09/07/15 04:25:33 lXorF5Vn
祈りの言葉が終わると、おのおの両手に一本ずつ箸を持ち、
それを目の前の茶碗にそっと添えた。
「それではみなさん『いただきます』」
「「「「「いただきます」」」」」」
学園長でもあるシスターのお言葉とともに、全員が行儀よく茶碗を叩き鳴らす。
右、左、右、右、左、右、左。
自分の茶碗にご飯が盛られるまで、決められたリズムで茶碗を一心不乱にたたき続ける。
きちんと『いただきます』ができない子供が増え、
食育の重要性が叫ばれる世の中だが、ここではそんな心配はない。
そしてご飯が盛られた生徒から好き嫌いなく、栄養バランスを考え、
目の前に横たわる食器から自分が食べたいものを取り分けていく。
くちゃりくちゃり。ずずーっ。
咀嚼音や味噌汁をすする音などが大食堂に響き渡る。
ここでは音を立てないで食べるような下品な生徒はひとりもいないのだ。
時折、咀嚼した食事を口移しで食器係へと食べさせてあげる生徒もいる。
そのとき、箸の先で乳首をつまんだりするいう気の配りよう。
もちろん、食器係の表面に残った食べ残しは、生徒全員でなめつくすのも忘れない。
食事の最後には、みんな揃っておなかを前に張り出しつつ右手でぽんぽんと2回叩いて
「ごちそうさまでした」と挨拶し、シーシーチッチッと爪楊枝で歯をせせるのも忘れない。
学生の食事とはいえ、一切の気の緩みも見せず礼儀を重んじるこの学園ならではの光景だ。
昼休みが終わると、週1回設けられている「礼儀作法」の時間がはじまる。
もちろん教師である俺は参加する必要はないのだが、
教室の後ろでそれを見るという義務がかせられている。
今日も『正しいバイブの使い方』なんていう、単調かつつまらない内容だ。
「このような『くわえバイブ』は大変みっともなく見えます。
ちゃんとバイブは1回ずつ根元まで差し入れ、そして外に出すのがマナーです」
ほかにも『ねぶりバイブ』『重ねバイブ』『移りバイブ』『寄せバイブ』『涙バイブ』など、
男の俺には役に立たないマナーばかりが紹介されていく。
もっと実践的なマナーを紹介してほしいものだ。