ちりとてちんでエロパロ 第四席at EROPARO
ちりとてちんでエロパロ 第四席 - 暇つぶし2ch50:名無しさん@ピンキー
08/05/12 08:12:19 wPGL1B8y
お父さんナイス!
草々が弟子たちにどんな説教したのか気になるwww

51:名無しさん@ピンキー
08/05/12 10:16:12 5tyFTOZq
エーコいいなぁ
社長になってからは多少強引な手を使っても
不自然じゃないしw

52:名無しさん@ピンキー
08/05/12 10:38:11 BzEgIC4D
お父さん、GJ!まさにぐっどじょぶです!話もおもしろかった~。
でこひっぱたかれる四草と「桃太郎侍みたい」の若狭にやられました…。
でも一番は「私のビーコ」だな~。
まさに「エーコ!エーコ!エーコ!…(ry」

53:名無しさん@ピンキー
08/05/12 11:13:09 gtxVpL+8
お父さん、ナイスな作品GJです!
艶っぽい長屋のおかみさんが出てくる落語(そんなのあったか知らんが)の
世界そのものだわ

54:名無しさん@ピンキー
08/05/12 12:54:36 m2+AWeiJ
生まれた子が男の子で草々と母乳の取り合いをする話が読みたいです。

若狭「らっく~ん♪チュッ」
落太郎「あ~☆」
草々「若狭オレにも・・・」

55:名無しさん@ピンキー
08/05/12 23:05:00 XnT2H82B
>45
GJ!
ABの旅行記も読みたいです。
二人で草々師匠のことをネタにして笑ってそうだw

56:名無しさん@ピンキー
08/05/13 00:58:39 A4furFPl
じゃあお母さんも投下しちゃっていいかしら!?
いいわよね、お父さん?


4兄弟で某ラジオ局の某有名深夜生番組に出演した設定
93年のB子入門後~94年あたり、小草若のタレント業絶頂時
さわりだけ、エロなし
お好みでない方はスルー願います

57:徒然亭一門のオールナイトニッポ○
08/05/13 01:02:12 A4furFPl
小草:そーこーぬーけーにっ!お待たせしましたがなぁ!徒然亭小草若でございます~
(パチパチパチ←拍手)
誰やねんこいつ?って方はいないとは思いますがっ!念のため自己紹介をいたします
本業は落語家です
(ざわざわ)
上方、つまりは大阪の徒然亭草若一門の3番弟子であります
(ざわざわ)
後ろやかましいっちゅうねん!
…えー、普段は某ラジオ局で3時間のスー!パー!生!ワイド!をやってるんで、
聴いたことある方もいらっしゃるとは思いますが、
今夜は一夜限りの特別企画!
徒然亭一門のオールナイトニッ○ンと題して、ここニッ○ン放送に我が一門が勢揃いしました!
では、一人ひとことずつどうぞっ!
草原:え~こんばんは。徒然亭草若一門の筆頭弟子、草原でございます
今夜は最後まで頑張りますので、よろしくお願いします
小草:あれ、兄さん噛んでませんやん?
草原:さっき1杯引っ掛けてきてん。さぁっ!ノリノリでいきまっせ~!
小草:…えー、嫌な予感がしてきましたが、気を取り直して次!
草々:…どうも。2番弟子の草々です(憮然)
小草:…おいおい、もっと愛想よくやらんかいな!
ほんますんません、こいつ生粋の落語バカでして、落語以外ではつまらん男なんですわ
草々:バカとはなんやねん!おまえにだけは言われたないわ!
だいたいなぁ!こんな番組よりもっと落語の修行を…
小草:こんな番組ってなんやねん!
四草:(エコーを効かせて)徒然亭四草とゆかいな仲間たちのオールナイトニ○ポン。
(チャンチャチャン♪×4チャラッチャ♪チャッチャラチャ♪チャッチャチャ♪)
小草:音切って!音切って!…なんで「徒然亭四草とゆかいな仲間たち」やねん!
…え~、しょっぱなからお聞き苦しくてえらいすんません、ホラ、四草、あいさつせぇ
四草:こんなアホな兄弟子たちを持って苦労の耐えない、徒然亭四草です
(バシッ←頭叩く音)
小草:それでは、気を取り直して!
(再びエコー)徒然亭一門のオールナイト○ッポン!
(チャンチャチャン♪×4チャラッチャ♪チャッチャラチャ♪チャッチャチャ♪…)
小草:いやー始まりました!なんや感慨深いね、やっぱこの曲やね
ホンマは我が一門の師匠と末っ子の妹弟子もおるんですが、
年寄りとひよっ子なんで、お留守番してもろてます
草々:誰が年寄りやねん!
草原:まぁまぁ草々、ほんのジョークやろ
四草:そうですよ、師匠は年寄りなんかやありませんよ、まだまだ現役ですよ
こないだかて、若狭の…
小草:わーわー!何を言いだすねん!いくら深夜かて言うていいことと悪いことがあるやろ!
草々:そうや!弟子の恥は師匠の恥や!
小草:まぁでもせっかく深夜なので、普段なかなか言えんことも言いたいなぁ…うひょひょひょひょ!!
草々:ふ、普段言えんことってなんやねん?
四草:そりゃあ、決まってるでしょ?草々兄さんが一番苦手な分野ですよ
草原:これ緑も聴いとるし、颯太も録音して明日聴くってはりきっとったから、そのー、頼むで、ホンマ!
小草:えー、うろたえる草原兄さんはほかしといて、底抜けに進みたいと思います!
「徒然亭一門のオールナイ○ニッポン」
この番組は…以上、各社の協賛で東京有○町のニッ○ン放送をキーステーション
に全国3x局ネットでお送りしま~す!
(パチパチパチ)

曲の時代考証が面倒なのでとりあえずここで終わり。

58:名無しさん@ピンキー
08/05/13 01:08:39 hyLQdBDV
>>57
えぇー!ここで終わりとは殺生な(´・ω・`)
草々兄さんの一番苦手な分野の小草若talkがききたいです・・・・・

59:名無しさん@ピンキー
08/05/13 13:14:31 FWkW7+HC
>>56
お母さん続きは?続きは?
師匠が若狭になにしたのか気になる気になる気になる

60:名無しさん@ピンキー
08/05/13 13:27:55 FWkW7+HC
>>56お母さんがラジオの続き聞かせてくれるまでの場つなぎに、ちょっと投下失礼します。
若狭結婚後の一門→若狭。旅行ネタで微エロ少々くらい。

61:一門→若狭 城崎にて1
08/05/13 13:29:18 FWkW7+HC
ここへ来るのはいつ以来だろう。
鄙びた温泉宿に足を踏み入れた草原は、懐かしむように往事を振り返った。
徒然亭一門がこの旅館を定宿にしていたのは今は昔。
師匠の妻―おかみさんがいた頃は、一門の慰安旅行でよくこの地を訪れていた。
まだ幼い面影を残したままの草々に小草若。
今よりもっとひねた青二才だった四草。
喧しくも陽気な弟子たちを、いつも陽光の暖かさで見守っていてくれたひと。
彼女がこの世を去り、灯が消えたように一門が壊れてしまってから。
(もう、二度と来ることはない思てたんやけどな)

「待ってください!草原兄さん!」
「なにモタモタしてるんや、さき行くで」
今、再び灯を取り戻した一門の中心にいるのは、ちっちゃな身体いっぱいに荷物を抱えてるこの妹弟子。
自暴自棄になって落語界からほぼ追放状態にあった師匠の元へ転がり込み、
一度は落語と訣別した自分たちを強引に巻込んで一門を復活させてしまった不思議な娘。
もっとも、本人にその自覚は無いようだが。

以前、師匠がしていた話を思い出す。
―あの娘が現れたのはな、ちょうど庭で愛宕山の一節をかけてた時だったんや
亡くなった妻の愛した花の前で。
妻との思い出の噺をかけていた時。
―今から思えば、俺たちを心配した志保があの娘を連れてきてくれたんやないかな

徒然亭の新しい陽光は、おかみさんと違って鈍くさくて騒がしくてハラハラさせられ通しなのだけど。
自分たちはこの娘を愛している。
師匠も、草々も、小草若も、四草も。

それが、この旅行にちょっとした影を落とすことになるとは、夢にも思っていなかったのだけれど。

62:一門→若狭 城崎にて2
08/05/13 13:29:54 FWkW7+HC
「うわー!広いですねー!」
久し振りに通された懐かしい部屋。
荷物を降ろした末っ子から歓声があがる。
「若狭は初めてやったな。ここ来るの」
「そういや、おまえがうちに来てからは無かったからな」
「なんや一門の事でバタバタしてて旅行なんてようせんかったもんな」
「え!じゃあ兄さんらはいつもこんなとこに旅行しとったんですか!?」
ずるいずるい!と騒ぐ若狭を、彼女の兄弟子兼夫の草々が嗜める。
「若狭。おまえに意地悪してたとちゃうねんぞ。そんだけうちの一門が大変やったゆうことや」
草々に続けて草若が静かに話しかける。
「そうやな。その一番大変な時期にあんたはよう頑張ってくれた…今回は若狭の慰労旅行やで」
「草々兄さん…師匠…」
見回すと皆が優しく自分を見ている。感きわまって目が潤む若狭。
「そうと決まったらさっそく風呂や。若狭、ちゃんと人数分タオル出しとけよ」
「ええええ!私の慰労やなかったんですか!?」
「それはそれ、これはこれや」


この宿の名物は岩山を背にした天然の露天風呂である。
もともと、芸能に携わる者の利用客が多い予約制の宿の上、時期もずらしてあったため
風呂は徒然亭一門の貸切り状態であった。
岩場を挟んで男女に別れている露天風呂。

「わかさー、そっちはどーやー!」
「すごいですー!ほんまに貸切りみたいですー!」
岩の向こうの女湯から若狭のはしゃいだ声が響く。
「なんや、ほんまに若狭ひとりか。覗き甲斐ないな」
「覗く気だったんですか師匠」
「やめてください。覗きで捕まってまた落語できひんようになったらシャレなりません」
「冗談や冗談」

陽光のなか湯煙が立ち上ぼり、遠くで山鳥の鳴き声が聞こえる。
その静寂を破ったのは女湯からの悲鳴。
「ひゃあああ!!」
「若狭どうした!」
ざば、と湯から上がる草々と。
「さるさるさるさる!」
叫びながら岩場から現れる若狭。
「…さる?」
「出たんです!さるが!」
駆け寄る若狭を抱き留めた草々が女湯を覗き込むと、確かに猿が二匹湯に浸かっている。
「ここは山近いからな、時々猿や鹿が降りて来るんや。ゆうてへんかったか?」
「聞いてません!」
そら悪かったな、引っ掻かれたりせんかったか?と問う夫と大丈夫ですと答える妻。
「しかし風呂場でご注進やなんて、まるで坂本龍馬のおりょうやな」
草々は呆れたように呟いた。
「ああ『三枚起請』の」

63:一門→若狭 城崎にて3
08/05/13 13:30:36 FWkW7+HC
「アホ、『三枚起請』は同じ幕末の志士でも高杉晋作や。ええか、この話は都都逸の三千世界の烏を殺し…」
とうとうと解説を始める落語バカ一代とそれをうっとりと聞き入る妻。
仲良きことは美しきかな。夫婦としては微笑ましいことこの上ないのだが。
「…あー草々に若狭。勉強熱心なのもええんやけどな、ちょっとは周り考え?」
「そや。兄弟弟子ゆうても俺ら健全な男子やからな」
はっと二人の世界から帰った眼前には、湯の中から見上げる八つの目。
改めて互いの姿を見やるご両人。
辛うじてバスタオルを巻き付けてはいるが、豊満な胸が半分露出しほぼ足の付根まで見えている若狭。
草々に至っては筋骨隆々とした全身まるまる素っ裸である。

「っきゃああああああ!!!」
「っうわああああああ!!!」
…いや、今更かい。
湯の中の全員が胸中で突っ込む。

「も、申し訳ありません師匠!」
ざば、と湯に戻った草々にカラカラと笑いかける草若。
「俺もまだまだ枯れたわけやないからな。いや眼福、眼福」
「し、師匠!?」
「一応言っとくけどな、おまえのことちゃうで?」
「…わかってます」


脱衣所を出ると母屋まで連なる石畳が陽光に濡れている。
ここから見える山間の遠景が美しい。
亡き妻と初めて訪れた頃から変わらぬ景色。
感慨に耽る草若の耳に一人息子の声が飛び込んで来た。
振り向くと、どうやら先の一件で妹弟子をからかっているらしい。
「草々は果報者やな~毎日若狭の底抜けにグラマーな体拝めるんやからな~」
「もう小草若兄さん!」
「草々に飽きたらいつでも言ってな~待ってるで」

からかわれて真っ赤になった妹弟子を見送ると、その顔から道化の笑みがすっと消える。
小草若は前髪をひとつかき上げ、溜息を漏らす。代わりに浮かぶのは老成した横顔。
「…草々に飽きたら、か」
首を振り己を嘲笑う。
先刻の光景を思い返す。
岩場の影から現れた妹弟子の悩ましい姿態。
薄紅色に染まる透き通るような肌に、我知らず心騒いだというのに。
夫の草々は無反応だった。
ただひたすら彼女の身だけを案じていた。
(つまり、それだけ)
見慣れているという訳だ。あの柔肌を。
夫だけに見せる無防備な姿。信頼しきった目。
夫婦の絆をまざまざと見せつけられた瞼を閉じる。
「…敵わんな、ほんまに」

草若は息子の男の横顔を初めて見た気がした。
かける言葉を知らなかった。

64:一門→若狭 城崎にて4
08/05/13 13:31:18 FWkW7+HC
「だいだいおまえが猿程度で騒ぐからやな」
「だって猿ですよ猿!」
露天風呂の一件は夕食時になっても夫婦の間で尾を引いていたらしい。
「痴話げんかも大概にせえ。この万年新婚夫婦が」
「草原兄さんとこには負けますけどね」
「失礼な。うちの緑はあんなはしたない真似せえへん」

いつもの喧しい弟子たちの中に、いつもの息子の顔を見た草若はそっと胸を撫で下ろした。
当の若狭は何も知らずにぶちぶちと八寸をつついている。
(こうして見てると、まるでほんまの兄妹やのにな)
「まあ、ええやないか。嫌なことは酒飲んでぱあーっと晴らすが一番や!」
「あ!師匠もう徳利あけてもたんですか」
「あんま飲み過ぎんでくださいよ師匠」

料理もあらかた片付き、そろそろ二番風呂へ行こうかという頃。
師匠の教えを律義に守ったのか、本当にぱあーっと酒を飲んでしまった若狭は早々に潰れていた。
「全くこんなとこまで来て師匠煩わせるやなんて…」
草々はむにゃむにゃと動く若狭の口元をぴんと指で弾く。
「こら、そない苛めるもんやない。疲れてたんやろ、ほっといたり」
「でも師匠、せっかくの温泉が」
「大事な娘独りにはできんやろ。猿に引っ掻かれでもしたら大変や」
若狭を次の間に寝かせると、弟子たちを送り出した草若は徳利を抱え直す。
「…ほんまに手ぇのかかる子どもらや」
なあ?
今はいない、かつてのひとへそう語りかけて、草若はひとつ杯をあげた。


次の間の襖が音も無くそろりと引かれたのは、それから半刻ほど経った時分だろうか。

布団にくるまる若狭にすっと男の影が近付く。
その穏やかな寝顔を覗き込むと、清潔な唇にかかる髪をそっと払う。
指先に触れる、柔らかなそこから離れ難いのだろうか。
起こさぬよう細心の注意を払いながら、そろそろと輪郭をなぞってゆく。
つんとした上唇から、ふっくらとまるい下唇へ。
「ぅんんっ…」
身動ぐ彼女から指を離そうとしたその時。

ちゅく。
桃色の唇が男の指を捕らえ。
嬰児のように吸い付き、小さな口でしゃぶり始めた。
固ったように動かない男。

ちゅく…ちゅく…ちゅぱ

そのあどけない仕草を見つめる目に熱が籠る。
ふらふらと吸い寄せられるように屈み込む影。
柔らかな唇に男のそれが重なろうとした瞬間。
「…はい、そこまで」

草若の声にビクリと振り向いたそこには。
無様に狼狽える四番弟子の姿があった。

65:一門→若狭 城崎にて5
08/05/13 13:32:15 FWkW7+HC
「…いてはったんですか、師匠」
くうっと鳴る喉から嗄れた声が漏れ出る。
「ちょっと飲み過ぎたみたいでな。この年になると近くなって困る」
ちょうど入れ違いになったんやな、と言う草若から視線を逸らす。
「また、どこの猿が引っ掻きに来たか思うた」
布団の中の若狭は泰然自若の体で寝続けている。
その様に苦笑を漏らした草若は四草に向き直った。
「わかってると思うけどな一応、人妻やから」
「わかってます」
自身に言い聞かせるように、師の言葉を遮る。
「気まぐれです。ただの」
吐いた科白とは裏腹に苦痛に歪むその頬を草若は見つめていた。
屈折した生い立ちの為か、女と見れば利用するばかりのこの男が
なぜか妹弟子を憎からず思っていたことは知っていた。
しかし。
「もうちょっと色恋には器用な男や思てたんやけどな」

「…僕は寄ってくる女しか相手にせえへん主義です」
若狭の唇に含まれていた人差し指に爪を食い込ませる。
甘い感触を押し殺すかの如く。

算段の平兵衛になりきれない、この不器用な崇徳院の熊五郎を草若は優しく撫でた。
「…行こか。もうすぐ草々らが帰ってくるで」


「すいません師匠、若狭見てもらって」
風呂から戻った草々は草若に頭を下げると、眠る若狭の頭をひとつ小突いた。
「だから苛めたるなって」

この娘の想い人を草若は見つめる。彼女に触れることをただひとり許された男。
多分知る由もないだろう。
弟たちが己の妻にどんなに焦がれているのか。そして、どれほどその想いを耐えているのか。
それでいい。と草若は思う。
もし知れば、愚直だが優しいこの男は迷う。妻を愛することを躊躇うだろう。

「三千世界の烏を殺し…」
昼間、草々が語っていた都都逸を口ずさむ。
彼は知っているだろうか。
それがどれほど業の深い恋の歌かを。

遊女が男と取り交わす念書を熊野の社に届ける朱烏。
ひとつの念書が破られるたび三羽の烏が死ぬという。
女に言い寄る全ての男をことごとく破り捨て、三千世界の烏を殺し尽くした後。
手にした女とすなる朝寝。
その甘美な優越は毒と諸刃の剣だ。

「若狭、おい若狭」
先刻、忍んだ男と同じように若狭のそばへ屈み込んだ草々は、その額をぺちぺちとはたいている。
図体の割に幼い性格をしたこの男は、どうやら妻に放っておかれて寂しかったようだ。
「草々、若狭を大事にしたり」
草若はそっと襖を閉めた。

66:一門→若狭 城崎にて6
08/05/13 13:33:13 FWkW7+HC
「なんとなく、そやないか思てました」
眠れぬまま月明りの中庭へ出た草若に、同じく酔い冷ましに出ていた筆頭弟子はそう答えた。

あの時。
男たちの前に半裸の若狭が現れた時。
いつもなら陽気な笑い声を立てる筈の三男も、皮肉のひとつも言う筈の四男も無言で。
ただ彼女の火照る柔肌に魅入られていた。
湯の下で、駆け寄ろうとする足を、抱き留めようと欲する腕を、
彼らが必死に耐えていたことなど草々は知らない。

「あいつらには、気の毒な旅行になってしもたな」
ここへ来なければ、想い人の肌を目にすることも、その想いを一層募らせることも無かったろうに。
父親としての草若は息子たちの叶わぬ恋慕を憐れに思う。
だが、噺家の師匠としては。

「ま、手に入らぬ女を恋うもまた甘露…ええ芸の肥やしになるやろ」
そうであって欲しいと願う。彼らと、何も知らぬ彼らの想われ人のためにも。
「その相手が妹弟子ゆうのが、なんやショボい気ぃしますけど」
師の心中を推し量り、草原が混ぜ返した。


いつしか月は西へ傾き、遠くで山鳥の鳴き声が聞こえる。
「ああ、明けの烏が鳴いてるな」
夜の底から空が白み始める。
またいつもと同じ朝がくるだろう。





〈了〉



以上です。
微エロが指なめ程度で本当にすいません。
ベタに三千世界ネタがやりたかっただけです。
そして城崎在住のかたいらしたら誠に申し訳ありません。
SS内に書いたことはすべて嘘山ですんで…

67:名無しさん@ピンキー
08/05/13 17:49:19 oq3ALDxs
GJです!
高杉晋作のぞくっとするほど色っぽい都都逸を存分に生かされたSS,
堪能いたしました。微エロとおっしゃるが、雰囲気がまとわりつくように
エロいですって!
ちなみに城崎はおなじみの土地なんですが…猿温泉にでるのかは知りませんw

68:名無しさん@ピンキー
08/05/13 22:08:35 0POpv43D
>>66
おお~素晴らしい作品ありがとうございます!
師匠の弟子それぞれに対する想いがいいですねぇ。
非日常の場面設定も雰囲気あって良かったです。
GJでした!

69:名無しさん@ピンキー
08/05/13 23:15:48 UAntf+kT
うわぁ~雰囲気スゴイGJ!!
指を噛むとか、レトロな官能がまたちりとての世界に合いますねー

漢詩で口説いたり都都逸を持ち出したり、
なにげに小技が効いた作品が多くてクオリティ高い!

70:名無しさん@ピンキー
08/05/14 00:10:10 tPP3Q3G8
>>66
うわぁ、また雰囲気がいいですね~。
夫である草々と、叶わぬ恋をしている小草若・四草の差がええですね。
気付いていないからこそ、平和な青木夫妻が、それはそれで切ない。

えー、コネタ投下です。
最終回直後、男児誕生の青木一家(草々・若狭・落太郎)。
54さんのアイディアお借りしました。

71:終わりなき戦いの始まり 1
08/05/14 00:12:47 tPP3Q3G8
嫁の出産に立ち会うのを理由に大阪を離れていた草々が、久々に天狗座を訪れた。
袖から高座を見て、その後仲間に会うために楽屋に行く。
「ああ、草々。おめでとうさん」
にこにこと迎えてくれたのは、今日の落語会を主催した柳眉。
「男の子やったんやてな。よかったな、跡継ぎできて」
「柳眉~!!」
熱烈な握手を求めた瞬間、
「今だけや」
「何や鼻毛。何でお前がおんねん」
横から口出ししてきた尊建を見て、草々は顔をしかめる。
「そら、三国志の主催の会やから見に来たんや、お前と同じで。
 で、俺は忠告したってんねん。嬉しいのは今だけやぞ~、て。
 そのうち、いくらお前でも、嫁さんと子供に仲間外れされて、
 家ん中でベソかいて座るいうことなるんじゃ」
「何言うてんねん、鼻毛!」
尊建を睨み付けたところ、隣で柳眉が腕を組んでうんうんと頷いている。
「そやなぁ…お母ちゃん言うのは、子供のことで、じき頭いっぱいになるしなぁ。
 ダンナのことなんか、構てられんようになるもんや」
ずびっ。
柳眉の言葉が終わるか終わらないかのうちに、部屋の隅から奇妙な音がした。
「「「そ…草原兄さん…?」」」
三国志の視線の先には、本日の「柳眉の会」ゲストの徒然亭草原の背中。
「…思い出しとうないわ、あの日々は」
草原は、こちらに背を向けたまま、語り始める。
「求めても、求めても、途中で邪魔が入る日々。
 生まれるまでがお留守やったから、久々に…思うのが男の常やろ。
 それが、途中で颯太泣き出したら、あっち行ってまうし」
「いや、そやけど、一緒にあやしたらええやないですか、かわいい息子やし」
「そら、颯太はかわいい。けどな、赤ん坊いうのは、父親ってもんを
 認識するのは、母親よりずーっと後や。そやから…
 2人が仲睦まじいベタベタしとる間、俺はぽつんと1人残された。
 向こうで2人が笑顔でおるのに、俺を見つめてくれるのは、
 空に浮かんだまあるいお月さんだけや。ボーン…」
「「…はめもの入っとる…」」
尊建と柳眉がぽかんとした顔をした。
「あの頃を思い出すと、今でも寂しいなるわ。
 『まーくん』言うて、俺だけに笑顔を向けてくれたこともあったな、思たら…
 緑…緑…みどりぃ~!!」
またや。
草々はがっくりうなだれる。
「そやから…ええか、草々、よう覚えとけ」
草原は、がしっと草々の両肩を掴んだ。
「父親と息子はな、母親を巡る永遠のライバルやねん!」

72:終わりなき戦いの始まり 2
08/05/14 00:13:26 tPP3Q3G8
「あー、そらあるかもしれへんな」
兄弟子の迫力に恐れをなした草々は、帰りに弟弟子2人の家に立ち寄った。
産後の休みを実家で取っている嫁が帰って来る前に、傾向と対策を準備せねば。
だが、天狗座での出来事を話すと、小草若改め四代目草若は、あっさりと納得してしまう。
「俺かて親父のことは尊敬してたけど、やっぱりお母ちゃんが気になった。
 小さい頃なんか、よう夫婦喧嘩しとったしな。
 そういう時は、親父に代わってお母ちゃん守ったらなあかん、なんて思たわ。
 せやのにお母ちゃんが親父庇たりした時は…何や悔しかったなぁ」
やっぱり、息子はライバルになるんや。
草々はがっくりと肩を落とす。
「…息子とライバルにならん方法、あるにはありますけどね」
先日引き取ったばかりの息子と平兵衛に餌をやっていた四草が振り返った。
「ほんまか?!」
「若狭外して父子家庭になったらええんですよ」
うちみたいに。
言い終わると、四草は息子の頭を撫でた。
「いや、それ全然根本的な解決なっとらんやろ」
四代目草若が四草の頭を小突いた。
「そやけど、争う対象がないんやから、ライバルになりようがないでしょ」
「俺はな、息子と仲良うする方法を聞いてんのとちゃうねん!
 どないしたら若狭と久し振りに…その…」
四草の回答にいらだったものの、根本的な問題を口に出来ず、もじもじする。
そういうところはちっとも変わらへんなぁ、と思いながら四代目草若は口を開いた。
「一緒に、世話するようにしたらどないや?
 若狭が赤ん坊の世話しに行ったら、ついてって一緒に世話するんや」
「一緒に世話したところで、解決にはなりませんけどね」
今度は四草が横槍を入れた。
「子守しながら、そういうこと出来へんでしょ」
言われてみれば…と四代目草若が再び考え込む。
「…ま、3日で結婚した草々兄さんらしく、勢いで行ったらええんとちゃいますか」
「そやな、『底抜けにおかえりー!』って若狭に突進したらええわ」
おう、と答えると、草々はぶるりと武者震いをした。

73:終わりなき戦いの始まり 3
08/05/14 00:14:15 tPP3Q3G8
数日後。

「草々兄さん、ただいま帰りましたー」
赤ん坊を抱いた若狭が、にこにこと自宅に入って来た。
顔を合わすのすら、随分と久し振りな気がする。
ましてや、肌を重ねるのなんて、もう随分とご無沙汰である。
「おかえり、若狭」
「あ、待ってください」
ぎゅっとしてがしっと頭を撫でて…という草々の思惑は、あっさりと阻まれた」
「まずは、この子寝かさんと。
 草々兄さんと私が寄ったら、つぶれてしまうでぇ」
あ、そうか、そやな。
いきなり息子に勝利を奪われ、草々が肩を落としているなど知る由もない
若狭は、内弟子連中を呼び、子供用布団を出すように指示をする。
「そんなん俺がやるで」
「草々兄さんは座っててください、疲れとんなるやろし」
(一緒に世話も出来てへん…!)
座布団の上で、さらにがっくりとする草々だった。
「ほら、ものすごい疲れとんなるやないですか」
若狭は満足気に草々を残し、弟子共を引き連れて立ち去った。

74:終わりなき戦いの始まり 4
08/05/14 00:14:55 tPP3Q3G8
夜。
息子は隣の部屋で、ぐっすりと眠っている。
今がチャンスとばかり、草々は若狭に手を伸ばした。
しかし。
「ん…草々兄さん…ごめんなさい…私、眠うて…」
若狭の反応は鈍い。
「そやかて、もう長いことしとらんやろ?」
草々は、夢心地で寄りかかる若狭から、そっと寝間着を取り払って行く。
「う…ん…」
甘い吐息が若狭の口から漏れた。

その時。

「ぇ…ん、うぇ…ん、ひっく、わぁーん!!」
隣の部屋から、突如として泣き声がした。
とたんに若狭の目がぱちっと開き、草々の手を振り払って飛んで行く。
「ど、どないしたんや!」
さすがに草々も驚き、急いで若狭の後を追う。
「お腹空いたみたいやでぇ」
胸がはだけているのを、これ幸いとばかりに、若狭は赤子に乳を含ませる。
さっきまで苦労して辿り着こうとしていた房を、あっさりと手と口にした赤ん坊。
いや、確かに息子はかわいい、かわいいのだが…。

(俺が親父やて、わかってへんな)

草原の語りが蘇る。
息子が認識しているのは、母親の若狭だけ。
若狭は若狭で、今は息子が1番。
草々としては取り残された気分である。
久々に、若狭の肌に口付けるのを楽しみにしていたのに…

「どねしたんですか、草々兄さん。この子の口元ばっかり見て」
若狭が首をかしげてこちらを見た。
「いやその…ええなぁ、思て」
草々は決まり悪げに笑った。
その様子を見ていた若狭は、ちょっと考え込んでいたが、
やがて息子がぐずるのをやめたのに気付き、再び布団に戻した。
「あ、草々兄さん、ちょっと待ってて下さいね」
終わったんやったら、早く一緒に寝床に入って欲しいのだが。
草々の意志とは無関係に、若狭はしばらく戻って来ない。
やがて、若狭は手にコップを手にやって来た。
「はい、草々兄さん」
差し出して、嫁はにっこりする。
「珍しいから飲んでみたくなったんですね~。
 ほやさけ、忙しい時に赤ちゃんのために哺乳瓶に置いとくみたいに、
 ちょっと搾って来ましたさけ、飲んでみてください
 大人が飲んでおいしいかは、わからんのですけど」
ちゃうわボケ!!!誰が母乳を羨ましい言うてん!!!
赤ん坊が泣き叫んでは困るので我慢したが、
草々はこれまでになく、がっくりと崩れ落ちたのだった。



<終わり>



母子の絆って強いよね、な話でした。

75:名無しさん@ピンキー
08/05/14 00:51:41 MXSiQNz6
>>70
GJ!!!
夜中なのに腹抱えて大笑いしましたよ!
久々に三国志登場で嬉しい…と思ったら、草原兄さんてばそんな過去が。
息子ラブラブ四草と四代目の傾向と対策案がナイス。
「武者ぶるい」はもしかして風林火山ネタですか?
最後まで天然な若狭ママかわゆい。がんばれ負けんな草々パパ。
楽しい話ありがとうございました。

76:名無しさん@ピンキー
08/05/14 03:02:11 zH/WZgez
>>66
GJ!!

ふと考えたんだけどこの温泉旅行、部屋割りはどうなってるんだろう?
師匠は別部屋として、若狭は女性だし一人部屋を貰っているのか、

師匠
草々若狭夫婦
兄弟子

みたいな感じなのか。
若狭を一人別部屋にしておくとそれはそれで危険wだが
夫婦セットでも他の兄弟子には苦痛だなww


>>70
GJ!!
タイトルが秀逸ですな、草々これから一生戦い続けるのかww


77:名無しさん@ピンキー
08/05/14 08:59:38 v0RFWc3q
>>76
そんな温泉宿での夫婦の一夜と、ウヒョヒョヒョになる師匠+他の弟子たちの
話も良いですなwww

78:名無しさん@ピンキー
08/05/14 11:24:03 UQws04SP
>>66
艶な雰囲気でよかったです~!都々逸詳しくないけど、いいですよね。
下世話なだけじゃなくて凄みのある色っぽさがあって…。
三千世界~は、とくにカコイイw
恋に焦がれて鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が身を焦がす
とかも、すごくちりとてぽいなあ~と思っておりましたw

>>70
かわいいかわいい!すごくおもしろかったです!
キャラの感じもすごくよかった。草原兄さんサイコー!
そしてやっぱり若狭はかわええ。草々、負けずにがんばれ~!

79:名無しさん@ピンキー
08/05/14 23:19:07 x/Nij5IV
ほのぼの穏やかな空気掻き乱します。
四草×若狭の続きを書こうと思ったのですが
その前といい、草々の扱いがアレすぎたのでw
結婚後数年の草々×若狭エロ投下します。
ヤってるだけの話です…

80:熱を孕む 1
08/05/14 23:19:27 x/Nij5IV
しばらく互いに多忙だったために、オフの今日は久々にゆっくりできるはずだった。
だが、無理を重ねると体調を崩すことのある若狭は風邪を拾ってきてしまっていた。
「草々兄さん……」
だいぶ治まったが、咳のために掠れてしまった声が背中に届く。
振り返ると、まだ少しだるそうな様子の若狭が布団に横たわったまま見上げていた。
「まだ熱あるんやから寝とかんとあかんぞ」
「もう眠たないです」
頭が働いていないのか、舌足らず気味に応える若狭の枕元にしゃがみ込む。
頬が赤く、目元も眠たげにとろんとしている妻は、いつもより幾分幼く見えた。
そのくせ、少し荒い呼吸がやけに誘うようで。
「ええから寝とけって」
しばらくご無沙汰であることを思い出してしまい、取り繕うようにぎこちない手つきで布団を掛け直してやる。
「じゃあ、草々兄さんも一緒に寝てください」
「はあ?」
「ええやないですかぁ。今日はなんも仕事ないんやし」
相変わらず紅潮した顔のまま、にこにこと若狭が言った。
そしてご丁寧に身体をずらして布団にスペースまで空けた。
「お前、誘っとんのか」
「……そうや言うたら、草々兄さんどないしますか」
ふふ、と掛け布団にもぐって顔を隠すような仕草の若狭が、たまらなく可愛かった。
風邪の女房に惑わされる阿呆な亭主。
創作落語の一節のようだと思いつつも、手を伸ばさずにはいられない。
「若狭」
頬をそっと撫でると、ひんやりした指先が気持ち良いのか、目を閉じてされるがままになっている。
その口元は優しげな笑みを浮かべて。
……マズイ。
妻のささやかな表情ひとつで暴走しそうになる自分に気付いた。
これではまるで思春期の中学生である。
少々情けなさを感じつつ、草々はにじり寄った。
どうにも我慢できそうになかった。
「ほんまにええんか」
言外に問うと、若狭は薄く目を開けた。
そして相変わらず微笑のまま、黙って頷いた。
無骨な手でパジャマを脱がしていく。
そうしてあらわになった、自分よりも高い体温の身体をそっと抱きしめた。
微熱を孕む肌が吸いつくように重なり合った。
人の温もりがもたらす心地よさに深く息を吐き出す。
若狭を初めて抱いたとき、世の男がなぜ女に溺れるのかが判った気がしたものだ。
自分より小さく、柔らかい身体は腕の中にぴったりと納まる。
どこにも隙間がないように抱きしめ合って生まれる温もりは、ずっと求めていたものだった。
若狭の身体の、そのなにもかもが快楽を呼び覚ました。
「草々兄さん、あったかい……」
自分の胸に額をすり寄せるような仕草で、若狭が呟いた。
安心しきった子どもの寝顔のようなあどけない表情を、じっと見つめた。
結婚してだいぶ経っても、出会った頃の十代の面影が感じられる顔。
腕をほどくと、両手でそっと頬を包む。
重ねた唇を開いて、互いの舌を絡め合う。
何度繰り返しても物足りなく感じてしまうのは、自分だけではなかった。

81:熱を孕む 2
08/05/14 23:20:08 x/Nij5IV
「―若狭」
たっぷり時間をかけてから顔を離すと、自分を求める若狭の目に捕われた。
「草々兄さん……」
唇から首筋、鎖骨から胸へ。
目の前に横たわる身体を余すところなく口づけていく。
触れたことのない箇所などどこにもないくらい知り尽くしているのに、不思議と飽きることはなかった。
豊かな膨らみを手に収め、やや荒っぽく揉みしだいてその感触を楽しんでいたとき。
「草々兄さん……わたしも……したい」
「はっ?」
もぞもぞと動いて身体を起こした若狭は、布団の上にぺたんと座った。
つられて草々も向き合う体勢になると、下半身にすっと若狭の手が伸びてきた。
いつになく積極的な妻に狼狽する。
「わ、若狭? どないしたんや」
「いっつも草々兄さんにやってもらうばっかりやでぇ……」
俯きながら小さな声でそう言うと、おもむろに顔を伏せた。
新婚時代に何度かやらせたことはあったが、最近全くなかった行為に、全身が跳ねるように反応してしまった。
……やっぱり情けない。
既に形を変え始めている自身の一部が濡れた粘膜に包まれている。
なんとなく直視できずに、視線を空にさまよわせた。
生温い舌が、張り出した先端から根元まで往復している。
その間にも柔らかい袋を揉まれて、思わず声が洩れそうになった。
「草々兄さんの、おっきくなった……」
裏側の筋を舐めあげてから、若狭が言った。
たまらずに下を向くと、上目遣いで自分を見る女がいた。
濡れた唇の端から唾液が一筋流れている。
幼さと淫靡さが同居する貌。
自分の妻はこんな女だっただろうか―
草々が目を見開いて固まっているのがおかしいとでもいうように、若狭が笑む。
それから、一気に咥え込んで前後にスライドを始めた。
性交によく似た感覚に、射精感が増す。
「わ、若狭、あかん」
自分ひとりで達くのはまずいと思いながらも、久々の口淫は刺激が強すぎた。
「……ええですよ、イって」
「あかん、若狭―若狭っ……」
気付いたら、若狭の頭を掴んで腰を押し付けていた。
溶けるような快感が脳天を突き抜けた。
ふと我に返ると、軽く咳込む妻の姿。
またしても慌てふためく。

82:熱を孕む 3
08/05/14 23:20:42 x/Nij5IV
ティッシュ箱を引き寄せて口元を拭ってやると、もごもごと何かを言った。
「なんや」
「草々兄さんが気持ちようなってくれて、良かった……」
「……若狭」
「今度はわたしのことも、気持ちようして下さい」
ふふ、と笑う妻を、まばたきも忘れて見つめる。
―これは熱のせいだ。
普段の夜の生活は慎ましやかなもので、兄弟弟子らにいらぬ心配―というより揶揄されてるというのに。
高座で響くよく通る声と同じ口から発せられた言葉に思えず、崩れた体勢のまま若狭を見つめた。
「お、お前……もしかして余計に熱、上がったんやないか」
取り繕うように額を突き合わせて、自分より高いことを確認する。
触れ合ってしまえば、やはり自制などできず。
また、唇を重ねた。
今しがた口内に放った残滓を分け合うように、互いの舌を絡ませる。
そのまま若狭の身体を押し倒すと、丸みを帯びた腰へと指を這わせた。
下生えを掻き分け、触れた突起を強く擦った。
重ねた唇の隙間から洩れる喘ぎに気を良くして、執拗に続ける。
たっぷり反応を楽しんでから、さらに下の方へと指を動かした。
じゅぷ、と濡れた音がする。
「あっ……草々兄さんっ……いやぁ」
「嫌やないやろ、気持ちええ言うてみ」
「……あぁっ―そこ……」
熱く濡れる襞へ、指をぐっと挿入した。
絡みつくように吸い付く粘膜を引っかくように刺激し、指を増やしていく。
「そ、草々兄さん……はぁっ……」
「ええか?」
「あっ、もう……早く―」
ぎゅっと首に腕を回されて、若狭が耳元で囁く。
「草々兄さんが欲しい……」
そう、すべて熱のせい。
こんな一言で下半身が露骨に反応する自分に、またしても情けなくなる。
一方で、想い合って添った恋女房が、既に新婚と呼べない現在も変わらずに求めてくることの喜びも隠し切れない。
「若狭」
じりじりと己を挿入しながら、何度も呼んだ。
しばらくぶりの行為のためか、多少の抵抗がありながらも、なんとか最後まで収まった。
「草々兄さん……」
きゅっと締め付けるような感覚に、思わず息を詰めた。
「動いて平気か?」
言葉もなく、若狭は頷いた。
息を乱し、薄く唇を開いたまま、潤んだ目で自分を見上げている。
欠片ほど残っていた理性も見事に吹っ飛んだ。
音がするほど激しく腰を打ち付ける。
「もう……いやぁ―んっ……」
足をぐっと持ち上げて、密着度を高めた。
「……そこ、やっ……あっ―」
かすれ気味の高い声で喘ぐ若狭の身体をぐっと押さえて。
強く目を閉じて、精を放った。
それは、自慰などでは得られない強烈な絶頂感。
若狭の声が途絶えたかと思うと、その身体が軽く痙攣を起こしたように震えた。
ずるりと性器を抜いて身体を起こそうとすると、二の腕を掴まれた。
焦点の合わない目で見上げる若狭が、ひどく官能的な表情を浮かべている。
快楽を極めた女の顔だった。
「まだ離れんといてください……」
若狭は小さな声で、舌足らずに言った。
とても愛おしくて仕方なくて、ただその頬をそっと撫でた。
身体を拭ってやろうとしたが、若狭はきゅっと草々の腕を握って離さない。
そんな妻の姿に笑みを浮かべつつ、まだしばらく余韻を楽しむことにした。
抱き寄せると、汗ばんでいる肌がぴったりと合わさって。
―熱はまだ、引かない。

83:名無しさん@ピンキー
08/05/14 23:22:07 x/Nij5IV
以上です。
某金星人wがキャンディー舐める表情がやたら色気あったので
妄想に走った結果だったりするのですが
なんかやっぱり色々スイマセンorz

84:名無しさん@ピンキー
08/05/15 01:56:14 PFHx/10H
>>83
GJ!!!!
ヤッてるだけの話と言いつつも、エロだけではなく凄く雰囲気ある秀逸な
作品で萌えました!
勿論エロ的にも満足ですが!
草々若狭夫婦には、やっぱりラブラブが似合いますね。
エロでもどこか甘酸っぱくて余裕ない感じで、ホント可愛いカプだなあと
思います。

85:名無しさん@ピンキー
08/05/15 02:24:42 I9INr+XQ
GJ!!!
何か、この二人はエロい事やってても、かわいいと言うか、さわやかと言うか…
エロだけと言いながら愛の感じられる作品でした。ご馳走様!

86:名無しさん@ピンキー
08/05/15 04:07:14 Bgnd7ZDr
>>83
あの某金星人は確かに無駄にエロ可愛かったですね~w
草々、小草若、四草にもあんなコスプレを見せてやってほしいw

87:名無しさん@ピンキー
08/05/15 15:51:45 aQAnIHeN
キャンディー舐める某金星人って誰・・・

88:名無しさん@ピンキー
08/05/15 17:48:01 6DeFp73v
URLリンク(uproda.2ch-library.com)
URLリンク(uproda.2ch-library.com)

舐める某金星人
本当はドラマ中の舐めっぷりのがエロいんだが


89:名無しさん@ピンキー
08/05/15 17:52:25 aQAnIHeN
>>88
ありが㌧
そういうことかw

90:名無しさん@ピンキー
08/05/15 17:56:01 qn3k8lA2
>>83
GJ!
エロエロなのに、かわいい…。
なにせ若狭がかわいいし、若狭にめろめろな草々もいい感じでした。

>>87
某金星人はキミハンですw むっちゃ、かわいかったww

で、そんな後にエロなしですみませんが…。
若狭内弟子修行中の、四草→若狭。
ベタな少女漫画風味wな上に、四草が女々しい感じになっちまいましたので、
お嫌な方はスルーしてください。

>>78の「恋に焦がれて鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が身を焦がす」からの妄想です。

91:夕蛍1
08/05/15 17:58:55 qn3k8lA2
夏の夕暮れ時、川べりの道を歩いていた。
夕陽が水面に映り、あたりは橙色の光に満ちている。
「綺麗ですねえ~…ちょっと電車に乗っただけで、こんな景色が見られるやなんて」
若狭が言った。
「今日はほんまに楽しかったです!あ、いえ、勉強になりました!」
ありがとうございました!と、はしゃいだ声で言う若狭に、
「そうか」
とだけ答え、四草は振り返りもせず歩き続ける。

四草が続けている、とある寺での落語会。
季節ごとのペースで、続けてきた。
勉強会という形だから非常にこじんまりしたものだが
はじめは数人だった客も少しずつ増えてきている。
毎回楽しみに顔を出し、わざわざ寝床寄席にまで足を運んでくれる客もいた。

…今度は妹弟子さんも一緒にやらはったら、どうですやろ。
寝床寄席に行かはった檀家さんが、妹弟子さんもおもろかったでぇ、
女の落語家さんも悪ないなぁ、て言わはって。

寺の住職からの提案を草若に告げると、草若は一二もなく頷いた。
「ああ、それはええな。若狭にももう少し場数踏ませたいと思っとったんや。
あっこなら、ようわかってくれてはるし、そりゃありがたいこっちゃ」
お~い若狭~と、草若は声を張る。ぱたぱたと走ってくる音。
「はいっ!師匠」
現れた妹弟子は、だぼだぼのTシャツにジーンズ姿。
その色気のない姿に、なぜこんなに引き付けられるのか。
師に悟られないよう、四草はそっと目をそらす。
草若が事情を説明すると、若狭はきらきらと目を輝かせた。
きっちりと手をついて、頭を下げる。
「ありがとうございます、師匠」
それから四草に向き直り、もう一度。
「四草にいさん、ありがとうございます。私、がんばりますさけ」
頭を上げ、まっすぐ自分に注がれる視線。
その大きな目に自分がどれだけ焦がれているか、この娘は知らない。
どれほど欲しているのか、気付いてすらいない。
だから、四草はいつもどおりに答える。
「恥かかん程度に、適当にな」
と。

92:夕蛍2
08/05/15 18:00:28 qn3k8lA2
寄席は盛況だった。
若狭も無事に一席こなしてみせたし、四草はいつもどおりの二席。
いつもの値段で三席見られて得やったからなぁ、などと軽口を叩きつつ、
常連の一人は、祝儀までくれた。

その帰り道。
「こうやって自分で落語会をさせてくれるとこ、探さなあかんのですね」
この寺での寄席が、四草が自分で探してきた場だということを聞き、若狭は驚いた。
若手の落語家が上がれる高座はそう多くはない。
しかし勉強のためにも高座の数をこなしたい、と考える若手は多い。
よって、自ら落語会をできるようにはたらきかけをするのだ。
愛想がいいとはいえないこの兄弟子がそういった地道な努力をしていたことを、
若狭は今まで知らなかった。
わざわざおまえに言うことでもないやろ、と四草はこともなげに言うが…。
「私にできるんやろか…」
若狭がため息をつく。
夕陽が横顔を照らし、白いうなじに橙色が映った。
「まぁおまえの場合は、年季明けてからの話やな」
そもそも年季が明けへんかもしれん、とよけいな一言を付け加える。
四草はそのうなじから目を離せない自分を嘲笑った。
よけいな一言を加えたのは、そのせいか。
四草のことばを聞き、若狭はぷぅっと頬を膨らませる。
その表情は、まるで子どものようなのに。
「他のにいさんらぁも、こねして自分で落語やらはる場所探さはったんですか?
…草々にいさんなんかも」
その名を口に出すと、とたんに女の表情になる。
恋焦がれているのを隠そうともしない瞳。
いや、本人は隠しているつもりなのだろう、しかし。
丸わかりや。
胸の奥でひそかに嫉妬する自分をわらう。
この娘が恋うている男は、一人だけだとわかっているのに。
「昔は自分で探してたみたいやな。けど、最近は呼ばれることのほうが多いやろ。
草原にいさんは、かなりマメにやってはる。小草若にいさんは…ま、テレビっ子やからな」
テレビっ子って。と若狭が笑う。屈託のない笑顔。
あえて草々の名前を繰り返さなかった自分は、やはり嫉妬しているのだと思う。

若狭は知らない。
四草が、自分にどんなに焦がれているのかを。
若狭は知らない。
四草の夢の中で、痴態をさらされている自分を。
浅ましいと思いながらも、思う女を自分のものにする夢を見るのは。
仕方のないことなのかもしれない。女々しいことなのかもしれない。
いっそ抱いてしまえば、他の女たちと同じように顔のない女になるのか。
そうできないから、恋をしているような錯覚を覚えるのか。
もし今、ここで触れることができれば―
行き場のない思いを、四草は持て余す。

93:夕蛍3
08/05/15 18:03:50 qn3k8lA2
歩いているうちに、橙色の光は夕闇に溶けてなくなった。
日の落ちた川べりにほの白く光っているのは、大阪の街中より少し多めの星と。
「あ、四草にいさん!蛍!」
ほのかな光を身に纏う蛍。
ふわり、ふわりと、どこからともなく。

手で蛍を掬い上げようとする妹弟子の姿を、四草は眺めていた。
「ほら、つかまえましたよ」
どこか誇らしげに、すっと目の前に差し出された手。
その手はまるで、蛍をとどめる籠のよう。
掌中の蛍は自分の姿か。とらわれた、自分。
若狭がそんな四草の思いに気がつくことはないのだろう。
それでええ、と四草は思う。

「おまえは蝉やな。徒然亭にぴったりや」
「はい?」
なんでセミ?若狭が首をかしげ、きょとんと見返した。
「セミみたいにうるさい、いうことですか?」
また、ぷぅっと頬を膨らませた。
もう、にいさんはいっつもそんなことばっかり…と
勝手に決め付けて拗ねるその声を、可愛らしいと思う自分は。
―たいがい、病気やな。

蛍を包み込んだ小さな手から、淡い光が漏れ出している。
四草は、その光を見つめた。
一人の男への一途な思いを、熱い視線で奏で続けている。
そう、真夏に鳴き続ける蝉の如くに。
この愛らしい蝉の恋は叶うのだろう。
それは予感ではなく、確信だった。
だから、俺は蛍にもなれへん。
光を灯すどころかひたすらに闇にまぎれて、この身を焦がす。
ただ、手の内にとらわれて。

「綺麗ですね、蛍」
「せやな。…けど、連れて帰るわけにもいかんやろ」
離したれ。そう言うと、若狭はちょっと顔に影を落とす。
「…そうですね。このまま電車には乗れんですもんね。かわいそうやし」
名残惜しそうに、手を見つめた。漏れ出す光が夕闇に溶ける。
せつなそうにも見える横顔に、四草は吸い寄せられ…目をそらす。
離してやってくれ、その蛍を。おまえの手の中から。

若狭が手を開くと、蛍がゆらりゆらりと宙に舞う。
他の蛍にまぎれ、再び光りだした。
手放したことをふと後悔するかのように、若狭は蛍を見つめている。

「行くぞ」
蛍のように、解き放たれる日が来るのだろうか。
解き放たれることは、幸せなのだろうか。
光ることすらできない自分なのに。
かすかな胸の痛みを押し込めつつ、四草は歩き出した。
待ってくださいよ~と、追ってくる妹弟子の姿を背に感じながら。



おしまいです。お粗末さまでした。ありがとうございました。
お寺での落語会ってあこがれなんですが、
行ったことないんで適当です…。ご容赦ください。
それと、口に出してないなら若狭が蛍じゃね?というつっこみは無しでよろしくお願いします。
書いてから気がついた…orz


94:名無しさん@ピンキー
08/05/15 20:00:59 XKX4veZo
>>90
なんて、たまらなく美しくて、哀しくて、優しい物語なんだろう。
忍ぶ恋を秘めた男の純情が胸に迫ってきました。
夕暮れの橙、少女の白い肌、淡い蛍の光と情景の色彩がまた目に焼き付くようで。
ごめんなさい、伝えたい感想の万分の一も書き表せない自分がもどかしい。
GJです!

95:名無しさん@ピンキー
08/05/15 22:34:51 5jZvoF2G
>光を灯すどころかひたすらに闇にまぎれて、この身を焦がす。
>ただ、手の内にとらわれて。

このくだりが胸に刺さりました。切ないけれど優しい余韻を感じる
描写が素敵です。


96:83
08/05/15 23:24:52 iNPxPwlg
しょーもない話でしたがGJ本当にありがとうございました!
某金星人ネタに反応して下さって嬉しかったですw
しかし自分はやっぱりエロ向いてないことに改めて気付きました…

>>90
おおおおお、素晴らしすぎて言葉が出てこないです。
映画を観ているような感覚で読ませて頂きました。
情景の描写がリアルで美しいです。
次作も期待しております~!

97:名無しさん@ピンキー
08/05/16 01:39:36 cbJnlz8m
>>90
なんと幻想的な…
ベタだけど井上陽水の「少年時代」が似合いそうな情景だなーと思いました。

しかし四草の本名、忍ってホントにキャラを的確に表わしてるなぁ。
鳴かぬ蛍が身を焦がす……切ないのぉ

98:名無しさん@ピンキー
08/05/16 03:23:46 4AyW7Uqb
四草は『しのぶ恋』の結果、産まれた子だから
『忍』って名付けられたのかなって自分は思ってた。
息子にはめちゃくちゃ言われてるけどw、
意外と古典に素養のあるお母さんなのかも。

崇徳院さんの歌のある百人一首にも、『しのぶ恋』の歌がいくつかあるよね。
しのぶれど 色にでにけりわが恋は ものや思ふと ひとの問ふまで…とか、
たまの緒よ たえなばたえね わが恋は しのぶることの 弱りもぞする…とか。

このスレの喜代美←四草のシチュ読んでると、
名前の通り、『しのぶ恋』が似合う男なんだなぁ…とぞ思ふw

99:名無しさん@ピンキー
08/05/16 03:37:43 4AyW7Uqb
たまの緒よ たえなばたえね ながらへば…だったorz


100:名無しさん@ピンキー
08/05/17 01:29:59 DIOzKk9A
『忍』と名づけたのは、母親ではなくて父親かも、と想像したら、めちゃくちゃ不憫になってしまった。
父が名前を付けてくれるというので、ウキウキしていた母。
なのに、貰ったた名前が『忍』。
おまえら一生影に隠れとれ!と暗示されたショックで、母は男をとっかえひっかえの生活に・・・

ごめん、スレ違いだな。

101:名無しさん@ピンキー
08/05/17 13:29:52 Y0UuqS77
>>98
ロマンチストさんなんですね~
自分は「心に刃を持つ」ってのがしっくり来るな。

激しくスレチで悪いけど
グリーンウッドの忍先輩と被る…

102:名無しさん@ピンキー
08/05/18 02:19:12 XWPJLPSG
木曽山×清海思いついたので書いてみました。
エロちょっとだけです。

A子が可哀相な話なので、
A子好きな方はすみません。先に謝ります。

103:木曽山×清海
08/05/18 02:23:42 XWPJLPSG
「話が違うじゃない」
ドアを閉めてすぐ清海は責めた。
日が暮れるまでB子は帰って来ないと言った、木曽山を。
「おそらく、って言いましたよ僕は。高座終わっても師匠たちとお茶するかもしれん、て」
悪びれることもなく、冷蔵庫から缶ビールを取り出し喉を鳴らして飲みながら
木曽山は答える。
「僕が嘘ついたみたいな言い方せんといて下さい。」

草々と二人きりで会いたかった。
自分が東京でどんな生活をしていたかという事も、
父に会社の存続のための結婚を迫られていることも話したかった。
そして、

出来ることならもう一度、無垢な心で恋していた、
あなたとやり直したいと思っていると…伝えたかった。

もちろんすぐに答えが出ると期待してはいなかったけれど、
せめて昨日は、またどこかで、徒然亭ではない場所で、
B子には知られずに二人きりで逢う約束を取り付けられたらと、ただそれだけを思っていた。
しかし現実は、想定の範囲外の悲惨な結果。
かつての恋人だった草々には、“稽古があるから、じゃあ。”と、
あまりにもあっさりと久しぶりの逢瀬―(清海にとっては、)―を断ち切られ、
咄嗟に、すがるようにあの《景清》を聞かせて欲しいと頼み…

「あなたが夜まで帰らないって言ったのを信じて私は草々さんに―!」
清海の必死な訴えにも何処吹く風の面持ち。木曽山は他人事のようにつぶやく。
「ふーん…景清ってお2人にとって特別な落語だったんですか?」
頼んだ挙句の果ては、木曽山から聞きだした時間よりもずっとずっと早く
現実に草々の妻であるB子が帰ってきて、
彼女の熟練した三味線を見せ付けられながら、思い出の《景清》を聞かせられるという
二重苦どころか三重苦まで背負った辛い訪問になってしまった。
切実な願いとは程遠く。

怒りと屈辱を収める場所が見つからないで立ち尽くす清海の横を通って、
ビールもう一本いただきますね、と木曽山はまた冷蔵庫を開けた。


104:木曽山×清海2
08/05/18 02:26:32 XWPJLPSG
小さな子供のように勢いをつけて、ベッドに腰掛ける。
スレンダーな木曽山の身体がギシギシという音と共に細かく弾む。
プシュッと音を立ててまた缶を開けて一口飲むと、上目使いに清海を見た。
「もっと有効な情報が欲しかったら、それなりの事をして下さい。
それなりの対価はありますよ。」

まさかとは思っていたが、破門されるかもしれない時に自分に声をかける
このしたたかな青年のこと─
こんな予感は当たってしまう、人生の非情さのようなものを清海はまた感じてしまい、
「それで泊まってる場所を教えろって言ったのね」
軽蔑のまなざしでキッとせいいっぱい睨み付けた。

「嫌ならええですよ。」視線を窓へ移しその向こうに広がる大阪の街を眺めながら、
あくまでも他人事のように木曽山が言う。
「でも、僕は師匠とおかみさんのことなら何でも知ってます。
24時間生活を共にしてるんやし、あなたの知りたいこと、なんでも教えてあげられる。」
ふふっと鼻で笑って畳み込むように続ける。
「それに僕は、口が堅い。」

しばしの静寂がせまい部屋を占領する。
木曽山がグビグビとビールを飲む音だけが聞こえる。

なるほど、汚い取引はするが、保身についてはそれ以上に注意深いタイプだと思う。
ずるい人間だからこそ、今以上に草々に嫌われることはしゃべらないだろう。
今の清海にとってはそのことだけが一つの救いであり、希望のように思われた。
背に腹は代えられない。

窓の方を向くと、夕陽が赤々と燃えていた。
狭い部屋に差し込む光の眩しさが自分を蔑んでいるようだ。

「どうしたらいいの」
覚悟を決めて清海は聞く。
「取引、成立ですね。」
清海とは反対に、晴れ晴れとした声と表情で木曽山が答えた。

「じゃあ、まず。服脱いで下さい。」

105:木曽山×清海3
08/05/18 02:29:11 XWPJLPSG
カーテンを閉めると、その前で言われたとおり服を脱ぎ始めた。
Tシャツもジーンズも脱ぎ、さすがに下着を取る時は少しためらったが、
は、と一つあきらめのため息をつくと、
ブラジャーもショーツも、スルスルと外していった。

「こっちに来て、僕のズボン下ろしてくれますか」
スタスタと近寄り、ベッドに座る木曽山の前に膝をつく。
ベルトを外しファスナーを下ろし、腰のあたりに手をかけ引きずり下ろす。
その後一瞬動きが止まったが、すかさず木曽山がもちろんそれも、と言い
パンツも脱がせた。

「…フェラチオして下さい」

目の前にあるそれを手に取り、清海は舌を這わせた。
幾つも年下の男にいいように扱われて、愛撫してやろうなどという気持ちは
少しもないが、草々に近づくためには逆らえない自分がいることもまた事実だった。
それに早く終わればそれだけ早くこの嫌な男から開放されるはず、
今は従順にしている方がましだろう、と、清海は言われるがままに舌を動かした。
「う…そうそう… 上手いじゃないですか… お嬢様なのに」
一気に口に含むと、手も使いながら、時々きゅっと吸い上げた。
次第に木曽山の息が荒くなる。
硬さも温度も最大限になり、張り詰めたそれにたっぷりの唾液をからませた時、
木曽山は清海の頭を両手で押さえつけて、そのままねっとりした白い液体を放った。
「…うっ──!…ああ…」

清海の薄いピンク色の唇の端から、それがこぼれる。
木曽山はまだ清海を離さずに辱めと液の苦さに耐える顔を満足そうに眺める。
透き通る白い肌、紅潮する頬にかかる乱れた細い髪…
「飲んで下さい」
しかし清海は激しくかぶりを振り、自らの力で木曽山の手を外すと、
急いでバスルームに駆け込んだ。


106:木曽山×清海4
08/05/18 02:31:04 XWPJLPSG
口を洗って部屋に戻ってくると、木曽山は眼鏡を外しベッドに寝そべっていた。
「まさか今ので終わりと思ってませんよね?」

「…わかってるわよ」
投げやりに言うと清海もベッドに上がった。
すぐに木曽山が覆いかぶさり、清海の薄い乳房の突起に舌を這わせ、
もう一つの乳房は手で愛撫する。
「感じますか?」
ただ触られているだけなら感じなかったかもしれないが、木曽山は言葉で煽ってくる。
「草々師匠ともヤッたんですか?師匠上手かったですか?」
「いや!」
「師匠のもフェラチオしたんですか?」
傷つけられているはずなのに、草々という名が発せられる度に、
身体は嫌でも反応する。

「やめてぇ…」
手が次第に下半身へ降りて行き、柔らかな繁みをまさぐる。
「草々師匠の指ってどんななんでしょうねえ」
「…ああ…」
清海の口から完全に降伏したような声が漏れると木曽山はその割れ目に指を這わせ
すでにしっとりと濡れている襞を擦った。
指の腹で突起を回すように触ると、清海の中から粘りのある液が更に溢れて来た。

「…そろそろ対価をお渡ししてもいいかな…」
指先を途中まで入れて木曽山が言う。奥まで入って来ないもどかしさが清海を襲う。
「あ…あ… ん… いやぁ…!」

指をそのままの場所で動かしながら、木曽山は言葉で責めるのも止めない。
「さっき、師匠とおかみさんのことはなんでも知ってるって言いましたよね。」
耳元で熱い息とともに囁かれる。
「師匠って…見かけどおりの絶倫ですよ。週に4、5回やってますよ。
…おかみさんと…」


107:木曽山×清海6
08/05/18 02:32:59 XWPJLPSG
「そんなこと、いやあっ…聞きたくないっ…」
まさかなぜそんなことを─清海は苦痛に顔を歪める。
懸命に木曽山から離れようと肩を押し戻そうとするが、
中に入れられた指が与える刺激からも逃れられない。

「もう、いや…やめてぇ…!」
「何をですか?」
かすれる清海の声を聞きながら木曽山は指を突然最奥へと突き入れた。
「ああっ!」
清海の身体が快感にのけぞる。やっと奥まで到達した指に腰がゆらめく。
木曽山の指の動きに合わせるように、白い美しい肢体が波打つ。
もうこの交わりからは離れられない…ついに清海はそう感じ始めていた。
「これ、やめましょうか?それとも…」
一番感じるポイントを強く刺激しながら木曽山は聞く。
「取引、やめましょか?」

指を引き抜くと、木曽山は再び大きく張り詰めた自身を
清海のぬるぬると熟れきった入り口に押し当てたが、そこで動きを止めた。
「あ・・ぁん…」
今にも突いて来そうで突いて来ない、またじらされて悶える清海に
もういちど答えを確かめる。

「僕の入れて欲しいですか、それとも
もっと聞きたいですか、師匠とおかみさんのこと─」

奥の疼きにはもう耐えられない…
快感に、朦朧とした意識の中清海は答えた。
「来て…お願い…はやく──!」

口の端をあげて木曽山は一瞬笑うと、
すぐに清海の中に猛り狂ったそれを付き立てた。


108:木曽山×清海7
08/05/18 02:36:30 XWPJLPSG
行為のすべてが終わった時にはすでに日はどっぷりと暮れていた。
いつのまにか服を着ていた木曽山がジャっと音を立ててカーテンを開けた。

大阪の夜の街はネオンや信号や電車の明かりで美しく彩られている。
「夜景が綺麗ですね」
そんなのなんの意味もないこと…と清海はうつろな目をして思った。

「僕は破門にはなりません。また師匠のところへ戻ります。」

靴を履き、部屋の鏡を見ながら髪を直す。
そして清海の足元をすっと通り過ぎ、ドアの前で立ち止まった。

「取引、再開したかったらいつでもどうぞ。」
行為に入る前と同じ、明るい声で言い置くと、部屋を出て行った。

その間、ベッドの中で清海は身じろぎ一つしなかった。
心はただ空虚だった。

私、なにやってんだろ。
そうつぶやいて、はあ…と大きくため息をつく。すると
窓の外のキラキラ光るいくつもの色が、混ざり合って、にじんで、流れて来た…







以上です。
読んで下さった方ありがとうございました。
長いだけでたいしてエロくもなくすみません。
そしてA子もごめんなさい。幸せになっておくれ。



109:名無しさん@ピンキー
08/05/18 04:39:39 QMMuToSj
>>102
淡い期待が踏みにじられた上この仕打ち。A子カワイソス…。
つうか木曽山鬼。しかもしたたか、超したたか。破門の危機に全然懲りてね~!
奴はドSだと踏んではいたけれど、こりゃ恐竜師匠とB子の手におえんね。
もう早く四草師匠に死ぬほどおごらされるといいよw
切なくも哀れなA子の姿に涙…GJでした。幸せになれよ~!

110:名無しさん@ピンキー
08/05/18 09:49:42 XWPJLPSG
>102です。
>>109さん、ありがとう。
木曽山はドSにしか書けません。
抱きながら木曽山が景清を聞かせるっていうエピも
入れたかったんですが、長くなるのでやめました。

こんなひどい話やっぱりうけないみたいですね。
反省…


111:名無しさん@ピンキー
08/05/18 10:08:46 PWWc+u1M
乙です
A子には幸せになってほしい
(´・ω・`)

112:名無しさん@ピンキー
08/05/18 11:44:01 sYOiwyQ3
>>110
ちょっと待ってくださいよ~!
朝読んでそのあと2度寝しちゃっただけです!
すごい良かったですよ!
嘘山の嘘がバレたときの黒A子と嘘山のやさぐれ具合が好きだったので、
こんなお話にしてもらえて感謝です
景清聞かせるってのもさらにドSでイイ!!GJでした

113:名無しさん@ピンキー
08/05/18 11:59:48 KRDK3o28
倉庫
enyohaku34.web.fc2.com/omoya.html
ページ内安価機能しませんのでご了承を。

114:名無しさん@ピンキー
08/05/18 12:39:31 XWPJLPSG
>>111>>112さんどうもです。
景清聞かせるの入れた方が良かったですね。
でもまた更に悲しい話になるんで、複雑です。

>>113さん感謝!多謝!

115:名無しさん@ピンキー
08/05/18 13:39:59 +x72m4dK
>>113
ありがとう。ありがとう。

おぢさんもちょっとA子ちゃんで妄想投下しちゃおうかなハァハァ。
B子×A子。百合。ぬるいエロあり。

設定は聞かぬは一生の箸週の小浜完結編から。
駄目なかたは底抜けにスルー願います。

116:B子×A子1
08/05/18 13:42:06 +x72m4dK
小浜での落語会も無事終って。里帰りも明日までという夜。
私は家族にちょっぴり嘘を吐いた。
―草々兄さんらが心配やで、一日早く大阪に帰るわ。

今、私はエーコの家にいる。

ドアを開けたエーコはぎこちなくだけど、それでも私を迎え入れてくれた。
「今日お父さん、お母さんの病院泊まるから私ひとりなんよ」
知ってる。だから来た。
「へえ、そうなん」
知らないフリしてエーコの入れたお茶を飲む。
なんとなく、言葉が途切れて沈黙が落ちる。
「…なんであの時来たん?」
エーコの問い。あのお見合いの日のこと。

「…いやなんです。あなたのいってしまうのが」
答の代わりに詠唱する。
高校の時に読んだ、智恵子抄の一節。
「あなたがお嫁にゆくなんて」

 花よりさきに実のなるやうな
 種子よりさきに芽の出るやうな
 夏から春のすぐ来るやうな
 そんな理屈に合はない不自然を
 どうかしないでゐて下さい

初めて読んだ時、駄々っ子みたいや思とったけど。
今ならわかる。光太郎と同じ気持ちになった今なら。
「いやなんです」
 あなたのいつてしまふのが―
あの橋で別れた日のように。
今度は私がエーコを抱き締めた。

エーコの部屋でふたり服を脱いで。
一緒にベッドに入る。
なんや、初めて大阪に出た時。エーコのマンションに転がり込んだ夜を思い出す。
エーコの顔、こんな近くで見んの久し振りやな。
「ビーコ、胸おっきいね」
小学校の時からやもんね。小さく付け加えるエーコ。
「見とったん?」
「…プールの時とか体育の着替えの時とか」
はにかんで少し笑うエーコ。
「エーコこそモデルみたいやん」
エーコがかわいい。エーコが愛おしい。

お互いにお互いの胸をそっと撫でる。
啄むような優しいキス。
エーコの指がためらいがちに乳首に触れてくる。
「…ビーコ……ええかな?」
「ん……ええよ」
エーコの顔が私の胸に埋められて、おずおずと乳首に吸いついてくる。
(エーコ、赤ちゃんみたいや)
ちゅく、ちゅく、て。
無心にしゃぶっているエーコの幼い唇。

私には、小浜にも大阪にもいっぱい甘えられる人がいるけれど。
エーコはずっとひとりで。甘えることなんか許されなくて。
お母さんのこともお父さんのことも製作所のことも、みんなひとりで背負い込んで。
(…こんなに、細い肩やのに)
いじらしくなって、胸の中のエーコの頭を何度も撫でた。

117:B子×A子2
08/05/18 13:45:43 +x72m4dK
「…ありがと、ビーコ」
しばらくの間、私の胸に吸い付いていたエーコは恥ずかしそうに顔をあげた。
今度は私がエーコの胸に顔を寄せる。
「やっ……いやや、ビーコ」
「なんで?」
「だって、私、胸ないし」
「そんなことない」
エーコの胸、ぱんって上向いててすごくかっこええし。
ちょっとふざけて、ぱくんて頬張ってみる。
「や、あんっ、ビーコ…」
くすくす笑ってるエーコ。
考えたら、ずっとエーコの笑う声聞いて無かったな。
うん。ここんとこ、ずっと。
そう思って、わざと脇とかお腹とかこちょこちょくすぐってやる。
「や、も、ビーコってば!」
そんなことしてたら、お仕置みたいにエーコが下に手を伸ばしてきた。
「…あ、ひゃっ!」
「ビーコ、濡れてる…」
少し低い声で囁いてくるエーコ。
「…エーコかて」
私も、同じように触れる。
目と目が合う。キスをする。今度はもっと深く。
「……んんっ……あっ…や…」
腿と腿を絡めて。胸と胸を合わせて。
私の指がエーコの中に。エーコの指が私の中に。
なんにも考えないで、キモチイイことだけ。
ふたりで。一緒に。

疲れきって、私の隣で眠るエーコ。
エーコの寝顔を見ながら考えていた。
エーコが大阪に来た理由。
―あわよくば草々くんとより戻したい、それが大阪きたほんまの理由やって思うで
咲さんはそう言ってたけど。
咲さんには悪いけど、エーコはそんな子やない。私がよう知ってる。
―私やった筈やのに!
―草々さんの隣におって草々さんのこと支えんのは、ほんまは私やった筈やのに!
あの時、草々兄さんの名前を叫びながら、エーコが本当に呼んでいたのは。

タスケテ タスケテ タスケテ ビーコ

大阪でエーコが助けを求めてたのは、元カレの草々兄さんではなくて、私やった。
愚図で根性無しで考え無しのこの私やった。
―ごめん、エーコ。すぐに気づいてあげられんで


朝。
まだ暗い内にエーコの家を出る。
早起きのお母ちゃんに見つかったらことやし。

「…ごめん、あんなことしといてなんやけど、まだ私……」
きまり悪い顔で見送るエーコに、私は笑いかけて言う。
「ええよ、ゆっくりで」

あなたと出会ってから。
すごくすごく遠回りになってしもたけど。
今度は逃げへんから。
ずっとずっとそばにいるから。
待っててな、エーコ。

おわり

118:名無しさん@ピンキー
08/05/18 21:24:06 ZE/Qfolc
ごめ…過去ログ倉庫って、携帯からは見られへんの?(;_;)

119:名無しさん@ピンキー
08/05/18 22:03:36 KRDK3o28
倉庫、うっかり文字コードEUCやったからSJISにしたんやけど、
それでもhtmlだと重すぎなんですな。ま、そりゃそーだ。

もちょっとまっとくなはれ。再細工します。

120:名無しさん@ピンキー
08/05/19 08:20:08 SNICKga5
>>116
GJ!久々の百合ですね。はからずもドキドキ致しました…。
ビーコ攻めは今までないかも。新鮮でした。

121:名無しさん@ピンキー
08/05/19 08:20:45 SNICKga5
尊健×若狭投下させて頂きます。
はっきりいってひどい話です。レイプ系。でもエロはぬるい感じ。
時期は小草若が尊健を殴り飛ばした瞬間から。
その時草々はおらず、代わりに若狭が店から少し早いタイミングで出てきています。
前振りも長いですが、そんなので良ければ読んでやってください。

122:尊健×若狭 1
08/05/19 08:21:17 SNICKga5

それは、一瞬のことだった。

小草若兄さんが番組降ろされることになってしもた、その番組の打ち上げの最中。
自棄になったようにカウンターでお酒をあおっていた小草若兄さんは、一人で店を飛び出して。
慌てて後を追った自分の目に映ったものは、言い争う小草若兄さんと、尊健兄さんの姿。

酔っ払って足元のおぼつかない尊健兄さんが、見下すようにあざ笑う。
「お前みたいな落語家とも言えんような奴が一門会かぁ!?また寿限無でもかけるんか?」
「ああ!!?なんやとコラ! もう一回言ってみんかい!」
「おお何回でも言うたるわい! 前々からお前は気に入らんかったんじゃ! 落語も出来へんくせに
 テレビばっかり出くさって。あんな一発ネタで何年かもったんが不思議なくらいなんじゃ!
 お前とこの師匠言うたかてお前の親父やろがい! お前に才能あるとでも思とんか?
 やとしたらとんだ親バカもええとこなんじゃ!!!」
師匠の名前が出た瞬間、小草若兄さんの目がきつく吊りあがり、尊健兄さんを睨みすえる。
「師匠は…師匠は関係ないやろが!」
はん、と尊健兄さんは鼻で笑う。
「関係大有りじゃボケ!親父がおるからお前みたいなもんが落語家名のっとられるんやんけ!
 親バカ極まれりの、才能の有る無しも見分けられん耄碌した師匠なんやったら」

(やめて)

「復帰なんてせんと、さっさと引退したらええねん」
 
その言葉が、尊健兄さんの口から飛び出した瞬間。
小草若兄さんが、尊健兄さんを殴り飛ばした…。
尊健兄さんは、あざ笑った表情のままスローモーションで弧を描いて吹っ飛んで。
そして、道路に倒れこんだ。
あんまりにもそれは漫画の1コマのような風景で、現実のことのようには思えなかったけれど
自分のこぶしを見つめて呆然と立ち尽くす小草若兄さんの姿だけが…それを現実のことだと告げていた。



123:尊健×若狭 2
08/05/19 08:21:55 SNICKga5

「小草若、にい、さん…」
ゆるゆると自分を振り返った小草若兄さんの顔は。
「やって、もうた…」
はは、と漏れる空疎な笑みは、もうそれは笑顔とはとても言えないほどに虚ろに歪んでいて。
「これで…もう、、、一門会は、、わやに…なってもた」
切れ切れの声はかすれていて、もうそれは聞いていられないほどで。
「…親父にも、、見捨てられてまう…」
あまりに悲痛で、よるべない子供のように途方に暮れていて。

このままでは、このひとが、こわれてしまう。
やさしいこのひとが。あかるいこのひとが。
あんなに私を救ってくれた、このひとが。

よろめくように立ち去るその姿に、なんと声をかければ良かったのだろう?
自分は、このひとのために、いったい何ができるのだろう?
ただその場に立ち尽くすしかなかった――。

「わっ!尊健兄さんどないしたんですか!」
「あかん、完全に伸びてはる…。あ、若狭ちゃん!何があってん?」
なかなか戻ってこない尊健兄さんを心配したのか、土佐屋の若手落語家さんたちが集まってくる。
どうしたら。
迷ってる場合じゃない。私が…私がなんとかせんと。
兄さんを、徒然亭の一門会を…無くすなんて、何よりもつらいことなのだから。
すうっと小さく息を吸い、覚悟を決める。

「…私のせいなんです。ごめんなさい…」

ははは、と乾いた笑いが起きる。
「んなわけないやろ若狭ちゃん!女の子の力でこんな腫れ上がるほど尊健兄さんを
 ふっとばせるわけないやんけ」
「違うんです。尊健兄さん酔ってはって、タイミングと当たり所が悪かったみたいで…」
できるだけ信じてもらえるように、そううなだれてみるけれど。
「…若狭ちゃん。何か隠しとるんちゃうか?」
不審げに自分を見つめる目。目。目。
あかん…信じてもらえへん…

その時、ううっとうめき声を上げて、尊健兄さんがうっすらと目を開けた。



124:尊健×若狭 3
08/05/19 08:22:23 SNICKga5

上のほうから、ざわざわと声がする。聞きなれた声がいくつかと…、柔らかい、けれど必死めいた女の声。
(…あ、何や?…っ痛ぅ――!)
冷たく固い感触で、自分が道に横になっていることに気づき、尊健は身を起こしかけ、
とたん頬の激痛に襲われた。ずいぶん酔って頭がくらくらしていることがわかる。
けれどこの頬の腫れ上がった感じは何だ?
言うことを聞かない腕を無理やり持ち上げ触れてみると、鋭い痛みと予想以上に膨れた感触。
(おいおいおい…何やねんこれ? 来週師匠との二人会やいうのに)
重いまぶたを持ち上げると、そこでは弟弟子たちと…徒然亭若狭がなにやら言い争っている最中で。
(徒然亭…、、そういえば小草若の奴と――、あいつに殴られたんか)
酔った勢いもあり、小草若にはずいぶんいろいろと言ったような気が。いや言った。

「隠してなんかいません!私が尊健兄さんを殴ってしもたんです!」

叫ぶような若狭の声。
(こいつ、、、何を言うとるねん)

「ねえ尊健兄さん!そうですよね!?本当にすみません、いくら勢いとは言え、殴ってしもたりして…」

地面に横たわった自分のそばにかがみこみ、必死の表情で若狭は謝る。
その大きな目に、懇願の色を濃く宿して。
(お願い、尊健兄さん――!)
思わず、口を開いていた。

「いやええねん。急にお前の尻触った俺が悪いねんから。俺の自業自得や」
そして、あっけにとられる弟弟子達に向けて言い放つ。
「酔った勢いでのこんなんが知れたら土佐屋の恥や。お前らも師匠にも言わんといてくれや。頼むわ。
 二人会には響くけど、身から出たさびや。俺が酔って勝手に怪我したことにしてくれ。」

「兄さんがそう言いなるんやったら…。確かに女のケツ触って殴られたやなんて土佐屋の恥ですしね」
「ま、兄さんらしいけどな、はは」
「若狭ちゃんもそういうことで、頼むわ。ごめんな。」

大事にならずにすむと、少し安心したように弟弟子たちは軽口をたたく。
何か冷やすもんもらってきますわ、と店の中に戻っていく弟弟子たち。
残ったのは…若狭と、自分だけ。
そばにかがみ込んだまま呆然としたように成り行きを見守っていた若狭が、尊健を見つめる。
緊張にこごっていた表情がすうっと和らぎ、ほんの少し柔らかいあどけない微笑みを浮かべて。
「尊健兄さん…ありがとうございます、話、あわせてもろて…」
けど、と腑に落ちない表情で若狭は続ける。
「なんで、、、あんな泥を被るようなことまで言うてくれなったんですか? それに二人会て―。
 そんな時にこんなことになってしもたのに、なんで、そんなかばってくれなったんですか?」

何故だろう。
自分でもわからない。きっと師匠にはこっぴどく叱られるやろう。
何しろ楽しみにしとった二人会がわや、や。延期は可能だとは言え、練習を積んできた自分にとっても
それは身を切られるようにつらいことのはずで。
小草若に(おそらく)ひどいことを言ったのは自分だという負い目があるからか?
復帰をかけた徒然亭の一門会が、自分に怪我をさせたことで台無しになってしまうからか?
確かに徒然亭草々の上方落語会復帰を好敵手として待ち望んではいるが…。

いや。違う。

懇願するような若狭の目が、必死の表情が自分にむけられたあの時。
その願いを叶えたいと思った。どうしようもなく惹きつけられた。
自分は――若狭のために?



125:尊健×若狭 4
08/05/19 08:22:53 SNICKga5

徒然亭若狭。
すっかり廃れた徒然亭に好き好んで入門した少女のことは、ちょっとした話題になっていた。
「見ましたか尊健兄さん?徒然亭に入った子。ちょっとええですよね」
好色めいた薄ら笑いを浮かべながら自分にそう言ったのは誰だったか。
ちょこまかと小草若や草々の周りで駆け回る、小柄な少女。
あどけない可愛らしい童顔に、それとは不釣合いなほどのやけにグラマラスな肢体。
確かに抱き心地はよさそうだと思ったが…ただそれだけだったはずなのに。
けれどあの時自分にむけられた眼差しが、悲壮な覚悟をのせた表情が――
目に焼きついて、離れない。

「何でやろな。それより若狭、お前何で自分が殴ったなんて言うたんや?小草若に惚れとるんか?」
とたん若狭は真っ赤になって首をふる。
「そんなんやありません!もうすぐ一門会が…何とかせなって思うたら」
「そう言うたかて、お前が殴っても一門会に響くんは同じやないか。」
「あ…」
今更気づいたかのように言葉を無くす。
小草若を…守ろう思うた、か。
自分が破門になるかもしれへん危険も忘れて。
そこまで大事か、あの男が。
そのことに気づくのとほぼ同時に、心にゆっくりとどす黒い影が広がり始める。
先ほどまでは考えもしなかったはずの卑劣な言葉が口から滑り落ちるのを、止めようもないほどに。

「一門会…大事か?大事やろな。徒然亭の復活がかかっとるんやもんなあ。
 俺がほんまのこと、言うたら…わややけどな。」

わけがわからないと言うような訝しげな顔で、自分を見つめる若狭。
ゆっくりと身を起こしながら、その可愛らしい顔ににやり、と笑いかける。
自分が自分ではないような感覚。どうしてこんなことを。

「取引、といこうやないか。若狭ちゃん?」

すうっと蒼ざめる若狭。自分がどれほど今、下劣な笑みを浮かべているのか。

「明日、仕事明けのTV局前で待っとるさかいに、な」

   ************************

「へぇ…約束、守ったんか。若狭」
凍てついたような固い表情で、彼女はそこに佇んでいた。
思うとる男のために、そこまでする…か。
その姿は実に――
「健気なことで」
けれど…その健気さがいっそう、尊健の胸に影を落とし込む。

なんでこんなことに。若狭は思う。
尊健兄さんは自分を、小草若兄さんをかばってくれたのだと。
ちょっと怖そうだけど、口はとんでもなく悪いけど本当は優しいひとなんやと思ったのに。
何故?急に表情が険しくなって、自分を脅迫するようなことを。
けれど…昨日の小草若兄さんの顔を思い出すと、それはとても断れることではなくて。
怖い、とても。よほど兄さん達に相談しようかと思ったけれど、それも出来なかった。
怖い。怖い。怖い。
たすけて、、――兄さん…。

「ほな、いこか」
軽い口調で言って、尊健兄さんは歩き始める。

  

126:尊健×若狭 5
08/05/19 08:23:27 SNICKga5

だん、と部屋のドアを閉じて鍵を閉める。がちゃり、という音に、若狭が身をすくめるのがわかる。

「さて、と。なにからしてもらおうか」

そう振り返りにやりと笑うと、若狭ののどからひっと怯えたような声が漏れる。
蒼ざめた白い顔。極度の怯えで見開かれた大きな目。

「初めてなんか?何しろ徒然亭若狭は、兄弟子に大事にされとるいう評判やからな。
 他のとこの男には手え出されてへんかっても、兄弟子らにやられとるか思うたけど」

それは真実、上方落語界ではもっぱらの評判だった。
徒然亭の兄弟子どもは、そろいもそろって妹弟子につく虫を払いまくる。
若狭に声をかけようとすると、決まって誰か一人はついとる兄弟子にぎろりと睨みとばされる。
若狭をガードするかのように、できるだけ一人にさせない。
若狭のことをいろいろ聞こうとしただけで、不穏な気配が漂う。
そうやって掌中の珠のように守ってきた可愛い可愛い妹弟子を、自分に汚されるとは。

「そんな、兄さん達は――、あっ!」

抗議の言葉を口にしかけた若狭の後ろに回り抱きすくめ、その滑らかな白い首筋を吸い上げる。
両の手のひらで胸を揉みしだく。噂どおりの手のひらに余るボリュームの柔肉が手のひらの中で
心地よく踊る。たまらず、カットソーの下から手を潜り込ませ、ブラを上にずらし上げ、直接に
胸をもみ上げ、指の間でその先端を挟み込むように刺激する。
「や、いやぁ…」
細い涙声が若狭の口から漏れる。けれどその涙声も、今は自分を煽り立てる材料にしかならない。
乳首を押しつぶすように指先でこね回す。
そのまま左手をジーンズの前に滑り込ませる。薄いショーツの感覚を指でたどり、秘所をその上から
ゆっくりと撫でる。
その瞬間、若狭の体がびくりと震え、自分から逃れようとする。
「いやあっっ!だめぇ、お願いやから…っ!」
けれどがっちりとその腰を抱え込み、逃れようとするその体を引き寄せる。
「もう遅いて、若狭…。ここに来てもうた以上は、覚悟、あったんやろ?」
「やけど、やっぱり、、、ああっ!」
構わずジーンズのジップを引き下げ、ショーツの前からあたたかい茂みへと指をすすめる。
つぷり、とした感触を探り当て、指の腹を滑らせた瞬間。
「ひゃあああんっ!や、何、そこ嫌ああっ!止めて嫌あっ!」
「へぇ…ここが好きなんか。自分でしたこともないんか?」
言いながら執拗に蕾を指の腹でこねる。奥から蜜があふれ出し、指にまとわりつく。
「ひ、あう…んっ、や、ああっ…」
答えることも出来ず、若狭はびくびくと体を震わせて喘ぎをもらす。
蜜をからめて蕾をなぞるたびに、面白いように跳ね上がる細い体。
やがて、その声に淫靡なものが混じり始め。尊健の指の腹がその蕾を押しつぶすように力を込めた時。
細い悲鳴を上げてがくがくと身を震わせ、若狭の膝が崩れ落ちた。
荒い息をついて座り込む若狭の顔を覗き込む。
自分の身に何が起こったのか把握していない、呆然とした表情。
その目は涙と熱で潤みきって、半分開いて荒い息をつく唇はしどけなく、けれど艶かしくつやめいて。



127:尊健×若狭 6
08/05/19 08:24:05 SNICKga5

「若狭。いってもうた、な」
まだ呆然としたままの若狭を四つんばいにさせ、ジーンズとショーツを引きおろす。
「初めては好きな男が、良かったやろうに、な。」
そう耳元でささやいて、ぬるぬると潤みきった秘所に己自身をあてがう。
「…ひ…っ!いやああっ!助けてぇ!兄さん!そうそう、にいさぁん…っ!」
四つんばいの体勢のまま、必死で前にのがれようとする若狭。草々の名を呼びながら。
「へぇ…てっきり小草若に惚れとるんかと思っとったけど、草々やったんか」
けれど逃さない。白い腰を抱え込み、自分へと引き寄せる。
「好きでもない男守るために、ここに来たんか。ほんまに健気やな、けど…」
その健気さが、草々を呼ぶ声が。
自分の思いは決して叶うことがないと、尊健に痛いほどに思い知らせるから。

「残念やったな、若狭」

己自身を、後ろから若狭の中へと突きたてた。

上がる悲鳴。自分の一物を拒む狭い狭い若狭の中へ、無理やりに奥までねじ込む。
硬直する若狭の体。反り返る白い背。苦痛に耐えかねて漏れるうめき声。
すかさず腰を引き、また最奥まで突き上げる。
それを繰り返すたび、若狭の中は徐々に柔らかに、ざわざわと尊健自身に纏わりつきはじめる。
秘所からあふれ出す蜜が、激しい動きに白く泡立ち滴る。
「くっ、ああっ、、、はあっ」
のどから漏れる苦痛のうめきが、少しづつ色を帯びる。
腰をたたきつけるたびに揺れる白い尻。ふるふると震える腰。
柔らかくあたたかい若狭の中は、尊健をきつくきつく締め上げる。
心の中のどす黒くよどんだ澱を振り払うように、尊健は繰り返し腰をたたきつける。
そして――若狭の中がひときわ大きくたわんで尊健自身を締め付けた瞬間。
尊健は若狭の中に、自分自身を放つ。
頭の中に閃光が走るような感覚と、そして限りない罪悪感とともに。


若狭はくたり、と力を失って倒れこむ。
秘所からは、尊健と…自身の蜜がまじりあったものがつうっと白い太股を伝って落ちる。
半ば気を失ったその顔は、幾筋もの涙の跡で汚れて。

俺は。
俺は、なんということを。

ただ、、ただこの女を。
自分のほうへと目を向けるはずもないこの女に、ひと時でも自分を見つめてほしいと。
それが。
限りない自己嫌悪。どうしようもない執着心。
自分の本性を――思い知らされた、気がした。

意識を失った若狭の汚れた体をそっと清め、その涙を指でぬぐう。
力を失った体をベッドへと運び、そっと横たえる。
柔らかい曲線を描く体にシーツをかけ、ゆっくり髪を撫でる。その瞬間。
「そうそう、にいさん…」
花びらのような唇が、小さくその形に動いた。



128:尊健×若狭 7
08/05/19 08:24:37 SNICKga5

目が覚めたとき、なぜかベッドに横たわっていた。
体が、泥のように重い。まぶたさえ持ち上げるのがおっくうなほどに。なぜ。
(ああ、そうか――)
尊健兄さんと、自分は。
けれど、心が乾いてしまったかのように何の感情も浮かび上がってこない。
目を開けて辺りを見回すと、それに気づいた尊健兄さんがこちらを見つめた。
その顔は…なぜか今にも泣きそうな子供のように見えた。

「……すまんかった、な」

小さく、小さく尊健兄さんの声が響く。

「こんなこと言うても、もうどう償いようもないんやけど、な…」

「やくそく…お願いします。小草若兄さんのことは…」

「わかっとる。言うたりせえへん。…初めから、そんなつもりはなかった」

「…え?」

「…何でもない。ほんま、悪かった…。今日のことは忘れ。言うても忘れられん、か。
 こんなひどいことされたんやからな。恨んだらええ」

自嘲するように言う尊健兄さんの顔は、言いようのないほど苦しげで。
今にもその目からは涙がこぼれ落ちそうに思えて。
なぜだろう。あんなことをされたのに。乱暴に扱われたのに。
心から憎むことなど、なぜか出来そうには、なかった…。

 ****************************

「やくそく、お願いします。小草若兄さんのことは…」
想い人ではない男を、徒然亭を守ろうと一心に自分を見つめる若狭の目は。
あの、自分を虜にしたときと同じ眼差し。
どうしようもなく惹きつけられて。
自分の思いはもう決して叶えられることはありえないのに。

この想いから、逃れられる日がいつかくるのだろうかと。

ただ、それだけを思った――。


<終>



129:名無しさん@ピンキー
08/05/19 08:25:14 SNICKga5
以上です。お粗末さまでした。
エロ以外の部分がとんでもなく長くて申し訳ありません。
いや、尊健はもっとええ男やと思ってます。尊健ごめんなさい。

130:名無しさん@ピンキー
08/05/19 15:44:52 HVYJZRyO
GJです!
前の方のスレで同じシチュをリクエストしたことがあるんすよ
今になって願いが叶うとは!
しかもリク以上に切ないストーリーで嬉しいっす
アリガトございます!

131:名無しさん@ピンキー
08/05/19 20:51:18 Aeh4KfYw
GJ!
ひどい話と言いつつ、苦しい片恋で思わず鼻の奥がツーンと…
手に入らないとわかりきってるのがまた切ないなあ。
なにげに若狭親衛隊と化してる兄弟子エピにも萌えました。

132:名無しさん@ピンキー
08/05/19 22:13:42 TcBRc0da
GJです!!
ひそかに尊建→若狭好きだったので読めて嬉しいです。
しかもメイン二人に加えて小草若の心情を考えるとさらに切ない…
話に引き込まれて長さも全然気になりませんでした。

133:名無しさん@ピンキー
08/05/19 23:24:36 yCdj5HTs
こそっと倉庫復活

134:名無しさん@ピンキー
08/05/20 00:48:03 x1gr6u0+
>>133
管理人さんですか?
底抜けに乙です!
当方携帯専ブラ使いですが、ばっちり取り込んで読めました
ありがとうございます
あらためて読み返すと名作多くて楽しい!
職人の皆様ありがとうございます

135:名無しさん@ピンキー
08/05/20 00:49:28 sQ/VFe8Q
おお倉庫のちりとてカラーが素晴らしい!
>>133さん乙です

136:名無しさん@ピンキー
08/05/20 01:10:12 vvAifnA5
>>133
底抜けに~乙です
二席目の草々×若狭初夜の話が読めて嬉しい・・・

137:名無しさん@ピンキー
08/05/20 03:19:38 pfohCRNW
>>136
あれはほんに名作だったねぇ

138:名無しさん@ピンキー
08/05/20 03:45:01 LEPqD4FE
>>133さん、自分も携帯からなんですがやっぱり読めませんでした。どうやったら読めたんですか?
それと専ブラって何でしょうか?
質問ばかりですみませんが、良かったら教えて下さい。

139:129
08/05/20 06:16:55 sLwJv+DL
>>133
底抜けに感謝です!いつでも職人さん達の名作の数々が読み返せると思うと
もうこれでDVD発売&スピンオフまで生きていけそうな気がします。
噂の2席目草々×若狭初夜も、早速読んできました。感激。
そのほかの作品も、笑いあり涙ありの名作があって本当幸せ。

>>130-132
需要少なめカプしかもレイプ系で拒否反応示す方も多いと思われる内容で、
実は戦々恐々として投下しましたので、読んで頂けてとても嬉しいです!
>>130さん以前リクなさっていたとは!第二席でしょうか?
実はさっき読んだら、第二席>>70さんと尊×若の基礎設定丸被りだった…
今まで過去スレ読めず存じ上げなかったとはいえ、申し訳ありません。

しかも今気づいた。 尊健→× 尊建→○  ごめん鼻毛…orz

140:名無しさん@ピンキー
08/05/20 22:25:09 sot938Rr
>>138
ヒント
半年ROMれ

自分の力で何も調べようとせず、他力本願で楽して美味しい汁をすすろう
とする行為は、2chでは忌み嫌われるよ

141:名無しさん@ピンキー
08/05/20 23:46:45 x1gr6u0+
えー、祝・保管庫!ということで、ひとつ投下させてください。

四×黒A子でエロあり
わりきった大人の関係

少し前に投下された職人さんの嘘×黒Aがすばらしかったので、四バージョンで作ってみました
最初少しだけ草原兄さん&小草若ちゃんが登場
お好みでないかたはスルー願います

142:四×清1
08/05/20 23:49:49 x1gr6u0+
「エーコちゃん、今日はえらいすまんかったなぁ!いろいろバタバタしてしまって。また暇なときに遊びに来てや!」
徒然亭をあとにして、草原、小草若、四草、そして清海の4人での帰り道。
小草若が懐かしさと生来のサービス精神からあれこれ話し掛けていたものの、清海は半分うわの空だった。
二人の絆の強さを見せつけられ、さらには妻として、人としての懐の広さまで…。
悔しさや情けなさで清海の頭はいっぱいだった。
「まぁなんか後味悪かったし、飲みなおすか!」
これまた気遣いの人─この場合、単なる酒好きの人、かもしれないが─草原が誘う。
「どうやエーコちゃん、みんなでどっかで飲みなおさへんか?」
「えっ…いえ…、せっかくですけど、明日早いんです。すみません。また今度誘ってくださいね」
今は小草若のペースについていけない。それにあの二人の話が出たりしたら耐えられない。
「そうかー。残念やなぁ。」
「じゃあ僕が送っていきますよ」
「えっ!?いえ、いいです…みなさん飲みにいかはるようやし…一人で大丈夫です」
「僕酒飲めないんで帰ろう思うてたんで。ほな兄さんらまた。」
「そうかー。じゃあ気ぃつけて帰りやー」
「しーそぉ、エーコちゃんに変なことしたら承知せーへんからな!エーコちゃん、またなぁ!」

とまどいつつも二人に会釈をして、さっさと先を歩く男のあとについていく。
「ホンマにすいません…気ぃ遣ってもろて…」
「ええんですよ。つかまったらなかなか帰られへんし。ちょうどよかった」

─沈黙が続く。沈黙を避けるために無理やり話す男は青くさい、黙っていれば女が勝手に話すのに、
というのをどこかで読んだ記憶があるが、いざ平気で無言を押し通されるとそれはそれで困るものだ。
でも今はこの沈黙が心地よかった。ぺらぺら話したい気分ではなかったが、
かといって一人になったら孤独で胸が張り裂けそうだ。あの騒々しくも温かい空間から一人、ホテルの狭い部屋に戻るなんて─
嫌でも今日のできごとを振り返り、後悔の念にさいなまれる。それは嫌…。

「あの…もし、お時間あったら、ちょっとだけつきあってもらえませんか?飲まなくてええですから…」
「……」
四草は少し驚き、鋭い目を清海に向けた。
ややあって、
「……ええですよ。」
考えの読めない顔をしてひとこと答えた。
「ありがとうございます…」
「でも、僕も一応芸人の端くれなんで、このあたりで元キャスターの子と二人っきりいうのは、ちょっと。」
そこまで考えていなかった。そういえばそうだ。
「…それもそうですね…」
「部屋、行ってもええですか?」
「え…」

143:四×清2
08/05/20 23:52:50 x1gr6u0+
「狭いですけど…どうぞ」
清海の泊まっているホテルの部屋。自分はベッドに腰かけ、四草には鏡台の前のいすをすすめた。
「よかったらこれ、使うてください」
備え付けのスリッパを差し出す。二人して外履きからスリッパに履き替える。

突然の訪問だったが、荷物は整理整頓されていた。これがもう一人のキヨミなら、
いまごろ慌てふためいて片付けるところやろな、と四草の頭に浮かび、ふっと笑みがこぼれた。

清海はグラスを用意し、途中、コンビニで買いこんだビールやつまみ、それに四草用の烏龍茶を袋から取り出した。
四草がビールを開け、グラスに注ぐ。自分用に烏龍茶も。
清海にグラスを手渡すと、自分もグラスを手に取り、何も言わずに清海のグラスとあわせた。
かちりという音だけが部屋に響く。
「か~んぱ~い!」などという、この状況にふさわしくない言葉を言われなくてよかった、と清海はほっとした。

「ふぅー。おいしい…」
「酒はイけるクチでしたっけ」
「まぁ、そうですね…」
「そりゃ、ええですね」
「ええ…」
四草は酒を無理にすすめるでもなく、かといって無関心でもなく、ビールが残り少なくなるとさりげなく継ぎ足した。
「落語家さんて…みんなそない気遣いのできるかたばかりなんですか?やっぱり、修行が厳しいせいやろか…」
「さぁ、どうでしょうね…草々兄さんはどないでした?」
「…!」
いきなり核心に迫られた。こうして近くで見つめられるとますます動揺してしまう。
何もかも知っている、とでも言いたげな瞳が怖い。
「…ええ、やさしかったです…」
「今でも兄さんのこと好いてるんですか?」
「えっ…」
「…」
「べつに…過去のことやし…私は…」
清海はグラスを強く握り締めて、のどの奥から絞りだすように答えた。…これじゃあ全然ごまかせていない。
目の奥がかっと熱くなってきたが、なんとか涙はこぼさないように耐えた。きっともう目元は赤いだろう。

144:四×清3
08/05/20 23:54:42 x1gr6u0+
「…っ」
酔いが回ったせいだと思ってほしい。グラスに残っていたビールを一気に飲み干す。
再び静かにビールが注がれた。そして、
「…あんたはなんも悪ぅない。悪いのは全部草々兄さんや」
そう言いながら四草の右手が清海の髪の毛をなで、耳のあたりから頬までやさしく触れた。
さっきまでとは違う、おだやかな笑み。
ちょっとどきりとしてしまった。

──この人はシラフだ。だからこれはこの人の手なんだろう…女を口説くときの。
わかっているが、今夜はその手に乗ってみよう。
私は酔っているし、すべてはお酒のせい。このルックスと女の扱いのうまさなら、遊び慣れているはず。
お互い後腐れなく、一晩だけのお遊び──

触れられるがまま、清海は目を閉じた。冷たい手のひらが熱いほおを冷やしていく。
いすから立ち上がる衣擦れの音がして、上からそっと抱きしめられた。
髪にひとつ、それから目元、そして唇にくちづけられた。
そのまま何度かくちづけを交わしたあと、シャワーを浴びてくるように促してくれた。
待たせぬよう、メイクを落としてさっと身体を洗い、清海と入れ替わりに四草がバスルームにいる間、ほんの少しだけメイクをした。
(何してるんやろ、私…。)
ふと虚しさがこみあげてきた。また目元が潤んでくる。
そんな思いを打ち消したくて、先ほどのビールを飲み、缶ビールのプルタブに爪をかけた。
「痛っ」
「どないした?…貸してみ」
髪をタオルでふきながら浴衣姿の四草が出てきて、プルタブを開けた。
「あ…ありがとう…」
「ん」
四草も烏龍茶を手に取り、コツリと清海の缶にあて、飲み干した。
清海も缶を傾けた。
「ええ飲みっぷりやな」
あごを少しあげてビールを飲む清海は、首から浴衣の胸元まで白い肌がのぞき、ほんのりと赤く染まっている。
「色…白いな」
四草の手が首筋から鎖骨のくぼみに触れた。
そのまま浴衣のえりもとを横に広げ、鎖骨にくちづけられた。
「…っ!」
酒のせいか敏感になっている肌に、甘く鋭い痛みが走る。
もう片方のえりもとも広げられ、今度は鎖骨の下、胸の上あたりにくちづけをひとつ。
「んっ…!」

145:四×清4
08/05/20 23:57:05 x1gr6u0+
実家に戻って以来、正直にいえばそういう機会はめっきり減っていた。要するに欲求不満だった。そこに酔いと手慣れた男。情欲は止められない。

四草はいすから立ち上がり、鏡台の明かりを落としてベッドに座る清海の横に移動した。
明かりはベッドサイドのオレンジ色の光だけ。
目を伏せてかすかにほほえむ四草の顔には、長いまつ毛が影を作っていた。
清海が四草の表情から目を離せないでいると、手が伸びてきて、清海の細い身体はすっぽりと腕のなかにおさめられた。
厚い胸板に顔が触れる。わずかに鼓動が速い。
髪をなでながら唇がおりてくる。清海は軽く唇を開き、舌を受け入れる。
どこか探りあっていたようなキスがどんどん深いものになる。
(気持ちいい…)
内から外から人肌に触れ、久々の感覚に清海は震えた。
素肌を求めて互いの手が互いの肌を暴いていった。
清海の両腕は四草の背中を抱き、四草は唇から首筋、鎖骨へとくちづけ、舌をはわせる。
同時に清海の身体のラインを確かめるかのように、指でなぞる。
耳の裏から首の横、肩を通って腕、指先、手のひら、腕の内側、わき…そして胸に触れ、
手のひら全体でゆっくりとその感触を堪能する。
そして先端に指先が触れると、清海の唇からこらえきれない吐息が漏れた。
「はぁっ…ああっ…!」
再び唇が重ねられ、この快感を伝えるかのように清海は四草の舌にからみついた。
「…兄さんとは…どこまでしたんや…?」
「…なんでっ…そんなことっ…あっ」
胸を攻めながら、もう片方の手は足に伸びていた。内股を指がはっていき、また緩慢な刺激が与えられる。
「答えなここでやめる」
「あっ…んっ…何も…何もしてへんっ…!」
「ふぅん…ほんまに?」
「…っ、ほんまですっ!」
予想通りではあるが一応確かめておきたかった。一晩限りとはいえ、兄弟子と肉体的にも「兄弟」は少々気分が悪い。
「そうか…」
そうつぶやくと四草は顔をはずし、胸の先端を口に含んだ。
「あぁん…いやぁ…っ」
待ち望んでいた刺激を与えられ、清海は高い声をあげた。
四草の背中にしがみついていた両手は、片方が四草の頭に回され、髪を乱した。
焦らすように内股をなぞっていた指は、熱く濡れた中心に差し入れられた。
「ああん、はぁ、ああ…!」
先ほどまでと同様、ゆるゆると鈍い刺激が繰り返し与えられた。身体がうずいてたまらない。もっともっと欲しい…!

146:四×清5
08/05/20 23:59:23 x1gr6u0+
「…っ!うっ…!」
清海は手を伸ばし、四草の昂ぶった中心を握り、動かしはじめた。
突然の愛撫に四草から思わず声が漏れ出た。
四草の唇と指から繰り出される刺激が心地よすぎて、清海の手は止まりがちになるが、
それがまた焦らされているようで、四草にはたまらないものだった。

すぐに挿れたい気持ちを抑え、四草は茂みに顔を埋めた。
「いやっ!…んっ!あんっ!いやぁっ…」
なめて転がす。舌を差し入れる。ひととおり試してから「中と外、どっちが気持ちええ?」と尋ねた。
「…んっ…そ…と……きゃあっ!」
執拗に舌で攻められ、清海からひときわ高い声があがる。
「あんっ!あんっ!あっ…いやぁ…!」
清海の身体が震え、果てた。
「はぁっ…はぁっ…」
清海がぐったりしている間に四草はゴムをつけ、両足を広げてぐっと中に入り込んだ。
「…んっ!ああっ」
「……はぁっ、、気持ちいい…」
互いの体温を感じ取り、中の感触を味わってから、四草が腰を動かしはじめた。「んっ!…はあっ!はあっ!」
久しぶりの圧迫感に清海は快感とも不快ともとれない妙な感覚であったが、少しずつそれが快感に傾き、
もっと奥まで欲しい、もっとなかをえぐって欲しい、と感じるようになった。
やがて清海も四草を求めて腰を揺らし、小刻みに四草自身を締めつけた。
清海の大きな瞳に官能の色が濃くにじむ。
「はぁっ…はぁっ…!」
四草のいつものポーカーフェースも崩れ、余裕のない表情を見せていた。
互いに高揚が抑えられなくなり、どちらからともなく唇を求め、激しく交わった。
キスのせいで清海の腰は高くかかげられ、挿入がよりきつくなる。
ますます二人は追い詰められ、ついに限界を迎えた。
「あっ!ああん!ああっ!」
「…はぁっ、出るっ…!」
ゴムをつけてはいたが、念のため直前に身体から引き抜き、外で吐き出した。
「…はぁっ…」
四草は自分の身体の後始末をすませ、ぐったりとしている清海の身体をタオルでふいてやった。
「…意外に…やさしいんですね…」
「…」
いつもならシャワーを浴びるところだが、情事の疲れと酔いに負け、清海はそのまま眠ってしまった。
薄れゆく意識のなか、「ごちそうさまです、エーコさん」という声が聞こえた気がした──

翌朝。清海が目を覚ますと、四草の姿はなかった。
空き缶やつまみがきれいに片付けられ、四草の着ていた浴衣は畳んで隅に置かれていた。
自分は…浴衣が着せ付けてある。
「さすが…ようやるわ」
清海の口から苦笑がこぼれた。

(終)

147:名無しさん@ピンキー
08/05/21 00:11:06 UYkAFKCR
初めてリアル投下に遭遇した!
GJです!!
いやぁ四草のキャラの立ってること立ってることw

148:名無しさん@ピンキー
08/05/21 01:15:56 Uiu/iruO
>>146
最後の黒A子がかっこいいw
乙です

149:名無しさん@ピンキー
08/05/21 01:15:58 AGSw8SLM
うお~!GJです!
今夜はイイ夢が見れそうです

150:名無しさん@ピンキー
08/05/21 03:13:42 l3L85CpP
GJ!!はじめて拝見するカプ、堪能しました!
四草すげ…こりゃふらふらっとなる子多そうだw黒清海もいい!
四草、敬語使いからの口調のシフトタイミングが見事と思ったです。
喜代美のこと思う、一箇所だけの四草主観の部分がなぜか切ないなあ…

151:名無しさん@ピンキー
08/05/21 03:19:16 l3L85CpP
連投ごめん。
他にも四草主観部分いくつかあるのに勘違いしてた。失礼しました。
自分、四草×喜代美フィルターで目が曇ってるのかもwまたの投下楽しみにしてます!

152:名無しさん@ピンキー
08/05/21 06:12:32 l3L85CpP
さらに連投になってしまいますがどうぞご容赦下さい。
小草若→喜代美 投下させていただきます。
時期は小草若失踪中。長めほんのすこしエロ。
相当鬱展開なので、そんな小草若を見たくない方はご注意ください。

153:夢から醒めた夢 1
08/05/21 06:13:21 l3L85CpP

(…兄さん。小草若、にいさん――)

愛しい愛しい、少女の面影を残したかつての妹弟子が呼ぶ。
いつも明るく笑んでいた顔を、悲しげにゆがめて。

「――!」

目が覚める。こじんまりとした簡素な部屋。既に見慣れた風景が小草若の目に映る。
そう、徒然亭でも己のマンションでも四草の家でもなく、大阪からは遠く離れた地の。
何度この夢を見たことか。
一つの場所に長くとどまるたび、この夢は頻繁に小草若のもとを訪れる。
そのたび、逃げるように別の場所へ別の場所へと移動を繰り返してきた。
まだ肌寒いこの季節なのに、体にはじっとりと寝汗をかいていた。
カーテンを引くと、外はほのかに明け始めたばかりだった。
(ここにおるのも、もう長いことはないかもしれへんな)
予感めいたものを覚えながら、小草若はそっと目を閉じた。


154:夢から醒めた夢 2
08/05/21 06:14:06 l3L85CpP

「おつかれさまでした~!」
ガソリンスタンドのバイトを終え、家路に向かいかけた小草若に聞きなれた声がかけられる。
「あ、吉田くん!」
「何ですか、店長?」
自分より少し年上に見えるその男―このガススタンドの店長―が、にこにことこちらに
微笑みかけていた。
「あのさ、申し訳ないんだけどこの時間に入ってた女の子いるだろ?紀代美ちゃん。
 あの子、遅くなっちゃったから送っていってあげてくれないかな?悪いんだけどさ。
 最近ぶっそうだし、吉田君帰り道近いし。変に下心ある奴多いからなかなか頼める人いなくって。」
申し訳なさそうにこちらを拝むジェスチャーをする店長に、いいですよと気軽に請け負って、
小草若は手持ち無沙汰に同じバイト仲間の少女を待った。

「吉田さん、ごめんね~」
甘えたような声でこちらを見上げる少女。あの子と、同じ名を持つ―
栗色のくるくると巻いた髪、リスのように輝く瞳。
バイトの若い男どもが騒ぐ少女。自分が騒がれることを十二分に知ったその仕草。
(あの子とは、対極、か…)
優しい白い顔を思い出しかけて一つ頭を振る。もう自分には、関係のない、少女…。
せわしなく話しかける少女に適当に相槌を打ちながら歩く。

「でぇ~、吉田さんの声ってすごくいいってか響くじゃないですかぁ?
 その声聞いてお客さんが吉田さんのこと見て『あの男の人、名前なんていうの?』って聞くんですよ~!
 声もそうだけど、なんかめっちゃ見たことあるんだって。そういえば前も誰か言ってましたよね~」

にこにこと話す栗色の髪の少女の言葉を聞いて、現実に引き戻される。
ずっとずっと背負ってきた、「徒然亭小草若」の名を消すことがいかに難しいかを思い知る。
いくら逃れようとしても、どこからともなくひっそりと影のように自分について回る。
もう自分は…落語家ではないのに。
捨てた名に気づかれた後も明るい顔で面白おかしく昔のことを話せるほど、自分は強くはない…
(ここもそろそろ潮時、か――)
わずかに眉をひそめた小草若の表情にも気づかずに、少女はしゃべり続ける。
「もしかして吉田さん有名人?てかカッコイイですよね~!30過ぎてるって聞いたけど信じられないし」
「…そう?もう俺おっさんやで」
「全然見えないですよ!てか、今日本当は送りなんて要らないって店長に言おうと思ってたんですけど、
 吉田さんに頼んでくれるっていうから…。あの…彼女とか、、、いますよね?」
「…おらへんけど」
栗色の髪の少女の顔がぱあっと輝く。頬をわずかに染めて。
胸が痛む。あの子の表情に、一言一言に心躍った昔の自分を見ているようで。
「あの、だったら…、私と…。私、吉田さんが…」
「…ごめん」
「……だれか、好きな人が、いるんですか?」

「もう、、ずっとずっと好きな子が…おるんや」

気が遠くなるほどの長い間、どれほど消そうとしてもその想いが途切れることはなくて。



155:夢から醒めた夢 3
08/05/21 06:14:45 l3L85CpP

(…兄さん。小草若兄さん――!)

今、どこに。

帰ってきて、兄さん。小草若兄さん。お願いだから――!


「――!!」
泣き叫ぶ声に目が覚める。いつもの夢。けれどもその生々しさは。
まるで、そばであの子が呼んでいるかのように。

(アホらしい)
あの子がこんな風に自分を捜し求める夢を見ること自体が、浅ましい願望の現われなのに。
そう、こんな風に泣いて自分を求める必要など、彼女にはひとかけらもないのだから。
あの子は、、草々の腕の中で今頃は安らかに眠りについているはず。
昨日の晩、あの子と同じ名を持つ栗色の髪の少女と話して、あの子への想いをかきたてられたから、
こんなにもあの夢が生々しいのか。
頭をひとつ振り、冷たい水を冷蔵庫から取り出し、一口含んだ。


その時。

「こそうじゃく、にいさん」

「――!」

その声は。
懐かしい、甘いまろい声。
そしてつい先ほどまで自分が眠っていた布団の枕元にひっそりと佇むその姿は。
「どないしなったんですか、小草若兄さん?」
喜代美が添う。自分の身の傍に。一糸まとわぬ姿で。
(ああ、これもまだ夢、か―)
その丸い曲線を描く肩を抱き寄せて、そっと口づける。
目を閉じて自分に体をあずける喜代美の髪を撫で、その乳房に掌を這わせる。
あっ、と花びらのような唇から甘い声が漏れる。
全身をあます所なく愛撫して、その感覚を愛しむ。
この自分の腕の中で、喜代美は乱れ、甘い息をつき、切なげな声で自分の名を呼ぶ。
「ああっ…こそうじゃく、にい、さんっ…」
やがて果てた喜代美は、放心したような目で自分を見つめてかすかに微笑みかけ。
愛しげに自分の胸に頬を寄せる。

これらすべてが、これが夢であることの証明。現実にはありえない風景。

何度も訪れた夢。けれど夢の中で、自分はただ喜代美を抱き続ける。
この小さなあたたかい体の感触が、優しい愛しい微笑が。
夢とわかっていても、たとえ夢の中でも、この身を暖かくつつみこむから。

押し寄せる快楽に身を任せ喘ぐ喜代美を腕にかき抱き、
柔らかい喜代美の中で、真っ白い快楽に包まれて――


やがて、目が醒める。
冷えきった体。それが先ほどまでのことが夢である、何よりの証拠…。
くく、とくぐもった笑いが咽をつく。
自分の妄執を、浅ましさを思い知らさせる。
部屋はまだ暗い。窓を開けると、深夜のしんしんとした冷気が身を包む。
ほ、と一つため息をつき、小草若は頭をひとつ振る。



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