09/11/06 23:23:24 Tk3vsFsf
「眠れないの? アイリーン」
「あっ……ザギヴさん」
寝付きが悪く、ベランダに出て夜風に当たっていたアイリーンはザギヴに呼ばれ、振り向いた。
元々端正な顔立ちをしている彼女だが、月の光に照らされると更に美しさが増して見える。
同性ながらも自分とはあらゆる部分でかけ離れている彼女に対し、アイリーンはドキリとした。
「月が綺麗ね……」
「はい。ザギヴさんも眠れないんですか?」
「ええ、少し寝汗をかいちゃってね。夜風に当たりに来たの」
そう言いながらザギヴは長く、綺麗に整えられた黒髪を手で払った。
こう言った仕草の1つ1つが美しく見えるのも容姿だけでなく、普段の態度や性格もあるのだろう。
全く何1つ敵わないなぁ―アイリーンは以前母親にカットしてもらった髪を恨めしそうに触った。
自分も彼女のように髪を長くしてみれば、あの見放せない“幼馴染”も少しは振り向くだろうか。
「はあ……」
「溜息を吐くと幸せが逃げるわ。彼……オールの事でも考えてた?」
「ええ、まあ…………って、急に何を言い出すんですか!!」
「あら、違った?」
「ち、違うと言えば嘘になるようなそうでないような……」
ザギヴに見事に考えを当てられ、顔を真っ赤にしながら狼狽するアイリーン。
必死に今の言葉を否定する彼女が面白くて、ザギヴはクスクスと笑っている。
「別に恥ずかしがる事なんてないわ。貴方の年頃なら異性の事を考えるのは普通よ」
「うう~……」
これ以上赤い顔を見られたくなくて、アイリーンは顔を伏せる。
少しからかいすぎたかしら―ザギヴは内心で彼女に謝った。
「ねえアイリーン……貴方はオールの事が好き?」
「――ッ!? きゅ、急に何を……!」
「教えて。貴方はオールの事が好きなのかしら?」