嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 講和(50)条約at EROPARO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 講和(50)条約 - 暇つぶし2ch600:名無しさん@ピンキー
08/08/04 22:00:55 TqyO4Gxr
>>601
割り込んでしまってスマソorz


GJです

早苗はどんな逆襲をするのかをwktkしながら次回をお待ちしております

601:名無しさん@ピンキー
08/08/04 22:14:05 yXsc80hz
GJ!!
これから早苗の逆襲が始まるのだろうか・・
次も待ってます。
どれだけでも待ってます!


602:名無しさん@ピンキー
08/08/04 22:18:37 d86/O2p+
携帯からこの量とか…

お疲れ様にも程があるだろ

603:名無しさん@ピンキー
08/08/04 22:43:40 ANSV0qBp
>>603
携帯だと思って見くびってましたすいません。>>606に激しく同意。

604:名無しさん@ピンキー
08/08/04 22:51:36 4E+MIA1s
携帯から投稿ってそんなに大変なの?

605:名無しさん@ピンキー
08/08/04 23:02:28 fqmrAKsJ
今からまとめサイトおさらいしてくるよ。
最近長編が投下されないから内容忘れてる人も多いと思うんだぜ!
なんにせよ携帯からとかマジで乙

606:名無しさん@ピンキー
08/08/05 00:53:33 kqoXYfVy
>>佐藤早苗に手を引かれ、俺は佐藤早苗の家の前へと

なんか、いかにも素人が書いてますっていう稚拙な表現で萎えた
自分で読んで不自然に感じなかったとすればセンスなさすぎ
読み直ししていないというのなら、あまりにも読み手をバカにしすぎ

気が向いたら頭から読んでみるよ
今日は止めとく

607:名無しさん@ピンキー
08/08/05 00:57:40 bCpkp/Nv
気が向いたら頭から読んでみるよキリッ

608:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:09:38 Oku+T2NH
>>601
原稿用紙37枚って化け物か……
とりあえず、GJですよ

609:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:15:26 OwBF67or
>>610
ポッキー食べる?
やっぱりやらねーよ、バーカ

610:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:19:46 tUnHsv2X
>>609>>610んもう///ツンデレなんだから///

611:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:19:49 B8I41+1M
ぐわっ
佑子さんが可愛すぎる
これなんて純情キャラ=腹黒キャラなんだ

これはあのいたり先輩以来の胸のときめきがするぜ
そういえば、いたり先輩はあれで完結したの?



612:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:29:28 Ew5CcN5Y
>実際には口が裂けても言えないが―多分佑子さんより若干可愛い

↑そりゃ、殺されるぞw

613:緑猫 ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:33:42 t2PQ9p57
忘れられた頃に投下する男 スp


614:怪物姉隠形記(裏) ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:34:35 t2PQ9p57
 
「ねえねえセっちゃん」
「―ああっ!?
 そっちの出店は質が悪いことで有名だから伝えておけば―っと、ちゃんと回避した! えらい!」
「セっちゃんってばー」
「―そうそう、大根を選ぶときは葉っぱを見て。
 教わったことは必ず覚えている辺り、流石白ちゃん」
「……お姉ちゃん、拗ねちゃうぞー?」
「―む。あの客引き鬱陶しいなあ。
 姉さん、ちょっと行って排除してきて」
「りょーかい! ……あれ? 私ってパシリ?」
「―よし、ここまでは順調ね。
 この調子で行けば、日が落ちる前には帰れるかな」
「……セっちゃんセっちゃん! この卵凄いんだって!
 一個で3回はできるって! ユウキさんに十個くらい食べさせようね!」
「って姉さんが引っかかってどうするのよ!?」
 
 人気のない路地裏にて。
 黒髪の姉妹が、完全に気配を消しつつも、ちょっぴりはっちゃけながら。
 大通りを行く白い少女を、見守っていた。
 
 ただいま、はじめてのお買い物中。
 少女の一大冒険を、心配しすぎて家で待てない姉貴分と、
 何となくノリでついてきて、退屈を持て余している(ダメ)姉貴分。
 
 白い少女がその任務を半ばまで達成してもなお。
 安心して離れたりせず、主に妹の方がハラハラドキドキしながら見守っていた。
 ちなみに姉は野良猫とにゃあにゃあ会話して楽しんでいた。
 まあそれはそれとして。
 
 ふと。
 
「―セっちゃん」
 
 姉―ユメカが、冷たい声を発していた。
 いつものとろけた姉ではないことを瞬時に悟った妹セツノは、
 少女の監視を一時中断し、姉の方へと向き直った。
 
「近くに、手練れがいる。―逃げよう」
 
 

615:怪物姉隠形記(裏) ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:35:30 t2PQ9p57

 
 姉の言葉を受け、数秒ほどセツノは迷った。
 自分は、そんな気配を感じなかった。
 技能としての索敵なら、セツノの方が優れている。
 しかし、それはあくまで技術の問題。
 ユメカの動物的な第六感には、何者も敵わないことをセツノは知っていた。
 
「……別に任務中じゃないし、放っておいても大丈夫じゃない?」
 
 言いながら、さりげなく大通りの方へと視線を走らせる。
 それらしい人影は―
 
 
 ―白に。金髪の女性が、近付いていた。
 
 
 すれ違うとかそういった類ではない。
 明らかに、白に向かって歩いていた。
 
 まさか、
 
 
「……姉さん。ひょっとして、あいつのこと?」
「うん。あいつ。この前見たときは気付けなかったけど、たぶん、私より強い」
「……確かに、何だか今は、雰囲気が黒いというか、自分を抑えきれてないというか」
「この距離なら気付かれることはないと思うけど、念のため」
「でもあいつ、白ちゃんに……」
「たしか、しーちゃんを保護したり、ユウキさんに預けたりしたのも彼女でしょ?
 なら、滅多なことじゃ危害を加えたりしないよ。きっと」
 
 普段の姉らしからぬシリアスな言動。
 人間兵器のような姉がここまで恐れるとは。
 あの女―そこまでの手練れということか。
 
 


616:怪物姉隠形記(裏) ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:36:19 t2PQ9p57

 
 改めて、女性の素性を思い返す。
 アマツ・コミナト。近衛隊准隊士。ユウキとは帝都中央学院で知り合った女性。
 剣術謀術に長けており、敵対した者は全て屈服させられている。
 剣の腕に関しては、直接見たことはないが脅威に値する可能性が高い。
 ―以上、ユメカ作「泥棒猫さんリスト」より。
 
 ……確かに、敵に回したくない類である。
 特に貴族というのがヤバイ。ユメカとセツノの立場上、最も関わりに配慮が要る人種である。
 もし自分たちの所属がばれてしまったら、個人だけではなく村全体の問題になりかねない。
 姉の言う通り、白が危害を加えられる可能性は皆無だろう。
 ならば、自分たちは余計な波風を立てぬよう、対峙を避けて隠密に徹するべきだ。
 そう判断し、姉に同意を示そうとした、瞬間。
 半ば無意識に唇を読んでいたセツノは、アマツがこう言ったのに気付いてしまった。
 
 ―ちょっとこれから、ユウキの家に行くからな。
 
 
 
 それは困る。
 
 
 現在ユウキの家には、自分と姉の生活跡がこれでもかというくらい残されている。
 白い少女との二人暮らしと言い張るには、少し苦しい。
 というか姉の下着や自分の恋愛小説を、ユウキの物と言い張るには苦しすぎる。
 となれば、すべきことはただひとつ―
 
「姉さん! 家に戻ろう!」
 
 ―限られた時間の中で、自分たちの痕跡を隠す!
 
 


617:怪物姉隠形記(裏) ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:37:09 t2PQ9p57

 
 
 
 
 結論から言おう。
 ユメカは駄目人間過ぎた。
 
 戦闘特化型なのだから、隠密技能の多少の不得手は許されるかもしれない。
 しかし、だからといって。
 
「片付けの途中に発情って、何考えてるのか本気でわかんないんだけどっ!?」
「やだなあセっちゃん、ユウキさんのこと考えてるに決まってるじゃない☆」
「考えた結果が自慰ってのが意味不明なんだけど!」
「いやほら、性欲はヒトの三大欲求のひとつだし」
「うわあ蹴りたい。すっごく蹴りたい。
 今の私、性欲より馬鹿姉蹴たぐり欲のが強いけど―でも我慢! 私常識人だし!」
「なにようセっちゃん。それじゃあまるで、私が常識ないみたいじゃな」
「いいから黙って気配消してなさい。そろそろ来るんだから」
「はーい」
 
 屋根裏の空間にて。
 諜報員姉妹は息を潜めていた。
 
 自分たちの痕跡を隠した後は、少し離れた場所で待機するのが最善だったが。
 セツノの心配性とユメカの縄張り根性が、少しだけ影響した結果だったりする。
 
(……白ちゃん、無理しちゃ駄目だからね)
(もしあいつがユウキさんのこと強姦するようだったら、私が出て行ってやっつける!)
 
 セツノの心配性も大概だが、ユメカはユメカで先程までのシリアス調は何処へやら。
 いつもの馬鹿姉モードに戻っていた―が。
 
(……あれ? 何か忘れてるような懐が寂しいような?)
 
 


618:怪物姉隠形記(裏) ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:38:01 t2PQ9p57

 
 
 気付いたときには手遅れだった。
 というか姉のことを信用していた自分が愚かだった。
 そもそも、重要な片付けの最中に自慰を始めるような馬鹿姉が、
 まともに片付けていたと思い込んでいた己の不明を恥なければなるまい。
 
 ―部屋のど真ん中に自慰ネタの下着を放置。
 
 空前絶後のお間抜けさんを問い詰めると、
「だってーセっちゃんがいきなり呼び付けるからびっくりしちゃって置きっ放しに」云々と言い訳を。
 回収しに行きたくとも、既に白とアマツは家の中。
 気配を察知される危険を鑑みれば、このまま放置するほか手はない。
 不幸中の幸いか、放置された場所はユウキの寝室。
 脱ぎっぱなしにしていたと見るのが自然だろう。
 あとは運を天に任せ、見過ごされるのを祈るのみ。

「……っていうかそれ以前の問題として、寝室に何の遠慮もなく入ってくる客人なんて、そうそういるはずもないし」
「あ、入ってきたねセっちゃん」
「…………ユウキさんの知り合いって、変な女しかいないのかな?」
 この女騎士といい、以前の喧嘩ふっかけお姉さんといい。
「セっちゃん……そんな自己卑下しなくても……」
「筆頭が何を言うか」
 
 おもむろに入ってきたアマツと、慌てて追ってきた白。
 二人は大した時間もかけず、不自然に放置された下着に気付いた。
 白の方は、はてなと首を傾げるだけの、至極当然な反応を示していた。
 それに対し、アマツの方は―
 
「―あ、拾った」
「…………ッ!」
「ちょ!? 怒るところじゃないでしょ姉さん!」
「でも私、まだイッてないし……!」
「いやそれかなり意味不明」
 
 よくわからないところで憤慨するユメカと、いつものように突っ込むセツノ。
 どう見ても、油断しきっているようにしか見えない。
 ―が、その実、欠片も気配を漏らしていなかったりする。
 索敵の訓練を受けた者でも、今の二人に気付くのは難しいだろう。
 
 二人はそう確信していたため―
 
 


619:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:38:35 kqoXYfVy
やれやれ、誰かと思えば、ウナギファンの緑猫さんか
相変わらず便乗するのが好きだねぇ


620:怪物姉隠形記(裏) ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:38:50 t2PQ9p57

 
 さりげなく。
 本当にさりげなく、隣の白には気付かれないよう周到に隠された。
 
 アマツの殺気。
 
 当てられた瞬間、思考が硬直してしまった。
 女騎士がそんなことをする理由はひとつしかない。
 
 
 気付いているぞ、という警告。
 
 
 行動の選択肢は3つ。
 息を潜め続けるか、即座に離脱するか、あるいは。
 この場で、殲滅するか。
 
 セツノが選ぼうとしたのはふたつめ。
 ユメカが選ぼうとしたのは、みっつめ。
 
 選ぼうとした理由に、気質如何は無関係。
 それぞれの戦闘能力によって決まっていた。
 セツノは己が逆立ちしても敵わないと肌で感じ、とかく逃げの一手と判断した。
 対してユメカは、逃げきれる可能性を冷静に分析し、戦闘に入るしかないと決断した。
 
 姉妹は言葉を交わしていない。
 互いに最善と思える策を選び、実行しようとしていた。
 体重が僅かに移動し、踏みしめた天板が軋む。
 隠しようのない、確かな音。もう、動くしかない―
 
 
 
「―ん? 鼠でもいるのか?」
 
 
 敵意の欠片も滲ませぬ声が、響いていた。
 
 え? と固まるユメカとセツノ。
 気付かないふり? そんなことをする意味があるのだろうか?
 理解できず、二人はその場で動けずにいた。
 
「そういやお前、さっき鼠駆除の道具買ってたよな。この建物って鼠が多いのか?」
「……っ!(こくこくこくこく)」
 
 アマツと白の何事もなかったかのようなやりとりを。
 ユメカとセツノは、呆然と見下ろしていた。
 芝居じみたやりとりを―
 
「―そう。そういう、こと」
 
 ぽつり、と。
 ユメカの呟きが漏れていた。
 
 妹は姉を仰ぎ見るが、姉はそれ以上は何も言わず。
 ただ、悔しそうに。拳を握り締めていた。
 
 


621:怪物姉隠形記(裏) ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:39:55 t2PQ9p57

 
 
 
 
 
 隊舎に着く頃には、空は既に明るくなり始めていた。
 酒精でほどよく高揚した頭を、そのままベッドへ突撃させる。
 ぼふ、と間抜けな音がして、シーツの上に金髪が広がった。
 
「……あー。ひっさしぶりに、気持ちいい酒が飲めたなぁ……」
 
 むにゃむにゃと呟く。
 柔らかなベッドに包まれてその表情は見えないが、きっと緩みきっていることだろう。
 それほどまで、彼女の声は嬉しさに溢れていた。
 
「……変わってないなあ、ユウキのやつ。
 馬鹿みたいにお人好しで、変な風に気が回って。
 ホワイトのやつも良い感じで過ごせてるみたいだし、アイツに任せて正解だったな……」
 
 ……。
 …………。
 ……………………。
 
 
「……うん、あのときはアレで正解だった。そうだ。そうに決まってる」
 
 ふと。
 こぼれた声は、冷たかった。
 
 言っているのは、白い少女のことではない。
 もっと、別のこと。
 
「―だって、ユウキの部屋を、血で汚すわけにはいかないもんな」
 
 言いながら、懐から“戦利品”を取り出した。
 何故落ちていたのかなんて、どうでもいい。
 ユウキの匂いが残るものなら、何でもよかった。
 
 数瞬躊躇った後、恐る恐る、匂いを嗅いだ。
 
 自分はいつから変態に成り下がってしまったのか。
 想い人の下着を顔に押し当て、匂いを嗅ぐだなんて。
 実家の者が見たら、卒倒してしまうに違いない。
 
 


622:怪物姉隠形記(裏) ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:40:42 t2PQ9p57

 
「栄えある近衛隊准隊士が、下着泥棒か。堕ちたな。ははっ」
 
 笑う。しかし頬はいびつに歪む。
 だって。
 ―残っているから。
 
「意図的に抑えられた体臭。……諜報員の類だな。
 ユウキのやつ、変なことに巻き込まれてるんじゃないだろうな。
 だとしたら―巻き込んだ奴は、殺すしかないよな」
 
 想い人の下着、そこに残された女の香り。
 その意味を察せられないほど愚鈍ではない。
 
 離れていたのは自分なのだ。恨みに思うのは筋違いなのかもしれない。
 でも。
 だからといって。
 簡単に諦められるはずが、なかった。
 
 ずっと、ずっと我慢してきたのだ。
 欲しくて、穢したくて、自分の色に染めたくて。
 
「……畜生ッ!」
 
 衝動的に、下着を下腹部に押し当てる。
 腹の底で猛る衝動を鎮めるには、もう直接的な手段しか残されていなかった。
 
 
 
 
 
「……4年越しで、下着一枚とは……笑うしかないよな……ははっ」
 
 べとべとに汚れた下着をつまみ上げ、アマツは力無く苦笑した。
 
「ま、すっきりできたから、いいか。
 下着の一枚や二枚で気にすることもないよな」
 
 汚れた下着を放り捨て、アマツはベッドに寝転がる。
 天井を見上げながら、何とはなしに呟いてみた。
 
 
「感覚からして、たぶん凄腕だ。下手なところに探りを依頼したら、裏目に出かねない。
 ……ここは散財を覚悟して、お高いところに探らせてみるかね。
 
 ―イナヴァ村だと、実家の伝手を辿るのがいいのかね」
 
 
 


623:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:41:59 kqoXYfVy
自作投下の直後にこんなことされたら、俺だったら殺したいくらい腹が立つだろうな

624:緑猫 ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:43:50 t2PQ9p57
「血塗れ竜と食人姫」外伝7の続きです。
半年ぶりとか何考えてるんでしょう自分
あと自慰万歳
 
>>601
佑子! 佑子!
キュンときました。GJ!

625:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:49:03 kqoXYfVy
エール交換さえすりゃ許されると思ってるよ、この人は
はたから見りゃ、両手潰し以外のなにものでもないのだが

626:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:56:48 WrOC+HE5
他人の投下直後の投下がどれだえk疎まれるか分かってないのかね。
次からは自粛する事をお勧めするよ

627:名無しさん@ピンキー
08/08/05 02:08:14 kqoXYfVy
こいつが空気読めないことは、イタイ自分語り見ててもよく分かる
書き手系のスレでも読んで、マナーを身に着けてくれたらいいのだが
自分が単に保守要員で、作品には需要ないこともそろそろ悟って欲しい

628:名無しさん@ピンキー
08/08/05 02:48:54 aBPAolOB
全力でGJ!!!
こんなにスレが荒んでも投下してくれる貴方に心の底から感謝
ああ相変らず外伝のセッちゃんのお姉さんっぷりはイイなぁ
心底和むは
ユメカの馬鹿姉っぷりも別の意味で和むw
アマツ怖いよぅ……外伝では最後までほのぼの修羅場で通して欲しいのでまったり願います

629:名無しさん@ピンキー
08/08/05 03:04:43 Gzs8zyfN
アンチは気にせずGJ!
というか外伝お待ちしてました!

630:名無しさん@ピンキー
08/08/05 03:25:08 I5IHa+Pa
色んな人がいる訳で……
その中の1人の俺はGJと言おう
まあ、気にしてもしなくても加減が大事だよね


631:名無しさん@ピンキー
08/08/05 03:30:27 OwBF67or
ポッキーどれだえkいりますか?
あんまり食べると歯がイタイことになります
節度を身に着けましょう

632:名無しさん@ピンキー
08/08/05 07:34:05 iwnhzRAG
投下してくれるありがたさに勝るものはない
二人ともGJ!

633:名無しさん@ピンキー
08/08/05 08:06:09 dNAjGown
緑猫さんキタァー(゜∀゜)ーー!!!!
おお、二人とも超GJだ

俺たちはあんたたちをずっと待っていたぞ
ブログとか見ているけど、全然更新されないんで寂しい

634:名無しさん@ピンキー
08/08/05 08:37:19 z9N4uFyG
お二人ともGJだぜ。アンチの言ってることは話半分で聞くのがいいよ。

635:名無しさん@ピンキー
08/08/05 08:39:58 RzPl7OrH
いちいち言及せずにスルーすればいいのに

ともかくお疲れ様でした。

636:名無しさん@ピンキー
08/08/05 09:39:40 bCpkp/Nv
緑猫氏キテタ!!
SSが連続で投稿されるとあの勢い50以上あったころを思い出すぜ
この調子でどんどんSS投稿されることを祈ります

637:名無しさん@ピンキー
08/08/05 13:23:27 /mWC/Q2V
イヤッホオオオオオオオオウ!

638:名無しさん@ピンキー
08/08/05 13:39:50 1Ym/kefw
作品が投稿されると嬉しいね

639:名無しさん@ピンキー
08/08/05 14:08:04 kqoXYfVy
単発ワロス
スレ活性化のためとはいえ、なんか涙ぐましくさえあるな

640:名無しさん@ピンキー
08/08/05 14:15:49 bc0BxDbp
何かパンツを思い出すな

641:名無しさん@ピンキー
08/08/05 15:32:25 2y1/MJlD
いまkqoXYfVyがアツい

642:名無しさん@ピンキー
08/08/05 16:08:19 Mm7UiYW4
一人で荒らし活動お疲れ様です!
確かに涙ぐましくさえあるな(笑)

643:名無しさん@ピンキー
08/08/05 16:29:18 W4zJQoYH
作品がこんなに大量に来ているだと・・!
作者様GJ過ぎるっ!ここは楽園だ・・。

644:名無しさん@ピンキー
08/08/05 17:45:54 XXgqSile
夏厨多いな

645:名無しさん@ピンキー
08/08/05 18:59:53 GfTvSIBh
GJ

>>617のスpに地味にフイタのは俺だけで良い

646:名無しさん@ピンキー
08/08/05 19:52:05 wBiay6lj
というか、緑猫さんって男だったのか
今まで女だと思ってたよwwwwwww

647:名無しさん@ピンキー
08/08/05 20:38:37 IXa8uDXX
久しぶりの投下だ。ありがたや、ありがたや

648:名無しさん@ピンキー
08/08/05 22:15:41 oeGqp2T/
両手のひとgj!

649:名無しさん@ピンキー
08/08/05 22:17:20 Lyxk518A
キターーー!
GJ!!

650:名無しさん@ピンキー
08/08/05 23:53:48 kqoXYfVy
単発ワロスと揶揄されて、それでも同じIDが出てこないとは
両手の前編でGJしてた人も、同じ日に後編が投下された後は綺麗さっぱり消えちゃっているし
冷淡な連中だよなw
心無いどこかの書き手に酷いことされた今じゃ、両手の人には同情してるが

651:名無しさん@ピンキー
08/08/06 00:03:18 v5mJBOeb
修羅場に必要なのは憎しみだと思うんだ

付き合っていた幼馴染よりも大好きな女の子が誘惑してくるので
思わず、やりたい年頃だった主人公は幼馴染を捨てて、ヤリマンの方に逃げる
ヤリマンとやりまくっている間を幼馴染は盗撮カメラで泣きながら視聴

主人公を振り向かせるためにHな本を買ったり、いろいろと勉強に励む幼馴染

その頃、ヤリマンに主人公の子供を妊娠疑惑が発覚
それは主人公を試すための嘘だったが、主人公はあっさりとヤリマンを捨てて
幼馴染の所に戻って元サヤ

いろんな意味でブチ切れたヤリマンが主人公の家で責任を取れと強要するが
主人公に幼馴染の親が経営している産婦人科を紹介される
中絶しろ そして、俺に関わるなと言われたヤリマンはその場にあった鋸で

主人公を殺害

何箇所も切断して死体を組み立てて、ヤリマンはまたヤリまくる

幼馴染、主人公がいなくなったので失意のあまり自殺

めでたし めでたし


これでいいのだ

652:名無しさん@ピンキー
08/08/06 00:54:44 BcNxDL/z
夏だねえ・・・

653:名無しさん@ピンキー
08/08/06 01:12:07 iH7V6v0f
釣りだとおもうんだ

654:名無しさん@ピンキー
08/08/06 01:31:20 BcNxDL/z
何が?

655:名無しさん@ピンキー
08/08/06 01:47:45 cWQ7jt/q
そんなもん見ればわかるだろ・・・・・・・・・・・・・・・・・どこだ?
・・・・・・・・・・!!ハッ!・・・・まさか・・・「釣りだとおもうんだ」が釣りなのか!!

656:名無しさん@ピンキー
08/08/06 01:55:48 qQKKaHyQ
夏厨はおとなしく帰れ。pinkは一定時間以上利用すると金とられるぞ

657:名無しさん@ピンキー
08/08/06 21:25:19 5XITWKlk
>>660

お前も帰れ

658:名無しさん@ピンキー
08/08/06 23:04:34 Jy4wHsIZ
ふと思うんだ、あの嫉妬と修羅場にまみれた日々に戻れたら
どれだけいいんだろうか

659:名無しさん@ピンキー
08/08/06 23:28:06 SPRGaGu2
今さら何を……

660:名無しさん@ピンキー
08/08/07 02:07:54 kfXh0bbi
何故か、実家に帰省すると自分が付き合っていた女の子が兄貴と結婚していたという
ストーカーの実話は多分嘘だよ



661:名無しさん@ピンキー
08/08/07 12:37:47 C/+9CC31
>>664
お前・・・・・・・・・・泣いてんのか?

662:名無しさん@ピンキー
08/08/07 22:04:35 bK7kSGAu
>>664
多分あれだな…
何だっけ

663:名無しさん@ピンキー
08/08/08 15:00:54 alP1D6LK
>>664
むしろ、ストーカーが主人公の家に潜り込んで、ベットの中で昼寝しているところを
主人公に目撃されているのがいいと思うよ

664:名無しさん@ピンキー
08/08/08 18:18:26 u0kUm+hR
知らない猫がベットで寝てる…

665:名無しさん@ピンキー
08/08/08 20:07:47 Y0ZR1rYd
>>668
チャンスだな
その猫を可愛がってやれば恩返しに来るぜ
そして、お前に嫉妬の雨を降らせるのさ

666:名無しさん@ピンキー
08/08/08 20:23:46 U/YM0KA2
猫って、かなり嫉妬深いらしいぞ

何ゆえに泥棒の後に猫が付いているのかわかるから

667:名無しさん@ピンキー
08/08/08 23:26:23 fOrYtj3y
平気でマナー違反するバカのお陰でスレが白けちまったな
なのに「今度は九十九だ」って平気で言えるあたり、氏の常識を疑う
謝罪くらいあってもいいんじゃないか

668:名無しさん@ピンキー
08/08/08 23:27:46 XPZdwUvg
(゚Д゚)ハァ?

669:名無しさん@ピンキー
08/08/08 23:28:36 Jk6j0l1e
反応するなって調子にのるから

670:名無しさん@ピンキー
08/08/09 00:32:26 50SIAzDo
けど、今度の指摘で本人も自分の底意地の悪さに気付いたんだろう
ショックのせいで投下が中途半端に止まってるよ

671:名無しさん@ピンキー
08/08/09 00:34:38 gqRjImRM
夏だな

672:名無しさん@ピンキー
08/08/09 00:35:03 gqRjImRM
夏なら修羅場の炎を聖火として祭り上げて欲しいもんです

673:名無しさん@ピンキー
08/08/09 00:36:33 gqRjImRM
むしろ、北京オリンピックの競技に言葉様を参加させるのが一番だね
どれだけ、鮮血になるか楽しみだ

674:名無しさん@ピンキー
08/08/09 00:40:47 cvZcwcaI
>>677
世界殺しなら間違いなく金メダルは頂きだね

675:名無しさん@ピンキー
08/08/09 07:59:15 gw9zlCR4
いろんな意味で世界を「とれるな」

676:名無しさん@ピンキー
08/08/09 12:52:11 FiHTclBb
競技→凶技

走り飛び降り(ビルの屋上から)

槍投げ→殺り投げ(死体遺棄)(ヤリ逃げは誠限定)

砲丸投げ→睾丸投げ(誠の限定)

棒高跳び→船高飛び(niceboat)

なかなか思いつかないな。他には何がある?

677:名無しさん@ピンキー
08/08/09 17:18:46 1jvHiFcQ
>>680
100M走の鬼ごっこ(ランナーの後ろに鋸を持った少女達が追いかけます)

ヤラソン(42.195kmを走ってくれば、ヤンデレが追いかけて来ません
      捕まったら、監禁されます)

こんな感じ?

678:名無しさん@ピンキー
08/08/09 18:18:04 gw9zlCR4
俺は世界を殺る(とる)といったんだが・・
なんかびみょいな

679:名無しさん@ピンキー
08/08/09 20:25:56 AMRPzp5i
     _ ―- ‐- 、
    (r/ -─二:.:.:ヽ       始まったな
    7''´ ̄ヽ-─<:.:.',                  __
.   〈t<  く=r‐、\:く       _ ...-::‐::¬::::: ̄:::::::::::::::::::::::::::::::
   ∠j ` / ,j={_/ヽヽr'       >:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
.    っ Y _/ ヽ了       /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
.    し イ --─¬       /::::::/:/|:::/::∧:::∧:::::::::::::::::::::::::::::::::::
      f: :_: : :_:_:_└ 、     |/f|/|/ .|/ |/ ∨ ヽ|\:::::::::::::::::::::::::
     /-ー/: : : : : : :\      {            ヘ:::::::::::::::::::::
    /7: : : :r: : : : : : : : : }     ',  .j /     }   .}::::::::::::::::::::
   /: : : : : :.|: :j: : : :\: : j      } /_       ミ   ヘ::::::::::::::::::
  /: : : : : : : j: ヘ、: : : : \|    /く<l´::<ニ二 ̄`>   ミ:::::::::/
 ./: : : : : : : \::::ヘ: : : : : : :ヽ    {::ア{:::::::}厂¨,`_______j:::::://       あぁ
 {: : : : : : : : : : ヘ:::ヘ: : : : : : :',    V ヘ::::ノ` ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ .{::::|ヽ
 ',: : : : : : : : : : : :\ヘ: : : : : :ヘ.   /  ヘ¨       //:}::::|/
  ',: : : : : : : :::::::::::::::::::〉: :_:_.r--―く   >ヽ      /   _ノ::::{ _/
  '; : : : :.::::::::::::::::::::::r</ :.:..   `ー¬\__        /::::/
  〈: : : : :ー---‐‐r―'´  :.:.:.  ヘ: .  ヽ . . }ー、    ./::::<
  〈: : : : : : : : : : 〈r-‐、:.:.:.:ヘ.:.:.:.:.  ', : :  ',: . .|: : 〉  /:::::::/


680:名無しさん@ピンキー
08/08/10 00:02:01 UgFvmIrD
好きな女がヤンデレならどうする?

681:名無しさん@ピンキー
08/08/10 00:03:59 yWcaOw6T
最高だ

682:名無しさん@ピンキー
08/08/10 01:48:15 XC8xdgFh
ヤンデレの嫉妬って、誤解とすれちがいとまた誤解と変な解釈でやるから
主人公の取った行動って、なんでも嫉妬してしまう罠


猫に餌をあげた場合だと

私よりもあの猫さんの方がいいんですか。許しません
ねこさんのはらわたを切り裂いてあげます。これであなたは
私だけのもの

って感じ

683:名無しさん@ピンキー
08/08/10 02:13:49 ZJtsycPJ
あー夏休み!

684:名無しさん@ピンキー
08/08/10 04:20:09 47NjcWSc
>>687
お前も読書感想文が残ってるだろ

685:名無しさん@ピンキー
08/08/10 07:25:01 uwvLC5QN
大学生も夏休みなんだがな
因みにみんな夏休みの課題はに嫉妬深い姉を探すことだよな?



ってか浪人時代より大学入ってからの方が忙しいってのはどうよ?
SS書く暇もありゃしない

686:名無しさん@ピンキー
08/08/10 11:39:11 ZfGTfo4r
とりあえずsageようぜ

687:名無しさん@ピンキー
08/08/10 23:02:14 IrN08lB9
何気なく気になってたスレなので投下させてもらいますね

688:名無しさん@ピンキー
08/08/10 23:03:12 IrN08lB9
 どうして、ボクはボクである存在になれなかったのだろうか。
 幾度も、自分自身になりたいと思った。
 しかしそれは、ボクの心が、許さなかった。
 有限の命の限りに生きていかなければならないというのに、自信を見つめることは、何よりも躊躇うことだから。
 それは、これまでの人生がそうであったし、これからの人生も変わることはないだろう。
 その所為なのだろうか。彼女たちの気持ちに気付いていたのに、最後には全てを捨てて、逃げ出してしまったのは。
 ボクが、ボクで無い存在に完全になってしまったなら、きっと彼女たちは諦めてくれるだろう。
 そう、信じていたから―。




 ボクは、誰なのだろうか。







 まだ早朝の気だるさは残っている。
 珍しく寝巻きから着替えもせずに、朝刊を膝の上に乗せたまま、呑気にテレビに映るニュースの内容に没頭していた。
 端的にその内容を説明するのならば、世の中は金さえあればほとんどのことは許容されてしまうということ。
 無論、それがおかしいとは思わなかった。
 それは人の心の中に必ず根付いていること。その思いの大小に関係なく、認めなければならないことだろう。
 しかし、もし何らかの出来事で被害を受けた人たちがいるとすれば、どうだろうか。
 やはりそんなことがあったとしても、裁判を行なって勝利を得たとしても、結局は金という形で結果が返ってくる。
 例え人がどんな想いを抱いていたとしても、だ。
「……ととと、もう七時になってる」
 ニュースの内容が変わったことで、先ほどまで頭の中を巡ってた思考が途切れた。
 朝から呆けている場合じゃない。まだシャワーすら浴びてないのに、あと一時間半で朝食も身支度も終えて、急いで学校に行かなければならないのに。
 内心、かなり焦っている。
 何せ慌てることなんて、普段の生活からは考えられない。
 寝巻きを脱衣篭に脱ぎ捨てて、風呂場へと入る。
 夏の朝から冷水を浴びる、という体育会系の思考はなく、あくまでも熱めのお湯を全身に浴びる。
「頭が痒い~」
 正直なところ、まだ意識は覚醒しきっていない。
 その証拠に先ほどまでニュースを見ながら考えていたことは、綺麗さっぱり頭の中から忘却されていた。
 しかしそれも、自身の髪の毛に手を伸ばしたところで終わりを告げる。
「ふむ、最近は暑いから汗も掻いちゃうし、やっぱり毎日朝夜って風呂に入らないとダメかな」
 鏡には、一男子としては有り得ない姿が映し出されている。
 腰まで届きそうな長い黒髪に、つられて見えるすらりと細い腰。
 高校生男子とは思えない体格のくせに、背はそこそこ伸びているが、自分でも諦めが付いてしまうほどの男らしくない顔。
 そんな自身の見てくれに肩を落としながらも、静波雅(しずなみ みやび)は髪の毛だけは大事にしていた。
 痛まないように丁寧に、髪をシャンプーするときは割れ物を扱うかのように繊細な指使いで触る。
 すでに両親が他界している自分にとって、母親譲りらしい質のいい髪は、物心付いた頃から大事にしていた。
 男らしくないとか、気持ち悪い趣味だとか、周りからは思われているだろうが、そんなことは関係ない。
 声も聞いたことがなく、触れたこともない家族の繋がりを、少しでもいいから残したかっただけなのだから。





689:名無しさん@ピンキー
08/08/10 23:03:35 IrN08lB9
「いってきます」
 一人暮らしの我が家から学校までの距離は近い。始業の予鈴が鳴るのは八時半だが、それよりも一時間早くには家を出る。
 片道十分ほどのその距離を歩くのに、普通の学生はそんな早い行動はしないだろう。
 つまり、雅にはこの時間に登校しなければならない理由があるのだ。
 学校へ向かうルートを歩く前に、隣人もとい幼馴染を起こしにいかなければならない。
 つい最近またリフォームをしたとか、そんな話を聞いた隣人の家の前に立っていた。
 新築のような綺麗な外見の家を眺めながら、チャイムを鳴らす。
「あらあ、おはようみぃちゃん。毎日ご苦労様」
「おはようございます。繁縷、まだ寝てます?」
 自分のことを“みぃちゃん”と呼びながら現れたおばさんに会釈し、目的の人物について訊ねる。
 返答の代わりに、苦笑しながら首を左右に振ってきたのだが。
「あと五分で部屋に入るよ、って言っておいてください」
 仕方ないので、そのまま玄関の外で待つことにした。
 毎度のことなのだが、ここからは背中に煩い音が聞こえてくる。器物を破壊したような音や、水が吹き出るような音。とにかく音という音が出尽くしてくる。
 そしてきっちり五分。背にしていた玄関から物凄い勢いで人影が飛び出してきた。
「はあ、はぁ……お、おはよう、みぃちゃん」
 家の中で何があったのかは知らないが、思い切り息を切らせている彼女が、申し訳なさそうにこちらを見た。
「おはよう。相変わらず朝から飽きないね。寝坊するの好き?」
 彼女―和泉繁縷(いずみ はこべ)が困ったような笑いを見せてから、突然頬を膨らませる。
 ばたばたとその場で暴れる様子が、小動物の行動のように見えて微笑ましいものなのだが。
「仕方ないのー! お姉ちゃんだって色々忙しいんだから!」
 通学路でそれをやられるのは、恥ずかしいことこの上ない。
 お姉ちゃん、という通り、繁縷は雅よりも一つ年上であり、今年で卒業を控えている高校三年生だ。
 成績優秀であり、美人、よりかは可愛い印象のほうが強い顔立ちに、雅よりも長い黒髪を揺らしている。出るところは出過ぎているスタイルは、学校ではかなりの人気を博している。
 非常に落ち着いて穏やかな性格であり、人間的にも確立されているため、生徒会長に就いている彼女を知らない、という生徒は少ないだろう。
 だが、どこでどう間違ったのか、学校外の実生活はその姿はまったく見受けられないのだ。
「ほらほら、もう少しで学校に着くんだから、そんなおバカなことはやめなさい」
 肩を叩いて、とてもじゃないが年上とは思えない繁縷を宥める。
 それでも未だに不貞腐れているのか、じろじろとこちらを見ては、目を逸らすということを繰り返している。
「だぁーってえ、みぃちゃんが苛めるんだもん! そうやっていっつもいっつも、どれだけ私が傷ついてると思ってるの!?」
 泣いたフリを演じているのは明らかなのだが、都合の悪いことに学校が目の前に迫っている。
 諦めてこちらが折れるしかないのだが、学校の敷地に入るまでに渡さなければいけないものがある。
 弁当の包みを二つ、鞄から取り出して繁縷に渡す。
 未だに暴れていた繁縷の動きが、それでピタリと止まる。
「あ、今日のお弁当だ。ありがとう」
 二つの包みを受け取って、繁縷の表情が柔らかくなる。
 同時に腕を絡ませてくるが、学校目前ということもあって強引に引き剥がす。
「もう学校だからおしまい。これ以上おバカになったままでいると、繁縷のイメージが悪くなるよ」
 言われて繁縷も気付いたのか、自分の頬を何度か軽く叩いて表情を引き締める。
 自分で叩いて痛かったのか、涙目になっているのだが、大丈夫だろう。
 それから校舎までの道はあっという間だった。
「それじゃあ雅君。またあとでね」
 先ほどとは打って変わり、まるで別人のような繁縷が手を振りながら、優雅な仕草で先に教室へと向かっていった。
 ようやく彼女の体が、“学校モード”に切り替わったのである。
 姉の本当の姿を知っている身としては、それは奇妙な光景だったが、今更のことなので気にすることもなく、雅も自分の教室に向かっていった。





690:名無しさん@ピンキー
08/08/10 23:06:20 IrN08lB9
 二時限目の授業も終わり、次の三、四時限連続の体育授業のために更衣室に向かう。
 が、席を立ったところで不意に呼び止められた。
「雅ー、一緒に行こうぜ」
 これがまた、実生活の繁縷と肩を並べれるほど騒がしい人物である。
 ―清原墨人。中学の頃から何かと腐れ縁がある男友達。
 一人よりかは二人で歩いたほうが楽しいのは事実で、それは気の知れた人物だからこそ成り立つものである。
 無論、体育の授業中でもそれは続いていた。
 男女共同で使っている体育館は、それぞれにスペースが半分ずつ分けられている。
 男子のほうではバスケが行なわれており現在は雅と墨人共々、組み合わせのチームではないので壁際に座って無駄話をしていた。
「女子はバレーか……エロいよな」
 唐突に変態的な発言をした墨人を一瞥して、雅も何気なく女子のほうに目が向いた。
 なるほど、と納得してしまうような光景が広がっている。
 シャツとジャージという姿の女子たちが、身体を目一杯使って球技に集中している。
 当然、揺れている箇所は揺れているわけで、墨人の言いたいことはよく分かった。
「やっぱ久遠の胸が一番だよな、ホント」
 と、墨人の目が一点に集中していた。
 一際大きく揺れている胸が、本人の存在を更に強調しているように見える。
 丁度、久遠美津希(くおん みつき)が相手チームのコートにスパイクを打ち込んでいたところだった。
「ちょっと、同級生相手にそんなこと言うのって……」
 かといって、墨人が躊躇いもなく胸だの何だのと言う神経が理解できない。
 思わず言いかけたが、墨人はあっさりと言い切ってしまう。
「周りからオナペット扱いされてるし、別にいいんじゃね?」
「本人に聞こえたらどうするのさ……」
 その墨人の発言に、否定することもなかった。
 事実、彼女の噂と周りの男子の奇異な視線を見る限り、その発言は間違っていないと素直に思えるからだ。
 久遠の容姿は、それこそ雅がよく知る女性の繁縷に負けず劣らず、見事なまでに完成されている。
 よく手入れされた長髪に、豊満な胸にすらりと伸びた脚。同年代の女子に比べて一つ上を行く美人の容貌。
 加えて大企業の久遠グループの娘というお嬢様であれば、目を付けない男はいない、らしい。
 そして彼女に突撃していった男は、次々と玉砕していったと言われている。
 学校ではイケメンと言われている男、スポーツが出来る男、勉強が出来る男、数えるのが面倒なほどの人数の男たちが潰されたのだ。
「うちのクラスだって、そう思ってる奴らはたくさんいるだろ」
 しかし振られた男達は、決して彼女のことを諦めてはいないらしい。日々熱い視線を彼女に向けていて、再び機会を狙っているとのこと。
 墨人の言葉につられてふと周りを見る。
 バスケに参加していない何人かの男子が、卑しい目つきで久遠を見ているのが分かる。
 恐らくは、この中にも彼女に告白した者はいるのだろう。
 気持ちは分からなくもない。
 ただ、共感することはできない。
「どうしたの雅? そんなに難しい顔して」
 ふと掛けられた声に驚く。
 いつの間に女子の試合が終わったのか、久遠が覗き込むように目の前にいた。
 こちらが座っているせいか、彼女の姿勢が前屈みになっていることもあり、シャツ越しに見える胸が柔らかそうに揺れている。
「あ、ううん。ちょっと疲れてて」
 まさか、『先ほどまで墨人と、あなたの胸について話してました』などと言えるわけがない。
 とうの墨人は、まるで何事もなかったかのように別の男子と話を始めていた。
「久遠さんは、試合どうだったの?」
 彼女と話すようになったのは、二年に進級してから間もない頃からだった。
 明るく、それでいてはっきりと自分の意思を伝える彼女の性格には、羨ましく思うものがある。
 告白を次々と断っている、というのは自尊心が強いのだろう。
「あら、見てくれてたの? もちろん試合には勝ったわ」
 試合に勝てたのがそれほど嬉しいのか、満足したような表情を見せてくる。
 これがなかなか、可愛いものである。男子に人気があるというのも、分かる気がする。

691:名無しさん@ピンキー
08/08/10 23:06:48 IrN08lB9
「凄いね。ボクはあんまり運動は得意じゃないから、羨ましいよ」
 掛け値無しに久遠を称賛できるのは、心の底から彼女のことを羨ましく思っているからなのだろう。
 対して試合後すぐということもあるのだろうか、久遠の顔は赤く染まっていた。
 かと思いきや、突然周囲を何度か窺ったりと落ち着かなくなってきている。
「ご、ごめんなさい。もう戻るわ」
 久遠はそう言うや否や立ち上がって、今度はこちらの様子を何度か窺いながら女子の輪に戻っていった。
 終わった頃合を見計らっていたのだろうか、久遠が女子の輪に戻って程なくしてから、墨人が話しかけてきた。
「なあ、お前って久遠とよく喋るよな」
 不思議そうに訊ねてくる。が、これまで何度墨人が同じことを訊いてきただろうか。
 溜め息を吐きながらそれに答える。
「さあ? ボクの顔が男っぽくないからじゃない?」
 自分で言っておいてなのだが、何気なく傷ついてしまう。
 久遠が異性と話している姿を見るのは、男のほうから声を掛ける以外はほぼ見かけることはないらしい。
 男が嫌いだから、誰に告白されても断っている、という噂もある。
 しかし、そうは言っても現に彼女は先ほどのように、たまに話しかけてくることがあるのだ。
 恐らくは、雅の顔を見ても男だと認識しないのだろう。
 残念なことに生まれてからこれまで、学校指定のブレザーを着ていようが、男子トイレにいようが、初対面の人間からは必ず女だと間違えられている。
 伸ばしている髪のせいもあるだろうが、何よりも鏡を見たときに、自分でも悲しくなるほどの女顔が映っているのが原因なのだろう。
「そう言うなら髪を切れ、髪を」
 墨人が厄介払いをするかのように、雅の長髪を手で追い払うような仕草をする。
 しかしそれは無理な話だ。
 この髪は、自分の母親の姿を思い浮かべるための証であり、そして、
「もう、そんなこと言ったって切れないよ。大事な髪なんだから」
 自分に残っている、唯一の家族との繋がりなのだから。




692:名無しさん@ピンキー
08/08/10 23:08:59 IrN08lB9
「雅君ー、お弁当食べよう?」
 大して動きもせず、それでも適度に疲労感が溜まった体育授業が終わり、昼休みの時間になった途端だ。
 教室の前で待っていたらしい繁縷が、嬉しそうにこちらに駆け寄ってきた。
 墨人とのんびりと教室に入ろうとしていたところで呼び止められたが、別段いつものことであった。
 しかし、その“いつものこと”で毎度ながら墨人が激昂するのだが。
「うおおおお雅いいいい!! お前はまたしても会長の弁当を食べに行くのか!!!!」
 ボクが作った弁当なんだけどね、と言いかけたが踏み止まる。
 苦笑しながら黙って聞いていると、なおも墨人が続けて叫び声を上げる。
「我らのアイドルの和泉会長が、よりにもよって本人自体に男っ気の無い奴が!! ただ幼馴染だからという理由で手作りの弁当を食べさせてもらうなど許すことができるか!!」
 長々と喋る墨人につられて、徐々に雅に対しての悪意ある声が上がってくる。
 改めて繁縷の人気を再確認されているようだが、全く持って気分は良くない。しかもよく見渡すと、体育授業から戻ってきたクラスの生徒たちも見かけるから堪ったものではない。
 いつの間にか嗚咽を漏らして泣きじゃくる墨人だったが、結局は構わずに周囲に微笑を向けている繁縷の手を引いて、急いでその場から避難した。
 この学校は、普段は屋上は解放厳禁である。
 しかし、一時的な備品の保管場所の役目など、意外と使用する機会が多い。
 そのため、生徒会が鍵を保管している。つまり、繁縷と昼食を済ませるときは、いつも屋上に行くことになっているのだ。
「ほらみぃちゃん、早く食べようよー」
 繁縷がいそいそと嬉しそうに弁当の包みを解きながら、こちらにも弁当を渡す。
「作ったのはボクだから、複雑な気分なんだけど」
 朝に手放した弁当が、よもや幼馴染が作った弁当へと早代わりするとは。
 しかも昼には必ずご対面という、なんとも無駄なことである。
「ダメなの! 私が作ったってことにしなきゃ、生徒会長としての威厳がないでしょ?」
 何処がダメなのか分かりません。
 ただ見栄を張りたいだけじゃないのか。
「なら、別にボクの分の弁当まで取っていかなくてもいいじゃない」
 広げた弁当箱を見て、これが本当に繁縷が作った弁当なら、と思う。
 しかしそれは叶わないことだろう。何せ繁縷を台所に立たせるということは、単純に死を意味することになるのだから。
 それに、自分の弁当だけ持っていけば、わざわざそんな愚行をすることもないのだから。
「だ、ダメダメっ! 絶対ダメ! みぃちゃんと一緒にお弁当食べれなくなるじゃない!!」
 物凄い形相で、繁縷が迫ってきた。近すぎて、おでこ同士がくっ付きそうになるほどの距離までだ。
 焦っているようで、危機迫っているようで、恥ずかしそうな繁縷の表情が視界一杯に広がっている。


693:名無しさん@ピンキー
08/08/10 23:09:15 IrN08lB9
 ―やっぱり、姉よりも妹と言ったほうが正しいのか。
 小さい頃は自分がどこに行くにも、繁縷はその後ろをちょこちょこ付いて歩いていた。中学生くらいになった頃からどうしたのか、突然繁縷が姉のような振る舞いを見せてきてからは、その立場は変わったが。
 とは言うものの、繁縷の後ろを好きで付いて歩いたことも多くはないし、大抵は引っ張られていったことばかりなのだが。
 彼女には、小さい頃からの癖が抜けてないのだろう。
 ただ、自分と一緒にいるということが習慣付けられていることで、幼馴染をこれまで通しているのだろう。
 気の知れた仲で、尚且つ甘えて、文句を言ったとしても許容される仲。居心地がいいのは確かだ。
「もう、繁縷も子供じゃないんだから。……そんなんじゃ彼氏の一人や二人出来ても、苦労しちゃうんじゃない?」
 居心地の良さを知ってしまっているから、それ以上のことは望もうとすら思わないのだろう。
 だがそれでは、彼女自身は成長しないだろう。
 確かに、自分としても姉と呼べる繁縷がいるのは嬉しい。事実、彼女がいなかったら今の自分があるかすらも、分からないのだから。
 誰よりも身近に彼女を見てきたと自負しているからこそ、彼女はこのままではいけないと思う。
「ねえ、みぃちゃん?」
 いつの間にか、繁縷がこちらの様子を伺っていた。
 声の調子が、先ほどに比べて低いのが分かる。もしかしたら、気に障ることを言ってしまったのではないだろうか。
 だが、その思考は繁縷の言葉によって断ち切られる。
「みぃちゃんは、今の私のこと、嫌い? 一緒にいて、疲れる?」
 何かに怯えているようで、恐る恐ると訊ねられた。
 雅は首を傾げて、けれどもほんの少しの間を置いてから、ふるふると首を左右に振った。
 自然と、その心は穏やかな気持ちで溢れて、
「疲れるわけないでしょ。お姉ちゃんの面倒を見るのも、弟の仕事、じゃない」
 自分を頼ってくれている姉の存在が嬉しい。姉と呼ぶことが出来て、頼られて、それこそが繁縷の活力である。
 そう遠くなく、彼女の目の前には良い男性が現れるだろう。
 現在の彼女こそ、子供らしさが存分に残っており、また誰からも頼られる存在であることも事実である。
 自分は、彼女の心が子供から大人の女性に成熟するまで、温かい目で見守ることが望んでいる。
 何も無かった自分を生かしてくれた幼馴染に対する恩返しでもあるから。
 雅は薄らと微笑み、繁縷の頭をなるべく優しく撫でた。
「ん……ありがと……」
 くすぐったそうに、けれどもどこか寂しそうな表情を浮かべながら、繁縷は雅の腕にゆっくりと自身の腕を絡ませた。
 不安なのろう。彼女は根底ではしっかりとしているが、まだまだそれは表に出ることが少ない。
 もうしばらくは、彼女の面倒を見なければならないだろう。苦笑しながら、雅はそのことを嬉しく思うのであった。


694:名無しさん@ピンキー
08/08/10 23:10:34 IrN08lB9
とりあえず1話分? くらいなところで切ります。まだ嫉妬も糞もない状態ですが失礼しました

695:名無しさん@ピンキー
08/08/11 00:08:11 I76QshSY
おちゅ

696:名無しさん@ピンキー
08/08/11 00:12:26 UD4DnDlT
投下GJ
期待させていただく

697:名無しさん@ピンキー
08/08/11 01:00:20 DOtk45EB
>>698
乙です
久々の新作投下…この後の泥沼展開が待ち遠しいぜ

698:名無しさん@ピンキー
08/08/11 01:47:00 VNWI4eCS
投下乙
新作期待

699:名無しさん@ピンキー
08/08/11 03:15:57 Q1L2X1II
>>698
GJ!
ところで墨人って何と読みますか?

700:名無しさん@ピンキー
08/08/11 05:33:05 P7rir5Vv
ググレカス

701:名無しさん@ピンキー
08/08/11 06:58:36 szYfeG5m

主人公の「長髪に家族のつながりを感じる」とかいう部分にちょっと無理があるような?
個人的にはどこにでも居そうな一般的な主人公のほうが良いなあ

702:名無しさん@ピンキー
08/08/11 07:17:04 hGKc+6/r
居るとすげぇウザイけど
居ないとほんの少しだけ寂しいカツって不思議!

703:名無しさん@ピンキー
08/08/11 07:17:22 hGKc+6/r
はい誤爆ごめんなさいorz

704:名無しさん@ピンキー
08/08/11 12:19:01 FzsB+IBr
ところどころで第三者視点になってるのが気に掛かる
それと解放→開放とか、誤字がちらほら
後悔しないためにも読み返しをしようよ
ともかく緑猫の尻拭い、乙です

705:名無しさん@ピンキー
08/08/11 14:07:39 8an3vvf6
嫉妬の炎を燃やす女の子による惨劇は何かほれぼれするよな

706:名無しさん@ピンキー
08/08/11 14:12:23 /RaBH+qO
●相手のヤンデレがしゃべりたいことを察知し、それをヤンデレがしゃべるように誘導してあげる。

●ヤンデレが何をしゃべりたいかは、そのヤンデレ自身が気づいていない。これをヤンデレ自身よりも先に気づいてあげる。

●会話の辻褄や一貫性は敢えて無視する。論理的に正しいことではなく、ヤンデレが楽しい気分になるように会話を誘導する。

●ヤンデレは一方的に話す男が嫌い。自分がしゃべっている最中もヤンデレの表情を注意深く観察し、少しでも退屈していたら、話の途中でも敏感に話の展開を変化させる男が好き。

●ヤンデレは、抜け目のないだけの男は嫌い。ヤンデレにあっさりやられてくれるような、どこか抜けたところのある、おおらかで人のいい男が好き。

●ヤンデレは、頭で考える男が嫌い。腹やハートで考える男が好き。

●ヤンデレは、口でしゃべる男が嫌い。ヤンデレは、腹やハートから言葉を放つ男が好き。

●ヤンデレは、単に明るいだけのバカポジティブ男は嫌い。絶望も苦しみも血を流しながら感じ取り、逃げずに真正面から引き受けた上で、陽気、建設的、未来志向、もしくは、深い自己了解や自己解放をもたらすような話をする男が好き。

●ヤンデレは、愚痴、悪口、泣き言を言う男が嫌い。

●ヤンデレは誰かを見下したり、嘲笑したり、貶めたりする男が嫌い。

●ヤンデレは「オレはダメな男なんだ云々」と自己卑下・自己否定する男が嫌い。(さんまのように、ジョークやネタとしてやるのはよい)

●ヤンデレは、自分が優しいことをアピールする男が嫌い。本当に優しくないとできない気遣いをする男が好き。

●ヤンデレは、自分が頭がいいことをアピールする男が嫌い。本当に頭が良くなければ出来ない気の利いた会話や思慮深い段取りをする男が好き。

●ヤンデレは、しゃべる価値のないことをしゃべる男が嫌い。何かをしゃべるときは、それがホントにしゃべる価値のあるセリフかどうかを見極めてから口に出す。

●ヤンデレは、ヤンデレの言葉の表面上の意味ではなく、その裏に横たわる気持ちや意図や事実関係をくみ取ってくれる男が好き。

●ヤンデレは、ヤンデレの言葉を奇想天外な面白解釈してツッコミを入れてくれる男が好き。(ただし、ヤンデレを持ち上げるような愛のあるツッコミでないとだめ。ハズしたときは、すかさず自分ツッコミして笑いを取る。)

●相手のヤンデレがしゃべっているときには、ヤンデレがしゃべっている内容に反応する形で、自分の表情を繊細にコントロールして共感、驚き、無表情等をしてみせる。

●自分がしゃべっている時も、自分の言葉に表情をシンクロさせたり、わざと言葉の内容と表情をミスマッチにして笑いを取ったりする。

●普段から、鏡を見て、さまざまなバリエーションの、味のある表情を出す訓練をしておく。

●ヤンデレは、学歴、社会的地位、読んだ本をさりげなくほのめかす男が嫌い。まるでなんの本も読んだことがないかのように、日常の言葉だけで、なにげなくヤンデレの気持ちに届く言葉を放つ男が好き。

●ヤンデレは、それとなく余裕をアピールする男は嫌い。本当に余裕があり、余裕が自然とにじみ出てくる男は好き。

●ヤンデレは、金持ちでも貧乏くさい男は嫌い。貧乏でも気前のいい男が好き。

●ヤンデレは、筋肉が衰えて、立ち居振る舞いがだらしない感じになっている男が嫌い。立っても座ってもしゃきっとした印象になるくらいには、全身をバランス良く鍛えておく。

●「そのヤンデレ自身が気づいてない、そのヤンデレが欲しいモノ」を見つけ出して、プレゼントしてあげる。これをするには、そのヤンデレを普段からよく観察する必要がある。

●ヤンデレはだらしない服装の男が嫌い。しわしわの服やちぐはぐのカラーコーディネーションの服は着ない。

●ヤンデレは、ヤンデレでなければ気づかないことを気づく男が好き。

●ヤンデレは不潔な男が嫌い。毎日入浴し、歯を磨き、清潔な服を着る。

●ヤンデレは、途中、どんなに醜態をさらしても、最後の最後には自分の内なる道徳律を貫く男が好き。



707:名無しさん@ピンキー
08/08/11 14:17:54 xksnKkih
>>710
スレが違う


708:名無しさん@ピンキー
08/08/11 14:33:41 lMQWBTFv
>>710
スレ違いな上に同意しかねるものが多々ある
ヤンデレを語っておきながら何も分かってない
嫉妬深い女の子に泥棒猫と勘違いされて刺されるがいい(アナル的な意味で)

709:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:29:53 241t2suw
アッーーー!!!

710:名無しさん@ピンキー
08/08/11 21:53:15 ZZUCFHFP
>>710産業で頼む

711:名無しさん@ピンキー
08/08/11 22:55:39 03iKUMLJ
>>706
糞笑った

712:名無しさん@ピンキー
08/08/12 07:35:00 pm+6rc+2
いよいよ盆だな

713:名無しさん@ピンキー
08/08/12 20:57:23 GW9+SMus
社会人になって離れ離れになった人達も再会するんですね。

たくさんの良き修羅場があってくれると嬉しいね

714:名無しさん@ピンキー
08/08/13 01:51:49 sTZ3MTYB
sin.cos.tan

715:名無しさん@ピンキー
08/08/13 04:57:51 W1AdxU8H
URLリンク(www10.atwiki.jp)
URLリンク(www10.atwiki.jp)

716:名無しさん@ピンキー
08/08/13 12:45:25 nx8Yxl14
>>719
男のヤンデレはいらない

717:名無しさん@ピンキー
08/08/13 15:55:07 QppumL2f
>>720
佐々木は女だよ
┃┃¨━(σ-`д・´)━ ╋┓

718:名無しさん@ピンキー
08/08/13 20:22:36 HX4mmEYD
顔文字きめえ

719:名無しさん@ピンキー
08/08/13 22:22:08 Pt4pkd4u
かわいい
狐だろ?

720:名無しさん@ピンキー
08/08/14 20:18:00 s7xg6Ddc
>>719
スレ違い

帰れ

721:名無しさん@ピンキー
08/08/14 22:17:11 zVI3HDjN
暑い・・・
なにか冷たくなるようなSSないか

722:名無しさん@ピンキー
08/08/15 02:02:09 nPXeTPQN
 最愛の彼女が事故で亡くなって二年半が経った。
 最初は独り悲しみ嘆いていた男だが、そんな男を支えてくれた女性がいた。
彼女は男の友人であり、そして亡くなった彼女の親友でもあった。
 辛いのは同じ。だが、今にも崩れ落ちてしまいそうな男を支える事で自分を
奮い立たせていたのかもしれない。
 恋人を失った男と親友を失った女。男は女に支えられ、女は男を支える事で
なんとか立っていることができたのだ。
 そんな二人が自然と結ばれていく事は不思議なことではなかった。共に傷をなめあいながら
生きていれば心も近くなっていくもの。傷跡は残っても傷の痛みはゆっくりと癒えていく。
 男も少しずつながらではあるが、しかし確実に自分の力で立ち上がることが出来るように
なっていった。これもひとえに女の献身的な努力の賜物といえた。

 二人はいくつも並んでいる墓の、その中の一つの前に立っていた。
 墓に刻まれている名前―それは亡くなった恋人の名前が刻まれている。
 「恭子が亡くなってからもう二年と半年も経つのね……」
 墓に水をかけながら、黒いワンピースに身を包んだ智美が呟く。
「ああ、苦しかった。もう立てない、いっそのこと俺も……そんなことを何度も考えたよ」
 黒い背広を着た孝道は恋人の名前を見つめながら静かに言う。
「果てしなく長く感じたわね。でも今になるとあっという間だった気がする」
 智美が丁寧に墓を拭き、孝道が線香に火をつける。
 花束を墓前に置き、二人は手を合わせて目を瞑った。共に思い返していることは
 三人でいた懐かしい日々。自然と二人の目尻から涙が流れる。
 いつも三人だった。楽しいときも辛いときも、嬉しいときも悲しいときも三人だった。
 三人の再開は静かに過ぎていく。時は決して止まる事はない。
 薄く細い紫煙が上り、墓前の花束が風に揺れる。近くの海から潮の香りがする。
 ゆっくりと目を開き、孝道が固く結んでいた口をゆっくりと開く。
「俺はもう大丈夫だよ。俺は前に進む。今の俺には智美がいる。
 恭子のことは絶対に忘れないよ。これからも毎年必ず会いに来るから―」
 右手に智美の体温を感じながら、孝道は真っ直ぐに前を向いて言う。
 その目は確かな力強さがあり、生きる意志がはっきりと感じられる。
「恭子、次に会いにくるときはお腹の中の子と一緒に来るからね」
 智美は膨らみかけたお腹を撫でながら、親友に以前と変わらぬ笑顔で微笑んだ。
 二人の薬指には指輪がはめられている。婚約指輪である。
 来月二人は結婚する。子供が生まれるのは恭子が亡くなった月が予定になっている。
 絶望に満ちた日々は終わりを告げ、今ようやく二人は前に向かって進んでいる。
「それじゃ、また来年会いにくるよ、恭子――」
 太陽の光が降り注ぎ、二人を祝福しているかのように墓標が光に反射して輝く。
 寄り添いながら二人は墓を背にして歩き出す。未来に向かって進むために。


 線香の紫煙が揺れ、花束が風に吹かれて墓標から転がり落ちる。
 太陽は大きな入道雲に隠れ、大きな影を落とす。
 やがて、墓の影からもう一つの影が生まれた。誰も居ない場所にできるはずもない影は
ゆっくりと伸び、そこから湧き出るかのように――憎悪が生まれた。
「――さない……るさない……許さない、許さない……許さないッ!
私を殺しておきながら、孝道を奪っておきながら幸せになるですって……?
許せるわけないじゃない……私を殺しただけじゃ飽き足らず全てを奪っていくなんて。
殺してやる……。呪って呪って呪って呪って縊り捻り祟り殺してやる!
孝道は私のよッ! 誰がお前なんかに渡すものか………智美、絶対に殺してやる!!」
 憎悪を込めて怨念が呪詛を囁く。果てしない地獄の底から響くような声で恭子が謳う。
 顔の半分は潰れ、眼球は垂れ落ちている。歯茎や頬骨まで見えるほど抉れた顔に
乱れた髪がべったりと張り付き、腐臭と共に蛆が湧いて零れ落ちる。
 血に塗れ、所々破れている服。そこから覗く部分からはおぞましい蟲が這い出て、
生前の面影は綺麗なままの顔半分を残して微塵も残っていない。
 腐臭が墓場にたちこめる。その腐臭の中心から恭子はゆっくりと歩き出す。
 二人の歩いていった先を見据え、燻り続けた火から出る煙のように憎悪が蠢きだす。
「待ってて、孝道。すぐに殺すから。そいつを殺したらまた一緒になれるから……。
うふ、ウフフふふふふふふふフフフフフフふふふふふふふふふふふふふふふふふ――」


723:名無しさん@ピンキー
08/08/15 02:04:39 nPXeTPQN
お盆にちなんでの思いつき一レスネタでした。
その後怨霊のKさんはスタッフ(住職)が美味しく頂きました。

724:名無しさん@ピンキー
08/08/15 03:30:36 n5n8m2Fr
>>727
おお、書いてくれる人がいるとは・・・
なんとGJなことか

725:名無しさん@ピンキー
08/08/15 08:23:10 nVbtXZ3j
GJ
スタッフさんはネクロ(ryなのね…;

726:名無しさん@ピンキー
08/08/15 19:55:43 jUV5bIOp
GJ

>>728
いや、NTRがダメな俺としてはカニバ(ryなんじゃないかと思ってる…

727:名無しさん@ピンキー
08/08/15 21:48:58 kj/ZGuBO
>>726
土葬なんだね!

728:名無しさん@ピンキー
08/08/16 04:28:16 WaMz3G+9
>>731
こっちの姿の方が怖いって空気読んだんだよ。怨霊もさ。

729:名無しさん@ピンキー
08/08/17 01:51:13 xvaVUrfV
女の子に耳をカプってされたい・・・

730:名無しさん@ピンキー
08/08/17 02:11:08 vFZuZsP9
甘噛みされて舐められていきなり耳を噛み千切られるんだな
そして血塗れの唇でニヤリと笑った女の子はスカートのポケットから
折りたたみナイフを取り出して

「美味しい……もう片方の耳もちょうだい」

そう言って痛みと恐怖で腰が抜けて上手く逃げられない>>733の背後から――




「ハァ、ハァ……フフ、>>733の唇も美味しい。目も耳も頬も血も脳も脊髄も美味しいよ」

こうですね、わかってますよ。

731:名無しさん@ピンキー
08/08/17 02:13:59 DgyYeElP
ただの猟奇だろそれ…

732:名無しさん@ピンキー
08/08/17 02:29:27 GEF9T2Zh
猟奇に近いわな…

733:名無しさん@ピンキー
08/08/17 04:24:39 vFZuZsP9
要点だけ書いたからただの猟奇に見えたわけです
なので少し補足しておきましょう

この少し前に>>733には付き合ってる彼女がいた
しかし彼女からある日メールで「別れてください」と送られてきて音信不通になってしまう
悲しみにくれていた>>733だが、しばらく経ってから彼女が出来た
彼女は以前別れた彼女に比べて甘えん坊でよく耳を噛んできたり抱きついてきた
甘えられるのに気をよくしていた>>733だが彼は彼女のことをあまりよく知らなかったのだ
彼女はとても嫉妬深く、>>733が知らない女と喋るだけでも嫉妬するような女の子だった
彼女の嫉妬はだんだんとエスカレートしていき、>>733が通りすがりの女性を見ただけでも
怒るようになっていった
怒るときに彼女はよく>>733に「痕」を残した。キスマークや歯型、引っ掻き傷である
最初は可愛らしい嫉妬だと思っていた>>733もだんだんとうんざりしていった。いや、
心のどこかで恐怖してもいた
だが彼女は可愛らしく、自分のことを誰よりも愛してくれていることを知っていたから
多少の嫉妬深さには目を瞑っていた
そんなある日、>>733は以前別れた彼女と再会する
彼女は>>733と別れたことを後悔していた。彼女は涙を流しながら後悔している事を
語り、できることならもう一度やり直したいと言ってきた
一方的に別れを切り出したのには将来に対する不安があった。そして自分に自信が
なかった彼女は思いつめて別れのメールを出したのだ

>>733も心のどこかで未練があった。だが今の>>733には新しい彼女がいる
もうやり直す事はできないと言ったが、弱々しい元彼女の姿を見るとどうしても放って
おけなかった。今の彼女に少々疲れていたのもあった
それから>>733は元彼女と時々会うようになった。最初はメールだけのやり取りであったし
メールはすぐに消していたから今の彼女にばれる事はなかった
しかし、会うようになってからは匂いが残った。彼女との再開は過去の記憶を甦らせ、
再び恋仲の関係まで戻るのにそう時間はかからなかった
再開から以前の関係までは坂を転がるかのように進み、そしてそれに気付かぬほど
今の彼女は愚かではなかった
彼女は>>733の様子や知らない女の匂いを敏感に嗅ぎ取っていた
>>733が自分の知らない女と会っている。自分に嘘をついてまで誰と合っているのか
最近では抱きつくと困ったような表情をするようになった。キスマークをつけたり歯型を
つけるのを嫌がるようになった
>>733を信じたい。でもどうしても疑ってしまう

彼女の心はだんだんと病んでいった

ある日、>>733の後をこっそりとつけていくと、彼女は信じたくない光景を見てしまう
知らない女と仲良く喋っている>>733の姿。自分にしか見せていなかった表情で笑う
>>733の姿と、腕を組んで歩く知らない女
彼女は一人立ち尽くし、涙を流した。歪な表情で笑いながら、泣いた

翌日の夜、彼女は>>733の部屋に居た
いつもどおりのスキンシップで後ろから抱きつく彼女。彼女の頬が濡れていることに>>733
気付いていない
まんざらでもなさそうに笑う>>733の耳に口を近づけて彼女は――



とまあこういったことがあったんですよ
その後彼女は半月かけてじっくりと>>733を味わいましたとさ
みんなも浮気したりするとこういう事になるから気をつけようね!

734:蒼天の夢 08 ◆ozOtJW9BFA
08/08/17 05:29:28 KXHyGMdH
皆さんお久しぶりです。
久々に投下します。

735:蒼天の夢 08 ◆ozOtJW9BFA
08/08/17 05:30:14 KXHyGMdH
 パーティーから二日後の昨日のレース。ジースさんはなんと4位だった。
 今までで一番高い順位。賞金獲得枠まであと少しだった。
 だけどジースさんは少しも喜ばなかった。
 理由は分かっている。ジースさん、本当は5位だった。
 4位になったのは前を飛んでいたスキッダーが途中、事故で墜ちたから。
 最終周回、ゴール近くのコーナー。そのスキッダーが曲がろうとしていたら突風が吹き、崖に接近しすぎていたため反応する間もなく岸壁に叩きつけられた。
 わたしは直接見なかったけど話に聞くとかなり惨かったらしい。
 惨くないクリフ・スキッド事故なんてあればだけど。
 わたしはアーちゃんの餌を入れたカートを押しながら竜場を見回した。
 静かだ。
 まだお昼なのに。まだ大勢の人が働いているのに。
 普段は騒がしい山頂の洞窟。でも今はワイバーンたちが時々あげる鳴き声や物音しか聞こえない。
 今日はグレイ・クリフのスキッダー全員が喪に服している。
 だから丸一日、例え練習であっても誰も飛ばないことにしている。
 でも竜場が静かなのはそれが原因じゃない。
 だって全員いつも通りにきている。
 いつも通りワイバーンの世話をしている。ただ無口でしんみりしているだけ。
 みんな仲間を、ライバルを失ったことが悲しいのだ。
 それとも自分たちもしかしたら同じ末路を辿るかもしれない、と不安になっているのかな。
 わたしはカートから生肉を取り出すとアーちゃんが食べやすいようにナイフで切ってゆく。
 普段は気にも留めない肉を切る音が妙に大きく聞こえる。
「いけない……」
 暗い考えを頭から振り払う。
 スキッダーのみんなは仕方ない。その目で見てしまったのだから。
 でも雑務係の私までしんみりしたらいけない。集中しないと。
 ここで働きはじめてすぐ分かったこと。それは雑務係がしっかりしないとスキッダーの身に危険が及ぶ。
 雑務係の仕事にはワイバーンの世話やスキッダーの装備のお手入れが含まれる。
 どちらも手を抜けば大変なことになる。だから気合をいれないとだめ。
 こんな時は楽しかった時のことを考えるのが一番。
 楽しかったこと。
 やっぱりすぐに思い浮かぶのは数日前の市長邸でのパーティー。


736:蒼天の夢 08 ◆ozOtJW9BFA
08/08/17 05:31:35 KXHyGMdH
 市長様が主催しただけあってとっても豪華だった。
 それにジースさんのスキッダー姿も間近で見られた。
 だけど疲れることもあった。
 特にジースさんに近づこうとするファンの女の子。
 本人は気づいてないだろうけど、ジースさんって結構人気がある。
 だっていつもあんな命知らずな空中機動をするのだ。たとえ勝てなくてもその勇姿に惹かれる人はいるだろう。
 でもジースさんはスポンサーとの話し合いで忙しかった。
 だからわたしはファンの女の子が邪魔しないよう、彼女たちに事情を説明して遠ざけていた。
 貴族のお嬢様たちはわがままだったからどうしても聞かない場合、わざとドレスに飲み物こぼしたり、転ばしたりしなくてはならなかった。
 本当に手間がかかった。
 でもおかげでジースさんは何事もなく商会の皆さんとの面談を終えることができた。
 計算外だったのはあのエルフ魔女。
 ファンをさばき終わってジースさんのところへ戻ろうと思っていたのに。
 いつの間にか現れて、汚らしい唾液のついた指でジースさんの首筋を撫でていたのだ。
 あの時のジースさんの表情。おびえるウサギのような顔。
 物凄く可愛かった。
 あんな顔をさせられるのがエルフ魔女なんじゃなくてわたしだったらどんなにいいか。
「ハァ……」
 ため息が漏れる。
 あの魔女の方がわたしより遥かにジースさんに近いことぐらい知っている。
 エルフ魔女がジースさんのご家族と仲良くしているのは町では有名な話。
 そしてジースさんを昔から可愛がっていたのも。
『私は知ってる。すみずみまで』
 あの女が言った言葉が頭の中で木霊する。
 わたしが知らないジースさんの秘密をいっぱい知っている魔女。
 ダンスで踊る順番を待っていた時、エルフ魔女はわたしと目が合う度笑っていた。
 ずるい。ずるい。ずるい。
 妖しい光が灯った眼。
 きっとジースさんが家に帰ったあとも押しかけて誘惑しているに違いない。
 エルフ魔女だけじゃない。
 ティオーナという新人のスキッダーにして公爵家のご令嬢。
 あの貴族女も油断ならない。
 踊りの後、わたしとエルフ魔女が飲み物を取りに行っている隙に貴族女はジースさんをさらっていった。


737:蒼天の夢 08 ◆ozOtJW9BFA
08/08/17 05:32:13 KXHyGMdH
 公爵家の権力で無理矢理二人きりになって、ジースさんに何を言ったのだろう。
 ジースさんは少し話をしていただけって言っていたけど。
 本当はどんなことを強要されているのか。
「ミリアちゃん?」
「わヒャっ!」
 突然、ジースさんの声がした。
 驚いて振り向くと、すぐ眼の前にジースさんの精悍な顔があって色んな意味で言葉を失ってしまった。
「あー、ごめんごめん。あのさ―」
 ジースさんは苦笑しながら謝る。
「―小さく切ってくれるのは嬉しいんだけど、微塵切りにしなくてもいいからね」
「え?」
 わたしは驚いて手元を見る。
 ジースさんの言う通り、小さな肉片の山ができていた。
「ごごご、ごめんなさい!すぐにやり直します」
「いいよいいよ。いつもより食べにくいかもしれないけど、こいつなら大丈夫だって」
 ジースさんはそう言ってアーちゃんの頭を軽く撫でる。
「で、でも……」
「とにかくカートとナイフ戻しておいで。そうしたら帰ろう」
「え?もう、ですか?」
「今日はほら、アレだから飛べないし、世話が終わったら何もやることないし」
 わたしはてっきり夕方まで竜場に残ると思っていた。
 他のスキッダーと同じ様に。
「けど……」
「ほらほら、餌やるのは俺がやっておくから」
 わたしは渋々納得すると言われた通り道具を片付けにいった。

 片付けが終わるとジースさんはそのままわたしを連れて山を下った。
 やっぱり他のスキッダーたちが残っているせいか、山道を行くのはわたしたちだけ。
 いつもだったら二人っきり、ということで喜べたかもしれない。
 けど今はそんな気持ちにはなれなかった。
 切なさ、寂しさだけがぐるぐると頭の中を泳ぎまわってる。
 そんな感情に耐え切れずジースさんに話しかけた。
「ジースさん……アーちゃんをあのままにしておいて大丈夫なんですか?」
 実は前々から持っていた疑問だった。


738:蒼天の夢 08 ◆ozOtJW9BFA
08/08/17 05:33:35 KXHyGMdH
 スキッダーが自分のワイバーンを可愛がるのは当然のこと。もちろんそれはジースさんだって同じ。
 だけど側でお手伝いをしていて思ったのは、ジースさんってかなりあっさりしている。
 アーちゃんのお世話はしっかりしているし、撫でたりするのは普通なのに、やることやったらそのまま帰ってしまう。
 今日だって他のスキッダーたちがやることなくなっても愛騎の側にいたのに、帰っちゃうし。
「ああ、だから言い淀んでいたのか」
 わたしの言いたいことが分かったのか、ジースさんは笑った。
「別に大丈夫だろ。それにいつも以上に辛気臭くしていたら相棒に迷惑だ」
「でも他のスキッダーさんたちはワイバーンの側に残ってましたよ?」
「あいつらにはあいつらのやり方がある。俺には俺のやり方があるんだ」
「それはそうですけど……昨日はあんなことがあったばかりなのに……アーちゃんの側にいてあげた方が……」
「正直、あいつがそこまで理解してるのか分からないし、俺が側にいてやっても食事の邪魔だって」
「そんなことありません!アーちゃんだってきっとジースさんに―」
 そこまで言うと話を遮るようにジースさんはわたしの頭を撫でた。
「あいつはワイバーン。俺は人間。人間の基準で考えたってしょうがないんだ」
「でも……」
 自分がしつこいと思いつつも、どうしても食い下がれなかった。
「だけどな、一つだけあいつと喋れる言語があるんだ」
 ふとジースさんの顔を見ると笑みは消え、真剣な顔で遠くを見ていた。
「それは飛ぶこと」
「え?」
「ワイバーンはな、野生でも速さを競うんだ。レースというのは彼らの本能に刻み込まれているんだ。相棒に人間独特の言葉ややり方で感情を示したって意味がない。本当にあいつと会話できるのは飛んでいる時だけ」
 ジースさんは言葉を一旦切ると自らに言い聞かせるように言った。
「そしてレースで俺たちが一番速いってことを証明できた瞬間こそ……俺は相棒に、本当に感謝の意を伝えることができるんだ」
 わたしは言葉を失った。
 すぐ側に居たのにも関わらず、ジースさんのことを少しも理解していなかった。
 わたしは結局スキッダーとしてのジースさんしか見ていなかった。
 再びあの魔女の笑みが浮かび上がる。
 彼が好きな気持ちは誰にも負けない、と思っていた。


739:蒼天の夢 08 ◆ozOtJW9BFA
08/08/17 05:34:15 KXHyGMdH
 でも想うだけじゃ足りない。想うだけのファンの女の子じゃジースさんと結ばれる資格なんてない。
「っと、ごめんごめん。なんか変に真剣になっちゃって」
 ジースさんはすまなそうに頭をかいた。
「いえ、ジースさんがどんな考えでアーちゃんに接しているのが分かってよかったです。わたしこそしつこく聞いたりしてごめんなさい」
「気にしなくていいよ。それに共に働く者として俺の考えを理解してもらえて俺も嬉しいし」
 理解、という言葉を聞いて胸が痛んだ。
 違う。わたしはまだ何も理解していない。
 だからこれからもっとジースさんを知らなくてはならない。
 もっと。あの魔女なんかに負けないくらい。
「そうだ、まだお昼過ぎだからお茶して帰りません?」
 思いついたら即行動。今からでもジースさんのこと知らなくちゃ。
「俺はいいけど……」
「大丈夫ですよ。ワリカンでいいですから」
「いや、それは流石に……」
「無理しなくていいですよ?ジースさんのお財布事情は知ってますから」
「そうは言っても……」
「はいはい、行きましょう」
 わたしはジースさんの腕を引っ張って麓の街まで急いだ。
 昨日今日と周りの雰囲気は暗かったけど、おかげで新しい目標ができた。
 待っていて下さいねジースさん。わたしもっと貴方に相応しい女の子になってみせますから。


740:蒼天の夢 08 ◆ozOtJW9BFA
08/08/17 05:37:25 KXHyGMdH
以上、投下終了です。
覚えている方はもういないかと思いますが半年前ほどに投稿していたモノの続きです。


741:名無しさん@ピンキー
08/08/17 07:25:46 8jBqP7h2
>>744
お久しぶりGJ。
覚えてるっよ

742:名無しさん@ピンキー
08/08/17 10:24:21 AeCTL2lD
>>744
おおっ続き待ってました!
前回のパーティ編の盛り上がりからその後がずっと気になってたんだぜ?
次回投下を期待して待ってるyo

743:名無しさん@ピンキー
08/08/17 15:25:14 GEF9T2Zh
畜生…名前覚えていて内容覚えてないとは…ちょっと保管庫読み直してくる

744:名無しさん@ピンキー
08/08/17 15:27:53 ixnHG0AV
俺も最初の話から読み直してくるかw
GJ!

745:名無しさん@ピンキー
08/08/17 17:03:34 DANx3UBe
おおおおお久しぶりだこりゃ
gj

746:蒼天の夢 09 ◆ozOtJW9BFA
08/08/17 23:10:52 KXHyGMdH
書き貯めしておいた分のチェックが終わったので投下します。

747:蒼天の夢 09 ◆ozOtJW9BFA
08/08/17 23:11:37 KXHyGMdH
 今日は生憎の雨だ。
 朝、山を登って来る時は快晴だったのに竜場についた途端ふり出した。
 今はまだ軽くふっている程度だが、雲の様子から見て恐らく嵐になるだろう。
 嵐になると俺たちスキッダーは練習どころか通常飛行もできない。
 だからと言って今無理に飛び立てば練習飛行の真っ最中に嵐になってしまう可能性がある。
 もちろん竜場に来てしまった以上、何もしない訳にはいかない。
 周りのほとんどの者はいつものようにワイバーンの世話や備品の手入れに勤しんでいる。
 俺も暇な内に相棒を洗っておこうと、水を汲みに行った。
 そして水場からの帰り、竜場の真ん中で三人のスキッダーが集まって話し込んでいた。
 普段は皆忙しいのでこのような光景は珍しい。
(やっぱり飛べなきゃ暇だしな)
 と思いながら通り過ぎようとした時、あまり聞きたくない声に呼び止められた。
「お!噂をすればジースじゃないか」
 振り返ると、それはやっぱりアザラスだった。
「なんだ?今水汲み中だ」
「まあまあ、仕事熱心なのはいいけどたまにはスキッダー同士の交流を深めようぜ」
「別に俺はお前と交流を深めなくとも一向に構わんが」
「アハハ、そう言わずにジース君、こっちおいでよ」
 そう言ったのは革鎧に身を包んだ赤毛の女性だった。
 確かグレイ・クリフでは数少ない女スキッダーの一人だ。
「そうそう、ただでさえお前は人付き合いが悪いんだからな」
 もう一人の中年スキッダーも相槌をうつ。
「はあ、分かったよ」
 アザラスだけなら別に無視してもよかったが、他の同僚たちもいたのなら仕方ない。
「んで、噂をすればってことは俺の話をしてたのか?」
 赤毛の女スキッダーが俺を指差して言う。
「ズバリ!君今恋人とかいる?」
「は?」
 てっきりもっとスキッダーらしい話題を想像していたのでかなり間抜けな返事になってしまった。
「あ、別にあたしがジース君に気があるって訳じゃないから勘違いしないでね」
「分かってるよ。アザラスじゃあるまいし」
「おい!俺だってな―」
「して何でそんなこと聞くんだ?」
 一々アザラスに反応してられないので、無視して話を進める。


748:蒼天の夢 09 ◆ozOtJW9BFA
08/08/17 23:12:25 KXHyGMdH
「いいから先に質問に答えてよ」
「いや、いないけど」
「ほうほう、その割にはこの前の宴では熱心に踊っていたが?」
 中年スキッダーは顎鬚をいじりながら言った。
「確かお前さんのとこで働いている娘っ子だったか?」
「ははーん。女の子がお前のワイバーンを世話していると思ったら、ジースお前そういう魂胆だったのか」
「家で若い使用人雇っている貴族様に言われたくないね。ともかく彼女は俺の恋人って訳じゃないからな」
 俺の答えが予想外だったのか、なぜか三人とも考え込む。
「とするとやっぱりあのエルフの魔女殿か……」
 尚考えるようなアザラスに対して、もう二人の同僚は何やら想像を飛躍させていた。
「ずっと若いままの嫁さんか。羨ましいねえ」
「異種族恋愛か~。ロマンチック~」
「だからそうじゃないって!エリシアさんとも付き合ってないし、俺にはそもそも恋人がいないんだって」
 誤解されるのも嫌だが、自分に恋人がいないと全力否定するのも何処か恥ずかしい。
「なんだ、つまんない」
 赤毛の女スキッダーが残念そうに肩をすくめる。
「つまんなくて悪かったな。大体皆はどうなんだよ。俺ばっかりいじりやがって」
「いや、俺既婚者だし」
 と中年スキッダー。
「俺は許婚いるしな」
 とアザラス。
「あたしも全然。出会いがないのよ」
 はあ、とため息が出てしまう。なぜ俺は暇人たちの会話の肴にされなければならないのだろう。とにかくこれ以上留まったらまた何言わされるか分からない。
「さて、俺は相棒洗わなきゃいけないからまたな」
「えー、もうかよ」
「もう一人じゃないが、だからと言って女の子に全部任せる訳にはいかないからな」
 そう言って俺はアズールの居る竜場の区画まで戻ってきた。
「あ、ジースさん……」
 振り返ったミリアちゃんはなぜか複雑そうな顔で俺を出迎えた。
「ん?何かあったのか?」
「別に何でもないです」
 そっぽを向かれ、余計訳が分からない。


749:蒼天の夢 09 ◆ozOtJW9BFA
08/08/17 23:13:02 KXHyGMdH
 天気というのは人間の心にも多大な変化を及ぼすものだな、とブラシを水に浸しながら思った。
 
 アズールの胴体を綺麗にし終わった頃、外に続く人間用の門が勢いよく開けられた。
 俺を含め、竜場内の人間のほとんどが何事かと注目する。
 入ってきたのは貴族の男女。恐らく夫婦だろう。
 彼らの護衛らしき兵士が二人。
 そして最後には―
「お父さん?!」
 隣にいたミリアちゃんが驚きの声を上げる。
 ミリアちゃんの言う通り、貴族の夫婦に続き入ってきたのはライアンおやじだった。
 咄嗟に解雇の二文字が頭をよぎる。
 しかしその考えを振り払うよりも早く、ライアンおやじは俺を見つけると貴族共々こちらに近づいてきた。
 俺は濡れた手を素早く腰布で乾かすと一行と対峙した。
「ジース……」
 ライアンおやじが俺に声をかけるも、そこにはいつもの威厳はなかった。
 不安、否、罪悪感にも似た感情が顔に出ていた。
 解雇を言い渡しに来たような雰囲気ではないが、良い知らせでないことは確実だ。
「ジース、実はな―」
「君がジース・グリンかね?」
 ライアンおやじを押し退け、貴族の男が乗り出してきた。
羽振りの良い服が全く濡れてないところから、ここに上って来た時は密閉型の高価な馬車にでも乗ってきたのだろう。
「そうですが何か?」
「君に今から飛んで貰いたい」
 一瞬男の言葉の意味が分からなかった。
「今からですか?あの雨の中を?」
「困難なのは分かっている。だが君の腕を見込んで頼んでいる」
 貴族の男の眼を見て一瞬で嘘だと分かった。
 平民を見下す眼。頼んでいる訳でも、俺の腕を見込んでいる訳でもない。
 命令しているのだ。
「そうだ。私の娘の捜索を手伝ってもらいたい」
「捜索ですか……しかし―」
「君の本職とはかけ離れているだろうが、今は非常時なのだ」
 なるほど。俺の意見は最初から聞いてないということか。


750:蒼天の夢 09 ◆ozOtJW9BFA
08/08/17 23:15:17 KXHyGMdH
 だが外を見れば幾ら命令されているとしても無茶だということが分かる。
 普段はワイバーンが発進する洞窟の大きな口からは暗くなる一方の雲空と少しずつ激しくなる雨しか見えない。
「非常時と言いましても……」
「伯爵様、ここは私が。ジース、来い」
 食い下がる俺を見てライアンおやじが歩み出る。貴族の男もその方が良いと思ったのか、頷くと横に退いた。
 ライアンおやじは人の少ない角に俺を連れ出した。ミリアちゃんも一緒について来ているが咎められない辺り問題ないのだろう。
「ライアンさん、一体何が起こっているんですか?」
 何かに耐えるような表情でライアンおやじは淡々と切り出した。
「二日前にランソン伯爵様のご息女がピクニック中に行方不明になった」
「誘拐ですか?」
「いや、脅迫文等はなかった。大方迷子だろうな。ともかく最初は伯爵家の者だけで捜索していたが手がかり一つ見つからなかった
そうだ。そして迷子になってから二日経った。ご息女は確か十歳程度のはずだから体力もそろそろ限界に近いだろう。そして思いつ
いたのが空から探す、ということだ」
「でもお父さんおかしいよ。なんでジースさんが探さないといけないの?」
 ミリアちゃんがいきなり割って入る。
 ライアンおやじの眉間に皺が寄る。
「……うちの商会、いやうちの店は伯爵様に金を借りている……」
 外は曇る一方だが事の内容は今の言葉で晴れた。
 つまり借金をしているのだから捜索に手を貸せ、さもなければ、と脅されたのだ。
「事情は分かりました。やります」
「ジースさん?!何言っているんですか?ダメですよ!」
 ミリアちゃんは悲痛な声で抗議した。
 心配してくれているのは嬉しい。だが―
「もとはと言えば俺が原因です。責任はちゃんととりますよ」
 そもそも借金をしているのは多分にして俺がレースで勝てないからだろう。なら今回の役目は色んな意味で俺が適切だ。
「バカモン!何を勝手に決め付けている?借金はとある投資に失敗したからだ!間違ってもお前のせいではない!」
 ライアンおやじは怒鳴り、俺の肩を掴みながら続けた。
「いいか、一勝もしないうちにいなくなったら承知しないからな!地を這ってでも戻ってこい!」
 手を離すとライアンおやじは大股で伯爵のところまで戻っていった。


751:蒼天の夢 09 ◆ozOtJW9BFA
08/08/17 23:15:51 KXHyGMdH
 悪天候の中飛ぶのは不安だが、今のライアンおやじの言葉で断然やる気が出た。
 それに事実として迷子の子供がいるのだ。放っておく訳にもいかない。
「ミリアちゃん、準備手伝ってくれ」
「でも……」
「頼む。グズグズしていると飛び立つ前から嵐になってしまう」
「わ、分かりました」
 俺とミリアちゃんが急いで準備をする最中、伯爵は他のスキッダーの助けを応募していた。
 成功すれば大変な名誉だの、多額な報酬を用意するだの演説して必死に注意を引こうとしている。
 もちろん他のスキッダーたちはそう簡単に了承しない。俺たちみたいにスポンサーまで押えられている訳でもないし、多大なリスクを負ってまで行くことはない。
 同時に冷静になって考えてみれば伯爵も貴族とは言え、子の親。他人の弱みにつけ込むのは感心しないが心配だということは分かる。
 鞍をアズールに載せ、スキッダー用の革鎧に着替えると具体的に何をすればいいのか伯爵に指示を仰いだ。
「グレイ・クリフから北西に少し行った辺りを飛んでほしい。巨人の積み石付近一帯だ」
 結局他のスキッダーの助力を得られなかったようで、伯爵の声から疲労が伺えた。
「地上では我が家の者が捜索を続けている。君は上空から目を光らせ、見つけたら即座に近くの捜索隊に連絡してくれたまえ」
「分かった。必ずや貴殿のご息女を連れ帰ってこよう」
 俺の代わりに答えたのは女の声だった。
 驚いて振り返るといつの間に着替えたのか、あの真紅の革鎧をまとったティオーナが立っていた。
「ティオーナ様?!」
 一番驚いたのはどうやら伯爵の方で口をぱくぱくとさせている。
「ジース、時間が惜しい。行くぞ」
 さも当たり前のように出発しようとするティオーナを伯爵が引き止める。
「なりません!貴方様のような方を行かせる訳にはいきません!」
 偉そうな伯爵が急に謙虚になる辺り公爵家の名は流石である。
「我々の同胞は我々で助ける。特にランソン殿のご息女ともなれば王国の明日を担う者。放ってはおけない」
「しかし……ティオーナ様にもしものことがあったら……」
「案ずるな。雨の中で飛んだことは以前にもある。それに平民のスキッダー一人では心許ないだろう」
 恐らく頭の中で自らの面子や立場と愛娘の命を天秤にかけたのだろう。


752:蒼天の夢 09 ◆ozOtJW9BFA
08/08/17 23:16:30 KXHyGMdH
 しばし思案した後、伯爵は頭を下げた。
「どうか娘をお願いします」
「うむ。任せるがよい」
 俺とティオーナはそのまま騎乗し、ワイバーンを出口へと向かわせた。
 途中、先ほど話し合った同僚たちに見送られた。
「また飛行停止になるなんてごめんだからな。戻ってこいよ」
「やばいと思ったら遠慮なく着陸しなさい」
「ジース、死んだら俺が墓石買ってやるからな」
 唯一アザラスだけは笑えないことを言っていた。
「意地でも死なねぇよ」
「ジースさん……」
 最後にミリアちゃんが涙を孕んだ眼で俺の名を呼んだ。
「いってくる」
 短くそう言うと、ミリアちゃんは頑張って笑顔を作り、送り出してくれた。
「……いってらっしゃい」
 洞窟の外に突き出た高台に出るなり、激しくなる一方の雨に打たれながらも二頭のワイバーンは翼を広げ、準備運動をはじめる。
 飛んでいる間は手信号でしか会話できないのでティオーナに何か言うのであれば今だった。
「ジース、おまえの方がここの地理には詳しい。先行しろ」
 ティオーナは兜の紐を締めながら言った。相変わらずワイバーンに乗った彼女はさながら神話の戦乙女だ。
「了解です。それと―」
「なんだ?」
「協力ありがとうございます」
「愚か者。お前のような半人前に任せておいては助かる命も助からん。せいぜい墜ちないよう頑張るんだな」
「は、はい」
 パーティーでは少し親密になれたかと思ったが、俺に向けられた言葉は元の高圧的なものに戻っていた。
 やっぱり案外普通の女の子だという認識は俺の勘違いなのだろうか。
 だが今はそんなことを気にしている場合ではない。行方不明の女の子を見つけるのに集中しなければ。
 準備ができたのか、アズールは二、三回大きく翼を羽ばたき、両足に力が込められるのを感じる。
「ではいきます!」
「うむ」
 俺は相棒のわき腹を蹴り、飛び立たせた。
 暗雲は渦巻き、雨粒は矢の如き降り注ぐ。風は満ち、遠くで雷鳴が轟く。
 不思議と最初にあった不安は消え、高揚感が俺にも浮力を与えていた。


753:蒼天の夢 09 ◆ozOtJW9BFA
08/08/17 23:17:23 KXHyGMdH
以上投下終了です。
では今夜はこれにて失礼します。

754:名無しさん@ピンキー
08/08/18 00:24:01 IzCYr2iM
連日乙
まだ保管庫読みきってねぇ…

755:名無しさん@ピンキー
08/08/18 00:37:00 r5zQZiwQ
連作投下おつ。
ティオーナはこの作品の良心になるか?
他2人のヒロインの思考回路がぶっ飛んでるだけに…

756:名無しさん@ピンキー
08/08/18 00:40:43 eNgcl3Cy
連日だと・・
まだ八話にさえgj送っていないのにー。
まとめてで悪いけどgjですっ

757:名無しさん@ピンキー
08/08/18 00:52:20 7f5wnKxB
普通にファンタジー小説としてよく出来てる。嫉妬とか関係なく読んでしまった。当たり前のようにGJ

758:名無しさん@ピンキー
08/08/18 09:13:48 kF20lefd
gj!
これで他の神たちも帰ってきますように

759:名無しさん@ピンキー
08/08/18 11:01:14 IBBt76t8
おおぅ、早くも続きが気になるぜ

760:名無しさん@ピンキー
08/08/18 14:07:32 /v0CF5r9
GJ、重ねてGJ
しとどに枕を濡らして待ってたぜ

761:名無しさん@ピンキー
08/08/18 16:50:48 UGqKXwbG
なんか中学校の英語の教科書をそのまま訳したような文だな
どこか文法臭くて、一本調子で現象面だけが並べられてるかとこなんかが
いや、解りやすい文章だって意味だが

762:名無しさん@ピンキー
08/08/18 17:02:39 IzCYr2iM
じゃあ何でそんなことお前は言うんだ?
端から見たらお前の最後の説明なければ貶してるようにしか見えん

763:名無しさん@ピンキー
08/08/18 17:19:50 /v0CF5r9
>>765
>>1を読め。読んだらPCを閉じろ。それが幸せへの第一歩だ。

764:名無しさん@ピンキー
08/08/18 19:13:38 wEssBDvM
タレントに普通の恋人が出来たら大変だろうなぁ

ドラマとかで誰かの恋人役とかキスシーンあったりするんだもん

765:名無しさん@ピンキー
08/08/18 20:04:16 UGqKXwbG
そうムキにならないでよ
蒼天さんまで来なくなったら、君達が待ってる星空の再開が遠のいちゃうだろ
星空の新シリーズ開始まで、なんとかスレを維持しとかなきゃね

それにウナを叩くのなら、暗に「スレちだけど、繋ぎとして許したらぁ」って蒼天さんを揶揄してる>>761も攻撃しなくっちゃ

766:名無しさん@ピンキー
08/08/18 20:10:47 Aj/iZF6I
そんなことよりお姉さん系の彼女ほしい

767:名無しさん@ピンキー
08/08/18 20:56:03 KWeDvmyN
バカやろう!妹系だろう!!
や、お姉さん系も大好きですけど

768:名無しさん@ピンキー
08/08/18 21:17:01 emnUxwka
つまり姉妹で修羅場というわけですね分かります

769:名無しさん@ピンキー
08/08/18 21:17:09 IzCYr2iM
そうだよな。スレ汚してごめん。星空も待っているが、色々な人のものがやっぱりみたいな。新参だとうと何だろうと

770:名無しさん@ピンキー
08/08/18 21:17:45 fmcZFME2
やはり、嫉妬しているツンデレこそが可愛いわ


771:名無しさん@ピンキー
08/08/18 21:22:37 ehA30Cdh
ツンデレはツンツンしながら、あんたなんか好きじゃないわよと嫉妬するのが一番萌えますね
作者たちを頼むから、ツンデレの嫉妬を書いてくれ

772:名無しさん@ピンキー
08/08/18 21:23:56 ehA30Cdh
そういえば、蒼天の夢は読んでいないのでまとめサイトで立ち読みしてくるか
まあ、まとめサイトに行けば、監禁されるんだろうな

773:名無しさん@ピンキー
08/08/19 00:32:30 Im+qsoh8
>>776
監禁はいいよ

774:名無しさん@ピンキー
08/08/19 01:48:50 7ylqFzSv
亀ですがGJ!
親父さんに強制されるのかと思ったら親父さん良い人で良かったよ
平民と貴族の恋愛ってやっぱり親が邪魔したりするんだろうな

775:名無しさん@ピンキー
08/08/19 09:37:24 N7DSVarT
ツンデレ幼なじみこそ至高

776:名無しさん@ピンキー
08/08/19 10:35:54 oiejzacd
つまるところ、みんな本心では蒼天イラネでFA

777:名無しさん@ピンキー
08/08/19 11:39:29 Isjf0J4x
>>780
お前が一番イラネ

778:名無しさん@ピンキー
08/08/19 12:38:35 cS5L+mUb
>>780
どこが『つまるところ』なのか言ってみろやボケが

そんな風に荒らしに反応してた時期が俺にもありました……

779:名無しさん@ピンキー
08/08/19 13:25:03 N7DSVarT
幼馴染は黒髪が一番馴染む

780:名無しさん@ピンキー
08/08/19 13:46:48 J6jWDJdV
幼馴染が一番嫉妬深いというが、女の力の源は嫉妬と

うみねこの登場人物が言っていた

781:名無しさん@ピンキー
08/08/19 14:29:47 oiejzacd
>>782
荒らすなんて…いや、ごめん

>>747
内容薄くて全く覚えてね~や

とか

>>761
嫉妬とか関係ないじゃん

やら

>>762
これに釣られて他の書き手が帰って来たらいいのになぁ

みたいなレスがちょっと気になったから
ウナってオブラートで包むのとか、割と苦手でしょ
みんな、相手を傷つけないように諫言するのが旨いなぁって感心したの
される側の人も早く気付いてくれるといいんだけれど
書き手って、自分の作品以外のことには鈍感だから

782:名無しさん@ピンキー
08/08/19 14:36:33 XriHPslQ
そんな事より
ここの保管庫以外で修羅場なSSってないかねぇ
保管庫のは大概読みつくしたけどまだ足りないんだ・・・

783:名無しさん@ピンキー
08/08/19 14:37:23 BUz+zR3c
>>784
キリエが嫉妬深いのは戦人の母親に寝取られて、妊娠してから
ずっと、18年間嫉妬していた

自分も子供を妊娠したけど、流産してしまったおかげで嫉妬している力は
家具を遥かに上回りましたよ



784:名無しさん@ピンキー
08/08/19 14:38:38 GzytRv7b
うみねこはスレ違いだろうに

785:名無しさん@ピンキー
08/08/19 14:42:01 PG4Ou807
甘いな、嫉妬する女の子こそが俺たちの生きる力なんだよ

786:名無しさん@ピンキー
08/08/19 14:47:26 oiejzacd
うふふっ
いつものように単発が湧いてきましたね
本当にこれだけの数の住民が居てくれればねぇ

787:名無しさん@ピンキー
08/08/19 15:19:58 s6idzXwe
>>790
お前みたいなのがいるからこのスレ寂れたんだね^^

788:名無しさん@ピンキー
08/08/19 16:01:20 XriHPslQ
>>791
さ わ る な 危 険

789:名無しさん@ピンキー
08/08/19 16:56:00 LRU34ITW
未だにトライデント氏の作品の投稿を待っているのは俺だけなのか?

790:名無しさん@ピンキー
08/08/19 16:56:40 LRU34ITW
まあ、一番読みたいのは冬の星空と両手の華と後、なんだったけ?

791:名無しさん@ピンキー
08/08/19 17:46:17 oiejzacd
ともかく会話を成立せようと必死杉
誰かが乗っかってくれたら、そのIDのままレス返せるのにな

792:名無しさん@ピンキー
08/08/19 17:56:17 N7DSVarT
>>795
何かわからんけどお前かわいいな

793:名無しさん@ピンキー
08/08/19 18:48:31 cRoj5fuY
またこの流れかyo

794:名無しさん@ピンキー
08/08/19 18:57:34 /ocX2qAd
嫉妬なら良いんじゃね?
うみねこよくわかんね

795:緑猫 ◆gPbPvQ478E
08/08/19 20:29:16 kFlfbdPq
投下します

796:怪物妹奉公記 ◆gPbPvQ478E
08/08/19 20:31:12 kFlfbdPq
 
「まったく、姉さんってば……」
 
 帝都もすっかり冬の空気に包まれて久しい頃。
 セツノ・ヒトヒラはいつものように姉への愚痴をこぼしていた。
 場所は帝都南部に位置する大きな広場。噴水の縁に腰掛けながら、黒髪を冬風にそよがせている。
 中央では珍しい黒髪に加え、幼さを残しながらも美しさを兼ね始めた容貌は、通る者の視線を惹き付けてやまなかったりする。
 とはいえ流石に平日の昼下がりということもあってか、いかにも「人を待っています」風の美少女に声をかけようとする男は皆無だった。
 よってセツノは姉への愚痴をこぼし続けるのみ。これだけで一日潰せそうな気がするあたりお得かもしれない。
 なお、どうでもいいことだが。
 最近の姉への愚痴は、大きく分けて3種類に分類できる。
 
(1)暴走(性的な意味で)による被害に対して。
(2)暴走(変な思い違い)による修正の苦労に対して。
(3)暴走(白への間違った教示)による悪影響に対して。
 
 要は姉が暴走しているのが全ての要因なのだが、それに関しては既にセツノは諦めきっている。
 今は姉の暴走を如何に効率的に止めるかで、日々の安寧を保てるかどうかが決まってきている。
 ちなみに今回は(3)。こめかみに爪先を叩き込んで撃沈させたので酷いことにはならなかったのが救いである。武力行使万歳。
 まあそれはそれとして。
 内容は違えど、姉への愚痴はセツノにとっては日常茶飯事である。これはイナヴァ村にいた頃から変わっていない。
 故に、昔から彼女を知る者が見れば―
 
 
「変わりないみたいね、セツノ」
 
 
 ―と、声をかけるのは至極当然のことだろう。
 だが、直前まで気配を完璧に断たれた状態で声をかけられれば、それはもう、驚くしかないわけで。
 
「ッ!?」
 
 思わず臨戦態勢に入ったセツノは、腰掛ける石縁の隙間に隠した鉄針を取り出そうとした。
 が。
 
「こら、相手を見る前に武器を出すんじゃありません」
 ぺちこん、と額を弾かれた。
「わきゃ!?」と可愛い悲鳴を上げて涙目になったセツノの前には。
 
 メイドさんが立っていた。
 
「…………っっっ!!!?」
「とはいえ、反応速度はなかなかでした。純粋な速さは既に村一番に達していると聞きましたが、頷けますね」
「……ッ! ……ッ!!!」
「流石はあのユメカの妹といったところでしょうか―? どうしたのですか、先ほどから」
 小首をかしげるメイドさん。
 それを見て、セツノはついに決壊した。
 
「あ、あはははははははははははは!!!
 おばさんが若作りしすぎてるーーーーーーーーっ!
 ちょ、何やってるんですかヤクチさ」
 
 ま、と言う前に鉄拳が飛んできた。
 あわてて防御。しかしその上から叩き潰される。
 
 どでかい水飛沫が上がっていた。
 
 

797:怪物妹奉公記 ◆gPbPvQ478E
08/08/19 20:32:01 kFlfbdPq
 
「……どうやらしばらく会わないうちに、姉に感化されてしまったようですね。
 ここはひとつ、このヤクチ(19)が再教育を施してあげましょうかホホホ」
「す、すみませんでした。笑いすぎて申し訳……ぷっ……あり、くく、ません。
 せ、セツノ(7)は心より反省しています……ッ!」
「……その意味不明な数字は何でしょうか? ちなみに私は19歳です」
「あ、いえ何でもないですゴメンナサイ。ちなみに私は14歳です」
 
 もう一度鉄拳が叩き込まれた。
 今度のは直撃していたら死んでいた気がするセツノだった。
 
 まあそれはそれとして。
 ―潜入調査担当の元締めにして、イナヴァ村でも屈指の戦闘能力を誇る指導教官。
 それがセツノを殴り倒した女性―ヤクチの肩書きである。
 潜入調査を得意とするだけあって、変装の類は一級品なのだが、
 
「流石に若作りしすぎじゃないですが? や、外見は完璧ですけど、中身を知っている身としては」
「何を言っているのかわかりかねます。今の私は某商人に仕える年若きメイドです。根も葉もないことを言わぬように」
「……ただのメイドがあんな鉄拳を叩き込まないでくださいよ。見られたらどうするんですか」
「心配なく。この区画内に密告者の類が存在しないことは確認済みです。監視の者も置いてあります。それに、市井の者が見てもわからぬように撃ちましたし」
「な、なんか変な技の実験台にされてる……!?」
「誤解です。それはそうと、本題に入りたいのですが」
 
 ヤクチの表情が真剣なものへと変わった。
 セツノも頭を仕事用に切り換える。……顔は極力見ないようにしながらだが。
 
「ひとつ、大きなところからの依頼が入りました。それを貴女に頼みたいのです」
「え? 大きなって……私みたいな若造に任せちゃまずいのでは……?」
「要求される水準が特殊なのです。内容そのものは単純な人物調査なのですが」
「……特殊というと?」
「まず、対象者が特別な役職とのことなので、隠密技能に優れていること。
 次に、対象には他の諜報員が付いている可能性が高いとのことなので、単独活動に優れていること。
 そして……これは意味不明なのですが一番重要とのことでした。……適齢期の女性ではないこと」
「……はあ」
 
 一つ目の条件は、まあよくあることなので問題ない。
 しかし二つ目は……正直、避けたい類のものだ。この条件が付くということは、相手側にばれたら自分の責任でどうにかしろ、ということだ。
 つまり、気取られても村のバックアップは一切なし。独力で何とかしなければならなくなる。
 ちなみに村のことがばれたら死ぬより辛い目に遭うこと間違いなし。
 とはいえ、イナヴァ村での仕事では、ここまではよくある条件である。これだけだったら今までセツノやそれより年下の若者も受けてきている。
 しかし、最後のはどういう意味か。
 
 

798:怪物妹奉公記 ◆gPbPvQ478E
08/08/19 20:32:53 kFlfbdPq
 
「適齢期、というところで人選は難航しました。
 若すぎては技能が未熟となってしまいますし、かといって年老いすぎてはしがらみも多く使い捨てられない。
 私も今まさに適齢期ですので残念ながら出られ……何ですかその顔は!
 男性を使うことも考えたのですが、依頼主の紹介者が、できるだけ避けてほしいと言ってきましたし。
 そこで、ギリギリの年齢である貴女が選ばれたというわけです」
 
 確かに、セツノは隠密調査と単独戦闘に優れている。この条件を満たせる女諜報員は彼女だけだろう。
 
「……わかりました。お給料は弾んでくださいね」
「引き受けていただけて何よりです。
 ……しかしセツノ、貴女が報酬について言うのを初めて聞きました。
 何か欲しいものでもあるのですか?」
「え? あー、いえ、欲しいものというかプレゼントしたいものというか。
 とりあえず適齢期(38)にはわからないことなのでお気になさらず」
「殴りますね」
 
 
 
 
 
 ……まあ、嫌な予感はしていたのだ。
 とはいっても、一度引き受けてしまった手前、もうどうしようもなく。
 覚悟を決めてから、セツノは扉をノックした。
 
「入りなさい」
 
 かけられた声に、不自然な響きはない。
 セツノは深呼吸をして、ゆっくり扉を開けた。
 
 
 親衛隊隊舎。
 帝国内でも選りすぐりの猛者達が住まう宿舎。
 その一室に、足を踏み入れた。
 他の部屋より格式は下がるとのことだが、それでも通常の兵士とは比較にならない広さである。
 諜報員としての経験を数年積んだセツノではあるが、このような部屋に入るのは初めてだ。
 
(……うわ、あの壷とか幾らするのか考えたくないなあ……。
 准隊士でさえこれなんだから、正式な隊員とか隊長とかってどうなってるのかな?)
 
 依頼主を不快にさせないよう、あくまで首や顔を動かさず、さりげない視線の動きだけで観察するセツノ。
 しかし。
 
 

799:怪物妹奉公記 ◆gPbPvQ478E
08/08/19 20:33:47 kFlfbdPq
 
「―どうしました? 近衛隊の部屋がそんなに珍しいのですか?」
 
 うげ、と呻きそうになるのを必死に堪えた。
 部屋の主は、奥のソファに腰を沈めていた。
 セツノとの距離は5足ほど。これだけ離れていながらも、挙動を敏感に察知するとは。
 
(姉さんクラスの化け物、か。うわー絶対戦いたくない)
 
 戦慄を必死に飲み込みながら、セツノは努めて落ち着いた声で挨拶をする。
 
「―初めまして。依頼を受けて派遣されました」
「ああ。遠いところからご苦労でした。紅茶を淹れましょうか?」
「恐れ入ります。しかし、私にそのようなお気遣いは無用です」
「そうですか。ならば早速仕事を頼みたいのですが。……と、こんな感じでいいのでしょうか?」
「……はい、符丁に問題はありません。しかし―」
「すみませんね。私、こういったことは苦手でして。
 上手な方でしたら日常会話の中で出来てしまうらしいのですが」
「いえ、実は私もこの格式張ったやりとりは苦手でして」
 
 言いながら、ぺろりと舌を出した。
 自分も貴女と同じですよ、と可愛さを含めながらアピールしたのだ。
 が、その内心は冷や汗ダラダラだったりする。
 
 何故なら。
 
「私の名前を聞いているとは思いますが、念のため。
 私は、アマツ・コミナト。
 この近衛隊にて准隊士を務めさせていただいております。
 わかっているとは思いますが、此度のことは内密にお願いします。
 もし貴女が裏切るようであれば、たとえ“村”が相手でも―」
 
(怖ッ! ちょ、殺気怖いんだけどっ!?
 というか意味ありげに剣に手を添えないで!
 こいつの家系を敵に回したらイナヴァ村も危ういんだから、裏切るわけないのにー!
 うう、さっき用を足しておいてよかった……。
 ……でもまあ、この様子なら、気付いてない、よね?)
 
 


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch