ハヤテのごとく!のエロパロ 24冊目at EROPARO
ハヤテのごとく!のエロパロ 24冊目 - 暇つぶし2ch550:名無しさん@ピンキー
08/10/19 22:49:58 hZgd7MRt
晒しますね

551:名無しさん@ピンキー
08/10/19 23:10:01 Ne7+glsW
>>548
最新刊のおまけネタで流れを受けてみたが通じなかったようだ・・・(´・ω・`)サミシイネ

552:名無しさん@ピンキー
08/10/19 23:48:48 qWIzQDo4
お嬢さま乙です

553:名無しさん@ピンキー
08/10/19 23:53:41 WDfPpPDn
マジで糞みたいなSSかく奴いかいなくなったな死ねよ

554:名無しさん@ピンキー
08/10/20 03:48:54 tBN4OOWb
ワタルがサキさんと10歳まで一緒にお風呂入ってたとか…

555:名無しさん@ピンキー
08/10/21 01:01:17 N5HcX+Sz
17巻見てきた。

お前らアーたんの話かけや( -`(ェ)´-)y─┛~~

556:名無しさん@ピンキー
08/10/21 11:16:21 GqiobXF2
ハヤテの両親が惨殺されるSSはまだですか?

557: ◆40vIxa9ses
08/10/21 16:57:19 tblvA4hm
>>556 グロくならない程度に書きます あと数時間お待ちを…

558:名無しさん@ピンキー
08/10/21 17:29:12 EgBpM3br
>>557
期待してます

559:名無しさん@ピンキー
08/10/21 17:39:38 sL0oHXxH
惨殺って……

560:名無しさん@ピンキー
08/10/21 18:02:33 VWGTaQ/F
別に書いてもいいけど、なんで惨殺されることになったのかちゃんと経緯を書いてくれよ。


561:名無しさん@ピンキー
08/10/21 18:04:23 dKqphjaV
雪路は何でヒナギクを売らなかったんだろうか?
売れ残ったんだろうか?

562:名無しさん@ピンキー
08/10/21 19:53:28 jrm24c9X
>>560オレも知りたい

563:名無しさん@ピンキー
08/10/22 00:53:25 T+Mfn6sD
>>561
かわいい妹を売るなんてこと少年誌で出来るはずないだろ

564:名無しさん@ピンキー
08/10/22 01:12:27 IQH7nChK
>>561
雪路はそんなことするほど腐った人間じゃない
読解力大丈夫か?w

あーたん可愛いおおお

565: ◆40vIxa9ses
08/10/22 01:55:14 A6k+Ool3
「綾崎様。何時も何時も御贔屓にして頂きまして、本当に有り難うございます」
「いやいや、ここの店が一番サービスがいいからね!」
「そうよね、あなた!『本当に有り難う』って言わなきゃならないのはこちらの方ですよ、店長さん!」
「有り難うございます。奥様」

この日本で外国製の高級乗用車に関心を持つ者であればその名を知らぬ者の無い輸入自動車ディーラーのショールームの中を、
綾崎瞬とその妻は、恰幅の良い店長を当然のような顔で従えつつ、商談中の客たちを得意顔で睥睨しながら横切っていく。

「これが、先日ご用命頂きました○クラスのロングタイプのフル装備仕様車でございます」
「ほう。なかなか良いね」
「ねえねえ!早速乗ってみましょうよ!!」

そのまま二人はバックヤードに通され、傍に控える店長が丁寧に差し出すキーを瞬が気取った手付きで受け取り、
如何にもそうした高級車を扱いなれた風にキーのヘッドに組み込まれたリモコンボタンでドアロックを解除すると、
これまた当然のように何の躊躇いも無くその新車に乗り込んだ二人は、
最敬礼で見送る店長やバックヤードの整備士たちへの礼もそこそこに、
わざわざ店のショーウインドーから見える側の出入り口を選んで、
クラクションを盛大に鳴らしながら店の敷地を出て行った。

「何だ、今のは…」

店のショーウインドー越しに瞬たちの乗る車の後ろ姿を苦々しげに見やる客の呟きに答える販売担当者は、
もちろん誰もいなかった。

「…」

事務室に戻った店長は、背広の内ポケットから三千院家から預かっている携帯電話を取り出すと、
その『短縮1』のボタンを押す。
それに気付いた秘書代わりの女子事務員が、そっと席を外した。

「もしもし…。はい、いつもお世話になっております○ナ○の田中でございます。
…。はい…、たった今、瞬様と奥様が当店をお出になりました…。
…。いえいえ、どう致しまして…。はい、あれ以来、お二人とも、ショールームで大きなお声を出されることも無く…」

店長の口ぶりは、瞬たちを相手にしている時と全く同じく、とても丁寧だった。

566: ◆40vIxa9ses
08/10/22 01:55:55 A6k+Ool3
「あっはっはっはっ」
「うふふふふ」

信号が青に変わるたびに微かにタイヤを軋ませながらの急加速を繰り返すその車の中で、
瞬がハンドルを叩いて大笑いすれば、
その妻はパワーシートの背凭れを際限も無く倒したり起こしたりしながらニヤニヤとほくそ笑む。

「あなたは本当に世渡りもお芝居も上手だわ!1万キロも乗り回しておいて、ちょっとメーター戻して、
『たった500kmでエンジンがブルブル言うなんて信じられん!』とかショールームの真ん中で堂々と啖呵切るんだもの!」
「全く、ちょろいもんだよ!オドメーターの数字をいじるのにお金がかかっちゃったけど、あれ以来、
新しいのに乗り換えたくなったらショールームへ行って『これ』って指差すだけでいいんだから、こたえられないね!!」

車内という密室で下卑た性根を曝け出し、高級外車のディーラー相手に仕掛けた薄汚いカラクリの種明かしをし合う二人だが、
実はディーラー側は、そんなことは疾うの昔にお見通しだった。
ただ、瞬の運が良かったのは、あの日、あの店のショールームで瞬たちが販売員相手に猿芝居を打っているとき、
店の奥の事務所の中で、店の顧問弁護士へ連絡を取ろうと店長が受話器に指をかけた丁度その瞬間、
その電話機に三千院家からの電話がかかってきたことだった。

「これはこれは、三千院様。ご無沙汰いたしております。本日は、お車のご相談ですか?」
『いえ…。その…、今そちらに、綾崎瞬という人物が行ってはいませんか?』
「はあ…。それが…、その綾崎様が奥様とご一緒に、今…」

三千院家からの電話は、「支払いは当家が行うから、瞬たちに彼らが要求する通りの自動車を提供して欲しい」というもので、
その日以来、彼らは、雨で汚れたり、ほんの少しこすり傷を付けてしまったり、
或いは飽きというだけの理由でこの店に押しかけては自分たちの思う通りの仕様の新車をせしめていたのだった。
また彼らは、闇金から金を借りては踏み倒すという事を平気で繰り返していたが、実は、彼らが金を借りた闇金業者も、
取立てに来ては一通りの悪態をついて玄関ドアを乱暴に蹴飛ばして帰っていくヤクザ者も、
その全員が三千院家の手の者なのであった。
つまり、綾崎瞬夫婦は、三千院家の掌の上で踊らされている哀れな道化に過ぎなかったのだが、
彼らがそんな幸運を享受できた理由は、彼らの息子が綾崎颯(ハヤテ)だったからである。
だが、彼らが感謝もせずに漫然と送っていたその享楽の日々の“つけ”を支払わなければならない瞬間は、
静かに、だが確実に刻一刻と迫っていた。

567: ◆40vIxa9ses
08/10/22 01:56:35 A6k+Ool3
「あのジジイ。いきなり私たちを呼び出して、一体何の用なのだ?もし、つまらんことだったら、蹴り一発では済まさんぞ!」
「お嬢さま…」

三千院総本家の広大な応接室の真ん中に置かれた一際豪華なソファーに座って帝を待つナギの只ならぬ言葉を、
その後ろに立って控えているハヤテが諌めるが、その横に立つマリアは、沈黙を守ったままだった。

「揃っておるな」

その時、入り口の扉が執事の白手袋によって開かれ、そこから、クラウスを従えて入ってきた険しい顔つきの帝は、
年の割には軽い足取りでソファーに歩み寄ると、ナギと向かい合わせにどっかと座る。

「綾崎、ナギお嬢さまの隣へ…」

クラウスの静かな言葉に従ってハヤテがナギの隣へ座ると、帝は、おもむろに切り出した。

「今日、お前たちを呼んだのは他でもない…」
「もったいぶらずに用件を早く言え!」

いらついた口調で言葉を遮るナギに、「よし、わかった!」と言わぬばかりの勢いで、帝は一気呵成に言葉を繋いだ。

「お前たち、お互いにお互いのことを、どう思っておるのだ?」
「なっ!?」
「ええっ!!」

並んで座るソファーの上でナギとハヤテは同時に驚愕の叫び声を上げると、
ナギはそのまま耳の先まで真っ赤になって俯いてしまい、ハヤテは、何が何だか分からずに帝とナギの顔をただ見比べた。

「わしは、お前たちについて、全ての事を知っているということをよく心得た上で返答せよ!」

帝の言葉に、ナギは後ろに立つマリアの顔をサッと見上げたが、しかし、
自分もそのようにしたいという衝動を必死に堪えるハヤテの顔色が、見る見るうちに真っ青に変わっていく。
そう、帝の情報源がマリアであるならば、この自分が企てたナギへの誘拐未遂の事も帝の耳に入ったに違いなかった。

「マリア…、お前…」
「マリアを責めるな。わしが、全てを話すように命じたのだ」

ナギの何とも言えない声音でのマリアへの問い掛けを、帝が静かに遮る。

「帝おじいさま…、ナギお嬢さま…、僕はあの夜、ナギお嬢さまを誘拐しようとしたのです…」
「へ…?」
「…」

素っ頓狂な声を上げるナギと、押し黙る帝、クラウス、マリアの前で、
ハヤテは、ナギとはじめて出会ったあの晩の真実を語り始めた。

568: ◆40vIxa9ses
08/10/22 01:57:19 A6k+Ool3
「…これが、あの日の夜に僕がお嬢さまに申し上げた言葉の本当の意味です…」

ハヤテは、その場に居合わせたもの皆に全てを話した。
親に1億5千万円の借金を押し付けられ、その取立てに訪れたヤクザたちから必死で逃げた事。
だが逃げ切れないと悟って自棄になり、誰かを誘拐して身代金をせしめようと考えた事。
ナギを標的にしたのは、ナギがたまたまそこにいたから、というだけの理由だった事…

「僕は、お嬢さまに相応しい男ではないと思います…」

話し終えたハヤテの顔は涙で濡れており、そんなハヤテの様子を見ていたナギの頬にも幾筋もの涙の跡が光っていた。
そんな二人に、帝が優しく問い掛ける。

「ナギ」
「何だ…?」
「綾崎」
「はい…」
「わしは、お前たちに、『今までの事を話せ』と言ったのではない。お互いの事をどう思っておるのかを聞いたのだ」

なるほど、言葉の意味としては確かにそうかもしれないが、しかし、そんなレトリックはもう、
今のハヤテにとっては何の意味も無いことだった。
だが…

「わっ、私は…、ハヤテの事が好きなのだ…!だから、だから…、これからもずっと一緒にいて欲しい!!」

ナギは、すぐ隣に座るハヤテの身体に飛びつくようにしがみつくと、
その逞しいが今はナギたちへの申し訳なさに萎縮してしまっている体をギュッと抱き締めながら切ない声で訴えた。

「お嬢さま…」
「は、ハヤテは、私の事をどう思っているのだ…?」
「しかし、僕は…」
「今、ジジイも言ったではないか!ハヤテが、自分自身の事をどう思ってるかじゃなく、この私の事をどう思っているか、
聞かせろ!!」
「ですが…」

なかなか煮え切らないハヤテの態度に業を煮やしたナギは、ピョンと勢い良くソファーから立ち上がると、
ハヤテの鼻先にビシッと細くて白い人差し指を一本突き付けながら、何時もの調子で元気良く命令した。

「ええい!男の癖に何時までも過去の事に拘りおって!!いいかハヤテ!今から私の事を好きになれ!いいなッ!!」
「お嬢さま…」

ハヤテは、その鼻先に突き付けられたナギの指先を大きな両手で大切に大切に包むと、
何度も何度も「有り難うございます」と呟きながら、さっき冷たい涙で冷えた瞼から、今度は熱い幸せな涙を滾々と溢れさせた。

569: ◆40vIxa9ses
08/10/22 01:58:03 A6k+Ool3
ナギとハヤテが、マリアから差し出された熱いお絞りで顔に残る涙の跡をゴシゴシと拭い終えたのを見届けた帝が、
ハヤテに声をかける。

「綾崎。わしと一緒に来い」
「はい」
「ハヤテ…」

ソファーからスッと立ち上がるハヤテの後を追おうとするナギを、マリアが無言のまま優しい顔で制止する。

「うん…」

ナギは、少し浮かせた腰を再びソファーの座面に戻し、帝に従ってドアの外へと消えて行くハヤテの広い背中を見送った。

570: ◆40vIxa9ses
08/10/22 01:59:01 A6k+Ool3
帝に付いてほんの小さな次の間に入ったハヤテに、帝は身振りで椅子に座るように勧める。

「失礼致します」
「これからもナギの傍にいると決めたお前に、もう一つ決断してもらわねばならんことがある」
「はい」
「お前の両親のことだ」

「(やはり…)」とハヤテは思った。これからずっとナギの傍にいる以上、
それも、『好き』という感情を表沙汰にしてそうする以上、それは避けて通れぬ問題だった。

「僕は、どうすればいいのでしょう…?」
「お前は、自分の両親を許せるか?」

腰の後ろで腕を組んで部屋の中をゆっくりと歩き回っていた帝が、ふいに立ち止まって真剣な眼差しで尋ねた。
これは、難問だった。

「あんな人たちとは、親でも無ければ子でもありません…」
「…」
「…でも」
「やはり、そう言い切るのは迷いがあるか?」
「…はい」
「よい。それが人の情というものだ」
「有り難うございます」

その帝の一言は、ハヤテにとって本当に嬉しかった。自分を捨てた親でも、やはり、親は親なのだ。

「だが…」
「はい」
「辛かろうが、これを見てくれ」

571: ◆40vIxa9ses
08/10/22 02:00:01 A6k+Ool3
ハヤテと向かい合わせの椅子に座った帝は、テーブルの上のリモコンを取り上げると、
壁掛け式の液晶モニター画面の電源を入れ、続いて映像の再生装置の電源をオンにした。
再生が開始された映像は、乱暴な発進と加速を繰り返す高級外車を追尾する車両の前席から撮影されたもので、
聞こえてくる男女の会話は、その外車の車内のものらしかった。そして、その声は、紛れも無くハヤテの両親のそれだった。

「(父さん…、母さん…)」

だが、その二人の声音にハヤテがほんの少しの感傷すら感じる暇も無く、
その酷い会話の内容が彼の腸を瞬時に煮えさせた。

「そうだ、このカード、もうそろそろ残高が無くなるころだから、
これ使って、この間と同じように携帯電話を二つ三つ契約して、そいつを例の連中のところへ持ち込もう!」
「そうね。それで、ヤバくなったらポイ!でいいわよね~!」
「あははははは!!」

だが本当にハヤテの全身の血を逆流させたのは、次に聞こえてきた彼らのこの遣り取りだった。

「ハヤテのやつ、今頃どうしてるかな?」
「さあね…。いろんな所にいろんな風に売られてるかしら」
「でもあいつ、女の子みたいな顔してたから、ちゃんと女に生まれてりゃ、あいつを使ってもっと稼げてたかもしれないなあ」
「あら、男だって同じようなもんよ」
「男相手の売○かい?」
「いえいえ、あの子のお嫁さんにそっちの方で稼いでもらえばいいのよ!」
「ああ、なるほどなあ!夜の街で共稼ぎか!!あははははは」
「うふふふふ」

激しい憤怒に首から上の肌を紫色にしながらギリギリと握り締めた拳をぶるぶると震わせているハヤテの耳に、
帝の冷徹な声が響いた。

「お前の嫁、という言葉が彼らの口から出たからには、わしとしてもそれを放置するわけにはいかんのだ。
許してくれとは言わん。だが、孫娘を思うこの爺の気持ち、どうか分かってくれ…」

帝の言葉に、ハヤテはただ、深くしっかりと頷くだけだった。

572: ◆40vIxa9ses
08/10/22 02:00:41 A6k+Ool3
「お客様。それはご無理というものです」
「何が『ご無理』だよ!この間このフェリーを利用した時、おたくらが車の固定方法を間違ったから、
僕たちの大事なべ○○に傷が付いたんだ!修理代だって高かったんだぞ!」
「そうよ!それを今回、ただで特等船室を手配してくれれば帳消しにして上げるって言ってるのよ!有り難く思いなさいよね!」

フェリー乗り場のカウンターで、
困り顔の客を大勢後ろに待たせたまま、また綾崎夫婦は彼ら十八番のダメもとの無理難題を係員に吹っかけている。

「他のお客様のご迷惑になりますので…」
「じゃあ、お前の船会社が俺たちにかけた迷惑は、どうしてくれるんだい?」

その時、困り果てている係員の横の電話が鳴った。

「…はい。綾崎様とおっしゃるお客様で…。はい、では、少々ここでお待ち頂けば宜しいですね…」

受話器を置いた係員は、多少ほっとした表情で、目の前でむくれ返っている綾崎夫婦に告げる。

「只今上司が参りまして、綾崎様のご希望に沿う形でご乗船いただけますよう手配したいと申しておりますので、
今しばらくお待ちくださいませ」
「そうだよ。初めから上司を呼べばいいんだよ」
「ほんと!窓口の人が気が利かないのって、時間の無駄だわ!」

こうして、綾崎夫婦は、まんまと特等船室での快適な船旅を享受することになったのだが…

573: ◆40vIxa9ses
08/10/22 02:02:06 A6k+Ool3
真夜中、夫婦の船室のドアをノックするものがある。

「誰だよ…、こんな夜中に…」
「ほっときましょう。どうせ酔っ払いが部屋を間違えてノックしてるのよ…」

だがノックは繰り返され、そのリズムも強さも、とても丁寧だった。

「何だよ、もう…。誰だい?こんな夜中に!安眠妨害だぞ!!」
「このような深夜に真にご迷惑をお掛け致します、綾崎様。乗船者名簿についてなのですが…」
「ああ?乗船者名簿…?」

ドア越しの丁寧な呼び掛けに、瞬は気が付いた。
フェリー乗り場に自分たちを迎えに現われた、立派な制帽、制服姿の船員に得意になって先導されるまま、
綾崎夫婦は乗船者名簿に記帳せずに乗船してしまったのだった。

「名簿に記入してくれって言わなかったのは、おたくらのミスだろう?何もこんな夜中に…」
「いえ、名簿にご記入下さいとお願いしに伺ったのではないのです。むしろ、ご記入になられますと、
こちらにとりまして大変に不都合でございまして…」

深夜の訪問者に対面で文句を言ってやろうと瞬が無警戒にほんの少しだけ開けたドアをさっと押し開いて、
昼間彼らを迎えに出てくれた制服姿の船員を先頭に、屈強な船員が数名、ずかずかと二人の船室に入りこんできた。

「きゃあ!何よ!あんたたち!!」
「失礼だなあ、君たちは!夜の夜中に、就寝中の女性がいる船室に、そんなに大勢で…」
「お静かに願えませんか?我々は船内の“清掃”に参ったのです」
「馬鹿を言うなよ!一体なんのつもり…」

574: ◆40vIxa9ses
08/10/22 02:02:50 A6k+Ool3
屈強な船員たちに少しだけたじろいだ瞬だが、今回ばかりはどう考えても自分の側に理があると思い直し、
文字通りに胸を張って船員の一人に詰め寄ったその時、スッと伸びてきた別の船員の手が、
なにやら白くて小さな布のようなものを瞬の口と鼻の辺りに当てると、瞬があっという間に床にくずおれる。

「何するのよ!あ…」

さっきからベッドの上に半身を起こしてこの有様を見守っていた妻は、大きな声を出しかけたその口元を、
やはり瞬のそれと同じような白い布で押さえられて、再びパタリとベッドに仰向けに寝そべるように倒れこんだ。

「では、先ほど説明した段取りどおり、こいつらの着ているものを、下着までそっくりこちらで用意した物に取り替えるんだ」
「はい」
「身分が分かるものは、どんな些細なものでも回収して私のところへ持ってきてくれ。どんな些細なものでも、だ」
「了解しました」

船員たちは、先ほど打ち合わせたそれぞれの作業に取りかかり、程なくそれを首尾よく終えた。

「ご苦労だった。君らは持ち場に戻ってくれ」
「はい」
「君は、こいつらの荷物を持って、それから君たちは、これを担いで私と一緒に来てくれ」
「はい」

特に屈強な二人の船員は、さっきまでとは全く違った服装になった綾崎夫婦を一人ずつ担ぎ、
先導する船員の後に従って、夫婦の荷物を持った船員と共に部屋を後にした。
時間は、船酔いの客も酔い疲れて寝込んでしまうほどの文字通りの深夜だったし、
船員専用の階段を使えば、この二人の“人間ゴミ”を船客に見られることなく船尾へと運び、
そこから真っ暗な海へと投棄することなど、全く造作も無いことであった。
そして、『清掃作業が完了した』という電話を帝が専用の携帯電話で受けたのは、この直後の事だった。

575: ◆40vIxa9ses
08/10/22 02:03:34 A6k+Ool3
屋敷の居間のソファーで、ハヤテは膝の上に乗せたナギの頬を愛しげに指先で撫でていた。

「お嬢さまは、本当に可愛いですね。ほっぺもこんなにぷくぷくで、ふわふわで…」
「そんなに触ったら…、くすぐったいぞ、ハヤテ…」

ナギは飛び切りの美少女だったし、何よりもハヤテを恋い慕うその気持ちはとても深くて強いものだったから、
そんなナギの気持ちを真正面から受け止める事になったハヤテが、ナギの事を本気で愛し始めるようになるには、
それほど時間はかからなかった。

『さて、今日で今年ももう二ヵ月をきったわけですが、テレビをご覧の皆さんは、今年、やり残した事はありませんか?』
『ちょっと待った!そりゃ、まだ早いんじゃない?』
『いえいえ、時間なんていうものは、お金と同じで、「まだある」と思って気を抜いていると、いつの間にやら…』

テレビのニュースショーのキャスターたちのお喋りを聞きながら、ナギとハヤテはしみじみと話し合う。

「帝おじいさまのところでのお話し合いから、もう、1ヵ月経つのですね」
「うん…。早いようで遅いようで、でも…」
「でも?」
「ハヤテと一緒なら、どんな時でも最高に幸せだぞ!」
「はい。僕もですよ、お嬢さま…」

チュッと二人の唇がささやかに重なり合う、その甘く幸せな雰囲気に水を注すように、
画面のこちら側の事情など全く知らないキャスターが、余り気持ちのよくないニュースを読み上げ始めた。

「今日午前10時頃、○○県の××浜を散歩していた男性が不審な漂着物を複数見つけ、地元の警察に届け出ました。
警察官が現場に急行して調べた結果、一つはワイシャツらしきものを着た人間の上半身、
もう一つは、ジャージらしきものを穿いた女性の下半身と判明し、同県警では、現在、これらを司法解剖すると共に、
残っている着衣などからこれらの遺体の身元の手がかりとなるものは無いか、慎重に調査しています…」

576:名無しさん@ピンキー
08/10/22 02:04:29 A6k+Ool3
以上です

577:名無しさん@ピンキー
08/10/22 02:22:57 if/5+Fms
GJ
なんか、感動すればいいのか、ざまぁwwwって言えばいいのかそれとも鬱になればいいのかよくわからんな。

578:名無しさん@ピンキー
08/10/22 02:44:49 X1T9mhBN
書く前にはレス数と最低でもカプを書いてくれんと読めん

579:名無しさん@ピンキー
08/10/22 02:53:16 eDTBvcnI
これは…単行本派が17巻見て両親むかつく!って人向けのSSだよね。
読ませる文章で良かったです。読後感がなんとも言えないかんじになったが。
ハヤテ×ナギのワンシーンだけでも萌えたGJ。
個人的にはぶっちゃけ両親とかどうでもいいから576氏の「エロパロ」を読みたい。

580:名無しさん@ピンキー
08/10/22 05:11:38 siKta06J
>>576
今でもひなゆめで書いてる?
それとももうエロパロスレonly?
ハヤテの両親は泥棒・詐欺師であってクレーマーでは無いと思ってたんで
ちと違和感があった(詐欺師もクレーマーも似たようなもんだけど)
夜の街で共稼ぎのくだりは上手すぎてムカつき度MAXだったわw


581:名無しさん@ピンキー
08/10/22 15:17:38 VFSSTjGD
かなり違和感は否めなかった。
だけどこう考えると良いかもな。

582:名無しさん@ピンキー
08/10/22 18:24:16 Cj3vGee6
>>GJ
ぜひ次も書いてください

583:名無しさん@ピンキー
08/10/22 19:00:31 tPE9KWh5
アーたんかわいいよ、アーたん


……
………

>>576 GJ!!原作でもハヤテの親には不幸な目にあってほしいです。
そして、ハヤテには幸せになってほしいです。

584:名無しさん@ピンキー
08/10/22 20:15:29 n3uqAOV4
同意!
こうゆうSSもイイ!

585:名無しさん@ピンキー
08/10/23 21:00:13 NcClCtHY
GJ

アーたんアーたん言ってるヤツは同一人物か?

586:名無しさん@ピンキー
08/10/23 21:27:17 AVmwqJJO
自分583だけど、アーたんのことで書き込むのは初めてだよ。

587:名無しさん@ピンキー
08/10/23 23:03:04 n06D4NnN
同一ではなくても
見たいと思うやつがそれだけいるのさ( -`(ェ)´-)y─┛~~

588:名無しさん@ピンキー
08/10/23 23:30:48 rCFgA8Yt
さてはハヤテが潜んでいるな

589:名無しさん@ピンキー
08/10/24 03:10:08 2kpqnD+T
>>586

IDwwwwwww

AVワロタww

590:名無しさん@ピンキー
08/10/24 03:12:13 2kpqnD+T
ちなみに564は俺
ちょくちょく来てるお

591:名無しさん@ピンキー
08/10/25 14:55:08 DebumS7i
俺はハヤマリが一番好きだったのに
あーたん見てから俺の中でハヤマリは2番に!

592:名無しさん@ピンキー
08/10/25 15:02:11 tbhr0Nfe
俺はハヤマリが2番目に好きだったのに
泉たん見てから俺の中でハヤマリは3番に!

593:名無しさん@ピンキー
08/10/25 17:30:49 EOWCSSRB
>>589
小学生かwwwww

594:名無しさん@ピンキー
08/10/25 17:37:40 e+zFMwRk
>>592
泉が1位に飛び抜けたのか、2位に割って入ったのか

595:名無しさん@ピンキー
08/10/25 19:02:38 iT2KX8zT
俺はハヤマリが1番目に好きだったのに
今でも1番だけど

596:名無しさん@ピンキー
08/10/25 19:14:07 RnR2mEVe
俺はアーたんが出てくる前からハヤアーたんだけど
アーたんが実際に出てきたら俺の中でハヤアーたんは殿堂入り

597:名無しさん@ピンキー
08/10/25 21:35:44 VTOwdar4
やっぱりハヤナギかな

598:名無しさん@ピンキー
08/10/25 22:12:37 0ht/pAeR
ハヤテとナギ以外考えられなかったが
アーたんが出てからどっちも捨てがたくなりました
ナギたんもアーたんもかわいすぐる

599:名無しさん@ピンキー
08/10/25 22:19:49 ls+JZ5UB
あーたんには幸せになって欲しいなぁ

つーかあの後ろの執事誰だ?
ハヤテ③号か?

600:名無しさん@ピンキー
08/10/26 01:27:08 80PEzGVG
、、、、、、、、、、、、


601:名無しさん@ピンキー
08/10/26 11:00:08 uG8IgddC
>>599なんだこいつ

602:名無しさん@ピンキー
08/10/26 22:03:10 HYv7ZWLI
お前もな

603:名無しさん@ピンキー
08/10/26 23:34:38 ACgMtvde
誰か投下頼む

604:名無しさん@ピンキー
08/10/26 23:56:53 FaXzueau
>>594
飛びぬけちゃった
ちなみに2位はハヤナギ

605:名無しさん@ピンキー
08/10/27 13:36:35 DC2rTFCe
やっぱサクか泉だよな

606:名無しさん@ピンキー
08/10/27 15:37:43 LgS62nNE
西沢さん一筋だったのに、
アーたんが出てきてついに単行本を買ってしまった。17巻だけ

607:名無しさん@ピンキー
08/10/27 15:50:09 cPOoXScP
なら18巻も買わないといけないね

608:名無しさん@ピンキー
08/10/27 19:31:09 LvhRK8Gr
あーたんとナギの3Pを想像した俺はどうしたらいい

609:名無しさん@ピンキー
08/10/27 19:59:09 tBrZEPTL
>>605
同志。
その中でもハヤサクが最強

610:名無しさん@ピンキー
08/10/27 21:56:42 tcl5s3Dc
>>608
デスクトップ上の何もない場所で右クリック→新規作成→テキストドキュメント
できた新規テキスト ドキュメント.txtを開いて、
その熱い思いをひたすらキーボードに叩きつける

611:名無しさん@ピンキー
08/10/27 22:05:15 oUuBquCM
ナギとサクが流石の強さでアーたんが一気に人気上昇してきて
そんな中でも泉が侮れない数の支持を得ているといったところか

612: ◆09q0zCYQtk
08/10/27 22:41:44 3yA7IBcq
株価が下げ止まりませんが、一応>>566の後続としてお読み下さい

613: ◆09q0zCYQtk
08/10/27 22:45:12 3yA7IBcq
失礼しました >>575でした では、投下します

614: ◆09q0zCYQtk
08/10/27 22:45:57 3yA7IBcq
「しかし、この喫茶店は、ほんとに客が来ないなあ…」
「うん…。株の値段が凄く下がってるからじゃないかな?」

可愛らしい頬をぶすっと膨らませてナギが問い掛ければ、細い肩先をちょっと落としながら歩も軽い溜め息交じりに答える。
普通なら今頃からお客がポツポツと入りだすはずなのだが、全くそんな気配すら無い『喫茶 どんぐり』の店内で、
『CAFE DONGURI』のロゴ入りのエプロンを着けた二人の少女は、空しく暇を持て余していた。

ヒナギクの馴染みのこの店には彼女自身も時々バイトに入っていたし、
今から約半年前、ひょんなことからハヤテが店の厨房を借りることになったのだが、
その時、客の無理難題にヒナギクとマリアの助けを得ながら手際よく対応した彼のことを覚えていたマスターの加賀が、
余りの人手不足に窮してヒナギクの紹介で彼をスカウト、それを、
自分で働いて得たお金でハヤテに腕時計をプレゼントするために働き口を探していたナギとセットでいいなら、
という条件でマリアが承諾したのだ。
更にこの時、従業員が大金持ちのお嬢さまとその執事だけというのはバランスが悪いと考えた加賀が、
“普通の人”として雇い入れたのが歩なのだった。

今日は、ナギに内緒で一晩中伊澄の除霊に協力していたハヤテが、
その疲労振りをナギに見抜かれて学院から屋敷への直帰を命じられ、残念ながらバイトを欠席。
そしてマスターは、“ボス”とやらに呼び出されて先ほどから外出していた。

「うむむむ…。SP連中が、また店の外で通行人の身体検査をし始めたんじゃあるまいな…」

今年の春先、ナギがバイトを始めた直後には、その身を案じて、
黒ずくめにサングラス姿のSPたちが十重二十重に『どんぐり』を取り巻いて一般の者の通行を遮断してしまい、
全く入らなくなってしまった一般人の客に代わって着慣れないアロハシャツを着たSPがサクラの客となって入店したが、
そんな涙ぐましい努力も、
SP全員の顔を記憶しているナギに簡単に見破られて、そのシャツの襟元に忍ばせた超小型マイクをナギに摘み出され、
それを通じて、警戒中のSP全員とマリアとハヤテは、「今後、このような真似をしたら、お前たち全員即刻馘首だ!!
特に、マリアとハヤテが私を心配して様子を見に来ていたら、絶対に許さんからな!!」と言い渡されてしまったのであった。

それ以来SPたちの活動は静かになったが、しかし、これほどまでに客の入りが悪いということは、
季節が巡り再び寒くなり始めたこの時期になって、その活動がまた活発化したのであろうか?

615: ◆09q0zCYQtk
08/10/27 22:46:44 3yA7IBcq
「え?『えすぴーが身体検査』って何かな??」
「くっそー!せっかく来たのにこんなにまでヒマだと、せっかくの勤労意欲が台無しではないか!!」

イラつくナギは、歩の当然の疑問には答えずに板張りの床をカツカツと踏み鳴らして店の入り口へ向かうと、
上に付いているカウベルがもげそうになるほどガバッと勢い良くドアを開け、
そこから首だけを突き出してキョロキョロと外の様子を窺う。

『ふん…。いない、か…』

「お嬢さまたちは、僕たちの事に気が付いていませんね」
「ええ、今のところは大丈夫そうですね」
「はい、本日は10台の諜報車を用意しました。それぞれメーカー、色、年式を違わせてありますし、
ナンバーも東京都下と神奈川のものに分散させて、SPの服装もカジュアルなものにしています」

店の前の歩道に一目でSPと分かる黒背広たちの姿が見えないことに満足したナギは静かにドアを閉めるが、何の事は無い、
店の反対側の歩道沿いに設置されているパーキングメーターを入れ代わり立ち代り利用している数台の大型のワンボックス車は、
もちろん全て三千院家のSP部門の所有車で、その中の一台の車内では、
ナギの様子を心配するハヤテとマリアが、それぞれのヘッドホンで、店内に仕掛けたプロ仕様の盗聴機が傍受…、いや、
店内に設置した高性能の情報収集機器が送信してくるナギと歩の会話に聞き耳を立てていたのだった。

「確かにSP連中はいない。だが、客が来ない…」
「うう…。ハヤテ君がいてくれる時は、いろんなお客さんが来てくれるのに…。どうしてなのかな?」

店内で、ナギと歩の二人が思わず見合わせた顔の眉間に「むむむ…」とそれぞれ複雑な思いを込めて皺を寄せれば、
その様子をモニターしているワンボックスカーの車内の一同は、気難しいナギの警護の難しさに、改めて気を引き締め直した。

616: ◆09q0zCYQtk
08/10/27 22:47:28 3yA7IBcq
「ところで、ナギちゃん…?」

既にナギとハヤテの心が深く強く通じ合っているということを全く知らない歩が、
少々の優越感を篭めた視線を横目でナギへと送りつつ、ニヤつきながら話し掛けた。

「この頃は、ちょっといい恋のエピソードとかは無いのかな?
もちろん、起き抜けのベッドでハヤテ君が『甘いですよ』って勧めてくれたジュースが、実は酸っぱかった…。
とかいうのは無しでね!」
「うっ!」

暇を持て余す仲良し(?)少女たちの話題の定番といえば所謂『恋話(こいばな)』だが、
ハヤテをめぐる恋敵である-とまだ歩は思っていた-二人の間でのそれは、必然的にハヤテとの親密さの披瀝合戦となる。
そして、歩が禁じた“ジュースのエピソード”とは、例のSP追い払い騒動の直後、
自分から「恋話をしよう」と提案したのにも関わらず『デート』と『チュー(キス)』の体験での歩の虚勢を見抜けずに焦ったナギが、
その日の朝、なかなかベッドから起きないナギの目を覚まそうとして、
酸っぱいグレープフルーツジュースを甘いオレンジジュースと偽って勧めたハヤテの行動を極限ギリギリまで拡大解釈し、
「今朝もハヤテに、ベッドでイタズラされたのだ!」とぶち上げた、という何とも他愛の無いものだった。もちろん、
それに大ショックを受けた歩には、ナギの様子を見に来ていたマリアとハヤテがその真相を説明して、事なきを得たのだった。

「さあ!無いのかな?無いのかな~!あれから一つも、新しいのは無いのかな~!?」

ニタニタしながら執拗に煽り立てる歩に、既に耳の先まで真っ赤になって俯いていたナギは、
その赤さを更に濃くすると、小さな体をモジモジともっと小さくしながら、ツンと尖らせた唇でボソッと呟く。

『このところ毎日…、ハヤテとは…、いろいろと仲良くしているのだ…!』
『え~!あのハヤテ君が!?まさか~!!ナギちゃん、無理やハッタリは勘違いは、よくないんじゃないのかな??』
『な…!けっ、決して「ハッタリ」や「勘違い」などではなぁーーーーいッ!』
『じゃあ、どんな風に“仲良くしてる”のか、具体的に教えてくれる?』
『それは…、その…』
『ほ~ら、やっぱり!口から出任せはお止め下さい、ナギお嬢さま!!』
『だから!出任せなどではない!!今朝だって…、ハヤテに…』

「お…、お嬢さま…」

例のワンボックスカーの中では、店内の黄色い声での言い合いを、
着けたヘッドホンのスピーカーから耳にねじ込まれているハヤテが顔を熟れ切ったトマトのように真っ赤にしていたが、
そんなハヤテの姿を、その横で別個のヘッドホンで同一の音声に耳を傾けているマリアは、
ただ苦笑いを必死に堪えながら見守るしかなかった。

617: ◆09q0zCYQtk
08/10/27 22:48:16 3yA7IBcq
今朝、ハヤテは何時もの通り、愛する小さな主人をその寝室へ起こしに行った。

「おはようございます!お嬢さま」
「む~…」

ナギが一回で起きないことを良く心得ているハヤテは、そのまま窓辺に進むと、
高級な厚地の遮光カーテンをさっと開け、
そのプリーツを丁寧に整えながら金糸で太く編まれた綱型のタッセルで纏めていく。

「お嬢さま。さあ、学校へ行く支度を致しましょう!」
「今日は、もう疲れた。学校は、お休みする…」

天蓋付きの豪華なベッドの中で、窓から差し込む爽やかな朝の光に目が眩んだナギは、
たっぷりした造りの羽毛布団の襟を、大判の羽毛枕に乗せた頭の天辺近くまでモゾモゾと引っ張り上げながら答えた。

「お嬢さま~…」

そんなナギの仕草も可愛いハヤテは、ベッドに歩み寄ると、
羽毛布団の襟元からほんの少しだけちょこんと覗いているナギのつむじを、
その大きな掌全体を使って何度もゆっくりと撫でながら優しく話し掛ける。

「僕は、お嬢さまと一緒に学校へ行きたいんです」

つむじを撫でてくれるハヤテの掌はとても心地いいし、その言葉もとても嬉しいが、しかし、眠いものは眠い。

「そんなに何時も何時も一緒にいては、早く倦怠期が来てしまうかも知れんぞ~…」

呑みに行こうという誘いを新婚ほやほやの部下に断られた上司のようにぼやきながら、
ナギは、布団の中で寝返りを打って反対側を向いてしまう。
だが、本当にこの可愛い主人と一緒に学校に行きたいハヤテとしては、ここで引き下がるわけにはいかなかった。

「そうだ!お嬢さま」
「ん~?」
「僕から、贈り物を差し上げたいと思うのですが、受け取っていただけますでしょうか…?」

618: ◆09q0zCYQtk
08/10/27 22:49:30 3yA7IBcq
ハヤテからの口から出た『贈り物』という言葉に反応して、布団の中で思わずパチリと目を開けてしまったナギだが、
しかし、ハヤテがそう告げたタイミングを考えれば、それは、この自分を何とかして起こすための策略に違いなかった。
でも、ハヤテは今まで一度だってナギに対して全くの空約束をした事はなかったから、その『贈り物』とやらの内容に、
ナギは興味を持った。

「どんなものをくれるのだ?」

布団を被ったまま答えるナギのその声音から明らかに眠気が去っている事を感じ取ったハヤテは、
ナギの身体の大きさにふんわりと膨らんでいる羽毛布団の、
おそらくはナギの耳があるであろう部分に向かって、そっと囁きかける。

「オレンジジュースよりももっともっと甘くて…」
「…?」
「グレープフルーツジュースよりも、ちょっと酸っぱいかも知れませんねぇ」

ジュースという単語が二つも並んだからには、やはり飲み物系だろうか?
だが、そんなに甘くて酸っぱくて、起き抜けの目覚まし代わりに呑んでも美味しく感じられるような飲み物があるなら、
それをこの自分が知らないはずはない。
いや待て。飲み物でなければ、食べ物か?
いやいや、ハヤテは確かに『僕からの、贈り物』と言った。
ハヤテには、屋敷の物、つまり三千院家の物と自分の私物を混同するような癖はなかったから、
ならば、ハヤテが自分で用意した何かか?

「うむむ~…」

考えれば考えるほどいよいよもって深まっていく謎にとうとう耐え切れなくなったナギが、
細い腕をグイッと伸ばして上半身を覆っている掛け布団を足の方へパタンと二つ折りにし、
その開けた視界の中にハヤテの姿を捉えた、その時…

「ハ…、…んッ!」

あっという間に近付いてきたハヤテの顔が再びナギの視界を塞いだかと思うと、その唇が、
「ハヤテ」と呼び掛けようとして半分ほど開かれたナギの愛らしい桜色の小さな唇に、ふんわりと優しく重なってきた。

619: ◆09q0zCYQtk
08/10/27 22:50:22 3yA7IBcq
「!…」

いきなりのとても素敵で幸せな出来事に、ナギが口付けを受けた姿勢のまま固まっていると、
ハヤテは、ナギの唇の柔らかさを確かめるように、押し付けたままのその唇の先を二、三回ツンツンと尖らせてから、
ゆっくりと顔を離す。

「…あ、…」

幸せに頬を染めながらほんの間近で見詰めあう二人の間に言葉は無かったけれど、
ハヤテの藍色に煌めく澄み切った瞳と、ナギの優しい鶯色が美しい艶やかな瞳は、
その表面に愛する相手の顔をキラキラと映り込ませながら、互いへの深くて強い永遠の愛情を雄弁に語り合っていた。

「…」

二人は視線を熱く絡め合いながら、
うっすらと開いた唇を微かに閉じたり開いたりしては相手に「好きだ」と告げるタイミングを見計らっていたが、
しかし、その均衡がナギによって破られかけた、その時…

「…大す…、んんッ…!」

「大好きだぞ」と言いかけたナギの唇に、再びハヤテのそれが素早く重ねられる。

「…あッ」

ハヤテの温かい舌先がナギの小さな唇を優しくなぞりながら、その中への進入の許可を待つ。

「ん…ッ」

ナギの唇が微かに動いたことをもって許可が下りたと判断したハヤテは、
その少し広げられた隙間に大喜びで舌先を差し入れようと試みるが、と、どうだろう!とても嬉しいことに、
その隙間の入り口近くまで、ナギの可愛らしい舌先がハヤテのそれをおずおずと迎えに出て来てくれたのだった。

「んんッ…」

完全に重なってはいない唇から漏れてくる互いの温かで少しだけ荒い息遣いを、鼻や頬、そして顎に心地良く感じながら、
二人の舌の先は出会い、そして、お互いにその温かさと甘さを確かめるようにツンツンと軽く、
あるいは強く突付きあって、ナギとハヤテ本人たちより一足先に『おはよう』の挨拶を交わす。

620: ◆09q0zCYQtk
08/10/27 22:51:24 3yA7IBcq
「あっ…!ハヤテ…」

ナギが、掛け布団の襟を握り締めていた指を離し、その腕を、
自分の上半身の上に優しく覆いかぶさっているハヤテの首に回そうとした時、
ハヤテは、ナギの上からそっと身を起こすと、ナギに向けて優しく手を差し出しながら蕩けそうな笑顔で朝の挨拶をする。

「お嬢さま、おはようございます!」

思わずその手に掴まったナギは、ハヤテにその手をそのまま引っ張られて、苦もなく上半身を起こされてしまった。

「お…、おはよう、ございます…」

今更ながらに耳の先まで真っ赤になりながら挨拶を返すナギの小さな身体をハヤテはベッドから軽々と抱え起こすと、
その小ぶりな尻をそっとベッドの縁に据えて腰掛けさせ、自分はその前に跪いた。

「お嬢さま」
「ん?」
「僕からの贈り物は、お気に召しましたでしょうか?」
「うん…」

嬉しさと恥ずかしさで子犬が鼻を鳴らすような声で短く返事をするナギの幸せそうな桜色に染まった顔を見上げながら、
ハヤテは、真剣な顔でナギに話し始める。

「何で僕がお嬢さまと一緒に学校に行きたいか、お嬢さまはご存知ですか?」
「ううん…」

もちろんそれを知らないナギはフルフルと小さく首を横に振るが、やはり、もちろん早くそれを知りたい。

「僕がお嬢さまのお供をして校内を歩いている時…」
「うん」
「それを見た皆さんは、きっとこう思うに違いありません。『あの執事は、あんなに綺麗で可愛い主人に仕えているのか!
あんな素敵な女の子と何時も一緒にいられるあの執事は、物凄い幸せ者だなあ』って!」

ハヤテの言葉に欠片ほどの嘘も偽りも、更には誇張さえも混じってなどいないということは、
その藍色に輝く瞳の煌めきと真っ直ぐさを文字通りに目の当たりにしているナギには痛いほどよくわかった。
そんなナギのふっくらとした可愛い頬が、見る見るうちにさっきまでよりももっともっと濃くて美しい桜色に染め返されていく。

「そ、そうかな…?」
「はい!絶対そうですよ!!ですから、僕がお嬢さまの執事である事を、学校の皆さんに自慢させていただけませんか?」
「ま…、まあ、ハヤテがそうしたいというなら…、それも良いかも…」
「有り難うございます!!」

心の底からの喜びと嬉しさにその表情パッと太陽のように明るくしたハヤテが、言葉を繋ぐ。

621: ◆09q0zCYQtk
08/10/27 22:52:18 3yA7IBcq
「それに…」
「?」

不思議そうな表情になるナギの前からすっくと立ち上がったハヤテは、「失礼致します」と丁寧に断わってから、
ベッドの縁のナギのすぐ隣にそっと腰を降ろすと、ナギの小さな身体に逞しい腕を回して優しく自分の胸元へと抱き寄せ、
まだツインテールに纏めていないその艶やかな金髪のつむじに鼻先を埋めて深くゆっくりと息を吸い込んだ。

「ハ、ハヤテぇ!?」
「ああ…、お嬢さま…」
「そんな所…、クンクンしたら、ダメだぞ…」
「僕はお嬢さまの、このカスタードクリームみたいに甘い髪の香りが…、いえ、この綺麗な髪のだけじゃなく、
お嬢さまの香りが大好きなんです…」

大好きな男に優しく抱き締められながら地肌の匂いを確かめられてしまったナギは、もう、
首から上の肌を真紅に染め上げて「きゅう…」と力無くハヤテの胸元にただ夢中で縋り付くほか無かった。

「お嬢さまが学校をお休みになったら、僕は半日もこの香りから離れて過ごさなければならないんです…」
「うん…」
「ですから、お嬢さま無しでは半日生きるのがやっとのこの可愛そうな僕を助けてくださるおつもりで、
どうか、お願い致しますから僕と一緒に学校へ行っていただけませんか…?」
「…、…」

耳元間近で願い事をそっと囁くハヤテの甘い声音に、ただ一言「うん」と返事をする力さえ奪われてしまったナギは、
ハヤテの厚い胸板に火照る頬を埋めながら、小さく熱い溜め息混じりにほんの軽くコクンと頷くことしか出来なかった。

「有り難うございます、お嬢さま…!」
「…、うむ…」

そのつむじに、チュッチュッと軽く啄ばむようなハヤテからの口付けを何度も何度も受けながら、
ナギが、ハヤテの心臓の位置を確かめるように、その小さな掌をハヤテの白いシャツの胸元に優しく押し当てる。

「ハヤテ…」
「はい」
「私も…」
「はい…」
「私も…、ハヤテと、何時も一緒に居たいぞ…!」
「お嬢さま…!」

622: ◆09q0zCYQtk
08/10/27 22:53:02 3yA7IBcq
ハヤテが、自分の胸元で再び熱い溜め息をついた世界一愛くるしい主人の顔を覗き込もうとして首をぐいっと傾ければ、
その気配を感じたナギが、身体を支えてくれている愛する男の腕に預けた背中をしなやかに反らせ、
白い喉元をすっと伸ばし、美しく尖った顎先をくいっと上げて、
この自分の瞳の奥を一心に覗き込んでいる優しく美しいハヤテの藍色の瞳を、甘い熱を帯びた視線でうっとりと見詰め返す。

「お嬢さまは…」
「うん…」

ナギの背中を支えている腕にハヤテがそっと力を入れなおすと、無上の幸福に頬を染めながら見詰めあう二人の顔の距離が、
互いの息遣いを感じ取れるほどの近さにまで、再びぐっと近付いた。

「お嬢さまは…、僕の宝物です…」
「ハヤテ…」

ほんの間近の距離にあるナギとハヤテの唇が、互いを求め合って僅かにツンと尖った、その時…

「二人とも~!早くしないと学校に遅れますよ~!!」
「はっ…!はいッ!!」
「い、今行くのだッ!!」

寝室の扉をノックしながらのマリアの呼びかけに、二人は飛び上がって大慌てで身体を離したのだった。

623: ◆09q0zCYQtk
08/10/27 22:53:44 3yA7IBcq
『け、け、今朝だけではないッ!』
『ほう!と、言いますと、具体的には?』
『ク、クッキーを二人で食べたり…、ラジコンを教わったり…、DVDを観たり…』
『何よそれ!ハヤテ君はナギちゃんの執事さんなんだから、そんなの、普通の事なんじゃないのかな?』
『だから…、そうではなくてだな…』

「…、うう…」

店の筋向かいに停まっている例のワンボックス車の中では、
先ほどからヘッドホンから聞こえてくるナギの言葉に冷や汗と脂汗に塗れながらハヤテが悶絶していたが、
その上更に、同乗して同じ音声を聞いているマリアやSPたちからビンビンと伝わってくる、
「照れまくるハヤテを見ないようにしよう」という必死の気遣いの気配にとうとう耐え切れなくなったハヤテは、
天辺から激しく湯気を立てている頭からその罪なヘッドホンを毟り取るように外すと、
それを握り締めたまま、コンソールにくたりと突っ伏してしまった。

「ああ~…、お嬢さまぁ~…」

ハヤテは、血が上りきって朦朧とのぼせている頭で、
まだまだ数々ある二人だけの秘密のエピソードを、ナギが歩に対してもうそれ以上明らかにしないように、
そして願わくば、歩から如何に煽られようと、間違ってもその詳しい内容について説明し始めるような事が無いようにと、
ただただ必死に念じつつ懸命に祈るばかりであった。

624:名無しさん@ピンキー
08/10/27 22:54:17 3yA7IBcq
以上です

625:名無しさん@ピンキー
08/10/27 23:06:53 LzPzQ9Vk
こ、これは!!
GJ

626:名無しさん@ピンキー
08/10/27 23:13:32 cPOoXScP
あーたん萌えの俺に一本とるとは・・・・・

えーとティッシュティッシュ

627:名無しさん@ピンキー
08/10/27 23:18:28 6Ti6VNJN
GJ
神ですm(__)m

628:名無しさん@ピンキー
08/10/27 23:35:17 /SEAeuC1
「気がついたらティッシュに手が伸びていた」
なにをいっているのかさっぱりだろうが俺にもさっぱりだ

GJ

629:名無しさん@ピンキー
08/10/28 03:39:00 rIiXJCZd
>>624
ハヤナギはいいなああ

ナギカワユス


630:名無しさん@ピンキー
08/10/28 14:51:01 sH/iSwfT
ナギとあーたんの3Pがあるなら文句なし

631:名無しさん@ピンキー
08/10/28 15:57:58 SK+apen2
咲夜と泉の3Pがあったならティッシュが足りなくて困ることになるだろう

632:名無しさん@ピンキー
08/10/28 16:32:20 sH/iSwfT
な・・・に・・・さくやといずみだと・・・?
な、やめろっ、入ってくるなっ、うわ、ああっ、あーーーーーーーーたーーーん!!


633:名無しさん@ピンキー
08/10/28 21:53:59 k/IwUgd5
ww

634:名無しさん@ピンキー
08/10/28 21:55:45 5tsXmKsR
咲夜も泉もドMだからな。
ハヤテにいじめられるだけで幸せなんだろうな。

635:名無しさん@ピンキー
08/10/29 10:56:34 iGGt2FJQ
ちょうど咲夜と泉とナギとアーたんが好きな俺には居心地のいい場所だなw
5P…は難しいから4連戦希望

636:名無しさん@ピンキー
08/10/30 01:22:56 YkHQV/2l
雪路需要ある?

637:名無しさん@ピンキー
08/10/30 02:22:42 MZMy8paR
何度もいうが ワタル×咲夜×伊澄 書いてくれや;;

638:名無しさん@ピンキー
08/10/30 03:47:59 I2ifrBxn
>>636
俺の脳内雪路
「あんたには似合わないわよ?(…て、えぇ~~!?なに言ってんの?薫のやつ。え、マジ?私のこと、そんな風に、見てたの?…あ、やばい、顔赤くなってるかも…)」

639:名無しさん@ピンキー
08/10/30 09:31:45 OXgQETCo
そんなに乙女じゃないだろw

640:名無しさん@ピンキー
08/10/30 09:44:35 TxoQt0NV
いや、これはアリ

641:名無しさん@ピンキー
08/10/30 16:39:33 nYUIorUT
>>636
ありまくり

642:名無しさん@ピンキー
08/10/30 19:26:18 5m1JM1b5
歩とか見たい

643:名無しさん@ピンキー
08/10/31 01:11:41 wK+k/cbR
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch