☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第82話☆ at EROPARO
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第82話☆ - 暇つぶし2ch500:名無しさん@ピンキー
08/08/30 17:39:25 pEkfoCp7
>>498
717しか、ないんだけど……?
壺、じゃ見えないのかな。

501:名無しさん@ピンキー
08/08/30 17:54:57 GskjJmSX
クグっても出てこない?
俺もdat落ちとかの情報載せてるスレで見聞きしただけなんだが

>//----------------------------------------【編集後記】
>識者の方からアドバイスをいただきました。昨日の「アダルト専用サーバのご案内スレ」ですが、
>通称「スレッド924」と呼ばれるスレで、『板内での告知・宣伝などを目的とした「書き込めない」「落ちない」
>「ちょくちょく上がってくる」特殊なスレッド』(2ちゃんねるwikiより引用)だそうです。

>114 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日: 2008/08/28(木) 06:40:08 ID:riV2p/mE
>>113 運営が張ってる広告専用スレ

>イパーン人は書き込めないんだけど、書き込みの操作をすることで
>連投規制の支援ができる、便利なスレ

502:名無しさん@ピンキー
08/08/30 17:56:52 vcd1H6yj
>>501
サンクス やっと見えた

503:ぬるぽ ◆6W0if5Z1HY
08/08/30 20:32:50 Ym+ydcd5
 スマン、ありえねーくらい間を空けてしまった。申し訳ない。80スレの頭で書いた寿司のやつの続きです。
15レスくらい使わせてもらいます。途中で規制される可能性があるので、ちょっと時間がかかるかも。

・前編、後編の二回。今回は後編
・エロくない作品
・ほのぼのと真面目の入り交ざった作品
・時間軸はA’sのちょい後の軸と、Stsのちょい前の軸の混合
・NGにしたい人はトリップかIDでよろしく。

~~前編のあらすじ~~

 なんやかんやで、八神家の五人は、ヴィータのゲートボールの知り合い・鈴木老人の寿司屋にやってきた。
もうすぐ、鈴木老人の店はなくなってしまうのだが、果たして……


↓以下、本編スタート

504:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY
08/08/30 20:34:12 Ym+ydcd5
「―うむ。はやてちゃんにしぐなむさんにしゃまるさんにざふぃーらさん、じゃな」
「うちのヴィータが、いつもお世話になってます」

 鈴木老人にぺこりと頭を下げるはやて。

「いやいや。わしらこそ、びーたちゃんのおかげで、随分と外に出るのが楽しくなったもんじゃ。
 今日はみなさんのために、赤字覚悟で思い切りいい魚を仕入れてきた。半分やけくそじゃ」
「えっ? いや、そんな……」
「ええんじゃ、ええんじゃ。どうせもうすぐ店はなくなるんじゃ。炎が消える前の最後の瞬きじゃ」

 そう言って鈴木老人は豪快にふひゃひゃと笑ったが、事情が事情だけに、八神家の五人は笑えない。
豪快な笑いの中に、どこか寂しげなものが混ざっていることに気が付くのは、容易かった。

「あの……」
「はは、すまんの。では、そろそろ始めようかの」

 そう言うと、鈴木老人は準備を整える。ではここから、八神家が味わった寿司のうち、五品を紹介しよう。


505:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY
08/08/30 20:35:28 Ym+ydcd5
~~秋刀魚の握り~~

「へぇー、秋刀魚って、お寿司で食べられるんですか?」

 秋刀魚の調理法というと、塩焼きしか思いつかない人がほとんどではないだろうか。
ところがどっこい、実はこの大衆魚、寿司ネタとして非常に鮮烈な味を持っているのだ。

「世間一般ではあまり知られてはおらんようじゃがのぅ。めちゃくちゃうまいぞ」

 料理の知識にはそこそこ自信のあるはやてだが、秋刀魚が寿司ネタとして優れた面を持つということは、
皆目知らなかった。驚きと同時に、はやての口から疑問の声が漏れる。

「知らんかったわぁ……でも、秋刀魚のお寿司って全然見ぃひんね。どうしてやろ?」

 漁獲量が昔より減ってきているとはいえ、秋刀魚はまだまだスーパーに行けば見ることができる魚だ。
そんなポピュラーな魚なのに、寿司ネタとして使われるという話をあまり聞かないのはどうしてだろうか。

「秋刀魚は鮮度が落ちやすくてのう。鮮度が落ちると、寿司ねたとしての味は極端に落ちてしまう。
 つまりは鮮度が勝負の魚なんじゃ。今日は特別に、仕入れてもらった。では―」

 その言葉を境に、鈴木老人の周りの空気がスッと変わった。

「握るぞい」

 真剣な眼差し。いつもと違うその様子に、ごくり、と生唾を飲むヴィータ。
と、次の瞬間!まるで鷹が獲物を攫うかのように、木桶に右手を突っ込んで中の酢飯を掴み取る鈴木老人。
鮮やかな手つきでそれを丸めると同時に、左手には秋刀魚の切り身がのっかっている。
丸めた酢飯を切り身の上に置いた―かと思ったときには、既に寿司の形がしっかりと形成されていた。

(なんと……この老人、只者ではない!)

 目の前の老人から放たれるオーラに、思わず背筋をブルッと震わせるザフィーラ。

(な、なんなの、この人……!)

 圧倒されるその仕事ぶりはまるで―目の前の一人の老人に、光が凝縮していくようだと感じるシャマル。

(くっ、馬鹿な……! この私が、目で追うのが精一杯だと!)

 自分がライバルと目する少女のスピードに勝るとも劣らない、と驚愕するシグナム。
凄まじい勢い。それでいて雑な感じは全くなく、丁寧な仕事ぶり。あっという間に、十貫の寿司が出来上がった。

「さあ。どうぞ、召し上がれ」

 秋刀魚の上には、一般的なワサビではなく、生姜がのっかっている。ワサビより、生姜のほうが相性がいいのだ。

「……んっ、はぅん……!」
「……っ……おいし……」

 口内にじゅわっと広がる脂の味が、なんとも鮮烈。おっとりとした(?)感じではなく、勢いのある味の脂だ。
青魚にありがちな臭みがほとんど感じられないのは、薬味の生姜の効果だけではなく、下処理が丁寧だからだろう。
身もとろけるような食感。その秋刀魚の身が、ほのかなだしの香りがする酢飯と非常によく合う。
素材がよいのはもちろんだが、職人の腕によって見事に素材の魅力が引き出され、一流の寿司となっていた。
内心、たかが秋刀魚だと思っていたはやては、その認識を大幅に改めた。

(うわぁ……秋刀魚だと思って馬鹿にしてたら、あかんわあ……)


506:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY
08/08/30 20:37:27 ESYNTb+e
~~赤貝の握り~~

「ほぅれ、ご開帳じゃ」
「うわぁ! すごい、真っ赤!」

 鈴木老人が貝を開くと、中から真っ赤な水が溢れ出した。赤貝が赤いのは、身だけではない。
赤貝の身や体液が赤いのは、人間の血液が赤いのと同様、ヘモグロビンによるものである。

「うちの店で扱っている赤貝は、本物の赤貝じゃぞい」
「えっ? 本物って……」
「世の中に出回っている赤貝の大部分はのう、実は偽物なんじゃ」

 実は、赤貝は最近やっと養殖ができるようにはなったものの、まだまだ高級品。
一流の寿司屋などでないと、なかなか取り扱うことができない。
そこで、赤貝とよく似た貝を赤貝と称して売るというのが、いかにも日本人の考えそうなことである。
残念ながら、読者の諸君が寿司屋や缶詰で食べているのは、十中八九、赤貝の偽物だ。

「この世界って、結構いい加減ねえ……」
「うぬ……我々も、何が真で、何がそうでないか、それを見極める目をしっかりと持たねばならんな」

 ざわざわする八神家を、鈴木老人が諭した。

「だからのう、よく知っておいて欲しいんじゃ。本物の味を、な」

 目の前に置かれた赤貝の握りは、『大人の事情』などまるで知らないかのように、美しく輝いていた。
鼻にスッと抜ける爽やかな香り。それでいて、底の見えないような奥の深い味。
本物の味がこの一貫に凝縮されている―まだ世の中をほとんど知らない10歳のはやてだが、そう思った。

~~炙り金目鯛の握り~~

「へぇー、金目鯛を握り寿司に……」

 秋刀魚の時と同様、またしてもはやての口から「へぇー」が飛び出した。
はやては、金目鯛の料理法というと、甘辛く煮付けることしか思い浮かばなかった。

「これはのう、とある駅の駅弁を参考にして作ってみたんじゃが」

 皮を残した金目鯛の切り身を、炭火で軽く炙る。香ばしい匂いが立ち込めた。
その切り身と酢飯を、光速で寿司に仕立て上げていく手つきの鮮やかなこと。

「うまい……」
「なんという……上品で軽い味だ……!」

 その美味さに、ザフィーラとシグナムが揃って声を上げる。
さっと炙ることによって、適度に身が引き締まった金目鯛は、しっとりと、それでいて洗練された味がした。
炙られて香ばしくなった皮の食感が、金目鯛の淡白な身の旨みを引き立てる役割を果たしている。
金目鯛にある独特のクセは感じられない。酢飯との一体感も素晴らしい。

507:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY
08/08/30 20:38:06 ESYNTb+e
~~四海巻き~~

 四海巻き、とは断面が四角い巻き寿司のことである。
巻いて包丁で切ると、四角い断面にはマグロや胡瓜・玉子焼きやでんぶなどがカラフルに、美しく配置される。
見たことがある、という人も少なくないだろう。
だが、作り方が非常に難しく、最近ではこれを巻ける職人が少なくなってきたらしい。

「ほれ、こうやって、こうして……完成じゃ!」

 全く迷いがなく、鮮やかな手つきで四海巻きを完成させる鈴木老人。包丁でカットすると、断面が現れる。

「うわあ~……」
「わあ、きれいやなぁ……」

 ヴィータとはやてが、その美しい断面にうっとりとした声を揃って上げた。
他の三人も、感嘆の眼差しで四海巻きの芸術的な断面を見つめている。食べる前に、まず鑑賞。

「食べるのが勿体無いわね……」

 名残惜しそうに四海巻きを眺めた後、ゆっくりと口に運ぶシャマル。

「……っ!!……!」

 まるで、仕事帰りのサラリーマンが一杯やり始めたときのような、くはぁーっという表情を浮かべた。
なんという美味しさ。様々な具が渾然一体となり、それを寿司飯が見事にピタッと一つに纏めている。
寿司飯とは、なんという偉大なものなのだろう。
目で見て楽しみ、舌で味わい愉しむ。これぞまさしく、四海巻きの真骨頂だ。


508:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY
08/08/30 20:38:44 ESYNTb+e
~~炙り大トロの握り・塩~~

「いよいよ、最後の一品と行こうかのぅ。らすとにふさわしい一品を用意したぞ」

 柵取りされたマグロの大トロが、神々しいまでの光を放つかのように、どーんと登場した。
見事な刺身包丁によってその身は大きくカットされ、次には炭火で炙られる。
その極上の大トロを、豪快且つ繊細な技で寿司にしていくのは、まさに、ごっど・おぶ・寿司職人。

「うは……」

 誰からともなく、ため息が漏れた。大きくカットされた大トロは、シャリの上から悠々とはみ出している。
表面を軽く炙った黄金に輝く大トロに少々塩を振り、その上に白髪ネギと大根おろしがちょこんと載っていた。

「これが大トロ……私、食べるの初めてやわ……」

 以前、友人達と青森に行った時には、あの有名な『大間のマグロ』を食べる機会があったが、
あの時食べたのは赤身だった。大トロの部分は食べていない。
(某友人がマグロの目玉という爆弾を頼んだりはしたが)
こんなにいいものを自分が食べてもいいのだろうか、という背徳感と、美味しいものに対する期待感。
逡巡しながらも、はやては炙り大トロの握りに、ぱくりと食い付いた。

「……っ!!」

 はやての身体に、電撃が走った。

「……んはぁっ……」

 まるで、性的に最も脂がのった時期の女性が絶頂でもしたかのような表情と声を上げるはやて。
よく、大トロを食べたときの表現として、「口の中でとろけていくようだ」というのがあるが、まさにそれだ。
程よく炙られて香りの高まった大トロがみるみる融けていき、甘い脂となって口の中で唾液と混ざり合っていく。
白髪ネギと大根おろしが、その脂をなんとも爽やかなものに昇華させている。

 まさしく、至高の一品!

509:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY
08/08/30 20:39:20 ESYNTb+e
「―どうじゃ。満足してくれたかい?」

 ニコニコとしながら、目の前の五人を眺める鈴木老人。

「すげー……こんなにうめーものが、この世界にはあったのか……」
「これが寿司……単なる食べ物ではなく、まるで完成された芸術品のようだ。素晴らしいです、御主人」
「シャマル。お前も少し、この方を見習ったほうがいい」
「な、な、な、なんですって!」

 ザフィーラに掴みかかるシャマルを横目に、はやては満面の笑みを浮かべながら鈴木老人に言う。
今のはやての表情は、心も身体も満ち足りた者にしかできないものだろう。

「私―食べ物で感動したん、初めてです。ほんまに美味しかった。ありがとうございます」
「うんうん。最高の褒め言葉じゃ。みなさんに喜んでもらえて、わしも嬉しいのう」

 ずずずず、とお茶をすするはやて。ぷはぁ……と一息ついた後、こう言った。

「それにしても、こんなに美味しいお寿司を握れる人が、こんなに近くにいたなんて、知らんかったわぁ……」

 その言葉に、鈴木老人の眉がピクリと動いたように見えた。そう、はやての言う通りだ。
なぜ、これほどの腕を持つ人物が、このような目立たない場所で埋もれているのだろうか。
先ほどから抱いていた疑問を払拭すべく、シグナムが、ゆっくりとこう切り出す。

「御主人。あなた、只者ではありませんね」
「はは、そんなたいしたもんじゃないぞい。わしはただの老いぼれじゃ。ふひゃひゃひゃひゃ……」
「……私は、食べ物の世界のことは正直よくわかりません。
 しかし、あなたの持つ雰囲気は一流そのもの、ということだけは確信を持って言うことができます。
 そのようなお方が、なぜこんな目立たないところに……」

豪快に笑い飛ばす鈴木老人を、じっと見据えるシグナム。
その視線に、それまでニコニコと相好を崩していた鈴木老人が、ふと真面目な顔つきになった。

「……なかなかに鋭い目をお持ちの娘さんじゃのう。ここまでやってしまうと、さすがに隠せんか」

 ふぅーと大きく息を吐いた後、どかっと椅子に腰掛けて、鈴木老人は語り出した。


510:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY
08/08/30 20:40:07 ESYNTb+e
「……昔はな、銀座の一流店で職人をしておった」
「銀座で!?」

 鈴木老人の言葉に、はやてがビックリした声を上げた。

「ぎんざ? じーちゃん、どこだよそれ」

 はやて以外の四人は銀座を知らない。驚愕の表情を浮かべるはやての横で、ぽかーんとしている。
はやてが、興奮気味の声で四人に話し出す。

「みんな、銀座っていうのはな!(……大幅に中略……)そういうところなんや」
「「へぇー」」
「鈴木のじーちゃん、そんなにすごいところにいたのに、どうしてこの街に来たんだよ」

 ヴィータの問い掛けに、鈴木老人は複雑そうな表情になった。

「……何かが、違うような気がしての……」
「……?」
「はやてちゃんやびーたちゃんには難しい話かもしれんがの。あの店に来るのは、接待のお客ばかりじゃった」
「せったい? なんだそりゃ?」

 案の定、接待という用語がわからないヴィータ。

「簡単に言うと、仕事じゃ。仕事のために食べに来るんじゃ」
「仕事で? あたし達みたいに、鈴木のじーちゃんの寿司を食べたいから来るわけじゃないってことか?」
「まあ、そういうことじゃな。もっと言うと、わしの握った寿司を味わいたくて来るんじゃなくて、
 わしの寿司を仕事の『道具』として使うために来店する。そういうのが何か、違うような気がしての……」
「…………」
「純粋に、わしの寿司を『美味しい』と言ってくれるお客さんが見たくてのう。ここに越してきたんじゃ」
「……よくわかんねーな。そういう世界のことは」

 わかんねーな、と言いつつ、ヴィータは鈴木老人の気持ちが少しわかったような気がした。
時空管理局に入局して一年、複雑な『大人の世界』というものを少しは見てきたのだ。
鈴木のじーちゃんは、大人の世界の複雑な部分に絡め獲られちまったんだな、と。

「はは……びーたちゃんには難しすぎたか。いや、すまんかった。気にせんでくれ」

 力なく笑う鈴木老人に、シグナムが再び問い掛ける。

「……ところで―よろしいのですか、御主人? この店をもうすぐ畳むと伺いましたが」

 その途端、沈痛な面持ちになる寿司職人。しばらく黙り込んだ後、苦々しく呟く。

「……仕方あるまい。魚は年々値上がりしておる。いいものも手に入りにくくなってきておる。
 わしのような小さな店では、もう限界じゃ。これ以上はどうしようもない……」
「あなたには、まだ十分な力がある。このまま終わってしまうのは実に惜しい。何とか、ならないんですか?」

 何とかしようと一生懸命に頑張った結果がコレだと、そうわかっていながらも、
シグナムはそう言わずにはいられなかった。

「いいんじゃよ、もう。じじいはいささか疲れたわい……」

511:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY
08/08/30 20:40:48 ESYNTb+e
 帰り道―明るく輝く満月の下を、車椅子に乗ったはやてを囲みながら、八神家は淡々と歩いていた。

「……現実というのは、残酷なものだな」

 ポツリ、とシグナムが漏らす。その表情は、沈痛なものだった。

「もういい、とおっしゃっていたが、内にはまだ、この道を歩み続けて生きたいという情熱があるのだろう。
 そうでなければ、今日のように素晴らしいものを作ることなどできはしまい」
「そうね……」

 シャマルも、同調する。

「あれほどの腕と情熱を持ちながら、己の道を途中で断念せざるをえないとは……」
「どうにか、ならないものかしら?」
「……我々には、どうすることもできん。実に、無力だ」

 管理局や魔法関係のことならばともかく、この世界の一般人に過ぎない鈴木老人の店の経営など、
はやて達にはどうすることもできないのは明白だ。

「……残念やけど、なんともならんやろうなぁ。住む世界でも替えない限りは……」

 はやての言葉に、ふぅーっ一同がため息をついた。
だが、しばらく歩いた後、はやては突如自分で言った言葉を、ん?と思った後、あっ!と思った。

(そうや……! 住む世界を、替えれば……)



「―みっどちるだ? そりゃあ、一体どこじゃい?」
「えっと、まあ……とりあえず、一度来てみませんか?」

 ミッドチルダは外国のとある街だ、と適当に誤魔化した上で、はやてとヴィータは説明した。
上述したように、ミッドチルダには生の魚介類をそのまま食するという文化がない。
そもそも、生に限らず、魚介類を食するということがあまりない。
需要が少ないわけだから、魚というものに商品価値はそれほど認められず、したがって安価。
ミッドチルダでなら、何とか寿司屋をやっていけるのではないかと考えた。
(もっとも、市場が発達していないという別のリスクはあるのだが)

512:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY
08/08/30 20:41:34 ESYNTb+e
「……せっかくじゃが、やめにしとくわい。あんた達に迷惑はかけたくないんでの……」
「そんな、私達は迷惑なんか―」
「いやいや、ええんじゃ。ありがとう、はやてちゃん、びーたちゃん」

 諦めというかなんと言うか、もはや達観してしまったかのような、その表情。
だが、店の奥に引っ込もうとした鈴木老人を、ヴィータの声が引き戻した。

「……あれは、嘘だったのかよ?」
「……?」
「この前、『おいしい』と言ってくれる人が見たくて、って言ってたじゃねーか。あれは嘘かよ」
「…………」
「いろいろ理由をつけて……本当は、うまくいかなくなるのが怖くて、びびってるだけじゃねーのか」
「こら! ヴィータ!」

 いつもなら、はやてに「コラ!」と言われれば、そこで終わりである。だが、ヴィータは引かなかった。

「この前の鈴木のじーちゃん、すごく生き生きしてた。本当はまだ、お店、続けたいと思ってるんだろ?」
「いや、わしは……」
「鈴木のじーちゃんの寿司、すごくおいしかった。あたし、また食べたい」

 訴えるヴィータの眼差しは、真剣そのもの。真っ直ぐに目の前の老人を捉えている。
その視線に射すくめられ、鈴木老人は押し黙ってしまう。場に沈黙が流れた。

「……びーたちゃんの言う通り、度重なる苦境で、わしは臆病になっとったのかもしれんのう……」

 その言葉が出たのは、唐突だった。

「わしの寿司をまた食べたい、か……そう言われてしまうと、やめてしまうわけにはいかんのう。
 どこまでやれるかは、わからんが……」
「それじゃあ……」



 そもそも、魔法の存在を知らない人間を、ミッドチルダに連れてくること自体、問題といえば問題なのだが、
そこは管理局の有力魔導師や実力者と太い繋がりがある八神家。
周囲の協力の下、なんやかんやでうまいことやり、『鮨の鈴木・みっどちるだ本店』をOPENさせてしまった。

―ミッドチルダ初の寿司屋が開店した裏側には、こういう事情があったわけである。


513:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY
08/08/30 20:42:12 ESYNTb+e





514:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY
08/08/30 20:42:44 ESYNTb+e
「……のう、はやてちゃん。どうやら随分とお疲れのようだが、大丈夫かえ?」
「えっ?」

 鈴木老人に声を掛けられ、はやてはハッとした。
気分転換のために管理局を抜けて外に食べに来たというのに、どうしても仕事のことが頭から離れない。
せっかく食べにきた寿司も、それほど味わった気がしない。

「なにか、悩みでもあるんじゃないかえ?」
「いや、そんな……そういうわけや、ないんですけど……」
「ふひゃひゃひゃ、隠しても無駄じゃよ。顔にしっかりと書いてあるぞい」

 やはり、数十年間、カウンター越しに客と接してきた職人は違う。人を見る目は伊達ではない。
隠そうと思っても、あっさりとこちらの心の中を見破られてしまった。
しばらく黙っていたはやてだが、やがて、ぽつりぽつりと喋り出した。

「……今の仕事が、あんまりうまくいってないんです……」
「それはそれは……大変じゃのう……」

 うんうんと頷きながら、鈴木老人は次の寿司を握り始める。
鮮やかな手つきで握られたそれは、きらきらと輝きを放ちながら、はやての目の前に置かれた。
だが、はやては心ここにあらずといった感じで、手をつけようとしない。

「あんまり、一人で抱え込まんほうがいいと思うがのぅ……ささ、召し上がれ」
「……私にしか、できない仕事なんです。私が頑張らな、みんなに迷惑が……」

 鈴木老人に勧められて、ようやくはやては目の前の寿司を口に入れた。

「…………」

 絶品のはずなのに。とっても美味しいはずなのに。
はやては思う。これを美味しいと思えないなんて、きっと自分は心が病んでいる証拠だな、と。
でも、仕事の手を緩めたり、ましてや休むわけにはいかない。新しい部隊はどうしても必要なのだ。
今、自分が頑張らなかったら、全てがパーになってしまう。

「ふーむ……」

 はやての言葉を聞いた鈴木老人は、しばらくの間じっと考え込んでいたが、いきなりこう切り出した。

「……はやてちゃんは、寿司が握れるかい?」
「え?」
「わしと同じように、寿司を作ることができるかえ?」
「いや、そんな……私には、無理です」
「まあ、そうじゃな。自分で言うのも何じゃが、みっどちるだで寿司を握れるのはわしだけじゃ。
 そういう意味では、この仕事はわしにしかできんのう」
「…………?」

 鈴木老人の言葉の意図がわからず、はやては黙って話を聞いていた。

515:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY
08/08/30 20:43:32 ESYNTb+e
「じゃがのう、はやてちゃん。わしは一人でこの仕事をしとるとは思ってはおらんぞ。
 例えばのう……寿司を握るためには魚が必要じゃ。じゃが、わしは魚の獲り方など知ってはおらん。
 寿司を握るためには、魚を獲ってきた人から、買わなきゃならん。お米や酢も同じじゃ」
「…………」
「他にもあるぞい。この店―建物はわしでは造れん。誰かに建ててもらわにゃならん。
 電気やがすや水道も、わしの力ではどうにもならん。誰かに送ってもらう必要がある。
 いや、そもそもここでこうして寿司を握れるのは、あの時みなさんが助けてくれたからじゃ」
「…………」
「こうして考えてみると、わしゃあ、世の中のことの万分の一もできん。なんとも非力じゃ。
 人間なんて、みなそんなもんじゃないかえ? 一人でできることなど、たかが知れておる。
 つまりの―わしがここで寿司を握るためには、様々な人の助けがどうしても必要になるわけじゃ」

 その言葉に、はやてはハッとした。

「はやてちゃんも、同じじゃないかえ? わしゃ、仕事の内容がどんなものかまでは知らんがのぅ。
 はやてちゃんにしかできないものだとしても、その仕事をするはやてちゃんが生きていくためには、
 様々な人の助けが必要なはずじゃ」
「……私……」

 自分は一人なのだと、いつしかそう思うことにはやては慣れてしまっていた。
だが、鈴木老人の言葉を聞いてはやては思った。
今の自分が一人に追い込まれてしまっているのは、他でもない、自分自身のせいではないか……、と。

「今のはやてちゃんを見ておると、一人で全部抱え込もうとしているように見えるのう。それはいかんぞい。
 一人で抱え込まずに、もっと周りを見て、頼ってもいいと思うが、どうじゃろうか」
「御主人の言う通りです、主」

 今まで黙って話を聞いていたシグナムが、力強く頷いた。
はやての肩をポンと叩きながら、優しくも強い口調で言う。

「我々では力不足かもしれませんが……あなたの力になりたいと、私は思っています。
 あなたの力に、あなたの支えになってくれる人間は、他にもたくさんいます」
「シグナム……」
「あ、あたしも!」

 出遅れたと思ったのか、座っていたヴィータが、勢いよく立ち上がって叫んだ。

「あたしは、その……はやてがどんな仕事をしているかは、詳しくはわからないけど……
 はやてに文句を言う奴がいたら、そいつ、ぶっ飛ばしてやるから……」
「ヴィータ……」

 たどたどしい感じのヴィータの言葉だったが、気遣いは充分に伝わってきた。

516:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY
08/08/30 20:44:20 ESYNTb+e
「わしも、はやてちゃんの力になりたいと思うとる。はやてちゃんが、わしの寿司を食べてくれて、
 笑顔になってくれて、また明日から頑張ろうと思ってくれるなら、わしゃあ、死ぬまで寿司を握るぞい」

 三人の言葉を聞いて、はやては胸が熱くなった。人間、辛いときほど周囲の支えがありがたく感じられるものだ。
ありがとう、と言おうとした。だが―

「はやて……?」
「主……」

「あ……」

 気が付いたときには、溢れ出した涙が、はやての頬を伝っていた。

「え……?」

 慌てて目をこすって涙を拭こうとしたが、一度溢れ出した涙の奔流を止めるのは、無理だった。
人前では涙は見せるまいと、そう決めていたはずなのに。

「あかん……なん、で……」

 まだ18歳の女の子でしかないはやてがこの世界で生きていくには、いろいろと辛いことが多すぎた。
辛かったことはその度に、心のゴミ箱に放ってきたつもりだったが、完全に消去することなどできなかった。
誰かにこの辛さをわかって欲しかった。
でも、自分は頑張らないといけないから、この辛さも一人で処理しなければならないと勘違いしてしまっていた。

「……ごめん、な……私……あり……が……」

 自分のことを支えてくれる優しい人達は、こんなにたくさん、近くにいたのに……。
どうして、一人だなんて思ってしまったのだろうか。どうして、孤独だと思ったのだろうか。
どうして、一人で頑張らなければいけないなんて、思い込んでしまったのだろうか。

 優しくて、温かい存在が見えていなかった自分が、悔しくて、情けなくて、申し訳なくて。

 はやてはひたすら、泣いた。

517:ゲートボールと寿司と八神はやて・後編 ◆6W0if5Z1HY
08/08/30 20:45:11 ESYNTb+e
「主……」

 両手で顔を覆ったまま、うっうっと嗚咽しているはやての肩をグッと抱き、頭を撫でるシグナム。

「はやて……」

 こういう時、どうすればいいのかわからなくて、心配そうな表情を浮かべることしかできないヴィータ。
鈴木老人は優しくはやてに話しかける。

「……笑ってくれんか、はやてちゃん。さっきは力になりたいと言ったが、わしもはやてちゃんから力をもらいたいのじゃ。
 はやてちゃんが笑ってくれれば、わしゃあ、いくらでも頑張れる気がするんじゃがのぅ……」

 人は誰も一人では決して生きてはいけない。助けて、助けられて、そうやって生きていくのだ。
これからは一人で抱え込まずに、もっと周りの人達に頼っていこう。
逆に、自分が誰かの力になれるなら、精一杯頑張って、力になってあげよう。
そう思うと、はやては幾分、心が楽になった気がした。

 ゆっくりと顔を上げると、自分のことを優しく見守ってくれているシグナム、ヴィータ、寿司職人・鈴木老人。
明日からも大変なことがたくさんあるだろうけど、自分は一人じゃない。はやてはもう一度認識した。

「ふひゃひゃ、しんみりしてしもうた。よぅし、次の一品はさーびすじゃあ!好きなものを頼んでくれて構わんぞ」
「ホントか、じーちゃん!それじゃ、あたしは車海老!」

 ここぞとばかりに、値段の高いものを何の躊躇もなく注文するヴィータ。

「こら、ヴィータ!お前、少しは遠慮というものをだな……御主人、私は鮑を」
「―ってオイ!言ってることと、やってることが違u
「主、御主人の温かい心遣い、ありがたく頂戴いたしましょう。何になさいます?」

 澄ました顔で、聞こえないふりをするシグナムがおかしくて、はやては思わずクスッと笑う。
まだ涙の残る目で、それでも精一杯の笑顔を作って、はやては言った。

「私は……炙り大トロで―!」



お わ り

518:ぬるぽ ◆6W0if5Z1HY
08/08/30 20:46:10 ESYNTb+e
(  ;∀;)イイハナシダナー

 自分がこうしてSSを書いて投稿できるのも、様々な人の助けがあってこそ。
スレ住人が相互感謝の気持ちを忘れないように、という意味も込めての作品でした。
作中の通り、我々なんて世の中のことの一万分の一のことも知らないんだから、お互いに感謝し、
助け合って生きていきませう。……誰か一緒に映画行ってくれませんかのぅ orz

 これの続編として、機動六課設立の見返りとして上層部のじーさん共に身体を要求されて陵辱されるはやて、
という鬱話を書こうと思ったが、来月末から三ヶ月の長―い研修に入るので、多分もう年内に書くことはないかな。
というわけで、よいお年をwwwwwwwww

519:名無しさん@ピンキー
08/08/30 20:48:46 pEkfoCp7
>>518
GJ!
関西在住ならご一緒にw
あー、すし食いたくなってきた。


ふと、ナガジマ家もこんな感じでミッドチルダに来た、だったら面白いなあと思った。

520:名無しさん@ピンキー
08/08/30 21:09:37 ELUTYbDD
>>518
GJ!
面白かった。
いいね、鮨。
普通にいい話で、しかも前半が美味い話だった。
サンマ食いてぇ。どっかのホームベースが肝美味いって言ったたのを思い出したよ。

521:名無しさん@ピンキー
08/08/30 21:24:10 oM+1rAej
>>518
GJ!!80スレに戻って読んだけどすごく面白かったです!!
何かこう、ほのぼのとしてて思わず八神家を応援したくなるSSですね。

研修の合間にネタを考えるのもいいのでは?

522:名無しさん@ピンキー
08/08/30 21:25:33 xoiGq/ad
このスレやたら無駄に続いてるのに
保管庫どんだけ見づらいんだよ、タグとかいらねえから
普通にカプ同士で分けろよ

523:名無しさん@ピンキー
08/08/30 21:29:48 GskjJmSX
>>518
GJ!炙り焼きは本当に旨いですよね

524:名無しさん@ピンキー
08/08/30 21:32:10 WQey7ztn
>>522
またお客様気分のバカか
見づらいなら整理する側になって自分でやれ

525:名無しさん@ピンキー
08/08/30 21:36:49 jY/fodx1
保管庫にあるのが全てカプもので分類できると正気で思ってるんだろうか……

526:名無しさん@ピンキー
08/08/30 21:45:48 JS4Gp9ok
>>518
寿司を食べるときの喘ぎ声が無駄にエロすぎワロタ

527:名無しさん@ピンキー
08/08/30 22:25:24 93ZEUBGI
レスが反映されねええええええええ

528:名無しさん@ピンキー
08/08/30 22:25:42 93ZEUBGI
あ、PINKには書けた

529:名無しさん@ピンキー
08/08/30 22:33:29 Ua5S0Aku
なんか送信したはずのレスが誤爆でもなくどこかに消えるバグが出てるね。
俺もさっきなった。

530:名無しさん@ピンキー
08/08/30 22:43:44 93ZEUBGI
>>529
どうやら全域的に治ったみたい
スレ汚し失礼した

531:詞ツツリ ◆265XGj4R92
08/08/30 23:05:17 aRkUxruT
ここ連日の雷雨でビクビク状態の日々です。

突然ですが、「しんじるものはだれですか?」の続きを30分から投下してもよろしいでしょうか?

30KBで、今回はエロはありません。

532:名無しさん@ピンキー
08/08/30 23:07:58 oM+1rAej
>>531
tkpls

533:名無しさん@ピンキー
08/08/30 23:23:45 JICSeX+z
>>531
カモン!

ところで誰か>>532の意味を教えてくれないか

534:名無しさん@ピンキー
08/08/30 23:24:56 LLbxQ3Lx
>>533
投下プリーズかな多分。

535:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:30:30 aRkUxruT
とにかくプリーズと読めましたw
では、投下開始します。








 何故わたしは彼を好きになったんやろうか。
 わからへん。
 いつの間にか好きになっていた。
 だから恋に理由なんかない。
 ただただ、私は愛し続けるやろう。

 この命が尽きるまで。



 しんじるものはだれですか?




 某月、某日。

「それで、君はちゃんと仕事の重要性を理解しているのか?」

「うぅ、すんません」

 アースラの執務官室。
 持ち主の心を表したのか質素極まる机の上で、一人の人物がため息を吐き出していた。
 黒い制服、黒髪に黒い瞳、日系人を思わせる父譲りの色を受け継いだ少年とも青年とも言えない人物が机を指で叩きながら、ジロリと目の前の少女を睨んだ。
 彼の名はクロノ・ハラオウン。若干十四歳でアースラの執務官に配属されたアースラの切り札とも言われた少年。
 その彼が年月を重ね、十八歳になり、低かった身長が見違えるほど高くなった成長した姿だった。
 そして、その前でカーペットにしゅんっとなって小さくなっている少女の名は八神 はやて。
 地球では小学六年生、しかし一度時空管理局に入れば特別捜査官として名を馳せる才女だった。
 しかし、その威厳は欠片もない。


536:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:31:29 aRkUxruT

「コレを見てくれ。これは何に見える?」

 そこにあったのは何個も0が続いた数字と、ずらずらと書き綴られた被害報告と苦情の数々。
 それを直視し、はやてはあははーっと明後日の方向に目を向けて。

「ええと、給料明細?」

「ち・が・う。これは君が―正確には君たち三人が吹っ飛ばした建物の被害額とその報告だ」

 ニッコリとクロノが微笑む。
 全てを温かく照らすような表情―けれど、それははやてにはまるで地獄に落ちろとファックポーズを取る閻魔のように見えた。

「訊ねたいんだが、なんで毎回毎回君たちは簡単な鎮圧任務でも被害を出すのかな?」

「えーと、なのはちゃんが全力全開で砲撃を―」

「ああ。それはなのはからよく聞いているよ、何故か涙を流しながら私がやりましたぁああ! だからごめんなさいい! とうるさく言っていたから、始末書200枚を手書きで提出するように命じておいた」

 うわーとはやては心の中で引き攣った声を上げた。
 報告書を200枚、しかも手書き。
 夏休みの溜まった宿題を一日でやるよりもきつい仕打ちだと思った。

「なのははまだミッドチルダ共通語に不慣れだからね、いい勉強になるだろう」

 しかも普段は日本語でいいのに、ミッドチルダ共通語で書くように命じたらしい。
 爽やかな笑みで告げるクロノはそのことに何の罪悪感も感じていないようだった。
 呼び出される2時間前に聞いたなのはの「悪魔なのー!!」という悲鳴はきっとこの笑みを見て叫ばれたものに違いないだろう。

「あとさらに聞いたところだと、フェイトも被害を出してるな。なになに? 出来れば尋問用に捕縛してほしかった人物を、重傷に追い込んで、面会謝絶の重態だとか?」

「えっと、それはやねー。戦闘中でフェイトちゃんが背後から飛んできた魔力弾をよけて、反撃でサンダーブレイドを打ち込んだんやけど……うっかりその傍で水場に立っていたターゲットまで一緒に感電して……」

「なるほどなるほど。まあ咄嗟の事態だからね、反撃の種類も選べないだろうから、とりあえずフェイトには力尽きるまで大型スフィアからの砲撃でディフェンス訓練を受けるように指示しておいたよ」

 ……なんという悪魔。
 あのうすっぺらいフェイトちゃんの防御力やと、スフィアからの砲撃なんか受けたら火星までぶっ飛んでまうやろ。
 と、はやては思ったが口にはしなかった。
 一時間前に聞いた「お兄ちゃんの鬼ー!!」というフェイトに叫び声を上げさせた、クロノのとても楽しそうな笑みを目の前にしているのだから。

「そして、はやて」

「な、なに?」

「君は二人と一緒になって戦闘をしていたはずなんだが―君には指揮官権限を与えてあるんだ。何故二人を止めなかったのかな?」

「え、えーと……私もいっぱいいっぱいやったというか、二人の暴走を止めるのは無理だったというか」

 人差し指を突き合わせながら、はやてが言い訳をするとニコニコとクロノの笑みが深まっていく。
 にこにこと笑みが柔らかく、優しくなっていくのだが―反比例するかのようにはやての背筋に恐怖が走った。
 逃げたい。
 今すぐリイン、ユニゾンやー! と叫びながら全力疾走で逃げ出したくなる。
 けれど、それは許されない。
 何気に両手でS2Uとデュランダルの待機状態のカードを握り締めた彼からの追撃が背中に直撃し、某正義のヒーローに蹴り飛ばされる怪人よりもぶっ飛ぶことになるだろう。
 それぐらい彼は怒っている。間違いない。


537:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:33:05 aRkUxruT

「く、クロノ君……怒ってる?」

「いや、僕は怒ってないよ? 精々君の指揮官適正を見極めた局員に苦情と、あとついでに判断力を鍛えるために極限まで追い詰めるか、そうだそれには模擬戦休憩無しで僕が相手してやろう、大体八時間ぐらい。としか考えてないな」

「めっちゃ怒ってるやんかー!!!」

 どこからどうみても大激怒だった。
 研修期間中の預かりになっている三人が問題を起こせば苦情が飛んでくる身だ。
 今は退艦したリンディの替わりに艦長になっているあの飄々爺さんと違って、クロノは責任感が強いとも言える。
 飛んでくる苦情の一つ一つをしっかりと受け止め、その問題性を理解しているのだろう。
 だから、彼はきっとこう思っているはずだ

 僕の教育―いや、調教が足りなかったんだと。

「あかん! 調教されてまう!」

「は?」

 ついに脳まで春になったのか、と冷ややかな目でクロノがはやてを見つめるが、被害妄想で満杯な小学六年生の割には耳年増な少女はいやいやと身体を捻っていた。

「ああ、私はきっとクロノ君に酷い目にあって、お嫁にいけなくなるんやね……」

「はぁ……ていっ」

 ゴガンといい音が響いた。
 あいたー! と叫んで悶絶するはやてが頭を押さえて、クロノは起動状態にしたS2Uで肩を叩きながらため息を吐く。

「ふざけるようなら、さっきなのはとフェイトに科したペナルティを両方共こなしてもらってもいいんだが?」

「え、あ、いえ! ごめんなさい、真面目にやります! 許してください!」

 ぺこぺこと頭を下げるはやて。
 誰しも命は惜しかった。
 なのはの精神をガリガリと削って、SAN値がゼロに限りなく近づくような拷問も。
 フェイトの肉体をゲシゲシに苛め抜いて、新しい領域の扉が開きそうな拷問も真っ平御免だった。
 今のクロノならディフェンス訓練をさせながら、始末書を書かせるような無理難題も押し付けてくるだろう。

「しかし、はやて。どのような問題でも、現場責任者―つまり指揮官が背負う責任は大きい。それを指揮し切れなかったのははやて、君の責任なんだぞ?」

「それはわかっとる」

 キリッと顔を真顔に変えて、はやてはしっかりと返事を返した。
 おふざけだった表情から一変した顔だった。
 うん、とクロノがどこか満足したように頬を緩めると、S2Uを待機状態に戻した。

「まあ今後からはさらに注意するように。同じようなことが頻発するようだったら、リイン無しでマルチタスク三重処理の訓練を受けてもらうからな。それぞれミッド式とベルカ式の広域結界構築に、自分へのブーストの術式演算だ」

「うへー、なに、その衝突必死の術式チョイス」

「それをこなしてこそのマルチタスクだろう? 君はレアスキル分、所持魔法が多いんだ。誰よりも多くの魔法を使いこなすべきだ、持っているだけでは腐るだけだからね」

 淡々と厳しい要求を告げるクロノの発言は間違っていなかった。
 はやてはかつての闇の書―蒼天の書を受け継いだ夜天の主。
 レアスキル蒐集を所持し、ざっと数えても三桁を超える魔法を記憶している。
 しかし、その全てが使いこなせているとはいえない。


538:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:33:37 aRkUxruT
 たった三年前までは単なる小学生だったのだし、魔導師になった経緯も異常とも言える出来事でだ。
 魔導師の力と技を手に入れただけで、その後は必死に知識を詰め込んで、俄仕立ての魔導師になった。
 その際には目の前の人物からも多くの師事を得ている。
 それこそ、先生と呼んでもおかしくないほど―

「まあそれは後の課題として、はやてにもしっかりと何かをしてもらうぞ」

「う」

「他の二人にも申し訳ないからな、贔屓だーっと怒られるのは不本意だ」

 クロノはそういいつつも困った様子もなく、頬に指を立てて何をしてもらうのか考え始めた。
 どんな難題が飛び出してくるのか、冷や汗たらたらではやてが待っていた時だった。

『クロノくーん? まだお説教中―?』

「エイミィ。なんだ?」

『なんだじゃないよー、説教が長いのはいいけどね。そろそろ予定座標への次元航海を開始するから、その前に武装隊とのミーティングをするんじゃなかったの?』

「ああ」

 うっかり忘れていたとばかりにポンッとクロノが手を打つ。
 僕としたことがっと、少しだけばつ悪そうに口元を緩めると―不意にクロノの目がはやてを見つめた。

「なんや?」

「いや、丁度いい戦力がいたなと思ってね」

「へ?」

 ニヤリとクロノが口元の脇を歪めて、笑った。

「いい機会だ。現場の空気を味わうといい」

 へ? とはやてが首を傾げる中、クロノは静かにS2Uを展開させて、告げた。

「遺跡調査、僕と付き合ってもらうぞ?」




539:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:34:55 aRkUxruT


 あらゆる次元世界を航海する海の役割として未探査世界の調査が存在する。
 そして、その中でもアースラは無人世界―まだ文明が発達していない、或いは文明が滅び去った世界の探査を目的としていた。
 各主要世界からの連合機構であり、多次元世界の代表として文明世界との接触と交渉するには人員も足りず、権限も足りない。
 決して劣るというわけではないが、必要とされている役目が違うのだ。
 本来ならば第97管理外世界の接触もまたアースラの権限から超えているものだった。
 A級ロストロギア・ジュエルシード。
 幾多の被害を齎したロストロギア・闇の書。
 この二つに広大な惑星の一つの町で立て続けに発生したのは如何なる運命なのか。
 誰かの策略か。
 それとも気まぐれな神の導きか。
 誰も知る由はない。
 知ることも出来ない。
 シナリオを描く運命の導き手と接触することなど誰にも出来ないのだから―




 転送ポートから降り立った大地の上、砂塵が舞う大気。
 空は砂塵の雲に覆われて、薄暗く、眩く、不透明。
 有害物質の混じった砂塵は設定を調整したバリアジャケットが遮断し、複数の魔導師たちが降り立っていた。
 目的は一つ、この世界で発見された古代文明の遺跡。
 そこでの調査結果の回収なのだが―武装隊が降り立ったのには理由がある。

「さて、ここからが本番なわけだが―」

 黒い法衣型のバリアジャケットに身を包み、両手にS2Uとデュランダルを握り締めたクロノは告げた。

「エイミィ、先遣調査隊からの連絡は?」

『さっきから通信を送ってるんだけど、やっぱり返事が無いよ。通信は届いているみたいなんだけど……』

 先遣調査隊。
 アースラよりも先にこの地に訪れ、遺跡の調査をしていた一団から定時連絡が途絶えて二日。
 アースラはその調査と確認に訪れていた。

「応えるものがいない、か」

 クロノは表情を厳しく、呟いた。
 その横に立つ同じく騎士服姿を纏い、シュベルトクロイツを握り締め、ユニゾン状態の黒い翼を生やしたはやてが首を傾げる。

「つまり、どういうこと?」

(どういうことですぅ?)

 ユニゾン状態のリインフォースⅡもまたはやてにしか聞こえない声を上げる。


540:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:35:59 aRkUxruT

「さてね。通信が届いているということは通信機能が壊れたわけじゃない、ただ―嫌な予想が立つだけだ」

「へ?」

「三班に分かれましょう。アインス隊長、ツヴァート隊長、それぞれルートAとBから部隊を率いて侵入してください」

「了解」

「あいよ」

 アースラの武装隊を指揮する分隊長の二人が威勢よく指を上げる。

「はやて、僕たちは二人でCルートを進むぞ」

「あ、了解や」

 遺跡の中に入るルートは三つ。
 正規ルートであるAとBのルートと、裏門であるCルート。
 遺跡の見取り図は先遣隊からの定時連絡による情報で手に入っている。
 故に迷う必要もなくクロノは歩き出し、はやてもその後ろを付いていく。

「なぁ、クロノ君?」

「なんだ」

「私ら、二人だけでCルートいくんか?」

「そうだが?」

「危険、やない?」

(クロノさんとはやてちゃんだけじゃ、危ないですよー)

 今までの任務はいつも武装隊やヴォルケンリッター、なのはたちが居た。
 最低でも三人だった。
 けれど、今は二人。
 それも閉所で何が起こっているのかわからない危険な場所。
 はやてが戸惑うのも仕方が無かった。

「危険、だろうな」

「それなら―」

「しかし、これがベストなんだ」

「ふぇ?」

 クロノは感情の抜け落ちた顔で告げる。
 緩やかに、言葉を刻みつけるように、手を振った。

「高位魔導師と普通の魔道師、その戦力差から考えれば」

 砂塵の舞う大地から空を見上げて、クロノは呪うように言った。

「君も理解するべきだ。君たちと僕らの差を」

 才は無く、血反吐を吐くような思いで力を手に入れた少年はただ思う。
 常人から超越者への領域に踏み込んだ狂人は静かに歩き出した。

541:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:37:08 aRkUxruT


 砂塵に埋もれた遺跡の扉。
 その横にあったパネルにクロノが携帯情報端末から伸ばしたチューブを突き刺し、端末にコードを打ち込むと鈍い地響きを立てて動き出した。

「まだ機能は動いているんやね」

「ああ。先遣隊はホストコンピューターを探して調査をしていたはずだが……」

 そう告げて、クロノがゆっくりと指を曲げる―アクション・トリガー成立。
 瞬間、クロノの顔面一センチの位置で火花が散った。
 チュインッという金属音、一瞬だけ停滞したそれは黒い塊。鉛玉。
 すなわち質量兵器での銃撃だった。

「え?」

(なんですー!?)

「一足遅かったようだな」

 クロノが足を踏み出し、S2Uの尖端を扉の向こうに向けた。
 飛び散る火花、銃弾が足元を飛びまわる、壁を銃弾が駆け抜けて、銃撃音が鼓膜を刺激する。

「下がるんだ」

 その瞬間からクロノの空気が変わった。
 いや、隠してもいなかった雰囲気にはやてがようやく気付いただけだった。
 はやてが戦闘体勢に入り、クロノは―既に思考を切り替えている。

「クロノくん、危ないで!?」

 銃撃が降り注ぐ、その中でクロノは突き進む。
 障壁がひしゃげ、不可視の壁が次々と虫食いのように食い破られていく。
 その中でクロノは身体機能を弄り、瞳孔を細めた。
 虹彩を広げて、闇へと同調する。

 見えた。

「そこか」

 アクショントリガー成立。
 目を見開き、リンカーコアから魔力を放出し、破壊のイメージを演算処理で現実へと変換する。
 僅かに唇が歪む―小さな愉悦。
 ぞくりとはやての肌が泡立つ、恐怖の予兆。
 スティンガー・スナイプ。

「―スナイプショット!」

 弾丸加速のスペルワード。
 空間を切り裂くように右手を振るう、その軌道に合わせて光弾が飛んだ。
 青白い鬼火のような一撃、それは鋭く飛び去って―何かを砕いた。ばしゃりと生々しい音を響かせた。

「がぁああ!」

 悲鳴が上がった。
 暗がりの中で何かが倒れる音がした。
 はやては目撃する、それは人間だと。


542:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:37:52 aRkUxruT

「そっちもだ!」

 S2Uを横に薙ぎ払う。
 まるでピアノ線で操られているかのように、青白い光弾が急激に軌道を変えて飛翔した。
 弾道操作、魔法の恩恵、そこから打ち出された弾は物理法則に縛られることなく自在に軌道を変える。
 銃撃を放っていた人物が、暗がりの中で泡を食ったように走り出す―その背に光弾がめり込んだ。

「散れ」

 クロノの呟き。
 同時にめり込んでいた光弾が爆散し、人影は手榴弾の直撃でもあったかのように吹き飛んだ。
 奇怪な姿勢で壁に激突し、赤黒いものを撒き散らしながら床に崩れ落ちる。
 銃撃はそこで止んだ。
 否、既に打ち放つものはそこにいなかった。

「や、やりすぎちゃうか? 非殺傷設定でも、あれじゃ重傷やで……」

「完全に戦闘能力を削ぐならあの程度でも優しいほうだ」

 そう告げて、クロノはデバイスを振るうと、倒れ付した二体の人影にバインドを掛ける。
 同時に近づいたことで、その人相を理解した。

「盗掘者、か」

 クロノが目を細める。
 そこにあった光景。
 それはこちらに向けていた銃火器を床に落とし、防塵マスクを被った男たちが倒れ付した姿。
 ―魔導師ではないな。
 魔導師ではあっても低レベルの弱い存在。そう判断する。
 魔法の力に頼れない、奇跡の力を編み出せない存在は質量兵器という力を得て、その差を埋めようとする。
 それは正しい。
 正しいが、そんな当たり前の常識は一人の超越者の前には無意味だった。
 悲しいほどに圧倒的な差があった。

「はやて、障壁を忘れるな。バリアジャケット程度では貫かれる」

 クロノは静かに告げると、銃撃の止んだ道を進み始める。

「う、うん」

(オートプロテクションを発動しておくですー)

「頼むわ」

 リインの返事にはやてがゴクリと喉を鳴らしながら返事を返した。
 ずかずかと進むクロノの背中、その背に僅かな違和感を感じながら。



543:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:39:22 aRkUxruT


 遺跡の内部は朽ち果てていた。
 かつては文明の最先端を進んでいたのだろうその内部は風化した紙とも金属とも思えぬ欠片を散りばめさせ、ひび割れた壁が続く。
 その道を物珍しそうにはやては眺めながら、警戒を続けるクロノの後ろを付いていった。

≪ここから先の廊下を曲がれば、先遣隊のベースキャンプ位置のはずだが……≫

≪敵の根城の可能性、大やね≫

 気付かれる可能性を極力減らすために念話でクロノとはやては会話していた。

≪ああ≫

 短い返事。
 それに加えて二人は足音を立てていなかった。
 床から数センチ上を滑るように飛んでいた。
 飛行魔法の応用である浮遊、無声と消失した足音というのは室内戦において極めて有利な要素である。
 通常の物理法則を操作することが出来る魔導師。
 その可能性はどこまであるのだろうか。
 その利便性は計り知れないものがあった。
 そして、二人は静かに廊下の角まで辿り着き、静かに床に着地する。

≪どう?≫

≪動いている、な。声がする、どうやらアインス隊長とツヴァート隊長が上手くやっているらしい≫

 耳を澄ませば怒鳴り声が響き渡り、奥からは銃撃音が響いていた。
 ビリビリと心が、身体が震えそうな声、音。
 はやては無意識に震える自分の手を押さえようともう片方の手で押さえつけようとした―その時だった。
 クロノが左手に握っていたデュランダルを待機状態に戻した。

「へ?」

 震えた手を、無造作にクロノに掴まれた。
 ゴワゴワとどこか硬くて、細い自分の手よりも逞しい少年の手が包んでいた。
 他人の体温が伝わってきて、どこか熱かった。

≪怖いのか?≫

 クロノの問い。
 それにはやては極自然に、けれど顔を少しだけ赤くして答えた。

≪あ、当たり前や≫

≪そうか≫

 けれど、何故だろう。
 手の平から、指先から伝わってくるクロノの体温を感じていたら、何故か震えが止まっていた。
 身体がぽかぽかとしてきて、どこか胸が熱くなる。
 この感覚がリインに伝わらないことを何故かはやては祈っていた。


544:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:40:22 aRkUxruT

≪怖いとき、誰かの手を握るといい≫

≪え?≫

≪一人なら出来ないことも二人なら出来る。そう信じられるだろう?≫

 そう告げるクロノは何故か渇いた目を浮かべていた。
 その手に握るはやての体温をなんとも思っていないかのように、温かい体温とは裏腹に冷たい鋼のような瞳を浮かべて、その右手にS2Uを掴んでいた。
 何故かはやてはそれを悲しいと感じた。
 何故か痛々しいと感じていた。
 理由なんかない。
 理由が分からない。
 ただ空虚な気配を漂わせるクロノが切なくて、右手に握るクロノの左手の感触を忘れないように指を絡めていた。
 力強く握ったその手は頼りがいがあって、まるではやてを支えてくれるような気がした。

≪うー、リインもいるですよー!≫

 リインフォースⅡが可愛い声を出して、主張した。
 はやては音も立てずに苦笑する。

≪そうやな、私は一人とちごたんやな≫

 クロノ君が居て、リインもおる。
 震えは止まっていた、代わりに力が沸いていた。

≪もう大丈夫だな≫

 瞬間、するりとクロノの手がはやての指から抜け落ちた。
 もう十分だろうと判断して、左手の自由を取得する。

(あ)

 何故かその時はやては惜しいと感じた。
 けれど、そんな感傷は数瞬。両手でシュベルトクロイツを握り直す。
 クロノは口を僅かに歪めて、念話で誰かに言葉を送ると、いけるか? とはやてに視線を送った。

≪大丈夫や≫

 はやては頷く。
 そして、クロノは左手に再び起動状態にしたデュランダルを握ると、僅かに指を動かした。
 デバイスを操作・詠唱省略・演算開始。

≪まず僕が奴らの目を潰す、援護を頼む≫

 クロノは無造作とも言えるタイミングで廊下から足を踏み出す、黒い法衣が暗がりに紛れて、目立たずに廊下から姿を現す。
 クロノの目に飛び込んできたのは広い室内。
 遮蔽物の少ないイスやテーブル、その奥にいる無数の銃器を手に持ち、怒鳴り声を上げている人物。
 そして、その部屋の横で―無造作に並べられた人間サイズの袋。
 それを見た瞬間、クロノは静かに手の中のデバイスを握る手を強めた。


545:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:41:20 aRkUxruT

「ん?」

「ま、まどう―」

 クロノの存在に気付いた声、されど遅い。

「遅い」

 演算処理完了・魔力伝達・顕現開始。
 クロノは右手を降り抜いた、青白い魔力光を放ちながら、一直線に光の弾が音速に迫る勢いで室内の奥の床に直撃し―

「ブレイク」

 瞬間、白い光が全てを包んだ。
 空気がかき乱されるような爆音に、閃光が闇に満ちていた。
 今まで暗がりに慣れていた目にその光は凶悪だった。網膜が焼きつくような光量に絶叫が上がる。

「スティンガーレイ!」

 その中で足音も聞こえず、魔法を放つ声すらも聞こえないまま、目を閉じたクロノが動いた。
 マルチタスク起動。
 並列思考で共に同じ演算処理を行い、しかしその軌道のみを違えるイメージを持ち合わせ、両手に握る二振りのデバイスを振り抜く。
 縦に、横に、空間に線を刻み込むような動作と共に青白い光線が飛翔した
 白い世界に壊れた人形のような人影が踊り狂う、光が終わる、白い世界が終わると共にどさりと崩れ落ちる音がした。

「くそったれ!」

 ガチャガチャという金属音。
 未だに残る数十人の男たちが武器を構えるのを理解、クロノはそれに恐れる事無く足を踏み出そうとするが。

「甘いで! リイン!」

≪はいですー!≫

 その背後から、シュベルトクロイツを掲げ上げ、その黒き翼を羽ばたかせたはやてが躍り出る。
 魔力供給・バレルフィールドを展開・演算処理終了・顕在化開始。
 ミッドチルダ式の魔法陣が次々と展開されて、遺跡内部の壁を照らし出す、盗掘者たちの目に黒き翼を生やした天使の如き少女の姿が映る。

「全弾もってけ! アクセルシュータァアア!」

 オーケストラの指揮でもするかのように騎士杖を振り抜き、光が拡散した。
 それはまるで流星群のようだった。
 狭い通路の中、はやての前方から撃ち出された無数の光弾はクロノの脇を綺麗に潜り抜けて、カクカクと直角に折れ曲がりながら、その悉くを武装した盗掘者たちに着弾する。

「がぁああ!」

 スタン設定。
 非殺傷設定の弾丸は魔力を持つものにはそのリンカーコアにダメージを与えて魔力ダメージを与え、相殺し切れぬ過剰魔力によって肉体の神経に負荷を叩き込み、麻痺させる。
 リンカーコアを持たざるものには相殺すらも許されず、麻痺するのみ。
 大リーグピッチャーが投げ放つ球よりも速く鋭い、確かな威力を持った魔力弾の直撃に人体は容易く吹き飛んだ。
 壁に、床に、空に、蹴飛ばされた小石のように吹き飛んだ盗掘者たちがそれぞれの固い壁に激突し、悶絶する。後に残るのは呻き声のみだった。
 視界内の全ての人間を見事に撃ち抜いた少女はふぅっと額の汗を拭った。

「さっすが私、お手柄やん」

≪やったですー!≫

 ニコリと笑みを浮かべるはやてに、クロノは静かに目線を向けた。


546:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:42:02 aRkUxruT

「この部屋には―もういないか?」

 探査魔法を駆使し、動体反応を探る。
 視覚内に映る人数が全てがどうか探査し、クロノは警戒を怠らない。

「んー、まあ大丈夫やろ。私とクロノ君の仕事に手抜かりはなしや!」

≪ですー!≫

 はやてが無邪気に笑い、リインが同調するように声を上げた。
 そんなはやてを冷たい目で、嘆くかのように、羨むように、ただ渇いた目で一瞥し―瞬間、クロノは足場を踏み変えた。
 探査反応2、背後からだ。

「はやて!」

「へ?」

 クロノがドンッとはやてを肩で押し飛ばす。

「なにす」

 るんや! そう叫ぼうとした時だった。
 赤い華が裂いた。クロノの体から赤く染まり、遅れて銃声が轟いた。
 カランと右肩を打ち抜かれたクロノの右手から、S2Uが零れ落ちる。

「クロノ君っ!」

 そこでようやくしりもちをつき、痛みの走った腰の痛みも忘れてはやてが絶叫を上げた。
 銃撃のマズルフラッシュは彼女たちの背後、そこには二人のマスクを付けた男たちが居た。
 騒ぎを聞きつけて、巡回から戻ってきたのだろう二名。
 その喉の奥から聞こえる声は憤怒に満ちていた。

「死ねぇえええ!」

「っ!」

 続いて叩き込まれる銃撃を、クロノは左手に握ったデュランダルの先に発生させたラウンドシールドで凌ぐ。
 障壁に直撃し、跳弾した銃弾は床に、天井に着弾し、火花を散らす。

「化け物が!!」

 恐怖に怯えるような叫び声が聞こえた。
 実際恐ろしいのだろう。
 魔導師は恐ろしい。たった一本の杖でビルを崩壊させることも、地面を粉砕することも、何人もの人を殺すことも容易な存在なのだから。
 忌避の目はいつだって見てきた。
 はやても、クロノも当たり前のように受けてきたのだ。
 見れば奥にいる二人の片割れが肩にごつい鉄の塊を背負い、その砲口をはやてたちに向けていた。
 はやてはそれに見覚えがあった。
 あくまでも映画の中だが、確かにそれは―

「ロケット砲や!」

 パスンとどこか気の抜けるような音と共に噴射炎を吹き出し、ロケット弾が飛び出す。
 それを回避するには体勢が悪すぎた。
 はやてはしりもちをついたまま、クロノはラウンドシールドを展開したまま身動きが取れない。


547:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:43:10 aRkUxruT

「くっ!」

≪障壁を!≫

 はやてがシュベルトクロイツを振り翳し、障壁を展開しようとする。
 しかし、間に合わない。
 如何にシュベルトクロイツが高性能だろうが、ユニゾンデバイスが補助についていようとも、一呼吸するよりも早く演算処理を終えるなど不可能だ。
 ロケット弾をたった一つのラウンドシールドで防げるか?
 手榴弾の熱量と衝撃ならば二人のバリアジャケットで防げるだろう。しかし、ロケット弾は? 防げるかもしれないし、凌駕するかもしれない。
 故に。

「止まれ」

 そんな賭けに出る気はクロノにはさらさらなかった。
 二人に直撃するロケット弾、それが二人に迫る一メートル前で―光の鎖に縛られて停止した。

「え?」

 ディレイドバインド。
 クロノが得意とする空間設置型バインド。
 座標領域に侵入した全ての物体を停止させる魔法。それは人体でも、ロケット弾でも例外ではない。

「っ、ユーノなら銃弾でも止めるんだろうが」

 無限書庫で働いている悪友の名前を上げて、クロノは皮肉げな笑みを浮かべる。
 己の未熟さに。
 己の至らなさに。
 己の脆弱さをせせら笑うかのような笑み。

「クロノく―」

「返すぞ」

 はやてが声を掛けるよりも早く、クロノはデバイスを降り抜いた。
 飛行魔法の亜種、ベクトル操作。
 ロケットへと働いていたベクトルを真逆に変える、右は左に、上は下に、正面は後方に。
 バインドを解除。

「消し飛べ」

 そして、加速。
 まるで超能力のように、手で触れる事無くロケット弾が真逆の方角に―すなわち撃ち放った二人へと飛翔した。

「なっ!」

 避ける暇などない。
 先ほどのはやてたちの状況の鏡写し、違うのは魔法が使えないということだけ。
 すなわち防ぐ手段などなく―二人にロケット弾が着弾する。衝撃で爆砕し、爆風と衝撃破がグロテスクに人体を砕いた。
 爆音が鼓膜を震わせる。
 爆風が皮膚を震わせる。
 生臭い香りが、鼻腔を刺激した。
 人間はあっさりと死ぬものなのだと理解させた。

「これで最後、か?」

 探査反応はないな、とクロノは打ち抜かれた肩に手を当てながら呟く。
 その様子を呆然と眺めていたはやては不意に我に返ったように、声を上げた。


548:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:44:38 aRkUxruT

「っ、クロノ君!!」

 人が死んだ。
 それも間接的に魔法を使っているとはいえ、質量兵器でだ。
 問題ではないのか? いや、それ以上にはやてはショックを受けていた。

「い、今……」

 人が死んだのだ。
 あっさりと知り合いの男性が人を殺した。
 若干十二歳の少女は手を震わせていた。
 人を傷つけたことがないわけじゃない、死体を見たことが無いわけじゃない、けれど―誰かが殺すところを見たことはなかった。
 吐き気が遅れて込み上げてくる。
 はやての声は震えていた。

「どうかしたか?」

 けれど、クロノはまるで気にした様子もなく、ただはやてを気遣うような言葉を吐き出した。
 その顔には動揺の一つもなく、涼しい顔。
 今居る場所は確かな戦場なのだと告げるように、当たり前の顔をしていた。

「クロノ君……その人たち」

「殺したよ」

 あっさりと告げられた事実に、はやては震えた。

「なんで! クロノ君の腕なら殺さなくても―」

「彼らは調査隊を殺した」

 静かにクロノは部屋の隅を一瞥する。
 そこに並べられたゴミのような死体袋、おそらくデータを抜き取った後は放置しておくつもりだったのだろう。

「危険性が高いからね、執務官の判断で殺傷許可は降りる。無闇に危険を負ってまで非殺傷で留めるよりは、殺したほうがこちらの安全性が高い」

「っ、そんな言い方はないやろ!」

「なら、君は一生手を汚さずに戦い続けられると思っているのか?」

「それ、は」

 その言葉にはやては言い返すことは出来なかった。
 はやてが使う魔法、なのはたちが使う魔法、それらは非殺傷設定という人を殺さずに済む安全性を持っている。
 けれど、使うのは紛れも無い破壊の力。
 並大抵の爆薬や銃器など比較にならない破壊を齎すことの出来る技術なのだ。
 はやては言い返さない。
 そんなのは不可能だと知っているから。
 自分の使う力が都合のいい御伽噺のような力では無いことを知っているから。
 いつかはやても人を殺すだろう。
 なのはもフェイトも手を血に染めるだろう。
 戦い続ければ、誰かを護るために魔法を使えばいつか誰かを殺す。
 それは免れない運命。
 だけど。


549:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:45:17 aRkUxruT

「それを許容してたら、単なる人殺しや」

 殺すことを当たり前にしていたら、大切な何かが壊れるだろう。
 壊したことに心が痛まなくなった人間は本当に人なのだろうか?
 はやては迷う。
 迷いながら、手を血に染める少年に思いを告げようとして―

「だろうな」

「へ?」

 肯定するようなクロノの言葉に、はやては戸惑いの声を上げた。
 クロノはどこか遠くを見ていた。

「君たちはそれでいい」

 クロノは告げる。
 祝詞でも上げるかのように、舌を震わせ、唇を動かした。

「いずれ君も手を染めるだろう。僕らは―力を持った魔導師は誰かのために泥を被る。血を浴びる、手を染める、真っ赤に染めるだろう」

 じわりと血がにじみ、クロノの肩を押さえた手が赤く汚れていく。
 背負った人殺しの業が滲み出たかのように、真っ赤に染まる。

「それを恐れるなとはいわない」

 汗が吹き出す。
 激痛を感じているはずなのに、クロノははやてに諭すように語り続ける。

「けれど、その悲しみを忘れないでほしい。流す血の痛みを忘れないで欲しい」

 出来の悪い生徒に優しく教えるような教師の声音でクロノは告げる。

「そうすれば、君たちは僕がやるよりもずっと悲しみを減らせるはずだから」

「クロノ……くん」

 心に染み込むような言葉。
 どこまでも重い言葉だった。

≪あうー、難しいです≫

(でも、大切なことや)

 リインフォースⅡの言葉に、はやては噛み締めるように思った。
 この人はどこまで見ているんだろうか。
 僅かな共感。
 三年もの長い月日を共にしてきたが、初めてその心に触れたような気がした。
 くすぐったいような感覚が胸の中に湧き上がる。
 その正体を理解するよりも早く、頭の中にある言葉が飛び込んできた。

≪こちらアインス! ホストコンピューターまでのルートを制圧した!≫

≪了解。こちらもベースキャンプに待機していた武装集団の鎮圧に成功、悪いが人数を回してくれ≫

≪ラジャー。よくやったな、坊主≫

 アインスの笑うような声。
 それにはやては慌てて付け加えた。

550:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:46:17 aRkUxruT

≪あ、あと救護班を至急や!! クロノ君が負傷しとる!≫

≪なに?≫

「いや、この程度なら―」

「なにいってんねん!! 銃で撃たれておいて、軽傷もクソもないやろ!! さっさと治療するで!」

 そういって、はやては今までの呆然としていた動きが嘘のようにクロノの無事な腕を掴んだ。
 同時にシュベルトクロイツを操作し、はやては並行思考から自分のストックしている回復魔法の演算を開始する。

≪早くですー! クロノさんが怪我してるですー!≫

≪わかった! ひとっ走り走らせるから、しゃきんとしてろよ!≫

 アインスの念話が途切れ、静けさが満ちる。
 あとの室内に残ったのはノックダウンした武装集団の呻き声と、治療魔法の詠唱を続けるはやての声のみ。

「まず応急処置で止血するで。あと破傷風とか怖いからちゃんと医療班の手当てを受けんと―」

「いや、弾丸は貫通しているし、幸い骨には異常はないみたいだ。この程度なら傷口を塞げば……」

「うるさい! 怪我を甘くみたら、寿命縮めるで!」

 はやては怒鳴り声を上げると、その血に塗れた肩に手をあてがった。

「クロノ君、この部分だけバリアジャケットを解除してな」

「分かった」

 僅かにクロノが眉を歪めて、瞬間光が還元されるかのように右肩からクロノのバリアジャケットが消失した。
 其処に見えたのは赤黒い出血を流す肩、むわっとした血なまぐさい臭いがはやての鼻を突く。
 間近に見た出血と臭いに吐き気が込み上げながらも、はやてはハンカチを取り出して応急処置で習った傷口よりも心臓に近い位置を縛り、傷口の上にゆっくりと手をあてがった。
 はやての掌に柔らかな光が灯り、ゆっくりと出血が緩まっていく。

「まったく……偉そうなこといっても、こんなことしてたら死んでしまうで」

「いや」

 クロノが反論しようとして、ギロリと睨みつけてくるはやての眼光に黙殺される。

「うるさい。黙って治療受け取れ」

≪受けるですー!≫

「……わかった」

 どこかしょんぼりしたようにクロノが返事を返し、はやては武装隊が駆けつけてくるまでずっとクロノの治療を続けた。
 それがはやての義務だというかのように。
 ずっとずっと手を当てていた。


551:しんじるものはだれですか? ◆265XGj4R92
08/08/30 23:47:22 aRkUxruT


 結局、先見調査隊は全員殺害されていたことが分かった。
 盗掘者だと思われたのは旧ベルカ王国の過激派で、遺跡のホストコンピュータに眠っていた古代ベルカ関連のデータを狙っていたらしい。
 私たちが知っているのはそこまで。
 それ以上は私たちが知る権限のない話。お偉いさんが判断する内容やった。
 あとは任務通りにデータの抽出を終えて、先遣隊の遺体の回収と過激派の拘束と護送。
 それで私たちの任務は終わりを告げた。


 思えばあの時からかもしれん。

 私がクロノ君を好きになったのは。

 初恋という感情も理解しないまま―私は惹かれた。


 それが仕組まれていたことだということも知らずに。


 私は壊れた狂人に恋をした。



552:詞ツツリ ◆265XGj4R92
08/08/30 23:51:54 aRkUxruT
投下完了です。
前回までの話から二年前、まだクロノとはやてが恋人同士になる前の時代。
はやてがクロノに惹かれたのはこれからでした。
未だに彼と彼女の恋物語は始まってすらいません。
未だにこれから。
これから描かれるのは破綻するのが見えている恋愛劇。
少女は壊れた狂人に恋をする。
壊れた狂人は少女を惑わす。
彼と彼女の心が重なる時は来るのか。

次回はまだ大人になった少年と未だに青い少女の物語になります。
彼と彼女を取り巻く環境をどうぞお楽しみ下さい。
めくるめくる物語がどうか皆様のお楽しみになりますように。

読んでいただいてありがとうございました。


553:名無しさん@ピンキー
08/08/31 01:25:09 V3BJuy7p
このクロノとはやてがどうやってあのエロス時空になったか気になりますね。
しかも鬼畜だぜクロノ君、普通に犯人殺してるぜ、しかも作中描写で狂人扱いwww
続きが気になる! 次話の投下もお待ちしております~。

554:名無しさん@ピンキー
08/08/31 02:51:12 sGZvnJ/2
貴重なクロはや分をありがとうございました。
近いうちの続きのご投下をお待ちしております。

555:名無しさん@ピンキー
08/08/31 03:54:39 i4v/3dNs
>>493
GJ!!
熱血のつぼをつきまくりです
全員の力と思いを受け継いだヴィヴィオ…
誰かに伝えたい強い思いを持ち、力を皆を守り助ける力として振るう
それでこそ真の聖王と呼べるのだろうな
いやもう、とことん個人的には続けて欲しいです!


556:名無しさん@ピンキー
08/08/31 10:09:31 U0NWD+Oc
>>518
GJ!です!
まさかここで料理もののSSまで読めるとは!
エロ非エロなんて小さな括りはとうに超越したこのスレの懐の深さを見た思いです。
私も暫くネットに繋げない環境にいたことがありますが、三ヶ月くらいは長いようであっという間ですよ。
いつまでもお帰りをお待ちしております!
あ、映画は九州圏なら是非ww 大人一枚が辛い歳になって久しいですorz

557:名無しさん@ピンキー
08/08/31 11:56:17 aFZ6ZZMf
>>518
GJ! 旨いな。
来年なんて気の早いこといわんでまた投下してくれ。
(魚詳しいね、業界の人?)

558:名無しさん@ピンキー
08/08/31 16:20:49 Sy+srVWC
B・A氏GJ!
凄く熱い展開に燃えさせてもらったが、この後の予言のことを考えると…
どういう結末で終わるのか気になる

559:246
08/08/31 20:23:14 JYebJ06P
長編感想レスありがとうございました。
今回は有言実行と言う事で、前後編のクロエイの前編です。
・メインはクロエイ。前編はエロなし。後編はエロあり。
・カレルは、優しく元気な男の子。リエラはお兄ちゃん大好き幼女。今回この子達の名前が割りと出ます。
では。


560:Love for you
08/08/31 20:24:19 JYebJ06P
 時空管理局本局次元航行部隊所属、XV級大型次元航行船クラウディア艦長―クロノ・ハラオウン。
 彼は今、暇だった。

「このままクラウディアは、巡航ルートを進みつつ異常があるまで待機だ」

 その命令を下したのは、一体いつだっただろうか。
 片付けるべき仕事も終わり、簡単な昼食を取り食後のコーヒーを飲むこと、既に数時間。艦長室拳自室で制服
の上着を脱ぎ捨て、シャツのボタンを大きく開き脱力している現状。
 はっきり言って、あまり良いものではない。何も起こらないに越した事は無いが、それでもと思ってしまうの
がこの暇と言う存在の恐ろしいところである。
 仕方ない、と溜息を吐きながらクロノは立ち上がる。シャツのボタンを閉めなおし、制服の上着に袖を通しな
がら部屋を出て向かうは、義妹であるフェイト・テスタロッサ・ハラオウンの自室だ。
 これと言った趣味も無く、クルーである皆と純粋に会話を楽しむ事が出来る程、艦長と言う立場は簡単なもの
じゃない。目の前で緊張されるのは余り嬉しい事じゃない。
 となると自然、クラウディアのナンバー2であり家族でもある彼女の元に足が進んでしまうのは、仕方の無い
事。

「フェイト、クロノだ。入っていいか?」

 トレーに二人分のコーヒーを乗せつつ、来訪を告げるアラームを鳴らす。
 たまには妹と話すのも悪くない。そう思っての事だった。

「……フェイト? いないのか?」

 だがいくら声をかけてもフェイトが応える気配は無い。自然、耳を澄ませ室内の様子を伺うように聞き耳を
立ててみれば、聞えたのは良く見知った、けれどここへいる筈も無い彼女の親友の悲鳴。
 扉のロックはされていなかった。クロノがフェイトの了解なしに扉を開けた。瞬間鼻をくすぐったのは、
思わずクロノが呻いてしまうほどの強い、彼女達の匂いだ。

「クロノ。悪いけど今取り込み中」
「ひっ、ぁっ……んん……!」

 フェイトが頬を高揚させながら、押し倒している彼女の教導隊制服の上から胸を強く揉む。首筋に這わせてい
たフェイトの舌が、ぬめぬめと光る道をつくっていた。
 フェイトに押し倒されている彼女は涙目で、羞恥に顔を真っ赤にさせながらも、現れたクロノに助けを求めて
いる。
 見知ったサイドテールを震わせている彼女の傍ら、白い銃形のデバイスが二挺起動状態で転がっていた。壁に
はいくつもの銃弾の後。
 きっと、彼女も暇なのだろう。そう思うことにして、クロノはそのままフェイトの自室に背を向ける。クロノ
さん、と呼びかける十年来の友人の声にクロノは脱兎の如く逃げ出していた。

「フェイトは駄目と」

 荒い息もそのままに、次にクロノが向かうのはフェイトの執務官補佐であるシャリオ・フィニーノの巣くう場
所。
 その場所の特定は出来ている。彼女は大抵、デバイスを弄くって恍惚となっている筈なのだ。

「シャーリー、僕だ」
「あ、クロノ艦長。お疲れ様です。どうしましたか?」

 予想通り、シャーリーはそこにいた。
 妖しげな器具の埋め尽くすこの部屋で、シャーリーが眼鏡に光りを反射させながら今日の獲物であるデバイス
を見つめ笑っている。
 彼女の視線が注がれている哀れなデバイスの名は、バルディッシュ。

「すみません。今忙しいので、お持て成しは出来ませんが―」
「いや、いい。そのまま続けていてくれ。ところで、それはちゃんとフェイトの許可を取っているか?」
「もっちろんです。ちゃーんと、見て見ぬ振り一回で」


561:Love for you
08/08/31 20:25:23 JYebJ06P
 ならば何も言う事は無い。
 クロノがそのまま立ち去っていく。背中越しに聞える奇声に身震いしながら、フェイトの時と同じように
足を速めて。
 終ぞ暇を解消できる存在がいなかった事に、盛大な溜息を吐いたのだ。

「やっぱり、仕事しか無いか」

 結局、自分は仕事だけしてればいいのだろう。肩を落とし、クロノがブリッジへと向かう。
 ブリッジには誰もいない。当たり前だ。一日中仕事なんて誰だってしたくは無い。無論クロノも仕事が好きな
訳じゃない。仕事があるからやりたくなるだけなのだ。
 と、

『―クロノ、元気でやってる?』

 不意の事。突然開いた通信回線に視線を向ければいるのはここ十年、何故か何時までも姿の変わらぬ笑顔の母。
 気味の悪い笑顔でクロノを見る母が紡ぐその言葉こそ、彼にとって、特別に忙しい一日の始まりの訪れを感じ
させる始まりの鐘であった。


魔法少女リリカルなのはStrikerS
―Love for you―
(前編)


 時空管理局本局次元航行部隊所属、XV級大型次元航行船クラウディア艦長―クロノ・ハラオウン。
 彼は今、狼狽していた。
 突然の母の通信に、寒気のする笑顔。その正体は、呆気無さ過ぎる程簡単に分かってしまったから。

「全く、君は来るなら来ると連絡をいれれば―」
「向かいに来てくれたりした?」

 まるで、分かっていると言いたげな物言いだ。
 正直の言葉を返すのも癪に障り、クロノが鼻を鳴らして顔を背ければ、それに苦笑した彼女がごめんごめんと、
全く誠意の感じられない謝罪をしつつ、彼女はクロノの頭に手を伸ばす。
 背伸びをして、随分身長差をつけられてしまった夫の頭を彼女は撫でようとしていたのだ。

「カレルとリエラはどうしたんだよ」
「母さんに預けてきた。今日母さん仕事休みなんだ。それでたまには羽根を伸ばして来いって言うから」

 ちなみにここは、ブリッジから艦長室へと繋がる通路の途中だ。
 頭を撫でられる艦長と言う、おおよそ始めて見るであろう光景にすれ違う者達が目を丸くし、ややあって笑い
始める。
 それに内で溜息を吐き、いい加減にしろと頭を撫でる手を払いのけようとすれば、何時の間にか頭を撫でる彼
女の手はそこには無かった。

「―久しぶり。海鳴での任務以来」
「うん、そうだね。エイミィ」

 目の前にいたやたら顔色の良いフェイトに、エイミィが手を振っていたからだ。

「エイミィ、いつ来たの?」
「今だよ。クロノ君が迎えに来てくれないから」
「ふざけるな。連絡一つよこさなかっただろうが」


562:Love for you
08/08/31 20:26:10 JYebJ06P
 各々言いたいこと、聞きたい事を口にしながら三人はエイミィが淹れたコーヒーを啜る。クロノとフェイトが
無糖のブラック。エイミィは、ミルクと砂糖とたっぷりと。
 クロノにフェイト、そしてエイミィと言う顔合わせ。家族同士の会話でしか無いそれが、酷く懐かしいと感じ
てしまうのは何故なのか。
 会話は花を咲かせるように淀み無く進み、今エイミィとフェイトが話しているのは専らアルフの事。二人の会
話に適当に相槌を打ちながら、クロノは頭を過ぎった思考を流してしまうかのようにコーヒーを啜っていた。

「そういえばさ、エイミィ今日予定あるの?」
「ん、クロノ君に夕食作ってあげに来ただけ。今日の夜には帰るよ。やっぱり子供達が心配だからね」
「ゆっくりしてけばいいのに」
「だーめ。母さん一日しか休み無いから」
「―僕は家には帰らないぞ。ここで待機中だ」

 二人の言葉を遮るようにクロノが言う。
 瞬間見たエイミィの困ったような笑みに、言ってしまった事を後悔した。

「艦は私が見てるから。クロノはエイミィと一緒にいていいよ」

 助け舟と言うよりも、エイミィのその笑みが嫌だったのだろう。最後の一口を飲み終えたフェイトが、退室の
直前、そんな事を言っていた。

「ま、待てフェイト! 艦に艦長がいないなんて―」

 だがそれを許せるほど、彼は融通が利く人間ではない。寧ろ、硬いと言われさえする人間だ。
 フェイトが呆れかえり、エイミィが眉を下げて頬を掻こうが、それを止める事は無いしやめる事なんて出来や
しない。

「クロノ君、ごめん。あたし帰ったほうがいい?」
「い、いや! 誰もそんな事を言ってるわけじゃ―」
「じゃあ、どっち?」

 口を噤むクロノに、フェイトが笑う。
 やはり、提督と言えど妻には勝てないらしい。

「決まり。はい、クロノ艦長。今日一日お疲れ様でした」
「すまない、フェイト。今日一日よろしく頼む」

 クロノの視界の端、小さくガッツポーズをしている妻の姿に彼は苦笑しながらも、私服に着替えるべく、
制服の上着を脱ぎ捨てた。


* * *


 時刻は丁度午前一時を回ったばかり。
 私服へと着替えたクロノが車を走らせるは、ミッドにあるハラオウン家の自宅だった。

「ごめんねークロノ君。我侭言って」
「いいさ。それよりエイミィ、夕食まで時間があるがどうする気だ?」
「んー、何も。夕食作りに来ただけだから」

 全く以って予想通りの言葉である。
 しかし、夕食の時間まではまだ遠い。食事の買い物をしようにも、その後の時間をどうするかは分からない。
 咄嗟に考え、クロノは自宅へと続く道とは違う方向へとハンドルを大きく切り、咄嗟に自身の肩を掴むエイ
ミィに言う。
 たまには悪く無いだろう、と。


563:Love for you
08/08/31 20:27:01 JYebJ06P
「夕食までまだ時間がある。どこかで時間を潰そう」
「じゃあちょっと寄ってもらいたいところあるんだ……いい?」
「どこでも」
「えーとね、カレルとリエラにお土産。お父さんからって渡すから」

 最後に会ったのはいつだったか。我ながら情けなくなる事を考えながら、クロノがアクセルペダルを強く踏む。
恐らく選ぶのには時間がかかる。時間が沢山あるに越した事は無いだろう。
 舗装された道路を進む二人の車が、大通りに差し掛かった。
 減速し、しきりに左右に視線を動かすクロノが考えるは、自分達の子供であるカレルとリエラの事。
 一体、何を買えばいいのやら。カレルには玩具でも買ってやるべきか、リエラは何を買ってやれば喜ぶか。や
はり、兄と一緒の方がいいのだろうか―。

「参った。難しい」
「何でもいいんじゃないかな。クロノ君が選ぶものならあの子達だって喜ぶよ」

 エイミィが思案に耽るクロノの横顔を眺めながらその向こう、流れる風景の所々にいる女性の服装をじっと
見つめている事にクロノが気付く。
 何かエイミィにも、そう言葉を投げるクロノに彼女は首を横にして言うのだ。

「いいよ別に。クロノ君、多分二人の選ぶので大変だから」

 遠慮をしている様子は無い。きっと、本当にそう思っているのだろう。
 車を停車させ、車から降りたクロノの手を自然な動作でエイミィが握る。若干顔が熱くなるのを感じながらも、
その手を払おうとはしないクロノに、またエイミィが小さく声を漏らしながら笑った。
 それぞれ目当ての店を探しながら歩く二人の会話は、専ら自分達の子供の事。
 今年四歳になる双子の子供達の近況をエイミィが話し、クロノが頷く。
 子供達が去年幼稚園へ入園し、もう短くない時期が経っている。もうそろそろ、小学校に上がる為の準備も必
要となってくるのだろう。

「士郎さん達が色々助けてくれてるよ。子育ては母さんもアルフも好きみたいだし、あっちにいると結構暇なん
だ」
「そうか。それよりエイミィ、あの子達の学校は?」
「考え中。あっちには二人の友達もいっぱいいるからね。だからあっちの方がいいのかなぁ、って」

 クロノとしては、ミッドにいてくれた方が何かと助かる事が多い。一緒にいてやる時間も格段に増えるし、何
より時空管理局と言う職場が認知されているから。
 エイミィとしてもその事は勿論分かっているし、言ってある。ただ、少し不安があると言うところだろう。カ
レルとリエラは、まだ数えるほどしかこっちの世界に来た事は無かったから。恐らく、外国か何かと思っている
のは間違いない。
 と、不意の事。エイミィが目を輝かせてずっと握りっぱなしだったクロノの手を引っ張った。
 目指した先は、子供用の洋服を専門に扱っている店だ。恐らく、リエラに似合いそうなものでも見つけたのだ
ろう。


564:Love for you
08/08/31 20:27:57 JYebJ06P
「クロノ君、クロノ君! これ可愛いよ!」
「あ、あぁ……そうかもな」
「リエラに似合うかなぁ……」

 どうやら、リエラへのプレゼントは早々に決定しそうである。
 興奮ぎみに声を大きくするエイミィの後を追いながら、クロノはクロノでエイミィ程とはいかないものの、子
供達に似合いそうな服を手に取り、吟味する。
 エイミィが店員と何やら話しているのに聞き耳を立てていればエイミィが、目ざとくそれを見つけて手招きし
て。

「クロノ君、何かいいの見つけた?」
「いや。エイミィこそどうなんだ」
「これとか」

 そう言ってエイミィが目の前に差し出したのは、やたらレースのある動きにくそうな洋服だ。
 可愛いでしょ、と小首を傾げるエイミィに、だがクロノは眉を顰めるだけ。それよりももっと、クロノが選ん
でいたのは違うものだ。

「君は何を考えてるんだ。そんなのリエラには似合わない」
「えー、可愛いよ!」
「リエラはもっとカレルと一緒に遊べるくらいのがいいだろ」

 頑なに自分の主張を推そうとするクロノにエイミィも負けてはいない。頬を膨らませ、クロノが戻したレース
付きの服を再び手に取り一人レジへと進んでいく。
 リエラは可愛いんだから何だって似合う。そんな意地になっているとしか言えない事を言いながらだ。

「待て待て、僕が買う筈だろう! 君が買ってどうするんだ!」
「いいの! リエラに絶対似合うんだからっ! クロノ君からって言う」
「なっ―僕がそんなの選んだなんて言われたくない! 戻せ!」
「いーや! これ買うの!」

 ぐぐっと顔を突き合わせにらみ合う事数分。近くにいた店員は眉を下げながら苦笑し、二人と同じように商品
を選んでいた客は、微笑みながら二人の事を見つめている。
 だがそんな視線に気付かない二人の機嫌は、さながら地面すれすれを飛ぶ燕の様に秒刻みで下降した。
 似合うったら似合うと商品をレジへ出そうとするエイミィを制し、クロノがこっちのほうが似合うと何時の間
にか手に取っていた服を変わりにレジへと突き出した。
 それをエイミィが止め、クロノが声を荒げるの繰り返し。

「っ―いい加減にしろ! 変な意地張るな!」
「そっちだって!」

 売り言葉に買い言葉。際限なく高まる苛立ちに、最早冷静に考える事など出来なくなっていた。
 二人同時にレジへと服を突き出し、二人同時に財布から出した紙幣を叩き付け、つり銭と共に商品を受け取っ
て。
 ふと、思い出したように辺りを見渡したエイミィが、自分達を見つめる視線に気が付いたのだ。
 瞬間、エイミィの顔が沸騰する。やや遅れて気付いたクロノも同様に。

「い、いくぞエイミィ!」
「待ってよクロノ君!」

 二人分の商品を手に、クロノが足を速め店から逃げ出した。
 車に乗り込み、エイミィが助手席に乗ってから車を走らせて―すっかり治まってしまった怒気に、しばらく
二人で笑いあった。

「どうするんだ。リエラのが二つになったじゃないか」
「カレルのも二つ買えば良いよ。お母さんとお父さんからって。ね?」


565:Love for you
08/08/31 20:29:05 JYebJ06P
 今度は喧嘩なんてしないように。ゆっくりと。カレルの土産を選んだときには、日が落ち、空はすっかり星達
が輝く夜空へと変わっていて。
 エイミィがこちらへ赴いた目的である夕食の時間が訪れたのだ。

「クロノ君、帰る前に夕食の材料買わなきゃ」
「……」
「クロノ君ってば」

 だが思う。リエラの服を買う前の事だ。やはりこのまま、エイミィに夕食を作らせるだけで帰していいのか、
と。

「エイミィ、今日夕食作ったら帰るんだよな」
「うん。母さん、今日一日しか休み取れないんだって」
「……むぅ」

 思考すること数分。その間しきりに自分の名を呼ぶエイミィの事を無視して、それとは逆に彼女の事を考えて
いた。
 別にエイミィの夕食が食べたくない訳じゃない。寧ろ食べたい。だが何か……せめて美味い食事くらいご馳走
してやるべきじゃないのか。そう思い始めてしまっていたのだ。

「決めた。エイミィ、悪いが夕食は明日にしてくれ。今日は外だ」
「ちょ、ちょっと待ってよ! だから明日は―」
「僕から母さん達には連絡する。アルフだっているんだ。一日くらい構わないさ」

 戸惑うエイミィを無視する形で、クロノが車を走らせる。
 突然の事だ。勿論予約なんて取っていない。実はこう言う時エイミィが喜びそうな店も知らない。唯一あると
すれば、彼女の要望どおり夕食を作らせて美味いと言ってやることくらい。
 だがそれは、明日やる事に決めてある。

「しょうがないなぁ、クロノ君は」

 微笑んでいるエイミィだが、子供達の事を考えているのは分かっている。
 やはり止めておくべきだったか。そんな事を考えながら、クロノは久方ぶりの妻との食事に、自然とステアリ
ングを握る力が強まっていた。
 やはり、彼も妻の来訪は快いものだったらしい。


* * *



566:Love for you
08/08/31 20:29:51 JYebJ06P
 クロノが選んだ店は、ごくごく普通の、一度はエイミィと行った事もあるレストランだった。味も悪く無く、
エイミィも実に美味そうに食べていた。
 今はその帰り。腹も膨れ、後は自宅に帰って寝るだけと言う時間である。

「―すみません、お願いします」
『はいはいー。エイミィによろしくねクロノ』

 公言どおりエイミィの一泊の了解を取り付けたクロノが、そっと隣で安堵の息を吐いているエイミィに
振り返る。
 聞いていたにも関わらず、どうだったと聞く辺り余程子供達の事を心配しているのだろう。
 クロノが肯定の意を込めて頷くと同時、普段の笑みに何倍もの明るさを混ぜながら彼女はクロノの腕を絡め
取っていた。

「なんだよ」
「たまにはいいでしょ。駐車場までこのまま」

 若干頬を紅くしながらも、クロノも満更では無い様子。
 エイミィはクロノの歩調に合わせやや早足になりながらも、何ら気にした素振りも無い。歩きにくいかと聞か
れても、ただ首を横に振るのみであった。

「もう慣れたよ。クロノ君、歩くの早いから」

 敷地内では無いとは言え、店から駐車場までの距離は長くない。エイミィに気付かれない程度に、気持ち歩く
速度を緩めては見たが、やはり大した意味は無いだろう。

「クロノ君」
「なんだ? もう何も無いぞ。今日は寝るだけだ。僕は明日仕事なんだからな」

 当たり前の様に呟けば、目を丸くしたエイミィが呆れたように溜息を吐いて。
 そして言うのだ。自分だけ、と。

「自分だけって、元々君は働いて無いじゃないか」
「そう言う意味じゃない。ヒトの予定勝手に一日遅らせておいて、自分は好き勝手やるのかって意味」
「おあいこだ。君が来なかったら僕は今日仕事が出来たんだ」

 まるで仕事が大好きな人間のようだ、と内心思った。
 それはエイミィも同じだったのだろう。一頻り声をかみ殺して笑い、クロノと触れている方とは逆の手で、
僅かに浮いた涙を拭う。
 二人で歩いて数分。そんな記憶にすら残らない会話をしていた。視界の奥には既に、目的地である駐車場が
見え始めている。
 それが何となくではあったが、寂しさを感じずにはいられなかった。たまには海鳴に帰って、家族達と共に
過ごそうと思うくらいには。
 と、

「ね、ねぇねぇ……クロノ君」
「またか。なんだ?」
「えぇ、っと……その―」
「なんだよ、はっきりしてくれ。分からない」

 エイミィが、躊躇いがちにちょこんと指を突き出していた。
 それに視線を向け、瞬間クロノの顔が沸騰したかのように赤くなり鼓動が早鐘を打ち始める。見ればエイミィ
は、クロノ以上に紅くなりながら俯いていた。

「歩き疲れた。休憩しよう」

 そんな歩いているわけじゃないだろう、と言う突っ込みなどお構いなしに。
 先ほどまでの色々な感情など、全てどうでも良いと言われているくらいに、不意の事。
 エイミィが指差したそこは、所謂ラブホテルだったりした。

567:246
08/08/31 20:33:21 JYebJ06P BE:736963564-2BP(0)
以上です。ありがとうございました。
んー、やっぱりエイミィさんは描写が少なめだからいまいち書きにくい気がする。この辺り、やはりエイミィさ
んが出てこない理由なんでしょうかねぇ……結構好きなのですけど。
後自分が台詞書く時は、中の人の声で脳内再生されないと書かないのですが、クロノ君の声がたまにショタ声に
なって困ります。
クロノ君は、無印、A`sの時の自分が受けた感じをそのまま大人にした感じ。エイミィさんはちょっと苦しいか
も。
次回は、エロ後編です。長編待っている方しばしのお待ちを。

ついでに。
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第83話☆
スレリンク(eroparo板)


568:名無しさん@ピンキー
08/08/31 20:37:51 THmEhVdu
GJです
ニヤニヤしたw

569:名無しさん@ピンキー
08/08/31 20:43:13 olLOSVVA
GJ。
しかし、フェイトさん、あんた部下に何てことをさせてんのさw

570:名無しさん@ピンキー
08/08/31 20:46:38 x4iOSYNP
GJ!珍しくおとなしめなクロノだ
エロ楽しみにしてます
あと、ティアナに合掌

571:名無しさん@ピンキー
08/08/31 20:46:50 0/Q3y8gc
>>567
GJ&スレ立て乙っす。
一つ質問ですが、>>560でフェイトに押し倒されているのはティアナでいいんすよね?
『教導隊制服』で『サイドテール』と書かれているので一瞬なのはかと思ったんすが。
ただ単に俺がティアナが教導隊に転向する話を見落としてただけならすいません。

572:名無しさん@ピンキー
08/08/31 20:49:00 fPDZE1yg
>>571
幻術だろう。

573:名無しさん@ピンキー
08/08/31 20:52:46 Dx4QxkOT
>>571
状況から総合的に判断すれば、ティアナの幻術だな。

574:571
08/08/31 20:54:12 0/Q3y8gc
>>572-573
そ れ だ ! orz

ああ、だから>>570がティアナ合掌とか言ってるのか。
その位付こうよ俺 OTL

575:246
08/08/31 20:56:30 JYebJ06P
ごめんなさい。わざとぼかして書いていたもので。ティアナの幻術です。
意味も無くなのはさんとフェイトさんを書きたくなる悪い癖です。

576:名無しさん@ピンキー
08/08/31 21:00:19 L492sLK/
>>575
GJ!&スレ建て乙!
俺はそれを悪い癖とは思わないぜブラザー
後編と長編の続き楽しみに待ってますね

577:名無しさん@ピンキー
08/08/31 21:01:54 OCZlnRRk
>>567
GJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJグッジョオオオォォォォォォォォォオブ!!!
待ちに待ったクロエイがやっときて感激のキワミ!アッーーーー!です!
いや~いい夫婦ですな、エイミイさんの誘い方もグーです
後半を全裸で待っています

578:名無しさん@ピンキー
08/08/31 22:39:08 wkN/OB4c
なんか、久々にエイミィ見た気が…
とにかくgj!!


579:名無しさん@ピンキー
08/08/31 23:04:41 4fXmP27O
>>567
いや~GJです。
何か、クロエイすごくなごむ。でも後半に備えて俺も全裸待機ですな。

580:名無しさん@ピンキー
08/08/31 23:39:44 mQQCu+qq
なんかもう…………とにかくティアナ乙w

581:野狗 ◆gaqfQ/QUaU
08/09/01 01:28:15 un68OYZU
 まとめにも載ったやつの続きです。完結。
 レス数6。
 エロ。はやて。オリキャラ。お尻。
 あぼんは鳥かコテで。

 タイトルは
 「石田医師はまた出張に行きました その2」

582:野狗 ◆gaqfQ/QUaU
08/09/01 01:28:48 un68OYZU
            1

 少女の甘く荒い吐息だけが、処置室の中に聞こえていた。
 お尻の穴を擦られるたびに、触れられるたびに吐息は漏れ、あるいは囁くような喘ぎが聞こえる。
 快楽によって熱っぽくなった胸は息苦しささえ覚えさせ、犬のように舌を出して無様に喘ぐ。
 出した舌は指に挟まれ、扱くように指先に揉まれる。揉まれた舌の先がじんじんとしびれて、何かに触れていたい、何かに触れられたいと疼きだす。
だから、舌は無意識の内に自分を弄ぶ指を追っていた。
 ぺちゃぺちゃと指先を舐めると、それに答えた指が舌先から根本にかけてを握りしめるように捕らえ、優しく表面をくすぐった。
 お尻の穴と舌先を同時にいじられ、一本の長い棒で身体を貫かれたような錯覚すら、少女は覚える。
 長い棒が肛門から直腸を通り、胃を貫き、食道から喉へ、そして唇から舌先へ。愚かな錯覚であると自分でもわかっていた。しかし、それは甘美に思えたの

だ。
 貫かれ、どうしようもなく弄ばれること。
 自由を奪われ、ただ甘い刺激だけを与えられ続けること。
 はやては、自分がハンモックになってぶら下がっているような気がしていた。
 舌先に繋がれた糸と、お尻の穴から伸びるヒモ。その二つでぶら下げられるハンモック。
 ゆらゆらと揺れるたびに、上から、下から、心地よさが送られてくる。

 ふと、下腹部に違和感があった。
 覚えのある感覚にはやては焦り、舌足らずに訴えかける。

「あ、あ、あの、先生」
「どうしたの? はやてちゃん」

 医師は静かに尋ねた。今はリズミカルな刺激だけを与えている。刺激を与えられることに抵抗が全くなくなったとき、次のステップに移るのだ。

「おトイレが……」
「ああ、おしっこか。もう少し、我慢できるかな?」

 言いながら舌をつねり、お尻に回していた手を秘部に回してやや強引に尿の出る付近をさする。
 そして突然のことに抵抗しようとするはやてから、一気にアナルビーズを抜いた。
 
「あ、か……」

 舌を引き出されたまま、歯を食いしばることもできずに拳を握りしめる。

「見たらあかんっ!」

 シーツをぐっしょりと濡らす失禁に、医師は大袈裟にため息をついた。

「お漏らしとはね……」

583:野狗 ◆gaqfQ/QUaU
08/09/01 01:29:20 un68OYZU
          2

 それはあまりにもショックな出来事だった。
 お漏らしをしてしまったことが、はやてにとっては大きなショックだったのだ。
 そんな粗相など、記憶の中では一度もない。
 車椅子というのは、一人で行動するにはあまりに不便だ。家を一歩出てしまえば、トイレにすら苦労するのが日常生活なのだ。
しかし、それでもはやてはきちんと自分を管理していた。
 自分が一人でトイレを使える場所を把握し、誰に頼らずとも用が足せるように行動していたのだ。
 ヴォルケンリッターが来てからでもそれは替わらない。車椅子を押してくれるというだけで、はやては基本的には自分だけで処理できるように行動していた

のだ。
 だから、ある種のパニックにはやては陥ってしまった。
 こんな粗相は隠さなければならない。知られてはならない。誰にも知られてはならない。たとえ家族同様の守護騎士たちであっても。
 そして医師は、はやてがそう言い出すであろう事を予想していた。
 だから、内緒にすると申し出た。
 もちろん、代償はある。引き替えに、今日のことを誰にも言わないこと。
 それを約束させると、医師ははやての舌をもう一度引き出し、思うがままに味わった。
 小さな舌を捕らえ、ねぶり、吸い、甘噛みし、唾液を自分のものと交換する。柔らかく温かく、甘さすら感じる少女の舌を医師は思うがままに蹂躙したのだ



「お漏らしのことは誰にも言わないからね。だからはやてちゃんも、今日僕にされたことを誰にも言っちゃあ行けないよ」

 これは約束だ。と医師は言う。
 約束と名が付くだけで、はやてにとっては幾ばくかの束縛になることを見越した言葉だった。
 そしてその目論見は見事に当たる。
 誰にも言わない、とはやては約束してしまったのだ。どんな形であろうと、はやては絶対に約束を破りはしないだろう。

「それじゃあ、今日はこのくらいにしておこうか。明日もこの時間に来るんだよ」
「……はい。先生……」

 呼び出した助手に車椅子を押され、部屋を出るはやて。
 肩を落としたその姿に、医師は心の中でほくそ笑んでいた。


「あの、はやてちゃん……何かあったんですか?」

 はやてを待っていたシャマルがあまりの様子に堪らず声をかける。ちなみに、シャマルたちは例の医師が戻ってきていることを知らない。
知っていれば、どんな手段を使っても排除していただろう。

「ん? あ、なんでもないよ、シャマル。ちょっと、疲れてるだけやから。なんも心配せんでええんよ?」

584:野狗 ◆gaqfQ/QUaU
08/09/01 01:29:54 un68OYZU
        3

 泣きそうな顔で、はやては目の前の異物をにらみつけていた。

「そんな顔なんてすると、可愛い顔が台無しだよ、はやてちゃん」

 揶揄するような医師の言葉にも反応しない。
 お漏らしの日から一週間が過ぎていた。その一週間、はやてはずっとお尻の穴を弄られ続けている。今も、医師の指が穴に入り込んでいた。
 ベットに腹這いに寝かせたはやての前に立ち、上半身で覆い被さるようにして、医師の指ははやての肛門を弄っている。

「ふ……ん……んっ!」

 指で中身を穿られる度に、はやては息を短く激しく吐き出している。そして抜かれると息を吸い、一瞬だらしなく口元が開く。
すぐに持ち直し口を閉じるが、その一瞬でこぼれた涎が唇を濡らしていた。

「涎を垂らすって言うことは、そんなに好物なんだ、これ」

 医師のズボンのチャックは開けられ、そこからはみ出したペニスがはやての面前に突きつけられている。

「おちんちんを見て涎を垂らすなんて、はやてちゃんはスケベだね」
「違……」

 違う、と言いかけたはやての肛門の内側を指が撫でる。医師の特技は、指の第一関節だけを曲げることだった。その曲げた指の腹で、肛門の内側をなでさす

る。

「う……は、あ……」

 言葉は喘ぎに混ざり、否の返事は打ち消される。
 内側に螺旋の筋を引くように動く指。その動きにつれて、はやては舌を出し喘ぐ。

「舌まで出して、催促するの? 本当にスケベな子だ」

 言うなり、指が置くまでずぶりと差し込まれる。この数日で慣れきった肛門が指を軽々と飲み込み、はやてはのけぞった。
 その唇と舌に、医師はペニスを押しつける。

「んぐっ……んんっ」
 
 指の動きに合わせて腰を動かすと、喘いで暴れる舌が愛撫をするかのように揺れる。その結果はやての舌は、自ら進んで行うように医師のペニスを舐め回し

ていた。

585:野狗 ◆gaqfQ/QUaU
08/09/01 01:30:26 un68OYZU
        4

 そしてさらに三日後。

「先生、もっと、触ってください」
「はっきり言わないとわからないなぁ」
「お尻、あたしのお尻です」
「ここを、触ればいいのかな」
「違う、違いますっ」
「わからないよ、はやてちゃん」
「お尻の……お尻の……」
「わからないなぁ」

 ニヤニヤと笑いながら、医師ははやてのお尻のすぼまりの付近を爪で押さえる。

「ひっ! そこ、そこです、その中を、もっと、もっと指を入れてください!」
「だから、どこだか言ってもらわないと」
「お尻の……お尻の……穴です!」
「ああ、ここか。ここに指を入れるとどうなるのかな?」
「ひゃ、ああ、……気持ちええんです。気持ちよくなるんです。お尻が熱くて、あそこが熱くて……」
「ふーん。でも、はやてちゃん一人で気持ちよくなるのは良くないなあ」
「ああ、堪忍ですぅ、そやけど、もっと触って欲しいんです」 
「替わりに、何かしてくれる?」

 はやては答えず、唇を噛みしめている。

「うん。別にいいんだよ。僕は別に、お尻を触らなくてもいいんだから」
「待って! 待ってくださいっ!」
「何かな?」
「……舐めます」
「何を?」
「先生の…………舐めます」
「聞こえない」
「先生の、お……おちんちん、舐めます」

 医師はゆっくりと、はやての頬を両手で挟み、うつむいていた顔を自分に向ける。 

「違うよね? 正直に言ってごらん?」

 はやての両目には、涙が浮かんでいた。
 それは悔しさか、情けなさか、悲しさか。…………それとも、悦びか。

「先生のおちんちん……舐めたいんです」
「正直でいいよ。はやてちゃん」

586:野狗 ◆gaqfQ/QUaU
08/09/01 01:30:59 un68OYZU
           5

 さらに一週間後。

 マンションのエントランスまで、医師は少女を迎えに出た。

「一人で来たの?」
「はい」
「本当に?」
「あの……ヴィータがついてくる言うたけど、たまには一人で行きたいって……」

 医師ははやてのむき出しの太股に手をやると、そのままスカートに中へと手を滑らせた。
 そこにあるはずの下着の感触はない。ただ、温かく濡れそぼった肉の感触がある。

「もう濡れてるのか? 本当、スケベな子だな、君は」
「だって、先生が……」
「わかってるな?」
「はい」

 医師は電動車椅子のスイッチを手動に切り替えると、後ろに回って押し始める。
 はやてはいつも通り、スカートをまくり上げると、両手を秘部に当てる。
 すぐに濡れた音が玄関ロビーに響き、はやての喘ぎが小さく聞こえ始める。

「公園を一回りしてこよう。たくさんイケたら、ご褒美だ」
「はい。先生」

 指の動きが早くなり、はやては声を出さないようにうつむく。
 医師は、毛布をはやての下半身に掛け、周囲からは何も見えないようにする。

「じゃあ行こうか」

 はやての返事は、くぐもった喘ぎだけだった。

587:野狗 ◆gaqfQ/QUaU
08/09/01 01:31:30 un68OYZU
         6

 そして約十年後。

「はやてちゃん、これからどうするの?」

 なのはが問うと、フェイトも興味ありげに首を並べる。
 六課がなくなった後の進退はすでに決まっているし、それは互いに知っていることだ。
 今なのはが聞いているのはもっと短期間のこと。それこそ、「明日はどうするの」という類の質問だった。

「私とフェイトちゃんは少し休暇をもらったから、原隊復帰の前に海鳴に帰ってみるけれど」
「あー。あたしは海鳴の家は処分してるし、シグナムたちはみな仕事で、リインは長期メンテナンス。休暇もあたし一人やしなぁ」
「一緒に来る? はやてちゃんならお母さんも歓迎だよ」
「あ、うちも同じだよ。母さんだって、クロノだってエイミィだって歓迎するよ」
「ありがと、そやけど、実はちょっとした計画があるんよ」
「計画?」
「旅行や。この世界やのうて、地球やけどな」
「へえ。あ、もしかしてゲンヤさんと一緒とか」
「ちゃうちゃう。そんな浮いた話やあらへんよ。そしたら、あたしはそろそろ行くから、また、休みが終わったら会おな」




 これまでも、定期的にここには来ている。疑念をもたれたことは一度もない。当たり前だ。地球は自分の故郷なのだから。
 休暇の度に里帰り。何の不思議もない。
 後は定期連絡さえ絶やさなければどこへ行くのも自由だ。
 はやては、マンションのエントランスを合い鍵で通ると、早足でエレベータに乗り込んだ。
 息が荒くなるのがわかる。
 身体は知っている。もうすぐなのだと。
 濡れているのが自分でもよくわかった。今すぐに脱ぎ捨てたい衝動を抑えて、エレベータを下りる。
早くしないと、スカートにまで染み出て来かねないほどに濡れているのだ。
 ドアフォンを鳴らす。
 ドアの開いた先には、初恋の人。自分に全てを教えてくれた人。
 はやては挨拶もなしで入り込むと、後ろ手にドアを閉めた。
 その人は笑っている。
 はやては振り向いて、ドアに身体を預け、お尻を男に向ける。そして、スカートをまくり上げた。

「あたしのいやらしいお尻に、先生の罰を与えてください」

 たっぷりと犯されることを想像する、はやてはすでに喘いでいた。


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