ちりとてちんでエロパロ 第四席at EROPARO
ちりとてちんでエロパロ 第四席 - 暇つぶし2ch450:夫婦胸算用 4
08/07/07 02:52:28 BckcNEeC
なんで、なんでこんなことに。

草々の視線に晒されながら、若狭は今更ながら困惑していた。
先程のような自慰ですら、数えるほどしかやったことないのに
愛する夫に現場を見られた上、彼の前で公開オナニー。
―なんの罰ゲームや、これは

寝間着のズボンとショーツは布団の中の行為で脱いでしまっていて
下半身は裸のままだ。
それでも、大事な部分を隠すようにぺたんと座ると
上着のボタンを震える指で一つ一つ外してゆく。
露わになった乳房に、夫の目が集中するのを感じてカッと熱くなる。
欲情している。この異常な状況に。

片手で乳房を持ち上げると、もう片方の手で唇をなぞる。
ちゅく、と人差し指を吸い、唾液を絡めたそれで己の身を這わせる。
まるい顎から喉へ。鎖骨を彷徨ってから胸の谷間へ。
テラテラと濡れて光るその軌跡には覚えがあった。
「…ワンパターンやて言いたいんか?」
それは、草々の舌が好んで通るお決まりのコース。
苦笑する彼に違うとかぶりを振りつつも、若狭の指は止らない。
今度は両手で乳房を掴み、つんと尖る乳首を摘んで弄ってみせる。
「ああ……」
蕩けるような甘い嬌声が唇から漏れる。
胸への刺激だけでは足りないのか、太腿を擦り合わせ始める若狭。
乳房から離れた指が下方へ向かうのを見て、ポンと彼女の膝を叩く。
「足、開き?」
ひくん、と戦慄く妻へ容赦なく命じる。
「肝心なとこが見えんやろ」

暫しの躊躇い。それでも情欲には抗えないと見えて、膝を立たせ
ゆるゆると内股が開いてゆく。
現れたそこは既に愛液でとろとろに濡れていた。
可愛らしい陰核は赤く尖り欲情を訴えている。
白い指がそこを擦ると一段と高い嬌声があがる。
とろりと新たな蜜が溢れる。
ごくり。
喉を鳴らし瞠目する男の目と、妻の蕩ける目がかち合う。
「草々、兄さん」
ぞくりとするほど色を帯びた声が彼を呼ぶ。
「見てるだけで…ええんですか…?」
熟れた唇の奥、赤い舌がちろりと踊る。男を誘う蠱惑の笑み。

―完敗、や

妻の誘惑に負けた男は、潔く滴るような女体に齧りつく。
「やん、も、草々兄さんがっつき過ぎ」
くすくすと身を捩って若狭は逃れようとする。
「疲れとるんやなかったんですか?」
お返しとばかりに可愛く責める妻にすまんと詫びつつ
その白く艶めかしい身体を捕らえ抱き締めた。
「ただいま、若狭」
「お帰りなさい、草々兄さん」

451:夫婦胸算用 5
08/07/07 02:52:58 BckcNEeC
(それにしても、お咲さんの言うてた通りや)
十日ぶりの逢瀬をたっぷりと味わい、妻を腕に納めた草々は
出立前の居酒屋での忠告を思い出していた。
『ええっ?十日も若狭ちゃん一人にすんの?危ないわ、草々くん』
何気なく伝えたスケジュールに居酒屋「寝床」の女将、咲は
すっ頓狂な声を上げたのだ。
『若狭も子どもやないし、大丈夫やて』
呑気に返す草々に咲は甘いな!と気色ばむ。
『最近、若狭ちゃん目当てにこの店来る若い子おるんよ?』
『なんやて?』
そんな話は初耳だ。

『草々くんと結婚してることはみんな知ってるけど』
若狭ちゃん若くて可愛いし、と腰に手を当て滔々と続ける咲。
『それに、女の私から見てもなんや綺麗になってるしな』
確かに、結婚当初は子ども子どもしていた妻は年を経るごとに
美しくなっている。夫としては実に喜ばしいのだが。
『一人寝の人妻に近づく男、おるかもしれへんよ?』

正直、油断していたのだ。
なにしろ若狭との結婚を宣言した当時。
『ようもあんなカワイイ喜代美ちゃんを!』
まともに悔しがってくれたのは小草若くらいなもので。
『はあ、若狭と…ね』
『草々お前、ああゆうんが好みやったんか…』
三国志の柳眉と尊建にはなんとも微妙な顔をされ。
『もうちょっと考えたほうがええんとちゃうか?』
草原兄さんには心配され。もう一人の弟弟子、四草に至っては
『…アレが女に見える草々兄さんを尊敬します』
『せんでええわ!』
新妻をけちょんけちょんにけなされてすっかり拗ねていた草々は
(嫁は色気や無い、気立てや)
と、若狭に色気は無いものと決め込んでいたのだ。
それがどうだ。
今宵の滴るような色香の妻ときたら。
散々色気が無いとバカにした四草でさえ、この若狭を見たら
むしゃぶりつきたくなるに違いない。最も見せる気は毛頭無いが。
女として開花した妻に目をつける男が出ても不思議では無いのだ。
(無理して早く帰ってきて正解や)

「次の高座は確か来週やったな」
咲から聞き出した「若狭目当ての若い子」の面々を思い浮かべる。
心当たりはある。いずれも、妻と同期の若い落語家たちだ。
(…見せつけておくか)
妻の楽屋を訪れるであろう後輩どもへ。
妙な気を起こさせないようにしっかりと。
そんな夫の胸の内など露知らず、久し振りの腕の中で
くふんと甘えた声を出し、若狭は幸せな眠りにつくのだった。




452:名無しさん@ピンキー
08/07/07 21:26:02 7hvYbgDW
>>446
超GJ!!!!!!!
エロスの極致を堪能いたしました~。素晴らしいです!
表現が日活ロマンポルノ的な昭和な感じがして、さらに良かったです。
この夫婦はいつまでもこんな風にいちゃこいてたらいいと思いますw

453:名無しさん@ピンキー
08/07/08 00:05:59 8MSg9DpV
GJ!!!すごくよかったです!
若狭可愛いだけじゃなくエロくて最高。
本編でも、結婚してからのほうが何かと色っぽかったですよね。


454:名無しさん@ピンキー
08/07/08 22:00:37 E8U+4idp
GJ!エロいよ若狭若狭エロい。

何か前半のシーンが読み覚えあるような気がしたんですけど
もしかして過去に書いておられた作品のリメイクでしょうか?


455:名無しさん@ピンキー
08/07/09 20:44:26 k+wH/srK
本編では小草若や若狭がタレント業やったり
草々がモギリの押しかけバイトしてた描写があったけど
四草も売れないころは同じことしてたんだろか?
想像できない。

チラ裏だけど、自分が草原中の人を生で見たのは
水上バスの観光案内だったわ。

456:名無しさん@ピンキー
08/07/09 20:56:56 zLKXROTR
女が勝手に貢いできたから、バイトはしてない

と、たまたま今日見たDVDに出てきたw
年季が明けたとたんに師匠が一門会すっぽかしたという
小草若に負けず劣らず間の悪い弟子なんだ四草は。

457:名無しさん@ピンキー
08/07/09 23:05:32 zHatOv1P
しかし中華屋の2階に住んでる以上、多少は店手伝ってるだろう
東京でも二ツ目くらいだと普通にバイトしなきゃ食べていけないし

458:名無しさん@ピンキー
08/07/10 01:51:19 uoCA7jpP
草々のアタクシ(嫁の)実家へ帰らせていただきます!事件の時、
若狭のタレントの仕事を「行く先々でヤンチャやらかし」てたみたいだから
一応、四草も営業らしきことやってたんじゃないかなて妄想。


新米AD、佐藤くんは困惑していた。
今日の収録は、最近売れセンの女の子落語家ちゃんがゲストだったのに
何故かニラニラ薄気味悪く笑う陰気な男が楽屋で待っていたのだ。
「すんません、若狭急に出られんようになってしもたんで…」
マネージャーから紹介されたそいつは女落語家ちゃんの兄弟子なのだという。
(こんな暗い奴が落語家?つかなに考えてんねん天狗芸能!)
いくらなんでも女の子の代わりに野郎よこすことないやろ!
佐藤くんはツッコミたかったが、相手は関西を牛耳る大手芸能事務所だ。
いち放送局のヒラ社員が逆らえる相手ではない。
(どーすんやろ今日の企画…)
またギリで書き直しかよてっぺんまわるまで帰れんやんけクソタレが。
心の中で悪態をつきつつ、ヨロシクお願いしますね~とへらへら笑いかけると
こっちを見透かすような胡乱な目つきでジロジロねめまわしたあと
にまぁっと笑ってみせたのだ。
(うわっカンジ悪っ!)
「と、とりあえずコレはナシですよね、女モノやし」
場を取り繕うつもりで楽屋に用意してあった着物を片付けようとする佐藤くん。
すると今度はその着物をじ~っと見ていた陰気男、
いきなり持ってたコップの水を着物にひっかけたのだ!
「な、なにすん…!」
慌てて止めようとした佐藤くんの前で、ドロドロ溶け出す着物。
(ヤバッ)
実はこの着物、いつものよーに悪ノリする一条Pの鶴の一声で作らせた
水で溶けちゃうペーパー着物だったのだ。
『今度来る落語家ちゃんてデカ乳なんやろ?タダの着物じゃもったいないわ~』
『でもその子、天狗芸能なんでしょ?ヤバないです?』
『だーいじょーぶ!あそこの九郎ちゃんとオレ、仲良しこよしや』
そんなこんなで落語家ちゃんに着せる予定だった特注着物は
今やタダのドロドロと化していた。
「え、えーと、あの、その…」
しどろもどろになる佐藤くんに陰気男は坦々と話し始める。
「今日来る予定だった若狭、実はウチの会長のお気に入りなんですよ」
「…ええっ?」
ギョッとなる佐藤くんに再びにまぁっと笑いかける陰気男。
「…ギャラは倍掛けでけっこうですよ?」
(なんやねんこの男っ!)

おわる

459:名無しさん@ピンキー
08/07/10 02:16:06 dR4KJ6qb
おおー!なんという展開
いっぱい想像しました
GJです

460:名無しさん@ピンキー
08/07/10 20:24:10 IlFGPrOS
>>458
GJ! 四草、特注着物をすぐ見抜くってことは昔は相当悪いことしてたろw

461:名無しさん@ピンキー
08/07/10 23:12:31 3HvDQMnL
>>458
ワロタ。
まさかのTV局の算段。
それを一瞬で見抜く陰気男。
まあ、徒然亭と天狗芸能を相手に回そうってのが、甘いなw

462:名無しさん@ピンキー
08/07/12 13:45:11 I0yGSLUM
若狭が福井帰ってた時、テレビの仕事みんなで割り振ってたみたいだけど
あの伝説の「おいそしー」なお店紹介のほかにも
フリップ持って街頭アンケートとか、クイズでモンゴウイカ答えるとか
やってたってコトだよね?…四草も

463:名無しさん@ピンキー
08/07/12 21:51:59 f1FJseWp
草原兄さんのカミカミレポート
底抜け無し小草若の盛り上がらない街頭アンケート
陰気な答えしか言わない四草のクイズ…

464:名無しさん@ピンキー
08/07/13 10:00:33 yESA2h2G
エアコンのCMに出てる四草の中の人を見てると、
純情で朴訥な恋愛パロも読んでみたくなる…

465:名無しさん@ピンキー
08/07/13 11:29:04 hkgpC6Yv
しかし、ちりとてに限って言うと、純情で朴訥が似合うのは草原兄さんだぞ。

466:名無しさん@ピンキー
08/07/13 11:50:57 1EnHlq9v
草々だって純情・朴訥では負けない

四草は朴訥じゃないけど、奥底では純情

467:名無しさん@ピンキー
08/07/13 22:55:42 sv6b5xFQ
バイトネタで前に思いついたのがなんとか形になったので投下します。
結婚後半年すぎたくらいの四草→若狭な地味な話。
エロもなにもありません。
言葉遣い、細部など違ってたら指摘頂けると嬉しいです。

468:共有 1
08/07/13 22:56:21 sv6b5xFQ
梅雨も明け、連日の猛暑に辟易している七月の終わり。
一門会も盛況のうちに幕を下ろし、いつものように寝床で打ち上げが繰り広げられた。
だいぶ酒が回り始めた面々をウーロン茶を飲みつつ横目で眺めていると。
「四草兄さん」
ウーロン茶が半分ほど入ったコップを手に取る、若狭が隣にきた。
「今日はお疲れさまでした」
上気した顔で座り、少々舌足らずな口調で言った。
にっこり笑ってコップを持ち上げたので、とりあえずカチンと音を立てて合わせてやる。
落語会の反省やら演目のこと、終わった後の開放感からか、互いにあれこれと言い合った。
「あ、ウーロン茶もらってきますね」
話が途切れたところで、若狭が立ち上がってカウンターへ向かう。
軽く椅子にもたれるような体勢のまま、店内を見回した。
師匠は一番弟子となにやら話し込んでいる。
一日違いの二番弟子と三番弟子は酔っ払い的なくだらない口論を延々続けている。
その二番弟子の新妻である若狭が、ウーロン茶を手に戻ってきた。
向かいではなく、また隣に腰を下ろす。
肩が触れる距離で、その顔を見た。
「酔うてんのか」
「判りますかぁ? なんやいつもより飲み過ぎたみたいやでぇ、ええ気持ちです」
うふふ、と血色の良い顔をほころばせる。
「あっちはもっと飲んどるやろ」
草々と小草若を指すと、かすかに若狭の目が眇められた。
それは、ほんの一瞬のこと。
シラフでなければ気付かなかったかもしれない。
「ええんです、どうせ明日は仕事入ってへんし」
「そやな」
「四草兄さんも、今日師匠のとこ泊まっていきませんか?」
あの様子だと小草若兄さんも帰れそうにあらへんし、と続ける。
「お前はそれでええんか」
仮にも結婚数ヶ月の夫婦のこと、一応尋ねた。
心にもない、型通りの問いに若狭は笑う。
「ええですよ、もちろん。たまには楽しいやないですか」
「楽天的な奴やな」
「だって、わたしも草々兄さんもほんまに明日何もあらへんし」
「……そうか」
メディアの仕事を減らし、夫婦揃って細々と高座で生活している。
しかし本当は、若狭が短期間で稼いだ貯金で食い繋いでいるのが現状らしい。

469:共有 2
08/07/13 22:57:26 sv6b5xFQ
「四草兄さん」
「なんや」
「ちょっと、相談があるんですけど」
「なんや、面倒なことか」
「実は、バイト探そう思うとるんです」
「―バイト?」
「本当のとこ、やっぱり生活厳しいさけ、他の噺家さんにも聞いてみたんです」
内弟子修行を終えてから、落語だけで食べていけるのかどうか。
若狭の口から聞くまでもなく、判り切っていることだった。
他ならぬ自分も、回数は少なくとも中華屋のアルバイトは続けている。
「草々兄さんに相談したら、俺が食わせてやるの一点張りで……」
小浜まで行って、嫁の家族まで巻き込んで解決したんじゃなかったのか。
ちらりと草々を見て、小草若と一気飲み対決などしている能天気ぶりに小さく笑う。
「ほやさけ、短時間で週何日かだけでもバイトしよう思うてるんです」
「バレんようにか」
「……ほうです」
「生活費が増えたら不審に思うやろ、いくら草々兄さんでも」
「でも、今だって把握してへんし、それに―お金の計算苦手な人やし」
「それはそうやな」
細かいこと、特に数字を管理することの不得手なのは昔から知っている。
若狭と結婚が決まったと知ったときも、二人の生活のやりくりについて、兄弟子ふたりともよく話のネタにした。
「どこか、いいとこ知っとったら教えてください」
「いいとこ、な……」
また、若狭をちらりと見る。
大きな目をまっすぐに向けて、ほど良く酒がまわって頬も唇もあざやかに染まっている。
普段はゆったりした服や着物で隠されてはいるが、スタイルもなかなか悪くない。
その手の商売ならいくらでも稼げる女だろうと値踏みしかけて、ふっと目を逸らした。
不特定多数の男を相手に媚びる姿が一瞬で脳裏に浮かんだのを、強引に打ち消す。
「お前、バイト経験ほとんどないやろ」
「えっと、はい。奈津子さんの手伝いと何回かやらせてもらった延陽伯くらいです」
どちらもバイト経験といえるほどのものではない。
「他の誰かには相談しとらんのか」
「してへんです。なんや他の人にはこういうこと、話にくい感じがして」
「俺ならええんか」
軽く睨むように横目で見ると、慌てていえいえ!と手を振った。
「だって今も住み込みで続けてはるし―それに」
「それに?」
「四草兄さんには判ってもらえそうな気がしとんなったんです」
視界に入る草々や小草若をよそに、自分だけに言われるには悪くない言葉だった。
コップに残ったウーロン茶を黙って飲み干す。
しかし、相手は結婚一年にも満たないいわゆる新妻。
「なんでも話し合うんが、夫婦いうもんちゃうんか」
思ったことをストレートに言うと、図星を指されたという表情でぐっと詰まった。
「話し合いにもならへんから困っとんのです」
はーっと深いため息をついて、若狭は肩を落とす。

470:共有 3
08/07/13 22:58:23 sv6b5xFQ
「でも、もっとちゃんと言わなあかんのかな……」
いつもなら席を立ってしまいそうな愚痴だったが、妙に気になった。
―実は上手くいっていないのか?
そんな疑念がよぎり、しばし若狭をじっと見つめた。
腕を伸ばせばコップより手前で触れる肩に、指を伸ばしかける。
「おーい、そろそろお開きにしよか」
師匠の声が響いて、不自然にならない動きで腕を下ろした。
ようやく、だらだら続いていた打ち上げが終わった。
家路に着いた草原以外、ぞろぞろと向かいの師匠宅へと入っていく。
足取りの危うい草々を脇から支えて夫妻の部屋へ戻っていく若狭の後ろ姿。
同じくふらふらの小草若に肩を貸しつつ敷地に入ったところで、兄弟子の足が止まった。
隣を見ると、薄く開けた目が二人の影を追っていた。
「未練がましいですよ、小草若兄さん」
「ふん、うっさいねんお前は」
「しっかり歩いて下さいよ。そこ、つまずかんように」
小草若が横にいなかったら、自分が同じようにまばたきもせずに見てしまっただろう。
「あんな気難しいやつの嫁なんちゅうもん、ようやっとる思うただけや」
酔っ払いの独り言を聞き流しながら、家へ入る。
居間に着いたとたんに脱力したように倒れた小草若を見下ろし、踵を返す。
さっさと自室に引っ込んだ師匠に挨拶をしてから、廊下の雨戸を少しだけ開けた。
今宵は新月、星はよく見えるが月明かりがなく、暗い夜空だった。
軽く深呼吸をしつつ空を仰いでいると、閉めたはずの玄関が開く音がした。
「四草兄さん」
外の空気で酔いが引いたのか、若狭がいつもの顔で近付いてきた。
「草々兄さんはええんか」
「もう寝ちゃいました。小草若兄さんは?」
無言のまま目で居間を示すと、布団くらい敷かんと、と慌てて部屋へ入っていった。
柱にもたれたまま、若狭が甲斐甲斐しく布団を広げるさまを眺める。
その白い手が小草若の肩にかけられる寸前。
もたれていた身体を起こし、若狭より早く小草若兄さん―と呼んだ。
軽く目を見開く妹弟子を無視して、突っ伏したままの小草若を無理やり起こす。
そうしてなんとか布団に押し込めると、明かりを消すべく電灯の紐に手を伸ばした。

471:共有 4
08/07/13 23:00:03 sv6b5xFQ
「四草兄さんは―やっぱり泊まらんのですか」
ひとつ屋根の下、起きているのは自分と若狭だけだった。
伸ばしている腕の角度を変えれば簡単に触れてしまう、息遣いまで伝わる距離。
ギリギリの感触に、酔いが回ったように足元が揺れた。
電灯を消して、斜めから受ける廊下の明かりを頼りに振り返る。
視線が、ぶつかった。
「……ああ」
あと一歩半、近かったら手を出していたかもしれない。
間合いを測るようにゆっくり顔をめぐらせて、息を吐いた。
「帰るわ」
ぼそっと言って背を向ける。
表の通りに出ると、ぱたぱたと足音を立てて若狭もついてきた。
「なんやねん」
「いえ、さっきの話なんですけど―その、バイト」
「ああ」
「やっぱり、もうちょっと考えてみます」
「そうか」
酔漢と化した草々を支えながら、寄り添って部屋に戻っていった後ろ姿。
隠し事の苦手な女だから、貫き通すのは無理だろう。
「ほやさけ、わたしが言ったことも、内緒にしとってください」
「黙っとけばええんやろ」
「はい。秘密です」
でも生活は厳しいから、やっぱり草々兄さんにちゃんと言わんと……とぶつぶつと呟いている。
そんな若狭をちらりと見ながら、秘密の二文字が胸の奥底に落ちていくのを感じた。
「若狭」
「なんですか?」
「草々兄さんと結婚して、良かったか」
若狭はなにを問われているのか判らない様子で、きょとんと見返された。
わずか一瞬だけ目が地面へと逸らされて、それから明るく笑い出す。
コンマ何秒かの表情は、これ以上ないほどはっきりと自分の瞼に焼きついた。
「当たり前やないですかぁ。幸せですよ」
そうのろける笑顔は、いつも誰にも見せている顔だった。
見間違いなのか、他愛無い新婚の憂いなのか、深い意味はないのかもしれない。
―でも、もし……そうでなければ?
「お前はいつでも楽しそうでええな」
湧き上がる感情とは裏腹に、どうでもいい軽口を叩いた。
「じゃあ四草兄さんも、楽しんでください」
「なにを」
「うーん、人生かなぁ」
なんだか呑気なことを言って、また楽しげにふふふと笑っている。
戸口から漏れる明かりと街灯の頼りない光だけの、真夜中の闇にふたり。
また、距離感が失われそうになった。
「阿呆なこと言ってないで、さっさと寝ろ」
「やっぱり帰るんですね。じゃあ、おやすみなさい」
「ああ」
若狭に背を向けて、夜道をひとり歩き出す。
たいした内容でもない秘密と、深い意味などないかもしれない一瞬の表情。
そんなものでも、知っているのは自分の他に誰もいない。
あの兄弟子も知らないこと。
ふと足を止めて、振り返った。
師匠宅も内弟子部屋もわずかに漏れる明かりだけで、物音もなくひっそりとしている。
不意に、大声で笑い出したいような心持になった。
―今だけは、誰よりも若狭と距離が近いのは自分だ。
馬鹿げた考えが浮かんで、くくくっと小さく笑った。
どうせ誰も見ていない、知っちゃいないのだ。
明日また顔を合わせるまでの短い時間、ささやかな優越感に身を任せていてもいいだろう。
新月の闇夜を見上げてそんなことを思って、再び歩き出した。


<終>

472:名無しさん@ピンキー
08/07/14 00:26:33 5qoZ9Gv2
>>467
GJ!です!
憂いの人妻と醒めた男のもどかしい闇夜がなんともエロティック!
耐え忍びながらも密やかな占有に胸を焦がす彼の色香に酔いました。

473:名無しさん@ピンキー
08/07/14 23:07:29 A/Q6iwGo
GJです!
なんか、ほのかに色気が漂う大人のSSですねぇ。
草々みたいなタイプの男と現実に一緒になると、恐らくこういう心境になるだろうな。

474:名無しさん@ピンキー
08/07/17 23:49:18 2GLkBXW/
メモリアル本見てつくづく思う。
このドラマ、美男美女は出て無いのに、基本ホームドラマなのに
なんでこんなにエロいんだろ?

475:名無しさん@ピンキー
08/07/18 20:19:26 wgyNa3i/
中の人が全員エロいから

476:名無しさん@ピンキー
08/07/18 21:49:55 1gDIZ6sk
週刊文春の原色美女図鑑に載ってたよ>若狭

477:名無しさん@ピンキー
08/07/18 21:57:30 mIBQEsYq
エロ気って大事だよね

容姿とは関係ないものだよね

478:名無しさん@ピンキー
08/07/18 22:58:06 0fsZrxkm
>>476
気付かなかった
ちょうど家族が買ってきてたのがあったので見たよ
若狭カワイイなぁ

479:名無しさん@ピンキー
08/07/18 23:06:54 DdcSK+cz
美男はともかく、美女はそれなりに出てると思うぞw
若狭の中の人ならファットフォトの写真がめっちゃ可愛かった

しかしここもそのうち寂れていくんだろうか…

480:名無しさん@ピンキー
08/07/19 20:59:01 kapEt6TW
>>476
すんません保守ですが小ネタ作ったんで投下します。バカです。
設定とかいろいろ無視で。勢いってコエーなオイ。

481:四草が何やらかしたかはこっぱずかしいので省略。
08/07/19 20:59:45 kapEt6TW

いつものように出前から戻り、いつものように店の片隅に陣取り
いつものように遅い夕食を賄いのチャーハンで済ませた四草は
何気なく開いた雑誌に息を飲んだ。
巻頭のカラー写真に登場しているのは、四草のよく見知った女性。
同門の妹弟子、徒然亭若狭その人であった。
そういえば数週間前、若狭にグラビアの仕事が入ったとかで
彼女の夫である兄弟子の草々が愚痴をこぼしていたのを思い出す。
―落語家はタレントちゃうねんぞ、なんでグラビアなんか…
その時は、ああまた女落語家ゆうんで珍獣扱いされてんのやな
程度に聞き流していたのだが。
目の前の写真は、珍獣どころか彼女の瑞々しい表情を捕えていた。
澄んだ空の下、広い高原の中からこちらを見つめる若い女。
四草はそのまま雑誌を掴むと席を立った。
「あっ!また店の本勝手に持ってくか!」
背中でわめく店員の中国語を聞きながら二階の自室へ階段を上る。
部屋の中央に坐して制服のボタンをくつろげ、改めて雑誌を開く。
グラビアのタイトルは原色美女図鑑。
(美女、やて)
仰々しい題に普段の妹弟子を重ねてくすりと笑う。
しかし、そこにはタイトルに恥じない女の姿が写されていた。
さらさらと吹く風に髪を靡かせ、思いを馳せるように振り返る
悩ましげなその顔。
かと思えば天幕から姿を覗かせ、ふわりと無防備に微笑んでみせる。
カメラマンの腕がいいのか、着ているものはいつもの見慣れた
シャツにジーンズというシンプルな装いであるにも拘わらず、
その姿は妙に彼女を艶めかしく引き立ていた。
(ま、プロの仕事やな)
ざわつく鼓動をごまかすように言い聞かせてページを繰る。
ぴた、と指が止った。
ふいに現れた写真に心臓を鷲掴みにされる。
穏やかな自然の中とは打って変わって大写しのショット。
髪の乱れにも構わず大きく見据えられた瞳。力強く引き結ばれた唇。
四草の知らない女の顔がそこにあった。
まるで何かを求めているかのような。そして挑発しているかのような。
囚われる。
ふいに息苦しさを感じた四草は慌てて雑誌を放り投げた。
―今、俺は何をしてた?
自分の行動のあまりの幼稚さにカッと頬が熱くなる。
(…カメラマンが変に気合い入れるからや)
これはあいつではない。四草のよく知る女では。
あえて間抜けな妹弟子の姿を思い浮かべて、雑誌は放り投げたまま
頭から布団を被り目をつぶった。


終。

482:名無しさん@ピンキー
08/07/19 23:16:20 3NJTR4OB
GJ!!
あーやっぱり四草はムッツリが似合いすぎるw
そしてたぶん小草若やら尊建やらも同じ行動取ってる気が。
また思いつく限りの投下をお待ちしております!

483:名無しさん@ピンキー
08/07/20 00:26:16 pNvak+VX
GJです。草々兄さんの反応も気になるところ・・・・・

484:名無しさん@ピンキー
08/07/20 03:06:31 fx7wSWxi
GJです。面白かったです!
カメラマンのせいにしてる四草にフイタw
それと「あっ!また店の本勝手に持ってくか!」→この中国語っぷりがツボった。
というか四草、何回雑誌勝手に持っていってるねんw
またの投下お待ちしてます。

485:名無しさん@ピンキー
08/07/20 06:26:44 sRQl/OFB
>>484
わかるw

>「あっ!また店の本勝手に持ってくか!」
頭の中で自動的にちゅこく訛りの日本語に変換されたアルヨー。

486:名無しさん@ピンキー
08/07/21 22:38:45 iPdLDwpW
連休最終日にこっそり投下しときます。
小草々くんが草々師匠夫婦を語る形式の下ネタギャグです。
先に謝っときます。
ごめんなさいつい出来心でやりました反省してます。

487:ここだけの話 1
08/07/21 22:39:19 iPdLDwpW
や、もう呑めません、限界です勘弁してくださいよ。
いや、内弟子の務めや言われましても…
そうだ、座興代わりにうちの師匠の趣味をひとつバラしちゃいます。
え?草々の趣味なんか昔から知ってるし興味もないですって?
師匠がおかみさんにさせてるあっちの趣味の話でも?
…お、尊建師匠食いついてきましたね。
いいでしょう、お話します。あ、でもこれオフレコでお願いしますよ?
…実はうちの師匠、膝枕フェチなんです。
あ、今なんやそれって顔しましたね?ふふふ、そうくると思いました。
ええそうです、さすが四草師匠鋭い。ただの膝枕やないんですよ。
まず、膝枕させるおかみさんを長襦袢姿にするんです。
それで…これ言ってもええのかな…はいはい勿体つけずに言います。
師匠、おかみさんに下着つけさせないんですよ…
ああっ小草若師匠!鼻血鼻血!
…すいません、ちょっと刺激強すぎました?やめときます?
小草若はほっといてええて…ドライですね柳眉師匠。
じゃ、続けますね。
そうです、胸押えもパンツも無しで長襦袢だけで。
それで膝枕させるんですけど、師匠こだわりがあって。
ふつう膝枕ってこう太腿の横に頭のせますでしょう?
せやけどアレって首のとこガクッてなるんで収まり悪いんですよね。
なんで師匠の場合、横やのうて縦に頭のっけるんですよ。
そうです、ちょうど太腿と太腿の谷間のとこです。
そこだとしっかり首入るんで、ええ枕になるんだそうです。
しかも師匠、おかみさんの襦袢の裾わってから枕にするんですよ。
ほら、うちのおかみさんけっこう太腿むちむちしてはるでしょ?
そこへ生で頭のっけるわけですから、そらもうむちむちのすべすべで
極楽のような枕になるて…小草若師匠、鼻血大丈夫ですか?
そんでもって、師匠って天パですから太腿の内側にチクチク当たるて
おかみさんくすぐったがるんですけど、それもなんやじっとしてると
ええ感じになってくるらしくて、満更でもないみたいなんですよ。
それで耳掻きしたりヒゲ剃ったりしてるんですけど。
さっきも言うた通り、おかみさん襦袢の下の胸押え外してますから
膝枕する師匠の顔の上へたぷんっておっぱいが落ちてきて。
…ええ、あの巨乳ですもん。絶景なんてもんやないですよ。
おかみさん、手元狂うからやめて言うんですけど、師匠も男ですから。
時々膝枕のままイタズラ仕掛けたりして楽しんでるんですよ。

488:ここだけの話 2
08/07/21 22:39:54 iPdLDwpW
なんです柳眉師匠?
草々も若狭もそんな話、おまえにせえへんやろて?
ええ、そらそうです。師匠もおかみさんもそんなこと喋ったりしません。
でもね。
僕の内弟子部屋て、師匠ら夫婦のすぐ隣なんですよ?
同じ徒然亭の小草若師匠や四草師匠ならご存じや思いますけど、
あそこの壁、ものっすご薄いんですよ。
一応、師匠らも気ぃ使うてくれてはるみたいですけど。
それでも夜になると…ね?やっぱり夫婦ですから。
そんで、僕の部屋まで筒抜けになってまうんですよ。
え?若狭はダンナの悪趣味になんも言わへんのかって?
悪趣味もなにも…おかみさん、わかってへんですもん。
ほら、師匠がたも知ってると思いますけど。
おかみさんて結婚するまで男と付き合ったことないんですよ。
男の人ゆうたら後にも先にも草々師匠ただ一人。
そら他と比べようがないですしね。
…我が師匠ながら、うまいことやったな思いますよ僕も。
あんなカワイイ奥さんが、なんも知らんまんまで嫁いできて。
しかも師匠にベタ惚れやから疑うゆうことも無いですし。
源氏の若紫でしたっけ?
可愛い女の子手元おいて自分好みに育てるゆう話。
まさにあのまんま、師匠好みの女なんですよねおかみさんて。
せやけど、もし。
もし、おかみさんが師匠より先に誰か他の男と出会っていたら。
例えば、ここにいる師匠がたのような魅力的な男性と出会っていたら。
草々師匠のこと、もっと違う目ぇで見てたかもしれへんですけど。
…って、あれ?どしたんです?なんや空気湿っぽくなってません?
そんな深刻な顔せえへんでも…僕、なんや変なこと言いました?

…あ、誰かおもて見えたみたいですね。僕、出迎えてきます。

……草々師匠!
お疲れさまです、お待ちしてました。
へ?別にビックリなんてしてませんよ?
あはは…やだなぁもう。師匠らもみんなお揃いで先始めてますよ。
…え?みんなでなんの話してたかですって?
ええ、ちょうど今おかみさんの膝枕の話してたんです。
やだなあアレですよアレ、「ヒゲのおいらん膝枕DEEP」
おかみさんが奈津子さんから借りてきたギャグ映画のDVDですよ。
なんやマッチョなオカマが強引に膝枕させえ!て襲ってくる変な映画。
師匠もくだらんゆうて笑ろてたやないですか…そうそうアレの話です。
…おや、どうしました師匠がた?
そんな吉本新喜劇バリにずっこけはって。




おそまつ

489:名無しさん@ピンキー
08/07/23 01:50:44 w2yPfrrL
>>486
嘘山師匠GJ! 奈津子さんどんなマニアックな映画持ってんすか。
もしかしてそれも嘘なん?ジブンワカラヘン!!

490:名無しさん@ピンキー
08/07/23 02:06:49 dUG2iHEG
>>486
GJ!ラストにワロタw
そういえばヒゲのおいらんって、熊五郎がやってたんだよな。

491:名無しさん@ピンキー
08/07/25 07:43:46 Ygh2NxNg
ここはまいごのネタバレおけ?

492:名無しさん@ピンキー
08/07/26 12:44:21 tP31l66v
せんといて!

493:名無しさん@ピンキー
08/07/27 02:14:25 CwLGlpuI
ドラマ板でまいごネタがネタバレスレの間は自重かなー、と思ってる。

494:名無しさん@ピンキー
08/07/27 10:20:46 E5WXmPag
あと2週間の辛抱じゃ

495:名無しさん@ピンキー
08/07/27 17:19:02 iAxgRnip
子供は女の子だから落子ちゃんか。

496:名無しさん@ピンキー
08/07/27 17:38:58 vi6pK5RC
草原兄さんの酔っ払いぶりみてたら、このスレで何度か拝読した
「草原兄さんデー」の実写化が激しく見たくなったwww

497:名無しさん@ピンキー
08/07/27 22:12:49 mYKZoHhx
草々の枕、なんつーか、つくづく嫁さん大好きなのな

498:名無しさん@ピンキー
08/07/28 00:17:49 0oYu1M+A
マクラで夫婦生活が垣間見れてニヤニヤしっぱなしw
しかし、分かってたけど若狭出ないと寂しいもんだ
つーか画面に華がない…

499:名無しさん@ピンキー
08/07/28 20:03:46 BLVeNTI1
>>498
あやまれ!ちえ子さんにあやまれ!

500:名無しさん@ピンキー
08/07/29 18:02:05 3juo8Dj5
おっぱいバレー

501:名無しさん@ピンキー
08/07/30 23:32:12 K3Bw4maY
>>496
そういえば、草原兄さんデーは、このスレのオリジナル設定だったな。
いつの間にか、公式設定だと思ってた自分がいたよ。

502:名無しさん@ピンキー
08/08/02 23:23:54 c30xPPqJ
まいごとは全く関係ないのですが、前に趣味で書いた四草×若狭投下します。
年季明け後、売れっ子になった若狭と四草の不倫ネタ。
なので草々ファンの方には色々すいません。
その上、季節設定が冬です。なんかもー本当にすいません。

503:深海 1
08/08/02 23:24:26 c30xPPqJ
遮光カーテンを閉じて、人工的な夜を作る。
それでも隙間から漏れる光が、俗世との境界を示していた。
白が基調になっている部屋は清潔感に溢れていて、圧迫感があった。
迫るような白から逃れるように視線を動かして。
ようやく、互いを見た。
薄暗さの中で、白い顔が浮かび上がる。
「慣れてはるんですね、こういうとこ」
「お前は―そうか、外泊すらないんか」
確認したことはないが、処女のまま結婚して旅行もしたことがない夫婦のこと。
外で男と泊まった経験もないのだと気付く。
「はい、初めてです」
薄く笑って部屋を見回す女に、臆したところはない。
窓へ向いてカーテンの隙間から外を眺める、その後ろ姿。
少し、痩せただろうか。
「仕事、大変そうやな」
放ったのは、そんなありきたりな言葉で。
「テレビの仕事いうんは時間が不規則やし、大変です」
返ってきたのも、中身のない言葉。
互いに必要な言葉ほど、出てこない。
若狭の後ろから抱きしめるように腕を回して、同じように外に目を向けた。
世界でも指折りといわれる美しい港を、静かに望む。
コンテナを積んだ大型の船舶が遠くから近付いてくるのが見えた。
かすかに聞こえる汽笛は幻聴だろうか。
「初めていうんは、なんや緊張しますね」
そう言って若狭は、手を四草の腕に重ねた。
この瞬間だけ切り取って見れば、どこにでもいる当たり前の恋人同士の風景。
角度を変えれば不倫旅行か―と、脳裏のどこかで思う。
「初めてであって、初めてやないやろ。……シャワー浴びてこい」
耳元で囁くように言うと、くすぐったそうに肩をすくめた。
若狭はそのまま首だけで振り向くと、まばたきもせずに自分を見つめた。
数秒の沈黙。
するり、と腕の中から逃げ出した女は、堂々とした足取りでシャワールームへ向かった。
「なんや、あいつは」
笑うでも照れるでもない、不思議な瞳、あれは―共犯の光か。


神戸で開かれたイベント的な落語会で一席終えた数時間前。
楽屋のドアを開いた先に、若狭が座っていた。
地方ロケから戻り、今日は他に仕事ないため伊丹空港でマネージャーと別れて来たと言った。
その意図が読み取れない自分ではない。
落語会は親子向けの早い時間の開催だったため、片付け終えても夕方には解放された。
「草々兄さんには、明日帰る言うてあるんです」
なにを言いたいのか、確認する前に歩き出した。
海が見たいと言う若狭と港の見える遊歩道を往く。
日曜ということもあり、同じような男女二人連れが多かった。
強い海風に、寄り添って歩く恋人たちとすれ違っていく。
「寒いか」
「小浜も冬は寒かったでぇ、これくらい平気です」
「こういうときは寒い言うもんや」
腕を伸ばして肩を抱き寄せると、嬉しそうに身体をくっつけてきた。
寒風が触れ合う部分の体温を上げていく。
「草々兄さんはこないなことしてくれんから、嬉しい」
ぽつりと零された一言に、さざ波が立った。

504:深海 2
08/08/02 23:25:00 c30xPPqJ
四草がシャワーを終えて出てくると、肩にタオルを掛けた若狭がまた窓辺に立っていた。
カーテンを少しだけ開いて、ぼんやりと外を眺めている。
その横顔に刻まれた翳が、言葉よりも雄弁に孤独を物語っていた。
慣れないメディアの世界に飛び込んで、理解者であるはずの夫とは溝が生じて。
心開く相手もおらず、若狭はたったひとりで立ち尽くしていた。
どんなに後ろ向きでも、くよくよ悩んでいても、若狭の周囲では常に誰かが手を差し伸べていて。
その手を取って、いつもは最後には笑っていたはずだった。
「四草兄さん」
振り返って見せたのは、作り慣れた笑い方。
―もっと早く気付いてやれれば。
自分がもっとも見たくない姿が目の前にあって、あらゆるものに苛立ちが募った。
「いつもみたいに、わがまま言ったらどうや」
「怖い顔して、どないしたんですか」
「無理に笑わんでもええ」
張り付いたような笑顔に慣れてしまっている姿が痛々しい。
たまらずに、するりと頬を撫でてやった。
「四草兄さん……」
泣けばいい、と思ったのに、戸惑ったように自分を見返すばかりだった。
「辛いならそう言え」
「なんや、四草兄さんらしくないですね」
首を傾げた若狭の髪から、水滴がひとしずく滑り落ちた。
その一滴が足元の絨毯にしみ込む前に、身体を抱き寄せる。
ぎゅっと音がしそうなくらい腕に力を込めると、カーテンを掴んでいた手が背中にまわされた。
伝わる温かさに、小さく息を吐き出す。
「あったかい……」
「寒かったやろ、ひとりで」
「すっごく、寒かった……」
腕の中、肩が小さく震えた。
距離を置いて見るよりもずっと細くて壊れそうな身体。
自分ならこんな想いはさせないのに、と女々しい考えがよぎって目を閉じる。
「泣き方も忘れてしもて、笑うことしかできん……」
こんな言葉を聞くために、腕を伸ばしたわけではないのに。
今の自分にできるのは、ただこうして抱き留めてやることしかなかった。

505:深海 3
08/08/02 23:25:39 c30xPPqJ
冬の海を思わせる部屋で、手を離さずに溺れていく。
初めて抱く女なのに、帰ってきたような懐かしさが満ちて。
不思議なほどに穏やかな感情が支配していた。
涙を忘れた若狭は時折泣きそうな表情になったが、流れるものはなにもなく。
達してベッドに崩れ落ちても、変わらなかった。
「……若狭」
耳元で呼びかけても、声はない。
沈み込むように眠る女を眺めているうちに、いつの間にか意識が薄れて。
―とても長いような、それでいて短いような。
不思議な夜をひとときも離れずに過ごした。
太陽がすっかり姿を見せた頃、静かにベッドを抜け出した。
窓辺に立ってカーテンを開ける。
「……朝、ですか」
くぐもった声がして振り返ると、シーツにくるまった若狭がぼんやりとこっちを見ていた。
「起きたか」
「おはよう、ございます」
一夜を共にした後、朝の光の中で顔を合わせる。
今までに感じたことのない気恥ずかしさに、さり気なく目を逸らした。
衣擦れの音に続いて、ペタペタという足音とともにと近付く気配。
冬の柔らかい陽射しが溢れる窓際にふたり、言葉もなく並んだ。
大阪へ帰れば、何事もなかったかのように兄妹弟子の間柄に戻る。
落語会に出たのも、ずいぶん前のことのように思えた。
「いい天気ですね」
囁くように、若狭が言った。
遠く、水面輝く海を大型の貨物船が通り過ぎていくのを目で追っていく。
この先なにひとつ願いが叶わなくてもいいから―
今、世界も時間も止まったらいい。
不意に浮かんだ詮ない想いを振り払うように、若狭を見た。
「若狭」
去っていく船を見つめるその横顔に、ひとすじの雫。
「……太陽が眩しい」
そう言って、涙を落とした。
「なんや、まだ泣けるんや私……」
何度も見たはずの泣き笑いの顔が、妙に幼く映った。
もう、言葉は不要だった。
黙って抱きしめて、唇が触れないようにそっと頬を重ねる。
最後の抱擁は、ひどく悲しく、そしてどこまでも温かかった。

506:深海 4
08/08/02 23:26:39 c30xPPqJ
何年経っても忘れがたく、あの一夜を思い出すことがある。
夢か幻か―記憶を手繰るごとに、現実感は遠のいていく。
触れ合った肌の温かさ、零された吐息の熱さ。
ひっそりと落ちた涙。
自分だけが知っている、そのささやかな優越感だけは褪せることがない。
それから十年以上が過ぎ、若狭は引退して出産した。
互いに顔を合わせても、もう何事もなかったかのような日々。
「四草兄さん。来とんなったんですね」
ひぐらし亭の楽屋に入ったところで、背後から声を掛けられた。
振り返ると、今お茶淹れますねと言いながら若狭が台所へ戻っていった。
同じ一門といえども個々に仕事が入るため、頻繁に顔を合わせるものでもない。
若狭が育児のために居室にいる時間も長いため、姿を見たのも久々である。
―見間違いでなければ。
瞬間、心に浮かんだ疑念は近付く声にかき消された。
「おう四草、来とったんか」
「おはようございます、四草師匠」
弟子を連れた草々が楽屋へ入ってきた。
挨拶の後、企画中の一門の地方興行の軽い打ち合わせをする。
途中で若狭が茶を運んできて、そのまま同席した。
細々とした部分のメモを取り、ときに確認のために口を挟む。
その一連の草々との会話に、遥か昔の商社勤務時代が頭をよぎる。
かつて見たような、営業とアシスタントの図だった。
意識的に若狭を見ないように努めながら、短いミーティングは終わった。
「確認取れたら連絡ください」
そう言って立ち上がり、さっさと辞した。
季節はまた、冬になっていた。
その数日後、単発の落語会で昼席の出番を終えた。
瞼の裏に焼きついて離れない横顔に軽く頭を振って、楽屋の扉を開ける。
「―なんで、ここに」
「待ってたんです」
お疲れさまでした、四草兄さん―と、若狭が微笑した。

507:深海 5
08/08/02 23:27:28 c30xPPqJ
遊泳禁止と書かれた看板が朽ちかけて、傾いている。
人影のない冬の海岸、風だけがなにかを主張するように強く吹き付けていた。
湿った砂に足跡を残しながら、肩を並べて歩く。
「子ども、預けてるんやろ」
「十時くらいに帰る言うてきました。たまの息抜きやからそれくらいまでならええって」
陽が落ちた海沿いは暗く、時計を確認することはできない。
互いに示し合わせたように、足を止めた。
測るように、数えるように、じっと見つめ合う。
―きっかけを待っているのだと判っていたから、唇を開いた。
「寒いか」
「……寒そうに見えますか」
そう言って目を逸らす横顔は、いつか窓の外を眺めていたものと同じだった。
「ああ」
腕を絡ませて、若狭が寄りかかってきた。
ゆっくりと、足取り揃えて歩き出す。
一夜かけて取り除いてやったはずの翳はまた、若狭を蝕んでいた。
あの頃よりもずっと、お互いの枷は重くなっている。
それでも同じように待っていた若狭の、声のない叫びを振り払える自分ではなかった。
どれだけ年月が経っても、たったひとりの女にいつまでも縛られている。
他のどんな女を抱いたところで、代わりなどどこにもいなかった。
たいして会話もせずに、海のそばの一室へ入る。
時間を惜しむように、性急に求め合って、乱れて、果てた。
「やっぱり、寒かった……」
ぽつりと若狭が呟いて、目を閉じる。
その顔を眺めながら、これからのことを考えた。
こうして時折、自分を逃げ場にすれば、若狭は上手く過ごしていけるだろうか。
あの、打ち合わせの一場面。育児をこなす母。弟子の面倒をみるおかみさん。
草々にとって、そういう若狭が必要なのであって、女である若狭を求めているわけではない。
―ならば、女の部分くらい戴いても悪いことはないだろう。
そこまで思考が行き着いたとき、すぐ横で若狭が軽く頭を上げた。
「潮騒が聞こえる……」
「そうやな」
「また―海、連れてきてもらってもええですか」
そうしてバランスが保たれれば。
若狭がひとり立ち尽くすことがなければ。
そのためなら、なにをしても構わない。
「お前が望むなら」
狭いベッドの中、視線を合わせた。
若狭の眼が自分を捕える。
いつかも見た、不思議な瞳―
そこには、共犯の光が宿っていた。

 <終>

508:名無しさん@ピンキー
08/08/03 05:16:39 B5SyY2BM
GJです。
泣くことも忘れてしまっていた若狭が痛々しい…。
あのまま、草々に理解されない売れっ子状態が冬まで続いていたら
こんな風な心を抱えてしまっていたのかもしれないと思うと切なかったです。
若狭の空洞をただ一人理解して、けれど重過ぎる枷を取り除くことはできなくて。
彼女を抱く四草、本当に切なくて泣きそうになった。切ない男だな…
冬っていう季節がぴったりの素敵SS、ありがとうございました!

509:名無しさん@ピンキー
08/08/03 12:25:53 yFJBQegb
GJです。
なんで四草は切ないのが似あうんだろうなあ…。
作中の底知れない感じの冷たい空気感がすごくよかったです。

510:名無しさん@ピンキー
08/08/03 20:50:20 XKL8CmIt
>>502
GJです!新作お待ちしてました!
>>502さんの描かれる若狭はどこか陰があって謎めいていて
秘密は女を女にする―A secret makes a woman woman
(元ネタは名探偵コナンですが…)
て雰囲気で大ファンです。

511:名無しさん@ピンキー
08/08/04 06:30:21 lr1iYfzd
GJです!いつもながら美しいお話ありがとうございました。
暑い部屋で読んでるのに、描写が素晴らしいので、冬の海風まで感じてしまいました。是非ぜひまたお願いします!

512:名無しさん@ピンキー
08/08/06 01:16:25 iuL/EEw2
保守

513:名無しさん@ピンキー
08/08/07 00:04:45 F8zqGCob
まいご三兄弟放送までの保守というこで。
内弟子修行時代の若狭と草々で小ネタ投下しときます。バカネタです。


「…やさしく、してください」
どこか舌足らずな甘い声がピンクの唇から零れる。
「そうそう、にいさん……」
細い肩を頼りなげに震わせ、小さな手をきゅっと胸の前で組み、
潤んだ大きな黒い瞳がひしと草々を見上げる。

ハタチの女の子と二人きりの密室でこのセリフ、このシチュエーション。
古い歌謡曲で言うとこの、あなたに女の子の一番大切なものをあげるわ的
ベタな展開が始まりそうな状況に、くらあっと理性が吹っ飛びかけたが
ここは上方落語の名門、徒然亭草若宅の稽古部屋。
相手の女の子というのはアホの末っ子弟子、徒然亭若狭。

なんやかんやで弟子入り前から同じ屋根の下で暮らしているが、
そんな色仕掛けが出来るような娘でないことは草々がよく知っている。
「…………誰に習った?」
「はい、師匠から」
今までの雰囲気はどこへやら、草々の問いにけろっと答える若狭。
「師匠から?」
「はい、兄さんらに稽古つけてもらう時はこうせえって」
「…それ、みんなにもやったんか?」
「小草若兄さんはまだですけど、草原兄さんと四草兄さんに」
(それでか)

ここ最近、元から若狭にデレデレな小草若はともかく
他の兄弟弟子までミョーに、この妹弟子に甘くなっていたのだ。
こと妹の面倒見るのを億劫がってたはずの四草にいたっては
ここんとこ、買い物につきあったり芝居見物に連れてったりと
すっかり甲斐々々しく若狭の世話焼きに転じていた。

(さすがです師匠……!)
カラクリの解けた草々は、師匠・草若の深謀遠慮に感じいっていた。
あの女タラシの四草さえも、こんなお子さま若狭に落とさせて
なおかつしっかり兄弟子修行をさせてしまうとは。

(師匠!男・青木一、一生あなたについて行きます!)
改めて師への尊敬を深める草々であった。

「あのー、わたしのお稽古は?」

514:名無しさん@ピンキー
08/08/07 08:28:06 RtJ5RGsl
GJGJです~!めっちゃワロたw
師匠の算段にどっぷりはまって、あの恐竜草々よりも判断力が鈍ってる
四草兄さん哀れなりwまた楽しみにしてます!

515:名無しさん@ピンキー
08/08/07 15:06:46 H/Ci7LfX
GJGJ!
師匠が若狭にレクチャーしてるさまを想像して、
バカウケしました。
しかし、若狭…裏をばらしちゃあかんやろ、しかも草々にw
ここは色仕掛けで落とせ!


516:名無しさん@ピンキー
08/08/07 23:38:57 9ioU/yMB
>>513
GJです!いや~なんか容易に想像つきますw
面倒見のいい四草、はたから見たら笑えそうです。


チラ裏ですが、中の人の雰囲気のせいか、和菓子屋になっても
師匠やら兄弟子と危うい関係になりそうで秘かに萌え。

517:名無しさん@ピンキー
08/08/08 10:07:46 EtFLPuBh
>>516
和菓子屋、自分は見てないんですよね~
あまりにも彼女は若狭だったもんだから、他のドラマが見られない・・・orz
どうなんでしょ、和菓子屋は萌え系ですか?

518:名無しさん@ピンキー
08/08/08 19:59:44 5/tpIZ/7
人それぞれでないかな?
どーなつが萌えか否かはそれこそ>>517が見なきゃわからんワケで。

中の人ならお台場大奥がエロかったな。
柳沢吉保(北村一輝)のために綱吉(谷原章介)に抱かれる姫さん役。
綱吉の子だと偽って柳沢の子を産むってとこで前スレの四草×若狭思い出した。

519:名無しさん@ピンキー
08/08/08 22:29:51 ORD3JO9o
>>518
あれエライエロイよね…

520:名無しさん@ピンキー
08/08/09 07:35:57 SvUG1cAa
海ネタ二番煎じのギャグ投下で失礼します。
エロ無いです。色気も無いです。かわりにアッー臭がします。
(話中のブランド名は架空のものです)

521:ビキニは女の子が着てなんぼ1
08/08/09 07:36:45 SvUG1cAa
徒然亭一門inぴちぴちビーチ(箱作海水浴場)
~草原の子ども落語講座に便乗してみんなで海水浴といこうやないか~

相変わらず行き当たりばったりなご存じ徒然亭草若一門ご一行様。
その草若の実子にして三番弟子の徒然亭小草若はこの日、
あるひとつの期待に胸を膨らませていた。

理由は三日前。
実家兼師匠宅の対面にある居酒屋「寝床」に入ろうとした時のこと。
扉の向こうから聞こえてきた女二人の話し声。
寝床の女将・咲と妹弟子・若狭の女同士のナイショ話。
よく会社の給湯室から聞こえてくるアレですアレ。
当然、男なら足を止めて聞き耳立てますがな。

『へえー、若狭ちゃんビキニ着るん?』
『えへへ~ダイエット頑張っちゃいました』
『うわ!それエクスリーの新作やん!どしたんこんな高いの?』
『実は、前に一緒の仕事した天狗トリオさんがくれなったんです』
『はぁー、そらまたずいぶん気前ええな』
『はい、番組の罰ゲームで団長さんが着せられたのもろたんです』
『……その入手経路はビミョーやな』
『ほやけど洗濯してあるし、イエローは人気ですぐ売り切れるんですよ?』
『まあ、若狭ちゃんがええならええんやない?』

ウキウキ弾んでいる若狭に対してビミョーに引き気味のお咲さん。
野郎の着た水着もらって喜ぶのって女としてどーよ?的な。
だが外で聞いてた小草若はそれどころではない。
「ビ、ビキニ……若狭がビキニ……!」
「どしたん、小草若さん?」
「ぅひょわああっ!?」
突然、店主の熊五郎に肩を叩かれた小草若は一目散に駆け出していった。
「……そないビックリせんでも」

阪急百貨店、新作水着売場。
気がついたらそこに立っていた小草若。本能って恐ろしい。
(こ、こんな大胆なの着るんか!)
目の前にはまさに会話に出てきたビキニがディスプレイされている。
呆然と見上げる小草若に店員が近寄る。
「お客さまーなにかお探しでしょうか?」

数分後。
「ありがとうございましたー」
小草若の手には何故か若狭と同じブランドのビキニ(メンズ)が。

(…人妻になってもた女の子とペアルックて)
我ながら痛い。痛過ぎる。
しかし、だ。
若狭の独身時代っつったら内弟子修行の真っ最中で。
こんなふうに水着で海行ったりすることなんて一度もなかったのだ。
フラれたとはいえ惚れてた女と初めて�/09/05(金) 15:52:39 ID:GpBKi1SK

522:名無しさん@ピンキー
08/09/05 17:43:47 +9vSSME6
GJ!
短いのにぎゅっと詰まった感じがしてすごくよかったです。

ラスト…落子が見てるのに気がついた若狭が
四草に教えるためにあえてつかんだんだったりして…と妄想。
なんかイロっぽくてよかった~。

523:名無しさん@ピンキー
08/09/05 23:18:30 S/+Z/jnj
う~ん!エロくてイイ!!

524:名無しさん@ピンキー
08/09/05 23:42:43 e5L/fqkK
いや~ん!!美しい!GJ!GJ!GJ!
久々に萌えました!

525:名無しさん@ピンキー
08/09/08 12:53:55 0JDVFrjN
>>548
今さらだけど、総集編の特典になんか萌えネタある?
BOXそろえたらさすがに金欠で家人の目も厳しいんで
買おーかどーしよーか未だに迷ってんだ・・・・

526:名無しさん@ピンキー
08/09/08 17:11:02 lnl6LCab
四草、草原ファン
向け燃えネタかな、
まいごメーキング。


527:名無しさん@ピンキー
08/09/08 17:24:37 cl/7qrm/
さすがにエロはない
小草若がちょっと微エロな話?してるくらい
四草はこのスレの四草と全然違うので要注意

528:名無しさん@ピンキー
08/09/08 21:06:15 1YdrV0SD
目から涎のふわふわ兄さんだからな

529:名無しさん@ピンキー
08/09/08 21:11:28 1YdrV0SD
買う価値をちりとて単位で教えて下さい。

530:名無しさん@ピンキー
08/09/08 22:01:59 lZz4DDfI
メイキング、最後にたまらんプレゼントがあるんだけど、
ネタバレになるから言えない・・・

531:名無しさん@ピンキー
08/09/08 22:21:17 IFnQ6nP9
気になる!5若狭3鯖4エーコ気になる!!
買わずに済ませたかったのにッ

532:名無しさん@ピンキー
08/09/09 21:17:34 BRt2+rhc
>>582
ひ、ヒントだけでもっ……!

533:名無しさん@ピンキー
08/09/15 02:00:32 WcDx+Y6V
>>584
このままだとなんか気の毒なのでいまさら生殺しみたいなヒントですが。
それとももう決めてぽちっとやったあとですかね。
NHKストリートの動画をチェックした人なら、気づいたかどうかは別として
>>582の(おそらく)指しているものを目にしている。

それに限らず、総集編DVD発売後にNHKストリートでアップされた動画は
DVDに入っていたメイキング映像がベースだった。

534:名無しさん@ピンキー
08/09/17 20:41:12 /59owb4L
底抜けに捕手。

535:名無しさん@ピンキー
08/09/19 01:10:38 qj6H6MFI
職人さんの呼び水になればと思い、投下します。
草々×若狭でエロあり。砂吐くほど甘々バカップルです。

536:三十過ぎたら男はだいたいエロオヤジになる1
08/09/19 01:11:24 qj6H6MFI
―大型の台風9号は現在、勢力を増し深夜から未明にかけて……

「師匠、大丈夫かな……」
「日本海側はルート外れるゆうてたから心配無いやろ」
テレビから流れる台風情報を待つまでも無く、
すでにびゅうびゅうと強い風が枝折戸を叩き付け
庭の植込みは愛宕山の一八がひっかけた竹さながらに大きくたわんでいる。
一昨日から地方公演で家を空けている主の草若に代わり
嵐に備えて屋敷の雨戸を閉めてまわっているのは、
離れに住む弟子夫婦の草々と若狭だ。

「よし、あとは二階やな」
ギシギシと狭い階段を昇り、普段はあまり生活の場として使わない
がらんとした室内へ入ってゆく。
「北の格子窓、指挟まんよう気ぃつけや」
戸締まりを確認しつつ声をかけた若狭を振り返ると
「うう~……」
彼女は戸袋に引っ込んだままの雨戸と格闘していた。
ガタガタと軋むそれに草々は懐かしさを感じていた。
「ああ、そいつはコツがあるんや」

この家に来たばかりの頃、おかみさんから教えてもらった裏技。
若狭を後ろから抱えるように立ち、雨戸の把手に手を掛ける。
「ええか、俺が蹴ったらせーので引っ張るんやぞ?」
「はいっ!」
「いちにの……」
「さんっ!」
どんっ
蹴りあげるとウンともスンともいわなかった雨戸がスルスルと動く。
が、勢いがつきすぎたのかピシャンと閉まった反動で
引っ張っていた二人はもつれるように座敷に転がってしまった。
「おわっ!?」
「ひゃあ!?」

閉め切った部屋の外でゴウゴウと雨風の音が鈍く聞こえる。
「大丈夫か若狭?」
「草々兄さんこそ怪我ないです?」
互いの無事を確かめあってから、ふと気がつく。
畳の上、妙な姿勢でぴったりと抱き合ったままでいることに。
夫婦とはいえ、なんだか気恥ずかしくて二人で決まり悪げに笑うと
のろのろと体を起こす。
「……母屋、全部閉めたことやし、戻って寝るか」
「ほうですねぇ、もう遅いし」
若狭の乱れたスカートをなおしてやりながら、草々が腰を浮かせたその時。
ゴウッ
屋敷が揺れるような衝撃の後。
ふっと闇に包まれる二人。
「えっ?な、なに?」
「停電、やな」

大阪北区の空は完全に暴風域に入ったようだ。
雨戸を閉め切った暗闇の中、二人はまたさっきのように抱き合っている。
今度は離れないようしっかりと。
「…電気、つくまでこうしてよか」
「なんも見えへん」
「雨戸閉めたからな」

537:三十過ぎたら男はだいたいエロオヤジになる2
08/09/19 01:12:12 qj6H6MFI
闇の中で身動ぎもせず、互いの体温と鼓動だけを感じている。
それだけで、不思議と外の嵐から守られてるような気分になる。
人間とはおかしなもんやな、と妻の柔らかな体を抱き締めながら
物思いに耽る草々に、その腕の中の若狭が話しかけてきた。
「…なんか、喋ってください」
黙ってるのもなんや寂しいし、草々兄さん落語家なんやし。
おまえかてそうやろ、と突っ込みながらもそうやな、と頭を回らす。

「この家来たばかりの頃、小草若とケンカばかりしててな」
おかみさんからもらった、宝物のジグソーパズル壊された仕返しに
当時の小草若が宝物にしてたエロ本破いたのは、丁度この部屋やったな。
引出しの奥に隠してあったヤツをこっそり持ち出して、ビリビリにして……
「…変な思い出話」
草々の胸で若狭がくすくすと身を捩って笑っている。
「おまえが話せえてゆうたんやろが」
そう言う草々自身の腹もくつくつと波打っている。
三十路越えて所帯持った男が、女房に話す思い出話がエロ本て。

「…で、草々兄さんは見たんですか?」
「なにをや?」
「その、小草若兄さんの本」
「アホ、見る前に破いたわ」
草々はちょっぴりウソをついた。
なんせ当時の自分ときたら十代の性欲真っ盛りだ。
その手の本に興味が無いわけがない。
もっとも、ぱらぱらと捲っただけで真っ赤になってしまったのだが。
(……そういえば)
あのエロ本にあった写真で妙に記憶に残っているページがある。
あどけない少女のような顔に、不釣合いなグラマラスな姿態の女。
変にドギマギして、紙を破る手が滑ったのを覚えている。
思い返すとあの写真は、今腕に抱いている若狭に似ていたような気が。

「……変なコト、考えんといてください」
「あ?」
突然、その若狭に言われて我に返った草々は、意味する所に愕然となった。
妻の柔らかな腿に当たる己の一物がすっかり変形してしまっている。
(……いくら小僧の頃思い出したかて、性欲まで戻ることないやろ)
単純極まりない自分に呆れつつ、すまん若狭と腰を引いた…のだが。
「……なにしてんねや」
引いた筈の股間に、相変わらずぴったりと柔らかな太腿が当たっている。
というか、押しつけられている。
「変な話して変なコト考えとる、草々兄さんが悪いんです」
くすくすと笑う若狭の吐息が草々の耳をくすぐった。
「ゆーわくしとるんですよ?…草々兄さんのこと」

538:三十過ぎたら男はだいたいエロオヤジになる3
08/09/19 01:12:59 qj6H6MFI
ゆーわく。
たどたどしく発音された妻の言葉は、意味をわかってない子供のようで。
それでいて。

「あっ…ゃあ…んっ……あんっ……」
雨戸を閉め切った暗がりの座敷に、甘い嬌声と湿った音が響く。
時折、外で雨風が板戸を激しく打ち付ける轟音で鈍くかき消されるも
ふたつの音は途切れること無く続いている。
互いの目鼻立ちもぼんやりとおぼつかない闇の中。
手探りだけで衣服を乱し、その肌の熱を伝え合う。
草々の右手は、はだけたブラウスから零れる若狭の乳房に指を這わせ
左手は下着を剥ぎ取ったシフォンスカートの中で、まろやかな尻と
その奥に濡れる秘処の感触を楽しんでいる。
女体の敏感な箇所を夫の武骨な手に預けている若狭の小さな両の手は
草々のスラックスの前をくつろげ、聳り立つ幹と根本の袋を包み込んでいる。

「とけそう……」
とろりと甘く蕩けた溜息が若狭の唇から漏れた。
「溶けてまえば、ええ」
熱い耳朶を食みながらそう囁く草々の声に、何故か妻は吹き出した。
「いやや、草々兄さん……四草兄さんみたい」
急に出たその名は、いつも陰気に辛辣な科白を吐く兄弟弟子のもので。
「…ほんまや」
彼の苦々しげな口調まで思い出し、釣られて草々も笑い出す。
「もう…また兄さんが変なコト言いなるから」
「そら、悪かったな」
尚も笑い続ける若狭のスカートの中で、草々の指が動く。
「あっ!やぁ……んっ!」
「今度は変なコト、言わんといたる」

親指で肉芽を転がしながら残る指で柔らかな襞をかき分け
中指を滴る秘処へ差し込み内壁を擦る。
刺激するたび、草々の男根に絡む細い指がびくん、としなう。

「すき……そうそう、にいさんの…ゆび……」
愛液で草々の指が濡れそぼる頃。うわ言のように若狭が言葉を紡いだ。
「おっきくて…ごつごつしてて……おとこらしいのに…」
「らくご…しとんなるとき……ほんま、きれいで…いろっぽおて……」
陶然とした声音で若狭は続ける。
「はじめて…おうたころみた、にいさんのうめの……」
ああ、と草々は懐かしい記憶を手繰り寄せる。
梅乃。
それは昔、妻の下座で掛けた『辻占茶屋』の遊女の名。
「あのときの、ゆびに…どきどき、したん……」

「喜ィ公…」
懐かしさのあまり、草々は思わず昔の愛称で妻を呼んだ。
喜ィ公。
不器用で、一生懸命で、愛しい。俺だけの。
「喜ィ公は、俺の梅乃に誑かされたわけやな」

539:三十過ぎたら男はだいたいエロオヤジになる4
08/09/19 01:13:53 qj6H6MFI
―喜ィ公、おい喜ィ公

出会ったばかりの頃。
草々の後ろをちっちゃな体でちょこまかとついてきた子供は、
何時しか同じ道を志す同志となり、一門の末っ子弟子となり、そして。
こうして、草々の腕の中で艶めかしい媚態を晒すおんなになっていた。
さながら幼虫が蛹に、蛹が美しい蝶へ姿を遂げるような変貌に
草々は改めて舌を巻く思いだ。
この艶やかな蝶がその身を変える以前から、一途に慕い続けてきた
相手というのが、他でもない自分なのだという。
長い間、彼女の想いに毛ほども気付かずにいたくせに
蝶が羽を天に伸ばした途端、あっさりと捕えてしまった自分は。
(梅乃どころやない、狡い大人やな…)

胸の内でそっと苦笑を洩らしつつも、捕らえた獲物を逃す気は毛頭無い。
充分に潤みを湛えた秘処から指を引き抜き、スカートごと腰を浮かせて
小さな手で高められた怒張の先端へあてがう。
「ひゃっ…ああんっ……!」
ぐちゅ、と卑猥な水音に大きくしなる背を抱き、さらけ出された乳を
唇の感触を頼りに吸い上げる。
「腰、自分で動かしてみ」
喜ィ公?
昔の名で呼んでやると、びくんとその身がわななく。
「あっ…いやや……」
そうそう…さん……。
昔の呼称を彼女は呟いた。

暗闇にぼんやりと浮かぶ柔らかな輪郭に、草々は不思議な感覚を抱いていた。
腕の中の感触は、違えようもなく抱きなれた大人の妻の筈なのに
草々の脳裏は、出会った頃の少女の姿が描かれていた。
あの頃の何も知らない、いたいけな少女を犯している。
そんな倒錯した想像にひどく興奮していた。
過去の自分は、確かに彼女を女として見ていなかった筈なのに。

ずぶ濡れで、男物の浴衣にくるまっていた喜ィ公。
三味線を抱えて、べそをかいていた喜ィ公。
そのくせ、自分や師匠や兄弟たちのために懸命に走り回ってた喜ィ公。
あの喜ィ公が、服を乱して乳を揺らし、腰をくねらせて喘いでいる。
「ほら、もっと腰、振れるやろ……喜ィ公」
「あっ、やっ、いゃあ……!」
「嫌やないやろ喜ィ公…気持ち、ええんやろ?」
「やぁんっ…いわんでぇ……っ!」
喜ィ公。
そう呼んでやるたび、ぞわぞわと蠢く熱い壁がきゅっと締め付ける。
乱れる少女。
(俺は、おまえの最初で、最後の男なんやな……)
こたえられない征服感に満たされる。
熱い種を、彼女の胎内へしっかりと埋め込むように引き絞り
最奥へ叩き付けた。

540:三十過ぎたら男はだいたいエロオヤジになる5
08/09/19 01:15:09 qj6H6MFI
雨戸の外はいつの間にか、風雨が弱まっていたらしい。
たたん、たたんと軽く板戸を叩く雨音を聞きながら
心地良い熱の余韻に身を任せ、ゆるく肌を触れ合わせる。

「なんや、恥ずかしいこといっぱい喋ったな」
「草々兄さんが、変なコトばかり言いなるから…」
甘えた声でしなだれかかる若狭の背を撫で、軽く口づけた時。
ブゥゥン……
地虫のような音とともに、室内に明かりが戻った。
「……電気、復旧したようやな」
眩しさに目をしばたかせながら草々が呟く。
闇に慣れた目が、白い光にようやく馴染んだ頃。
夫婦は互いの乱れた姿に、今更ながら顔を赤らめていた。
母屋の座敷で、何も敷かずに着衣のまま行為に及ぶなんてことは
結婚してから今まで一度も無かったからだ。
「……遅なったけど風呂、沸かして入るか」
「……はい」
どちらからともなく、照れた笑いを浮かべて腰を浮かせる。

その時だった。
階下でカタン、と物音がしたのは。
「え……なに?なに?」
「まさか、泥棒か?」
今までの雰囲気など一気に吹き飛び、青ざめた顔を見合わせる。
「ど、どねしよ草々兄さん……!」
「落ち着け若狭、まずは下降りて確かめるんや」
軋む階段を、なるべく音を立てないよう細心の注意を払いながら
ソロソロと足を忍ばせ降りてゆく。
物音はどうやら廊下の向こう、居間のあたりから聞こえてきたようだ。
妻を背に庇いつつ、照明の映る障子戸に手を掛ける草々。
はたして、そこにいたのは。

苦虫を噛み潰したよーな顔で卓袱台を囲む、よく見知った男三人。

「玄関、開けっ放しで二階いたら留守番にならんやろ」
心底呆れ返った溜息を吐く筆頭弟子。
「心配して来てみたら、お楽しみの真っ最中とはね」
皮肉に唇を歪める四番弟子。
「なんで俺ら、リアルに『茶漬け間男』やらされなあかんねん…」
頭を抱えて呻く三番弟子。

草若門下の五人弟子が勢揃いした縁起棚の前に、冷たい沈黙が落ちる。
重苦しい空気の中、おそるおそる二番弟子が尋ねた。
「…………………ま、まさか、全部、聞こえて……」
くっと奇妙な声が兄弟弟子三人の喉から漏れる。
「ノーカット、無修正、5.1chサラウンドでな」

ぼーん ぼーん
嵐も過ぎ去り、草木も眠る丑三つ時。
「……っいやああああああああああああああああああッッ!!!」
深夜の草若邸に末っ子弟子の悲鳴がこだましたという……。




541:名無しさん@ピンキー
08/09/19 07:16:36 sr3eVbE7
ええ、落ちや!
落語や!

542:名無しさん@ピンキー
08/09/19 07:57:41 fZyZlhuV
おぉぅ~!!
GJ!!です!!

やっと、あの報われなかった喜イ公時代の喜代美が
報われたようで
良かったです!!


でも、四草視点を読んでみたいと思ったです


543:名無しさん@ピンキー
08/09/19 10:37:41 dRelj3QU
喜ィ公呼びいい!GJ!

544:名無しさん@ピンキー
08/09/19 11:44:57 eEg9TQLT
底抜けにGJ!久しぶりの大作うれしいです。
私も別視点で「聞き耳(のぞき?)三兄弟」も読んでみたいと思いました。

545:名無しさん@ピンキー
08/09/19 13:22:38 Sp4feN1Z
うまい!!
草々×若狭はやっぱ最高だ!!

546:名無しさん@ピンキー
08/09/19 15:11:11 dDHb/saZ
「茶漬間男」どんな噺か知らなかったから
某所で国宝の動画を見てきたw
いやぁ~GJ!!
しかし、聞いてしもた方も聞かれた方もたまらんなw


547:名無しさん@ピンキー
08/09/19 19:39:47 eEg9TQLT
>>587さんの新作がうれしくて、触発されて続き書いてみました。
ギャグ、エロなしの小ネタです。まいご三兄弟につなげてみました。
初めてのSSでつたなくてすみません。枯れ木も山のにぎわいになれば。

548:その約10年後
08/09/19 19:41:03 eEg9TQLT
時は平成20年。あれから10年以上の歳月が流れた。
今年は四草の噺家デビュー20周年を記念して「四草会」が計画されていた。
ちなみに気配りたっぷり一番弟子、草原の発案である。
ただ、五番弟子の若狭が落語家を引退してしまったため、末っ子弟子
返り咲きの四草の前座を兄弟子3人のうち誰がやるか、でもめた末、
草々がその役を受けることになった。
今日は二人でかけるネタの打ち合わせである。

「すいませんね、兄弟子に前座頼むなんて」
「気にすんなって。この会の主役はお前なんやから。」
「で、兄さん最初は何かけはるつもりですか?」
「それなんやけどな、若狭とも相談したんやけど、俺、創作落語を
 やってみよう思うんや」
「創作落語を!草々兄さんがですか?」
「俺もまだちょっと不安なんやけどな。若狭が手伝うてくれる言うし、
 二人で作った噺をかけられたら二人でお前を祝う意味でもええかなて。
 若狭も喜ぶし」
「相変わらずバカップルですね」
「やかましいわ。で、ネタにはあの話使おうと思うとるんや。ほれ、
 昔おまえと草原兄さんと小草若が安曇川で道に迷ったときの」
「それ、思いっきり僕のプライベートネタやないですか」
「せやから、一応お前の了解得とかなあかんやろ。ええか?」
「まあ、昔の話ですから。ええですよ。でも奇遇ですね。
 じつは僕も今回初めて創作やろうと思うてたんですよ」
「えっ!お前もか?」
「マクラに使う程度ですけどね。あの話しようと思てるんです。
 ほら、前に兄さんと若狭が師匠の家で留守番してたときに台風直撃して
 停電になって、ぼくら心配して駆けつけたら二階から喘ぎ声が・・・」
「四草お前っ・・・あかんっ!その話はあかんっ!」
「く、首しめんで下さい・・・じょ、冗談ですよ・・・(半分本気やったけど。チッ)」

おわり

549:600
08/09/19 20:01:55 eEg9TQLT
>>587さん、勝手にお借りしてお気にさわったらごめんなさい。
あと、四草会が20周年記念だとか、前座に草々起用のいきさつとかも
まいごの放送前だったか、どこかの関連スレで読んだアイディアいただきました。
つぎはぎリサイクルショップみたいでお目汚し失礼いたしました。

550:名無しさん@ピンキー
08/09/19 21:50:36 0/xRZ5LC
GJGJ
四草絞殺Part Ⅱ
この際、四草は草々脅してきつねうどん奢らせろ

551:名無しさん@ピンキー
08/09/20 03:17:26 vFJv2k6O
>>599
GJ!といいますか、ありがとうございます!
あんなしょーもないオチをまさかまいごネタに繋いでいただけるとは…!
四十過ぎよーが子持ちになろーが嫁スキーでバカップル呼ばわりされてる
草々がらしくてイイです。
そして、十年越しで意趣返しする四草に盛大に吹きました。
なんてヤな野郎なんだ。

552:名無しさん@ピンキー
08/09/21 13:08:15 eOgBrUjy
>>587>>600
GJでした!いや~いいわ!面白かったー

553:草月 ◆ACiteNl50A
08/09/23 00:47:35 nLpTaFIV
若狭×四代目草若 追憶

ものすごく久々に投下させていただきます。
暗いです。めちゃくちゃ暗いストーリーになりました。
神降臨までのつなぎでどーぞ。

554:草月 ◆ACiteNl50A
08/09/23 00:48:31 nLpTaFIV
若狭×四代目草若 追憶 1

「草若兄さん…今日、来てくんなりますか…?」

今日も彼女からのメッセージ。一日の終わりに顔を出す。
逆らえない、愛しい妹弟子からの電話。
やめなければ、もうやめなければ…誰にとっても不幸なだけなのに。
そう思いながらも四代目草若、小草若はひぐらし亭への道を急いでいた。
いつも通る道、大通りは地下鉄の工事をしていて通行止めの看板と迂回路を
誘導する警備員の赤い誘導灯、点滅を繰り返す警告灯が小草若の心に注意を
促していた…この先に行ってはならない、と。


小草若は「あの日」の出来事を思い返していた。

それは今から数ヶ月前、草原と四草、小草若は喜代美に誘われてひぐらし亭の
二階の喜代美達の自宅で飲んでいた。
どうやら草々と喜代美が夫婦喧嘩をしたらしく、お互い謝るきっかけを
見つけられないまま草々は弟子の小草々と地方公演に出かけてしまい、
どうしたらいいのか相談に乗ってほしいとのことだった。
最初は夫婦として先輩の草原が愚痴を聞いてやってアドバイスをして
やっていたが次第に例の絡み酒に発展してしまい、やむなく四草が連れ帰った。
一段と恰幅の良くなった草原を四草と二人掛かりでタクシーに押し込んで
自分も帰ろうと荷物を取りに戻ってくると喜代美の目が潤んでいた。
「じゃあ俺も帰るわな…どないしたんや、若狭?まだ何か悩みがあるんか?」
若狭は何も答えなかった。
「俺は若狭の兄さんなんやで?妹の悩みは解決したらなあかんがな。」
「聞いてもろてもええですか…?」
「何でも言うてみ!百ぺん言うてみい!」
しばらくは言いにくそうにしていたが、やがて意を決したように話し始めた。
「…草々兄さんは、亡くなったおかみさんのことをずうっと忘れとらんの
です…。」
「何やて…?」
「私は…おかみさんの代わりなんです…。」

喜代美の話よると、あの伝説の大晦日の告白大会、そして三日後には結婚
という超スピード婚を経た二人は最初こそ草々の家出騒動があってあわや
夫婦の危機かと思われたがそれも何とか乗り越えて落語家夫婦として仲睦まじく
やっていた。
ところが次第に、草々が自分を通して他の誰かを見ているらしいことに
喜代美は気付いてしまった。
疑念が確信へと変わったのは先代の草若から志保の着物を何枚か譲り受けた
時のことだった。純粋に嬉しくて草々の前で着て見せた。
その姿を見た時、草々の口が「おかみさん…」と動いたのを喜代美は
見逃さなかった。さすがに小草若には言えなかったが、その時から草々は
喜代美が志保の着物を着て高座に上がった日は必ずといって良いほど彼女を
求めた。


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