09/04/05 17:00:13 hWjBU/IN
理央の優しくて残酷な言葉に心をぐちゃぐちゃに抉られながら、恵は大声で叫んだ。
「まだ私がいるじゃない! 私といっしょに逃げましょう! 私たち、家族じゃない……」
恵の視界で、理央の顔と生前の妹の表情が重なる。
しかし理央は空虚な視線で、意味が解からないとばかりに「師匠」の取り乱す姿を眺めてくるだけだ。
「二回も家族を失ったら……二回も守れなかったら……私はもう……!」
…………………………………………………
……………………
山林の中で寄り添う二人の巫女を、静かに観察している影があった。
それは辛うじて人間の形は保てていたが、人間の姿をしていなかった。両腕はヒジから先が引き千切られ、
股間は深く裂けて腸や子宮の残骸を垂れ落とし、乳房は抉られて骨が見えている。全身に付いた歯型と裂傷
と魔物の唾液が、彼女の肉体に何が起きたのかを示している。
足は噛み切られていたが、平然と立っていた。
そして彼女の頭は欠けた月のように左頭蓋が抉りとられて脳味噌が零れ落ち、鼻や唇や頬肉は剥ぎ取られ
ていた。耳も存在しない。ただ飛び出しかけた眼球だけが虚ろに首と違う方向を向いている。
姫宮真央。
魔物に食い千切られた彼女は無言で、恵と理央の姿をじっと観察している……!
(続)