08/08/27 20:49:13 thhWK+Vn
……実際、悪い気はしない。真奈美も美奈と同じく幼なじみだし。
美奈に悪いとか思いつつ、喜んでいる自分がいた。
木枯らしの吹く夕暮れの道の中、ただ美奈と繋がれた右手だけが暖かかった。
351:名無しさん@ピンキー
08/08/27 20:51:07 thhWK+Vn
「わぁ、兄さんの部屋、久しぶりです」
美奈が感慨深げに呟く。確かに美奈を部屋に入れたのは数ヶ月、もしくは一年ぶりだろうか。
送ってくれたお礼にせめてお茶くらいだそうと家にあがってもらったのだ。
「まぁ、結構片づいてるっしょ? あ、お茶もってくるから」
俺はバッグをベッドに放り投げると、一階に降りた。
352:名無しさん@ピンキー
08/08/27 20:52:55 thhWK+Vn
実は俺の隠れた趣味にお菓子づくりがある。
二日ほど前に作ったチーズケーキ……
ラッピングしてチルドで保管していたし大丈夫だろうと、
二人分の温かいお茶と共にお盆に載る。
美奈はおいしいといってくれるだろうかなどと呑気に考えながら、自室に戻った。
そして、そんな俺を待っていたのは。
「……兄さん、これは?」
開口一番、美奈の冷ややかな声が俺を襲った。
美奈が握っているのは、真奈美からの手紙だった。
353:名無しさん@ピンキー
08/08/27 20:54:40 thhWK+Vn
口内炎\(^o^)/
今回はここまでやねん
なんか思いつきで書いた養子の話のほうがうまくいきそうだ\(^o^)/
354:名無しさん@ピンキー
08/08/27 21:18:22 bOC4/keO
ハッ、乙とか言って欲しいのか?
お、おっ・・・ぉっ・・・。
うっ、うるせーな何でもねーよバーカバーカ!
355:名無しさん@ピンキー
08/08/27 21:27:21 +PguwrK4
おぉぉ GJ!
続きが楽しみだぜ!
ヤンデレスレで軽くツンデレ(?)るとは(笑)
356:名無しさん@ピンキー
08/08/28 02:33:18 1DiEf3EJ
>>353
乙。あんまり口内炎をひっぱると通称口内炎の人とかで認識されるぞww
357:名無しさん@ピンキー
08/08/28 02:54:56 i9C6kPkq
>>353
実に乙
358:名無しさん@ピンキー
08/08/28 03:28:44 hgFYZ4Ox
>>356
もう口内炎の人で良いんじゃね?
359:名無しさん@ピンキー
08/08/28 10:53:21 0Ry4F9W5
二、三行毎に投稿とか
スレッドの燃費が悪すぎる
360:名無しさん@ピンキー
08/08/28 12:48:01 G+c5Vkcb
それはある。携帯電話から見る分には楽だが。
1レス20行くらいを目安に投下して欲しいもんだ。
361:名無しさん@ピンキー
08/08/28 13:54:58 i35wjcpm
すいません
携帯からなんでイマイチ間隔が掴めませんでした
362:名無しさん@ピンキー
08/08/28 23:07:51 sM6GLjIC
原稿用紙1枚分くらいは書けるよ。
363:名無しさん@ピンキー
08/08/29 00:34:40 mjugbcep
GJすぐるwww
早稲田のセンター利用かな
結構キツいと思うけど頑張れ!
364:名無しさん@ピンキー
08/08/31 01:55:51 t4hj3SmR
「お姉ちゃんから……ですね?」
俺は答えることができなかった。
俺が肯定すれば美奈が「なんらかのそういったアクション」を起こすことはなんとなく予想はついたからだ。
だが人間、とっさの考えに思慮は回らないものだ。
そしていつも後悔するのだ。
なぜあのときこう答えなかったのか、と。
かといって「違うよ」と、平気で嘘をつくような姑息さも、俺は持ち合わせているわけではなかった。
「やっぱり、そうなんですね」
沈黙は肯定だ。答えは二択ではない。
美奈はおもむろに封を破ると、中身を取り出した。
「おい、ちょっと」
「兄さん」
悲しげな表情だった。
先ほどの、触れれば身を裂くような、
鋭利な刃物のようなそれではなく。
「兄さんのためなんです。私が先に確認して問題なければ渡します」
……そうだった。
この手紙が謝罪や弁解のためだとは決まっていないのだ。
「あ、でも心配しないでください。きっとお姉ちゃんだって仲直りしたいはずです」
俺の表情が暗くなったのを見て、慌てながら言った。
「私も仲直りしてほしいですし」と微笑みながら付け加え。
「いいですよね? 兄さん」
俺はこくんと頷いた。
美奈は俺の同意をうけ、ふっと微笑んだ。
美奈が文面に目を通し始める。
俺は美奈が笑顔のままでいてくれる、そんな結末を予想した。
そうなると思っていたんだ。
だが、目の前の美奈の表情は、俺の見た未来とは逆の方向に向かっていた。
「……ひどい、こんなの」
ぽつりと呟いた言葉が、俺の心に突き刺さった。
「……兄さん。これは渡せないみたいです」
最も聞きたくなかった台詞だった。
「兄さん、これは私が預かっておきます。兄さん……」
美奈は静かに、そして慈しむように俺を抱きしめた。
不思議と涙はでなかった。
俺は崩れそうになる心を美奈に預け、返ってくるはずのない自問をした。
365:名無しさん@ピンキー
08/08/31 01:57:11 t4hj3SmR
今回はテストも兼ね
1レスこれくらいでいいでしょうか?
366:名無しさん@ピンキー
08/08/31 02:03:06 n7BQ2vHY
GJ!これからどの方向に向かっていくのか…
続き楽しみにしてます!!
文の量は問題無いと思います。
オレ的には全然OKです。
367:名無しさん@ピンキー
08/09/01 21:16:06 Y9dzetf3
「お前! 藤崎さんに何したんだ!?」
翌日の昼休み。
授業が長引き、放浪の旅に出遅れた俺は、教室でどっか見たことあるような男にとっつかまった。
「昨日から藤崎さんの様子がおかしいから聞いてみたら……お前が原因らしいな」
眼前の男は俺を威嚇するように鋭く睨みつける。
「部活でも動きにキレがなかった。お前が藤崎さんに何かしたんだろ!」
俺が黙っているのを肯定と受け取ったのか、男は更に言い募る。
……ん?
ああ、思い出した。こいつはテニス部の部長だ。
昔、真奈美に誘われてテニス部の練習を見に行ったときちらっと見たな。
「どうなんだ!?」
俺の机をバン!と叩くと、男は更に勢いづいたようだった。
「いや、どうなんだと言われてもなぁ」
ぶっちゃけ面倒くさい。
真奈美をまかなきゃいけねーのに。
しかもギャラリーがこそこそ言ってるじゃねーか。ううむ……。
そもそもこいつは中途半端に、というかほぼ内容自体は知らされていないのだろう。
そらそーだわな。知らされてんのならこんなことにはならん。
だが説明できない。真奈美の名誉のためだ。甘いのかもしれんが……。
「おい、そこのテニス部部長さんよ」
ギャラリーの中の一人だった―いつもの軽薄なノリはいずこやら、真剣な表情な修が、俺を庇うように男との間に割り込む。
「さっきから俺のダチに好き勝手言ってくれてるけどな。てめーがこいつらの何を知ってんだ?」「突然なんなんだ君は。関係ないだろ」
「関係? 大ありだよ。それにお前はこいつらのことを全くわかってねえ」
確信ありげに言い放つ修。意外と友達思いなんだなぁ。と感心した矢先。
「こいつらはな、婚約してんだよ! 未来を誓いあってんだよ!」
……。
「そりゃな? 確かに真奈美ちゃんと喧嘩しちまったかもしんねー。
だがな、そんなもんはこれからの夫婦生活の……二人で乗り越えるべき壁なんだよ!」
とりあえず、ひとまず喋り終わったらしい修は、ハァハァと肩を上下させている。
相手の男もポカンとした表情だ。
クラスのギャラリーから婚約がどうだこうだ聞こえてるが……うーむ。
「おーい、伊藤、松本」
俺はレスリング部のクラスメイトを呼ぶと、体育館裏の人気のないトイレに拉致るようお願いした。
ガチムチ二人に連れ去られながら「俺にそのケはねぇー!」
と叫ぶ修をみて、最初からこうしておけばよかった、と思った。
368:名無しさん@ピンキー
08/09/01 21:18:44 Y9dzetf3
「で、話を聞かせてもらおうか」
修をガチムチの生贄に捧げた後、俺たちは屋上に移動した。
この時期に屋上にいるやつはほとんどいないし、ギャラリーがうざかったからだ。
でもこれにはデメリットがある。人目を気にしないでいい分、こいつがさらに勢いづくことだ。
「お前……暴行したんじゃないだろうな」
いきなり、きた。暴行、つまりレイプとでも言いたいんだろう。まあ俺がされそうになったわけだが。
真実はいえないが……とはいえど、このままやられっぱなしもムカつく。
「あんたは、真奈美から何を聞いたんだ?」
「お前が関わっているとは聞いたな」
「内容までは聞いてないだろ」
「確かにな。だがこういった場合、藤崎さんが被害者とみるほうが正しいんじゃあないか?」
まあ、逆レイプなんて滅多にないんだろうしなぁ。
でもこの場合その滅多に起こらないことが起こってるわけで。
「そうかもしれない。でもそうじゃないかもしれない」
「はぐらかすな!」
男が一際大きな声を出す。
……ただの義憤じゃないだろうな。
こいつとは話したことがないからどういう人間かは知らない。
だが部長を務めているあたり人望は一応あるんだろう。無論表だけかもしれないが。
だがこの行動も真奈美を思っての行動……だと思いたい。
まだ完全に信用するのは早すぎるが。
「真奈美が被害者だとして、だ。なぜ全て語らないと思う?」
「お前と藤崎さんは幼なじみらしいな。大方お前を庇ったりしてるんじゃないか?」
そうとるのが普通だろうな。でも、お前は真奈美の心に入り込んではいないんだ。
「なら、その逆だってありえるんじゃあないか?」
「はっ、責任逃れもいいとこだな」
……こいつ完全に真奈美に惚れてやがるな。
盲愛もいいところだ。
「どう思おうが勝手だけどな。もういいだろ? じゃあな」
もう何を言っても無駄だと判断した俺は、相手に背を向け、歩き出した。
相手がまだ何か言っているのが聞こえたが、予鈴の音にかき消されていた。
……やれやれ。これから面倒なことになりそうだ。
369:名無しさん@ピンキー
08/09/01 21:23:54 Y9dzetf3
翌日の放課後。俺は昨日と同じく美奈と正門で合流した。
歩き始めると、俺を励まそうとしてかどんどん話題を降ってくる姿が痛々しかった。
かつての美奈は、俺と真奈美の後についてくるような大人しいやつだったから、
この変化が俺を慰めるためだということは明白だった。
そして今の俺は楽しそうに話す美奈をみて、今日の昼休みの出来事を話すか迷っている。
話せば、美奈の笑顔は失われてしまう。
……なんでこんなことになったんだ。悪いのは俺なのか?
あのとき真奈美が言っていた。―愛してるから。それに気づかなかったから?気づいてあげられなかったから?
答えはでない。苛立ちだけがぐるぐると回っている。
「兄さん!!」
不意に、頭の中で美奈の声が弾けた。
横を向くと、傍らを歩いているはずの美奈の姿がなかった。
え? と思った瞬間、俺はぐいと後方へ引っ張られ、柔らかい何かに抱き留められていた。
その後ろを、甲高い音をたて、大きな質量をもった何かが通過していくのがわかった。
「ぼさっとしてんじゃあねえぞ! クソガキがーッ!」
ついで、罵声。
大型トラックに引かれそうになったんだとわかったのは、数秒後だった。
そして、頭に回された手。柔らかな膨らみ。自分が美奈の胸の中にいるとわかったのもその数秒後だった。
「わ、美奈、とりあえず離せっ」
「嫌です!」
じたばたともがく俺をしっかりホールドする。
む、胸が……こいつ意外に胸あるんだなぁなどと不埒なことを考えていると、ヒクッヒクッとすすり泣くのが聞こえた。
「み、美奈……?」
「どおして……兄さん……死ぬかって……兄さんが死んだら、私……」
……そうだ。俺は何をしてたんだ。苦しんでるのは自分だけと思って。
結局美奈を悲しませて。一番最低なのは俺じゃないか。
何か、わかったきがした。
「美奈、離して」
「嫌です!」
「大丈夫だから。どこにもいかないから」
優しくいうと、数秒おいて美奈は手を離した。
美奈の顔は赤く染まり、くしゃくしゃになっている。
「……あんまり、見ないでください。今、私とてもひどい顔してるから」
泣き顔を隠すように俯いた美奈が愛しかった。
「ごめんな」
美奈の小さな体を抱きしめる。美奈が痛いくらいの力で抱き返してくる。
迷ってる場合じゃないんだ。
俺のことをこんなにも大事に思ってくれる人がいる。
……それ以上に理由が必要だろうか?
370:名無しさん@ピンキー
08/09/01 21:26:37 Y9dzetf3
今回はここまでです。
これでよければ、以後一レスあたりこれくらいで投下しようと思います。ご迷惑をおかけしました。
あと
口内炎治ったよー!
イヤッッホォォォオオォオウ!
* + 巛へ
〒| +
+ 。||
* + / /
∧_∧ / /
(´∀`/ / +
/⌒ f
/ュヘ |*
+〈_) ) |
/ i +
ガタン / /ヽ |
||| j / | ||||
―――――
371:名無しさん@ピンキー
08/09/01 23:05:55 rs95s6ug
GJすぎる
これは次の口内炎フラグ…
372:名無しさん@ピンキー
08/09/01 23:20:48 lRd+L6jR
GJすぎだぜ。
おら、わくわくしてきた!!
そして口内炎完治オメデト。
373:名無しさん@ピンキー
08/09/02 01:36:34 TOTMPI8N
GJ!!!
真奈美のターンはもう来ないのかな?
374:名無しさん@ピンキー
08/09/03 03:07:13 wTe3BKRW
最終的に3Pに決まってんだろ……修と平行して
375:名無しさん@ピンキー
08/09/03 16:44:41 yXWMBPPc
まあそこらへんはネ申の御心のままにってことで
376:名無しさん@ピンキー
08/09/04 22:09:55 nwVMn/rD
夜空に輝く月と星々。丑三つ時あたりだろうか。なぜかラケットをもった真奈美と竹刀を構えた美奈が激突していた。
「あんたは大人しく……私と祐介の後ろについてくればいいのよ!」
真奈美は矢のごとき速さで接近すると、ラケットを振り抜く。
だが、真奈美渾身の一撃は空を薙いだだけであった。
「甘いですね」
真奈美の横薙ぎをバックステップで回避していた美奈。
「そんなんだから兄さんに嫌われるんですよ!」
今度は美奈が攻勢に転じた。
まるで動きが見えなかった。女性でもこんなに速く動けるものなのか?
気づいたら、真奈美が美奈の突きを辛うじてかわしていた。
……間違いなく殺すつもりの攻撃だ。
「二人とも! やめ―」
止めに入ろうとした俺だったが、最後まで言葉を出せなかった。
二人いったん戦いを止め、濁ったような、もしくは何かに取り付かれたような瞳でこちらを凝視してくる。
「兄さん。これは儀式なんですよ」
「勝った方があんたの側にいるの。一生」
「ま、もちろん」
「勝つのは」
「私だけどね!」「私ですがね!」
両者は、残像を散らすかのような勢いで互いに急迫する。
振り下ろしたラケットがかわされ、薙払われた竹刀をよける。
月夜に照らされ、交わる二人の姿は、まるで流麗な舞のようであった。
「あんたも知ってるだろうけど、私たちは結婚の約束だってしてるし、この前はディープキスだってやったのよ!」
「はっ、よくいいますね。無理やりのくせに。それなら兄さんは先日、自らの意志で私を抱きしめてくださいましたよ!」
「なっ!?そ、そんなのっ」
美奈の言葉に、一瞬、ほんの一瞬だが真奈美がたじろいだ。
そして、その隙を見逃す美奈ではない。
真奈美のラケットが宙を舞う。振り上げられた美奈の竹刀が、真奈美の手からもぎとったのだ。
「これで終わりですね!」
完全に無防備になった真奈美に、竹刀が振り下ろされる。
「やはり兄さんは私のも……」
美奈は勝利を確信しただろう。俺も真奈美の敗北を確信した。
377:名無しさん@ピンキー
08/09/04 22:14:57 nwVMn/rD
が、そこには信じられない光景が広がっていたのだった。
真奈美が両の手のひらで、竹刀を挟み込んでいたのだ。いわゆる白羽どりだ。
「祐介は私のもの、ですって?」
「あ……なっ……」
愕然としている美奈の手から素早く竹刀をもぎとると、ラケットを綺麗に受け止め―
「寝言は寝てから言いなさいよっ!」
「きゃっ!?」
真奈美の横薙ぎをもろにくらった美奈が横に吹っ飛ばされる。
吹っ飛ばされる時、同時に竹刀を掴んでいるのはさすがというべきか。
「まだまだ!」
真奈美は立て続けに三発のテニスボールを打ち込む。
美奈は不安定な体勢のまま竹刀を操り、二つを打ち落としたが、一発が左の手の甲に直撃した。
「くっ……」
硬式のボールゆえ、ダメージはかなりのものだろう。美奈が苦痛に顔を歪めた。
……それからどれくらい時が経っただろう。お互いが満身創痍になっていた。そして両者武器を構え、間合いをとっている。
数刻の膠着の後、じり、と両者が動いた。
―まずい!
直感的に何かを感じた時、俺は両者に向かって走っていた。
美奈の喉元を狙った突きが、真奈美の脳天を狙った振り下ろしが―
間に合うか!?
「真奈美!! 美奈ーー!!」
そこで、俺は目を覚ました。そこは暗い真夜中のどこかなどではなく―カーテンを通して、太陽の光が部屋に降り注いでいた。
―夢?
なんかものすごい夢だったなぁ……。
「祐介ー! 美奈ちゃんがきてるわよー!」
「へっ!? ええっ!?」
なぜ朝っぱらから美奈が?
俺はベッドから跳ね起きると、クローゼットから制服をとりだし、訳の分からぬままに着替えた。
夢のことなど、頭からすっ飛んでいた。
「で、今日はなんでまた」
「んー……。少しでも長く兄さんと一緒にいたかったから……です」
傍らを歩く美奈。中学の制服と高校の制服。あーなんとなく視線がいてえ。
「それで……その兄さん」
急に上目遣いになる美奈。ううむ……この流れは。
「手、繋ぎたいです」
やはり、きた。
「だめ……ですか?」
あからさまにしょんぼりとする美奈。俺は甘いやつだなぁ……。
「ほれ」
美奈の左手を握る。
「あ、痛っ」
美奈の左手には、痛々しく包帯が巻かれていた。
「お、おい、大丈夫かよ? てかどうしたんだ?」
「ちょっと……へましちゃいまして」
えへへ、とごまかすように笑う美奈。
「へまって……料理とかで?」
「料理ですか……確かに……うん」
少し考え込んだ後、
「料理ですね、うん」
「なんなんだよ……ま、大事にならなくてよかったな」
「優しく握ってくださいね」
「……なんか忘れてる気がするなぁ」
美奈が小さく何か言った気がしたが、冬の風に飛ばされ、消えていった。
378:名無しさん@ピンキー
08/09/04 22:18:17 nwVMn/rD
なんとなく思いついたんで書いてみました
これは外伝的な話なんで本編とはほとんど関係ないです。
厨2病なんて言わない。
379:名無しさん@ピンキー
08/09/04 23:53:46 X0/vo+SR
GJ!w
一瞬、真奈美が死んだかと思って焦ったが
本編とは関係ないみたいでよかったw
真奈美も美奈も幸せになってほしい。
380:名無しさん@ピンキー
08/09/05 03:32:57 GoTc8PhO
急展開過ぎて吹いた
まあこれはこれでよくある外伝パターンだから良いんだけど
どちらかが死ぬなんて展開だけは避けたいね
381:名無しさん@ピンキー
08/09/05 11:40:27 +S6xH4zL
>377
で、でも料理しちゃったんでしょ?
お姉ちゃんを・・・
382:名無しさん@ピンキー
08/09/05 19:28:50 v4E3IQ/f
GJ
いやはや、男がヒロインぽいですなw
383:名無しさん@ピンキー
08/09/07 21:38:58 e3ExnRuD
そしていつもの帰り道に至ったわけであるが。
街の風景も、あほみたいに寒い気温も、人気のない公園も全て変わらない。いつもと変わらないのだが。
ただ違うのは、美奈と手をつないでいるってことだ。ぎゅっと。
しかも美奈がぴったりと寄り添うように体を寄せてくる。
実際美奈は可愛いし嫌ではないのだが……。やはり周りから見ると俺はロリコン認定されているのだろうか?
そういえばさっきの事故(未遂)現場、うちの制服着た奴もいたよなぁ……。
ずいぶんと派手なことをやったもんだ。天下の公道で抱き合っていたんだからなあ。噂になって真奈美の耳に入らなけりゃいいけど。
……もちろん真奈美以外の奴の耳にもだが。
特に今日の男の耳に入ればまた話がややこしくなる。
「あの、兄さん」
「え、ん?」
いつもより間近にいる美奈が心配そうに顔をのぞきこんでくる。
「なにかあったんですか?」
「え?」
「だっておかしいですよ。さっきだってひかれそうになるくらい考え事してたし、今だって……私が側にいるのに」
……まあ、普通にうっかりしてましたじゃすまされないよな。
だがやはり迷う。美奈を傷つけたくはないし……やはり言わないべきだろうか。でも……
「兄さん」
いつもの、穏やかな声だった。
「言ってしまったら、美奈が傷ついてしまう、とか考えてますよね?」
「……」
「だいたい兄さんの考えてることはわかりますよ。兄さんは優しいですからね」
「いや、俺は」
「さっき、兄さんは私を抱きしめてくれました」美奈が柔らかく笑う。
「私、すごくうれしかったんです。心の中が満たされるっていうか、とても温かかったんです」
幸福そうに語る美奈。
「そして、同時にお姉ちゃんがとても憎かった」
途端に、美奈の声色が変わった。その声に、抑えきれない怒りがにじんだ。
「美奈、それは」
俺の望んでいる答えじゃない。俺はそうさせたくなかったから―
「だって、そうでしょう」
冷たく、きっぱりと一つの事実を指摘する。
「お姉ちゃんは兄さんの優しさにつけこんで、兄さんを逆レイプしようとしました」
「それは」
逆レイプ……。その言葉が頭に響いた。
確かにそうかもしれない。いや、そうだ。でも俺は男だし幼なじみだし―
「兄さん、男だとか幼なじみだとか、関係ないです」
……また考えを読まれた。
「立場が逆だったらどうです? 幼なじみじゃすまされないですよ」
確かにそうだろう。立場が逆だったら今頃……。でも―
「そりゃ確かに、美奈が言ってることが正しいよ」
そう、正しい。正しいのだが。
384:名無しさん@ピンキー
08/09/07 21:41:04 e3ExnRuD
「でも俺は……俺が……」
なぜ今になっても真奈美を庇おうとしているのか分からない。
しかし、肝心の言葉がでない。
「兄さん、お姉ちゃんは兄さんを襲ったんです」
二度目の指摘に、俺はあのときのことを思い返していた。
「優しくて、本気で抵抗できない兄さんを」
強くでられない俺を、「愛してるから!」と、真奈美は愛を強要した。
「兄さんは、お姉ちゃんを完璧な存在だと勘違いしていませんか?」
美奈の追い打ちをかけるような一言に、俺は頭を殴られたような衝撃を受けた。
「勉強もできて、真面目で、教師や友達からの信頼も厚い。運動も部活もソツなくこなす」
美奈は真っ直ぐに俺を射抜く。全てを見通していると言わんばかりに。
「でも、お姉ちゃんは10代の高校生なんです」
美奈は客観的な事実のみを指摘する。さすがに、俺は言葉に詰まる。
「あんなことを許してはお姉ちゃんのためにも兄さんのためにもなりません。そうでしょう?」
確かに、そうかもしれない。俺は今まで真奈美を完璧な存在と見ていた。だがそれがいけなかったのかもしれない。
「ですから兄さん、話してください。私が側にいます」
……そうだ。確かに美奈は正しい。ここで真奈美を許してしまえば真奈美は増長するかもしれない。決意するには、十分だった。
「実は―」
結局、俺は昼休みの出来事を、美奈に話した。
「……そんなことが」
「うん、まぁ……」
全てを話した後、幾分か楽になったが、告げ口をしたような罪悪感が広がる。
「最低ですね、お姉ちゃんは」
姉である真奈美のことをバッサリと斬る。だが、確かに事実でもあるのだ。
「これじゃ、兄さんが悪者じゃないですか!」
美奈は、激しく声を荒らげる。その目は、怒りに燃えていた。
「……え?」
暗闇の向こう。美奈の家の前で何かが蠢いた。
「美奈……?」
その声の主が近づいてくる。暗闇にいたのは、真奈美だった。
「え、ゆ、祐介?」
「あ……」
俺は一歩、後退していた。フラシュバックというほどのものでもないが、突然だったので、心が落ち着いていなかったのだ。
「あ、あのね、この前は」
俺を見つけるやいなや、真奈美は必死な形相で迫ってくる。何かにすがるような、そんな響きがあった。
「それ以上、近づかないでください。兄さんに」そこに、冷たい声と共に美奈がさっと割り込む。
「どいてよ! 私はっ」
そこで真奈美は何かを悟ったような、はっとした表情になった。
「……なんであんた達が一緒にいるの? こんな時間に」
385:名無しさん@ピンキー
08/09/07 21:46:02 e3ExnRuD
ここはエロパロ板だ!なのになぜ貴様はさっさとエロを描かんのだ!
「エロ描写だけが、エロパロ板の全てじゃない!」
それを誰がわかる?誰が認める?
「くっ……」
はい今回はここまでです。いやーなんか美奈が黒くなりすぎたような……。真奈美(´・ω・`)カワイソス
ちなみに死ぬとかいう予定はいまのところないです
むしろ俺がシニソウダヨー\(^O^)/
386:名無しさん@ピンキー
08/09/07 21:48:41 8Yk+op4x
うひょー! GJ!
すばらしい!
真奈美ちゃん…。確かにカワイソウだけれども。
ヤンデレは過程も大事っすよ!
387:名無しさん@ピンキー
08/09/07 22:00:07 VmVDmW0e
追いつめられる描写がないと、ヤンデレじゃなくてタダの危ない人だから。
388:名無しさん@ピンキー
08/09/07 22:01:38 e3ExnRuD
>>384の冒頭は
×しかし、肝心のではなく
○しかも、肝心~
です。すんません
389:名無しさん@ピンキー
08/09/08 02:06:32 UuhLTkj+
美奈って黒いか?
390:名無しさん@ピンキー
08/09/08 18:42:26 wGU8LkUI
黒くなりそうだが、今のところ黒くはないな。
つまり書き手の中では黒いわけで、
現状の行動が黒い動機のもとに推進されているわけですね。
と、職人殺してみる俺。
391:名無しさん@ピンキー
08/09/08 19:37:13 UuhLTkj+
言ってる事は筋が通ってるのに、それが建前なんて…
美奈、恐ろしい子……
392:名無しさん@ピンキー
08/09/09 02:59:30 SaceB5fg
>>370
>>339の続きマダー チンチン
393:名無しさん@ピンキー
08/09/09 04:30:41 ZNAcMlFP
>>390
そんなもん誤爆しとけw
394:名無しさん@ピンキー
08/09/09 18:45:26 nfF+z48h
>>389
乳首がな
395:名無しさん@ピンキー
08/09/09 19:11:55 mBw8uqo8
「姉さんは完璧じゃないんです!」
と言った舌の根も乾かぬうちに
「兄さんに近づかないで下さい」
と情け0mgで突き放す辺りが黒いよな
396:名無しさん@ピンキー
08/09/12 20:52:24 hh5zlhaB
ほしゅ
397:名無しさん@ピンキー
08/09/13 00:22:49 dqtEXY3f
ちょっと思いついたので書かせていただきます。
まだ本番までは書けてないんですが・・・こうゆうシュチュエーションはありなのかな? という質問をかねて。
名前はとあるゲームのものを拝借しました。
夕立の中を走っている。
地面にたたき付けられた雨粒が煙るような雨の中を。
公園の中を屋根を探して走っている。
「こっちだ樋口!」
激し過ぎて前も見えないような、雨音意外なにも聞こえない、そんな雨の中。
微かに聞こえた呼び声の下に向かった。
―視界が開けた。
「新堂さん?」
一本の大きな木の幹を囲うように作られたベンチに座っていたのは、風邪で学校を休んだクラスメートだった。
「災難だったな樋口、とりあえずこれで体拭けよ」
そういって彼は彼女にハンドタオルを渡すと後ろを向いた。
「あ、ありがとうございます」
「いや……あと、オレは後ろ向いてるから、脱いで絞ったりとかした方がいい」
「え、それは……ちょっと」
「どうせ誰もこないよ」
「……」
「しょうがないな」
そういうと彼はTシャツを脱ぎだした。突然の動きに彼女が驚いていると、彼はそれを彼女に向かって差し出す。
「オレの、そこそこ乾いてるし、こっちに着替えてから絞れよ」
「え……でも」
「いいから、風邪引くぞ?」
「……はい」
398:名無しさん@ピンキー
08/09/13 00:23:47 dqtEXY3f
言われるがままにシャツを受け取り、体を拭き、着替え、服を絞った。髪にはタオルを巻かせて貰う。
「乾くまでそれ、着てていいから」
「ありがとうございます……もうこっち見ても大丈夫ですよ」
「そう?」
「服、着てますし」
「いやその……胸、とか」
「私、胸はちいさ……下着がないと困るほど大きくないです、から」
「それ、下着干してるってことだろ……」
「あ」
言葉通り彼女のブラジャーとかワイシャツは今木の枝につるしてある。彼が振り向いたら間違いなく目についていただろう。
「うう、ごめんなさい」
「別に……気にしないでいいぜ」
「……ところで新堂さんは何故ここに?」
風邪をひいてるはずの彼が、何故こんな場所にいるのだろう? 雨が降ってる、というのを差し引いてもここは公園なのだ。風邪をひいてる人間が来る場所じゃない。
「雨宿りのためだよ」
「風邪ひいてるのでは?」
「えあ、あー……うなんだ」
「はい?」
「仮病……なんだ」
「そうですか」
「……」
「寒いですね」
嫌な沈黙のまま永遠とも感じられる時間が流れた。具体的には15分くらい。
「雨、止みませんね」
「……」
「服、乾いたみたいです」
「……」
「あの、新堂さん……」
399:名無しさん@ピンキー
08/09/13 00:24:34 dqtEXY3f
「あの、新堂さん……」
「ん……悪い、呼んだ?」
「服、乾きました……から、これお返しします」
「ん、サンキュ」
そうやって渡されるはずだったTシャツは、彼の手に渡らずベンチの上に落ちた。そして彼もまた……
「あれ、おかしいな」
「新堂さん!?」
慌てて彼女が支えた彼のからだは冷たい、既に風邪をひいてるとか具合が悪いとかそういう段階ではない。弱り切っている。
「なんでこんな……本当は風邪ひいてたんですね?」
とっさに彼の体を抱きしめる。が、弱々しい彼の腕は彼女を突き放した。
「やめてくれ、だいじょぶだから」
「でも! 具合、悪いんでしょう?」
「平気だよ、平気だから。それにもしそうだとしても風邪をひいてるのにこんなとこにいるオレが悪いんだ、樋口が気にすることじゃない!」
そういって離れようとする彼を、彼女は今度こそ抱きしめた。服の前を開け放って。
「樋口……!」
「今私に出来るのはこれくらいですから」
そのままベンチの上に彼は押し倒された、彼女が何を考えて、そんなことをしているのか彼はわかっている。
もし逆の立場であれば彼は絶交されることを覚悟の上でも同じことをしただろう……だからこそ、殊更平気であることを装っていたのに。
けれど彼はまだ気付いてない、彼ではなく彼女だからこその選択肢の幅に。
彼女の手が寒さで縮こまっている彼のそれに触れる。
彼女の舌が寒さにで強張っている彼の口に入り込む。
彼女の言うほど小さくない胸が彼の胸に押し付けられる。
「っは……樋口、やめてくれ」
「だめです、これ以上辛そうなあなたをただ見ていることは出来ません」
400:名無しさん@ピンキー
08/09/13 00:26:59 dqtEXY3f
ここまでです。
要するに雪山的なシュチュエーションで、
男が拒むけど女が男の方を助けるために無理矢理・・・みたいな。
ありですか?
401:名無しさん@ピンキー
08/09/13 05:13:55 mmAz2Knb
助けるために無理矢理とか、理に適ってないだろw
弱ってるところを無理矢理のほうがまだ面白い
二人だけの環境を築きたいのなら、旅行にでもいくとよろし
402:名無しさん@ピンキー
08/09/13 07:12:19 XcZx8Rlg
>>400
俺的には有りですよ
403:名無しさん@ピンキー
08/09/13 09:19:51 P6sOz242
定義厨になるつもりはないがヤンデレなんか?これ
404:名無しさん@ピンキー
08/09/13 09:34:25 eurABM8O
ヤンデレだけなら専スレがあるし、そういうのに縛られない作品もあっていいと思うんだがなぁ。
いい意味でのスレの差別化にもなるだろうし。
405:名無しさん@ピンキー
08/09/13 09:38:56 I0Wtj5FU
それじゃあただの逆レイプ?
406:名無しさん@ピンキー
08/09/13 13:02:30 ZqVuk2CG
当初から重複じゃないかとは何度も言われてただろ。
いまさらそんな定義してどうする。
407:名無しさん@ピンキー
08/09/13 13:41:39 Ept3dC3/
大人しい(orそう見える)女の子が常軌を逸した行動に出てしまって犯されることが重要で
その様子がヤンデレに見えるかどうかはさほど重要ではないように思える。
ぶっちゃけスレタイの【】ない方がしっくりくる。
408:名無しさん@ピンキー
08/09/13 13:44:09 P6sOz242
まあ、だめって言われても投下をやめる必要はないんじゃねーの?このスレ人いないしねえ。まったりいこう
409:名無しさん@ピンキー
08/09/13 18:57:56 6zqjgAxm
あえてヤンデレにしないのが腕前だと思う今日この頃。
皆さんいかがお過ごしですか?
わたしは今日、近場にバイキングをやってる店を見つけて少し幸せです。
410:名無しさん@ピンキー
08/09/13 20:05:20 3/p8DLs3
GOGO!
続けて続けてー!
GJだよ!
411:名無しさん@ピンキー
08/09/16 20:49:03 12l0SriR
ほしゅ
412:名無しさん@ピンキー
08/09/17 09:43:18 O1cJCYrD
>>400
個人的にすごくグッと来たから是非投下してくれ
413:名無しさん@ピンキー
08/09/18 23:16:32 +K6SZhlS
お久しぶりです投下
414:名無しさん@ピンキー
08/09/18 23:17:34 +K6SZhlS
「なんでって……そんなことはお姉ちゃんには関係ないでしょう」
美奈の冷ややかな言葉に、真奈美がわずかにたじろいだ。実際、こんなことは先日―俺が真奈美の家に行った―初めて目にした光景だった。
「関係ないってなによ! なんであんたが!」
思わず真奈美が怒鳴り返すが、美奈は動揺する様子もなく、静かに、冷ややかに説く。
「兄さんはお姉ちゃんの恋人ですか? それとも、お姉ちゃんには兄さんを束縛する権利があるとでも?」
「そんなこと言ってないじゃない!」
「では、やはり兄さんと私が何をしていようと関係ないですよね?」
「だから……なんであんたなの!?」
ただ駄々っ子のようにわめく真奈美と、落ち着き払っている美奈。端から見ると、どちらが姉でどちらが妹かわからないだろう。
「さぁ……それは自分の胸に聞いてみては? 自分が何をしたか、覚えていないわけではないでしょう?」
呆れ果てた、と言わんばかりの口調で、美奈は告げる。
「あんた!」
次の瞬間、美奈の頬に真奈美の平手打ちが飛んでいた。その音が澄み切った夜に響く。
「……困ったら暴力ですか。全く、自分が神様とでも思ってるんですか?」
美奈は反抗的になるわけでもなく、先程と変わらない無機質な声を淡々と出す。
「だからそんなことは言ってないでしょ!?」
また、二発目の平手打ちが飛んだ。美奈はそれを避けることもなく、頬に受けている。
「……満足ですか?」
ただ、一言。冷ややかに美奈は言った。その一言で三発目がでることは明白だった。
「ま、真奈美、やめろって」
俺は慌てて美奈と真奈美の間に入った。
「いいんです。兄さんは下がっていてください」
美奈は依然として真奈美をキッと見据えている。ぶたれた頬が赤らんでいるのが痛々しかった。
「いや……そんなわけにはいかんだろ。とにかく手当てしなきゃ」
俺は美奈の腕を掴み無理やり家へ連れ込もうとした。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 私の話を……」
「いや、無理。美奈、いくぞ」
「は、はい」
追いすがってくる真奈美を振り払い、俺は美奈の手当てのため家に入った。
415:名無しさん@ピンキー
08/09/18 23:20:42 +K6SZhlS
「大丈夫か? 美奈」
言いながら、俺は美奈の様子がおかしいのに気づいた。美奈は俯いてがくがくと身を震わせていたのだ。
「み、美奈?」
美奈の顔をのぞき込むと、黒い瞳が俺の顔を映す。その目には涙が浮かんでいた。
「に、兄……さん、これは」
美奈がかすかにささやく。と同時に、俺は深い自責にとらわれた。
「ち、違うんです、これは……」
「ごめんな美奈。ほんとごめん」
俺はできるだけ優しい声を出し、美奈の華奢な身体をきつく抱きしめた。
「兄さん!! 」
美奈は俺の胸に顔を押し付けて、堰を切ったように泣き始めた。
様々な思いが、胸にこみ上げる。過去のことなど考えても何も変わらない。後悔はするだけ無駄だ。
だがたった今目の前の少女を傷つけた過ちに、それをせずにはいられなかった。
俺は自らの迷いゆえに、美奈の変化を考えることができなかった。人間はそう簡単に変われるものだろうか?
幼稚園、小学中学と、自分たちの後ろをついてきた美奈。
元来おとなしく、あまり自己主張を好まない美奈が、いくら俺のためだと言っても、気性が激しく攻撃的な真奈美に対峙するのはどれほどの勇気がいっただろう。
さすがに、真奈美が常習的に美奈に手をあげているとは考えにくいが、要するに俺は二人のことをわかっているようでわかっていなかった。そういうことなのだ。
「ごめんな」
俺はいつまでも美奈を抱きしめていた。
この時、俺はなにか、神聖な気持ちのようなものを感じた。
416:名無しさん@ピンキー
08/09/18 23:27:58 +K6SZhlS
投下遅くなった上に量も少なくてすいません
あと河合マークで偏差値65をこえました!みんなのおかげです!多分!
河合マークって一番信用できるんですよね?
>>392
すいませんこのときは二作同時いけるかもとか思ってたけど無理みたいです\(^O^)/すいません先にこれを終わらせます
>>400
投下したいと思ったときにはもうすでに!投下は終わってるんだ!
417:名無しさん@ピンキー
08/09/19 01:31:46 Okq9FV31
GJ
真奈美が可哀想になってきたww
うん河合のマークは受けたことないけど、記述は信用できるお
65ならいけるだろwガンガレ
執筆もガンガレ
ちなみに代ゼミや真剣とかは糞
418:名無しさん@ピンキー
08/09/19 02:05:36 xrEo3O1W
GJ!
これから真奈美が病み病みになっていくのですね!
毎回楽しみにしてます。
自分はマークとか受けたことないから分かんないですが……
65なら確かにいける気がするデスよ。
そっちのほうもがんばってください。
419:名無しさん@ピンキー
08/09/19 03:01:58 6x2xPR1P
ツマンネ・・・次無いの?
420:名無しさん@ピンキー
08/09/19 06:35:52 abs969ZI
GJね、美奈がかっこよく見えてきたwww真奈美がどうなるか楽しみだ
421:名無しさん@ピンキー
08/09/19 07:58:59 Gmm+y6CU
面白そうなのに分量が短い。
タイトルがついてないので初見だとわかりづらい。
少し残念。
422:名無しさん@ピンキー
08/09/19 17:11:19 KSZFwdhp
これって、川崎さんの話のCルートだったよね?
423:名無しさん@ピンキー
08/09/19 18:03:55 09Lxcfgu
>>416
GJ!
でも先を妄想すると、このままラブHになりそうな…
ここから逆レに持って行くのは大変そう
頑張って
俺は大学行った事無いからアドバイス出来んが、体調にはお気をつけ下され
424:名無しさん@ピンキー
08/09/23 21:31:05 YSvTl4mO
ほしゅ
425:名無しさん@ピンキー
08/09/25 10:04:51 k4bmZdbp
河合の人は河合が一番信用できると言い、駿台の人は駿台が一番レベルが高いと言う
そんなもん。
426:名無しさん@ピンキー
08/09/26 17:00:14 Vbxl3PAN
予備校は金を払って、勉強しなければならない環境に自分を閉じ込めるためのもの。
浪人ってのは
427:名無しさん@ピンキー
08/09/27 20:45:01 CjCkSjLa
昔浪人した時の経験でいうなら河合の模試は非常に質が高いよ。
この時期にその偏差値ならまずまず。次の11月頃のやつでも取れたら
かなりイイ感じじゃないかな。直前のプレテストは本番に合わせて
大概易しい目に作られてるから、取れすぎても油断しないこと。
って、話題が変わっちまったな。本題に戻そうよ。
428:名無しさん@ピンキー
08/09/28 00:17:36 fLanVNj+
あれ、スレを間違えたかな……?
429:真奈美と美奈の話。
08/09/28 03:41:05 xv6ZvdBC
「兄さん、もうすぐ冬休みですねっ!」
いつもの帰り道に、美奈の弾んだ声が響いた。昨日の今日で心配したが、外傷はないみたいだ。
……もしかすると家で暴力をふるわれたかもってのはないみたいだ。
「だな。早いもんだ」
ほんと、早いと思う。高校に入学したのがほんの先日に思える。
「兄さんは予定あります? その、クリスマスとか、イブとか」
むう。さすが幼なじみ。痛いところを突いてくる。例年は藤崎家一家なり友達なり過ごしてきたが……。
「俺はないよ。美奈こそどうなん? お前可愛いし、男子から結構誘われたりしたろ?」
実際美奈は可愛い。どれくらい可愛いかってーと……そうだな。100人に聞いたら90人は可愛いって言うだろうな。残りの10人はデブ専なり熟女好きなり局所的な趣味のやつに違いない。
「誘われたのは否定しませんが」
と抑揚のない声の後、
「予定は作ってませんよ、まだ。これから作るつもりですけど」
美奈は真っ直ぐと前を見据えている。その横顔には決意めいた何かがあった。まぁ、つまり告白なりなんなりするんだろう。美奈も中3だし、好きな男の一人や二人いて当たり前だ。
「そっかー。ま、お前なら大丈夫だろ」
「ほんとに大丈夫ですかね?」
美奈は相変わらず前を見据えている。
「うん。そりゃなぁ」
「ほんとにそう思います?」
「うん」
「だったら兄さん」
不意に、美奈が立ち止まった。
「ん?」
「私、兄さんのことが好きです。付き合ってください」
俺はこの時、ザ・ワールドを体験した。い、いや体験したというよりは理解を越えていたのだが……。
ま、待て。落ち着け俺。言葉が出ない。
「兄さん」
顔を上げると、美奈が悲しげに微笑んでいた。
「やっぱ、だめですよね。実際、兄さんが私を女として見ていなかったのは分かってましたから」
美奈の顔に涙が伝っていく。だが、実のところ俺も「美奈を女としてみていたか?」と聞かれると自信がない。胸も膨らんできたし、身体も少し丸みを帯び、肉体的には女なのだろうし俺もその変化は受け入れていた。
だがやはり美奈は真奈美の妹であり、幼なじみというポジションだった。可愛いな、とは思うが、抱きたいだとか、独り占めしたいだとかそんな荒々しい気持ちになったことはなかった。
今までは。しかし先日での出来事以来、そういった考えが変わってきたこともまた確か。大切なのは今だ。昔じゃない。
「ご、ごめんなさい兄さん、それじゃ……」
だから、俺はそれを伝えなくちゃならない。
「待てよ。俺、まだ何も言ってないだろ」
美奈の手を掴む。冷んやりした手に触れた時、形容しがたい温もりを感じた。
「……え?」
「俺も美奈のこと好きだ。だから、その、よろしく」
「に、兄さん!」
告白にしては少し情けないなと思ったが、顔をくしゃくしゃにした美奈が、飛びついてきた。最近泣かしてばっかだなと苦笑しつつ、背中に手を回した。
周りの目なんて、気にならなかった。だってそうだろ? 俺は自分の意志で美奈を抱きしめてるんだ。
430:真奈美と美奈と
08/09/28 03:42:56 xv6ZvdBC
翌日の12月23日、昼休み。俺は修に屋上へ呼び出された。
何か混みいった用事のとき、この時期この場所は最高だ。何しろ寒いからな。人いない。
「この前は悪かったな」まず先に口を開いたのは修だった。
「気にすんなよ。てか大丈夫だったか? あの後」
あの後というのは、レスリング部に、修をトイレに連行させた事件だ。
「……聞かないでくれ。いや、俺はそれだけのことをしてんだよな。だからこの痛みはその戒めにしておくよ」
修が遠くを見る目で……やっぱ掘られ……いやなんでもない。
「だからさ、俺お詫びしたくて」
「お詫び?」
思わず聞き返していた。こいつ頭でも打ったのか!?そう言いたくなったのは秘密だ。
「ほら、最近お前らマジで仲悪いみたいじゃん」
「……まあ」
「でだ。親友としてそれは思わしくない」
なんか嫌な予感してきた。
「で、24日空いてるか? あいてるよな? いや空けとけ。つまり明日だ」
「え?」
「喜べ」
そこで初めて、修がニヤリと笑った。
「真奈美ちゃんと24日、仲直りだ」
「は?」
いや、訳が分からない。いや分かるんだが、その。
「つまり言うと、俺と川崎さんと真奈美ちゃんとお前でデートすんだよ」……真奈美とデート? 24日? いや、てかなぜ川崎さんと修?
いろいろと突っ込みどころが満載すぎる。
「いや……お前なぁ」
「いやいや安心しろよ。あくまで『祐介から仲直りしたい』って旨を伝えておいたから。自分からはいいにくいことなんだろ? ここまで喧嘩するってことはつまり、相当ひどいことがあったんだろ」
いや当たりだ。当たりだよ。お前冴えてる。でもな、お前地雷だよ。とんでもない。核爆弾の地雷だ。
「いや無」
「というわけだ。それじゃあな! 絶対あけとけよ!」
俺は頭を抱えた。
431:名無しさん@ピンキー
08/09/28 03:49:44 xv6ZvdBC
今回はここまでです。
模試や勉強についてレスくれた方も文章についてレスくれた方もありがとうございます。
今度は風邪ひいちゃいましたおおぉぉお
432:名無しさん@ピンキー
08/09/28 04:05:48 VrbKDj6J
急に寒くなってきたからな。こういう季節の変わり目は、体調を崩しやすい。
433:名無しさん@ピンキー
08/09/28 09:15:07 RIU4+Dqm
GJ!
やべぇ続きがたのしみだぜw
どうやって逆レにもていくんだろう……ワクワク
確かにねぇ。一気に寒くなったからなぁ。
一刻も早い体調の回復をねがっているぜ!
434:名無しさん@ピンキー
08/09/28 20:37:04 THLHWIyy
GJ(´・ω・)b
修がKYすぎて泣けたwww
予測だが仕方なくいく→真奈美ととやかくあって仲直り→美奈がそれを見てしまう→逆レ……かな?
今度は風邪か……バファリン飲むか?あっ、パブロンか
435:名無しさん@ピンキー
08/10/03 08:00:12 H22cK9hB
ほしゅ
436:名無しさん@ピンキー
08/10/03 17:14:09 E+xZXfNh
投下しよかな
437:名無しさん@ピンキー
08/10/03 17:22:53 5WfQlrLR
思わせぶりなレス乞食は要らん。帰れ。
438:名無しさん@ピンキー
08/10/03 17:55:04 gPbkKHep
>>436
投下してー
439:名無しさん@ピンキー
08/10/04 00:48:19 oWI0d8V2
>>434
バファリンも一応効くぞ、解熱効果がというだけだが。
440:名無しさん@ピンキー
08/10/04 00:58:18 oMEYwqw7
>>439
スレ違いだが熱も下げれば良いってもんじゃないんだよな、熱も対ウイルス用の反応のひとつだし
同じことでヤンデレにならないように、感情を抑えさせようと努力した結果、
悪化することもあるわけだな
441:名無しさん@ピンキー
08/10/04 03:54:43 oWI0d8V2
>>440
かぜの引き始めの熱は抑えない方がいいという話もあるからな。
ただまあそんな事も言ってられないんで普通はかぜ薬を飲んで早めに寝るのがいいわけ
だが。
442:名無しさん@ピンキー
08/10/04 19:42:57 vObOpAZV
40度近い高熱が続く場合は、脳炎の恐れもあるから強制的に
下げた方がいいけどな。
自分が入院した時は、脇の下に(タオルに包んだ)氷を挟んでくれた>看護師
443:名無しさん@ピンキー
08/10/04 22:33:27 oDndAVAA
>>442
そしてそのまま大人しめな看護師に逆レされたんだろ?
氷嚢をわきに挟んでくれた後にモノをムネにはさむ大人しめな看護師のSSを!
444:名無しさん@ピンキー
08/10/04 22:37:12 vObOpAZV
残念ながら、体育会系のちょっと色黒の元気な看護師だった…
445:名無しさん@ピンキー
08/10/05 00:40:57 Rzc1w4Jd
∧∧
ヽ(・ω・)/ ズコー
\(.\ ノ
、ハ,,、  ̄
 ̄
446:名無しさん@ピンキー
08/10/05 02:45:46 9xGN+ubj
>>444
俺、・・・・・・・・そっちの方がいい
447:名無しさん@ピンキー
08/10/05 03:13:49 Q+SgHpCg
看護師だとどっちだか分からないじゃないか……
キミ! 体育会系のちょっと色黒なアッーーー!
448:名無しさん@ピンキー
08/10/06 14:01:14 7u7Dz8ok
法律上、看護婦という名称がなくなって、看護師に統一されたんだから仕方がない。
449:名無しさん@ピンキー
08/10/06 22:53:58 +bgEa8LF
ここで書く分にはいいんじゃない?
450:名無しさん@ピンキー
08/10/09 01:26:05 65ZrVwtX
幼馴染姉妹ルートのはずなのに川崎さんまで加わってるからさらなる泥沼を期待している俺guile
451:名無しさん@ピンキー
08/10/11 14:06:45 +3ZDTOMF
何かここって、真奈美と・・・を書いてる職人さんだけで成り立ってるね。
452:名無しさん@ピンキー
08/10/11 18:53:41 F0IcA3PD
他に職人がいないからな……
逆に言うならいなくなったらこのスレは過疎るな……
453:名無しさん@ピンキー
08/10/11 21:56:39 PrMU333v
ネタっつーかおおまかなあらすじは出来上がってるんだけども、
SSなんか書いた事無いんで形にならねーです
とくにエロシーンなんか実体験はおろかエロゲーすら未経験なんで何とも
454:名無しさん@ピンキー
08/10/11 22:10:34 x6X8wH3a
>>453
エロSSを読んだ事ぐらいはあるだろう……
455:名無しさん@ピンキー
08/10/11 23:32:23 PrMU333v
まあそれもそうか、色々と参考にしてみよう
シチュ的にほぼ確実に騎乗位になるためこのスレの他の作品と似た感じになりそうだが何とか挑戦
456:名無しさん@ピンキー
08/10/12 00:02:29 vxyYngAv
>>455
wktk
457:名無しさん@ピンキー
08/10/12 23:49:11 5GUxf3Qc
保守
458:名無しさん@ピンキー
08/10/13 00:46:24 ro1HHEV/
スレの性質上仕方のないこととはいえ、選択を迫られる度に最悪の選択肢を選び続ける主人公達が哀れだ
エロゲ化したら選択肢全てが地雷で実質バッドエンド1択の糞ゲーになるな
459:真奈美と美奈
08/10/13 04:00:07 SLfl11nH
むぅ。困った……。いや、修が悪気があってこんな提案をもちかけてきたわけではない。それはわかる。わかるのだが……。
如何せんことがことである。修が川崎さんを好きってことはわかるし、例えその恋の実る確率が
……そうだな、明日宇宙からジオンが攻めてきて地球との大戦争がおこるくらい―つまり限りなく0だ―低いとしても友人としては応援せねばなるまい。
しかし、だ。あの時、美奈をぶった真奈美。正直異常だと思った。いや、思ってしまった。
仮に俺が来て修と川崎さんのデートが成功するんならそれでいいんだけど……。
常に四人で行動するわけはないし、つまり俺と真奈美二人きりになる時もあるってことだ。
別に二人きりが怖いわけではない。あの時押し倒されたのは不意をつかれたからだし、いくら真奈美が鍛えているとしても、力じゃ負けないはずだ。多分……。
だから、別に暴力が怖いわけじゃないんだ。ただ、真奈美を変な目で見てしまいそうで嫌なのだ。
かつては最も信頼し気の置けない関係だった人間を、狂気などと捉えてしまいそうで嫌なのだ。
付き合いの深い分、えてしてそのような視線は気付かれやすいだろう。
「うーむ……」
屋上から見渡す風景は、いつもと変わらない。下を見れば蟻みたいに小さくなった車がひしめきあい、見上げれば澄んだ青空がある。
いつになったら俺は大人になるんだろう。大人だったら、こういうときもスパッと決めて誰も傷つけずに解決するのだろうか。
俺は昔から何も成長していないきがする。何が変わったんだろうか、俺は。
「わっ!!」
「ひっ……」
突然背後から肩をつかまれた。心臓が竦みあがり、びくっと飛び上がった。
「ぷっ……あっははははっ!!」
460:名無しさん@ピンキー
08/10/13 04:04:52 SLfl11nH
心臓をバクバクさせながら振り返ると、腹を抱えて笑い転げている女が一人。俺のクラスメート、安藤夏美だった。高校からの友達なのだが、結構話したりするし、中々いいやつだと思う。
「お前なぁ……」
ただ、元気すぎる。
「いや、ごめんごめん、つい出来心でさぁ」
にやけた顔からは、笑いをかみ殺そうとしているのが丸わかりである。
「……そうか」
自分でもわかるくらい憮然とした声だった。ほんとつまらん性格だと思う。少し自己嫌悪に陥りながら、俺は安藤に背を向け、再び冬の町を見渡す。
しかし安藤は帰る様子もなく、俺の隣で手すりに寄りかかり故郷の街並みに目を向ける。安藤の少し茶髪がかった髪が、冬の風になびいた。
「珍しいじゃん。あんたがサボりなんてさ。なんかあったの?」
いつもの元気で軽い調子とは違い、投げかけられた声は、さりげなく、柔らかかった。
「……安藤だって、いつもはサボりなんてやんないだろ」
真奈美の影響か、俺はむしろ居丈高に振る舞われたほうが楽に感じるようになっていた。
だからこうやって優しい口調だと、つい困惑してしまう。
「まあねー。ほんとどうしちゃったんだろ。自分、もっと器用な人間だと思ってたんだけどさ」
はぁー、とため息をつく安藤。
「へ?」
「いや、こっちの話。ところでほんとどうしたの? 今日……ううん、あんた最近ずっと変だよ」
自分はそんなにひどい顔をしていたのだろうか。いや、彼女以外からはそんな指摘をされなかった。
「藤崎さん、だっけ? あんたの幼なじみ」
思わずドキリとした。が、平静を装い、まぁ、と適当に相槌をうつ。不意に、安藤が俺に向き直るのがわかった。
「その子関係でしょ」
真っ直ぐに俺の心の中を言い当てた言葉に、俺は安藤に目を向けた。
「……まぁ」
はぁっ、と軽くため息がでた。おちゃらけているようで、こいつは洞察力だとか勘が優れているのだ。
「あたしにも、言えないこと……だよね? しょせん高校からの付き合いだもんね」
「あ、いや! 安藤のことはほんといいやつだと思うし、でも……ごめん」
高校からの付き合いだとかそんなんじゃないのだ。誰にも言えないことなのだ。
「んー……。ねえ、立石。今日残ってる授業ってなんだっけ?」
「確か現国と英語だな」
「げっ、あたしの嫌いなやつじゃん」
「お前の得意なの、数学だけだもんなぁ」
安藤は、数学だけは常に90以上をキープしている。他はからっきしだめだが。
「まあね。ねえ、立石」
安藤が、俺の手を握った。
「今からさ、遊びにいこうよ」
461:名無しさん@ピンキー
08/10/13 04:14:03 SLfl11nH
「ねぇっ、次はあれのってみよ!」
安藤の笑顔がはじける。もうかれこれ三時間は動き回っているのだが、全く疲れを見せない。さすが陸上部は違う。
「ほら、早く!」
彼女が走ると、少し短めにされた、紺のスカートがふわりと浮かび上がる。陸上部のくせ?に白いままの脚―というか全身あまり日焼けしていない―が眩しい。
俺たちは、あれから学校を抜け出し、電車で30分ほどのテーマパークにきていた。
平日だというのに、この国内最大のテーマパークは人でごった返している。地方のつぶれかけの遊園地に客を回してやりたいくらいだ。
「いやー、平日ってのは気分がいいねぇ」
あはは、とのんきに笑う安藤であるが。豪胆というか大胆というか。
学校を抜け出して、まさかこんなところまでくることになるとは。
「てか、何なんだよお前のチョイスは! ほとんどが絶叫系じゃねーか!」
ほぼ、安藤のリクエストに答えていたのだが、こいつの選んだのはお化け屋敷やらジェットコースターやら……で。死にたいれす。
「いやー遊園地ときたら絶叫系+お化け屋敷でしょ! レストランに来て電気製品を買おうとするやつなんている? 断じていない!」
「……どうでもいいけど、そろそろ帰ろうぜ」
「えー!? 立石さぁ、もうギブなわけ?」
明らかに不満げな表情になる安藤。
「違う! 時間もう四時半過ぎてるの!」
俺は携帯電話のデジタル時計を見せる。
「あちゃ。もうこんな時間か。楽しい時間はすぐ過ぎるからね」
「そういうこと。じゃ、いこうぜ」
「ちょっと待って」
安藤が、俺の腕を掴んだ。
「最後に、あれ乗っていこ」
「いやー、すごい眺めだね!」
「だな」
俺たちは、最後の締めに観覧車に乗っていた。夕暮れのこの時間、観覧車から見る景色はとても美しい。闇に沈もうとしている町が、とてもはかなく、そして幻想的だ。
「あ、そういやなんで俺らこれに乗れたわけ?」
実際、この観覧車には長蛇の列ができていた。安藤が「交渉しにいってくる」とか言って、一人で観覧車の係員の元へいったのだが。
「あーそれは企業秘密」
おい、目が泳いでるぞ。いっとくが、脅迫は犯罪だぞ。
「あ、ねえ! あっちってさ、うちらの学校のほうだよね?」
安藤が俺に背を向け、外の景色を指差した。
「うん。だな」
「すごー!! 学校が全然見えない!」
安藤の表情は見えないが、キラキラと瞳を輝かせているのだろう。当たり前だろ、などと突っ込むのは無粋だろう。
あ、弁解しとくけど、こいつは馬鹿じゃないぞ。テストはいつも赤点ギリギリだけどさ。それは部活を頑張ってるからだ。多分。
「ねえ、ここからの風景、綺麗だよね」
安藤の表情は見えない。だが、少し声のトーンが落ちているように感じた。
「だな。綺麗だと思う」
「じゃあさ、あたしとどっちが綺麗かな」
安藤は、景色を見たままだ。冗談でいってるんだろう。少し声に笑いが含まれていた。と俺は思った。
「……風景と人間を比べられるわけないだろ」
「あはは、それもそうだよね」
心底楽しそうに笑う。安藤はこちらをみない。
「じゃあさ、藤崎さんとこの風景なら、どっち?」
「お前、真奈美も人間だぞ。てか俺の話を聞けい!」
「あははは、ちゃんと聞いてるって!」
絶対聞いてない!こいつは聞いてない!
「じゃあさ、藤崎さんとあたしだったら?」
からかうのもいい加減にしろ、と言おうとした。言えなかった。
「……突然どうした?」
だから、こう言うしかなかった。こちらを向いた彼女の瞳には、ただ濁ったようななにかが浮かんでいた。
ちょうど、この夕暮れの景色のような。これから、さらにまどろんでいくであろう何かだった。
そして、あの時の真奈美に似た―。
462:作者
08/10/13 04:21:15 SLfl11nH
お久しぶりです。最近ペースが落ちてすみません。でも最近は不眠症以外は健康そのものです。これもみなさんのおかげであります。多分。
なんか俺の健康スレみたいですんませんw
勉強はそこそこ順調です。ってなんか変ですよねw恐らくエロパロ板で勉強とか報告してんの俺くらいだろうなぁ。まぁ優しいここの住人さんたちに感謝っす。
>>455
。wktkせざるをえない!
463:名無しさん@ピンキー
08/10/13 06:22:19 VlwGwpUR
>>455おー、期待してるぜよ
>>462やあ作者(´・ω・`)あなたの作品いつも楽しみにしながら読んでいるよ、投下ペースが遅くなってしまうのはわかるが無理だけはしないでくれ。勉強がまず第一だからね(´・ω・`)
そして新キャラキター(゚∀゚)どんどんフラグ立つねえwww
464:名無しさん@ピンキー
08/10/13 10:57:28 /icXeAIG
なんつうエロゲ体質主人公……
465:名無しさん@ピンキー
08/10/13 12:47:44 fajBwt5A
第3…いや第4勢力ktkr
466:名無しさん@ピンキー
08/10/13 12:56:42 4XMMxZL9
>>80
7人が狙ってるのは長谷川さんの思い込みで、他の女の子と話しているの
なんかを見た時に、勘違いして病み具合が激しくなるのがいいな。
467:名無しさん@ピンキー
08/10/13 13:15:38 tDWEJQuR
>>455
カモン!
出来次第まったり投下していってください。
楽しみにしてるんだぜ!
>>462
フラグ立ちまくりktkr
GJだぜ!
そして眠れない時はホットミルクだぜ。トリプトファンだぜ?
468:名無しさん@ピンキー
08/10/13 16:49:08 ZDNL3MYW
URLリンク(r4.bannch.com)
469:名無しさん@ピンキー
08/10/13 17:01:29 cHWXNvW5
百合はNGなのかこのスレ
470:名無しさん@ピンキー
08/10/13 19:38:09 fajBwt5A
女が女をレイプする事を逆レイプと呼ぶのであればOKなんじゃね?
俺はその辺の定義は分からん
ただ、俺的にはおk
471:名無しさん@ピンキー
08/10/14 09:37:20 hiayt/O+
>>469
俺もまぁ許容範囲だとは思う
472:名無しさん@ピンキー
08/10/14 12:24:22 lMetP+9H
出来れば百合はよそでやって欲しいというのが本音
サブではありだけどメインは女×男が望ましいな
473:名無しさん@ピンキー
08/10/14 19:09:10 ApxL1Fz/
ここでいいじゃん
474:名無しさん@ピンキー
08/10/15 02:09:50 7RiX8nav
俺は百合属性はないけどその辺は作者の良心に任せる
個人的には女が責められるのは逆レイプとは言わないと思うよ
475:名無しさん@ピンキー
08/10/16 17:14:00 FiY+od7j
ふ‥
476:名無しさん@ピンキー
08/10/16 22:08:00 Gw3tk4fb
前半部すら書き終わらないのにエロパロでエロネタ書いて叩かれたスレを見つけてしまって俺涙目
477:名無しさん@ピンキー
08/10/18 00:25:51 dcdLjjhT
投下来ないね・・・・
478:名なし
08/10/19 14:28:26 upLNvW2f
マダー?
479:名無しさん@ピンキー
08/10/22 18:14:51 XKr+0uqf
>>462
俺はまだ、待ってるぜ!!
480:名無しさん@ピンキー
08/10/23 21:00:59 KuL/lcHs
良いスレを見つけた
>>462、あんたのが一番面白いですぜ
まだ続いてるとは驚き、頑張ってくだせえ
481:名無しさん@ピンキー
08/10/25 18:40:16 wgzRoGhd
保守
482:名無しさん@ピンキー
08/10/26 19:33:07 MK9QLgxF
>>294
吉良
>>305
フーゴ
>>416
「プロシュートの兄貴ィッ!」 というかペッシ
>>462
続きにも期待 wktk
483:名無しさん@ピンキー
08/10/26 19:34:32 MK9QLgxF
>>458
そだ |------、`⌒ー--、
れが |ハ{{ }} )))ヽ、l l ハ
が |、{ ハリノノノノノノ)、 l l
い |ヽヽー、彡彡ノノノ} に
い |ヾヾヾヾヾヽ彡彡} や
!! /:.:.:.ヾヾヾヾヽ彡彡} l っ
\__/{ l ii | l|} ハ、ヾ} ミ彡ト
彡シ ,ェ、、、ヾ{{ヽ} l|l ィェ=リ、シ} |l
lミ{ ゙イシモ'テ、ミヽ}シィ=ラ'ァ、 }ミ}} l
ヾミ  ̄~'ィ''': |゙:ー. ̄ lノ/l | |
ヾヾ " : : !、 ` lイノ l| |
>l゙、 ー、,'ソ /.|}、 l| |
:.lヽ ヽ ー_ ‐-‐ァ' /::ノl ト、
:.:.:.:\ヽ 二" /::// /:.:.l:.:.
:.:.:.:.:.::ヽ:\ /::://:.:,':.:..:l:.:.
;.;.;.;.;;.:.:.:.\`ー-- '" //:.:.:;l:.:.:.:l:.:
484:名なし
08/10/29 06:55:33 sQa8XQUt
もう16日立ってるのに投下こないww
485:名無しさん@ピンキー
08/10/29 13:43:09 Bv8I2587
全裸にネクタイ、靴下履いて正座で待機!
486:名無しさん@ピンキー
08/10/30 00:23:40 1FPX8M7k
URLリンク(imepita.jp)
487:真奈美と美奈。
08/10/30 23:53:53 0HncxUwT
「あれ? こんなところで何してるんですか?」
テーマパークから帰ると、いつものように校門で待っていた美奈と遭遇した。健気に待ってくれている美奈を差し置いてテーマパークに行っていた(しかもサボリ)ことが、罪悪感を煽る。
「いや、ちょっと気分転換にさ。ほら、無性に走りたくなることとかあるだろ?」
「つまり、サボリですね?」
美奈はニッコリと笑って指摘する。
「Exactly(その通りでございます)」
俺はぺこりと頭を垂れた。
「はぁ……。兄さんはもう少しで受験生なんですよ? 困るのは兄さんなんだから」
お前はすでに受験生だろ、言いかけたが、やめておいた。美奈に成績を聞くのは愚問だ。
「ところで兄さん、この方は?」
美奈の視線が、俺の傍らにいる人物―安藤夏美―に向かう。
「あー……えっと」
「親友、兼クラスメートだよ。君は?」
俺が判断に迷っていると、横から活発な声が割り込んできた。安藤は俺に密着し、仲の良さをアピールするようにいう。
美奈は一瞬虚を突かれたような表情になったが、しゃんと胸を張って言った。
「妹、兼幼なじみ、兼恋人の最強コンボとでも言っておきます」
美奈が言い終わるのと同時に、下校時間を告げるベルが鳴り響いた。
「「……は?」」
俺も安藤も、恐らく世界一間抜けな表情をしていたに違いない。ぽかんとした表情ってのは、こういうのを言うんだろうな、とふと心の片隅で思った。
「もちろん一部はジョークです。面白くなかったですか?」
んな真顔で言われても、冗談とは思えないちゅーねん。
「いや、なんというか、びっくりした」
「うん、まあ、面白い子じゃん。てか君は立石の妹さん? 妹さんいるなんて聞いてなかったけど。それに恋人って……?」
安藤が凍りついた雰囲気を変えようと話題を振る。この辺は体育会系、手慣れたもんだ。
「私は妹さんではありません。藤崎美奈という名前があります」
美奈は相変わらずマイペースである。いや、昔はここまで不思議じゃなかったんだが。ほんとに。
「ふーん……。なんか、あんまり分かった気にはならないけど……。美奈ちゃんか。あたしは安藤夏美。よろしくね!」
「ええ、是非とも」
美奈が握手のため手を差し出すと、安藤もそれを握った。……一応仲は順調なのか?
「てかー、立石さぁ、妹でもない人に兄さんって呼ばせてるわけ?」
「……えっ?」
「……もしかして立石ってロリコン?」
ジトーと、怪しいものでも見るかのような目。あれ、もしかしたらのもしかして俺ロリコン認定?
「違う! 断じて違うぞ!」
「犯罪者はみんなそういうのよ! 美奈ちゃん、どうなの?」
「実は毎晩毎晩兄さんに……こ、これ以上はとても言えません」
「美奈も悪乗りしすぎ」
コツンと美奈の頭を叩くと、むぅと少し拗ねた表情になる。
「迫真の演技だったでしょう?」
「そういう問題じゃないっての」
「ふふ。確かに悪乗りが過ぎました。ところで、そろそろ教室に戻った方がいいのでは? 荷物をとりにきたんでしょう?」
そうだった! 携帯で時間を確認すると、すでに放課後になってかなり時間が過ぎている。
「やべ。美奈、少し待っててくれ」
俺は安藤と共に、夕暮れの学校に戻った。
488:真奈美と美奈。
08/10/30 23:56:00 0HncxUwT
「ねぇ、立石」
人気のない校舎にはいると、安藤が口を開いた。
「……あのさ」
安藤は俺の手をつかみ、立ち止まった。
「ん?」
振り返ると、先ほどとは違う表情の安藤がいた。「さっきの子とは、本当に何もない?」
その声には、幾分かの切実さと、幾分かの探りが込められていた。
「……なんだよ、マジで俺のことロリコンだと思ってるのか?」
さすがにむっとして言い返した。まさか本気でロリコンだとでも思っているのか?
「ううん、そうじゃなくて……ちょっと気になって」
少しきつく言ったのが効いたのか、さすがにばつの悪い表情になる。というか、そもそも安藤が気にすることなのだろうか?
「んじゃ、以後は気にすんな。本当に何もないから」
これは嘘ではない。本当に何もないのだ。今のところは。ただの恋人関係にあるだけ。
「うん、ならいいんだけど……」
安藤は少し疑っているみたいだが、一応は納得してくれたみたいである。
「ところで、さっきの子、どっかで会った気がするんだけど」
「いや、それはないだろ。勘違いじゃね?」
そもそも安藤の家の地区と俺たちの地区は結構、いや、かなり離れている。地区というかそもそも町が違うのであるから、小学も中学も一緒なわけはない。
「そっか、そう……だよね。あたしの勘も当てになんないもんだねー。なんとなく……思ったんだけど」
安藤は、からからと笑った。
「何を思ったんだよ?」
「秘密だよ!」
安藤は俺に向日葵のような笑顔を向ける。
「ほら、急ごうよ!」
安藤が遠ざかっていく。一歩、二歩。少しずつではあるが、着実に。
「あ、ああ」
辺りはもう、すっかりと暗くなっていた。
489:真奈美と美奈。
08/10/30 23:59:43 0HncxUwT
こんばんは。二週間以上間を空けてすみません。そろそろ受験シーズンなので、本当に申し訳ないんですが……。
次は今より遅くなるかもです。できるだけ気分転換や待ってくれてる人のために書こうとは思ってますが……。
最近は体調はそこそこです(笑)
490:名無しさん@ピンキー
08/10/31 01:09:46 d10L/8js
どの子に逆レなのか
491:名無しさん@ピンキー
08/10/31 01:10:57 d10L/8js
ごめん間違ってエンター押しちゃったorz
どの子に逆レされるのか!
非常に楽しみだぜ!
GJ!
それと受験がんばれ!自分のペースで書いていってください。
全裸正座でおとなしく待ってます。
492:名無しさん@ピンキー
08/10/31 01:15:43 u56zUjYq
ロリコンを侮辱するんじゃねえええ!!!
493:名無しさん@ピンキー
08/10/31 08:59:40 06fk6zl5
ろりこんは びょうきです。
さあ、ロリスレに帰るんだ。
俺と一緒に。
494:名無しさん@ピンキー
08/10/31 15:08:47 z1Lz9586
GJ!!
さぁ早く体調を崩すんだ!
495:名無しさん@ピンキー
08/10/31 15:44:27 OOO60BM6
GJ、だんだんウマーな展開になってきたな。
とりあえず無茶はしないでくれ、自分のペースで構わないから。
ただ……エターならないで欲しい……この通りだOTL
496:名無しさん@ピンキー
08/10/31 16:37:39 CtWfzD5R
エターならないで?どういう意味なん?
497:名無しさん@ピンキー
08/10/31 20:19:51 ADuMLyVv
エターナル…永遠
永遠にお待ちください、つまり作品未完のまま作者逃亡…って事かのう
俺の勝手な推論によると
498:名無しさん@ピンキー
08/10/31 20:25:43 EGIthCeq
エターなる…ツクール用語。作品が未完成のまま永久封印になること。
元はラウンジの派生だが、現在ではVIP他広範に用いられる。
派生語)エターなるの海、フォビドゥン
499:名無しさん@ピンキー
08/11/04 10:28:45 keUF7g5B
>元はラウンジの派生だが、現在ではVIP他広範に用いられる。
聞いたこともねぇよ。
これだからラウンコのクソどもとVIPPERときたら・・・
500:名無しさん@ピンキー
08/11/05 22:59:53 DViWHJoY
ド サ ッ
「ちょっ・・・・・・何すんだよ>>499!?」
「ねぇ、なんで>>498はそんなこと言うのかなぁ・・・・・・
あたし「エターなるが以下ry」なんて、聞いたこともないよ?」
「いや、そのそれは・・・・・・」
「あたしや他の人たちが何も知らないと思って、
まるでそれがあたかも広く使われてるんだって触れ回って・・・・・・」
「だから、違うんだってば・・・・・・」
「なにが違うの!?これだからあなたみたいなVIPPERはっ!
・・・・・・・・・もういいよ、これ以上そんなこと言うんだったらおしおきしてあげる」
「待て!話せばわかっ・・・・・・むぐぅっ・・・・・・!?」
「これでもう逃げられないね。
大丈夫だよ?おしおきって言ったって、別に痛いことするつもりはないから」
「むーっ!むーっ!」
「・・・・・・・・・さ、始めよっか?」
・・・・・・こっちに落とすSSに行き詰まってるうちに、
>>498-499がこんな調子で脳内変換されてしまった、2人ともマジゴメン。
まだ完成には程遠いってのに、一体何やってんだろ俺はorz
501:名無しさん@ピンキー
08/11/05 23:00:53 Kf/b6lzc
>>500
迷いながらも進んでいるんだと思います。
502:名無しさん@ピンキー
08/11/06 00:25:58 yL+25STQ
とりあえずエターナル発言の張本人です(´・ω・`)
とりまごめんなさい、おとなしいヤンデレっ娘に見つかるまで吊ってきますわい
503:名無しさん@ピンキー
08/11/06 12:31:33 jS88+BWO
はぁはぁ・・っ・・・!
504:名無しさん@ピンキー
08/11/06 16:02:08 jS88+BWO
GGJ!!
505:名無しさん@ピンキー
08/11/11 23:00:18 DJwb0oeb
ほし
506:名無しさん@ピンキー
08/11/17 04:15:52 GSX2Kg1C
ほ
507:名無しさん@ピンキー
08/11/20 00:40:58 P/VMQIA8
し
508:名無しさん@ピンキー
08/11/20 16:03:23 KGnvUpPR
ゅ
509:名無しさん@ピンキー
08/11/20 20:27:40 3Uz7jQCm
保守
510:名無しさん@ピンキー
08/11/22 01:28:07 to0ZY7oz
あら・・・
職人様はいらっしゃらないのか・・・
ほ し ゅ
511:真奈美と美奈。
08/11/22 12:00:02 BaF9O5xO
「で、兄さん。なぜ授業をさぼったんですか?」
抑揚のない、無機質な声。いや、その声音はわずかに怒気を含んでいるようだ。てきとーに頼んだコーヒーには、誰も手をつけていない。
俺たちは、学校から場所を移してファミレスに来ていた。
ちなみに、美奈の要望により安藤も一緒である。
「……だからリラックスのためだって」
美奈の視線が痛い。ジト目というかなんというか……。いや、そんな次元じゃない。
「浮気ですか?」
問いつめるように、視線を突き刺してくる。
「いや、そんなんじゃ」
「だったらどうして嘘をつくんですか!!」
店内に一際大きな声が響く。周囲の視線が一気にこちらに集まる。
「い、いやさ。美奈ちゃん、あたしが誘ったから悪いのは立石じゃなくて」
「あなたは黙っていてください」
美奈の冷たい一言で、安藤は押し黙る。いや、そうするしかなかったのだろう。先ほどの冗談を言い合っていたような朗らかさは全くなかった。
美奈はつまり、俺だけに答えろ、と。そういっているのだ。
「嘘なんてついてないってば……」
基本的に冷静なはずの美奈がここまで怒りを露わにするのはあの時以来だ。普段から怒りっぽい人間を相手にするのは簡単だが、美奈のような普段冷静な人間はたちが悪い。
「嘘なんてついてない? 兄さんは私を誰だと、何だと思っているんですか!?」
512:真奈美と美奈。時々安藤。
08/11/22 12:01:31 BaF9O5xO
「あ、あの、お客様……店内ではお静かに……」
さすがに見かねたらしいウェイトレスが注意をしにきた……が、それを最後まで言いきることは出来なかった。美奈が一瞥をくれただけで、ウェイトレスはヒッといって引っ込んでしまったのだ。それに力を得たかのように、美奈は勢いを増した。
「いいですか?兄さん。私は兄さんの何ですか?彼女ですよね?なのになぜ隠し事をするんですか?そもそもばれないとでも?私は兄さんの幼なじみですよね?私は兄さんのことならなんだってわかっています。その私に! なぜ嘘をつくんですか!?」
コーヒーカップから立ち上る湯気が揺れる。
言ってることがめちゃくちゃだ。いや、言いたいことはわかる。のだが……。
「答えられない、と。なるほどですよ、兄さん。つまり私のことはもう彼女でもなんでもないと。好きではなくなったと。そういうわけですね?」
「い、や、んなことは」
美奈はやけに饒舌にまくしたてる。そんな美奈を、安藤は呆然と見つめていた。
「それは違う、と。つまり兄さんは依然と私のことを愛していると。そういうことですか?」
「……そうだよ」
そうだ。俺は美奈のことが好きだ。これは事実だ。だが、こんな言い合いは不毛に思える。
「だったら、証明してください」
「……証明?」
思わず、美奈の話に引き込まれた。
「そうです。愛しているという証明です」
愛しているという証明? 証明と言われても、愛しているから愛しているとしか言いようがない。
「とか考えてますよね?」
「……ああ」
「言ったはずですよ。私は兄さんのことなら、何でもお見通しですからね」
美奈は自信ありげに宣言する。
「……そうみたいだな」
「兄さん、あなたの考えは正しいです。確かに愛の気持ちそのものの具体化することはできません。が、少なくともそれを行為に表すことはできるのではないですか?」
「……つまりどうしろと」
女の方から言わせる気ですか、とつぶやいた後、
「私とセックスしてください。そう言ったんですよ」
美奈はもったいぶるように、しかしはっきりと宣言した。
513:作者。
08/11/22 12:03:58 BaF9O5xO
こんにちは。またまた遅くなってすみませんwえたーなることはないので安心してくださいwただ、今まで以上に遅くなると思います。
すみません。勉強がんばります。皆さんも体にきをつけてください
514:名無しさん@ピンキー
08/11/22 16:05:54 F7ohSXK7
おひさしぶりGJ!
うはw公共の場の会話じゃねぇwww
でもそれがいい
えたーにならないって聞いただけで安心したよ
うp主も体調気を付けて頑張ってくれ
515:400
08/11/22 16:18:42 GtdIvtcR
400です。文章力皆無です。
理にかなわないと言われてあきらめかけたんですが、励ましの言葉もいただけたのでがんばっています。
でもいったん挫折したせいで最初書いてたときの気分が思い出せないことと、
経験地の無さから我ながらひどいことになってます。
結局もとの構想からはだいぶ外れてしまいましたがせっかくだから投稿させてもらいます。
「――――!」
悪夢を見た。
しかも知り合いを犯す淫夢を……情けないが思わず悲鳴をあげながら跳ね起きてしまった。
頭が重い。太陽が西側にある。なんでだっけ? と少し考えて、風邪をひいて学校を休んだことを思い出した。
夏風邪だな、バカしかひかないらしいし、昨日傘が無いのに夕立の中を走ったのが悪かったか。
そんなことをつらつら考えていると徐々に意識がはっきりして来た。
寝汗でべっとり張り付いた服が気持ち悪い、ちょっとあれだけどシャワーを浴びよう。そう思って部屋から出た。
どうやら家には誰もいないみたいだ。
見舞に来るような友達は高校違うし、両親はまああれだし、バスケ部の連中はみんな大会とかで忙しいだろうし……、
ってかこの時期に休んでてオレはだいじょぶなのか? ダメだろ。
シャワー浴びたら学校に行って部活にでよう、ちょっとくらい大丈夫だよな……。そう思った。
多分その油断が良くなかった。じゃなきゃあんな夢を見た罰だ。
家からも学校からも十二分に遠い場所で大きな入道雲が空に現れた。
「ぬ、ぬれたぁ~」
予想通り無駄に激しく降ってくれた夕立との戦いは、それでも先に気付いて雨宿りできる場所
―近くの公園の巨木―に当たりをつけられた分昨日よりはマシだった。
かなり濡れはしたが幸いここにはベンチがあるし、部活の道具を入れたバックは防水できてるから
中のタオルが無事だった。服を絞り体を拭きながら考える。
(やまないな……下校中の生徒見つけられたら入れてもらうんだけど)
残念ながらここは公園の中だ。外ならともかく中を通学路にしてるやつなんているのかな? 多分いないだろう。
それでも……。と一縷の望みを託し夕立の中に目を懲らしていたら、走る一つの人影が目についた。
長い黒髪、白っぽい肌、見覚えのある制服、鞄、顔。
「樋口!?」
驚きのあまり出た声は思ったより大きかったらしい。夢にでてきたクラスメートがこちらを向いて走ってくる。
気をしっかり持て、オレ。
516:400
08/11/22 16:23:23 GtdIvtcR
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
びしょ濡れで走って来た樋口の頬は、微かに赤かった。けっこう長い距離を走ったきたのかも知れない。
息も荒い。服が濡れて張り付いてる、その向こう側にシュガーブラウンを確認してしまい、慌ててそこから目を反らした。
「さ、災難だったな樋口……随分走らされたみたいだし」
「ああ、新堂さんでしたか」
助かりました。そういって顔を上げた彼女は、ゆっくりと息を整えて微笑んだ。
自分を呼び止めたのが知人であることがわかって安心したらしい。
一瞬その微笑みに目を奪われ、そしてさっき見た夢を思いだし鬱な気分になった。
タオルを取り出して彼女に差し出す。
「使えよ、そのままだと風邪ひくだろ」
「え? あ、えっと」
「オレが使った後だからあれだけど、まあ雨に濡らして絞るなりなんなりしてくれ」
「あ、いえ、それは全然大丈夫なんですけど」
半ば押し付けるようにタオルを渡したが、樋口はぶつぶつ言って動かない。
あれか、見ないで下さいね……、とか? 要するに服を脱いで絞ったりとかしてる間は
裸にならなきゃいけないのが嫌だと? 色々目にあれだからなんとかしてほしいんだけどな。
「他に誰かきたりしないでしょうか」
「え?」
予想外の言葉が来た。あれ、オレはいいのか? 信用されてる?
いや、そんなわけ無いか。罪悪感が押し寄せてくるからそう思いたくないし。
「まあだいじょうぶじゃないかな。降り初めてから大分時間たったし」
「でも……二度あることは三度あるといいますし」
中々話が進まない。しょうがない、着ていたシャツ―所謂体操服だが―を脱いだ。
風通しがよく出来てるからちょっと寒いけど、おかげでもう殆ど乾いている。
オレの唐突な行動に驚いて硬直した彼女は、我に帰ると慌てて目を反らした。
……なにか言ってくれたりすると反応しやすいんだけどな。まあ、いい。
「これも貸してやるから」
「え……」
「迷うなら使えよ。オレと違って頭いいんだから、普通に風邪ひくぞ? それに脱いだオレがバカみたいじゃないか」
「……新堂さんはバカじゃないですよ」
語調を強めたのが効いたらしい、ブツブツ言いながら彼女はオレのシャツを受け取った。
……これって女の子に無理矢理自分の服を着せてるわけだよな、オレは変態か?
そんなことを考えながらボーッとしていたら、絞られた服から水が滴る音がしてきた。
今は裸か下着か……もうオレのシャツを着ているのか。そんなことを一瞬考えてしまったのが嫌で、
雑念を払うように頭を振った。
「どうかしました?」
517:400
08/11/22 16:25:10 GtdIvtcR
「え? いや、なんで?」
「首を振ってましたから」
こっち向いて着替えてんのかよ、普通後ろ向くだろ!
「い、いや別に」
「そうですか」
「それ、服乾くまできてていいから」
話題を反らしたくてとっさに適当なことを言う、まあそんなに寒くないから別にいいけど。
「ありがとうございます……もうこっち向いても大丈夫ですよ」
「そう?」
「シャツ、着てますし」
「いやその……胸、とか」
気になったことを遠慮がちに聞いたら一瞬間が開いた。
「私、胸はちいさ……下着がないと困るほど大きくないです、から」
「それ、下着吊ってるってことだろ……」
「あ」
本当に吊ってるかどうかは知らないけどどうやらまだ振り向くわけにはいかないらしい、
こんな会話顔をあわせたまま出来るわけないしいいんだけど。
樋口が自分の胸の大きさを自分で言及しちゃったせいで余計に気まずい空気が流れてるし。
「えっと……その……そういえば新堂さんは何故ここに?」
「そりゃ雨宿りのためだよ」
とりあえずこの空気をなんとか出来ればなんでもよかったから、なにも考えないで適当に答えた。
「いえ、そうではなくて」
「なに?」
「風邪をひいて学校を休んだのでは」
「へあ」
少し考えそうになったけど、言われてみるとそうだ。いろいろあって忘れてたけどオレ、風邪ひいてるんだ……、
まあそれで忘れるくらいならたいしたことないだろうし、大丈夫かな。そう思って口を開いた。
「それは、まあ大丈夫」
「なに言ってるんですか!」
ら、怒鳴られた。なんかクラッときた。
「風邪はひき始めが肝心なんです! 待っててください、すぐに傘を持って」
「ちょ、ちょっと待て樋口」
彼女が雨の中に飛び出そうとする気配を感じた、振り向いて腕を掴み慌てて引き止める。
必死に言い訳を考え、目を見て出来るだけ真摯な表情を作り告げる。
「違う樋口、仮病なんだ」
真摯もクソもない台詞だった。彼女の表情がスッと冷めるのが見えた。
「嘘は、嫌いです」
後には本当に気まずい沈黙が残った。
518:400
08/11/22 16:28:48 GtdIvtcR
「×××××××ね」
ボーッとしていた、樋口がなにか言ってる気がする。答えるべきなんだろうか?
「×××××たみたいです」
ごめん樋口なんかよく聞こえないんだけどもうちょっと大きな声でない?
と、なにかが肩に触れたああやっぱり夢じゃないのか。
「ん……悪い、呼んだ?」
ごめんごめんなんかボーッとしてたよああシャツ返してくれるのか服乾いたんだってうわぁ樋口
なんてかっこしてるんだワイシャツ羽織ってるだけで前が開けっ放しじゃないかそれにいつの間に正面に回り込んだんだ
オレが振り向いたんだっけ視界の真ん中に彼女の顔が度アップで視界の端にはシュガーブラえ?
「仮病の方が嘘だったんですね」
視界から樋口の顔が消えた。胸に、背中に、頬にじんわりと浸みるような暖かい感触がある、気持ちいい。
その気持ち良さに溺れそうになったとき耳元で彼女の声がした。
「いま、温めてあげます」
「なにしてんだひぐ……んっ!?」
驚きで意識が引き戻されたオレの正面に彼女の顔が戻ってくる、キス。
忘我した半開きの口に舌が潜り込んでくる、閉じようとして噛んでしまった。
変だ。知っているような知らないような感触、口の中にサビのような味が広がる。
押し出そうと思って動かした舌が彼女のものと触れ、その感触に痺れるようなものを感じる。
慌てて開いた口からようやく樋口は舌を抜いた。
「どうゆう……つもり」
「遭難した男女が最後にどうするか、知ってますか?」
「しらないよ!」
嘘だ。でもこの場面で知ってるなんて言いたくない。……彼女の口から聞かされるのはもっと嫌だけど。
それを察したのか、彼女はただ薄く微笑んだ。
「今の私にはそれしかできませんから」
そう呟いた彼女の右手が下着の中に差し込まれ、そこにあるものに触れる。
寒さで縮こまっていたはずのソレは、なぜか『樋口が触れた』というだけの理由で起き上がり始めた。
これが悲しい男の性ってやつか。
「体が弱ると性欲が強くなるそうです」
樋口の口からそんな話は聞きたくなかった。あと心の声に返事をしないでくれ。
そんなことを考えてるあいだも彼女の指はソレを解すように動いている、
ひっぱったり、強く握ったり、下手だと思う。殆どくすぐったいだけだ。でも今はそれだけで充分たってしまう。
なのに……
なのになにしようとしてるんだ樋口!
「きっと口の中の方が暖かくて気持ちいいですよね」
彼女は座り込んで動けないオレの前にひざまづき、ズボンと下着をまとめて引き下ろした。
見られたことに動揺しているオレとは対象的に、彼女はソレを前にして怯む様子はない。
彼女がかきあげた湿った黒髪が、膝に当たる。冷たいはずなのにそこだけ熱くなった気がした。
かろうじて声を出す。
「ひぐち……もうやめてくれ」
「新堂さん、新堂さんは私が嫌いですか?」
「すきだ……よ、だいじなともだちだ」
彼女がすっと膝を伸ばす、顔が目の前に戻ってくる。
「じゃあ諦めてください」
519:400
08/11/22 16:31:55 GtdIvtcR
「……!」
再びのキス。今度はただ唇を合わせるだけ。彼女の吐息の甘やかさに溺れること数秒。
気が付けばそれは終わっている。
「初めてだからあまり上手く出来ないでしょうけど、頑張りますから」
彼女の口がソレに触れたのを温かさで感じる。柔らかいなにかがしっとりとそれに絡み付く、
口が裂けてもくすぐったいでは済まされない淫靡な感触。彼女の息遣い、湿った音、
放り出していた両手はいつの間にか痛いほど彼女に握られている。
オレが弱いのか、彼女がうまいのか、あるいは空気に流されているだけか?
彼女の意図通りそれはそういう行為をはたせるだけの状態になっている、なってしまっている。
「ぐぅ……ひぐち、も、やめてく、れ」
「……そうですね、入れましょう」
「ひっ」
顔をあげた彼女の名前を呼ぶつもりが悲鳴にしかならなかった。
けれどそのせいでか樋口が悲しそうな顔をする。
「新堂さん、私は少なくとも友達としてあなたが好きです」
「オレ……だって」
「新堂さん、あなたのそれはただ腫れ物みたいに遠ざけてるだけです」
「そんなつもりは」
「相手のために自分を傷つける覚悟を持てる関係を友達と、
相手を傷つける覚悟をもてることを好きというんです。
あなたの私に対する態度が無意識だというなら最悪ですね。
考えるまでもなく私は好きとか友達とかの対象外なんですから」
泣きたくなって来た、オレはそんな態度をとっていたのだろうか?
熱と寒さで痺れた脳髄に追い撃ちをかけるような痛み、思考がまとまらない。
涙が溢れた。
そんなオレの頬を樋口の掌が包む、目の前にあるのは今までの言葉と似つかわしくない穏やかな笑み。
「ごめんなさい新堂さん……でもわかってほしいんです、今はこれがあなたのためで、どんな気持ちで私がこうしているのか」
彼女がなにを言っているのかはよくわからなかった、けど行為はとまっている。
「新堂さんは、夏美ちゃんや藤矢君が相手なら肌を合わせるのをためらったりはしないでしょう?」
そうだろうか? そうかもしれない。だって二人は親友だからそうなっても……
「それはきっと友達であるという信頼がゆえに、なにがあってもお互いの関係が変わらないという安心があるからです」
そうだ。二人は親友だからちゃんとわかる、どうしてか、どうしたいか。でも、
「違いますか? 新堂さん」
でも樋口、お前の言うとおりオレは、お前をそんな風には、
「私はそこに行きたかったんですよ? シャツを貸して下さったとき、少しだけ期待してしまいました」
「……」
答えられないオレを前に、彼女の表情が微かに崩れ……それからすぐに取り繕ったような笑みを取り戻した。
「まだ萎れてはいないみたいですね」
彼女が身を乗り出してくる、
「本当は少し怖かったんですけど、今なら大丈夫な気がします。新堂さん」
520:400
08/11/22 16:35:03 GtdIvtcR
これだけ時間があっても彼女の言うとおり少しも萎れてくれていないそれが、
彼女によって彼女の場所に誘導される。
「なんでここまでするんだ、温めるなら抱き合うだけでも」
なお時間を稼ごうとするオレの言葉は聞き入れられず、彼女の淵とオレの先端がぴとりとあわせられた。
彼女の左手は背中に、右手はオレの未だに動いてくれない左手に添えられる。
目の前に彼女の胸がある、興奮か羞恥か先端と同じくらい全体が赤い。
ずぷり・ブチリ、と。二つの音がしたような気がした。じんわり、と。
生臭く神聖な温度が伝わってくる。
「ぐくぅ、ひ……ぐ、ち」
「あ……あぐ、く」
狭くてきつい、痛い。窒息しそうな感触。体の芯が熱くなる。苦しい。
壊れそうなほどオレの左手を握る彼女の右手、えぐれるんじゃないかと思えるほど強く背中を掴む左手。
爆発しそうな二つの鼓動、彼女の頬からオレの頬に落ちる泪。
温かくて気持ちいい。きつくて苦しい。痛い。頭の芯がガンガンする。
「……ッ! …………!!」
「ぁ……あぁ……あ」
彼女と自分の内側の脈動がそこに集中するような錯覚。
互いに動けないまま押し寄せる痛み、熱……劣情。何に由来するかもわからない悲鳴を押し殺す。
気持ちいいと気持ち悪いってどう違うんだ?
「はっ……し、どうさ、動きま、す」
プルプルとか、そんなかわいいもんじゃない。
がくがくとかがたがたとか言える程震えながら、彼女はゆっくり膝を伸ばし腰を持ち上げる。
彼女の温度が離れていく淋しさと、絞り上げられるような形容し難い感覚。
痛いけど痛いだけですまされない。
「ひぐち……も、じゅうぶんだよ」
そもそもここまでする必要がない、これ以上は互いに耐えられない、そう思った。
その言葉に一瞬、気が抜けたように彼女の締め付けが弱くなった。
けれどすぐに彼女の左手が力を増す、終らない? 囁くように、搾り出すように彼女は囁いた。
「房中術です」
必死に自分を支えながら息をつく彼女の吐息を間近に感じて、
離れた彼女の熱を一瞬でも恋しく思った自分をくびり殺したくなる。そんなオレの葛藤をよそに、彼女は言葉を続けた。
「性行為による興奮や気の高ぶり・集中等が、免疫等を高め人体に良い影響を与えるとかそんなことです」
「ほんき……で」
「だって!」
本気でそんな話を信じるのか? 漏れた言葉に彼女が悲鳴をあげる。
「それしかできないんだから、そうするしかないじゃないですか!
嘘でも偽善でもなにかの間違いでも、優しくされたらそうしたいじゃないですか!
優しくしてくれた人が苦しんでるのを黙ってみてるくらいなら、
出来るだけのこと……全部やるしかないじゃないですか」
叫ばれた言葉が痛い。なにも言えない。痛い。すごく痛い。
涙が……見下ろす彼女の涙と見上げる自分の涙の区別がつかない。
「大丈夫ですよ新堂さん、今だけです」
この涙をオレの手で拭うことさえできれば……きっとこんなことはおしまいに出来るのに。
「今だけ、もうちょっとだけ貴方の」
伸ばそうとした右手がなにかを掴むことはない、最後まで動いてくれない。
「貴方のために頑張らせて下さい」
その言葉と、彼女の笑顔を記憶に焼き付けて、
「ごめん……ひぐち……」
オレは意識を手放した。
(おしまい)
521:作者。
08/11/22 18:02:30 BaF9O5xO
>>514
ありがとうございます!!でもほんと書く時間はなくなりますんで、もし受験が終わった後にこのスレが落ちていたら復活させて書こうとおもってまつw
>>515
普通に上手だしあまり卑下するなお。そんなあなたにGJを贈ります。短く話をまとめきれる力がほしいっす
河合マーク模試返ってきました!!偏差値67で立教と明治ではA判定だったんですが早稲田法はE判定でした\(^O^)/
522:名無しさん@ピンキー
08/11/22 21:10:02 7itaIj0u
現役なら大学入試の話はしないほうがいいお。
って、暫く前にもこんな会話したなw
523:名無しさん@ピンキー
08/11/23 00:18:04 lGhg6gUD
>>513乙、話の展開がすごくなってきたなwそして忘れられる姉w
2人の作者にGJを送ろう、無理だけはしないでほしいさ。我々は待ってるぞ
524:名無しさん@ピンキー
08/11/25 20:42:50 qll2uhkO
GJ、続き待ってるぞ
525:救世主
08/11/25 21:27:28 aRtEXb4v
人工の光に照らされた街、東京。この街で買えないモノはない。技術、、金、物、果ては者まで手に入るのだ。
この街に住む、いったい何人の人間が街で起こっている出来事を認識しているだろうか。
上司に叱られ、飲み屋で愚痴をこぼし会うサラリーマンたち。ミュージシャンを夢見、地方から上京してきた若者たち。目標を見つけられず、ただなんとなくバイトで生計をたてるフリーターたち。
彼らは、知らない。知っているつもりだが、知らないのだ。
「うー寒い寒い……」
寒空の元、熊田健太は家路を急いでいた。時計の針は午前二時を回っている。吐く息は白く、それらはすぐに漆黒に吸い込まれていく。
「……帰ったら深雪に暖めてもらうか」
自分でもわかるくらい、口元が歪んだ。深雪というのは、健太の婚約者である。
名字を藤原といい、日本で知らない者はいない一流大企業、藤原コンツェルン総裁の娘である。
健太の両親と深雪の両親はいわゆる親友の間柄であり、健太と深雪は幼い頃から親交があった。
健太は今23で社会人、深雪は18の高校生であるが、いわゆる幼なじみだ。
だからこそ、だろうか。健太が深雪を勝ち取ったのは。深雪には地位も金も頭脳も美貌も人望もあった。対する健太は……。まあ人並み以上ではある、くらいだろう。
「……む」
健太は、ある公園の入り口で立ち止まる。その公園を抜ければ、家までのショートカットになるのだった。が、以前深雪に「あの公園は危ないから絶対に通っちゃだめですからね!」
と念を押された記憶がある。確かにこの街なら何か危険なめにあってもおかしくはない。この公園はかなり広く、森というか、木が鬱蒼と繁っているエリアがある。健太が通らなければならないエリアはまさにそこだ。
―よし、行こう。
しかしこの男、熊田健太。何かと突飛な行動に走るのである。
―そもそも俺は男だ。ウホッ!な趣味はないし、仮に襲われても脚には自信があるのだ―
かくして、真夜中より更に漆黒が支配する公園へと、健太は踏み出した。
予想以上だった。暗い。昼には何回も通る道だったから油断していたのである。健太はやはり深雪に従っておくべきだった、と深く後悔していた。
東京だというのに、東京にあるべき音がなかった。冬なので生命が動く気配がない。
ザワザワ……という木々のささやきのみが、健太に語りかける。静かであれば静かであるほど、恐怖が心を蝕んでいく。
「い、いや、素数を数えて落ち着くんだ! 2、3、5……6……7」
しかし言い終わらないうちに、健太は完全に錯乱してしまった。いや、錯乱というと語弊がある。彼は一瞬にして心を奪われていた。
美しい少女だった。歳は15ほどだろうが、木々の間からわずかに差し込む月光に照らされた姿は神々しくさえあった。
腰のあたりまで伸びている、黒髪。そして、この暗がりでも分かるくらいに透き通った肌。ただ紺色のセーラー服のみを身につけ、冬の夜に身を預けているのが非現実的な妖しさを醸し出している。
「君は……何をしているんだ?」
気づいた時には、健太はすでに少女へと言葉を投げかけていた。
少女は、はじかれたようにこちらを向くと、哀しげに言葉を紡いだ。
「……待っているんです」
「人をか? こんな場所は危ないからうちに帰ったほうがいいよ」
健太は少女に近づくと、少女はわずかに首を横に振った。
「……そうか」
健太はそれだけいうと、上着を脱ぎ、少女にかけてやった。そうするのが当然であるかのように。
「!? あの……」
少女は困惑気味に、かけられた服と健太を見やった。
その仕草が、ひどく人間らしかった。いや、人間なのだから当然であろう。なんだかおかしくて、健太は思わずぷっと吹き出してしまった。
「ごめんごめん、じゃあ俺帰るから。早く君も帰りなよ。ニュースで君の顔、見たくないからさ」
それだけ言うと、健太は走り出した。少女が自分を呼んでいたが気にせず、一気に駆け抜ける。恐怖など、もはや頭の片隅にすら残っていなかった。
家は、公園を抜ければすぐだとはいえ、この寒さだとやはり体調には悪いはずである。しかし、可愛い子だった。深雪に勝るとも劣らすといったところだ。だが、それだけだろう。
「うーー……さぶい」
もう会うこともないはずだ。健太はそれきり少女のことを頭から消し去ると、帰ったらどう言い訳するかに思考をシフトした。
526:救世主
08/11/25 21:28:49 aRtEXb4v
「健ちゃんっ!! おかえり!!」
健太がマンションの自室に帰り着くと、待ちかまえていたように、セーラー服姿の深雪がダイブしてきた。
「ただいま、深雪」
深雪をしっかりと抱きとめると、深雪の健太に回された手に力がこもった。
「ばか!! ねぇ、今日は何してたの!? どうして遅くなったの!? まさか浮気!? ううん、健ちゃんに限ってそんなことないよね!?」
健太の胸の中で、深雪が狂ったように叫ぶ。深雪は、健太の行動を異常なまでに縛ろうとするのだ。
健太の勤め先は深雪の父親の会社なのだ。この父親、娘である深雪には甘い。それはもうバー○ンドカレー甘口に砂糖を大さじ10杯ほど加えたくらいに甘い。
深雪の父親への肝いれによって、健太はほぼ絶対に、定時で帰れるのだった。そう、忘れもしない。
入社してから一週間ほどたったある日、健太は初めて残業をした。健太としてはそれは当然のことであり、不満はなかった。
ああー働いたなぁなどと呑気に考えつついつもより一、二時間遅くマンションに帰ると、泣きはらした深雪が飛びついてきた。
浮気したの!? ねえ、私のどこが悪いの!? 健ちゃんの気にくわないところ、絶対直すから捨てないでぇ……
健太は慌てて説明した。残業だったんだ、と。
それからの深雪の行動は早かった。
すぐに総裁である父親に電話すると、今後一切健太に残業させるな、という旨を伝え、一瞬で了解された。
こういった経緯があり、健太はほぼ確実に定時には帰ってきていたのである。が、今日はその「ほぼないこと」が起こったのだ。
それは、会社の取引先―しかもお得意先―がいたく健太を気に入り、是非食事でも、という流れである。さすがに切ってはならない相手だったので、今日だけは定時は諦めて、遅くなったのである。
「深雪」
取り乱した深雪の唇を塞く。一瞬、驚きに目を見開いた深雪であったが、すぐに積極的な舌使いで健太の口内を犯す。
「ん……ちゅぱ……あなた……」
深雪は、交わるときにはあなたと呼ぶ癖がある。五分ほどディープキスをした後唇を離す。二人の間に、橋ができた。
「あなた……ほしい」
深雪はうっとりとした表情で健太を見つめる。
およそ高校生とは思えない妖艶さがあった。
「でもここは玄関……」
「……ここがいいの」
深雪は恥じらいながらも壁に手をつき、健太に尻を向ける。成熟しきれてはいないが、十分な丸みを帯びたそれは、健太の理性を壊すのには十分すぎた。
いや、むしろこのみるからに美味な果実を見せられ、自らを律する男がいるとも思えない。
健太は無言で深雪のスカートを捲り上げ、ずれ落ちないようにする。
深雪は、パンティーを穿いていなかった。露わになった亀裂に、健太は己のモノでなぞる。
「やっ! あなた、きて……やぁん!」
深雪はその美しい顔を真っ赤に染め上げ懇願する。
もはや洪水だった。しばらくそうやってじらした後、健太は深雪の細くくびれた腰をつかみ一気に貫いた。
深雪は声にならない悲鳴をあげ、頭を思い切りそらす。
「あん!あん!」
健太の腰の動きに会わせ深雪は規則正しくあえぎ声をだす。
健太は腰から手を離し多い被さるようにして、深雪の胸をもむ。若さあふれるそれは瑞々しい弾力にあふれていた。大きさも平均以上だ。乳首を服越に摘むと、深雪の中がきゅっとしまった。
「あなた……んっ……イ、イキます……あん!」
しばらく健太のせめに耐えていた深雪は、やがて限界を迎えようとしていた。健太は腰のスピードをあげて、深雪を絶頂においやる。
二人は、深く愛し合っていた。
527:救世主
08/11/25 21:29:50 aRtEXb4v
とりあえず投下終了です。ごじがあったらすみません
528:名無しさん@ピンキー
08/11/26 00:21:33 vswBn661
>>527
GJ!
529:名無しさん@ピンキー
08/11/26 00:51:21 klblCVqV
いいれす
530:名無しさん@ピンキー
08/11/26 01:42:41 /F1Feexp
スレタイに繋がるかどうかは今後のこととして、中々に良いテキスト
531:名無しさん@ピンキー
08/11/27 01:02:34 NQoyQD0H
GJ!!残業免除とかww
532:名無しさん@ピンキー
08/11/30 17:12:45 LN5ckjpJ
上司、使いづらそーー
533:名無しさん@ピンキー
08/12/02 10:40:30 QvFSmfrx
同僚に同情しちまうw
534:名無しさん@ピンキー
08/12/02 21:53:33 HeOCXBvM
ういーす。
今つくってんだが、世界観の説明が長い作品でも需要ある?つーか濡れ場まで遠くなりそ。
535:名無しさん@ピンキー
08/12/02 22:14:53 nOuPoTyl
見ての通り過疎気味なので俺としては大歓迎だ
536:名無しさん@ピンキー
08/12/03 03:16:31 Yxc0hThc
>>534
長いのは嫌いじゃない。
537:名無しさん@ピンキー
08/12/03 03:18:38 SqWLnmTZ
>>534
まあぶっちゃけ需要とか聞かないほうがいいよ
いろいろアレだし。
538:名無しさん@ピンキー
08/12/03 21:10:29 wXSmBvh3
……
539:市立野蒜高校
08/12/03 21:42:55 wXSmBvh3
全日制、普通科。中学時代を適度に過ごし、受験の3ヶ月前からやや頑張ればまあ入学できる。
ふっふっふ、こんな平凡な高校『市立野蒜高校(通称ノビ高)』に来たということは、我らのことに興味があるのだな? そうだろう、そうだろう!?
はっはっは! やあ諸君ご機嫌うるわしゅう! そして彼女の居ないそこの君達のことは同志と呼ばせてもらおうか!
まずは自己紹介だ。俺はノビ高二年三組出席番号7番、軽井沢佐平(かるいざわ さへい)! どうだね、俺の軽々しい人間性がよく伝わるだろう?
ちなみに下の名前の読み方を変えるとスケベと読めるのは気のせいだ! 気のせいだが名付け親はいつか必ずぶん殴る!このせいで中学時代苛められたからな!
「今も時々呼ばれてるだろ。っつうかさっきから誰と喋ってんの? ガチでうるさいんだけど」
っと、話が脱線しかけたが本題に入ろうか。
そう、この平凡な高校には、俺を筆頭とする熱き同好会があるのさ。
我々は昼休みになると、弁当を片手に旧校舎の部室(使用者皆無)に集合し、それぞれが熱き思いをぶつけ合っているのだよ。
「何が熱き思いだ。つまり欲望吐き出してるだけだろーが」
……くっくっく、夢と希望を持て余している少年達よ。耐えがたくなればいつでも門戸を叩くがいい。俺が許した瞬間、君は同志を越えた心の友となるであろう。
「お前の心の友には死んでもなりたくないな」
我々は、『ノビ高美少女研究会』、通称NBK! ノビ高に花咲く乙女達を愛し、存分に堪能するための会である!!
「うっわ、言い切ったよマジきめぇ。コイツいい加減にセクハラで起訴されねえの?」
「ぬっふっふ。甘いな同志折原真琴(おりはら まこと)。早まって訴えられるなど愚の骨頂! 我々は常に一線を踏みとどまる闘いを繰り広げているのだ!」
「それもセクハラって言うだろバカ。あと、同志って呼ぶな!」
二年三組の教室。
今は三時間目が終わった後の休み時間で、生徒達は三々五々、居眠りしたりお喋りしたりしている。
中でも騒がしいのは、窓側の後ろの席で演説するように喋っている小太りの少年だ。
「ふっふ、そう怒らないでくれたまえよ。安心したまえ、我々NBKは君のことも高く評価しているからな。主に脚線美的な意味で」
「……そういや、誉められて逆ギレしかけたのはてめぇが最初だったな」
「それだよ。その男勝りな性格と女神のごとき容貌。やはり君は怒りに顔を歪めている時が最も美しい」
540:市立野蒜高校
08/12/03 21:47:56 wXSmBvh3
「うっさいっつってんだろが!」
鉄拳。
天然ウェーブの茶髪と長身が特徴の少女は、なおも語り続ける軽井沢に右ショットアッパーを放った。
女子空手部で鍛えられた拳は、わりと脂肪の詰まった男の体を軽く10センチは浮かせていた。
「今度今のような世迷い言を吐いてみろ、当分てめェの顔見て過ごさなくていいくらいの複雑骨折拝ませてやるからな?」
「ふうーむ、前にも言っただろう。その手のハードなSMがご入用なのは、俺でもスレ住人でもなく一年一組のNBKメンバー、南一樹君なのだがな。そうだ、いつか彼から君宛に恋文を預かってたようn」
「もういい死ね」
何事も無かったように起き上がってきた軽井沢を、真琴の足が再び沈める。
丁度その時、チャイムが鳴った。
「……で、お前は何が入用だってんだ?」
尻を突き出した体勢で床に沈む軽井沢。その間抜けな姿に目だけを向けながら、真琴は退屈そうに聞いた。
すると軽井沢はバネ仕掛けの人形のごとく飛び起きて、
「全てだよ! ……オーケー冗談だ、流石の俺も首の骨がやられては黄泉の世界にハチニンコだから、な?
ゴホン、乙女達が最も美しく輝くポイントは『ギャップ』にあると俺は思っている」
「……へえ」
「NBK会長の意見だからな、信頼していいぞ」
「阿呆か」
有段者の一撃を二発食らったにも関わらず、ピンピンしているのが軽井沢クオリティ。
今日の四時間目担当の数学教師がやって来て、彼はノロノロと席に着いた。
541:市立野蒜高校
08/12/03 21:52:07 wXSmBvh3
□○□
授業終了宣言。
直後。
さっきまで船を漕いで鼻提灯すら膨らませていた軽井沢は、やけにキリリと豹変して隼のごとく教室を飛び出していく。
運動不足が明らかなゆとり体型の割に、わりと綺麗なフォームでの疾走。
「どうぉぉおおおおおしいぃぃぃぃ!」
廊下を駆け抜け、階段を下り、中庭を突っ切って旧校舎へ。
そこから更に階段を上がったところの、手前から二番目の引き戸を勢いよく開け放つ。
「遅いぞ! 我が兄弟、軽井沢!」
「あ、軽井沢会長!」
「会長、お疲れ様です!」
使われていない部屋からは何もかもが運び出され、今は煤けた床と壁、天井が覆っているだけである。
その真ん中に、三人の男子生徒が何かを囲うように座り、揃って弁当を食べていた。
「ふむ、俺が最後か。それにしても同志沙流谷、お前が俺より早く来るとは珍しいな」
軽井沢は言いながら三人の傍に腰を下ろし、自身の弁当の風呂敷を解き始める。
「僕は四時間目の授業が先生のいない自習だったからね。だがこの時を思うと居ても立ってもいられず、終了五分前に飛び出させてもらったのさ」
細長い手足と胴体の少年が、黒フチの逆光眼鏡をクイと鼻の上に押し上げながら得意げに語った。
成績学年十位を維持する微妙な秀才、二年一組の沙流谷達生(さるたに たつお)。NBKの副会長である。
ちなみに眼鏡を取れば切れ長の目をしたイケメンが現れることはお約束。
「フフ……我らがクラスのアイドル、有川さんは相変わらずだったよ。ロリコンを自称する僕としてはたまらない」
怪しげに笑う沙流谷。だが、ここには誰もその笑いを気味悪がる者は居ないのだ。
「はっは、有川氏は沙流谷の好みに直球ストライクであったなあ。ロリでツルペタに加えて、仕草の愛らしさも申し分ない。俺が同じクラスであれば録画の一つでもしてきたものを」
542:市立野蒜高校
08/12/03 21:58:52 wXSmBvh3
「そういう君こそあの折原さんと同じクラスじゃないか」
「! 折原さんといえば!」
突然、食事を囲んでいたメンバーの一人が身を乗り出してきた。
「会長! 今日の折原さんはご健在でありましたか!?」
折原真琴の話題に誰よりも熱く食いついてくるのは、短い黒髪の小柄な少年。女の服でも普通に似合いそうな中性的な容貌は、母性愛の強い女性に人気がありそうである。
Mを極めたドM、一年一組の南一樹。
腕っ節は見た目通りの弱さだが、軽い骨折なら一晩で自然治癒し、腕が吹き飛んでも一週間で自己再生するというカオスな回復能力が一部では有名らしい。
「ふむ、彼女は相変わらずであったぞ。事実を述べただけで殴りつけてくる性格もいつも通りだ」
「うっ、……うらやましいっ」
涙声で歯噛みする南。
ちなみに彼の持つエロDVDは全て男が女に痛めつけられるシリーズだったりする。
「俺も……俺もあの方の鉄槌をこの身に受けたいっス! ああ、俺のバベルが起立してしまうっス、鼻の骨をへし折られた瞬間のあの快感といったら……」
「それで喜ぶんは一樹ぐらいやろ」
トリップしかける南に肘鉄を食らわせつつ、坊主頭の少年が口を開く。
わりと体育会系ながっしりした肉体は、全体的に頼りないメンバーの中では浮いていた。
「前も俺言うたが、骨折られて喜ぶ変態なんざ漫画ですらなかなかお目にかかれへんで?
何がお前をそこまでにしたんや、家庭内暴力でもあるんなら警察行きや?」
「お、俺の一家は平穏無事などこにでもある4人家族ですっ!」
じゃあ何でお前のようなカオスが生まれたんやろな、と呟いて坊主頭の少年はコンビニおにぎりを頬張る。
一年四組の石塚健(いしづか けん)。帰宅部とはいえ、小さい頃からボクシングジムに通っているれっきとしたスポーツマン。
中学時代は荒れて喧嘩ばかりしていたらしく、体中にその名残である痣が残っている。