08/08/16 02:06:04 LHT+gEta
またもツッカタスッポコというBGMに乗せての桃華の回想。
『冬樹君…。その…、女性が苦手とか…、女性が嫌いとか…、そういったことは…』
『ないよ』
『では、今、お付き合いなさっている女性がいるとか…』
『いないよ』
『冬樹君は、私のことが御嫌いですか?そうでなくても、私のことを迷惑とお感じでしょうか?』
『全然そんなこと無いよ』
『では、私とお付き合いしていただけないでしょうか…?』
『うん、いいよ』
『えっ…?いいんですか!?』
『うん』
『…本当に…?』
『うん。これから、宜しくね』
『…はい』
「…ということは、つまり…」
「…はい…」
「直截な申し入れが、最も効果的である、と…」
「…そうなんです…」
この結果に、ポールは、うーむと腹の底からの唸りが混じった溜め息をつき、
桃華は、この結果を他者に告げたことで緊張の糸が切れたのか、へなへなと力なくその場にへたり込んだ
「お嬢様…」
ポールは桃華を優しく助け起こすと、そのままその手をとって、設えられているテーブルへと導いた。
席に着いた桃華の斜め後ろに着いたメイドが、冷たいお絞りをさっと差し出す。
アイスティーが作られ、それは運ばれてきたサンドウィッチと共に桃華に供された。
「ポールにも同じものを」
「かしこまりました」
桃華は身振りでポールにテーブルに着くように勧め、ポールは「恐れ入ります」と深々と一礼してその指示に従う。
桃華の白く細い指先が優雅な仕草でティーカップの取っ手を摘み上げ、そのまま口元へと運んでいく。
金の縁取りが施された白いティーカップの縁が、
ようやく血色を取り戻した桃華の愛らしい唇に軽く押し当てられる。
と、次の瞬間…
桃華はそのままティーカップをグイッと煽り、
細い喉仏をコクコクと鳴らしながら冷たい紅茶を一気に喉の奥へと流し込んだ。
「ぷはーッ!あー、生き返るゼ!!」
「お嬢様…!」
思わずハッと桃華の表情を窺うポール。
そこには、普段は可愛らしくカールしているこめかみの飾り毛をピンと立て、
眉と目を挑戦的にキリリと吊り上げ表情を引き締めた裏桃華の顔があった。
表のそれよりも明らかに逞しい手がスッと差し出すカップに、すぐにメイドがなみなみとアイスティーを注いだ。
「ポール…、早速、明日…、な!」
「承知いたしました…!」
不敵な笑みを浮かべる主に、老執事は丁重だが力強い言葉を返した。