嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 講和(50)条約at EROPARO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 講和(50)条約 - 暇つぶし2ch500:名無しさん@ピンキー
08/07/27 19:33:20 epWK2em4
ありがたい

501:名無しさん@ピンキー
08/07/27 19:41:11 qYLJT4Mk
まだ一人いるみたいだな

502:名無しさん@ピンキー
08/07/27 21:08:26 QURPaTLg
あれ、なんで誰もいないの?…名無し君、私を捨てて他のスレに行っちゃったの…?

…許さない、絶対に許さない…。あのエロパロ板の泥棒猫ども…殺してやる…切り刻んでやる…ぶっ殺してやる!!!!



503:名無しさん@ピンキー
08/07/27 21:36:16 ypHRg5cc
スレ住人のお約束を守れない奴はスレ住人に非ず

504:名無しさん@ピンキー
08/07/27 22:03:26 j2urKkjq
>>502
ツンデレキャラって、嫉妬するツンの部分が激しいが
その後に待っているのは依存デレだぞ

ルイズやシャナやナギで驚異的なファンを作ったツンデレ経済効果は
多くの人がくぎゅファンになってしまった

恐るべしツンデレ

てか、↑3人全員嫉妬キャラじゃんwwwww

505:名無しさん@ピンキー
08/07/28 02:03:20 4xoO5Vmx
エロパロ板≠公共の場。これ常識。

506:名無しさん@ピンキー
08/07/28 07:19:08 wk3MHdfm
どうでもいいけど
よく恥ずかしげも無くきもいうんこ妄想人目に曝せるな・・・
なにがしたいのかよくわからんが

507:名無しさん@ピンキー
08/07/28 10:12:06 G25GqlXv
>>510
そんなこと言うなよ ドキドキしちゃうじゃないか

508:名無しさん@ピンキー
08/07/28 10:31:10 iFGuMgyI
>>508
ルイズの嫉妬は凄いからな
記憶喪失になった巻なんて、ルイズのツンデレぶりを全て暴露されて

皆からヤバいとさえ言われていたw

509:名無しさん@ピンキー
08/07/28 10:45:12 4MSWqlwt
ツンデレの話題よりもツンデレ依存系型について語ろう
ツンデレ依存系というのは最初はツンツンしているんだけど、付き合ってからデレる

更にデレて、大好きな彼にどんどんと依存してしまう。ウザイくらいに依存するので
だんだんと主人公の生活圏を脅かされてしまう。何故か勝手に合鍵を作られ、
携帯の友人メモリーは消され、常に監視される生活

他の女の子と喋っただけでツンツンとキレしてまう彼女


このキャラをどうやって修羅場SSで書くのか
それは難しい話だよな

510:名無しさん@ピンキー
08/07/28 11:07:37 q0hrQ/aZ
何かヤンデレとツンデレを足して2で割ったような感じだな

511:名無しさん@ピンキー
08/07/28 11:45:58 Yy/k9mIn
思い込み・勘違いタイプが書きやすいんじゃないだろうか
それを解消させればハッピーエンドにできる

512:名無しさん@ピンキー
08/07/28 15:19:37 3D7vqp49
ツンデレ嫉妬娘をボロクソにフったらどうなるんですか?

513:名無しさん@ピンキー
08/07/28 15:56:54 FsRwjxiH
烏有に帰します

514:名無しさん@ピンキー
08/07/28 21:48:35 UFFOlBnk
秋の星空の続編マダー?

515:名無しさん@ピンキー
08/07/28 22:15:08 h/YYWmBW
それにしても、嫉妬スレの住人はあれだな
女が嫉妬するのはいいんだけど、NTR展開があると火病を起こすのは良くない

主人公がずっと仲の良かった幼馴染を親友(女グセの悪い)に寝取られた場合
落ち込んで主人公は毎晩泣いて過ごす。幼馴染を忘れると決意して、新たな道を歩き出す

前向きに人生を歩いた結果、主人公には同じアルバイト先で彼女を作り、それなりに満足な
生活を送っていた。すでに仲の良かった幼馴染のことは頭の片隅にもなかった。

 ところが、幸せ絶頂であった幼馴染は女グセの悪い親友にDVされまくっていた。
 親友に騙されて、チンピラグループに輪姦されたりと酷い目に遭っていた。
 今日も親友とチンピラグループのためにお金を稼ぐために出かける。

 その時に、幼馴染は偶然見かけるのであった。
 主人公と彼女が仲良く手を握って幸せにようにしている光景を。
 それを見た瞬間、幼馴染は自分の不幸と彼の幸せの落差に愕然とする。
 主人公の傍にいた時は幸せであった。なのに今は。
 ああ、ちょっと顔がイケてて、話がちょっと上手いだけで親友の告白を受けたことに激しく後悔する

 そして、ある事を思いつく。
 壊してやろう、主人公の幸せを。
 主人公が私に告白してくれたら、自分の不幸なかったはずだったんだ。私は幸せでいられはずだ。
 幼馴染は主人公と彼女の仲を切り裂いてやろう。修復できないように
 ならば、主人公と偶然に再会できるように演出して、近づいてやろう。
 彼女よりも、私の方が好きなはずだから

 ↓
 幼馴染、魔王化


 構成的には

 主人公  見た目、地味

 幼馴染  ビッチ女
 
 彼女   天然、主人公の浮気がわかると→黒化

 による修羅場が読みたいですね

516:名無しさん@ピンキー
08/07/28 23:27:28 18kWC+Hj
519
それYOUが書いちゃいなYO!

517:名無しさん@ピンキー
08/07/29 01:41:10 r0NePYSZ
>>519
あえて言うなら、修羅場は幼馴染と彼女の一騎打ちが楽しみさ

518:名無しさん@ピンキー
08/07/29 01:58:11 Wtdlg90V
>>519
さあ、完成させる作業に(ry

519:名無しさん@ピンキー
08/07/29 02:02:10 ovt9GBhk
>>519
ただのビッチだと荒れるから、スッキリ爽やかな人気者のビッチになりますよーに

520:名無しさん@ピンキー
08/07/29 02:08:09 YkkUsnhk
ビッチだと言えば、西園寺世界

>>519
のビッチ女は頭がスイーツだからな
ちょっと格好いいイケメンと付き合って、DVされたからって
幼馴染の主人公が幸せ状態だから壊すってのはスレが荒れるなw

誰か書いてくれないかな


521:名無しさん@ピンキー
08/07/29 03:34:30 DJVg2fh3
火病るもなにも、スレの趣旨から外れてるがな……

522:名無しさん@ピンキー
08/07/29 04:15:23 BVN10T3T
大抵、空気を読まない奴がNTRの話題を出すから荒れるんだろ…

523:名無しさん@ピンキー
08/07/29 05:33:51 /sae8Lft
NTRとかどう考えても荒らしだろ・・・


524:名無しさん@ピンキー
08/07/29 10:11:08 5C/FyoI7
NTR展開を入れているみたいだが、ヒロインはビッチ女だから
修羅場さえあればいいや



525:名無しさん@ピンキー
08/07/29 10:57:43 vty2bG5e
それにしても、主人公って恋のライバルにイケメン金持ち男が必ず出てくるんだけど
あれって、かなりユーザーにとって嫌がらせに等しいよな

526:名無しさん@ピンキー
08/07/29 11:00:20 6MXFCzzz
NTRメインはNTRスレでやれといいたくなるが
>>519みたいに修羅場メインなら大歓迎だ

何がいいたいかというと。
さぁ、完成させる作業に戻るんだ

527:名無しさん@ピンキー
08/07/29 11:07:12 GfaSw9Cg
ただいくらなんでも「輪姦される」って設定はNTRに偏重しすぎじゃね
しかもその発想のまま、主人公の彼女もレイプ的な被害に合わせるとかだったらNTRスレでやったらいいと思うの
「NTR要素のある修羅場」から「修羅場要素のあるNTR」にならないようにしないとスレ違いだぜ

528:名無しさん@ピンキー
08/07/29 11:19:11 vty2bG5e
>>531
どうも>>519は幼馴染を使い捨てているからどうでも良くないか
まあ、作品が投下されるわけないんだから
熱くならないように

529:名無しさん@ピンキー
08/07/29 15:04:48 Ahg2fWK1
お前らリボンの騎士はどうなの?

530:名無しさん@ピンキー
08/07/29 16:17:42 2otQM63o
>>530に同意、注意書き付けて嫌ならスルーで問題なし

531:名無しさん@ピンキー
08/07/29 16:27:36 qCoDhpqD
ただこのスレには嫌ならスルー出来ない奴が多くてだな・・

532:名無しさん@ピンキー
08/07/29 22:53:44 ixF2qMPc
ビッチものだとまとめサイトにある「ひとりワルツ」が良かったな。
すぐに包丁を出すのではなくて罵りあいのような修羅場が好みだ。

533:名無しさん@ピンキー
08/07/30 00:14:01 NfqxQHzQ
なんかまとめで
主人公を自分のものにするためあえて寝取られるヒロインのSSがあったんだが
なんてタイトルだったけ?

534:名無しさん@ピンキー
08/07/30 06:45:00 eeDCp5jh
まとめサイトのSSずいぶん前に全部読んだから結構忘れてるなあ
ちょっと読み返してくる

535:名無しさん@ピンキー
08/07/30 09:49:15 2XZJJgjh
そうだな、まずNTRの定義がおかしいと思うぞ
ここでのNTRはレイプかビッチなだけ
NTRって、性行為などで相手の心を奪われることじゃなかった?


536:名無しさん@ピンキー
08/07/30 11:01:30 v57Dsgaz
引っ張るねえ、君も
ポッキー食べる?

537:名無しさん@ピンキー
08/07/30 14:59:01 GHzmbEtR
>>540
それは俺が貰おうか。三本くれ

538:名無しさん@ピンキー
08/07/30 15:58:32 bcLPerHb
ポッキーを両端から食べ合うんですねわかります

539:名無しさん@ピンキー
08/07/30 17:00:06 zatnFwYz
『くらえ!はぁぁぁ、ペガサス!!流星・・・?!・・・???・・・・キック・・・』

540:名無しさん@ピンキー
08/07/30 20:29:15 r0AnDkZw
>>541
一本では弱いポッキーも、三本集まれば……ということですね。わかr

541:名無しさん@ピンキー
08/07/30 21:37:08 bcLPerHb
>>544
いや3人の女と食い合うんだろw
そして後で詰め寄られるんですね

542:名無しさん@ピンキー
08/08/01 08:16:41 JpzgPh0o
なんて修羅場

543:名無しさん@ピンキー
08/08/01 13:26:53 q0jRJDLt

待て!俺のポッキーも貸すぜ!

544:名無しさん@ピンキー
08/08/01 20:57:23 Kr9OliBq
後輩の幼なじみが後輩の別れた相手に花束を送ったらしいんだけど、どういう意味なのだろうか?

545:名無しさん@ピンキー
08/08/01 21:06:38 oQLBOyx8
花言葉でわかるだろw

546:名無しさん@ピンキー
08/08/01 22:07:51 Kr9OliBq
聞いてきた
二種類あって一つは紫と白の二色でもう一種類は紫色の花、花の種類は多いし見分けがつかないから正しくないかもしれないけど二色の方は多分紫陽花の花
一色の方はりアスターっていう花が一番近いらしい
紫陽花の花言葉は、無情、移り気、あなたは冷たいとか一家団欒、家族との結びつき、強い愛情など
アスターの花言葉は携帯から探すの難しくて同感と信頼の二つしかわかんなかった
花言葉は色によっても違うらしいから上が当てはまるとは限らないみたい

547:名無しさん@ピンキー
08/08/01 23:32:44 +EdZzi2c
うんうんスレ違いだね

548:名無しさん@ピンキー
08/08/01 23:35:45 kCTP1Z/6
何で女性にバラをプレゼントするの?
菊の花でいいじゃんw

549:名無しさん@ピンキー
08/08/01 23:46:56 iHi5vhn6
菊と聞いて尻穴を思い出すのはエロゲ脳かなぁ・・・

550:名無しさん@ピンキー
08/08/02 01:21:47 jgmY8e7h
紫のアスターの花言葉は『恋の勝利』『私の愛はあなたの愛よりも深い』
他にも花言葉をちょっと探したら、四つ葉のクローバーの花言葉は『幸運』の他にも『私のものになって』というのがあった

551:名無しさん@ピンキー
08/08/02 20:43:59 xxpnWbfC
ファンタジーものなんか需要がないことくらい、スレの流れを見てりゃ分かりそうなもんだが
あちらでやってくれるんなら誰にも迷惑かからないから、何も言うつもりはないけどさ
つか、キャラとかの設定決めるのも書き手の楽しみの一つなのにな
独自の世界を作る自信がないのなら書くの止めた方がいいし
ひょっとして形を変えた誘い受けとしてのキャンペーンなのかな
いずれにしてもつまらなそう
どうしても書くってのなら王子はティークにでもしとけば

552:名無しさん@ピンキー
08/08/02 20:55:46 Q8dy3xoq
世界観の説明に相当の量を割かんとならんからな。
長々とスレに投下されてもアレだし。

553:名無しさん@ピンキー
08/08/02 20:59:33 PMhVCMdn
俺は好きだけどな、蒼天の夢とか・・・・続きマダー?

554:名無しさん@ピンキー
08/08/02 21:02:11 wfnp2xBQ
一年ぐらい前にタイトルを応募で決めたRPGがあったのを思い出した。

555:名無しさん@ピンキー
08/08/02 21:11:42 jgmY8e7h
俺はぶらまりとか九十九神とか白き牙とか好きだけど

556:名無しさん@ピンキー
08/08/02 21:23:55 swnJUaxT
ちゃんと修羅場になってれば
ファンタジーでも何でもいいと思うけど

557:名無しさん@ピンキー
08/08/03 00:05:52 rh0fj3pH
雨の音、わたあな、転帰予報、ノントロまだぁ嗚呼ああああああああああああああああああああああああ

558:名無しさん@ピンキー
08/08/03 00:12:51 NCV3+MxD
わたあなブログで完結してなかったか

559:名無しさん@ピンキー
08/08/03 00:50:44 L96eiaOe
>>562
ブログどこ?

560:名無しさん@ピンキー
08/08/03 01:05:40 yL2O0R4b
わたあなでググレ

561:名無しさん@ピンキー
08/08/03 01:11:53 L96eiaOe
というか、阿修羅様の関連スレの作者紹介が何か少し追加されていたので
ある意味、感動したぜ



562:名無しさん@ピンキー
08/08/03 01:14:27 L96eiaOe
ちょっと、日本語がおかしいな

阿修羅様が管理しているまとめの関連スレの作者紹介が少し追加されている

でいいのか

この時間だと眠たいんで
さすがにおかしくなる

563:名無しさん@ピンキー
08/08/03 05:29:20 bzDzK22U
誰もお前のレスなんて気にしてないから無理して書き込まなくていいよ

564:名無しさん@ピンキー
08/08/03 10:49:13 lqJatsp6
>>566
頑張れよ

565:名無しさん@ピンキー
08/08/03 23:37:09 fsuLJQf1
うんこっこw





















うんこw

566:名無しさん@ピンキー
08/08/04 00:01:41 3Eb0m+vC
修羅場にとって大切なのはヘタレな主人公だろうね

567:名無しさん@ピンキー
08/08/04 00:35:29 YyCDUZSV
>>570
誠みたいなヘタレ主人公だとヒロインが肩を露出させて誘惑するだけで
簡単に浮気して肉体関係を持つからな
でも、ヒロインが腹黒いからちゃんと弱みを握って脅迫
彼女に黙って、ヒロインとデートしまくり、不振に思った彼女が後を付けると


修羅場が完成ってわけですよ

568:名無しさん@ピンキー
08/08/04 01:21:30 qJh2AU1q
誠はヘタレというよりは、やることしか頭に無い

569:名無しさん@ピンキー
08/08/04 02:44:15 +LieL2bH
主人公が好きだった幼馴染と他の男が恋仲と誤解して
どこかに引っ越すようなパターンに萌えるのは俺だけか

幼馴染視点からすると突然、好きな主人公が消えて病むぞw

570:名無しさん@ピンキー
08/08/04 03:01:05 E8rbF8jd
>>573
心臓がキュンてした。

でも引っ越すんじゃなしに主人公が距離を置くみたいな感じの方が良いかな
まぁ人それぞれだけど

571:名無しさん@ピンキー
08/08/04 03:33:08 D1yS1jrm
>>574 まぁ手段として高校進学時に一緒の高校にしてたけど受験の前に幼なじみにばれないようにかえてて
家は近いけど学校は違うパターンとか
または大学進学時に地元の大学に一緒に行くことになってたけど
遠くで1人暮らしをはじめるとかかな

572:名無しさん@ピンキー
08/08/04 10:07:10 U4GzYCVM
>>575
その逆パターンがタユタマのアメリなんだよな

主人公が好き好きだけど、主人公が好きな自分に疑問を感じて
主人公に黙って、他の学校を受験して完璧に主人公と別れる

街中で出会ったとしても、主人公を総スルーして、お世話になったお葬式も来ない
んで、噂になると他の男と付き合っているようだ

主人公、何かも諦めて毎晩泣き寝入りする


男だとかなり病むぞw これ
なんて仕打ちだ

573:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 19:01:45 YcNQWi07
携帯からの投下。14レス使います。

574:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 19:05:29 YcNQWi07
「終わった……!」
 ボールペンを置いて思い切り伸びをすると、関節から気持ちの良い音が鳴った。
ゆっくり弛緩しながら窓から外を眺めると、今までにない程綺麗に見える朝陽が昇り始めていた。
こんなに清々しい朝を迎えるのは初めてだ。
達成感に酔いしれながら、先程まで机の上で格闘していた課題の数々を見つめる。
殆どが×だらけの赤い有り様だが、それでも自分で終わらせたものだ。
自己満足するなというのは無理な話だ。
「終わったんだぞ俺……!」
 徹夜までして、俺は提出日である四月一日の朝にようやく課題を全て片付けることが出来た。
結局課題を貰った日以降佑子さんと遊ぶという当初の計画は叶わなかったが、今日から始業式までの一週間は休日のオンパレードだ。
佑子さんのことだから仮に宿題があったとしてもとっくに終わらせているだろうし、一週間以上会っていないんだから俺が誘えば快諾してくれる筈だ。
そうだと信じたい。
「そういえば……」
 佑子さんのことを考えていたら、不意に佐藤早苗の顔が浮かんだ。
自分で一緒に宿題することを提案してきたのに、結局あの日以来音沙汰がまるでない。
どうしているのか気にはなるが、少なくとも課題を終らせてはいるだろう。
確かに俺と同じく赤点……というか0点取ってしまったのは事実だが、あいつは今までは中々に優秀ではあったからな。
テスト毎に廊下に張り出される成績優秀者の欄にも大抵は載っていたし。
別に成績がいいからと言って課題を終らせているとは限らないが。
「眠いな……」
 とりあえず今はこの壮絶な眠気をどうにかして処理しなければならない。
一日中机に向かい続けるなんて性に合わないことしてしまったせいで、椅子にもたれかかっただけで寝てしまいそうになった。
まずは朝風呂して目を醒まそう。
佑子さんについての話はそれからだ。
佐藤早苗に至ってはどうせ今日学校で会うだろうから、その時直接訊けばいい。
 立ち上がると、俺は酩酊状態の会社員のような足取りで制服片手に部屋を出た。
水を飲もうと一旦リビングに行くと、母が既にテレビを見ながらフライパンを巧みに使っていた。
時計を見ると、針は五時過ぎを指していた。

575:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 19:07:23 YcNQWi07
こんな陽がやっと昇り始めたような時間帯から既に作業している母を目の当たりにして、俺は今日学校に行く時間が早目であることを思い出した。
今日四月一日は―本来俺には関係のない日であるが―入学式の日だ。
だから先生たちもその準備に忙しく、俺のような不良生徒に構っている余裕もないから、課題の提出時間を通常の登校時間より早く指定されたのだ。
だったら始業式の時でいいじゃんとは口が裂けても言えなかった為、俺は母にこの日早く起こしてくれるよう頼んだのだった。
すっかり忘れていた。
「おはよう信悟」
「おはよ。母さん、俺風呂入ってくる」
「別に構わないけど、パンツ持ったの?」
「あ」
 母の何のことはないと言わんばかりの視線が痛かった。
やっぱり親には勝てない。
溜め息をつくと、俺は来た道を引き返して自分の部屋までの階段を上った。
 風呂から上がると、食卓では姉が食パンを咥えながらテレビの占い番組に見入っていた。
こんな早起きな上にパジャマ姿ではない姉を見るのは久しぶりで、少々驚いてしまった。
「どうしたの、姉ちゃん?」
「友達と約束あるから」
 姉は視線をテレビ画面に固定したまま応答してきた。
大学生にもなって占い番組に釘付けになっているのはどうかと思うが、熱心な様子の姉に水を差す程俺は不躾な弟ではないので、黙って自分の椅子に座った。
時間も余裕があるとは言い難いので、俺は食べることに専念させてもらうことにした。
パンを一齧りしてほとんど咀嚼しないで飲み込むと、徹夜明けで鳴りそうな位空いていた腹に食い物の有り難味が染み込んだ。
うん、ピーナッツバター塗っただけのパンってこんなにも旨いもんなんだな。
「信悟、あんたの今日の星座ランキングは七位でね、ラッキーアイテムはハンカチだってさ。わかった?」
「わかったよ」
 そんな微妙な順位言われても反応に困るだけだ。
俺は適当に返事しておいてから、朝食を平らげる作業に戻った。
「信悟っ!? あたし今日二位だって! 惜しいなぁ。ちなみにラッキーアイテムは身内の人らしいよ」
 人のことをアイテム扱いする占いなんか信じるんじゃない。
隣で目を輝かせている姉を尻目に、俺はマヨネーズを手に取った。

576:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 19:09:07 YcNQWi07
「ところで、信悟こそ何でこんな時間に起きてんの? 制服なんか着てさ」
 チューブ握る手に力が入り過ぎて、ハムエッグに大量のマヨネーズがかかってしまった。
これは高カロリーな目玉焼きが出来上がってしまったものだ。
「学校行く為以外にどんな理由があるってんだよ? 変なこと訊くんだな姉ちゃんは」
「だって、あんたが次に学校行くのって始業式の時でしょ?」
 意外と食い下がってくる姉に、頭を押さえたくなった。
マヨネーズを食いながら次の言い訳を考えていると、母親が流しの蛇口を止めた。
「沖美、悪戯が過ぎるんじゃない?」
「はーい、すいませんでした」
 母親からの注意に対応する姉の声には悪びれる様子は微塵も感じられなかった。
「ただ、我が弟が成績不振でその課題提出しに行くなんて、口にはとても言い難くて」
「知ってたのかよ。意地悪いな」
「いやさ、あたしのラッキーアイテム身内だから、あんた弄ってたら何か良いことでもありそうな気がしてね」
 満面の笑顔でそんなこと言うとは、全くとんでもない姉だ。
まぁ先日制服のズボンの染みをぬいてもらったばっかだし、今回は大目に見るとするか。
これ以上関わっても時間の無駄と割り切ると、俺は飯を一気にかきこんだ。
朝食を終えると、歯磨きをする為に洗面所へと足を運んだ。
『ピーンポーン』
 歯磨きを始めてしばらくしてから、家のチャイムが鳴った。
母が怪訝そうな表情を浮かべながら台所から玄関へと向かっていった。
こんな朝早くに呼び鈴鳴らす粋狂な奴の面を見たい気がしない訳ではなかったが、歯磨きの途中に相手を迎えるのはさすがに失礼だ。
それにどうせ近所の爺さんか婆さんが暇潰しに世間話でもしようと来ているだけだろうし、それなら近所では多少顔の利く母が行った方が良いに決まっている。
そう結論づけると、俺は眠気醒ましも兼ねた歯磨きを続行させてもらうことにした。
聞き耳を立てつつ。
「どなたかしら?」
 母親の足音が消え、聞き慣れたドアの開く音が耳に入ってきた。
「あら、あなたは……」
「おはようございます。先日お邪魔させて頂きました、今井佑子と申します」
 驚きの余り、口内の涎混じりの歯磨き粉を半分近く飲み込んでしまった。
反射的に喉を鳴らしながら洗面台に向けて残りの歯磨き粉を吐き出した。

577:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 19:10:40 YcNQWi07
咳を数回自発的に行いながら、軽い衝撃を受けて散らかってしまった頭の中を早急に整理する。
あの名前にあの声―どんなに耳が腐っていようとも聞き間違える訳がない。
「佑子さん!?」
「仲川くん、おはようございます。来ちゃいました」
 洗面所から思わず吐露してしまった意味のない心中の台詞にすら返事してくれる佑子さんの優しさが沁みる。
別に来てくれたことに関しては何も問題はない。
寧ろ嬉しいの二乗だ。
ただ、こんな早朝からわざわざ来る理由が不明瞭だ。
俺に会う為だけに来ているとはとても思えない。
何か別の事情があってのことに違いない。
勿論佑子さんにそれを訊くつもりではあるが、とりあえず今は佑子さんに失礼のない―というよりも佑子さんに幻滅されないような身なりを整えなくては。
運良く今日は既に制服を着ているし、さっき風呂にも入った。
歯磨きも中途半端ながらもやった。
それらを確認すると、俺は一瞬でうがいを済ました。
念には念をと鏡で自分の顔を凝視し、最終チェック完了。
我ながら女々しいとは思いつつも、やはり彼女の前では良い格好をしていたいのだ。
「今行きます!」
 そう言いながら洗面所を出て左手にある玄関まで足早に向かう。
視線の先には、声色通りの優しい笑みを携えた制服姿の佑子さんが毅然と立っていた。
「佑子さん、どうしたんですか?」
「今日は新一年生の入学式に出席するんですが、八時半集合でしばらく時間があるので。課題の提出日は今日だと仰っていましたよね?」
「それはそうですけど……」
「課題終わるまでは邪魔しては悪いので我慢していたんですが、今日なら絶対大丈夫だろうと思って。……迷惑でしたか?」
「と、とんでもない! 即効で準備するんで待っていて下さい!」
 俺は慌てて佑子さんに背を向けて鞄を取りに自分の部屋を目指した。
頬を伝うものに赤面して、余計に駆け足で階段を上がる。
卒業式でも流さなかった嬉し涙に心底驚きながら、俺は本気で佑子さんを大切にしなければと決意を新たにした。
「俺、本当に怖いくらい幸せだよな絶対」
 本音を呟きながら、佑子さんの下へ急いだ。

578:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 19:13:07 YcNQWi07
 今、自分の学校までの通学路には俺と佑子さん以外の姿は見当たらない。
ほとんどの在校生たちは課題なんてイレギュラーな物を貰っていないに違いない。
その事実に気付くと、改めて課題を出した教師に対する逆恨みに近い感情が沸々と湧き上がってきた。
一方で、この課題のおかげでこうして佑子さんと手を繋ぎながら早朝の静寂を共有出来ていることを考えると、あの教師に感謝しなければならないのかもしれない。
だけどもしこの課題がなければ、もっとフリーな時間が増えていてその分佑子さんと遊べた筈だ。
―それに、あんな風に佑子さんと揉めることも……。
「仲川くん、どうかしましたか?」
 佑子さんの落ち着いた声が、胸の中の陰惨とした蟠りを払拭してくれた。
せっかくの佑子さんとの二人きりの時間を非生産的な考え事に没頭することで潰すなんて馬鹿げている。
覆水盆に返らずとは良く言ったもので、済んでしまったことに幾ら文句垂れたってどうしようもない。
そんなことよりももっと大事なことが俺にはあるんだ。
「どうもしてませんよ。そんな俺ヤバそうな顔してました?」
「そんなことありませんが、ただ何か別のことを考えていたような気がして……」
 顔にまで出ていたとは、迂闊。
佑子さんの前で間抜け面晒していなかったか不安になり、間を作らないように慌てて話を繋ぐ。
「多分一睡もしてないからボーッとしていただけですよ」
「寝てないんですか?」
「恥ずかしながら、課題終わらせる為に徹夜してしまいまして」
 苦笑しながら頭を掻いた。
出来れば言いたくはなかったが、見栄張ってまた前みたいなことになるのはご免だ。
「そうでしたか。それではまた今度にします」
「何をですか?」
「大したことではないんですが、私の家に来て頂ければと思っていたんですよ」
「……すいません、もう一回言ってくれませんか?」
「……是非仲川くんに私の家に来てもらいたいと思っていたんです」
「申し訳ありません。恥ずかしながら徹夜明けで意識が朦朧としているんですよ。ということで、もう一度だけお願い出来ますか?」
「…………今日から始業式までって暇ですよね? 仲川くんが良ければいいんですが、私の家に……」

579:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 19:15:23 YcNQWi07
「お邪魔しちゃっていいんですか!? 正真正銘佑子さんのご自宅にですよ!?」
 その場で足を止めて、通学路であることを憚らずに大声を張り上げた。
幸い通学路は俺たちで貸切状態だったので、周りから好奇の目で見られるという羞恥プレイを受けずに済んだ。
「は、はい。終業式の時に電話で話した通り、一度落ち着いて話でもしたいなと思って」
「佑子さん宅でお話ですか!? 嘘じゃありませんよね?」
 余りにも自分に都合の良い話なので二回聞き返しただけでは信じ切れず、もう一度確認してしまった。
それが癇に障ってしまったのか、佑子さんは目を細めつつ若干握っている手の力を強めた。
痛みはなく、寧ろ女の子特有―なのかどうかは女性経験浅い俺には分からないが―の柔らかさが伝わってきた。
今更だが、佑子さんの手の小ささに少し驚いてしまった。
「仲川くん、覚えておいて下さい……。私が仲川くんに嘘をつくことはありません」
 赤面してしまい、思わず顔を佑子さんから背けたくなった。
そんな切羽詰ったような表情でこんな嬉しくなるようなこと言われちゃ、目合わせるなってのは中々に難しいことだ。
多分、普通の男にとっては彼女が嘘つかないだなんて宣言されても当たり前としか思わないのかもしれない。
でも、俺はその当たり前に飢えていた。
自分の勘違いで女性不審に陥って以来、女性を絶対に信頼出来る状況を俺は望んでいたのだ。
そして佑子さんは真摯な表情で放った言葉で以て、俺の願望を確固たるものとして実現させてくれた。
そんな彼女を、愛しく思わない訳がない。
「はい、ありがとうございます! 死んでも忘れませんよ!」
「ふふ……そして……」
 佑子さんは控え目な笑いを漏らすと、空いている左手で俺の右肩を掴んで自分の体を預けてきた。
顔を俺の胸に埋めているせいで、艶やかな黒髪が眼前に広がり、又そこから広がる仄かな匂いが鼻腔を擽る。
これはシャンプーの匂いであって決して佑子さん自体が良い匂いである訳ではないと思いつつも、頭がクラクラしそうになる。
「仲川くんも、私に嘘をつくことはない……私を好きでい続けてくれる……私を裏切ったりしない……。ですよね?」
 ……声に陰りがあるような印象を受けたのは、顔が下を向いているせいで篭ってしまったからなのだろう。
そう納得させると、俺は空いている右手で佑子さんの左手首を優しく握った。
「言うまでもありません」
 佑子さんは笑ってくれた。

580:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 19:17:26 YcNQWi07
 鳥肌立つくらい気色悪いこと言ってしまった後悔から、今度こそ本当に佑子さんから目を逸らしてしまった。
「もしかして、傍目からだと俺たちって俗に言うバカップルってのに見えるんじゃ……ないんですかね」
「もしかしなくてもそうですよ。だから―」
 佑子さんの笑い声が聞こえたのと同時に、俺は左腕にやけに心地良い感触を覚えた。
「―見せつけちゃいましょう」
 恐る恐るその方向に視線をやると、俺の左腕が佑子さんの両腕によって絡み取られている光景が映った。
ここまでくると人目を気にすることもどうでも良くなってしまい、半ば自棄になってそのまま歩み出した。
陽は昇っているものの人っ子一人いないけど。
「佑子さんって意外と行動派なんですね」
「幻滅しちゃいました? おとなしく小動物みたいな媚びた目線で見つめてくるだけの女の子の方が良いですか?」
 そんなことありません―と言おうとして思い止まった。
よくよく思い返してみると、何だかんだでさっきから俺は佑子さんに押され気味になっている気がしてならない。
佑子さんの方が年上なのだからある種当然のことなのかもしれないが、それでは男として立つ瀬がないってものだ。
赤面佑子さんを拝まないことには俺の通学は終われない―そんな悪戯心が、自然と俺の次の言葉を決定した。
「どんな佑子さんでも俺は大好きです!」
「えぇ!?」
 俺の臭み満点の台詞に、佑子さんは口に手を当てて笑い出してしまった。
臭過ぎたかと後悔しつつ、冷めた瞳で見られるということがなかっただけマシかと自分を納得させた。
 それにしても、俺と佑子さんの間に異性への対応力の差があることを再確認して少々気落ちしてしまった。
俺はつい一ヶ月半前まで本気で異性を意識したことすらなかった男。
それに対して、佑子さんは俺より一歳先輩の上中々に可愛らしい女性だ。
異性経験も人並みにはあるのだろう。
話によるとキスも一人としたことがあるようだし、そうなると今まで付き合った人数はそれ以上かもしれない。
勿論そのことについて醜い独占欲を丸出しにして憤ったりはしないが、そのことを常に心に留めておかなければならない。
俺と佑子さんとの経験の差はそのまま認識の違いに繋がり、それが二人の仲に亀裂を生じさせるかもしれないから。
勘違いで他者との関係に皹が入るのはもう沢山だ。
相手のことをしっかり見て、聞いて、思う―小学校で教わるようなことをすれば大丈夫だ。

581:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 19:19:10 YcNQWi07
「仲川くんたらいきなりそんなこと……くふ……」
 佑子さんはまだ笑いの蟻地獄に嵌り続けているご様子。
我ながら面白みの欠片もないあのネタ台詞に、よくしゃがみこんでまで爆笑していられるものだと思う。
見ているこちらまでつられてしまいそうになる。
時々見かける、笑いのツボが一般人とは若干ずれている人の一人なのかね。
「そろそろ行っちゃいますよ」
 冗談混じりに言いながら佑子さんに顔を近付けた。
そうするとさっきまでは気付かなかったが、佑子さんの真っ赤な両耳が視界に入った。
これについては、笑い過ぎで興奮しているだけという解釈が有力だ。
しかし、万が一にも佑子さんが先程の俺の台詞に照れているとしたらどうだろう?
……ほぼ有り得ない仮説だが、どうせ佑子さんの真意を確かめるようなことはしない。
真相は謎のままなのだから、自分にとって都合の良い解釈をした方が建設的だ。
別に自分に言い聞かせている訳ではない筈……。
「あっ、待って下さい。私も」
 口を片手で覆ったまま慌てて佑子さんは立ち上がった。
そんな様子を見ていると、佑子さんとの今後について危惧している自分が馬鹿馬鹿しく思えてしまう。
……肩の力を抜くべきなのかもしれないな。
最近になって気付いたことだが、俺はどうやら考え事の多い人間らしい。
でも、俺の沈思黙考によって事態が好転したことは俺が知る限りでは一回もない。
佑子さんの過去についてだけ念頭に置いて、余計且つ無意味な考えを一旦払拭するのも悪い気はしない―。
「ところで、佑子さんの家にお邪魔していいという話は……」
「またの機会にですね。徹夜した体に追い討ち掛けて体調崩したら嫌でしょう?」
「俺は健康に定評があるのですが……。佑子さんがそう言うのであれば仕方ありませんね」
「今日はゆっくり休んで下さい。明日また連絡しますので」
「それって明日は……ってことですよね?」
「はい。明日を一日千秋の思いで待っています」
 ―この幸せな時を守る為に。

582:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 19:20:52 YcNQWi07
 左手に巻かれた腕時計で時間を確認する。
「えっと……大体七時半ですね」
「ありがとうございます。丁度良い時間ですので、私もそろそろ学校に向かいます」
「一緒に登校してくれてありがとうございます。俺も出来れば送ってあげたかったんですが……」
「気持ちだけ受け取っておきます。どうも」
 歩きながら佑子さんに頭を下げられた。
俺も返そうと思ったが、間もなく校門の前に着いてしまい一旦立ち止まった。
「それでは、明日はよろしくお願いします」
 もう一回お礼を言おうとしたが佑子さんの言葉に制されてしまった。
佑子さんももたもたしていたら自分の学校の入学式に遅れてしまうだろうから、これ以上話すのは迷惑か。
かなり名残惜しいが、明日思う存分佑子さんと話し尽くしてやる。
揺れる心を無理矢理納得させると、俺は佑子さんに背を向け校門をくぐった。
まだ早い時間なだけに、校内には慌しく駆けている教員たちと数組の気の早い親子がいるだけであった。
そんなに忙しいなら、在校生を何人か引っ張り出して手伝わせれば少しは楽になるだろうに。
まぁわざわざ課題出してもらってそれを提出する為にやって来た、迷惑掛ける側にいる俺が教員に小言を言う資格なんてないがな。
「眠い……」
 見ている人はいないと踏んで、その場で遠慮なく盛大な欠伸をかました。
眠気と倦怠感が体中を駆け巡っていることを理解すると、俺は早々に担任の教師を見つけてしまおうと自分の教室の方へと歩み出した。
「久しぶり!」
 数歩進んだところで、聞き覚えのある声と共に肩を叩かれた。
大体相手の正体に目星を付けつつ振り返る。
「元気してた?」
「それなりに。というかお前どこから湧いてきた?」
「人を菌みたいに言わないの。せっかく共に課題を課された同士として校門で何時間も待っていてあげたっていうのに」
「そりゃどうも。今度何時間でもお前に返してやるよ」

583:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 19:22:55 YcNQWi07
一旦終了します。二時間後きます

584:名無しさん@ピンキー
08/08/04 19:33:46 UPujLeIv
今ならどんなヘタレでも間違いなくウケるからね
お手軽に安っぽいGJ貰いたいのならチャンスってことだ
ゆっくり読ませて貰うよ
感想は一段落してから

585:名無しさん@ピンキー
08/08/04 20:11:08 MeMt2uGr
佑子さんキタァー(゜∀゜)ーー!!!!
GJです。
次回投稿も楽しみに待ってますよ

586:名無しさん@ピンキー
08/08/04 20:39:56 LRf89ydw
GJ!
こうやって待っていた作品がひょっこり帰ってくるから嫉妬スレから離れられないんだよな

587:名無しさん@ピンキー
08/08/04 20:45:21 ZlKlbHNG
おぉお久しぶりです。
とりあえず最初から話読み返してきますかね・・。
話思い出さねば。

588:名無しさん@ピンキー
08/08/04 20:57:16 UPujLeIv
>>591
確かに内容スカスカで印象薄いからなぁ
別に待ってたわけでもないし
俺もまとめスレ行って読み返さないと

589:名無しさん@ピンキー
08/08/04 21:22:54 fx0M+09t
佑子さんに対抗できるキャラはいたり先輩しかいないと私は思っているので
>>587
GJだ。次回も楽しみに待ってます
全裸でw

590:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 21:41:27 YcNQWi07
残り投下します。

591:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 21:43:57 YcNQWi07
「ところで君、あんなに恥ずかし気もなく欠伸してたってことはどうせ課題のせいで徹夜明けなんでしょ? 当たっちゃった?」
「そういうお前こそ目の下にクマ作ってどうした、佐藤? テンション高いし」
 俺の目の前で驚いた様子で自分の鞄の中身を漁り出したのは、佐藤早苗だ。
約二週間ぶりの再会だが、彼女に特に変わったところは見当たらず、相変わらず絵に描いたような美少女のままであった。
率直に言ってしまうと―実際には口が裂けても言えないが―多分佑子さんより若干可愛い。
今は両目の下にクマが広がっているが、それでも佐藤早苗の顔はトータルで見れば我が学園一の美貌を誇っていると思う。
全く以て憎い奴だ。
 当の佐藤早苗は、しゃがみこんで鞄から取り出した手鏡で自分の顔を確認しているようだ。
「うわ……酷……」
 佐藤早苗は鏡に映った自分の顔を前に、溜息混じりに肩を落としている。
お前の顔でそんな酷評が下されるなら、一般の女性は恥ずかしくて外出出来なくなってしまうぞ。
「言っておくけど、あたしは課題なんて一週間以上前に終わっていたの。徹夜なんてしてないからね」
 手鏡を鞄の中にしまった佐藤早苗が立ち上がった。
「それじゃあ、目の下のその黒い染みはどう説明するんだよ? 強がる必要なんてないだろ」
「このクマはね……最近あまり眠れてなかったから……」
「やっぱり課題のせいでケツに火がついてたんじゃないか」
「違います! 言うなれば、最近のあたしは遠足を明日に控えて眠れない小学生みたいな感じだったのよ」
「曖昧過ぎて訳が分からない」
「まぁそんなことは気にせず、さっさと先生探しちゃお」
 佐藤早苗に左腕を掴まれると、さっき俺が向かおうとしていた教室の方へと引っ張られていった。
鼻歌交じりに歩いている佐藤早苗をよそに、俺の脳裏にはホワイトデーの翌朝のことが過ぎった。
その要因は時間帯的なこともあるが、何より俺に対する佐藤早苗の強引な態度があの時のそれと酷似しているからだろう。
あの時は、佐藤早苗にフラれたおかげで結果的には佑子さんと付き合うことになるなんて思いもしなかった。
その上逆恨みしていた佐藤早苗と友達にまでなるとは、想像だにしていなかった。
「人生山あり谷あり、人間万事塞翁が馬、禍福は糾える縄の如しってことなのかな……」
「どうしたの?」
「何でもない。そんなこと気にせず、さっさと課題出しちゃおうぜ」
 終わり良ければ全て良しだ。

592:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 21:45:26 YcNQWi07
 入学式の準備に追われていることもあって、担任の教師に二人分計十冊のテキストを渡すだけで課題提出は終了した。
いつもは課題を渡した後も三十分位の説教を頂戴させられるのだが、さすがの小言教師にも今日は暇な時間がないようだ。
「ふぁ~……眠いな。何か最近は課題中心の生活を送っていただけに、それが終わるとちょっとした虚脱感が……」
「欠伸しながら喋らないでよ。あたしは集中して二日で終わらせたからあんまりそういうのはないな」
「俺が超集中して二週間近く掛かった課題を二日で? やっぱお前頭良いんじゃん」
「あんたが悪過ぎるんでしょ。というかどうせ休憩と称してテレビ見てたりしてたんじゃないの?」
「そりゃそうだろ。休み中に机に連続三十分も噛り付いていたら気が狂う」
「……色々と言いたいことはあるけど、とりあえずあんたはこれっぽっちも集中なんかしてないからね」
 佐藤早苗が完全に接触している親指と人差し指の先っぽを見せてきた。
そこまでこれまでの努力を否定されると、別にそういうことで良いやと思えてくる。
とにかく今日は早く家に帰って寝て、何もしないことの幸せを噛み締めたいものだ。
「ふぁぁ~~……無茶苦茶眠いな」
「またアホ面晒して欠伸した。あたしだって昨日は眠れなかったけど、欠伸出る程眠くないわよ」
「徹夜に強い体なんだな」
「何となくデリカシーゼロの発言に聞こえるからやめなさい」
 脳天に衝撃一発。
鞄で頭を殴られた。
それでも、根強い眠気が解消される気配は一向に感じられない。
 視界に入った校門がここから家までの道のりの長さを俺に思い立たせ、余計に歩くのが億劫になった。
「そんじゃあ、また始業式の時によろしくな、佐藤」
 力なくそう言うと、佐藤早苗の方へと向き直る。
その佐藤早苗はと言うと、何故か校門の方向を凝視していた。
しかもかなり驚いているようで、せわしなく手が震えている。
「何で……」
 佐藤早苗の口から漏れた言葉に、さすがの俺も見ているだけではいけないような気にさせられた。
とりあえず、再び半開きの瞳を校門の方へと向ける。
さっきと違って“何かがある”という意識の下見た為、さっきは感知すら出来なかった人影を確認した。
目を擦ってからもう一度校門の先を見て―そして驚愕のあまり半開きから全開になった目でその人影の正体を再確認する。

593:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 21:46:50 YcNQWi07
「課題提出はもう終わったんですか? 早いですね」
「佑子さん!?」
 つい十数分前に校門でさようならしたばかりの佑子さんが笑顔でそこにいた。
叫びながら俺は一気に佑子さんの下へと駆け出していった。
「佑子さん、どうしてここに!?」
「いえ、仲川くんの時計って時間ずれているようで……」
 僅かに息の上がった俺の前に、佑子さんは革鞄の中から取り出した腕時計を見せつけてきた。
そのディスプレイのデジタル表示によると、今はどうやら七時二五分らしい。
自分の腕時計を確認すると、大体七時四十五分を指している。
「まだ時間に余裕があったので、ギリギリの時間まで仲川くんを待っていようかなって思いまして」
「俺の時計の時間が……ずれているんですか? 佑子さんの時計がずれているという可能性は?」
「ないとは言い切れませんが……。そう言われると、どちらなんでしょうかね?」
 場合によっては切羽詰った状況になりかねないというのに、佑子さんに慌てた様子は見受けられない。
何でそんなに落ち着いていられるのかはとりあえず今は置いといて、俺は学校の時計で何時か確認しようと身を翻した。
「仲川が正しい」
 振り返った途端に声が耳に入った。
と同時に、佐藤早苗がディスプレイに七時四十六分と表示された携帯電話を目の前に差し出してきた。
どうやら俺の時計が正しかったようだ。
ということは……。
「佑子さんっ! ずれているのは佑子さんの時計ですよ!」
「そうなんですか? それはびっくり仰天です。想定外でしたよ」
「驚いている暇なんてありませんよ! 急いで学校に向かわないと!」
 俺が独り馬鹿みたいに騒いでいるというのに、当事者たる佑子さんは自分の時計の時間を直している。
どうしてそんな余裕でいられるのか不思議でならない。
まさか俺みたいに、遅刻確実でそれなら思いっきり遅れてやるなんていう風に思う人ではないだろうし。
「ずれていた時間は二十分ですよね? なら大丈夫。私はいつも学校には三十分前に着くようにしています」
「てことは、今から行っても……」
「まぁ十分前には着けますね。歩いても」

594:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 21:48:35 YcNQWi07
 思わず脱力してしまいそうになる。
俺独り空回りして無駄に神経擦り減らしただけか……。
まぁ佑子さんが損をすることなく済んだということを素直に喜んでおこう。
「それでもそんなに時間に余裕はありません。急ぎましょう! 俺も一緒に行きますので」
「いえいえとんでもない! 私は仲川くんとまたこうして僅かでも話せただけで嬉しかったので」
「そんなこと言わずに……」
「―仲川くんは、明日の私の家での初デートに備えて、今日はゆっくりお休み下さい」
 そう言い残すと、佑子さんは小走りで彼女の学校があるであろう方向へと行ってしまった。
追いかけようとしたが、佑子さんに休めと言われた手前それに逆らうのは気が引けた。
それでも追い掛ける勇気は俺にはなかったから、結局俺はその場で佑子さんの姿が見えなくなるまで見守ることしか出来なかった。
明日会える……明日会える……そう言い聞かせても、やっぱり納得し切れなかった。
明日がこんなにも待ち遠しくなるとは、俺もしっかり青春謳歌してしまっているな。
何か少しだけ恥ずかしい。
「―欠伸、しなかったね?」
 後ろから佐藤早苗の声が聞こえた。
振り向いた先には俯いた佐藤早苗の姿があった。
佑子さんのことで頭がいっぱいだったから全然気にしていなかったが、そういえば携帯を見せてきた時も俯いたままだった。
俺は佐藤早苗の機嫌の変化の速さは恐ろしいことを思い出した。
こういう時、深く考えてから行動を起こすと大抵トラブルが起きていたんだ。
佐藤早苗は友達の一人だから、また前のように険悪な感じになるのは嫌だ。
だから、俺は何も考えない。
前例から学習出来ない奴は人に非ずだ。

595:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 21:49:41 YcNQWi07
「それがどうかしたか?」
「……別に……」
 佐藤早苗はあっさりと引いた。
やはり俺の“考えない”という考えが功を奏した。
「仲川、あんたの時間を今日貰うわ」
 あれ?
「また藪から棒に……。何を言い出すんだ?」
「あんたさっきあたしが校門で待ってた分の時間を返してやるよって言ってたじゃない! 何、今更約束破る気なの!?」
 急に怒鳴られてしまった。
その切羽詰った表情は、両目の下のクマのせいもあってか、悲し気に見えてしまった。
どういうことか考える時間も与えてくれなさそうだし、考えもしてはいけない。
「も、勿論守るさ……。でも、今日じゃなくてもいいんじゃないか? 明後日とかその次とかさぁ」
「今日じゃなきゃいけないの!」
「分かったよ……」
 怒鳴り声に圧されてほとんど強制的に頷かされてしまった。
「それじゃ今からあたしの家に行くからね」
 そうして、完全に興奮してしまった佐藤早苗に手を引かれ、俺は佐藤早苗の家の前へと連れていかれた。
何も考えなかった結果がこれなんだが……本当に良かったのだろうか?
自問したところでどうしようもないが。

596:名無しさん@ピンキー
08/08/04 21:50:51 TqyO4Gxr
>>587

キター( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)`Д´)-_-)冫、 )ノД`)=゚ω゚)━ッ!!!
GJっす!
お待ちしておりました

次回もwktkしながらお待ちしております!

597:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 21:53:30 YcNQWi07
投下終了。レス数間違えました。
578-586と595-599の合計13レスが11話目です。

598:名無しさん@ピンキー
08/08/04 21:55:35 fx0M+09t
追加分キタァー(゜∀゜)ーー!!!!

寝る前に読んでおきます
昔は寝る前に投下された嫉妬SSを読むのが楽しみだったんだけどな


599:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
08/08/04 21:57:05 YcNQWi07
数えたら14で合ってたorz 今度こそ本当に失礼しました。

600:名無しさん@ピンキー
08/08/04 22:00:55 TqyO4Gxr
>>601
割り込んでしまってスマソorz


GJです

早苗はどんな逆襲をするのかをwktkしながら次回をお待ちしております

601:名無しさん@ピンキー
08/08/04 22:14:05 yXsc80hz
GJ!!
これから早苗の逆襲が始まるのだろうか・・
次も待ってます。
どれだけでも待ってます!


602:名無しさん@ピンキー
08/08/04 22:18:37 d86/O2p+
携帯からこの量とか…

お疲れ様にも程があるだろ

603:名無しさん@ピンキー
08/08/04 22:43:40 ANSV0qBp
>>603
携帯だと思って見くびってましたすいません。>>606に激しく同意。

604:名無しさん@ピンキー
08/08/04 22:51:36 4E+MIA1s
携帯から投稿ってそんなに大変なの?

605:名無しさん@ピンキー
08/08/04 23:02:28 fqmrAKsJ
今からまとめサイトおさらいしてくるよ。
最近長編が投下されないから内容忘れてる人も多いと思うんだぜ!
なんにせよ携帯からとかマジで乙

606:名無しさん@ピンキー
08/08/05 00:53:33 kqoXYfVy
>>佐藤早苗に手を引かれ、俺は佐藤早苗の家の前へと

なんか、いかにも素人が書いてますっていう稚拙な表現で萎えた
自分で読んで不自然に感じなかったとすればセンスなさすぎ
読み直ししていないというのなら、あまりにも読み手をバカにしすぎ

気が向いたら頭から読んでみるよ
今日は止めとく

607:名無しさん@ピンキー
08/08/05 00:57:40 bCpkp/Nv
気が向いたら頭から読んでみるよキリッ

608:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:09:38 Oku+T2NH
>>601
原稿用紙37枚って化け物か……
とりあえず、GJですよ

609:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:15:26 OwBF67or
>>610
ポッキー食べる?
やっぱりやらねーよ、バーカ

610:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:19:46 tUnHsv2X
>>609>>610んもう///ツンデレなんだから///

611:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:19:49 B8I41+1M
ぐわっ
佑子さんが可愛すぎる
これなんて純情キャラ=腹黒キャラなんだ

これはあのいたり先輩以来の胸のときめきがするぜ
そういえば、いたり先輩はあれで完結したの?



612:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:29:28 Ew5CcN5Y
>実際には口が裂けても言えないが―多分佑子さんより若干可愛い

↑そりゃ、殺されるぞw

613:緑猫 ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:33:42 t2PQ9p57
忘れられた頃に投下する男 スp


614:怪物姉隠形記(裏) ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:34:35 t2PQ9p57
 
「ねえねえセっちゃん」
「―ああっ!?
 そっちの出店は質が悪いことで有名だから伝えておけば―っと、ちゃんと回避した! えらい!」
「セっちゃんってばー」
「―そうそう、大根を選ぶときは葉っぱを見て。
 教わったことは必ず覚えている辺り、流石白ちゃん」
「……お姉ちゃん、拗ねちゃうぞー?」
「―む。あの客引き鬱陶しいなあ。
 姉さん、ちょっと行って排除してきて」
「りょーかい! ……あれ? 私ってパシリ?」
「―よし、ここまでは順調ね。
 この調子で行けば、日が落ちる前には帰れるかな」
「……セっちゃんセっちゃん! この卵凄いんだって!
 一個で3回はできるって! ユウキさんに十個くらい食べさせようね!」
「って姉さんが引っかかってどうするのよ!?」
 
 人気のない路地裏にて。
 黒髪の姉妹が、完全に気配を消しつつも、ちょっぴりはっちゃけながら。
 大通りを行く白い少女を、見守っていた。
 
 ただいま、はじめてのお買い物中。
 少女の一大冒険を、心配しすぎて家で待てない姉貴分と、
 何となくノリでついてきて、退屈を持て余している(ダメ)姉貴分。
 
 白い少女がその任務を半ばまで達成してもなお。
 安心して離れたりせず、主に妹の方がハラハラドキドキしながら見守っていた。
 ちなみに姉は野良猫とにゃあにゃあ会話して楽しんでいた。
 まあそれはそれとして。
 
 ふと。
 
「―セっちゃん」
 
 姉―ユメカが、冷たい声を発していた。
 いつものとろけた姉ではないことを瞬時に悟った妹セツノは、
 少女の監視を一時中断し、姉の方へと向き直った。
 
「近くに、手練れがいる。―逃げよう」
 
 

615:怪物姉隠形記(裏) ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:35:30 t2PQ9p57

 
 姉の言葉を受け、数秒ほどセツノは迷った。
 自分は、そんな気配を感じなかった。
 技能としての索敵なら、セツノの方が優れている。
 しかし、それはあくまで技術の問題。
 ユメカの動物的な第六感には、何者も敵わないことをセツノは知っていた。
 
「……別に任務中じゃないし、放っておいても大丈夫じゃない?」
 
 言いながら、さりげなく大通りの方へと視線を走らせる。
 それらしい人影は―
 
 
 ―白に。金髪の女性が、近付いていた。
 
 
 すれ違うとかそういった類ではない。
 明らかに、白に向かって歩いていた。
 
 まさか、
 
 
「……姉さん。ひょっとして、あいつのこと?」
「うん。あいつ。この前見たときは気付けなかったけど、たぶん、私より強い」
「……確かに、何だか今は、雰囲気が黒いというか、自分を抑えきれてないというか」
「この距離なら気付かれることはないと思うけど、念のため」
「でもあいつ、白ちゃんに……」
「たしか、しーちゃんを保護したり、ユウキさんに預けたりしたのも彼女でしょ?
 なら、滅多なことじゃ危害を加えたりしないよ。きっと」
 
 普段の姉らしからぬシリアスな言動。
 人間兵器のような姉がここまで恐れるとは。
 あの女―そこまでの手練れということか。
 
 


616:怪物姉隠形記(裏) ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:36:19 t2PQ9p57

 
 改めて、女性の素性を思い返す。
 アマツ・コミナト。近衛隊准隊士。ユウキとは帝都中央学院で知り合った女性。
 剣術謀術に長けており、敵対した者は全て屈服させられている。
 剣の腕に関しては、直接見たことはないが脅威に値する可能性が高い。
 ―以上、ユメカ作「泥棒猫さんリスト」より。
 
 ……確かに、敵に回したくない類である。
 特に貴族というのがヤバイ。ユメカとセツノの立場上、最も関わりに配慮が要る人種である。
 もし自分たちの所属がばれてしまったら、個人だけではなく村全体の問題になりかねない。
 姉の言う通り、白が危害を加えられる可能性は皆無だろう。
 ならば、自分たちは余計な波風を立てぬよう、対峙を避けて隠密に徹するべきだ。
 そう判断し、姉に同意を示そうとした、瞬間。
 半ば無意識に唇を読んでいたセツノは、アマツがこう言ったのに気付いてしまった。
 
 ―ちょっとこれから、ユウキの家に行くからな。
 
 
 
 それは困る。
 
 
 現在ユウキの家には、自分と姉の生活跡がこれでもかというくらい残されている。
 白い少女との二人暮らしと言い張るには、少し苦しい。
 というか姉の下着や自分の恋愛小説を、ユウキの物と言い張るには苦しすぎる。
 となれば、すべきことはただひとつ―
 
「姉さん! 家に戻ろう!」
 
 ―限られた時間の中で、自分たちの痕跡を隠す!
 
 


617:怪物姉隠形記(裏) ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:37:09 t2PQ9p57

 
 
 
 
 結論から言おう。
 ユメカは駄目人間過ぎた。
 
 戦闘特化型なのだから、隠密技能の多少の不得手は許されるかもしれない。
 しかし、だからといって。
 
「片付けの途中に発情って、何考えてるのか本気でわかんないんだけどっ!?」
「やだなあセっちゃん、ユウキさんのこと考えてるに決まってるじゃない☆」
「考えた結果が自慰ってのが意味不明なんだけど!」
「いやほら、性欲はヒトの三大欲求のひとつだし」
「うわあ蹴りたい。すっごく蹴りたい。
 今の私、性欲より馬鹿姉蹴たぐり欲のが強いけど―でも我慢! 私常識人だし!」
「なにようセっちゃん。それじゃあまるで、私が常識ないみたいじゃな」
「いいから黙って気配消してなさい。そろそろ来るんだから」
「はーい」
 
 屋根裏の空間にて。
 諜報員姉妹は息を潜めていた。
 
 自分たちの痕跡を隠した後は、少し離れた場所で待機するのが最善だったが。
 セツノの心配性とユメカの縄張り根性が、少しだけ影響した結果だったりする。
 
(……白ちゃん、無理しちゃ駄目だからね)
(もしあいつがユウキさんのこと強姦するようだったら、私が出て行ってやっつける!)
 
 セツノの心配性も大概だが、ユメカはユメカで先程までのシリアス調は何処へやら。
 いつもの馬鹿姉モードに戻っていた―が。
 
(……あれ? 何か忘れてるような懐が寂しいような?)
 
 


618:怪物姉隠形記(裏) ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:38:01 t2PQ9p57

 
 
 気付いたときには手遅れだった。
 というか姉のことを信用していた自分が愚かだった。
 そもそも、重要な片付けの最中に自慰を始めるような馬鹿姉が、
 まともに片付けていたと思い込んでいた己の不明を恥なければなるまい。
 
 ―部屋のど真ん中に自慰ネタの下着を放置。
 
 空前絶後のお間抜けさんを問い詰めると、
「だってーセっちゃんがいきなり呼び付けるからびっくりしちゃって置きっ放しに」云々と言い訳を。
 回収しに行きたくとも、既に白とアマツは家の中。
 気配を察知される危険を鑑みれば、このまま放置するほか手はない。
 不幸中の幸いか、放置された場所はユウキの寝室。
 脱ぎっぱなしにしていたと見るのが自然だろう。
 あとは運を天に任せ、見過ごされるのを祈るのみ。

「……っていうかそれ以前の問題として、寝室に何の遠慮もなく入ってくる客人なんて、そうそういるはずもないし」
「あ、入ってきたねセっちゃん」
「…………ユウキさんの知り合いって、変な女しかいないのかな?」
 この女騎士といい、以前の喧嘩ふっかけお姉さんといい。
「セっちゃん……そんな自己卑下しなくても……」
「筆頭が何を言うか」
 
 おもむろに入ってきたアマツと、慌てて追ってきた白。
 二人は大した時間もかけず、不自然に放置された下着に気付いた。
 白の方は、はてなと首を傾げるだけの、至極当然な反応を示していた。
 それに対し、アマツの方は―
 
「―あ、拾った」
「…………ッ!」
「ちょ!? 怒るところじゃないでしょ姉さん!」
「でも私、まだイッてないし……!」
「いやそれかなり意味不明」
 
 よくわからないところで憤慨するユメカと、いつものように突っ込むセツノ。
 どう見ても、油断しきっているようにしか見えない。
 ―が、その実、欠片も気配を漏らしていなかったりする。
 索敵の訓練を受けた者でも、今の二人に気付くのは難しいだろう。
 
 二人はそう確信していたため―
 
 


619:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:38:35 kqoXYfVy
やれやれ、誰かと思えば、ウナギファンの緑猫さんか
相変わらず便乗するのが好きだねぇ


620:怪物姉隠形記(裏) ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:38:50 t2PQ9p57

 
 さりげなく。
 本当にさりげなく、隣の白には気付かれないよう周到に隠された。
 
 アマツの殺気。
 
 当てられた瞬間、思考が硬直してしまった。
 女騎士がそんなことをする理由はひとつしかない。
 
 
 気付いているぞ、という警告。
 
 
 行動の選択肢は3つ。
 息を潜め続けるか、即座に離脱するか、あるいは。
 この場で、殲滅するか。
 
 セツノが選ぼうとしたのはふたつめ。
 ユメカが選ぼうとしたのは、みっつめ。
 
 選ぼうとした理由に、気質如何は無関係。
 それぞれの戦闘能力によって決まっていた。
 セツノは己が逆立ちしても敵わないと肌で感じ、とかく逃げの一手と判断した。
 対してユメカは、逃げきれる可能性を冷静に分析し、戦闘に入るしかないと決断した。
 
 姉妹は言葉を交わしていない。
 互いに最善と思える策を選び、実行しようとしていた。
 体重が僅かに移動し、踏みしめた天板が軋む。
 隠しようのない、確かな音。もう、動くしかない―
 
 
 
「―ん? 鼠でもいるのか?」
 
 
 敵意の欠片も滲ませぬ声が、響いていた。
 
 え? と固まるユメカとセツノ。
 気付かないふり? そんなことをする意味があるのだろうか?
 理解できず、二人はその場で動けずにいた。
 
「そういやお前、さっき鼠駆除の道具買ってたよな。この建物って鼠が多いのか?」
「……っ!(こくこくこくこく)」
 
 アマツと白の何事もなかったかのようなやりとりを。
 ユメカとセツノは、呆然と見下ろしていた。
 芝居じみたやりとりを―
 
「―そう。そういう、こと」
 
 ぽつり、と。
 ユメカの呟きが漏れていた。
 
 妹は姉を仰ぎ見るが、姉はそれ以上は何も言わず。
 ただ、悔しそうに。拳を握り締めていた。
 
 


621:怪物姉隠形記(裏) ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:39:55 t2PQ9p57

 
 
 
 
 
 隊舎に着く頃には、空は既に明るくなり始めていた。
 酒精でほどよく高揚した頭を、そのままベッドへ突撃させる。
 ぼふ、と間抜けな音がして、シーツの上に金髪が広がった。
 
「……あー。ひっさしぶりに、気持ちいい酒が飲めたなぁ……」
 
 むにゃむにゃと呟く。
 柔らかなベッドに包まれてその表情は見えないが、きっと緩みきっていることだろう。
 それほどまで、彼女の声は嬉しさに溢れていた。
 
「……変わってないなあ、ユウキのやつ。
 馬鹿みたいにお人好しで、変な風に気が回って。
 ホワイトのやつも良い感じで過ごせてるみたいだし、アイツに任せて正解だったな……」
 
 ……。
 …………。
 ……………………。
 
 
「……うん、あのときはアレで正解だった。そうだ。そうに決まってる」
 
 ふと。
 こぼれた声は、冷たかった。
 
 言っているのは、白い少女のことではない。
 もっと、別のこと。
 
「―だって、ユウキの部屋を、血で汚すわけにはいかないもんな」
 
 言いながら、懐から“戦利品”を取り出した。
 何故落ちていたのかなんて、どうでもいい。
 ユウキの匂いが残るものなら、何でもよかった。
 
 数瞬躊躇った後、恐る恐る、匂いを嗅いだ。
 
 自分はいつから変態に成り下がってしまったのか。
 想い人の下着を顔に押し当て、匂いを嗅ぐだなんて。
 実家の者が見たら、卒倒してしまうに違いない。
 
 


622:怪物姉隠形記(裏) ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:40:42 t2PQ9p57

 
「栄えある近衛隊准隊士が、下着泥棒か。堕ちたな。ははっ」
 
 笑う。しかし頬はいびつに歪む。
 だって。
 ―残っているから。
 
「意図的に抑えられた体臭。……諜報員の類だな。
 ユウキのやつ、変なことに巻き込まれてるんじゃないだろうな。
 だとしたら―巻き込んだ奴は、殺すしかないよな」
 
 想い人の下着、そこに残された女の香り。
 その意味を察せられないほど愚鈍ではない。
 
 離れていたのは自分なのだ。恨みに思うのは筋違いなのかもしれない。
 でも。
 だからといって。
 簡単に諦められるはずが、なかった。
 
 ずっと、ずっと我慢してきたのだ。
 欲しくて、穢したくて、自分の色に染めたくて。
 
「……畜生ッ!」
 
 衝動的に、下着を下腹部に押し当てる。
 腹の底で猛る衝動を鎮めるには、もう直接的な手段しか残されていなかった。
 
 
 
 
 
「……4年越しで、下着一枚とは……笑うしかないよな……ははっ」
 
 べとべとに汚れた下着をつまみ上げ、アマツは力無く苦笑した。
 
「ま、すっきりできたから、いいか。
 下着の一枚や二枚で気にすることもないよな」
 
 汚れた下着を放り捨て、アマツはベッドに寝転がる。
 天井を見上げながら、何とはなしに呟いてみた。
 
 
「感覚からして、たぶん凄腕だ。下手なところに探りを依頼したら、裏目に出かねない。
 ……ここは散財を覚悟して、お高いところに探らせてみるかね。
 
 ―イナヴァ村だと、実家の伝手を辿るのがいいのかね」
 
 
 


623:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:41:59 kqoXYfVy
自作投下の直後にこんなことされたら、俺だったら殺したいくらい腹が立つだろうな

624:緑猫 ◆gPbPvQ478E
08/08/05 01:43:50 t2PQ9p57
「血塗れ竜と食人姫」外伝7の続きです。
半年ぶりとか何考えてるんでしょう自分
あと自慰万歳
 
>>601
佑子! 佑子!
キュンときました。GJ!

625:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:49:03 kqoXYfVy
エール交換さえすりゃ許されると思ってるよ、この人は
はたから見りゃ、両手潰し以外のなにものでもないのだが

626:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:56:48 WrOC+HE5
他人の投下直後の投下がどれだえk疎まれるか分かってないのかね。
次からは自粛する事をお勧めするよ

627:名無しさん@ピンキー
08/08/05 02:08:14 kqoXYfVy
こいつが空気読めないことは、イタイ自分語り見ててもよく分かる
書き手系のスレでも読んで、マナーを身に着けてくれたらいいのだが
自分が単に保守要員で、作品には需要ないこともそろそろ悟って欲しい

628:名無しさん@ピンキー
08/08/05 02:48:54 aBPAolOB
全力でGJ!!!
こんなにスレが荒んでも投下してくれる貴方に心の底から感謝
ああ相変らず外伝のセッちゃんのお姉さんっぷりはイイなぁ
心底和むは
ユメカの馬鹿姉っぷりも別の意味で和むw
アマツ怖いよぅ……外伝では最後までほのぼの修羅場で通して欲しいのでまったり願います

629:名無しさん@ピンキー
08/08/05 03:04:43 Gzs8zyfN
アンチは気にせずGJ!
というか外伝お待ちしてました!

630:名無しさん@ピンキー
08/08/05 03:25:08 I5IHa+Pa
色んな人がいる訳で……
その中の1人の俺はGJと言おう
まあ、気にしてもしなくても加減が大事だよね


631:名無しさん@ピンキー
08/08/05 03:30:27 OwBF67or
ポッキーどれだえkいりますか?
あんまり食べると歯がイタイことになります
節度を身に着けましょう

632:名無しさん@ピンキー
08/08/05 07:34:05 iwnhzRAG
投下してくれるありがたさに勝るものはない
二人ともGJ!

633:名無しさん@ピンキー
08/08/05 08:06:09 dNAjGown
緑猫さんキタァー(゜∀゜)ーー!!!!
おお、二人とも超GJだ

俺たちはあんたたちをずっと待っていたぞ
ブログとか見ているけど、全然更新されないんで寂しい

634:名無しさん@ピンキー
08/08/05 08:37:19 z9N4uFyG
お二人ともGJだぜ。アンチの言ってることは話半分で聞くのがいいよ。

635:名無しさん@ピンキー
08/08/05 08:39:58 RzPl7OrH
いちいち言及せずにスルーすればいいのに

ともかくお疲れ様でした。

636:名無しさん@ピンキー
08/08/05 09:39:40 bCpkp/Nv
緑猫氏キテタ!!
SSが連続で投稿されるとあの勢い50以上あったころを思い出すぜ
この調子でどんどんSS投稿されることを祈ります

637:名無しさん@ピンキー
08/08/05 13:23:27 /mWC/Q2V
イヤッホオオオオオオオオウ!

638:名無しさん@ピンキー
08/08/05 13:39:50 1Ym/kefw
作品が投稿されると嬉しいね

639:名無しさん@ピンキー
08/08/05 14:08:04 kqoXYfVy
単発ワロス
スレ活性化のためとはいえ、なんか涙ぐましくさえあるな

640:名無しさん@ピンキー
08/08/05 14:15:49 bc0BxDbp
何かパンツを思い出すな

641:名無しさん@ピンキー
08/08/05 15:32:25 2y1/MJlD
いまkqoXYfVyがアツい

642:名無しさん@ピンキー
08/08/05 16:08:19 Mm7UiYW4
一人で荒らし活動お疲れ様です!
確かに涙ぐましくさえあるな(笑)

643:名無しさん@ピンキー
08/08/05 16:29:18 W4zJQoYH
作品がこんなに大量に来ているだと・・!
作者様GJ過ぎるっ!ここは楽園だ・・。

644:名無しさん@ピンキー
08/08/05 17:45:54 XXgqSile
夏厨多いな

645:名無しさん@ピンキー
08/08/05 18:59:53 GfTvSIBh
GJ

>>617のスpに地味にフイタのは俺だけで良い

646:名無しさん@ピンキー
08/08/05 19:52:05 wBiay6lj
というか、緑猫さんって男だったのか
今まで女だと思ってたよwwwwwww

647:名無しさん@ピンキー
08/08/05 20:38:37 IXa8uDXX
久しぶりの投下だ。ありがたや、ありがたや

648:名無しさん@ピンキー
08/08/05 22:15:41 oeGqp2T/
両手のひとgj!

649:名無しさん@ピンキー
08/08/05 22:17:20 Lyxk518A
キターーー!
GJ!!

650:名無しさん@ピンキー
08/08/05 23:53:48 kqoXYfVy
単発ワロスと揶揄されて、それでも同じIDが出てこないとは
両手の前編でGJしてた人も、同じ日に後編が投下された後は綺麗さっぱり消えちゃっているし
冷淡な連中だよなw
心無いどこかの書き手に酷いことされた今じゃ、両手の人には同情してるが

651:名無しさん@ピンキー
08/08/06 00:03:18 v5mJBOeb
修羅場に必要なのは憎しみだと思うんだ

付き合っていた幼馴染よりも大好きな女の子が誘惑してくるので
思わず、やりたい年頃だった主人公は幼馴染を捨てて、ヤリマンの方に逃げる
ヤリマンとやりまくっている間を幼馴染は盗撮カメラで泣きながら視聴

主人公を振り向かせるためにHな本を買ったり、いろいろと勉強に励む幼馴染

その頃、ヤリマンに主人公の子供を妊娠疑惑が発覚
それは主人公を試すための嘘だったが、主人公はあっさりとヤリマンを捨てて
幼馴染の所に戻って元サヤ

いろんな意味でブチ切れたヤリマンが主人公の家で責任を取れと強要するが
主人公に幼馴染の親が経営している産婦人科を紹介される
中絶しろ そして、俺に関わるなと言われたヤリマンはその場にあった鋸で

主人公を殺害

何箇所も切断して死体を組み立てて、ヤリマンはまたヤリまくる

幼馴染、主人公がいなくなったので失意のあまり自殺

めでたし めでたし


これでいいのだ

652:名無しさん@ピンキー
08/08/06 00:54:44 BcNxDL/z
夏だねえ・・・

653:名無しさん@ピンキー
08/08/06 01:12:07 iH7V6v0f
釣りだとおもうんだ

654:名無しさん@ピンキー
08/08/06 01:31:20 BcNxDL/z
何が?

655:名無しさん@ピンキー
08/08/06 01:47:45 cWQ7jt/q
そんなもん見ればわかるだろ・・・・・・・・・・・・・・・・・どこだ?
・・・・・・・・・・!!ハッ!・・・・まさか・・・「釣りだとおもうんだ」が釣りなのか!!

656:名無しさん@ピンキー
08/08/06 01:55:48 qQKKaHyQ
夏厨はおとなしく帰れ。pinkは一定時間以上利用すると金とられるぞ

657:名無しさん@ピンキー
08/08/06 21:25:19 5XITWKlk
>>660

お前も帰れ

658:名無しさん@ピンキー
08/08/06 23:04:34 Jy4wHsIZ
ふと思うんだ、あの嫉妬と修羅場にまみれた日々に戻れたら
どれだけいいんだろうか

659:名無しさん@ピンキー
08/08/06 23:28:06 SPRGaGu2
今さら何を……

660:名無しさん@ピンキー
08/08/07 02:07:54 kfXh0bbi
何故か、実家に帰省すると自分が付き合っていた女の子が兄貴と結婚していたという
ストーカーの実話は多分嘘だよ



661:名無しさん@ピンキー
08/08/07 12:37:47 C/+9CC31
>>664
お前・・・・・・・・・・泣いてんのか?

662:名無しさん@ピンキー
08/08/07 22:04:35 bK7kSGAu
>>664
多分あれだな…
何だっけ

663:名無しさん@ピンキー
08/08/08 15:00:54 alP1D6LK
>>664
むしろ、ストーカーが主人公の家に潜り込んで、ベットの中で昼寝しているところを
主人公に目撃されているのがいいと思うよ

664:名無しさん@ピンキー
08/08/08 18:18:26 u0kUm+hR
知らない猫がベットで寝てる…

665:名無しさん@ピンキー
08/08/08 20:07:47 Y0ZR1rYd
>>668
チャンスだな
その猫を可愛がってやれば恩返しに来るぜ
そして、お前に嫉妬の雨を降らせるのさ

666:名無しさん@ピンキー
08/08/08 20:23:46 U/YM0KA2
猫って、かなり嫉妬深いらしいぞ

何ゆえに泥棒の後に猫が付いているのかわかるから

667:名無しさん@ピンキー
08/08/08 23:26:23 fOrYtj3y
平気でマナー違反するバカのお陰でスレが白けちまったな
なのに「今度は九十九だ」って平気で言えるあたり、氏の常識を疑う
謝罪くらいあってもいいんじゃないか

668:名無しさん@ピンキー
08/08/08 23:27:46 XPZdwUvg
(゚Д゚)ハァ?

669:名無しさん@ピンキー
08/08/08 23:28:36 Jk6j0l1e
反応するなって調子にのるから

670:名無しさん@ピンキー
08/08/09 00:32:26 50SIAzDo
けど、今度の指摘で本人も自分の底意地の悪さに気付いたんだろう
ショックのせいで投下が中途半端に止まってるよ

671:名無しさん@ピンキー
08/08/09 00:34:38 gqRjImRM
夏だな

672:名無しさん@ピンキー
08/08/09 00:35:03 gqRjImRM
夏なら修羅場の炎を聖火として祭り上げて欲しいもんです

673:名無しさん@ピンキー
08/08/09 00:36:33 gqRjImRM
むしろ、北京オリンピックの競技に言葉様を参加させるのが一番だね
どれだけ、鮮血になるか楽しみだ

674:名無しさん@ピンキー
08/08/09 00:40:47 cvZcwcaI
>>677
世界殺しなら間違いなく金メダルは頂きだね

675:名無しさん@ピンキー
08/08/09 07:59:15 gw9zlCR4
いろんな意味で世界を「とれるな」

676:名無しさん@ピンキー
08/08/09 12:52:11 FiHTclBb
競技→凶技

走り飛び降り(ビルの屋上から)

槍投げ→殺り投げ(死体遺棄)(ヤリ逃げは誠限定)

砲丸投げ→睾丸投げ(誠の限定)

棒高跳び→船高飛び(niceboat)

なかなか思いつかないな。他には何がある?

677:名無しさん@ピンキー
08/08/09 17:18:46 1jvHiFcQ
>>680
100M走の鬼ごっこ(ランナーの後ろに鋸を持った少女達が追いかけます)

ヤラソン(42.195kmを走ってくれば、ヤンデレが追いかけて来ません
      捕まったら、監禁されます)

こんな感じ?

678:名無しさん@ピンキー
08/08/09 18:18:04 gw9zlCR4
俺は世界を殺る(とる)といったんだが・・
なんかびみょいな

679:名無しさん@ピンキー
08/08/09 20:25:56 AMRPzp5i
     _ ―- ‐- 、
    (r/ -─二:.:.:ヽ       始まったな
    7''´ ̄ヽ-─<:.:.',                  __
.   〈t<  く=r‐、\:く       _ ...-::‐::¬::::: ̄:::::::::::::::::::::::::::::::
   ∠j ` / ,j={_/ヽヽr'       >:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
.    っ Y _/ ヽ了       /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
.    し イ --─¬       /::::::/:/|:::/::∧:::∧:::::::::::::::::::::::::::::::::::
      f: :_: : :_:_:_└ 、     |/f|/|/ .|/ |/ ∨ ヽ|\:::::::::::::::::::::::::
     /-ー/: : : : : : :\      {            ヘ:::::::::::::::::::::
    /7: : : :r: : : : : : : : : }     ',  .j /     }   .}::::::::::::::::::::
   /: : : : : :.|: :j: : : :\: : j      } /_       ミ   ヘ::::::::::::::::::
  /: : : : : : : j: ヘ、: : : : \|    /く<l´::<ニ二 ̄`>   ミ:::::::::/
 ./: : : : : : : \::::ヘ: : : : : : :ヽ    {::ア{:::::::}厂¨,`_______j:::::://       あぁ
 {: : : : : : : : : : ヘ:::ヘ: : : : : : :',    V ヘ::::ノ` ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ .{::::|ヽ
 ',: : : : : : : : : : : :\ヘ: : : : : :ヘ.   /  ヘ¨       //:}::::|/
  ',: : : : : : : :::::::::::::::::::〉: :_:_.r--―く   >ヽ      /   _ノ::::{ _/
  '; : : : :.::::::::::::::::::::::r</ :.:..   `ー¬\__        /::::/
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680:名無しさん@ピンキー
08/08/10 00:02:01 UgFvmIrD
好きな女がヤンデレならどうする?

681:名無しさん@ピンキー
08/08/10 00:03:59 yWcaOw6T
最高だ

682:名無しさん@ピンキー
08/08/10 01:48:15 XC8xdgFh
ヤンデレの嫉妬って、誤解とすれちがいとまた誤解と変な解釈でやるから
主人公の取った行動って、なんでも嫉妬してしまう罠


猫に餌をあげた場合だと

私よりもあの猫さんの方がいいんですか。許しません
ねこさんのはらわたを切り裂いてあげます。これであなたは
私だけのもの

って感じ

683:名無しさん@ピンキー
08/08/10 02:13:49 ZJtsycPJ
あー夏休み!

684:名無しさん@ピンキー
08/08/10 04:20:09 47NjcWSc
>>687
お前も読書感想文が残ってるだろ

685:名無しさん@ピンキー
08/08/10 07:25:01 uwvLC5QN
大学生も夏休みなんだがな
因みにみんな夏休みの課題はに嫉妬深い姉を探すことだよな?



ってか浪人時代より大学入ってからの方が忙しいってのはどうよ?
SS書く暇もありゃしない

686:名無しさん@ピンキー
08/08/10 11:39:11 ZfGTfo4r
とりあえずsageようぜ

687:名無しさん@ピンキー
08/08/10 23:02:14 IrN08lB9
何気なく気になってたスレなので投下させてもらいますね

688:名無しさん@ピンキー
08/08/10 23:03:12 IrN08lB9
 どうして、ボクはボクである存在になれなかったのだろうか。
 幾度も、自分自身になりたいと思った。
 しかしそれは、ボクの心が、許さなかった。
 有限の命の限りに生きていかなければならないというのに、自信を見つめることは、何よりも躊躇うことだから。
 それは、これまでの人生がそうであったし、これからの人生も変わることはないだろう。
 その所為なのだろうか。彼女たちの気持ちに気付いていたのに、最後には全てを捨てて、逃げ出してしまったのは。
 ボクが、ボクで無い存在に完全になってしまったなら、きっと彼女たちは諦めてくれるだろう。
 そう、信じていたから―。




 ボクは、誰なのだろうか。







 まだ早朝の気だるさは残っている。
 珍しく寝巻きから着替えもせずに、朝刊を膝の上に乗せたまま、呑気にテレビに映るニュースの内容に没頭していた。
 端的にその内容を説明するのならば、世の中は金さえあればほとんどのことは許容されてしまうということ。
 無論、それがおかしいとは思わなかった。
 それは人の心の中に必ず根付いていること。その思いの大小に関係なく、認めなければならないことだろう。
 しかし、もし何らかの出来事で被害を受けた人たちがいるとすれば、どうだろうか。
 やはりそんなことがあったとしても、裁判を行なって勝利を得たとしても、結局は金という形で結果が返ってくる。
 例え人がどんな想いを抱いていたとしても、だ。
「……ととと、もう七時になってる」
 ニュースの内容が変わったことで、先ほどまで頭の中を巡ってた思考が途切れた。
 朝から呆けている場合じゃない。まだシャワーすら浴びてないのに、あと一時間半で朝食も身支度も終えて、急いで学校に行かなければならないのに。
 内心、かなり焦っている。
 何せ慌てることなんて、普段の生活からは考えられない。
 寝巻きを脱衣篭に脱ぎ捨てて、風呂場へと入る。
 夏の朝から冷水を浴びる、という体育会系の思考はなく、あくまでも熱めのお湯を全身に浴びる。
「頭が痒い~」
 正直なところ、まだ意識は覚醒しきっていない。
 その証拠に先ほどまでニュースを見ながら考えていたことは、綺麗さっぱり頭の中から忘却されていた。
 しかしそれも、自身の髪の毛に手を伸ばしたところで終わりを告げる。
「ふむ、最近は暑いから汗も掻いちゃうし、やっぱり毎日朝夜って風呂に入らないとダメかな」
 鏡には、一男子としては有り得ない姿が映し出されている。
 腰まで届きそうな長い黒髪に、つられて見えるすらりと細い腰。
 高校生男子とは思えない体格のくせに、背はそこそこ伸びているが、自分でも諦めが付いてしまうほどの男らしくない顔。
 そんな自身の見てくれに肩を落としながらも、静波雅(しずなみ みやび)は髪の毛だけは大事にしていた。
 痛まないように丁寧に、髪をシャンプーするときは割れ物を扱うかのように繊細な指使いで触る。
 すでに両親が他界している自分にとって、母親譲りらしい質のいい髪は、物心付いた頃から大事にしていた。
 男らしくないとか、気持ち悪い趣味だとか、周りからは思われているだろうが、そんなことは関係ない。
 声も聞いたことがなく、触れたこともない家族の繋がりを、少しでもいいから残したかっただけなのだから。





689:名無しさん@ピンキー
08/08/10 23:03:35 IrN08lB9
「いってきます」
 一人暮らしの我が家から学校までの距離は近い。始業の予鈴が鳴るのは八時半だが、それよりも一時間早くには家を出る。
 片道十分ほどのその距離を歩くのに、普通の学生はそんな早い行動はしないだろう。
 つまり、雅にはこの時間に登校しなければならない理由があるのだ。
 学校へ向かうルートを歩く前に、隣人もとい幼馴染を起こしにいかなければならない。
 つい最近またリフォームをしたとか、そんな話を聞いた隣人の家の前に立っていた。
 新築のような綺麗な外見の家を眺めながら、チャイムを鳴らす。
「あらあ、おはようみぃちゃん。毎日ご苦労様」
「おはようございます。繁縷、まだ寝てます?」
 自分のことを“みぃちゃん”と呼びながら現れたおばさんに会釈し、目的の人物について訊ねる。
 返答の代わりに、苦笑しながら首を左右に振ってきたのだが。
「あと五分で部屋に入るよ、って言っておいてください」
 仕方ないので、そのまま玄関の外で待つことにした。
 毎度のことなのだが、ここからは背中に煩い音が聞こえてくる。器物を破壊したような音や、水が吹き出るような音。とにかく音という音が出尽くしてくる。
 そしてきっちり五分。背にしていた玄関から物凄い勢いで人影が飛び出してきた。
「はあ、はぁ……お、おはよう、みぃちゃん」
 家の中で何があったのかは知らないが、思い切り息を切らせている彼女が、申し訳なさそうにこちらを見た。
「おはよう。相変わらず朝から飽きないね。寝坊するの好き?」
 彼女―和泉繁縷(いずみ はこべ)が困ったような笑いを見せてから、突然頬を膨らませる。
 ばたばたとその場で暴れる様子が、小動物の行動のように見えて微笑ましいものなのだが。
「仕方ないのー! お姉ちゃんだって色々忙しいんだから!」
 通学路でそれをやられるのは、恥ずかしいことこの上ない。
 お姉ちゃん、という通り、繁縷は雅よりも一つ年上であり、今年で卒業を控えている高校三年生だ。
 成績優秀であり、美人、よりかは可愛い印象のほうが強い顔立ちに、雅よりも長い黒髪を揺らしている。出るところは出過ぎているスタイルは、学校ではかなりの人気を博している。
 非常に落ち着いて穏やかな性格であり、人間的にも確立されているため、生徒会長に就いている彼女を知らない、という生徒は少ないだろう。
 だが、どこでどう間違ったのか、学校外の実生活はその姿はまったく見受けられないのだ。
「ほらほら、もう少しで学校に着くんだから、そんなおバカなことはやめなさい」
 肩を叩いて、とてもじゃないが年上とは思えない繁縷を宥める。
 それでも未だに不貞腐れているのか、じろじろとこちらを見ては、目を逸らすということを繰り返している。
「だぁーってえ、みぃちゃんが苛めるんだもん! そうやっていっつもいっつも、どれだけ私が傷ついてると思ってるの!?」
 泣いたフリを演じているのは明らかなのだが、都合の悪いことに学校が目の前に迫っている。
 諦めてこちらが折れるしかないのだが、学校の敷地に入るまでに渡さなければいけないものがある。
 弁当の包みを二つ、鞄から取り出して繁縷に渡す。
 未だに暴れていた繁縷の動きが、それでピタリと止まる。
「あ、今日のお弁当だ。ありがとう」
 二つの包みを受け取って、繁縷の表情が柔らかくなる。
 同時に腕を絡ませてくるが、学校目前ということもあって強引に引き剥がす。
「もう学校だからおしまい。これ以上おバカになったままでいると、繁縷のイメージが悪くなるよ」
 言われて繁縷も気付いたのか、自分の頬を何度か軽く叩いて表情を引き締める。
 自分で叩いて痛かったのか、涙目になっているのだが、大丈夫だろう。
 それから校舎までの道はあっという間だった。
「それじゃあ雅君。またあとでね」
 先ほどとは打って変わり、まるで別人のような繁縷が手を振りながら、優雅な仕草で先に教室へと向かっていった。
 ようやく彼女の体が、“学校モード”に切り替わったのである。
 姉の本当の姿を知っている身としては、それは奇妙な光景だったが、今更のことなので気にすることもなく、雅も自分の教室に向かっていった。





690:名無しさん@ピンキー
08/08/10 23:06:20 IrN08lB9
 二時限目の授業も終わり、次の三、四時限連続の体育授業のために更衣室に向かう。
 が、席を立ったところで不意に呼び止められた。
「雅ー、一緒に行こうぜ」
 これがまた、実生活の繁縷と肩を並べれるほど騒がしい人物である。
 ―清原墨人。中学の頃から何かと腐れ縁がある男友達。
 一人よりかは二人で歩いたほうが楽しいのは事実で、それは気の知れた人物だからこそ成り立つものである。
 無論、体育の授業中でもそれは続いていた。
 男女共同で使っている体育館は、それぞれにスペースが半分ずつ分けられている。
 男子のほうではバスケが行なわれており現在は雅と墨人共々、組み合わせのチームではないので壁際に座って無駄話をしていた。
「女子はバレーか……エロいよな」
 唐突に変態的な発言をした墨人を一瞥して、雅も何気なく女子のほうに目が向いた。
 なるほど、と納得してしまうような光景が広がっている。
 シャツとジャージという姿の女子たちが、身体を目一杯使って球技に集中している。
 当然、揺れている箇所は揺れているわけで、墨人の言いたいことはよく分かった。
「やっぱ久遠の胸が一番だよな、ホント」
 と、墨人の目が一点に集中していた。
 一際大きく揺れている胸が、本人の存在を更に強調しているように見える。
 丁度、久遠美津希(くおん みつき)が相手チームのコートにスパイクを打ち込んでいたところだった。
「ちょっと、同級生相手にそんなこと言うのって……」
 かといって、墨人が躊躇いもなく胸だの何だのと言う神経が理解できない。
 思わず言いかけたが、墨人はあっさりと言い切ってしまう。
「周りからオナペット扱いされてるし、別にいいんじゃね?」
「本人に聞こえたらどうするのさ……」
 その墨人の発言に、否定することもなかった。
 事実、彼女の噂と周りの男子の奇異な視線を見る限り、その発言は間違っていないと素直に思えるからだ。
 久遠の容姿は、それこそ雅がよく知る女性の繁縷に負けず劣らず、見事なまでに完成されている。
 よく手入れされた長髪に、豊満な胸にすらりと伸びた脚。同年代の女子に比べて一つ上を行く美人の容貌。
 加えて大企業の久遠グループの娘というお嬢様であれば、目を付けない男はいない、らしい。
 そして彼女に突撃していった男は、次々と玉砕していったと言われている。
 学校ではイケメンと言われている男、スポーツが出来る男、勉強が出来る男、数えるのが面倒なほどの人数の男たちが潰されたのだ。
「うちのクラスだって、そう思ってる奴らはたくさんいるだろ」
 しかし振られた男達は、決して彼女のことを諦めてはいないらしい。日々熱い視線を彼女に向けていて、再び機会を狙っているとのこと。
 墨人の言葉につられてふと周りを見る。
 バスケに参加していない何人かの男子が、卑しい目つきで久遠を見ているのが分かる。
 恐らくは、この中にも彼女に告白した者はいるのだろう。
 気持ちは分からなくもない。
 ただ、共感することはできない。
「どうしたの雅? そんなに難しい顔して」
 ふと掛けられた声に驚く。
 いつの間に女子の試合が終わったのか、久遠が覗き込むように目の前にいた。
 こちらが座っているせいか、彼女の姿勢が前屈みになっていることもあり、シャツ越しに見える胸が柔らかそうに揺れている。
「あ、ううん。ちょっと疲れてて」
 まさか、『先ほどまで墨人と、あなたの胸について話してました』などと言えるわけがない。
 とうの墨人は、まるで何事もなかったかのように別の男子と話を始めていた。
「久遠さんは、試合どうだったの?」
 彼女と話すようになったのは、二年に進級してから間もない頃からだった。
 明るく、それでいてはっきりと自分の意思を伝える彼女の性格には、羨ましく思うものがある。
 告白を次々と断っている、というのは自尊心が強いのだろう。
「あら、見てくれてたの? もちろん試合には勝ったわ」
 試合に勝てたのがそれほど嬉しいのか、満足したような表情を見せてくる。
 これがなかなか、可愛いものである。男子に人気があるというのも、分かる気がする。

691:名無しさん@ピンキー
08/08/10 23:06:48 IrN08lB9
「凄いね。ボクはあんまり運動は得意じゃないから、羨ましいよ」
 掛け値無しに久遠を称賛できるのは、心の底から彼女のことを羨ましく思っているからなのだろう。
 対して試合後すぐということもあるのだろうか、久遠の顔は赤く染まっていた。
 かと思いきや、突然周囲を何度か窺ったりと落ち着かなくなってきている。
「ご、ごめんなさい。もう戻るわ」
 久遠はそう言うや否や立ち上がって、今度はこちらの様子を何度か窺いながら女子の輪に戻っていった。
 終わった頃合を見計らっていたのだろうか、久遠が女子の輪に戻って程なくしてから、墨人が話しかけてきた。
「なあ、お前って久遠とよく喋るよな」
 不思議そうに訊ねてくる。が、これまで何度墨人が同じことを訊いてきただろうか。
 溜め息を吐きながらそれに答える。
「さあ? ボクの顔が男っぽくないからじゃない?」
 自分で言っておいてなのだが、何気なく傷ついてしまう。
 久遠が異性と話している姿を見るのは、男のほうから声を掛ける以外はほぼ見かけることはないらしい。
 男が嫌いだから、誰に告白されても断っている、という噂もある。
 しかし、そうは言っても現に彼女は先ほどのように、たまに話しかけてくることがあるのだ。
 恐らくは、雅の顔を見ても男だと認識しないのだろう。
 残念なことに生まれてからこれまで、学校指定のブレザーを着ていようが、男子トイレにいようが、初対面の人間からは必ず女だと間違えられている。
 伸ばしている髪のせいもあるだろうが、何よりも鏡を見たときに、自分でも悲しくなるほどの女顔が映っているのが原因なのだろう。
「そう言うなら髪を切れ、髪を」
 墨人が厄介払いをするかのように、雅の長髪を手で追い払うような仕草をする。
 しかしそれは無理な話だ。
 この髪は、自分の母親の姿を思い浮かべるための証であり、そして、
「もう、そんなこと言ったって切れないよ。大事な髪なんだから」
 自分に残っている、唯一の家族との繋がりなのだから。




692:名無しさん@ピンキー
08/08/10 23:08:59 IrN08lB9
「雅君ー、お弁当食べよう?」
 大して動きもせず、それでも適度に疲労感が溜まった体育授業が終わり、昼休みの時間になった途端だ。
 教室の前で待っていたらしい繁縷が、嬉しそうにこちらに駆け寄ってきた。
 墨人とのんびりと教室に入ろうとしていたところで呼び止められたが、別段いつものことであった。
 しかし、その“いつものこと”で毎度ながら墨人が激昂するのだが。
「うおおおお雅いいいい!! お前はまたしても会長の弁当を食べに行くのか!!!!」
 ボクが作った弁当なんだけどね、と言いかけたが踏み止まる。
 苦笑しながら黙って聞いていると、なおも墨人が続けて叫び声を上げる。
「我らのアイドルの和泉会長が、よりにもよって本人自体に男っ気の無い奴が!! ただ幼馴染だからという理由で手作りの弁当を食べさせてもらうなど許すことができるか!!」
 長々と喋る墨人につられて、徐々に雅に対しての悪意ある声が上がってくる。
 改めて繁縷の人気を再確認されているようだが、全く持って気分は良くない。しかもよく見渡すと、体育授業から戻ってきたクラスの生徒たちも見かけるから堪ったものではない。
 いつの間にか嗚咽を漏らして泣きじゃくる墨人だったが、結局は構わずに周囲に微笑を向けている繁縷の手を引いて、急いでその場から避難した。
 この学校は、普段は屋上は解放厳禁である。
 しかし、一時的な備品の保管場所の役目など、意外と使用する機会が多い。
 そのため、生徒会が鍵を保管している。つまり、繁縷と昼食を済ませるときは、いつも屋上に行くことになっているのだ。
「ほらみぃちゃん、早く食べようよー」
 繁縷がいそいそと嬉しそうに弁当の包みを解きながら、こちらにも弁当を渡す。
「作ったのはボクだから、複雑な気分なんだけど」
 朝に手放した弁当が、よもや幼馴染が作った弁当へと早代わりするとは。
 しかも昼には必ずご対面という、なんとも無駄なことである。
「ダメなの! 私が作ったってことにしなきゃ、生徒会長としての威厳がないでしょ?」
 何処がダメなのか分かりません。
 ただ見栄を張りたいだけじゃないのか。
「なら、別にボクの分の弁当まで取っていかなくてもいいじゃない」
 広げた弁当箱を見て、これが本当に繁縷が作った弁当なら、と思う。
 しかしそれは叶わないことだろう。何せ繁縷を台所に立たせるということは、単純に死を意味することになるのだから。
 それに、自分の弁当だけ持っていけば、わざわざそんな愚行をすることもないのだから。
「だ、ダメダメっ! 絶対ダメ! みぃちゃんと一緒にお弁当食べれなくなるじゃない!!」
 物凄い形相で、繁縷が迫ってきた。近すぎて、おでこ同士がくっ付きそうになるほどの距離までだ。
 焦っているようで、危機迫っているようで、恥ずかしそうな繁縷の表情が視界一杯に広がっている。


693:名無しさん@ピンキー
08/08/10 23:09:15 IrN08lB9
 ―やっぱり、姉よりも妹と言ったほうが正しいのか。
 小さい頃は自分がどこに行くにも、繁縷はその後ろをちょこちょこ付いて歩いていた。中学生くらいになった頃からどうしたのか、突然繁縷が姉のような振る舞いを見せてきてからは、その立場は変わったが。
 とは言うものの、繁縷の後ろを好きで付いて歩いたことも多くはないし、大抵は引っ張られていったことばかりなのだが。
 彼女には、小さい頃からの癖が抜けてないのだろう。
 ただ、自分と一緒にいるということが習慣付けられていることで、幼馴染をこれまで通しているのだろう。
 気の知れた仲で、尚且つ甘えて、文句を言ったとしても許容される仲。居心地がいいのは確かだ。
「もう、繁縷も子供じゃないんだから。……そんなんじゃ彼氏の一人や二人出来ても、苦労しちゃうんじゃない?」
 居心地の良さを知ってしまっているから、それ以上のことは望もうとすら思わないのだろう。
 だがそれでは、彼女自身は成長しないだろう。
 確かに、自分としても姉と呼べる繁縷がいるのは嬉しい。事実、彼女がいなかったら今の自分があるかすらも、分からないのだから。
 誰よりも身近に彼女を見てきたと自負しているからこそ、彼女はこのままではいけないと思う。
「ねえ、みぃちゃん?」
 いつの間にか、繁縷がこちらの様子を伺っていた。
 声の調子が、先ほどに比べて低いのが分かる。もしかしたら、気に障ることを言ってしまったのではないだろうか。
 だが、その思考は繁縷の言葉によって断ち切られる。
「みぃちゃんは、今の私のこと、嫌い? 一緒にいて、疲れる?」
 何かに怯えているようで、恐る恐ると訊ねられた。
 雅は首を傾げて、けれどもほんの少しの間を置いてから、ふるふると首を左右に振った。
 自然と、その心は穏やかな気持ちで溢れて、
「疲れるわけないでしょ。お姉ちゃんの面倒を見るのも、弟の仕事、じゃない」
 自分を頼ってくれている姉の存在が嬉しい。姉と呼ぶことが出来て、頼られて、それこそが繁縷の活力である。
 そう遠くなく、彼女の目の前には良い男性が現れるだろう。
 現在の彼女こそ、子供らしさが存分に残っており、また誰からも頼られる存在であることも事実である。
 自分は、彼女の心が子供から大人の女性に成熟するまで、温かい目で見守ることが望んでいる。
 何も無かった自分を生かしてくれた幼馴染に対する恩返しでもあるから。
 雅は薄らと微笑み、繁縷の頭をなるべく優しく撫でた。
「ん……ありがと……」
 くすぐったそうに、けれどもどこか寂しそうな表情を浮かべながら、繁縷は雅の腕にゆっくりと自身の腕を絡ませた。
 不安なのろう。彼女は根底ではしっかりとしているが、まだまだそれは表に出ることが少ない。
 もうしばらくは、彼女の面倒を見なければならないだろう。苦笑しながら、雅はそのことを嬉しく思うのであった。


694:名無しさん@ピンキー
08/08/10 23:10:34 IrN08lB9
とりあえず1話分? くらいなところで切ります。まだ嫉妬も糞もない状態ですが失礼しました

695:名無しさん@ピンキー
08/08/11 00:08:11 I76QshSY
おちゅ

696:名無しさん@ピンキー
08/08/11 00:12:26 UD4DnDlT
投下GJ
期待させていただく

697:名無しさん@ピンキー
08/08/11 01:00:20 DOtk45EB
>>698
乙です
久々の新作投下…この後の泥沼展開が待ち遠しいぜ

698:名無しさん@ピンキー
08/08/11 01:47:00 VNWI4eCS
投下乙
新作期待

699:名無しさん@ピンキー
08/08/11 03:15:57 Q1L2X1II
>>698
GJ!
ところで墨人って何と読みますか?

700:名無しさん@ピンキー
08/08/11 05:33:05 P7rir5Vv
ググレカス

701:名無しさん@ピンキー
08/08/11 06:58:36 szYfeG5m

主人公の「長髪に家族のつながりを感じる」とかいう部分にちょっと無理があるような?
個人的にはどこにでも居そうな一般的な主人公のほうが良いなあ

702:名無しさん@ピンキー
08/08/11 07:17:04 hGKc+6/r
居るとすげぇウザイけど
居ないとほんの少しだけ寂しいカツって不思議!

703:名無しさん@ピンキー
08/08/11 07:17:22 hGKc+6/r
はい誤爆ごめんなさいorz

704:名無しさん@ピンキー
08/08/11 12:19:01 FzsB+IBr
ところどころで第三者視点になってるのが気に掛かる
それと解放→開放とか、誤字がちらほら
後悔しないためにも読み返しをしようよ
ともかく緑猫の尻拭い、乙です

705:名無しさん@ピンキー
08/08/11 14:07:39 8an3vvf6
嫉妬の炎を燃やす女の子による惨劇は何かほれぼれするよな

706:名無しさん@ピンキー
08/08/11 14:12:23 /RaBH+qO
●相手のヤンデレがしゃべりたいことを察知し、それをヤンデレがしゃべるように誘導してあげる。

●ヤンデレが何をしゃべりたいかは、そのヤンデレ自身が気づいていない。これをヤンデレ自身よりも先に気づいてあげる。

●会話の辻褄や一貫性は敢えて無視する。論理的に正しいことではなく、ヤンデレが楽しい気分になるように会話を誘導する。

●ヤンデレは一方的に話す男が嫌い。自分がしゃべっている最中もヤンデレの表情を注意深く観察し、少しでも退屈していたら、話の途中でも敏感に話の展開を変化させる男が好き。

●ヤンデレは、抜け目のないだけの男は嫌い。ヤンデレにあっさりやられてくれるような、どこか抜けたところのある、おおらかで人のいい男が好き。

●ヤンデレは、頭で考える男が嫌い。腹やハートで考える男が好き。

●ヤンデレは、口でしゃべる男が嫌い。ヤンデレは、腹やハートから言葉を放つ男が好き。

●ヤンデレは、単に明るいだけのバカポジティブ男は嫌い。絶望も苦しみも血を流しながら感じ取り、逃げずに真正面から引き受けた上で、陽気、建設的、未来志向、もしくは、深い自己了解や自己解放をもたらすような話をする男が好き。

●ヤンデレは、愚痴、悪口、泣き言を言う男が嫌い。

●ヤンデレは誰かを見下したり、嘲笑したり、貶めたりする男が嫌い。

●ヤンデレは「オレはダメな男なんだ云々」と自己卑下・自己否定する男が嫌い。(さんまのように、ジョークやネタとしてやるのはよい)

●ヤンデレは、自分が優しいことをアピールする男が嫌い。本当に優しくないとできない気遣いをする男が好き。

●ヤンデレは、自分が頭がいいことをアピールする男が嫌い。本当に頭が良くなければ出来ない気の利いた会話や思慮深い段取りをする男が好き。

●ヤンデレは、しゃべる価値のないことをしゃべる男が嫌い。何かをしゃべるときは、それがホントにしゃべる価値のあるセリフかどうかを見極めてから口に出す。

●ヤンデレは、ヤンデレの言葉の表面上の意味ではなく、その裏に横たわる気持ちや意図や事実関係をくみ取ってくれる男が好き。

●ヤンデレは、ヤンデレの言葉を奇想天外な面白解釈してツッコミを入れてくれる男が好き。(ただし、ヤンデレを持ち上げるような愛のあるツッコミでないとだめ。ハズしたときは、すかさず自分ツッコミして笑いを取る。)

●相手のヤンデレがしゃべっているときには、ヤンデレがしゃべっている内容に反応する形で、自分の表情を繊細にコントロールして共感、驚き、無表情等をしてみせる。

●自分がしゃべっている時も、自分の言葉に表情をシンクロさせたり、わざと言葉の内容と表情をミスマッチにして笑いを取ったりする。

●普段から、鏡を見て、さまざまなバリエーションの、味のある表情を出す訓練をしておく。

●ヤンデレは、学歴、社会的地位、読んだ本をさりげなくほのめかす男が嫌い。まるでなんの本も読んだことがないかのように、日常の言葉だけで、なにげなくヤンデレの気持ちに届く言葉を放つ男が好き。

●ヤンデレは、それとなく余裕をアピールする男は嫌い。本当に余裕があり、余裕が自然とにじみ出てくる男は好き。

●ヤンデレは、金持ちでも貧乏くさい男は嫌い。貧乏でも気前のいい男が好き。

●ヤンデレは、筋肉が衰えて、立ち居振る舞いがだらしない感じになっている男が嫌い。立っても座ってもしゃきっとした印象になるくらいには、全身をバランス良く鍛えておく。

●「そのヤンデレ自身が気づいてない、そのヤンデレが欲しいモノ」を見つけ出して、プレゼントしてあげる。これをするには、そのヤンデレを普段からよく観察する必要がある。

●ヤンデレはだらしない服装の男が嫌い。しわしわの服やちぐはぐのカラーコーディネーションの服は着ない。

●ヤンデレは、ヤンデレでなければ気づかないことを気づく男が好き。

●ヤンデレは不潔な男が嫌い。毎日入浴し、歯を磨き、清潔な服を着る。

●ヤンデレは、途中、どんなに醜態をさらしても、最後の最後には自分の内なる道徳律を貫く男が好き。



707:名無しさん@ピンキー
08/08/11 14:17:54 xksnKkih
>>710
スレが違う


708:名無しさん@ピンキー
08/08/11 14:33:41 lMQWBTFv
>>710
スレ違いな上に同意しかねるものが多々ある
ヤンデレを語っておきながら何も分かってない
嫉妬深い女の子に泥棒猫と勘違いされて刺されるがいい(アナル的な意味で)

709:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:29:53 241t2suw
アッーーー!!!

710:名無しさん@ピンキー
08/08/11 21:53:15 ZZUCFHFP
>>710産業で頼む

711:名無しさん@ピンキー
08/08/11 22:55:39 03iKUMLJ
>>706
糞笑った

712:名無しさん@ピンキー
08/08/12 07:35:00 pm+6rc+2
いよいよ盆だな

713:名無しさん@ピンキー
08/08/12 20:57:23 GW9+SMus
社会人になって離れ離れになった人達も再会するんですね。

たくさんの良き修羅場があってくれると嬉しいね

714:名無しさん@ピンキー
08/08/13 01:51:49 sTZ3MTYB
sin.cos.tan

715:名無しさん@ピンキー
08/08/13 04:57:51 W1AdxU8H
URLリンク(www10.atwiki.jp)
URLリンク(www10.atwiki.jp)

716:名無しさん@ピンキー
08/08/13 12:45:25 nx8Yxl14
>>719
男のヤンデレはいらない

717:名無しさん@ピンキー
08/08/13 15:55:07 QppumL2f
>>720
佐々木は女だよ
┃┃¨━(σ-`д・´)━ ╋┓

718:名無しさん@ピンキー
08/08/13 20:22:36 HX4mmEYD
顔文字きめえ

719:名無しさん@ピンキー
08/08/13 22:22:08 Pt4pkd4u
かわいい
狐だろ?

720:名無しさん@ピンキー
08/08/14 20:18:00 s7xg6Ddc
>>719
スレ違い

帰れ

721:名無しさん@ピンキー
08/08/14 22:17:11 zVI3HDjN
暑い・・・
なにか冷たくなるようなSSないか

722:名無しさん@ピンキー
08/08/15 02:02:09 nPXeTPQN
 最愛の彼女が事故で亡くなって二年半が経った。
 最初は独り悲しみ嘆いていた男だが、そんな男を支えてくれた女性がいた。
彼女は男の友人であり、そして亡くなった彼女の親友でもあった。
 辛いのは同じ。だが、今にも崩れ落ちてしまいそうな男を支える事で自分を
奮い立たせていたのかもしれない。
 恋人を失った男と親友を失った女。男は女に支えられ、女は男を支える事で
なんとか立っていることができたのだ。
 そんな二人が自然と結ばれていく事は不思議なことではなかった。共に傷をなめあいながら
生きていれば心も近くなっていくもの。傷跡は残っても傷の痛みはゆっくりと癒えていく。
 男も少しずつながらではあるが、しかし確実に自分の力で立ち上がることが出来るように
なっていった。これもひとえに女の献身的な努力の賜物といえた。

 二人はいくつも並んでいる墓の、その中の一つの前に立っていた。
 墓に刻まれている名前―それは亡くなった恋人の名前が刻まれている。
 「恭子が亡くなってからもう二年と半年も経つのね……」
 墓に水をかけながら、黒いワンピースに身を包んだ智美が呟く。
「ああ、苦しかった。もう立てない、いっそのこと俺も……そんなことを何度も考えたよ」
 黒い背広を着た孝道は恋人の名前を見つめながら静かに言う。
「果てしなく長く感じたわね。でも今になるとあっという間だった気がする」
 智美が丁寧に墓を拭き、孝道が線香に火をつける。
 花束を墓前に置き、二人は手を合わせて目を瞑った。共に思い返していることは
 三人でいた懐かしい日々。自然と二人の目尻から涙が流れる。
 いつも三人だった。楽しいときも辛いときも、嬉しいときも悲しいときも三人だった。
 三人の再開は静かに過ぎていく。時は決して止まる事はない。
 薄く細い紫煙が上り、墓前の花束が風に揺れる。近くの海から潮の香りがする。
 ゆっくりと目を開き、孝道が固く結んでいた口をゆっくりと開く。
「俺はもう大丈夫だよ。俺は前に進む。今の俺には智美がいる。
 恭子のことは絶対に忘れないよ。これからも毎年必ず会いに来るから―」
 右手に智美の体温を感じながら、孝道は真っ直ぐに前を向いて言う。
 その目は確かな力強さがあり、生きる意志がはっきりと感じられる。
「恭子、次に会いにくるときはお腹の中の子と一緒に来るからね」
 智美は膨らみかけたお腹を撫でながら、親友に以前と変わらぬ笑顔で微笑んだ。
 二人の薬指には指輪がはめられている。婚約指輪である。
 来月二人は結婚する。子供が生まれるのは恭子が亡くなった月が予定になっている。
 絶望に満ちた日々は終わりを告げ、今ようやく二人は前に向かって進んでいる。
「それじゃ、また来年会いにくるよ、恭子――」
 太陽の光が降り注ぎ、二人を祝福しているかのように墓標が光に反射して輝く。
 寄り添いながら二人は墓を背にして歩き出す。未来に向かって進むために。


 線香の紫煙が揺れ、花束が風に吹かれて墓標から転がり落ちる。
 太陽は大きな入道雲に隠れ、大きな影を落とす。
 やがて、墓の影からもう一つの影が生まれた。誰も居ない場所にできるはずもない影は
ゆっくりと伸び、そこから湧き出るかのように――憎悪が生まれた。
「――さない……るさない……許さない、許さない……許さないッ!
私を殺しておきながら、孝道を奪っておきながら幸せになるですって……?
許せるわけないじゃない……私を殺しただけじゃ飽き足らず全てを奪っていくなんて。
殺してやる……。呪って呪って呪って呪って縊り捻り祟り殺してやる!
孝道は私のよッ! 誰がお前なんかに渡すものか………智美、絶対に殺してやる!!」
 憎悪を込めて怨念が呪詛を囁く。果てしない地獄の底から響くような声で恭子が謳う。
 顔の半分は潰れ、眼球は垂れ落ちている。歯茎や頬骨まで見えるほど抉れた顔に
乱れた髪がべったりと張り付き、腐臭と共に蛆が湧いて零れ落ちる。
 血に塗れ、所々破れている服。そこから覗く部分からはおぞましい蟲が這い出て、
生前の面影は綺麗なままの顔半分を残して微塵も残っていない。
 腐臭が墓場にたちこめる。その腐臭の中心から恭子はゆっくりと歩き出す。
 二人の歩いていった先を見据え、燻り続けた火から出る煙のように憎悪が蠢きだす。
「待ってて、孝道。すぐに殺すから。そいつを殺したらまた一緒になれるから……。
うふ、ウフフふふふふふふふフフフフフフふふふふふふふふふふふふふふふふふ――」



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