【涼宮ハルヒ】谷川流 the 61章【学校を出よう!】at EROPARO
【涼宮ハルヒ】谷川流 the 61章【学校を出よう!】 - 暇つぶし2ch600:名無しさん@ピンキー
08/06/18 16:24:09 ZTK5dbWM
 あれは、朝比奈さんのお陰だろうと、キョンは口元まで出かかるがそこで止まる。
映画に関しては原因はどうあれ、想像以上に好評だった事は紛れも無い事実だった。
そして、渋々ハルヒに問いかける。
「で?具体的にはどんなビデオを作るんだ?」
「SOS団の特徴を前面に出してイメージビデオを作るのよ!これよ、これ。じゃあ、
早速準備に取り掛かるわ。わかった?」
「僕は賛成ですが、皆さんはどうです?」
「ふぇ、あたし、またビデオ出るんですか」
「今回はユキに出て貰おうと思うの。大丈夫よ、みくるちゃんはお手伝いだから」
「それなら、あたしお手伝い頑張ります」
「有希は?」
「……別にいい」
 それまでその存在すら感じさせないで、文庫サイズの小説を黙々と読んでいた
寡黙な少女が答えた。
「キョンもこれで異論は無いわね」
「へいへい」
 こうして、SOS団イメージ回復ビデオの撮影が決定した。


【どうしてここにいるの?どうしてこんな事されているの】
 
 頭の中に声が響く。みくるはその問いに答える。
≪あたしが涼宮さんに選ばれたから……だからこれは必然なの≫

【何時まで偽りの自分を演じるの】

≪涼宮さんは未来の世界に大きく干渉してる……だから、駄目≫

【キョン君はどうするの】

≪キョン君は……涼宮さんと……だから……それにあたしは未来人だし≫

【本当は自分がキョンくんとそうなりたいんでしょう】

≪あたしはそんな事考えちゃ駄目なの……だって……そうしないと≫


 みくるの頭の中に思考が流れ込んでくる。ビデオ撮影は一時休憩となっていた。
ハルヒは新しいコスプレを調達するために、≪演劇部に行って来る≫とみくるを
一人残して去っていった。顔を上げると、SOS団で行った海水浴の写真が目に留まる。
「禁則事項……あたしの最重要禁則事項……です」
 ぽつりと呟く。目の前が歪む。床にぽたり、ぽたりと水滴が零れた。

601:名無しさん@ピンキー
08/06/18 16:26:07 ZTK5dbWM
 コンコンとドアをノックする音が部室に響く。それはSOS団の合図。
男子部員が部室に入るときは必ずこのノックをする。それが決まりだ。
みくるは慌てて目の両手で擦ると、どうぞと促す。
「あれ、朝比奈さんだけですか……って、なんて格好してるんです!?」
「え……あっ……これですか。イメージビデオの撮影です……」
「また、朝比奈さんにこんな格好させて、ハルヒの奴、昨日は長門にやらせるって
言っていたのに」
「やっぱり、キョンくんも長門さんがやったほうがいいなって思います?」
「えっ?それってどういう意味ですか?」
「あたしはキョンくんから見て長門さんより魅力が無いんでしょうか?」
 普段見られない真剣なみくるの顔がそこにはあった。
「いやっ、そんな事ないですって」
 キョンの顔が徐々に赤くなっていく。それと同時にみくるの頬もぱあっと、ピンク色に
染まっていった。

≪あたし、いきなり、何言っているんだろ……キョンくんに……キョンくんなのに……
過去の世界の人を好きになっちゃいけない……たとえそれがキョンくんでも≫

【本当にそれでいいのかしら?もし、ここでキョンくんを好きになるのが歴史の必然
だとしたら、キョンくんを好きになってもかまわないはず】

「あのっ、とりあえず、服着ましょう。その、目のやり場に困るんで」
「キョンくん……あの……」



他の作者さんがここ離れたのもわかります。
もう、本当に萎える。
作品を愛していても、このスレに投下する意欲を削ぐ読み手が多すぎるよ。
もう、本当に読み手が酷すぎる。

602:名無しさん@ピンキー
08/06/18 16:32:47 A81ROU7j
捨て台詞カッコイイwww

603:名無しさん@ピンキー
08/06/18 16:33:12 /p4/rXoZ
>>591
でもVIPとか垂れ流しじゃん?
誰も何も言わない。乙とか社交辞令なあいさつしか帰ってこないぞ?

>>601
そうだね。読み手が酷いね。

604:名無しさん@ピンキー
08/06/18 16:37:36 A81ROU7j
VIPは纏めサイトと避難所でまともな感想が来る

605:名無しさん@ピンキー
08/06/18 17:04:07 ANH08n/h
>>597
>>598
お前ら二度と来なくていいよ
最低なだけな書き手なんか邪魔なだけ
一人で勝手に切れて落書きぶん投げていくとか、どんなだよ



606:名無しさん@ピンキー
08/06/18 17:06:25 JuAlbW9p
>>601
やめて正解だったんじゃない?

607:名無しさん@ピンキー
08/06/18 17:16:22 CIAcLxKF
読み手なんてみんな死ねばいい

608:名無しさん@ピンキー
08/06/18 17:21:29 Pk/+6y6n
ここは昔から読者の反応厳しいスレだったが、そんな中で異様にレベル高い作品が連発されたり、
物書きのプロなんかが投下しにきてたんだぜ
そんなスレでどの程度の作品投下したらどれくらいの反応が返ってくるかくらい、ある程は度想像できるだろうに
面白くない駄文撒き散らす書き手に限って怒って切れて、暴れて空気悪くしていく
アニメ終わってから目立ち始めた作者自演とかうんざり

読み手の態度も大概だが、それ以上に勘違いしてた作者軍団の言動が酷すぎた
そりゃあ袋叩きの一つにも遭いますっての
俺は誉められたことなんか全然ないけど、叩かれたことなんかほとんどないね
「つまんね」とかよく連打されてたが、これは叩きや荒らしじゃなくて感想。そう取れない人はマジでいらない

609:名無しさん@ピンキー
08/06/18 17:30:14 CIAcLxKF
書き手の癖にSS以外の文章書いてんじゃねえ

610:名無しさん@ピンキー
08/06/18 17:39:04 Q2UvD0/f
比較的よくありがちなスレッドの一生

1、スレッドが立つ。
2、技術のある人間がAAを提供して盛り上げる。
   感動を求めて人が集まってくる。
3、オリジナルAAを書ける人間が乗ってきてさらに盛り上げる。最盛期。
4、盛り上がりに乗じて何も書けない魯鈍と白痴が寄ってきてスポイルする。   ←いまここ
   彼らの無駄な愛着が逆効果を及ぼし、スレッドのレベルが著しく低下。
5、飽きて大勢が去っていき、行き場の無い魯鈍と白痴が残される。
   低レベルな自慢・偏見の陳列、煽りあい、無駄な罵倒、
   いわゆる「2ちゃんねる用語」を多用したお寒いレス等々が並ぶ。
6、煽りと罵倒しか出来ない魯鈍まで魯鈍同士の空疎な煽りあいに飽きて去る。
7、何も提供できない白痴が過去の栄光の日々を夢見て空ageを繰り返す。
   脳死状態。
   脳死状態。
プロ市民みたいになってきたな

611:名無しさん@ピンキー
08/06/18 17:39:02 JuAlbW9p
読み手の癖に乾燥以外の文章書いてんじゃねぇ

612:名無しさん@ピンキー
08/06/18 18:05:14 8BQ763M5
VIPだって昨日はすごいあれてたぜ?
あの古泉のナントカいう、糞SSのせいでな。

613:名無しさん@ピンキー
08/06/18 18:36:48 OTvoweGn
ラノベ原作、京アニ、厨房が集まるエースのツーペアが揃ってるのだからどこの板だって荒れるに決まってる

614:名無しさん@ピンキー
08/06/18 18:47:54 d09UDy7u
>>603
VIP本スレはつまらんSSは原則スルーってだけ。乙とか返ってこなかった場合はそれ相応の評価を受けている証拠だよ。
いいSSならそれなりに感想が返ってくる。

まとめサイトの方は甘めだが、本スレは昔と違ってかなり厳しい。

615:名無しさん@ピンキー
08/06/18 18:52:05 f3MNNwB+
>>605
読み手が書き手を追い出すスレ初めて見たw
落書きではなくて普通に書いてたが自演扱いと煽られて嫌になったように見える


616:名無しさん@ピンキー
08/06/18 19:20:01 mmSryoxn
初めて見たってことは、この板出入りするようになったから三日と経ってない新人さんってことですね
いらっしゃい世間の狭い人。歓迎するぜ?

617:名無しさん@ピンキー
08/06/18 19:24:54 Q29Qlb0e
pinkbbできる前からふつーによくあるやり取りだわな
ネギや葉鍵板ならヘタレ職人が追い出されない方が異常だったw

618:名無しさん@ピンキー
08/06/18 19:33:50 /b8uZDez
おいおい、折角ネタ振りしてくれてるんだから返してやろうぜ。

おーい>>601ぃ! 俺が悪かったー! 帰ってきてくれー! カムバァーック!

619:名無しさん@ピンキー
08/06/18 20:01:40 OTvoweGn
帰ってこられても困るだけのよーな…

620:名無しさん@ピンキー
08/06/18 20:51:03 ooOKRjv7
最盛期だろうと今だろうと、良作を投下すれば絶賛されるっての。その証拠に前スレのハルキョンエロはGJばかりだった。

621: ◆LeyXT4003g
08/06/18 22:33:15 Ng4EHijG
あわてるな。
これはアンチVIPの高等戦略だ。
VIPには威張るほどの作品も書けないくせに大口叩きまくる書き手ばかりだ、と印象づけようとしてるんだよ!!

一つ言っておけば、いや二つ言、いやいやいつも通り三つくらいは語っちまうだろうから、
暇のない人はさっさと次のレスに進んでくれ。
>>598は、書き手のくせに、読み手は書き手より弱い!という態度をとり、書き手としての立場を切り売ってスレに意見しちまってる。
書き手が皆こんな勘違いナルちゃんだと思われたら困るぜ。謙虚でマトモな書き手もたくさんいるからなー、読み手のみんな!
まあ偉そうな態度でも許せるほどこのスレにとってなくてはならぬ神職人様だ、ってのならともかく、
ここでもVIPでもどちらでも落とせるような内容のSSを持ってきておいてここの書き手ぶってるんだから、語るに落ちるってやつさ。
同人誌の定番とも言える撮影会ネタであり、また、あれこれ悩まず地の文で「キョン」と平気で書いてしまえるあたりは、
エロSS書きに向いてたかもしれんと思うけどな、悪い意味で。
冥土の土産を吐いちまった以上もはや見ちゃいないとは思うが、スレを切ったんならログごと消してしまうのを心からオススメするね。
でないと1年後あたりに、
なんでアタシはこの程度のSSしか書けなかったくせにこんなに偉そうだったのおおぉ!と髪掻きむしって転げ回る羽目になるぜ。

622:名無しさん@ピンキー
08/06/18 22:49:32 Ga5f1xwY
個人的にはあんたの昔の安直チープで原作無視なオレサマ世界のSSの名前と口調だけ書き換えた奴が見てみたい。
是非こっそり投下してくれ。

623:名無しさん@ピンキー
08/06/18 22:53:14 aa/YimBQ
まあ無駄だろ、ここのスレの句なんてとっくの昔に過ぎてんだ
あとは消えるだけだぜ

624: ◆LeyXT4003g
08/06/18 22:58:14 Ng4EHijG
>>622
そんなSSを投下するときにはこのトリつけたまま落とすぜ必ず!
……と、ウソでもこう書いとかないと次の書き手が作品投下しづらいじゃねえかw

625:名無しさん@ピンキー
08/06/18 23:01:11 OTvoweGn
スレの旬って言うか作品自体の旬が過ぎてしまった
作者自らがそうしてしまった

626:名無しさん@ピンキー
08/06/18 23:26:16 /wBgl/Nt
まぁ、今はどうでも良いんじゃねえの?
どうせ二期が来たらまた盛り上がるだろうし。
今は暇を持て余した子供達が喧嘩してるのを眺めるだけでも。

627:名無しさん@ピンキー
08/06/18 23:29:43 oSoELSjE
621
あんた最近丸くなったよな。
もう酉付ける必要ないんじゃない?

628:名無しさん@ピンキー
08/06/18 23:39:13 ZTK5dbWM
>>621
読み手のからの罵倒なら別にいい。
ただ、書き手の貴方から、プロットを全部読んだような言い方されるのだけは許せない。
このまま撮影会とみくるとエッチで終わり?何処をどう読んだら、そうなるんだよ。

冒頭の前振り、みくるの脳内に響いている声、OKを出した長門有希が何故撮影会に来なかったのか。
このプロットが全く意味が無いものになるだろ。
完結、校正しないでブン投げているから文句は言えないが、書き手でもある貴方が偉そうに語るな。
それなら、貴方の作品を私に見せなよ。

私は書き手じゃないって言われたから、書いている途中の文を見せることで書き手と示しただけ。
だから、この作品には余り意味が無い。全てを完結させていないのだから。
だけど、書き手である貴方が一部分だけ見て、内容を言い切る根拠はなんだんだ。

それから、私は読み手が書き手より弱いなんて一言も言ってない。
ここの空気が書き手を萎えさせ、投下意欲を削いでいるって言っているだけ。
もう一度言うが、書き手の貴方が私に偉そうに言う事じゃない!


>>605
二度と来るなと言われれば、書き手は去るのみです。
ご指摘の通り、ちゃんと今日で消えますよ。
貴方達の言う、プロ級の方の投下がまたいつか来るといいですね。

ただ、他の投下する方は気をつけてください。
このスレは自分のハードル以下の書き手は、投下する価値、スレにいる価値もないと思っている方が多いようです。
巷で話題の少年サンデーの編集者のようではありませんか。
そんな読み手と戦っていく書き手が多くいればいいですね。

◆LeyXT4003g だけは別。
早く作品投下してこのスレの人満足させたら?



629:名無しさん@ピンキー
08/06/18 23:47:57 L0sVk+vW
エロ属性があってる作品さえくれば百万のGJを
贈呈する気なんだがこないんでスルーする毎日


630:名無しさん@ピンキー
08/06/18 23:51:25 L0sVk+vW
うーむ 切れるのはもっともだが6分でこの文章量は流石書き手だなぁ

631:名無しさん@ピンキー
08/06/18 23:53:49 mT03tGR8
>>628
捨て台詞吐いて退場って2ch自体合ってないんじゃないか?
マンセーされたいなら自分でサイト作ってやった方がいいよ
煽られたり貶される度に怒ってたら神経もたないだろ

632:名無しさん@ピンキー
08/06/18 23:55:52 xpPkgbZ/
ID:ZTK5dbWMが文句言い始めてからの流れが見てておかしすぎるww


633:名無しさん@ピンキー
08/06/18 23:59:51 oSoELSjE
書き方特徴あるなぁ。
なんとなーく絞れる自分が気持ち悪ぃwww

634:名無しさん@ピンキー
08/06/19 00:15:58 bxs4KkQq
また高度なリレーSSが投稿されているようだなw

635:名無しさん@ピンキー
08/06/19 00:26:26 1vGNuHqv
>>628
つーか荒らしてないで早く消えろよ馬鹿


断言するぜ。この人絶対粘着する。
それも荒らしに転職してな。

636:名無しさん@ピンキー
08/06/19 00:39:56 bxs4KkQq
>だけど、書き手である貴方が一部分だけ見て、内容を言い切る根拠はなんだんだ。

この「なんだんだ」という書き間違え方。
某所でも見覚えがあるよね?

637: ◆LeyXT4003g
08/06/19 00:45:22 b/o6BRDW
>>628
おやおや、戻って来ていただけたのですね。

>このまま撮影会とみくるとエッチで終わり?何処をどう読んだら、そうなるんだよ。
>だけど、書き手である貴方が一部分だけ見て、内容を言い切る根拠は
このへんは、釣り、というものだと解釈しておきますね。
>それから、私は読み手が書き手より弱いなんて一言も言ってない。
>書き手の貴方が私に偉そうに言う事じゃない!
どの指がこれらの文を打っているのですか?
>完結、校正しないでブン投げているから文句は言えないが、
>だから、この作品には余り意味が無い。全てを完結させていないのだから。
伝えたいことを伝える努力を必死でしなければ伝わらないものが多いんですよ。
そうした創作人としての基本にして当然の努力を怠っておいてのこの言い様、他の書き手までもが誤解を受けてしまうではないですか。
それとですね、ここがどういう場所か忘れてません?
二度と来ないなどという発言は、神職人か常コテにならない限り、匿名の掲示板では無意味なのですよ。

>>636
武士の情けだ勘ぐらないであげてくれ。

※読み手の皆さんへ。
多くの書き手は、あなたがたに萌えやエロや鬱をお伝えするため、できる限り努力をいたしております。
手抜きを手抜きと自覚しておいて投下するような輩がいたら、作品の出来不出来とは無関係に、徹底的に叩いてあげてください!
あ、でも、馴れ合い雰囲気なスレでは別です。
叩かれる恐れのないベタベタ環境でしか棲息できない書き手もおりますので、スレの空気にお従いください。

※初心者書き手の方々へ。
一人でも仙人クラスの職人にならない限り、あなた一人だけでスレッドの空気を一変させるのは無理です。
意見があるのでしたら、書き手も読み手もない一住人として、堂々と対等に発言しましょう。
なお、読み手への愚痴は、スレの他の書き手に迷惑にならないよう、SS書きの控え室で。

※読み手様書き手様各位。
SSでも感想レスでもないのに貴重な容量を無駄に使ってしまい、申し訳ありません。

638:名無しさん@ピンキー
08/06/19 00:46:50 ear1l/nI
お前ら全員荒らしじゃん
なに偉そうに語ってんの?
自分は違うとか思ってる?
今このスレにまともな人間いるとは思えないんだけど

639:名無しさん@ピンキー
08/06/19 00:49:17 wqp6pKA/
新着が50もあったのに、ほぼ全部雑談だったとは……
この脱力感は異常だよね……

640:名無しさん@ピンキー
08/06/19 00:51:29 EftQzSlV
エロパロハルヒスレ恒例、スーパー罵り合いタイムです

641:名無しさん@ピンキー
08/06/19 01:06:52 oe0ZuDdO
ゲェェー、あ、朝比奈さんが珍しくまともなことを言ってる…
伊達に十年以上SS書いてるわけじゃないってか。

642:名無しさん@ピンキー
08/06/19 01:06:54 FbJ9NN42
最近この流れも楽しく思えてきた俺

末期だね

643:名無しさん@ピンキー
08/06/19 01:11:37 PQWhc/am
このスレ自体が末期だろう

644:名無しさん@ピンキー
08/06/19 01:12:00 riNhuBjs
>>598-601みたいな糞も面白くない癖に
「俺は書き手だ」と言いたい放題言ってしかも終わってすらないSS読むくらいなら、
こんな流れの方がまだ笑えるだけ救いがあるわ。
ほんと勘違いしてる書き手しか残ってないんだなあって良く分かった。

勘違いしない空気読める人は流行りを嗅ぎ分けるのも的確だからアニメ終わったらさっさと余所行くしな。
変なのだけ残るのは必然かもな。

645:名無しさん@ピンキー
08/06/19 01:15:29 PH0IOur3
単発ID多すぎ

646:名無しさん@ピンキー
08/06/19 01:20:17 cRe08dVs
>>644
いや、このヒトは別なところ(VIP?)に投下してるって最初に言ってるぜ?
つまりとっくにここの書き手ではない。読み手だ。

647:名無しさん@ピンキー
08/06/19 01:20:46 EftQzSlV
>>644
それは読み手でも同じ事が言えるだろう。

648:名無しさん@ピンキー
08/06/19 01:40:42 SyDHrdIm
朝比奈さんのVIP作品とは何ですか?

649:名無しさん@ピンキー
08/06/19 01:49:07 EftQzSlV
ここまで来たんだ。朝比奈さんにVIPとエロパロ作品から5つ選んでもらおう。

650:名無しさん@ピンキー
08/06/19 01:53:54 hEGEiv1b
投下します
佐々木メインです

651:名無しさん@ピンキー
08/06/19 01:55:48 hEGEiv1b
[三人目の女神]

こりゃあ一体何の冗談だ?
周囲には跳び上がって喜ぶヤツ、地面にうずくまるヤツ、嬉しくて泣きだすヤツ、悲しくて以下同文なヤツ、えとせとらえとせとら、皆思い思いに感情表現を爆発させていた。
長篠の戦後の戦国時代かバブル全盛期並に動乱の時代が今まさにこの時であるというのに、俺達SOS団の面々は一人残らず教科書通りに硬直していた。
 
もう一回言う。だから、聞いてくれ。できれば、答えをくれ。

これは何の冗談だ?

風は、桜を静かに揺らしていた。


652:名無しさん@ピンキー
08/06/19 01:56:59 hEGEiv1b
「SOS Dragon Project」
あれは桜の咲き、散っていった一年前のこの季節。
朝比奈さんが東京のお嬢様大学への進学を決め、全校生徒に惜しまれ卒業した(誇張ではない、たぶん)、ちょうどその日ではなかっただろうか。
緊急集会といってハルヒはSOS団員を止せばいいのに強制招集し、部室の席に着かせた後大仰な仕草で模造紙をホワイトボードに張り付けた。
「キョン、これを読み上げてみなさい」
俺は言われたとおりに、バカでかい模造紙の赤字を読んでやった。
「そう。もしアンタがこの音読に失敗しようもんならどうしようかと本気で心配してたわ」
あのな、いくら俺とはいえやっていい間違いとやっちゃいけない間違いってもんがあるんだよ。こんなもん今時小学生でも読めるわ、と言おうとしたが今年中学生になったばかりの自分の妹のことを思い出し封印することにした。
「それで、涼宮さん。このプロジェクトの目的は一体何なのでしょうか。」
髪をかきあげ古泉が訊く。相変わらず無駄にスタイリッシュだな。
しかし、それは俺も訊きたいことだ。とうとう俺たちも三年、いやでも受験の文字の二文字が頭に浮かぶ頃合いである。
そんな時期にこの団長様はどんな手間暇のかかることをしてくれようというのか、是非とも確認しておきたいところだ。
「フフフ、団員諸君!」
待ってましたとばかりにハルヒは椅子の上に片足を乗せ、
「今年、我がSOS団は一致団結して!」
人差し指を立てた手を東側の壁へ向け、

「T大に合格しますっ!!!!!!!!!!!!!!」

高らかに宣言し、そのころの俺はというと長門の注いでくれた茶を吹き出そうかどうか考えていた。ちなみにT大ってのは、都にある例の赤門のアレな。
別に伏せる必要もないんだろうが、まあ念のためということで。それに今はそんなことは問題ではない。
おい誰か、こいつの頬を血が出るまで引っ張ってやってここが夢でないことを気付かせてやれ。
「おい、ハル……」

653:名無しさん@ピンキー
08/06/19 01:59:07 hEGEiv1b
「唐突にどうしたのですか、涼宮さん」
どうせだれも突っ込まないのだから、俺がいくしかないのだろう、と思い口を開いた俺を制して言いきったのは、涼宮ハルヒ専属のイエスマン古泉一樹だった。
普段のニヤケ面は崩していないものの、一割程度は疑念の色が浮かんでいるのが分かる。
俺は読心術で一財産気付けるかもしれないな。それもひとえに長門のおかげだ、と思い窓際の宇宙人に目を向ける。
そんな本どこで出版されているんだ、というような分厚い本を手にした宇宙人は、これ又意外なことにハルヒの顔を注視している。
普段ハルヒの言うことにまったく異を挟まない二人の感度良好な反応に、俺の突っ込みは完全に無効化されてしまった。

「まず、みくるちゃんが東京に行っちゃったじゃない?まあ今年はしょうがないとして、再びSOS団の活動を日常的に行うためにはあたしたちは近くに住む必要があるわ!」
軽く咳払いをして
「そしてどうせ上京するというのなら、この狭い日本でも一応はトップと呼ばれているT大に合格してみたいじゃない!」
野郎、いったいいつのドラマに感化されてやがんだ。それでそのタイトルか。
「SOS団全員がT大に合格したとなれば、これは我らの威光を存分に知らしめる起爆剤になるわよ!」
まぁ、そりゃそうだろう。
しかしだな、
「なあ、ハルヒ」
改めて問い正す。
「お前は本当に全員がT大に合格できるとでも思ってんのか?」
仮にだ、もし仮に全員でT大を受けたとしよう。
まず長門は問答無用でパスだ。あいつに解けない問題をT大の教授ごときが作れるはずもない。つーか、長門なら世界七不思議も六つくらいは答えをすぐに出してくれそうだ。
ハルヒもおそらくは受かるだろう。例の変態パワーはこの頃になるとほとんど消えていたが、有言実行っぷりは相変わらず太鼓判を押された折り紙つきだ。
古泉はさすがに前述の二人には劣るだろうが、それくらいの素質はありそうな気もする。
これで四人中三人は見込みありとなる。しかし、四人目が最大最後最強最悪に問題なのだ。

俺が受かるわけがなかろう。


654:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:00:09 hEGEiv1b
二年時はハルヒのやや迷惑ながらも懸命な教えにより学年で中の中くらいの成績は維持できた。
しかし、ここが日本最高ランクの進学高というのならともかく、なんちゃって進学高県立北高である以上、真ん中の成績のヤツなんかは中堅の私立に入れればよしといったところだ。
そんな奴がT大を受験するなど、首都高をラジオフライヤーで走るくらいに身の程知らずだ。
以上のような内容を最小限に要約してハルヒに告げると
「そんなことアンタに言われるまでもなくわかってるわよ」
とのこと。
わかってんならさっさと撤回しろ。無駄な議論も嫌いじゃないが、今回のは度が過ぎている。
「あたしに有希、古泉君は確実に合格するわよ。だからこのプロジェクトの要旨は、あんたを合格させることなの!」
カチューシャから伸びた前髪が風に身を躍らせる。窓から見える空はどこまでも青い。
「あたしたち三人で一年間の内にアンタをしごきにしごいてやるから、覚悟しなさい!!」
勝手にしろよ、もう。
カカカとマンガのように高笑いするハルヒをよそに、俺は溜息を吐き、古泉は頂き物のおはぎの中に針が入っていたような顔をし、長門の手は止まったままだった。
カーテンが、パタパタと鳴っていた。


655:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:01:12 hEGEiv1b
どうせ言って聞くような奴じゃないし、目標はともあれこの三人に勉強を教わるのならまあ悪いことにはならないだろうと思い軽い気持ちで始めた「SOS Dragon Project」
それははっきりいって、地獄のような厳しさであった。
ハルヒの腕章はいつのまにか「カリスマ講師」となっており、カリスマ講師完全監修のもと作成されたプログラムに沿って俺は勉強させられることとなったのだが、きついなんてもんじゃない。
中世ヨーロッパにはこんな拷問があったと聞かされればああそうですかと思わず納得してしまうような、そんなハードさであった。
プログラムもさることながら、三人の教え方にも辟易した。そんな立場じゃないことは百も承知だが。

「ハルヒ、出来たぞ」
「……バッカバカ!何でこんな問題もできないのよ!ここなんて簡単な計算ミスじゃない!アンタよんかけるごも解かんないの?!」

「古泉、出来たぞ」
「……残念ですが、ペーパーテストというごく限られた表面的な能力しか測ることのできない分野では、あなたの深淵から湧き上がる読解は理解されないのです。すみません」
 
「長門、出来たぞ」
「問五。関係副詞」

棍棒のハルヒ。真綿の小泉。斬鉄剣の長門。
始末屋稼業でも始められそうだな。

しかしなんだかんだ言いつつもハルヒ、古泉、長門の講師陣は非常に有能であったらしい。
夏休み前の試験ではSOS団全員でトップを固める(俺もいるぞ)という快挙を成し遂げ、俺は谷口から絶縁を宣言された。どうでもいいが。
そして灼熱の夏期講習をくぐり抜け、秋の終りの全国模試では俺の成績はT大に受験してもギリギリ落ちるくらいのところまで上昇した。
ちなみに俺を除く三人はすでに絶対安全圏にいる。
やっぱすげえわ、こいつら。


656:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:02:09 hEGEiv1b
夏休みの時、俺は古泉に俺の世話なんかしてて大丈夫なのかと聞いてみたことがあった。
するとヤツは
「教えるということは、その三倍を理解していないと上手にできないものとも言われています。僕にとっても良い勉強になって、助かっています」
とにこやかに返した。
ふむ、とりあえず感謝しとこう。
朝比奈さんにはこの計画は伏せてある。春に全員で上京して驚かそうという目論見らしい。
寒風吹きすさぶ冬、俺はこのドッキリが成功すればいいなと、半ば本気で思うようになっていた。

センター試験も誰一人足切りにかかることなく通過し、俺達は俺の最終調整に入っていた。
今年からT大は後期試験が無くなってしまったため、これに落ちると私立を受験していない俺達は問答無用で浪人となる。
しかしまあ、一縷の望みに賭けることができるほどには、俺も成長したということさ。

部室での休憩時間、俺は長門の淹れてくれたお茶を片手にひとり、窓の外を眺めていた。
降りしきる雨が校庭を汚す。
ノックの音。
「どうぞ」
「失礼します」
古泉だった。さわやかスマイルはデフォルトだが、ややくたびれた様子がうかがえる。
古泉はそのまま席に腰を下ろす。
「なあ」
顔を見ずに呼びかける。
「どうか、しましたか?」
「どうして、ハルヒはいきなりあんなこと言い出したんだろうな」
「というと、このプロジェクトですか?」
古泉は姿勢を直した。
「ああ。アイツは受験なんて興味ないと思ってたんだが。朝比奈さんうんぬんは別として」
「正直なところ、わかりません。僕としてもそれは気掛かりだったのですが」
俺はある程度予想していた答えを聞き、なんとなく安心した。なんでだろうか。
「まあ、結果としてどうやら全員が受験することは決定したようですので。結果オーライ、というのもたまにはいいんじゃないですか?」
コイツにしては楽観的な事を言う。
しかし、それは俺も同じ思いだ。

雨垂が窓を伝い、落ちる。
「みんな、つうか俺ががんばんなきゃだけど、受かればいいよな」
「きっと、大丈夫ですよ」
俺と古泉は、いや、俺達は皆楽観的だった。

楽観的過ぎた。

遠雷が、鳴っていた。

657:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:03:18 hEGEiv1b
本番当日、俺達は赤門の前で円陣を組んでいた。
「さあキョン!!あたしたちへの心配はファミレスのレジに売っているおもちゃ並に無用だから、あたしたちの教えた全てを吐き出してきなさい!!!」
「おおっ!!」
「いけますよ」
「あなたを、信じる」

「みんな、今まで言えなくて申し訳なかったけど、本当に、ありがとな」
「くぅー!!あんたにしては殊勝な心がけじゃないっ!!やっと団員としての心構えがなってきたようねっ!!」
「いえいえ、あなたもよく、頑張ってくれました。僕の助力など、微々たるものですよ」
「どういたしまして」

「それじゃ!いくわよ!!えいっ!」
「「えいっ!!」」
「「「おおおーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」
「おお」
「有希っ、ワンテンポ遅いっ!もう一回!!」

試験終了。
俺は数学にやや不安が残ったものの、概ねは手ごたえを感じていた。
これはひょっとするとひょっとするかもしれない、というほどの。
三人は、まあ言うまでもなく良好そうだった。
美しい夕日を浴びながら、俺達は赤門を後にした。
伸びた影が、徐々に薄らいでいった。

三月、俺達は卒業式を終え(ハルヒが歴代学校史に残るような珍プレーをしたのはまた別の話だ。担任の岡部は三年間の最後まであいつにかき乱されてまったく同情に値する)、試験結果を見に再び東京へと飛んだ。

かつてない緊張感である。
赤門は受験生やその保護者、そして予備校関係者でごった返していた。ええい、縁起の悪い。
俺の受験番号はかなり最初の方で、他の三人はいずれも最後の方だった。
人の波をかき分けかき分け、掲示板へと直行する。
まだ掲示板には白い布が被せられていた。
しかし、それもじきに剥がされる。
俺は三人の顔を見やった。

ハルヒ。
心なしか緊張しているようである。自分の結果についてではないだろう。

古泉。
いつもよりかなり真剣な表情である。自分の結果についてではない。

長門。
かわらん。

心から、一緒にいたいと思った。
誰にも言わない。だけど、誰にも何も言わせない。
俺は、まだこいつらと朝比奈さんと、SOS団の一員としてとしてバカをやりたかった。

布がはじき飛ばされる。桜が舞う。
全来訪者がドングリ眼で喰らいつく。
前方の頭、あたま、アタマをなんとかかわし、俺もそれにならった。

そして、物語は冒頭に戻る。


658:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:04:09 hEGEiv1b
こりゃあ一体何の冗談だ?
周囲には跳び上がって喜ぶヤツ、地面にうずくまるヤツ、嬉しくて泣きだすヤツ、悲しくて以下同文なヤツ、えとせとらえとせとら、皆思い思いに感情表現を爆発させていた。
長篠の戦後の戦国時代かバブル全盛期並に動乱の時代が今まさにこの時であるというのに、俺達SOS団の面々は一人残らず教科書通りに硬直していた。
 
もう一回言う。だから、聞いてくれ。できれば、答えをくれ。

これは何の冗談だ?


俺の番号しか、なかった。
もう一回言う。だから、聞いてくれ。できれば、否定してくれ。

俺の番号しか、なかった。

最初は嬉しかったさ。それこそ泣きそうにな。にじむ視界を何とか覚まし後半へ目をやったが、そこに幾度となく暗唱した仲間たちの番号は存在しなかった。
何を疑うかって?まずは自分の記憶だろう。
俺は鞄から手帳を取り出した。ちくしょう、手が笑ってやがる。
なかなか所定のページを開けず焦りばかりが募る。
ひらいた。
間違いない。俺の記憶は間違いではなかった。
手帳が違うんじゃないかって?
それももちろん疑ったが、さすがにそこまで間抜けなほど俺も失礼じゃない。はず。
次に大学側だ。あいつら採点ミス、或いは掲示ミスでもやらかしたんだろう。そうに決まっている。
しかしこの場では確認のしようもない。
最後に自分の脳を疑っていると、聞きなれた、だが聞いたこともない声が俺の耳を貫いた。
「キョン!!!あんた、やったじゃないっ!!!おめでとうっ!!!!!」
誰かがここまで嬉しそうな声というものを、俺は聞いたことがない。
「やりましたねっ!!」
これも。
「おめでとう」
これも。
桜の花びらが頬を撫ぜ、おちてゆく。

「どうして……?」
多分俺は崩れ落ちた。アスファルトの感触と小石が手のひらを突き刺す。膝がズキズキと痛む。
肩が潰れる。
どうして、俺が受かってんだ?
どうして、お前らが受かってないんだ?
どうして、そんなに手放しで喜べるんだ……?
どうして、どうして、どうしてどうしてどうして……?

もはやまともな思考の働かなくなった脳とは別に、俺の神経はある「感覚」を捉えていた。
視線。
斜め後ろからの、誰かの、柔らかい視線。
視線が、音をたてて笑っていた。


659:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:05:04 hEGEiv1b
なんとか三人は俺を落ち着かせ、ホテルへと戻った。
「すまない、取り乱しちまって……みんなが、一番つらいのにな」
うつむく俺を、ハルヒはやさしくなだめてくれた。
「いいのよ、キョン。そりゃ、あんただけ受かるってのは予想外だったけど、そもそもプロジェクトの目的は『キョンをT大に受からせる』だったんだから。成功と言えば成功よ?」
「でも、俺に時間を割きすぎたせいでみんなが……」
「そのリスクも背負っての決断だったから、非はあたしにあるわ。……有希や古泉君には、申し訳ないことをしちゃったけど……ごめん」
ハルヒの申し訳なさそうな姿など二度とお目にかかれないものだと思うが、その時に俺はそんな余裕がなかった。
「とんでもない。彼が合格してくれただけでも、SOS団の誇りですよ。ダメだったものは、しょうがないことです」
晴やかに古泉が語る。
「あなたの合格はわたしに喜びというものをもたらしている。それで、じゅうぶん」
今までにない高熱、アイスが溶けるくらいの温度を帯びた声で、長門が言ってくれる。
俺は顔を伏せたまま、くぐもった声で聞いた。
「どうして、みんな、そんなに、嬉しそうなんだ……?」
何とも言えない空気が辺りを包む。
俺は三人がどんな顔をしているか見たかったが、ちょうど間の悪いことに俺の腕の上でプレー中のゲームは九回裏の二死満塁、逆転サヨナラのチャンスだ。
要するに、腕から目が離せない。
「あんたが「「あなたが「「「仲間だから」」」」ですよ」じゃない」

ああ、すまん。
ダメだ、コレ。
俺の目がクライマックスに釘付けになっている間、背中と頭にそれぞれ三本ずつの腕の感触があった。


結果発表から上京するまでの間のことを、俺はよく憶えていない。
ハルヒは俺を元気づけようと卒業記念や合格記念などいろいろな行事を催してくれた。
三人は浪人して来年もう一度受験しなおすらしい。
「あんたのことだから留年して結局あたしたちとまた一年生やるかもね!」とハルヒはあまり笑えないジョークをくれ、しかし俺はなんとか悪態をついてみせた。
春休みに戻ってきた朝比奈さんとも宴会をした。
ハルヒは全員で上京できなかったことを詫び、朝比奈さんはなんとも気まずそうに笑っていた様な気がする。
東京でのアパートも決まり、俺が上京する前夜に送別会が長門の家で開かれた。
みんな、妙に静かだったような気もするが、気のせいかもしれない。
翌日、俺の乗る新幹線は定刻どおりに発車した。
駅にはSOS団と鶴屋さん、そして家族が来てくれていた。
表情は、憶えていない。


新しい寝床に山と積まれた段ボールを何とか片付け、俺は布団の上に寝そべった。
明日は入学式。晴れて俺もT大生である。
気分は晴れないが。


660:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:06:44 hEGEiv1b
翌朝、空には真っ黒な雲がひしめき合っていた。天気予報によると午後から雨らしい。
式場には着慣れないスーツを身にまとった新入学生の大安売り会場だった。無論俺もその商品の一部である。
下ろしたばっかりの革靴でぎこちなく中に入る。
途中で大小様々なパンフレットを配られ、たちまち俺のカバンは小銭を入れすぎて豚のようになった財布のようになった。
無数に並ぶパイプ椅子の中から適当な所に座る。
ぼんやり前を見ると、ぞろぞろと新入生たちが席を探して彷徨っている。俺の右隣りにはいかにもT大生、というようなカタブツっぽいヤツが座っていたが、左は空席。
「適当な」席を取ったのだからそこもすぐに埋まりそうなもんだと思っていたが、まるで誰も気づいていないかのように素通りしていく。
ネガティブになっていた俺は、自分が避けられているんじゃないかといらん心配をしていた。
ステージ上に目をやると、応援部と思しき学ランの男が司会者と打ち合わせをしている。なんか催すんだろう。

―この程度の操作なら、簡単なのに

しきりに腕を振り回すステージ上の学ランをボーっと見ていた俺は、突如聞こえたため息混じりの声により現実へと誘われた。
左から、ギシリという音。
こういう場面で隣に誰か座ったら、絶対顔を見るだろ?だから俺もそうする。
ビーズクッションのように柔らかな笑み。
あまり長いとは言えない髪の毛。
春に買ったばかりのタイトスカートスーツに着られている体。

「やあキョン、久しぶりだね。僕のこと、憶えてくれているかい?」
そして、変わらない口調。
ああ、もちろん、忘れられるはずがない。中三の時の親友を、そして、高二の時の事件の当事者を。
「佐々木……」
まさかこんなところで知人に遭遇するとは思わなかった。しかもとびっきりのいわくつきのヤツと。
「相変わらずずいぶんな言い草だね。知らないものばかりの中で縮こまっていたところに、これはこれはメシアがいたものだと思っていたのに」
むう。それは一理あるな。
「まあ僕としては言っておきたいことや聞いておきたいことがあるんだが、そろそろ壇上の彼が何か言いたそうにしているから後にするよ」
「ああ、そうだな」
学ランの男は、直前まで練習していた式辞を朗読し始めた。


661:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:07:34 hEGEiv1b
「まずキョン。なぜ君はここを受験しようと思ったんだい?いや、なんの他意もない。ただただ純粋な興味さ」
入学式終了後、俺と佐々木は近場の喫茶店に昼飯がてらもぐりこんだ。
「ハルヒが、」
少しばかり胸が痛む。
「高三の春にSOS団全員でここに合格しようって言いだして、それに乗っからされたんだ」
それを聞いた佐々木は我が意を得たりとばかりにニヤリとして
「やはり、涼宮さんが言い出したことなんだね?」
佐々木はお冷を一口含んで、続けた。
「そんなことだろうとは思っていたよ。君が自分から高校教育という偏狭な枠組みに挑んでいくとは、到底思えないからね。それで、涼宮さんや、古泉さんに長門さんは一緒じゃないのかい?」
このとき、少しばかりの違和感を感じた。
俺の知っている佐々木―高校二年の時までの佐々木なら、ちょっと考えれば自明である事柄をわざわざ聞いてくることは稀だった。
そんなことがあったとしてもそれは佐々木流の皮肉であり、この場面で皮肉を持ってくるのもらしくないっちゃない。センスが落ちたか?
「受かったのは俺だけだ。なぜかは知らんが」
できるだけ平坦な声で、主観を挟まずに言った。
すると佐々木は火のあるところから煙がたったのを見たような顔つきで
「そうか。それは残念だな。過去のことの一切を水に流していただいて、健全なるお付き合いをさせていただきたかったのだが」
といった。
ベートーヴェンだかバッハだかのジャズアレンジのBGMが大きくなったような気がした。
「ところで、佐々木」
「なんだい?」
もうとっくに料理は運ばれてきていたのだが、二人ともまだ手をつけていない。
訊きたいこと、言いたいことはこっちにも山ほどあった。
俺だけ受かったのは不自然だよなとか、どうしてお前はここを受けたんだとか、学部はどこだとか、意外とスーツが似合うなとか、キリもない。
ただ、なぜだろう。その全ての言葉の現実感が消えうせて、訊いても訊かなくても一緒のような、言っても言わなくても一緒のような、そんな気分に落とされた。
佐々木はいつからそんな頽廃的なオーラを出すようになったんだろうか。
いや、それは俺だな。最近気が滅入っててどうにもいけない。
相手への責任転嫁を自分自身でたしなめていると
「キョン?」
佐々木がミッキーマウスを見るような目つきで
「呼びかけたなら、続けてもらってもいいかな?何を言われるのかと思考したまま中座させられるのは中々に疲れることなんだ」
「あ、ああ、すまない」
そして俺は比較的に死ぬほどどうでもいい話題を振り、佐々木の哲学的見解による反撃を受け、やっと懐かしい心持を味わえた。
俺はなんとか自分を奮い立たせようと慣れないボケに挑戦してみせた。
すると佐々木はハハハと腹を押さえて笑い、
「キョン、キミは僕を笑い死なす気かい?あまりにも初々しくて涙が出るよ」
そのとき、絶対的なズレ。地元の大地震の時テレビで見た高速道路の断絶のような。
自分でもそれほど面白くないと思ってたし、佐々木を笑い殺すにしても致死量には遠く及ばない。
だがズレは、そんな「深い」ところにはない。

俺のナポリタンは冷えて固まっていた。


662:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:08:33 hEGEiv1b
「……であるからして、雨粒は重力で落ちてくるわけではないんだ。もし雨が自由落下で落ちてきているならば、僕たちは今頃ズタズタになっているよ」
予報通り昼過ぎからぽつぽつと雨が降り出し、喫茶店を出た午後三時ごろにはかなりの勢いになった。傘持ってきててよかったな。
俺の隣の博識少女は雨の降る仕組みをさっきからトクトクと説明している。指をくるくるとまわし、かなりご機嫌のようだ。
しかし、俺はというとそんな話のことは興味の外、古い言い方をすればout of 眼中 だった。
「ではなぜ雨は降るのに雲は落ちてこないのかというと、簡単にいえば……」
「なぁ」
時限爆弾から伸びた赤と青のコードを二本とも切りに行くような心境で、俺は話を遮る。
ヤツは閉じていた目を開いてこちらを見た。中断されて少々不本意そうである。
「どうしたんだいキョン、僕の話はつまらなかったかな?」
つまるかつまらないかと聞かれればつまる。今日の話は、ちゃんと聞いていればかなり面白そうな部類ではあったしな。
ただ、今ばかりはちょっと事情が別だ。
俺はビニール傘を背中側に傾け、立ち止まって正面から目を見た。

心臓が血液を送り続けている。
肺が呼吸ごとに酸素と二酸化炭素を交換している。
二人の間の水たまりがせわしなく揺れる。

「おまえ、誰だ?」

さっきまで一緒に飯を食って談笑していた相手に言うセリフではないことはわかりきっている。
もしこれが日常なら、俺は「そいつ」に悪い冗談だと猫のえずいた様な声で笑われるだけであり、もしこれが普通の友人なら多少怒りも気味悪がりもするだろう。
しかし、俺は一度仮にも世界を救い、二本に分れた世界を走りぬけ、三日間知っているけど何かが違う奴らとすごし、数え切れない八月を繰り返した。
もう、何が起こっても不思議ではない。驚きはするけどな。
そんなできれば御免こうむりたい経験値の積み重ねにより、危険信号の点灯はハッキリと見えるようになり。
間違いなく赤信号だった。


663:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:09:24 hEGEiv1b
俺の目の前の「そいつ」はあっはっはと笑いだした。雨の音と妙に絡む。
そしてひとしきりオーケストラの演奏を終えた後、さんざんヒントを与えられてようやく答えを出したできの悪い生徒を見る女教師のような目でこちらを見た。
「どうして、気付いたの?」
よんかけるごはなに?とでも聞くような声で尋ねる。
にじゅうだ、バカ野郎。
「いろいろあったんだが、まあ一番は笑いかたかな。あいつはそんな豪放には笑わない」
「正解。ま、あれだけ強調したんだからわかって当然よ」
いつのまにか「そいつ」は女口調になっていた。しかし新鮮さを感じている余裕はない。
「そろそろ正体を教えてもらえねえか。いつまでもモノローグで『そいつ』呼ばわりじゃ心が痛む」
「そいつ」はニヤニヤと、まるで普段の佐々木からは想像もできない表情で
「肉体という点においては、あなたの知る佐々木さんで間違いないわ。ただ、心は別物ね」
だったらとっととその体から出て行ってぬいぐるみにでも入り込んでやがれ。見世物にすれば二人分の学費くらいは稼げそうだ。
「つれないのね、いつも一緒にいる関係だったというのに」
お前のような奴は知らん。
「それじゃ、大ヒントあげるね?」
「そいつ」はエレベーターのボタンでも押すかのように人差し指を街路樹へと向けた。

茶色の枝からピンクの靄が滲むように。
音もなく、目の前で、銀杏から桜が咲いた。
花びらが雨に連れられアスファルトへ着陸してゆく。

どうしようもない既視感。
今は春だが、銀杏から桜が咲くはずがない。
秋に桜が咲くように。

こんなすごい手品を見せられたのだからなんか反応してやらないと失礼だとは思ったが、生憎俺はこの時日本語を忘れていた。不明瞭な母音が口から漏れる。雨に消される。
「……、に、いち、ハイ時間切れ。ホントは自分で気づいてもらいたかったんだけど、もう待ちきれないわ」
人の同意も得ずにカウントダウンするな。
「そいつ」は桜になってしまった銀杏から人差し指を自分の顔へ向け、
「長門有希が言うには『進化の可能性』、朝比奈みくるによると『時間の歪み』、古泉一樹によると『神』、でも」
宇治拾遺物語を朗読するように淡々と。そして俺を指差し
「あなたにとってはどうなのかしら、キョン?」
割と佐々木に近い微笑を造った。
革靴に雨が浸み込んでいた。


664:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:11:12 hEGEiv1b
ハルヒの持っていた願望をかなえる力は高校二年の春以降弱まる一方であり、同時に古泉の出動回数も目に見えて減っていた。
それを俺は喜ばしく思いつつ、朝比奈さんや長門が所属に戻ったら嫌だとか多少不安になりつつ、時を過ごしていた。
ところで急な話だが、質量保存の法則って知ってるか?いや、あまり深い話にはしない。ぼろが出る。
まあ要するに、力は消滅することはないってことだ。
消えたと思ったエネルギーは熱エネルギーとなって宇宙に放出されてるだけで、無くなってはいないとか、そういう話。
ではここで問題。
ハルヒから消えた変態エネルギーは、どこへ行ってしまったのでしょうか?
知るか。
質問自体思いつきもしなかった。
そして今、問いと答えは一緒くたになって提供された。問題集なら失敗作だな。
問題兼解答は俺の前で傘を揺らしている。
「あの、力……?」
「そ。だいたい力が意思をもってないなんて、とんだ決め付けよ。人権侵害も甚だしいわ」
何が起きても不思議じゃないが、驚きはする。当然だろ?
「涼宮さんはちょっと自我が強すぎて、あたしの出る余地なんか全くなかった。それで、願望をかなえる力だけを利用された。面白くないと言えば、面白くなかったわね」
タイトスカートから伸びた足で水たまりを撫でる。
「その願望ってのも、ほとんどあなた関連のものばかり。まったく、こっちの気も知らないで」
しつこいようだが、知るか。
「でも、時が経つにつれて涼宮さんはわたしの力を忘れ始めた。行使しなくてもあなたと居られるようになったから。そして、わたしの鎖は緩んだ」
コイツ、俺がちゃんと聞いているとでも思ってるのか?勝手に進めやがって。
話半分には聞いてやっているが。
「ターニングポイントは、想像つくでしょ?」
それは俺に答えを求めてんのか。めんどくさい。
「高二の春か?」
投げ捨てるように言ってやったが、「そいつ」は満足げに跳びはねた。水たまりが砕け地面をたたくヒールの音が雨の中響く。
佐々木の格好でやるそれは、普段とのあまりのギャップに思わず笑いそうにもなった。

665:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:13:45 hEGEiv1b
「その通り。あのパラレルデイズの後、わたしは佐々木さんからの熱烈なオファーを受けた。涼宮さんの拘束は緩みっぱなしだったから、随分と簡単に移動させられたわね」
「熱烈な」という形容詞が三本の指に入るくらい似合わなさそうな奴だが、佐々木は。
「佐々木は、あいつは変哲な力は必要ないと言っていたはずだ」
「女心と秋の空、てとこかな?わたしが佐々木さんに移住する前のことは確かめようがないけど」
「そいつ」は小難しい喩えを使わないから佐々木より解読は簡単だが、理解が今一つ追いつけない。
「それで佐々木さんのとこに移ったはいいんだけど、彼女の願望はまたしてもあなたに関するもの。ホント、あなたって幸せ者ね。二人しかいない女神の両方に愛されるなんて」
なにやら爆弾発言を続けていく。これは止めた方がいいだろう、俺のためにも。
「あの二人は恋愛感情を精神病と見なしているような奴らだぞ?そんなワケあるか」
昔似た様な事を古泉に言った気がするな。
「だったらその精神病に二人してかかっちゃったんでしょ。あなたもいい加減認めなさいよ」
ジト目で俺を睨む。表情豊かな佐々木も、割といいなとかは思ってないぞ。
「ただわたしにとってのラッキーだったことはね」
佐々木っぽい微笑に顔を戻して
「佐々木さんの自我がそれほど強くなかったこと。あなた以外への執着が弱かったこと。だから、私はこうやって表に出て来れる。あなたと話せる。」
傘をクルクルと回しながら告げる。雨が横なぎにとんでいく。

「そいつ」はしばらくそうしていたが、突然俺の目を見て
「なんであなたしか合格しなかったか、わかる?」
俺の逆鱗に触れた。
俺は佐々木の体に掴みかかった。傘は後方に打ち捨てていた。
「おまえが、なにかしたのか?」
雨の音が消える。
三人の顔が浮かんでは消えてゆく。指はぎりぎりと回転する。

「痛いよ」

不意に聞こえた、弱々しい声。
いつもの佐々木なら消して吐かないような、悲しそうな声。
俺は弾かれたように佐々木から離れた。
二人の乱れた呼吸音が不規則に重なる。
雨は再び聴覚の捉えるところとなる。

666:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:15:00 hEGEiv1b
先に口を開いたのは向こうだった。
「そもそも全員が合格するだけの力はあった。しかし受験のその前後に佐々木さんは最後にして最大のオファーを行ったの。そして涼宮さんは残った一回分の力をあなたの合格へ使い、自分は千年に一度くらいのミスを犯した」
どうしてそんなことが言える。
「そいつ」は、それはあたしの一部が涼宮さんにのこってたから、と返して、こう続けた。
「長門さんと古泉君は、涼宮さんが落ちたことを知ったそれぞれの上層部が観察を続けさせるため、ってところね」
「それじゃ、佐々木が」
力を奪ったからか、と言おうと思ったのだが、「そいつ」は申し訳なさそうな口調で割り込んできた。
俺も、そんなこと言いたくはなかったから助かった。
「佐々木さんを責めないで。彼女は、あなたと居たいと思っただけだから」

強くなってきた雨のもと真新しいスーツをお互いずぶ濡れにしながら、現実離れした話は続く。
「お前は、なんなんだ。何がしたいんだ」
「とりあえずあなたと佐々木さんをくっつけちゃって、そのあとは、そうね。世界征服でもしちゃおうかしら」
冗談だろ?
「マジ。前半も後半もえらくマジ。やっと自由に力を使えるようになったんだから、それぐらいのことはやらせてもらうわよ?」
コイツ、ハルヒよりもエキセントリックな思考を持ち合わせてやがる。世界征服なんて今どきショッカーすら狙ってないかもしらん。
「そんなことには、させない。いくらなんでも、お前の力を巡る勢力が黙っちゃいないだろう」
すると、「そいつ」は、ってそろそろめんどくさくなってきた。「彼女」でいいだろう。訓読みで「かのおんな」だ。反論は聞かん。彼女は佐々木のようにクツクツと笑って
「ああ!それをまだ説明してなかったね」
と言い
「どの勢力も、わたしが移動したことには気付いていないわ」
とんでもないことを告げた。
ありえないにもほどがある。たとえば「機関」なら俺の経歴から交友関係まですべて調べ上げたし、情報統合思念体はそれこそ情報の塊だし、未来人は未来からの観測が効くはずだ。
そんな奴らが、最大の関心事である力の動向について知らない訳がない。
「認識できないものは知りえない、ってこと。力をそういう風に使えば、連中は何も知ることができない。わたしの望むがままに」
彼女は右手で自分の小さな肩をさする。さっき締め付けたのがきついんだろうか。
俺はやや後悔した後、相手の言ったことを反復して、恐ろしい心境に陥った。
あいつらの助けが借りれない。これは、かなりのマイナスだ。俺一人でできることなどハルヒに「俺はジョン=スミスだ」ということくらいだし、それも力がなければ思い出話で終了してしまう。
「高二の時の事件が収まったのも、後に力を行使したから。藤原くんがあんなにやさぐれてたのは、力の届かないほど遠くの未来からわたしの愚行が観測できたからかもしれないね」


667:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:15:31 SyDHrdIm
支援

668:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:16:04 hEGEiv1b
「でも」
でも、彼女は、嬉しそうに悔しそうに続ける。
「あなたには、わたしの力が及ばなかった。涼宮さんの中にいた時も、佐々木さんの中に移ってからもそう。あなたの周囲の環境は変えれても、あなた自身は変えれなかった」
彼女は俺の落ちていた傘を拾い上げ、俺の手を握りながら傘を握らせた。
手が冷たい。
「そんなだからこそ、あの二人も惚れちゃったのかもね」
もう、反論するのもばかばかしくなってきた。俺が思いつく問題など、全て解決しているに違いない。なんせ、神様なんだから。古泉に言わせれば。

彼女は佐々木譲りの細い眼をいっぱいにあけた。
「さあ、それじゃゲームを始めましょうか」
オセロや志知奈良部、じゃなかった七並べなら喜んでやってやるが。
「わたしは佐々木さんの願望通りあなたと佐々木さんをくっつけにいく。あなたはわたしを涼宮さんのところに戻すかわたしを『殺して』しまえば勝ち。佐々木さんに落とされたら負け」
ふん、神様と凡人世界選手権出場者の俺が戦うとは、公平なゲームだな。
「しかしこっちには時間がいくらでもある。佐々木に落とされなきゃいいだけの話だ」
すると彼女はすこぶる楽しそうに
「難しいよー?佐々木さん自身ホントに本気だったから。わたしが言うのもナンだけどほんとにあの娘かわいいし」
ホントにナンだな。
「それに、時間無制限じゃないの」
おい、詳しく説明しろ。
「佐々木さんの自我はそれほどでもないって言ったよね?そこにわたしくらいの自我が入り込むと、佐々木さんは表に出てこれなくなっちゃうの。ちょうど、涼宮さんの中にいた時のわたしみたいに」
「そうなるまでの時間は、どれくらいだ」
「まあ、持って一年ってところでしょうね」
こともなげに言いやがる。他人事のように。他人事か?
「でもそれだけじゃあまりに不公平だから、わたしを取り巻くグループへの情報統制は解くわ。敵も増えるけど、味方がいないとあなたのクリアは難しそうだもの」
それはそれはありがたいこって。
「だが」
俺は最後の疑問を口にする。質問ばかりで疲れた。
「どうして佐々木の願望を優先するんだ?世界征服がしたいなら、そっちを先にやりゃあいい」
言ったあとで、墓穴掘ってやしねえかとかなり己の判断を呪った。スタートの前にゲームオーバーなんて悲しすぎる。
「それはダメ。すべてがコントロール可能になるまでは」
俺は意味がよくわからん、って顔をする。

「あなたを好きなのは、三人目の女神も同じこと」

わからん。心から。

「それじゃ、スタート」

彼女の右腕が俺の顔に伸びてくる。豪雨の中、なぜかその腕は濡れることなく俺の顎にたどり着き、至極愛おしそうに撫で上げ。
俺と触れ合うくらいの場所に立ち。
そして小さな手を俺の後頭部に添え頭をゆっくりと下げ自分はつま先をあげて。

その音は、雨に消える。

世界が、息を呑んだ気がした。


669:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:20:07 hEGEiv1b
終了です
自分としてはこれで終わりなんですが、もし続きが出来たらまた投下させてください
ありがとうございました

670:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:21:22 bxs4KkQq
GJ!乙。
3人目はオリキャラなのか。

671:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:22:56 sbg6Wtra
乙続き待ってる

672:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:23:16 AOOcqIp2
乙!

673:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:23:27 v5iLOAmT
読むの早いな

674:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:25:37 FR7Nb61h
まだ読んでないけどこのタイミングで投下してくれたことに感謝するわ

675:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:27:50 q8mlYRlK
乙乙

676:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:30:03 PH0IOur3


677:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:34:36 SyDHrdIm
この逆パターン
中学以降のハルヒの性格が能力のものだったら
その場合は佐々木に能力が移ると共に、小学生の性格に戻るのか

678:名無しさん@ピンキー
08/06/19 02:55:47 IbvaozOZ
この流れで、いかにも良作っぽい投下が来るとは夢にも思わんかった。
これで終わりってのも……まあ悪くはないけど、もし続きが思い浮かんだら是非投下して欲しいぜ。

679:名無しさん@ピンキー
08/06/19 03:25:44 H36Gho70
お疲れ様でしたありがとうw

680:名無しさん@ピンキー
08/06/19 03:47:49 cRe08dVs
個人的には佐々木はちょっと黒い感じが好きなんだ。
しかしこれはイイ。これで終わりってのがある意味ゾクリとする感じでいいかもw

681:名無しさん@ピンキー
08/06/19 04:43:50 riNhuBjs
正直、落とす方にしてみれば流れなんてあまり関係がない。
どれだけ荒れてても投下が始まればピタっと止まるのは投下したことある人ならみんな知ってる。
その後荒れるか荒れないかは内容次第。

ここまでの反応がこのスレの全てだろう。
読み手の態度が~~とか文句言ってる作者は「なんで自分が投下した後には叩かれてしまうのか」、
客観的に考えて現実を直視した方が良い。文句言われる作者と言われない作者がいるということになにかを感じて欲しい。

面白かったです。お疲れさま。
この流れで投下したから、と言う評価は失礼千万です。

682:名無しさん@ピンキー
08/06/19 05:56:13 48pWUhtn
>>669
GJ!先の展開が全然読めなくてすごい面白かった。
「そいつ」の正体が朝倉か朝比奈(大)か九曜かとどきどきしながら読んだ。
みくる卒業、ドラゴン桜、長門不合格とSSの狙いがわからないのとメインのはずの佐々木がなかなか出てこないので不安になったけど
最後で見事にすべてのつじつまが合って気持いい。

683:名無しさん@ピンキー
08/06/19 06:52:50 eMfz2LtS
ほめ方けなし方(レスの内容、レスの集まり具合)も実にわかりやすいワンパターンだって事になにかを感じてほしい。
これは作者でなく感想書く側にだけどね

684:名無しさん@ピンキー
08/06/19 07:25:20 fYY43C2o
俺、こういう>>(683)被害妄想だけで煽るしかしない人(下手すりゃマンセーされない書き手か?)が一番の弊害だと思うんだよね
コピペなんかより余程有害に感じるんだが

それにしてもこのSSは面白かった。ゾクゾクっとくる系は久しぶりだな
やっぱり面白い話の後は普通に感想書く人一杯いるし荒らしも空気読んで大人しくしてる
結局SSスレなんてのは投下される作品次第なんだよ。思い知った

685:名無しさん@ピンキー
08/06/19 07:37:32 eMfz2LtS
>空気読んで
この空気がクセモノなんだよね
続けてるとわざとらしさに気づけなくなる

個人の意見で済まさず総体を持ち出しはじめるようになると
自分をかえりみるなり他のスレと比較するなりした方がいいな

もっとも、ゴリ押しでせっかくわざとらしさに染まらない部分を排除して作った安住の地を
健全化しろというのは余計な世話だろうけどね

686:名無しさん@ピンキー
08/06/19 08:49:56 9TCcl8sE
良作に感動して何が悪い。
てわけで、>>669面白かった。是非続きをお願いします。

687:名無しさん@ピンキー
08/06/19 10:32:04 A1jhZGO8
今は投下するなら最高のタイミングだろ
どんな駄作でもGJと乙しかつかないし

688:名無しさん@ピンキー
08/06/19 10:41:27 eMfz2LtS
駄作は逆に一様にこきおろされるよ
この一様さが問題なのだが自覚は無いらしい

689:名無しさん@ピンキー
08/06/19 13:35:02 IbvaozOZ
ようするに、この手のスレの癌細胞はID:eMfz2LtSみたいな奴。

690:名無しさん@ピンキー
08/06/19 13:39:14 vtqlWsNY
それは失礼すぎる

あまりにも癌細胞に失礼

691:名無しさん@ピンキー
08/06/19 14:11:32 6Zme+ji1
>>683
>>685
>>688
これだものな。どう見ても荒らし目的の書き込みではなさそう
一番「臭い」タイプのゴミだな

692:名無しさん@ピンキー
08/06/19 15:55:25 kdjuYuIQ
こーいう、自分が誉めて貰えなかったのを恨んで文句言い続けてます系の元書き手っぽい奴が一番うざったい
へっぽこな話を投下する奴に限って直後の自演とか酷いし

693:名無しさん@ピンキー
08/06/19 15:56:54 7GuWfRlr
SSスレなんて投下する側と感想を述べる側の覚悟があればいいんじゃないの?
感想の在り方を議論するなんてバカなの?

694:名無しさん@ピンキー
08/06/19 16:09:41 eMfz2LtS
>へっぽこな話を投下する奴に限って直後の自演とか酷いし
そうそう、マジョリティ演じても実際の質が変わるわけじゃあない
ただ自賛にツッコミが入る空気を懸命に排除してるだけで
やってる本人には一番耳が痛い指摘だろうからねえ

そのうえIDはかわってもメンタリティの共通項の多さを隠せてないのは若さゆえかねえ
同じスレに情熱かけすぎると自分だけ見えてないものが増えるよ

695:693≠692
08/06/19 16:14:04 LQUOfNlA
>>694
あのさ、多分面と向かって直接言ってすら理解してくれないんだろうけど、


君はこのスレのSS投下阻害要因の少なくとも一つだよ。




696:名無しさん@ピンキー
08/06/19 16:36:03 cRe08dVs
恒例の自演が始まりましたよ。

697:名無しさん@ピンキー
08/06/19 17:35:43 IbvaozOZ
>>695
荒らしにマジレス超カコイイ。
放っておきなさい。

698:名無しさん@ピンキー
08/06/19 18:55:22 QxPM47IB
ファンの楽しい雑談と面白いSSが読みたいだけなんだが、
そんなスレでバカに水と肥料やって何を収穫したいんだよとw

699:名無しさん@ピンキー
08/06/19 19:45:53 pqX8dzAS
雑談なんかいらねえよw
自分を含めてキモヲタしかいないこんなスレの馴れ合いレスなんか見て楽しいわけねーだろ
俺が読みてえのは萌えエログロラブコメギャグだけだ
お前がバカに肥料やってる張本人だっつーの

700:名無しさん@ピンキー
08/06/19 21:01:50 k5SrgzDn
>>669乙なのね

で、またこの流れかw

701:名無しさん@ピンキー
08/06/19 22:51:15 Q7vUll8h
T大に落ちた俺に言わせると2年生の途中から努力する程度でそれまでバカだったやつが受かるなんてありえない


702:名無しさん@ピンキー
08/06/19 22:53:22 fo+hWYyA
そんなツッコミ入れてるようじゃT大も落ちるよ。………うん

703:名無しさん@ピンキー
08/06/19 23:00:19 o2tC5s9b
『変態佐々木シリーズ』マダー?

704:名無しさん@ピンキー
08/06/19 23:09:25 lNhTh4IY
一年ちょっとで東大入っちゃう人とかも実際にいるしなあ
本物の天才なのに勉強知らないとかやる習慣がなかったとか、そういう類の
>>701は一般論ではあるけれど有り得ないってわけでもないな。多少痛々しい

705:名無しさん@ピンキー
08/06/19 23:20:13 a3Erap8m
東大ねぇー元東大生だけどあんま天才天才ってやつはあんまいなかったけどね。
中には受験勉強なんてしたことないとか言い放つやつもいたけど
個人的には東大には受かったけど京大には落ちたから胸糞は悪かったのだけは覚えてる。実家京都だったしな

706:名無しさん@ピンキー
08/06/19 23:42:21 4sdGkprt
今度は学歴厨が騒ぎ始める時間ですか?

707:名無しさん@ピンキー
08/06/19 23:43:12 wO6HyEr6
>>705
お前が文系だったってだけなオチくさい
理系は変な奴の巣窟

708:名無しさん@ピンキー
08/06/19 23:50:05 OR3K5Nub
東大入れるくらい勉強できてもこんな場所で空気読めないアホレスして愚痴ってるようじゃなんか悲しいなあ…と思いましたとさ

709:名無しさん@ピンキー
08/06/20 00:59:17 UROgVmhK
少なくとも性格か頭かどっちか悪い奴しかこのスレにはいません。

710:名無しさん@ピンキー
08/06/20 01:03:04 MAp+/vbu
俺、MITに楽勝で受かったよ。
周りの連中はみんな凄い。みんな英語話せる。

711:名無しさん@ピンキー
08/06/20 02:03:01 iFrs76By
俺、機関に楽勝で受かったよ。
周りの連中はみんな凄い。みんな超能力使える。

712:名無しさん@ピンキー
08/06/20 05:00:23 NwbPIL6M
>>705
前期京大で後期東大って珍しいな?

713:名無しさん@ピンキー
08/06/20 09:25:12 2e8wS4zE
>>701
キョンが東大受かる成績になったのは、「涼宮ハルヒの能力による」と能力さん自身が言ってますよ
誰も何も言ってなくても、あの世界ならそう解釈できる

714:名無しさん@ピンキー
08/06/20 16:12:11 rECp12jr
>>712
珍しいっていうか初めて聞いたよ
京大と東大両方受ける馬鹿なんて

715:名無しさん@ピンキー
08/06/20 19:20:36 FZRVsbu9
みんな優しいな
俺は突っ込む気も起きなかった

716:名無しさん@ピンキー
08/06/20 19:42:24 EhGhagSS
携帯で投下されてるのを知って家帰って一番にPC電源入れた。
読んだ。
面白かった。
GJ!!


あと、谷口ワロタ

717:名無しさん@ピンキー
08/06/20 23:49:54 UFwi4WRm



G






なんかの暗号か?

718:名無しさん@ピンキー
08/06/21 07:10:06 4YMcSkC7
あと、谷口ワロタ

719:名無しさん@ピンキー
08/06/21 17:05:01 /x8eudtg
どうでもいいけど今日消失長門とにゃんにゃんする夢を見たよ。





今朝ほど現実に絶望した日は無いorz

720:名無しさん@ピンキー
08/06/21 19:52:42 OONB7rcb
453 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/19(木) 23:15:47.37 ID:kjIYCTJb0
キョン「長門、今日はちょっと趣向を変えて目隠ししてやってみよう。もちろんお前も外部情報をカットしておいてくれ」
長門「了解した」
キョン「…よし、じゃあ。いくぞ、長門」
長門「あ…」

<禁則事項行為中>

長門「(中で…出されているのを…確認…)」
キョン「気持ちよかったか?長門」
長門「(コクリ)」
キョン「なら、目隠しを取ってもいいぞ」
長門「…!」
古泉「フフフ、TFEIの中も人間のとあまり変わらないんですねぇ」
キョン「プーッ、クックック…古泉のは気持ちよかったか?長門」
長門「ああ…あああ、ああ…」
古泉「ざまあみろ」
キョン「ざまあみろ」


721:名無しさん@ピンキー
08/06/21 19:59:58 fY8hmT5W
>>720
これはひどい

722:名無しさん@ピンキー
08/06/21 20:45:09 kqSafDKy
>>720
これは古泉&キョン氏ねとしか言いようがない

723:名無しさん@ピンキー
08/06/21 22:08:42 sMGoSHj6
酷過ぎる

誰か普通の長キョンか長古のラブラブHなSSを投下して中和してくれ

724:名無しさん@ピンキー
08/06/21 22:55:14 oMZjYhl4
「それ、無理」
にこやかに職人は答えた。
「ここのスレ住人はただのラブラブ話なんて叩くだけだし。正直飽きているの。
ここはスルーして事態の変化を待つ。だから、我慢して」

725:名無しさん@ピンキー
08/06/21 23:53:56 VLdYrmr+
長キョンはどうもほのぼのはあってもエロはなかなか思い浮かばないなぁ

726:名無しさん@ピンキー
08/06/21 23:59:26 OONB7rcb
エロ同人は長門の方が多いんだけどな。
個人差だろうね。

727:名無しさん@ピンキー
08/06/22 00:33:15 Kx/t5+AU
書いてみました。
よく分からない何かになりました。
エロなし。2レス。

728:長門さんが『もーん』だそうです
08/06/22 00:34:57 Kx/t5+AU
「………もーん」

「………」
「どうしたの、キョンくん? そんな『イースター島にいったらモアイの代わりに奈良の大仏が鎮座ましましていやがったような感じだ』とでも言いたげな顔をして」
「人の心を読むな、朝倉」

「………もーん」


―――――――
長門さんが『もーん』だそうです
―――――――


「で、確か俺は長門に呼ばれてわざわざこのマンションまで来たわけだが、………なんであいつはさっきから部屋の隅っこで『もーん』と言ってるんだああ可愛いなぁこんちくしょうだきしめていいですねひうぃごー」
「はい落ち着いて、そんなあなたに清涼剤。ピト、っと」
「ナイフは薬じゃねえっ!」

「………もーん」

「えっと、狼さんが落ち着いたところで質問に答えるけど、どうもキョンくんがひどい事をしたみたいなのよね」
「え、いつだ、それ」
「夢の中で」
「冤罪じゃねえか!」
「じゃあ、夢の中へ、夢の中へ」
「行ってみたいとは思いませんよ!」

「………もーん」

「あー、とりあえず、だ。俺は一体何をすりゃいいんだ?」
「慰めなさい。いえむしろ、慰み者になりなさい」
「よし、とりあえず帰るな。じゃっ!」
「しゅっ、しゅっ、と」
「ナイフを砥ぐな!」

「………もーん」

「ほっ、やっ、とっ」
「ナイフでジャグリングをするな。………あーもう、とにかく帰るからな」
「………どうしても」
「慰めろとかなんとかってのは脅されてイヤイヤやるもんじゃないだろ。じゃあな」
「………」ぐっ
「って、袖を掴むな袖を。………んあ、長門?」

「………も、もーん」



729:長門さんが『もーん』だそうです
08/06/22 00:36:10 Kx/t5+AU
「………はは、あはははは」
「キョ、キョンくん? 何でそんな鼻血だらだら流しながら壊れた笑い声をたてているのかな?」
「意外性で2倍、上目使いで2倍、そしてどもった事で3倍、12倍ですよ朝倉さん! 1000万パワーズですよ!」
「いやその計算はおかしい」
「もう脅しとかナイフとかハルヒとかオチとかなんぞ知った事か! 今夜は朝までサタデーナイトフィーバーだ!」
「まあ、『もーん』の時点で出オチだしね。で、長門さんはそれでいいの」

「もーん、もーん」

「あら、いいの? じゃ、あたしは帰るから。キョンくん後はよろしくね」
「おう、まかせろ。『もーん』の名にかけて!」
「………誰よ、それ」

「もーんもーん」
「もーん?」
「もーん!」
「もーんもーん、もーん」

「なんか居間の方からイヤすぎる会話が聞こえてくるわね。というか、あれで会話、成り立っているのかしら? ………まあいいわ、どうせあたしに言える事は一つくらいだしね」


「ではでは、ごゆっくりー、………ってね」




730:名無しさん@ピンキー
08/06/22 00:38:10 Kx/t5+AU
以上です。
ラブラブHは自分には難しいようです。
では、また。

731:名無しさん@ピンキー
08/06/22 01:18:18 aj7ouCHt
不条理4コママンガかなんかを読んだ後の気分になるなw
俺はGJと言うよ。

732:名無しさん@ピンキー
08/06/22 01:22:25 DiEVkMhT
これが俗に言う超現実主義って奴か

嫌いじゃないぜ、こういうの

733:名無しさん@ピンキー
08/06/22 01:24:25 RU9db/dF
オチがない上に意味がわからない。
誰か解説してくれ。

734:名無しさん@ピンキー
08/06/22 01:33:39 e9PnG8xa
つまりもーんということだ

あとはわかるな?

735:名無しさん@ピンキー
08/06/22 02:02:07 +45gbqvv
なんかパン工場や校庭は~とは違うベクトルの意味不明さだな
俺もこういうの好きだぜw
てかこの長門は消失長門なのか?

736:名無しさん@ピンキー
08/06/22 02:17:10 h+jnnPy/
長門がいっちゃってることだけがわかった

737:名無しさん@ピンキー
08/06/22 02:21:54 LP0MRWSP
長門みたいな心情の読み辛い無口キャラのエロを文章で表現するのは難しそう。
絵的に見栄えのするキャラだからエロ漫画にはしやすいのかも知れんが。
…でも長門の同人もあんま沢山見たって記憶ないな。
書店の棚はハルヒやみくるばっかだったような。

738:名無しさん@ピンキー
08/06/22 02:30:29 +45gbqvv
>>737
むかーしこのスレで勧められたDLアクションだったかな?
っていうサークルの良かったな

739:名無しさん@ピンキー
08/06/22 02:33:37 9C+MwLye
宣伝乙

740:名無しさん@ピンキー
08/06/22 05:30:29 P9m+CDkh
だめだ……なぜか長門がムックのような生物の気ぐるみを着てるような気がしてならないwww

741:名無しさん@ピンキー
08/06/22 22:52:32 YpvyLnoS
長門は萌えないという人が多いらしいな

742:名無しさん@ピンキー
08/06/22 23:46:33 qcfkVMz4
萌えますか? 萌えませんか?

743:名無しさん@ピンキー
08/06/22 23:46:56 WntVvL9R
アニメから入って消失読んでない人はそうじゃない?
逆に小説を消失まで読み進められたら長門に嵌ると思う


744: ◆ka5BrNUzcE
08/06/22 23:47:43 YT2e1Yaq
SS投下します。

前スレ
スレリンク(eroparo板:798番)-811
の続きです。
場面はSOS団の日常風景、シチュは前回投下分の翌日から。

>保管庫の中の人へ
改行直して頂き、感謝いたします。どうもありがとうございました。

745:誰にも優しく愛に生きる女・翌日
08/06/22 23:48:24 YT2e1Yaq
 ―これは、世界をひっくり返すトンデモパワーを手に入れた涼宮ハルヒという爆弾女と、
キョンという間抜けな仇名を持った平凡な俺と、宇宙的未来的超能力者的な仲間たちとが織り成す、
突っ込み所満載の関西ギャグ物語。

 野生動物対野生児の激突から一夜明けた翌日の放課後、見慣れないボードゲームの盤面を挟んだ
俺の対面に座る制限付き超能力者の古泉一樹は、爽やかな笑みを浮かべて申し訳なさそうに詫びを
入れるという器用な芸当を俺に披露してくれていた。
 「……それは大変な目に遭った事ですね。この近辺でイノシシが極ありふれた動物であっても、
やはり危険動物である事には変わりありません。その危険因子を涼宮さんから排除できなかった事は
『機関』として真に遺憾な話です。今後は涼宮さんが登下校される時イノシシに襲われないよう、
お望みなら『機関』は全力を挙げて山狩りをする事を約束しますよ。その時は山に一個軍団ほど投入
する事も、『機関』の力をもってすれば簡単です」
 発音こそ明瞭で爽やかな印象を与えるが、セリフ回しは無駄にクドい。これが古泉の話し方だ。
 部室で俺の説明を聞く前に、こいつも噂ぐらいは耳にしてる事だろう。昨夜学校近くの住宅街で、
キョンという間抜けな仇名の男が女の声で罵倒されていた、という噂だ。ライダーとかヒーローとか
臭いとかエロキョンとか視姦とか獣欲の限り汚して犯して嬲り倒すといったハルヒの罵声は、
俺が危惧した通り周辺住民の耳に届いていたらしい。それでもって今朝までには、北高の全生徒に
知れ渡る結果となってしまった。
 物騒な単語が飛び交っていたはずなのに、どうして誰も警察に通報しなかったのか。それとも
SOS団の悪名は、俺の知らぬ間に随分前から学校外にまで広まっていたのか。考えるのも恐ろしい。
 登校して自分の席に座り、後ろのハルヒに一声掛けようと振り向けば、うちのクラスの全員が
遠巻きに俺とハルヒを眺めてやがった。連中のざわめきの中から、第二位とダブルスコア以上の
差を付けて最も多く聞こえた言葉は何だと思う。「ついに」だとよ糞忌々しい。
 素数とその倍数と1のつく数の時だけアホになる、つまり常にアホな谷口なんか、
「キョンなんぞに先に童貞卒業された」とかほざきながら泣き喚いていたな。机に突っ伏した
奴の後頭部を、当然のように思いっ切り殴ってやった。
 さよなら俺の平和な人生。一年ほど前に俺の手を離れて無限遠点まで行っちまってたそいつが、
とうとうこの世から存在ごと消滅してしまった。再び俺の手に戻る機会はもう永遠に訪れない。
呼び戻すのは死者を蘇らせようとする愚行に等しい。せめて今は過ぎ去った美しい平和な日々
という奴に哀悼の意を捧げてやろう。
 「おめでとう涼宮さん」と歩み寄った佐伯と阪中から祝福を受け、赤面して硬直するしかなかった
ハルヒのマヌケな姿に、僅かながら溜飲を下げたものだ。一矢報いた感はあるが所詮一矢は一矢、
致命傷じゃない。相討ち共倒れどころか、俺の受けたダメージの方が遥かに大きかったんだが、
その辺をあいつは理解しているんだろうかね。ところで『佐伯』『阪中』って、あいうえお順では
『涼宮』に近いよな。二年にもなって積極的に話す女子がそれって、ハルヒの奴今ごろ新入生かよ。
 「いい加減にあなたも気付いていい頃でしょうが、涼宮さんの動揺も相当のものだったと思います。
それでも僕から一言、祝福の言葉を述べさせて頂いても宜しいでしょうか」
 心底楽しそうな爽やかハンサムスマイルを俺に向けて古泉は言った。うるさい少しは黙れ古泉。
お前の後ろで黙々と本を読む長門の態度を少しは見習ってもらいたいね。
 「そうですね。僕には彼女の心が読めませんが、長門さんが今日読んでいる本はよっぽど
面白いんでしょうね」
 お前もそう思うか。今日の長門はいつになくページを早く捲るもんな。三十秒に一度ずつ紙を捲る
長門だが、宇宙人のあいつがその気になれば、秒間数ページを一気に視覚情報として脳裏に
焼き付けるのも朝飯前である。敢えてゆっくりと読書に勤しむあいつは、月並みな表現だが
心から本を愛しているんだろう。

746:誰にも優しく愛に生きる女・翌日
08/06/22 23:50:12 YT2e1Yaq
 ところで改めて訊くが古泉、たかがイノシシ相手に一個軍団投入する『機関』って何なんだよ。
大体軍隊を動かすのにどれほどのヒトモノカネが必要だと思ってるんだ。費用対効果で言うなら、
地元の猟友会に頼む方がよっぽど安上がりで確実だと子供でも解るだろ。それでも軍隊使うのか。
生徒会選挙の時にやったアホな規模の現ナマ実弾投入といい、どんな組織なんだよ全く。
 ああ『機関』の成り立ちや基本思想は前に聞いたから結構だ。そうじゃなくて、例えば普段は
ハルヒの子守以外にどんな活動をしてるんだ。せめて組織の正式名称ぐらい出さないと、どっかから
突っ込みが入っても俺は知らん。それこそハルヒが巡回してる動画サイトで偶然発見した、
グランドチャンピオンとか四万十川料理学校とか頭頭<<トウズ>>とかと同レベルのネタ設定にしか
ならないぞ。関係ないがハルヒの奴、そのサイトのログインパスを俺の本名に設定してやがったな。
冗談のつもりで試したら一発で割っちまった。
 「『機関』は『機関』ですよ。それで僕もあなたも、僕たちを知る人々も全く不自由しない。
何の問題がありますか?」
 前々から森さんや新川さんたちが普段どんな仕事してるか疑問に思っていたんだが、今ので解った。
あの人たち普段はお笑い芸人やってるのか。やっぱり大手お笑い興行会社なんだなお前の親玉は。
さぞかし薄給で苦労してるんだろうよ、お前も森さん新川さん多丸さんも。キャシィ塚本先生の
サイン辺り、お前の親玉なら頼めば用意してくれそうだな。
 「容易な事です。『機関』は例の興行会社にも顔が利きますのでね。おっと、今のはシャレの
つもりで言ったんじゃありませんよ」
 そう弁解した古泉は、笑顔のまま無駄なまでに白い歯を輝かせてみせた。爽やかだなお前。
クソ寒いダジャレよりも、今のお前の爽やかな仕草の方がギャグとしてちゃんと機能してるぞ。
 「お褒め頂いて光栄です。なにしろ僕は道化師を演じなければならない身ですからね。最高の
賛辞を頂きました」
 ああ全くその通りだ。爽やかさも度が過ぎるとコテコテのお笑いにしかならない。お前の
キャラクターがそうだ。お前は爽やかさが売りのボケ担当だ。
 「それは涼宮さんが望まれたからですよ。爽やかなイメージの転校生、いや元転校生と言うべき
でしょうね。もう転校生属性は失われてしまいましたが、とにかく涼宮さんにとっての爽やかな
イメージだけは維持しなければならないんですよ。いやはや辛い所です」
 辛いとか何とか言っておきながら、古泉は爽やかな笑顔を崩さない。尊敬に値するプロ芸人根性だ。

 話は少し横に逸れるが、ここでコアな地方ネタについて語ろうと思う。
 俺たちの住む地域で土曜昼からオンエアされる喜劇番組では、たまに首都からやって来た爽やかな
青年役の芸人が登場する。その爽やかな青年役は、舞台の常連出演者や観客に向かって、これでもか
これでもかと己の爽やかさを執拗にアピールするのだ。これは爽やかさを強調するギャグなのだが、
他所では絶対通用しないし、解らん人には絶対解らん。俺もこの手のベタでクドいギャグは好かん。
 だがハルヒの転校生に期待するイメージというのは、正にこの手のコテコテな爽やかさなのだった。
古泉の言動はそのイメージに沿った物にすぎない。何だかんだ言ってハルヒも、小学生ぐらいまでは
例の興行会社の喜劇を毎週観て育った子なんだな。

 それよりもだ古泉。物語の復習も終わった事だし、いい加減に話を進めよう。
 「『機関』は『機関』ですよ」
 それは今さっき聞いた。天丼ギャグは御腹一杯だ。
 「……続けさせて下さい。『機関』は『機関』、僕は僕です。常に全ての考えが一致するとは
限らない。僕個人の意見としても、山狩りなんて必要ありません。実際に涼宮さんは、あなたに
迫ったイノシシという危険をご自分の力で追い払った。野生動物程度の危険など、涼宮さんの
例の力の前では大した障害にはなりませんよ。涼宮さんに対するその位の信頼感というものなら、
この一年ほどの間に僕にも備わって来たという自負はあります」
 ちょっと待て古泉、今ハルヒの力と言ったな。じゃあ何か、ハルヒがイノシシを追っ払ったのは、
ハルヒのトンデモパワーが炸裂したからなのか。鳩が全部白くなったり、みっみっミクルビーム
だったり、秋なのに桜満開サクラ子爵だったり、シャミセンがバリトンの利いた『ええ声』で喋ったのと
同じ現象が発生したとお前は言うのか。

747:誰にも優しく愛に生きる女・翌日
08/06/22 23:51:15 YT2e1Yaq
 「おや、違うと仰るのですか?あなたの話によると、涼宮さんは母イノシシに何か話しかけていた
らしいじゃありませんか。動物に言葉を喋らせる事が可能なら、人間の言葉を動物に理解させるのは
もっと容易い事です。そうは思いませんか?」
 気が付いたら俺の視界一杯に、古泉のニキビ一つシミ一つない色白な爽やか笑顔が広がっていた。
男の癖にモチ肌だなんて、どこまでも爽やかだなお前。分かったから、爽やかさを強調せんでいい。
顔を近付けるな。口からモンダミンの香りがするんだよお前は。香りの強さだと、部室に来る直前に
お口クチュクチュやってたみたいだな。爽やかキャラの為にはそこまでやるのかよ。ギャグのつもり
なら止めとけ。他所に行ったらゲイに間違われても文句は言えんぞ。
 「別に構いませんよ。要は僕の本質である、道化師としての役割さえ理解して頂けるなら
それで十分です。僕が同性愛者か異性愛者かという問題は、道化師という僕の本質の前には
大した事ではありません」
 芸の為ならゲイ扱いも厭わぬか。古泉お前こそ真の芸人だよ。何なら俺からお前の親玉に、
お前のギャラを上げてくれるよう頼んでやろうか。それ位してやってもいいと認めてやるから、
とにかく顔を離せ……
 視界一杯に広がった爽やかなニヤケスマイル、というビジュアル的には毒物でしかない物から俺を
救い出してくれたのは、横から俺の鼻先に突き出された専用の湯呑だった。

「……はいキョンくん、お茶です」
 耳を優しく擽る天使の声に惹かれて見上げれば、メイド姿の天使が俺に微笑みかけていた。
朝比奈さんだ。なんでこの人部室にいる時はいつもメイド服なんだろう。キャラ作りの一環だと
ハルヒは言ってたが、それでも学校にメイド服という組み合わせはコテコテすぎるだろう。
朝比奈さんは何をお召しになっても見目麗しいお方だし、メイド服も最高に似合ってらっしゃるから、
間違っても疑問を口にする事はないが。
 古泉の十分の一程度の適度に爽やかな笑顔、つまり自分にとっての精一杯の爽やかさでもって、
愛らしい上級生メイドさんに微笑み返す。朝比奈さん、今日は笑顔が一段と素敵ですよ。
 「ありがとうキョンくん。でも褒めてもお茶ぐらいしか出せないわよ。熱いから気を付けてね」
 すみません朝比奈さん、男は女の前では道化にもなれるんです。お茶ぐらいって、朝比奈さんに
淹れて頂いたお茶こそ、人類の至宝に喩えるべきです。温度、濃度、手に心地よい茶器の重み、
いずれも素晴らしい朝比奈茶を是非とも頂きましょうぞ。湯呑を受け取ろうとして、朝比奈さんの
細くて華奢な指に触れる。「きゃっ」と愛らしい声を上げる朝比奈さんが先輩だなんて、
事実とはいえ未だに信じられない。
 湯呑の中から湯気とともに立ち昇るふくよかな煎茶の香りとを味わって、おもむろに一口啜る。
うむ美味い。今日の茶はいつにも増して美味い気がしますよ朝比奈さん。もしかして何かいい事でも
ありましたか。
 「もう、キョンくんったら全然素直じゃないのね」
 古泉にも湯呑を渡しながら、朝比奈さんは俺を振り返って少し拗ねてみせた。全然恐さを感じない。
むしろ嬉しそうに年下の男の子をからかっているようにも見えて、本当に愛らしいお方だ。
 すみません朝比奈さん、俺のどこが素直じゃないのか全然分かりません。ですがあなたが喜ばしく
思う出来事であれば、俺もそれを心から喜びましょう。だから教えて下さい。俺は何に対して
素直になればいいのでしょうか。
 「うふふ。分かってるクセに。キョンくんも、ようやく自分の気持ちに気付いたんだなって……」
 紙の捲れる乾いた音が、俺を至福の一時から呼び醒ました。

748:誰にも優しく愛に生きる女・翌日
08/06/22 23:52:27 YT2e1Yaq
 小さく悲鳴を上げて朝比奈さんが縮込まる。音の発生源に目を遣れば、長門がパイプ椅子に
座ったままハードカバーに目を落としている。長門の姿には、特に普段と変わった点は見られない。
 だが朝比奈さんは、猛獣と遭遇して怯える小動物のように、おずおずと俺と古泉の下から離れて
行った。前から思っていたんだが、やっぱり朝比奈さんは長門が苦手なんだろうか。もしかしたら
俺の知らない所で、宇宙的未来的な確執でもあるのかね。平和な日常の中では忘れがちだが、
古泉も腹に一物抱えてそうな親玉に仕える身の上だ。本人らの感情は別にして、それぞれの親玉の為
に三つ巴の戦いを繰り広げている事もあるだろう。
 まあ仮にそうだとして、俺には誰か一人に肩入れする気はない。皆大切なSOS団の仲間だからな。
 気を取り直して茶をもう一口啜る。明日の気温も平年を上回ります、なんて前日の天気予報では
そう言ってたが、森田さんも二日連続で予想を外す事もあるもんだね。夕方になって冷えてきたのか、
熱い朝比奈茶の有難みが普段の三割増しに感じられる。
 「朝比奈さんのお茶が美味しい、という意見には僕も賛同します。しかしそんなに寒いですか?」
 古泉は俺に言うと、手にしていた湯呑を奴が持って来たゲームの盤面脇に置いた。ふっ、と吐いた
爽やかな溜息が如何にもワザとらしい。絵柄的にシュールだ。悪い事は言わないから止めとけ。
明らかに爽やか路線のやり過ぎだ。
 「職業病だと思って頂きたいものです。話を続けましょうか……」
 さらりと流しやがった。まあ良いだろう、俺もお前の爽やかさを語るのに飽きて来た頃合だしな。
 「動物が人語を解するという事が、現実的な考えだと思いますか?ましてや相手はイノシシです。
我が子を守る為には、野犬を殺し人間を病院送りにする事も厭わない危険動物ですよ。我が子を
害する恐れのある相手に、わざわざ睨めっこ勝負なんて仕掛けますか?その間子供は無防備に
なるんです。わざわざ子を危険に晒す可能性の高い選択肢を採るより、手っ取り早く相手を
攻撃する方が合理的でしょう。例えばそう、あなたを……あなたが話してくれた内容は、
もしかしたらあなたが負傷入院するという物語に上書きされた出来事なのかもしれません。
他ならぬ涼宮さんの手によって」
 という事は何か。イノシシが睨めっこ勝負の土台に立ってくれたのも、ハルヒがトンデモパワーを
発揮した所為だと言うのか。本来の俺は今頃病院のベッドの上で朝刊の地方欄を開き、その片隅に
ひっそりと目立たない記事になって掲載された自分の本名を間抜け面で眺めている筈だって、
古泉お前はそう言いたいのか。
 ギャグだとしたら最低だ。極くありふれた野生動物一匹の為に世界は改変されましただなんて、
それこそ最低のブラックジョークじゃないか。ハルヒの気迫が母イノシシに通じたと考えた方が
まだマシだ。何があいつに猛獣との睨めっこに勝利する程の気力を与えたのか、俺には到底想像も
付かないがね。
 悪いが俺は賛同できない。お前の話には根拠がない。イノシシにとっての合理性を根拠に挙げる
つもりなら、無用な戦いを回避するのもまた合理的な選択肢じゃないか。母イノシシが死んだら、
親離れもできていないウリボウはどうなる。野垂れ死には避けられん。動物はシビアな野生の世界に
生きているんだ。子供さえ無事なら、自分から攻撃を仕掛けるなんてリスクの高い行動を避けるのも
賢明な判断だ、と主張できるだろう。
 だいたい俺と古泉のどっちが正しいのか、誰も証明できないんだぞ。お前の方が俺より正しいと
言い張るつもりなら、何か証拠を出せ。ハルヒが変態パワーを使ったと、俺も認めざるを得なくなる
確かな証拠をな。
 古泉の奴は、目だけ0円スマイルを保ったまま唇を窄めやがった。お前意外と負けず嫌いなんだな。

749:誰にも優しく愛に生きる女・翌日
08/06/22 23:53:09 YT2e1Yaq
 古泉の奴は、目だけ0円スマイルを保ったまま唇を窄めやがった。お前意外と負けず嫌いなんだな。
 「確かにあなたの仰った通り、僕は涼宮さんが能力を使ったという確証までは持っていません。
なにしろ例の空間も発生しませんでしたからね。あなたは既にご存知ですから釈迦に説法といった
具合ですが、あの空間は涼宮さんが……」
 皆まで言うな。あの変態空間は、あいつの機嫌が極限まで悪くなった時にしか発生しない。しかも
お前の超能力は例の空間が出ない事には発動せず、その場合お前は俺と同じ一般人にすぎない。
現に映画の時だって、怪奇現象が実際に発生するまではハルヒの異変に気付かなかったじゃないか。
 などと俺が反論している間に、古泉の奴は盤面に目を落として駒を進めていた。逃げたなこいつ。
そんな俺の考えを見透かしたようなタイミングで、古泉の野郎は盤面から顔を上げ爽やかにニヤケて
みせた。ええい爽やかだな。
 「お互いに根拠のない主張を譲り合わず、水掛け論に終始するのは僕の望む所ではありませんので。
それでも僕としては、涼宮さんが力を発揮してくれた、と信じたいのですよ」
 なら勝手に信じていればいい。だがな古泉、どうしてお前はハルヒの力が発動したという事にした
いんだ。
俺としては物語の上書きだなんて物騒な話は御免蒙りたいんだが。
 「涼宮さんの言葉を借りるとすれば……そうですね、彼女ならこんな風に言うんでしょうか」
 古泉は盤面から顔を離して俺を向き、額に掛かった前髪をこれ見善がしに指先で掻き上げて言った。
 「『そっちのほうが面白いじゃないの』」

 どうです、と言わんばかりに首を傾げた古泉を無視して、俺は再び湯呑を手にした。
 まったくハルヒ語録に古泉のクドい爽やかポーズが加わったら、本当に悪趣味でしかない。
これじゃ強大な力を持て余し遊び半分で弱者を虐げる、自意識過剰な悪役みたいだよ全く。
 しかし今のハルヒの口真似だが、抑揚や発音が恐ろしくあいつの特徴を捉えていたのには感心する。
良くも悪くも古泉一樹は、この一年でSOS団に馴染んで来たって事かね。ある種の感慨と共に部室
を見渡し、朝比奈茶をもう一口啜る。
 ……ふむ、濃ゆい。
 お茶の話じゃなくて、部室の面々を指して言ってるんだ俺は。
 下らないボードゲームに興じる爽やかイケメン、その後ろでパイプ椅子に腰掛けて規則正しく
紙を捲り続ける小柄な無口少女、さらにいそいそと茶菓子まで用意してくれる、部室専属の愛すべき
巨乳メイドさん。宇宙人未来人超能力者という非日常的な情報を無視してなお、俺の目に映る
日常的な彼らの姿は三者三様に強烈な個性を放っていた。しかし統一感がなさすぎる。
 不思議な要素萌え要素を、これでもかこれでもかと過剰に詰め込んだ結果、出来上がったあいつの
望む世界は、不気味なまでに関西特有の極彩色で強調されたライトノベルだった。そんな趣さえ
感じられるが、しかしこういうコテコテな光景に日々の安らぎを感じる辺り、俺もハルヒと
根は同じなんだろうな。断じて認めたくないものだが。
 いや朝比奈さんのお茶も濃いぞ。以前に俺は濃い味の茶が好きだと朝比奈さんに伝えた事があるが、
その翌日から朝比奈さんは健気にもお茶を濃い目に淹れてくれるようになったのだ。その心遣いが
嬉しくて、俺は前にも増して茶をゆっくり味わって飲むように心がけている。文字通りの喫茶という
奴だな。
団長の好み?そんなの知らん。どんなに高い茶も三秒で飲み干すハルヒは、この俺よりも茶に暗い。
だが気配りの出来る朝比奈さんの事だ。勢いよく飲んで舌や喉を火傷しないよう、団長には薄くて
温めに淹れるという、石田三成のような努力を俺の知らない所で払っているのかもしれない。

750:誰にも優しく愛に生きる女・翌日
08/06/22 23:54:10 YT2e1Yaq
 「あなたの番ですよ」
 俺が愛らしい上級生について考えを巡らせようとする機を見透かしたように、古泉は持っていた
賽子を俺の鼻先に突き付けた。掌に載せていたのならまだ許そう。だが親指と人差し指で賽子を摘み、
顔を傾けて爽やかに微笑むのは格好の付けすぎだ。視覚的な毒物なんだよお前のスマイルは。
お前俺に何か恨みでもあるのか。それとも愛らしい朝比奈さんに想いを馳せるのがそんなに
悪い事なのか。
 「それが『想いを寄せる』の言い間違いでない事を切に願いますよ、僕は」
 お前は余計な事を言うな古泉。仮に俺が朝比奈さんに想いを寄せていたとしても、お前に
とやかく言われる筋合はないだろう。恋愛は個人の自由だ。他人の恋路を邪魔する奴は、
馬に蹴られて死んじまえ。
 古泉は肩を落として爽やかに溜息を吐くと、力なく首を横に振った。俺何か変な事を言ったのか。
 「あなたが本当に平穏な日常を望んでいるのか、考えれば考えるほど疑問が深まりますね。
先程あなたは僕の意見を物騒だと仰いましたが、僕に言わせればあなたの方が遥かに危険な
思想の持ち主です。この話が涼宮さんの耳に入ったら、世界がどうなると思ってるんですか。
人知れず世界を守るヒーローとしての努力が、あなたの不用意な一言で全部台無しになるかも
しれないと考えると胆が冷えますよ」
 そうだろうな。今日はやけに冷えるもんな。
 「やれやれ」
 今のは俺ではない。古泉の奴が俺の口癖をマネたんだ。一年も付き合っていると、余計な癖まで
伝染るんだろうかね。深呼吸して姿勢を直した古泉の笑顔に、何か諦観の念が込められていたような
気もする。
 「涼宮さんの話題を僕とやり取りする時だけ、あなたは僕の役割を平気で取り上げるんですね。
あなたがそういう人物なのは存じ上げていた筈なんですが。まあいいでしょう。今はゲームの
時間です」
 そうゲームだ。古泉が持ち込んだこのゲームだが、つい遊ぶのを忘れてしまう程つまらん
代物だった。古泉ならもっと気の利いたゲームを持ち込む筈なんだが、今日に限って何故
こんな物を持って来たんだ。
 「どうしたらあなたに勝てるのか、ずっと考えていました。そしてある結論に達したという訳です。
将棋であっても運の要素が新しく加われば、勝負に紛れが発生します。運を味方に付ける事に成功す
れば、ひょっとしたら僕が勝つかもしれません。それでこのゲームを持ち込んだんですよ」
 なるほどそういう思惑か。古泉にしては考えたなと感心する一方で、その運とやらに見放されたら
どう仕様も無いなという、そんな二つの思いを胸に秘めて奴から賽子を受け取った。
 「御健闘をお祈りします」
 そりゃどうも。俺が振った賽の目は四。続いて回したルーレットの針は、ピンク色に区切られた
枠を指して止まった。まずまずの出目といったところか。
 「いえ、中々に効率的ですよ。出目を無駄にしなくて済みますからね」
 古泉を無視してピンクの駒を四個だけ進める。一応言っておくが四マスの間違いじゃない。
駒を四個だ。
 自分の番が終わり、古泉に賽子を手渡す。無駄に軽やかな手付きで賽子を受け取った古泉は、
指に摘んだそいつを祈るようなポーズで額にかざした。なあ古泉、それ必勝祈願か何かのつもりか。
 奴の出目は六。
 いい出目じゃないか、と喉の奥まで出掛かった励ましの言葉は、得意げな爽やかスマイルの前に
霧散する。大きく腕を振り、これまた大袈裟な動作でルーレットを回す古泉。針が指した色は、
無情にも歩の一個しか駒のないまつざきしげる色。
 何だよまつざきしげる色って。おかしいだろこのゲーム。
 古泉の奴は案の定というか、0円スマイルを保ったまま唇の端だけを歪めて苦笑い、なんて
使い道のほとんど思い浮かばない器用な芸当をやってのけた。

751:誰にも優しく愛に生きる女・翌日
08/06/22 23:55:27 YT2e1Yaq
 芸はいいから早くそのまつざきしげる色の歩兵を動かせ。悩んでも覆水盆に返らず、
出目をやり直す事は出来ない。負けず嫌いのハルヒでさえ、最近じゃこんな下らない事で
世界を引っくり返す暴挙には出ないぞ。早くしろ時間の無駄だ。
 そもそもこの狂ったゲームを持ち込んだのは古泉、お前だ。このクソゲーの製作者が
何を考えてチェスや将棋の駒数を敵味方百個ずつに増やしたのか、その将棋に賽子と
ルーレットなんて運要素を付け加えたのか、何でまつざきしげる色なんて色があるのか、
俺には理解できないし、また理解したくもない。
 こんな突っ込み所だけで構成されたゲームを部室に持ち込んで俺を誘ったのはお前だ。
最後まで付き合ってやるから、お前も白黒付くまでこのゲームをきちんと全うしろ。
 爽やかな笑顔を保ちつつも、賽の目とルーレットと盤上の駒とを未練がましく見比べていた
古泉に見切りを付け、俺は奴の背後でハードカバーに目を落とす長門の姿を視界に捉えた。
 おい長門―

 長門は俺の呼び掛けには応じなかった。読書に集中していても、長門は注意力を失う奴じゃない。
絶対に聞いている筈だと分かっていたので、もう一度長門に話しかけた。たかが駒一つ動かす事も
出来ずに固まっている古泉は、ここらで一旦視界からご退場願おうか。
 長門、長門さん。読書大好き長門さん。昨日俺が遭遇した災難について、是非意見を聞かせてくれ。
長門はパラパラと捲れるハードカバーに目を落としたまま、唇だけを動かして淡々と語ってくれた。
 「情報統合思念体は、涼宮ハルヒによる情報の改変を観測できなかった。私も情報に対して改変が
行なわれた痕跡を感知していない。恐らく情報の上書きが行なわれた可能性は極めて低いと
考えられる」
 だろうと思ったぜ。古泉の冗談とも本気とも付かない戯言よりも、長門の簡単な説明の方が
ずっと親切だ。あいつは憶測で物を言うが、長門は基本的に事実を述べる。何か意見を付け加えるに
しても、必ず事実を元に考えを展開してくれるから、自分の頭で良し悪しを判断する事もできる。
つまり聞き手にとってフェアな物言いなんだよな、長門の喋り方って。情感に乏しく聞こえても、
中身の薄い古泉の発言よりはずっと参考になる。ありがとう長門。お前の解説は世界一、
いや宇宙で一番的確だよ。
 「ただし……」
 ただし何だよ。長門にしては引っ掛かりを覚える物言いだ。言いたい事があるならハッキリ言え。
俺の声に促されてか、それとも自分から言いたかったのかは判らないが、とにかく長門は高速機械
―名前は思い出せないが、銀行とかに備えてある紙幣を数える為のアレだ―のようにページを
捲りながら珍しく饒舌な口調で話を続けた。
 「涼宮ハルヒの行なった情報改変が、彼女自身が個体として持っている能力に上乗せされる形で、
ごく僅かに発動された可能性も残されている。この世界に科せられた物理的な制約情報を変更せず、
かつ情報改変による世界への影響が誤差範囲に留まる場合は、情報の改変量が私たちインター
フェースの検出限界を下回る。その結果として、私たちが情報改変の有無を感知できなかったという
事態も、可能性として完全に否定まではできない。その仮定をもとに推測を進めると、涼宮ハルヒが
自身の情報干渉能力に気付いた可能性がある。情報統合思念体の気付かない内に、彼女が自律進化を
遂げていたとしたら、彼らはそれを感知できるレベルまでインターフェースの能力を向上させようと
するだろう」

752:誰にも優しく愛に生きる女・翌日
08/06/22 23:57:07 YT2e1Yaq
 パタリ、とハードカバーが閉じられる音がした。普段なら団活の終了を告げる合図なんだが、
まだ団長も登場していない。長門は残りの時間をどうやって暇潰しするつもりなんだろうか。
もしかして今日はもう一冊ぐらい読むつもりなのかね。
 両手に閉じた厚物を固定したまま、長門は微動だにしなかった。窓から差し込む柔らかな光に
照らされた長門の姿は、まるで一種の芸術作品だ。肖像というより、どっちかと言えば果物カゴの
油絵に代表される静物画の印象が強いが。
 長門よ。そのままの姿勢でいいから、俺の話を聞いてくれないかな。元々は聞き齧りの知識で、
しかも親友の受け売りだ。その親友も、元はある大学の先生のブログから引用したと言ってたな。
退屈なのは分かっているが、ほんの少しだけ付き合ってくれ。ハルヒの反則能力や、お前の親玉の
事情云々は別として……

 『有る』ということを証明するのは簡単だ。たった一つでも例を挙げれば、それで十分だからな。
しかし『無い』ということを証明するのは非常に困難になる。全ての例を調べ上げ、『有る』
という可能性を完全に潰して、それで初めて『無い』と証明した事になるからだ。
 悪魔の証明、と親友は言ってたな。今朝俺が挑戦した数学小テストも、悪魔の証明問題だった。
見事に玉砕したよ。谷口のアホを笑えねえ。言い訳するつもりはないが、全部の例が最初から
与えられているなんて、現実乖離も甚だしい。
 話が外れそうになったが、つまりはそういう事だ。お前の親玉でさえ、全ては知らないんだよ。
さもなくば、わざわざお前を生み出してハルヒの調査なんかする訳がないからな。だがお前は実際に
四年前この世に誕生し、そして俺たちと出会った。最強宇宙人のお前を遥かに凌ぐ高次の存在、
言ってみりゃ神様モドキみたいなお前の親玉でさえ、『無い』事は証明できないって訳だな。
 長門はようやく首だけを俺に向けた。どこまでも澄み渡った黒檀の瞳が「何を言っているの」
とでも言いたげに暖まっている。ようやく俺の話をまともに聞いてくれる気になったか。いい兆候だ、
続けよう。 
 『無い』ことを証明するよりも、別の『有る』ことを証明してから考えを組み立てて行く方が
ずっと合理的だ。全ての例を虱潰しに調べ上げる場合より、圧倒的に素早い判断を正確に
下せるからな。お前のハルヒセンサーに限界があるなんて初耳だったよ。だがそれでも
普段のお前なら、見つからない物はひとまず『無い』と判断して、こんな風に言うはずなんだよ。
 ―涼宮ハルヒによる情報改変の痕跡は見られなかった。彼女による情報干渉の可能性は
極めて低い―
 わかるか長門。『無い』ことにこだわる長門有希なんて、本当にお前らしくない。大体だな、
『無い』ことを前提にした推論というのを、世間では妄想って言うんだよ。万事合理的な
長門にしては、有り得ないまで思考が迷走しているじゃないか。おかしいよ。
 本の読み方にしてもそうだ。お前なら十数秒もあれば、本一冊の文字情報を読み取るのには
十分だろう。だがお前は敢えてゆっくりと読むんだ。まるで読書にともなう全ての行為を
楽しむようにな。文字情報だけじゃない。活字の字体やインキの擦れ滲み、紙の折り目や破れ目、
長年蓄積した染み黄ばみ、紙の表面に走る繊維の目までを、視覚のみならず触覚嗅覚まで
動因して愛するんだ。一ページに一分ぐらい掛けて、ゆっくりとな。
 今日のお前は色々とおかしな点が多過ぎる。お前の無愛想は出会った頃と変わらんが、
しかしある感情がお前の無表情の下で渦巻いているのが、今の俺には判るんだよ。
 ハッキリ言おう。長門、お前は一体何に対して苛立っているんだ。

753:誰にも優しく愛に生きる女・翌日
08/06/22 23:58:51 YT2e1Yaq
 「べつに何も」
 無表情のまま、長門は真っ黒な瞳を俺に向けて素っ気無く言う。そのまま何分ぐらい経過したか。
長門との睨めっこ勝負で、元より俺に勝ち目など無かった。喉の渇きを覚えたのを幸いに、俺は
長門から目を離す。分かったよ長門、俺の負けだ―
 淹れてから結構時間が立つのに、湯呑からは未だに湯気が立ち昇っていた。流石は朝比奈茶だ。
冬に逆戻りしたのかと錯覚するほど肌冷えのする日は、朝比奈茶で暖を採るに限る。
 真っ白な湯気を吐き出す湯飲みを手に取り、中身を一口含む。

 氷が入っているんじゃないかと思うほど冷たい液体を、口から吹き出しそうになるのを堪えて
何とか喉の奥へと送り込んだ。たとえ冷めても朝比奈さんが心を込めて淹れてくれたお茶だ。
吹き出すなんて勿体無い。できるかそんな事。しかし氷水みたいに冷たいのに、なんで湯気が
立っていたんだよ。俺が目を離した隙に、誰かドライアイスでも混入させたのか。いや違う―
 長門、お前の仕業だな。こら目を逸らして本を開けるな。その本今さっき読破したばっかりだろ。
ちゃんと俺を見て、俺の話を聞け。朝比奈さんの淹れてくれたお茶を冷たくしたのはお前だな。
冷蔵庫に入れて保存してた訳でもなきゃ、朝比奈さんにも古泉にも、ここまで茶を冷やす事なんて
できっこないんだよ。しかも冷蔵庫に入れてた訳でもない。よしんば冷蔵庫に入れていたとしても、
たった十分足らずでここまで冷やせる事は不可能だ。こんな魔法みたいな芸当が可能な人物は、
お前以外には部室に居ないんだよ。金田一探偵を呼ぶまでもなく、犯人はお前だ。
 椅子を蹴飛ばして叫び終わった途端、視界に舞う無数の真っ白な粒子が長門の姿を掻き消した。

 ―なんじゃこりゃあっ。
 親父が晩酌の度に口走る、大昔の刑事ドラマにあった若い刑事の殉職シーンみたいに叫んじまった。
間違いなく、今の今まで俺は部室にいた筈だった。黒褐色に古びた旧校舎の部室で、暖かな色の
西日に照らされつつ、朝比奈さんの淹れてくれたお茶に舌鼓を打ち、古泉の持ち込んだゲームに興じ、
静かに本を読む長門が紙を捲る音で時の刻みを数えるという、怠惰ながらも贅沢な至福の時間を
満喫していた筈だった。
 壁や窓や出入り口は消滅し、三百六十度パノラマな世界は上下左右前後水平垂直どこを見渡しても

 雪、雪、雪。
 気が付いたら乾燥粉末みたいなサラサラに乾いたバージンスノーに膝まで埋もれ、数メートル先も
ブリザードに霞んではっきりとは見渡せない。天井の代わりに広がった空を見上げれば、これでもか
これでもかと降り頻る大粒の雪。森田さんでも二日連続、実質三回も予報を外すこともあるもんだね、
ここ数日の的中率だけを論えば、良純とタメを張れるいい勝負だ。いや違う。道理で寒いと思った、
こんな猛吹雪が吹き荒れるぐらいだもんな。じゃなくて―
 ブリザードの勢いが衰えるにつれ、辺りの様子がハッキリと見渡せる。
 俺の対面に座って爽やかな笑みを浮かべる少年、その後ろでパイプ椅子に腰掛け読破した本を開き
文字に目を落とす小柄な無口少女、いそいそと茶菓子まで用意してくれる、部室専属の愛すべき
巨乳メイドさん。
 SOS団の団活風景が、そっくりそのまま雪山に移植されちまっていた。主人不在の団長席には
三角の役職プレートに、去年の今頃は最新機種だったデスクトップ。あああんなに雪まみれに
なっちまって、低温と湿気で本体が駄目になっちまう。ウェブ閲覧に興じる癖にウィルスも
スパイウェアもロクにチェックせず、定期的なファイルの整理もディスクの最適化作業もせず、
それどころかクッキーすら消さないハルヒのバカに代わって、俺がきちんと管理してきたというのに。
あの機体も今日でサヨナラか。代わりの機種って幾らぐらいするんだろう。それともハルヒの事だ、
またコンピ研から最新機種を収奪するつもりかもな。その時は全力でもって止めなきゃならん、
ああ俺の気苦労ばかりが増えて行く。

754:名無しさん@ピンキー
08/06/22 23:59:09 uQ8JzGTp
このSSがつまらないのに無駄に長いとこに対してだ

755:誰にも優しく愛に生きる女・翌日
08/06/22 23:59:36 YT2e1Yaq
 「どうしました?あなたの番ですよ」
 猛吹雪に晒されても全く崩れない古泉の笑顔が鬱陶しい事この上ない。お前寒くないのかよ。
それよりも古泉、こんな状況に置かれてもよくゲームなんか続けられるな。お前の神経は
どんな造りをしてるんだ。
 「これは御無礼、しかしあなたも最後までやり遂げると仰ったばかりじゃありませんか」
 さあ、と古泉は掌に賽子を乗せて俺に差し出した。
 「いっその事、ここでビンタを倍にしませんか?」
 古泉の爽やかスマイルの奥に、何やら嫌らしい光が差したように思われた。ええい古泉、
麻雀劇画の真似より先に、お前はゲームの基本から勉強し直せ。いつも俺に負けてるだろお前は。
大体ゲームを続けようにもだな、盤面も駒もルーレットも雪に埋もれてるじゃないか。雪を
除けようとしても駒が動いちまう。続行不可能だと判らないのか。
 それから頭の上に十センチも雪を積もらせたままで、爽やかスマイルを浮かべるんじゃない。
ギャグを通り越して最早ホラーにしか見えないぞ。怖いよお前、雪を払えよ。
 それと朝比奈さん。大変申し上げ難いのですがあなたもです。笑顔が麗しいのですが、
メイドキャップと肩の上に積もった雪を振り払って下さい。それとお茶菓子は探さなくても
結構です。それどころじゃないでしょう。雪ですよ。文芸部室でまったりと午後の一時を
過ごしていたのに、いきなり雪が降った事を、あなたは不審に思わないのですか。
 俺を見上げて小首を傾げた朝比奈さんの姿に、俺の心臓が十六ビートのリズムを刻む。だが、
 「……えっ?雪ってお家の中でも降るものじゃないの?」
 常識を斜め上四十五度に飛び越した朝比奈さんの一言で、俺は真っ更な雪面に自分の顔型を
クッキリと刻印した。そう言えば朝比奈さんは未来人だったな。立ち振る舞いだけで心癒す、
愛らしい上級生メイドという印象ばかりが先行しがちだが。それにしても今の一言はないですよ
朝比奈さん。あなたついこの前、俺と一緒に雪山で遭難したばっかりでしょう。おかしいと
思わないのですか。こんな吹雪の中で、あなたは寒くないんですか。
 「でもこの前は、寒い山の中で振る雪だったから冷たかったんでしょう?今はお部屋の中だから、
雪が降ってもちっとも寒くないわ。ひょっとしてキョンくん、寒いの?それなら、また暖かいお茶を
淹れてあげるわね」
 ―ってあなた本当に寒くないんですか。ならば身を縮込めてガタガタ震えてるのは俺だけですか。
やっぱりこの雪長門の仕業だったんだな。何で俺だけが糞寒い思いをしなきゃいけないんだよ。
 どうでもいい話ですが、朝比奈さんの居た未来では科学技術がどんな風に進歩してるんでしょう。
船が浮力で浮いてなかったり、室内で冷たくない雪が降るような未来って、どんな世界なんですか。
 俺が聞くと朝比奈さんは、唇に指を宛てて『静かに』のポーズを取り、ウィンクして俺に言った。
 「禁則事項です」

 この台詞も久し振りに聞いた気がする。彼女の仕草に心拍が二十四ビートまで跳ね上がった所で、
もう一度ブリザードが視界を完全に覆い隠した。ああマイエンジェル朝比奈さん、生きていたらまた
お目に掛かりましょう。まずはこの世界を元に戻すのが先です。
 おい長門―俺は部室を雪山に変えた張本人の姿を探す。何でお前はこんな事をしでかすんだ。
何か俺に言いたい事でもあるのか。だったらちゃんと俺に話せ。いきなり人を凍り付かせようと
するなんて、普段のお前の言動と比べたらまるで高校生と四歳児ほどに違う。一体何に腹を
立ててるんだ―


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch