09/01/23 16:25:17 RN66XaKR
「アルテア兄さんになんて言えばいいんだろう……抜け駆けとか絶対言われるよな……」
怒られる生徒みたいな表情をしたクレイ。
いや別に悪いことをしたって訳じゃないんだけど、この前のことが下敷きになってる以上、確かに微妙だよねえ。
「パステルの気持ちも考えずに! とかさ。自分のこと棚に上げて」
まだ何も言われてないのに、アルテアのコメントまで想像して落ち込まなくてもいいと思うんですけど。
「アルテア、いつドーマに戻ってくるの?」
「今週中には帰ってくるらしいよ。顔を見せずに入れ違いって訳には……いかないだろうな」
「でしょうね」
皆にもう来週に帰るって言っちゃったし。
今から出発を早めるなんて理由がないし。
第一そ知らぬ顔して逃げるように帰るには、クレイは正直すぎるところがあるしねえ。
そもそもわたし、一応当事者のはずなんだけどね。ほとんど他人事のように聞いてる状態。
本気で悩んでるクレイがあんまり面白いから、ついつい……というよりも。
あんまり鈍感だから、ちょっとこのまま放っておいちゃおうと思って。
だってね、クレイってばわたしの気持ちなんて全然わかってないんだもん。
俺の片思いだの暴走しただのアルテア兄さんに勝てるもんかだのと言うばっかりで、なぁんにも聞いてくれないんだよ?
今聞いてくれたらわたし、クレイがさぞかし喜ぶだろう事を言ってあげられるのになあ。
さて、クレイはアルテアに会って、なんて言うつもりなんだろう。
なんだかちょっと意地悪な気分。それがまた楽しいし。
なるほど、アルテアやイムサイがクレイをいじめて遊んでるのはこういうことだったのね。くふふ。
隣にいるのは困り果てたハンサム。
わたしは不幸なクレイをさらに不幸にしそうなことを考えながら、こっそり含み笑いした。
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完結です。