とある魔術の禁書目録 10フラグ目at EROPARO
とある魔術の禁書目録 10フラグ目 - 暇つぶし2ch450:名無しさん@ピンキー
08/09/15 14:57:05 17l365hj
>>361はまず練習スレで文章の書き方練習してから書けばいいのにね。
正直半年ROMれのレベルだわ。

451:名無しさん@ピンキー
08/09/15 15:35:17 CROfVz69
そうか?
そこまで下手だと思わないがなあ。違和感少しあるけど、説明のシーンってのもあるだろうし

452:名無しさん@ピンキー
08/09/15 15:39:00 fUzd4POo
>>450
文章力とかエロパロ板で言われてもなw
ここではエロくて面白けりゃ正義。他は害悪。
高い文章力なんて読者から金もらってる物書きにしか必要ないよ

453:名無しさん@ピンキー
08/09/15 22:32:12 0IznOjOO
なんか投下しづらそうなふいんきですね

454:名無しさん@ピンキー
08/09/15 22:37:55 pJJy9KKG
空気読まず投下してもよろしいでしょうか?

455:名無しさん@ピンキー
08/09/15 22:43:02 CROfVz69
むしろこの空気を変えて頂きたい、とミサカは恐れ多くも期待を込めた眼差しで見つめてみます。

456:名無しさん@ピンキー
08/09/15 22:45:06 pJJy9KKG
 ふと、目が覚めたとき、そこは病室だった。

 真っ白な部屋に純白のベッド、太陽の光と同調するような色彩のカーテン、俺の着てい
る服は死に装束のような入院着である。色のない色に染められた世界に一つだけぽつんと
鎮座するのは古めかしさが漂う真空管の黒いテレビだけだった。もう何度も訪れたこの部
屋は、周囲を見渡さなくともどこになにがあるか分かるようになってしまった。
 そんなモノクロの世界に例の如く舞い戻ってしまったのは、これまた例のとおり、妙な
事件に首を突っ込んでしまったせいである。

 はぁ、とため息を一つ力なくついて、ベッドに手をつき横たわった体を起こそうと力を
入れた。
「よっ―と、ってあれ?」
 力を入れたのだが、体が上がらない。
「……ぐおっ」
 もう一度持ち上げようとしてみたが、何か重いものでものしかかったように動かない。
 ……ま、まさか俺、この年で身体のどこかイっちゃってますですか?
 お、落ち着け。クールになるんだ上条当麻。落ち着いて素数を数える、じゃなかった身
体を少しずつ動かしてみるんだ。
 …ま、まず足から。
 ………………。
 ひょいひょいと痛みも伴うこともなく割とすんなり持ち上がった。簡単にシーツを隆起
させたあたりを見ると、足は問題ないようである。
 ……よし足は大丈夫みたいだ。次は手に行ってみるか。
 ………………。
 ああああああああ!!!! 左手は上げるけど、俺の右手が上がらないんですが、これ
ってもしかしてそういうことでせうか? これまでの無理がたたっちまったのか? 神様。
助けて許して、助けてくれないと俺の幻想殺しが火噴いちまうぞ? って俺の右手動いて
ないんだった……マジ? マジですか? 本気と書いてマジと読むんですか? やっぱ不
幸だああああああああああ!!!

457:名無しさん@ピンキー
08/09/15 22:45:36 pJJy9KKG
 と、とりあえず落ち着け。落ち着くんだ、上条当麻。
 なにかの気のせいかもしれない。さあもう一度神様のシステムをも殺せる右手をチェッ
クだ。
 俺は右手をぎゅっと握りしめた。

 ふにふに。

 …う、動いた?
 何事もなかったかのように機能した手には、恐らく布団であろう柔らかな感触があった。
 よ、良かったああああああ!! 成人すらしていないこの若さで五体満足じゃなくなっ
てしまったかと思っちまったじゃねーか!
溢れる嬉しさが抑えられず、もう一度手を動かしてみる。

 にぎにぎ。ぷにぷに。
 もう一度やってみる。

 にぎにぎ。ぷにぷに。
歓喜に満ちた右手が握りしめた先には、

「や……んっ」

 天にも昇る気持ちだった俺の幻想を殺す、甘い吐息がかかっていた。
そのあと驚いて飛び上がった俺の目に飛び込んできたのは、神裂火織その人のうつろな
表情だった。

458:名無しさん@ピンキー
08/09/15 22:46:12 pJJy9KKG
「……ですから、いい加減顔を上げてください上条当麻」
 さっきまで自由に動くだの動かないだの言っていた身体全体をフル稼働させて土下座の
ポーズを作りだしてはや三十分、未だに俺の情けない姿は変わらず維持されていた。
「これは不幸の化身上条さんと言えども、前代未聞の失態なのですよ。それを許すなんて
神裂様あなたどこの聖人……でしたね、そうでしたね。ごめんなさい」
「あなたにそう謝られては、こちらの立つ瀬がありません。どうか顔を上げてください。
むしろ迷惑をかけたのはこちらの方なのですから」
「いえ、そんなもの軽くお釣りが来るようなことを上条さんはしちまいました。もうホン
ト貴方様の刀でどうぞ真っ二つにぶった切っちまってください」
「仮にも病院内で流血沙汰など起こせるわけがないでしょう。いえ、それ以前にそのよう
なことを私があなたにするわけがないでしょう」
 俺と神裂はこんな感じでさっきから終わりの見えない押し問答を繰り返していた。
「はぁ」と神裂は一つため息をついた。どうやら埒が明かないと思ったのだろう。ようや
く俺の案を飲む気になったようだ。
 ―あぁ、お父さま、お母さま。あなたたちの不肖の息子は今淫行を働いた罪で、その
生涯にピリオドを打とうとしています。生んでくれてありがとう。生まれてきてごめんな
さい。
 神裂は俺の頬を両手で優しく持ち上げて言った。
「私としては不服なのですが、分かりました。ではこうしましょう」
 そう言った神裂の顔は少しだけ赤かった気がした。
 やはり口ではなんといっても、先ほどの事を気にしているのだろう。

 ―俺は、死を、覚悟した。

 何度となく眼前に近づいてきた死界への入口を、今俺はくぐろうとしている。
 さあどんな判決だって来てみろ。俺は最後まで笑って受け止めてやる。

「……何を笑っているのかは分かりませんが、こういうのは如何でしょうか。私たちはお
互いに相手の言うことを無制限になんでも一つだけ聞く、というのは」

459:名無しさん@ピンキー
08/09/15 22:47:08 pJJy9KKG
「は?」
 俺は目が点になった。
「ですから、相手の言うことを一つだけなんでも聞く、というのはどうかと伺ったのです」
 りょーかいりょーかい、このチンケな頭でもようやく理解できましたよ、そこで俺に死ねというんだな。
 俺にもその権利をくれたのは、この不幸続きの一生に一度くらいはいい目を見せてやろ
うとかそういったせめてもの優しそうで心遣いなわけですか。
 だったらその権利を最大限利用してやるぜ、チクショー!
「あぁ分かった。その条件で構わない」
 俺にしては珍しく、真顔で言えたと思う。

「それじゃあ神裂、死ぬ前にどうか俺とエッ―」
「で、では、私とデートをしてください!」
 俺と神裂は同時に声を張り上げていたが、しかし最後まで言い終えることができたのは神裂だけだった。
「俺とエ…ですか?よく聞こえませんでした。すみません、もう一度お願いできませんか?」
「あ、いや…」
 どうやら俺が言った内容は聞こえていなかったようだ
 というかこっちもよく聞こえなかったけど、でえと? あのデート? それともそれは
新手の拷問なのでせうか?
「でえと?」
「…はい、デートです。その……私は恥ずかしながら、そういった経験はまだ一度もなく、
不得手なのです。ですから異性と接する機会も経験も多いあなたに、殿方に対してどう振
舞ったらいいか、教えてほしいのです。お願いできないでしょうか?」
あのですね、神裂さん。何か勘違いされてるようでせうが、上条さんは一度も女性とそ
んなライクやラブな関係になったこともないし、デートの一つもしたことないんですけど
ね。
「……いや俺はそれでもいいんだけどさ」
 なにしろ殺されると思っていた矢先のことだ、それで済めば僥倖である。
「俺でいいのか?」
「…あなた以外にこの手の問題で頼れる男性はいません。お願いします」
「あ、あぁ、分かった」
 なんだかよく分からないが、神裂とデートすることになってしまった。

460:名無しさん@ピンキー
08/09/15 22:48:25 pJJy9KKG
 そんな約束からしばらく経ったが、神裂は先ほどからずっと顔を綻ばせたまま、お腹は
空いてないかだとか、お茶を飲まないかだとか、トイレは大丈夫かだとか、忙しなく俺に
話しかけていた。
 神裂の笑顔をあまり見たことがなかった俺には新鮮だったが、その真新しさが今は逆に
怖い気もする。ひょっとしてなにか企みでもあるのだろうか。
 神裂はようやく落ち着いたのか、ベッド横の丸椅子に座って言った。
「ところで伺うのを忘れていましたが、あなたはなにがよろしいのでしょうか?」
「なにがって、お願いか?」
 コクコクと頷いて俺の言葉を待つ神裂にはきっと犬の耳と尻尾がよく似合うことだろう。
普段は犬というか虎とか鷹みたいだけど。
 うーんと首を捻って考えるが、お願いしたいことというのが思い浮かばない。
 いや、思いつくことはいくらでもあるけど、実行するには命がいくらあっても足りない
気がする。
「悪いけど保留ってことでいいか?」
「えぇ、構いません。ゆっくりと考えてください」
 神裂は神裂で心ここにあらずといった感じで、今何か聞いたらイギリス清教の暗部でもなんでも教えてくれそうな勢いだった。
「それでは、そろそろ失礼させてもらいます。また後日伺いますので」
 神裂は椅子から立ち上がり、大げさに礼をすると部屋から出て行った。
「お、おう。じゃあまたな」
 俺はぎこちない笑顔で手を振り、引き戸に手をかけた彼女を見送ったのだった。

461:名無しさん@ピンキー
08/09/15 22:51:08 pJJy9KKG
タイトル忘れてましたorz 「とある病室の妄想殺し」というタイトルですが、すっかり記憶のかなたに置いてきてました。
かなり展開強引な上に後半勢い失速しまくりですが、一応続く予定です。エロスのカケラもなくてごめんなさい。
次あたりねーちんがエロくなる予定です。

462:名無しさん@ピンキー
08/09/15 22:59:07 CROfVz69
終わったのかどうかと思って一瞬うろたえてしまいましたがねw
ともあれGJ!ねーちん派の俺としては同士にめぐり合ったようでうれしいです。できる女な神裂さんもいいけど犬耳シッポ完備のねーちんも萌えますねー。
我らが上条さんも上手いこと再現されてるし続きを全裸で待たしていただきましょう!

463:名無しさん@ピンキー
08/09/15 23:11:46 h28iuIde
ちょっと辛いことがあって心が虚ろになっている俺の清涼剤として期待しています。

464:名無しさん@ピンキー
08/09/15 23:19:12 nYKK3MYj
かみじょー君、なんというネガティブバカっぷりwというか単に鈍過ぎるだけか…w

465:名無しさん@ピンキー
08/09/16 00:15:47 F1XjSMeH
ねーちん祭りじゃああああああああ

466:携帯の人 ◆0yDabgA/0.
08/09/16 12:43:31 z/XaJzQZ
そんなねーちん祭に横槍を入れに俺、参上。

もはや忘れ去られたかと思ったけど、ちょろっと話題に上ったらしいので途中までの小萌せんせーネタを投下。

因みに、妙な設定なんかは保管庫参照でよろしくね。
リレーとは一切関係ありまs(ry

じゃ、いくよー

467:『ふぃぎゅ@禁書目録・小萌編』 ◆0yDabgA/0.
08/09/16 12:46:40 z/XaJzQZ
買い物袋を片手に、家のドアノブを捻る一人の少年。
つんつんと黒髪を微妙に立たせ、少しだけ自分の容姿に気をつかったりするそんな年頃の少年が買い物袋を片手にしているというのも、些か妙な光景であろう。
かといって、買い溜めしておくといつの間にか冷蔵庫や棚の食品がねこそぎ無くなったりしてるので、こうやって毎日その日食べる分だけ買ってこなければならないのだ。
それも上条宅に寄生…もとい、居候している白衣の銀髪シスターのせいである。
いや、まぁ、別に彼女と一緒に住んでいることに文句があるわけではない。
バスタブの中で寝なければならないことはこの際脇に置いておくとして。
とんでもない事件に巻き込まれたりもするが、それでも誰か他人が不幸になるより何倍もマシだ。
ただ、バスルームに篭りきらないと取り返しのつかないような暴挙(上条的主観)に出そうだったり、出させられそうだったり、暴走しちゃったりと、何かを納めなければならなくなりそうで、怖い。
何が怖いかはさておき。
可能な限りあの暴食をコントロールすること、それが仕送りだけで二人(と一匹)暮しをするための工夫だったりする。

さて、買ってきた食材を冷蔵庫に収め(またしてもインデックスは出掛けていた。いったいどこにいるのやら)、何をしようかと考えた瞬間、
「…あ、そうだ」
昼時に捻ったあれのことを思い出した。
鞄を手繰り寄せ、カプセルを取り出すと鞄を無造作に放る。
ガチャっと音をたてて落ちる鞄からさっさと意識をカプセルに移した少年は、ぱかりとそれを開いた。
中に入っていたのはシリーズのフィギュアを絵付きで羅列した紙と、薄いビニールに包まれたバラバラのパーツ。
一先ず紙を眺めるのは後回しにして、早速組立にかかった。
ビニールを破り、パーツを並べる。
頭、右腕、左腕、上半身、下半身、衣服。
簡単にパーツを言い表すのならこんな具合だろう。
まず服に右腕を通し、次に上半身。こうしないと右腕がはまらないのだ。
左腕をはめ込んだら頭と下半身をそれぞれくっつける。
元々パーツ数も多くなく、シンプルな造りだったのであっという間に組立完了だ。
何気なく、そのフィギュアをテーブルに立ててみた。
バランスもしっかりと考えられているのか、台座も無くすんなりテーブルの上に屹立する、どこか見覚えの少女。
デフォルメされているのか、全体的に小さい気がする。
下手をすれば小学生に見えかねない桃色ショートカットの少女に再び激しい既視感を感じた。
何だか、つい最近このフィギュアにそっくりな女性を見たことがある気がする。
あくまで少女ではなく女性。外見的には少女で差し支えないが、年齢的にははっきり言ってかなりの問題がある。
魔法少女を名乗れるのは19歳までだ。
ともかく、目の前に立つフィギュアが、どことなく、
「小萌、せんせい?」
少年の担任である月詠小萌にそっくりだったのだ。

ラフな恰好。
そういわれれば確かにそうなのだが、どうみても少女の『衣服』に異常がある。

いや、異常…異常なのか?

ぱっと見、白いワンピースに見えなくもない。
ただ、首周りはやけに広がっていて、右肩に乗っているはずの服がずり落ちている。
典型的な白いワンピースの様に袖が落とされていないその様は、女物の服というよりもむしろ普通のTシャツに見えるのだ。
ひどくシンプルで、他人の目を一切気にしないでいれる場所にいるような、はっきり言えば部屋着のようなイメージ。
プライベートなワンシーン、といったところか。
当然、組み上げている最中はモロで見えていたアレは、微妙に絶妙なラインできちっと見えない。
で、そんなものを凝視していたら、なんというか、イケない妄想が、こう、じんわりと…。

いや、フィギュアを見て欲情したわけでは決してない…ないぞ!

フィギュアが動いたり、魔法をぶっ放したり、妄想を具現化する魔法式を部屋に書き込まれて精液を要求されるような事態にならない限り、欲情なんかしないもん、とアピールしたい気分だ。

小萌先生に似てるから妄想が止まらないんだ!

そんなことを思いつつ、しっかりと小萌先生のあられもない姿を妄想するあたり、如何なものかとは思うが。

その日の夜。
皆が寝静まった夜半過ぎ。
上条宅に住まう一匹の猫は、不可思議な光景を眺めていた。
本来なら真っ暗な部屋に、やわらかく瞬くわずかな光。それは上条の組み上げたフィギュアから放たれているようだ。

468:『ふぃぎゅ@禁書目録・小萌編』 ◆0yDabgA/0.
08/09/16 12:47:57 z/XaJzQZ
ゆっくりと明滅を繰り返す青白い光に疑問を持ったのか、スフィンクスは音もなくフィギュアの置いてある棚に飛び乗ると、そっと前足を伸ばした。
が、

バチッ…。

触れるか触れないかギリギリの場所で、見えない何かに弾かれるスフィンクスの前足。
思わぬ衝撃に、びくり、跳びはねるように後ずさると、一度も振り向かずに飼い主の元へ走った。
流れるような動きで銀髪少女の枕付近に着地。
ぐいぐいと頬を押して覚醒を促すが、少女が目を覚ますようなそぶりはない。
もう一人の方へは、物理的な障害があり、向かうことは不可能。
暫くキョロキョロと逡巡した後、くるんとインデックスの側で丸まった。
その瞳はじーっと、淡い燐光を放つフィギュアを見つめながら。


最近珍しくも無くなった補習の帰り。
朝からしとしとと降り続けていた雨は、ことここに至りいきなりその勢いを増した。
気にかけるほどじゃなかった雨量にタカをくくっていた上条は、下駄箱の前に立ってようやくその浅慮を嘆くことになる。

大雨。

嵐というには些か静かだが、ただの雨にしては激しい。
「どーすっかなぁ…」
軽く頭を掻きながら唸る%8

469:『ふぃぎゅ@禁書目録・小萌編』 ◆0yDabgA/0.
08/09/16 12:57:26 z/XaJzQZ
こういう場合の対処方なんて、濡れるのに構わず鞄を頭に乗せて家まで突っ走るか雨が大人しくなるまで待つことぐらいしかないだろう。
しかしまぁ、出来ることならば極力濡れることは避けたいと思うのが人間である。
ならば雨が止むまで時間を潰せばいいのだが、そんなこともいってられない。
家に帰れば暴食シスターが牙もあらわに待っているかと思うと、雨の中を猛然と走って帰るなんて選択肢も考えてしまいそうだ。
むしろそうしなかった後が怖い。
でも、濡れるのは嫌だなぁ。
そんな具合に、なかなか踏ん切りがつかず躊躇っていると、
「…傘、忘れたのですか?」
背中にかけられる幼い声。
聞き馴染んだ声に振り返れば、そこにいるのは実用的な黒くて大きい傘(彼女が使うには些かゴツ過ぎる気もするが)を片手に立つ月詠小萌がいた。
ずばり言われて少しだけ恥ずかしそうに、
「まぁ…見ての通り…」
ぽつりと答える上条。
外は雨。
それで下駄箱に立ち尽くしている理由なんて一つくらいのものだ。
その少年の恥ずかしげで困ったような苦笑に、
「じゃあ、一緒に帰りましょうか」
にっこりと嬉しそうな笑顔を向けた小萌。
並のロリコンならまず間違いなく一撃でノックアウトさせらるほど、素敵な笑顔で。
「……はい?」
数瞬の間、思考が止まった。
「はい、この中にはいってくださいねー」
少年が思考停止状態にあるのをいいことに(?)、ばさっ、と傘を広げるとそれを掲げる。
が、
「あたっ!?」
よくよく考えてみればわかることだが、上条と小萌の間にはかなりの身長差がある。
当然のことながら、ナチュラルに小萌が傘をさした場合、その骨が上条に突き刺さることになるのは想像に難くない。
そして案の定さっくり刺さる傘の骨。
「わぁあ!? だっ、大丈夫ですか上条ちゃん!」
刺さった場所を押さえうずくまる上条少年に、傘を放り出してわたわたと慌てる小萌先生。
普段の彼女なら、こんな凡ミスを起こすことなどありえないのだが。
「大丈夫です…」
まるで大怪我をした人に対しるような心配っぷりに、上条は思わず苦笑を浮かべてしまった。
何を浮かれているのか知らないが、それよりもまず聞かねばならないことがある。
「…ところで、どうしてまた俺と一緒に帰るなんて言い出したんですか?」
問われた小萌は、
「傘が無くて困ってたんですよね。ここからなら私のお家が近いのでそこで傘を貸してあげようかと思って」
そもそも困っている生徒を助けることが当たり前な彼女にとって、この行為はごくごく自然なものなのだ。
他意が無いかといえば、正直なところあったりもするが。
「………む…」
小萌の言にも一理ある。
傘を借りるくらいならさほど問題は無いだろう。
多少なりと遠回りにならざるを得ないが、小降りになるまで待つよりも効率的だ。
二人仲良く相合い傘という恥ずかしさ満点な弱点を除けば。
悩む。
濡れることと、頭をかじられることと、相合い傘で帰ることが脳内で攻めぎ合う。
表情には出さずに悩みながら、ちらりと小萌に視線を向けると、
「………?」
どうしたんですか? 早く行きましょう、と言わんばかりの可愛らしい笑みが待ち構えていた。
そんな笑顔を向けられて何時まで悩んでいられるだろうか。
がっくりうなだれると、
「小萌先生、傘、俺が持ちますよ」
さっきの二の舞はごめんだ。
「…はい…」
小萌も上条の言わんとしていることを察したのか、頬をほんのり朱色に染めながら、こくりと頷き傘を差し出した。


ばらばらと傘に当たって弾ける雨の音を聞きながら、上条と小萌の二人は小萌の部屋を目指して歩いていた。

470:『ふぃぎゅ@禁書目録・小萌編』 ◆0yDabgA/0.
08/09/16 13:10:21 z/XaJzQZ
傘本来の持ち主である彼女を気遣って、彼女が濡れないよう傘を寄せている。
そのため上条の肩は傘から微妙にはみ出る形となり、すっかりびしょ濡れだ。
それでも雨の中歩いて帰ることを考えれば、腕一本で済んだことは上出来と言えよう。
「上条ちゃん、結局濡れちゃってるじゃないですか…」
呆れたように呟く小萌。
再三に渡り小萌は『もっと上条ちゃんの方に寄せて下さい』といったのだが上条は決して首を縦には振らず、
「このくらいどってことないです」
の一点張り。
小萌が呆れたように呟くのも頷ける。
結局、上条少年を何とかするのは諦め、出来得る限り少年に密着することで対処した。
まあ、それが問題といえば問題だったりもするが。
何せ今、妄想をネタに自家発電に勤しんだ女性と体を密着させている状態なのだ。
気まずいわ恥ずかしいわどきどきするわで、まともな思考が維持していられない。
だからさっきから返事が『どってことないです』の一辺倒なのだ。
ただ、あの台詞には自分を戒める意味も含まれていたりもする。
どってことないから大丈夫だ、自分は意識なんてしてないない、と。
意識しないようにと思っている段階でしっかり意識しているのだが、今の上条少年に気付くだけの余裕はない。
とりあえず意識を他方へぶっ飛ばし、何とか平静を装っていたのだが、
「…おっと…」
突然、酷い風が二人を襲った。
「あ、ありがとうございます」
傘を動かして小萌を雨から守る。その際、雨を被ったのだが、いまさら少しばかり濡れたところで差異は無い。
一先ず安心してひょいと傘を持ち上げた瞬間、
「ひゃわぁ!?」
「うぉお!?」
二人の横を車が猛スピードで走り抜けた。
そして弾ける大量の泥水。
運悪く水溜まりの横を通ろうとしたのと合わさって、始めから傘をさしていた意味が無いぐらい、二人してびしょ濡れになってしまったのでした。


「さ、上がってください」
その後の押し問答(このまま帰るか帰らないかの)の末、結局小萌先生の部屋まで入ってしまうことになった少年。
被った水が泥水で全身汚れまくりだったのもあり、服を洗って乾かしているついでにお風呂までいただくことになった。
ただ、
「ごめんなさいですー。ちょーっと散らかってますけど気にしないでくださいね」
言わずもがな、ちょっと、等という生易しいレベルではないことに読者諸氏はもちろん同意していただけることであろう。

何というか、カオスの限界を全力全開手加減無しで全速前進したらこうなりそうな感じだ。
着替えとかお風呂とか以前に、まず片付けから入る必要がある気がする。
とりあえずの処置として必要最低限使えるだけのスペースを確保した二人は、
「小萌先生からどうぞ」
「上条ちゃんから先に」
意図せず綺麗にハモってしまった。
ぴたり、と動きを止めた二人。
きっちり三秒固まった後、互いに顔を見合わせ、
「だから小萌先生が」
「ですから上条ちゃんが」
またしてもハモる。
考えるまでも無いが、互いに譲る気が無いようだ。
かたやびしょ濡れ泥だらけの生徒を差し置いて行動するなんて選択肢は頭の中に存在せず、かたや寒そうに震えている人をほったらかしにしておくことなんて出来るはずもなく。
いつまでも言い争いを続けることこそ、時間の無駄ということにこの二人は気付かないのだろうか。
そのまま会話は平行線を辿る、
「だぁーっ、もうわかりましたよ」
かに見えたのだが、
「はぁ、はぁ…ようやく折れてくれましたかー」
「一緒に入りましょう」
上条ちゃんの答えは、何と言うかぶっ飛びまくっていた。


まぁ、当然のことながら小萌先生は恥ずかしがって拒否しようとしたが、

471:『ふぃぎゅ@禁書目録・小萌編』
08/09/16 13:13:08 z/XaJzQZ
「俺が先に折れたんですから、今度は先生が折れてください」
とは上条少年の言。
交換条件の様に言われ、悩む小萌。
しかし、このままでは二の舞どころか三の舞まで舞わねばならなくなってしまう。
譲れないこともあるが、そんなことを言っていたらいつまで経ってもお話は進まないのである。
「……………わかりましたよぅ…」
渋々ながら頷いた小萌は、
「それならそうで早くしましょう。なんだかんだであれから結構時間が経っちゃいましたから」
ちゃっちゃと思考を切り替え、体を温めることを最優先事項に据えた。
ちょっぴり涙目だったりするのはヒミツだ。
何故か二人で脱衣所まで行き、二人ほぼ同時に服を脱ぎ始める。
「先生、服はどうしたら?」
学ランの上を脱ぎ去り、それを片手に小萌に問う。
「そっちの洗濯機に入れてくださいー。まとめて洗濯しちゃいますから」
振り向こうとして何だか可愛らしいピンク色の布が見えた気がして思わずぎゅいんと首を強引に違う方へ向け直した。
一緒に入ろうといった割に何とも情けないことである。
いや、まぁ、仕方の無いことかもしれないが。
「上条ちゃん?」
学ランの上着、ワイシャツと脱ぎ終わったところで小萌が上条に声をかけた。
「……まだ、脱ぎ終わらないんですか…?」
問われ振り向いた瞬間、
「もう少」
言葉を紡ぐことを忘れてしまった。
「どうかしましたか?」
大きめなバスタオルで体を隠した幼女(危険だ。犯罪の香りがする)がそこにいたのだ。
淡い青色のタオルは彼女の身体をしっかりと隠している。
大きめなといったが、小萌にとってこのタオルは大きすぎるらしい。膝下まで伸びたそれはさながらスカートのようだ。
きっちりと防御されているように見えて、ただ一つ、その格好には欠点があった。
歩み寄ろうとして出した左足がタオルの繋ぎ目のスリットから現れなければ完璧だったのに。
思わず鼻の頭を押さえた。
多分、普通なら横に使うタオルを縦にしているのだろう。小萌のウエストやらのサイズから考えて横でも問題無いというか、むしろその方がよかったと思われる。
何せ、かなりギリギリ、際どいところまで足があらわになっているのだ。
というか腰まで見えている。
たったこれだけのことなのだが、つい先程も言った通り自家発電のネタにした女性の肌が目の前にあったりしたら、下半身のアレが元気になりすぎてしまう。
ズボンと下着を脱ぐに脱げずにいると、
「………?」
小首を傾げ『どうしました?』と言いたげな小萌の視線にまたしてもぶつかる。
「…あの…そうやって見られてるとすごく脱ぎづらいんですけど…?」
半分はそう思っている。
本心は別のところにあるのだが。
「ぁ…あぁっ! そっ、そうですね! それじゃあ先生は先に入ってますー」
言われて初めて気がついたのか、あっという間にバスルームに飛び込んでいった小萌。
「はぁ…」
その後ろ姿を見送り、上条は大きな溜め息を吐いた。
なんか色々と大丈夫なのだろうかと。
そう、例えば理性とか理性とか理性とか。
素晴らしくダメな気がして来た上条さんでした。


昔の人はこんな諺を残している。

泣きっ面に蜂。

詳しいことはググったりしていただけると説明が省けるので有り難い。

472:『ふぃぎゅ@禁書目録・小萌編』 ◆0yDabgA/0.
08/09/16 13:16:01 z/XaJzQZ
さて、何故急にこんなことを言い出したのかと言うと、
「上条ちゃん、重くないですか?」
「問題アリマセンデス、ハイ」
今まさに上条少年がその諺を、身を以て味わっている最中だからだ(もしかしたら多少解釈の仕方が違うかもしれないが)。
どういうことかというと、こんな感じ。

泣きっ面に(全裸の小萌先生が)蜂(ピッタリ密着して膝の上)。

これが恋人同士だったりしたらなんの問題も無いのだが、さすがに先生、それも恋人ですら無い人とこの状態で取れる行動は『我慢』の一手だろう。
ただ、健全な男子高校生がこの状況で我慢を強いられるのはツライ。
何度も言うが、自己発電のネタに利用させてもらった人が目の前に全裸で居るのだ。
ぶっちゃけ妄想が現実になっているようなものである。
その上、小萌は自分が上に乗っかっていて迷惑なのではと(自制中の生返事ではそう感じても致し方あるまい)ちらちら上条の方に振り向いてくるのだ。
そのたびにコーラルピンクのアレが目に入ってくるので、正直暴走しそうだったりする。
何が、とは聞かないであげてほしい。
素数をカウントすることで何とかおっきしないように努力しているのだから。
「…あの…、上条ちゃん、もしかしなくても私、上条ちゃんに迷惑かけてます?」
2713まで数えたところで、変化が起きた。
少年にとってある意味で都合が悪く、ある意味で幸せな変化が。
小萌がとうとう耐え切れなくなったのか、完全に振り向く形で上条と真っ正面から向き合ったのだ。
「う゛っ!?」
思わず首の構造限界の速度と動きで上を向こうとしたのだが、
「どこ向こうとしてるんですかっ! ちゃんと先生の顔を見て答えてください!」
小萌の細腕からは考えられないような力で頭を固定されてしまった。
がっちりと押さえ込み、答えるまで離しません、と言わんばかりだ。
そうしてもらっているおかげでなんとかおっきは免れたが、今度は罪悪感が込み上げて来た。
「…別に…迷惑って訳じゃ…」
目尻に涙を滲ませた幼女が目の前にいて、涙を滲ませている原因が自分なら、罪悪感の一つも覚えるだろう。
いや、覚えなければ人として駄目だ。ロリコン云々はさておくとして。
「じゃあ何でさっきから返答がおんなじものばかりなんですか?」
「いや、それは…俺が悪いというか…生理現象というかなんというか…先生のせいじゃないことは確かだ! …けど…」
むーっ、と唸る小萌。
しどろもどろになりつつも上条は答えてみせる。
だが、小萌は質問の勢いを衰えさせない。
「けど? けど、なんですか?」
そうやって面と向かって聞かれても困る。
というか小萌は気付かないのだろうか。
大分熱くなっているから、そこまで意識が回らないのだろう。
「だから!」
いつまでも悩んでいたって仕方ない。引かれたならそれまでだ。
腹を括った上条が声をあげた。
「先生の裸が気になって、意識しちゃって落ち着かないんだ! 一緒に入ろうって言い出したのは俺だけどさ…」
が、徐々に言葉が小さくなっていく。
小萌は驚いたような顔をしていた。

473:『ふぃぎゅ@禁書目録・小萌編』 ◆0yDabgA/0.
08/09/16 13:18:47 z/XaJzQZ
それはまぁ、そうだろう。
いつの間にか拘束の手も外れていたらしい。
「…………」
小萌の顔を直視できない。最初からそうではあったが。
未だ膝の上にいる小萌のせいで風呂から上がるに上がれない少年。
そんな上条の状態を知ってか知らずか、
「上条ちゃんは…女の子と一緒にお風呂に入ることに慣れてるんじゃ無いんですか?」
呆然とした表情でとんでもないことをおっしゃった。
「はいぃ!? っつかそっち!? 驚いてたのそっちかよ!?」
絶叫する上条に落ち着いた目で小萌は、
「あれだけ女の子に囲まれているんだから一回や二回はあったんじゃないかなー、と」
とんでもないことばかり言う幼女は、何やら盛大な勘違いをしてるんじゃないかと上条は考えた。
「ありませんってば! 一緒にお風呂なんて! それに、囲まれてるだけで俺のことが好きな奴なんていないですよ…」
言ってて虚しくなってきた。
心の中で馬鹿でかいため息を吐いた後、二の句を接ごうとして、
「少なくともここに一人…上条ちゃんのことが大好きな女の子がいるんですけど…」
接げなくなった。
「……はい?」
頬に手を当て恥ずかしげに上条を見つめる小萌。
上条はブレーカーが落ちたかのように動かない。
「もぅ、何度も言わせないでくださいよぅ…」
なんかもぢもぢしてる。
指でデコを突いてきた。
「私は上条ちゃんのことが好きなんです…」
もう一度言われ、衝撃で復活した。
そして言葉を咀嚼し、起きたての頭で考える。
はっきり言えば有り得ない。自分が立ててきたフラグは駄フラグばかりだったはずだ。
いきなりこんなイベントが起こる可能性なんてゼロに近いはず。
なら先生が俺をからかっているということか?
いや、それも違う。
先生は冗談であんなことを言う人間ではない。
それは自分自身よくわかっていることだ。
では一体?
そこまで悩んである答えにたどり着く。
そういえばその可能性もあったな、と。
その答えとは、
「もしかして、生徒として好きってオチ…?」
殴られた。
「バカバカバカ! 上条ちゃんの鈍感! にぶちん! 朴念仁!」
ぽかぽかぽか。
高さ的に胸板しか叩けないらしい。
それでもまぁ、上条自身出した答えが間違っていたということは理解出来たが。
「…そーゆーのって、普通教師の方が『先生と生徒だから』って止めませんか?」
至極当然というか、まぁ正論であろう。
物語的流れ云々はさておくとしても、倫理とか外聞とかいろいろと問題もあるはずだ。
例えば、エロゲの如く教師の方から肉体関係を迫って来たら話は別なのかも知れないが。
「でもでも、節度あるお付き合いなら問題ないと思うんですよー?」
小萌の場合、そんなことは限りなく零だ。そもそも見た目的に問題がある。
「節度、ねぇ…」
「そうです」
それが守られていないから問題になっているのではなかろうか。
「とりあえず話をまとめさせてください…」
小萌の少しズレたような言動に違和感を感じたが、そんな小さなことよりもこちらを解決しなければ。
「…つまり…先生は俺のことが好き…それも生徒として好きなんじゃなくて、一人の男の子として好きだ、と」
「はいです…」
耳まで真っ赤にして俯きながら答える小萌。
正直なところ、俯かれると困るのだが。
だって見えちゃうもの。
「…むぅ…」
見えちゃうのはともかくとして(見えていいわけではなく気にしていたら話が進まないからである)、上条当麻は唸らずにはいられなかった。

474:『ふぃぎゅ@禁書目録・小萌編』 ◆0yDabgA/0.
08/09/16 13:21:27 z/XaJzQZ
はっきり言えば小萌に好意らしきものは持っている。
だが、それは何と言うか、女教師への憧れというか、年上に見えないからこその親しみ易さというか、そんな感じのものだと思う。
それは、やっぱり恋愛感情とは違う気がする。
ただ、上条少年は鈍いうえに恋愛経験など皆無に等しい。
というか恋愛と親愛の違いがわからないのだ。
境界が、という以前に、その線がはっきりしていないのだから困る。
空を(というか天井を)仰ぎながら頭を掻く上条。
「先生」
「は、はいっ!」
ぽつりと呟くような少年の呼び掛けに、過剰な反応を見せる小萌。
それも致し方の無いことか。
教師とは言え一人の女の子であることには変わりない。告白したせいで無言になられてはその裁定が気になってしょうがないことだろう。
上条のそれは、小萌の予想とは違ったのだが。

「親愛と恋愛の違いってどこにあるんだ?」

「…親愛と恋愛の違い、ですか…」
一瞬、浴槽の中でコケそうになった。
拍子抜けというかなんというか…だが、上条の表情は真剣そのもので。
「うーん…難しい問題ですねー…」
少しだけ、いつも教師をやっている彼女の顔になる。
「上条ちゃんの言わんとしている『親愛』は、お友達や家族に対する愛情のことであってます?」
こくりと頷く少年。
「それで、『恋愛』は…」
続けようとして詰まった。恋愛というものについてどう解釈すべきか。
この確認はそのために行っているのだが、実は大きな問題がある。
当然のことながら、恋愛観というものは人それぞれ違うもの。
似ていることもあるだろうが全く同じという可能性は無きに等しい。
自覚を促すにしても、それは幾分か小萌の主観に因る話になるだろう。
そのことについて悪いと思っているわけではないのだが、それとこれとは話が別だ。
今悩んでいるのは親愛と恋愛の違いというものをいかにして上条当麻に教えるか、である。
ひとしきり頭を悩ませた後、
「恋愛は異性間による愛情の形でいいですか?」
「ああ、そうだけど…異性間っていうとそれは母親とかも含まれるよな?」
返された答えに少し詰まる。
「えっと…恋愛というのはですね、異性間の親愛の最上級であり、そして通過点でもあります」
ぴんと小さな指を立てながら説明を再開する。
「男の子の初恋は大多数がお母さん相手なんです。女の子の場合はお父さんですねー」
ここまではいいですかー、と小首を傾げて見せる。
「一応」
頷いた上条に、では、とそういって小萌は話を続ける。
「あくまで統計というか、そういった類のものなので確証として話すことは出来ませんが。この話はさておき」
上条の膝の上での座り方を直す。
「好き、が愛してる、になって最終的には結婚に到りますよね?」
またしてもこくり、と上条は頭を縦に振る。
「これが最上級という意味です」
言い終わると小萌は、ぴっ、と指をもう一本立てて今度は二本にした。
「次に通過点の方ですが、人間、恋をしたらそこで終わるわけじゃないのはわかりますよね」
また指を一本に戻し、
「恋をして、それが愛に変わり、いずれは家族になる」
要は、と続ける。
「恋愛の先にあるのが結婚という訳です。ちょっと強引な持って行き方かも知れないですけど…」
ちゃぷんと小さな水音が浴室に響いた。
これで終わりとばかりに小萌が自身の膝に手を置いたからだ。

475:『ふぃぎゅ@禁書目録・小萌編』 ◆0yDabgA/0.
08/09/16 13:23:45 z/XaJzQZ
上条は、若干眉根を寄せながら考え始めた。
話を聞く限りでは、どちらもあまり大きな違いがないような気がする。
ただ、小萌の言わんとすることが理解できない訳では無い。
親愛と恋愛の境界線。
それだけで考えるなら、小萌の問いに対する答えはNOだ。
しかし、
「………」
何と言うか、それだけで済ませたくない…そんな気持ちに気付いてしまった。
言われるまで、境界線云々を意識するまで気付くことも出来ないほど小さな小さなモノだったのだが。

健気で、真面目で、一生懸命な人。

生徒達のことを何よりも大切に想っている人。

子供っぽくて部屋はあれだけど、しっかり大人な人。

自分の『能力』や過去を知ってなお、普通に接してくれる人。

一緒にいると楽しい人。

考えてみればみるほど小萌と一緒にいた時のことを想い出してしまう。
思えば、以外と二人っきりでいた時間も多かった気がする。
主に補習関連で、だが。
勉強自体あまり得意な方ではない上に補習を受けさせられるのが『超能力』に関することではどうしようもない。
それでも今までやって来れたのは馬鹿騒ぎ出来るクラスメートと、小萌先生のおかげだったと思っている。
ここまで悩んで、でも答えは出ない。
なら、素直に今思っていることを彼女に伝えよう。
「……小萌先生…あの…俺、さ…」
言葉と共に、小萌を見つめる上条。
「考えても悩んでも…好きとか愛してるとかわかんないんだよ…」
それを聞いて、わずかばかり小萌は表情を暗くした。
ある意味拒絶にも取れる言葉だったからだ。
だが、
「だから、俺が今の気持ち、今思ってることを話すから」
上条を小萌の予想斜め上をいった。
「聞いて欲しいんだ」


はじめは…あの人と一緒にいると退屈しないな、ぐらいにしか思っていなかった。
いつも無邪気っていうか子供っぽいけど、それでいて何事にも一生懸命で…見てて飽きない人だなぁ、ってさ。
姫神の面倒を見てくれてた時も、大覇星祭の時だって全然学校とか関係ないインデックスの世話を焼いてくれたりして、実は結構感謝してたんだ。
周りにいた女の子の中で、いろいろな意味で一番安心出来るのが小萌先生だったんだよ。
気になるって言うか…気を許せるっていう表現がしっくりくるんじゃないかと思う。
つまり…先生と一緒にいたい…。
……うん、多分そうだ。
俺は、小萌先生と一緒にいたい。
小萌先生に、一緒にいてほしい。

これが好きだって気持ちなら…俺、上条当麻は月詠小萌のことが、一人の女性として…好きです。



「…上条ちゃん…っ…ふ、ふふ…っく…嬉しいですよぅ…嬉しいです…」
何を憚ることも無く小萌は泣いた。
ぐしぐしとまるで子供のように涙を拭い、笑おうとする。
だが、微妙に感情の制御が効かなくなっている彼女はどうしても泣き止むことが出来ない。
「うぇ!? ちょ、小萌先生!?」

476:『ふぃぎゅ@禁書目録・小萌編』 ◆0yDabgA/0.
08/09/16 13:25:04 z/XaJzQZ
そして、当然の如く目の前で女の子に泣かれた上条少年は狼狽えまくっている訳で。
いい加減、風呂から上がらないとのぼせるような気がする。
「と、とりあえず風呂から上がりましょうね! 先生から!」
まだ大袈裟な動作で涙を拭い続ける小萌。
このままではいろいろと問題が発生するだろうことは容易に想像がつく。
それに、こうでもしないとまた話が進まなくなるのである。
「…っぐず…ぁい…わかりました…ずず…上条ちゃんはゆっくり浸かってくるんですよ…」
ようやく小萌が動いた。
鼻を啜りながら、何とも間抜けな様相だがそれすらどこと無く可愛く見えてしまうのだから不思議だ。
なんかもういろいろと無防備になっている小萌から視線を逸らし、彼女が風呂場から退室したことを確認すると、上条は盛大なため息を吐いた。
「はぁ…」
緊張の糸が切れたから、というのが妥当か。
股にぶら下がっているアレがすっかり猛り狂っていたが、誰も見ていないのだから気にする必要もないだろう。
まぁ、落ち着くまで風呂場に閉じこもっていなければならないが。
「…好きだって、言っちまった…なぁ…」
そして股間の猛りよりも問題なのがこちらだ。
別にそのことに関して後悔しているわけではない。
むしろ喜ばしいことだろう。
あの鈍感な上条が自身の気持ちに気付けたことは僥倖といえる。
「…これから先どうすんのかな、小萌先生…」
流れから鑑みて、これから二人は付き合うことになるだろう。
だが、世間一般から見れば上条と小萌の関係は彼女彼氏以前に生徒と教師だ。
わかっているとは言っていたものの、実際のところどうするつもりなのか上条には皆目検討もつかない。
この学園都市が無駄に広いとはいえ、二人で遊べる場所…さらに言えばデートとして出向ける場所はかなり限定されてくる。
そうなれば見つかる危険性も増えてしまう。
湯舟に肩まで浸かりながら天井を仰ぎ、黙考する上条。
かといって、すぐに答えが出るわけもなく。
気が付けば息子さんもすっかり大人しくなっていたので上がることにしたのだった。

477:携帯の人 ◆0yDabgA/0.
08/09/16 13:26:57 z/XaJzQZ
終わりましたよ、っと。

強引な展開だと自負しております。

リレーは時間があれば書こうかな。またアニェで。

さいならー

478:名無しさん@ピンキー
08/09/16 13:42:45 sfie4Zso
わっふるわっふ(ry
とにかくGJです。強引な展開と言ってますけどカミジョーさんならありえるかなと思いました。
むしろ小萌先生は車で学校に行ってないのかとかどうでもいいことが気になってw

479:名無しさん@ピンキー
08/09/16 22:40:42 NiFpLzUI
幼女かわいいよ幼女とかいうと今のご時世通報されそうだけどGJした!
携帯の人に初めて遭遇した気がするw

480:名無しさん@ピンキー
08/09/16 22:41:56 xhUW3KX1
先生は合法ロリなので無問題
あぁげに素晴らしき哉合法ロリ

481:名無しさん@ピンキー
08/09/17 02:24:24 bmFFkk43
小萌センセーは少なくとも20代後半、もしかしたら30に届いてる可能性もあるんだよな。…あれと真面目に付き合う。
…ビジュアル的にヤバいぞこれは。
ベタな回避手段
「妹です」

482:名無しさん@ピンキー
08/09/17 02:27:19 Y/sLnJxQ
いいえ、ダッチワイフです

483:名無しさん@ピンキー
08/09/17 10:00:02 SX3b7amE
かなり萌えるハァハァ

484:名無しさん@ピンキー
08/09/18 11:32:54 TxPMermM
御坂シスターズに押し倒されてインデックスもまじえてわっふるするシチュエーションが浮かばないんだけど誰か

485:名無しさん@ピンキー
08/09/18 11:34:23 TxPMermM
御坂シスターズって言っちゃったけど単品で
なんて言えば良いんだろう最終信号じゃない他の御坂妹の一人
強いて言えば12巻でネックレスちらりしたあの娘

486:名無しさん@ピンキー
08/09/18 12:20:45 ojJJY5Fn
>>485
10032号のことか?それぐらいggrks

といわれる前にwikiくらいよんでみましょう、とミサカは妄想する前にやるべき事があるとやんわりと指摘します。

487:名無しさん@ピンキー
08/09/18 12:26:47 TxPMermM
wikiとかあったのかありがとう御坂さん

488:名無しさん@ピンキー
08/09/18 12:41:23 ojJJY5Fn
ミサカの名前はミサカであって御坂ではない、とミサカは訂正を申し出ます。

489:名無しさん@ピンキー
08/09/18 16:45:55 I4Z73nC5
コントはしないほうがいいかも

↓いつもの流れへ

490:名無しさん@ピンキー
08/09/18 17:59:10 QBgCH2xH
いつもの流れってこんなんじゃなかったっけ?

って言ったらマジボケ認定かね?

491:名無しさん@ピンキー
08/09/18 18:28:19 ebwIls3S
いや、コントだろうが伸びるに越したことはないだろう。
過疎は更なる過疎を生みかねんし。

492:名無しさん@ピンキー
08/09/18 18:42:47 b7QddTmf
それだと作者が来るまでじーっと黙ってろってことなのかな?

493:名無しさん@ピンキー
08/09/18 19:49:09 WTfIwupt
えーと。とりあえず場つなぎにでもなんか書いてみる(予定w)ので質問をば。
需要はやっぱりエロネタですか?(エロパロ板でなにを今更と言われそうですが…)

494:名無しさん@ピンキー
08/09/18 19:52:14 fTwo9X0T
レス指定で5W1Hみたいな感じで書いてみて欲しいなw

495:名無しさん@ピンキー
08/09/18 19:55:34 WTfIwupt
5W1Hってことはやっぱりエロってことk(マテ

496:名無しさん@ピンキー
08/09/18 21:23:59 WTfIwupt
493です。495で書いたように5W1Hの意味はえっちぃ事だと勝手に理解しましたwww
…つか誰×誰がいいんでせうか?リクあれば書いてみようと思います。
平行して「美琴は外せねェだろうがよォ」って事で自分で書きたいのも書いてみてます(上げるかは分かりませんが)。

497:名無しさん@ピンキー
08/09/18 22:07:11 moqqOYXM
ねーちんだろw

498:名無しさん@ピンキー
08/09/18 22:10:01 moqqOYXM
連投スマソ

相手はとうまでお願いします><



499:名無しさん@ピンキー
08/09/18 22:16:18 WTfIwupt
ねーちんに当麻…なかなか要求が高いじゃないかww
もしかすると美琴とねーちん一本にまとめて扱うかもしれないがそうなったらスマン

500:名無しさん@ピンキー
08/09/18 23:28:47 Fpg7i1L8
一応、このスレを見ていて、かつ5W1Hの意味が解らない奇特な人へ。これはWhoWhereWhatWhyWhenHowの事だよ…、みんな知ってるか。


501:名無しさん@ピンキー
08/09/18 23:43:53 WTfIwupt
あれ、この場合は「5W1H=状況に応じて」と解釈してエロネタだッ!!と判断したオレは異端か。そーでつか。

502:名無しさん@ピンキー
08/09/19 01:02:52 FaINVZaD
ある意味5WhoとHと言う解釈もありかなと振った本人も考えてみた。
ねーちん、美琴、姫神、アニェーゼ、五和とH!
この5人をどうそろえるかが大変だ。

503:名無しさん@ピンキー
08/09/19 13:08:33 J+kHH82l
インデックスがいねえwww
薄すぎてカワウソ

504:名無しさん@ピンキー
08/09/19 13:19:19 fFe1WAwB
インデ…ックス…?

505:名無しさん@ピンキー
08/09/19 14:51:13 EXvqV+Iw
禁書、姫神、美琴、御坂妹、ねーちん
あ、ちょうど五人だ

506:名無しさん@ピンキー
08/09/19 14:59:01 fFe1WAwB
>>505
妹のポジションの確保のためシスターズで抗争勃発

507:名無しさん@ピンキー
08/09/19 15:27:27 vv9Rj9+1
ねーちん吹寄禁書ねーちんねーちん

508:名無しさん@ピンキー
08/09/19 16:33:51 J+kHH82l
青髪 土御門 蛙医者 一方通行 ステイル
よしばっちこい

509:名無しさん@ピンキー
08/09/19 16:36:57 fFe1WAwB
>>508
女が混ざってるぞ

510:名無しさん@ピンキー
08/09/19 17:37:15 UvFuW0do
アウレオルス アレイスター 5巻の和風魔術士 災誤先生 アックア 完☆璧

511:名無しさん@ピンキー
08/09/19 17:47:41 dJbn5GeR
ねーちん ローラ 禁書 美琴 御坂妹

これならおっきする

512:名無しさん@ピンキー
08/09/19 18:26:24 0b9LFqvn
ねーちん吹寄オルソラ五和ローラ
これが俺のジャスティス

513:493
08/09/19 18:41:44 I41Fp48x
なんかいつのまにか話題が広がってるしwww
ところで書いてる作品でインデックスの濡れ場が書けない…
どーしよ。

514:名無しさん@ピンキー
08/09/19 18:51:34 fFe1WAwB
いなかったことにすればいんじゃね?

515:493
08/09/19 18:56:17 I41Fp48x
ここで究極の手段を使うのかwww

516:名無しさん@ピンキー
08/09/19 19:02:41 vv9Rj9+1
兄メカの影響だとは思いたくないがな……

517:名無しさん@ピンキー
08/09/19 19:05:19 uGXN1Lre
御託はいい
ねーちんの尻エロスを書く作業に戻りたまえ

518:名無しさん@ピンキー
08/09/19 19:06:40 bUJonTIm
>>513
お前さんの今後も考えて、敢えて苦言を呈するが
そういうレスはあまりしない方がいいぞ

作者がスレでそういう風に前面に出てくるとウザがられることが多い
作品の良し悪しに関らずな
最悪、作者がウザいから作品をスルーするなんてこともあるし

スレにもよるが、大体のスレではそうしたほうがいい
作り手は作品で語れ、ってな

偉そうなこと言ってすまないな

519:493
08/09/19 19:07:02 I41Fp48x
あらかじめ言っとくが気に入らなかったら上げないかもしれん。

520:493
08/09/19 19:09:30 I41Fp48x
>>518
分かった。終わるまで一旦ROMろうと思う。

521:名無しさん@ピンキー
08/09/19 19:11:37 fFe1WAwB
他のパロスレでは大量にあげてる人くらいだしね、名前ついてるの。
俗に言う誘い受けはレス乞食氏ねみたいな風に取られやすいし。

522:名無しさん@ピンキー
08/09/19 20:21:20 yk9ZNuEW
御坂さんが鞭を使うと大変なことにw

523:名無しさん@ピンキー
08/09/19 20:31:43 dJbn5GeR
あからさまなレス乞食はうざいな


>>519みたいな

524:名無しさん@ピンキー
08/09/19 20:38:43 0Cc/6aiW
というか確かにこのごろ空気はおかしいな。
100レスぐらい前にもこういうやりとりがあったと思うんだが。
投稿する時って過去スレまでは見なくてもそのスレぐらいは全部読むべきだと思う俺は古いのか?

525:名無しさん@ピンキー
08/09/19 20:45:23 fFe1WAwB
前も言われてた気がするけどなんとなく低年齢化したのか?
と感じることは多々ある。
>>524
むしろそういう暗黙の了解的なことを知らない人が増えたのかもしれない。

526:名無しさん@ピンキー
08/09/19 22:18:03 J+kHH82l
逆に考えるんだ
低年齢化したんじゃない 俺たちが老けたんだ
ですよねねーちん え18?うそだー

527:名無しさん@ピンキー
08/09/19 23:12:14 UvFuW0do
>>526どうした、応答しろ、526…
…遅かったか

528:名無しさん@ピンキー
08/09/19 23:28:56 Lna07ZVH
神裂さんじゅうななさ…グハッ

529:名無しさん@ピンキー
08/09/19 23:30:48 fFe1WAwB
お前らほんとにねーちん好きだなw

でもねーちんより年上しかここにはいないはずなんだよな

530:名無しさん@ピンキー
08/09/19 23:59:56 0Cc/6aiW
同い年もいるんじゃないか?全然信じられないが。


ところで誰か、些細なことだが教えて欲しい
我らが上条さんはパワーアップイベント今までないよな?
それらしいのはヘタ錬金術師の竜ぐらいだったと思うんだが違ったら訂正頼む。本スレのあの勢いじゃ聞くに聞けん

531:名無しさん@ピンキー
08/09/20 00:10:07 XMdTPged
>>530
フレキシブルな能力なのでその時々です。

532:名無しさん@ピンキー
08/09/20 00:18:55 Z39IFVe3
>>530
確かに幻想殺しについての現象はあの竜の顎だけのはず。
飲み込まれると記憶を失うとか。更に竜ってこは「竜王の吐息」にも関連があるのだろうか?

533:名無しさん@ピンキー
08/09/20 00:21:29 KuUyg4Sh
>531,532
すまん。本スレでも散々考察されてたのはわかってるんだが最新刊とかではどうかと思ってな
ありがたいありがたい

534:名無しさん@ピンキー
08/09/20 00:42:08 LqiVfmd3
>>532
やっぱりラーニング説がでかいよな。
つまり今まで溜めた御坂の電撃で電流責(ry

535:名無しさん@ピンキー
08/09/20 01:35:16 EfknqSJ7
何故か某同人サイトで見つけた夏コミ禁書本は、2冊が2冊とも黒子×美琴の百合モノだったり。いや嬉しいけど。
主人公とヒロインw

536:名無しさん@ピンキー
08/09/20 01:39:36 XMdTPged
前戯で終わりの美琴本

537:名無しさん@ピンキー
08/09/20 11:29:10 SQ7yrsTb
>>536

> 前戯で終わりの美琴本


続きはWebで、ですねわかります

538:名無しさん@ピンキー
08/09/20 12:45:42 6LUFEmqZ
>>535
どこの同人サイトかkwsk

539:名無しさん@ピンキー
08/09/20 13:19:30 EfknqSJ7
>>538
エロアニ☆スナイパー
ただし少しが必要なタイプ

540:名無しさん@ピンキー
08/09/20 18:22:10 8HbGVhj1
前戯で終わり………美琴たんならありえるww

541:名無しさん@ピンキー
08/09/20 18:31:56 8znV+kb3
ヘタすりゃ上条さんより不幸だからな

542:名無しさん@ピンキー
08/09/20 19:22:37 dX0S9Uas
タバコみたいな名前の早漏皇みたいな声のメイドを描いてる人だな

543:名無しさん@ピンキー
08/09/21 10:16:53 Yna0BINa
それじゃ一つ投下させてもらいます。
初めに断っておきますが、エロは無しで萌えもなしです。
作者の厨二病を笑うつもりで読むぐらいが丁度いいです多分。
我らが上条さんは別人です。
世界観が壊されたくない人はスルーしてください。

544:たとえばこんな最終場面
08/09/21 10:17:47 Yna0BINa


    ※


 上条当麻は絶望を知らない。
 今まで数限りない「事件」にその右手を突っ込み引っ掻き回しながら。
 しかし激闘の果てに、その混沌うず巻く泥濘の底から必ずハッピーエンドを掴み取ってきたからこそ。
 彼は、本物の絶望を知らない。
 慢性的な不幸に慣れているから、常習的な幸福に慣らされているから、彼は決定的な絶望を知らない。
 だから、その右手の至る先が見えた事もまた、なかった。
 人はその未熟を自覚する所から成長を始める。
 であるならば、紆余曲折あろうと最終的には大団円を迎え続けてきた彼が、成長する事は果たして出来たのだろうか?
 自分が抱える弱さや、未熟や、不完全を、直視し認識することは果たしてあったのだろうか?
 否。断じて否。現状に満足している限り、人は力を欲さない。人は強さを求めない。己の弱さに気づかない。
 だから、上条当麻は、強さを欲したことがない。
 その右手に宿る幻想殺し。上条当麻は、その不完全と未完成に心のどこかで気づきながらも、完成を本気で望んだことはないのだ。不便を感じることはあっても、結局はどうにかなってきたからと、それだけの理由で。
 ゆえに、当然の予想が成り立つ。

 それは、つまり、彼が究極まで追い込まれ、神に祈る段階も悪魔に縋る段階も通り越し、ただ己の未熟を憎悪するしかない状況まで追い詰められた時。
 神を恨み、悪魔を呪い、自分と自分の弱さを殺したいほど憎んだその瞬間に、彼の能力が、真の意味での飛躍と完成を見るだろう、という予想が。


545:たとえばこんな最終場面
08/09/21 10:18:31 Yna0BINa


     ※


 荒涼とした廃工場に、数え切れない人影が転がっている。
 背が低く気の強そうな女子中学生。茶髪にアロハシャツの陰陽師。長髪に巫女装束の吸血殺し。青く染めた髪にピアスをつけた少年。腰まで届く長髪をポニーテールにした聖人。赤く染めた髪にバーコードの刺青を刻んだ魔術師。
 他にも判別しきれないほど多くの人間が、無造作に転がされている。
 その全員が全身のいたる所に傷を負い、意識を失って倒れている。
「どーしたどーした、上条当麻ー。お前の力はその程度かー? あーーーーんだけ鳴らした武勇伝が泣くぜー、オーイ?」
 その正面には、わかりやすく『チンピラ』のテンプレートのような格好をした男が数人と、右手はおろか全身を押さえつけられてもがいている上条当麻の姿があった。
 その中の一人が、目の前の惨状を見せつけるように、当麻の顔を無理矢理上げさせ、状況の認識を強要する。
「さーさーさっさと少年らしく新しい力に目覚めてくれよー! パワーアップイベントに最適だろーがよー、このシチュエーションはー?
 それともやっぱあれかー、一人や二人殺さねーと本気の一つも出せねーってかー?」
 その言葉と同時に耳障りな笑い声が響き、工場の中を反響で埋めていく。いっそ視線で人が殺せればとばかりに当麻は男たちを睨むが、その行為はかえって男たちの笑い声を高めるだけだった。
「まあでも冗談じゃなしに上から命令されてるしなー。いい加減ここらで目覚めてくんないと、おにいさんたち本当に殺しちゃうよー?」
 ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべながら嘯く男たち。地面に力いっぱい押し付けられているために、当麻は唾を吐きかけることもできない。
「じゃあよー、さっき見た獲物ン中に銀色の髪したガキいたろー? あいつ俺に殺らしてくんねえかーあ?」
「なんだお前、そんな趣味あったのかー? 引くぜー、オイ。このロリコン親父がよー」
「いいだろがよ、何だって。いっぺんヒトを、できりゃー女のガキを殺ってみたかったんだーあ。こう、白くてやーらけー腹にナイフ入れてよ」
「マジで変態かお前ー。好きにすりゃーいいんじゃねえの?」
「おうよ、好きにさせてもらわー」

546:たとえばこんな最終場面
08/09/21 10:19:03 Yna0BINa
 その言葉と共に、男たちの一人が輪の中から抜け、工場の外に歩いていく。その後姿を火を噴きそうな視線で見つめることしか、その時の上条当麻にはできなかった。
 男がしばらくたって戻ってきた時には、その傍らに、手足を縛られ猿轡をかまされ、歩くこともままならない、しかし意識だけはしっかりとある銀髪のシスターを連れていた。
「さあーって盛り上がってまいりました! ガンバレ少年! 負けるな少年! お前がなんとかしないとこの銀髪幼女が死んじゃうぞーーー?!」
 一人がそう叫ぶと共に、またも耳障りな笑い声。
 けれど当麻本人はそんなものは気にも留めず、たださっきまでしていた抵抗を更に強めるだけだった。
 手足がアスファルトを擦るのも気にせず、接触面の皮膚が完璧に摩滅し、当麻が組み伏せられている半径一メートルほどに血で描かれた半円ができようとも、上条当麻はあがき続けた。上に自分より大柄な人間を複数乗せながら、それでもなお、全身の筋力でもって暴れ続けた。
 だが、無意味。彼の抵抗など意味を成さないほど、相手の数が多すぎる。彼にできるのはただ、両目を見開いて現実を見据えることのみ。
「さあ、いよいよ男のナイフが少女に突きつけられようとしていまーーーす! 少女逃げる! だけど意味がない! 男のナイフが腹をなぞる! おーっと薄皮一枚切り込んだァ! 赤いしずくがナイフを伝っているーーー!」
 のどを潰したようなくぐもった声が当麻の噛み締めた歯からこぼれる。地鳴りか獣の唸り声かと錯覚させるその声も、この状況では男たちの興奮をあおるだけだ。
「ヤバイ! ヤバイ! これはマジにヤバイです! 踏ん張れ少年! この状況をナントカできるのはお前だけだーッ!」
 すぐそばで実況しながら騒いでいる男の存在など、すでに当麻の視界には入っていなかった。ただ涙目で自分に助けを求める少女を、狂ったように暴れながら見据え続けることしか彼にはできなかった。
 そして、とうとう、決定的な瞬間が訪れる。肌を撫でるように服の上をさまよっていたナイフが、その切っ先が、一瞬の停止の後に、その身を全て、少女の内に埋めた。
 猿轡をかまされていてもなお、正気を削る絶叫が放たれる。まともな神経を欠片でも持ち合わせているのなら、そこに秘められた悲痛さに我知らず涙が落ちるような、声。けれど異常な興奮状態にある男たちには、そんな悲鳴ですらも興奮をあおるスパイスにしかならなかった。
 同時に少年も唸り声を上げるが、それもやはり何もなさない。今日この場所に何百回目かの咆哮が響くが、それはそれ以前に響き渡った数百回と同様、どんな奇跡も起こさない。
 そして、下腹部を血で染めた少女が糸が切れたように倒れ、その体から冗談のような速さで赤い血溜まりが広がって、ひくりと一度震えた後動かなくなったその瞬間。少女の絶叫はとうに止み、少年の咆哮がぱったりと止まったその瞬間。

 その瞬間、その場には確かに、何かが切れる音が響いたという。



547:たとえばこんな最終場面
08/09/21 10:21:38 Yna0BINa


    ※


 その音が本当に響いたのか、はたまた実際には響いていないのか、今となってはわからない。ひょっとしたら、その場にいた一人の少年が変質する雰囲気を、人が音として知覚しただけなのかもしれない。
 確たることは何も言えないが、とにかく間違いなく言えるのは、不審を感じて少年を見た全員が、数秒縛り付けられたように凍りついたという、その事実のみ。
 暴れまわっていた手負いの獣が、いつの間にやら深淵を湛えた化け物に変質しているのを、彼らは理性でなく直感で理解していた。
 少年は話し出す。自分の愚かを悔いるように。自分の鈍さを憎むように。
 自分の弱さを、傷つけてしまった者たちに懺悔するように。

「気づいてた。心のどこかじゃ気づいてたんだ、俺は。ずっと、ずっと前から、不思議に思ってた。
 俺のこの力は、なんでこんなにも不自然なんだろう、って」

「おい! そいつの口を黙らせろ!」
 一瞬前までとは別人のような雰囲気を放つ上条当麻に気圧されたのか、男たちの一人が声を張り上げる。
 けれど、さっきまで完璧な優位の上に立っていた男たちが、今や完全に、組み伏せられうつ伏せにされた一人の少年に圧倒されていた。
 下から睨み上げていた時には嘲笑しか生まなかったその視線は、ことここに至り、全てが手遅れになってからようやく、男たちの抑止力になっていた。
「この右手は、神様だって殴り殺せるのに。魔術師と能力者が全員、束になってかかっても倒せない存在だって、この右手だったら消し飛ばせるのに。
 なのに現実には、俺は、たった数人の能力者にすら、勝つことができない」
 その瞳には、さっきまで猛り狂っていた感情の片鱗も見えはしない。深い湖を覗いたように、そこにはただ、純粋な深さと暗さのみが在った。
 その目に見入り、その深淵を覗いた男たちは、悪魔にでも魅入られたように立ちすくむ。

548:たとえばこんな最終場面
08/09/21 10:22:27 Yna0BINa
「気づくべきだったんだ。気づけるはずだったんだ。
 この力は俺が生まれたときから共にあったけど、この力はこういうものだと思い込むのには十分な時間を過ごしたけど、それでも俺は気付けるはずだったんだ。真剣に、俺自身について考えていれば」
 そこで彼は、その感情の映らない瞳で、倒れている仲間たちを見回した。
 未だ縛られたように棒立ちになっている男たちは目にも留めず、存在すらしないように無視して。
 彼は動かない仲間の一人一人に視線を注ぎ、言葉を投げる。
「存在するだけで最強の座に手をかけるこの力は、なんで右手にしかないのか。まぎれもない万能でほとんど全能にも近いこの力は、なんで右手にしか宿っていないのか。
 違ったんだ。前提からして間違ってた。なんで俺は、こんな簡単な事に気づかなかったんだ?

 右手だけで十分だから、右手にしか宿っていなかったんだ。

 この力は、右手に在るだけで完璧に完成してるから。それ以上あっても無意味なぐらい全能の力を持ってるから。だからこの右手にしかなかったんだ」
 その言葉は、まるで、詫びるように。
 守るだけの力があったのに、その力を振るうことができなかったと、そう謝るように。謝罪するように。静まり返った空間に、響き渡る。

549:たとえばこんな最終場面
08/09/21 10:23:13 Yna0BINa
「考えてたんだ、本当は。
 岩を割ったら破壊だけど、岩を彫ったら創造だ。紙を汚せば破壊だけど、紙を染めれば創造だ。
 一本の大樹を切り倒すのは完膚なきまでに破壊だけど、その大樹を木材にするのは、まぎれもない創造。その木材を切断するのはわかりやすく破壊だけど、その切り分けられた断片で椅子を作れば、それは明らかに、創造だ。
 本質的に破壊と創造は同質で同義。目的のある破壊を創造と呼び、目的のない創造を破壊と呼ぶのが普通ではあるけれど、
 目的なんて主観的なものを両者の区別の大前提においてる時点で、二つは相互に行き来が可能だ。
 そう考えてこの右手を見れば、答えなんてすぐに出たのに。行き着く先も辿り着く果ても見通せたのに。
 この幻想殺しは、その本質は、こんなちっぽけなものじゃないって、簡単にわかったはずなのに」
 上条当麻自身は、まだ何もしていない。ただ韜晦めいた独白を延々と続けているだけだ。
 けれど、ああ、その場にいる者のうち一体何人が気づいていただろう。他ならぬ彼の右手が、心臓が脈打つようにびくりびくりと痙攣していたことを。
 そのリズムに合わせて、弱く弱く微かに微かに、光が明滅していたことを。その光が段々強くなっていたことを。
 そしてその光が強くなるほどに、一つのシルエットが浮かび上がっていたことに、一体誰が気づいていただろう。
 そんな自身の変質を気にも留めず、上条当麻は語り続ける。それはひょっとしたら、現在の自分が世界に遺す、一種の遺言のつもりであったのかもしれない。
「さあ、飛躍の時間だ。飛翔の瞬間だ。お待ちかねだ、嬉しいだろ?
 テメェらのリクエストどおり、俺は、上条当麻は、人間を辞めてやるよ。
 完成に至る論理は単純にして明快。
 即ち、破壊と創造は本質的に同じであるということ。
 そして、俺の能力はあらゆる異能をぶち殺す幻想殺し。
 これらが導くのはどういう結論か。
 それはつまり、こういうことだ」
 その言葉と共に、右手の光がひときわ強く発光する。瞼を閉じても易々と眼球を焼くその閃光は、現れた時同様、一瞬にして弱まり、消滅した。
 その光の後に残るのは。
 竜。
 あくまで人の腕に巻きつける程度の大きさでありながら、人間という種族を完璧に圧倒する化け物。炯々と両の眼を光らせ、明らかに固有の意思を持ち、ヒトを当然のように見下す化け物が、そこにいた。
 その余りの威圧感に、当麻を囲んでいた男たちは当麻を組み伏せていた男も含めてすでに全員地面にへたりこんでいる。
 右腕に竜を従えて、上条当麻はゆっくりと立ち上がった。



550:たとえばこんな最終場面
08/09/21 10:23:57 Yna0BINa


   ※


「この右手が異能を殺せるというのなら、それは即ち、異能を生み出せるということだ。
 この右手があらゆる異能をブチ殺すというのなら、それは即ち、あらゆる異能を、神や天使や悪魔や竜ですらも、生み出せるということだ。
 だから、この右手は、殺し生み出す神の右手。破壊し創造する神の能力。
 あらゆる幻想に終わりを告げる、あらゆる幻想の始まりそのもの。
 そうだ。俺の力の名は、俺の右手の本当の名は、

『それは殺すためだけに生みだされる(ImagineBreaker999)』

 無慈悲で不条理な現実を、現実って名前の幻想を、神を呼びつけてまでブチ殺す。それが俺の能力、幻想殺しの、本領だ」

 そうして彼は、いまや自分以外に立つ者のいなくなった周囲を睥睨する。
 以前の彼からは想像もできない冷たい視線で、ただただ冷徹に無感情に、逃げ出すこともできずに地べたに這いつくばっている男たちを、両の眼で見据えている。
「まっ、待てッ! お前は正義の味方なんだろ?! そんな奴が人を殺してもいいのかよ?!
 俺みたいな奴でも殺さないで改心させるのがお前みたいなのの役じゃねえのか?!」
 一人の男が、まだ腰が抜けている体で叫んだ。けれど上条当麻には、もはやその叫びに揺れる心は残っていない。

551:たとえばこんな最終場面
08/09/21 10:24:52 Yna0BINa
「そうだ。そして違う。
 俺は正義の味方じゃない。ただの偽善者。ただの偽善使いだ。
 だから、俺はお前らを殺さない。だけど、俺はお前らを許さない」
 そう言いながら、上条当麻は右腕の竜を男たちの一人に向ける。その口の前に魔方陣が描かれ、口の中に光が収束し、パラパラと時折光の残滓がこぼれる。
「俺はお前らなんかを殺さない。本当は殺してやりたいが、それは俺の権利じゃない。
 それを持ってるのは、ここに倒れてるやつらだけ。
 俺が守ることができなかった、俺といたせいで傷ついた、ここに倒れてるこいつらだけだ。
 だから、さあ、覚悟しろ。覚悟して覚悟して絶望しろ。
 お前らが見たがった力を、お前らが望んだ本物を。
 今、ここで、見せてやる」
 言葉が終わると同時。
 竜の口に集まっていた光が、その輝きを増していく。竜そのものが現れた時と同等かそれ以上の閃光が、その場にいる人間全ての視界を真っ白に灼き尽くす。
 ただただ静かに。誰かの絶叫や誰かの悲鳴や誰かの懇願を飲み込んで、爆発的な光が冗談みたいに膨れていく。
 その光は弱まることなく。

 純粋な光が世界を染めた。



552:たとえばこんな最終場面
08/09/21 10:25:31 Yna0BINa


   ※


 光が完全に消えるのに、いったいどのくらい時間がかかったのだろう。
 一秒か、十秒か、あるいは一分か。さすがに五分はかかっていないだろう。
 世界が元通りほの暗い月光で満たされた時、その場で意識を持っているのは上条当麻だけになっていた。
 ついさっきまでがくがくと震えていた男たちは、仰向けに、もしくはうつ伏せに、そこら中に転がっている。
 生きているかどうかも定かでない男たちを上条は当然のように無視して、彼は歩み寄った。
 自分のせいで腹を刺され、今はぴくりとも動かない少女の下に。
 そして彼は、無造作に手を伸ばして少女の胸に触れ、同時に耳を口元に寄せる。何かを願うように数秒目を閉じて、そして開いた。
 もうとっくに覚悟はできていたのだろう。動揺したそぶりも見せずに、彼は一度天を仰いだ。
 銀髪の少女は、そのまだ温もりを失わない体は、けれど。
 けれどもう、呼吸も脈動もしてはいなかった。
「悪い、インデックス。ごめん。本当に。
 俺はお前を救えなかった」
 何の感情もこもっていない言葉が、ただ無意味に、彼の口から落ちる。
 それは恐らく、罪の告白。
「俺はこれから、お前を救う。
 お前はきっと、俺を許さない。でも、許してくれ」
 これから行う、絶対に許されない行為の独白。
「この右手は、多分、記憶だって消せるしベクトルだって操れる。俺に敵意を持った全ての人間を倒すことも、絶対じゃないけど多分できる。
 でも、この右手じゃ、人を甦らせることまではできないんだ。
 まだ」

553:たとえばこんな最終場面
08/09/21 10:27:07 Yna0BINa
 もしもこの場に誰かがいたら、上条当麻の異様な気配に思わず身震いしただろう。
 その目には、明確な感情があった。男たちに見せた無感情な瞳は、今は多すぎるほどたくさんの感情であふれていた。
 悲しみ。後悔。喜び。迷い。恐怖。安堵。
 言葉に仕切れないほどたくさんの感情が、浮かんでは沈み、混ざり合っている。
「この右手には、命を消す力はない。
 この力を不思議に思った奴らから、散々言われた言葉だ。俺もそれは知っている。
 この右手は幻想を殺すだけで、現実を殺したことはない」
 きっとまだ迷っているのだろう。
 上条当麻は、その覚悟を決めるために、今淡々と話している。
「だけど、この右手でもしも誰かを殺したら。そうしたら、この右手は、命だって作れるようになる。
 幻想を殺す右手は幻想を生み出すように。
 人を殺す右手は人を作れる。そう思うのは、決してこじつけじゃないはずだ」
 一度言葉を切り、そこら中に倒れている自分の仲間を見る。
 例外なく傷ついて、痛みの余り気絶している、自分の大切な人たちを。
「そうだ。だから俺は、この右手で俺を殺そう。あの男たちで代用できればいいんだけど、なんだか無理みたいだしな。
 俺はあいつらを人間だと思えない。そんな奴らを殺したって、手に入るのは人でなしを癒す力だけだ。
 きっとこの右手は、俺が『人間』として認識してる奴を殺さないと人を治させてはくれない。俺が大切だと思ってる奴を殺さないと、俺は誰も助けられない。
 だから俺は、俺を殺さなきゃいけないのか」
 多種多様な感情を移していた彼の瞳が、落ち着いていく。
 トップからボトムまで変化していた感情が、一つの極に収束していく。

554:たとえばこんな最終場面
08/09/21 10:28:00 Yna0BINa
「怖いな。怖い。
 でも、感謝しなくちゃいけないか。俺が死ぬだけで、この不幸が帳消しにできるんだから」
 その瞳に浮かぶのは、静かで柔らかい覚悟。
 正から負へと移り変わった感情は、感謝に収束した。
「本当に悪かったな、インデックス。俺のせいで、こんな目にあわせて」
 そのまま彼は、ゆっくりと右腕の竜を動かし、自分の左腕に近づける。
 逡巡する間もなく、竜が肘を食いちぎった。
 息を呑む音がする。
 歯を食いしばる音も。
 けれど彼は叫ばない。叫ぶことすら自分には贅沢だと言うように、彼は耐えている。
 竜が、もう一口と顎を開いた。一拍を置いて、またも肉が食いちぎられる音。
 人が肉を咀嚼するような音が、空間という空間を埋めていく。
 そしてその音が引き金になったように、天から羽が降ってきた。
 屋根の存在など完璧に無視して、雪と間違うような純白の羽が、傷ついた人々の上に落ちる。
 なぜか地面には落ちず、人の上にだけ落ちるその羽は、傷口に融けるように消えていく。
 その羽が落ちた場所が仄かに光り、その傷が、少しずつ小さくなっていく。
「ははっ、よかった。俺の考えはあたってる。これで、こいつも助かる」
 それを確認した上条当麻は、痛みに耐えながら、笑った。
 これで、心残りなく逝くことができる、と。そう言いたそうな、笑顔だった。
 そのまま、その竜を。自分の胸に向ける。
「インデックス。インデックス。悪いな、本当に悪かった。
 でも。
 ありがとう」
 言い終わると共に、竜が心臓めがけて喰らいついた。
 血飛沫すら飲み込んで、竜は己の主を喰らう。
 そのたびに羽は数を増し。
 記憶を消した白い羽が、人の上にしんしんと降り続けた。





555:名無しさん@ピンキー
08/09/21 10:32:52 Yna0BINa
終わりです。スレ汚しスマン。
一つのレスにもう少し詰められたなあ。無駄使いごめん。

556:名無しさん@ピンキー
08/09/21 11:49:44 46WGim8Z
禁書板行くべきだったな

557:名無しさん@ピンキー
08/09/21 12:14:17 xAqFiMB+
>>555
GJ
…ですけど流石にスレ違いかなと思いました。
禁書板の方に行くべきでは無かったかと

558:名無しさん@ピンキー
08/09/21 13:20:05 l/U43W3W
吹寄がとうまを振り向かせようと誘惑する萌えなSSはまだか?

559:名無しさん@ピンキー
08/09/21 13:29:06 Nv1mtyqH
通販で買ったあやしい媚薬をとうまに飲ませて襲わせようとする吹寄
放課後呼び出していつものようにとうまに飲ませてみようとする吹寄
しかし効果を確かめようと思ってとうまが来る前に自分でちょっと飲んでみるとあっという間に発情する吹寄
そして逆にとうまを襲う吹寄みたいなシチュはまだかな

560:名無しさん@ピンキー
08/09/21 16:28:07 nNwADLzY
吹寄とインデックスって…誰?

561:名無しさん@ピンキー
08/09/21 17:11:28 6wM3w3kK
都市伝説です

562:名無しさん@ピンキー
08/09/21 17:13:11 zNfbAEwZ
今こそとうま、せいりが来ないんだよネタを……

563:名無しさん@ピンキー
08/09/21 17:37:04 Nv1mtyqH
元から来て無いだろ?インデックス。

564:名無しさん@ピンキー
08/09/21 19:31:53 nNwADLzY
とうま、みんなせいりせいり 言ってるけどせいりってなにかな?私も混ぜて欲しいよ

565:名無しさん@ピンキー
08/09/21 19:48:13 Nv1mtyqH
>>564
吹寄の下の名前だよ

566:名無しさん@ピンキー
08/09/21 20:44:55 l/U43W3W
>>559何をしている!
ここは俺に任せて早くその妄想を文章にするんだ!
あとは頼んだ…ぜ

567:名無しさん@ピンキー
08/09/21 23:01:37 nNwADLzY
Wikiでネタ探してたら、猟犬部隊の追跡班にインデックスがいたんだが誰だよ入れたの吹いたじゃないか
インデックス→ミサカ妹とその逆って相手を何て呼ぶかな探したけど見つからなかった

568:名無し@ピンキー
08/09/22 09:45:56 zkWKvnz8
浜面とアイテム女子3人組のSSをくれ

569:名無しさん@ピンキー
08/09/22 09:49:47 s1otn0IV
アイテムは四人組だが誰を仲間外れにする気だ?

570:名無しさん@ピンキー
08/09/22 10:24:50 I9BDZqiu
違うんだあの四人に男が混じってるんだ

571:名無しさん@ピンキー
08/09/22 12:50:43 Ii1kd94E
なん…だと…

572:名無しさん@ピンキー
08/09/22 15:07:21 J6tuKlAs
まさかブレンダの下半身が無かったのはそういう……

573:名無しさん@ピンキー
08/09/22 16:53:07 HakO6ngE
恐怖の新発想だな

574:名無しさん@ピンキー
08/09/22 18:02:07 z3cY6cPX
フレンダ?「結局、俺とお前ってさ、友達以下の主人と奴隷の関係じゃん?でも俺としては、それ以上の関係になりたいと思ってる。結局、主人とパシリの関係にさ」
浜面「……俺は一体、何処から突っ込めばいいんだ?アレイスターは俺に何も言ってはくれない…教えてくれ、芳川…!」
フレンダ?「なんだ、お前は攻め趣味か?突っ込むってさあ、結局そうなのか?」


アーッ!

575:名無しさん@ピンキー
08/09/22 21:31:29 zkWKvnz8
---大変なことになってるぜい!!
アイテムに異端子が紛れているんだにゃー

576:名無しさん@ピンキー
08/09/22 21:34:51 zkWKvnz8
 浜面×絹旗なんてのがかなり見たいかもっ

577:名無しさん@ピンキー
08/09/22 22:18:21 wBBkwW+4
てかもう絹旗×フレンダを

578:名無しさん@ピンキー
08/09/22 22:27:58 36l8TMbV
ageられつづける限り無理じゃないかな

579:名無しさん@ピンキー
08/09/22 23:01:58 9CPZ4OZ2
>>578
確かにそうかもしれん

580:名無しさん@ピンキー
08/09/22 23:11:47 zkWKvnz8
・・・ですよね、もう少し具体的にしないと。ーということなので一緒に考えてもらえませんか? 

581:名無しさん@ピンキー
08/09/22 23:15:23 36l8TMbV
わざとなのか、そうなのか。
それとも小学生でアルファベットをまだ習って無いのにここにきちゃったのか

582:名無しさん@ピンキー
08/09/22 23:22:08 zkWKvnz8
そこを指摘されちまいますと、ぐうの音もでねぇっすね

583:名無しさん@ピンキー
08/09/22 23:33:37 TKwCzlYh
たぶん言うと老害認定されるけど言うわ。

だからアニメ化は嫌なんだよ。

584:名無しさん@ピンキー
08/09/22 23:40:01 9CPZ4OZ2
>>582
とりあえずsageようぜ意図的ならともかく。
あと案外自分で書いてみると良いのが出来るかもよ?
>>583
その気持ちも分かる。

585:名無しさん@ピンキー
08/09/22 23:45:42 36l8TMbV
>>583
確かに同意だわ。
死ぬかここから去るかどっちか選べとか非道いこといいそうになった

586:名無しさん@ピンキー
08/09/23 00:47:44 Px+l+YPh
アニメ化→ゆとり襲来→過疎化→スレ消滅

黄金コンボですね、わかります。

587:名無しさん@ピンキー
08/09/23 00:49:20 tzcBWeUL
>>586
そんな幻想俺が(ry

正直ありそうでこまる

588:名無しさん@ピンキー
08/09/23 00:51:52 IHMu1p0D
しかしアニメの上条さんは見れば見るほど、原作とかけ離れた顔してるな…
あれじゃ不幸属性ついてるように見えん

589:名無しさん@ピンキー
08/09/23 01:06:50 X+AmEXYT
堕天使メイドアナル本とか普通に出る時代だしな

いいぞもっとやれ

590:名無しさん@ピンキー
08/09/23 01:17:41 84UfW7nw
>>589
あれはいいものだ。赤マルの美琴もよかった。
アニメ化でイイコトといったら同人が増えるくらいか。
どうせ駄同人は誰も買わないだろうし。

591:名無しさん@ピンキー
08/09/23 09:49:11 KJ/o2NBo
電撃の引抜きが遅かったら、超電磁砲の絵師が禁書同人を描いてくれた可能性もあったような。
あの人の絵でねーちんエロが見たかったなあ。

592:名無しさん@ピンキー
08/09/23 11:02:19 7kvLo+XX
昔S○2ってゲームがあってだな。

……だから、>>591が実現不可能なんですよ。

593:579 ◆UHJMqshYx2
08/09/23 12:38:30 Ru4eSgPN
ウェーイ。

ここの平均年齢をどんと上げているおっさんなのにKYでコテつけてて駄文書きが現れたのだぜーいえーい。

594:『握りしめたその手に you_belong_to_me』
08/09/23 12:42:28 Ru4eSgPN
                     -*-

 いつの間にやら向かい合って正座をしていた二人がいま、何をしているかと言えば。
 何故だろう、上条当麻は向き合った少女の胸のふくらみを両手に掴んでいた。上条自身、制止で
きない身体の震えが手のひらにも伝わって、触れている薄くなった古いシャツの向こう側、インデッ
クスの柔らかな双丘を刺激する。
「ひいん、ふあ、あう……ううん」
 大きさがどう、とかそんな話はとっくに意識下にはない。もっと奥のほうから上条を操る何かが、
衝動的に、目の前の少女の、長い銀髪を乱して碧の瞳を潤ませ、白い肌を震わせる少女の乳房を
揉みしだかせる。
 手のひらの中央を、シャツ越しに堅く隆起した何かが突き上げてきた。目の前で荒い呼吸を繰り
返す少女も、抗えない性の衝動が身体を走っているのだ。
 そんな、思考とは言えない、むしろ野性的な直感が、脊椎反射のように上条の身体を巡って、や
はり自分をきちんと制御している、とは言えないままに、手のひらが突き上げる少女の衝動を押し
返す。
「きゅふっ……うん…、ひあ、あ、ああ………」
 半ば身をよじらせて、もう上条には喜悦の声としか聞こえない喘ぎをインデックスが上げた。
 いつかのピンク色どころの騒ぎでは無い―ふんわかなどしていない、自らに欠けたる性への衝
動の―色が、頭の中を染める。このピンク色は前のピンク色とは違う。でも、そんなことが判った
からと言ってどうだというのだろうか?
 その、衝動のピンク色に染まりきってしまった上条の頭の中で確たる姿を保つのは、手に伝わる
感触、瞳を潤ませたインデックスの表情、張り詰めて痛みさえ覚える体の一部分、それくらいしか無い。

 そうしてそれは、インデックス自身にも当てはまることだったのだろう。が、荒げた息を無理に整え
ようとしながら、少女は上条に尋ねた。
「……ねえ、ほら、ちゃんと…育ってるんだよ……?」
 インデックスの少しかすれた声に、堅くなりすぎた分身が激しく自己主張した。腰の奥がうずいて、
震えが背骨を伝って身体を昇る。かはっ、と掠れた息が口から漏れても、それは声にはなってくれ
ない。
 少女の乳房を掴んだその体勢のまま、戸惑うことしかできない上条の表情を見て、相対する少女
が潤んだ瞳を細めた。
 困惑の表情なのか、悲しいのか、そう言ったこともよく判らない。少女の柔らかな感触と生の喘ぎ
声が、何度も言うが、上条の思考能力など、とうの昔に奪い去っているのだから。
 だが、眼前の銀髪碧眼の少女は、上条からの返事の声がないことに不満を覚えたのだろうか。
それとも、それ以上の思惑があったのか。あるいは、上条以上に理性を失いかけていたのかもしれ
ない。
 インデックスの言葉は、さらに上条の理性をもぎ取ることになる。

「……どうして返事、して……くれないの? ……そっか、おなか周りの時みたいに、直接じゃ、ない
から? その……前だって、……と、とうまは、ちょ、直接、見てるんだもん」

 呟きながらインデックスが次に取った行動は、上条の手のひらを自分の胸の上に置いたまま、シャ
ツのボタンを外すことだった。
「――――っ、え……」

595:『握りしめたその手に you_belong_to_me』
08/09/23 12:43:38 Ru4eSgPN
 上条の声が聞こえても(きっと聞こえたはずだ)、インデックスの手は止まらない。一番下のボタン
に手を掛けてそれを外すと、手はそのまま上へ、二つめのボタン、そして三つめと昇っていく。
 シャツの裾が開いて、少女の太股とその付け根が露わになると、そのさらに奥を隠す真っ白な三
角形がちらりと覗いた。
 三角形が次第に大きくなっていくと、表面にあしらわれたレースが、小さな編み目を数えることが
できるのではないか、というほどに鮮明に上条の目に映りこむ。布地の人工的な白さが、インデッ
クスのやや紅潮した肌とのコントラストをお互いに強調しあって眩しい。
 目を逸らせないままにインデックスの手は動いて、火照った肌の上の小さな臍の窪みが上条の
視界に飛び込んでくる。
 柔らかなふくらみを掴んだ手は、何故か離すことが出来ない――いや、離したくないのだ。そう、
ここから手を離したくないのだろう、と、上条がまるで人事のようにぼんやりと考えている間にも、や
はり少女の手は止まらず、自らの胸を柔らかく包む手のひらの隙間を縫うように、インデックスの小
さな手が最後のボタンを外した。
 そうして、全てのボタンが外れてしまったシャツの端を、握り込むようにインデックスが掴む。そう
することで、一直線に、少女の鎖骨の窪みから、上条が掴んでいるふたつのふくらみの微かな谷間、
小さな臍までの真っ白な、しかし上気してややピンクがかった肌が上条の眼前に晒される。

「………ふう……」
 インデックスの口から溜まった呼気が漏れた。
 真っ赤に染まった顔の、やや心許なげに震える唇が、上条にはどうにも艶めかしく見えて眩しい。
眩しいのだが、目を離すことは出来ないのだ。
 目を離すことが出来ないまま(さらに言えば、両手も離せないまま)、上条は半ば硬直状態に陥る。
 そんな上条の状態が判っているのかいないのか、インデックスがシャツの裾をぐい、と強引に引
き下ろした。シャツがはだけて白い肩が出てきた、と思う間もなく、脱げ落ちる布地に引きずられて
上条の手が離れる。離れると、引かれるがままになったシャツは完全に少女の上半身から落ちて
しまった。
 瞬間、インデックスが羞恥に顔を真っ赤に染めて俯く。自分がぐぎゅ、と唾を飲み込む音が、やけ
に大きく上条の耳に響いた。

 少女の双丘を隠すものは、もはや何もない。ピンク色に火照った二つのふくらみが、荒くなった呼
吸に併せて上下する。きめ細かな肌は艶めいて、しっとりと浮かんだ汗に光っているかのようだ。
「ねえ、とうま」
 碧色の瞳を震えるように潤ませ、顔を真っ赤に染めた少女が、小さな声を上げて上を向く。
 それと同時に、小さくても形の良い隆起―要するに、乳房―がぷるん、と揺れて、その頂上
に輝いていた薄桃色の蕾が震えた。
 その小さな声に、やはり上条は言葉を返せない。
 しかし、上条の目は、シャツ越しにも自分の手にはっきりと伝わってきた、少女の、インデックス自
身の性の疼きが、天井の灯りを反射して輝く双丘の上で堅く虚空を突き上げているのをしっかと捉
えて離さない。
 もっと、舐め回すように見たいと直感的に思い、しかしさらに意識の奥、さっきからずっと上条を支
配している本能的な部分が手を動かす。そう、これに触りたい。これに触って良いのは自分だけだ
――。
「や………っ、ひあ、あんっ」
 乳房を鷲掴みにされ、インデックスが悲鳴にも似た声を上げる。しかし抵抗は、しない。
 上条の手のひらの中で、小さな―本人は『成長している』とは言っていても、やはり小さい(が、
そんなことはもはやどうでも良い)胸がふにゅ、と形を変え、それでいてしっかりと伝わってくる肌の
張りが握るその手を押し返す。何もかも弾いてしまいそうな張りと艶なのに、それでいてきめ細か
な肌は上条の皮膚に吸い付くようにしっとりとしてさえいる。プリンとか、マシュマロとかそういった
感覚を最初は覚えたけれども。
 違うのだ。

596:『握りしめたその手に you_belong_to_me』
08/09/23 12:45:20 Ru4eSgPN
 これは、他の何かなどではありえない。これが、『インデックスのおっぱいの感触』、なのだ。他の
何と比べようというのか。比べようなど無いではないか。
 そう思うと、さらに手はインデックスの感触を求めてふくらみの上を這い回る。押さえることなども
はや不可能な興奮で息が荒くなる。その荒くなった息が、少女のそれと重なった。
「ふあ、あ、あ、あ、あ、あ、と、とうま――」
 ついさっきよりも、もっと艶めいた喘ぎをインデックスが漏らす。震える少女の腕が、上条の袖を掴
んだ。
「………っ?」
 袖を引かれて一瞬、理性のようなものが舞い戻る。舞い戻った理性が、本当にこのまま触り続け
て良いものか、という思考に変わって脳裏を掠めて、しかしそれでも触感として伝わる少女の乳房
の感触に、手は触ることを止めようとしない。むしろ行動はエスカレートしていくばかりだ。
 両手の手のひらを回すようにしてふくらみの稜線を撫でさする。
 さらに自分の息が荒くなっていくのが、上条自身にもよく判った。
 なぜ、判るのだろう? いや、強烈な興奮が、逆に頭の中のどこかに冷静すぎる自分を作り上げ
ているのだ。しかし、そんな自分が居ても、行動を止めてはくれない。ただ見守るばかりだ。そうし
て、その客観的すぎるもう一つの視点が、さらに上条を興奮の渦へと押しやるのだ。
 頬を染め、碧眼を潤ませた銀髪の少女が自ら上条の前にさらけ出した、その二つの小さな白い
峰を包み込むように押し当てられていた手のひらを動かす―いや、勝手に動いてしまう。

 その手のひらを押し返してくるふくらみを押し上げ、寄せ、離し、押し下げて、そのリズムを変えて
繰り返し、ときおりきゅう、とかすかに力を強めて白い肌に指を埋める。
 少女の峰の頂上にある小さな蕾が少しずつ堅くなっていくのが、シャツの布地を隔てていても判っ
 ていた。が、それで終わりではなかったようだ。
 直接、上条の手に触れられて、蕾はさらに堅く大きく膨らむ。
 膨らんだ蕾が上条の手のひらを押し上げた。その快感を伴う微妙なくすぐったさに耐えられず、ご
ぎゅ、と音を立てて唾を飲み込みながら、親指付け根と手のひらの間で、上条はその蕾―インデッ
クスの乳首―を挟み込んだ。
 くりん、と硬くなった乳首が手の中で横を向く。
「ひゃひいっ」
 上条の袖を掴んでいたインデックスが、悲鳴を、しかし喜悦の喘ぎに埋もれた悲鳴を上げる。
 こりこりと親指の根本に感じる乳首の硬さが、どこかたまらない。この、少女の性の疼きに堅くなっ
た乳首をもっと虐めてやりたくなる。両手の人差し指と親指で、片方ずつをつまみ上げた。
「きゅふっ、うあ、あ、ああ…………」
 自分自身には触ってもいないのに、耳を突き抜けるインデックスの喘ぎ声と、指に、そして手のひ
らに伝わる感触が屹立する上条の分身をも刺激する。突き上げて擦れて、少し漏れ出したような
感触を覚えた。その感触が、上条をさらにエスカレートさせる。
 中指と親指で、先端の小粒をつまみあげる。残った指で、その周りのピンク色を撫でさすった。
「やあ、あん、あっ、あっ、あ、ひあ、あ、ひう、」
(先っちょだけじゃなくって、周りも膨らんで堅くなるのか)
 などと、あえぐ少女の声を聞きながらも冷静なままの部分が勝手に分析をして、またもやさらに煽
られる。
 もう一度、手のひら全体でインデックスの乳房を掴んだ。手の中で形を変えるその感触を、押し返
してくるその張りを、突き上げて擦れる堅くなった乳頭が転がるのを、その感覚を一瞬たりとも逃す
まいと揉み上げる。
 少女が掴んだ袖の、その指がぎゅう、と固く絞られ、引っ張る力が強くなった。
「い、インデックス……」
 快感に耐えかねるように下を向いていたインデックスが、名前を呼ばれて上条を見上げる。
 焦点を合わせるのも難しそうに、その碧眼が上条の目をのぞき込む。そしてやはり力の入りかねると言った感のその唇が、一つの単語を紡いで投げつけてきた。
「とうま、とうま、とうま、とうま―――――」
 そうして少女はひときわ大きく身体を震わせると、かくん、と糸が切れたように力を失って前方に
倒れる。倒れて、インデックスは上条の太腿に頭を埋めた。しかしてそこには、耐えきれぬほどに
震える分身がいきり立っているのだが。
 少女の荒い息がズボン越しに上条を煽る。ズボンを掴んだ手に、どうにか力を込めて少女が上を
向く。
 その整った顔に浮かぶ、淫靡に崩れた表情を見た瞬間、上条の頭の中のどこかに残っていた最
後の一本の線が、音を立てて、切れた。

597:『握りしめたその手に you_belong_to_me』
08/09/23 12:46:34 Ru4eSgPN

                     -*-

 部屋に差し込む朝日の光が頬を撫でて、上条は目を覚ました。
「……………??」
 どうして自分はベッドで寝ているのだろう、と言う疑問が上条の寝ぼけた頭の中に浮かび上がり、
続けて昨夜起こった『あること』へと思考が繋がる。
 がば、と跳ね起きた。そうしようと思ったのではない。身体が勝手に跳ねたのだ。
 頭を振り回すように左右を見回し、思い出されたそのことが夢や幻などではなく、事実だと知る。
 しかし、やってしまった、と言うよりもむしろ『来るべき時が来てしまった』、という感覚が先に立つ
のは何故なのだろうか。

「とうまに、食べられちゃったんだよ……」

 傍らで上条を見上げる銀髪の少女が、はにかむようにその頬を染めて、跳ね除けられてしまった
毛布を引き寄せる。毛布に顔を半分埋めるその間にも、一糸もまとわぬ少女の、まぶしいほどに白
い肌の色が目に入った。
「うあ、あうあ、そ、そのだな、インデックス、」
 目に入った裸の肌にまず顔が火照り、昨夜の記憶が心臓を踊らせる。まともに言葉が出てこない。
「へへへ」
 慌てる上条の腕に、頬を染めたインデックスが身を寄せてきた。ぴた、とその頬を添え―
「え? おい、すごい熱――」
 上条の手に触れたインデックスの頬が異常に熱い。慌ててその手を額へと回した。やはり、熱い。
 慌てる上条を見上げて、インデックスが呟いた。
「なんでだろ。わかんないんだよ……? なんで、熱、出たのかな?」
 へへ、と力なく笑うインデックスを見て、ピンと来る。そういうことか、つまり。
「う、は、初めてだったもんな、無理させて、熱、出ちゃったんだな………。す、すまん」
 いったん言葉を切って大きく息を吸い込み、言葉を続ける。
「どお、どっちにしたって俺のせいだもんな、とにかく今日はゆっくり休まなきゃ。そ、そうだ、今日は俺が付いててやるよ、な、学校は休むから」
 聞いて、少しだけ驚いたような顔をしたインデックスだが、すぐに照れたように微笑んで上条の腕
に捉まった。そこに浮かび上がった表情が、昨夜、初めて繋がった瞬間と同じ表情であることには
気づいたものの、それが幸福感を満たした表情だ、と言うことにまで上条が思い至るのには、あと
数時間を要する。とまれ、このことはまた別の話だ。
「と、とりあえずは、だ、熱、あるんだから、服着てちゃんと暖かくしないとな」
「………とうまが着せてくれるの?」
 少女の甘えた声に、少年は派手に赤面した。

                     -*-

「熱が出たのでお休みさせてください小萌先生」
「セリフが棒読みなのですよ上条ちゃん? 電話でそんなことを言ってまで学校をサボるのは、先
生は許さないのですよ?」
「………………………あー、その、」
 適当に誤魔化すことは出来ないようだ。熱があるのは事実なのだから―上条ではなくインデッ
クスが、なのだが―、曖昧に出来れば良かったのだが。
 それでも、小萌は上条とインデックスが一緒に暮らしていることを知っているワケだから―、さら
には、インデックスが(上条の記憶に残る限りは)これまで体調を崩したことがないことも知っている
だろうから、はっきりと言ってしまう方が上策なのかもしれない、と上条は思い直す。
「実はインデックスが熱を出しちゃって。詳しいことはよく判りません。看病したいのです小萌先生」
「それならそうと最初から………ん? まさか、上条ちゃ―」

ぶつ。ぷーーーーーーーー。

598:『握りしめたその手に you_belong_to_me』
08/09/23 12:47:31 Ru4eSgPN
 上条が携帯を切ってしまった。無機質な電子音がスピーカーの奥から聞こえて、ここで名前を呼
んでももう切れているから無駄、と小萌は携帯電話を耳から離した。
 その携帯電話をじっ、と見つめる。
(シスターちゃんが熱を出したと言うのは本当のことみたいですけど、上条ちゃんがどうしてあんな
に焦って電話をしてくるのでしょう?)
 月詠小萌の心中の疑問、というかなにか上条に対しての疑いめいたものは、アパートを出ても、
朝礼、さらには職員周知が終わっても消えてはくれなかった。ぶつぶつと呟きながら、いつの間に
やら自分の担当するクラスに辿り着く。
 扉を開けると、数カ所に固まっていた生徒たちが慌てて自分の席へと帰って行った。
 クラス委員の青髪ピアスが手を挙げて発言する。
「せんせー、カミやんが来てへんのです。電話にも出えへんし、土御門も見てへんって言うとって」
 上条が居ない、というその発言に返答しようとする。
 しかし、考え事に集中力を奪われていたためだろうか。小萌の口から漏れたのは、用意していた、
というか、おそらく上条が期待しているであろう、と自身考えていたものとは違うセリフだった。

「ああ、上条ちゃんのことなら聞いているのですよー。シスターちゃんが訳ありで熱を出してしまった
ので、看病するから休ませて…………あ、」





 小萌が口を塞いだと同時に、ガタガタッ! と、派手に音を立てながら数人が立ち上がった。






 誰もが上の空のまま、それでも時間が過ぎて放課後。

「どういうことかきっちり説明して貰わないとね」
 長い黒髪を額で二つに分けた少女が、頬を引き攣らせながら言った。言って、ドアの前にしゃが
み込む、サングラスを掛けた男子生徒に命令口調で吐き捨てる。
「鍵、無くしたときにこうやって開けたって言ってたわね? そのやり口はともかく、出来るって言うな
ら早くしなさい」
 続くのは、同じく長い黒髪の和風な雰囲気の少女。
「小萌が。しっかり監視していないから」
「ひ、姫神ちゃん? いきなり何を?」
 背後に立ち尽くす青い髪の巨漢は、少女たちからは完全に置いてきぼりだ。何か言おうと手を挙
げかけ、張り詰めた空気に出しかけた手を引っ込め、それを繰り返し、そしてため息をつく。
 次の瞬間、カチャリと音がしてドアに張り付いていた男子生徒が振り返り、
「開いた、んだにゃっ!!!!!」
 喋ろうとして、ドアの前から慌てて飛び退いた。………蹴り退けられる前に。





                     -*-

599:『握りしめたその手に you_belong_to_me』
08/09/23 12:48:09 Ru4eSgPN
「ちょっとはマシか? なんか、さっきよりしっかりした物食べれそうか?」
 洗濯物を取り入れて、ベッドサイドに上条が歩み寄る。上条の声を聞いた少女は、声の主を見つ
め返しながら、ベッドの上で半身を起こした。
 その碧眼を微かに細めて呟く。
「わたし、とうまにあげられて、よかった」
「ね、熱、出てるのに、そ、そんなこと言ってる状況かよ……い、今は、早く熱、下がるようにしなきゃ」
 頬が紅潮しているのは熱が出たせいなのか、それでもついさっきより赤い顔をしている気がする
碧眼を潤ませた少女に、気恥ずかしさからか少しだけ乱暴に声が出る。しかしそれでも微笑むそ
の表情を変えないインデックスに、慌てながら、絞り出すようにして言葉を継ぎ足した。
「す、好きな女の子としたんだ、って、まだ、も、ものすごくドキドキしてる……。せ、責任、取らなきゃ
な」
 インデックスは額に添えられていた上条の手のひらを掴むと、それを頬に添えさせる。触れた手
のひらで頬を包むように上条が少し手の力を抜くと、インデックスはそれが嬉しいのか心地よいの
か、潤む碧色のその目を細めた。
「……嬉しい、とうま……。大好きだよ、誰よりも、何よりも、本当に、大好き」
 上条は、本当に幸せそうにそう言った少女を見つめ返す。
「また、先に言われちまったじゃないか……。なんか、情けなくなってきたぞ」
「これから、いっぱい、いっぱい言ってくれるんでしょ? それなら、いいかも」
 上条の呟きに返答したインデックスはくす、と微笑むと、少し上向き加減に顔を上げて瞳を閉じた。
「あ、あう……」
 今日何度目の要求だろうか。何度目でも、二人きりでも、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。しかし、そうして求められることもまた、快感なのは何故だろう。
 身体を折って、覆い被さるように少女の顔に自分の顔を近づける。自分も目を閉じた。
 自分の唇が、インデックスの唇と触れあう。何とも言えず幸せな感触――

 を、堪能するのもつかの間。


 鍵がかかっているはずの玄関ドアが、大きな音を立てて乱暴に開け放たれた。



                                             ("you" belong to......."me"?)

600:579 ◆UHJMqshYx2
08/09/23 12:50:52 Ru4eSgPN
で、吹寄が上条を誘惑する>>599のSSマダー??

601:名無しさん@ピンキー
08/09/23 12:56:07 e0/qH9sK
>>600
GJ!やっぱこの後日談的なものがあるといいなぁw

しかしうっかり自分にレスしちゃうなんてカミジョーちゃんはうっかりものですねー。

602:名無しさん@ピンキー
08/09/23 14:22:15 Qwl2MMgq
GJ!!
次回作も期待してます

603:名無しさん@ピンキー
08/09/23 15:46:03 Bj8Wib84
>>600
GJ!!
てか書く気満々だねってミサカはミサカは期待満々の心持ちでまってみる事にする

604:名無しさん@ピンキー
08/09/23 16:33:51 e0/qH9sK
ちなみに599だけどプロットみたいなのは作れてもシナリオかけないから
他の誰かが書かない限り一生あのSSは生まれないと思うんだにゃー

605:名無しさん@ピンキー
08/09/23 16:35:55 e0/qH9sK
って俺も同じ間違いしちゃったんだにゃー。
×599
○559
罰としてロー○正教の本山でコー○ン配布してくる

606:名無しさん@ピンキー
08/09/23 21:19:04 PTdcHqQE
>>600 GJ!! ところで、

>長い黒髪を額で二つに分けた少女

て、誰だろう?

607:名無しさん@ピンキー
08/09/23 22:21:56 N5tl/zhX
>>606
吹寄制理

608:名無しさん@ピンキー
08/09/23 22:28:43 PTdcHqQE
>>607 ああ、そうか。ありがとう。

609:名無しさん@ピンキー
08/09/24 02:42:10 Zl3araOc
なんかこう凄すぎて言い表すための言葉がおれの中に存在しない……

610:名無しさん@ピンキー
08/09/24 10:28:57 n8RXscV/
>>609 っそげぶ

611:名無しさん@ピンキー
08/09/25 20:04:11 ez4lvhF8
吹寄さんとカミジョーさんがイチャイチャする話はまだですか?

612:579 ◆UHJMqshYx2
08/09/25 21:05:00 8ocPuA2e
??
>>600
……………ぎゃああああ!!!
当分姿をくらましますので探さないでくださいorz

613:名無しさん@ピンキー
08/09/25 21:09:48 3HkkOQTR
>>612
罰として559の妄想をSSにする権利をやろう!
というか自分が読みたいので御願いします。

614:名無しさん@ピンキー
08/09/26 00:46:10 C19bc9T3
お久しぶりです。
ぼやぼやしている間に、すっかり夏が過ぎ去ってしまいました。
応援してくださった方々に申し訳なさを感じる一方、散発的にレスを消費する
ことにも後ろめたさを感じる最近。

ともあれ、また続きをやらせて頂きたいと思います。
* オリキャラ有り。例によって苦手な方はスルー願います。

615:夏よ過ぎ去れ、速やかに ――Sunnydays 18
08/09/26 00:51:21 C19bc9T3

夏の夕べは日の入りが遅い。
午後6時過ぎ。
溶けたガラスのように、真っ赤に焼けた空を映して、海もまた、眩しいくらいに輝いている。
寄せる波にあわせて、スマートな船体が穏やかに揺れる。
朱の渚に、白い小船が並んで船体を休ませている様子は、白鳥の群れが静かに一日の終わりを待って
いるようにも見えた。
「ヨットハーバーか。こんな所に連中の目があると思うか?」
「さあね。でも人がみんな帰っちゃった海水浴場をウロウロしてても、しょーがないっしょ」
Tシャツ短パンの軽装で桟橋を歩く浜面の隣では、水着の上から青のパーカーを引っ掛けた麦野が、
カコカコとサンダルを鳴らしている。
時刻の関係か、風はごく微風。
しかし開けた海辺では、流れを遮るものは無い。
潮の香りを含んだ穏やかな流れが、額から剥き出しの足首までを、満遍なくさらってゆく。
日の傾きとともに暑さも退いて、弱い風でも十分に涼しかった。
「いやぁー、気持ちいいね。やっぱ本物の海は違うわ」
言って、麦野はぐっと伸びをする。パーカーのビニール地が、ふくよかな膨らみに押し上げられて張
るのから、浜面は慌てて目を逸らす。
「プールじゃ味わえないなぁ。どんなにでっかいマンモスサイズでも、潮風とか水平線の眺めなんて
、再現できないし」
「外に出るにも、いちいち許可が要るし?」
「だから有難みも大きくなるってね。ま、嬉しい事じゃないけど」
飄々と言い放つ麦野の横顔に、ふと、彼女が以前に海を見たのはいつの事だったのだろうかと、浜面
は思った。
足の下で、静かにさざ波が揺れる。風の静まる凪の時間、今ばかりは海鳥の声も絶えて、海の輝きだ
けがただ眩しい。
周囲で目に付くのは、ヨットマンなのか、日に焼けたドライスーツの人々。そして男女のアベック―
―今の浜面たちも、彼らの一組に思われているのだろうか。
なんとなく、今同じ場所にいる彼らが、今日どこからここへ来て、これからどこへいくのか―そん
な疑問が頭をもたげた。
マストの林の向こうに視線を転じれば、空と海の境へと消えていく茜雲。
まるで、世界の壁が大きく広がったようにも思える。空がどこまでも続き、太陽と夜を追って、どこ
までも旅して行けそうだった。
(……アホくさ。俺は12のガキか何かか?)
「遠いね」
「っ」
感情の読めない囁きが、浜面の思考をかき乱す。
振り向けば、麦野もじっと、海の彼方を見つめている。細められた目は、暮れの水平線を映して仄暗
い。
「見れないよね。あの街にいたんじゃ」
「……」


616:夏よ過ぎ去れ、速やかに ――Sunnydays 19
08/09/26 00:53:42 C19bc9T3
なんと答えるべきか、逡巡する。
分からない。麦野が今、本当は何を見ているのか。そして、その先に何を望んでいるのか。
―分からないから、答えようが無い。その事実は、浜面には今更ながら、少しショックだった。
「訊いていい? レベル0って、どんな気持ち?」
「な、に?」
唐突な質問に面食らう。
意図を計りかねて、浜面の答えはぎこちない。
「スキルアウトがどんなものかなんて……想像付くだろ?」
目を逸らす。
足を止め、ちょうど目の前に泊められていたヨットに、勝手に飛び乗る。
ゴンッという振動が船体を揺らし、浜面は船板越しに、海を踏みしめた。
あまり正面に向き合って話したい事ではなかった。
「最初の学校じゃ、周りから無視された。生徒だけじゃねえ、センコー連中も、まるで空気みたいに
素通りしていきやがった。朝の挨拶、授業中の指名なんかはもとより、生活指導もだ。課題を提出し
なくても、怒りもしなけりゃ注意もしねえ。一度頭にきて、校庭で堂々とタバコを吸ってみたら、や
っぱり何も言われなかった。風紀委員の方が構ってくれた位だ」
舳先まで歩き、赤黒い海面を覗き込む。
波間に映る自分の表情は、照り返しでシルエットになり、見えなかった。
「で、程なく転校だ。『能力、品行、本人の志望等を考慮した結果、最適と判断された環境への移行
』とかなんとか言ってたが、要は『ウチで飼っておく価値が無いから、とっとと出てけ』ってこった

ゴトンッと再び振動が走って、浜面の足元が上下に大きく揺れた。麦野もこちらに飛び乗ってきたの
だろう。
あえて目を向けず、苦い記憶を喉から吐く。
「転校した先は、まあ、すぐに辞めた。んで、スキルアウトに入った。おわり」
「そんなこんなで、はまづらクンの人生は裏街道まっしっぐらってわけ? あんた、案外根性無いね

どことなくワザとらしい声で、麦野はうそぶく。
しばし沈黙。
二人、並んで海を見る。
高く声を張り上げて、カモメが一羽、頭の上を飛んでいく。ややあって、後に続くように、2,3羽
が空に飛び出す。
戻り始めた風に、明るい茶の髪が流れて、浜面の鼻先をかすめた。
―そのあたりで、浜面は観念した。
「……分かった。分かったよ」
「へたれ野郎」
「ぐっ。……転校先は、まあ、クソみたいなところだった。聞いた話じゃ、下位ランクの学校っつっ
ても、色々あるらしいが、俺の行った先はどうしようもねぇ吹き溜まりだった」
「チンピラの集まりとか」
「俺に言わせりゃ、そっちの方が万倍マシだったな」

617:夏よ過ぎ去れ、速やかに ――Sunnydays 20
08/09/26 01:02:59 C19bc9T3

そこは低ランクなりに、成果を出そうと、熱心で懸命な教育を行っている学校だった。ある意味では
学園都市の学校として、模範的な指導方針ではあったろう。
しかしその専心ぶりは随所に歪んだ形で現れ、それは生徒達にも伝染していた。
低ランクの学校だけあって、集まってくるのは強度の弱い能力者ばかり。
元々『出来がよくない』生徒達は、執拗な能力開発にさらされ、多くの者がコンプレックスを醸造さ
れる。
その先にあるのは、弱者同士の蹴落としあいだった。
卑屈な劣等感、その裏返しの優越感。
それらが評価され、順位付けをされる環境。
今思えば、どうしようもなく下らない所だったが、あの時、渦中にいた浜面には、そんな環境をどう
こうする余裕などなかった。
レベル2の念動力者―ベッドに寝転がったまま、テレビのリモコンを取れる程度の生徒が、やたら
と幅を利かし、他の学生達が一様に羨望の眼差しで見つめる。
まるで全国模試の上位入選者でもみるような、尊敬、憧れ、そして嫉妬の入り混じった視線。
―そしてそれを鷹揚に浴びる、あいつの顔。
王様みたいに振舞う、その生徒への反抗を見せた日から、無視される日々が再び始まった。
同じクラスにいたのは、ブックカバー越しに本のタイトルが読めるというレベル1。
古典マンガの番長みたいにふんぞり返り、レベル0をパシリに使っていた。
―拒めば、何故かクラス全員が敵意を剥き出しにした。1対38。従わないわけにはいかなかった。
レベル0どうしでも、1分ほどウンウン唸って本のページ1枚を念力でめくれるヤツと、5分頑張っ
ても何も起こせないヤツでは、決定的な上下の階級に分けられる。
―何も起こせなかった浜面は、執拗なイビリに遭った。
共同体というよりも、1つのシステムという表現が適当だ。何故そうなのかも分からない。誰も満足
していないのに、誰も良くしようと思わない。ただ、周りがそうだから、皆それに従っているだけ。

転校して1ヶ月経ったある日、例のレベル2が、当時浜面が愛用していたバイクを奪い取り、挙句、
壊した。
キれた浜面がバイクのメットで殴り倒すと、ヤツは白目を剥いて昏倒した。自慢の念動力は、どうや
ら喧嘩に使える程の物でもなかったらしい。

全てがバカバカしくなった浜面は学校を辞め、ほどなくスキルアウトに入った。



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