卓上ゲームエロパロ総合スレ23at EROPARO
卓上ゲームエロパロ総合スレ23 - 暇つぶし2ch100:宝玉少女の斬撃舞踏曲
08/07/23 20:45:39 sz2LmvdU
 答えを出すために。
 納得出来る時間が欲しいと告げた。

「……」

 エリスは沈黙する。
 柊は焦る。
 どうしょう。最低な答えだったか。
 よくよく考えると単なる保留だよなっと遅れて回ってきた回転が追いついてくる。
 だらだらと柊の顔に汗が流れ始めるころ、エリスが口を開いた。

「よかった」

「は?」

「私、迷惑だと思ったから」

 エリスは笑っていた。
 笑いながら泣いていた。
 喜んでいた。

「私、柊先輩の横になんかいたら駄目だと思っていたから」

 告白する権利なんてないと思っていた。
 ウィザードですらない、ただ護られるだけの人間だから。

「それはちげえよ」

 柊はそんな彼女の思いを否定した。

「俺は多分、エリスが一緒にいてくれたら幸せだと思える」

 感情の答えは分からない。
 けれど、確信は出来る。
 彼のよく知るエリスなら一緒にいて楽しいと、嬉しいと、幸せだと断言出来る。

「ありがとうございます」

「れ、礼を言うようなことかぁ?」

 戸惑いながら、柊は頬を掻いた。
 エリスが笑った。楽しげに。

「じゃあ、そろそろ行くわ」

 照れ隠しに柊が靴を吐き直す。
 外は綺麗に晴れていた、青空。
 光差す夏の空。
 風はどこまでも吹いていた。


101:宝玉少女の斬撃舞踏曲
08/07/23 20:46:01 sz2LmvdU
「いってらっしゃい、先輩」

「ああ。エリスも元気でな」

 そういって、柊が玄関から足を踏み出そうとした瞬間。

「あ、先輩!」

「ん?」

 柊が振り返る。

 ―柔らかい感触がした。

 感触に戸惑い、見てみればそこには真っ赤な顔をした彼女が居た。

「先にこれだけ貰っておきますね」

 エリスは笑う。
 まるで向日葵のような微笑を。
 夏の空の光に照らされて、咲き誇っていた。


 それが斬撃舞踏曲の終わりだった。







102:宝玉少女の斬撃舞踏曲
08/07/23 20:47:07 sz2LmvdU
 虚無。
 終わりなき地獄。
 悪夢、悪夢、悪夢、悪夢―異形。
 おぞましい。
 嗚呼、嗚呼、絶望せよ。
 おぞましい怪物たちに発狂せよ。

「これが、例のミュレイターですか」

 正視に堪えないおぞましい生き物。
 幾重もの封鎖結界、錬金術と科学による拘束具、それらに捕らえられた化け物。
 それを見つめる一人の少女が居た。
 美しい月のように輝ける銀髪、月光に照らされた雪原のように真っ白い肌、神の如き腕前を持つ人形師が生涯をかけて作り上げたかのような美貌。
 それが世界を護る守護者の姿。
 真昼の月 アンゼロット。

「はい。通常のエミュレイターよりも数段、否、別規格の力を備えたイレギュラーです」

 それに答えるのは仮面を付けた美青年。
 ロンギヌス・コイズミ。

「そして、調査の結果、これは本当に“裏界”からのものではないのですね」

「ええ。このエミュレイター―否、クリーチャーが持つ波長は裏界からの発生物ではなく」

 虚無。
 闇。
 漆黒。
 ありとあらゆる怨嗟を練りこめて、心を失い、全て発狂せよとおぞましく声を上げるその怪物は泣き叫ぶ。

「“闇界より這い出るもの”―【冥魔】です」


 世界の危機に終わりは無い。
 終焉が訪れないことがないように。


 世界は狙われていた。


103:斬撃舞踏曲の人
08/07/23 20:54:06 sz2LmvdU
投下終了です。
たった短い短編なのに長々とすみませんでした(謝罪)
こんなの柊じゃねえよ&エリスじゃねえよ、という意見もあるでしょうが、それら全て自分の力不足です。
拙いお話でしたが、少しでも楽しんでもらえれば幸いです。
本格的なエロも書こうと思いましたが、技量が足りないのと、エリスと柊の関係がそれで決定的になってしまいそうなので控えました。
あと雰囲気が壊れてしまいそうでしたので(汗)

あと。ネタバラシをすると、
最初に柊と戦ったエミュレイターは冥魔に喰われ、パワーアップしました。
TV版の後も世界結界が弱まり、冥魔がちらほらとようやく観測され始めたばかりの話つもりです。
アンソロジーの後日談といったところでしょうか。
冥魔が強すぎる気もしますが、下手すると魔王も食うのでこれぐらいが妥当かなっと自己判断です。すみません。

あと、我ながら拙い技量で言い難いのですが。また機会があれば書かせてもらおうと思います。
次回のヒロインはどこぞのポンコツ魔王様の予定ですが、もし他のヒロイン&こんな冥魔と戦って欲しいとか、あのキャラを出せというのも受け付けております。
例えばアルシャードガイアの某錆びたシャード持ちとか、ガイアの病弱男装娘でもおkですw

それではまたのちほど(あったら)レス返しなどをさせていただきます。
ありがとうございました(謝礼)

104:名無しさん@ピンキー
08/07/23 21:02:54 HSbTBFyj
ぐっじょーぶ。
エリスはヒロイン力高いなぁ。
なにせ、あの柊にフラグを意識させるほどだし!w

> あのキャラを出せというのも受け付けております。

よーし言ったな、後悔するなよ?w
皆きっとここぞとばかりに無茶キャラ要求するぞきっとw


個人的には好きだけど誰も触れない、勇士郎withダブルメイドとか希望してみる。

105:名無しさん@ピンキー
08/07/23 21:29:17 bwY9EUei
ベルとちゃんさまで

106:名無しさん@ピンキー
08/07/23 21:31:12 1NkyUoRD
斬撃の人、完結お疲れ様でした。
まさしくこれこそヒロイン&ヒーローといった感じのエリスと柊、堪能させて頂きました。
エロ成分の少なさはお気になさることはないかと。
むしろ、文章の格調の高さ故か、「エロ」よりも「艶」を感じましたから。
次回予告ではポンコツ様がヒロインということで、こちらも投下を楽しみにしています。
私も拙作「蓮司×くれは」の後日談でベル様ヒロインにした後、
「よーし、今度はポンコツじゃなくて魔王の名に相応しい怖くて冷酷な魔王らしいベルを ! 」
と、「ぷちべる」書いたら、なにをどこで間違えたのか、ベル様ご本人の株を下げる結果に(泣)。
ですので、ぜひ私の代わりにリベンジを ! (笑)
ともあれ、完結お疲れ様でした !

107:名無しさん@ピンキー
08/07/23 23:57:43 Rd0Vmsdw
斬劇の方乙です~
エリスさんのヒロイン底力を見せられたお話でありました~

108:名無しさん@ピンキー
08/07/24 01:46:24 b4HLh5ss
>>104
んー?確か流鏑馬弟×ふゆはるネタは旧保管庫にあったよーな……

>>103
ともあれ、お疲れ様でした。
いやいや何をご謙遜を
確かに表現や言葉の取り回し上で首を傾げたくなる点はいくつかありましたが、それを補ってあまりある描写力、雰囲気の構成力でした
すげー、どうやったらこんないびつなもの書き的成長の仕方できるんだ(ほめ言葉)

なにより、です。なによりも、公式以外で、俺は、これほどの、「柊蓮司」を、見たことが、ないっ(断言)!
これだけ二次で柊蓮司を堪能したのははじめてに近いくらいな気がします。

大変いいものを拝ませていただきました。これを原動力に自分も頑張ろうと思います
次回作を期待しています、今からもぅドキドキするーっ!

109:名無しさん@ピンキー
08/07/24 03:16:50 4Na5FqA7
完結お疲れ様でした。そしてありがとうございました。NWアニメからなんで
エリス大好きなんですけど本妻くれはやネタにも使いやすいアンゼロットに
ベルなんかが強くてなかばあきらめかけてたんですがこんなクオリティの高い
作品に出合えるとは本当に感動しました。
 ところでガイアの病弱病弱娘というのが気になってしょうがないのでネタが
浮かんだら是非お願いします。

110:名無しさん@ピンキー
08/07/24 03:59:12 rzZylOD3
こんなユメを見た。

GM「今度、エンドラインのリプレイやるんですけど。
かわたなさん、やりたいキャラあります?」
かわたな「じゃ、ケイトを…」
GM「結城と戦うケイトですか。いいですね。」
かわたな「…それで、結城を寝とる」
GM「…」

111:名無しさん@ピンキー
08/07/24 10:46:29 B0RYx8OP
ムーンライトドローンステージネタを読んだおかげで、
薬王寺勇希(男)×檜山ケイ(女)とか、上月姉妹(永子・つかさ)の姉妹モノとか変な妄想が。

112:名無しさん@ピンキー
08/07/24 10:59:20 Lyq+7N0g
隼美「普通っていうなー!(CV:新谷良子)」

113:名無しさん@ピンキー
08/07/24 12:39:55 0XJlvccN
隼乃がいいな。女性化するなら。

114:斬撃の人
08/07/24 14:19:20 7urZO5Cn
そろそろ感想が出終わったようですので、レス返しです。

>>104
勇士郎withダブルメイドですかw
ちょいやくぐらいなら次回(書くとしたら)出せるかもしれません。

>>105
ベル様はともかく、ちゃん様まで!?
辺り一帯が焦土と化しますよw(バトル前提で考えている)
でも、あまりメインになるのは少ない気がするから出していいかもしれませんね。
……柊が死なないといいけど。

>>106
いえいや、まだ修練が足りません(汗)
そちらのプチベルと比べて、儚さとか足りない模様です。
出すとしたらポンコツ+カリスマモードを魅せ付けたいですね。
頑張ります。

>>107
エリスはヒロイン。
これは譲れませんw 個人的に好きなヒロインだと、ベルとレンとエリスです。
くれははまあ王道ということでw(マイナースキー)

>>108
出来るだけ柊らしさを出そうと頑張りましたけど、戦闘に関してはかなり好き勝手やってますw
あそこで答えをはっきり出すのは柊らしくないかなーと(優柔不断というよりも優しさです)
お褒めの言葉に恐縮です。

>>109
アニメからの方ですか。
お褒め頂きありがとうございます。自分もエリスが好きなんですが、あまりにエリスとかのSSがないので自分で書きました。
広いネット世界にはまだまだ自分よりも上の方がいるでしょうが、技量を褒めてくださってありがたく思います。
ガイアの病弱男装娘というのは、ファンブックに出てきた柊 レンという柊の平行存在のことです。
個人的には好きなキャラなので、いつかネタが浮かんだら書きたいと思います。

では、多数の感想ありがとうございました。
次回は今回の話の続編予定です。いつになるかは分かりませんが、いつか書きたいタイトル。
【魔王少女の爆撃舞踏曲】です。

115:名無しさん@ピンキー
08/07/24 16:02:54 H7ygUHT+
>114
……魔王……爆撃……た、高町式交渉術!?

「お話……聞かせて?」(ドカーン)

116:名無しさん@ピンキー
08/07/24 18:47:44 BEC37QR2
ようやくエクソダス読了したが、
アィヴィーのエンディングを見て、思わず柳也がアイヴィーとのフラグを立ててしまって、
そしてミナリが嫉妬して、さらにそこにジェラルドが絡んできて、
ドロドロな昼ドラ展開を想像してニヤニヤしていたのは俺だけだろうか。

どう見ても俺だけです。
本当にありがとうございました。


なんかこう、アイヴィーがまどろみから目覚めたら、
柳也が上着とかかけてやってそうな、そんな感じのを連想してしまったんじゃよぉ~。

117:名無しさん@ピンキー
08/07/24 19:45:18 yzpM7j+k
そこにセント・ジョージが加われば更に(大惨事的に)完璧だなw

118:名無しさん@ピンキー
08/07/24 19:54:18 gg3y+sjk
そして新生Xナンバーとして現れる柳也妹であった

119:名無しさん@ピンキー
08/07/24 19:59:22 YkwQnQ6D
むしろスティングがXナンバーのプロトタイプとか
ほらクローンだのフルボーグだの

120:名無しさん@ピンキー
08/07/24 21:40:37 zoZLMujJ
>スティングとXナンバーズ
真面目な話何らかの技術供与や交換がセル間であった・・・てのは有り得る話かもしれないな
 
リプでそういう話が出ることは無いだろうけど
今後のサプリでそんな設定が出たら面白いな
 
・・・ここまで書いたところで、
エクソダス終了後のサプリにネオ・ファントムセルなる組織が収録された光景を幻視した

121:名無しさん@ピンキー
08/07/24 22:08:37 yaQppIUR
>>120
(ノエルと白馬の王子を読みながら)
 え?携帯マスターファントムやファントムおみやげセットとかのアイテムや
ファントムセル戦闘員、影武者マスターファントムといったエネミーが追加されるって?


122:名無しさん@ピンキー
08/07/24 22:13:00 YkwQnQ6D
ゲル・ファントムセルじゃねぇの?

悪魔的天才からダインスレイフ研究所、ヘルメス、ファントムセルと
DXにマッドサイエンティストは欠かせない要素だな

123:名無しさん@ピンキー
08/07/24 22:13:50 eM32tOkV
( ゚∀゚)つ/∪⌒☆ <魔王少女の爆撃舞踏曲 マダー?) チンチン

124:名無しさん@ピンキー
08/07/24 22:34:08 BEC37QR2
というわけで(だry)投下します

雷火×武田の続きです。

ハンドアウト OP1~2 マスターシーン1
マスターシーン2 ミドルフェイズ1
スレリンク(eroparo板:249番)-254

ミドルフェイズ2 これから

今回1レス分のみです。エロもありません。
牛歩の歩みで申し訳ないです。
いやあ、他のリプレイ読んでるとそっちでの妄想が広がって(以下言い訳なので略

では投下します。

125:名無しさん@ピンキー
08/07/24 22:34:24 BEC37QR2
 クエスターは、どのようにして奈落の気配を察知するのか。
 答えは簡単である。魔力……マナの欠如が、奈落発生の予兆であり結果である以上、
マナの感じ取れない場所に奈落は存在するという事になる。
 本来、ありとあらゆる物体、存在に宿っているはずのマナが、存在しないという事。
その違和感こそを、クエスターは奈落の気配として捉えるのだ。
 無論、意志のある奈落はマナの欠如を覆い隠し、自らの存在が露見する事を避けようと、
細工を弄する事もままあり、クエスターであれば奈落を必ず察知できるかというと、
そうは言えない場合もある。
 だが……
「……これは」
 最早呆けている場合ではない事を、雷火は眼前に広がった光景に教えられた。
「おっ、気づいたか、服部?」
「はい。……変、ですね」
「だよな……」
 どこがどうおかしいと言うわけではない。そこにあるのは学校の建物だ。
 どこがどうおかしいと言う事ができない。全てが狂った、学校の建物がそこにあった。
「なんなんだ、これ?」
 時刻は当に始業時間を越えていて、本来ならば学校は教師の声、生徒の声、その他
もろもろのざわめきに包まれているはずの時間だ。
 だが、そこには静寂だけが満ちている。そして、本来満ちていなければおかしいはずのマナが……ない。
「なんで、こんなに……静かなんだ?」
「………………」
 正一の疑問に、雷火は答える事ができない。
 そこにあるはずのマナが感じられない。それが示すのは、奈落の存在だ。それを雷火は
当然理解できる。だが、それを傍らにいる少年に自らの理解する所を教える事もまた、
当然の如くできない。
「……武田殿」
「なんだ?」
「それがし、様子を見てまいります。ここで待っていて下さい」
「様子って……俺も行くよ」
「駄目です。……危険……そう、危険ですから、それがしが行きます」
 雷火の心に焦りが満ちる。まさか、奈落の動きがここまで早いとは。
 そして、本来喧騒に包まれているはずの学校が、静寂によって満たされている意味。
「なんだよそれ……危険って……だったら先生とか、親とか、大人に言って……」
「時間がありません。それがしは……行きます!」
(皆……無事であってくださいっ……!)
 そう、そこには先生達が……そして、クラスメイト達がいるはずなのだ。
 焦燥が、雷火の足を動かす。
「ちょ……服部!?」
 正一を校門の前に一人残し、雷火は駆け出した。
 クエスターとしての能力を全開にしたその速さに、正一が面食らうのも気にせず。


「は……はえぇ……」
 あっという間に豆粒のように小さくなった雷火の背中を呆然と見送りながら、正一は
考えた。一体、何が起こっているのだろうかと。
 彼に理解できる範囲では、目の前に起こっているのは異常からは、危険の有無は
わからない。だが、雷火は言った。危険だから、と。
「……じゃあ、お前は危険じゃないのかよ」
 彼女は、どうやらこの異常に、何か心当たりがあるらしかった。
 自分には、この異常が一体何なのか、皆目見当がつかない。
 先生が既に中にいるだろう事を考えれば、大人達もあてにはならないだろう。
「俺、次第……」
 何故か心に刻まれたその言葉を、正一は噛み締めた。
「だったら……俺も行かなきゃだめだよな」
 記憶の中には既に無いはずの夢に見た光景が、一瞬だけ脳裏をよぎる。
「大丈夫……多分、やれるさ」
 そう呟くと、懐の中にあるカードの宝玉が緑色に光った。まるで、呟きに応えるように。

126:名無しさん@ピンキー
08/07/24 22:34:39 BEC37QR2
ここまで投下です。

127:名無しさん@ピンキー
08/07/24 22:58:52 PXUvSQHL
おつ、まってたぜー!
でもやっぱり、もうちょっと読みたいとわがまま抜かす。

128:名無しさん@ピンキー
08/07/24 23:36:10 WqzwcOl5
続き来たー!

気長に待ってるぜ

129:名無しさん@ピンキー
08/07/25 22:54:11 mI2iyVlX
URLリンク(moepic3.dip.jp)

130:名無しさん@ピンキー
08/07/25 23:11:49 hHx+iFwQ
ベベベベルたんのお尻の穴あぁぁ!?

131:名無しさん@ピンキー
08/07/26 02:03:58 PycaY3Xp
アンゼロット様のスジと微乳と困ったような表情がもう辛抱たまらんですたい!もう一生ついていきます!!

ところでこれってやっぱりコラかな?

132:名無しさん@ピンキー
08/07/26 09:40:16 6pzmecxE
コラだな、元絵はサイトにあるし。
しかしこのアンゼ様可愛いな。

133:名無しさん@ピンキー
08/07/26 13:12:58 MQs4m3W8
古本屋に「合わせみこ」が出ていたので買いました。
やらしい夢―巨乳女子高生が毎日、男子高校生の剣(隠語)を胸に差し込まれて熱い液体が飛び散る夢を見るだとか、
81pのパジャマのお尻のラインとか、ベル様の「ふふ……あたしを相手にして、三十秒保ったらほめてあげるわ?」とか、
私なんか五秒持たない自信がありますよ?
こんな妄想↓でスレを汚しても構いませんね! 

134:無力化ベルさま
08/07/26 13:13:33 MQs4m3W8
世界結界の暴走で無力化したベルは、げすなウィザードたちに捕らえられてしまう。
「げひゃひゃひゃ、魔王ベール=ゼファーもこうなっちまったらただの女だなぁ?」
強大な力を誇っていた魔王も魔力を失っては無力な羊に過ぎない。
「ただの女とは失礼ね。とびっきりの美少女、と言って貰えないかしら」
力を失い、拘束され、敵に囲まれているというのにベルの顔には余裕がある。
「けっ、生意気な女だぜ」
いかにも主人公に絡んで瞬殺される町の暴漢といった風情のスキンヘッドの男が舌打ちをしながら、身動きの取れないベルのスカートを捲り上げ、青と白の縞々を顕にする。
「身動きの取れない女の子にこんなことをするなんて、ウィザードの質も随分落ちたものね」
「うるせぇ! 今の手前なんざ、人権もねえただの穴ぽっこなんだよ! おい、準備はできたか」
スキンヘッドが背後を振り返ると、痩せすぎた眼鏡の男が撮影機材の準備を終えたところだった。
「へへ、恥ずかしくて二度と人前に出てこれないような目に合わせてやるぜ」
スキンヘッドがそういいながら、縞々の股を覆う部分を乱暴に右手で掴み、持ち上げる。
正面に置かれた撮影機材にベルの幼い、まだ毛も生えていないツルツルの割れ目が写る。
スキンヘッドは、そのまま持ち上げた布地を左手にもったカッターのような刃物で切り取る。
「貴方、魔剣使いだったの。でも随分とお粗末な獲物ね」
「うるせえ! 俺様の獲物を馬鹿にするな!」
スキンヘッドは、ズボンからすでに起立した男の武器を取り出した。
「じっくりとねぶってやろうと思ってたが、もう止めだ! いきなり突っ込んでやるぜ!」
小さなベルの穴には、とても入りそうに無い肉の凶器。
だが、ベルは余裕を失わない。
「ふふ……あたしを相手にして、三十秒保ったらほめてあげるわ?」
「生意気言いやがって!」
愛撫もなく、荒々しくスキンヘッドがベルの小さな体を押し倒し、その蜜壷に凶器を差し込む。
「う、おおおおおおおおぉぉぉおぉおぉ」
急な挿入に顔をしかめるベル。その小さな体は、だがすんなりと男をくわえ込んでいた。
世界結界の力で封じられたとはいえ、これが魔王の力なのか、ベルの体は男の全ての精を吸い取ろうするかのように広がり、収縮し、蠢き、飲み込んだ。
スキンヘッドは、あっという間に全ての精という精を搾り取られ、至上の快楽の中、何もかもをもベルに捧げた。
仲間が抜け殻となって、地に倒れ伏しても周りの男たちは動かなかった、否、動けなかった。
白濁に染まった女の穴を見せ付けるようにしながら、ベルが微笑む。
「さあ、貴方たちもいらっしゃい。私が食べてあげるわ」
何かに操られるように、男たちが自らの凶器を取り出し、小さな雌に群がる。
小さな体で大勢の男の欲望をぶつけられるベル。しかし、一見捕食者である男たちはその実、被食者。
前の男の白濁汁をたらす穴に突っ込んだ男が、前の男のように全てを奪われた。
ベルの後ろの穴、前よりもさらにきつい場所を求めた男も同様に、ベルの小さな、そして妖艶な唇をわって口膣を味わった男も同様に。
拘束からとかれたベルの白魚のような手は、触手のように絡み付いて同時に二人の男を噴出させた。
ベルの小ぶりな胸に吸い付き、その小さな果実を味わったものも、太ももの張りを頬擦りして味わったものも、黒いニーソックスに自らの凶器をこすりつけたものも、等しく、イってイった。
永遠のようなわずか五分間、その場にいた20をこすウィザードたちは全てをベルの子宮に、体内に捧げていた。
「これだけプラーナを吸収すれば、しばらくは大丈夫ね。でも、私がこんな方法を取らなくちゃいけなくなるなんて……ルー=サイファー覚えてなさいよ。貴方の計画は私がつぶす」
そうしてベルは、向かう。あの忌まわしい計画をつぶしうる力を持った男の元へ、餌では無く敵と認めた男、柊蓮司の居る所へと。


135:合わせ貝のみこ
08/07/26 13:14:05 MQs4m3W8
「んっ、声が、壁、薄いのにっ」
狭い、部屋の中、暗闇で絡み合う艶かしい女体。
「なら、我慢すればいい」
そういいながら、灯の指が翠の最も敏感な場所をまさぐる。
「だっ、駄目、ですっ、あっ、んっ、んっ~~」
あの事件で500年前の伊那冠命神としての記憶を取り戻した翠。
その記憶は、歴史の闇に埋もれるはずだったある出来事をも含んでいた。
500年前、激しさをますエミュレイターへの対処法として、金色の巫女がもたらした秘儀。
世界結界を暴走させるための魔王ルー=サイファーの一手。
碧き月の神子と紅き月の巫女を魔術的に結びつけるための原始的で、根源に近いゆえに強力な儀式。
女同士の、二人の体の交わり。
そこで味わった快楽は、体だけでなく魂までにも刻み込まれ、よみがえった記憶は、永の年月を自分に仕えた従者であり恋人となった男のことも忘れさせ、翠を灯の元へと導いた。
そして、灯もそれに答えた。
以来、二人は自らの恋人に秘密の逢瀬を何度も重ね―今に至る。
「おかえしですっ!」
必死に手で口を押さえて喘ぐのを耐えていた翠が、今度は灯を攻撃しようと、胸に手を伸ばす。
「っ!」
むにゅっと膨らんだ乳房を鷲づかみにして、その大きさを確かめるように揉んでゆく。
「ふふー、攻めるのは得意でも、攻められるのは弱いんですかー?」
顔を名の通り赤らめながらも灯も翠の胸に手を伸ばす。
「そう、だから攻める」
二人の少女がお互いの指先でその年頃としては豊かな乳房をまさぐり、掌で包みあう。
「また、大きくなっている。時雨に揉まれているの?」
「違っ、んっ、でも食事を奢ってもらったり、ウィザードとしたの仕事で、ご飯食べられるようになったからっ!」
「そう、ならまだ大きくなるかも。楽しみ」
灯はそういいながら、翠のサクランボを口に含み、舌で転がして、歯で甘噛みする。
「ひゃっ、ん、灯さんこそ、恋人さんとどうなんですか?」
灯が翠の乳首から口を離すが、そこはヨダレでベトベトに汚れ、透明の液体が未練がましく灯と翠を繋いでいる。
「……バイトで忙しいって、言ってある。私たちは互いに快楽に溺れて恋人を裏切っている者同士」
灯の身を背徳が、欲情の炎となって焦がす。
「なら、とことん快楽を味わうべき」
仰向けに押し倒した翠のむっちりとした太ももを持ち上げると、灯はそこに抱きつくようにして体の位置をかえ、うつ伏せになって足を差込む。
二人の足の根元、女の最も敏感な場所が重なり合わさる。
そして二人は、汗とヨダレと愛液をベッドに撒き散らしながら激しく、その場所をこすり合わせる。
何度も何度も、尽き果てぬ快楽に身を任せて。


136:いやらしい柊
08/07/26 13:14:52 MQs4m3W8
「柊の腕にぶら下がるようにくっついていた女の子だけど……」
そういって後の言葉を濁し、何か言いたそうに灯を見つめるくれは。
「……毎晩」
「毎晩!?」
「柊自身の分身ともいえる。太くて大きくて硬くて長い獲物を翠の目の前で取り出して」
「なっ!」
くれはの頬が、羞恥と嫉妬で赤く染まる。
「あの大きな胸に差し込んで」
「っ!」
一瞬、自らのささやかな胸を見下ろして拳を握り締めるくれは。
「とびちる熱い液体」
ぎり、ぎり、と歯が軋む音。
「そしてイってしまう翠」
無言で立ち上がり、幽鬼のような形相で部屋から出て行くくれは。
「そんな夢を見ていたそう」
淡々と最早いない相手に言葉を紡ぐ灯。
「人に話を聞いて、途中で席を立つのは無礼」
居なくなったくれはを追おうと立ち上がった灯だが、探すまでも無く、戻ってくるくれは。
「あははは。ちょっと大切な用事が出来たんで出かけてくるけど、わたしはずっとここに居たって証言してくれるカナ、カナ?」
無言でうなずいた灯は、くれはが出て行った後、ぽつりと呟いた。
「でも、包丁を手にもって外に出るのは非常識」

137:名無しさん@ピンキー
08/07/26 13:15:18 MQs4m3W8
銀河皇帝だとかアルティメット柊とか女柊だとかの元も分からん浅いファンなんで、口調やキャラが違うかもしれんけど許して、親切に教えてくれるがよいさ。


138:名無しさん@ピンキー
08/07/26 14:00:00 PycaY3Xp
GJ!あかりんと三下エロかわいいな……三下はエロが少ない(つか、はじめて?)から貴重な三下エロ成分を補給できたぜわっほう!

そしてとりあえずゲヒャヒャこと天は色々と自重すべきwww

139:名無しさん@ピンキー
08/07/26 18:10:09 r9RqWT3d
ゲヒャヒャハルト自重w

140:名無しさん@ピンキー
08/07/26 19:29:57 oeNL2SyZ
約一週間ぶりのご無沙汰です。
「変わらない絆」に引き続いてのヒロインPCエリスもの第二弾、
投下スタートのためやって参りました。
ではでは。


141:エリス~胎動する悪夢~
08/07/26 19:30:33 oeNL2SyZ
 盃に大海の水は注げない。 
 それは赤子にも自明な理であろう。
 広大無辺にも思われる潮の流れるさまを見て、手の内に捧げ持ったたったひとかけ
の盃が、それを満たして余るなどとは、所詮狂人の語る戯言に過ぎない。

 されど ---- 。

 それを妄言と嘲笑するものこそ、愚かである。
 常軌を逸し、狂おしいままに力を振るうものこそが、不可能事を可能にする。
 そのことを ---- 私は幾度となくこの目に見てきて知っている。
 狂人と呼ばれ、蔑まされるほどに、その者の力はあるべきものを歪に捻じ曲げる。
 その者は、狂気の力でただ一本の微細な針をもって山を崩し ----
 またある者は、二本の腕を翼代わりにはばたかせて空を舞い ----
 そうでない者は、吐き出す息だけであまねく木々をなぎ倒した ---- 。

 狂気には狂気の持つ力があり。
 狂人には狂人の理論がある。

 そして、それを体得した者のみが人知を超え、それを知るもののみが狂気というもの
の恐ろしさを理解するのである。

 されば、見よ。

 私はこの星に、この星以上のものを降らせてみせる。
 この星よりも巨大で強大で、言語に絶する存在を降臨させる。
 私が終末の喇叭を吹こう。蒼褪めた馬に跨ろう。
 だから、どうかアナタの力を貸してくれ。
 かつてすべてを見通すものに創造されたる器の少女よ。
 アナタは、破壊の使徒を経て、創造の母となるべきひとだ。

 志宝 ---- エリスよ -------- 。





 小気味良いテンポでリズムを刻む、包丁とまな板の二重奏。
 それを伴奏とするかのように、上機嫌なメロディーを口ずさむ小さな唇。
 早朝、いかにも和風といった風情の調理場で。煮立った鍋の噴き上げる湯気の、白
いヴェールの向こう側、一人の少女が軽やかに踊っていた。
 そう。それはまさしくダンスを踊るように。
 調理場という舞台を縦横無尽に行き来する少女の姿は、料理もひとつの芸術なのだ
ということを改めて思い出させてくれるほどの鮮やかな手際である。
 いかにも嬉しそうに野菜を刻み。なんとも愉しげにフライパンを操り。
 小皿にすくった煮物の味を見るときの思案顔だけが、どことなく哲学的で。


142:エリス~胎動する悪夢~
08/07/26 19:31:05 oeNL2SyZ
「みりん、少し足しとこうかな・・・」
 つぶやいた声は、真摯そのものである。
 また忙しなく動き回りながら、てきぱきと茶碗や小鉢や箸を用意する。みるみるうちに
朝の食卓という芸術品が完成に近づき、こまめに調理場と隣接する居間を行き来する
間、髪を飾るカチューシャのリボンがさざめくように揺れていた。
 少女の深い青の髪に合わせたような水色のリボンが、染みひとつない純白のエプロ
ンに映え、美しいコントラストを描く。朝の爽やかな空気に溶け込んだかのような清楚
さと清々しい雰囲気は、少女の持つ特有の資質でもあった。
 少女の名を、志宝エリスという。
 彼女が朝食の用意に専念しているのは、秋葉原の一角、知る人ぞ知る由緒正しき
赤羽神社の境内裏、いまエリスがお世話になっている赤羽家の母屋であった。
 一日置きで任された赤羽家での料理当番。
 根っから料理が好きなエリスは、ここぞとばかりに張り切って調理に精を出す。
 本当は毎日だって苦にならない。苦にならないどころか、むしろ率先して炊事役を
任されたいのだが、それは居候先のくれはや、くれはの母にこぞって拒絶された。
 先の戦い ---- 宝玉戦争と呼ばれる世界中のウィザードや魔王たちを巻き込んだ
大戦が終結を迎え、居所を失くしたエリスが赤羽家の世話になることが決まった当初
は、世話になるのだから、と家事の一手を引き受けようとするエリスに対して、
「エリスちゃん、それはダメだよ~。こういうのはね、かわりばんこかわりばんこ」
 くれはは、あくまで自説を譲らなかった。
 世話になるのだからこれくらいのことは、と追いすがるエリスに、
「だめ~。かっわりばんこ、かっわりばんこ~。はわわ~」
 両手の人差し指でくるくると空中に輪を描く仕草で、奇妙な節回しの歌を歌いながら
くれはが逃げるようにエリスから遠ざかる。
「ああっ、く、くれはさんっ、どこへ !? 」
 エリスの呼びかける声に背を向けたくれはは、どこか音程の微妙にずれた自作の
歌をはわはわと歌いながら、すたたたっ、と廊下を駆けていってしまった。
 エリスの ---- 差し伸ばした手が行き場をなくして硬直する。
 そんな二人のやり取りを見ていたくれはの母親が、柔らかく笑いながらエリスに向き
直った。髪を短くアップにまとめ、きりりとした和装の「着物美人」という呼び名がしっくり
とくる女性である。もう十歳も若かったら、どんな男性も放っておかないだろうと思える
ほど綺麗なひとだった。
「エリスさん。どうかおかしな娘だって思わないでね。・・・・・・まあ、おかしなところがな
いわけではないんだけれども」
 うふふ、と笑う姿が艶っぽくて、エリスでさえもドキリとしてしまう。
 遠ざかる娘の背中を見遣って、
「たぶんね・・・気恥ずかしいんだと思うの。あの子、貴女に家事一切を任せるからここ
に置いてやるんだ・・・なんて、そうさせてるみたいで嫌なんじゃないかしら」
「わ、わたし、そんなつもりじゃ・・・」
 慌ててそれを否定するエリス。
 赤羽くれはが、そんな尊大で、誰かの処遇にそんなつまらない交換条件をつけるよ
うな人間ではないことはエリスが一番よくわかっている。むしろ、そんな駆け引きなどと
はもっとも縁遠い明るさと天真爛漫さがくれはの良い所だ。


143:エリス~胎動する悪夢~
08/07/26 19:31:28 oeNL2SyZ
「ええ。わかっています。だけど、本当に貴女のほうで、変な引け目を感じたりはしてい
ない ? 」
「・・・あ・・・う」
 やんわりと指摘を受けて、エリスが絶句した。
 お世話になるんだから。本当はここに居るべきじゃないんだから。せめて自分に出
来ることぐらいは全部私が引き受けよう。みなさんの負担を軽くしよう。だって、私がこ
こにいることは、本当はありえなかったことなんだから ---- 。
 そんな想いで口にした、エリスの「炊事当番は私が」という言葉だったのだが、むし
ろそれがくれはの心の何処かに引っかかったのだろう。
「貴女はもう赤羽家の一員なんですからね。家族と同じです」
 目で語るように、エリスの顔を見つめて一言一句をゆっくりといって聞かせる。
「くれはもそう思っているから、貴女にそういう気の遣わせかたをさせたくないんだと、
そう思うの。きっと、エリスさんのことを妹ができた、みたいに思っているはずだから」
 家族だからこそ気兼ねなど必要ない。誰が “妹” や “娘” に、他人行儀な気遣いな
ど望むだろうか。気遣いなどではなく助け合うこと。手伝ったり、一緒に何かをしたり、
ひとつの想いを共有したり。それが家族の条件であろう。だとすれば、くれはたちの言
う家族の条件を、エリスはすでに満たしていることになる。
「だから、私もエリスさんひとりに炊事当番をお任せすることには反対ですからね ? 」
 と、小首を傾げて笑いながら、エリスのことを “娘” と呼んでくれる。
 大いに赤面し、また大いに恐縮しながら、エリスはようやく「はい」と言うことができた。
 敵わないなあ ---- と心の中で呟いて。
 くれはさんにも、おば様にも。この母娘にはどうしても敵わない、と素直に思う。
 だけど、その代わりにというわけではないのだけれども、
「境内のお掃除だけは、私、やらせて頂いてもいいですか ? 」
 一瞬目を丸くしてエリスの顔をまじまじと見つめたくれはの母が、再び笑み崩れた。
 しょうのない娘ね、とでも言いたげに溜息をつき、
「じゃあ、それだけはお願いしちゃおうかしら」
 譲歩するようにそう言うと、
「だけどね、本当になんの気兼ねも要らないのよ。くれはのことも私のことも、姉であり
母であると、そう思ってもらいたいの。本当の家族だと思って欲しいのよ。ね ? 」
 暖かい手で、エリスの髪を撫でてくれる。はにかみながら頷いたエリスの胸の内に、
言い知れぬ喜びが湧き上がってきた。天涯孤独の造られた存在。利用されるために
産み出され、破滅のために望まれた存在でしかなかった自分を、迎えてくれる人が、
家族と呼んでくれる人がいるということへの喜びであった。
「うん。上出来、上出来」
 三度目の味見でようやく満足して、エリスは小皿をぺろりと舐めながら微笑んだ。
 赤羽家に来てから、和食のレシピが随分と増えた。秋葉原の高級マンションに住ん
でいたころは洋風の食事が多かったが、やはり神社に住んでいるとなると、作る食事
も自然と和食が中心となる。赤羽家の調度類が、素焼きの小皿や、竹、桜、梅などの
模様入りの小鉢だったりと、いかにもなものが多かったことも影響している。
 青い笹模様の丸皿に、ローストビーフを乗せるような真似は、エリスには出来なかっ
たのである。料理とは、食器の見た目も含めて料理である、とエリスは密かに思ってい
るからだ。全体の調和も含めて、料理というものを広範囲的な視野に入れて見たとき、
やはり赤羽家の食卓には和の香りが相応しいような気がする。
 お得意のマドレーヌを焼くときだけは、縁の部分が緩やかに波打った形状の、ちょっ
とお洒落な小さな洋風のお皿を特別に用意して、初めてお菓子を作ることが出来る。


144:エリス~胎動する悪夢~
08/07/26 19:31:59 oeNL2SyZ
 とにもかくにも、今朝の赤羽家の食卓は完成した。
 朝の定番、脂ののった焼き鮭。生卵に焼き海苔。茄子とミョウガの和え物をサイドメ
ニューに、シジミのお吸い物と里芋と蓮根と人参の煮物が脇を固める。人数分の茶碗
を用意しておしゃもじを手に取ると、まるで見計らったように、くれはが食卓へ現れた。
「おはわー・・・・・・んー・・・いい匂いー・・・」
 まだ眠たげな目をこすりながら、くれはが鼻をすんすんと鳴らす。
 見事に調理された食材たちがほかほかと湯気を立て、いやがうえにも食欲を誘う。
「おはようございます、くれはさん」
 さっそく、くれはの分のご飯をよそってやりながらエリスが挨拶をした。
 ことん、と茶碗をテーブルに置いてから立ち上がり、
「く、くれはさん、いくら女の子しかいないからってダメですよ」
 くれはに歩み寄ると、起き抜けとはいえあまりにもひどい彼女の着崩れ方に頬を染め
て、寝巻きの乱れを直してやる。普段巫女服姿で和装には馴れているはずなのに、と
てもそうとは思えない姿で、くれはが現れたからである。
 薄手の生地で織られた浅黄色の寝巻きは浴衣の形状であるから、着崩れするともう
大惨事であった。帯はほどけて床をずるずると這いずり、襟がくしゃくしゃで左の鎖骨が
露になり、危うく胸元までもが見えそうになっている。当然、帯が帯として機能していな
いわけだから、歩くたびに、本来和服では見えるはずがない太腿までが露出してしまう。
「は、はわわ。ご、ごめんエリスちゃん。たはは、カッコ悪いね、私・・・」
 人差し指でぽりぽりと頬をかきながら、くれはが決まり悪そうに笑った。
 襟を正してやり、帯を結び直してやる姿は、まるで年下のエリスのほうがくれはの姉
のようにも見える。苦笑しながらエリスが、
「でも、珍しいですね。くれはさん、いつもこんなに寝相悪くないのに・・・」
 そう呟くと、
「は、はわわ・・・・そ、そーだね、あはは、どーしちゃったのかなー、私・・・」
 なぜか顔を真っ赤にして、だらだらと脂汗をかきながら口ごもるくれはである。
「 ? ? ? ・・・あ、そうだ。昨夜、先輩がお見えになっていたじゃないですか ? 今朝、朝
ごはんをご一緒できるように、たくさんご飯炊いたんで、まだ寝ているようでしたら後で
起こしててきてもらっても・・・」
 控えめにくれはにお願いすると。
 くれはの顔がそれはそれは色をつけたように紅潮の度合いを増していき。
「ひ、ひーらぎっ !? あ、うん、ひーらぎまだ寝てるよっ ? あいつ寝起きが悪いから起こ
さないできたんだけど・・・・・・は、はわわっ !? 」
 なぜか、くれはが「しまった」という顔をする。
 エリスはきょとんとくれはを見上げ、
「あ、もう見てきてくださったんですね。でも、今日のご飯は自信作ですよ。柊先輩にも
ぜひ召し上がってもらいたいです」
 と、屈託なく笑う。その様子から眩しそうに目をそらし、
「そ、そーだねー・・・あはは・・・後で顔洗ったついでに起こしてきたげるよー・・・」
 どこか力なく、くれはがそう言った。寝巻きの乱れをエリスに直してもらい、どことなく
“自己嫌悪” とでも書かれたような顔をして、とぼとぼと居間を出て行く。
「 ? ? ? 」
 なんだろう。なにかまずいことでも言ったのだろうか。心底不思議でたまらない、とい
う風にエリスが首を傾げていると、居間から寝室のある棟へと続く渡り廊下のほうから
賑やかな声が届いてきた。


145:エリス~胎動する悪夢~
08/07/26 19:32:27 oeNL2SyZ
《うおー、ここまで美味そうな匂いが漂ってくるぜー ! あー、腹減ったなー、昨夜は随分
体力使ったから・・・》
《は、はわわーっ !? ば、ばかひーらぎ ! 大声でそんなこと言わないでよっ !? 》
《い、痛えっ !? つねんなっ !? な、なんでお前が怒るんだよっ !? 昨夜、任務から帰って
きたんだぞっ !? 疲れて腹空かせて帰って、なにが悪いんだよっ !? 》
《はわっ・・・ !? そ、そういう意味・・・ !? あ、あはははは・・・ 》
 ぽんぽんとよく弾む会話の妙は、幼馴染みで長年連れ立ってきた二人ならではのも
の。軽妙なテンポのやりとりは、居間から出て行ったくれはと、彼女に起こされてきた
柊蓮司のものだった。くすり、と笑い目を細めながら、
「いいなあ・・・」
 無意識の言葉をエリスが漏らす。
 二人を ---- 羨ましい、と思う。自分にはない、二人だけの時間を育んできたくれは
と柊。二人を結び付けているものは歩んできた時間であり、信頼であり、たぶん友情
ではなく、愛情と呼ぶべきもので。
 そんなことを言えばきっと二人は力いっぱい否定するだろうけれど、その絆は絶対
誰にも壊せない、真似できない強固なものなのだろう。だから、エリスは大好きなくれ
はと柊の関係が羨ましくなるときがしょっちゅうで。
 頼れる先輩で、女友達で、かつてはともに戦いに身を投じた仲間で、いまは家族の
ような存在のくれは。
 自分を気にかけ、護ってくれて、自分のために世界を敵に回してでも戦ってくれた、
エリスの ---- 初恋の人、柊。 
 二人のことが大好きで、二人にも愛されているエリスが、ほんのちょっぴり寂しい想い
をするのは、いつもこんなときである。
 だけど、エリスは首をふるふると軽く打ち振り、心の中のなにかを振り払うように、力
強く微笑んだ。おしゃもじと、一回り大きな茶碗を取り上げると、お腹を空かせた柊のた
めに、山盛りでご飯をよそってあげることにした。
「お、美味そうだなー。食いでがありそうだぜー」
 朝から豪快な笑顔を浮かべ、柊が食卓に顔を出す。来客用の浴衣姿が新鮮で、これ
はエリスの贔屓目だろうが、「柊先輩、和服も似合うなー・・・」と改めて彼を見直した。
「おはようございます、柊先輩」
「うぃーっす・・・・・・って、いて、いてててててっ !? くれは、耳引っ張んなっ !? 」
「なーにが、うぃーっすよ。朝の挨拶ぐらいちゃんとしなさいよね、ひーらぎ」
 さっき自分が寝惚けて「おはわー」などと挨拶したことは忘れて、くれはが出来の悪
い弟を叱るように柊をたしなめる。続けて自分の茶碗も用意しながら、エリスが二人に
言った。
「さあ、席に着いてくださいね。ご飯もお吸い物も、おかずもたくさん、おかわりあります
から」
 その言葉に、くれはが柊の耳から指を離し、二人は揃って従順にエリスに従った。
 エリスの作る御飯の前には、歴戦のウィザードである二人も、大人しく従うより外に
ないのであった。
 三人揃って「いただきます」を唱和する。真っ先に箸を食卓に走らせたのは当然のよ
うに柊で、食膳と口の間を行き来する二本の箸のスピードが、目で追うのも大変なほど
どである。


146:エリス~胎動する悪夢~
08/07/26 19:33:01 oeNL2SyZ
「ひーらぎ~、ちょっと落ち着いて食べたら~ ? 」
 呆れ果てた口調のくれはにしたところで、咀嚼のスピードは相当なものである。
 柊にこそ及ぶべくもないが、それでもエリスの倍は早い。
「ばーろー。美味いもんは美味いんだからしょーがねーだろー」
 言いながら、里芋を一度に二個も頬張る柊。
「ばーろー。せっかくエリスちゃんの作ってくれた料理、ちゃんと味わいなさいよねー」
 くれはも負けじと、スライスされた蓮根を一度に十枚も箸で持ち上げる。
「あ、きたねーぞ、くれはっ !? そんないっぺんに・・・」
「へへーん、蓮根に穴が開いているのは、実はこのためなんだよーだ」
 まさかそんな理由で蓮根に穴が開いているわけではないだろうが、くれはは勝ち誇
るように言い切ると、しゃりしゃりと音を立てて、味の良く染み込んだ蓮根の煮物を口に
入れた。
「ふふ。まだまだおかわりたくさんありますから、慌てないで食べてください」
 早朝の夫婦漫才に控えめなツッコミを入れる。エリスの至福の時間である。
 残念なのは、くれはの母が不在であることで、なんでも「陰陽師どーしの寄り合いー」
と、いたって簡単にくれはが説明をしてくれた。詳しいことは実はくれはも知らないよう
で、どこで集まって、どれくらい家を空けるのかまでは、彼女自身も知らされていない
ようだった。いつもいるはずのくれはの母がいない分、柊がいるので食卓は寂しくは
なく、むしろ普段以上のけたたましい朝を迎えることになったことに、エリスはこっそり
感謝した。
「エリス、おかわりっ」
 ずいっ、と目の前に突き出された大きな手に、山盛り御飯を平らげた後の大振りの
茶碗が乗っていた。見れば、まだ口の中でもぐもぐとやりながら、お腹を空かせた柊が
まるで欠食児童のような顔をして、エリスをやけにきらきらした目で見つめている。
 餌をねだって甘える大型犬 ---- そんな失礼な連想が頭に浮かんでしまい、思わず
エリスは反省してしまった。お詫びの印に、さっきよりも大盛りでよそってあげようと、そ
の手から茶碗を受け取ろうとしたエリスの身体が、一瞬硬直する。

 どくん。

 身体の芯を突き抜ける、大きな脈動。
 なにか見えない圧力が、確実な質量をもって体内を蝕んでいくような、そんな感覚。
 それは譬えるなら、熱。熱の塊のようなものが、エリスの体内に潜り込んでくるような
そんな感覚。じわり、と額に汗が浮かぶ。エリスは久しく感じることのなかったこの感覚
に、背筋が凍るように思った。
 あのとき。
 宝玉戦争の真っ只中。
 エリスが、新しい宝玉を手に入れるたびに感じていた “あの” 感覚が、いま甦っていた。
「エリス・・・・・・ ? どうした、具合でも悪いんじゃねーのか・・・ ? 」
 柊の心配そうな表情と声に、はっと我に返る。
「エリスちゃん・・・・・・なんだか顔色がよくないよ ? 」 
 くれはが気遣わしげに自分の顔を覗き込む。二人に心配をかけたくなくて、エリスは
さもなんでもない風を装って、笑顔を浮かべ。
「あ、なんでもないです。柊先輩の食べる勢いについ圧倒されちゃって。先輩、学校の
屋上でお昼頂いていたときのこと、思い出しちゃいますね」
 上手く話をそらせただろうか、と少し心配になる。
 相変わらず、二人の真剣な眼差しは自分の顔から離れずに、柊もくれはも無言で
エリスを注視しているのだった。


147:エリス~胎動する悪夢~
08/07/26 19:33:27 oeNL2SyZ
「・・・・・・本当になんでもねーのか ? 」
 柊は、時々すべてを見透かすような目をするときがある。まさに、いまの彼の瞳がそ
んな色を湛えているのだった。
「なんでもないですよ、本当です」
 言えるわけがなかった。宝玉の力を得たときと似たような感覚を覚えたなどと、絶対
に言えるわけがなかった。第一、胸の奥、身体の芯で一瞬だけ奇妙な鼓動が脈打っ
ただけなのだ。勘違いかもしれないではないか。いや、勘違いに違いないではないか。
「エリスちゃん。なにかあったら、すぐ話してくれなきゃ、いやだからね ? 」
「くれはさんまで・・・なんでもないですよ、本当に」
 ごめんなさい。嘘ついて。でも、なんでもないです。なんでもないに違いないんです。
 だから本当に心配しないでください、お二人とも。
 差し出されたままの茶碗を柊の手から受け取り、たっぷりと二膳分の御飯をよそって
返す。どことなく納得していないような二人へ、エリスは決して笑顔を崩すことなく応対
して、それ以上の追求を避けるようにした。

(勘違いです。いまの感覚だって、聞こえた声だって、空耳に違いないんです ---- )

 脈打つ熱の塊が体内に侵入してくる感じ。
 それと同時に耳をかすめた囁き声を、エリスは、もう忘れようと思い込む。
 エリスの中に飛び込んできたモノは ---- いや、飛び込んできたものがあるとすれ
ばの話だが ---- こんなことを囁いていたような気がするのだ。


 ナンダマダマダハイルジャナイカ --------


 と -------- 。

(続)


148:名無しさん@ピンキー
08/07/27 11:09:56 Kg+kINXU
赤羽弟は?

149:名無しさん@ピンキー
08/07/27 11:30:18 pwxNEa+9
きっと押入れの中で姉と柊が昨夜何してたか目撃してて、べとべとになって気を失うように眠ってるんじゃないかな。


150:名無しさん@ピンキー
08/07/27 11:48:29 3H/jaYXR
エルフレア読んでて思ったこと
天使ってショタコンなんだな

151:名無しさん@ピンキー
08/07/27 13:04:32 BHY7ViNl
空導王を受け止めるザーフィー。

シチュエーションは、知らぬ知らぬ。

152:名無しさん@ピンキー
08/07/27 13:05:07 T7W1ldeT
えーお久しぶりのゴンザ×ノエルです。
リアルが忙しくてなかなか書く時間がとれなかったんで、ひたすら妄想ばかりしてました。
クライマックス戦闘に入れるかな~と思ったら話が一向に進まず、とりあえず幕間だけで投稿となります。

153:ノエルと恥辱の舞台
08/07/27 13:05:32 T7W1ldeT
ポージング勝負が終わりゴンザレスはノエルを床に降ろして尻からペニスを抜いた。
ノエルは排泄に似た感覚に心地よさと開放感を覚えた。ゴンザレスの剛直が抜けると物足りない感じがした。
尻を丸出しで突き出したポーズのまま突っ伏す。錬金バイブと呪いの効果で股間からはダラダラと汁が垂れている。
ゴンザレスは素早くノエルの服をはだけ、亀甲しばりに使っている縄をほどき、ノエルの股間からバイブを抜き取った。
「はぁんっ……」
先ほどまでノエルを昂ぶらせていてくれた太いものが全て取り払われてしまった。
もの足りない……もっと気持ちよくしてほしい。それがノエルの本心だった。
突っ伏したまま脚を開き、尻を突き上げて、もの欲しそうに股間が開いている。
床からゴンザレスを見上げると目が合った。
「どうしたのかね、ノエル君。次は最後の勝負だ。まずは戦利品のチェックをしたまえ。」
何事もなかったかのように振舞っている。だが、その目はノエルの本心を見抜いているようであった。
(だめっ、立たなきゃっ……)
自分を取り戻して、よろよろと立ち上がるノエル。
(犯して欲しい……自分の股間をあの剛直で思う存分突き上げて欲しい。)
ノエルの肢体はそう言っていた。

「これで全部かな?」
ゴンザレスが返却した武具を揃えている。壊れてしまったもの以外は全て揃っているはずだ。
一緒に鉄格子の中に閉じ込められていたシルヴァは、途中で飽きたのか寝ていた。
この状況で寝られる度胸は凄いと思う。
「シルヴァさん、起きてくださいっ、トランさんを治してくださいっ」
むにょむにょ……
ちょっとした怨みと楽しみを込めて、大きなおっぱいを揉みながら起こしてみる。
「ン……なによ、シグ? あ、ノエルちゃん。ってなにしてるのよ?」
自分のを揉むのも楽しいが、他人のおっぱいを揉むのは気持ちよかった。蹂躙するような優越感を得られる。
「トランさんのパーツが全部あつまったんです。直してください。」
寝ぼけまなこでシルヴァがあたりを見回し、大変な状況だったことを思い出したようだ。
「ノエルちゃん……無事なの?」
ノエルは心配してくれたのが嬉しかった。
「私なら大丈夫ですっ、その、大変な経験でしたが、女性としてレベルアップしたと考えることにしましたっ」
「……そう」
シルヴァはすまなそうに目を伏せた。
「じゃあ、あの人造人間を直さなきゃねっ!」「はいっ!」
二人はトランの修復をはじめた。

「ピー、ピー、ピー、システムエラーです。早急に復旧してください。」
……やばい。直らない。シルヴァは焦った。
外すときは継ぎ目とかあって簡単だったから、スグに直せると思ってホイホイ分解したけど、
繋げてみてもエラーメッセージを口から吐き出すだけだった。
横を見るとノエルが涙目になっている。やばい。どうにかしなくてはっ!
「ゴンザレスさん、錬金術かじってましたよね? これわかります?」矛先をそらしてみる。
「む、私は錬金術の道具を使うだけだが……どれ、やってみよう。」
男は幾つになっても機械弄りとか好きなものだ。上手いこと乗せることができたようだ。
だが、3人でしばらく弄っても結局直らなかった。

154:ノエルと恥辱の舞台
08/07/27 13:06:07 T7W1ldeT
「こわれても……ぜったいにかえしてくれるって、約束したのにっ!」
ノエルの悲痛な叫びが会場に響き渡る。
(やばいっ、マジ泣きだっ!)
ゴンザレスは焦った。
女を追い込みヒイヒイ泣かせるのは気にならない。むしろ興奮する性癖だ。
だが、この状況は違う。まるで子供の大切な物を壊してしまったようなものだ。
同じ女を泣かせているはずなのに桁違いの罪悪感が沸き起こる。
会場の観客達も一様に、『あ~あ、やっちまった』という目でゴンザレスを見ていた。
サクラの部下達も、壊した張本人はずのシルヴァまでゴンザレスを批難の目でみていた。
「わかった、わかったからっ! 直すっ! 直すからちょっと待ってくれ!」
若干理不尽なものを感じながらも必死でノエルをあやす。
「えーと、説明書とかないのか? なんで外した通りにつけて動かんのだこのポンコツは……」
ぶつくさ言いながらトランの体を弄りまわす。色々試すが直る気配はない。
「そうだ、製造元に問い合わせてみよう。なにか連絡方法はないかね?」
「ぐすっ、トランさんは、ひっく、携帯大首領さんと、ひっ、お話してました……」
「これかっ」
腰に吊るさっていた携帯大首領を取り出すと、いくつかボタンがついていた。
「えーと、大首領直通……ではないな。製造部サポートセンター、これだっ!」
ポチッ
ボタンを押すと目がピカピカ光りだす。数秒待つと何者かの声が携帯大首領から聞こえてきた。
「はい、ダイナストカバル・サポートセンターです。」
「えーと、人造人間が動かなくなっちゃったんですけど……」
「様子を詳しく教えてください。」
「五体がバラバラになってまして。いや、まだ生きてます。たぶん。」
「あー、バラしちゃったんですかー。それだと保証は効かないんですよ。」
「いや金なら払いますんで、とにかく治して欲しいんですよ。」
「そういうことでしたら、こちらのほうでスタッフを送ります。深夜ですから明日以降という形になりますが、よろしいですか?」
「早急に、今すぐというわけにはいきませんか?」
「いや~、流石にこの時間ですとドクトル・セプター寝ちゃってますんで。もう歳だから無理して起こすのもねぇ」
「そうですか、わかりました。では明日お待ちしております。」
「はいっ、では明朝携帯大首領で一度連絡してからお伺いしますので、もうしばらくお待ちください。ご利用ありがとう御座います。」
ピッ
携帯大首領の目から明りが消えた。
「ノエル君、直してもらえるそうだよっ!」
「ほんと? ほんとですか?」ノエルは泣きべそをかきながら確認する。
「明日にはスタッフの人が来てくれるそうだ。ドクトルなんとかという人らしい。」
「トランさん、ピーピーいわないですか?」
「大丈夫だって、金もわたしが出すから、なっ? 泣きやんでくれっ」
「ぐすっ……はいっ……」
ようやっと泣くのをやめてくれたようだ。ゴンザレスは心底ほっとした。


155:ノエルと恥辱の舞台
08/07/27 13:06:40 T7W1ldeT
ゴンザレスは気を取り直して話を進めることにした。
「なあ、ノエル君。もう勝負をあきらめたらどうかね? 人造人間の彼のことはすまないと思う。
 だが実際問題、ノエル君ひとりで私と戦うことはできまい?」
確かに言われたことも尤もだった。このまま勝負をしても勝ち目は万に一つもないだろう。
そうなれば冒険者をやめ、ゴンザレスの嫁となり、毎晩あの剛直に貫かれて気持ちいい思いをすることになる。
……あれ? けっこういいかも? ノエルは既に思考まで淫乱になっていた。
毎晩、もしかしたら昼間もゴンザレスにエッチな攻めをされて、やがては妊娠、出産して母親になるところまで妄想する。
……母親?
犬のように鳴く義母、そしてまだ見ぬ産みの母を連想する。
(そうだっ、私はお母さんに会うために冒険していたんだっ!)
当初の目的を思い出し、目に光が戻る。こんなところで冒険を止めるわけにはいかないっ!
「いいえっ、まだ諦めませんっ。まだ私にはカラドボルグがありますっ!」
お母さんと繋がる大事な剣。それを取られるわけにはいかなかった。
「ふん、ならばこちらも手加減はしませんぞ。」
ゴンザレスも真剣な目で見返す。
「それなら提案なんだけど、トランの代わりに私じゃダメかな?」
横からシルヴァが声をかける。
「彼を壊しちゃったのは私も同罪だし、ノエルちゃんの助っ人としては適任だと思うけど?」
「む、確かに……いいでしょう。認めます。」
「シルヴァさんっ!」
ノエルは嬉しさのあまりシルヴァに抱きついた。やっぱりおっぱい大きい。
「でも、本当にいいんですか? たぶん、エッチな攻撃とかしてきますよ?」
「う、だ、大丈夫よっ、大人の女だからっ」
シルヴァはその忠告にちょっと引いたが、自分から言い出したからには引っ込めるわけにもいかなかった。
「ノエルちゃん一人よりはよくなったと思うけど、こうなるとヴァルとかいうのが居ないのが痛いわね。」
シルヴァもこれからの戦闘について考えてみる。するとどこからともなく名乗り声が上がった。

「ヴァルならここに居るぜー!」
「なにぃっ!?」
突如上げられた名乗りに驚くゴンザレス。
会場の外壁の上、月光を背に忍者装束を纏った人影が立っていた。
「トウッ!」
忍者は外壁の上から跳躍し、空中で一回転半のひねりを加えながら観客席を越え舞台の上まで到達し、
 ズベッ!
着地に失敗して顔から落下した。
「うわぁ……痛そう」
忍者は何事も無かったかのように立ち上がった。首がおかしな方向に曲がっている。
「ふんっ」手で首を持って正しい位置に戻している。あれで直るのだろうか?
ノエルは心配しつつも現われた忍者を見る。
着ているものはいつの間にか無くなっていたヴァルの黒装束だ。
だが、スラリとした体躯はフィルボルのものではない。そもそもどうみても女性だ。
胸は形のいい盛り上がりをみせ、サイズの合っていない黒装束を着てヘソやふとももが丸出しになっている。
頭巾からは犬のような耳が、ズボンは入りきらないのか尻が破れてシッポが見えている。
「ヴァルでござる」
「お前ベネットだろう?」
ゴンザレスが即座につっこんだ。
「……ヴァルでござる!」
ツッコミは受け付けないようだった。
「ベ……ヴァルさん、どうして……?」
とりあえずノエルも話をあわせてみることにする。ベネットもノエルに顔を寄せヒソヒソと話しだす。
「拙者、義によって助太刀いたすでござる。このままヴァルということで話をあわせて欲しいでござる。」
「えーと、ありがたいんですけど、いったい何故助けてくれるんですか? 義理とか特に無いような……
 むしろ風呂に沈めたっきりで悪かったと思ってるんですけど……」
「実は拙者も言葉の意味はよくわかってないのでござるが、こういう場合『義によって助太刀いたす』というのがお約束であり、かっこいいのでござる。」
「は、はあ……」
やはりベネットであった。

156:ノエルと恥辱の舞台
08/07/27 13:06:55 T7W1ldeT
「と、とにかくヴァルさん無事だったんですね!」
「もちろんでござる!」
バレバレだが、無理やりコレをヴァルだと言い張ってみる。
「ふっふっふ、いやはやヴァル君…プッ…無事だったとは驚いたよ……ぐふっ」
ゴンザレスも笑いながら話をあわせてくれた。やっぱりこの人いい人かもしんない。
「ふふふ、拙者の変装術にかかれば、この程度造作もないでござる。」
どうみてもバレているのにベネットは得意げに腕組みをしてつったっていた。

「……では、最後の勝負といこう。その前にノエル君、仕度を整えたまえ。」
ゴンザレスが指摘する。前の勝負が終わって脱がされたままだった。裸でいることに慣れすぎてスッカリ忘れていた。
フェザーアーマーは壊れてしまったので、先ほど脱いだ踊り子の衣装を着るしかない。ぱんつはピエール先生に盗られたままだけど……
見ると踊り子の衣装の横に見覚えのない袋が置いてあり、手紙が乗っかっている。ピエールからの贈り物だった。
『ミス・ノエル。貴女の素晴らしい健闘を称え、この品を贈らせて戴きます。きっと役に立ってくれるでしょう。』
なんだろう? 包みを開けてみると、出てきたのは白い大きなパンツのような布切れ……おむつだった。
『これなら多い日も安心でーす。呪いの効果もやわらぐことでしょう。』
流石にいい年しておむつをつけるのには抵抗があった。
だが、呪いを押さえる効果があるというのなら試してみるのも手だった。とりあえず履いてみる。
ピリッ クリトリスに軽い電流が流れ、股間に振動が起こり出す。もうこの感覚に慣れてきて気持ちいいだけだった。
股間から流れ出す愛液がおむつに吸収され、ベタつく不快感はない。
呪いの効果は相変わらず気持ちいいが、つけて戦えないほどでもなかった。
(どうしましょう……せっかくの贈り物ですし、使ってみましょうっ)
おむつをつけたままスカートを履き、ブラジャーをつける。踊り子の衣装の装飾品をつけて、護りの指輪をはめる。
愛剣カラドボルグを持ち、装備は完了だ。
スカートの下からは大きなおむつがはみだしてワカメちゃん状態であった。

157:名無しさん@ピンキー
08/07/27 13:08:33 T7W1ldeT
以上です。次回は戦闘に入って決着の予定です。
次は早くアップできるといいなぁ……

あと作中登場人物の参考図
URLリンク(www.fear.co.jp)

158:名無しさん@ピンキー
08/07/27 13:57:29 HZVmqx12
ダイナストカバルサポートセンターとか勘弁してくれwwwwwwwww

シルヴァとベネット参戦で超wktkしてるのに素直にエロい展開を期待できねえよ!(笑)
どんだけユーザーサポート充実してるんだよダイナストカバル!(笑)

159:名無しさん@ピンキー
08/07/27 15:06:50 p3BNdhWX
おむつって、どんだけフェチ展開を・・・
そしてクライマックスはエロ戦闘を期待してもう全開ですよ

160:エリス~胎動する悪夢~
08/07/27 19:19:29 6p+xk69f
 感じていた違和感はいつしか嘘のように消え去っていた。
 熱も、体内の脈動も、霧が晴れるように掻き消えていたし、食事が進むにつれて平
素の彼女自身を取り戻したエリスの姿に一応は安心したのか、くれはも柊も九割の安
堵と一割の不安を抱いたまま、朝食を再開し始めた。
 忘れよう、という思いのせいだけでなく ---- 柊が三杯目のおかわりを要求し、顔を
赤らめつつも、くれはが二杯目の茶碗をそっと差し出した頃には、エリスの胸の内から
あの違和感は綺麗さっぱり影を潜めていたし、事実エリス自身がそのことをもう忘れて
いた。
 あまりにも自然で。あまりにも日常と変わることなく。
 柊もくれはも、ようやく自分たちの思い過ごしに過ぎなかったか、と胸を撫で下ろした
頃、食事の時間も終わりを告げた。
「ふいー、喰った喰った。ご馳走さん、エリス。いやー、三杯飯なんてエリスの料理なら
ではだぜー」
 満足げに自分のお腹を撫でながら、柊がエリスの料理の手前を誉めそやす。ぽっ、
と頬を染めながら、エリスが「お粗末さまでした」というのへ、
「ごちそーさまー。やっぱりエリスちゃんの御飯おいしー。うんうん、これで私も安心して
赤羽家の味を後世に伝えることができるってものよ」
 湯飲みの番茶をずずーっとすすりながら、こくこくとくれはが頷いた。
「お前は継がねーのかよ !? エリスに継がせてどーすんだ !? っていうか、お前はなにも
伝えてねーだろ、後世にっ !? 」
 エリスがここへきて覚えた和食のレシピの多くは、くれはの母から教わったものだ。
 つまり、くれは自身はなにもしていないわけである。
「朝からツッコミ飛ばすわねー・・・。でも、別に私はいーんだよーだ。赤羽家の陰陽師
の技術はちゃーんと受け継いでるしね。第一、陰陽の技も料理も両立するのは至難の
業なんだから。だから、代々の赤羽家の味はエリスちゃんが継いでくれることになりま
した」
「ええぇーっ !? そ、そんな責任重大な・・・・・・ !? 」
 平然としてとんでもない発言をするくれはに、エリスが慌てふためいた。
 助けを求めるようについつい柊のほうを見てしまうのだが、ここぞとばかりに盛大な
ツッコミを入れるかと思いきや、意外と柊はいたって真面目な顔をしている。
「そうか ---- よかったじゃんか、いろいろと」
 そう言いながら、エリスを温かい目で見てくれるのである。
「ひ、柊先輩まで・・・きゃっ !? 」
 ばふん、と頭の上に柊の大きな手が被さってきて、わしわしと髪を撫でられる。
「エリスー、これから大変だぞお前。あのおばさんの娘ってのはいいとして、こんな手の
かかる姉が出来ちまってよー」
 などと言いつつ、本当に嬉しそうに笑うのだ。
 ようやく柊の言葉の意味に気がついて、エリスは声を詰まらせる。
 おばさまが自分に料理を教えてくれることには、そういう意味もあったのか、と。
 赤羽家の一員になった、という実感がじんわりと沸いてくる。確かに、赤の他人だと
思っていれば自分が受け継いできた家庭の味を懇切丁寧には教えまい。
 くれはのほうを見れば、柊とエリスのやり取りなど聞こえないふりをするかのように、
あさっての方角を向きながら済ました顔で番茶をすすっているのであった。


161:エリス~胎動する悪夢~
08/07/27 19:19:55 6p+xk69f
 目が潤んでしまいそうになるのをぐっとこらえて、
「そんな・・・私嬉しいです。素敵なお母さんとお姉さんが出来て」
 エリスが柊へ笑いかける。
「はわ~。そんな “素敵” だなんて、本当のこといってもなにも出ないよ~ ? 」
「聞こえてるんじゃねえかっ !? 」
 びしっ、と鋭い冴えを見せる柊のツッコミ。
 あはは、と笑いながらエリスは実感する。この温かい人たちとの絆や日常が、あの
悲しみと苦しみに満ちた戦いを経て、私が手に入れたささやかな ---- だけど大切な
宝物なのだ、と。もう、なにも憂えることはないもない。わたしはここにいて、くれはさん
や柊先輩や、たくさんの友達や仲間、大切な人たちがここにいる。
 このかけがえのない日々を暮らし、いつまでも笑っていられるんだ、と。
 いまのエリスは ---- そのことをこれっぽっちも疑ってはいないのだ。
 そう。
 いま、たったいままでは -------- 。





 楽しい時間、充実した時間というものは思っているよりも早く過ぎ去っていくものだ。
 朝食を終えたと思ったら、昼食を。昼食を食べたと思ったらもう夕餉の支度。
 いま、エリスは夏休みの真っ最中である。
 学校に通わなくてもいいこの長い休みの間、多くの学生たちは休暇を満喫している
のであろう。しかし、どれだけの同年代の少年少女が、エリスほどに充実した毎日を
送っていることだろうか。
 光陰矢のごとし、という言葉があるが、エリスが感じる時の流れとは、まさしくそういう
類いのものだった。
 熱帯夜になることが予想される熱気を大気が孕む今夜、エリスが用意した晩餐は、
きりっと冷やしたソウメンと、ちょっと奮発してうなぎの蒲焼、それに、昼の間から冷蔵
庫で冷やしておいた白玉のデザートである。
 暑さが食欲を奪うこの季節、喉越しの良い冷えた麺に、滋養強壮のための鰻、さっ
ぱりした食後の甘味というエリスならではの気配りが垣間見えるメニューだった。
 ウィザードとしての力を失くしたエリスには、月衣の特殊な加護はない。
 だからこそ、季節や気候の移り変わりにも即したメニューになるというわけである。
 風鈴の涼しげな音が縁側から聞こえてくる赤羽家の食卓に、目を輝かせながらくれ
はが飛び込んできて、エリスの作った晩御飯に舌なめずりせんばかりの勢いで畳の上
に滑り込んでくる。
「ミョウガに焼き茄子に紫蘇の葉におろし生姜 ! はわー、薬味も充実してるよ~」
 小皿の上の薬味にすら感激して歓声を上げるくれはと、笑顔でそれに頷くエリス。
 差し向かいで座り、歓談しながら夕食を摂る二人の時間が、瞬く間に過ぎていく。
 食器を片付け、お風呂に入り、扇風機の風に当たりながらとりとめもないお喋りをし
ているうちに、時計の針がいつの間にか深夜十二時を差していた。


162:エリス~胎動する悪夢~
08/07/27 19:20:26 6p+xk69f
「はわわ~」
 表記するとニュアンスが伝わりにくいが、これはくれはの欠伸である。
 さすがに眠気が襲ってきたのか、目に溜めた涙をこすりながら、くれはが席を立つ。
「エリスちゃん、私、もう寝るね」
「あ、はい。私もそろそろ、って思ってました。お休みだからって夜更かししちゃいがち
になるの、よくありませんからね」
 自戒を込めて苦笑しつつ、エリスが扇風機の電源をオフにした。
 とはいえ、エリスが夜更かししてしまうときは、大抵くれはのお喋りに付き合わされて
のことが多い。その自覚に乏しいくれはが、夜更かしは健康にも美容にもよくないから
ねえ、などと呑気なことを言う。
「おやすみ、エリスちゃん」
「はい。おやすみなさい、くれはさん」
 居間や台所の明かりを消して回ると、辺りが夜の闇に包まれる。本棟から続く渡り廊
下へくれはの姿が消えると、エリスは最後に戸締りの確認をしてから、自分も寝室へ
と急いだ。
 エリスの部屋は、渡り廊下を歩ききった一番奥。
 窓際に大きな神木が木陰を作ってくれる、この時節には涼しげで快適な部屋である。
 風が吹けば葉のざわめきが耳に心地よく、枯葉散る季節には紅葉で目を楽しませて
くれるという。
 部屋に入り、エアコンのスイッチをオンにし、タイマーをセットして。
 薄手の浴衣に手早く着替えると、エリスは布団と毛布を用意した。
 夏の暑さが肌で感じられる頃から、浴衣はエリスのお気に入りの寝巻きになってい
る。薄い水色がいっそ爽やかに目に映る、涼しげな浴衣であった。
 部屋の電気を消し、布団に身を横たえ、毛布を胸元にかけると、エリスはたちまち
健やかな眠りに落ちていった。
 そして。
 異変は眠りの後で訪れた ---- 。





 暗がりの中。苦しげな、しかしどこか艶めいた呻き声が室内を這いずっている。
 エリスの寝室内。と、すれば、この声の主は当然彼女のものである。
 うっすらと額には汗が浮かび。ひそめられた眉が切なげで。
 半分開かれた唇からは呻きとともに熱い吐息が断続的に漏れて、まるで子供がい
やいやをするように、枕の上に乗せた頭を左右に振っていた。
 胸元にかけられた毛布はいつの間にか跳ね除けられて、部屋の隅で打ち捨てられ
たぼろきれのようにうず高く丸められている。
 ずずっ、と。
 布団をぐしゃりと引きずりながら、エリスの足が動いた。膝を曲げ、浴衣の裾を割り、
水色の布地がはらりとはだけられる。爪先から膝、膝から太腿と、和装を乱して脚を
露にしていく。お尻から腿までのなだらかな曲線が剥き出しになり、扇情的な姿をさら
している様子は、常のエリスからは想像も出来ない有様である。
 もう一方の脚も、ゆっくりと曲げられていき、すっかり開脚された両脚の間、身に着け
た下着までが露出される。
 帯がほどけ、襟がはだけ。もし室内の明かりが点いていたとしたら、エリスの全身の
肌を汗の珠が浮いているのが見て取れるであろう。


163:エリス~胎動する悪夢~
08/07/27 19:21:00 6p+xk69f
 そして。
 ぼう、ぼう、ぼう、と鈍い音が立て続けに沸き起こり。
 エリスの寝室を、十数もの人影が埋め尽くした。人影 ---- そう、まさしく人の形をし
た影だった。黒く、夜よりも闇よりも黒く。そのシルエットたちは、次第に輪郭を顕してい
き、くっきりとした姿を取り始めた。影ゆえに判別しがたいが、その姿は女性のようで。
 年の頃はわからぬが、体格も身長もさまざまの、少女の姿をした影だった。

(志宝 ---- エリスよ -------- )

 影のひとつが深い眠りのうちにあるエリスへと呼びかける。

(どうかアナタの力を貸してくれ)

 別の影が、眠るエリスの開かれた口元へと唇を寄せるように覆い被さった。

(かつてすべてを見通すものに創造されたる器の少女よ)

 それとは別の影が、エリスの浴衣の襟を完全にはだける。

(アナタは、破壊の使徒を経て、創造の母となるべきひとだ)

 言いつつ、エリスの両足首を掴み。

(志宝 ---- エリスよ -------- )

 すべての影がエリスの名前を唱和した。
 十数体もの影の少女たちが、エリスにゆっくりとのしかかる。薄く開いた唇をこじあけ、
影のひとつがエリスの呼吸器を侵略する。胸元に張り付いた影が、肌に染み込むよう
に体内へと沈み込む。強引に開かれた脚の間、するすると下着と肌の隙間を縫って、
エリスの大切な、二つの器官に滑り込んでいった。

「ふあ・・・・うふぅ・・・・ん・・・・」

 悩ましげに声を漏らしたエリスが身をよじる。
 影たちの体内への侵入が終わり、最後に残った一体が、布団の上のエリスを見下ろ
していた。それは、どうやら最初にエリスに呼びかけた影のようである。

《十五体・・・か・・・まだまだ入りそうですね・・・》
 線のか細い少女の声で、影が呟いた。
 その声は愉悦と興奮に上ずり、愉しくて仕方がない、といった風である。

《今夜は・・・ここまでにしましょう・・・急激な変化は・・・好ましくありませんから・・・》
 いとおしげに、エリスの苦しげな寝顔を見つめた影は、最後に呟く。

《よい悪夢を・・・志宝エリス・・・今夜は始まりの一夜に過ぎませんから・・・》



  ※


164:エリス~胎動する悪夢~
08/07/27 19:21:32 6p+xk69f




 エリスは夢を見る。
 眠りの壁の向こう側、深層意識を捕らわれたまま、エリスは昏い夢を見る。
 夢の中の自分は身動きが出来ず、仰向けに寝かされて、ただ十数人の人影に囲ま
れているのだ。
 誰ですか。私になにをするつもりですか。
 言葉を出すことは、どうやら許されているらしい。エリスは周囲の影たちに必死で呼び
かけた。影たちは、しかし、ただただエリスを見下ろしているばかりである。その姿は、
シルエットから類推するかぎり、妙齢の少女を思わせる体躯であった。
 少女たちの影がエリスに近づく。薄っぺらく、細く、まさしく影の形をとった少女たちの
黒い身体が、エリスに覆い被さってきた。
「い、いや、いや、いやいやいやいやいやあぁぁぁぁぁーーーーーーっ !? 」
 生理的な嫌悪感に突き動かされて、エリスは悲鳴を上げた。
 その口を塞ぐように、影がずるり、と飛び込んでくる。
「んぐうぅぅぅぅぅっ !? 」
 喉を塞がれ、呼吸を止められ、エリスは涙を流しながら苦悶の声を上げた。
 苦しい。息がつまる。呼吸が出来ない。死んじゃう。
 そんな思考がぐるぐると頭の中を激しく巡る。これは夢。夢なんだ。だから死んじゃう
なんてことはないんだ。エリスの中の冷静な部分が彼女自身を落ち着けようと、そう諭
す。でも、この苦しさはなんだろう。夢なのに。
 しかし、リアルな夢は、その現実感ゆえに精神を蝕む。いまこの瞬間、エリスが夢現
で感じる苦しみは、確かに本物であった。
 別の影がエリスの耳元に唇を寄せる。ぬるり、と真っ黒い舌が突き出され、エリスの
耳の穴を嘗め回した。ぞわぞわと背筋を昇るおぞましさに身を震わせ、頭を振ろうと首
に力を込める。ずるずるずる、と。まるで蛇のように伸びた影がエリスの耳から侵入を
開始し、瞬く間に彼女の脳に到達した。
「ぐ、うぐっ、ふ、ふうっ、ぐ・・・・・・」
 灼ける。脳が焼ける。頭が沸騰する。苦しみに流し続ける涙すらも、その熱で乾かして
しまいそうな灼熱が、エリスを蹂躙した。
 また別の影がのしかかり。
 エリスの襟元をはだけ、脂汗にまみれた肌を露にした。薄っぺらな黒い闇が、べとり
とその胸に張り付く。エリスの裸の胸元に真っ黒な一面の染みをつくり、影がじんわり
と浸透する。
 一人が染み込むとまた一人。それが終わると、次の影がまた染み込む。
 脳を焼かれ、喉を犯され、肌どころか体内までも蹂躙され。
 エリスは恥辱と苦痛に泣いた。
 そして ---- 。
 最後を締めくくるかのように、残された二体の影がエリスの脚を拡げた。
 浴衣の裾をめくられると ---- そこに着けていたはずの下着はなかった。
 夢のなせる業か。影の少女たちの世界に取り込まれたとき、邪魔な布切れなど失わ
れてしまったのであろうか。エリスは苦痛に蝕まれた意識の中で、悲痛と驚愕に苛まれ
ていた。


165:エリス~胎動する悪夢~
08/07/27 19:23:15 6p+xk69f
 少女が、他のなににもまして護り通したい、隠しおおせたい部分。
 それらの箇所が、剥き出しにされる。
 いまだ誰の手も触れていない美しい花弁。ひっそりと閉じ、花開くときを待つかのよう
に慎ましく秘められた少女の中心部。そのわずか下には、これもまた美しく密やかに
閉じた器官 ---- たとえ最愛の人が相手であってもさらけ出したくない部分 ---- が
息づいている。
 しかし、影たちは容赦をしなかった。
 するりするり、と黒い少女の形が細くなり、侵入に適した形へと己が体躯を作り変え
ていく。さしずめそれは、真っ黒な蛇。陵辱の確固たる意志を持った、淫らな蛇のよう
だった。
 ぴとり -------- ぴとり -------- 。
 影の蛇が、エリスの股間と ---- 菊門にあてがわれ。
 そして、間髪いれず同時に。
 ずぐ、ずぐずぐっ、ずるるるるっ -------- と。





 エリスは夢を見る。
 寝汗にまみれて夢を見る。
 夢の中に捕らわれながら、びくりびくりと痙攣を続けるエリスの身体を、喜悦とともに
見下ろしながら、影の少女はくるりと背を向け、寝室の壁からするすると戸外へ抜け出
していく。

《よい悪夢のようでなにより・・・志宝エリス・・・今夜のことは目覚めたときには忘れて
います・・・第二夜・・・第三夜・・・さあ・・・あなたの器を満たすのにどれだけの夜を越え
たらいいのか・・・私の想像をぜひ超えてください・・・器の少女よ・・・》

 そんな言葉を残して。
 影の少女は姿を消した。
 背後に、悪夢を見続けるエリスだけを残して。



 同時刻。
 異世界アンゼロット宮殿。
 二十四時間体制でファー・ジ・アースの監視を続けるオペレータールームが、にわか
に騒がしくなる。近年、類を見ない有様のエミュレイター反応が観測されたことにより、
エマージェンシーコールが発動され、宮殿内に常駐したロンギヌスが急遽集まったので
ある。
 オペレーターたちを見下ろす司令塔の、豪奢な背もたれつき司令官席に座った銀色
の髪の少女が、不機嫌そうに側近の仮面の青年から報告を受けていた。
 銀糸を織り成したような長く美しい髪は、彼女の二つ名に相応しく月光の煌きを持ち、
年端もゆかぬ十三、四歳の少女の姿はやはり冴え渡る月の如くに朧麗で。
 少女の名こそ、アンゼロット。
 ロンギヌスを束ねる司令塔であり、全世界のウィザードたちの精神的支柱であり、か
つ “世界の守護者” 、 “真昼の月” の異名で呼ばれる絶世の美少女であった。


166:エリス~胎動する悪夢~
08/07/27 19:23:44 6p+xk69f
「こんな時刻に叩き起こされて、わたくしは不機嫌ですわ」
 アンゼロットがじろりと真横に立つ側近を見上げ、そう愚痴を垂れる。
 世界の守護者としての責務はやはり二十四時間体制。とはいえ、寝入りばなの深夜
に起こされては、さすがのアンゼロットも機嫌を損ねるというものだろう。
 椅子に腰掛けた姿は、よほど急いだものか寝巻き姿のまま。黒のネグリジェにガウン
を羽織っただけの、まるで火事場から焼け出されてきたかのような装いである。
「はっ。申し訳ありません。ですが、オペレーターの観測したエミュレイター反応が、過去
に前例のない観測のされ方をいたしましたもので、無礼を承知でお越し頂きました」
 丁寧に、堅苦しく応じた仮面の青年は、ロンギヌス隊員の一人。
 とはいっても、アンゼロット配下の中でも実力は折り紙つき。 “ナンバー持ち” に匹敵
すると噂されるほどの青年。名を、コイズミという。
「やれやれ、ですわ」
 溜息とともにそう言ったアンゼロットが、次の瞬間にはもう “守護者” の顔になってい
た。
「それでは、報告させていただきます。時刻はほんの十数分前。秋葉原近辺で複数の
---- 正確に言えば十六体のエミュレイター反応が観測されました。すべて ---- 魔
王級です」
 言葉だけを聞けば、ウィザードたちが卒倒しかねない報告であった。
 十六体もの魔王級エミュレイターが同時に同一ポイントに出現するとは、只事ではな
いどころか、確かにコイズミの報告するとおり、前例のないことであろう。
 アンゼロットの表情が緊張で強張り、こめかみを汗が流れる。これも、アンゼロットに
しては珍しいことであった。
「ガッデム ! なんてことでしょう ! 全ロンギヌスだけでなく、フリーランスのウィザードや
傭兵にも声をかけ、緊急配備をする必要がありますね。手配の準備は、コイズミ ? 」
 言われた当のコイズミは ---- 困惑の表情を浮かべて口ごもる。
「どうしました ?_」
「それが・・・出現したエミュレイターたちは、魔王級といえどもすべてがいわゆる “ザコ
魔王” ---- おそらく裏界においては士爵級の弱小魔王ばかりでして」
「馬鹿なことを ! だからといってそれを放置していい理由にはなりませんわよ !? 」
 激昂するアンゼロットを慌ててなだめるように、コイズミが言葉を次いだ。
「い、いえ、誤解なさらないでください。相手を弱小魔王と軽んじて手配をしなかったの
ではなく・・・手配が間に合うことなく、観測された反応がすべてロストしてしまったので
す」
「は・・・・・・ ? 」
「ですから、エミュレイターの秋葉原出現までは観測できたのですが・・・出現からわず
か半時間ほどの間に、すべての反応が失われてしまったのです。いま、オペレーター
たちが奔走しているのは、ロストした反応の行方を追っているからでして・・・」
 コイズミの説明を受けていたアンゼロットの表情が、みるみるうちに翳りを帯びる。
 不可解な事態に遭遇して、胸の内に沸きあがった漠然とした不安感を隠そうともせ
ずに ---- 。


167:エリス~胎動する悪夢~
08/07/27 19:24:17 6p+xk69f


 同時刻。
 裏界帝国。
 軋む歯車のオブジェを背に、ゆらめく蝋燭の輝きを浴びながら。
 ひとりの少女が不機嫌そうに呟いた。
「・・・・・・どこかの誰かがつまらない悪戯を仕掛けているみたいね、リオン ? 」
 ウェーブのかかったくせっ毛。肩口までかかる髪の一部を編みこんで、アクセントに
リボンを結び。大きな吊り目はまるで猫のように悪戯っぽく気まぐれで。
 小柄な肢体を輝明学園の制服に包み、肩にはお気に入りのポンチョを羽織った少女
が、椅子に脚を組んで腰掛けていた。
 裏界帝国の実力者。あまねく翼持つものを従える美しき蠅の女王。
 大魔王、ベール=ゼファーである。
「そのようですね・・・大魔王ベル・・・」
 リオンと呼ばれた少女が、その横に腰掛けていた。
 額にかかる艶やかな前髪をはらりと垂らし、腰まで届く長い髪はどこまでも闇の色。
 ひっそりと囁くような声で応え、視線は腰掛けた己の膝元に落ち、分厚い古書の頁
を飽くことなく追っている。
 リオン=グンタ ---- “秘密侯爵” の異名を持つ、裏界の魔王のひとり。
「狙われているのは志宝エリス ---- と、この書物には書いてあり・・・」
「待って、リオン」
 さえぎるように言葉を挟むベル。
 その瞳が憤りと、そして愉悦に輝いている。
「どこの誰かは知らないけど、この私を差し置いて大きなゲームを始めようとしている
のよ・・・頼まれなくたって、いいえ、拒否されたって参加するわ、私」
「・・・結果は・・・言わないほうがいいのでしょう・・・ ? 」
 リオンの問いかけに、我が意を得たりと頷いたベルが言う。
「わかってきたじゃない、リオン。ゲームは結果が分からないからこそ面白いのよ。
さあ、このゲームに乗るか、叩き潰すかは後で決めるとして・・・行くわよ ---- 」
 組んでいた脚をほどき、椅子から立ち上がる。


「ファー・ジ・アースへ -------- 」


 大魔王が、そう宣言した -------- 。

(続)



休みにかまけてSS書き。ちょっとエリスがひどい目に遭ってしまってますが・・・。
今回、いつもより長くなってしまいそう・・・
最後までお付き合いいただければ幸いです。
ではでは。


168:斬撃の人 ◆265XGj4R92
08/07/28 21:16:09 m7gtkKT7
エリスきたぁああああ!
エリスのSSはやっぱりいいですねぇ。
本妻くれはもいいけど、はかないエリスがとても好きです。
続きを期待してます!


そして、舌の根も乾かぬうちに続きを投下します。
二十分からです。
今回こそエロイ内容になるはず(予定)。


169:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/07/28 21:20:16 m7gtkKT7


 支配するものとは気高くなくてはならない。
 崇めるものが陶酔するように。
 従えられるものが陶酔するように。
 支配されることは悪ではない。
 支配されることが正しいと思えるものこそが正しいのだ。
 気高き華のように。

 見上げて、声をあげ、称えられよ。

 麗しき魔王よ。




170:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/07/28 21:20:34 m7gtkKT7

 紅い世界。
 残酷なまでに穢れた世界。
 それは紅い。
 それは赤黒い。
 それは淀んでいる。
 腐臭にも満ちた臭いが満ちた世界。湿った音がする。汚れた音がする。ぐちょぐちょと粘着質な音がした。

「ぁあ―」

 声がした。
 粘着質で、いやらしい雌の声。
 紅い世界の中で、何かが蠢いている。
 嗚咽にも似た声が響いていた。

「ぃゃあ」

 それは悲鳴。
 穢れた腐った世界の中で、助けを求める声があった。
 それは白い肢体、汚れを知らぬはずの幼い肢体。
 艶かしい素肌を、汚物によって穢されていく光景が。
 無数の闇に陵辱され、襲われ、貪られた少女がそこにいた。
 流す血すらも啜られて、汗を舐められて、流す涙すらも垂れ流される腐汁の中に混じり合い、汚れていく。
 四肢を蠢く闇に絡まれ拘束され、一糸纏わぬ身体を無数の闇が、爬虫類の舌にも似たざらついた闇が撫で回し、しゃぶりまわし、貪っていく。
 それは犯されていた。
 魂すらも汚されて、快楽と苦痛に満ち満ちた悲鳴を歌っていた。
 それは侵されていた。
 孕まされるかのように、口から、肛門から、膣から突き刺さる闇に絶叫を上げていた。
 頭から腐った床に押し付けられ、突き上げた臀部から血のように愛液を垂れ流し、絶望の声を上げていた。
 それに遠慮など無い。
 その行為に性欲などない。
 ただの被害。
 一方的な残虐。
 何故ならばそれを行う存在に知性は無い。
 ただの虚無にして、現象にして、闇にして、悪夢。
 悲鳴を上げようとも聞き入れられることなど存在しない。
 泣き叫んでも止まる理由なんて存在しない。
 絶望する。
 終わらない悪夢。

 少女は名も無き魔王だった。
 支配する側の力を持つ存在だった。

 けれど、それは何の意味もたなかった。

 よりおぞましい力に。
 より醜い存在に。
 より恐ろしい闇に。
 悪夢に襲われ、食われ、泣き叫ぶ少女に過ぎないのだから―



 魔王少女の爆撃舞踏曲

171:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/07/28 21:21:17 m7gtkKT7

 秋葉原には【天使の夢】という喫茶店がある。
 二人の可愛い看板娘と一人のナイスバディなお姉さんがいて、おまけのように料理が上手い少年がいる店である。
 いわゆるメイド喫茶と呼ばれる店。
 そこに一人の似つかわしくない青年が、コーヒーを口に運んでいた。

「あー死ぬー、あー」

 ゾンビのような声を上げて、コーヒーを啜る青年。
 その名を柊 蓮司というある意味秋葉原でもっとも有名な下がる男である。
 その背にはどんより重みが背負われ、死相が浮かんでいた。

「あのー、お客様? い、一応店内で奇声を発するのはやめてほしいんですけどぉ」

 そんな柊に勇気あるメイドが話しかけた。
 鹿島 はるみ。
 絶賛ドジっ子☆メイドとして天使の夢の二大看板娘として活躍している少女である。

「う、す、すまねえ」

 少しだけ体勢をよくして、柊がコーヒーを飲み干す。
 からんと音を立ててカップを置いた後。

「すまん。1000円のスペシャル・ミルクティーを頼む」

「は、はい」

 慌ててはるみが柊の注文を受けて、厨房に向かおうとすると―
 ズルっという音が響いた。
 なんとそこには何故かバナナの皮が!

「きゃぁんっ!」

 ベタンと音を立て、さらには近くに座っていた人のテーブルに頭をぶつけ、がしゃんがしゃんと派手に食器が割れる。
 大惨事だった。

「お、おい大丈夫か!?」

 慌てて柊が腰を浮かそうとして、次の瞬間上がった歓声に動きを止めた。

「ひゃっほう! またはるみちゃんがドジを踏んだぜ!」

「これがないと始まらないぜ!」

「萌えー!」

 酷く手遅れな気がする声だった。
 うーと涙目で頭を擦っていたはるみが手馴れた様子で片づけを始める。
 柊は伸ばしかけた手を止めて、気まずそうに頬を掻いて座りなおした。
 そんな柊の前に、かちゃりと音を立ててカップが置かれた。

「お?」

「どうぞ、ご注文のスペシャル・ミルクティーです」

 置かれたカップから視線を上げると、そこにはウェイター服の流鏑馬 勇士郎が立っていた。


172:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/07/28 21:22:33 m7gtkKT7
「お。勇士郎じゃねえか」

「どうも」

 それほど顔を合わせたことのない二人だったが、互いの名声と高い実力を持つウィザードとして互いの顔と名前ぐらいは知っているのが当たり前である。
 そして、つい数ヶ月前にはアンゼロットの(脅迫的な)依頼によって簡単な魔王討伐の依頼も受けたことがあり、彼らはそれなりに不幸な互いの境遇に同情して、親しみを覚えていた。

「あれ? なんでお前が給仕なんてやってるんだ?」

「いやー、ふゆみもはるみもあの調子なんで」

 そう告げる勇士郎の視線を追うと、はるみは食器を片付けようとしてグラグラとさせている手つきに酔っ払ったように踊っているし、ふゆみは対照的にモクモクと片付け終わったテーブルを布巾で拭いていた。

「忙しい、のか?」

「一応注文は落ち着いてるしな。なんか柊が悩んでいるようだったんで、ちょっとだけ顔出しに来た」

 そういって、どかっとイスに座る。

「どうかしたのか? 柊。またアンゼロットにでも依頼を押し付けられたのか?」

「ああ、まあな。っていうか、押し付けられてそれが終わったからここに来たんだよ」

 はぁっとため息を吐き「一人でエミュレイターの巣窟の攻略に向かわされたんだよ、最近アンゼロットの奴がますます横暴になってやがる」と愚痴を吐いた。

「た、大変だな」

 勇士郎は引き攣った笑みを浮かべた。
 もはや同情するしか方法がなかった。ていうか、よく生きてるよなと思うのが本音でもあった。

「まあそんなのはいつものことだからいいんだけどよ……はぁ」

「どうした? まだなんかあるのか」

 何時もよりも長い柊のため息。
 そして、勇士郎の言葉に、柊は静かに口を開いて―

「なあ、勇士郎―愛ってなんだ?」

「……」

 沈黙。
 数秒間にも及ぶ長い沈黙だった。
 一瞬勇士郎は時が止まったような気がした。エターナルフォースブリザード。一瞬にして大気全てが凍りつき、相手は死ぬ。
 そんな解説文が脳内に駆け巡り―

「柊。新手の魔王の呪いか? 今すぐアンゼロット宮殿に行こう、お前やばいぞ!!」

 即座に月衣から取り出した0-Phoneを握って、勇士郎が119のボタンを乱打した。
 救急車を呼び出そうとする勇士郎の手を、ビシリと突っ込みを入れた柊の手が閉じさせた。

「いや、まて、落ち着け!」

「落ち着けるかぁ! 秋葉原は今日で終わりだ! はるみ、ふゆみ! 俺は世界を救うぞぉお! あと、姉さんは一人で頑張れるさ!!」

「おちつけぇえええ!」

 世界最高クラスの魔剣使いと勇者の乱闘が勃発。

 しばし、お待ち下さい。

173:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/07/28 21:24:59 m7gtkKT7

「ふぅふぅ」

「はぁはぁ」

 神殺しの魔剣と約束された勝利の剣による激闘は涙目まじりに飛び込んできたはるみの介入によって終わりを告げていた。
 音速に迫る常人には捉えきれぬ剣戟は月衣の恩恵によって音も立てずに衝撃破も放つことなく、火花を散らすことのみ。
 イノセントであるはずの客たちは降って沸いたショー扱いでとても楽しんでいた。
 物凄く駄目な気がするが、気にしたら負けな気がするので二人共気にしなかった。

「んで? なんでそんなこといいだしたんだ?」

 世界がマジで終わるかと恐怖していた勇士郎はエクスリカバーを横に置きつつ、残骸になったイスに座る。

「いや、ちょっとな」

 柊はズタボロになった顔を掌で拭うと、同じく残骸になったイスに座り、切れ込みの入ったテーブルを立て直した。

「何があったんだ?」

 歯切れの悪い柊の返事に、勇士郎が囁くように尋ねた。
 そんな質問に柊は困ったように頬を掻いて……ぼそりと告げた。

「……告られた」

「は?」

「知り合いの女に、好きだと言われたんだ……」

 そう告げる柊の顔はどこか戸惑っているような気がした。
 どうすればいいのか。
 何と答えればいいのか。
 それらが分からない子供のような顔だった。

「なあ、どうすればいいと思う?」

「ぬー」

 それは悩むものだと勇士郎は考えて、腕を組んだ。
 数少ない男友達(OO? あれは友人などではない、単なる変人である)の悩みである。
 なんとかアドバイスをしたかったが。

「それはまあ、自分の思いを正直に告げるのが一番だろう」

 それぐらいしか方法は無い。
 安易にOKしろだの、断れだなんて言う資格はない。
 それらは勇士郎の世界を賭けた経験からはっきりしていることだった。


174:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/07/28 21:25:26 m7gtkKT7

「やっぱり、そうか……そうだよなぁ」

「それが一番誰にとっても正しいことだと思う」

「でもなぁ。俺は今一よくわかんねぇ」

 ガリガリと柊は頭を掻いて、あーと唸り声を上げる。
 心底悩んでいるようだった。

(俺もこんな時があったなぁ)

 と勇士郎は自分で入れたスペシャル・ロイヤルミルクティーを啜りつつ、遠い目をした。
 今現在にいたってもはるみとふゆみのどちらかを選んでいない自分の優柔不断は捨て置いてだ。


 そんな時だった。


『柊さぁ~ん』

 激しく。
 そう、激しく嫌な声がした。

「ん?」

「げっ!」

 それは拡声器で大きく拡大された聞き覚えのある声。
 柊が一瞬にして顔を見上げ、勇士郎が窓の外を見る。
 そこには秋葉原の路上の上をホバリングする軍用ヘリ、その中で拡声器を持つ息を飲むほど可憐な美少女―中身はロリババアだが、が居た。

「あ、アンゼロットぉ!?」

「柊……成仏しろよ」

 即座に手を合わせる勇士郎。
 実に脆い友情だった。

「ちくしょう! 俺には休む暇もねーのか!!」

 そんな絶叫を上げる柊に黙祷を続けながら、勇士郎は残ったミルクティーを口に含み。

『柊さぁ~ん。ついでに丁度いいところにいる、流鏑馬 勇士郎さ~ん。私のお願いにYESかハイで答えてください』

「ぶーっ!!!」

 激しく噴出するミルクティー。
 はるみが「あわわ、掃除が大変です」と慌てて、ふゆみが「……店を汚しちゃだめなのに」と呟いた。

「まてぇええええええええ!!!! 俺もかぁあああ!」

 他人事だったのが一瞬にして運命共同体である。

175:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/07/28 21:25:46 m7gtkKT7

「勇士郎。一緒に死のうぜ」

「断る!」

 キランと歯を光らせるやけっぱちな柊。
 慌てて逃げ出す準備を整える勇士郎。
 しかし、その前に天使の夢の扉が激しく蹴り開けられる!

「キルキルキルキルキル!」

「キルキルキルキルキル!」

「キルキルキルキルキル!」

「キルキルキルキルキルー!!!!」

 それは覆面を被り、キルキル叫ぶ謎のロンギヌス制服集団だった。

「き、キルキル部隊ぃいいい!!? まだこの時代にもあったのかよ!?!」

「やっぱり昔から趣味が変わってないのか、アンゼロットぉおおお!!」

『さあロンギヌスのみなさ~ん。柊さんと勇士郎さんを運んでくださーい』

 殺到する戦闘員たち。
 瞬く間に埋め尽くされ、捕縛され、運ばれていく柊と勇士郎。

「いやだぁあああああ!!」

「俺はこれが嫌で、ロンギヌスを辞めたんだぁあああああ!!」

 男二人の絶叫を残して、嵐のように天使の夢から変人達が立ち去っていった。
 後に残ったのはどこまでも続く静けさのみだった。

「……えっと、紅茶のお代わりいります?」

 はるみが呆然とする客ににこっと微笑んだ。
 そして、厨房担当の居なくなった店はいつものように続けられた。


176:魔王少女の爆撃舞踏曲 ◆265XGj4R92
08/07/28 21:29:00 m7gtkKT7
投下完了です。
リクエスト通りに勇士郎+二人のメイド出しました。
予定では柊一人の拉致予定だったのですが、せっかく元勇者様がいるので彼にも地獄を味わってもらいます。
なお、某所に転載していますが、こちらは18禁版としてデラックスに書いて行きますので楽しんでもらえるよう頑張ります。

次回ポンコツ魔王の登場予定です!
読んでくださってありがとうございました!!

177:名無しさん@ピンキー
08/07/28 22:31:09 TrLxlG28
キルキルロンギヌスww
うわーもうだめーのやりすぎで絶滅したと思ってたのにw

178:名無しさん@ピンキー
08/07/28 23:01:55 1eT9yeWn
斬撃の人来てたっ ! っていうか、第二弾のアクション早っ !?
(次からは爆撃の人って呼んだほうがいいんでしょうか !?)
のっけからエロスな展開かと思いきや、プラスアルファ、
前作とは異なるコミカルなフレーバーも好きな雰囲気です。
(柊はどうしても面白くしたくなりますもんね)
エリスSS、喜んでいただいているようでなによりでございます。
実は、エリスものを再び書きたくなったのは「斬撃さま」のおかげです。
斬撃舞踏読んで、思わずアニメのDVD最終巻を見直してしまい、「エリス熱」が
ふつふつと・・・が、新作執筆の動機だったりして(笑)。
というわけで、続きでございます。ではでは。


179:名無しさん@ピンキー
08/07/28 23:02:26 YZ27GuW3
作者さんぐっじょぶっ!
ところでさっきからアンゼロット様が出刃包丁砥いでいるんだけど…

今は手加減してあげてくださいねアンゼロット様。
続きを書いてもらわなければならないんですから。

180:エリス~胎動する悪夢~
08/07/28 23:02:40 1eT9yeWn
「・・・ふい~~~~・・・・・・」
 赤羽神社の境内へと続く長い石段をとぼとぼと登り、その丁度真ん中辺りで大きく息
をつく。両手に持った買い物袋の重さに辟易しながら、柊蓮司は壜類や缶類がみっしり
と詰まった買い物袋を、恨めしげに見下ろした。途中で休憩でも入れないとやっていら
れない、とばかりに石段の上に腰を下ろすと、割れ物ばかりが入った荷物を注意深く
小脇に置いた。
「ったく、くれはのやつ。ここぞとばかりに人をこき使いやがって・・・」
 ひとり、愚痴をこぼす。
 柊の携帯には、時折くれはから買い物を頼むメールが入ってくる。
 不思議と、急ぎの用事 ---- 例えばウィザードとしての任務 ---- がないときを見計
らうように届くメールは、どこかで自分の暇な姿を観察しているのではないか、と柊が
疑うほどに、いつもいいタイミングで送られてくる。いままで、任務の有無に関わらず、
柊が手の放せないときにメールが届いたことはただの一度もなかった。
 そして、柊が秋葉原の外に出ているときも、こういうメールは届かない。散歩がてら
歩いてこれる距離にいるときに限って、くれはは連絡を寄越すのである。
 そういうとき、大抵頼まれる買い物というのが ---- 運搬に一苦労も二苦労もするよ
うなものばかり、というのも通例だった。今日頼まれたのは、醤油やみりんなどの調味
料、料理で使うお酒を一升瓶で数本。お米も切れそうだから一袋お願い、という追伸
メールに秋葉原郊外で絶望の悲鳴を柊が上げたことなど、くれはは知る由もあるまい。
 それにいちいち従順に従うところが、柊もお人よしである。もっとも、これらの食材の
恩恵に自分も預かっていることを考えると、無下にそれを断ることも出来ない。
 美味い飯にありつくための苦労だと思えば力も沸いてくるってもんだ ---- 。
 内心、そうやって自分の心に折り合いをつけ、柊はどっこいしょ、っと若者らしからぬ
気合の声を入れた。
 がさり、と音を立てて重たい買い物袋を持ち直す。振り仰げば、石段を登りきるまで
もう半分。ちょっと、心がくじけそうになる。
「ま、ここまで来てごねたってしゃーねーからな・・・」
 苦笑して石段に足をかけた。毎度、くれはからの買出し依頼の度に、同じ石段で同じ
独白をしていることなど、柊はいちいち憶えていない。忘れっぽくもあり、自分の苦労に
いっそ無頓着な柊ならではのことである。
 さんざん愚痴をこぼしてはいても、境内に近づくにつれて柊の口元にはあるかなしか
の微笑が浮かんでいた。買出しを頼まれたときは、堂々と赤羽家の食卓にお呼ばれさ
れることができるからである。
 姉と二人暮らしの柊は、姉弟揃ってがさつで、ちょっといい加減なところがある二人
なので、食事の用意も自然と手を抜くことになる。というより、姉の京子は、決して料理
が出来ないわけではない(むしろ腕前のほうはなかなかのものであるはずだ)のだが、
その腕前を柊相手に披露することは絶対にないのである。いつだったか、腹を空かせ
て帰ってきた柊を前にして、自作の豪勢なシーフードパスタをぱくつきながら、物欲しそ
うな視線を向ける柊と目が合うと、
「これ、あたしンだからね」
 と、冷たい一言を吐いたことがある。俺の分は・・・と言いかけた柊に背を向け、お前
に食わすパスタはない、とでも言うように無言で食事を続け、挙句の果てには五百円
玉を投げてよこすような姉なのだ。
 自分のためにつくる料理はあっても、弟ごときに振舞ってはやらぬ。コンビニでパン
でも買って喰うがよい ---- そんな声が聞こえてきそうな背中だったことを、柊はよく
憶えている。


181:エリス~胎動する悪夢~
08/07/28 23:03:41 1eT9yeWn
「あれじゃ嫁き遅れるよな、絶対」
 姉本人の前では決して言えない一言を吐く。ちょっと性格は男っぽくてがさつだが、
十人並み以上の器量良しの姉なのだ。あばたもえくぼというヤツで、あの性格だって
惚れた相手でもいれば「竹を割ったような姉御肌」とポジティヴな評価をしてくれるかも
しれないではないか ---- と。
 そんなつまらないことを考えながら、とうとう石段を登りきり、境内へと到着する。
 七月も終わりに近づいた神社の境内は、燦燦と太陽の輝きが降り注いでいる。
 それでも、敷地のあちらこちらに立ったご神木やら、そうでないにしても立派な幹の
大木が緑の葉をさわさわと揺らし、所々に涼しげな木陰を作っている。
 どこかで蝉の鳴き声が聞こえ、柊は “らしくもなく” 夏の風情に耳を澄ませてみた。
 季節を肌で感じ取る ---- などという風流を、珍しく柊が味わっていると、
「あ~、ひーらぎー、ごくろーさま~」
 くれはのけたたましい呼び声が、風流の邪魔をした。
「ご苦労様です、柊先輩」
 後に続くのはエリスの声。二人揃って柊を出迎えた少女たちは、目にも涼しげな純
白の巫女服姿である。赤羽神社の看板娘 ---- 神社で看板娘もどうかという話もあ
るが ---- であるくれは目当ての参拝客も多かったのだが、最近では新しくここの巫
女の手伝いをエリスがするようになって、いままで以上に神社を訪れる者が増えたと
いう噂である。たしかに、(口を開きさえしなければ)長い黒髪の純和風美少女と、控え
めで優しげな、小動物的雰囲気の美少女 ---- と、タイプの違う可愛い巫女さん二人
がいるのである。順当に考えても、赤羽神社に閑古鳥が鳴くことはありえないだろう。
 そんな美少女二人に出迎えられた当の柊は、特になんの感慨があるわけでもなく、
「おー、きたぞー」
 と、重たい買い物袋ごと手をあげて、普通の挨拶をするのである。
 彼にとって見れば、幼馴染みといつでも一緒にいたせいか巫女服姿なんぞ珍しくも
なんともないわけだし、女の子の容姿がどうであれなんということもない、という性質
である。同性から見れば、ある意味、小憎らしい若者であった。
「はわ、重そう。やっぱりこういうとき男手があると便利便利~」
 柊の手の中の荷物を覗き込んで、くれはが目を丸くした。自分で頼んでおいて、重そ
うもなにもないものである。
「ほんとに重そう・・・柊先輩、一個持ちますから渡してください」
 申し訳なさそうな顔をしてエリスが手を差し出した。
「ほら見ろ、くれは ! これが人としての普通の反応だぞ !? いつもいつもお前、すげー
買い物頼むけど・・・あ !! そういえば俺、お前が手伝うって言ったの見たことねーっ !! 」
「はわー、ひーらぎってば女の子にそんな荷物持たせようってのー ? さいてー」
 会えば始まる夫婦漫才。言葉の上ではひどいことを言っているように聞こえるが、お
互いの口調に相手を罵り、なじる色合いは決してない。エリスの目から見ても、なんだ
か仔犬と仔猫がじゃれあっているようにしかみえないのだから世話がなかった。
「まあまあ、お二人とも。お荷物、随分重たいみたいですから、手分けして家の中に運
んじゃいましょう ? ほら、それで早くお夕食の準備・・・」
 言いかけて、柊の右手に持った買い物袋の取ってに手を伸ばしたエリスが ----

 ぐらり、と傾いた。


182:エリス~胎動する悪夢~
08/07/28 23:04:15 1eT9yeWn

「あ・・・れ・・・・・・ ? 」
 視界がぼやけ、続いて真っ暗になる。眩暈か、と感じたのは束の間、頭を鈍器で打
ちつけられたような鈍く激しい痛みを感じてその場にうずくまる。いや、うずくまったの
ではない。頬に、じゃりっ、と感じた石の感触は境内の玉砂利 ---- 。
 私、倒れたの ---- ?
 その疑問が、エリスの頭に浮かんだ最後の言葉。
 柊先輩が私の名前を叫んでる。くれはさんが私の名前を呼んでいる。どうしてそんな
遠くから呼んでいるんですか ? 私、すぐここにいるじゃありませんか・・・・ ?
 笑おうとして頬が引きつる。もう、顔の筋肉すら満足に動かせない。
 力強くなにかに ---- たぶんそれは柊の腕だ ---- 抱きしめられた感触だけが、ひ
どく心地よかった。まるで真綿に包まれているかのような安らぎを、エリスはつたない
意識の頼りにしていた。
(・・・ひ・・・らぎ・・・んぱい・・・く・・・はさ・・・ん・・・)
 二人の名前を呼ぼうとして、結局声に出すことは出来ず。 
 エリスは意識を手放した ---- 。



 エリスは夢を見る。
 眠りの中でだけ思い出せるこの夢は、確か二度目の夢のはずだ。
 影の少女たちに体内を侵食されたおぞましい記憶が一気に甦り、エリスは悲鳴を上
げようとする。しかし、その声を押しとどめるものが、自分の身体の中で蠢いた。
 それは、あの晩の夢で自分に侵入してきたはずの、黒い少女たちの声。

 声は一斉に、呪いの言葉をエリスに吐いた。

 騙したのね。身体をくれるって言ったはずよ。それなのに、こんな娘たちと一緒に押
しこめられて。閉じ込められて。ごちゃまぜにされちゃうなんて。ああ、溶けていく。この
身体も意識も蕩けだす。どろどろになる。混ぜられてしまう。真っ黒になって。ひとつに
されちゃう。そうやって次の娘たちも閉じ込めるのね。閉じ込めて自分の中に取り込む
のね。取り込んでも飽き足らず、次の生贄を探すのね。嘘つき。

 あの晩の夢で自分を陵辱したはずの十五の影が、十五の言葉で怨嗟を囀る。
 そして十五の影の少女が、一斉に唱和した。


 ---- そうやってわたしたちを “食べる” のね -------- !!






183:エリス~胎動する悪夢~
08/07/28 23:06:01 1eT9yeWn


 違う。違う。違う。私はなにもしてません。
 エリスは必死で否定する。
 しかし、その否定をさらに否定するのは、内から自分を責める恨みの言葉。
 その声たちが次第に ---- くぐもって、不明瞭になり、まるで泥の海に溺れるように
ぶくぶくという音を立て、無理矢理押し込められ、溶解させられ、まるで胃袋の中で食
物が消化されるように ----

 ひとつになってエリスの “一部” になった。

「い、や・・・いやあぁぁぁぁぁーーーーっ !? 」
 得体の知れないものを喰らい、養分として吸収したと ---- 本能が直感する。
 込み上げる悲鳴に、ごぼ、という音が混じった。慌てて両手で口を押さえ、エリスは
必死で吐き気を堪える。一瞬でも気を抜けば、嘔吐してしまいそうな気持ち悪さに、耐
えようとする。ごくり、と、ようやくの思いで唾を飲み込み、荒い呼吸をついた。
 そこに、 “あの影” が姿を現した。

《悪夢へようこそ・・・志宝エリス・・・二夜目を待ちきれずに失礼・・・》

 どこかで聞いたような声だった。
 影は、やはり少女の姿を取っている。
 華奢な、小柄な少女のシルエット。

《十五体では物足りず・・・一晩で養分としてしまったのね・・・でも安心して・・・》

 影の少女が自分のお腹の部分に自らの両手をずぶずぶと差し込んで。
 ずるり、と。
 なにかを引きずり出した。
 
《今日は二十体・・・でも、養分を得たアナタは、もうこれでも一晩保たないかも・・・》

 少女に引きずりだされたものは影。彼女の言葉の通り、二十もの影。その影たちは、
やはり女性の輪郭を持っている。しかし、前夜と違うのは。

 やめて。ゆるして。たべないで。はなしがちがう。いやよ。こんなのいや。

 二十の影の少女たちが、いずれもエリスに許しを乞うていることだった。
 前夜のエリスは陵辱されるだけの存在だった。でも、いまは ---- 強靭な牙と溢れ
かえる絶対の力をもって、影を捕食するものだった。


184:エリス~胎動する悪夢~
08/07/28 23:07:00 1eT9yeWn
 でも、いや。
 エリスは叫ぶ。
 こんなこと私はしたくない。これは、なにかを犠牲にして力を得る行為だ、と。これは
弱いものを虐げる行為なのだ、と。エリスは直感でそれを悟っていた。エリスの心は優
しさに満ちている。誰かやなにかを犠牲にする行為の空しさや悲しさは、誰よりも知っ
ている。そのことを、エリスの心に刻み付けてくれた人たちが、すぐ側にいるのだから !

《・・・ぬうぅぅぅっ・・・ !? 》

 エリスの心に生まれた強靭な意志は、影を圧倒的な力で拒絶する。
 影の少女がひるみ、黒々とした深淵の向こう側から、エリスを睨みつけた ---- かの
ように見えた。エリスぅぅぅ・・・と、影の少女が憎々しげに吠える。
 やはり ---- どこかで聞いた声だった。
 影は濃く、次第に輪郭を整えていき、あやふやだった姿が確かな形を取り始める。
 薄紙をはがしていくように闇が薄れていき、その姿をくっきりと現していく。
 見てはいけない ---- エリスは思う。しかし、視線を外すことが出来ず、彼女へ呼び
かけた最初の影の少女が正体をさらけ出していく様を、エリスは目の当たりにすること
になった。

《・・・また・・・くるわ・・・》

 そう言って口元を歪めて笑った少女の顔は。

「そんな・・・うそ・・・」

 聞き覚えのある声なのは当然のこと。

「うそ・・・だよ・・・・・・」

 褐色の肌をしてはいたけれども。

「いやああああぁぁぁっ・・・・・・ !? 」

 見まごうことなき自分自身----
 ---- 志宝エリスに、他ならなかった・・・・・・。



「ひーらぎー・・・どうしよう・・・エリスちゃん起きないよ・・・」
 赤羽家の居間。普段らしからぬ弱々しげな声で、くれはが呟く。
 境内で柊を迎えたときには、なんでもなかったはずなのに。急に、なんの前触れもな
く倒れてしまったエリスを運び込むと、とりあえず居間に布団を敷き、その小さな身体
を慎重に横たえ、回復のときをじっと待っていたのである。



次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch