true tearsのエロ小説スレ エロい涙 3滴目at EROPARO
true tearsのエロ小説スレ エロい涙 3滴目 - 暇つぶし2ch550:名無しさん@ピンキー
08/10/01 00:04:16 +P2k2YvD


551:名無しさん@ピンキー
08/10/01 11:15:21 NKhfJAtz
            i⌒r.´   ヽ
            l. | ,lノリハリ)
キタ━━━ ノ,,ノゝ(!i゚ヮ゚ノ━━━!!!!!
          ((.  ⊂)_6)つ
              .i__|_i ◯
               し'ノ

552:はじめての外泊-1
08/10/03 01:48:51 bOGg0fn/
トゥルー・ティアーズ サプリメント・ストーリー

 『 は じ め て の 外 泊 』

 ― all night long ―



《 一 きちゃった……》

「じゃ~留守番、お願い。すぐ戻るから」
 比呂美は靴を履きながらそういうと、少し急いだ様子でドアを開けて出て行った。明らかに小
走りになった比呂美の足音がすぐ小さくなって消えた。ひとときの別れ―。とても『別れ』と
は言えないほどのちっぽけな『別れ』でも、比呂美の部屋にひとりで取り残されると寂しさが襲
ってくる。比呂美のいない比呂美の部屋―。比呂美は、この部屋で毎朝ひとりで起き、毎晩ひ
とりで眠る。その寂しさに比べれば、こんな『別れ』なんか『別れ』のうちに入らないというの
に。眞一郎は自嘲気味に顔をゆがめると、ドアの鍵をかけ、リビングに戻っていった。
 眞一郎は後悔していた。
「シチューが食べたい」と思わず口に出してしまったせいで、比呂美はひとりで買い物をする羽
目になったからだ。冷蔵庫を開けて食材が足りないことに困っている比呂美に、「一緒に買い物
にいこう」と眞一郎はフォローしたが、比呂美はその提案をかたくなに拒んだ。
 なぜ? と眞一郎が尋ねると、「セフレで一緒にいるところ、見られたくないし……」と比呂
美は答えた。その一言で眞一郎は妙に納得させられた。もし、『セフレ』という名のスーパーに
一緒にいるところを目撃され、その噂が妙な方向に膨れ上がった場合、『セフレ(エッチ友達)
がセフレ(というお店で)でお買い物』というレッテルを貼られかねない。それは、ラブホテル
からふたり一緒に出てきたところを目撃される恥ずかしさに匹敵するだろう。そして、この手の
噂は当の本人たちにはどうすることもできないというのが、人の世の法則だった。つまり、一度
しくじれば万事休すなのだ。
 そうなると、思春期の女の子にとっては耐え難い日々が続く。ボーイ・フレンドとの仲がいい
ことを冷かされるならまだしも、『ふしだらな娘』、『もう処女じゃない』と言われ続けるのだ。
男には想像つかない精神的苦痛である。おまけに比呂美は一度、石動純との逃避行でさんざんな
目に遭っている。比呂美がそういうことに人一倍気にするのも無理からぬ話。
 しかし、出かける準備をしている比呂美は、なぜだかウキウキしているようだった。人目があ
って眞一郎と一緒に出かけられないことを残念に思っているはずなのに、これから恋人との約束
の場所に向かうような感じだった。さきほど、シチューを作る材料が足りないことを確認した比
呂美の顔は一瞬くもったが、すぐに一転して、これはチャンス! と言わんばかりに明るさを取
り戻した。比呂美にしてみれば、こういうシチュエーションを楽しみたかったのかもしれない。
恋人を自分の部屋に残して自分だけ買い物に出かけ、戻ってくれば恋人が自分の部屋の中から迎
えてくれる。そういうひとときを味わいたかったのかもしれない。
 比呂美と付き合いだしておよそ半年―。眞一郎も比呂美のそういう女心にほんのちょっと、
思いを巡らすようになっていた。
 相変わらず、比呂美の部屋は白とピンクの世界だった。眞一郎は腰を下ろさず比呂美の部屋を
眺めた。ピンクのカーテン。白い整理ダンス。階上のベッドの手すりにかけられた制服のブルー
がやけに目立った。ティッシュペーパーの箱も白かピンクしか見たことがない。おそらく比呂美
の母親の趣味が少なからず影響しているのだろうと思っていたので、眞一郎は色の趣味について
特に触れないでいた。
 眞一郎は腰を下ろし、テーブル上のテレビのリモコンに手を伸ばしかけて、あるものが目に留
まった。眞一郎が座っている場所から右斜め方向の壁際に置かれた白い整理ダンスの引き出しの
ひとつが、わずかながら浮いていたのだ。1センチあるかないかだけ引き出しが飛び出している。
眞一郎は、その引き出しを奥まできっちり入れてあげようと思って、そのタンスのそばまで行き
かけて、重大なことを思い出した。眞一郎と比呂美の仲を揺るがしそうなくらい大事なことを。
 その白い整理ダンスの引き出しのどれかに比呂美の下着が収まっていることを眞一郎は知って
いた。下着が収まっている状態を直接見たわけではなかったが、比呂美の部屋での挙動を総合的
に判断して導き出された結論だった。五段ある引き出しの上から四番目は、ブラジャーとショー
ツが収まっている。間違いなかった。その引き出しが、今ちょっとだけはみ出していたのだ。

553:はじめての外泊-1
08/10/03 01:50:25 bOGg0fn/
(罠か? 比呂美のいたずらかもしれない……)
 眞一郎は、整理ダンスに伸ばしかけた手を引っ込めた。
 今さらながら、比呂美の下着に特別な興味はなかった。この部屋で比呂美を愛撫しつづけてい
るうちに、比呂美の下着を十種類くらい知ることになった。まだ見たことのない下着はあるだろ
うが、いずれお目にかかれるだろう。わざわざ信頼を裏切ってまで未だ見ぬ下着を見ようとは思
わなかったが、ただ、ひとつだけ気になることはあった。
 それは、この引き出しにはコンドームが隠されているということだった。過去一回だけ、『行
為』の最中に眞一郎をベッドに寝かせたまま比呂美がフロアに下りたことがあった。引き出しを
開閉する短い音がしたあとすぐに比呂美はベッドに戻ってきたが、今思えば、あのとき、枕元に
準備しそこねたコンドームを比呂美は取りにいったらしかった。比呂美はそのことに一言も触れ
なかったので、眞一郎も何だったか訊かないのがエチケットだろうと思って黙っていた。
 ただ、やはりこのことは男として確認しておいたほうがいいだろうと眞一郎は思った。コンド
ームを『どこにしまっているのか』ということを。比呂美にコンドームを取りに行かせるような
ことは二度とさせてはいけないだろう。眞一郎の男としての責任感が、一度引っ込めた手を再び
引き出しへ向かわせた。
(下着を物色するわけではないんだ。比呂美に恥ずかしい思いをさせないための下調べなんだ)
 とにかく頭の中で何でもいいから理屈を繰り返して理性を押さえつけ、眞一郎は四番目の引き
出しを開けた。
 うわっと漂ってきた甘い香りに、眞一郎は魂が抜けてしまうような感覚に見舞われた。心と体
が離れていくような感覚……。やばい、と思い、まだ神経がつながっていた両腕で整理ダンスを
力強く突いて、開け放たれた引き出しの中に視線を落とした。幸いにも、眞一郎を現実に引き戻
すモノがすぐに目に留まった。眞一郎は、それを見てほっとした。下着をかき回さずに済むと思
った。引き出しの一番手前の内壁に、掌の半分くらいの大きさのコンドームの箱が二つ、下着と
内壁との隙間に滑り込まされていた。ひとつは、黒と金のデザインの箱。もうひとつは、赤と銀
のデザインの箱で、これは眞一郎が調達して比呂美に渡したものだった。
 それにしても、あの香りは何だったんだろうか。たしか、比呂美の体を抱きしめるときにほの
かに匂う香りだった。こういう拘りは、男には到底理解できない『女の嗜み』なのだろうと眞一
郎は思った。三代吉も同じようなことを言ってた気がする。愛子を抱きしめるといい匂いがする
んだ~って。

554:はじめての外泊-1
08/10/03 01:50:55 bOGg0fn/
 拘りといえば、女性にとって下着のデザインも、妥協の許せぬものだろう。眞一郎は、いけな
いと思いつつも、引き出しの中に詰められた比呂美の下着を改めて観察した。ほとんどが白とピ
ンクのものばかりで、紺色や例の縞模様のものが数種類あるだけ。全体的な印象としては、いた
ってシンプルだった。おそらく、この年頃の女の子にしてみれば下着の枚数は少ないだろう。欲
しくても買えないという現実が、この引き出しの中に映し出されているようで、眞一郎は少し切
なくなった。比呂美だって表に見えないところのおしゃれはしたいはず。それなのに、なんだ、
この部屋は。ぬいぐるみのひとつ置いていない。かわいい小物がひとつくらいあったっていいじ
ゃないか。前々から比呂美のそういうところが気になっていた。
 眞一郎は、もやもやとした思いを振り切るように引き出しをきっちり閉めた。下着を覗いたと
比呂美に疑われてもいいと思った。正直にコンドームの場所を確認したと言おうと思った。そし
て、ちゃんと謝ろう。
 いろんな葛藤があったせいで喉がカラカラだった。眞一郎は、コーヒーの入った自分用のマグ
カップに手を伸ばした。そのときだった。来訪を知らせるチャイムが鳴った。
 あまりにも予期せぬことに、眞一郎の鼓動は息苦しくなるほど急に乱れた。
 比呂美がこの部屋を出て15分くらいしか経っていない。『セフレ』までは少なくとも片道2
0分はかかる。途中で引き返してきたのだろうか。
 眞一郎は、気を落ち着かせながら、音を立てずにそろりと玄関のドアへ歩み寄った。靴脱ぎ場
の手前まで来たところで、もう一回チャイムが鳴った。そのことで、眞一郎は一気に警戒心を強
めた。
(比呂美じゃない。比呂美なら、ドアをノックするはず)
 ドアを開けるわけにはいかなかった。もし、比呂美の友達だったら、とんでもない騒ぎになる
だろう。とにかく誰だか確認しよう。眞一郎は、ドアの中央にある防犯窓に物音を立てないよう
に慎重に近づき、そっと覗いた。体の右側が少し見えた。スカートらしきものを穿いている。た
ぶん、女性だろう。誰だか分からないが、仕方がない。居留守を決め込むしかなかった。だが、
眞一郎がリビングへ戻ろうと体重を移動しかけたとき、訪問者がドア越しに声をかけてきた。
「眞ちゃん。居るのはわかってるのよ。開けなさい」
 母・理恵子だった。

555:カカ
08/10/03 01:51:43 bOGg0fn/
カカです。アクセス規制に巻き込まれていて
長いこと書き込めませんでした。
いろいろご迷惑をおかけしまして申し訳ありません。
連載に挑戦します。よろしくどうぞ。

556:名無しさん@ピンキー
08/10/03 02:08:46 q/CtH4r/
>>555
お久しぶりです
またカカさんの作品がよめるとは、うれしいかぎりです
前作、大好きです

557:名無しさん@ピンキー
08/10/03 02:50:17 tzSWMMa0
最近職人さんが次々復活してくれて嬉しいな
皆さんの作品大好きです

558:名無しさん@ピンキー
08/10/03 20:28:16 e7i1+x0G
>>544
思わず生唾を飲み込む展開…
ごちそry最高ですw
>>555
おおーカカさん久しぶり乙です。
比呂美と眞一郎のうれし恥ずかし逢引が突然のママン参戦w
続きが気になるっっ!

559:名無しさん@ピンキー
08/10/03 21:15:42 a8UdC5PC
レベルの高い連載が2つもきて嬉しい限りです。

560:名無しさん@ピンキー
08/10/04 00:19:52 7RhRX9wy
>>555
乙かれさま。お久しぶりです。
再開はとてもとても嬉しいです。
比呂美の部屋で一人となった眞一郎の
行動が実に面白かったです。

561:はじめての外泊-1
08/10/04 02:03:28 M9j1Vw0E
(比呂美とばったり会ったのだろうか……)
 もしそうなれば、比呂美はおそらく眞一郎が部屋にいることを隠すだろうが、理恵子に簡単に
見破られて白状させられるだろう。人付き合いが豊富な理恵子を騙すなど容易なことではないの
だ。それにしても、比呂美がいないと分かっているのに、なぜ理恵子はアパートに来たのだろう
か?
 眞一郎は観念して、ドアのロックに手を伸ばしかけたが、はっと気づいて再び息をころした。
(母さんのことだ。カマかけてるのかもしれない)
―――――――――――――
 チャイムを鳴らしても比呂美がすぐに出てこない
    ↓
 何かやましいことがある
    ↓
 眞一郎が部屋にいる
―――――――――――――
……という論理なのだろう。簡単だ。
 理恵子の罠を見破った気になった眞一郎は、ほっとため息をついたが、『ウラを取る』ことが
物事をうまく運ばせるためのコツだ、ということに眞一郎が気づくのにはもう少し時間を要した。
 ドアの向こうの理恵子は、沈黙を保っていた。二度目のチャイムが鳴ってから3分は過ぎた。
それでも理恵子は一向に帰る気配を見せない。
 確たる証拠を握っているのだろうか。眞一郎が今この部屋の中にいると―。これだけ部屋の
中から反応がなければ諦めてよさそうなものだが。もし、理恵子が比呂美と近くで出くわしてい
れば、そのことを話してくるだろう。でも理恵子はまだ一言しか言っていない。やはりおかしい。
理恵子の作戦だ。眞一郎がそんなことを考えていたときだった。
 ピルルルルルル―
 眞一郎のズボンのポケットの中にあった携帯電話が鳴ったのだった。
 眞一郎は、「わっ!」と思わず声を上げて飛び上がり、着地のときに床をドスンと言わせてし
まった。間違いなくドアの外まで伝わっただろう。
 ドンドン
 間髪入れずに理恵子がドアを取立屋みたいにノックしてきた。
「眞一郎ッ! 早く開けなさい。お父さんに言いつけるわよ」
 ここにいるという証拠を眞一郎は自ら提供してしまった。理恵子にウラを取られたのだ。携帯
電話の電源をまっ先に切ることを思いつかなかった歯痒さが込み上げてくる。眞一郎は、少し投
げやりな気持ちになってドアのロックに手を伸ばした。
 そのときだった。眞一郎の背後から―リビングの奥から「いやっ!」という悲痛な叫びが弾
丸のように飛んできた。眞一郎の全身はそれに激しく揺さぶられた。その音の弾丸が眞一郎の心
臓に命中したのではないかと思うくらいに。だが眞一郎は、どうにか振り向いてその叫びの主を
確認できた。

562:はじめての外泊-1
08/10/04 02:04:25 M9j1Vw0E
 栗毛色の、腰まで伸びた長い髪―。比呂美だった。
 比呂美が顔を伏せて床にうずくまっていた。
 なぜ、比呂美がここにいる? 眞一郎は当然のことながら混乱した。今から20分くらい前に
買い物に出かけたではないか。少し冷静さを取り戻しかけた眞一郎は、この状況について考え出
したが、すぐに心臓が破裂しそうな衝撃を覚えた。その原因は比呂美の格好だった。比呂美は、
上半身裸だった。正確にはブラジャーを着けていたが、肩ひもは完全に垂れ下がり、両腕には赤
いみみず腫れがいくつもあった。下の方は、スカートがびりびりに破かれていて、膝頭を擦り剥
いていた。まさに乱暴されたあとの格好だった。
(どうしてこんな……)
 眞一郎は、ドアの外にいる理恵子のことなんかきれいに忘れてしまい、怒りを増幅させながら
比呂美の方へ足を運ばせた。自然と大またで歩き、握りこぶしにさらに力がこもって振るえた。
(だれが、こんなことをっ!)
 すでに怒りが頂点に達した眞一郎は、床をどすんどすんと言わせた。眞一郎の目には比呂美し
か映っていない。だが、リビングに入りかけたところで、眞一郎は自分の右手に違和感を覚えた。
怒りに硬直している体とは対照的に、柔らかい感触。それがなんであるかは今はどうでもいいこ
とだったが、眞一郎はちらっとそれに目をやった。眞一郎の右手の握りこぶしから白いものがは
み出している。あまりにもまぶしい白さだったので、眞一郎は少しそれに興味がいった。立ち止
まり、右手をゆっくり開いた。
 白いもの。白い布切れ。小さな花の刺繍が施されている。ショーツだ。比呂美のショーツだ。
(まさかっ!)
 眞一郎は、慌ててもう一度比呂美を見た。比呂美は顔を伏せて泣いている。肩を怯えたように
震わせ、鼻水をすすり上げて泣いている。
(おれが、はぎ取ったというのか?)
 そんなはずはない。そんなことをするわけがない。眞一郎は必死に自分にそう言い聞かせた。
だが、それを裏付ける確たる証拠は眞一郎には何もなかった。逆に、眞一郎が犯人だと疑う証拠
は眞一郎自身が握り締めていた。こういうとき、『比呂美を愛している』という強い想いは、眞
一郎を勇気づけてはくれない。そっぽを向いたままで事態を変えてくれない。どう行動してきた
か、どう行動するのかが今の眞一郎を救うのだ。比呂美に事の真相を訊くしかない。それはとて
も辛いことだと分かっていても、そうしなければ、ぼろぼろな姿の比呂美を目の前にして眞一郎
は気が変になりそうだった。
「比呂美……」
 眞一郎が重い口を開くと、比呂美は意外にあっさりと顔を上げた。だが比呂美の視線は、眞一
郎を突き抜けていって、眞一郎の背後にいる人物に定まっていた。
「……ヒロシくん……」と、かすれた声で比呂美が何かを求めるように囁いたあと、部屋全体を
響かせるほどの低い声が眞一郎の背中に襲いかかってきた。
「涼子を泣かしやがって」
 眞一郎は、後ろの人物が誰だか考えるよりも先に、反射的に振り向いた。だが、眞一郎が半分
ほど振り向いてようやくその人物が視界の端に見えてきたところで、左顎に強い衝撃を受け、気
がつけば部屋の天井を見せられていた。

563:カカ
08/10/04 02:06:58 M9j1Vw0E
感想ありがとうございます。
こんな調子でちょっとずついきます。

564:はじめての外泊-1
08/10/04 09:28:34 Dwn8GQ1i
 時が止まっているみたいだった。いや確実に、仰向けにさせられ宙に浮いている眞一郎の体は
重力に従って落ちていっていたが、1秒が10秒になったようにゆっくりだった。この落下スピ
ードなら床に到達するまでに自分を殴った相手を確認できると思った眞一郎は、顎を引いてその
人物を目で捉えた。
 まず、前に突き出した右腕が目に留まった。眞一郎に強烈なパンチを見舞った拳。その拳から
腕を辿っていくと顔がある。仁王のような形相でまだ眞一郎を睨みつけているその顔は、眞一郎
にどことなく似ていたが、眞一郎よりも顔が細かった。大きなメガネもかけている。若かりし日
の父親、ヒロシだった。そうなると、このヒロシが「涼子」と呼んだ比呂美は、比呂美の母親と
いうことか。まだ宙に浮いている眞一郎は体をひねって、床にうずくまっている比呂美にそっく
りな女性を見た。よく見ると、比呂美よりも痩せている感じだ。顔は双子のようにそっくりだっ
たが、頬のあたりが細い。
 そうこうしているうちに、眞一郎の体はまもなく床に衝突する。眞一郎は、後頭部を打たない
ようにもう一度顎を引き、両腕を開いて柔道の受身の姿勢を取った。
 衝撃はすぐ来た。だが、それは衝突したときの衝撃ではなった。
 眞一郎の体が床に到達すると、周囲は一気に真っ暗になって、眞一郎は床よりもさらに下へ引
っ張られていったのだ。落下するというよりも、下へ向かって重力よりも速く加速するといった
感じだった。ものすごいスピードだった。何か目に留まるのだが、どれもが白い光の腺にしか見
えない。どこまで、落ちるのだろう。いや、進むのだろう。底知れぬ不安が眞一郎を襲ったが、
眞一郎は、まもなくこの急下降劇が終わるのを感じていた。そして、その予感どおりになった。
 こんどは衝突のときのような強い衝撃だった。眞一郎は一瞬息が詰まって気を失いかけたが、
なんとか堪えることができた。やがて、音を感じた。テレビの音声。眞一郎はうっすら目を開け
た。見えた世界が斜めになっている。体を起こすと、正常な水平の世界に戻った。眞一郎は、ゆ
っくり辺りを見回した。比呂美は、いない。比呂美に似た女性もいない。後ろを振り返った。ヒ
ロシもいない。だんだんと眞一郎の頭の中に記憶が蘇っていく。殺風景な部屋。自分の部屋でも
比呂美の部屋でもない。部屋の真ん中に置かれたいかにも古そうなちゃぶ台。そして、その古さ
とは対照的に今風な液晶テレビ。ちゃぶ台の脇に目をやると、大きなスポーツバッグがある。そ
れを見て、眞一郎はすべてがはっきりした。
「夢か……」

565:名無しさん@ピンキー
08/10/04 09:47:24 c2IaPCiX
どこまでが1なんだw日付け変わったら連番変えればいいのに

566:名無しさん@ピンキー
08/10/04 19:34:30 RngVcxny
>>563
乙です
ジェットコースターみたいな展開に状況整理が追いつかないw
題からしてお泊りを予想してたけどタイムスリップ?物なのか
取り合えず頭をまっさらにしてみた方がよさそう
続き楽しみです。

567:カカ
08/10/04 19:42:24 JaSnKz9Z
ちょっと解説しておきます。
分割投下の仕方がわるかったので混乱させてしまったようですが、
冒頭のシーンは全部、眞一郎の夢です。
ただ、この夢での出来事は、いろいろと意味をもっています。
次に投下する回からふつうに話が進みます。

568:名無しさん@ピンキー
08/10/05 04:20:01 Y3wlj3XE
>>567
自分も怒濤の展開に一瞬戸惑ったけど
最後の眞一郎の一言で納得できました

むしろハラハラさせる文章上手だと思います
続きも楽しみにしてます

569:はじめての外泊-1
08/10/07 00:48:01 eYsh6YTJ
 眞一郎の口から大きなため息がこぼれ落ちた。怒りと、追い詰められた気持ちと共に……。
 眞一郎は今、マンションの一室にいた。先週より金沢に来ていて、ここでずっと寝泊りしてい
た。今日で七日目だった。
 もうひとつため息をつくと、眞一郎は立ち上がり、ガラス窓を開けた。すぅーと爽やかな風が
秋の虫の声と共に滑らかに入り込んでくる。状況把握のためにフル回転していた眞一郎の脳が正
常運転にだんだんと戻っていくと、全身の神経からのフィードバックを感じるようになる。左顎
に痛みを覚えた眞一郎は、そこに手を当て、振り返ってちゃぶ台を見つめた。どうやら、ちゃぶ
台の角で顎を強打したらしい。父親に殴られた、左顎―。夢の中でなくても、比呂美を泣かす
ようなことがあったら、ヒロシは間違いなく眞一郎を殴るだろうう。父親としての感情とは別の
感情を、おそらく抱きつつ……。
 左顎は、ずきんずきんと疼いてかなり痛かった。そんなに強く打つものだろうかと眞一郎は少
し不思議に思い、夢の中に陥る前の時点のことを思い出してみた。
 テレビを見ていた。今日は金曜日。夜九時から洋画がはじまり、それを頬杖をつきながら、ぼ
ーっと見ていた。ちょうど『ロッキ○』だった。それで、夢の中で親父に強烈な右ストレートを
食らうことになったのか。眞一郎は苦笑した。いつの間にか、そのままの姿勢で眠りに落ち、し
ばらくして頬杖から顎が外れ、支えを失った眞一郎の頭部が落下する。この落下のときが、夢の
中での、あの強烈に下へ引っ張られる落下のときだったのだろうか。そうなると、現実と夢の中
での出来事の順番が食い違うことになるが、そもそも夢というものは時間軸に縛られないのだか
ら、そういう矛盾を考えても仕方がないだろう。大事なのは、夢の中で起こったひとつひとつの
出来事。内容が内容だっただけに、さきほどの妙にリアルな夢のことが眞一郎は気になった。リ
アルだっただけに、その記憶も鮮明だった。現時点でも夢の中の出来事をひとつも忘れてはいな
いはずだ。
 忘れていない? そういえば……。
 眞一郎は、ちゃぶ台の上の携帯電話で時間を確認した。二十一時三十三分。
 眞一郎がこのマンションで寝泊りするようになってから、毎日夜九時ごろに比呂美が電話をか
けてきた。今日まで一日も欠かしたことがない。ここへ出発する日に眞一郎は、自分から電話を
かけるから―と比呂美と約束したが、その日、見事にすっぽかしたもんだから、比呂美は頭に
きてしまって、眞一郎を当てにしないことにしたのだった。
 ただ、眞一郎は比呂美との約束をないがしろにしていたわけではない。確かに、約束どおりに
電�さく噛み締めた。
…………初めての……心が満たされないセックス…………
比呂美の焦燥を感じた眞一郎が、謝意のつもりなのか無言で乳房を弄ってくる。
だが、空しさに包まれた比呂美にとって、そんな眞一郎の気配は、今はただ煩わしいだけだった。
       
        [つづく]

570:名無しさん@ピンキー
08/11/19 16:36:03 jjssAp67
つづく!

571:名無しさん@ピンキー
08/11/19 23:20:52 jYJhvsB8
>>611
乙です。GJですっ。毎度、さすがです!
でも、意外と深刻な心理描写になっているのが、
エロスレなのに(エロスレだからこそか?)大変気になるところっす。
眞一郎が正しい分、理性的でない比呂美の焦燥との和解(?)が
待ち遠しいですっ!

572:名無しさん@ピンキー
08/11/20 00:46:30 vDZXyP/9
うーん、大丈夫だと思ってるけどちょっとドキドキしますなぁ。
いや、乙ですー。

573:名無しさん@ピンキー
08/11/20 04:16:43 EFsF7UPK
朋与男さん乙です
二人ともハッピーエンドとわかっていても
こみ上げてくる不安さは流石ですね

574:名無しさん@ピンキー
08/11/25 20:18:29 dNsWZ8l/
カカさんのが保管庫にあがってたよー!

575:名無しさん@ピンキー
08/11/25 23:06:10 boLNgAe/
>>616
おおーサンクス!ちょっくら読んでくるよ
カカさん乙です。

576:名無しさん@ピンキー
08/11/27 16:38:46 JMxzEHrG
♪眞一郎~のこころの底に・・・                  ニャル様

577:ある日の比呂美・番外編2-9
08/11/28 02:14:25 XPtSHpJz
比呂美の部屋の水周りは、ロフトの下にコンパクトにまとめられていた。
狭いながらも浴室とトイレは別になっており、洗面所の横に洗濯機を置くスペースも確保されている。
「……はぁ」
情事の後片付けを済ませた比呂美は、仕事を始めた洗濯機の横で髪を乾かしながら深く溜息をついた。
唸りをあげるドライヤーの温風に栗毛を泳がせながら、数分前の出来事を反芻してみる。
(……どうしちゃったんだろう…私……)
冷静さ、というより正気を取り戻した今の比呂美には、先刻までの自分が全く理解できなかった。
本当に妊娠を望んでいたのか、ただ中に出されたかっただけなのか…… もうそれも思い出せない。
(《気持ちいい》ってことに流されやすい……のかな、私)
……そうとしか考えられない…というよりも、そう考えたいと比呂美は思った。
眞一郎との約束された未来を破壊する結果を、自分が本心から望むはずはないのだ。
先ほどの異常な行動は、膣内射精による快感を欲した肉体の欲求に、精神が屈服しただけ。
それはそれで情けないことなのだが、受胎本能に踊らされて社会性を放棄したのだと認めるよりは、幾分マシと言えた。
「……だらしない…」
小声でそう呟いて、比呂美が内在する牝を罵倒した時、リビングに繋がるドアが外側から軽くノックされた。
「な、何?」
ドライヤーのスイッチを切って、ドアノブに手をかける。
まだバスタオルを巻いただけの姿だったが、居間にいるのは眞一郎だけだ。 別に恥ずかしがる必要も無い。
「雨あがったからさ。俺、先に行くよ」
そう掛けられた声に応えて扉を開けると、眞一郎は既に生乾きの制服を身につけ、帰り支度を整えていた。
今日は夕食を仲上の家で食べる曜日なので、二人が一緒に帰宅しても別段おかしくはないのだが……
「制服の俺と私服のお前が一緒に帰ったら……ちょっとマズイだろ?」
「……そう…ね」
眞一郎と比呂美の関係が『一線』を越えていることに、眞一郎の両親は気がついている。
しかし、たとえそうでも、『そうではないフリ』をするのが子供としての義務だ。
学校帰りの不自然な『寄り道』を見せ付けて、両親に要らぬ詮索をさせる訳にはいかない。
《二人の『深い関係』を感じさせぬよう注意を払う》 
それは大人になる前に性を繋いだ眞一郎と比呂美にとって、周囲に対してしなければならない最低限の礼儀であった。
「なるべく、暗くなる前に来いよ」
アリバイを気にしつつも、眞一郎は比呂美への気遣いを忘れることはない。
玄関でスニーカーを履きながら、「なんなら、着替えてから迎えに来るから」と優しい言葉を投げかける。
だがその眞一郎の声は、比呂美の耳には届いていなかった。
裸体にバスタオルを巻いただけの美しいシルエットが、何かに憑かれたように窓外へと視線を遣っっている。
(ホントだ……晴れてきてる)
雨は止んだ、という眞一郎の報告どおり、空を塗り込めていた厚い灰色が、所々ひび割れを見せていた。
そして、その割れ目から下界へと伸びる光の橋…… 差し込んでくるオレンジの光。
(…………きれい……)
世界はもう泣き止んだのだ。 もう美しさを取り戻しつつあるのだと、比呂美は理解した。
なのに自分の感情は、反比例するように『不』の方向へと変化したまま、薄闇の中に漂っている。 
『湯浅比呂美』を置き去りにして、明るさを回復しつつある夕空の輝き……
自身でも解読不能な混乱を抱えた今の比呂美には、その煌きが妙に妬ましく感じられた。
…………
「比呂美、どうした?」
窓の外を向いたまま固まってしまった比呂美の白い背に、玄関から伺うような声が掛けられる。
「ううん、なんでもない」
肩を小さくすくめてから比呂美は振り向き、眞一郎の元に駆け寄った。
明らかな『作り笑顔』を浮かべる比呂美に気づき、少しだけ陰りを見せる眞一郎の表情。
微妙な空気と微妙な感情が混濁し、向かい合う恋人たちの間に、気まずい沈黙が停滞した。
「……あの……」
重い気配を払い除けようと、比呂美の口が取り繕いの言葉を紡ぎだそうとする。
だがそれよりも早く、眞一郎の両腕が前に伸び、比呂美の身体を引き寄せようと動いた。

        [つづく]

578:朋与男
08/11/28 02:19:13 XPtSHpJz
2-9で終わりの予定だったのですが、
書いてるうちに長くなってしまい、分割することにしました
次の2-10で「番外編2」はおしまいです。
その先は……まだ秘密です

579:名無しさん@ピンキー
08/11/28 02:29:09 Y8kCXFw8
毎度ながらGJです!
冷静になった後で後悔する辺りが比呂美らしいww

580:名無しさん@ピンキー
08/11/28 18:29:10 dTVIe0r9
>>620
乙です。
うんちゃんと分かってるところが比呂美らしいね
さり気なく空の描写が入ってるのがなんともttらしく感じました
ご褒美あるかなw

581:名無しさん@ピンキー
08/11/28 20:02:53 38XvdtfN
>>620
乙であります。いつもながら、GJですっ!
比呂美さんの自己嫌悪モードを、“ちゃんとした”眞一郎が
どう解きほぐしてあげられるか。
楽しみにしておりますっ。

582:ある日の比呂美・番外編2-10
08/12/01 02:37:14 CThev5Wh
引っ張られる衝撃で、比呂美の裸体を包んでいたバスタオルの結び目が解けた。
「あ……」
布が床へと落ちる柔らかな音と共に、乳房と肺を軽く潰されることで漏れ出す甘い声。
湿った服で抱き締めることに遠慮があるのか、眞一郎の腕の力は普段よりも幾分弱かった。
ワンパターンなんだから、と胸中に呟いてみるが、比呂美はその抱擁を不満とは思わない。
迷いっているときに、自分をちゃんと繋ぎとめてくれる存在が感じられることは、とても心地よいことだから。
……しかし……
「あのさ……今日みたいな日は…」
「…………」
眞一郎の口から漏れ出た『今日みたいな日』という単語が、比呂美の瞳を瞬時に濁らせた。
今日みたいな日はしてはいけない……しないようにしよう、とでも言いたいのか。
(そんな常識論なんて聞きたくない。……それに……)
二人の愛が形となる可能性がある日を、眞一郎が《危険》と認識していることも、比呂美の癇に障った。
眞一郎の視野の外にある比呂美の唇が、キッと噛み締められる。
音どころか気配も発しない不満の発露であったが、眞一郎はそれを感じられないほど愚かではなかった。
比呂美とのズレを感じ取る本能が、《間違っている》ことに気づかせて、その口を噤ませる。
「……?」
想像した台詞を吐かない眞一郎を訝しみ、比呂美の唇が動きかけた。
だが、それは突如動いた眞一郎の腕が、比呂美の両肩を掴んで身体を引き離した事で打ち消されてしまう。
「!」
突き放されると思える程の勢いだったが、比呂美の上腕に食い込んだ眞一郎の指は、決して離れることはない。
乏しい腕力で比呂美の身体を自分に正対する位置に固定すると、眞一郎は真っ直ぐに目の前の曇った瞳を見据えた。
「ゴメン。 ……次は…ちゃんとするから」
「…え…」
二人の失敗を一人で背負い込もうとする眞一郎の気遣いが、比呂美の中の氷を溶かしていく。
多少のすれ違いはあっても、眞一郎の優しさと誠実さだけは変わらないのだという確信。
その揺ぎ無い事実が、比呂美の心に再び暖かな焔を灯した。
「…………うん……私も…次はちゃんとする……」
眞一郎の制服の胸元に、比呂美は額を摺り寄せるようにして甘えてみせる。
頼りにしてくれ、と相手が求めているときに、素直にそうすることもまた、愛の形だと比呂美は思った。
…………
…………
「じゃ、またあとで」
「うん」
バスタオルを身体に巻きなおし、比呂美は玄関ドアの向こうに立つ眞一郎に向かって、ひらと手を振った。
同じ様に軽く手を振り、扉の向こうに消えていく眞一郎を見送る。
金属製のドアが閉じる、バタンという大きな音。 そして徐々に遠ざかっていく眞一郎の気配。
比呂美はいつものように、去っていく眞一郎の姿を確認しようと、リビングの窓へと駆け寄った。
薄いレースのカーテンを少しめくり、仲上の家へと帰っていく眞一郎の後ろ姿を視界に入れる。
(……大丈夫……大丈夫よ……)
さっきの出来事は、ほんの些細なすれ違いでしかない。
気にするような……深刻になるようなことではないのだと、比呂美の思考が結論を出そうとした時……
「んっ……」
大人しかった胎の奥の器官が急に暴れだし、身体の主に抗議を始めた。
誤魔化すなと叫ぶように、収縮を繰り返して比呂美を責め立てる子宮。
(…………んぁ……なんで……)
不足しているモノなど無いのに…… 満たされているのに……
比呂美には自分自身が一体何を求め、欲しているのかが分からなかった。
「…私……何が欲しいの……」
無意味である事を承知の上で、沸き起こった疑問を声に出してみる。
だが、夕日に染められた部屋の壁が答えを返すことはない。
正体の分からない焦燥が、眞一郎のくれた温もりに取って代わり、体内に充満する。
(…………何なの?……何なのよッ!!……)
ささくれ立つ気持ちと、股間を濡らす愛液の感触。
比呂美はその二つを感じながら、暫くの間、窓際に立ち尽くしていた。

                      TO BE CONTINUED
                          新シリーズへ

583:朋与男
08/12/01 02:42:46 CThev5Wh
ただヤルだけの話のはずが、なぜこんなことに……
あぁ、石を投げないで下さい
新シリーズのプロットをじっくり練って、
皆様の望む結末に着地させるように努力しますので、
何卒お許しを……

584:名無しさん@ピンキー
08/12/01 06:38:12 IY9m7B4D
万札紙飛行機投げてあげるお

585:名無しさん@ピンキー
08/12/01 08:14:27 lMcRObOC
>>625
乙デス。良かったよ。
お餅を包んで投げてあげようw

586:名無しさん@ピンキー
08/12/01 23:15:13 Xq/uQA+p
乙です。ありがとうございますっ。
その上これが、新シリーズの予告編となろうとは。
それにしても、比呂美さん。結構、深刻ですな。
どこまで描いていただけるのか、楽しみです。
ま、言質も頂きましたのでw
皆が望む決着…って、この言い方があれですけれどww、
私も天空の食事を掴んで投げてあげましょw
うん。ガリンコ積んで、待ってる。

587:朋与男
08/12/02 01:43:09 Vr0Bo/O3
コメントくださった方 保管庫を更新してくださった方
そして読んでくださった皆様、ありがとうございます
石じゃないモノが飛んできてホッとしました

新シリーズは、まだ断片的なアイディアを書き留めている状態なので、
全体の道筋が決まり次第、始めさせて頂きたいと思っております
年内にスタートできるといいのですが、どうなりますか……
とりあえず、最後に眞一郎と比呂美が濃い『一発』をかます事だけは決めてますので、
どうぞご安心くださいませ

588:女同士のバスルーム 1
08/12/06 03:54:50 zXAPHRyN
「いただきます」
日本海の新鮮な魚介類で作られた料理の前で、比呂美は両手を合わせた。
見た目にも美しいこの夕食を作ったのは、眞一郎の母である。
仲上家の風景に、比呂美は自然と溶け込んでいた。
比呂美と眞一郎の母との関係は、時間と共に改善してわだかまりは消え
週に一度はこうして比呂美も一緒に夕食をとるようになっていた。

「ごちそうさまでした」
食器を片付けようとする比呂美に声をかけたのは
誰よりも彼女を憎んでいたはずの眞一郎の母であった。
「そんなことしなくていいのよ。お風呂沸いてるから、よかったら入っていきなさい」
比呂美が家族として認められたからだろう。
これまでには考えられなかった言葉と穏やかな表情だった。




冷えた手足の先に、痛みにも似た感触を覚えながら
比呂美は湯船の中で大きく息を吐いた。
「ふぅ~……」
以前は風呂場やトイレの中でさえも、気が休まる時などなかった。
だが今はこうして大きく手足を伸ばすことができる。
比呂美はようやく自分の居場所を見つけることができたのかもしれない。
(そういえば……)
ふと昔のことを思い出す。
まだこの家が比呂美にとって、とても息苦しい場所であったころ
脱衣所で着替えているところに眞一郎が入ってきて
下着姿を見られてしまい、赤面して眠れなかったあの日のことを……。
今ではその下着の内側でさえも、眞一郎の前に曝け出しているのだが
あのときのことを思い出すと、比呂美は今でも心拍数が上がってしまう。

(あのときの眞一郎君……今なら……)
鏡の前で眞一郎を想い、にこっと笑う比呂美。
そのとき、風呂場のドアが不意に開いた。

589:女同士のバスルーム 2
08/12/06 03:55:25 zXAPHRyN
「一緒に入ってもいいかしら?」
比呂美の返事を待つことなく、何も身につけていない眞一郎の母が入ってきた。
突然のことに驚きながら、比呂美は慌ててタオルを取って身体を隠した。
「あら、そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃない。女同士なんだし」
「おばさん……!!」
「背中、流してあげるわね」
比呂美が抱いていたタオルを取ると、後ろで膝をつき石鹸を泡立てる。

恥ずかしそうに俯く比呂美と、その背中を洗う眞一郎の母。
二人の間を沈黙が流れる。
「綺麗な身体ね」
眞一郎の母がぽつりと呟くように言った。
その言葉通り、比呂美の肌は雪のように白く滑らかだった。
弾力があり水をも弾く、肌理細やかな若い肌。皺や弛みなどとは無縁の身体。
「本当にあなたの母親にそっくり。嫉妬しちゃうわ」
その言葉には、かつて比呂美を苦しめたトゲはない。
「そんな……おばさんも綺麗です……」
「うふふ、ありがとう。」


背後から伸びた手が、比呂美の乳房に触れた。
「あっ、前は自分で……」
「意外と大きいのね。着痩せするタイプなのかしら」
「あの……」
「大きいし張りもあって形もきれいね」
その手は洗うというよりも、乳房の形をじっくり確かめるように、比呂美の身体を這うように動いた。
両手で下から持ち上げるように、寄せてから手をはなす。そしてまた下から……。
若い果実は重力に負けることなく、高い位置をキープしている。
気が付くと、タオルは床に落ちていた。
「んっ!」
石鹸の泡を絡めた大人の指が、先端の突起をキュッと摘んだ。
甘い刺激が全身を駆け巡り、比呂美の口からは自然と声が漏れる。
「おばさ……あっ……ん……」
「お風呂は声が響くから気をつけて……」

590:女同士のバスルーム 3
08/12/06 03:55:59 zXAPHRyN
ねっとりとした乳房への愛撫に、比呂美は手を口に当てて声を押し殺そうとした。
それでもビブラートのかかった甘美な吐息が、指の間からこぼれ落ちてしまう。
「う……あッ……ゃ………」
大人の指使いで16歳の少女を弄びながら、眞一郎の母は比呂美の耳元でたずねた。
「眞ちゃんとはもうシたの?」
「んっ……ご……めんなさい……」
「謝らなくていいのよ。でもまだ高校生なんだから避妊はしっかりしなさいね」
硬く尖った乳首を親指と中指で強く挟み、人差し指が擦り上げる。
比呂美は身体を預けるようにして、ビクンと大きく仰け反った。


乳房を弄んでいた右手が徐々に下がって腹部を撫でる。
そこには無駄な脂肪など一切ついておらず、ウエストは艶かしい曲線を描いている。
女子にしては硬い腹筋をなぞり、指先が栗色の茂みの中へと進んでいく。
「きちんと手入れしてるのね」
「お母さんが教えてくれたんです……」
恥毛が生え揃った中学二年生の春。母に教えられて比呂美は処理の仕方を覚えた。
バスケのユニフォームが袖のないデザインということもあり
脇とビキニラインを定期的に手入れをすることが、比呂美の習慣になっていたのである。
指先は小さく整えられた茂みを抜け、少女の核心である新芽に触れた。
「ひゃん!」
「見つけた……ここ、気持ちいいでしょう?」
「いっ……ん……あぁ……ダメ……」
指の腹で包皮ごしに刺激すると、新芽はぷっくりとその存在感を露にする。
石鹸のぬるぬる感と、緩急をつけたタッチが、比呂美をどんどん高い場所まで登らせていく。
ギュッと脚を閉じて快感に耐えようとするが
乳房に当てられていた左手がその脚を開くように促すと、比呂美は逆らえず身体を開いてしまった。

強烈な快感を生む新芽の下で、ヒクヒクと何かを求めるように呼吸をするたびに
ぬらぬらとした愛液が、奥のほうから次から次へと分泌されている。
愛液の泉源を探すように、中指が洞窟の中へと侵入する。
奥へ奥へ……圧迫感を感じながら指はどんどん飲み込まれていく。

「んんっ!……んぅっ…!!」
くちゅくちゅと音が出るほどかき混ぜられたかと思うと、今度は膣壁をくすぐられる。
女の身体を知り尽くした熟女の指技に、比呂美は抗うことなどできなかった。
「ほら、イッていいのよ」
「あぁっ!……だめっ!いぁぁっ!イクッ……んんッ……!!!」
我を忘れた比呂美の大きな喘ぎ声が響き渡る。
眞一郎の母は、左手で比呂美の口をふさぎ、右手の中指を折り曲げて上壁を強く圧迫した。
同時に比呂美の中で真っ白な花火が弾ける。
全身がビクビクッと何度か跳ねたあと、脱力した比呂美の身体はぐったりと眞一郎の母の胸に崩れ落ちた。

591:女同士のバスルーム 4
08/12/06 03:57:02 zXAPHRyN
アパートまでの道を手をつないで歩く二人。
「ごめんね。いつも送ってもらって」
「これからも遠慮せずに家に来いよ」
「うん……」(さっきのアノ声、聞かれてないよね?)
比呂美が立ち止まる。
一歩先で振り向く眞一郎。
「今夜は泊まっていって」
「えっ?でも……」
「おばさんも泊めていいって言ってたから」
潤んだ瞳で見つめられ、眞一郎は頷くしかなかった。
―終―

592:名無しさん@ピンキー
08/12/06 04:07:10 zXAPHRyN
久しぶりに帰ってくることができました

気がつけば放送開始からもうすぐ一年ということで
DVD買って復習したいところですが金欠ですorz
アニメのDVDってどうして高いんだろう……


朋与男さん、連載お疲れ様です
新シリーズも楽しみにしています
次回こそは朋与が主役のお話を書けるよう頑張りますw

593:名無しさん@ピンキー
08/12/06 06:47:44 DcyQ2BKf
ギャー、本当に久しぶり またあなたに会えるとは
早起きしてよかった 

594:名無しさん@ピンキー
08/12/06 17:44:47 GclpSFin
>>634
おおおー久しぶり乙~!
ママンとの絡みが実に自然でいて使えるエロさ…ご馳走様です。
眞ちゃん今夜はいつにも増して積極的な比呂美さんにエロエ…コボンもといメロメロですなww

595:兄妹じゃなくてよかった
08/12/07 03:39:00 gBQE76KC
 休日の昼下がり、比呂美の部屋。
 ごろんと寝転がった視線の先に、眞一郎は数冊積み上げられた少女漫画を見つけた。
 勝手知ったる比呂美の部屋。これが彼女の持ち物ではないことはすぐに分かった。
「どうしたのこれ?」
 ページをぺらぺらと送りながら眞一郎が尋ねる。
「何?」
 流しで洗い物を終えた比呂美がタオルで手を拭きながら顔を出す。
「あ、それ? 朋与に借りたの」
 眞一郎の隣に腰掛けて、一冊受け取ってページを開く。
「遊びに行ったときに一巻だけ読んで惹き込まれちゃって……時間も無かったから借りてきちゃったの」
「そんな面白いの?」
「うん。今度自分で買い揃えるつもり」
「へー……」
 確かに絵は綺麗だし、女の子が好みそうなかっこいい男の絵もちらほら見える。
 けど、比呂美が漫画にハマるなんて珍しいなと眞一郎は思った。
 仲上の家にいた時はそういった類のものを買ってる様子もなかった。
 居候の身分ということで我慢していたのかななんて考えていると、
「……ほら、ここ読んでみて」
「ん?」
 言われて比呂美が指差すページを覗き込む。
 彼女の長い髪の甘い香りがふわっと鼻こうをくすぐりドキっとさせられる。
「『知ってた? 私たち兄妹なんだって……』……あっ……」
 ピンときた。比呂美がこの漫画に惹かれた理由。

596:兄妹じゃなくてよかった
08/12/07 03:40:01 gBQE76KC
「これ……」
「うん。恋をした二人が実は兄妹だったっていう話なの。
 どこかに似たような二人がいたよね」
 比呂美は冗談めかして微笑む。
「俺たちは違っただろ」
 誤解だったとはいえ、あまり思い出したくない記憶だった。
「うん……でも、この話しは本当の兄妹で……結局結ばれないの」
「おかしいだろ。漫画だったら普通ハッピーエンドにするだろ? 実は血が繋がってなかったとか」
 比呂美はゆっくりページを捲りながら、
「そうだったらいいなって思いながら読んでたんだけどね……
 読み終えたとき悲しくて泣いちゃった……
 真っ先に眞一郎くんのこと思い浮かべた。
 よかったって。私たちは兄妹じゃなくてよかった……って」
 そういう比呂美の瞳には涙が滲んでるように見えた。
 そんな苦しい思いをしたのになんで、
「買い揃えることないんじゃないか?」
 眞一郎がそういうと比呂美は首を振って、
「だからこそ大切だって思いたから。眞一郎くんのこと」
「比呂美……」
 見つめる瞳が綺麗で愛しくて吸い込まれそうになる。
 そんな見とれている眞一郎の隙を付いて、比呂美はすっと唇を重ねた。
 ほんの少しの触れ合いに胸が温かくなる。
「本当に兄妹だったらこんなことできなかったね」
「もし今、本当は兄妹だって言われたらどうする?」
 口にした眞一郎自身が胸を締め付けられる思いがした。
 比呂美が身を寄せて眞一郎の背中に腕を回す。
「今さら言われたって無理……
 眞一郎くんと抱き合う嬉しさ知ったもの……
 眞一郎くんに満たされる幸せ知ったもの……」
 同じ気持ちを共有できていることに無上の喜びを感じる。

597:兄妹じゃなくてよかった
08/12/07 03:40:55 gBQE76KC
「んっ………ん、……んっ……」
 抱きしめ合い唇を重ね、抑えきれない劣情が互いの舌を絡ませあう。
「んっ……比呂美、いい?」
 とても高ぶりを抑え切れそうにない眞一郎が尋ねる。
「駄目って言われても私からしちゃう」
 抑えきれないのは比呂美も同じだった。
「……ん、んっ…………」
 再び唇を重ねると、眞一郎は比呂美の胸に手を伸ばす。
 ブラと薄いセーター越しでもその柔らかさを十分感じられて、ますます興奮させられる。
 もっとちゃんと触りたいのだが、比呂美がキスを止めてくれないので(眞一郎も止めるつもりはないが)、
セーターとブラをたくし上げ直に触れる。
 初めて触れたときより大きくなってきている気がする比呂美の張りのある胸を両手でまさぐり、桃色の乳首

を親指で弾くと、ビクビクと感じてくれるのが嬉しい。
「っ……そんなにされたら感じちゃう」
 唇を話して比呂美が反論する。
「仕方ないだろ。比呂美の胸 触りたくなるんだから」
「私にもさせて……」
 比呂美は屈みこんで、眞一郎のベルトを外すともぞもぞとトランクスを動かし、すでに勃起した肉棒を取り

出す。
「もう凄く熱くなってる……」
 熱っぽく呟いて比呂美は肉棒にキスをする。
「比呂美……」
 一方的にされる事に行為を制しようとしたが、美少女にフェラチオされることを男として拒めるはずが無い


「んっ……ちゅ、ちゅっ、んっ……」
 バスケをしてるのにすべすべとした柔らかな手で優しく握られ、亀頭にキスの雨を降らせながら、唾液を乗

せた舌で舐められると、背筋にぞくぞくと快感が走り抜けた。

598:兄妹じゃなくてよかった
08/12/07 03:42:33 gBQE76KC
 比呂美のフェラチオは何度しても慣れない。
 これだけの美少女が献身的に奉仕してくれる現実にものすごく興奮して落ち着かない気持ちになる。
 それに、
「比呂美……なんか凄く上手い」
 回数を重ねる度に上達していき、こちらの快感のポイントは把握されていた。
「こういうこと上手って言われても恥ずかしい……」
 そういう間も手でしごくことを忘れない。
「そう感じるんだから仕方ないだろ」
「っ……ん、んんっ…んっ!ぢゅっちゅっ、んっ…ちゅっ、んんっ……」
 ごまかすように奉仕に集中する比呂美。
 肉棒を口に含み、舌を絡めながら出し入れして吸い上げる。
 時折聞こえる唾液を吸い上げる淫らな音が、静かな部屋に響きわたるのが更なる興奮をかきたてる。
「比呂美……もうっ……」
 絶えていたが我慢の限界だった。はっきりとは言わずとも射精を懇願する。
「いいよ、このまま出して……」
 一度髪をかき上げ上目遣いにこちらを見る瞳に欲情した。
 びゅるっ! びゅくっ、びゅくっっ!
 先端を含んでいた比呂美の口内に勢いよく射精した。
「比呂美っ……!」
 好きな女に受けとめてもらえる悦びになかなか高ぶりが収まらない。
 濃い白濁の体液を本能のまま注ぎ込む。
 その全てを比呂美は眉をしかめながらもちゃんと受けとめた。
「んっ……んんっ……」
 射精が終わるのを待って比呂美は口を離し、そして精液を嚥下する。
 この瞬間がまた眞一郎の劣情を誘う。
「無理しなくてもいいのに」
「ちゃんと受けとめたいの……眞一郎君のだから」 
 最初のころは全てを受けとめきれなかったり、吐き出したりしていたが、それでも眞一郎が気持ちよくなった証を無下に扱いたくないと比呂美は言う。
 精液を飲むなんて簡単に出来ることじゃない。
 愛されてるんだと眞一郎は実感する。目の前の少女が愛しくてたまらない。
「きれいにするね」
 言って比呂美は、唾液や精液を纏った肉棒に再び舌を這わせ、それらを拭っていく。
 射精後で敏感になってる先端を優しく刺激され、肉棒は萎えることがなかった。


599:兄妹じゃなくてよかった
08/12/07 03:43:57 gBQE76KC
「今度は俺がするから」
 我慢ができずに逆に比呂美に覆いかぶさり、スカートの中に手を這わせると、
「ま、待って……! 私は大丈夫だから」
 何が大丈夫なのか瞬時に理解できなかった眞一郎から身を引き、比呂美は自分でスカートを脱ぎ、
「……あんまりじっと見ないで」
 比呂美は顔を赤くして言うが、どうしても目が離せずわずかに視線を外すだけの眞一郎。
 彼女がショーツを脱いで言葉の意味を理解した。
 すでに密壷からは愛液が溢れていて、ショーツと糸を引いていた。
 恥ずかしさに、比呂美は両手で自分を抱きしめるように丸くなる。
「……いやらしい娘だって軽蔑しないで」
 今にも泣きそうな比呂美。
 眞一郎と触れ合い、彼に快感を与えてるだけで、身体が勝手に悦びを溢れさせ男を求めていた。
 まだ16歳の、子供でも大人でもない曖昧な年齢。
 清らかでいたいと願う少女の心と、好きな男に愛される悦びを知った淫らな心が入り乱れ、情緒が不安定になる。
 そんな比呂美を眞一郎はそっと抱きしめキスをする。
「軽蔑なんてするわけないだろ。
 比呂美が俺を欲しがってくれてるってわかって嬉しいし……」
 少しキザな台詞を言ってるなと自分で照れくさくなるが、それが正直な気持ちだ。
「眞一郎くん……」
 優しく自分を受け入れてくれる彼が愛しい。
 だからこそ眞一郎が欲しい。
「……お願い」
 比呂美なりの精一杯のおねだりに応えるべく、眞一郎は忍ばせていたコンドームをすばやく装着し、彼女の足を開かせ身体を滑り込ませる。
 先端を膣口に宛がい蜜を馴染ませる。
 この先の密壷の快感を知っているがゆえに眞一郎は息を呑んだ。
「入れるな?」
「うん」
 眞一郎は息を止めるくらい集中して、腰を押し進めた。

600:兄妹じゃなくてよかった
08/12/07 03:45:03 gBQE76KC
「んっ、んんっ……!」
 熱い肉棒が膣内を進入してくることに自然に息が漏れる。
 眞一郎からすれば呑み込まれる感覚だった。
 最初の抵抗を過ぎれば後は歓迎されるように“ぬぬぬ”と呑み込まれいくようだった。
『初めの頃はあんなに抵抗感があったのにな』
 思わず思い返す眞一郎。
 それだけ比呂美と身体を重ね、互いを馴染ませていった証拠だった。
 根元まで挿入してやっと息を吐く。
「比呂美大丈夫?」
「うん……眞一郎くんでいっぱいになってる」
 嬉しそうに微笑むと膣内も肉棒をきゅうきゅうと甘美に締付けてくる。
 それだけで思わず射精しそうになるのをぐっと堪える。
「膣内でびくびくしてる……」
「比呂美の膣内 気持ちよすぎるから……」
 彼女の膣内は複雑にうねっていて無数の襞が生き物のように絡みついてくるうえに、いろんな箇所で締めつけてくる。
 比呂美しか女を知らない眞一郎だがこれが名器と呼ばれるものなんだろうなと感じていた。
 なんとか気をそらそうと視線を逸らして気が付いた。
「比呂美、腕回して」
「? うん」
 言われるまま比呂美は首に腕を回すと、眞一郎は比呂美の背中を抱いて身体を起こさせると、自分が横になり彼女を上にさせた。
「背中痛かっただろ?」
「このくらい大丈夫だよ。気を使わなくてもいいのに」
「少しくらいカッコつけてもいいだろ? ……正直あんまりもちそうにないからカッコ悪くて」
 苦笑いする眞一郎。
「気持ちよくなってもられてるのにカッコ悪いなんて思わないよ」
「ん、でも…なぁ……動くな?」
 全肯定されることに気恥ずかしくなり、行為に集中することにする眞一郎。
 わずかに腰を揺するだけでも圧倒的な快楽が襲ってくる。
「奥……揺さぶられるっ……」
 比呂美の方も深く挿入され奥を刺激されると、快感が溢れてきてあっという間に高ぶってゆく。
 自然と腰も動き、眞一郎の肉棒を淫らに締めつける。

601:兄妹じゃなくてよかった
08/12/07 03:46:23 gBQE76KC
「んっ、あっ……あんっ……眞一郎くん……気持ちいい……?」
 喘ぎの合間に問いかける。
「ん……凄く気持ちいい。比呂美は……?」
「私もっ……ふわっ、んっ…気持ち……いい……気持ちよくて……んっ、腰っ、動いちゃって……
 いやらしくない?……嫌いにならない……?」
 いつも以上に比呂美は蜜を溢れさせ、結合部がらぐちゅぐちゅと音がする。
「嫌いになるわけないだろ。俺だって、めちゃくちゃ硬くしてるだろ?
 比呂美としたくってこうなってるんだぞ? 嫌いになるか?」
「ならないっ、んっ…ならないっ……求めてくれて嬉しいっ……」
「ならお互い様だろ?」
「……うん」
 比呂美は恥ずかしそうに微笑み、眞一郎に覆いかぶさってキスをする。
「んっ、んんっ!んっ…んふっ、ん」
 舌を絡ませながら、眞一郎は快感に張り詰める胸を愛撫し快感を送り込む。
「んっ、俺もうイクからっ」
「うん、私ももうっ……」
 眞一郎が切羽詰って告げると、比呂美も抱きついて切なげに訴えてきた。
 最後とばかりに突き上げると、膣内も情熱的に絡みつき締めつけてくる。
「比呂美……っ!」
「眞一郎くんっ! 好きっ…あっ!んんっ、ああっ…イっちゃうっ……!!」

602:兄妹じゃなくてよかった
08/12/07 03:47:50 gBQE76KC
 どくんっ!
 びゅくっ! びゅるっ、びゅるるっ!!

 比呂美の腰を抱き寄せ、奥まで挿入し射精する。
 膣内が精液を求めるように収縮してくるので、さっき以上の精液がゴム越しの膣内に注がれてゆく。
 ゴム越しでも意識が飛びそうなほど気持ちいい。
 もちろん眞一郎は何もつけずに膣内射精する快感も知っている。
 ゴム越し以上の開放感に加え、比呂美を妊娠させるかもしれないという背徳感が混ざり合う、神経が焼ききれそうな快楽。
 あれは麻薬だ。
 だからこそこうやってゴムをつけて自重しないと、簡単に比呂美を妊娠させる自信がある。
「んんっ……凄いっ……気持ちよくて……幸せ……」
 愛しい男が自分の胎内で果てる幸せをどう表現したらよいのだろう。
 こんなにも自分は満たされているんだともっともっと眞一郎に伝えたい。
 もっともっと眞一郎の喜びを受け取りたい。
 だからこそ強く思う。
「兄妹じゃなくてよかった……」
「そうだな」
 指を絡ませあい、優しく優しく慈しむように唇を重ねた。
「なぁ……比呂美?」
「……何?」
「もっといいか?」
「……うん」
 
 二人は布団に移動して、時間が許す限りお互いを求め合った。

603:遅筆屋(@11) ◆3mclWd6jX.
08/12/07 03:51:14 gBQE76KC
リハビリで書いてみました。途中改行おかしくてごめんなさい。
二人のキャラがちょっとおかしい……orz

言い訳はしません(保管庫でしたけど)。
after tearsの続きはもうちょっと、いや、もうしばらく、いや、もう再来年……必ず。

604:名無しさん@ピンキー
08/12/07 04:17:59 KxlqD1KS
ぎゃー、超お久しぶり あさって会社に行く勇気が出てきた
ありがとう 夜更かししてよかった

605:名無しさん@ピンキー
08/12/07 19:04:16 n84JvXeS
乙ですっ。いや、遅筆はステータスですから、大丈夫w
眞一郎、男ですなぁ。日常の一コマな感じもGJでございます。
俺も明日会社に行く元気補充できましたよっ。

606:名無しさん@ピンキー
08/12/07 20:19:01 Rt2Mwl1K
遅筆屋さん、乙デス。
おかえりなさい。次のSSもお待ちしております。
・・・でも来年ならともかく、再来年までかかるんですか?w

607:名無しさん@ピンキー
08/12/09 05:25:51 Y8LKNtz8
かつてのSS書きの人が続々と戻ってきたな

608:名無しさん@ピンキー
08/12/09 12:10:40 aWGlgbW4
皆さん乙です

609:名無しさん@ピンキー
08/12/17 05:11:42 MCNtDy60
hosyu

610:名無しさん@ピンキー
08/12/24 03:14:13 ZNP9PRPN
聖夜エロは無しかな

611:名無しさん@ピンキー
08/12/29 01:17:41 SVwL39BZ
残り20KBか…容量きつくなってきたな

612:名無しさん@ピンキー
08/12/30 15:35:05 OOruIaPR
保守

613:名無しさん@ピンキー
08/12/30 23:23:41 YFPrwMAk
新年ネタが読みたい。エッチしながら二人きりで初めて年を越すみたいな。

614:ある日の比呂美・大晦日編1
08/12/31 12:38:10 rjkFN7wK
年に数回ある『祭』と同様に、大晦日は仲上酒造にとっては書き入れ時である。
翌日に控えた新年の準備で、近隣の神社のほか、一般家庭からも大量の注文が舞い込む。
高校三年の眞一郎と比呂美は数ヵ月後に受験を控えた身ではあったが、
この日ばかりは家業を手伝わないわけにはいかなかった。
眞一郎は従業員たちに混じって配達に。
比呂美は眞一郎の母と共に、電話や店頭での応対に精を出し、忙しい年の暮れを送っていた。


そして、真冬の太陽が落ちはじめ、町中の新年の準備が終わった頃のことである。
眞一郎はようやく仕事から解放され、家に戻ってきた。
「ふぅ、疲れた~」
配達用の自転車を片付け、自室で仮眠を取るべく階段をふらふらと登る。
障子を開いて部屋に入ると、自らを操る気合の糸を切って、身体をベッドに倒れ込ませる眞一郎。
そのまま眠りに堕ちて行けば、ある程度の回復は出来るだろうと考え、瞼を閉じる。
だが、眞一郎の気配を追いかけるように階段を登ってきた足音に、その企みは敢え無く打ち砕かれた。
「眞一郎くん」
同じ様に仕事がひと段落した比呂美の影が、戸口から声を掛けてくる。
「……そっちも終わったのか?」
「うん。 注文の電話も打ち止めみたい」
そう言いながら、比呂美は眞一郎が突っ伏すベッドの縁に腰を下ろした。
「おばさんもね、おじさんに呼ばれて…公民館に行っちゃった」
視線を合わせないまま、比呂美は暗に、《今 この家にいるのは私たちだけよ》を告げてくる。
ポケットを弄り避妊具を取り出した比呂美は、眞一郎の視線の先にそれをちらつかせながら、
「しよ」と声を出さずに唇を動かした。
「ここでか?」
アパート以外の場所で『求めて』くる比呂美の積極性に、眞一郎は気圧されてしまう。
それに、今は体力もほとんど残っていないので、できれば夜まで待って欲しいのだが……
「嫌ならいいけど」
煮え切らない眞一郎に向かって、比呂美はプイと横を向き、拗ねたフリをして見せた。
だがそれは、眞一郎の性格を計算しての行動である。
……こういう態度を取れば、仲上眞一郎は湯浅比呂美の誘いを拒めない……
それを熟知してのアクション……恋人同士の遊びだ。
眞一郎もそれが比呂美の《サイン》であることは充分に承知している。
そして、彼女の望み……欲望を蔑ろにする選択肢は、仲上眞一郎の中には存在しなかった。
…………
「嫌だなんて言ってないだろ」
比呂美の手首を掴んでコンドームを取り上げると、
眞一郎はそのまま、比呂美の身体を巻き込むように寝具へと組み伏す。
「ちょっと……いきなりは……」
本心とは真逆の言葉を紡ぎだす比呂美の唇を、眞一郎は「うるさい」と優しく囁いてからキスで塞いだ。
そして、この数ヶ月で熟練の域に達した指使いを屈指して、比呂美の性感帯を刺激しはじめる。
「……ん………くっ……」
眉間にシワを寄せながら、くぐもった嬌声を漏らし出す比呂美。
その姿が、慣れない労働でクタクタになっているはずの眞一郎の身体から、疲労を一瞬で吹き飛ばした。

615:ある日の比呂美・大晦日編2
08/12/31 12:39:25 rjkFN7wK
眞一郎と比呂美が肉体の関係を持つようになってから、まだ一年と経ってはいない。
それなのに、絡み合い、もつれ合う二人の動作は、何年も連れ添った夫婦のように息が合っていた。
場所も確認せずに伸ばされた指が、的確に互いの衣服のボタンを外し、二人を生まれたままの姿へと近づけていく。
「あ、待って」
ほとんどの脱衣を終え、下着だけとなった眞一郎に、突然ストップが掛かった。
眞一郎と同様にショーツだけとなっている比呂美が、布地の上から陰部の肉を揉み解そうとする指を掴む。
「ダメ。代え……無いから」
「あ……悪ぃ」
そうなのだ。 比呂美はこの情事のあと、ここで着替えることは出来ない。
迂闊さを悔やんだ眞一郎は、「失敗失敗」と頭を掻いて謝罪をする。
そんな恋人を微笑みで包み込みながら、比呂美は自分でショーツを脱ぎ捨て、こう続けた。
「……もう…準備できてるから……」
眞一郎を迎え入れるために開かれる細い両腕、そしてしなやかな両脚。
その付け根には本人が申告したとおり、牡を受け入れる為の潤みが、艶かしい輝きを放っていた。
ゴクリを生唾を嚥下してから、眞一郎は先ほど比呂美から取り上げた避妊具を手早く装着する。
そして、「…きて…」という甘い囁きを合図にして、
完全に硬化した自分自身を、比呂美の胎内……最奥へ向かって突き入れていった。
「ぅっっ!!」
割り開かれる悦びに、くぐもった声を上げる比呂美の白い喉。
意識の底に《もし、おばさんたちに聞かれたら》という警戒があるのか、その声は普段よりも抑え気味である。
しかし、眞一郎はそんな比呂美の思惑などお構いなしに、蓄積されていた欲望をぶつけた。
たっぷりと湧き出していた愛液に助けられ、存分に力を発揮する眞一郎の陰茎。
そして比呂美の理性は、子宮の底を連打してくる官能的な刺激の前に、早くも決壊寸前に追い込まれてしまう。
「しっ…眞一郎っ……くんっ……声……声出ちゃうっ……」
切れ切れの悲鳴を上げながら、ピストン運動の緩和を求める比呂美。
だが眞一郎は、その要求をニヤリと意地悪く笑って撥ねつける。
「はぁ、はぁ、……嬉しそうな顔して……何言ってんだよ」
……眞一郎は理解していた。 
自分のペニスを深々と咥え込みながら、比呂美が何を考えているのか……
(……比呂美はこの状況を楽しんでいる……)
家族に見つかるかもしれないスリルと、相手の《テリトリー》に取り込まれ、自由を奪われる束縛感。
普段とは違う、彼女にとっては《異質》な状況が、比呂美の興奮と心拍を加速させている。
そしてその《加速》が、陰部と汗に濡れた肌を通して自分にも伝播してくる……
その……とてつもない……快楽が……
…………
「比呂美ッッ!!」
眞一郎は短く、しかしハッキリと愛しい女の名を叫ぶと、前後運動のスピードを速めた。
「くあああああっっっ!!!」
強烈な刺激に晒されることで、比呂美の内部に掛かっていた抑制が一瞬外れ、叫びが漏れ出す。
(だめっ! ……そんなにされたら……すぐイッちゃうッ!!)
イク…… 絶頂へと強制的に押し上げられる……
脳内に浮かんだ予感が比呂美の唇を無意識に動かし、「イク」という単語を小声で連呼させた。
「イッちゃう… イッちゃう… イク… イク… 」
迫り来る快楽を、その感覚を追い始める比呂美の意識。
唇から零れる淫靡な声は徐々に間が短くなり、遂には「イクイクイク」と数珠繋ぎになってしまう。
そして、それに連動して速度を増す眞一郎の突き込みが限界に達しようとした、その時……

616:ある日の比呂美・大晦日編3
08/12/31 12:40:46 rjkFN7wK
「眞ッ…一郎ッッ!!!」
平時、絶対に『くん』を外さない比呂美が、恋人の名を呼び捨てる…… それが絶頂の合図だった。
「いいぞ、比呂美ッ!」
眞一郎は放出欲を間近に感じながら、比呂美にある行為をおこなう許可を与えた。
と同時に、股間と股間を隙間無く密着させることで、亀頭の先端を深く突き込んで比呂美の《女》を抉る。
「んああああああああッッッ!!!」
絶頂に達した比呂美が甲高い叫びを発し、その完璧と言ってよい肉体が大きく海老反った。
びくびくと暴れる美肉を押さえつけ、拘束するように絡みつく眞一郎の四肢。
そして、一歩遅れて『頂』に達した眞一郎の性感神経が、
その全身をぶるりと震わせ、陰茎とそれに連なる器官の制御を、魂の意思から切り離す。

    どくっ どくっ どくっ どくっ

……大量に溜め込まれていた精の放流……
避妊具越しに胎内へと叩き込まれた熱い迸りが、比呂美の快感を更に一段上へと押し上げた。
(ッッ!!!!)
思惟が真っ白に染められ、膣と子宮の震えが止まらない。
……壊れる……壊れてしまう…………
時間がゆっくり進む白い世界の中で、比呂美はそんな恐怖感に、訳も無く囚われる。
だが、その恐ろしさを打ち負かす方法を、彼女は知っていた。
興奮の極みに達すると、無意識にしてしまう『いけない癖』…… それをすればいいだけだ。
心の隅にいる醒めた自分が、「変態」と自分自身を罵ってくるのを自覚するが、そんなことは気にしない。
眞一郎はそんな自分を許してくれる…… 愛してくれるのだ……
……素直に、欲するままに『すれば』いいのだ……
そう比呂美は確信を持って思った。
いけない自分…… ダメな自分を見せる…… 見せ合うのが愛…… 本当の愛……
…………
(愛してる… 眞一郎……)
心の中でそう呟いてから、比呂美は射精を続ける眞一郎の肩に吸血鬼のように噛み付いた。
溢れ出そうな想いを、震えと痛みに託して、愛する男に伝えるために…………


…………
日が完全に落ちたのだろうか?
悦楽の波から開放された二人は、部屋が薄暗くなっていることに気づいた。
「結構…長くしちゃったかな?」
そう言って眞一郎は比呂美の身体を押し潰したまま、時計に視線を遣る。
さして進んではいないデジタル表示の輝きが目に飛び込み、
行為を始めてから二十分ほどしか経過していないのが、一目で分かった。
「『つるべ落とし』……だね」
古臭い言葉を持ち出して、比呂美は笑う。
冬の落日はとても早い…… ただ、それだけだ。
大丈夫。 おばさんたちは、まだ帰っては来ない。
毎年、大晦日のこの時間、おじさんとおばさんは挨拶回りに忙しく、夕食時まで帰宅しないのが通例ではないか。
「心配ないよ」
包み込むように微笑んで、比呂美が眞一郎の頬に手を伸ばした瞬間だった。

     ガラッ

玄関の引き戸が動く音が、キンと冷えた空気を伝わって階下から二人の耳朶に届く。
そして、それに続いて響き渡る、眞一郎の母の「ただいま」という声。
「「!!」」
まだ結合を解いていない二人の身体が、快感ではないモノに反応して、ピクリと震えた。

617:ある日の比呂美・大晦日編4
08/12/31 12:42:13 rjkFN7wK
「誰もいないの?」
まだ遠くにあるおばさんの声を耳に受け、身体が反射的に跳ねる。
泡を食っている眞一郎を押し退けてベッドから出ると、比呂美は散乱した衣服を手早く身に着けはじめた。
考えるよりも早く、状況に対して的確に動いてくれる自分の肉体。
やはり身体は鍛えておくものだな、とつくづく思う。
…………
一分と掛からずに身支度を整えた比呂美は、まだ全裸でいる眞一郎をベッドの中に押し込めた。
おい、と抗弁する眞一郎を無視して、「疲れて眠っているフリをしろ」と悪知恵をつける。
「お前なぁ…」
「いいから」
不満で尖がった眞一郎の唇に軽く口付け、その頭に布団を被せて裸体を隠す。
そして比呂美は乱れの残る髪を手櫛で整えると、一階つづく階段口へと足を向けた。


「お帰りなさい。早かったですね」
何事もなかったかのように、比呂美は家族を探してキョロキョロしているおばさんに声を掛けた。
「あぁ、良かった。出掛けちゃったのかと思ったわ」
そう言って微笑んでくれるおばさんに、比呂美も微笑み返す。
もちろん、二分前まで彼女の息子と交わっていたことは、微塵も感じさせずに。
「公民館の方、もういいんですか?」
「すぐに戻らなきゃいけないんだけど、あなたにお願いがあって」
「??」
おばさんが自分に頼みごととは珍しい、と内心で思いながら、比呂美はその内容を問うた。
「悪いんだけど… 年越しそばの準備、お願いできないかしら?」
「! …はい、構いませんけど…… いいんですか?」
仲上家のそばつゆは既成の品ではなく、こだわりのオリジナルだった。
代々、嫁から嫁へと受け継がれているその『味』…… 
一応の味付けは教わっているが、まだ自分が一人で仕上げるのは早いのでは、と比呂美は思う。
「去年ちゃんと覚えてくれたし… 大丈夫よ、あなたなら」
さらりとそう告げると、おばさんは踵を返して玄関へと足を戻す。
「それじゃあ宜しくね」と背中越しに手を振るその姿を見送る比呂美の胸が、熱い何かで満たされていった。
眞一郎がくれる温かさとは別の……かけがえの無い何かで……


数分後、やはり階下の様子が気になったのか、眞一郎が服を着て階段を降りてきた。
「あれ? お袋は?」
「うん。 また公民館に」
何しに戻ってきたんだ?と訊くともなしに呟いて、眞一郎は母の行動を訝る。
比呂美はその問いに答えを返すつもりはなかった。
ただ黙って眞一郎の背後に回りこむと、その背中を台所に向かって強く押す。
「な、なんだよ」
「おそばの仕度するから手伝って」
脈絡の無い比呂美の行動に、眞一郎は「そんなのお袋がやるよ」と言って抵抗するが、比呂美は耳を貸さなかった。
またしても訪れた『重労働』の予感に、情けない声を上げる眞一郎。
そんな恋人の心情をよそに、比呂美はすぐに現実となるであろう楽しげな想像で頭の中を満たしていく。
美味しい年越しそばを食べて…… テレビを観て…… 『家族』でおしゃべりをして……
思わず口元が緩み、「ふふ」と声が漏れる。
「???」
訳が分からないぞ、という顔をして、眞一郎は肩越しに振り向く。
比呂美は満面の笑みで返答すると、そのまま疲れの溜まった眞一郎の身体を、台所の奥へと押し込んでいった。


            [おしまい]

618:朋与男
08/12/31 12:45:51 rjkFN7wK
新シリーズ……ではありません
年末スペシャルってトコでしょうか
番外編2のつづきになる新しいお話は、
たぶん来年、スレが『4滴目』に移行してからになりそうです
ゴメンナサイ

それでは住人の皆様、良いお年を

619:名無しさん@ピンキー
08/12/31 13:11:13 yeVW8VlQ
見に来てみて良かったw
朋与男さん乙デス。
二人の逢瀬のこなれた感じが素敵ですねぇw

新作も楽しみにお待ちしておりますハイ。

620:名無しさん@ピンキー
08/12/31 13:11:56 o1vlsZml
>>660
乙です!GJでございますっ。
アニソン三昧ファイナル聞きながら、
スレを見直しておりましたら、なんと!
そうですよね。大晦日は『家族』で過ごすもの。
比呂美さんも仲上家の家族に、ですものね。
ありがとうございました。良い年迎えられそうです!
ああ、良いお年をっ。

621:名無しさん@ピンキー
08/12/31 13:12:59 CVMcwJnd
キタ━━(゚∀゚)━━!!

622:名無しさん@ピンキー
08/12/31 13:28:36 3JlIpT2t
朋与男さん乙です
来年もお願いします

623:名無しさん@ピンキー
08/12/31 14:04:16 kkdlCQTd
GJです!比呂美の「しよ」が意表を突いていい感じ
ママン気付いてない?何でも見通しそうなイメージだけど……

来年もよろしくお願いします

624:名無しさん@ピンキー
08/12/31 15:34:57 yeVW8VlQ
>>665
間違いなく気付いてるね

625:名無しさん@ピンキー
08/12/31 23:26:01 JLPFk3gf
GJ!これはいい気分で年越しできるぜ

626:名無しさん@ピンキー
09/01/01 01:57:45 HaSCMUgF


627:カカです
09/01/01 02:30:16 HaSCMUgF
明けましておめでとうございます。
ようやくの規制解除です。

「はじめての外泊」の更新が滞り
もうしわけありません。
家族が入院してしまって……
落ち着いたら再開します。

それと、
朋与男さんの作品は、
「ある日の比呂美17」から保管庫の方に
私が更新させていただきました。
もしミスがあったらご指摘ください。直します。

それでは、今年もよろしくお願い申しあげます。

628:名無しさん@ピンキー
09/01/01 16:51:58 S+r1RNLD
カカさんお帰りなさい&明けオメです。
朋与男さん始め他の作家の方&スレ住人の皆さんにも明けオメことヨロです。

629:名無しさん@ピンキー
09/01/02 23:08:22 h4EMIwoR
容量の限界が近いので新スレ立てました

true tearsのエロ小説スレ エロい涙 4滴目
スレリンク(eroparo板)

630:名無しさん@ピンキー
09/01/03 14:26:52 m+7bNY/k
>>671
乙っ


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