【貴方なしでは】依存スレッド3【生きられない】at EROPARO
【貴方なしでは】依存スレッド3【生きられない】 - 暇つぶし2ch450:心の隙間
09/01/19 00:43:41 PfpCdvTi
―「こんなに食べれるかなぁ…」
縦横1メートルのテーブルが料理で埋め尽くされる。
「高校生でしょ?大丈夫よ、」
エプロンを外し椅子に掛ける。
「なんか5人分ぐらいあるけど…」

「まぁ残ったら明日にでも食べるわよ。」

「うん、それじゃいただきます。」

「はい、いただきます。」
前は姉と三人で食べたがあの時は正直気まずくて、味もあまりわからなかった。
今は美味しく母の味を堪能できる。
「うん!美味しい!!」

「ふふっそうでしょ?勇はこの味で育ったんだから」

姉ちゃんと食べるご飯も美味しが。
懐かしさからか、母と食べる料理は、今まで一緒に食事をした誰よりも美味しく感じた。
「本当?ありがとね…さっ、いっぱいあるからたくさん食べてっ!」
母も楽しそうだ。
姉ちゃんとお母さんと俺…三人で暮らせたら楽しいだろうなぁ…
ふと姉ちゃんのを思う…
一番支えてくれた姉ちゃんだけは絶対に幸せになってもらわなきゃ。
(俺の甘えもそろそろ治さなきゃな)
「自立」と言う言葉が頭に浮かぶ。

451:心の隙間
09/01/19 00:44:01 PfpCdvTi
―仕事中に勇から電話かかってきた。
勇から初めての電話…。

携帯の画面を見て一瞬で身体が硬直する。
画面に表示されている勇の名前を眺めていると、電話がきれてしまった。
ハッと我に還り、すぐにトイレに駆け込む。
慌ててかけ直すとワンコールで勇が出てくれた。
勇から話を聞くと、なにか相談に乗って欲しいらしい。

「今仕事中だから夜でいい?」と聞くと血の気が引くような答えが返ってきた。

―「忙しいの?それじゃまた今度でいいや、仕事頑張ってね。」

「え!?ちょ、ちょっと待って!!!」

「ビックリした!!どうしたの!?」
自分でも自分の声のでかさにビックリした。

「いや…うん、多分あと一時間ぐらいしたら帰れるかも…」

「え?でもさっき夜になるって…」

「いや、すぐに終わる仕事ばかりだから大丈夫だよ。」

仕事が詰まってるが私一人いなくなったって会社は大丈夫だろう。
勇と会うのは夕飯を作った日以来だ。
会社の取締役という重役を担っている人間として、失格かもしれないが私は仕事より息子をとる。

食事を一緒に食べるという約束をして電話を切る。

「勇……」
まだ私を母として頼ってくれる勇に感謝しなくては。

452:心の隙間
09/01/19 00:44:27 PfpCdvTi
―「ごちそうさま、ちょっと食べ過ぎたかも…お腹いっぱい…」

テーブルに置いてある料理をすべて食べ、だらしなくソファーにもたれ掛かる。
「ふふっ凄いわね、全部食べちゃうなんて…さすが高校生ね。」
あんな嬉しそうな顔で食べてる姿を見られると全部食べないと悪い気がする。
「お母さんはお腹空いてなかったの?あんまり食べてないけど…」
食事の途中から母は箸を置いて俺の食べてる姿を眺めてるだけだった。
「勇の食べてる姿を見ているだけで、お腹いっぱいになったわ。」
そういいながら自分のお腹を撫でだした。


―「私も手伝おうか?」

「大丈夫だよ、休んでて。」

「そう…」

母は「私が洗うから休んでていいよ。」と言ったのだが、食べてばかりでは悪いので皿洗いをさせてもらっている。


「よしっ終わった。」

「お疲れ様、ありがとね、勇」
手をタオルで拭き、母が座るソファーに近づく。

「お母さん…それで話なんだけど…」

「ん?あっそうだったわね…でっなに?相談って。」

「姉ちゃんのことなんだけど…」

453:心の隙間
09/01/19 00:44:50 PfpCdvTi
「麻奈美…?」

母の表情が曇る。
「うん…最近姉ちゃんにどう接していいかわからなくてさ…」

「どうゆうこと?なにかされたの?」

―母に父が死んだ後のことを話した…
俺が姉に依存していたこと…俺は立ち直れたが俺の依存が姉に移り、姉の依存度が日に日に増していること。
母に言えることはすべて話した。

「私のせいね…私が家族を壊したから…」

母が涙を流しながら呟く。

「違う!!俺の精神面の弱さが姉を巻き込んだんだ…お母さんが悪い訳じゃない…」
気がつくと母を抱きしめていた…

「きゃっ!?、ゆ、ゆう??」

「俺がもっと強かったら姉ちゃんは自由になれたんだ……」

「勇…勇は悪くないわ…ほら泣きやんで…お母さんも悲しくなるから。」

いつの間にか涙が溢れていた。

「っ!?ごめんっ!!」
慌てて母から離れる。
涙を拭い深呼吸をする…
「すぅー…はぁー…すぅー…はぁー…相談どころじゃ無くなったね…」

「そうね、でもちゃんと相談にはのるわよ?」

「…また今度でいいや…てゆうか今何時?」

「……8時40分。」

「ええ!??」

454:心の隙間
09/01/19 00:45:33 PfpCdvTi
「九時までに帰らないと!!」
慌てて帰る準備をする。
「ふふふっ、勇はお姉ちゃん大好きなのね。」
母が笑いながら話す

「いや、まぁ…姉ちゃんだからね…あと風邪引いてたから…」

「ちょっと妬けるわね…でもまっ、仕方ないか…私と勇は時間が空きすぎたのね…」

「お母さん…」

「よし!私が家の近くまで送って行くわ、家まで送ると麻奈美が怒るでしょ?」

まぁ姉は良い顔しないわな…
いつか母とお姉ちゃんが仲良くなる日が来るのだろうか…。

いや、またみんなで仲良く話せるように三人の時間をこれからも作ろう。
昔のように過ごせるには時間がかかるかもしれない…でも人生はまだ先が長いんだから時間をかけて溝を埋めていこう。

「うん!お母さんお願い。」


455:心の隙間
09/01/19 00:46:01 PfpCdvTi
玄関を出ると暗闇の中でもわかるぐらい大粒の牡丹雪が空から降り注いでいるのが見えた。

前に姉ちゃんと帰った時も雪が降っていた…あの時は手を繋いで帰ったっけ…。

「勇!!下の駐車場見て!!」
姉ちゃんの子供っぽいところは母譲りみたいだ。
母が七階から上半身を乗り出して下を見ている
俺も同様に下を見る。

「うっわ~綺麗…真っ白だ…」

地面のアスファルトは完全に雪で隠れ車もすべて真っ白だ…
「こんなに積もったの何年ぶりだろうね!?早く下に降りましょ!!」

母に手を引かれエレベーターに乗り込む
エレベーターに乗ってる間母は手を離さなかった。
早く近くで雪を見たいらしい
すぐに走る準備ができている…

「勇!早く!!」
一階に着きエレベーターのドアが開ききってないにも関わらず走って外に飛び出す
ドアが肩に当たって少し痛かったが
母の喜びようを見るとどうでもよくなる。
「お母さん、走ったら滑るよ」

「まだ若いから大丈夫よ!」


姉が歳をとればお母さんみたいになるのかな…
そんなことを考えながら母が転けないように手を握りマンションからでると、少し離れたところで人影が見えた…。


は…?


姉ちゃん?

456:心の隙間
09/01/19 00:47:40 PfpCdvTi
ガタガタ震えながら立つ姉は顔色が真っ青だった…
すぐに姉に駆け寄りたかったのに……足が全く動かなかった…
「麻奈美!!」
母が俺よりも早く姉に走り近寄る。

俺は母が近寄ると確実に拒否反応がでると思い母を止めようとした。

…しかし姉の行動は考えていたのと全く違った…
「ちょっ!!麻奈美!?なにしてるの!?」


「お母さん…お願いですから…勇を盗らないでください…私は勇しかいないんです…」

―土下座……

姉は雪の中母にむかって地面ギリギリまで頭を下げたのだ。
「麻奈美!!いいから早く立ちなさい!!あなた顔真っ赤じゃない!!」

「お願いします…勇は盗らないでください…家も返すから…」

小さく呟いているのに姉の声は離れている俺のところまで聞こえてくる…


「姉ちゃん違うでしょ…?姉ちゃんは強くて…優しくて…憧れで……うっ!!」


あれ…お腹が痛い…食べ過ぎたのか…な…
「「勇!!!」」


身体に力が入らない……
なんで?雪があか…い…の?
苦し…い…お姉ちゃ…ん


457:心の隙間
09/01/19 00:49:19 PfpCdvTi
「きゅっ救急車呼ばなきゃ!!」

母が慌ててるのが見える……姉ちゃんは?
「勇?大丈夫だからね?すぐに病院いこうね?」

「大丈夫だ…よ、ちょっと転けた…だけだか…ら…それよりお姉ちゃん…風邪引いてるか…ら…早く」

立とうとするがお腹に激痛が走る…

「わかった!!わかったから!!」

母に肩をつかまれる。
そういやお父さんも血吐いたな…お父さん痛くないって言ってたのに…


―「ははっすんごい痛いじゃん」

母がなにか叫んでる……
俺もなにか返さなきゃ…
「安心して…大丈夫だか…ら泣かな…いで…」


―気を失う前に聞こえた最後の声は俺の名前を呼ぶ姉の声だった。




なんでだろう……





無性に姉に顔が見たくなった。

458:心の隙間
09/01/19 00:53:47 PfpCdvTi
ありがとうございます。

今日はこれで終わりです。
次はちょっと投下遅くなるかも…
でもなるべく早く続きを書くのでお許しを。
では。

459:名無しさん@ピンキー
09/01/19 01:03:57 1DOVW1wP
こういう話が好きな人もいるだろうしスレ違いじゃないんだけど、自分としてはちょっと残念な展開・・・

460:名無しさん@ピンキー
09/01/19 01:52:25 q2QkiRJP
・・・・・・・・・・・エロは・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「父さんの嘘つき!今度の日曜はエロ入れてくれるって言ったじゃないか!うぇーん」

461:名無しさん@ピンキー
09/01/19 02:52:00 tDYaHupy
え?これって、ただ単に勇が腹痛で倒れたってこと?それとも
誰かに、なんかされたん??

462:名無しさん@ピンキー
09/01/19 02:56:42 PfpCdvTi
書いてる文足りなかったですかね。
誰かになにかされた訳ではありません

463:名無しさん@ピンキー
09/01/19 02:59:00 PfpCdvTi
あっ今見たら姉に刺されたと思いますねw
スイマセンでした

464:名無しさん@ピンキー
09/01/19 03:57:13 ibg0PJw4
食い過ぎじゃ吐血しないよな……

465:名無しさん@ピンキー
09/01/19 04:28:17 gcDrLvw9
>>464
いや、食い過ぎと吐血100%関係ないでしょw

466:名無しさん@ピンキー
09/01/19 11:55:16 tWuBJw3Y
父親も吐血したっていう描写があったから遺伝的な病気かな?なんて思ったり

467:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
09/01/19 21:30:47 87xMjrJb
<やまいぬ>・3

私が「貴方が私に望んでいること」を理解できるようになるまで時間を与えてください。(犬の十戒より)

はあ、はあ。
はあ、はあ。
はあっ、はあっ。
自分の息遣いが、どんどん荒くなっていくのがわかる。
いつになっても、慣れない。
どきどきする。
ぞくぞくする。
─佐奈と交わるのは。
床に這った佐奈の白い大きなお尻を、後ろから抱え込む。
成熟し、脂の乗った女の人のお尻。
それは、十五歳の小柄な「子供」には、過ぎた代物だ。
戸惑いと、焦りと、そして欲情。
僕のあそこは、かちんかちんだった。
「ふふふ、どうしたかえ? いつもよりも堅くて熱いぞえ、主どの?」
振り返った佐奈が、弄うようにささやいた。
白磁の美貌の中で、唯一赤い─血のように紅い唇の端がきゅっっと吊り上っている。
それは微笑なのだろうか、それとも─。
わからない。
わからないまま、腰を振った。
「おお、逞しや」
佐奈が仰け反る。
でも、それは、たっぷりと余裕を残した反応。
その証拠に、自分から腰を振った佐奈の「中」が、なぶるように僕の性器を弄ぶ。
「……くっ……」
危うくいきそうになって、僕は、奥歯をかんでこらえた。

468:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
09/01/19 21:31:17 87xMjrJb
セックスなんか、よく分からない。
佐奈と交わることは、神社の人たち─相馬さんや岩代さんから勧められている。
凶神に人間の言うことを聞かせるのは大変なことだ。
人が願っても、聞き入れられることはない。
だから、人は、食欲、睡眠欲、物欲、破壊欲―欲望で神を釣り、取引をする。
性欲を刺激するは、その中でも食欲と並んで一番効果的な方法だと言う。
<女神>の飼い主なら、なおさらだ。
「友哉様。何のために、<凶犬神>の宮司が、神と異なる性の人間に定められていると思っているのです?」
佐奈がはじめて発情した日、僕に相談された岩代さんは、
眼鏡の奥の瞳に、何の感情も浮かべずに言った。
その日から、僕は佐奈と交わっている。
多分、同級生の誰よりも、セックスをした回数は多いんじゃないかと思う。
佐奈は、綺麗で、成熟して、そして淫らな女神だ。
交わり始めれば何度も僕を求めてくるし、僕のほうも何度しても欲望が尽きない。
教室で、すすんでいる子たちが、誰としたとか、
どこでどうやってしたとか、話しているのを耳にすることがある。
僕なんかは、みんなからまるっきり未経験と思われているだろうし、
実際そうしたことで、からかわれたこともある。
でも、「神社」に戻れば、僕は、こうして毎日佐奈を抱いている。
だけど、―セックスは、よくわからない。
こうしていると気持ちいいけど、ものすごく気持ちいいけど、
これは正しい交わり方なのだろうか。
DVDとか本とかで、知識は仕入れている。
でも、細かい─あるいは根本的なところで、
自分のこのセックスは間違っているんじゃないか、といつも不安になる。
同級生が熱心にひそひそ話しているセックス。
あの娘をいかせたとか、何をしてもらったとか。
ひょっとしたら、僕が今しているこれは、彼らがしているものとは違っていて、
そして佐奈はこれに満足していないんじゃないか。
僕は、それがとても不安だった。

469:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
09/01/19 21:31:48 87xMjrJb
「残念ながら、これ以上はどうアドバイスもできません」
恥を忍んで相談した相馬さんも、岩代さんもそう言った。
DVDやビデオ、それに聞きかじりの知識。
─それが佐奈の「許容範囲」だった。
佐奈は、僕が他の人間と親しく交わることを望まない。
まして、他の「牝」との性行為はなおさらだ。
佐奈は「凶犬神」。
あらゆる事象を「嗅ぎ取る」ことができる「鼻」を持つ。
それはつまり、僕が他の女性と交わって「練習」したり、
あるいは他の人間の交わりを生で見て「勉強」したりすることが不可能ということを意味する。
僕は、人間の女の子とセックスしたこともないのに、
女神、それも狂った女神としている。
─不安。
佐奈は、―この女神は、僕の捧げる「貢物」に満足しているのだろうか。
白くて大きなお尻を後ろから抱きながら、僕は、焦燥にも似た感情を抱く。
それは、経験の少ない男の子が、今、接している女の子、
それも自分よりはるかに成熟した、強力な女神への畏れ─。
牡と牝との間に、これほど力の隔たりのある二人。
いや。
一人と一柱は、交わってもいいのだろうか。
「……」
不意に、佐奈が振り返った。
四つん這いの肩越しに、強い視線が僕を突き刺す。
「どうしたかえ? 何を考えておる?」
「……い、いや。何も……」
「余計なことを考えるでない。わらわだけを感じや。―主どの?」
最後にとってつけたような、「飼い主」に呼びかける言葉。
佐奈は、まだ僕のことをある字だと思っていてくれているのだろうか。
─それとも……。
そう思った瞬間、佐奈が腰を僅かにゆすり、僕は悲鳴を上げた。

470:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
09/01/19 21:32:19 87xMjrJb
締まる。
佐奈のぬるぬるとした粘膜が、急に荒ぶる。
自分を深く貫いている僕の性器を、肉の洞(うろ)が包み込む。
いや。
これは、僕が貫いているんじゃない。
これは、僕がくわえ込まれているのだ。
佐奈の性器─佐奈の顎(あぎと)に。
喰われる。
尖った、敏感な、聖気の先っぽから。
白い肉の中の、薄桃色の粘膜。
それが、白い牙と、真っ赤な口に化けたような気がして、
僕は背筋が凍りついたように硬直した。
「……」
すがめた目で、佐奈が僕を睨む。
「いかぬかや? ―-いけ、主どの」
傲慢なまでの一言とともに、佐奈が、腰を激しくゆすった。
「ああっ!」
唇からまるで女の子のように高くて甘い悲鳴が漏れる。
同時に、僕は佐奈の中に射精していた。
「ちょっと、あっ、待って、待っ─!!」
耐えようとする僕の努力を、佐奈の白くて大きなお尻は無視した。
僕の下腹にぴったりと吸い付くように触れている滑らかな肌は、
そこから僕の動きを見通しているかのように、僕を放さない。
僕は、佐奈の中に射精し続けるしかなかった。
何度も、何度も、退職の限界まで。
搾り取られる、毟り取られる、吸い取られる。
身体の中身を丸ごと、全て。
頭の中が真っ白になって、やがてそれが真っ暗へ変わる。
気を失う瞬間、僕は佐奈の声を確かに聞いた。
「わらわが怖いかえ? ―いい気味じゃ」

471:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
09/01/19 21:34:09 87xMjrJb
思い出して下さい。
私には貴方の手の骨を簡単に噛み砕くことができる歯があります。(犬の十戒より)

夢。
闇の中。

灯りは、いつの間にか消えていた。
僕は、―目が覚めたのか?
それとも……。

夢現(ゆめうつつ)
暗闇の中。

誰かが僕のそばにいる。
ああ、これは、佐奈だ。
僕の佐奈。
佐奈の匂い、佐奈の息遣い、佐奈の体温。
でも─。
「わらわが怖いかえ? ―いい気味じゃ」
気を失う前に耳にした佐奈のことばを思い出し、僕は愕然と跳ね起きた。

暗黒の中。
現実。

僕は、凶犬神と二人きりで、光が一切ない部屋の中に閉じ込められていた。
灯りは、灯りはどうしたのだ。
佐奈の気配だけが、闇の中で感じ取れる。
窺っている。
僕のことを。
闇を友とする、盲目の狂犬が。

472:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
09/01/19 21:35:01 87xMjrJb
「……」
何か言おうとして、僕は、声が出なかった。
締め切られ、幾重にも結界を張られた本殿の中は、
光を失えば、真の闇の中に閉ざされる。
それは、佐奈の空間。
佐奈が閉じ込められている世界そのもの。
こうした状態が、どれだけ危険か、「神社」の人たちからよく聞かされている。
「狂える神」は、例外なく人間を憎んでいる。
人間に作られ、人間に使われる神なら、なおさら。
「凶犬神」を生まれたときから「飼う」のは、決して安全なことではない。
それだけ強力で、狂った女神だから、生まれたときから縛るのだ。
それは、つまり、そうでもしないと手に負えないほどの凶神(まがつかみ)だということ。
飼われること、養われること。
目も見えず、力も弱い、犬と人の間の弱い赤ん坊。
庇護し、世話をし、愛情をついでくれる「飼い主」に抱くのは、
感謝と、信頼と、愛情。
でも、だけど─。
長じて力を持ち、全てを「嗅ぐ」ことができるようになった女神。
それが、自分と言う呪わしい存在を生んだ張本人だと知ったときに抱くのは、
─感謝と、信頼と、愛情であり続けるだろうか。
力を高めるために、目から光を奪い、
その力を支配するために結界の中に閉じ込め、
この世ならぬものを「嗅ぐ」ことを強制し続ける「飼い主」の正体を知ったとき、
女神が抱く感情は─。
事実、何人もの犬養の宮司は、飼い犬に「喰われて」いる。
比喩ではない。
文字通り、喰われたのだ。
脳裏に、灰燼と化した本殿跡が浮かぶ。
何代か前の「凶犬神」の住まい。
─三日経っても宮司が戻らぬ場合、それは、女神が自分の「飼い主」を喰い殺してしまったのだ。

473:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
09/01/19 21:35:32 87xMjrJb
以後の、食事も、世話も、つまり自分の生命までも拒否して「飼い主」を殺す。
凶犬神は、そこまで歪んで狂ってしまうのだ。
結界ごと焼き払われた跡地を見たとき、
僕は、僕が佐奈にそうされる日が来ないという保証がどこにもない事を知った。

「―目が覚めたかや?」
闇の中での、問い。
「あ、ああ……」

「―わらわが怖いか、主どの?」
暗闇の中での、問い。
「……怖い。怖いよ」

「―いい気味じゃ」
暗黒の中での、ことば。
「……いい気味か─」

ふっと、近づく気配。
佐奈は、僕が思っていたよりも、ずっと近いところにいた。
暖かな舌が、べろりと、頬を舐められる。
いつか、―-ずっとずっと昔に、佐奈にそうされたように。
「いい気味じゃ。―佐奈は、友哉のほうがずっとずっと怖い」
「―え……」
拗ねたような声。
それには、隠しようのない甘えがこもっている。
僕が良く知っている、佐奈の声。
「わらわが、友哉に捨てられることをどれだけ畏れておるか。
─たまには、思い知るが良い。―いい気味じゃ」
暗闇の中で、床に優しく押し倒される。
佐奈が一人、ずっとずっと僕だけを待っていた闇の中で。

474:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
09/01/19 21:36:25 87xMjrJb
「あ……」
そして、僕は、佐奈がいつもどんな思いで僕を待っているのかを、はじめて知った。

涙が溢れる。
頬を伝うその涙を、佐奈が舐め取る。

飼い主よりも、ずっと成熟してしまった犬が。
飼い主よりも、ずっと力を持ってしまった犬が。

飼い主から恐がられてしまった犬が。
飼い主─世界の全てから恐がられてしまって、
飼い主に捨てられることを畏れて、
飼い主よりもずっとずっと怖い思いをしている犬が。

そんなことを、そんな単純なことをはじめて知った
愚かな飼い主は、ことばもなくただ泣き続け、
僕の犬は、ただただそれを慰め続けた。
優しい闇の中で。


思い出して下さい。
私には貴方の手の骨を簡単に噛み砕くことができる歯があります。

─けれども、私は貴方を噛まないように決めている事を。(犬の十戒より)


思い出してください。
貴方には仕事や楽しみがありますし、友達だっているでしょう。
でも……、私には貴方だけしかいないのです。(犬の十戒より)


そして─どうか忘れないで下さい。私が貴方を愛していることを。(犬の十戒より)


                   fin

475:名無しさん@ピンキー
09/01/19 21:46:55 oDUgHCJH
ぐっ…GJ!!
ラストにほろりとしてしまった…

476:名無しさん@ピンキー
09/01/19 21:56:51 tDYaHupy
GJ!!
やっぱ、あんた最高だ!!!!

477:名無しさん@ピンキー
09/01/19 22:00:21 sFnOPBNT
GJ!!
素敵!

478:名無しさん@ピンキー
09/01/19 22:43:32 g3yJQY8m
やまいぬで抜くの23回目です

479:名無しさん@ピンキー
09/01/19 23:15:33 g90G7UXb
GJ!!

480:名無しさん@ピンキー
09/01/19 23:19:08 0u2wqRT1
GJ!! 以外の言葉は見当たらん。

481:名無しさん@ピンキー
09/01/19 23:55:55 ttONECFv
いいなぁ、<やまいぬ>今までので一番好きです。ラストがあっさりめなのが個人的には惜しいですけど
後日談とかどうだろうか?
依存系小説はファンタジー要素無の現代が舞台という、固定観念を見事に打破したところも素晴らしいし、
犬の性質やら呪術的要素を取り入れることを選択したのも素晴らしい。設定の一つ一つが魅力的過ぎる、
アイデアの勝利にゲーパロ氏の技量が加わったこの作品は最強ですよ。
ああ、佐奈の可愛いところもっと見たいなぁ……

482:名無しさん@ピンキー
09/01/20 00:12:57 OBLPOtNs
gj
これはいい神
待ってたかいがありました  

483:心の隙間
09/01/20 06:27:20 DJHNV9YO
―なんとかタクシーでお母さんのマンションにたどり着いたのはいいが、母の部屋まで行っていいのか、勇に電話をして出てきてもらうか迷っていた。

ここまで勇を迎えにきたんだ…勇からすれば迷惑に違いない。
ただ待ってることは出来なかった…もし勇が母と暮らし、私達の家に帰ってこなかったら私は一人になる……そうなれば私は父に会いに行くだろう…一人は耐えられない。

「……勇にメールしよう…」

もし電話で拒否されたら立ち直れない…勇の声で否定されたら……
そう思い携帯を取り出すとマンションから見覚えある人が小走りで出てきた…




「勇…と…お母さん」
手繋いでる…楽しそう…

「……あっ」

勇が私に気づく…その顔はどこか怒っていて、寂しく、私を哀れんでるような顔に見えた…

「麻奈美!!」
お母さんも私に気づいたようだ、名前を呼びながら私に駆け寄ってくる…

もう私はなにも持っていない…勇からお母さんを遠ざける術がなにもない……

母にお願いしよう……心から言えばわかってくれるはず…

私は地面に座り母頭を下げる…
「お母さん…お願いですから…勇を盗らないでください…私は勇しかいないんです…」

484:心の隙間
09/01/20 06:28:00 DJHNV9YO
母がなにか言ってるが頭がクラクラして聞こえない、まだ勇を連れていこうとしてる?お願いしなきゃ…
「お願いします…勇は盗らないでください…家も返すから…」

これでダメなら……



―『姉ちゃん違うでしょ…?』


あれ…勇の…声…?


『姉ちゃんは強くて…』


わたしは勇がいなきゃ……


『優しくて…』


勇のほうが……


『憧れで……』


勇が私に憧れ…



私は勇…の…お姉ちゃん…。

485:心の隙間
09/01/20 06:28:34 DJHNV9YO
勇が私の名前を呼んだ……立たなきゃ…

……ドサッ……



……え?

……勇?

……なんで寝て…ッ!!

「勇!!」
勇を助けなきゃ…
「足が…」
動かない…
母が勇に駆け寄っていくのが見える…

「うぅ…ぁ…(お母さん!!勇を助けて!!)」
声がでない…

「(勇!!まって!!すぐにっ!!)」
視界がぐにゃぐにゃになっている…。
なのに勇の姿ははっきりと見える…


―「はぁ、はぁ…ゆ…う…」

やっとでた言葉…あまりにも小さく弱々しい声は勇に届くはずがない。

動かない足をズルズルと引きずり、柵に手を掛け無理矢理に足を進める…

「もう少し…もう少しで…」
勇の顔が見える…

母が携帯で電話をしている…救急車を呼ぶのだろう。
「はぁ…はぁ…ゆう…もう大丈夫だ…か…」



―勇?なんで笑ってるの……



そんなに苦しそうに笑わないで……

486:心の隙間
09/01/20 06:29:00 DJHNV9YO
―――――――ここは?――――――

目を覚ますと真っ白の部屋にいた。
真っ先に視界に入ったのは蛍光灯……
身体には布団が掛けられている…
少し重たいが、上半身を持ち上げて座る。

「ここどこだろ…?」
周りを見渡すが部屋の中にはなにもない…
ふと腕に違和感を感じて腕を見る。
なにか刺さってる…
「点滴……病院?」

そうだっ私風邪引いてたんだ…でも誰が病院まで…
周りを見渡すが誰もいない。

「…勇がここまで連れてきてくれたんだ…」

やっぱり勇に迷惑かけた…
たしかあの夜勇を迎えに行って…それから…頭がクラクラして…勇が…


「え……勇…?」
たしか勇が倒れて…助けに行かなきゃって…

「ッ!?勇!!」

思い出した…確か勇も救急車で運ばれたはず!!
「今から、いくからね…勇ッ」
ベッドから降りようとすると点滴に繋がれてることを思い出す…
「……こんな物ッ!!」




「なにやってるの!?やめなさい!!麻奈美!!」
点滴の管を掴み、引き抜こうとすると母が扉から入ってきた。

「お母さん…?」

「あんたね…まず自分の身体を治しなさい。」


「お母さん……勇は?」

487:心の隙間
09/01/20 06:29:32 DJHNV9YO
「勇は……今検査中よ…」
お母さんの顔が一瞬にして曇る…

「お母さん…勇なにかの病気なの?吐血するなんて……」

「わからないわ…ただ病気だとするとあまり軽い病気ではないでしょうね…」

「もしかして…お父さんと……」

「麻奈美!!!」
母の大きな声にビクッとなる。

「でかい声だしてごめんなさい…今は麻奈ちゃんも身体を休めなさい。」

「勇に会いたい…」

「すぐに会えるわ…それまでに身体を治しなさい…勇に笑われるわよ?」
母が手を振り出ていく。
私はそれをふり返す訳でもなく、ただ母の後ろ姿を見ていた…

「勇……」

勇もお父さんと同じようにいなくなるの?
私はどうすれば……

―「私のなにが気に食わないのよ…役立たず。」

熱で思うように動かない自分の体を睨みつけ言い放つ。

しょうがないので上半身をベッドに戻す。
布団を肩まで掛け、目を瞑る……





―お姉ちゃん…




「……勇」

目を開けようが瞑ってようが、勇のことが頭から離れない…

488:心の隙間
09/01/20 06:30:00 DJHNV9YO
―ふぅ……麻奈美も勇の事になると周りが見えなくなるわね……
「周りじゃなくて…自分が見えないのか…」

やはり麻奈美は私と同じ過ちを犯した…
私は勇をこの手で縛り付け
麻奈美は自分を傷つけて勇の性格を逆手に取った…
なぜこうも悪いところだけ似てくるのだろうか…

「私もバカだな…勇の事になると周りが見えなくなる…」

ふぅっとため息を吐き袖を捲り上げる…
勇の診察中、自分を抱きしめる形で腕を必死に握ってた…結果皮膚に爪が食い込んで血が出てしまった…

「後で消毒してもらわなきゃ…」
服に血が付くが仕方がない…

さっき麻奈美に言われた、もしあの人と同じ癌なら……


嫌な汗が一気に吹き出す。


「絶対にダメよ!勇はまだ若いもの!!ガンなんかになってたまるものですか!!」

そう自分に言い聞かせないと、まともに立っていられない…。




あなたお願い…勇を連れていかないで……。

489:心の隙間
09/01/20 06:30:51 DJHNV9YO
―――――――夢を見た――――――

父と2人で散歩している夢…

なぜか懐かしいとは感じなかった…
死んだ父が出てきても当たり前のように接していた…。

昔は夕方まで遊んでいると父が迎えにきてくれた…帰り道に手を繋ぎ夕焼けの河原道を2人で歩いて帰った…

あの時の俺はまだ四年生だった…
だが夢の俺は現代の年代の姿形をしていた。

「勇、ちょっと疲れたか?」
父が優しく話しかけてくる。

「うん…ちょっとだけね…なんか眠たい…」

「よし、おんぶしてやろう!」

「いや、この歳で恥ずかしいよ…」
さすがに高校生でおんぶは恥ずかしい…。

「あほか、子供は親に甘えるのが仕事だ早く乗れ!!」
父が俺の前に座り手を後ろにする。

「俺…昔と違うけどおんぶなんてできるの?」

「子供担げない父親がどこにいるんだ!さっさと乗れ!」

「はぁ、わかったよ」
しかたなく父親の背中に乗る。

「おっ?なかなか重いな…健康に育ってる証拠だな。」

「足プルプルしてんじゃん…」

「ははっ大丈夫だよ」
―俺は成長したはずだ。
なのに父の背中は子供の頃に見たあの時とまったく変わっていなかった。

490:心の隙間
09/01/20 06:31:32 DJHNV9YO
―「あれ?見てよ、お姉ちゃんとお母さんだ…」
100メートルほど先に母と姉が立っている…
「おーいっ!!」

手を振ると母と姉も手を振り返えしてきた…
「ははっ…さっ早く帰ろっ!!」

「……」

「お父さん?」

「んじゃっここでお別れだな…」
父の手が俺の太ももから離れていく…

「は?…なんで?」

「なんでって、わかるだろ?」

「わからないよ!!帰る家は一緒でしょ!?家族なんだから!!」

本当はわかってる。

「唯一無二の家族だ…だが行く場所は違う…勇はまだやらなきゃいけないことが山ほどあるだろ?」

「お父さんと一緒にしたいことが山ほどあるんだ!!」

「それを麻奈美と一緒にしてあげてくれ…」

「お父さんに聞いてほしい相談がいっぱいあるんだ!!」

「それをお母さんに聞かせてあげてくれ…」

「まだお父さんに甘えたい!!」

「疲れたら2人に甘えればいい…その代わりいざとなったら勇が2人を守るんだぞ。」

「まってよ!!お父さん!!」

「ずっと見守ってるからな……愛してるぞバカ息子。」






「お父さんっ!!!」

491:心の隙間
09/01/20 06:46:32 DJHNV9YO
今日の投下終了です。
もうすぐ完結すると思うのですが…次こそちょっと遅くなるかも…
では

492:心の隙間
09/01/20 06:53:31 DJHNV9YO
ゲーパロさん楽しかったです
超GJ!
次も楽しみです

493:名無しさん@ピンキー
09/01/20 19:00:18 Bwxsdx8U
ゲーパロ氏最高すぎだろ……いぬがみはシリーズになったりしませんかね。やばいハマった

494:名無しさん@ピンキー
09/01/20 21:23:34 Rq7tgkiM
ゲーパロ氏の作品はいつどこで何を見ても最高だ
まず設定からしてすごいわ。ゲーパロ氏になら抱かれてもいい

495:名無しさん@ピンキー
09/01/20 21:23:48 3BYCFVdL
いぬがみって平仮名で書くと某裸王ラノベを思い出すから困る。
あれも重度の依存娘がヒロインだけどな。

496:名無しさん@ピンキー
09/01/20 21:43:50 lDI7ZE9Q
おおう沢山投下きてたっ。
作家の皆さんGJです!

497:名無しさん@ピンキー
09/01/21 22:59:51 15sdnR5c
>>491
GJ!!この後で凪の出番はあるのでしょうか?

498:名無しさん@ピンキー
09/01/24 20:58:19 /ps+PZN4
最近は1日に一回投下あったのに…

保守

499:名無しさん@ピンキー
09/01/24 23:09:15 QXcIDF/o
とりあえずヤンデレ展開でなくて(?)良かった
おやぢGJ!

500:名無しさん@ピンキー
09/01/25 14:55:16 KLGyxMKB
GJ!
母と姉ちゃんの和解おねがい~

501:名無しさん@ピンキー
09/01/28 11:36:52 sdv4hVlu
誰もいないね~

502:名無しさん@ピンキー
09/01/30 01:11:56 Q+VmOawj

「お父さんっ!!!」 「キャスバル父さん!!!」

503:名無しさん@ピンキー
09/01/30 18:03:23 I9sRVHnv
キャスバル「はっはっは・・・どうだ、冒険は楽しいだろう!」

504:名無しさん@ピンキー
09/01/31 18:29:43 3yJ2xeX1
age

505:名無しさん@ピンキー
09/02/01 02:49:32 NHkD0Fjd
>>503
そりゃキャッシュじゃねーの?

506:名無しさん@ピンキー
09/02/02 22:27:19 jZsjqo6c
続きマダー?

507:名無しさん@ピンキー
09/02/06 14:35:08 J3NCdONK
ここ人少ないな…いいスレなのに…

508:名無しさん@ピンキー
09/02/06 23:18:11 e4T+kflx
一番好きなジャンルなのに人がいないという…

509:名無しさん@ピンキー
09/02/06 23:20:49 sac5FUFT
てか、心の隙間どうしたんだろうね?

510:名無しさん@ピンキー
09/02/08 11:45:22 84n24osa
良い依存のある小説漫画を教えてけれ

511:名無しさん@ピンキー
09/02/08 19:12:17 SrLVkJDe
羊のうた

512:名無しさん@ピンキー
09/02/08 20:23:05 GjBQCISI
>>510
「なるたる」

513:名無しさん@ピンキー
09/02/08 22:04:49 XowV8fmT
やめろー!やめてくれー!

514:名無しさん@ピンキー
09/02/08 23:47:52 MEliLDVF
なるたる読んだことないけど結構な鬱らしいな
鬱エンドはヤンデレで十分だよ…

515:名無しさん@ピンキー
09/02/09 02:22:31 Wap9i1hr
依存は普通にヤンデレの一種だと思うが

516:名無しさん@ピンキー
09/02/09 02:49:06 W2BiHRJH
すまんな言い方が悪かった
最近よく見る、殺傷沙汰起こすヤンデレの事を言いたかったんだ
こういうヤンデレは何て呼んだらいいの?

517:名無しさん@ピンキー
09/02/09 02:51:10 YpbAVXnZ
サイコ?

518:名無しさん@ピンキー
09/02/09 16:28:23 LyPynvXu
最近になって映画化した「空の境界」も、なにげにヒロインは依存タイプだと思う
ナイフ振り回したり主人公を一度殺しかけてるせいかヤンデレ扱いされることが
多いけど


519:名無しさん@ピンキー
09/02/09 16:40:23 CQ4r8t9n
>空の境界
映画版の一作目のラストで敵と戦った際に「自分が最初に見つけた」
ってな感じの台詞があるしな。

520:名無しさん@ピンキー
09/02/09 18:01:32 3MQPmBPn
ああ、男を誘拐?した敵に対して、お前なんてどうでもいいけど、拠り所にしたのはこっちが先なんだから、返してもらう
みたいな台詞言ってたね。
あと、男に暫く会ってないだけで、ものすごく不機嫌になってきたりとか

521:名無しさん@ピンキー
09/02/09 18:41:29 CQ4r8t9n
>>520
それそれ、その台詞。
今DVD見て確認してたw
やっぱり依存型彼女だなあれは。

修羅場じゃないが自分の惚れた男を助けるor守るために敵を皆殺し
に来る女ってのは何気にツボだ。

522:名無しさん@ピンキー
09/02/09 21:49:11 Td/jQHWZ
そもそも原作の最終章では「お前がいないと生きていけない」発言があるしな

523:名無しさん@ピンキー
09/02/10 00:38:11 gpX2t7XG
空の境界は上巻で読むのやめてたな
今度続き買ってみるか

524:名無しさん@ピンキー
09/02/10 01:04:05 r6HXcmx+
作者いないね~

525:名無しさん@ピンキー
09/02/10 03:16:23 zqh4Qlba
お互いが寄り掛かってるような依存も良いけど、ドロドロに溶けて混ざりあってるような依存が特に好きです


526:名無しさん@ピンキー
09/02/11 00:51:06 /I8IUj9n
知名度低いんだろうなぁ…このスレ

527:名無しさん@ピンキー
09/02/11 17:20:27 3F+5oc7W
だろうなぁ
自分的には依存ってヤンデレと違うものだと思ってる

528:名無しさん@ピンキー
09/02/11 18:27:12 EaY0db7K
そもそもヤンデレの定義がよく解らない
相手を病的に愛するのがヤンデレなら依存も同類だと思うけど、ヤンデレスレとか見たらとても同類には見えない

529:名無しさん@ピンキー
09/02/11 22:16:36 VaAubQAL
ヤンデレ自体も定義しづらい概念だからなぁ…

恋敵を殺した、痛めつけたがヤンデレなんだみたいな傾向があるけど
根本にあるのは「私から離れないで、私だけを見て欲しい」
っていう依存心だと思う

依存心が病的なまでになっちゃうとヤンデレ、一歩手前が依存かなぁ…


個人的な見解でスマン

530:名無しさん@ピンキー
09/02/11 22:27:50 YHjozVKO
依存は愛
ヤンは恋
愛は献身
恋は独占


531:名無しさん@ピンキー
09/02/12 02:01:47 2GJa5MNb
依存が悪化したらヤンデレ?
俺もあんまり区別つかんな。
自分と男のためなら人殺す、これが一番わかりやすいヤンデレでしょ?

依存は人を怪我させない?
でもゲーパロも心の隙間も人を怪我させてるしな…
意味わかんね

532:名無しさん@ピンキー
09/02/12 02:13:07 Z+xgEE5J
ヤンデレ辞典なるところからコピペ

>「ヤンデレ」とは

>「ある対象に対して社会通念上から病的とみなされるほど深い情念や執着を抱え込み、それを原動力として
>過激な求愛、排他、自傷、他傷など極端で異常な言動に駆られるキャラクター、もしくはその状態」のことであり
>大きく分けて

>1 「ある対象に好意、恋愛感情を持っているが、第三者が割り込む、介入や対象に届かない、
>  通じないことへの煩悶によるストレスの蓄積が募り精神に異常を来たしたキャラクター、もしくは状態」
>2 「トラウマやコンプレックス、フェチズム、思想など初めからなんらかの精神的な傷や執着があり、
>  それがある対象に恋愛感情を持つことで浮き彫りになったり悪化して一種の暴走をするキャラクター、もしくは状態」
>の2パターンに分けられる

らしいので「貴方なしでは生きられない」レベルまでいっちゃうとヤンデレ
それより手前にいるならヤンデレになる可能性がある依存系ってところなのかな

533:名無しさん@ピンキー
09/02/12 04:53:06 Fagx3V66
貴方なしでは~って方向性だとヤンデレも依存も類似してしまうような気がするですよ個人的に

ヤンデレは、愛情が憎悪に直結する傾向で、
依存は独占欲を通り越して相手と自分を同一化しようとする感じ
だから台詞にすると
ヤンデレは「彼は私の恋人よこの泥棒猫!」で
依存は「キミがいないと生きていけないの……」なんだと思う

そーゆー意味では、依存と言うのは「ヤンデレ」ヒロインが多く持つが故に、
ヤンデレというカテゴリに一緒に括られた、基軸の違う要素であるのだと言ってみます。
つまりこのスレはヤンデレと掠っているように見えるが、
「依存」というを更にマイノリティな要素を精密に抽出しようと……
え、何?モニターばかり見るな?
いやそれなら帰ればいいんじゃ、明日も忙しいんだしって待ちなさい話合おうだから竹刀を



ボスケテ

534:名無しさん@ピンキー
09/02/12 05:10:34 rtzef4Cm
つ、つまり柿ピーのピーナッツてことだな!!

535:名無しさん@ピンキー
09/02/12 08:24:55 96aqUQzU
ヤンデレ「あなたは私のもの」
依存「私はあなたのもの」

536:名無しさん@ピンキー
09/02/12 13:04:13 A4dJpnsh
ヤンデレは自分の価値観がすべて。相手の都合など知ったこっちゃない
依存は相手(対象物)の価値観がすべて。自分の都合など知ったこっちゃない

根本は同じだが執着心のベクトルが真逆。

537:名無しさん@ピンキー
09/02/12 23:13:35 7m/0M08g
>>535
それだ!

538:名無しさん@ピンキー
09/02/13 00:09:26 4Fn7I991
>>535
なんと分かりやすい

539:心の隙間
09/02/13 10:40:43 T+aoaCDe
遅くなってスイマセンでした…
微熱のインフルエンザとかあるんですね
すごくしんどかったです。
15日、遅くても16日の夜中までには投下します。


540:名無しさん@ピンキー
09/02/13 13:12:55 4Fn7I991
キタ━━(゚∀゚)━━!!

541:名無しさん@ピンキー
09/02/13 22:41:44 v7g56UAZ
おお待ってました!! 止まっちゃったのかと思って、心配してました!!

542:名無しさん@ピンキー
09/02/14 03:01:39 Np51smAw
>>539おお、ようやっと続きが読める

543:名無しさん@ピンキー
09/02/14 17:44:29 1TG68YMI
今wikiでACの項を見ていたが、中々おもしろいね。
依存と共通点がいくつもある。

544:心の隙間
09/02/15 18:17:39 jSQHCAMk
――――――お父さん…―――――――



「ぅ…ん……」



眩しい…頭が…グラグラする…それに独特の嫌な薬の匂い…




―目が覚めると自分の部屋じゃない見知らぬ個室のベッドに寝かされていた…。
夢の余韻が残っていていまいち頭が働かない。


「………(ここどこだろ)」

起きあがるために、手すりに手を伸ばそうとするが身体が重くて思うように動いてくれない…
自分の身体じゃない感覚に襲われ吐き気がする。

(頭がクラクラするのは…なんだろう…視界がぼやけて………)
目だけで周りを見渡すと、少しぼやけてだが人らしき姿が見える。

「……(姉ちゃん?)」

目覚めた俺に気がついたのか、その物体はベッドの側まで近寄ってきた…。
最低限人間だとシルエットでわかるが、なぜか恐怖心はまったくなかった。

「(誰だろ…もう少し近くに寄って来てくれたら…)」

目を凝らすが、やはりぼやけてハッキリと見えない…
仕方がないので声をかけようと息を吸うと、不意に頬を撫でられた。


「勇……目が覚めた?…まだ薬が効いてるからちょっと辛いでしょ?」


声を聞いてやっとわかった。

「………(あぁ…お母さんか…)」

545:心の隙間
09/02/15 18:18:15 jSQHCAMk
肌を撫でられてる感覚はあまり感じないが、嗅覚で感じる優しい匂い。

…母の匂いがする…

「まだ眠たいでしょ?…お母さん横にいるから寝ていいよ?」

「コクッ……」

少ししか動かない体を無理矢理動かして頷く。


―夢を見ていた時は父のことで頭がいっぱいだったのに意識が現実に戻ると父のことはあまり気にならなかった…
もう夢の内容もほとんど忘れている。
父と一緒に歩いていたこと、あと父に言われた最後の言葉だけ頭に残っている…

「……(甘えろ……か……)」

父や姉に甘えていたのは覚えている…ただ母に甘えた記憶はまったく無い。

なのに母の匂いに包まれると安心するのはなんでだろう…

(もう少し寝よ…)

ぼやけた母の顔を目に焼き付け、目を閉じる。



頭に浮かぶのは父のことではなく、楽しく三人で暮らす未来の家族予想図。






―なぜかわからない………ただ、もう父には会えない気がした…。

546:心の隙間
09/02/15 18:18:52 jSQHCAMk
―「……よかった…」

勇が寝たのを確認し、病室から出た瞬間安堵からか、足の力が抜けて座り込んでしまった…。
壁の手摺りを両手で掴むが、足がおぼつかない。
手摺りに体を預けて、少しずつだけど、なんとかベンチまで歩いてこれた。

「よ…っと………ふぅ~…」

ベンチに座ると、本格的に全身の力が抜けていくのが分かった。

「…麻奈ちゃんにも教えてあげなきゃね……ふふっ……また熱ぶり返しそうだけど。」

麻奈美はというと。病院にはこばれてきた時は40℃以上熱があったのだが、点滴の効果で今は微熱程度に下がっている。
顔色も良くなって気分も楽みたいだ。


「あの子の半分は、勇で出来てるような物だから……喜ぶ顔が目に浮かぶわね………。」


―私が出ていった後、麻奈美は本当に頑張ってくれたと思う。
勇の姉として、お母さんとして、家族として、一番の理解者としても…。

私が出来なかったこと、なにが一番勇の幸せかを、探し出せなかった……最終的に麻奈美を追い込んだのは私…。

私の考えの甘さが招いた罪。
あわよくば、昔みたいに母親になれると自分に言い聞かせて勇に会いに行った…。
本心では解ってる。
罪の重さがどれほど重いかを。

547:心の隙間
09/02/15 18:19:24 jSQHCAMk
私がしたことは、数年前の罪を繰り返しただけ。
愛する子供を傷つけただけ…。

「愛する……か……人の愛し方も知らないくせにっ…ていわれそうね…」

麻奈美の顔が脳裏に浮かんでくる。

あの日の麻奈美の顔は、今でも忘れたことが無い…。


―私が家を出る時、勇はどうしていいか分からずに大泣きしていたが、麻奈美は違った。

玄関先で勇を守るように私の前に立ちはだかり、下唇を噛みしめ、私を睨みつけていた。


あの家を出た時から一度も私は麻奈美の素顔を見ていない気がする…。


母親なのに―


「母……親…?……私が?」

子供を傷つける母親なんて存在していいはずがない。


「本当……なにが母親よ……立派すぎて涙が出るわ……」


自業自得だってことはわかっている―

だけど、悔しさ、寂しさ、後悔が渦巻いてる感情を制御することはできず。

看護士に声をかけられても、溢れ出る声と涙を止めることはできなかった。

548:心の隙間
09/02/15 18:19:51 jSQHCAMk

   ◇   ◇   ◆   ◆   ◆   ◇   ◇   ◇

―「勇、大丈夫かな…」

母には寝てなさいって言われたけど、やっぱり勇が気になって仕方がない…。
熱は下がったのに何故ベッドから出られないのだろう。
母が部屋を出ていってから、ずっとベッドに寝たきり。

「はぁ~…病院ってほんと窮屈…」
熱が下がったお陰で気分は良好なのだが、どうも病院は嫌いだ…逆に病気になるような気がする。

「…早く点滴終わってくれないかな…。」
吊されている点滴を見上げる…まだ半分以上薬が入っている。

「おとなしく待つしかないか……はぁ」
睡眠は十分とったし喋る相手は誰もいない。
一人になると時々昔からずっと一人っ子だったんじゃないかと思う時がある。

それが嫌で家族の誰かが確実に家に帰っている時間まで、外で友達と遊びほうけていた。
毎日狙って夕方に帰ると、学校から帰ってきてる勇が玄関先まで無邪気な笑顔で出迎えてくれる。

それがたまらなく嬉しかった。

549:心の隙間
09/02/15 18:20:21 jSQHCAMk

「麻奈ちゃん?身体どう?」


昔の思い出に耽っていると母が病室に入ってきた。
「うん、大丈夫…もう熱も無いし、体もダルくないよ。」

「そう、この点滴が終わればもう帰っていいそうよ。」

「うん……」

「……」

―気まずい…母とはやっぱりギクシャクする。
勇は母のことを本当に許したのだろうか…。
私は……わからない。
勇が昨日雪の中で私に言ったあの言葉。

憧れだって言ってくれた…それも嬉しかったけど、もっと違う心の叫びを聞いた気がする。

なにかわからない。
ただ大切な何かを勇は私に伝えてた。

「…わからない……」

「え?なにが?」

「え…?あっ!!いや、えっと…べつに…」
つい言葉に出てしまった。

「そう…あっそうだ!勇が目を覚ましたわよ。」

「え!!?本当!?」
病院だというのに大声で叫んでしまった。

「えぇ、また寝たけど夕方には起きるんじゃない?それまでには点滴もはずれてるわよ。」

「よかった…本当によかった…」

やっと勇に会える…

550:心の隙間
09/02/15 18:20:45 jSQHCAMk
「……ごめんね…」

「え?なにが?って……お母さん…目…」

「ううん、なんでもない…ちょっと先生と話してくるわね?」
そういうと母は病室を出ていった。

「……」

私に指摘されて慌てて目を伏せたが、瞼が腫れて目が真っ赤に充血していたから泣きはらした後だとすぐに分かった。

「なにが正しくて、なにが間違いなんだろう…」

どうすればこうならなかったとか、今更考えても答なんて見つからない。
ただ私の体内時計は、家庭が壊れたあの日で止まってるのかもしれない…。

勇もお母さんも関係を修復しようと頑張っていたのは分かってる。
だけどお母さんに勇を盗られたら私は勇がいない生活をしなければならない。
ここ数年私の家族は勇だけだと自分に言い聞かせ、ごまかし続けてきた。

「お父さん……お父さんはお母さんのこと許したの?」

窓の外に広がる青空に向かってつぶやくが、返答など返ってくるはずもない。

「…許す努力…か…」
ふぅ…と溜め息を吐き目を閉じる…眠気などまったく無かったのに、何故か深い眠りについてしまった…。



―母の夢など数年間まったく見なかったのに…



なんでだろう?この日初めて無邪気に母に甘える夢を見た。

551:心の隙間
09/02/15 18:21:19 jSQHCAMk
父に教えられたことがある…。

身近な人に目を向けれない人間は、絶対に人の心の声を聞けないと。

『世界中の人間を守れとは言わない…せめて自分の大切な人ぐらいは守れるようになれ……息子のおまえは俺が守るから。』

   ◇   ◇   ◆   ◆   ◆   ◇   ◇   ◇

「大切な人…か…」

―時計を見る。何時間寝たのか分からないが夕方の7時を過ぎている。

身体から薬が抜けたのかおなかがキリキリと痛む…
「なんだろこれ…ご飯の食い過ぎか?」

「こら!なに座ってるの勇!!」
いきなり声をかけられてビックリした…
「あれ?お母さん?」

「ほら先生も来たから早くベッドに横になって。」

母の後から続いて四十代前後の白衣を着た短髪の男と若いナースが一人入ってきた。

「気分はどう?良くなった?」

「少しだけ…。」

「今日はまだ疲れが溜まってるからね、明日になれば楽になるよ。」

「はぁ…」

「それとね…薬のことだけど…」

ペラペラと話し続けるが、どうでもいい。
俺が聞きたいことはなんの病気かってことだ。
俺の頭の中では吐血した時点で父と同じ病気だと思いこんでしまっている。

552:心の隙間
09/02/15 18:21:48 jSQHCAMk
医者がなにか話してるが頭に入ってこない。
受け答えもすべて空返事で返している。
この先生が悪い訳じゃない…だが先延ばしにされてるみたいでイライラする。
早く教えてほしい…

「それとy「あの!!」

我慢が出来なくなって医者が話してるところを割って入ってしまった。

「ん?なに?」
紙をペラペラと捲りながら話していたため、その手がピタッと止まる。

「すいません…あの…俺ってなんかの病気なんですか?…」

聞くのは怖い…だが聞かずに終わるのがもっと嫌だ。

「ん?あぁ…そうだね、お母さんには言ったけど君には言ってなかったね。」

その言葉を聞いて母に目を向けるが、母は俺に背中を向け花瓶の水を入れ替えているため、表情が分からない。

―まだやりたいことだっていっぱいある。

父とも約束もした。

まだ生きていたい!!

「君はね……」

553:心の隙間
09/02/15 18:22:09 jSQHCAMk

   ◇   ◇   ◆   ◆   ◆   ◇   ◇   ◇

「いつの間に寝たんだろ…」

変な夢…母の夢なんてまったく見なかったのに。
複雑な心境になる…
私の夢に勇が出なかったことなんてまず無いと思う。
さっき見た夢は、母と私2人きりだったけど。悪夢とはかけ離れた穏やかな夢だった。
「なんでだろ…よくわからないな……ん?…」
ふと身体が軽いことに気がついた。

「あれ?…点滴はずれてる…」

腕を見ると私に刺さっていた針は無くなっていた。

一応周りを見渡す…誰もいない…
窓の外を見ると寝る前とは違う吸い込まれそうな暗黒が広がっている。
「何時間寝たんだろ…」
壁に掛かっている時計を見上げる。

「8時…かなり寝たなぁ……」

寝起きであまり頭が働かないので冷たい水で顔を洗いたい。
「トイレに行こ…そこで顔洗えばいいや…」

起きあがり下半身をベッドから外に出すと、靴を履き、扉に向かって歩き出す。
ドアノブに手を掛けようと右手を差し出すとドアノブが独りでに回った。
瞬間扉がガチャッと勢いよく開いた。

「あぶなっ!?なっなに!?」

554:心の隙間
09/02/15 18:22:37 jSQHCAMk
勢いよく開けられた扉が鼻先をかすったのでビックリして後ろに仰け反ってしまった。

「あれ?麻奈ちゃん?なにしてるの?」

扉の向こうにいたのは母だった。

「いや…なにしてるって…ちょっとトイレに…」

顔にぶつかりそうになったことを言おうとしたが、言い争いをしたくない。
「そう?気をつけてね」

母とすれ違い部屋を後にする…が気になることが一つある。

「……勇はどうしたの?」
もう8時だ。
母の言うとおりなら勇はもう起きてるはず…
「勇?……勇は入院することになったわよ…」

―は?なにいってるの?…意味が分からない…

「…勇の病室どこ…」

「え?なに?」

「勇の居場所を聞いてるのよ!!勇はどこよ!?」

「ちょっ!?麻奈美!」

―気がつくと母につかみかかっていた。
母に罵倒っていたのは覚えているが、なにを言ったのかわからない…父と勇の状況があまりにも似すぎてて、頭が真っ白になっていたからだ。

555:心の隙間
09/02/15 18:23:14 jSQHCAMk
「麻奈美!!勇の病室に連れていくから落ち着いて!!ねっ?」

母が私の両手を掴んで諭すように話しかけてくるが駄目だ…感情が押さえられない。

「勇に!…勇に会いたい!!…お願いだから勇に会わせて…お願いだから…」

「麻奈美……ほら勇に涙姿見せるつもり?勇がまた心配するわよ?」


「え…?」


勇が心配?


―そうだ、私は勇の姉なんだ。
今苦しんでるのは勇本人に違いない…

「ほら涙拭いて…」
母にハンカチで涙を拭われる。

「うん…お母さんありがとう……それとごめんなさい…」
何故か分からないが自然と口から出た言葉だった。

「ん?べつに良いわよ…ほら勇に会いに行きましょ?」
さっきまで渦巻いてた感情は嘘のように消え去っていた。

私がこんなにもうろたえていたら勇も道を見失う…。
これからは勇の姉として…家族として勇を守らなきゃ駄目だ。




勇がいない人生なんて今は考えられない。
だけど私の精一杯を勇に見せてあげたい。

「今度は私が勇を支えなきゃ。」

556:心の隙間
09/02/15 18:25:17 jSQHCAMk
これで今日は終わりです。
なるべく早く続きもかきますので
もう少しつきあってください。


557:名無しさん@ピンキー
09/02/15 22:49:45 KN/drogg
一番槍GJ
新作待ってました
勇の病気が気になるぅ

558:名無しさん@ピンキー
09/02/15 23:06:21 dpCK2vIW
乙。
続き期待してます!

559:名無しさん@ピンキー
09/02/15 23:23:42 WTKnIoKw
これで盲腸とかいうオチがついてどっとはらいのハッピーエンドなのか
はたまたシリアス展開か
続きが楽しみっす

560:心の隙間
09/02/16 19:15:16 DXB7gHLN
ありがとうございます。
明日の朝には投下できると思います。

できればこのスレも活気づいてほしいんだけどね~上手くいかないですね。
では、失礼します。

561:名無しさん@ピンキー
09/02/16 19:46:36 utGHpeCk
がんばってくれ
待ってるわ

562:心の隙間
09/02/18 00:56:29 hHJ/mBqo
―母がいなくなり、父が他界、自分が壊れ、次に姉が壊れた時。昔と比べて精神面は強くなったと思ってた。

家族が絆を取り戻せばみんなが幸せになる…。
しかし自分が考えている以上に現状は深刻で、母と俺が和解すればすむことだと勝手に思いこんでいた。

一度出来た心の隙間は数年では埋められない…。

「体も心も弱いんだな俺は…」
自分の弱さに苛立ちを覚えるが、どこに持っていけばいいか分からない。

この前まで姉ちゃんと2人で楽しく暮らしていたのに…。
未来に不安が無いのかって言われれば、不安だらけだった。

でも本当に楽しかった…。

「この病気のことは絶対に姉ちゃんには言えないな…」

姉は絶対に自分のせいにするだろう…
これ以上姉を追い込めない。
俺からしたら一番の被害者は姉なのだ。

「一応お母さんにもお姉ちゃんには言うなって言ったけど……」

もう謝られるのは母だけでいい。
医者が出ていった後30分近く泣きながら謝られた。

父は絶対に家族を泣かせたことは無かった。
泣かせたと言えば父が亡くなった日ぐらいだろう。

「本当……強くなったと思ったんだけどなぁ…」


実際は空回りするだけで父のように強くなれなかった。

563:心の隙間
09/02/18 00:56:59 hHJ/mBqo
―「勇、起きてる?中に入るわよ?」


少し窓の外を見て呆けていると。ドアをノックする音と母の声が聞こえた。
部屋に何もないからか、やけに音が響く。

「体の調子は?疲れてない?」

「え?あぁ…うん、全然大丈夫。」

母が部屋に入って来たが、扉を閉める気配が無い。

「お母さん?寒いんだけど…」

今は真冬だ…さすがに開けっ放しにされると肌にこたえる。

「えぇ…なにしてるの?早く入ってきなさい。扉閉めなきゃ。」
母が扉から上半身を部屋の外に出し、誰かに話しかけている。

「なに?誰かいるの?」
話し相手の小さな声は聞こえるが姿がまったく見えない。

「えぇ?……泣いたせいで目が変って…目なんか気にしないわよ……なに?……鏡なんか持ってないわよ…はぁ、今化粧したばかりでしょ……ホラッ」

途切れ途切れしか聞こえない声を聞こうとするがやはり誰か分からない。
母に腕を引っ張られ腕だけ部屋の中に入っているが、確実に拒否反応がでている。
「お母さん誰なの?…すんげー嫌がってない?その人…」

「嫌がってんじゃなくて、恥ずかしがってんの……よッ!!」



「キャッ!?」


564:心の隙間
09/02/18 00:57:46 hHJ/mBqo
母が強引に相手の腕を引っ張ると。女性らしい声と共に母と言い争っていた人物が姿を現した。



「あれ?……お姉ちゃん?」

姿を現したのは下を向いて目を伏せている姉だった。

逆に予想外だ…姉ならスッと部屋に入ってくると思っていたし。
なにより母とあんなに話してる姉なんて見たことが無かったからだ。

「…」

「お姉ちゃんさっきからなんで下向いてんの?」
部屋に入ってきてからずっと下を向きっぱなしだ。

「いや、ちょっと…寝過ぎで…目が腫れてて…」

「いや、俺は別に気にしないけど…。」

「ほらね、勇が気にするわけ無いでしょ?目もそんなに腫れてないわよ?てゆうか、なんのために化粧したか分からないわよ麻奈ちゃん…」
母が姉にフォローを入れるが姉は一切顔を上げない。

「まぁ別にお姉ちゃんが見せたくなかったら別にいいけど…」
無理矢理に見せろなんて言う必要もないし、本人が嫌がってんなら仕方がない。
「うん…ありがとう…」

なんだろう…変に空気が重い。
母も姉もどことなく元気が無いみたいだ。

「えっと…あっそうだ、お姉ちゃん風邪は大丈夫なの?体だるくない?」


なにか話をしないと気まずい空気に押しつぶされてしまいそうだ。


565:心の隙間
09/02/18 00:58:07 hHJ/mBqo
「うん…点滴で熱も下がったし体も楽だよ。」

「そっか、よかったね…。」
なんでこんなに話しづらいんだろ…。
母も立ってるだけでなにも話さない。

「……勇、入院するの?」

姉の言葉を聞いた瞬間母を睨みつけた。

「これは言わなきゃ、どうせ後々分かることよ。」

母の言うことが正しいのですぐ目をそらす。
「……うん、ちょっとだけね…まぁすぐ帰るよ。」
当たり障り無い答えを返す。

「勇…なんの病気なの?」

「え?…なんの病気って……それは……その……」


―ヤバい…考えるの忘れてた…どうしよう…。
母に助けを求める目を向けるが、溜め息を吐いて「あなたが言いなさい。」って顔してる。

しょうがない自分のことだからなんとかするしかない。
「え~と……盲腸?…だったよ。」

―姉は俺に対して、もの凄く高度な技を使う時がある―

「嘘でしょ。」

即答で返された。

「勇…嘘つく時の苦笑いの癖治したほうがいいわよ?」

そんな癖があったのかと慌てて両手で頬を触った。

「ほら…嘘だ…」

「え?……あっ!?」
すぐに手を下ろすがもう遅い。
母も呆れた顔をしてため息を吐いている…。


566:心の隙間
09/02/18 00:58:50 hHJ/mBqo
「勇…やっぱり麻奈ちゃんにも本当のこと言ったほうがいいわよ?」

姉の肩を優しく掴み、小さく呟く。

「……」

―やっぱり無理か…
こうなったらもう姉に嘘は通用しないだろう。

「そうだね……わかった…お姉ちゃん、嘘ついてごめん。」
姉に向かって頭を下げる。

「べつにいいよ…私を思っての事なんでしょ?」

いつの間にか姉も顔を上げている。
姉が言ってたように目が少し充血し、瞼が腫れていたが酷いと言ったほどではなかった。

―その充血が気にならないくらい姉の目は真剣なのだ。


「俺ね……」


「うん……」




「胃潰瘍だってさ。」

567:心の隙間
09/02/18 00:59:26 hHJ/mBqo
―「胃潰瘍…?」

「そう、胃に穴開いてるんだってさ。」
笑いながら話すが姉は顔を崩さない。
多分姉は父と同じ病気を考えていたのだろう、俺だって考えてた。

「でもね麻奈美、もうちょっとで危なかったのよ?。」

「え?」

「先生にもうちょっと早く連れてきてくださいって言われたわ。」
そんなこと言われてたんだな…知らなかった。

「お母さんのせいじゃないよ…自分の体をちゃんと管理してなかった俺が悪かったんだよ。」
母は申し訳なさそうに話すが、母は知らなくて当然だ、一緒に暮らしていないのだから。

「…胃潰瘍って食生活とかストレスでなるんだよね…」

―やっぱりきた…

「…そうみたいだね…あんまり知らないけど…」
話をごまかそうと頭で考えるが、なんてごまかせばいいか分からない…。

「……やっぱり私は勇のことなにも分かって無かったのね…姉なのに。」
こうなることが嫌で姉に言わないでおいたのに…

「そんなんじゃ無いよ、こればっかりは自分のことだから…」
治すどころか胃が余計に痛くなる…。

「勇の為とか都合の言いように自分に言い聞かせて…私今まで何してたんだろ…お父さんとも約束したのに……やっぱり私いなきゃ…」


568:心の隙間
09/02/18 00:59:58 hHJ/mBqo

「お姉ちゃん!!!」
「真奈美!!!」
母とほぼ同時に姉に向かって怒鳴る。
声のでかさに姉が肩を強ばらせて目を瞑る。
さすがに聞き逃せない言葉が出かけたので止めた。

「お姉ちゃん…それとお母さんもだけど、こればっかりは自分の体の管理を怠ったことが原因だから。怒られることがあっても、謝られる筋合いはないよ。」

ちゃんと言い聞かせないとこのままお互いにずっと引きずっていくだろう。
この事態でまた家族が離ればなれになるのは絶対に嫌だ。

「わかった?お姉ちゃん…」
姉にもう一度言い聞かせる。
「うん…わかった…」
小さくだがはっきりと頭を縦に振ってくれた。

「…勇……ありがとう、私ね…これからは絶対に勇が自慢できるお姉ちゃんになるか…ら…だから……だから…強くなるから……お願い…」

最後の声は聞こえなかった…。だけど言いたかったことは分かる。
涙声は聞こえないが震える体と姉の手の甲に落ちる水滴が、どれほどの思いで伝えているか十二分に心へ伝わってくる。

姉が言った最後の言葉の返事は決まってる…


「あたりまえでしょ?、俺の家族はお姉ちゃんとお母さんだけなんだから。」



「ッ!?勇ッ!!!」

569:心の隙間
09/02/18 01:00:36 hHJ/mBqo
姉が勢い良く抱きついてくるのを受け止める。
ベッドに座ったままなので、後ろに倒れそうになってしまった。


「これからも一緒に頑張っていこうね?」

「うん!!絶対に頑張るから!!ゆう!勇!!」
感極まってるのはわかるが、姉が頬ずりをしてくるので姉の涙やらなんやらでお互い顔がえらいことになっている。

少し苦笑いになってしまうが、幸せな苦笑いもあるんだなって本当に痛感した。
母のことが気になり母に目を向けると姉の少し後ろで座り込んで泣いている。

母も辛かったんだろう……罪悪感に苛まれ誰に許してもらえばいいかさえわからなかったはずだ。

「ははっ…まだまだお父さんみたいな人間にはなれそうに無いな。」

姉を抱きしめたまま窓の外をみる―

空には一面綺麗な星空。
父も空からちゃんと見てくれてるはずだ。
夢の中で父に言われた言葉を思い出す。
「疲れたら甘えろ…か…」
いつの間にかハグに母も加わり凄まじいことになっている。

「勇!!真奈美!!ごめんね!!私もこれからは母としてあなた達を絶対に守るから!!」

―お互いに少し道に迷っただけ…

「うわぁぁぁ~~ん!!お母さん!お母さん!ごめんなさいぃ!」


570:心の隙間
09/02/18 01:01:07 hHJ/mBqo
―家族が道に迷えば探すのが当たり前。

「本当にごめんなさい!!許してもらうまでいつまでも償い続けるから!」

―見つけたら手を繋ぎ、後は出口を探すだけ。

「私の方こそ意地になってて!!」

―その出口が今やっと見つかった気がした。


母も姉もなにを言っても泣きやまなかった。
しかしふと考えるとここは病院だ。
さすがにこんだけ声を出せば、誰かが注意しにくるはずだ。

「二人とももう泣きやんでね…ここ病院だから…」

母も姉も思い出したように口に手を当てる。

「それとこれは二人に相談なんだけども…話を聞いてもらっていい?」

俺の入院をきっかけに、母と姉にしてもらいたい重大なことがあった。

「え?なに?」

目を擦りながら聞き返してくる。
涙で化粧が取れてるのが気にならないくらい、無我夢中だったみたいだ。


「それはね……」


―今日の出来事が、家族の心の隙間を埋める第一歩になってくれるに違いない。

「えぇ……私は大丈夫だけど…」

「…私も大丈夫よ…勇と約束したからね…」

母と姉が顔を見合わせて笑う。


―はじめから心の隙間なんて無かったんじゃないかって思わせるぐらい二人は自然に笑っていた。

571:心の隙間
09/02/18 01:10:47 hHJ/mBqo
今日は終わりです朝に投下するって書いたんですが…遅れてしまい申し訳ありませんでした。
あと二回ぐらいで終わりかな?


572:名無しさん@ピンキー
09/02/18 02:43:05 EJ2qlIB9
もう、エロは諦めました。人間、諦めるのにも勇気がいるんですね。
そんな私ですが作者にこの言葉を……GJ!

573:名無しさん@ピンキー
09/02/18 03:22:10 rO3OEZA3
GJ!! 何か、ハッピーエンドっぽいですね・・・

574:名無しさん@ピンキー
09/02/19 18:52:34 NhsNo5Ee
エロは…ごめんね。
途中までシリアスでいこうかと思ってましが…。
なんかこの家族に愛着わいてきて無理でした。
多分明日の朝か夜までには投下できそうです

575:名無しさん@ピンキー
09/02/19 19:26:07 KrJkMlaM
おっけーですよGJ.待ってます。

576:名無しさん@ピンキー
09/02/19 21:09:00 WLEuqAYL
>>574
エロ大盛りでよろ

577:名無しさん@ピンキー
09/02/20 02:55:09 4wTGJALN
よし、全裸で待機してる

578:名無しさん@ピンキー
09/02/20 15:24:50 6bZZttS/
ここまでエロがないエロパロのSSは初めてだ。
まあおもしろいけどね

579:心の隙間
09/02/20 17:31:09 4z5syA7w

「はぁ~お腹減ったなぁ…」

   ◇   ◇   ◆   ◆   ◆   ◇   ◇   ◇

入院生活が始まって一週間が経ち、病院の空気にも慣れてきた今日この頃。
7日間丸々点滴で過ごした人生なんて、これ一回で十分だと身に染みて感じた。

体重も一週間で七キロも痩せた…。
さすがに何か食べたいと思っていたら、今日から病院食がでるとのこと。

胃が弱っているためお粥らしいが、米が食べれると思うと嬉しくてしょうがない。

「はぁ~夜まで待てない…」
時計を見るとまだ昼の3時だ。

母は仕事、姉は大学。
二人とも俺が退院するまで休むと言ったが、さすがにそれは無理がある。
俺は知らなかったが姉に関しては最近大学をサボりまくってまで俺との時間を作っていたらしく。
大学生活がかなり危うい状態のようだ。
姉には大学生活もエンジョイしてもらわないと困る。

「夕方にはお姉ちゃんが見舞いにくるって言ってたな…」
嬉しいのだが二人とも忙しい中、朝と夕方の一日二回も見舞いにくるから気を使ってしまう。

一応無理しないでとは言っているが見舞いにくると姉も母も面会時間ギリギリまで話していく。


「まぁ誰も来ないよりはいいよな…」


580:心の隙間
09/02/20 17:31:30 4z5syA7w

―コンっコンっ。

「あの~スイマセ~ン…こちら中村 勇さんの病室……あ!!勇だっ!!」

ノックが聞こえたかと思うと。こちらから返事を返す前に扉が開き2人の男女が入ってきた。

「あれ?なんでここがわかったの?」

入ってきたのは同級生の高橋と大樹だった。

「担任が勇が怪我して入院してるって聞いてさ。おまえの家に電話しろっ電話しろって高橋がうるさくてよ~。」

「な!?今言わなくてもいいでしょ!?だいたいあんたが勇が入院するなんて何かあったんだ!って騒ぐから心配になったんでしょ!!」

2人とも病院がどういう場所がいまいちわかってないらしい。
「見舞いに来てくれたのは嬉しいけど…ちょっとだけ静にな?」
二人を落ち着かせるために俺も静に喋る。
高橋はわかってくれたみたいだが、大樹がくせ者だった…。

「勇!!お姉さまから聞いたよ!!胃潰瘍だってな…悪かったなぁ…しつこくマックに誘って…まさかここまで思い詰めてたなんて知らなかったんだ!!許してくれ!!」

そう言うと大樹が高橋の頭を掴んで二人で頭を深々と下げてきた。

「ちょっと!!なんで私まで巻き込むのよ!!?」


581:心の隙間
09/02/20 17:31:55 4z5syA7w
「楽しいからずっと見ていたいんだけど…ここ病院だから…ね?」
夫婦漫才を見てるみたいで楽しいが。さすがにこのまま騒げば2人とも追い出されるだろう。

「あっごめん…勇、病気なのに…」
高橋が下を向いてうなだれる。

「まぁ勇よ…高橋も謝ってることだし許してやれよ…」
自分のことを棚に上げてよく言う。
高橋は大樹のほうを睨みつけ今にも飛びかかりそうだ…。

「高橋も大樹のこと本気で相手してたら胃潰瘍になるよ?」
高橋の肩をポンポンと叩きながら落ち着かせる。

「ふぅ…そうね…」

高橋も夫婦漫才に疲れたのかパイプいすに腰を下ろす。
大樹もこれ以上騒げばどうなるかわかったようだ、部屋から廊下に頭だけだして看護婦がどうたら呟いている。

「勇…大丈夫なの?…まだ辛いんじゃない?」
高橋が心配そうに聞いてくる。

「もう大丈夫だよ、1ヶ月入院しなきゃダメみたいだけど、体もだいぶ楽になったしね。…心配かけてごめんね?」

「ううん…早くよくなるといいね、みんな心配してたよ?いつかわからないけど、部活の先輩とかクラスのみんなで勇のお見舞いにくるってさ。」


「…そっか…本当にみんなに迷惑かけるなぁ。」


582:心の隙間
09/02/20 17:32:31 4z5syA7w
―「べつにいいんじゃね?一人で生きてる訳じゃあるまいし。」

「え…?」
扉から顔を引っ込めて、大樹がこちらに近づいてくる。

「中学の時からずっと一緒につるんでるけどさ、親父さんが死んだ後おまえは一切弱い心を人に見せなかったよな。」
大樹がいつになく真剣な表情で話しかけてくる。

「俺が知ってる人の中で一番尊敬する人は間違いなくおまえだ。」

「やめろよ恥ずかしいな…」
恥ずかしいことをよく真剣に話せるなと思うが自分自身大樹の声に真剣に耳を傾けている。

「だけどな…中学の時から…今でもだけど、いつも思ってたことがあるんだ。」
高橋も大樹のこんな真剣な顔を見たことが無かったのだろう…大樹の顔を不思議そうに眺めている。


「……おまえなんで周りにいる人間に頼らねぇの…?」

―大樹の言葉に心が揺れる。

「いつも思ってた…みんなといる時は笑ってるくせに。一人になると寂しいのか悲しいのか、訳分かんねえ表情してたもんな。」

「……」


「おまえが親父さんを目指してるのは知ってるよ……俺も親父さんによくしてもらってたしな……でも親父さんだって疲れた時ぐらい誰かしらに甘えてたんじゃねぇの?」

583:心の隙間
09/02/20 17:32:57 4z5syA7w
―疲れたら甘えればいい―

「あ……」
夢で言ってた父の言葉を思い出す。

「おまえの親父さんだって超人じゃないんだから…疲れたら休憩するだろ。目的地も分からず、休憩もしないで走り回るから体壊すんだよ、バカ勇。」

「そっか…そうだな…本当にバカだな俺は…」
父の言ってる言葉の意味がやっと分かった気がする。

「まぁ、俺の言いたいことが伝わってたら言いよ……」

大樹も照れてるのか俺の方をまったく見ない。

「ビックリした…まさか大樹があんなまともなこと言うなんて……」
高橋も大樹に驚きの目を向けている。

「アホか!俺はいつだってまともだ!」
平手で高橋の頭をパチンと叩く。

「痛ッ!叩くな!高校生の癖にウルトラマンごっこしてた人間が言う台詞じゃないわね。」

「ばっ!?おまっ!秘密って言ったじゃねーか!!」

高橋は大樹にウルトラマンごっこを無理やりさせられて別れを決めたらしい。
つきあって三日でウルトラマンごっこは大樹の中でセーフだったのだろう…アホまるだしだ。

「ははっ大樹だからな、そこは我慢しなきゃつきあえないよ」

「勇もあぁ言ってるじゃねーか!おまえが悪い!」



「なんですってぇ!?あんたがッ!」


584:心の隙間
09/02/20 17:33:20 4z5syA7w
―本当にこの二人の友達になれてよかったと思う。

「ほら、静にね。」

「そうだぞ?勇の見舞いじゃなく騒ぎにきたのかおまえは?」

「ぐっ……大樹…後で覚えておきなさいよ…」
高橋の言いたいことは分かるが大樹に口で勝てる人を見たことがない。
…まぁ大樹が高橋に喧嘩で勝ってるとこも見たことないけど。
「まぁ、元気そうでなによりだわ…早く病気治して学校に来なさいよ?」

「わかってるよ、こんなとこまでわざわざ悪かったな、退院したらお礼するよ」

イスから立とうとする高橋が中腰でピタリと止まる。

「あのさ…それじゃ一つだけ聞いてほしいんだけど…」

「なんだ?あんまり高いもの買えないぞ?」
神妙な顔つきで話そうとする高橋は少し怖かった。

「あっあのさ…」

「うん…」
大樹も意味が分からず高橋の顔を見ている。

「も、もしよかったら…」

「う、うん」

「…わっわたしの…こっ…ことも、下のなっなまえでy―「ガラガラガラ」

「「「勇ぅ~!!」」」


「よ…ん……で…」


「は!?なっなんだ!!?」

585:心の隙間
09/02/20 17:33:43 4z5syA7w
高橋の話を真剣に聞いていたので、いきなり扉が開いたことにビックリした。

「なっなんだおまえら!!なんで今日くるんだよ!?」
大樹も驚いている。
高橋に至っては、驚きを通り越して放心している。

「ばか!!おまえら授業サボって見舞いに行きやがって!俺らも授業終わったから心配で見舞いに来たんだよ!!」

「みんな…てゆうか何人いるの!?」
部屋の中でも15人はいる。

「いや、わかんね。なんか部活の先輩もきてるみたいだけど…」
後ろのほうで俺の名前を叫んでいる。
嬉しいが何度も言うようにここは病院なんだけど…。

「少しくらい休憩しても、ここに来たみんなはおまえから離れていかねーぞ?」
大樹が嬉しそうに話す。

「うん…ありがとう…」

父のようになりたい…父のようになって家族を守れる人間になりたい。
それだけ考えて生きてきた…
―目標にはできるけど、本人にはなれない…
父から教わったものを同じようにしても父にはなれない。

なぜなら俺に無い物を父は持っているからだ…。
逆に父に無い物を俺は持っている。

これからは自分自身を貫いていこう。

こんなに自分を支えてくれる人がいるんだから。

586:心の隙間
09/02/20 17:34:08 4z5syA7w
この後一時間近く入れ替わり立ち替わり人が入ってきて騒ぎ倒して看護士に怒られ帰っていった。

最後に残った高橋と大樹も疲れた顔をしている。
「んじゃ…俺らも帰るわ…またくるからな?ちゃんと病気治せよ?」
大樹が俺の頭をポンッと叩いて扉を出ていった。
「それじゃ…またくるね…ちゃんと休んでね…」
どことなしか落ち込んでるみたいだ。

「わかった、それじゃーな、早苗。」

高橋がビクッとなり、こちらに振り返る。
「なんだよ?おまえが言えっていったんだろ?」

「え!?あっ!!うん……ありがとう…ちゃんと体治しなさいよ!?まってるからね!!?」
そう言うと、ゆるみきった顔で大樹の後を追いかけた。

「ふぅ…帰ったか…」

少し寂しいがこれでやっと落ち着ける。
時計を見るともう6時30分だ。
もうすぐ待ちに待った夕食がくるはず。
「さすがにお腹へったな…」
お腹をさすりながら呟く。
目を閉じ、ボーッとしていると。
遠くからカラカラと何かを押す音が聞こえる。
「…やっときた…」
音を聞いてすぐにわかった。
夕食を乗せた小さな台がこちらに向かっている…。
看護士の声も近づいてくる。
こっちも座って食事がくるのを待つ。


―コンっコンっ

587:心の隙間
09/02/20 17:34:56 4z5syA7w
「勇くん、夕食ですよ~?入りますねぇ~」

きた!!
待ちに待った食事がやっと運ばれてきた…。

「はい、しつれいしま~す。」
看護士がベッドについてる台に夕食を置く。

「はい、それじゃ残さず食べてくださいね?」

「えぇ……(マジでお粥だけだ)…」
なにかおかずがついてくると思っていたのでガッカリする。

「あぁ、それとお母さんきたわよ。」

「え?そうなの?」
仕事が終わるのは早すぎる。

「うん、なんかお友達も一緒みたいだったわよ?。」
そういうと看護士のお姉さんは病室を出ていってしまった。
「お母さんの友達…?」
なぜ母の友達が見舞いにくるのだろう…意味が分からないが見舞いに来てくれるのであれば、対応しなければならない。
早く夕食にありつきたいが仕方がない…お客さんを迎えなければ。

―「あら勇?夕食?ごめんね~少し早くきちゃった。」
母入ってきてその後から女性が入ってきた。
「お久しぶりね…勇くんでいいかしら?」

「え、えぇ……(誰だこの人…まったく覚えていない)」
入ってきた女性は身長が高くモデル体型の美人だが。すっかり記憶から消え去っている。


「ふふっまぁ覚えてるわけないわね…ほら入っておいで。」


588:心の隙間
09/02/20 17:55:41 4z5syA7w
その女性が横に声をかけると一人の少女が姿を現した。


―「え!?凪ちゃん!!?」
その女性の横にいたのは凪だった。

「え?っと…あれ?どういう…」
理由が分からず頭で考えるが、まったく浮かび上がってこない。

「前に言ったわよね?恭子がうちの会社の社長だって。」
そんなことを言ってた気がする…てことは…。

「凪ちゃんのお母さん…?」

「ピンポーン、大正解!」
凪母が両手でピースをする。

「でもなんでわかったの?俺はお母さんに言ってないよ?」
そう…凪のことを母にはまったく言っていないのだ。

「…それがね、凪の携帯の待受が勇くんの写メールなのよ。」

「は?俺の?」
凪が慌てて凪母を止めに入ろうとするが逆に凪の携帯を取り上げてしまった。

しかし俺には凪と写メを撮った記憶が全くない…。

「多分気づいてないわよ勇くん…だって…ほら。」
凪の携帯の画面を見せられる。

画面には情けない顔で爆睡してる自分の寝顔が写っていた。


589:心の隙間
09/02/20 17:56:13 4z5syA7w
「お兄ちゃん!!見ちゃ駄目!!」
凪母から携帯を取り返そうと必死になってピョンピョン飛び跳ねている。
「ははっまぁ許してやってね?凪も悪気があってやってるわけじゃないからね?」
凪母から携帯をとるとカバンの中に携帯を隠してしまった。
チラチラと泣きそうな顔でこちらを見ているがべつにこれぐらいでは怒りはしない。
「でもそれだけじゃ分からないはずじゃ…」
凪の携帯をみただけで父と離婚して名字が変わってるのに俺が母の息子だなんて気づくはずがない。
「少し前にね?あなたのお母さんが私にやたら息子の自慢をしだしたのよ…」

母に目をやるが「なにか?」と言った感じの目で返された。
「優しいわ、男前だわ、可愛いわベタぼめするから、顔を見せなさいって言ったらあなたの写メールを撮ってきたのよ。」

「また写メ!?」

今度は母の携帯を見せられる。
画面いっぱいにご飯を食べてる自分の顔が写っている。

「この写メールをみた時にどこかで見たことがあるなぁ~と思ったのよ、そしたら凪の携帯に入っている、男の子と同じ顔だったわけよ、わかった?」

「はぁ…なんとなく」
少し強引な感じはするがここまで来てるのだから本当なんだろう。


590:心の隙間
09/02/20 17:57:02 4z5syA7w

「んで一週間前にあなたのお母さんから勇くんが入院してるって泣きながら話し聞かされたのよ……それを凪に話したら、病院の場所も知らないくせに泣きながら、また家出しようとしてねぇ~。悪いと思ったんだけど来させてもらったわ。」

「そうですか…迷惑かけて申し訳ありませんでした。」

やっと少し状況が把握できてきた。
凪は凪母の後ろに隠れてモゾモゾしている。

「……それじゃ、ちょっとお母さん達は出かけてくるから。凪…迷惑かけちゃダメだからね。」

「え!?」
―意味がわからない。
病院に子供を普通置いていかないだろ。

「それじゃ、勇も優しくしてあげなきゃダメだからね?また後でくるわ、んじゃ」
そういうと二人ともそそくさ部屋を出ていってしまった。
残された俺と凪はポカ~ンとしてるだけだった。

「凪ちゃん……元気だった?」
声をかけると凪の頭だけコクっと頷く。

「そっか…風邪とか大丈夫?最近風邪が流行ってるみたいだから…」
また頭だけコクっと頷く。
自分の服の胸元を握りしめて下を向いているため表情はわからない。



「お兄ちゃん……病気なの?…大丈夫…?」
聞き取りづらいか細い声で凪が聞き返してきた。

591:心の隙間
09/02/20 17:57:28 4z5syA7w
「え?大丈夫だよ、もうすぐしたら家に帰れるよ?」

「よかった……お兄ちゃん…?」

「ん?なに?」

「お兄ちゃんの隣に座ってもいい?」
なぜ許可を求めるのかよくわからない、緊張してるのかもしれない。

「うんいいよ、おいで。」
凪にむかって手招きをする。

「やった!…それじゃ…よいしょっと…」

「…あぁ…だから許可を求めたのね……」
パイプいすに座るんじゃなくてベッドの中に入ってくるって意味か。

「お兄ちゃん…暖かい…」
真冬の中スカートで来てるのだから寒いに決まってる。
よく見るとほんの少し化粧してる…。

「お化粧してるの?…可愛いね」

「あ……ぁりが…と…ぅ」
顔が真っ赤っかでえらいことになっている。

ふとお粥に目を向ける。
まだ湯気がたっている…
美味そうだなと考えていると凪が気まずいことを言い出した。

「お兄ちゃん……私がご飯食べさせてあげるね!」
言うや否やスプーンとお粥が入ったお皿を掴んで俺の前まで持ってくる。
「はい、あ~ん!」


「ははっそれぐらい自分で食べれ…」


「…お口…あ~ん…して…」


「ないかもね…」

一生懸命口元にお粥の入ったスプーンを持ってこられたら自分で食べるなんて言えない。

592:心の隙間
09/02/20 17:58:00 4z5syA7w

「あ~ん……パクッ……うん、美味しい。」
久しぶり食べる米は本当に美味しかった。

「ふふ~ん、美味しいでしょ?」
さも自分が作ったかの如く誇らしげに話す。
多分凪が食べさせてるから美味しいと言わせたいのだろう。

「うん、美味しいね。ありがとう、凪ちゃん。」

「うん!!もっと食べさせあげる!はい、あ~ん…」
このお粥が無くなるまで食べさせてくれるらしい。

「あ~ん…」
―前と比べて少し積極的になった気がする。
初めて会った日は物凄く大人しい子だと思ってた。
なにをするにも顔色ばかり伺ってた。
まぁ他人に接する時は顔色も伺うか…ましてや知らない男の高校生となると、なおさらだ。

―「はい、終わり~!美味しかった?」
皿とスプーンを台に戻して、もう一度ベッドに入り直す。

「うん、ごちそうさま。美味しかったよ、凪ちゃんも腕疲れたでしょ?」

「ううん、大丈夫!」
変な緊張がとけて安心したのか、凪の位置が俺の隣から膝の上になっている。

「あ!?そうだ!!…ふふ~ん…お兄ちゃんビックリするよ?」

俺の指で遊びながら思い出したように声をあげる。
よく分からないが物凄く嬉しそうだ。

593:心の隙間
09/02/20 17:58:29 4z5syA7w
「お兄ちゃんの家の前にでっかい真っ白な家がいっぱいあるでしょ?」

「うん、あるね。その家がどうかしたの?」
最近、家前の道を挟んだところに住宅街が建てられた。
どの家もかなり立派で古家としてはあまり好ましくなかった。
「私とお母さんね~そこに引っ越すことになったの!」



―「え?…は!?なっなんで?」
急な展開に頭が追いついていかない。
凪は満面の笑みで話すが、多分俺は苦笑いだったと思う。

「えっとね、もうすぐ私中学生でしょ?」
たしかに会ったとき、小学6年生だって言ってた。

「だから私、中学は〇〇中学校に行くの!」

「え!?マジで!?」
これには驚いた。
○○中学校は俺が通ってた中学校だ。

「マジで~!だから退院したら引っ越し手伝ってね!?」

「う、うん、でもなんで?凪ちゃん中学校は決まってるはずじゃ…」
凪が通うお嬢様、お坊っちゃん小学校は隣にも同じようなお嬢様、お坊っちゃん中学校がある。
その小学校に通うと97%でその中学校に入ることになるらしい。

「こっちのほうが楽しいし、お母さんも自然が多い方がいいってさ。」
凪母…恐るべし。
金持ちの考えることはよくわからない。
てゆうか積極的すぎるだろ。

594:心の隙間
09/02/20 17:59:05 4z5syA7w
「それとね…その家の近くにね…私の好きな人が…いるから。」

後ろから見ても分かるくらい耳が真っ赤だ。

「へぇ~一途だねぇ、んじゃ頑張らなきゃね。」
隣町まで追いかけてくるぐらい、好きなんだな。
少し感心する。

「うん…がんばる…お兄ちゃん…。」
凪も中学生だ。
行動と見た目が幼すぎて小さい子供のように接してしまうが立派な女性。
好きな人の一人や二人いて当たり前な歳だ。


―コンっコンっ

凪にもう一度ど頑張れといいかけたところに誰かが扉をノックする。

「ん?お母さん達帰ってきたかな?」

時計を見るともう七時半だ。

「お母さん達どこにいってたんだろーね?」

「なにか美味しい物でも食べにいってたんじゃない?」

「え~ずるい!」
凪が俺の顔を見て不機嫌そうに言う。


―ガラガラッ


―「入るね~勇~大好きなお姉ちゃんが来ましッ!?…た…よ…。」


―扉から入ってきたの母達ではなく大学帰りの姉だった。

595:心の隙間
09/02/20 18:04:16 4z5syA7w
今日はこれで終わりです少し長かったので疲れました…。
あと二回の投下で終わりそうです。

エロは次なにか書くことがあればそっちに入れるので勘弁してください。


596:名無しさん@ピンキー
09/02/20 18:44:17 8w1hTKoE
いいとこで切ったなおいw

GJ!!続き待ってます!!

597:名無しさん@ピンキー
09/02/21 00:06:52 cUfYPT2J
修羅場再び?
…にはならないよな?

598:名無しさん@ピンキー
09/02/21 00:40:54 PocPjWow
早苗の蜜壷はしとどに濡れそぼって・・・・・

599:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
09/02/22 23:40:26 AJWULkuU
<私が私でいられる時>、一年ぶりの続きです。
本編はもうほとんど完結です。
随分とご無沙汰なので、保管庫でアップしました。

URLリンク(green.ribbon.to)

これまでの分は

URLリンク(green.ribbon.to)

の真ん中当り、「依存・修羅場シチュ」にあります。

600:名無しさん@ピンキー
09/02/23 01:47:42 W1K3dgk5
おおお久しぶりじゃないか!
今から読んできます

601:名無しさん@ピンキー
09/02/23 15:54:49 v/K28hTG
読ませて頂きました!

貴方に惜しみないGJを!やっぱり物語は底抜けにハッピーなエンディングじゃなきゃね!?

602:名無しさん@ピンキー
09/02/23 16:58:31 1Qb6t+fL
まとめてで失礼だが、心の隙間、ゲーパロ両氏ともGJ!

「ぴ、ぴ、ピラルクー」でどうしても吹いてしまうのは俺だけじゃないはずw

603:名無しさん@ピンキー
09/02/23 17:07:20 +jlqEGmf
神GJ

604:名無しさん@ピンキー
09/02/23 18:14:47 tWok7hzy


605:依存系幼なじみ(0/5) ◆9DJPiEoFhE
09/02/24 05:36:18 YFNOwbAs
5レス投下します。

606:依存系幼なじみ(1/5) ◆9DJPiEoFhE
09/02/24 05:37:23 YFNOwbAs
 頭部を鈍器で殴られたかのような衝撃。今日も一日の始まりだ。
「ってぇ……」
「浩樹(ひろき)、起きたぁ? もいっちょいっとくぅ?」
 甘えるような声で囁く少女。言葉と行動が違えば天国なのだろうが。
「起きた起きた。見ればわかるだろ、妻依(さより)」
「何よ、嫌そうな声出しちゃって。やっぱりもいっちょ……」
 拳を振り上げる。
「やめい。そりゃ毎朝毎朝殴られてれば嫌な顔にもなるだろ」
「毎朝殴ってくれって言ったのは誰だっけ?」
 整った美麗な、しかし幼さを残す顔を歪ませてこちらを見下ろす妻依。にやにやすんな。
「いや、そりゃ、だって、起きれないし……てかその言い方は語弊があるぞ。別に殴ってくれとは」
「はいはい自業自得。さ、着替えるわよ」
「聞けよ……」
 そう言いつつもしぶしぶと従う自分。慣れとはかくも恐ろしいものである。
「未だにこのパジャマ着てるのね。かっわいい~」
「茶化すなよ。時間ないんだろ」
 顔に血が上っているがわかる。今着ているパジャマは小学生からのものだ。寝巻きというものは自分が一番楽に過ごせるものにするべきであって、そういうものは時間が経てば経つほど変えられないものなのだ。だから仕方がない。仕方がないのだ。
「はい、終わり」
 手馴れた様子でネクタイを軽く締められ、ポンと胸を叩かれる。
「ん」
 妻依は顎をついと上げ、薄い……失礼、小ぶりな、いや、ささやかな、取るに足りない、粗末な……これ以上考えても僕の語彙じゃ墓穴を掘ってしまいそうだ。つまり、その、洗濯板を張った。
「っでぇ!」
「今、失礼なこと考えたでしょう?」
 頭をさする自分と張り付いたような笑顔で問う妻依。穴はすでに掘りきっていたようだ。
 さて、気を取り直して次からはずっと俺のターンだ。
「お前こそずっとそのパジャマだよな」
「……仕返しのつもり? 言っとくけど、あんたがそれ着てるからあたしもこれずっと着てるのよ」
 ターンエンド。もう僕のライフは0だ。
「ほらほら、顔赤くしてないで続けなさいな。本当に時間なくなってきちゃった」
 妻依には勝てた試しがない。無駄な抵抗は諦め、急いで制服に着替えさせる事に努めた。

607:依存系幼なじみ(2/5) ◆9DJPiEoFhE
09/02/24 05:38:24 YFNOwbAs
「行って来ます」
「行って来ます」
 家を出る。
 今日は快晴だ。しかし冬空に雲ひとつないと逆に寒く感じる。
「寒いわね」
 ぶるりと体を震わせる。妻依も同意見のようだ。
 いつものように二人で登校する。会話はない。幼馴染といってもそんなものだろう。
 昔はともかく、もう思春期もそろそろ終わりという年頃だ。異性の幼馴染というのは意識する対象ではなくなってしまっている。ありふれた言い方だが兄妹のようなものだ……姉弟かもしれないが。
「飯塚(いいづか)さん、桜咲(さくらざき)くん、おはようございます」
 振り返ると、クラスメートの三神さんが小さく手を振りながらこちらに歩いているところだった。
「おはよ」
「おはよう」
 挨拶を返す。
「ふふ」
 三神さんが小さく笑った。笑い方も人が違うとこんなに上品に見えるんだな。朝に見た邪悪な笑顔とは大違いだ。
「何にやにやしてるのよ、実夏」
 にやにや? 三神さんの笑みは微笑んでいるという表現が正しい。自分と同じ基準で物事を考えるのはどうかと思うぞ、妻依。
「あ、浩樹、あんたまた騙されてる。この子は」
「二人は本当に仲がいいんだなって」
 三神さんが妻依を遮るように笑顔で言い切った。
「そりゃ悪くはないわよ。幼なじみなんだから」
「そうだよ、こんな暴力幼なじみと一緒にいれるのは僕だけだと自負してるよ」
「せんでいい! ……さっき、痛かった?」
「ん、いつものことだし。それに大体、僕が悪いし」
「いつも、ごめん」
「くすくす」
 三神さんから視線を感じる。
「何よ」
「何でもありませんよ」
 その時の三神さんの顔はとても綺麗な笑顔だった。

「今日は一段と寒いですね」
 どうやら誰もが今日の天候に関しては共通認識を持つらしい。まぁ真冬の朝なんてそんなものだろう。
「そうね、毎朝毎朝寒くてやんなっちゃう」
「飯塚さんと桜咲くんには関係なさそうですけどね」
 そう言ってくすり。
「どういう意味?」
「そのままの意味ですよ。あったかそうだなぁって思っただけです」
 妻依と二人して首を傾げる。
 三神さんはそう言うが、僕らは取り立てて特別な防寒をしているわけではない。
 妻依は制服に市販のダッフルコート、それに手編みのマフラーと手袋。僕に至っては制服に妻依と同じマフラーと手袋という始末だ。寒そうと思われるならともかく暖かそうと思われる謂れはないはずだ。

608:依存系幼なじみ(3/5) ◆9DJPiEoFhE
09/02/24 05:39:25 YFNOwbAs
「そこの二人、止まれ」
 校門を抜ける。この寒空の下、三十分近くも歩き続けるのは苦行だ。
「おい」
 家からだと自転車通学の許可がでないギリギリの距離なのだ。十メートルくらい大目に見ていただきたい。まぁ、自転車でも寒いことには変わらないのだが。
「貴様ら! 止まれと言っている!」
「何よ」
 鬱陶しそうに妻依が応える。
「何度も何度も言ってることなんだが、誰も見ていないところだったら何をしていても誰も文句は言わない。だが、ここは学校だ。最低限度の校則は守って欲しい」
 苦々しげにこの学校の生徒会長である上原さんがそう言ってくる。
「何度も何度も聞いてることだけど、あたしは別に校則を破ってなんかいないじゃない? こいつは知らないけど」
 僕を顎でしゃくる妻依。
「僕だってそんな覚えなんかないですよ」
「自覚のない悪が一番の悪だとはよく言ったもんだ……」
 上原さんがぼそぼそ何か呟いたが僕には何と言ったのかはわからなかった。
「だから、その、べたべたとくっつくのを止めてくれ、とそう言っているんだ」
 べたべた? 僕らはそんなことをしている覚えはない。
「だから、そんなことはしてないじゃない」
「そうですよ」
「ぐっ……いや、つまり……」
「お二人が仲睦まじく手を繋いで身を寄せ合っている姿を全校生徒に晒していることが、校紀を乱すことに繋がるかもしれないと生徒会長さんは心配しているのですよ。ね?」
 今までどこにいたのか、三神さんが割り込んできた。
「そ、そうだ。不純異性交遊をするななどとは言わん。ただ、何だ、もう少し節度を守って欲しいというか、その、他人の目を気にする努力をして欲しい」
 上原さんはなぜか顔を俯かせながらそう言った。
「手ぇ? 手を繋ぐなんてこと普通でしょ? それにこんなに寒いんだし、誰かにくっついてないとやってられないわよ」
 白いため息をつきながらうんざりしたような表情を作る妻依。それに関しては僕も同意だ。加えれば早く教室に行きたい。
「ふつうじゃない! 貴様らの基準は知らんが世間ではそういうことは恋人同士でしかやらんのだ!」
 鼻息も荒くがなりたてる上原さん。せっかくの美人が台無しだ。
「だからあたし達は恋人なんかじゃないって。ねぇ、浩樹」
「そうですよ。ただの幼なじみです」
 淡々と返す。何となく火に油を注いでるな、とも思いつつ。
「恋人じゃないぃ? どう考えても」
「事実はどうであれ、周りにどう見えるかが問題だと生徒会長さんは言いたいのですよ。ね?」
「あぁ、そっか。それならそうと早く言いなさいよね」
 すっと腕から離れる妻依。寒い。
 その場を去る僕ら三人。
 振り返ってみると、校門の前で上原さんは毒気を抜かれたように呆然としていた。

 妻依と三神さんはクラスが同じだが、僕は別だ。一年と二年のメンバーはほとんど変わっていないのに僕らは離れてしまった。少々面倒だが、クラス分けは水ものなのだから仕方がない。そう思いながら、僕は一限の準備を始めた。

609:依存系幼なじみ(4/5) ◆9DJPiEoFhE
09/02/24 05:40:32 YFNOwbAs
 チャイムが鳴る。今日もようやく一日が終わりだ。私は鞄に教科書を詰め込み、隣のクラスに入る。
「あれ?」
 いつもの席に彼がいない。どうしたことだろう、何かあったのだろうか。
「誰もいない教室を覗いたりしてどうしたの? 妻依」
 後ろからの声に振り向くと、不思議そうな顔をしているクラスメイトがいた。
「ひろ、いや、このクラスはどうしたんだろうって」
「最後の授業の先生が病欠とかで自習だったらしいよ。うちのキムも休めっての」
 キムとはついさっきまでうちのクラスで授業をしていた数学教師のことだ。妖怪ラリホー、α波製造機など、異名の多さだけが取り得である。
「……そうなんだ。ありがと、瑠璃」
 瑠璃に礼を言ってその場を後にする。
 さて、彼はどこに行ったのだろうか。帰宅したということは考えられない。なぜなら、私が同じ立場だったらそうすることは絶対にありえないからだ。
 まず昇降口で彼の下駄箱を確認する。うん、靴はある。
 次に彼が一番いる確率の高い図書室へ。放課後の図書室というものは試験前でもなれば閑散としているものだ。今日も例に漏れずここは静寂に満ちていた。
 念のため、通路にある座席も含めて隅々まで探したが彼の姿はなかった。次。
 可能性は低いが生徒会室へ。
「おや、一人とは珍しい」
 嫌な奴に会った。回れ右をしようとするが。
「桜咲君をお探しだろう。いくら恋人とはいえ常に一緒で気が滅入らないのか」
 会長はそう問うた。私は彼女を見据えた。
「だから、恋人同士ではないのよ」
「ただの幼なじみだと」
「ええ」
「それは、いつか恋人同士になるかもしれない、という意味も含まれているのか?」
「考えたこともないわ」
「それでは、いずれお互い別の恋人ができる日が来るかもしれない、と」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「君は曖昧だね」
「あたしは他の人より成長が遅いのかもしれない。恋とか愛だとかそういうものがよくわからないの」
「私だってわからんさ。それでも君が彼といたいという気持ちは変わらないのだろう」
「そうね、それは本当。昔から、彼と過ごした記憶の中でそれだけは一度も変わっていないわ」
「……そうか」
 顔を伏せる会長。そして生徒会室を占める沈黙。
「……で?」
「で、とは何だい」
 まだいたのか、とでも言いたそうな顔で会長がこちらを見上げた。
「いや、こういうシリアスな会話をした後に浩樹の場所を教えてくれるのがお約束かなーって」
「ゲーム脳も大概にしたまえ。そもそも私は最初に君が一人なのを珍しがったじゃないか」
「だったら思わせぶりな会話しないでよ!」
 まったく、喋り損だ。早く浩樹を探しに行かねば。もう日はずいぶんと傾いている。
「しかし、こんな時間までここで話していてよかったのかい? もう桜咲君は帰ってしまったのではないか?」
「ううん、浩樹は絶対にあたしを待っているわ」
 これだけは言い切れた。そうして生徒会室を後にする。
「わかってるよ」
 会長はニヤリと人の悪そうな笑みを浮かべた。

610:依存系幼なじみ(5/5) ◆9DJPiEoFhE
09/02/24 05:41:34 YFNOwbAs
 どこを探しても彼の姿はない。
 駄目元で、最初に探した図書室に入った。
 目の覚めるような赤。窓から夕焼けが差し込み、部屋は相変わらず静寂に満ちていた。 そんな中、備え付けの机で舟をこぐ者が一人。
 向かいの椅子に座って眺めた。アホ面だ。それ以外に表現しようがない。そんな顔を見ていると私はどうしても顔の緩みが抑えられなかった。だから……

 頭部を鈍器で殴られたかのような衝撃。
「ってぇ……」
「お目覚めぇ? 居眠りとはいい身分ねぇ?」
 目の前には妻依、いや殺意の波動に目覚めた者がいた。
「うわっ、はんにゃ、ってぇ! いや妻依、いつの間に」
 ボカボカ殴るのはやめて欲しい。ただでさえできの良くない頭が悪化してしまう。
「今何か言った? こっちの台詞よ! さっきはあんた図書室にいなかったじゃない」
「え? 僕はずっとここにいたはずだけど……」
 そう、僕は六限が休講と聞いてからずっと図書室で妻依を待っていた。褒められる理由はあっても殴られる理由はないはずだ。
「六限の終わった直後! この部屋誰もいなかったわよ?」
「あー、その時は、トイレ、行ってたかも……」
 あの時は僕の中のテロリストが大暴れだったのだ。早々に最善の処置を講じる必要性があった。
「トイレなんてずっと我慢してなさいよ」
「無茶言うなって」
 ぷいと顔を背ける妻依。それを見て気づいた。つまり妻依は六限が終わってから僕をずっと探して歩き回っていたということになる。
 この暖房の効いた図書室ではなく、身を刺すような寒さの校内を。
「ごめん」
 素直に謝る。申し訳ない気分でいっぱいになった。
「お詫びに帰りにアイス奢りなさい」
「え、この冬のしかも夕方に?」
「い・い・か・ら! 行くわよ!」
「……わかったよ」

 腕を組んだ二人が部屋を出て行く。
 一部始終を眺めていた図書委員の男子生徒は久々の光景を堪能したことに満足しつつ欠伸をひとつ。
 とっくに過ぎた閉館時間をまた顧問の教師に注意されることを憂いつつ、読みかけの文庫本に栞を挟み、すでにほぼ終えていた退室準備を手早くこなし、図書室を後にする。
 冬の日の入りは早い。少し前まで騒がしかったそこは、完全なる暗闇と静寂で満たされた。

611: ◆9DJPiEoFhE
09/02/24 05:42:35 YFNOwbAs
投下終了です。
書き忘れましたがエロなしです。

612:名無しさん@ピンキー
09/02/24 13:02:15 q2aDpOuh
投下乙
続き期待

613:名無しさん@ピンキー
09/02/24 20:47:40 oNgr3B5b
wktk

614:名無しさん@ピンキー
09/02/24 21:30:54 5eNMk5EX
>>610
GJ!これはいい依存。
一人で帰るのそんなに嫌かw

615:心の隙間
09/02/25 03:40:51 7veM0QOl
>>611
よかったです。
GJ!!
ゲーパロさんも楽しかった

616:名無しさん@ピンキー
09/02/25 03:47:49 7HQLlxcE
>>611
こういうのなんかいいね、本人達に自覚がないのがおもしろい。


そして、ゲーパロマンセー!

617:名無しさん@ピンキー
09/02/25 04:06:12 p1eurv0u
>>611
ネタの仕込み方が上手いな。こうもすんなりと。
それぞれが思惑ありげに依存カップルを見守っている雰囲気が良い。

618:名無しさん@ピンキー
09/02/25 08:36:56 HLWCZKoc
>>611
GJです。
幼馴染のまま踏み込んでいったらこうなりました、という感じだな。

619:心の隙間
09/02/25 20:28:54 7veM0QOl
明日の朝には投下できるかもしれないです。
遅れても明日の21時までには投下します。
それでは

620:名無しさん@ピンキー
09/02/26 11:28:59 v3suS8n0
待ってます。

621:名無しさん@ピンキー
09/02/26 23:21:47 hAJ4hqrT
まだかな

622:心の隙間
09/02/26 23:48:57 q7RgKJAu
すいません、投下したいんですけど。
なぜかできない…

もう少し待ってください

623:心の隙間
09/02/27 01:04:56 gLF4+23k

   ◇   ◇   ◆   ◆   ◆   ◇   ◇   ◇

「ふふ…あの二人仲良くしてるかしら?」
楽しそうに話す恭子になぜか少し苛立ちを覚える。

「仲良くしてるかって……そりゃ勇は面倒見がいいからね。妹できたみたいな感じじゃないの?」
レモンティーが入ってるカップから口をはなして返答する。
少し返答に棘があったかと恭子を見るが、気づいていないみたいで笑みを浮かべている。

―私達は今、恭子の頼みで勇が入院している病院から少し離れたオープンカフェで時間を潰している。

凪ちゃんがどうしても勇と二人で話をしたいそうだ。
「ふふっ…家出の後、家に帰ってきてからずっと携帯握ってるから何事かと思ったけど…とうとう凪にも春がきたわね。」

「……」

時計を見る…7時20分。
8時になったら面会時間が終わる。

「あら?もうこんな時間…それじゃいこっか?」
恭子が席をたち伝票をとる。

私と恭子がカフェに入ると、どっちがお金を払うかジャンケンで決める。
私たち2人の学生からの決まり事だ。

恭子の旦那である修司くんも子供っぽい恭子の仕草が一番好きだったらしい。


624:心の隙間
09/02/27 01:05:19 gLF4+23k
理想の女性像は?と聞かれれば間違いなく恭子と答えるだろう。
あんなふうに男の人に甘えてみたかった。
「ほら!おいて行くわよ?」
恭子の声が後ろから聞こえてくる。
振り返るともうレジをすませてコートを羽織っている。

「う、うん!今いく!」
慌てて私もコートを手に取り恭子の後を追う。

外にでると冷たい風が勢い良く肌に突き刺さる。
昔は真冬にミニスカートを着てもまったく気にしなかったが30半ばになれば昔みたいに短いスカートなんて着れない。
悲しいことだが、そんな服装をしたとろこで喜んでくれる人もいない。

「はぁー…はぁー…少し遅くなったかもね…凪心配してるかしら?」
恭子が自分の手に息を吹きかけると、寒さで白くなった息が両手を包み込む。

「大丈夫よ、もうすぐ中学生でしょ?」
来月から高原一家が家の前の住宅街に引っ越すことになった。
その新居から凪ちゃんは中学校に通うらしい。
通う中学校は新居に近い私と恭子の母校。
勇の通ってた中学校でもある。

凪ちゃんに頼まれたと言うのだが、まず娘に頼まれたって一軒家を買うなんてあり得ない。
そこには少なからず私も関係してくるのだ。

625:心の隙間
09/02/27 01:05:42 gLF4+23k
―勇の約束。

少しギクシャクするが麻奈美も精一杯頑張ってくれているので順調に勇との約束を継続できている。

あの勇の一言がなければ確実になかった現実。
勇と麻奈美には感謝してもしきれない気持ちでいっぱいだ。

「あんた…物凄く泣きそうな顔してるわよ?」
恭子が心配そうに話しかけてくれてる。

「バカ、子供じゃあるまいし…早く病院いきましょ。」

多分私は本当に泣きそうな顔をしていたのだろう。
少し滲んで視界が見づらくなっている。
今日はあまり勇と話していない。
面会時間の終了が近づいてるが恭子が隣にいる限り、走る訳にもいかない。

「ちょっ!ちょっと」」

頭ではゆっくり歩いてるつもりだったが
自然と足が速まっていたみたいだ。

―急激に勇に近づきすぎたのだろう。
最近、勇の顔を見ないと落ち着かなくなっている。

玄関前から上を見上げると勇の病室が見える。

「勇見えないかなぁ…」

「ははっ見えるわけないでしょ?」

小さく呟いたのに恭子に聞こえたみたいだ。
「ふふっ…わかってるわよ…」
分かってることだがなぜか寂しさがこみ上げてきた。

「…わかってるわよ…」

勇の存在がどれだけでかいか思い知らされてしまう。

626:心の隙間
09/02/27 01:06:09 gLF4+23k

   ◇   ◇   ◆   ◆   ◆   ◇   ◇   ◇

「お姉ちゃん、ちょっと…凪ちゃんも…」
なぜか姉もベッドに入ってきて姉と凪に挟まれてしまった…。
この部屋だけえらく濃い空気が流れている気がする。

―姉が部屋に入ってきて凪の顔を見た瞬間、時間が止まったかのように三人とも停止した。

数秒の間だったのだが何時間も時間が止まったような錯覚に陥っていたのだ。

「あれ?…なんで……え?」
姉もパニックに陥ってるのだろう。
手もポケットに入ったり後ろにいったり忙しない…。
表情も病室を間違ったかの如く申し訳なさそうに周りを見渡していた。

「えっとね…ちょっとややこしいんだけどね…」

戸惑っている姉に凪がいてる理由を話すと。
話が終わった瞬間冷静な顔つきで「嘘つけ」と言われた。

「本当だって…もうすぐお母さんも帰ってくるから聞いてみたらいいよ。」

「そう…わかった。」
分かってくれたのか姉はパイプいすに座り、大きなため息をついた。

「体の調子はどう?少しは楽になった?」

「うん、もう大丈夫だよ。」

駅から走ってきてくれたのだろう……顔が熱を帯びて赤くなっている。


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