ちりとてちんでエロパロ 第四席at EROPARO
ちりとてちんでエロパロ 第四席 - 暇つぶし2ch1:名無しさん@ピンキー
08/05/10 01:06:38 s/AQwMq1
ようこそのお運びで厚く御礼申し上げます。
こちらはドラマ「ちりとてちん」のエロパロスレです。

※sage進行でお願いします。
※どなたさまも荒らしは底抜けにスルーの方向で。
※SS投下時には、カプ名と傾向(エロの有無、鬼畜・百合等)の表記をお願いします。
※次スレの算段は容量が490KB超えた、もしくはスレが950まで進行したら、
 宣言して立ててください。誘導もよろしくお願い申し上げます。

初代スレ 【朝ドラ】ちりとてちんでエロパロ【貫地谷B子】
URLリンク(same.u.la)

二代目スレ ちりとてちんでエロパロ 第二席
URLリンク(same.u.la)

三代目スレ ちりとてちんでエロパロ 第三席
スレリンク(eroparo板)

2:名無しさん@ピンキー
08/05/10 01:15:39 s/AQwMq1
自分で2ゲトww

3:名無しさん@ピンキー
08/05/10 01:18:33 FOxf51yy
そ~こ~ぬ~け~に>>1乙やがな!
前スレラストでは要らんこと書いてすんませんでした。
ではおまじないを…w
(・∀・)ノ~~~~~~○
第四席も楽しいスレになりますよ~に

4:名無しさん@ピンキー
08/05/10 01:25:26 s/AQwMq1
>>3
いやいやお気にせずにw
自分はDVDが届いてからここに投下したいっす。

5:名無しさん@ピンキー
08/05/10 11:10:22 tLXyG/xP
>>1乙です
ロム専ですが本当に楽しませてもらってます
職人の皆さんありがとう
DVDも楽しみだ

6:名無しさん@ピンキー
08/05/10 11:38:40 47GgfP9/
その>>1乙のよぉ~きなこと!

今日17時からは3日から延期になった落語ワールドSP
お忘れなく~

7:名無しさん@ピンキー
08/05/10 14:01:46 d6NV5xgY
>>1
乙です。
ありがとうございます。

職人様方、いつもありがとうございます。
毎回、楽しいちりとて話を読ませていただいてます。
ずっとROMってたのですが、ちょっとネタを思いついたので、初めて投下させていただきます。
・・・エロいというより、ギャグ的で、恐縮なのですが。
時期は、草々との結婚より前です。内弟子修行中。5兄妹です。

8:小ネタ ザ・お風呂でばったり 1
08/05/10 14:03:34 d6NV5xgY
5月。
というても日によっては、真夏日に近い気温の日がある。
師匠に頼まれた用事を済まして、電車代を稼ぐために5キロ近く歩いて帰ると、汗をダラダラとかいていた。

「ただ今、帰りました。」
「おう、すまんかったな。」
「いえ、このくらいは・・・」
結構きつかったです、とは言えず、言葉を濁す。
「えらい汗かいてるやないか。稽古の前に、水浴びてこい。」
「ありがとうございます!!」
着物を着る前にさっぱりできるなら!と喜んで風呂場の方へ回る。
「ああ、そや、さっき若狭も汗だくで買い物から帰ってきょったんや。入れて言うたから、その後で・・・って、もうおらんのかいな。」
しゃあないやっちゃ・・・と言いながら、困ったように顔をかく草若師匠だった。

風呂敷に包んだ浴衣を脱衣かごに入れる。
一つ下の脱衣かごに何かが入っているのは認識していたが、しょっちゅう入れっぱなしで忘れる師匠のこと。あまり気にも留めなかった。
さっさと服を脱ぐ。
師匠にお会いしてから、ここまで、ざっと三分。中々早いスピードや。
「さぁ、入ろか」と風呂場の扉に手をかけて、初めて扉の向こうに誰かがいるのに気付いた。
おかしい、と思う前に扉を開けてしもうて。
雫に濡れた妹弟子と、裸で対面する羽目になってしもうた。




9:小ネタ ザ・お風呂でばったり 2
08/05/10 14:07:19 d6NV5xgY
☆草原の場合
「きゃああああっ!」
「うわああっ!」
な、何で若狭がおるんや!焦りながら、壁側を向き、必死に目を閉じて、体を扉からずらす。この時ほど、きっちりとタオルを巻いていて良かったと思ったことはない。
「そ、草原兄さん・・・?」
「すまん、若狭、びっくりさして!」
「いえ、しゃあないですけど・・・。」
しゅしゅっと、帯を締めている音がする。
あー、よかった、とホッとしている自分がいる。一瞬のことで、しっかりなんて見てへん。けど、やっぱり見た事実には変わりない・・・と思うと、落ち込んできた。若狭に申し訳ないと思う。思うが。
それ以上に頭にあるのは・・・。
『許してくれ、緑ー!』
妻以外の女性の裸を見た事への詫びだった。
いや、その、昔は見たことある。それは、認める。せやけど、結婚してからは、緑だけや!
「あの・・・草原兄さん・・・?」
壁に向かいながら、ものっすごく暗い雰囲気の草原兄さんに、こちらが心配になる。
「兄さん、失礼しました。お先ぃ、出させていただきますさけ。」
「おー・・・。すまんかったな、若狭・・・。」
「いえ、ほな。」
パタパタと出てから、若狭は考える。
『そない落ち込まれるような体型やねやろか、私。』

☆草々の場合
「きゃあああっ!」
「わ、若狭?!」
びっくりしながら、後ろを向く。
「な、な、なん、草々兄さんが?!」
パニック気味の若狭は、驚いてうずくまってしまったようだ。
「す、す、すまん!」
「いや、あの・・・はい。」
どうすればよいか分からず、精神統一に寿限無を心の中で唱え出す草々。そして、気付く。
「ん?・・・おい、若狭。」
「はいっ!」
「お前、何で風呂に入ってんねん。」
「師匠が、入ってこい言いなったんです。」
「で、お前、沸かしたんか。」
「はい。」
「もしかして、一番風呂か?」
「は、はい。」
それを聞いて、草々は向き直った。
「アホか、お前!いくら師匠がええ言わはっても、一番風呂入る前には、もう一回頂いてええか聞かんかいっ!」
「きゃーっ!」
びっくりついでに若狭、手が出た。まっすぐつきだした拳は、草々のみぞおちにヒットしたのだ。
「うっ・・・。」
崩れ落ちる草々。
「あ、す、すみません!」
その脇を抜け、まず、若狭は浴衣をささっと着た。そして、草々を覗きこむ。
「あの、一応師匠には湧いたときにもう一度、確認さしていただきました。」
「そ、そうか・・・ほな、ええわ。」
なかなか痛烈に決まった腹への攻撃に顔をしかめながら、若狭の方を向くと。顔より先に、白い腕と、襟の隙間から見える胸に目がいってしまった。
「うわっ!!」
「へ?草々兄さん?」
慌てる草々の理由が分からない若狭。
「も、もう大丈夫や!ほな、お先!」
そう言って風呂場に入り、草々は扉を閉めた。
「お先て・・・うち方が先やったんやけど・・・?」
不思議そうな若狭だけが残った。


10:小ネタ ザ・お風呂でばったり 3
08/05/10 14:12:07 d6NV5xgY
☆小草若の場合
「わ、わわわ若狭喜代美ちゃん?!」
自分が悲鳴を上げるより前に、小草若に不思議な驚き方をされてしまい、若狭は声を上げそこねた。若狭も喜代美も自分の名前だが、若狭は名字ではない・・・等と考えてしまう。
持っていたタオルで形ばかりは体を隠したものの、当たり前のように、全てを隠しきることはできていない。小草若の方は、愛しい愛しい女の子が目の前に、とても魅力的な姿でいることから、目を離せない。いや、離したくない。
『うっわー、めっちゃ色白いやんか、喜代美ちゃん!また、谷間もあるし、ウエストの部分が綺麗にタオルの後ろに納まって・・・細いなぁ。』
結局、じっくりと見てしまい。
「・・・小草若兄さん、すみません。」
「へ?」
デレッとしていた次の瞬間、若狭の謝罪の後から、平手がとんできた。
「い、いつまで見てなるんですかっ!」
「あ、す、すまん・・・。」
小草若の横をするりと通り抜けた若狭は、小草若が振り向いた頃には、浴衣に袖を通していた。
『あかん、このままでは、俺の好感度が下がる一方や!』
頭の中はさっきよりパニックである。嫌われたくない一心なのだ。
「ほな、お先です。」
かちゃ、と扉の開く音。
『あかん!』
「喜代美ちゃん!」
「はい?」
思わず呼び止めて、言った一言。
「底抜けに~、ナイスバディやったで!!」
「・・・っ!」
まっ赤になって出て行く若狭。
「・・・あかんやないかー!!」
凹む小草若だった。
一方、廊下で若狭は。
『小草若兄さんってば・・・!』
じっくり見て、とか、何てこと言いはるんや、とか、色々と怒る要因もあったが。
『ほやけど、最後に褒めてくれなったから・・・。』
だから、許してあげよう。そう思って笑うのだった。

11:小ネタ ザ・お風呂でばったり 4
08/05/10 14:12:32 d6NV5xgY
☆四草の場合
「き・・・ん?!」
「静かにせぇ。」
パニックを起こして叫びかけた若狭の口を押さえる。
「うるさい。」
分かった、というように頷く若狭を見て、四草は手を離す。
「四草兄さん、なんで?」
「師匠が入ってこいて言わはった。」
「え?!」
師匠が入ってきてええて言いなったのに・・・忘れはってんやろか?とぶちぶち呟く若狭をじっくりと眺める四草。
「結構、ええ体型やな。」
ぽつり、と呟いた声は小さく、若狭には聞き取れなかったらしい。
「え?なんですか?」
「いや。なんも。」
師匠がうっかりしたのか、何なのかは不明だが、このチャンスを逃す手はない。
「あの、四草兄さん。」
「なんや。」
目線をこちらにやられて、身をすくめる。時々、この兄弟子の目が苦手だ。今のように。
「うち、もう出ますさけ、どうぞ入ってください。」
「そうか。」
ほな、とそそくさと横をすり抜けようとした若狭だが、腕を回して、ガッと肩を掴まれた。
「ふぇっ?!」
そのまま抱き込まれて、声も出ない。
「千載一遇のチャンスや。」
「な、な、な、にが?!」
ちらっと若狭に目をやると、四草は最高級の笑みを見せた。
「俺の背中ぐらい流していけっちゅう話や。」
「ええ?!」
びっくりして目を白黒させている間に、若狭は再び風呂場へと引き戻されるのだった。

終わりです。

12:名無しさん@ピンキー
08/05/10 14:13:38 y9yJqsCu
うわー初めてリアル投下に遭遇!!
GJです!!

13:名無しさん@ピンキー
08/05/10 14:17:17 d6NV5xgY
失礼いたしました。
思いついて、書き込もうとする度に規制にかかりまして・・・。

やっと書き込めてすっきりしました!
再び、ROMに戻ります☆

14:名無しさん@ピンキー
08/05/10 15:19:29 1sEEsAPW
乙です。
設定がおもしろかった。キャラも立ってるし。
師匠~、「若狭の後で」てちゃんと言うたってw

ただ…出来れば次はsageてください。

15:名無しさん@ピンキー
08/05/10 15:45:38 zq1/MC+Q
1番バッターお疲れさんでした~。
そうか、兄弟子誰やろ???と思ったら、全員のパターンがあったとは。
面白かったです。
個人的には緑LOVEの草原兄さんが・・・w

16:名無しさん@ピンキー
08/05/10 16:41:43 l6Ukr/yh
GJ.GJ.

17:名無しさん@ピンキー
08/05/10 17:35:09 2EO4jeus
草々兄さんも面白かったでぇ

18:名無しさん@ピンキー
08/05/11 00:53:32 N63U+60Q
>>7
おもしろかったです!

で、エロなし小ネタ系が続くのも申し訳ないんですが…。
前スレ484さんの「草原にいさんDay」の設定をお借りして、
エロなし、喜代美の内弟子修行時代のどたばた5兄弟話。

小ネタ系といってもちょっと長いので、お嫌な方はスルーしてください。

19:徒然亭の初春はあけぼの-戦いの火蓋は既に。の巻
08/05/11 00:55:10 N63U+60Q
本日元旦。
徒然亭恒例の「酒びたり」の日。
その名の通り、飲んで飲んで飲みまくる。容赦は一切ない。
内弟子修行中の若狭であろうが、基本下戸の四草であろうが
テレビ局にて生放送をこなしてきた後の小草若であろうが、
いっさい斟酌されない。恐ろしい一日である。
おそらく楽しいのは、誰にも邪魔されずに酒が飲める師匠と…。

「こりゃっ!わかちゃ!もう酒があらへんやないか~!
しょこにゅ、底抜けに足らんがな~!」
「にいさん…噛みながら、俺のギャグ取らんとってくださいよ…」
いつもなら立て板に水のような流れんばかりの抗議をするであろう小草若が
げっそりした顔で、力なく"一応言うときますが"と言った感じで突っ込んだ。
そう。一番楽しいのは、明らかに草原だろう。
この日がまたの名を「草原にいさんDay」と呼ばれる所以である。

「ああぁぁぁ、すみませぇんんんん!今すぐ買ってきますさけぇ~」
と、これまたかなり酔っ払っている若狭がハイテンションで答えた。
末っ子として買出しに行かなくてはいけない立場だということは
脳まで酒漬けになっていても、覚えていたらしい。
しかし勢いよく立ち上がったため、一気に酒が回り、ぐらりとバランスを崩す。
そんな若狭を「うひょひょ、役得やぁ」と思いながらとっさに受け止めつつ、
小草若は兄弟子に言った。
「にいさん…今の喜代美ちゃんに行かせるんは、底抜けに危ない思いますけど…」
それまで、隅のほうで半分気を失いかけていた四草もむっくりと起き上がる。
「わりますよ、かえりに、さけ、ぜんっぶ。…かけますか?」
にやりと笑い…言いたいことは言い終わったのか、そのままもう一度畳に倒れこんだ。
その横でぶつくさと正月丁稚をつぶやき続けていた草々が、
ぱっと頭を上げて、目に見えて嬉々として言う。
「絶対割るやろ。せやからにいさん、そろそろこの辺で…」
そんな草々の提案を遮って、草原が高らかに宣言した。
「よっしゃあ!じゃあ、俺が!この草若一番弟子の俺が買うてきたる!」
がっくり。まだ飲むんかい…。
辛うじてまともな意識のある次男三男がうなだれる。
そしてそういうとこだけ噛まへんのですね、にいさん…。

草原が足取りも軽く買い出しに行くと。
残された弟妹弟子たちは屍累々状態。草若はそんな弟子たちを見つつ
「ちょっと部屋行ってるわ。酒くらい自分のペースで飲みたいからなあ。
あ、草原が戻ってきたら、俺は寝た、言うといてや~」
と言うと、隠し持っていた一升瓶とともにいそいそと自室へ引っ込んだ。
「俺も…ちょっと…。にいさん戻ってきたら…声かけてや」
そう言って、草々も内弟子部屋へ戻る。いったん眠って精気を養う作戦か。
四草は気が抜けたのか、すっかり眠ってしまったようだ。

「喜代美ちゃんも、ちょっと休んだほうがええんちゃうか」
小草若が気遣わしげにぽやぽやしている若狭に声をかけるが、
若狭はかなり酔いが回っているのか
「え~そうですねぇ~にいさん優しい~ありがとうございますぅううう」
などとにこにこしているだけ。
なんとか休むようにと言おうとするが、どうも酒が回っているようでうまく頭が回らない。
「あーだめや。水飲んでくるわ…喜代美ちゃん、持ってきたるからここで待っててな」
そう言うと、小草若は台所へ向かった。

20:徒然亭の初春はあけぼの-小草若にいさんの場合。の巻
08/05/11 01:00:04 N63U+60Q
台所で、一気に水を飲む。冷たさがからだに染みていく気がする。
「あ~もう、毎年のこととは言え、ほんまかなわんわ、これだけは…」
ぶつぶつと、つぶやく。
しかし今年は、喜代美だけはぶっ倒れないよう守らなくてはいけないという
男らしい決心が胸にあった。脱落するわけにはいかなかった。
「あとの三人は、役に立たんからな…」
師匠まで役に立たないカテゴリーに入れている時点でかなり酔っているのだが…。

「すみませぇん…やっぱり~、私ぃ、役に立たんですねぇ…」
「うわ!びっくりした!!!」
いつのまにか、コップを手にした若狭が横に立っていた。
さっきまでやたらとにこにこしていたはずが、今度はやたらと目をうるうるとさせている。
「考えたらぁ、にいさんに水を持ってこさせるなんてえ、あかんなぁ思てぇ…」
アルコールが入って、ほんのり朱が刷かれた白いうなじ。
小草若はどきりとする。
「でぇ、今来たらぁ、役に立たんてぇ、にいさんが言うとんなるからぁ…」
ふぇぇ、と今にも泣き出さんばかりの。
「がんばりますさけぇ、見捨てんとってください!」
零れ落ちそうなそんな瞳で、上目遣いで、必死で見つめられ…。
あかんあかんあかん!あかんて、そんな顔したら、顔したらああああ!
「喜代美ちゃん!!!」
思わず抱きしめてまうがな。
「ふぇ?」
発せられた、すっとんきょうな声。
「にいさん?気分でも、悪いんですかぁ~?」

ああ、これや。まるで本気にしてへん。
小草若はがっくりしつつも、そんな若狭がかわいらしくて仕方がない。
ぱっとからだを離し、にっこり微笑む。
「ああ、ごめんごめん。俺は大丈夫や。底抜けに元気やで~!」
いつもどおりに言うと、やっと若狭も笑った。
酔うてるよな、俺。喜代美ちゃんも酔うてるよな。
じゃ、ちょっとくらいなら、…ええよな。

「役に立たん、なんて、思てへんよ。安心し」
「ほんまですかぁぁ?」
ぱっと、若狭の顔が輝いた。小草若はいーこいーこ、と頭を撫でる。
「ほんま、ほんま。せやから…」
そのまま酔った勢いでキスしてまお、と思った。
しかし、若狭のあきらかに酔った幸せそうな顔を見ていると、さすがに少々ためらわれ…。
小草若は、若狭の頬にそっと頬を近づける。
しばらく頬をすり寄せ合った後、顔を見合わせて、若狭がにっこり。
あ~、ほんま、可愛らしいなあ、もう。
「にいさん、気分悪くなくてよかったです~。お水ぅ、あげます!」
って、喜代美ちゃん、全然意味わかってへんやろ…。再びがっくり。

にこにこしたまま、若狭が手にしていたコップを小草若に差し出す。
手渡された小草若は、勢いでそれを飲み干し…はたと気がついた。
「き、喜代美ちゃん…これ…底抜けに…日本酒やがなあ…」
一気に飲み干したので、比例して一気に酔いが回る。
そのままへたへたと…て、あかん、いま座ったら絶対立たれへん。
しかし!そんなところを見られるわけにはいかない。気力を振り絞って、笑顔で若狭に言う。
「き、喜代美ちゃん…。う、烏龍茶な。冷蔵庫にあるから、四草に持ってってやり…」
俺はここでちょっと休んでるわ、と言うと、
底抜けに素直な若狭は、「小草若にいさんはやっぱり優しい」などと言いながら
コップを片手によろよろと居間へ戻っていった。

そんな若狭を見送り、へなへなと座り込みつつ、小草若はほんの少し後悔する。
いっそのこと、ちゃんとチューしとくんやったかなあ…。
…あかん、ほんまに立たれへんがな…。

21:徒然亭の初春はあけぼの-四草にいさんの場合。の巻
08/05/11 01:01:07 N63U+60Q
「四草にいさぁん、烏龍茶、置いときますねえぇ」
畳に転がったままの四草に若狭は声をかける。
「寝とんなるんかな…にいさぁん、うー・ろん・ちゃあ~」
寝せておけばいいものを、耳元でもう一度繰り返した。
がばっと四草が身を起こす。
「うわ!びっくりした!にいさん、起きとったんですかぁ~」
「…ねとったのを、おまえがおこしたんやろ」
むっつりと、四草が答えた。ちなみに嘘である。
直前に目を覚ましていたが、そのまま寝たふりをしていたのだ。
しかし、そうとは知らない若狭はわたわたと慌てる。
「す、すみません…。烏龍茶ぁ、持ってきたんでぇ、つい…」
慌てる若狭が見とうて寝たふりしとったなんて、我ながら意味がわからん。
ましてや、可愛らしい思うなんて、ますます意味わからん。
おまえのせいやて言うてやったら、慌てるだろうと算段したなんて。
自分自身に憮然としつつ、若狭から烏龍茶を受け取りごくりと飲んだ。
心なしか、頭が少しすっきりしたような気がする。

「にいさぁん、大丈夫ですかぁ…?」
若狭が心配そうに、四草の顔を覗き込みたずねた。
…おまえ無防備に顔近づけすぎやろ。
「四草にいさんはぁ、他のにいさんらぁと違て、お酒全然飲まれへんのでしょお…?
なんや、いつもの四草にぃさんやないみたいですぅ…」
「たいしたこと、あらへん」
いつもどおり、冷静に答えた。答えたはずだ。多分。
「だってぇ、しゃべりかたとかぁ、なんやいつもと違とんなるしぃ…それにぃ…」
だから、若狭。顔近づけすぎやっちゅーねん。
あんな、もし俺が小草若にいさんやったらとっくにキスしてるぞ。
などと考えつつ、目を眇めて若狭を見やる。
「それに、なんや」
とたんに、若狭がくすくすと笑い出す。
「にぃさあん、手ぇ離してくださいよぉ、くすぐったいですぅ~」
あかん。無意識に手を握っとったらしい。何をしてんねや、俺は。
と思うものの、なんとなく手を離すことができない。
ふんわりと薄桃色のすべらかな感触。ほのかにあたたかい。
若狭の潤んだ大きな目がこんなに近くにあって、手なんぞ握っていた日には…。

「但使主人能醉客,不知何處是他郷」
「はぁっ!?」
突然、中国語らしき言葉を発され、若狭は驚く。
「りはく、や。すきなだけおれにのませてくれたら、ここがどこやわからんようになる、
たびさきやのうて、おれのいばしょかとおもう…っちゅういみやな」
「李白ならぁ、せめてぇ、書き下し文で言うてくんなったらええのにぃ…」
その突っ込みも、とんちんかんやけどな。
「つまりな、わかさ」
引き寄せる。いっそこのまま抱きしめてしまおうか。抱きしめて、そして。
「おれもさけをのんで、そういうきぶんや、っちゅーこっちゃ」
「にいさぁん…ぜんっぜん言うとんなること、わかりませんさけぇ…」
その困った顔が愛らしい、と。四草は心底思う。
だからな、俺は今おまえを口説いとる、っちゅーことやねん。
と、言おうとした瞬間に。

「…にぃさぁん?また寝たんですかぁ…?なんや、やっぱりわからん…」
"そういう気分や、っちゅーこっちゃ"と言ってらしからぬ笑顔を見せた四草は
そのままぱたんと眠ってしまったのだった。
まさに、電池が切れたかのように。
若狭は首をかしげ、四草に手渡したコップの中身を飲んでみる。
「あれ…これ、もしかしてぇ、お酒入っとる?…ん、おいしぃ~」
無意識に四草に駄目押しをした若狭は、四草が一口しか飲んでいない烏龍ハイを飲み干した。

22:徒然亭の初春はあけぼの-草原にいさんの場合。の巻
08/05/11 01:01:58 N63U+60Q
「おお、わかちゃ…若狭。何してんねん」
「あ、草原にいさぁん、お帰りなさぁい~。酔っ払ったんで、風にあたろう思てぇ~」
ふらふらと千鳥足で歩く若狭。えへらえへらと幸せそうに草原に声をかける。
「あのぉにぃさんらぁ、草原にぃさんがぁお買い物に行ってる間にぃ~、
みぃんなつぶれちゃいましたぁ~」
にこにこと満面の笑み。こいつ、笑い上戸かいな。
「草々にいさんはぁ部屋に戻りなってぇ~。
小草若にぃさんはぁ台所でぇ、四草にぃさんは居間ですぅ~」
めいめい勝手につぶれとんのかい。
「そうか…全く、だらしゃの、しの、ないこっちゃなぁ~」
たたき起こして飲ませたる、などと不穏なことを考えつつ…
はたと世話焼きの血が目を覚ます。

「草々のこっちゃ、半袖着たまま寝とるやろ。
風邪引くとあかんから、毛布でも、きゃけ、かけといてやり」
「あ~そぉですねぇ~。さすが草原にいさんやぁ~」
にこにこしたまま若狭が言った。
「じゃあ~草々にいさんとこ行ってきますぅ~」
「うん、頼んだで」
と、言ったところに
「はにゃぁ?」
と言う妙な声とともに草原に突然重みがかかった。
若狭がバランスを崩して倒れ込んだのだ。

「あ~…あ…。にぃさんすみませぇん…」
と言いながら、若狭が顔をあげる。
どあっぷ。若狭の大きな瞳が草原の目の前にあった。
アルコールが入り、つややかに潤んだ目。ほんのり桜色に上気した頬。
こいつ…こうやって見ると、美形なんやなぁ。
草原は酔った頭でそんなことを考える。気ぃつかんかったな。
小草若が惚れるんもわかる…。ほんま、可愛らしなぁ…。
「草原にいさぁん…?」
そんなふうに考えると、普段はなんとも感じていない声まで甘やかに響いてくる。
うっとりと若狭の声に耳を傾けた。
「なんや、若狭…」
噛むことも忘れている。

と、はじけるように若狭が笑いだした。
「にいさぁん~、口が口が、タコみたいですぅ~」
は!?…しまった!
あんまり可愛く見えたので、チューの態勢に入ってしまったがな!!
「こ、これはやなぁ!」
あかん!なんとかごまかさなくては!
「こ、これは、ちゃこっ、"蛸芝居"の稽古、や!!」
…見え透いてますがな。しかし酔った若狭はほえぇ~と感心した様子。
「さすが草原にいさんですぅ~。私ぃ、にいさんの芝居噺大好きやぁ~。
今度"七段目"聞かせてくださいねぇ~」
「そ、そうか?じゃあ、まちゃ今度な」
「はいぃ~。じゃあ草々にいさんとこに行ってきますねぇ~」
「あ、わかちゃ…若狭。転ばんよう気ぃつけや」
はいぃ~ありがとうございますぅ~と言いながら、
若狭はふらりふらりと草々の部屋のほうへ歩いていった。

そんな若狭の後ろ姿を眺めながら、草原はひとり懺悔する。
すまん、緑ぃ…一瞬の気の迷いや…。ほ、ほんまやで。

23:徒然亭の初春はあけぼの-草々にいさんの場合。の巻
08/05/11 01:02:51 N63U+60Q
コンコン、と若狭は草々の部屋のドアをノックする。
…返事はない。
「寝とんなるんですかぁ、草々にいさーん、入りますよぉ~」
ドアを開け、中を見ると、草原が言ったとおりだった。
そこには、半袖のまま見事に机に突っ伏している草々の姿が。

「おぉい酒、これ一升二、三合あると思うねん…、これちょっとそっちなおしといて…
おっなんじゃい、酒持って来てくれたんかい…嬉しぃやないかぁ…」
ぶつぶつと「寄合酒」の1節などをつぶやいている。
草々にいさん、寝ぼけとんなる…。くすくすと若狭が笑う。

部屋の片隅に転がっている毛布を手に取り、そっと草々にかけた。
「…まことにありがたいこっちゃ…」
「ん?にぃさん、起きとんなるんですかぁ?」
かけられた感謝の言葉に、反射的に嬉しいと思ってしまう。
しかし、それが「寄合酒」の続きであることに気がつき…。

にぃさんは、ほんまにほんまに、落語が好きなんやなあ…。
それはそれで、嬉しくなる。
若狭はふふっと笑いながらそんな草々を見ていた。

ずっと、見ていたい。
落語を口ずさむ草々にいさんをずーっと。
できれば、ずっとずっと、こうやって、そばで。
それができたら、どんなに幸せやろ。

ううん。
今かて幸せや。さっきから、ずーっと幸せやぁ…。
酔った頭で考える。
なんでやろ?なんでこんなに幸せなんやろ?

はたと気がつく。
そっか。みんなが楽しそうやから、幸せなんや。
師匠も、小草若にいさんも、四草にいさんも、草原にいさんも。
そして、落語をずーっとつぶやいている草々にいさんも。
みぃんな幸せそうで楽しそうだから、だから、私も幸せなんや。
いいことに思い当たった自分が嬉しくて、若狭はくすくす笑う。

そうだ!もっといいこと思いついた。

「じゃあー、草々にいさんにもぉ、幸せのおすそ分けですぅ~」
そう言って若狭は、にこにこしながら、
夢心地に落語を紡ぎつづける草々の口元へ、そっと口付けた。

24:徒然亭の初春はあけぼの-戦い済んで日は昇り。の巻
08/05/11 01:03:26 N63U+60Q
翌朝。
誰も彼も、みごとに二日酔いを抱えている。

小草若は、がんがん痛む頭を抱えながら、一人ごちる。
「喜代美ちゃんにチューした夢見た…うひょひょひょひょ」

四草は、足元からぐらぐらしつつ、自問自答する。
「昨夜、女口説いた、よな…。けど…まさか…若狭を?」

草原は、重い胃をなだめながら、思い返す。
「なんや…若狭の前で"蛸芝居"をやったような気ぃが…。緑に謝った気ぃが…」

草々は、胸のむかつきを抑えながら、つぶやく。
「酔ってたとは言え"寄合酒"はまだまだやな…ところで、いつ毛布かけたんや?俺」

そして若狭は。全身二日酔いで、一人叫んでいた。
「うわあああああん!昨夜のこと、何にも覚えてへんのですぅ!
私、なんか変なことしませんでしたか?
絶対しとる…!!私のことやさけ、なんかしたに違いないんです…!
ねぇ、にいさんら、聞いとんなるんですか~!!」

こっそり一部始終を見ていた草若がひとりけろっとして
「おまえらは、ほんまにおもろいなぁ」
と笑っていたことは、誰一人気づいていなかったのだった…。


25:名無しさん@ピンキー
08/05/11 01:04:08 N63U+60Q
おしまいです。お粗末さまでした。ありがとうございました。

四草がつぶやいた漢詩ですが、本来艶っぽい意味には解釈されないです。
そこはご容赦くださいw
どうも四草には何かアイテムを絡めたくなるんだよな…。
自分の中では、花鳥(=㎡師匠か)風月の似合う男なんでw

こういう小ネタみたいな話ってほとんど書いことないので、いろいろごめん…。
タイトルもはじめてつけたしw
草々×若狭大好きなんですが、自分では書いたことなくて、
たまには草々にいさんLoveな若狭を書いてみようかな、と…。
草原にいさんDay元ネタのお話はかわいらしい小草若×喜代美だったのに
ぶち壊しのどたばたですみませんでした。

26:名無しさん@ピンキー
08/05/11 01:09:01 IQwuQ4SF
>>25
リアルタイム投下に立ち会えて感動です!
楽しく読ませて頂きました。素晴らしいの一言に尽きます。
師匠含め、全員のキャラがとてもしっかり表現されていて
ヤマもオチも小ネタもちゃんとあるのが見事でした。
また力作をお待ちしております!


27:名無しさん@ピンキー
08/05/11 07:42:41 UkvFV2ok
>>25
GJ!素晴らしい!
一門全員の描写が秀逸すぎます!
小草若×若狭、四草×若狭に、草々×若狭、草原×若狭まで網羅されてるとは。
密かに全部お見通しな師匠が美味しすぎます。
まるで幕の内弁当のような贅沢な作品、ありがとうございました。

28:名無しさん@ピンキー
08/05/11 08:12:04 bW5ck7PG
前スレ>>484ですが…
うわぁ!お待ちしておりました!最高GJです!!!ありがとうございます!
ちゅうか、自分の設定をこんな素敵作品に使っていただけたなんて感激。
みんなすごくそれぞれ“らしい”見事な酔いっぷり、堪能しました。
四草、漢詩で口説こうだなんて粋なオトコ…つぶれてるけどwタコ草原兄さんワロスw
草々ラブの若狭も全編通してめっちゃ可愛らしかったっす。惚れるのもわかる…。
またの投下を楽しみにお待ちしておりますね。

29:名無しさん@ピンキー
08/05/11 08:22:55 7dbBQr7l
おもろい、おもろい!

30:名無しさん@ピンキー
08/05/11 11:09:05 pD+q2N0L
若狭かわええ~!!
それぞれがそれぞれらしくて、おもろかった。

31:名無しさん@ピンキー
08/05/11 11:51:00 Tg5T08U2
>>25
うわあああ~、若狭かわえええ~!!
漢詩を呟く四草と、「せめて書き下し文で」という若狭なんて、
・・・うひゃひゃひゃひゃ、何て知的な雰囲気なんでしょ。
そして、緑LOVEで、ちょっとしたことで緑さんに謝る草原兄さんいい!
タイトルおよびサブタイトルもええですね。
ぶんぎゃく・・・文学の香りが漂うております。

32:名無しさん@ピンキー
08/05/11 16:37:56 Tg5T08U2
調査、と言いますか・・・質問?
四草×小四草の母親(子供を連れて来た女性とは別人設定)はアリでせうか(汗)。

未来編をぽちぽち書いとりますうちに、小四草母の設定に行き当たりまして。
いや、小四草母が、あそこにぽいっと置いていった女性だと設定するには、
小四草の性格がストレートになり過ぎてしまいましたのですが・・・。

未来編の抵抗が皆さん少ないみたいですが、逆に小四草母については
抵抗ある方が多いかも??と思いましたので、質問してみました。

33:名無しさん@ピンキー
08/05/11 17:14:45 pD+q2N0L
>>32
きつい言い方かもしれないけど、そういう調査とかって嫌がる人多いと思うよ。
ここ、自サイトじゃないんだから。

シュチュが特殊だと思うなら、投下前レスにそう書き込めばいい。
「未来編、小四草母は連れてきた女性とは別人設定です。」みたいな感じで。
そうすれば嫌な人は読まんだろうし、そうでない人は読むだろう。

最近いろいろゆるいけど、これはさすがにちょっと…と思ったんでつい書いてしまった。
雰囲気悪くしてごめん。
>>32さんも気を悪くしたら申し訳ないが
あからさまな誘い受けは嫌われるとオモ。
とくに書き手さんは文章で個人特定されやすいわけだから気をつけた方がいいと思うよ。

34:名無しさん@ピンキー
08/05/11 17:36:36 Tg5T08U2
>>33
いや、むしろ感謝です。
自サイトじゃないから逆に聞いたほうがいいんかな?と思っただけで。
そのまま普通に行ってしまって良いなら、それでいきます。

使い方わかってなくて申し訳ない。

35:名無しさん@ピンキー
08/05/11 19:20:35 HTgr9z3D
言い方キツイけどさ、そんなだから四ヲタはKYとかウザイって言われる
んだって事に気付いてくれ…orz

でも、正直オリキャラがカプの片割れとして幅利かせる話って、こういう
場に投稿するには相応しくないような気がする。
自己投影の夢小説と同類の匂いがするし、嫌ならスルーとは言うものの、
言葉悪いが余りにも本編にないオナニー特殊設定が出てくるようなら、
読む人選ぶし自サイトかそれこそ同人誌でやってくれと思う。

原作根拠パロが好きなんで、未来編も申し訳ないがスルーした人間です。
こういう住人もいるって事で、ここは何でもマンセーされる場所だと思われる
と辛い。
職人さんには感謝してるし勿論尊敬もしてるけど、GJレスが住人の総意
じゃないという事も忘れないで欲しいんだ…

36:名無しさん@ピンキー
08/05/11 21:29:01 llgtRmJp
>>35
あとから「スルーした人間です」宣言は本当の意味でスルーにならない。

注意書きがあればなんでもいい。

37:名無しさん@ピンキー
08/05/11 21:37:54 Tg5T08U2
いや、ほんと、雰囲気悪くして申し訳ない。
確かに、脱線話が幅利かせすぎた。
気をつけるようにします。

38:名無しさん@ピンキー
08/05/11 21:55:00 wR9Z8FY3
>>37
いや、よくぞ言ってくれたと思った

39:38
08/05/11 22:05:43 wR9Z8FY3
>>38>>35へのレスだった
失礼

40:長くてすいません
08/05/11 23:00:34 XQ+URLhi
>>35>>38
逆に好きだっていう読み手もいるわけで、嫌な人はお願いだからスルーしてほしい

>>32氏は「調査」「みんなに好評」が地雷だったね
それがなければ突っ込まれなかったかも
ついでに。その設定は>>32氏ファンでも微妙
しかし、未来編もスルーしようかと思ったらハマったし、期待も少しある
もちろん未来編は引き続きよろしく
もし自サイト持つならついていきますよ!FIGHT!!

41:名無しさん@ピンキー
08/05/11 23:08:19 Tg5T08U2
>>40
解説ありがとうです。
なるほど、そんなつもりじゃなかったと言うのは言い訳ですが、
改めて見ると態度デカいな自分。
言葉には気をつけないかんと改めて思いました。
ではでは、首洗って出直してきます。

42:名無しさん@ピンキー
08/05/12 01:03:24 yRoQeZVv
>>35
四ヲタ は余計。
四草ネタを投下してくれる人たちに失礼だよ。

43:名無しさん@ピンキー
08/05/12 01:45:30 2ckQly7o
よーしお父さん空気読まずに小ネタ投下しちゃうぞ。
しかも>>41さんの前スレ作品思いっきりパクリ気味なんだぜ。
苦手なかたはスルー推奨なんだぜ。
放送終了数ヶ月後設定。エロなし。オチなし。ギャグ系。

44:悩める草々師匠1
08/05/12 01:47:25 2ckQly7o
上方落語界の中堅、徒然亭草々に待望の第一子が誕生してはや数ヶ月。
妻の元女流落語家、徒然亭若狭は高座を引退して一門のおかみさん兼母親と、
公私ともに草々を支えてくれている。
弟子も増え、落語家としても男としても順風満帆。かに思えるのだが。

ひぐらし亭。
上方落語界悲願の常打ち小屋は今日も多くの客で賑わっている。

本日の演目『草々一門会』を無事終えた草々は、弟子たちの待つ楽屋へ赴く。
(……?)
いつもなら騒がしい楽屋がやけに静かだ。妙に思った草々がそっと覗いてみると。
赤ん坊に乳を与えている妻と、それを固唾を飲んで見ている弟子三人。
…割れるよーに頭が痛い。
人前で乳おっぽり出すな!
男はな、授乳するおっぱいにかて欲情するもんなんやぞ!
「おい」
「あ、お疲れ様です草々兄さん」
「お、お、お疲れ様です師匠!」
慌てて居住いを正す弟子どもを一睨みしてから、取り敢えずわかってない妻に注意する。
「楽屋では乳やるなて言うたやろ」
「ほやかて急にこの子がぐずり出すさけぇ、小草々くんもおっぱいあげた方がええですよ言いなって…」
こいつら後で説教や。
「ええから二階あがっとけ」
「はいはい」

妻を二階へ追い立てながら、楽屋からのヒソヒソ話に聞き耳を立てる。
「…おかみさんて幾つでしたっけ」
「師匠の一回り下で、今年で34やったかな?」
「僕らとあんま変わらんですよね」
「童顔ですし」
「…全然アリですよね」
説教、一時間延長に決定。

弟子どもを叱りとばして妻子の待つ二階へ向かうと、今度はそこから知った声が聞こえて来た。
「こいつも母親らしい母親知らんからな…俺と一緒で」
「…四草兄さん」
寝入った息子を連れて上がり込んでいる弟弟子。こいつもか。
「若狭、よかったらおまえが母親がわりになってくれんか」
「ええですよ、こんなわたしでよかったら」
なに息子使って人の嫁口説いてんねん
こらこらこらどさくさに紛れて肩を抱くな肩を!
「若狭、今度子どもらと四人で遊園地……」
すぱこーん
四草のデコに草々の扇子がクリーンヒット。
デコをおさえて呻く弟弟子からさっさと若狭を奪還する。
「わあ、桃太郎侍みたいですね」
「居たんですか草々兄さん」
呑気に拍手する妻とチッと舌打ちする四草。
聞こえてるっちゅうねん
「居たんですかやないやろ」
「…減るもんじゃあるまいし」
「やかましい」

45:悩める草々師匠2
08/05/12 01:49:47 2ckQly7o
「…なんや今頃気ぃついたんか」
最近、どうも妻に言い寄る男が多い気がする。
そんな草々の悩みをそう一刀両断してのけたのは、
十代の頃から馴染みの弟弟子にて今は四代目草若。
「しかも最近て。そんなん昔っからやろ」
本気で気ぃついてへんかったんかと半ば呆れ顔で諭される。
「待て、昔からって…四草もか?」
「そや」
「あいつ女とっかえひっかえしてたやないか」
「よう考えてみ。若狭にだけは特別優しゅうしてたやろ」
「それは妹弟子として…」
「ちゃうやろアレは」
言われてみれば確かに
「じゃあ、柳眉や尊建が落語会にしょっちゅう誘ってたんも…」
「そうや」
「あいつら女の噺家おると花があるて」
「それもあったかも知れへんけど、大概若狭連れ出す方便やな」
クソッよくもあいつらぬけぬけと
思い出し怒りする草々をやれやれとなだめる四代目。
「ま、これから気ぃつければええやろ…ちぃっと遅すぎるけどな」

そこへ。
「あら、今日はお揃いなんですね」
「エーコちゃん!」
「こらスッポンサー様にちゃんは無いやろちゃんは」
「ええですよエーコで」
ひぐらし亭のスポンサー、若狭塗り箸製作所の女社長が艶やかに微笑んでいた。

「さすがわたしのビーコやわ」
一部始終を聞き終えた和田社長は誇らしげに頷いている。
…わたしの?
「思い出すなぁ…初めて会うた小浜の海岸」
疑惑の視線を向ける草々をよそに彼女は遠い目をしていた。
「おばさんの長いスカート一生懸命引きずって歩いて…転んでしもて」
うっとりと頬を染める女社長。
「わたしの手を取って見上げたあの顔…ほんまに可愛いかったんよ」
もしもーし?エーコさーん?

「ところで今度ビーコと旅行行こて思てんですけど」
回想シーンから帰ってきた和田社長は唐突に言い放った。
「は?旅行?」
「ええ、前に草々さんらが話してくれなった喜六と清八みたいに」
ふたりっきり、水入らずで
「ビーコも子育てとおかみさん業で疲れてるし」
とうとうと続けるスポンサー様。
「今まで草々さんが独り占めしてたんやもの」
ちょっとくらい返してくれてもええと違います?

にっこり
有無を言わせぬ極上の微笑。

かつての憧れ、清楚可憐なお嬢さんは強な女傑となっていた。

最大にして最強の伏兵が、まさか自分の元カノだったとは。
打ちのめされる草々。

がんばれ僕らの草々師匠。傷は深いぞ。


終。

46:名無しさん@ピンキー
08/05/12 01:59:44 Ka5UoJcq
イイね!

47:名無しさん@ピンキー
08/05/12 02:49:52 /9ZFBLm2
>>43
お父さんwwwGJwww

>>7
底抜けにナイスバディー、に大ウケ
四草はチャンスをモノにできたのか!?
>>25
漢詩のくだりにみごとにやられた…
色男にふさわしい口説き文句!

48:名無しさん@ピンキー
08/05/12 06:57:33 Zp8MPwNC
>>43
エーコ落ち!!爆笑した!!
放送当時、A子→草々よりA子→B子だと言われていたの思い出しました。
スポンサー様、強いw

49:名無しさん@ピンキー
08/05/12 07:07:23 HyoQDySy
>>43
朝っぱらから笑わせて頂きました。
乳のくだりでコーヒー吹いた。

50:名無しさん@ピンキー
08/05/12 08:12:19 wPGL1B8y
お父さんナイス!
草々が弟子たちにどんな説教したのか気になるwww

51:名無しさん@ピンキー
08/05/12 10:16:12 5tyFTOZq
エーコいいなぁ
社長になってからは多少強引な手を使っても
不自然じゃないしw

52:名無しさん@ピンキー
08/05/12 10:38:11 BzEgIC4D
お父さん、GJ!まさにぐっどじょぶです!話もおもしろかった~。
でこひっぱたかれる四草と「桃太郎侍みたい」の若狭にやられました…。
でも一番は「私のビーコ」だな~。
まさに「エーコ!エーコ!エーコ!…(ry」

53:名無しさん@ピンキー
08/05/12 11:13:09 gtxVpL+8
お父さん、ナイスな作品GJです!
艶っぽい長屋のおかみさんが出てくる落語(そんなのあったか知らんが)の
世界そのものだわ

54:名無しさん@ピンキー
08/05/12 12:54:36 m2+AWeiJ
生まれた子が男の子で草々と母乳の取り合いをする話が読みたいです。

若狭「らっく~ん♪チュッ」
落太郎「あ~☆」
草々「若狭オレにも・・・」

55:名無しさん@ピンキー
08/05/12 23:05:00 XnT2H82B
>45
GJ!
ABの旅行記も読みたいです。
二人で草々師匠のことをネタにして笑ってそうだw

56:名無しさん@ピンキー
08/05/13 00:58:39 A4furFPl
じゃあお母さんも投下しちゃっていいかしら!?
いいわよね、お父さん?


4兄弟で某ラジオ局の某有名深夜生番組に出演した設定
93年のB子入門後~94年あたり、小草若のタレント業絶頂時
さわりだけ、エロなし
お好みでない方はスルー願います

57:徒然亭一門のオールナイトニッポ○
08/05/13 01:02:12 A4furFPl
小草:そーこーぬーけーにっ!お待たせしましたがなぁ!徒然亭小草若でございます~
(パチパチパチ←拍手)
誰やねんこいつ?って方はいないとは思いますがっ!念のため自己紹介をいたします
本業は落語家です
(ざわざわ)
上方、つまりは大阪の徒然亭草若一門の3番弟子であります
(ざわざわ)
後ろやかましいっちゅうねん!
…えー、普段は某ラジオ局で3時間のスー!パー!生!ワイド!をやってるんで、
聴いたことある方もいらっしゃるとは思いますが、
今夜は一夜限りの特別企画!
徒然亭一門のオールナイトニッ○ンと題して、ここニッ○ン放送に我が一門が勢揃いしました!
では、一人ひとことずつどうぞっ!
草原:え~こんばんは。徒然亭草若一門の筆頭弟子、草原でございます
今夜は最後まで頑張りますので、よろしくお願いします
小草:あれ、兄さん噛んでませんやん?
草原:さっき1杯引っ掛けてきてん。さぁっ!ノリノリでいきまっせ~!
小草:…えー、嫌な予感がしてきましたが、気を取り直して次!
草々:…どうも。2番弟子の草々です(憮然)
小草:…おいおい、もっと愛想よくやらんかいな!
ほんますんません、こいつ生粋の落語バカでして、落語以外ではつまらん男なんですわ
草々:バカとはなんやねん!おまえにだけは言われたないわ!
だいたいなぁ!こんな番組よりもっと落語の修行を…
小草:こんな番組ってなんやねん!
四草:(エコーを効かせて)徒然亭四草とゆかいな仲間たちのオールナイトニ○ポン。
(チャンチャチャン♪×4チャラッチャ♪チャッチャラチャ♪チャッチャチャ♪)
小草:音切って!音切って!…なんで「徒然亭四草とゆかいな仲間たち」やねん!
…え~、しょっぱなからお聞き苦しくてえらいすんません、ホラ、四草、あいさつせぇ
四草:こんなアホな兄弟子たちを持って苦労の耐えない、徒然亭四草です
(バシッ←頭叩く音)
小草:それでは、気を取り直して!
(再びエコー)徒然亭一門のオールナイト○ッポン!
(チャンチャチャン♪×4チャラッチャ♪チャッチャラチャ♪チャッチャチャ♪…)
小草:いやー始まりました!なんや感慨深いね、やっぱこの曲やね
ホンマは我が一門の師匠と末っ子の妹弟子もおるんですが、
年寄りとひよっ子なんで、お留守番してもろてます
草々:誰が年寄りやねん!
草原:まぁまぁ草々、ほんのジョークやろ
四草:そうですよ、師匠は年寄りなんかやありませんよ、まだまだ現役ですよ
こないだかて、若狭の…
小草:わーわー!何を言いだすねん!いくら深夜かて言うていいことと悪いことがあるやろ!
草々:そうや!弟子の恥は師匠の恥や!
小草:まぁでもせっかく深夜なので、普段なかなか言えんことも言いたいなぁ…うひょひょひょひょ!!
草々:ふ、普段言えんことってなんやねん?
四草:そりゃあ、決まってるでしょ?草々兄さんが一番苦手な分野ですよ
草原:これ緑も聴いとるし、颯太も録音して明日聴くってはりきっとったから、そのー、頼むで、ホンマ!
小草:えー、うろたえる草原兄さんはほかしといて、底抜けに進みたいと思います!
「徒然亭一門のオールナイ○ニッポン」
この番組は…以上、各社の協賛で東京有○町のニッ○ン放送をキーステーション
に全国3x局ネットでお送りしま~す!
(パチパチパチ)

曲の時代考証が面倒なのでとりあえずここで終わり。

58:名無しさん@ピンキー
08/05/13 01:08:39 hyLQdBDV
>>57
えぇー!ここで終わりとは殺生な(´・ω・`)
草々兄さんの一番苦手な分野の小草若talkがききたいです・・・・・

59:名無しさん@ピンキー
08/05/13 13:14:31 FWkW7+HC
>>56
お母さん続きは?続きは?
師匠が若狭になにしたのか気になる気になる気になる

60:名無しさん@ピンキー
08/05/13 13:27:55 FWkW7+HC
>>56お母さんがラジオの続き聞かせてくれるまでの場つなぎに、ちょっと投下失礼します。
若狭結婚後の一門→若狭。旅行ネタで微エロ少々くらい。

61:一門→若狭 城崎にて1
08/05/13 13:29:18 FWkW7+HC
ここへ来るのはいつ以来だろう。
鄙びた温泉宿に足を踏み入れた草原は、懐かしむように往事を振り返った。
徒然亭一門がこの旅館を定宿にしていたのは今は昔。
師匠の妻―おかみさんがいた頃は、一門の慰安旅行でよくこの地を訪れていた。
まだ幼い面影を残したままの草々に小草若。
今よりもっとひねた青二才だった四草。
喧しくも陽気な弟子たちを、いつも陽光の暖かさで見守っていてくれたひと。
彼女がこの世を去り、灯が消えたように一門が壊れてしまってから。
(もう、二度と来ることはない思てたんやけどな)

「待ってください!草原兄さん!」
「なにモタモタしてるんや、さき行くで」
今、再び灯を取り戻した一門の中心にいるのは、ちっちゃな身体いっぱいに荷物を抱えてるこの妹弟子。
自暴自棄になって落語界からほぼ追放状態にあった師匠の元へ転がり込み、
一度は落語と訣別した自分たちを強引に巻込んで一門を復活させてしまった不思議な娘。
もっとも、本人にその自覚は無いようだが。

以前、師匠がしていた話を思い出す。
―あの娘が現れたのはな、ちょうど庭で愛宕山の一節をかけてた時だったんや
亡くなった妻の愛した花の前で。
妻との思い出の噺をかけていた時。
―今から思えば、俺たちを心配した志保があの娘を連れてきてくれたんやないかな

徒然亭の新しい陽光は、おかみさんと違って鈍くさくて騒がしくてハラハラさせられ通しなのだけど。
自分たちはこの娘を愛している。
師匠も、草々も、小草若も、四草も。

それが、この旅行にちょっとした影を落とすことになるとは、夢にも思っていなかったのだけれど。

62:一門→若狭 城崎にて2
08/05/13 13:29:54 FWkW7+HC
「うわー!広いですねー!」
久し振りに通された懐かしい部屋。
荷物を降ろした末っ子から歓声があがる。
「若狭は初めてやったな。ここ来るの」
「そういや、おまえがうちに来てからは無かったからな」
「なんや一門の事でバタバタしてて旅行なんてようせんかったもんな」
「え!じゃあ兄さんらはいつもこんなとこに旅行しとったんですか!?」
ずるいずるい!と騒ぐ若狭を、彼女の兄弟子兼夫の草々が嗜める。
「若狭。おまえに意地悪してたとちゃうねんぞ。そんだけうちの一門が大変やったゆうことや」
草々に続けて草若が静かに話しかける。
「そうやな。その一番大変な時期にあんたはよう頑張ってくれた…今回は若狭の慰労旅行やで」
「草々兄さん…師匠…」
見回すと皆が優しく自分を見ている。感きわまって目が潤む若狭。
「そうと決まったらさっそく風呂や。若狭、ちゃんと人数分タオル出しとけよ」
「ええええ!私の慰労やなかったんですか!?」
「それはそれ、これはこれや」


この宿の名物は岩山を背にした天然の露天風呂である。
もともと、芸能に携わる者の利用客が多い予約制の宿の上、時期もずらしてあったため
風呂は徒然亭一門の貸切り状態であった。
岩場を挟んで男女に別れている露天風呂。

「わかさー、そっちはどーやー!」
「すごいですー!ほんまに貸切りみたいですー!」
岩の向こうの女湯から若狭のはしゃいだ声が響く。
「なんや、ほんまに若狭ひとりか。覗き甲斐ないな」
「覗く気だったんですか師匠」
「やめてください。覗きで捕まってまた落語できひんようになったらシャレなりません」
「冗談や冗談」

陽光のなか湯煙が立ち上ぼり、遠くで山鳥の鳴き声が聞こえる。
その静寂を破ったのは女湯からの悲鳴。
「ひゃあああ!!」
「若狭どうした!」
ざば、と湯から上がる草々と。
「さるさるさるさる!」
叫びながら岩場から現れる若狭。
「…さる?」
「出たんです!さるが!」
駆け寄る若狭を抱き留めた草々が女湯を覗き込むと、確かに猿が二匹湯に浸かっている。
「ここは山近いからな、時々猿や鹿が降りて来るんや。ゆうてへんかったか?」
「聞いてません!」
そら悪かったな、引っ掻かれたりせんかったか?と問う夫と大丈夫ですと答える妻。
「しかし風呂場でご注進やなんて、まるで坂本龍馬のおりょうやな」
草々は呆れたように呟いた。
「ああ『三枚起請』の」

63:一門→若狭 城崎にて3
08/05/13 13:30:36 FWkW7+HC
「アホ、『三枚起請』は同じ幕末の志士でも高杉晋作や。ええか、この話は都都逸の三千世界の烏を殺し…」
とうとうと解説を始める落語バカ一代とそれをうっとりと聞き入る妻。
仲良きことは美しきかな。夫婦としては微笑ましいことこの上ないのだが。
「…あー草々に若狭。勉強熱心なのもええんやけどな、ちょっとは周り考え?」
「そや。兄弟弟子ゆうても俺ら健全な男子やからな」
はっと二人の世界から帰った眼前には、湯の中から見上げる八つの目。
改めて互いの姿を見やるご両人。
辛うじてバスタオルを巻き付けてはいるが、豊満な胸が半分露出しほぼ足の付根まで見えている若狭。
草々に至っては筋骨隆々とした全身まるまる素っ裸である。

「っきゃああああああ!!!」
「っうわああああああ!!!」
…いや、今更かい。
湯の中の全員が胸中で突っ込む。

「も、申し訳ありません師匠!」
ざば、と湯に戻った草々にカラカラと笑いかける草若。
「俺もまだまだ枯れたわけやないからな。いや眼福、眼福」
「し、師匠!?」
「一応言っとくけどな、おまえのことちゃうで?」
「…わかってます」


脱衣所を出ると母屋まで連なる石畳が陽光に濡れている。
ここから見える山間の遠景が美しい。
亡き妻と初めて訪れた頃から変わらぬ景色。
感慨に耽る草若の耳に一人息子の声が飛び込んで来た。
振り向くと、どうやら先の一件で妹弟子をからかっているらしい。
「草々は果報者やな~毎日若狭の底抜けにグラマーな体拝めるんやからな~」
「もう小草若兄さん!」
「草々に飽きたらいつでも言ってな~待ってるで」

からかわれて真っ赤になった妹弟子を見送ると、その顔から道化の笑みがすっと消える。
小草若は前髪をひとつかき上げ、溜息を漏らす。代わりに浮かぶのは老成した横顔。
「…草々に飽きたら、か」
首を振り己を嘲笑う。
先刻の光景を思い返す。
岩場の影から現れた妹弟子の悩ましい姿態。
薄紅色に染まる透き通るような肌に、我知らず心騒いだというのに。
夫の草々は無反応だった。
ただひたすら彼女の身だけを案じていた。
(つまり、それだけ)
見慣れているという訳だ。あの柔肌を。
夫だけに見せる無防備な姿。信頼しきった目。
夫婦の絆をまざまざと見せつけられた瞼を閉じる。
「…敵わんな、ほんまに」

草若は息子の男の横顔を初めて見た気がした。
かける言葉を知らなかった。

64:一門→若狭 城崎にて4
08/05/13 13:31:18 FWkW7+HC
「だいだいおまえが猿程度で騒ぐからやな」
「だって猿ですよ猿!」
露天風呂の一件は夕食時になっても夫婦の間で尾を引いていたらしい。
「痴話げんかも大概にせえ。この万年新婚夫婦が」
「草原兄さんとこには負けますけどね」
「失礼な。うちの緑はあんなはしたない真似せえへん」

いつもの喧しい弟子たちの中に、いつもの息子の顔を見た草若はそっと胸を撫で下ろした。
当の若狭は何も知らずにぶちぶちと八寸をつついている。
(こうして見てると、まるでほんまの兄妹やのにな)
「まあ、ええやないか。嫌なことは酒飲んでぱあーっと晴らすが一番や!」
「あ!師匠もう徳利あけてもたんですか」
「あんま飲み過ぎんでくださいよ師匠」

料理もあらかた片付き、そろそろ二番風呂へ行こうかという頃。
師匠の教えを律義に守ったのか、本当にぱあーっと酒を飲んでしまった若狭は早々に潰れていた。
「全くこんなとこまで来て師匠煩わせるやなんて…」
草々はむにゃむにゃと動く若狭の口元をぴんと指で弾く。
「こら、そない苛めるもんやない。疲れてたんやろ、ほっといたり」
「でも師匠、せっかくの温泉が」
「大事な娘独りにはできんやろ。猿に引っ掻かれでもしたら大変や」
若狭を次の間に寝かせると、弟子たちを送り出した草若は徳利を抱え直す。
「…ほんまに手ぇのかかる子どもらや」
なあ?
今はいない、かつてのひとへそう語りかけて、草若はひとつ杯をあげた。


次の間の襖が音も無くそろりと引かれたのは、それから半刻ほど経った時分だろうか。

布団にくるまる若狭にすっと男の影が近付く。
その穏やかな寝顔を覗き込むと、清潔な唇にかかる髪をそっと払う。
指先に触れる、柔らかなそこから離れ難いのだろうか。
起こさぬよう細心の注意を払いながら、そろそろと輪郭をなぞってゆく。
つんとした上唇から、ふっくらとまるい下唇へ。
「ぅんんっ…」
身動ぐ彼女から指を離そうとしたその時。

ちゅく。
桃色の唇が男の指を捕らえ。
嬰児のように吸い付き、小さな口でしゃぶり始めた。
固ったように動かない男。

ちゅく…ちゅく…ちゅぱ

そのあどけない仕草を見つめる目に熱が籠る。
ふらふらと吸い寄せられるように屈み込む影。
柔らかな唇に男のそれが重なろうとした瞬間。
「…はい、そこまで」

草若の声にビクリと振り向いたそこには。
無様に狼狽える四番弟子の姿があった。

65:一門→若狭 城崎にて5
08/05/13 13:32:15 FWkW7+HC
「…いてはったんですか、師匠」
くうっと鳴る喉から嗄れた声が漏れ出る。
「ちょっと飲み過ぎたみたいでな。この年になると近くなって困る」
ちょうど入れ違いになったんやな、と言う草若から視線を逸らす。
「また、どこの猿が引っ掻きに来たか思うた」
布団の中の若狭は泰然自若の体で寝続けている。
その様に苦笑を漏らした草若は四草に向き直った。
「わかってると思うけどな一応、人妻やから」
「わかってます」
自身に言い聞かせるように、師の言葉を遮る。
「気まぐれです。ただの」
吐いた科白とは裏腹に苦痛に歪むその頬を草若は見つめていた。
屈折した生い立ちの為か、女と見れば利用するばかりのこの男が
なぜか妹弟子を憎からず思っていたことは知っていた。
しかし。
「もうちょっと色恋には器用な男や思てたんやけどな」

「…僕は寄ってくる女しか相手にせえへん主義です」
若狭の唇に含まれていた人差し指に爪を食い込ませる。
甘い感触を押し殺すかの如く。

算段の平兵衛になりきれない、この不器用な崇徳院の熊五郎を草若は優しく撫でた。
「…行こか。もうすぐ草々らが帰ってくるで」


「すいません師匠、若狭見てもらって」
風呂から戻った草々は草若に頭を下げると、眠る若狭の頭をひとつ小突いた。
「だから苛めたるなって」

この娘の想い人を草若は見つめる。彼女に触れることをただひとり許された男。
多分知る由もないだろう。
弟たちが己の妻にどんなに焦がれているのか。そして、どれほどその想いを耐えているのか。
それでいい。と草若は思う。
もし知れば、愚直だが優しいこの男は迷う。妻を愛することを躊躇うだろう。

「三千世界の烏を殺し…」
昼間、草々が語っていた都都逸を口ずさむ。
彼は知っているだろうか。
それがどれほど業の深い恋の歌かを。

遊女が男と取り交わす念書を熊野の社に届ける朱烏。
ひとつの念書が破られるたび三羽の烏が死ぬという。
女に言い寄る全ての男をことごとく破り捨て、三千世界の烏を殺し尽くした後。
手にした女とすなる朝寝。
その甘美な優越は毒と諸刃の剣だ。

「若狭、おい若狭」
先刻、忍んだ男と同じように若狭のそばへ屈み込んだ草々は、その額をぺちぺちとはたいている。
図体の割に幼い性格をしたこの男は、どうやら妻に放っておかれて寂しかったようだ。
「草々、若狭を大事にしたり」
草若はそっと襖を閉めた。

66:一門→若狭 城崎にて6
08/05/13 13:33:13 FWkW7+HC
「なんとなく、そやないか思てました」
眠れぬまま月明りの中庭へ出た草若に、同じく酔い冷ましに出ていた筆頭弟子はそう答えた。

あの時。
男たちの前に半裸の若狭が現れた時。
いつもなら陽気な笑い声を立てる筈の三男も、皮肉のひとつも言う筈の四男も無言で。
ただ彼女の火照る柔肌に魅入られていた。
湯の下で、駆け寄ろうとする足を、抱き留めようと欲する腕を、
彼らが必死に耐えていたことなど草々は知らない。

「あいつらには、気の毒な旅行になってしもたな」
ここへ来なければ、想い人の肌を目にすることも、その想いを一層募らせることも無かったろうに。
父親としての草若は息子たちの叶わぬ恋慕を憐れに思う。
だが、噺家の師匠としては。

「ま、手に入らぬ女を恋うもまた甘露…ええ芸の肥やしになるやろ」
そうであって欲しいと願う。彼らと、何も知らぬ彼らの想われ人のためにも。
「その相手が妹弟子ゆうのが、なんやショボい気ぃしますけど」
師の心中を推し量り、草原が混ぜ返した。


いつしか月は西へ傾き、遠くで山鳥の鳴き声が聞こえる。
「ああ、明けの烏が鳴いてるな」
夜の底から空が白み始める。
またいつもと同じ朝がくるだろう。





〈了〉



以上です。
微エロが指なめ程度で本当にすいません。
ベタに三千世界ネタがやりたかっただけです。
そして城崎在住のかたいらしたら誠に申し訳ありません。
SS内に書いたことはすべて嘘山ですんで…

67:名無しさん@ピンキー
08/05/13 17:49:19 oq3ALDxs
GJです!
高杉晋作のぞくっとするほど色っぽい都都逸を存分に生かされたSS,
堪能いたしました。微エロとおっしゃるが、雰囲気がまとわりつくように
エロいですって!
ちなみに城崎はおなじみの土地なんですが…猿温泉にでるのかは知りませんw

68:名無しさん@ピンキー
08/05/13 22:08:35 0POpv43D
>>66
おお~素晴らしい作品ありがとうございます!
師匠の弟子それぞれに対する想いがいいですねぇ。
非日常の場面設定も雰囲気あって良かったです。
GJでした!

69:名無しさん@ピンキー
08/05/13 23:15:48 UAntf+kT
うわぁ~雰囲気スゴイGJ!!
指を噛むとか、レトロな官能がまたちりとての世界に合いますねー

漢詩で口説いたり都都逸を持ち出したり、
なにげに小技が効いた作品が多くてクオリティ高い!

70:名無しさん@ピンキー
08/05/14 00:10:10 tPP3Q3G8
>>66
うわぁ、また雰囲気がいいですね~。
夫である草々と、叶わぬ恋をしている小草若・四草の差がええですね。
気付いていないからこそ、平和な青木夫妻が、それはそれで切ない。

えー、コネタ投下です。
最終回直後、男児誕生の青木一家(草々・若狭・落太郎)。
54さんのアイディアお借りしました。

71:終わりなき戦いの始まり 1
08/05/14 00:12:47 tPP3Q3G8
嫁の出産に立ち会うのを理由に大阪を離れていた草々が、久々に天狗座を訪れた。
袖から高座を見て、その後仲間に会うために楽屋に行く。
「ああ、草々。おめでとうさん」
にこにこと迎えてくれたのは、今日の落語会を主催した柳眉。
「男の子やったんやてな。よかったな、跡継ぎできて」
「柳眉~!!」
熱烈な握手を求めた瞬間、
「今だけや」
「何や鼻毛。何でお前がおんねん」
横から口出ししてきた尊建を見て、草々は顔をしかめる。
「そら、三国志の主催の会やから見に来たんや、お前と同じで。
 で、俺は忠告したってんねん。嬉しいのは今だけやぞ~、て。
 そのうち、いくらお前でも、嫁さんと子供に仲間外れされて、
 家ん中でベソかいて座るいうことなるんじゃ」
「何言うてんねん、鼻毛!」
尊建を睨み付けたところ、隣で柳眉が腕を組んでうんうんと頷いている。
「そやなぁ…お母ちゃん言うのは、子供のことで、じき頭いっぱいになるしなぁ。
 ダンナのことなんか、構てられんようになるもんや」
ずびっ。
柳眉の言葉が終わるか終わらないかのうちに、部屋の隅から奇妙な音がした。
「「「そ…草原兄さん…?」」」
三国志の視線の先には、本日の「柳眉の会」ゲストの徒然亭草原の背中。
「…思い出しとうないわ、あの日々は」
草原は、こちらに背を向けたまま、語り始める。
「求めても、求めても、途中で邪魔が入る日々。
 生まれるまでがお留守やったから、久々に…思うのが男の常やろ。
 それが、途中で颯太泣き出したら、あっち行ってまうし」
「いや、そやけど、一緒にあやしたらええやないですか、かわいい息子やし」
「そら、颯太はかわいい。けどな、赤ん坊いうのは、父親ってもんを
 認識するのは、母親よりずーっと後や。そやから…
 2人が仲睦まじいベタベタしとる間、俺はぽつんと1人残された。
 向こうで2人が笑顔でおるのに、俺を見つめてくれるのは、
 空に浮かんだまあるいお月さんだけや。ボーン…」
「「…はめもの入っとる…」」
尊建と柳眉がぽかんとした顔をした。
「あの頃を思い出すと、今でも寂しいなるわ。
 『まーくん』言うて、俺だけに笑顔を向けてくれたこともあったな、思たら…
 緑…緑…みどりぃ~!!」
またや。
草々はがっくりうなだれる。
「そやから…ええか、草々、よう覚えとけ」
草原は、がしっと草々の両肩を掴んだ。
「父親と息子はな、母親を巡る永遠のライバルやねん!」

72:終わりなき戦いの始まり 2
08/05/14 00:13:26 tPP3Q3G8
「あー、そらあるかもしれへんな」
兄弟子の迫力に恐れをなした草々は、帰りに弟弟子2人の家に立ち寄った。
産後の休みを実家で取っている嫁が帰って来る前に、傾向と対策を準備せねば。
だが、天狗座での出来事を話すと、小草若改め四代目草若は、あっさりと納得してしまう。
「俺かて親父のことは尊敬してたけど、やっぱりお母ちゃんが気になった。
 小さい頃なんか、よう夫婦喧嘩しとったしな。
 そういう時は、親父に代わってお母ちゃん守ったらなあかん、なんて思たわ。
 せやのにお母ちゃんが親父庇たりした時は…何や悔しかったなぁ」
やっぱり、息子はライバルになるんや。
草々はがっくりと肩を落とす。
「…息子とライバルにならん方法、あるにはありますけどね」
先日引き取ったばかりの息子と平兵衛に餌をやっていた四草が振り返った。
「ほんまか?!」
「若狭外して父子家庭になったらええんですよ」
うちみたいに。
言い終わると、四草は息子の頭を撫でた。
「いや、それ全然根本的な解決なっとらんやろ」
四代目草若が四草の頭を小突いた。
「そやけど、争う対象がないんやから、ライバルになりようがないでしょ」
「俺はな、息子と仲良うする方法を聞いてんのとちゃうねん!
 どないしたら若狭と久し振りに…その…」
四草の回答にいらだったものの、根本的な問題を口に出来ず、もじもじする。
そういうところはちっとも変わらへんなぁ、と思いながら四代目草若は口を開いた。
「一緒に、世話するようにしたらどないや?
 若狭が赤ん坊の世話しに行ったら、ついてって一緒に世話するんや」
「一緒に世話したところで、解決にはなりませんけどね」
今度は四草が横槍を入れた。
「子守しながら、そういうこと出来へんでしょ」
言われてみれば…と四代目草若が再び考え込む。
「…ま、3日で結婚した草々兄さんらしく、勢いで行ったらええんとちゃいますか」
「そやな、『底抜けにおかえりー!』って若狭に突進したらええわ」
おう、と答えると、草々はぶるりと武者震いをした。

73:終わりなき戦いの始まり 3
08/05/14 00:14:15 tPP3Q3G8
数日後。

「草々兄さん、ただいま帰りましたー」
赤ん坊を抱いた若狭が、にこにこと自宅に入って来た。
顔を合わすのすら、随分と久し振りな気がする。
ましてや、肌を重ねるのなんて、もう随分とご無沙汰である。
「おかえり、若狭」
「あ、待ってください」
ぎゅっとしてがしっと頭を撫でて…という草々の思惑は、あっさりと阻まれた」
「まずは、この子寝かさんと。
 草々兄さんと私が寄ったら、つぶれてしまうでぇ」
あ、そうか、そやな。
いきなり息子に勝利を奪われ、草々が肩を落としているなど知る由もない
若狭は、内弟子連中を呼び、子供用布団を出すように指示をする。
「そんなん俺がやるで」
「草々兄さんは座っててください、疲れとんなるやろし」
(一緒に世話も出来てへん…!)
座布団の上で、さらにがっくりとする草々だった。
「ほら、ものすごい疲れとんなるやないですか」
若狭は満足気に草々を残し、弟子共を引き連れて立ち去った。

74:終わりなき戦いの始まり 4
08/05/14 00:14:55 tPP3Q3G8
夜。
息子は隣の部屋で、ぐっすりと眠っている。
今がチャンスとばかり、草々は若狭に手を伸ばした。
しかし。
「ん…草々兄さん…ごめんなさい…私、眠うて…」
若狭の反応は鈍い。
「そやかて、もう長いことしとらんやろ?」
草々は、夢心地で寄りかかる若狭から、そっと寝間着を取り払って行く。
「う…ん…」
甘い吐息が若狭の口から漏れた。

その時。

「ぇ…ん、うぇ…ん、ひっく、わぁーん!!」
隣の部屋から、突如として泣き声がした。
とたんに若狭の目がぱちっと開き、草々の手を振り払って飛んで行く。
「ど、どないしたんや!」
さすがに草々も驚き、急いで若狭の後を追う。
「お腹空いたみたいやでぇ」
胸がはだけているのを、これ幸いとばかりに、若狭は赤子に乳を含ませる。
さっきまで苦労して辿り着こうとしていた房を、あっさりと手と口にした赤ん坊。
いや、確かに息子はかわいい、かわいいのだが…。

(俺が親父やて、わかってへんな)

草原の語りが蘇る。
息子が認識しているのは、母親の若狭だけ。
若狭は若狭で、今は息子が1番。
草々としては取り残された気分である。
久々に、若狭の肌に口付けるのを楽しみにしていたのに…

「どねしたんですか、草々兄さん。この子の口元ばっかり見て」
若狭が首をかしげてこちらを見た。
「いやその…ええなぁ、思て」
草々は決まり悪げに笑った。
その様子を見ていた若狭は、ちょっと考え込んでいたが、
やがて息子がぐずるのをやめたのに気付き、再び布団に戻した。
「あ、草々兄さん、ちょっと待ってて下さいね」
終わったんやったら、早く一緒に寝床に入って欲しいのだが。
草々の意志とは無関係に、若狭はしばらく戻って来ない。
やがて、若狭は手にコップを手にやって来た。
「はい、草々兄さん」
差し出して、嫁はにっこりする。
「珍しいから飲んでみたくなったんですね~。
 ほやさけ、忙しい時に赤ちゃんのために哺乳瓶に置いとくみたいに、
 ちょっと搾って来ましたさけ、飲んでみてください
 大人が飲んでおいしいかは、わからんのですけど」
ちゃうわボケ!!!誰が母乳を羨ましい言うてん!!!
赤ん坊が泣き叫んでは困るので我慢したが、
草々はこれまでになく、がっくりと崩れ落ちたのだった。



<終わり>



母子の絆って強いよね、な話でした。

75:名無しさん@ピンキー
08/05/14 00:51:41 MXSiQNz6
>>70
GJ!!!
夜中なのに腹抱えて大笑いしましたよ!
久々に三国志登場で嬉しい…と思ったら、草原兄さんてばそんな過去が。
息子ラブラブ四草と四代目の傾向と対策案がナイス。
「武者ぶるい」はもしかして風林火山ネタですか?
最後まで天然な若狭ママかわゆい。がんばれ負けんな草々パパ。
楽しい話ありがとうございました。

76:名無しさん@ピンキー
08/05/14 03:02:11 zH/WZgez
>>66
GJ!!

ふと考えたんだけどこの温泉旅行、部屋割りはどうなってるんだろう?
師匠は別部屋として、若狭は女性だし一人部屋を貰っているのか、

師匠
草々若狭夫婦
兄弟子

みたいな感じなのか。
若狭を一人別部屋にしておくとそれはそれで危険wだが
夫婦セットでも他の兄弟子には苦痛だなww


>>70
GJ!!
タイトルが秀逸ですな、草々これから一生戦い続けるのかww


77:名無しさん@ピンキー
08/05/14 08:59:38 v0RFWc3q
>>76
そんな温泉宿での夫婦の一夜と、ウヒョヒョヒョになる師匠+他の弟子たちの
話も良いですなwww

78:名無しさん@ピンキー
08/05/14 11:24:03 UQws04SP
>>66
艶な雰囲気でよかったです~!都々逸詳しくないけど、いいですよね。
下世話なだけじゃなくて凄みのある色っぽさがあって…。
三千世界~は、とくにカコイイw
恋に焦がれて鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が身を焦がす
とかも、すごくちりとてぽいなあ~と思っておりましたw

>>70
かわいいかわいい!すごくおもしろかったです!
キャラの感じもすごくよかった。草原兄さんサイコー!
そしてやっぱり若狭はかわええ。草々、負けずにがんばれ~!

79:名無しさん@ピンキー
08/05/14 23:19:07 x/Nij5IV
ほのぼの穏やかな空気掻き乱します。
四草×若狭の続きを書こうと思ったのですが
その前といい、草々の扱いがアレすぎたのでw
結婚後数年の草々×若狭エロ投下します。
ヤってるだけの話です…

80:熱を孕む 1
08/05/14 23:19:27 x/Nij5IV
しばらく互いに多忙だったために、オフの今日は久々にゆっくりできるはずだった。
だが、無理を重ねると体調を崩すことのある若狭は風邪を拾ってきてしまっていた。
「草々兄さん……」
だいぶ治まったが、咳のために掠れてしまった声が背中に届く。
振り返ると、まだ少しだるそうな様子の若狭が布団に横たわったまま見上げていた。
「まだ熱あるんやから寝とかんとあかんぞ」
「もう眠たないです」
頭が働いていないのか、舌足らず気味に応える若狭の枕元にしゃがみ込む。
頬が赤く、目元も眠たげにとろんとしている妻は、いつもより幾分幼く見えた。
そのくせ、少し荒い呼吸がやけに誘うようで。
「ええから寝とけって」
しばらくご無沙汰であることを思い出してしまい、取り繕うようにぎこちない手つきで布団を掛け直してやる。
「じゃあ、草々兄さんも一緒に寝てください」
「はあ?」
「ええやないですかぁ。今日はなんも仕事ないんやし」
相変わらず紅潮した顔のまま、にこにこと若狭が言った。
そしてご丁寧に身体をずらして布団にスペースまで空けた。
「お前、誘っとんのか」
「……そうや言うたら、草々兄さんどないしますか」
ふふ、と掛け布団にもぐって顔を隠すような仕草の若狭が、たまらなく可愛かった。
風邪の女房に惑わされる阿呆な亭主。
創作落語の一節のようだと思いつつも、手を伸ばさずにはいられない。
「若狭」
頬をそっと撫でると、ひんやりした指先が気持ち良いのか、目を閉じてされるがままになっている。
その口元は優しげな笑みを浮かべて。
……マズイ。
妻のささやかな表情ひとつで暴走しそうになる自分に気付いた。
これではまるで思春期の中学生である。
少々情けなさを感じつつ、草々はにじり寄った。
どうにも我慢できそうになかった。
「ほんまにええんか」
言外に問うと、若狭は薄く目を開けた。
そして相変わらず微笑のまま、黙って頷いた。
無骨な手でパジャマを脱がしていく。
そうしてあらわになった、自分よりも高い体温の身体をそっと抱きしめた。
微熱を孕む肌が吸いつくように重なり合った。
人の温もりがもたらす心地よさに深く息を吐き出す。
若狭を初めて抱いたとき、世の男がなぜ女に溺れるのかが判った気がしたものだ。
自分より小さく、柔らかい身体は腕の中にぴったりと納まる。
どこにも隙間がないように抱きしめ合って生まれる温もりは、ずっと求めていたものだった。
若狭の身体の、そのなにもかもが快楽を呼び覚ました。
「草々兄さん、あったかい……」
自分の胸に額をすり寄せるような仕草で、若狭が呟いた。
安心しきった子どもの寝顔のようなあどけない表情を、じっと見つめた。
結婚してだいぶ経っても、出会った頃の十代の面影が感じられる顔。
腕をほどくと、両手でそっと頬を包む。
重ねた唇を開いて、互いの舌を絡め合う。
何度繰り返しても物足りなく感じてしまうのは、自分だけではなかった。

81:熱を孕む 2
08/05/14 23:20:08 x/Nij5IV
「―若狭」
たっぷり時間をかけてから顔を離すと、自分を求める若狭の目に捕われた。
「草々兄さん……」
唇から首筋、鎖骨から胸へ。
目の前に横たわる身体を余すところなく口づけていく。
触れたことのない箇所などどこにもないくらい知り尽くしているのに、不思議と飽きることはなかった。
豊かな膨らみを手に収め、やや荒っぽく揉みしだいてその感触を楽しんでいたとき。
「草々兄さん……わたしも……したい」
「はっ?」
もぞもぞと動いて身体を起こした若狭は、布団の上にぺたんと座った。
つられて草々も向き合う体勢になると、下半身にすっと若狭の手が伸びてきた。
いつになく積極的な妻に狼狽する。
「わ、若狭? どないしたんや」
「いっつも草々兄さんにやってもらうばっかりやでぇ……」
俯きながら小さな声でそう言うと、おもむろに顔を伏せた。
新婚時代に何度かやらせたことはあったが、最近全くなかった行為に、全身が跳ねるように反応してしまった。
……やっぱり情けない。
既に形を変え始めている自身の一部が濡れた粘膜に包まれている。
なんとなく直視できずに、視線を空にさまよわせた。
生温い舌が、張り出した先端から根元まで往復している。
その間にも柔らかい袋を揉まれて、思わず声が洩れそうになった。
「草々兄さんの、おっきくなった……」
裏側の筋を舐めあげてから、若狭が言った。
たまらずに下を向くと、上目遣いで自分を見る女がいた。
濡れた唇の端から唾液が一筋流れている。
幼さと淫靡さが同居する貌。
自分の妻はこんな女だっただろうか―
草々が目を見開いて固まっているのがおかしいとでもいうように、若狭が笑む。
それから、一気に咥え込んで前後にスライドを始めた。
性交によく似た感覚に、射精感が増す。
「わ、若狭、あかん」
自分ひとりで達くのはまずいと思いながらも、久々の口淫は刺激が強すぎた。
「……ええですよ、イって」
「あかん、若狭―若狭っ……」
気付いたら、若狭の頭を掴んで腰を押し付けていた。
溶けるような快感が脳天を突き抜けた。
ふと我に返ると、軽く咳込む妻の姿。
またしても慌てふためく。

82:熱を孕む 3
08/05/14 23:20:42 x/Nij5IV
ティッシュ箱を引き寄せて口元を拭ってやると、もごもごと何かを言った。
「なんや」
「草々兄さんが気持ちようなってくれて、良かった……」
「……若狭」
「今度はわたしのことも、気持ちようして下さい」
ふふ、と笑う妻を、まばたきも忘れて見つめる。
―これは熱のせいだ。
普段の夜の生活は慎ましやかなもので、兄弟弟子らにいらぬ心配―というより揶揄されてるというのに。
高座で響くよく通る声と同じ口から発せられた言葉に思えず、崩れた体勢のまま若狭を見つめた。
「お、お前……もしかして余計に熱、上がったんやないか」
取り繕うように額を突き合わせて、自分より高いことを確認する。
触れ合ってしまえば、やはり自制などできず。
また、唇を重ねた。
今しがた口内に放った残滓を分け合うように、互いの舌を絡ませる。
そのまま若狭の身体を押し倒すと、丸みを帯びた腰へと指を這わせた。
下生えを掻き分け、触れた突起を強く擦った。
重ねた唇の隙間から洩れる喘ぎに気を良くして、執拗に続ける。
たっぷり反応を楽しんでから、さらに下の方へと指を動かした。
じゅぷ、と濡れた音がする。
「あっ……草々兄さんっ……いやぁ」
「嫌やないやろ、気持ちええ言うてみ」
「……あぁっ―そこ……」
熱く濡れる襞へ、指をぐっと挿入した。
絡みつくように吸い付く粘膜を引っかくように刺激し、指を増やしていく。
「そ、草々兄さん……はぁっ……」
「ええか?」
「あっ、もう……早く―」
ぎゅっと首に腕を回されて、若狭が耳元で囁く。
「草々兄さんが欲しい……」
そう、すべて熱のせい。
こんな一言で下半身が露骨に反応する自分に、またしても情けなくなる。
一方で、想い合って添った恋女房が、既に新婚と呼べない現在も変わらずに求めてくることの喜びも隠し切れない。
「若狭」
じりじりと己を挿入しながら、何度も呼んだ。
しばらくぶりの行為のためか、多少の抵抗がありながらも、なんとか最後まで収まった。
「草々兄さん……」
きゅっと締め付けるような感覚に、思わず息を詰めた。
「動いて平気か?」
言葉もなく、若狭は頷いた。
息を乱し、薄く唇を開いたまま、潤んだ目で自分を見上げている。
欠片ほど残っていた理性も見事に吹っ飛んだ。
音がするほど激しく腰を打ち付ける。
「もう……いやぁ―んっ……」
足をぐっと持ち上げて、密着度を高めた。
「……そこ、やっ……あっ―」
かすれ気味の高い声で喘ぐ若狭の身体をぐっと押さえて。
強く目を閉じて、精を放った。
それは、自慰などでは得られない強烈な絶頂感。
若狭の声が途絶えたかと思うと、その身体が軽く痙攣を起こしたように震えた。
ずるりと性器を抜いて身体を起こそうとすると、二の腕を掴まれた。
焦点の合わない目で見上げる若狭が、ひどく官能的な表情を浮かべている。
快楽を極めた女の顔だった。
「まだ離れんといてください……」
若狭は小さな声で、舌足らずに言った。
とても愛おしくて仕方なくて、ただその頬をそっと撫でた。
身体を拭ってやろうとしたが、若狭はきゅっと草々の腕を握って離さない。
そんな妻の姿に笑みを浮かべつつ、まだしばらく余韻を楽しむことにした。
抱き寄せると、汗ばんでいる肌がぴったりと合わさって。
―熱はまだ、引かない。

83:名無しさん@ピンキー
08/05/14 23:22:07 x/Nij5IV
以上です。
某金星人wがキャンディー舐める表情がやたら色気あったので
妄想に走った結果だったりするのですが
なんかやっぱり色々スイマセンorz

84:名無しさん@ピンキー
08/05/15 01:56:14 PFHx/10H
>>83
GJ!!!!
ヤッてるだけの話と言いつつも、エロだけではなく凄く雰囲気ある秀逸な
作品で萌えました!
勿論エロ的にも満足ですが!
草々若狭夫婦には、やっぱりラブラブが似合いますね。
エロでもどこか甘酸っぱくて余裕ない感じで、ホント可愛いカプだなあと
思います。

85:名無しさん@ピンキー
08/05/15 02:24:42 I9INr+XQ
GJ!!!
何か、この二人はエロい事やってても、かわいいと言うか、さわやかと言うか…
エロだけと言いながら愛の感じられる作品でした。ご馳走様!

86:名無しさん@ピンキー
08/05/15 04:07:14 Bgnd7ZDr
>>83
あの某金星人は確かに無駄にエロ可愛かったですね~w
草々、小草若、四草にもあんなコスプレを見せてやってほしいw

87:名無しさん@ピンキー
08/05/15 15:51:45 aQAnIHeN
キャンディー舐める某金星人って誰・・・

88:名無しさん@ピンキー
08/05/15 17:48:01 6DeFp73v
URLリンク(uproda.2ch-library.com)
URLリンク(uproda.2ch-library.com)

舐める某金星人
本当はドラマ中の舐めっぷりのがエロいんだが


89:名無しさん@ピンキー
08/05/15 17:52:25 aQAnIHeN
>>88
ありが㌧
そういうことかw

90:名無しさん@ピンキー
08/05/15 17:56:01 qn3k8lA2
>>83
GJ!
エロエロなのに、かわいい…。
なにせ若狭がかわいいし、若狭にめろめろな草々もいい感じでした。

>>87
某金星人はキミハンですw むっちゃ、かわいかったww

で、そんな後にエロなしですみませんが…。
若狭内弟子修行中の、四草→若狭。
ベタな少女漫画風味wな上に、四草が女々しい感じになっちまいましたので、
お嫌な方はスルーしてください。

>>78の「恋に焦がれて鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が身を焦がす」からの妄想です。

91:夕蛍1
08/05/15 17:58:55 qn3k8lA2
夏の夕暮れ時、川べりの道を歩いていた。
夕陽が水面に映り、あたりは橙色の光に満ちている。
「綺麗ですねえ~…ちょっと電車に乗っただけで、こんな景色が見られるやなんて」
若狭が言った。
「今日はほんまに楽しかったです!あ、いえ、勉強になりました!」
ありがとうございました!と、はしゃいだ声で言う若狭に、
「そうか」
とだけ答え、四草は振り返りもせず歩き続ける。

四草が続けている、とある寺での落語会。
季節ごとのペースで、続けてきた。
勉強会という形だから非常にこじんまりしたものだが
はじめは数人だった客も少しずつ増えてきている。
毎回楽しみに顔を出し、わざわざ寝床寄席にまで足を運んでくれる客もいた。

…今度は妹弟子さんも一緒にやらはったら、どうですやろ。
寝床寄席に行かはった檀家さんが、妹弟子さんもおもろかったでぇ、
女の落語家さんも悪ないなぁ、て言わはって。

寺の住職からの提案を草若に告げると、草若は一二もなく頷いた。
「ああ、それはええな。若狭にももう少し場数踏ませたいと思っとったんや。
あっこなら、ようわかってくれてはるし、そりゃありがたいこっちゃ」
お~い若狭~と、草若は声を張る。ぱたぱたと走ってくる音。
「はいっ!師匠」
現れた妹弟子は、だぼだぼのTシャツにジーンズ姿。
その色気のない姿に、なぜこんなに引き付けられるのか。
師に悟られないよう、四草はそっと目をそらす。
草若が事情を説明すると、若狭はきらきらと目を輝かせた。
きっちりと手をついて、頭を下げる。
「ありがとうございます、師匠」
それから四草に向き直り、もう一度。
「四草にいさん、ありがとうございます。私、がんばりますさけ」
頭を上げ、まっすぐ自分に注がれる視線。
その大きな目に自分がどれだけ焦がれているか、この娘は知らない。
どれほど欲しているのか、気付いてすらいない。
だから、四草はいつもどおりに答える。
「恥かかん程度に、適当にな」
と。

92:夕蛍2
08/05/15 18:00:28 qn3k8lA2
寄席は盛況だった。
若狭も無事に一席こなしてみせたし、四草はいつもどおりの二席。
いつもの値段で三席見られて得やったからなぁ、などと軽口を叩きつつ、
常連の一人は、祝儀までくれた。

その帰り道。
「こうやって自分で落語会をさせてくれるとこ、探さなあかんのですね」
この寺での寄席が、四草が自分で探してきた場だということを聞き、若狭は驚いた。
若手の落語家が上がれる高座はそう多くはない。
しかし勉強のためにも高座の数をこなしたい、と考える若手は多い。
よって、自ら落語会をできるようにはたらきかけをするのだ。
愛想がいいとはいえないこの兄弟子がそういった地道な努力をしていたことを、
若狭は今まで知らなかった。
わざわざおまえに言うことでもないやろ、と四草はこともなげに言うが…。
「私にできるんやろか…」
若狭がため息をつく。
夕陽が横顔を照らし、白いうなじに橙色が映った。
「まぁおまえの場合は、年季明けてからの話やな」
そもそも年季が明けへんかもしれん、とよけいな一言を付け加える。
四草はそのうなじから目を離せない自分を嘲笑った。
よけいな一言を加えたのは、そのせいか。
四草のことばを聞き、若狭はぷぅっと頬を膨らませる。
その表情は、まるで子どものようなのに。
「他のにいさんらぁも、こねして自分で落語やらはる場所探さはったんですか?
…草々にいさんなんかも」
その名を口に出すと、とたんに女の表情になる。
恋焦がれているのを隠そうともしない瞳。
いや、本人は隠しているつもりなのだろう、しかし。
丸わかりや。
胸の奥でひそかに嫉妬する自分をわらう。
この娘が恋うている男は、一人だけだとわかっているのに。
「昔は自分で探してたみたいやな。けど、最近は呼ばれることのほうが多いやろ。
草原にいさんは、かなりマメにやってはる。小草若にいさんは…ま、テレビっ子やからな」
テレビっ子って。と若狭が笑う。屈託のない笑顔。
あえて草々の名前を繰り返さなかった自分は、やはり嫉妬しているのだと思う。

若狭は知らない。
四草が、自分にどんなに焦がれているのかを。
若狭は知らない。
四草の夢の中で、痴態をさらされている自分を。
浅ましいと思いながらも、思う女を自分のものにする夢を見るのは。
仕方のないことなのかもしれない。女々しいことなのかもしれない。
いっそ抱いてしまえば、他の女たちと同じように顔のない女になるのか。
そうできないから、恋をしているような錯覚を覚えるのか。
もし今、ここで触れることができれば―
行き場のない思いを、四草は持て余す。

93:夕蛍3
08/05/15 18:03:50 qn3k8lA2
歩いているうちに、橙色の光は夕闇に溶けてなくなった。
日の落ちた川べりにほの白く光っているのは、大阪の街中より少し多めの星と。
「あ、四草にいさん!蛍!」
ほのかな光を身に纏う蛍。
ふわり、ふわりと、どこからともなく。

手で蛍を掬い上げようとする妹弟子の姿を、四草は眺めていた。
「ほら、つかまえましたよ」
どこか誇らしげに、すっと目の前に差し出された手。
その手はまるで、蛍をとどめる籠のよう。
掌中の蛍は自分の姿か。とらわれた、自分。
若狭がそんな四草の思いに気がつくことはないのだろう。
それでええ、と四草は思う。

「おまえは蝉やな。徒然亭にぴったりや」
「はい?」
なんでセミ?若狭が首をかしげ、きょとんと見返した。
「セミみたいにうるさい、いうことですか?」
また、ぷぅっと頬を膨らませた。
もう、にいさんはいっつもそんなことばっかり…と
勝手に決め付けて拗ねるその声を、可愛らしいと思う自分は。
―たいがい、病気やな。

蛍を包み込んだ小さな手から、淡い光が漏れ出している。
四草は、その光を見つめた。
一人の男への一途な思いを、熱い視線で奏で続けている。
そう、真夏に鳴き続ける蝉の如くに。
この愛らしい蝉の恋は叶うのだろう。
それは予感ではなく、確信だった。
だから、俺は蛍にもなれへん。
光を灯すどころかひたすらに闇にまぎれて、この身を焦がす。
ただ、手の内にとらわれて。

「綺麗ですね、蛍」
「せやな。…けど、連れて帰るわけにもいかんやろ」
離したれ。そう言うと、若狭はちょっと顔に影を落とす。
「…そうですね。このまま電車には乗れんですもんね。かわいそうやし」
名残惜しそうに、手を見つめた。漏れ出す光が夕闇に溶ける。
せつなそうにも見える横顔に、四草は吸い寄せられ…目をそらす。
離してやってくれ、その蛍を。おまえの手の中から。

若狭が手を開くと、蛍がゆらりゆらりと宙に舞う。
他の蛍にまぎれ、再び光りだした。
手放したことをふと後悔するかのように、若狭は蛍を見つめている。

「行くぞ」
蛍のように、解き放たれる日が来るのだろうか。
解き放たれることは、幸せなのだろうか。
光ることすらできない自分なのに。
かすかな胸の痛みを押し込めつつ、四草は歩き出した。
待ってくださいよ~と、追ってくる妹弟子の姿を背に感じながら。



おしまいです。お粗末さまでした。ありがとうございました。
お寺での落語会ってあこがれなんですが、
行ったことないんで適当です…。ご容赦ください。
それと、口に出してないなら若狭が蛍じゃね?というつっこみは無しでよろしくお願いします。
書いてから気がついた…orz


94:名無しさん@ピンキー
08/05/15 20:00:59 XKX4veZo
>>90
なんて、たまらなく美しくて、哀しくて、優しい物語なんだろう。
忍ぶ恋を秘めた男の純情が胸に迫ってきました。
夕暮れの橙、少女の白い肌、淡い蛍の光と情景の色彩がまた目に焼き付くようで。
ごめんなさい、伝えたい感想の万分の一も書き表せない自分がもどかしい。
GJです!

95:名無しさん@ピンキー
08/05/15 22:34:51 5jZvoF2G
>光を灯すどころかひたすらに闇にまぎれて、この身を焦がす。
>ただ、手の内にとらわれて。

このくだりが胸に刺さりました。切ないけれど優しい余韻を感じる
描写が素敵です。


96:83
08/05/15 23:24:52 iNPxPwlg
しょーもない話でしたがGJ本当にありがとうございました!
某金星人ネタに反応して下さって嬉しかったですw
しかし自分はやっぱりエロ向いてないことに改めて気付きました…

>>90
おおおおお、素晴らしすぎて言葉が出てこないです。
映画を観ているような感覚で読ませて頂きました。
情景の描写がリアルで美しいです。
次作も期待しております~!

97:名無しさん@ピンキー
08/05/16 01:39:36 cbJnlz8m
>>90
なんと幻想的な…
ベタだけど井上陽水の「少年時代」が似合いそうな情景だなーと思いました。

しかし四草の本名、忍ってホントにキャラを的確に表わしてるなぁ。
鳴かぬ蛍が身を焦がす……切ないのぉ

98:名無しさん@ピンキー
08/05/16 03:23:46 4AyW7Uqb
四草は『しのぶ恋』の結果、産まれた子だから
『忍』って名付けられたのかなって自分は思ってた。
息子にはめちゃくちゃ言われてるけどw、
意外と古典に素養のあるお母さんなのかも。

崇徳院さんの歌のある百人一首にも、『しのぶ恋』の歌がいくつかあるよね。
しのぶれど 色にでにけりわが恋は ものや思ふと ひとの問ふまで…とか、
たまの緒よ たえなばたえね わが恋は しのぶることの 弱りもぞする…とか。

このスレの喜代美←四草のシチュ読んでると、
名前の通り、『しのぶ恋』が似合う男なんだなぁ…とぞ思ふw

99:名無しさん@ピンキー
08/05/16 03:37:43 4AyW7Uqb
たまの緒よ たえなばたえね ながらへば…だったorz


100:名無しさん@ピンキー
08/05/17 01:29:59 DIOzKk9A
『忍』と名づけたのは、母親ではなくて父親かも、と想像したら、めちゃくちゃ不憫になってしまった。
父が名前を付けてくれるというので、ウキウキしていた母。
なのに、貰ったた名前が『忍』。
おまえら一生影に隠れとれ!と暗示されたショックで、母は男をとっかえひっかえの生活に・・・

ごめん、スレ違いだな。

101:名無しさん@ピンキー
08/05/17 13:29:52 Y0UuqS77
>>98
ロマンチストさんなんですね~
自分は「心に刃を持つ」ってのがしっくり来るな。

激しくスレチで悪いけど
グリーンウッドの忍先輩と被る…

102:名無しさん@ピンキー
08/05/18 02:19:12 XWPJLPSG
木曽山×清海思いついたので書いてみました。
エロちょっとだけです。

A子が可哀相な話なので、
A子好きな方はすみません。先に謝ります。

103:木曽山×清海
08/05/18 02:23:42 XWPJLPSG
「話が違うじゃない」
ドアを閉めてすぐ清海は責めた。
日が暮れるまでB子は帰って来ないと言った、木曽山を。
「おそらく、って言いましたよ僕は。高座終わっても師匠たちとお茶するかもしれん、て」
悪びれることもなく、冷蔵庫から缶ビールを取り出し喉を鳴らして飲みながら
木曽山は答える。
「僕が嘘ついたみたいな言い方せんといて下さい。」

草々と二人きりで会いたかった。
自分が東京でどんな生活をしていたかという事も、
父に会社の存続のための結婚を迫られていることも話したかった。
そして、

出来ることならもう一度、無垢な心で恋していた、
あなたとやり直したいと思っていると…伝えたかった。

もちろんすぐに答えが出ると期待してはいなかったけれど、
せめて昨日は、またどこかで、徒然亭ではない場所で、
B子には知られずに二人きりで逢う約束を取り付けられたらと、ただそれだけを思っていた。
しかし現実は、想定の範囲外の悲惨な結果。
かつての恋人だった草々には、“稽古があるから、じゃあ。”と、
あまりにもあっさりと久しぶりの逢瀬―(清海にとっては、)―を断ち切られ、
咄嗟に、すがるようにあの《景清》を聞かせて欲しいと頼み…

「あなたが夜まで帰らないって言ったのを信じて私は草々さんに―!」
清海の必死な訴えにも何処吹く風の面持ち。木曽山は他人事のようにつぶやく。
「ふーん…景清ってお2人にとって特別な落語だったんですか?」
頼んだ挙句の果ては、木曽山から聞きだした時間よりもずっとずっと早く
現実に草々の妻であるB子が帰ってきて、
彼女の熟練した三味線を見せ付けられながら、思い出の《景清》を聞かせられるという
二重苦どころか三重苦まで背負った辛い訪問になってしまった。
切実な願いとは程遠く。

怒りと屈辱を収める場所が見つからないで立ち尽くす清海の横を通って、
ビールもう一本いただきますね、と木曽山はまた冷蔵庫を開けた。


104:木曽山×清海2
08/05/18 02:26:32 XWPJLPSG
小さな子供のように勢いをつけて、ベッドに腰掛ける。
スレンダーな木曽山の身体がギシギシという音と共に細かく弾む。
プシュッと音を立ててまた缶を開けて一口飲むと、上目使いに清海を見た。
「もっと有効な情報が欲しかったら、それなりの事をして下さい。
それなりの対価はありますよ。」

まさかとは思っていたが、破門されるかもしれない時に自分に声をかける
このしたたかな青年のこと─
こんな予感は当たってしまう、人生の非情さのようなものを清海はまた感じてしまい、
「それで泊まってる場所を教えろって言ったのね」
軽蔑のまなざしでキッとせいいっぱい睨み付けた。

「嫌ならええですよ。」視線を窓へ移しその向こうに広がる大阪の街を眺めながら、
あくまでも他人事のように木曽山が言う。
「でも、僕は師匠とおかみさんのことなら何でも知ってます。
24時間生活を共にしてるんやし、あなたの知りたいこと、なんでも教えてあげられる。」
ふふっと鼻で笑って畳み込むように続ける。
「それに僕は、口が堅い。」

しばしの静寂がせまい部屋を占領する。
木曽山がグビグビとビールを飲む音だけが聞こえる。

なるほど、汚い取引はするが、保身についてはそれ以上に注意深いタイプだと思う。
ずるい人間だからこそ、今以上に草々に嫌われることはしゃべらないだろう。
今の清海にとってはそのことだけが一つの救いであり、希望のように思われた。
背に腹は代えられない。

窓の方を向くと、夕陽が赤々と燃えていた。
狭い部屋に差し込む光の眩しさが自分を蔑んでいるようだ。

「どうしたらいいの」
覚悟を決めて清海は聞く。
「取引、成立ですね。」
清海とは反対に、晴れ晴れとした声と表情で木曽山が答えた。

「じゃあ、まず。服脱いで下さい。」

105:木曽山×清海3
08/05/18 02:29:11 XWPJLPSG
カーテンを閉めると、その前で言われたとおり服を脱ぎ始めた。
Tシャツもジーンズも脱ぎ、さすがに下着を取る時は少しためらったが、
は、と一つあきらめのため息をつくと、
ブラジャーもショーツも、スルスルと外していった。

「こっちに来て、僕のズボン下ろしてくれますか」
スタスタと近寄り、ベッドに座る木曽山の前に膝をつく。
ベルトを外しファスナーを下ろし、腰のあたりに手をかけ引きずり下ろす。
その後一瞬動きが止まったが、すかさず木曽山がもちろんそれも、と言い
パンツも脱がせた。

「…フェラチオして下さい」

目の前にあるそれを手に取り、清海は舌を這わせた。
幾つも年下の男にいいように扱われて、愛撫してやろうなどという気持ちは
少しもないが、草々に近づくためには逆らえない自分がいることもまた事実だった。
それに早く終わればそれだけ早くこの嫌な男から開放されるはず、
今は従順にしている方がましだろう、と、清海は言われるがままに舌を動かした。
「う…そうそう… 上手いじゃないですか… お嬢様なのに」
一気に口に含むと、手も使いながら、時々きゅっと吸い上げた。
次第に木曽山の息が荒くなる。
硬さも温度も最大限になり、張り詰めたそれにたっぷりの唾液をからませた時、
木曽山は清海の頭を両手で押さえつけて、そのままねっとりした白い液体を放った。
「…うっ──!…ああ…」

清海の薄いピンク色の唇の端から、それがこぼれる。
木曽山はまだ清海を離さずに辱めと液の苦さに耐える顔を満足そうに眺める。
透き通る白い肌、紅潮する頬にかかる乱れた細い髪…
「飲んで下さい」
しかし清海は激しくかぶりを振り、自らの力で木曽山の手を外すと、
急いでバスルームに駆け込んだ。


106:木曽山×清海4
08/05/18 02:31:04 XWPJLPSG
口を洗って部屋に戻ってくると、木曽山は眼鏡を外しベッドに寝そべっていた。
「まさか今ので終わりと思ってませんよね?」

「…わかってるわよ」
投げやりに言うと清海もベッドに上がった。
すぐに木曽山が覆いかぶさり、清海の薄い乳房の突起に舌を這わせ、
もう一つの乳房は手で愛撫する。
「感じますか?」
ただ触られているだけなら感じなかったかもしれないが、木曽山は言葉で煽ってくる。
「草々師匠ともヤッたんですか?師匠上手かったですか?」
「いや!」
「師匠のもフェラチオしたんですか?」
傷つけられているはずなのに、草々という名が発せられる度に、
身体は嫌でも反応する。

「やめてぇ…」
手が次第に下半身へ降りて行き、柔らかな繁みをまさぐる。
「草々師匠の指ってどんななんでしょうねえ」
「…ああ…」
清海の口から完全に降伏したような声が漏れると木曽山はその割れ目に指を這わせ
すでにしっとりと濡れている襞を擦った。
指の腹で突起を回すように触ると、清海の中から粘りのある液が更に溢れて来た。

「…そろそろ対価をお渡ししてもいいかな…」
指先を途中まで入れて木曽山が言う。奥まで入って来ないもどかしさが清海を襲う。
「あ…あ… ん… いやぁ…!」

指をそのままの場所で動かしながら、木曽山は言葉で責めるのも止めない。
「さっき、師匠とおかみさんのことはなんでも知ってるって言いましたよね。」
耳元で熱い息とともに囁かれる。
「師匠って…見かけどおりの絶倫ですよ。週に4、5回やってますよ。
…おかみさんと…」


107:木曽山×清海6
08/05/18 02:32:59 XWPJLPSG
「そんなこと、いやあっ…聞きたくないっ…」
まさかなぜそんなことを─清海は苦痛に顔を歪める。
懸命に木曽山から離れようと肩を押し戻そうとするが、
中に入れられた指が与える刺激からも逃れられない。

「もう、いや…やめてぇ…!」
「何をですか?」
かすれる清海の声を聞きながら木曽山は指を突然最奥へと突き入れた。
「ああっ!」
清海の身体が快感にのけぞる。やっと奥まで到達した指に腰がゆらめく。
木曽山の指の動きに合わせるように、白い美しい肢体が波打つ。
もうこの交わりからは離れられない…ついに清海はそう感じ始めていた。
「これ、やめましょうか?それとも…」
一番感じるポイントを強く刺激しながら木曽山は聞く。
「取引、やめましょか?」

指を引き抜くと、木曽山は再び大きく張り詰めた自身を
清海のぬるぬると熟れきった入り口に押し当てたが、そこで動きを止めた。
「あ・・ぁん…」
今にも突いて来そうで突いて来ない、またじらされて悶える清海に
もういちど答えを確かめる。

「僕の入れて欲しいですか、それとも
もっと聞きたいですか、師匠とおかみさんのこと─」

奥の疼きにはもう耐えられない…
快感に、朦朧とした意識の中清海は答えた。
「来て…お願い…はやく──!」

口の端をあげて木曽山は一瞬笑うと、
すぐに清海の中に猛り狂ったそれを付き立てた。


108:木曽山×清海7
08/05/18 02:36:30 XWPJLPSG
行為のすべてが終わった時にはすでに日はどっぷりと暮れていた。
いつのまにか服を着ていた木曽山がジャっと音を立ててカーテンを開けた。

大阪の夜の街はネオンや信号や電車の明かりで美しく彩られている。
「夜景が綺麗ですね」
そんなのなんの意味もないこと…と清海はうつろな目をして思った。

「僕は破門にはなりません。また師匠のところへ戻ります。」

靴を履き、部屋の鏡を見ながら髪を直す。
そして清海の足元をすっと通り過ぎ、ドアの前で立ち止まった。

「取引、再開したかったらいつでもどうぞ。」
行為に入る前と同じ、明るい声で言い置くと、部屋を出て行った。

その間、ベッドの中で清海は身じろぎ一つしなかった。
心はただ空虚だった。

私、なにやってんだろ。
そうつぶやいて、はあ…と大きくため息をつく。すると
窓の外のキラキラ光るいくつもの色が、混ざり合って、にじんで、流れて来た…







以上です。
読んで下さった方ありがとうございました。
長いだけでたいしてエロくもなくすみません。
そしてA子もごめんなさい。幸せになっておくれ。



109:名無しさん@ピンキー
08/05/18 04:39:39 QMMuToSj
>>102
淡い期待が踏みにじられた上この仕打ち。A子カワイソス…。
つうか木曽山鬼。しかもしたたか、超したたか。破門の危機に全然懲りてね~!
奴はドSだと踏んではいたけれど、こりゃ恐竜師匠とB子の手におえんね。
もう早く四草師匠に死ぬほどおごらされるといいよw
切なくも哀れなA子の姿に涙…GJでした。幸せになれよ~!

110:名無しさん@ピンキー
08/05/18 09:49:42 XWPJLPSG
>102です。
>>109さん、ありがとう。
木曽山はドSにしか書けません。
抱きながら木曽山が景清を聞かせるっていうエピも
入れたかったんですが、長くなるのでやめました。

こんなひどい話やっぱりうけないみたいですね。
反省…


111:名無しさん@ピンキー
08/05/18 10:08:46 PWWc+u1M
乙です
A子には幸せになってほしい
(´・ω・`)

112:名無しさん@ピンキー
08/05/18 11:44:01 sYOiwyQ3
>>110
ちょっと待ってくださいよ~!
朝読んでそのあと2度寝しちゃっただけです!
すごい良かったですよ!
嘘山の嘘がバレたときの黒A子と嘘山のやさぐれ具合が好きだったので、
こんなお話にしてもらえて感謝です
景清聞かせるってのもさらにドSでイイ!!GJでした

113:名無しさん@ピンキー
08/05/18 11:59:48 KRDK3o28
倉庫
enyohaku34.web.fc2.com/omoya.html
ページ内安価機能しませんのでご了承を。

114:名無しさん@ピンキー
08/05/18 12:39:31 XWPJLPSG
>>111>>112さんどうもです。
景清聞かせるの入れた方が良かったですね。
でもまた更に悲しい話になるんで、複雑です。

>>113さん感謝!多謝!

115:名無しさん@ピンキー
08/05/18 13:39:59 +x72m4dK
>>113
ありがとう。ありがとう。

おぢさんもちょっとA子ちゃんで妄想投下しちゃおうかなハァハァ。
B子×A子。百合。ぬるいエロあり。

設定は聞かぬは一生の箸週の小浜完結編から。
駄目なかたは底抜けにスルー願います。

116:B子×A子1
08/05/18 13:42:06 +x72m4dK
小浜での落語会も無事終って。里帰りも明日までという夜。
私は家族にちょっぴり嘘を吐いた。
―草々兄さんらが心配やで、一日早く大阪に帰るわ。

今、私はエーコの家にいる。

ドアを開けたエーコはぎこちなくだけど、それでも私を迎え入れてくれた。
「今日お父さん、お母さんの病院泊まるから私ひとりなんよ」
知ってる。だから来た。
「へえ、そうなん」
知らないフリしてエーコの入れたお茶を飲む。
なんとなく、言葉が途切れて沈黙が落ちる。
「…なんであの時来たん?」
エーコの問い。あのお見合いの日のこと。

「…いやなんです。あなたのいってしまうのが」
答の代わりに詠唱する。
高校の時に読んだ、智恵子抄の一節。
「あなたがお嫁にゆくなんて」

 花よりさきに実のなるやうな
 種子よりさきに芽の出るやうな
 夏から春のすぐ来るやうな
 そんな理屈に合はない不自然を
 どうかしないでゐて下さい

初めて読んだ時、駄々っ子みたいや思とったけど。
今ならわかる。光太郎と同じ気持ちになった今なら。
「いやなんです」
 あなたのいつてしまふのが―
あの橋で別れた日のように。
今度は私がエーコを抱き締めた。

エーコの部屋でふたり服を脱いで。
一緒にベッドに入る。
なんや、初めて大阪に出た時。エーコのマンションに転がり込んだ夜を思い出す。
エーコの顔、こんな近くで見んの久し振りやな。
「ビーコ、胸おっきいね」
小学校の時からやもんね。小さく付け加えるエーコ。
「見とったん?」
「…プールの時とか体育の着替えの時とか」
はにかんで少し笑うエーコ。
「エーコこそモデルみたいやん」
エーコがかわいい。エーコが愛おしい。

お互いにお互いの胸をそっと撫でる。
啄むような優しいキス。
エーコの指がためらいがちに乳首に触れてくる。
「…ビーコ……ええかな?」
「ん……ええよ」
エーコの顔が私の胸に埋められて、おずおずと乳首に吸いついてくる。
(エーコ、赤ちゃんみたいや)
ちゅく、ちゅく、て。
無心にしゃぶっているエーコの幼い唇。

私には、小浜にも大阪にもいっぱい甘えられる人がいるけれど。
エーコはずっとひとりで。甘えることなんか許されなくて。
お母さんのこともお父さんのことも製作所のことも、みんなひとりで背負い込んで。
(…こんなに、細い肩やのに)
いじらしくなって、胸の中のエーコの頭を何度も撫でた。

117:B子×A子2
08/05/18 13:45:43 +x72m4dK
「…ありがと、ビーコ」
しばらくの間、私の胸に吸い付いていたエーコは恥ずかしそうに顔をあげた。
今度は私がエーコの胸に顔を寄せる。
「やっ……いやや、ビーコ」
「なんで?」
「だって、私、胸ないし」
「そんなことない」
エーコの胸、ぱんって上向いててすごくかっこええし。
ちょっとふざけて、ぱくんて頬張ってみる。
「や、あんっ、ビーコ…」
くすくす笑ってるエーコ。
考えたら、ずっとエーコの笑う声聞いて無かったな。
うん。ここんとこ、ずっと。
そう思って、わざと脇とかお腹とかこちょこちょくすぐってやる。
「や、も、ビーコってば!」
そんなことしてたら、お仕置みたいにエーコが下に手を伸ばしてきた。
「…あ、ひゃっ!」
「ビーコ、濡れてる…」
少し低い声で囁いてくるエーコ。
「…エーコかて」
私も、同じように触れる。
目と目が合う。キスをする。今度はもっと深く。
「……んんっ……あっ…や…」
腿と腿を絡めて。胸と胸を合わせて。
私の指がエーコの中に。エーコの指が私の中に。
なんにも考えないで、キモチイイことだけ。
ふたりで。一緒に。

疲れきって、私の隣で眠るエーコ。
エーコの寝顔を見ながら考えていた。
エーコが大阪に来た理由。
―あわよくば草々くんとより戻したい、それが大阪きたほんまの理由やって思うで
咲さんはそう言ってたけど。
咲さんには悪いけど、エーコはそんな子やない。私がよう知ってる。
―私やった筈やのに!
―草々さんの隣におって草々さんのこと支えんのは、ほんまは私やった筈やのに!
あの時、草々兄さんの名前を叫びながら、エーコが本当に呼んでいたのは。

タスケテ タスケテ タスケテ ビーコ

大阪でエーコが助けを求めてたのは、元カレの草々兄さんではなくて、私やった。
愚図で根性無しで考え無しのこの私やった。
―ごめん、エーコ。すぐに気づいてあげられんで


朝。
まだ暗い内にエーコの家を出る。
早起きのお母ちゃんに見つかったらことやし。

「…ごめん、あんなことしといてなんやけど、まだ私……」
きまり悪い顔で見送るエーコに、私は笑いかけて言う。
「ええよ、ゆっくりで」

あなたと出会ってから。
すごくすごく遠回りになってしもたけど。
今度は逃げへんから。
ずっとずっとそばにいるから。
待っててな、エーコ。

おわり


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