true tearsのエロ小説スレ エロい涙 3滴目at EROPARO
true tearsのエロ小説スレ エロい涙 3滴目 - 暇つぶし2ch450:名無しさん@ピンキー
08/07/29 22:35:31 gra5WCtb
マイクロビキニとかいいよな

451:名無しさん@ピンキー
08/07/31 12:41:47 SKSorjkb
ファーストキッス、面白いのに~。
カカさん、ここ見ていないのかな~
今からでもいいのに。

452:名無しさん@ピンキー
08/08/01 00:45:14 dPKXbo4K
保管庫、
あれはあれで、困ったモノだ。

453:名無しさん@ピンキー
08/08/01 00:48:07 CM0q6qx9
あれ目次の方消したのは誰だ
ひょっとしてカカさん自分で撤去したか

454:名無しさん@ピンキー
08/08/01 00:54:18 dPKXbo4K
悪戯している奴でしょ

455:名無しさん@ピンキー
08/08/01 00:56:59 CM0q6qx9
>>454
そっちならいいんだが、本人だともう更新がなくなるかもと心配になった
ただ、なんとなく気にしにないでと言いにくいんだよな、あれは

456:名無しさん@ピンキー
08/08/01 01:08:14 fDzsj7QD
スレ告知してほしいって意は結構あったからね
それでも敢えて気にしないでくださいと言っておこう

457:名無しさん@ピンキー
08/08/01 01:37:27 CM0q6qx9
ところでカカさんっていつごろからカカを名乗ってたの?
春雷の時はまだ名無しだと思ったけど

458:名無しさん@ピンキー
08/08/01 05:03:53 nQbDL8c5
>>457
春雷の時の後書きで名乗ってるよ
しかし、保管庫酷いな

459:名無しさん@ピンキー
08/08/01 11:26:54 CM0q6qx9
あの11だけは削除しておかないか?あれあると戻ってきにくそうだぞ

460:名無しさん@ピンキー
08/08/01 12:30:10 fDzsj7QD
削除は管理人さんしか出来ないな
でも文を全消しする事は出来るか

461:名無しさん@ピンキー
08/08/01 17:33:02 D2Khvyae
復元だけしといたけどコレでいいのかな

462:ある日の比呂美 66
08/08/02 00:35:24 x8UDAAZK
「うぃっす!」
電源の入っていない自動ドアを手で開けて、『あいちゃん』の店内に足を踏み入れると、そこに店主の姿は無かった。
代わりに調理場からこちらに仏頂面を向けてきたのは……
「俺の新車に傷、つけなかっただろうな」
野伏三代吉の恨みがこもった『視線』と言う名の槍が、鋭く全身を突き刺してくる。
(怒ってるなぁ。 まぁ当然か)
と内心呟きながら、開店準備に追われる三代吉を横目に、眞一郎は頭を掻きながらカウンター席に陣取った。
「あ~ ……悪ぃ、ハンドルがちょっと……」
「なにぃぃ!?」
学校に到着するとすぐ、眞一郎は自転車を校門脇に乗り捨てて、一目散に体育館へと疾走してしまった。
当然、スタンドを使って立て掛ける、などという気の利いた作業がなされる事も無かった訳で……
必然的に新品の自転車は随所に擦過傷を負い、無残な姿を『あいちゃん』の裏手に晒している。
「お・ま・え・なぁ~!!」
「だから悪かったって。今度、埋め合わせするからさ」
このとおり、と拝むようなポーズをとる眞一郎に呆れたのか、三代吉はそれ以上詰め寄ってくることはなかった。
「俺の計画がメチャメチャだぜ」
などと愚痴りながらも、三代吉は冷蔵庫からコーラを引き出し、慣れた手つきで栓を抜く。
冷えた瓶をドンと眞一郎の目の前に突き出すのと同時に、彼は別の詰問を始めた。
「で? 何だか知らないけど……間に合ったのかよ」
「! …………あぁ」
ニコッと笑みを返しながら、コイツはいつもこうだな、と眞一郎はあらためて思った。
……三代吉は……本当は自転車の傷なんか心配しちゃいない。
眉間にシワを作っていたのは、きっと自分の…………いや、自分と比呂美の心配をしていたからだ。
それでいて……入ってはいけない一線を自覚している気配りと優しさが……コイツにはある。
(さっきの比呂美と朋与の笑顔…… 見れたのは三代吉のお陰だよな)
…………とてもありがたい、頼もしいと感じる。
…………
「なんだよ、人の顔ジッと見て」
無言で視線を送る自分を『気持ち悪いヤツ』とでも思ったのだろうか?
拭き掃除をしていた三代吉の手が止まり、また憮然とした表情がこちらに向けられた。
「なんでもね~よ」と笑ってコーラを一気に煽り、口にするのは照れくさい感謝を、炭酸と共に押し戻す。
そして、しばらく二人で雑談に興じていると、二階につづく階段がトントンと軽快な音を立て始めた。
「あれ? 眞一郎、来てたんだ」
バンダナを頭に巻いた愛子が現れ、声を掛けてくるのと同時に、眞一郎もまた、片手を上げてそれに応える。
いつも通りの、何気ない受け答えに笑顔になる『接客仕様』の愛子。
……だったのだが、カウンター内でのんびりしている三代吉の姿を見つけた途端、彼女の顔色が変わった。
「三代吉!あんた何やってんのよ!」
「へ? 何って??」
「夕方から団体さんの予約入ってるって言ったでしょ!! 倉庫から材料運んどいてって昨日頼んだじゃない!!」
やべぇ!忘れてた!と叫ぶやいなや、エプロンを大慌てで外し始める三代吉。
ラブラブサイクリングは無理だったか、と内心で笑いを噛み殺しながら、眞一郎はその背中を呼び止めた。
…………やはり……言うべき事は、言うべき時に言わなければならない……と思う。
「……三代吉……サンキューな」
今日だけのことではない。
今までの分と、そしてこれからの分。
おそらく、一生掛かっても返しきることが出来ない三代吉の友情……
眞一郎は心の底から、何物にも代え難いその宝への感謝を、短い一言に込めて彼に送った。
何気ない言葉の中に自分の真意を汲み取ったのか、鼻を軽く擦って照れを隠し、「バカ野郎」と笑う親友。
その姿は、追い立てるように背中を押す愛子と共に、勝手口の向こうへと消えていった。
「さっさと行って来い! 三十分以内に帰ってくることッ!!」
「す、スイマセン、店長~」
間抜けな……でも、どこか温か味のあるやり取りが、視界の外から聞こえてくる。
眞一郎は三代吉に、胸中でもう一度「ありがとう」と呟いてから、戻ってきた愛子に視線を移した。

463:ある日の比呂美 67
08/08/02 00:37:32 x8UDAAZK
「ったく。出勤したら予定表を確認しろって言ってるのに。 ……で? 眞一郎はどうしたの?」
従業員の出来の悪さを嘆きつつ、店主は開店準備を引き継ぎながら話し掛けてくる。
「いや。 借りてたチャリを返しに来ただけなんだ」
そう短く告げて、カウンターに手をつき、腰を上げる。
他に用事は特に無いし、このあと比呂美と待ち合わせているので、のんびりもしていられない。
「それじゃ」と愛子に手を振ったところまでは良かったのだが……

    ぐぅ~

朝食以降、何も補給を受けていない胃袋がとうとう悲鳴を上げ、その叫びが愛子の耳に届いてしまった。
「何よ。 お昼食べてないの?」
「うん…まぁ…… 色々あってさ」
苦笑して去ろうとする眞一郎を呼び止め、愛子は鉄板に火を入れる。
完全に浮いていた腰を席に戻して数分待つと、香ばしい匂いを放つ今川焼きが三つ、眞一郎の前に差し出された。
「助かったよ。ホントは腹ペコでさ」
もう一本、追加されたコーラと共に、眞一郎は世界一の今川焼きで空腹を満たし始める。
愛ちゃんの焼くヤツは味が違うな、と世辞ではない世辞を口にしてみたが、愛子はまともに取り合ってはくれなかった。
…………
「ねぇ、眞一郎」
黙って開店作業を続けていた愛子が、突然、こちらに目を向け口を開く。
「ん? なに??」
口の中いっぱいに今川焼きとコーラを詰め込んだ眞一郎に向かって、愛子は驚愕の一言をサラリと言い放った。
「あんた、また女の子泣かせてきたでしょ?」
「ぶっ!!!」
いきなりの……しかも弱点を正確に撃ち抜くような愛子の一撃に、眞一郎は思わず口にしたコーラを噴き出してしまった。
汚いなぁと顔をしかめながら、愛子は手元の雑巾でカウンターと眞一郎の口元を拭く。
「ゴメン…………でも、なんで?」
表情で『その通りです』と白状しながらも、眞一郎はそう訊かずにはいられなかった。
魔法使いでも見るような視線を向ける自分に、愛子は「『お姉ちゃん』を舐めんなよ」と見得を切って笑う。
「あんた、『あの時』と同じ顔してるもん」
そうキッパリと断言し、愛子はカウンターの向こう側から、自分を見下ろしてくる。
…………腰に手を当てて、踏み台代わりのビールケースに仁王立ちしている愛子お姉ちゃん…………
…………あの時とはいつのことだろう……心当たりがありすぎて、どれか分からないな…………
『弱みを握られた弟』的な思考が、ショックで麻痺しかけた脳みその中をグルグルと巡る。
どんな返事をしたらいいのかと困っていると、愛子は満面の笑みのまま、拳骨を自分の脳天に落としてきた。
「いてっ!」
「まったく……アタシと乃絵ちゃんだけかと思ってたのに」
やれやれ、と呆れて肩をすくめ、「あんたはナチュラルに女を泣かせ過ぎ」と説教を垂れる愛子。
だが『お姉ちゃん』はそれ以上、事の次第を深く突っ込んで訊いてこようとはしなかった。
ただ一点だけ、「比呂美ちゃんは知ってるの?」と冗談の混じらない鋭い声で重要な事を問い詰めてくる。
「知ってる。 ……全部……知ってる」
真面目な質問に同じ真剣さで返答をすると、愛子は納得したらしく、「そう」とだけ呟いて話は打ち切られた。
…………
…………
「ごちそうさん。 んじゃ俺、行くわ」
開店の邪魔にならないようにと、再び席を立った眞一郎を、愛子はまた呼び止めた。
自分の分は三代吉が取り返してくれたからいいけど、と前置きしてから、彼女は静かに呟く。
「乃絵ちゃんと……その娘の涙は無駄にしちゃダメだからね」
その言葉の重さに胸が詰まり、声が出ない眞一郎に向かって、愛子は「分かったの!」と念を押す。
眞一郎は、はにかんだ笑顔で「うん」と頷くのが精一杯だった。
そして「ありがとう」という感謝の気持ちを、『照れ』というオブラートに包んで口にし、店を後にする。
「また、おいでね」と背中に告げてくる愛子の声…………
それが、比呂美の元へと向かう今の眞一郎にとっては、温かく、貴重で、かけがえの無い物に感じられた。

464:ある日の比呂美 68
08/08/02 00:39:21 x8UDAAZK
比呂美は、眞一郎と待ち合わせの約束をした海岸沿いの防波堤に腰掛け、ひとりで海を見ていた。
三代吉に自転車を返しに行った眞一郎と別れてから、もうかれこれ一時間になる。
『あいちゃん』からここまでは大した距離ではないので、てっきり先に来ていると思ったのだが……
(シャワーと着替え。食事まで済ませた私より遅いって、どうなのよ?)
そう胸の中で愚痴りながらも、比呂美は立腹しているわけではなかった。
……たまには一人で……海を見ながら静かに物事を考えるのも悪くない……そう思う。
朋与のこと…… さっき聞かされた『おばさん』とお母さんの再会のこと…… そして眞一郎のこと……
経験不足の自分の頭では、正確な回答を導き出せないのは承知しているが……
……それでも……少しでも……噛み砕いて、呑みこんで、自分の血にしなければならない。
そうしなければ、支えてくれる優しい人たちの想いに、一生報いる事が出来ないのではないか、と比呂美には思えた。
…………
…………
「!」
照りつける太陽の光と比呂美との間を何かが横切り、思索の海に潜っていた意識を、現実に引き戻す。
吸い寄せられるように視線を上向けた比呂美の瞳に映ったのは、空を舞う二羽の海鳥たちだった。
上昇気流に身を任せ、真上を旋回する姿…… それは自分とは無関係な存在であるはずなのに、何故か目が離せない。
「にゃあ」
そしてこれもまた、突然に左側から聞こえてくる猫の鳴き声。
いつの間にそこに現れたのか、見覚えのある小さなシルエットが、すぐ隣で空を見上げていた。
「ボー……ちゃん?」
呼び掛ける声に、また「にゃあ」と反応し、こちらに近づいてくる彼は、間違いなく朋与の飼い猫『ボー』だった。
「なにしてるの?」という比呂美の問いには当然答えず、腕に胴体を擦りつけて挨拶してから、再び離れていくボー。
忙しいから構ってやれないぞ、とでも言いたげに、ボーはまた空に……鳥たちに向かって鳴き始める。
…………何度も……何度も……空に向かって鳴き続けるボー…………
それは今朝、眞一郎の部屋で目にした絵本の世界の再現だった。
続きを……結末を教えてもらっていないストーリー……その答えがここにあるのではないか。
何故か訳もなくそう思え、比呂美はボーと海鳥たちの『会話』に意識を傾け、耳をすませた。
…………

        バサッ!

何度目かのボーの叫びに応え、海鳥たちが旋回を止めて舞い降りてくる。
ボーの頭上を掠める様に飛び、また大空へと舞い上がっていく鳥たち……その雄大な飛翔が目に焼きつく。
……それは決して威嚇などではなく、ボーの魂を、どこか別の場所に誘おうとしている様に、比呂美には見えた。
「にゃあ!」
ボーもそれを理解したのだろうか。 彼は鳥たちの軌跡を追うようにして、比呂美の側を離れ駆け出していく。
…………その先の待つ何か……誰かを求めて飛翔するように…………
…………

ボーの姿が視界から消えた時、比呂美は全ての答えを掴んだような気がした。
そして自分も、正体が分からない何かに促されるように立ち上がる。
全身に吹き付けてくる風を正面から受け止めて…… 両腕と両脚を一杯に拡げて……比呂美は思う。
(飛ぶんだ!!)
……『飛ぶ』…… それはあの石動乃絵が口にしていたフレーズ。
そして、言葉の中に込められた意味が……今の自分には良く分かる。
接点など無いと思っていた少女の想いが、眞一郎を通して、いつの間にか己の血肉になっているのを感じる。
……飛ぶ……みんな…いつか飛ぶ……
絵本の中のボーも、朋与も、『おばさん』も、……そしてたぶん、石動乃絵も……
…………自分の道をみつけて、羽ばたいていく………… ……そして……
(私も飛ぶ! 私のみつけた空を!!)
それはみんながくれた空。 眞一郎の空。 どこまでもつづく蒼の中を、自分は彼と二人で羽ばたきたい!
…………
…………
洗いたての髪を潮風に泳がせながら、比呂美は防波堤の上で心と身体をいっぱいに開放する。
ようやく現れた眞一郎がその後ろ姿に引き込まれ、立ち尽くしている事にも、しばらく気づくことはなかった。

465:ある日の比呂美 69
08/08/02 00:42:40 x8UDAAZK
「飛べそうか?」
後ろから掛けられた声に、比呂美はハッと肩越しに振り向いた。
いつからそこにいたのか……眞一郎の笑顔が、少し離れた場所からこちらを見ている。
「…………」
「……なんか言えよ」
口走ってしまったポエムっぽい質問に返答がもらえず、眞一郎は困ったような表情を作った。
だが比呂美の顔は、眞一郎と同じ透明な笑顔を反射するだけで、すぐにまた海へと向き直ってしまう。
視線を風に戻し、無言で世界に向き合う自分の背中を、比呂美は眞一郎への答えにした。
(……感じて……眞一郎くん)
…………
…………
今の自分の所作を目にして、『飛ぶ』という単語を連想した眞一郎……
視界の外にいる彼は、きっと石動乃絵を思い出しているに違いない……
……朋与のことも、思い出しているに違いない……
(石動乃絵と黒部朋与が、仲上眞一郎の中にいる。大事な何かを…形作っている……)
かつてはそう考えるたびに、胸の奥に黒い炎が燃え上がり、嫉妬で身を狂わせていた。
自分に出来ないことを眞一郎にしてやれる……彼女たちが憎かった。
でも、今は違う。
あなたの涙は奇麗だ、と言ってくれた石動乃絵の想い……
眞一郎を包んであげて、と言ってくれた黒部朋与の想い……
そのどちらもが、身体の奥底に根を張っているのが、ハッキリと分かるから。
……あの頃の『湯浅比呂美』は、もういない……
眞一郎と同じように、彼女たちと接することで、自分は変わった……飛ぶことができた。
二人の想いを受け入れて、力に出来た今、不の感情が心を支配することは……もう無い。
…………そして…………
風に向かう自分の背中を見つめてくれる眞一郎は……その事を全てを理解してくれている……
……自分の……湯浅比呂美の全てを…………
…………
…………
比呂美は広げていた手足を畳むと、振り向いて防波堤から飛び降りた。
視線を絡ませてくる眞一郎の前に立ち、「わかった?」と悪戯っぽく小首をかしげて笑ってみる。
「……うん」
口中で小さくそう言った眞一郎は、比呂美の示した答えに満足しているようだった。
感極まった様子の眞一郎に、「帰ろう」と呟き、ひとり歩き出す比呂美。
「あ……待てよ、比呂美」
背後から呼び止めるその声には、聞こえないフリをする。
そして比呂美は、記憶の底に沈んでいた、ある唄を歌い始めた。

466:ある日の比呂美 70 (最終回)
08/08/02 00:47:16 x8UDAAZK
♪す~ぐそこ~にアブラムシ~♪
        ♪眞一郎~の靴~の底にもアブラムシ~♪

後ろをついてくる眞一郎……その心が震えるのを明確に感じるが気にしない。
……蒼天に向けて口ずさまれる……うろ覚えのメロディ……
何も含むところはない。 それは眞一郎にも分かっていると思う。
ただ……今はこの唄を……彼女の唄を歌いたい。
そんな気分だった。
…………
眞一郎を子分のように引き連れ、比呂美は防波堤沿いの道を晴れ晴れとした顔で、歌いながら進んでいく。
(……気持ちいい……)
石動乃絵もこんな気持ちだったのだろうかと思い、声のトーンを上げたその時、後方から突然に爆笑が巻き起こった。
「ぷぷっ……ぶはははははははは!!」
響き渡る笑い声に心の高揚をかき消され、比呂美の眉間にシワが刻まれる。
振り返ってみると、眞一郎が緩んだ目元に薄っすらと涙を浮かべながら、呼吸困難に陥ったかのように身悶えていた。
「な、なによ!」
「くく……わ、悪ぃ……。 でもお前……唄だけはヘタクソだよな……ププッ……」
何とか押さえ込もうとして叶わず、眞一郎はまた大口を開けて笑い出す。
比呂美は顔を真っ赤に紅潮させながら、腹筋に手を添えて苦しむ眞一郎を置き去りにして再び歩き出した。
(ホントにもうっ! 空気読めないのは直らないんだからっ!!)
唄が下手なのは、言われなくても自覚している。
麦端高校で完璧少女の名を欲しいままにしている自分の、唯一の弱点が『コレ』だった。
(歌手になりたいわけじゃないんだから、別にいいじゃない!)
そう。 なりたいモノは他にある。
……湯浅比呂美がなりたいモノは、眞一郎の……仲上眞一郎の…………
…………
脳天から怒気という湯気を発散しながら、思考が別の結論へとスライドしかけた時だった。
「その唄、まだ一節つづきがあるんだぜ」
もう笑っていない眞一郎の声が、耳朶の裏に響く。
それがどうしたのよ、と声を荒らげながら比呂美が脚を止めるのと同時に、眞一郎の喉が高らかに鳴った。

    「♪眞一郎~の心の底に……『湯浅比呂美』!!♪」

町じゅうに聞こえるような大声で叫ばれたそれは、先程とは全く逆の意味で、比呂美の顔を耳まで赤く染める。
「……な……」
感激と羞恥にまみれて声が出ない比呂美の真横まで、眞一郎は一気に距離を詰めてきた。
そして勢いに任せて手を取り、指をしっかり絡めると、比呂美の身体を引っ張るようにして、眞一郎は歩き出す。
……繋いだ手から……指先から……眞一郎の想いが、熱に形を変えて伝わってくる……
比呂美は自分と同じ様に、頬を赤らめている眞一郎の横顔を眼に焼き付けながら、握る手の平に力を込めた。
眞一郎がそれに反応し、視線をこちらに寄こす。
「今朝の絵本の…つづきだけどさぁ……」
そう言いかける眞一郎の言葉を、比呂美は首を横に振ることで止めた。
結末はもう知っている。 眞一郎の描きたい物語なら……ちゃんと分かっている……
瞳の光で紡いだ想いは、眞一郎の心に届いたらしい。
黙って頷き、話を途中で打ち切ると、仲上の家へ向かう歩速を少しだけ早める眞一郎。
比呂美は恋人に歩くスピードを合わせながら、帰路の先で待っている家族の顔を思い浮かべた。
今日は着物の着付けレッスンのあと、新しい料理の作り方を教わる約束をしている。
《今夜は…… そうね。ブリ大根にしましょう》
今朝、『おばさん』が嬉しそうに言った言葉…… それが頭に浮かび、比呂美は顔をほころばせた。
「?? 何だ?」
「ううん、何でも。 おばさん、気が早いなぁ~って」
不思議そうな顔で見つめてくる眞一郎を横において、比呂美は『ブリ大根』が持つ意味を考える。
(あ……そういえば……)
……女の子がお嫁に行く時、ブリ大根を食べると幸せになれる…………
幼い頃、この地方特有の素敵な風習を教えてくれたのは、確か母だったなと、比呂美は懐かしく思い出していた。

                [おわり]

467:朋与男
08/08/02 01:02:39 x8UDAAZK
カカさんの新作で盛り上がっているところ、失礼いたします
長々と続けて参りました「ある日の比呂美」、終了でございます
なんとか結末にたどり着けたのも、すべて読んでくださった皆様のおかげです
心より御礼申し上げます

で、次なんですが……今のところ予定はありません
もうカカさんや一日一話さんがおられますし、そろそろ引き時かとも思います
それに大本命の遅筆屋さんとあさみの人さんも控えておられますしね
でもまぁ、また発作的に何か書きたくなって、投下してしまうかもしれませんので、
その時はまた、暇つぶし気分で読んでやってください

それでは住民の皆様、またお会いできる時までサラバです
ご愛読、本当にありがとうございました!

468:名無しさん@ピンキー
08/08/02 01:17:08 0qc9U8ov
朋与男さん乙です
「○○がいるから」と言わず、思いついたらいつでも帰ってきてください
朋与男さんの代わりは誰もいないのですから

カカさん
変な人が保管庫にいたようですが気にせず投下してください
こんな事であの大作が全貌を日の下に置くことなく終らせるなど惜しすぎます


469:名無しさん@ピンキー
08/08/02 01:30:41 PezavDXE
>>467
乙です。
すばらしい長編ご苦労様でした。
エピローグ、愛ちゃんとの会話や本編のエピソードを上手い引用などなど
綺麗な締めでした。

長編でなくても全然構いませんので
発作を起こされて投下されることを首を長くして期待してます。

いままでありがとうございました。



470:名無しさん@ピンキー
08/08/02 05:04:58 XsoJUnC2
朋与男さん
お疲れ様でした
綺麗なエロ描写が印象に残ります
また気が向いたら投下してください

471:名無しさん@ピンキー
08/08/02 23:56:07 aR/2ojNU
俺はエロ描写よりも修羅場の描写が好きだった

472:名無しさん@ピンキー
08/08/03 21:26:48 XIsF/o54
>>467
お疲れさまです。
大長編の終わりに寂しさを感じています。
どうか朋与男さんの創作意欲に発作が起こりますように。

473:名無しさん@ピンキー
08/08/04 20:54:56 Q5d//0oT
>>467
波の音が…海鳥の声が…ボーの鳴き声が…
そして海辺で楽しそうに並んで歩くラストシーンの二人が見えた気がした
今まで楽しませてくれたことに言葉で語り尽くせないほどの感謝とありがとうです。
そしてまたいつでもお待ちしてます。

474:名無しさん@ピンキー
08/08/05 13:33:14 oS23MW1q
朋与男さんは、多少間が空いても落としてくれるという
安心感があったからなー。
他の職人さん方が続きを投下してくれる事を期待してます。

475:名無しさん@ピンキー
08/08/08 21:33:17 Wm2bxQj4
保守っておくか

476:名無しさん@ピンキー
08/08/09 05:37:27 7oRlvNR0
ここに書くべきか迷ったけど
カカさんお疲れ様でした
相変わらずカカさんの口げんかはインパクトあります

477:名無しさん@ピンキー
08/08/15 07:43:47 2eRh4bCN
保守

478:名無しさん@ピンキー
08/08/18 00:46:22 O8X7XvHT
誰か~ぁ、書いて~

479:名無しさん@ピンキー
08/08/18 11:18:32 K+kiKG88
もうこのスレも終わりやね。

480:名無しさん@ピンキー
08/08/18 20:59:26 NxAKM1sD
比呂美と泳ぎに行く話し希望

481:名無しさん@ピンキー
08/08/19 01:20:34 lZwI10ZI
世間は所謂盆休みだ
まだあきらめるのは早い。
あきらめたらそこで...

482:バスに揺られて 1
08/08/19 21:14:58 dEOG8KEH
夏休み真っ最中の8月某日。
比呂美と眞一郎は海に来ていた。といっても泳ぎに来たわけではない。
眞一郎は石段に座って、水平線を見ながら大きく伸びをする。
「せっかくの夏休みだってのに、補習のせいで一日無駄にしちゃったなぁ」
「眞一郎君は毎日ダラダラして無駄に過ごしてるでしょ」
比呂美のきついツッコミが入る。
今日は補習がある登校日。
その帰り道にこうして二人で海に寄ったのだ。

太陽が傾き始めても、気温は一向に下がりそうもない。
冬は雪が積もる富山でも、夏というのは当たり前に暑い。

比呂美も眞一郎の隣に座り、同じ水平線を見ながら言った。
「来週の日曜日、泳ぎに来ない?」
「バスケ部の練習は?」
「休みなの。だから……ね?」
「いいよ」
「やたっ!そうと決まれば水着を買いに行かなくちゃ。晴れるといいな~」
(比呂美の水着……)
如何わしい妄想をしてしまうのは、健全な男子だという証拠でもある。
―ピカッ!
眩しい閃光に、眞一郎の緩んだ頬が引き締まった。


―ゴロゴロゴロ
空の向こうから雷鳴が聞こえる。
「降ってくるかも。帰ろう!」
比呂美は立ち上がり、眞一郎の手を取って走り出す。
「ちょっと待ってくれよ」
急かす比呂美と、引っ張られる眞一郎。
雨雲はあっという間に太陽を遮り、強い雨を降らし始めた。
「急いで!」
鞄で雨を凌ぎながら、二人は海岸沿いのバス停へ駆け込んだ。

483:バスに揺られて 2
08/08/19 21:15:42 dEOG8KEH
「はぁはぁはぁはぁ……」
膝に手をついて息を切らす眞一郎とは対照的に
比呂美は少しも呼吸が乱れておらず、鞄から取り出したスポーツタオルで眞一郎の体を拭いている。
「大丈夫?風邪ひかないでね。海に行けなくなっちゃう」
「はぁはぁ……俺は大丈夫だから。ほら、比呂美も」
タオルを取って、今度は眞一郎が比呂美の雫を拭う。
「ありがとう」

眞一郎は、時刻表と腕時計を交互に見ている。
「バスが来るまであとどれくらい?」
「もうそろそろ来る時間だけど……」
「遅れてるのかな」
「多分」
ベンチに腰を掛けてバスを待つ。
バス停の屋根を叩く雨音が、夕立の激しさを物語っている。
窓から海を見ると、波も荒れてきているようだ。
相変わらず、遠くの空では雷が鳴っている。


「ちょっと寒くなってきちゃった」
「大丈夫か?」
「抱きしめてほしいな……」
抱きしめられた比呂美の体は、雨で濡れたせいで少しひんやりとしていた。
比呂美の濡れた髪からは女の香りが漂う。
その甘く艶かしい香りは、眞一郎の鼻先をくすぐり、本能を刺激した。

「比呂美……」
「眞一郎君……んっ……ちゅ……ちゅぱ……」
眞一郎が差し出した舌を、比呂美はつるりと受け入れた。
二人の唇の間で淫らな水音が奏でられる。

ディープキスを交わしたまま、眞一郎の手が比呂美の太ももへ伸びる。
だが、比呂美はそれを払いのけてキスを解いた。
驚いた表情の眞一郎に、比呂美は頬を紅潮させたまま言った。
「バス、来たみたい」
耳をすませると、確かに雨音に紛れてバスが近づいてくる音が聞こえる。

“バスはいつも間の悪いときにやってくる”
それは今回も同じだった。

484:バスに揺られて 3
08/08/19 21:16:23 dEOG8KEH
バスに乗り込むと、比呂美は眞一郎の手を引いて
最後部の二人用の座席に座った。
前方のワイパーは速いテンポで動いている。

窓際に座った眞一郎はボーっと海を眺めていた。
(気まぐれな夕立を恨んでも仕方ないか)


眞一郎の足に何かが触れた。
その感触のほうを見ると、比呂美の右手が、左の太ももに置かれている。
「比呂美?」
「すごい雨だね」
そう言いながら、比呂美の手はさするように動いている。
「そうだな……」
「来週の日曜日は晴れるかな?楽しみだね」
手の動きはゆっくりだが、大きく前後している。
「眞一郎君も楽しみにしててね…」
スラックスの上から、眞一郎の男の部分に触れる。
同時に耳元で小さく囁いた。
「…私の水着姿」

そこはすっかり硬くなっていた。
トランクスとスラックスを内側から破るように、力強く屹立している。
「ひろ、み……」
「ん?」
比呂美は確かめるように、指先で眞一郎の形をなぞる。
そして十分に血液が海綿体に流れていることを確認すると
今度はファスナーに指をかけ、引き下ろしていく。

485:バスに揺られて 4
08/08/19 21:16:54 dEOG8KEH
ジジジジジジ

ファスナーを全開にすると、今度はトランクスの前開きに指先を忍び込ませた。
「やばいって……」
「大丈夫……」
「誰かに見られたら……」
「絶対バレないよ……」
二人の他にバスに乗っている人は
運転手と、中央付近の座席で会話をしている二人のお婆さんだけ。
前の座席の背もたれが胸から下を隠しているので、見られる可能性は低いかもしれないが
もしかしたら途中で誰かが乗ってくるかもしれない。
それでも眞一郎は比呂美を払いのけないし、比呂美も手を動かすことをやめない。

解放されたペニスは、苦しそうなほど硬く勃起していた。
比呂美の右手が優しく包み込み、慰めるように上下に動いてしごき始めた。

シュッシュッシュッシュッ

規則正しく刻まれるリズム。
眞一郎は、表情に出さないように懸命に耐えていたが
しっとりとした比呂美の手のひらの感触と、バスの中という状況が
限界への距離を急速に縮めていく。
雪解け水が湧き出るように、尿道口からカウパー腺液が滴る。
それが比呂美の手のひらで塗り広げられて、ペニス全体をぬらぬらと光らせた。
上下する比呂美の手は速度を上げ、バスのワイパーと同じリズムで動いている。

「……気持ちいい?」
「うん……」
「……出そうになったら言ってね」
「ごめん。もう出そう……」
限界が近いことを告げると、比呂美はスカートのポケットからハンカチを取り出した。
その様子を見ていた眞一郎は気づいてしまう。
比呂美のブラウスが雨でくっきりと透けて、ピンクのブラが見えていることに……。
脳に送られた一枚の画像が、トリガーをあっさりと引いてしまった。

486:バスに揺られて 5
08/08/19 21:17:31 dEOG8KEH
「出るッ……!」
眞一郎は、比呂美の耳元で小さく叫ぶ。
比呂美は左手で用意していたハンカチを、素早く亀頭の先端に当てた。
握られながらも、力強く脈を打って精を放つペニス。
先端から放出された白濁液は、ハンカチの上でプルプルと震えるほどの濃さだった。

栗の花にも例えられる重く不快な臭いが漂う。
汚れた面を内側に折ったハンカチを、平然とポケットにしまう比呂美。
眞一郎も、ぐったりと項垂れたものを、そそくさとスラックスの中に押し込んだ。


 次は 麦端三丁目 麦端三丁目


バスはウインカーを点滅させて
スピードを落としながらバス停のほうへ寄っていく。

二人が前方の降車ドアに向かう途中
中央付近に座っているお婆さんの会話が聞こえた。
「なんだか変な臭いがしない?」

逃げるようにバスを降りる二人。
いつのまにか夕立は通り過ぎ、西の空が赤く染まっていた。
―終―

487:朋与男
08/08/19 21:57:19 fj+ZT/JG
むむ、スレ維持の救世主参上!ですね
一日一話さん(ですよね?)、一ヶ月ぶりの新作、堪能させていただきました
しかし比呂美……バスの中でとは大胆な……
火がついた二人の性欲が、これで治まるとは思えません
続きを激しく希望いたします

あと「ある日の比呂美」の終了に感想を書いてくださった皆様、
ついでと言っては失礼なのですが、この場を借りまして厚く御礼申し上げます
ありがとうございました

488:名無しさん@ピンキー
08/08/19 22:40:53 xMpC9QQO
>>482
元一日一話さんキタ━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━!!
久しぶりのSS美味しゅうございました
> 「来週の日曜日、泳ぎに来ない?」
> 「バスケ部の練習は?」
> 「休みなの。だから……ね?」
> 「いいよ」
続きも読みたいなぁ
( ゚∀゚)o彡°水着!水着!w

489:名無しさん@ピンキー
08/08/20 04:41:39 UDN55DgY
一日一話さん
乙です
相変わらずコンパクトでありながら濃厚なSSですね


490:名無しさん@ピンキー
08/08/20 15:25:02 TQS4pdwZ
>>482
守護者あらわる。
乙です。
いい燃料補給になりました。

491:元一日一話
08/08/23 02:38:50 JiLCtbEC
遅くなってすみません
アク禁に巻き込まれていました。解除されたようなので書き込みます

>>487
お久しぶりです
「ある日の比呂美」お疲れ様でした
皆さん同様、新作を期待しています


海と水着の話は、是非とも書きたいと思っています
まだイメージもわいてこないので
夏の終わり(8月中)までに間に合うかわかりませんが、できるだけ頑張ってみます

比呂美の水着について、皆さんはどんなイメージがありますか?
個人的には下着の印象からか、白や青系なのかなと思うのですが、黒なんかも似合いそうですよね…
乃絵についてはスクール水着が真っ先に思い浮かびますw


今回は「バスに揺られて」の続編です。保守代わりになれば幸いです

492:バスに揺られたそのあとで 1
08/08/23 02:40:09 JiLCtbEC
※「バスに揺られて」の続編です。


バスを降りると夕立は通り過ぎていた。
雨上がりの匂いの中、夕焼けを背に歩く比呂美と眞一郎。
大きく伸びた二つの影は、寄り添って手を繋いでいる。

「今日も帰ったら絵本の続き?」
「そうだな。夏休みが終わるまでには一冊描き上げたいし」
「そう……」
「でも最近は暑さのせいか集中できなくてさ~」

不意に比呂美が立ち止まる。
「家に寄っていかない?」
一歩先で振り返る眞一郎。
「集中できるようにしてあげる……」

~♪
眞一郎の唇が動き出したと同時に、携帯電話の着信音が鳴った。
「ごめん……」
「…………」
「もしもし?帰り道だけど。えっ?……わかった」
―ピッ

「……おばさん?」
「今日は用事があるから早く帰ってこい、だって」
「じゃあ仕方ないね」
「ごめん」
「ううん」


一人アパートに帰った比呂美は、玄関を閉めると深いため息をついた。
「はぁ~……」
鞄を置いて右手を見つめる。
ほんの少し前まで、この手は眞一郎と繋がれていた。
それよりもう少し前には、眞一郎を握って上下していた。しかもバスの中で。

ポケットに手を入れて、取り出したハンカチをそっと広げる。
べっとりと付着した眞一郎の精液。
男子特有のキツイ臭いがむわっと漂う。
比呂美はこの臭いがどんな香水よりも好きだった。
「くんくん……」
鼻腔いっぱいに匂いを吸い込む。
(眞一郎君の匂いだ)
下腹部がじゅんと熱くなるような……
子宮が疼くような……
触りたい。いじりたい。気持ちよくなりたい。
比呂美の性欲が身体を動かす。
ハンカチを握り締めたまま、軽やかにロフトへ駆け上った。

493:バスに揺られたそのあとで 2
08/08/23 02:40:59 JiLCtbEC
ハンカチを鼻に当てたまま、ショーツを脱いで横になる。
(眞一郎君……)
スカートを捲りあげ、茂みの奥へと右手が伸びる。
視覚と触覚を満たし、そして嗅覚にダイレクトに響くリアルなオカズが
無意識のうちに比呂美の指使いをいつもより大胆にさせた。

ちゅくっ…くちゅっ…ぴちゃ…くちゃっ……

薄い粘液が奏でる水音と、甘美な吐息。
水音のボリュームが上がってくると、吐息は喘ぎ声に変わっていく。
「うぅっ!……眞一郎くん……もっと……あんっ……もっとぉ……」
この手が、この指が、眞一郎のものだったら……
そんなことを想像しながら、比呂美は快楽の頂点へと登りつめていく。
ハンカチを口の中に含んで噛み締める。
青臭い眞一郎の味が舌から脳に伝わる。
脳と身体が反射的にエクスタシーの記憶を呼び出して、あの気持ちよさを再現した。
「んっ……あっ…いっ…あっ…はぁん……んんっ!…アッ!…イ、ぃく…!!」
頭の中が真っ白に痺れる。
背筋にグッと力が入り、腰が大きくブリッジのように跳ね上がる。

そのまま比呂美は意識が薄れていくのを感じながら
強い眠気に身を任せて、瞼を閉じた。

それからどれくらいの時間が経ったのだろう。
意識を取り戻した比呂美は、重い身体を起こして時計を見たが、まだ長針が半周した程度だった。
シーツにできた無数の染みは、比呂美が飛沫をあげたことを物語っている。
本能が求めた満足感と、理性が生み出す罪悪感。
それは自慰行為を覚えたころから変わっていないが、その比率は変わってきている。



「何作ろうかな~」
シャワーを浴びた比呂美は冷蔵庫を開けて、夕食の献立を考える。
しばらく考えた後、アロエヨーグルトを取り出してドアを閉めた。
(海だもん。水着だもん。ダイエットしなきゃ……)
比呂美の身体には、落とすべき無駄な脂肪などないのだが
少しでも綺麗になりたいと思うのが乙女心。
ダイエットに水着選び、約束の日曜日まで、比呂美にとって忙しい毎日が始まった。
―終―

494:名無しさん@ピンキー
08/08/24 06:51:38 Hl9ya6vW
GJ!海編も期待してます
比呂美は白のビキニが似合いそう

495:名無しさん@ピンキー
08/08/24 08:27:17 nRKQbYOz
>493
比呂美がとても魅力的です。
海と水着の話も凄く楽しみです。
比呂美の水着は白のワンピースを着てほしいですかね。
さりげなくハイレグぎみで、背中が大きくカットされていたり。

496:名無しさん@ピンキー
08/08/24 13:55:02 +OMZ4DRE
>>491
GJ
続き乙っす。
比呂美さんもすっかりエロくなっちゃて、最高です。

水着は白や逆に濃い紫のワンピースがいい感じ。
ちなみに乃絵はフリフリ系で、愛ちゃんは頑張ってセクシーなビキニかな。


497:名無しさん@ピンキー
08/08/26 00:28:06 FR6f949S
海編、楽しみにしています

498:名無しさん@ピンキー
08/08/26 18:51:31 F68Ow/Ku
乳首やマンコが見えそうなマイクロビキニで

499:名無しさん@ピンキー
08/08/26 20:27:51 oJGDZmdt
ないわw

500:名無しさん@ピンキー
08/08/28 10:20:06 HNImFvXr
愛ちゃん、大胆

501:名無しさん@ピンキー
08/08/29 14:09:10 ofvReDd/
夏が終わるなぁ

502:名無しさん@ピンキー
08/08/30 15:58:52 uhSQ/5Ge
愛ちゃんならコーラに睡眠薬混ぜて逆レイプくらいしてくれると思ったのに

503:海水浴 1
08/08/31 19:24:41 HNAlUayF
「こんにちは。あの、眞一郎くんは……」
「まだ二階で寝てるみたいなのよ。起こしてあげてちょうだい」
下から聞こえる話し声は耳に届いていたが
眞一郎の体と瞼は重く、ベッドから起き上がれずにいた。
階段を上る音が近づいてくる。

「眞一郎君、起きて」
「…比呂美?…今何時?」
「もうお昼だよ。今日の約束忘れちゃったの?」
(今日の約束?なんだっけ?)

「ねぇ」
比呂美の声に眞一郎は瞼を薄く開けた。
ぼやけた視界の中で、比呂美の顔が近づいてくる。
「せっかく可愛い水着買ったのに。見たくないの?」
(そうだ。今日は比呂美と海に……)「……見たい」
「じゃあ起きて。早く行こっ!」
『比呂美の水着姿が見たい』その一心で眞一郎は起き上がった。



雲ひとつない空、太陽の光を反射して海面はキラキラと輝いている。
気温はこの夏の最高値を記録していた。
「晴れてよかったね。早く泳ごうよ!」
「そうだな。え~っと更衣室は」
汗ではりついたTシャツの胸元をパタパタと動かしながら
眞一郎は更衣室が備えてある海の家を探した。
「あそこにしようか……!?」
眞一郎が指差しながら隣を見て驚く。
熱い砂の上で、比呂美がワンピースを脱ごうとしているのだ。
「おい!こんなところで!」
慌てふためく眞一郎を横目に、比呂美はするっと脱いでしまった。
ワンピースの下から現れたのは、下着……ではなく水着。

疲れた顔でロボットのように「似合ってるよ」と繰り返す朋与と共に
二時間半もかけて選び抜いた水着である。

「……どうかな?」
「えっ……あ……カワイイ……」
「それだけ?」
「……すごくよく似合ってる。やっぱり比呂美ってスタイルいいよな」
「ふふ、ありがとう♪」
ニコッと笑う比呂美の姿を、眞一郎は直視することができなかった。

504:海水浴 2
08/08/31 19:25:18 HNAlUayF
浮き輪に座って波に揺られる比呂美と、それにつかまる眞一郎。
この波のように心地よい穏やかな時間が流れる。
夏休みの間も、連日のように部活がある比呂美にとって
今日はようやく訪れた夏休みらしい一日。
二人が同じ時間を共有するのは久方振りだった。
「バスケ部は明日からまた練習?」
「うん。夏休み中もいくつか練習試合が入ってるから」
「そっか、忙しいんだな。一緒に遊べるのも今日だけか」

海面下で眞一郎の手が動く。
「あっ……眞一郎君……」
浮き輪の穴に座っている比呂美のヒップに触れる。
「他の人に気づかれちゃうよ……」
「離れてるから大丈夫だって」
「でも……」
小さく締まった柔らかい肉をいやらしく撫で回す。
臀部から前のほうへ手が移動すると、手のひらから指での愛撫に切り替わる。
比呂美の一番恥ずかしい部分を、指が摩るように前後する。
一本の筋をなぞるように、何度も何度も。
「眞一郎君……んっ」
比呂美の手が浮き輪をギュッと握る。

久しぶりに逢えた恋人。
それも眩しい水着姿で。
押さえ込んでいた欲望が暴走を始めて、眞一郎の悪戯はエスカレートしていく。
爪先で優しく引っ掻いたり、指を震わせて振動を与えたり、巧みに比呂美を高めていく。
「んっ……あんっ……やっ」
水着の股間部分を器用に手繰り寄せ、比呂美の大切な部分を海水に晒す。
指先で入り口を十分にほぐすと、ずぶりと中指を侵入させた。
「んんっ!んァ!」
そこは眞一郎を待ちわびていたかのように、ぬるっと抵抗なく受け入れて
嬉しそうにギュウギュウと指を締め付ける。

ぷかぷかと波に揺られながら、下から眞一郎の指に突き上げられる。
動きを変え、形を変え、膣壁を擦り上げる一本の指。
比呂美の息は乱れ、目は虚ろに空を眺めている。
「はぁ…はぁ…はぁんっ!…くっ……ぁん!」
「あんまり声出すと気づかれるぞ」
「だって……んふぅ……っ……指が……」
「指が気持ちいいのか?」
コクコクと頷く比呂美を見て、眞一郎は征服感に満たされる。
中指に続き、人差し指も比呂美の中へ侵入する。
うねうねと蠢くイソギンチャクのような動きが与える強い刺激。
「んんっ!…くぁ…あっ…アンッ!ぃぁっ、ひぁっ、イクッ!!」
二本の指がグイッと同時に曲げられて、比呂美の頭は真っ白に染まった。

505:海水浴 3
08/08/31 19:26:07 HNAlUayF
「眞一郎君、やっぱり……んっ!」
「しー。静かに……」
狭いシャワー室で絡み合う二人。
丸まった水着が足元に転がり、スノコがカタカタと音をたてる。
壁に手をついた比呂美を、背後から突き動かす眞一郎。
その右手は比呂美の白い乳房を掴んでいる。
―ぺたぺたぺた
感じやすい比呂美が声を出してしまわないように、ゆっくりとした腰の動き。
いつものような激しさはなくとも、もどかしさとスリルが官能を後押ししてくれる。
「……っ……ぅ……ぁっ……んっ……」
抑えきれない嬌声が、淫靡な吐息となって比呂美の唇から零れ落ちる。
隣のシャワー室から人が出て行く気配を感じると
眞一郎はここぞとばかりに、比呂美の細いウエストを掴んで、激しく揺さぶった。
ラストスパートに応えるように、比呂美の膣は力いっぱい収縮する。
「んっ、あっ、…あっ、イヤッ、んあぁっ……ひっ、ぃっ、ぃっ……」
「はっ、はぁっ、いぃっ、あっ!んっ!……っ!!」


ドロッと溢れ出た精液が、スノコの上に垂れ落ちる。
シャワーの水に流されて、排水溝へと消えていく。
日に焼けた身体に冷たいシャワーを当てながら、二人は抱き合って乱れた呼吸を整えた。


更衣室の前で腕時計に目をやる眞一郎。
(おそいなぁ。でも女は着替えに時間がかかるっていうし……)
それから十分後、更衣室から出てきた比呂美はどこか浮かない顔をしていた。
「眞一郎君、大変なの……」
「どうした?」
 ・
 ・
 ・
比呂美は恥ずかしそうに耳元で囁く。
「下着忘れちゃった……」
―終―

506:名無しさん@ピンキー
08/08/31 20:35:50 xz7TBdAz
GJ。比呂美さんエロいよ比呂美さん

しかし眞一郎、ようやく確保したデート当日に昼まで爆睡かよww
ちゃんとしろww

507:名無しさん@ピンキー
08/08/31 22:44:02 ZL6lb+TK
>>503
夏の終わりに、ありがとう、ありがとう。
大胆なお二人さんのやられます。
そして、最後のオチまでついて。
またいつか、待ってます。

508:名無しさん@ピンキー
08/08/31 23:33:08 ahdSdkpx
一日一話さん
乙です
全くこのバカップルわw
デートに浮かれてドジッ子な比呂美も可愛いですね

509:名無しさん@ピンキー
08/09/01 03:04:27 gixcj/Gx
一日一話さん乙!
どうやって帰るんだろうw

510:名無しさん@ピンキー
08/09/01 11:48:58 WaeO5WWH
ノーパソ

511:名無しさん@ピンキー
08/09/02 20:55:57 4CRaRwlT
帰りはノーパンプレイですか

512:名無しさん@ピンキー
08/09/03 05:41:48 S5tN9DMJ
(;´Д`)ノーパンノーブラ…ハァハァ

513:名無しさん@ピンキー
08/09/04 10:45:25 c6F0IUy5
比呂美さん、フトモモに精液垂れてきてますよ

514:名無しさん@ピンキー
08/09/04 14:26:33 r0E64r7I
われらが比呂美が某最強魔王に負けそうです!
皆さんの力を貸してください!!

コード発行所でコード貰って
URLリンク(as20+++++++08.xii.jp)
+は取ってコピペ
アニメ最萌トーナメント2008 投票スレRound96
スレリンク(vote板)

<<湯浅比呂美@true tears>>
をコードと一緒に張るだけ

515:名無しさん@ピンキー
08/09/04 14:29:45 q81aGMuG
  /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:/:..:..:../:../l:::!::..:: : : : : : : :! ヽ: :', :ヽ: . . ヽ ',
. ':::::::::::::::::::::::::::::::::l::::::::::;':..:..:.::,'!:.,' |:.!::::: : : : : : i :i   ', :i : : :, . . .  .
 i::::::::::::::::::::::::::l:::::::|:::::::::i:.:::.:::/ !:i |!i::::::.:. : : : i :i   i :ト : : ' . . . i i
 |::::::::::::::::::::::::::l:::::::!::::::::!:::::::/ |:l  l:| ';:::::::. : : :! :! ___,,,..」:!ヘ : :i . .  ! !
 |::::::::::::::::::!:::::::|:::::::!:::::.:|:::::/  lL -‐!|‐ヘ:::::::. :|i    |j  ', :i . . i '
. !:::::::::::::::::|:::::::l:::::::l:::::.:l:::;'-‐ ´|    !  \::::. :.、! _, -_厶-:、i.:! . . ! ′
 !:::::::::::::::l:::::::!::::::.:!::.:l|::i      -‐_¬  ヽヘい. 'ィ抒:i」}`y'|:! . . ハi
  ';::::::::::::::::!:::l:l::::.:.:.';.:.| !{  _,,xゥァ示'^ヾ    ヽ  {t込.,_  l' /. , !
    、:::::::::::::';::lム:::::.:.:.v!  ,〃{Yfiリr'^         `-"´ ノ/:〃′
    ヽ::::::::::ハ::い:::::.:.:ヽ `` ど辷うゝ'        ///// ´/://
      `、:::::{.ハ´ヘ:::::.:.:ぃ、   /////        {      /イ
      i::::::',  ヽ.{\:::.\              〉       !
        !::::::ヽ. {_`ヽ\、ー             '        ,  >>514
       |:::::::::::`丶、`′ `             _,    , '   投票されることを考えてたらイっちゃった…
       j::::::::::::::.:::::::`T ^ヽ         ー '"´    /
        '::::::::::::l:::.:.:.:i::::!   丶 _           /:!
     /::::::::::::::|:::::.:.:l:::|        ‐-  _    /: i :l
      /:::::::::::::::::!:::::::.:.!:l             `7¬':::::i: :!: l
.     /::::::::::::::::::::l:::::::::.:iヽ             ,':::::::l::::::!: |i: :!

516:名無しさん@ピンキー
08/09/06 14:49:21 ZPyxDoPQ
かなり善戦したな
勝たないほうがよかったよ

517:名無しさん@ピンキー
08/09/08 20:34:58 BG8oABI1
ここで負けて良かったよ

518:名無しさん@ピンキー
08/09/10 14:03:27 3XSr7f5V
むぎや祭エロを~~

519:名無しさん@ピンキー
08/09/11 23:17:00 GxH52wUx
待つのって体力がいるのよね

520:名無しさん@ピンキー
08/09/15 14:42:24 uO7JFLmc
祭、おわった…

521:名無しさん@ピンキー
08/09/17 10:17:13 W4buXXdv
オナバード

522:名無しさん@ピンキー
08/09/18 23:15:06 l2G27Twm
保守

523:名無しさん@ピンキー
08/09/20 08:08:28 73Cem3Pc
しんさくしんさく!

524:ある日の比呂美・番外編2-1
08/09/21 02:59:53 zAw96bk+
夕立は突然だった。
つい先刻まで快晴だった空がいきなりヘソを曲げ、久しぶりに一緒に下校する眞一郎と比呂美に襲い掛かる。
運の悪い事に二人は傘を持っておらず、その上、今いる所は仲上の家までは、まだまだ距離がある場所だった。
(こんな土砂降りの中を走って帰ったら、眞一郎くん風邪ひいちゃう)
比呂美の決断は早い。
眞一郎の手を取ると、彼を引っ張るようにして自室へのコースを駆け出す。
学校で『周回遅れの女王』の異名をとる俊足に掛かれば、現在位置から自宅までの距離など何程の物でもない。
大した時間も経ずに、二人は比呂美の暮らすアパートの玄関へとたどり着いた。
「結構 濡れちゃったね」
玄関の鍵を開けながらヘヘッと肩をすくめる比呂美に、答えを返す余裕は眞一郎にはなかった。
肺の辺りを押さえながら、「…殺す気か…」と吐き出すのが精一杯。
万年運動不足の文化系にとっては、豪雨の中の猛ダッシュは相当の苦行だったらしい。
比呂美は満面の笑顔で眞一郎の抗議を無視すると、部屋の中へと彼を押し込んだ。
そして真新しいタオルを二つ用意し、その一つを眞一郎に投げ渡す。
受け取ったタオルで頭や肩の水滴を拭いながら、窓外の様子に目を遣り、眞一郎は呟いた。
「当分、止みそうもないな」
「日が暮れるまでは無理だよ」
自分のタオルで髪を拭きながら、比呂美は眞一郎の横に寄り添って、同じ方向に視線を向ける。
「シャワー浴びて。そのままじゃ風邪ひくよ」
入浴を勧める比呂美に、眞一郎は「傘を貸してくれれば帰ってから風呂に入れる」と抗弁したが、彼女は聞き入れない。
何をムキになっているのか、と横に立つ温もりに目を遣った瞬間、眞一郎は比呂美が求めているモノに気づく。
…………三割ほど閉じられた瞼の奥……青味がかった瞳が訴えかける『それ』は…………
…………
(そういえば、もう何日もしてない……)
ここ最近、二人は各々の用事で忙しく、会話を交わすのも久しぶりだった。
そして最後に身体を交わらせたのは四日前……
愛の交感を覚えたばかりの恋人たちにとっては、『長すぎる』と言って差し支えない時間である。
「比呂美」
眞一郎は短く呟くと、両腕を伸ばして比呂美の身体を抱き締めようとする。
が、自分の全身が濡れ鼠の様になっていることがふいに思い出され、その動きは寸前で止まった。
「ふふっ… 私も濡れてるんだから、別にいいのに」
大好きな『眞一郎の抱擁』が得られなかった比呂美は、微量の非難を視線に混ぜて微笑む。
眞一郎はそれを受け止めつつ、同様に微笑みを返しながら右手を比呂美の左頬にあてた。
「……いやらしい顔…してるぞ」
「……眞一郎くんも…ね」
お互いの体内で、心臓の鼓動と共に『欲望』が跳ね回り始めたことを、二人は敏感に感じた。
軽い口づけを交わしてから、眞一郎と比呂美は相手の制服に手を掛ける。
慣れぬ脱衣にもどかしさを感じつつも、何とか目の前の恋人を全裸にした二人は、今度は何の遠慮もなく抱き逢った。
「……一緒に……入ろう」
「……」
眞一郎の大胆な誘いに、比呂美は僅かな戸惑いを見せる。
もう手足の指の数では足りないほど眞一郎とセックスを重ねてきたが……入浴を共にしたことはない。
一糸まとわぬ姿になっておきながら……今更…だが……
(……恥ずかしい)
未体験の領域に踏み込む恐怖に、比呂美の心が一瞬だけ怖じけたが、それは本当に一瞬のことだった。
きつく抱き締めてくる眞一郎の存在が、些細な恐れと怯えを煙のように消していく。
「……いいよ……洗いっこ……しよっか?」
「えっ…」
眞一郎の耳元で囁かれた言葉が、瞬時に二人の立場を逆転させる。
「……比呂美」
心の余裕が消し飛んでしまった眞一郎の手を、比呂美の白い手が引く。
「……入ろ……」
雨雲のせいで薄暗くなった部屋を後にし、眞一郎と比呂美は頬を欲望で紅潮させながら、バスルームへと消える。
室内には脱ぎ捨てられた二着の制服と、激しさを増す雨音だけが残された。

        [つづく]

525:朋与男
08/09/21 03:06:15 zAw96bk+
遅筆屋さんとあさみさんの復活を願って、短いお話を投下させていただきます
保守です、保守
ただひたすら『ヤル』だけの話にしようと思ってますが、対面座位だけはさせない予定です


526:名無しさん@ピンキー
08/09/21 04:50:38 KVY4jtej
おおおGJです!
積極的な比呂美かわいい!
次作も期待しています

527:名無しさん@ピンキー
08/09/21 05:06:25 llvbe6QE
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!

528:名無しさん@ピンキー
08/09/21 12:14:43 bzLdsh8w
>524
二人で風呂ですか!続きが猛烈に楽しみです。

529:名無しさん@ピンキー
08/09/21 14:49:29 E1cNTvkS
朋与男さんプチ復活ですね
続きが楽しみです

530:名無しさん@ピンキー
08/09/22 09:59:59 XvDgrIX9
>>524
おおおお。朋与男さんだ!
「ヤル」だけなんて言われますが、二人のラブエロが読めるだけで
最高です。それも「つづく」ですし。
他の職人さんもぜひ追随してほしいです

531:ある日の比呂美・番外編2-2
08/09/24 03:01:18 t6nsgCUF
「二人で入るの、初めてね」
暖色系の明かりに照らされた浴室で、比呂美はタオルで髪をまとめ上げながら呟いた。
「そ…そうだ…な」
すっかり主導権を奪われてしまった眞一郎は、気分を落ち着かせようと深く息を吸い込んでみる。
だが、目の前に広がる夢のような光景に、呼吸器と心臓は暴走を続ける一方だった。
二人で入るには狭すぎる洗い場を、小物を片付けることで少しでも広くしようとしている比呂美の後ろ姿……
タオルに隠された髪の生え際と、柔らかさを増してきた肩から尻にかけての緩いライン……
確かな照明に彩られた世界が、もう見慣れたはずの比呂美の裸体を、普段よりも美しく、扇情的に魅せる。
(自分で誘ったんだろ。 しっかりしろ、俺!!)
視界を閉じて苦し紛れに入れた気合は、僅かに声になってしまった。
「え? なに??」
何事か、と訊き返してくる比呂美に視線を戻すと、すでに浴室の整理は終わっていた。
液状石鹸のボトルとバスマット、浴室用の小さな椅子以外は、お湯の入っていない浴槽に追いやられている。
そして片づけをした本人は、椅子を自分の前に置き、バスマットの上に正座していた。
問い掛けに答えられない恋人を無理に追及したりはせず、比呂美は「座って」と囁き、眞一郎を促す。
「う、…うん」
その言葉に吸い寄せられるように、眞一郎は椅子に腰を下ろした。
内心の動揺を悟られないように、わざと男性器を堂々と比呂美に見せ付ける。
だが、平常心と優位性を取り戻そうとする眞一郎の目論見は、比呂美が発した一言で脆くも崩れた。
「お客さん、外 暑かったですか?」
「……………………は、はいぃぃぃ???」
股を大きく開いたまま、それに負けないほど大きく両眼を見開く眞一郎を見て、比呂美はククッと笑い出す。
唖然としている眞一郎をよそに、比呂美はシャワーのコックを捻ると、お湯の温度を確かめながら言った。
「『エッチなお店』ではね、最初はこう挨拶するんだって」
自分と眞一郎の冷えた身体に温水を浴びせながら、比呂美はまだ薄く笑っている。
「な……何を言って……えぇ??」
眞一郎は心底、どう反応すればいいのか分からなかった。
確かに今の状況は、三代吉から聞いたことのある『エッチなお店』の様子に酷似しているが……
(なんで比呂美がそんなこと知ってるんだ……)
罠か…… 隠れて三代吉と『その手の』猥談をしている事がバレたのか……
眞一郎の背中に、冷たい物が駆け抜ける。
…………
陰部だけでなく、身体全体が緊張で固まってしまった眞一郎をよそに、比呂美はボディシャンプーを自分の身体に塗り始めた。
「な…なにしてんだよ……」
比呂美の理解不能な行動を目にし、思わず眞一郎の口が動く。
だが、比呂美はそれが聞こえないかのように作業を続け、身体の前面で石鹸を泡立てると、眞一郎の後ろに回り込んだ。
「……朋与がね…… マンネリにならないように、ちゃんとサービスしろって……」
「!」
二人にとって、かけがえの無い少女の名前を聞き、眞一郎は緊張が解けると同時に得心がいった。
ネットジャンキーの黒部朋与ならば、『この手の情報』に精通していても不思議は無い。
(朋与の奴……余計な事を比呂美に吹き込んで……)
そう内心で呟いたものの、眞一郎は朋与に感謝していた。
いつも自分たちを気に掛けてくれていること…… 
そして二人に新しい世界に踏み込むきっかけを与えてくれたことを……
…………
「うわっ!!」
刹那、思考を別のところに飛ばしていた眞一郎の背中に、比呂美の柔らかな乳房が押し付けられた。
甘美な刺激に声を上げた眞一郎の反応を楽しみながら、比呂美は手を前に回して眞一郎の上半身をギュッと抱き締める。
そして小さな唇を開き、前歯で眞一郎の耳朶に軽い噛み跡をつけてから、小声で囁いた。
「じっとしててね。……私が……きれいにしてあげる」
「……比…」
眞一郎の返事を待たずに拘束を解き、円を描くように自分の身体を動かし始める比呂美。
乳首の先端が背部を蠢くむず痒い感覚に、眞一郎は「うっ」と呻き声を上げた。

        [つづく]

532:朋与男
08/09/24 03:04:29 t6nsgCUF
コメントくださった皆様、ありがとうございます
温かく迎えてくださってホッとしました

保守が目的なので、なるべく小まめに投下したいと思っております

533:名無しさん@ピンキー
08/09/24 03:40:02 +4IQE5yA
眠れなかった夜に、ありがとうございます
明日は休みます 比呂美と眞一郎が幸せならどうでもいい
今日はもう寝ます

534:名無しさん@ピンキー
08/09/24 07:27:59 gkE/caRT
朋代男さんお帰りなさい&乙です
新作もいい感じで今後が楽しみです
でも、朝此処を覗くのはこれからよそう・・・前屈みになっちゃう///

535:名無しさん@ピンキー
08/09/24 12:01:00 2lMSUwa+
            i⌒r.´   ヽ
            l. | ,lノリハリ)
キタ━━━ ノ,,ノゝ(!i゚ヮ゚ノ━━━!!!!!
          ((.  ⊂)_6)つ
              .i__|_i ◯
               し'ノ

536:名無しさん@ピンキー
08/09/25 00:59:01 himXisx2
>>532
またまた続きが来たよ。
間を開けてでも投下していただければ、週の生き甲斐になります。

537:名無しさん@ピンキー
08/09/25 06:18:02 LDeXw+Ap
朋与男さん
乙です
どんどんエロくなっていくな比呂美さんは・・・
朋与GJ!!

538:名無しさん@ピンキー
08/09/27 10:22:21 /JTgtTcz
朋与男さん
乙です
保守投稿ご苦労様です



539:安藤愛子の切情1
08/09/28 04:35:14 +mGsoAC0
※鬱注意

原案:>>502さん



朦朧とする意識の中、眞一郎は重い瞼を開けた。
(ここは……ここは……どこだ……?)
何が起こったのかわからない。
ただ、これは夢ではないということは理解できた。
90度に傾いた世界から自分が横たわっていることに気づく。
しかし体に感じるのは、ベッドの心地よさとは程遠い、硬く冷たい感触。
(ここは……俺の部屋じゃない……)

起き上がろうとするが、拘束されていて腕が動かない。
なんとか上半身を起こすと、強烈な眩暈と頭痛が眞一郎を襲った。
「痛てっ……なんだこれ」
眩暈が治まるのを待つ。
ズキズキと響く頭痛のおかげで、徐々に意識を取り戻し始める。
(……監禁されてる?誰に?)
舌上に漂う甘い味。胃からこみ上げる炭酸の気泡。
(たしか俺は……!)

自分がどこにいたのか、何を食べていたのか
意識を失う直前に何を飲んだのか、眞一郎ははっきりと思い出した。

暗い小部屋のドアが開く。


「眞一郎、気がついた?」
差し込む光に目が眩んで顔は見えなかったが、声と影で眞一郎には愛子だとわかる。
同時にここが店の倉庫だと気づいた。
しばらくすると明順応で視界が鮮明になる。
その目に映った愛子の悲しげな表情からはいつもの生気が感じられない。
「愛ちゃん、どうして…………」
愛子は何も言わないまま、眞一郎の唇を奪った。

540:安藤愛子の切情2
08/09/28 04:36:05 +mGsoAC0
「比呂美ちゃんと別れて。アタシと付き合って」
突然の強引なキスと告白。
眞一郎は驚きのあまり言葉を失ったが、落ち着いた様子で自分の気持ちを告げる。
「俺は比呂美をずっと支えるって決めたんだ」
「そうだよね。そういうところが眞一郎のイイトコロ……」
振り返ってうなだれる愛子の背中からは深い哀愁が感じられる。
「俺、誰にも言わないから!それに三代吉は愛ちゃんにマジなんだしさ」
「三代吉じゃダメなの」
「えっ?」
「三代吉はイイヤツだけど、やっぱりアタシは眞一郎が好き。眞一郎じゃなきゃイヤ」
何かを覚悟したように愛子は顔を上げた。

白いセーターに手をかけると、少しの躊躇もなく脱ぎ捨てる。
続いて赤いミニスカートも、キャミソールも、下着も
まるでこれからシャワーでも浴びるかのように。
「胸は自信あるんだ。比呂美ちゃんより大きいでしょ?」
挑発するように胸を寄せ、虚ろな目で迫る愛子。
「愛ちゃん!やめてくれ!」
その言葉とは裏腹に、眞一郎の中に潜む本能は反応していた。
いくら理性を身につけても人間だって所詮は動物。
子孫を残すようにインプットされた遺伝子が、雄の部分を駆り立たせる。

衣服を脱ぎ捨てた愛子だったが
ほどよく肉付いた健康的な脚にはニーソックスが履かれたままだった。
その姿が淫靡で肉感的な雰囲気を醸し出し、眞一郎の燻る火種に油を注ぐ。

これ以上愛子の艶かしい姿を見てはいけないと、眞一郎は瞼を閉じて叫んだ。
「もうやめてくれ!!」
「眞一郎、ちゃんとアタシを見てよ」
「俺は愛ちゃんと三代吉とずっと友達でいたいんだ。だからもう……」
「ごめんね。でもこれが最後の我侭だから」
―カチャカチャ
愛子の手は眞一郎のベルトを外し、下半身の衣服を剥いでいく。

541:安藤愛子の切情3
08/09/28 04:37:00 +mGsoAC0
右手で女陰をほぐしながら、左手で眞一郎のペニスを更に硬くさせる。
黙々と下準備を進める愛子を止められる言葉はもう何もなかった。
十分に潤ったことを確かめると、愛子は眞一郎に跨る。
「目を覚ましてくれよ!」
「悪いのは全部アタシ。眞一郎は何も考えなくていい」
狙いを定め、腰を落とし、眞一郎を“にゅるり”と飲み込んで奥深くまで受け入れる。
「んっ……はぁ……入った。やっぱり三代吉よりも大きい……」
「愛ちゃん、やめ……」(比呂美……!三代吉……!)
これが愛子による強姦だとしても
恋人と親友、大切な人を二人も同時に裏切ってしまったという事実が
愛子の軽い体重と共に、眞一郎に重く圧し掛かった。

眞一郎はこれまで比呂美と何度かまぐわったことがあったが、いつも避妊は欠かさなかった。
だが今回は違う。このまま射精してしまえば、愛子の中で直接精子を放つことになる。
親友の彼女に対してそんなことが許されるはずがない。
眞一郎はそう自分に言い聞かせて必死に歯を食いしばった。

「あっ、んっ、んんっ……奥に当たって、ん、きもちいっ」
眞一郎の上で腰を振る愛子。
愛子はこうして眞一郎とひとつになることをずっと望んでいた。
ベッドの中で一人慰めるときも
三代吉に組み敷かれて処女を散らしたときも
ずっと眞一郎のことを考えていた。
もう戻れない境界線を越えて、愛子は叶わぬ願いを現実のものにした。

「あぁっ!いいっ!眞一郎!あんっ」
小さな身体を弾ませるたびに豊かな乳房がゆさゆさと揺れる。
大きさだけではなく、形も色も柔らかさも非の打ち所がない。
たわわに実った二つの果実には、男なら誰でも揉みしだいて吸い付きたくなるような魅力があった。
「あぁぁっ!…んぁぁぁっ!」
三代吉にはない太さが、硬さが、大きなカリ首が、愛子を内側から強く刺激する。
今まで感じたことのない快感が、愛子の腰を激しく動かした。
眞一郎のペニスを膣全体で感じながら絶頂に達する。
「んッぁ!いっ!ぃっ!眞一郎、いッちゃ……あァァッ、イクッッ!!」
それと同時に眞一郎も一筋の涙を流しながら、愛子の中で果ててしまった。

542:安藤愛子の切情4
08/09/28 04:37:37 +mGsoAC0
目も合わせず走り去る眞一郎の背中を見送りながら、愛子は店のシャッターを下ろす。
ミニスカートの奥から垂れてきた精液が、ニーソックスに染みをつくっていた。

誰も居ない暗い店内。
いつものあの席に眞一郎と三代吉が座ることはもうないだろう。
愛子はその場に崩れ落ち、声をあげて泣いた。



「アタシの背がもっと大きかったら」

「アタシの髪がもっと長かったら」

「アタシがバスケットボールをやっていたら」

「アタシがあと一年遅く生まれていたら」

「そしたら眞一郎の彼女になれたのかな?」
―終―

543:名無しさん@ピンキー
08/09/28 18:41:39 viu32dpr
>>539
元一日一話さん乙っ
病んでる愛ちゃん…こえぇぇぇぇ
しかしエロいわぁ愛ちゃんの身体w
また楽しみにしてます。

544:ある日の比呂美・番外編2-3
08/09/29 02:16:28 Bf/tZx1W
眞一郎の両肩に手を置いて、そこを支点に比呂美は身体を動かし続ける。
楕円から八の字へ…… 胸の先にある桃色の小肉が、縦横無尽に眞一郎の背で踊った。
「気持ち……いい?」
「……あぁ…………うっ!」
瞼を閉じて身体を小刻みに震わせる眞一郎の痴態が、比呂美の心を熱くさせ、その口元を緩ませる。
だが、そんな比呂美の優位は長く続かなかった。
攻撃に使用している部位は女にとって……比呂美にとって最も『感じやすい』部分。
性感の激しい高揚と限界が比呂美の神経に襲い掛かり、少しずつ意識を混濁させていく。
「…はっ……はぁ……はぁ……」
感じはじめていることを眞一郎に悟られないように、漏れ出る嬌声を押さえ込もうとする比呂美。
しかしそれは、湧き出す悦楽の前では無駄な抵抗でしかない。
程なく、比呂美の声は比呂美自身の制御を離れ、眞一郎の呻きより激しいものになっていった。
…………
「……比呂美… 前も…してくれよ」
「え? ……あ…うん」
比呂美は自分勝手に盛り上がっていたことを反省し、再び身体を眞一郎の前に滑らせて跪いた。
(気持ちよくしてあげなきゃ。 眞一郎くんを……気持ちよく……)
見上げた眞一郎の顔が余裕を取り戻しつつある事に戸惑いながらも、比呂美はそそり立った陰茎に手を伸ばそうとする。
だが比呂美の手の平が目標にたどり着くより早く、眞一郎の両腕が比呂美の身体を引き寄せていた。
「あっ!! ちょっと…何??」
突然、眞一郎が攻撃に転じたことに、戸惑いの声を上げる比呂美。
眞一郎はそれに動ずることなく、そのまま腕全部を使って、比呂美の背中と臀部に刺激を加え始める。
「いやっ!」
予告もなくスタートした眞一郎の愛撫から、比呂美は身を捩って立ち上がり壁際へと逃げ出した。
しかし、その顔に嫌悪の情が浮かばないのを熟知している眞一郎は、椅子から立ち上がって比呂美を追い詰める。
「『洗いっこ』……なんだろ? だったらさ…」
「そ、そうだけど……先に私が………ぁあん!!」
背面を壁に遮られて逃げられない比呂美は、眞一郎にあっさりと捕らえられてしまった。
「この方が…手っ取り早いよ」
勃起した陰部を腹部に押し当て、胸板で乳房を押し潰しながら、眞一郎は先程の比呂美の動作を真似る。
その甘美な感触に、比呂美の口からは「はぁあ」という甘い吐息が漏れはじめた。
ボディシャンプーの泡と眞一郎の肌が織り成す甘美な刺激が、比呂美の前頭葉は痺れさせる。
そして、全身に行き渡っていく心地よい弛緩……
徐々に力が抜けていく比呂美の身体を支えながら、眞一郎は腹に当てていた陰茎の位置を、陰裂へと移動させた。
比呂美のそれを真似るようなものから、セックスを直接に連想させる動作へと移行していく眞一郎の動き。
陰唇の谷間をレールに見立て、ペニスを前後させる眞一郎の動きに、食いしばった比呂美の口から嬌声が零れる。
「んんっ……いやぁ…」
説得力の無い拒絶の言葉を比呂美は口にしたが、眞一郎は攻撃の手を緩めない。
壁際に比呂美を固定したまま、陰茎の上部で開き始めた肉の華を刺激し続ける。
(ダメっ……欲しくなっちゃう……)
下腹部の奥に巣食う牝が脈動をはじめ、『貫かれたい』という強い気持ちが比呂美の脳内を駆け巡る。
眞一郎の本能も、陰茎の上面に感じる比呂美の蜜の感触が引き金となって、暴走を始めていた。
「比呂美、いくよ……」
僅かに腰を落とし、陰茎の角度を調節しながら比呂美の膣に狙いを定める眞一郎。
腹筋に力を込め、怒張をグイと突き出そうとした瞬間……
「ダメっっ!!」
比呂美の鋭い声が、狭い空間を切り裂く。
快楽に呆けていた比呂美の身体が覚醒し、バネのように弾けると、眞一郎の拘束を振り解いた。
眞一郎から距離をとり、浴室の隅に逃げる比呂美に、『おあずけ』を喰らった牡の非難の視線が飛ぶ。
「な、なんだよ。 お前だって…」
欲しがっているじゃないか…と口にしかけて、拒絶の理由が突如、眞一郎の頭に思い浮かんだ。
「あ…… もしかして、今日って…」
比呂美は赤面した顔をコクリと頷かせてから、今が『危険』な時期であることを告げる。
「たぶん……そろそろ排卵日だから…… ナマは…ダメ……」
セックスという行為に、常に付きまとう『妊娠』という現実……
それが眞一郎の顔を、牝を狩る野獣から普通の高校生へと引き戻していった。

545:朋与男
08/09/29 02:23:06 Bf/tZx1W
>>539
一日一話さん、新作良かったです
「出たぁ! 愛子さんの『48の眞一郎殺し』の一つ、『非情なる昏睡レ○プ』だぁ!!」
とか思っちゃいました
次はDVD最終巻のパッケージ乱入記念として、朋与が主役のお話をお願いします。

546:名無しさん@ピンキー
08/09/29 02:27:33 dc4ixYK9
ありがとうございます
明日は会社にいってみようかな

547:名無しさん@ピンキー
08/09/29 03:48:26 wFC1mg9C
一日一話さん&朋与男さん乙です
愛ちゃんの切なさが伝わってきます

朋与男さんさすがですね
この手ので「避妊」とか出されると萎える事多いけど
逆に二人がお互い大切にしてるのが伝わってきます

548:名無しさん@ピンキー
08/09/29 10:09:50 qu1Ihy+P
>>539
乙かれです。
愛ちゃんの情念を深く深く感じました。
続くのかな。


549:名無しさん@ピンキー
08/09/30 23:01:52 OYdK0Jlx
>>544
朋与男さん、乙です
これで、行為をやめちゃうのかな
それとも、他のプレイか

550:名無しさん@ピンキー
08/10/01 00:04:16 +P2k2YvD


551:名無しさん@ピンキー
08/10/01 11:15:21 NKhfJAtz
            i⌒r.´   ヽ
            l. | ,lノリハリ)
キタ━━━ ノ,,ノゝ(!i゚ヮ゚ノ━━━!!!!!
          ((.  ⊂)_6)つ
              .i__|_i ◯
               し'ノ

552:はじめての外泊-1
08/10/03 01:48:51 bOGg0fn/
トゥルー・ティアーズ サプリメント・ストーリー

 『 は じ め て の 外 泊 』

 ― all night long ―



《 一 きちゃった……》

「じゃ~留守番、お願い。すぐ戻るから」
 比呂美は靴を履きながらそういうと、少し急いだ様子でドアを開けて出て行った。明らかに小
走りになった比呂美の足音がすぐ小さくなって消えた。ひとときの別れ―。とても『別れ』と
は言えないほどのちっぽけな『別れ』でも、比呂美の部屋にひとりで取り残されると寂しさが襲
ってくる。比呂美のいない比呂美の部屋―。比呂美は、この部屋で毎朝ひとりで起き、毎晩ひ
とりで眠る。その寂しさに比べれば、こんな『別れ』なんか『別れ』のうちに入らないというの
に。眞一郎は自嘲気味に顔をゆがめると、ドアの鍵をかけ、リビングに戻っていった。
 眞一郎は後悔していた。
「シチューが食べたい」と思わず口に出してしまったせいで、比呂美はひとりで買い物をする羽
目になったからだ。冷蔵庫を開けて食材が足りないことに困っている比呂美に、「一緒に買い物
にいこう」と眞一郎はフォローしたが、比呂美はその提案をかたくなに拒んだ。
 なぜ? と眞一郎が尋ねると、「セフレで一緒にいるところ、見られたくないし……」と比呂
美は答えた。その一言で眞一郎は妙に納得させられた。もし、『セフレ』という名のスーパーに
一緒にいるところを目撃され、その噂が妙な方向に膨れ上がった場合、『セフレ(エッチ友達)
がセフレ(というお店で)でお買い物』というレッテルを貼られかねない。それは、ラブホテル
からふたり一緒に出てきたところを目撃される恥ずかしさに匹敵するだろう。そして、この手の
噂は当の本人たちにはどうすることもできないというのが、人の世の法則だった。つまり、一度
しくじれば万事休すなのだ。
 そうなると、思春期の女の子にとっては耐え難い日々が続く。ボーイ・フレンドとの仲がいい
ことを冷かされるならまだしも、『ふしだらな娘』、『もう処女じゃない』と言われ続けるのだ。
男には想像つかない精神的苦痛である。おまけに比呂美は一度、石動純との逃避行でさんざんな
目に遭っている。比呂美がそういうことに人一倍気にするのも無理からぬ話。
 しかし、出かける準備をしている比呂美は、なぜだかウキウキしているようだった。人目があ
って眞一郎と一緒に出かけられないことを残念に思っているはずなのに、これから恋人との約束
の場所に向かうような感じだった。さきほど、シチューを作る材料が足りないことを確認した比
呂美の顔は一瞬くもったが、すぐに一転して、これはチャンス! と言わんばかりに明るさを取
り戻した。比呂美にしてみれば、こういうシチュエーションを楽しみたかったのかもしれない。
恋人を自分の部屋に残して自分だけ買い物に出かけ、戻ってくれば恋人が自分の部屋の中から迎
えてくれる。そういうひとときを味わいたかったのかもしれない。
 比呂美と付き合いだしておよそ半年―。眞一郎も比呂美のそういう女心にほんのちょっと、
思いを巡らすようになっていた。
 相変わらず、比呂美の部屋は白とピンクの世界だった。眞一郎は腰を下ろさず比呂美の部屋を
眺めた。ピンクのカーテン。白い整理ダンス。階上のベッドの手すりにかけられた制服のブルー
がやけに目立った。ティッシュペーパーの箱も白かピンクしか見たことがない。おそらく比呂美
の母親の趣味が少なからず影響しているのだろうと思っていたので、眞一郎は色の趣味について
特に触れないでいた。
 眞一郎は腰を下ろし、テーブル上のテレビのリモコンに手を伸ばしかけて、あるものが目に留
まった。眞一郎が座っている場所から右斜め方向の壁際に置かれた白い整理ダンスの引き出しの
ひとつが、わずかながら浮いていたのだ。1センチあるかないかだけ引き出しが飛び出している。
眞一郎は、その引き出しを奥まできっちり入れてあげようと思って、そのタンスのそばまで行き
かけて、重大なことを思い出した。眞一郎と比呂美の仲を揺るがしそうなくらい大事なことを。
 その白い整理ダンスの引き出しのどれかに比呂美の下着が収まっていることを眞一郎は知って
いた。下着が収まっている状態を直接見たわけではなかったが、比呂美の部屋での挙動を総合的
に判断して導き出された結論だった。五段ある引き出しの上から四番目は、ブラジャーとショー
ツが収まっている。間違いなかった。その引き出しが、今ちょっとだけはみ出していたのだ。

553:はじめての外泊-1
08/10/03 01:50:25 bOGg0fn/
(罠か? 比呂美のいたずらかもしれない……)
 眞一郎は、整理ダンスに伸ばしかけた手を引っ込めた。
 今さらながら、比呂美の下着に特別な興味はなかった。この部屋で比呂美を愛撫しつづけてい
るうちに、比呂美の下着を十種類くらい知ることになった。まだ見たことのない下着はあるだろ
うが、いずれお目にかかれるだろう。わざわざ信頼を裏切ってまで未だ見ぬ下着を見ようとは思
わなかったが、ただ、ひとつだけ気になることはあった。
 それは、この引き出しにはコンドームが隠されているということだった。過去一回だけ、『行
為』の最中に眞一郎をベッドに寝かせたまま比呂美がフロアに下りたことがあった。引き出しを
開閉する短い音がしたあとすぐに比呂美はベッドに戻ってきたが、今思えば、あのとき、枕元に
準備しそこねたコンドームを比呂美は取りにいったらしかった。比呂美はそのことに一言も触れ
なかったので、眞一郎も何だったか訊かないのがエチケットだろうと思って黙っていた。
 ただ、やはりこのことは男として確認しておいたほうがいいだろうと眞一郎は思った。コンド
ームを『どこにしまっているのか』ということを。比呂美にコンドームを取りに行かせるような
ことは二度とさせてはいけないだろう。眞一郎の男としての責任感が、一度引っ込めた手を再び
引き出しへ向かわせた。
(下着を物色するわけではないんだ。比呂美に恥ずかしい思いをさせないための下調べなんだ)
 とにかく頭の中で何でもいいから理屈を繰り返して理性を押さえつけ、眞一郎は四番目の引き
出しを開けた。
 うわっと漂ってきた甘い香りに、眞一郎は魂が抜けてしまうような感覚に見舞われた。心と体
が離れていくような感覚……。やばい、と思い、まだ神経がつながっていた両腕で整理ダンスを
力強く突いて、開け放たれた引き出しの中に視線を落とした。幸いにも、眞一郎を現実に引き戻
すモノがすぐに目に留まった。眞一郎は、それを見てほっとした。下着をかき回さずに済むと思
った。引き出しの一番手前の内壁に、掌の半分くらいの大きさのコンドームの箱が二つ、下着と
内壁との隙間に滑り込まされていた。ひとつは、黒と金のデザインの箱。もうひとつは、赤と銀
のデザインの箱で、これは眞一郎が調達して比呂美に渡したものだった。
 それにしても、あの香りは何だったんだろうか。たしか、比呂美の体を抱きしめるときにほの
かに匂う香りだった。こういう拘りは、男には到底理解できない『女の嗜み』なのだろうと眞一
郎は思った。三代吉も同じようなことを言ってた気がする。愛子を抱きしめるといい匂いがする
んだ~って。

554:はじめての外泊-1
08/10/03 01:50:55 bOGg0fn/
 拘りといえば、女性にとって下着のデザインも、妥協の許せぬものだろう。眞一郎は、いけな
いと思いつつも、引き出しの中に詰められた比呂美の下着を改めて観察した。ほとんどが白とピ
ンクのものばかりで、紺色や例の縞模様のものが数種類あるだけ。全体的な印象としては、いた
ってシンプルだった。おそらく、この年頃の女の子にしてみれば下着の枚数は少ないだろう。欲
しくても買えないという現実が、この引き出しの中に映し出されているようで、眞一郎は少し切
なくなった。比呂美だって表に見えないところのおしゃれはしたいはず。それなのに、なんだ、
この部屋は。ぬいぐるみのひとつ置いていない。かわいい小物がひとつくらいあったっていいじ
ゃないか。前々から比呂美のそういうところが気になっていた。
 眞一郎は、もやもやとした思いを振り切るように引き出しをきっちり閉めた。下着を覗いたと
比呂美に疑われてもいいと思った。正直にコンドームの場所を確認したと言おうと思った。そし
て、ちゃんと謝ろう。
 いろんな葛藤があったせいで喉がカラカラだった。眞一郎は、コーヒーの入った自分用のマグ
カップに手を伸ばした。そのときだった。来訪を知らせるチャイムが鳴った。
 あまりにも予期せぬことに、眞一郎の鼓動は息苦しくなるほど急に乱れた。
 比呂美がこの部屋を出て15分くらいしか経っていない。『セフレ』までは少なくとも片道2
0分はかかる。途中で引き返してきたのだろうか。
 眞一郎は、気を落ち着かせながら、音を立てずにそろりと玄関のドアへ歩み寄った。靴脱ぎ場
の手前まで来たところで、もう一回チャイムが鳴った。そのことで、眞一郎は一気に警戒心を強
めた。
(比呂美じゃない。比呂美なら、ドアをノックするはず)
 ドアを開けるわけにはいかなかった。もし、比呂美の友達だったら、とんでもない騒ぎになる
だろう。とにかく誰だか確認しよう。眞一郎は、ドアの中央にある防犯窓に物音を立てないよう
に慎重に近づき、そっと覗いた。体の右側が少し見えた。スカートらしきものを穿いている。た
ぶん、女性だろう。誰だか分からないが、仕方がない。居留守を決め込むしかなかった。だが、
眞一郎がリビングへ戻ろうと体重を移動しかけたとき、訪問者がドア越しに声をかけてきた。
「眞ちゃん。居るのはわかってるのよ。開けなさい」
 母・理恵子だった。

555:カカ
08/10/03 01:51:43 bOGg0fn/
カカです。アクセス規制に巻き込まれていて
長いこと書き込めませんでした。
いろいろご迷惑をおかけしまして申し訳ありません。
連載に挑戦します。よろしくどうぞ。

556:名無しさん@ピンキー
08/10/03 02:08:46 q/CtH4r/
>>555
お久しぶりです
またカカさんの作品がよめるとは、うれしいかぎりです
前作、大好きです

557:名無しさん@ピンキー
08/10/03 02:50:17 tzSWMMa0
最近職人さんが次々復活してくれて嬉しいな
皆さんの作品大好きです

558:名無しさん@ピンキー
08/10/03 20:28:16 e7i1+x0G
>>544
思わず生唾を飲み込む展開…
ごちそry最高ですw
>>555
おおーカカさん久しぶり乙です。
比呂美と眞一郎のうれし恥ずかし逢引が突然のママン参戦w
続きが気になるっっ!

559:名無しさん@ピンキー
08/10/03 21:15:42 a8UdC5PC
レベルの高い連載が2つもきて嬉しい限りです。

560:名無しさん@ピンキー
08/10/04 00:19:52 7RhRX9wy
>>555
乙かれさま。お久しぶりです。
再開はとてもとても嬉しいです。
比呂美の部屋で一人となった眞一郎の
行動が実に面白かったです。

561:はじめての外泊-1
08/10/04 02:03:28 M9j1Vw0E
(比呂美とばったり会ったのだろうか……)
 もしそうなれば、比呂美はおそらく眞一郎が部屋にいることを隠すだろうが、理恵子に簡単に
見破られて白状させられるだろう。人付き合いが豊富な理恵子を騙すなど容易なことではないの
だ。それにしても、比呂美がいないと分かっているのに、なぜ理恵子はアパートに来たのだろう
か?
 眞一郎は観念して、ドアのロックに手を伸ばしかけたが、はっと気づいて再び息をころした。
(母さんのことだ。カマかけてるのかもしれない)
―――――――――――――
 チャイムを鳴らしても比呂美がすぐに出てこない
    ↓
 何かやましいことがある
    ↓
 眞一郎が部屋にいる
―――――――――――――
……という論理なのだろう。簡単だ。
 理恵子の罠を見破った気になった眞一郎は、ほっとため息をついたが、『ウラを取る』ことが
物事をうまく運ばせるためのコツだ、ということに眞一郎が気づくのにはもう少し時間を要した。
 ドアの向こうの理恵子は、沈黙を保っていた。二度目のチャイムが鳴ってから3分は過ぎた。
それでも理恵子は一向に帰る気配を見せない。
 確たる証拠を握っているのだろうか。眞一郎が今この部屋の中にいると―。これだけ部屋の
中から反応がなければ諦めてよさそうなものだが。もし、理恵子が比呂美と近くで出くわしてい
れば、そのことを話してくるだろう。でも理恵子はまだ一言しか言っていない。やはりおかしい。
理恵子の作戦だ。眞一郎がそんなことを考えていたときだった。
 ピルルルルルル―
 眞一郎のズボンのポケットの中にあった携帯電話が鳴ったのだった。
 眞一郎は、「わっ!」と思わず声を上げて飛び上がり、着地のときに床をドスンと言わせてし
まった。間違いなくドアの外まで伝わっただろう。
 ドンドン
 間髪入れずに理恵子がドアを取立屋みたいにノックしてきた。
「眞一郎ッ! 早く開けなさい。お父さんに言いつけるわよ」
 ここにいるという証拠を眞一郎は自ら提供してしまった。理恵子にウラを取られたのだ。携帯
電話の電源をまっ先に切ることを思いつかなかった歯痒さが込み上げてくる。眞一郎は、少し投
げやりな気持ちになってドアのロックに手を伸ばした。
 そのときだった。眞一郎の背後から―リビングの奥から「いやっ!」という悲痛な叫びが弾
丸のように飛んできた。眞一郎の全身はそれに激しく揺さぶられた。その音の弾丸が眞一郎の心
臓に命中したのではないかと思うくらいに。だが眞一郎は、どうにか振り向いてその叫びの主を
確認できた。

562:はじめての外泊-1
08/10/04 02:04:25 M9j1Vw0E
 栗毛色の、腰まで伸びた長い髪―。比呂美だった。
 比呂美が顔を伏せて床にうずくまっていた。
 なぜ、比呂美がここにいる? 眞一郎は当然のことながら混乱した。今から20分くらい前に
買い物に出かけたではないか。少し冷静さを取り戻しかけた眞一郎は、この状況について考え出
したが、すぐに心臓が破裂しそうな衝撃を覚えた。その原因は比呂美の格好だった。比呂美は、
上半身裸だった。正確にはブラジャーを着けていたが、肩ひもは完全に垂れ下がり、両腕には赤
いみみず腫れがいくつもあった。下の方は、スカートがびりびりに破かれていて、膝頭を擦り剥
いていた。まさに乱暴されたあとの格好だった。
(どうしてこんな……)
 眞一郎は、ドアの外にいる理恵子のことなんかきれいに忘れてしまい、怒りを増幅させながら
比呂美の方へ足を運ばせた。自然と大またで歩き、握りこぶしにさらに力がこもって振るえた。
(だれが、こんなことをっ!)
 すでに怒りが頂点に達した眞一郎は、床をどすんどすんと言わせた。眞一郎の目には比呂美し
か映っていない。だが、リビングに入りかけたところで、眞一郎は自分の右手に違和感を覚えた。
怒りに硬直している体とは対照的に、柔らかい感触。それがなんであるかは今はどうでもいいこ
とだったが、眞一郎はちらっとそれに目をやった。眞一郎の右手の握りこぶしから白いものがは
み出している。あまりにもまぶしい白さだったので、眞一郎は少しそれに興味がいった。立ち止
まり、右手をゆっくり開いた。
 白いもの。白い布切れ。小さな花の刺繍が施されている。ショーツだ。比呂美のショーツだ。
(まさかっ!)
 眞一郎は、慌ててもう一度比呂美を見た。比呂美は顔を伏せて泣いている。肩を怯えたように
震わせ、鼻水をすすり上げて泣いている。
(おれが、はぎ取ったというのか?)
 そんなはずはない。そんなことをするわけがない。眞一郎は必死に自分にそう言い聞かせた。
だが、それを裏付ける確たる証拠は眞一郎には何もなかった。逆に、眞一郎が犯人だと疑う証拠
は眞一郎自身が握り締めていた。こういうとき、『比呂美を愛している』という強い想いは、眞
一郎を勇気づけてはくれない。そっぽを向いたままで事態を変えてくれない。どう行動してきた
か、どう行動するのかが今の眞一郎を救うのだ。比呂美に事の真相を訊くしかない。それはとて
も辛いことだと分かっていても、そうしなければ、ぼろぼろな姿の比呂美を目の前にして眞一郎
は気が変になりそうだった。
「比呂美……」
 眞一郎が重い口を開くと、比呂美は意外にあっさりと顔を上げた。だが比呂美の視線は、眞一
郎を突き抜けていって、眞一郎の背後にいる人物に定まっていた。
「……ヒロシくん……」と、かすれた声で比呂美が何かを求めるように囁いたあと、部屋全体を
響かせるほどの低い声が眞一郎の背中に襲いかかってきた。
「涼子を泣かしやがって」
 眞一郎は、後ろの人物が誰だか考えるよりも先に、反射的に振り向いた。だが、眞一郎が半分
ほど振り向いてようやくその人物が視界の端に見えてきたところで、左顎に強い衝撃を受け、気
がつけば部屋の天井を見せられていた。

563:カカ
08/10/04 02:06:58 M9j1Vw0E
感想ありがとうございます。
こんな調子でちょっとずついきます。

564:はじめての外泊-1
08/10/04 09:28:34 Dwn8GQ1i
 時が止まっているみたいだった。いや確実に、仰向けにさせられ宙に浮いている眞一郎の体は
重力に従って落ちていっていたが、1秒が10秒になったようにゆっくりだった。この落下スピ
ードなら床に到達するまでに自分を殴った相手を確認できると思った眞一郎は、顎を引いてその
人物を目で捉えた。
 まず、前に突き出した右腕が目に留まった。眞一郎に強烈なパンチを見舞った拳。その拳から
腕を辿っていくと顔がある。仁王のような形相でまだ眞一郎を睨みつけているその顔は、眞一郎
にどことなく似ていたが、眞一郎よりも顔が細かった。大きなメガネもかけている。若かりし日
の父親、ヒロシだった。そうなると、このヒロシが「涼子」と呼んだ比呂美は、比呂美の母親と
いうことか。まだ宙に浮いている眞一郎は体をひねって、床にうずくまっている比呂美にそっく
りな女性を見た。よく見ると、比呂美よりも痩せている感じだ。顔は双子のようにそっくりだっ
たが、頬のあたりが細い。
 そうこうしているうちに、眞一郎の体はまもなく床に衝突する。眞一郎は、後頭部を打たない
ようにもう一度顎を引き、両腕を開いて柔道の受身の姿勢を取った。
 衝撃はすぐ来た。だが、それは衝突したときの衝撃ではなった。
 眞一郎の体が床に到達すると、周囲は一気に真っ暗になって、眞一郎は床よりもさらに下へ引
っ張られていったのだ。落下するというよりも、下へ向かって重力よりも速く加速するといった
感じだった。ものすごいスピードだった。何か目に留まるのだが、どれもが白い光の腺にしか見
えない。どこまで、落ちるのだろう。いや、進むのだろう。底知れぬ不安が眞一郎を襲ったが、
眞一郎は、まもなくこの急下降劇が終わるのを感じていた。そして、その予感どおりになった。
 こんどは衝突のときのような強い衝撃だった。眞一郎は一瞬息が詰まって気を失いかけたが、
なんとか堪えることができた。やがて、音を感じた。テレビの音声。眞一郎はうっすら目を開け
た。見えた世界が斜めになっている。体を起こすと、正常な水平の世界に戻った。眞一郎は、ゆ
っくり辺りを見回した。比呂美は、いない。比呂美に似た女性もいない。後ろを振り返った。ヒ
ロシもいない。だんだんと眞一郎の頭の中に記憶が蘇っていく。殺風景な部屋。自分の部屋でも
比呂美の部屋でもない。部屋の真ん中に置かれたいかにも古そうなちゃぶ台。そして、その古さ
とは対照的に今風な液晶テレビ。ちゃぶ台の脇に目をやると、大きなスポーツバッグがある。そ
れを見て、眞一郎はすべてがはっきりした。
「夢か……」

565:名無しさん@ピンキー
08/10/04 09:47:24 c2IaPCiX
どこまでが1なんだw日付け変わったら連番変えればいいのに

566:名無しさん@ピンキー
08/10/04 19:34:30 RngVcxny
>>563
乙です
ジェットコースターみたいな展開に状況整理が追いつかないw
題からしてお泊りを予想してたけどタイムスリップ?物なのか
取り合えず頭をまっさらにしてみた方がよさそう
続き楽しみです。

567:カカ
08/10/04 19:42:24 JaSnKz9Z
ちょっと解説しておきます。
分割投下の仕方がわるかったので混乱させてしまったようですが、
冒頭のシーンは全部、眞一郎の夢です。
ただ、この夢での出来事は、いろいろと意味をもっています。
次に投下する回からふつうに話が進みます。

568:名無しさん@ピンキー
08/10/05 04:20:01 Y3wlj3XE
>>567
自分も怒濤の展開に一瞬戸惑ったけど
最後の眞一郎の一言で納得できました

むしろハラハラさせる文章上手だと思います
続きも楽しみにしてます

569:はじめての外泊-1
08/10/07 00:48:01 eYsh6YTJ
 眞一郎の口から大きなため息がこぼれ落ちた。怒りと、追い詰められた気持ちと共に……。
 眞一郎は今、マンションの一室にいた。先週より金沢に来ていて、ここでずっと寝泊りしてい
た。今日で七日目だった。
 もうひとつため息をつくと、眞一郎は立ち上がり、ガラス窓を開けた。すぅーと爽やかな風が
秋の虫の声と共に滑らかに入り込んでくる。状況把握のためにフル回転していた眞一郎の脳が正
常運転にだんだんと戻っていくと、全身の神経からのフィードバックを感じるようになる。左顎
に痛みを覚えた眞一郎は、そこに手を当て、振り返ってちゃぶ台を見つめた。どうやら、ちゃぶ
台の角で顎を強打したらしい。父親に殴られた、左顎―。夢の中でなくても、比呂美を泣かす
ようなことがあったら、ヒロシは間違いなく眞一郎を殴るだろうう。父親としての感情とは別の
感情を、おそらく抱きつつ……。
 左顎は、ずきんずきんと疼いてかなり痛かった。そんなに強く打つものだろうかと眞一郎は少
し不思議に思い、夢の中に陥る前の時点のことを思い出してみた。
 テレビを見ていた。今日は金曜日。夜九時から洋画がはじまり、それを頬杖をつきながら、ぼ
ーっと見ていた。ちょうど『ロッキ○』だった。それで、夢の中で親父に強烈な右ストレートを
食らうことになったのか。眞一郎は苦笑した。いつの間にか、そのままの姿勢で眠りに落ち、し
ばらくして頬杖から顎が外れ、支えを失った眞一郎の頭部が落下する。この落下のときが、夢の
中での、あの強烈に下へ引っ張られる落下のときだったのだろうか。そうなると、現実と夢の中
での出来事の順番が食い違うことになるが、そもそも夢というものは時間軸に縛られないのだか
ら、そういう矛盾を考えても仕方がないだろう。大事なのは、夢の中で起こったひとつひとつの
出来事。内容が内容だっただけに、さきほどの妙にリアルな夢のことが眞一郎は気になった。リ
アルだっただけに、その記憶も鮮明だった。現時点でも夢の中の出来事をひとつも忘れてはいな
いはずだ。
 忘れていない? そういえば……。
 眞一郎は、ちゃぶ台の上の携帯電話で時間を確認した。二十一時三十三分。
 眞一郎がこのマンションで寝泊りするようになってから、毎日夜九時ごろに比呂美が電話をか
けてきた。今日まで一日も欠かしたことがない。ここへ出発する日に眞一郎は、自分から電話を
かけるから―と比呂美と約束したが、その日、見事にすっぽかしたもんだから、比呂美は頭に
きてしまって、眞一郎を当てにしないことにしたのだった。
 ただ、眞一郎は比呂美との約束をないがしろにしていたわけではない。確かに、約束どおりに
電�さく噛み締めた。
…………初めての……心が満たされないセックス…………
比呂美の焦燥を感じた眞一郎が、謝意のつもりなのか無言で乳房を弄ってくる。
だが、空しさに包まれた比呂美にとって、そんな眞一郎の気配は、今はただ煩わしいだけだった。
       
        [つづく]


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