09/06/26 17:55:29 dYM5jA27
「お兄ちゃん」
聞き慣れた声に反応する。この声の主は親父が去年再婚した相手の娘で、俺より一つ年下の義妹、麗(うらら)の声だ。
声の状態から驚いた様子がない事から、悪戯をしたのはコイツだと判断した。
「おい麗、この手足を拘束しているモノを今すぐ外せ。今ならデコピン一発で許してやる。」
普段ならこの後すぐに行動に移すのだが、一向に動く気配がない。「イヤ」
!?、普段の麗ならまず言わない台詞が口からこぼれた事に俺は少なからず衝撃を受けた。しかし、ここで引き下がっては兄もとい男としてのプライドに関わる、そこで俺は語気を少し強め
「早く外せ、今なら親父達には内緒にしてやる、だから今すぐ外せ」
すると麗がクスリと笑った。メガネをかけていないから表情まではわからないが、多分微笑んでいたのだろう。
「お父さん達はしばらく帰ってこないよ。少し遅れたけど、二人でハネムーンに行くって昨日の晩御飯の時に言ってたよ。期間は30日で、しばらく留守にするけど家の事は頼むって言ってたの忘れたの?」
確かに言ってた気がする。そしてそのハネムーンの出発日が今日の早朝という事も言っていたと思う。つまり、今家に居るのは俺と麗だけと言う事になる。
それが何を指し示すのかというと、俺の生き死には全て麗の手に握られているという事だ。