嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 講和(50)条約at EROPARO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 講和(50)条約 - 暇つぶし2ch964:名無しさん@ピンキー
08/08/23 20:42:55 XaAA9UFb
 魔女は胃袋の中身を地面にあらかた吐き出してしまうと、落ち着いて女の死体を調べ始めた。
母親以外で初めて見た人間である。魔法の効き目を疑うわけではないけれども、どうも薄気味悪い心地がするので、杖の先で突付くという消極的な仕方であった。
死体の抱えているものに興味が湧き、杖に力を込めて腕を退かしてみると、その布の塊が奇妙な声で鳴き始めた。春先の獣に似た高い鳴き声であった。
魔女は思わず後ずさりした。そうして小さく揺れたかと思うとはらりと布が捲れて、包まれていた赤子の姿があらわになった。
魔女は恐る恐る近づいてその赤子を抱き上げてみた。赤子は魔女と目が会うと、苦しげに歪めていた顔を和らげてキャッキャと小さく笑い始めた。
 魔女は赤子を洞窟に連れ帰った。彼女自身理由は解らないが、殺す気にはならなかった。赤子を抱いていた女の死体は衣服や持ち物を剥ぎ取ってから魔法で燃やした。
死体の焼けたところには十字架だけが残った。それに触れると手が焼け爛れて捨てようにも捨てられなかったのである。
 魔女は赤子をナナシと名付けた。名前を呼んでくれる人が居なくなって久しい彼女にとって赤子の名を呼ぶことは楽しかった。
オムツやらなにやらは死体から剥ぎ取ったものと同じものを作ってやった。はじめのうちはミルクばかり飲ませていたが、しばらくしてナナシがお腹を壊し始めたので、咀嚼したパンを口移しで食べさせるようになった。
 一年の月日が過ぎた。
 立って歩けるようになったナナシが、岩の角に体をぶつけて擦り傷を作った。魔女は洞穴に魔法をかけて岩壁を柔らかい蒲団に変えた。
ナナシが昼間を起きて過ごすので魔女もそれに合わせた。月の晩の儀式を行うときは眠気を振り払うのに苦心した。
 さらに一年の月日が過ぎるとナナシは片言で話し始めた。母さんと呼ばれて、魔女は胸の奥がほのかに温められるように感じた。
 ナナシとの時間はゆるやかに過ぎて行った。魔女にはこれまで生きてきた数百年がぼんやりした白昼夢であるとも思え、まるでナナシと出会ったときに目が覚めた心地であった。
ナナシの成長する姿は魔女に実感を与えた。ナナシの背丈が魔女に追いついたときには、一緒に暮らすようになって十五年近い年月が過ぎていた。


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