調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインpart23at EROPARO
調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインpart23 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
08/05/02 22:07:27 v5I/bmxU
◆過去スレ
調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインpart22
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調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインpart21
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調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインpart20
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調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインpart18
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調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインpart17
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調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインpart16
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調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインpart15
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洗脳や調教などで悪の奴隷になるヒロインpart14
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洗脳や調教などで悪の奴隷になるヒロインpart13
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洗脳や調教などで悪の奴隷になるヒロインpart12
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洗脳や調教などで悪の奴隷になるヒロインpart11
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調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインpart10
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3:名無しさん@ピンキー
08/05/02 22:08:38 v5I/bmxU
調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインPart9
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調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインPart8
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調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインPart7
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調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインPart6
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調教や洗脳で悪の奴隷になるヒロインPart5
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調教や洗脳で悪の奴隷になるヒロインPart4
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調教や洗脳で悪の奴隷になるヒロインPart3
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調教や洗脳で悪の奴隷になるヒロインの同人誌 part2
URLリンク(www2.bbspink.com)
調教や洗脳で悪の奴隷になるヒロインの同人誌
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4:名無しさん@ピンキー
08/05/02 22:10:02 v5I/bmxU
以上、テンプレです。
最後のSS投下で前スレのスレ容量を全て食ってしまい申し訳ありませんでした。

5:名無しさん@ピンキー
08/05/02 22:11:46 v5I/bmxU
ところで、前スレのSSは最初から貼りなおすか途中から貼るか、どちらがよろしいでしょうか。

6:名無しさん@ピンキー
08/05/02 22:15:12 SHT2x+QJ
申し訳ありません、スレ立て重複してしまいました。あちらを削除依頼に出します。
前スレのSSは、もう一度貼りなおした方がいいかな?
保管庫の編集にも優しいし、これから見る人も見やすいかと。

7:178 猟血の狩人 第五回
08/05/02 22:19:38 v5I/bmxU
>>6
わかりました。では改めて最初から貼りなおします。
ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

ティオが吸血鬼兄妹によって攫われてから一夜がたち…
ニースは来たくもない教会を訪れ、眠り続けるリムと一緒にいる両親に事の顛末を話した。

「それでは…、結局吸血鬼は倒せなかったのですか」
リムの両親が顔にあからさまに失望の色を浮かべて呟いた。娘を狙う吸血鬼に、これからも怯えなければならないという暗鬱とした
気持ちと、何故吸血鬼を倒してくれなかったのかとニースに対する不満が心の中に渦巻いている。
「………」
その内心を察して、ニースは心底から目の前の二人を憎々しいと思った。

(何よその目は…
自分たちで自分の娘すら守れないクズの癖に、私たちを非難する資格なんてあると思っているの?!
だいたい、お前達のせいでティオちゃんは攫われたっていうのに、それに対する謝罪もない訳?!ムカツク!)

願わくば、今すぐにでもこの家族をズタズタに切り裂いて豚の餌にでもしてしまいたい。
血を一滴残らず吸い尽くす、という選択肢すら拒否するほど今のニースはこの一家に対する憎悪を募らせていた。
しかし、ティオの命が抵当に取られている以上、少なくともリムを今殺すわけにはいかない。
(でも…、ティオちゃんを危険な目にあわせた代償は、必ず払って貰うわよ…)
「それだから、悪いけれどリムを今晩連れ出すわ。もしこのまま隠し続けると奴ら、きっと町中を灰燼に帰しても探し続けるよ」
多分にはったりを含んでいるが、こうでも言わないと絶対このクズ共は娘を差出しはしないだろう。と、ニースは考えていた。
(もしそれでもリムを寄越さないなら、ガキ達に代わって私がこの町をメチャメチャにしてやる!)
なにしろ、リムを持ってこないとティオが危害を被る事になってしまうのだ。
ニースの優先基準からすれば、この町の住人全員の命よりティオ一人の命の方が断然重い。太陽さえ暮れてしまえば、ニース一人ででも
恐らく2時間ちょっともあればこの町の住民全員を殺し尽くすことは可能だ。
ニースはじーっと凍て付くような視線で両親を睨みつけ、無言の圧力を加え続けた。
手っ取り早く言う事を聞かせるために魔眼を使うという手もあったのだが、あえてニースはその選択肢を外した。

この同意は、あくまでもこいつらの意思でされなければならない。
そうでないと、この後に起こる事態にこいつらの責任が問えないからだ。

「で、ですが…、娘を夜に連れ出すというのは…」
それでも、リムの両親はまだ躊躇っていた。
そりゃ吸血鬼狩りのプロ二人掛かりでも倒しきれず、片割れを連れ去ってしまうほどの強大な吸血鬼だ。
一人だけになったニースが勝てるか?と考えれば、その可能性は皆無に等しい。
そんなニースに大事な一人娘を預けたら、吸血鬼にどうぞ私たちの娘を連れ去ってください、と言っているのと同じと考えても無理はない。
「とりあえず、一晩様子を見て…」
「まずは、確実に吸血鬼を殺すために誰か応援を…」
なんとかリムをこの場に留めようと、両親はあれこれと理屈を捏ねてニースに納得させようとしてきた。
ニースの相方が攫われたのには同情するが、所詮両親にとっては他人であり、肉親のリムの身の安全の確保の方が優先されるのは当然だ。

が、それはニースにとっても同様である。
耳障りな言い訳を暫く聞き続けたあと、ニースは突然バン!と手元の机を手ではたいた。
その勢いたるや、机の脚がミシリと嫌な音を立てたのみならず、面が多少ひび割れるほどの衝撃であった。
ギョッとした両親は騒いでいた口をぴたっと閉じ、恐る恐るニースの顔を覗いてみた。
「言っておくけれどね、あんた達に選択権はないの」
空気が凍りつくほどに冷たい声を放ったニースの表情は、昨日ティオと一緒にいたときに見せていた無邪気な笑顔とは一変した
禍々しさ溢れるものだった。

8:猟血の狩人
08/05/02 22:20:38 v5I/bmxU
「あんた達が娘を大事にしているのと同様、私もティオちゃんのことがとっても大事なの。
ティオちゃんを取り戻すためだったら、私はどんなことでもするわ。あくまでもあんた達がこの子を貸さないっていうんだったら、
私はあんた達を殺してでも連れて行く。これは本気よ」
髪の間から覗くニースの瞳が異様にぎらついて見える。声の調子からも表情の真剣さからも、ニースが本気なのは見て取れる。
「っ………?!」
リムの両親はニースの発する雰囲気にぞっと背筋を震わせた。
もしあくまでも娘を渡すのを拒めば、ニースはなんの躊躇いもなく自分たちを殺すだろう。
このまま娘を渡したら、娘が吸血鬼に殺される可能性は高い。だが、そうしなかったら自分たちは確実に目の前のニースに殺される。
そして、結局娘はニースに連れ去られてしまう。
「………、分かりました。娘をあなたにお預けします」
さらに多少の逡巡の後、両親はとうとうリムをニースに預ける決意をした。結果が変わらないならば、ニースに全てを賭けてみるのも
悪い選択肢ではない。
「ですが……、必ず、必ず娘を狙う吸血鬼を滅ぼしてください、お願いします……。っ!」
こうなったらと腹をくくり、ニースに頭を下げた父親の目に入ったもの。
それは、憎悪と殺意と怨嗟で染まり、歪みきったニースの真っ赤な瞳だった。
「当たり前よ…。ティオちゃんを私から奪った連中…。絶対に許すものか。
どんな手を使ってもいい。あいつらの顔を絶望と後悔で化粧し、手足をもいで動けなくしたところで全身の血を抜いていやる…
見てらっしゃいよ、あのガキ共が……」
ギリギリと歯軋りする口元から妙に長い犬歯が見えるような気がする。
(まさか…、この人…)
父親はその形相から、もしかしてこの女性も吸血鬼なのではないか?と一瞬心の中で思ってしまった。
それは正鵠を射たものではあったが、父親自身吸血鬼を一度も見たことがないのと、日中に教会の中に入ってくるニースを考えたら
まさか彼女が吸血鬼のはずがないと勝手に結論付けてしまった。
ある意味、命拾いしたともいえる。
もし、ニースに吸血鬼ではないのかと少しでも話し掛けでもしたら、さすがに有無を言わさずに殺されていたであろう。



「とはいえ…、どうしたものかしら」
眠らせたままのリムを自宅へと戻させ、ニースもまたリムの家へとさっさと引き上げてきたが、先への展望が開けたわけではない。
「奴らの意表をつく手段は既に考えてあるけれど…、絶対的に人手不足なのよね」
なにしろ敵は少なくとも二人いるのに、こちらにはニースただ一人。
心の中では、アレクサウスとアルマナウスにいかなる恥辱を与えて地獄に落すかのアイデアがあれこれと浮かんでくるものの、
現実にそれが出来るか?と問われれば相当に困難と言わざるを得ない。なにしろティオと二人がかりでも手玉に取られたのだから。
少し頭を冷やして考えたら、あの二人が相当に強いことは分かる。爵位こそ名乗ってはいなかったが、間違いなく高位貴族に匹敵する
齢と魔力をもっているだろう。一対二で勝てる相手ではない。
「となると、こっちも複数で当たらなければいけないだろうけれど…」
まさか、町の人間に助けを借りるわけにもいかない。ニースが吸血鬼だってことがばれると逆に攻撃されかねないし、
そもそも多少腕に自信がある人間風情が相手に出来るものじゃない。絶対に足手まといになってしまう。
「そうなると、頼れるのは…、これしかないかな…」
ニースは、遮光用の装身具である降闇を撒くりあげ、裏に縫い付けられた大量の小瓶をじっと眺めた。
この小瓶の一つ一つには、かつてティオと一緒に狩り魔力と血を奪い尽くした吸血鬼の灰が詰められている。
通常、この程度の量の灰では普通に血を与えても復活することは出来ないが、魔力がふんだんに込められたニースの血ならば
僅かばかりの血でも灰の状態からニースの忠実なしもべとして蘇らせることが出来る。

9:猟血の狩人
08/05/02 22:21:38 v5I/bmxU

だが、

この灰になっている吸血鬼は前述の通りニースが魔力を奪い尽くした絞りカスなので、人間相手には充分すぎるものの高位の吸血鬼を
相手にすると『いないよりはマシ』程度の代物にしかならない。実際、カスを10人ほど蘇らせたとしてもアレクサウスほどの力を持った
吸血鬼なら、一体倒すのに3分はかかるまい。それでは時間稼ぎにもならない。
「せめて、この中でも少しでもマシな奴を……って、ちょっとまった!」
まじまじと小瓶を見ていたニースだったが、そのときふと『あること』を思い出した。

「いるじゃない!私のしもべで、かつ力を奪っていない奴が!!」

嬉々とした笑顔を浮かべたニースの視線の先には、つい先日灰を詰めたばっかりの二本の小瓶があった。
ニースはブチリと小瓶を縫い付けてある糸を引きちぎると、蓋を投げ捨ててから自らの親指をその鋭い牙で噛み破った。どす黒い吸血鬼
の血がぷくーっと親指の腹に膨らんでくる。
その血をニースは数滴づつ、小瓶の中へと垂らしこんだ。
すると、瞬きする間もなく小瓶から白い煙がしゅうしゅうと立ち昇り始め…、ブワッと白煙が広がったかと思うと徐々に収縮して
人の形を取り始めた。
やがて、人型となった煙は色を為して実体を採り、ニースの前に若い男女の吸血鬼が顕現した。
男は幼い背格好で童顔。長く伸ばした髪を肩口辺りで結わいている。
女は長身短髪、猫科の肉食獣のような四肢と鋭利な容貌を備えている。
「おはよう。リオン、アンナ」
リオン、アンナと呼ばれた吸血鬼は、ニースの声に固く閉じられていた瞳をカッと開いた。血よりも紅い虹彩がゆっくりと動き、
自分たちの主の姿を捉える。

「「おはようございます、ニース様」」

かつてニースやティオと同じ『狩人』に所属していたが、ふとしたことから吸血鬼と化し灰になってニースの懐にしまわれていた
リオンとアンナはニースの姿を認めると恭しく傅き礼をとった。二人の体に流れる血が、瞬間的に目の前のニースが
自分たちの主であることを知らせ忠誠の礼をとらせたのである。
「ニース様、また私たちに命をくださり有難うございます」
アンナが嬉しそうに自分たちを復活させてくれたニースへ感謝の言葉を述べた。
とは言っても、彼女らを灰へと帰したのはそのニースであるのだが、もとよりアンナはニースによって吸血鬼へとされており
親吸血鬼であるニースは絶対的な存在となっている。アンナにとってニースは主人であり持ち主であって、道具である自分がどう
扱われようが文句を言える立場ではないのである。
そしてそれは、アンナによって吸血鬼となったリオンにも同じことが当てはまる。アンナがニースの支配下にある以上、
そのアンナが親吸血鬼であるリオンとっても、ニースはアンナ程ではないが忠誠を誓う存在である。
「これでようやく、人間の血を啜ることが出来るんですよね…」
リオンが、もの欲しそうに唇の周りを舌でなぞった。リオンの血を吸うことが出来たアンナと違い、リオンは吸血鬼に
なって早々ニースによって灰にされてしまったため、人間の血の味をまだ知らないでいる。
「ああ…、我慢できない…。血が、血が欲しい……。あっ…」
一刻も早く血を味わいたいのか、うわ言のように呟くリオンが、ニースの後ろで寝ているリムを目ざとく発見した。
「なんだぁ…、人間がすぐそこにいるじゃないですか。
ニース様、その人間の血、少しでいいんですから吸わせてもらえませんかぁ…?」
リオンは欲望に目をぎらつかせてニースに頼み込んできた。
見ると、アンナも舌なめずりをしながらリムのことを眺めている。二人にとってリムは極上の御馳走に見えるのだろう。
「うふふ、この子にも私たちの牙で天国を見せてあげないとね」
「そうですよね、アンナ様ぁ。
ああ、あの真っ白な肌…。そして、その下に流れる赤い血……、たまらないよぉ…」
リオンもアンナも、顔に笑みを張り付かせたままじわりじわりとリムへと向けて近づいていっている。ニースの返事を聞く前に
今にもリムへ向けて喰らいつきそうだ。

10:猟血の狩人
08/05/02 22:22:38 v5I/bmxU
「………、ダメよ」
しかし、勿論それを許すニースではない。左手をリムとアンナたちの前にかざし、二人がそれ以上進むのを阻止した。
「えっ…?なんでですかニース様。せっかく餌が目の前にあるのに……」
初めて血を吸う機会を奪われたリオンが、あからさまな不満を顔に浮かべた。アンナの方はニースがダメと言ったのだから
しかたがないと思っているが、アンナ程ニースへの支配力がないリオンはそう易々とは納得はしない。
「この人間の血は吸ってはダメ。大事な取引材料なんだから」
「取引材料…、ですか?」
アンナがニースの言った言葉をおうむ返しに返した。何の、取引材料なのか。
「この人間のせいで、ティオちゃんが吸血鬼に攫われたわ。そして、今晩こいつと引き換えにその吸血鬼がやってくる」
そう言われて、初めて二人はこの場にティオがいないことに気が付いた。
「そう言えば…、先輩の姿が見えない…」
「………」
リオンは周囲を改めてきょろきょろと見回し、アンナはティオという言葉を聞いて少し複雑な表情を浮かべた。
「どうしたのアンナ?まさかあなたまだティオちゃんのことを…」
殺す気じゃないでしょうね?と、ニースはアンナへ向けて鋭い視線を送った。
「いえ、ニース様が大事にされている先輩を殺める気などもう少しもありません。
第一、私は自らの手でリオンを自分のものにしたのです。今更先輩を狙う理由もありませんし」
そう言ってはみたものの、アンナの表情はやはりちょっと曇ったままだった。以前、殺したいほど憎みきっていた相手だけに
ニースの支配力に心が呪縛されていても、そうそうその想いは消せないのだろう。
「そんな…、あの先輩が攫われるなんて…」
リオンは少なからずショックを受けたのか呆然としている。こっちも吸血鬼になってもティオを慕う心はあまり変わらないようだ。
「じゃあ一刻も早く先輩を助けなければいけないじゃないですか!
このままじゃ先輩の血が、その吸血鬼どもに奪われてしまいますよ!
そんなことになったら、僕が先輩の血を味わえないじゃないですか!!」
もとい、やっぱり心は吸血鬼側にぶれているようだ。
「ニース様、今すぐにでも…」
「落ち着きなさいリオン!」
焦りまくるリオンに、ニースはぎろりと睨みつけながら一喝した。
「今は真昼間よ。降闇がある私はともかく、あんたたちなんか一瞬にして燃え尽きてしまうわ。
それに、あいつらティオちゃんの気配を完全に消して私に感知されなくしているの。どこにいるかも分からないティオちゃんを
どうやって探すっていうの?!」
ニースの声には苛立ちが隠せないでいる。リムと取引すると言っている以上、アレクサウスがティオの血を吸うという可能性は低いと
思っているが、絶対にないとは言い切れないところが歯がゆい。
それ故、ニースも内心気が気ではなかった。
「あなたたちは私に力を奪い取られないまま私のしもべになっているわ。だからこそ、今回ティオちゃんをさらった吸血鬼に
対抗するために蘇らせたの。
あなたたちは吸血鬼としての力はまだまだ弱いけれど、狩人じこみの体術があるわ。吸血鬼の体になったあなたたちは、人間の時より
はるかに身体能力が増しているからそれなりの吸血鬼にも太刀打ちできるはずよ」
ニースの言葉に、アンナはこっくりと頷いた。
が、リオンは少し浮かない顔をしていた。
「ですがニース様…。僕たちがその吸血鬼を相手にするとしても、先輩はどうするんですか?
そんなことをしたら向こうが先輩を無事にしておくとはとても思えないんですが…」
リオンの懸念はもっともだ。が、ニースはリオンに向けてニタリと微笑んだ。
「そのへんは考えてあるわ。向こうがティオちゃんとあの女を交換する時…、仕掛けを施しておくのよ。
向こうがそれに気を取られている隙に、ティオちゃんを保護しつつあいつらを攻撃するわ。大丈夫、絶対にうまくいくわ。あと…」
そこまで言って、ニースは突然リオンの喉首を掴み上げた。みしみしと鈍い音が鳴り、爪が食い込んだところから血がツゥーっと流れている。

11:猟血の狩人
08/05/02 22:23:38 v5I/bmxU
「ぐはっ!ニ、ニースさまぁ…、なにを……」
「あなた、さっきティオちゃんの血を味わうとかいったわね…。ふざけるんじゃないわよ。
ティオちゃんの血は私だけのものよ。お前如きが口にしていいものだと思っているの?!」
ニースの目には不遜なリオンに対する怒りがメラメラと浮かび上がっている。このままでは本当にリオンの喉を握りつぶしかねない。
「も、申し訳ありませんニース様ぁ……!もう金輪際、先輩の血が欲しいなんていったりしませぇん!!」
リオンは喉を圧迫され発生もままならぬ仲、必死に声を張り上げ自信の不逞をニースに謝罪した。
「それでいいのよ。ちょっとは自重しなさい!」
リオンの謝罪の言葉に満足したのか、ニースはリオンを握り締めていた手の力を緩め、リオンはその場にどさっと崩れ落ちた。
げほげほとえづくリオンにアンナが泡を食ったかのように近寄り、心配そうに背中を摩っている。
「まったく…、血なんて後でいくらでも飲ませてあげるんだから。
馬鹿なこと考えなければ痛い目を見ずに、吸血鬼の悦楽にたっぷりと身を浸すことが出来たってのに」

「「えっ?!」」

あきれた顔をしながらぼそっと呟いたニースの言葉に、リオンとアンナはパッと反応し驚いた顔をニースへと向けた。
「そ、それはどういうことですか?ニース様」
「うふふ、それはねぇ……」
アンナの問いにニースが向けた顔は、吸血気の毒に染まりきった笑みだった。







12:猟血の狩人
08/05/02 22:24:38 v5I/bmxU
一方、アルマナウスの人形にされて連れ去られてしまったティオは…

「………ハッ?!」
今まで体の奥底に沈殿していた自らの意識が急速に覚醒していくのをティオは感じ、目を覚ましたティオはパッと首を上げた。
ティオの視界に入ってきたもの。それは薄明かりに照らされこじんまりと整えられた一室と、自分を見つめる二人の子ども…
いや、自分に敵対する存在である二体の吸血鬼、アレクサウスにアルマナウスだった。
「あ、兄様。ティオさんが目を覚ましましたわ」
「おはようございます、ティオさん。ちょっと不自由かもしれませんが勘弁してくださいね」
アレクサウスの言葉にティオは自分の状態をちらっと確かめてみた。
なるほど、両手首は枷で縛り付けられ天井から鎖で吊り下げられている。両足も床から伸びる鎖で繋がれており文字通り手も足も出ない。
「なるほど、これはちょっと勘弁しかねるわ…って、ちょっと待った」
このとき、ティオの心にある疑問が生じた。なんで、この二人は自分の名前を知っているのだろうか?
「あなたたち…、なんで私の名前を知っているの?」
このティオの問いかけに、アレクサウスとアルマナウスは何かを思い出したのか、クスクスと微笑みながら答えてきた。
「それは…、貴方の主人が貴方の名前を連呼していたからですわ。それはもうもう滑稽で滑稽で…
ティオちゃん、ティオちゃんって泣き叫びながら、届かぬ手を必死に伸ばして…
貴方はよっぽど主人に愛されているのですね…。クスクス」
「し、主人……?!」
ティオは最初、アルマナウスが言う『主人』が誰を指すのか思い浮かばなかった。
が、自分のことを『ティオちゃん』と呼ぶものはただ一人しかいないことにすぐに気が付いた。
「…何言ってるのよ。ニースは私の主人なんかじゃない。仲間よ」
「そうなのかい?吸血鬼と人間が一緒にいるからてっきりそうだとばっかり思っていたけれど…
でも、君からは僅かばかりだがニース…だっけ?の気配が感じられるな。彼女に血は捧げているんだろ?」
アレクサウスの問いかけに、ティオはしかめっ面をしながらもこくりと頷いた。
「…ええ。でも牙を立てられたりはしていないわ。あくまでも傷口から血を与えているだけよ」
血は与えているが自分は吸血の虜にはなってはいない。ティオはそう主張していた。
「ふぅん…」
ティオの言い分にアレクサウスは内心失笑を禁じえなかった。
そんな子供だましな事をしても吸血の呪縛からは逃れられはしない。例え傷口越しからでも吸血鬼から血を吸われ続けることにより
ティオの魂は僅かづつではあるが吸血鬼の力に汚されていく。
そして、それが一定の割合を超えれば身も心も隷属し、吸血鬼に全身の血を吸われることを望むようになる。
所詮、その状態になるのが速いか遅いかの差でしかないのだ。
が、どうやらニースはそれを承知の上であえてティオにそのこと言わず傷口からの吸血を続けているようだ。
(僕も彼女のことは言えないけれど…、いい趣味をしているよ。
じわじわと時間をかけて、この人間をすこしづつ吸血鬼に堕していくなんて、ね)
アレクサウスはニースの意図をほぼ正確に見抜いたが、それを口にすることはなかった。
したところで意味はないし、その意図もこれから無駄なことになるからだ。
「じゃあ君は、まだ本当の吸血の快感を知らないんだね…」
ニッと笑ったアレクサウスの瞳に、それまでなかった欲望の色がはっきりと浮かんできている。


13:猟血の狩人
08/05/02 22:25:38 v5I/bmxU
「………!!」
それを感じ取り、ティオの顔面からさあっと血の色が引いていった。
ひた、ひたとアレクサウスが足音もなくティオに向って歩いてくる。薄ら笑いを浮かべたアレクサウスの視線の先にあるものは
四肢を縛られたティオ、の首。
「あ、あ…、いやぁ……」
ティオは反射的に後方へと逃れようと体を捩ったが、手も足も縛られているので体だけ『く』の字に曲がるばかりで一歩もその場を動けない。
「やめて、やめて!こないで!!」
ティオだって、吸血鬼に血を吸われることで与えられる快感を知らないわけではない。
何しろ、定期的にニースに自ら血を与えている時に感じる魂をも汚してしまいそうな快感を味わっているのだから。
でも、それすら直接牙を挿しこまれて与えられた快感ではない。
過去に、幾度もニースに直接牙で吸って貰いたい衝動に駆られた事があったが、それで与えられる快感を知ってしまったら
恐らく二度と後に引き返せない。
この身全ての血が吸い尽くされるまで吸血の快感を求め続け、果ては自分が吸血する側へと堕ちてしまうことになるだろうと
ティオは本能的に感じていた。
だからこそ、ここでアレクサウスに吸血されることで自分の身も心もアレクサウスに従属させられることになってしまうことが
たまらない恐怖だった。
「ふふふ…、さっきまでの勇ましい君はどこへ行ってしまったんだい?そんなに牙を立てられることが恐いのかい?」
アレクサウスはふわりとティオと同じ目線まで浮き上がり、恐怖で顔を引きつらせるティオの顔をまじまじと眺めた。
ティオは言葉も発することが出来ず、小刻みに顔をかくかくと縦に振り続けていた。否、それしか出来なかった。
「可哀相に…、そんなに怯えてしまって。でも、もう恐がることはないんだよ…」
アレクサウスは震えるティオに歳相応の少年に相応しい天使の様な笑みを浮かべた。そして、そのまま顔をティオの喉下まで下げ…

チュッ

ティオの首筋に、軽いキスをした。
「ひぁっ!!」
噛まれた!というショックと首筋に感じた燃えるような熱さに、ティオは体をビクッと反らせ大きな悲鳴を上げた。
「あははは…。その反応、初々しいね」
ティオの反応が面白かったのか、アレクサウスは二度、三度とティオの首筋にキスを繰り返した。
「ひぃっ、いやぁっ!!」
その度に、ティオは目に涙を浮かべながら大声を上げていた。
「……、どうやらこんな子供だましのキスはお気に召さないようだね」
恐怖と立て続けの悲鳴でハァハァと息を切らしているティオから、アレクサウスはスッと顔を離した。
「んっ…」
そしてそのまま涙目になっているティオの唇へ自分の唇を重ねた。
「んうぅっ!!」
ティオの心に、さっき魂を奪われたアルマナウスのキスが否応なしに思い起こされた。
が、今度のアレクサウスのキスはそういった儀式めいた物ではなく、単純にティオの口腔を蹂躙していくものだった。
(な、なにこれぇ……)
ぬらりぬらりとアレクサウスの熱い舌がティオの舌を絡め獲り、ティオの思考力を一舐めごとに奪っていく。
下唇にちくちくと当たるアレクサウスの牙が心地良い刺激となってティオの体を燃え上がらせていく。
ちゅるっ、ちゅるっ、と唾液が跳ねる音が、いままでまともなキスすらしたことがないティオの心を興奮させていく。
「んっ…ふぐっ、んんっ……!」
ニースが見たら怒り狂いそうな濃厚なディープキスはかれこれ五分以上続いた。

「ふふ…、どうだい?本気のキスの味は」
アレクサウスが満足そうに口を離したとき、ティオの顔は興奮で真っ赤に染まり、腰はガクガクに腰砕けになり吊るされている鎖で
かろうじて立っているような状態だった。


14:猟血の狩人
08/05/02 22:26:38 v5I/bmxU
「あ…、あふぅ……」
さっきとは別の意味で、ティオは言葉を発することが出来なかった。
頭の中がピンク色の霞で完全に覆われており、紡ぐべき言葉を思い浮かべることが出来ない。
その代わりの意思表示なのか、自分から離れていった唇を惜しむかのようにティオの舌が半開きになった口から伸び、
アレクサウスの唇を求めゆらゆらと蠢いていた。
「あら兄様、この方一回のキスだけでもう蕩けてしまいましたわ。何か施術でも致しましたの?」
「別に。普通のキスをしただけだよ。
どうやら彼女は着ている服装の通り、今まで禁欲の生活をしてきたようだね」
ティオはアレクサウス達との戦闘に備えて『狩人』の正装の法衣を纏っている。教会の関係者である以上、肉欲とは無縁の生活を
送っていたことは容易に想像できる。
だからこそ、アレクサウスのちょっとしたディープキスでも簡単に跳んでしまったのだろう。
時折弱々しくビクビクと体を震わせているだけのティオを、アルマナウスはとても楽しそうに眺めた。
「貴方って本当に面白いわ。私の人形を倒すくらいの強い力を持っているかと想ったら、兄様のキスだけで崩れる脆さも持っている」
「う、あ……」
ティオは熱に浮かされたような顔で自分に近づいてくるアルマナウスに視線を向けた。そこには抵抗の意思は、最早ない。
(あ……)
自分が一目置くほどの強さを見せた人間が、今目の前で触れたら壊れそうな弱さを見せている。
そう思った時にアルマナウスの嗜虐心がゾクッと刺激され、アルマナウスは思わず両手で両腕を抱え体を一震わせした。
「そんな…顔を見せられては……、私も、ジッとしていられませんわ……」
アルマナウスはティオの唇に軽く触れるようなキスをすると、ティオの両胸に服越しに手を這わせた。
「ひっ……」
服の上からでも胸を擦られる刺激に官能に燃え上がりきった体はすぐに反応し、ティオの脳髄に震えるような快感をもたらした。
「あら…、背のわりに胸は大きくないのですね。それでも私のよりは大きいのですけれど…
まあ、肉が引き締まった肉食獣というイメージで悪くはないですわ」
むにっ、むにっとアルマナウスは大きさを確かめながら双乳をやんわりと揉みしだいている。
その都度、ティオの体に感電したような痺れが走る。
「ああっ、いやぁっ!!こんなの、こんなの変よ!変だわ!!」
自分の感覚がコントロールできない。こんなことは今まで感じたことがなかった。際限なく暴走していく官能が恐ろしくもあり、
また楽しみでもある。そんな相反した感情がティオの中で膨らみ続け、ティオはパニックに陥っていた。
「やめて!もうやめて!!このままじゃ私変になる。狂っちゃう!!」
「…うるさいわね」
わんわん泣き喚くティオが耳障りだったのか、アルマナウスはさっきのアレクサウスのようにキスで口を封じてしまった。
「むぐーっ!!」
再びティオの口腔を吸血鬼の舌が蹂躙する。
が、さっきと違うのは口からの悦楽のみならず胸からも官能の波が送られてくることだ。

「んん…ちゅぅ…」
もぎゅ もぎゅ もぎゅ

「んーっ!んーっ!!」
あまりに激しい快感に支配され、ティオは気絶することも出来ず注がれ続ける快楽に翻弄されていた。さらに、
「アルマナウス、僕も参加させてもらうよ」
妹とティオの情事を後ろで眺め続けていたアレクサウスがいつの間にかティオの後ろに周りこみ、
ティオの首の頚動脈沿いに舌をぞわりと這わせた。
「!!んぐぐーっ!!」
不意打ちのように訪れた首への刺激に、ティオの塞がれた口からはくぐもった悲鳴とともにアルマナウスとの接合部から涎が
滝のように溢れ出てきた。
アレクサウスは時折牙で甘噛みしたり、耳の裏を舐めしゃぶったりとティオが体験したこともないような刺激を
飽きさせることなくティオの肉体へと送り込んでくる。


15:猟血の狩人
08/05/02 22:27:38 v5I/bmxU
(ああっ!わ、私は何をされているの?!なんで私はこんなことされているの?!
もう、もうわからない!わからないよぉっ!!)

法衣の裏は噴き出てきた汗でべったりだ。いや、汗以外の体液も血液以外は全て流れ出ている気すらしてくる。

「うん、ん、んんんぅぅ~~~~っ!!」

脳の容量の限界をはるかに超えた快感をあまりにも長く与えられ続けたティオはとうとうそれに抗しきれなくなり、
息が続く限りの嬌声をあげたあと、フッと気を失ってしまった。
「おやおや…、やっぱ耐え切れなかったみたいだね」
「でも兄様、やっぱりこの方は素敵ですわ。こんなに良い声で鳴いてくれる方は久しく会った事がございませんから」
気を失いながらぜぇぜぇと息を切るティオを見て、吸血鬼兄妹はとても面白い玩具を手に入れた子どものようにはしゃいでいた。
「さて、と……」
アレクサウスは気を失っているティオの顎をくいっと持ち上げ。ティオの意識へ言霊を放った。
「さあティオ、『起きるんだ』」
アレクサウスの声にピクッと反応したティオは、意識を覚醒させたのか弱々しく瞳を開いた。
「あぅ……、はぁふ……」
ティオの泳いだ瞳は目の前のアレクサウスへと向けられたが、特に何かをするでもなくただせわしなくため息をつき続けていた。
「ふふ、すっかり大人しくなってしまって…、可愛いものだね」
ティオを睨むアレクサウスの瞳がキラリと赤光を発し、ティオの瞳へと吸い込まれていく。
普段のティオならニースとの絡みで培われた耐性や魔眼に対する警戒により逃れることも出来ただろう。
が、これまで受けた陵辱で抵抗力を喪失していたティオは、まともにアレクサウスの魔眼を喰らってしまった。

「あぅ……」

とろんとしたティオの瞳がボゥッと紅く光り、心が赤い鎖で呪縛されていく。
ティオの心の中にあるアレクサウスに対する警戒心や敵愾心が紅い光で消し去られていき、
その代わりにアレクサウス達への敬慕と隷属の意識が心に上書きされていく。
(ああ…、この人、なんて素敵なの…。こんなにそばで見ているのに、全然気がつかなかった……)
その青白い肌。その紅い瞳。その猛々しい牙。全てが愛しく思えてくる。
(なんで私はこの方をあんなに恐れ、憎んでいたの…?ふふ、バカみたい……)
ティオの目に入るアレクサウスの姿がだんだんと愛しいものへ変わっていくのを、ティオは何の疑問もなく受け入れていった。
それに反比例して、ティオの心からニースという存在は小さくなっていき…、やがて完全に消えてなくなった。
「あ、あぁ……アレク、サウスさまぁ…」
ティオのアレクサウスを見る目が、先程とはまるで違い媚と悦びの色を帯びたものへと変わっている。
(ふふ…)
ティオが完全に魔眼の影響下に堕ちたことを確信したアレクサウスは、ティオの耳もとで優しく囁いた。
「どうだいティオ?今よりもっと気持ちよくなりたいかい?」
「今より……もっと…、きもち、よく……?」
瞳を紅く光らせたまま、ティオはおうむ返しにアレクサウスが発した言葉を紡いだ。

きもちよく きもちよくなる きもちよくなれる きもちよくしてくれる

『気持ちよく』と言う言葉がティオの心の中でどんどん膨らんでいく。
いつ、どこで、だれにされたのかは思い出せないが、自分の血を吸い取られている時、他に得難い快感を与えられたのを
肉欲に爛れた心が思い出した。


16:猟血の狩人
08/05/02 22:28:41 v5I/bmxU
「……な、なり……」
ティオの顔が緩くにやけ、薄笑いを浮かべた口元からは一筋の涎が糸を引いて零れ落ちている。
その蕩けきったティオの顔は、普段のティオを知ってる人間からは想像も出来ないものだった。
「なりたい、のぉ…。もう、体が熱くて、熱くてたまらないの…。
お願い、この熱さを静めてぇ……。血を、吸ってもいいからぁ……」
ニースが聞いたら屈辱で卒倒しただろう。ニースがティオに言わせたい言わせたいと思っている『ティオ自身から吸血を求める』と
いうことを、魔眼仕込みとはいえアレクサウスに先に言わされてしまったのだから。
「なりたぁい、なりたぁい……。アレクサウス様ぁ……、私をもっと、気持ちよくしてくださぁい……
その雄々しい牙でガブッて噛み付いて、私の血を全部吸い取ってくださぁい……」
もうティオはアレクサウスに様付けをするのがごく当たり前なことと捉えるようになっていた。
彼は自分の主人であり、自分の一番愛しい人であり、自分の一番大切な存在だ、と。
「吸ってぇ、吸ってください……。吸って、気持ちよくしてくださぁい……」
ティオは縛られた格好のまま体を左右に艶かしくくねらせ、アレクサウスに吸血のおねだりをし続けた。ニースのことは記憶から消えた
ものの、過去に感じた一番の快感はやはり吸血の快感だからだろうか。
「ふふふ…、こんなふうにかい…?」
アレクサウスはそんなティオの喉首に顔を近づけ、かぷっと口で甘噛みをした後、牙をつんつんとティオの頚動脈の上に這わせた。
「ああぁっ!そう、それがいいの!!
挿して!アレクサウス様、アレクサウス様の牙を私の喉に挿れてくださぁい!!」
ちくちくと肌に牙が触れる感触に、ティオは嬉し涙まで流して歓喜に打ち震えた。

(あと少しアレクサウス様が口に力をこめるだけで、私の血の全てがアレクサウス様の中へと吸い取られていく!)

そう想像しただけでティオの心は悦びで満たされ、その際に与えられる想像を絶する快感を想い浮かべティオはぞくぞくと背中を振るわせた。
法衣の股下の辺りが明らかに汗以外のもので濡れている。
それは今でもドプドプと湧き出しており、法衣がそれで真っ黒に濡れているのが外から分かるくらいだ。
「ふふ…」
喉に突きつけられた牙の圧力がグッと増してくる。もう僅かでも力が入れば皮膚の張力が耐え切れずに裂け、
アレクサウスがティオの中を蹂躙するだろう。

(き、来た!来たぁ!来た来た来た来た来たぁぁ!!!)

ティオは待ちに待った瞬間が来たことに興奮を抑えきれず、軽く達してしまいそうになってしまった。
(ダメ!気を失ったりしたら、あの気持ちよさを味わえない!!)
ティオは一瞬遠くなりかけた意識を必死で繋ぎとめ、来るべき瞬間を味わおうと心躍らせた。

しかし

「なんて、ね」
アレクサウスは今まさにティオの喉を噛み破ろうとする瞬間、口をティオの喉から離してしまった。
「え……」
何が起こったがティオは一瞬理解できず、呆然とした顔をアレクサウスに向けた。
「アレクサウス、さま……?」
「ティオ、君の血は吸わないよ。これでも僕は花嫁を待っている身なんでね。今は花嫁以外の血は吸う気は無いんだ。
それに君は花嫁との取引相手だ。傷物にする訳にはいかないじゃないか」
なんとも白々しくアレクサウスは至極真っ当なことを言った。
魔眼まで使ってティオの魂すら蹂躙したというのに、いまさら傷物も何もない。が、言っていることは正論だ。
しかし、今のティオにとってはそれは恐ろしい言葉だった。
(自分がアレクサウス様の花嫁の取引に使われるということは、自分はアレクサウス様に捨てられてしまう!)
今のティオにとって、アレクサウスとアルマナウスは何物にも替え難い唯一無二の存在である。その存在に捨てられるということは
自分の全てを捨てられるに等しい行為である。


17:猟血の狩人
08/05/02 22:29:38 v5I/bmxU
「……いや……」
ティオの瞳に、官能とは違う涙が零れ落ちてくる。
「いや…、いやです。アレクサウス様、私を捨てないでください!!
私にとって、アレクサウス様たちは私の全てなんです!アレクサウス様がいない世界なんて想像も出来ません!
どんなことでも、どんな身分でもよろしいですから傍においてください!お願いしますぅ!!」
捨てられる恐怖からわんわん泣き始めたティオを、アレクサウスは最初は面白い見世物を見ているような愉しげな目で眺め
暫くしてから子どもをあやす様に優しく囁いた。
「わかったわかった。そこまで言うならティオを捨てるような真似はしないよ。いじわるして悪かったね」
アレクサウスの言葉に、涙でぐじゃぐじゃになっていたティオの顔は一瞬にしてパッと輝いた。
「ほ、本当ですか?!本当ですね!ウソって言ったら嫌ですよ?!」
「うん。花嫁を取り返すときに、一緒にティオも連れ帰ってあげるよ。ただ…」
アレクサウスの後ろからアルマナウスがけむくじゃらのぬいぐるみを持って近づいてくる。
「そのために、ティオの体をちょっといじらせてもらうよ」
「は、はい!はい!!何でもいいです。アレクサウス様のお傍にいられるならなんでも!!」
アレクサウスの言葉にティオは一も二もなく頷いた。
アレクサウス様たちと一緒にいられるなら、例えこの体がどうなっても構わない。
はたして自分はどんなことをされるのか。

アレクサウス様に、どんなことをされてしまうのか。

そう考えるだけで胸がキュッと詰まり、カーッと血が頭に上ってくる。
ティオが早鐘のように心臓を鳴らして期待する前で、アルマナウスが持っていた人形をスッとかざした。

第五回終

18:178
08/05/02 22:32:49 v5I/bmxU
以上です。
前スレで次スレ誘導も出来ないような状態にしてしまって申し訳ございませんでした。
第六回目もほぼ全て書き終えていますので、なるべく早い機会に出したいと思います。

最後に、本当に申し訳ございませんでした。

19:名無しさん@ピンキー
08/05/02 23:07:54 lJ+fl/u9
これは大変に乙でした。
直でニースの眷属にするのかと思いきや。
魔眼をかけられる/かけられたティオ想像してムァッハァーしました。
この後の展開楽しみですね。
特に一手間加えられた取引後のリオとティオの、ね。
ごちそうさまでした。
500kb超過はまぁ、仕方ないんじゃないでしょか。
次にテンプレに入れましょ。

それと。例によって例のスレにupられてた奴をサルベージして例の場所にあげときます。

20:名無しさん@ピンキー
08/05/02 23:08:43 lJ+fl/u9
これは大変に乙でした。
直でニースの眷属にするのかと思いきや。
魔眼をかけられる/かけられたティオ想像してムァッハァーしました。
この後の展開楽しみですね。
特に一手間加えられた取引後のリオとティオの、ね。
ごちそうさまでした。
500kb超過はまぁ、仕方ないんじゃないでしょか。
次にテンプレに入れましょ。

それと。例によって例のスレにupられてた奴をサルベージして例の場所にあげときます。

21:名無しさん@ピンキー
08/05/02 23:09:30 lJ+fl/u9
ぉぉぉ。
ダブった。
吊ってくる。

22:名無しさん@ピンキー
08/05/02 23:46:44 QN+XXCrX
イ㌔

23:名無しさん@ピンキー
08/05/02 23:50:39 U8Lp8aik
だれか、ビックリマンのヘラがワンダーマリアに
再び洗脳されて悪魔にされるSSを書いてください。

24:名無しさん@ピンキー
08/05/03 00:35:20 hk5M+06K
なんだこのクレクレ

25:名無しさん@ピンキー
08/05/03 00:39:14 S7uqQLXZ
前スレはSS投稿ラッシュだったから900もいかないで容量オーバーしたのね。

スレが活発でいいことだ。

26:名無しさん@ピンキー
08/05/03 04:47:19 EkO0tYg+
猟血の狩人の続きまだかなぁと思ってたら来た
178氏これからもがんばってくだせいorz

27:名無しさん@ピンキー
08/05/03 10:25:49 eOY3XjHY
URLリンク(jun.2chan.net)
おまいら、元気すぎwww

28:名無しさん@ピンキー
08/05/03 14:24:20 etKroIQn
容量オーバーとかもうね……。
だから長文が多すぎるって言ったのに……。

29:名無しさん@ピンキー
08/05/03 16:18:43 Oqwc+498
某所の巫女さん悪堕ち本、委託はじまったな

あとさ、あんまり長い文章だとやっぱ一つにまとめたほうが見やすくないかな?

30:名無しさん@ピンキー
08/05/03 16:33:48 TPId5f6o
おいおい前スレから長文叩きしてるやつはなんなんだい?
>>25も言ってるが、スレが1000に行かないうちにオーバーするのは、
SSが活発している証拠、栄光あることなんだよ。
容量オーバーの最大の原因は、投下者がスレ容量に不注意だから。
次スレのテンプレに注意書きを入れれば解決できるもの。

それを長文のせいにするとか、頭悪いじゃないの?
短文がいっぱい投下したところで、容量オーバーするものはする。
ていうか10レスを越えた程度で長文扱いするなんて、どんだけ読書が苦手なんだよ。
他のすれに行けば、もっと長いやついくらでもあるんだから。
もし本気でそれを言ってるんなら、エロパロ板をやめたほうがいいぞ。

31:名無しさん@ピンキー
08/05/03 17:03:34 Oqwc+498
良い事すりゃなんでも許されるってもんじゃあないと思うけどな。
と、言うか良い悪い、長文に慣れてる、慣れてないというより配慮だと思うんだ。
相手に読みやすいものを提供するってのは物書き側が心がけないとダメだろ。

32:名無しさん@ピンキー
08/05/03 17:14:01 S7uqQLXZ
別に独りでスレ潰したってわけじゃないし。偶々SS投稿中にリミットが来たってだけでしょ。
そもそも1000までいく必要全然ないわけだし。

512kb超えたのを知ってちゃんとスレ立てて投稿しなおしてくれてるんだし、それについて
どうこういうようなことではないと思うが。

33:名無しさん@ピンキー
08/05/03 17:29:17 5NT8XXNP
>>18
乙でした!今回も続きが気になるところで終わってしまった。楽しみにしてます

長文は危険だと言う方の気持ちもよくわかるのですが
これを切欠にシリーズ中止とかはしないで欲しいです…このスレのSS大好きなんで。

34:名無しさん@ピンキー
08/05/03 18:04:24 CwXgwk/g
巫女さんの悪墜ち本を買った人いたら詳細kwsk

35:名無しさん@ピンキー
08/05/03 19:56:29 XKjsorwF
虎の店頭で売ってるなら明日にでも買ってくるが・・・

36:名無しさん@ピンキー
08/05/03 20:28:55 9ZrdBAPD
以前、txt上げって形にしてる人もいたが難しいわな
それだと容量も場所もとらんがスレに残らんから消えたらそれまでだし

37:名無しさん@ピンキー
08/05/03 20:38:28 +romEJUp
>>36
あーあれは残念だったな・・・
あの時さ、読む時間が無かったからtxtをDLだけしてたんだよ
んで後日読んだら、txtの最後に「続きは別うpです」て・・・・・全俺が泣いたわ

38:178 猟血の狩人 第六回
08/05/03 23:20:30 U0Vj+di8
これからはスレ容量にももっと注意しながら投下をしていきたいと考えている178です
では、前夜の続きです

そして、真円鮮やかな満月の夜。
ニースは前夜アレクサウス達が現れた小高い丘の上にリムと一緒に立っていた。
勿論リムには魔眼で意識を飛ばし、アレクサウスが現れても勝手な行動をとらないようにしている。
が、それ以外にもリムは外見上奇異なことがあった。
リムは短剣を両手で握り締め、その切っ先は自身の喉笛へと向けられている。魔眼の影響か握る腕は微動だにしていないが
ちょっとでも力をこめればリムの喉に赤い花が咲くことだろう。
(さあ、早く来なさいガキ共、目に物を見せてやるわ……)
ニースは日中にリオンたちと交わした作戦を思い出し、含み笑いを浮かべた。



「それを言う前に…、まずはあなた達の役割を話すわ」
ニースは、練りに練った吸血鬼兄妹打倒の策を二人に話し始めた。
「あいつらはリムとティオちゃんを交換するつもりだから、まずティオちゃんに手を出すことはないわ。
もしティオちゃんに何かあったら、こっちもリムをどうするかぐらい向こうだって知っているもの」
ニースには確信があった。ニースがティオに執着しているのと同様、アレクサウスがリムに執着しているのは
昨日のやり取りを見ていても明らかだからだ。
「でも、言い換えれば向こうはティオちゃんになにもすることは出来ない。せいぜい魔眼で暗示をかけて催眠状態にすることぐらいよ。
そうなれば、こっちに付け入れる隙が生まれる」
「例えば、どんなですか?」
リオンの問いかけに、ニースはニタリと邪悪な笑みを浮かべた。
「つまり、目の前で何が起ころうがティオちゃんは何も知ることは出来ない。私達が何をしてもティオちゃんに知られることはないのよ。
そうなれば、どんな手でも打つことが出来るわ…」
その笑顔に、リオンもアンナも流石に戦慄を覚えざるを得なかった。それほど今のニースの笑顔は黒々としたものだからだ。
「まずは、ガキの気を逸らせるためにリムを殺すわ。
あいつらの目の前で、リム自らに自分を殺させるのよ。そうすれば、さすがにガキ共もそれに目を奪われるはずよ。
なにしろ、手に入れようとした女が目の前で死ぬんだから。
その隙を突いて、あなた達はメスガキのほうを始末しなさい。二人がかりで隙をつけば大丈夫でしょう?
その間に、私は魔眼でティオちゃんを眠らすわ。そして、残ったガキをゆっくりたっぷりと…、ククク」
ニースはアレクサウスが血塗れで自分に助けを求める姿を想像し、ゾクゾクと体をふるわせた。
しかし、それを聞いた二人は困惑気味だった。
「で、ですがニース様…、この人間を殺してしまっては後々厄介なんではありませんか?
いくらなんでも吸血鬼のせいには出来ませんよ。町の人間だって黙ってはいませんし…」
「ああ、その心配は無用よ」
リオンの心配そうな声を、ニースはあっさりと否定した。


「だって、町の人間は皆殺しにするんだから」


その声を聞いたとき、リオンとアンナは一瞬固まってしまった。
「み、皆殺し……?!」
「そうよ。ティオちゃんが攫われたのにその心配を全然せず、私達が吸血鬼を討ち漏らしたことを責める連中よ。
そんな人間、生きている価値なんてないわ。私達の腹に納まるのが相応しい末路よ。
私達でこの町の人間を殺し尽くし、その暖かい血を存分に堪能するのよ!」
「「!!」」
ニースの言葉に、リオンとアンナの眼がギラリと輝いた。
「そ、そうだ…、先輩の安否を省みない人間なんか、死んで当然だ…。僕が、吸い殺してやるんだ…」
「こ、この町……、この町全員の人間の血が飲める……、す、凄いぃ……」
早くも血塗れの自分達を想像したのか、リオンもアンナもたちまち呼吸がハァハァと乱れ始め、ぎらつく瞳が紅く輝き
開いた口元からはとめどなく涎が零れ落ちている。

39:猟血の狩人
08/05/03 23:21:30 U0Vj+di8
「やりましょうニース様!先輩を攫った吸血鬼を滅ぼし、その後たっぷりと血の海に浸りましょう!!」
「ああっ、待ちきれないっ!早く、早く飲みたい!啜りたい!吸い尽くしたい!!」
「待ってらっしゃい…、私からティオちゃんを奪おうとするものはどんな奴でも絶対に殺す。
ティオちゃんを大事にしない奴は、誰だろうと許さないんだから…アハハハハ!!」
元は人間を守り吸血鬼を狩る立場だった三体の吸血鬼は、今や完全に人間を狩る存在と成り果て
アレクサウス達をくびり殺した後いかに効率よく住民を殺すかという一点に妄想をめぐらし、嬌声を上げ続けていた。

まさか、アレクサウスがそれ以上の搦め手でくるとは知らずに。



「やあ、ちょっと待たせたかな?」
ニースの頭上から声がする。ニースがフッと顔を上げると、昨夜ティオを連れ去っていった時間を巻き戻すかのように
吸血鬼兄妹がティオを抱えて降りてきた。
(来たわね…)
案の定、ティオは暗示をかけられているのか虚ろな紅い目をして立ちすくんでいる。読みどおりだ。
リオンとアンナは丘の横に立っている粗末な廃屋の中に忍ばせている。ここなら上空からも姿が見えることはない。
「女を待たせるのは男として失礼なんじゃないかしら?って、別にそんなことを言うために来たんじゃないわ。
アレクサウス、ティオちゃんは無事なの?」
「当たり前じゃないか。こうしてここにピンピンしているよ。
…僕としては、花嫁が持っている物騒な物のほうがよっぽど気になるんだけれど」
確かに、抜き身の短刀を喉にあてがった姿というのは穏やかなものではない。
「これはお前達がティオちゃんに変なことをしていないかの保険よ。
もし変なそぶりを少しでも見せたら、リムに命令してこの剣を喉に突き刺させるわ」
ニースの脅しに、アレクサウスは困ったような苦笑いを浮かべた。
「ん?君は花嫁の両親に頼まれて花嫁を僕たちから助けるんじゃなかったのかい?殺していいものじゃないと思うんだけどな」
「…私も吸血鬼よ。なんで人間のいうことを聞いてより大事な物を捨てなきゃいけないの?
私にとってティオちゃんこそ全てに優先するもの。それ以外なんて塵芥と同じだわ」
これはニースにとって真理であろう。
でなければ、ティオを連れ去られた怒りで町の人間を腹いせのように皆殺しにするなど考え付くはずがない。
「なるほど…、よっぽど彼女に愛されているんだね、君は」
アレクサウスは、彫像のように立っているティオの頬を愛しげにするっと撫で回した。
「ティオちゃんに触るな!!」
それを見たニースは烈火の如く怒り、アレクサウスに敵意を込めまくった視線を向けた。
「とっととティオちゃんを返せ!さもないとリムを殺すわよ!」
リムの剣を持つ腕に僅かに力がこめられる。ほんの少しだが、切っ先が皮膚の下へと潜り込み赤い血が首を伝っていく。
「ああ、もったいない………
わかったよ。では双方の持ち物を互いに向けて歩かせよう。そしてその後に…」
「殺し合いということね。いいわ」
ニースはくいっと顎を動かし、リムへ向こうへ行くように命令した。
同時にアレクサウスもティオに促し、双方は同じような速さでふらふらと歩みだした。
(ククク…、馬鹿な連中。まんまと思惑にはまったわ)
ニースは内心笑い転げたくて仕方がなかった。こうも思い描いたとおりに物事が進むとは思わなかったからだ。
(あとは互いが通り過ぎた瞬間にリムを殺し、即座にティオちゃんを眠らせてしまえばOK。
長い年月を生きてきたって言っても、所詮はガキよね)
やがて、リムとティオの体が交差する瞬間がやってくる。あと二歩、後一歩!

(今だ!)



40:猟血の狩人
08/05/03 23:22:30 U0Vj+di8
「リ…」
ニースがリムに自殺命令を発しようとした、正にその瞬間!

「ティオ、やれ!」

アレクサウスが一歩先んじて発した声があたり一面に響き、その声に反応したティオの瞳がカッと金色に輝いたかと思うと
目にもとまらぬ速さで身を翻してリムの手にあった短刀を手刀で叩き落した。
「えっ?!」
何が起こったのか一瞬分からなかったニースの前で、ティオはリムの頸部をパシッと叩いて失神させると、
両手で恭しく担ぎながらアレクサウス達の元へ一足飛びに戻っていった。
「ティオちゃん、なにを……。っ!
アレクサウスゥ!!おまえ、ティオちゃんに何をしたぁ!!!!」
ティオの動きを見れば、アレクサウスが何かしたに違いない。
そう確信したニースはアレクサウスを睨み殺しかねないほどの勢いで睨みつけ怒鳴り上げた。
「それを君が言える性分だと思っているのかい?
最初から、僕の花嫁を生かして渡す気なんかなかったくせに」
ニースの怒気を受け流すアレクサウスの顔はあくまでも飄々としている。まるで、全てをお見通しだと言わんばかりに。
「第一、僕がこの場に来たのは花嫁を連れ帰るためだ。君の人形と交換するなんて言った覚えは、一言もないんだけれどね」
「な、に…」
そう言われ、ニースは昨夜のアレクサウスの言葉を思い浮かべた。

『今宵は満月まで後一日。明日になったら正式に花嫁を迎えに来る。その時まで、君の人形は預からせて貰うよ』
『明日ちゃんと僕の花嫁を用意しておくんだよ。そうしないと、君の人形がどうなるか…』

確かに、ティオを返すとは一言も言っていない。
アレクサウスはティオを返す気は、最初から全然なかったのだ。
「彼女は人間にしてはとても筋がいい。昼間は活動が制限される僕たち吸血鬼にとって、昼間に襲撃を退けることが出来る
護衛の存在はとても重宝するんだよ。君だって彼女がいることで十分助かっただろう?」
確かに、太陽の光を浴びただけで致命傷になりかねない吸血鬼にとって、日の光とともに襲ってくる敵を退ける存在は不可欠だ。
ニースだって、降闇を羽織っているとはいえ日中の動きはかなり不自由だ。
そういう意味ではティオの存在は想像以上に大きかったといっていい。
「それに、妹が彼女のことをいたく気に入ってしまってね。
ほら、可愛い妹の願いを聞いてやるのは兄として当然のことじゃないか」
アレクサウスがニヤニヤと笑ってアルマナウスのことを軽く指差す。
「人を指差すなんて失礼ですわよ兄様。
でも、私が彼女のことを気に入ったのは本当ですわ。強さと脆さを併せ持ち、相手にしていて全然飽きが来ませんもの。
大事に、大事に愛でて差し上げますわよ」
アルマナウスは微笑みながらティオの体にふわりと抱きついた。
「あ…」
アルマナウスが体に触れたことで、ティオの顔に少しだけだが恍惚の笑みが浮かんできていた。
「ティオ、ちゃん…」
それがまた、ニースにはたまらなく腹立たしい。
「だから、彼女は僕たちが貰い受けるよ。より僕たちを守るに相応しい存在になってね。
さあティオ、僕たちが与えた新しい体を彼女に見せてあげるんだ」
「…わかりました、主様」
瞳を金色に輝かせているティオはアレクサウスの命令にこくりと頷くと、抱いているリムをアレクサウスに渡すと
身に纏っている法衣をその場でシュルシュルと脱ぎ始めた。
一糸纏わぬ姿になったティオはその場でスッと瞳を閉じ、何かに集中し始めた。


41:猟血の狩人
08/05/03 23:23:30 U0Vj+di8
「ふうぅぅぅ………」
ティオが深い吐息を放った瞬間、ティオの体に変化が訪れた。
小麦の穂のような金色の短く刈り揃えられた頭髪がざわざわと伸び始めて腰の辺りまで届き、色も冷たい銀色に変化していく。
いや、銀髪は頭髪だけでなく腕周り、胸、腰、脛の辺りからも伸び、体に纏わり付いてきている。
「ふうぅ…、ふおぉぉ……」
左右の頭頂部の髪がまくれ始め、下から何かが伸びてきている。
細かい産毛に守られて出てきたのは、紛れもなく獣の耳だ。
「うおおおおおおっ!」
そして出てきたのは耳だけではない。
腰からふさふさした毛を纏い伸びてきたのは、身間違えようもない獣の尻尾。
「…っはあぁぁっ!!」
最後に、内に溜まった気を全て吐き出すかのように雄叫びを上げた口には肉を噛み千切る犬歯が伸び、
グワッと開いた瞳の瞳孔は、縦に大きく裂けていた。
「…ふぅう、ふうぅ……、ウウ…」
完全に変化しきったティオの姿は、銀髪の狼と人間を融合させたものだった。
冷たく光る月明かりに照らされ、夜風に銀色の体毛が煌いている姿はある種の神々しささえ漂って見える。

「ワァォーーーーーーーーーン!!」

静まり返った夜空に、鈴の音のように澄んだティオの遠吠えがこだました。

「な、な……、ティオ、ちゃ……」
「………」
あまりのことに呆然とするニースを、ティオは金色の瞳で異物でも見るかのように見下していた。
「ア、ア、アレクサウス………
き、貴様ぁ、ティオちゃんを人狼にしたなぁ!!なんてことをするんだぁ!!」
ニースが激高するのも無理はない。
人狼とは、他には狼憑きともいわれる亜人種の変種である。
変種と言われるのは、人狼は独立した種ではなく一種の呪いと言っていい存在で、彼らは個体で繁殖することは出来ず
人狼が深手を負わせた人間が数日の潜伏期間を経て新たな人狼となり仲間を増やしていくのだ。
伝聞によれば、人狼は過去に魔導士が作り出した魔法生物に近いもので、食欲、繁殖欲、性欲といった生物の根源的な
欲求を持たず、破壊衝動のみに特化した生物であるとも言われている。
初期治療さえしっかりしておけば深手を負っても人狼になる前に回復することが出来るので吸血鬼ほど脅威ではないが、
一旦人狼に変化してしまったら元に戻すことは難しいとされている。
ニースにとってなによりも大事なティオを勝手に人狼に変えられてしまったのだ。怒らないほうがどうかしている。

が、アレクサウスは自身に責任はないとばかりに取り澄ました顔で答えてきた。
「なんてこともなにも、これは彼女が望んだことだよ。
彼女は僕たちに仕える事を望み、自ら進んでこの姿になったんだ。なあ?ティオ」
「ええ。私は主様のもとに仕えることに無上の悦びを知り、よりお傍でお役に立てるようこの肉体を賜ったわ。
以前の脆弱な人の体ではない。主様達に近づくどのような輩も切り裂き、引き裂くことができる素晴らしい体をね……」
ティオは人狼となった自分の姿をニースに見せびらかすかのように誇らしげに誇示して見せた。
「ああ、だから彼女は同族にはしていないんだよ。確かに吸血鬼で人狼になったら相当な強さになると思うけれど
それじゃあ昼に満足な活動が出来ないからね。
でも…、花嫁を同族に迎え入れた後はその血を味わってみると言うのも、悪くはないかな。同族にしない程度に、ね…」
「悪いわね。せっかく貴方の自慢の人形だったのに私達が取ってしまったみたいで。
でも安心しなさい。貴方の大事な人形は、私達の大切なおもちゃとして末永く使ってあげるわ」
アルマナウスがティオのふさふさの尻尾に手を添えて持ち上げ、すりすりと愛しげにほお擦りをした。
「ふわぁっ……、ああ…アルマナウス様ぁぁ……」
アルマナウスに触れられたことがよほど嬉しいのか、ティオは尻尾をピクピクと震わせながら歓喜の笑みを浮かべていた。
その様を、ニースは信じられないといった顔で見つめ続けていた。


42:猟血の狩人
08/05/03 23:24:39 U0Vj+di8
私のティオちゃんが、人狼になってしまった…
私のティオちゃんが、私以外の吸血鬼に尻尾を振っている。
私のティオちゃんが、私のことを眼中にも入れていない!
私のティオちゃんが、私以外の相手に媚を売っている!!
私のティオちゃんが、私以外の相手にあんな蕩けた顔を浮かべている!!!

ニースの心に激しい嫉妬の炎が燃え上がり始めている。ティオをいいようにされていることがどうにも辛抱できない。
「汚い…汚いぞアレクサウス!魔眼でティオちゃんの心を操ったな!
操って、ティオちゃんが自分から人狼になるよう仕向けたんだ!そうだな!!」
ニースの指摘に、アレクサウスはさも当然といった顔をして頷いた。
「そうだよ。僕たちは吸血鬼だ。吸血鬼が魔眼を使って人間の心を操って何が悪いんだい?
その人間の元の意思なんか関係ない。君だってやってきたんだろう?」
「ぐっ…」
その言葉に、ニースは言葉が詰まってしまった。確かに、自分がやって相手はだめだと言うのは説得力がない。
「でも、僕たちは君には感謝しているんだよ。本当に」
何も言い返せないニースに対し、アレクサウスは顔ににこやかな笑みを浮かべ大仰に手を広げてニースにお辞儀をした。
「………?」
「花嫁はちゃんと連れてきてくれたし、僕たちにはこんな良い駒を用意してくれた。お礼をいくら言っても言い足りないぐらいだよ
だから、その感謝の返礼として……」
そこまで言った時、子どものように爽やかな笑みを浮かべていたアレクサウスの顔が、一瞬にして吸血鬼にふさわしい
邪悪な悦びに満ちた嘲笑に変わった。

「君の下にいた人形の手で、君の事を殺してあげよう!!
ティオ、あの吸血鬼を殺すんだ!」

「はっ!」
アレクサウスの命令に、人狼ティオはその顔に狩猟者の笑みを張り付かせ、その場から軽く5mは跳躍し、
一瞬のうちにニースを捉える間合いに入った。
「フフフ……」
ティオがその両手に生えた鋭い爪を真っ赤な舌でぺろりと舐めた。鋭利に研ぎ澄まされたそれは、ニースが
使う爪に勝るとも劣らない代物だ。
「さあ……、一瞬で突き殺してあげようかしら。それとも、ゆっくりゆっくりなます切りにしてあげましょうか…」
ティオの瞳には今までニースが見たことのないような、破壊を愉しむ暴力的な色が輝いている。
明らかにティオは、本気でニースを殺しにきている。
「や、やめて……。ティオちゃん、私よ、ニースよ!!」
ニースは何とかティオに自分のことを思い出してもらおうと必死に呼びかけている。が、ティオの表情は微動にもしない。
「わからないのティオちゃん!私達、ずっと一緒だったじゃない!いつでも、どこでも!!」
「私はお前なんか知らない。私にお前なんか必要ない。
私は、主様のために動く。主様はお前の命をご所望している。だから、

                死 ね                    」

ティオは右の腕を大きく後ろに引き、ニースの心臓目掛けて一直線に突き出してきた。
(やだ……。ティオちゃんが私を殺そうとしている……。こんなのウソ、信じない……)
目の前で起こっている現実が受け入れらないニースは、思考停止を起こし一歩も動くことが出来ない。
このままではニースの命は確実にティオに狩られてしまう、というまさにその瞬間


43:猟血の狩人
08/05/03 23:25:39 U0Vj+di8

「「ニース様ーーーっ!!」」

ニースの横から飛び出てきた黒い影が一瞬早くニースの体を押し倒し、ティオの手刀はニースが立っていた空間を空しく素通りしていった。
「ニース様、何ボーっとしているんですか!!」
虚ろなニースの瞳に飛び込んできたのはリオンとアンナだった。
いつまでもお呼びがかからない二人は隠れていた廃屋から様子を見に飛び出し、突然の主の危機に考える暇もなく飛び出してきたのだ。
「人狼如きにあっさりと間合いを詰められて……、えええぇっ?!
ティ、ティオ先輩?!」
目の前に立っている人狼の顔を見てリオンはちょっと間抜けな悲鳴を上げた。
そこにいたのは紛れもない慕っていたティオだったからだ。
「なんで…先輩が…」
アンナも驚きを隠せないでいる。
かつてのティオ憎しの気持ちはかなり薄まってはいるのだが、こんな予想外かつ突然の再会には少なからず心が動揺してしまう。
「ふぅん…、一人で来るはずはないと思っていたけれど、そんなところにお仲間がいたのか……
まあいいや。ティオ、三人とも始末するんだ」
「はい!」
アレクサウスの命令を聞き、ティオは猛然と三体の吸血鬼に襲い掛かってきた。
「ニ、ニース様!これって?!」
「逃げなさい!あのティオちゃんにはまともにいったらあなた達では叶わない!!早く!!」
ニースは二人に撤退を促した。が、勿論黙って逃がすティオではない。
ティオが最初にロックしたのは、三人の中で一番ひ弱そうな吸血鬼だった。
「ひっ、せ、先輩?!」
獣のような素早い動きで自分に向ってくるティオを、リオンは右手に持った大剣を構えることも出来ずただ呆然と眺めていた。
「うおおぉっ!!」
「わぁっ!」
リオンは自分目掛けて放たれた右手の上段からの爪撃にようやっと体が反応し、慌てて後方へと飛びのいた。
が、その結果リオンの体制は酷く不安定な物になる。
正にそれを狙っていたティオは、顔に禍々しい笑みを浮かべると、返しの左腕をリオンの胸目掛けて横になぎ払った。
「!!」
リオンはとっさにティオの意図を理解し、右腕で自らの胸部を庇った。その結果、致命傷を免れることは出来たが

ザシュ!!

「うわぁぁぁっ!!」
リオンの右腕は肘の部分から綺麗に切断され、大剣ごと宙を舞った後に青い炎をあげ燃え尽きた。
長い年月を経た吸血鬼ならば腕の一本ぐらい再生することなどわけないのだが、あいにくリオンとアンナは吸血鬼となって
まだ数週間しか経っていない。
再生を行うにも物凄いエネルギーが必要となり、もちろん今の状態で回復できるようなものではない。
「あ、熱い!手が……ぐはぁっ!」

ドンッ!

苦痛に顔を顰めるリオンの鳩尾に、間髪いれず放たれたティオの蹴りが吸い込まれていった。ただの蹴りならまだどうということは
ないのだが、同時にティオは足の爪をリオンの腹へと食い込ませていたので、ずぐり、という感触とともに爪が腹の肉を引き裂き、
リオンは後方に吹っ飛ぶと同時に腹から血を周囲に撒き散らした。
体を『く』の字に折り曲げながら優に3mは吹っ飛んだリオンは、そのまま地面に叩きつけられ勢い余ってごろごろと転がってった。
「げほっ、げほっ……!」
リオンは残った左手で腹を押さえ、立ち上がることも出来ず血混じりの咳を吐いていた。
その後ろで、月光に爪と瞳を光らせたティオが走りながら近づいてくる。


44:猟血の狩人
08/05/03 23:26:40 U0Vj+di8
「死になさい」
動けないリオンに止めを刺そうと、ティオは大きく手を振り上げた。
「リオン!!」
その時、リオンを助けるためアンナが横から幾本もの小刀を構えながらティオに突っ込んできた。
「リオンを滅ぼさせはしない!ましてや先輩の手でなんて!!」
アンナの手から、自慢の投剣が気合とともに放たれた。
アンナが投げた小刀は寸分違わずティオの急所目掛けて飛んでいった。どれかを避けても確実に何本かは急所に刺さる。
致命傷にはならずとも、多少なりともダメージを負わせることが出来ればその隙にリオンを助け出せるかもしれない。
そこにアンナは淡い期待を抱いていた。
そして、実際にティオは大部分の小刀はやり過ごせたが残ったうち一本がティオの眉間目掛け吸い込まれていった。しかし、

カィン

小刀は鈍い音を立てて弾かれ、地面に空しく落ちてしまった。
「えっ?なんで……、ハッ!」
その時アンナの瞳に、ティオの後方に煌々と輝いてる満月が飛び込んできた。
満月の時、人狼の力は最高の物になり、この時はいかなる武具をもってしても人狼を傷つけることは出来ない。
アンナの持つ小刀はおろかどれほど祝福された聖剣をもってしても、今のティオにはかすり傷一つつけることは出来ないだろう。
「………、貴様が先か!」
小刀が当たったところを指でこりこりと撫でたティオは、アンナを一睨みすると横たわるリオンを無視しアンナに襲い掛かっていった。
「くそっ!」
今のティオにダメージを与える手段はない。出来ることといえば逃げることしかない。
アンナは逃げ場所を探そうと一瞬だけ側面へと視界を移し、再びティオへと向きなおしたところ…
「ハアァァッ!!」
「えっ……?!」
アンナの目と鼻の先に、ティオの顔があった。
物凄い勢いでアンナの懐に飛び込んできたティオは、そのまま顔と肩をがっちりと掴んでから鋭い牙が生え揃った口をぐわっと開き

ガシュ!!

「あがぁっ!!」
アンナの喉笛にガブリ!と喰らいついた。
とはいっても、別にティオは吸血鬼ではないので血を吸う意図はない。
「ガウウウウゥッ!!」
そのままティオはアンナの肉に牙をがっちり喰らいこませると、バキバキと顎に力を篭める。
みちみちと肉繊維がちぎれる耳障りな音が、アンナの耳のすぐ下から聞こえてきている。
「や、やめ!痛、あああーーっ!!」
「ガルルゥーッ!」
アンナが上げる悲鳴に構わずそのままティオはブン!と上体を振りきった。
その勢いで、ブチブチと肉と血管が引き裂かれる音とともにアンナの喉笛がティオの牙で食いちぎられた。
「ぁ………」
呆然とティオの口に収まる抉り取られた自分の肉を見ていたアンナの視界が一瞬にして血に染まる。
噴水のように喉から噴き出てくる自分の血に塗れ、アンナはその場にどさりと崩れ落ちた。
「リオン、アンナ!」
自分の見ている前で、一瞬のうちに二体のしもべが逃げる間もなくティオによって打ち倒された。
ティオが見せた人外の強さは、ニースの予想をはるかに上回る物だった。
「……残るは、お前だけ」
ニースの声にぴくりと反応したティオが、ニースの方へとゆっくりと向き直る。
全身をリオンとアンナの血で濡らし、殺戮の悦びに瞳を金色に爛々と輝かせるティオの姿は恐ろしくもあるが、また美しくもある。
純粋な破壊衝動の塊である人狼に相応しい姿だともいえるのだが、勿論ニースはそんなティオを肯定することをできはしない。
「もう、もうやめてティオちゃん!ティオちゃんのそんな姿、私見たくないよ!!」


45:猟血の狩人
08/05/03 23:27:40 U0Vj+di8
ニースが夢見ていたのは、自分と同じ吸血鬼になって永遠に同じ時を歩むティオの姿だ。
こんな獣となって殺戮を繰り返すティオなど悪夢以外の何物でもない。
「やめて、やめてよぉティオちゃん…。あのちょっと単純だけどやさしいティオちゃんに戻ってよぉ…」
ニースの瞳からは、自分でも知らないうちに涙が零れ落ちていた。
吸血鬼になってからというものの、演技で流した偽りの涙はいくらでもあるが、本心から流した熱い涙は始めてのものだった。
自分の中にまだそんな熱い心が残っていた。などと思い起こす心の余裕は今のニースにはなかったが。
「なによあなた…、いきなり涙なんか流して。今さら命が惜しくなった……、グッ!」
いきなり目の前で泣き出したニースに多少の戸惑いを覚えたティオに、異変が生じた。
ティオは突然顔を顰めたと思ったら片手で顔を抑えてその場に蹲った。ひどく頭が痛むのか、額からは脂汗が浮き出ている。
「あぐ……っ、ニ、ニース…」
それはまったくの突然だった。擦れ声だったがニースの耳に、はっきりとティオの声で自分の名前が呼ばれたのだ。
「!!」
(もしかして、私を思い出したの?)
ニースは苦しげにしているティオに急いで近づき、その肩に手を掛けた。
「ティオちゃん、ティオちゃん!私を思い出してくれたの?!ねえ………」
切羽詰った声をあげ、ゆさゆさとティオの肩を揺するニースに、俯いていたティオがゆっくりと顔を上げた。
「ティオちゃ……、っ!!」
その顔を見て、ニースの体に戦慄が走った。
「甘いわね、あなた」
ニースを見つめるティオの顔に浮かんでいた表情は
両唇の端を頬まで裂けるくらいに釣り上げ、長い牙を剥き出しにしながら
獲物がまんまと目の前に飛び込んできたことに、この上ない悦びを感じた肉食獣の微笑みだった。
(まさか、罠だったの?!)
背筋を襲うぞっとした悪寒に、ニースは慌ててティオから遠ざかろうとしたが、
時すでに遅くティオの左手がニースの右腕を素早く捕らえていた。
「そっちから近づいてきてくれるなんて、手間が省けたわよ!」
ニースの視界に、自分に迫ってくるティオの長い爪が飛び込んでくる。

「ティ…!」
「さよなら」

ドンッ!

そのままティオが突き刺した右腕は、ニースの腹から胎内に入り、背中を真っ直ぐ突き抜けていた。
「うぁ………!」
けふっと咳き込んだニースの口から、どぼどぼと血が溢れ流れてくる。
「あ…、や。ティオちゃん……」
ニースの口からは血が、その瞳からは涙が止め処なく溢れ落ちてきている。
吹き出る血は冷たいのに、流れる涙は何でこんなに熱いのだろう。
「ふふふ…、お前の内臓、冷たいけれどいい感触よ」
ティオはずるりとニースの体内から血塗れの手を引き抜くと、体毛の上で濡れ光るニースの血をぺろぺろと舐め落した。

「てぃ お ちゃ   」

それだけ言うと、ニースはがくりとその場にうつ伏せに倒れた。
その姿をティオは夜風に全身の体毛をなびかせながら一瞥した後、来たときと同じよう跳躍して主の下へと去っていった。


46:猟血の狩人
08/05/03 23:28:40 U0Vj+di8



「さすがはティオ。いい仕事っぷりだったよ」
意気揚揚と戻ってきたティオにアレクサウスは満面の笑みを浮かべて迎え入れた。
アレクサウスの笑顔を見て、ティオの心に例えようのない優越感が湧き出てきていた。
(ああ、主様が今の瞬間だけ私のみのことを見ていてくださる!主様の笑顔が私だけに向いていてくれる!)
この笑顔のためなら、ティオはなんだってやってやろうという気になってくる。
例え先程のような吸血鬼が100体襲ってこようとも、負ける気すら起きない。
(にしても…、さっきの吸血鬼はおかしな奴だったわ。全然抵抗せずに私の名前ばっかり連呼して…)

ズキン

「っ!」
あの自分の名前を呼んでいた吸血鬼のことを思い浮かべた時、ティオの頭に刺すような痛みが走った。
不意をついた痛みに、ティオは体のバランスを崩しほんの少しだけ体をよろめかせた。
「どうしましたの?ティオ」
よろけたティオを見たアルマナウスが、心配そうにティオの顔を覗き込んでくる。
「いえ…、ちょっと頭痛がしただけです」
頭を抑えたまま、ティオはアルマナウスに心配をかけまいと笑顔を浮かべて答えた。
「あら…、それは大変。
兄様、もう目的は達しましたし帰りましょう。ティオも慣れない体に負担をかけすぎたみたいですし」
「そうだね。じゃあ早く僕たちの城に戻ろうか。そこでさっそく花嫁と祝言を挙げるんだ。
あ、その後でティオもたっぷりと可愛がってあげるよ。今日頑張ってくれたごほうびだ」
この言葉に、ティオの耳がピクッと反応した。
(主様が、私のことをかわいがってくれる?!)
「あ、主様!ありがとうございます!」
ティオは主の望外の温情に尻尾をパタパタと振りながら全身で悦びを表した。
また、アルマナウスはアルマナウスで労苦をねぎらう意図かティオの喉をごろごろと撫で上げた。
「可愛いティオ……、後で私も兄様と一緒に可愛がってあげますわ」
「!!きゅぅ~~ん…」
アルマナウスの意図せぬ褒美に、ティオはくたっと全身の力を抜いて鼻を鳴らし、喉から発せられるむず痒さを伴う快感に酔った。
「じゃあ、行こうか」
アレクサウスはリム、アルマナウスはティオを抱え昨夜と同じように夜の空へと浮かび上がった。
空に浮くティオが意図せずに下を見下ろした時、地面に横たわる腹に大穴を明けた吸血鬼が視界に入ってきた。
「……っ」
その姿見たときに、またティオの頭に軽い頭痛が走った。
(なんなのよ、あいつは…)
ティオは説明できない苛立ちを心の中に感じていた。
あの吸血鬼のことを、自分は何か知っている気がする。
だが、それを考えようとすると頭の中で誰かが『考えるな』と釘を刺してくる。
なら、考えない方がいいのだろう。主様もそう思っているに違いない。
あの吸血鬼のことを知っていて何か得をするというのか。自分には主様たちだけあればいい。それが今の私のすべてだから。
ティオはそれ以上、ニースのことを考えるのを止めた。
これから城の中で素晴らしいご褒美が待っているのだ。そっちのほうが今のティオにはより重要なことだった。


47:猟血の狩人
08/05/03 23:29:40 U0Vj+di8



「う……、ニース様、アンナ様……」
アレクサウス達が飛び去って暫くした時、丘の上でふらふらと蠢くものがあった。
先ほどニースに片腕を飛ばされたリオンが、意識を取り戻したのかゆっくりと立ち上がった。
「ニース様、アンナ様ぁ、どこで………!!」
霞む目で周りの状況を見たリオンは、目の前の惨事に絶句した。
自分の左横には、喉笛を食いちぎられ小刻みに痙攣を続けるアンナ。
自分の正面奥には胸板にぽっかり穴を開け、ピクリとも動かないニース。
「ニ、ニース様、アンナさまぁ!!」
自分の右腕と腹部の痛みさえ忘れ、リオンは二人の主に慌てて近づいていった。


第六回終


48:178
08/05/03 23:33:57 U0Vj+di8
以上です。
巫女さん本はここの住民なら絶対満足の行く出来ですよ。必見です。
それではまた…

49:名無しさん@ピンキー
08/05/04 00:05:09 V/AtkQCW
一番槍GJ!!

つか・・・・みんながいってる巫女さん本ってなんだ?

50:名無しさん@ピンキー
08/05/04 00:08:57 vwEnlslD
>>49
URLリンク(www.toranoana.jp)

51:名無しさん@ピンキー
08/05/04 00:13:46 mKN9c97S
GJつーかティオ人狼化とか予想外の展開すぎて驚いたw
なんだか話の展開そのものがふつーに楽しみになってきたよ

52:名無しさん@ピンキー
08/05/04 00:16:19 fIyBF97Z
長いと見にくいんだ。
時々ふらーっと出るくらいならまだしも、一気にくると胸焼けがする。
3レスくらいでムッハーできるSSがいいなぁ。

53:名無しさん@ピンキー
08/05/04 00:29:34 P1tQBn76
長いと見にくいんだ。
時々ふらーっと出るくらいならまだしも、一気にくると胸焼けがする。
3行くらいでムッハーできるSSがいいなぁ。

54:名無しさん@ピンキー
08/05/04 00:33:25 l1VMEAAj
>>48
GJ!
毎回面白いシチュエーションを混ぜてくれるので楽しみw
SSの長さは説明台詞が長いとかじゃなきゃ別に気にならないんだけどな。
こればっかりは個人によるだろうけど

55:名無しさん@ピンキー
08/05/04 00:35:00 g3TMjPCh
>>47
GJ!長くて全然いい。むしろ長いほうがいい
ここはエロパロ板だし。

>>53
久々に本気でイラッときた



56:名無しさん@ピンキー
08/05/04 00:44:43 V+AqwuI1
しつこい粘着だな
スルーしようぜ

57:名無しさん@ピンキー
08/05/04 00:56:37 V+AqwuI1
ID:mF5BD6Ji0
ID:Y+v24mrv
ID:SVSnhBId
ID:Bqvy0/3w
ID:HO9s6O/k
こいつチョンで馬鹿真性厨房でニートでゲハ住民じゃないの?

58:>>57
08/05/04 00:58:31 V+AqwuI1
しまった誤爆した
吸血鬼化したい・・・

59:名無しさん@ピンキー
08/05/04 01:05:34 +3c08pY9
ティオの人狼化は予想の斜め上をいって驚いたけど
なぜか悲しい気持ちになった。

余談だけど仮に敵を倒してティオの洗脳解いても人狼化は残ってそうだよな
問題はそれからな気がする
人狼ティオの運命が気になる(正気に戻った後の意味で)けど
良かったぜ GJ!

60:名無しさん@ピンキー
08/05/04 01:07:52 V/AtkQCW
まぁ>>53みたいな嵐が沸いてるみたいだから、あながち誤爆ではない

61:名無しさん@ピンキー
08/05/04 01:18:09 ymIyyzCw
>>59
正気に戻った後はお決まりの台詞
「ごめんね…わたし、こんな体になっちゃったよぉ…」
でさらにハァハァできるじゃないか

62:名無しさん@ピンキー
08/05/04 01:33:00 +3c08pY9
>>61
いや、その台詞の後でニースはどうするのかが気になる
吸血鬼にはできなさそうだし
かといってニースがティオの人狼の能力を有効に使うとは思えないし
せっかくの能力も宝の持ち腐れになりかねん

てか、最後は伯爵殺すのか?

63:名無しさん@ピンキー
08/05/04 01:38:17 TUQbFNvj
ニースはかなり強い吸血鬼だろうけど、最強じゃないってトコがいいな。
今までダークヒーロー的な魅力のあったニースがここまで苦戦を強いられる所に更に愛着が沸く。
続き期待してます。

64:名無しさん@ピンキー
08/05/04 01:48:26 mKN9c97S
>>52はともかく>>53はネタで言ってるんだろ。
3行で興奮できるSSとかそんなもん書ける奴がいたらいっそ尊敬するわw

65:名無しさん@ピンキー
08/05/04 02:16:16 l1VMEAAj
そういやティオちゃんぱんつはいてないのね
いや大したことじゃないけど

66:名無しさん@ピンキー
08/05/04 02:55:12 psU77xNH
文句言うならみなけりゃいいだろ、シリーズものなんだから専ブラ入れればあぼーんできるだろうに

67:名無しさん@ピンキー
08/05/04 02:56:11 psU77xNH
>>66のは>>53あてね

68:名無しさん@ピンキー
08/05/04 03:02:04 2K2l5dSk
>>48
乙でした!敵さん邪悪すぎてムァッハーした。
ニースはやっぱり、ティオ相手に抵抗すらできないのね。
無防備なニースってのもギャップ強すぎて。
ここでティオの、ニースの眷属としての覚醒に期待。
しかし人狼化したティオ…見てみたいなぁ。
人狼というとあのサイトさんあたり、のりだしてくれませんかねw

てーんーしーのよーうなー あーくーまーのーえーがおー

69:名無しさん@ピンキー
08/05/04 03:29:15 GLDHd0DY
>>64!これ以上私の心をかき回さないで…
やっ…やだぁ…忘れたくないのに、>>53の事が頭の中から消えて行っちゃうよぅっ…
あぁ…もう>>64様しか見えなくなる…>>64様ぁ…

三行だとこの程度が限度・・・(´・ω・`)

70:名無しさん@ピンキー
08/05/04 04:40:53 g3TMjPCh
巫女のやつ見て思い出したんだが・・・
某所で淫魔にアナルに尻尾いれられて、
淫魔化しちゃう巫女の絵を見たことあるんだが、それだけでどんな作品かわかる猛者はいる?よければ教えて欲しい
たしか、だんだんと肌が青色になっていってカラーで張られてたと思ったんだが


71:名無しさん@ピンキー
08/05/04 07:13:31 vwEnlslD
URLリンク(www.imgup.org)
これの事ならこのページのみで他は存在しない
そして肌の青色化はコラ
元ネタは神羅万象

72:名無しさん@ピンキー
08/05/04 10:33:52 +3c08pY9
>>71
しかし良くできたコラだ…
某所で見たことあるけどコラとは思ってなかった

73:名無しさん@ピンキー
08/05/04 11:01:26 vwEnlslD
URLリンク(www.imgup.org)
続きとしては存在しないが同作者のを一枚
堕ちないけどね、1ページだし

74:名無しさん@ピンキー
08/05/04 11:36:46 HioNaOW3
ファイルバンクにふたばのログ上がっとる!誰だか知らないけど乙

75:名無しさん@ピンキー
08/05/04 11:52:14 g3TMjPCh
>>73
俺の中ではあんたは神認定
thk

76:名無しさん@ピンキー
08/05/04 18:10:37 SDu0Y6d2
暇潰しにとらいすたーずを買ってみようかな
悪堕ちあるかなぁ

77:名無しさん@ピンキー
08/05/04 18:29:04 EvL1xqdj
久々に来た。相変わらずみんな元気そうでなによりだ
>>71>>73
初めて見たけどコラ元は買ったことあるわそれw
>>76
堕ちは無さそうな空気だが…ヒロイン3人もいたら1人くらいはあるかもな
しかしあってもあの絵じゃ堕ちきらないと思ふ。

78:献血の紅
08/05/04 18:44:25 +3c08pY9
こんばんは献血です。
前スレで『酒による悪堕ち』をコンセプトにした作品をもう一回作りたいと言ってましたが
ようやく(一部が)完成しましたので投下させていただきます。

79:狗と壺
08/05/04 18:45:08 +3c08pY9
絶海に浮かぶ孤島 『鬼牙島』の鬼共の本拠地、
そこで私 『伯(ハク)』は鬼の策略にはまり、現在鬼に捕まっています。

(不覚です……)



80:狗と壺
08/05/04 18:45:35 +3c08pY9
話は一ヶ月前にさかのぼります。

私は生まれつき狗の血を持つ故に、髪と同じ白色の犬の耳と尻尾が生えていて、それが原因で人間に迫害され、私は人里離れた場所での暮らしを余儀なくされていました。
そんなある日、私は人間の『彼女』と出会いました。
その時は敵意をむき出しにしたのですが、怪我をしていたため倒れてしまいました。
しかし、彼女は馬鹿にするわけでもなく、
それどころか私の住処を聞くと、住処まで私を抱えて怪我の看病をしてくれました。
しばらく彼女は私を看病してくれました。
看病をした後、私は「あなたの名前を教えてほしい」と言いました。


81:狗と壺
08/05/04 18:46:09 +3c08pY9
すると彼女は答えてくれました。 彼女の名は『小桃』というそうです。

彼女は悪事を行う鬼の本拠地『鬼牙島』へ乗り込むために、家来を探していたそうです。

私は怪我の看病のご恩で彼女の仲間になることに決めました。
人間は大嫌いだけど、彼女…いや、小桃様のためなら頑張れるから…  多分それは彼女のことが好きになったからでしょう。

そして私は小桃様の家来となりました。
そして彼女は名もなき私に『伯』という名前を与えてくれました。

それから、私は小桃様と家来探しの旅が始まりました。
そして、私達は猿の尻尾がある『猿飛(エンヒ)』さん(忍者らしい)、背中に黒い翼を持った緑の髪をした『空(クウ)』さん(クーデレ)と出会っていきました。


そして私達は鬼牙島に着いたのですが、鬼たちの罠にはまってバラバラにされてしまいました。
そう、孤立してしまったのです。



82:狗と壺
08/05/04 18:46:32 +3c08pY9
そして現在至るというわけです。
ちなみに私は今腕に縄をかけられ、自由が聞かない状態です。


「邪魔だと言うなら早く殺せばいいじゃないですか!」
私はこの島のボスに向かって叫びました。
しかし、そのボスはいまだに余裕の表情です。
「生憎だが、この俺、王鬼様は貴様らを殺すつまりはない、安心しろ」

そのボスの名は『王鬼』と呼ぶようです。

「オイ! お前達、アレをもってこい!」 「はっ!!」
王鬼は部下の鬼に何かを持ってくるように命令しています。

「一体何を持ってくるつもりですか!?」
「ふふふ…、お前を…いや、お前達を同胞にするための物だ」
その言葉を聞いて、私は不安になりました。

そして、しばらくして来たものは大きなつぼのようなもの。 というか壺です。本当にありがとうございました(でもデカイ)
壺をもって来た鬼の数は出て行く前は2人でしたが今は10人になっていました。 よほど重かったのでしょう。

「よし、この酒壺にこの娘を入れろ」 「はっ!」
すると鬼達は私の衣服と私を縛っていた縄を引き千切ってきたのです。
「い、いやっ!」 私は戦慄しながらも抵抗しましたが、鬼の力はあまりにも強すぎたため無力でした。

そして私は抵抗空しく衣服を脱がされ、酒壺に放り込まれました。



83:狗と壺
08/05/04 18:46:55 +3c08pY9
く、苦しい… このままじゃ死んじゃう……
小桃様…た…すけ…てぇ……

…う、嘘… 苦しくない…… 何で…ここには空気なんてないのに…
でも空気ができる…しかも……なんだかちょっとふしぎなきぶん………


(伯が入っている坂壺を眺めながら王鬼はにやりと笑う)
「ふふふ、この坂壺に入っている酒はな、『鬼変酒(おにへんしゅ)』といってな、
 人間を鬼にする成分が入ってるんだよ。」
(また、肺の中に満たすことにより直接の酸素呼吸が可能である。)




84:狗と壺
08/05/04 18:48:10 +3c08pY9
ふあぁ…なんだかからだがほてってきた……
きもちいいよぉ……なんだかすっごくからだをさわりたいきぶん…

あ、さわるときもちいいなあ…… ついでにあそこもさわっちゃえ…

んふぁ…、すごいぃ……もっとさわりたいよぉ………



「気持ちがいいだろう? その酒はな、飲んだ人間の体を気持ちよくさせる媚薬と同じ効果もあるんだ」




85:狗と壺
08/05/04 18:48:33 +3c08pY9
はっ、ああっ…ここさわるときもちいい、きもちよすぎてきちゃうぅぅ………

んんっ、あああっ!! イ、イクウウウウウウウウッ!!

はぁ…はぁ……なんだか体がムズムズする………

あ、なんだかふしぎなかんじ……まるでちからがわいてくる…
からだがあおにかわってく…………
それに、けんしがのびてく………

おでこからなんだかごつごつしたのがはえてくる……
………ああ、これがつのなんだぁ……………

あはははは……おにってこんなにきもちいいんだぁ……




86:狗と壺
08/05/04 18:48:57 +3c08pY9
「そろそろいいだろう、おまえらアイツを出してやれ」 「はっ」

ん、眩しい……



それから私は彼の部下によってロープで助けられ(?)、私は鬼となった姿を見せた。

「いい姿だ、さすがは鬼変酒だ」

私は頭がグルグルしているので、彼の言葉が良く解からない。
でも、それは一瞬だけ………。
頭の中の酔いはどんどん引いていく…
そして私の思考もどんどん変わっていく……



87:狗と壺
08/05/04 18:49:20 +3c08pY9
そんな時、一人の小柄な少女が現れた。
「お前は小桃!?」 「見つけたよ! 大鬼!」
ああ、あの姿は…

「まさかここが気づかれるとは思ってなかったが、それよりもお前の家来を見てみろ!」 「!?」
「青い髪と体、灰色の二本の角、以前にあった耳と尻尾はまだ残っているが、その姿はまさに鬼だろう!」 「そ、そんな……」
その人は私を見て、ショックを受けている。

「あなた!伯ちゃんに何をしたの!?」 「ふん、そんなこと、貴様が知るつもりはない!」
なんだか頭がクルクルする…。

「さあ、できたての我がしもべよ! その娘を主である俺の眷属にするのだ!!」

そのコトバを聞いた私は『完全に』目覚めた。

88:献血の紅
08/05/04 18:51:40 +3c08pY9
ここからはマルチエンド形式を使ってます。
今回はAパターンを投下します

89:狗と壺 【鬼エンド】
08/05/04 18:52:41 +3c08pY9
主? ああ、そうだ……私はこの人の傀儡、つまり下僕なんだっけ…

「はい、御主人様…仰せのままに……」 私は彼にそう答えた。

私は御主人様の言うとおりに、目の前の少女を捕まえるために近づいた。

「伯ちゃん! やめて!!」




90:狗と壺 【鬼エンド】
08/05/04 18:53:18 +3c08pY9
そして、少してこずってしまったけど、ようやくこの子を捕まえた。
剣で攻撃してきたものの、その剣撃自体が生ぬるかったので払うのは割と簡単だった。

「良くやった我がしもべよ! 眷属にする前に、まず手始めにそいつの衣服を破ってしまえ!」
「はい、仰せのままに」 私は彼女の綺麗な衣服を破り捨てた。
「あ!ああっ!!」 彼女は頬に涙を流していた。

何で泣くんだろ? たかだか服なのに……

「おい、女! 貴様のために酒壺に縄梯子を付けてやった!
 これで貴様は放り込まれる心配はない! さあ、安心して鬼となれ!!」
「イヤ! 鬼にだけはなりたくない!」 彼女は御主人様の前でみっともなく抵抗する、そんな彼女を私は哀れに思った。


91:狗と壺 【鬼エンド】
08/05/04 18:53:41 +3c08pY9
「ふん、まあいい… どうせ貴様は鬼となる運命、かつての家来によって鬼となるがいい!!
 しもべよ! その人間の女と共に酒壺に入れ!!」

私はその命に感動した。 哀れな人間の少女が鬼になるところを直で見ることができるのだから。

「光栄です! この命、私が成します!」 私の心は歓喜している。 こんなに嬉しいことはない…
「伯ちゃん…」 でも、彼女は涙を流している。
だから言ってあげる 「大丈夫…私があなたを変えてあげる…」 と……

そして私は彼女を背負って、酒壺に入っていった……。



92:狗と壺 【鬼エンド】
08/05/04 18:54:06 +3c08pY9
それからは簡単なこと……
彼女を抱きしめて、口付けを交わして、可愛い体を愛撫して、彼女を悦ばせる……。
最初は嫌がっていた彼女の顔もしだいに恍惚の表情を帯びていく。


そして彼女の股から潮が噴出したとき、変化が訪れた。
彼女の長い髪は、黒から桃色に変わっていった。 私はその髪を愛おしく撫でた。
彼女の人の耳は、次第に尖り始め、ヒトならざる形へと変わっていった。 私は後ろに回って、その長い耳を甘く噛んだ。
彼女の可愛らしい四肢の色は、肌色から苺のような赤へと変色した。 私はその四肢を青い手で撫でた。
幸せそうに開く彼女の口にある四つの犬歯は、次第に伸びていき、無力で愚かなな者共に力を示す牙となった。 私はその牙を舌で舐めた。

そして、彼女の額からは一本の角が音を立ててゆっくりと伸びていった。 その角の色は、灰色の私と違う黄色。

彼女の顔からは鬼となった喜びの表情が浮かんでいる。
それは私も同じ、私も鬼に生まれ変わったことを喜んでいる。
そして、私と彼女は祝福の深い口付けを交し合った。



93:狗と壺 【鬼エンド】
08/05/04 18:54:27 +3c08pY9
そして、私達は壺から上がった。
「お待たせいたしました御主人様、彼女を我らの同胞にして参りました」 「ふむ、ご苦労 さて、桃色の鬼とやら気分はどうだ?」
すると彼女は快楽を兼ねた悦びの表情で答えた。
「はい、私は今、鬼となってとても幸せです!」
御主人様は微笑んだ。
「そうか、そうであれば俺は嬉しいぞ
 では、お前達に命令する! 残りの侵入者二名を鬼に変えるため、捕まえてくるのだ!」
そんな……残りの二人も鬼にできるなんて
「「ハイ! 仰せのままに!!」」
私達はその命を喜んで受けた。



94:狗と壺 【鬼エンド】
08/05/04 18:54:53 +3c08pY9
例の二人を捕らえるべく、私達は行動を開始した。 その途中、
「ねえ、ちょっとだけいいかな?」
彼女は何かをねだる様に話しかけた。
「何です?」
「さっきの続きがしたいけど、いい?」
ああ、そんなこと……
「口付けのことですか、いいですよ でも、他のところも触ってくださいね」 「うん」
そして、私達は少しだけ体を交わり合わせることにした。

だって、まだ時間はあるのだから……



95:献血の紅
08/05/04 18:58:03 +3c08pY9
以上で投下終了します
>>88で言ったとおり、今回はマルチエンディング仕様なので
もう一つのエンディングがあります
そっちはもうすぐ完成予定です

96:名無しさん@ピンキー
08/05/04 19:05:57 V/AtkQCW
GJ!
いつもいつもアンタの作品を楽しみにしてるぜ!
ただもうちょっと1レスに文章を詰めてほしかったが・・・・まぁ、そんなのは俺の勝手だよな
もう一つのやつも待ってます!

97:名無しさん@ピンキー
08/05/04 19:43:48 ZtAz+k+v
GJ!
職業クーデレに思わず笑っちまったぜ。
別エンディングも楽しみにしてるよ。

98:名無しさん@ピンキー
08/05/04 22:50:19 g0kDjQ6E
Bugbugの記事に黒化した舞夢がのってたけど
なんかブラック聖闘士っぽいな

99:名無しさん@ピンキー
08/05/04 23:17:24 sxjntOB/
すでに前回からして聖衣っぽかったしな。
鳳翼天翔を思い出したのは俺だけk

100:名無しさん@ピンキー
08/05/04 23:37:27 5x6ZBD9g
舞方氏のところに洗脳来てたな。

101:名無しさん@ピンキー
08/05/04 23:49:26 2MuVEZUI
>>74
>>19

102:名無しさん@ピンキー
08/05/05 00:00:34 jnvl2EQo
AnonIBのヒプノスレが新スレになってたから見たんだが
キリスト教圏だと蛇の目ににらまれて催眠術にかけられるシチュって、
悪魔に誘惑されて悪堕ちと同義なんだな
このへん文化圏の違いが如実にでてる感じでオモロイ

103:名無しさん@ピンキー
08/05/05 00:10:55 2+H0eEtu
悪堕ちってさ、もちろん書き手にもよるけど堕ちるヒロインの一人称だと
通常の三倍で萌えないか?

104:名無しさん@ピンキー
08/05/05 00:16:43 hgxmEQIv
同意せざるをえない

105:名無しさん@ピンキー
08/05/05 00:20:13 IdE+4Q45
一人称と三人称には、それぞれの良さがあると思うんだ。
俺が感じる三人称の良さをあげると、今まで(読み手の)味方だった者が敵になって、
やりきれないような切なさがいいのだ。
寝取られた悔しさみたいな。
アニメで悪堕ちを見かけた時は、こんな感じになる。

一人称視点は、とにかくヒロインの心理変化が楽しめるね。

106:名無しさん@ピンキー
08/05/05 01:02:30 CnnecWla
URLリンク(www.nicovideo.jp)

既出かもしれんけどこれサイコー

107:名無しさん@ピンキー
08/05/05 03:21:37 Edl4cx8d
一人称の良い?所はとかく書くのが楽な点、悪堕ちに限ってはだが


108:名無しさん@ピンキー
08/05/05 03:40:13 2+H0eEtu
それは投下を期待してもいいってことだな?

109:名無しさん@ピンキー
08/05/05 11:51:21 uEeqpXwT
MC・悪堕ちとハーレムが重なった場合、
ここに投下するべきか、ハーレム小説に投下するべきか

110:名無しさん@ピンキー
08/05/05 11:56:04 C/HF16dQ
MCスレという手もありますぜ

111:名無しさん@ピンキー
08/05/05 16:23:45 yvwiKosD
filebankの例の場所誰か教えてプリーズ

お気に入り登録してたけどPCの不都合で消しちゃったからわからなくなっちゃったんだ…

112:名無しさん@ピンキー
08/05/05 16:49:18 Edl4cx8d
過去ログ読めばすぐ分かる

113:名無しさん@ピンキー
08/05/05 17:00:47 6EQWPyJp
PCを洗脳して聞き出せばいいよ

114:名無しさん@ピンキー
08/05/05 17:34:57 yvwiKosD
>>112
前スレまでは読み返したけど情報なし
それ以前は読めないからわからないよ

>>113
記憶喪失(フォーマット)させて、新しい人格(OS)入れたから
洗脳してもわからないって言うから無理

って書こうと思ったら保管庫あったこと思い出した俺涙目OTL
二人ともありがと

115:名無しさん@ピンキー
08/05/05 19:47:59 RqvCaGkm
Firefoxのオンラインブックマークを登録しておけば
PCがクラッシュしてもブックマークは生き残るからお勧めさ。
ま、sennouakuotiなんだけどね。

116:名無しさん@ピンキー
08/05/05 22:01:12 2+H0eEtu
みんなは二次とか同人誌でどれぐらい悪堕ちの作品知ってる?
俺はジャンヌとかしか知らないんだが
聖剣のリースとかもあるーだよな?

117:名無しさん@ピンキー
08/05/05 22:19:54 51mGctlx
>>116
ルキンフォーの同人誌はいろんな意味で良い

118:名無しさん@ピンキー
08/05/05 22:41:17 V2o7jxgy
サクラ大戦の桜が悪堕ちする同人誌もあるな

119:名無しさん@ピンキー
08/05/05 23:01:48 ZzWWgjqu
>>118
kwsk

120:名無しさん@ピンキー
08/05/05 23:07:42 j/78eT7F
俺もFBのアドレス忘れたから>>115たよりにやってたら
悪堕ちと洗脳逆だったorz

121:名無しさん@ピンキー
08/05/05 23:09:54 uutoWDZe
悪落ち作品のDBでも作ろうか?

122:名無しさん@ピンキー
08/05/05 23:12:29 Edl4cx8d
>>119
Happy Go Luckyの5かな
最終的には魔族化してた

123:名無しさん@ピンキー
08/05/05 23:13:35 qjKuS42R
>>121
wikiなら編集に協力するよ

124:名無しさん@ピンキー
08/05/05 23:14:26 Ywqi8xfR
>>118
詳細求む

125:名無しさん@ピンキー
08/05/05 23:20:23 V2o7jxgy
>>119,124

詳細は122氏が仰る通り。
黒ノ巣会の羅刹に犯されて魔族化して、内部リークで
華激団本部を強襲して終わりって話だった。

126:名無しさん@ピンキー
08/05/05 23:48:02 G8g4Ruw+
自分のお奨めははYokohama junkyの『廃棄』
モリガンがナコルルを陵辱の後に吸精鬼にしてしまう内容
最後でナコがレラ(ふた)を搾り尽くして吸精鬼化する

127:名無しさん@ピンキー
08/05/05 23:48:44 uutoWDZe
>>123
wikiか良いね
自分で立てたことは無いけどやってみようかな?

128:献血の紅
08/05/06 00:31:29 yfbSoWVB
こんばんは献血です。
ようやく狗と壺の別エンドができたので投下します。
ある意味真のエンディングですよ

129:名無しさん@ピンキー
08/05/06 00:31:45 L5TZGaoU
>>126ってもしや入手困難?

130:狗と壺【欲望エンド】
08/05/06 00:32:14 yfbSoWVB
私は自分の事を主と呼ぶ男の方へ顔を向けた。 そして、
「何をやっている? 捕まえるのはあの娘…」
その後の言葉は続かなかった。
何故なら、私がその男の喉笛を自慢の鋭く尖った爪で突き刺したのだから。

「ブフェッ…ゲハァ……」 そして男は息絶えた。 それが王鬼(オウキ)という男のあっけない最後だった。

そして、私は既に亡骸となった男の言う『娘』の周りにいる鬼共を犬の速さと鬼の腕力で蹴散らした。
鬼達は私を殺そうと集まってきたが、一瞬でにらみつけたらすぐに黙った。 鬼とて命がほしいのだろう、私も無駄な殺生など「必要としていない」

「伯ちゃん……」 喜びの涙を流す彼女。 いや、『小桃様』
きっと彼女は私が鬼となっても、かつての心を持っていたことへの喜びだろう。

しかし、私は鬼共に声高く宣言した。

「聞け! 鬼達よ!!
 私は確かに王鬼を殺した! しかし、それはこの島を崩壊させるために殺したのではない!」
突然の事に驚く鬼と御主人様 そして、王鬼の死体から金色の一本角を一気に引っ張って肉体から抜き取った。
「あのような男がこの鬼牙島を統べる者であること自体が愚かだからだ!
 だからこそ私はこの方こそが島を統べるに相応しいと思ったからだ!!」
言い終えた時には既に私の人差し指は御主人様へと向けられていた。



131:狗と壺【欲望エンド】
08/05/06 00:32:34 yfbSoWVB
「え… 私?」 彼女が戸惑うのも無理はないと思うが、それでも私は続ける
「王鬼を殺した責任として、私が彼女を二代目王鬼とする!
 貴様ら、依存はないな!?」 すると鬼達から反対の雰囲気が消えうせた。 そして御主人様はショックを受けた。

「伯ちゃん…な、なんで……
 なんでそんなこというの!?」
なぜ? まあ、突然だから解からないのだろう……
「私を助けるために王鬼と鬼をやっつけて、私を助けたんでしょ!?」
彼女は何もわかっていない……
「確かに私は王鬼を殺しましたが、それ以外の鬼は殺していません
 更に言うと、私はあなたを助けたわけじゃありません」

「ウソ! 伯ちゃんは私を助け……」 涙目で私の言葉を否定しようとする彼女はハッとした。
そう、彼女を縛っていた縄は外していなかった。

さらに、「……グッ…何なんだよぉ…一体…」 私が蹴散らした鬼達は次々と目を覚ましていく。
そう、確かに鬼は『蹴散らした』が、『殺して』はいなかった。

そう、私は元からかつての心など無かったのだ。

「ここからは私一人で十分、私と二代目候補以外はこの部屋を出よ!!」
そして、鬼達は一人残らず部屋を出て行き、私と小桃様だけが残った。
私は、彼女を縛っていた縄を引き裂く、そしてその縄は、縛るものも、力をも失い落ちていった。



132:狗と壺【欲望エンド】
08/05/06 00:32:54 yfbSoWVB
「やっと、二人きりでお話ができますね」 私は以前のように微笑む。
しかし、彼女は落ち込んでばかり。
「鬼に…されるんだね……私………」 「小桃様…」
自分の運命に悲しむ彼女に私は、私と同じ大きさの体を抱きしめ、そして小さな唇を重ね合わせた。
「ん…んんっ!……」「ふ、むぅ……くちゅっ…」
キスは深い深いディープキスへと堕ちていく…
無論、彼女は抵抗した。 しかし、私が与える快楽に堕ちていった。

そして、唇と唇、舌と舌が離れ、そこから糸が引かれた。 
でも、口を離しても、抱擁は未だにつづく

「泣かないで下さい…私はただ、あなたが欲しいだけだから…」
その言葉には嘘も偽りも無かった。
「伯ちゃん……」


133:狗と壺【欲望エンド】
08/05/06 00:33:34 yfbSoWVB
「私はあなたと出会うまで、人間に迫害されて生きていきました
 その中で私は全ての人間を憎みました
 でも、あなたと出会って私はあなただけを信じることにしたんです
 だけど、あなたの目的の『鬼退治』が終われば私とあなたは離れ離れになる」
語れば語るほど私の胸は苦しくなって、悲しくなって涙を流す。
「だったら、私と一緒になりたいなら私と一緒にいようよ
 いちゃいけないなんていわないよ」
いつも…いや、島に向かう前はムードメーカーだった優しい彼女も今は彼女と一緒にいたいという願いでいっぱいだろう
その証拠に涙を流している。
でも彼女は故郷に帰れば沢山の優しい仲間たちがいるだろう。
でも、私にとっては彼女だけだ。
「私が欲しいのは、あなただけです……
 あなたには私だけ見て欲しい!私だけを愛して欲しい!
 私は欲しい、あなたの全てを全部!」 「伯ちゃん…」



134:狗と壺【欲望エンド】
08/05/06 00:34:04 yfbSoWVB
あの時、彼女と初めて出会った時、恨んでいた耳と尻尾を「優しくて可愛い」と言ってくれた小桃様、
その後に名も無き私に『伯(ハク)』という名を与えた小桃様、
数え切れないほどに、うわべだけの敬語しか言えない荒んだ私にない暖かな優しさをくれる小桃様
あの優しさのために私は彼女を助けた。 そこから私は誇りを持つことができた。
でも、猿飛(エンヒ)さんや空(クウ)さんが家来に加わった時から不安になってきた。
私はいつかは彼女と分かれてしまうのではないか?
またあの時に戻ってしまうのではないのか?…と

それから私はあせり始めた。 
それが原因だろう… あの時罠にはまったのは…きっと…



135:狗と壺【欲望エンド】
08/05/06 00:34:47 yfbSoWVB
気がつけば私は、自分の胸の内を彼女に、愛しの小桃様に曝け出していた。
「違うよ…」 彼女は泣いている
「違う…よ…
 伯ちゃんはなんにも…悪くな…い…よぉ……」 泣かせてしまった そんなつもりは無かったのに…
こんなことをしても彼女は許してくれる。 こんな私でも一緒に暮らしたいと願っている。
でも、私は鬼となってしまった。 ただでさえ犬の耳と尻尾を持つ私が鬼となれば、余計に迫害されるのは目に見えている。

そして、私が完全に目覚めた時点で彼女への欲望はもはや自分でも止められなくなっていたのだ。
もはや私は思考も心も何もかもが、もうめちゃくちゃになってしまった。


私は、王鬼の角を手に小桃様を抱え、歩く。 その方向はあの鬼変酒が入った酒壺。 その壺には縄梯子が吊るされていた。
「ごめんなさい…小桃様
 私にはこの道しか残ってないのです!」
そして、そのまま縄梯子を上り、
私は愛する主と共に落ちていった。




136:狗と壺【欲望エンド】
08/05/06 00:35:10 yfbSoWVB
小桃様の肺はしばらくして、酒で満ちていった。
だけど彼女の顔はさっきの事を思い出しているのか、ひどく暗い。
壺の中に刺す光は少ない、でも私は鬼、鬼の目は暗い場所でもものを見ることができる。
そんな彼女を私は、ただ抱きしめる。

そして私は、手にしていた金色の角の根の部分を彼女の額に突き刺すように当てた。
「(ひっ! イタイ!いたいよぉ!)」 角は彼女の額に引っ付いていく。
額から生じる激痛に苦しむ彼女を、私はぎゅっと強く抱きしめる、
彼女を苦しめる罪悪感よりも、彼女が鬼に変わる恍惚感が支配していく。


それからの私はただ、「鬼になって欲しい、私と同じになって欲しい、鬼になったら私を使っていいから…」と考えるようになっていった。
鬼のような欲望は心のありとあらゆる部分を蝕んでいった。
私は欲望に忠実になっていった。 いや、欲望は更に強くなっていった。
その私の欲望は、小桃様を更に強く抱きしめる。



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