【貴方なしでは】依存スレッド3【生きられない】at EROPARO
【貴方なしでは】依存スレッド3【生きられない】 - 暇つぶし2ch250:名無しさん@ピンキー
08/12/24 12:43:50 Xuj+cdYA
>>249
ちょっとまってよw

無理がないかってまさかエロパロで言われるとは思わなかった
周り俺より無茶してる作品ばっかりだと思うけどw

251:名無しさん@ピンキー
08/12/24 13:23:20 ndtYNTXC
>249
気が早すぎるwww

>250
落ち着いてくれ、幻想ありきの場所で現実感を本気で持ち出すような人はそんなに居ないって。


252:名無しさん@ピンキー
08/12/24 14:26:26 RaF9EQyA
まぁ、
・主人公が高校生
・姉と同居

以上2点からするとそう無理はないと思うぞ。
本人が交番をいやがってるんだから、
自分の家以外つれてく先を思いつかんのが普通だろう。
高校生で児童相談所の存在を知ってるほうが不自然だろうし。

主人公が30歳童貞無職ニートの一人暮らしのところに
連れ込むなら、確かに無理があるが。

253:名無しさん@ピンキー
08/12/24 19:32:00 qiuLpw0u
>>252
30歳童貞無職ニート+キモオタデブの俺は生きてていいですか?

254:名無しさん@ピンキー
08/12/24 21:03:13 XTbnXt8z
35歳童貞ほぼ無職すねかじりキモオタメタボの俺が「生きてていい」って言ったら楽になる?

255:名無しさん@ピンキー
08/12/24 21:16:06 6/TqT888
他人を見下して安心しようとする自分が嫌になるだけ。

256:心の隙間
08/12/25 02:24:47 rwIVt/5J
遅い・・・・・・・・・。



玄関で弟の帰りを待ってるがまったく帰ってくる気配がない。
壁に掛けてる時計を見上げる。

「門限って意味しってるのかしらあの子・・・・・・。」
もう二時間近く立って帰りを待っている。
門限が7時、もう9時を過ぎている。
電話しても出ない、メールしても返ってこない、学校に電話したら担任がもう帰ったと言う。

「なにかあったのかしら・・・」
イヤな予感がする。
冷や汗が止まらなくなる
「あの子になにかあったら私・・・」
頭では最悪の出来事しか想像できなくなっている。

「やだ・・・嫌ッ!!!私の前からいなくなるなんて考えられない・・・」

足が震えて崩れ落ちそうになる。
「早く帰ってきて・・・」
携帯の画面に移る弟を見ながら口ずさむ。

すると扉の向こうから足音が聞こえてくる
小さい声だか声も聞こえる





あの人だ

257:心の隙間
08/12/25 02:30:35 rwIVt/5J
「・・・帰ってきてくれた・・・」

嬉しさで玄関の扉を開けて迎えに行こうと思ったが、安心したらなぜか怒りがわいてきた。

こんなに心配させてほっつき歩いてたんだから私から行くことないんだ、あの子から謝らないと許さない。
「でも・・・・・・あんまりしつこくすると嫌われるかな。」
嫌われることを考えると怒りよりも不安のほうがでかくなる。
でも心配したことは伝えなきゃ!

「ただいま、姉ちゃん」





「おかえり・・・・・・いま何時?」

258:名無しさん@ピンキー
08/12/25 15:34:53 kJMgwwle
犬神のやつマジ楽しみなんだが(*゚ω゚*)次の月曜日あたりかなぁ
すげー耽美な設定で最高やわ

259:名無しさん@ピンキー
08/12/25 21:54:51 IXLNevsk
神々が集うスレがあると聞いてやって来ました

260:名無しさん@ピンキー
08/12/26 01:37:31 72KwzLpo
>>257
オーケーオーケー、姉は弟依存なのか。続きが楽しみだぜ、GJ!

261:心の隙間
08/12/26 01:51:26 32uqUvJo
ものすごく怒ってる・・・

ここは素直に謝ってたほうがいいな
「ーー姉ちゃん、ごめん、部活が長引いてさ。」
なにも言わず近づいてくる姉に少したじろぐ、
すっと姉の手が頬に近づいてくる
殴られるッ!!

とっさに目をギュッと瞑ってしまった。
しかし痛みではなくかわりにヒヤっとした冷たい感触が頬に伝わる。

「遅くなる時は電話して・・・メールでもいいから・・・」
目を開けると涙をためている。
「(手が冷たい・・・姉ちゃんずっと玄関で待ってたんだ)次からはちゃんとメールするね。」

姉の頭を撫でると、姉は目を細め大きく息を吐きながら勇の胸にもたれ掛かった。
甘えようとしてもたれ掛かったのでは無く、足に力が入らないのだ。
(早く一緒に寝たい・・・このままベッドに連れていこうか)
姉は勇と添い寝をすることで頭がいっぱいだ。
週に一度だけ一緒に寝てくれるこの日を姉は一番楽しみにしている。

ーーしかしこの唯一の楽しみを2時間後に壊されるどころか、奪われることを姉はまだしらない。

「姉ちゃん、それでちょっと相談なんだけど・・・」
勇が玄関の影に向かって手招きをする
すると玄関の影から姿を現す小さな破壊者。



「おじゃまします・・・・・・」


262:心の隙間
08/12/26 01:56:47 32uqUvJo
こんなんでいいのかものすっごい不安なんだけどw


263:名無しさん@ピンキー
08/12/26 03:14:12 NfoMDO+y
GJ
先が気になるぜ!

264:名無しさん@ピンキー
08/12/26 03:29:36 0+TYYegl
つづき!
つづき!!!!

265:名無しさん@ピンキー
08/12/26 17:43:27 ST1ZlDAO
>奪われることを姉はまだしらない
お姉ちゃんヤンデレ覚醒フラグw
見事にフラグを叩き折ってくれることを期待




266:心の隙間
08/12/27 01:32:55 2qbeJ2Sg
ーー姉ちゃんはまったく状況が飲み込めていないみたいだな・・・

姉は口を半開きにしながら凪を見ている。
(まぁ、いきなり小学生連れてきたらこうなるわな。)

頭を掻きながら、なんて説明するか考えていると。
姉ちゃんから小さな声で聞いてきた。
「・・・・・・なにこの子?」
隠しても余計に怪しまれるから、今日あったことを全部姉に話した。

ーー始めは頷いてるだけだったが、状況を少しずつ把握してくると、顔を真っ赤にし勇に向かって怒鳴った。
「勇!!なに考えてるのッ!!!なぜすぐに警察に電話しなかったの!?親御さんが心配して、探してるかもしれないじゃない!!」

息を荒げて勇を怒鳴る。
「いや、警察に電話しようとしたんだけど嫌がってさ、公園に置いていく訳にもいかないし、だから今日一日だけ泊めてあげようとおもってね。」
「あのね・・・周りからみたら勇が連れ込んだって思われるでしょ!?勇が警察に連れて行かれたら私死ん!ッ・・・」

姉はハッとなって勇から目をそらす・・・
ーー感情が溢れ出そうになる。
(早く、この子を警察に引き取ってもらわなきゃ!!)

なんとかいつもの2人の日常を取り戻そうとするがうまく頭が働かない。

267:心の隙間
08/12/27 01:34:56 2qbeJ2Sg
ーー頭が追いつかない・・・
なぜ、よりによってこの日にこんな災難がくるの。

いきなり現れた子供は私からしたら邪魔者以外の何者でもない、
子供は好きだけど今の状況で好きか嫌いか聞かれたら、間違いなく嫌いだ。

「ーー警察に電話するから待ってなさい・・・」
凪を一睨してからリビングに歩いていく。
勇にも目をむけようとしたが、今さっき怒鳴ったばかりなので、心の距離をとられることを恐れて、これ以上は言えない・・・

今は感情的になってしまったが私が勇にむかって怒鳴ることはまずない。
一度同級生を連れてきたことがある、その時の同級生の勇を見る目は、表には出ていないが見るからに好意を寄せている目をしていたのだ。
その時は我を忘れて怒鳴ってしまったが、その後一週間勇とはギクシャクしてしまった。
今考えても胃が痛む、
なにか言えば勇の機嫌を損ねるんじゃないか、なにを作れば勇は喜んでくれるか
ーーあの同級生とは違う・・・私の目は勇しか写らない目



その目をこの子も持っている。

268:心の隙間
08/12/27 01:41:44 2qbeJ2Sg
夜勤の休憩に書いてるから少しずつになるんですよ、ごめんなさいね。
まぁゲーパロさんや、ほかの人が書いてくれるまでの繋ぎとして、見ててくださいね。

269:名無しさん@ピンキー
08/12/27 02:12:49 +m5xDUpg
最初のレスかな?
まずはGJ

繋ぎと言わずに、隙間も期待してみてるよー



270:名無しさん@ピンキー
08/12/27 07:36:52 GKT0b5vR
お疲れ。

まだ序盤っぽいので内容には触れないけど
「ーー」は使わないほうがいいかな。

271:名無しさん@ピンキー
08/12/27 10:19:03 JZ8r6ldR
つか「ーー」じゃなくて「―」だね

272:名無しさん@ピンキー
08/12/27 11:02:53 Tp4qAKXM
前々から気になってたんだが「―」ってどうやったら出てくるんだ?

273:名無しさん@ピンキー
08/12/27 11:19:58 OcxVifK7
うちのは、「だっしゅ」と打ち込んで変換すると「―」がでるです。

274:名無しさん@ピンキー
08/12/27 11:44:45 Tp4qAKXM
―おお本当だ。ありがたいありがたい
これをきっかけに>>273には依存せざるをえない

275:心の隙間
08/12/27 14:01:33 2qbeJ2Sg
OK、やめるわ

276:名無しさん@ピンキー
08/12/27 22:14:35 qGBBKm+w
勇と聞くとブレンを思い出す

277:名無しさん@ピンキー
08/12/27 23:22:12 lMgLTN6P
>>276
ごめん、覚えてない。

278:名無しさん@ピンキー
08/12/28 04:32:09 EsxkaK1H
>>276
ブレンパワードの主人公か。
あれも姉がブラコン風味だった気がする。

279:名無しさん@ピンキー
08/12/28 10:52:39 b1+MsJBJ
>>278
イイコ姉さん(漢字忘れた)は明らかにブラコンの域を越えた方です。

考えりゃブレンは登場人物が何らかに依存していた気が。
ジョナサンや艦長とか。

280:心の隙間
08/12/28 19:35:32 lC8W8hhB
書いてたらヤンデレと依存の違いがわからなくなってきたw

281:名無しさん@ピンキー
08/12/28 22:17:27 sVZFVDeu
>>280
ヤンデレ 要するに自己中心。自らの快楽が全て。 否定されると殺しにかかってくる

依存 献身的。相手の喜びが自分の喜び。 否定されると泣くか、謝罪&捨てないでコールをしてくる

さてどちらが現実にいてほしいかな

282:心の隙間
08/12/28 22:34:38 lC8W8hhB
>>281
あぁそういうことか、
依存は現実にいっぱいいてるけど、ヤンデレはちょっと危険すぎるよねw

今まで書いたのヤンデレになるんじゃないかなって思ったからちょっと不安になったの
すぐに続き書きますね。

ほかに誰か書いてくれないかなぁ

283:名無しさん@ピンキー
08/12/29 00:02:41 M1GR0GxL
ここはゲーパロさんが定期的に投下してくれるから、過疎スレ化を免れている危ういスレだからねぇ、
というわけで、心の隙間の作者さんには勝手ながら期待させてもらっているのです、頑張ってね。

284:名無しさん@ピンキー
08/12/29 01:42:09 hpiBKAbq
俺はヤンデレは愛しすぎて病んでしまうというか愛情表現が過剰になってしまう人の事だと思ってる。
だから依存型のヤンデレとか猟奇型ヤンデレとかそんな感じで広義な意味でヤンデレを認識してるわ。


285:心の隙間
08/12/29 02:29:44 lVbRlJtr
私は警察に電話をするためにリビングに入って電話の受話器を持つと、バタン!と玄関から扉の閉まる音が聞こえた。

「勇?」
なぜか胸の鼓動が早くなる

少し遅れてリビングの扉から、冷たい夜風が入ってくると同時に、勇の気配も、声も、匂いも、一瞬にして消え去った。
受話器を置き、恐る恐るリビングの扉から玄関を覗く。

「・・・・・・え?」
勇がいない・・・
カバンは置いてあるが靴がない。
血の気が一瞬で引いていく。
なんで・・・どうして?怒って出ていった?
「ッ!早く追いかけなきゃ!!」

靴を履くことすら忘れて、裸足で家を飛び出すが、家を出たらすぐにT路地になっている。
「どっちに行ったかわからない・・・早く謝らなきゃ」

足が震える。
「勇・・・・・・ゆうユウ・・・」

口から出るのは弟の名前ばかり、こんな時にも私は座り込むことしかできない。

周りには闇しかない・・・・・・光(勇)が見えない

286:心の隙間
08/12/29 02:31:35 lVbRlJtr
「なんで小学生ってあんなに足が速いんだ!!」
凪を追いかけながら呟く。

姉が警察に電話をしようとリビングに入ったら
凪はいきなり走って逃げてしまった。

「ハァ、ハァ、凪ちゃん!!ハァ、ちょっと待って!」
大声で叫ぶと凪は走るのを辞めた。
(こんな真夜中に・・・周りが聞いたら間違いなく警察に捕まるだろうな。)

凪は息切れ一つしていない。

「(俺が歳なのかな?)凪ちゃん足速いね、ビックリしたよ」
「お兄ちゃんも速かったよ、絶対に見失うと思ったもん」
凪は笑いながら話しかけてくる。
「もう鬼ごっこはおしまい、風邪引くからお家に行こう、お姉ちゃんには俺が言ってあげるからね」

しゃがんで凪に話しかけると少し悩んで凪がコクッと小さく頷いた

俺がそっと手を差し伸べると、凪は顔を少し下げ照れた仕草をしながら、手探りで人差し指と中指を握ってきた。


凪と話しながら歩いていると、家の前になにかうずくまっているのが遠目でもわかる。

凪は勇の顔ばかり見ているので全く気づかなかったが勇はそれを見て一瞬で体が硬直した。



「・・・・・・姉ちゃん!?」

287:心の隙間
08/12/29 02:40:48 lVbRlJtr
>>283
ありがとうございます。
少しずつですが書いていくのでよろしくお願いします。

288:名無しさん@ピンキー
08/12/29 09:54:57 e+Ty9FNx
>>287
超GJ!!
依存好き&お姉ちゃん大好きの自分としてはたまらんだぜ

ただまとまってから投下したほうがよいかも

289:名無しさん@ピンキー
08/12/29 13:45:30 B3uSNMAz
>>281
お前とはいい酒が飲めそうだ。

290:281
08/12/30 00:42:20 7aMdJy0Z
あともう一つ違う点があるな。
ヤンデレ バッドエンドが多い
依存 ハッピーエンドが多い かな?
ヤンデレのバッドエンドは「あーあ死んだか」程度にしか思わんが
依存のバッドエンドは心が痛い

291:名無しさん@ピンキー
08/12/30 00:58:09 6r7Rf1Lw
依存型は普段は暴れてたりツンツンしてても、いざ破局間近になると泣いて縋りそうだよね。
そりゃ心も痛むってもんだよ。

292:心の隙間
08/12/30 04:32:58 lziqKQYF
凪の手を離し、うずくまっている姉に走って近づく。
背中に手を置くと小刻みに震えているのがわかる。
「姉ちゃんどうしたの!!?怪我はない!?」
なんで道路で倒れてるのかわからない、なにか事件に巻き込まれたのかと嫌な考えが頭によぎる。
「ユウ・・・・・・ゆう?・・・・え!?勇!!」
いきなり抱きつかれ姉の全体重が胸にのしかかってくる、
「ちょッ!!姉ちゃん?、どうしたのこんなとこで?心臓とまるかと思ったよ・・・」
「勇が怒って出ていったから探しにいったんでしょ!?」
(怒った?俺が?)

勇を離すまいとしがみついてるので、無意識の内に背中に回している手の爪が、服を通り越して皮膚に食い込む。

「痛ッ!!ちょっと!背中に爪が食い込んでるよ!!」
「やッ!嫌だッ!!」
離そうとするが姉は混乱して全く離れようとしない、それどころか、しがみつく力が増してきた。
「ッ!!・・・姉ちゃん、大丈夫だからね?早く家に行こうね?風邪引くから」
髪を撫でながら小さい子を宥めるように、優しく言う。
「・・・・・・」
「まだご飯食べてないんだよね~、お腹空いたから早く家に帰ろうよ」
なるべくいつもの会話みたいに、違和感の無いように話しかける。



「・・・・・・なに食べたいの?」

293:心の隙間
08/12/30 04:34:55 lziqKQYF
背中から痛みが和らいでいく。

「う~ん、部活で身体動かしたからさ、ものすごくお腹へってるんだよね、肉が食べたいかな」
「うん・・・それじゃいっぱい料理作るよ」
背中から手が離れていく、その手が勇の左腕に移動する
「それじゃ早く帰ろう。」
左腕に姉がしがみついるから歩きにくいが、拒んだらまたややこしくなりそうなので、そのまま歩こうとすると。


「あの・・・・・・お兄ちゃん・・・」

忘れてた・・・・・・
「凪ちゃんごめん、こっちにおいで」
凪が泣きそうな顔でこっちを見ている。
左腕は姉で埋まっているので右手で凪を手招きする。
子供が2人いきなりできた気分だ。
小さな女の子と女性に挟まれて歩く光景は周りから見たら微笑ましく写るかもしれない。

しかし勇は息苦しくて仕方がなかった。
勇の頭の中は寝ることでいっぱいだ、
(早く帰って寝よう、今日はイロイロなことがありすぎた・・・)

疲れはてた身体で考えることは難しく、姉との週に一度の約束も忘れてしまっていた。

294:心の隙間
08/12/30 04:40:51 lziqKQYF
「ただいま~」
玄関を開けて誰もいない家に声をかける
「おかえりなさい」
一緒に入ってきた姉が小さな声で答える。
少し後に続いて凪がおじゃましますと家の中に入ってくる。
玄関で立ち止まってても仕方ないので、靴を脱ぎ凪を連れてリビングに入る。
姉は靴を履いてないので先にリビングに入ってくれてよかったのだが
何故か靴を脱いでリビングに入るまで、玄関を離れなかった。

ふぅ、やっと落ち着ける。
ソファーに腰をかけため息を吐くと、凪はオドオドしながら部屋の中を見渡している。
「凪ちゃん、こっちに座りな」
隣をポンポンと叩くと、凪はそれに従ってソファーに座った。
姉を見るとチラチラとこちらを意識しているが、なにも言わず冷蔵庫を覗いている。
「お腹へってるから早く食べたい」
「うん・・・それじゃ簡単な物にするね?」

正直早く寝たい・・・
欠伸をしながら目を擦る。
凪を見ると下を向いたまま動かない。
寝てるのかな?と思い顔をのぞき込むと、目は開いている。
目線をたどると俺の手を見ている。
少し凪の顔を眺めていると、やっと顔をのぞき込まれてることに気づいたのか、凪がヒャァッと変な声をあげて飛び上がった。
「手になにかついている?」

295:心の隙間
08/12/30 05:03:08 lziqKQYF
「・・・・・・お父さんみたいに優しい手してる」
勇の手を握り小さく呟く。

お父さん亡くなったんだったな・・・そりゃ寂しいよな。
「そっか、お父さん優しかったんだね」
凪はポロポロと涙を流しながら勇にしがみつき、小さな声で泣き出した。
俺からはなにも言えないよな・・・
自分の無力さにイラッとするが、どうしようもない。
明日はちゃんと家に帰さなきゃ、親が絶対に心配してるはず、でも今日だけはこの子の父親でいてあげよう。


この子は一年前の俺だ・・・父に依存していた俺は父が死んだ時一瞬で自分の世界が崩壊した。

父が死んだ後、依存する対象が姉しかおらず、父から姉に移った。
結果俺は立ち直ったが、その「代償」は大きく、俺の心の隙間が姉の心に伝染したのだ。

その隙間が大きな亀裂となり家族を失う恐怖と、一人になる寂しさから、姉は俺を離さなくなった。
今の姉はしていることは違えど「あの人」を思い出す、
「暴力」でしか愛せない。唯一歪んだ愛を俺にむけた人・・・
もう誰もいない夫婦部屋に目を向ける。


「2人には広い家だな・・・・・・」
姉も凪にも聞こえない小さな声で呟いた。

296:名無しさん@ピンキー
08/12/30 14:00:24 dP/GKZ2J
>>270「―」がなんでダメなの?


297:名無しさん@ピンキー
08/12/30 14:12:55 v6Q/Ru01
>>296
あんた本当に21歳以上か?

298:名無しさん@ピンキー
08/12/30 16:12:45 ik28Fdtz
今は18歳以上なのだが

>>296
指摘されてる作品はそれを連発しすぎていたからだろう
三点リーダーと同様に多用するとくどくなるからね


299:心の隙間
08/12/30 16:23:20 lziqKQYF
>>298
あっそうなの?
―とーの違いを指摘されたかと思ってた

300:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6
08/12/30 20:05:40 bNGYkHt4
「─」「……」依存症がここにも約一名。
そりゃあもう辞書登録するくらいに依存症。

「ー」とい「―」は携帯で見るとほとんど同じに見える場合もありますね。
モニターで見ると「ー」の左側の上にあがっている部分が気になりますが。

301:名無しさん@ピンキー
08/12/30 20:26:02 5IQZ65BB
「・・・・・・」は「……」に直した方がもっと読みやすくなるぜ。
面白いのにリーダのせいで読み辛いとちょっと悲しいぜ。

302:心の隙間
08/12/30 20:30:00 lziqKQYF
依存者だらけたなw
まぁ俺も最近ここに依存してるけど、ちょっと控えなきゃ出れなくなるw
>>300
そんなんですよ、
それに俺の携帯は古いからかーは端があがってないんです・・・
長さで区別するしかないんですよね。
だから始め間違えて使っちゃったんだけど



303: 【大凶】 【1704円】
09/01/01 02:19:32 jdsjBq15
あけおめー

304:名無しさん@ピンキー
09/01/01 12:08:51 rvcYO4rN
>>302
携帯だと確かに横棒系記号の区別は辛いものがある。自分のには4種あったけど内2種は区別困難だった。
「・」を重ねるよりは「…」の方が主流というかそこが気になる人は多いようだから気をつけた方が吉。

305:心の隙間
09/01/02 04:29:26 ZtMlyIiv
あけましておめでとうございます。

「…」があるってことを今の今まで知らなかったです
みんな「・」を並べてると思ってた……
次からは気をつけますね。
ありがとうございました。
楽しみにしてくれている人が何人いるかわからないですが、なるべく早く続きを書けるように頑張ります。


306:名無しさん@ピンキー
09/01/02 05:10:33 8c/5rAxc
あけおめ!
期待させてもらいます。

307:心の隙間
09/01/04 05:43:34 QUwcrSkA
―昔のことを思い出しながら、夫婦部屋の扉を眺めていると、姉が料理を運んできた。

「買い物行ってないから、冷蔵庫の中にあるもので作ったんだけど、こんな物しか作れなかった……ごめんね。」
そう言うと、サラダ、味噌汁、肉じゃがを申し訳なさそうにテーブルに置く。

「いや、作ってくれるだけ有り難いよ、姉ちゃんの料理はなんでも美味しいからねぇ、いくらでもお腹に入るよ。」

姉は親が離婚してから家事を一人でしているからか、料理が人一倍美味い。
感謝の気持ちをこめて、たまに俺が料理をつくると。
「嬉しいけどお姉ちゃんの仕事が無くなるから……」
と複雑な顔をするので、ほとんど俺が台所にたつことはない。
だから家事全般は姉がすることになっている。

「ありがとね、勇」
姉が嬉しそうに笑う。
こんなに綺麗で優しい自然な笑顔を、なぜ家族以外の異性に見せられないのだろう。
スーパーの定員におつりを渡してもらう時も、どことなくぎこちない笑顔になっている。
ナンパなんてされた日には、顔が引きつるどころか、泣き出してしまいそうだ。
こんな姉が家族として心配でならない。

308:心の隙間
09/01/04 05:44:30 QUwcrSkA
ふとテーブルを見ると、俺の前にしか料理が無い。
そういや凪にも聞くの忘れてた……
「凪ちゃんご飯食べた?」
「……グゥ~…」
口からでは無くお腹から返事が聞こえた、
「ちゃんと作ってあるわよ、今持ってくるわ。」
姉が背中を向けて凪に話す。
凪はお腹の音を聞かれたせいか、顔を真っ赤にして下を向いてしまった。

「はいどうぞ、召し上がれ。」
凪の前にも俺と同じ物が並ぶ。
「美味しそう……。」
「姉ちゃんの料理は美味しいよ!この料理食べたら毎日食べにきたくなるよ」
凪の耳元で小さく姉に聞こえるように言う。
「馬鹿言ってないで早く食べましょ、冷めるわよ。」
「うん!それじゃ~いただきま~す。」
「いただきま~す。」
「いただきます。」
礼儀よく三人で手を合わせて食べ始める。

「美味しい!!」
「そうだろう?美味いだろ?家の自慢は姉ちゃんの料理だからな」
笑いながら凪の頭を撫でる。
「ボソッ……作ったの私なのに…」
「え?なに?」
姉が小さい声でなにか呟いたが聞こえなかった。
「べつに、なんでもないよ早く食べよう」
「うん…」
てゆうかテーブルに三人並んで食べるって変な感じだな……いつもならテーブルを挟んだ俺の前に座るのに今日は何故か横に座ってきた。

309:心の隙間
09/01/04 05:45:44 QUwcrSkA
姉の行動の意味がわからないので放置する。
よく解らないことに口をだすと、後々変なことに巻き込まれそうだからだ。

凪は少し距離を置いて座っているが姉は太ももが密着してる状態なので、非常に食べにくい。
「姉ちゃん…ちょっと食べにくい」
「…」
たまに姉は頑固として言うことを聞かない時がある。
今がその時なんだけど。
俺が横に少し移動をすると姉も膝を上げ正座の状態でススッと移動してくる。
一度それを繰り返したことがあるが最終的に膝の上に座られた。
(凪は料理に夢中だな。)
凪はさっきとは違い、余程お腹が空いていたのか、花より団子と言った感じだ。
(美味しそうに食うな……ほっぺたに米粒がついてる)
妹ができた気分で嬉しくなる。
「凪ちゃん、ほっぺにお米ついてるよ」
凪は慌てて米粒がついていない反対の頬を触る。
「そっちじゃないよ、取って上げるね」
そう言うと口元についてる米粒を人差し指でとってあげた。
「ありがとうお兄ちゃん!」
「どういたしまして」
そんなやりとりを一部始終見ていた女が一人
おもむろに茶碗に手を伸ばしご飯を手で一掴み。

「ピトッ…ピトッ…ピトッ…」


310:心の隙間
09/01/04 05:46:25 QUwcrSkA
「姉ちゃん……」
どんだけ腹へってたんだ…
凪の米粒を取って振り返ると、料理を食べる訳でもなく口の周りの米粒を取るでもなく前を向いたまま動かない姉ちゃんがいた。

いや目だけはこっちをチラチラ見ている。
「……(取れって意味だよな)ね、姉ちゃんも米粒ついてるよ、ほら)」
一つずつ取ってやると
「あっほんとだ!ありがとう」
と胡散臭さ抜群の返しをしてきた。
なにをしたいのか、今一解らないが早く食べたほうがよさそうだ。
残っている料理を素早く食べると10分後に姉と凪も食べ終わった。
「いや~美味しかった!!ごちそうさま」
「ごちそうさま」
「はい、ごちそうさま」
姉が纏めて食器を流し台に持っていく。
「ふぅ~食った食った。」
「お兄ちゃん、ありがとう美味しかった。」
「俺が作ったんじゃないけどね、お姉ちゃんに御礼いっときな」
「うん、ありがとうございました!、ものすごく美味しかったです!!。」
凪は台所の姉に向かって御礼を言った
「そう、喜んでくれて嬉しいわ」
姉も洗い物をしながら凪に言う。

311:心の隙間
09/01/04 06:13:06 QUwcrSkA
―やっぱり家族が多ければ楽しい。
思い出すな……
(父さんと俺と姉ちゃん、いつも楽しかったな。)

父から色々なものを貰った。
思い出やプレゼント、土日になれば俺と姉ちゃんのために、どこにでも連れていってくれた。

周りから見たら「甘すぎる」かもしれない。
しかし俺はそんな父の優しさ、背中の広さ、人に対する心遣いをこの目で見て育った。
だから凪もほっとけなかった。
父なら同じようにしたと思うから…。

ただ唯一父が激怒したことがある。
離婚する時に言った「あの人」の言葉「勇は連れていく」
その言葉に父は「ふざけるな!!姉弟を離ればなれにさせる訳にはいかない!絶対に俺が育てる!!」

ある日「あの人」が俺にしていたことを父は知った…いや、見てしまった。
そのことが離婚の引き金を引いたのだから正義感強い父の性格上、絶対に渡すわけにはいかなかったのだろう。
そんな父にいくら感謝をしてもしきれない。

感謝をしたくても、もう親孝行すらできない。

312:心の隙間
09/01/04 06:13:40 QUwcrSkA
父のことを考えると涙が出そうになる。
「勇、お湯を沸かしたから、お風呂入ってきなさい。」
姉の言葉で現実に引き戻される
「うん、わかった」
眠気が襲ってくるので早く風呂に入ろう」
ソファーから立ち脱衣場に足を進めようとすると凪もついてこようとする。
「……今からお風呂入るんだよ?先に凪ちゃん入る?」
(こんな時にもレディーファーストしなきゃいけないのか…)
「……お兄ちゃんと入る」
その瞬間ガシャーンッ!!と大きな音が鳴り響く。
「姉ちゃん大丈夫!?怪我ない?」
フローリングには皿が割れて飛び散っている。
拭いている途中で手を滑らせて落としたらしい。

一瞬姉ちゃんが停止したが我を取り戻したのか慌てて皿をかたづようと、しゃがみ込む。
「ごめん、ちょっと手滑っちゃった」
「怪我がなければいいけど、気をつけてね」

下に落ちた皿の破片を全部拾いゴミ箱に捨てる。

「んじゃ風呂行ってくるね」
「まって!!凪ちゃんと一緒にお風呂入るの!?だ、だめ!!駄目だからね!!」
姉がえらい剣幕で話しかけてくる。

「わかってるよ……凪ちゃん、ごめんね?お風呂は一人で入ってくれる?」
流石に一緒には入れない。


313:心の隙間
09/01/04 06:14:12 QUwcrSkA
凪は露骨に嫌な顔をした。
「まぁ、風呂ぐらい入れるだろ?先に入っておいで。」
凪を風呂場に連れていく。
「……」
完璧、膨れてるな……
凪は下を向いたまま勇の手を取り風呂場に向かう。
「まぁ、こればっかりはちょっと許してね」
凪の頭を撫でる。
「……それじゃ、お風呂出るまでここにいて」
「ここって脱衣場なんだけど…」
「うん、すぐに入るから」
そう言いながら服を脱ぎ出す
「ちょッ!まッ!まって!!」
脱衣場から出ていこうとすると
「やッ!ダメダメ!!ここにいて!!」
ガシッ!と凪が背中にへばりついてくる。
「わっわかったから!!早く背中から離れて!!」
そう言うと凪は勇の手を掴んだまま服を脱ぎだした
「もう、服脱いだよ」
「う、うん、それじゃ、お風呂に入って(小学生相手にアホか俺は!)」
「逃げない?」
「に、逃げないよ!」
「絶対に?」
「ぜ、ぜったい!」
「……」
やっと解ってくれたのか風呂場に入ってくれた。

「ふぅ……疲れた」
一人になり一気に肩の力が抜ける。

「お兄ちゃんそこにいる?」
「ちゃんといるよ~」
……今日はなかなか休めないな。

314:心の隙間
09/01/04 06:14:50 QUwcrSkA
凪が出た後は俺だ。
流石に脱衣場から出ていってほしいと言ったら
顔を真っ赤にして脱衣場から出ていった。
見られるのは大丈夫なのに見るのは恥ずかしいのか?
よくわからない…
なるべく早く身体を洗い頭を洗う。あまり湯につかることができなかった。
「―お兄ちゃん、まだ?」
「もう出るよ、ちょっと待ってね」
脱衣場の扉の前で待ってるのか…
凪を待たすと風邪を引きそうなのでさっさと身体を拭き、服を着て、姉に出たことを伝えにいく。
すると、姉は入る用意してたのか、すぐに風呂場に直行した。
俺と凪はリビングのソファーに腰を掛け、テレビを見ていたが凪がウトウトしている。
時計を見るともう22時だ。
流石に小学生に22時は無理があるな
「凪ちゃん、眠たい?それじゃ寝よっか?」
「………うん。」
ボーッとしているのか声が小さい。
「それじゃ二階に行こうか?」
凪をつれて二階の勇の部屋に向かう
(凪をベッドで寝かせて俺はソファーで寝よう、明日休みだし大丈夫だな)
2人とも頭で考えることは同じ、「早く寝たい」これだけだ。
ただ凪の思考には純粋なオマケがついてくる。




(お兄ちゃんと早く寝たい。)

315:名無しさん@ピンキー
09/01/04 13:13:38 IWaudGV3
GJ!!!!!!
凪の依存度が増えていくw



もう7時間も正装でまってるんだが続きは無いのか
この寒い中、裸に靴下ネクタイはきついんだが

316:名無しさん@ピンキー
09/01/04 19:27:48 AodhF/hW
GJ!!

胸にキュンキュンくるww

317:心の隙間
09/01/04 20:50:08 QUwcrSkA
>>315
寝てましたw
まだ続き書いてないので出来次第また来ますね
あと服着て待っててくださいw

>>316
ありがとうございます
まぁ携帯なんでちょっとずつになりますがなるべく早く頑張ります

318:名無しさん@ピンキー
09/01/05 09:42:02 A8vWONKk
>>317
PC持ってないの?

319:名無しさん@ピンキー
09/01/06 00:59:32 NMNblGtY
しかし依存スレでなければ登場人物の命が心配なレベルw

320:心の隙間
09/01/06 06:56:13 HeA4JfUN
―お父さん…



いつもある「毎日」が一本の電話で音を立てて崩れ落ちた。
お手伝いさんのヒソヒソ声が、偶然扉越しに聞こえてしまった。
ハッキリと聞こえた「事故」、「即死」と言う言葉。
トラックとの接触事故らしいがどうでもいい……
お父さんがいなくなった今、私の居場所はもう無かった。

お母さんはいつも忙しく、私の周りのことは、全部お手伝いさんがしてくれた。
だからお母さんとの思い出がまったくない。
だけどお父さんは違った、忙しいけど暇をみつけては私と一緒にいてくれた。
夜寝る時も、私が寝るまで側にいてくれた。
私の大好きなお父さん。

なのになんでだろう……
お父さんの葬式の時も、お父さんが火の中に入れられるのを見た時も、涙は出なかった。

なんでだろう―お父さんの顔が思い出せなくなっていた。

321:心の隙間
09/01/06 06:56:41 HeA4JfUN
お父さんの葬式から5日も経てば、周りのみんなは、なにもなかったかのように普段の日常を取り戻していた。
私だけ日常に戻れず、学校と家の行き帰りだけになっていた。
外に遊びに行くわけでもなく、家でなにかするわけでもなく、窓の外を見るだけ。
お父さんの部屋の前に行ったが扉を開けようとすると手が震えて開けられなかった。
扉を開けてお父さんがいなければ、私は多分泣き叫ぶと思う。
いや…絶対に壊れるという確信があった。
だからお父さんのことは、頭では解っていたけど心が現実を拒んでいた。
お父さんがいないこの家は私の家ではない……

どうせお母さんは私のことを探さない。
そう思うと行動は早かった。
財布とお父さんから貰った携帯以外なにも持たず家を飛び出した。

―なにも考えず歩いた。
夕方になり空が薄暗くなるとカラスが鳴き始める。

財布の中を見てみると千円と小銭がちょっと
「…」
近くのコンビニで肉まんを買いまた歩き始める。
「寒い……ここどこだろ…」
なにも考えずに、歩いて来たため、ここがどこかまったくわからなかった。

トボトボと歩いていると近くに自販機が見える
「…なにか暖かいの飲もう…」


322:心の隙間
09/01/06 06:57:15 HeA4JfUN
自販機の前に立ち、財布から千円札をだそうと手をかけたその時。

後ろから図太い男の声が聞こえた。


「ねぇ、どうしたの?…… 」
いきなり声をかけられたので、ビックリしてお金を下に落としてしまった
「あぁ…ごめん、怖がらせちゃったね。」
振り返ると小太りの30代の男の人が立っていた
「うぅ…あの、えっと…わたし…」
「大丈夫だよ、おじさんがとってあげるよ」
そう言うとしゃがみ込んで千円札を拾う。
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」

御礼を言うとまた自販機に向き直る。
なにも買わずに走って逃げたら怪しまれると思って手が震えるのを我慢し、千円札を入れる。
「髪になにかついてるよ……」
そう言うとり小太りの男は髪を触ってきた
「ありが……ざいます…」
背筋がゾッとする
(早く逃げなきゃ!!)
ジュースを買い、とるためにしゃがみ込むと
男の手が肩に置かれる。
「夜遅いから……家まで一緒に行ってあげるよ。」

この瞬間、身の危険より、家に送り返されることが頭が浮かんだ。
「やッ!!」

ジュースもお釣りも取らず、走って逃げようとした。
ガシッ
「まってよ…大丈夫だからね?こっちおいで」

腕を掴まれ、恐怖で足が動かない。

323:心の隙間
09/01/06 06:57:44 HeA4JfUN
「それじゃ、僕の家においでよ…」
凪がピタッと止まる。
それを見た男は、汚らしい笑顔を浮かべた。
「……家?」
私がこの人の家に行く?
「そう……遊ぼうよ」
意味がわからない、私を家に連れて帰るんじゃないの?
「遊ぶってなにして?」
「楽しいことだよ」
男はニコッと笑って頭を撫でてきた。

本来なら嬉しいはずが、男の行為すべてに嫌悪感しか抱けない。
この時になってやっと本当の身の危険を感じ取った。
(この人おかしい…ついて言っちゃダメだ!)
男が凪の頭を撫で終わった直後、男を両手で、力いっぱい突き飛ばした。

すると男は、中腰で立っていたため、女の子の力でも勢いよく派手に転んだ。
その隙に凪は、男の横を全速力で走り抜けた。
男もすぐさま立ち上がり、追いかけようとしたが凪の足の速さに勝てる訳もなく、ただ呆然としてるだけだった。

324:心の隙間
09/01/06 06:58:16 HeA4JfUN
―後ろを振り返らず、がむしゃらに走った。
「ハァ…ハァ…ハァ」
どれぐらい走ったかわからないが、追っかけてくる足音も声も聞こえない。
後ろを振り返ると誰もいない、
「……はぁ~怖かったぁ」
安堵か恐怖か解らない足の震えが来る。
「これからどうしよう、お金もう無いし…戻るのは嫌だし。」
お釣りを置いてきてしまったので財布は空っぽだ。

またトボトボ歩き出す。
(私このまま死んじゃうのかなぁ?…そしたらお父さんに会えるかな…)
ふとそんなことを考えながら歩いていると
視界に薄暗い公園が入ってきた。

空を見上げればもう真っ暗だ…
無論公園には誰もいない。

夜の公園は怖いが仕方がない。
街灯に照らされている一つのベンチが目に入る。
(歩くの疲れた…ちょっと休もう)
フラフラになりながらベンチに腰を落とす。

(少し休んだらまた歩こう)

どこに?

(はぁ…心配してるかなぁ)

だれが?

(………)

私を心配する人や、帰りを待ってる人なんて、誰もいない。

325:心の隙間
09/01/06 07:04:16 HeA4JfUN
「……お父さん」
公園で遊んでいれば迎えに来てくれた。
「…ウッ…グスッ…」
いつも私の頭を撫でてくれた
「お父さんに…会いたい…」
顔を思い出せないんじゃなくて、思い出したくないんだ……
(お父さんが探してくれるまでここにいよう……お父さんなら見つけてくれるはず)
今は、唯一この街灯の照らす光が、私の居場所。


お父さんのことを考えていると、少し遠くから小さな声が聞こえる。
お父さんの声ではないので私ではない。
しかし足音は公園内に入ってくる。
(もしかして……追いかけてきた?)
嫌な汗がでる。
(ヤダ、怖い!逃げなきゃ!!)
そう考えていると視界に靴のつま先が入ってきた。
(もうダメ!逃げれない!!)
ギュッと目を瞑り膝を強く抱え込む。



―「大丈夫ですか?なにかあったんなら警察呼びますか?」

326:心の隙間
09/01/06 07:06:20 HeA4JfUN
―あの人じゃない?
聞こえてきた声はもの凄く優しい声だった。
お父さんと同じ優しい声
何故か分からないけど、その人の顔を見たくて自然と目線が上がる。

お父さんに似てる…
顔や背格好が似てる訳じゃなく、雰囲気がお父さんに似てる。
「帰るお家ない…お父さんいなくなっちゃったから」

なぜこの人にこんなこと言ったんだろう…自分でもよくわからない
ただこの人が、本当に心配してくれてるのが声でわかった
こんな優しい声を私にかけてくれる人なんて、お父さん以外にいなかった。

気が緩んだのか見知らぬ人の前で私は泣いてしまった。
私が急に泣き出したのを見て、男の人が困惑してるのが分かる
だが感情が溢れかえってる今、涙を止めることはできなかった。
オロオロしながら男の人が私に言う
「それじゃお巡りさんに助けてもらおっか?」

おいて行かれる!!
「嫌!お兄ちゃんも私を置いてどこかいくんでしょ!?」


327:心の隙間
09/01/06 07:10:41 HeA4JfUN
言い終わった後にハッとなった。
(もうダメ…私おいていかれる…)
「こんな暗いとこに置いていくわけないだろ?一緒にお巡りさんのとこまで連れていってあげるよ」

考えていたことと違った答えが返ってくる。
どうしたらいいか考えていると、彼が私にスッと手を差し伸べてきた。
(…握ってもいいのかな?)
少し警戒したが思い切って手を握る。

(……暖かい)
手袋もせず、何時間も真冬の夜の街を歩き回っていたから手の感覚が無かった。
「どうしたの?早くいこ?」
手の暖かさを感じていると声をかけられた。

「嫌、お巡りさんのとこにいくとあの家に連れていかれる…」
「家があるの?なら帰らなきゃ心配するよ?お母さんだって今頃探してるかも」
「あの家に帰るならもうここでお家つくるもん!!」

感情的になって繋いでいた手を離してしまった。
(手……離れちゃった…)
よくわからない感情がこみ上げてくる。

もう一度手を繋ぎたい、そう思いながら彼の手を見ていると。
「キミが嫌じゃなかったら一晩だけ家にくるかい?」

328:心の隙間
09/01/06 07:15:33 HeA4JfUN
―え?今なんて?私がこの人の家に行く?…

(さっきのおじさんと同じこと言ってる…どうしよう、でも…おじさんみたいに嫌悪感がまったく感じられない。)

父の顔色ばかり伺う人を見てきたからなのか、上辺で話してる人と、心から話してる人の区別がつく。
「ここじゃ寒いでしょ?風邪引くし寝る所ぐらいなら用意するよ?」

でも…もう、私にはこの人しかいないんだ。
「いいの?迷惑じゃないの?」
「大丈夫だよ、てゆうかキミをここに置いていったら心配で眠れないから」
彼が優しい笑顔で答えてくれる。
思わず嬉しくなって抱きついてしまった。
彼は倒れそうになるのを支えてくれた。
(お兄ちゃん…)
何時間もかけて、ここまで歩いてきた理由がやっとわかった…。



―この人に会うためだ。

329:心の隙間
09/01/06 07:18:00 HeA4JfUN
終わりです(-.-)zzZ
仕事行ってきまーす。
では

330:名無しさん@ピンキー
09/01/06 09:01:40 4fqB5ygN
超GJ!!
凪ちゃんは頭いい子なんだなー。語彙がすげぇ
これからも楽しみにしとるよ

331:名無しさん@ピンキー
09/01/06 23:11:29 HeA4JfUN
>>318
もってないですね、PC使うことがないんで。
>>330
ありがとうございます。
俺ばっかり書いてるけどあんまり書きすぎると、他の人投下しにくくなるかな?

332:名無しさん@ピンキー
09/01/07 01:23:14 zLfw8c9e
自己主張はほどほどにしといたほうがいいと思うよ。

333:名無しさん@ピンキー
09/01/07 01:37:35 Ff5SGBw1
>>332
OK、気をつける


334:名無しさん@ピンキー
09/01/07 01:40:14 xnHVUBCc
>>331
丁寧に個別にレスしたりしていると、たまに変なのに絡まれて面倒なことになるんで
気をつけた方が良いよ、作品に直接関係しないようなことで作者さんの意見やら個性を出すと
付け込まれる恐れがある

あと、今ここで書いてくれているのは貴方の他はゲーパロ氏しかいないから特に遠慮する必要はないかと

335:心の隙間
09/01/07 06:01:09 Ff5SGBw1
―はぁ……どうするかな。

勇は今、少し困った状況に追い込まれている。
「凪ちゃん…ベッドは一つしかないんだよ?小学生の凪ちゃんと違って身体が丈夫だから俺がソファーで寝るよ。」
「だからさっきから言ってるでしょ?このベッドを2人で使おうよ。」

勇の部屋に入った2人は、ベッドで2人で寝るか、1人で寝るかについて押し問答している。
凪の意見は、「お兄ちゃんがソファーで寝るなら私がソファーで寝る、それが嫌なら2人で寝たい」

勇は「凪ちゃんはお客さんだからソファーで寝てもらう訳にはいかない、風邪でも引かれたら困る、一緒に寝るのは反対」
凪の本音は「2人で寝る」しか選択肢が無いのだが
勇も一筋縄ではいかない。

なにもないとは言い切れる……が、如何せん姉が許すわけがない。

家に連れてきただけでも、犯罪臭がするのに、一緒に寝るとなったら……
「それじゃ横にいてあげる、じゃダメ?」
「ダメ」
即答。
はぁ…
ため息がでる
なにを言っても最終的には「一緒に寝る」に行き着いてしまう。
どうしたものか。

336:心の隙間
09/01/07 06:01:45 Ff5SGBw1
―早くしなきゃ…あの人がくると、確実に一緒に寝るのは無理になる。
多分あの人は私のことを良く思っていない。

話しかけられた初めの声で解った、お兄ちゃんは気づかなかったが、あの罵倒の言葉は私にぶつけていた。
お兄ちゃんのほうを見ていたが、すべての罵倒は私に容赦なく突き刺さってきた。
あの人の私に対する感情は、憎悪しか感じ取れなかった。
食事もお兄ちゃんに言われなければ、私に出すことは無かったと思う。
(ものすごく、美味しかったけど)
だから、怖くてあの人の顔もまともにみれなかった。

―お父さんによく使っていた最後の手段……
純粋なお兄ちゃんには使いたくない作戦だけど、しょうがない。
勇が凪を説得してる途中、凪は下を向き、肩をフルフルと震わす
「……凪ちゃん?」
お兄ちゃんが心配して声をかけてくれる。
罪悪感がでるけど、お兄ちゃんのガードが堅すぎる。
「グスッ……お父さんがいつも一緒に寝てくれてたから寂しくて…グスッ…ごめんなさい」

下を向きながら泣いてる真似をする…
(お父さんは私の泣き真似でいつも騙されてた…)
お兄ちゃんこれで「一緒に寝る」っていって!!お願い!!!

「……凪ちゃん…」

337:心の隙間
09/01/07 06:02:42 Ff5SGBw1
凪ちゃん……



泣き真似下手すぎたろ………
凪は下を向いて一生懸命泣き真似をしている。
泣き真似をする前の、「閃いた!!」みたいな前フリから始まり、小さな手の平で顔を隠しているが、指の隙間から時々チラッとこちらの様子をうかがっている。
隙間から見える横顔が一生懸命なので、本気で俺を騙せてると思ってるらしい。……
(はぁ……この歳で姉ちゃんと同じようなことをしてくるのか…いや、姉ちゃんの精神年齢が幼すぎるのか…)
2人とも騙すならしっかりと騙してほしい…
変なことを考えていると、階段を上がってくる足音が聞こえる。
この家には今3人しかいない。
凪と俺はここにいるので、必然的に階段を上がってくるのは姉になる。
階段を上がり、勇の部屋の前で足音が止まる。

コンコンっ…
「勇…入るわよ?」
ノックをした後、姉の静かな声が聞こえる。
「うん、いいよ」
姉は、入ると言っても俺からOKがでない限り絶対に入ってこない、まぁ普通かもしれないが、朝これで何度遅刻したことか。

338:心の隙間
09/01/07 06:03:17 Ff5SGBw1
ガチャッと扉が開くと、パジャマ姿の姉が入って来た。

風呂からでたばかりなのだろう、髪から湯気が出ていて、石鹸とシャンプーのいい匂いがする。
「勇、その子の布団をお父さんの部屋に敷いたわ」
「あぁ…うん、凪ちゃんどうする?」
「グスッ……」
「それ………私に通用すると本気で思ってるの?…」
凪がビクっとする。
「姉ちゃん、怖がらせちゃダメだよ」
「……」
どうしよう…ややこしくなってきたな。
「私…お父さんと寝てたから…一人で寝れない…お兄ちゃんと寝たい」
「ダメに決まってるでしょ?なに考えてるの?…てゆうかなにベッドに座ってるの?そこは私とゆッ」
「姉ちゃん!!」
今度は姉がビクッとなる
「はぁ…わかった、それじゃ今日は凪ちゃんと一緒に寝るよ」
凪の顔がパァっと明るくなる
逆に姉の顔は青ざめていた。
「ただし、姉ちゃんもこの部屋で寝ること。
ベッドの横に布団を敷いて同じ部屋で寝れば、姉ちゃんも俺のこと監視できるでしょ?だから今日はこの部屋で三人で寝る。」

まぁ姉から言ったらなんで私が?って感じだろうが、正直これぐらいしか思いつかない。

339:心の隙間
09/01/07 06:04:17 Ff5SGBw1
お風呂に入っていると二階に上がる足音が聞こえた…

一つは聞き慣れた落ち着く足音
もう一つは聞きづらい小さな足音…だが心に重くのし掛かる足音。
嫌な予感がする。
いつもは念入りに身体を洗うのだが(勇と寝る時は特に)素早く頭と身体を洗うと、身体をてきとうに拭き、ドライヤーで乾かさずに勇の部屋に直行した。
勇の部屋の前に立つとノックをする。

コンコンっ…
「勇…入るわよ?」
勇の返事を待つ
「うん、いいよ」
勇の返事を聞き中に入るとあの子が勇のベッドに座っている
(勇と私のベッドよ?)
心の声がでそうになるのをおさえて勇に言う。
「勇、その子の布団をお父さんの部屋に敷いたわ」
本当はまだ敷いてないけど、この子を早くベッドから降ろさなきゃ。
「あぁ…うん、凪ちゃんどうする?」
「グスッ……」
この子…やっぱり勇しか見てない。
「それ………私に通用すると本気で思ってるの?…」
(フフ…よく私も使うけど、嘘泣きで騙せるのは勇だけよ)

「姉ちゃん、怖がらせちゃダメだよ」
「……」
勇に言われるとなにも言えなくなる。


340:心の隙間
09/01/07 06:04:44 Ff5SGBw1
「私…お父さんと寝てたから…一人で寝れない…お兄ちゃんと寝たい」

は?なに言ってるのこの子?

「ダメに決まってるでしょ?なに考えてるの?…てゆうかなにベッドに座ってるの?そこは私とゆッ」
「姉ちゃん!!」

私と勇のベッドと言いかけたところで勇が私を睨む。
…勇に嫌われることをなにより嫌う私からすれば、勇に睨まれただけで心臓を掴まれた錯覚に陥る。
「はぁ…わかった、それじゃ今日は凪ちゃんと一緒に寝るよ」


いま……なんて言ったの?勇が他人と寝る?、何故?、勇を怒らせたから?、今日は私と寝る日じゃ……
思考が追いつかない。
勇がなにかを言ってるがなにも聞こえない……聞こえるのは自分の心臓の音だけ。
私の目は勇しか写らないはず……。


なのに見えるのは、勇の優しい顔ではなく。
初めて私にむかって笑みを浮かべる凪の笑顔だった。

341:名無しさん@ピンキー
09/01/07 06:11:45 Ff5SGBw1
>>334
忠告ありがとうございます、気をつけます。

今日はちょっと少くなくて申し訳ないです。
人がいれば仕事終わりか明日の朝に投下します。
では

342:名無しさん@ピンキー
09/01/07 06:57:48 /Xa6pOPv
GJ!! 私もこれから仕事なので良い活力剤になります。


343:名無しさん@ピンキー
09/01/07 08:29:04 /Xa6pOPv
GJ!!
まさか姉が、ナンパされたくらいで泣きそうになるのに
そんな気の強いキモ姉だとは思わなかった。

344:名無しさん@ピンキー
09/01/07 09:00:58 pvBWrQZR
GJ!!


345:名無しさん@ピンキー
09/01/07 10:57:47 QYwMtuNM
下手な泣き真似萌え。姉にもいいことありますように! GJ!

346:名無しさん@ピンキー
09/01/07 15:23:56 x+gfQrz7
(つД⊂)エーンエーン
(つД・∩チラッ

347:名無しさん@ピンキー
09/01/07 17:50:31 a0Nxyz5p
いい仕事だ

348:名無しさん@ピンキー
09/01/08 08:35:09 QQhTbCfm
そろそろ来るかな

349:心の隙間
09/01/09 03:39:04 CXTYMzZR
――1年前――



「……勇、男の子だろ?もう泣くな」

「イヤだ!!お父さん、いかないで!!!」

「勇が…麻奈美(まなみ)を守らなきゃ駄目だぞ…」

「うぅ…お父さ…まってよ……」

「麻奈美……」

「……お父さん」

「今まで苦労かけてごめんな…これからも苦労をかけるだろうけど……勇を……頼んだからな……」

「……わかったわ」

「わかったってなんだよ!!!お父さんも頑張って!まだお父さんと、したいことがいっぱいあるんだ!」

「二人とも……俺の子供に産まれてきてくれてありがとう…幸せだったよ…」

「まってよ!!お父さん!!!」

「勇………」

「イヤだ!!お姉ちゃん、離してよ!!!」


(お父さん………。
勇は私が守るから…安心して)


350:心の隙間
09/01/09 03:40:36 CXTYMzZR
―父の葬式には、たくさんの人がきた……。

職業、年齢、性別は幅広く、父が知人にどれだけ愛されていたかわかる。

そんな、老若男女が集まれど、思う気持ちは皆一緒だった。

棺桶にしがみついて離れない小さな女の子。

―おじさんを連れていかないで!!

泣き叫ぶ子供の頭を撫でながら、「ありがとう」と言う。
でないと自分が崩れ落ちてしまう。

この女の子と同じように、父にしがみつき、泣きたかった。
もっと甘えたかった…
遊びたかった…
怒られたかった…
一緒に居たかった………

怒りか悲しみか解らない感情が溢れ出そうになる。

「………姉ちゃんは守らなきゃ。」

最後に父から言われた、
―麻奈美を守れ……
もう家族は姉ちゃんしかいない、俺がしっかりしなきゃ駄目だ。
姉を見ると忙しなくテキパキと行動している。

その後ろ姿を見ると心から感心する。

351:心の隙間
09/01/09 03:43:17 CXTYMzZR
外にでて空を見上げる。

雨が降りそうな曇り空。
昼間なのに日差しがまったくなく、冬独特の乾燥した風が肌寒い。

「……家に帰りたい」
ここから歩いて帰れば30分で帰れる。
でも姉をおいて帰るわけにはいかない。
帰ったら一人になる、それだけは避けたい。

「勇、外寒いよ?中入ろうよ」
自販機で買ったコーヒーを、ベンチで飲んでいると、姉が探しにきた。
「うん、わかった。」
飲み終わったカンをゴミ箱にむかって投げるがゴミ箱からハズれる。
チッと舌打ちしながらカンを拾いにいくと、女性に拾われゴミ箱に捨てられる。
「あっすいません、ありがとうございます。」
慌てて頭を下げ御礼を言う。


「勇……大きくなったわね、三年ぶりかしら?」
どこか懐かしく、優しい声。
「もう、中学3年生になったんだね…」

俺の頭に女性の手が近づいてくる…頭を触られた瞬間、昔の記憶がフラッシュバックする。

全身から脂汗と震えが止まらない。

「勇に触らないで!!」
姉が俺と女性の間に割り込んできた。
「あら…麻奈ちゃん、いたの?あなたも大きくなったわね」

女性がニコッと笑い姉に言う。

「今更なにしにきたの……お母さん」

352:心の隙間
09/01/09 03:46:23 CXTYMzZR
「お父さんに会いに来たのよ」

「ふざけないで!!!お父さんと会ってどうするのよ!?もう関係ないでしょ!!」

「最後のお別れを言いに来ただけよ…」

「ふざけっ「いいですよ…父は中にいますから、どうぞ」
姉の言葉を制して母に言う。
「勇!!!」
「ありがとう、案内してくれる?」
最終的にはどうせ親戚が母を中に入れるので、ここで言い合ってても仕方がない
姉は母を父に近づけたくないのかイラついた雰囲気を醸し出している。

母を父が眠る場所まで連れていくと親戚の目が母に向く。まったく気にならないと言った感じで父に近づき、父の顔をのぞき込む。
「あなた……死んでも優しい顔をしてるのね」
母が父の頬を優しく撫でながら呟く。

「本当に、ごめんなさい…」

母の涙をはじめてみた……それは後悔の涙なのか、悲しみの涙なのかわからないが、それを見た瞬間、今まで母にされたことが嘘みたいに「昔の思い出」となった


353:心の隙間
09/01/09 03:48:11 CXTYMzZR
お母さん元気かな……
一年前の葬式以来まったく会っていない。

葬式の後の半年間は姉に辛い思いさせた。
自分が姉に依存してることに半年間も気づかないなんて……。


―「てゆうか、凪ちゃん……早く寝ようよ…」

さっきまでは半分眠てるような顔をしていたのに、ベッドに入るが寝る気配がない。

「お父さん以外の人と寝たことないから……恥ずかしい…」
「今更はずかしいの?さっきまでは普通だったじゃん。」

顔を真っ赤にして布団を頭まで被ってしまった。
そのくせ掴んでる俺の手は離さない。

まぁ年頃なんだろうな……

姉が布団を取りに行ったが部屋を出ていく時に「忘れてる…」と呟きながら部屋を出ていった。

なにかを忘れたみたいだ
よくわからない。

まぁいろいろあったがやっと寝れる!!
明日は凪を帰さなきゃならない。
たぶん今日よりもっと疲れるだろう。

354:心の隙間
09/01/09 03:49:33 CXTYMzZR
―勇は完璧に忘れていた。

私と一緒に寝る約束。
私が人生の中で一番楽しみにしている至福の時。

今日会ったばかりの子にもっていかれた…
一年前、葬式の帰り際、母に言われた言葉。
「私と同じ苦しみだけは味わわないように」の意味が今ではなんとなくわかる気がする。

母も勇を愛していたのだろう…しかし勇は父に愛情を求めた。
結果、母の嫉妬心から愛が歪み、勇を縛った。

母はよく勇にキスをしていたみたいだが、キスでは飽きたらず、その先に踏み込もうとして父にバレたのだ。
自業自得。

私は母のようにはならない、勇を傷つけない。
私が勇を守る。
勇が言ってくれた
「お姉ちゃんは俺が守るから。」
この言葉を聞いて私は決心した。

勇と生きていこうと。

355:心の隙間
09/01/09 03:52:34 CXTYMzZR
……早く布団もっていかなきゃ。

こうしてる間にも私の居場所が無くなっていく。

父の部屋から強引に布団を掴むと階段を走り、布団を引きずったまま勇の部屋にむかった。

勢い良く扉を開けると二人はまだおきていた。
(小学生…おめめパッチリじゃない…)
さっきまでウトウトしてたのに…早く寝てほしい…。
そしたら勇を嘘泣きで私の布団に連れ込もう。
私自身我慢ができなくなっている、早く勇と寝たい!!

頭の中はそのことでいっぱいだ
「それじゃ、電気消すわよ?」

パチッと壁のボタンを押すと部屋が真っ暗になる。
「姉ちゃん豆電球にして。」
凪のことを考えてだろう。嫉妬心が沸き上がってくる
(ダメ、私はお母さんとは違う)
自分に言い聞かせ豆電球にしてから布団に入る。

布団をベッドに極限まで近づけている為、なにをしても止めに入れる。
勇は信用できるけど……凪は危ない。
私がいる限り勇には手を出させない。



てゆうか、豆電球ってなんであんなに心地いい光なんだろう……布団暖か…い…




「………zzZ」




「姉ちゃん……よっぽど疲れてたんだな。」

356:名無しさん@ピンキー
09/01/09 03:54:55 CXTYMzZR
遅くなって申し訳ないです……
今日も少なくてごめんなさい。
多分夜には続きかけると思います。


357:名無しさん@ピンキー
09/01/09 10:09:18 /lAq8iRv
GJ!!
姉ちゃんに萌えた!!

358:心の隙間
09/01/10 03:06:24 m1Fu2zaR
―寝てしまった……

携帯の時計を見るともう3時だ。
0時ごろから記憶が無い…
計算すると三時間、2人の行動を見逃したことになる。

ふと上に視線をむけると、いつの間にか豆電球の光が消えている…
だか、窓から射す月明かりの光が、部屋の中を照しているので、薄暗くてもある程度見えている。

音を立てず上半身だけ起きあがると、ベッドに目をむける。…
「勇?」
「…ウ…ン…」
(かわいい…)
携帯の液晶の光を勇にむけると眉間にシワがよる
少し眩しそうに顔を隠してしまった。

微笑ましい…
(お母さんが手を出すのも……唇触るぐらいなら…)
と考えるが頭を振り邪念を振り払う。
(勇のトラウマになるわ!!それだけはダメよ…)

悪魔と天使が頭の中で戦っていると、横に凪がいないことに気がついた。
「…?」
あれ?どこに行ったのかしら
トイレにしては遅いし多分一人ではトイレまでいけない。

ふと勇のお腹あたりに目をむけると布団越しに膨れ上がってることに気づく。

359:心の隙間
09/01/10 03:10:18 m1Fu2zaR
勇の布団を少し下げてみる……

「………」

パチッ

なにも言わず立ち上がり電気をつける。
「う…う~ん…なんだよ姉ちゃん…眩しいな…」
「その子なにしてるの……」
「はぁ?………おわ!!」
勇もビックリしている、てことは勇も気づかなかったのか…
「zzZ」
凪は気持ち良さそうに勇の服に頭を突っ込み寝ている…そりゃ気持ちいいだろうね。
「凪ちゃん……どこに頭突っ込んでんの?」
「んえ?」
凪は変な声をあげて勇のシャツから頭をだす。
「寝ぼけてたの?服の中に頭突っ込んでたからビックリしたよ」
勇は笑いながら話してるが、私は顔がひきつりっぱなしだ。
私でも躊躇することをサラッとする…これが子供の特権だ。
勇が拒まないと解っているのだろう…なんの迷いもなく、勇の腕に抱きつく。

「……やっぱり布団は別々にするべきね」
「いや、もう大丈夫だろ、凪ちゃんも大丈夫だよね?」
「うん、もうちゃんと寝る」
「そう、それじゃ早く寝なさい」
(今日だけの我慢よ、私頑張れ!!)

また電気を消し布団に入る。
ふぅ……早く朝になってほしい。

360:心の隙間
09/01/10 03:13:36 m1Fu2zaR
―起きたのは朝の七時。

凪はまだ寝ているが姉はすでにおきている。
「姉ちゃん…目の下クマ凄いよ?寝てないの?」
「うん…見張らなきゃ…」
「俺そんなに信用ない?」
「勇じゃなくて……」
よくわからないが、あまり信用されてないようだ…少しショックだな。
「まぁ、いいや。朝ご飯食べようか?」
「うん、今から作ってくるね。」
(少しふらついている…大丈夫かな?)
凪を見るとニヤニヤしながら寝ている。
お父さんの夢を見てるのか、「お父さん」と言う寝言が聞こえる。

俺も葬式の後2ヶ月は父の夢をみた。

夢の内容は決まって同じだった。
父、俺、姉で手を繋ぎ、公園を散歩している。
楽しいが最後に父がいなくなる。
だから葬式の後の半年間、眠れない日が続いた。
寝たら寝ただけ父との別れがまっている。
それがなにより辛かった。

―窓の外を眺めていると、凪が眠たそうにおきてきた。

「よく眠れた?」
「うん、お父さんと寝てるみたいだった」
「ものすごく幸せそうな顔してたよ?なんの夢見てたの?」
「う~ん…わかんない…」
まぁ夢なんてそんなもんか。

361:心の隙間
09/01/10 03:15:07 m1Fu2zaR
今日は学校が休みなので私服に着替える。
凪ちゃんは来たときと同じ服なので着替える必要はない。
勇の部屋を出て、2人で一階のリビングに行く。
テーブルを見ると朝の食卓定番と言ったおかずが並んでいる。
「凪ちゃん、おはよう」
エプロンをはずしながら、姉が凪に挨拶をする。
「…おはようございます」
凪も眠たそうに挨拶をする。
テーブルの椅子に腰をかけると俺の横は凪、前に姉が来る。
昨日みたいに凪と姉に挟まれることは無かった。

朝飯を食べ終わり、ソファーに座ると凪もくっついてくる。
もうすぐ凪ともお別れだ、少しは凪のお父さんみたいに出来ただろうか…。

「……勇」
姉が急かすように言ってくる…。
「わかってるよ、凪ちゃん……携帯持ってるよね?」
「……」
意味が解ったのだろう、俺の手を離してうなだれる。
「家族の人……心配してるよ?迎えに来てもらおうよ」
「……」
「……凪ちゃん…あなたには帰る場所があるでしょ?」
「帰っても誰も私に興味がないもん…」
「心配しない親なんていないよ、」
「……嫌」
ふぅどうしたもんか……警察に電話すれば一番早いのだが。

「……凪ちゃん、あなたいい加減にしなさいよ…」

362:心の隙間
09/01/10 03:16:42 m1Fu2zaR
泣きそうになる凪に言い放つ。

「ずっとここにいるつもり?あなた一人の為に家族の人が探し回ってるかもしれないのに」
なぜか姉も俺のほうをチラチラみながら泣きそうになっている。
「私のことを見つけてくれたのはお兄ちゃんだけ…お母さんが探してくれるわけがない…」
「だから逃げるの?ずっと逃げ回ってるの?」

「……」

姉の発した言葉から凪は喋らなくなってしまった。

「……凪ちゃん、携帯かしてくれる?」
凪の頭を撫でながら問いかけるとなにも言わずポケットから携帯をだす。
携帯を開けると電源を切っているため画面が真っ暗だ。
「お母さんに電話するよ?」

もう無理だと解ったのか小さくコクッと頷く。
凪の携帯から母親に電話をしようとすると姉に止められる。
「勇より女の私のほうが相手を混乱させずにすむから、私が電話するわ。」
「うん、そうだね、お願い。」
凪の携帯を姉に渡す

「凪ちゃん、こっちにおいで。」
凪に向かって手招きをするが近寄ってこない。

あんまり言いたくないが仕方ない。

「……凪ちゃん、俺もお父さんいないんだよ?」

363:心の隙間
09/01/10 03:18:30 m1Fu2zaR
「……え!?お兄ちゃんもお父さんいないの?」
ビックリしたような顔をむけてくる。
「うん、お母さんもお父さんもいない、家族はお姉ちゃんだけなんだ」
「なんでお兄ちゃん元気なの?……寂しくないの?」
「俺も始めは逃げてばっかりだったんだ。寂しいし、時々会いたくなる。でもねお父さんと約束したんだ、家族を守るって。」
凪の目を見て話すと凪も下を向かず話を聞いてくれている。
「凪ちゃんも俺みたいに逃げちゃダメだよ?寂しかったらお母さんに言いたいことを言えばいいよ、ちゃんと聞いてくれるはずだから。」
「……わかった、頑張ってみる…」
「うん、頑張ってね、応援してるからね」
先ほどの落ち込んだ顔よりやや晴れた顔をしている。

唯一の理解者を亡くせば誰だって逃げたくなる。
ましてや小学生…辛いって言葉じゃ足りないだろう。


「お兄ちゃん………抱っこして。」
「うん、おいで」
凪を膝の上に乗せ頭を撫でると俺の肩に顔を埋めてくる。

「○○駅にいきましょう、迎えに来てくれるって。」
姉が電話を終えて、戻ってきた。
「それじゃ、凪ちゃん、いこうか?」
「うん!!」
家から駅につくまで凪ちゃんは俺の手を離さなかった。


364:心の隙間
09/01/10 03:21:52 m1Fu2zaR
―駅につくと、ベンチに座り車で来るらしい迎えを待つ。
大手会社のご令嬢を一日預かったのだ…なに言われるかわからない…
「……大丈夫よ、勇はなにも悪いことしてないでしょ?親御さんもわかってくれるわよ。」
顔にでてたのか姉に慰められた。

三人で雑談していると。
少し遠目に一台真っ黒の車がむかってくる。
「あっ!あれだ!!」
凪が立ち上がり黒い車にむかって指をさす。

「うっわ……」
小さな駅にふさわしくない車が到着する。
ガチャッと助手席から女性が降りてくる。
「凪!!!」
「お母さん…」
その女性は凪に近づくや否や凪を力一杯抱きしめる。
「痛いよ、お母さん…」

「バカ!!ものすごく心配したのよ!?もうあなたしかいないの…だからいなくならないで……」
「うん…お母さんごめんなさい……」

やっぱり子を心配しない親なんていない。これならもう大丈夫だろう。
凪と母親を眺めていると、母親が姉に顔をむける。
「本当にありがとうございます!!なんて御礼をいったらいいか……。」
「いいえ、警察のほうに電話をしようと思ったのですが事情が少しわからなかったので…携帯を持ってることにも今朝気づきまして電話をするのが遅れました」

365:心の隙間
09/01/10 03:25:47 m1Fu2zaR
姉が頭を深々と下げる。慌ててそれに続く。
「いいえ、あなたみたいな人に凪を見つけてもらわなきゃ…今頃どうなっていたか……」
「そう言っていただけると有り難いです。」
「なにか御礼をさせて頂きたいのですが…」
「いいえ、お気持ちだけで結構です。これから用事があるので。」

母親と姉の押し問答が続く。
その間に凪との別れをすませよう…

「凪ちゃん…身体に気をつけるんだよ?」
「…うん、わかった」
「よし、それじゃ握手ね。」
手を出すと凪も手を握ってくれる。
もの凄く疲れた一日だったが。なんだかんだで楽しい一日だった。
凪の目には涙が溜まっている。
「お兄ちゃん………しゃがんで」
凪の言われた通りにしゃがむ。
「目瞑って手を出して…」
「変なイタズラしないでよ?」
笑いながら目を瞑る。
「………お父さんにもしたことないから……」
え?と聞き返すと唇に暖かい感触が触れるのが感じられた。
驚いて目を開けると凪の頬は真っ赤だ。
母親は背中をむけていたので気づかなかったが、姉には見られた。姉の顔も違う意味で真っ赤だ。

366:心の隙間
09/01/10 03:28:26 m1Fu2zaR
―あの子、勇にキスをした……
自分の顔が怒りで熱くなるのがわかる。
ふざけるな!!私の勇なのに!!母親が来たんだからさっさと帰ればいいのに。
母親との押し問答もさすがに疲れた。
「勇…帰るわよ?用事があるでしょ?」
「用事なんかあったっけ?」
「(私と寝る約束よ!!)忘れたの?早く帰りましょ。それでは、娘さんとお幸せに」
勇を無理矢理に立たせて歩き出す。
「ちょっ、姉ちゃん、あっそれじゃ凪ちゃん元気でね!!!」
「うん!お兄ちゃん電話するね!!」

ピタッと歩くのを止める。
「電話?…番号をしってるの?」
「ん?昨日の夜中に番号を教えてって言うから教えたよ」

私の不覚だ……やっぱり寝なきゃよかった……早く家に帰らなきゃ……。
休みの日をもっと有効に使わなきゃ。
2人のために。

母親の最後の御礼を軽く無視して家にむかう。

自宅に帰る途中、もう凪のことは頭になく、勇とどう過ごすかしか頭になかった。

367:名無しさん@ピンキー
09/01/10 04:14:17 yUkrQ/wO
GJ!
姉の逆襲に期待

368:名無しさん@ピンキー
09/01/10 04:16:38 AT1NnQHb
GJ!

369:心の隙間
09/01/10 04:24:52 m1Fu2zaR
投下終了です。
ありがとうございます。
次もなるべく早く投下します。
では

370:名無しさん@ピンキー
09/01/10 19:14:08 TgoUrTFu
GJ
幼女相手に、嫉妬するお姉ちゃんかわいいぜ

371:名無しさん@ピンキー
09/01/10 22:15:54 YuhLe9z4
GJ!!

次回も楽しみにしてます!

372:心の隙間
09/01/11 02:51:29 rCfrNZfi
―やっと落ち着けると思ったのに…。

凪を送り届け別れた後、姉に腕を引っ張られ家にむかっているが、なにか鬼気迫るといった感じでズンズン歩いていく。
「姉ちゃん、買い物にいこうよ、家に食べるものなにもないよ?」
「嫌。」
「姉ちゃん……手痛いからもう離して。」
「絶対にイヤ!!」

離すどころか余計に力が増してくる。
「姉ちゃんどうしたの?なんか変だよ?」
「勇……私との約束を忘れてるの?」
「約束?……」
なんだろう…姉との約束…思い出せない。
「毎週金曜日の夜!!」

考えていると姉が思い出せない俺にイラついたのか、ヒントをだしてきた。

「金曜日の夜………あ!!」
「勇……忘れてたでしょ。」
思い出した…だから昨日からあんなに機嫌が悪かったんだ
「でも凪ちゃんもいてたし…昨日はさすがに無理だよ…」
「だから我慢したのよ…今日まで我慢すれば、昨日の約束を今日に繰り越してもらうつもりだったから…」
俺の手を握り下を向いてしまった…
「……わかったよ、それじゃ今日の夜は一緒に寝よう。」
まぁ、約束だからしかたないか。
「…夜までまてない…」
違う意味に聞こえるから考えて喋ってほしい。

「それじゃ……買い物に行かなきゃ約束は無し…」

373:心の隙間
09/01/11 02:52:32 rCfrNZfi
その言葉を聞いた瞬間、カッと熱くなり、私は勇の頬を叩こうと、手を振り上げていた……
しかし勇は怯まず私の目をジッと見るだけ。
振り上げた手をどこに持っていけばいいか分からず、勇を睨みつける。

ここで叩けば今まで我慢したことがすべて崩れる、勇に嫌われる恐怖から、どこに怒りをぶつけていいかわからず、ただ戸惑うだけ…。

「わかった…それじゃ早く買い物にいこう……」
ここは勇の言うとおりにしよう…ここで揉めても時間が減るだけだ。
「うん、それじゃ行こっか?」
勇が先に歩き出す
置いて行かれないように慌てて勇の隣に並ぶ。

―勇は卑怯だ。

私は姉としての威厳がまったく無いといってもいいだろう。
なにをするにしても勇の側でないと落ち着かない。
今の私の人生はすべて勇で成り立ってるからだ。

―俺が姉ちゃんを守る―

その言葉に私は甘えているのだ。

もし守る相手が私では無く、違う相手に変わったら……
「考えるのは辞めよう……今が幸せなんだ」
自分に言い聞かせる。
そうしないと「姉」ではなく「女」としての感情が溢れ出てしまう。

374:心の隙間
09/01/11 02:53:00 rCfrNZfi
―昔の姉なら喧嘩になれば平手打ちなんて当たり前だった……
ここまで弱らせたのはほかでもない俺だ。
姉を見るとなにか考えごとをしてるのか、上の空で歩いている。
「姉ちゃん前をむいて歩かなきゃ危ないよ?」
そう言うと姉の腕を掴み、引き寄せる。
「分かってるわよ!!歩くぐらい自分で歩ける!!!」
バシッ
「痛っ」
「あっ!!勇……ごめんなさい。」
手を振り払われた……かなり怒ってるな。
まぁ家につく頃には機嫌よくなっているだろう。

そう信じてスーパーに足をむける。

―、スーパーにつくとカゴをもって歩き出すが、休日で人が混雑してごった返している。
「これと…これと、あと野菜売場にいかなきゃ…」
姉は食料を俺が持ってるカゴの中に放り込んでいく。
「…ちょっと姉ちゃん入れすぎじゃない?……」
食料をバンバン入れてくる。
「いいのよ、買いだめすれば毎日こなくてもいいでしょ、それに今日は美味しいもの食べさせてあげる」
いつ機嫌が治ったのだろう……
女性の感情は激しいな。

375:心の隙間
09/01/11 02:53:27 rCfrNZfi
見る見るうちにカゴの中が食料だらけだ。
さすがに重たい…
「………はい、半分。」
見透かされたのか姉がカゴの取っ手を片方掴んだ。
そのまま2人でカゴを持ち、レジの台にのせると、定員の冷たい視線に気づく。
彼女となら気にならないのだが、姉となると、なぜかその目が気になってしまう。
会計をして、買った物を袋に詰め、二つあるうちの軽い方を姉に渡す。
店の中が暖房で暖かかったので外に出ると来る時より寒さが増している。

「寒っ!早く家に帰ろう、身体が寒さを通り越して痛くなりそうだよ。」
「そうね、早く家に帰って布団に入らなきゃ」
「(そのことしか頭にないのか)いや、まだ昼だから、寝るには早いよ」
「私は3時間しか寝てないわ。」
「夜寝れなくなるから、今日はちゃんと夜中に寝ようね」
「ええ、帰ったら寝ましょう。」
……姉と会話が成り立たないので、会話することを辞める。
家に向かって歩いている道中、空から冷たい水の雫が顔に当る。
見上げると、空一面に雨雲が広がっている。
「あぁ~降ってきたな…傘なんて持ってきてないし…姉ちゃん走れる?」
「うん、大丈夫よ、風邪ひく前に家に着きたいわ。」
雨が本格的に降る前に家まで走って帰りたかった。

376:心の隙間
09/01/11 02:54:14 rCfrNZfi
「はぁ、はぁ、はぁ、買い物袋を持ったまま走るのは流石に疲れるね。」
「はぁ、はぁ、そうね、卵割れてなきゃいいんだけど…」
家の前まで走ってきたが、結局びしょびしょになってしまった。
「濡れるんなら歩いてくればよかったな。」
「バカッ、風邪ひいたらどうすんのよ、男手は勇しかいないんだっ?!…か…ら……。」
姉が固まった。

「姉ちゃん?どしたの?」
姉の目線を辿ると自宅の玄関を見て固まってるみたいだ。

「なに?家になにかある……の…」
姉につられて玄関に目をむけると………一年振りに見る母が扉の前に立っていた………

―「おかえりなさい。」

当たり前のように迎え入れるその声は、普段からある日常だと勘違いしてしまいそうになるぐらい、身体に優しく浸透してきた……



「ただ…い…ま。」

あれ?姉ちゃんと2人暮らしじゃなかったっけ?
意味が解らない。
お母さんが帰ってきた?手には買い物袋を持っている。
………懐かしい。
勇は感覚が麻痺して昔の思い出を懐かしんでいる。
だが麻奈美はそうはいかなかった。
母を睨み一言。

―「私達の家に……なにしに来たのよあんた…」

377:心の隙間
09/01/11 03:04:04 rCfrNZfi
今日の投下終了。
また短くて申し訳ないです。
短いときは夜勤だと思ってください。
では。

378:名無しさん@ピンキー
09/01/11 03:36:43 6SL5xfl8
GJ!!
お仕事がんばって下さい!今このスレにはあなたのSSを読みに来てるよ
うなものですから・・・

379:名無しさん@ピンキー
09/01/12 02:18:58 tsLJEkvk
GJ!!
姉の受難は続くよどこまでも
ほぼ毎日更新お疲れ様。スレが作品で伸びる事のなんて健全なことよ

380:心の隙間
09/01/12 05:28:13 L5IYTmpZ
―勇と2人が一番楽しい。
やっぱりあの子は私達の間にいらない存在だったのよ……。

スーパーに行く途中少し大人げない行動をとってしまったけど…見た感じ怒っては無いみたいだし、今日の夜美味しいものを作って謝れば勇も許してくれるだろう。

スーパーに着くと夕食のために必要なものと、5日間ほど買い物に行かなくてすむように、多めに買い込む。

勇を見ると重そうにカゴを持っている。
カゴの取っ手を片方掴むと、一緒に持ち上げレジに持っていく。
―勇との共同作業。
勇は少し照れていたみたいだが私は照れより嬉しさが増している。

スーパーを出て歩いていると雨が降ってきた……
「あぁ~降ってきたな…傘なんて持ってきてないし…姉ちゃん走れる?」
「うん、大丈夫よ、風邪ひく前に家に着きたいわ。」

このまま2人、雨に濡れれば一緒にお風呂に入れるんじゃないかな?…
と有り得ないことが脳裏によぎる。
(2人でお風呂なんて99%無いわ…風邪引いたら元も子もないのにバカね私。)
ため息を吐き、勇を追いかける。
―しかし、その1%に未練が残ってしまい、自然と走る足が遅くなる…。
結果2人ともびしょ濡れになってしまった。

381:心の隙間
09/01/12 05:28:55 L5IYTmpZ
「はぁ、はぁ、はぁ、買い物袋を持ったまま走るのは流石に疲れるね。」
途中から勇が私の足が遅いため袋も持って走ってくれた。
優しい勇の心遣いを感じる…。

「濡れるんなら歩いてくればよかったな。」
罪悪感が少しでるが1%の確率に期待してしまっている。

「バカッ、風邪ひいたらどうすんのよ、男手は勇しかいないんだっ?!…か…ら……(お母さ…ん?)」



なぜ…いるの…よ……私と勇の家に……
「姉ちゃん?どしたの?」
勇の問いかけに気づく。
勇に見せてはいけないと思い、勇を家から遠ざけようとしたがもう遅かった。
「なに?家になにかある……の…」
勇が母を見た瞬間固まってしまった。

―「おかえりなさい。」
おかえりなさい?今更家族気取り?
ふざけるのもいい加減にして!!
そう叫ぼうと一歩前に出る。

「ただ…い…ま。」

その言葉に足が止められる。
たぶん無意識のうちに出たんだろう
勇を見るとまだ状況が把握できてないらしい。
私も母がなぜここにいるか分からない。
ただ私にとって良くない理由には変わりないだろう。

怒りを込めて母に言い放つ。


「私達の家に……なにしに来たのよあんた…」

382:心の隙間
09/01/12 05:29:35 L5IYTmpZ
―姉ちゃんの言葉で現実に引き戻される。

そうだ、何故母がいるんだ?

「二人に料理を作ろうと思ってきたのよ。」

ニコッと笑いながら言う。
母の手料理?なぜ今になって?
「…いきなり?一年間も音沙汰無しで、現れたと思ったら料理って…」
これは本音だ、母の情報なんてこの町にいないってことぐらいしか、分からなかった。
いきなり現れて、料理作ると言われても意味がわからない。
「…私は何回も電話したわよ?ただ勇には繋いでくれなかったけどね。」
母が姉のほうを見る。
「あっ当たり前よ!!家を出ていった人と話す事なんて一つもないわよ!!!」
「なにそれ?……俺は電話かかってきた事すら知らなかったんだけど?」
軽く姉を睨む。
「う…だって……勇は嫌がると思って…それで…わたし…」
小さくなってしまった。
まぁ姉も俺のことを思ってしてくれたことみたいだし……
「ふぅ……まぁ、雨も降ってるし…とにかく家に入ろう、風邪ひくから」
「ちょっ勇!?、なんでこの人も入れるのよ!!?」

「こんな所で言い争ってたってしょうがないだろ?母さんも風邪ひくから、早く家に入って。」
母の背中をぽんと押す。
「ふふっ……ありがとう、勇。」

383:心の隙間
09/01/12 05:30:09 L5IYTmpZ
母を家に招き入れるのは不思議な感じだ。
元々は父と母の家だったのに……

「姉ちゃん、先にシャワー行ってきて、後で俺も入るから。」
姉は無言のまま、何故か悲しそうな表情浮かべ、風呂場に向かった。

「勇…もう高校一年になったのね。」
荷物をテーブルの上に置き母が俺に話しかけてくる。
「うん、身長はあまり伸びないけどね」
「そんなことないわ、カッコ良くなったよ。」
母とはいえ面と向かって言われたら恥ずかしい…
「やめてよ、恥ずかしいから」
「お父さんに似てきたわ……顔も性格も」
「…うん…ありがとう、おかあ…さ…。」

―お父さんに似てる―




それは俺にとって一番の誉め言葉だ。

俺が一番言って欲しかった言葉…

「あ…れ?ははっ…なんで…涙なん…か…」

自然と涙が出てきた…
拭いても拭いても止まらない…
「勇……ごめんなさい……お母さんを許して…」
「え?…お母さん…」
母に抱きしめられる…懐かしく、優しい匂い。
「……うん、もう大丈夫だよ…気にしてないから」
「ありがとう、勇…本当にありがとう…」



―「なにしてるの……」

384:心の隙間
09/01/12 05:30:36 L5IYTmpZ
「ね、姉ちゃん!?はっ早かったね!」
リビングの扉から姉が入って来たのに気づかなかった……


「えぇ…なにかあったら駄目だと思ったから早く出てきたの……で?なにしてたの…」

「つまずいて転けたところを勇が支えてくれたのよ…勇ありがとね。」

母が機転を利かしてくれた。

「う、うん、お母さんも気をつけてね。」
こんな言い訳で姉に通じるのか?
「勇……風邪ひくから早くシャワー浴びてきなさい。」
「うん、それじゃ行ってくるね。」
通じたのかよく分からないが助かった…
(…ただ姉ちゃん震えてたな…。)
「……大丈夫かな?」

姉と母を2人にすることが心配だったが、早くシャワーを浴びて出てくればいいか。


385:心の隙間
09/01/12 05:44:02 L5IYTmpZ
シャワーを浴び、姉が持ってきてくれた服を着て、リビングに向かう。

「あれ?姉ちゃんは?」
リビングに入ると母しかいなかった。

「二階に行ったわよ?」
幸い姉は自分の部屋にいるみたいだ。
「ふ~ん、あっそうだ!お母さんが料理作ってくれるんでしょ?なに作ってくれるの?」
「え~?まだ夕食には早いわよ?でも、楽しみにしててね。」
「秘密なの?まぁ楽しみにしてるよ」

ちゃんと家族らしい会話ができてる。
何年離れててもやっぱり家族なんだな…。
母と話していると、ふと母の髪型に目がいく。
「お母さん、髪短くなったね…髪の色も…」
一年前は茶髪にウェーブのかかったロングヘアーだった。
今はセミロングで綺麗にカットされている…色も真っ黒だ。

「あと…服装もなんか落ち着いてる。」
昔は派手な服装を好んで着てた。
だから子連れでも関係なくアホな男は声をかけてきたりした。
「ふふっもう今年で 37よ?そりゃ、お母さんも落ち着くわよ」
「でも見た目は20代後半ぐらいに見えるよ?」
「そう?…お小遣いあげようか?」

「え?…うん……ありがとう…(500円!?)」

「また言ってくれたら、あげるかもね」

笑いながら呟く母は心から楽しそうだった。

386:心の隙間
09/01/12 05:44:55 L5IYTmpZ
「てゆうか姉ちゃん、降りてこないな…ちょっと見てくるね?」
ふと姉が気になった…
「えぇ…それじゃ食材冷蔵庫に入れとくわね?」
「うん、ありがとう」
母から貰った500円を握りしめ二階の姉部屋に向かう。

こんっこんっとノックをする。
「姉ちゃん、いるんでしょ?下に降りてこないの?」
「……」
「姉ちゃん、入るよ?」
ガチャッと扉を開ける……
しかし姉の姿が見当たらない。
「あれ?姉ちゃんどこにいったんだ…?トイレか?」
部屋を出てトイレにむかう。

こんっこんっ

「姉ちゃん、いますか~?」
「……」
返事がない。
「あれ?ここも違うのか……」
二階には姉の部屋と俺の部屋とトイレしか無い。だとすると……

―ガチャッ。

「姉ちゃん、いんのか?」
自分の部屋だからノックせずに入る。

「姉ちゃん……なにしてんの…?」

よく解らないが、ベッドの上で三角座りしている…


俺に気づくとか細い声で姉が呟く。

「…ゆう……私は勇のことならなんでも分かるわ…。」


387:心の隙間
09/01/12 05:45:27 L5IYTmpZ
「え?いきなりなんなの、姉ちゃん?」
「勇の好きな食べ物、甘い肉じゃが。
嫌いな食べ物、トマト、納豆。
好きな色、緑。
嫌いな色、紫。
好きな動物、犬。
嫌いな動物、蜘蛛。……全部言えるわ」
「うん…あってるけど、それがどうかしたの…?」
「勇の家族は私一人…私の家族も勇一人。2人で頑張って行こうってお父さんとも約束したわ。」
「……」
「あの人は私達を裏切ったのよ!?当たり前みたいに母親面するあの人が許せないのよ!!」
「……でももう四年も前のことだよ?許せないのはわかるけど……ずっとこのまま許さないつもりなの?」
「勇は許せるの!?被害の張本人は勇、あなたなのよ!!?」
「……さっきお母さんが謝ってきた……それで許したよ。」
「なっ!?なんで許せるのよ!!」
「ずっと引きずっててもしょうがないだろ…?」
「………私は認めないわ……勇は騙されてる…」
「姉ちゃん……」


俺じゃ説得どころか逆撫でするだけだな…。

388:心の隙間
09/01/12 05:45:54 L5IYTmpZ
「ゆうくん…抱っこして…」

姉が俺のほうに両手を差し出す…

(ゆうくん…?小学生の時姉ちゃんに言われてた名前だ…なんで今頃?)

「…うん、分かったおいで。」

ベッドに座り姉を膝の上に呼ぶ
「ゆうくん……暖かい」
膝に座ると腕を首に巻き付けてきた。

「ゆうくん…置いていかないで…ゆうくんに必要とされるようにもっと頑張るから…だからお母さんのとこなんかに行かないで……」
「姉ちゃん…大丈夫だから…ほら…泣き止んで」

泣きじゃくる姉は俺の知ってる姉じゃなかった…。
ここで突き放せば、姉は立ち直れないどころか壊れてしまいそうで怖かった……
「…ゆうくん…勇…」

姉から奪った感情と植え付けた感情。


「はぁ~勇の匂…いいい匂い…大好き…」


植え付けた感情が少し多かっただけ


「勇は私の弟―私はゆうくんのお姉ちゃん―」




―自分が犯した罪と罰からは、絶対に逃げられない。

389:心の隙間
09/01/12 05:49:39 L5IYTmpZ
ありがとうございます。
今日はこれで投下終了です。
15日までに終わらそうと思ったけど…無理臭いな…

390:名無しさん@ピンキー
09/01/12 08:29:05 ZuP7XTsy
GJ!!

焦らなくてもいいんだぜ

391:名無しさん@ピンキー
09/01/12 10:47:55 OUqqWm2c
ゲーパロさんを全裸でまってます

392:名無しさん@ピンキー
09/01/12 14:14:06 W1bQWOaD
>>389
GJ! いい依存でした。この姉はいいな。

393:名無しさん@ピンキー
09/01/12 15:37:16 I6DJvaeC
>>389
GJ! 報われない姉ちゃんだが壊れないで欲しい。

394:心の隙間
09/01/13 03:18:36 imylJ3wA
―お風呂から出てきたとき、母と勇が抱き合っていた……

―その瞬間、私は悟った。

……母に勇を盗られた…。

(勇と母を離さなきゃ…)
頭にすぐに浮かんだが唇が思うように動かない…
勇と抱き合ってた母が、私がリビングに入ってきたにも関わらず、勇を離さなかったからだ……

―「なにしてるの……」
やっと振り絞って出た言葉がこんな弱々しい声なんて…

その言葉を聞いて勇が慌ててこちらを向く……
「ね、姉ちゃん!?はっ早かったね!」

……ムカつく……

「えぇ…なにかあったら駄目だと思ったから早く出てきたの……で?なにしてたの…」
精一杯、嫌みを込めて言う…。
「つまずいて転けたところを勇が支えてくれたのよ…勇ありがとね。」
母は言葉の裏に私だけが気づくように「嘘よ。」と言っているのが分かる…。

抱き合ってるのを途中から見てしまってるのだ、そんな言い訳通じるはずがない…母もそれは知っているはず…。

395:心の隙間
09/01/13 03:21:45 imylJ3wA
―勇が風呂場に行けば、リビングに私と母の2人だけ…
気まずい空気が流れる。
「…麻奈ちゃん、大学に行ってるんだって?」
そんな空気の中、母が私に話しかけてくる。
「えぇ……○○大学に……それがなにか?」
「○○大学?……懐かしいわね、お父さんが行ってた大学ね。」
「そう……」
「…麻奈美……私のせいで苦労をかけたわね…本当にごめんなさい…」
「今更なに……?」
「私は親として、してはいけないことをしたわ……あなたには一生許してもらえないかもしれない…ただずっと償っていくつもりよ…本当にごめんなさい…」

「ふざけないで……謝ってもらっても、もう、昔のようにはいかないわ…」

本心で謝ってるのはわかる……
だが母の最終目的が「また勇と一緒に暮らしたい」と願ってるなら私は絶対に許さない……
先ほど、なぜ抱き合ってたのか分からないが、あの行為も母には勇と暮らす第一歩になったはずだ。
家族と言うのは出てたり入ったりできない絆で結ばれているはず…。
そんな謝罪一つで家族に戻りたいなんて、傷つけられた側からすれば許せる訳がない。
「そう……麻奈美……あなた勇に彼女が出来れば、ちゃんと祝福できる?」

―勇に彼女?……なにいってるの?

396:心の隙間
09/01/13 03:25:17 imylJ3wA
「なによ…いきなり…」
「もしも……勇に彼女が出来て…結婚することになったら、あなたどうするの?」
私にその質問をする意味がわからない…「どうもこうも……私は勇の姉よ…姉だか…ら…」
―姉だからどうする?
勇のことを祝福する?
勇の横には私ではなく別の女…
その女と勇は新しい家族を作る…
私はどうすればいいの?

「私は我慢が出来なかった…大事に育てた勇が他の女のとこに行くのが怖かったのよ。」

「私…は…」

「…あなたはこの先、絶対に私と同じやりかたで勇を縛るわ……」
「お母さんとは違う!私は勇のことを最優先に考えて行動するわ!!ましてや勇を傷つけたりしないわよ!!!」

「私も勇を最優先に考えてたわ…なにをするにしても…」
「だったら何故あんなことを勇にしようとしたのよ!?あなた母親でしょ!!?」
「えぇ、私は母親よ…誰よりも勇を愛しているわ…私が産んだんだもの…」



―なにも…言い返せなかった。
勇を語る母には誰にも劣らない絶対的な勇への愛が溢れていた。
「無論あなたも愛している」
「…」
「あなたにも分かる時がくるわ―身体の半身を持って行かれた気持ちがね…」

「ぅ…あっ…」

―始めから母には勝てないんだ…

397:心の隙間
09/01/13 03:26:57 imylJ3wA
私は母から逃げた……
母の本音と現実を叩きつけられた私は勇を守る気持ちを忘れ自分可愛さに現実から逃げてしまった…
勇の部屋に逃げ込んだが無論勇は、風呂場にいて部屋にはいない。
勇のベッドに近寄り布団に顔を埋める…勇の匂い…の他に甘い匂いがする…凪の匂いだ…
「なんで…私には勇しかいないのに…」
今すぐ勇に触れたい…
私の「勇を守る」と言う信念から大きく外れているのは分かっている…
だがもう抑えられない…
勇に甘えたい。
撫でられたい。
匂いを嗅ぎたい。
母や凪と同じように………勇とキスをしたい。


―まただ……勇がいなきゃ不安で仕方がない…ここから動けない……自分の小ささに嫌気がさす…勇……。



助けて…

398:心の隙間
09/01/13 03:31:20 imylJ3wA
―「…姉ちゃん…大丈夫?」
「うん…少し落ち着いてきた……」
姉が泣き出してから30分間ずっと膝の上で抱っこしてたので足が痺れてる。
「勇……私を置いていかないでね…ずっと家族だから…」
俺の頭を姉の手が忙しなく這う。
「……」
「なんでなにも言ってくれないの……」
「いや、うん…分かってるよ…」
「……それじゃ今日は早く寝ましょ…勇こっちにきて…」
「まだお母さんが下にいるだろ?ご飯も作ってくれるし…食べなきゃ悪いよ…」
「勇は私とお母さんどっちが好き?」
「え?」
「私は勇が一番大切よ…?」
「あ…うん…」
「だから…勇もっ「コンっコン」
「勇?食料冷蔵庫に入れたわよ?」

いいところに母が来てくれた……
「は~い!わかったぁ!すぐに降りるよ~」
姉をチラッと見ると扉を睨み殺しそうな勢いで睨んでいる…「姉ちゃん…下に降りれる?」
「うん……大丈夫…」そういうと俺の膝から立ち上がる。
「ふぅ……それじゃいこっか…」
足が痺れてるのを我慢して立ち上がる…部屋の扉を開けると母が立っていた。
「勇、もう料理作っちゃうね?」
「うん、お願い、美味しい料理お願いね。」
「任せなさい、私は料理美味いわよ?」

「ははっ楽しみだね。」


399:心の隙間
09/01/13 03:33:12 imylJ3wA
「……お母さんと仲良く話さないでよ…」
「っ!?」
今の声姉ちゃんか?…すごく冷たかった…あんな声初めて聞いた。
「……でさっ、トマトとか入れないでね?」
姉のほうを振り替えれない…
「勇、あんたまだトマト食べれないの?昔からダメだったわよねぇ」
「匂いがね…駄目なんだよ」
「まだまだ子供ね…ふふっ」

「勇…聞こえないのお母さんと仲良く話さないで。」
今度は耳元で囁かれる。
「……」





―この日を境に麻奈美は母親の予言通りに勇の心を縛り付け、1ヶ月後には勇を壊してしまうことになる。

400:心の隙間
09/01/13 03:36:30 imylJ3wA
見てくれてる方ありがとうございます。
短いですが今日は終了です。



401:名無しさん@ピンキー
09/01/13 12:08:30 Ks4R1OAe
めちゃくちゃこえーよ!!!エ、エロは……?

402:名無しさん@ピンキー
09/01/13 21:05:01 0U4UPnU/
・・・これヤンデレじゃね?

403:名無しさん@ピンキー
09/01/13 21:51:25 imylJ3wA
>>401
エロパロだもんね…
エロいれなきゃ駄目かな?
>>402
俺はヤンデレでも依存でもどっちでもいいけど
ヤンデレってあれでしょ?
殺す!みたいな感じのやつでしょ?
人にたいして怪我させたり殺したりしないから安心してみてくださいね。

404:名無しさん@ピンキー
09/01/13 21:54:27 lby/JXbU
NO、刃傷沙汰=ヤンデレではない。

405:名無しさん@ピンキー
09/01/13 22:01:56 RxhkHtmn
エロは? あくまで個人的な要望なんだが女言葉はそこまできつくなくても
いいと思うぞ。

406:心の隙間
09/01/13 22:41:44 imylJ3wA
―私の犯した罪は計り知れないほど大きく、絶対に消せない…

家族を失った私は自暴自棄になり、死のうと何度刃物を手にしたか……
しかし死ねなかった…
もう一度勇と話がしたい…勇に触れたい…私の感情は高まるばかりだった…

いくら家に電話しても麻奈美が切ってしまう…
勇の携帯番号を知らないので家電に頼るしかなかった。
―そして会いに来てしまった。
…しかし家には誰もいないようだ…私は落胆したが何故か少しホッとしていた。

勇に会えば私はまた昔の罪を繰り返すんじゃないかと考えてしまったからだ。
「ふぅ……しょうがないわね……帰るしかな……い…」
後ろを振り返り家を離れようと一歩踏み出すと小さく聞こえる懐かしい声………勇?…

私の前に勇がいる…話しかけなければ。
麻奈美が私に気づいた…その顔は嫌悪感一色だ……
勇は私を見ればどんな顔するだろう…怖い…

―勇が姉の異変に気がつき、姉の目線を追って私を見る……久しぶりの勇の顔……ドキッとした。

その顔は拒絶でも喜びでもなかった。

「おかえりなさい。」なぜこんな言葉がでたのかわからない……ただ…勇の声が聞きたかった…

「ただ…い…ま。」


407:心の隙間
09/01/13 22:42:17 imylJ3wA
当たり前のように返してくれた…嬉しい。

勇の久しぶりの声は私の耳を通り抜け身体全体に染み渡る。
私の子……。
私の勇……。
一年前と比べてまた一段と若い頃の父に似てきた。
今でも私の旦那はあの人以外は考えられない、私にはあの人しかいなかったからだ。
私とあなたの間に出来た2人の子供…
麻奈美が産まれた時は2人で抱き合って喜んだ…麻奈美は私と父平等に甘えた…。初めての子供、可愛くて仕方なかった…それから三年後…勇が産まれた。

この時もあなたは男の子が産まれたって物凄く喜んでくれた。

でも勇は私にしか懐かず、あなたを困らせたわね。

それが成長して行くにつれ母親から父親に移行する…
私に甘えることは無くなり、なにかあればあの人に話した…。

学校のこと、友達のこと、悩み。
すべて私に報告していたのに…
初めは年頃だからしょうがない、と諦めていた。

―小学3年生の時4人で祭りに行った帰り、勇は父におんぶをねだった、私がしてあげると言った時、勇の「お父さんがいい」と言う言葉に私の心にある何かが弾けた…



この時初めて勇に必要とされたいと強く思った。

408:心の隙間
09/01/13 22:42:43 imylJ3wA
―「それじゃ、またご飯作りに来てね、お母さん。」

「えぇ、私はいつでもいいわよ?たまには電話してきてね」

母の料理をごちそうになり母を玄関の外まで送り届ける。

「勇、ありがとうね…私、拒絶されるかと思ってたから…」

「もういいよ…姉ちゃんにも言っとくから。」

「ありがとう…それじゃ、またね」
手を振り母を見送るが名残惜しそうな母の顔が脳裏に焼き付く…

「もう帰った……?」
玄関の扉から姉が顔を出す。
「あぁ…もう帰ったよ…また料理作ってくれるってさ。」

「……風邪ひくから早く家に入って。」

「うん…」
姉の言うとおりに家に入ると、姉に抱きしめられた。
「姉ちゃん、痛いよ…」

「少しだけ…少しだけこうさせて…」

「……(どうしよう…)」

「それじゃ、もう遅いから勇の部屋にいきましょ」

まだ8時だが仕方ない、これ以上伸ばしたら本気で切れそうだ。

姉と二階に上がり、俺の部屋に向かう。「……やっぱり私の部屋で寝よう。」

「は?なんで?姉ちゃんのベッド狭いじゃん。」

「いいのよ、いきましょ。」

いきなりなんなんだ?

409:心の隙間
09/01/13 22:43:06 imylJ3wA
姉に連れられ姉部屋に入る。

あまり姉の部屋には入らないので少しドキドキするが、部屋は昔とそんなに変わっていない。
年頃の女性の部屋にすれば、少し落ち着いてる気がする。
「勇…寒い…」
俺が部屋を見渡している間姉は一切俺の横を動かなかった。
「うん、それじゃ寝よっか?」
姉のベッドに俺が先に入ると。後から姉がベッドに入ってくる。

「……やっぱりちょっと狭いね」

「うん…」

小さいシングルベッドに大人2人が寝るとやっぱり窮屈だ…姉の身体が背中にピタリとくっついている。

「やっぱり俺の部屋に行こうか…」

「ここでいいよ…暖かいからこっちのほうが寝やすい…」

「……」

こんなんで寝れるのだろうか……

「勇、こっち向いて」

「え…なんで?」

「勇の顔が見たいから…こっち向いてよ…」
「……」
なにも言わず振り返ると、姉と俺の顔がスレスレの位置にあるのがわかる…

410:心の隙間
09/01/13 22:43:34 imylJ3wA
「ははっ、ちょっと恥ずかしいね。」

「うん、ちょっとね、でも勇と一緒に寝ると落ち着くわ…」

「そだね、もう寝よっか?」

「うん…」

寝れるかわからないが早く寝てしまおう…。
―――――――――――――
「……」

「……」

「勇…寝た…?」

「……zzZ」

「ごめんね…お姉ちゃん弱くて…少ししたらまた頑張るからね……」

「…zzZ」

「……チュッ……おやすみ…」

「!?……zzZ………(姉ちゃん…)」


この日を境に一週間に一度だった約束が4日に一度になった。

411:心の隙間
09/01/13 22:46:00 imylJ3wA
スイマセン、朝の続きこれで終わりです…
次はなるべくまとめて投下します

412:名無しさん@ピンキー
09/01/14 22:36:10 AmJNWoez
俺が思うに
依存=献身的、自己犠牲的な感じ
ヤン=独占、自己中心的な感じ  
まあここでも一度話し合いがあったと思うけど。
なにはともあれgj 

413:名無しさん@ピンキー
09/01/14 23:35:24 vKHaTys6
勇みたいのを魔性って言うんだろうなぁ

414:名無しさん@ピンキー
09/01/15 06:17:17 frr4qOqP
test

415:心の隙間
09/01/15 07:46:33 an/+82FO
今日仕事から帰ってきたら投下します。

416:名無しさん@ピンキー
09/01/15 20:46:22 3DMxBHww
待ってます!!!

417:心の隙間
09/01/15 22:12:32 an/+82FO
―母が夕飯を作りに来てくれてから二週間、あれから姉が俺の部屋に居る時間が倍近く増えた。

一週間に一度の約束も4日に一度になってしまった……姉から泣きながら頼み込まれたからだ。
それも姉の小さなベッドで寝るから体の節々が痛い。
「はぁ……」
最近ため息をよく吐くようになった…あまり身体の調子も良くないな…

授業の内容もあまり頭に入ってこない。

今も授業中だが空ばかり見てしまう…。


―「あんた…大丈夫?…」
隣席の女子、に声をかけられる。
「ん?あぁ、まぁちょっとね。」

「なんか最近元気ないみたいだけど…悩み事?」
異性の中で一番仲がいい女子かもしれない。
話しやすく、あまり気を使わなくてすむから楽だ。

「まぁ…家族のことだから相談しようにもね…」

「そっか……まぁいつでも相談してよ!!私が答えれる範囲でよければ、いつでも相談にのるからさ!!」

「ありがとう……あと授業中だから静にな?。」

周りを見渡すと全員俺達のほうを見ている……立ち上がり話しているこの女子は周りをキョロキョロと見ると顔を真っ赤にし小さく「バカ勇!」と言うと椅子に座り直した。

418:心の隙間
09/01/15 22:12:58 an/+82FO
キーン、コーン、カーン、コーン。


―「ふぅ…やっと終わったな。」
今日は学校が終わる時間まで空を眺めていた、
いつもは長く感じる学校の時間も今日ほど早く感じた日はないだろう。


―「勇、帰りにマック行こうぜ!腹減ってしょうがねぇよ。」
いつも一緒に帰っている男友達が話しかけてきた。

「は?、今日って部活無いの?」
「おう、三年生はもうすぐ卒業だろ?なんか三年生だけでパーティーするらしいよ。」
「なんだそりゃ?部活関係無いじゃん。」
「まぁ、集まって何かするってことが無くなるから羽目外したいんだろ。」
まだ一年だからわからないがやっぱり寂しい物なのか…
「まぁ、部活無いならべつにいいよ?」
「んじゃ、行こうぜ。」


―「勇~!!」
2人で一階まで降りると。
授業中、俺に相談にのると言った女子が俺の名前を呼びながら走ってくる。

「なんだ?走るなよ、転けるぞ」

「いや、校門に勇の知り合いが来てるわよ?」

「俺の知り合い…?誰だろ…」

「女の人だったよ…綺麗な人だったけど…あんた彼女いたの?」

「はぁ!?かのじょぉ!?勇……おまえ裏切ったな…」

419:心の隙間
09/01/15 22:13:25 an/+82FO
「ははっ裏切ったって。」

「なに笑ってんじゃボケ!!おまえは俺と同じように部活一筋の親友だと思ってたのに…女なんかの尻追っかけやがって。」

いきなりなにキレてんだ?

「いや、おまえだって高橋(女友)とつきあってたじゃん」

「ちょっ!!私は大樹(男友)とつきあってなんかいないわよ!?」

「まぁ、つきあってたのは本当だな…手も握らせてくれなかったが…」

「立派な彼氏彼女だよ。頑張れ」


「3日間だけよ!!今はなにもないわよ!!」

「すんげー必死だな…流石に傷つくぞ?」

「まぁ…仲良くな?俺は知り合いって奴を見てくるわ」

「まて!!おまえは俺とマックの約束があるはずだ!!」

「いや…まぁ、また明日な。」

「ヤダ!!約束だ約束!!」

姉ちゃんが男ならこうなるのか…

「てゆうか、本当になにも無いからね!?勘違いしないでよ!!?」

ギャーギャーと騒がしいな…似たもの同士で良いと思うけど…

「高橋…わかったから大樹をなんとかしてくれ……涙でボロボロじゃないか」


420:心の隙間
09/01/15 22:13:48 an/+82FO
「高橋頼むからな?」

「えぇ…誤解しないでよ?私と大樹は本当になにもなかったからね」
まだ言ってんのか…

「勇!!ちょ、ちょっと待てって!!Sサイズならなんでも奢ってやるから!!なっ!?」

「(なに言ってんだこいつ?)……んじゃ、また明日ね」

靴を履き替えて校門に向かう。
後ろで叫び声が聞こえるが無視しよう。
今は大樹より、校門で待つ女性だ…


―校門まで走ってきたが、どこにいるんだ?

「(いないじゃん…)」
周りを見渡してもいない…
「新手のイタズラか?」

するとヴーヴーッとポケットの携帯が震動する。

携帯を開いてみると画面には「姉」と表示されている。
「メール?なんだろ…」


『勇、迎えにきたよ~!○○駅に先に行ってるから、後で追いかけてきてね』

姉ちゃんが迎えに?校門の女の人って姉ちゃんか…
「でも珍しいな…姉ちゃんが迎えにくるなんて…なにか用事かな」

ここでウロウロしててもあの2人に捕まる恐れがある…よく解らないが一応駅に向かおう。


421:心の隙間
09/01/15 22:14:08 an/+82FO
―駅の改札口に着くと姉に電話をする。

「姉ちゃん今どこにいるの?」

『えっとね、三番線ホームのベンチに座ってる。』

「わかった、そこで待ってて。」

姉との電話を切り、三番線ホームを目指す……

学校帰りの生徒達が数多く、少し混雑している。


階段を登り三番線ホームにたどり着く。
「どこだろ……」
周りを見渡すが生徒だらけでまったくわからない…歩くことすら困難だ。

―「…勇」

「姉ちゃん!?ビックリしたぁ~」

肩を叩かれ後ろを振り向くと姉が立っていた。

「姉ちゃんよく後ろ姿だけで俺だってわかったね」
老若男女いるがほとんど俺と同じ学生に通う学生だ。

「弟の後ろ姿見間違えるわけないでしょ?」

「ふ~ん、まぁいいや、なにか用事があったの?迎えにくるなんて珍しいじゃん。」

「ん?べつに用事なんてないわよ?」

「は?じゃあなんで来たの?」

「……駄目だった?…嫌なら今から帰るけど…」

「いや、俺も今から家に帰るから一緒に帰るけど。」

「それじゃ帰りましょ。」

422:心の隙間
09/01/15 22:24:59 an/+82FO
電車に入ると後から後から人が入ってきて、10秒もしないうちに満員になってしまう…
姉は運良く座れた(譲ってくれた)みたいだが俺は座れなかった。
なんとか姉の前を確保することが精一杯だった。
「勇、交代する?」

「お姉ちゃんに立たせるわけにはいかないでしょ?大丈夫だよ30分ぐらいだから。」

「そう…辛くなったらいってね?」

「立つぐらい日常茶飯事だよ、気にしすぎだって。」

「うん……ギュッ……」

「……」

最近は一緒に居る時、俺の身体のどこかに触れていないと落ち着かないらしい。
誰が見ても姉の依存が悪化してるのはわかる。
姉にカウンセラーを勧めたが拒否反応が凄まじかったので断念した。


目を瞑り昔のことを思い出す…

昔は元気な姉だった。
美人と言う言葉が、そのまま当てはまる姿と、誰にも負けない強気な性格で姉の周りには人が耐えることは無かった。

姉に頼る人もいっぱいいるだろう…俺もその一人だ。

423:心の隙間
09/01/15 22:25:20 an/+82FO
俺に費やした時間が姉から周りの人間を遠ざけた。
周りからの誘いをすべて拒否し、休みの日を俺の為に使いだした頃から多くの人が離れていってしまった…

地元の友達はいるみたいだが、やはり大学の友達を作ってほしい。
そして大学生活を満喫してほしい。
一番世話になってるからこそ姉には一番幸せになってほしい。
本当にそう思う。


―「勇…着いたわよ?」
姉の声に現実へと引き戻される。

姉と一緒に降りて改札口を通り抜ける。

「勇?空見て…綺麗…」

「お?雪だ…積もるかな?」

「夜も降り続けば積もるかもね…」

「寒いねぇ…早く家に帰ろうか?」

「勇は右手に手袋付けて、私は左に手袋付けるから…はい反対の手は繋いで帰ろっ」

「恥ずかしいよ…」

「え?あっ……そっか…それじゃ勇が手袋使って言いよ?私は平気だから…」

「ははっ俺は手袋なんかしたことないよ、大丈夫だよ、お姉ちゃん使ってよ」

「え…でも…霜焼け出来るかもしれないし…」

「大丈夫、寒さには強いから」

「そう…そ、それじゃ…えっと…」

「……わかったよ、手袋片方付ければいいんだね…ハイ、繋ぐんでしょ?」

「!?……うん!!それじゃ帰ろっ!!」

424:心の隙間
09/01/15 22:26:00 an/+82FO
家につくと服に付いた雪が溶けて結局びしょ濡れになってしまった。
「お風呂沸かしてくるね?タオル持ってくるからちょっと待ってて!」

「わっ私も行く!」
慌てたように姉が俺の後を追ってくる。
「ハイ、姉ちゃん、タオル。」
姉にタオルを渡すとありがとう、と言い身体を拭き始めた。
10分経ち風呂が沸いたので姉を先に入れさせようとしたのだが、姉はとんでもないことを口走った。
「一緒にお風呂入る…とか…」

「え?」
思わず聞き直してしまった。

「いや、風邪引いたらさ…アレだから…」
「流石に…ね…先に入っていいよ?」

「うん……わかった…」

「……(一緒に風呂はやばいな)」
姉がでた後、俺もすぐに入ったが、何故か俺ではなく姉が風邪を引いてしまった…。

―やっぱり風邪か…風呂でた後姉の顔色が悪かったので熱を計れば38℃という高熱表示がされている。
「今日は大人しく寝なきゃ駄目だからね?」

「勇はどこいくの?」

「風邪移るといけないからさ、自分の部屋で寝るよ。」

「そう…たまに勇の様子を見に行く…」

「いや、風邪引いてるのお姉ちゃんなんだから俺が様子見に来るよ」

「わかった…なるべく早く見に来てね?」
風邪で余計に心細くなっている。

425:心の隙間
09/01/15 22:26:40 an/+82FO
一応明日は姉の看病で休むつもりだった…
だから一時間ごとに姉の部屋を覗いた…姉は苦しそうにしながらも俺が顔を覗かせると布団から出ようとする…
俺が行くから寝れないのかと思い
行くのを止めると今度は姉が部屋を覗きにくる…
どうにも姉の身体が休まってる気配が無かったので
俺も姉部屋に布団を敷いて寝ることにした。
約束の日では無いこの日に姉部屋で寝ることが姉自身嬉しかったようで。
一人はしゃいでいる。
姉を落ち着かせお腹をさすると10分もしない内に寝息をたて始めた…
「……本当に子供みたいだな」

小さく呟くと光を豆電球だけにし自分も床につく…


この小さな病気が麻奈美の依存を加速させることを勇はまだしらない…。






(病気や怪我をすれば勇は構ってくれるんだ…)


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