08/08/19 04:50:02 FU8X/mcR
―8月某日
「社長!社長!」
プレハブ小屋の一室、工具楽屋のオフィスである。
この日は現場の仕事が入っていなかった為、工具楽我聞は書類仕事に精をだしていた―はずであった。
ところが、彼の秘所である國生陽菜が判を貰おうとしたところ、我聞は社長椅子に腰掛けたままうとうととしているではないか。
陽菜は彼の肩に手を掛けると、ゆさゆさと揺さぶり起こそうとする。
「…ん……あ、國生さん」
「『あ、國生さん』じゃありません!社長、こちらに判をお願いします!」
「ああ、すまない」
バン!と卓上に書類を叩きつける陽菜。
その剣幕におののきながらも軽く目を通し判を押すと、自分の席へと戻る陽菜の後姿を眼を擦りながら眺める。
(む…いかんいかん、仕事中に居眠りなど)
気合いを入れなおす為に己の頬を叩くと、デスクに残っている書類に目を通し始めた。
「はるるん、そんなにカリカリしなくても…」
「カリカリなんてしてません!」
技術部長である森永優が取り成すも、けんもほろろと言った感じで取り付く島もない。
「我聞くん、陽菜ちゃんと何かあった?喧嘩でもしたの?」
我聞の許へと赴き耳打ちをする優。
だが、そう言われても我聞にも彼女の不機嫌の理由など知る由も無い。強いて挙げるなら、やはり先程うたた寝をしていた事だろうか。
「いや、オレもさっぱり…」
「今日の陽菜くんは、何時にも増してピリピリしとるのう」
「我聞くんがなかなか告白しないからじゃないの?」
専務の中之井千住を交え我聞・優の3人はこそこそと、ここ数日の彼女の態度について話し合う。それが耳に入ったのか、陽菜は例の凍える視線で彼らを見やった。