08/08/21 19:56:01 +2GZXbAU
ネウロイの襲撃によってカールスラントは焦土と化し、人々は他国へ逃げるため今日も港や国境付近の検問は人ごみの山だった。
そんな中に私はいた。
病気の妹をブリタニアの病院へ移送する船の乗船許可証を発行してもらうためだ。
「今すぐにでも妹をブリタニア行きの船に乗せてもらいたいんだ」
「何度も言ってるでしょ。無理なんですよ。一ヵ月先まで予約がいっぱいでして」
かれこれ一時間は頼み込んでいるが、受付の男は一向にうんと言ってくれない。
今回ばかりは堅苦しいカールスラント人気質に腹が立つ。
「重い病なんだ。なんとか一週間以内の船に乗せてやれないのか?」
「バルクホルンさん、気持ちはわかりますが病人だろうとなんだろうと船に乗せるには手続きが必要なんです。今から手続きすれば一ヵ月後の船には乗せられますからそれで我慢してくれませんか?」
一ヶ月、そんなに長い間、この土地にクリスを残しておくのはあまりにも危険すぎる。
そんなことを考えて黙り込んでいると、受付の男が言った。
「手がないこともないんですがね」
真っ暗闇に光が差し込んだ。
「本当か!?」
「ええ、明日にでも妹さんの乗船許可証を作れますよ。ただし条件がありますがね」
その時の男の顔はいかにも悪巧みをしていそうな顔だった。
しかしクリスを一日でも早くブリタニアに連れて行きたい私には断る理由などなかった。
「わかった。条件を聞こう」
「即答していいんですか?大尉にとっては結構大事なことだと思いますけど」
「問題ない。妹を船に乗せることの方が重要だ」
「それでは今日の深夜に二番倉庫に来てください。話はそれからです」