【お焚き上げ】投げSS供養スレ【墓場】at EROPARO
【お焚き上げ】投げSS供養スレ【墓場】 - 暇つぶし2ch50:名無しさん@ピンキー
08/10/13 10:48:07 gmoD+SbE
>>49
すごく面白かったぞ!?

51:名無しさん@ピンキー
08/10/13 23:12:30 9gjfA4Y+
>>49
グッジョブ。面白かった。

52:名無しさん@ピンキー
08/10/14 19:18:39 VR+xrU2J
>>47-49
GJ!

53:名無しさん@ピンキー
08/10/19 20:22:03 Bcjr1Zxw
またぐっじょぶなお焚きあげはないべさか

54:名無しさん@ピンキー
08/10/19 20:59:01 V6jlX2q2
中断してるSSはいくつかあるけど、お焚き上げした後、気が変わって続きを書きたくなるかもしれんからなぁ。



55:名無しさん@ピンキー
08/10/19 21:01:15 mEN50NRg
それはあるな
お焚き上げしたけどたまに続き書きたくなるし

56:名無しさん@ピンキー
08/10/21 19:47:13 2MusJbf7
供養

57:名無しさん@ピンキー
08/10/21 20:23:17 xlt2+13y
水子。改行テスト。
母子ものにつきスルー推奨

58:名無しさん@ピンキー
08/10/21 20:24:08 xlt2+13y
「いい?綾小路くんのお母さんにご迷惑かけちゃ駄目よ?」
「うむっ、まかせておけ」
「好き嫌いしない。それと寝る前にちゃんと歯は磨くこと。いいわね」
「当然だっ。では母よ!行ってくるぞっ!!」
一々噛んで含めるように言い聞かせる母親と、早く出掛けたくてうずうずする子供。
夕方、新太が学校から戻ると我が家の門前ではそんな光景が繰り広げられていた。
だぶだぶのリュックを背負った弟は母親にビッと敬礼したかと思うと一目散に駆け出していく。
「なんだありゃ」
間の抜けた声で新太が呟くと、母親が振り向いた。
「あら、おかえり」
「ただいまー。あのバカ、こんな時間に何処行くんだ?」
「綾小路さんの所にお泊まりですって」
「ふーん」
興味なさげにさっさと家に入る新太。鞄を畳に放り投げ、よっこらせと言わんばかりに腰を下ろした。
テレビのスイッチを入れ、ごろりと横になる。…うるさい弟の居ないせいか、家の中が随分静かだ。
縁側から真っ赤な夕陽が差し込み、畳も障子も赤く染め抜いている。秋、深し。
「今日の晩飯は何でしょーか。」
メランコリィな気持を吹き飛ばすように、間伸びした声を台所に投げ掛ける。返事は直ぐ戻って来た。

59:名無しさん@ピンキー
08/10/21 20:24:59 xlt2+13y
「焼き魚とおひたしよ。なぁに?手伝ってくれるの?」
「いやいや、滅相もない」
軽く舌を出して寝返りを打った。静かな台所に包丁のリズミカルな音が響いてくる。
テレビに視線を戻すが、何を見ても面白くなくてスイッチを切った。彼の意識は別な所に向かっている。
鞄に忍ばせた一本の映像テープ。年頃の男子の事だ、言うまでもなくいかがわしい内容のテープである。
過激過ぎて市場には出回らない作品だと、持ち主の級友は声を潜めて洩らしていた。
無気力に見える顔つきの裏に動悸と期待を潜ませながら、新太は独りほくそ笑んだ。
─おとんは出張、うるさい弟もいない。後はおかんが寝静まるのを待てばゆっくり楽しめるな。
夜に備えて少し寝ておくか─
腕を枕に目を閉じる新太。規則正しく俎板を叩く音を聞きながら、程なく眠りに落ちていく。
恐らくは、若い女性のあられもない姿を夢に見ながら。

「新太─、ご飯できたわよ?」
いくら呼んでも返事が無いので覗いてみると、新太は畳の上で静かに寝息を立てていた。
「ったく……たまに静かだとこれなんだから」
浮島の夜は冷える。母親は溜め息をつきながらも、穏やかな寝顔を浮かべる新太に毛布を掛けた。


60:名無しさん@ピンキー
08/10/21 20:26:46 xlt2+13y
「おっと、そうは問屋が卸さないわよ」
楽しそうな笑み。有無を言わせず没収する程頭の堅い母親でない事は解ってる。
しかしこんな状況で堂々と居直れる程、新太は摺れては居なかった。
「…ツイてねえ。わかった、今夜は諦めるからよ。それ明日にゃ返さないといけないんだよな」
しおれた様子で訴える新太。母親とて悪戯以上の思惑でテープを抜き去った訳では無い。
案外神妙な態度の息子に、彼女は負い目を感じた。ぶっきらぼうに見えても相手は繊細な年頃なのだ。
パジャマ姿のまま部屋に踏み込むと息子の傍らに座り、慰めるような声音で言った。
「…ほら、そんなに気を落とさないの。遠慮せずに見たらいいじゃない、男のコなんだから。……ただし」
そこで言葉を切ると彼女はテレビのスイッチを入れ、問題のテープを再生デッキに攻撃的に挿入した。
「我が子に見せていい物かどうか、ちゃんとこの目で改めさせて貰いますっ。
……という訳で、お母さんと一緒に見ましょ?」
「…………マジっすか……」
嬉々として振り向く母親に、新太は軽く眩暈のする頭を抱え込む。
─自分も興味津々って、顔に書いてあんぞ…
テープの内容よりも、直ぐこの場から逃げ出したい。新太は切実に思った。

61:名無しさん@ピンキー
08/10/21 20:32:07 xlt2+13y
…間違えて途中消してしまったので中断。
この調子で何コマ使う気かと思い挫折。
字数制限と投稿の面倒な携帯なんて大っ嫌いだ。

62:名無しさん@ピンキー
08/10/30 18:26:02 Zvy2zRBq
>>57-61
遅くなったがGJ

63:名無しさん@ピンキー
08/11/02 00:24:09 tZaLgUkG
ここは二次もおk?

64:名無しさん@ピンキー
08/11/02 21:20:37 XzgiPDbO
なんでもいんじゃね? 焚いてやれ

65:名無しさん@ピンキー
08/11/13 10:05:44 3b4nsSdS
はっきり言いましょう
レイプNTR要素ありのこの展開を覆すだけの和姦が書けねぇ
そーゆー訳でお焚き上げ



冷たい雨のそぼ降る街をあたしは傘もささずに歩いていた。
何故なら、あたしには居場所がないから。
昨日まで、あたしはそう思い込んでいただけだった。
でも、今日、本当に居場所を失った。
産みの親の言葉で。
『私の実継を誘惑しないで、この泥棒猫!』
あれは本心からの言葉だ。
実継を今でも待ち続けている女から奪い取ったのは他ならぬ母さんなのだから。



あれは今から一年に十日ばかり引いた、あたしが高校にあがる直前の事だ。
もう10時を回っているのに、母さんがお客さんを連れて来た。
飄々として、いやに馴れ馴れしい、狐顔。
珍しくあたしも同席するよう言われて、変に思った。
お客さんが来ると酒を酌み交わすから、お酒の飲めない未成年は部屋にあがりなさい、
って言うのがうちの家訓なのに。
そうして終電で帰って来た父さんに、母さんは一枚の紙を渡した。
母さん?
……それ、離婚届けだよ……?
父さんは何も言わずにサインした。
父さん?
なんで何も言わないの?
書斎で荷造りする父さんを罵った。
父さんはぽつりと独り言のように答えた。
「本当に相手を想うなら、身を退くのも一つの選択なんだよ」
父さん、それが世間に顔向け出来ないような恥知らずな真似でも退くのが正しいの?

父さんは答えなかった。
翌日、実継の彼女と名乗る人が家を訪ねて来て、実継を返してほしい、と土下座まで
していった。
実継はそんな元カノに帰れとウィスキーを浴びせ、実継が帰ってくるのを待っている、
と言い残して立ち去る彼女に、母さんは二度と来るなと塩を撒いていた。
当然、母さんがセフレ連れ込んで父さんと離婚したことはあっという間に知れ渡り、
あたしの高校生活は、一人裏庭で購買のパンをかじる毎日から始まった。
母さんはすっかり変わった。
髪や服、お洒落に気を遣うようになって、シャンプーやボディソープなんかを奢るよ
うになった半面、掃除は雑になり、食事も度々手を抜くようになった。
洗濯物も一日置きにしていたのが、二日三日と溜め込むようになった。

66:名無しさん@ピンキー
08/11/13 10:11:20 3b4nsSdS
それでもあたしの前ではなるべく実継に甘えたりはしないよう気をつけているみたいだった。
だから、あたしは自分の身の回りくらいは自分で片付けるようにしたし、何も言わなかった。
週末にはおかずをつくって、三駅離れた町のアパートにいる父さんにお弁当を届けた。
そんな生活が続いて半年後、父さんは飲酒運転のドライバーに跳ねられて死んだ。
母さんは「もう関係ない人だから」と葬式にも顔を出さなかった。
葬儀の次の朝、母さんは起きてこなかった。
起こしに行くと扉の向こうから猫が喉を鳴らすときみたいな変な声がした。
あたしは台所で一人、夕べの残りのサラダをつついて泣いた。
学校帰り、路地裏に隠れてビールを飲んだ。
美味しいとは思わなかった。でも、今の母さんがつくるご飯よりはずっとマシだ。
そんな時、奴が声をかけて来たのだ。
「こら、女子高生。飲酒はいかんでしゅ」
飲酒といかんをかけた駄洒落をのたまう三十歳くらいの人の良さそうな背広姿のおっさん。
「変だな、この位の歳の娘って箸が転がっても笑うんじゃなかった?」
「笑う訳無いじゃん」
その時のあたしは多分自暴自棄になっていたんだと思う。
お酒入ってたし。
埃を払って立ち上がると、ベンチ替わりに腰掛けていた、自販機の横っちょに転がって
いたブロックの廃材に足を乗せ、制服のスカートの裾を、パンツが見えるぎりぎりまで
弾くようにめくった。右手を突き出しちょっと腰をくねらせ、おっさんを誘うような
ポーズを決める。
「くだらない駄洒落なんかより一緒に踊ろうじゃないか」
蓮っ葉な声でおっさんを挑発した。
あたしは、母さんみたいに一生添い遂げると約束した人以外の男をくわえ込んで喜ぶ
ふしだらにはならない。
ささやかな幸せすら守る力もない法律も糞くらえだ。
法の平等の元に守られ、ぬくぬくと日々を過ごすおっさんが、小娘に色目を使われ、
へどもどとうろたえる様を見て嗤ってやる、そんなつもりだった。
おっさんの両肩に手をかけて、腰を落とし、胸を突き出し、映画に出て来るキャバレー
嬢がするみたいに、背広の腹から胸の辺りにこすりつけた。
自慢じゃないけどあたしのバストはD65。
ウエストは61、ヒップ89。
それなりにめりはりのあるサイズだと思ってる。
「どうだ?女子高生のおっぱいは。キモチよかろ」
こんな事もしてやるぞ、と脚を腿で挟み込んだ。

67:名無しさん@ピンキー
08/11/13 10:15:46 3b4nsSdS
「全く最近の女子高生は、けしからんな」
おっさんがため息をついてネクタイを緩めた。
片手でシャツのボタンを外す。
ちらりと覗いた胸板。
ドキリとした。
それまで優位に立っていたのが嘘のように脚がすくんだ。主導権を握っていた筈の自
分が、それだけの事で、立場が入れ代わった気がした。
薮をつついて遊んでいたら虎が出て来た、そんな心地だった。
おっさんの手がスカートをまくり、下着を下ろした。
腰が押し付けられて、脚の間に何かがするりと入り込んできた。
なにをどうされたのかわからない位、自然な、無駄の無い動き。
あ、と思う間もなく、熱い塊が、あたしの中で蠢いていた。
「やだ、嘘っ」
おっさんを押し退けようと胸板を叩いた。
おっさんの腕は力強くて、どうあがいてもあたしは身動きが出来なかった。
「嘘じゃねぇよ、男をこんなにしといて未成年ですから、は無しだぜ、お嬢さん」
おっさんがあたしのベストとブラウスをたくしあげ、乳房を剥いた。
大の男が赤ちゃんみたいに乳首に吸いつく。
「やぁっやめてっ」
嫌、お腹の中がムズムズする。
あそこを意識しちゃう。
んん、おっさんがくぐもった呻き声をあげた。
それまでがっちり食い込んで内側から圧迫していたのが、どんどん萎んでいく。
おっさんが腰を引くと、あたしの脚の間からちゅぷ、と音を立てて、黒いしわしわの
鰻みたいのがでてきた。
何故かおっさんは胸ポケットに入れてあったあたしの生徒手帳を抜き取っていて、返
してほしかったら明日またここで待ってな、そう言い残して立ち去っていった。

あたしは、自分の身体を抱え込むような恰好で、その場にへたりこんだ。
脚の間から何かが溢れてる。乳首を吸われた感触が、生々しく残っている。
気持ち悪い。
あたし、セックスしちゃった。
もしかしたら妊娠したかも。
こんなの、クラスメイトの誰もしてない(と思う。話なんかした事ないし)。
誰にも相談なんか出来ないよ。
どうしよう。
どうしよう。

怖いのにどうすることも出来ず、それからあたしは何度もおっさんに抱かれ続けた。
学校でも、家でも出来ないこと……他愛のないお喋りがおっさんとなら出来たから。
おっさんはあたしを抱くときだけは酷く怖い顔をしたけど、それ以外の、喫茶店で待
ち合わせの時や、その後の食事の時にはよく喋り、よく笑った。
地理と生物にはやたら詳しかった。
いつしか学校より家よりおっさんと逢うのが楽しみになっていた。

力ずくで犯された相手なのに。
あたしはどれだけ人に飢えていたんだろう。



そうして半年が過ぎ、あの日が来た。

その日はおっさんは出張だとかで、あたしは久しぶりに早く家に帰ることが出来た。

68:名無しさん@ピンキー
08/11/13 10:19:18 3b4nsSdS
実継は夜にならないと帰ってこないから、今日はほんの少しだけ、あの頃の時間に戻れる。
筈だった。
居間に実継がいた。
「よーう、麻衣ちゃん」
ソファーに寝転んで週刊誌を読んでいたニットセーターを着た狐顔が起き上がる。
いつ聞いても軽薄な声音に、楽しい気分が一瞬で冷たいピリピリしたものに変わる。
仏頂面と嫌悪をミックスさせた表情を隠す事なく問うた。
「母さんは」
「珍しく買い物だよ、今日は久々に腕奮ってオムライスだとさ、お前の好物なんだっ
て?」
あたしは返事をしないで居間を出ようとした。
母さんが帰ってくるまで駅前か近くの本屋に逃げるつもりだった。
自分の生まれ育った家から逃げるのも変な話だけど、仕方ない。もうここはあたし達
家族の場所じゃなくて、母さんと実継の住み処で、あたしはその一角を間借りさせて
もらっているだけなんだから。
実継があたしの左の二の腕を掴んだ。
掴まれた部分が苛々とした熱を帯びる。
触るな。穢らわしい。
「離せ」
離せと言ったのに実継は更に身体を密着させて来た。
「麻衣ちゃん、最近すげぇ色っぽいのな」
変な熱を帯びた目。緩んだ口元。
「日本語が理解できないか?」
「最近佳津子ばっかりだから飽きちまってんだよ、やらせろよ、麻衣ちゃん」
体中が総毛だった。
こいつ、あたしに欲情してる。
「母さんに言い付けるぞ」
母さん、早く帰って来て。
あたしに手を出してるとこを見たらきっと母さんも目が醒める。
実継が馬鹿にしたような声音で笑った。
「はっはぁママに言い付ける、麻衣ちゃんは子供だねぇ」
いきなり身体が支えを失ったように勢いよく廊下に倒れ込んだ。
実継が腕を掴んでいた手を離したのだ。
突然の事に受け身も取れず、したたかに倒れたあたしの上に実継が跨がる。
上体を重ねて、耳元に囁く。
体中が嫌悪感にビリビリする。
「どうせあちこちでハメまくってんだろ?オレで何人目よ?」
「お前と一緒にするな」
へ、実継が鼻で笑ってあたしの乳房をわしづかみにした。
「伊達に何人もこましてるわけじゃねぇよ、御望みなら乳首だけで逝かせてやるぜ?」
その言葉に嘘はなかった。
実継の指が乳首に触れただけで、おっさんに抱かれ、ほんの少しだけ綻んだ雌の部分
が激しく反応する。


69:名無しさん@ピンキー
08/11/13 10:49:37 3b4nsSdS
あたしは理解した。
あたしが実継を嫌いなのは、到底深みのない薄っぺらい人間性と、撒き散らす牡の本
能が同居した存在だからだ。
そして父さんは牡として実継に負けた。
だから、身を引かざるを得なかったんだ。
人の姿をした獣。
嫌だ、こんなのに触られたくない。
あたしは抵抗した。
実継を罵り、脚をばたつかせ、頭を振り乱て暴れた。
「うっさいなぁ」
実継が顔を近づけて来た。
つ、と唇が塞がれて、生臭い、蛞蝓みたいなのが口内に押し込まれた。
歯茎を、上あごの、凹んだ部分を撫でられ、それだけで、身体にあの痺れが走った。
イクまい、とそれだけに必死になっていて、下着を降ろされてるのにも気付かなかった。
キスしたままの状態で、実継が一気に押し入ってきた。
それだけであたしは軽く達した。
思わず漏らした苦しげな呻きに満足したのか、実継が唇を離す。
混じり合った唾液が、か細い糸をひいていた。
唇は離れたけど、まだ接吻は続いているように思えた。
「突っ込んだだけでイッたのか?大洪水じゃねーか」
実継が腰を使い始めた。
おっさんのより僅かに細い。
なんだ、アンタの自慢の逸品、粗品じゃん。
それだけが、乳房を揉まれ、口も内も凌辱されたあたしを支えていた。
「実継、アンタ、あたしの、知ってる、人の、より、小さい、よ」
「ぁあ?」
実継の指が乳首を捩りあげた。
快楽を通り越した鋭い痛みに悲鳴をあげる。
「その小さいナニをハメられてあへあへ言ってるテメェはなんだ?この売女」
俯せにされて、犬の姿勢で貫かれた。
ゆっくり引き抜いて、わざと滴る音を聞かせる。
ボタ、パタタ、と粘っこい液体がフローリングの床に垂れる。
余りに恥ずかしい音に、気がとおくなりそうだった。
「佳津子だってここまで濡らしたりしねぇよ、麻衣はとんだ助平だな」
「違うっ違う……っ」
「違わねぇよ、このエロマンコ」
実継が結合部を撫で、指を目の前に差し出す。
人差し指と親指には濁った粘液の橋がかかっていて、それが何を意味するのか火を見
るより明らかだった。
まだ実継は中に出してない。
つまり、あたしは実継に犯され、本気汁を溢れさせているのだ。
実継はさっきの報復だと言わんばかりにあたしを淫売だ雌犬だと、罵倒し、その度に
あたしは心を傷付けられる痛みに現実に引き戻された。

70:名無しさん@ピンキー
08/11/13 10:53:56 3b4nsSdS
もう死にたい。そう願う半面、おっさんに逢いたくてあたしは泣いた。
おっさん。おっさん。死ぬ前に一目逢いたい。逢ってから死にたい。
あたしをこんな身体にしたのはおっさんなのに、何故かおっさんには怒りも憎しみも
沸かなかった。
目茶苦茶に泣きじゃくるあたしを実継のぼっくいが追い詰める。
「いけよ、淫乱娘」
それまで放置されていた小さな肉の芽を摘みあげられた。
あたしは言葉にならない悲鳴をあげて、実継をしっかり締め付けた。
実継にイカされた……。
放心し、ぐったりと倒れ伏すあたしの腰を実継が抱え込んだ。
「一人でヨガって満足してんじゃねぇよ」
さっきまでのはまだ本気じゃなかった、と言わんばかりに激しく打ちつけてくる。
「やっ、あっ、イクッ、イクッ」
あたしは着崩した制服姿で髪を振り乱し、何度も果てた。
汗と涙は勿論、よだれまで床に垂らした。
いっそ行為に没頭して気を失ってしまったほうがまだ楽だったかも知れない。
そうすれば、あんな言葉を聞かずに済んだかも知れないんだから。
ふ、と家の中の空気が動いた。
カツ、とパンプスの響きが、続いてドサ、グシャリ、そんな音が聞こえた。
涙で滲んだ視界に、母さんがいた。
母さんは般若のような形相だった。
実継に腰を掴まれたままあたしは母さんに手を差し延べた。
母さんが迫ってくる。
母さん、助けて、母さん。
こいつを追い払って。
次の瞬間、目の前に星が瞬き、鼻がつんときな臭くなった。
続いて身体をしたたかに床に打ち付けた。
顔をあげると、勃起したイチモツを晒した実継が膝立ちのままポカンとした顔をして
いて、その脇に、母さんが仁王立ちで肩で息をしていた。
身を盾にして、実継を守るように。
何が起こったのか判らなかった。
頬が熱い。
口の中に錆臭い味が滲みている。
あたし、母さんに張り飛ばされた……?
なんで?
あたし何もしてない。ううん、されたのはあたしだよ?
「母さ」
「私の実継を誘惑しないで、この泥棒猫!」
それだけ言い放って母さんは実継の方に向き直った。
「嫌よ、やめて……小娘なんかに振り向いたりしないで、私だけを見てよ、実継」
実継を口に含み、それから顔を背けて何かを吐き捨てた。
再び実継を頬張る。
母さんは実継についていたあたしの愛液を舐めとって、吐いたのだ。
物理的に、とか衛生的にとかじゃなくて、何か違うところが、母さんを汚らしい、
厭わしい。そう認識した。
もう、母さんは母さんじゃない。
母さんの姿をした、色情だ。


71:名無しさん@ピンキー
08/11/13 10:56:31 3b4nsSdS
実継が女の髪を弄び、囁く。
「馬鹿だなぁ、佳津子が最高に決まってるじゃないか」
しゃぶりついたまま、女が甘えた声をあげる。
「んん、実継ぅ」
卑猥な水音が廊下に響く中、あたしは身繕いをして、自分の鞄から財布を取り出すと、
足音を立てないように靴を履き、玄関のドアを開けた。
ドアの脇には女が買ってきた卵や挽き肉や何からが一杯入ったビニール袋が落ちてい
ていて、その脇に、紙で出来た小さな箱が転がっていた。
駅前のケーキ屋さんのロゴが捺された箱だった。
箱から小さなロウソクの入った袋と、生クリームが零れていた。
それが何か悟って、胸が詰まった。
鳴咽を堪え、冷たい雨のそぼ降る中に飛び出した。
今日はあたしの誕生日だったんだ。
あたしだって忘れていたのに……母さん、母さん……!



もうどれだけ歩いたのかわからない。
頭のてっぺんから靴の中まで、すっかり雨で濡れている。
駅前の繁華街で、かわいい私服に着替えてはしゃぐクラスメイトを何度か見かけた。
彼女達はあたしと目があうと、困ったような、迷惑げな顔で視線や顔を背けたり、
わざとこっちを指差してゲラゲラ笑った。
実継が羨ましかった。
あいつが死ねばどんなにいいだろう。
でも母さんが哀しむ。
そして実継を待っている元カノも泣くだろう。
あいつにはそれでも泣いてくれる人がいるのだ。
あたしには哀しんでくれる人すらいないのに。
いっそ消えてしまいたい。
どうやったら死体も残さず、誰にも迷惑かけずに綺麗さっぱり消えてしまえるだろう。
ここなら死んでも見付からないかな。
繁華街から少し離れた新興住宅地の外れの、鬱蒼と繁った雑木林の前でぼんやり立ち
尽くしていたその時だった。
「お前、何やってるんだ?」
背後から声をかけられた。
辺りを見回した。近くには誰もいない。
それでその声があたしに向けられた事にようやく気付き、振り返る。

訝しい顔をしたおっさんがいた。

どうしてだろう、あたしは馬鹿みたいにおいおい泣いておっさんに縋り付いた。
なにやってるんだろう。
あたしは誰にも必要とされていないのに。
だから、死のうとしていたのに。
なのに、おっさんの姿を見たら、そういうのが全部どこかに吹っ飛んでいってしまった。
おっさんはあたしを抱きしめてくれた。
いつもなら恐いだけのおっさんの腕が、この時だけは冷たい世間から守ってくれる力
強いものに感じられた。

72:名無しさん@ピンキー
08/11/13 11:15:55 3b4nsSdS
おっさんの家は雑木林の向こう側、隣町に立っている3LDKマンションの一室だった。
バブルの頃に建った物らしくて、無駄に贅沢なつくりだった。
壁一面に、紅葉した山野、雪化粧の町並み、緑滴る渓流、朝焼けの海、夕暮れの薄野
原、アップで撮られた昆虫や小動物のパネルが飾ってあった。
写真が仕事なのかと聞くと
「それは趣味が高じたもんだ、休みにはよく野山を歩き回っている」
と返って来た。
だから、地理と生物に詳しいんだ。
ほんの少し、おっさんを知った気がして嬉しかった。
おっさんはまずはシャワーを浴びて着替えてこい、話はそれからだと言って男物のパ
ジャマを寄越した。
いつもみたいにくだらない駄洒落を口にしなかった。
おっさんは怒ってるみたいだった。
風呂場を出ると、おっさんは温かいミルクを用意して待っていた。
「何があった」
ぽつりぽつりと語り、思い出しては泣き、泣いてはおっさんが宥め、全部話し終わる
まで、長い時間がかかった。
話を聞き終えたおっさんは、深いため息をついた。
そうして、とにかく今日は泊まっていけ、そう言っておっさんは和室に布団を敷き始めた。
それから、水の入ったコップと、風邪薬の乗った盆を枕元に置いた。
「寝る前にちゃんと飲んどけ」
布団に横たわっても、ずっと神経が昂ぶっていた。
おっさんは今日もあたしを抱くんだろうか。おっさんに、実継と同じ事をされるのが
怖い。
そんな中、おっさんがぼそぼそと何かを呟いているのが襖越しに聞こえた。
誰かと電話で話しているみたいだった。
結局一睡も出来ないまま、朝を迎えた。
おっさんは更にふさぎ込んだ顔をしてダイニングでカメラをいじっていた。
テーブルには飲みさしのコーヒーと、灰皿の上で山盛りになった吸い殻。
おっさんも眠っていないみたいだった。
「なぁ、お前さん料理は出来るか?」
なんでそんな事を聞かれるのかわからないまま「一通りなら」と答えた。
おっさんは大きなため息をついて、重い口を開いた。
「夕べ、お前さんが寝た後、お前さんの親御さんと話をした」
「…………」


73:名無しさん@ピンキー
08/11/13 11:16:50 3b4nsSdS
「正直、帰らないほうがいい」
(中略、麻衣はの暴行の最中、親ではなくおっさんの事を想っていたことに思い当たる)
「俺はな、あの時お前さんは欲しい服を買ってもらえないだの、勉強したくないだの
つまんねぇ我が儘こねて悲劇のヒロインぶってるだけだと思ったからお前さんを犯し
たんだ、でもお前さんは、もっと辛い境遇にいたんだな」
(ここからあたし穢されたから綺麗にしてよ和姦→一緒に住もうエンドに至る)

以上

パズルの完成が見えているのにピースが無いって、せつねぇ……

74:名無しさん@ピンキー
08/11/13 13:25:55 oC5pIJX6
GJ!未完ながら読み応えがあった・・・!
グッドエンドになるはずだったんだなぁ。せつな~

75:名無しさん@ピンキー
08/11/14 12:07:23 hD4TQ5LA
GJ!
良いお炊きあげでした

76:名無しさん@ピンキー
08/11/28 18:11:23 BjWlITYK
保守ー

77:名無しさん@ピンキー
08/12/05 16:16:08 fOxPkJfI
保守

78:名無しさん@ピンキー
08/12/12 16:27:20 BXE8t5sv
保守

79:名無しさん@ピンキー
08/12/14 01:33:47 EQe04Ubm
原作の進展で満足してしまった二次物供養
アタマとケツのみ

 一時間ほど前から始まった「異変」によって、聖ベドラム病院は未曾有の混乱に包まれていた。
 室内にいる者の目を焼くほどの光が辺りを包んだかと思うと、数呼吸の後に凄まじい衝撃と轟音が
襲った。大地震か、それとも、核爆弾が投下されでもしたのか。混乱の中、辛うじて我を取り戻した
何人かは、窓から病院の外を覗き、そして、再び絶句した。一面の砂嵐。その中に、舞い上がる樹木、
家々、鉄筋、アスファルトの塊。不可思議な結界によってなぜか院内は無事であるものの、外界との
連絡は途絶。医師も、看護師も、患者達も、皆が何をすればよいか見当もつかないまま、ただただ
東京が滅びてゆく様を傍観しているしかなかったのである。

 狂乱した人々の悲鳴。それを宥める者たちの声も絶叫に近い。今なせることなど何一つないという
のに、駆けずり回る無数の足音は止まず、無意味な作業によるものか、それとも混乱の果ての破壊行為に
よるものか判別のつかない騒音が鳴り響く。院内はどこもそんな有様だった。

 ただ一箇所、この病院の全責任を預かるものの私室だけは、不気味な静寂に包まれていた。
 聖ベドラム病院院長の肩書きを持つその初老の男は、取り乱すでもなく、指で押し広げたブラインドの
隙間から、外界が破壊されていく様をただ無言で見つめていた。
 院長室の扉がノックされる。
 しかし、男は外の光景に魅入られた様子で、応えを返さなかった。一寸の間を置いて、「失礼します」
という若い女の声とともに扉が開く。入ってきたのは、場違いなセーラー服に身を包んだ女であった。
長身で、奇妙に老成した雰囲気を漂わせている。服装からすればまだ十代のはずなのに、数枚の書類を
綴じたパネルを小脇に抱え、きびきびと立ち居振る舞う様はまるで熟練のナースのようにも見えた。

「壊劫(えごう)が始まったな……」
 女を振り返りもせず、男は独り言のように呟いた。
「ええ」
 深い感慨を込めた男の呟きを、しかし女は素っ気ない様子で返す。手慣れた手つきで書類をめくり、
淡々と報告を始めた。
「産婦人科からの報告では、インパクトの瞬間から十三名の新生児を確認したそうです」
 病院の他の職員が聞いたら目を回したことだろう。正体不明の大惨事の最中でさえ、一向に取り乱す
様子のないこの二人の人物にとって、最大の関心事とは病院が確認した新生児の人数であるらしい。
 その報告に男はようやく窓際から離れ、女へと向き直る。
 目を閉じて、報告の内容をしばらく反芻している風であったが、やがて何かを諳んじるようにして
口を開いた。
「慈変泰は人為にて革を成し天子を生み出す」
「……果たして何人がアートマンとして覚醒するかしら?」
 あたかも神の託宣を告げる預言者のような厳粛さをもった男の言葉に、女はどこか面白がる様子で
問うた。男はその特徴的な口ひげを指でしごきながら、沈思するように答える。
「再び黄金の卵へと還る者は少なく、梵天(ブラフマン)に至る者は更に少ない……」
「それでも異能さえあれば使い道はありますわ」
 女はそう付け加え、小さく嗤った。理知的な容貌ともあいまって、それはひどく酷薄な笑みだった。
手元のリストを眺める女の唇がなまめかしく蠢く。男には聞こえないほどの小さな声でそっと呟いた。
「可哀そうね。この子たち。とても可哀そう」
 そして、再び、小さく嗤った。

80:名無しさん@ピンキー
08/12/14 01:34:51 EQe04Ubm
 トタン葺きのアパートの前に一台の自転車が停まった。
 黒のヘルメット、そして、黒地に赤いラインを引いたライダースーツ。光沢を放つ革の生地が
しなやかで優美なラインを描き、その人物が女性であることを強調していた。
 女は自転車から降りると、無造作にヘルメットを脱ぐ。
 解放された濡羽色のショートボブが宙を舞った。
 あたりは無人であったが、もし観察者がいたなら、ここで思わず感嘆の吐息を漏らしていただろう。
それくらい、ヘルメットを脱いだ女の素顔は美しかった。くっきりと弧を描く眉、涼しげな目元、
鼻筋の通った、一種東洋的な造形美を湛えた顔立ち。切れ長の瞳には三白眼気味の鋭い眼光が宿る。
それはどちらかというと見る者を畏怖させる類の非人間的な美であったかもしれない。

 女はアパートを見上げる。
 その引き結ばれた唇には、いかなる表情も浮かんでいなかった。
 そして、無言のまま、アパートの、玄関扉が開け放たれたままの一室へと歩を進める。

 塗装が剥げ、所々に亀裂の入った木製の扉が、錆付いた蝶番によって辛うじて支えられている。
その開け放たれた入り口は、しかし黄色のテープによって何重にも封印されていた。事件現場などで
よく目にする類のテープに見えたが、黒字でプリントされた「立入禁止」の文字の合間に見慣れぬ
渦巻き文様が並ぶ。呪法に精通した者が見れば、それが霊的に施された強固な封印であることが
わかったであろう。
 女はライダースーツのファスナーを引き下ろす。豊かな双丘がこぼれそうになる際どい寸前で
手は止まり、懐中より赤く染め上げられた数珠を取り出した。
 数珠をかけた右手に左手が合わされ、合掌を形作る。
「おん……あぼきゃ……べいろしゃのう……」
 女の艶やかな唇から、その出で立ちに不似合いの真言が紡がれる。
「吽(うん)」
 最後の一音とともに、合掌が解かれ数珠を握る右手が軽く打ち下ろされた。
 同時に、何かが弾ける音が鳴り響き、玄関を封鎖していたテープが次々とひとりでに千切れてゆく。
 遮るもののなくなった玄関に、女はブーツのまま踏み込んでいった。

 ステンレス張りのシンクの脇を抜けると、直ぐに、息が詰まりそうなほど狭い室内の全貌が見渡せる。
型の古いテレビとビデオ一式を除けば、家具と呼べるものは何一つない殺風景な部屋。フローリングと
呼ぶのが憚られるような剥き出しの板床には、白いビニールテープで仰臥した人間の形が模られていた。
 テープの中の、ちょうど人型の頭部にあたる部分にはどす黒い血痕がこびり付いている。
 床の染みと見分けがつかぬほど変色しているわけではないが、乾ききったそれに流れ出た直後の
生々しさはない。おそらくは二、三日ほどは以前のものであろう。生活感のない部屋の様子から
見ても、すべては、後処理も含めて終わってしまった後であることが伺われた。この部屋の住人であった
はずの兄妹も、もはやどこか遠くへと移されてしまっているのだろう。

「そう……間に合わなかったのね」
 呟きが漏れた。
 前回は早過ぎた。そして、今回は遅過ぎたのである。
 能面のような無表情であった女の顔に、初めて、悔恨のような、あるいは憐憫のような痛ましい表情が
浮かんだ。

以上

81:名無しさん@ピンキー
08/12/14 19:49:17 GRz14u6K
すげぇ、もしかしてソワカちゃん?

82:名無しさん@ピンキー
08/12/15 02:14:25 i9HhXmS8

元ネタ分からない
しかしGood ジョブ

83:名無しさん@ピンキー
08/12/15 23:14:39 CD9A91nr
>>81 
正解
マイナーな二次を供養させてもらえてこのスレに感謝

84:名無しさん@ピンキー
08/12/16 10:01:06 GBEZlboG
被ったうわああああああorz
雑談リクのカプにインスパイアされていそいそと書いてるうちに同じカプが投下されましたw
遅筆な自分を呪います

というわけで、激しく未完のゴミ二次をお焚き上げ供養
エロ途中まで書いてもうイヤン


85:名無しさん@ピンキー
08/12/16 10:01:41 GBEZlboG

「ひゃっ」
「ごめん、冷たかった?」
 素肌に触れるひんやりして骨ばった指。
 気遣うような眼差しでわたしを覗き込むギア。
 少し乱れた黒髪が頬にかかり、そこはかとなく色っぽい。
「だ、大丈夫だよ」
「すまない」
「あのな、こいつが冷血動物なのは先刻承知だろうが。そんなことでいちいち悲鳴をあげるな」
 ずずいと割り込む上から目線な物言い。
 悔しいけど立場上言い返せないわたし。
 せめてもの抗議に、ぷーっと膨れて唇を噛む。
 と、その唇が上から柔らかいものに塞がれた。
 手と同じように冷たいギアの唇。
 はむ、とやさしくわたしの唇を包むようにキスしながら、低い声が呟く。
「ごめんよ。邪魔なのがいて」
「ん……」
 ぬめりを帯びた舌が唇の上から歯茎をそっとなぞり、吸い上げながら舐めまわす。
 間接から力が抜けてしまうようなキスがふと離れる。
 少しとろんとしてしまった目を上げると、全く遠慮というものが感じられないぎょろ目が至近距離からわたしを覗き込んでいた。
「おい、お前ら。ふたりの世界を作るんじゃない」
 当然のようにギアを押しのける大きな体。
 こんがり日に焼けてがっちりと大柄。鎧みたいな分厚い筋肉の肉体は、ギアの細いけれど弾力ある鋼みたいな体とはいいコントラストになっている。
 だってギアは白くてダンシングシミターは浅黒くて。
 身長はあまり変わらないのかな?
 こうして裸体で並ばれると、ついつい見比べてしまう自分がちょっとやだなあ……
「おいおい、こいつと比較しないでくれるかい? この筋肉バ……いや」
「ギア! 貴様いま馬鹿と、筋肉馬鹿と言おうとしたろうが!!」
「言ってない言ってない」
 含み笑いをしているギアに、真っ赤になって怒っているダンシングシミター。
「全く、貴様の毒舌と女の転がし方にだけは勝てん気がするぜ」
 しれっと受け流されて、怒りのやり場に困っているようにブツブツ言いながら、わたしの上にのしかかってきた。


86:名無しさん@ピンキー
08/12/16 10:02:18 GBEZlboG
 んもう、こんなことなら、こっそり抜け出したりするんじゃなかった。
 シルバーリーブに来ていたギア逢いたさに、夜中にみすず旅館を抜け出したわたし。
 ギアの泊まっていた旅館の部屋で久々の再会を喜び合い、ついそういう流れになったところで……
 前触れなく開いたドア。
 立っていたのはギアとパーティを組んでいる辮髪の男、ダンシングシミターだった。
 彼はベッドの中のわたしたちを見て無表情なまま一瞬眉を上げると、
「ほほぉ、そういうことか。邪魔したな。飲み直してくる」
 と言うとドアを閉めようとした。
 その時真っ青になって、つい叫んで呼び止めてしまったのはわたしの失敗だった……のかな、やっぱり。
「ちょ、ちょっとちょっと待ってーーーっ!!」
 閉めかけたドアがまたギイッと開く。
「なんだ」
「いやあの、その、えっと」
 わたしを抱きしめたままだったギアが体を起こし、苦笑した。
「パステルが何か言いたいらしい。とりあえず入ってドアを閉めてくれ」
 フォローありがとう、さすがギア。って違う! 言いたいことってえっと、えっと……
「飲み直すって、ど、どこで?」
「この町にそんなに何軒も飲み屋があるのか」
「……猪鹿亭だけだよね」
 猪鹿亭には今、クレイとトラップがいるはず。
 彼らが出かけるのを確認して抜け出してきたんだもの。
「あの……うちのパーティのメンバーがいると思う……んだけど」
「そうか。言っておけばいいんだな」
「違うってばーー!!」
 そんなこと言われてしまったら、あのクレイが、あのトラップが果たしてなんて言うか、考えただけで眩暈がする。
 ただでさえふたりともギアを嫌ってるっていうのに、いやいつかは言わなきゃいけないんだけど……
 いやいや、とにかく今言われるのはまだ時期尚早よ!
 とりあえず恐る恐る口止めをお願いする。
 でも、そのずるそうな表情を見るに、なんだか嫌な予感はしてたんだよね。
 案の定、口止めの交換条件を提示してきたダンシングシミター。
「げっ。わたしそんなお金持ってないよ」
「誰も金なんぞと言っとらんだろうが」
「じゃあ何よ?」
「……俺もまぜろ」
「はあ!?」
 まぜろって、まぜろって、ちょっとどういうことよ!?
 すぐ傍らのギアをすごい勢いで振り向くも、彼は片手でおでこのあたりを押さえてはぁ……とため息をつきたげな表情をしていた。


87:名無しさん@ピンキー
08/12/16 10:02:51 GBEZlboG
「ダンシングシミター。言っていいことと悪いことがある」
「そうか? ごくまっとうな取引だと思うが」
 その表情には、あくまでも悪びれる様子がない。
 ギアはいつものポーカーフェースも崩れ、おそろしく困り果てた表情でわたしに向き直った。
 ダンシングシミターは全てにおいて果てしなくビジネスライクな人間であること。
 彼が「取引」と言い出したらそういった意味では手が付けられないこと。
 ……なんかどこかで、すごく似たような人の話を聞いたことがあるような気がするなぁ。
 虚しい既視感を感じていると、ベッドから降り立ったギアがおもむろにソードを取り出した。え、いやまさか。
「パステルがどうしても嫌なら、剣に訴えるしかないな。負けるつもりはないが勝つ保障もない」
「ふふ、そこまでするかい、ギアよ」
 望むところと言わんばかりの嬉しそうな表情で、背中に背負った剣に手を伸ばそうとするダンシングシミター。
 それはもう、一緒即発寄らば切るぞ状態の張り詰めきった雰囲気。
「パステル。怪我するから下がって」
「人の心配とは随分悠長だな」
 余裕の表情のダンシングシミターと、緊張の表情で少し青ざめてすらいるギア。
 こんなことで、こんなことでこの二人に斬り合われたりしたら、ギアが怪我でもしたらっ!
「やめて、ふたりともやめてっ! わたしはいいからっ!!」
 一瞬固まった男達。
 と思うと、辮髪の毛先を揺らして、坊主頭が天を仰いで爆笑した。
 がっくりと頭を垂れたのはギア。
「はーっはっはっはっ。そう来ると思ったぜ。この賭けは俺の勝ちだな」


……そしてわたしはこうしている。
 全裸の男二人とベッドの上。
 幸いにしてというべきか、ギアの泊まっていた宿屋は一応シルバーリーブで一番お高いところだったから、部屋も広いしベッドも大きい。
 とはいえこの図体のでかい男二人プラスわたしじゃ、どうやったって狭苦しいのは否めないんだけどね。
「まあ俺のことはあまり気にするな。オプションと思え」
「つけてくれって、頼んだ覚えはない、わよ……っ、ぁんっ」
 どうにか言い返すも、体の上を滑るギアの愛撫に文句にも迫力が出なくて。
 服なんてとっくに剥ぎ取られ、4つの目が全身を舐めるようにじろじろと這い回り、火が出そうなほど恥ずかしい。
 開かされた両脚の間にはギア。
 細い指に茂みをいとおしげにさわさわとまあるく撫ぜられ、背筋をぞくっと何かが這い上がる。


これで明日からまた頑張れる……
お焚き上げさせて頂いてありがとうございました

88:B.B.H.(00)1/11
08/12/26 22:48:04 FHSOnfzJ
本編の展開上他諸々で本スレ投下は没の二次物。
年の差体格差上司と部下。もうそれなりにヤッてる前提10レス分+オマケ。

------------

カティが自分の為に選んでくれたバスジェルを試してみて以来、
香りの良い泡をたっぷりと蓄えた、あたたかいバブルバスが
ピーリスは大好きになった。

ドードーと音を立ててバスタブに落ちるお湯の勢いで、
シトラスローズの香りの泡が、モコモコとわいて来る。
適温のお湯と白い泡をたっぷりと浴槽にためて、
裸身にまとったバスタオルを外し、傍らのハンガーにかけると
ピーリスは海綿スポンジを手に、ゆっくりとバスタブの中に体を沈めた。
長い銀髪は、タオルで包んであげてある。
大佐の体のサイズに合わせた、細長くて大きな猫足のバスタブに、
半ば横たわるように背を預け、足を伸ばす。

泡のお湯にとぷんとつかると、その心地よさに思わず、
ふうっとため息がでてしまう。

スポンジを湯の底に沈めたまま、ピーリスは泡を両手ですくっては、
その香りと感触を楽しんだ。
手に盛った泡をふうっと吹くと、小さなシャボン玉がきらきら、
ふわふわと舞い上がる。

「超兵」である自分が、こんな振る舞いをするなんて。
他人から見れば、おぞましく腹立たしく、
滑稽に映る光景だろうなと、ふと思う。

明日は大佐も自分も、久しぶりに揃っての休日だ。
だから。
この香りで、自分の体を彩りたかった。
大佐もいい香りだと、言ってくれたから。

不意に背後のドアが開く音がした。
湯気の立ちこめる明るいバスルームに、
自分以外の人の気配が入って来る。

「一緒にいいかな、中尉?」

声に驚き、一瞬だけドアの方を見上げて、ピーリスは動揺した。
「えっ!あ、たっ、大佐?!」

腰にバスタオルを捲いただけの、セルゲイの姿がそこにあった。

89:B.B.H.(00)2/11
08/12/26 22:48:40 FHSOnfzJ
浴室の明るい光の中でまじまじと男の体を観察出来る程、
そして自分の裸を見せられる程、ピーリスはまだ「慣れて」はいない。
突然の事に、あわてて顔と体を背ける。
思わず両肩を抱く様にしてバスタブの中で背を丸め、
泡の中で見えないはずの体を隠してしまう。

セルゲイがバスタオルを外し、ハンガーに掛ける様子が、
見ていなくても音でわかった。

動揺するピーリスに全くおかまいなしに、
当然の様に男が湯の中に入ろうとしているのが、
肩越しの気配でわかる。

ピーリスは伸ばしていた足を縮め、
背を向けたまま逃げる様にバスタブの半分を空けた。

「ああ、すまんな」
言いながら大柄な男はそのまま、湯の中に体を沈めてしまう。

どうしよう…。
その言葉しか、浮かばない。
恥ずかしくて顔を伏せれば、湯気があたって頬が
かあっと火照って来る。

「中尉はもう、体は洗ったのかね?」
いつもと代わらぬ口調で声をかけられても、
今のピーリスには振り向く勇気がない。
「いえ、まだ、これからです」
彼女の目の端に、泡をたくわえたスポンジと、
男の大きな手がちらっと映った。

「そうか…」
問われれば律儀に返事をし、決して出て行けとは言わない彼女の
丸まった小さな背中を、セルゲイは自分の体に引き寄せた。

「あ!」
湯の中でピーリスの体が浮き、仰向けにコロンと傾く。
そのままセルゲイの胸に背を預けるようにして、
小柄な彼女の白い体が、男の腕の間にすっぽりと収まった。

真っ赤になって身を固くしているピーリスの背後から手を回し、
セルゲイはスポンジを片手に握って、クシュクシュと泡を立てる。

「では、一緒に洗ってしまおうか」

赤く染まった彼女の小さな耳に唇を寄せて、
セルゲイは囁いた。

「そんな!いえ、あの、自分でっ」
「いいから」
スポンジを奪おうとするピーリスの手をかわし、
セルゲイはそっと、彼女の首筋にそれをあてがった。
「……っ!」
細い肩がぴくんと震え、ピーリスが首をすくませる。

90:B.B.H.(00)3/11
08/12/26 22:50:29 FHSOnfzJ
くるくると小さな円を描く様に首から肩、そして背中がこすられる。
まるで子供にする様に腕をとり、肘から指の先、そして脇へと
スポンジが動く。同じ調子で泡に隠れた慎ましやかな二つの胸や
腹まで、丁寧に優しく洗われる。
恥ずかしいのは確かだが、本当に「洗う」だけに徹した動きに
意味の分からない安心感を得て、少しだけ、ピーリスは体の力を抜いた。

セルゲイの片腕が、ピーリスの太腿の下に差し込まれる。
背に男の胸がのしかかり、ピーリスは前屈みになる。
「あ…」
そのまま腿の下で、男の腕が持ち上る。
再び男に背を預ける格好でピーリスの膝が曲がり、足が浮いた。
泡の外にでた膝頭も同様にスポンジで洗われるのだろう。
そう思って油断した彼女の隙をつく様に、
セルゲイは丸い膝を、指先でぞわりとくすぐった。
「やっ…ん…!」
ちゃぷんと水音を響かせて、ピーリスが身をよじる。
男は無言で、そのまま膝から太腿へと指を遡らせる。
「えっ?!あ、あのっ、大佐、あのっ…あ…」
どう考えても、すでに体を洗う行為ではない。
そのまま腰骨の辺りまで指が這い、
今度は小振りな尻に向かって下って来る。
「あ、あ、やっ、大佐、あ…あのっあ、んっ」
ぞくぞくする様な快感が、白い皮膚の下を這いずり回る。
ピーリスの細い腕に、ざあっと鳥肌が立つ。

「寒いのかね?中尉」
両足の間の核心には触れず、セルゲイの指が尻の丸みを辿る。
「鳥肌が立っているが…」
しらじらしくそう言いながら、意地の悪い男は
耳や首筋に唇を寄せて吐息をかける。

「やっ!…ん、ち、違います…これは、ぁ…ちが、んぅっ」
耳を甘噛みしながら、セルゲイは無骨な指先を
太腿から腹、そして胸へと滑る様に移動させる。
下からすくいあげる様にして彼女の胸を手の中に包み、
親指を使って押し捏ねるようにその先端を揉みしだく。
「あっいや…っ!あ、ぁ、あっ!」
弱い所ばかりを攻められて、ピーリスの体が震えた。

顔が熱い。
頭がぼうっとする。
こんなところで。
こんな風にされるなんて。
これ以上されたら…。

「…ま、待って、下さい…あっ、あの、大佐っ」

「んん?」
唇を離し、彼女の体からそっと手を引きながら、
セルゲイは、気のない風を装った返事をする。
愛撫の手から解放され、肩ではあはあと息をしながら、
ピーリスは小声でつぶやいた。
「の…のぼせて、しまいます、から…私、そろそろ」
「もう、あがるのかね?」
背を向けたまま、ピーリスはこくん、と頷いた。

「…バスタオルを、取っていただけませんか」
背を向けたまま告げるピーリスに、
セルゲイが意地悪な追い打ちをかけた。

91:B.B.H.(00)4/11
08/12/26 22:51:04 FHSOnfzJ
「泡を流してから、だな」
「…あ、はい」

素直なピーリスはバスタブの泡をできるだけ体に纏わせながら、
おずおずと立ち上がった。
これから泡を流そうというのに、男の視線が気になって、
隠すために矛盾した行動をとってしまう。

シャワーヘッドに手を伸ばし、そこでふと、微かに首を巡らせて
背後のセルゲイを気にする。

「あの…大佐。そのままでは、顔にお湯がかかってしまいますが」

だから背を向けるなり何なりして、こっちを見ないでいてほしいと
暗に匂わせたつもりだったのだが。

「それもそうだな」

セルゲイは何の躊躇もなく、ザアっと湯の中から立ち上がった。
はっと息を詰め、ピーリスは咄嗟に顔を背ける。

セルゲイの腕が彼女を引き寄せ、後ろから抱きすくめた。
片手に握っていたシャワーヘッドが、背後の男に奪われる。
「た、大佐っ!」
悲鳴に近い声が、バスルームの中で大きく響く。
自分の声に驚いて、ピーリスはあわてて口を塞いだ。
「じっとしていなさい」
ヘッドの止水スイッチを押して、セルゲイはピーリスの体に
温かい湯の雨を振らせた。
「……っ!」
シャワーへッドが上下に動かされ、
全身に纏った泡がみるみる流され消えてゆく。
「あっ…や…」
自分の体を抱く様にして、ピーリスは
露になる肌を隠そうと無駄な抵抗を試みる。
その手をどけろとは言わないセルゲイだが、
湯にやわらかくなったピーリスの肌を、
シャワーを持たぬ方の手でいい様に弄ぶ。
背筋を指先でつうっとなぞってやると、
ピーリスの体がしなやかに反りかえった。

下へと降りて来たセルゲイの指が、
後ろから女の体の底をぬるり、とすくいあげる。

「やあっ!んっ!」
ビクンと跳ねる彼女から指を離し、セルゲイは
絡んだ粘液をわざわざピーリスの目の前にかざして、
ゆっくりと開いて見せる。

「君のだ…中尉」

気泡を蓄えた透明なゼリー状のそれは、
ピーリス目の前で、
開いた男の指の間に橋をかけるように粘り、伸びた。

92:B.B.H.(00)5/11
08/12/26 22:51:35 FHSOnfzJ
「いっ!…いや…ぁっ」
初めて見せつけられる自分の淫らな歓びの証に、
ピーリスはうろたえた。
 そんな…では、大佐はいつも、これを、口に?
 舌で、舐めて、音をたてて…。

「う、うそですっ…そんなっ」
股間を隠していたピーリスの手が、
後ろからセルゲイに掴まれ、強引に脇にのけられた。

「うそ呼ばわりとは、心外だな」
「え、あ!大佐…っ」
代わって勢いよく湯をふきだしているシャワーヘッドが、
彼女のそこにあてがわれる。
「やっ、あぅっ!」
ピーリスの鋭い悲鳴があがった。
足の間の狭い空間に注がれて水音がくぐもり、
じゅわじゅわと卑猥な音色に変化する。

「大佐ッ!あっとめて、とめてください、大佐!あ、あんっ!」

バスタブのフチに掴まり、水圧を避ける様に腰を引き、
体を折って、白い体が悶える。
幾つもの湯の筋が、ピーリスの敏感な所を容赦なく叩く。

「だめ…大佐…だめ、ですっ!!や、あっ!いやぁあ!」

セルゲイが少しだけヘッドを離してやると、
湯は叩くのではなく、局部一帯をざわざわと奏で始める。

「ん、あっ…は、っん…ん…っ!あ、あっ、ああっ!」

再び強く押しあてられて、強い刺激に肉芽が晒される。
セルゲイの操るシャワーに嬲られ、なす術もなくただ啼き、喘ぐ。
初めて経験する刺激と快感に、開いた小さな唇から
悲鳴にも似た鋭い吐息が上がりつづける。
眉根を寄せ、目をきつく閉じ、悩ましげに腰をくねらせる。

 いかされる…。
 このまま、
 お湯でいかされちゃう…。

ぼんやりとそう思った瞬間。シャワーの湯が、ぴたりと止まった。

あてがわれていたシャワーヘッドが離れ、
同時に背後のセルゲイの気配もまた、離れるのを感じる。

「はっ、はあッ…は…、は…ぁ、あ…」

ガクリと頭を垂れ、バスタブのフチに手をついて
ピーリスは力の入らない体を支えていた。
助かったという思いと、漠然とした不安が、彼女の心を支配する。

後ろで再び、シャワーの音がした。
体を離したセルゲイが、自分の泡を流しているのがわかる。

「あがるのではなかったのかね、中尉?」
水音に混じる突き放す様なセルゲイの言葉に、
ピーリスは絶句する。

93:B.B.H.(00)6/11
08/12/26 22:53:01 FHSOnfzJ
バスタブを掴む手が、震える。
解放されなかった快感が、恨みがましく体の中で暴れ、騒ぎ、
ピーリスの体をぞわぞわと蝕む。
あれほどシャワーで流されたはずなのに
新たな蜜がじわりと湧いて、奥からとろとろと溢れて来る。

水音が止まる。
シャワーヘッドを元あった場所にカタンと戻す音がした。

今のピーリスにはもう、裸の体を隠す余裕さえなかった。
ねだる様に尻を後ろに突き出して、目を伏せ、
冷めてくれない体の疼きに、切なげに喘いでいる。

震えるピーリスの背後から、セルゲイが肩を抱いた。
昂った男の熱いものが、彼女の腰に当たる。
「あ…」
ピーリスの唇が、戦慄いた。

羞恥と官能の狭間で震えている彼女の首筋を、
指先でそっとくすぐりながら、男が低く甘い声で、囁く。

「…言ってごらん、ピーリス」

ピーリスがビクッと首をかしぐ。
彼女の耳元に唇を寄せ、ふうっと吐息をかけながら、
セルゲイは更に促した。

「どうしてほしい…?」

彼女の潤んだ瞳が、薄く開いた。

「ほし…い……。たいさ…」
セルゲイの言葉尻にすがる様に
ピーリスの唇から、吐息まじりの渇望が漏れる。

「たいさ、が…ほし、い…」
消え入りそうな語尾で、たどたどしく、はしたない欲求を口にする。

「おねが…い、です…いつもみたいに……。おねがい…っ」
自分の言葉に昂りながら、小さな声を震わせて、ピーリスは正直に訴えた。

唇を首筋に滑らせながら、セルゲイが問う。
「…ここで?」
整えられた薄い口ひげにゾクリと肌を奏でられ、
ピーリスは声も出せずに、ただ頷いた。
「今、すぐ…?」
さっきよりもなお強く、ピーリスは頷く。
熱を持った彼女の耳元で、セルゲイが微笑む気配がした。
「キスは…どうする?」
「…キス……キス、も」
男に誘導されるまま、首を巡らせピーリスがねだる。
うつろな表情で、セルゲイを見つめ、誘う。

セルゲイは彼女を向き合わせると、無言でそっと、唇を重ねた。

94:B.B.H.(00)7/11
08/12/26 22:54:48 FHSOnfzJ
求めに応じても、セルゲイは決して深くは、しない。
わざと軽く触れるだけの、もどかしいキスをする。
ついばむ様にせわしなく、幾度も幾度も触れては離れて、
彼女を煽り、炙って、追いつめてゆく。
罠にかかったピーリスが、セルゲイを追って
少しずつ唇を開き顔をつきだせば、
意地悪く顎を引いてその求めをかわしてしまう。
「たいさ、もっと…深く…んっ…」
半開きの口の中で、焦れた彼女の小さな舌が
セルゲイを求めて淫らに動くのが見える。

普段の勇ましい彼女からは想像もつかない、
淫らで熱っぽい女の表情だ。

セルゲイは舌を伸ばし、彼女の口腔に侵入する。
ピーリスの舌先に、自分のそれを触れさせて、
からかう様に舐めてくすぐってから、唇を深く噛み合わせた。
ようやく与えられた深い口づけを逃すまいと、
ピーリスの腕がセルゲイの背に回ってしがみつく。

「っ…ん、ぅん、ふ、…ぁふ…んっ…」

キスの合間の息づかいに、彼女の昂った声が、混じる。
その声が、セルゲイの欲望を煽った。
彼女の体を引き寄せ、掌で体の形を確かめる様に
ゆっくりと撫でまわす。
下に指を伸ばして、茂みの奥に滑り込ませると、
彼女のゼリーは、すでにとろけたジュースに変っていた。
そのままくちゅくちゅと、ひとしきり弄ぶ。
男の手の動きに合わせて、腕の中の女が太腿をすりあわせ、身悶えた。

湯気でソフトフォーカスのかかった空間の中。
二人はしばらくの間、ひたすら互いの唇を貪りあった。
舌を絡ませ、吸い上げ、激しく、深く。
いやらしい音を立てて。

そっと彼女の潤みから指を引き離す。

濃厚なキスを交わしながら、セルゲイはピーリスを抱きあげて、
緩やかな曲線を描いて反り上がるバスタブのフチに座らせた。

唇を離し、見つめ合う。

男の大きな手が、ピーリスの滑らかな太腿を掴み、
ゆっくりと左右に押し開く。

「あ……」

挿入の期待感にピーリスが瞼を閉じ、喉を反らす。
乱れた息を隠そうともせず、男の来るのを待ちわびている。

そんなピーリスの姿をじっくりと目で楽しみながら、
セルゲイは自分の熱い昂りに手を添えた。
先ずは自身を誇示する様に、先端をそっと、彼女の潤みにあてがう。
「あ、ああっ…ん」
ただ触れただけなのに、ピーリスの体がピクリと跳ねる。

残酷な衝動が、セルゲイの胸に湧きおこった。

もう少し、焦らして乱したい。…狂わせたい。

95:B.B.H.(00)8/11
08/12/26 22:55:54 FHSOnfzJ
セルゲイは彼女の谷間を遡る。
わざと入り口に向かわずに、シャワーの湯にさんざん嬲られ、
充血して固くなったピーリスの粒に、自身の先端を押しつけた。

「あ!やあああっ!大佐っだめぇ!」

押し込むと、彼女がぬるりと滑って逃げまわる。
セルゲイはそれを、自身の切先で執拗に追った。
捕らえて押し突き、くにくにと捏ねまわす。
ピーリスが激しく乱れ出す。

「たいさっ!あっ!そこっもう、だめっ!あっ!ああおねがいっ!」
鋭い刺激に耐えられず、彼女の腰が、くねり逃げる。

「いれてっ…ください、おねがいっ!中っ、塞いでっ!埋めてっ!」
泣きそうな声と表情で、ピーリスは初めて、男の楔を身の内にねだった。
激しく哀願する姿に、セルゲイの背筋にもゾクリと妖しい戦慄が走る。

さらにもう一声を欲して、セルゲイはしつこく女をなぞる。
互いの零すぬめりを使って。
「ああ許して!もうおねがいっ!たいさっ!いじわるしないでぇっ!」

初心な彼女にここまで必死にねだられれば、本望だ。

「すまんな…今、いく」
すがる彼女のこめかみや目元にそっとキスをしながら、
セルゲイがささやいた。

年甲斐もなく逸る気持ちを抑えながら、
セルゲイはできるだけゆっくりと、彼女の中に自身を沈めた。

「ピーリス…」

細い腰を掴んで拘束し、逃がさない様にじわじわと、深く、貫く。

「あ…あ、あ!…ああっ!」

待ちわびていた愛しい男の侵入に、子猫の様な声があがる。

セルゲイの形に添って押し開かれた、狭くて浅めな彼女の中は、
いつも以上にぬめり、温かかった。
セルゲイは獣じみた愉悦の息をつく。
ゆっくりと根元まで埋め込むと、そのまま
早いテンポで小刻みに腰を振リ始める。
貫き納めたままの姿勢でピーリスを揺らし、
振動で内から彼女を犯す。

「んっ、あっ、あっ、あっ…は…ぁっ…ん」
恥毛を擦りつける様にして揺らされるピーリスもまた、
拙いながらも腰を使ってセルゲイを迎える。
小さな体で懸命に、男の激しい欲望を受けとめようとする。
浮いた足を男の足にきつく絡ませ、求める。

男の刻む早いリズムに合わせて、あっ、あっ、という
甘い声があがる。
うわごとの様に、たいさ、たいさ、とセルゲイを呼ぶ。
首にかじりつく彼女の背を、頭を抱える様にして
セルゲイはさらにきつく抱きしめた。

96:B.B.H.(00)9/11
08/12/26 22:56:29 FHSOnfzJ
体を密着させて、互いの肌の匂いと温もりとを確かめ合う。
それぞれの耳元で、求める相手の荒くて熱い息づかいが響く。
痺れる様な快感が、繋がった場所から甘いさざ波となって
二人に押し寄せて来る。

高く、細くなるピーリスの悲鳴に合わせて、
彼女の中が別の生き物の様に淫微に蠢めきだす。
埋め込まれた欲望に、粘液で満たされた温みがまとわりつく。
官能的な女の内部に包まれて、徐々に自分の猛々しさが溶かされ、
呑み込まれてゆくのをセルゲイは感じた。
誘いの手を振りほどくかの様に、セルゲイは一旦、軽く腰を引いた。

「いや…抜か、ないで…っ!!」
置き去りにされると恐れたピーリスが、絶望的な声を上げる。
…抜くものか。
セルゲイは、最奥に向けて深く強く、打ち付けた。
ぐっと奥を押してから、再び小刻みに腰を振る。

「い…っやぁぁあああああっ!!」
ピーリスが、啼いた。
男に揺すられる度に注がれる細かい振動が、彼女を絶頂の淵へと追いつめてゆく。

「あ、あっ!たいさ、それだめっ!もう…もうっ!」

いやいやと激しく頭を振って、きつく、きつく、セルゲイにしがみつく。

「やああっああだめ!おねがい!も、動かさないでぇっ!」
迫り来る絶頂感に、いや、いや、だめ、と繰り返し叫び、
心の内でまだ来ないでと、自分の体に懇願する。

達する寸前の、ピーリスの癖だ。

「イっていいぞ…ピーリス」
彼女の変化を見て取って、セルゲイが最後のタガを外してやる。
掠れた声で、彼女の耳元で、囁く。
ピーリスの最後の理性が、崩れ落ちた。

首が、背が仰け反り「あ、あっ、ああ…」
足が、膝が、上がって「たいさっ…たいさぁっ…」
閉じようとする女の部分が、じいんと痺れて
「あぁっ!たいさああぁああ…っ!」
大きな快 感 の 波 に、呑 ま れ る… 。

「ーーーーーーっ!」

声にもできない悲鳴を上げて、ピーリスは達した。
男をくわえこんだ場所で、激しい肉の収斂がはじまる。

ビクッビクッとくり返される生々しい収縮に晒されて、
セルゲイが、唸った。
彼女の奥が、いつも以上に激しくセルゲイを攻めたてる。
さんざん焦らして悪戯をした仕返しだとでも言わんばかりに、
男を貪欲に吸い上げ、吸い尽くそうと淫らに蠢く。
セルゲイは腰を止めた。
彼女の施す襞の愛撫に身を任せ、背を反らす。
尻の筋肉が、固く引き締まる。
自分の腰をさらに押し付け、ピーリスの腰を強く、強く、引き寄せる。

欲望がひと際、大きく膨らむ。
引き絞り、内の白濁を一気に、潤みの中に放った。

97:B.B.H.(00)10/11
08/12/26 22:57:40 FHSOnfzJ
「はあっ…はあっ…はっ…はっ…あ…」

戻って来た聴覚が最初に捕らえたのは、
互いの荒い、息づかいだった。

「初めて、だな…」
繋がったままピーリスを抱きしめ、セルゲイが囁く。
「…?」
男の体に頭を預けたピーリスが、微かに顔を巡らせる。
とろけた後のうっとりとした表情でセルゲイを見上げる。

微笑みながら、男が呟いた。

「君の方から、あんなに…求めて、くれたのは」

うれしかったと告げるセルゲイに、
ピーリスの頬が、みるみる真っ赤に染まった。

「…今日の大佐は、いじわるです」
ふいっと顔を伏せながら、小声で控えめな抗議をする。

「嫌だったかね?」
「……やっぱり、今日はいじわるです」
言葉に詰まったピーリスが拗ねた様に言い返す。
「すまんな。そんな時もある」
笑いながら、男は再びピーリスの頭を自分の胸に抱き寄せた。

互いの肌が、汗と湯気とでしっとりと濡れているのを感じ合う。

「……離れたくないな」
セルゲイが呟いた。
「…私もです、大佐…」
今度は素直にそう答えると、
ピーリスはセルゲイの裸の胸に頬を擦り寄せた。

セルゲイの匂いに混じって、シトラスローズの香りがする。
幸せな匂いだと、ピーリスは思った。

----(終)-----



…そしてそのままポリネシアン・セックス。
無駄に長くてサーセン

98:B.B.H.(00)11/11【おまけ(一ヶ月後)】
08/12/26 22:59:33 FHSOnfzJ

「先月の水道料金が、いつもの倍近いんだが」

リビングで紅茶を嗜みながら、何気なくセルゲイがそう言うと、
向かいの席のピーリスがあからさまに動揺し、真っ赤になって俯いた。

「……その…シャワーは、ほどほどにな、中尉」

コホンと咳払いをしてそれだけ言うと、セルゲイは再び紅茶を啜った。


---(終)---


以上。お粗末。

99:名無しさん@ピンキー
08/12/28 03:31:33 MW8ji/oG
エロかった!GJ!!
おまけもいいね。

100:名無しさん@ピンキー
08/12/30 18:39:31 +v+Romaq
保守

101:名無しさん@ピンキー
08/12/31 22:36:28 Jdea9Wip
>>99
供養つき合ってくれてTHX
よいお年を

102:名無しさん@ピンキー
09/01/03 01:18:27 XYuIMPDo

「ごめん。」

とける白い息に、混じらせて体育館の倉庫で先輩は俯いた。
小窓から見える冬空は水色に澄んでいて、手をかけたポールは冷えていた。



「さる。いつまで落ち込んでんだよ」

角のスーパーへお使いに行くとジャージ姿の友人がいた。
隣の家に住む幼馴染だ。
「……うるさいな。誰がサルよ」
"卵1パック/牛乳2本(低脂肪の)"と書かれたメモを握り締めて、がっくりする。
人が落ち込んでるのにやめてほしい。
「勝利には関係ないでしょ。あたしが落ち込んでようと暗かろうと」
「んー。愛が寝てると朝が静かだよな」
「うるっさいなあ」
眠ろうとしても買ったばかりの携帯を無駄に見つめてしまって眠れないんです。
今までの時間に起きられなくて遅刻しそうになるのもしょうがないでしょうが。
賞味期限をチェックしつつ奥に手を伸ばして新鮮なのを引き寄せる。
よ、とパックの両脇に指を入れて籠に移した。
スーパー特有のBGMに特売タイムサービスのアナウンスがカットインした。
勝利が反応してパン売り場に去っていった。
忘れることにして、さっさとレジに並ぶことにする。
ひとつ向こうの台ではクラスメートのお母さんがレジを打っていた。

冬の外は寒い。
夕方ならなおさらそうで、黒い電線がやけにくっきり空に写っている。
マフラーに顔を埋めるようにして歩いた。
高めの位置で二つ結びにした髪が、頬にかかってちょっと邪魔だった。
ポケットには安全のためにとお母さんが持たせた携帯電話。
荻野部長とつきあうときに新しく買ってもらったのに無駄になってしまった。

―もちろん、振られたことはショックだったのだけれど。
(暫く跳び箱の影で、マットに伏せって泣いた。)

荻野部長が悩んでいたことを全く気づかなかったことに
もうどうしようもないくらいのショックを受けて立ち直れなくなった。
結局、あたしは子どもなのだ。
こんなに、自分のことで精一杯だっただなんて。

---------------

年明け早々ですが。
幼馴染のふたりで時々埋めネタに投下していたもの、
もう続きが思いつかないのでお炊きあげします。

103:名無しさん@ピンキー
09/01/11 11:16:32 Uo1Xc/BM
保守

104:名無しさん@ピンキー
09/01/11 21:16:53 hxVSQD9f
>>102
幼なじみ萌えたよー

105:名無しさん@ピンキー
09/01/22 23:09:27 iZG0u4BO
ホッシュホッシュ

106:名無しさん@ピンキー
09/02/01 19:20:28 GIRGX/wJ
保守

107:名無しさん@ピンキー
09/02/03 23:36:30 PwMDszzs
「ね、アルノルト先生、なんだかごつごつしているでしょう」
「はい、いや、ええと……」
この状況でどう答えたものか。アルノルトは眉を歪ませて「なんとなくですが」と曖昧な返事をした。
視界は彼の使える主人の背中で遮られていた。彼女と同じ名前のバラ色、薄いピンク一色である。
柔らかく寄った皺まで美しい絹の生地がさらりと動いた。セシリアが振り向いたのである。
「なんとなくですか?」
ゆっくり、はっきり、おっとりした発音でセシリアが尋ねた。
小さな頭を傾げたときに長い金の髪が背中に流れ、セシリアを抱えるアルノルトの腕を擽った。
唇を引きつらせ、ますます硬直したアルノルトをじっと見おろすのは目尻の柔和に下がった小鳥のような目。樅の幹の色をしている。
アルノルトは彼女の眼差しを常々温かい素敵なものだと思っていたが、この至近距離だと話は違う。
彼はセシリアの顔から目を逸らし、自分の太腿に乗る小さなお尻を見、また慌てて目を閉じた。
「先生?」
「あ、申し訳ございません。ええ……いえ、痛くなんてありません。決して」
「そうですか。ありがとう。下ろしてください」
「はい」
心底ほっとして、アルノルトは少女の腰を抱いた。
猫を持つように(主人に対して失礼な例えだが)セシリアを床に下ろし、自分も大急ぎで椅子から立ち上がる。
彼女の座っていた太腿から、さっと熱が逃げてゆく。
体の前面にわずかに残ったぬくもりと重みの余韻、それから髪の甘い匂い。勘弁してくれ、とアルノルドは胸のうちに呟いた。
大体今の時間は詩文学の時間だったはずだ。
さあ今日はお嬢様は何分でお眠りになるだろうかと思いながら扉を開けたのが五分前のこと、彼女はアルノルトに仕事をさせてくれなかった。
開口一番こう言ったのだ。
『アルノルト先生、私のお尻ごつごつしているらしいの』
お母さまが昨晩仰ったのです。ええと、昨晩というのもお食事のときで、ええ、あらかた食べ終わったところなんですけれども。
そうそう、デザートのバニラアイスにかかったラズベリーソースが、(中略)、
それで、あなたは小さい頃お尻が薄かった、膝に乗せるとお尻の骨が当たって痛かったのよ、と仰られて。
『……なのです。先生、お膝の上に座らせていただいてもよろしいかしら?』
『よろしくありません』
いつもの要領を得ない長話を聞き流し、アルノルトは結論にだけ当然の即答をした。
セシリアは心の底から驚いた顔で、「まあ」と一言だけ発した。
これはあれだ。断られることを想定していなかった顔だ。
このあとはきっと不思議そうな顔になり、悲しそうな顔になり、泣きそうな顔になり―最後には花も恥じらう笑顔で、絶対にこう言うのだ。
『ありがとう、アルノルト先生。はい、どうぞ。私の椅子に腰かけてくださいね』
折れたアルノルトは胸中を見せない無表情で、瀟洒な花柄の椅子に腰かけた。
傍から見るとさぞや面白い絵であっただろう。無骨な青年が小さな椅子に座り、その上に華奢な美少女が腰掛ける、という。
ちなみに、教師たるもの教え子に嘘は教えない。
セシリアのお尻は丸くて小さいという事実は、アルノルトのよく覚える頭に鮮烈な体感として刻まれたのである。

108:名無しさん@ピンキー
09/02/03 23:37:11 PwMDszzs
クロフォード家の次女であるセシリアは御年十七歳。
それぞれ二つずつ年の離れた姉と妹がいるが、明晰揃いの姉妹の中で彼女だけは(いい意味でもその倍ぐらいの悪い意味でも)毛色が違っていた。
良く言えばおっとりと慎み深く清楚で大人しい。悪い意味では一言、ぼけている。
深窓の令嬢の世間知らずが行き過ぎたというレベルではないこともしばしばで、七歳の頃から彼女を知る家庭教師のアルノルトは、
諦め半分苛立ち半分、はみ出たところにどうとも表し難い妙な愛情を持ってセシリアに接してきた。
「ねえアルノルト先生、どうしてここは十二分七だなんて中途半端な答えになるのかしら?」
「正解です。良くできました」
「できました先生。答えは七です。私、七って好きです。アルノルト先生のお誕生日は七月七日ですし、私が初めてあなたにお会い……」
「間違いです。やり直して下さい」
「はい……」
 数学の時間ならばこう。
「それより、先生の国の言葉で、愛してるってどういう発音だったかしら?」
「イッヒ・リーベ・ディッヒ」
「まあ嬉しい!」
「知りませんよ」
外国語の時間ではない。政治学の時間である。とにかく万事がこんな風で堪らないのだ。
アルノルトはスーツのズボンを引っ張った。
皺など寄っていないと分かってはいたが、まだ柔らかい感触の消えない太腿がどうにも収まり悪かったのだ。
詩を朗読するセシリアの肩越しに、ちょこんとした耳越しに、ふっくらとした頬を見る。
アルノルトは溜め息をついた。
セシリア本人に直接その容姿を褒めたことはないが―何と言えばいいのか分からない―心底思う。
こんなに可愛らしいのだから、中身がもう少ししっかりしていれば申し分なかった。
家庭教師として自分が不甲斐ない。嫁に出すのにも先々不安である。いやそもそも貰い手があるだろうか。
春を讃える言葉がアルノルドの耳に流れ込む。
仕事中のこと、口先だけはしっかりとセシリアのラテン語の発音を訂正するのを忘れずに、アルノルドはぼんやりと窓の外を見つめた。
色とりどりのバラと昨夜の雨に艶めく芝生、季節の花のアーチと噴水は小さくともおしゃれで凝っている。
この授業が終わったらテラスでお茶にしましょう、とセシリアが言っていた。
クッキーをつまみながら脈絡も取り留めもない長話をテンポ悪く自分に語りかけるセシリアを想像し、アルノルトは苦笑した。
『そう思いませんか? アルノルト先生』、柔和な頬笑みを浮かべ、小首を傾げて尋ねるセシリア。
今日も庭を散歩する時に手を繋ぎませんかとせがむだろうか。家庭教師離れをさせるために断り続けてもう三か月も経つのだが。
「アルノルト先生、どうかされましたか?」
は、と顔を上げ、アルノルトは自分の意識がここにあらずだったことに気がついた。
「申し訳ございません」

109:名無しさん@ピンキー
09/02/03 23:37:39 PwMDszzs
セシリアが小鳥のような目を瞬きさせ、失敗したアルノルトを物珍しそうに見つめた。
「庭に何か、面白いものがおありかしら?」
「いいえ」
きまり悪く姿勢を正し、アルノルトは腕を伸ばしてセシリアの持つ本のページをくった。
セシリア様、三行目からお願いします。言うと、彼女は首を振った。
「休憩にしませんか? 私、お腹が空いちゃいました」
普段ならば時計を見て一蹴するところであるが―アルノルトは眉を寄せた。
セシリアが膝の上に座ってから調子が悪い。そうですね、と低い声で答える。
「あの……何か気に障ることが?」
セシリアが白い指を伸ばしてアルノルトの服の裾を摘まんだ。
不機嫌さを隠しきれずにひと回りも年の違う主人に気を使わせたことが情けなかったが、セシリアの無垢な行動がまた微妙にアルノルトの眉間の皺を濃くした。
「いいえ」
「本当ですか?」
「はい」
優しげな眼差しでアルノルトをしばらく見つめていたセシリアは、だったら、と唇を動かした。
「お茶が済んだら、お馬に乗せてください」
散歩ではなく相乗りと来たか。
「お言葉ですが、セシリア様」
今度こそ、アルノルトはきつくたしなめることを堪えなかった。
「セシリア様は大きくおなりです。例え慣れ親しんだ私のような家庭教師でも、男の膝の上に座ったり、相乗りをしたりすることは控えるべきかと思われます」
「まあ。私ったら……」
「はい、どうか慎み深く思慮深く―」
「太ったのかしら? そんなに重かった? ごめんなさい、私気付かなくて……お馬さんが可哀想でしょうか」
溜め息を吐く。
「そういうことではありません」
ではどういうことなのでしょう?
セシリアがそう尋ねたがっているのが分かった。
茶色の瞳が怒られるのを待つ時のふるふる震える視線をアルノルトに注いでいる。
「いつか、いえ、もうきっと近いうちに、セシリア様はご結婚されます」
結婚、と口にした途端、妙な胸騒ぎが胸に飛来したのに気付かないふりをして、打たれたような表情のセシリアにさらに告げる。
「そんなときに、ほいほいと夫以外の男に慣れ慣れしくしてはクロフォード家の名に傷が付きます。そうでなくても、あなたが夫以外の膝の上で抱かれ―いや失礼、とにかく……なりません」
アルノルトの言葉を理解するため、しばし沈黙した後、セシリアは一言ひとこと、穏やかに吐き出した。 
「男性の方と親しくなんてしたことはありません。私には……よく、分かりませんが。
結婚するのだとしても、アルノルト先生に優しくしてもらうことは、私はとても嬉しいのです。
嬉しくては、ダメなのでしょうか。アルノルト先生となら、アレックス様も問題ないとおっしゃるはずです」
「アレックス様?」


ここまで

110:名無しさん@ピンキー
09/02/03 23:38:22 PwMDszzs
アレックス様は彼女のフィアンセ
アレックス様の存在にショック受ける家庭教師
→ぼけぼけと「結婚したらどうしたらいいのか不安です」というお嬢様

「キスってどんなのですか?」
「こんなのです」
「セックスはどうすれば……」
「こうします」

→なんだかんだで思いを告げられずにいる家庭教師とようやく家庭教師が好きだった(性的な意味で)んだと気付くセシリア

(おしまい↓)

「私、思うのですが、アルノルト先生は私を攫えば良いのではないかしら」
「良くないです」
「では私がアルノルト先生に攫われますわ」
「それも一緒です、良くないです」
「ではどうすれば……私、あなたに汚されてしまいましたもの。もうお嫁には行けないみたい」
分かっていてしたことだが本人の口から汚されただの嫁には行けないだの聞かされるとやはり胸に来る。
とんでもないことをしでかすのだという自覚は最初からあったし、首も追放も覚悟の上だったが、
途方にくれたような、かつすっきりと泣きはらした目でわけのわからない提案を繰り広げるセシリアを前にすると後悔はとめどなかった。
はっきりと分かっていることは、セシリアが嫁に行くことをこのような卑劣な手段で遮るほど疎ましく思い、つまりよっぽど、自分はこのお嬢様のことが好きなのだということだ。
不幸せにはしたくなかった。どの口が言うのだと、自分でも思うけれども。
「ええと……ええと……」
駆け落ちしましょう。私の国に来なさい。
言いかけた言葉を噛み殺し、アルノルトの服の裾を摘む指を見た。少し蒸気した手は、逃がされることを恐れるようにアルノルトの視線からも逃げようとはしなかった。
「お父様に、言います」
目の前の真っ暗になるような感覚に耐えながら、アルノルトは静かに返事をした。
「……そうしましょう。嘘を吐くのは、絶対にいけませんから」

→「私この人と結婚する」って言うセシリア
→びっくりしたり呆れたり嬉しかったりなアルノルト
→父と婚約者涙目
→二人はいつまでも幸せにぼけぼけと暮らしましたとさ

めでたしめでたし

111:名無しさん@ピンキー
09/02/03 23:39:27 PwMDszzs
主従スレの家庭教師×おっとりお嬢様というレスに萌えたので書き始めたけど
壊滅的に時間がないのとネット離れするのとで続きが書けそうにない
なくなく供養チーン

112:名無しさん@ピンキー
09/02/04 05:36:36 QFrjatIo
GJ!
ありがとう萌えた

113:名無しさん@ピンキー
09/02/04 08:52:16 JIiNFbqL
>二人はいつまでも幸せにぼけぼけと暮らしましたとさ
GJ!!

114:名無しさん@ピンキー
09/02/04 12:52:14 YH50fzgL
             / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 【ドラえもん】 ガチャ子の祟り 【ガチャ子】
     ,__     | ガチャ子、迷わず成仏してくれ スレリンク(occult板)
    /  ./\    \______________
  /  ./( ・ ).\       o〇..      ヾ!;;l;::lilii|//"
/_____/ (´ー`) ,\    ∧∧         |;;l;;::|liii|/゙
 ̄|| || || ||. |っ¢..|| ̄   (,,  ) ナモナモ    |;;l;;::||iii|
  || || || ||./,,, |ゝ iii~    ⊂  ヾ..        |;;|;l;::i|ii|
  | ̄ ̄ ̄|~~凸( ̄)凸 .(゙  ,,,)~ wjwjjrj从jwwjwjjrj从jr

摩訶般若波羅密多心経

観自在菩薩。行深般若波羅密多。時照見五。
蘊皆空度。一切苦厄。舎利子色。
不異空空不異色色。即是空空。即是色。
受想行識。亦復如是。舎利子是。諸法空想。
不生不滅。不垢不浄。不増不減。是故空中。
無色無受想行識。無眼耳鼻舌身意。
無色声香味触法。無眼界乃至無意識界。
無無明亦。無無明盡。乃至無老。
死亦無老死盡。無苦集滅道。無智亦無得。
以無所得故。菩提薩タ依般若波羅密多。
故心無ケ礙。無ケ礙故。無有恐怖。遠離一切。
顛倒夢想。空竟涅槃。三世諸仏依般若波羅密多。
故得阿耨多羅三藐三菩提。
故知般若波羅密多。是大神呪。是大明呪。是無。
上呪。是無等等呪。能除一切苦真実不虚。
故説般若波羅密多。呪即説呪日。
羯諦羯諦。波羅羯諦。波羅僧羯諦。菩提娑婆訶。
般若心経


115:名無しさん@ピンキー
09/02/05 03:47:37 XGWlWmgz
ちょw

116:息子×母【00】
09/02/06 21:47:31 alc7XlmF
やってる部分の描写だけだがお焚き上げ。
本スレ投下分の続きで没ネタ。近親相姦もの。
子熊ファンは読まない方が良い。
息子16歳位久しぶりに寄宿舎から帰ってきた設定。
その後に母親死亡、と考えてたので設定的にもNG。
---------------

「あ、ああ…あなた……んっ…ああ」
リビングから悩ましい声がする。
母さんだ。
父さんのシャツを胸に抱いて。
あの夜みたいに下着の絡んだ片足を
テーブルの上に載せて。
足を開いて。
自分の指で。

僕の中で、何かが弾けた。

リビングの扉を乱暴に開け放つ。
バタン!という音に驚いた母さんが
はっと目を見開いて僕を見る。

あわてて足を閉じ、スカートをおろしても、
もう遅いよ、母さん。

僕はベルトを外しながら、
ソファの上の母さんにのしかかった。

「あ、アンドレイ?!」
驚いた母さんがもがく。
僕は乱暴に母さんのエプロンをはぎ取り、
セーターの裾から中に手をつっこむと
胸の上まで下着ごと引き上げた。
柔らかそうな白い二つの丸い胸が
誘う様に目の前で揺れてこぼれ出る。
その片方に、僕は夢中でむしゃぶりついた。

「アンドレイ!!」

ヒステリックな叱責にも似た声。
だけど、それだけじゃない。
母さんの中の、女の怯えを感じて、僕は昂る。
なんとか体制を入れ替えて逃れようと
もがく母さんの太腿を片手で抱える様にして持ち上げる。
足の間に自分の身を割り入れて、僕は母さんをさらに
自分の体の下に引きずり込む。
「やめっ、やめなさいっ!アンドレイッ!!」
僕はズボンをおろして露にした自分の股間を、
母さんの大事な所にこすりつける様に押し当てる。
「!!」
わかるよね、母さん。
もうこんなに固くなってる、僕のモノ。

117:息子×母【00】
09/02/06 21:48:00 alc7XlmF
母さんのあそこに触れて
僕のはさらにムクムクと大きくなる。
片方の胸をジュルジュルと音を立てて吸い、
片手でもう一方のこりこりしている胸のてっぺんを
軽く捻るようにいじくると、母さんの体がビクッと震える。
唇をすぼめてもう片方の先端も吸い上げ、舌でコロコロと
弄ぶ。

「んあっ!…う…や、やめなさいっ!」

まだ抵抗するの?母さん。
母さんのアソコ、どんどん濡れて熱くなって、
押し付けた僕のをヌラヌラにしてるのに。

僕は固くなった自分のモノで母さんのアソコを探る。
入り口の辺りに僕のがひっかかって、ほら、
もうヌルヌルすぎて、このまま僕のが入っちゃう。

「あ、ああ!だめ!だめよ、アンドレイ!挿入れちゃだめっ!」

できないね。
僕はゆっくりと、母さんの中に自分のモノを突き立てる。

「あ、あ、あああだめ、だめ!」

ぬぷっという音がしたの、聞こえた?母さん。
「やめて、お願いだから!アンドレイ!やめてぇ!」
何言ってるの。
母さんの体、僕を受け入れてくれてるじゃない。
あったかくて、ぐちょぐちょで、優しく僕に吸い付いてくる。
僕の、もう根元まで…きっちりと…ねえ。
「…欲しかったんでしょ?ここに」
思わず声に出して語りかると、母さんが息を呑む気配がした。
僕は勢いづいて言葉を続ける。


118:息子×母【00】
09/02/06 21:48:25 alc7XlmF
「父さんが…任務任務で構ってくれないから…自分でしてたんでしょ?」
「あ、アンドレイ、それは!」
「ならいいじゃない、僕が父さんの代わりに」

言いかけた所で、パアンという音と共に頬に衝撃が走った。

叩いた手をかざしたまま、燃える様な目で僕を睨んで、
母が激昂する。

「あんたなんかに父さんの代わりができる訳ないでしょう!!」

僕の中で、
それまでの甘い熱気の様な物が、
すーっと引いていった。

冷えてゆく頭で、
僕はかつてこのリビングで見た光景を思い出す。
あの時の父さんの、腰使いを。

僕は無言で、記憶の中のその動きを
自分の体を使って再現しはじめた。

あのリズムで。
抜きと深さで。
打ち付けて。
離れて。

母さんの中が、怯えた様にひくんっと震える。
僕の下で、母さんがあからさまに動揺しはじめたのがわかる。
そうさ。
母さんはあの時
この動きで狂わされてたんだ。
ならば同じ動きで…僕だって…。

「あ、あ、いや…!だめ!や、やめなさ…あ、アンドレ…ああ」
やめないよ母さん。
あの時見たいに狂って。
僕でイクまで、やめない。

僕はあの時に見た父の動きを思い出す。
ときどきリズムを変えて
ゆっくり深く突いて
とどまって
そして今度は
早く
浅く
腰を振って
また深く深く突き上げて
そのまま奥をえぐる様に
腰をグラインドさせて
それからまた
早く
浅く…

忘れようとしても、
脳裏に灼きついて離れずに、
今までさんざん瞼のウラに浮かんでは
夜中に僕を悩ませ続けた、あの光景を再現する。
正確に。この目で見た、父の動きそのままに。

119:息子×母【00】
09/02/06 21:48:45 alc7XlmF
「やあっあ、あっ!ああいや!あ、ああぅっ…ふ、うっ、くうぅんん!」

感じまいとしてるんだね。
声を一所懸命堪えて。
真っ赤な顔して。

「はっ…ああっ!んっ…くはっ!あっ…ぁんん!うぅ…ん、んやっぁ…!」

かわいいよ母さん。
悔しいの?
父さんじゃないのに父さんと同じ動きの
僕で感じちゃうのが、悔しいんだね?
でも…目を閉じちゃったらますいんじゃないかな。

「はうっ!!あはぁあああっだめ!やっ!
 やああああんっ!あぅう!っんああああ!」

ほら。
視覚が消えたら
記憶の中の父さんそっくりな僕の動きで、
ますます感じちゃうだけなのに。

「あああっ!だめぇぁああ!もっやあああん!ふぁんっ!はあんっ!」

母さんの中がどんどんグチュグチュ、
ドロドロになってく。
ああいい、気持ちイイよ、母さん。
僕が動くたびに、キュウキュウ締め付けて
ヒダ襞が蠢きながらぴたぴたと吸い付いて
撫でて、奏でて、擦り上げて…。

気持ちイイ。

父さんは、これを独り占めしてたんだ。
こんなに気持ちイイ母さんのここを。
独り占めしながら、寂しい想いをさせてたんだ。
父さんは酷い奴だ。
母さん、ね、そうだろう母さん。

僕は夢中で腰の動きを加速させる。

「はあうう!やあっ!ああっ!ああんっ!ああいいいっ!い、いあああ!」
限界なんだね、母さん。
気持ち良くなって。もっと。感じて、イって!

120:息子×母【00】
09/02/06 21:51:35 alc7XlmF
「イって…!母さんっ…!僕、でっ!イって!母さんっ!」
「あ、あ、あああ赦して!あああああっ………ッ!!!!!」
母さんの体が、僕の下で強ばる。
きゅううんと僕を締め付けてから
ビクンビクンと母さんのアソコが
リズミカルに収斂する。
「あ、ああ!母さんっ!僕もっ…イク…ッうううッ!!!」
母さんにぐりぐりと腰を押し付けながら
柔らかな肉の海の中に射精する。
ビュクン、ビュクンと繰り返し、幾度も。



-----------------------------------
で、このあと母は
「無かった事にするけれど今は一緒にいたくない、
 お願いだから、今日はもう寄宿舎に帰って」という。
息子はすごすごと立ち去る。
息子はさすがに後悔、だがこんなことになったのは
母にさんざん寂しい想いをさせた父がなにもかも全部悪いんだと
思い込もうとする。
そのすぐ後で赴任先で母は死亡。
見殺しにして帰ってきた父に、息子は自分の罪悪感を
隠す様に激しく叱責、父に初めて殴られる。
そして本スレ投下分の最後のシーンへ。

貶めるつもりはなかったのだが…結果的にひでえ奴になったしまったのと
本編見てたらファンがあまりにも気の毒でその意味でも没。

失礼しました。

121:名無しさん@ピンキー
09/02/07 19:55:19 X2fYZpGM
ナイス投げ
元ネタ知らないけどエロかった

122:名無しさん@ピンキー
09/02/08 16:21:26 DPYRvqIR
ひたすらエロい
GJ

123:ペアリング
09/02/14 18:25:04 06eHNwpT
いつか必ずこんな日が来るとわかっていた。
だけど見ない振りをしていた。知らない振りをしていた。
逃げようともせず、避けようともせず、立ち向かおうともせずに。
だからこれは必然。
いつものようにバイトを終え、自宅でつまらない笑いを流しているテレビ番組を茫洋と眺めながら、漫然と過ごしていた夜。
来訪者を告げるチャイムの音に促され、けだるい体を動かしながら、開いた扉の先に―
「……久しぶり」
彼女の姿があった。
好きだった女性。
胸を張って、好きだと言えた女性。
好きだと言って、隣にいてくれた女性。
もう俺の隣に並ぶことはない、一年前に別れた最愛の人。
俺は驚きに目を見開いて、彼女の姿を映す。突然の出来事に頭が追いつかない。
そんな俺に対して、彼女は柔らかな表情を崩さない。まるで昔みたいに。
少し冷たい風が吹き、彼女が一瞬身を震わせる。
俺はようやく落ち着いた頭で、これからどんな顔でどんな言葉を掛けるべきか模索するが、思い浮かべた全てが的はずれなような気がした。
結局俺は無表情で、選択を保留した。
「取りあえず入れよ」
今までのように。


彼女―新山なつきと出会ったのは、5年前の春。
「ね、シャーペンの芯持ってない?」
講義で偶然隣の席に座った彼女にそう尋ねられたのが、始まりだったと思う。
それから何度か話すようになり、友人になり、恋に落ちた。
お互い初めての恋人で、何をするのも手探りで、一歩ずつ、でも確実に進んでいった。
俺は彼女のくるくる変わる表情が好きで、彼女は俺の感情がわかりやすい顔が好きだと言った。
「チヒロってさ、考えてることがす~ぐ顔に出るよね。隠し事とか出来ないタイプ」
「そうか? 『お前は無愛想だ』ってよく言われるんだけど」
「初めはね。慣れちゃえばもう手に取るようにわかるよ。チヒロくらい素直な人も珍しいよね。かわいいかわいい」
「こら、ペット扱いすんな」
春のひだまりの中で、彼女の身体を腕に抱きながら、他愛ない話を睦み合う。
それは確かに幸せな時間だった。
いつまでも続くと思っていた。根拠もなく思っていた。



124:ペアリング
09/02/14 18:26:26 06eHNwpT
「ありがと」
俺が用意したクッションの上に行儀良く正座して、彼女は差し出された紅茶を受け取った。
カップを両手で包み込むようにしながら、ゆっくり口に運ぶ。
二、三度喉を動かしてから、彼女はかすかに顔をほころばせた。
「私の好み、まだ覚えてたんだ」
砂糖はいらない、ミルクは多め。それが彼女の紅茶を飲むときのスタイルだった。
「他にそんな飲み方をする奴は知らないからな」
答えて、自分のカップを傾ける。もう桜の咲く季節だというのに、今日はやけに冷える。
風が強いのか、時折窓が音を鳴らした。
彼女は一年前とほとんど変わっていなかった。いまだどこかあどけなさを残した顔も、カップの縁を撫でる仕草も、人懐っこい笑顔も。
ただあの頃と比べて、背中まである髪がもう少し伸びていた。
「それにしても、相変わらず雑誌だけは片づけないのねー」
「別にいいだろ。他はちゃんとしてるんだし」
俺の反論に、彼女はむっと眉をひそめる。
「部屋が汚く見えるよ」
「退廃的な雰囲気が出て良いと思わないか?」
「全然」
ばっさりと切り捨てられる。相変わらずの物言いに、ほっとしたような安堵の息が漏れた。
「でも」
彼女がいつの間にか、俺と同じような表情を浮かべていた。
「元気そうで、安心した」
猫みたいに目を細めて、微笑む。俺は急に気恥ずかしくなって、その瞳から視線を逸らした。
彼女には俺の感情の変化などお見通しだけど、それでも誤魔化すように言葉を紡ぐ。
「まぁ、な。お前の方はどうなんだ?」
「2回くらい風邪を引いたけど、それくらいかな。寝込んだりもしなかったし……あ!」
突然何かを見つけたような声を上げて、彼女はあらぬ方向を見た。
目線を追うと、部屋の隅に鎮座してあるオーブントースターに辿り着く。
白い色で、少し小さめのトースター。
「まだ使ってるんだ、これ」
懐かしさを滲ませた声音で、彼女が呟く。
それは初めて二人でお金を出し合って買った物だ。
全体的に薄汚れて、ところどころ塗装が剥げたり焦げたりしているけど、それでも二人が一緒にいたことの証だった。
「どっちかと言えばオブジェとして活躍してるけどな」
「それ全然使ってないってことじゃないっ。朝はパン派なんだから、ちゃんと焼きなさいよ」
「いやほら、面倒だし」
「もー、変なところでずぼらなんだから。おねーさん心配」
「同級生だろうが。二ヶ月生まれが早いだけで年上ぶんな」
そんな他愛ない話をしていると、今の俺達の関係が嘘のような気がしてくる。
別れたなんて事実はなくて、一年間の溝なんて存在しなくて、そんなのは全部俺の思いこみで。
今も変わらず彼女は俺の元に用もなくやってきて、二人で食事したり、テレビを見たり、くだらない冗談を言い合ったり。
たまにどこかへ出かけて、遊んで、デートを楽しんで、いい雰囲気になって、キスをして、愛し合って。
記念日にはプレゼントを贈り合って、来年も一緒だねと、身を寄せ合う。
だけど。

125:ペアリング
09/02/14 18:27:14 06eHNwpT
「そういやさ、最近どう?」
「どうって……普通」
「そんなんじゃわかんないわよ。もっと具体的な話を求めてるの」
「具体的って何を喋ればいいんだ」
「……例えば…………彼女が出来た…………とか、仕事が忙しいとか」
俺達は、別れたんだ。
「彼女なんて出来る気配もないよ。仕事は……」
一瞬言い淀んだが、知られても構わないだろうと、続ける。
「辞めた」
「……そっか」
彼女は怒りもせず理由も聞かず、ただ静かな声で目を伏せた。その何も触れない、気を遣ったような態度が胸に痛みを与える。
しかし我慢できないほどの苦痛ではない
なごやかな雰囲気が重いものに変わると、先送りにしていた疑問が急速に浮上してくる。
彼女がここに来た理由。何故このタイミングなのか。そして
彼女に新しい恋人はいるのか。
考えた瞬間、叫びだしそうなほど胸が荒れ狂う。つまらない、どうしようもない嫉妬。
俺はそれをどうにか押さえ込み、何でもないを装って彼女に同じ問いを返す。
「そっちはどうなんだ?」
彼女はしばし悩むかのような素振りを見せてから、穏やかな笑みを浮かべた。
「色々大変だけど、大体うまくいってるかな?」
気が狂うかと思った。世界がぐらぐら揺れ、胃と肺が鷲掴みにされる。
しかしそれも数秒で収まり、虚脱感と落胆と、泣き出したくなる気持ちだけが残った。
「そうか……」
彼氏、いるのか。まぁ彼女、器量はいいし性格だって明るいし、当然だよな。周りの男が放っておくはずがない。
別れる前、職場の同僚からしょっちゅう誘われて困ると言っていたし。
いや、そもそも俺は何を期待していたのだろう。俺は彼女にとって、昔の恋人。それだけでしかないのに。
「えっと」
祝福しようと口を開く。だけど意味のある単語にならない。
『よかったな』も『幸せに』も、とてもじゃないが言えそうになかった。
結局沈黙してしまい、静寂が部屋を支配する。
喉はからからに渇いているのに、飲み物に手を付ける気にはならなかった。
もう既に空になったカップの縁を手でなぞっていた彼女が、ぽつりと漏らした。
「引っ越し、しようと思うんだ」
顔を上げ、俺の目をしっかりと見据えて、今度ははっきりと告げた。
「この街を出ようと思うの」


どうして別れてしまったのか。
切っ掛けは些細なケンカだった。
お互い仕事が忙しくて、会える時間も学生時代とは格段に減って、気持ちのすれ違いが起きた。
意固地になって、謝ることもせず、ただ時間だけを無為に過ごした。
切っ掛けはケンカだけど、多分それは全ての元凶じゃない。
学生時代だってケンカはした。些細なことで意地を張ったときもあったし、口を利かないときだってあった。
5年近く付き合って、うち2年は半同棲状態。これだけ長く一緒にいれば、ケンカだってする。
でも学生時代は会える時間が多かった。口を利かなくても顔を合わせていれば、いつの間にかわだかまりは解消していた。
それに絶対に譲れない、受け入れられないという理由で衝突したことは一度もなかった。
俺達はきっと、甘えていたのだろう。
そうやって二人で一緒にいて、いつしか何も言わなくても相手の望むことがわかるようになって、
わかったつもりになっていて、わかってくれていると信じ込んで。
必要な言葉を口に出すことさえ忘れてしまった。
俺達はきっと、まだ大人になれていなかったんだ。



126:ペアリング
09/02/14 18:29:04 06eHNwpT
「これはどうする?」
「うーん、捨ててもらっていいよ」
「買ってきたCDは? 三枚くらいあるけど」
「それもいい。たまには聞くでしょ?」
なし崩し的に置いてあった彼女の私物を、二人でひとつひとつ処遇を決めていく。
まるで遺品整理のようだった。
遺品整理、か。
その言葉もあながち間違いではないだろう。ここにあるのは恋の残骸だ。
こんな詩的で格好付けた表現は気恥ずかしいけど、まさしくそのものなのだから。
「オーブントースターは?」
少しだけ彼女の動きが止まった。窺うようにこちらを見上げ、恐る恐ると言った口調で尋ねる。
「いらないって言ったら、捨てる?」
「多分な」
置いておくには、辛すぎるから。
「……じゃ、もらっとく」
逡巡のあと、彼女はそう答えた。
「わかった」
付けっぱはなしのコンセントを引き抜いて、輪ゴムでまとめる。
持ち上げたら塗装の剥げた部分がザラリとした手触りを返してきて、年月を感じさせる。
押入から引っ張り出したスポーツバックに入れ、彼女のハンドバックの隣に置いた。
「郵送してくれないの?」
「セルフサービス。小さいし軽いから、持って帰れるだろ」
「けち」
彼女は子供のように頬を膨らませた。以前はそれが楽しくて、わざと意地悪をしたりした。
でもそんな思い出も、恋の残骸のひとつなんだろう。
「このバックも、向こうにある俺の物も、そっちの勝手にしてもらって構わないから」
「うん」
彼女が頷く。
これで終わりだった。
これで全てだった。
彼女の物も思い出も部屋中に溢れていて、どれだけ捨ててもきりがないと思っていたのに。
たった小一時間程度で、全てが終わった。
俺も彼女もじっと立ちつくしたまま、指先ひとつ動かさない。
彼女は何を考えているのだろうか。
以前は手に取るようにわかったそれが、今は目隠しでもされたように少しも見えない。
まだ知りたいと、望んでいるのに―

127:ペアリング
09/02/14 18:29:59 06eHNwpT
「――っ」
どちらが漏らした吐息だったのか。突然の彼女の行為に俺は反応出来ず、思考すらも止められた。
俺の身体に、彼女の両手が回されていた。懐かしくて愛おしい感触。
ふわりと揺れた彼女の髪の香りが鼻腔をくすぐって、忘れていた感覚を叩き起こす。
「キス、して」
途切れ途切れの囁きが耳を打つ。その声には甘えも妖艶も無く、懇願しているような必死さだけがあった。
「ね、キス、しよう」
彼女の望みに応えたかった。抱きしめて、唇を奪って。自分の願いを叶えたかった。
でもそれだけじゃ俺はきっと止まらない。最後まで彼女を求めるだろう。
だから。
「やめよう。そういうのは」
受け入れなかった。
俺の好きだった彼女は、優しくて、意地悪で、意地っ張りで、時々甘えたがりになって。好きな相手には、正面から向き合う人だから。
彼女の隣には、今は違う人がいるから。
抱きしめるのは、もう俺の役目じゃない。
「……そっか」
背中に回された手がすっと離れ、暖かな体温が消えた。彼女は一歩下がって、微笑む。その顔は、泣き出す寸前に見えた。
「あと、これ返しておくね」
差し出された手のひらの上には、銀色の指輪が乗せられている。
それは俺が彼女に贈ったペアリング。
「持っておくのも捨てるのも、出来そうにないから」
幾度かの躊躇いの末、腕をゆっくり伸ばして受け取る。硬質な感触が震える指先から伝わってきた。
「じゃあ」
「うん」
小さなハンドバックと不似合いなスポーツバッグを持って、彼女は長い髪を翻す。一歩一歩、遠ざかっていく。
俺は石のように固まったまま、何も出来ずに見送るだけだった。
扉が閉まり、彼女の香りが部屋から消える。
手のひらに冷たい銀色だけを残して。



128:ペアリング
09/02/14 18:30:57 06eHNwpT
この指輪をプレゼントしたのは、付き合って2年目のこと。彼女が頻繁に俺の家に泊まるようになった頃だった。
彼女の誕生日プレゼントを考えていたときに、ふと思いついたのだ。
もし指輪を贈ったら、彼女はどんな顔をするだろう。
きっと驚きに目を開いて、それから最高の微笑みを見せてくれるに違いない。想像するだけで、自然ににやけてくる。
次の日から俺は必死でアルバイトをした。
彼女ならどんな金額の物でも喜んでくれるだろうが、高価であるほど俺の想いの深さを表せるという単純な思考からだった。
それに、彼女に贈る物は自分の稼いだ金で買いたかった。
順調に仕事はこなせていった。
しかし普段と違う様子を見せれば必ず目に留まる。というか俺は彼女に隠し事は出来ないのだ。
不自然な行動に疑念を持った彼女に問いつめられ、事はあっさり露見した。
同時にロマンティックな演出も企画倒れが決定した。
「だったらさ、こうしようよ」
こっそりと進めてきた計画が水の泡となり再び苦悩を始めた俺の手を取り、彼女が提案してきた。
「せっかくだから、ペアリングにしよ。二人で同じのを買って、お互いに贈り合うの」
それじゃあ誕生日プレゼントにならないと反論した俺に、
「私が買う方はチヒロの誕生日プレゼントだよ。
それで、ふたりの誕生日のちょうど間の日に交換しよう。何の日だったか覚えてるよね?」
忘れるわけがなかった。それは俺達が恋人同士になった日。幸せの第一歩を踏み出した日だった。
「ね、いいでしょ?」
反対する理由など無かった。俺の考えより遙かに良質のアイデアだったのだから。
そして当日。
近所の公園で、俺達は向かい合っていた。本当はもうちょっとロマンティックな舞台を用意したかったのだが、
『気取った場所よりも、普段行くような所にしない? そっちの方が、そこを通るたびに思い出せるから』
という彼女の意見により、自宅から徒歩10分のここに決定。
せめて夜ならば噴水の効果で少しは幻想的になったかもしれないのに。
まぁこれだけ天気がいいのに俺達以外に誰もいないので、良しとするか。
咳払いをひとつしてから、改めて彼女を視界に収める。彼女は両の手を後ろで組んで、俺をまっすぐに見つめてくれている。
ポケットの中から指輪を取り出し、手渡そうとしたところで動きが止まった。
……どういう風に渡そう。
プレゼント包装をしているから、そのまま渡せばいいのか? それとも直接指輪だけを渡す? 
こういう場面ってドラマとかでは見たことはあるけど、あれは大体がプロポーズシーンだったような。
プロポーズってちょっと待て結婚はまだ早くないか? いや違うだろ俺。
他のみんなはどうしてるんだ? ああ詳しく話を聞いておけばよかった。
焦れば焦るほど、思考が八方塞がりになっていく。
時間だけが無為に過ぎていき、いい加減彼女も呆れてるんじゃないかと思いつつ目を向けて―その姿に胸を突かれた。
ずっと彼女は待ってくれていた。
今の俺の心中などお見通しだろうに、それでも俺を信じて、瞳に俺だけを映して、変わらない優しい笑みを浮かべて待っていてくれた。
気持ちがスッと楽になる。憑き物が落ちたように体が軽くなった。
そうだな。他人がどうであろうと、俺達は俺達なんだから。
格好悪くても、想いを伝えられればいい。

129:ペアリング
09/02/14 18:32:08 06eHNwpT
俺は直接指輪を手に乗せ、
「誕生日、おめでとう」
差し出す。彼女の表情がゆっくりと微笑みに
「う~ん、ちょっと物足りないかな」
「は?」
変化せずに、代わりに紡がれたのはそんな言葉だった。
物足りないって何が? 指輪? というかこれ選んだの彼女だったよな?
疑問がぐるぐる頭を渦巻く。混乱状態の俺を見かねてか、彼女が助け船を出してくれる。
「おめでとうとかじゃなくて、恋人ならではの言葉が欲しいな。心がキュンってなるようなやつ。
あと回りくどいのじゃなくて、直接的なのを希望します」
えらく注文が多い。というか何を言わせたいのか読めてきた。
涼しい風がふわりと吹いて、木々の葉を揺らす。あぁ、もうこんな季節なんだな。
「……………………言わなきゃ駄目か?」
「だめ」
清々しささえ感じられるほどの即答だった。追いつめられた俺は、黙り込んで目を逸らす。
彼女の望む台詞を持っていないなんて事はありえない。それどころか、いつもいつも思っている。
しかし実際に口に出すのは気恥ずかしさが残るのだ。付き合って2年も経つのに未だに恥じらう俺は、やはり情けない男なのだろうか。
「言ってくれなきゃ伝わらないこともあるし、伝わっててもやっぱり言葉にして欲しいときだってあるよ」
俺は顔を上げ、語り始めた彼女に再び視線を合わせた。
「多分こうだろうなーとか、そうに違いないって思ってても、もしかしたら全部私の想像でしかなくて、
全然違ってるんじゃないかって、怖くなったりする。
だから、言って欲しいんだ。抱きしめてくれても伝わるけど、言葉にしてくれたらもっともっと伝わるから。
いろんな方法で、いっぱい伝えて欲しいから」
彼女はそこで、まっすぐ俺を見上げた。
「チヒロの口から、聞きたいな」
あぁ、薄々は気付いていたが、俺はとんだ馬鹿野郎だ。
彼女の想いをまったく察せられず、自分の変な見栄のことしか考えていなかった。本当、情けない。
でもそんな情けない奴の言葉を、彼女は待っていてくれているのだから。
俺は一度きゅっと指輪を握り、大きく深呼吸して、彼女にまっすぐ向かい合って、
「好きだっ」
告げた。
心の奥底まで占めている、大切な大切な気持ちを自分の口から伝える。ただそれだけで。
「うーん、もう一声っ」
「も、もう一声っ?」
「ほら、私って欲張りだから」
「……………………愛してるっ!」
「うんっ。私もチヒロのこと、愛してる」
彼女が最高の微笑みを見せてくれた。


-----------------------------------
このあと
ヒロインを追いかけて「やっぱり好きだ」と告白、
ヒロインも同じ気持ちだと返す。
新しい恋人云々は主人公の勘違いで、ヒロインはずっと主人公を忘れられなかった。
ペアリングはまたお互いの指へ。

こんな感じになる予定だったが、詰まった。
2年以上止まっているので焚き上げ。

130:名無しさん@ピンキー
09/02/14 19:27:58 bxG4SGzd
GJ!これは良い投げ
おもしろかった

131:名無しさん@ピンキー
09/02/15 00:54:19 ANul1bej
GJ
描写がいいね。ひきこまれた
ハッピーエンドらしいので安心したよ

132:名無しさん@ピンキー
09/02/15 17:39:18 eukXZ1zX
GJ,俺には書けないタイプの話なんで純粋にうらやましい。

というわけで、俺もお焚き上げ。
二度目のクリスマス遅刻の上、中で使うネタをほかの話に転用してしまったりで、
いよいよお蔵入りだと判断。


133:『エリーゼ子供じゃないもん、と少女は言った』
09/02/15 17:41:28 eukXZ1zX




なんというか。



火が消える瞬間というのは、命が潰える瞬間のように見えてしまう。






なんてな。
ガラにもなく、おセンチなこと考えちまったよ。


やっぱ人間、死ぬ間際ともなると、感傷的になるのかねぇ。







青年・青柳崇(あおやぎ たかし)は、火の消えた暖炉を眺めながら、そんなことを考えていた。

ここは、吹雪荒れ荒ぶ雪山の、孤立したロッジの中。
しばらく前まで部屋を暖めていた暖炉の炎も、燃やすものを燃やし尽くし、つい今し方その小さな火を潰えさせた。
その後の崇(たかし)の体温を保つものは、着ている服と、このロッジに残されていた毛布のみだ。
それ以外のめぼしい布は、暖炉の火を保つためにくべてしまった。
そとの吹雪はもはや嵐とも呼べる勢いで、ほんの数メートルの前進すら許さぬ勢いで荒れ狂っている。
いくら山の天気は変わりやすいとはいえ、これがあっさりと止むような気配は微塵もない。


さてでは本当に、完全に孤立した場所なのだろうか、ここは。


残念ながら、そうであるといわざるを得ない。
このロッジは、とある金持ちの持っていた別荘の一つ。部屋数もそこそこ、ヒーターなどの暖房設備も充実していたし、
通信機器も漏らさず揃えられていた。
緊急時の移動手段として、数台のスノーモービルも保持していた。
しかしそれらは、もういずれもなく、または機能を失っていた。

崇の他に人間は? と問われれば、彼一人であると答えるしかない。
死んだ人間は死体であり、崇の周りに散乱する多数の死体は、人数には数えることが出来ないからだ。

つまり彼は、吹雪荒れ荒ぶ雪山の、孤立したロッジの中、たった一人で命をつなげているのだ。


いったいいかなる事情があって、今がどういう状況なのか、もったいぶるようなものでもないので、簡潔に説明する。




134:『エリーゼ子供じゃないもん、と少女は言った』
09/02/15 17:44:22 eukXZ1zX


青柳崇は、ヤクザである。
背が高く、喧嘩慣れしたそれなりの肉体の持ち主であり、無口ではあるが冷たい表情で相手を威嚇できるクールタイプのヤクザだった。
少し前に二十歳を過ぎた年齢である彼、組の中での立場はといえば、10代の悪ガキ達をまとめる役割が与えられてはいるものの、
組織としてはまだまだ下っ端である。

そんな彼が、この数日、とある金持ちのボディガードとして駆り出され、こうして雪山のロッジへの遊興に付き合わされていた。
そこに、金持ちに敵対するグループからの襲撃。
崇をはじめボディーガード達は懸命に応戦したが、残念ながら敵の数が多すぎた。
激しい銃撃戦の後、崇達は全滅した。
もちろん崇は生きて・・・この時点では、の話であるが、生きている訳なので、全滅という言葉はふさわしくないのだが。

彼は、・・・要領よく、死んだ振りをしていた。
崇はヤクザではあるが、これといって下衆な性格をしているわけでもなく、所属する組に対する忠誠心が高いわけでもない。
なぜ彼がヤクザになったのかといえば、強いていうならば行き場もなくふらふらとしていたらいつの間にかヤクザになっていた、というだけなのだ。

血生臭い争いの時間は過ぎ、雪山のロッジに静寂が訪れた。

死んだフリを続けていた崇は、撤収する集団に混ざり損ねた。なもので、連中がロッジのヒーターと通信設備を破壊し、
残されたスノーモービルからすべての燃料を抜いていくなどといった、そつのない手際を感心しながら眺めているしかなかった。
仕方なく、歩いて脱出しようと出てみたものの、次第に天気が荒れ、ものすごい嵐となった。
なんとかロッジに戻った崇は、そこにしつらえられていた暖炉に火をともし、燃やせるものをかき集め少しずつそれをくべながら嵐が収まるのを待った。
しかし、一向に天候が回復する兆しを見せないまま、火を保つのも限界に近づき、そしてとうとう、火が消えたのだ。


暖炉の火が無くなってしまうと、一気に部屋の気温が下がっていく。

通信も出来ない以上、何らかの助けが向こうから来てくれることを他力本願的に待つしかないわけだ。
後は、この嵐が早々に収まって、自力で脱出するか。
寒さに体力を奪われ、動く力も余り残っていない。

徐々に冷えていく部屋の温度に、崇は、覚悟を決めてしまった。

死の覚悟をした彼は、ぼんやりと薄れ行く意識の中で、さて生まれてから今までの走馬燈を開始しようとして、3歳児あたりのところで止めてしまった。
今更思い返しても楽しい人生ではなかった。



(だったら、最後ぐらいは、楽しいことを考えながら死んでいこう。
 なんだかマッチ売りの少女や、フランダースの犬の最終回みたいだ。

 そう考えると、凍え死ぬのも悪くない。なんか儚げで、眠っている間にあの世に行けそうだ。
 燃えさかる火に包まれて焼け死ぬよりはマシ。あれはなんか、怨敵に呪詛を吐きながら死ぬような感じだし。
 イメージとしてはあれだな、本能寺の変で焼け死んでいった第六天魔王信長か、ジュリー演じるところの天草四郎@映画版魔界転生みたいな。)




いざ、逃れられない死を前にして崇は、ずいぶんと呑気な物思いに耽る。




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