麻生優子妄想同盟(夢幻戦士ヴァリス) 第七幕at EROPARO
麻生優子妄想同盟(夢幻戦士ヴァリス) 第七幕 - 暇つぶし2ch400:ARCH DUKE
09/07/14 22:17:34 PYNShKkl
(19)

――暗黒界。ヴェカンタニア。

(ベノンめ、使えぬ奴よ・・・・)

黄金で飾られた黒曜石の玉座。
静寂の支配する広大な空間に一人座し、黙然と思考を巡らせる仮面の王。

(まあ、よい。所詮、あのような口舌の徒には、さして期待などしておらぬ。
それよりも、問題なのは・・・・)

コツ、コツ、コツ。
鈍く輝く鋼鉄の飾り爪が、玉座の手摺りに、苛立たしげなリズムを刻み続ける。
密かに監視に付けていた者からの報告によれば、
今や最後の暗黒五邪神となったヴォルデスが、不可解な行動を示しているという。



401:ARCH DUKE
09/07/14 22:18:31 PYNShKkl
(20)

(老いぼれめ。一体、何を考えている?)

麗子を助けるために現実界に向かった所までは良い。
単なる気まぐれか、あるいは、ベノンへの当てつけか、いずれにせよ、その意図は理解可能だ。
だが、最新の報告によれば、双頭の雷竜は、<ヴェカンタの戦士>を伴って現実界を離脱すると、
全く未知の次元座標へと向かった、というではないか。

「未知の、座標?」

苛立ちのあまり、声に出して呟きを漏らす、ヴェカンティの支配者。
直後、もう一つの事実に気付くと、さらに不機嫌さを募らせた。
三界・・・・分けても、現実界の名で総称される無数の次元世界に監視の網を張り巡らせ、
夢幻界側の動きを封じ込める目的で開始された、一連の大規模プロジェクト
――多層次元宇宙の精密探査や全天図作成を取り仕切っていたのが、
他ならぬアイザードであった、と思い出したのである。



402:ARCH DUKE
09/07/14 22:19:13 PYNShKkl
(21)

(もしや、あの老いぼれが向かった先とは・・・・)

無機質な金属光沢を湛えたマスクの下、
およそ人間的な感情などというくだらない代物とは全く無縁の筈の、冷徹無比な眼差しに、
ほんの一瞬だけとはいえ、揺らぎが生じる。

(――黄泉の国、サザーランド)

幾つかの世界において、伝承として語り継がれている異空間。
夢幻界と現実界の結び目に位置し、
自前の戦力を持たぬ筈の夢幻界に<戦士>を供給し続けている、と謂われているが、
数次に渡った探査によっても実態は明らかにはならず、実在するかどうかも疑わしい、とされてきた。
・・・・だが、調査報告を取り纏めた者が反逆の張本人であり、
今また、もう一人の反逆者までもがその場所に向かおうとしている、となれば、話は全く違ってくる。

「これは、捨て置く訳にはいかぬな・・・・」



403:ARCH DUKE
09/07/14 22:20:03 PYNShKkl
(22)

「近衛軍団に出撃準備を。全軍の将を急ぎ招集せよ」

矢継ぎ早に命令を下しつつ、ログレスはこれまでとは別種の苛立ちを覚えた。
暗黒五邪神と異なり、一般の軍団長や参謀たちには、
思念通話や瞬間移動などの便利な能力を持っている者は少なく、
何かあるたびに、逐一伝令を送り、参集を待つ必要がある。

「フン、埒も無い」

自らが発した勅命を受け、
各地の司令部や駐屯地に慌しく飛んでいく部下たちの気配を感じ取りながら、
仮面の裏側で冷笑を浮かべる暗黒の王。
そもそも、能力以前の問題として、
彼らには、支配者の意思を汲み取った上で、自身の判断で最適な作戦を立案する才幹が欠如していた。
総じて忠誠心だけは高く、アイザードやヴォルデスのように不遜な考えを抱く者は皆無だが、
御前会議を開き、基本戦略を通達するだけでは足らず、
個々人の任務についてさえ、大まかな指針を示してやらねば、まともな働きを期待できない連中なのだ。

(まぁ、良いわ。今回は予も出陣する訳だからな。
それに、老いぼれの傍らにはあの娘がいる。いざとなれば――)



404:ARCH DUKE
09/07/14 22:21:05 PYNShKkl
(23)

(星が流れていく。綺麗だ・・・・)

――ここは、一体、何処だろう?
身体中が、まるで空気と化したみたいに、フワフワと軽く感じる。
だというのに、頭の中は、ずぅん、と重く澱み、全く思考が働かないのはどうしてだ?

(もしかして、これが"死"というものなのか?)

ヘドロのようにドロドロとした自我に残る、最後の記憶。
<ファンタズム・ジュエリー>の強大な波動に押し包まれ、
存在自体がグシャグシャに攪拌され、破砕されていく・・・・恐怖感。

(・・・・結局、暗黒界に生まれた者は闇の中でしか生きられない、という事なのか。
アイザード様や優子と同じ世界で・・・・光の中で生きる事など、所詮は・・・・)

頬を伝うこの感触は、涙だろうか?
空っぽの胸は、何とも言えない寂寥感とやりきれなさとで一杯だった。
主君と仰いだ青年との誓いも、互いに友と認め合った少女との絆も、
三界を律している冷徹な法則の前では、何の意味も持たなかったのだろうか?
ヴェカンティに生を享けた者は、あのベノンのように、
闇の掟に従い、破壊と殺戮をひたすら繰り返すだけの存在でしかない、と・・・・?



405:ARCH DUKE
09/07/14 22:21:49 PYNShKkl
(24)

「あ、気が付いた。デルフィナさん?」

――重たげな瞼を持ち上げ、目を開けた女エルフの視界に、最初に飛び込んできたのは、
心からほっとした様子の、蒼髪のパートナーだった。
・・・・あ、ああ、と、曖昧な返事を返しながら、
デルフィナは、自分を抱きかかえた<ヴァリスの戦士>の肩越しにぼんやりと周囲を眺める。

(次元の狭間?現実界から何処か別の世界に転移しようとしているところなのか?)

自分はまだ生きているらしい、と、ようやくのみ込めて、安堵の息をつく金髪の女剣士。
どうやら、<ジュエリー>のパワーで強制的に次元の狭間へと投げ入れられたショックで、
一時的に意識を失いかけていただけのようだった。
頭の芯には、まだぼうっとした感じが残り、とても本調子とはいかなかったが、
先刻来の暗鬱な感覚は遠ざかり、思考も五感も急速に回復の兆しを見せている。



406:ARCH DUKE
09/07/14 22:23:04 PYNShKkl
(25)

「・・・・ちょっとだけ、心配したんだけど、
<ジュエリー>には、別にデルフィナさんを傷付けようという意思はなかったみたい。
多分、<明>の力を受け容れる事が出来るかどうか?試していたんじゃないかしら」

「試していた?私を、か?」

訝しげな顔つきのパートナーに向かって、ゆっくりと頷き返す、蒼髪の<戦士>。
その後に、気恥ずかしそうに頬を赤らめつつ、小声で付け加える。

「その・・・・本当は、わたしも、初めて<ジュエリー>に触れた時はあんな調子だったし・・・・」

(だったら、最初に言ってくれたって良いじゃないかッ!?)

思わず大声を上げかけて、ハッと口をつぐむ女剣士。
優子の口元には、(珍しく)悪戯っぽい笑いが浮かんでいる。
しばらくの間、考え込むような表情になった女エルフは、
やがて、意味に気付くと、やれやれ、と言わんばかりの口ぶりで、呟きを漏らした。



407:ARCH DUKE
09/07/14 22:28:19 PYNShKkl
(26)

「なるほど、これでおあいこ、という訳か?」

返事をする代わりに、クスッ、と、小さく微笑む優子。
その表情を眺めたデルフィナは、もう一度舌打ちを漏らすと、苦笑いを浮べた。

「お前も、案外、根に持つタイプなんだな」

「・・・・だって、やられっぱなしってのは、やっぱり、ちょっと口惜しいし」

フン、と、軽く鼻を鳴らす、女エルフ。
ベノンとの死闘の前、都内のホテルでの一件は、確かに悪ふざけが過ぎたかもしれないが、
今になって仕返しを仕掛けてくるとは、
というより、この生真面目な少女が自分にそんな一面を見せた事自体、(良い方向で)意外だった。

(シブヤの街角で出会ってから、まだ丸3日と経ってはいないのに、
随分と馴れ合うようになったものだな・・・・お互いに)

――してやられた、とは感じたものの、不思議と悪い気はしなかった。
むしろ、僅かな期間のうちに、そこまでの関係を築くに至った事を嬉しく思う感情の方が強い。
少なくとも、最初に出会った頃の彼女ならば、
ここまで打ち解けた態度を見せたりはしなかっただろうし、
自分にしても、そんな馴れ馴れしい行為は断固として撥ね付けていただろう・・・・。



408:ARCH DUKE
09/07/14 22:32:48 PYNShKkl
(27)

「・・・・それにしても、随分と移動に時間がかかるな。」

照れ隠しの意味合いも含んでの事だろう、いささか強引に話題を変えようとする女剣士。
多分、一切を承知の上で、にっこりと笑いながら、
蒼髪のパートナーは、そう言えばそうね、と相槌を打った。

「いつもだったら、ほとんど一瞬で到着するんだけど」

実際、優子にも、今回の次元移動は少し時間がかかり過ぎているように感じられた。
互いに引き合う<ファンタズム・ジュエリー>本来の性質を利用する形で、
意図的に目的地が操作されていた前回は特別としても、
最初と二回目の次元移動にはさほど時間を要しなかった筈である。

「・・・・・・・・」

優子の説明に、不意に眉を寄せて表情を険しくするデルフィナ。
しばらくの間、逡巡しているかのような様子で何事かを反芻した後、
何事か、と表情を固くしてこちらを凝視する蒼髪の少女に向き直ると、
慎重に言葉を選びながらではあったが、自分の考えを打ち明ける。

「・・・・これは、あくまで、そういった可能性がある、というだけの話だが、
現実界への転送がアイザード様によって仕組まれたものだったというのなら、
あるいは、今回の次元移動にも、あの御方が何らかの影響を及ぼしていらっしゃるのかもしれん・・・・」



409:ARCH DUKE
09/07/14 22:35:24 PYNShKkl
(28)

「――ま、まさか?」

さすがに驚愕を隠せず、瞠目する優子。
当然と言えば、当然だろう。
あの時、全ての魔力を費消し尽くした、プラチナ・ブロンドの魔道士は、
自分の目の前で、存在の全てを失い、因果地平の彼方へと飛散していった筈なのだから。

・・・・・・・・だが。

「・・・・いや、あの御方の考えは、正直、私などには想像もつかない。
もし、アイザード様が、ベノンに敗れ、肉体を滅ぼされる事を予見された上で、
密かに何らかの手を打っていらっしゃったとしても、私は不思議には思わない」

信頼するパートナーの、
――いや、それ以前に、今なお彼を深く愛し続けている女性の、
冷静な分析に、しばしの間、言葉を失う蒼髪の少女。
困惑と疑念に襲われたその横顔に、ちらり、と一瞥を走らせたデルフィナは、
低い声で、・・・・そういう御方なのだ、アイザード様は、と、短く言い添える。
その一言で、幾分、落ち着きを取り戻しはしたものの、
<ヴァリスの戦士>の表情は未だ固く強張り、激しい動揺によって蒼褪めたままだった。

(・・・・アイザード、あなたは一体・・・・)



――――TO BE CONTINUED.


410:ARCH DUKE
09/07/14 22:40:28 PYNShKkl
以上、第16章をお送りしました。
お楽しみ頂けたのであれば幸いに存じます。

なお、お陰さまで、今回も投下作業を連投規制に妨げられる事がございませんでした。
ご支援を頂いた方、大変有難うございました。




411:名無しさん@ピンキー
09/07/15 20:31:04 pj37b0tx

話もだいぶ大詰めかな?

412:名無しさん@ピンキー
09/07/18 01:32:01 QqCR0Cjg
乙であります。

413:名無しさん@ピンキー
09/07/22 22:37:13 uiGnUh0n
ヴァルキリーの更新キタけど、作者のHPは全然更新されないね。

414:名無しさん@ピンキー
09/07/24 07:45:05 asG2avti
>>489
さっき見に行ったら更新されてたよ


415:名無しさん@ピンキー
09/07/25 02:50:44 25MpA7TB
くっ、ヴァルキリー買うのやめたからコミック発売までおあずけだ…

416:ARCH DUKE
09/07/29 03:06:54 0BmYDhRr
本日、コミヴァ最新号を購入いたししました。
実は、次章のエロシーンはどういったシチュにしようか?と迷っていたのですが、
今回の漫画を見てイメージが固まりました。

・・・・という訳で、次回予告です。
次章(第17章)は、今回の続きからレーザスの剣の登場シーンまで。
エロ担当はドラゴとデルフィナで、
一度は治癒したものの、ベノンの攻撃で受けた腕の傷が再び痛み始めたデルフィナを、
医療施設に連れ込んだドラゴが、怪しげな装置とクスリを使って快楽漬けにしていく、という展開となります。
完成・発表は、9月下旬の予定ですので、しばらくお待ちくださいませ~。

417:名無しさん@ピンキー
09/08/04 06:39:12 AkMxVsgn
保守

418:名無しさん@ピンキー
09/08/11 03:20:05 nnF5SAfE
hoshu

419:名無しさん@ピンキー
09/08/17 23:46:25 HnJ1a6cP
コミケに行った人、ヴァリス関係で同人か何か出てた?

420:名無しさん@ピンキー
09/08/21 00:49:57 ADRrg4rA
>>495
今回は収穫ゼロだな
ZOLの所も新刊落としてたし


421:名無しさん@ピンキー
09/08/29 00:11:23 zFNaHisO
今月号の二次マガについてたうるし原のピンナップって、
鎧の色は変えてあるけど、「バルキサス」のレムネアだよな?


422:名無しさん@ピンキー
09/09/02 05:23:15 ADEujojJ
うるし原スゲー

423:名無しさん@ピンキー
09/09/08 23:14:06 73U+y/ls
hoshu

424:名無しさん@ピンキー
09/09/12 21:50:12 RyyGHIki
コミケ行きたかったな

425:名無しさん@ピンキー
09/09/19 08:26:50 ropVbRJ1
保守

426:名無しさん@ピンキー
09/09/24 19:06:06 I05g9qQs
次号表紙は優子ですな

URLリンク(www.comic-valkyrie.com)

427:名無しさん@ピンキー
09/09/24 22:34:44 Ze9auuF6
久々に優子のサービスシーン有りかと期待したら耳が尖ってた・・・

428:名無しさん@ピンキー
09/09/27 14:15:28 lj6FCJS7
漫画版は、そろそろ終わるのか?

429:名無しさん@ピンキー
09/09/27 18:58:23 CSF0sbAU
終わっても次号からヴァリスⅡが始まってくれれば・・・
という儚い希望を持ってるよ。

430:名無しさん@ピンキー
09/09/27 23:45:34 SeSiWZ2m
>>504
あと3~4回で終わりじゃないか?
それだけあれば今まで出てる分と合わせて単行本もう1冊出せるページ数にはなると思う

431:名無しさん@ピンキー
09/09/27 23:56:37 3tebwcgC
コレ以上続くならネタは切れて完全オリジナルになる
ヴァリスXというかアザーサイドというか
もう成年ものにしてしまえばZOL氏も楽じゃろうて

432:ARCH DUKE
09/09/28 00:49:40 Eybukgnp
お待たせしました~。

『3V(ヴァリス・ヴァルキリー・バージョン)』エロパロSS第17章、只今完成いたしました。
本日22:00頃より投下を開始いたしますので、
お手すきの方は連投規制回避のためのご支援を宜しくお願い申し上げます。

なお、今回は、諸事情により、Hシーン少なめでお送りいたします。
ご期待頂いていた方には誠に申し訳ございませんが、
予告していたデルフィナへのハード責めは次章(第18章)に順延となります。
どうかご容赦下さいませ。




433:ARCH DUKE
09/09/28 22:06:06 Eybukgnp
皆様、お待たせしました~。

只今より、『3V(ヴァリス・ヴァルキリー・バージョン)』エロパロSS第17章の投下を開始いたします。
お手すきの方は連投規制回避のためのご支援を宜しくお願い申し上げます。
なお、本章は、コミック本編の第15話後半~第16話及び第17話の一部に対応していますが、
必ずしもコミックに掲載されている順番通りの構成にはなっていませんのでご注意下さい。

それでは、お楽しみ下さい~。





434:ARCH DUKE
09/09/28 22:07:11 Eybukgnp
(1)

――何処とも知れぬ世界。摩天楼の聳え立つ都市の上空。

「ここは・・・・三界の何処でも無さそうだが?」

優子の背中に負ぶさったまま、疑問の台詞を口にするブロンドの女エルフ。
薄手の革鎧越しに伝わってくる体温の温もりに、内心、どきまぎとしながらも、
現実界の少女は懸命に理性を保ちつつ、魔力によって構成された純白の双翼を羽ばたかせ続ける。

「な、なんだか、百年くらい前のアメリカに、タイムスリップしたみたい」

「アメリカ?たしか、現実界の国名の一つだったな。百年くらい前はこんな風だったのか?」

「そ、そうかも・・・・」

興味津々な表情で質問するデルフィナだったが、
押し付けられる、豊かな胸乳に思考を乱された蒼髪の少女は、
顔を真っ赤にして、曖昧な返事を返すのが精一杯だった。
ほんのりと甘い匂いのする、生温かい吐息が耳元をかすめるたび、
<ファンタズム・ジュエリー>のエネルギーの奔流に煽られて、
自慰を見せ合い、唇を重ね、唾液を交換し合った記憶が、脳裏にまざまざと蘇ってくる。



435:ARCH DUKE
09/09/28 22:07:45 Eybukgnp
(2)

(デ、デルフィナさんの胸・・・・背筋に擦れて・・・・気持ち良い・・・・)

しなやかな革製の胸鎧に包まれた、豊満な大人のバスト。
気のせいだろうか、その中心部分がコリコリと固くしこっているように感じられて、
優子は、湧き出してきた生唾を、ゴクリ、と、嚥下した。

(あああッ、だ、だめぇ・・・・ヘンな気分になっちゃうッ!!)

純真な少女の肉体を愛撫し、性感に火をつけようと企てているのは、
金髪エルフの胸のふくらみだけに留まらなかった。
わざとではないにせよ、パートナーの腰が薄布越しに桃尻の表面に押し付けられるたびに、
背筋へのタッチに優るとも劣らないゾクゾク感が生まれて、
括約筋が、キュウウウッ、と、固く収縮し、腰椎の付け根の部分に妖しい感覚が湧き上がってくる。
更に、むっちりとしたフトモモが、白いスカートから伸びる自身のそれに絡みつくように密着してくると、
ショーツの奥に隠された秘密の谷間が、じゅん、という湿った音と共に、じっとりとした蜜に濡れ始めた。

――――と、次の瞬間。



436:ARCH DUKE
09/09/28 22:08:18 Eybukgnp
(3)

「これはこれは、見目麗しき<ヴァリスの戦士>殿」

不意に、横合いから掛けられた言葉に、思わず、心臓が停止しそうになる蒼髪の少女。
半ばパニックに陥りながら振り返ると、
目の前では、オリーブ・グリーンの鱗に覆われた、ヌイグルミのような竜が、
蝙蝠羽根を、パタパタとせわしなく動かしながら飛行していた。

「えっと・・・・ど、どなた?」「ド、ドラゴ・・・・貴様ァッ!!」

次の瞬間、ほぼ同じタイミングで発せられる、二つの科白。
当惑した問いかけと激しい剣幕とが、見事な和音を響かせ合う。
一瞬、顔を見合わせる二人だが、パートナーの気迫に押し負けた優子に代わって、
怒髪天を衝かんばかりの形相のデルフィナが機関銃のような勢いで詰問を開始した。



437:ARCH DUKE
09/09/28 22:08:53 Eybukgnp
(4)

「今までドコで油を売ってたんだ、エロ飢鬼めッ!?」
「やかましい、こっちはこっちで大変だったんだ、乳デカ剣士ッ!!」

目をパチクリさせる夢幻界の<戦士>を無視して、怒鳴り声を張り上げる、エルフとドラゴン。
状況が飲み込めず、唖然としていた優子だが、
しばらくすると、どうやら二人――正確には一人と一匹――とも、
口汚く罵倒し合いながらも、決して本気で相手を傷付けようとしている訳ではない事に気付いた。

(ちょっとだけ似てるかな・・・・あの頃の、わたしたちに)

脳裏に蘇る、懐かしい日々の記憶。
・・・・今にして思えば、以前の麗子は、意地悪で、皮肉屋で、会えば言い争いばかりしていたけれども、
どんなに酷く喧嘩をした時でも、自分の事を心底から嫌ったり、憎んだりはしていなかった筈だ・・・・。

「気をつけろよ、優子。
コイツはドラゴと言ってな、女と見れば尻にかぶりつかずにはいられない変態トカゲだ」
「人聞きの悪い事を言うな。お前だって、つまみ食いはお手の物だろうがッ!?」

ぐっ、と答えに窮するブロンド美女。
たしかに、アイザードと出会って以来、抱かれる男は彼だけと思い定めてきたものの、
反面、同性に対しては見境無しと言って良く、
暗黒界においても現実界においても、陥落させた少女は数知れない。
それどころか、今、傍らにいる蒼髪のパートナーでさえ、
(プライベートな関係においては)獲物の一人と言っても過言では無いだろう。



438:ARCH DUKE
09/09/28 22:09:42 Eybukgnp
(5)

(ま、まあ、たしかに・・・・否定はできないかも・・・・)

ベビー・ドラゴンの、愛くるしい外見とはかけ離れた、あけすけな態度に、
何とも言い難い表情の<ヴァリスの戦士>。
当のデルフィナは、と言えば、さすがに分が悪い、と自覚したらしく、ふてくされて黙り込んでいる。
そして、チビ竜は、してやったり、という笑いを浮べながら、
改めて蒼髪の少女に向き直ると、無遠慮な眼差しでその姿体をねめつけるのだった。

「え、えーと・・・・もしかして、あなたが『導き手』なの?」

黄金色に光り輝く<ヴァリスの鎧>に覆われたカラダの各部、
分けても、美しい胸甲に包まれた形の良いバストラインに向かって、
360度あらゆる角度から舐め回すような視線を送って来るドラゴにいささか閉口気味の優子。
だが、目の前の彼が、竜と呼ぶにはあまりに小さい、ヌイグルミのような愛くるしい容姿とは裏腹に、
強大な風の魔力を内に秘めた術者である事に気付くと、自然とその疑問を口に上らせる。



439:ARCH DUKE
09/09/28 22:10:31 Eybukgnp
(6)

「フッ、さすがは<ヴァリスの戦士>。
脳味噌に回る栄養が全部胸に行っちまった、そこの牛女と違って、察しが良いな。
いかにも、オレ様こそがお前の『導き手』。
優秀な頭脳でお前を勝利に導くよう、アイザード様から命じられている」

精一杯の威厳を込めて言い放つ、ドラゴ。
念のため、まだ黙りこくっているパートナーを振り返ると、
盛大に顔をしかめてはいたものの、別段、その言葉自体を否定するような素振りを見せてはいない。

「フッフッフッ、どうやら、オレ様の偉大さを認める気になったようだな。
良かろう、ならば、『導き手』として案内してやろうッ!!
この世界、サザーランドの中心、ニゼッティーの神殿になッ!!」

「ま、待てッ!!サザーランドにニゼッティーだと!?」

威勢良く宣言するや否や、
チビ竜は蝙蝠羽根に大気を孕み、天空に向かって力強く飛翔していた。
背後でデルフィナが発した驚きの叫びに対しては、
どうでも良い雑音とでも言いたげに無視を決め込んでいる。
そして、それを目にした優子もまた、真っ赤になって悪態をつく女剣士に苦笑を浮べながらも、
背中から伸びた光の翼を羽ばたかせ、異世界の空へと舞い上がるのだった――。



440:ARCH DUKE
09/09/28 22:11:15 Eybukgnp
(7)

――優子たちが飛び去った少し後。彼女達がいた隣の都市区画。超高層ビルの屋上。

「どこなのよ、ここはッ!?」

肩口で小奇麗に切り揃えられた自慢の赤毛を打ち揺らし、
かたわらに寄り添う巨大なドラゴンに向かって、声を荒らげる漆黒の<戦士>――桐島麗子。
だが、金色の鱗に覆われた双頭の雷竜は、さてな・・・・、と首をかしげ、
物珍しそうに周囲の風景を眺めやるばかりで、彼女の質問に対してすぐには答えを寄越さなかった。

「現実界を離れてしばらくしたところで、
<ファンタズム・ジュエリー>が何かに強烈な反応を示したのだよ。
どうやら、そのせいで引っ張られてきてしまったらしい」



441:ARCH DUKE
09/09/28 22:12:00 Eybukgnp
(8)

「じゃなくてッ!!私が知りたいのは、今いる場所は何処なのか、って事なのッ!!
ログレスの命令無視して、あちこちほっつき歩いている、アンタなら分かるでしょッ!!」

「いや、悪いが、本当に初めて見る景色だよ。
何処と無く、現実界に似ているような気もするが、空気の匂いは全く違うな」

呟きながら、彼――暗黒五邪神最後の将であり、
一時は暗黒界を手中に収めかけていた時期さえある老将、雷邪ヴォルデスは、大きく翼を広げた。
尻尾の先まで含めると百メートルは優にありそうな巨体をゆっくりと旋回させつつ、大気の感触を確かめる。

「へえ、アンタにも、知らない世界があるんだ?」

やや皮肉っぽい口調の、<ヴェカンタの戦士>。
ログレス直属の暗黒五邪神とはいえ、
目の前のドラゴンは、今まで、病と称して自分の領地に引き篭ったまま、
夢幻界への出兵にも優子の討伐にも殆ど協力する姿勢を示していなかった。
そして、ようやく重い腰を上げたかと思えば、
あのクソ生意気な子竜と少し戦っただけで、あっさりと現実界を後にし、
挙句の果てに、こんな訳の分からない世界に迷い込んでしまったのである。



442:ARCH DUKE
09/09/28 22:12:42 Eybukgnp
(9)

(ったく、アンタがログレスの命令をサボタージュするのは勝手だけど、
なんで、私まで付き合わなくちゃならないのよッ!?)

赤毛の少女がふてくされるのも無理はないだろう。
一方、怠け者の暗黒五邪神はと言えば、金色の鱗に覆われた双頭を巡らせて下界を見下ろすと、
困ったような表情で舌打ちを漏らしていた。

「いかんな、騒ぎになりかけている」

何事か、と、視線を投げかければ、
数十メートル下の路上に群れ集った人々が、こちらを指差しながら口々に何かを叫んでいた。
無論、今いる場所からでは、何を言っているのか?聞き取れる筈も無かったが、
状況から考えて、おおよその意味は彼女にも想像できた。



443:ARCH DUKE
09/09/28 22:13:22 Eybukgnp
(10)

「フン、まぁ、仕方が無いでしょ。絵ヅラがまんま怪獣映画なんだから」
「あんまり、年寄りを傷付けないでくれないか」

情け容赦の無い指摘にすっかり気落ちしたらしく、金鱗のドラゴンは、
元気の無い声でボソボソと変身魔法の呪文を詠唱し、人間の体へと変化する。
・・・・だが、魔術によって変身したヴォルデスを一目見た麗子は、
更に辛辣さを増した感想を漏らさずにはいられなかった。

「アンタの趣味をどうこう言う気は無いけど、
どうせなら、もっと若い姿になりたい、とか考えないの?」

口を尖らせる<ヴェカンタの戦士>の前に現れたのは、
古代のギリシャ彫刻を連想させる、簡素なトーガを纏った壮年の男性。
取り立ててダンディという訳でもなく、むしろ、野暮ったいと言っても良いほどの顔立ちと、
中肉中背、下腹の出っ張りが気になる、典型的な中年男性の体型は、率直に言って威厳もへったくれも無く、
一時は暗黒界最強と号された程の魔竜の化身にはとても思えなかった。



444:ARCH DUKE
09/09/28 22:14:08 Eybukgnp
(11)

「もう、見栄を張るようなトシでもないからな。そんな事より、そろそろ行くぞ」

だが、冴えない中年男に変身したヴォルデスは、
先程とは打って変わって、まるで外見に合わせて精神もオヤジ化したかの如く、
イヤミなど何処吹く風とばかりに、スタスタと歩き始めてしまう。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。一体、何処に行く気なのッ!?」

「さてな。行く先はわしにも分からんよ。
とにかく、石の呼びかけに応じるしかないだろう」

「・・・・・・・・」

唖然として二の句の告げられない麗子。
飄々とした老竜の物言いには、
アイザードのような油断のならない雰囲気も、ベノンのような陰険さも感じられないが、
腹の底が読めないという点では、今は亡き同僚たちにも引けを取らなかった。
いや、むしろ、二人のように露骨に警戒感を生じさせたりはしない分だけ、
老獪とも言えるし、あるいは、巧妙という言い方さえ出来るかもしれない。



445:ARCH DUKE
09/09/28 22:15:02 Eybukgnp
(12)

「・・・・ここが、ニゼッティーの神殿?」

ドラゴの先導で降り立った先は、何の変哲も無いオフィスビルの屋上だった。
――否、よくよく眺めれば、殺風景な雨ざらしのコンクリートに囲まれて、
物置小屋のような小さな建物が、ぽつん、と建っており、
入り口らしき扉の前に、喪服のような黒衣を纏った老人が静かに佇立している。

「ようこそ、優子さん。
現役の<戦士>がこの世界にやってきたのは初めてだよ」

見れば、自分よりも頭一つ分背の低い、小柄な老人である。
年齢は、外見から判断すれば、七十過ぎ、といったところだろうか?
頭頂部はすっかり禿げ上がり、生え際に残っている幾許かの頭髪も、髭や眉毛と同様、真っ白に変じている。
もっとも、上体をやや前屈みにして、手にした杖に体重を預けている姿にも関わらず、
不思議と、老いさらばえた、という印象は受けなかったが。



446:ARCH DUKE
09/09/28 22:15:35 Eybukgnp
(13)

「あなたは?」

「私の名はニゼッティー、サザーランドを統括する者だ」

穏やかな笑みを浮かべながら自己紹介する黒衣の賢人。
額に刻まれた深い皺と顔の下半分を埋め尽くしている真っ白な髭の間で、
理知的な光を湛えた琥珀色の瞳が少女を静かに見つめている。

(この人は一体?さっき、デルフィナさんはひどく驚いていたようだったけど?)

先程のドラゴンは、自分こそがアイザードに選ばれた<導き手>だと宣言した。
ならば、彼が引き合わせようとしている老人は、一体何者なのだろうか?
<導き手>の役割が、<ヴァリスの戦士>である自分をこの人物の許に案内するものだとしたら、
ニゼッティーと名乗ったこの男は、何を知っており、何を語ってくれるのか・・・・?

優子が問いを発しようとした、その刹那――!!!!



447:ARCH DUKE
09/09/28 22:16:07 Eybukgnp
(14)

「うぐッ・・・・あぐぐぅッ!?」

突如、背後で発せられる、苦悶のうめき。
振り返ると、女エルフが左腕を押さえて蹲り、激痛に表情を歪めている。
慌てて駆け寄った優子の目に飛び込んできたのは、
一度は完全に塞がっていた筈の傷口が、再び真っ黒に黒ずみ、腫れ上がっている様子・・・・。

「デ、デルフィナさんッ!?」

「し、心配するな・・・・」

気丈にかぶりを振る金髪の剣士だったが、
顔面はみるみるうちに血の気を失い、蒼白く強張っていく。
持ち前の再生能力だけでは不足だからと、
<ヴァリスの戦士>の生体エネルギーを拝借してまで治癒を促進し、
実際に、かなりの程度まで状態を改善出来た、と思っていたのだが、
それでもまだ、負傷によるダメージ全てを帳消しする事は叶わなかったというのだろうか?



448:ARCH DUKE
09/09/28 22:17:06 Eybukgnp
(15)

「むぅ、コイツはちょっと難儀だな」

頭上から状況を観察していたドラゴが、
深刻そうな口調で呟きつつ、背中の翼を変化させた腕で、彼女の身体を抱え上げる。

「ベノンとの戦いに次元移動・・・・ちっとばかしムリを重ね過ぎたんだな。
ちょっと休ませてやらないと、後々厄介な事にもなりかねん。
優子、悪いが、オレ達は中座させてもらうぜ」

――余計なお世話だ、さっさと降ろせ、と、苦しみながらも口だけは達者なデルフィナ。
無論、ベビー・ドラゴンは完璧に無視すると、何処かへと飛び去っていく。
心配そうに見送るしかない蒼髪の少女を眺めやり、
とにかく、彼女を落ち着かせるのが先決だと判断したのだろう、
白髭の老賢者は、軽く咳払いすると、囁くように話しかけた。

「優子さん、サザーランドには、アイザード卿の肝入りで作られた研究施設が幾つかありましてな、
あの子竜は、その何処かに向かったのではないでしょうか?」



449:ARCH DUKE
09/09/28 22:17:42 Eybukgnp
(16)

「アイザードが!?」

驚きの声に、――然様、と、深く頷き返すニゼッティー。
過去の記憶を思い出しているのか、いささか遠い目をしながら、静かに語り始める。

「・・・・サザーランドとアイザード卿との縁は浅からぬものがありましてな。
あの御方は、まだ夢幻界にいらっしゃった頃から、ここで様々な計画を立てられ、実行されて参りました。
暗黒界に出奔されてからも、基本的にその関係は変わらず、
この世界の存在を秘匿して下さった上に、密かに援助までして頂いていたのです。
おかげで、我々はヴェカンティの脅威に曝される事も無く・・・・」

・・・・と、そこまで話したところで、唐突に口を閉じる黒衣の賢人。
どうしたの?と問いかけようとした優子もまた、すぐに異変に気付くと、
<ヴァリスの剣>をいつでも実体化できるように身構えつつ、周囲に視線を走らせる。



450:ARCH DUKE
09/09/28 22:18:17 Eybukgnp
(17)

――次の瞬間。

「そのお話、わたくしにも詳しく聞かせて頂きましょう!」

天空から響き渡る、鈴を振るような涼しげな美声。
言葉の発せられた方角を見上げると、
宝珠を抱いた竜の彫刻が施された杖を構えた、年若い魔道士が、
天空に穿たれた次元の裂け目から姿を現わし、二人の前へと舞い降りようとしていた。

年の頃は、優子と同じぐらいだろうか?
少し小柄でほっそりとした体つきの少女である。
白磁の人形のように白く透き通った肌にまだ幾分幼さの残る顔立ち。
理知的な輝きを湛えた薄青色の瞳には、
愛らしさと共に何処か威厳めいた存在感が宿っている。
少し青みがかった銀髪を、シニヨンとウェーブを組み合わせた独特の髪型に結い上げ、
清らかな光沢を帯びた、白い長衣を身に纏うその姿は、蒼髪の<戦士>にある人物を連想させた。



451:ARCH DUKE
09/09/28 22:20:03 Eybukgnp
(18)

「・・・・ヴァルナ様・・・・」

傍らに佇んでいたニゼッティーが、小さく呟きつつ、姿勢を正す。
トン、と、軽やかなステップを踏んで、地上へと降り立った銀髪の少女は、
老賢人を軽く一瞥すると、ごく自然な動作で優子に向き直り、静かに口を開いた。

「ヴァルナと申します。母であるヴァリアの名代として参りました」

「ええッ!?ヴァリア・・・・さま・・・・の!?」

驚愕に駆られ、大きく両目を見開く<ヴァリスの戦士>。
身に纏った雰囲気から、もしかしたら夢幻界の住人かもしれない、と予感してはいたものの、
さすがに、目の前の、自分と殆ど変わらない背格好の少女が、
あの、神々しいまでの威厳と力強さに満ち溢れた夢幻界の女王の娘だとまでは思い至らず、
大いに面食らった、という体である。

・・・・だが、そう言われて、改めて面立ちを確かめてみれば、
たしかに、眼前の少女には、ヴァニティを統べる偉大な支配者の面影と、
そして、彼女から受け継いだ力の片鱗を看て取れる。
勿論、ヴァリア自身ほどの圧倒的な迫力は感じないが、
少なくとも、彼女の立ち居振る舞いは、支配する事に慣れた者としての洗練に満ち溢れており、
また、その身に宿った魔力は、質量共に並みの魔物や魔道士を遥かに凌駕するレベルのものだった。



452:ARCH DUKE
09/09/28 22:20:35 Eybukgnp
(19)

「ええ、その通りです、優子。
やむを得なかったとはいえ、今まであなた一人だけに戦いを強いてきたのを、
母もわたくしも、ずっと気に病んでいました」

沈痛そうな面持ちで頭を下げる、夢幻界のプリンセス。
単なる儀礼やおためごかしなどではない、心底からの謝罪に、優子は再び面食らい、
・・・・そして、直感的に、この少女を自分の許に送ってきたヴァリアの意図に気付いて、複雑な心境に陥った。

(・・・・つまり、わたしがアイザードの影響を強く受け過ぎた、と危惧している訳よね・・・・)

はたして、ヴァルナと名乗った夢幻界の魔道士は、
続く言葉で、今は亡き元夢幻界人の青年への疑念をはっきりと指摘する。

――曰く、
アイザードは<ファンタズム・ジュエリー>の基本構造を解読し、
限定的にとは言え、自分に都合よく作り変える術すら発見していた。
アイザード自身は滅んだとはいえ、
彼が<ジュエリー>にどんな改変を施したのか?は、未だ明らかではない。
そんな危険な状況のまま、<ヴァリスの戦士>に一人で戦いを続けさせる事を、
母は大変不安に感じており、わたくしに此処へ向かうよう指示したのだ、と・・・・。



453:ARCH DUKE
09/09/28 22:22:12 Eybukgnp
(20)

「ふむ、成る程、それで貴方様がサザーランドに・・・・」

沈黙を守っていた老賢者が、呟くように漏らした一言に、
夢幻界の王女の双眸が、ほんの僅かな瞬間だけだが、キッ、と、厳しい視線を放つ。

「当然でしょう。
この世界は、事実上アイザードの統治下にあったようなもの。
あの男の配下やこのニゼッティーの話を鵜呑みにして動けば、罠が待ち受けていないとも限りません」

咄嗟に、反論しようとする優子。
だが、(あたかも彼女の言葉を遮るかの如く)黒衣の老爺が口を開く方が、一瞬だけ、早かった。

「ヴァリア様やヴァルナ様のお考えは無理もないもの。
されど、この地下に納められているものをご覧になれば、疑念も晴れましょう」



454:ARCH DUKE
09/09/28 22:22:52 Eybukgnp
(21)

「それは、一体・・・・?」

発せられた王女の問いには答えず、
ニゼッティーは、背後にある物置小屋のドアに手をかざし、何事かを呟いた。
途端に、目の前の、何の変哲も無い、殺風景なビルの屋上が一変し、
重厚な大理石の列柱の連なる荘厳な建物――神殿へと姿を変える。

「こ、これは!?」

「どうぞ、お入り下さい。地下にご案内いたしましょう。
アイザード卿のご遺命にございますれば、どうか」

言い終えるなり、異世界の老人は、蒼髪の少女に向かって深々と頭を下げた。
ヴァルナの方は言えば、判断に窮したらしく、
――さしずめ、彼の説明をただちに信用は出来ないにせよ、
100パーセントの自信を持って虚言だと言い切れるだけの確証も無い、といった所だろうか――
困惑しきった眼差しを<ヴァリスの戦士>に投げかけている。

二人のやりとりを眺めながら、静かに考えを巡らせる優子。
・・・・もっとも、心の内は、すでに九割方、定まっていたのだが。



455:ARCH DUKE
09/09/28 22:23:30 Eybukgnp
(22)

「いいわ、行きましょう」

拍子抜けするくらいあっさりとした口調で、承諾の返事を行う優子。
あまりにも明快なその態度に、
ヴァルナは勿論、ニゼッティーまでもが、意外そうな表情を浮かべ、少女を凝視する。

「虎穴に入らずば虎児を得ず、よ。
大丈夫、今までだって、必要なものはそうやって手に入れてきたんだから」

内心、我ながら凄い事を言ってるわね、と苦笑を漏らす、蒼髪の<戦士>。
決して嘘をついている訳ではないとはいえ、
この局面で今のような台詞を用いるのは、本心を偽っている、と非難されても仕方ない行為だろう。
――だが、彼女は、反論しようとして果たせないまま、
口をもごもごさせるばかりの夢幻界の王女に対しては申し訳ないと感じつつも、
あくまで自分の選び取った道を押し通す腹積もりだった。

(わたしは、アイザードを信じる。
たとえ、あの人の語った言葉の全てが真実ではないとしても、それでも、わたしは・・・・)



456:ARCH DUKE
09/09/28 22:24:12 Eybukgnp
(23)

「では、参るといたしましょう」

蒼髪の少女をそっと一瞥し、白髭に覆われた口元に小さく笑みを含ませた老人は、
慇懃な態度で、二人の少女を差し招いた。
小さく頷いて、<ヴァリスの戦士>が、列柱に囲まれた回廊に歩みを進めると、
渋々とではあったが、夢幻界の王女もまた、彼女の後に続いて神殿の奥へと足を踏み入れる。

「どうぞ、そのまま奥にお進み下され。
突き当たりに、地下への乗り物が用意してございます」

彼の言葉どおり、しばらく進むと、回廊は途切れ、
代わりに、古風な飾り格子によって囲われた昇降機が姿を現した。
優子、ヴァルナ、ニゼッティーの順に乗り込むと、
(魔法なのか、あるいは、技術なのか、は判然としなかったが)格子戸がガラガラと閉まり、
三人を乗せた昇降機は、地の底へと続く薄暗い隧道の中を、
微かな軋ばみ音と共に、ゆっくりと下降し始めたのだった――。



457:ARCH DUKE
09/09/28 22:25:30 Eybukgnp
(24)

――サザーランド。とある研究所の一室。

「こりゃあ・・・・ちょっとどころじゃない、かなり不味い状況だぞ」

顕微鏡を覗き込んでいたドラゴが、深刻な口調で呟く。

「やはり、良くないのか?」

ベッドに横たわったまま、訊ねかけるデルフィナ。
こうしている間にも、傷が広がり、痛みが増しているのか、
エルフの表情は険しさを増す一方だった。

「ベノンの炎に含まれていた瘴気が、腕の組織を犯してるんだ。
優子の生体エネルギーを吸収して、一時的に進行が止まっていたんだろうが、
今のままだと、ほぼ確実に、腕一本では済まなくなるぞ」



458:ARCH DUKE
09/09/28 22:26:32 Eybukgnp
(25)

「糞ッ!!オカマ野郎め、死んだ後まで厄介事をッ!!」

無念そうに呻く女剣士。
すでに、どす黒い腫れは左腕を覆い尽くさんばかりに広がり、
ゴマ粒大の小さな斑紋は、肩口を越えて胸元付近にまで進出していた。

「さすがは暗黒五邪神サマ、ってところだな。
何とかしてやりたいが、オレは医者じゃ無いし、
こんな進行の速さじゃあ、医者に診せた所でおいそれと治せるような代物じゃない・・・・」

一体、どうしたものか、と、考え込むベビー・ドラゴン。
単なる負傷であれば、壊死しかけた腕を切断して、
機械制御の義手を取り付けるなり、魔術で新しい腕を生やすなりすれば良いだけだが、
おそらくは、もはや身体の隅々にまで行き渡っているであろう瘴気が相手では、
そんな方法では一時しのぎにもならないだろう。

一方の金髪美女は、右腕一本だけで何とか体を起こすと、
ゼイゼイと苦しげな息の下から、かろうじて言葉を絞り出した。

「まだ、死ぬ訳にはいかん・・・・何か方法は無いのか?」



459:ARCH DUKE
09/09/28 22:27:06 Eybukgnp
(26)

「フン、殊勝なこったな。
お前のその態度は、ご主人様の言い付けだからか?
それとも、例の<戦士>殿に情が移っちまったからなのか?」

「・・・・・・・・」

無言のまま、すがりつくような眼差しを向ける女剣士の姿に、
おいおい、図星かよ、と、小さく肩を竦める緑色の子竜。
かつてのデルフィナだったならば、こんな情けない顔を曝すくらいならば、
むしろ、従容として死を受け容れる方を選んだ筈だった。

(って事は・・・・本当に本気なのか、大馬鹿エルフめ)

目の前の同志を、やや驚きを以って眺めやりながら、ドラゴは胸の奥でため息をついた。
主の命令を果たすまでは死ねない、という想いは変わらず持ち続けているとしても、
もはや、彼女の心の中では、以前ほどの価値を持ち得なくなっているのは間違いない。
・・・・おそらく、今となっては、現実界の少女こそが最大の求心力の源であって、
彼女への感情の強さは、すでに、アイザードに対する忠誠心すら上回っているのだろう。



460:ARCH DUKE
09/09/28 22:27:41 Eybukgnp
(27)

「そこまで言うんだったら、方法が無い訳じゃないが」

やや曖昧な言い方をしつつ、
探るような眼差しをデルフィナの隻眼に注ぐドラゴ。
女剣士の方は、間髪を入れずに聞き返して来る。

「どんな方法だ!?
・・・・いや、何だって構わない。今一度、戦えるようになるのならッ!!」

ふう、と大きくため息をついて、風のドラゴンは研究机の抽斗を開けた。
中にぎっしりと詰まっていた薬瓶をガサゴソと掻き分けて、
目的の物――微かに鈍い光沢を帯びた液体の入ったアンプル――を取り出し、
期待と不安を交互に浮かべているエルフの前に、トン、と置く。

「<ヴァリス・オア>だ。最終処理をする直前のまだ安定していない状態のヤツだがな」



461:ARCH DUKE
09/09/28 22:28:14 Eybukgnp
(28)

「どうして、そんなものがここに?」

我知らず、声を上擦らせるデルフィナ。
心臓が、ドクン、と大きく跳ね上がり、
血の気を失って強張っていた顔面に、束の間、赤みが戻る。

<ヴァリス・オア>。
<ヴァリスの剣>をはじめとする、<戦士>の装備の原材料となる魔道物質で、
これを用いて作られる武器や甲冑は、極めて軽量かつ頑強であるだけでなく、
特殊な精神感応特性を有し、主の精神力と心の状態に応じて様々な能力を発揮する、とされている。
夢幻界の秘境と呼ばれる場所にのみ産出し、採掘量も極僅かであるばかりか、
加工の工程は夢幻界の最高機密に指定され、文字通り、門外不出となっていた筈だった。

「・・・・実際、アイザード様も、夢幻界から持ち出せたのは不純物の大量に混じった原石だけだった。
何とかして精製しようと、色々手を尽くしたみたいなんだが、
結局、優子から奪った<ファンタズム・ジュエリー>の力を利用するまでは、
どんな方法を試しても上手くいかなかった、って話だったな」



462:ARCH DUKE
09/09/28 22:28:54 Eybukgnp
(29)

「さて、コイツの使い方だがな、
早い話、触媒となる溶剤と混ぜて、お前の体組織に直接吸着させるって寸法だ。
上手く行けば、体内の毒素や瘴気を分解するぐらい、造作も無いだろう」

――もっとも・・・・、と、ドラゴは、一瞬、言い澱んだ。
慎重に言葉を選びながら、話を再開したものの、
その視線は、時間と共に下へ下へと降下していく。

「失敗した場合は、正直、何が起きるか見当もつかん。
そもそも、薬として考えるなら、かなりの劇薬と言わなくちゃならん代物だしな。
仮に耐えられたとしても、カラダが拒絶反応を起こすかもしれん。
いくら、お前の肉体が、アイザード様直々に、遺伝子レベルから再調整を施されたものだからって、
<ヴァリスの戦士>とは違っているからな、適合しない可能性も高い。それに・・・・」



463:ARCH DUKE
09/09/28 22:30:52 Eybukgnp
(30)

「もういいッ!!」

うんざりした口調で、金髪美女は子竜の話を遮った。
顔を真っ赤にして、一気にまくし立てる

「どのみち、私の気持ちは変わらん。
足手まといになるぐらいなら、死んだ方がマシだ。
優子が戦っている傍で、指をくわえて見ている事しか出来なくなるのなら・・・・!!」

(やっぱり、そっちが本音かよ)

金髪美女には聞こえないように、小さくため息をつくベビー・ドラゴン。
興奮したせいだろう、体に負担がかかって、苦しげに喘ぐ女エルフと、
掌の中のアンプルに入った薬液とを交互に見比べながら、苦み走った笑みを浮べる。

「分かったよ、もう止めろと言わねぇ。
だがな、<ヴァリス・オア>を体内に入れる施術は、かなりキツイぞ?」



464:ARCH DUKE
09/09/28 22:31:25 Eybukgnp
(31)

「そんな事は百も承知だ」

即答で答える女剣士。
だが、相方は、今度は、フン、と小さく鼻を鳴らしただけで、
研究室の隅の覆いを掛けられた装置・・・・人間一人を漬け込めるサイズの培養槽へと歩み寄った。

「悪いが、その答えは、コイツを見せ終わるまで聞かなかった事にさせて貰うぜ。
おっと、文句は無しだ。論より証拠、とにかく、これを先に見てもらう」

そう言って、よっこらしょ、と、薄汚れたカバーを取り外すベビー・ドラゴン。
途端に、布地の上に降り積もっていた埃が盛大に舞い散り、
白い砂嵐となって、ベッドの上のデルフィナへと吹き寄せてきた。

「なッ!?一体、何だッ!?」

時ならぬ汚物の襲来に、思わず顔を背け、悪態をつく金髪エルフ。
だが、再び顔を上げた瞬間、彼女の舌はピタリと動きを止め、
血の気を失った表情は、恐怖と嫌悪によって真っ青に凍りつくのだった。



465:ARCH DUKE
09/09/28 22:32:00 Eybukgnp
(32)

「・・・・・・・・」

「な?だから、キツイって言っただろ?」

愕然として、眼前の培養槽
――否、正確には、培養液の中でのたくっている数匹の生物に釘付けになった女剣士に向かって、
少し皮肉を込めた調子で、ドラゴが呟く。

直径約2メートル、ほぼ完全な球形をした強化ガラス製の培養槽は、
十数種類の薬剤を溶かし込んだ、紫色の溶液によって満たされ、
底には、大きいものでは体長2、3メートルにも及ぶ、触手生物がとぐろを巻いていた。

脈を打つ赤黒い血管を連想させる、不気味な肌面。
時折り、まるで、不整脈のように、びくんッ、びくんッ、と不規則に収縮しているのが気色悪い。
サイズは、下水管のように太く長いものから、小ぶりのウナギ程度のものまでまちまちだが、
先端部分だけは同じ造作で、キザキザの三角歯が並んだ口が異様に大きく裂けていた。
大きさ以上にバラバラなのは、竿肌を彩る体色で、
濁った血のような赤錆色のものから、死人のように蒼褪めた色合いのもの、
熱帯のジャングルに咲く食虫花の如くけばけばしいものに、
斑紋や網目模様を纏ったものまで、個体によって完全に異なり、まるで統一感が無い。



466:ARCH DUKE
09/09/28 22:32:37 Eybukgnp
(33)

「こ、こいつらが、触媒、なのか?」

やっとの思いで言葉を搾り出すデルフィナ。
声音は、先刻までとは打って変わって弱々しく、恐怖に震え慄いていたが、それも致し方ないだろう。
強化ガラスの向こう側で蠢いている極彩色の生物の群れは、
暗黒界において、拷問や処刑の道具としてよく用いられる、危険極まりないタイプのものだった。

「ああ、早く言えばな。
何しろ、コイツらの身体は丈夫に出来ているから、<ヴァリス・オア>だって平気で取り込んじまう。
前にも言った通り、<ヴァリス・オア>の劇薬成分は強烈だからな、
一旦、コイツらに吸収させた後で、お前のカラダの中に吐き出させる必要があるんだ」

――人体に直接投与する場合に比べれば、遥かに安全性は高い筈だ、と、胸を張って答えた子竜を、
隻眼の美女は鋭い怒りを込めて睨み付けた。
たしかに、<ヴァリス・オア>の毒性は弱まるかもしれないが、
凶暴さは折り紙つきの触手生物と同居する危険性を考えれば、
まともな神経の持ち主ならば、安全性が向上する、などとは口が裂けても言えない筈である。



467:ARCH DUKE
09/09/28 22:33:34 Eybukgnp
(34)

「い、一応、人間には、無闇に襲い掛かったりしないように、色々と弄ってある。
少なくとも、いきなり噛み付いたり、食いちぎったりはしない筈だ・・・・多分、だけどな・・・・」

言い訳を並べつつ、冷や汗を浮べるドラゴ。
チッ、と鋭く舌打ちを打ち鳴らしたデルフイナは、
水槽の中で蠢く、目も耳も鼻も無いバケモノに、改めて嫌悪に満ちた眼差しを注ぐ。

「早い話が、肉体を痛めつけるのではなく、精神を嬲り尽くす用途のために、
遺伝子レベルから『改良』を加えて生まれた品種、って訳だな?」

女剣士の口調は幾重にも苦々しかった。
無論、彼女とて、暗黒界に生を享け、<戦士>として戦い抜いてきた身であり、
捕虜や罪人、とりわけ、女性のそれに口を割らせるための手段として、
この種の生物の使用が極めて効果的である事は深く知悉していた。
そして、そのような手法を用いていたという点に限っては、
忠誠を誓った主君であり、夜毎に互いを求め合った情人でもあった、夢幻界出身の青年魔道士も、
ベノンのような暗黒界の大貴族たちと基本的に何ら変るものではなかった、という事実も・・・・。



468:ARCH DUKE
09/09/28 22:34:07 Eybukgnp
(35)

(そうだ・・・・思い出したぞ)

あれは、アイザードの配下となって間もない頃だった。
ある夜、任務を終えて、主君の許に帰任の報告に向かおうとすると、
地下の研究室――元夢幻界人の魔道士のお気に入りの場所だった――から明かりが漏れており、
扉の向こうから、にちゅッ、にちゅッ、という粘ついた音と、微かな悲鳴が聞こえてきた。

扉の隙間から室内を覗くと、セラミック製の手術台の上に、
全裸の少女・・・・おそらく、主の魔道実験の産物たるホムンクルスの一人が横たえられ、
カラダに、全長数メートルの、タコとクラゲとイソギンチャクが融合したような怪物が巻き付いていた。
よく見ると、少女の手足は拘束具によって手術台に固定されており、
傍らでは、記録係とおぼしき、羽根つき美女が一人、無機質な眼差しを湛えて、
(DNAの塩基配列が一つか二つずれているだけの)自らの血族が、
『タスケテ・・・・タスケテ・・・・』と、たどたどしい言葉で救いを求めつつ、陵辱される様を観察している。



469:ARCH DUKE
09/09/28 22:34:39 Eybukgnp
(36)

(アイザード様は、いらっしゃらないのか?)

重要で、なおかつ、自身の知的好奇心を満足させるに足るもの、と判断した実験であれば、
青年魔道士が研究室に篭り切りになって、徹夜で結果を分析し続けるのは珍しくはなかった。
逆に言えば、彼自身が立ち会わず、担当の記録者に任せ切りにしている、という実験は、
別段、重要でもなく、興味を惹かれる対象でも無い、という訳である。

(ならば、長居は無用だな)

一瞬ののち、そう判断した自分は、
哀れな羽根つき少女にも、触手生物にも、関心を失って、立ち去った筈
――憶えているのは、それが全てだった。

この後、彼女の運命については知る由もなかったし、
ましてや、あの化け物に関わりを持ちたいなどという考えが浮かぶ事など決してなかった。
当時は、他にやらねばならない事や関心を持たねばならない事が山積していたし、
何より、愛しい主以外は全く眼中に無い、と言い切っても過言では無い状態だったのだから・・・・。



470:ARCH DUKE
09/09/28 22:35:13 Eybukgnp
(37)

(――今になって、こういった形で思い出す羽目になるとは・・・・)

唇の端に浮かぶ、自嘲気味の笑い。
拷問に直接関与してきた訳ではないにせよ、
危険極まりない生物と知りつつ、必要悪として黙認してきた自分が、
放っておけば全身を蝕み、やがては死に至るであろう、不治の傷を癒すためにとはいえ、
あのおぞましい雁首を自らの膣口に受け入れる事になろうとは、運命の皮肉としか言いようが無い。

「や、やっぱり、やめておくか?
じっくりと腰を落ち着けて探せば、別の治療法が見付かるかも・・・・」

「そんな時間が何処にあるというんだ?」

にべもなく言い放つや否や、ブロンドの女剣士のとった行動は素早かった。
ベビー・ドラゴンに冷やかな一瞥をくれて黙り込ませると、
シーツを跳ね上げ、よろめきつつも寝台から床に降り立つ。
・・・・そして、半ば這うような足取りながらも、何とか培養槽に歩み寄ると、
分厚いガラス越しに、醜悪極まりない人造生物を、キッ、と睨み付けた。



471:ARCH DUKE
09/09/28 22:35:56 Eybukgnp
(38)

「言った筈だ。足手まといになるぐらいなら、死んだ方がマシだ、と。
覚悟ならとうに固まっている・・・・さっさと始めろッ!!」

おぞましさに全身を震わせながらも、有無を言わせぬ口調で言い放つ、金髪エルフ。
弾かれたように立ち上がったドラゴが、
水槽の上部へと飛び付くと、薬剤の注入口からアンプルの中身を流し込む。
途端に、<ヴァリス・オア>の毒性に当てられて、触手の動きが激しさを増し、
まるで強いアルコールの中へと投じられた泥鰌の如く、ビチビチと跳ね回り始めた。

(ううッ!!な、なんて、おぞましいッ!!)

覚悟はしていたものの、常人ならばとても正視など出来ない凄惨な光景に打ちのめされる女剣士。
今から、この逃げる場所とて無い悪魔の大釜に、一糸纏わぬ裸体を浸して、
狂ったようにのた打ち回る化け物の愛撫に晒されるのだ、と思うと、
歯の根も合わぬほどの恐怖が押し寄せてきて、思考が凍りつき、何も考えられなくなってしまう。
・・・・否、そればかりではく、獲物を徹底的に責め立て、嬲り抜くためだけに生を享けた彼らは、
口腔、膣穴、肛門、尿道・・・・ありとあらゆる穴から体内へと侵入し、
おぞましい体液を所嫌わず吐き出して、獲物の肉体を白濁に染めていくに違いない・・・・。



472:ARCH DUKE
09/09/28 22:36:32 Eybukgnp
(39)

(だ、だめだッ!!これしきで音を上げるようではッ!!
優子のためには堪えるしかない・・・・とにかく、今は堪え抜かなくてはッ!!)

最愛の少女を脳裏に思い浮かべ、消え入りそうになる勇気を必死に振り絞る隻眼の剣士。
だが、極彩色の触手生物は、彼女の苦闘を嘲笑うかのように、水槽の中を暴れ回り、
時折、ぞっとするような色合いの体液を吐き出しては、また狂気のダンスに打ち興じていた。
目にしているだけで理性が掻き乱されるのだろう、
デルフィナは死人同然の面持ちで、唇の端から胃液の糸を垂らしている。
ドラゴの方はと言えば、とっくの昔に腰を抜かして、部屋の隅で情けなくガタガタと震え慄いていた。

・・・・だが、無論、本当の地獄の幕開けは、
彼らが<ヴァリス・オア>の成分を吸収し終え、
吐き気を催させる水中の舞踏を手仕舞いにしたその時である。
美しきエルフの乙女が、無事、悪魔の試練を乗り越える事が出来るのか?
それとも、暗黒界の魔生物のもたらす禁断の悦楽の前に、永遠の狂気へと堕ちてしまうのか?
未来を予測出来得る者は、三界には一人として存在していなかった。

――そう、三界のうちに存在している者の中には。



473:ARCH DUKE
09/09/28 22:37:05 Eybukgnp
(40)

――因果地平の彼方。世界の何処にも存在しない空間。

『・・・・どうやら、帰還に向けての準備は整いつつあるようだな・・・・』

影・・・・いや、黒っぽい靄のような、と形容すべきだろうか?
もはや、人間としての輪郭を留めていない、その不浄な存在は、
しかし、三界に生きとし生ける、どんな人間にも不可能な執念深さで、
仮初めの生にしがみ付き、安らぎに満ちた死への誘いを拒否し続けていた。

『<ヴァリス・オア>・・・・死せる魂魄と生ける肉体を繋ぎ止める霊薬の滴。
我が肉体を不滅のものとする事は叶わなかったが・・・・』

おそらくは笑っているのだろう、顔にあたる部分がユラユラと揺れていた。
幽鬼にも及ばない、このような惨めな有様と成り果ててなお、
彼は、生前の、シニカルな性格を留め、歪んだユーモアを愛しているらしい。

『我が愛しき従者・・・・未完成なる<戦士>の魂を、お前に捧げよう。
そして、彼女の肉体は、我が魂魄を受け容れたとき、完成された器として再び用いられよう・・・・。
全ては我が予測通りに進行している・・・・些かも、齟齬は無い・・・・』



――――TO BE CONTINUED.




474:ARCH DUKE
09/09/28 22:40:08 Eybukgnp
以上、第17章をお送りいたしました。
お楽しみ頂けたのであれば、幸いに存じます。

なお、お陰さまで、今回も連投規制に引っ掛かる事無く、
順調に投下作業を終える事が出来ました。
ご支援頂いた方に感謝を申し上げます。

475:ARCH DUKE
09/09/28 22:54:58 Eybukgnp
なお、次回ですが、、『3V(ヴァリス・ヴァルキリー・バージョン)』は一回お休みとさせて頂き、
不定期連載SSの『戦士集合!』の第4章を発表したい、と考えています。

まだスレのレス数・残り容量共にかなり余裕があり、
『新スレに切り替わる毎に1章ずつ更新』という基準を満たしてはいないのですが、
前章の投下から既に1年以上経過しているため、
これ以上お待たせするのもどうかな~、と思いますので・・・・。

完成・発表予定は、11月の中旬頃を予定しています。
なお、デルフィナさんの触手陵辱シーンをご期待の方には大変申し訳ございませんが、
『3V(ヴァリス・ヴァルキリー・バージョン)』第18章の発表は、今年の年末~来年の1月上旬の予定となります。
どうか、ご容赦の程お願い申し上げます。


476:名無しさん@ピンキー
09/09/29 11:41:37 BZ2Sr2U5
続き、楽しみにまってまっす。

477:名無しさん@ピンキー
09/10/02 18:59:51 wGelFKEb
乙であります!
ARCH DUKEさま、今回もありがとうございます。
次回も楽しみです。

478:名無しさん@ピンキー
09/10/03 20:30:47 PmBgdd1E
乙です!!

479:名無しさん@ピンキー
09/10/07 23:36:49 0gel5yco
保守

480:名無しさん@ピンキー
09/10/13 00:11:02 r4wrzuhR
hoshu

481:名無しさん@ピンキー
09/10/21 13:29:38 fnl7xjcN
喪主

482:名無しさん@ピンキー
09/10/27 13:01:56 jr7WDPfq
捕手

483:名無しさん@ピンキー
09/11/02 13:12:39 2mgnubzd
本州

484:名無しさん@ピンキー
09/11/10 09:47:35 x1i3bqck
九州

485:名無しさん@ピンキー
09/11/17 23:51:04 c6AUsqPe
四国

486:ARCH DUKE
09/11/21 00:21:33 D3uHnOmp
お待たせいたしました~。

不定期連載SS『戦士集合!』第4章、本日完成いたしました。
21(土)の夜は所用により時間が取れないため、
22日(日)又は23日(月)の夜に発表を行いたい、と思います。
なお、今回は、文章量もあまり多くないため、連投規制対策のご支援は不要です。

発表までもうしばらくお待ちくださいませ~。

487:名無しさん@ピンキー
09/11/21 07:23:10 rBdoP2KE
期待してますよ~

488:名無しさん@ピンキー
09/11/21 07:25:37 YD43vbEU
待ってました!

489:ARCH DUKE
09/11/22 21:03:56 I/0snKFw
お待たせいたしました~。
只今より、不定期連載SS『戦士集合!』第4章の発表を開始いたします。


490:ARCH DUKE
09/11/22 21:04:38 I/0snKFw
(1)

――夢幻界。ヴァニティ城。一室。

「はぁうッ・・・・くッ・・・・あはぁ・・・・うふはぁんッ!!」

金箔と七宝で飾られた天蓋付きの豪奢なベッドの上で、激しく絡み合う二つの肢体。
マウント・ポジションを取り、巧みなベッド・テクニックを駆使しているのは、
全身をぴっちりとしたメタリック・カラーの戦闘スーツに包んだ、ツインテールの少女
・・・・変幻戦忍の異名を奉られる、本能寺忍軍の女忍・アスカ。


491:ARCH DUKE
09/11/22 21:05:12 I/0snKFw
(2)

「フフフ・・・・どう、お姫サマ?
あたしの忍術、気に入って頂けたかしら?」

まだあどけなさを残していると言って良いだろう、
やや色白だが、申し分なく健康的な肌艶に恵まれた相貌に浮かんでいるのは、
その雰囲気とは全く相容れない、邪まな喜悦にまみれた、嗜虐の笑い。
スモークバイザーの奥では、橙々色の双眸が欲情の炎を上げて燃え盛っている。



492:ARCH DUKE
09/11/22 21:05:48 I/0snKFw
(3)

敏捷なネコ科の肉食動物――ライオンやトラのような強大なパワーを誇る大型の獣ではなく、
リュンクスやワイルドキャットのようなスピードと敏捷さを持ち味とする夜の狩人たち――を連想させる、しなやかな体躯に纏っているのは、
オレンジ色の縁取りのある、シャイン・シルバーとブラックのツートン・カラーのレオタード型戦闘スーツ。
瞳と同じ色の頭髪の上には、昆虫の触角を模したアンテナ付きのティアラを頂き、
額の真ん中では、それと一体化した宝玉状の超高感度センサーが妖しいピンク色に光り輝いている。



493:ARCH DUKE
09/11/22 21:06:27 I/0snKFw
(4)

「ひぃうッ・・・・んぁああッ!!
あ、アソコが・・・・あああ・・・・熱いッ・・・・まるで、燃えているようですッ!!」

一方、アスカに組み敷かれて、
艶かしく喘ぎながら、上気したカラダを激しく打ち震わせているのは、
丁度、彼女と同じくらいの背丈の赤紫色の髪の女騎士。
――芸術王国ララマザーの王位継承者たる身分を隠し、
白翼の騎士・ナイトスワニィとして力なき民草のために剣を振るう、王女シルキス。



494:ARCH DUKE
09/11/22 21:07:00 I/0snKFw
(5)

大振りのメロン程もある豊かなバストに、キュッと引き締まったウェスト、
そして、発育途上の初々しい曲線の中に豊かさの気配を秘めたヒップ周り・・・・。
10代半ばという年齢相応の、小柄な体格とはいささかミスマッチだったが、
彼女の肉体は、少女らしい愛らしさを残しつつも、すでに女性としての成熟への第一歩を踏み出している。
それらを包んでいるのは、王宮で身に纏う、豪奢な薄絹のドレスではなく、
黄金で縁取られた、純白に光り輝く魔法甲冑の筈だったが、
今この瞬間は、アスカの淫術によってその多くが剥ぎ取られ、ベッドの下に無造作に投げ捨てられていた。



495:ARCH DUKE
09/11/22 21:07:33 I/0snKFw
(6)

(・・・・はぁ、はぁ・・・・だ、だめです・・・・こ、この感じは・・・・ひはぁああッ!!!!)

黒色の特殊樹脂で出来たグローブに包まれた、アスカのしなやかな指先が、
シルキスの無毛の恥丘を優しくなぞり上げ、サーモン・ピンクの陰唇を捲り上げる。
突き上げてくる快美感に、胸甲を剥ぎ取られ、剥き出しになった白い乳房がブルブルと揺れ動き、
弓なりにしなった背筋が、ギクン、ギクン、と、激しく痙攣を発した。



496:ARCH DUKE
09/11/22 21:08:06 I/0snKFw
(7)

(・・・・あああ・・・・と、止められないッ!!わたくしのカラダ・・・・また、あの時のように・・・・!!)

大粒の涙を浮べながら、必死にかぶりを振る白き姫騎士。
その脳裏に去来するのは、数ヶ月前に起きた、忌まわしくも甘美な事件の記憶――。

偶然に出会った魔法の白鳥の力を借り、白翼の騎士・ナイトスワニィとなったシルキスは、
王国を騒がす謎の魔物・ジュエル魔獣と戦ううちに、
背後で彼らを操る黒幕が、隣国であるウィンザー魔法大国の姫であり、彼女自身の幼馴染みでもあるローズ王女と知る事になる。
真意を問い質すべく、単身、彼女の許へと乗り込んでいく、汚れなき姫騎士。
だが、そこでシルキスを待っていたのは、
邪悪な魔道の術により誕生した黒鳥の力を得て、暗黒の騎士・ダークスワニィと化したローズの姿だった。
完膚なきまでの敗北を喫したシルキスは、自らの家臣たち、そして、領民の目の前で、
ジュエル魔獣、復讐心を滾らせた犯罪者たち、そして、ローズ自身によって、
辱められ、純潔を奪われ、更には、純真な心の奥深くに宿った、もう一人の自分
・・・・被虐の快感に溺れ、自ら肉棒と精液を求めて悶え狂う痴女の素質を暴き立てられてしまう。



497:ARCH DUKE
09/11/22 21:08:39 I/0snKFw
(8)

「あああッ!!ダメですッ・・・・もう・・・・もう、わたくし・・・・あはぁあああッ!!」

白鳥の最後の力を得て、奇跡的にローズを退けた後も、
あの時の記憶は、夜と無く昼と無く、淫夢となってシルキスを苦しめ続けていた。 
普段は忘れていても、ちょっとしたきっかけ――多くは性的な興奮にまつわるものだった――で、
突然、脳裏にフラッシュバックすると共に、
何度も何度も白濁した熱い体液を注ぎ込まれた未成熟な肉の花弁から溢れ出る淫らな滴りとなって、
下穿きの内側をびしょびしょに濡れそぼらせてしまうのである。



498:ARCH DUKE
09/11/22 21:09:25 I/0snKFw
(9)

「フフン、お姫サマのクセして、色々と経験済みみたいねぇ?
この可愛らしい、ツルツルのオマ○コで、一体、何本のチ○ポを咥え込んだんだ?」

「はぁうッ・・・・お、お願いです・・・・これ以上は、もう・・・・」

眼尻一杯に大粒の涙を溜めながら、弱々しくかぶりを振るシルキス。
だが、アスカの冷たい指先がピンク色に充血した陰唇粘膜をなぞり上げるたび、
淫術にとらわれた姫騎士のカラダは妖しい波動に打ち震え、
口元からは、熱い吐息と一緒に、肉悦に蕩け切った喘ぎ声が引っ切り無しに飛び出してくる。

そして、ついに――。



499:ARCH DUKE
09/11/22 21:09:58 I/0snKFw
(10)

「ひぁあッ!?ぁああッ・・・・はぁひあぁあああッッッ!!!!」

少女の全身が、ビュクビュクビュクッ!!と、ひときわ大きくうねりを発した直後、
手足の感覚が急速に消え失せていき、
まるで、そこだけが重力の法則から解き放たれてしまったかの如く、浮遊感に包まれた。
次の瞬間、桜色に染まり上がった白絹の皮膚の上の、毛穴という毛穴から、
銀色をした小さな汗の粒が、パアァァッ、と飛び散ったかと思うと、
目の前が白一色に発光し、鉄砲水のように溢れ出した快感が、凄まじい勢いで意識の全てを飲み込んでしまう・・・・。



500:ARCH DUKE
09/11/22 21:10:39 I/0snKFw
(11)

「本能寺忍法・秘奥義『淫蟲壷操りの術』。
これでもう、アナタはあたしには逆らえないわよ、可愛いお姫サマ」

唇の端を歪めながら、女忍者はにんまりと笑みを浮かべた。
対する姫騎士は、肺の中の空気を残らず吐き出してしまったかの如く、
顔面を真っ赤に染めながら、荒々しい呼吸を繰り返すだけ。
熱い涙滴を一杯に湛えたアメジスト色の双眸は、
先刻までの、気高く、力強い意志の顕れである美しい輝きを喪失して、
今では、まるで魂を抜き取られてしまったかのように、どんよりと曇ってしまっていた――。



501:ARCH DUKE
09/11/22 21:11:12 I/0snKFw
(12)

――ヴァニティ城内。一室。

各世界から<戦士>たちが召喚されて以来、
ヴァニティ城では、夢幻界の住人だけが暮らしていた頃には存在しなかった行事が幾つか誕生していた。

毎日の食事もその一つである。

・・・・と言っても、本来ならば、夢幻界にいる間は、
リアリティの住人である<戦士>たちといえども、飲食によって栄養を補給する必要は無かったし、
そもそも、空腹や喉の渇きを覚えるという事自体がありえない筈だった。


502:ARCH DUKE
09/11/22 21:11:48 I/0snKFw
(13)

だが、(出身世界によって回数には違いがあるものの)一日に何度か食事を摂る、という習慣に慣れた<戦士>たちにとって、
いかにその必要が無いからと言っても、全く飲食をする事の無い毎日、というのは、
何とも奇妙で、落ち着きの無い、何より、潤いに欠けるものに感じられるものだった。
彼女たちにとって、飲食を取る、という事は、単なる栄養とエネルギーを補充するための行為ではなく、
ある意味では、自分達が各々の出身世界に属する者だ、というアイデンティティーを再確認する行為でさえあったのである。
<戦士>たちの強い要望の前では、王女ヴァルナとてその願いを無下には出来ず、
彼女達が(現実界に居た頃と同じく)時間の経過と共に空腹や渇きを覚えるよう、取り計らうしかなかったのだった。



503:ARCH DUKE
09/11/22 21:12:21 I/0snKFw
(14)

「凄いわね。本当に、欲しい物なら何だって出てくるなんて・・・・」

目の前で白い湯気を立てている料理
――異世界アシャンティのレダ教徒に伝わる、伝統的な保存糧食だという、
プラスチックに似た材質の容器に入った、茶褐色のスープに浸かった細打ちの縮れ麺――を前に、
目を丸くしているのは、<レダの戦士>朝霧陽子。

彼女が驚くのも無理は無い。
『どんな物でも用意出来るから、遠慮なく申し付けて欲しい』という給仕係の侍女の言葉に対して、
ならば、とばかりに求めたのだが、テーブルの上に並べられるまでに要した時間は、せいぜい数分といったところだったのだから。



504:\______________________/
09/11/22 21:13:40 tAh4T9Nf
                         ○
                          。
                        /rニー 、` ー、
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                      ,r '´l _. リ !    / l.〉 l,r
                  l   、i(._`    `ー-‐'ヽ./   l`
               ,r::'::::l   !ヽ_`ヽ_,..、     '⌒r_'
    r‐ 、       _  i:::::;::;_;l-'´` ‐ ̄._ l   _,、_'ノ- i、._
    l    `-、..-i' ´  ヽ_,.ゞ- 、      r ' ´ ̄       /:::::::::`ヽ
   !     ,..rー、    ヽ.  ヽ     ./     _,...-::'´:::::::::::::_;/
    ヽ、   /     ,ヽ.    i.   ヽ   -r:::::'::::´:::::::::::;::::-‐::':´::::::)
      `‐/ 、__ ./ヽ,入_,ノ     l  ,r'´ ` ー ::::_::::::::::::::_;:::- ' ´
     _,/     /.  ヽ_   _,.. -ヘ-'         ̄
  r' ´      ヽ       ̄
  ヽ、      _ノ
      ` ― ''´

505:ARCH DUKE
09/11/22 21:13:42 I/0snKFw
(15)

「うん、あたしもびっくりしちゃったッ!
このリンゴ、おじいちゃんの育ててた木に成ってたのと、形も大きさも全部一緒なんだもん。
もしかして、おじいちゃんの畑から取ってきたのかな?」

そう言いながら、皿に盛られた果物に元気良くかぶりつく、<リバースの剣士>キャロン。
オレンジ色の髪の毛をポニーテールに結わえたこの少女も、ヴァルナやシルキスと同じく、
出身世界である惑星ラルの『昼の地』(ミュウ)に栄えたラル王国の王家の血を受け継ぐ『姫君』である。
だが、生後間もなく、魔王ラモ・ルーの侵略により、自分以外の王家の全員を失い、
これまでの人生の3分の2以上を辺境の老農夫の家族として過ごしてきた彼女の立ち居振る舞いは、
王族の優雅さでは無く、庶民の娘の溢れんばかりの快活さよって占められていた。



506:ARCH DUKE
09/11/22 21:14:51 I/0snKFw
(16)

「ホントよね~。
こっちのケーキなんて、去年閉店した駅前の喫茶店の、オリジナル・ケーキと全く同じ味よ。
一体、どうやって作ってるのかしら?」

生クリームの付いたイチゴを突き刺したままのフォークを揺らしつつ、感心しているのは、
真紅のチャイナドレスに身を包んだ、<第108代魔物ハンター>こと真野妖子。
『どんな物でも用意出来るから・・・・』という、夢幻界人のセリフに対して、
廃業して既に一年以上経つ店の看板メニューを注文する彼女も彼女だが、
(何らかの魔術的手段を用いているにせよ)オーダー通りの物を律儀に揃える給仕たちも只者ではない。



507:ARCH DUKE
09/11/22 21:15:24 I/0snKFw
(17)

「・・・・」

和気藹々と賑やかに料理を囲んでいる3人とは対照的に、
別テーブルで、一人、沈んだ顔をしているのは、<銀の勇者>レムネア。
目の前の皿に盛られている、故郷カナンの料理
――フレッカスという小ぶりのパンと果汁で風味付けした低アルコール飲料のメルン――
をじっと見つめながらも、殆ど手を付ける事無く、物思いに耽っている。

(・・・・メッシュやリアンたちも、今頃はご飯食べてる頃かなぁ・・・・)



508:ARCH DUKE
09/11/22 21:15:58 I/0snKFw
(18)

「どうしたの?食事、進んでないようだけど?」

背後からの声に、ハッとなる<銀の勇者>。
振り返った視線の先では、黄金の甲冑に身を包んだ蒼髪の少女が心配そうな表情を浮べている。

「え、えっと・・・・その、何でもないの。ちょっと考え事をしてただけ・・・・」

曖昧な返事を返したレムネアを、
しばらくの間、無言で見つめていた優子は、やがて、にっこりと微笑みかけた。



509:ARCH DUKE
09/11/22 21:16:31 I/0snKFw
(19)

「心配しなくても大丈夫。
ヴァルナ様や麗子に任せておけば、すぐにみんなの所に戻れるようになるわ」

「・・・・!」

心の内を見透かされ、両目を見開く銀髪の<戦士>。
眺めているだけで心が和んでくるような、ふんわりとした温かい笑みを浮かべたまま、
<ヴァリスの戦士>は、テーブルの上からフレッカスの一片をつまみ、口元に放り込む。



510:ARCH DUKE
09/11/22 21:17:03 I/0snKFw
(20)

「ねぇ、レムネア。あなたの故郷・・・・カナンって言ったかしら・・・・どんな所なの?
良かったら、聞かせてくれないかしら?」

「え、ええ・・・・喜んでッ!!」

沈みがちだった少女の表情に、パッ、と光が灯った。
優子が席に着くや否や、堰を切ったように話し始めるレムネア。
故郷であるカナンのこと、幼馴染で許婚でもあるメッシュのこと、親友のリアンや両親のこと・・・・、
無論、話が一段落するまでの間に、殆ど手付かずの状態だった皿は綺麗さっぱり片付けられていた。



511:ARCH DUKE
09/11/22 21:17:36 I/0snKFw
(21)

「あれ?レムネアったら、優子が来た途端に、すっごくテンション上がっちゃったわね~」

「うん。ちょっと落ち込んでたみたいだけど、あの様子だと、もう心配無さそう」

特製イチゴ・ショートを食べ終え、食後のダージリンティーを優雅に啜る妖子に、
レダ教徒の保存糧食をスープの一滴まで飲み干して、幸せそうに息をついた陽子が相槌を打つ。
どうやら、二人共、銀髪の少女の事を気がかりには感じていたものの、
どう声を掛けたものか?と迷っている間に、優子に先を越されてしまったらしい。



512:ARCH DUKE
09/11/22 21:18:08 I/0snKFw
(22)

「ところで、シルキスはどうしたの?お腹、空かないのかな?」

自分で注文したリンゴを平らげただけでは満足できなかったのだろう、
さらに、陽子と妖子の頼んだ物と同じ料理を追加注文して、旺盛な食欲を満たしていたキャロンが、
生クリームと醤油味のスープのたっぷりと付着した顔を上げて、質問する。
レダ教徒の保存糧食もこの世には存在しない筈のイチゴ・ショートも、
惑星ラルの少女にとっては初めて口にする食べ物だったが、幸い、口に合ったらしい。
あっという間に胃の中へと消えていった。



513:ARCH DUKE
09/11/22 21:18:40 I/0snKFw
(23)

「シルキス?さあ、知らないわ」

「そう言えば、今朝から見かけないわね。ずっと部屋に居るのかしら」

顔を見合わせる、二人の<戦士>たち。
ヴァニティ城は途轍もなく広い上に複雑な造りの城郭であるが、
彼女達が起居している区画はその中の一部に限られており、
半日近くも姿を見る事が無いという状況は、たしかに普通ではなかった。



514:ARCH DUKE
09/11/22 21:19:14 I/0snKFw
(24)

「シルキスだったら、ちょっと前に沐浴場の方に向かっていたわよ」

そう言葉をかけたのは、優子と話し込んでいたレムネアである。
<ヴァリスの戦士>と打ち解けて話をしたせいだろう、
その表情はすっかり晴れ渡り、不安の影は微塵も無くなっていた。
傍らでは、満足そうな微笑みを浮べた蒼髪の少女がレモン・ティーを啜っている。



515:ARCH DUKE
09/11/22 21:20:16 I/0snKFw
(25)

「モクヨクジョウ?」

「お風呂場の事よ・・・・ほら、この前話したじゃない。麗子に頼んで新しく作って貰う事にした、って」

首を傾げる<リバースの剣士>に、苦笑を浮べる妖子。
自分や陽子と異なり、キャロンが生まれた世界<惑星ラル>は文明化があまり進んでいないらしく、
会話の際、ある単語がどんな意味を持っているのかが分からない、といった事がしばしば起きる。
幸い、『風呂』はラルにも一応存在していたので、
それがどういったものであるか?を、一から説明する必要は無かったが。



516:ARCH DUKE
09/11/22 21:20:48 I/0snKFw
(26)

「なんだ、お風呂に行ってたのか。それじゃあ、姿を見かけなかったのも当然だよね」

納得顔のキャロン。
だが、私たちも行ってみない?と陽子が言い出すと、たちまち渋面を作った。

「どうして?キャロンも一緒に入ろうよ」
「檜風呂にジャグジー、北欧風のスチームサウナも作った、って聞いてるよ」

<レダの戦士>と<魔物ハンター>が口を揃えて、<リバースの剣士>を風呂場に誘う。
だが、惑星ラルの少女はなかなか首を縦に振ろうとはしなかった。
どうやら、風呂の存在は知っていても、入浴が好きという訳ではないらしい。

・・・・だが、その頃、沐浴場では、彼女達の誰一人として予想だにしていない、深刻な事態が発生していたのだった。


――――TO BE CONTINUED.



517:ARCH DUKE
09/11/22 21:36:28 I/0snKFw
以上、第4章をお送りいたしました~。
お楽しみ頂けたのであれば、幸いに存じます。

なお、(17)で、レムネアが注文している二つの料理ですが、
OAV『極黒の翼バルキサス』の中の描写では、
どちらがパン(というよりクラッカーのような食べ物)の名前で、どちらが飲み物の名前なのか?判然としませんでしたので、
『フレッカス』の方がパンで『メルン』の方が飲み物である、と推定して文章化しています
(手元にある原画設定集にも、さすがにそこまでは書いてありませんでしたので・・・・)。

次の第5章ですが、現時点では、このスレを使い切った後、
新スレの即死防止対策を兼ねて発表を予定しています。
時期としては、残りのスレ容量が約140KBですので、約半年後になるのではないかと考えていますので、
皆様、もうしばらくの間、お待ちくださいませ~。


518:名無しさん@ピンキー
09/11/24 16:26:17 wtszeCwH
おお、いつのまにか続きが
今後も期待してまっす

519:名無しさん@ピンキー
09/11/26 01:51:25 tSamNwFC
乙です!堪能しました!

520:名無しさん@ピンキー
09/12/02 01:25:20 7BJD2jVf
保守

521:名無しさん@ピンキー
09/12/11 00:26:50 P/91D9le
サンソフト、日本テレネットの版権を取得
URLリンク(game.watch.impress.co.jp)

522:名無しさん@ピンキー
09/12/11 05:52:12 evV7F1VG
サンソフトGJ!
でもエロじゃないんだろうねぇやっぱり・・・


523:名無しさん@ピンキー
09/12/11 15:23:59 FQhW+nId
次はパチスロか・・・


524:名無しさん@ピンキー
09/12/18 01:10:03 IXnrNYlP
ルシア×優子

525:名無しさん@ピンキー
09/12/24 23:49:22 btm8PnG0
メリークリスマス
早いですが皆様良いお年を
URLリンク(nhkgfile.s4.x-beat.com)

526:名無しさん@ピンキー
09/12/24 23:59:45 JE7/FvSt
おおお247さんキター!!
なんというクリスマスプレゼント

527:名無しさん@ピンキー
09/12/26 03:51:58 ArJp5Cd7
>>601
㌧クス。ええもん見せてもろたわ。

528:名無しさん@ピンキー
10/01/01 00:28:27 odcJEScW
あけおめ

529:名無しさん@ピンキー
10/01/03 17:46:29 MImArDQ6
あけおめ
今年もよろしく!

530:名無しさん@ピンキー
10/01/09 22:33:00 gE0rz+/u
2010年初hoshu

531:名無しさん@ピンキー
10/01/11 01:16:26 IVLq4Bal
age


532:名無しさん@ピンキー
10/01/18 22:28:14 nvdueC2f
保守

533:ARCH DUKE
10/01/23 22:17:58 gm+1C7MY
大変お待たせしました~。

年末年始を挟んだため、予定よりも1週間ほど余計に時間が掛かってしまいましたが、
只今より、『3V(ヴァリス・ヴァルキリー・バージョン)』第18章の発表を開始いたします。
お楽しみ下さいませ~。


534:ARCH DUKE
10/01/23 22:19:20 gm+1C7MY
(1)

――サザーランド。研究区画の一角。医療施設。

『ひぐぅ・・・・あひぎぃいいィィィッ!!!!』

紫色の培養液に満たされた生体ポッドの中、
ぬらぬらと妖しくぬめり光る触手生物の群れに絡み付かれて悲鳴を上げるエルフの女剣士。
分厚い強化ガラスに隔てられているため、悲痛な叫び声が外界に漏れ出る事はないものの、
本来の美貌など想像さえ出来ない程、醜く引き攣っている相貌を見れば、
彼女の味わっている苦痛の凄まじさは一目瞭然である。



535:ARCH DUKE
10/01/23 22:19:53 gm+1C7MY
(2)

ずちゅッ・・・・じゅちゅッ・・・・ぢちゅるるッ!!

紐状の肉塊がニュルニュルとうねり、性感の増したなめらかな肌の上でおぞましい体液を引き摺る。
拘束から逃れようと足掻く、美しき獲物の抵抗に興奮を覚えたのか、
汁液の分泌量を増大させた先端部分がムクムクと膨張し、手首ほどの太さに変化した。

「ひぃッ!?だ、だめ・・・・だめぇッ!!」

まるでアイザードとの色恋沙汰を経験する以前の無垢な時分に戻ったかのように、
自由の利かない体をガクガクと震わせるデルフィナは、必死にかぶりを振った。
目の前では、無数の環節部から粘ついた液体を湧出させている触手が、
まるで自分自身の存在を誇示するかの如く、赤々と腫れたコブ状の突起を収縮させてみせる。
頂上の部分には小さな割れ目があり、全身を覆っている不浄な体液とは異なる質感の、半透明な蜜が滲み出していた。


536:ARCH DUKE
10/01/23 22:20:26 gm+1C7MY
(3)

(う、嘘ッ!?)

邪まな魔術と遺伝子レベルでの生体改造技術の融合によって生まれた人外の魔物とは言え、
これが生殖行為を目的とした器官である事は一目で理解できた。
実際、そこからは、培養液の生臭さなどとは比較にならない、強烈な性臭が立ち込め、
抗い難いフェロモンが牝の本能を刺激して、発情へと誘っている。

「あ、ぐぅ・・・・うううッ!!」

すでに秘裂の内側では熱いとろみが溢れ返っている。
子宮が、ドクン、と大きく脈を打ち、
強烈な衝撃波が脳天に向かって猛スピードで突き上がっていった。
自制など到底不可能な牝の欲望、淫らな本性が、
心臓を早鐘のように打ち鳴らしつつ、さらなる快楽を求め続ける。



537:ARCH DUKE
10/01/23 22:21:33 gm+1C7MY
(4)

じゅぶりッッッ!!!!

ひときわ太い触手の一本が、むっちりとした下半身の間に頭を潜り込ませて来る。
愛液でベチョベチョに濡れた恥毛の密林を撫で付けるように何度かまさぐりながら、
最適の突入角度を探し当て、縦筋を結ぶ乙女の入り口をノックする。
彼の動きに呼応して、手足を拘束していた同胞達が女剣士の体躯を持ち上げて、
水中で仰向けに寝かせ、汁みどろの太股が水平になるまで股を広げさせた。

「あああッ!?あぎぃいいいいッ!!」

悲鳴を上げた反動で下肢の筋肉が緩んだ瞬間、
不浄な先端が、サーモンピンクに染まった聖域に侵入を開始した。
狭苦しい小道を押し拡げ、肉の塊りを遮二無二に詰め込んでくる。
必死に逃れようとするデルフィナだったが、緊縛された手足は動かす事さえ容易ではない。
もっとも、たとえ五体の自由が利いたとしても、
密閉された培養槽の中では逃げ場など何処にもある筈が無かったのだが・・・・。


538:ARCH DUKE
10/01/23 22:22:04 gm+1C7MY

(5)

ズブッ・・・・スブブッ・・・・ジュブブブッ!!!!

ブザマに引き攣る股関節の中央部で、蜜壷がゴリゴリと穿られていく。
おぞましい肉縄の感触が子宮口のクビレを強引にこじ開けると同時に、
鈍痛を伴った拡張感が臍穴に向かって直進していった。

「いひゃあッ!!くるな・・・・もう、こないでぇッ!!」

醜悪な怪物によって何もかも踏み躙られてしまう戦慄と屈辱に、
さしもの彼女も歯を鳴らし、顔色を蒼白に変えた。
心臓の鼓動がどんどん速く、激しくなり、えずくように苦しげな喘ぎを搾り出す。
子宮の奥壁にまで達した異物の感触が信じ難いほどの激痛となって全身の神経をショートさせ、
視界全体で、何千何万ものカメラの放列が一斉にシャッターを切ったかのように、無数の稲光が弾け飛んだ。

――だが、その苦痛も長くは続かない。


539:ARCH DUKE
10/01/23 22:22:53 gm+1C7MY
(6)

「あくぅッ!!ああ・・・・ふあぁあッ、んふぅうッ!!」

痛みが限界を迎えたところで、一瞬、五感の全てが消失し、
次いで、つい今しがたまで激痛と苦悶をカラダ中に撒き散らしていた筈の陵辱者から、
今度は、恐るべき量の快楽物質がぶちまけられて、
瞬く間に、膣と言わず、子宮と言わず、下半身全体を、性感の大波がペロリと呑み込んでしまう。

「あぁ・・・・ふぁう・・・・はぁああ・・・・」

快楽電流がビリビリと熱く迸り、秘唇のわななきが脊髄を往還する。
全身の交感神経が性感帯と化してしまったかの如く、あらゆる場所から快感が流れ込み、
頭の中を真っ白な靄によって包み込んだかと思うと、えも言われぬ悦楽によって思考を強制停止させた。
汚液に穢れた白い頬は淫熱を帯びてピンク色に紅潮し、
エメラルド・グリーンの双眸はトロンと蕩けて、酩酊したような視線を彷徨わせている。


540:ARCH DUKE
10/01/23 22:23:44 gm+1C7MY
(7)

次の瞬間。

「ああッ・・・・そ、そこはぁ・・・・んぁはぁあああッ!!」

何本もの細い肉蛇が互いの身体を絡めて、ドリル状に捩り合った複合触手が、
未だ手付かずのままだったもう一つの孔・・・・アヌスに向かって突入を開始した。
膣と子宮を占領している侵略者に、感覚の大半を奪われていた隙を衝かれて、
一気に菊口を食い破られ、直腸内への侵入を許してしまう。

「ひぁううッ・・・・はふぅあぁあああッッッ!!!!」

心ならずも腰をぶるぶると震わせる金髪エルフ。
何千何万もの小さな虫が這いずり回るような異様なゾクゾク感が脊髄へと突き抜け、
我知らず反り返った爪先が紫がかった培養液をバシャバシャと攪拌した。
ひとかたまりになって肛門に侵入した小触手の群れは、
最も狭く、きつい肉襞の間を掻い潜るなり、パラバラにバラけてしまい、
得体の知れない捕食動物の如くわしゃわしゃとうねりつつ、我が物顔で直腸内を捏ね回していく。



541:ARCH DUKE
10/01/23 22:24:19 gm+1C7MY
(8)

「うぁはああッ!?あむぅッ・・・・うくぁ・・・・ふひぃあああッ!!」

デルフィナ本人の腸液と魔生物の体液とが混じり合った奇怪な液汁を潤滑剤にして、
あたかもアナルの小皺の一本一本を丹念に引き伸ばしていくかの如く、排泄器官を貪り尽くす。
肩肘を強張らせて拘束された両手首をかち鳴らし、豊かな尻を狂おしげに打ち揺らすたび、
内臓の内側から痺れるような快感が溢れ出し、甘美な肛悦の波動が身体全体を覆っていった。

尻穴深く入り込んだ魔生物は、結腸孔まで食指を伸ばし、
直腸そのものを波打たせては、フジツボのように裏返った腸粘膜から濁った汁を飛沫かせている。
すっかり弛緩してしまった肛門付近では、
今まで他の場所を襲っていた触手までもがピストン運動を繰り返し、
真っ赤に腫れ上がったすぼまりを、これでもか、とばかりに嬲り回していた。
許容範囲を遥かに超えた量の異物が排泄器官に入り込んで激しくのたうち、
無数の快楽火花が弾けては、粘膜という粘膜を焼き尽くしていく。



542:ARCH DUKE
10/01/23 22:24:52 gm+1C7MY
(9)

「あッはぁああああッッッ!!!!」

肛虐の快美に屈した女剣士の肉体は、
間断なく痙攣を走らせながら、最低最悪の絶頂に向かって追い詰められていく。
最後に残った理性を振り絞り、必死に抗おうとはしているものの、
押し寄せる快楽の大波が全てを呑み込み、攫い尽くしてしまうのはもはや時間の問題だった。

ぐちゅッ!!ぬちゅ、ちゅるじゅッ!!ずちゅるにゅッ!!

容赦なく掻き回される肉壷から、沸騰した甘露が溢れ返る。
過熱する肉体は悦楽の波紋に騒いで総毛立ち、
決壊した汗腺からねっとりとした汗を垂れ流して歓喜に咽いだ。
口元からはとめどなく湧き出してくる唾液の糸がダラダラと流れ落ち、
エメラルド色の瞳はトロトロに蕩け切って、焦点さえ結べなくなってしまっている。



543:ARCH DUKE
10/01/23 22:25:26 gm+1C7MY
(10)

――その直後。

「あひぃいッ!!いはぁ・・・・きひぃあぁああああッッッ!!!!」

なけなしの抵抗を木っ端微塵に吹き飛ばした圧倒的な法悦が、
金髪エルフの意識に深々と牙を突き立て、一片の哀れみも情け容赦も無く、噛み砕いた。
結腸孔を抉られた瞬間、脳味噌の中で極彩色の火花が飛び散り、
魂そのものが抜き去られてしまったかのようなフワフワとした浮遊感に包まれる。

――びゅぶぶぶッ!!ぶしゃあああああッッッ!!!!

飛翔感に打ち上げられる、肛門絶頂。
ここに来てやっと本来の役目を思い出した腸筒が収斂して、
ニュルニュルとうねる異形の肉蛇を一気にひり出し、体外へと放出しようと試みる。
ほぼ同時に、子宮と膣襞も限界に達したらしく、
前後の穴から噴出した気泡交じりの大量の体液が質の悪いワインのような色合いの培養液と混じり合い、
グシャグシャに攪拌しつつ、正体不明の不気味なカクテルへと変えていく。


544:ARCH DUKE
10/01/23 22:25:58 gm+1C7MY
(11)

「はへぇあぁあああ・・・・」

恍惚の笑みを浮かべたまま、惚けているデルフィナ。
切れ長の双眸は快感に蕩けきり、
零れ落ちた大粒の涙がだらしなく緩んだ頬筋をダラダラと流れ落ちていく。
秘裂と菊門が熱いとろみで浸されるのが信じ難いほど心地よく、
ブルブルと両肩を打ち震わせながら、甘い喘ぎ声を漏らし続ける姿には、
もはや<戦士>のプライドは微塵も感じられず、娼婦以下の体たらくと言っても過言ではない。

・・・・だが、獲物を陵辱する事だけが己れの存在理由である魔生物にとっては、
この程度の性交はまだまだ序の口に過ぎなかった。
一分も経たないうちに新たな触手が立ち現れ、
虚脱状態で快楽の余韻に浸っている豊満な肢体を貪ろうと試みると、
すでに一度穢らわしい精を吐き終えていた同輩もまた、
負けじとばかり、肉筒を復活させて、新参者と縄張りを競い合う。

果てしなく繰り広げられる陵辱により、全身を嬲り抜かれ、穢し尽くされる女剣士・・・・。
瞳に宿っていた、美しく、凛とした意志は、最後の一滴まで奪い取られて、
あらゆる希望を断たれた無間地獄を彷徨いながら、欲情に咽び泣く事しか許されなかった――。



545:ARCH DUKE
10/01/23 22:26:40 gm+1C7MY
(12)

サザーランド。ニゼッティーの神殿。地下の秘匿空間。

――――ガシアァァンッッッ!!

大仰な着地音を響かせて、昇降機は動きを止めた。
足元に戻った重力の感覚が、
この場所が終着点・・・・最下層部である事を告げている。

(ここが・・・・神殿?)

古めかしい鎧戸が開け放たれ、眼前に現れた光景に、一瞬、息を呑む優子。
広がっていたのは、人工の照明に照らし出された白亜の大ホール。
幅も奥行きも一体どれぐらいあるというのだろうか?
地の底に作られた施設とは思えないほど広大な空間が、見渡す限り、続いている。
背後を振り返ると、ヴァルナもまた同感であったらしく、薄青色の目を大きく瞠っていた。



546:ARCH DUKE
10/01/23 22:27:13 gm+1C7MY
(13)

「あれだ・・・・」

客人たちの反応には取り立てて関心を示す様子も無く、ホールの一角を指し示す老賢者。
注目した先には、古代のピラミッドを連想させる形状の、巨大な
――さすがにエジプトにある本物ほどの大きさは無いものの、
威容、という点では決して遜色のない――白大理石のモニュメントが屹立していた。

「もう長い間、仕舞いっ放しだったが・・・・」

低い声で呟くと、ニゼッティーは、純白の石壁に向かって片手をかざし、一言二言、何かを呟く。
呪文か?と思ったのは現実界の少女の方で、
魔道士としての経験において彼女より秀でているヴァルナには、
呪文ではなく、魔術によって封じられている何者かを解放するためのキーワードだ、と、すぐに分かった。



547:ARCH DUKE
10/01/23 22:27:44 gm+1C7MY
(14)

ゴゴゴゴゴゴ――!!!!

地鳴りにも似た重々しい震動音。
食い入るように見つめる二人の少女の前で、大理石のモニュメントの頂が割れ、
内部に封じられていた物・・・・優子の背丈ほどもあろうかという大きさの大剣が、
瘴気と見紛わんばかりの強大な霊気を立ち上らせながら、空中へと浮上する。

「ま、まさかッ!?」

叫び声を発したのは、夢幻界の王女。
衝撃の大きさを物語るかのように、双眸は大きく見開かれ、
呻きとも喘ぎともつかない、くぐもった吐息さえ漏らしてしまう。

「<レーザスの剣>!!何故、こんな所にッ!?」


548:ARCH DUKE
10/01/23 22:28:17 gm+1C7MY
(15)

「無論、アイザード卿が持ち出されたからでございます。
おそらく、ヴァリア様は、<ファンタズム・ジュエリー>の喪失以上に、
事実が露見するのを恐れられ、あなた様にさえ、隠し通されていたのでしょう。
何しろ、この剣が作られた目的は、<古の封印>の破壊、なのですからな」

ニゼッティーの視線が、蒼髪の少女へと移動する。
<古の封印>という単語が何を指すのか?は不明だったが、
老人の顔に浮かぶ、使命は果たし終えた、という強い安堵感を一目見れば、
それが今は亡き青年の遺志であり、自分を呼び寄せた理由なのだ、という事は容易に推測可能である。

「ふむ、ヴァルナ様は兎も角、何も知らない優子さんには説明が必要でしょう。
・・・・よろしい、少し長い話になりますが、お聞き頂けますかな?」

「え、ええ。お願いします」

少し緊張した面持ちで応じる少女。
穏やかな微笑を向けたまま、老賢者は語り始める。
暗黒界の起源と夢幻界との闘争の歴史を、
・・・・そして、終わりなき戦いを終わらせるために、あの青年が実行しようとした計画の真実を――。


549:ARCH DUKE
10/01/23 22:28:48 gm+1C7MY
(16)

全ての発端は、ヴァリアの中に生じた<ヴェカンタ>だった。

無論、彼女自身が望んだ訳ではなかったが、
多元宇宙――<現実界>と総称される無数の時空体を創造する過程においては、
世界の森羅万象を司る者として、それに全く触れずにいる事など不可能だったのだ。

そもそも、<ヴェカンタ>の本質は変化を司るエネルギーであり、
悪しき局面においてのみ発現する訳では決してない。
破壊であろうが創造であろうが、事物が動く時には必ず発生し、
程度の差こそあれ、周囲に影響を及ぼさずにはいられない性質を有しているのである。

それでも、最初のうちは、女王自身の強大な力に比すれば、ごくごく限定的な影響に過ぎず、
警戒さえ怠らなければ、コントロールは充分に可能だと考えていたのだが・・・・。


550:ARCH DUKE
10/01/23 22:29:20 gm+1C7MY
(17)

だが、時は呆れるほどに長かった。

優子達の生まれた世界――地球の時間に換算すれば、百数十億年という途方もない間、
多元宇宙を構成する数多の世界を生み出し、成長させ、安定させるうちに、
<暗>の要素は着実に蓄積されていき、
いつしか、彼女自身をも侵食しかねない、危険なレベルにまで達してしまったのである。

恐れを感じた夢幻界の支配者がとった行動は、
<暗>の力に冒された自らの一部を分離して、新たに作った異空間に封じる事だった。
ヴァリア自身の手によって行われたその封印が<古の封印>であり、
また、切り離された<ヴェカンタ>が閉じ込められた異空間こそが、
後に暗黒界、<ヴェカンティ>の名で呼ばれる事になる、負のエネルギーに満ちた魔界なのである・・・・。



551:ARCH DUKE
10/01/23 22:29:55 gm+1C7MY
(18)

「そんなッ!?じゃあ、最初に<暗黒界>を作ったのはッ!?」

愕然とする現実界の少女。
傍らでは、当のヴァリアの娘が視線を床に落としている。
表情を変えなかったのは、ニゼッティーただ一人だった。

「ヴァリア様とて、悩み抜かれた上での事だったのでしょうな。
少なくとも、簡単に下せる決断ではなかった筈。
なぜならば、これはご自身を大きく犠牲にする行為でもあったのだから。違いますかな、ヴァルナ様?」

「・・・・え、ええ・・・・たしかに、おっしゃる通りです・・・・」

老人に促されて、夢幻界の王女は、ようやく重い口を開く。
なるべくならば、母親を傷つけずに済むよう、
かと言って、<ヴァリスの戦士>に対して混乱や困惑をもたらす事も無いように、
使用する言葉を慎重に選びつつ、ぽつり、ぽつり、と話し始める。


552:ARCH DUKE
10/01/23 22:30:27 gm+1C7MY
(19)

「・・・・母が衰え始めたのは、大分裂にかなりの力を使ってしまったからだ、と聞いています」

結果、<古の封印>によって封じ込めた筈の<暗黒界>は徐々に勢力を増し、
やがて、封印の一部を無力化して、限定的ながら現実界にも影響力を行使するまでに至ったのだ、と。

「・・・・その後に起きた出来事は、おそらく、優子さんも聞き知っているのではありませんかな?
つまるところ、そのような事態が生じる、と半ば分かっていても、
あの時点では、ヴァリア様には他に打てる手が無かった、という次第なのですよ」

ヴァルナの後を引き取った老賢者は、『あの時点では』という箇所を特に強調してみせた。
直後、夢幻界の少女が、何か言いたげに、言葉を発しかけたものの、
黒衣の老人に一瞥されただけで気勢を殺がれたらしく、すごすごと押し黙る。
一つうなずくと、ニゼッティーは<ヴァリスの戦士>へと向き直り、
ここからが肝腎だ、とばかりに、一気に畳み掛けるかのような勢いで語り始める。



553:ARCH DUKE
10/01/23 22:31:01 gm+1C7MY
(20)

「大分裂の際、生まれた存在が、<暗黒界>の他にもう一つある。
君たちの世界・・・・現実界に誕生した、<人類>という新たな種だ」

大分裂を決断した時点で、ヴァリアには、
自らの消耗が多元宇宙に何をもたらすのか、大方の予想はついていた。
いずれ、異空間に封じた<暗黒界>は強大化し、封印は弱体化していくだろう、と。

それ故に、彼女には、<古の封印>が機能している間に、来るべき戦いに備えておく必要があった。
だが、夢幻界は、その性質上、自前の戦力と呼べる存在を持つ事が出来ない。
善なる目的のために為されるものであれ、悪しき目的のために為されるものであれ、戦いとは、
結局のところ、世界に変化、つまり、<ヴェカンタ>の増大をもたらすものでしかないからだ。

そこで考え出されたのが、<明>の力――<ヴァリス>を帯びて戦う、現実界の<戦士>という存在。
そして、供給源となる種族、<人類>だった。
無論、どんな形を取ろうが、戦いは戦いであり、<暗>の力の源泉である事に変わりは無い。
それでも、<人類>を戦場に送る事によって生じる<ヴェカンタ>の量は、
夢幻界の住人を直接戦わせるよりは、遥かに低いレベルに留まるものだったのである。



554:ARCH DUKE
10/01/23 22:31:33 gm+1C7MY
(22)

「・・・・このサザーランドは、そのようにして現実界から徴用され、
戦いの末に命を落とした者たちの魂を、再び元の世界へと転生させるための安息の場であり、
<戦士>たちが作り出される重要なサイクルの一部なのです」

そこに目を付けたのがアイザードだった。
当時、暗黒界との戦いの責任者の一人だった夢幻界の青年は、
戦況を好転させるためには<戦士>として最高のポテンシャルを持った魂を生成する必要がある、と考え、
サザーランドを拠点に研究を展開、同時にこの地を実質的な支配下に組み込んでいったのである。

ただし、それは、正式な許可を受けてのものではなく、彼の独断によるものだった。
いくら暗黒界との戦いに必要だからとはいえ、
本来、自然の摂理に任せられるべき無垢なる魂に、人工的な改変を加えるなどという行為は、
秩序と調和を司る夢幻界の支配者たるヴァリアにとって、到底許容出来ない事だったのである。
彼女の認識では、器となるべき<人類>という種を創造し、
<明>の力を宿した武器・・・・<ヴァリスの剣>を与える、という一事だけでも、
確実に<ヴェカンタ>の増大を促す行為であり、やむを得ず容認しているに過ぎなかったのだから。



555:ARCH DUKE
10/01/23 22:32:16 gm+1C7MY
(23)

「その上、アイザード卿の研究自体、最終的には頓挫してしまったのですからな。
長年にわたる研究の末、ついに満足の行く魂が完成したものの、
いざ、最強の<戦士>を生み出す段になって、制御に失敗してしまい、
苦心して作り上げた魂は、3つに分裂して、三界へと飛び散ってしまった。そして――」

・・・・と、そこまで説明し終えたところで、ニゼッティーは唐突に言葉を切り、
のみならず、語り始めて以来はじめて、逡巡するかのような表情を浮かべ、口を閉ざした。
単に話の進め方を考えあぐねている、というよりも、
話すべきか否か、という判断自体がつきかねているかのような、深い沈黙を前にして、
俄かに不安げな面持ちになる優子とヴァルナ。

意を決した老人が口を開くまでの、一瞬、否、半瞬にも満たない間、
一体、幾つの視線が空中で交錯し、ぶつかり合い、
幾つの問いかけが、声として発せられる事無く、口の中で空しく泡となって消えていっただろう?
・・・・・・・・だが、その直後、老賢者が低い声で紡ぎ出した真実は、
彼女達の脳裏をよぎった予想を遥かに超えて、強烈な衝撃をもたらす事になるのだった。

「――そして、三つの世界に、三つの生命が誕生する事になったのだよ。
すなわち、現実界の優子、夢幻界のヴァルナ、暗黒界の麗子・・・・君達3人が」


556:ARCH DUKE
10/01/23 22:33:41 gm+1C7MY
(24)

「なッ!?」「ま、まさかッ!?」

驚愕の叫び声が、見事な和音を奏で合う。
両目を張り裂けんばかりに見開き、呼吸を詰まらせる優子。
今にも卒倒するのではないか?と思えても不思議ではないほど、顔面を蒼白に変えるヴァルナ。

「ア、アイザードが、わたしたちを生み出した、ですって!!」
「私たちは元々一つの存在だった、と、おっしゃるのですかッ!?」

最初の衝撃が過ぎ去るや否や、
堰を切ったかのように浴びせかけられる質問の数々。
黒衣の老人は、努めて落ち着いた口調を保ちながら、答えを返した。

「驚かれるのも無理はない。
だが、お二方とも、どうか冷静に、最後まで話を聞いて下され。
ご疑念の点に関しては、後で必ずお答えします故、今はどうか・・・・」



557:ARCH DUKE
10/01/23 22:34:17 gm+1C7MY
(25)

「・・・・・・・・」

今度は一転して、石のように押し黙る二人の少女。
その沈黙をどう受け取ったのだろうか、
老賢者は、コホン、と咳払いすると、おもむろに話を再開した。

「先にも申し上げた通り、人為的な魂の改変は、あの御方の独断によるものであり、
与えられた権限からは明らかに逸脱するものでございました・・・・」

結果、ヴァリアから咎めを受け、以後、<戦士>に関わる事を一切禁じられるに及んで、
アイザードは、<ファンタズム・ジュエリー>を奪い、夢幻界を出奔、暗黒界へと寝返ったのだ。
だが、その一方で、彼は<ジュエリー>と共に持ち去った<レーザスの剣>をニゼッティーに預け、
さらには、サザーランドの存在そのものをログレスに対して秘匿したまま、
自分自身の軍勢を作り上げるべく、密かに研究を続けてきたのである。



558:ARCH DUKE
10/01/23 22:35:52 gm+1C7MY
(26)

「おそらく、アイザード卿は、軍勢が完成した暁には、
暗黒界の軍団の夢幻界侵攻を阻止するおつもりだったのでしょう。
優子さん、あなたを密かに救出し、保護した上で、
<ヴァリスの戦士>を討ち取った、とログレスに偽りの報告を送ったのも、その一環でした」

もっとも、その策は、完全に篭絡したと思っていた<ヴェカンタの戦士>の裏切りによって失敗に終わり、
彼自身の生命を縮める結果となって跳ね返ってきた訳だが。
最後に、あの女戦士――デルフィナもまた、
おそらく、青年魔道士が自らの軍団を作り上げる研究の過程で生み出された兵士の一人なのだろう、
と付け加えて、ニゼッティーは話を締め括った。

「――想像もしていませんでしたわ。
彼の者が、そんな考えで動いていた、などとは・・・・」

ため息と共に吐き出されたヴァルナの言葉は、重く沈んでいた。
己れの私利私欲のために祖国を捨てた裏切り者、と言い聞かされてきた男が、
実際には、誰よりも深く夢幻界の将来を憂い、
(方法については全く問題無しとは言えないにしても)戦局を挽回する道を模索していた、とは。



559:ARCH DUKE
10/01/23 22:36:25 gm+1C7MY
(27)

「・・・・・・・・」

しばし無言のまま、ニゼッティーの語った内容を反芻する優子。
衝撃的な話ではあったが、不思議と違和感は感じられなかった。
脚色あるいは誇張を帯びてはいないか?という疑念も全くと言って良いほど生じず、
むしろ、これまで胸の奥に留まり続けていたモヤモヤが一気に雲散霧消して、
視界が急に開けたような爽快感が広がっていくのが良く分かる。

(・・・・まったく、<ヴァリスの戦士>になって以来、驚く事ばかりだったけど・・・・)

フフッ、と小さく笑みを漏らす、蒼髪の少女。
怪訝そうな表情を浮べるヴァルナを一瞥すると、
蒼髪の少女は、目の前の祭壇に突き立てられた、自分の身の丈ほどもある大剣へと近付き、
地金が剥き出しの無骨な拵えの剣柄に細い指先を絡めると、すぅぅぅッ、と、大きく息を吸い込んだ。

「まさか、わたしに姉妹が出来るとはねッ!!」

裂帛の気合と共に、渾身の力を振り絞り、両手の指に力を込める。
一点の曇りも無く澄み切った双眸が見つめるのは、強大な魔力を湛えた金剛不壊の刃。
二度三度、ピシッ、ピシッ、という、耳障りな音が台座から響き渡ったかと思うと、
原初の業火を宿した切っ先が久方ぶりに封印の桎梏から解き放たれ、
少女の白い腕の中で燦然たる輝光を発しながら、荒ぶる竜の如く、四方八方に霊気を撒き散らした。

その、次の瞬間――!!


560:ARCH DUKE
10/01/23 22:37:19 gm+1C7MY
(28)

――ドゴオォォォンッッッ!!!!

耳をつんざく大音響と共に、
つい今しがた、三人を地下の神殿へと運んでくれた昇降機が跡形も無く吹き飛んだ。
地鳴りのような衝撃波に続いて、
飛散した瓦礫の破片が数十メートルは優に離れていた彼女たちの足元にまで届き、爆発の凄まじさを物語る。

「い、一体、何事ですッ!?」

突然の出来事に取り乱し、大きな叫び声を上げるヴァルナ。
祭壇から引き抜いたばかりの<レーザスの剣>を手にしたまま、
優子もまた、爆発のあった方角を振り返り、
ニゼッティーさえもが、驚きを隠しきれない様子でその場所を見据えている。

・・・・もっとも、夢幻界の王女は兎も角、他の二人の表情には、
単なる驚愕だけに留まらない、もっと深刻で重要な感情が含まれていたのだが・・・・。


――――TO BE CONTINUED.


561:ARCH DUKE
10/01/23 22:52:43 gm+1C7MY
以上、第18章をお送りいたしました。
お楽しみ頂けたのであれば、幸いに存じます。

次の第19章は、3月下旬から4月上旬の発表を目指して既に執筆に取り掛かっています。
内容的には、デルフィナ触手陵辱の続き、及び優子と麗子の再対決シーンの前半を描いていく予定で、
これに続く麗子の回想シーン(アイザードとの最初の出会い)についても、
何とかエロパロ化出来ないものかな~、と考えています。

それでは、本日はこの辺で~。



562:名無しさん@ピンキー
10/01/24 00:01:04 m8uTbqyX
乙です
>>次の第19章は、3月下旬から4月上旬の発表を目指して既に執筆に取り掛かっています。
その間もう一回初めから読み直してくるか


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