きすぎる。
 「私は、あなたが生きていると知って、とても嬉しかった」
 「そうか。喜んでくれるなら、俺も感謝するよ」
 「私たちは、確かに、あの時、一つになった気がした。
 私とあなたの中に、違う物は何もなかった。
 私は、あのまま、あなたと一緒に行こうと思った。
 その気持ちは、今も変わらない」
 クゼの、冷たい顔に、素子の告白は届かないのか?
 「そうだな。あの時はそうだった。
 俺もまだ、革命家だったからな」
 その口調は、クゼの顔よりも冷たかった。
 「俺は、今、二十四時間監視されている。
 俺にプライバシーはないし、俺には個人的に誰かと付き合うこともできない。
 相手のプライバシーを第三者にさらけ出す事になるからだ」
 「私は気にしないわ」
 「たぶん、俺は、もうあの時の俺じゃない。
 あの時の俺なら、もうとっくに監視システムを破壊して逃げている。殺されるのを覚悟してな。
 不条理に生かされる事、誰かに支配される事は、元々俺の本意じゃない。
 だが、俺は今、甘んじて政府が俺に課した監獄で暮らす自分を許している」
 「人は変わってゆく。それは当然のこと。
 まして、あなたは一度死んだわ」
 「そういう事じゃない。俺は何も変わらない。
 そして、お前が共有した俺は、今も此処にいる」
 素子には、クゼが何を言いたいのか理解できなかった。
 「守り、戦う対象が変わったんだ。
 今の俺には、大きな大儀や、沢山の者たちの事を守り、戦う気力も、意志も、そして自由もない。
 だが、ただ、黙って立ち尽くし、嵐の波から守る防波堤ぐらいにはなれる。
 ……、そうだな、おまえの後ろにいつもいる、あの大男のような立場だ。
 だが、俺は、俺の守る者に、自分の気持ちを伝える事はできない。
 あの女(ひと)の自由を、奪いたくはないからだ」
 

21:白雪姫 10
08/09/23 00:43:02 D97ODtl4
 素子にとって、それは意外な告白だった。
 「あの女(ひと)?
 船長?」
 クゼの、その口元が、幾分照れくさそうな笑みを浮かべたような気がした。
 「あなたにとって、私はもう何も共有してはいないの?」
 「あの時の、俺たちのその瞬間は真実だ。
 誰よりも、俺たちはお互いを解り合っている。だが、俺イコールお前ではない。
 そして、人は、同じ魂を共有し、その中に閉じてしまうだけでは生きていけない。
 お前を愛する事は、俺を愛する事に等しい。
 だが、人は、同じものではいられないんだ」
 船体の揺らぎと、深い海の底から立ち上るような船の金属音と、
そして静寂が二人の中にあった。
 「つまり、私は、振られたんだな」
 それは、素子の我が儘が引き寄せた天罰なのか。
 「お前も、辛い恋をするものだ」
 皮肉が口に出てしまった。
 「条件が悪いほど、燃え上がるものさ」
 今の素子には、そのクゼの心が、とてもクゼらしいのだと解る。
 ─素子は、クゼの一部を持っているから。
 「キスしてもらっていい?
 それで、終わりにするから」
 そして、二人は並んで、ベッドに座った。
 クゼは素子を抱き寄せて、そしてためらいがちにキスをする。
 そして、素子を押し倒し、そして耳元で囁く。
 「愛して……いた……」
 そう云いながら、素子の首筋にキスし、前のボタンを外して解いてゆく。
 「好きな女がいるんだろう」
 クゼのキスと囁きに酔いながら、素子はそう洩らした。
 「だから、最後、だろ……最初で……」
 素子の身体がほぐされてゆく。
 ただの一度でも、それは幸福な夢の時間だった。
 まるで初めての少女のように、素子はクゼにされるがままに抱かれていた。
 多分、逝くとか逝かないとか、そういう事とは別の至福。
 その腕の中に在ることが全てだった。
 「クゼ……」
 生殖機能のないクゼの指を、自分の中に受け入れて、深く包み込む。
 「ありがとう……」
 絶頂感の中で、素子の何かが溶けてゆく。
 海の底に沈んでしまうような思いがいした。


22:白雪姫 11
08/09/23 00:45:25 D97ODtl4
 明け方、岸壁の風は強く、素子は風に煽られる髪が鬱陶しかった。
 バトーの車が停まった。
 「私、振られちゃったわ」
 バトーは風上に立った。
 「だろうな」
 「もしかして、イシカワは知っていた?」
 「ああ。送られてくる視覚データの殆どは、女船長の姿だったらしい」
 「イシカワも酷いヤツだ」
 「お前が言うな」
 バトーは、背中から素子を抱いた。
 「ごめん、バトー」
 子供のような謝り方だった。
 「連休は今日からだろ。お前の部屋で仕切り直しだ」
 素子は振り返り、バトーの首を抱き寄せた。
 「忘れさせて……。あの人の事を……」
 囁いて、そしてキスした。
 

---おわり---

 おまけ
 その頃、公安9課。
 「全く、お前らはなにをしている」
 荒巻は、まだ明けぬ空に向かってそうこぼした。
 「今回の事は、全くの機械の不備、事故にしてしまうより他にないだろう」
 「申し訳ありません、課長」
 イシカワは、ただ頭を下げて謝罪するしか無かった。
 「全く、困った娘を持ったな」
 夜景の広がる窓ガラスに映る荒巻の顔に笑みが浮かんでいるのを、
イシカワは見逃さなかった。
 「ダイビングに行ったようだな。
 低気圧があるのに、天気予報も見ないのか、全く」 
 とりあえず、今日は休日である。

23:名無しさん@ピンキー
08/09/24 21:58:02 fD0upplW
>>22
GJでした。少佐とバトーが付き合ってて、そこにクゼが現れてという前提ならこういうのもありなんでしょうね。
でもちょっと感想書きにくいな・・・結末が結末だけに。
別にはっぴーえんどだけを期待してるんじゃないですけどね。

24:名無しさん@ピンキー
08/09/25 03:44:09 6IAM5hdF
GJ!
続きでバト素の甘い連休もかいてほすい

25:名無しさん@ピンキー
08/09/26 12:26:51 Z/qxzAlg
誰だよ俺の専用アンドロイドに合成蛋白与えた奴は…アイツはいつも俺産の天然蛋白って決めてんの!

26:名無しさん@ピンキー
08/09/27 00:40:21 SdvLGEVk
バトーは素子に甘すぎる!

出戻り女なんて、誰がすんなりと受け入れてやるもんか!
たとえ、素子だろうとなあ・・・やっていいことと、悪いことが・・・
あ、でも失恋するのバトーは知ってたのかなあ?

しかし、・・・やり逃げとは・・・・

27:名無しさん@ピンキー
08/09/27 00:44:27 F5GIhMvo
>>26
ちゃんと読んでないだろ?11あたりをもう一度読め。

>「もしかして、イシカワは知っていた?」
 「ああ。送られてくる視覚データの殆どは、女船長の姿だったらしい」


28:名無しさん@ピンキー
08/09/29 10:58:47 uEHKsuXv
>>27
”イシカワは”知っていたんだろ?
バトーは知っていたかどうか分からないジャン。

29:名無しさん@ピンキー
08/09/30 13:07:53 NPfQLKPa
やっとこさ新スレにたどり着いたよ;!
そんでもってGJ! ありがとう!
でも旧スレの内容はもう携帯からは見れんかな……;;

30:名無しさん@ピンキー
08/10/04 01:36:52 8ZSmkq9I
新ネタ考えられず・・・

すんごい切ない「バト×素」でいい設定ある?
いや、他の相手でもいいけど
切ないのはバトーが似合う気がして・・・

31:名無しさん@ピンキー
08/10/04 15:25:51 KDHJPoKT
>>30
自分の中のバトーに聞けばいい。
そのバトーがせつなさを知っているバトーなら物語は生まれてくるし、
知らないバトーなら、誰の設定を借りても、バトーらしい切なさは描ききれない。

作り出すものという概念を捨ててみるといいよ。
そして、物語が成熟するまで時間をかけていい。

幸い、このスレの住人は気が長い。
急ぐ必要はないと思うよ。

エロせつないの、じっくり待ってます。

32:名無しさん@ピンキー
08/10/05 10:23:31 dKnoNDBL
質問だけど、RDもこのスレの管轄でいいのかな?
最近専門スレがない作品スレにRDネタ投下したんだけど、攻殻スレでやるべきじゃね?と言う人がいたもんで。
でもRDってシロマサ色かなり薄いから、どうなんだろうと思って。

33:名無しさん@ピンキー
08/10/06 07:36:48 cZkGqLWH
RDスレあったのに落ちたね
とりあえず>>32のそれをよみにいくます!

34:名無しさん@ピンキー
08/10/09 22:28:47 hnGQqDM1
>>32の読みたいなあ
とりあえず保守れ保守れ

35:名無しさん@ピンキー
08/10/10 23:06:43 Edl7cssc
RDってなんすか?
自分、シロマサ作品は攻殻とアップルシードしか知らないもので・・・
アップRu しーDo でRDかと思ったんすが、よく考えたら

apple seedでRは一文字も入っていないわけで・・・・

36:名無しさん@ピンキー
08/10/10 23:16:18 ceUVZyzY
RD潜脳調査室

37:名無しさん@ピンキー
08/10/11 16:42:36 WN0bCyX6
遅ればせながらハル爺スレからここまでたどってきた。
ジャンル的にどこなのかよく分からないけど>>32の作品は好きだから待ってますよ

38:名無しさん@ピンキー
08/10/12 12:38:31 B8oTT3IE
RD潜脳調査室って題名からして
原作がエロそう。ゴクリ・・・

39:名無しさん@ピンキー
08/10/15 09:54:47 TiVqyRd7
>32です。色々お答えいただいてどうも。
抑圧されたリアルが多忙なので予告は出来ないけど、気が向いたら
あっちのスレでやったような波留×ミナモとか(もしかしたら爺じゃなくて若返りVerかも)
久島×エライザとかをいきなり投下させて貰います。

つーか俺、落ちたRDスレでエロイザネタ中断してた者でもあるんですが、
あの続きは一体どうしたもんだか。
ここでいきなり続きのラスト投下ぶちかますってのもなんかちがうし。

40:名無しさん@ピンキー
08/10/21 23:35:16 aUedSgQY
ほしゅー!

41:名無しさん@ピンキー
08/10/28 00:29:18 +fDDlZ02
スピルバーグ実写版の話がきてるね。
実写って観て後悔する事が多いから嫌過ぎる。

42:名無しさん@ピンキー
08/11/07 01:09:18 rKad7Csd
うひ

43:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/08 01:34:46 x1y3wpVE
何時からだろうか。
素子がネットへダイブする度に、あちらから寄ってくる気配がある。
それは最初、一筋の光の信号だった
2回目は2本 3回目は3本と、ダイブするたびにその気配は長く、多くなっていき、
複雑に絡み合い、最近ではまるで小さなハブ電脳の様になってきた。
そのうち、そのハブ電脳はゲートを作りだし、素子の方へいつも開かれた状態を表す。
素子はその誘いを知りつつも、まだ中へ入っていく気にはならなかった。
そして、現実への帰還。

「少佐、最近おかしくないですか?」
「何がだ?」
「最近、ネットへダイブした後に数分間考え込んでいるような様子があるので・・・」
「そんなことは前からだろ?」
「そう、ですか・・・?ならいいんですが」

トグサの鋭い勘を素子はあしらった。


44:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/08 01:44:47 x1y3wpVE
一体誰?私を誘っているのは。
もしかして・・・

素子は最近、とても大切な人を亡くしたばかりだったので、
どうしても、自分に近づいてくるあの複雑に絡み合った光の玉が
彼に思えてならなかった。
しかし、確信が無い。
敵が9課の素子の存在に感づき、あちらから近づいてきた可能性もある。
一体どちらか?
しかし、今の素子にはそれを判断する気にはならなかった。
もし彼だとしても、再会してなんになるというのか?
おそらく、彼に会えたとしても、それは彼本人ではなくゴーストの宿らない
単なる彼に関する情報の塊に過ぎない。
それでもいいわ。会えるなら・・・・。などという女々しいことを考えるような素子ではなかった。


45:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/08 01:55:11 x1y3wpVE
「内閣府にハッキング?それはまた、ご大層なことを考えましたね、敵さんも・・・」
「つべこべ言わずに、お前もダイブして、内閣府の情報を保護しながら
 ハッキングを仕掛けている大元を特定しろ。
 今の俺達には、これが優先第一事項の仕事だ」

スケールが大きな割りには地味な作業に気が進まないトグサを
イシカワが促す。
荒巻を除いた9課の皆がダイブルームに集結し、作業を行っていた。

「バトー、サボってねえか?」
「俺の専門は頭脳戦なの。俺が一番にたどり着いてやりゃあ・・・」
「脳を焼かれないよう、気をつけなさい」
「へーへー、身代わり防壁はちゃんと着けてるよう」
「んー、なかなかたどり着けないな。内閣府の情報の保護だけで時間がかかる」
「ボーマ、バックアップとって。臭い所を一気に深く行ってみるわ」
「まてよ少佐、そこまで俺、たどり着けてねえよ」
「なによ、皆まだ第2段階?早く第4段階まで来なさい」
「来なさい。ったって・・・・」

46:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/08 02:03:47 x1y3wpVE
「お、たどり着いたぞ、第4段階。言ったろ?俺の専門は頭脳戦だって」
「よし、ではバトー、バックアップを・・・」
「ちょっとまてよ、気が早えって!重装備をして体制を整えてだな・・・」
「着いてくるだけで良いわ。後は危なくなったら引っ張り出してくれれば」
「無謀だねー!引っ張り出すのもかなりの力量が必要だってのに」
「じゃあ、他に誰か?サイトー」
「今、第3段階です・・・」
「俺も。」「俺第2段階」
「時間が無い。残業はしないぞ、バトー」
「分かったよ!いいか、通信できる範囲だぞ。それ以上深く入ったら引き出せねえ」
「行くわよ!」

素子は掛け声をかけ、ハッキングの大元と思われる場所を目指して深く潜って行った。
現実世界では意識の深さゆえ、会話が困難となる。
素子とバトーの会話は途切れ、後は黙々とキーボードを叩く音だけが残った。



47:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/08 02:12:30 x1y3wpVE
素子は意識を細く長くし、一気に第6段階まで潜った。


(バトー、聞こえる?)
(ああ。内閣府のファイルと自分の位置を確認中。少佐、自分姿を可視化できるか?)
(いまするわ)

素子はネットの可視化プログラムを使い、
クロマではなく素子自身の姿を可視化させた。
バトーも可視化する。

(よし。っと、・・・何だ?もうそんなに深くまで行っちまったのか?)
(命綱=意識の通信量の太さは充分かしら?)
(まあ、姿と声は確認できるし、いいんじゃねえの?)
(よし、ではそのまま降下する。危なくなったら報告)
(ラジャー)

素子はハッキングファイルと思われる場所を目指してどんどん降下して行った。


48:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/08 02:22:34 x1y3wpVE
もう少しか・・・・?

(バトー!?)
(心細そうな声出すんじゃねえ。俺まで心細くなっちまう。姿は見えねえが、声はクリア)
(よし、大丈夫だな)

と、後1段階でファイルに届くかと思われたその場所で
例の光の塊が素子にゲートを空けて表れた。

今、あんたに構っている時間は無いのよ。

素子は無視しようとした。だが、ゲートの光の中に見えたもの。それは・・・

(ク・・ゼ・・・)
(ああ!?なんだって!?)

やはり、お前だったのか・・・

素子は安堵感と再会の喜びに一瞬酔いしれた。
そして、玉は今がチャンスだと素子に語りかけるように一層強く光る。
ここまで深く、長くネットにダイブしたことで光の玉の内容の一部がやっと見えたのだ。
そして、バトーに素子の姿は見えない。
ここまで9課のほかの奴らは到達できていない。
素子は一瞬任務を忘れ、私的な感情に揺り動かされて、
光のゲートをくぐった。

49:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/08 02:31:50 x1y3wpVE
(おい!少佐!おい!・・・・・ばかやろうが・・・・。
 俺が降りたら誰も引き上げてくれねえんだぞ!)

バトーは呼びかけに答えなくなった素子に怒りを感じたが、
仕方なく、素子の下って行った経路を自分もたどることにした。
目視できていたところまでは当りがつけられる。
そこから下は勘が頼りだった。

(クゼ・・・私はお前を知っていたぞ。ずっと昔から・・・)
(そうか・・・だが、もう今は自分が何者なのかも分からない。
 ただ、お前を知っている気がする。懐かしいというレベルの記憶でだ)

クゼは素子を抱き寄せた。そして、額にキスをする。
瞳を閉じた素子の体をなぞり、服を剥ぎ取るようにして脱がせていく。
首筋にクゼの指がなぞり・・・そして・・・

50:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/08 02:40:59 x1y3wpVE
(少佐ー!少佐ー!返事しろよ、ばかやろう!どこまで奥にいっちまったんだよ!)

バトーは素子のを必至で探す。
就業時間の終了を15分過ぎていた。
ようやく素子の降りたレベルまで到達すると、今度は横の広がりを探さなくてはならない。
バトーは網を潜り抜けながら駆けずり回り、ようやく素子の気配を感じ始めた。
気配を頼りに素子にちかづくと、光の塊の中に素子が居ることを確信した。
ゲートは閉じているが、中身は見える。
バトーは素子の姿の確認をいち早くしたかったので、ゲートを覗き込んだ

(少佐!・・・・!!!)

バトーはそこにいた素子の姿に驚愕した。

(おやおや、折角良い所だったが、とんだ邪魔が入ったな)
(てめえ!)
(残念だったな。お前の好きな女少佐と私の居るところはゲートがもう閉じていてね・・・
 入ってくるには相当な力が必要になってしまったよ)
(少佐を放しやがれ!ゴーダ!)

51:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/08 02:55:51 x1y3wpVE
そこに居たのは肌が露わになり、ゴースト錠をはめられた素子とゴーダだった。

(君に好きな女少佐は、初恋の人クゼの姿をちらつかせたら
 いとも簡単にわが手中に納まってくれたよ。全く、とんだ淫乱少佐だよなあ?)
(ふざけるな!ここを開けろ!)

バトーはゲートを拳で力いっぱい殴りつけたが、傷一つ着かない。
ゴーダは素子の柔らかく、大きな 乳房を掴み、見せ付けるように揉みしだいた。
素子は恨めしそうにゴーダを見つめるが、ゴースト錠のせいで
指一本、瞼一枚動かせないでいた。
ゴーダのイタズラは次第にエスカレートしていく。
素子のやわらかな臀部に、足に、腹部に、指を這わせ、最終的にはその性器を弄び始める。
バトーは相変わらずゲートを開こうと必死になるが、びくともしなかった。

(そこで、女少佐が弄ばれているのを見ながら一人で性処理でもしていたらどうかね?
 実生活ではこんなことは見れないだろう?しっかりと目に焼き付けておくがいい)

52:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/08 03:01:47 x1y3wpVE
ゴーダは素子をうつぶせにしての腰を持ち上げ、尻をバトーに向けた。

(後ろからの眺めのいいだろう?ここで、ちょっとしたサービスだ。
 アブノーマルな趣向も私は好きでねえ・・・。ここも性感帯だと君は知っているか?
 まあ、その体型からして君は軍隊上がりか何かだろう?
 だったら、こんなことは経験済みだよなあ?男同士で・・・)

ゴーダは素子の肛門に舌を這わせて舐め上げた。
何度も舐めて唾液で肛門を潤わせると、光を反射して素子のソコは
ヌラヌラと淫靡に輝いた。
後ろを向いているので素子の表情はバトーに見えないが、それが一層バトーの想像を掻き立て、怒らせた。
ゴーダの右手人差し指が素子の肛門にねじ込まれる。
そのまま、円を書くように押し広げられる。
素子のピンク色のソコは、ほぐされると共に口を開き、ペニスをくわえ込むには充分な柔らかさになった。


53:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/08 03:15:54 x1y3wpVE
バトーは未だに無謀な抵抗を続けている。

(さて、そろそろ私も性処理をしなくてはいけないようだ。
 君の無駄な抵抗も、コレをすれば治まるだろうかね?)
(てめえ!ゆるさねえぞ!ぶっ殺してやる!)
(殺す?くっくっく・・・私自身はもうこの女少佐に殺されているよ。
 私は情報の海に漂っていた私の情報の一筋一筋が絡み合ってできた
 ただの情報の複合体に過ぎない。だから、ゴーストも存在しない。死する存在ではない。
 私は自由になったのだ。肉体の限界から!ゴーストの縛りから!
 そして、自由になったからこそ、この女少佐にやっと復讐できる。
 私は最初一筋の光でしかなかった。そのときからこいつを監視していたさ。
 こいつがネットに繋ぐたび、その存在を察知して見失わないようにぴったりと着いていた。
 そのうち、私の情報の光の筋は増えていったが、
 それは同時にこいつから私の存在を悟られる危険を意味する。
 まだ今のようにゲートも存在せず、無防備だったからな。
 しかし、こいつは私を詮索や攻撃をしなかった。常にそこに居て、確実に大きくなる
 情報の塊なのにだ。私は不思議に思ったが、それもすぐに回答を得たよ。
 そうだった、私とほぼ同時期に死んだ奴がいたっけな。と、
 思い立った私はクゼの情報、主に外見も集め出した。そして、本日、
 ようやくクゼの顔をした私が出来上がったのだ。まあ、こいつを捕らえてからは
 いらなくなったのでクゼの外見は破棄したがな。実に簡単なゲームだったよ)

54:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/08 03:18:15 x1y3wpVE
ゴーダはまるで自分の勝ちだといわんばかりに大きく胸を張って
バトーに声高に演説をした。

今夜はここで、眠気の限界です。
おやすみなさい

55:名無しさん@ピンキー
08/11/08 19:49:14 2Va4jA0s
>>54
GJ!面白い。

56:名無しさん@ピンキー
08/11/08 20:49:16 7/UcIs/r
>>54
まるで作者が書いたみたいだ

57:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/09 23:24:13 T+uCPd+S
バトーは必死にゲートを叩く、しかし、傷一つ付けることは出来ない。
ゴーダは一通り演説をしたことで満足し、素子に向き直った。
素子はゴースト錠のせいで表情を返ることもできずにいる。
もしも、顔から上の神経が動かせたとしたら、どんな表情でどんな言葉を吐くのだろうか?
ゴーダの好奇心がくすぐられたが、そこでゴースト錠を調節してしまうと、
素子に裏を掻かれて反撃を喰らいそうなことを想定すると、そのことは出来そうになかった。
隠微に照かる素子の肛門。
たとえネットの中の世界だとしても、その体を弄ぶことは
ゴーダにとって復讐に十分値する行為だった。
ゴーダは自分の下半身を刺激した。すぐに反応が出る。
鬼の様な表情のバトーを横目に、ゴーダは素子のポッカリと開いたそこへの侵入を試みた。

(・・・ん?)

進入しようとするゴーダを誰かが後ろから羽交い絞める。
突然のコトに、ゴーダはヒヤリとした表情をした。
しかし、口は平静を装う。

(ほう、この女少佐への愛はあのゲートをも越えたか。大したものだ・・・)

出来るだけ余裕を見せようと、振り返る。
と・・・、そこにいたのはバトーではなかった。


58:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/09 23:38:17 T+uCPd+S
(お・・・お前は・・・!い、いつからここに居た!?)
(お前がわざわざ招き入れたのだということを忘れたのか?!)
(馬鹿な!クゼのデータはすでに破棄したというのに!)

そこに居たのはクゼだった。
生前のソレと変わらずに無表情で口も動かず。胸像だけの、不完全なままの。
しかし、口調はかなり焦りと怒りを含んでいる。
もがくゴーダ。しかし、クゼがゴーダの胸の前で組んだ手を放すまでは至らない。
クゼはそのまま、後ろへ後退する。
先にはゲート。その向こうにはバトー。

(外からは開かない。しかし、中からなら・・・どうかな?)
(放せ!・・・お前だってコイツを抱いてみたいだろ?ずっと思い出の中にいた存在だ。
 そうだ、取引をしよう。再び融合するんだ。そうすればお前はコイツと交わることができる。
 顔と記憶の一部はお前に譲ろう。体は私のを貸す)

59:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/09 23:48:40 T+uCPd+S
(断る・・・)
(じゃあ、その胸から下だけでもいい!私は胸から下と意識の半分を・・・!)
(・・・・・・・・俺達はネット上に漂う光の塊。生殖行為は必要ない。
 何故ならば、この光の繋がりが俺達の体、この煌きが俺達の声。
 そして、それは無限に繋がり、広がり、揺らぎ、完全で不完全なものをつむぎ出す・・・)
(この世界では生前に国家機関という公の場で
 光を浴びて存在していた私の情報の方が優勢なんだぞ!?
 お前など、ただの難民のリーダーという影の存在でしか過ぎん奴の情報量など、
 たかが知れている!融合しなければ、どの道お前は俺というプログラムに吸収されて
 消滅するのみだ!分かっているのか!?)
(お前こそ、本当に分かっているのか?・・・出島の難民と択捉の2箇所から
 世界に発信された俺”達”という存在の広がりと深さを。
 俺一人の存在では確かにお前には勝てん。
 しかし、俺を中心とした仲間たちに共通する思想とその情報量を
 お前は、本当に分かっているのか?・・・)

60:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/10 00:01:45 fzY6l3zZ
ゲートがジリジリと近づく、ゴーダは必死に抵抗した。

(やめろばかやろう!)
(大丈夫だ、俺達に死は無い・・・)

クゼの背中がゲートをくぐる。
3人を包み込んでいた光の世界のところどころに黒点が発生する。

(案外脆かったな。俺が少し出ただけで、ほらもう、
 こんなにブラックホールが出来ている・・・)
(放せ!)
(この小さな俺達の世界は終わる。そして、俺達は再び一筋ずつの光となって・・・)
(良いのか!?もう会えないかも知れないんだぞ!?俺は必ず戻ってこれる!
 情報を内閣がまとめて保存しているからな!しかし、お前は違う!
 難民と択捉の一部の住民の電脳の中に散り散りになって存在する
 非常に不安定な存在だ。いいのか?もう、この女少佐には会えないんだぞ!?)
(構わないさ・・・。姫を守って自ら死す。ステレオタイプだが、まさに勇者だろう?
 自分の後に姫を任せられる男もソコに存在している。心置きなく・・・いける・・・) 

61:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/10 00:16:58 fzY6l3zZ
プツン!プツン!パリン!

黒点からひびが入ったように黒い稲妻が広がり、
そこから光の線維が断ち切られてバラバラになり、
最後はネット世界のあちらこちらに散らばった。

ゴーダ、クゼ、ゴースト錠が消滅し、残ったのは2人。
バトーは無言で自らの上着を一枚引き剥がし、グッタリと横たわる素子に掛ける。
今までの仕打ちを思い出すと、掛ける言葉も無い。
素子も、何も感じないように、ただ、ボーッっと意識を薄れさせていた。
素子からなるべく目を逸らそうと向こうを向いたバトーの目に素子の着ていた服が映る。
バトーはそれを拾いに行き、素子のそばに置いて後ろを向いた。
素子はゆっくりと起き上がり、服を手に取った。ゴーダに剥ぎ取られた服。
クゼだと思い、任務を忘れて自らゲートに入った。
責任者としてはあるまじき行為。バトーに怒鳴られ、処罰されても仕方が無い。

62:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/10 00:28:45 fzY6l3zZ
しかし、バトーは思慮深く言った。

(・・・・・・ここは丁度、内閣府のデータ内だ。
 ゴーダのデータを出来る限り消去して帰るぞ・・・)
(・・・・・・ええ、そうね・・・。でもそれは、最優先事項ではないわ、私たちの今の任務は・・・)
(馬鹿野郎!ここでゴーダを消滅しておかないと、また悪さしてくるだろ!
 俺はもうあんな思いするのは御免なんだよ!お前がレイプされるのを見るのも!
 他の奴が助けて無力感に打ちのめされるのも!)
(・・・・バトー・・・。大丈夫よ。もうあんな誘いには乗らないわ。例え、本物のクゼだとしても)
(信じられねえよ!そんな言葉!)
(バトー・・・)
(その顔!・・・まさに女の顔だぜ!男にすがる女の顔だ!
 そんな思いでクゼを求めてこのザマなんだろ!信じられるかよ、そんな女の言葉・・・)
(・・・・・・・・)

バトーの怒りを最もだと受け止め、素子は顔を伏せた。

(早く服を着ろ!残業時間を無駄に費やすなよ・・・)
(ああ、すまない・・・)

63:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/10 00:52:17 fzY6l3zZ
素子の衣服が整うのを待ってから、バトーは素子に向き直り作戦を告げる。

(ハッキングを仕掛けている大元はこの階層に存在しているんだろ?)
(ああ、そうだ。)
(なら、お前はこの階級で任務の遂行をしろ。
 俺はこの階層のゴーダのデータを出来るだけ殺してくる)
(しかし・・・)
(お前はさっき任務を忘れて私的な行動をした。今度は俺がさせてもらう。
 これで、おあいこだ。そして、他の奴らはこの段階には当分降りてこれねえから、
 ばれることもねえ。いいな?)
(・・・・・断ることは出来ないわね、お互いのために)
(そういうこと。じゃあな、今度こそ通信の出来る範囲に居ろよ。
 今度途切れても助けにはいかねえ)
(分かってるわよ)

それから、素子は無事にハッキングの大元を潰し、
バトーはゴーダのデータを出来うる限り殺すことに成功した。

64:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/10 01:03:58 fzY6l3zZ
「お疲れさーん!」
「はー、終わった終わった」
「ほとんど少佐とバトーの活躍かよ・・・」
「いや、俺達は情報の保護を立派に遂行しただろ?内閣の」
「本当に保護し切れているのか、疑問だけどな・・・」

残業になりながらも、9課の皆は家路に着いた。
素子も皆と同じでセーフハウスに繋がる道を歩く。
と・・・、素子の足が途中で止まった。後ろを振り返る。
街のネオンが煌く。光がチカチカと信号を発する。

一筋の光か・・・。甘かったわ、今回は私のミスね、馬鹿だったわ・・・。
浅はかな行動が命取りになった。
そして大きな代償。クゼの飛散。バトーからの信頼を地に落としたこと。
何一つ自分ひとりで解決できなかっ・・・た。

ため息が自然に出てくる。
少女のようにしゃがみこんで泣きたくなるのをこらえて、ただ立ち尽くした。

65:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/10 01:18:39 fzY6l3zZ
(おい、少佐!これから飲むぞ)

バトーが電脳で話しかけてきた。
ドキリとしたが、平静を保つ。

(・・・今日はご苦労だった。明日に備えてゆっくり休め)
(へへ、何強がってるんだよ。これから飲みながら反省会だ)
(反省は後日報告書で行う。自閉モードにさせてもらうわよ)
(まてよ!切るなって!報告書に書けねえことを反省するんだよ)
(・・・おあいこのはずでしょ?)
(おあいこだが、今後のためにな。予防策を話し合う)
(もうゴーダもクゼも復活しないわよ)
(そういいきれるか?言い切れねえだろ?だから、今後の策を話し合うんだ。
 俺としか話せないだろ?この件は)
(確かにそうね。でも、これは私のプライベートな話なの。だから・・・)

「俺にとってもプライベートな話なんだよ!」

66:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/10 01:28:37 fzY6l3zZ
突然、バトーの生の声が後ろから聞こえたかと思うと、素子が振り返るよりも早く
その大きくて厚い胸板に抱きしめられる。
素子はその頼りがいのある肉体にすがりつきたくなるのをぐっとこらえて、
かといって抵抗もせず、静かに口を開いた。

「・・・光学迷彩の私的使用は重罪よ?」
「光学迷彩?そんなもんは使ってねえ、気配は消していたがな。
 そんなことにも気が付かなくなってしまっているのか?ご傷心だな」
「別に・・・ご傷心じゃ無いわ・・・自分の情けなさに・・・腹が立っているの」

涙声になる素子。泣き顔を見なくて済む様に、バトーは震える素子を胸に暫く抱きとめた。
素子の涙は数分で納まったようだ。自ら顔を離し、バトーを見上げる。
バトーは安心し、ニヤリとして言った。

「よし!飲むか?」
「いいえ、飲まないわ。けど・・・・もう少し、一緒に居て」
「・・・はぁ?一体どこで?」
「私のセーフハウスよ」

67:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/10 01:32:54 fzY6l3zZ
今夜はここまでです。読んでくれている皆さんありがとう。

68:名無しさん@ピンキー
08/11/10 07:56:54 c5gS5LM0
おおおお~!
GJです!!続きがきになっていたので嬉しい!!
でもまた続きがきになる~~~w

69:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/11 17:24:13 XZmCng3l
素子のセーフハウスはネオン街の雑居ビルの一室にあった。
窓の外には酔っ払いが千鳥足で通りすぎ、チンピラが喧嘩をし、
男を誘い込む女たちが街角に立っている。
かつてパズが島としていたこの場所は、
決して真剣に愛を語り合うには不釣合いな場所だった。

「たいそうな所をセーフハウスに選んだよなあ・・・。
 もう少し心休まる場所で休んだらどうなんだ?」

バトーは窓の下のチンピラの喧嘩を眺めながら素子につぶやいた。

「うるさい方が気が紛れるのよ。落ち込んだときはいつもここって決めているの」
「へえ、お前が落ち込むことなんてあるんだぁ?」
「あるわ。最近では矢野の亡くなった後と・・・」
「クゼが死んだ日か?」
「・・・ええ、そうよ」
「そして、今夜は墓穴を掘った日」
「何ひとつ自分で解決できなかった日」

70:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/11 17:38:26 XZmCng3l
「まあ、そういう時もあるさ。俺だって、何もできなかった。
 現実世界に居る物とネットに住む者の間には明らかな力の差があったってことだ」
「・・・・」
「もう、危ない橋を渡るなよ。・・・といってもお前はまた渡る。だろ?
 そう俺のゴーストがそう囁いているんだ」
「私のゴーストは・・・」
「お前のゴーストは、俺を欲してはいない。
 俺をここに誘ったのは期を紛らわすためだ。あの窓の外の騒音と一緒だ」
「違う。私は・・・」
「お前はまた忘れた頃にクゼを欲する。そして、アイツと融合して
 ネットの深く広い彼方に行っちまうのさ・・・」

窓の外にはネオン。チカチカと光の信号をバトーに送り続ける。
素子はバトーの言葉を否定することが出来ずに暫く、たたずんだ。


71:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/11 18:12:42 XZmCng3l
「一晩一緒に居ろってんなら、居てやるさ。だが・・・条件がある。
 クゼのことはもう忘れろ。あいつは死んだ。もう戻ってはこない」
「忘れろと言って忘れられるものじゃないわ」
「いや、忘れるんだ。俺に記憶を焼き切らせろ。そうすれば・・・」
「嫌よ!」

拒否する素子の表情は今日の任務中と同じものだった。
男にすがりつく顔。クゼとの思い出に、すがりつく顔を素子が再び見せたのだ。
バトーはそれを見て苦虫を噛み潰したような表情になる。

「やってられねえぜ!どんだけアイツが大事なんだよ!
 ・・・こんなことなら、助けに行くんじゃなかったぜ・・・」

やるせない気持ちでバトーはつぶやいた。

72:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/12 14:37:48 +g0FCH38
「肉体の消滅とゴーストの喪失。個の消滅はそれで決定的だった。今までは。
 しかし、今回の件でそれが揺るがされ、クゼとゴーダは情報の海から
 自然発生的に戻ってきたの。自主的に・・・」
「そうして、お前は俺達公安9課よりも、クゼに着いて行こうとしている。
 不確実で不確かな、ネットに漂う散り散りの情報に望みを託そうとしてる。
 今まで何年も一緒に居て戦ってきた俺達よりも、つい数ヶ月前に表れた
 思い出の相手だか、初恋の相手だか分からん奴にな・・・。
 俺が少佐と通信が途絶えたあの時、必死になって助けに行ったのは
 望みを感じていたからだ。
 思い出と喪失感にどっぷりと浸かって這い上がれねえお前が、 
 広大なネットの深淵にどっぷりと浸かってしまっても這い上がれるという望みを感じた。
 いや、這い上がってきて欲しいと、俺が望んでいたからだ・・・」

バトーはやるせない気持ちを吐露し、素子を胸にきつく抱きしめた。。

「すまない・・・心配ばかりかけさせて・・・」

素子は頼りがいのあるバトーの胸板に顔をうずめて抱きしめ返し、瞳を閉じた。


73:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/12 19:44:57 +g0FCH38
バトーは素子を胸に抱きながらも、迷っていた。
この素子の反応は、このまま服を脱がしてももよいという意思表示なのか
それとも、ただ、体温が欲しいだけなのかは分からない。
もしも、自分から突っ走って素子にあしらわれたとしたらもっと傷つくことになる。
素子の次の行動を待つしか、バトーには出来なかった。

素子は顔を挙げ、バトーを見上げた。

「バトー、抱いてくれる?私を・・・」
「体だけで良いのか?・・・俺は・・・」
「私のゴーストに刻み込まれた、クゼへの思いを無くすほど
 私を深く・・・抱いて・・・。ただし、快感という意味ではないわ」
「分かった。任せろ・・・」

バトーは優しく素子に口付けをした。

74:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/12 22:55:39 +g0FCH38
バトーは焦る気持ちを押し殺して、できるだけゆっくりと素子に触れ、服を脱がす。
蝋のように白い肌が露わになる。義体だけあって体毛は一本も存在しない。
自らも脱ぎ、そして、改めて向かい合うと、素子からバトーの元へ身をすりよせた。
バトーの唇は素子の全身を這う。優しく、ゆっくりと、反応を確かめながら。
素子は素直に声をあげ、バトーの愛撫に浸った。
バトーは既に男性を受け入れる準備が出来ている、素子の秘めたる場所に口付けた。
指を入れてみると、素子は素直にあえいだ。
素子もバトー自身を掴み、刷り上げ、優しく口で包む。

「そろそろ、いいか?」
「ええ、いいわ・・・」

素子はしたになり、バトーを受け入れる体制をとった。

さようなら・・・

何故か、喪失感が沸きあがり、素子は一筋の涙を流した。


75:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/12 23:02:24 +g0FCH38
「なんで泣く?嫌か?」
「いいえ、いいわ・・・来て・・・」

涙は止まらない。

「参ったな、俺はこういうの駄目だ。まるでレイプするみたいじゃねえか・・・」

バトーはため息をつき、体を離した。そして、素子の隣に天を仰いで寝た。

「ごめんなさい」

素子はつぶやく
バトーは起き上がってそんな素子を抱きあげ、自分の腹部に座らせた。

「準備できたらそっちから来い。あんまり遅いと萎えちまうが、その時はなんとかしろ」
「・・・分かったわ」

バトーが興奮して焦る気持ちを出来るだけ抑えているのが表情と言い方から
手に取るように分かり、素子は少し微笑んだ。

76:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/12 23:24:51 +g0FCH38
しかし、素子の決心はすぐには着かず、バトーの下半身は元気を無くす。
すると、バトーは冷静さを取り戻した。

「体はいつでもつながれる。問題は心だ。少佐、そんなにクゼって奴はいい男だったのか?」
「さあね?でも、初恋だったわ。全身義体にならなきゃいけなかったり、
 辛いことが重なっていた時期に、出合ったから、多少は美化されているのかも」
「出島で会った時はどうだった?」
「外見はそんなに好みではなかったわ。でも、お互いに通じるものがあった。
 私も彼の立場だったら、先に全身義体になったのが彼で私が後者の立場であったら、
 もしかしたら、難民を引き連れて改革を起こしていたのは私だったかもしれないと・・・」
「はは、そんなわけねえだろ」
「あら、そうとも言い切れないわよ。人との出会いや置かれた立場、
 その偶然性と不確かさがまるでその人自身の実力のように評価される時がある。
 いえ、常にそうとも言い切れる・・・」
「まあ、確かに、俺が公安9課に入ったのは少佐とイシカワに出会えたからってわけだ」
「そうよ、だからこそ、私は彼に惹かれたの。偶然に私たちは再会した。
 それは偶然でしかないのだけれど、まるで、私たちの間に見えない力が働いた
 かのように・・・」
「そうして、再びクゼと離れてしまった今でも、再び見えない力が働いてまた会えると
 感じているってわけか・・・。そして、その気持ちを俺に断ち切って欲しい」
「そうね・・・」
「難しい注文だな。だが、任せろと言ったからには、全力をつくさせてもらう。
 仕切りなおしだ」

77:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/12 23:34:05 +g0FCH38
バトーは自分に座っている素子の体を腹部から太ももに異動させた。

「萎えちまった。少し、刺激してくれ」
「ええ、任せなさい」

素子は口と手を使い、バトーの下半身を愛撫する。
すると、バトーは面白いほど早い反応を見せた。
バトーも素子の入り口を指で確認する。

「クゼはもう居ない。だが、俺は今、確実にココに居る。肉体も、電脳も、ゴーストも
 全てココに居て、お前を見つめてる。だから、お前も全てココに戻って来い、素子・・・」

バトーは素子の腰を持ち上げ、自分の良い場所にあてがった。
素子はバトーを見つめ、決意をしてから自ら腰を下ろしていった。
小さくあえぎ、一筋の涙を流して。

78:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/12 23:56:58 +g0FCH38
素子の中に入ったバトーは素子が逃げないように下からゆっくりと何度も突き上げる。
その度に素子は呻きともあえぎともつかない声をあげ、
そのうちに上半身を倒してバトーに身を預ける形になった。
体制を変え、素子が下、バトーが上になる。

「ああっつ!バトー!バトー!っく・・・」
「素子・・っ!」

腰を打ちつけ、バトーが中で弾ける。
素子は崩れ行くバトーの巨体を受け止め、痙攣が終わるまでしっかりと抱きとめた。
弾む息が整い、バトーが体を起こす。素子はそのバトーと瞳を合わせて微笑んだ。

「バトー・・・ありがとう・・・・」
「こっちこそ・・・無理させてすまねえ・・・」

もう一度抱き合う。

79:素子×バトー(ゴーダが少し)
08/11/13 00:01:10 +g0FCH38
「やっと・・・ココに戻ってこれた気がするわ。自分のゴーストが・・・」
「そうか、それは良かった。また、現実からゴーストが離れそうになったら・・・
 いや、ゴーストを離れさせねえのが先だ。
 この部屋は今月で引き払え。お前が再びこの部屋に来たくなったら、
 俺のセーフハウスに来な」
「ふふ、とんだ誘い文句ね」
「今のところ、それが一番の方法だからな・・・」
「そうことにしときましょ、今のところはね・・・」

照れを必死で隠すバトーの頬に素子は口付けをした。

終わり
 
 

80:名無しさん@ピンキー
08/11/16 15:10:36 9wokFeuY
おおおおーいいねーいいねー。
良い物読ませてもらいました。GJ!

81:名無しさん@ピンキー
08/11/21 10:21:16 Dk5svYV8
保守

82:名無しさん@ピンキー
08/11/25 14:57:17 LlvDpVdA
ほしゅ

83:王妃の支配 0
08/11/27 01:22:29 KF9VaZ3t
いつも茅葺女王様におつきあいくださり、ありがとうございます。
また、女王様が威張りたいと申しますので、おつきあい頂けたらと思います。
で、エロ担当はボーマ×オリキャラ。
例によって、特に過激なエロはありません。
また、茅葺は延々と政治しておりますので、期待せぬように。

それから、中華キャラについては某少女向け小説のキャラの名前を借りてありますが、
別にそっちのパロでは全然ありません。

今回、やむなく連載形式を取ります。
今のところ今後の投下予定を告知できませんから、
投下されたい職人の方はどうか遠慮なさらずに。
このスレが終わるまでに、全話完成を努力致します。


84:王妃の支配 1
08/11/27 01:23:04 KF9VaZ3t
1、チャイナガール

 その日、ボーマはコンビニに遣いに出された。
 残業飯の手配の不備で、一番年若くて、たまたま手の空いていた彼が行くのは当然の事だった。
 おにぎり十個、カップ麺五個、パン五個、それからタバコも忘れないようにしないと。
 ノンアルコールビールと、それから……、
 棚ばかり見ていたボーマの足下に、小銭の散らばる音がした。
 見下ろすと、地味に髪を後ろに二つに束ねた女の子の頭。
 「あ、スイマセーン」
 ボーマを見上げる眼鏡姿のその顔の主は、清楚で可憐な笑顔であった。
 (……、あ、ツボ)
 ボーマの萌えセンサーが激しく反応する。
 小銭を拾うのを手伝いながら、でかい図体の自分がちょっと嫌だ。
 飾らないその子、なんと半纏にジャージ姿。
 「はい」
 手渡すと、彼女は云った。
 「あっ、アリガトゴザイマス」
 ボーマの9課としての耳が、その声の訛りを聞き当てた。
 「中国の方ですか」
 「は、はい。ワタシ、先月、中国からリョウガク、あ、リュウガクしてきました。
 日本語ベンキョウ一杯したつもりですガ……、ワカリマスカ?」
 「なんとなく」
 見た目が恐ろしいと自覚しているボーマの姿を見ても、全く物怖じしない。
 「ヤサしいですね、アナタ。
 ワタシの兄、人民解放軍のレンジャーです。スコープアイ、怖くないですよ。
 なんか、オニイチャンとハナしているみたいで、ちょっと嬉しいです。
 あ、オカネ、ヒロってくれて、タスカリですね」
 何となく女性となると奥手に回るボーマであったが、その子はボーマにも自然に話を向けてくる。
 その子は、そのままレジに行った。
 ボーマは、なんとなくそのまま後を見送ることが悲しいと思った。
 「ワタシ、ホン・チュンリーとイイマス。
 ココ、毎日キマスから、また会えタラ声掛けてクダサイネ」
 そう言い残し、店を出て行った。
 ボーマには恋の予感が訪れたのか……?
 少しボーッとして、ついタバコを買い忘れたのに店を出てから気づいた。

85:王妃の支配 2
08/11/27 01:24:25 KF9VaZ3t
2、昔なじみ

 セクレタリーアンドロイドが来訪者を告げると、茅葺は自ら席を立ち執務室のドアを開けた。
「お久しぶりね」
 茅葺は笑顔で室内に招き入れると、やや緊張した面持ちの相手をソファに座らせた。
 室内には、他に官房長官、第一政策秘書といった側近の面々が揃っている。
 茅葺の口元をほころばせた相手。
 その笑みが社交的な意味合いではなく、茅葺の郷愁から漏れたものであることを彼は気づいただろうか。
「さて、早速だけど、お返事を頂けるかしら」
 彼は優れた経済学の素養を持った人間である。茅葺は学生時代に彼の目指すところをその傍らで聞いていた。
「私でお役に立てるのであれば、謹んで拝命いたします」
 余計な言葉はない。
 実直な彼らしいと思う。
「各庁の予算申請の詰めの時期だというのに、あなたを引き抜いてしまって、財務省は困らないかしら」
「省庁は特定の個人の能力に依存しているわけではありません。また、そうあってはならない。私はそのように、
人材を育成して参りました」
 きっぱりとした態度だった。自らの仕事に自信と誇りを持っている者の威厳が自然とそこにある。
「頼もしい事。でも、私の仕事を引き受けて下さるという事は、そのように大切に育てて来た部下たちと
対立する事もあるのだけれど」
 茅葺は少し意地悪に聞いてみた。
「内部を知りすぎる立場の私に白羽の矢を立てたのは総理でございます。
 それは、私の資質を汲んでいただいた上でのご判断だと解釈いたしましたが」
「ええ、私はあなたに期待しているの。
 だから、かつての部下たちとも派手に喧嘩していただけるということね」
「必要がございますならば。内情を知っているからこそ、攻撃の加減は自由自在。総理の御心のままに施政を
進める用意があります」
 茅葺は相手をまっすぐに見据え、そして云った。
「では、茅葺内閣の財務大臣及び内閣府金融特別担当大臣にあなたを任命します」
 茅葺は、その任期の最後になるであろう担い手を、その男に託した。
 二週間前、財務大臣は失言問題を起こし、世論の激しい攻撃にあい失脚を余儀なくされた。元々愚鈍なところがあり、
それでも先の見えた任期満了を待つばかりの政権内では波風も立てずに居てくれたら、それで良かったのだろう。
 ところが、最近になって茅葺内閣後の政権奪取に野心を燃やす野党から、大きな問題を突きつけられていた。
 野党より提出された特定国家に対する輸入関税優遇の撤廃法案である。



86:王妃の支配 3
08/11/27 01:27:42 KF9VaZ3t
 茅葺政権は親中国・反米帝の立場でいままで外交に関わってきた。
 それが、今回、中国側との蜜月といってよい関係に水を差す事態である。
 従来、茅葺政権以前から、中国製品に対する関税優遇は問題とされてきた。それは先の大戦時に戦費調達と
効率的な物資の輸入のため、日本側からのODAの廃止に伴って行われた緊急措置的な外交政策であったが、
中国のみに行われている関税優遇は他国に対する不公平として、米国・ヨーロッパ諸国のみならず、日本への
輸出による経済成長政策を模索する東南アジア諸国からも強い反発が持ち上がっていた。
 各国との関係の平等化はもちろん近々に進められるべき時期に来ているとは理解している。しかし、茅葺政権は
あと長くて一年である。親中国派として華やかに外交を進めてきた茅葺にとって、この時期に中国側の不興を買うことは、
政権から降りたあと、オブザーバーとしての国際外交に活躍の場を求める茅葺の野心にとっては、大いに避けるべき
事態といえた。
 この件に関していえば、政権自体のイメージはいささかダウンするが、前職の大臣の失脚はむしろ喜ぶべき事態。
野党との政治闘争においては、実力のある論じ手こそが必要とされる。
 草壁昭之。
 学生時代より海外の大学で経済分野を修め、また官僚になってのちは、堅実かつ大胆な手腕で成り上がってきた男である。
 彼を在任中に閣僚として招くことがかなった事は、茅葺にとって、公私ともに喜ぶべき事態であった。
 新たな足場をつくる。
 そのために、これまで総理として国に尽くしてきた真摯さを曲げることになるかもしれないが、茅葺は歩き出してしまった。
 国を超えた政治家としての、野望のために。
 この国を王と例えるなら、茅葺は王妃だ。
 配偶者を持たない茅葺にとって、国こそ立てるべき主。
 最後の時間を、有効に使うこと。
 それが茅葺にとって、今は最も重要なことだった。

87:王妃の支配 4
08/11/27 01:28:52 KF9VaZ3t
3、電子戦隊

 一週間ほど前。東京、招慰難民地区。
 一人の女が雑踏を行く。
 中華食材店のビルの外壁の、朽ちかけたパイプの階段を駆け上がる。
 「紅 秀麗です。
 本日着任致しました」
 「ご苦労。君の働きを期待するよ」
 見た目はヒップポップな服を着た二十そこそこの若者こそ、実は、人民解放軍特別機密電子戦部隊の部隊長、
浪 燕青である。
 「あの厳しい電脳戦試験を優秀な成績で突破したと聞いた。
 主席の息子でいらっしゃる紫 劉貴氏の推薦でこの最前線に送られてきたようだが、この部署はそれほど
甘いものではない。失敗は許されないので、そのつもりで」
 「もちろん、覚悟はできております。浪中尉」
 「それから、そこにいるのは、君より三日早く着任した杜 影月くんだ。
 まだ十六歳そこそこの子供だが、ハッキングとクラックにかけては天賦の才がある。
 また、その外見から、潜入工作にも役に立つだろう。協力して任務に当たってくれ。
 そして後方支援として、志静蘭を置く。コンビニ店員として配属してあるので、支援が必要な時は彼を通じて行う。
 それから、外殻装甲防具の搬入までは数日時間が必要だ。
 ターゲットは高機能自己判断AI搭載の思考戦車を装備しているから、それなりの対応策無しに手出しは危険だ。
当面は地道に調査及び潜入工作に従事してくれればそれでいい。
 以上。
 今後は携帯端末メールによって命令を伝える」
 着任の挨拶は、以上のごとく、極めて事務的に完了した。

88:王妃の支配 5
08/11/27 01:30:39 KF9VaZ3t
4、モンスター・ガール

 9課が現在抱えている案件、それは招慰難民地区における新たなテロ活動の噂だった。
 誰という具体的なものは不明だが、新たなる求心力となる存在が出現しようとしているのは確かだった。
 ネットの中にも、実体なき反体制組織、まるで『個別の十一人』を見るようなストイックさと狂気を兼ね備えた
『笑い男』のような若いカリスマを求める書き込みが見受けられるようになった。
 ボーマは最近、若者向け無料掲示板に調査として潜る日々が続いている。
 この正体無き指導者への期待。
 それは一種の、宗教にも似た熱気を帯びようとしていた。
「おい、ボーマ」
 イシカワが云った。
「疲れたのか?
 気分転換にちょっとコンビニ行ってきてくれ。のど飴が欲しい」
 ネットへのダイブを中断して考え事をしていた時だった。
「はい、はい行きます。
 他に注文ないか聞いてきます」
「やけに素直だな」
 イシカワが意味ありげに冷やかした。
 もしかして、最近、お使いに喜んで行っているのを気づかれたのかもしれない。
「女なのか?」
「そうか、女か」
 赤服の中にも、ボーマとあの中国人留学生が話しているのを見た者がいるのだろうか?
 雑談に混じって、そんな言葉が聞こえてくるのをボーマはちょっと面映ゆく感じてしまう。
 気づいたら、もう三度あのコンビニに足を運んでいて、そのうち二回は、会って話した。
 ほんの挨拶ばかりだが、それでもボーマにとっては、仕事以外で特定の女性と喋る機会はこれまで皆無だったのだから。
「そうなの、女なの」
 少佐の声もする。
「それは変わった女の子ね」
 そうなんだよ、ちょっとオタクで……
 ボーマの中で、ホン・チュンリーの存在は少しづつ大きくなっているようだった。
「またお遣い?」
 ロビーで資料部のサラがチョッカイをかけてきた。
「断ればいいのに、馬鹿ね」
 ピンヒールにウエストをキュッと絞ったスーツ、長めのタイトスカートの絵に描いたような秘書スタイル。
ヒール込み180㎝超えの長身なので、そういった姿でも充分ボーマを威圧する。
 女らしい一方で、視覚入力システム用のデジタルアイを左眼に埋め込んでいる。目立たないタイプもあるのに、
高機能重視のものなので、鬼気迫る美貌に装着されたその姿は、正直ボーマよりグロテスクなほどだ。
「そんなにいい子でいたいのかしらね、ボーマちゃん」
 そんな彼女にいじめられたら、ボーマはただ萎縮するしかない。
「草薙さんに夕方には資料、揃うからって伝えてね」
「今から、僕、外出するんですよ。自分で伝えればいいじゃないですか」
「馬鹿ね。あなたに伝言させることに意義があるのよ」
 ボーマに対しての二回目の馬鹿である。
「よろしく頼んだわよ」
 サラのデジタルスコープから、何かの光が飛んできた。

89:王妃の支配 6
08/11/27 01:32:48 KF9VaZ3t
5、女王の宴

「それで、総理。
 今回の関税優遇措置撤廃の件で、作戦はあるのですか」
 与党内の幹部の面々が顔を揃えている。
 料亭政治は過去の因習として、茅葺はあまり好きではないが、こういった事はこういった場で話されるのが
相応しいのだろう。
「ええ。中国との良好な関係に、今さら水を差すこともないでしょう。
 いずれこの案件は見直す時期が必要ではありますが、それは今ではありません」
 キリッと着こなしたスーツであるが、鎖骨を出したデザインのブラウスと煌めく小降りのダイヤモンドが引き立てる胸元や、
タイトスカートから覗く正座した膝など、とても老獪な政治家の一人とは思えない若々しい色香は、いまだに一同の
女王として君臨するにふさわしい威厳と気高さを兼ね備えていた。
「むしろ、個別の十一人事件の後、一時は収まっていたネットでの英雄待望論がまた再燃しているようですね。
それに乗じて、一部の人権主義者や招慰難民地区の支援者たちの中に活動が活発化していると聞きました。
 ネット上には常に英雄を求める声は絶えませんね。
 特に、差別されていると感じている方々の間には。
 現状で、行政が難民支援を行うには限度があります。難民支援ばかりを強化しても、一般市民の失業率が
思わしくない現状では、難民荷担に不平の声を上げる人々もいることを忘れてはなりません。
 そこで、現状で出来る事、とりあえずネット監視法の内容を改善し、その上で、テロリストなど、反社会的活動家の
洗い出しを容易に行う体制への足がかりにできればと思います」
 茅葺の突然の意見に、中堅議員が口を挟んだ。
「それはまた、急なご発言です。内容が内容だけに、十分な準備と期間を要する問題ですな。
 ネット監視となれば、言論弾圧とネット依存度の高い輩が何かとうるさくなりましょう」
「ええ、分かっています。非常に下準備に時間を要し、慎重に時間をかけて議論されるべき問題です。
 ですが、悠長にしている暇もないでしょう。
 できる事から順に用意を進めていこうじゃありませんか。
 そしてその上で、真に急ぐべきものから議案を詰めていきましょう。
 そして、今期見送りの案件も出るとは思いますが、中途半端に結論を急ぐような真似はしてはなりません。
 私の意図、ご理解頂けまして?」
「そうですな。ひとまず、それらの手配を致しましょう」
「よろしくお願いします、幹事長。
 時に、笹塚さん。あなたはネット社会にお詳しいから、もしかしたら心当たりがあるかもしれませんが、ネット上での
現実的な組織の様子はどんな風ですの」
「今のところ、小さな組織での指導者は幾人か出ていますが、お互い同志の勢力争いに忙しい状況では、当面、
表だった活動には発展する危険はないのでは。
 さらに、個別の十一人事件以降、重火器に関する規制が強化されたばかりですし」
「そうね。でも、そういった不安定な組織に、海外のテロ組織が介入したら、と想定しておくのも危機回避には必要なことね」
 茅葺は微笑んだ。氷のように冷たく、そして艶やかで、背筋が寒くなるような笑みだった。
「あら、せっかくの料理が冷めてしまうわね。
 皆さん、そろそろ乾杯しましょう。政調会長、音頭をお願いします」
 女王は、宴の開催を命じた。

90:王妃の支配 7
08/11/27 01:33:42 KF9VaZ3t
6ありがちな話

 ボーマは夜道をトボトボと歩いていた。
 帰りにいつものようにコンビニに寄ったが、チュンリーには会えなかった。
 サイトーが車で一緒に帰ろうと誘ってくれたが、淡い期待があったので断ってしまった。
 このまま駅まで歩いて、電車で帰るしかない。
 その時だった。
「ヤメテ、イヤデs、何スルデスカ」
 たどたどしい日本語は、パニックを起こしているのか、いっそう聞き取りづらかったが、ボーマには耳に焼き付いた声だった。
 ボーマは小路に入り、そこの暗がりで襲われている少女を助けた。
 荒事には馴れている。この程度のチンピラ、どうって事はない。
「大丈夫?」
「あっ、あっ」
 恐怖の余りに声が出ないようだ。
「僕ですよ、チュンリーさん。安心してください」
 だが、混乱して相手が誰か分からないらしく、腰を抜かして動きが取れない様子ながら、それでも逃げ出そうとしていた。
「僕です、僕ですってば」
 ボーマは一歩下がって街灯の下に立ち、姿が見えるようにした。
「あっ、ボーマさ、っさ……」
 ようやく声が出た。
「近づいていいですか?
 僕、送りますから」
「タ、タスケて……」
 チュンリーは安心したのか気を失ってしまった。
 ボーマは自分のコートを脱ぎ、汚れて乱れたチュンリーを包むと、タクシーを止めた。
 呼びかけても起きないので、とりあえず自分の部屋に連れて行く事にしたのだ。
「……怒らない……だろうか」
 少佐に連絡しようとも考えたが、最初に警察に連れていくべきだった、と絶対怒られる。
 少佐に怒られるか、彼女に嫌がられるか、どっちがマシなのか。
 心臓が早鐘のように鳴る。
 あまり深く考えなかったのだけど……、少しヤバイ感じがする。
 スケベ心は全く無かった。
 ……そう、ただ、放っておけなかっただけ。


91:王妃の支配 8
08/11/27 01:34:39 KF9VaZ3t
 自室について、ボーマはちょっと考えて彼女をソファに寝かせた。
 靴だけどうにか脱がせて、他にどこも触ることができなかった。
 それから………目覚める時に自分が居るのをびっくりするのではないかと思い、ボーマは一度部屋を出ることにした。
 テーブルに書き置きをして。
 ……ボーマがメモを書いていると、彼女はおもむろに目を覚ました。
「アレ、ぼーまサン、ワタシ、どうして……」
 しばらくボヤッとしていたが、いきなり表情が変わった。
「ワタシ、ワタシ……」
 何が起きたのか、思い出したようだった。
「大丈夫です。困っていらしたので、僕がお助けしました。
 気を失ってしまったので、僕の部屋に。
 でも、気づいたのだったら、家まで送ります」
 チュンリーは涙を浮かべていた。
「イヤ、キョウハ怖くて帰レナイです。
 アノヒト、ストーカー。ワタシの家、知ってイテ、マッテいたデスヨ」
 本当に怖かったのだろう。手渡したタオルで顔を覆い、泣きじゃくるのを堪えている。
「あ、トモダチのイエ、行キマス。ケイタイ端末……」
 ボーマはその時、気づいた。
 ボーマ自身ドキドキしてしまって、その付近に落ちていたであろう彼女のバッグを拾ってこなかったのだ。
「ドウシヨウ。
 デンワバンゴウ、ワカラナイ」
「よかったら、泊まっていってください。
 僕が、同僚の家に行きます。明日の朝八時に、いつものコンビニに来てください。家まで一緒に行ってあげますから」
 ボーマはテーブルに鍵を置いた。
「……ダメ、ぼーまサンにコレ以上ごメイワク掛けたくナイ」
 チュンリーの泣き濡れた瞳が、ボーマを見上げる。
 乱れた髪が額に張り付き、束ねた髪もボサボサになって。
 でも、眼鏡の奥の瞳を、吸い寄せられるようにボーマは見つめてしまう。
「…ぼーまサン、あなた、ヤサしスギル。
 ダカラ、ワタシ、忘れたいネ、サッキのコト、ゼンブ。
 アナタノ、優しさにツケコムの、ワルイ女してる。
 デモ、アナタノ腕、きっと優シイ」
 ボーマは息が止まるかと思った。
 ……初めての告白だったから。
 頭の中が真っ白で、どうすればいいのかワカラナイ。
『えっと、腕の中、優しいって、それは……、いいって……こと』
 間違いじゃないかと思った。
「シャワー、借リマス。
 ……Tシャツ貸してクダサイ」
 ボーマは云われるままに、洗いたてのバスタオルと、まとめ買いして来て袋に入れたままのTシャツを渡した。
 ちょっと頬を染めて、彼女はバスルームに入っていった。
 ボーマは予想もつかない展開に、心臓バクバクを通り越して頭が痛くなってきた。

 


92:王妃の支配 9 今回はここまで
08/11/27 01:36:19 KF9VaZ3t
 そして、ボーマは彼女を抱いた。
 薄いTシャツの上から、細い身体をぎこちなく抱きしめた。
 その感触が嬉しくて、少しきつく抱いて、それから髪に顔を埋めた。
 いい匂いがして、頭がクラクラした。
 窒息しそうな気分だった。
 彼女のほうから、そんなボーマの口を塞いだ。
 はじめはチョット触れる程度、だが、彼女が舌を入れてきたので、遠慮がちに絡めて、そしてもっと深く絡めた。
 下腹部が温かく息づき、その場所が彼女の太腿に当たっているのに気づいて、照れくさかった。
 「怖かったでしょう」
 自分の高ぶりを少し押さえようと、ボーマは云った。
 「……もう、怖くない」
 耳許で囁かれて、堪らなくなる衝動を必死で抑える。
 相手は怖い思いをしたばかりだから、無理は絶対にしない。
 それがボーマの優しさ。
 乳房に触れるのも、そこに口付けるのも、彼女の事を思うと少し躊躇われたが、チュンリーはボーマの口元に
乳首を突き出した。
 ボーマは、少し乱暴かと思ったが、そこに激しく吸い付き、嬲っていた。
 「アッt」
 チュンリーが小さく可愛い声を上げる。
 「アイサレテ、ダカレルノハ、シアワセダカラ、コワガラナイデ、シテ……」
 その細い小さな手が、ボーマの指を握り、自分の秘部に導いた。
 そして、ボーマの指先を、その濡れた場所の突起に当て、そのまま上下させた。
 「コウして……ホシイ」
 チュンリーは本当に求めていた。
 ボーマの思いを。
 ボーマの中で、躊躇は氷解し、そして行為に没頭してゆく。
「スキ、スキ、スキ」
 暗がりの中で、どれほど囁かれたことか。
 たっぷりと濡れたその場所に差し入れる時、彼女は身体をのけぞらせ、もっと深く受け入れようと両脚で
ボーマの身体を抱え込んだ。
 最初のはあまり長くは持たなかった。
 それでも、二回目は後ろから抱きしめ、乳房を楽しみながら突き上げた。
 乳首の周りをグリグリすると、気持ちいいのか身もだえして、交わった場所がきつく締まるのを感じた。
 ボーマの手を取り、交わったままのクリトリスを指で撫でさせると、悲鳴にも近い声で喘ぎ、戦慄いた。
「気持ちイイヨ…、ぼーま……してるの好き。気持ちいいいの…ズうっトしたい」
 そうやって朝近くまで交わると、ボーマは深い眠りに落ちた。
 レンジャーとしての訓練を受けているはずのボーマが、物音一つ聞こえぬ眠りに落ちていたのだ。 

                                                          <続く>

93:名無しさん@ピンキー
08/11/30 02:16:13 YWmqji6f
>>92
|∀・)つ 旦~ ドゾ

94:名無しさん@ピンキー
08/12/01 00:07:50 Rkcu/a4b
しょうさのほうまんな~♪

95:名無しさん@ピンキー
08/12/02 01:56:12 PILnmcK2
おぉおー、GJです。続き期待してるよ。
そして中華キャラたちの名前もGJ(笑)確かにハッキング強そうだwww

96:名無しさん@ピンキー
08/12/12 10:01:29 J6qwFK1a
3rd で「バトー×素子(妊娠がらみ)」を書いたものです。
リアルでバトー(夫)に精子を入れられ、妊娠しました。8月出産予定です。
生身の体で陣痛を体験することになるなんて・・・。いたそうだ!
「サイトー!(先生)そいつを(麻酔薬を)よこせえええ!」
注)かかりつけの先生の名前は斉藤ではありません。



97:名無しさん@ピンキー
08/12/12 14:44:32 kytdcfCu
日記帳にでも書いとけ

98:名無しさん@ピンキー
08/12/12 15:55:53 bxcKwo77
>>96
おめ
出産までにまた投下汁

99:名無しさん@ピンキー
08/12/12 16:55:05 RX/n0U9E
>>96
おめでとう。

でも、ちょっと一言。
自分の出産リスクやらを充分吟味して、出産予定の場所の産科事情も吟味した上で、
出来れば総合病院の産科(母子ともに手術の可能な設備で小児科併設)に、
費用は惜しまず頻繁に通って親しくなっとくように。

昨今の事情では、普通に産院で定期検診しているだけでは無事に産めるとは限らない。
場合によっては、陣痛を待たずに切ってしまう手もある。

出産は命のやりとりだし、その後だって、悩みの種は尽きないけど、
赤ちゃんはみんなに笑顔をもらって大きくなる。
決して一人で育てていくとは考えないで。

それから、つわりが酷ければ無理はしない。
PCなど、電磁波もあるから推奨しない。
電波なお子様になるよw

100:名無しさん@ピンキー
08/12/12 17:41:19 rwfjR8CE
>>96
おめでとう。元気な赤ちゃんが生まれるといいね

しかし非常におめでたい話だけど、できればここにそういうリアルな事を書いて欲しくなかった。
ここはあなただけが書いたり読んだりするスレじゃないし
せっかくのあなたのSSもそういうエロい目で見て萌えるという事が出来なくなってしまったよ
今度からは気を付けて。風邪をひかないように体を大事にしてください。

101:名無しさん@ピンキー
08/12/13 00:48:41 LyqgE7Th
おめでとう!
(しかし女性の方だったんですな……男性だと思いこんでた
このスレちょこちょこ自分以外にも女性住人がいて嬉しいぞ)

元気なお子を産んでください。
そして攻殻を次代へ脈々と伝えていくのだ(笑)

102:名無しさん@ピンキー
08/12/13 05:05:24 3Ddnsll4
お願いだから自重してくれ

103:名無しさん@ピンキー
08/12/13 13:26:01 3+uKSS2F
空気を読まずにバト×素を激しく希望

104:名無しさん@ピンキー
08/12/15 01:19:11 SMzCT1AC
遅レスだけどおめでとう。
それよりも、すっかり過疎スレだと思ってたのに、
雑談できるだけの人数がまだいた事に驚いてる。

105:名無しさん@ピンキー
08/12/24 21:40:44 IckQvrHO
(注意書き)
1,保守小ネタにつき、エロ無し
2,時系列ではウチコマを使用するべきですが、
あえてタチコマ使用に改変

遊びで書いた話なので、スレ違いのエロ無しご容赦下さい。

106:聖夜の奇跡1
08/12/24 21:43:33 IckQvrHO
 草薙素子には何か声を掛け難い時がある。
 今、この瞬間がまさにそれだ。
 あれはいつだったか、もっと蒸し暑い夏の夜だった。
 背中を向けたまま、高層階からぼんやりと市街地を見つめている。
 あの時と全く一緒だ。
 さめたコーヒー片手にいったい何を思っているのか、後ろに誰かいる事さえ
気づいている様子もない。
 素子が気づくまで、ずっとこのまま立っていようかとバトーは思った。

「何か用?」
 振り向きもせず窓ガラスに映ったバトーのシルエットに向って、素子はようやく
口を開いた。
「まだ帰らないのか?」
「えっ? ああ……もうこんな時間……他の皆は?」
「夜勤以外で残ってるのは俺とおまえだけだ。今日は何の日か理解してるか?」
「そんな所に立っていないでこっちへ来たら」
 バトーは、ゆっくりと素子へ近づいた。
「見て、ほら」
 窓ガラスの向う側に新居浜の夜景が広がっている。飽きるほど見慣れた眺めだが、
いつもより派手に輝くイルミネーションは、今日がクリスマスイブだからだ。
「イブだったわね。道理で誰もいないと思った」
「トグサも今日は早く帰った。今頃は家で楽しくやってるさ」
「きっとそうね」
「一緒にメシでも食いに行くか? 俺達も」
「今日はどこも多いわよ。それに余りお腹は空いてないの」
「そうか……腹は減ってないのか」
「でも飲みたい気分ね。お酒なら行ってもいいわ。一緒に行かない?」

 素子からの予想外の申し出だった。断る理由は当然ない。
「そうだな、メシより酒だ。待ってろ、上着取って来るから」
「下で待ってるわ」
――待ってる
 その言葉を快く聞いて、バトーは部屋を出て行った。
 上着を取って下に行くまで、ものの5分もかからない。
 だが、上着を忘れた場所を思い出して少し憂鬱になってくる。
 確かタチコマ達がいるハンガーに置いてきた筈だ。
 自分の姿を見て、退屈しているであろうあの連中が簡単に開放してくれるかどうか……。
 そっと行って脇目も振らずに逃げてくればいい。
 バトーはそう思いながら、全速力で走って走って走った

107:聖夜の奇跡2
08/12/24 21:46:29 IckQvrHO
「バトーさぁん!!!」
――しまった!
 バトーは椅子の上に放り出したままの汚い革ジャンを急いで着ると、なるべくタチコマ
と目を合わせないようにした。
「バトーさん、オセロやろう! トランプでもいいよ」
「バトーさん、天然オイル!」
「バトーさん、ぼく達すごく退屈なんだ。ねぇ遊んでよ」
「世間はクリスマスイブなのに、ぼく達には何にもない」
「ケーキも、チキンも、シャンパンも無い!」
「我々は、クリスマスを楽しむ権利を要求する!」
「サンタクロースもいない……プレゼントもなにも無い!」

 仕方なく、バトーは少しだけタチコマ達に付き合う事にした。
「ハァ? プレゼント? 赤い服きたじいさんからのプレゼントが欲しいっていうのか。
赤い服着たじいさん達なら毎日見てるだろ? ほら、そこにもひとりいるじゃねえか」
 ハンガーには、タチコマ1機を調節中の赤服が一人だけいた。
 赤服は、ニヤニヤしながらバトーとタチコマ達のやりとりを聞いていた。
「あんなのただの鑑識だ。なんにもくれないし、気に入らない事があるとすぐにラボ送り
にするって言うんだよ」
「明日ならオイルでもなんでもくれてやるよ。だが今日はダメだ。用がある」
「予定があるの? それってクリスマスイベント?」
「イベント? なんだそりゃ?」
「クリスマスにはクリスマスイベントってものがあるんでしょ? カップルで美味しい物
食べて、ホテルに泊まるんだよね? それから何するの? 楽しいこと?」

 タチコマの言葉に、バトーは頭をかかえた。
「……タチコマ……それは間違った情報だ。並列化するんじゃねえぞ!
 おい、赤服!おまえらどんな教育してんだ?」
「私じゃない。そんなウソを教えたのはアズマだ」
「何? アズマのヤツ! いかにも女好き軽薄ヤローの考えそうな事だ! 
 おい、おまえら。明日俺が正しいクリマスの過ごし方について教えてやる。
明日まで待ってろよ」
「なんで? 今日でもいいでしょ?」
「おい、おい……おまえ達……」
 赤服は調整中の手を止め、バトーとタチコマ達の元へ近づいた。
「バトーは用事があると言ってるだろう。余り困らせるんじゃない。それともおまえ達は、
他人の都合を思いやる事もできないのかな? そんな子供ではなかった筈だ。そんな態度
は大人だとは言えないな」
 赤服の言葉にラボ送りを恐れたタチコマ達は一斉に黙りこんだ。

108:聖夜の奇跡3
08/12/24 21:49:24 IckQvrHO
「う~ん、そうだよね。ぼく達はもう大人だ」
「バトーさん、わがまま言ってごめんなさい」
「ごめんなさい。明日まで我慢するよ」
「バトーさん、おやすみ。メリークリスマス!」
「いい子だ。わかったら早く寝るんだ。明日はきっとバトーも来てくれる」

「助かったぜ……頼りなるな、あんた」
「褒めるか、貶すかどっちかにしてくれよ。それにしても、珍しく急いでいるな。
彼らが言うようにクリスマスイベントでもあるのかね? 本当なら羨ましい」
「よせよ。そんな女はいない。少佐のお供で酒飲みに行くだけだ」
「少佐とね……それはますます羨ましい。少佐は、君の事はよく誘うが、
私などは一度もお誘いはかからない。もっとも、酒は余り飲まない方だが」
「羨ましいだと? あんたが思うほど楽しくもねえよ」
「まあいい。気をつけて行くといい。最近は物騒だ。少佐と君の強さは十分に理解して
いるが、大衆の集まる場所でのテロなんて珍しくもない世の中だ。クリスマスだから
といって、あっさり休戦になるなんて事はない」
「ご忠告はありがたく受取るよ。お疲れさん」
 バトーは、赤服とタチコマを残し急いで行ってしまった。

「ねえねえ……」
 皆寝たと思っていたのに、いつのまにか1機のタチコマが赤服の後ろに立っていた。
 それは、いつもバトーから天然オイルをもらっているあのタチコマだった。
「なんだ、まだ起きてたのか」
「バトーさんさぁ、少佐と行っても楽しくないって言ってるのに、なんであんなに
急いでるの? それになんだかとっても楽しそうにしてるんだけど……」
「難しい質問だな。要は人間の複雑な感情というか、大人の事情ってやつさ」
「おとなのじじょう? それ何?」
「おまえ達が理解するには、まだまだ経験値が足りないな。明日、バトーにゆっくり
質問するといい。質問の答えによっては、また経験値が上がる。おまえ達の経験値が
上がればバトーも喜ぶだろう」
「ほんと?」
「ああ、きっとさ。じっくり聞いてみてくれよ。ついでに、少佐とどこへ行ったかも
聞いてみてくれ。個人的に興味がある」
「了解! それじゃおやすみ!」
「ああ、お休み」

 ようやく静かになり、赤服は腕を組んだまま独り言をつぶやいた。
「まあ、私では少佐の相手は務まらない。いろんな意味で……バトー、健闘を祈る!」
明日、タチコマ達の質問責めに合うであろうバトーを想像して赤服はニヤリと笑った。

109:聖夜の奇跡4
08/12/24 21:52:26 IckQvrHO
 バトーは、息を切らして地下の駐車場へ行った。
 そこには、すでに車を横付けにして退屈そうにハンドルに凭れた素子がいた。
 助手席のドアを開け勢いよく車に乗り込むと、素子は欠伸をしながら言った。
「遅かったわね……」
「ああ、待たせて悪かった。タチコマ達につかまってたんだ」
「タチコマ? フフ……退屈してたのね。あの子達、何か言ってた?」
「クリマスを楽しむ権利を与えろだとよ」
「だんだん生意気になってくるわね。それとも、成長の証かしら?」
「成長か……そうかもしれん。アズマがくだらん話を聞かせたりするから……」
「アズマ? 何を話したの?」
「あっ! イヤ、なんでもないんだ。聞いてもつまらん話さ。
それより、ほら早く車出せよ」
「なによ、遅れてきたクセに勝手な事ばかり言って」
 素子は、ブツブツ言いながらエンジンをかけ車を急発進させた。
「グッ! あぶねーな。行き成り出すなよ!」
「しっかりつかまってなさい。飛ばすわよ」
「ほどほどにしろよ。一応、俺達は警察官なんだぜ」

 バトーの言葉が聞こえなかったのか、それとも無視しているのか、素子は少しも
スピードを緩めず9課を後にし車道に乗った。
 真直ぐ走っていつものように都市高速に合流するのだろうと、バトーは思った。
 だが、車は序々にスピードを緩め、ウインカーを点滅させたと思うと路肩に止まって
しまった。9課を出てからほんの数分しか経っていない。
「なんだよ、行き成り止めて」
「やっぱり、やめるわ」
「あ……やめるだと?」

 結局それか……。
 最初から機嫌が悪かったに違いない。夜景を眺めてるうちに気紛れに誘ったに違いない。
ここは諦めて、缶ビールでも買って帰るしかない。
 缶ビール程度で、今の気分が晴れるとは思えないのだが―

「ああ、行きたくないなら仕方がないな。俺はビールでも買って帰るわ」
「えっ? ああごめん……言葉が足りなかったわね。車で行かないって意味よ」
「なんだそうなのか……紛らわしいな、おまえの言い方」
 そう愚痴ってみたものの、再び気分は爽快になってくる。
 自分はどこまでも単純にできているらしいと、バトーは、ほっとしながらそう思った。
「それなら、店まで歩いて行くのか。珍しいな歩きなんて」
「まあね。酔いとは無縁の私達でも、たまには歩きでもいいんじゃない?
待ってて、そこのパーキングに車置いてくるわ」
 素子はそう言うと、バトーをその場に下ろしてバーキングに入っていった。

110:聖夜の奇跡5
08/12/24 21:55:30 IckQvrHO
「お待たせ。行きましょう」
 コートの襟をたて、ポケットに両手を突っ込んだまま二人は歩道を歩き出した。
 賑やかイルミネーションの煌く場所までは、まだ歩いて2、30分もかかりそうな
距離だ。
 やけに冷える夜だった。歩き出してものの数分もしないうちに夜空から白い氷の粒が
降ってくる。それは地面に落ちればすぐに水滴に変わってしまうほど脆い雪だった。
「雪か……珍しいわね。最近は余り見ないわ」
「ボタ雪か。降ってもすぐに溶けちまう。ロマンティックには、ほど遠い気分だな」
「いらないでしょ、そんな気分」
「ああいらねえ、いらねえ。いらねえよっ!」
「三度も言わなくてもわかるわよ。黙って歩きなさい」
「了解!」

 二人は、黙ったまま歩道を歩いた。
 最初は小降りだった雪も、いつの間にか段々と本降りになってきた。
 時々すれ違う人々も、傘を手にした者達が多くなっていた。
「おい、小降りだと思ってたら、本格的に降ってきたな。もう溶ける暇もねえな。
これじゃ店に着く頃には雪だるまになっちまう……」
 バトーは、犬の様に頭を振って体に積もった雪を払い落とした。
「やっぱり、傘が必要みたいね」
「何? 傘だと? いらねえよ、そんなモン。軍にいた頃を忘れたのか? あの頃は
こんな事は珍しくもなかったぜ。雨や大雪の中、何時間も移動させられてよ。あれに
比べりゃなんでもねえよ」
「忘れたわけじゃないけど……」
「俺は今、あの頃を思い出して懐かしい気分に浸ってるとこだぜ」
「懐古趣味? 止めはしないけど、じゃあこれはいらないわね」
 素子は、バッグの中から携帯用の傘を取り出した。それは、草薙素子には不似合いな
ピンク色の小さな傘だった。
「あ? あるのか? 傘……」
「なんだか雪になりそうだったから、車に置いてたやつを持ってきたのよ。
でも、いらないんでしょ。懐かしい気分に浸ってるなら……」
「かせよ」
「え?」
「かせって! ほら、早く!」
 バトーは、強引に素子の手から傘を取り上げると、急いでそれを素子に差しかけた。
「どうだ。やっぱり傘はあったほうがいいだろが?」
「何勝手な事ばかり言ってるのよ。懐古趣味はどうしたの? それに傘は私のよ……
でも、やっぱりあったほうがいいわね」
 素子はそう言って、にっこりと笑った。
「だろ?」
 素子の顔を見たバトーは、満足したようにニタリと笑った。

111:聖夜の奇跡6
08/12/24 21:58:21 IckQvrHO
 だが、折角の傘は余りに小さすぎ、その傘の大部分を素子に差しかけるバトーは、
かろうじて頭だけを傘に突っ込み、大きすぎる体の大半には雪が積もっている。
 目指す店まで、あと10分も歩けば着くはずだから、我慢しようと思えばなんでも
ないような気もした。
 さすがにここまで来ると、クリスマスを楽しむ人達が大勢いる。
 傘の中で肩を寄せ、体をピッタリと密着させた二人組の間をぬう様に、
バトーと素子は歩き続けた。
 同じ傘の中にいても、どう見ても恋人同士とも思えない二人は、周囲から異様に
浮いていた。
 当の本人達は一向に気にしてはいないのだが、何故かすれ違う人達は、この奇妙な
二人組を自然と避けるように移動していく。

「なんか……避けられてないか? 俺達?」
「別に何も気づかないけど」
「そうか? 気のせいか……」
「でも、ここまで来ると、やたらとカップルが多いわね」
「当たり前さ。イブだぜ」
「楽しいのかしら? みんな同じ事やって?」
「そりゃ楽しいだろ」
「あなたも楽しいの、バトー? 少しはロマンティックな気分とやらを感じてる?」
「はぁ? 感じちゃいねえよ。おまえと一緒だぜ? そんな気分にはならねえな」
「そう……私もバトーと一緒じゃ、そんな気分になれない」

―あいつとなら、そんな気分になれるのか?

 一瞬、バトーはそう聞いてみたくなった。
 だが止めた。
 わざわざ不愉快な事を口に出す必要もないと思った。
 聞いても答えははっきりとわかっている。
 9課のビルで、素子は夜景を眺めているわけじゃなかった事など承知の上だ。
 素子は、光の洪水の中に、はっきりとあの男の姿を見ていたに違いないのだから。
 素子は、決して忘れはしないだろう。
 あの懐かしい幼馴染とかいう、あいつの事を……
 素子の消えた二年間、自分が決して草薙素子の存在を忘れなかった様に。
 だからなんとなく、素子の気持ちは理解出来るような気がした。
 理解出来ると言うだけで、不愉快極まりない事は変わらないのだが。

112:聖夜の奇跡7
08/12/24 22:02:21 IckQvrHO
「だめだな。ここも満員だ」
「仕方ないわよ、こんな夜だもの」
 3軒目の店に断られ、二人は再び歩道に出た。
「こりゃ朝まで空いてる店が見つかるかどうか……」
「見つければいいじゃない。きっとどこか空いてるわよ」
「朝まで、ずっと歩いてもいいってか?」
「構わないわよ。明日は休みだし」
「少佐。俺、明日仕事だ」
「そう?」
「そうじゃねえだろ。ひでえな」
「我々にはチームプレーなどと言う都合の良い言葉は存在しない。自分の仕事の
責任くらい自分で取ってよね」
「俺、おまえの事……時々、ひでえ女だと思う時があるぜ……」
「そう? 自分じゃあんまりそうは思わないんだけど」
「言っても無駄って感じだな」
「フフフ……そうよ、無駄よ。だから黙って歩きなさい」
「はい、はい、了解」

 二人して夜の街をどこまでも歩いた。深夜になっても人の波は消える気配もない。
 あいかわらず、冷たい雪がバトーの上に降り注ぐ。
 半ばヤケクソな気持ちになりそうだったが、こうして黙って二人で歩いていると、
バトーは、不思議と落ちついてくるのを感じていた。
 素子が消えて二年。復帰して一年が過ぎようとしていた。
 ―もう、戻らないかもしれない。
 何度もそんな事を考え、いつの間にか心は荒んでいた。
 だが、素子はある日突然帰ってきた。
 そして、こんな夜に自分の隣りを歩いてる―傘というおまけまでつけて。
 自分が本当に望んでいたのは、素子の気持ちでは無く、ただ同じ場所にいてくれる
それだけだったのかもしれない。
 明日生まれたとかいう救い主が、不器用な男を哀れんで起こした小さな奇跡なのかも
しれない―そんなふうに思えてくる。

「なあ、魂の救済ってのは、本当にあると思うか?」
「なあに? 懐古趣味の次は宗教の話でも始めるつもり? そんなに信心深い人間だった
かしら?」
「俺は至って信心深い人間だ。おまえもよく知ってるだろ」
「知らないわね。今、初めて聞いた……でも、自分の魂を救済してくれる人間は、世間
一般で言われているような救世主なんかじゃなく、案外身近にいる人間なんじゃない?」
「……ああ、そうかもしれねえな。おまえには、そんな人間はいるか?」
「さあ、いるようないないような……よくわからないけど、いるかもしれない」

―それは、俺だ!

そう言ってしまいたかったが、さすがにそれを口に出しては、思い上がりというものだ。
 折角一緒にいられるのに、総てがぶち壊しになってしまう。
 このまま黙って歩いて行こう―バトーは、そう思った。

―おわり―

113:名無しさん@ピンキー
08/12/24 22:31:19 AUiGl4lI
GJ!
クリスマスプレゼントいただきました。

バトー、がんばれ。

114:名無しさん@ピンキー
08/12/24 22:33:09 p5jvqaEy
キャラに違和感もなくいい雰囲気だ
メリークリスマスGJ!


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch