08/05/21 09:30:03 jRz2WrSP
また妹死亡だと普通の二次元だからな
しかしそこは作者の見せ方次第か
87:名無しさん@ピンキー
08/05/21 10:01:25 zs1Ef8i9
なにげに>>81が名言を言ったことについて
88:名無しさん@ピンキー
08/05/21 11:06:40 jRz2WrSP
あ、>>86がまあと書いたつもりでまたになってる
89:名無しさん@ピンキー
08/05/21 13:55:50 maFHKi71
なぜおまいらは好きな展開の話を自分で書かないのか
90:名無しさん@ピンキー
08/05/21 15:42:52 KmmwjCDa
書いた職人、書いている職人予備軍だって中にはいるはずさ
しかしようやく全裸待機の辛くない季節になってきたな
91:名無しさん@ピンキー
08/05/21 15:48:01 zs1Ef8i9
>>90
昼は良いが夜はまだ少し寒いだろ? 姉貴のストッキングで良ければ使ってくれ
つ黒ストッキング
92:名無しさん@ピンキー
08/05/21 17:04:09 FvzFl3Ts
>>91
あ、あなたは私のストッキングで何してるのよっ!
わたしを触ればいいのに、馬鹿…………
93:名無しさん@ピンキー
08/05/21 17:24:46 f59qeXgk
心配は要らないさ
朝起きた時、布団をめくれば内側にキモ姉妹がいるはずなのだから
94:名無しさん@ピンキー
08/05/21 19:14:39 Ulsb5nmV
気も狂うような暑さと湿気・・・。そして熱病と死を運ぶ虫ども・・・。緑に塗りこめられてはいるが、ここは地獄に違いない。
だが、物心ついてからずっと、キモ姉とキモウトの手から死にもの狂いで逃げ回っていた俺にとって、この内乱のクメン王国は天国と言ってよかった。
続かない
95:名無しさん@ピンキー
08/05/21 23:00:47 f59qeXgk
そして一話のラストで謎の美女・美少女のやり取りが入るんですね、わかります
96:名無しさん@ピンキー
08/05/22 13:55:09 XT3DfU5a
>>89
お前は他人のオナーニを見るのが趣味なのか
97:名無しさん@ピンキー
08/05/22 14:42:13 oprXty9T
オナーニバロスwww
98:名無しさん@ピンキー
08/05/22 14:50:01 Guu+0Yxn
「オナニーと見せかけてオナーニだなんて失望したわ。
でも愛してる! さあお姉ちゃんが正しいオナニーの仕方を教えてあげるからちょっと来なさい>>96ちゃん!」
99:名無しさん@ピンキー
08/05/22 15:58:11 UcfhzLRv
オプーナ
100:名無しさん
08/05/22 17:33:53 9Si5v9D3
100
101:名無しさん@ピンキー
08/05/22 18:32:20 mJydqPCy
オナーニが通じないこんな世の中じゃ
102:名無しさん@ピンキー
08/05/22 19:00:54 QA8SEkb7
>>99
/ ̄\
|妹男姉|
\_/
|
/  ̄  ̄ \
/ \ / \
/ ⌒ ⌒ \ よくぞ殺伐としかけたこのスレで言ってくれた
| (__人__) | 褒美としてキモ姉妹のSSを読む権利をやる
\ ` ⌒´ / ☆
/ヽ、--ー、__,-‐´ \─/
/ > ヽ▼●▼<\ ||ー、.
/ ヽ、 \ i |。| |/ ヽ (ニ、`ヽ.
.l ヽ l |。| | r-、y `ニ ノ \
l | |ー─ |  ̄ l `~ヽ_ノ____
/籠の中 ̄ヽ-'ヽ--' / 綾シリーズ /|
.| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/| ______
/永遠のしろ/|  ̄|__」/__(仮) /| ̄|__,」___ /|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/ 妹姫  ̄/ ̄ ̄ ̄ ̄|/ 桜の網 /| / .|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/l ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ノスタルジア ̄|/| /
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
103:名無しさん@ピンキー
08/05/22 19:02:42 7z0jfy/e
籠の中ひとつもらおうか
104:名無しさん@ピンキー
08/05/22 19:02:57 14BLmH4p
「オプーナ」←パンふいたw
105:名無しさん@ピンキー
08/05/22 19:35:33 LjDe6Kyh
>>102
陳列商品の基準が気になる
106:名無しさん@ピンキー
08/05/22 20:01:22 kJM4QeLr
>>105
人気のあるものと、あとは過去ログで読んだら妹姫の人がちょっと悲惨でな。投下時期がスレ初期の荒れてた頃だったんだ
未完だがしろはガチ、ノスタルジアは(オレ主観で)期待・・・? てことで
あくまでオレ基準であって、これが絶対というつもりはない
キモ姉妹作品の商品棚・・・・・・いつか見てみたいな
107:名無しさん@ピンキー
08/05/22 23:10:39 g9ctAxhv
なんか棚の前でどれにするか迷ってうろうろしそうだww
108:名無しさん@ピンキー
08/05/22 23:45:17 pKgY0NJl
馬鹿かおまいは
全部買えばいいだろうが
109:名無しさん@ピンキー
08/05/23 01:59:50 4vZB5Ydb
すべて頂こう
なに、釣りは要らんさ
110:名無しさん@ピンキー
08/05/23 05:44:32 V2jWNgfd
オプーナを買う権利はいらんが
永遠のしろを読む権利は欲しいw
111:名無しさん@ピンキー
08/05/23 08:32:43 IIdC1Axl
同人でいいからキモ姉妹イベントとかないもんかね?
エロパロ的にはヤンデレに負けていないジャンルなのに・・・
あれか。実際に兄・弟を監禁したニュースとかがないからイカンのか
112:名無しさん@ピンキー
08/05/23 08:34:38 3u6ipVsT
キモ姉妹が世間にばれるようなヘマをするとでも
113:名無しさん@ピンキー
08/05/23 10:56:38 4/vc9o8B
そういやそうだな
114:名無しさん@ピンキー
08/05/23 11:09:27 8mQFlvfu
つまり全国の男性若年層行方不明者の数だけキモ姉妹がいるわけか
そう考えると凄いなw
そして第一部監禁調教編から第二部キモ姉妹対警察の逃避行・追撃編が始まると
もちろん婦警は従姉妹で
115:名無しさん@ピンキー
08/05/23 11:20:55 h3SZ6Udw
ツンデレやヤンデレと同じことにならないか心配
116:名無しさん@ピンキー
08/05/23 13:29:47 8mQFlvfu
キモ姉妹だけはさすがの女性誌様も手を伸ばせないからな
「これが噂のキモ姉妹!こうすればアナタもモテモテ!
先ずはアナタのお兄ちゃん・弟を異性として意識してみよう!」
とか絶対にあり得ない
安心できる聖域だ
117:名無しさん@ピンキー
08/05/23 14:01:01 DEfaUwfw
むしろ「ストーカー指南」を参考にしてるキモ姉妹とか
118: ◆busttRe346
08/05/23 14:51:56 gaKr2Xoy
グロ描写が含まれているので苦手な方はスルーしてください。
監禁トイレ最終話投下します
119:監禁トイレ最終話
08/05/23 14:52:31 gaKr2Xoy
呆気なかった。
リビングにていつもと同じ椅子で、いつものように、両親は向かい合って座っていた。
私達はその背後にそれぞれ回り込み、ロープを首にかける。体重をかけロープを一気に下へ引っ張る。
ひゅっ、と息を呑む音が聞こえた。ロープを通じて手に届く、大物の手応え。
暴れる義父の背が衝立になって私からは何も見えない。が、この男からは母が全く同じ構図で
苦しんでいる姿が見えるはずだ。彼はロープを掴み、必死に後ろを振り向こうとしていた。
ようやくこちらを向いた義父からは、困惑している様が面白いほどに読み取れる。
『何が起きてる!?』『どうして!?』『何故!?』
そんな言葉を今にも喋り出しそうな瞳を見つめ、私は心中で呟いた。
――馬鹿ね、前を見ればすぐに分かるのに。すがたかたちは違えど同じ状態のお母さんが見えるわよ?
合わせ鏡みたいにね。罪状は……分かるでしょ?
瞳が激しく動き回り、眼球内をあちこち飛びまわる。
「かっ……」
青黒く肥大した舌が口からぬらりと現れる。
あはは、カメレオンだ。カメレオンがもがいてる。
しね。
しね。
くたばれ。
くたばれ。
私から彼を奪った罪を、思い知れ。
ロープを通して伝わってきていた力が消失した。念のため、無抵抗な肉にさらにロープを食い込ませる。
目の前の半身も仕事を終えたようだ。
二匹のカメレオンをそのままにキッチンにあったワインを開封し、中身をグラスに注ぐ。
それを差し出し、乾杯しよう、と声をかけた。彼女は礼も言わずにそれを受け取った。
――乾杯の音頭は?互いの健闘を祈って?
――己の勝利を祈ってで良いんじゃない?
――じゃあ乾杯。
――乾杯。
さぁ、一つ終わった。そしていよいよ始まる。
ワインを一気に流し込む目の前の私を見ながら、始まりの合図を待った。
グラスの砕ける、始まりの合図を。
120:名無しさん@ピンキー
08/05/23 14:53:58 gaKr2Xoy
「そっか、薬、吸わなかったんですね」
彼女は気にした様子もなく僕に言った。
その間に僕の指はボタンを押していた。もうどうなろうと構わない。ただここから早く出たかった。
逃げ出したかった。
スピーカーに向かって叫ぶ。見つかってしまった時点で、無意味な事くらい理解していた。でも誰かに
伝えずには、叫ばずにはいられなかったのだ。
「助けてください!人が、死んで……!!」
「無駄ですよ。それ、壊れてますから、いえ、正確には壊しましたから」
スピーカーからは何の応答も無かった。たった一つの脱出経路は、本当に呆気なく消失した。
「何で、殺したんだよ」
もう動くことのない、義妹の体を支えて、僕は萌姉ちゃんを睨みつけた。
「そんなに悲しい?蕾が死んだのが、そんなに悲しい?」
彼女は嬉しそうに問い掛ける。
そして後ろ手でドアを閉め、回転式のロックをかけようとした。
だが、ドアにロックはかからなかった。
ドアが第三者の手によって開かれたからだ。ロックバーはむなしく一回転し、振り子運動を続ける。
それは番との別れを惜しんで、手を振っているようにも見えた。
「両手を上げろ」
姉さんが――摩季姉さんが、萌姉ちゃんの背中に右手を突きつけて立っていた。
「ねえ……さん?」
思わず、口をついて出た。
摩季姉さんは僕の方を見て、少しだけ表情を緩めた。
「無事で良かった……達哉、早くその娘から離れて」
それだけ言って、また萌姉ちゃんの後頭部に視線を戻した。萌姉ちゃんはナイフを捨て、素直に
両手を上げる。
「違う、違うんだ。姉さん、蕾が、死んでるんだ。死んでるんだよ、コイツ……」
もうそこには蕾がいないのに、空っぽのはずの体はやたらと重かった。
「そう、殺したのね……お父さんやお義母さんと一緒に」
「親父も、花苗さん、も?」
信じないようにしていたのに。蕾の言葉は紛れもない真実だったのだ。
「二人は、リビングで首を絞められていた。飲みかけのワインが入ったグラスが二つ。片方は、
割れて床に落ちていた。三人が殺された時間はほぼ同時期のはず」
じゃあ…最初から…?この監禁が始まった時にはもう、蕾は死んでいた?
「薬か、それとも単純に不意をついて暴力を振るったか。とにかく、この人は、はじめから一人だった……」
皆、僕の知らない所で死んでいく。また吐き気が込み上げてきた。
僕からは見えないが、姉さんの右手の先には何か武器が握られているらしい。
121:名無しさん@ピンキー
08/05/23 14:55:41 gaKr2Xoy
ねじこむように右手を押しつけられた萌姉ちゃんの体は少し震えはしたものの、彼女は相変わらず
平然としていた。緊迫したこの状況にも、妹の死にも、何も感じていないみたいに。
「ねえ、そんなに悲しいんですか?死んじゃったのがそんなに悲しかったですか?」
能面が僕に囁く。
何かがおかしい。
ここにきて僕はようやく違和感を覚えた。
「蕾が死んだ事が悲しいのなら、気にする必要はないですよ」
何かがおかしい。
萌姉ちゃんの口調じゃない。
「義兄さん、私は生きてますから」
「……嘘だ、あり得ない……。姉ちゃん、頼むから悪ふざけはやめてくれ」
彼女は、まだこのなりすましを続行させるつもりのようだった。よく見れば姉ちゃんの姿は……。
スニーカー。
ジーンズ。
厚手のパーカー。
そして髪を一つに束ねた、ポニーテール。蕾の格好だ。わざわざ着替えたのか。
彼女は笑みを零し、口を開く。
「それともたっくんは、私に生きていてほしい?」
「もう良い」
摩季姉さんの静かな声が、それでも圧倒的に響き渡る。
「あなたがどっちか、なんて興味は無いの。早く達哉を返して。手錠の鍵はどこ?」
「ああ……挨拶が遅れたわ、お久し振りです、摩季さん。鍵はパーカーの右ポケットに」
姉さんが右手の何かを左手に移しかえ、右手をパーカーのポケットに突っ込む。
「ねえ、摩季さん。私、本当はあなたも殺そうと思ってたの」
「……」
萌姉ちゃんがニヤニヤとどこか破綻した笑顔で話しかけている。
摩季姉さんは無言だ。
「だって、あなたも義兄さんのことが好きでしょう?彼の前ではずっと、“お姉さん”の顔でいようと
努力してたみたいだけど、私には分かってましたよ」
『違う』
僕も、摩季姉さんも同じ言葉を発した。
当然だ。僕達は家族で、間に流れる愛情は親愛しかありえない。
それなのに。
それなのに、どうしてそんな顔するんだよ。どうして僕に申し訳なさそうな顔するんだよ、姉さん。
姉さんは目当ての物を見つけたらしい。右手をポケットから抜くと、僕に小さな金属片を投げてよこした。
手錠の鍵だ。受け取るとすぐに鍵を差し込み、捻る。
散々僕を苦しめた銀色のブレスレットが、獲物を解放した。
「だってね……。あなたが達哉に近付く度に、臭うのよ、それはもうひどい悪臭が。腐った雌のにおい。
発情した女のにおい。私ね……」
122:名無しさん@ピンキー
08/05/23 14:57:16 gaKr2Xoy
いつの間にか、僕の目に映る萌姉ちゃんの姿が少しだけ大きくなっていた。たった一歩分の、拡大化。
けれどその一歩が、彼女を脅かす凶器の威力を完璧に打ち消した。
彼女と摩季姉さんの間の空白が、そのまま僕の視界になる。だからようやく姉さんの持っていたモノの
正体が分かった。
摩季姉さんが握っていたのは、スタンガン。
触れれば絶大な効果をもたらすそれは、裏を返せばほんの少し距離を置くだけで、手を塞ぐだけの―――
「姉さんッ!!」
お荷物と化す。
走り出す。間に合ってくれ。間に合えよ、頼むから!!
摩季姉さんが左手を突き出すも、萌姉ちゃんはとっくにその場から移動していた。
しかも移動した先は摩季姉さんの目の前。左手はがっちりと捕らえられ、無防備な姉さんには
最悪の結末しか残っていなかった。
「私、あなたのその臭い。大嫌いだったの」
張り詰めた布を切り裂く音。その背後に混じり入る、柔肉が歪み、裂ける音。
血が姉さんの足を伝って、床に色を添える。
受け身を取る事もなく、摩季姉さんの体は床に倒れた。
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははッ!!
ずっと我慢してたから見逃してあげてたのに!!死ね!死ねッ!!さっさと死ね!!達哉と私の
邪魔する奴なんてみんな死ねッ!!」
僕に羽交締めにされて尚、萌姉ちゃんは暴れ回る。早く、姉さんを助けなくてはならない。こんな
イカれた奴に姉さんを殺させてたまるものか。
「義兄さん、邪魔、しないでください」
彼女はいとも簡単に僕を振り払った。壁際まで吹っ飛ばされ、蕾の隣に倒れ込む。
萌姉ちゃんが床に落ちたナイフを拾い、僕に突き付ける。
「さて、続きです。義兄さんは蕾と萌と、どっちに死んで欲しいんですか?」
「ふざけるなよ、もう、頼むからやめてくれよ……。そんなのどっちだって構わない!!姉さんを
助けなきゃ……」
血と呻き声が床を這う。まだ姉さんは生きている。例え虫の息だろうと、生きている。
「それは困ります。どっちか選んでください」
「萌姉ちゃん、本当にやめてくれ……蕾は死んでるんだよ、もう選ぶとか、そんな話はとっくに
終わってるんだよ!!」
123:名無しさん@ピンキー
08/05/23 14:58:43 gaKr2Xoy
「だから死んでないって言ってるでしょう……?」
彼女の顔が、まるで、まるっきり蕾にしか見えない。
「そうですね……。これなら納得してもらえるでしょうか。昔、私が木登りをして降りられなくなった時、
義兄さんは私を助けてくれましたよね?アレは確か私が姉さんと喧嘩して家を飛び出した時でしたっけ。
誰にも分からない所にいたはずなのに、義兄さんだけが私を見つけて、助けてくれました。
義兄さんが受け止めてくれるって分かっていたから、私は迷いなく木から飛び下りる事が出来たんです」
それは誰にも語った事のない、義妹との思い出だ。
「じゃあ……死んだのは……萌姉ちゃ、ん?」
「私が帰り道で苛められてた時、たっくん、助けてくれたよね?嬉しかった……。そのあと、誰にも
言わないでくれた事も。あの時から私はたっくんさえいてくれれば何だって出来るって思えるように
なったんだよ?」
それは二人だけの秘密だった、義姉との思い出だ。
「義兄さんが風邪を引いた時、うなされながらも私の名前を呼んでくれた事。それを指摘した時の
恥ずかしそうな顔、今でも忘れられません」
義妹との。
「たっくんとテスト勉強した時、懐かしいな。あの時、私の教えた教科の成績だけが良かったんだよねぇ……」
義姉との。
互いの記憶が入り交じる。記憶と共に、表情も言動もその持ち主のものへと移り変わる。
「萌姉ちゃん……?」
「なぁに?」
「蕾……?」
「何ですか、義兄さん?」
「本物はどっち……?」
混乱につぐ混乱の中でようやく発せた疑問に、“彼女”は答えたのだ。
「どっちがいい?」
やっぱり、澄みきった瞳で。
124:名無しさん@ピンキー
08/05/23 15:00:33 gaKr2Xoy
視界はひたすら一色の朱に、しかし流動的な赤に染められていた。下腹部に焼きゴテでも当てられたような、
灼熱の痛みが渦巻いている。股間を、自分の女としての象徴を蹴られたのだ。
あの女の履くスニーカー、その先端に付けられた小さなカッターの刃に「女性」を根こそぎ奪われた。
何故、スタンガンを選んだ。
躊躇すべきではなかった。相手は父も、母も、妹も殺した紛う事なき殺人犯だ。
刑事としての理念がそうさせたのかもしれない。
まだ家族と思い込んでいた妄念がそうさせたのかもしれない。
迷いなど捨て、打ち抜いておけば良かったのだ。今度こそ、自分が羽化する機会は永遠に失われた。
鎖は己より遥かに柔いロープに絞められ、千切れたのだ。気付かず、殻に篭り続けた結果が、これだ。
後悔が身体を冷まし、精神を覚ましていく。五感に纏わりついていた霧が晴れていく。
それで気付いた。
自分の血液とは別の、ある種の生臭さ。まぐわいの匂い。一方は心地よく、もう一方は嫌悪を交えて
鼻孔をつく。目の前には、朱と白が渦巻く粘液。達哉が犯され、侵され、冒された事の証。
(痛い……)
声にならない叫びが、体を動かす。全身をまさぐり、指が鉄塊に触れる時を待つ。
どうして私は駄目で、どうして彼女は良くて、どうして私は許されず、どうして彼女は赦されて――
彼女の熱にあてられてか、ようやく触れた鉄塊はほの暖かかった。
彼女が達哉に近付いている。また犯そうとしている。達哉が食べられる。存在ごと食いつくされてしまう。
助けなきゃ。
食い尽くされる前に。
彼女に従属されてしまう前に。
目の前の達哉も、彼女の中の達哉も、解放してあげなければ。
(達哉から)
ホルダーから引き抜いた拳銃を掲げ、震える指で安全装置を外す。
トリガーを引いた。
「はなれて」
視界の隅で、あのマーブル模様の水溜まりが彼女の血に飲み込まれていった。
125:名無しさん@ピンキー
08/05/23 15:02:10 gaKr2Xoy
――ああ、意外と軽い音なんだな。
漠然とそう思った。薬莢の弾ける音を脳が認識した次の瞬間、僕の耳は何らかのフィルターでも
かかったように、聴力を失った。例え軽くても、強大で凶暴な音だったのだろう。
音量だけでなく、物理的な破壊力も。
もっとも、耳に襲いかかってきた突然の襲撃者が、発砲音だと分かったのは一発目のあと、姉さんの
手に握られた拳銃を見たあとのことだ。
僕へと手を伸ばしていた“彼女”が、ふらついた。
「あ……?」
多分、本人も自分の下腹部を見るまでは、分かっていなかったに違いない。銃弾が埋め込まれた点を
中心にして、Tシャツが黒ずんでいく。
「あ、あ、あ、だめ。待って。駄目。達哉が出ていっちゃう。せっかくもらった、のに、達哉が
出ていっちゃう。待って。行かないで」
多分、この監禁が始まって初めてだ。
こんなにも憔悴し、生半可なものではない苦悶を浮かべている彼女の姿は。彼女は命以外の何かを、
必死にとどめようとしていた。傷口を両手で押さえ、待って、行かないで、と叫ぶ。
しかし、その叫びすらも許されなかった。押さえつけた両手の上から、さらに何度も銃弾が撃ち込まれた。
指が千切れ、腹は抉られ、鮮血が散る。
「だめ、だめ、だめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめ
いかないでいかないでいかないでいかないでいかないでおねがいだから、わ、たし、から、にげ、な、」
銃声の嵐の中で泣き叫ぶ彼女の声だけは、何故かはっきりと聞こえていた。
拳銃はやがて弾を全て吐き出し、彼女の下腹部は肉も骨も皮もぐちゃぐちゃにかき混ぜられ、
床には真っ赤なスープが広がっていた。
「いかない、で……」
摩季姉さんの血も、彼女自身の血も混じり合った床に、倒れ込む。そして動かなくなった。
摩季姉さんはもう標的のいない、無人の空間に向けて、トリガーを引き続けている。
ぼんやりとだが、がちっ、がちっ、と撃鉄の音が耳に飛び込んできた。
「姉さん……もう、良い。終わったから」
僕が声をかけると、顔に感情が戻ってきた。ゆっくりと焦点を合わせ“彼女”を見つめた後、指を
一本ずつ拳銃から引き剥がし、床に捨てる。
そして摩季姉さんは思い出したように、
「いたい……」
と呟いた。
「いたい……いたい。いたいよ、たつやぁ……」
姉さんは泣いていた。涙が血溜まりの中に、吸い込まれていく。
126:名無しさん@ピンキー
08/05/23 15:03:52 gaKr2Xoy
僕も泣いていた。
姉さんの姿が悲しかったのか、それとも結局なにも出来ず家族を失い、傷つけた自分が
憎らしかったのか、それともここまできても、身の安全を確保できたことに安堵したからなのか、
自分でも把握出来ない。
「今、行くから。姉さん」
立ち上がり、摩季姉さんへ足を踏み出す。
「いかないで」
足を掴まれた。
彼女が、身体を引きずって僕の足下まで移動していた。もう両の手合わせて、五本しかない指が、
僕の足にすがりつく。
――まだ、生きて……
“彼女”の視線すらちぐはぐな顔が、僕を見上げていた。床を這い、僕の足にしがみついて、哀願する。
「いかないで、おねがいだからいかないで」体が、動かない。
「たつやぁ、痛いよ……お姉ちゃん、いたくてたまらないよ」
彼女の指が、食い込む。姉さんが泣いている。
「わたしのことだけみて」
音が、聞こえる。
「たつや、たつや、はやく」
サイレン音。
「ねえ、どっちにでもなってあげる。すきなほうになってあげるから、いかな、い、で」
徐々に近付くパトカーのサイレン音の中、彼女の瞳孔が広がって――
事件から一週間が経った。僕は病室の天井を見てぼけっとしていた。事件の余波を考えての事だろう、
広い個室をあてがわれた。他人から根掘り葉掘り聞かれる事が無いのは確かにありがたい。
健康状態は良好。
精神状態も良好……だと思う。
医者にはしばらく様子を見た方が良い、と言われた。締め切られたカーテンを少しだけ捲る。
病院の外はカメラマンや記者でごった返している。
「退院時はあの中を通るのか……」
考えるだけでうんざりだ。
――コンコン。
「どうぞ」
声をかけるとドアが音も無く横に滑る。
二人の刑事がそこにいた。
「角倉さん、その後具合は如何ですか?」
親しげに話しかけてくるのは、僕を保護してくれた初老の刑事。
「僕は平気ですよ。病院の方々には気を使わせすぎて恐縮してるくらいですから」
「まあゆっくりしてください。誰の目から見ても酷い事件でしたから、ね……」
こういう状況に慣れていないのか、その刑事が作る真面目な顔は、少しぎこちない感じがした。
普通、刑事って逆だろうに。
「正直な所あんまり実感無いんですよ。あそこで何があって、何を見て、何を聞いたか、全部
思い出せるんですけどね。それが今の僕と……その、結び付かない、というか……」
127:名無しさん@ピンキー
08/05/23 15:05:19 gaKr2Xoy
「出来る事なら忘れた方が良いのかもしれませんな……。ただこんな会話をしてなんですがね、
一つはっきりした事があるんですよ」
「“彼女”は『角倉 萌』だったのか、『角倉 蕾』だったのか、なんですがね……」
――ああ、やっぱり本題はその話か。
何となく予想はついていた。
あの二人は、世間一般の双子のイメージからご多分に漏れず、本当に良く似ていた。
しかしいくら双子でも全てが同じという訳ではない。分かりやすいところで指紋などがその例だ。
形こそ似通っていても、同一の指紋を持つ事は不可能だ。
トイレから出てしまえば、“彼女”の正体はあっという間に白日の下にさらされる。
刑事が僕に近付く。煙草の苦い匂いが鼻に纏わりつく。
「“彼女”の名前は――――」
「いぃやあ゛あ゛ああああぁぁぁぁッ!!」
もうとっくに慣れてしまった悲鳴が轟く。刑事二人は驚いていた。
「すいません、ちょっと失礼します」
僕はスリッパに足を差し入れると早足でドアへと向かう。
「あ、あの、今の」
「……姉さんなんです。ここで待っててもらえませんか?」
今の姉さんを見せるのは、お互いの為にも良くないだろう。返事を待たずに隣の病室へと向かう。
「い゛やぁああッ!!だづや゛ッ!!だづや゛ぁッ!!」
ドアの先では姉さんが吠えていた。
目は真っ赤で、焦点は揺らいでいて、鼻水と涎を垂らし、唾を飛ばし、喘ぐように吠えていた。
暴れる体を看護師が三人がかりで押さえ付けている。
「姉さん」
僕が呼び掛けると、姉さんはぴたりと動きを止め、母親を探す迷子のように僕へと手を伸ばす。
「たつや、たつやぁ……お姉ちゃんのところに来て」
姉さんに近付くと指を絡め合う。姉さんは僕の胸に頬を擦りつける。鼻骨と胸骨が擦れて少し痛い。
「どこに行ってたの……離れないで。たつやがいないからお姉ちゃん、恐い夢を見たわ」
「ごめんね、姉さん。……少し眠ろう?手を握っていれば恐い夢なんて見ないよ」
姉さんの頭を撫でながら、話しかける。姉さんは僕を見上げ、
「うん……。でももう少しこのまま」
そう言って胸に顔を埋めた。
看護師に目配せをして、錠剤を受け取る。
「姉さん、薬飲もうか。早く良くならないと」
姉さんは素直に従い、錠剤を飲む。看護師はそれを確認すると静かに部屋を出ていった。
128:名無しさん@ピンキー
08/05/23 15:07:11 gaKr2Xoy
あの日を境に、姉さんは女としての部分を失い、家族を失い、姉としての自分も失った。
「もう達哉しか残っていないの」
目覚めてからの姉さんは、そればかり言う。
――“彼女”は『角倉 萌』だったのか、『角倉 蕾』だったのか――
壊れた姉さんを抱き締めながら、刑事の言葉を思いだす。
『すきなほうになってあげる』
萌姉ちゃんの記憶を持っていて、蕾の記憶も持っていた“彼女”はそう言った。
どっちにもなれるからどっちでもない“彼女”。
姉さんが寝たら、“彼女”の正体を聞く事になるはずだ。でも聞いても何も変わらない。
どこからどこまでが萌姉ちゃんとの思い出で、何から何までが蕾との記憶だったのか、今の僕には
分からないのだから。まるで、ピース一つ一つが純白の正方形のパズルでも相手にしているみたいだ。
どんなに組み上げても、正解は分からない。どんな風にも組み上げられるけれど、答えは分からない。
何故、“彼女”はあんな事件を起こしたのか。何故両親を殺し、自分の片割れを殺し、双子を演じたのか。
もしかしたら“彼女”は、「本当の自分」を僕に選んで……いや、見つけて欲しかったんじゃないだろうか。
。
ずっと騙し続けていたけれど、原初の自分の姿に気付いてほしくなってしまったんじゃないだろうか。
――角倉達哉との思い出を作り上げてきたのは全部、自分なんだ――
そんな自己主張のつもりだったのかもしれない。
結局答えは分からなかったし、答える義理も無かった。今でも責任感は感じていない。
ただ“彼女”を見つけてあげられなかった事に、少しだけ無力感は感じていた。
僕が“彼女”から逃げさえしなければ、こんな事は起きなかったのだろうか?
全てが狂言だったのか真実だったのか、“彼女”が死んでしまったので今となっては分からないけれど。
「誰もいない場所で、ずっと、ずっと二人でいれたらいいのに……」
囁き声が僕の思考を断ち切った。
「姉さん……?」
返事は返ってこなかった。規則正しい、深い呼吸が聞こえる。
「おやすみ、姉さん」
姉さんに布団をかけ、静かにドアを閉めた。
それじゃあそろそろ聞きにいこう、“彼女”の名前を。“彼女”の正体を。自分の病室へと足を運ぶ。
129:名無しさん@ピンキー
08/05/23 15:09:28 gaKr2Xoy
いつもよりスリッパが重い。それでも、歩く。
あの日、姉さんは僕以外の全てを失った。
僕は、姉さんすらも失った。
あの日以前の、何も知らなかった頃の僕は、まだあのトイレに監禁されている。
そして、永遠に解放される事はない。
【エピローグ】
深夜。
飲み物を切らしたので、近くのコンビニに何か買いに行く事にした。
ダウンを羽織り、隣人を起こさぬよう静かにドアを閉める。前のアパートとあまり変わらない、
古臭いアパートだ。家賃もほとんど変わらない。
週刊誌の記者達が連日詰めかけるのに辟易して引っ越したのだが、正解だったようだ。
待っていたのは以前と変わらない、穏やかな焼き増しの日々。
変わったのは、未だ回復の見込みのない姉さんの見舞いという行為が、日常に付け加えられた事くらい。
回復した後には何らかの制裁が加えられる事を考えると、姉さんにとっては今のままの方が
良いんじゃないかとさえ思ってしまうのだけれど。
コンビニまでは以前より少し歩く。この時間でも大分暖かくなってきた。
このダウンももう少しすれば必要なくなるだろう。
突き当たりを右に曲がり、コンビニから伸びる、蛍光灯の光を確認した。
何かが、
僕の口を、
塞いだ。
振りほどけない。もがく端から力が抜けていく。
「ねぇ、達哉?二人っきりになれるとっても素敵な場所、見つけたの……。……行こう?」
薄れゆく意識の中、耳元で姉さんが囁いた。
《END》LESS……
130: ◆busttRe346
08/05/23 15:11:29 gaKr2Xoy
投下終了です。最後までお付き合いいただきありがとうございました。
それでは失礼します
131:名無しさん@ピンキー
08/05/23 15:36:12 Kt5DmstC
GJ!!!!!! 今までありがとうございました。
もし、よろしければ次回作もよろしくお願いします。
132:名無しさん@ピンキー
08/05/23 15:57:31 2AwDDZxj
>>130
GJェェェェェェッ!!!!!
素晴らしい作品ありがとうございました
お疲れ様でした!
惜しむらくは、萌姉さんには幸せになって欲しかった…
133:名無しさん@ピンキー
08/05/23 16:14:57 8mQFlvfu
長かった・・・・・・長かったぞ!
ようやくこの一言が言える!
完結乙かれぇぇえええっ!
Gj!
134:名無しさん@ピンキー
08/05/23 16:17:19 HKeEFK5p
GJ!摩季姉さんの大勝利ww
135:名無しさん@ピンキー
08/05/23 18:22:43 /l/fDR62
「こうして神作品は完結した!」すごく良かったです。今まで一番愛読していた作品なので、こうして完結したのはすごい嬉しいです。個人的には蕾派でしたが…次回作、できれば楽しみに待っています。本当にありがとうございました。
136:名無しさん@ピンキー
08/05/23 18:42:25 eG0dKlYP
ディ・モールトGJ!! でらGJ!! なまらGJ!! 超GJ!!
いやー良かった。まさかの結末でビックリですわ
摩季姉の蹴られた部分がエグくて思わず股関押さえちまったぜ……
なんつーか、摩季姉はもっとこう、幸せになってほしいね…うん……
なんにしろ完結お疲れ様です!素晴らしい作品をありがとうございます!!
137:名無しさん@ピンキー
08/05/24 01:31:20 zNDNOVJ9
完結乙!
そしてGJ!
138:妹が病んだ原因 第六話
08/05/24 02:15:18 ONE7CENV
投下予告
139:妹が病んだ原因 第六話
08/05/24 02:16:33 ONE7CENV
―――――――――――――
暗い、暗い部屋の中。
月明かりを背に一人の少女がたたずんでいる。
「あははっ♪」
少女は携帯電話を片手に誰かと会話しているようだった。
短く切り揃えられた黒髪に覆われている横顔は十六歳という年齢からは想像もつかないほど幼く、
幼女のような笑みをこぼしている。
そして、そんな愛くるしい外見に似つかわしくない、彼女が着てる真っ白な入院服と、
服に映えるようにまっ黒な、右目を覆う眼帯。
それらを纏いながら無邪気に笑う彼女は可憐であり異端であった。
「そう、そう!会えたの!会えたのね!」
電話の相手に見えるわけでもないのに彼女は喜びを体現するように狭い部屋中を、
ピョンピョン跳ね回る。
暗がりの中での片目にもかかわらず、慣れたものなのか彼女は躓くことなく部屋中を飛び回る。
「どうだった?どうだった?……うんっ!そうでしょうそうでしょう!!
言ったとおりだったでしょう!!」
部屋にポツンと置いてある簡素なベッドに飛び乗り、興奮したままギシギシと揺らす。
電話の相手は彼女の興奮ぶりがうかがえたらしく、苦笑しつつも彼女をたしなめる。
「落ち着いてなんかいられないわよ!!あなたが動いたということはもうすぐ、もうすぐなのよ!!」
そう。長かった。
あの時から十年もたった。
傷が完治し、充分に力を蓄え、いくつもの準備をするのに十年かかった。
「ええ、ええ。長かった、長かったわね。本当に、あなたがいてくれてよかったわ。
いくらあたしが優秀でも一人でできることには限界があるものね。
今回のことだってそうよ。あたしじゃあの子がいる限り近づけないもの」
決して日向に出ることは許されなかった。
彼に近づくことさえできない。
彼女がいるから。彼女のせいで。自分はずっと、十年もの間この部屋以外に存在できなかった。
彼が自分のことを見てくれないとわかっていたから、だから苦しくともここにいるしかなかった。
140:妹が病んだ原因 第六話
08/05/24 02:17:07 ONE7CENV
「そうね、そうね。そんなのはもう終わり。もうあの子の思い通りになんかさせない。
十年前は油断したけど今度は万全。あの子の幸せを壊して、希望を潰して、存在を消し去ってやるの…」
彼女はその片目にどこまでも深い憎しみを宿し呟く。
そう。今の自分と同じように……
「ええ?……だめよ。あの子は自分の居場所に戻るの。
身の程をわきまえずに十年も隣に居座り続けたんだから、殺さないだけマシでしょ。
もっとも、もっとも。今度こそ本当に自殺しちゃうかもね。あははっ!!」
電話の声は黙り込む。
「もう、もう。あなたはあたしの友達でしょう。あの子の心配なんかしなくていいの。
それとも何?やっぱり、やっぱりあたしよりもあの子のほうがいいの?」
電話の声はあわてて否定する。
その質問は電話の主にとっては残酷な質問。
にもかかわらず無邪気な彼女は平然と口にする。
彼女の時は彼が離れてからずっと止まったままだ。
だからこそ、子供の無邪気さは無自覚に相手を傷つける。
否定するのを聞いた彼女は満足げに頷き、
「うん、うん!あたしたちは友達だもんね!」
上機嫌にベッドから飛び降りる。
「だからね、だからね。友達だからあたしのためにあの子に殺されてくれるでしょ?」
邪気はないけど悪意はあるから。
無自覚に、無意識に、唯々自分の幸福のために。
「うん、うん。ありがとう。」
「風子」
彼女は傷つけ、壊し、滅ぼしていく。
動き出した流れは止まらずに加速する。
―――――――――――――
141:妹が病んだ原因 第六話
08/05/24 02:17:33 ONE7CENV
「おーにーさーん!!」
俺が校門の前で麻里を待つために生ける仏像と化しながら、
本日の夕飯のメニューはシェフの気まぐれ料理がいいな、と思案にふけっていると、
聞き覚えがあるような気がしないこともない声が鬼ごっこに興じている。
アクセントが違う気がしたが字面をとらえると確実に鬼ごっこだ。
そもそも俺は一生、麻里とともに鎖国して生きていくことを誓ったのだから、
アクセントがどうとか知ったこっちゃないのだ。
麻里と会話できればモーマンタイ。
「あー。遅いなぁ」
「当たり前のごとく無視しやがりましたね」
ふむ、空気がやけにうるさいな。
「もしも~し?お兄さん?聞こえてますかぁ~」
「……」
「お~い?お~に~さ~ん~」
「……」
「まーちゃんにお兄さんにキズものにされたって泣きついてやるぅ…」
それをやると死ぬのは君だったりするんだが…
「ええい。さっきから何なんだやかましい。俺は貴様みたいな凡百の一般人何ぞにかまってやるほど暇ではないのだ。
わかったのならさっさと消えるなり消えるなり消えるなりするがいい」
「ひどっ!?ボクの扱いひど過ぎでしょ!?」
テンション高いなぁ……
つーか、この子一人称が『ボク』なのか。
やだなぁ。あの人と同じってだけでこいつのことはなんか嫌になるな。
「う~いいもんいいもん。男はお兄さんだけじゃないんだもんね。
ボクなんか引く手数多なんだから……」
勝手に落ち込みだしたぞ。
というか、あまりのシスコンぶりに男どもからひかれにひかれまくり、
挙句、相馬が妹のこと以外に興味を示したら奇跡(誇張表現)、とまで言われる俺を男扱いするのか。
頭のいとをかしな奴もいたもんだな。
そういう奴は経験上、ウチのオブジェになっちゃうルートに一直線なんだが。
ここで余計な事を言ってフラグが立つと、二、三日ぶりに行方不明事件で騒がれそうになるから自重して、
俺はとりあえず今ここに立っている原因について情報を仕入れるか。
142:妹が病んだ原因 第六話
08/05/24 02:17:56 ONE7CENV
「あーもしもし、ふーちゃんさんや」
「ふーちゃんさんってなんですかぁ…なんですかぁ?」
わかりにくいので補足すると最初の「なんですかぁ」はちゃんとさんを混同させたことに対する不満であり、
後の「なんですかぁ」は俺の呼びかけへの回答である。
この子もなかなか難解な日本語を使うな。
「いやね、お兄さんは別に怪しいもんじゃなくてただ単に妹君はどこで何をしているのかなー、
と兄心ながらに心配しているんでね」
要約すると、テメェ麻里をどこへやった!!、ってところかね。
すると、それまでのいじけていた様子から一転、いたずっらこのように笑い出す。
「にゃふふふ♪やっぱり兄妹だねっ!お互いがお互いのことを思う、
ああ!!美しきかな兄妹愛!!」
テンションの落差が激しく喧しい娘っこという評価が確定した。
というかなんなんだ。誰も貴様の感想なんか求めてなんぞないのだ。
貴様のその目障りなツインテールを固結びで電柱にくくりつけてやるぞ。
わかったらさっさと麻里の居場所を吐くがいい!!ハハハハハハハハハ!!
などという戯言は心の保管庫に留めて置くこととしよう。
「麻里の居場所がどこかとっとと吐かないとそのやかましく騒ぐ口を、
たまたま手に持っていたこの金属バット~(某ネコ型ロボット風味)で塞いでやるぞ♪」
「うわっ!!こわっ!!ってかなんで金属バットなんか持っているの!?」
「すべては麻里のために……」
「意味分かんないし、答えになってないし、そこはかとなくジリジリと金属バットを近付けないでごめんなさい言います言います言わせてくださいだから下げて下げて金属バットを下げて~!!」
うむ、聞き分けのいい後輩だな。
「あ~怖かった。目が笑ってなかったよ。あれはマジだったね。うん。
はあぁ、なんでボクがこんな目に遭っちゃうのかなぁ……」
おいおい。また落ち込んだよ。
しょうがない。今度は剣道部から借り受けた木刀で……
「あっ!そ、そうそう!まーちゃんね、まーちゃん」
「ちっ」
「? 今、何か隠したぁ?」
「いえいえ、なにも」
以外と危機察知能力に優れた奴め。
143:妹が病んだ原因 第六話
08/05/24 02:18:22 ONE7CENV
「そういえばさっき、お互いに、とか言ってたけど」
「そうそう、それ!ボクがお兄さんのとこへ来たのはそれだったのっ!」
木刀はその辺にポイして証拠隠滅。
剣道部に怒られるかもしれんが、そんなのはいくらでも何とかなるだろ。
それよりも今の最優先事項は麻里の情報を得ることだったりする。
授業が終わりかれこれ一時間。
いつもならとっくに帰宅し麻里とのあま~いスウィートタイム(意味の重複)に、
学校においてすり減った(主に先輩のせい)俺の精神は癒されているはずなのだが。
もしや麻里の身に何か!?
おいおいおいおい、ヤベェよ、ゲキヤバだよ。
麻里の身に何かあっただって?
そんなことになったらボクちゃんもうおさきがまくらのどうしようもなくあばばばあばっばばばば
「あの~おにいさん?」
「ふはははは!!人類など滅ぶがいいさ!!ハーハッハッ!!!」
「ひいっ!?」
はっ。い、いかんいかん。まことに遺憾ながら精神があっちに行ってしまった。
気がついて辺りを見回すと幸いにして人はいなかったので俺はほっと一安心。
ふー。危なかったぜ。もし誰かに見られでもしたら、
俺はともかく麻里が、あんたのお兄さんって頭おかしいんじゃない(以下略)
ともかく誰にも見られなかったのだから引き続き麻里のことを待つか。
「あー。遅いなぁ」
「いきなり元に戻ったと思ったらまた無視ィ!!
ヒドイ!!ヒドイよおにーさんっ!!
ハッ!!も、もしかしておにーさんって巷で流行しているといわれているツンデレってやつ?
やだなーもーそれならそうとちゃんと言ってよぉ。
おにーさんをめぐるボクとまーちゃんの三角関係、にゃふふふ♪たっのしそぉー♪」
144:妹が病んだ原因 第六話
08/05/24 02:18:48 ONE7CENV
それならそれで麻里が容赦なく日本刀を振り回してきそうだよなぁ。
でも、麻里が望むならそっちの昼ドラ路線も考えておくか。
この泥棒ネコっ!!、みたいなね。
そんな麻里も萌えー
とはいえ今のはさすがに俺のほうがおかしかったので一応会話を元に戻すか。
「俺は好きなやつ(=麻里)にはダダ甘だから君に対してのは、
好意の裏返しではなく単純な意地悪だ」
勘違いすんじゃねぇこのメス豚、は麻里のために取っておこうかな。
「やだなぁ。冗談に決まっているじゃないですかぁ。
まーちゃんとは親友ですよ。し・ん・ゆ・う。
親友のお兄さんを奪い取ろうなんてこれっぽち思っちゃいないよぉ」
とか言ってにゃふふふと笑う。
なんかこれ以上こいつに付き合っているのは面倒になってきたな。
会話が戻るどころか、完全に脱線して道路にでも突っ込みそうな勢いになってきたし、
そろそろいい加減情報を聞き出すか。
「で、その親友さんはどこにいるんだ?」
「あっ、そうそう、そうだった!
そもそもボクはこんなとこにわざわざ世間話をしに来たわけじゃないんだよ。
伝言があったんだよねぇ、伝言」
「伝言?」
「えーっと。コホン。少し用事があるので兄さんは先に帰っててね、夕飯までには戻るから。
とまーちゃんから言伝を頼まれたボクでしたぁ」
145:妹が病んだ原因 第六話
08/05/24 02:19:16 ONE7CENV
なんだ遅くなるのか、だったらさっさと帰って麻里のために御馳走でも作っておけば、って俺料理できないけど。
あいにく家事はからっきしダメなんだよなぁ。
じゃあ、しょうがない。麻里のために心をこめて買い物だけでもしようか、と結論し歩き出す。
歩き出し、
歩いて、
歩いているんだけども、
「何で君がついてきているわけ?」
「へぇ?」
なぜだか知らないが俺の隣をついて歩いてくるふーちゃん。
俺の隣は麻里の特等席だから今すぐにでも消え去って欲しいのだが。
「やだなぁ。ボクは帰るなんて一言も言ってないじゃん。
ちょっとお、お兄さんとゆっくりお話してみたかったんだよねぇ。
だからぁ、一緒に帰ろう?」
別に帰ってもかまわないのだが、帰っているところを麻里に見られて死亡エンド(この子が)になるかもしれないしな。
まあ、それでもいいか。
「別に一緒に帰ってもかまわないが、俺のことは『先輩』と呼べ」
「はぁ……」
これでこの子は後輩キャラでツインテなボクっ子という高ステータスを手に入れたわけだ。
というか俺のことを兄というカテゴリに属する呼称で読んでいいのは麻里だけなのだ。
そんなことは口が裂けたら言えないが。
そんなこんなで俺の中で後輩キャラに任命されたふーさんちゃん(仮称)とともに帰路に着く。
結句、喧し姦し騒乱娘は終始、俺と麻里の蜜月について質問し続けていた。
俺も、麻里のすばらしさについて語るのはやぶさかではないので質問にきっちりと答えていた。
そんなこんなで分かれ道。
146:妹が病んだ原因 第六話
08/05/24 02:19:48 ONE7CENV
「それじゃ」
と、右手を上げハードボイルド風に去ろうとしようとしたところを、遮られる。
「おに、じゃないや…先輩」
ん?と疑問を口に出さずにテレパシーだけで伝えることを試みるが失敗したらしい。
結果、俺は無言で次の言葉を待つこととなる。
「先輩にどうしても聞きたいことがひとつあるんだ」
どうやら今日一緒に帰ろうと言い出した本当の目的はこちららしい。
ああ、そんなことに気づかずに俺は何意気揚々と語っていたんだ、と自己嫌悪に苛まれるのは日常茶飯事なので気にしない。
くけけ。麻里のいない俺はご飯のないチャーハンのようなものなのでいつにもまして思考がブレ易くなっている。
といわけなので用件があるなら速やかによろしく。
どうやらマジな話らしくさっきまでの能天気な雰囲気は霧散し、真摯な目をしている。
紳士を自負する俺としてはきちんと正装しないとな、ってスーツ忘れちゃったよ。ははは。持ってないけど。
俺の脳がはいている戯言は聞こえていないらしく(聞こえていたら引かれているだろう)まっすぐに俺を見ている。
ホントに同一人物なのかな、とか無益な思いつき。たぶんこっちが地な。
「先輩は」
「今、幸せなの?」
おいおい何を言ってやがりますかこのおぜうさんは。
幸せ?幸せかだって?そんなの決まってんじゃん。
麻里がいて、麻里がいて、麻里がいてくれる。
そんな日常のどこに不満があるって?
不満なんかない。俺はこの地球上にいるどんな人間よりも幸せなんだ。
麻里がいるから。麻里が隣にいる限り俺は幸せなんだ。
麻里だけが、麻里だけが俺のすべてであり幸せであり絶対なんだ。
そう、そうだ。幸せなはずなんだ。なのに、なのに……
何で俺は何も言えないんだっ!!!
147:妹が病んだ原因 第六話
08/05/24 02:20:10 ONE7CENV
いつも適当なことを吐く口は動かず、震えるような嗚咽を漏らすだけ。
簡単だ。一言、いつものようにシスコンぶりを多大にアピールしつつ、麻里の素晴らしさを称えた後、
俺はこんな妹を持って最高に幸せだ、と高らかに宣言すればいい。
それなのに俺の口は動かない。
喉元に来ている言葉を、何かが無理やり押し込んでいるような違和感を感じる。
俺の深い深い場所から這い出る何かに体が支配されつつある。
どうして、どうして。
幸せなはずだ
チガウ
麻里が隣にいてくれる
チガウチガウ
ずっと、ずっと笑ってくれる
チガウチガウチガウ
だから、幸せなんだ、幸せなはずなんだっ!!
チガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウ
麻里がいるから、俺は誰よりも幸せなはずなんだっ!!!
148:妹が病んだ原因 第六話
08/05/24 02:20:35 ONE7CENV
「先輩」
混乱している俺を見ながらふーちゃんは続ける。
その顔は俯いている俺からは確認することができない。
「まーちゃんもおそらくは苦しんでいる。
それをまーちゃんはずっと解決しようとしてきた。
それが、おそらく、まーちゃんが言っている『約束』」
何を言っているかはわからない。
ただ、俺の頭が軋む音が聞こえるだけ。
「聞いてなくてもいいから聴いて。
これは先輩たちのために言うことだから。
先輩、あなたたち兄妹が幸せになるには逃げちゃダメ。
逃げないで真実と向き合うの。もう二度と忘れちゃだめ。
忘れてしまうと先輩もまーちゃんも幸せになれないから…」
なんだ。なんなんだ。こいつは、いったい、俺の、俺たちの何を知っているんだ!
忘れるな、だ、と?俺は何を、忘れている?
それが、それが今俺を苦しめているのか?
麻里が幸せになれないだと?どうしてそんなことが言えるんだ?
いったいなんだっていうんだ……
「ボクが言えるのはここまで。
先輩。今感じていると思うそのこころ。
それこそが先輩が本当にまーちゃんを想っている証。
それを忘れないで。お願い。
ボクじゃ、『友達』のボクじゃだれも救えないから……」
なんなんだよっ!!
俺たちは何なんだよっ!!
麻里。麻里ぃっ!!苦しんでいるのか?幸せじゃないのか?
お前は何を思っているんだ?何を抱えているんだ?
俺は何を忘れているんだ?
わからないわからないわからない
「俺はっ……俺はっ!!!」
幸せじゃなかったのかっ!!!
149:妹が病んだ原因 第六話
08/05/24 02:21:12 ONE7CENV
―――――――――――――
うずくまっていたお兄さんを置いて、帰り道を歩く。
「ちょっと、いきなりすぎたかな……」
いずれ言うべきことだったとしても少し時期が早すぎたんじゃないだろうか。
でも、まーちゃんの監視の目をくぐってお兄さんと接触するチャンスなんかおそらくもうなかったように思う。
今日まーちゃんが来れないのは、おそらく姉さんのおかげだろう。
あの人のことだからこういった手助けはおそらくもう期待しないほうがいいだろう。
多分、今日のが姉さんからの最初で最後の贈り物。
「姉さん……」
幼いころからずっと憧れていた姉さん。
でも、絶対に届かない。あの人の視界に入ることさえできないと知っていた私はずっとあきらめていた。
姉さんに認めてもらいたかった。姉さんに見てもらいたかった。
姉さんに近づきたくて、一人称を姉さんとおなじ『ぼく』にして。
でも、あの人はボクに、いや、世界に興味がなくて。
「ああ……だからボクは……」
あの兄妹が羨ましかったのかもしれない。
お互いがお互いをどこまでも欲し求め合う。
そんな関係に。
「だからこそハッピーエンドじゃなきゃいけないんだ」
そう。彼らの物語はハッピーエンドにしなくてはいけない。
彼女も、まーちゃんも、お兄さんも。決して失わず、決して死なない。
笑いあって、手を取り合っている、そんな最高なハッピーエンド。
彼女の思い通りにさせない。
まーちゃんの思い通りにさせない。
そのためにはお兄さんがすべてを知る必要がある。
種は植えてきた。
でも、その種が芽吹くにはもう少し時間がいる。
それまで二人がなにもしないとは思えない。
最悪、ボクは何もできず、何も残せずに彼女のシナリオ通りにまーちゃんに殺され、
そしてすべてが彼女の思い通りになってしまうかもしれない。
そうなると、ボクのしていることは無駄になる。
「そうならないように頑張らないとねっ!!」
姉さん。
ボクの親友たちが幸せになれるかどうか見ててね。
ボクは頑張るから。
「にゃふふふ♪そうと決まったら行動あるのみだねっ!」
自分を奮い立たせて夜の道を行く。
自分ではなく他人のためにすべてを懸けて……
―――――――――――――
150:妹が病んだ原因 第六話
08/05/24 02:24:43 ONE7CENV
投下終了です。
なんというか、神作品の後に投下って……
>>130 乙&GJ!! 素晴らしい作品をどうもありがとう!!!!
151:名無しさん@ピンキー
08/05/24 08:28:24 AenDnH7y
>>130
何かいろいろなことを投げっぱなしジャーマンというか、あまり深く考えずに話が
盛り上がれば良いという感じで細部は適当というか、ダメダメなんだけどキモ姉
ものとしては良い出来でした
152:名無しさん@ピンキー
08/05/24 10:15:47 IcwyY9oL
>>130
ありがたいね。キツいラストだったけど、楽しませてもらいました。
>>150
さてようやっと物語が動き出しそうな気配。二人がどうなってしまうのか楽しみです。
153:名無しさん@ピンキー
08/05/24 18:20:23 Fx9kTo83
絶体絶命都市2をやってて。
水害の中のキモウト と言うシチュを妄想してみる。
兄に会いたい一心で兄の研究を狙う怪しげな男をブチ殺し、追ってくる刑事と死闘を繰り広げ、
ある時は濁流に飲まれかけ、
そして兄の居る避難場所へ…
みたいな話。
154:名無しさん@ピンキー
08/05/24 18:29:35 L7VX1fIu
もちろんハッピーエンドだよな?
155:名無しさん@ピンキー
08/05/24 18:37:19 cUAxlhs1
ハッピーエンドって何だ?
156:名無しさん@ピンキー
08/05/24 19:17:52 6zEOvHPH
>>155
そりゃぁキモ姉妹の目標達成だろう
157:名無しさん@ピンキー
08/05/25 12:21:56 Zw1n0i/I
そろそろ前スレが埋まるな
158:名無しさん@ピンキー
08/05/25 16:21:36 lXyiXplG
前スレ>>334を見て、家庭が貧乏な間は両親は仕事三昧のため兄が妹の世話をし、部屋を共有していたのが当たり前だったから、妹が過度のブラコン(キモウト)だったことに気付かなかったけど
家が少し裕福になる→部屋の固有の話題→妹が全力で拒否→妹の過度のブラコンが発覚→両親・兄が妹を兄離れさせようと→妹が……
というのが思い浮かんだ
159:名無しさん@ピンキー
08/05/25 17:33:08 u2StUsk2
それを誰かがSSとして書いてくれればなぁ…
160:名無しさん@ピンキー
08/05/25 17:42:56 lf7GcArM
誰かがと何度言おうと誰も書いてくれない罠
基本的に皆受け身だからな
161:名無しさん@ピンキー
08/05/25 17:56:01 X0BcXzkY
んなこたーない
他人の投下プロットから始まって完結した長編もあれば、雑談の内容を小ネタ化して投稿した名無し書き手もいる
それに、毎日妄想力を鍛えていれば何かの弾みで書く気になることもあるんジャマイカ?
162:名無しさん@ピンキー
08/05/25 18:15:37 Dg7Kx4ZQ
>>28
今更ですがGJ!
163:名無しさん@ピンキー
08/05/25 20:44:27 dP19Aw2Z
前スレ埋まった。
変名おじさん乙&GJ!
164:名無しさん@ピンキー
08/05/25 20:49:43 d5H+dlRz
保管庫が更新されていますね
編集人の方、いつも乙です
165:名無しさん@ピンキー
08/05/25 21:07:20 6ksWuoNY
毎度のことながら、埋まりきるまで目が離せないな
166:名無しさん@ピンキー
08/05/26 00:24:17 7tIH1EM9
梅ネタはあれで終わりなのか
おじさん乙です
167: ◆lnx8.6adM2
08/05/26 00:28:19 kVKQfjwj
埋めネタはあれで終わりです。もともとタイトルだけ思いついたのを容量に合わせて書いたので
埋めネタの場合、話部分でスレが埋まった時は次スレで終了報告をした方がいいのでしょうか?
では失礼します
168:完結できない人
08/05/26 00:45:21 1Jq4daP3
日本に帰ってきたので、再出国するまでに何か一つ短編を投下しようと思います。
多分妹モノです。
169:名無しさん@ピンキー
08/05/26 01:18:33 TZL1pd9N
出国と聞いただけで今生の別れを連想してしまう俺の国際感覚は明治時代並
楽しみにしてます
170:名無しさん@ピンキー
08/05/26 15:05:20 aShizEFf
座して待つ。全裸でな!
しかし今日は暑くてかなわんぜ
171:名無しさん@ピンキー
08/05/26 15:33:09 z2pz/3Vw
こんな暑い日はキモウトの口移しで水分補給にかぎるぜ
172:おならマン/姉編
08/05/26 16:59:06 1fBVpJ9k
「ふう」
パソコンに向かっている姉の美佐子がため息をついた時、相川誠はここぞとばかり
に席を立ち、
「肩、こってるみたいですね、お姉さま」
などと言いながら、椅子に座っている美佐子の背後に立った。
「社会人はつらいね。家にまで仕事を持ち込まなきゃならないなんて」
「そう思うんなら、肩ぐらい揉みなさい」
「五百円で五分」
「ちゃっかりしてるわね」
美佐子は苦笑いしつつ、肩を指でとんとんとつついた。やってくれという意味である。
「毎度!」
誠は早速、姉の肩に手を置き、自分がマッサージ器にでもなったつもりで、揉み解し
にかかった。
地元の高校で教師をしている二十三歳の姉は、生真面目な性格が災いして、休日でも
こうして仕事をしている事が多い。生徒の為に効率の良い勉強の仕方を模索したり、私
生活について色々と相談にのっているせいか、気の休まる暇がなさそうだった。一方、
誠といえば生来のお調子者で、学業はそこそこ、運動もそこそこ、十七歳の今は家から
程近い公立高校に通い、青春を謳歌している所である。よくもまあ、姉弟ながらこうも
両極端に生まれついたものだが、これでも二人は結構、仲が良かったりする。
姉は弟の大らかさを愛し、弟は姉の真面目さを尊敬しているので、今もこうやって
肩揉みなどを請け負っているのである。その辺の呼吸は肉親ならではだった。
「ああ、気持ちいいわ」
誠の手は優しく凝りを解し、美佐子に癒しを与えた。仕事の疲れもあってか、美佐子
は目を閉じ、体を椅子に預けて良い心持のようである。
「姉さんの場合、肩こりの原因はパソコンばかりじゃないんだよなあ」
「どういう意味よ」
「これだよ、これ。胸が大きいせいじゃないの?」
誠は自分の眼下に見てとれる豊かな二つの山を、指先でちょいとつつきながら言う。
173:名無しさん@ピンキー
08/05/26 17:17:23 pzbjIKZZ
支援?
174:おならマン/姉編
08/05/26 17:22:34 1fBVpJ9k
「ちょっと、やめなさい」
美佐子は身をよじり、腕で胸を覆った。ほんの冗談のつもりで触れた誠は、姉の反応
に驚き、顔を強張らせた。
「ごめんなさい」
「あ、ううん、怒った訳じゃないのよ」
弟の殊勝な態度に、今度は美佐子の方が驚いた様子である。しかし、すぐに笑顔を
見せて、
「ほら、まだ五分経ってないわよ。お駄賃欲しかったら、しっかり揉むのよ」
「うん」
そうして誠はお詫びの意味を込めて、十分ばかし姉の肩を揉んだのであった。
それからしばらくして、誠が部屋に帰ろうとした時の事である。台所から飲み物を頂戴
してきた為、忍び足で階段を上がって自室の前へ行くと、何やら隣室からごそごそと
物音がする。そこは美佐子の部屋で、誠は姉が何か探し物でもしているのかと思い
隣室の前へ行く。すると、物音は声に変わり、耳にはっきりと言葉として届いた。
「あ、うん・・・」
鼻にかかったような甘い声と、衣擦れの音が奇妙なユニゾンとなっている。その間には
荒い息遣いも聞こえてきて、ただならぬ雰囲気であった。
(何事だろう)
部屋の扉には換気用のルーバーが下方に設置され、指を突っ込めば外からでも開け
られるようになっていて、そこから覗けば部屋全体の様子こそ分からないが、中で何が
起こっているかぐらいは確かめられそうだった。誠は這い蹲るようにし、ルーバーを指
でこじ開けて、室内に目をやった。
(どれどれ)
誠の視界に入ったのは、せいぜい腰から下の景色。もっといえば、窓に頭を向けて置か
れている、姉のベッドが何とか見る事の出来る状態である。だが、幸いな事に美佐子は
ベッドの上に寝転んでおり、何をやっているのかが見てとれた。
(あっ!)
と、思わず叫びそうになるのを何とかこらえて、誠は姉の姿を凝視した。美佐子はちょうど
こちらに足を向けている状態で、ミニスカートの奥を懸命に指でまさぐっている最中である。
(オナニーしてるのか)
ほんの十分くらいまで、仕事をしていた姉が自室にこもり、自慰をする姿を目撃するとは
誠も夢にも思わず、驚くばかりであった。白いショーツが右足の先に引っかかった有様
で、相当、急いだようである。
175:名無しさん@ピンキー
08/05/26 17:26:08 RVgtOWTM
お姉ちゃん支援しちゃいますよ~
176:おならマン/姉編
08/05/26 17:45:35 1fBVpJ9k
必死に声を出すまいとしているが、激しい息遣いが美佐子の興奮を表していた。ベッド
の上で乱れる姉の姿を見た誠は、股間が痛むほど巨大化している事に気づく。それは
姉弟という関係を超え、雌と雄に分類されているような感じだった。だが、誠には姉犯の
気持ちはないし、美佐子もきっと同じ考えだろうと思われる。なにせ先ほど、胸を少し
触っただけで過剰反応といえるほどの態度を見せたのだ。万一にも爛れた関係は望ん
でいないだろう。しかし─
「ああ、誠・・・」
と、美佐子が低く呟いた時、誠の背に冷や汗がどっと流れた。美佐子はその際、乳房を
激しく揉んだ。そこは誠が触れた場所だった。自らの手で優しく揉んだかと思うと、時に
厳しく乳首をひねり上げる事もあった。そしてうわ言のように誠、誠と呟くのである。
(まさか、俺の事・・・?)
同名の他人という事も考えられるが、姉は身持ちの堅い事で有名だった。学生時代はよ
く女友達を家に連れてきたが、その人物はいつも美佐子は異性から好かれるのだが、す
べて断っていると言っていた。実際、姉は外泊もした事がないし、週末は大抵、家にいる。
そうなると必定、美佐子が呟く名は自分という事にならないか。誠は姉の痴態を見ながら、
まさか、まさかと心の中で叫ぶ。
「駄目よ、誠・・・おいたしちゃ・・・」
美佐子はついにさかりのついた犬のように這い、尻を誠の方に向けて秘所をますます激し
くいじり始めた。そのうち、どこからか男根を模した器具を持ってきて陰裂にあてがい、
「誠・・・」
と言って、それを女穴奥深く埋めたのであった。
(うわー、凄いな。あんなになるんだな)
きわめて肌色に近い二枚貝が円形に押し開かれ、桃色の生肉を男根まがいが抉っていく
光景は、想像を絶する物だった。あの姉が、器具を使って自慰をするなどとは思いもよらず、
誠はいきり立つ下半身が粗相をせぬよう頑張るので必死。いや、もうパンツの中は粘り気
のある液体で溢れ、青臭さまで漂う始末である。当然、このまま見ている訳にもいかず、誠
は来た時と同じように忍び足で部屋の前から去っていった。
「びっくりしたなあ・・・まさか、姉さんが」
自室に戻っても、姉のあの姿が目に焼きついてどうしようもなかった。そうして誠は美佐子と
同じように、自慰をするのであった。
177:名無しさん@ピンキー
08/05/26 17:50:45 tNGhjqop
ばよ支援
178:おならマン/姉編
08/05/26 18:09:44 1fBVpJ9k
「なに、誠」
夕食の時間、誠はぼうっと美佐子の顔を見ている事に気がついた。
「私の顔に、何かついてる?」
「目と鼻と眉毛と口が」
「当たり前でしょう」
対面に座っている美佐子の姿は、いつもの尊敬する姉、そのものである。服装が変わ
っている訳でもなく、素のままの美佐子がそこにはいた。
誠はまだ、姉の自慰姿の余韻に支配されている。教師という身分はさておき、わが姉と
て人間である。自慰をするとは思わないでもないが、実際に目にすると相当な衝撃であ
った。まして尊敬する姉があのように激しく乱れようとは思ってもみなかったので、誠は
女の貪欲さをまざまざと見せ付けられた感がある。
「誠、お箸が進んでないわよ」
「あ、うん」
「調子でも悪いの?」
「そうでもない。俺の自慢は健康だけだから」
「そうね。うふふ」
両隣に座っている両親はわが子の変化に興味がないようで、誠の変わった様子にも気
を止めはしないが、美佐子は何かと面倒をみたがった。はて、姉は一体、自分をどう見て
いるのだろうと誠は思いつつ、飯をかきこむのであった。
夕食後、誠は自室であれこれと考えた。姉の自慰姿を見た事は無論、黙っているとして、
問題は彼女が呟いた名前である。あれが赤の他人であれば別にいいが、もし自分であっ
たらと考えると恐ろしくて仕方がない。繰り返すが誠は別段、姉犯の気持ちは持ち合わせ
ていないし、もし美佐子が弟を愛しているような事があっても、大問題としか思えない。血
のつながった肉親が体を重ねる事は道徳的に許されず、あってはならぬ事だ。美佐子が
好きか嫌いかと問われれば勿論、好きと答えるが、それは姉としてであって、一人の異性
としてではない。
そうして懊悩してると、不意に誰かが部屋の扉をたたいた。
「誠、ちょっといい?」
やや間があって扉が開くと、いかにも風呂上りという感じの美佐子が立っていた。普段、
この姉はこんな姿で弟の部屋を訪れるのだが、今日は例の事もあってか何やら誠は緊張
するのである。
「なんだよ、姉さん」
「ちょっと腰を揉んでよ。五分で五百円」
そう言って美佐子は誠のベッドへ倒れこむ。この行為自体は珍しいものではないが、やはり
あの事が誠の心に響いており、違和感を与えた。
179:名無しさん@ピンキー
08/05/26 18:18:52 zW0IZdqP
私怨
180:名無しさん@ピンキー
08/05/26 18:23:59 3RDLzd++
取り合えず、書きながら投下してるのなら止めた方が良い
181:名無しさん@ピンキー
08/05/26 18:27:10 waVpzsod
投下ながすぎ
書きためて投下してくれないと困る
182:おならマン/姉編
08/05/26 18:32:19 1fBVpJ9k
「ねえ、早く」
「分かった」
誠は白いキャミソールとショーツしか身に着けていない美佐子の体をまたぎ、腰に手を
あてた。柔らかな女体に指が吸い込まれるかのような錯覚をしつつ、誠は腰を揉み始め
た。
「ああ、いい気持ちよ、誠」
「疲れてるんだよ、姉さんは」
按摩よろしく腰を揉み解していくうちに、誠は半裸の姉の姿に艶かしさを感じた。姉とて
一人の女である事を知り、理性が溶けていくような気さえした。考えてみれば姉という
のはきわめて複雑な存在である。母ではなく他人でもない。若く瑞々しい体を有している
のに、奪ってはいけないのだ。いわばお預けをくらったままの生活を、十年、二十年と
過ごし、どれだけ心を通い合わせても結ばれてはいけない。そんな不都合な存在がはた
してあるものだろうかと、今更にして誠は思う。
誠は少しずつ腰から下へ手を伸ばした。そして、硬くなった男根を姉に悟らせるように、
尻の割れ目にあてがった。もう、一線を越えても構わないと思った。相手の気持ちはどう
か分からないが、姉を女と見るようになっては仕方がなかった。しかし、美佐子は無言で
ある。突っ伏したまま、誠の好きなようにさせているのだが、さすがに変だと思い、美佐子
に話しかけてみると・・・
「姉さん」
「・・・・・」
返事はない。どうやら眠っているらしい。仕事の疲れかはたまた自慰で疲れたのかは
さておき、不安定な状態の誠には危険な状況になった。
「ううん・・・」
美佐子がふいに寝返りを打った。誠にはちょうど、姉の寝姿を眼下に見る形となり、別の
方向から見れば、それは今から男が女を犯すような姿だった。誠はふっくらと膨らむ二つ
の山に手を伸ばし、キャミソールの肩紐をそっと外す。ブラジャーはしておらず、生の乳房
がお目見えし、誠の手がそれをしっかりと包んだ。その感触は例えるならば、形の崩れない
柔らかな餅のようで、頂だけが弾力のある固さを持っていた。誠の指はその頂を啄ばみ、
更には唇を近づけて甘く噛んだりした。
183:名無しさん@ピンキー
08/05/26 18:32:35 aShizEFf
新人は歓迎する
が、まだ長くなるようなら書きためて一気に投下してくれ
期待支援
184:名無しさん@ピンキー
08/05/26 18:34:27 1fBVpJ9k
すいません。じゃ、またの機会に。
185:名無しさん@ピンキー
08/05/26 18:35:15 zTb9s4jp
>>179
醜い泥棒猫がお兄ちゃんと一緒の空気を吸うなんて許せない……
こうですか、わかりません><
186:名無しさん@ピンキー
08/05/26 18:43:34 UkUw+hUB
まあ落ち着けよ
せっかく投下してもらってんだからそんな言い方ないべ
書き終わる頃までスレを閉じる手もあるだろ
まあ完成してから投下してもらうのが一番良いんだけどな
と書き込もうとしたらすでに終わっていましたわけで…
>>184
完成したら投下してください。期待して待ってます
187:名無しさん@ピンキー
08/05/26 20:42:47 AXYw7Amm
>>186
書きながら投下すると、他の作者さんが投下しにくくなるからね
保管庫の人も大変だろうし
>>184
期待してます
188:おならマン/姉編
08/05/26 21:33:56 /KqFoD5P
いきまーす。終わりまで。
189:おならマン/姉編
08/05/26 21:38:21 /KqFoD5P
敏感な場所を悪戯されているというのに、美佐子は目を覚まさない。あるいは起きて
いるのかもしれないが、拒む様子は見せなかった。もっとも誠は姉の同意を得ている
訳ではないので、あまりしつこくは責められない。一時はこのまま犯してしまいたいと
考えたが、万が一、姉の素振りが自分の勘違いであったならば、もう姉弟の関係には
戻れないので、踏ん切りがつかないのである。勃起した男根は行き場を求めていらだ
っているが、まさかこれを姉の中に入れてしまう事も出来ず、ただ腹をすかせた犬の
ようにうろつくばかり。
「姉さん、はあはあ・・・」
誠は乳房を入念に舐め、乳首を赤子の如く吸った。湯上りの肌は何やら良い匂いを
放ち、少年を惑わせる。いつしか美佐子の肌は上気し、汗ばんでいた。そして、誠が
もう一度、乳首をちゅうと吸いつけた時、
「ああん・・・」
不意に美佐子は目を閉じたまま、体を捩ったのである。誠は慌てて飛び退き、心臓の
高鳴りを覚えながら姉の様子を確かめた。
(やっぱり、寝てるんだ)
誠は冷や汗をかいていた。危うい所であったと自分を戒めた。姉は間違い無く寝てい
る。昼間に見た、誠という名を呟きながらの自慰も、この思わせぶりな態度もすべて
己の勘違いだと思った。ありふれた名前である。美佐子の恋人がたまたま、自分と同
じ名前であったとしても何の不思議があろう。無防備な下着姿でこの部屋へ来たのも、
弟は異性として物の数に入ってないという証しではないか。そう考えると、激しくいきり
立っていた誠の男根は、すっかり萎んでしまった。
「ごめん、姉さん」
誠は肌を露わにした姉に毛布をかけ、頭を冷やす為に自室から出て行った。ギリギリ
の所で間違いを犯さずに済んだが、まだ心はかき乱れており、姉と同室するのは気ま
ずかった。だが、誠が出て行ってすぐ、美佐子はむくりと起きて、
「意気地なしねえ」
と、呟いたのであった。
190:おならマン/姉編
08/05/26 21:42:55 /KqFoD5P
翌日も美佐子はパソコンの前で頑張っていた。誠は贖罪のつもりもあって、今日は
自分の方から声をかける。
「姉さん、肩こってない?」
「こってるわよ」
「揉んであげようか。お金はいいから」
「あら、珍しい。後が怖いわね」
ふふ、と美佐子は笑って、肩をとんとんと指でつついた。
「今日はあまりこってないみたいだね」
「そうね。昨日、あなたにたくさん揉んでもらったし」
実際、あまりこってはいないのか、美佐子の肩は筋張ってはいなかった。
「仕事もほどほどにして、遊びに出ればいいのに。彼氏とかいるんでしょ」
「いないわよ。どうして?」
その言葉を聞き、誠は首を傾げた。
「いや、姉さんも年頃だし、彼氏がいてもおかしくないかなって思って」
「心にもない事言わないのよ。昨日、私がオナニーしてる所、覗いたくせに」
この瞬間、誠の体が凍りついたように強張った。
「なあに、その驚きようは。まさか、気がついてないと思ってたの?」
そのまさかである。誠は固まったまま、ぐうの音も出ない。
「夜なんか寝たふりしてたら、おっぱいをちゅうちゅう吸っちゃって・・・ふふ、気持ち良か
ったわよ」
美佐子は立ち上がると、誠に向き直った。そして、シャツの上から自分の乳房を揉み、
「触ってごらん」
と言って、誠の手を取った。
「じゃあ、昨日・・・あの時に、誠って呟いてたのは」
「もちろん、あなたの事よ。可愛い弟だもの。妄想の男役に使って何が悪いの?」
誠の手は美佐子の誘いで、柔らかな乳房の上にあった。昨晩、揉んだり吸ったりした
あの場所である。
「私ね、あなたにレイプされる妄想が一番、感じるの。服を破られたり縛られたり・・・
ふふ、ごめんね」
誠の男根はぎりぎりと上向き、ズボンの中で大きくなっていた。両親は留守にしていて
我が家には姉弟、ただ二人きりである。
191:おならマン/姉編
08/05/26 21:45:10 /KqFoD5P
「さあ、私の部屋へ行きましょう。父さんも母さんもいないし、今日はたっぷりと遊べる
わね」
「姉さん、俺・・・」
「何を怖がっているの?姉弟だって女と男、血が繋がってるからって、何もしてはいけ
ないって訳じゃないのよ」
美佐子の手が誠の腰にまとわりつき、ざわざわと揺れ動く。見ればその様は、蜘蛛の
巣に捕らえられた羽虫か何かのようであった。
それから時が移ろい、真冬を間近に控えたある日の事。美佐子と誠は実家を離れ、ア
パートの一室で寄り添うように暮らしていた。美佐子の腹は大きくなっており、一目見
て妊娠している事が分かる。
「誠、今、赤ちゃんがお腹を蹴ったわ」
「本当?」
美佐子は妊娠五ヶ月を過ぎ、すでに安定期に入っている。勿論、父親は誠で、産む
つもりだった。
あの日以来、姉弟は夫婦のように過ごし、当然のように子をなしてしまった。美佐子は
休職届けを出し、誠は学生をやりながら一緒に暮らしているが、懐妊を知った両親に
怒りを買い家を追い出された為、今は本当に二人きりとなってしまった。もっとも姉、弟
共に何ら沈む事無く、むしろ邪魔者はいないとでも言いたげに、飄々と生きている。傍
から見れば若夫婦のように映り、健康的な間柄に見えるが、その実、これ以上ないほ
どのいかがわしい繋がりだった。
「姉さん、俺とこうなった事、後悔してない?」
「ずっと前から、こんな風になりたかったのよ。後悔なんてしてないわ」
美佐子は腹を撫で擦りながら、微笑んだ。幸せな女の顔だった。
「じゃあ、誠。今日も抱いて」
「うん」
二つの影が一つになった時、アパートの明かりが消え、姉弟の罪を覆い隠すように闇が
辺りを包むのであった。
おしまい
192:名無しさん@ピンキー
08/05/26 22:01:18 t4zR6/dh
>>191
GJ!
次は妹編なんだよな? 楽しみに待ってますよ。
193:名無しさん@ピンキー
08/05/26 22:13:17 JWEJFz5E
>>191
こりゃナイスだ。GJだ。たまらんね。
194:名無しさん@ピンキー
08/05/26 23:06:56 UkUw+hUB
にやにやしながら読んじまったじゃねーかよGJ!!
妹編を期待してます!
っつーかさ、「おならマン」っつーからどっちがどのタイミングで屁をこくのかとずっとさ……
195:名無しさん@ピンキー
08/05/26 23:41:48 3zKlP0ki
>>191
GJ
しかしけしからん姉だな。もっとやれw
196:名無しさん@ピンキー
08/05/27 02:05:00 KX3aw6Hd
(*´Д`)ハアハアハアハア・・・・・・・・・
(*´Д`)ウッ!!
・・・ふぅ。
まったく、姉弟で孕ませとはけしからんSSだ。
197:名無しさん@ピンキー
08/05/27 05:13:08 UDCf0/sU
GJ!
だが、題名がアレなモンでずっと変な意味でドキドキしてしまったじゃないかぁ!
198:名無しさん@ピンキー
08/05/27 05:48:25 lPEmkcg3
ハンドル名を見てギャグ系かと思いましたが
抜きました。 (;´Д`)ハァハァフンフン
199:名無しさん@ピンキー
08/05/27 07:53:35 oxRkJNiW
きめぇ
200:名無しさん@ピンキー
08/05/27 08:28:10 a+QJ72By
↑
* *
* + 褒め言葉です
n ∧_∧ n
+ (ヨ(* ´∀`)E)
Y Y *
201:名無しさん@ピンキー
08/05/27 09:11:17 oxRkJNiW
きめぇ
202:名無しさん@ピンキー
08/05/27 10:58:28 9j0lHfeL
マゾなキモウトを言葉責めにしたいんですね、分かります
そういや変態言われて喜ぶキモ姉妹短編が幾つかあったなぁ
203:名無しさん@ピンキー
08/05/27 12:18:28 0Q9b/YiA
^´ ∨// /,∠ ,. ' /l/// /, ' , '/ ! | l }´ 〈
〉 変 〈/ , ' // ̄`>< /// /// _,.=‐|'"´l l〈 変 /
〈 態. ∨, '/l| ,.'-‐、`//`7/ /''"´__ | ハ l丿 態 {
人) ! ! (/! |ヽ〈_ ・.ノ〃 〃 / '/⌒ヾ.! ,' !く ! ! (_
ト、__/ ヽ、_,.イ /l l |:::::::```/:::::/...´.. //´。ヽ }! ,' !! ) /
ト' 亦 ,イ⌒ヽ/ !l l ! l し J ::::::::::::::::::::``‐-</ / ,'、`Y´Τ`Y
l 夂 (ハ ヽ l i ! l ', ! , -―-、_ ′::::::::::::: //! Λ ヽ、ヽl
ヽ 〉,\ ! i ',.l `、'、/_,. ―- 、_``ヽ、 ι 〃,'/! ヽ、\ ヽ、
! 能 // ,' lヽ! ii ',l ∨\'⌒ヽー-、 `ヽ、! / ハ ノヽ._人_从_,. \
| 心 { / ,' ' ,! ll l`、 { ヽ' \ ヽ ' '´ Λ ',} ( \
.丿 ∨ // ,',! l l l ヽ`、 \ \ ∨ し /! ∨ 変 ,ゝ、
∧ / / ヾノ //l l l l、_ヽ\ \ ヽ , ' ,.イ |ノ 態 (ヽ
/ノ__ ゚ ゚ (⌒`〃'j | l l l `ヽ `ヽ、.ヽ _,.}'′ ,.イl { | ヽ ! ! ,ゝ\
/ /`Y⌒ヽ/⌒ 〃 ノ | l l l } ヽ、._ } ノ,.イ l | ! ! | )_
204:名無しさん@ピンキー
08/05/27 13:29:21 KIatPr9d
>>199
>>201
/::::::/::::::::::::::::\/ |:::::/|:::::| |::::::| |::::|::::::::|:::::::::::::|::::::::::\:::::::::::::::
:::::::/::::::::::::::::::/ ヽ、 |::/ |::::| |::::::| |::::ト、:::::|、:::::::::::|:::::::::::::::ヽ:::::::::::
:::::/::::::::/::::::/ ,==>ト{_, |:::| |::::::| |::::| \|\::::::::|::::::::::::::::::|::::::::::
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|:::/::o::::::| | {::::::l|l|::!| V |:::::! レ/´,ィ´ ̄`ヽ::::ト、::::::::|:::::|::::::::::
レ'.:::::|::o::! ヽヾ、:::ノノ ヾ、| | /::ヽ、_ノレ' ヽ:::::::|:::::|::::::::::
/.:::゚:::∧:::::|(__)ニ==ニ | |::::::l|l|l:::::::| ト、::::!::::。:::::::::
.::::::::::/::::ハ:::| ´ ̄ ̄` ヽヾ、;;;;;;;;;;ノ O::::o::::::::::::::::
::::::::/::::/ .:ヾ、 .::: ´ ̄ ==‐- 二つ /::::::::::::::::::::::::::: あやまれ!!
:::::/::::/ .::::∧ ` /::::::::/::::::::|::::::::: お兄ちゃんにあやまれ!!
::/::::/ .:::::/::∧ ヽ`'ー--- 、 /.::::/:::::::::::|::::::::: あやまらないなら・・・・・・お前なんか殺してやる!!!
/:::/ .:::::/.::/.::.ヽ |:::::::::; -‐::::.ヽ /.::::/:::::::::::::::::|:::::::::
::::;' .:::::/ .::i:::::::::.\ !:::/7:::::::::::::::::i /.::::/:::::::::::::::::::::::|:::::::::
.:::! .:::/ .:::::!:::::::::::::/\ V〈::::::::::::::::::::| ∠:::::/:::::::::::::/.:::/::::::|:::::::::
::::|:::/ .:::::::l::::::::::::/.::::::.\ \ヽ、_// /::::::::::::::::/::::/|:::::::|:::::::::
::::レ' .::::::::/::::::::::/.::::::::::::::.\ `'ー--‐' _,. ‐'"/.::::::::::::/.::::/::|:::::::l\::::
:::::::::::::/.::::::/.::::::::::::::::::::::.`'ー--‐''"´ヽ /.:::::::::/.:::::/::::|:::::::| \
ところで、前スレあたりから妙にAAを見るようになった気がする
205:名無しさん@ピンキー
08/05/27 19:33:12 OxDMXy3J
電波ネタ1~姉弟inRPGゲーム世界~
「う~ん、はっ!何処だ此処!おい、起きてくれよ姉さん!!」
「うにゅ~何よ朝から。もしかして性欲の限界?お姉ちゃんが奉仕…何処よ此処。」
俺達は姉弟は俺の部屋から訳の分からない宿屋に飛ばされていた。
俺は恐る恐るフロント?のジジイに此処は何処かと聞いた。
「此処はウィマーナ王国、マン炭坑宿場町の宿屋じゃ」
ウィマーナ?宿屋?…俺のやってたゲームの世界じゃないか!
て、事はスメタナ街道を通って総統府まで出向かないと行けないのか…姉さんとリリス会わせたく無いな~
でもリリスイベント無いとこのゲーム進まないんだな、これが。
・・・・・・・数年後
「主人公様!姉王様がお呼びですぞ!」こいつは家臣のエル翁、原作の王様だ。
あれから、ヒロインは見せ場無く姉に謀殺され、俺に近付いて来た第一・第二王女はやはり姉の餌食となった。
魔王を姉が瞬殺した後、姉が軍事クーデターを引き起こし、現在に至る。
前国王は俺達の執事へと成り下がってしまったのだ。
こうしてウィマーナ共和国連邦の一日が終わる。
「よく聞いて、お姉ちゃん世継ぎができちゃった。」
206:名無しさん@ピンキー
08/05/27 19:59:15 98mOoxrO
207:名無しさん@ピンキー
08/05/27 22:18:04 Xnx17uqS
スレ止まり過ぎだろ、jk
>>205
ガンガレ。とにかくガンガレ!
>>206
ageんなー!
208:名無しさん@ピンキー
08/05/28 14:57:07 CUm9kvey
保管庫落ちた?
209:名無しさん@ピンキー
08/05/28 15:31:28 NSezYVDp
>>208
まとめサイトの事?
確かに見れないね
210:名無しさん@ピンキー
08/05/28 16:21:26 yBe7t11+
第二保管庫は見れるぞ?
211:名無しさん@ピンキー
08/05/28 17:06:20 uzq9Fd+u
今年のクリスマスはヤンデレのお友達が出来るようにお願いしよう!
212:名無しさん@ピンキー
08/05/28 17:25:34 bHJMVkcj
>>211
お兄ちゃんひどい!
わたしのせくしーな水着姿をみたくないの?
213:名無しさん@ピンキー
08/05/28 17:40:37 cwyR35x4
なに言ってるの
>>211ちゃんは貴女よりお姉ちゃんの水着に夢中なの
214:名無しさん@ピンキー
08/05/28 17:52:51 sDutG9/t
確かに妹のサンタコスはかなり魅力的だな・・・
215:名無しさん@ピンキー
08/05/28 18:41:59 fK48c5Dy
ふぁーあ
216:名無しさん@ピンキー
08/05/28 20:34:57 ZAKV0kZG
なんかこの前姉がブリーフみたいなパンツ買ってきて「男物みたいのだから履く?」とか言ってきた。絶対履かんが。
217:名無しさん@ピンキー
08/05/28 20:57:06 ctWQmhcK
いきなり規制くらっちまった。orz
どっかに電子戦につえーキモ姉妹はいないものか
218:名無しさん@ピンキー
08/05/28 21:26:28 e0tpEGyJ
チャフ撒くキモ姉とか?
219:名無しさん@ピンキー
08/05/28 21:29:54 9XHvAoGu
「文明社会にいる限り、お兄ちゃんは私から逃げられない」と豪語するキモウトとか?
220:名無しさん@ピンキー
08/05/28 22:24:46 o5Lh2cQG
イージスシステムと互角にやり合った上、データリンクシステムを乗っ取る姉妹とか?
221:名無しさん@ピンキー
08/05/28 22:32:24 ruqjB6vP
何のためにだw
222:名無しさん@ピンキー
08/05/28 22:32:49 Y50dutq1
世界中の人間を洗脳してスパコンで愛しい兄弟を一から再生しようとするキモ姉妹とか
223:名無しさん@ピンキー
08/05/28 22:41:45 ctWQmhcK
>>222電人HAL乙
しかし考えてみると監禁はあっても監視とかあんまないよな
部屋にカメラ設置したり
224:名無しさん@ピンキー
08/05/28 22:45:32 pXJCiBEo
フェアリィ空軍に所属しているキモウトとかか
225:名無しさん@ピンキー
08/05/28 22:47:27 ruqjB6vP
>監視
『お姉ちゃんの3乗』で普通にやってたぞ、盗聴と盗撮。
常時やってるのは盗聴だけっぽいが
226:名無しさん@ピンキー
08/05/28 22:56:01 GCA1fPKq
スカイネットはキモ姉だった
227:名無しさん@ピンキー
08/05/28 23:13:56 o5Lh2cQG
兄の携帯…電波傍受
家の電話…専用回線にて盗聴
兄…盗聴器、CCDカメラにて監視
な、キモウト。
228:名無しさん@ピンキー
08/05/29 00:04:38 bW8ZaHBJ
なにこのミリタリースレ
229:名無しさん@ピンキー
08/05/29 01:20:37 xKsZdqyd
こうなると幽霊になって四六時中まとわり付いてるキモ姉が一番強いんだな。
そういえばお姉ちゃんが幽霊になって帰ってくる話がいくつかあったな。
いいところで切れてる奴とか。
230:名無しさん@ピンキー
08/05/29 01:29:54 xKsZdqyd
229を書き込んだ瞬間からなんだか首筋が寒い。
昔よく妹が冷えた手を俺の背中に入れて来たのを思い出した。
天国で元気にしているだろうか。
231:名無しさん@ピンキー
08/05/29 01:32:29 fJhLCLfD
>>229
サツキですね、分かります
232:名無しさん@ピンキー
08/05/29 02:02:16 iHm66lDt
アルファルファモザイク 兄貴へ
これで検索して読んでみてくれ
素晴らしいキモウトの妄想が生まれるやもしれぬ
兄貴(家族)として好きだった→一人の男として好きになった
そんなキモウトとか良くね?
233: ◆7d8WMfyWTA
08/05/29 04:12:16 T3M55Cpp
投下します
234:ノスタルジア ◆7d8WMfyWTA
08/05/29 04:17:43 T3M55Cpp
澄川家の平日の朝は早い。
まず朝の六時には、父の武雄が家を出る。
さらに六時半には、母の八重子も家を出る。
それぞれ職場で重要な立場に就いている人間ゆえ、とにかく常に仕事に追われている。
八重子は五時には起きて夫と一緒に朝食をとり、さらに子供たちの食事を作っておくことをここ数年の習慣としていたが、最近になって変化が生まれた。
「じゃあ後はお願いするわね。私はもう行かなければならないから」
「わかったわ、お母さん」
「助かるわね。あなたは本当、出来た子だわ」
早朝の台所で、八重子は娘の千鶴子にいくつか指示をした後、そう言って微笑んだ。
きっちりとスーツを着込み、すでに化粧も済ませてある。
髪を後ろで結わえていたゴムを外すと、ややウェーブがかった黒髪が背中に流れた。
千鶴子の母親とだけあって、千鶴子に良く似た顔の造りをしており、大人らしい色気と美しさに溢れた女性だった。
ただ、八重子はその表情に生き生きとした変化があり、千鶴子はその表情には全くと言っていいほど変化が無い。
ともに美しいと言っても、その違いが、両者の美しさの種類を異なったものとしていた。
動的な八重子の美しさに対し、どこまでも静かな美しさの千鶴子であった。
「もう私よりもおいしいご飯が作れるんじゃないかしらね」
「そんなことはないわ」
八重子の褒め言葉に、千鶴子はその端正な顔立ちをほとんど動かさずに返す。
八重子は小さく笑って、先ほどまで自分が身につけていたエプロンを千鶴子にかけた。
「相変わらず愛想がないわね、あなたは」
「…………」
「学校でお友達はできた?」
「ううん」
「……まあ、あなたのことだから心配は無いと思うけどね。女の子なんだから、もう少し可愛く振舞っても罰は当たらないわよ」
「…………」
八重子が何を言っても、千鶴子はただ黙って八重子を見つめるか、一言短い返事をするだけだった。
生まれてこの方いつもこの調子だったので、八重子は今更特に思うことも無かった。
自分の娘に能力が備わっていることは既に承知していたので、この年齢にしては落ち着き過ぎに思える態度も、実に頼もしく思えた。
「頼むわよ、千鶴子。そろそろあのだらしないのが起きてくると思うから」
「誰がだらしないって?」
八重子が言うと同時に台所に入ってきた文雄が、寝ぼけ眼を擦りながら不満げな声を出した。
「あなた以外に誰が居るというのよ。まったく、本当にだらしない……。千鶴子を見なさい。もうきちんと着替えて、ご飯の支度だって始めているっていうのに」
「え……? う、うわっ!」
八重子の言葉に、文雄は千鶴子の姿を視界に捉える。
眠気に半ば閉じていた目を見開き、叫び声をあげて飛びのいた。
「なによ、あなた。千鶴子を見て飛び退るなんて。家族とはいえ失礼でしょう」
「あ、い、いや。居るとは思わなかったから」
「何言ってるの。このところあなたの食べている朝食を作っているのは千鶴子なんだから、起きていて当然でしょ」
「まあ、そうなんだけどさ……」
よほど心が乱れたらしい。
文雄は母の追及に、しどろもどろといった様子だった。
「まあいいわ。それじゃあ私は行くからね。二人とも、しっかりやりなさい」
八重子は時計を見ると、バッグを肩から提げてぱたぱたと廊下を走って行ってしまった。
玄関の扉が閉じる音がして、家の中には一瞬奇妙な静寂が訪れた。
後に残された兄と妹。
千鶴子は文雄をじっと見つめ、文雄はその視線から逃れるように目を逸らしていた。
「おはよう、文雄さん」
千鶴子は文雄の様子など一切気にした風もなく、挨拶を口にする。
対する文雄の声は小さく、どこか落ち着かないものだった。
235:ノスタルジア ◆7d8WMfyWTA
08/05/29 04:18:52 T3M55Cpp
あの日から、文雄は千鶴子に対してよそよそしい態度をとってしまっていた。
冗談とはいえ、自分と性交渉を持ちたいと口にした妹を、意識せずにはいられなかったのだ。
自然に、何も無かったように振舞おうとしても、そこは澄川文雄、根が正直な男である。
気付けば千鶴子と距離を置くように動いてしまっていた。
「おい、文雄、どうしたんだ。このところ、随分粗末な昼飯じゃないか」
「ん? ああ……」
窓の開け放たれた五月の教室。
いつものように海風が通り抜け、真っ白なカーテンをはためかせる。
このところの陽気のおかげで、昼休みとなると生徒たちは屋外で食事をとるようになっていた。
人少なになった教室で、文雄と統治郎はいつもと変わらず、窓際の机を挟んで向かい合って座っていた。
文雄の手の中には、先ほど購買部で買ってきたカレーパンがあった。
「まあ、色々あったんだよ」
そう言って、文雄はカレーパンにかじりつく。
統治郎が自分の弁当のおかずを箸で指し示した。
「いるか?」
「いや、いいよ。案外足りそうだし」
「そうか? 遠慮しなくてもいいんだぞ? あの豪華な弁当からだと落差が激しいだろう」
「前が異常だったんだよ。これが普通さ」
「異常と言うか、尋常ではなかったのは間違いないがな。千鶴子ちゃんと喧嘩でもしたのか?」
「……どうしてそんなこと聞くんだ?」
「あれほど凝っていた弁当がぱったりと無くなれば、不思議に思うだろ」
「別に……喧嘩なんてしてないよ」
喧嘩ではない。
ただ文雄が一方的に避けているだけだった。
例の冗談の数日後、昼の弁当はもういらないと言ってしまったのだ。
既に作ってしまった弁当を手に玄関口に佇む妹の、無表情ながらどこか寂しさを感じさせる顔を思い起こし、文雄は胸を痛めた。
「そう……喧嘩なんてしてないよ」
「何かあったのなら相談に乗るぞ?」
「何もないよ」
「お前は正直者だ。顔に出る。苦しそうな表情をしている。何かあったと書いてある。話してみれば楽になるかもしれないぞ」
「話すほどのことはないさ。心配してくれるのは嬉しいけど、気持ちだけ受け取っておくよ」
さすがに、妹を意識してしまって避けている、などとは口が避けても言えない。
俯く文雄の肩を、統治郎がどんと叩いた。
「気持ちだけなんて寂しいことを言うなよ。俺は出来る限りのことをするぞ。実際のところ、お前と千鶴子ちゃんが喧嘩をしていると困るんだ」
「? 何で統治郎が困るんだ?」
文雄の問いに、統治郎はそれまでになく真剣な表情を見せた。
「実はな、文雄よ。俺は今、ある悩みを抱えているんだ。その解決に力を貸してもらいたいんだよ。お前と、千鶴子ちゃんに」
「よくわからないけど、それは俺一人じゃ力になれないことなのか」
「無理だ。というか、千鶴子ちゃんじゃないと無理なんだ」
「何だそりゃ。そう思うなら、千鶴子に直接頼めばいいんじゃないか?」
呆れたように言う文雄に、統治郎はずいと顔を寄せた。
「簡単な話だ。俺から頼んでも千鶴子ちゃんは引き受けてはくれないだろう。ああいう子だからな。毎日愛情弁当を作ってもらうくらいに懐かれているお前から頼んでもらった方が、引き受けてもらえる可能性が高い」
「あ、愛情って、そんな……」
「それにだ。兄妹は喧嘩しているよりも仲が良い方がいいに決まってる。俺の相談をきっかけに、二人を仲直りさせることができれば、それは喜ばしいことだ。一石二鳥だ」
「仲直りって……だから、喧嘩とかじゃなくてもっと複雑なもので……それに、元々仲が良かったのかどうかも怪しいよ、俺と千鶴子は」
統治郎は、ふむ、と首を捻った。
「素直じゃないな、お前は」
「……それで、統治郎、お前の悩みっていうのは何なんだよ。千鶴子じゃないと無理という話だけど、それこそ俺だって出来る限りのことをするつもりはあるぞ」
統治郎は大柄な体をゆすって椅子に座りなおすと、一息ついてから話し始めた。
「実は、俺には従妹がいてな。この学校の一つ下の学年に在学しているんだ」
「へぇ……統治郎の従妹か。お前に似てワイルドなのかね、やっぱり」
「いや、これが全然似ていないんだ。俺の一族は確かに俺みたいに体が大きくて性格はいいかげんなのがほとんどなんだがな。その従妹はどこをどう間違ったのか、やたら小さくて、繊細な面構えなんだよ。千鶴子ちゃんほどではないが、まあ可愛いと言えるだろう」
「そう真剣に言われると、自虐ネタなのか従兄馬鹿なのか千鶴子へのお世辞なのかわからなくなるな……。で、その従妹がどうしたっていうんだ?」
「うむ、そいつがな、人を殺したと言っていてな」
「そりゃあ……なかなか……」
「困ったもんだろう?」
236:ノスタルジア ◆7d8WMfyWTA
08/05/29 04:21:44 T3M55Cpp
夏江統治郎には従妹がいた。
が、その従妹とはすでに数年間会っていなかった。
統治郎の親族は、そこまで付き合いが希薄な面々ではない。
ただ、その子の過去があまりに特殊だったからだった。
「お前を信じて話すんだ。口外はするなよ」
そう言って始まった統治郎の従妹の話は、驚くべきものだった。
美山叶絵、旧姓は里井。
彼女は中学に入学する少し前に、両親を亡くした。
父親が彼女以外の家族を皆殺しにした末に、自殺したのである。
殺人鬼の娘となった叶絵。
そのあまりの壮絶さゆえに、統治郎の両親をはじめ、親戚の者たちは彼女を引き取ることに消極的だった。
また、親族間で囁かれる噂が、彼女をさらに窮地に追い込んだ。
叶絵と父親は男女としての関係を持っていたのだという、そんな噂だった。
叶絵との関係が明るみに出た父親は、他の家族に責められることとなり、最終的に家族を皆殺しにしてしまったのだということだった。
親族の中で警察と繋がりを持つ者が聞きだしたもので、信憑性の高い話とされた。
家族を崩壊に導く要因となり、その命を全て奪い、一人生き残った娘―親族達は叶絵をそう認識し、蔑み、忌み嫌った。
当時統治郎はそのあたりの事情を良く知らずに、両親にうちで引き取ってはどうかと提案したが、一蹴されてしまった。
結局誰も引き取り手の現れないまま日は過ぎ、叶絵は施設に送られることになった。
しかし施設に送られる直前になって、ある人物が自分が彼女を育てようと言い出した。
その人物は美山作蔵という、親族の中の鼻つまみ者だった。
若い頃から粗暴で、親から受け継いだ財産で好き勝手に暮らし、暴力団関係など良くない人間達との噂も絶えなかった。
普通だったらそんな男が名乗りを上げたところで、他の親戚が止めるのだろうが、叶絵についてはそんな事情だったため、鼻つまみ者同士ちょうどいいということになってしまった。
そうして叶絵はそのまま美山作蔵の養子となり、名字を変えた。
以後、美山叶絵は美山作蔵と共に、秋日市郊外の山裾にある大きな一軒家に暮らし、他の親族とは断絶状態となった。
それまで従兄妹として普通に親交のあった統治郎は、彼女のことがずっと心に引っかかっていたのだ。
この春、新入生の中にその従妹の顔を見つけた時は本当に驚き、喜んだ。
年齢よりも幼く見える顔立ちと、くりくりと愛らしい瞳は、昔のままだった。
セミロングの髪を二つに分けて結び、新しい制服のスカーフを初春の風になびかせて歩くその姿を見た統治郎は、すぐに声をかけに行った。
が―
「私のような人殺しに何か用なの?」
悲しげに微笑んで、叶絵はそう言った。
「かなちゃんよ、そんな、自分を人殺しだなんて言うな。俺はそんな風に思っちゃいないぜ」
「何よ今更……あの時、助けてくれなかったくせに……」
唇を噛み、搾り出すように叶絵は言った。
悲しみとも憎しみともつかぬ、何とも言えない表情に、統治郎は胸をつかれる思いだった。
「統にい、もう私に近付かないで」
辛そうに呟き、統治郎から離れようとする叶絵に、統治郎は言った。
「確かに今更だ。今更だが……これからお前を手助けすることを許してもらえんか? 俺はずっとお前のことが心に引っ掛かっていたんだ」
「統にい、言ったでしょ。私は人殺しだって。近付くと不幸になるよ」
「だから、俺はそんな風には思っちゃいないと……」
「あの事件の話じゃないよ。あれからも、私は何人も殺しているの。最低の人殺しなんだよ」
「な……」
あまりの言葉に、絶句してしまった。
踵を返して立ち去る叶絵のその背中を、統治郎はただ見送るしかできなかった。
237:ノスタルジア ◆7d8WMfyWTA
08/05/29 04:23:10 T3M55Cpp
「というわけだ」
一通り話を終えて、統治郎は、大きく息を吐いた。
「どういった事情なのか、本人にきちんと聞きたいところなんだがな」
「聞きに行けばいいじゃないか」
「俺は恨まれているんだ。信用も無い。話してくれるわけがないさ」
「お前が悪いわけじゃないだろ。その時のお前には決定権も、両親をねじ伏せるほどの力も無かったんだから」
「どうだろうな」
自嘲気味に呟いて、統治郎は文雄の肩を掴んだ。
「とにかく、そういうわけだから、千鶴子ちゃんにお願いしたいんだよ、俺は」
「つまりあれか。千鶴子をその叶絵ちゃんとやらに接触させて、どんな状況にあるのか聞き出そうと、そういうことか」
「さすがは親友、理解が早いな」
「話はわかったけど、やめた方がいいんじゃないかな。千鶴子はそういうのには向かないよ」
文雄は妹の冷たい表情を思い浮かべた。
幼い頃からずっと千鶴子はあんな様子だった。
とにかく自分の興味ある事柄以外は眼中に無い。
家族との感情の交流ですら希薄なのだから、他人との交流なんてあるはずもなく、友人と呼べる存在が居たことは今までただの一度も無かった。
「あいつ、そういう、人付き合いとか苦手だからさ」
「そうなのか? 千鶴子ちゃんに任せれば間違いないと思ってたんだが」
「あれで色々欠点のある奴なんだ。同年代の子と話しているところなんて見たことないぞ」
「うーむ……まいったな。他に頼むとなると……」
腕を組んで考え込む統治郎。
文雄が空になったカレーパンの袋をくしゃりと握りつぶす。
と―
「人付き合いも、必要ならばするわよ」
澄んだ声が二人の真横から響いた。
「え……」
文雄と統治郎が声のした方向を振り返る。
真っ直ぐな目を文雄に向けた千鶴子が、いつもの弁当箱を両手で包むようにして持ち、少し離れたところに立っていた。
「ち、千鶴子……? お前、何しに……」
「これ。お弁当」
二人のついた机にするりと近付き、弁当箱を置く。
その視線が文雄から外れることはなく、文雄は思わず顔を逸らしてしまった。
「弁当はもういいって言っただろ」
「私が食べてもらいたいのよ」
「俺は別に……食べたくない」
千鶴子は少しの間黙って文雄を見つめていたが、やがて二人のやり取りを聞いていた統治郎の方を向いた。
長い髪が肩からさらりと流れ、窓から入る陽光を綺麗に映す。
統治郎は千鶴子の美しさを間近に見て一瞬どきりとしたが、顔には出さずにいた。
「夏江さん」
「おう、何だい、千鶴子ちゃん」
「先ほどのお話に協力します。一週間以内に調べてみせましょう」
「え……え? おいおい、そりゃ本当か? いや、だったらありがたいことこの上ないが……」
「ただ、条件があります」
「条件?」
「はい。その従妹のことを調べている間、文雄さんが私に付き従うこと。それが条件です」
光の具合のせいだろうか、統治郎は、千鶴子の瞳の奥に、赤く煌く何かが見えたような気がした。
238:ノスタルジア ◆7d8WMfyWTA
08/05/29 04:24:47 T3M55Cpp
次の日の放課後、文雄と千鶴子は市内を走る電車に乗り、郊外へと向かっていた。
電車といっても、線路はかろうじて複線だが車両は一両のワンマン車両で、窓の外の景色も民家や路地裏といった、いかにも日常的な風景である。
市民にとって最も身近な移動手段として親しまれている鉄道だった。
下校する生徒達の利用時間帯から少し遅れているため、車両内に人は少ない。
がらがらに空いた席に、文雄と千鶴子は二人、西日を背に受けて座っていた。
二人がこうして肩を並べるのは、実に数日ぶりのことであった。
「良かったわ。文雄さんが一緒に来てくれて」
「統治郎にあそこまでされたらな……」
千鶴子の出した条件を、統治郎はすぐに呑んだ。
そして、その場で文雄に土下座した。
「お前と千鶴子ちゃんに何があったのは知らんが、ここは条件を呑んでもらえないか。俺はあの従妹が心配でたまらんのだ」
そう言って床に額を擦り付ける統治郎を、文雄は拒むことは出来なかった。
こうして数日来の気まずい想いを抱えたままで、文雄は千鶴子と行動を共にすることになったのだ。
「というか、俺を従えてどうするんだ? 何か考えでもあるのか?」
「特に意味はないわよ。文雄さんが私を避けるから、傍に置いておこうと思っただけ」
「置いておくって……」
「文雄さんは本当、お人好しよね。あんな土下座一つで動いてしまうんだから」
「お前な、そんな言い方ないだろう」
統治郎との友情を馬鹿にされたようで、文雄はいい気分がしなかった。
が、そこは電車の中、仮にも公共の場ということで、うるさく言うのはやめにした。
「それで……どこに向かってるんだ、これは」
「言ったでしょう。美山叶絵さんの家よ」
「いや、言ってないから。放課後教室にやってきて、そのまま引っ張ってきたんだろ、お前が」
「そうだったかしら?」
「そうだよ! いや、まあいいや……。昨日の今日で、もう美山さんと友達になったのか」
「いいえ。今のところ彼女は私にとって赤の他人よ」
「だとしたら、家に行ったところで追い返されるだけだろ。話を聞きに行くにせよ、もっと関係を深めてからじゃないと無理なんじゃないか」
文雄は統治郎の従妹であるという、美山叶絵のことを思い出した。
既にその日の昼休みに、千鶴子と二人でその外見を確認済みであった。
統治郎の血筋らしからぬ、と言っては失礼だが、線の細い印象の、やや童顔の可憐な少女だった。
彼女は何人かの友人と食堂で昼食をとりながら、可愛らしく笑っていた。
統治郎の話から想像していたのとはまったく違った明るい様子が、文雄には何とも印象的だった。
あんな少女が凄絶な、暗い過去を持っている―そう考えるだけで胸が痛む思いだった。
「文雄さん、何を考えているの?」
千鶴子の呼びかけに、文雄は回想を打ち切られた。
「え……? あ、ごめん。別に何も……」
「美山さんのことを思い出していたんでしょう」
「いや、まあ……うん」
「よほどあの娘が気に入ったのかしら」
千鶴子の言葉を、文雄は首を横に振って否定した。
「違う。ただ、少し可哀想だと思っただけだよ」
「可哀想だは好きと同じよ、なんて言葉があったわね」
「だから違うって。しつこいぞ。何か言いたいことでもあるのか?」
「別に……そんな怒らなくてもいいじゃない」
小さく俯いて、千鶴子は言った。
文雄は少し気まずくなって、椅子に座りなおした。
239:ノスタルジア ◆7d8WMfyWTA
08/05/29 04:25:14 T3M55Cpp
「ま、まあ……とにかく、そういうわけで、話を聞きに行くのは少し早いんじゃないか」
「話を聞きに行くわけじゃないから」
「え?」
「話を聞くなんて無意味だから、聞かないわ。嘘をつかれたら確認のしようがないもの。自分で考えて、自分で調べるのよ」
「え……じゃあ、深山さんの家には何をしに……」
思わず千鶴子の方を向いて問いかける文雄の唇を、千鶴子の白い指が押さえた。
「わからない?」
「……わからない」
身を引いて文雄は答える。
少し離れて座りなおそうとしたが、気付いたら千鶴子に手を握られていた。
「文雄さん、人を殺したと言っている人間が、ごく普通に生活を送れるのはどんな時だと思う?」
「え、ええと……言っているだけの時とか?」
「半分正解」
口元だけ動かして、千鶴子は言う。
相変わらず文雄の手を握ったままで、どうやら離すつもりは無いようだった。
「半分というと、残りの半分は何なんだ?」
千鶴子と距離を置くことを諦めて、文雄は尋ねた。
「実際に人を殺していて、警察に捕まっていないときね」
「おいおい、そんなこと……」
あっさりと言う千鶴子に、文雄は反論した。
「そうそうあるわけないだろう。仮にあったとして、彼女のように人殺しを公言するなんてありえない」
「そうね、ありえないわ。せっかく捕まらずにいるのに、自分の罪を明らかにするのはおかしいわよね」
何という会話をしているのだろうと、文雄は思わず車内を見回した。
線路を渡る静かな振動音が響く車内には、自分達以外に年老いたの男女が数人乗っているのみである。
彼らはぼんやりと窓の外を眺めていたり、あるいはうつらうつらとしていたりで、文雄たちの会話は耳に届いていないのか、少なくとも興味を示している様子は無かった。
「以上のことを鑑みると、彼女の置かれている状況というものが見えてくるのよ」
「え? どうやって?」
「簡単な場合分けよ。中学校の数学でもやったでしょう」
「ええと、今の流れだと……美山叶絵が何もしていない場合と実際に人を殺している場合があるけど、後者の場合は公言するはずがないから、やっぱり何もしていないということになるのか?」
「捕まる覚悟で殺人を公言することもあるし、絶対捕まらないとわかっているから公言するということもあるでしょう」
「つまり、どうなるんだよ……?」
「捕まる覚悟で言うのなら、それこそ警察に行けばいいわよね。でも彼女は行っていない。ごく普通の、高校生としての生活を送っているわ」
「絶対捕まらないとわかってて言っている……お前はそう考えているわけか」
「ええ。もちろん、美山さんが何もしていない可能性や、何も考えずに口に出してしまったという可能性も、等しくあるわ。けど私はそう考えているの。ねえ、文雄さん」
千鶴子が手を伸ばし、文雄の頬を優しく撫ぜた。
「捕まらない人殺しって、どんなものだと思う?」
「え、そ、それは……」
ありうるのだろうかと、文雄は一瞬考え込んでしまった。
「……わからないな」
「私の考えるとおりなら、面白いものが見られると思うわよ」
淡々としながらも、千鶴子はいつもに比べてずっと口数が多かった。
アナウンスが鳴り、市の最北に近い、山際の駅に着く。
扉が開くと千鶴子は立ち上がり、文雄の手を引いた。
「行きましょう、文雄さん」
何だか千鶴子は楽しそうだ。
文雄はそう思った。
240:ノスタルジア ◆7d8WMfyWTA
08/05/29 04:27:11 T3M55Cpp
美山家は、駅から少し坂を上った高台に、その居を構えていた。
石垣に囲まれ、その全貌は見えないが、大きな家であるということはわかる。
夕刻、日が落ちるまでまだ一時間はあるという時間、あたりには人通りは無かった。
「それで、千鶴子、どうするんだ?」
「言ったでしょう、調べるって」
千鶴子は美山家の脇を通る細路地に入り、周囲を見回すと、ひょいと飛び上がって石垣の上に手をかけた。
「お、おい、千鶴子! 何を……」
慌てて文雄は止めに入るが、千鶴子は無視して石垣をよじ登る。
足を掴もうかとも思ったが、
「あら文雄さん、私の下着が見たいの?」
との一言に、引き下がらざるを得なかった。
「……犬がいるわ。放し飼いにされているみたいね」
石垣に登った千鶴子は、スカートのポケットから何か取り出すと、庭に向かってそれを放り投げた。
いったい何をしているのかと、文雄も覚悟を決めて石垣に登る。
草木の茂る、それなりの広さの庭の片隅に、犬が二匹、地面に鼻をこすりつけて何かを貪っていた。
「何をやったんだ?」
「非常食よ。このままじゃ庭に下りられないでしょう」
「いや、食べ物をやったところで、そんなすぐには懐かないと思うんだが……」
そう言っている間に、二匹の犬は千鶴子の与えた食べ物を食べ終え、地面から顔を上げた。
すぐに歩き始めるが、なにやらふらふらと足元がおぼつかず、やがて唸るような、苦しげな声をあげる。
ついには、二度三度と嘔吐を繰り返し、二匹が二匹とも横になって倒れてしまった。
「これで大丈夫よ」
千鶴子はひらりと庭に下り、文雄も続けて下りる。
犬たちの方を見ると、ぴくりとも動かず、自らの吐瀉物に鼻先を突っ込んで地面に倒れていた。
「何をしたんだ?」
「眠らせただけよ」
とてもそうは見えないが、文雄は可愛い妹の言葉を一応は信じることにした。
「……どうやって?」
「知識と、あとは自然の力ね。身近なところに、色々なものがあるものなのよ」
不法侵入という明らかな犯罪行為に加えて、先ほどの倒れる寸前の犬たちの不気味な様子。
文雄は正直怖かったが、千鶴子に従うと約束した以上、ここで逃げ去るわけにはいかなかった。
そもそもにして、この様子では自分がいなくなったらどんな無茶をするかわからないという思いがあった。
草木が伸び放題の、手入れの行き届いていない庭を、千鶴子は既に歩き出していた。
木造の、大きくはあるが質素な造りの家が見えた。
「まるで探偵ごっこね」
「ああ……そうだな」
「文雄さん、私の後についてきて。窓から死角になるように近付くから」
「近付いて何するつもりなんだ……?」
「中に入るのよ。決まってるでしょう」
「……おい、待てこら」
はっしと文雄は前を行く千鶴子の肩を掴んだ。
「家にまで入るつもりなのか。無茶を言うな」
「大丈夫よ。犬を庭に放し飼いにしていたから、意外と戸締りには気を遣っていないかもしれないわ」
「俺はそういうことを言ってるんじゃない。さすがにそれはだめだ。犯罪だろ」
「何言ってるの、夏江さんの従妹さんのこと、調べなきゃならないんでしょ」
「それはそうだけど、もう少しまともな手段でだな……て、何を……むぅ!」
文雄の言葉は、千鶴子によって遮られた。
突然飛びつくようにして、口を手で塞がれてしまったのだ。
「静かにして」
千鶴子が耳元で囁く。
妹の髪の香りにどぎまぎとしながらも、文雄はしっかりと頷いた。