08/11/22 12:01:31 BaF9O5xO
「あ、あの、お客様……店内ではお静かに……」
さすがに見かねたらしいウェイトレスが注意をしにきた……が、それを最後まで言いきることは出来なかった。美奈が一瞥をくれただけで、ウェイトレスはヒッといって引っ込んでしまったのだ。それに力を得たかのように、美奈は勢いを増した。
「いいですか?兄さん。私は兄さんの何ですか?彼女ですよね?なのになぜ隠し事をするんですか?そもそもばれないとでも?私は兄さんの幼なじみですよね?私は兄さんのことならなんだってわかっています。その私に! なぜ嘘をつくんですか!?」
コーヒーカップから立ち上る湯気が揺れる。
言ってることがめちゃくちゃだ。いや、言いたいことはわかる。のだが……。
「答えられない、と。なるほどですよ、兄さん。つまり私のことはもう彼女でもなんでもないと。好きではなくなったと。そういうわけですね?」
「い、や、んなことは」
美奈はやけに饒舌にまくしたてる。そんな美奈を、安藤は呆然と見つめていた。
「それは違う、と。つまり兄さんは依然と私のことを愛していると。そういうことですか?」
「……そうだよ」
そうだ。俺は美奈のことが好きだ。これは事実だ。だが、こんな言い合いは不毛に思える。
「だったら、証明してください」
「……証明?」
思わず、美奈の話に引き込まれた。
「そうです。愛しているという証明です」
愛しているという証明? 証明と言われても、愛しているから愛しているとしか言いようがない。
「とか考えてますよね?」
「……ああ」
「言ったはずですよ。私は兄さんのことなら、何でもお見通しですからね」
美奈は自信ありげに宣言する。
「……そうみたいだな」
「兄さん、あなたの考えは正しいです。確かに愛の気持ちそのものの具体化することはできません。が、少なくともそれを行為に表すことはできるのではないですか?」
「……つまりどうしろと」
女の方から言わせる気ですか、とつぶやいた後、
「私とセックスしてください。そう言ったんですよ」
美奈はもったいぶるように、しかしはっきりと宣言した。