08/07/22 17:30:37 Fm4VMIB1
夜中、わたしは音を立てないようにベッドを抜け出した。
今日もわたしの秘密の時間が始まる。
焦る気持ちを抑えて慎重に準備を終えて、部屋を出ようとした。
「んー……穂乃花? どうしたの」
背中から聞こえてきた声にわたしは思わず身を強張らせる。
道具を出すときの音で、同室の友達を起こしちゃったみたい。
「ト、トイレだから、気にしないで」
咄嗟に出た言い訳だけど、ウソってわけじゃない。
今日はトイレもしてみるつもりだもんね。
「うんー……」
納得した友達が布団に潜り込むのを確認して、わたしは部屋を出た。
しんと静まり返った女子寮を忍び足で1階廊下の途中まで移動する。
門限の時間は過ぎているから玄関も裏口もダメだけど、この窓からだけは夜中でも外へ出入りすることができる。
誰か他の子が夜遊びするために、この窓だけ鍵を壊しちゃったのかもね。
外に出るとわたしは小走りで寮の裏手に回った。
1日中、このときのことばかり考えてた。
もう我慢できないよ。早く、早く、人間じゃなくなりたい。
わたしはパジャマの上着とズボンを脱ぎ捨てた。
背中に手を回して、ブラも脱ぎ落とす。
ショーツもくるくる脚に巻きつけながら、脱いじゃった。
「ああ……あふぅ……」
素肌が直接、夜風に撫でられる。
今日は満月だったんだ。
誰かが窓から外を見れば、裸のわたしは見られちゃうかもしれない。
満月に白い肌を浮かび上がらせた、靴も履いていないわたしの裸。
恥ずかしいけど、両腕を広げて月光と夜風を受け入れると、お腹の奥がきゅんって疼いた。
なかなか子供っぽい胸も、華奢な身体も、やっと産毛が生えてきたあそこも、見られちゃう。
でも、平気なの。わたしはいまから人間じゃなくなるから。
わたしは興奮に震える指で、ゆっくり自分に首輪を嵌めた。
お洒落用のチョーカーとは全然違う、頑丈なだけが取り柄の大型犬用の首輪。
すると魔法に掛かったみたいに両手の手のひらが勝手に地面につく。両脚は勝手に膝をついてる。
「くぅん……わん、わん」
誰も居ない寮の裏庭で、四つん這いになったわたしは鳴き声を呟いた。
わたしは優等生なんて思われてる女子高校生、穂乃花じゃない。
わたしは犬。
人間の寮に迷い込んできた、野良犬のメスなの……。