☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第82話☆ at EROPARO
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第82話☆ - 暇つぶし2ch340:おっぱい禁止令
08/08/26 23:03:53 /6vr7dO3
「ひゃん! くすぐったい……よ」

 湿った舌に敏感な部分を舐められ身をよじるフェイトだったが、身体が震えるのはくすぐったさだけで
はない。
 すぐ近くにもっと直接的に愛撫できる場所があるため滅多と触れられることはないが、クロノに舐めら
れている部分はしっかりと感じる場所の一つである。
 皮膚のすぐ下にある性感神経が、舌で優しく触れられて微弱な電流を頭に送ってくる。
 後ろの指も徐々に深く進んでくるがまだほんの入り口までで、硬く閉じた秘門をほぐしてリラックスさ
せようという動きだった。
 腰で隠れているためクロノが具体的に何をやっているのかフェイトには分からず、その分だけ神経が過
敏になり、じんわりと股間が濡れてくる。

「お尻、もっといろいろしてくれても、いいよ」

 蕩け出した声で囁くフェイト。許可のような口調だが、実態は己の欲望を形を変えて伝えただけである。
もちろんクロノもそこは心得ていて、やや奥深くまで抜き差ししながら肉壁を擦る。
 尻から上がってくる刺激にいっそう顔を緩ませるフェイトだったが、いきなりぴりっと胸の先から快感
が走った。
 思わず我に返って胸に眼をやると、自分の右手がゆっくりと乳首を転がしていた。完全に無意識下の淫
らな行動に、フェイトの頭はかっと熱くなる。
 幸いクロノが気づいた様子は無い。慌てて手を引っ込めるが、どうしても突き出した乳首に眼がいって
しまう。
 思い返せば、これまでクロノに性器を舌で愛される時は体勢上どうしても胸がお留守になってしまい、
必ずと言っていいほどフェイトは自分で自分の胸を慰めていた。
 それ以外の場合でも、抱き合う時はクロノに揉まれたり吸われたりされなかったことなど無い部分であ
る。なのに今夜は指一本触れられはしないとなると、逆に禁止を破って思うさまいじってみたいという思
考が沸いてくる。
 今もフェイトが息をする度に、柔らかく大きな双丘と中心に咲いた花は触って欲しそうにふるふると揺
れている。

(だめだめ! 自分から触っちゃいけないって言ったんだから、我慢しないと)

 頭を振って、胸への欲望を追い払う。
 フェイトの葛藤など知らぬクロノは、順調に愛撫の段階を上げていく。

『そろそろ、こっちも欲しそうにしてるな』

 念話と同時に、舌が逆戻りして秘裂に攻め入った。
 焦らされることなく、溢れる愛液がすすられ舌が突き入れられる。単純に入れるのではなく、丸めるこ
とで厚みと尖りを持たせてフェイトの蜜壷が味わわれている。さらに歯が硬くなった淫核を甘噛んだ。

341:おっぱい禁止令
08/08/26 23:05:05 /6vr7dO3
「ふぁ、っあぁ……!」
『そういえば、お尻にもいろいろしてよかったんだっけ』

 ぐいっと指が押し込まれる。
 もう撫でる程度だった最初の優しさはどこにもない。根元まで突っ込まれた指が、容赦なく尻穴をえぐっ
て引っかき回す。舌を越える激しさでフェイトの後ろの穴を侵略し尽くす。
 かと思えば、いきなり指も舌も抜いてクロノは顔を寄せてきた。

「ほら、前も後ろもこんなに濡れてる」

 クロノの口の周りは明らかに唾液とは違う液体でてらてらと光っており、目の前に出された指も腸液で
ねっとりと濡れていた。
 自分の分泌した恥ずかしい液体を見せられて、頬を染め反射的に顔を背けるフェイトだが、クロノの唇
が追ってくる。
 唇が重ねられ、舌を絡め取られる。自分の愛液がたっぷりとついて汚れたクロノの舌だが、まさぐり合っ
てクロノの唾液を飲むうちにそんなことはどうでもよくなった。
 その間も右手は尻に戻り、残った左手は秘裂に二本まとめて差し込んで指の腹を使って膣壁をなぞり上
げる。

「指と舌、どっちがいい?」
「どっちも、気持ちいいよ。もっとして、クロノぉ……!」
「お尻も?」
「うん、指ももっと挿入れて……ひぁっ!」

 前と後ろの指が、相反する動きを取り出した。
 秘裂の指が前後して奥底を突けば、尻の指は腸壁を擦ったり引っかいたりしてくる。
 かと思えばその数秒後には後ろが抽迭を始め、前は親指で秘芯が捏ねくり回される。
 両方からくる快感の種類が目まぐるしく変化し、フェイトに息を吸う暇さえ与えず絶頂へと引っ張り上
げられていった。

「ああ、気持ちいい……! 私、イッちゃうぅ……っ!」

 一際強く淫核を押し潰された瞬間、全身の筋肉に力が入り秘裂と尻穴がぎゅっと締まってクロノの指を
強く噛んだ。
 完全な受身での半強制的な絶頂だったが、そんなことは快感の大きさの前には些細なことだった。
 フェイトが果てるのに合わせて尻の指は抜いたクロノだが、前はなおしばらく動かしてフェイトを高み
からゆっくりと下ろしてくれる。
 喘ぐフェイトに満足そうな視線を落としながら、クロノもパジャマを脱ぎ去って、いきり立っている性
器を握った。

342:おっぱい禁止令
08/08/26 23:05:55 /6vr7dO3
「じゃあそろそろ、始めようか」
「……うん」

 身体が貫かれる衝撃と快感を思い出しながら、フェイトは自分からゆっくりと股を開いて、溶けなぐら
い熱を帯びた身体をクロノに差し出す。
 だが胸の奥にだけ、ほんのわずかな切なさが残っていた。



          ※



「二回目、出すぞ……!」
「あ、はぁあ……! あ、熱いぃ!」

 ごぽごぽと音を立てて、子宮に入りきらなかったクロノの欲望が結合部から滴り落ちていく。
 犬のように四つん這いになって背後から抱かれていたフェイトも同時に達し、絶頂の陶酔に涙と唾液を
流す。下の口からも、白濁液の後を追って新しい愛液が洪水のように流れ落ちていた。
 激しく喘ぐフェイトだったが、官能が満たされたわけではけっしてない。
 クロノの倍以上の回数絶頂に達し、たっぷりと精液を注がれてなお、フェイトの身体は乾いていた。

(おっぱい……触ってほしい……)

 前戯の段階から不満を訴えていた乳房は、もう媚薬をたっぷり塗り込められたかのようにじんじんと全
体が疼いていた。
 どれほど激しく達しても、すぐに胸の感触に引きずられる。イキたいのにイけない生殺しの状態に極め
て近い。

(先っぽだけなら……おっぱい出ないよね)

 クロノの肉棒はまだ硬さを保ったままフェイトの胎内にあるが、休憩中なのか特に動きもせず尻や背中
を撫でたり髪の毛をいじくったりして遊んでいる。
 クロノの様子を窺いながら、フェイトはそろりと折りたたんだ右腕を胸の先端へと持っていく。
 胸中の血が集まったように尖りきった乳首をきゅっと捻った瞬間、頭がずくんと痺れた。

「あぐぅ!?」

 背後でクロノの呻きが上がる。快感に反応して膣の具合が急激に変化したのが、両者にとって予期せぬ
不意打ちになったらしい。
 だが、クロノに気づかれたかもしれないという懸念など、フェイトの頭の中にはなかった。

343:おっぱい禁止令
08/08/26 23:07:02 /6vr7dO3
(乳首が、すごく気持ちいい……!!)

 強く愛撫されるのを待ちわびていた胸にとって、軽い愛撫でも十分すぎる刺激になった。
 片手だけでは足りない。反対側の乳首にも手を伸ばし、フェイトは夢中になって乳首をいじくり続けた。
 しこった乳首を徹底的に揉みほぐし、爪で引っかき、思い切り引っ張る。
 その一つ一つの行為が肉棒で突かれるぐらいに気持ちよく、全身が悦びに打ち震えじりじりと肉体の限
界へと引き金が引かれていく。
 フェイトは確信する。このまま乳首を触っているだけで自分は膣内射精に匹敵する絶頂を迎えられると。
 乳首だけでこれなら、母乳を搾ればどれだけの快感が待っているのか、予測がつかない。

(一回だけ。一回おっぱい出すだけなら、クロードの分も残ってる、よね?)

 答えの分かりきった自問自答を終え、フェイトが自分の乳房を握ろうとした時だった。
 ぐいっと強く両手首が掴まれる。はっとして首を回せば、唇の端を吊り上げてクロノが笑っていた。

「僕には触るなと言っておいて、自分であれこれするのはルール違反なんじゃないか」
「こ、これは、そうじゃなくて…………きゃっ!?」

 言い訳など聞く耳持たぬとばかりに、乱暴に上体が起こされる。そのまま激しく何度も腕が引っ張られ
た。

「ひぁっ! あふんっ! や、めて、クロ……はぁぁぁん!!」

 上半身の振動が下半身にも伝わって、繋がったままの膣がかき回される。
 だがそれ以上に、揺らされる乳房からの刺激がフェイトを悶絶させていた。勢いよく左右に身体を揺ら
されると、乳房同士が軽くぶつかり合う。たったそれだけの小さな衝撃が、胸の神経を通る間に何十倍に
も増幅されてよがり声を上げさせた。
 一度自ら禁を破った身体は、あっという間に理性をかなぐり捨ててクロノに懇願した。

「クロノっ、お願いだからおっぱい触って揉んで吸って、気持ちよくして……!」
「明日クロードにおっぱいやれなくなっても、いいんだな?」

 クロノの言葉にほんの数瞬だけ母性が甦り、否定の声を出そうと口を開く。
 だがすぐさま浅ましい雌の本能が取り代わり、欲望の示すがままにフェイトは叫んだ。

「いいからぁ、私のおっぱい絞って……いっぱい出してぇ!!」

 手首の拘束が解かれ、布団の上へと墜落するようにフェイトの上半身は落下する。
 胸に手が回り乳房をぐっと強く握られた瞬間、三種類の音がした。
 胸からは、母乳が吹き出す小さな音。
 股間からは、溜まった愛液が肉棒と秘裂の隙間から噴出する音。
 そして最後が、フェイトの口から漏れた絶叫だった。

「は、ああああぁぁぁん!!!!」

 がくがくと全身を痙攣させながら、尾を引く叫びをフェイトの喉は上げ続ける。

344:おっぱい禁止令
08/08/26 23:08:00 /6vr7dO3
「くっ……また締まる……! 一回搾られただけで、イッたのかフェイト」
「だってぇ、だってぇ……!」

 半開きの口から涎と意味の無い言葉を垂れ流しながら、クロノの手のひらに乳房を押しつけてフェイト
は催促する。
 何度もフェイトの乳を搾り慣れているクロノは、絶妙の指遣いで胸を揉み母乳を搾り取っていく。あっ
という間に、眼前のシーツが白く重く濡れそぼった。
 一度先端から母乳が滴る毎に、フェイトは絶頂に襲われ意識を飛ばしかける。同時に、流した分だけ別
の白色の液体を求めようと膣が収縮しながら蠢いた。

「もうちょっと、力を抜いてくれ。このままだと……挿入れてるだけで出しそうだ……!」

 クロノの頼みを聞き入れることなどなく、鼻腔から入ってくる乳臭さに脳髄までも犯されたフェイトは、
逆に自分の堕落した願いだけを口にした。

「私のおっぱい、搾るだけじゃなくて……飲んで。でないと、クロノの精液このまま枯れるまで全部出さ
せちゃうんだから……!」
「それは困る、なっ!」
「ひゃああん!?」

 身体が引っ張り上げられ、胎内をえぐり続けていた肉棒の角度が変わる。
 一気に後背位から背面座位に移行したクロノは、すかさずフェイトの右胸を強引に歪ませて乳首を口に
含んだ。
 肺活量だけでなく乳房を揉みあげる握力も加わり、あっという間にフェイトの母乳は吸い取られていく。
逆の胸を揉む手も止まりはしない。途中に乳首を歯で挟むことも忘れない。

「あ、ひあああっ!! もっといっぱい吸って!!」
 
 自分の体内で作り出した液体を、最愛の人が極上の美味として飲んでいる。
 その一事だけで、恋愛心・母性・肉欲といったフェイトの中のあらゆる要素が歓喜の悲鳴を上げて肉体
を打ち震えさせた。きっとクロノの精液をフェイトが飲んでいる時も、クロノは近い気分になっているの
だろう。
 小水のように蜜を垂れ流して感じながら、フェイトはこの交わりに唯一足りていない物を求める。

「全部っ、私の全部クロノにあげるからっ……! クロノもちょうだい!!」

 ありったけの力できつくクロノの分身を包みながら、同時にフェイトは腰を捻った。
 肉棒が激しく痙攣したかと思うと、どっと切っ先から灼熱の液体が発射され子宮を直撃する。

「はあっあああっああああぁぁぁぁんん!!!!」

 フェイトの身体も視界も真っ白に染まった。
 半分意識を失ったまま前のめりに倒れこめば、母乳を吸ったシーツがべったりと頬に張りついた。

345:おっぱい禁止令
08/08/26 23:09:24 /6vr7dO3
          ※



(…………う~~~~)

 事が終わって意識が回復し頭が醒めると、フェイトはあまりの自己嫌悪に寝台の隅っこで頭からシーツ
にくるまり呻いていた。
 自重しようと思っていたのに、結局は肉欲に負けて母乳を絞り尽くされてしまった。明日もクロードの
ご飯は粉ミルクだ。

(母親失格かな……)

 落ち込んで涙ぐみかけているフェイトに、クロノが声をかけてくる。

「すまない。我慢できなかった」
「…………クロノは悪くないよ。先にして欲しいって言ったのは、私なんだから」
「だけど僕も自重すべきだった。……まあ、君に喘ぎながら絞って欲しいなんて言われて、我慢できる訳
がなかったか」

 クロノの言葉でついさっきまでの痴態を思い出し、赤面したフェイトはますます強くシーツを引っかぶっ
てしまう。
 そんなフェイトの身体をあやすように、シーツ越しにクロノが優しく撫でてくれた。

「なんだったら、君の母乳が出なくなるまでこういうことするの止めようか?」
「……我慢できる? 溜めちゃうの、身体に悪いよ」
「妊娠中はずっとしてなかっただろ。一回やったら、二回目は簡単だ。期間も短いだろうしな」

 背中を撫でていた手が止まり、優しくフェイトを抱きしめてくる。

「するかしないかは、君に任せる。母乳は僕やクロードの物である以前に、君の物なんだから」
「……明日の夜までに、考えとく」

 考えると言いはしたが、心が多少は平静を取り戻し母乳の甘ったるい匂いとクロノの温かさに包まれて
いるうち、どちらを選ぶか全く決まらぬままに性交の疲労からフェイトの精神はゆっくりと眠りに落ちて
いく。

(……明日もクロードにおっぱいあげれないから……その分いっぱい抱っこしてあげよう)

 歌を歌ってあげて、絵本を読んであげて、母親が子供にして上げられることをいっぱいしてあげよう。
 それだけはちゃんと決めて、フェイトは緩やかに瞼を閉じた。



          終わり

346:おっぱい禁止令
08/08/26 23:10:20 /6vr7dO3
          おまけその一「スクライア家」



 どろりと、三度目なのに濃さの薄れない液体が舌に零れた。舌の上でたっぷりと味わいつくしてから喉
に送って、熱さと粘りを内臓の感覚で愉しむ。
 最後の一滴まで飲み干してからなのはが顔を上げれば、口淫を受けていたユーノも満足そうな表情を浮
かべている。
 だが同時に、どこか満ち足りない色も顔に表れていた。

「ねえなのは。口も気持ちいいんだけど、そろそろ本番したいなぁって……」
「駄目だよ。今晩は口だけでしかやってあげない」
「ええっっ、なんで!?」
「昨日私のミルクいっぱい飲んだんだから、今日は私が飲ませてもらう番なの」
「……ひょっとして、昨日ユーナの分まで飲んじゃったこと……怒ってる?」

 無言のままにっこり笑うと、ユーノの顔色が面白いように青ざめた。そのくせ肉棒は張り切ったままな
のが少し滑稽である。
 笑顔のまま唇から舌を覗かせ、亀頭をつんつんとつついている時だった。部屋に置いている端末が鳴っ
て、よく知ったデバイスの声を発する。

『マスター、ユーナお嬢様が起きられました。空腹かおしめが原因かと思われるのですが』
「分かった。今いくね」

 ちゅぽんと口から出して、なのはは若干乱れた服装を整える。

「えっ、まさか僕このまま放置プレイ!?」

 股間を露出したまま情け無い声を上げているユーノを置き去りにして自室へ戻り、ベビーベッドの隣の
机に置いてある愛機になのはは軽く礼をする。

「レイジングハート、お守りご苦労様」
『お気になさらず。アイナさんがおられない時に面倒を見るのは私の義務ですから。ヴィヴィオお嬢様は、
妹の面倒を見るにはまだ幼いですし』

 ぐずっているユーナを抱きかかえてはだけた胸元に近づけてやると、すぐに元気よく吸い始める。
 やがて乳首を口に含んだままことりと眠りに落ちた娘を下ろしユーノの部屋へ帰ると、夫がベッドの上
で土下座していた。

「お願いだから挿入れさせて」



『マスター、またお嬢様が起きられたのですが』
「あ、はぁぅん、レイジング、ハート……あと五分だけ……くぅんっ! ユーノ君、そこ、もっと!」
『了解しました。では僭越ながら私が子守唄など。ぼうや~良い子だねんねしな~。い~まも昔も……も
う眠られましたか。本当に空気の読める良い子ですねお嬢様は』



          まだ続く

347:おっぱい禁止令
08/08/26 23:12:16 /6vr7dO3
          おまけその二「八神家」



「最近、トウヤが不満あるみたいなんです」
「何に対してだ?」

 夜更けに自室へとやってきた妻に、ゲンヤは服を脱ぐ手を止めて訊ねた。
 誕生したばかりの息子の異常は、どんな些細なことでも気にかかる。
 だが一足先にベッドの上で全裸となって三角座りしていたはやての言葉に、ゲンヤは思い切り拍子抜け
した。

「私のおっぱいに」
「…………へぇ」
「私のおっぱい飲み終わった後は必ず、シグナムやらスバル見てあっちの方がうまそうやって顔してるん
です」
「生まれたばっかりのガキがそんな顔するか」
「けどこないだ試しにシグナムのおっぱい吸わせてみた時は凄かったですよ?」
「吸わせるな」
「ちなみにヴィータの胸も吸わせてやろうとしたらトウヤめちゃめちゃ嫌がりました」
「…………だからあいつ部屋の隅でいじけてたのか」

 息子の将来が本気で心配になるゲンヤだった。我が子は間違いなく、母親最大の悪癖である乳への妄念
を受け継いでいる。

「だからせめてもうちょーっとだけ自分の胸を大きくしてやりたいな、と母親として思うんです」
「どうやってだ? シリコン入れたりするのか」
「まさか。周りのバスト成長に貢献し続けた私が断言します。そんなニセチチ手術せんでも、乳は揉まれ
て大きくなる。……だから」

 胸の前で脚を抱いていた腕をほどいたはやてが、猫のような姿勢と笑顔でにじりよってくる。

「現状、私の乳を揉む唯一の権利者である旦那さんに頑張ってもらいたいなぁと思ってるわけですよ」
「……ああ、つまり」

 遠回しすぎる誘いの意味を遅まきながらもようやくゲンヤは悟り、残っていた服を手早く脱ぎ捨て、は
やてを膝の上に抱き上げる。

「今夜はいっぱいしてほしいってことか?」

 ゲンヤの回答に、はやてはたいそう嬉しそうな顔でこくりと頷いて、口づけてきた。

「トウヤにけっこう飲まれましたけど、まだ二口ぐらいはゲンヤさんの分、残ってますよ?」



          まだまだ続く

348:おっぱい禁止令
08/08/26 23:13:11 /6vr7dO3
          おまけその三「二十年後のクロード・T・ハラオウン宅」



「よあ~けのない、世界なんてな~いから~」


「なんかあの歌、聞いたことあるな」
「第九十七管理外世界の歌。この間実家に帰った時に、母さんがクロナに子守唄で歌ってた。ユーナも教
えてもらったんだろ」
「言われてみりゃ歌詞が日本語っぽい気がするな。……子供で思い出したが時にクロードよ、お前を一児
の父親にして俺の親友と見込んで訊ねたいことがある。正直に答えてくれ」
「なんだ?」
「母乳って美味いのか?」
「ぶっっっ!?」
「やっぱり由緒正しき二代目乳揉み士としては、揉んだら出る物の味も知っとかないとな。避妊具無しで
初体験に臨んで見事にホールインワン達成したエロード大先生だったら、母乳プレイの一回や二回やって
んだろ?」
「エロード言うな! そ、そ、そんな非常識なこと、やってるわけないだろう!」
「お前ってさぁ、嘘つく時必ず天井見るわどもるわで丸分かりだよな」
「う、うるさいっ! いくら親友だろうが答える義理はない! 自分で結婚相手を見つけて確かめろ!」
「そんな理想の相手が見つからないから訊いてんじゃないか」
「ハードルを下げろ。はやてさんぐらい料理上手でシグナム先生ぐらい胸があってシャマルさんぐらい優
しくてヴィータさんぐらい強い女性なんているわけないだろ」
「いいや、絶対いるはずだ! レトルト食品しか作れなくて胸がAAカップで優しさの欠片も無くて運動
神経ゼロな女が身近にいるんだから、その逆もこの世のどこかにいるに違いない! だいたいお前なんか
昔は理想の女性はフェイトさんだって言ってたくせに貧乳のユーナ……」
「 ふ た り と も ?」
「うわっっ!?」
「ユ、ユーナ!? お前いつからそこに……」
「お酒は飲んでもいいけど、あんまり騒ぎすぎてクロナが起きたりしたら…………怒るよ?」
「す、すまない! 静かに飲むから!」
「お、俺もぼちぼち帰るから!」
「静かにしてくれるなら、泊まっていったってかまわないよトウヤ君。私はもう寝るから、お皿とグラス
は水洗いだけしといてね。じゃあ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。…………なんか最近、あいつキャラクター変わってないか? こう、笑顔に凄い迫力
があるっていうか」
「たしかに結婚したあたりからちょっとずつなのは義母さんに似てきてたような……」
「高町の血が今頃になって覚醒してんのか。そしてお前はどんどん尻に敷かれていってると」
「まあ、僕の知り合いで奥さんの尻に敷かれてない人なんていないし……」
「例外はうちの親父ぐらいか。なんでこんなに男が肩身の狭い思いする家ばっかりなんだろうなあ」



 その頃、教会にて。

「母乳と血液の成分はほぼ同じ。ということは、授乳行為とは言葉を変えれば吸血行為でもあるというこ
と。親子関係とは麗しき捕食関係でもあるのですねえ」
「…………フレイヤ、あなた何を突然?」
「いえ、お母様がコーヒーにミルクを入れているのを見て、ふと思いついただけのことです。うふふふふ」
(……本当にこの娘、苦手だわ)

 いつもの胡散臭い笑みを顔に貼りつけたままブラックコーヒーに生チョコのすり下ろしを浮かべて優雅
に飲んでいる養女を眺めつつ、カリムもコーヒーを口に運ぶ。
 ミルクも砂糖も入れたのに、やたらと苦かった。



          今度こそ終わり

349:サイヒ
08/08/26 23:15:40 /6vr7dO3
以上です。
自分で書いといてなんですが、三人娘のおっぱい吸い放題な子供達に軽く殺意が沸いた。


連載のプロット見直してたら、クロフェ時空のくせしてクロフェの会話シーンが最終回にしかないという
致命的な問題点(俺にとって)を見っけたんでクロフェ分自給自足。
おまけで盛大に連載のネタばれしてますが、特に先の展開を秘密にするような話でもないですし。

番外編第二段として「ルー子のエリオ寝取り計画(失敗編)」もやる予定。

350:名無しさん@ピンキー
08/08/26 23:21:32 XPaQA/9W
GJ!

>>「けどこないだ試しにシグナムのおっぱい吸わせてみた時は凄かったですよ?」
>>「ちなみにヴィータの胸も吸わせてやろうとしたらトウヤめちゃめちゃ嫌がりました」

 試しに吸わそうとして頭から囓られるリィンを幻視しました。
 って、何やってんですかはやてちゃん。


>>「ルー子のエリオ寝取り計画(失敗編)」

 正座して待ってます。がんばれルーちゃん

351:名無しさん@ピンキー
08/08/26 23:48:16 GPfvRjAq
GJ!!!  やっぱオッパイは良い、いや凄く良い!!!

相も変らぬエロさ、脱帽にございますよお師さん。
しかし、フェイトが胸だけで徹底的に悦楽を感じるようになったのは間違いなくクロノのせいだwww

352:名無しさん@ピンキー
08/08/26 23:49:58 sDfTSfpV
>サイヒ氏

  _   ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
 ⊂彡



353:名無しさん@ピンキー
08/08/26 23:51:24 1Vtg+ZSQ
GJ!!

>>「ルー子のエリオ寝取り計画(失敗編)」
失敗篇、ってことは性k……もとい成功篇もあるんですよね?!
あるといってください、お願いします

354:名無しさん@ピンキー
08/08/27 00:29:14 DVNqak4F
超GJ!
実にいいおっぱいでした
性格の3分の2は遺伝で決まるらしい……

355:名無しさん@ピンキー
08/08/27 06:29:28 +gcDj7nW
>>349
GJ!
相変わらずな色ボケ具合ですね、この二人w
あと何気に親として子供を気遣うフェイトと、そんなフェイトを気遣うクロノが
いい感じです。

でも、これだけのことやっても、子供はクロード一人だけなんですよね。この時空のクロフェ。
実はもう一人、弟か妹ができていても面白いけど、どうなんでしょう?

356:名無しさん@ピンキー
08/08/27 08:09:16 CnRR4V1B
プロバイダが規制されていて投下ができないorz
文章多いからケータイは厳しいし・・・泣けてきた。

357:名無しさん@ピンキー
08/08/27 09:20:47 nDSkLRI2
よし!会社か学校のPCから投下するんだ!ww

358:名無しさん@ピンキー
08/08/27 09:47:09 B+sNQsHZ
>>356
もっと推敲しろという神のお告げだよ、きっと
マターリしとけ。スレは逃げやしないからw

359:名無しさん@ピンキー
08/08/27 10:07:43 uBIWUml1
>>358

魔法少女リリカルなのは総合エロ小説第82話 は逃げ出した!
しかし( )に周りを囲まれてしまった!

( )内に入る言葉を答えよ

360:名無しさん@ピンキー
08/08/27 10:57:17 7u+UDM+e
>>359
変態紳士達 だな

361:名無しさん@ピンキー
08/08/27 11:46:23 mrFnBBKJ
ウホッ☆

362:名無しさん@ピンキー
08/08/27 12:16:32 F/wgW+ox
ちょっと懐かしいネタだがなのはエロパロと言えば、
納豆、G、キシャーに囲まれるべきじゃないかと思う。

363:名無しさん@ピンキー
08/08/27 18:12:49 i5rCkqcA
>>362
あの頃のスレはカオスだった……今はだいぶ落ち着いたね

364:名無しさん@ピンキー
08/08/27 18:27:55 ZQPv4w5L
G…ってなんだっけ?

365:名無しさん@ピンキー
08/08/27 18:33:46 PUwldMaG
調理場の黒い悪魔

366:名無しさん@ピンキー
08/08/27 19:10:04 aG1zxmMo
ルールーのインゼクトですね、わかります

367:名無しさん@ピンキー
08/08/27 19:29:46 UkQl5JNL
ガリューだろがりゅー

368:名無しさん@ピンキー
08/08/27 19:41:03 NhnrqKFD
>>349
フェイトさんみたいな立派なおっぱいを持つ妻ならクロノのようになっても仕方がないかと

ルー子のエリオ寝取り計画(失敗編)…ものすごい楽しみ!!!!
個人的には成功編が見られたらヘブン状態になりそう

369:名無しさん@ピンキー
08/08/27 22:45:55 CDEPQNpe
GJ!
エロノが凄くうらやましいです。
フェイトさんには頑張って大切な夫と子の相手を頑張って欲しい


そしてどうしてもルー子のエリオ寝取り計画が気になってしまう。
成功編…キャロが空鍋かきまわす想像が一発でできてしまうほど楽しみです。

370:名無しさん@ピンキー
08/08/27 23:13:49 zogC6wtA
GJ!
続きが楽しみだぜ!

371:詞ツツリ ◆265XGj4R92
08/08/27 23:19:50 zogC6wtA
長い冬が明けた……
ようやく規制解除されましたので、30分から【空へと響く銃弾】第二話を投下してもよろしいでしょうか?


372:名無しさん@ピンキー
08/08/27 23:20:32 Ydm2ivte
遅かったじゃないか・・・

373:名無しさん@ピンキー
08/08/27 23:21:05 1zDK6k95
全力でOK! あなたのSS、一日千秋お待ちしておりました。

374:空へと響く銃弾 第二話 ◆265XGj4R92
08/08/27 23:30:05 zogC6wtA
そろそろ投下開始します。
注意:脇キャラですが、オリキャラが出ます。
残酷描写がこれからの物語で登場する可能性があります。
さほど露骨にではありませんが、SSXの設定が織り込まれています。
それらをご注意してください。


375:空へと響く銃弾 第二話 ◆265XGj4R92
08/08/27 23:30:54 zogC6wtA

 ボタボタと口から零れ出る液体が酸っぱかった。
 胸が、喉が焼けそうで、どこまでも吐瀉物が止まらない。

「うぼぇえ」

 ゲロまみれの無様な姿。
 耳に嵌め込んだイヤホンから冷たい報告連絡。

 ―射殺完了。

 胸が燃えるようで。
 下半身が凍りついたようで。
 頭蓋骨の裏側が掻き毟られているかのようで、ジンジンした。
 その日、買いに行った商売女が泣き叫ぶほどに犯した。

 それが俺の初めての人殺し。

 スコープの中の世界を砕いた日のことだった。




 空へと響く銃弾

 2.薬室に弾丸を詰め込んで、ボルトを引き、閉鎖する。




 ミッドチルダ首都航空隊。
 それが今のヴァイスの職場でもあった。
 そして、その場所にはかつての同僚がよく顔を合わせる場所でもある。
 それは―

「あー、ヴァイス先輩~!」

 地上本部、航空隊宿舎の廊下から一人の女性が小走りに現れた。
 アルト・クラリッタ。
 元機動六課のオペレーター、今は陸士108部隊に所属し、その正式ヘリパイロット。
 その身に纏うフライトジャケットが何よりの証拠。

「よぉちびアルト、こんな場所で会うとは珍しいな。なんか用か?」

 ヴァイスがアルトに訊ねると、彼女は少しだけ頬を膨らませて答えた。

「用が無いとあっちゃいけないんですか?」

「ぇ?」

「ぶー、まあいいですけどね! これ、JF-704の整備報告です。整備課の人からついでに渡してくれって頼まれまして」

 別部署なのに、わざわざアルトに渡されたという事実は普通に考えれば少しおかしいことだろう。
 しかし、この地上本部はあまり変わって事ではない。
 何故なら彼と彼女はとてもある意味において仲良しだからだ。


376:空へと響く銃弾 第二話 ◆265XGj4R92
08/08/27 23:31:25 zogC6wtA

「ん、サンキュ」

 そういってアルトにお礼の言葉を呟くヴァイス。
 ヴァイス先輩。
 アルトの二年前からさほど変わらない態度、グランセニック陸曹という呼び方の皮がはがれて、彼女は昔通りヴァイスを先輩と呼ぶ。
 長い付き合いだ。
 どこか子供っぽさの抜けないアルトの態度に苦笑しながら、ヴァイスはぺらぺらと書類を確認。
 そして、最後に付けられたヘリパイロットのローテーションスケジュールを見て、眉を歪めた。

「あれ? また俺の待機時間が減らされてるんだが、どういうことだ?」

「いや、私に聞かれても……あ、そういえばヘリに見かけない顔の若い子がいましたけど、新人でも入ったんですか?」

「そういやこの間入ってきたな? ということはその分の割り引きで―くそ、あのおっさん……俺の楽しみを奪うつもりか」

 ガシガシと頭を掻いて、ヴァイスが呻く。
 ヘリパイロットとスナイパー、その二束わらじを履いているヴァイスのスケジュールは不規則だ。
 武装隊に人手が足りなければ引っ張り出されるし、ヘリパイロットに余裕がなければパイロットに移行する。
 どちらも手放せない、大切な仕事になっているからこそ、片方に比重が傾くのがヴァイスには苦悩だった。
 そして、傾く仕事―狙撃手としての時間が長いのは彼にとって苦痛だった。

「先輩?」

「ん、あ、いや……サンキュな。悪いなアルト、わざわざ届けてもらって。生憎俺はここ最近自分も操縦するヘリだって言うのに見にいけなくてさ」

 ヴァイスがヘリの操縦桿を握ったのは一体何日前だろう。
 ストームレイダーのグリップを握る感触だけは生々しく残っているというのに、操縦桿を握る時の感覚は、空へと舞い上がるなんともいえない喜びである感覚が朧だった。

「いえ、別に対した手間でもないですからっ」

 アルトがどこか心配そうに答える。
 ヴァイスの浮かべる影を帯びた表情に、彼女はどこか心配そうな目を浮かべていた。
 そんなアルトの視線に気付いて、ヴァイスは取り繕ったかのように笑みを浮かべると、不意に手を伸ばした。

「よし、アルト! 今度飲みにでもいくか!」

「え? いきなりなんですか!? って、人の髪をくしゃくしゃにしないでくださいよ~!」

 なでなでとアルトの髪を弄るヴァイスに、うきーとアルトが抗議のパンチをするが、届かない。
 長身の上に手が長いヴァイスの手で押さえられると、小柄な彼女の手は微妙に彼の身体には届かないのだ。
 ぶんぶんと空を切るアルトの手。
 からからと笑うヴァイス。

「先輩、本当に28ですか? もう少し大人になってくださいよ!」

 アルトの反論。
 三十路、二歩手前のヴァイスには辛い言葉だった。

「うるさいぞ、アルトのくせに」

 ぴんとデコピンがアルトのデコに命中。
 のののぉとうめき声が上がった。


377:空へと響く銃弾 第二話 ◆265XGj4R92
08/08/27 23:32:27 zogC6wtA

「よし、んじゃ俺は仕事にでも戻るかねー」

 ぜーぜーとアルトが真っ赤な顔で息を吐くころになって、ようやくヴァイスは手を離した。
 うぅ、いじめっ子だぁと涙目でアルトが呟くのは聞かぬふりである。

「あ、ヴァイス先輩っ」

「ん?」

 自分の部署に戻ろうとするヴァイスに、慌ててアルトは声を上げた。

「そういえば、鑑識班のラードさんが先輩を探してましたよ? なんか用事が終わったから、さっさと来いって。アタシ、伝言板じゃないのに」

「ん? わかった」

 何頼んだんですか? と訊ねるアルトに、ヴァイスは野暮用だと軽く誤魔化す。

 不思議がるアルトを置いて、ヴァイスはその場から立ち去った。




 午前中のデスクワーク作業。
 報告書の草案をまとめ終わり、データを保存したヴァイスは昼飯時にも関わらず食堂に向かわず、ある一室へと足を運んでいた。
 地上本部での捜査任務に属する鑑識班、その部署である。
 武装捜査員と呼ばれる武装隊と鑑識班の繋がりは深い。
 単純な捜査や武力での鎮圧では解決出来ない、科学捜査や最新のテクノロジーなどを用いての分析など彼らの重要性は高いのだ。
 そして、その中の鑑識員の一人にヴァイスは個人的なつてがあった。

「おーう、ヴァイスじゃないか。よく来たな」

 鑑識課の部屋の中、昼飯に出て行ったらしい無人の空間に一人だけコーヒーのカップを持った男がいる。
 にこやかな笑顔、低い身長、少年を思わせる童顔に、藍色の髪。その口から出るのはどこか年老いた男の声。
 少年のような男の名はラード。ラード・グラス。
 年齢にして40にも至る見かけだけならば、十代半ば程度の―幼年成熟の特性を持つ次元世界の住人だった。
 地上本部の古株でもある人物に、昔からヴァイスは世話になっていた。
 元々は質量兵器―弾痕分析などの権威でもある人物である。彼の住まう次元世界は管理世界においても、魔力素が存在しない世界のため例外的に質量兵器が解禁されており、硝煙と鉛玉が行き交う世界だ。
 そのためあまり魔法を好いていない変わった人物でもある。


378:空へと響く銃弾 第二話 ◆265XGj4R92
08/08/27 23:33:12 zogC6wtA

「なんか呼んでたらしいっすね」

「ほれ、頼まれていた奴出来とるぞっ」

 ぽいっとバインダーに挟んだ書類をヴァイスに投げるラード。
 それを慌てて受け止めると、ヴァイスはそれを捲った。
 事件発生時の風速、予想射撃角度、打ち込まれた弾痕のひび割れと発見された弾丸からの予測距離、ヴァイスが求めていた情報がずらずらと羅列されている。

「かー! 魔法ばっかりで銃器の硝煙も、力も、恐ろしさも、素晴らしさもわかっとらん海の連中は手抜きばっかりだ」

「さすがっすね」

「ふん。この程度は写真からの予測に過ぎんし、信憑性も高くないわい。ミッドチルダで起きた事件だというのに、陸には指一本触れさせてくれんのだ」

 ガツンとカップを叩きつけ、気息を吐き出すラード。
 その少年じみた顔には似つかわしくない憤怒の表情が浮かんでいた。

「たまらんたまらんたまらん。レジアスの阿呆め、あやつが死んでからわしらの仕事が窮屈になりおった。そう思わんか、ヴァイス?」

「え? あーそう……っすね」

 ラードの言葉に、ヴァイスは躊躇うように返事を返した。
 それは全て事実だった。
 二年前レジアスが暗殺され、彼の補佐官であり、娘であったオーリスが後送されてから地上本部には海からの介入が激しくなった。
 上層部は海からの派遣人員で埋め尽くされ、海派の派閥とシンパによって、元々所属していた陸の人員は肩身の思いをし、古株だった人間は何かの理由で左遷され、或いは退職に追い込まれていった。
 魔力素養が高いものは率先してエリートの道を進み、低いものは出世が遅れて、ハードな現場に送り込まれる。
 もはや陸は海の傀儡だと、単なる飼い犬だと吐き捨てて去っていった人間もいる。
 地上本部はもはや元の原型など留めていないも同然だった。
 そして、海の象徴でもあり、“奇跡の部隊”とさえ褒め称えられた機動六課に所属していたヴァイスは低い魔力量であったが、そのお陰で海からの風当たりは弱かった。
 ハードな環境ではあるが、幸い上司も海からの派遣人員ではなく、運よく生き延びている陸のベテランであり、彼には壁を解消した妹もいる。
 全ては順調、だといえる。
 そう、ただ生き延びるだけなら―

「で? これをどうするつもりなんだ、ヴァイス?」

「え?」

「本局鑑識班からの報告書を渡してきたってことは、どうせお主の“元同僚”の嬢ちゃんたちが絡んでおるんだろう?」

 ラードの目線が厳しく、ヴァイスの胸を貫いた。

「これを見せて、ただそれでお終いというわけにはなるまい。これを理解し、追う人間が必要となる」

「それ、は―」

「海は嫌いだがのぉ、お主自身はわしは気にいっとるよ」

 ずずぅとコーヒーを啜り、少年の姿をした男は足を組んだ。

379:空へと響く銃弾 第二話 ◆265XGj4R92
08/08/27 23:33:44 zogC6wtA

「質問じゃ。お主は何のために手を貸す? 友情か? それとも愛情か? それともコネと恩売りか? この件の解決に協力したとあらば、貴重な貸しになるだろうな」

「俺は―別にそんな理由で」

「ならば、なんだ?」

 言葉が突き刺さる。
 視線が突き刺さる。
 衝動が突き刺さる。
 ヴァイスは心臓を握り締められたような感覚がした。ナイフに刺されたような衝撃がした。
 吐き気、吐き気、吐き気。
 汗が浮かぶ、中途半端な自分。


 ―何故俺に協力を仰いだ?



 つい数日前に自分が吐き出した問い。
 その答えは、答えは―

「まあええわ」

 ブルブルと拳を震えさせたヴァイスに、ラードはあっさりと言葉を撤回した。
 え? とヴァイスが呆然とするほどにあっさりと。

「わしには興味が無い。ただ適当に楽しめればええからのぉ」

「楽しいって」

「ヴァイス―殺意の重さを思い出せ」

 え? とヴァイスが呆然となる。
 そんな彼に背を向けて、ラードは再び書類に目を通し始めた。

「主が誰かを殺すことを決めた理由を、思い出せばそれでいい」



「鉛だろうと、魔法だろうと、引き金を引くための重さは変わらんのだから」




380:空へと響く銃弾 第二話 ◆265XGj4R92
08/08/27 23:34:52 zogC6wtA
 それは夜。
 仕事が終わり、宿舎に戻る時間。
 そんな時間に、ヴァイスは約束した場所でバイクを傾けて、煙草を吸っていた。
 紫煙が肺に染み渡る、苦い味、吐き気がする―けれどやめられない、やめるつもりもない自傷行為。

「煙草……吸うようになったんですね」

 声がした。
 振り返る必要も無い、呼び出した相手。
 ティアナ・ランスター。かつての同僚、ヴァイスの知る一人の男の妹。
 その事実を彼女は知らない、教える気も無い、だから紫煙を吐き出すことを返事にした。

「まあ、な。別に法令違反じゃないぜ?」

「確か路上喫煙は禁止の場所ですが」

「そりゃ失礼したな」

 すうーと煙草を吸い尽くし、胸ポケットから取り出した携帯灰皿に仕舞い込む。
 風に舞った僅かな灰が、夜空に散った。
 軽い大気汚染、多めに見てほしいけど駄目か?

「それで、返事を」

 ティアナが問う。
 こちらの真意を。
 彼女の捜査に協力するかどうかを。

 答えは決めた。

「協力するさ」

 煙草臭い息を吐いて、ヴァイスは答えた。

「いいんです、か?」

「おいおい、誘ったのはお前だろう?」

 ティアナが少し動揺したのを見て、ヴァイスは肩を竦める。
 腰掛けていたバイクから降りて、ティアナを見る。

381:空へと響く銃弾 第二話 ◆265XGj4R92
08/08/27 23:35:51 zogC6wtA

「でも、これは本当なら海の私たちが解決する問題で―」

「そんなわけがない」

 ティアナの言葉を封殺。
 海に所属しているなどという言葉はいらなかった。
 無意識にテリトリーを主張して欲しくなかった。
 アイツが護りたかった地上のことを忘れるような言葉を告げて欲しくなかった。
 かつての機動六課。
 誰もが見捨てた、忘れている、重視していない世界をのけ者にして欲しくなかった。

「これは俺たちの問題だ」

 そうだ。
 これは陸でも、海でもない。
 俺たちの、アイツの、住んでいる、或いは住んでいた世界の問題。

 そして。

「それに」

 ヴァイスはたった一つだけ理由を見つけていた。


「殺意の重さ、それを知りたいんだ」

「え?」

 銃器を、同じ引き金を引き続ける誰かが知りたかった。
 その痛みを知りたかった。


 ただそれだけだ―



382:名無しさん@ピンキー
08/08/27 23:37:22 LlGiPwSR
渋いヴァイスに支援

383:詞ツツリ ◆265XGj4R92
08/08/27 23:38:37 zogC6wtA
投下完了です。
いやはや、色気の欠片も無い内容ですみません。
次回からヴァイスとティアナの捜査が始まる予定です、少しは色気も出てくるかな?


あとまとめ管理人氏にお願いです。
大変申し訳ないのですが、SSXの設定によると二年後の時点では既にティアナは執務官になっていたようなので、

まとめの

 彼に告げるのは小柄な少女。
 オレンジのかかったブロンド、決意を秘めた目つき、中に誇る野生の魅力を漂わせる子猫のような体躯、まだ二十歳にも満たない少女が纏うのは白い制服、執務官補佐の制服。
 ティアナ・ランスター執務官補佐。
 かつてはツインテールにまとめていた髪を肩下まで伸ばした少女。

↑ の内容を

 彼に告げるのは小柄な少女。
 オレンジのかかったブロンド、決意を秘めた目つき、中に誇る野生の魅力を漂わせる子猫のような体躯、まだ二十歳にも満たない少女が纏うのは黒い制服、執務官の制服。
 ティアナ・ランスター執務官。
 かつてはツインテールにまとめていた髪を肩下まで伸ばした少女。

に変更し、補佐官という言葉を全て執務官に修正してもらえないでしょうか?
誠にお手数をかけてすみませんがお願いします。

以上です。

384:名無しさん@ピンキー
08/08/27 23:40:52 LlGiPwSR
投下乙です!
詞ツツリ氏の作品はダークシリアスで大好きです。
こちらもクロはやも楽しみにしています。

385:名無しさん@ピンキー
08/08/28 00:14:02 Q95Afx1I
>SSXの設定によると二年後
結局ティアナは二十歳の壁を越えなかったのか(一般待ち組)

386:名無しさん@ピンキー
08/08/28 00:22:42 K2tsX7Gb
GJ!!です。
シリアス感が堪らないですw
やっぱり、本編後の陸は海の介入を受けるだろうなぁ。
その場合、下手すると人材の引抜が、さらに増加して陸の治安が凄く悪くなりそうだ。

387:名無しさん@ピンキー
08/08/28 11:30:34 SzRtnGEB
そのうち陸士によるクーデターが起きるかもな
でもあいつらじゃすぐに鎮圧されるか・・・・・・

388:名無しさん@ピンキー
08/08/28 13:10:09 K2tsX7Gb
ゲリラ戦法や、質量兵器による暗殺(狙撃や車爆弾)を海の重鎮を標的にしたら、
結構いいところまでいけそう。
ただそうなると、もはや、ただのテロ組織www

389:名無しさん@ピンキー
08/08/28 13:58:31 GDqRxG1N
GJ!!!
なんだろう、ヴァイスって本編じゃ結構かっこよかったのにssじゃあギャグキャラばっかりだよな


久しぶりにシリアスなヴァイスにもう一度GJ!!!

390:名無しさん@ピンキー
08/08/28 17:17:28 hGHdOk7F
>383
GJです、しかし……

>その日、買いに行った商売女が泣き叫ぶほどに犯した。

まさかソープじゃあるまいなwww

391:名無しさん@ピンキー
08/08/28 17:43:09 qNuAaMd3


392:名無しさん@ピンキー
08/08/28 18:44:33 EeddWgoX
>>390
ソープ・ナンバーズと申したか
…このネタも随分懐かしい響きがするな、一頃はあんなに隆盛したというのに

393:名無しさん@ピンキー
08/08/28 19:42:57 SzEqqGLY
ここでソープ一期二期…………い、いや、なんでもない。

394:名無しさん@ピンキー
08/08/28 20:13:12 mvnC7vq2
>>390
なぜかセインが頭に浮かんだ。

395:69スレ264
08/08/28 21:03:01 7FJXwbdT
業務連絡です。
81スレの保管完了しました。
職人の方々は確認お願いします。


野狗 ◆gaqfQ/QUaU氏(>>235-244)と276氏(>>277-283)へ
それぞれアンカーをつけた作品にできれば題名を付けてもらえると助かります。

396:名無しさん@ピンキー
08/08/28 21:10:37 UagDBnoX
>>395
乙かれー
-━ ポッキードゾー

397:名無しさん@ピンキー
08/08/28 21:26:06 FbGoVH58
司書殿に傾注!

398:名無しさん@ピンキー
08/08/28 23:21:21 UKJss0By
>>395 司書様、業務お疲れ様です!

>>390 ソープシリーズは大好きなので、たくさんの職人さんに書いて欲しいですね~

399:246
08/08/28 23:41:14 A5o/nDiX
今日は誰も投下が無いなぁと言う事でユノフェイ長編三話投下です。
前回感想レスありがとうございました。
以下ご注意を。
・メインはユノフェイ。後同じくらい高町母子の物語。
・鬱展開。鬱エンド。誰も救われませんし、誰も助かりません。
・なのはさん、フェイトさん、ヴィヴィオ、ユーノ君、八神家、ハラオウン家、ナカジマ家、テスタロッサ家好
きな方は要注意。
ではでは。

400:名無しさん@ピンキー
08/08/28 23:41:27 nKqXO2Kt
>>349
遅レスですがGJ!!
親子2代あわせて乳とは
そんなにおっぱおがいいのか!
ええ、すごくよくわかります。

「ルー子のエリオ寝取り計画(失敗編)」ってことは成功編もありますよね。
そうだといってよバーニィーーーーーーー!!!!!!!!

401:246
08/08/28 23:45:04 A5o/nDiX
ごめんなさい。今回前の話の続きなのであらすじ。
なのはさんの体調が悪いと様子を伺うヴィータちゃん。なのはさんは大丈夫だと言い張ります。
ややあって、なのはさんが修理中のレイジングハートを受け取る為に教導隊オフィスを出て行きます。そこにいたのは
フェイトちゃん。なんか様子がおかしいぞ。
一方その頃、ヴィヴィオが在学中の学校で、聖王の鎧が発動したりして―。
以下から前回の続きです。



402:Cursed Lily
08/08/28 23:45:57 A5o/nDiX
 突然なのはがオフィスを飛び出してから数分。ヴィータは、なのはに確認してもらったスケジュールを再確認
しながら彼女の帰りを待っていた。
 腕を組み足を揺すらせ、苦笑する周りの視線を気にせずに。

「くそっ、こっちは心配してるって言うのに」

 昔からだ。本当にそう言うところだけは何が起こっても、どんな目にあっても変わってくれる気配は無い。
 恐らく高町なのはを良く知っている人間ならば、必ずと言って良いほど目にしてしまう彼女の最も駄目な所。
もう癖だと言い換えても良いだろう。
 それをまた目の前にしてもう我慢なんて出来る筈も無く。一度思いっきり怒鳴りつけてやらないと気がすまな
いと、ヴィータが拳をデスクに叩きつけた。
 それと同時、ヴィータのデスクに積まれていた資料が隣の席に音を鳴らして崩れていく。慌てて崩れた資料を
戻そうと立ち上がったヴィータが見たのは、見慣れた、この苛立ちの原因である彼女の手。

「もぅ、ヴィータちゃん何やってるの。あんまり暴れちゃ駄目だよ」

 今まで無かったレイジングハートがきちんと定位置にあると言う事は、レイジングハートを受け取る為にオ
フィスを出たのだろう。
 見上げたなのははヴィータの崩した山を元に戻す為、資料を一つずつ手に取り始めている。
 その笑みはオフィスに出る前から変わない。違っているのは先ほどよりも血の気が引いて白かった顔が青く
なっているのと、唇が震えているくらいか。
 途中、なのはが手にしていた資料が床へとこぼれ落ちた。ごめんと拾い始めるなのはの手を見て気付いたが、
その指先も滑稽な程に震えていて。
 なのはが床に落ちた資料を屈んで拾う。その度に拾った資料が手から落ちるものだから、それを拾う為にまた
屈む。何度も何度も、寒気がする程にそんな事を繰り返していた。笑顔で。

「お前さ、もう帰れよ。そんで休め。ヴィヴィオだって心配するだろ?」
「またさっきの? ほんとに私は大丈夫なんだから、ね?」

 その普段と変わらぬ口調に。その言葉に。そして何よりも、その笑顔に理解した。
 何を言っても無駄なんて当たり前。なのは本人が全く辛いと思っていないのだから、何度言っても焼け石に水
で終わってしまうのだ。

「やばいな……どうしよ……」

 きっと、自分なんかではどうしようも出来ない。
 故に呟きながらヴィータが出来るのは、なのはの様子を、笑顔の裏側を伺おうとする事のみ。
 ややあって、なのはが突然帰り支度を始めた。上司といくつか言葉を交わし、制止を求める上司の言葉を半ば
振り切る形でなのはが鞄を持ってオフィスを出る。
 なのはとすれ違う寸前、ヴィータが目にした横顔は今までの笑顔が嘘に思えるほど切羽詰っていて。何となく
ではあるけれど、ヴィータが察した。恐らくヴィヴィオの事で間違いない。
 なのはのデスクは資料が散乱したままだった。それを片付けながら、ヴィータが願うように呟いた。

「テスタロッサが何とかしてくれればいいんだけどなぁ―」



 辛くなんて無かった。それがあの子の為なのだと思っていたから。
 苦しくも無かった。あの子が苦しむほうが、何倍も、何十倍も辛いから。
 例えあからさまに避けられても、こちらを見ようとしてくれなくても、名前を呼んでくれなくたって構わない。
どうでもいいと思うことにした。一番最初に戻っただけと思うことにした。
 だって、あの子にママじゃないと言われる事の方が辛いから。
 あの子の温もりが傍に無い事の方が、彼女に拒絶されることよりも辛いから。
 自分はただ、あの子の事だけを考えていれば良い。あの子が笑顔でいられる事だけを考えて生きていれば良い。
 きっとそれが、あの子の母親として役割だ。


魔法少女リリカルなのはStrikerS
―Cursed Lily―
(3)

403:Cursed Lily
08/08/28 23:46:43 A5o/nDiX


「―あぁ、これもいいかな」

 数え切れるほどの本が宙を浮いていた。
 場所は無限書庫のとある一画。本と同じように宙を漂うユーノ・スクライアは、手にしていた本を一通り確認
してから頷くと前もって用意していたいくつかの本と共に自室である司書長室へと戻って行く。
 彼が手にしているのは、ここ最近に出版された執務官試験の為の参考書だ。何でも新しく執務官補佐になった
元機動六課のメンバーの子に必要との事で、依然にフェイトから以来されていたものをユーノが探す事と相成っ
たのだ。
 そんな訳でユーノは書庫から引っ張り出した数冊の参考書をデスクへ置き、今はコーヒーカップ片手に持って
きた本の内容を吟味しようと言う訳だが、これが中々難しい。

「しっかし、なんで僕がこんな事やらなくちゃいけないんだよ」

 そもそもユーノは執務官では無い。漠然と執務官試験に役立ちそうな参考書と言われても、首を傾げたくなる
のが現状だ。
 フェイトの兄であるクロノ・ハラオウンも無理難題を押し通そうとすることで無限書庫内では密かに有名だが、
それと同等の事を意識せずにやる妹の方が性質が悪いかもしれない。
 既に参考書を捲る事数十分。あまり知らない情報の波にやる気を揉まれ、ユーノは一人読書をする時の半分以
下の時間で目頭を強く抑えて本を閉じた。
 別に自分が選ぶ必要は無い。後でフェイト自身に選んでもらえば良いだけなのだ。
 が、約束の時刻になってもフェイトは訪れる気配がない。どこで油を売っているのかと時計と参考書の表紙を
交互に睨む事、更に三十分弱。

「―ごめん、遅れちゃった」

 やっとの事で無限書庫に姿を見せたフェイトは、ユーノが思わず駆け寄る程に血色の悪い顔で応接間のソファ
に座っていた。


404:Cursed Lily
08/08/28 23:47:29 A5o/nDiX
「なんか、顔色良くないけど……体調悪いの?」
「ちょっとだけ。毎月の事だから」

 暗に触れるなと言いたいのだろか。
 ユーノ自身、その事に触れる度胸も経験も勿論無い。内心慌てふためきながらもフェイトと反対側のソファへ
座り、秘書の差し出したコーヒーを飲み干し、何とかその場を切り抜けることにした。
 早速参考書を手に取ったフェイトは本の内容と自身を持ち込んだ資料を比較し、二三度頷き本を閉じるを繰り
返す。
 閉じた本に確りと付箋をしている辺り、どうやらフェイトの目に適う本を選ぶ事は出来たようでユーノが僅か
に安堵の息を零していた。

「ありがと。これ全部借りてくね。後、無理言ってごめん」
「いいけどさ、これからはもっとちゃんと探して欲しい本を教えてくれないと嫌だからね。そう言うとこちょっ
とクロノに似てきてる」
「ごめん……善処します」

 しゅんと身体を小さくするフェイトに苦笑し、ユーノがフェイトを促して立ち上がる。
 フェイトとの約束事はこれで終わり。後は溜まっている仕事を片付けて今日の仕事は終了だ。
 が、その前にもう一つ。仕事以外のプライベートな用件だ。

「ねぇ、フェイト。今日仕事何時に終わる予定?」
「え、……どうだろ。そんなに遅くならないと思うけど」
「じゃあさ……ええっと、ちょっと夕食付き合ってくれないかな。君が六課で言ってたやつの話しがしたいんだ」

 突然の誘いだ。
 ユーノの表情は強張ったまま。フェイトも俯いてユーノと同じ様に。

「うん、私もユーノに話したいこと……あるから―」

 ややあって頷いたフェイトに、ユーノが若干表情を和らげる。
 だがそれとは逆に、フェイトは俯いたままだった。


 彼のその一言で、嫌でもあの時の事が甦る。
 なのはからの突然の呼び出し。機動六課が解散してまだ一日しか経っていない日の事。
 伝えたい事がある。そんな事をなのはは言っていた。


* * *



405:Cursed Lily
08/08/28 23:48:31 A5o/nDiX
 教導隊部署を通じて突然入った連絡に、なのはは一心不乱にそこへ向かっていた。
 レールウェイに乗る時間も惜しく、タクシーを飛ばして彼女が向かうのはベルカ自治領、聖王教会本部だ。
 聖王教会に着くや否や自動で開く扉を強引に開き、財布に入っていた一番貨幣価値の高い札を投げ捨てるよう
に運転手に渡して聖王教会へ駆けていく。
 勿論つり銭の事なんて頭に無い。彼女は、焦っていたから。

「―お待ちしていました、高町一尉」
「ヴィヴィオはどこですか!?」

 碌な挨拶もせず娘の名を叫ぶなのはに、シャッハが僅かに表情を強張らせる。
 呼吸を乱しているなのはは落ち着いている時間なんて要らないと睨んでいるようで、シャッハは何も言わずな
のはを案内する事に終始した。
 シャッハがなのはを招いたのは、カリムの自室だ。部屋に入ってなのはが見たのはソファで寝息を立ててい
る愛娘の姿。
 今朝学院へ向かった時と同じように制服を着ていて、けれど膝には見覚えの無い絆創膏がいくつも。きっと、
転んでしまったのだろう。
 気付いたときには、カリムとシャッハの視線など忘れていて。なのははヴィヴィオの元へ駆け寄り声をかける
寸前だった。

「起こさないで上げてください。ようやく眠ってくれたところです。後シスターシャッハ、なのはさんにハーブ
ティーを」

 それをカリムが制止する。普段とは打って変わった厳格さを声の端々に感じさせながら。

「結構です。それよりヴィヴィオの事を話してください」
「シスターシャッハ、お茶の準備をお願いします。後なのはさん、申し訳ありませんがこのままヴィヴィオを休
ませてあげる気はありませんか?」

 嫌でも分かる遠まわしな物言いだ。娘に大事があってそれで落ち着けるなんて出来るはずが無いのに。
 感情的にカリムを睨むつけるなのはに対し、カリムは涼しげになのはの視線を交わしてヴィヴィオを見ていた。
 連絡を受けたシャッハがここへ連れて来てからも、ヴィヴィオは泣き止まなかった。疲れてしまったのだろう。
なのはがどれだけ怒気を撒き散らそうとも、ヴィヴィオにが起きる様子は微塵も無い。
 残念なのは、この少女の母がその事に今も気付いてくれないこと。

「ヴィヴィオがクラスメイトの子と先生を聖王の鎧で傷つけてしまったと伺いました。それは本当ですか?」
「はい。ヴィヴィオがそう言っていましたから」
「何故ですか?」

 カリムは無言。ソファにも座らずカリムの眼前のデスクに両手を着いているなのはを見上げ、溜息を吐くだけ。
その態度が、今はこの上なく不快だった。

「黙ってちゃ分かりません! 答えて下さい!」

 故にデスクに両手を叩きつけ、なのははカリムを睨む。落ち着かせようとするシャッハの手を払い、怒声と共
に撒き散らすはここへ訪れる間感じていた切なる欲求。
 ヴィヴィオがあんな事、自分の意思でする筈が無かったから。
 きっと、あんな事をした原因がどこかにある筈だから。
 何とかそれを知って、抱きしめたかったのだ。
 ―なのに。

「あなたがヴィヴィオの事を娘としてとても愛しているのは良く分かりました。それで、何故あなたは先程から
ヴィヴィオの心配しかしないのですか?」
「……だからっ、そんな事を聞いてるんじゃ―」
「この子が傷つけてしまった教師と、周りのクラスメイトの子達の事は全く気になりませんか?」

 無言になったのは、なのはだった。
 カリムの言葉に後ずさり、ソファに音を立てて腰を下ろす。瞬間、寝返りを打ったヴィヴィオに肩を震わせて。
それを見つめている表情からは血の気が引いていた。


406:Cursed Lily
08/08/28 23:49:17 A5o/nDiX
「勿論、ヴィヴィオの事で余裕が無かったのはわかります。ですが、あなたが今考えている事はいけない事の様
に思います」
「……」
「確かに聖王の鎧が発動したのは、クラスメイトの発言がきっかけだったようです」

 それを聞いて、一体何をしようとしていたのか。
 分からない。それがなのはが聞き出したかった最初の言葉を耳にした時の感想。
 なのはとてカリムの言葉の意味は分かっている。当然の事だ。心配しないほうがおかしい。彼女はそれが出来
ない程愛情と言うものに欠けている人間ではない。
 ―だったら、何故こんなにも納得が出来ないのだろうか。

「あなた以外の本当のままと言う事について、聞かれてしまったようです。それが嫌だったのでしょう。泣きな
がらヴィヴィオのママはあなただけだと言っていましたよ。この時期の子供は、特にヴィヴィオは精神が成熟し
ていますから。仕方が無かったのでしょう」

 カリムの言葉がどこか遠くで聞えていた。思考を埋め尽くすのはカリムの言葉でも想像してしまったヴィヴィ
オの泣いている姿でもなく、自分自身を呪う後悔の念。
 きっと、まだ駄目だったのだ。本当のママになんてなれていなかった。自分が本当のママだったなら、ヴィ
ヴィオはそんな事で傷つかずに済んだ筈だから。
 だから全て至らない自分の所為なのだろう―そう思っておかないと、駄目だった。

「……ヴィヴィオを連れて帰ります」

 ヴィヴィオに伸ばしたなのはの手は震えていた。それを一度拳を握る事でどうにか収め、ヴィヴィオを出来る
限り優しく抱きしめる。
 間近で見たヴィヴィオの顔には、涙の跡がいくつも残っていた。それに涙を浮かべそうになって、なのはは
ヴィヴィオの髪に頭を埋めて小さく、ごめんと繰り返す。何度も何度も。

「ザンクト・ヒルデ魔法学院へは、ヴィヴィオを自宅で休ませた後に伺わせて頂きたいと思います。重ね重ね、
申し訳ありませんでした」
「シスターシャッハ。送って差し上げてください」
「申し訳ありません。ヴィヴィオと二人で帰らせてください」

 カリムとシャッハの視線に背を向け、やっと触れる事の出来たぬくもりに目を瞑る。
 怖かったから。抱きしめて、ヴィヴィオの事をもっと近くに感じて、そうしていないと恐怖で震えが止まらな
かったから。
 そして、それを知っていて尚彼女はなのはに問う―否、知っているから問わなければと思ったのだ。

「もし今後この様な事が起こって、それがヴィヴィオに責があった場合……あなたはちゃんと叱ってあげられま
すか?」

 長い沈黙だ。少なくとも、ヴィヴィオが薄っすらと目を開けてしまうくらいには。

「……ママ?」

 目尻に涙を浮かべながら、ヴィヴィオがなのはの頬に触れる。いつもの様に溌剌とした心の底から安心できる
笑顔じゃない、泣きつかれて辛そうな笑みを浮かべながら。
 苦しかった。息が出来ないくらいに、胸が締め付けられた。嫌でも思い出してしまうのは、スカリエッティに
捕まり、泣き叫びながら自分を呼ぶヴィヴィオの悲鳴。

「ヴィヴィオが……笑顔になってくれるなら」

 でも、そうじゃなかったら―。

「私はどんな事をしても、この子の味方でいます」


407:Cursed Lily
08/08/28 23:50:07 A5o/nDiX
 カリムはそれ以上何も言わなかった。シャッハは口を閉ざしなのはから視線を逸らしていた。それを無視して、
なのはが部屋を後にする。
 誰も追いかける者はいない。当然だ。あんな事を言ってしまったのだから。
 カリムの問いかけを無視する事も出来た。けれどもヴィヴィオへの想いに嘘は吐けなかったから。
 不安だけが募る。
 あの日に、母になると誓ったはずなのに―。



 そう、誓ったんだ。
 彼女に自分の想いを告げてしまったあの日の事。
 この子の為に、あの子以外のいらない物を全て捨ててあげようと思ったんだ。


* * *


 時空管理局本局から転送ポートに乗り、ミッドチルダ首都クラナガンへ着いて十分弱。普段と全く変わらない
緑色のスーツを身につけたユーノは、フェイトとの待ち合わせに何も考えずにここを指定してしまった事に後悔
していた。
 辺りところ構わずいちゃつくカップルに、ガラの悪そうなチンピラ達と酔っ払い。それらが見ていて楽しい筈
も無く、フェイトの言葉どおり本局の待ち合わせでも良かったのではないかと思い始めていたのだ。

「まぁ、でも変な噂立っても嫌だからなぁ」

 その言葉が指し示すのは無論なのはの事だ。未だに想いを伝えられないとは言え、やはり想いを寄せてはいる
相手にいらぬ誤解などされたくないし、耳にもいれて欲しくは無かった。
 と、

「ユーノ、お待たせ」

 フェイトだ。ユーノと同じように仕事を終えたフェイトが、息を弾ませながらユーノの元へ走り寄っていた。
 久しぶりに見た彼女の私服はやはり所々に黒色が散りばめられている。そして思い出せばミニスカートが圧倒
的に多かった彼女だが、今回はジーンズにシャツと言ういたってラフな格好だった。
 特に何も装飾品をつけていないにも関わらず、いちゃついているカップルの片割れや酔っ払い達が振り向くく
らいには、やはり彼女は綺麗だとユーノが思う。

「大丈夫、そんなに待ってないからね。それより早く行こう。ここじゃ落ち着かないでしょ?」
「うん……そうかも」

 辺りを見渡し、自分を見る視線にユーノの背へ隠れようとするフェイトの肩に軽く触れ、向かうはユーノが
フェイトと無限書庫で別れてから予約したレストランだ。
 目的の場所へ着き、ポカンと口を開けているフェイトの視界に装飾が眩しい入り口と、その割には落ち着いた
店内が映っていた。
 普段余り外食をしないフェイトも勿論分かっているのだろう。ここは、気軽に行ける店なんかじゃ無い。

「一応、無限書庫司書長だからね。ある程度の融通は通るみたいだ」

 もしなのはを誘う時、予約が取れないのは情けないから。そう言ってユーノが照れくさそうに頬を掻いた。無
論、店を目の前にしてのやせ我慢だ。
 しかし店内に入れば、外で見た以上に圧倒されてしまうのは当然の事。それを堪えながら二人がウェイターの
案内で席に着く。
 だが非常にまずい。まずいなんて言葉では言い表せないほどに、ユーノはまずい事に気がついた。

「ユーノ……?」
「大丈夫! フェイトは黙って見てればいいから!」


408:Cursed Lily
08/08/28 23:50:53 A5o/nDiX
 まずこの店内の雰囲気。スーツだからといつものに袖を通したことに先ず後悔。
 ついでに、想像していたよりも一桁ばかり値段が高い。幸い財布の全財産を使えば払えない事は無いだろうが、
貯金を下ろさなかった事にもう一度後悔して。
 更に一番の問題は、メニューを見ても分からない事。本当にこの世に実在するのか分からない食べ物の数々。
最後に、普段碌な食事をしていなかった事に後悔した。
 眉間に皺を寄せてメニューを睨むユーノだが、感じるのは頭痛だけ。額からは大粒の汗が一筋、テーブルクロ
スに零れて染みを作った。

「―貸して」

 そして、そんなものを目の前にして待っていられる程、フェイトとて気は長くない。ユーノから強引に奪い
取ったメニューを一目確認し、全く以って意味が分からない事を理解してウェイターを呼ぶ。
 これ、とフェイトが指差したのは本日のお勧めメニューだ。こればかりはとユーノが避けていた、所謂こう言
う状況での定番メニューである。

「ごめん……フェイト……」

 全く情け無いことこの上ない。
 曖昧に笑うフェイトに、ユーノは肩を落とし深い溜息を吐く。
 もしこの場にフェイトではなくなのはだったならどうなるか。怒ると言う事は無いだろうが、呆れられてしま
うのは必至だろう。
 だがいくら後悔してももう後の祭りでしかない。幸いなのはこの場にいるのがなのはではなく、フェイトで
あった事くらい。

「そういえばさ、フェイト。話したいことあるって言ってなかったっけ?」

 気を取り直し、先ず聞くのは勤務時間中に耳にしていたその事だ。
 無限書庫や考古学で毎日頭を働かせるような事をしているからだろう。彼の元来の性格もあって、やはり一
度気になってしまった事は、最初に片付けないと落ち着かない。
 当然の如くフェイトに聞けば、瞬間フェイトの顔が何故か曇る。まるで、聞かれたくない事を聞いてしまっ
たかのように。

「どうしたの、フェイト?」

 だが、そんな筈は無い。元々、フェイトが伝えたかった事の筈だ。聞かれて困ることなど無いはずだ。あると
すれば、伝えたいけれど言いにくい事。
 そしてそれば、俯くフェイトの雰囲気から分かるように的外れなんかでは決して無い。

「もしかして、言いにくい事なのかな? 聞かない方が良い?」
「そんな事……無いけど……」

 俯くフェイトは曖昧に口ごもるだけで答えてはくれない。その様子に戸惑いを感じ、少し落ち着く為にと冷た
い水を喉に通した。
 ややあって運ばれた食事も手付かずのまま。フェイトはじっと、何かに耐えるように固く握った拳を膝の上に
置いたままだ。

「ごめん。もう聞かないからそんな顔しないで。ほらっ、せっかく来た料理冷めちゃうしさ」

 その辛そうな顔が見ていられなかった。理由は分からない。ただ、フェイトが何かを辛いと感じていることだ
けは理解できる。
 それを追い払うように、ユーノがナイフとフォークを手に取った。視線の先には本日のお勧めなのであろう料
理が皿の真ん中にちょこんと、一口で食べられるほどのサイズで乗っていた。
 フェイトに食べるよう促しながらユーノが一口。皿の上に乗っていた料理は、たったそれだけの行動で消えて
いた。


409:Cursed Lily
08/08/28 23:51:39 A5o/nDiX
「ユーノ、駄目だよ。そんなに頬張っちゃ」

 別に意識してやった事ではない。単に本当に一口で食べられてしまっただけの事。だが、別の客達の苦笑交じ
りの視線と引き換えにして、フェイトの笑みは取り戻せたようで。
 安堵はするがそれでもやはり顔は熱くなる。そして二皿目がテーブルへ出てくると同時、今度はちゃんとと料
理を切り分けようとするユーノに、フェイトが言った。

「あんまり気にしなくていいんじゃないかな。それに、こんな所より近くのファミレスの方がなのはは喜ぶと思
うよ。ヴィヴィオいるから」

 考えてみれば当然のこと。なのはがヴィヴィオを置いて一人で来るなんて考えにくい。
 すっかり抜けていた自身の考えに更に顔を紅くしながら、ユーノはフェイトの様子を注意深く伺った。
 特に気にする必要が無いほど、フェイトは笑顔だ。ユーノの言葉にも、何ら変わらない様子で笑みを返してく
れている。

「フェイト、大丈夫?」
「何が? あっ、ユーノこれ美味しいよ。早く食べないとだね」

 何かを誤魔化しているのは分かっている。だが、誤魔化さすと言う事はやはり自分には話せない事なのだろう
とユーノが内心頷いた。
 心配ではあるが、今の笑顔を無くさせてでも言葉にさせるのは気が引ける。それに、自分以外にもっとフェイ
トの力になってくれるでろう人間をユーノは数え切れぬほどに知っている。
 フェイトの家族達に、機動六課で知り合った皆、はやて達に、後なのは。特になのはなら、フェイトの心配事
くらい気付いている筈だから。

「あぁ、ほんとだ。さっきは味なんて分からなかったから」
「でしょ? せっかくなんだしもっと味わって食べなくちゃ」

 暗くなりそうな気持ちを払い、ユーノがフェイトの言葉通りの味に舌鼓を打つ。更にもう一口。やはり今まで
食べたものよりも味が良い事は確かだった。
 メインディッシュを食べた後、食後のワインを飲むフェイトはやはり慣れないのだろう。子猫がミルクを飲む
かのように少しずつ。味を確認しながら飲んでいた。

「そういえば、六課のパーティーでも飲まなかったね。はやては飲んでたけど」
「はやてはほら、好きそうだから。私は今まで飲んだことなんて無いし」

 はやてが聞いたなら怒鳴りつけてきそうな事を言いながら、二人は少しずつではあったが酒を飲み、他愛も無
い談笑を続けていた。
 八神家の面々がこの場にいたならば、もっと騒がしくなっていたのだろうか。結局六課のパーティーには現れ
なかったなのはは、やはり飲んだら酔ってしまうのか等色々と。
 ユーノは笑顔だ。仕事以外で久しぶりに心の底から楽しいと思っていたから。
 フェイトは同じように。終ぞユーノには言えなかったあの日の事を、笑顔の裏に隠しながら。



 だって言える訳が無い。目の前にしきりになのはの名を出して笑う彼がいたんだから。
 あの日、機動六課が解散した次の日だ。なのはに呼び出され聞いたのは、全く想像なんてしていなかったなの
はの今までの想い。
 今までの笑顔も温もりも何もかも。全てが、あの時嘘だったのだと教えられた。
 もうきっと、二度と彼女の前では笑えない。それくらいにはっきりと。
 親友だと、心の底から大切だと思っていたのに―。


* * *



410:Cursed Lily
08/08/28 23:54:19 A5o/nDiX
 ユーノと食事を取り分かれてから一時間弱。自室と言う、最も開放される空間へ戻ったフェイトは部屋着に着
替える気力すら起こらず、ベッドに横たわっていた。
 頭を鈍い鈍痛の様なものが巡る。飲みなれないものを飲んだからだろう。何をしても痛む頭に、恐らく酒は好
きになれないモノだと知りながら、ふと見上げた先、壁にかけられている数枚の写真に視線の動きが止まった。

「……なのは」

 呟く名は、つい最近まで親友だと思っていた彼女の名前。
 そして今は、自分に嘘を吐き続け、彼の想いを踏みにじった多分一番嫌いな女の名前。
 気持ちが悪かった。
 吐き気が治まってくれない。トイレへと向い、見よう見まねで喉奥に指を突っ込むが、一滴の胃液すら出てく
ることは無い。だからこれはきっと、あの日の事の所為なのだろう。そう思ってしまった。
 本当に気持ちが悪い。今にも泣きそうなくらいだ。
 同性にあんな感情を抱いた事は無い。自分があるのは異性だけ。だから理解なんて出来ないし、する気も起こ
りはしない。
 写真の中のなのはの笑顔は少しも色あせはしない筈なのに、この目に映るその笑顔が薄っぺらい仮面の様にし
か感じられない。
 悔しかった。腹が立った。不快だった。

「なのはが……友達になろうって言ってくれたのに」

 そして何よりも、あの時、初めて名前を呼んだ時の事を嫌なものとしか思えなくなった自分が辛かった。
 けれどもう、きっと元には戻らない。戻ろうと思えない。

「……」

 ビリビリ、と手に取った写真が破れていく。
 楽しかった、消えないはずだった思い出と一緒に消えていく。
 破れた写真の中、なのはの笑顔に涙が零れていた。まるで、自分が泣かせてしまったようで、どうして良いか
分からない。
 破れた写真の中に、彼女以外の皆がいる事さえ今はもうどうでも良くなっていて―。

「―ユーノ、もう寝ちゃったのかなぁ」

 寝る直前、無性に彼の声が聞きたくなってしまった。

411:246
08/08/28 23:56:40 A5o/nDiX
以上です。ありがとうございまいた。
今回は次回へ繋ぐユノフェイ&なのヴィヴィの今後の示唆みたいな感じでした。
次回はユノフェイ←なのはさんな部分が書けるかなぁと。
ところで、前後編くらいクロエイ書こうかなと思うのですが、クロノ君の浮気癖に定評のあるなのはエロパロで
の需要はどの程度なのでしょう……?
とりあえず、また次回です。

412:名無しさん@ピンキー
08/08/29 00:00:29 TN4YMiCR
GJでした
続きが楽しみなような、でも見たくないような……
>クロエイ
需要あるに決まってるじゃないですか!

413:名無しさん@ピンキー
08/08/29 00:05:50 SzEqqGLY
GJ!
欠けたパーツの完成が楽しみですけれど………完成図を見たいような見たくないような……。
でも欝ENDは嫌いじゃないw

414:名無しさん@ピンキー
08/08/29 00:22:15 FZND07HK
GJ!!です。
フェイトとなのはの間に何があったんだろう?


415:亜流
08/08/29 00:36:59 Y5ImOa+I
>>395
まとめお疲れ様です。
早速ですが、いくつか修正をお願いします。


・文言修正
【ユノアリSS Act.02 X-Rated】

修正前
>「もぅ………バカ!!はやてとかに聞かれでもしたらどうするのよ?!」

修正
>「もぅ………バカ!! はやてとかに聞かれでもしたらどうするのよ?!」


あと、レス区切りで発生した空白行の部分を以下のように詰めて下さい。

【こんなはずじゃなかったふたり。 ALTO View】
>「これだけ…あれば……んんっ…」
>指についたものを確認しないまま、あたしはそれをくすんだピンク色の後ろの孔の部分にあてがった。

>「はぁっ…はぁっ…はぁっ………!」
>強烈な快楽の波がある程度引いたところで、あたしの身体はすっかり脱力しきっていた。

>先輩は一呼吸おいて再びあさっての方向を見つめる。
>「でも、俺もそんなバカでクソマジメな執務官補佐を好きになってたんだ。いつの間にかな」


【ユノアリSS Act.02 X-Rated】
>こんなことを告白するのは恥ずかしいけど、これが正直な気持ち。
>「一応……前にアリサと結ばれたことを思い出しながらする、という手もあるよ?

>ブラの肩紐だけを外している手が止まり、アリサの頬はますます赤みを帯びていく。
>「あんまり……その、ジロジロ見ないでね?」

>「……えっち」
>アリサは何かを持ったままの右手で冷蔵庫の扉を閉め、開いた左手でお尻の部分を視界から遮る。

>すぐにでも暴発しそうな快楽に溺れそうなボクを見て、アリサは満足そうに笑みを浮かべた。
>「いつでもイッていいよ? 最後の仕上げに、お口の中で受け止めてあげるね」


以上です。


416:名無しさん@ピンキー
08/08/29 00:39:34 EWY2b20j
>>411
GJですぜい!!

なんという三角関係! こりゃ鬱に向かってまっしぐらですね。
なのは・フェイト・ユーノの関係にヴィヴィオがどう絡むか楽しみです。

417:名無しさん@ピンキー
08/08/29 00:46:02 92tUZaGV
>>411
GJですが、俺も続き楽しみだけど怖いw
完全になのは→フェイトなのって珍しいですね
ギャグだと結構あるけどシリアス系は。

あと、クロエイ全然需要ありますよ!
浮気も好きですが本妻もまたいいものです

418:亜流
08/08/29 01:11:22 Y5ImOa+I
ついでにチラシの裏

<以下チラ裏>
案がまとまったので作業を進めています。
明日か明後日には投下可能。
他にユノアリで書いておくSSがあるので投下間隔が少し空くかも。

419:名無しさん@ピンキー
08/08/29 01:42:04 hKoFjjpv
>>411
こりゃ怖いが続きが楽しみだ。

420:名無しさん@ピンキー
08/08/29 01:42:23 uIF/uAMY
>>411
GJGJGJ!
いいですねー、やっぱなのは→フェイトは最高ですよw
毎度246氏のssはツボのど真ん中に直撃して困る
次も楽しみに待ってますね!

>>417
確かにフェイトそんがなのはさんを嫌ってるのは新鮮だなw

421:野狗 ◆gaqfQ/QUaU
08/08/29 06:56:41 9tF+hNaE
>>395
いつもありがとうございます。
タイトルは「教えましょう」でお願いします。
お手数おかけします。

422:名無しさん@ピンキー
08/08/29 13:08:15 oBI7a1um
>>420
しかし二次だと確かにフェイト→なのはが多いが、本編中だとなのは→フェイトであることの方が多い気がする
フェイトは意外と交友範囲が広く、言われてるほどなのは依存って感じはしないんだよな

423:名無しさん@ピンキー
08/08/29 14:44:34 MEFNe2gS
>>422
俺には
なのは←→フェイト
に見える

424:名無しさん@ピンキー
08/08/29 15:02:59 PfstCt5h
なのは←オレ→フェイト

425:名無しさん@ピンキー
08/08/29 15:05:48 fb5mYg7H
両腕を引っ張られて引きちぎられるんですね
分かります。

426:名無しさん@ピンキー
08/08/29 15:07:58 HNerfIzz
矢印がその状態だと、一方的な思いを二人に向けてるだけですね。

427:名無しさん@ピンキー
08/08/29 15:11:48 8iYbreCg
>>422
確かにどっちかというとなのはがフェイトに依存してるかもねー
フェイトが死んでプレシア化するなのはとかも見たいぜ
王道的になのはが死んでフェイトがプレシア化するのも見たいけど

428:名無しさん@ピンキー
08/08/29 15:51:07 ZPxNRM92
ここで過去にユーノが死んでプレシア化するなのはって作品があったような記憶があるんだが

429:名無しさん@ピンキー
08/08/29 16:17:06 blXX/XZQ
フェイトはヤンデレるの多くね?

まぁ俺のフェイトそんは百合ん百合んでなのはさんは小悪魔だがな


430:名無しさん@ピンキー
08/08/29 16:20:55 uIF/uAMY
>>427
いいねー、俺もなのはさんが死んでプレシア化するフェイトそんはぜひ読みたいw
誰かが書いてくれる事を祈る

431:名無しさん@ピンキー
08/08/29 16:37:30 nG8KZCJh
しかし、テスタロッサ家は何か憑かれてるな・・・・
母といい娘といい、被後見人の皆様はそうでないことを願うしかないが

しかし、なのはのプロジェクトF的なものなんて想像できないな人格が丸くなるのか?


432:名無しさん@ピンキー
08/08/29 17:09:53 6eaEufmn
>>431
つ【リリカルふぇいと】

433:名無しさん@ピンキー
08/08/29 17:12:57 PfstCt5h
丸くなってNeeeeeeeeeeeeeeeeee

434:名無しさん@ピンキー
08/08/29 17:13:24 3Nuc3ToV
何故だろうか、なのはが死んでプレシア化するフェイトそんは想像付くのに
逆が想像付かないのは。キャラ固有の倫理観の違いか、これが。

>>431
つ リリカルフェイトのなのはそん 真の冥王様が出来上がってますよ

435:名無しさん@ピンキー
08/08/29 17:31:43 nG8KZCJh
リリカルふぇいとをさっと読んできた・・・

なのはそんヤバ過ぎるwwwアルフが可哀そうすぎるww色々とキャラが崩壊してるな
クロノがショタコンとかだいぶカオスでした

436:名無しさん@ピンキー
08/08/29 17:38:01 PfstCt5h
でも最近じゃ一番オモロイよな。

437:名無しさん@ピンキー
08/08/29 17:38:34 mMnzh05z
>>434
良くも悪くも、フェイトそんは思い詰めたら一直線で視野が狭くなるからじゃね?
逆になのはさんは激怒しててもVSクアットロの時みたいに冷静だろうし。
仮にそれぞれが『殺された』場合のシチュでも、フェイトそんと違ってなのはさんが犯人をヤるイメージが沸かない。
非殺傷設定の全力全壊・SLBexフルバーストで消し飛ばす光景はすぐ思い浮かぶがw

438:名無しさん@ピンキー
08/08/29 17:53:54 Q1VkviMe
なのはさんは、クールに確実に容赦ない殲滅という名の虐殺が信条なはず!

おや?誰か来たようd

439:名無しさん@ピンキー
08/08/29 17:55:39 4TZE+tOX
ティアナが執務官試験に合格したのがいつなのか、
特定できるような情報はSSXで出てた?
NanohaWikiではそういう情報は載ってないみたいだが。

440:名無しさん@ピンキー
08/08/29 18:00:44 8L59Tn/I
>>439
新暦77年頭くらい。

441:名無しさん@ピンキー
08/08/29 18:02:38 4TZE+tOX
>>440
ギャアァァァァァァ
今のうちに聞いといてよかった……あんがと

442:名無しさん@ピンキー
08/08/29 19:32:16 8iYbreCg
>>437
そういうなのはさんのイメージとかって見た人一人一人違うと思うぜ
各々好きななのはさんで妄想すればいい

443:名無しさん@ピンキー
08/08/29 20:01:06 vlrsiEs4
SSにするなら書き手の腕の見せ所だな

444:名無しさん@ピンキー
08/08/29 20:58:48 fb5mYg7H
なのはやフェイトはそれぞれの獲物でヤるってイメージだけど
はやては謀殺ってイメージ。

445:名無しさん@ピンキー
08/08/29 21:11:21 2bu7HzV8
はやては、万が一ヴィータが被害者の時だけは我を忘れて殺りにいってほしい。

446:名無しさん@ピンキー
08/08/29 21:49:06 TWfcnyc3
何故かはやての場合はヴィータに限らず、家族がそういう目にあったら、
どんな手も辞さず報復するイメージがある。

447:名無しさん@ピンキー
08/08/29 21:59:11 XSXbs4kp
はやてが家族殺られたら→我は忘れないけど報復は忘れない
フェイトがなのはさんやエリキャロだったら→責任感じて自失状態
なのはがフェイトさんだったら→空元気で無理し続けて傷癒えぬままの一生
なのはさんがヴィヴィオだったら→とことん自分を追い詰めていざプレシアママンの道へ
かなぁ……。
一番自分自身を追い詰めるのはなのはさんだと思う。
フェイトさんは逆に自分自身が経験してる事だから、プレシアママンにはならないしなれないからどうする事も出来なくなりそう。


448:名無しさん@ピンキー
08/08/29 21:59:23 RbSafNpm
直接的ではなく社会的に抹殺しそうだ

449:名無しさん@ピンキー
08/08/29 22:06:17 mH0iCC5n
変な噂流したもんでユーノに社会的に抹殺されそうになった
漫画なら見たことがある

450:名無しさん@ピンキー
08/08/29 22:07:36 uIF/uAMY
イメージっつう時点で一人一人感じ方違うんだから異なるのは当たり前なんだし
いちいち自分のイメージを書き連ねてくのはどうかと……

451:名無しさん@ピンキー
08/08/29 22:19:09 2bu7HzV8
しかし、世界転覆させようとした犯罪者すら、数年後には更正したと見なされ社会復帰できるこの世界で、
社会的抹殺ってどこまでされるんだろ。

452:名無しさん@ピンキー
08/08/29 22:28:02 fb5mYg7H
ブラックリストにでも登録されるんでない?
特定の施設は利用できない入れないとか。

ちょっと違うか。

453:名無しさん@ピンキー
08/08/29 22:35:08 TN4YMiCR
中学2年生の頃のノートを全次元世界にむけて公開される

真面目に考えると雇用禁止とかかね?

454:名無しさん@ピンキー
08/08/29 22:48:56 grV+5t11
社会保障番号とか、銀行口座とかを
すべて書き換えられるとか。

455:名無しさん@ピンキー
08/08/29 22:53:36 q6tiGqVE
背中に「私はロリコンです」と入れ墨を彫られるとか。

456:名無しさん@ピンキー
08/08/29 22:53:57 ugLiiiyS
実は一部の法の保護が受けられない、とか。
重態にならない限り怪我させても罪にならない、みたいなのだと結構きついと思われ

457:名無しさん@ピンキー
08/08/29 23:27:49 XJyXZfeQ
>>453
黒歴史ノート公開とかなんという鬼畜

458:名無しさん@ピンキー
08/08/29 23:32:13 CJpsrzr8
>>447
昔復讐モノっぽく書いたこともありますが、自分のイメージもそんな感じでした。
隊長三人娘は、身内に不幸があったら責任感じて内に潰れそうなイメージがありますね。
作家さんごとにイメージは違うけど、長編などでキャラの行動が一貫したイメージに基づいて書かれてるものが読み易い感じがします。


459:名無しさん@ピンキー
08/08/29 23:44:22 7r3LkV8R
ミッドチルダには伝統的な犯罪者の減免法があった(裏)そうそれは性的な無料奉仕
今日はそんな毎月何日かそんな日があるナンバースの一人を紹介しよう

秘密のクラブ

ぬらりとした暗闇が広がっているその中になまめかしいほどの白い裸体が浮かんでいた
そのふくらみは未だまだ幼く眼帯の少女は抑えきれない羞恥にうつむいていた
「あ…」
男がやってきた、ここのところ連日チンクの減免に協力してくれている人物だ、政府の高官らしい
彼のプレイはいささか特殊だったゆえに効果も絶大、ナカジマ家の為にも妹達の為にも自分も協力的であるのが望ましい…はずだ

「おお…きょうも美しいなチンク君…お人形のようだ…はは、ほうぅら、今日はこんなプレゼントを持ってきてあげたんだよ…」
「…あ、ありがとうございま…ぁ…っあ…ぅ」

男は優しく抱擁したかのように見えた、チンクは礼を言おうとして身悶えした
男の手がチンクのお尻に沿い揉んだ
「柔らかいお尻だ…マシュマロのようだね…」
次いでマスクを被った中年の男は手に持ったうずらの卵大のローターをチンクのアナルにあてると
そのまま差し込んだのだ

つぶり
「そんっな…あぅ…ふぁっ…あぅ…はっ…あっ…あああ…」
ぬずずずう

そのまま奥まで押し込まれる、腸を逆に撫で上げられるような感覚に男の胸に手を当てて歯を食いしばるチンク

「どれ」

カチっ ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ

「っひっい!?うぁあああああああああ!!」

ビクリとチンクは白い髪を振りエビのように床で身悶えた、スイッチを止めると男は満足そうに頷いた
白い髪の少女はハァハァと犬のように息をつき唾液が床を舐めた

「ふむふむ感度は良好だな…さぁ立ちなさい夜のお散歩の時間だ」

「はぁあ…ぁ…は、は…い…」


素肌の上にコートを羽織り、よろよろと立ち上がった、今夜は何をさせられるのだろうか
そう思うと知らずチンクの体の奥に熱いものが灯るのを感じた瞳に被虐の色が僅かに瞬いた
男はそれを見逃さなかった

首輪をつけられ縄で引かれた

チンクは思った、これは罰、罰なのだ…

促されて街頭の瞬く深夜の街に踏み出した                      
                                        エロパロ的にはこんなんで?











460:名無しさん@ピンキー
08/08/29 23:48:25 SfxZs6/W
>>459速く続きを書く作業に戻るんだ!

461:GJ
08/08/29 23:49:18 2bu7HzV8
>>459
さあ、ディード編とセイン編を書く作業に戻るんだ。

462:名無しさん@ピンキー
08/08/29 23:50:17 v+ubL7VP
>>459
    _∩
( ゚∀゚)彡 MOTTO!MOTTO!
 ⊂彡

463:名無しさん@ピンキー
08/08/29 23:56:12 7r3LkV8R
ディ…ディードは…目隠ししておっぱいで奉仕の刑、むせかえるほどの大量の白濁を喉の奥に流しこまれる

セイン、セインはえーと…能力的に壁を境に別々の部屋の男達に上半身と下半身を犯される刑…

464:名無しさん@ピンキー
08/08/29 23:58:42 CJpsrzr8
>>459
どうかクア姉を宜しくお願いします……

465:名無しさん@ピンキー
08/08/30 00:03:16 WE2OXCJX
>>463
ありがとうございます。これで今夜は安らかに眠れそうです。

466:名無しさん@ピンキー
08/08/30 00:10:13 yFo0Thna
ノーヴェあたりは、夜の公園で輪姦露出プレイとかw
あと、目隠ししたまま、男子公衆トイレに手錠で拘束して放置もいいと思うんだ。



467:名無しさん@ピンキー
08/08/30 01:11:12 l6duhBkT
ディエチは俺の所に永久就職でおk?

468:名無しさん@ピンキー
08/08/30 01:55:59 SnKlY2Ga
んじゃ、ウェンディは俺の
性欲処理機兼子孫繁殖装置になってもらうわ

469:名無しさん@ピンキー
08/08/30 02:18:36 Da7gtb9n
なんという産む機械
じゃあセッテは俺がもらうわ

470:名無しさん@ピンキー
08/08/30 04:14:52 fQTtnz74
ならばオットーは俺の専属お世話係り(嫁ともいう)になってもらう。

471:名無しさん@ピンキー
08/08/30 04:21:48 Or1SNf6Q
チンクは俺の娘でFA?

472:名無しさん@ピンキー
08/08/30 09:53:36 IlIAyblq
なんかエロなしのSS用の板ができたらしいが、移動する人とか出るのかな?

創作発表 URLリンク(namidame.2ch.net)

473:名無しさん@ピンキー
08/08/30 10:30:58 VwNJIwfc
そもそもこのスレはエロパロといえどもエロオンリーじゃないわけだから、移動する必要もないし。
たまに変なのも湧くけどさ、なのはエロパロスレはこのままでいいんじゃない?

474:名無しさん@ピンキー
08/08/30 10:38:07 F8vreNl7
>>473
同意
エロありだろうが、なしだろうが楽しめれば問題なしだろ

475:名無しさん@ピンキー
08/08/30 11:36:26 aO/zjSiC
まぁ向こうにリリなののができたら考える
現状だと放送も終ってるし二手に分かれたら過疎りそうだけどね
昔に比べるとやっぱ減ったよね投下

476:名無しさん@ピンキー
08/08/30 11:51:45 fvRKwa3m
>>475
減ったか?>投下
落ち着いたとは思うけど
一日に何作も投下があるほうが異常だったんだから

477:名無しさん@ピンキー
08/08/30 11:56:02 JICSeX+z
>>475
そりゃ本編終わってから結構経つんだから仕方ない
劇場版公開したらまた増えるかもな

478:名無しさん@ピンキー
08/08/30 12:07:29 oM+1rAej
>>473
今までもエロ、非エロともにいい具合に共存してきたんだ。今更分断する必要もないんでないかい?
今、ヴァイスが主役の非エロSSを書いてる。職人さんの迷惑にならない程度に投下したいな。

479:名無しさん@ピンキー
08/08/30 12:58:49 F0/FV6tU
>>476
だがエロパロ板で「普通」っつったら……数ヶ月・数年単位で1スレ使い切るペースだぜ?
このスレも最初期はまさにそうだったけどよ。ここもいつかはまた過疎るんだろうな

480:名無しさん@ピンキー
08/08/30 13:08:55 l6duhBkT
>>479
盛者必衰だからな、しょうがない
でもリリカルシリーズが発表される限りは栄え続けるんじゃない?

481:B・A
08/08/30 14:59:08 28uAuMX+
規制が未だ解除されていないので、ネカフェから投下します。



注意事項
・B・A版エリルー時空のお話
・主人公はヴィヴィオ
・オリキャラが出ます
・非エロでバトルです
・sts本編から11年後の物語
・フェイトが天寿を全うしております
・その他かなりの捏造多し(特に古代ベルカや聖王に関して)
・タイトルは「Das Erbe zur Zukunft」 意味:未来への遺産
・SSXの内容は風の噂程度にしか知りません(←もう持っている人に対して)
・作中においてヴィヴィオの言葉と行動に矛盾が生じてしまいますが、あくまで本人の気持ちの問題ということにしてください
・前提作品『Ritter von Lutecia』
      『Nach dem eines Speerritters』

482:Das Erbe zur Zukunft①
08/08/30 15:00:12 28uAuMX+
第28話 「SECRET AMBITION」



少女には目指すべき目標があった。
幼き日に、孤独な暗闇から救い出してくれた母のようになりたい。それは裏を返せば、彼女の娘であることに対する免罪符を求めているのと同じであった。
だから掲げた理想も目指す正義も使用する魔法も、全てが母親の真似でしかなかった。
一度はそれに挫けそうになったこともあった。
自分がしていることは母親の真似でしかなくて、最初から開拓されている道を歩いているだけなのではないのかと悩んだこともあった。
そして、それは事実その通りであった。もしもこのまま時が進めば、自分は当然のように本局教導隊に入り、
多くの魔導師達に戦技を教える日々を送ることになっていただろう。
だが、その道中で感じ、得たものは紛れもない自分自身の内から出た感情であった。
きっかけは憧れだった、
始まりは憧憬だった。
何もかもが母親と同じで、けれど友を救いたいと思う気持ちだけは自分自身の誇りだった。
これだけは、誰の言葉にも左右されない、自分の内側に問いかけて見つけ出した答えなのだから。
だから、例え立ち塞がる敵がどれ程強大であっても躊躇しない。胸に刻んだ青臭い信念を、エゴイスティックなまでに貫き通す。
手にした力は、思いを貫く魔法の力。誰かの悲しみを撃ち抜く力。
その思いを胸に、ヴィヴィオは大空を力強く羽ばたいた。
自分という敵を打ち倒し、闇に囚われた友を救うために。

「アクセルシューター・・・・・・シュートっ!」

重い駆動音と共にカートリッジが炸裂し、三十二発の虹色の球体が不規則な軌道を描きながら聖王ヴィヴィオへと迫る。
誘導操作弾であるという利点を最大限に活かしたその軌道は、純粋に目標を追尾するものから相手の動きを先回りするもの、かく乱のためにわざとジグザクに飛ぶものなど、
複数の軌道を重ねることでさながらサーカスのアクロバットのように青空を縦横無尽に駆け回り、逃げ回る聖王ヴィヴィオと激しいドッグファイトを展開する。

「王の背中を舞うとは、不敬な弾だ!」

振り返りざまに聖王ヴィヴィオは砲撃を放ち、追尾するシューターを打ち消さんとする。すかさず、ヴィヴィオは思念制御でシューターを誘導、
まるで蛇が木の枝に絡みつくように極太の砲撃を避け、動きの止まった聖王ヴィヴィオの体に次々と着弾する。
立て続けに命中したシューターは一発だけでも鋼の装甲に穴を穿つ程の威力を秘めており、非殺傷設定であったとしても当たれば激しい苦痛が全身を襲う。
だが、朦々と立ち上がる白煙を睨みつけながらヴィヴィオは更にカートリッジをロードし、駄目押しとばかりにディバインバスターのチャージを開始した。

「ディバイン・・・・・・」

「見せてやろう・・・・・これが、王の戦いだ!」

「・・・・・バスタァァァッ!!」

白煙を振り払って姿を現した無傷の聖王ヴィヴィオに虹色の砲撃が直撃し、灰色の魔力光が落葉のように散っていく。
やはりと言うべきか、彼女の聖王の鎧は堅牢であった。精神を乗っ取られたことで魔力の性質まで変化してしまったのか、
その強固さはヴィヴィオのそれを遙かに上回っており、戦車をも容易く粉砕する砲撃を直に受けても僅かに仰け反らせる程の効果しか与えられない。

「この程度では、王の歩みは止まらぬ」

戦況を見守るシグナム達が驚愕の声を漏らす。
聖王ヴィヴィオはディバインバスターの直撃を受けてなお、前進を始めたのである。
ヴィヴィオが必死でリンカーコアを活性化させて魔力を注ぎ込んでも、その攻撃は聖王ヴィヴィオの肉体が纏う灰色の光に阻まれ、掠り傷一つ負わせることができない。


483:Das Erbe zur Zukunft②
08/08/30 15:00:59 28uAuMX+
「王とは媚びず、己が所業を省みぬものだ。受けて返す、それが我が王道よ!」

「奇遇だね、私も同じだ!」

光の奔流を割って繰り出された聖王ヴィヴィオの拳をラウンドシールドで受け流し、即座にアクセルフィンを羽ばたかせて離脱する、
すかさず後を追う聖王ヴィヴィオではあったが、その眼前にはお礼とばかりにばら撒かれたディバインシューターの群れが待ち構えていた。
アクセルシューターを習得しているヴィヴィオにとってその魔法は既に下位ランクに属するのだが、無詠唱でカートリッジを消費せずに発動でき、
尚且つコントロールのためにこちらの動きを止める必要がないという利点がある。直撃を食らっても僅かに怯む程度である聖王ヴィヴィオを前にして
その利点は微々たるものだが、それでも距離を取るには十分な隙となった。

「デバイスがない分、撃ち合いでは不利か・・・・・・・・・なかなか粘るではないか、私よ。そんなにこの娘を助け出したいか?」

「当然だ。セリカちゃんは、私の友達だ」

「言い訳にしか聞こえぬ」

「他に理由なんかない。友達っていうのはそういうものだ」

「共感できんな」

「戦う理由なんてそれだけで十分だ。聖王、お前は何のために戦う!?」

「ベルカの・・・・いや、我が国のためだ」

「その先には何がある?」

「永遠の富と繁栄」

「平和じゃないんだね」

「我が王道の綻びに気づけたか、私よ」

先程までのやり取りが嘘のように静まり返り、空に静寂が戻ってくる。

「ないんだね、終わりが・・・・・・・」

世界は一つではない。次元という海を隔てて無数の世界が混在しており、未だ確認されていない世界も無数に存在する。
聖王が掲げた王道は、確かに全てを支配することができれば争いはなくなるかもしれない。だが、肝心の支配すべき世界に果てなどというものは存在しない。
無限に広がり続ける次元世界に終わりはなく、祖国に恵みをもたらす聖王の戦いが終わることはない。そして、だからこそ彼女の国は繁栄を続けることができたのである。

「一つの世界に終始すれば、或いは見つけられたかもしれぬ。だが、止まってしまえば衰えるのが世の理だ。滅びぬためには戦い続けるしかない。
果てなき永遠の闘争が唯一救いの道であると悟った聖王の血族は、そのために自ら戦地に赴き、誰よりも濃く鮮血に染まることを選択した」

平穏という名のぬるま湯に浸かってしまえば、その先に待っているのは緩やかな衰退だけ。さながらコップの水が水蒸気となって蒸発してしまうかのように
緩慢な滅びの坂道を転がっていく。己の国を永遠に存続させることを願う聖王にとって、それはどうあっても受け入れ難い真理であった。
故に、彼女達の一族は戦い続けたのである。平和に甘えず、平穏をかなぐり捨て、自ら混沌を求め、戦争という一つの経済の下に自国を置くことを考えだした。
そして、そこまでしてなおベルカは滅んだ。

484:Das Erbe zur Zukunft③
08/08/30 15:01:35 28uAuMX+
「私よ、お前の言う通り私は一人であった。常に最前線で戦い、国のために全てを投げ出した。友と語らう舌も夫と見つめ合う瞳も持たなかった。
だが後悔などしておらぬよ。ベルカは私に夢を見せてくれた。我が統治の下で、繁栄を謳歌する民の笑顔は何よりも勝る至高の悦楽であった。
だから私は戦おうと決めた。どれだけ多くの屍を積み重ねようとも、その微笑みだけは絶やしてはならぬと」

「矛盾している。国民のためと言うなら、どうして国民に犠牲を強いる!?」

「その痛みを忘れぬために、我々は民の先陣を切るのだ」

「私には理解できないな。誰かを傷つけてまで幸せになりたいなんて思えない」

「ならば問い直そう。私よ、我が王道に代わるものをお前は保持しているか? 私を否定するには、その代わりとなるものを持つことが最低条件だ」

聖王ヴィヴィオに問われ、ヴィヴィオは僅かに逡巡した後にレイジングハートの先端を彼女に向ける。それが、今のヴィヴィオの偽らざる本心であった。

「答えはなしか」

「正義と政治に王道なしだ。今はなくても、いつか見つけ出す」

「保留というわけか」

「私にできることなんて、砲撃を撃つことくらいだ。エリオお兄ちゃんみたいに速く走れないし、ルーお姉ちゃんやキャロお姉ちゃんみたいに召喚獣の使役もできない。
クロスレンジは得意じゃないし、戦術なんて全然思いつかない。ううん、それだけじゃない。私は自分の周りのことで手一杯だ。
困っている人を助けたいと思っていても、セリカちゃんみたいに世界中の人を救いたいとは思わないし、あなたみたいに自分を犠牲にしてまで国に尽くしたいとも思わない。
ママみたいに最後まで戦える保障もどこにもない。私は死にたくないし戦いたくもない。それでも・・・・・・・・・」

毅然と見上げた視線は強く、その表情は二十歳にも満たない子どもとは思えぬ程引き締まっていた。
自分の口にしていることがただのわがままであるとわかっていながら、それでもヴィヴィオは目を背けずにきちんと自分と向かい合って胸の内を言葉へと変える。

「それでも、私の力で助けられる人がいるのなら、私は戦う」

「目の前で苦しむ人を救うためにか?」

「それしかできることがない」

「お前の目の届かぬところで苦しむ人間は?」

「私じゃ救えない」

「見捨てるのか?」

「私一人じゃ救えない。けれど、私は一人じゃない。私にできないことはその人がしてくれる。私よりも速く走れる人、魔法の上手い人、力持ちの人、頭のいい人、
そんな人がたくさんいる。だから、私はその人達にできないことをする。私は世界を救うんじゃない、そこに住む人を助けるんだ。それが私の戦いだ」

今日という日まで、ヴィヴィオは多くの人間の生き様を目にしてきた。
愛する者のために全てを投げ出した者がいた。
大切な家族のために己の心を殺した者がいた。
胸に描いた理想のために命を削った者がいた。
目指した夢を叶えた者がいた。
自分の正義に押し潰された者がいた。
様々な価値観が生まれては消え、我を通すこともままならない生き難い社会。それが今のミッドチルダだ。だが、だからこそ生きていける。
多くの思いが交錯するから争いが生まれるのだとしても、その争いの中で芽吹く繋がりは何よりも大切でかけがえのないものなのだから。
だからヴィヴィオは、ただ純粋に助けたいという願いのみを糧に魔法の力を振るい続ける。差し伸べた手を掴んでくれたかどうかという結果よりも、
手を差し伸べるという行為自体が何よりも尊いのだから。

485:Das Erbe zur Zukunft④
08/08/30 15:02:06 28uAuMX+
「私はみんな大好きだ。だから、私はみんなと生きていく!」

例えそれがもう一人の自分を否定することになろうとも、人間の持つ可能性に賭けたかった。
かつて自分を命懸けで救ってくれた人の涙が、生きとし生きる全ての生物に宿っていると信じたいから。

「お前は・・・・・騎士なのだな」

「そしてお前は王だ」

「王が戦わずして、誰が国を守る?」

「世界を守るのは王じゃない、人だ」

「何故、そこまで信じられる?」

「絶望する理由がないだけだ」

「その言葉、欠片でもこの娘に伝えてやればどうだ?」

「そのための言葉だ。私は最初から、お前なんかと戦っていない!」

虚空から出現した虹色の糸が聖王ヴィヴィオの四肢に絡みつき、身動きが取れぬように拘束する。
同時に、レイジングハートのカートリッジ機構が駆動して高純度の魔力がデバイス内の回路を循環し、槍の先端に虹色の光が凝縮していく。

「私が戦っているのは、セリカちゃんだけだ! お前は邪魔をするなぁっ!!」

叫びと共にエクセリオンバスターが放射され、聖王ヴィヴィオの姿が虹色の奔流に呑み込まれる。
だが、次の瞬間にはバインドを引き千切った聖王ヴィヴィオがカイゼル・ファルベを翼のように押し広げながらヴィヴィオの砲撃を二つに割り、
海面から飛び出たトビウオのように獲物目がけて滑空する。

「それでこそ私だ。私は誰にも理解されず、孤独の中で戦う姿こそよく似合う」

「言葉にすればわかりあえるさ。でなきゃ、人は一人じゃ生まれてこない。みんなと分かち合うために、人は孤独を恐れるんだ」

繰り出された拳をラウンドシールドで受け流し、擦れ違い様にショートバスターを連射して牽制、即座にアクセルフィンで横滑りして用意しておいた
ディバインシューターを展開する。敢えてコントロールを度外視して弾数のみを優先したそれは瞬く間に視界を埋め尽くし、海流のように蠢きながら前進していく。

「その孤独が、多様な価値観が全てを滅ぼす。わからぬ訳ではないだろう!」

極太の砲撃がディバインシューターの壁を焼き払い、滑空した聖王ヴィヴィオの蹴りが容赦なくヴィヴィオの体を捉える。
瞬間、ヴィヴィオもまたレイジングハートを振るい、ショートバスターを発射する。打撃と砲撃がそれぞれの聖王の鎧とぶつかり、
飛び散った火花を垣間見る暇さえ与えずに両者の体は独楽のように回転しながら宙を舞った。

「孤独が争いを生むのなら、それを拭う幸を王が与えれば良い。王とはそのための機械、国を動かす心臓だ! 末端でしかない騎士が敵うと思うな、私よ!」

「王様がそんなんだから、争いはなくならないんだ。言葉にすれば分かり合える、思いをぶつければ分かり合える。そのために人は生きているんだ!」

聖王ヴィヴィオが放った魔力弾の雨を、ヴィヴィオは乱射したシューターで迎撃し、再び砲撃のチャージを開始する。
その隙を突いて聖王ヴィヴィオは拳を握り、追い縋ろうとするディバインシューターを蹴散らしてヴィヴィオへと迫る。

486:Das Erbe zur Zukunft⑤
08/08/30 15:02:45 28uAuMX+
「ディバイン・・・・・・」

「はああぁぁぁぁっ・・・・」

「・・・バスタアァァァッ!!」

拳が届く寸前でチャージを終えたヴィヴィオがディバインバスターを発射し、轟音を上げながら虹色の閃光が迫りくる聖王ヴィヴィオを飲み込まんと大気を焦がす。
攻撃に集中している聖王ヴィヴィオに回避の術はなく、直撃を受けて仰け反った隙にバインドを展開、SLBのチャージタイムを稼ぎつつ一気に距離を取るのが
ヴィヴィオの狙いだ。だが、攻撃が間に合わないことを事前に気づいていた聖王ヴィヴィオは即座に用意しておいた砲撃を放ち、威力の相殺を図る。

「なるほど、この娘の記憶の通りだ。お前はお前の母とよく似ている。どれだけ苦しんでも絶望せず、屈しようとしない。諦めるということを知らない。
だが、それがこの娘を追い詰めた。お前の母に憧れ、その強さを目指し、そして手が届かなかったと知るとこの様だ」

光の奔流を割って飛び出した拳が、ヴィヴィオの聖王の鎧とぶつかって鈍い音を響かせる。思わず耳を塞ぎたくなるその音は、人間の骨が砕ける音だ。
しかもそれは一度だけではなく、強固な聖王の鎧を半ば強引に突破せんと力を込める度に、不快な旋律と化して断続的に空に響き渡るのだ。
また、砲撃の威力を殺し切れなかったのは、聖王ヴィヴィオの右腕に深い裂傷が起きており、そこから痛々しいまでに真っ赤な血が流れ落ちているのを見て取れた。

「セリカちゃん!?」

「考えることを放棄し、自分であることを拒絶した挙句、何の見返りも求めずに自己犠牲だ。駒として使い潰す以外の価値など、この娘には存在しない」

「止めろ・・・・・それ以上、セリカちゃんを傷つけるな!」

「喜べ、セリカ・クロスロード。お前は遂に、成りたかった英雄になれるのだ。お前は死して私に勝利をもたらし、私は目の前の私の体へと移る。
生前の私と同じ遺伝子だ、きっとよく馴染むであろうな。その喜びと共に、お前のことを褒めてつかわそう。それが私の与えたお前の役目だ」

灰色の虹がヴィヴィオの聖王の鎧を徐々に侵食し、ゆっくりと拳が不可視の壁を突き抜けていく。それは同時に、彼女の右腕がどんどん壊れていっているのと同義であった。

「自分を取り戻して! 聖王に好き勝手させるなんて、セリカちゃんらしくないよ! このままじゃ、セリカちゃんが死んじゃう!」

「無駄だ、私の言葉はこいつに届かぬ!」

「死んだらそこで終わりなんだよ! もう戦えないんだよ! みんなの笑顔を守りたかったんじゃないの!? ここで死んだら、
今日まで頑張ってきたこと全部が無意味になるんだよ! 思い出して、どうしてここに立っているのかを、何故この道を選んだのかを! 
例えその結果が間違っていても、みんなから否定されたとしても、その道を選んだからここにいるんだってことを忘れないで! 
どうして戦いたいと思ったのか、その気持ちを否定しないで!」

直前まで迫った拳は実際の大きさよりも遙かに大きく見え、触れた先から砕けていってしまうような凶悪な気配を纏っていた。
その死の具現ともいえる拳を前にして、ヴィヴィオは視線を逸らさずに聖王ヴィヴィオの内に沈んでいるセリカに向けて語りかける。

「私だって悩んだ。自分がやってしまったことに後悔して、躓いて、それでもみんなから笑われるような小さな理由に縋ってここまで来た。
小さい頃の私は弱くて泣き虫で、転んでも一人じゃ起きられなくて、みんなにもたくさん迷惑かけて、私なんかいない方が良いんだって思ったこともあって
・・・・・・・それでも、私のことを守るって抱きしめてくれた人がいて、その人に憧れたから・・・・・・その憧れが私を私にしれくれるから、
私はここに立っている。それが正しいのかどうかはわからない。けれど、その気持ちに間違いがないことだけはわかる。憧れることが間違いだなんて、
誰にも言わせない。思い出して、セリカちゃんがみんなの笑顔を守りたいって思った理由を、高町なのはに憧れた訳を! 自分を否定してでも戦おうって決めた原点を
・・・・・・・・胸に宿った、熱い彗星のような鼓動を・・・・・・・その憧れだけは、忘れたりしないで・・・・・・セリカちゃん!」

虹の鎧が砕け、死の拳が唸りを上げる。
その戦いを見守っていた人間の誰もが目を背け、ヴィヴィオ自身ですらここで終わりなのかという諦観の念を抱く。だが、その一撃が頭蓋を砕くことはなかった。
まるで場違いな静寂が空に戻ってくる。
目の前の出来事にヴィヴィオが息を呑み、聖王ヴィヴィオもまた驚愕に眉をひそめる。その視線の先には、突然動かなくなった聖王ヴィヴィオの右腕があった。


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