【お焚き上げ】投げSS供養スレ【墓場】at EROPARO
【お焚き上げ】投げSS供養スレ【墓場】 - 暇つぶし2ch300:ウィンターウォーズ
10/01/06 23:08:40 e596juei
当然、首都圏の交通網は全部マヒ。
空港も全面閉鎖。
父さんは安全のため会社に缶詰になって三連休の家族旅行もパァになった。
でも僕はそれどころじゃなかった。液晶テレビの向こうで血の気の多い某知事が
「県民を安心させるためにさっさと撃ち殺せ」とわめき立て、他所の特番では超常現象
関係の面々が、あれはプテラノドンが進化した貴重なUMAだいやいや宇宙から飛来した
何やらだとはしゃぐ中、僕は部屋に篭ってPSPを放り出してガタガタ震えていた。
恐る恐る覗いたYOUTUBEにもリオレウスの映像がテンコ盛り。
偶然だと思いたいよ。
でもあの場にいて、出現する直前に不思議な現象を見てるんだもの。
きっとよくある特撮物のように今にも家に政府の高官とかがやってきて……。
途端、ピリリと携帯が鳴って僕はホントに悲鳴をあげた。
着信はマキからだった。
「おい、テレビ見てるか?凄いことになってる」
古典SFとネイチャー雑誌をこよなく愛する筋金入りの変人ガンナーは
僕の返事も待たずにリオレウスの動向をまくし立て始めた。
「あいつは動物園のシマウマを食った後、23区上空を周回、今は風にのって房総半島に」
「おれが知るかよ!」
僕は怒鳴った。
僕のように怯える事もなく余裕ぶっこいて情報を語るマキの気持ちが理解できなかったんだ。
「おれはハンターじゃねぇよおれのせいじゃねぇよ!」
そんなに冷静になれるんなら自衛隊にでも教えてやれよ、あいつには毒がよく効くってさ!
「落ち着けよ、誰もお前にどうにかしろなんて言ってない、逆だ」
マキの声はしっかりしていた。
「お前は小心者だから今頃パニクってるんだろうと思って電話したら案の定だ」
意外だった。
マキはあんまり他人に関心を示さない本の虫だと思っていたから。
実際僕は、学校から逃げ帰る時、片思いのユキに現実逃避目的で
家に来てくれとお願いしようかと思ってたんだ。
「ゲームキャラが実体化した時点でガキの手に負える範囲なんか
とうに越えてるよ、だから気に病むな」
「……ありがとうな、マキ」
僕は泣いていた。


301:ウィンターウォーズ
10/01/06 23:09:42 e596juei
そうして、お腹が空いていたのに気が付いてリビングに出て来たら、
カプコンの開発部の責任者がテレビに写ってた。
やっぱりというか、何と言うか、動物園の監視カメラの映像や、YOUTUBEの動画から
関与を疑われたらしいのに、マイクを向けられた開発部の人は嬉しそうな顔をしていた。
モンスターハンターの世間的浸透度を喜んで、鋭意製作中のスピンオフ新作、猫の里を
アピールして事態を茶化したついでにリオレウスの存在自体を完全否定していた。
そこで画面が慌ただしくなって、サーチライトに照らされる夜の森が映し出された。
房総半島上空を飛んでいたヘリコプターがリオレウスを見つけたとかで、
実況中継に切り替わったらしい。
わらわら集まる光源を嫌がって、リオレウスが首を尻尾を振って雄叫びをあげる。
その様子に興奮した女子アナがわめき立てた。
『ご覧下さい、怪物がこちらを威嚇しています、あっ、自衛隊です、
自衛隊のF戦闘機がミサイルを放ちました!』
白いハレーションと轟音の嵐の中、リオレウスの悲鳴が聞こえた。
『あっ、怪物が飛びますきゃあこっちにひいいぃいいい』
唐突に画面がスタジオに戻って、生物学者や流体学?とかの学者さん達が、
腹部には空気を溜める器官があって、それで飛翔が可能と思われる、とか
意外とぐんにゃりした動きから甲殻を持った無脊椎動物の可能性もある、
とか、色々この世界の物理法則でリオレウスを分析して語っていた。
その間にもあちこちのカメラがリアルタイムで捉えたリオレウスの様子を
流しまくり、時折ミサイルが撃ち込まれる。
なんだかリオレウスが可哀相になってきた。
そりゃカプコンもなんとかしろ、って言われても困るだろうけどさ、あれがナナテオや
クシャルだったら、どんな顔をしてインタビューを受けるんだろう、爆撃に晒されて
追いかけまわされて苦しむ姿を見たらどう感じるんだろうって思ったら……。
やる瀬ない気持ちでマキに電話した。


302:ウィンターウォーズ
10/01/06 23:10:55 e596juei
「見てた今の?」
「さっきまでレイが憤慨していた。あいつ大のリオレウス好きだから」
「マキ、リオレウスを帰す方法ってなんかない?」
「そいつは難題だね」
「そこをなんとか、スペースファンタジーだとなんかあったりするだろ」
「そうだね、神様が筒井康隆のような意地悪でなきゃ、条件が揃えば帰せる
可能性はある。それからSFはサイエンスフィクション、空想科学小説だ」



戒厳令が敷かれた静かな夜明けの街を、僕らは誰にも
見つからないよう学校に向かってひた走った。
一世一代の大博打。
見つかったらおしまいだ。
教室に入って、席に座るなりPSPの電源を入れる。
きっかけは夜中の3時に届いたマキのメールだった。
「ニュースを見てて気が付いた、学校がエリア5、気の毒なシマウマのいた動物園は
エリア9の水呑場、都心はエリア6、房総半島はエリア2に合致するんだ。
(エリア2は正確には東京湾になるんだけど、陸地じゃないから足を伸ばしたんだね)
あちらの時間経過とリオレウスの疲労度から推察すると、午前6時に学校に来る」
祈るような気持ちだった。
リオレウスが戦車やミサイル爆撃で死ぬと思えないけど、
世界中の人達の嫌悪と好奇に晒されるのは嫌だから。
神様、どうかお願いです、ユキにフラれても泣かないから、
リオレウスを帰してあげて下さい。
ドスランポスを、イヤンクックをクリア、ランク1リオレウスを受注。
装備もあの時と全く同じに、アイコンを確認する。
飛竜のマークはない。
これは……確変!?
思わず空を見る。
朝焼けの空に白く輝く基点が現れ、みるみる輝きを増していく中、窓がビリビリ鳴り始めた。
きた……!
傷だらけのリオレウスが咆哮し、光の渦に飛び込む。
水の王冠のような軌跡を描いて光も消えていった。
「マキ、あんたクールだわ」
ユキの声がした。
振り返ると、ユキがマキのほっぺたに何回もキスをしていた。
嘘……っ、ユキがマキにっ……。
「あたし、あんたに惚れたかも」
ちょっと困った顔で視線を逸らしてこめかみをポリポリ掻いてるマキの頬は真っ赤だし。
そりゃフラれても泣かないって願掛けしたけど、
ホントにフラれるなんて、あんまりだぁぁぁ。
へたりこむ僕の頭上で、(顔は知らないけど)筒井康隆に似た顔の
神様があかんべぇをした気がした。





303:名無しさん@ピンキー
10/01/11 00:46:01 VrP1CAh/
ナイス投げ

304:普通?のカップル
10/01/11 21:57:45 ZqggBXX6

ピン、と中途半端なピンポンの音。
ボタンが壊れていて後半の音が出ないのだ。
時計を確かめると、約束の時間ぎりぎりだった。
俺はインターフォンを確かめもせずにドアを開けた。

「おじゃましまーす。間に合った?」

と奈緒が入ってきた。
顔半分がマフラーに埋もれているくせに、鼻と頬が赤い。

「ちょうど。外そんなに寒かった?」

「うん、わりとね」

勝手知ったる他人の家、奈緒は手持ちの鞄を定位置の本棚の前に置いた。
今日は久しぶりの連休でうちに泊まり込みに来たのだ。
このところ仕事が忙しくて暇がなく、数週間会ってない。
しばらく耐え忍んだせいか今日は一段とかわいく見えるような……気のせいか。

とりあえず、今日は荷物を置いた後で買い物に出かける予定だ。
奈緒が何やら買いたいものがあるらしい。
さぶさぶ、とこたつにもぐりこむ奈緒。
出かけるんじゃないのか、と思ったがまあ一服入れるのもいいだろう。
コーヒーを淹れてやるとありがと、とこたつの中から手を出した。

「おいし」

マグカップを手に自分もこたつに入った。
一口コーヒーをすすった後で、奈緒の顔がまだほんのりと赤いのに気付く。

「風邪引いてるんじゃないよな?」

「え、何で?」

「顔赤い」

額に手を当てるが、冷え症で寒がりの奈緒の額はまだひやりと冷たかった。
確かに熱もないし、声もかすれていないし鼻声でもない。

「ちょっと寒かっただけだよ」

だがそう言って顔を伏せた奈緒の、目が少し潤んでいたのを俺は見逃さなかった。
一気にコーヒーを飲み干して、

「ごめん、ちょっとトイレ借りるね!」

と立ち上がった時の不自然な立ち方。なんでスカートを押さえてるんだ。
妙な予感がする。
俺は怒られるのを覚悟で、後ろを向いた奈緒のスカートをめくりあげた。

「なっ……!」

ぱんつはいてない。


305:普通?のカップル
10/01/11 22:05:22 ZqggBXX6
「ちょっ、馬鹿何してんの!」

奈緒は俺の手をひっぱたいて慌ててスカートを直したが、そりゃこっちのセリフだ。
黒のタイツは色が濃くて透けにくいが、そのほんのりと透けた肌色のエロスといったら、まあ。

「なんではいてねーの!?しかもその上からタイツとか、えっろ……」

奈緒はそういう、色っぽいことを積極的にするような性格じゃない。
なので、これは。

「うううう、うっさい!いいじゃんなんだって」
「いやいやいや、あの、おもらしじゃない……よな?」
「な、ち、違うに決まってるでしょ!」
「じゃあ何」
「それは……」
「本当は用足したかったんじゃないよな」
「……うん」
「さっきからそわそわしてたのはそのせいだよな?」
「……うん。なんでバレたんだろ」
「そりゃあ、お前、愛の力っていう」
「馬鹿」
「いーじゃん、俺たちの仲じゃん、教えよーぜ。なんで?」
「やだ。だって絶対馬鹿にするもん」
「わかったわかった、絶対馬鹿にしないから。おせーて」
「……絶対?」

俺はぶんぶん首を縦に振った。
あんまり勢いよく振ったので、奈緒もちょっと苦笑した。

「だってさ。総一、時間に遅れるの嫌いじゃん。予定が狂うって」
「んー。まあ、ほどほどにしてくれると、ありがたいかな」
「今日も時間に遅れちゃいけないと思って急いで支度したんだけど、
 やっぱりギリギリになっちゃって。
 でも何とか電車には間に合ってさ、乗ったところで気付いたの」
「……はいてないことに?」
「さすがにそれはない!あのね、気付いたのは、その、下着の上下が違うってこと」
「はあ」
「いやホラ、今までは一応、ちゃんと上下同じの着てきてたんだよ!
 今回はついうっかり違うの付けてきちゃって。
 で、駅のトイレで着替えようかと思ったんだけど乗り換えの電車が来るから。
 で、しょうがないからタイツだけは履いたの」
「……はあ」
「そういうのも総一はだらしないと思うかな、って気になっちゃって。
 とにかく着いてから履けばいいか、って考えたの」
「いや……それは、別にそこまで気にしないけど……」
「そ、そう?ならいいんだ」

ほっとした表情で俺を見る奈緒の顔がやけにかわいく見える。
あれ、これって。もしかして。

「奈緒。お前、……感じてる?」

306:普通?のカップル
10/01/11 22:07:41 ZqggBXX6
「奈緒。お前、……感じてる?」

奈緒の顔がかっと赤くなる。

「何いってんの。そんなわけ」

「ノーパンで電車乗ってきて感じてるとかエロすぎるだろ。……奈緒?」

後ずさりする奈緒の肩を左腕でがっちり捕まえて、右手をスカートの中に差し入れる。

「や、やだっ、総一、待って」

暴れる奈緒の隙を突いて、スカートの中をまさぐる。
タイツのちょうど股の部分は実際の足の付け根からは少し空間があるが、タイツはうっすらと湿り気を帯びている。

「濡れてんじゃん」
「やだ……」
「そんな状態で電車乗って、痴漢に襲われでもしたらどうするんだよ。
 俺は別に下着のことは気にしないから」
「うん、そうだよね。なんか焦っちゃって。今は何やってんだろって思う」
「……で。何かエロいこと考えてたんじゃないよな?」
「へ?」
「やらしーこと想像してたんじゃないよな、って言ってんの。」

スカートの中に手を入れたまま、ゆっくりと太ももを撫でる。
肝心の股の部分は微妙に距離があって届かない。タイツめ、なんてにくい構造をしているんだ。

「あのね」
「うん」
「……総一のこと、考えてた」

その一言で理性は吹き飛んだ。狭いワンルームのこと、すぐ傍にベッドはある。
俺は抱えた奈緒ごとベッドの上に倒れこんだ。
むしゃぶるようにキスを重ねる。
奈緒もいつになく積極的で、舌を入れても抵抗せずむしろ自分から絡めてくる。
セーターの上から、夢中で奈緒の胸を揉む。
奈緒の呼吸が荒れてきてキスの合間に吐息が漏れた。

「あ、あっ、……はあっ、そ、……ーいち……」
「ん」
「だめ……こんな、明るいっ、うち、から……」
そうは言っても、身体は正直だ。
感じやすくなっているのか、キスと胸だけでこんなによがってるのに。

「やだ。俺もう我慢できねえもん」


307:普通?のカップル
10/01/11 22:24:24 ZqggBXX6
俺の息子もとっくに硬くなっていた。
数週間のお預けの上、この据え膳で我慢できる男がいるものか。
既に奈緒に突っ込みたくて大暴れしている。
でもいつにない奈緒の痴態を味わいたくて、わずかな理性でとどまっている。
「奈緒こそこんなに濡らしてるのに、出かけられないじゃん」
「……うん……」
奈緒のセーターを胸の上まで捲り、さらにブラも外さずずり上げる。
巨乳というほどでもないが、柔らかくって触り心地のいい奈緒の胸が現れる。
「久しぶりー、俺のおっぱい」
胸の間に顔をうずめると、奈緒が顔を上げた。
「なんで総一のなのよ」
「だって俺のだろ」
「……ん」
恥じらいつつ頷く奈緒。
やばい、エロかわいいっていうのはこういうことか。違うか。
じかに胸に触れると、ん、と奈緒が眉根を寄せる。
すべすべして気持ちいい。
奈緒の肌は全体に気持ちいいけど、中でもここが格別だ。
乳首はガンガンに立って硬くなっていて、ちょっとつつくだけで奈緒の身体がぴくんと跳ねた。
しばらく舌で優しく転がした後、きゅっとつまむ。
「ひゃ、あぁんっ!」
いつもは恥ずかしいからって、声を堪えてるのに。
今日の奈緒はやばい。
「奈緒、悪い。俺もう、限界なんだけど、いい?」
「うん……、いいよ」
そう言って服を脱ごうとする奈緒に、俺は待ったをかけた。
「え?」
「せっかく奈緒がやらしい格好してるんだし、そのままで」
「着たまま、するの?」
奈緒はちょっと意外そうな顔をしている。
そういえば着衣エロはしたことなかったか。
まあ、奈緒のエロ知識は俺が育てたようなものだからな。
といっても今日のようなケースになるとは思いもよらなかったけど。
「そのほうが興奮するって。いーだろ、たまには」
「……総一のどすけべ。変態」
「褒め言葉として受け取っておこうか」
言いながら奈緒のスカートをめくる。
黒いタイツの中に、うっすらと透ける肌と陰毛。
エロい。エロすぎる。
ああ、息子が痛いほど張ってきた。
名残惜しいがタイツを膝下あたりまで引き下げる。
「え、タイツも履いたままなの?まさか」
その状態で奈緒の身体をころんとうつ伏せにする。

「そのまさか。奈緒、四つん這いになって」


308:普通?のカップル
10/01/11 22:26:45 ZqggBXX6
「……恥ずかしいよ」
「何をいまさら」
何回俺が見たり突っ込んだり舐めたりしたと思ってるんだ。
「明るいし」
カーテンを引いているとはいえ、隙間から真昼の日差しが差し込んでいる。
今日はいい天気だ。
いつもは暗いところなのでまだしも、明るいところで見られるのが嫌らしい。
うつ伏せたままもじもじしている奈緒の、割れ目を指先で撫でてやった。
「ふあぁあんっ!」
不意打ちでびっくりしたのか、驚くほど大きな声が出た。
奈緒は顔を真っ赤にして首だけ振りかえった。
「ば、馬鹿!」
「すっげー濡れてるんだもん」
「だって……あっ……」
再び指でなぞると、それだけでぬちゃ、といやらしい音がする。
形のいい尻が震えてきゅっと力が入る。
「奈緒も、……欲しいだろ」
「ん。……も、今日だけ、だからね」
すっと腰を上げてくれた。
割れ目とそのすぐ上の穴が露わになって、良く見える。
てらてらに光って、きれいなピンクのはずがやけに怪しい色に見える。
「あんまり見ないで……」
めくりあげられたスカートに、中途半端に下ろしたタイツ。
誘うように、締まった尻が俺に向かって突き出される。
本当はもっと舐めたりいじくったりしたかったが、我慢も限界だった。
焦る手でベルトをはずして、下着をおろす。
ベッドの下に隠してあったコンドームを付けると、奈緒の腰に身体をあてがった。
「いくよ」
ずぶ、と音が立ちそうなぐらい引きこまれた。
奈緒の中はぬるりとぬめって、少しずつ入れようと思っていたのに一気に入ってしまった。



309:普通?のカップル
10/01/11 22:29:45 ZqggBXX6
「あ……やばい、奈緒。すげー気持ちいい……」
正直すぐイキそうなぐらいやばい。
動くよ、と言いながら既に腰が動いてしまっていた。
「ん、っ、ああ……っん!」
奈緒がたまらず嬌声を上げる。
いつにない奈緒の甘い声に、自然こちらの動きも激しくなる。
奈緒の張りのある尻をひっ掴んで、がつんと打ち付ける。
奥まで深く突くたびに、奈緒の尻が痺れたようにぷるぷる震える。
それがいやらしくて、もっと見たくなって、何度も何度も突きいれる。
「ふぁ、あっ、そう、いち……」
どこからかテレビの音が聞こえる。
そうだよな、休日の真昼間だもんな。
ってことは、こっちの声も聞こえてるかもしれないな。
そう思ったら、嫌だと思う半面もの凄く興奮してきた。
「奈緒っ……」
押し進めるごとにまといつくような感触。
「あん、そー、いち……すごっ……んん!」
引き戻すたび襞に引き絞られる感覚。
「やぁんっ!そーいち、やだ、あたしっ」
奈緒が悲鳴を上げる。
あ、と思った瞬間には熱い液が迸っていた。
それこそどばっ、ていう擬音がつきそうなぐらい大量に。

「……っはぁ……」
しばし放心状態。
数回、勢いに任せて動いた後ゆっくり引きぬくと、ご無沙汰だっただけに
どろりと濃いのが溜まっていた。
「うわ、すげ……あれ、奈緒?」
身体を離した途端、奈緒の腰がかくんと落ちた。
慌てて奈緒を横たえると、寝起きみたいなぼんやりした表情をしている。
「ん……」
「もしかして、奈緒、イった?」
「そう、なのかな……。なんとなく、こんな感じになったことはあるんだけど、
今日はなんか、凄かった」
そう言って目だけで俺を見上げる。
そんな顔で凄かったとか言われると、嬉しいんですけど。
やばいんですけど。
すると奈緒の手が伸びてきて、ベッドの上に引き倒された。
「ね、総一。もうちょっとゆっくりしよ……?」
それは望むところだけど。
「買い物は、いいの?」
「うん。だって、明日もあるし」
「いいならいいけど」
「久しぶりに会ったんだもん。今日は、ぎゅっとしてたい、かなって」
「……そんなこと言うとまた襲うよ?」
早くも息子が復活しつつあるのを感じながら、奈緒の頬に軽くキスした。
たまには予定が狂うのもありかな、と思いながら。

310:普通?のカップル
10/01/11 22:31:51 ZqggBXX6
以上投げ。

普通すぎて面白くないとか、タイツのネタとかがもっと活かせそうなのに
思いつかないとかいろいろ。


311:名無しさん@ピンキー
10/01/12 17:00:32 DBepjGoJ
ナイス投げ!
これは良いエロ

312:名無しさん@ピンキー
10/01/12 19:49:42 VA/RZwT7
メインとして考えていたSS
ところがサイド用SSを早漏投下してしまい、つじつまが合わなくなる
続きが書けなくなったのでお焚き上げ 

*

「おまえだけはなんとしても助けてみせる。愛しい子、愛しいわが娘」

 ザナハリ軍に王都を幾重にも囲まれ、もはや猫の仔さえ逃げ出すこともかなわないと認
めたとき、タウフェジット聖王妃は降伏を宣言した。
 主力の聖騎士団は王とともに戦場で散った、地方領主は動けまい。いまの戦力では早晩
崩れ落ちるだろう。すこしでも余力を残した状態で危機をしのぎ、再起に備える。それが
上層部の判断であった。
 降伏調印ののち、聖王妃はすべての権限を剥奪され、王城の一角に幽閉される。 
「おまえのためならば、タウフェジットを差し出すことも厭わぬ」
 狂気の相を浮かべた母に強く抱きしめられ、聖王女はそっと瞳を伏せた。
 母からすればタウフェジットを思っての降伏ではない。じわじわと握りつぶされる恐怖
に心蝕まれた人々が暴徒と化して城に押し寄せ、聖王女をなぶり殺しにする、その未来を
避けるための行動。
 娘を守るためだけに。
「ただ一人の聖王女。おまえだけだ。おまえだけ。宝石の姫よ。世界はおまえにひざまづく」
「尊い御心、ありがとうございます、お母様」
「この艶やかな銀の髪、渦なす白銀の輝き。瞳はどうだ、なんという緑。美しきわが娘。
おまえは誰よりも美しい……そう……あの女より……」
「お疲れになりましたか。お水はこちらに。さあ、ゆっくりなさってくださいませ」
「どこへ行くの……だめよ……」
「私はどこへも参りませんよ。いつでもお母様のお側に。こうしてずっと手を握っていま
すから」


 聖王女はザナハリ軍が支配する王城で、精神の均衡を失った母親を見舞うため、わずか
ばかりの自由を許されていた。
 部屋から部屋へ。
 前後を黒衣の兵士に挟まれ、女官も伴わず歩む姿は、しかし凛として美しい。
 敗者の屈辱に苛まれていた者も、ひそやかに伝わる聖王女の誇り高さに涙せずにはいら
れなかった。

313:名無しさん@ピンキー
10/01/12 19:51:31 VA/RZwT7
 つまらないこと。
 聖王女は失望していた。
 吟遊詩人がこぞって歌いあげた麗しさ、貴公子は熱情をこめて恋を囁き、行き交う人々
の羨望のため息は途切れることがなかったというのに。ザナハリの蛮族どもときたら、折
に触れてちらちら目をやるだけの卑しい所作が苛立たしい。
 東方、身体に墨を入れる習俗を残す未開の小国にタウフェジットが負けるとは、想像だ
にしなかった。軍旗は黒、軍装も黒、洗練とはほど遠い姿に眩暈がする。
 このような者どもが蠢く地に嫁がれたのか、姉上様は。
 

「待て」
 礼儀を知らぬ声につ、と視線だけを流す。
 黒髪ばかりのザナハリ兵では初めての、赤を宿した男がいた。
「こちらへ」
 かなりの地位にあるのか、見張りの兵士たちが無言で従う。
 背が高い。聖王女の頭頂がようやく胸元に届くだろう。わずかに顔を傾ければ、たく
ましい戦士の体躯と荒削りな容貌が窺える。
「気が済まれたか?」
 不躾な視線を揶揄されて、聖王女は頬を染め俯いた。好奇を見透かされた怒りを隠す
ために。
「大公妃様はこのことをご存じでいらっしゃるの」
「立場を弁えろ」
「大公妃様に謁見の申し込みを。私は王族にふさわしい扱いを望みます」

*

ここまで
ザナハリ大公妃は聖王女の異母姉
幼い頃に母親が権力争いに負け、王族としての存在を抹消されました
侵略軍の先陣を率いる恐ろしい女性
このあと聖王女は玉座のない謁見の広間へ行きまして、商人と引き合わされます

314:名無しさん@ピンキー
10/01/12 19:53:08 VA/RZwT7
 何度か見たことのある顔だ。
「素晴らしい」
 たしか……プラーマの商人。
「まさに聖王女と見まがう気品、色香ではありませんか」
「痴れ者が。この私を誰と心得る。タウフェジットの聖王女ぞ」
「いや、演技も堂に入ったもの。王侯のごとく血肉にまでとは望みませんが、ある程度の
不遜さは必要でありますからな」


みたいな感じで偽物認定くらったあげく


「おお、聖王女様は母君のご乱心により落命なされたとか。タウフェジットの方々にはお
悔やみ申し上げまする。比する者なき花と謳われた姫君はかくてザナハリの魔手より逃れ、
清らな身のまま人々の心に刻まれるわけですな、いやはや」


弔鐘が鳴り響き、聖王女は死んだということに
そしてプライドが高く認識の甘いお姫様は奴隷商の手に落ちてしまいます
<聖王女そっくりの娼奴>という触れこみで金持ち達からエロいことをされまくり、タウフェ
ジットという国はザナハリが吸収、地図から消えましたとさ


令嬢、女官、王女の三部作となる予定でしたが断念
なーむー

315:名無しさん@ピンキー
10/01/15 22:56:20 7TZt4uxs
ナイス投げ

316:名無しさん@ピンキー
10/01/20 15:24:10 XGmlkEjx
あれ三部作だったのか、残念
投げ乙

317:名無しさん@ピンキー
10/01/25 16:23:27 EvubSR2S
保守

318:名無しさん@ピンキー
10/01/28 01:52:47 SCJu8SXt
書いてる途中で漫画本編が進んでしまったので投下



千鶴は大いに悩んでいた。
放課後に風早をつかまえて口を割らせてからずっと、家に帰るまではおろか
家に帰ってからも、床をごろごろと転げ回りながら悩んでいる。
既に風呂も食事も済ませ、そろそろ寝る時間だというのに、一向に眠気が訪れない。
先程の爽子の件、ではない。
大きく関係しているのは事実だが、今の千鶴にはそれ所ではなかった。

「男は好きな女に触りたいと思うもの」

風早に言われた台詞が、頭でぐるぐると廻っている。
自分は龍に触れられた事はない。
頭を撫でられたり、慰める為に抱きしめられたことはあっても
男女として触れ合う事など皆無だった。
部屋に二人きりでいる時でも、ゲームや漫画、お喋りをするだけ。
あいつは、本当に自分のことを好きなんだろうか。
友達の延長、幼なじみの延長という事はないんだろうか。
風呂の中で見下ろした自分の身体を思い出して、思わずため息が出てしまう。
女らしい柔らかさのない身体。
「美しい」「可愛い」といった修飾語を付けようのない顔には
目つきが悪いと評するに遜色ない雰囲気が纏わり付いている。
これで女を感じろ、と言う方が無理なのかもしれない。
「やっぱ、触り甲斐がないよな」
自分の肩や足に手をやり、硬い感触に眉をしかめる。
大体、龍が悪いのだ。
自分に好きだと言っておきながら、何をする訳でもない。
部屋に行けば以前と同じ、口を開けば相変わらず。
これで安心しろと言う方がおかしい。
今日ずっと悩んでいたのは龍のせいだ。
ぜんぶ龍のせいだ。
決めた、龍が悪い。
折しも明後日からはゴールデンウイーク。
時間はたっぷりある。
対決して、白黒はっきりさせてやろう。
そもそも何を悩んでいたのか、主旨がずれている事にも気付ない。
千鶴は鼻息も荒く布団に潜り込み、苛立ちに任せて荒々しく寝返りを打った。

319:名無しさん@ピンキー
10/01/28 01:54:17 SCJu8SXt
しかも投下中にメモ帳とぶとかorz

320:名無しさん@ピンキー
10/01/29 00:57:11 O75CVXJa
>>319ヾ (゚Д゚ )…イ㌔

321:名無しさん@ピンキー
10/01/29 19:19:03 qhMK9xvT
>>318
ナイス投げ

322:名無しさん@ピンキー
10/01/31 20:12:19 ynLjQ/Fg
>>318


323:名無しさん@ピンキー
10/02/04 01:30:29 to1EOBLN
ヤンデレスレに投下しようと書いた長編のプロローグ的な話
完結させる暇がないのと、ヒロインの吃音症を上手く表現できず、投げてしまいました

 夕焼け。
 開け放った窓から、生ぬるいそよ風と共に聞きなれた掛け声が聞こえる。
 頬杖をついて、見下ろすグラウンドには、青春に汗を流す同年代の少年少女。
 その中のある場所に、俺の視線は固定されている。
 グラウンドに敷かれたダイアモンド。
 その中心、小高い丘に立つ一人の少年。
 彼は腕を大きく振りかぶって、手の中の小さなボールを投げる。
 直ぐに、カーンと小気味よい音が響く。
 高く上がった白球は勢いよく、空へ吸い込まれていく。
 このグラウンドに柵はなくホームランは存在しないが、普通の球場なら間違いなくホームランだろう。
 俺が通うこの、県内いや、全国でも十指に入るとされる強豪校の神明学園野球部で一番の強打者相手に、馬鹿正直に速くもない速球で勝負すればこうなることなんて明らかだろうに。
 ―俺が投げるなら、あんな惨めな醜態さらさないのに。
 そんな愚にもつかない考えが浮かんだところで、はん、と自分を鼻で笑う。
 何を今更。
 こんなところで、未練がましくかつて俺がいた場所を眺めている自分のほうがよほど惨めじゃないか。
 ズクンと左肩に鈍い痛みが走り、ち、と舌打ちして窓から視線を外す。
 放課からしばらくたち既に人気のないはずの教室に、一人、俺以外の少女がいた。
 同じクラスの少女で、名前は雛森小夜。
 見かけるたびにいつも一人で、誰かと話しているところなんて見たことなかった。
 なんでも、何ぞやの楽器がうまく多くの大会で賞をもらっているというような話を聞いたことがあったような気もするが、どうだっただろうか。
 つまり、俺にとっての彼女は容姿はいいが、今の今まで特に印象を抱くことのなかった少女だ。
 彼女は、机の上に置いてある教科書を、じっと見つめて微動だにしない。
 窓の外から少しでも意識をそらしたくて、俺は彼女にそっと近づいた。
 そして、彼女の視線の先にあるものを見て、
「成程」
 思わず声を漏らした俺に、びくりと肩を震わせ、少女は顔をあげた。
 どうやら、彼女も自分以外に誰かがいることに気づいてなかったのだろう。
 驚いたように見開いていた黒目がちな瞳が、やがて怯えの色を濃くしていく。
 俺はと言えば、彼女から視線を外し、再び彼女の机の上の教科書を未だ眺めていた。
 当然ながら俺が持っているモノと何ら変わりのないただの教科書。
 けれど、その教科書には汚い文字で悪辣な言葉がいっぱいに踊っていた。
「今時、こんなことする奴いるんだなあ」
 漫画やテレビの中でしか見たことのなかった、いじめの王道ともいってもよい代物に感心した声がもれた。
「あ……」
 少女が震えるような声で鳴く。
 かなり小さな声だが、透き通るような声。
 同じクラスになって、3ヶ月近くたつのに、初めて声を聞いた気がする。
 彼女はと言えば、ようやく俺の視線に気づいたように教科書をあわてて机の中に引っ込めた。
「なあ、お前ってエンコーなんてやってるの?」
 教科書にあった悪辣な言葉の一つの真偽を尋ねてみる。
 かなりデリカシーのない行為だが、今の俺はとにかくムシャクシャしていた。
 つまり、ムシャクシャしてやった、相手ならだれでもよかったっていうやつだ。
 ……あれ、なんか違うか?
 まぁ、半ばというか100%八つ当たりの俺の言葉に彼女は今にも泣きそうな顔をして、
「や、やって、ない……です」
「え、そうなの?でも教科書に書いてあったけど」
「あ、あそこに、か、書いてあるの……嘘、ばかり……です」
「ふうん」
 確かに目の前の少女は印象からしてそんな事をするようには見えなかった。
 触ると冷たそうだと思わせるほどの白い肌、黒目がちで大きな瞳は大粒の涙をたたえ、
 両側の一部を兎の耳のように黄色いリボンでまとめた肩よりも長い柔らかそうな黒髪。
 絶世の美人というほどでもないが、学年の女子の中でも上位に入るんじゃないかと思うその容姿からはどことなく、育ちの良さが感じられた。
 まぁ、だからといって、そういうことをやっていないとも限らないんだが。

324:名無しさん@ピンキー
10/02/04 01:32:19 to1EOBLN
「他にも何かされてんの?」
「……え?」
「いや、それって所謂いじめだろ。だったらこれだけじゃないのかな、と」
「……」
 彼女は俺の無神経な質問に答えず、俯く。
 それが、雄弁に答えを語っていることに彼女は気づいているのか。
 数秒の後、コクリとうなずいた。
 それから、興味本位な俺の質問に、彼女はやはりオドオドしながらも何故か答えてくれた。
 俺がもしも彼女だったら絶対に、一発殴るなり引っ叩くなりして罵倒して、逃げるだろうけど彼女はそうはしなかった。
 彼女の性格がそうさせているのかもしたら、それよりも彼女は話したかったんじゃないだろうか。
 誰でも、どんなことでもいいから、彼女は同年代の人と話したかったんじゃないだろうか。
 未だ濃い怯えの色の中にほんの少し、嬉しそうな色が混ざっているのを見つけ、何となくだがそう思った。
 

 彼女の説明によるといじめは、去年、つまり高校1年の春過ぎから続いていて、いじめの原因はある同級生の告白を断ったことが発端となったという。
 告白を断っただけで、いじめなんてどこの漫画の中の話ですか、と言いなくもなったが真実らしかった。
「こ、こ、告白だけなら、今まで何度か、け、経験があるの」
 話しているうちに敬語は治っていたがうざったい吃音は相変わらずだった。
「……自慢か!告白なんて日常茶飯事ですよってことか!」
 何となく、場を盛り上げようとそんな風におどけてみる。
 すると彼女は、びくりと体を震わせて、
「そ、そ、そんなんじゃ、ない、もん」
 と、泣きそうな顔をした。
「泣くなよ、ただの冗談だろ」
「う、うん。わかって、る、けど……」
「で、告白され慣れた雛森は他の女子の嫉妬を買いましたってことか?」
「だ、だか、ら、別に慣れてる、わけ、じゃない……。それに、い、いじめられてる、原、因はそうじゃなくって……」
 そこで彼女は言葉を切って考え込むようなそぶりを見せた。
 窺うように俺の瞳を覗き込んでくる。
 その上目遣いに少しだけ、心臓が跳ねたが、気付かないふりをする。
「なんだ、相手のことを気遣ってんの?別に誰にも広めたりしないって」
 そんなことよりも、こんな中途半端で話を止められたら気になって今夜眠れなくなってしまいそうだ。
 しかし彼女は、ふるふると首を振る。
 どうでもいいが、さっきから雛森の行動はやけに小動物チックだ、と兎の耳のように跳ねる髪を見て思った。
 ……狙ってやってるんじゃないだろうな?
「そうじゃ、なくて、う、う、宇佐美、くんは、知らない、の?」
「は、何を?」
「え、と、わたしが……い、い、いじめられてる、原、因」
「なに、そんなに有名なのかその原因って」
「わかんない、けど、多分……」
「ふむ、まあ俺はそういうのに頓着しなかったからな」
 正確にはそれどころではなかった、というところだろうか。
 1年前はそれより夢中になることで忙しかったし、最近は、周囲のことに気を配る余裕もなかった。
 だから、その有名な原因とやらを知らなくても不思議ではない。
「い、飯尾くんって、知って、る?」
「……飯尾、ね。このクラスの委員長で野球部のエースだろ」
「うん、去年その人に、こ、告白されたの」
「へぇ……あいつがねえ」
 クラス委員長である飯尾一樹の姿を、思い浮かべてみる。
 中学から一緒だった背が高く、切れ長の目をした彼は、性格も誰とも分け隔てなく接し、優しく温和で女子、男子ともに信頼が篤く、人気もそこそこあるほうだろう。
 学力、運動神経ともに並み以上の才能を持っていることも人気の一因と言える。
 しかし、俺に対しては以前から必要以上に突っかかってくるので正直辟易としていた。
 それは、俺が野球をやめた今となっても変わらず、たびたび俺に対し勝ち誇ったような、小馬鹿にしたような表情を見るたびに殴りたくなる衝動抑えるのに苦労していた。
 表では愛想良く、人当たり良い人間を演じているが、気に食わない人間などには才能を鼻にかけた傲慢さで見下した態度をとるような男であった。
「んで、その飯尾が断られたのを逆恨みしていじめを主導してるってわけ?」
 少し剣呑になった俺の声色に雛森は、びくつきながらも小さく首を振るような、頷くような曖昧な仕草をした。

325:名無しさん@ピンキー
10/02/04 01:35:47 to1EOBLN
「正確にはそうじゃ、なくて。何故、か、わたしから飯尾、君を誘惑して、告白した飯尾君を、こっぴどく、ふった、ことになってて。
 みんな、その話を信じて、気が付いたら、誰も、わたしと、はなしてくれなくな、ってて……。も、ものを、かくされたり、らくがきされたり、してっ……。好きだった、ぶかつもやめなきゃ、いけなくなって」
 途中から雛森の声に嗚咽がまじる。
 また泣くのかよ、と心中で舌打ち交じりのため息をつく。
 好きだった部活、のくだりでまた痛みが走った左肩をさすりながら雛森を初めて可哀そうだと思った。
 暫く―雛森が落ち着くまで待って、
「んで、いじめの原因となる噂を流したのが飯尾ってわけか」
「うん……」
「証拠は?」
「告白の、次の日、い、飯尾君、が、話してるの、みた、から」
「はあ?それならその時、違うとでも否定すれば良かったんじゃないのか?」
「ひ、否定、したけど、誰も……」
「信じてくれなかったってわけか」
 小さく、頷く。
 そういえば、と思い出す節があった。
 友達との会話の中でそういう噂を聞いた気がする。
 その時は、俺の精神状態は最悪で話半分に聞いていたし、特に俺を馬鹿にするようになった飯尾の話題は当時の俺にとってタブーに近く、友達もそのことを重々していたのか、その話は直ぐに終わり、以来話題に上らなかった。
「にしても、誰かを振ったってことでいじめにつながるとはな」
「飯尾君、人気者、で、い、い、良い人、だから」
「ふん、良い人、ねぇ」
 まあ、大多数の評価がそのまま、その人物の姿を的確に表すとは限らない、ということだろう。
 それに、雛森がいじめられる原因は、もちろんその噂とやらが最大であろうが、彼女の容姿なんかも関わっているのかもしれない。
 なんというか、なんともベタな話である。
 使い古されて、カビでも生えてるんじゃなかろうか、というくらいには。
 そんなことをぼんやりと考えていると、チャイムがなった。
 時計を見ると、どうやら下校のチャイムらしい。
 あと幾分もすれば、教室のカギが自動的に閉められ、教員の見回りが始まる。
 見つかったからと言って別に何ということでもないが、女子と二人遅くまで教室に残っていると変な誤解を買いそうだし、いろいろと面倒そうだ。
 それに、あと数十分後には駅前のスーパーで夕方のセールが始まる。
 わけあって一人暮らし中の俺にとって、食費というのは決して馬鹿に出来ないものである。
「じゃあ、俺もう帰るわ」
 そう言って席を立った俺を、雛森が見上げてきた。
 何故かその顔が、残念そうに見えるのは気のせいだろうか。
「あ……は、はい」
 わたしも、帰り、ます、と雛森は呟き、鞄の中に件の教科書や筆箱を入れ始めた。
 何となく気付いていたが、彼女の動作は何と言うか無駄が多く、鈍い。
 簡単に言うと、トロ臭い。
 その様子を何とはなしに眺めていると、準備を終えた雛森が、俺の様子をうかがってくる。
「え、えと……」
 雛森を眺めて動かない俺に、戸惑ったように、きょろきょろと周囲を見わたしたり、自らの髪の毛をなでつけたりと忙しない。
 ふと、俺の手が吸い込まれるように、彼女の頭に乗った。
「ふ、ふぇ?」
 戸惑う雛森をよそに、ふわふわと柔らかい髪の感触をたのしむ。
 そして、わしゃわしゃと髪の毛をないかき回しながら、
「一緒に帰ろう」
 雛森は、え?と目を白黒させて。
 俺は笑みをこらえながら彼女の返事を待たずに、くるりと踵を返した。
 我ながら俺らしくない行動だとは思うが、
「え、え、え?」
 何が起こったのか理解できないというような声を背中に聞きながら、教室を出る。
 すると、ぱたぱたと慌てたような足音が聞こえてきた。
 足音は俺の数歩後ろで、ゆっくりとなる。
 背中に、彼女の窺うような視線を感じながら、
「なあ、雛森の家ってどこだ?」
「え……」
「ちなみに、俺の家は新市街あたりなんだけど」
「あ、わ、わたしも……」
「あ、そうなん?んじゃあ、同じ電車に今まで乗ってたんだな。朝何時発?」
「えと、7時5分」

326:名無しさん@ピンキー
10/02/04 01:36:31 to1EOBLN
「えと、7時5分」
「早すぎだろ、いくらなんでも。そんな早く来て何してんの?」
「本、読んだり、授業の、予習とか」
「……」
 暗っ!という言葉を飲み込み、下駄箱から靴を出し、上履きと履きかえる。
 まぁ、皆からシカトされてるならそれ以外にやることはないか。
 横を見ると、のろのろと雛森が靴を履き替えている。
 生来のものであろうドン臭さに、俺を待たせてる意識があるのか、妙に慌てていて、わをかけて遅い。
 はあ、とため息一つ。
 しかし、そのため息が少し、弾んでいることには気のせいだと信じたい。
「置いて行ったりしないから、そんなに慌てんな」
「あ……うん」
 うなずき、ようやく靴を履き終えて、黒目がちな目でじっと見上げてくる。
「よし、行くか」
「う、うん!」
 喜色に声を弾ませて、雛森はうなずいた。
 初めて見た彼女の笑顔に、心臓が小さく一つ跳ねた。
 気付かないふりをして、少し速足で歩きだす。
 彼女が告白に慣れている理由も、まあ、頷ける。
 雛森は、再び俺の後をついてくるが、今度は俺の半歩から一歩後ろ、ほぼ俺の隣を歩いていて彼女の表情がうかがえた。
 雛森は目を細め、柳眉をさらに下げて口角を小さく上げている。
 その表情を横目で見ながら、俺は自分の行動の原因を考えていた。
 正直、俺は今まで生きてきて自分のことを優しいと思った事なぞ一度もないし、他人からそう称されたこともない、と思う。
 かといって、冷血人間ではないと信じたいが、真っ向から否定できるかと言われると痛い。
 この至って俺らしくない行動の原因は、やはり雛森が言った好きだった部活云々が関係しているのだろう。
「なあ、雛森って何か楽器がうまいって聞いたけど本当か?」
「え……う、うん、ヴァイオリン、なら……」
 俺の質問に雛森は予想外にも、頷いて見せた。
 お、と思って彼女を見つめると、彼女は照れくさそうな顔をして。
「わ、わたし、小さいときからいっぱい努力したから。その分の自信はある、から」
 彼女にしては妙に滑舌よくしゃべるその姿には、自信の色が見て取れた。
 でも、とすぐに雛森は声を落とす。
「でも、オケ部でも、部員皆に、む、無視、されて。わたし、悪くない、のに、やめなくちゃいけなく、なって……」
「何で?好きならずっと続ければよかったんじゃないのか」
「ううん。お、オーケストラは、まとまってなきゃ、だから。一人でも、な、仲間はずれが、いたら、その人がどんなに上手でも、足手まといにしか、ならない、から」
 今度は自慢か!と茶化すことはしなかった。
 また、ぼろぼろと涙を流す彼女にかける言葉を探したが見つからなかった。
 どうすればいいのか迷っていると、彼女はすぐに泣きやみ、
「ひ、弾くのは好きだけど、一人でやっても、つまんないし。やっぱりコンクールとかで、たくさんの人の前で弾くの、楽しいし」
「へぇ、緊張してコンクール苦手な印象があるけどな」
「うん。緊張はするけど、ね、でもやっぱり、皆に聞いてもらいたいって気持ちが、強いから」
「やっぱり、プロを目指してたりするのか?」
「うん!ソリストは、難しいけど、国内のオーケストラに所属できたらな、って思うの」
「じゃあ、留学とかするのか?」
「ううん、今は留学しなくても、国内の学校でもレベル高いところが、一杯あるから」
「へえ……」
 彼女の眼に涙はすでになく、キラキラと別の輝きをもっている。
 その様子を見て、彼女を応援したいと強く思った。
 ―俺は、とうに夢に破れてしまったから。
 破れてしまった俺の夢を、彼女に託したいと、身勝手な想いが湧いてくる。

327:名無しさん@ピンキー
10/02/04 01:38:36 to1EOBLN
「……なあ」
「はい?」
「友達になってくれないか?」
「……ふぇ?」
「雛森が弾く、ヴァイオリン聴きたいし。お前のこと、もっと知りたいって思ったし。だから、俺と、友達になってほしい」
「……」
 突然の俺の言葉に雛森は目をぱちくりとさせる。
 彼女は心の中で何を思っているのだろう。
 分かるはずもないが、あまりいい印象は抱かれてないだろうな、と思う。
 彼女とまともに話したのは今日が初めてだし、今思っても無神経な事をズケズケと聞いていた気がする。
 ……態度も悪かったしな。
 少しだけ、一時間くらい前の自分に戻りたいと思った。
「まぁ、俺も雛森に好かれてるとは思ってないし、寧ろ、嫌われてる自信があるしな。……だから、その……普通に断ってくれて、いいから」
「あ……」
「わ、悪かったな。変なこと言って。忘れてくれていいから」
 じゃあ、と軽く手を挙げて走り出そうとする。
 グイと、かすかな抵抗。
 振り向くと、雛森がシャツの裾を握っていた。
 じ、と彼女の眼が俺を見据える。
 何だか、俺の醜い心の中が見透かされているようで、目をそらしたくなる。
 なのに、彼女の眼に引きつけられて、そらせない。
「な、なりたい……」
 蚊の鳴くような少女の声。
「わ、わたし、もう、友達いないし。それどころか、皆に、嫌われてるし、1日に家族以外の誰とも喋らない日が、良くあるし、
そういう日は、夜になると、寂しくて、泣いちゃうし……。ヴァイオリンも聴いてくれる人も、少なくなったし……。それに、それに、えと、えと……」
「お、落ち着け。何ていうかつらい思いをしてきたんだな」
 今になって周囲を見渡す。
 幸い人通りは多くないが、それでも0ではない。
 いぶかしげな視線を送ってくる人もいる。
 無理もない、俺だって第三者なら怪しむと思うし。
 あー、通報されない、と信じよう。
「う、うん、つらかった。つらかった、よ。だから、わたし、宇佐美君となりたい、友達に、なりたい」
「いいのか?本当に気にせず、断ってくれていいんだぞ」
「ううん!断ったりなんか、しないよ!宇佐美君には、今日、デリカシーのないこと一杯聞かれたし、今から、やっぱり嘘だって、言ってもゆるさないもん。
だから、わたしと、宇佐美君は、もう友達、なの……」
「そ、そうか。良かった。誰かに友達になってくれ何て言ったことないし、何ていうかかなり緊張した」
 多分、これから先もその言葉をいう機会はないだろう。
 普通は友達というものは自然となるものだと思うし。
 でも、こういうのも悪くないとも思うのだ。
「じゃあ、改めて。俺は宇佐美、悠。宇佐美とか悠とか何とでも呼んでくれていいから。よろしくな」
 す、と手を差し出す。
 雛森は数秒首をわずかに傾げ、考えるしぐさを見せた。
 そして、二三度俺の手と顔を見比べて、
「え、えと、雛森、天音。よろしくね、宇佐美、君」
 そっと、俺の手をとって。
 えへへ、と嬉しそうに彼女は笑う。
 その笑顔を見た瞬間、かあ、と顔が一気に火照った。
 ていうか、さっきから俺は何をやってるんだ。
 友達になってくれなんて言葉を告げるのもそうだが、握手なんて。
 自分の行動のあまりの青臭さに、無性に恥ずかしさがこみ上げて思わず顔をそむけた。
 顔をそむけた俺を不思議そうに、見上げてくる少女をよそに、手を振りほどくように離して、速足で歩く。
「あ、待ってよ」
 声とともに、慌てたような足音が追ってくる。
 もう、なんて妙に大人びた、呆れたような声が聞こえて、恥ずかしさを倍にする。
 ―気付かないふり、気付かないふり。
 すでに、どっぷりと陽が落ちた道に長い影が二つ、伸びていた。

328:名無しさん@ピンキー
10/02/04 01:41:32 to1EOBLN
投下終了
改めて読み返すと、支離滅裂だなあとかエロまで何話かかるんだとか、
ヒロインのヤンデレ状態まで何話かかるんだとか、突っ込みどころ盛り沢山
これですっきりしました。
なむ、なむ。

329:名無しさん@ピンキー
10/02/04 01:43:43 H47O/v/F
ペッコリ45℃

330:名無しさん@ピンキー
10/02/04 15:25:52 K9m1OOkL
ナイス投げ

どもりは最初の一文字から先がなかなか言えない感じかな
「あ、ああああああ、あのね、こっ、ここ、ここここ、今度、いっしょに買いもの行ってくれる?」
みたいにちょっと過呼吸っぽいしゃべり方
ぜんぶ途切れとぎれだと単純に弱気っぽく見えてしまうかも

331:名無しさん@ピンキー
10/02/09 18:52:35 K4FChput
緊張すると吃る自分の感じだと舌が固くなって縺れる
例えば「ありがとう」と返す時
あ、の次の「り」を出したいのに下顎の筋肉が強張って舌が空回りする
ずっと同じ「あ」「あ」を出し続けるわけよ
しかも自分もそれが恥ずかしいと感じるからさっさとありがとうを吐き出してしまいたい
で「ああありゃとう」になってしまうという
これは喉咽から顎の筋肉が緩いせいもあるらしい
時々、呼気吸気を同時にやってしまって唾液が気管に入る事しばしば

332:名無しさん@ピンキー
10/02/10 19:07:16 Som63UgV
ナイス投げ。
何話掛かっても完結してほしいな何て思ってしまった。


333:名無しさん@ピンキー
10/02/10 23:47:36 8wF3tNW+
二度ほどスレ立ってた間に書き上げられず寝かせておいたものの、
気力体力尽き果てたので投げて楽になります。
今秋映画公開なのにorz


334:Secret Profile
10/02/10 23:49:29 8wF3tNW+
尾形が戻った時、床に女の肢体が無造作に転がっていた。

「…笹本!」

片頬は腫れ、口から血が滲んでいる。ブラウスと下着は無惨に引きちぎられ、
白い乳房が露出していた。スーツのパンツも前が開いている。

尾形は駆け寄って注意深く上体を起こした。
「大丈夫か、笹本」
「つ……。…大丈夫…です……」
話ができる事にとりあえず安堵し、尾形はコートを脱いで笹本の体を包んだ。
「すまん、お前独り残すべきじゃなかった。俺の判断ミスだ」
「…いえ、ミスったのはあたしで…。……拳銃に気付かれなくて、幸いでした…」
「すぐ病院へ行くぞ」

病院へ行けばなにがしかの書類が増える、尾形に何らかの影響がないとは言えない、
そんな考えが笹本の頭をよぎった。
「いや、こんなの大したこと……」
そう言って手で頬を拭うとぬるついた感触がある。
指についたのは血ではなく、異臭のする白い液体だった。
おぼろげな記憶が甦る。

眉間に皺を寄せたままの尾形が尋ねた。
「他に怪我は」
「…何ともありません」
「―本当か?」
そこでようやく笹本は察した。尾形は男には生じない類いの怪我を案じているのだ。

335:Secret Profile
10/02/10 23:50:25 8wF3tNW+
笹本は口を歪め、吐き捨てるように言った。
「……幸か不幸か、ヤツら変態で。生身の女には触らない主義だそうですよ」
スタンガンで笹本の動きを止めた男達は、散々彼女を小突き回した挙句に、
卑猥な言葉を浴びせながら彼女の顔から胸のあたりへ射精して去ったのだった。
畜生、と大声で叫びたいのを抑え唇を噛む。

「そうか」
尾形は短くそう言うと、笹本の肩を支えて立たせた。
「歩けるか?」
「は…い、多分」
汚された顔を上司に向けるのがためらわれて、笹本は目をそらし答える。
尾形は笹本の頭からすっぽりとコートをかけると、ぐっと抱き寄せた。
「…係長、コートが汚れます」
「いいから」
尾形に支えられ外に出て車に乗るまで、マルタイはこんな気持ちなんだろうかと
笹本は考えていた。

乗った車は間もなく停まり、下りたところで建物に入る。
「待っていろ」
尾形が離れた。
襟の隙間から窺うと、どうやらビジネスホテルのエントランスらしい。
戻ってきた尾形に伴われるまま笹本は歩いた。

そこはこじんまりした清潔な部屋だった。それ以上でもそれ以下でもない。
部屋の中にぽつんと立ったきりの笹本に、バスルームから尾形が声をかけた。
「まず、風呂に入って傷を洗え」
勢いよく落ちる湯の音がする。
体を洗ったところで、この憂鬱な気分はしばらく消えないな、と笹本は思った。
汚れた部分を切り取って焼き捨てたい気分だった。

336:Secret Profile
10/02/10 23:51:07 8wF3tNW+
「一度戻ってお前の服を取ってくる。後処理で軽傷を負い、病院ヘ行って直帰すると
 みんなには説明しておく。いいな」
「はい」
「少し休んでいろ。すぐ戻る」
尾形が消えると、笹本は深く溜め息をついた。
自分が女でさえなければ、尾形はこんな気の遣い方はしなかっただろう。男なら、
そもそもあんな目には遭わないはずだった。
普段は忘れているつもりでも、時々手ひどく思い知らされる。
「畜生」
小さくつぶやいて、笹本はバスルームに入った。

熱い湯が傷口にしみたが、構わず頭と体を3回ずつ洗って、ようやく我慢ならない
不快さが消える。
バスタオルで全身を拭いてからよく見ると、手足にいくつも痣ができていた。
鏡の中の顔の、頬の腫れも引いていない。
しばらく自分を睨みつけていた笹本は、ちっと舌打ちして髪を乾かし始めた。

尾形が帰ってきた時、笹本はバスタオル一枚巻いた姿でベッドの縁に腰掛けていた。
立とうとするのを尾形の手が制する。
「…怪我はどうだ」
「派手なだけで、大したことはありません」
「念のため消毒しておけ」
紙袋から出した消毒薬の小さな容器を笹本に手渡す。
「はい」
笹本は小さく一礼して洗面台へ向かった。

337:Secret Profile
10/02/10 23:51:46 8wF3tNW+
「つ…っ」
鏡の前で消毒した頬を軽く押さえているところへ、コーヒーの香りが漂ってくる。
戻ると、備え付けのカップがテーブルの上に置いてあった。
「コートと鞄、それに着替えだ。俺のシャツで悪いが我慢してくれ」
「係長…」
笹本は唇を噛んで頭を下げた。
「ご迷惑をおかけして、本当に…申し訳ありません」
語尾が震える。

悔しそうな表情の笹本に尾形は言った。
「謝るな。お前が悪いんじゃない」
「でも、もし私が、………」
笹本はその後を言わずに拳を握りしめた。飲み込んだ言葉は尾形にも予想がつく。
「女性であることをマイナスだと考えるな。それはお前の個性に過ぎない」

笹本の眉根が寄った。個性にも有用なものとそうでないものがある。
「……井上の勘も…、個性ですか」
皮肉や嫉妬に聞こえるかも知れないと思ったが、つい口に出た。
「そうだ。―山本の大食らいもな」
尾形は悪戯っぽい目をして笑う。

笹本は首を振って苦笑した。
「…ふ……」
「そういう事さ。……飲んで少し休め、ほら」
「あ…。すみません、いただきます」
窓辺に歩む尾形の背を見ながら、笹本は受け取ったカップに口を付ける。
コーヒーは冷め始めていたが、濃い苦味はむしろ清々しく感じられた。

338:Secret Profile
10/02/10 23:52:40 8wF3tNW+
尾形は険しい表情でカーテン越しに外を見る。
笑いに紛らしたものの、井上にしろ笹本にしろ、獲得した個性のために払う代償は
余りに不当で理不尽だと思わずにはいられなかった。

と、黙考する尾形の目の端に飛んでくる肘が映った。

小さくかわしたその先へ、さらに拳が飛ぶ。
「何の真似だ、笹本」
手のひらで受けた拳がくるりと翻り手刀に変わる。他方の手が突きを繰り出す。
笹本の動きは実戦とは行かないまでも、訓練並みに激しかった。
次々に飛んでくる拳を受けるが埒が開かない。
防戦一方の尾形が、ようやっと笹本の両手首を掴んで動きを封じた。
「やめろ、痣が増えたらどうす―」

ふいにバスタオルが生き物のように笹本の体を滑り落ちる。
ずっと笹本の顔から視線を外さないよう努めていた尾形だが、反射的に目が追った。
その目の前で、笹本の白い裸身が露になる。
「………!」
尾形は咄嗟に顔を横に向け、目を閉じた。遅れて笹本の手首を離し、手を下ろす。
「…すまん、…早く……」

黙って尾形の横顔を見ていた笹本は、ひた、と尾形に体を寄り添わせた。
尾形は驚いて目を開け、しかし穏やかな声でゆっくり尋ねる。
「……どうした…」
笹本は何も答えず、動こうともしなかった。
「……………」
だらりと手を下げたまま、尾形は窓を見て目を細める。

339:Secret Profile
10/02/10 23:53:39 8wF3tNW+
泣くのかと思ったが、そうでもないらしかった。
尾形の脳裏に先程の笹本の姿が浮かぶ。
暴力が肉体を痛めつけるのに等しく、性的な侮辱は精神を痛めつける。
受けた苦痛をやり過ごすには時間が要るだろう。
普段は意識せずにいた甘い匂いが尾形の鼻孔をくすぐった。

笹本がそっと顔を上げ、尾形は動きに反応して顔を下げる。
その唇に、笹本は無造作に口付けた。
「………」
尾形は眉をひそめ瞬きをしたが、目を伏せると、柔らかな感触を確かめるように
笹本の唇を押し戻す。さらに笹本が唇を押し当てる。少し開いた唇から舌を出し、
尾形のそれを誘う。尾形の舌を探し当て、性急に絡める。
白い指がシャツの胸元を握り、大きな手がくびれたウエストに回る。
立ったまま、尾形と笹本は唇を貪り合った。

笹本の細い指先が尾形のシャツのボタンをまさぐり、外し始める。
ベルトにまで指がかかった時、その手を尾形が押さえた。
「―自分でやる」
そう言って、笹本をベッドに寝かせる。
笹本は放心した様子で尾形を見つめていたが、すぐに壁に顔を向けた。

尾形はネクタイを緩めながら横たわる裸身を眺める。
痣さえなければ人形かと思うほど、均整の取れた美しい体だった。
この容姿であの聡明さなら、職業の選択肢は数多くあったに違いない。そこから
敢えて警察を志した笹本の選択を、尾形は保証してやりたい気がした。

340:名無しさん@ピンキー
10/02/10 23:58:50 8wF3tNW+
以上

お楽しみはこれからだなんだけど
脳内映像が分岐するしいろいろ疲れました

映画コケないといいなあ
ありがとうございました 合掌

341:名無しさん@ピンキー
10/02/11 00:19:16 s1R9bMQm
ナイス投げ!!!
とても残念だけど、お疲れ様

間が空きすぎて、忘れてたが、
おかげで思い出したよ。

342:名無しさん@ピンキー
10/02/16 03:23:15 VZ/aRV+b


343:名無しさん@ピンキー
10/02/19 18:26:29 41sWJOgn
保守

344:名無しさん@ピンキー
10/02/27 18:06:57 JiMUeYRi
保守

345:名無しさん@ピンキー
10/02/28 16:03:20 Ab5OQiH6
念のため保守

346:名無しさん@ピンキー
10/03/03 15:09:47 bPmlKnWg


347:名無しさん@ピンキー
10/03/06 23:55:26 ODI6xuTP
そろそろかな

348:名無しさん@ピンキー
10/03/07 00:15:00 10lYqtrm
スレのみんなに嫌われたのでここに捨てていきます
そしてきっぱり忘れます、永遠に

349:1996年、パタヤ
10/03/07 00:15:19 10lYqtrm
"……で、その金庫は無事手に入ったの?"

ベッドの上、初めて会った頃からは想像もつかないような妖艶な顔で、男物のアロハシャツの間から布の面積が少ないいかにも『それ』用の下着を覗かせたジェーンが言う。
本当に、女は魔物だ。

"ああ……鮫ってやつは自分より体長が大きな相手には警戒してなかなか近寄らないからな、その習性を利用したってわけだ。"

"あなたも潜ったの、その吹き抜けの水槽に?"

"いや、俺は例のごとくパソコンの前でモニタと睨めっこさ。
ジェームス・ボンドは性に合わないのは君も知ってるだろ、チョコパイ?"

"いや、だって最初のビジネスだって言うし、ボロボロのバンでマフィアと白昼ケチャップを演じたんでしょ?"

"クルマとか機械は得意だが生き物は苦手でね、特に人間が一番苦手さ。
海洋生物学で博士号取った人間の言うことじゃないかもだが。"

ジェーンの砂糖菓子のようにフワフワなカールの髪を、俺は優しく撫でた。
裸の上半身に髪が当たってこそばゆい。

"あら、ドクター・ベーグル、もしかしたら私のことも苦手かしら?"

"そうは言ってないぜ……ん。"

"……ん。"

350:1996年、パタヤ
10/03/07 00:15:49 10lYqtrm
俺たちは、そっと口づけを交わす。
ジェーンの、さすがパンジャブ系らしい特徴的な体臭と香水……多分バーバリーのブリットだろう……の匂いが混ざったかぐわしい香りが、狂おしい。

鼻腔を、快楽中枢を、ジェーンの存在が次第に犯していく。
その豊満なカラダを、いまはオトコを刺激することを意識して、わざとそう見せているが、以前のカラダの線を隠すようなダサい恰好でもそれとわかるほどだったそのカラダを、俺は自由にしたい衝動と戦う。
ちゃんと俺の生き方を知って欲しい、今までの俺を、そしてこれからの俺を、知って欲しい。
理性ある人間として、生物の本能である肉欲より先に、俺にはそうしなければいけない義務があった。
それは、また危ないビジネスにこのチョコパイを引きずりこんだ責任でもあった。
中共の連中を出し抜くなどという綱渡りの前に、二人が本当の意味での恋人になったと、人生のパートナーとなったという、証明でもあった。
そしてゆくゆくは、俺の片腕としてジェーンにも商会の一員になって欲しかった。
福利厚生の厚さなどこの稼業には望めないが、俺はオトコとして、ひとつの生き物のオスとして、どうしてもそうしたかった。

351:1996年、パタヤ
10/03/07 00:16:11 10lYqtrm
だがしかし、俺の理性は本能にはどうしても勝てなかった。
気がついたら俺はジェーンの細い褐色の首筋に舌を這わせながら、その大きなやわらかい双球を下着越しに、俺のコレクションの一部であるシグ・ゼーンのアロハ越しに、まさぐり始めていた。

甘いジェーンの声を、、みずみずしい肉体を、俺は楽しんでいた。
スパイシーな匂いに交ざるメスの匂いに、俺はくらくら惑わされていた。

しとどに濡れたそこを、その部分を隠すには小さすぎる布をずらして、俺は自らの怒張で一気に貫いた。
ジェーンが、艶っぽい声で鳴いた。

俺の腰の動きは次第にヒートアップし、そのプルプルしたジェーンのそこを、既に低いところまで降りてきたコリコリとした子宮口を、肉の芽の裏側のざらざらした部分を、次々と俺は責め立てた。
半分白目を剥きながらジェーンは、声にならない声で俺の名を呼び続けた。
俺も、ジェーンをずっと呼び続けた。
それは、二人がカラダだけでなく心までも一緒になっている証拠かもしれなかった。

パタヤの夜、あのフロリダの夕日から四年後の夜は、こうして更けていった。
南十字星が、カーテンの隙間から覗いていた。

〈完〉

352:名無しさん@ピンキー
10/03/07 00:16:31 10lYqtrm
以上でした
南無阿弥陀佛

353:名無しさん@ピンキー
10/03/14 03:27:47 GT8Dr8WF
姉妹スレ
スレに投下し辛い/迷うSS【元・追い出され3】
スレリンク(eroparo板)
専用スレに投下できないSS
スレリンク(eroparo板)
【うpろだ】専用スレのないSS その2【代わり】
スレリンク(eroparo板)

354:名無しさん@ピンキー
10/03/14 14:00:06 +wiZOrhV
話の舵きりを間違えてしまったので、投げます

355:名無しさん@ピンキー
10/03/14 14:00:55 +wiZOrhV
 森を抜けると、ちょうど無人駅に列車が到着していた。
 臼井は俺を見ると肩だけ竦めて、何も言わずに車両に乗り込んだ。
 俺も後に続き、座席へと座る前に、彼を先に通す。
 景色が動き出す。
「…何故譲った」
「深い意味はありませんね」
「……」
 こういう時、果たしてどんな顔されるのかと思っていたが。
 分かっている。俺は自分が嫌になって、不貞腐れている―そうだろ?
「…若いとは、己を見失うことだな」

 目を覚ますと、隣に臼井はいなかった。
 外は夜。夜行列車は近代的な装飾のはずが、何故か薄暗い灯火に木の匂い。
 膝掛を退け、俺は席を立つ。車両は全体的に空いている。
 ふらふらと歩いてみる。と、誰かの肘が、俺の太腿に当たった。
「あら、失礼」
 そう言って、見慣れぬ貴婦人はその面を見せた。
「…貴方、チョコ・レートはお持ちなさって?」
「いいえ、持っていませんが」
「そう。お互い、良い旅を」
 何だか、ドレスが妙に時代がかっているのだが、仮装パーティでもあるのか?

 臼井を探したが、どの車両に行っても見つからない。
 それどころか、こんな列車に乗った覚えがない。一体、どうなっている?
「探し物かしら、お兄さん」
 考え事をしていると、目の前が留守になっていた。
 通路の道を塞いでいることに気づく時は、とても恥ずかしい。
「すいません」
「あ、退いてほしくて言った訳じゃないよ。どうせ空席だらけだし」
 そう言う彼女はブランデーを二本、ぶら下げている。
 ほんのり赤い顔に、漂うアルコール臭ね。映画のワンシーンなら次はきっと、
「一緒に飲まない?」

「キミの名前を当ててみせようか」
 隣に座った彼女が、そう言って絡んできた。
「その前に、あなたの名前を聞いていませんが」
「はい」
 スーツの胸ポケットから、手慣れたように名刺を差し出す。
「バジリスク通信の番記者、ボニー・アイカワよ。よろしく、ジョー」
「俺の名前はサトル・イシドウです。誰です? ジョーというのは」
 へ? といった顔をされても、こっちが困る訳ですが。
「妙じゃない? この列車にそんな人、乗ってないはずなんだけど」
 そんなこと言われてもなぁ…。

 持ち物を探ると、確かにあった。
 乗車券と、そこに名前が”ジョー・ハミルトン”とはっきりと。
「イシドーってのは、偽名ね? 確かにキミ、東洋人って顔してるけど」
「……」
 非現実的にも程がある。これは、明らかに違う世界だ。
 夢、か? それとも”エルオーネ現象”か?
 あれ、そもそもエルオーネ現象って何だっけ? 科学誌にそんな論文が載っていたと思うのだが。
「ブランデー、飲まないんだ?」
 いや、俺未成年だから。それにアルコール類は好きじゃない。
 しかし…もし夢なら覚めてほしいものだ。ここはリアル過ぎて、居心地が悪い。

356:名無しさん@ピンキー
10/03/14 14:01:49 +wiZOrhV
「あなたは一体、この列車で何を?」
「教えない。ヒントだけなら良いけどね。プライベートじゃないってこと」
 番記者が仕事をしている―それって、誰かのスクープでも狙っているということか。
 俺? の訳はないだろうが、この列車内にいるのかもしれない。
「じゃ、同じ質問をキミにも良いかな?」
「…ガーデンに帰る」
 しかし、ピンとこないようだ。
「キミは庭師さん? 私の知ってるジョーは、神出鬼没の名探偵よ」
「はぁ」
 夜行列車に名探偵か…昔やったゲームのようだ。ウンザリしてきた。
 
 事勿れ主義と言われるかもしれないが、いくらSeeD目指しているとはいえ、得意苦手はある。
 こんな疲れている時に、見る夢か? それとも俺の体力不足なのか?
「何故俺をご存知で?」
「よく新聞に載るわ。…実際に見たのは初めてだけど、結構好みよ」
 肩と頭が、触れてくる。酔っ払って、これで本当に仕事になるのだろうか。
「夜も更けて、間も無く日付が変わる。…逢魔の刻が訪れる」
 独り言か? 逢魔の刻なんて古びた言い回しだが、随分含みを感じる。
「……アイカワさん?」
「…だから、駅に着くまで二人で行動しない? 名探偵さんと一緒なら、多分安全な気がするもの」
 つまり俺といないと、安全は保障されないということ?

 果たして彼女を、信用して良いものかどうか。
 と言っても、この列車内で俺の味方になってくれそうな人物は、彼女くらいか。
 そうでなくても、とりあえず現状を把握する為には、その力を借りるべきかもしれない。
「キミは自分を見せない。それでいて、人を油断させる……んー、魅力的だなぁ」
 半目で緩んだ表情は、明らかに酔いが回っている。
 彼女は正面から俺の目を見つめ、その手で太腿を撫でる。
 意味深なことを呟くのは厄介だが、それ以上に今、俺の身の安全の方が、どうも怪しい。
「あの?」
 いつの間にか彼女の蝶ネクタイは緩み、シャツのボタンは上から二つ三つ、外れている。
 しかし、ジャケットの色合いと言い、これではどちらが探偵か分からない。

「止めましょう。こんな所で」
 思わず流されかけたが、口づけされそうな前に、彼女を制す。
「…釣れないのね。もうちょっとキミのこと、調べたかったのに」
 洒落た冗談ですが、
「自分の席に戻ります」
 よく考えたら、俺がここで”ジョー・ハミルトン”を演じる義務は、別に無い。
 夢だろうと何かの現象だろうと、いずれ元通りになるはず。
 だったら、当たり障り無くやり過ごそう。イチャイチャしても疲れるだけだ。
「じゃあ、後でそっちに行っても、構わない?」
 真面目に仕事しろよ番記者さん。

 俺は素直に後列車まで戻って来た。端に車両番号が書かれている。
 ”五”からここ”七”までは一般車両。他、一~四が個室付きの専用車両、八以降が貨物車両。
 さて、閉鎖されたこの列車内で、一体何が起きると言うのか。或いは、何も起きないのか。
「?」
 一定のタイミングで聞こえるのは、何だ? 汽笛?
 俺はポケットに、懐中時計を所持していた。見ると、針は出鱈目な位置で止まっており、動かない。
「零時三十八分二十四秒、か」
 そういえば、摩り替わったかのようにストップウォッチが無い。
 暗示的ではあるが、何、結局これは夢だということなんだろう。
 俺は懐中時計を窓際に置くと、狭い座席に上半身だけ、横になった。

357:名無しさん@ピンキー
10/03/14 14:07:03 +wiZOrhV
 自然とそのまま、俺は眠りについた。
 夢の中で寝るとか大した皮肉だと思うが、割と心地良い。
「―?」
 ふと意識が戻る。念の為、周囲を確認する。
「…はぁ」
 まだ、夢の中だった。そしてこつこつと、聞こえてくる足音。
 こんな真夜中に、誰だ? そう思いながら再び目を閉じていると、足音はすぐ近くで止まった。
 例の番記者さんだろうか? 俺はもう寝る。
「おい」
 起こさないで下さい。お休み中です。

「眠った振りしてんじゃねぇぞ。チョコ・レートを何処へやった」
 は? もしかして、俺に訊いているのか?
 極めて小声ではあるが、かなり柄の悪い兄ちゃんのようだ。
「何だよ煩いな」
「答えろ。あれがないと、ヤバいんだよ…!」
 チョコレートの一つや二つ、無くて困るなら常備しとけよ。
「何してるんですか?」
「! …っ!」
 彼は俺に絡むのを止めて、足早に去って行った。
 面倒事に巻き込まれるのはもう嫌だってのに、これはいよいよどうしようもなくなってきたか。

「大丈夫ですか、お兄さん」
 視線だけ向けると、眼鏡をかけた女性が立っている。
「はい。助けられたようで、ありがとうございます」
 寝たままでは流石に失礼なので、体を起こす。
「一般客に因縁付けるなんて、キーラも堕ちたものです」
「知り合い、ですか?」
「知り合いなものですか。悪名高いマフィアですよ」
 マフィアが列車内うろついているのか。まともじゃないな。
「じゃあ、あなたは?」
「パメラです。パメラ・ケルビン」

 改めて見ると、やや幼い容姿だった。
 髪は二又の三つ編み、格好は継ぎ接ぎの目立つ質素なドレス。
 何故か分からないが、初見で親近感を持ってしまった。番記者には、そこまでは思わなかったのだが。
「サトル・イシドウです」
 この世界では俺の顔、一般に触れているようだが、一応そう言った。
「イシドー?」
「そうです。あなたは一人でこの列車に?」
 一目見てマフィアだなんて、分かるものだとしたらこの子も只者じゃない。
「あ、立たせたままで…良かったら隣にでも」
 とりあえず、彼女を座らせる。


みかん
複雑な話書く技量と意欲がないのに、よくもまぁ

358:名無しさん@ピンキー
10/03/21 08:58:49 +QyNgfR6
だれになりすまし?

359:名無しさん@ピンキー
10/03/24 11:01:16 W294DXz/
 やや古風な西洋風の大豪邸に美和子が閉じ込められてもう三日になる。最初の
一日は混乱と恐怖で男の言いなりになっていた美和子だったが、二日目になって
漸く状況を受け入れ、恐怖が怒りに火をつけた。そうして激情の赴くままに、此
処に監禁した男に逆らった。そしてその罰として、昨夜から水の一滴も与えられ
ていない。
 空腹を抱えた美和子が目をつけたのは、長い廊下の途中の大きな窓の傍に置い
てあった、ピンクの新鮮なチューリップだった。一度気になってしまうと、口内
に溢れてくる唾液を止められない。もう、我慢など出来なかった。
 美和子は一輪のチューリップを取り上げる。瑞々しいチューリップだった。そ
の花弁を一枚、千切ってみる。
 白い細い指で摘まんだ薄紅色の花弁を、薔薇色の口唇の奥に隠されていた米粒
のような歯と、濃いピンクの舌が出迎える。
 ビロードのように肉厚の花弁を、陶器の如き歯が噛み締める。
――ぷつり、つぷん――
 噛み千切られた花弁は、口内で無残に咀嚼され、嚥下された。
「……レタスみたい」
 それが美和子の、初めて口にしたチューリップという植物に対する過不足のな
い感想だった。
 美和子は今度は茎を持って、二三枚の花弁を一度に口に含む。そして次の瞬間
、ガクの付け根、茎の部分へと一気に歯を立てた。
 ぷつん、
 くちゅ、
 あっさり口内に転がり込んできたチューリップが、磨り潰され唾液と共に撹拌
され、ごくり、細い咽喉を通じて食道へと落ちていく。
 それから美和子は、餓鬼のようにチューリップを貪った。青臭い茎を頬張り、
肉厚の葉の葉脈を引きちぎり、十数本あった花を全て、胃に収めていたのだ。
 こふ、と小さなゲップを溢した美和子が次に目をつけたのは、白磁の花瓶その
もの。美和子は一瞬の躊躇もなく、花瓶を手に取った。縁には金の飾りが施され
、表面には青い小鳥の飛ぶ見事な花瓶。
 美和子は意外に重量のある花瓶を両手に持ち、ゆっくりと持ち上げる。たぷん
、内部で水が揺れた。
 花瓶の縁が美和子の口唇に触れる。柔らかな唇を硬質な花瓶が押し潰す。ゆぅ
っくり、美和子は花瓶を傾けた。
 つつぅ……っ、清純な水が頬から顎、細い首筋と華奢な鎖骨を通って胸元へと
滑り落ちていく。小さな咽喉が、何度か上下する。
 こくん、こくん
 陶器の中身が空になるまで、その行為は続いた。


 中身を飲み終えた花瓶から、美和子は無造作に手を放した。
 ガシャン、硬質な音と共に、高価な花瓶は砕け散った。
 美和子はその欠片を無造作に踏みつけて、窓辺にそっと寄り添う。真っ白な陶
器に、生々しい深紅の血が付着する。鮮烈な対比を、窓から差し込む夕陽の日射
しが中和する。
 美和子は窓の外に広がる赤く染まった森を見て、ぼんやりと溜め息を吐く。コ
ンクリートの森しか見たことのない美和子には、こんな森を見るのは初体験に近
い。
 涙すら、出てこない。美和子は割れた陶器の欠片を手に取った。


女性っぽい文体に挑戦したらおもいっきりこけた上に
スレ自体流れたのでお炊き上げ

360:名無しさん@ピンキー
10/03/26 20:36:23 EnU2upUl
テスト。

361:名無しさん@ピンキー
10/03/28 10:53:04 JrUh5Hg+
投げ乙

362:シンケンジャー 薄雪と新佐
10/03/28 23:11:09 42566JdU
開け放した窓から遠くの座敷の宴の音が流れ込んでくる。
芸妓の小唄。拍子を取って皿を箸で叩く音。幇間が何か下卑た冗談でも
言ったのか、酔客の哄笑や女達の嬌声が遠く響く。
さまざまな音に耳を傾けながら窓辺に座る新佐。その横で三味線を爪弾く薄雪。
二人は部屋の灯りを落とし、ただ静かに時を過ごしている。
窓から差し込む月灯りが、その月を見上げる新佐の額と頬を照らしている。
薄雪は惚れ惚れとその愛しい男の顔を眺める。
初めて本気で愛した男。そして自分を本気で愛してくれている男。

その男の横顔をこうして眺めるだけで薄雪の心は沸き立つ。
三味線を脇に置き、薄雪は徳利を手にし新佐が手にした杯へと酌をする。そして
新佐の足の間に割り込むように座り、その胸に寄りかかる。
新佐は、はだけた薄雪の胸元に片手を差込みそのやわらかな手触りを楽しみつつ
無言のまま杯をぐい、と呷る。

「おまえも飲むか?」
問いかける新佐に薄雪は艶のある笑みを浮かべ、顎をつん、と上げて答える。
「飲ませておくれ」
応じた新佐は徳利から直接酒を口に含むと、薄雪の首筋に手を添え上を向かせる。
新佐を見上げながらうっすらと微笑む薄雪。その半開きの唇に、新佐は自分の
唇を押し当てる。そして口に含んだ酒を薄雪の口へと流し込む。
ごくり、とその甘い口当たりとなった酒を飲み込み、薄雪はさらに求めるように
新佐の口に舌を伸ばす。
新佐の歯や舌に残る酒の味を舐め取りながら、「もっと」とせがむ薄雪にさらに
応じた新佐は繰り返し、口に含んだ酒を薄雪に飲ませる。二度、三度と。

心地よく唇や口の中をくすぐっていく、ちろちろとした薄雪の舌の動き。
新佐の体は反応する。硬くなったものが、薄雪の尻に当たる。

「ふふ」
嬉しげに微笑んだ薄雪は体の向きを変え、新佐の裾から股間へと手を伸ばす。
隆々と固くなっているその部分。薄雪の指がそれを上下に撫でる。
素知らぬ顔でまた月を見上げる新佐。だが薄雪の指の動きにつられ、うぬ、と
耐えるような表情を浮かべ始める。
薄雪は裾を開き褌の紐を緩め、その物を露わにする。
新佐の足の間に座り嬉しげに股間に顔を寄せてきた薄雪に、新佐はそっと呟く。
「見られているぞ」
「誰に?」
「月に」
見上げた夜空。満月にやや欠けるその月が二人の顔を照らす。
ふん、と鼻を鳴らした薄雪。
「わちきはかまわない。月め。好きなだけ見ればいい」
挑発するようにそう言うと、再び新佐のそれをそっと握り、口に含む。

363:シンケンジャー 薄雪と新佐
10/03/28 23:11:35 42566JdU
薄雪の鼻を新佐の強い匂いがくすぐる。汗と、漢の匂い。
それだけで薄雪は何やらうっとりとした気分になる。他の客であればすぐに
湯を浴びて来いと部屋から叩き出すところだが、新佐の匂いは愛しい。
目を閉じゆっくりとそれを頬張りながら、薄雪はその舌触りと形を楽しむ。
これが愛しくて愛しくて仕方がない。その思いは我ながら驚くほど強い。
いっそ食いちぎりたいとすら思う。食いちぎったそれを咀嚼し飲み込み、己の血肉と
できたらどんなに幸せだろうか。
だがそれは無理な話だ。代わりに薄雪は唇と舌を使い、それを味わうことだけで
我慢する。舌を這わせ絡め、強く吸えるだけでも幸せだ。
新佐のものなら。愛しい男のものならば。

先端の丸みを口に含み舌先で清めるように舐める。親指と人差し指で作った円で
根元の部分をきゅっと強く握る。
指をゆっくりと上下させながら、その先端の複雑な筋や段に丹念に舌を這わせていく。
新佐は薄雪の襦袢をゆっくりと剥ぎ取る。露わにされた白い肌。
その背中と尻をまた月が照らす。月灯りを浴びたその肌はそれ自体がぼんやりと
輝いているように見える。

「薄雪、こちらに」
新佐は横たわると薄雪の身体の向きを入れ替えさせ、自分の顔の上に跨らせる。
大きく開かれたその脚の間にあるものが期待に息づく。
「まだ見ているの?」
「…月か?あぁ」
新佐は夜空を見上げる。煌々と輝く月が、まるで二人を叱りつけるかのように
まばゆく照らしている。
「見ているぞ。おまえの、ここを」
新佐は指先でその部分をゆるやかにこねる。雫が月灯りにきらりと光る。
「おお、いやらしい…月、め…」
呟く薄雪の白い背中が喘ぎと共に震える。その身をくねらせながら、薄雪はまた
新佐の物に唇を寄せると喉の奥まで飲み込み、顔を上下に動かし始める。

新佐も薄雪のそこに唇をつけ、舌を這わせる。重なり合った襞を舌先で掻き分け
開く。そして滴ってきたものをすくい上げながら舐め取る。
新佐の舌先が一番触れて欲しい突起を見つける。その周囲をぐるりと舐め上げ、
そして触れたか触れないか、程度にそっとつつく。
「んぅ…っ!」
声を出せない薄雪はもっと強くとせがむように腰を振る。新佐はそれに応えて
舌先をそこに押しつけ、ほじくり始める。
同時に指先で雫を滴らせる場所を撫でつつく。かりかりとくすぐり、引っかく。
指先だけをそこに沈め、ゆっくりと出し入れを繰り返す。
薄雪は快感に堪えきれず激しく身を捩らせる。その白い肌が薄桃色に染まる。
新佐の舌がそこを穿るたびに薄雪の体はびくんと震える。襲いかかる快楽の
波に囚われてしまいたいが、そうなれば新佐を愛撫する指と舌が止まってしまう。
どうすれば良いか判らず薄雪はそれを咥えたまま首をふり、さらに激しく顔を
上下させる。

364:シンケンジャー 薄雪と新佐
10/03/28 23:13:56 42566JdU
「薄…ゆ、き」
新佐の息が荒くなる。その切なげな声を聞き薄雪の心はさらに昂ぶる。その口が
塞がっていなかったとしたら、薄雪は先程新佐から酒を飲むかと尋ねられた時と
同じ答えを口にしただろう。その言葉を心の中で強く願い繰り返し叫ぶ。
薄雪の心の叫びは聴こえないが新佐はそうする。薄雪の尻の肉を鷲掴みにすると
背を反らせつつ「おぅ!」と声を上げる。

「…くっ」
喉を鳴らした薄雪の口の中でそれがびくんと震える。そしてあのねっとりとした
味が口いっぱいに広がる。これは新佐が自分の愛撫に悦びと満足を得た証。
─おお、新佐!
その喜びと興奮に鼻を啜りながらいまだ放出している最中のそれを強く吸う。
先端から放たれたものが薄雪の喉に流れ込んでくる。薄雪は何度もその迸りを
味わい飲み込んでいく。

付け根や腹にこぼれたもの、己の唇の端に残るもの。全てを一滴も残さず
舐め取り飲み込んだ薄雪は、満足と共にふぅ、とひとつ小さな溜息をつく。
目を閉じ荒く息を吐きながら、新佐は薄雪の体を荒々しく抱き寄せる。
「おまえは私を狂わせる」

新佐が投げつけるように発したその言葉。薄雪にとってはただの愛の言葉
以上に喜びをその胸に与える。わちきはもう狂っている。新佐、おまえに。
新佐の耳たぶを甘く噛み歯を立てながら薄雪は囁く。
「…ならば狂えばいい。二人で。どこまでも」
新佐が薄雪の体を押し倒しのしかかってくる。薄雪は見上げた窓からまた月が
覗き込んでいるのを見て笑う。
「まだ見られている」
「障子を閉めるか?」
言いながら新佐は薄雪の中に突き入れてくる。強く。深く。
「あぁっ…、新佐!」

もういい。もうどうでもいい。薄雪は新佐の体にしがみつき爪を立てる。
激しく突かれながら薄雪は啜り泣く。愛しさで心が壊れてしまいそうだ。
どうして新佐と自分は違う人間なのだろう。違う体なのだろう。
このまま二人の体が溶けてしまえばいいと、溶けて重なり合い一つの体に
なれればいいと、そんなことすら思う。

薄目を開けてまた月を見る。先程よりもさらに大きくなったように見える月が
何も言わず薄雪を見つめる。その月を取り囲むように薄雪の視界が白い光で
溢れ、ついに全てが白一色に満ちる。

もう何も考えられなくなり、愛しい男の名をただ繰り返し叫ぶだけとなった薄雪。
その姿を哀れみ目を覆うように、空の月に黒い雲がかかった。

─終わり─

*これを元にもっとねっとりした内容にしたかったが書くテンションが下がったこと、
 どう考えても誰得な話なのでやる気が失せたので投げ

365:名無しさん@ピンキー
10/03/29 01:12:59 Y+sPkdOx
ナイス投げ!!
というかGJじゃないか。

もったいないが……お疲れ様!

366:名無しさん@ピンキー
10/04/17 18:59:30 3YCamEx5
保守

367:名無しさん@ピンキー
10/04/29 05:45:15 9vYqkWQw
保守

368:名無しさん@ピンキー
10/05/04 19:05:09 kOUawpqZ


369:名無しさん@ピンキー
10/05/09 22:48:38 pcZkcvZ/
書こうと思ってたスレが落ち、とち狂って半角二次に最初だけ投下するという
色んな人に迷惑かけまくった迷走作品ですが、ここに投げて供養できれば…いいな
以下8レスくらい使います。



ガバスから大氷穴、あやかしの洞窟を抜けたピエトロ一行は
交易都市トンクウにて一泊の宿をとることにした。
依然行方不明のパウロの消息を追う、あてどない旅である。
疲労は溜まり、大十字路では休息を取る・取らないで一悶着もあった。

傭兵二人に礼儀正しく「おやすみなさい」と言ってベッドにもぐるピエトロ。
それを合図に傭兵たちもそれぞれ就寝…のはずであった。
しかし時計の長針が一周りした頃、ゴソゴソと動き出す人影がいたことに
熟睡中のピエトロと、今回の中心人物であるダイソンは気付かなかったのだ。


370:名無しさん@ピンキー
10/05/09 22:49:21 pcZkcvZ/
下腹に違和感がある。
むず痒く、筋肉が引きつるような感覚。
絶え間ない柔らかな刺激が与えられている気がする。気のせいか?
ずいぶん昔の、青春真っ盛りな時代を彷彿とさせるそれは
言ってしまえば、射精感--。

「…?」
ダイソンは、浅い眠りに漂っていた意識を浮上させた。
無意識に元来の細目を擦ろうとして

ギシッ 「!?」

腕が頭上に固定されていることに気付く。眠気が一気に覚めた。
これはいったい何事だ、まさか強盗でも忍び込んでいるのか!?
困惑したダイソンは、腕の自由がないまま飛び起きようとして
「ああ、もう目が覚めたのかい?」
と楽しそうに呟く人影を見た。
彼の一物に優しく口付けを落とす、傭兵仲間のラウラの姿を。


371:名無しさん@ピンキー
10/05/09 22:50:02 pcZkcvZ/
「これはどういう--!」
「シッ!」
ダイソンが思わず大声を出そうとした矢先、鋭く遮られる。
ラウラはダイソンの腹に跨るようにして身を乗り出した。
顔が近づく。
鼻先が触れるか触れないか、という位置まで近づく。
「そこに寝ている坊やが…王子様が起きちまうよ?」
ラウラの唇の動きがやけにゆっくりして見えた。
一音発するたびに、彼女の吐息がダイソンの唇を湿らす。
「12歳の王子様には、目の毒だと思わないかい?」
やけに楽しそうな調子で呟く。
ラウラの顔は更に近づき、もう焦点が合わせられない。

「昼間はあたいに気を遣ってくれただろう。
 でもね、このラウラ姉さんは『借りは作らない主義』なんだよ」
もう唇が触れ合いそうな距離でラウラは呟く。
ほんの少し、顔を上げるだけで本当に口付けできるほどの距離。
しかし彼女は体ごと離れ、最初にいた位置、つまりダイソンの足の間に座り込んだ。
ダイソンの一物を指先でやわやわと触れながら
「金目のもので礼をする、っていう訳にもいかない。
 親切には親切で返すのが筋ってもんだ」
と言い、ついでのようにそそり立つ陰茎の裏筋を素早くしごいた。
予想外の刺激にダイソンは思わず唸り声を上げてしまう。
「っ!…私は、別に、礼を求める気など、ないのだが」
「じゃあ、あたいが欲求不満だからヤるってことでいいよ」

まるで昼間の会話の裏返しだ。
ラウラの巧みな指使いに声が出そうになるのを抑えながら、
ダイソンはそんなことを考えていた。

「傭兵所は人目が多いから出すモンも出せずに溜まってるだろう?
 それにしても…体格に劣らず、立派なシロモノじゃないか」
うっとりとした口調で、ダイソンの直立をしごく。
尿道口をぐりぐりと刺激し、指の先で弾く。
もう一方の掌で玉袋を柔らかく揉みつつ、襞の一つ一つを確かめるように辿る。
声を出さないように歯を食いしばっているダイソンの表情をちらりと盗み見したラウラは
にやりと笑って、先走りの溢れる先端に口付け、そしてそのまま僅かに吸い上げた。

「…う、…っ」
「気持ちイイかい?」
一度唇を離すと、今度は深く銜える。舌を縦横に走らせ、時には吸い上げつつ
ダイソンの昂ぶりを丹念に舐めあげる。
喉の奥に先端が当たるほど、頭全体を前後に動かしてダイソンを追い込む。
「うっ」
「そりゃ良かった」
ダイソンの唸りと荒い息遣いに満足したように応える。
「それにしてもあんたの我慢する顔…そそるねぇ」
指の腹でやや強く擦り上げながら、ラウラはニヤニヤと笑いダイソンを追い詰める。
陰茎の周囲を、螺旋を描くように舌が這う。
そのまま深く深く銜えこみ、
「っっ!!」
一気に吸い上げた。


372:名無しさん@ピンキー
10/05/09 22:50:35 pcZkcvZ/

ごくり、とやけに大きな音が聞こえた。
それはダイソンの生唾を飲む音だったのかもしれないし、
ラウラが彼の精液を飲み込む音だったのかもしれない。
信じられないといった顔をして、ダイソンはラウラを見つめる。
そんな様子を知ってか知らずか、ラウラは唇に残る白い跡を指で拭っていた。
彼女はその指先を見つめると小さく微笑み、べろりと舌先で舐め取る。そしてダイソンに視線をやる。
「ずいぶん溜まってたんだ」
「も、もういいだろう。いい加減はずし」
てくれ、と言い切る前にダイソンは言葉を失った。
彼の足の間でラウラは膝立ちになり、スカートのスリットに手を差し込み始めたのだ。
「あたいが欲求不満なんだよ、もう少し付き合うのが男ってモンじゃないかい?」
ラウラはダイソンの凝視する視線を感じながら楽しげに告げた。
そのまま下着の紐をスッと解き、わざとゆるやかな動作で下着を下ろした。

月明かりに照らされて、下着と秘所の間に伝うものが光る。
淫靡な姿だとは分かっているが、目が離せない。
「ダイソンの舐めてたら、気分がノってきちゃった」
ラウラは自分の下着がもはや用を成してないほど濡れていることに対して、それだけ言った。
照れも恥じらいもなく、あるのはただの熱っぽい息遣いのみ。
そのまま上着にも手をかけ、これも簡単に脱ぎとった。
着衣の上からより目立つ二つの膨らみと、その頂点で硬くなっている蕾が彼女の興奮を示している。

ダイソンはその姿を見て、彼女を抱きしめたいという強い衝動に襲われた。
何故と問われても応える言葉が見つからないほど、突然の衝撃だった。


373:名無しさん@ピンキー
10/05/09 22:51:06 pcZkcvZ/
しかしそんなダイソンの心中などラウラに分かるはずもない。
おもむろに自分の乳房に指先を這わせ、ゆっくりと形を変えていく。
「…あぁ、はぁ…んっ」
乳首を指先で捏ねくり、つまむたびにラウラの眉がきゅっと寄る。
切なそうな息遣いと、潤んだ視線が中空を彷徨う。
ダイソンはそれを食い入るように見つめるしかなかった。
腕の拘束が解ければ、そのままラウラを押し倒し、豊満な乳房を押しつぶすように揉んだだろう。
乳首を吸い、噛み、彼女が体を震わせ果てるまで何度も貫くだろう。そう思った。
そこまで考えて、自分が彼女の体を激しく求めていることに気付いた。
そしてその事実を認めるしかなかった。

ラウラは自分の指で乳房を弄っても、達することは難しいと分かっていた。
この行為はただのデモンストレーションだ。自らの痴態をダイソンに見せ付けるための。
果たしてそれは効果があったのか。
ダイソンの股間にそそり立つ一物を見る限り、その答えは明らかだった。
「んっ…ダイソンっ」
わざと彼の名前を切なげに呼ぶ。視線を送る。
彼の脳内で、自分はどのように犯されているのだろう。それが知りたいと思った。
桟橋で自分に向けられた気遣い。対等な仲間として扱われたことに戸惑いもした。
嬉しかった。それに応じたいと思った。―その一方で、女として求められたいとも思った。

自慰に耽る彼女の目前で、むくむくと活力を取り戻した陰茎を見て、ラウラは満足そうに微笑んだ。
指先が胸元を離れ、スカートの裾をつまむ。
足はダイソンの腰を跨る状態で、膝立ちになっている。
「ああ、もう…。我慢できない…」
夢見心地のように呟くと、スカートの裾を少しずつ上げる。
月光を反射するように、濡れた内腿が白い肌を際立たせつつ輝いた。
髪の色と同じ黄金色に染まる陰毛と、その奥でもの欲しそうに震える秘所がわずかに見える。
ラウラはダイソンの一物に左手の細い指を当て、その硬度に満足そうに笑うと
自分の秘所がダイソンに良く見えるように開脚し、右手の指先で花びらを開いた。
「ほーら」
愛液を垂らしながら、その隙間を埋めるものを欲して淫らに動く花びらを大胆に見せる。
堅物そうなダイソンの前でこんなに淫靡に振舞うことへの背徳感が背筋を震わす。
「ここに、あんたの…いただくよ」


374:名無しさん@ピンキー
10/05/09 22:51:37 pcZkcvZ/
ラウラは片手を陰茎に沿え、もう片手で自らの秘所を開くとそっと腰を下ろした。
ダイソンの先端に潤んだ熱が微かに当たる。
もう恥も外聞もなく、ダイソンは出来る限り腰を突き上げた。
「ああっ!」
ラウラが驚いたように喘ぐ。彼の先端の一番大きな箇所がぐい、と肉を押し分けたのだ。
ダイソンが自ら動いたことによりもたらされた快感と歓喜が体内から溢れる。
ラウラ自身が自分の体を中途半端に煽ったため、足りなかった熱と圧迫を感じるや否や
体がそれを追い求めるように蠢いた。彼の直立に一息に貫かれる。
「ん!あ!あぁ!」
粘着質な音を掻き消すほど、ラウラは喘いだ。ダイソンの腹筋に両手を当てて
自らの性感帯にダイソン自身が擦れるように腰を振る。
ダイソンもベッドのスプリングと同調するようにして弾みをつけ、彼女の膣を深くえぐる。
「うぁ、ん!や!ダイソン!」
「…っ、ラウラ!」
ダイソンとしては腕の拘束から一刻も早く逃れたかった。
そうすれば自分の腰の上で淫らに踊り狂うラウラを、気の済むまで抱けるからだ。
しかしラウラによって封じられた腕は一向に解ける気配もなく、
ダイソンは自分の欲に従って腰を突き上げるほかなかった。
「ダイソン、いいっ!あぁっ!」
ラウラは自分の発した言葉の意味すら意識せず、ただただ快感をむさぼっていた。
浅い位置で腰を振っては、深い場所へ突き立てる。
ダイソンが不規則に与えてくる衝動に、意識を飛ばしかける。
そのうち子宮から込み上げるような切なさを感じた。
一番深いところに、熱が欲しい。

ラウラの動きが急に早くなり、膣内が追い立てるようにきつく締め付けてきた。
こんなに締められては、もう達してしまう。
ダイソンは下腹に気合を込めて激しく腰をゆすった。
切なく、甘美に攻め立てるラウラと共に果てたいと無意識のうちに思っていた。
そんなダイソンの突き上げに、ラウラの体が震えた。
もうだめだ、足も、手も、頭も、全部が飽和しそう。
「…ぁ、あ、あああああ!!!」
ラウラが叫ぶように達すると同時にダイソンの陰茎を強く締め付けた。その熱さに
「うっ!」
ダイソンも白濁した精液を、一滴残らず彼女の中に放っていった。


375:名無しさん@ピンキー
10/05/09 22:52:25 pcZkcvZ/
ダイソンの腹の上で、ラウラが猫のように丸まってクスクス笑っている。
「あんなに打ち付けて…痛いじゃないさー」
「わ、悪かった」
律儀に謝るダイソンに、ラウラは冗談だよ、と笑って応じる。
「気持ちよかっただろう?これで貸し借りは帳消しだからね」
「別にそのようなつもりではなかったのだが…」
昼間の小さな気遣いに対してお返しがこれでは、何だか倍返しされた気分すらする。
「でも、さ」
「?」
ラウラがダイソンの耳元に顔を寄せ、そっと打ち明け話をするような体勢になり
「もしまだまだヤりたいっていうなら…探索のときとかでも、ね」
「…!」
言葉の意味を理解し、一拍遅れて赤面するダイソンを尻目に
「次の探索一緒に行けるように、坊やにそれとなく言ってみるよ」
とニヤニヤしながら呟いた。
その言葉でようやくピエトロの存在を思い出したダイソンが慌てたが
「まぁ坊やは朝まで起きないだろうよ」
とラウラは何事もないように答えた。



そしてある日のピエトロ。
「ラウラさん、なんでビースリープ覚えてるんだろう?
 それになんでLv.3なんだろう??」

376:名無しさん@ピンキー
10/05/09 22:55:03 pcZkcvZ/
以上です。投げれてスッキリしました。
スレ汚し失礼しました。

377:名無しさん@ピンキー
10/05/10 06:35:07 QjJDM+cT
ナイス投げ

378:名無しさん@ピンキー
10/05/20 09:46:52 taGKRr53
ナイス投げ!

379:名無しさん@ピンキー
10/05/20 13:32:18 lp41M3iZ
ナイス投げ!ラウラがエロいわ

380:名無しさん@ピンキー
10/05/26 09:45:09 FbTqPiNL
保守

381:名無しさん@ピンキー
10/06/04 01:23:02 ThCnJxZG
保守あげ

382:名無しさん@ピンキー
10/06/15 15:52:54 LffzA6u4
保守

383:名無しさん@ピンキー
10/06/28 15:59:08 cneCFb1u
保守


384:名無しさん@そうだ選挙に行こう
10/07/10 10:17:52 uG8LBxFG
保守

385:名無しさん@ピンキー
10/08/18 00:37:44 VOfDMH6y
人外系スレ向けのプロットを固めがてら裏話的なギャグSSを
書いていたらそれだけで力尽きた上に誰得にも程がある代物に
なってしまったので保守代わりにお焚き上げ。
以下の属性を受け付けない人はタイトル
「あま~いおうちと生化学災害」をNG指定。

「非エロ」「下ネタ」「剣と魔法な世界」「触手」「くそみそ」

386:化あま~いおうちと生学災害
10/08/18 00:40:30 VOfDMH6y
*コドスより仲間達へ
 落とし穴に落ちてからすぐにこれを書いている。
 兄と一緒だ。
 これより北へ向かう。
 何か見付けたら壁に印を付けて置くから、気を付けてくれ。

*チアーナより皆様へ
 コドスのメモを見付けたので、私もメモを残していきます。
 私は一人です。
 ここへ来るまでに怪物と何度か戦いましたが、スライムや蛇のような体の柔らかい物
ばかりで、メイスでは思うように倒せません。
 どなたかと早く合流出来る事を願っています。
 皆に神のご加護のあらん事を。

*ピアーより皆へ
 さっきまでカマグと一緒だったんだけど、仕掛け扉に引っ掛かってはぐれた。
 しばらくこの辺りを調べる事にする。
 ここに置いた二つの瓶は、カマグの見立てだと赤いのは心を鎮めて魔力を回復する
飲み薬で、黄色いのは切り傷を塞ぐ塗り薬らしい。必要なら使って。

*チアーナより皆様へ
 赤の薬をいただきます。
 ここより一つ下の回廊でファキアの死体を発見しました。
 彼女はあの蔦のような怪物に囚われており、手の施しようがありませんでした。
 この小部屋で少し休憩した後、直ぐ側の階段を上ります。
 皆に神のご加護のあらん事を。

*コドンより
 コドスが死んだ
 うね**にやられた
 黄色の薬使った
 ****会いたい
 **は*ってる
 **は嫌だ
 ****痛い
(*部分は血で汚れていて判別不能)

*カマグより皆へ
 先程、この迷宮の主の部屋を発見した。
 そこで、恐ろしい秘密を知ってしまった。

387:化あま~いおうちと生学災害
10/08/18 00:43:10 VOfDMH6y
 主の部屋はこの回廊の突き当たりにあるが、魔法の罠が幾つも仕掛けられているから、
コドス以外は手を出さない方が良いだろう。
 証拠として日記と魔法の品を幾つか持ち出して来たが、日記の内容と来たら何とも
読むに耐えない。出来れば捨ててしまいたい気分だ。
 もしもの時の為に、魔法の品の使い方を書き残しておく。
(以下、魔法の品物の目録と使い方)

*ピアーよりチアーナへ
 どうやら、生き残っているのは私とあんただけらしい。
 さっき、カマグの荷物を見付けた。
 武器も魔法書も放り出して行くとは思えないから、多分、そう言う事だと思う。
 カマグは迷宮の主人の部屋を見付けたみたいで、荷物袋に色々残ってた。
 解読の魔法が掛かった指輪を使って日記を読んだけど、全くふざけた話だ。いっそ
あの怪物ごと燃やしてしまいたいくらいだ。
 ところで、回復の魔法はまだ使える?
 例の怪物にやられて、傷が疼くんだ。

*ピアーよりチアーナへ
 あの蔦怪物は毒を持っていたらしい。
 さっきから目が回るし、手足に力が入らない。
 そのせいか、同じ所をぐるぐる歩いてるような気がして、不安で仕方ない。
 手持ちの解毒剤を飲んだけど、効くかどうか。
 目覚める事が出来たら、上へ向かう。

*ピアーよりチアーナへ
 あんた今どうしてるんだ?
 人は好いけど他の誰より慎重なあんただ、まさか変な欲をかいてドジ踏んでるなんて
事はないだろうけど、心配だよ。
 こっちは薬も魔法も使い切った。
 早くあんたの顔が見たいよ。

*ピアー・シリングより誰かへ
 これが誰かの目に触れるなら、私はもう怪物の餌食になってるだろう。
 後からやって来る者の為に、知っている限りの事を書いておく。
 この迷宮は百年ほど前に一人の魔術師が作ったもので、一月ほど前にここに住み着いた
小鬼どもが下層の扉を開けたせいで中にいた使い魔が解き放たれたらしい。
 魔術師の日記を読めば全て解るが、迷宮と使い魔の存在理由は余りにも馬鹿馬鹿しい。
こんな物の為に仲間を失い、死んでいくのかと思うと無念でならない。
 この手紙の入った袋が無事なら、幾らかの金貨や宝石と一緒に、魔術師の日記と解読の
魔法の指輪が入っているはずだ。

388:あま~いおうちと生化学災害
10/08/18 00:45:37 VOfDMH6y
 それらの品物が有っても無くても、これを読んだらすぐに迷宮を出て近くの町の冒険者
ギルドに行き、ただちに中の生物を焼き払い、犠牲者を弔うように頼んで欲しい。
 日記以外の品物は、使いの報酬として取って貰って構わない。



 「……と言う事で、これがその日記」
 そう言って、鉄の半鎧を着た大男は一冊の褐変した本をカウンターに置き、その
向こう側に座るローブの男の前に押し進めた。
「後ろのページを何枚か破ってメモにしてたらしいが、内容は無事だと思うぜ」
 ローブの男は本を開くと解読の呪文を唱え、びっしりと書き込まれた文字を読んだ。



*魔術師ニョドスの日記
●月●日
 今日は何と喜ばしい日だろう!
 世俗を離れ、知識の深淵を求めてはや五十年。最早人並の幸せなど縁の無い物と思って
いたが、斯様に若く美しい女を妻に迎える事が出来るとは。
 これで幻術を相手に一人芝居をする事も、手下の怪物どもが昼夜構わず子作りするのを
腹立たしく思う事も無くなった。
 改めて言おう。今日は何と喜ばしい日だろう!
●月●日
 女と言う物は実に面白い。
 隅から隅まで調べ尽くしたと思っても、次の日には新たな発見がある。
 変化の無い日々に摩滅していた探究心が蘇って来るのを感じる。

(以下数ページ、口に出すのがはばかられるような「考察」が続く)

●月●日
 近頃、妻の顔色が冴えない。
 あれは慎ましいから口にしないが、明らかに私との時間を物足りなく思っている。
 無理も無い。あれは若く健康で、私とは孫ほども年が違う。
 何とかしてあれを満たしてやりたいのだが、どうしたものだろう。
●月●日
 妻の顔に笑みが戻った。
 私が丹精込めて作ったおもちゃを気に入ってくれたようだ。
 もっと喜ぶ顔が見たい。
●月●日
 ゆうべはひどい失敗をした。

389:あま~いおうちと生化学災害
10/08/18 00:47:30 VOfDMH6y
 新たな合成生物を試そうとしたら、妻ではなく私にじゃれ付いて来た。
 何とか対処したが、まだ尻が痛い。
 ただ、方向性は間違っていない。どうにかして改良出来ない物か。
●月●日
 合成生物が逃げ出した。
 間抜けな手下に運ばせたのが間違いだった。
 余計な事を覚える前に捕まえなくては。
●月●日
 逃げ出したものと狩ったものの数が合わない。
 種が出来ないように改良したつもりだったが、消し切れていなかったようだ。
 合成生物は手下達の尻に種を植え付け、着実に数を増やしている。
 何か対策を考えなければ。
●月●日
 後始末に追われているせいか、体の具合が良くない。
 妙に体がだるいし、腹が張っているように思う。
 妻は私を気遣ってか、閨に来なくても良いと言った。
●月●日
 体の具合がおかしい。
 ぐるぐるいっているのに、何も出ない。
 今日は休もう。
 月●日
 腹がくるしい
 ぐるぐるが腰までひびく
 あれをよんだのに返事がない とびらも開かない
 どうなっているんだ
● ●
 はらのなか ぱんぱんだ
 うず から  あな ほじっ
 すごく    いです
  ●
 かゆ うほ



 最初の方はざっと流し読みしていたが、次第にページをめくる手が遅くなり、やがて、
ローブの男は深い溜め息をついて本を閉じた。
「……確かに、これは余りにも馬鹿馬鹿しい」
「だろ? 俺もそれを見た時は壁で頭をかち割りたくなったよ。……ま、そう言う訳
だから、そのピアーとか言う奴とお仲間を弔ってやってくれ。こいつは葬式代だ」
 大男は苦笑混じりに言って、宝石が詰まった小さな革袋をカウンターに置いた。

390:名無しさん@ピンキー
10/08/18 00:49:43 VOfDMH6y
投下終了。
メモ帳からコピペ失敗してタイトルがおかしな事になってもたorz

391:名無しさん@ピンキー
10/08/19 11:13:51 7Ce2wk00
「うほ」じゃねーかwwwmwmw

392:名無しさん@ピンキー
10/08/30 19:51:05 HOwAPA30
 お借りします。
 「【風俗】娼婦でエロ小説【遊郭】」に投下するつもりで書き始めましたが、途中で「陰間はスレ違いじゃないか?」と思い、そのまま投げてしまいました。
 こちらに投下して未練を断ち切ることにします。

393:水揚げ
10/08/30 19:52:56 HOwAPA30
 いずれの将軍の治世であったか、とにかく江戸の片隅にある某岡場所。禿の
小梅は鼻歌交じりに路地を歩いていた。手に提げた大きな紙袋にはお座敷に置
いておく金平糖が入っている。
 女将に命じられ隣町まで買いに遣わされた帰り道、昼を過ぎたばかりの空は
すぐにでも雪が降ってきそうな雲行きだったが、彼女は上機嫌であった。懐の
紙には店の旦那がちよっとオマケしてくれた金平糖が数粒入っている。
「んふふ~」
 小梅は先月過ぎた正月でようやく数えの十三歳になったばかりだった。月の
物もまだ来ていない少女にとって甘い金平糖は何よりのご馳走である。あとで
こっそり食べようかな。それとも誰かと一緒に食べようか。
 そう、たとえば隣の陰間茶屋「京屋」にいる竹松ちゃんとか……。
「……あれ?」
 細い辻を曲がりかけたところで彼女は歩を止めた。左へ行けば自分の住んで
いる女郎屋「松屋」がある。右の路地は川に突き当たって行き止まりとなり、
細い柳が揺れる風情はまるで幽霊でも出そうな場所だった。
 そんな柳の幹によりかかって誰かが白い襦袢姿で泣いている。幽霊かと小梅
は一瞬息を呑んだが、よくみるとその後姿には見覚えがあった。自分よりやや
小さな背丈、そして腰まで伸びる漆黒の髪。まちがいない。
「どうしたんだい、竹松」
 数歩そちらに歩み寄り小梅は声をかけた。びく、と体を震わせ、竹松は顔を
あげる。泣きはらした真っ赤な目に彼女は首を傾げた。
「ど、どうしたんだい。楼主に叱られでもしたのかい?」
「小梅ちゃ……うわぁーん!」
 途端、彼は小梅の懐に飛び込み、さらに大きな声で泣き出した。彼女はどう
していいかわからず、しばらく視線を彷徨わせたあとそっと彼の頭に手をかけ
る。
「こら、大の男が昼間っからびぃびぃ泣くんじゃないよ。……ほら、金平糖あ
げるから泣きやみな」
「うん……ぐすっ」
 頭を撫でられ、竹松はようやく涙を止めた。鼻を啜り、小梅から貰った一粒
の金平糖を口に入れる。ほのかな甘みが口に広がった。もう一度鼻をすすり上
げ頬をぬぐう。小梅は自身もお菓子を舌の上で転がしながらもう一度尋ねてみ
た。
「で、どうしたってんだい」
「……」
「黙ってちゃわかんないだろ。ほら、言ってみなよ」
 黙りこんだ竹松にやや強い口調で命じる。彼女よりひとつ年下の竹松は、昔
から泣き虫で心配性な子供だった。いっぽうの小梅は正反対に快活で姉御肌の
少女で、二人は不思議と気があって幼い頃からいつも一緒に遊んでいた。
 ぐすっと大きく鼻を啜った竹松は、上目遣いに彼女を見た。掻き消えそうな
声で呟く。
「僕の水揚げが決まったんだ」
「……! へえ」
 小梅は一瞬息を呑んだ。だが何でもないふうを装い相槌を打つ。その声が微
かに掠れていたのが自分でもわかった。取り繕うように咳払いをし、さらに尋
ねる。
「で、いつなんだい」
「今夜」
「こっ……え、えらく急な話だねえ」
 こくりと頷き、竹松は顛末を話し始めた。

394:水揚げ
10/08/30 19:53:33 HOwAPA30
 数日前、陰間茶屋「京屋」に二人の男がやってきた。一人は武家の者で、連れの男に「細川様」と呼ばれていた。もう一人の男は「伊勢屋」という大店の旦那だった。
 伊勢屋の旦那は普段は女郎屋である「松屋」のほうに出入りしているが、今回はじめて陰間茶屋に足を踏み入れてきた。おそらくは細川という武士の性癖のせいだろう。
 細川は一人の若衆を指名し、一晩中その少年の体を貪り続けた。そして翌朝はやく帰宅する際、玄関に見送りに出てきた竹松を一目で気に入り、次回の相手を命じたのだという。
「で、それが今夜なのかい」
 柳の脇にある石に腰掛けながら竹松が首肯した。はあ、と溜息をつき、小梅が彼の背中を叩く。
「何だい。いつかこんな時が来ることはわかってたことじゃないか」
「……」
「おめでとさん、ようやく自分で稼げるようになったんだ。あーあ、アタイも早く水揚げして、おっかさんに楽させてやりたいよ」
 彼女はなるべく明るく告げたつもりだった。だが竹松は俯き、再び涙をこぼし始める。
「な、なんだいなんだい。そういう湿っぽいの、アタイは苦手なんだよ」
「……小梅ちゃんは、怖くないの?」
「へっ?」
 竹松が顔を上げ、じっと幼馴染の少女の顔をみつめた。
「僕だっていつかは……って覚悟してた。でもやっぱり怖いんだ」
 彼はこの岡場所で生まれた。松屋にいた女郎が産み落とした子で父親が誰かは知れない。物心つく前から男女の―そして男同士の営みをみて育った。だから自分が今夜、どんな行為をするのかは充分知っている。
 しかし……いや、だからこそというべきか、彼はぶるっと全身を震わせた。自分自身を抱きしめるように両肩に手を回す。
「……」
 小梅にはかける言葉がなかった。威勢のいい言葉を口にしながらも、彼女もまた内心では初夜に対する漠然とした不安と恐怖を抱えていた。
 普通の町娘たちが持つような幻想など持っていない。おそらくは店に出入りする馴染みの旦那衆の誰かが自分の初めての相手となるのだろう。相手を選べないのは女郎の宿命だ。それを悲しいと思うのは、自分で自分が悲しすぎる。
 そしてその日はそう遠くなく訪れる筈だ。
 少女の体が大きく震えた。空から一片の雪が音もなく鼻先に降りてくる。
「ほ、ほら。雪が降ってきたよ。早く帰らないと風邪ひいちまう」
 竹松の手を強くひき、小梅がつとめて明るい口調で言う。そうしないと自分も彼につられて泣き始めてしまいそうだった。
 だが彼は立ち上がらない。彼女から顔を背けたままふるふると黙って首を横に振る。その背中がどうしようもなく細く儚くみえ、思わず小梅はそっと彼の背中に手を回した。
「……え?」
 驚いて竹松が顔を上げようとする。だがその前に小梅は彼の長い髪の毛に顔を埋めた。すう、と音を立てて匂いをかぐ。
 それは幼い頃からの小梅の癖だった。彼女は何か辛いことや悲しいことがあると、決まって竹松に抱きつき彼の髪の匂いをかぐのだった。
 竹松には首筋に流れてくる吐息で、小梅も心の奥では怖がっていることを察した。口では一言もそんなことは言わないし涙もみせないが、彼女もやはり不安なのだ。
 何度か思い切り匂いを吸い込んだあと、小梅は顔を上げた。竹松は涙を拭い振り向く。ぎこちない笑顔をみせる彼に、小梅は僅かに頬を赤らめた。
「な、なんだい」
「ありがと……小梅ちゃん」
 小梅は慌てて何か言い返そうとした。だがその前に竹松が立ち上がり、裾を整えて改まって頭を下げてきたので、彼女は言葉を飲み込んだ。
 空から振る雪はその量を少しずつ増していった。

395:水揚げ
10/08/30 19:55:01 HOwAPA30
 雪はすぐやんだ。重くたちこめる雲の隙間から赤い夕陽が差し込んでくる。
 竹松は自分の部屋の中で全身を固くして正座していた。
 軽い食事を摂ったあと体を清め、髪を梳かし服を着替えてあとは客が来るのを待つばかり。どこか遠くから三味線の音や陽気な笑い声が聞こえるたびに、彼はびくっと体を震わせる。
「おい」
 部屋の障子が突然開けられ、野太い男の声がした。ひい、と息を呑み、慌てて彼はその場に指をつく。
「ほ、本日はお越しいただき誠にありがとうございます……」
「落ち着け。俺だ俺」
 裏返った声で口上を述べる彼に苦笑しながら男が声をかける。聞き覚えのある声に顔を上げると、そこに立っていたのは「京屋」の楼主、為蔵だった。
「あ……?」
「そんな緊張するな。それと口上はもっとゆっくり、落ち着いて言え」
「あ、ごめんなさい……」
「まあいい。ちょっと場所が変わった。ついてこい」
 為蔵は竹松を立ち上がらせると彼を先導して細い廊下を進んだ。狭い階段を登り、さらにその奥にある座敷へと向かう。そこは上客専門の部屋で、二間続きの手前の部屋で酒肴を愉しんだあと奥の部屋で褥をともにすることができた。
 座敷の前の廊下に為蔵が座る。その少し後ろに竹松も座った。改まった声で為蔵は障子越しに座敷へと声をかけた。
「失礼します。竹松を連れてめぇりやした」
「おお、苦しゅうない。入れ」
 部屋の中から鷹揚な返事が聞こえる。数日前に聞いた細川様のお声に間違いない、竹松の体が一瞬大きく震えた。為蔵が静かに障子を開く。竹松は慌てて廊下に額をつけた。
「た、竹松にございます……」
「おう。そう固くならんでもよい。ささ、近う近う」
「は、はい」
 恐る恐る竹松は顔を上げ、座敷の中に座りなおしてもう一度礼をした。為蔵もその横に入り同じように頭を下げる。
 部屋の中には二人の中年男性がいた。上座にいるのは細川で、その横に座る商人ふうの男は伊勢屋の旦那だった。
 二人が顔を上げると、細川は酒を口に運びながら横の男性に尋ねた。
「ところで伊勢屋。今宵は何か趣向を凝らしておる、とか言ったな」
 訝しがる少年を尻目に、伊勢屋は軽く頷いて手を叩いた。と、奥の間とを隔てる障子が静かに開き、その向こうに座る二人の女性が深々と頭を下げる。
「松屋の女将、小雪にこざいます。本日は小梅の水揚げをお引き受けくださり、誠にありがとうございます」
「小梅にございます。ふつつかものながら精一杯、務めさせていただきます」



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