08/10/07 19:19:36 SW8NFJc0
「最後の競竜協会の鳥竜飼育員も玉砕。これで万策尽きたわけだ……まだテレビ出演料で
懐が温かいうちに練炭でも買っとくかねぇ?」
世知辛い現実を噛み締めながら、町外れの河原で全財産の入ったスポーツバッグを枕に
ぼんやり空を見上げていると、ヒュルルルル……、この世界で聞こえるはずのない、
聞き慣れた音が聞こえた。
ハンターの哀しい習性だ、咄嗟に起き上がり、音の発生源を捜す。
そいつはすぐに見つかった。
「……リオレウス!」
黄昏れに染まる町の上空を悠々と旋回する空の王。
こんな人里に……?まさか子供を掠って食うのか!?
いや、世間に戻って一ヶ月、リオレウスが人里を縄張りにしてます、なんて話は
一度も聞いてない。あったとしたら、(いい見世物として)せっかくだから退治してほしい
とかなんとかいう話になってるはずだ。
リオレウスがこちらに気付いた。
くる……!
思わず身構える。
……紅い火竜は、俺を一瞥しただけだった。
不思議な気分だった。
フィールドで俺達が戦ってきたリオレウスは、後頭部に刺された電極のせいも
あるんだろうけど、いつもどこかヒステリックだった。
でも、それしか知らない俺達はそれが普通だと、自然なんだと思っていた。
奴は違った。
奴は確かにこっちを視認していた。
なのに意にも介していなかった。
人間なんてちっぽけな存在なんか気にもとめない、悠然たる空の王。
あれが……本当の自然……。
体中の血がふつふつと沸いている気がした。
あいつと戦いたい。命懸けの狩りをしてみたい。
ポッケ15をたたき出されるどさくさに紛れてくすねたサーペントバイト改を
スポーツバッグから取り出す。
時に自然は厳しくあるけれど、生き物全てに分け隔てなく優しく微笑んでくれる存在だから。
あいつになら食われても悔いはない。
俺は紅い火竜の飛び去った山に向かって、歩き出した。
終