【あかほん・濱中】氏家ト全 25時間目【妹・生徒会】at EROPARO
【あかほん・濱中】氏家ト全 25時間目【妹・生徒会】 - 暇つぶし2ch300:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
08/06/27 00:43:41 OZsWgKPx
傍観者氏、Y-275氏お疲れさま&GJです。

あまりに仕事が忙しくて滞ってましたが、マサヒコの誕生日前後には何とか短めでも一作投下出来ればと思っています。
では生徒会週マガ移籍とスレのこれからの発展に期待を寄せて



徹夜で仕事します。

301:名無しさん@ピンキー
08/06/27 12:10:30 I17k51eV
Y275氏GJ!

302:名無しさん@ピンキー
08/06/27 21:38:55 YBux2RKS
相変わらずGJです。しかも投下ペースが速い。

303:名無しさん@ピンキー
08/06/28 07:10:37 jpmUVPO1
まさに二代目アジアンエキスプレス

304:郭泰源 ◆5pkah5lHr6
08/06/28 14:08:11 l0THglmL
はい、どうも郭です。
>>Y275氏にGJですよ。久方ぶりの大型新人、すばらしい。
あとWiki保管庫、すごいです!!これは!!
書き手としてはただただ感謝。励みになりますよ、マジで。
ところでですが、全然規制が解除されません(涙)。
出張ついでに、アヤナ帰国SSの最終章投下。では。


305:郭泰源 ◆5pkah5lHr6
08/06/28 14:08:49 l0THglmL
「そろそろ戻ろう、若田部。多分みんな、待ってるから」
「うん………」
炎が消えるまでを見つめ続けていたふたりは、ようやく、絡め合っていた指先を離した。
それでも、アヤナの指先にはマサヒコの体温が残っていたし、
マサヒコの指先にも。確かに、アヤナの体温が残っていた。
それがとても不思議なことだと――ふたりはなぜか、そんなことを考えながら屋上を後にした。

「おう、マサヒコ?実行委員の後かたづけ、終わったか?」
「ん、今終わったとこ。悪かったな、和田。教室の片づけ任せちゃって」
「ま、いいって。どうせ残りは明日やるんだし」
教室に戻ると、いち早く和田君がマサヒコに声をかけてきた。
「アヤナ~~?ねえねえ、教室かたしたらさ、みんなで打ち上げ行こうって言ってるんだけど?」
「あ、良いね!柴原さん!」
マサヒコから少し遅れてアヤナも戻り、すぐに柴原さんがアヤナに声をかけた。
(悪い………柴原、和田)
マサヒコは、無言で感謝していた。和田君も、柴原さんも。
クラスの他の人間が、マサヒコたちをからかう隙を作らないように素早くフォローしてくれている。
そのことに、もちろん気付かない彼ではなかった。
「わ~~い、いこいこ♪アヤナちゃ~~ん、アイ先生も中村先生もね、来てくれるんだって♪
みんなでカラオケ行こッ♪えへへ、ね?杉内くんもね♪」
「行く行く、行くなっていっても無理矢理行く!!行きましょうって、若田部さんも!」
「なぁ、杉内?殴って良い?」
“バキッ、ドカッ、ボスッ!”
「あは。あはははは、痛くない。痛くないよ?なんでだろう?」
あっという間に、フクロにされる杉内君。そして。
「だいじょうぶ~~?すぎうちくん?ほ~~ら、痛いの痛いの、とんでけ~~♪」
「ああッ!本当に、痛くない!!」
“ボスッ、バキッ、ドカッ!!”
今度は合図も無しにクラスメイト一同にボコボコにされる杉内君だが、
リンコはなぜかそんな恋人の様子をニコニコと見守るのであった………て言うかリンコ、なにげに酷い。
「ま、良いから、じゃあ片づけもうすぐ終わりそうだし、行くか?みんな」
「「「「「おう!」」」」」
マサヒコの言葉を合図に、2-Aの有志面々は教室を後にした――

「♪~~♪~~♭♯」
「おし、次、濱中さん!お、俺と一緒にお願いします!」
「コラ、大野!抜け駆けすんな!」
「まあまあ。じゃ、三人で一緒に歌う?大野君、佐々木君?」
「はい!」
「ぜひ!」
結局男女20人ほどの生徒にアイ+リョーコというメンバーで駅前のカラオケボックスに集合すると、
大部屋ふた部屋に別れての打ち上げ会がすぐに始まった。
「しかし濱中先生、大人気ねえ………」
「あの人の胃袋を知れば引く奴もいるかと思ったが」
「正直、俺もあれはドン引きだった」
「お前が正常だよ、和田」
マサヒコは意識的にアヤナと別部屋に入っていた。柴原さんに和田君、それにアイという面々だが、
そこでは既に男子生徒によるアイの争奪戦が始まっていたのであった。
「しかし柴原?ここの支払いとか大丈夫なのか?」
「あ、それ大丈夫。中村さんがさっきお金は任せなさいとか言ってたから」
「それ、本当に大丈夫か?言っとくけど、今日の売り上げに手をつけるとかは無しだからな?
あれ、まだ精算が済んでないって杉内が言ってたし、明日には実行委員会で売り上げ報告が」
「だから大丈夫だって。ここだけの話よ?なんでも森脇先生にカンパしてもらったって」
「?カンパ?」
「うん、なんでも森脇先生と中村さんって昔からの知り合いだとかで、お願いしたら快くカンパしてくれたって」


306:郭泰源 ◆5pkah5lHr6
08/06/28 14:10:03 l0THglmL
(快く、ねえ………)
なんとなく副担任教諭・森脇の顔を思い浮かべて気の毒に思うマサヒコだが、
それもどこか自業自得と思ってしまうところもあったりして。
「ね~~ね、しばっち!歌おうよ!」
「あ、いぐっちゃん、じゃ、歌う?歌っちゃう?歌っちゃえ!」
あっさりと井口さんの誘いにのってマイクを握りしめる柴原さんを、苦笑しながらマサヒコは見守る。
そしてごく当たり前のように和田君がマサヒコの隣に移動してくる。
「で、大丈夫だったか?マサヒコ」
「………大丈夫だったよ、なんとかな」
「そうか…………」
複雑な表情を浮かべる友のことを見て、和田君もそれ以上は聞かなかった。
その後はタンバリンを叩いたり、歌っているクラスメイトを囃し立てたりと、
いつもクールな和田君にしては珍しいくらいにはしゃいだ、振りをしていた。
それは、彼なりの優しさだと――マサヒコは、思った。
「わ~~~い、歌い疲れちゃったよ、マサヒコ君!」
「正確には食い疲れもあるんじゃないですか、先生」
「あ、ひど~~い!」
ちょっとむくれて見せるアイだが、テーブルに広がる跡形もなくなったピザやらパスタやらの皿、
それに空の丼等の数々を見れば、説得力などなくなってしまうわけで。
「しかし………すげえですね、相変わらず」
「へへ、最近のカラオケはフードメニューも充実してるんだよね♪」
「はあ。で、どうします?まだなんか頼みます?」
「そうね~~、じゃ、ミックスピザのLを」
「ドリンクじゃないんですね、やっぱ」
「追加で三枚お願いね♪マサヒコ君」
((((まだ食うんかい!!!!!!!!))))
アイの驚異の食欲にさすがにひっくり返る面々だが、アイはいつもどおり満面の笑みなわけで。
「はい、じゃ、ピザの追加で。はい?ええ、ミックスをLサイズ、三枚です。はい。お願いします」
そしてもはや慣れっこのマサヒコは、淡々とフロントに注文を伝えるのであった。
「ねね、マサヒコ君は歌わないの?」
「いや、ホラ、俺音痴ですし」
「も~~う、相変わらずなんだから。はい、じゃ、私とデュエット!」
「………だからですね、先生?」
「イヤなの!そういうの!マサヒコ君も、一緒に楽しまないと、私はイヤなの!」
マサヒコの腕をとり、ダダをこねるように揺らすアイ。その仕草はとても可愛らしいものだった。しかし。
「??………あ!先生、飲んでますね?」
いつもよりちょっとほの赤い目許と、いつもよりちょっと甘えた感じのアイを見て、気付いた。
そう、マサヒコの言うとおり、アイはほろ酔い加減で上機嫌に出来上がっていたのだった。
「大丈夫~~~他のコには飲ませてないから」
「そういう問題じゃ!柴原!お前なあ、先生の近くにいたんだったら」
「いいじゃん、濱中先生は未成年ってわけじゃないんだし」
「………あのなあ」
「歌おうよ~~へへ、マサヒコく~~ん」
「はぁ。分りましたよ、しょうがないな……」
諦め顔で、マサヒコはアイから渡されたマイクを手にする。その様子を見てにっこりと微笑むと、
アイは先にスポットライトの下へと移動していた。
「マサヒコ、うらやますぃ~~!!」
「ひゅ~~ひゅ~~!!アイ先生!!」
周囲の声に押されるように、マサヒコはアイの横に立つ。
「で、先生?どの曲入れたんですか?」
「えへへ、前も一緒に歌ったことあるから、マサヒコ君も大丈夫だよ」
「はあ……あ、この曲ですか。はは、懐かしいっすね」
マサヒコも、その曲名を見るとつい頬が緩んだ――そう、その曲は、あの日。
合格発表を見に行った後、みんなでカラオケボックスに行ってアイと一緒に歌った歌。
「………あの頃は」


307:郭泰源 ◆5pkah5lHr6
08/06/28 14:10:58 l0THglmL
「え?」
「毎日が、すごく楽しかったよね、マサヒコ君」
「………はい」
アイの表情は、その言葉と裏腹に、ほんの少し寂しげなものだった。
彼女の思いは、マサヒコにも分っていた――分っていても。
「じゃ、行くよ!マサヒコ君!」
「あ、はい!広い宇宙の、数あるひとつ、青い地球の、広い世界で………」

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

「………ほぉら~~~♪ほぉら~~♪ほぉおらぁぁ~~~♪ひ・び・け!恋のう・たぁ!!」
曲を歌い終えると、アイとマサヒコは微笑みあいながら見つめあい、ハイタッチを交わした。
どこかほのぼのとした師弟のそんな様子を、クラスメイト達はやんやの喝采で迎える。
「お~~~、小久保君意外に上手じゃん!」
「濱中先生、プリティっす!!!!」
「えへへ、ありがと~~~♪」
「あんまからかうなって、お前ら………」
照れるマサヒコと笑顔のアイ。ふたりは舞台から降りると、隣り合ってシートに座り込む。
「お疲れ様でした♪マサヒコ君」
「はぁ。あ~~あ、でも今日は歌うつもりなかったのにな」
「私と歌うの、そんなにイヤだった?」
「!あ、ち、違いますって。あの、俺はやっぱ人前で歌うのはあんまその、苦手っていうか」
「ふふッ、知・っ・て・る!」
「………勘弁して下さいよ、先生」
相変わらずのマサヒコ&アイ。ふたりは、姉弟のようで、恋人のようで、やはり教え子と家庭教師なのだった。
“♪♯♭”
「あ?メールって……すいません、先生。ちょっと」
慌ててマサヒコが携帯を開けると、そこには。
<From:若田部><Sub:今外にいます><来て下さい。話が、したいです>
(…………若田部)
アヤナからのメールを見て複雑な表情を隠せないマサヒコ。
アイはそんな彼の様子を見て、既になにがあったかを、察していた。
(マサヒコ君………)
そして、アイは。マサヒコの耳元に唇を寄せてきて。
(??)
ほんの少し漂うアルコールの湿った匂いと、それと混じったアイの薫りが、して。
「行ってきなさい、マサヒコ君」
「え?せ、先生?」
「まだ、答えが出てないって顔してる。そんな君の顔、見たくないな………私は」
「先生。でも、オレ」
「いいから、行け!マサヒコ!」
突然立ち上がると、アイはマサヒコの頬をぱん、とひっぱたいた。
「!イテッ!な、なにするんすか、先生?」
「行け!マサヒコ。ゴチャゴチャ考えるな!」
「…………はい」
今日二度目だな、と苦笑しながらマサヒコはアイに送り出される。
もちろん柴原さんと和田君も、彼を見ていた。そしてふたりは、顔を見合わせて、頷く。
「??どうしたんだよ、マサヒコの奴」
「ねえね、しばっち?小久保君どうしたの?」
「あははは、彼女からお呼びがかかっちゃったみたいね」
「あ、噂のミサキちゃんから?」
「あ~~あ、いいな~~、モテ男君は」
「ひがむなって、湯上谷。俺らはもうちょっと盛りがっとく?」
「「「「「「おう!!」」」」」
仕切り上手コンビにより、マサヒコの脱出劇はさほど騒がれずにすみ、宴は続くのだった――


308:郭泰源 ◆5pkah5lHr6
08/06/28 14:11:42 l0THglmL
「あ………ゴメンね、小久保君」
「いや、良いよ」
カラオケボックスを出ると、そこには商店街の灯を背にしたアヤナが佇んでいた。
いつもの言葉を発さずとも、いるだけで。そう、ただ存在するだけで華やかな彼女と違い、
その姿はどこか儚くて、脆くて、今にも消えてしまいそうな――幽玄とした、感じがした。
「一緒に、来てくれる?」
「良いのか?お前の部屋の方は」
「ウン。後は、お姉様にお願いしてきたから」
「そうか………」
ふたりは、肩を並べて歩き始めた。無言だった。言葉は、要らなかった。
マサヒコには、彼女がどこに向かおうとしているのか、言わなくても分っていた。

「どうぞ、小久保君」
「ああ」
着いたのは、やはり若田部家だった。アヤナがドアを開け、マサヒコを誘う。
あの日と同じ、少し空気のひんやりとした玄関で靴を脱ぐと、ふたりはまた無言で。アヤナの部屋に向かう。
「…………」
「…………」
部屋に入っても、しばらく。ふたりは、無言のままだった。
ふたりの頭の中には、いくつもの、言葉が渦巻いていたにもかかわらず――ずっと、無言のままだった。
“きゅッ………”
そして、ようやく。マサヒコが、アヤナを軽く抱き寄せた。
「…………小久保君」
胸の中で、アヤナが呟くような、ちいさな声を漏す。その声は、少し、苦しそうで。少し、悲しそうで。
「若田部………オレさ、ずっと、どうすれば良いか、分らなかった。オレ、逃げてたんだと思う。
お前からも、ミサキからも。多分ミサキは、そんなオレの情けなさを見抜いてて。
だから、あいつには愛想を尽かされたと、思うんだ。お前も………そう思うんなら、オレ」
「………私は、あなたから、逃げないよ。逃げないし、逃がさない」
「………」
「天野さんは。あの人は、優しいから。あなたが、私と天野さんの間で、悩んでるのを見て、
きっと、あなたを苦しませたくないと思って。だからあなたの前から去ったんだと、私は思う。
でも、私はあなたから、逃げない。私は、天野さんと違うから。優しくなんて、ないから。
狡くて、酷い人間だから。あなたを楽になんか、してやらない。これから、ずっと。あなたを、好きでいる」
「……………」
大きくて、澄んだ瞳が、ほとんど動かずに自分を見つめている。
そして、唇だけが、別の生き物のように言葉を紡いでいる――マサヒコは、そう、思った。
「あなたは天野さんと同じくらい、優しい人だから。きっと、天野さんが去っていったことを一生後悔する。
その原因になった私といる限り、苦しむ。でも私は………ずっとあなたと、一緒にいたい。
たとえ、それがあなたには負担だとしても。私は、小久保君の、側に、いたい」
「若田部……」
愛の告白というより、復讐のような――呪いのような言葉だと、思った。
それでも、それは間違いなくアヤナの、真情からの言葉だと、マサヒコは知っていた。
“ちゅッ”
アヤナが、キスをしてきた。唇を塞ぎにかかるような。呼吸を、堰き止めようとするかのような。
それは、攻撃的な、キスだった。そのまま、覆い被さるように。マサヒコを、ソファベッドに押し倒す。
“くちゅ………くちゅ、つぅっっ”
唇を吸ってから。舌を口内にねじりこむように、挿れてきた。性急で、なにかに取り憑かれたように。
「は………ぁ………」
なすがまま。アヤナに圧倒されながら。マサヒコは自分がひどく昂ぶりはじめていることに、気付いていた。
「ん………ぅ………あ………」
貪るように、唾液を掻き混ぜ合う。強く、激しく。野蛮で、原始的な激情を、剥き出しにして。
“ぷきゅ………”
長いキスのあと、ようやくアヤナが唇を離す。頬が上気して、目許にぽわっとした赤みが広がっていた。
「若田部………」
「抱いてよ………小久保君」


309:郭泰源 ◆5pkah5lHr6
08/06/28 14:12:31 l0THglmL
「でも………」
「抱いて。天野さんのことを、忘れてしまうくらい。今日のことも、全部、忘れてしまうくらい。
それに………私が、憎いでしょう?小久保君」
「そんな、ことは」
「いいの………あなたに、嫌われても。あなたに、憎まれても。私には、あなたを好きでいることしか、
できないから。もしかしたらあなたの気持ちは、永遠に変わらないかもしれないけど。
それでもあなたの気持ちが変わるまで。私は、待つから。ずっと…………ずっと。いつまでも」
彼女が泣いていることに、気付いた。大きな薄鳶色の瞳から、光の線が伝い、落ちる。
(若田部は……………)
幼子をあやすように優しく。もう一度、アヤナを抱く。マサヒコは思っていた。
―この子は、こんなに、良く泣く子だったろうか?
――こんなにも弱く、感情を剥き出しにしてしまう子だったろうか?
――もしかしたら。自分が、かつて知っていた若田部アヤナという子は、幻影だったのではないか?
そんなことを考えてしまうくらい、両腕の中の少女は、あまりにも弱々しくて、あまりにも小さかった。
「お願い………抱いて。私のからだに、あなたを刻んで。あなたを、下さい」
「………分ったよ、若田部」
“ちゅッ”
アヤナを落ち着かせるように。優しく、静かなキスをした。
上に組み敷かれていた体勢から、隣に寝かせる。そして彼女の弱点にも、舐めるようなキスをする。
「あ………!んッ………」
耳朶に唇を寄せられ、アヤナは切なげな声で喘ぎ、自然と身体が傾ぐ。
生温い、マサヒコの吐息が吹きかかるのを感じて、がくり、と力が抜けそうになる。
“ちゅ……ちゅぅッ、くちゅう”
そのまま、執拗なくらい。マサヒコはアヤナの耳を舐め、吸う。
「う………あ………ぁ!はぁッ………こ、こくぼ………くん」
声を抑えることが、出来なかった。鼻から高い声が漏れて、肌が粟立ち、ぶるぶると震えた。
くすぐったいような、気怠く痺れるような快楽に、アヤナは身体の芯から熱くなっていった。
「脱がすよ?」
「うん………」
“する………”
為されるがまま、制服を脱がされてゆく。ブレザーを。ワイシャツを。スカートを。
マサヒコのその仕草は、滑らかで、手早かった。下着だけの姿になるのに、さほど時間はかからなかった。
“きゅッ……”
(え?………)
マサヒコの細い指が、自分の衣服を剥いでいき、身体に触れ、纏い付く――
まだ、たったそれだけで。アヤナは自分の裂け目から滴が漏れてきたことに気付いて、驚く。
「やっぱり、きれいだよ。若田部は」
“ちゅ………くつッ”
「ふぁッ………」
大きな胸の谷間に顔を埋め、キスをした。跡がついてしまうであろうことも構わず、強く、吸い出す。
乳房をブラ越しに揉む。少し力を加えるだけで、それは下着から溢れんばかりに、形を変える。
「私は………キレイなんかじゃ、ない。………汚れちゃったから。狡い女だから。私は」
「きれいだ、若田部」
アヤナの自虐的な言葉を遮るように断定口調でそう言うと、
“ぱち………ぷつッ、ちゅ”
マサヒコはそのままブラを外し、乳首を口に含む。
「あ……あぅ」
暗い感情を吐き出していたアヤナの口から、溜息が漏れる。
柔らかだった乳首は、マサヒコの口撫にすぐに反応して、つん、と固くなる。
“く………つ。ちゅ。ちゅ、ちゅぷ”
「ふ……ッ、あぅん………あッっ………」
ひたすら、マサヒコはアヤナの乳首を舐め、吸い、味わう。アヤナも、ただその愛撫に身を任せていた。
“ぷくッ………”
そして乳首から口を離すと――少しだけ、悲しげな表情をしてから、また。
マサヒコはアヤナの乳房に顔を埋めてから、呟いた。


310:郭泰源 ◆5pkah5lHr6
08/06/28 14:13:38 l0THglmL
「ゴメンな、若田部」
「小久保君が、謝ることなんて、ないよ……………全部、私が」
「お前にしか、謝れないんだ。あんなこと言っておいて、オレ、やっぱりすごく後悔した」
「……………天野さんを」
「違う。ミサキを失ったことじゃなく。お前と、こうなってしまったことでもないんだ」
「…………」
「上手く言えないけど。もっと良いやりかたが、あったんじゃないかって。もしかしたらオレ達は、
友達のままでいられたんじゃないかって。……後悔するとしたら、そういうことなんだ。
オレはミサキと付き合ってたのに、今思えば心のどこかに若田部のことが残っていた。だから」
“ぎゅッ”
アヤナが、優しくマサヒコを抱き締めた。やらかい乳房に、頬を包まれる。
華やかで、甘い――彼女の薫りに、自分がくるまれるような、錯覚を感じた。
「………私は、今、嬉しいよ」
「え?」
「言ってくれたから。小久保君が、私のこと。心の中に残っていたって、そう言ってくれた」
「ああ。若田部のことが、オレはずっと」
「ねえ?小久保君。私が一番怖かったことが何か、分る?」
「?」
「忘れられて、しまうこと」
「………忘れられて?」
「思ってたの。アメリカに行ってから、ずっと。小久保君に会えなくなってからずっと、思ってた。
あなたは、私のことをいつか忘れてしまうのかな、って。私は、忘れられてしまうのかな、って。
そう思うと、ものすごく寂しくて、ものすごく怖くなった。だって、それは……私という存在が、
あなたの中から、消えてしまうってことでしょう?それが、私は怖かった」
「オレは、お前を忘れたことなんて、ないよ」
「そうだと良いな、って私も思ってた。でも、それは確かめることができなかったから。
あんなに楽しくて、大切だった日々が……ただの思い出になって、消えてしまう。
そのことに気付いたとき、私は決めたの。日本に帰るって。天野さんにも、正直に言おうって。
天野さんは、私にとって一番大切な友達。前も言ったけど、それは、今でも変わらない。
こうなってしまっても。私は、あの人のことを、友達だって思ってる。それでも、私は」
“ちゅッ”
アヤナがマサヒコのつむじにキスをした。それは、母親が子供にするような、慈愛のキス。
「全てを、言おうと決めた。私の、思いを。それで、壊れてしまっても。後悔しないって。そう決めたの」
「…………多分オレは、後悔するんだな」
「そう。あなたは、後悔する……優しいから。後悔、し続ける」
アヤナはそう言うと、マサヒコをぎゅっと抱き締めた。
(若田部………)
彼女の鼓動が、聞こえた。ほんの少し汗ばんだ肌は、しっとりと馴染むようで。
なにより、柔らかくて、温かかった。マサヒコは不思議なくらい、安らかな気持ちになった。
「背負うから」
「え?」
「あなたの、その思いを。わたしも、背負うから。ずっと」
“ちゅ”
そして、アヤナは――マサヒコの頬を両手で挟み、唇を重ねた。
「…………」
「…………」
お互いの気持ちを確かめ合うように、ふたりは微動だにせず。ただ、そのままでいた。
“つ………”
「若田部………オレ」
どれくらいそうしていたのだろう?ようやく、唇を離して。マサヒコが、言う。
「なにも………言わないで。あなたの、考えていることは、分るから」
「………ああ」
「でも………ねえ、小久保君?そう思った私たちは」
アヤナが言葉を切る。そして、力無く、笑う。
「間違って、いたのかな」


311:郭泰源 ◆5pkah5lHr6
08/06/28 14:14:16 l0THglmL
「間違ってたのかもしれない…………多分だけど」
「………そうよね」
ふたりは、顔を見合わせて寂しく笑った。しばし流れる、沈黙の時間。
そして、また――マサヒコは、ゆっくりとアヤナを抱き寄せた。
「………」
“しゅ”
「ふ………」
顔を埋め、ちゅッ、ちゅッ、と胸の谷間にキスをしながら。薄い布に包まれた、アヤナの丘を撫でる。
長い会話の後にもかかわらず、そこはまだ、十分な湿度を保っていて。
“じぅ………”
すぐに、愛液が漏れ出てきた。布越しでも、そこがじんわりと滲んできたことが分った。
“す……すぅぅ………”
中指の先にある、その感触を確かめながらマサヒコは、小さな弧を描くようにして指先を往復させる。
「う………ぅん………ダメ、小久保君」
「ゴメン、痛かった?」
「違うの。気持ち良いんだけど………あの、ショーツが汚れちゃうから………脱がせて?」
「あ、うん。」
今更気が付いたようにアヤナの両脚を軽く上げさせると、下着に手をかける。
青と白のストライプのショーツは彼女が心配していたとおり、愛液で既に汚れてしまっていた。
「………濡れて、くっついちゃってるよ。若田部」
「やン。恥ずかしいから、言わないで」
ショーツの中央にできた灰色の染みが肌にぺっとりと貼りついているのを、剥がすように脱がす。
アヤナの裂け目が、マサヒコの目の前に露わになる。小さく息を飲みこんだ後、それに指を伸ばした。
“くちゅッ”
「!あンッ!!」
横に柔らかく生い茂った恥毛が手のひらに絡みつく。指先には、温かな粘膜の感触。
「若田部………濡れてて、あったかいよ」
「ア………う」
目を閉じて恥じいるアヤナを見つめながら、マサヒコは彼女の耳元で囁く。
「昨日は若田部、自分からオレの前で見せてたのに、やっぱ恥ずかしい?」
「あのときは、必死だったの。どうしてもあなたは、私を抱いてくれそうになかったから」
「………ゴメン」
「良いよ、もう。だから………」
潤んだ目で。おねだりをするように、アヤナがマサヒコの頬にキスをして、抱きつく。
それに答えるように、マサヒコはアヤナのぬかるみの中をかき混ぜた。
“ちッ………ぐちゅ。クちゃッ。くりッ……くちゅッ”
「あッ……ん、あ……」
首筋や、顎や、こめかみへのキスを続けながら。濡れてはいてもまだ固さの残る裂け目を、
ほぐすように優しく触れ、両襞を撫でていたが――突然マサヒコは、指先でそこを。
“きゅッ”
「!?!……きゃあッ!あ!あッ!!」
ぐいッ、と一気に左右に広げ、剥き出しにしてしまった。
一瞬、彼女が目を見開いて驚きの声を発するのにも構わず、
めくれて広がったそこの上部にある小さな珠を、きゅッ、きゅッと擦る。
「ひゃん!??や、きゃァッ!!ダメェッ、こくぼく……ん、きゃ!」
いきなりの手荒い愛撫に、アヤナの豊かすぎる肢体が、固くなり、引きつり、戦慄く。
悲鳴にも似た声を無視して、マサヒコは小さな珠をくにくに、と弄り続け、耳朶をちろちろと、舐め続けた。
「きゃ、あ!………や、そこも、ダメ!や!んくぅ、や、あぁぁん!!!」
“ぷくちゅぅぅぅぅッ”
「あ………ゃ……」
大きく震えた後に裂け目から愛液が溢れ出し、マサヒコの手のひらを濡らした。
薄い紅色の唇から涎が零れ、つぶらな瞳は焦点を失い、目の端には涙が溜まっていた。
それは、彼女が達した、確かな証だった。
「敏感なんだね、若田部は。昨日も、すぐいっちゃったし」
「あ………や。やァ」


312:郭泰源 ◆5pkah5lHr6
08/06/28 14:15:40 l0THglmL
あっさりと絶頂に達してしまった恥ずかしさからアヤナは顔を両手で隠して身を捩るが、
彼女の意志に反して下腹部は、灼けるように熱くなってしまっていた。
(恥ずかしいけど………でも………)
アヤナは、自分のそこが更なる甘美な悦楽を欲してじゅくじゅくと疼いているのを、はっきりと感じていた。
“ぐッ………ちゅ”
「!こ、小久保君?」
彼女の情欲を察したかのように――マサヒコは素早く頭を下げて潜り込むと、
熱したアヤナのからだに唇を触れさせ、舌を這わせた。
“ちゅッ………つ、ち、ちゅぅ”
「!きゃ、ひぃああああ!!」
玉の汗が光る、たっぷりとした乳房。柔らかに締まった、中央の稜線。滑らかに窪んだ、臍。
キスと舌撫を交互に繰り返しながら、マサヒコはアヤナの下半身を愛撫してゆく。
そしてそこに行き着くと、両膝を開かせてアヤナの入り口に顔を寄せた。
――少し酸い薫りが、マサヒコの鼻腔を直撃する。しかしそれは、不快な薫りでは、なかった。
「ん………」
まだ完全に羞恥心を捨て切れないアヤナはほんの少しだけからだを強ばらせるが、
すぐに力を抜いてマサヒコのなすがまなになった。
(………可愛いな、若田部のここ)
彼女の髪と同じ薄茶色の恥毛が、疎らに生い茂っていた。
汗と愛液で湿った茂みから、うっすらと顔をのぞかせるアヤナの女唇。
それはミサキのそれより、やや肉厚で、濃いピンク色で、ぷっくりとしていた。
昨日、他ならぬ自分が何度もその奥に精を放ったばかりだったが、
マサヒコはアヤナのそこを、たまらないくらい、愛おしいと思った。
“りゅ……”
「ひぅん!」
指先で、小さく拡げて。マサヒコが、温かい舌を入り口に這わせてきた。アヤナは、思わず悲鳴をあげる。
“ちゅッ………ちゅ、つ~~~、ちゅる”
「あ!ヤっ!んあ!……ひあ!ん、ぅくん………は、くぅん」
夢中でミルクを飲みほそうとする、子猫のように。丹念にマサヒコが舐め続けるうち――
やがてアヤナの声からは固さが消えていき、艶やかな、円味を帯びた声へと変わっていった。
そして入り口は徐々に開いていき、奥からさらにとくとくと愛液が染み出てきていた。
「赤くなってる………若田部の」
「や!やだ、言わないでよ、そんなコト」
十分に潤っていたアヤナのそこは、マサヒコの舌撫でさらにぽってりと赤く腫れたようになり、
さきほどの指撫で軽く剥かれた小さな珠も、既にぷっくりと突起状になって姿を見せていた。
“つ………ちゅ、つぅ”
「!?!きゃ、きゃぁあああああ!」
敏感な珠を、唇ではさんで、吸って、舐る。アヤナが叫び声を上げ、
からだを弓なりに反り返らせるのにも構わず、マサヒコはひたすらそこを責め続けた。
“づ……じゅ、じゅうッ”
そして奥から次々と溢れてくる愛液を、じゅるじゅると、わざと音をたてるように啜る。
「や………吸っちゃ、いや、恥ずかしいよぉ、こくぼ、くん、あ、は、や!」
両脚で、マサヒコの頭をきゅっと挟んだ。爪先が震え、体中から汗が噴き出るように、流れた。
泣きたくなるような恥ずかしさを覚えながら、アヤナは昨日の処女喪失よりも、確実に。
自分のからだが、快楽の渦に沈み、欲望を貪っていることを、感じていた。
“じゅ、ぷじゅッ、じゅるッ”
さらに、ぴったりと。マサヒコが顔面をアヤナの裂け目に密着させるようにして、吸い上げると――
「は!あ………だめ……ダメぇぇぇぇ!!」
視界の全てが、白く覆われ、アヤナはさっきよりもずっと深く、激しく。自分が、達してしまったことを感じた。
“ぴしゅぅッ!!!”
濃厚で、愛液よりもさらに粘つく、とろとろとした蜜が吹き出され、マサヒコの鼻先を汚した。
“ぴッ……とろぅ………”
「ん……ん………あ、ふあぁぁぁ………」
何度も蜜を垂らし、何度も痙攣を繰り返してから。アヤナは、がっくりと脱力してしまった。
「………………」


313:郭泰源 ◆5pkah5lHr6
08/06/28 14:16:34 l0THglmL
無言で顔をあげ、マサヒコは見つめてきた。アヤナの蜜で、口元から鼻先までべっとりとまみれていた。
「や………見ないで、私、いっちゃった………恥ずかしい……」
弱々しく声をあげるアヤナだが、マサヒコはただ、目も伏せられぬほど美しい彼女の肢体を見つめていた。
皮膚がはち切れてしまいそうなくらい桃色に上気した肌には、玉の汗が光っていた。
アヤナは鈍く震えて――息を吐くのさえ、精一杯の様子だった。
“ごくッ”
マサヒコは自分の中から、静謐な欲望と、確かな愛情が湧いてくるのを感じていた。
――今すぐ、目の前のこの少女を犯してしまいたい。
いや、ゆっくりと、大事に彼女を包んでしまいたい――
相反するようで、近しいふたつの感情。それに突き動かされるようにして、マサヒコは。
“ぎゅッ”
アヤナを、強く強く。抱き締める。身体と心の震えが、大きく柔らかな胸から伝わる。
「大丈夫?若田部」
「だいじょうぶなわけ、ないじゃない……バカ」
「久しぶりだよな、それ」
「なによそれ…………バカ」
頬を赤く染めてまたそう言うアヤナを見て、マサヒコは微笑んだ。
しおらしいアヤナより、今のアヤナの方が、やはり彼女らしいと、思った。
“ちゅ”
アヤナのおでこにキスをしてから、ソックスだけで裸の彼女を横たえると、ようやくマサヒコも制服を脱いだ。
下着の中で既に雄々しくそそりたったペニスを、じっと見つめていたアヤナに誇示するように取り出すと、
それを彼女の両脚の間に、ゆっくりとくっつけた。
「………若田部、怖い?」
「怖く、ないから。………ください」
そう言うと同時に、アヤナはマサヒコに抱きついてきた。
そして、羞じらいながらも両脚を広げて絡めてきた。固くなったペニスが、ぐいッ、と押しつけられた。
その先が、柔らかな入り口に触れていることを、感じた。
「………じゃ、いくよ?」 
「ウン………」
指先で、確認するようにアヤナの入り口を優しく広げると、マサヒコは、怒張しきったペニスを。
“ぐくッ、、、、ぬぅる………”
「あ!………あぁッ!!」
アヤナの中に、埋めていった。眉をひそめ、高い声で、アヤナは艶やかに、鳴いた。
「まだ、痛い?」
「……………痛い。けど、ちゃんと…………感じるよ」
「本当?」
「ウン。痛さも感じるけど。ちゃんと感じる。ちゃんと、小久保君を、感じる。
あなたが、私の中にいることを、感じてる………だから、もっと、きて」
性急に。ねだるように。アヤナが腰を密着させてくる。
「………若田部」
“ぐ……ぅ。ず………るくッ”
「う………あ………こくぼ……くん」
(入った……)
昨日より、なめらかにアヤナの中に入った。やはり、そこは昨日と同じく。
くにくにと、柔らかく、熱く、マサヒコを包んできて。
「は――ッ………あ………」
「若田部………」
「いい………へいき、だから。もっと。もっと、奥まで」
無言で、頷いた。言葉通り、マサヒコは。
“るぅ……、ぐ、ぐ、ぬる、ずぅぅッ”
「あ………うン………入って、きた。こくぼくんの。あ、すごく    あ!」
「…………動くよ?若田部」
「ウン………き、て………小久保、くん……」
炙られるような苦痛に、身を焦がしながら。痺れにも似た快楽に、浸りながら。
アヤナは――自分の肉体が、浅ましいほど、マサヒコを欲しているのを、感じていた。


314:郭泰源 ◆5pkah5lHr6
08/06/28 14:17:30 l0THglmL
“ぐ………ずるッ、ぐちゅッ、ずくッ、ぐじゅッ”
「ふぁ………あ、あ。あ、ン!は………ぁ!」
奥まで突き立てて。それを、浅く引き抜いて。また、それをずぶずぶと、沈める。
繰り返されるピストン運動に応えるように、アヤナの口からは獣じみた呻き声が漏れる。
“ちゅ………とぅる”
その肉欲の叫びを、塞ぐように。マサヒコが、唇を重ねて、舌を入れてきた。
アヤナも夢中になって、舌を絡めて、吸う。
(あ………いい……気持ちいい……すごく。それと……小久保君……の、匂い)
奥の奥まで、マサヒコの肉体で隙間無く埋め尽くされていると、感じながら。
ふと、アヤナは――今更のように。彼の体臭が、鮮鮮しく薫ってきたと、思った。
それは、ほのかな香りだった。青い樹木のような、若々しい香りだった。
“きゅッ”
耐えきれないくらいマサヒコが愛おしくなったアヤナは、彼の首に手を回して力の限り、抱き締めた。
マサヒコも、すぐに抱き締め返してきた。ぴったりと、裸と裸のまま、密着したふたり。
アヤナは、マサヒコのペニスを埋め込まれたまま。マサヒコは、アヤナの中に包まれたまま。
貪るように。息をすることすら、忘れたように。長く、激しいキスをする。
「ん………あ………」
「は………ふぁ………」
ようやく唇を離すと、少しの間、見つめ合ってから――
“ぐ………ぱン!ぐちゅッ、ずる!ぐちゅッ、ぬりゅッ!!”
「は、あ!う!ぁああああ!!」
より激しく、マサヒコはアヤナの奥にペニスを突き立てていった。
彼女の荒い息と咆哮はマサヒコの鼓膜を心地良くくすぐり、さらにそのリズムを早めさせる。
“る………”
そしてマサヒコは、無意識のうちに。アヤナの肌に光る細かい汗の粒を、舐めた。
「あ!いい!あ!はぁン………」
飢渇の思いに炙られながら。アヤナのからだは、マサヒコの浸入を歓び、受け入れていた。
むず痒いような楚痛は、微かにずくずくと疼いていたが――
まだ二回目だというのに、アヤナは完全にマサヒコとのセックスに溺れていた。
「あ………わかたべ………」
マサヒコも、アヤナの肉体とアヤナとのセックスに惑乱し、完全に溺れていた。
甘い、花の香りのようなアヤナの薫りに浸り、ピストン運動を繰り返す。
たぷたぷと揺れる豊かな乳房に顔を埋めたり、キスをしたり、舐めたりした。
「あ!ン!こくぼくん、あッ、くすぐったぁい………!あッ!!!」
そのたびに嬌声をあげるアヤナの反応を楽しむ余裕すらなく。
からだの火照りと喉の渇きに苛まれて、背骨を軋ませるように、ひらすら彼女を求めていた。
“ぐちゅッ!ぱん!ずぶぅッ!!ぅるぅ!!”
「くはッ!あッ!あぁッ!!!くぁッ!!」
感情の高まりとともにアヤナの叫びも、粘度を増して、より深い艶声へと変化していった。
(ん………あ!きもち、いい………こくぼくん。……いい………あんなことの、あとなのに………。
あんなことの、あとだから……すごく、エッチになってる、私……ああああ!!)
アヤナは、感じていた。マサヒコに抉られ、突かれるたび、悲しいほどに、自分が女だと思った。
(私は………私は。天野さんが、好きだった………小久保君が、好きだった………なのに)
緊張と弛緩のリズムに襲われ、快感の奈落にずるずると滑り落ちながらも――
アヤナは胸の奥がつかえるような哀しみを、また思い出していた。
「あ!こくぼ、くん………わたし………わ、た、し………あああッ!!!」
網膜に、光が、爆ぜて。悲しみと、快楽のふたつの渦に呑み込まれて。アヤナは、達した。
歓びの悲鳴を叫んで、ふたつの巨きな乳房がぷるぷると震え、玉の汗が噴き出る。
「ゴメン………若田部。オレ、まだ………」
「う………あ、あ。い、いよ。………小久保君。来て………いい、から」
茫然としていたアヤナだが、両手を広げてマサヒコを迎え入れる。
――マサヒコは、申し訳ないような気持ちになったが、それでも。
“ず…………ぐちゅッ、ずちゅッ!!”
「あ………あ!ぁぁあああッ!」
緩やかに、ピストン運動を再開させた。既に何度も達していたアヤナだが――


315:郭泰源 ◆5pkah5lHr6
08/06/28 14:18:21 l0THglmL
再び内臓の奥まで抉られて、情欲に火がつき、燃えさかるのを感じていた。
“ぐちゅッ!!じゅッ!!ぽぷッ!!!”
「はっ………あ、んっ。こくぼくん………熱い。こくぼ、くぅん……すき。すきぃ」
半ば意識が飛んだトランス状態で、アヤナは譫言のようにマサヒコの名を呼び、求めていた。
絡めた脚に力をこめ、 彼の打ちつける腰の速度にシンクロさせて、
花弁を擦り上げるように自らも腰をくねらせる。
“ぐちゅッ!!つぴッ!!ず………ずぷッ!!!”
そしてアヤナの裂け目も、再び――生温かい、ぬめった白濁の果汁を溢れさせ、
マサヒコを更に熱い、奥深くへと引きずり込もうとしていた。
(あ………もう、ダメ………壊れる……わ、た、し………全身が、あそこに、なったみたい……)
「あ………若田部……おれ、あ!は、うッ」
“ずるッ………ぴゅッ!!どくッ!!”
雄叫びともつかない声をあげると、間一髪、マサヒコはアヤナの胎内からペニスを引き抜き、
青い精で、汗に濡れたアヤナの腹部を。若草を。乳房を。汚していく。何度も、何度も。
「あ………はぁ………い、いい……こくぼくん…………」
精液で汚されているのにも構わず、アヤナはマサヒコの射精をうっとりと見つめていた。 
(かかってる……小久保君の、が。わたしに………あ。……あったかい)
「あ………は、はぁ、は……わかたべ………」
自らのペニスに手を添えたまま、マサヒコも荒い息でただ射精を繰り返す。
精を吐き尽くしてもなお、それは固さと角度を失わぬまま―アヤナの方を、向いていた。

後始末を終えたあと。ふたりは無言のまま、寄り添うように並んで寝ていた。
「………小久保くん?」
どれくらいの時が過ぎたのだろう――ちいさな声で囁くと、アヤナはマサヒコを見た。
そして、気付いた。当たり前のように、マサヒコが腕枕をしてくれていたことに。
「…………」
彼は――目を閉じていた。初めは眠っているのか、ただそうしているのか分らなかったが、
耳を澄ますと、マサヒコの鼻から漏れるほんのわずかな寝息の音が聞こえた。
(…………あ)
また、気付いた。マサヒコの目許に涙の痕があって、まだ少し、涙が流れていることを。
(夢を………?)
それは、ミサキの夢なのだろうか。悔悟の夢なのだろうか。それとも、自分の夢なのだろうか。
アヤナはそんなことを思いながら、飽かずにマサヒコの顔を眺めていた。
(小久保君………)
それは、アヤナが覚えていたより、ずっと大人びたものだった。帰国してから、ずっと。
彼だけを、見つめ続けていたと、思っていた。しかし、かつての端整な顔立ちはそのままに――
マサヒコの表情は、より精悍で、より男らしい、逞しいものになっていた。
それが、自分のいなかった空白の間に起こったことだと思うと、
アヤナは胸が締めつけられるほど、寂しい思いに襲われるのだった。
(でも………その分、私はずっとこれから、あなたといる。そう、決めたから。ずっと、あなたと…………)
マサヒコを起こさないよう、静かに彼の裸の胸に耳を寄せた。とく、とく、と心臓の脈打つ音が聞こえた。
「………ん?若田部」
「ごめん………起こしちゃった?小久保君」
「いや………ん、そろそろ帰らなきゃ」
“ぎゅッ”
アヤナは、体を起こそうとしたマサヒコに無言で抱きついた。そして、彼も無言で、そのまま。
(………図々しいかもしれないけど)
アヤナは、思っていた。いつか、ミサキとも。笑いあえる日が――許してもらえる日が、くるのかもしれない。
都合の良い、勝手な思いかも知れないが――そう、アヤナは信じたかった。
“ふ…………”
マサヒコが、アヤナの髪を撫でた。それは、柔らかくて、優しくて、
「小久保君………私、」
「一緒に、いてくれ」
「!?え………」
「言えなかった、ずっと。一緒に、いてくれ。オレを………許して、くれ」


316:郭泰源 ◆5pkah5lHr6
08/06/28 14:26:44 l0THglmL
「許すって………」
「オレな、若田部。やっと気付いたことがあるんだ」
「………?」
「なんだか照れくさいけど、オレ、すごく、良い友達や、良い人たちに恵まれてるっていうか。
でも、オレはそのことに全然感謝してなかった。当たり前だと思ってた。
お前と、こういうことになってから………今更だけど、気付いたんだ。
和田にも、柴原にも、中村先生にも、濱中先生にも、オレは感謝しなきゃならないって。
みんな側にいて、心配してくれてる。そんで……なによりお前に、オレは、感謝しなきゃならないって。
こんなオレでも、好きだって言ってくれて、一緒にいてくれる、って言ってくれるお前に。
だから………もう一回言うよ。オレと、一緒にいてくれ。どうしようもないオレを、許してくれ」
「小久保君………」
それは、拙い愛の告白だった。嬉しさで心が満たされながら――アヤナは、思っていた。
ふたりでこれから、歩いていく日々を。きっとそれは、平坦ではないだろう。
もしかしたら、祝福されるものでは、ないかもしれない。それでも、アヤナは。
「…………いっぱい、キスしよう」
「え?」
「いっぱいキスして、いっぱい愛し合って、いっぱいケンカしようよ、小久保君。
それでね、ふたりが、おじいさんとおばあさんになって。あんなこともあったね、って。
皺くちゃになって、笑いあえるようになりたい。………それくらい、あなたと一緒にいたい」
「すげえ長い先だな、それ」
ちょっとマサヒコが苦笑する。それでもそれは、どこか照れたような、ほんの少し、嬉しそうな。
(それくらい先になれば、きっと………笑い話に、できるよね)
アヤナは、マサヒコの笑顔を見つめながら――そんなことを、思っていた。

END


317:郭泰源 ◆5pkah5lHr6
08/06/28 14:28:17 l0THglmL
今回は以上。しかしま~~~~長い時間かけた割には、相変わらずのダラダラです。
タイトルは『Back in Japan』でよろしくです>Wiki管理人様
長々続いた連載ですが、ようやく終わって一安心。
次作は今回ギリギリで脱稿が間に合わなかった、嫁との完全共作、シンジ×カナミです。
ヒロキ×アキも間に合えば。生徒会役員共も展開あれば書けるかな?
個人的には、コトミとムツミが一番書けそうです。
次作投下は出張のある7月半ば頃を予定。ていうか海外ホストの規制ってなんやねん。では、股。

318:名無しさん@ピンキー
08/06/28 19:08:07 VCVtyQRM
郭氏来たああああああ

郭氏、Y-275氏共に乙&GJです!!
Y-275氏はかなりハイペース投下ですね。本当にお疲れ様です。
郭氏は次は7月ですか、ちょうど生徒会も連載開始ぐらいのタイミングだし、wktkがたまりません。

319:名無しさん@ピンキー
08/06/28 21:34:22 VBtD0bQo
新旧エースの共演リレーGJ!
やっぱり大黒柱が戻ると安心します。ピンキリ氏もwktkしながら待って鱒。

320:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
08/06/29 03:13:30 cP3wAZLo
 住人の皆さん職人の皆さんお疲れ様です。
濱中でマサヒコ誕生日ネタ、スルー対象ワードは「猥談」です。
タイトルは「最適のプレゼント」でお願いします。

では。

321:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
08/06/29 03:14:04 cP3wAZLo
 梅雨がまだまだうっとおしい六月末の某日。
小久保邸には五人の若い女性が集っていた。
もはやいちいち誰とか説明する必要もないだろうが、そこを敢えて言うと、
濱中アイ、天野ミサキ、若田部アヤナ、的山リンコ、中村リョーコの面々である。
 マサヒコたちが中学を卒業して二年、
マサヒコとリンコは同じ高校に通うことになったが、ミサキは別の進学校、アヤナは父の都合で渡米、
アイは卒業研究と就職活動、リョーコは社会人一年目……と、
家庭教師時代とは異なりそれぞれ離れた時間が多い生活になるかと思いきや、
もともとミサキはマサヒコの隣人で、何より彼氏と彼女の関係、
アヤナは一年であっさり戻ってきて、アイの卒論と就活も早目に蹴りがつき、
リョーコはリョーコで何だかんだ言いつつこの年下連と縁を切るつもりなんざなし。
で、結局は仲良し関係を変えず変わらず続けている状態なのだった。
「では、さっそく会議を始めましょう」
「はい、中村先生しつもーん」
「早速のその意気や良し。で、何? リン」
「今日は小久保君の誕生日プレゼントを皆で決める会議なんですよね」
 マサヒコの誕生日は七月一日。
今日から目と鼻の先で、プレゼントを用意するのにちんたらしている暇はない。
「そうよ」
「じゃあ、何で小久保君の家で話し合いをするんですか?」
 濱中アイと中村リョーコは、未だにマサヒコたちから先生と呼ばれている。
家庭教師と教え子の関係は中学卒業と同時に解消されており、
小学校の教師であるアイはともかくとして(まだ産休職員の代替で臨職扱いだが)、
リョーコは業界大手のいつつば銀行に勤めているので、先生呼ばわりは本来はおかしいところっちゃおかしいところ。
が、三つ子の魂ではないが、それならそれで「濱中さん」「アイさん」「中村さん」「リョーコさん」と呼び方を急に変えるのも、
ちょっと微妙な話だったりするのもまた事実ではある。
呼ぶ方もしっくりこないし、何より呼ばれる方もこそばゆくて落ち着かないということもあり、
結果、旧来のまま「濱中先生」「アイ先生」「中村先生」「お姉さま」といった呼び方が続いている次第なのだ。
「答は簡単、私のマンションでは出来ないからです」
「何でですか」
「酒瓶と未洗濯の下着とアダルトグッズが散乱しているから」
 昨日もセイジで遊んでね、と腕を組み頷きながら言うリョーコ。
まったくもって自慢出来ることではないが、それを悪びれもせずに堂々と理由にするところは彼女らしいかもしれない。
「じゃあアイ先生のところは」
「ごめんね、あのね、昨日ゴキブリが出てね」
 曰く、バルサン中。
「アヤナちゃんの家は」
「……今、兄さんの彼女が来てるから。父と母に会いに」
 曰く、結婚前の重要な面接(?)中。
「ミサキちゃん……」
「え? そ、その、私は別に……。わ、私の部屋でも良かったんだけれど」
 曰く、展開に流され中。
「んー、で、私の家は皆の家から遠い、と」
 的山邸はポツンと離れた距離にあり、集まるのに不適。
で、結論としては。
「ま、そういうことでマサの家が一番都合がいいのよ」
 小久保邸は集合場所。
これもまた、以前から変わることないお約束である。

322:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
08/06/29 03:16:40 cP3wAZLo
「さ、ちゃっちゃと話を進めるわよ。早くしないとマサが帰ってきちゃうから」
 部屋の主であるマサヒコは現在外出中である。
母に命じられ、駅前のデパートまでお買い物に出かけているのだ。
このポイントは、マサヒコ本人がいないのに部屋に女性陣を勝手に上げちゃう母ってどうなのよ……ではない。
息子が女の子に囲まれている状況が楽しくて仕方ない母がちょっと策を弄しちゃいました、というところにある。
すなわち、息子の部屋で会議をさせるべく、わざわざ当の息子を追い出したということ。
息子がいたらいたでおもしろい展開にはなるだろうが、
どうしても突っ込み兼ストッパーになってしまい話が佳境に入る前に切れてしまうのだ。
それでは盗み聞きの楽しみが薄れてしまう。
「で、さっそく本題なんだけど」
「プレゼントのことですか」
「そうそう。結論に飛んじゃうと、もう一つしかないでしょ」
「? PS3ですか」
 尋ねるミサキ。
前々からプレイステーション3が欲しいと何度かマサヒコが口にしており、
瞬時に「マサヒコが欲しいもの」と言えばこれくらいしか思い浮かばない。
「違うわよ、んなもん自分の小遣いで買わせなさい」
「じゃあ、何ですか?」
 ミサキを筆頭に、アイ、アヤナ、リンコの頭上には見えないハテナマークが浮遊。
リョーコはそんな四人をニヤリと笑いつつ見回すと、胸を張って言い放つ。
「決まってるでしょ。カラダよカラダ」
「カラダ……? 清涼飲料水ですか」
「はいボケないボケない。つまり肉体よ肉体!」
「……」
「はいあきれないあきれない。若く瑞々しい乙女の肢体をこう、首にリボンでも巻いてプレゼントに」
「……あのう」
「マサの目の前に四人一列に並んで、誰から味見する? なんて」
「すいませんけど」
「恋人にプラスして自由にしていい処女が三人なんて男にとっちゃ超ド級のプレゼント……」
「いい加減にして下さい!」
 リョーコの暴走、それに怒るミサキ、急ぎ足の展開についていけないアイ、
わかってるのかわかってないのかほよよんとした表情のリンコ、
突っ込みたいのに相手がリョーコだからそれがなかなか出来ずに赤面して黙り込むアヤナ。
ストッパー役のマサヒコがいないとこうなります、という典型的な流れになっている。
「そ、そんなこと出来るわけないですし、しません!」
「あらどうして?」
「どうしてもこうしてもです! 常識的に考えて!」
 語気荒いミサキだが、リョーコにはその心底が透けて見えている。
常識に照らし合わせて、という立場で反論してくるミサキだが、結局は恋人であるマサヒコに他の女性が近づくのが許せないのだ。
嫉妬と言ってしまえばそれまでなのだが、
アイ、アヤナ、リンコのマサヒコに対する感情が「異性の友人」と一言でまとめるには、
あまりに曖昧なままであるのがミサキの中では無視出来ない問題となってしまっている。
アイはショタコン疑惑、リンコは天然で性意識の壁が低いという危険性がそれぞれあり、何より女の直感的にアヤナがどうにも怪しいわけで。
ただでさえ日中別々の高校に通っていて側で目を光らせられないのに、
その上本来なら安全牌であるはずの親友がマサヒコに本気になったら……と、
友情とはまた違った次元で、ミサキにしてみれば気が気でないところ。
それで、そんなミサキの「恋する乙女の心の動き」は、
色事について百戦錬磨なリョーコにゃわかりやす過ぎる程にバレバレなのだった。

323:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
08/06/29 03:17:58 cP3wAZLo
「ミサキはああ言ってるけど、あんた達はどうなの?」
 ここでリョーコ、反対意見に真っ向から立ち向かわず、
一旦別人に話を振って場の雰囲気を泥沼な方向へと持って行くという戦法に出た。
これで振った面子も一斉に歩調を合わせて敵対してきたら作戦失敗なのだが、もちろん中村リョーコはそんな見通しの甘い迂闊な人間ではない。
アイたちの性格と思考を見越しているからこそ打てる、狡猾にして勝率の高いカケヒキなのだ。
「わ、わっわた、私もそんなこと出来ません」
 アイは反対するものの半ばパニクる。
「な、何で小久保君何かにそ、そ、そんなことを、してあげなけりゃならないんですか!」
 アヤナも同様で、こちらはパニクるというより慌てると言った方が適切か。
「えー、じゃあ小久保君のセックスフレンドになれってことですかあ? うーん……」
 リンコは論点が完全にズレた答を返す。
「リ、リ、リンちゃん! 何考え込んでるの?」
 リンコに反射的にミサキが突っ込む。
もうこうなると完全にペースはリョーコのもの。
ミサキもアイもアヤナもリンコも、ミキサーでかき混ぜられる果物の如しだ。
どういったジュースが出来上がるかは、それはミキサーたるリョーコの思惑次第。
「ミサキ……あんた将来、看護師になりたいって言ってたわね」
「へ?」
 リョーコ、二の矢を放つ。
突如まったく違う方向に話題を振って相手をさらに惑わせる、これぞ彼女の常套手段。
もちろんまったくの無暗撃ちではない、ちゃんと意図あってのものである。
「そ、それがどうかしたっていうんですか」
「ううん、あのね……オトコって奴はね、コスチュームプレイに誰しも弱いのよ」
「は?」
「ナースなんてその中でも上位に来るのよねぇ、例外なく。マサヒコも多分そうじゃないかなー、なんて」
「え、え、え?」
「そうねえ、設定は……マサが医者でアンタが新人看護師で――」

  「天野君……君はいけない子だな。聖なる医療の場でこんなに淫らに濡れるなんて」
  「あ……あ、そ、それは、それは小久保先生が……」
   天野ミサキは今年の春にこの小久保病院に就職した新人看護師。
  中学時代に見た医療番組の影響でこの道を目指し、見事夢を叶えることが出来た。
  彼女の前途は明るかった。
  いや、明るいはずだった。
  「さあ、いつものようにおねだりして、ゆっくりと腰を下ろしてみて」
  「は、い……。小久保先生の、マサヒコ先生の太いお注射を、私に突き刺して下さい……!」
   小久保病院の跡取り息子、マサヒコ。
  端正な顔立ちで若い看護師連から人気があり、ミサキも勤めて初日から仄かな想いを彼に寄せていた。
  「あ、あっ……す、ごいで、す……!」
  「いやらしいな天野君……ミサキは。もう根本まで飲み込んだ」
  「はぁ、はぁ……」
   ミサキがマサヒコから声をかけられたのは、出会って一か月が経った頃。
  ミサキが一人、夜の資料室でカルテを直していた時だった。
  「大変だね、手伝おうか」と優しい口調で言われ、ミサキは一気にのぼせあがってしまった。
  「ここは今はたまたま使ってないとはいえれっきとした病室なのに、ミサキは恥ずかしくないのかい」
  「言わないで、言わないで下さい……! あ、んんっ、き、気持ちいいよぉ……!」

324:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
08/06/29 03:19:21 cP3wAZLo
   その後も事あるごとに会話を重ねるようになり、
  もともと異性に関しては純過ぎる程に純なミサキは完全にマサヒコの虜となった。
  そして。
  「くっ……ミサキ、どこに出してほしい?」
  「あ、あっ……! ダメ、服は、看護服はダメ……まだ、仕事が……外は、ダメです……! ああっ!」
  「それじゃ、中がいい?」
  「はぁ、あああん……! ダメ、それもダメぇ、にん、しんしちゃう……!」
   カーテンから差し込む月明かりに照らされて、
  天野ミサキはベッドの上、マサヒコの上で腰を振っている。
  ナース服のままで。
  「大丈夫……くぅっ、ここは病院だ、堕ろすことなんて簡単に出来る」
  「ダメ、そんなのダメ、ダメぇ! ああっ、私は、私はぁ……ダメっ、いく、イッちゃうよぉ!」
   マサヒコが舐めろと言ったらミサキは舐める。
  飲めと言ったら飲む。
  中出しを求められたら応じる。
  今のミサキは、完全にマサヒコの奴隷だった。
  「よし……出す、ぞ……っ!」
  「あ、あ、あああーっ!」
   ミサキはマサヒコを愛している。
  そう、心の底から。
  マサヒコが他のナースにも手を出している事実を知らずに。
  この患者がおらずいつも空き室になっている病室で、毎晩違うナースを抱いている事実を知らずに。 

「――とか、何とか」
「なっななななな、何を言ってるんですかっ!」
 リンゴやイチゴもかくや、と思われる程に顔を赤くし、ミサキは怒鳴る。
しかし彼女は気づいていない、既にリョーコの術中にはまってしまっていることを。
リョーコのエロ話を区切りの良いところまで聞いてしまっているのがその証拠でもある。
所詮、こっち方面ではミサキはリョーコに勝ち目などない。
「だ、だいたいそれじゃコスプレとかいうレベルじゃないと思います!」
「んー?」
「な、なりきりじゃなくて何かもう完全にそのものじゃないですか!」
 ミサキのツッコミはある意味正しい。
正しいが、悲しい程に無力である。
「ねぇミサキ」
「もう、知りません!」
「怒ってるけど、アンタは一度も考えたことがないの?」
「え?」
「ナースプレイはともかくとして、マサの子供が欲しいと思ったことは、さ」
「なっ!?」
 リョーコ、倶梨伽羅峠の火牛の如く一気呵成の責め、いやもとい攻め。
動揺を誘ったところに急所を突いてトドメを刺す、まさに悪女の面目躍如と言えようか。
「マサちゃんの子、ども……?」
「いい、アンタはこの面子の中では勝ち組なのよ? 彼氏がいて」
「……で、でも、まだ私もマサちゃんも高校生で」
 まだ高校生、とか口走っている時点で完璧に陥落しているわけだが、最早ミサキはリョーコマジックの檻の中。
過去に何度もひっかかり、いい加減耐性も出来そうなものだが、やはりミサキの本質は夢見がちな乙女であるということか。

325:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
08/06/29 03:20:21 cP3wAZLo
「もう処女じゃないんでしょ? ほら、前回マサに抱かれたのはいつ? その時のことを思い出してみなさい」
「……」
「恋人へのプレゼントが妊娠の報告なんて素敵と思わない?」
 さらばミサキ、妄想の園へ。
頬を染め、ブツブツと愛しい彼氏の名前を呟く今の彼女に聖光女学院で五指に入る秀才の面影はない。
「お、お姉さま! こ、こ、高校生でに、に、妊娠なんて不潔です! 風紀が乱れてます!」
「そうですよ先輩! 家族計画です! 子づくりは計画的に!」
 アヤナとアイの遅すぎる自己主張。
もちろんこんなもん、焼け石に水、暖簾に腕押し。
リョーコにしてみりゃこのタイミングで二人がつっかかってくるのもお見通しである。
「アヤナ」
「は、はいっ!?」
「アンタは保育士になりたいんだっけ?」
「え、な、なりたいと言うか、子供が好きなので……」
「じゃあシチュエーションは決まりね。アンタの保育園でマサの子供を預かっていて」
「ちょ、ちょっとお姉さま!?」
「迎えに来たマサを倉庫に連れ込んでかねてからの想いを遂げる、と」

   若田部アヤナは薄暗い倉庫の中、四つん這いの格好で無心に腰を振っていた。
  彼女の背後には、一人の男性が覆いかぶさっており、これもまた同じように腰を動かしている。
  所謂、後背位のセックスだ。
  「ああっ、小久保君、小久保くぅん!」
  「わかた、べ……!」
  「いや、いやいやっ……! アヤナって、アヤナって呼んでくれなきゃイヤ……!」
   若田部アヤナと小久保マサヒコ。
  二人は中学時代、同じ学校に通っていた。
  間に何人か挟み、色々あったがまず異性同士としては仲が良かった方であろう。
  やがて中学卒業と同時にマサヒコは幼馴染と交際を始め、
  アヤナはアヤナで両親の事情でアメリカへと移住、接点は無くなった。
  「やばい……もう出そうだ」
  「あんっ、あっ、中に、中に……欲しいよ、小久保くんっ」
   涎を垂らして懇願するアヤナ。
  彼女の前髪や頬には、つい十分前にマサヒコがしたたかに撃ち放った精液がまだこびりついている。
  舌と乳房で奉仕をした結果だった。
  「でも、今日は……くっ、ヤバイんじゃないのか」
  「うん、うんっ、でも、でも欲しい、小久保君の精子、精液、子種が、欲しいっ!」
   二人が再開したのはまったくの偶然だった。
  アメリカから帰国後、アヤナは東大進学を強制する父に逆らって家を飛び出し、
  かねてからの希望であった保育士になるべく短大へと入学。
  無事資格を取得し、密かな母の援助もあってこの保育園へと就職した。
  「だけど、くっ、やっぱりダメだ、デキちゃうだろ……っ」
  「ううん、欲しいの、小久保君の赤ちゃん欲しいの!」
  「わ、若田部っ」
  「ごめんなさい、あんっ、あま……ミサキ……!」
   小久保マサヒコの妻、小久保ミサキ。
  旧姓天野ミサキは、アヤナの中学時代からの親友にしてライバルな関係だ。
  「ごめんね、ごめんね、でも、私、わたしぃ……」

326:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
08/06/29 03:21:21 cP3wAZLo
   アヤナは薄暗い虚空に向かって謝り続ける。
  それはマサヒコへの、ミサキへの、そしてこの保育園に通っている一人の小さな女の子へのもの。
  そう、マサヒコとミサキの子への。
  「好きなの、どうしようもないくらい、小久保君が好きなの……ぉ!」
   満開の桜の下、マサヒコが娘を連れて入園式に現れた時、アヤナは言葉を失うくらいに驚いた。
  学生結婚、娘の誕生、そしてミサキが病気で入院という顛末をマサヒコの口から直に聞いた時、彼女の心の奥に再び炎が灯った。
  マサヒコへの、かつてひた隠しにしていた愛の炎が。
  「……ダメだ、外に出すよ若田部」
  「どうして、どうして……!」
  「俺はこれ以上、ミサキを、娘を裏切れない……!」
   妻が入院中で男の欲望を吐きだす機会がなかったマサヒコ。
  ミサキ不在で心に自制をかけることが出来なかったアヤナ。
  ともに弱い人間だったと言ってしまえばそれまでなのだろう。
  二人は、保育園のお迎えの時間に密かに裏の倉庫で逢引を重ねる仲になった。
  「ゴメンな、若田部……」
  「ううん、私こそゴメンね、小久保君……」
   マサヒコとミサキの子は、大好きな先生と大好きな父の爛れた関係を知らずに部屋で迎えを待っている。
  そう、今も――

「とか、なーんとか」
「ありえませんッッッ!」
 アヤナ、完全に声が裏返っている。
パニックを通り越して頭の回路がショート寸前になっていることが良くわかる。
得てして自立心の強い自信家は予想外過ぎる出来事には脆いものなのだ。
「なんなんなんでわたわた私とこくこく小久保君がそんそんそんな関係に」
「落ち着きなさいアヤナ」
「だいたいたいありええないですす。小久保君と天野さんがもし結婚したなら私がそれを知らないわけが」
 ミサキは勉強上でのアヤナの倒すべき(?)ライバルだが、同時に大切な親友でもある。
仮にアヤナがアメリカから何年も日本に帰れなかったとしても、それでもメールで連絡を取り合うくらいはするはずの仲だ。
「ふふん、アヤナ」
「なな、何です?」
「アンタ、マサとミサキが結ばれることに抵抗はないわけ?」
「へっ!?」
 渡米直前、マサヒコに対する微妙な気持ちはふっ切った。
アヤナはそう信じていた。
信じ込もうとしていた。
ミサキだけはそれを心の奥で疑問視していたが、
少なくともマサヒコをはじめアイやリンコはアヤナがマサヒコへ恋心らしきものを抱いていることに気づいてはいなかった。
が、ぎっちょんちょん。
これもリョーコはあっさりと見抜いていたのだった。
ミサキとマサヒコの仲をアヤナが認めたつもりで認めていなかったのを。
「アヤナ、あんたはマサヒコを欲しいと思ったことが、本当に一度もなかったの?」
「私は、でもそんな……小久保君を、私は……」
 アヤナ、落ちる。
認めることは妥協すること、それはすなわち心が弱いということ。
そんな自分を決して許すことが出来ないプライドの持ち主だからこそ、こういう誘導尋問にはからっきしである。

327:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
08/06/29 03:22:23 cP3wAZLo
「私は、でも、でも、でも」
「恋は奪いとるもの。そういう見方もあるわよ」
「待ーって下さいせんぱーい!」
「んっ、何よアイ」
「それ以上はダメです! マサヒコ君とミサキちゃんの仲を裂くようなことはー!」
 アイの言葉に、リョーコはにんまりと微笑んだ。
アイが自分を止めてくるとしたら、多分こんな言い方をしてくるだろうと踏んでいたからだ。
「アイ!」
「はいっ!?」
「アンタは教師、ならば王道路線で行くべきね。教師と教え子の禁断の恋路!」
「えええええええええええ」
「ついでにリン!」
「ふえ!?」
「アンタはファッションデザイナー志望だったっけ……ま、それとは関係なくアンタはスク水で野外プレイ!」
「何か風邪ひきそうですケド」
 小久保マサヒコへの誕生日プレゼントを何にするか。
その緊急会議は着地点が見えないまま限りなく空へと上昇中。
リョーコが仕切るとたいていは議論の向う先が見えなくなるものだが。
「よし! じゃあ教師とロリっ子と3Pで。いや、いっそ5Pか? Pだけにプレゼントということで」
 今回のこれは極めつけかもしれなかった。
暴走のバッケンレコードがひたすら伸びていく――


「……ホント、楽しい子たちねえ」
 さて。
やはりというか何と言うかマサヒコ母、ドアの向こうでバッチリ盗み聞き。
彼女にしてみてもこれが目的でマサヒコを追い出したわけだから、見事目的達成と言えた。
「しかしリョーコちゃん、最初からプレゼントの話をする気なかったんじゃないかしらね」
 類は友を呼ぶとか、天才は天才を知るとか何とか。
性格構造に似たところが多々あるだけに、リョーコの暴走が計画的なものに思えてきた母なのだった。
「だけど、どうも若田部アヤナちゃんもウチの子に気があるみたいね」
 まったく誰に似たのやら、と胡坐かきつつ首筋をポリポリとかくマサヒコ母。
お行儀悪いが、さすがに立って聞き耳をたてるのはしんどいうということか。
座布団があったら良かったのだろうが、それはさすがに無いものねだりであろう。
「まだまだ波乱があるかも、これは」
 立場的に、マサヒコ母はミサキを応援はしている。
小さな頃からミサキがずっとマサヒコを好いていてくれたことも承知しているし、
二人が付き合い始めて無事に男女の仲になれたことも感づいている。
出来れば、息子にはこのままミサキと結ばれて欲しいとも思っている。
しかし、自身の過去の経験から、マサヒコ母は知っている。
恋愛というのはどう転ぶかわからない……ということを。

328:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
08/06/29 03:23:19 cP3wAZLo
「ふふん、半分冗談のつもりだったけど、もしかしたら案外タイムリーな買い物だったかもしれないわね」
 ニヤリと笑うと、マサヒコ母はズズズとすすった。
本来ならミサキたちにふるまうはずだった、氷が溶けてすっかりぬるくなってしまった麦茶を。
そして思った。
今頃マサヒコ怒ってるだろうか、それとも途方にくれているだろうか。
「さて、我が息子はどうするか?」
 買い物のメモを持たせて駅前のデパートへとマサヒコを行かせたわけだが、
ボックスティッシュやら蚊取り線香やらの商品名が並んだそのメモの一番最後に、彼女はこう書いたのだった。

 『誕生日プレゼントとしてコンドーム一年分』と。



  F   I   N

329:ピンキリ ◆UsBfe3iKus
08/06/29 03:26:04 cP3wAZLo
以上です。
アイとリンコのエロ妄想部分は結局省いた形になってしまいました。
すいません。

では、また。




>wikiの方
感謝の言葉もありません。
本当にありがとうございます。

330:名無しさん@ピンキー
08/06/29 07:14:53 KdtldHnj
おおおーっ!!
久々の大量投下、みなさんご苦労様です。

331:名無しさん@ピンキー
08/06/29 10:47:21 kRgfwoJd
郭  氏  復  活  キ  タ  ー  !
超乙!

332:名無しさん@ピンキー
08/06/29 12:43:16 gkY6MmsH
ピンキリ氏まできたあああああ
本当久しぶりの投下ラッシュ、生徒会でもっとこれが活性化すればいいな^^

333:名無しのWiki職人
08/06/29 13:02:13 fqP7YczW
お疲れ様です
Wiki保管庫更新しました


以前は一記事15KB程度が限界だったので長編は分割していたのですが、
一記事のサイズが大きくても大丈夫になったようで
たとえば郭氏の「Back in Japan」(約140KB)でも1つに出来ます。
編集人としては楽なのですが、ちょっと長すぎる気もしますね。


334:名無しさん@ピンキー
08/06/30 01:41:14 rsZLM80j
祝!郭泰源氏カムバック!
そしてwiki人も乙!

335:名無しさん@ピンキー
08/06/30 10:24:48 nDWDeMA4
移籍情報確認してないんだけどいつ移籍するんでしょうか?

336:名無しさん@ピンキー
08/06/30 22:26:21 vGU+eB/w
>>335
7月23日発売のマガジンからだよ

337:名無しさん@ピンキー
08/07/01 07:10:55 DDEo7PWy
郭氏帰還というのに人が少ないな

338:名無しさん@ピンキー
08/07/01 07:18:56 Ylhcz/TD
んなこたないぞー

339:名無しさん@ピンキー
08/07/01 15:13:53 DDEo7PWy
そうかーすまん
あ、マサヒコ誕生日オメ

340:名無しさん@ピンキー
08/07/01 17:09:13 4Jtz3avE
まあ、今は仕方ないよ 週間に変わると目につきやすいから、人増えるかも・・・
でも、ROM専の人もいるだろうそこそこ人いるんじゃないかな

341:名無しさん@ピンキー
08/07/02 09:03:35 VP/Uaf+3
黄金期の一気に十数人がGJレスを返す様は壮観だったな
まぁ昔は昔今は今でマターリできればいいんだけどな

342:Y-275
08/07/02 17:42:44 zJ+0Bv4e
こんにちは。住人、職人の皆さん、お疲れ様です。

唐突ですが、投下します。

かなり前に書いた小ネタを上回るやっちゃいけなかったかな感のある小ネタです。

スルー対象ワードは

『涼宮ハルヒ』

『タカトシ視点』

です。

かなりの悪ふざけネタなので薄目で読んでください。

343:Y-275
08/07/02 17:46:07 zJ+0Bv4e

『すいません、遅れました。』

俺が一声かけて生徒会室に入るとそこには異様な光景があった。

『遅かったわね、津田君。』

遅れた理由に関しては触れずに、ただ一言だけ返す、アリア先輩。

ただ、その格好は…

『メイド服??』

『こら、アリア!!素で返してどうする!?服着せる前に言っただろう!!今日は未来から来たドジなメイドの役だと。萩村を見習え!!』

いつもの場所辺りから会長の声が聞こえる。
だが、肝心のスズ先輩の姿が見当たらない。
俺は辺りを見渡す。

『…いた。』

スズ先輩は生徒会室の片隅でハードカバーの分厚い本を読んでいた。
いや、ぶっちゃけ、その体格でその本を持っているのは重そうなんだが…

『…………』

スズ先輩は視線をこちらに向けたが表情一つ変えず、何もしゃべらない。3点リーダー製造機と化してしまっている。

声でいつもの場所にいると判断し、今まで一度もそちらへ向けてなかった会長の方へ俺は視線を移した。

『……っ!?』

俺は思わず絶句してしまった。
何の気まぐれか会長の髪型はポニーテールだった。
それと何故か腕に『生徒会長』と書いた腕章がついていたことも言っておかねばなるまい。

………………………………

344:Y-275
08/07/02 17:47:38 zJ+0Bv4e

『昨日、スニーカー系のライトノベル超人気シリーズの4作目を読んで、状況似てるし、面白いんじゃないかと思ってな。』

あのシリーズなら俺も読んだことはある。
確かに、俺に妹がいてみたり、スズ先輩と物真似してるキャラも、アリア先輩と物真似してるキャラも身体的特徴は被る。
なんなら俺が生徒会に入るまでの経緯、会長の強引さを類似要素として加えても良い。

『それに…』

会長はまだおっしゃりたい事があるようだ。

『これから週刊に移って、今まで知らなかった奴らにパクリ等と某掲示板に書き込まれるのもシャクだからな。それならいっそ、先にネタにしてしまおうという訳だ。』

先程俺が易々と類似要素を上げられるぐらいだ、新しく読みはじめた奴らにはそう映る可能性は充分有り得る。
だが、しかし…

『いや、面白そうもなにもジャンルが違い過ぎますよ。』

SFのライトノベルと4コマのギャグ漫画。なにもかもが違いすぎる。
っつーか、会長はいとうの○ぢ原画作品好きだな。
家のPCにななついろドロッ○ス辺りのアイコンがあってもおかしくないんじゃなかろうか?

そんな事を考えていると、

『津田君、これ、お茶ね。』

アリア先輩がお茶を差し出してくる。

っつーか、なにが何でもこの設定通すつもりですか…

345:Y-275
08/07/02 17:49:38 zJ+0Bv4e

『ところで、会長?』

俺は自分の疑問を解決することにする。

『あの作品に出てくる、ガチホモのにやけ超能力者役は誰がやるんですか?』

そう。あの話を真似るのであればもう一人登場人物がいる。

『はぁ、何を言っているのだ津田?4作目だと言っただろう?いないのが標準仕様だ。』

『いや、それだと会長もここにいちゃおかしいんじゃ…』

俺の記憶が確かなら、4作目のパラレルワールドにはガチホモの超能力者も、彼が神と崇める人間。つまるところ今会長が演じている(はずの)キャラもいないのが正解のはずである。

さらに厳密にいえば、アリア先輩役の人がサンタコスをしても、メイド服を着ることはない。
あれか?ポニーテールならここにいてOKって事なのか?俺にはポニテ属性無いぞ?

等と思考の世界に入り込んでいた俺が再び会長の方を向くと会長は俯いている。

地雷踏んじまったか?
背中を嫌な汗が流れる。


『そ、そんなに、津田は私がいるのは嫌か?』

………………話が唐突に飛んだ気がする。

『私だって、『普段の会長が良い』やら、『いつもの会長といる日常が楽しい』なんて言われてみたかったんだ!!』

ちょっ、会長何を言って…

『さらには、階段落ちして入院した津田の横に布団をひいて会長権限で独り占めを…』

って、俺はこのあと階段落ちまで求められてたんですか!?

346:Y-275
08/07/02 17:52:38 zJ+0Bv4e
刺されるよりかはマシだけどさ…
助けを求めるように辺りに視線をさ迷わせるとスズ先輩がこちらを見ている。

『………………』

って、スズ先輩、まだキャラ続行中ですか!?
っつーか、今更ながらですが、先輩のIQが180もあると思うと、ハードカバー本が映えますね。

『萩村先輩。会長もこんな様子ですし、もう演じ続けなくても良いんじゃないですか?』

『………わかった』

っつーか、ほんとにわかったのかどうかいまいちわかりにくい答えだな。

『♪ある晴れた日の事~』

突然の歌声にビックリし、そちらを見ると、メイドさんが踊っている。

『ちょっ、七条先輩何を!?』

『いや、そろそろエンディングかなと思って。』

『どの辺の流れが!?いや、そうじゃなくて突然歌いださないでください!!まじでビビりますって!!』

『ん~、わかった。別の曲にするね。』

いや、そうじゃなくて…

『ミ、ミ、ミラクル、ミク…』

『だ~、それ以上歌っちゃダメだ~!!』

………………………………

2度とこんな事はおきまいとは思うが、かなり混沌とした生徒会室から解放されたのは、下校時刻のチャイムが鳴り響いた後だった。
キャラが壊れた会長だったが、生真面目にも下校時刻のチャイムとともに『解散!!』と宣告。
アリア先輩の着替えを待っている二人を置いて、俺は先に下駄箱に向かった。
しかし、考えてみると、あんな感じの突拍子もない思いつきにしょっちゅう振り回される作中の主人公は凄いな。
4作目の中ではそんな日常が『楽しい』だなんて発言してるし。そんなの俺には脱帽もので、
そんな境地を得るのは一生無理に思える。
そんな風に思うのだが、どうしてもこのあとに出てくるセリフは彼と同じなようだった。

『やれやれ…』

347:Y-275
08/07/02 17:58:26 zJ+0Bv4e
以上です。
言い忘れましたが、前に書いたシャナネタと繋がってたりします。

漫画板のほうでこんな話題が出てたのでノリと勢いで。

タイトルは

『生徒会役員共の消失』

で。

今、本誌移転に間に合うようにアリアで一本書いてます。

それでは、お目汚し、駄文乱文失礼致しました。
失礼します。

348:名無しさん@ピンキー
08/07/02 19:07:17 2DvcVHSy


349:名無しさん@ピンキー
08/07/02 23:07:02 IeebLA0R
自分はハルヒをあまり知らないので、何ともいえませんが
とりあえず、ハイペース投下本当に乙です

350:名無しさん@ピンキー
08/07/02 23:07:57 IeebLA0R
自分はハルヒをあまり知らないので、何ともいえませんが
とりあえず、ハイペース投下本当に乙です

351:名無しさん@ピンキー
08/07/03 01:28:52 xsJlNA1b
ちょっとニヤリとしちゃった。


352:名無しさん@ピンキー
08/07/03 10:31:44 j2pqXJcY
これはクロスとかコラボって言っていいのかなw
ともかくハイペース乙


あ、ふと思ったが郭氏はもしかして前回でスレ史上初の投下100突破?

353:名無しさん@ピンキー
08/07/04 13:05:52 Y/B2uceU
マターリ

354:名無しさん@ピンキー
08/07/04 14:23:56 f4POew7i
ふわ~り

355:名無しさん@ピンキー
08/07/05 01:14:23 R3xohjsC
中村リョーコ
小久保ママン
小宮山
佐々岡
園長嫁
レイコ社長
横島
寮母

氏家女傑八部衆

356:名無しさん@ピンキー
08/07/05 15:27:56 VW49x/cZ
まぁ1番エロいのはコスプレイヤー・ケイちゃんなんですけどね

357:某コテハン
08/07/05 21:32:54 jVsu4Nyp
ここのところ仕事が忙しくて製作が全く進みませんが、
新しい職人さんが頑張っていることだし、自分も気力を振り絞って作品を完成させようと思います。

358:名無しさん@ピンキー
08/07/06 16:29:49 n/ePGIBj
おkおk

359:名無しさん@ピンキー
08/07/06 21:12:41 OcVo4ICZ
ガンガレー(wktk

360:名無しさん@ピンキー
08/07/07 12:11:02 6RfJwnbi
黄金期は右も左も職人ばかりだったような気もしたが、
今まででいったい何人が蹄跡を残したんだろう?

361:名無しさん@ピンキー
08/07/07 14:46:40 ltXl0enx
生徒会が週マガに移籍したら職人増えるかな?

362:名無しさん@ピンキー
08/07/08 08:51:00 5iBw3GC9
戻ってくる職人はいるかも試練

363:名無しさん@ピンキー
08/07/09 12:10:37 0Y8pU/YY
男一人に女多数の下ギャグというスタイル
それが氏家、そこに痺れ(ry

364:名無しさん@ピンキー
08/07/10 04:24:34 vDOAv0dA
氏家先生の作品って設定がギャルゲっぽい(思い切りネタにしてましたが)気がする。
ツンデレネタはほぼ全員がやったし、クーデレネタもあった、ネコミミはリンコが、妹はカナミ、コトミ…ドジっ子、天然もいる。
あと、姉属性とヤンデレ属性はどこでネタになるのか若干楽しみな俺がいる。

365:名無しさん@ピンキー
08/07/10 18:26:37 QuMaRAEH
ヤンデレは置いといて、姉はそういえばいないな
まあ姉御キャラぽいのはいるけど

366:名無しさん@ピンキー
08/07/10 21:01:43 dLqT3+qK
男主人公が揃って美形で天然レディキラーっぽいからな
あかほん井戸田は本領発揮?前に連載終わったからアレだが

367:名無しさん@ピンキー
08/07/11 22:46:54 q3TiqYAo
姉>スズ
あえて言ってみたり

368:名無しさん@ピンキー
08/07/11 23:50:38 tE6aLo2M
井戸田の場合は立場上、TBの3人相手に
本領発揮するのはまずいのでは(*´Д`*)/ヽァ/ヽァ

369:名無しさん@ピンキー
08/07/12 17:32:44 4KLTbkQy
じゃあ三瀬さんで

370:名無しさん@ピンキー
08/07/12 22:43:12 jPl4r4p+
じゃあ社長で

371:Y-275
08/07/13 13:41:54 fPc4x9X8
住人、職人、保管庫管理人の皆さんお疲れ様です。
なんとなく、以前からちょこちょこ書いてた生徒会役員共のSS、めどがついたんで投下します。

スルー対象ワードは

『未完』

『アリア視点』

『展開が急』

です。

372:Y-275
08/07/13 13:43:41 fPc4x9X8

『海についたぞ!!』

夏の日差しのもと、吹き抜ける心地よい潮風に髪を任せるまま、なびかせながら、一番前でシノちゃんが声だかに宣言しています。

来る前に『遊びではない』と宣言しておきながら、楽しみで仕方なかったのでしょう。

私もその気持ちは良く分かります。
楽しみでないといえば嘘になるから。

ただ、素直に楽しめる訳ではなかったりもします。
その事を考えると少し憂鬱です。

私とシノちゃんの間に取り交わされた、『約束』という懸案事項を抱えながらも合宿はスタートしました。

………………………………

『わ、私と津田の間を取り持ってくれないか?』

そう告げられたのは夏休みを控え、終業式の打ち合わせを終えた夕方の生徒会室でした。

『そ、その、なんというか、ど、どうも、津田のことがだな…』

言い淀みながらシノちゃんが続けました。

いわく、彼と接しているうちに彼が気になりだしてしまったこと、校則との間で揺れ動いた期間もあったこと、それから、気持ちを伝えようにも手順が分からないこと。

『というわけで、自然と2人の心が通い会うような、その、なんというか…』

言葉を続けるシノちゃんの顔は夕日に照らされながらも露骨に真っ赤になっているのがわかりました。

『わかった。お安い御用だよ。』

悩んでいる親友を突き放そう等とと思うほど私は薄情ではありません。
ちょっと、お人よし過ぎかな等と思いつつも、私は引き受けることにしました。

373:Y-275
08/07/13 13:45:06 fPc4x9X8

シノちゃんに言われ、津田くんの事を今までより気にしだすと、軽はずみだったかなと思ってしまうような事もありました。
でも、それも別段気にするようなものではありませんでした。
かといってシノちゃんと津田くんの仲が進展することも無く。
結局普段通りなまま私達は今日を迎えてしまいました。

………………………………


『ねぇ、一緒に遊びに行かない?』

私が一人浜辺を歩いていると見知らぬ男の人が声をかけてきました。

本来ならば、2人の仲を取り持つという約束を交わしている以上、2人の側にいるのが適切であったとも思います。
しかし、津田くんはスズちゃんと飲み物を買いに出掛けてしまい、シノちゃんも休憩と言って、パラソルの下で休んでいます。
そんななので、私は私で浜辺を歩いていた矢先でした。

『友人と一緒に来ているので遠慮させていただきます。』

私は丁寧にお断りします。

『その友達とは後で合流すればいいじゃん。行こうぜ!!』

そういうと強引に私の手をとってきます。

『ちょっと!!離してくださいよ!!』

思いもよらない事に私は動揺してしまいます。

『大丈夫だって、ちょっとだけだから。ね?』

そういうと男性はさらに力を込めて私の手を引っ張ってきます。
純粋に力でものを言われてしまうと私にはなす術はありません。
これはかなりやばいかも…
貞操帯つけておけば良かった。私は軽く後悔してしまいます。

374:Y-275
08/07/13 13:46:15 fPc4x9X8

『ちょっと、人の彼女に何してるんですか?』

聞き慣れた声が聞こえて私は振り向きます。
男性の方も同様にそちらを振り向くとそこには津田くんがいました。
遠くから私と男性のやりとりに気付き、駆け付けて来てくれたのでしょう。

『は?なんだ、てめぇ?』
男性は津田くんを威嚇します。

『おまえこそ、何様だよ?人の彼女の手を掴みやがって。』

男性は再度繰り返された津田くんの彼女発言に、確認するように私の方を見ます。

『うん。私の彼氏です。』

『な!…さっきは友達とって…』

男性は動揺を表面にだしながら、うろたえています。

『待たせたな。アリア。ほら、行こう。』

そんな男性を前に津田くんはあいている方の私の手を引きます。

『…うん。行こう』

先程男性に引かれた時には何とも無かったのに、津田くんに手を引かれ、私は顔が火照るのを自覚しながら一言だけ返すとそのまま歩き出しました。
男性は呆然としてしまい、もはや引っ張る手に力はこめられておらず、簡単に引きはがすことが出来ました。

………………………………

それから暫く津田くんはなにも言わずに私の手を引きながら海岸を歩きます。
私も黙って着いて行きました。
途中何度か先程の津田くんの姿を思い出してはドキドキと高鳴る胸に動揺を覚えながら。

『ふはぁーっ、緊張したぁ。』

やっと発した津田くんの第一声は私もあまり見たことも無いもの。
まさに言葉通り、彼も緊張していたのでしょう。

375:Y-275
08/07/13 13:47:15 fPc4x9X8

『どうでした俺の演技?』

繋いだ手はそのままで津田くんはこちらに向き直ります。

『うーん、そうねぇ…』

突然向き直った津田くんに私はさらに頬が火照るのを自覚しながらなんとか平静に言葉を返します。

『なかなかの高得点かな。』

『でしょう?これでも、妹に付き合ってよくドラマ見てるんですよ。』

なんだか嬉しそうな津田くんです。

『それにしても、七条先輩になにも無くて良かったですよ。』

正直それは反則ではないだろうか?そんな風に思ってしまう発言をさらりと津田くんはしてきます。
先程から彼を意識してしまっている私に破壊力は抜群でした。
その後の津田くんの言葉は私の耳には入らず。
ただ、手を引く津田くんに付き従って歩きました。


………………………………

『お風呂は24時間利用可能だって、お姉ちゃん。』

その後、皆のもとへと戻ると横島先生はすっかり出来上がった状態。
仕方なく私達は近くの旅館へと泊まることになりました。
一応体裁もあるので、私達は姉弟ということになっています。
ただ、部屋が一つなので今晩は一晩中津田くんと一緒。自然と心が高揚するのがわかります。
きっと今、シノちゃんも同じように感じている。
私はそう思いました。
そう思うということは私も津田くんを好きになってしまった…
その事実はどうしても認めなくてはならないようです。

………………………………

376:Y-275
08/07/13 13:48:48 fPc4x9X8

『良いお湯だったね。スズちゃん。』

『ええ、そうですね。』

お風呂に入った帰りの事です。
そんな会話をしながら廊下を歩いていると、目の前で津田くんとシノちゃんが楽しそうに会話をしています。

なんだかんだ言って私の助け無しでもシノちゃんと津田くんは仲良くなっているようです。

そんな2人に心が痛みます。

『七条先輩どうしたんですか?』

突如、押し黙った私を不振に思ったのかスズちゃんが声をかけてきます。

『ええ、なんでもないの。』

私は平静を装って返します。

『それにしても、津田と会長は仲が良いですね。あれじゃ、姉弟というより、カップルです。』

その言葉に奈落に落とされた気分になります。
このままいけばそれは事実になる。
私は自然とそう思えました。
だって、前を歩く2人はそれほどまでにお似合いに写るのですから。

それはシノちゃんの気持ちを知っている私としては嬉しいこと。
でも、私個人としては悲しいことでもあります。

………………………………

『近親相姦は良くないぞ!!』

夜中に突如大きな声を出したシノちゃんの声に私達一同は目を醒ましてしまいました。

『その設定まだ生きてたんですか…』

津田くんはツッコミもそこそこにシノちゃんを自分の布団へと押し返します。

どうも状況から察するに寝ぼけたシノちゃんが津田くんの布団に潜り込んでしまったようです。
私の助けなんかいらないんじゃ…
思わずそう口から出かけて、その言葉を飲み込みます。
シノちゃんは強く意識してるよりも、普段の何気ないやりとりやボケっぷりが事態を良い方に持って行ってくれるような、
そんな星の下に生れついた子なのでしょう。
私も時々ボケてるなんて言われるけれど、それで事態が好転して行くなんて強運は持ち合わせていない。
そういう自覚があります。

377:Y-275
08/07/13 13:50:52 fPc4x9X8
それならば、行動をおこさなければ、この気持ちに報われる日が来ることはない。
私は思わず息をのみました。
津田くんに自らの恋心を伝えるということ、それは即ち、シノちゃんとの約束を反古にするということ。
シノちゃんとの関係は生徒会の役員として、会長と書記ではありますが、それ以前に親友です。
親友を裏切ってまで叶えるべき恋心なのか?

私は多いに悩みます。

『七条先輩どうかしたんですか?』

その時、不意に向かいの布団から声がかかりました。
みると津田くんが顔をこちらに向けています。寝返りをうった際にでも私が心地悪そうにしているのが見えたのでしょう。

『いや、ちょっとね…』

私は自分の考えを気取られまいと平静を装って答えます。

『津田くんは?』

『いや、なんか、一度目が醒めちゃったら、なかなか寝付け無くて…』

どうやら津田くんは目が醒めてしまったようです。

『ふふ、私もよ。』

私は短く答えました。

『それに、なんか、嫌な予感がするんですよね。寝ぼけたとか言って誰かが布団に忍び込んで来そうな…』

『…ゲフン、ゲフン』

…津田くんがそう言った瞬間むせるような咳が聞こえてきました。どうもその"誰か"は図星のようです。

『それなら、少し、外歩かない?』

私は津田くんを誘ってみることにします。
正直いうと、さっきの津田くんの発言がなんだか、起こりえそうな気がして、何とも言えない寒気がしたからです。

『そうですね。』

津田くんはその全てをという訳ではないでしょうが、私の意図するところは汲んでくれたようです。

津田くんが布団から出たのを確認すると、私も布団から出て、2人で廊下に向かいました。

………………………………

378:Y-275
08/07/13 13:52:07 fPc4x9X8


海の見えるロビーで向かい合うように私達は腰を下ろしました。

『いや、会長にも参っちゃいますよね。素でやってるにしても、いちいちビビりますよ。昔からあんななんですか?』

頭を掻きながら津田くんが問いかけてきます。

『うーん、あのまんまだよ。ものすごくしっかりしてて、同性から見てもひくくらい完壁なんだけど、あの通り。
でも、それが逆に堅すぎる印象を与えずに好感に繋がるんじゃないかな?』

私はシノちゃんについて思う事を付け加えながら答えます。

『なるほど、そう言われてみると…』

『その言い方だと津田くんはそう感じてはいないってこと?』

思ってもみない津田くんの答えに私は聞き返します。

『俺は立場上いちいちその言動やなんかに振り回されたり、ツッコんだりしてる分だけ、そんな風に思った事無かったですよ。』

『そうなの?』

『ええ。』

やや、苦笑気味に津田くんが答えます。

『でも、そんなところもシノちゃんの可愛いところだと私は思う訳です。』

別に今更その役目を全うしようという訳ではないけれど、津田くんがシノちゃんの魅力に気づいていない事が親友として悔しくて、私は付け加えました。

『確かにそうかも知れませんね。完璧なだけよりか全然親しみ持てますし。』

『そうそう。』

そこも純粋にシノちゃんの魅力として津田くんが捉えてくれれば良いな。
素直にそう思えます。
自然と私の頬が微笑んでいるのが分かります。

『そういえば、うちは校則であれですけど、会長って彼氏さんとかいたことあるんすかね?』

急に話しが飛んだ気がします。

379:Y-275
08/07/13 13:58:07 fPc4x9X8
『うーん、特には聞いたこと無いなぁ、あ、でも、共学化する前はしょっちゅう告白されてたけどね。女の子から。』

『百合っすか…さすがは女子校。』

そうは思っても私は素直にそう答えてあげました。

『でも、どうしてそんなこと聞いたの?』


『ん~、なんとなくですかね。魅力的であっても大変そうだななんておもわず思ったんで。』

この口ぶりだと少しはシノちゃんの思いは期待が持てるのかな?
若干の切なさが込み上げます。

『そういえば、七条先輩はどうなんすか?』

『残念ながら、私は昔から私立の女子校で、いない歴=年齢です。津田くんは?』

『俺もいない歴=年齢ですよ。』

そういう年代だから仕方が無いのでしょうけど、やっぱり、恋愛の話は盛り上がります。

『じゃあ、どういう娘が好み?うちの高校ならより取り見取りじゃない?』

『いや、それ以前にうちは校内恋愛禁止じゃないですか。』

津田くんは苦笑します。

『まぁ、でも、実際悪いことする訳でも無いし、前例も無いし、どうだか分からないわよ?
そこまで深く考えずに、オナネタにこんな娘使ってますって告白するつもりで。』

『女子校育ちでオナネタって良いんすか!?』

380:Y-275
08/07/13 13:59:14 fPc4x9X8
津田くんにツッコまれちゃいました。
あ、もちろん、ナニじゃないですよ。
気軽にってつもりだったんですが…

『それはそうと、どうなの?』

『う~ん、そんなに難しくは考えてませんね、好きになることに理由なんて特に無いかなと…
後はお互いの気持ちですかね。』

なるほど。
なんとなく、かわされた気もしますが、確かにそうなのかもしれません。
それに、昔読んだ本に書いてあった気がします。

『恋愛って難しいロジックじゃないもん。要はヤリたい時にヤル事よね。』

そう考えるとさっき布団の中で悩んだのも馬鹿らしくなって来てしまいました。
要はヤリたいか否か、そして互いの気持ちね…

『突然だけど、津田くんは私とシたい?』

『はい?』

『いや、互いの気持ちが大切って言ってたから…』

『あの、どこからツッコめば良いんですかね?』

『ツッコむところの選択肢は3つしかないよ?』

『えっと、それはつまり、どこからその発想が生まれた!?とスるって何をだ!?と…』

津田くんはいきなり挿れてくるつもりかと思ったらどうやら違ったみたいです。
私も初めてだし内心焦り気味でした。

『う~ん、確かに、結婚を前提にしてる訳ではないし、それに、初めてがベッドの上じゃないのもちょっとね…じゃあ、胸でしてあげる。』

『いや、ちょ…』

『津田くんは嫌?』

津田くんの意志を確認するように私は津田くんの顔を覗き込みます。
津田くんが、拒絶するようなら、今日は止めておこう。
そう思いながら津田くんの答えを待ちます。
津田くんは目を泳がせて、ちらりと一瞬、私の胸元を見ました。

『…嫌じゃないです。』

顔を真っ赤にしながら津田くんが小さな声で答えました。

『じゃあ、混浴行こうか。』

そう言って私は腰をあげ、歩き出します。

何でですかと聞いてくる津田くんにその方が色々都合が良いじゃないと答えながら。

………………………………

381:Y-275
08/07/13 14:04:23 fPc4x9X8
とりあえず以上です。
続きは週マガ移籍までにと言いたいところですが、ちょっと難しそうです。
ここまで書くのに二転三転してしまっているので、グダグダ&かなりの急展開になってしまいました。
書きはじめると夢中になって書けるんですが、詰まると平気で長期間放置してしまうので期待せずにお待ちくださいませ。

駄文乱文失礼致しました。
それでは失礼します。

382:名無しさん@ピンキー
08/07/14 12:39:42 J1dazTj2
早いペースに充実ぶりがうかがえます乙!

383:名無しさん@ピンキー
08/07/14 14:28:16 Ye02zm7a
GJ!!!

384:名無しさん@ピンキー
08/07/14 17:52:57 LAVrqBTM
乙andGJ!

385:名無しさん@ピンキー
08/07/15 10:43:28 ZA8ojzWC
目指せエースの座!

386:名無しさん@ピンキー
08/07/16 13:56:47 XKN6GiWM
マサやシホ、シンジたちは元気にその後をくらしているだろうか

387:名無しさん@ピンキー
08/07/16 18:24:55 uLM72ZBR
立たされろ、日本男子!!

予告きたわあああああああああああ
マガジン一時買うのやめてたけど、また購読しなおす

初回はCカラーらしい、やっぱページ数は6かね?

388:名無しさん@ピンキー
08/07/16 20:44:16 XKN6GiWM
ん?マガジンの予告見返したらシノとアリアが二年、スズが一年になってる
これは‥‥?

389:名無しさん@ピンキー
08/07/17 00:59:18 sx3NrBz3
時期的にリアルタイム進行かなと思って、3月終了か?とか思ってたが、その設定なら2年はやるつもりなんだろうな。
編集部の意図感じまくりだけど。

390:名無しさん@ピンキー
08/07/17 01:07:43 HVMB9T8G
氏家関連スレじゃそこかしこで「まーた編集がお約束で間違ったんだべ」と突っ込まれてるなw
前科たっぷりなだけに確かに怪しい

391:名無しさん@ピンキー
08/07/18 11:16:18 4t82C4CX
シンジや今岡、ケイは志望大学に受かったかな

392:名無しさん@ピンキー
08/07/18 11:43:29 Lsr5xowg
落ちた

393:名無しさん@ピンキー
08/07/18 19:28:20 v59KY7SR
シンジが誰を堕としたって?

394:名無しさん@ピンキー
08/07/18 20:29:26 iO7PQi/Z
カナミ

395:名無しさん@ピンキー
08/07/19 10:35:51 umhT1pyp
しかし、変なタイミングでの異動だな
スクランのドタバタした畳み方をみると何かあったのかとさえ思ってしまう

とりあえず氏家がんばれ超がんばれ

396:郭×伊東 ◆5pkah5lHr6
08/07/20 16:51:10 vIyoi591
はい、どうも郭です。予告通りのカナミ×シンジ、嫁との完全共作です。
NGワードは「若干鬱展開」「カナミの性格がホラー気味」かな。では、投下。


397:郭×伊東 ◆5pkah5lHr6
08/07/20 16:51:55 vIyoi591
「あ・・・いい・・・・・・おにいちゃん」
ぐちっ!ぐちゅ!
「・・・・・」
おにいちゃんが、黙って後ろから私の中に入ってる。
「カナミ・・・・・・」
「あ・・・・あンっ!おにいちゃん」
耳元で、名前を呼ばれる。低い声で囁かれるだけで私はまた、感じてしまう。
すじゅッ!!びくん!!
「あ・・・はぁッ!!入ってるう!」
奥深くまで、おにいちゃんの体積が私を満たしている。壊れそうなくらいに強くされているのに、
私のあそこはおにいちゃんに突かれて、喜んでいるみたいに、ちぢこまった。
ぐしゅッ!!ぐぢッ!!
「あ!あぁ!!深い!すごいよぉ、おにいちゃん」
おにいちゃんは、後ろから犯すのが好きだ。突かれるたび、
私のおしりの穴がきゅっとちぢこまるのを見るのが好きらしい。
この体勢だと大好きなおにいちゃんの顔を見ることができないし、
おしりの穴を見せるのなんて初めは恥ずかしかったけど、
慣れるとこっちの方がおちんちんの当たり方が深くて気持ち良くなるから不思議だ。
「カナミ・・・・はっ、はぁ・・・・・」
ぐぷん、ずぷん!
「あ!!おにいちゃん、それ!!いい!ふうッ!!」
最後にいっかい、思いっきり奥までさされて、私は、イッた。
おにいちゃんと、こころとからだが同時につながるのを感じた。
私の中で、おにいちゃんのおちんちんが痙攣するみたいに動いた。
0.1㎜のゴムごしに、おにいちゃんが射精しているのを感じた。
どくん・どくんって、おにいちゃんのおちんちんから精液があふれてるのがわかった。
「あっ・・・すごいよ、おにいちゃん。すごいッ。あったかい・・・せーえきが、いっぱい入ってくるよ・・・」
「・・・一応、コンドームはしてるんだけどな」
「えへへ・・・でもこう言った方が、気分出るでしょ?」
「あのなあ・・・」
ちゅッ
さされたままからだをおこして左腕をおにいちゃんの首にまきつけると、
苦笑いしてるおにいちゃんの横顔にごほうびのキスをしてあげる。
「きもちよかったよ、おにいちゃん。じょうずになったね!」
「誉められて良いもんだかな、それ」
言いながら舌を出すおにいちゃん。ちっちゃい頃にいたずらをみつかったときと同じ顔。
すごくカワイイから、私はおにいちゃんにまた、キスをした。
ちゅッ・・・くちゅ
「・・・・」
舌と舌をからめてまぜてくっつかせる。あったかい、おにいちゃんの口のなか。
おにいちゃんの口のにおいが少しした。おにいちゃんが唾液を私の口のなかにいれてきたんで、
こくこきゅとのみこんだ。あまり味がしないけど、おにいちゃんの唾液だから美味しい。
私を見つめるおにいちゃんの目は、哀しそうだった。わかっているんだ。私にも。
これが、いけないことだってことくらい。それでも、私は

カナミが哀しそうな目で俺を見つめてくる。分っている。俺にも。
これが、禁忌の行為だってことくらい。それでも、俺たちは。

ある日曜日のことだった。俺はいつもどおり10時すぎまで寝過ごしていて。
カナミに無理矢理布団からたたき出されて、リビングで遅い朝食を食べていたところだった。
「え?あ、はい。城島ですけど」
電話をとって話していた、カナミの顔色がみるみる真っ青になっていくのが分った。
「カナミ?なんかあったのか?」
「おにいちゃん・・・・・・・・」
「お、おいカナミ??」


398:郭×伊東 ◆5pkah5lHr6
08/07/20 16:52:48 vIyoi591
青い顔をしたカナミが、崩れるように俺に抱きついてきた。

『海外に赴任していた父親と母親が、今朝交通事故で亡くなった。今すぐ、家族に現地に来て欲しい』

なかなか要領を得ないカナミの言葉をなんとかまとめると、こういう話だった。
さっきの電話は、父親の勤める会社からの電話だったということだ。
驚いた俺が電話をかけ直すと、父親の上司だとかいう人が慰めの言葉とともにさらに詳しい話をしてくれた。
「・・・今回はお気の毒としか言いようがありません。こちらでも確認しましたが、
現地はテロの可能性も低く事故ということで間違いないようです。
城島さんは長年会社のために頑張ってくれていたのに、お子さんたちには本当に申し訳ないことをしました。
我々も同行しますし、飛行機の手配等は全て会社で負担しますので、一刻も早く現地に向かって欲しい」
俺も慌てていたから良く覚えていないが、確かこんな話だったはずだ。
ニュース番組のほんの1分程度のコーナーにも、新聞の小さなお悔やみ欄にも載らないような、
それは地味でありふれた事故の話。だけど、それが俺たちの身に降りかかってしまった。
「おにいちゃん・・・・どうしよう、おにいちゃん・・・・」
泣き続けているカナミをなんとかなだめて関川の叔父さんの家に電話をかけた。
叔父さんも驚いていたけど、さすがに俺たちと違って大人だった。
パスポートの手配や学校に休みの連絡もしないといけないから、すぐに家に来てくれると言ってくれた。
(そうか・・・・そんなこともしないといけないんだ)
俺は、、、どこかこれが現実の話じゃないような、不思議な気持ちで叔父さんの話を聞いていた。
受話器をおいて、カナミの隣に座った。泣いて泣いて、とにかく泣き続けていた。
カナミのお気に入りだったはずのTシャツもスカートも涙でびしょ濡れで、
畳の上にまで涙のあとが次々とできていた。
「・・・・・・・・・」
なにも言わず、俺はカナミを抱きしめた。カナミの涙で服が濡れるのが分ったけど、抱きしめた。
「・・・・・・どうしよう、おにいちゃん」
「関川の叔父さんが来てくれるって言ってたから。とにかく待とう。それから考えよう。
俺もどうしていいのか分らないけど、お前が泣きたいなら、泣けばいいよ」
「どうしよう、おにいちゃん」
カナミのおっきな目から、ぼろぼろと涙が溢れて流れる。俺は空っぽな気持ちで、ただそれを見つめていた。

それから後のことは、あんまりにも急で強烈な展開だったんで、今思う出そうとしても逆に難しい。
叔父さん夫婦にエーコまですぐに来てくれて、その後のことはほとんど仕切ってくれた。
俺とカナミは父親の上司だという人に連れられて、名前でしか聞いたことのないその国に向かった。
両親は飲酒運転のトラックに追突されたとかで、遺体も、、、それは見ない方が良いって言われた。
父親と母親だったはずの、一部。それだけを俺たちは日本に持ち帰って、葬式をすることになった。
一応俺は喪主とかいう立場だったんだけど、そこでも叔父さんたちが全部やってくれて、
俺たち兄妹はただ茫然と忙しく、全然実感がないまま時間が過ぎていった。

「大丈夫なわけはないだろうけど、気持ちをしっかり持つんだよ?シンジ君」
「はい・・・なにからなにまですいませんでした、叔父さん」
「なに言ってるんだよ、こういうときには頼ってくれないと」
「本当に助かりました。叔父さんたちがいなかったら、俺たちどうしていいのか分らなかったです」
「君がしっかりしないといけないかもしれない。でも辛かったら、本当にいつでも連絡してくれよ?
エーコも僕たちも、すぐに駆けつけるから。エーコもカナミちゃんを心配してるし」
「はい・・・」
日本に帰ってきてから、エーコはずっとカナミと一緒にいてくれた。
カナミの憔悴っぷりといったらなにしろひどくて、葬式に来てくれたマナカちゃんや矢野ちゃんですら
声をかけるのをためらうくらいだったから、エーコの存在はすごくありがたかった。
「じゃあ・・・私も帰るけど。シンちゃん、あのね、あの・・・」
「本当にありがとう、エーコ。すごく助かったよ」
「シンちゃん・・・私、また来るよ?絶対、来るから」
「うん。・・・待ってる。ごめんな、エーコ」
エーコは涙をこらえるような顔をして、多分、まだ言いたいことが沢山あったんだと思うけど・・・
それでも最後には笑顔を見せて、叔父さんと一緒に帰っていった。


399:郭×伊東 ◆5pkah5lHr6
08/07/20 16:53:29 vIyoi591
「・・・・・・・・・」
叔父さん夫婦とエーコを見送ったあとの家は、静かだった。静かすぎて、鼓膜が痛いくらいだった。
(・・・カナミ)
気持ちの片隅に、、、いや、本当は気持ちのど真ん中にずっとあったことに、やっと俺は向き合った。
さすがに葬式のときは出てきたけど、帰国してからのカナミはほとんど部屋の中から出てこない、
半引きこもり状態になっていた。家事全般は叔母さんがやってくれていたし、
エーコがカナミにつきっきりでいてくれたから今日まではなんとかなっていたけど、
今日から俺とカナミは本当にふたりっきりだ。
「・・・」
階段を上がって、カナミの部屋の前に立つ。なにを言っていいのかわからない俺。
なにを言えばいいんだろう。カナミは、なにを思ってるんだろう。
「・・・・・・・・おにいちゃん?」
「カナミ、叔父さんたち帰ったから」
「そう・・・・」
また沈黙が続く。ここから立ち去った方が、、、いや、やっぱり一緒にいないと、、、俺が迷っていると、
「入って・・・おにいちゃん」
「・・・・・・うん」
部屋にはいると、カナミはパジャマ姿のままベッドの上で毛布にくるまっていた。
ひどい姿だった。顔は青白くて髪はボサボサ。目も腫れていた。
いつもみぎれいにしていたカナミとは思えなかった。そういう姿を見たのは、初めてだったかもしれない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
テーブルの前で座ったけど、カナミは無言で親指の爪を噛むだけだった。
痩せこけたカナミの小さな顔の中でふたつのおおきな目が不自然な光を放っていた。
俺をずっと睨んでいるけどその目は虚ろで、空っぽな、感情の無い目だった。
怒っているのか悲しんでいるのかさえ、分らなかった。
「カナミ、俺・・・俺たち」
「おにいちゃん、どうしよう。ふたりっきりになっちゃった」
「・・・ふたりっきりじゃ、ないよ。エーコも、叔父さんたちもいてくれる。矢野ちゃんや、マナカちゃんだって」
「ふたりっきりだよ。どうしよう」
「だから、カナミ。そんなこと言うなよ。おれたちには」
「わたしたちだけになっちゃった。ふたりだけになっちゃった」
俺の話が聞こえていないように、カナミは似たようなことを繰り返す。

カナミの心が、壊れかけている。

いてもたってもいられなくなって、俺はカナミの隣に座って、カナミを抱きしめた。
「・・・・・・・おにいちゃん」
「父さんと母さんがいなくなって、お前が傷ついてるのは分ってる。
でもまだ、俺がいるじゃないか。カナミ、俺がいるから」
「おにいちゃんは、いなくならない?」
「ああ。俺は、カナミといるから」
「ウソだ」
「嘘なんかじゃない。俺は」
「おにいちゃんもいつかはわたしから離れていくんだ。お父さんとお母さんみたいに」
「俺は、お前といるから。嘘じゃない」
「そんなことを言ってるけど、きっと誰か好きな女の子ができて、結婚して、
わたしからいなくなるんだ。それで、きっとわたしと関係ないところで先に死んじゃうんだ。
わたしを、ひとりだけ残して。・・・お父さんと、お母さんみたいに」
子供みたいなことをカナミは言っていたけど、それを怒る気にもならなかった。
「約束するよ、カナミ。俺は、いなくならない。お前と、いるから。
俺が結婚しても、お前が結婚しても、俺たちは世界でふたりだけの兄妹だから」
「それじゃ、やだ」
「・・・俺がいるだけじゃ、ダメなのか?」
「おにいちゃんは、約束できないよ。わたしといるなんて。だって、わたしたちは兄妹だもん。
おにいちゃんとわたしは、いつか離ればなれになるんだ」


400:名無しさん@ピンキー
08/07/20 16:54:10 vIyoi591
「・・・・・・・・・カナミ」
俺は悲しくなって。悲しくなりすぎてカナミをまた、抱きしめた。
「・・・・・・もういいよ、おにいちゃん」
カナミが俺のからだを押し返そうとしたけど、俺はむしろもっと強く、カナミを抱いた。
「違うんだ、カナミ。俺・・・・ごめん、なんて言っていいかわからないけど。でも、俺は」
「わたしね、おにいちゃん。もうイヤなの。怖いの。だいじな人が、いなくなるのが」
「俺も、イヤだよ。俺も、同じなんだ」
「同じ?」
「俺も、お前と同じなんだ。怖いんだ。お前を失うのが。もう、お前だけは失いたくない」
「・・・・・おにいちゃん」
いつのまにか、カナミは泣いていた。服越しに伝わるカナミの涙の温度。
その涙は、あったかいのに、冷たかった。冷たいのに、あったかかった。
「おにいちゃん・・・・・」
泣いているカナミをもう一度抱きしめる。カナミは小さくて柔らかくて、悲しかった。
今のカナミは、、、悲しいっていう感情のかたまりだった。
「わたしと・・・・・いて」
「うん」
「もっと、抱きしめて」
「・・・・うん」
カナミはずっと、泣いていた。多分カナミも、自分でどうして良いのか分らなかったんだろうと思う。
俺だって、そうだったから。カナミの言うとおり、俺たちは、ふたりきりになっちゃったから。
「・・・・・・・ごめんね。ありがとう、おにいちゃん」
「だいじょうぶか?カナミ」
「うん・・・・あのね、おにいちゃん」
なにかを言おうとして、カナミは口ごもる。俺はその様子を、ずっと見つめていた。
(・・・・きれいだ)
いつもはエロボケでおちゃらけているけれど、兄の俺から見てもカナミは十分に美人だった。
でも今のカナミはいつもの夏の朝顔の花みたいな明るい美しさとは違う、
一瞬で壊れそうな、危うくて清澄な美しさをまとっていた。
指で触れようとすれば、カナミは姿も定かでなくなってしまうみたいで、、、
「・・・・おにいちゃん、わたし」
カナミが、月の明りを受けて淡く光る。思わず指先で、その光をすくうようにカナミの頬に触れた。
「ん・・・・・」
ちょっと驚いたみたいに、カナミが吐息を漏す。カナミの顔は薄く夜に輝いたままだ。
それは魅入られるほど美しく、どうにも信じられなかった。
目の前に見えているのに、非現実的で夢の中にいるような気持ち。
カナミに触れていた指が少し震えた。するりと指先から、滑り落ちる。
「あ・・・・」
ぷくっ
声をあげたときには、小さな音とともにカナミが俺の指先を口に含んでいた。
光の欠片は、まだカナミを照らしている。静かな夜の空気が、震えていた。
ぷちゅ・・・ちゅ・・・・ちゅう
密やかに濡れた音は、途切れながら続く。カナミは俯いたまま、俺の指を舐めている。
カナミの舌のやわらかい感触に俺はわけのわからない気持ちになって。
「おにいちゃん・・・・・」
そう囁いた後に、カナミが俺を見上げる。目もとがはれていて、頬には涙のあとがはりついていた。
「キス、して」
「カナミ・・・・でも」
「キスしてよ。苦しい・・・・・・お願い。怖い。わたし、怖いの」
カナミは、本当に苦しそうに震えていた。俺は、、、それが、いけないことだって分っていたけど。でも
ちゅッ
キスをした。カナミの唇に触れた。カナミの唇は、乾いていて、カナミの汗の匂いがした。
「ん・・・・・・・・・・」
生気が戻ったみたいに、青白かったカナミの頬が朱に染まった。
ちゅ・・・・ちゅ



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