卓上ゲームエロパロ総合スレ23at EROPARO
卓上ゲームエロパロ総合スレ23 - 暇つぶし2ch200:マッドマン ◆265XGj4R92
08/07/29 17:55:06 Ixwoq7rw
投下完了です。
柊と勇士郎のコンビに、ベルが合流しました。
次回からこの一風変わったトリオが頑張ってくれると思います。
柊は何度となく戦った魔王にどう思うのか。
勇士郎は段々下がる男のような不幸属性に打ち勝てるのか。
ベル様はポンコツ属性から抜けれるのか。

敵は強大です。
下手な雑魚魔王なら一人でもぼこせるような面子に大して相応しい敵を用意しています。
あっと驚いく仕掛けを用意しています。
どうぞお楽しみに。

なお、呼びにくいでしょうのでここでのHNはマッドマンで固定させていただきます。
よろしくお願いします。

201:名無しさん@ピンキー
08/07/29 19:18:53 ZVS6vl97
>200
期待しますぞ、マッドマン殿

> ベル様はポンコツ属性から抜けれるのか。
あぁ、うん……抜けられるといいねぇ
……たぶん無理……



202:名無しさん@ピンキー
08/07/29 19:45:59 PegG1Ovw
飯食いに離れる前に軽い支援

203:名無しさん@ピンキー
08/07/29 19:48:22 LL/h8AsW
俺も期待大なんだぜ、マッドマン氏
柊にベルにエリスなんて俺のためにあるSSと言っても過言ではn(キシャー

しかしアレだね。 次からきくたけスレを分離させるべきかなぁ。
きくたけ厨の自分にはサイコーなんだけど、総合スレって雰囲気じゃねぇ希ガス。

204:名無しさん@ピンキー
08/07/29 19:55:46 dERBTbhb
そうか?DXとかも結構ある気はするんだが・・・
分離はキリが無くなるからやめた方がいい気がする

205:名無しさん@ピンキー
08/07/29 20:08:37 HqrZwhcz
ソードワールドが分離してるわけだし、分離でもいーんじゃねーかと思いますが。
向こうはフォーセリアのみならずラクシアも範疇だし。


ところでナイトウィザードをアニメでしか知らない方、挙手願います。

206:名無しさん@ピンキー
08/07/29 20:16:43 5Ie8QfiR
分離すると間違いなく過疎るだろうから、それが怖い。
別ゲームのSSを書いてても、中の人が同じ確率は低くないと思われる。


207:名無しさん@ピンキー
08/07/29 20:25:42 rdMCmeWr
アニメ効果でNWの投下が多くなってるのは確かだが、むしろこのペースが異常と言える。
他のジャンルで投下しづらいって人も今のところいないと思うし、いいんじゃなかろうか。

SWスレと別れてるのは、向こうは小説展開とかリプレイ展開の体力が凄いからな。
公式PCも小説キャラも多い。その分読者も幅広いだろうし。

208:名無しさん@ピンキー
08/07/29 20:48:41 DC8zqmjv
今書いてるのが終わったら別のを書こうと考えてる俺。

209:名無しさん@ピンキー
08/07/29 21:19:06 T0BpVfIH
その台詞が死亡フラグに見えたのは俺だけでいい

210:名無しさん@ピンキー
08/07/29 22:08:58 SjDfHlpA
そんな簡単に死亡フラグとか言うなよ、縁起でもない……
お前らと一緒にメシなんて食えるか、俺は離れの自分の部屋で(ry

211:名無しさん@ピンキー
08/07/29 22:14:15 uvGIfvLP
>>210
おいおい、そうツンケンするなよ。
せっかくだからいいワインを開けようと思ったのに。
ちょっと待ってろ、今地下のワインセラーから取って(ry

212:名無しさん@ピンキー
08/07/29 22:37:57 61xSxtJX
>>211




ワインじゃなくておせち料理を振舞ってくれるんですね、わかります

>>200
>柊は何度となく戦った魔王にどう思うのか。
さらにフラグが立ってゴロンゴロン→nice boat→「柊君が死んじゃう!」by翠

>勇士郎は段々下がる男のような不幸属性に打ち勝てるのか。
ムリ、女の子二人に挟まれてる時点で奴の幸運は尽きた、来世がんばれ~へっとらーいとーてーるらーいとー

>ベル様はポンコツ属性から抜けれるのか。
中の人がゴトゥーザ様な時点で既にポンコツなのは約束されたものとCDドラマ時代から(ry

213:名無しさん@ピンキー
08/07/30 00:30:46 RHo7ugZ5
柊と勇士郎とベルか、色々期待してしまうな
勇士郎「3人でするのには慣れてる」的問題発言とか

214:名無しさん@ピンキー
08/07/30 00:35:30 rhbgi99t
だがそれは女2男1であり男女比が逆なのは現世ではないのだろうか

215:名無しさん@ピンキー
08/07/30 01:05:24 o3k8Dssb
柊はいい男尻だとぅ!?

216:名無しさん@ピンキー
08/07/30 03:04:26 3L0nS4pr
>どんな時にも突っ込みを忘れないつっこみ芸人の鑑だった。
芸人言うなっ!

217:名無しさん@ピンキー
08/07/30 15:12:22 zyRUAKt7
>担当者 「ご予約のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
>あなた 「死の茄子色カブトムシです。」
>担当者 「どのような漢字でしょうか?」
>あなた 「腹上死の死に、茄子オナニーの茄に、腐女子の子に、下着物色の色です。」
>担当者 「・・・。」

218:エリス~胎動する悪夢~
08/07/31 22:50:23 3Im51LOx
 別にたいした考えがあったわけじゃない。
 自分の手でできるなにかがあったわけでもない。
 苦しそうな寝息を立てて目覚めることのない可愛い後輩の姿を。
 きっとなんとかしてくれるはずだと期待してすがりついた大切な幼馴染みの姿を。
 見ていられなくなって、いたたまれなくなって -------- 。

「・・・逃げてきただけじゃねーかよ・・・俺・・・」

 降り注ぐ午後の日差しの中で。柊蓮司は唇を噛み締める。
 こんなときどうしたらいいのか ---- 魔剣使いである自分にはさっぱりわからない。
 自分にできることは手に握った冷たい鋼を振るうこと。冷えた鋼鉄に熱を注ぎ、迫り
来るものを薙ぎ払うこと。斬り、突き、斃すことはできても、癒し、救い、安んじることは
できないのだろう。
 彼の一太刀が世界を救ったと人は言う。
 彼の決断が世界の脅威を払ったと人は賞賛する。
 だが、和室の居間で昏々と眠る、一人の小さな少女に癒しを与えることぐらいのこと
が、俺にはできないのか、と柊は顔を曇らせた。
 神社の境内へなんとなく降り立ち。涼しい木陰を玉砂利の上に投げかける大樹の側
に立つと。柊は、握り固めた拳をその太い樹の幹めがけて叩きつけた。
 どすん、と鈍い音がする。
 ウィザードである柊が、自分の意志を込めて自分に傷みを与えるために殴りつけた
拳は ---- 骨が砕けたかと思うほどに強烈な痛みを彼自身にもたらした。
「・・・っ・・・痛って~~・・・」
 これでいい。これは自戒と自罰のための殴打であった。こんなことをしてなにになる、
と人は言うだろう。救うことのできないエリスの苦しみが、こんなことで和らぐわけでも
なければ、その苦しみを共有することができるわけでもない。
 柊蓮司は、そんなつまらない偽善的な行動や先の見えない感傷にひたる男ではあ
りえなかった。
 己を戒め。己に罰を与え。その儀式が終わると ---- 。

「・・・っ、よっしゃあぁぁぁぁぁーーーーーっ !! 」

 トレードマークのグローブごと両の拳を力強く握り、天に向かって柊は吠える。
 痛い思いをした。痛い思いをして目が覚めた。
 ごめんな、エリス。きっとなんとかする。
 ワリい、くれは。お前のこと置いてきちまって。
 この拳を痛めたことで、チャラにしてくれとは言わねえが、もうくよくよ考えるのは止め
にすっからよ。やれることしかやれねえ俺だけど、やれることには全力を尽くすぜ。
 その、決意を込めた雄叫びである。
 一度、心に決めてしまえば行動の迅速さは柊の長所といえる。
 胸のポケットから 0-PHONE を取り出すと、手当たり次第にメールを打ち始めた。
「てのあいてるやつはれんらくくれ。たのむ」
 漢字変換の手間さえ惜しんだ、短い短いメール。
 灯。ナイトメアのおっさん。マユリ。翠。この際、グィードだろうが時雨だろうが、知って
るヤツ全員に連絡取ってやる -------- と。
 手が空いているものに限り連絡を求む ---- としたのは、柊なりの気配りである。
 事情がはっきりしていないこの一件に、いま現在関わっている仕事を放棄してまで
手伝ってくれ、とは頼めない。それでも、柊が頼めばおそらく皆 ---- 万難を排して、
彼の元へ駆けつけてくれるであろう。だが、それをさせないのが柊であり、それゆえに
皆が柊の求める助けに応えるに違いないのだ。


219:エリス~胎動する悪夢~
08/07/31 22:50:58 3Im51LOx
 だから柊は、メールの相手が深刻に受け取らないような文面を、作って送ったつもり
であった。この中の誰かが、エリスの身に起きた異変を解決する糸口をつくってくれる
かもしれない、と淡い期待を胸に抱いて。
 他力本願 ? それがどうしたってんだ。俺にできないことはきっと他の誰かができる。
 俺にできることは、思いつく限りの可能性を試してみることだけだぜ !
 そこで柊は、はた、と思いつく。
 まだ、いる。この事態を打開できそうなヤツ。それも、かなり期待できそうなやつが、
まだひとり、いる。真っ先にその相手のことを思い出さなかったのは、柊の心が無意識
にブレーキをかけたからであろうか。
 しばし黙考。
 じわじわと、その額からは大量の汗が流れ出している。
「・・・背に腹は変えられない・・・ってか」
 こういうとき、たぶん一番頼りになるはずの性悪ババアの顔が脳裏に浮かんで、げん
んなりとする。また無理難題押し付けられるんだろうな、と苦笑するも、エリスの身に起
きている異変や彼女の感じているであろう苦しみを思えば、エミュレイター討伐耐久ト
ライアスロンを走破するくらい、なんだというのか。
「よし・・・」
 再び 0-PHONE を手に取って。
 柊がメールを送信したのは ---- ロンギヌス・コイズミのアドレスだった。
 心に根ざした強烈な心的外傷が、メール相手の主に直接連絡を取ることを選ばせな
かった・・・というと大げさに過ぎるだろうか。
 同じ文面を送信すると、 0-PHONE を胸元にしまいこむ。
 さて、これからどうするか・・・と思いをめぐらして。柊の胸ポケットでメールの着信を
告げる味も素っ気もない電子音が鳴り響いたのは、それからわずか二分後のことで
ある。
「お ! さっそくか ! ん・・・コイズミだな・・・なになに、えーと・・・『いま着きます』・・・ ? 」
 いまから行きます、の間違いじゃないのか。あいつも随分慌ててメールを打ったんだ
な・・・と思った柊が、コイズミのメールの文面がまさしくその通りだったことを思い知る
のは、わずか数秒後。
 がたごとがたごとどぐわっしゃどぐわっしゃがらがらがら・・・としか形容できない凄まじ
い音が、赤羽神社のふもとから境内を目指すようにこちらへと迫ってくる。
 思わず、柊が月衣から愛用の魔剣を引き抜いて、音のする方向へと向き直ったとし
ても、彼を責めることはできまい。とにかくそれほど、凄まじい音だったのだ。
 
 がた、ごとごとごと、ごっとん、ぶるるるるるぉぉぉぉっ !!

 一台の黒塗りのリムジンが、この日本という国の道路事情を思えば肩身の狭いロン
グボディを上下前後に震わせながら、境内へ続く長い石段を文字通り “走って登って”
きた。
「な・・・なにしてやがるっ ! てめえ、アンゼロットだなっ !? そうだろ、ええっ !? 」
 あまりの非常識ぶりに度肝を抜かれつつも、生来のツッコミ気質はいささかも萎える
ことはなく。しかしそのツッコミは、黒い車体に跳ね返されて夏の青空に空しく響いた。


220:エリス~胎動する悪夢~
08/07/31 22:51:29 3Im51LOx
 がたぷし。がたぷし。ぶるぶるるる。ききっ。
 さすがは、アンゼロット御用達リムジンブルームである。少々間の抜けた排気音がす
るこを除けば、その車体に傷ひとつ、シミひとつなく。
 呆れ果てて口をあんぐりする柊の前に、リムジンのドアを開け、ロンギヌス・コイズミ
が姿を現す。久方ぶりの再会に柊へ向けて一礼をし、続いて、反対側のドアに回ると、
うやうやしくノブを引いた。
 そこから姿を現したのは当然の如く ---- 。

「ご無沙汰しておりますわ、柊さん。ご機嫌いかがですか ? 」
「最悪だ、馬鹿野郎っ ! 今回のは極め付けだぞ、アンゼロット ! リムジンで石段登って
くるなんて、なに考えてやがんだっ !? 」
 ずかずかと足踏みしながら、コイズミのエスコートで車外に降り立ったアンゼロットに
迫る柊。怒鳴り散らされた本人は、「私悪くありませんもん」とでも言うかのように、柊
から顔を背けた。いかにも「ツーン」という擬音が聞こえてきそうな無視っぷりである。
 殺気立つ柊と、お澄まし顔のアンゼロットの間に割って入るように、コイズミが恐縮の
態で頭を下げる。
「申し訳ありません、柊様。リムジンブルーム搭載のホバリング機能が故障しておりま
してやむなく」
「だからってなあっ・・・ ! 」
「柊様からの着信を頂いて、急を要する事態かと、このような無茶をしたのは私の判断
です。お叱りならばどうぞ私を」
 ぐぬぬ・・・と柊が唸る。本音を言えば、こうして自分の発信したメールに、すわ一大事
と駆けつけてくれたコイズミの心根は嬉しい限りなのである。経過はどうであれ、この手
の不可解な事件を相談するにあたっての最適任者(柊自身は認めなくとも)である、ア
ンゼロットをも連れてきてくれたわけだから、感謝こそすれこれ以上怒ることはできな
かった。
「・・・あんたの顔を立てるよ」
「ありがとうございます」
「それにしても、アンゼロット。ずいぶんと都合よく、近くにいたんだな」
 そう言いながら自分へ視線を向ける柊に、アンゼロットが歩み寄った。
「・・・もともと、わたくしたちの目的地が赤羽神社であったというだけのことですわ。そ
こへ、タイミングよく柊さんからの連絡が入っただけのことです」
 しゃく、しゃくと玉砂利を踏みしだきながら、アンゼロットが柊のすぐ手前まで近寄って
くる。その表情はどこか不安げで。世界を憂う守護者の心をかき乱すなにかが、起きて
いることを柊に想起させる。
「柊さん。単刀直入に言いますわ。昨夜から本日にかけて、多数のエミュレイター反応
が秋葉原周辺で観測されています。この二日間で、下級とはいえ四十体近くの魔王
級が出現しているのです」
「はあ ? 」
 素っ頓狂な声を上げて、柊が片眉を吊り上げる。アンゼロットの言葉を不審に思うの
も無理からぬこと。ここ二日間の秋葉原は、柊が知る限りでは平穏無事なのだ。
 月匣も紅い月も見えない、普段と変わらぬ秋葉原だったのである。


221:エリス~胎動する悪夢~
08/07/31 22:51:55 3Im51LOx
「柊さんの疑問もごもっともですが、聞いてください。魔王たちは、我々が観測できた
かぎりでは、これといった活動をしていないのです。ただ現れ、ただ消える。それだけ
なんです」
 なにも活動をしない。出現の痕跡をただ残すだけ。その不気味さたるや、如何ばかり
か。アンゼロットの面差しに深く落ちた陰鬱な影が、その言い知れない恐怖を物語って
いるようだった。
「・・・そして、つい先ほど。出現した二十体もの魔王が、ただそこに居た、という痕跡を
残して姿を消したポイントが ---- この赤羽神社なのです」
「おいおい、いくらなんでもそりゃねえだろう。昨日も、そしていまもここにいるけど、俺
もくれはもそんな気配感じてねえぞ。赤羽神社はいたって平穏無 ---- 」
 ---- いいや。なにが平穏無事なものか。
 柊はその場で硬直する。
「まさか・・・・・さっきエリスがぶっ倒れたのとなにか関係が・・・・・・」
 その呟きを聞きとがめ、アンゼロットが眉をひそめる。
「・・・エリスさんが倒れ・・・ ? っ、きゃうんっ !? 」
 シリアスな台詞に、間の抜けた悲鳴が取って代わる。
 エリスが倒れた、という柊の言葉が終わるか終わらぬかのうちに、がたがたと身を震
わせ、拳を硬く握りしめたコイズミが、
「エーーーーーーリスさまーーーーーーっ !? 」
 天地を揺るがす大絶叫を上げて、全速力で駆け出したのである ---- 走行軌道上に
突っ立つ自らの主 ---- アンゼロットを突き飛ばしながら。
「うおっ !? あ、アブねえっ !? 」
 コイズミの体当たりをまともに食らったアンゼロットが、両手を左右に広げたままでく
るくると回転するのを、柊が受け止める。不本意なトリプルアクセルを決めるはめとなっ
て、柊の胸の中に抱きとめられたアンゼロットが、臣下の無礼を咎めた。
「ガ、ガッデムっ !? コ、コイズミっ !? ア、アナタなんてことをするんですのーーーっ !? 」
「申し訳ありません、アンゼロット様ーーーーっ !! あとでいくらでも罰はお受けいたしま
すからーーーーーっ !! 」
 もはや、コイズミの頭の中を、「エリスの安否」という一事のみが占めていることは明
白であった。呆然とコイズミを見送った柊が、
「はは・・・そうか、そういやアイツ・・・」
 苦笑しつつ、改めて気がづいた。
 以前、灯の代わりに護衛の任務についてからというもの、コイズミがエリスのことを
ひとりの異性として気にかけているということは、傍目にも明白なのである。
 そのことをあまり多くの人間に知られていないと思い込んでいるのはコイズミだけで
あり、その恋心にこれっぽっちも気づいていないのはエリスだけなのだった。
 コイズミは、あれであれで好い男だ、と柊は思う。
 生真面目な性格はエリスの護衛時のことを見れば一目瞭然だし、アンゼロットなどに
心から臣下の礼を尽くしているくらいだから、義理堅いところもあるとわかる。ロンギヌ
スに所属しているくらいだから腕も立つだろうし、仮面を取ればきっと二枚目なのであ
ろう。それならば ----
「エリスのやつも、もう少しコイズミのこと、男として見てやればいいのになあ」
 と、なにげなく呟いた。


222:エリス~胎動する悪夢~
08/07/31 22:52:22 3Im51LOx
 人の恋心には鋭敏なくせに、自分に向けられた好意はとことん気づかない柊の、あ
まりといえばあまりな一言 ---- つまり、偉そうなことを言っている割には、エリスが彼
自身に対して抱いていた淡い恋心にはまるで気づいていないのである。
 と ---- 。 ぼんやりとコイズミの姿を見送っていた柊のほっぺに、激痛が走った。
 むぎゅうううう ---- 。
「い、いでででででっ !? ア、アンゼロット、なにしやがるっ !? 」
 コイズミの暴走で突き飛ばされ、柊に助けられたアンゼロットが、抱きとめられた腕の
中から手を伸ばし、柊の頬をつねり上げたのだ。
「ひ・い・ら・ぎ・さ~ん ? いつまでわたくしの身体を熱烈に抱きしめていらっしゃるんで
すか~ ? 」 
「な、なにが熱烈だ !? 自分で立てるならさっさと立てよっ !? 」
 言われて初めて気がついて。柊はアンゼロットの両肩をつかむと、自分から引き剥が
すように押しやった。咄嗟のこととはいえ、倒れそうになったアンゼロットを受け止め、
しばらくその華奢な身体を護るように、がっしりと抱きしめていたことに初めて気づいた
のである。普通ならここで、顔を赤らめてどぎまぎする場面であるはずなのだが、そこ
はそれ。へし折ってきたフラグの数では他の追随を許さない男、柊蓮司の本領発揮で
ある。赤面するどころか、「うわ、こんなもん抱きしめちまった」とでも言うように、慌てて
アンゼロットを押しのけるのだから酷い話である。
「きゃんっ !? ら、乱暴ですわねっ !? 優雅なエスコートなど柊さんに期待などしてはいま  
せんでしたけど・・・・・・」
 突き返されたアンゼロットが不平を述べながら柊の腕から逃れる。ぱたぱたとスカー
トの埃を払う仕草をしながら、
「いまの台詞、エリスさんの前では言わない方がいいですわよ。これはわたくしからの
忠告です」
 憮然とした顔でそう言った。
「いまの・・・ってなんだ ? 」
 柊の、ぼけらっ、とした顔を見て天を仰ぎながら。
「エリスさんが、コイズミを男として見てやれば・・・というくだりですわよ。その台詞だけ
は、二度と口にしないことをお勧めします」
「あ・・・ああ・・・まあ、そうだな・・・俺が他人の恋路に口出すなんてらしくねえしな・・・」
 間違った納得の仕方をした柊に、深い深い溜息をつく。アンゼロットが、この朴念仁に
説教でもしてやろうかと口を開きかけた瞬間 ---- 。

「伏せろっ !! アンゼロット !! 」

 柊の怒鳴り声が聞こえた。え ? と思う暇もなく、大きな影が自分の身体に覆い被さっ
てくるのを、アンゼロットが呆けたように見つめ。次の瞬間には、たくましい腕と厚い胸
に抱きしめられて、自分の身に起きた事態を把握するよりも早く、アンゼロットの身体は
宙を舞っていた。
 いや ---- そうではなく。アンゼロットの身体を包み込むようにして抱えた柊が、超人
的な跳躍力をもって、数メートルもの距離をジャンプしたのである。
 その、ついさっきまで二人が立っていた地点を ----
 ---- 一筋の赤い輝きが貫いた。


223:エリス~胎動する悪夢~
08/07/31 22:53:28 3Im51LOx
「うおっ !? 」
「きゃああっ !? 」
 柊とアンゼロットが同時に叫ぶ。
 夏の大気を切り裂くように走り抜けた赤光は、まるで天を裂く雷光のような軌跡を描
き、二人の立っていた地点を貫いたのである。見れば、境内に敷き詰められた玉砂利
が光を浴びた部分だけ消失し、大地が黒々とした深淵を開いていた。ぶすぶすと、焼け
焦げたような異臭が辺りに漂う。直撃すれば、絶対の死を免れえぬであろう、破滅の
輝きであった。
 アンゼロットを抱えたまま跳躍した柊が、境内に放置されたままのリムジンブルーム
の陰に隠れ、次の瞬間また遥かな跳躍を披露した。続けざまに放たれた赤い光は、狙
い過たずリムジンの車体を貫き通し、その強靭なはずのボディに拳大の穴を穿つ。
 リムジンが、一瞬の沈黙の後 ---- 爆発炎上した。
「くうっ !? 」
 ずざざざざっ、と大地に着地した柊が、抱え上げたアンゼロットの身体を自分の背中
に隠し、攻撃が繰り出された方角を睨みつける。さわさわと、心地よい風が葉を揺らす
大樹 ---- その陰から攻撃が繰り出されたと、柊は見当をつけた。
「出てきやがれっ ! なにもんだっ !? 」
 聳え立つ大樹の、さらに後ろに控えているはずの敵に向かって、柊が怒号する。
 一秒、二秒の沈黙が、果てしなく長い時間のように思えて柊は息を潜めた。
 彼の背中に隠されたアンゼロットが、無意識のうちに柊の服の裾を握り締める。

 と -------- 。

 樹の陰から覗いたのはほっそりとした少女の脚。
 ゆっくりと。焦らすように。
 敵であろうはずの少女は樹の陰からゆるゆるとその身を顕した。

「なにものだ・・・って、ひどいじゃありませんか、柊先輩。私です。エリスです・・・志宝
エリス・・・ですよ・・・」

「な・・・んだと・・・ !? 」
 現れた敵の姿に、柊は動揺を隠せなかった。
 脳裏に甦るのは、そう遠くはない過去の記憶。
 輝明学園の校内、伝説の樹の側でキマイラに襲われていたくれはとエリスを助けた
のが、彼らの最初の出会いだった。あの時のエリスの姿がフラッシュバックする。
 奇妙な既視感を覚えた理由はすぐに分かった。
 白い帽子。転校前に使っていた、白のブレザー。出会ったばかりの頃のエリスが身
に着けていた着衣そのままの服装だったのである。
 服装も。声も。顔も。なにもかもが同じ。
 ただ二つの相違点は、墨を薄く流したような褐色の肌。そして ---- 。
 彼女がエリスであれば、決して宿すはずのない強烈な憎悪と悪意の輝きを、その双
眸に宿している、ということだろう。


224:エリス~胎動する悪夢~
08/07/31 22:54:00 3Im51LOx
「てめえ・・・いったい・・・」
 魔剣を構え、エリスの姿をした「モノ」に死の切っ先を突きつける。
 唇の片方だけを嘲りの形で吊り上げた黒いエリスが、憎々しげに柊とアンゼロットを
ねめつけた。
「柊先輩だけなら今日は我慢しようと思っていたんですよ・・・ ? でも、アンゼロットさん
も来ちゃいましたから・・・もう我慢が効かなくなっちゃって・・・」

 繊手をゆらりと掲げながら ---- 。

「だから、お二人とも殺しちゃいますね ? 」

 黒のエリスが ---- 「仇敵」を見つけた者の瞳で二人に死の宣告をした。





 “影の” エリスは夢を見る。
 昔の夢を。自分が生まれた ---- いや、産み出された頃の夢を。
 この世界に誕生し、目覚めたとき。自分の身に着けた真っ白なブレザーと、青いリボ
ンの付いた可愛らしいカチューシャ、四葉のクローバーのマークがワンポイントの白い
帽子が、ひどく自分には似合っていないような気がして気恥ずかしかったのを憶えて
いる。日焼けのせいなどではない、薄闇を流した褐色の肌は不吉な色のような気がし
て。こんな女の子らしい服装が、不似合いな気がして。
 これならば。
 私の横で眠る女の子のほうがよほどお似合いだと思う。 
 自分と同じ顔の。透き通るような肌の。まるで自分に生き写しの女の子。
 すやすやと眠る寝顔は邪気の欠片もなく、まるで本当の天使のよう。
 同じ服装。自分と肌の色だけが違う。
 無垢な幼子のように純粋な少女が、ちょっぴり羨ましいと影のエリスは思った。
 
「 ---- 目覚めたようだね。エリス」

 透き通る声が耳朶を打ち、影エリスは振り返る。
 ああ。私はこの人をなぜか知っている。産まれたばかりでも、私はこの人のことをよ
く知っている。この人が私の生みの親なのだ。なぜ私が産み出され、なんのためにこ
の世に生を受け、また隣で眠るもう一人の自分がなぜ産み出され、なんのためにこの
世に私と共に居るのかを、私はなぜだか知っている。

「キミの方にはさまざまな知識と、ある程度の力を与えておいたからね。不思議に思う
ことはない」

 造物主は、私の心を見透かすようにそう言った。
 どこか悲しそうに、でもまるで私を “欠陥品” でも見るように見下ろして。


225:エリス~胎動する悪夢~
08/07/31 22:54:30 3Im51LOx
「でも、それが間違いだった。余計な飾りをつけた分、器としては、足りない。使うなら
やっぱり -------- 」

 私の造り主が、私の側で横たわる白い私を愛しげに見つめる。

「そっちの -------- エリスだね」

 そんな。いや。いやです。私のほうが貴方のことをよく知っているのに。貴方の理想
を誰より知っているのに。そのために産まれ、貴方のために働けることを、役に立てる
ことを、 “産まれたとき” から理解しているのに。こんな、なにも知らない娘を、貴方は
選ぶというのですか。

「キミのほうは、もしものときの ---- そんなことがあるとは思えないけど ---- 代用品
ということで、一応ストックだけはしておいてあげよう。そのときが来るまで ---- 永遠
来ないとは思うけど ---- じっとしているがいいよ」

 右目を、色の薄い金色の髪で隠した美しい少年が、鈴の音を転がすような声音で、
残酷な言葉を吐く。

 夢の中で ---- 影エリスは「見捨てられた」という思いに身をよじる。
 ああ、愛しい造り主よ。私ではダメなのですか。私は貴方の完全なる信奉者なので
すよ。貴方の与えた力と知識が、私の使い道の妨げになるとはなんという皮肉なので
しょうか。だけどこの力は捨てられない。貴方が、貴方という存在を私の心に刻みこん
でくれたからこそ、貴方を想う私がいるのですから。
 ですから、どうか。
 どうか -------- 。

「見捨てないで -------- おじさま -------- 」

 必死の呼びかけに少年は ---- すべてを見通す者と呼ばれる神のごとき存在は。

 ただ、冷笑を残して私に背を向けた -------- 。



 眼前に魔剣を構える柊蓮司。
 その背後にはアンゼロット。
 だから ---- “彼女” の仇敵というのなら、まさしく彼らがその最たる二人であった。

 いつも見るあの夢を反芻し終えて。
 憎悪の炎に油を注いで。
 影エリスは ---- 死をもたらす赤い輝きを、その身に纏う。

「 ---- さあ、始めましょう。柊先輩・・・憎い ---- 憎い人 ----」

(続)


226:名無しさん@ピンキー
08/07/31 23:31:39 ws9Mft2Z
ぐっじょぶ!
そういうラインでしたかー。

しかしコイズミは、ホントに出世したなぁ。

単なる背景→単なるモブ→なんか存在感のある脇役→
名前ゲット、今ではアニメオリジナルキャラ扱い→
設定的にもロンギヌスの精鋭中の精鋭、アンゼの副官と言うか懐刀的存在で
性格的にも真面目で一途で義理堅いナイスガイ ←今ココ

227:名無しさん@ピンキー
08/08/01 00:05:23 7e890sjN
GJ。

>>226
ロンギヌス00とかの地位を完全に食ってったな。

228:名無しさん@ピンキー
08/08/01 00:29:23 H0FFvGb3
>>227
中の人の差だろうw

229:名無しさん@ピンキー
08/08/01 03:58:05 qfDYdpdU
00は、ほらベルに突っ込んで自爆する役目が残ってるじゃないか

230:名無しさん@ピンキー
08/08/01 06:37:44 7WyoM9Cn
むむ!俺には見えたぞ仮面の蟹達をラストバトルに送り込むため00が冥魔王の一人に自爆しにいく姿が!そしてエンディングで

「仮面が無かったら即死ry」

231:名無しさん@ピンキー
08/08/01 06:40:06 AqQcFIiO
関西弁の天使ですね
わかります

232:名無しさん@ピンキー
08/08/01 07:47:29 TFgsCU2F
え、えと、夜天の主?

233:名無しさん@ピンキー
08/08/01 09:51:14 ijDbi8Cl
今回分を読んでいるちょうど今、WMPが「ゴジラのテーマ」吐き出してるのよ。

……造物主とか、ハッタリ自重しろいやヤンデレいいぞ!?

234:名無しさん@ピンキー
08/08/01 16:10:01 tRZ3T+e+
ロンギヌスH(アッシュ)は相変わらず鈍いというか、無神経というか……
それがかえって修羅場を招いていることに気づいてないのもまた「らしい」というべきか。

235:強化(ry
08/08/01 18:26:57 0tl2fD04
「はーい、じゃあ大公様スタジオ入りまーす!」
「……なにこのセット?」
「いえ、大公様制服じゃないですか。あ、ポンチョは脱いでくださいねー」
「あーはいはい……ったく」

「超公さまー、視線お願いしまーす」
「ベルにまけるわけにはいかないものね! こう?」
「はーいOKです! いいですよースゴクイイ!」
「ふふーん、やっぱりこのパールちゃんがいちばんつよくてかわいいんだから!」
「激写! 激写ボーイ!」
「ところでロケにはきたけど、ここはなんなの?」
「ああ、その、超公さまが可愛さとともに妖艶さをアピールできる場所ですよ!」
「ふーん?」

「……あの」
「なんですか?」
「私の側にいると、その、危険……」
「こちとら撮影に命かけてるんですよ。さ、ポーズお願いします」
「でも……」
「こんなに美しいものを撮らないなんて、美への冒涜ですよ? さ、ポーズおねがいします」
「……うん。ありがとう……」

こうして桃色★ファーサイドが発売されたという
URLリンク(www1.axfc.net)


すみませんごめんなさい出来心でした
でもモデル作るのおもすれーっすわコレ
3Dの心得があればポンチョやら制服やら自作するんですが……

236:強化(ry
08/08/01 18:30:50 0tl2fD04
あ、パス忘れてました
kyouka

237:名無しさん@ピンキー
08/08/01 19:00:10 VKzZEJQu
久しぶりに地下に来た。
まさか今更桃色★ファーサイドなんて名前を見る事になるとは。
覚えて貰えてるもんだなぁ。

しかしみんなそんなに魔王のエロ雑誌読みたいのか。
記憶が正しければ5000v.って書いた気がするぞ俺。

238:名無しさん@ピンキー
08/08/01 19:17:53 bIk1PIOW
ああ、読みたいさ!

侵魔召喚士になれば購入できそうな2nd世界に万歳

239:名無しさん@ピンキー
08/08/01 21:02:08 fYy7tCdo
オレのプラーナが吸い尽くされそうなものが投下されとる

ひゃっはー!

240:名無しさん@ピンキー
08/08/01 21:03:23 SjqVilef
3Dカスタム少女とはw。
これは見事、GJせざるをえない。
最近身長の高低を変えるパッチが出たとか何とかあったなぁ。

241:名無しさん@ピンキー
08/08/01 21:48:42 0xk1j2B0
>>226
あとは下がりさえすれば、ポスト柊の座も夢じゃないな。

242:名無しさん@ピンキー
08/08/01 23:07:22 QkfWWQ0m
OVERDRIVEの抱き枕絵と壁紙があかりん。
あかりんはえろいなあw

243:名無しさん@ピンキー
08/08/01 23:33:47 PZ6D/jxz
なあ、抱き枕相手でも腹上死になるのかな……(ゴクリ)

244:名無しさん@ピンキー
08/08/01 23:43:30 Emo9Q3on
お前………………                    なぜ俺と同じ考えを。もしや貴様は俺か?

245:名無しさん@ピンキー
08/08/01 23:46:20 SQ/aSYq5
久々に抱き枕買ってみるかな。

246:名無しさん@ピンキー
08/08/02 00:55:02 qcvjKkoW
>235
ちょ、うまいwww
ここまでそっくりにできるもんなのか。

>237
今でもたまに読み返してるぜ。
そしていまだに続編を待っていたりしているぜ。

247:名無しさん@ピンキー
08/08/02 01:06:11 ztWKhR8+
>>237
本当に出版されたら大変なことになるぜ

248:エリス~胎動する悪夢~
08/08/03 02:30:44 jjRMTtU+
 柊蓮司は憎むべき “仇敵” 。
 それならばアンゼロットもまたそうである。
 影エリスが虚空にかざした死の右手は五指がすべて開かれ、そのほっそりとしたそ
れぞれの指から、陽炎のごとくに立ち昇った闇色の炎が、ちりちりと空気を灼き焦がし
ている。
 指から手のひら。手のひらから右腕そのものへと。黒い炎はまとわりついて、まるで
意志あるもののようにゆらゆらと蠢いていた。
 双方の距離はほぼ十メートル。
 魔剣使いである柊には少々遠い間合いといえる。
「柊先輩。そんなところに突っ立ったままじゃ、なにもできませんよ ? 」 
 影エリスが嗤う。手を向けた先には柊と、その背にかくまわれたアンゼロット。
 図らずも、この双方の配置は、圧倒的に柊にとって不利な状況となっている。
 第一に距離。
 これは白兵戦を本領とする柊と、おそらくは魔法による遠距離攻撃を主武器とする影
エリスとの戦いである。
 柊が魔剣の届く間合いに入るまでに、何回の攻撃をしのがなければならないのか、
とシミュレーションをする。初めにアンゼロットを抱えて第一撃目を避けてから、第二撃
目がリムジンブルームを破壊するまでの間。おそらく三秒と間は空いていまい。
 つまり、わずか一、二秒の間に影エリスの攻撃準備は完了するはずである。
 ならば三回。いや、二回。その攻撃をしのぐことが勝利の前提となる。
 第二に、護らなければならないアンゼロットという枷の存在。
 柊は直感している。
 おそらく、影エリスは自分たちを二人とも殺したがっている、と。
 自分かアンゼロット、あわよくば双方の息の根を止めたくてうずうずしている ----
 そのことは、先ほどの彼女の台詞以上に、自分たちを睨みつける憎悪の眼差しが雄
弁に物語っていた。
 もしも間合いを詰めるべく、柊が跳躍したとしたら ---- 。
 影エリスの黒炎は、護りを失ったアンゼロットを焼き尽くし、その上で柊をも火葬する
だろう。それがわかっているから動けない。いや、動かなくともやはりなぶり殺しの
目に遭うかもしれないが、そうとわかっていても柊の足は動かなかった。
 こめかみを冷たい汗が伝う。
 なにかの覚悟を決めたように目を見開いた柊の顔は、不思議と穏やかであった。
「アンゼロット」
「・・・なんですか、柊さん」
「このままお前を護って戦いに突入すれば、たぶん二人揃って真っ黒焦げだ」
 冷徹な剣士の判断を迷わず口にする。かすかに、アンゼロットの顔が蒼褪めた。
「で、だ。これからお前は回れ右して、まっすぐ後退しろ。俺の背中からはみ出るんじゃ
ねえぞ」
「柊さんっ !? 」
 アンゼロットの声は悲鳴に近く、彼女がついぞ発したことのない驚愕と悲痛な響きを
持っていた。二人とも死ぬくらいなら、アンゼロットは生かそう。世界中のウィザードの
司令塔であり、多くの臣下を抱える彼女にもしものことがあってはならないから。
 なに、自分だってみすみす殺されるわけじゃない。あのエリスの攻撃を死に物狂い
でしのぎきって、アンゼロットが無事逃げおおせたとしたら、そのとき初めて後の憂い
を気にせずに、思う存分戦うことができる。


249:エリス~胎動する悪夢~
08/08/03 02:31:11 jjRMTtU+
 そう ---- 覚悟を決めたのだ。
 アンゼロットを逃がし、自分も生き残って勝利を収めるとしたらそれしかないだろう。
 そのためには、しばらくの間、影エリスの黒い炎から彼女を護る盾にならなければな
らない。生き残るためには、時として命をも捨てる覚悟が要るのだと ---- 逆説的では
あったが、これも戦いの鉄則のひとつといえた。
「・・・やだ、相変わらずカッコいいこと言うんですね、柊先輩。だけど・・・そんな先輩の
こと・・・・・・・・・大嫌いです」
 影エリスが右腕を振り上げ、一息に振り下ろす。
「アンゼロット ! 走れーーーーーっ !! 」
 柊の合図の声と同時に、五本の指から放たれた炎が立て続けに柊めがけて襲い掛
かる。アンゼロットは動かない。いや、動くことができなかった。ここで背を向けて柊を
置いて逃げることが、なにかひどく自分の誇りや尊厳に関わることのような気がしたの
だ。この戦いの場に背を向けるということは、なにか別のもっと大事なものに背を向け
るということだ。
「おい、走れって言っただろう !! なにやってんだっ !? 」 
 怒鳴る柊にアンゼロットが叫び返す。
「でも、わたくしだけ逃げるわけにはいきませんわ ! わたくしにだってできることが・・・」
「バカヤロウっ !! 」
 一拍おいて -------- 。
 一本の炎が矢と化した。別の炎が一匹の蛇のごとくにうねくった。三番目の炎は縛
する鎖のように大きくたわみ、薬指から四本目の炎が飛来した。最後に放たれた黒い
炎が龍へと姿を変え、柊とアンゼロットの立つ一帯を焼き払おうとする。
 腰を落とし、下げ降ろした魔剣を、柊が一呼吸で振り上げる。斜め下から上空へと、
鋭く切り上げるように。
 その一振りで、炎で造り上げられた矢をすくい上げる。
 魔剣を返すその勢いで、黒蛇の鎌首を断つ。
 闇色の縛鎖を、いましめを解く横薙ぎの刃風が打ち払い。
 目まぐるしくひるがえる剣の峰で四つ目の灼熱を受け止めると。
 突き出された切っ先が、龍の顎を貫いた。
 ----- 影エリスの五連弾攻撃も凄まじかったが、それをしのいだ柊の剣技をなんと
称するべきか。
 剛にして精妙。巧緻にして豪。
 当代随一の若き魔剣使いの真髄が、ここに顕現していた。
 迫り来る敵をただ迎え撃つだけ。薙ぎ払うべき障害をただ斬り払うだけ。
 ただ愚直なまでに戦うその技こそが、いまや “業” 。柊蓮司の到達した領域は、そ
れほどのものであった。
 影エリスの波状攻撃を一時しのいで、
「お前、世界の守護者だろう !? ここでなんかあったら責務を果たせねえんじゃねえの
かよっ !? いいから走れっ !? 俺は全然戦えるっ !! 」
 ふたたび柊がアンゼロットを叱咤した。
 肩越しに振り返った柊の視界に ---- アンゼロットの驚愕の表情が飛び込んでくる。


250:エリス~胎動する悪夢~
08/08/03 02:31:41 jjRMTtU+
「柊さんっ !? 次が来ますっ、避けてっ !! 」
「なんだとっ !? 」
 ほんの一秒。たかだか二秒。だが、その間を生かしきれなかったのは、戦いには余
計な気遣いのせい。明暗を分けたのは、護るものを常に気にかけていたものと、敵を
殺すことになんの躊躇もしなかったものの差であろうか。
 右手の五指から黒炎を放つ間、残る左手で追撃の用意を完了させていた影エリスの
周到さは、ただ柊とアンゼロットを殺すことに腐心していたがゆえの完璧な布石。
「消し炭にしてあげますっ ! ひいぃぃぃぃらぎせんぱあぁぁぁぁぁぁいっ !! 」
 初めの不意打ちのときと同じ、赤い煌き。光った、と思ったときにはもう遅く。
 朱に染まった稲光のごとく、鋭角的な蛇行の軌跡を描く死の輝きが柊の心臓を目が
けて走り抜けると ---- 突如として天空から降ってきた暗黒の帳に、その赤光は吸い
込まれて消えた。
「なんですってっ !? 」
 驚愕に叫んだのは ---- 今度は影エリスのほうである。
 戦いに余計なものを持ち込んだのは、今度は彼女の方だった。
 空を振り仰ぎ、集中を途切れさせた影エリスは、背後からの囁きを聞き逃してしまっ
たのだから。

「・・・・・・ヴォーティカルショット・・・」

 線の細い囁きに続いて、背後で空間の歪む気配。虚空の一角を歪め、凝縮して造り
出された闇の礫が、影エリスの右腕をしたたかに打ち据える。
「くうぅぅっ !? 」
 激痛に身をよじり、影エリスが背後からの射手を振り返った。

「・・・・・・うふふ・・・命中・・・・・・」

 ひっそりと口元に微かな笑み。黒い漆黒の闇を凝らせたような美しい髪はひどく長く、
腰までをも覆い隠すよう。長い前髪のひとふさがはらりと額に垂れて、青白い肌と絶妙
なコントラストを生み出している。
 黒いローブ。黒いスカート。そして、手には一冊の分厚い書物を抱え。
「“秘密侯爵” ・・・リオン=グンタ・・・ !? な、なぜ・・・ !? 」
 影エリスの問いには無言で微笑んで。リオンは人差し指を上空に向け、ある一点を
指し示した。私などを見ていていいのですか。あちらに注意をしないともっとひどい目に
遭いますよ。まるでそう言っているかのように。
 影エリスだけではなく、柊もアンゼロットも空を振り仰ぐ。
 そして三人は ---- 柊を狙った赤光を妨げた、闇の帳をもたらしたものの正体を知っ
たのだった。
 なにもない空に黒々とした亀裂を生み出し。
 罅割れた空から暗黒の瘴気を従えて。その支配するものに相応しく、自在に天空を
我が物とする侵魔の女王。
 飛ぶものはすべて。翼あるものは皆 ---- 彼女に等しく頭を垂れるという。
 偉大なる裏界の魔王。美しき蠅の女王。
「くっ・・・・・・大魔王・・・ベール=ゼファー・・・」
 千年の憎しみを込めて意外な伏兵に歯噛みする影エリス。
「あらあら。ちょっと見ない間に、ずいぶんとやんちゃになったのね、エリスちゃん ? い
いえ、エリスちゃんのにせものさん・・・かしら・・・ ? 」
 くすり、と笑うベール=ゼファーの ---- ベルの言葉に、影エリスが眉を吊り上げる。


251:エリス~胎動する悪夢~
08/08/03 02:32:19 jjRMTtU+
「にせものじゃないっ !! にせものなんかじゃないぃぃぃぃっ !! 」
「・・・・・・えっ !? 」

 豹変 ---- という言葉が、かくも似合いの変貌が他にあるだろうか。
 逆立てた眉が醜く崩れ、つぶらで大きな瞳は険しく細められ、歯を剥き出して呪詛と
憤怒を吐き出す影エリス。別人のようなあまりの変わりようと形相に、さしものベルが
わずかににひるんだ。今度こそ、その隙を見逃すことなく。
「おおぉぉぉぉぉっ !! 」
 影エリスの足元から “闇” そのものが沸いた。ぞぶり。ぞぶり、と。
 その数 ---- 実に二十体。
「なんだありゃ・・・」
 呆然と呟く柊。二十の影は、黒く塗りつぶされ、平面状にペーストされた少女たちの、
奇怪なオブジェであった。苦悶と悲哀と恐怖に歪んだ表情を貼りつけた影の少女たち
は、それでも影の主の意志には逆らうことができず。その紙のように薄っぺらい身体を
うねうねと踊らせ、一斉に大魔王へと襲い掛かる。

 ああ。偉大なる蠅の女王よ。
 大魔王ベール=ゼファーよ。
 畏れ多い。畏れ多い。
 ですが私たちは逆らえないのです。
 私たちの意志ではないのです。
 取り込まれてしまって、どうしようもないのです。
 お赦しください。
 お慈悲を。お慈悲を。お慈悲を。

 二十の影少女たちがベール=ゼファーに赦しを乞う。
 この、裏界の偉大なる女王への敵対行為を恐怖しながらも、逆らえぬことの赦しを
乞うている。

「・・・・・・ふん・・・・・・」
 ベルの眼前に灼熱の魔方陣が展開した。光り輝く奇怪な幾何学模様に彩られた、
滅びの魔法。
「ディヴァイン・コロナっ !! 」
 無慈悲なる一撃が黒い少女たちの一群を薙ぎ払った。千切れ、砕け、散り、掻き消
えていく影たちは、消滅の瞬間、安らぎの言葉を残していった。

 ああ。解放に慶びを。滅びに言祝ぎを。
 永遠の死を賜って感謝いたします、大魔王ベール=ゼファー -------- 。

 二十の影が、甘美なる滅びを受け入れて、消滅する。
 爆炎に視界をさえぎられていた境内から砂塵と黒煙が晴れていくと ---- 多勢を相
手取る不利に早急な撤退の判断を下したらしい影エリスの姿はすでに跡形もなく。
 ただ、彼女が立っていた場所には、空虚な虚無の残滓がかすかに気配を残している
のみである。


252:エリス~胎動する悪夢~
08/08/03 02:32:53 jjRMTtU+
「・・・・・・なーる・・・」
 なにかに気づいたような思案顔をして、ベルが地上のリオンを見下ろした。
 こくり、と無言で頷くとリオンは眼前の柊たちに歩み寄る。
 無論、柊には先ほどまでの油断はない。魔剣の切っ先は、ひとたび本気で振るわれ
れば、裏界の秘密侯爵であろうとも致命傷は免れまいと思われる殺気を帯びていた。
「・・・剣を収めてください。私たちは、貴方がたと敵対するつもりは当面ありません」
 リオンがうっすらと、かすかな笑みをこぼしながら囁いた。
 当面、ときたもんだ ---- 柊は内心舌打ちをしながら、それでも魔剣をすぐには引け
なかった。このタイミングで裏界の名だたる魔王二人がここに現れたのである。
 言われて素直に剣を収めるのは、本物の愚者の行為と言えた。
 影のエリスが去っても ---- 大魔王ベール=ゼファーと秘密侯爵リオン=グンタが
次の相手なら ---- 戦局はさっき以上に気が抜けないものになるはずだ。
 そんな柊の警戒を、ベルがからかう。
「忘れっぽいのね、柊蓮司。ついこの間、私たちは共闘した仲じゃない ? 」
 ふわり、と上空から舞い降りるベール=ゼファー。お馴染みのポンチョが風に翻り、
銀髪が陽光を照り返してきらきらと輝く。音もなく着地すると、
「違ったかしら ? ね、柊蓮司」
 十五、六歳の少女の容姿には不似合いなほどの妖艶な微笑みが、その口元にうっ
すらと浮かぶ。無意識であっても籠絡の手管となるほどの、蠱惑的な微笑みだった。
 しかし、さすがは柊蓮司である。美少女の微笑も魔王の誘惑も、あまつさえあからさ
まな好意であっても、それが女性から向けられたものであればすべて「完全防御」の
効果を発揮するほどの朴念仁。
 ベルの微笑など蚊ほどにも男心をくすぐられないのか、あくまでも憮然とした顔を返
すだけである。
「そりゃ、あのときはな。俺たちにとって共通の大きな敵がいたから、一時的に、一回
こっきりの話だろうが」
 不機嫌極まりない声で答えを返す柊に、
「・・・・・・今回も、そうだとしたら・・・ ? 」
 一転してシリアスな表情を作り、低い声で問い返すベル。
 柊の背中から顔を出したアンゼロットが、それを聞き逃すはずもなく。
「大魔王ベール=ゼファー。まさか、今回の一件 ---- あの、エリスさんが ---- あの
ときと同様の脅威だと言うのですか」
 アンゼロットの言うあのときの脅威とは、この場に居た全員が等しく関わった『宝玉
戦争』にまつわる戦いのことであろう。
「・・・まあ、ここへ来てあの黒いエリスちゃんに会うまでは確信していなかったけど。
だけど、アンゼロットに柊蓮司、よく聞きなさい ? もしかしたらこの一件、シャイマール 
復活に匹敵するほどの事件かもしれないわよ ? 」

 シャイマール !

 その名は破壊と暴威の象徴。
 裏界に絶対的な力をもって君臨し、ただ一人 “皇帝” の称号を冠した最強の侵魔。
 かつて、すべてを見通すものゲイザーが、この世界を灰燼に帰し、新たな世界の創
造をもたらすために、そのシャイマールを、志宝エリスを核として復活させようとした企
みにまつわる一連の戦いが、『宝玉戦争』の顛末である。


253:エリス~胎動する悪夢~
08/08/03 02:33:25 jjRMTtU+
 柊蓮司が生唾をごくりと飲み込んだ。アンゼロットが顔面蒼白になって身を震わせた。
 “皇帝” シャイマールとは ---- 最強ランクの魔剣使いと世界の守護者が、これだけ
の反応を表すほどの名前であった。
「事態の深刻さが少しは伝わったかしら ? 」
 歌うように言うベルの額にも、うっすらと汗がにじんでいる。自分の口にしたことの重
大さに、自然と緊張が走るのか。
「・・・場所を変えて話しましょうか、ベール=ゼファー」
「そうしてもらえると助かるわ、アンゼロット。私の説を補強するためには、貴女だけじゃ
なくて ---- エリスちゃんからも話を聞きだす必要がありそうだから」
 
 赤羽神社境内において ---- いまふたたび、世界最強クラスの美少女二人が、共闘
を宣言した瞬間だった。



 赤羽神社の境内から外れた母屋の居間は、軽いパニック状態に陥っていた。
 居間の中央に敷かれた布団には、眠るエリス。
 その周りをぐるぐると、「エリス様・・・ああ・・・おいたわしやエリス様・・・」とうわごとの
ように繰り返しながら、ロンギヌス・コイズミが歩き回っている。
 さきほどまでしょぼくれていたくれはは、コイズミの登場がアンゼロットの随行である
と察していたから、少しは希望の光が見えたのか、普段の彼女を取り戻し始めており、
落ち着きをなくして狼狽するコイズミに向かって、「ちょっとコイズミさん。うろうろしない
でよ。うるさいってば。エリスちゃんの身体に障るでしょ ? 」とたしなめるだけの気丈さ
は回復している。
「は、はい。申し訳ありません、くれは様」
 言われてそのときはピタリと立ち止まるものの、すぐにまたそわそわし始めて、腹を
空かせた動物のようにエリスの周りを歩き回るコイズミと、それを注意するくれは。
 そんなことを、もう四、五回ほど繰り返しているのである。
「・・・ああ、もう・・・。ひーらぎ、どこで油売ってるのかな・・・アンゼロット連れて、早く
戻ってきてよ・・・」
 ぼそっ、とくれはが呟いた。
 そこへタイミングよく柊が帰還を果たし。
「・・・おいおい、別に油売ってたわけじゃねーぞ。・・・でも、ま、遅くなってワリイ」
「おっそーいっ ! どこでなにやってたのよ、ひーら・・・・・・・ぎ・・・ ? 」
 顔を上げ、文句を垂れようとしたくれはの表情が凍りつく。
 額に汗して戻ってきた柊が、抜き身のままの魔剣を引っ提げたままだったからでは
なく ---- まあ、それにも驚いたのだが ---- 、連れ立ってやってきたアンゼロットの
背後から、さらに二人の珍客が現れたからであった。
「は、はわーーーーーーーーーっ !? 」
「んなっ !? だ、大魔王ベール=ゼファーに秘密侯爵リオン=グンタ !? 」
 くれはとコイズミの絶叫が居間に轟き渡る。
 そんな二人を柊とアンゼロットが、
「あー、くれはくれは。騒がなくてもいーぞ。今回もとりあえず協力し合うことになったか
らよ」
「コイズミ ! おろおろするんじゃありません ! 見苦しい !! 」
 ・・・・・・と。それぞれがそれぞれのやり方で二人を落ち着かせる。


254:エリス~胎動する悪夢~
08/08/03 02:33:55 jjRMTtU+
「は、はわー・・・・・」
「も、申し訳ありません・・・アンゼロット様・・・」
 狼狽するなというほうが無理なこの状況で、すぐさま落ち着きを取り戻したのはさすが
といったところか。溜息をついて柊が、
「とりあえず、二人とも上がってくれ」
 魔王二人を手招いた。
「おじゃましまーす」
「・・・おじゃま・・・します・・・」
 意外に礼儀正しい裏界魔王たち。
 かと思いきや、途端に眉をひそめたベルが、突っ立ったままでいるコイズミをびしりと
指差して、
「ちょっと気が利かないんじゃない !? お客様には座布団くらい出しなさいよね !? 仮面
割るわよっ !? 」
 と横暴な台詞を吐くと、続いてリオンが家主であるくれはをじとーっ、と見つめながら、
「・・・お茶くらい・・・出ませんか・・・・・・ ? 」
 図々しい催促をした。
「し、失礼しましたっ」
「は、はわわ、番茶しかないけどそれでもよければ・・・」
 あわただしく動き始めるくれはとコイズミであった。
 以前のエリスの護衛時に赤羽家に居候していたコイズミは、さすがに母屋の間取り
も記憶していたか、ばたばたと隣室へ駆け出すと、すぐさま人数分の座布団を取って
くる。
 立場上、まずアンゼロットに座布団を勧め、続いて柊に。最初に座布団を持って来い
と命令したベルの足元へと用意を終えると、最後にリオンのところへと。
 そこで。
 コイズミが硬直する。
 じーーーーっ・・・と無表情な瞳で自分を見つめ続けている、リオン=グンタ。
 ごくり。コイズミが唾を飲み込んだ。
「・・・・・・お久しぶりです」
 にいっ、と唇を笑いの形に作り、リオンが言った。ベルとリオンが、かつて宝玉戦争の
折、ゲイザーの企みを暴露するためにアンゼロット宮殿へと多少荒っぽい表敬訪問を
したことがある。そのとき、リオンのヴォーティカルショットを喰らってコイズミが吹っ飛ば
されたときのことを言っているのは間違いがなかった。
「・・・・・・・うふ」
 背筋に冷たいものを感じたか、コイズミがその場を離れようとするのを、リオンがその
手から、座布団の最後の一枚を奪い取った。
「あっ・・・ ! 」
 のんびり、緩慢に見えて、どうやってコイズミから座布団をもぎとったのやら。
 しばし、ぼーっ、と立っていたリオンが。
 すうっ、とゆっくりその場に正座すると、自分の真横に奪った座布団を置いた。


255:エリス~胎動する悪夢~
08/08/03 02:34:44 jjRMTtU+
「う・・・・・・」
「・・・どうぞ・・・」
 自分の隣に座れ、ということか。ぎくしゃくとした動きでリオンの横に着席したコイズミ
に、リオンはもう一度、
「・・・・・・・うふ」
 と、わざとらしく笑いかけた。ネズミをいたぶる猫の感覚で、からかって愉しんでいる
のは明白である。丁度その頃、くれはが大きなお盆に湯飲みと急須を乗せて、はわ
はわ言いながら戻ってきた。
 それを楽しげに眺めていたベルが口火を切る。

「さて。飲み物の用意ができたらそろそろ始めましょうか。材料が揃えば、たとえ憶測
の域とはいえ推理することができるわ。この一件の正体が、ね・・・」

 手ごたえのあるゲームに遭遇した子供のような無邪気さで ----
  ----大魔王がそう言った。
(続)






PCヒロイン寝たままですいません(笑)。
なんだか、「まずい ! 予定のシーンになかなか到達しない ! 」と慌てるゲームマスター
の心境です。まだ、二回目投下のときに微エロがあったくらいで、Hなしで話が進んで
るし・・・。でも、次は少しエロ分補給あると思うので・・・。
当初言ってた「長くなりそう」は本当になりそうです。長丁場になるかもですが、スレ
の合間の閑話休題的に気楽に読んでお暇つぶしに使ってやってくだされば。
ではでは、また。


256:名無しさん@ピンキー
08/08/03 14:04:24 UuVDsU0k
おや?
スレリンク(eroparo板)

257:名無しさん@ピンキー
08/08/03 17:00:30 JByuM94q
>>256
ハイハイ、向こうの>>1さんわざわざ宣伝乙

258:名無しさん@ピンキー
08/08/05 15:44:40 TWM9bWfk
ウォーハンマーで“いくさ群れ”を作った。
神様が何か言ったようなので、ダイスを振ってみたらスラーネッシュになった。

曰く、『産めよ増やせよ地に満ちよ』という、このスレ向きな啓示を受けた。

259:マッドマン ◆265XGj4R92
08/08/05 17:26:23 wiJQLoRA
>>255
GJ!
ベル様、柊たちの前に登場!
前回暴落したカリスマを取り戻せるか?!(多分無理) リオンに攻められてコイズミピンチだけど、まあいいか(まて)
はてさて、エリスに何が起こっているのか。
その真相が次回明かされるのを楽しみにしてます! 敵が強いといいな!(願望です)


っと、それと。
17時40分から、魔王少女の続きを投下させていただきます。
よろしくお願いします。

260:名無しさん@ピンキー
08/08/05 17:36:38 TBDiDS9y
>>235が消えとる・・・
誰か持ってる人再うpをー

261:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/08/05 17:42:05 wiJQLoRA


 勇者とはなんだ。
 それは勇気のあるもの。
 世界を救うもの。
 悪を打ち倒すもの。
 英雄であり、希望であり、使命を背負いしもの。
 幾多の戦いを潜り抜け。
 数えるのを忘れるほど世界を救い。
 異形を斬り殺した。
 どこまでも。
 どこまでも。

 終わりの果てに、磨耗するほど―



 剣閃交錯。
 大地を蹴り飛ばしながら、疾走する一組の剣士が疾風の如き速度で交わった。
 エンカウント。
 異形の集団の群に飛び込み―通過。同時に風に揺れて、散らばる石片。
 剣撃は瞬くような速さ。
 魔剣と聖剣が、豆腐のように異形の集団を解体し、斬殺する。
 見よ。幾多の異形を斬り殺した神殺しの刃を。
 身よ。幾多の軍勢を払い除けた王の刃を。
 圧倒的な強さで、柊と勇士郎は剣を振るう。
 斬、斬、斬。
 異形の手が降りかかるよりも早く、その首を刎ね飛ばし。
 ねじれた刃で繰り出されるよりも早く、その胴体を貫いて。
 久方ぶりに会ったとは思えない動きで、二人の剣士が斬舞を舞い踊る。
 グロテスクな残骸を花びらに、切断のための踏み込みを足拍子に、戦い抜くための動きを振り付けに。
 見惚れるほどの美しく、荒々しい戦いがそこで狂い咲き―瞬くように散った。
 開始から数分と経たずに戦いは幕を引く。
 異形の全滅という形で。

「これで終わりか?」

「そうみたいだな」

 最後の敵の胴体を袈裟切りに両断し、ぶんっと露払いをするかのように柊が魔剣を振り払う。
 勇士郎は紅い外套を翻し、僅かに飛んだ異形のゴーレムたちの欠片を払った。
 圧倒的な強さだった。
 世界でも最高峰のウィザードである二人の強さは別格である。
 並大抵の雑魚魔王ならば瞬殺されるほどに強い。

「んで? なんでこんなところにいるんだよ、ベール・ゼファー」

「答えろ」

 魔剣を肩にかけて柊は振り返り、勇士郎もまた剣を手に柊と同じ方角に視線を向ける。
 振り返った先、そこにいるのは一人の少女だった。


262:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/08/05 17:43:45 wiJQLoRA

 輝明学園の制服の上にポンチョを纏った、息を飲むほど端正な顔つきをした銀髪の美少女。
 誰が知るだろう。
 それが侵魔たちの領域である世界の裏側―裏界第二位の座位に就きし魔王、金色の魔王が弱まっている現在においては実質的なナンバー1である大魔王だということを。
 幾度となく世界を滅ぼそうとした敵。
 柊 蓮司は彼女に何度も対峙した。
 流鏑馬 勇士郎も長い戦い歴史において、何度か彼女の陰謀を潰す手助けをしていた。
 万が一、彼女がこの場で相対の道を選べば、町は全て灰燼に変わるほどの死闘が始まるだろう。
 人知を超えた絶大なる力を大魔王たる彼女は保有し、それらに対抗するだけの強さを持つ二人が揃っているのだから。
 そして、魔剣を持つ柊は、聖剣を持つ勇士郎は決して油断はしない。
 彼女の一挙一動を見据えて、警戒をしていた。

「あら、物騒」

 クスリとベール・ゼファーは微笑んで、両手を組みながらその指を自分の口元に当てる。
 あどけない顔に、どこまでも淫靡な仕草。
 幼い少女の肢体でありながら、歳を重ねた女性のようなギャップがベール・ゼファーにはある。
 まだ未熟なウィザードであれば、その一挙一動で怯え、奮え、魅惑されてしまいそうなほどに。

 ―ボロボロのポンチョに、どこか煤けた顔でなければだが。

「まだ何もしてないのに、そう牙を剥き出しにするのはやめてほしいわね」

 カリスマブレイクしていることに気付いていないのか、それとも取り繕っているのか。
 鈴を鳴らすかのような甘い声でベール・ゼファーが告げる。

「無警戒で当たるには前科が多すぎるとは、思わないのか?」

「ていうか、魔王を見て警戒しないほうが阿呆だろうが」

 勇士郎と柊はまったく気にする事無く、反論する。
 そして、気付いた。

「なあ、ベール・ゼファー」

「なによ?」

「お前……弱くなってないか?」

 その一言に、ビシリという音と共にベール・ゼファーの動きが止まった。
 凍りついたかのように。
 必死で取り繕っていた弱みに気付かれたかのように。


263:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/08/05 17:44:04 wiJQLoRA

「そういえば、なんか弱いな?」

 勇士郎も不意に気付いたかのように眉を歪めた。
 出会うたびに感じる威圧感が、昔よりも弱い気がしたのだ。

「っていうか、なんでお前あんな雑魚に追われて逃げてたんだ?」

「っていうか、何故飛ばない?」

 口々に柊と勇士郎から質問の言葉が飛んだ。
 その度にプルプルとベール・ゼファーの体が震える。

「もしかして、現し身の配分でもケチったのか?」

 柊がぽんっと吐き出した言葉。
 それにブチッとベール・ゼファーのこめかみから音がした。

「う、うるさいわね!」

 きゅぃいいんとその右手に光が宿る。
 閃光が迸る。

「うぉおおお!」

「なっ、ちょっ!?」

「リブレイドォオオ!!」

 ちゅどーん。
 閃光が上がった。

 “三人を巻き込んで。”




264:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/08/05 17:44:34 wiJQLoRA

 げふっと煤を吐くような音がした。

「お前……アホだろ。あんな範囲魔法を近距離で撃ったら、自分も巻き込まれるだろうが」

「う、うるさいわね! 柊 蓮司の癖に」

 黒焦げの柊の言葉に、同じく焦げ付いたポンチョを纏ったベルが不満そうに告げる。
 その様子を見て、守りの鞘で防御した勇士郎はため息を吐き出した。

「とりあえず状況がまったく分からないんだが、ベール・ゼファー。お前はここに何しに来た? 冥魔とでも手を組みに来たのか?」

 王の剣を手に、勇士郎が低く響き渡る金属音にも似た鋭い声を発した。

「あら、失礼ね? あんな連中と手を組むほど私は堕ちていないわ」

「どうだか。お前はゲーム感覚で世界を滅ぼそうとする、使えるコマであれば喜んで使うんじゃないか?」

 彼女の手口をよく知る勇士郎は言いながら、エクスカリバーの柄を握り直し。

「勇士郎。そこまでにしとけ」

「柊?」

「こいつは嘘を付いてない」

 事態を見守っていた柊がある種の確信を込めて呟いた。

「お前も多分何度もあるんだろうが、今までの経験からするとベール・ゼファーは俺たちを騙したことはあっても嘘なんざ滅多に付かない。嘘になったとしても本人すら知らなかったことだけだ」

 今までの事件を思い返すと分かるのだが、公平性を取るためか、それとも真実という毒に苦しむ姿を見たいのか嘘はついていない。
 真実を言わないことはあっても、偽りは告げないのだ。
 そして、今―“あんな連中とは手を組むほど堕ちていない”と告げた。
 最低でも協力関係にあるわけではないらしい。

「確かにな。でも、なにか企んでいる可能性もあるぞ?」

「何の疑いもなく信じろって言ってるわけじゃねーよ。ただ今すぐ敵として戦うのはやめとけって思うだけだ」

「賢明ね。柊 蓮司」

 くすりとべール・ゼファーは笑う。
 あどけない少女の顔に、蠱惑的な笑みを浮かべて、その白い指を頬に当てる。

「それにしても、貴方達の言葉からさっするとアンゼロットもここの連中には気付いたようね? 冥魔―ラース=フェリアでの名称そのものみたいだけど。貴方達は調査ってところかしら?」

「まあな」

 隠すことでもないので平然と柊は答える。


「馬鹿なことをしたものね」



265:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/08/05 17:44:53 wiJQLoRA

「なに?」

「もう、ここは―敵地よ」

 そうベール・ゼファーが告げた瞬間、彼女の背後の壁が波紋を広げるように揺らいだ。
 柊と勇士郎が瞬時にべール・ゼファーに剣を構え―彼女は振り返りもせずに手を背後に向けた。

「リブレイド」

 手に光が宿り、瞬く間に撃ち出される。
 迸る光の奔流が、波紋を広げてその中から産み落とされようとしていた異形ごと飲み込んだ。
 爆破、閃光。爆風と共にベール・ゼファーのポンチョとスカート、そして銀髪の髪が揺らいだ。

「分かった? 迂闊にここに足を踏み入れるのは馬鹿のすること。だって」

 波紋が広がる。
 壁が、家が、ビルが、次々とゼリーが震えるかのように振動し、形を変えていく。
 つい一瞬前までれっきとした建造物だったものが、水を掛けられた粘土のように姿を変えて、子供が作るような奇妙な形へと成り果てる。

「ここは敵の領域内よ」

 そう告げてベール・ゼファーは走り出す。
 柊と勇士郎に向かって足を踏み出し、二人の裾を掴んだ。

「え?」

「な?」

「走りなさい!!」

 さすが魔王というべきか、少女の体躯でありながらその力は青年二人の身体を引きずるほどに強い。
 やむなく柊と勇士郎もまた走り出す。

 どこまでも終わらない殺意から逃れるために。





266:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/08/05 17:45:43 wiJQLoRA

 走る、走る、走る。
 一人の少女の先導に従って、二人の青年が走っていた。

「どこまで走るんだ!?」

「どこまでもよ! 足を止めれば、すぐに捕捉されるわよ?」

「どういうことだ? そもそもここは月匣なのか?」

 紅い月は昇っていない。
 月匣特有の空気すらもなく、ただ走る街は無人の空間なだけで、通常通りの世界のはずだ。
 能力を用いて、建造物などを砕き、破壊し、操作することは出来るだろう。
 けれど、あれほどの大規模なものは単なる能力だけでやるには効率が悪すぎるはず。

「馬鹿ね。もうとっくに貴方達は月匣に足を踏み入れているわ」

「なに?」

「虚構と現実の境目にね。見てみなさい、さっき壊れたはずの建物を」

 そう告げられて、柊と勇士郎が振り返る。
 振り返った先は先ほど形を変えた建造物たち―それの変わらぬ姿。

「なっ!?」

「どういうことだ、こりゃあ!?」

「足を止めないで!」

 勇士郎と柊が驚きに一瞬速度を落としかけたのを、ベール・ゼファーが叱咤する。

「お、おう!」

 二人が走り出すのを確認し、ベール・ゼファーもまた速度を戻した。
 無人の町並みを三人が走る。
 響き渡るのはアスファルトを蹴る三人の足音だけだった。

「で、あれはどういうことだ? 町を再生したわけじゃないだろう?」

「そうね。あれは再生したわけじゃない、元から壊れていない―“現実の建物よ”」

「現実? ということは、さっき変貌したのは幻ということか?」

「幻というよりも、展開されている―“月匣”というべきかしら。今この町の中は薄皮一枚の厚みで虚構と本物が重なっているわ。さっき見えたのは入れ替わった建物よ」

 それはあたかもトランプの表と裏のようだとベール・ゼファーは告げる。
 今いる町は無数に並べられたカードの絨毯の上のようなものであり、その中の一枚をひっくり返せば瞬く間に月匣という虚構の姿が飛び出てくるのだ。
 見かけは同じ以上、それが本物なのか、偽者なのかは瞬時に把握することは不可能。
 それが虚構と現実の境目。


267:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/08/05 17:46:05 wiJQLoRA

「なに?」

「そう、それもある魔王の力によってね」

 ベール・ゼファーの言葉に、二人が顔を歪めた。

「魔王ってことは……」

「やっぱりお前も絡んでいるのか?」

「半分正解で半分外れ。確かに絡んでいるけど、この事態を引き起こしたのは私じゃないわ」

「?」

「何かやって、んでミスったのか?」

 はぁっとため息を付く。
 言いたいことじゃないけれど、渋々言う。
 そんなイントネーションで、彼女は二人に告げた。

「この能力を持った魔王は私の部下よ。けど、この町に送り込んでから―帰ってこなかったわ」

「冥魔に、喰われたのか?」

「多分ね」

 まったく使えない子ねとあっさりとベール・ゼファーは告げる。
 冷酷な魔王としての顔。
 部下であろうとも使い捨てる非情とも言える言葉に、柊と勇士郎は答えない。
 ただ疑問に思ったことを言葉で発した。

「んで、お前が来たってことは……様子でも見に来たのか?」

「一応正解。まさかあいつの能力まで取り込まれているとは思わなかったから、冥魔がいることすら気付かなかったわ」

 おかげでこのざまよと肩を竦める。
 マヌケといえばマヌケだが、柊と勇士郎は先ほどの反応で彼女が言わない事実にも気付いていた。

「あーなるほど」

「つまり適当に作った現し身で様子を見にきたら、うっかり冥魔の月匣に捕まって、そのせいで本体からの供給すらも出来ずに逃げ回っていたということか」

「あえてぼかした内容を言わないでよ!」

 後ろを走る二人の青年にベール・ゼファーは声を荒げた。
 先ほどから何度も言っているように魔王の威厳などこれっぽちも残っていなかった。
 ガシャーンという景気のいい音と共に砕け散っている。


268:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/08/05 17:46:30 wiJQLoRA

「まあそんなことはどうでもいいとしてだ」

「あまりどうでもいいわけじゃないんだけど、なに?」

「ベール・ゼファー。君が先に来ているってことは、俺たちよりも情報は握っているんだろう」

 当たり前じゃないと、ベール・ゼファーが呟く。
 その顔を柊と勇士郎は走りながら見つめた。

「なに?」

「となれば、選択肢は一つ」

「そうだな―ベール・ゼファー、手を組まねえか?」

 柊が告げた言葉に、思わずベール・ゼファーが足を止めた。
 続いて柊が、勇士郎も足を止める。走り回っていたことにより、吹き出した汗がいまさらのように流れる。

「……面白い提案ね? 私は魔王よ、貴方達の敵対者」

「普段ならな。でも、今は共通の敵がいる。ベール・ゼファー、君の性格からしてこのままここの冥魔を放置することはないんじゃないか?」

 部下を食われ、さらには襲われ、ここまでやられておいて気高き魔王が何もしないわけが無い。
 自分のプライドと、そして地位や立場を護るために何が何でもこの冥魔を自分の手で始末しなければ、裏界での顔に泥が塗られるだろう。
 それを見越して、勇士郎は告げる。

「そして、俺たちは冥魔を倒すことを任務としていても、大魔王ベール・ゼファーを倒す任務も必要性も持っていない」

「変わったわね、ブルー・アース。しばらく見ないうちに頭でも柔らかくなったのかしら?」

 何世代か前の彼の姿を思い出しているのだろうか、ベール・ゼファーは口元に手を当てて、優雅に嘲笑う。
 かつての勇者の彼ならば今ここで自分を葬り、冥魔をも倒そうとしていただろう。
 頑なに力を通す勝利の聖剣を携えたかつての彼ならば、天地がひっくり返っても言わなかっただろう言葉。

「人は変わるさ。大切なものだけを失わなければ」

「そう」

 聖剣を携えた勇者は紅い外套を翻し、静かに告げる。
 決意の瞳。燃えるような激しい光を湛えた視線がベール・ゼファーを捉える。
 それは見られるだけでゾクゾクと背筋に震えが走りそうな勇者の威圧感。
 目の前にいるのは幾多のエミュレイターを退け、裏界魔王72柱の一柱である貪欲の魔王【アー=マイ=モニカ】を葬った戦士なのだ。
 このような状況でなければ、彼を巻き込み、この手で苦痛と絶望に歪む姿を見てみたいと思うほど素敵な男。

「それで? 私に何のメリットがあるのかしら?」

 けれど、少しだけ自重する。
 ベール・ゼファーは気が長いのだ。感情のコントロールぐらいは大抵のことならば融通が利く。
 出来ないのはどこぞの超公を名乗る馬鹿を説得するようなプライドを傷つけられるような行為のみ。
 素直に頷かないのはただの気まぐれだった。

「メリットはあるだろ」

 しかし、そんな空気を読まない馬鹿がいた。
 柊 蓮司。
 ここ近年で瞬く間に台頭を表し、四度に渡る異変でベール・ゼファーと敵対し、協力もしたことのあるウィザード。
 少しだけ面白い玩具。
 それが彼女の評価だった。


269:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/08/05 17:46:55 wiJQLoRA

「メリット?」

「白兵戦もある程度はこなせるだろうが、今のお前じゃ難しいはずだ。魔法メインのお前を護る剣士が二人ってのは魅力的じゃないか?」

「護るといいつつ、グサリとやられるのは嫌よ?」

 生きている限り敵対するのが当たり前の立場として告げた言葉。

「するわけないだろ」

 しかし、それを即座に柊は否定した。当たり前のように、まるで友達にでも言い返すような気安さで。
 その態度に、ベール・ゼファーは肩を竦めた。

「なんだよ?」

 不思議そうな顔を浮かべる柊、僅かに呆れている勇士郎は柊の行動の意味を理解している。
 これだから、柊 蓮司は困るのだ。
 何度も殺し合っているくせに、一度は彼の幼馴染である星の巫女を操られた手助けもして、土星では直接殺しあったこともあるくせに、まるで無警戒。
 単なる馬鹿ならば諦めがつくけれど、一度仲間だと思った人間には当たり前のように接する。
 彼に怨みという感情はないのだろうか。
 立場上手を組むにしても影を引きずるのが普通なのに、彼は、目の前の馬鹿はそれすら考え付きもしない。
 頭が痛くなりそうだった。
 真面目に考えるのが馬鹿らしくなるほどに。

「しょうがないわね」

「……そんなに不満そうにするなよ」

「当たり前でしょ? この私がウィザードに力を貸してやらないといけないのだから」

 その言葉に、柊が分かったようにニヤッと笑う。
 その笑みにぴきりとこめかみを動かしながら、ベール・ゼファーは不満そうに告げた。

「協力してあげるわ。流鏑馬 勇士郎、そして柊 蓮司。ありがたく思いなさい? 私のエスコートは並の男じゃ勤まらないわよ」

「安心しろ。荒っぽい魔法使いには慣れてる」

「姉さんよりはマシだろうな」

 二人の言葉。
 にやりと笑って―同時に聖剣が、魔剣が抜刀される。
 まるで姫を護る近衛兵のように左右に散開し、二人は聖剣と魔剣を構えた。
 見れば、足を止めていた間に周囲が波打つように波紋を広げ、次々と異形へと成り代わっていく。
 無機質な殺意が満ちる。
 冥魔の視線だろうか、渇いた虚無の気配。汚物にも似た悪臭の香り。
 おぞましい異形たちの震えが、振動が、伝わってくる。


270:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/08/05 17:47:14 wiJQLoRA

「覚悟しなさい」

 その中でベール・ゼファーは両手を広げる。
 まるでダンスでも始めるかのように、淡い魔力を迸らせ、その身に纏っていた制服とポンチョの汚れが掻き消える。
 新品の如き美しさ、化粧でも整えるかのようにその片手で自らの頬に触れて、薔薇のように紅い唇を指でなぞる。

「これから始まるのは乱暴なダンス」

 抜刀。
 金属音が響く。
 二人の剣士が、地面が圧迫されそうなほどの威圧感を放ち、彼らの纏う月衣がプラーナの光を帯びて輝き出す。
 それに当てられて、それに輝かされて、一人の銀髪の麗しい少女が手を伸ばす。
 男でも蠱惑するかのように、どこかの愚かな異形を誘うかのように、伸ばした手で身体を抱きしめる。淫らに身体を動かして、魔力を練り上げる。

「悲鳴を上げても、泣き叫んでも、どんなに赦しを請いても赦さない」

 町が次々と裏返る。
 異形たちが一人の少女を求めるかのように迫り狂う。
 おぞましい光景。
 殺到する異形。

「さあ」

 世界が染まっていく。
 ベール・ゼファーの力を帯びて、歪んだプラーナの輝きが、世界を真紅に染め上げる。
 紅い月の下で、一人の魔王少女が告げた。

「始めましょう」

 歌うように、奏でるように、熱い吐息を吐き出して。
 上気した頬で、銀色の輝きの下で見開かれる琥珀の瞳。
 劣情を奏で上げるような声で、振り絞るような歌声で告げた。


「絶叫に満ちた舞踏曲を踊りましょう」



271:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/08/05 17:48:28 wiJQLoRA
投下完了です。
次回からド派手なバトルになる予定です。
魔王が、元勇者が、魔剣使いが盛大に暴れまくるアクションバトルにご期待下さいw

……エロはいつだろう?

272:名無しさん@ピンキー
08/08/05 18:01:27 qFMNmJvr
乙!

面白かったぜ
どんな展開になるか期待

273:名無しさん@ピンキー
08/08/05 20:07:13 r1+/GOLK
何故か最後の一言だけが神田理江のアナブラボイスで再生されたw

274:名無しさん@ピンキー
08/08/05 22:30:23 KBTsf9f+
乙!
さて、ブレイクしたカリスマは戻ってくるのだろうかw

275:名無しさん@ピンキー
08/08/05 23:29:29 i7cog49Z
> さて、ブレイクしたカリスマは戻ってくるのだろうかw
うん、無理……かな


276:エリス~胎動する悪夢~
08/08/06 00:02:52 9wQmVqFY
>マッドマンさま。
こっちのベルは「カリスマ大暴落魔王」か「超ポンコツ魔王」の悪い両極端・・・。
うう・・・カリスマとか可愛さとかかっこよさとは縁遠いのでしょうか・・・。
で、投下なのですが。
みなさんどうか、「ウソつき ! 」と叱ってやってください・・・。
書いてるうちに解説長くなってしまって、エロ分補給ゼロ !
本気で長丁場です・・・飽きられないでしょうか(汗)。
前書いた通り、読み物的お気楽さで「ふんふん、なるほどね」って感じでお読みいただけ
れば。では、少ししたら投下しまーす。


277:エリス~胎動する悪夢~
08/08/06 00:07:58 9wQmVqFY


 “影の” エリスは夢を見る。
 ここではないどこか。もはや存在しない場所。無窮の深淵に閉ざされた、彼女のため
にしか用を成さない黒い棺の中で。
 そこがどこかは誰も知らない。彼女が還るただひとつの場所。
 赤羽神社から撤退を余儀なくされた影エリスは、彼女の居場所でまどろんでいた。
 そう遠くない過去に、想いを馳せながら ---- 。



「う・・・う~ん・・・」
 布団の中で寝返りを打つ。いつもの朝を迎えるように覚醒したエリスは、まだ重い瞼
をうっすらと開きながら、自分を覗き込む二つの顔に気がついた。
「え・・・あ・・・あれ・・・ ? 」
 まだ眠っているのかな。これは夢でも見ているんじゃないのかな。そう思う。
 だって、ここにはいるはずのない二人が、並んで私の寝顔を覗きこんでいるなんて、
どうしたってありえないことなんだもの ---- 。
「あは、起きた起きた。なぁに、まだ寝惚けてるみたいだけど大丈夫なの ? 」
「・・・まだ・・・状況を認識していないようですよ・・・大魔王ベル・・・」

 -------- !?

 そうだ。ここにいるはずのない、いてはいけない二人 ! 大魔王ベール=ゼファー、そ
して “秘密侯爵” リオン=グンタ !!

「きゃっ・・・・ !? きゃあっ !? きゃあぁああああっ !? 」
 ここ二日間の不安定なエリスの神経は、ここへきて即席のパニック状態になったよう
である。かけられた毛布を思いっきり蹴り上げ、思いのほか俊敏な動作で跳ね起きる
と、布団の上を這いずるようにして逃げ出した。ふと、目の前に柊蓮司の姿を見出した
エリスは、
「先輩っ、柊先輩っ、た、助けてください~~~っ !? 」
 無我夢中で、胡坐をかいて座る柊の胸の中に迷わず飛び込んだ。
 彼の分厚い胸板にしっかりとしがみつき、「先輩、先輩」と何度も柊を呼びながら、そ
の胸に顔をうずめる。もちろん、その横で「む~~~・・・」と口をひん曲げて唸る赤羽
くれはや、サヨナラ満塁ホームランを浴びたマウンド上のピッチャーのようにうなだれる
ロンギヌス・コイズミなど眼中にない。
「お、おいおい。大丈夫だぜ、エリス。ほら、噛み付きゃしねーよ。いまは訳があって、
こいつらと協力することになってるんだ。だから落ち着けよ、な ? 」
 怯える子供のようなエリスの青い髪をよしよし、と撫でてやり。震える背中をぽんぽ
ん、と叩く。努めてなにごともないように穏やかな口調で、エリスをなだめてやる柊。


278:エリス~胎動する悪夢~
08/08/06 00:08:29 9wQmVqFY
「・・・・・・ひーらぎ・・・めずらしくやさしーんだね・・・」
 じっとり、くれはが横目で睨みつけ、そんなことを言う。
「残念なことですが・・・かないません・・・」
 落胆と悲嘆がないまぜになった口調で、コイズミが敗北宣言をした。
「な、なんだよお前ら。俺、なんか悪いことしたか !? 」
 わかっていない。まるでわかっていない男、柊蓮司。
 赤羽家の母屋の居間で突発的に発生した甘酸っぱい寸劇に、

「・・・もしもし。もしもーし」
「・・・・・・・・・この扱いは・・・ないんじゃないでしょうか・・・」

 やたらとくぐもった二つの声が、柊たちに呼びかけた。
 ベルとリオン。二人の首から上が ---- ない。いや、ただ単にエリスの跳ね飛ばした
毛布が、見事に二人の頭の上に覆い被さっているだけなのだが。
 和室の居間に正座しながら、頭から毛布を引っかぶらされた魔王二人 ---- 。
 このシュールな映像は、なかなか見られるものではないレアな光景である。
 柊にしがみつくエリスをちらりと横目でみながら、こほんとひとつ咳払いをしたアンゼ
ロットが、
「コイズミ。毛布をはがして差し上げなさい」
 出来の悪い笑劇にさっさと幕を引きたいのか、棘のある口調でそう言った。
「は、はい・・・・・」
 おそるおそる魔王二人の背後に回り、頭を覆う毛布をひっぺがすコイズミ。
「ちょ、いた、いたたっ、髪引っかかってるじゃないっ !? 」
「・・・・・・ヘアースタイルが・・・台無しです・・・」
 不平を垂れる魔王たち。見れば確かにベルとリオンの髪はぐしゃぐしゃにされ、二人
の美少女魔王は恨めしげに、コイズミを睨みつけた。
「も、申し訳ありません」
 律儀に頭を下げるコイズミへ、
「こちらへ来なさい、コイズミ。謝罪する義理などありませんよ」
 つんけんとした物言いでアンゼロットが叱り付ける。
「・・・部下は粗忽、主は無礼。とんだ主従だわね」
 ベルの辛辣な一言をじろりと一瞥で跳ね返し、アンゼロットが声を荒げる。
「さあ、今ことに時間を費やしていても仕方ありませんわ。ちゃっちゃと始めてしまいま
しょう」
 肩をすくめたベルが、エリスに視線を移す。柊の腕の中で小動物のように震えている
のをからかうように。
「ねえ・・・そろそろ話、始めたいんだけど ? 熱烈な抱擁は後にしてくれないかしら ? 」
 言われて初めて己の行為の大胆さに気づいたか、
「ス、スイマセン・・・柊先輩・・・私、なんてこと・・・・」
 顔を真っ赤にしながら柊の胸から飛びのいた。
「まあ、気にすんなよ。そりゃびっくりもするって」
 わはは、と豪快に笑う柊。彼自身は、エリスに抱きつかれたことにこれっぽっちの気
恥ずかしさも感じてはいないらしく、実に涼しい顔をしている。


279:エリス~胎動する悪夢~
08/08/06 00:09:15 3z5LHPIn
「やれやれ、だわ」
 呆れ顔のベルがようやく気を取り直して、
「話を整理するためには、アンゼロット。貴女だけじゃなくエリスちゃんにも、この二日
間の異変について話して貰うわよ。敵の思惑、正体、その他諸々を推理するためなん
ですからね」
 そう言った。
「エリスさん ? 倒れたとは聞いていましたけど、やはりなにかあったのですか ? 」
「・・・は、はい・・・・・・」
 いぶかしげに問うアンゼロットに、エリスが小さく答える。
「やっぱり、あの朝飯のときのことか・・・エリス・・・すまねえ・・・もっと気を配ってやって
いればこんなことには・・・」
 苦しげに顔をしかめ、柊がエリスに頭を下げる。
「そ、そんな、柊先輩のせいじゃないです。わ、私あのときお二人に余計な心配させた
くなくって、なんでもないって言っちゃいました。でも、あれは嘘だったんです・・・本当
は、なんでもなく・・・なかったんです・・・」
 涙を浮かべしょんぼりとするエリスに、
「水臭いぜエリス。お前は俺の仲間だし、可愛い後輩なんだ。心配とか迷惑とか、気に
すんなよ。お前が頼ってくれるんなら、そんなもん苦になんてするもんか。むしろもっと
頼っていいんだ。お前のためなら、俺はなんだってしてやるからさ」
「ひ・・・柊・・・先輩・・・」
 柊の台詞 ---- 聞きようによっては ---- いや、誰が聞いても熱く、そして甘い台詞
ではなかろうか。事実、エリスは柊の「お前のためならなんでもする」という言葉に瞳を
うるうるとさせ、頬を上気させている。が ----

 たぶん、柊の言葉に他意はない。きっと、文字通り仲間のために身体を張るぜ、とい
う意味なのだ。

「こほん。おっほん」
 見かねたアンゼロットがわざとらしく咳払いをする。
「まったく・・・柊蓮司は・・・」
 舌打ち混じりにベルまでもが吐き捨てる。二人揃ってなぜだか顔が赤いのは、エリス
の発する桃色のオーラに当てられたためだろうか。見ればますますくれはが機嫌悪そう
にそっぽを向き、コイズミは畳に両手をついて下を向いて落ち込んでいる。
 ただひとり、冷静なのは「あらあら」と楽しそうにこの風景を外枠から眺めているリオン
だけだった。
「もーいーかしらー ? エリスちゃーん ? 」
 ことさら大きな声で呼ばわるベルに、
「きゃっ !? は、はい、スイマセン・・・話、話ですよね・・・」
 より赤面しながらうつむくエリスである。
「・・・っ、たく・・・。それじゃ、始めるわよ ? まずはエリスちゃん、この二日間に起きた
ことを、まずは話してくれる ? 」


280:エリス~胎動する悪夢~
08/08/06 00:10:01 3z5LHPIn
 うながされて、ぽつりぽつりとエリスが話し始める。体調の異変、空耳だと思っていた
声、身体に押し込められた黒い少女たち、自分と同じ顔をした褐色の肌のもう一人の
自分のこと ---- さすがに、夢の中で黒い少女たちに侵入されたときの細かい描写は
省いた。まさか、「あんなところ」や、あまつさえ「こんなところ」にまで侵入された夢を見
たなどと、口が裂けても言えるはずがない。
 大方の話を終えると、続いてアンゼロットが口火を切る。コイズミの補足・解説も付け
加えながら、この二日間で観測されたエミュレイター反応の不可解な動きについての
事細かな情報 -------- 二人の話そのものは、ものの十五分で終わった。
 黙りこくって、瞳を閉じながらベルはじっと動かない。
 眠っているのか、と思うほど微動だにしないのである。
「・・・・・・お、おい。ベル、どうしたん・・・もごごごっ !? 」
 急に大人しくなったベルに、なんだか心配になった柊が呼びかけると、その口を塞い
だものがある。血の気の少ない、リオンの薄い手のひらだった。
「・・・・・・静かに」
「も、もごっ ? 」
「・・・大魔王ベルの “名探偵モード” です・・・」
 どこまで本気か分からないリオンの言葉であった。
 しかし、その茫洋とした瞳の色からは、彼女の真意を測り知ることはできそうになく。
 しかたなく、ベルが目を開けるのを待つしかない一同なのである。
 一分経ち。二分が過ぎ。

 すうっ -------- と。
 ---- ベルの瞳が開かれた。





 “影の” エリスは夢を見る。
 幾度となく見てきた、あの時の夢である。
 そう遠くはない過去。当時こそそんな呼び名はなかったが、いまの世においては『宝
玉戦争』と呼ばれる、あの約一ヶ月にも及ぶ一連の戦いの時代。
 もはやいまとなっては存在しない場所で、影エリスはいつも待ち続けていた。
 自分と、自分と同じ姿を持った志宝エリスという名の少女を造り上げた、あの人の帰
還を。
 最近のあの方 ---- その美しい少年の容貌に似つかわしくなく、影エリスは “おじさ
ま” と呼んでいる ---- は、頻繁にいなくなることが多くなった、と彼女は思う。
 ファー・ジ・アースと呼ばれる世界に、あの『白い私』を送り込んで以来、めっきり還っ
てこなくなってしまったようだ。
 あの方 ---- “見つめるもの”ゲイザーと名乗るあの人は、いまでは『キリヒト』と名を
変えて、自分の理想と目的のために別の世界で日々働いているのだという。
 影エリスは知っている。ゲイザー=キリヒトの絶望を。憤りを。悲しみを。
 世界を見つめ続ける永遠の時間、キリヒトがどれだけ悲嘆に暮れていたのかを。


281:エリス~胎動する悪夢~
08/08/06 00:10:59 JTiIVXE6
「おじさま・・・・」
 物理法則も概念も異質なこの空間で、影エリスはひとり、膝を抱えながら呟いた。
 いつも考えているのは、キリヒトの心中である。
 あの方は、誰よりも世界を愛している。自分の見つめ続ける世界を、誰よりも平穏で
あれ、と願っている。美しく緑なし、人々は笑い合い、愛し合う。巡る四季を末永く繰り
返し、争いはなく、悲しみもなく。そんな世界であってくれと願うキリヒトの心は、しかし
次第に荒んでいったのだ ---- と影エリスは思う。
 キリヒトの心は、世界が腐敗するにつれて疲弊していった。
 自分が見つめ続ける世界を愛したいのに ---- 愛することが出来ない。
 だってそうではないか。
 人々は奪い、人々は殺す。自分たちが造り上げた村々や、都市間や国家において、
その共同体の名の下に戦争という名の理不尽な暴力や虐殺に明け暮れる。
 木々を倒し、森を焼き、海を汚し、空を曇らせ、種を絶やし、それでもまだ飽き足りる
ことのない愚者の世界 ---- こんなもの、誰が愛せるというのだ。
 それでも、キリヒトは待ち続けたのだ。それこそ何百年、何千年と。
 だけど。だけど、人々は変わらなかったではないか。
 だからキリヒトは決意した。一度この世界を滅ぼして、一からやり直そうと。
 世界を愛しているからこそ、愛したいからこそ、滅ぼそうと。
 そのために産み出されたのが、あの少女 ---- 志宝エリスであった。
 裏界という異質な世界を、絶対の力で支配した “皇帝” シャイマールを、ファー・ジ・
アースに降臨させるための転生の器として。
 破壊と殺戮と暴威の象徴、絶対の滅びをもたらすシャイマールの復活は、文字通り
の世界の終焉を意味している。
 そのための、キリヒトの理想を具現化するための、大事な大事な器が、エリスであっ
た。そして影エリスは ---- キリヒトがエリスの予備として造ったに過ぎない、簡易版
の器でしかなかった。それが、彼女にとっては辛い。自分が、おじさまの役に立てない
ことがとても辛い。
 影エリスの世界を、不意に輝きが照らす。
 抱えていた膝に埋めた顔を上げ、彼女は溢れる喜びを隠そうともしなかった。
 あの方の帰還の前兆を、確かに感じ取ったのだ。最近はファー・ジ・アースに入り浸り
で、なかなか還ってこないおじさまの、久しぶりの帰還。
「おじさま・・・・」
 世界を照らす光に向けて、影エリスは彼の名を呼んだ ---- 。





 赤羽家の居間に不思議な緊張感が流れている。
 瞳をゆっくりと開き、人差し指でぴしっと天を指すベルは、ほんのちょっとミステリの
女王を気取った、ポンチョの名探偵である。
 思わせぶりで。しかも勿体つけて。静かに歌うように。
「誰が志宝エリスを狙っているのか」
 仰々しくも、そう呟いた。
 この場、この雰囲気でのこの問いかけは、『誰がクック・ロビンを殺したのか』を想起
させる語調にも聞こえるようで。
「だから、誰なんだよそれは」
 まぜっかえす柊に「うっさいわねー」と返してしまうところが、いまいちベルが名探偵
になれないところであろうか。


282:エリス~胎動する悪夢~
08/08/06 00:11:53 JTiIVXE6
「いい ? ここで貴方たちも考えてみるといいわ。エリスちゃんにちょっかいを出してきた
ヤツの正体は、なにものなのか」
 先ほど柊になだめられてすっかり落ち着きを取り戻したエリスが、固唾を呑んでベル
の言葉を聞いている。ターゲットが自分である、と明確に名指しされているのだから、
当然無関心ではいられないだろう。
「・・・その正体を推測するには、いろいろな道筋がありますが・・・」
 リオンが助け舟を出すようにそう言った。
「志宝エリスを狙う理由 ---- そして、狙うことが “出来る” 理由、を推測してみたら
いかがでしょうか・・・ ? 」

 狙うことが “出来る” -------- ?

「奇妙な言い回しをしますわね、秘密侯爵リオン=グンタ・・・・・・」
 アンゼロットが不敵な笑みを浮かべた。推理合戦の様相を呈してきたこの会合に、
俄然、闘志が沸いたようである。なんといっても、先の宝玉戦争においては、ベルの
「事件の黒幕=ゲイザー」の推理にぐうの音も出なかったのであるから、アンゼロット
が汚名返上とばかりに張り切るのも無理はない。
「エリスさんを狙うものがいるとして・・・その理由は三つ考えられますわね。ひとつは、
ただプラーナを求めるだけのエミュレイターが、無作為に彼女を狙う場合。二つ目は、
彼女を人質に取り、柊さんたちの弱点として利用する場合。三つ目は、エリスさんにな
にかまだ特殊な力が残っていると勝手に思い込み、エリスさん自身を利用しようとする
場合」
「一つ目は却下だろ。エリスは別にプラーナを吸われてねえんだしよ。二つ目も違うん
じゃねーかな ? アイツ、人質に取るどころか正面きって俺とアンゼロットを殺しに来や
がったし」
「はわっ、ひーらぎが冴えてるっ !? 大丈夫 ? 熱でもあるんじゃないの ? 」
「ちょっと柊さん !? 私が言おうとしたことを・・・コホン・・・ま、まあ、いいですわ。三つ目
の理由が、こうしてみると一番もっともらしく思えますが、でもそれにしても引っかかる
ことがあります。それならば、あの黒いエリスさんは、ただ闇雲にエリスさんに力がある
と思い込み、ウィザードとしての力もない彼女に手を出したのでしょうか ? 」
 アンゼロットの言葉を、ベルが楽しそうに聞いている。なかなかのものじゃない、と、
そう言っているようだった。
「あ、アンゼロット様。エリス様にウィザードとしての力が残されてはいない、というのは
本当に確実なのでしょうか」
 コイズミが、おそるおそる手を挙げて発言する。まるで、黒板の問題の答えが正解か
どうかわからずに、おどおどする小学生のように。
「それは確実です。それならば、彼女の狙いはなんだったのでしょうか ? ウィザードの
力を持たないエリスさんを愚かにも、勘違いで狙いに来たお馬鹿さんなのでしょうか」
 挑戦的な瞳をベルに向けるアンゼロット。ふふん、とベルが鼻で笑う。


283:エリス~胎動する悪夢~
08/08/06 00:12:33 3z5LHPIn
「志宝エリスのウィザードとしての力は失われている。これが真実だとするならば、こ
こで “四つ目” の理由を見つけなければならないわね。どう、柊蓮司 ? 貴方にはなに
か見当がつく ? 」
「分かるわけねーだろ。第一、そいつはお前らが、もう答えを見つけてるんじゃねーの
か ? 」
 ベルの問いかけに憮然と答える柊。
「まあ、エリスがウィザードとしての力を失ってるんだとしても、なにか別の力が残って
りゃ、話は別なんだろーけどな。狙うとしたら、あるのかないのかもわからない、そんな
もんぐれーだろ・・・・・・っ、おいっ !? なんで俺のオデコ触るんだベルっ !? ・・・っ、い、
痛ってえっ !? アーーーンゼロットぉっ !? つねんなっ !? ほっぺたつねんなっ !? 」
 正面からベルが、熱を測る仕草で柊の額に触れる。アンゼロットが信じられないもの
でも見たかのような顔で、柊の頬をねじりあげる。
「ひ、柊蓮司 ? 本当に熱あるんじゃないでしょうね ? 」
「柊さんが痛がっている !? するとこれは夢ではないんですのね !? 」
「なんだってんだーーーーーーっ !? 」
 ぶんぶんと頭を振り回し、二人の手を払いのける。
「なんなんだお前ら !? 二人揃って俺のこと馬鹿にしてんのかっ !? 」
 激昂する柊の服の袖を、横からエリスがきゅっと掴む。
 その唇は真っ青で、ふるふると震えており、歯がかちかちと小さく鳴っていた。
「エリス・・・ ? 」
「・・・・・・お二人が驚いているのは・・・柊先輩の言ったことが・・・正解だから・・・です
か・・・ ? ウィザードの力を失くした私が狙われた理由・・・それは、まだ “失くしていな
い力” が私にある・・・そういうことなんでしょうか・・・」

 沈黙。
 それが、エリスの問いに対するアンゼロットとベルの回答だった。
 それの意味するところはすなわち「肯定」。
 二人が驚いて、柊をいじり倒したのは、別に彼のことを馬鹿にしたわけではない。
 なにげない柊の無意識の一言が、まさに核心をついていたからである。
 こくり、とベルとアンゼロットが同時に頷き。リオンの口元に笑みが深まった。

「四つ目の理由・・・敵は、ウィザードの力を失っても、いまだ損なわれることなく残って
いたエリスさんの資質を知っていた。そして・・・それを狙ってエリスさんに接近したと、
わたくしはそう思います」
 アンゼロットが唇を引き締めた。
「私に残された資質・・・って・・・」
 エリスの真実を希求する言葉に、アンゼロットは一瞬躊躇いを見せた。
 これを口に出してもいいものかどうか、迷っているようである。
「言ってください・・・私、受け入れますから」
「エリスさん・・・」
 まだ顔色は悪いが、エリスはきっぱり言い切った。その顔に浮かんでいるのは、まぎ
れもなく決意。どんな運命でも、どんな真実でも受け入れてみせるという決意。
 ウィザードとしての力は失ったが、こうして自分の身になにかしらの悪意 ---- おそら
くは世界を巻き込もうと暗躍する悪意が襲い掛かるのであれば、毅然とそれに立ち向
かう心の強さが、エリスの心の奥深くに息づいている。


284:エリス~胎動する悪夢~
08/08/06 00:13:13 JTiIVXE6
「教えてください。アンゼロットさん。ベルさん。私も戦います !! 」
 この場にいる一同の脳裏に、フラッシュバックする “あの” 光景。
 魔剣を構えた柊の傍らでアイン・ソフ・オウルを展開しながら、この星を護る力を貸し
てくれと祈った、あのときのエリスと同じ決意の言葉であった。
「・・・・・・あーあ。なんか一本取られた感じだわ。ねえ、アンゼロット ? ここで変に気を
使ったら、それこそエリスちゃんを侮ることになるんじゃない ? 」 
 それは、おそらく大魔王ベール=ゼファーの最大級の賛辞であっただろう。
 ベルは認めている。エリスという少女の心の強さを。ウィザードでなかろうが、力を
失くしていようが関係ない。しばしば人の心の強さは、人の力など比べるべくもないエ
ミュレイターの脅威ですらも凌駕する。そのことを、自らの身をもってよく知るベルだか
らこそ、エリスの心の強さに感じ入るものがあったのであろう。
 ようやく、アンゼロットもそれを認めた。
 残酷な真実であれ受け入れようとするエリスが、とても神々しくさえ見える。
「わかりました。それでは、わたくしなりに考えたエリスさんの資質がなんであるか、そ
れを明らかにしましょう」
 すうっ、と息を吸い込み一息に。
「エリスさんからは、ウィザードとしての力は失われています。もちろん、かつてのシャ
イマールの転生体としてのエリスさんも、です。失礼を承知で言わせてもらいますが、
いまのエリスさんは、ウィザードとしての力とシャイマールとしての力を失くした、抜け殻
のようなものです」
 そこで言葉を切ると、アンゼロットはエリスを気遣うように、「ごめんなさい」と小声で
謝罪した。
「い、いえいえ。本当のことですから気にしないでください」
 あはは、と笑うエリス。ここで笑えるところが強さなのだろう、と傍で見ていた一同も
得心がいった様子で、彼女のことを見直した。アンゼロットがエリスに軽く目礼する。
 その仕草はどこかうやうやしく、エリスに敬意を払っているようにも見えた。
 咳払いをひとつして、アンゼロットが言葉をつなぐ。 
「では、敵の目的はいったいなんなのでしょうか。敵が目論む、エリスさんの利用価値
とはなんなのでしょうか -------- ここで、わたくしたちは発想を逆転させる必要があ
るのです」
「発想の逆転 ? 」
 いぶかしげに問う柊に頷いて。
「ええ。エリスさんの中に存在しない力など、初めから利用できるはずはありません。
ならば、なんのメリットがあって抜け殻のエリスさんを狙うのでしょうか」
 横で聞いているベルが、にまにまと人の悪い笑みを浮かべている。アンゼロットの話
が進むに連れ、その笑みは広がっていくようである。自分と同じ思考の筋道を、宿敵
であるアンゼロットも追っている ---- そのことがひどく嬉しいようだった。
「 ---- 力を失った抜け殻は、ふたたび “なにか” で満たされることによって、利用で
きます」
 眉をひそめながらアンゼロットが言う。エリスにとって、ひどく残酷な言い方をしている
ことが自分でも分かっているのであろう。それが、とても苦しげであった。
「敵の狙いは、エリスさんをふたたび “力” で満たすこと。かつて、かのシャイマールを
その内に宿していたほどの巨大な器を、それと同等の力によって満たすこと。わたくし
の考えは以上です。シャイマールほどの存在を封じ込めていた器の大きさ ---- それ
こそが、エリスさんの隠された資質である ---- と、わたくしは考えます」
「ブラボー」
 人を喰ったような賞賛の言葉と、続いて乾いた拍手の音。
 くっ、くっ、と笑いながら、ベルが手を叩いていた。


285:エリス~胎動する悪夢~
08/08/06 00:13:54 JTiIVXE6
「やるわね、アンゼロット。徳を積んだみたいね ? 続きは私も加わっていいかしら ? 」
「・・・どうぞ」
「ありがと・・・って、ところまではみんな理解したと思うけど、ここからが本番よ。敵の目
的がはっきりしたところで、その正体まで探っちゃいましょうか ? 」
 一同へ向けてウィンクをすると、ベルが全員の顔を見回す。
 全員が全員、難しい顔をして考え込んでいた。しかし、それは答えがわからなくて悩
んでいるのではなく、むしろ「漠然とした回答」を全員が頭に浮かべているために、その
真実の重大さ、深刻さを憂えている表情に近い。
「・・・ひとつ。志宝エリスの資質と、その持っている特性を熟知したものでなければ、
今回の陰謀を企むことはできない」
 リオン=グンタが口火を切ったのは、「敵」の正体を満たす条件の第一である。
「・・・たしか、その娘、エリスちゃんと同じ顔、してるっていったよね・・・ ? 」
 くれはの問いを、ベルが愉しげに「ふたつ」とカウントする。
「そういやアイツ、アンゼロットや俺のことをすげー恨んでるって感じだったな」
 みっつ、とリオン。
 くすくすと笑い声を立てながら、ベルがいかにも可笑しそうに言う。
「ここまでくれば十分でしょう ? 志宝エリスの “シャイマールの器” としての資質や特
性をよく知っていて、志宝エリスと同じ姿をしていて、なおかつ柊蓮司やアンゼロットを
まるで “親の仇” のように憎んでいる ---- 」

 みなが、生唾を飲む。
 ベルの一挙手一投足も見逃さない、一言半句も聞き逃さない、といったように。

「私の出した結論 ---- 敵の正体は」
 居間の空気が、あまりの緊迫感に凝固する。

「 “器” の特質を知るものは、それを造ったもの以外にはありえない ---- 」
「ゆえに、それは、かの“見通すもの”ゲイザーに連なるものであり ----」
「志宝エリスと同じ姿の彼女がそうだというのなら ---- 」

 立て板に水とまくしたてるベルは、やはり一同を集めて推理を披露する名探偵のよ
うである。

「ゲイザーの被造物・・・もう一人の志宝エリス。その目的は、ここにいるエリスちゃん
を、ふたたびシャイマールと同等の力でもって満たすこと・・・柊蓮司とアンゼロットを
“親の仇のように” 憎んでいる様子から、ゲイザーの完全な信奉者と思って間違いな
いでしょうね」

 場に緊張が満ちる !

「そして、ゲイザーの信奉者である以上、その最終的な目的は ---- 」

「まさか、キリヒトと同じようにこの世界を完全に一度滅ぼすってんじゃないだろうな !? 」
 激昂する柊蓮司を見つめるベルの瞳の色には、いつもの無邪気さや彼をからかう様
子は微塵も感じられず ---- 。

 ベルはただ、小さくこくり、と頷いただけであった ---- 。

(続)


286:名無しさん@ピンキー
08/08/06 09:12:45 1cUrfjdC
>276
この大ウソつきめ

だが、今はこの大ウソが心地いい
ヤッツケでエロいワードを無理矢理挿れられるよりかは
焦らしてくれた分のイロイロな大爆発に期待させてもらうよ?


287:名無しさん@ピンキー
08/08/06 09:28:17 3G7xLkeU
乙。
謎と舞台が明らかになり、相変わらずのベルとアンゼの詰めの甘さと
柊の空気の読めなさが光るお話でしたw


しかし、いろいろと出ている、NWのSSを読んでると……
以前は「どちらかと言えば小説版のほうが正史」と言う声が大きかった記憶があるが、
今では「コイズミが出ている」の一点を持って、アニメ版が正史と認識されてる気がするw

288:名無しさん@ピンキー
08/08/06 12:19:14 DR/mRST+
小説版エリスとアニメ版エリスは声の有無以上の違いがあるし、
性格的にも柊やくれはに絡ませたり、アンゼの依頼を受けるなら
圧倒的にアニメ版エリスの方が動かしやすいのもあるかもな >アニメ版準拠が多い

289:名無しさん@ピンキー
08/08/06 14:05:56 oRxepeXu
後、アニメ準拠のアンソロ小説が大幅な補強をしてしまってる

290:名無しさん@ピンキー
08/08/06 17:21:59 ui9SEbDa
小説版設定で拾いやすいのは

柊の魔剣折れる
スーパーくれはタイム
TIS大活躍
ベル以外の魔王にちゃんと(?)出番アリ

あたり?

291:名無しさん@ピンキー
08/08/06 18:26:52 oo0IHaMh
>>290
パールちゃんがあっさりやられるのがなんとも…

292:名無しさん@ピンキー
08/08/06 20:39:14 ntXrZkI6
まあ、きくたけ世界的には小説の方が正史に近いんだろうが、所詮はきくたけワールド
TRPGの設定なんぞ後から幾らでもなかったことに出来るしな

アニメの方が認知度高いし、SS的にはあえてTRPG設定引っ張ってくる必要がなければどうでもいい


293:名無しさん@ピンキー
08/08/06 20:58:00 dVINey2F
アニメ準拠だとエリスが輝冥学園3年で天文部にいるという設定で使えるしな

294:名無しさん@ピンキー
08/08/06 21:56:08 T8QFnTcl
明るく! 明るく!

295:名無しさん@ピンキー
08/08/06 21:58:13 8x6uVwfF
アニメ準拠だとくれはが巨乳という設定になるな

296:名無しさん@ピンキー
08/08/06 22:00:45 DLKnvHnC
>>295
それはいらない

297:名無しさん@ピンキー
08/08/06 22:15:58 XN3YxzvP
>>296
あのな、レギュラーヒロインがひんぬーばっかりでどうするのかと。

298:名無しさん@ピンキー
08/08/06 22:19:02 muB3FLAV
突いたら割れると今でも信じてます!

299:名無しさん@ピンキー
08/08/06 22:22:01 oo0IHaMh
>>297
お前ガンナーズブルームで撃ち殺されるぞ

300:名無しさん@ピンキー
08/08/06 22:37:02 3W1oLMS5
>294が何を言ってるのかと思ったら。輝冥かよw

301:名無しさん@ピンキー
08/08/06 23:16:41 V3H0H+Jy
まぁ魔王シャイマール様が居られる学園なら輝冥学園でも間違ってない気もするがな

302:名無しさん@ピンキー
08/08/06 23:21:31 muB3FLAV
どうでもいいが


輝冥計画ヒイラギマー


とかいう電波が来てしまった

メイ オー

303:名無しさん@ピンキー
08/08/07 01:06:15 DjX5HBYY
あかりんにつららを挿入するんですね、わかります。

304:名無しさん@ピンキー
08/08/07 01:08:36 dlBEl7J1
オクタヘドロン製牛乳というものがあってだな(ry

305:名無しさん@ピンキー
08/08/07 01:41:51 AHVwfjZ9
? 貧乳だらけで何か問題でも?

306:名無しさん@ピンキー
08/08/07 02:04:05 xrK7KiXr
今野先生、仕事してください

307:名無しさん@ピンキー
08/08/07 08:08:27 xqlPvNAg
しかしよく考えると原作だと貧乳キャラは結構少なかったような
要姉妹とくれはくらいじゃね?

マユリも竜之介もけしからん大きさだし。

308:名無しさん@ピンキー
08/08/07 08:43:56 XE0Hri/f
>>307
世界の守護者様と大魔王を忘れるとはけしからん

ああ…小さすぎて見えなかったか

309:名無しさん@ピンキー
08/08/07 09:54:10 xqlPvNAg
ぽんこつ大魔王はその気になれば大きくできるから却下。
ぱーるちゃんさまのことなら同意。

世界の守護者様?
…ノーコメント。ダイヤモンドやすりで削り殺さr(ここで記述が途切れている)

310:名無しさん@ピンキー
08/08/07 11:38:46 FYRXHoMa
>309
早く過去のタイムゲートをくぐってL・A・L・Aのコマンドを入力する作業にもどるんだ!

311:名無しさん@ピンキー
08/08/07 17:12:39 FeOWL4xv
>>285
ウ ソ ツ キw
しかし、段々謎が分かってきましたね。
ゲイザーの信奉者ということは使徒か? でも、何故魔王とかを従えているのかが不明ですね。
そちらの話もクライマックスに近づいているようでwktkさせていただきます。
もうそっちだと柊とくれはがくっつているので、エリスとのCPは成立しないんだろうなぁと嘆きつつも次回も楽しみにしています!
頑張ってください。

そして、冥魔は……まだ?(まて)



312:名無しさん@ピンキー
08/08/07 21:56:40 57gaYGVF
雷火×武田少年を待ちながら保守

313:名無しさん@ピンキー
08/08/07 23:12:24 vFJeWVpE
 もうじきお盆だな。『「ありがとう」の言葉』を(個人的)筆頭に連載中の作品の
続きや新たな職人さんなどでスレが盛り上がることを期待

314:名無しさん@ピンキー
08/08/07 23:13:18 ma9SrjqS
そっち受けなのか。

315:名無しさん@ピンキー
08/08/07 23:50:28 VmXpri8G
男女の場合は必ずしも攻め受けの順番じゃないけどな


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