◆ファンタジー世界の戦う女(女兵士)総合スレ 6◆at EROPARO
◆ファンタジー世界の戦う女(女兵士)総合スレ 6◆ - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
08/04/24 22:16:25 hN/5mPaf
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3:名無しさん@ピンキー
08/04/24 23:27:10 gVtRnqAG
乙です!!

4:名無しさん@ピンキー
08/04/25 05:04:50 53S7SADZ
>>1乙!

5:投下準備
08/04/25 06:09:30 I2SYk7dj
実生活における年度替りの混乱と長い規制に巻き込まれてしまい、
またスレの残容量に納まるか不安だったので投下が大分遅くなってしまいました。
>>1乙であります。

本作は独占派・和姦至上主義の方にはお奨めしません。
(自分も本当は独占派なのですが)
和姦が無いとは言いません。
でも和姦だけの話かと言われれば、それは・・・

そんなことよりファルハードの人気がまた凋落しそうで不安。
彼は実際のところ英雄だし、名君なんですよ?
では外伝後編をどうぞ。

6:Prince of Dark Snake
08/04/25 06:10:49 I2SYk7dj
 
燃える蝋燭の薄明かりの中で、王の手がリラーの腰を撫でる。
鍛え抜かれた筋肉の存在が、指を介して伝わった。
労働もせず後宮に侍り、ただ主の訪ないを待つだけの美姫たちとは違う肉体だった。
娘子兵は身体が資本である。
三度の食事に事欠かぬどころか、食べて身体を作る事も任務のうちだ。
彼女達は、意図して戦闘用の身体を造る。
それは、剣闘興行が盛んに行われていたルームならではの発想であり、伝統だった。
パルティアでは未だに経験則でしかない事だが、西方の帝国では一歩も二歩も先を進んでいた。
強い筋肉と骨格を身に付けるための食餌法という概念を、ルーム人は技術として発達せしめた。
その技術は宮廷を護る近衛たちに受け継がれ、現在パルティアの王宮にも伝えれたのだ。

「はぅっ……」

しかし、彼女達とて肌まで作り変えられてしまった訳ではない。
男の愛撫を受ければ、普通の女と同じように反応する。

「ここが感じるのか? リラーは」
「あんッ、」

背中に這う指の感触に、思わず唇から喘ぎが漏れる。
リラーにとって王は初めての男だが、ファルハード王はすでに何十人もの女を知っている。
柔らかく、しかし時には強く。
どこをどう責めれば女がたまらなくなるか、十二分に知った指使いであった。

「へっ、陛下…… あぅぅ、そんな…… 」

優しくそっと触れられたなら、堪えられない。
錬兵場で杖に打たれた痛みにも耐えた背中が、男の愛撫でわななく。
鍛え上げられた身体が、小娘の様に震えた。


7:Prince of Dark Snake
08/04/25 06:12:18 I2SYk7dj
 
その様子を、窓の外から眺める四つの眼があった。
暗殺者や隠密が潜入する危険がある王宮では、不審人物の取り締まりは厳重である。
王の私室を覗くような不届き者は、両眼を抉り出されても文句は言えない。
今夜の後宮も、数個小隊の宦官兵が巡邏している。
だが、闇の中物音一つ立てずに樹上へよじ登り、茂る枝葉の影に身を隠した少年と小鬼の姿を、
彼らは全く捉えることが出来なかった。

『おい、……なっ、何をしてるんだよ、父上は?』
『ひょ? 男女の交わりをご存じ無いのかえ』
『し、知ってるけどさ……』

イスファンディアールも、男女の秘め事に無知という事はない。
物陰でふしだらな睦み合いをする男女を見かけた事もある。
誰も見ていないだろうと彼らは高を括っていたのだろうが、
まさか王子殿下が宮殿の屋根の上から覗いていたとは思うまい。
しかし、そういう行為をまじまじと見るのは初めてだ。

『でも、父上には母上がいるのに……』
『存外間抜けな若君様じゃな。
 御身の妾腹の妹たちは、王妃と交わってこさえた餓鬼ではなかろうて』
『ぐ……』

言われてみればその通りだ。
ファルハード王の正嫡の子は自分と妹だけであるが、下にはもう二人妹がいる。
彼女達は父王が側室に産ませた王女たちだ。
本当は嫡出の弟が一人いるはずなのだが、難産の所為で生れ落ちた時には息をしていなかった。
男の遊び相手が欲しかったイスファンディアールは、死産の知らせを聞いてひどく哀しがったものだ。

『それにしたって、なんでリラーなんだ?』
『さて、儂にそんな事を言われても喃……』
『もっと見た目の綺麗な女官は幾らだっているだろ?』
『あいつも醜い部類の女ではなかろうて。あるいは美人なだけの女は抱き飽きたかの』
『……』
『なんにせよ、他人の趣味に口を挟もうとしても無駄じゃ。
 儂はそれを十五年ほど前に思い知らされておる』

老小鬼は肩をすくめ、それ以上何も言わなかった。
イスファンディアールは再び父の部屋へと視線を戻す。
丁度リラーの帯が解かれ、鎧下も脱がされようとしていた。
 

8:Prince of Dark Snake
08/04/25 06:13:10 I2SYk7dj
「フフッ…… 愛い奴」
「むぅっ」

唇を塞がれ、言葉を漏らすことも封じられた。
そのまま口を貪られる。
淫らな水音を立てて、唇と唇が絡み合う。
そして背中を撫でていた指が、今度は女を前方から攻める。
露になった乳房を、王の掌が強く掴んだ。
五指が食い込み、揉みしだく。
たわわに膨らんだ乳房は、リラーにとって数少ない女を意識させる部分だ。
そこを男に触られると、身体が奥から熱くなる。
やわやわと胸乳を揉みつつ、ファルハード王は彼女の身体を床に押し倒した。

「ぁ……んっ」

仰向けに寝そべる彼女の身体を、蝋燭の明かりが照らす。
小さな呻き声を上げて、リラーは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
日頃の毅然とした態度は微塵も感じさせず、
ここに居るのは未だ男女の交わりに戸惑いを隠せない一人の娘だ。
その初々しさが、男心をくすぐった。
ファルハードはリラーの乳房から手を離すと、そっと彼女の下半身へと伸ばした。
娘子兵の鍛え抜かれた脚を掴み、持ち上げる。
彼はその足首に優しく唇を付けた。

「な…… 何を! ……お止め下さいっ」
「いかんか?」
「私めの如き女の足に口を付けるなど、御身の汚れになりましょう……」
「ほう? そういうものかな…… ちゅっぅ」
「ああぅっ」
「ちゅ、ちゅ、ちゅ、ちゅっ……」

制止に耳を貸さぬまま、ファルハードは女の脚に接吻をしていく。
足首。脛。ふくらはぎ。
肌に吸い付く音が、リラーは無性に恥ずかしかった。
他の男にこんな事をされたら、容赦なくその頭を蹴り飛ばしているだろう。
だが、そんな真似は出来ない。
ただ彼女は、男の口付けを困惑しながらも受け続けるだけだ。
それは相手が主君だからなのか、それとも自分にとって特別な男だからなのか、
リラーにはまだ判別がつかない。
仮についたとしても、後者だとは絶対に認められまい。
主君に懸想するなどは、娘子兵には許されぬ事なのだから。
片手でリラーの脚を持ちつつ、ファルハード王はもう片方の手を両脚の付け根へと伸ばす。
遮る布地とてなく、王の指は容易くリラーの股間に至った。

「きゃっ!?……あっ、ぁっ」

そのまま押し当てるように縦になぞる。
縮れた毛が擦れてしゃりしゃりと鳴った。
裂け目を愛撫され、リラーは震えた。
しかし先ほどまでのように恐れからではない。

「や…… やあ……っ、ああんっ!」

指に水気が絡みつき始めたのを悟ると、ファルハード王は攻め手を中にまで及ぼしていった。
男を知ってまだ間もない鮮やかな色の花弁の間に、王の指が滑り込む。
指の腹で膣内の柔襞を掻き毟ってやると、リラーの唇から喘ぎ声が発せられる。
普通の女の様な、娘子兵としての彼女からは決して吐かれる事のない嬌声が部屋に響いた。
それを聞いて徒心を誘われぬ男はおそらく居まい。
まして平素のリラーの様子を知っている身であればなおの事だ。

9:Prince of Dark Snake
08/04/25 06:14:50 I2SYk7dj
身悶えする女の脚を、ファルハード王はようやく解放する。
その代わりに、寝転ぶリラーの身体を横に転がし、うつ伏せに這わせた。

「はぅ……」

背中に熱い肉体が覆い被さってくるのを感じると、リラーは心臓の高鳴りを抑えることが出来なかった。
半分は畏れから、残りは期待からだろう。
早鐘を鳴らすようにという形容がまさしく当てはまる。
リラーは羞恥に身を焼かれ、顔は朱に染まっていた。
その耳元に唇をよせ、王はそっと囁く。

「耳まで赤くなっておるぞ。リラー」
「は、はい…… 申し訳ございませぬ」
「何を謝る事があるのだ。耳が赤くなって何の不都合がある」
「おっ、お許しを…… しょ、少々血迷っている様で御座います」
「フフッ…… 謝ってばかりだな、リラーは」

ファルハード王は微笑ましげに揶揄した。
既に幾度も身体を交えているというのに、リラーは相変わらず小鳥の様に怯えている。
これがもっと幼い娘であるならば得心もしようが、
女だてらに剣を取って戦う娘子兵がかように悶えるのは意外だ。
初心な様子を失わない彼女の有様に食指をそそられて、王はリラーの臀部に手を添える。
膝を立てて腰を持ち上げさせると、瑞瑞しい筋肉に包まれた下半身の張りの間に女の秘所が垣間見える。

「では、入れるぞ」
「ふぁぅ!」

拒もうとする暇も無く、いや、もとより拒絶する自由などはないのだが、
指で押し開かれたかと思った瞬間には股間に異物が突き立てられていた。
愛撫によって解されていた女陰に受け入れられ、
硬く張り詰めた男性器はぴっちりと隙間無く包み込まれた
不思議な事でも無い。
彼女の身体は、そこを穿つ物によって拓かれたのだから。

「あ、あああぁぅ……」

一息に奥まで突き抜かれ、リラーは呻いた。
顔を絨毯に押し付けつつ下半身だけ持ち上げた今の格好は、まるで獣の交尾のようだ。
けれども、彼女はこの形が嫌いではない。
なぜなら、後ろから貫かれるのなら主君の顔を見詰めずに済むからだ。
ファルハード王もそれを察してか、無理強いして正対させようとはしない。
ただし、時には彼女を情事に慣れさせるために、あるいは恥かしがる初心な様子を彼が愉しむために、
あえて吐息が頬をくすぐる程に顔を近づけて交わる夜もあるが。

「ゃ……、ぅんっ!」

膣中を掻き出される感触の直後に、再び深く突き込まれる。
肌が肌を叩く乾いた音に、リラーの喘ぎが重なった。
ファルハード王は繰り返し彼女の女陰を抉る。
臀部を掴む手に、瑞瑞しい弾力が感じられた。

10:Prince of Dark Snake
08/04/25 06:16:21 I2SYk7dj
 
「やっ、あぁっ……、くぅ……ん……、ああぅ……!」

膣壁に擦り付ける動きは強弱を交え、巧みに女の官能を掘り起こしてゆく。
堪えきれず、そのたびにリラーは床の敷物に熱い吐息を吐き掛けた。

「あんっ!」

男の手が腰部から上半身へと伸びた。
すくい取るように五指が胸乳を掴む。
余計な脂肪を付けないように心がけているリラーだが、付いてしまうのは仕方が無い。
女性らしい膨らみを握りつぶすように搾られる。
だが、痛みよりも甘い痺れに似た感覚が勝ってしまうのは何故だろうか。
頭の中では女を捨てる覚悟が出来ていたはずなのに、
肉体の方はこんなにも容易く性交に馴染んでしまっている。
それは喜ぶべきことなのだろうか?
それとも不甲斐ないと考えるべきなのだろうか?

「可愛らしい声も出せるではないか。リラー」
「えっ?」
「閨でまで、厳しい態度を続けなくても良いのだぞ」
「……くぅっ、うぅぅ」

優しい声で、ファルハードは女の耳元で囁く。
しかし、返ってリラーは上等の敷物に爪を立て、快楽に押し流されようとするのに耐えた。
娘子兵として、王の前で乱れる姿を見せたくは無い。
訓練によって叩き込まれたその信念は、既に習性と言っても良かった。

「フフフ……」
「ひゃっ!?」

その様に興を覚えてか、王の指が硬くなった突起を挟み取った。
彼女は再び喘ぎ声を漏らす。
乳首が転がされ、伸ばす様に引っ張られる。
その最中も、腰の動きは休んでいる訳ではない。
幾度も幾度もリラーの子宮を突き上げ、膣壁に己の存在を摩り付け、彼女を休ませる事はしない。

「やっ、だ……駄目です…… これ以上は、お許しを……」
「ふむ? 何ゆえ今更止めよと申すのか?」
「かように、寵をお受けし続けたなら……
 もしかして王の御子を授かってしまうかもしれませぬ」
「それがどうしたのか?」
「わ、私め如きがカイクバード家の御子を産むなど、そんな大それたこと…… きゃう!?」


11:Prince of Dark Snake
08/04/25 06:16:58 I2SYk7dj
 
一際強く膣奥に男根を打ち込まれ、リラーの言葉は呻き声で中断された。
そのまま激しく抽送を繰り返す。

「ひゃっ、あっ、」

掻き回される度に次第に膨らんでゆく官能に、リラーは蕩かされてしまいそうになった。

「構わぬ。その時は余の子を産め」
「そ、そんな…… はぅ!」
「男児であれば余が手ずから教育し、きっとカイクバードの裔に恥じぬ王子に教育するであろう。
 英雄王の血を引くに相応しい、お前に似た強く逞しい子を産むがいい」

そう言うと、ファルハード王はさらに腰の動きを早めた。
肌が打ち合わさる小気味良い音を立てて、盛んに進退を繰り返す。
苦痛とも悦びともとれぬ喘ぎが、室内に響いた。

「や……、あん、……くあっ、……はっ、……ああっ、あああんっ!」
「リラー! 余の子を孕めっ!」
「っあ、あああぁーーーーっ!!」

意識が遠く吹き飛ばされそうになる感覚を味わいながら、
リラーは主君の精液を膣内に余さず受け止めていた……


・・・・・・・・・



12:Prince of Dark Snake
08/04/25 06:18:13 I2SYk7dj
 
 コン 、コン 、コン

扉を叩く音が鳴る。
情けを与えた女を抱き締めたまま、ファルハード王は扉の向こうに居る侍従に声を放った。

「何用だ?」
「御くつろぎの所申し訳ございませぬ。
 王妃様が陛下にご面会を求めておいででございます」
「コリーナが?」
「左様でございます。
 どうしてもお話したい事があるとの由で……」

なんとなく用向き予想できる。
しかし、会わぬわけにも行かない。
衣装を正し、ファルハード王はリラーに告げる。

「余は王妃に会わねばならぬ。
 お前はしばしここに居れ」
「はい、陛下……」

直ぐに部屋を去ろうとすれば、王妃と鉢合わせする可能性が有る。
そんなことになったら、まだ公になっていない二人の関係が悪い形で露になりかねない。
リラーは、自分を残して隣室に向かう主君の背を黙って見送った。
厚い杉材で作られた扉が閉められる。
彼女が気だるい感覚に身を委ねたまま横になりたいと感じた時だった。
音も立てず、それは絡み付いてきた。

「!?」

気が付いた時には、頚に腕が巻きついていた。
凄まじい力で気道が締め上げられ、叫ぶことさえ封じられる。
いつの間に入り込んだのか全く判らなかったどころか、
燭台の炎を毛筋も揺らめかせず、一切の気配を感じさせぬまま、侵入者はリラーの背後を取っていた。

(ゔうぅっ!)

反射的に、両手で相手の腕を外そうと試みる。
だが、まるで蛇に締め付けられているかの如く、顎の下に入り込んだ腕はびくともしない。
ひょっとしたら自分のよりも細いかもしれない腕なのに、渾身の力を込めてさえ微動だにしなかった。
首と腕の隙間に指を捻じ込み、頚動脈を極められるのを防ぐのが精一杯だ。

13:Prince of Dark Snake
08/04/25 06:24:00 I2SYk7dj
 
突然呼吸を遮断され混乱する思考の中で、リラーは己の失態に歯噛みした。
王宮に入り込んだ曲者の存在に気がつけなかったばかりか、急を告げる声さえ上げられぬとは。
一体何のための娘子兵か!

(くそっ…… 誰か…… 曲者が……)
『大人しくしろ、リラー』
(!?)

侵入者が耳元で囁いた声に、彼女は聞き覚えがあった。
だが、同時に驚愕も覚えた。
そんな彼女の耳に、侵入者の囁きが続く。

『大声を上げれば、隣にまで聞こえるぞ。
 母上にこの場を押さえられていいのか?』
『イスファンディアール殿下!?』
『後宮に忍び込んだ事を父に責められても、僕は母上に庇ってもらえる。
 だが、お前が主君と通じたことを母上に知られた時、果たして父上はお前を庇ってくれるかな?』
『……』

想定もしなかった事態というのは、まさにこういう事を指すのだろう。
侵入者が、まさか国王の嫡子であったとは。
いや、リラーはそれよりも王子の囁いた言葉の意味を反芻する。
ファルハード王は、理由は知らねども第一王子に厳しい。
その反動からか、母親であるコリーナ王妃は息子を溺愛している。
禁を犯して後宮に入った事を国王が罰しようとしたら、王妃が息子を護ろうとする事は火を見るより明らかだ。

(……)
 

14:Prince of Dark Snake
08/04/25 06:24:50 I2SYk7dj
 
抵抗する無意味さを承知し、リラーは王子の腕を叩いて降伏の意を伝えた。
慈悲も侠気も持ち合わせたファルハード大王の事だ。
自分を護ろうしてくれる可能性も、もしかしたら零ではないかもしれない。
娘子兵が主君に身を委ねた事を妻に詰られても、
パルティアとルームの国情の違いを盾に取って庇ってくれるかもしれない。
しかし、王妃の怒りを一時は避けられたとしても、その後はどうだろう。
どこの世界に、夫が抱いた女に好意を持つ妻がいるというのか。
後宮を束ねる権力者であり、世継ぎの御子の母親である王妃に憎まれたらどうなるか、
リラーにそれを試す気はなかった。

頚を締め上げていた腕の力が緩む。
しばらくぶりに新鮮な空気を肺に吸い込むと、リラーは生き返った心地になった。
けれども、一息つくことが出来たのも言葉どおりの僅かな時間に過ぎなかった。

『きゃっ!』

イスファンディアールの手に肩を掴まれ、そのまま床に押し倒される。

「で、殿下!? 何を…… むっ、うぅ……」

仰向けに倒れた女の唇を、王子の唇が塞ぐ。
歯の列を割って、舌が口中に入り込んだ。
九つも年下の少年に口を貪られる。
それは、さっきまで寵を受けていた男の息子の舌なのだ。

「む、むむぅ…… や、止め……」
『声を出すなと言っている』
『あうっ!』

王子の手が、リラーの乳房を掴んだ。
だが加減を知らぬイスファンディアールの指は、父親のよう女の身体を悦ばす握り方にはならない。
跡が残りそうなほどに強く、容赦なく搾り上げたまま、もう一度リラーの唇を味わった。


・・・・・・・・・



15:Prince of Dark Snake
08/04/25 06:26:20 I2SYk7dj

「何度も言わせるな。
 余はあれの軽率さを嗜めようとしただけではないか……」
「いいえ、何度であろうと言わせて頂きます。
 貴方はあの子に厳しすぎますっ」

眉間に皺を寄せて詰ってくる妃を前に、ファルハード王は歯切れの悪い言い訳を繰り返していた。
娶ってから十五年。
可愛らしい少女であったコリーナ皇女もすっかり女として成熟し、
パルティア王妃として宮廷の内外に重きをなしている。
二度の出産を経験した彼女であるが、それで美しさを損ねるどころか
年毎に艶めいた色香を増して、美貌の上でも後宮に君臨している。

「そうは言ってもだな……
 あの歳で獅子に挑もうとするなど早すぎる。
 大事が出立してからでは遅いのだ。
 第一王子とは他に代りの無い身だという事は、あれにもしっかり理解させねば……」
「では、何ゆえ衆目のある所であの子をお叩きになられたのですか?」
「むうっ……」

予想通り、コリーナの話は先日の狩猟祭の事であった。
王都に戻ってから、イスファンディアールは腹を立てて姿を見せないという。
明日は王子王女の誕生日だというにも関わらずだ。

「お気に入らなかったのならば、取り合えずあの場ではお褒めになり、
 後で密かに諭されればよろしいでしょう?
 それを、貴顕の者たちの目の有る場所でお叱りになるなど、
 あの子が恥をかかされたと憤っても仕方ありませんわ!」
「……言うな。もう済んでしまった事だ」

妃の視線から逃れようと、ファルハード王は顔を横に背けた。
それでもまだ言い足りないのか、コリーナは夫である自分を詰り続ける。
在位十五年、西方に向かっては舅であるルーム皇帝と堅い盟約を結び、またコプトの王に膝を屈せしめ、
東はシンド王の玉座を脅かし、さらに永年の宿痾であったエフタウルを討った。
王国開闢以来、稀に見る壮挙といってよい。
そんな彼であっても、妻の口を塞ぐ事だけは出来ない。
近親に英雄無しとはよく言ったものだ。

(いっその事、全てを打ち明けてしまえば楽になれるかもしれないが……)

そんな危険な考えが脳裏をよぎる。
彼の苦しみの根源は、彼自身しか知らない。
王国を、王家を揺るがしかねない大事を分かち合う者は、パルティア王国に誰一人として居ないのだ。
もし、妃に打ち明けたらどうなるだろう。
彼女が愛しんでいる息子が、密かに押し付けられた別の女が産んだ子だと知ったら?
しかし、それは絶対に公表してはいけない秘密だった。
息子の出自は、カヤーニ王朝を揺るがした大事と不可分に結びついている。
蛇王ザッハーグの血を引く女と交わったという己の過失だけでなく、
カイクバードの子孫があろうことか蛇王となりかけたという、おぞましい事実と繋がっているのだ。
開祖カイクバードの名に賭けて、それは絶対に公表してはならない秘密であった。

「貴方は、あの子を愛しておられないのですか?」

16:Prince of Dark Snake
08/04/25 06:27:13 I2SYk7dj
「愛しているとも……
 あれは余のたった一人の息子だ」

愛さぬはずがない。
どれほどコリーナが美しくなろうと、後宮に佳人が献じられようとも、
あの面立ちに残る若き日の思い出は忘れようとしても忘れられぬ。
数奇な宿命を背負い、激しい情熱の末に生まれた息子を、どうして愛さぬはずがあるだろう。
しかし、それは一人の父親としての心情であり、王としてはまた違った立場で語らねばならない。
イスファンティアールの身体には、パルティアの王座を継ぐべき正当な血と、
決して継がせてはならない血が同居している。

実際のところ、彼は恐れていた。
蛇王ザッハーグの血を引くあの子が、パルティアの王となることが。
それは幼年期から刷り込まれてきた蛇王家への敵意だけではない。
彼だけが、蛇王が誕生した時にどんな惨事が起こるかを現実として知っている。
もし王位に即いた後に、蛇王の血が目覚める事があったら……
英雄王の末裔として、それだけ決して許してはならない事なのだ。

「私は、貴方が他の女に気を惹かれようと、私への気持ちが薄らごうと、
 それも女の宿命と耐えるつもりでおります。
 けれども、この胎を痛めた我が子がないがしろにされるとなれば、黙ってはおられませぬ」

妃の言葉で、再びファルハード王は罪悪感に苛まれる。
コリーナへの気持ちが薄らいでいる訳ではない。
だが、彼は妻に真実を隠している。
王妃は、あの子の本当の母親では無い。
それを知っていながら、彼と王家の名誉の為に真実を告げる訳には行かないのだ。
その後ろめたさが、いつの間にか王妃への振る舞いに現れてしまっているのかもしれない。

こんな自分の立場を知ったら、あの女はどう思うだろうか。
ふと、十四年前に別れた妖の姫の姿が脳裏に浮かんだ。
きっと、あの女は自分をあざ笑うだろう。
何時になっても忘れられぬ、あの高笑いを放ちながら。

『うふふ、王としての義務と父親としての情愛の間で板挟みになられて、おいたわしいファルハードさま……
 でも、そんな悩み悶えるお顔を見ていると…… そそられてしまいますわ! おおっほほほほほほほーーーっ』

思い出の中で哄笑する美姫の姿を想いながら、ファルハードは王妃の繰言を聞き流していた。


・・・・・・・・・



17:Prince of Dark Snake
08/04/25 06:28:18 I2SYk7dj
『駄目っ! お止め下さいっ!』

相手を跳ね除けようと伸ばした手を、イスファンディアールは巧みに捌いた。
逆にその腕を掴み取ると、床に磔るように押し付ける。
リラーの体は女性としては恵まれている分、体格負けはしていないはずである。
けれども、父親に比すれば未だか細い第一王子が、娘子兵の体を容易く組み伏せた。
その腕力たるや凄まじいものがあった。
押さえ込まれ、拒む事も出来ぬまま、リラーの女陰にイスファンディアールの男根が触れる。
骨が軋むほど強く女の手首を握り締めたまま、イスファンディアールはリラーの女陰に自分の物を捻じ込んだ。
満足に愛撫も与えられぬままであった、先程の情事の残滓が滑りを助けた。
水気を保ったままの膣内に容易く侵入を果たすと、深くその奥を貫く。

『あぅっ!』
『嫌なら、大声を出して助けを呼べ。
 さもなくば、扉を開けて父上の元にでも逃げ込むがいい。
 僕はそれでも構わないぞ?』
『く……、ううっ……』

鍛えぬいた肉体が自慢の娘子兵だが、その分頭の動き鈍いというわけではない。
下手に騒ぎ立てる事が、自分の為にならない事くらいは判る。
もし後宮から追放されたら、家族に仕送りをする事も出来ない。
そして腕っ節だけしかない自分は、どこに身を落ち着ければよいというのか。
恥辱と打算が心の秤に掛けられる。
どちらに傾くか決まるまで、そう長い時間はかからなかった。
かって国王の求めを拒めなかったように、一娘子兵に過ぎぬ身で世継ぎの王子に逆らう勇気は無く、
ファルハード王に今の自分を、姦されかかっているこの場を見られた上で、
今後も同じように自分を扱ってくれるかどうか、リラーには自信が無かった。
こと男女の事について、彼女は不甲斐ないほどに未経験であり、哀れなほどに臆病だった。
リラーの腕から、力が抜けた。

女の抵抗が止むと、イスファンディアールは先端が秘裂から抜けそうになるほどに腰を引き、
そして再び突き入れた。

(はうっ!)

堅く唇を閉じて、喉の奥からこみ上げてくる吐息を封じ込めた。
そうやって堪えていなければ、リラーは呻き声を上げてしまっていただろう。
だが、そんな彼女の忍耐を一切斟酌せず、
イスファンディアールは深々と抉った膣内から柔襞を掻き出さんとばかりに男根を引き、また突き込む。
一度往復させただけでコツを掴んだのか、回数を重ねるごとに動作は素早くなる。
その為に、耐えるリラーにとっては、声を殺そうとするのがますます困難になっていくのだ。
二人の肌が打ち合わされる音は、ひょっとして隣室に聞こえはしないかとリラーが心配になるほど激しい。
父親がしたような女の躯を知り尽くした技ではなく、若さゆえの荒々しい交わり方であった。

(やっ、何故……? 少しも心の通じ合わない交情だっていうのに、何で身体は……)

だが、そんな荒々しい行為であっても、リラーの唇から零れそうになるのは甘い喜悦の喘ぎだ。
それを噛み殺しながら、彼女は懊悩する。
操を捧げた国王に対して、これは裏切りになるのだろうか?
保身の為に、自分は主君の息子に体を許してしまった。
自ら体を開いた訳ではないが、それで自分を誤魔化せるような、器用な忠誠心の使い分けは出来ない。
ではなぜ、脅された上で無理矢理関係を結ばされているというのに、苦痛どころか官能を覚えるのか?
この歳になるまで一人しか男を知らなかった彼女にとって、
それも女の生理であると理解するのには経験が少なすぎた。
 

18:Prince of Dark Snake
08/04/25 06:29:22 I2SYk7dj

(大王っ、どうかお許し下さい……)

主君以外の男に奪われて初めて、リラーは自分がファルハード王を愛していた事を実感した。
臣下の身ゆえの拒めない関係であるのなら、主筋に当たる王子に抱かれるのも同じ筈だ。
だが、今自分の心中には、王以外の手によって快楽を覚えている事への申し訳無さで満たされている。
王を前にした時に、身分の違いや娘子兵という立場を必要以上に意識してしまったのも、
己の本心に気が付く事を怖れていたためなのだ。
ただし、本当の気持ちに気が付いたからといって、陰部を突き上げられる快楽は消え失せはしない。

『ひぁっ! あぅっ!、あんっ……、んん、んんんっ!? ……んっ、んんっ!!』

顔を顰め、屈辱と快楽の両方に堪えるが、もはや唇だけでは声を抑え切れなくなり始めた。
イスファンディアールは掌でリラーの口を塞ぐと、さらに激しく腰を打ち付け出す。
少年が精を搾られる取るまで、それから長くはかからなかった。
膣の最奥にある子宮の入り口を押し上げたまま、精液が脈打ち迸る。
犯された上に膣内に放出された衝撃で、リラーは身を強張らせた。
結果として、彼女の下肢が挿入されたままの男根をきつく締め上げ、
イスファンディアールの放った精液を溢さず受け止めることになったが、
それはリラーの意図するところではなかった。

『……』

一滴余さず出し終えると、イスファンディアールは女から身を離した。
床に脱ぎ散らかしてあった己の衣服を手に取り、素早く身に纏う。

『僕は去ぬる…… 父上たちに覚られぬようにしておけよ』

一方リラーは放心状態にあった。
王子がなぜここに現れたのか?
なぜ自分をいきなり犯したのか?
余りに唐突な出来事ゆえ、湧き起こる疑問を問いただすことも忘れていた。

『リラー……、これで今晩お前が孕んだとしても、父上の子か僕の子か判らなくなったな』

その一言だけを残して、イスファンディアールは部屋の窓から外へ飛び出していった。
忍び入った時と同様、微かな足音さえ立てずに彼は消えた。
王の部屋には、呆然とするリラーがたった一人残された。


・・・・・・・・・

 

19:Prince of Dark Snake
08/04/25 06:31:10 I2SYk7dj
いつの間にか、日暮れ前に居た屋根の上にイスファンディアールは戻って来ていた。
どうやって後宮から抜け出して来たか、記憶は曖昧だった。
ただ無我夢中に夜の王宮を駆け巡り、気が付いたら元居た場所に帰って来ていた。

「なんともまあ、ご早熟なる若君であることよ。
 今夜のところはほんの少し、眼学びして頂こうとだけ思っておりましたのに」
「……」

喉が灼けるように乾いていた。
先ほどの事は、まるで性質の悪い夢だったような気もする。
だが、夢ならば自分に話しかけてくるこの老小鬼も存在しないはずだ。

「ヒョヒョッ、血は争えんということか…… 恐ろしいが、また嬉しい事でもあるわい。
 まさかその歳で、父親が抱いたばかりの女子に襲い掛かりなさるとは……」
「うるさい!!」
「ひょっ!?」

老小鬼の顔に、空の革水筒が叩きつけられた。
それは先刻イスファンディアールが飲み干した後、屋根の上に投げ捨てられていた物だ。

「くっちゃべってる暇があったら、とっとと酒を持ってこい!
 さっきのよりも上等で、強いやつを探してくるんだっ!!」
「ひえっ、鬼使いの荒い若君様じゃ……」

そう呟くと、老小鬼は屋根から飛び立って夜の闇に紛れていった。
もしかしたら、彼なりに主に気を使ったのかもしれない。
一人きりに戻った屋根の上で、イスファンディアールの顔が歪む。

(う、うぅっ……)

怒りでも、憤りでもなく、ただ押さえ切れないのは哀しみだった。
まるで八つ当たりの様に、女子の肌身に荒れ狂う想いをぶつけたが、衝撃は少しも治まりはしない。
妹のリーチェには甘い父が、なぜ自分には厳しくあたるのか?
不自然とも理不尽とも思いながら、父なりに自分を鍛えようと思ってくれているのだと考えていた。
だが、今晩見聞きした出来事から推察される理由の方が、すんなりと疑問を氷解させてくれる。
ただし、それは苦痛を伴う解答であった。
 

20:Prince of Dark Snake
08/04/25 06:31:50 I2SYk7dj

(父上は、僕を王位に即けたくないのだ)

そればかりか聡明な彼は、おそらく父親でさえはっきりと意識はしていないだろう事まで見通していた。
なぜ父王がリラーを寵するようになったのか。
あの小鬼の言うとおり、たおやかな美姫に食傷を起こしたのだろうか?
否、今年で自分は十四歳になる。
もし弟が産まれたとして、その子が同じ歳になる頃に自分は三十前後だ。
壮年の第一王子を差し置いて弟を立太子しようとすれば、波乱を引き起こさずにはいられない。
無意識にだろうが、父は求めているのだろう。
その時自分と王位を争い、勝つことの出来る子を。
たとえば、リラーのような強く逞しい娘子兵から生まれた、母親に似た壮健な身体を持つ息子を。

気が付きたくはなかった。
父がこれほど自分に隔意を抱いていたとは。
目頭が熱くなり、視界が潤む。
彼は必死にそれを堪えた。

『泣かないぞっ、泣くものか! 我はイスファンディアール! パルティアの王子だぞっ!』

心の中で叫び、奥歯を強く噛み締めた。
彼の十四回目の誕生日の朝が、もう数刻後に迫って来ている。


(完)

21:名無しさん@ピンキー
08/04/26 01:14:35 L5P3qsKs
GJです!

part6でも、よろしくお願いします。



22:名無しさん@ピンキー
08/04/26 05:04:46 /EV/zBzH
息子を愛してあげてください(´;ω;`)
切なすぎる・・・

23:名無しさん@ピンキー
08/04/26 07:50:04 ntrJ5JCr
 これはもしや、国を滅ぼす親子喧嘩か?
エロ抜きで面白です。エロがあるのでモオォーーと面白いです。

24:名無しさん@ピンキー
08/04/26 09:57:19 LzX+IocL
これはつまり親の愛人を寝取る展開?wktk

25:名無しさん@ピンキー
08/04/26 15:07:13 O+6kQ+Cb
父ちゃんひでぇ…

26:名無しさん@ピンキー
08/04/26 16:01:34 rrIOK7Su
盗んだ軍馬で走り出す14の夜

27:名無しさん@ピンキー
08/04/26 22:04:27 UHgLNxly
GGGJJJJ!!!!

28:名無しさん@ピンキー
08/04/27 00:18:19 2gCruVJ0
蛇皇子の話、続き読みたい。
まあでも王に蛇姫様への思いがあってよかったよ・・・
蛇姫さまはもうでてこないだろうか


29:名無しさん@ピンキー
08/04/27 00:55:35 cu4SxjLQ
父ちゃん愛人を寝取るほうがもっとひでぇ

30:名無しさん@ピンキー
08/04/27 13:41:49 8y2PxsAm
父の真意は別の所にあると信じたい。

31:名無しさん@ピンキー
08/04/27 18:11:06 rRrqAjPe
はーんー乱!はーんー乱!

なんか戦国時代の斎藤道三と義龍の確執みたいだ
でもこんな俗世間的な価値観のファルバードもこれはこれでいいね

32:名無しさん@ピンキー
08/04/27 21:01:26 08vrtOwa
結局どちらからも逃避の対象にしかされてないらしいリリー(´・ω・)カワイソス

33:名無しさん@ピンキー
08/04/27 22:53:22 rQkNEtG/
英雄だろうが名君だろうが、女にとっていい男かどうかはまた別の話。
(逆もまた然り)

前スレでファルハードをなじった奴です、さーせんw
でも決してファルハード嫌いじゃないっすよ~。ズルい奴だとは思うけどw
全ては自分がまいた種なので、どうこの問題にケリをつけるかで
ファルハードはんの器量というものを推し量らせてもらいまひょ。

どっちかというと箱入りお嬢だったコリーナ姫の王妃姿に感無量でした。

34:名無しさん@ピンキー
08/04/29 02:59:17 kcWSZN0N
↑そういう言い方されるとなんか腹立つの。ごめんね。


35:名無しさん@ピンキー
08/04/29 10:58:14 cugzRWlK
皆さんご感想ありがとうございます。
レスを貰うと書き手の身にはとても励みになり、嬉しいです。

蛇姫様の話は皆さんに好評なようで、書いて良かったと思います。
イスファンディアールの今後が気になる方もおられると思いますが、
一応本編の外伝なのでこれで終わりです。



終わった後だから言いますが、実は蛇姫第一話は数年前初めて王書に目を通した頃、
脳裏に浮かんだ話がベースになっており、その時は王子と蛇姫の性別が逆だったんですよね。
魔王の話を書いていたため、力関係が男>女だと代わり映えがしないと思ってプロットを変えたら、
逆に展開がしっくり来てしまいました。



しばらくしたら、半年振りに魔王の話を再開します。
今後ともよろしくお願いします。

36:名無しさん@ピンキー
08/04/29 13:09:23 YaocGqPx
ちょっと残念ですけど、それこそガイエが「銀河英雄後伝」とか「その後のユリアン・ミンツ」なんてのは書かない、と言っているように、
物語の外伝は読み手に想像させるだけでいいのかもしれません。

・・・読んでみたくはあるのですが。
では、魔王の続きに期待して全裸待機してます。

37:名無しさん@ピンキー
08/04/29 19:18:02 EQUt8Rm/
エロがなくても面白い
なのにエロがあるともっと面白いとな

困ったやつよのw

38:名無しさん@ピンキー
08/04/30 13:06:51 Ldsao1X9
蛇姫続きないのか・・・orz

39:名無しさん@ピンキー
08/05/01 00:26:21 d9xcbJ/0
蛇王子の続きがないのは多少残念ですが、
魔王様が御来訪とあっては、楽しみにせざるをえません。

具体的にいうと、全裸待機その2。

40:名無しさん@ピンキー
08/05/01 02:08:11 upzQzBfZ
蛇王子はべつに続かなくていいや

41:名無しさん@ピンキー
08/05/02 01:55:36 T72FsFCR
保守

42:名無しさん@ピンキー
08/05/05 01:20:15 XmE3pHPh
保守


43:名無しさん@ピンキー
08/05/07 22:57:53 EHD7swba
保守

44:アビゲイル
08/05/07 23:23:20 XcLNsbuH
こんばんわ
保守続きなのでアビゲイル番外編をささげます。

45:薬(前)1/9
08/05/07 23:24:45 XcLNsbuH
1/9
暑い。

さすがの北城も、夏の間は暑く過ごしにくい。
森に囲まれているからか、湿度も高い。
日中は熱を避けて人々は屋内で過ごし、活気があるのは明け方から昼までと、夕方から深夜、ということになる。

厩舎で馬たちに水を与えている手を止めて、アビゲイルは照りつける太陽を仰ぎ見た。
アビゲイルはこの夏のはじめに、特に命じられて新兵の訓練を担当した。
もともと兵を錬ることについては定評があった。
今度の城主は合理的な考えの持ち主らしく、適材適所であれば身分関係なく配置転換行うようである。
敬愛するロクは隙のない警備を買われ、北東の要、岩場の出城主として配置転換され、アビゲイルは中隊長に昇格し、北城を拠点として短期の野営野戦の実践訓練を行う日々を送っている。

涼しい山の砦が恋しい。
この次の野営訓練は山岳地帯を選ぶことにしよう。

2日後には国境偵察をかねて森林地帯に経験のない歩兵を50人ほど連れて行かねばならない。
すでに50人すべてを面接し、小隊にわけ、さらに5人単位の組を作り、中堅兵を指導者として用意した。
アビゲイルは新兵の経験値を上げるだけでなく、指導者となる中堅どころの更なるレベルアップを狙っている。
物資は受けとった。あとは、北東方面の実務に携わる責任者数名と哨戒ラインの打ち合わせを済ませるだけだ。
擦り寄ってくる愛馬の額をかるく撫で、アビゲイルは厩舎を後にした。

46:薬(前)2/9
08/05/07 23:25:34 XcLNsbuH
アビゲイルは今度の野営訓練の場を北東方面の森林地帯に設定した。
ここは針葉樹が多く冬場も緑が絶えないうえ、岩場も多く、身を隠しやすい地勢である。
秋から冬にかけて、山岳民族が侵入するルートと考えられている。
責任者会議の意見が割れた。
一方の意見は・・・新兵には重い。相手は容赦してくれない。主に後方支援を担当するサガエラ大隊長と部下マサトグ中隊長などの主張である。
もう片方は前線の哨戒長ナナ―クハと近隣の砦主ボロドが中心であった。いわく、この時期50人からの兵がうろうろしていれば、うかつに進入することはないだろう・・・
前線をあずかるナナ―クハと後方支援のサガエラはもともと仲が悪い。
会議は白熱し、予定時間を大幅に過ぎてしまったが、結局、山岳方面に深入りしないことを条件に、ほぼアビゲイルの設定どおりの訓練を行うこととなった。

責任者会議のあとは、酒席となった。・・・どの世界でもよくあることだ。

この国の軍人が好んで飲む蒸留酒は、度数が高い割に無味無臭で、飲み手の好みによって果汁や他の飲み物と混ぜて飲むものだ。
訓練の指揮を2日後に控え、アビゲイルは自重していたが、周りの者は徐々に酔いがまわり始める。

帰砦を明日に控えたボロドが部下とともに退出したのを機会に、アビゲイルも退出しようとした。
が、マサトグに引き留められた。
仲の悪いナナ―クハ哨戒長との舌戦の後でもあり、上司のサガエラ大隊長のご機嫌が悪い。
軍議の後の酒席に女を呼んでごまかすわけにもいかず、聞き分けのないサガエラを持て余して、マサトグは心底困り顔であった。
アビゲイルとマサトグはお互いに中隊長に立てられる前、ロクの部下として共に働いていた旧知の仲だ。
訓練所でも数ヶ月一緒に訓練をうけた先輩だ。
宥め役として酌をたのまれると、無下にことわるわけにもいかず、ずるずると酒を飲むことになってしまう。
サガエラ大隊長に勧められた酒を飲み干せば、次はナナ―クハ哨戒長の酒・・・強い酒をしこたま飲まされ、次第にアビゲイルにも酔いが回ってきた。

暑い。

サガエラ大隊長から珍しい南方の酒をすすめられて飲んだあたりから、本格的に酔いが回ったのだろう。
暑く感じられてしょうがない。
アビゲイルは夏だというのにきっちりと着こんだ制服の胸元を少し緩める。

ほっそりとした首元から垣間見える鎖骨のくぼみに、釘付けになったのは一人や二人ではなかった。
ゴクリ、と生唾を飲む音が聞こえたのは気のせいではない。

47:薬(前)3/9
08/05/07 23:26:24 XcLNsbuH
上気した頬を、手であおぐアビゲイルを心配したのか、マサトグが声をかけた。
「そんなに飲んでも大丈夫か?」
上目づかいにマサトグを見上げるアビゲイルは、首筋まで赤く染まり、目はうるみ・・・その部屋にいる誰もに煽情的に映る。
「・・・弱いほうじゃないんだけどなぁ。」
小首を傾げるしぐさも気だるげで、普段は見せない色香を感じさせた。
「この訓練が終わったら、気楽にのめるかな」
にっこり笑いかけて、マサトグに返杯をついでやると、マサトグの顔がアビゲイル以上に赤くなる。
アビゲイルの笑顔と酌を求めて、皆が酒を注ぎに群がり始めた。

気が付くと、いつもより饒舌な自分がいた。
問われるままに、城砦での生活のこと・・・父のこと、弟のことを話してしまった。
南方の酒のせいか。自制がきかなくなるまで酒をのんだことはないが、そろそろ退席しよう・・・
ぼんやりと考えているさなかに、ある問いが投げられた。

「今は特定の男がいるのか?」

誰から発せられたのかはわからない。普段のアビゲイルなら、聞こえないふりをしてその場をやり過ごす。
ところが。
「いませんよ」と、口が勝手に答えを出してしまう。
おお、と男たちがどよめく。
「親が決めた婚約者とか?」
軽く流そう、と思っても、真実が口を付く。「そんな家柄ではありません」

なにか、おかしい。
深酒とはいえ、心拍が上がりすぎだし、体温も異常に上がっている。

「好きな男はいないのか」
ちらり、とある男の顔が浮かんだ。春の終わりに別れたきりの、口にすることができない秘密の男。
「・・・別に」かろうじて、耐える。心臓が爆発しそうなほど苦しい。
「男がいないなら、俺、立候補しようか?」「結構です」
素直に答えれば苦しくはないが、自制すると心拍が跳ね上がる。

・・・薬物か。
これ以上、おかしな質問に答えてしまうまでに退席するべきだ。

「赤鬼と関係があったのはほんとか?」ナナークハが興味津津に聞いてきた。

48:薬(前)4/9
08/05/07 23:27:11 XcLNsbuH
「仕方がありませんでした」
事実なのだからしょうがない。正直に口に出した。
「赤鬼はどうだった?」周りの男達の目の色が変わった、と感じる。オスの本能が透けて見える。

「おっしゃることの意味がわかりません」心拍が戦闘中のように跳ね上がる。
マサトグでさえ、興奮を抑えきれていないことが見て取れる。
「抱かれごこちはどうだった、と聞いてる。」下卑た笑いとともに聞いてきたのはサガエラだった。
「別段どっうてことありません。」
熱気を帯びた男たちの視線に、鳥肌がたつ。
「城主は女を殴ったり縛ったりすると聞いたが、本当のところどうなんだ」
欲望の渦巻く視線にさらされることで、逆にすこし覚めることができた。

・・・城主のことをこれ以上聞かれるとこまる。

ふらり、と立ち上がると、めまいがした。
「どうした、アビゲイル」
「・・・酔いました。手水に」

酒のせいか薬のせいか判断できないが、相当、足にきている。
支えたのは、見知ったマサトグだったので、アビゲイルは安心して肩をかりた。
困り顔で不安げなマサトグにあごで早く行け、と促すサガエラや取り巻きの好色な笑顔を、アビゲイルが見ることはなかった。


49:薬(前)5/9
08/05/07 23:28:00 XcLNsbuH
手近な水場で、胃の中のモノを無理やり吐いて、大量に水を飲む。
こんなことで吸収された薬物が抜けことはないのだが、アビゲイル水を飲んでは吐き続けた。
アビゲイルの背中をさするマサトグが、不意にアビゲイルに問いかけた。
「・・・ハザウエイと関係があったってのは、本当なのか?」

真剣なマサトグのまなざしにたじろぎ、思考が一瞬停止した。

茶髪の丈夫。かすんだ頭の中で名前と顔が一致するのに時間がかかる。とても遠い出来事なのだ。
「なりゆきで・・・一度きりだ」
あんな冷めた情事はもうまっぴらだ。
めまいの中で吐き気がこみ上げ、生暖かい水を少量もどし、咽た。

背中をさする手を止めずにマサトグがつぶやいた。
「その・・・なりゆきが、俺の上に訪れる可能性はある?アビゲイル」
真意を測りかねて、咳き込むアビゲイルが目を細めマサトグを訝しげに見上げる。

「このままだと、俺は・・・大隊長の部屋にあんたを連れて行かないといけない」
マサトグは手を止めない。
傍目には酔った同僚を解放するいい奴にみえるだろう。
「アビゲイルの答え次第で」
再度の吐き気で、先ほど飲んだ大量の水を全部吐き戻してしまった。
苦々しさは胃液のせいだけじゃない。
・・・もう、好きにしろ。
肉体的なくるしさと覚束ない思考に何もかもが面倒になったとき、頭上から声がふってきた。

「はい、そこまで」

50:薬(前)6/9
08/05/07 23:28:42 XcLNsbuH
底抜けに明るい声は、介抱するほうにもしない方にも聞き覚えのあるものだ。
「だめだなぁ、アビゲイル。こんなになるまで飲まされちゃってさぁ」
ごく自然に二人の間に語り笑いかけた。
通りすがりの人間には同じ宴席から抜け出てきた仲間に見えただろう。

夢かもしれない。
ひどくなる一方のめまいの中、夢でもいいか、とアビゲイルは男にしなだれかかり、首に手をまわした。
思いのほか肌がひんやりとしていて、気持ちがいい。
額を男の首筋に当て、ため息をつく。

夢のようだ。
いとおしい女が、自から手を差し伸べてくれるなんて。
一瞬、課せられた役目を忘れてこのままこの女をどこかの部屋につれこんでしまおうか、などと考えている自分に苦笑する。
女が背中に回した手指の感触と、首筋に当てられる吐息をたっぷりと楽しむ。

それは誰が見ても恋人同士の抱擁に見えた。

まるで悪夢だ。
アビゲイルはさっきまで手の内にあった。
宴席で決まった男も好いた男はいないとアビゲイルは確かに言った。薬はきいてなかったのか?
この男も見たことがある・・・たしか訓練所でわりと優秀だった奴だ。アビゲイルと面識が?

混乱する男を尻目に、二人は抱擁を楽しんでいる。
男がよしよしと女をおとなしくさせた後、人懐っこい笑顔をマサトグにむけた。
「だめだなあ、マサトグ。女に薬なんか飲ませちゃってさあ」
これ以上はない笑顔なのに、目が、笑っていなかった。
あまりの眩しさにマサトグは気が遠くなり、現実感を失った。

51:薬(前)7/9
08/05/07 23:29:35 XcLNsbuH

暑い。

生暖かい夜具の感触が気に入らず、寝返りを打つ。
上着を取ってしまおうと無意識に服を緩めた。

ふいに、冷たい水が口に流しこまれてくる。
強烈なのどの渇きを感じて貪るように飲み下す。

たりない。
気持ちがそのまま言葉になったようで、今一度、水が与えられた。

まだ、たりない。

霞がかかったような思考を奮い立たすように、2・3度頭を振って上半身を起こした。
暗い部屋の中には細い灯火が揺らめいている。
「・・・ここは」
ゆっくりと、灯火が近づき、アビゲイルは眩しさに目を伏せる。
「俺の宿舎」ひかりの持ち主が、おずおずとアビゲイルを抱き寄せる。
「会いたかった、アビゲイル」
つつみこまれる暖かさは不快な暑さとは違って肌に馴染んで心地よく、アビゲイルはうっとりと目を閉じた。
「・・・私もだ、タイロン」

「もう一仕事残ってる、おとなしく寝ておいで」
言われるままに横になり、離れていく男の背中を目で追った。
いつになく素直なのは、盛られた薬か酒のせいにしておこう。


52:薬(前)8/9
08/05/07 23:30:40 XcLNsbuH
かちゃり、と音がしてドアが開き、熱に浮かされたようなマサトグに先導されて、サガエラが入室してきた。
寝台に横たわるアビゲイルの姿に、涎を落とさんばかりだ。灯火の反対側に佇むタイロンには気づきもしない。

「気分はどうだ、アビゲイル中隊長」寝台の上ににじりよりながら、早くも自分の下帯を解きにかかっている。
「悪くない・・・な」
夢を見ているような口調のアビゲイルは、サガエラのことなど眼中になく、ぼんやりと横たわっている。
いまからもっと気持ちのよい目にあわせてやる、などと益体もないことを口にしながら無遠慮に手を伸ばしてきた。

「マサトグ、サガエラ大隊長どのを拘束しろ」低く抑えられた声に、聞き覚えはなかった。
アルコールと性欲に支配された大隊長は抵抗することもできず、部下の手によって羽交い絞めにされ、身動きが取れなくなった。

「マサトグ、お前はこの男に命令されて、女に薬を盛ったな」
「はい」

「うそだ!マサトグ、だまれ!」喚き声を、部屋にいる誰もが取り合わない。

「どんな薬だと聞いている?」
「媚薬だ、と聞きました。正直になり、房事が病みつきになる薬で、人体に害はないと。」

サガエラは、姿の見えない声の主を求めて暗闇を透かし見る。

「今まで何人ぐらいに飲ませた」
「10人はくだらないと思います。」

命令に忠実な部下の口から悪事が零れていく・・・
「こいつが勝手に言ってるだけだ。証拠は何もない!」

ふ、ともう一本灯火が灯る。「証拠などいらんよ」
細い灯火が見る見る大きくなり、満月のような真円の輝きがサガエラに近づいてくる。
「アビゲイル、俺の名前を」

「・・・タイロン・ツバイ・イエ」

サガエラが白目をむいて昏倒した。


53:薬(前)9/9
08/05/07 23:31:29 XcLNsbuH
「・・・人が悪い」

腕の中に抱き込んだ愛しい女が、上目遣いに睨みつけている。
「なんのことだ」しらばっくれてみる。
「天眼を持ってすれば、何事も苦もなく詳らかになるだろう?」
タイロンも最初はそのつもりだった。
今回の標的がアビゲイルと分かって、しかもマサトグの欲望もアビゲイルに向けられていると知って完全に逆上したとは、本人にはとてもじゃないが言えない。
「俺、未熟者なんだよ」耳を甘く噛み締めてささやき声を流し込む。
アビゲイルの喉元が脈打つ。

「耳をこうされるが好き?」「・・・くすぐったい」
そっと衣の中に手を差し伸べて、ゆっくりと脇腹をなでる。
ぴくり、と引き締まった腹筋が痙攣した。
「・・・ふ・・ぅ」与えた快楽で押し出された声に満足し、だめ押す。「これは?」「・・ぁ・うん」
ゆっくりと、アビゲイルの首筋に血が上り、頬が上気してきた。
胸元に手を伸ばし、巻き絞めている布を取り去る。
快楽への期待ですでに頂が尖っている乳房がまろびでた。

「・・・お前を今抱きたい」
お互いに、潤んだ瞳で見詰め合う。
「私もタイロンに抱かれたい」
愛撫の必要がないほど準備が整ってしまったお互いに、苦笑を交わしながら貫き、受け入れた。

54:薬(前)おしまい
08/05/07 23:32:38 XcLNsbuH
また来週/~~

55:名無しさん@ピンキー
08/05/08 00:28:28 qUFxiufH
久しぶりに読めて嬉しいです。
アビゲイルが他の男に抱かれなくてよかった!
続きも待っています

56:名無しさん@ピンキー
08/05/08 06:38:10 dtcejUMr
おぉぉぉぉ!
また会えて嬉しいよ!
激しくGJです

57:名無しさん@ピンキー
08/05/08 14:08:53 pqxn42AV
待ちかねてました!
相変わらずGJです!

58:名無しさん@ピンキー
08/05/08 17:31:52 EC1q2ckl
アビゲイルの人きたああああああああ!
赤くなって火照るアビィも可愛いよアビィ可愛いよ


ってかタイロン相変わらず神出鬼没ですな

59:名無しさん@ピンキー
08/05/09 01:09:00 7iCVWN1X
↑最初と後のテンション違いすぎだろ(笑)

60:名無しさん@ピンキー
08/05/09 01:46:50 FclVmD6m
おおおおおおおいつもながら素敵です

61:名無しさん@ピンキー
08/05/14 00:10:42 vo9RX3PO
>54の言葉を信じて、今週中の投下、腹筋しながら待ってるよ

62:薬(後)おまたせ
08/05/17 01:08:51 gpJk5gS4
おこんばんわ。
後編投下に来ました~
お付き合いかた、よろしくでござる。

63:薬(後)1/8
08/05/17 01:09:58 gpJk5gS4
部屋には静寂がおとずれている。
けだるい空気には情事の残した匂いがのこる。
アビゲイルはタイロンの肩を枕に、タイロンはアビゲイルの髪に口元をよせて、まどろんでいる。
これ以上は体力の限界、というところまでお互いに愛し合ってしまった。
この至福の時間をもう少し楽しんでいたいのだが、仕事の後始末が出来ていない。
ため息をひとつ残して、タイロンは愛おしい女を手放して寝台から起き上がった。・・・ろうとした。

肘に巻きついた白い指がするすると腕にまとわりつき、思ってもみない力強さで寝台に引き倒おされた。
「もう、ちょっとだけ」
アビゲイルの声はかすれているが、タイロンには甘くしみいった。
鍛え上げられた胸筋の上に耳を寄せて、アビゲイルは心臓の音に耳を傾けている。

「私に盛られた薬は何?」
タイロンがやり残した仕事お思い出し起き上がろうとは思うのだが、寝台から、アビゲイルから離れられない。
「芥子じゃないし・・・」
さらさらと流れるアビゲイルの栗色の髪が、タイロンの胸筋を刺激する。

「芥子を知ってるのか?」アビゲイルが手にしているとは信じがたい。
森の国からひそかに流入する芥子は、この国の課題のひとつである。
煙草のように吸うと、美しい夢を見せ楽しい気分になる。
が、常習者は活力を失い体を壊して死にいたるのだ。
「一度、北からの密輸品を砦で焼きすてた。みんな、一日中浮ついてて大変だったよ。」
アビゲイルの指が、タイロンの鎖骨の上をさまよい始めた。
「私はだめだ。煙は目にしみるし、ひどい頭痛で、あんなものがいいとは思えなかった」
タイロンの乳首を捕らえて弄びはじめた。
「芥子の効き目は人によるからなぁ」答える声が乱れて上ずってしまった。
「で、あれは何?」
好奇心か、欲情か、きらりと光る目が美しい。

64:薬(後)2/8
08/05/17 01:10:52 gpJk5gS4
タイロンは少々ためらったが、アビゲイルに真実を告げることにした。
「自白剤」そっとアビゲイルの耳に口を寄せてささやく。
アビゲイルは動きを止めて、じっとタイロンを見る。

額に天眼を抱く魔法使い一族が治めているこの国には自白剤など必要のない代物である。
天眼者が第3の目を開いて命じれば、真実など容易く手にはいるのだから。
そのことを、彼女は知っている。

「・・・簡単に言うと、嘘がつけなくなる薬。」
昨晩の酒席を思い返せば、なるほど納得がいく。
彼女の眉間に刻まれたしわに、タイロンは口付けた。

「どこから・・・」
指を、彼女の細い首に回し、栗色の髪に絡める。
ここちよさにアビゲイルの苦い表情も緩む。
「海から入り込んでるけど、出所は西の砂漠の向こう」
にっこり笑い、うなじを撫で上げながら、続ける。
「国内では、媚薬として裏取引されてる。」

「昨晩を思い出してごらん」
まろやかな線を描く背中からやわらかい尻までをゆっくりと撫で下ろすと、アビゲイルの肌が泡立つ。
「お前はこうされるのが好きだといったぞ」
つま先まで走る快感に、アビゲイルは目を細めた。
「ぁ・・・そうだ、な」
乳房の頂が硬くなるのが判る。同時に、タイロンの男根が自己主張を始めるのも。

65:薬(後)3/8
08/05/17 01:11:40 gpJk5gS4
タイロンは両手でアビゲイルの尻をゆっくり捏ねる。
「この奥に触れてくれ、と懇願した、な?」
見る間にアビゲイルの頬に朱が注し、恥らって目をふせる。
「ぁ・・・うん」
「気が狂いそうなほどいい、と言ったろ?」
そのとおり。昨日の熱狂が次々に脳裏に浮かんで、いたたまれない気分になった。

「・・・薬の効き目はいつまで」話を逸らそうと答えと違うことを口にすると、息がつまるほど心臓がはねた。
「効き目はまだ、続いてるみたいだなぁ」
意外そうな顔をしながらも、後ろから片手を差し入れた。そこは滴り落ちそうな蜜を湛え、タイロンを待ち構えていた。

タイロンは坩堝に直接触れず、周りの薄い茂みを撫でたりひっぱたりして弄ぶ。
じらされることに耐え切れずにアビゲイルの腰がうねる。

「どうしてほしいか、言って」

いえない。一度口にしたら止め処なく、はしたない言葉が湧き出るとわかっていた。
タイロンはどうしようもなく魅力的な悪童の笑みを湛え、まっすぐアビゲイルを見ている。
小憎らしいのだが、惹かれてやまない。
恥ずかしいのだが、目をそらすことができない。

「ほら、どうされたいか言えよ」

観念して、アビゲイルは口を開く。「・・・もう、タイロンの好きにしろ」
全身をほんのりと朱にそめ、ちょっと拗ねたような口調も愛らしい。
タイロンは思わず彼女を強く抱きしめた。

66:薬(後)4/8
08/05/17 01:12:28 gpJk5gS4
後ろから、男の太やかで長い指が自分の中に入り込む。
「あぅ・・・ん」やっと与えられた刺激に思わず声が漏れた。
タイロンは確かめるようにアビゲイルの内壁を一周する。
敏感な場所はすでにタイロンの知るところである。丁寧に愛撫されると、アビゲイルの尻は切なげに震えた。
指を抜こうとすると、アビゲイルの粘膜は指を離すまいとするように蠕動し、内部へといざなう。
「指を食いちぎる気か」
ささやき声はくつくつという笑い声とともにアビゲイルの耳に注ぎ込まれ続ける。
彼女は恨めしげにタイロンをにらみつけるのだが、その目は欲情で潤んでしまっていて、かえってタイロンの加虐に火をつけた。

排泄に使用する孔へも温む坩堝から蜜をたっぷり擦り付け揉みほぐす。
「ううっ!」それは、彼女にとっても未知の刺激であった。
違和感が確実に自分を快楽へ追い詰めることに恐れをなして、アビゲイルは逃れようと身をよじる。孔も異物の進入を許すまいと窄まる。
連動して泉もこれまで以上に収縮し、アビゲイルに爆発的な快楽をもたらした。
「あ・・ぁぁあ」
「おまえ。ここも感じるのか」アビゲイルは考えるまもなく首を縦に振った。

タイロンは容赦しない。淫核へと指を伸ばして爪弾いた。「ん、ぅ」
ここにも溢れ出している愛液を潤滑に、露出した敏感な器官を撫でさする。
「昨晩はここが一番気持ちがいい、言った。」
10本の指を巧みに動かし、今度は後ろの孔への刺激を強めた。
「今はどっちが感じる?」
交互に与えられる快楽と、意地悪な質問。
羞恥と快楽とに挟まれたアビゲイルには、動悸が薬のせいなのか絶頂のせいなのか判らない。
「ぁど・・っ・・・ちもぉ・・っぅ・いぃ・ぁあ」応える声はすでに言葉をなしていないが、タイロンは満足げに目を細めた。
前後への刺激をやめないままに差し込む指を増やし、アビゲイルを高みへと追い立てる。
彼女は導かれるまま抱かれた胸に爪をたて、腰をくねらせながら訪れた絶頂を味わった。

67:薬(後)5/8
08/05/17 01:13:22 gpJk5gS4
絶頂の余韻にまどろむ女を残して寝台を降りる。
汗の引かないアビゲイルの為に窓を開けて風を呼び込んでやる。
日が昇りきる前にすでに日中の暑さが思いやられるような快晴であった。

不届き者を一人ひとり起しては、天眼で聞きたいことを聞き出し、今後のことを指示する。
アビゲイルが、寝台で半身をおこし、頬杖をついてこちらを見つめていた。
「泳がして、薬の流れを探るのか」
そっと出口からサガエラとマサトグを送り出し、後ろ出にドアを閉めた。
「うまいこと渡りをつけて、組織に入りこんでやろうと思ってさ」
にっこりと笑った顔に天眼はない。

アビゲイルのそばに腰を下ろして、手を伸ばし頬を撫でる。
「お前にしたように薬を使うとな・・・女はみんな自分が淫蕩だと思い込む」
深いため息をついた。
「攫われて、薬で娼婦に仕立て上げられて、外国へ売られていくんだ。・・・しょうがない、私は淫蕩なんだから、と思い込んで。」
アビゲイルが、タイロンの手に自分の手を重ねて、労わるように撫でた。手の甲に唇を当てる。
「おまけに見つけて連れ戻しても、色狂いは治せない。」
怪訝な顔で、アビゲイルは男を見上げた。
「心は忘れても、体が覚えてる。男出入りが絶えなくなって、結局娼館へ逆戻り」
もうひとつため息をつくと、寝台にひっくり返った。
如何ともしがたい問題に立ち向かうタイロンになんと声をかけたらいいのかわからない。
動物のように、寄り添ってじっとしていた。

68:薬(後)6/8
08/05/17 01:14:08 gpJk5gS4
ふいに、タイロンがくしゃくしゃ、とアビゲイルの髪をかき回す。
「まぁ、蓋を開けたらお前が引っかかってたのには驚かされたなぁ」
金色の目が、思い出し笑いで緩んでいる。
「仕事を一生懸命すれば、ご褒美が用意されてるってわけだ」
体を変えて、彼女を押しつぶしてしまわぬ様にアビゲイルの上に覆いかぶさる。
アビゲイルの方から、タイロンの首に手をまわし口付けを交わす。
長い長い、深いキス。

「・・・もう一度、私を抱く?」
率直な問いに、タイロンは笑い出した。「やめとく。」
アビゲイルが不服そうに唇を突き出す。その唇にをついばむようにキスを落とす。
「今お前を抱いたら、明日使い物にならなくなるぞ。演習の責任者だろ?」
いつのまにやら背中に回った両手は、中心線をゆったりと行き来しはじめた。
「・・・20日は帰ってこない・・・」
アビゲイルは、タイロンの耳を甘く噛み、舌で捏ねて誘惑の声を注ぐ。

刺激を受けて正直に反応してもたげ始めた男根を、アビゲイルの体から遠ざけようと試みる。
体を浮かせたその隙間に、回り込んだ細い指が、中心へまとわりつく。
「・・・こら、ききわけろ」
「その間に、またお前はいなくなるんだ。」
怒ったように言い捨てると、アビゲイルのしなやかな足がタイロンの腰に巻きつく。
「あ、アビゲイル?」タイロンはすっかり狼狽してアビゲイルの顔を覗き込んだ。

その瞳には、なみなみと泪。

「・・・アビゲイル」
慈しむ視線をうけ、ついに瞳は決壊して行く筋もの涙の筋が、落ちていった。

69:薬(後)7/8
08/05/17 01:14:51 gpJk5gS4
アビゲイルは、盛大に泣いた。
寂寥、慕情、喪失感、安堵と裏返しの不安・・・さまざまな思いがいっせいに押し寄せて、うまく言葉に出来ない。
わんわんと、むずがる幼子のように声を上げ、涙が止まらない。
こんなふうに泣いた記憶は過去、ない。

「・・・ぅっいつも 突然現れて消える」
きれぎれに、嵐のように渦巻く言葉を全部言葉にしてタイロンに投げつける。
「こ、ころを乱すだけ乱して、放り出す・・・」
タイロンは、いちいち頷きつつ、アビゲイルの頭をなででやっていた。
「どこにいるのか、生きているのかも分からない」
アビゲイルの額に唇をあてて、包むように抱きしめてやる。
しばらく、室内にはしゃくりあげるアビゲイルの声だけが響いていた。

アビゲイルがようやく落ち着いておとなしくなった時、すでに太陽は高みへと押し上げられている。

目じりから、下へ流れた涙の後に唇をあて、なめ取ってやる。
「・・・悪かった」バツが悪そうな顔で、アビゲイルが視線をそらす。「取り乱したりして」
タイロンはアビゲイルの頬を挟んで、自分のほうを向かせ、視線を合わせる。
「いや・・・俺も至らなかった」乱れた額の髪をつまんでよける。

「お前に何一つ約束はしてやれないけど」
そっと口付けを落とす。「何より、アビゲイルのことを大切に思ってる。どこにいても。」
吐息が、お互いの唇から溶け出した。
「・・・・・そんなこと、知ってる」目を細めて満足した表情で、目を閉じる。
一人の男からもたらされる満ち足りた幸福。

泣き疲れたのか、そのまますうすうと寝息をたて始めたアビゲイルの横でタイロンも目を閉じた。
いろんなことが、一度にありすぎる。
心地よい疲労感と手の内のぬくもりに誘われて、タイロンも眠りに引き込まれた。


70:薬(後)8/8
08/05/17 01:15:51 gpJk5gS4
暑い。

どれくらい眠っていたのか。
傍らに感じていた温みがうせたような気がして、わずかに覚醒した。
女を抱き寄せようと、手伸ばして探るが、見つからない。

あわてて起き上がる。
午後の日差しが直接入り込み、暑さがこもる部屋にたった一人取り残されていた。

なんという喪失感
泣きながら彼女が訴えたことが、改めて現実感を持って胸にせまる。

自分は、はっきりとアビゲイルに対する思いを口にした。
今度は、アビゲイルの口からはっきり、自分に対する想いを聞こう。
無論薬抜きだ。

起き上がり、すっかり温くなった水差しの水を口に含む。
ふ、と水差しの下に紙きれがおかれているのが目に入る。
走り書きで”またお会いできますように”と書いてあった。
じわり、と暖かいものが胸に湧き上がって、思わず笑みがこぼれる。
「手早く仕事を片付けて、会いにいくしかないよなぁ」

短い偶然の逢瀬が、彼らの間に確かな糸を張った。

71:薬(後)おしまい
08/05/17 01:17:09 gpJk5gS4
ありやとございました。

72:名無しさん@ピンキー
08/05/17 04:04:21 ASN4Jnn4
一番槍GJ!

アビゲイルの泣いた顔も可愛いよ。

73:名無しさん@ピンキー
08/05/17 12:54:10 8XtR5pGO
超GJ!

二人の絆があったかくってよかった。

74:名無しさん@ピンキー
08/05/17 16:54:29 +N1Nw285
続編キタ━(゜∀゜)━!!
アビィは可愛いしタイロンはかっこいいな!…神出鬼没だけど

アビィが幸せそうで良かった!

75:名無しさん@ピンキー
08/05/17 17:05:22 BJM/yR65
続編待ちかねておりました!!
二人ともいいキャラだなあ…幸せになってほしいです。

76:名無しさん@ピンキー
08/05/20 21:51:53 /Qh3l2UM
ほしゅ

77:名無しさん@ピンキー
08/05/25 17:04:02 eA15ocdt
保管庫はいつ復活するのだろう保守

78:名無しさん@ピンキー
08/05/25 20:11:34 wtb/xl1S
>>77
管理人さんが音信不通になって半年以上か。
前スレの作品も保管されていないし、Wikiで新しい保管庫を設立すべき時期に来ているのかもしれんね。
みんなで管理できる保管庫の方が、こうした状態は回避しやすい。

79:保管庫のエロい人
08/05/26 00:05:50 dDWhRq4V
すいません、今月いっぱい急がしいんで、来月になったら早急に手を打ちます。
姫スレの最終更新は3月だし、掲示板は10日に1度くらいは見ているので、
特に音信不通にはなってないです。

80:名無しさん@ピンキー
08/05/26 00:47:24 Cs+UQ4qQ
>>79
おつかれです。

81:名無しさん@ピンキー
08/05/26 12:38:47 rZD2Zcco
先走ってwikiを借りてしまったけど、音信が取れてよかったです。
あまり無理をなさらずにー。

82:魔王の書き手
08/05/29 22:16:54 fo+ansuz
いつもお読み頂いている皆様には申し訳ありませんが、
再開予定であった魔王の物語、ヘタレ、および新作の投下は、
規制に巻き込まれてしまって解除の見通しも立たないようなので、
いったん休載とさせて頂きます。


ネタ的には既に準備出来ているのですが、
こればかりはどうしようもありませんので、ご理解頂きたく思います。

83:名無しさん@ピンキー
08/05/29 22:20:54 iCKG54QT
/^o^\

84:名無しさん@ピンキー
08/05/29 22:43:37 GQLYe0Tk
>>82
了解しました。楽しみに、しかし気長に待っております。

85:名無しさん@ピンキー
08/05/29 23:04:25 e7Ibf5sE
じらしもまたプレイのうち・・・(*´Д`)ハァハァ

86:名無しさん@ピンキー
08/05/31 03:11:00 h5Jw+Oj0
保守

87:名無しさん@ピンキー
08/06/03 12:55:20 MIOjPmv/
もう、アリューシア様は降臨しないのかしらね~?

88:名無しさん@ピンキー
08/06/03 14:14:03 Ekj6hEjS
アリューシアなら、今、俺の隣で寝てるよ

89:グルドフ
08/06/03 14:46:10 MIOjPmv/
・・・・どちらさまで?

90:名無しさん@ピンキー
08/06/03 19:13:06 J79ZyiCe
>>88死亡フラグたったw

91:名無しさん@ピンキー
08/06/10 02:03:35 otmBkpA8
>>88
帰ってこないな…やられたか…

92:名無しさん@ピンキー
08/06/10 23:24:30 aJflt6a5

・・・─気がつくと彼の腕がからみついている─

まだ明け方の鳥も夢の中にいる頃
少しの息苦しさを感じ彼女は目を覚ます。

そして自分の状況を理解する。
「・・・まただ・・・」
彼女の婚約者─いや、恋人の腕が彼女をしっかりと抱え込んでいた。

首を動かして彼の様子を伺う。
彼は安らかな寝息をたててその深い眠りから覚める気配はなさそうだ。
「器用な奴・・・」
ひとつのため息とともに、見事に自分を放さないその腕に目を移す。

普段室内で働いている彼だが毎日の鍛錬を欠かさない自分の腕よりも色は白いが太くて逞しい。
─こいつも男なんだよな・・・
ほんの数時間前には彼は男で、自分は女なのだと感じるのがこれ以上無いくらいの行為をしておいて
不思議と彼女はそう思った。

騙されたような形で婚約者扱いされていたのはお互いがだいぶ幼いころだったが
その頃と比べるとやはり周りも二人も変わったと思う。
もちろんそれが嫌だとかずっと子供でいたいだとかそういう訳ではないのだが少しの寂しさも感じる。

─まぁ昔から性格は良いほうとはいえなかった気がするが・・・
恋人に対してにしてはひどいことを考えながら
彼女は自分を抱く恋人を起こさないように細心の注意を払い、そっと彼の柔らかくて少し癖のある髪を触る。

髪を触りながら普段の彼とは全く違うあどけない少年のような寝顔を眺めていると
彼女は温かくて優しくて、でも胸の奥が柔らかく締め付けられるような感覚で胸が満たされる。
─こういうのが愛というのだろうか?

こんな気持ちのときなら愛の言葉の一つや二つ言えるかとも思ったのだが
やはり照れくさいし自分には似合わないと思い、もう大人しく眠ることにする。

ゆっくりと瞳を閉じて自分を包む彼の体温を感じるとすぐに意識がぼやけてくる。
彼女はそのぼやけた意識のなか友人から聞いた異国の愛の言葉を思い出していた。
もう彼女は半分夢の世界に入り込んでいたし、
彼が少し眠りから覚めかけていたのにも、思わずその愛の言葉が口からでてしまっていたのにも気づけずにいた・・・


     
        「    ・・・・・・・・・─ほ・・・しゅ・・・・・・       」


                            
                          おわり

                          


93:名無しさん@ピンキー
08/06/10 23:27:29 aJflt6a5
このスレ好きなので初めて書いてみたのですが
お礼代わりとはおこがましいですが何かの足しになればと思い・・・
乱文失礼いたしました。(´・ω・`)

94:名無しさん@ピンキー
08/06/12 06:46:09 spWBYmoW
GJ!!

95:名無しさん@ピンキー
08/06/16 08:09:28 /EPKjlAa
ほしゅGJ
そして、あげ

96:名無しさん@ピンキー
08/06/18 18:12:23 o2/vSPXd
保管庫が徐々に更新されている……もうひといき!
管理人さんがんがれ

97:名無しさん@ピンキー
08/06/22 02:36:26 dU5GXFWb
保守

98:名無しさん@ピンキー
08/06/25 23:43:50 9KkDHYEo
ほつ

99:名無しさん@ピンキー
08/06/26 19:32:28 PUT04J9h
今日も保守だよ

100:名無しさん@ピンキー
08/06/27 21:39:41 +CPbk2FZ
少年誌みたいに寸止めとかパンツまでとかってスレ的にはどう?

101:名無しさん@ピンキー
08/06/27 22:38:36 htTBx5tf
>>100
そういうの今までも結構あったな。
昔の副長シリーズとか……

102:名無しさん@ピンキー
08/06/29 11:27:33 fIyEJF0x
別にいいんでないの

103:名無しさん@ピンキー
08/06/29 12:42:06 o+LJ4JS5
もうちょいまとまったら投下するべさ

104:名無しさん@ピンキー
08/06/29 19:38:50 0aICIQjH
文章面白かったら全然アリだよね。

105:名無しさん@ピンキー
08/07/01 16:29:42 0npIGy7e
文章が悪くても、シチュエーションが良ければいいよ
勿論、文章が良いに越したことはないが

106:名無しさん@ピンキー
08/07/02 22:35:30 UkluqFhU
愛があればいいよ!!

107:名無しさん@ピンキー
08/07/04 03:36:13 KpcGqwXx
魔王の人が投下するまで全裸ですごすぜ!

108:名無しさん@ピンキー
08/07/04 09:28:24 zJhlOaIo
全裸で過ごすには良い季節になったしな。


109:名無しさん@ピンキー
08/07/06 08:00:38 TrXlh71O
また今日も全力で全裸だ

110:魔王の人
08/07/06 09:03:37 oCh9KOi4
相変わらず規制中で投下不可能です。
A級規制かもしれません。
とりあえず服をお召しになってお待ちください。

111:名無しさん@ピンキー
08/07/06 10:31:42 cm1ynn2A
じゃあパンツだけは穿いているよ!

112:名無しさん@ピンキー
08/07/06 13:38:33 9c9KfA+4
では蝶ネクタイだけ

113:名無しさん@ピンキー
08/07/06 13:47:24 H57KVtQy
紙袋を頭に

114:名無しさん@ピンキー
08/07/06 19:29:47 d2tWJerG
じゃ、りぼんだけ

115:名無しさん@ピンキー
08/07/06 21:46:58 jMYZFsZW
よし、俺は靴下と手袋だ!

116:名無しさん@ピンキー
08/07/06 21:57:25 mDAeW8OG
エプロンだけで

117:名無しさん@ピンキー
08/07/06 22:38:37 3OWWvTdy
何言ってんだよ、ここは女兵士スレだぜ。

俺は勿論、全裸に兜と剣だ。

118:名無しさん@ピンキー
08/07/06 22:40:50 cXoLscsF
盾を穿く

119:名無しさん@ピンキー
08/07/07 10:06:50 JaeT5tHN
ブーツと小手のみとか
あとネカフェで投下っていうのもアリだと思いますよ魔王の人

120:名無しさん@ピンキー
08/07/12 02:07:25 04VdUHQa
保守

121:名無しさん@ピンキー
08/07/14 01:14:43 3aVR4waG
保守


122:名無しさん@ピンキー
08/07/17 14:44:02 jhux2B47
魔王の人が投下する前に闇の陣営に忍び込んでティラナの父ちゃんの毛皮をGETするぜ

123:名無しさん@ピンキー
08/07/18 19:22:37 EUoANW9R
そろそろ餓死してしまう……

124:名無しさん@ピンキー
08/07/21 20:22:32 qW7raQoh
ほしゅ

125:名無しさん@ピンキー
08/07/25 02:15:58 Pwqpn9KJ
保守

126:名無しさん@ピンキー
08/07/28 22:30:20 i/iGpb3P


127:名無しさん@ピンキー
08/07/30 20:16:37 UYLJRKuE


128:名無しさん@ピンキー
08/07/30 20:22:01 XyuLV7yQ
ほー

129:名無しさん@ピンキー
08/07/30 23:14:59 Zm19zWS0
ほーーーー

130:名無しさん@ピンキー
08/07/31 00:31:10 edO7WBcX
ほーーーーー

131:名無しさん@ピンキー
08/07/31 11:22:04 CVj/qaKD
生き残ったものの、前回投下からはすでに二ヶ月。
再び良スレとして活気を取り戻すことが出来ますように。

132:名無しさん@ピンキー
08/08/02 07:39:33 Uw3Oo1qL
魔王の人の規制が解除されるよう、全裸で祈願するぜ!

133:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:04:14 EW9pPpN+
保守

134:名無しさん@ピンキー
08/08/05 01:28:07 pyNYDa55
ふぁんたじ~?あぁ?そんなもん女にビキニ着させて、剣振り回させればいいんだよ!
って感じだった80年代は!で、俺は何が言いたいかと言うと・・・・・・・保守

135:名無しさん@ピンキー
08/08/05 13:50:42 yonpXYBo
ビキニ鎧より普通の鎧の方が数倍えろいよなあ……と思う俺は間違いなく異端
ほしゅ

136:名無しさん@ピンキー
08/08/05 15:47:46 0dzOd7Id
がっちがちに鎧を着込んでいて、
兜を脱いではじめて女だとわかるのがいい。
口調も生真面目カタブツ。

137:名無しさん@ピンキー
08/08/05 23:09:32 pyNYDa55
鎧を普段着感覚で着て日常生活をしてることがすごい!
ものすごい体力・筋力があるか、ものすごい軽い鎧かどっちかだな

138:名無しさん@ピンキー
08/08/06 22:49:59 WCqawoYL
ビキニ鎧の良さが俺にはわからんかったorz
メチャクチャゴツイ鎧の中に華奢なおにゃのこが入ってるのが良いと思ってるようでは修業が足りんか

139:名無しさん@ピンキー
08/08/07 00:16:32 C/+9CC31
ビキニ鎧とな・・・・・・よく考えると対極の組み合わせだな!

140:名無しさん@ピンキー
08/08/07 01:31:38 adr+Fvgc
今は本当にビキニ鎧って見ないね。
好きかどうかには年齢的な違いも出てくるのかな
80年代は国内もそうだったけど
アメリカでも、何でもかんでもビキニ鎧って時代だったよね
あの頃が輝かしく思えてくるorz
ドラクエとかに「ビキニの鎧」って単語が出て来ただけで興奮できていたあの頃が懐かしいw
ガチガチの女性騎士とかももちろん好きだけど
見かけなくなったからこそ、尚更恋しいってのはあるなぁ

141:名無しさん@ピンキー
08/08/07 01:38:21 CNTswnzC
俺の脳内ファンタジーではいまだに男はふんどしで女はビキニ鎧

142:名無しさん@ピンキー
08/08/07 02:00:08 mb5EPIMI
ビキニアーマー着る女戦士と、フルスーツ着る女戦士とじゃ人物像のイメージが変わるな。

143:名無しさん@ピンキー
08/08/07 06:49:41 CYwlydAu
ビキニ鎧・・・絵にはなるが実用性はゼロだよな、漢のロマンだけどw

144:名無しさん@ピンキー
08/08/07 09:44:56 sBGbNWRV
鎧を着て戦う女戦士は腹筋割れてるような体型がいいな
細身の体は魔術師とかに任せればいい
適材適所ってやつだ

145:名無しさん@ピンキー
08/08/07 10:14:02 +/2QMp0g
ビキニ鎧着るのは身体が筋肉質で、全身鎧着るのは身体が華奢。
鎧の重量を考えるとありえないけど、なんかそんなイメージがある。

146:名無しさん@ピンキー
08/08/07 19:08:24 uRsfZzig
うーむ……保管庫BBSは完全な無法地帯だな
前スレの各SSごとの個別保管もいっこうに進まないし……
夏だし新作もないし、管理人さんもモチベ落ちてるのかしらん

147:名無しさん@ピンキー
08/08/10 01:35:04 fqKm9bEW
保守

148:名無しさん@ピンキー
08/08/10 06:54:09 9+H3cmXu
こういうのはスレ違い?
異界自衛隊。
富士演習場の磁場が火山活動により変化し、凱旋門のような巨大建築物が現れた。
中から特殊生物(後に幻獣種と命名)が現れ交戦した陸自戦力が門に接近した時消失した。

女…自衛官 男…異世界住人なんてどうだろう?
     

149:名無しさん@ピンキー
08/08/10 08:41:40 G65F08tl
>>148
注意書きがあればいいんじゃね?

150:名無しさん@ピンキー
08/08/10 14:44:37 AwNSmuRc
>>148

>>1読んだ?
>・剣と魔法のファンタジーの世界限定で
>・エロは軽いものから陵辱系のものまで何でもあり

こっちの方が良いんじゃない? ファンタジーもOKのようだし。
【軍服】軍人や傭兵でエロ【階級】
スレリンク(eroparo板)


151:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:32:19 FnFMmGE6
封印解けてたら投下

152:投下準備
08/08/11 18:33:22 FnFMmGE6
ほぼ一スレぶりでありますが、魔王の話を再開します。
つきましては、半年以上空白があり、以前の話を憶えていて頂けてるか不安なので、
軽くおさらいを兼ねて出演女性陣のオムニバス形式で話を作りました。
エロは有りませんが、これで各キャラの特徴を思い出して頂ければ幸いです。


それでは『女たち』をどうぞ。

153:女たち
08/08/11 18:34:28 FnFMmGE6

「もとはと言えばな、そなたら毒姫は人に害を成すドラゴンを屠る為に考え出されたのよ」

朱天幕の床に胡坐をかき、ネリィに髪を梳らせながらティラナは語る。
人目の無いこの場所では、腰巻さえ履かない気楽な姿だ。
その後ろに坐って、ネリィは丁寧に櫛を入れる。
衣服を着るのは大嫌いなティラナも、毛繕いだけは欠かさない。
こうして身軽な格好で髪を梳かせるのは、ティラナにとって大のお気に入りの時間だった。

「太古の頃は、今よりもずっと竜種は世にのさばっておった。
 ようやく殖え始めた人間族にとっては、奴らは逆立ちしても敵わぬ敵じゃった。
 ゆえに人間どもは、奴らにしばしば生贄を差し出し、暴れる竜を宥めておったのよ。
 生贄に供されるのは決まって、選び抜かれたうら若い生娘じゃった……
 まあ、そちらは人間の美意識の話で、実際はドラゴンどもに生娘と経産婦の味さえ区別が付くと思えんがね」
「そんなに味が違うものなの?」
「当たり前じゃっ。妾の如く高尚な種族なれば、一噛みしただけで判るわえ!」

ティラナは誇らしげに言った。
まるで地上で最も古く誕生したと言われる竜族でさえ、粗野で悪食な下級種族であるかのような口ぶりだ。

「処女の肉は、舌触りがまろやかで臭みが無い。
 しかし身体が男を知ると、子を産むためのものに変わるゆえ味が落ちてしまうのじゃ……と、話が逸れたな。
 どこまで話したかの?」
「竜を屠るために、毒姫が考えだされたという事までよ」
「そうじゃった…… そうして人間は長い事ドラゴンに生贄を捧げて続けていたが、
 地上で最も悪知恵の働く種族である人間たちは、いつまでも竜に娘を喰われるのが気に入らなかった。
 ある時、どこかの誰かが考えた。『ドラゴンに一服盛ってやろう』と。
 無論、まっとうな方法では毒を喰らってくれるはずが無い。
 そこで生贄に捧げる娘に毒を帯びさせたのじゃよ。
 数え切れぬほどの娘達が、技法が確立されるまでに死んだ……
 ドラゴンを悶絶させるだけの毒を蓄えつつ、女子を生かす方法が見つかるまでにな。
 しかし、たった娘一匹の生贄で竜を殺せるようになるのなら、それは安い犠牲じゃったろう」
「……」

154:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:36:01 FnFMmGE6

そもそも、古代の物語に詳しいこの少女に毒姫の話をねだったのはネリィからだった。
彼女が長い間抱いてきた疑問、『自分を抱いても、魔王は何故死なないのか』という事を、
同じように死なないティラナに聞いたのだ。

『魔王は毒にやられない、と思っておるのか?
 逆じゃ。毒で殺されるような軟弱者は、ハナから魔王は名乗れんのよっ』

自慢げに話す口ぶりは、その毒にやられない己も同格とでも言いたそうなものだ。
髪を梳き続けるうちに話は自分自身の話へ、毒姫という存在について続いていった。
しかし、あらゆる形であれ死を厭うネリィにとって、それは愉しい話ではなかった。
まして、自分と同じ宿命を背負わされ、死んでいった少女達のことを思うと、
ネリィは心穏やかではいられなかった。

「こりゃ、手が止まっておるぞよ」
「……あっ、ごめんなさい」

再び、ネリィは輝く金色の髪に櫛を入れる。
ネリィも、ティラナの髪を整えるのは好きだ。
物心ついてから、彼女の人生には友と呼べる者が一人も居なかった。
自分を養育した薬師と、一定の範囲以上には決して近付く事の無い冷たい乳母達に囲まれて、
奥深い王宮の片隅で密かに育てられてきた。
誰かの髪を梳かすなどという境遇は、幾ら憧れても手に届かなかった。

魔王の寵姫になった今ならば、権力を嵩に命じることは出来よう。
ただし、毒に染まった自分を知っている女達の、怯え震える首筋を見ながら髪を梳くのでは、
己の存在が一層惨めに思えて、とても愉しむどころではない。
だから、ネリィはティラナのことが好きだ。
ティラナは、自分の身体の毒をこれっぽっちも恐れない。
髪も梳かさせてくれる。
彼女にとって、ティラナはたった一人の対等の友達だった。

「毒姫が生まれてから、ドラゴンはより容易に人の手にかかるようになった。
 絶命までには至らずとも、臓を灼かれて苦しむ彼奴らを屠るのは簡単じゃものな。
 そうして毒姫が育てられ、使われて行く中で……クククッ、ある時とんでもない不届き輩が現れたのじゃよ」
「不届き者?」
「そうじゃ。乙女であるはずの毒姫を、竜に捧げる前につまみ食いしようとした馬鹿がおったのよ。
 そんな真似をすればどうなるか、そなたには言うまでも無かろ?」
「……」

155:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:37:03 FnFMmGE6
「骸となった愚か者を見つけて、人間達は閃いた。
 『ドラゴン以外にも、この毒は使える……』
 その頃には毒の効く下級竜種も頭数を減らし、人間族にとって危急の存在では無くなっておった。
 それよりも、頻発する人間同士の争いの方にそれを使い出した。
 毒姫育成の技法と存在を秘伝とし、同族同士の暗殺に用い始めたのじゃよ。
 いかなる英雄豪傑も、美しい女にはほんに弱い…… ひゃひゃひゃっ、げにも女子に勝る毒は無しじゃ」
「そう…… そんな歴史があったのね」

ヒトの営みの愚かさを嘲笑うかのようなティラナの言いっぷりに、ネリィは哀しげに応じた。
反逆を企てた父、まだ母体に居た自分に毒を含ませた薬師、魔王を殺そうと自分を差し出した王族たち。
自分の出自もまた、その愚かさの一端に連なるのか。

「む…… 辛気臭い声は出すでない。
 少なくとも、魔王や妾はそなたを喰らっても死なんのじゃ。それで我慢せい」
「ええ…… 私には陛下と貴女が居る。
 これまで育てられてきた中で、私は一番幸せな毒姫だわ」

金髪の少女の身体を、ネリィは背後から抱き締めた。
彼女にとってかけがえの無い、小さな友達の身体を優しく包む。

「ひゃう! こそばゆい真似をするでないっ」
「うふふふふ…… 良いじゃない、これ位」
「妾にこんな風に気安くしていいのは魔王だけじゃっ」
「あら、陛下にこんな感じに抱き締めて頂いたことが有るの?」
「それは無いが……」
「私は有るわよ」
「が、がるるるるっ。自慢しよってからに!」

腕の中で口惜しそうに咆えるティラナを抱き締めながら、
ネリィは幸せな時間を堪能するのであった。


・・・・・・・・・



156:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:38:49 FnFMmGE6
 
用意された甲冑を試着し、アデラはその軽さに驚いていた。
信じがたいことに、装甲板の隙間を守る鎖帷子までもが高純度のミスリル合金だ。
剣と盾はラルゴン王の遺物を借り受けられるが、甲冑はそうは行かない。
正式に軍務に就いて以来初めて、彼女は自分用の鎧を仕立てることになったのだ。

「動かし辛い所はないかね?」
「いや…… 大丈夫」

これまでは、聖騎士団所有の鎧の中から体型に近い物を貸与してもらっていた為、
多少の不自然さは『鎧に身体を合わせろ』と言われてきた。
だが、さすがは鍛冶の匠と音に聞こえたドワーフ族の誂えた甲冑だ。
体格の寸法を測って作製されたこの板金鎧は、部屋着を着ているかの如く全く行動に不自由がない。

「とてもお似合いです。アデラ隊長」
「ありがとう」

装着を手伝ってくれた従兵の賞賛を受け止め、その場でアデラはくるりと廻った。
脚に履くのは一角獣の革をなめしたという稀少なブーツ。
片足分の価値だけでも、聖騎士としての彼女の生涯俸給を軽く上回る。
その代わり、履き心地は極上。
まるで足に羽根が生えたかのような気持ちにさえなる。
脛当て、膝当ても同様の特注品だ。
たった一人の為に、こうまで王国の重宝が集められ、用いられるなど例があるまい。
光の陣営が勇者に掛ける期待が、ここに伺えた。

「ふふふ、本当にお似合いよアデラ。非の打ち所のない、立派な軍装ね」
「魔道士の眼から見ても問題は無いかしら? マリガン」
「ええ…… 重すぎず、軽すぎず。
 各所に施された防御のルーンもしっかりしてるわ」

先のドレイクの来襲時に、勇者アデラを助けて活躍したという触れ込みで、
いつの間にかマリガンは聖騎士庁にまで出入りを許されるようになっていた。
ただし、付き合いの長いアデラは、それを十全に信じている訳では無い。
おそらく聖庁の有力者の誰かが、彼女に致命的な急所を強請られた所為ではないかと推測している。
アデラも、マリガンの魔術師としての実力は少しも疑ってはいない。
協力が得られるうちは頼もしい味方である…… 忠誠心には疑問符が付くが。
 

157:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:39:39 FnFMmGE6
 
「ちょっと外で剣を振るってみていいかな?」
「どうぞ、存分に」

剣を手にして錬兵場へ向かおうとすると、身体の動きに合わせて甲冑がカシャカシャと擦れ合う。
しかし、鋼板の無粋な音と比べれば、ミスリル銀は鎧の鳴る音さえ心地良い。
アデラも一人の騎士として、素晴らしい軍装を纏えば気持ちが昂る。
篭手で固めた手で鞘から刀身を抜き、構える。

「ふんッ……、ハッ、やぁっ! たぁーッ!!」

一振り、二振りと動作を確かめるように基本の型をなぞると、信じられないほどに甲冑が軽い。
切っ先は風を切り裂き、日の光を浴びて白銀の鎧が輝いた。

「隊長、すっごく素敵……」

その様を眼にした従卒が、思わず呟いた時だった。

「ふーん、君はアデラのことが好きなのね」
「……えっ!! そ、そういう訳じゃっ」
「あら? じゃあ嫌いなの?」
「違いますっ。アデラ隊長は…… あっ、憧れなんですっ!」

顔を真っ赤にして抗弁する従卒の肩に、マリガンはそっと手を置いた。
そして、耳元でそっと囁く。

「じゃあ、『アデラが欲しい』とか、『一つになりたい』とか思ったことは?」
「あっ、ある訳無いでしょう! まだ見習いですが、これでも聖騎士団の一員ですよっ」
「うふふ…… 聖庁の人間全員が聖人君子じゃないでしょ。
 君のアデラもひょっとしたら、こっそりそういう妄想を抱えているかもよ?」
「隊長に限って、そんな事は絶対ありませんっ」
「『アデラに限って』? じゃあアデラ以外は、そういう事をするかもしれないって意味よね。
 何か身に覚えでもあるのかしら?」
「うぅ……」

侮辱されて腹は立つのだが、何か口に出せば巧みに言葉尻を取られそうだ。
それが怖くて、うかつに言い返せないのが忌々しい。

「次の戦には、君も参加するの?」
「志願はするつもりです」

158:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:40:25 FnFMmGE6
 
(なんでこんな人が隊長殿の友人なんだろうか?)
そんな疑問が、従卒の脳裏から離れなかった。
不躾なほどに近付いたり、気安く触ったり、吐息が当たるほど耳元近くで囁くのは止めて欲しい。
はっきり言って落ち着かない。
ついでに魔道士なんだから、谷間が見えるほど胸元が開いたローブはいかがなものか。

「じゃあ、思い残しの無いようにしといた方がいいんじゃない?」
「お、思い残しってなんですか……」
「好きな人に告白するとか。それ用の店に行って、大人になっておくとか」
「そんなこと、出来ませんよ……」
「なぜ?」
「言いたくありませんっ」

そう言ったきり、従卒はマリガンから顔を背けてしまった。
従卒としての仕事さえなければ、この女術師からとっとと離れてしまいたい。
でもアデラが甲冑を脱ぐ時に、自分は手伝わなければならない。
その役目を誰かに譲る気はないので我慢しているのだ。

「可愛いわねぇ。手取り足取り私が教えてあげようかしら?」
「……何をですか」
「この世の中の半分の事よ」
「世界の半分?」
「うふふ…… 女を知れば世界の半分が判るし、男を知れば、残りの半分が判るわよ」
「ぐっ、からかわないで下さいっ。いくら何でも怒りますよ!」

肩に乗せられた手を振り払い、従卒はマリガンを睨みつけた。

「マリガン、私の従卒を堕落させようとするのは止めて頂戴」

外野の騒ぎを聞きとがめ、アデラは二人に向き直った。

「あっ、お邪魔して申し訳ありません。隊長……」
「御免なさいね。この子があんまり可愛いものだから」

従卒の謝り方は真剣そのものだったが、マリガンのそれはいつも通り遊んでいるかのような雰囲気が抜けない。
アデラにとって友人の行動はまさにいつも通りのことなので、今更それを咎めることも無かった。

159:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:41:11 FnFMmGE6
 
「これなら、魔王に勝てるかしら?」

アデラはそう呟く。
以前挑んだ時は無手であったが、実力差は圧倒的だった。
神器を手に、優れた甲冑を纏った位で、その差は埋められるだろうか?
それに答える女魔術師の声は、冷たいほど突き放した声だった。

「さあ、それはどうかしらね?
 どれだけ高価な武装したところで、勝てるかは別次元の話よ。
 なんせ相手はあの『魔王』だもの」
「失礼ですよっ! いくらアデラ隊長のご旧友とはいえっ! 隊長は絶対に勝ちます。
 そして王国を救って下さいます!」
「……だそうよ、アデラ。貴女の勝利は、この子が保証してくれるって」

マリガンは肩を竦めた。
知らないということは幸せな事だ。
魔王の持つ絶大な魔力を、この未熟な従卒は毛ほども判っていない。

(まあ私もあの夜まで魔王陛下の本当の力を理解できていなかったのだから、似たようなものだったけど)

そう思うと苦笑が洩れる。
アデラを追って夢の世界で魔王に出会い、底知れない力の存在を体験した。
だからこそ今なら判る。
王国最強を自負する己の、少なくとも十数倍の魔力を魔王が蓄えており、
それを自在に使いこなす事が出来るという事を。

(うふふ、山は高くなければ登り甲斐が無く、人妻は貞淑でなければ誘惑し甲斐が無いってね……)

自分の卑小さを思い知って、かえってマリガンの胸は高鳴った。
己の求める魔道の深淵とは、全てを賭けるに値する物だという確信が、彼女の情熱に火を付けたのだ。
あの夜を境に、マリガンは一つの壁を破った。
昨年までの自分なら、魔王との差は数十倍はあった。
今は十数倍である。
いずれ、この差を数倍にまで縮めてみせる。
さらにいつの日にか、あの漆黒の背中にこの手を届かせて見せる。
それは、確固たる誓いであった。

160:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:41:57 FnFMmGE6
 
「私も、魔王を倒すのに何かが足りないとは思ってるわ」
「隊長……」
「やっぱりアレじゃない?」
「『アレ』って?」
「ほら、私達がナニをした、あの夜に見せたアレよ。私が貴女に一服盛って、手ご……」
「わわわわわあっーーーーーー!!」
「?」

アデラが突然大声を出してマリガンの話を遮ったので、従卒は何の意味か判らなかった。
大人の雰囲気が魅力の隊長にしては、見た事のない慌てぶりだ。

「だっ、駄目よマリガン! そんなこと白昼堂々言っちゃ駄目っ!!」
「じゃあ夜中にこっそりとなら良いのかしら?」
「……アレとかナニとか、手ごって何のことですか?」
「フフッ、知りたい?」
「そんな事聞いちゃ駄目っ! 絶対にダメよっ!」

取り乱すアデラと、面白そうに笑う女術師。
従卒は双方を交互に見る。
一体この二人の間に、どんな秘密が有るのだろうか?
従卒にとって、解けない謎が一つ加わったのだった。


・・・・・・・・・



161:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:43:20 FnFMmGE6
 
『古く深き森』の辺に、闇の軍勢の野営地は設けられている。
もう一息で光側のエルフ族に止めをさせる所まで追い込んだ闇の軍勢であるが、
現在大規模な攻撃は中断されていた。
侵攻の要である『煉獄を運ぶ者』が先日の王都奇襲で炎を吐き尽くし、休息が必要になった為だ。

そんな状況の中、イリアは陣地の柵に腰をかけながら林檎を齧っていた。
一人ではなく、側にはフィリオがいる。
ただし、端女である彼女がイリアと同列に坐ることは許されないので、
フィリオは地べたに腰を下ろしていた。

「王都とやらはどんな感じだった?」
「すっごく珍しいものが一杯で、吃驚しました!
 亜人や獣人が居ないし、建物や着てる服も違うし、食べ物の味付けもこちらとは違ってましたっ。
 西の国ってああいう感じなんですね。
 あと白いエルフも大勢居ましたよ!」
「ふん、居留地を追い出された連中が、王都の軍勢に合流してるらしいな」
「他にも、背は小さいのに酒樽みたいに太った髭もじゃの御爺さんたちとか……」

楽しそうにフィリオは喋り続ける。
闇の軍勢が蹂躙した都市は幾つも見ているが、光の勢力下にある大都市を生で見たのは初めてだった。
ほんの僅かな時間だったが、目新しいものだらけの滞在だった。

「それから、ティラナさまの背中に乗せて頂いて、宮殿の屋根を飛び跳ね廻って……」

気が利くのなら、雌剣牙虎の活躍は少々省いて話すべきだろう。
しかし、そこは根が素直なフィリオである。
平静を装うイリアの態度をそのまま受け取り、王都での出来事を包み隠さず話す。

「で、楽しかったか?」
「はいっ、とっても!」
「……」

162:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:44:10 FnFMmGE6
 
忠実と正直がこの端女の美徳だが、時々それが過ぎる。
内心イリアは不満を抱えているのだ。
魔王があの雌虎を伴ったというのに、自分には声すら掛からなかったことに。
ただ、そんな詰まらない事で僻んでいると端女如きに知られるのは嫌なので、
そんな素ぶりは見せないが。

(チッ……)

話を聞いている内に、イリアは益々気が塞いできた。
終いまで食べるのが億劫になり、齧りかけの林檎をそのままフィリオに投げ与える。

「わぁ! ありがとうございますっ」

抛られた林檎をすかさず掴むと、フィリオは満面の笑みを浮かべ、齧り残しの果実にむしゃぶりついた。
このように、イリアは食べ残しの果物や、まだ肉が付いている骨などを時折フィリオに与えていた。
イリアにすれば、この風呂係の端女は愛しい主君のことを聞ける貴重な相手である。
取るに足らない下女だが、手懐けておいて損は無い。
そこで、犬に餌付けをするような気持ちで、色々呉れてやっているのだった。
まあフィリオにすれば、イリアがどんな思惑であろうと余り関係が無い。
食べ物をもらえるのならそれで十分だ。
だから、フィリオは彼女のことが好きだった。
果肉がまだ結構残っている林檎を呉れるのなら、何と思われようと平気である。
むしろ、イリアたちが自分を家畜同然に扱う事に、何の疑問も抱かきはしない。
フィリオにとっては、それが自然なのだ。

自分が齧り残した林檎を美味しそうに頬張るフィリオを見て、イリアは無性に腹が立った。
卑しい人間族の端女は、何の不安も無さそうに残飯を貪っている。
それに引き換え、永き時を自侭に愉しみつつ生きる高貴なる闇エルフの自分は、
こんな些細なことで思い悩んでいる。

「……なあ、フィリオ」
「ふぁい?」
「何で、陛下はお前まで王都に連れて行ったんだろうな?」
「ふぇ?」
「あの雌虎なら判る。忌々しいが、あ奴に虎の皮を被せればそれなりに役に立つからな。
 だが、何でお前をわざわざ連れてく必要があったんだ?」



163:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:44:51 FnFMmGE6
 
アデラの事を、イリアは詳しく知ろうとはしなかった。
戦の最中に捕らえられた、慰み者のうちの一匹ぐらいの認識しかなかった。
故に、解放されたアデラが、光の勇者として選定されたという事も知らない。
そもそも、魔王は陣営の誰にも王都へ向かう理由を告げなかった。
だから、勇者となったアデラの様子を探るために、フィリオを伴ったという答えには、
イリアは残念ながら至らなかった。

「そんな事は私には判りませんよ」
「……」
「でも、そもそも理由なんて考えなくってもいいんじゃないでしょうか?」
「何だと?」
「私は、陛下が連れて行くと仰るのならその通りにするし、
 連れて行かないというなら残るだけです。
 理由なんて物は、陛下が判っておられればそれで良いと思いますけど」

どうしてそんな事を聞くのかと言いたげな顔で、フィリオは答えた。
彼女は自由な意思で生きてきた人種ではない。
生まれる前から奴僕になることは決まっており、従う事がほとんど本能になっている。
望むことといえば、せいぜい持ち主から不当な罰を受けたくないという事と、
時々配給以外の食べ物にもありつきたいという事ぐらいだ。

「……」

己を完全に魔王に委ねきった端女の瞳が、彼女を見詰め返す。
イリアは言葉を失った。
その瞳には一点の濁りも曇りも無い。
もしも魔王が毒薬を飲めと言ったとしても、フィリオは直ぐに飲むに違いない。
そして飲んでから、飲まずに済ます方法はなかったかと考えるだろう。

(くそっ……)

何も求めない代わりに、何にも惑わされない。
貪欲と放埓が美徳である闇エルフとは、なんと違った生き方であることか。
畜生に相応しい、哀れな生き方だとも思う。
しかし現実にはイリアは迷い、フィリオは迷わない。
そんな事を考えているうちに、ここで悩む事すら嫌になってきた。
何も言わずに柵から降り、フィリオに背を向ける。

「イリアさま、美味しい林檎をありがとうございました」
「……クッ!」

背にかけられた感謝の言葉さえ、今は忌々しい。
イリアは、この端女を鞭打ちにしてやりたいという衝動に駆られた。
もしもフィリオが魔王の所有物ではなかったら、彼女はきっと実行していたに違いない。
去っていく闇エルフの少女の背中を見送りながら、フィリオは林檎の芯を種まで齧り続けていた。


・・・・・・・・・


164:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:45:27 FnFMmGE6

ベッドに横になった妃の手を、枕元に立ったクルガン王は励ますように握った。

「ご心配をおかけして申し訳ありません。もう何ともありませんから」
「身体を労わらねばならんぞ、ヘルミオーネ。
 もう少しだ。もう少しの辛抱で、全てが上手くいくのだからな」

暗黒竜の来襲があった晩以来、体調を崩して床に伏せったままの妻に、クルガンはそう断言した。
まるで、その未来が既に確定したものであるかの如く、無邪気といっていい声色で王は妃に笑いかける。
夫とは昨日今日の付き合いでは無い。
つられた様に、ヘルミオーネは笑った。
王の言葉に、自然と愛想笑いを浮かばせることが出来るようになったのは一体いつ頃のことだっただろうか。

「ああ、お前も待ち遠しいだろう。
 光の陣営が勝利し、正義が取り戻され…… そして余は、正統な権能と栄光を手にするのだ。
 その日は遠い日の事ではないぞ」
「本当に、待ち遠しいことです」
「うんうん、お前にも苦労をかけた。
 だが、それらが報われる日が来るのだぞ!」

自分がその勝利とやらにどれほどの貢献をしてきたかという事には、
どうやらラルゴンは気を払わないらしかった。
降って湧いた勇者の登場も、彼にとってはある意味当然だった。
英雄王の末裔たる自分が苦難に陥っているのだから、光と善の神々から助力が下されてしかるべきなのだ。
いや、彼にとっては助力が下されるのが遅すぎた感さえある。

「邪竜を退けたアデラの活躍は聞いたであろう?
 あの娘なら、きっと魔王を倒してくれる」
「……ぅ」

何気ないクルガン王の一言だったが、その名前を聞いた瞬間にヘルミオーネの表情は翳る。
しかし、上機嫌で独り善がりの想像を語るクルガンは、妻の変調に気が付かなかった。

「いかに魔王とは云え、勇者が誕生した以上恐るるに足りん。
 だからな、早く本復せねばならんぞ。
 邪悪な勢力が滅ぼされ、平和と繁栄が復活するのを共に祝おうぞ」
「はい…… では、一日でも早く床上げ出来る様に、もうお休みさせて頂くことと致しましょう」
「そうか? うむ、それが良いな。ではゆっくり休めよ」

165:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:48:12 FnFMmGE6
 
念を押すように何度も頷くと、クルガンはようやく王妃の寝室を去った。
夫から解放されたヘルミオーネは、安堵したように息を吐く。
慣れているはずの夫の相手が、なぜか今日は疲労に感じた。

(単に、体調が優れない所為なのかしら? それとも、もう私もそんな歳?)

まだ三十にもならないというのに、自分の身体はどうなってしまったのか。
あの日までは、いつも変わらない日々の積み重ねだった筈なのに。
絹の綿入れを被り直すと、ヘルミオーネは安息を求めて瞼を閉じた。
しかし、先程夫の口から洩れた名が、彼女に安らかなる眠りを与えなかった。

(……う、)

暗黒竜が王都を襲撃した夜、同時に魔王も出現していたという事は、光側では三人の女しか知らない。
一人は勇者アデラ、二人目は女術師マリガン、最後は王妃ヘルミオーネだ。
魔王は妖術を用いて王宮の人士から正気を奪い、その出現を悟らせなかった。
唐突に現れて数名の兵士を殺傷し、宮殿の屋根を跳ね回って逃げた魔獣の存在も併せ、
それらは暗黒竜の攻撃を支援するための撹乱工作だと、廷臣およびクルガン王は判断した。
真実は、王妃によって伏せられた。
彼女がアデラに口止めをしたのだ。
自分が夫の前で陵辱されたという事実を、誰にも漏らして呉れるなと。

石化術を解かれたクルガン王は泥酔していた所為もあって、
禄にあの時のことを憶えていなかった。
それは彼ら夫婦にとって幸いな事だったに違いない。
情緒不安定なクルガンが、自分の前で妻が辱められたと知ればどんな反応をしたことか。

目を閉じると、魔王にされた行為が脳裏に蘇った。
細いが強靭な力が篭った腕で組み敷かれ、
冷たい掌で身体中を触られ、
唇を奪われ、乳首を摘まれ、臀部を撫でられ、太腿を割って秘所を弄られ……
彼女には、魔王を憎む資格がある。
そして憎むべきなのだ。
光の陣営に生まれた身として、王妃という地位にあって、魔王を許すということはありえない。
さらに女としても、自分を蹂躙した男に憎悪を抱いてしかるべきなのだ。

だが、身体は憶えてしまった。
魔王との出会いで知った、男女の交わりの味を。
あれこそが、身も焦がれるような官能の歓びなのだ。
夫からは与えられなかった法悦を、あの晩初めて感じてしまったのだ。

豪華な寝台の上で一人、ヘルミオーネは煩悶した。
二度と、あの男と会う事は無いだろう。
そして会うべきでもない。
だが、知らなければ己の不幸を自覚することも無かったろう。
記憶だけが、冷たい人生に焼き鏝を当てられたが如く残る。
火傷の如く熱い一夜の思い出だけを残したまま、自分は再び賢く貞淑な王妃に戻らなければならない。
そんな人生を受け入れ、続けて行く覚悟は出来ていたはずなのに、今は何故か一抹の哀しさを憶える。
燻る想いを押し殺しながら、彼女は瞳を閉じた。


・・・・・・・・・

166:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:48:52 FnFMmGE6
 
そこは広い浴室だった。
古代帝国期に各地に造られた、公衆浴場並みの広さがあった。
絶え間なく湧き出す熱水が地下から汲みだされ、大理石の浴槽に注ぎ込まれている。
ただし、この浴室に居たのはたったの二人だ。
大理石の縁に背をもたれかからせた、恐ろしいほどに青白い肌をした白髪の女が一人。
その女に背後から抱き締められ、女の両脚の間に納まるように坐った少年が一人。
二人は重なるように湯に浸かっていた。

「師よ、何人も運命を変えることは出来ないのですか?」

少年は、抱き締められたまま背後の女に問うた。
二人は師弟である。
そして同時に男女の関係でもある。
湯に煙る浴室も、二人にとっては教育の場であった。
背中に当たる女の柔らかい肉の感触よりも、少年の関心は世界の真理に向かっていた。
そんな真摯な態度を愛でるように白髪の女は微笑み、授業を続けた。

「ご覧…… 我が弟子よ」

女は湯面の上に腕を伸ばした。
細く、白い指先から水滴がぽつりぽつりと落ち、湯面に波紋を形作る。
そしていくつもの波紋が重なりあって、複雑な紋様を織り成していく。

「落ちる水滴と波紋の間には因果が存在する。
 それは、神々でさえ抗えぬ黄金律だ。
 そして何者であろうとも、波紋を作らずに水面を歩むことは出来ない。
 現世の事象とは、生ける者と死せる物たちの波紋同士で揺蕩う大海原のようなもの。
 運命の内側にあるものが、その水紋を変えようと動くのなら、新たな水紋を造らずには居られない。
 複雑に絡み合う宿命を読み解き干渉するのは、
 混沌の中から秩序が発生するのを観測するより難しいだろうな」
「御身にでさえもですか?」
「私にも、お前にもだよ」


167:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:49:27 FnFMmGE6
 
少年は、雫が象る水紋に視線を注いだ。
この湯面が世界としたら、師と己がこうして湯を浴びることも水紋の波の一つ、運命の一欠片に過ぎぬのか。
だとしたら、なんと師も自分も矮小な存在であることか。

「末頼もしい子だな。
 無窮なる運命の深淵さえも、お前の渇望を止めることはできぬのか」

揺らぐ波紋をじっと見詰める教え子を、師は愛しげに抱き締めた。
世に稀なる資質を持ちながら、なお全ての叡智を掻き集めるには足らぬと己の非才を嘆く― 
若き弟子に、女はかっての自分の姿を重ね合わせていた。

「良く聞く事だ。我が賢き弟子よ」
「……はい、師よ」
「宿命を変える事は、水面を歩む者たちには無理だ。
 もしお前がそれ変えようと欲するのなら、宿命の外に飛翔し、世界に相対さねばならぬ」  

女は、少年の身体を強く抱き締めた。
魔道を極めた自分にすら不可能な事だが、この弟子ならばやり遂げるかもしれない。
彼女には、そんな期待があった。

「……出来ましょうか、そんな事が」
「可能かもしれないし、不可能かもしれない。
 しかし、お前が運命を変える運命には無いと、誰に判るのだ?」
「あっ……」

白い手が、いつの間にか弟子の膝の間に忍び込んでいた。
そこにある男子の証左を掴まれて、少年は思わず声を上げた。
根元から先端まで、指が巧みに撫で上げてゆく。

「授業は終わりだ、我が弟子よ。
 続きは、またいずれ話してやろう。
 それより今は―― 」


女の声は、そこで終わった。


168:名無しさん@ピンキー
08/08/11 18:49:58 FnFMmGE6
 
「……ん」

湯屋で、魔王は瞼を開けた。
浴槽の脇には、寵姫であるネリィが立っている。
ティラナが魔王の湯船を損傷させてしまったため、新注されるまで彼はネリィのそれを使わざるを得なくなったのだ。
生憎と虎も浸かれる巨大な湯船と比べれば、彼女の物は大分小さいが。

「……ネリィ」
「はい、陛下」
「余はどれほど眠っていたか?」
「あっ、……お休みになられていたのですか?
 申し訳ありませぬ。数えてはおりませんでした」

ネリィは面目なさげに頭を垂れた。
だが、常日頃から瞑目することの多い魔王である。
目を閉じているだけなのか、瞑想に耽っているのかの区別はつき辛い。
そんな時はいつも、邪魔をしないように控えているのが常だった。
よって、この場合も眠っていた事に気付けという方が難しかったろう。
魔王もネリィを責めることも無く、ただ呟くのみであった。

「夢を見た…… かって黒檀の玉座を所有せし、偉大なる魔道士とその弟子の夢だ」
「……?」
「まだ与える者と欲する者の心が一つであった、幸福な時代の二人。
 あれは― 」

話し続けようとした瞬間、仮湯屋の外で盛大な水音が鳴った。
それに阻れて、ネリィは続く言葉を聞く事が出来ずに終わる。
魔王が何を言おうとしたのか、もはや彼女には知る機会が与えられなかった。

「ちょっとクォン! しっかりと腰を入れて運ばないからよ」
「……ごめんなさい」
「もうっ、私だって自分が食べていくだけで精一杯なんだから。
 働けないなら、身体か命で稼ぐしかないんだからね!」

水を入れた桶でも落としたか、新入りの端女を先達が叱っているようだ。

「そこの者たち、静かになさい。陛下がご入浴中なのですよ?」
「あっ、ご無礼いたしましたっ。水は直ぐに運んでおきますので」
「急いで頂戴ね」



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