【総合】新ジャンルでエロパロpart6【混沌】at EROPARO
【総合】新ジャンルでエロパロpart6【混沌】 - 暇つぶし2ch400:名無しさん@ピンキー
08/07/03 21:30:45 PZ/ETxaz
おK、じゃ「内気すべりっ子」でいいんじゃね。
あれだ、ここVIPじゃないからここの書き方に合わせてくれた方がいいかな。
あなたの投下の仕方はあんまりSS板じゃ歓迎されないから。
まとめWikiとか過去ログも読んでな。

つーことで新シリーズだな(笑)

401:名無しさん@ピンキー
08/07/04 01:49:46 dAyjW/uC
うん、やっぱり内気をギュってしたい

402:名無しさん@ピンキー
08/07/04 10:20:22 04i3B81g
栃木がちょっとちぎれるにワロタ

403:名無しさん@ピンキー
08/07/05 11:17:46 CWPhl71n
新キャラのレーファの相方の名前とか決めておいでですかね?設定固めてたら教えて下さいな
以下本文


『蝶が蛹を脱ぎ捨てて、美しい姿を見せようとしている。』
眼前で広げられている光景を青山春樹は後にこう語った。

『…私を春樹さんだけ…のものに…して…』
彼にそう告げた少女、豆田貴子の身体を覆っているのは可愛らしい縞柄のブラとショーツのみ。
身体の線は女と呼ぶには余りにも幼い。
乳房と呼ぶにはまだ未成熟な青い果実。たわわに実った黒田や理菜とは対極であり、姉の陽子にも及ばない大きさ。
しかし、年少者の特権である肌理の細やかさはずば抜けて美しいことが見て取れる。
白磁のような横顔と、艶やかな黒髪の流れ。紅玉の唇と黒曜石の瞳を持つ少女は、まさに可憐だった。

彼女の腕は後ろに回されているから、ブラのホックが外されるのも時間の問題だろうか。
こんな閉ざされた空間に、今は可憐であり、やがては女として美しく成長するであろう少女と二人きり…。
知らず知らずの内に己の鼓動は速くなり、視界もぼんやりと霞みがかっているようにみえる。
…だから、きっと驚愕のあまり凍りつた表情を浮かべた妹と同居人が見えたのは気のせいだろう。
「ってルカに囲炉裏!?何でここに!?」

しかし、彼女たちから返事はない。瞬きすらせず、貴子を見つめている。
…妙にじとっとした視線で。
それはそうだろう…。
春樹が狙われているという通報でここに駆けつけたのに、目の前ではラブコメ展開で鼻の下を伸ばしている男。
当然怒りの感情は生まれるわけだし、その矛先も明らかになっている。

「……ちっ。」
見られている側の貴子は悔しげに舌打ちし、おもむろに脱ぎかけていた服を身に着ける。
『獲物を前に舌なめずり。三流のすることだな。』
どこかの組織の軍曹が言っていた台詞を思い起こし、臍を噛む。
リボンを結びなおし、身支度を整え終わったところで囲炉裏が彼女に声をかけてきた。
「なにをしていたのですか?まめこ。」

………2対1では不利。…しかも、相手にルカさんがいる。
囲炉裏一人なら倒せない相手ではないが、飛び道具の効かないルカとは圧倒的に相性が悪い。
海辺の温泉、黒田の看病イベントに加え、先日の公園でも敗れ続けているわけだし。
そして今も丸裸…というか全裸2歩手前の徒手空拳な状況では全くの勝ち目は無い。
なら、誤魔化すしかないか…。

「……はるきさんをたすけにきた。」
…ちょっと片言になっていたが、多分大丈夫。
「だったら服を脱ぐ必要ないでしょ!!」
……無理があったか。

春樹は一瞬前とずいぶん変わった状況を見つめていた。
視線の先では囲炉裏が貴子を羽交い絞めにした状態で、ルカが両拳を彼女のこめかみに押し付け捻じ込んでいる。
…春日部市在住の野原家の長男が母から受ける懲罰…いわゆるグリグリ攻撃という技だ。

「っ!?ぎぶぎぶぎぶぎぶ!!」
珍しく貴子ちゃん、本気で悲鳴を上げてるなぁ…などとどこか他人事のような心地で傍観している春樹。
貴子が倒れたら自分の番が廻ってくることは明白なのだが。
もっとも、自分がルカの追跡を振り切れないことも理解しており、まな板の上に乗せられた鯛は諦めて捌かれるのを待つだけだった。

新ジャンル「隠れ部屋でのお仕置き」新醤油学園野望編

404:名無しさん@ピンキー
08/07/05 11:19:13 CWPhl71n
「裏切り者のトウバンジャンを取り押さえました…。」
昏倒している陽子を引きずり、たどり着いた第三会議室。
テンメンジャンは、やがて訪れるであろう機会を待ちつつ、はやる心を落ち着かせる。
その標的である恥女校長こと千所玲。今は黒田夕圭と向き合う形で彼女の報告を聞いている。
「…それよりも青山春樹はどうした?」
「……単独で行動しているようです。私が会敵したのはトウバンジャンのみでした。」
「そうか。…下がっていいぞ。」
やがて踵を返し、机に向かうであろう校長。
その無防備な背中…とくに急所である延髄付近を狙って渾身のストレートを打ち込む夕圭だったが…。
「…甘い!!」
あっさりと避けられ、挙句には腕を取られて肩関節を極められる。
「ぐっ!!」
鈍い音に鋭い痛み…。容赦なしに肩関節を外されたようだ。
激痛のあまりに視界は霞み、脂汗は止まる気配も無い。
「不意打ちをやるなら殺気はもっと隠すべきだ。もっと鍛錬を積め。
 しかし、腕一本では屈さないか…。それでこそ四天王だ。及第点くらいならやってもいいぞ。」

退くわけにはいかない。外された関節を無理やりに押し込み、肩を戻す。
春樹を守護していたはずの陽子は、己の手で倒している。麻里愛も戦闘不能のであり、四天王で健在なのは自分と貴子のみ。
その貴子もこの場に居ない以上、自分一人でカタをつけるしかない。
囲炉裏とルカが春樹と接触している可能性もあるが、彼女ら二人も春樹と同じく『大切な人』。
全身全霊を賭けて、守りきってみせる。そして…。

「校長先生…。いえ、BB。貴女を倒す。…そして偽りの仮面を外した本当の私を春樹くんに見てもらうの!!」
「夢を持つのは結構だが、お前の力で実現できる事かよく考えろ!!この馬鹿弟子!!!」
校長の左ハイキックを右腕で流し、左のフックでカウンターを狙う。
しかし利き腕ではない一撃では、必殺の威力を期待できるはずもなく…。
「その程度か!!」
夕圭の拳を避けつつしゃがみこんだ玲の、さらにカウンターとなる八極拳の体当たり【鉄山靠】。
「っ!くはぁ……。」
勁を込めた一撃に吹き飛ばされる夕圭。その彼女の前に立ちふさがる影。
しかし、その影は追い討ちをかけに来た恥女校長ではなく…。

「そこまでだな。姉さん。」
「…舞。何のつもりだ?」

405:名無しさん@ピンキー
08/07/05 11:19:39 CWPhl71n
姉の行動を妨げる妹の姿…。

「姉さん。…私は姉さんのやり方が正しいとは思えない。」
「…舞。どういう事だ?」

ちらりと夕圭に視線を投げかけ、再び玲に視線を戻すと、舞はこう言い切る。
「性行為はこの場でするべきでない!」
「「はぁ!?」」
話はまるでつながらない…。…一体、何なんだ?
「いや、説明が不足していた。最初のデートは手を握るまで、3回目のデートを目安にキス。
 性行為に及ぶのは10回目のデートの帰りに、彼か自分の部屋でやるべきだ。ということで、ここで事に及ぶのは邪道だ。」

「…………舞先生?」
「…やれやれだ、舞。今時の小学生ですら、悠長な心構えではないぞ。
 大人の恋はスピーディーなモノだぞ。つまりは獲即食だ。」
「姉さんは黙っていてくれ。…ともかく、黒田くん。この場限りでは手を貸そう。
 そしてこの騒ぎが収まった後、私は青山春樹に交際を申し込み、最終的には私のものになってもらう!!」

予想外な寝返りに、思わず固まる恥女校長とテンメンジャン。
会議室での戦いが新たな局面を迎つつある頃、新醤油学園校門前には新たな2つの人影。

「おばさ…痛たたたたたたた!!す、すみません、校長先生!!
 だからアイアンクロー止めて下さい!!……………また、来ましたね。」
「ああ。新醤油学園だな。」

桜吹雪女学園からの刺客たち。青山春樹を巡る騒乱は、まだ終わらない。

新ジャンル「新醤油純情組」新醤油学園野望編

406:名無しさん@ピンキー
08/07/05 18:08:39 SdG53jBg
内気な子の妄想じゃなくなってるお(^ω^;)

今度から書きためて書くお

407:名無しさん@ピンキー
08/07/06 03:04:18 ErmhKk5D
あ、ロリっこって戦闘力あったんだ、と思いながら縞パンGJ
やっぱ縞パンはロマンだよね

>>406
なら内気じゃなくてもいいじゃない!色々やったらいいじゃない!!


>>370
普及はしているけど一家に一台(?)カメラがあるものでもない、
新聞社以外には写真屋さんくらいしかカメラは扱えないくらいなものだと思っています
わざわざそういう魔法を開発しなくても絵で描けばいいじゃん、
と大抵の魔法使いは思っている~みたいな。

408:ワンダーランドでつかまえて(1/19)
08/07/06 10:26:54 ErmhKk5D
魔獣と人間との問題解決は勇者に任命されたときからのヒロトの仕事である。
もっとも解決といってもその実態は人間に害をなす魔獣を倒すこと。死山血河を渡る命の奪い合いに
終始していたのだが、魔王と知り合ってからは交渉という平和的手段を取るようになった。
というか、平和的手段を取りたかったから魔王と知り合いになったという方が正しいか。
なにせ相手は魔獣。人間より強く、人間より高い種族である彼らには、基本的に人間の言葉は通らない。
言葉が通じない、という意味ではなく、聞く耳を持たれない、という意味で。こちらが交渉の相手たりえる、
魔獣並みの力を持っていると相手に分からせるには剣を使わなくてはならないし、そうなったらヒロトは
完全に外敵扱いだ。結局、話の通じる相手ではないのである。
なら話の通じる相手を連れてくればいい――と、そういうわけで彼は魔王と戦い、そして勝利したのだった。
種族によってその地位が露骨に変わるのが魔族という生き物だ。その頂点たる魔王を連れているとなると、
これはもう最強クラスの交渉カードである。逆らえるものなど誰もいない。最終的に従わせることは容易であり、
こっちは譲歩するだけでいい、とそれくらいの反則っぷり。
既に交渉というシロモノではない気もしないでもないが、一応ヒロトはこれまで上手くやっている方だろう。

それもこれも、魔王たるリューがヒロトと行動を共にしてくれているからなのだが。
………そのリューはどこに行ったのだろうか?

「畑の周りの探索を任せたから、遠くには行ってない筈だが……」

外に出ると、そこには相変わらず気の抜けるような青空が広がっていた。
ピーターの畑は、農業に関して素人な魔導師が無骨なゴーレムを使って耕したものであると知っているために
さっきより大分粗が目に付いてしまうが、それ以上にピーターの目的を教えられたために素晴らしいものだと
感じる。ゴーレムによる自動生産プラントの卵。天気によって、風によって顔色を変える畑を管理するのは
大変に難しいことだけれど、それを『術式』として確立できればどれほどの偉業となるだろう。
ピーターには是非頑張ってもらいたいところである。
が。

「その研究の邪魔をする不届きなワーラビットがいる、という話ですわよね」

そのワーラビットは畑を荒らすばかりではなく、ピーターが屋敷を離れている間にこっそり屋敷に忍び込み、
私物を漁ってこっそり持ち帰るというからまるっきり泥棒だ。
街道近くの森に棲み、旅人を襲って金品を奪うオークの盗賊団じゃあるまいし。
こんな辺鄙な場所じゃ魔族をも相手にするような商売根性逞しい商人の換金ルートも確保するのは難しい。
というか、羽毛布団くらいならまだわかるが……いったいワーラビットが
ピーターの写真を持っていって何に使うというのだろうか?
謎である。

「……ま、捕まえてみればわかることか」

ヒロトがじっ、と畑の彼方を睨みつけると、ピーターは静かにかぶりを振った。

「いえ、ヤツを侮ってはいけない。ヤツはこの辺じゃ『影無し』と呼ばれ恐れられているんです!」
「か……『影無し』……ですって?」
「その通り。ヤツは姿を見せた瞬間には既に彼方に逃げ去っているというほど逃げ足が速いんです……!」

こめかみに戦慄の冷や汗を流し、掠れた声で呟くピーター。その形相にヒロトたちも思わず息を飲む。

「………まあ、『影無し』というあだ名は今自分がつけたんですが」
「アドリブですか!」

ローラのツッコミに頬を照れながら掻くピーター。どこか気合の入らない青年だった。

「ですが……なるほど、確かにワーラビットといえば俊足の持ち主。臆病な性格で、
 その耳で戦士の足音を聞くや一目散に逃げ出すという魔獣です。ピーターさんのゴーレムはもちろん、
 ヒロトさんもあまり積極的に動くべきではないかも知れませんね」


409:ワンダーランドでつかまえて(2/19)
08/07/06 10:27:33 ErmhKk5D
ジョンが冷静な口調で言い、頷く。なるほど確かにごついストーン・ゴーレムや戦士の硬いブーツで足元を
固めているヒロトがあちこち動き回っては標的のワーラビットに警戒されてしまうことは避けられないだろう。
ということは、ワーラビットの捜索は軽装のローラとジョンの二人だけで行うということになるか。

「とんでもない!」

と、そこでピーターが声を上げた。何事か、と目を瞬かせるヒロトたちに、ピーターはもの凄く紳士的に胸を張る。

「自分は腐ってもキャロット家の魔導師、ピーター。女性ばかり働かせて自分は高見の見物などできません!
 ようはゴーレムを連れていなければいいのでしょう?ならば自分もお供しましょう。もとよりこれは
 自分の畑の問題で、皆さんは厚意で手伝ってくれているのですから、
 それに甘えっぱなしになるわけにはいきません。おらが畑はおらが護る!」

一同はおー、と思わず拍手しそうになるが、同時に首を傾げてしまう。女性ばかりって、ジョンは?
しかしすぐにあー、とうなじの辺りをぽりぽり掻きたくなった。というのもこのジョン・ディ・フルカネリ、
見た目が少女と見紛うばかりの美少年なのである。というか容姿といい、小柄な背丈といい、
齢14、15の女の子にしか見えない謎の生き物っぷり。そういえばクシャスの町で
温泉に入ろうとしたときも番頭さんに必死で止められたっけ。
まぁ実際のところ脱いでみれば一発で男性だということは証明できるのだが、
ここでそれをするのはかなり嫌だった。ローラもいるし、ジョンにそんな趣味はないし。

それによく考えてみればピーターはゴーレム使いの魔導師であり、
そのゴーレムを目立つために連れて行けないということはいったい彼がどれほど役に立つのだろうか。

「失敬な。自分はこれでもラルティーグで修行を積んだ魔導師ですよ!?確かにストーン・ゴーレムより
 性能は劣りますが、土に直接魔力を叩き込んで練り上げるクレイ・ゴーレムくらいは
 いつでも喚ぶことができるのです!」

ピーターは憤慨したように言うや否や、バッ、ババッ!と怪しい拳法じみた構えを取り、
しゅばばっと身をかがめて地面に掌をつけた。
その手がにわかに淡く発光し、めり、めりり、と地面が割れて地下からゴーレムが飛び出す。
ピーターの得意とするストーン・ゴーレムをそのまま小さくしたような姿の小型のゴーレムだ。
小型の………。
小型………。

「か、可愛いですわね」

ローラが困ったように口元を引きつらせるのも無理はない。
そのゴーレムは、ヒロトたちの中で一番小柄なジョンよりもさらに小さい。というか、ジョンの半分ほどの
大きさしかなかった。発案には素晴らしいものがあっても魔導師としてはどうしても腕利きとは言い難い、
というか平凡以下のピーターらしい。
しかし、ここで断っても変に正義感のあるピーターのこと、無理にでもついてくるに違いない。
ええい、面倒くさい。

「………よろしくお願いします」
「任されましょう!」

実際の戦力ではピーターが最下位につくのは間違いないだろうが、探している相手がワーラビットなら、
むしろジョン一人でもお釣りがくるだろうというものか。
………もっとも、戦うのと捕まえるのはまた別の話。一撃で相手を麻痺させるジョンの“霊拳”であろうとも、
当たらなければ意味がないし、足元を電磁力によって弾けさせて高速を得るローラの“雷刃”であろうとも、
あくまでも加速は一瞬であって、出会った瞬間背を向けて逃げられたら追いかける手段にはならない。
ワーラビットという魔獣の性質上、エンカウント&ランは十分ありえる話だった。

410:ワンダーランドでつかまえて(3/19)
08/07/06 10:28:35 ErmhKk5D
 
「と、いうことは。ワーラビットを探すというよりも、まず先にリューたちと合流する方がいいのかな」

ヒロトはさり気無くジョンの傍まで近寄って、そう囁く。ジョンも頷いた。
捕まえるのが困難なら、こっちから呼びつけてしまえばいい。幸いそれができそうな仲間が彼らにはいる。
魔王リュリルライア――彼女なら、ワーラビットに言うことを聞かせるくらい簡単なはずだ。リューとリオルが
今どこにいるか知らないが、手分けして探せば簡単に見つかるだろう。ピーターにまた適当な説明を
しなければならなくなるが――勇者であるというのならともかく、旅の仲間に魔王がいるというのはいかに
ピーターが気のいい青年であっても明かすことができる秘密ではないのだ。

「まだお仲間がいるのですか?」
「あ、ええ。あまり大勢で押しかけるのも迷惑でしょうから、この辺りで待つよう指示をしたのですわ。
 魔獣に詳しい魔法使いが一人と――ええと」
「――ボクの助手が、一人」

きょとんとしたピーターに、苦笑いしながらそう返す。ものは言いようだ。
確かにリューは世界で一番『魔獣に詳しい魔法使い』には違いないし、
リオルだって手伝うというより邪魔する方が得意であってもジョンの『助手』で間違いない。
ピーターはわかったようなわかっていないような顔をして、

「……もしかして、その方たちも女性では?」

と訊ねた。また紳士論を語る気だろうか。でも正直あのリューがいればそこらの魔獣や盗賊はおろか
聖堂騎士団の本隊が襲い掛かってきても返り討ちにしてボロ切れのようにしてしまうだろうし問題はないと思う。
一応頷いておくと、ピーターは予想に反してすいっと腕をあげると遠く、何かを指し示した。

「――先程から畑の向こうに赤い髪の女性が浮いているんですが、もしかしてその方でしょうか?」

赤い髪。というとリューか。
ヒロトたちは揃ってピーターの手が示している方向に目を向けた。畑の向こうに――ああ、いた。
遠いが目立つ、炎のような赤い髪をなびかせ見えない地面に立っているように仁王立ちになってこっちを見ている。
ニヤリと笑う、その少女には確かに見覚えがあった。リューである。

「………なにしてるのあの娘」

ローラが呆れたように呟いた。リューはニヤニヤとこっちを見ているだけで、全然動こうとしないのだ。
むしろ来いということか?とヒロトたちが思い始めた頃、リューはさらに笑みを深く――邪悪にして、
ばっと掌をこちらに向けた。
その空間が、ゆらっ、と波紋が広がるように歪む。
極限まで圧縮された魔力が空間を歪めることによって発生するその波紋は――名を“天輪”という、
魔王にのみ可能なほどの絶対攻撃……!

「なにしてるのあの娘!」
「伏せろ!」

ヒロトが叫び、いまいち飲み込めていないピーターを突き飛ばして背中の剣を抜き払う。
リューはきゅうっ、と唇の端を吊り上げ、そのまま魔力波をぴゅん、と放った。
光の矢のようなそれは触れれば辺り一面を焼き払う破壊の結晶だ。ヒロトはそれを弾き、打ち返す。
軌道を大きく変えられた魔力波はそのまま緑の平原の一角に落ちてゆき、――爆発を起こした。

「う、うわぁあ!?」

ピーターが驚いて声をあげる。それは驚くだろう。平原に大きなクレーターができてしまっている。
もし直撃すれば命はない。身体がばらばらになってしまう。


411:ワンダーランドでつかまえて(4/19)
08/07/06 10:29:34 ErmhKk5D
「リュー!」

ヒロトが咎めるように大きな声をあげると、リューはくるりと背を向けてふよふよと飛んで逃げていく。
なんなんだ、一体。

「……別行動をさせられた腹いせかしら」

ローラの呟きを聞いたのか聞いていないのか、ヒロトは剣を手にしたまま怒ったように言った。

「リューを追いかける。なんのつもりだ、あいつ」
「行ってらっしゃいませ。あ、私の分の拳骨は二発でお願いしますわ」

頷き、眉を吊り上げてヒロトは跳んだ。“豪剣”によって身体強化された脚は地面に足型を残し、
ひと蹴りで彼方まで跳躍する。その脚力にピーターは目を剥いたが、ジョンとローラは今さら
特に驚くことでもないので伏せた時についた土をぱんぱんと払っている。まったくもう、とか愚痴りながら。
……というか、直撃すれば明らかに即死するような攻撃を受けてなお平然としているローラたちの神経に
ピーターは驚いて声も出ない。それを弾き返したヒロトは、まあ彼はさっきピーターのストーン・ゴーレムを
あっさり斬ってのけたから只者ではないとわかっていたが、詠唱も何も無しであんな大穴を穿つほどの
攻撃魔法を放つ少女もピーターには計り知れない存在である。
っていうか、仲間じゃないのか?なんで殺そうとする?

混乱しているピーターをよそに、ぷりぷり怒っているローラたちは「あ、」と声をあげた。
その視線の先にいるのは――。

「うんうん、リュリル――じゃなかった。『ハートの女王』様はちゃんとヒロトを誘い出せたんだね」
「リオル?」

いつの間に近づいてきたのか、ミント・ブロンドの髪を持つ少女が畑を挟んだ向こう側にいた。
活発そうな容姿をした彼女は紛れもなくジョンの助手にして灼炎龍リオレイアの魂と賢者の石を
その身に宿すドラゴン娘、リオルである。
しかしどう見てもリオルなその少女は慌てたように首を振った。

「違う違う。今のあたしはリオルじゃなくて『ワンダーランド・プロジェクト』の『チェシャ猫』なんだよ!」

リオルは手をついて獣のような四足の体勢になると――ばさ、と翼を広げた。

「リオル!?」

龍化である。リオレイアの『肉体』――勇者ヒロトによって破壊されたリオル本来の身体と同じ
赤銅色の鱗を纏ったその姿は半人半龍、リオルの戦闘形態だ。魔力の消費が激しいために以前は
数十分も維持することができなかったその変身も、賢者の石が変質してからは自由にできるようになった。
……もっとも、大技を連発すればやっぱりすぐにバテてしまうのだが。

「リオルじゃないって!『チェシャ猫』!」

おとがいを反らし、ひゅうっ、と大きく息を吸い込んで――、

「明後日に向けて必殺!火龍烈火吼(デラ・バーン)!!」

――火球を放った。
うわ、と身を伏せるも、その軌道は勝手に逸れて遥か遠くで爆発した。


412:ワンダーランドでつかまえて(5/19)
08/07/06 10:30:31 ErmhKk5D
どどん、と地面を揺るがして立ち上る炎の柱にまたもピーターは愕然とした。ぱらぱらと破片が飛んできて
足元にぶつかる。冗談じゃない。さっきのヘンな恰好の少女もそうだが、
あんな攻撃魔法、ピーターのストーン・ゴーレムでさえ一撃で木っ端微塵だろう。
完全に、殺しにきている攻撃である。
間違いない。
ピーターは悟った。
彼女たちは仲間じゃない。
何かが、ローラたちの仲間に化けているのか――もしくは……。
まずい、このままでは全滅だ。
その前に。
元凶を倒さなければ。

「リオル!危ないじゃないですか!!」
「ひゃあ、違、違うってばジョン――じゃなくて。ええと?ふは、ははは。悔しかったら
 ここまでおいで――と。ああ、リュリルライア様。これってやっぱり無茶な気がしてきました!」

よくわからないことを口にして、リオルはばさばさと飛んで逃げようとする。

「ローラさん、電撃を!」
「了解ですわ!」

ジョンがこめかみをひくつかせてズレた眼鏡を直し、ローラも怒りを隠さない形相でギリギリと奥歯を鳴らした。
リューには絶対防御の魔法障壁があるためヒロトにしか相手はできないが、
相手がリオルでこの距離なら彼らにも『撃つ』手はあるのだ。
ジョンはぱきぱきと指を鳴らすとすっと手を重ねて逃げるリオルに向け、
ローラは腰に差している愛剣ボルテックを抜き払い、やはり切っ先をリオルに向ける。

「【閃き奔れ】!」
「“雷刃”!」
「わひゃぁ!?」

ジョン、そしてローラの放った二筋の稲妻は絡み合い一筋の光線(ビーム)となってリオルに――避けられた!

「くっ!ローラさん――いえ、ここに残ってください!ボクはリオルをとっちめますから!」
「任せましたわ!拳骨は三発で!」
「ええ!?ちゃんと外したじゃんかぁ!」
「帰ってきましたわ!“雷刃”!」
「危なッ!ローちゃん、掠ったよ今の!」
「チッ!ちょこまかと!」

ローラは目を三角にして怒り、ジョンはむしろ薄く笑顔さえ浮かべて追跡体勢に入り走り出している。
リオルはしばらくローラの稲妻に抗議していたが、すぐにわたわたと空中で手足をばたつかせて再び逃げ出した。
ジョンが怖い。口は三日月、眼鏡がキランと光って瞳が見えないがきっとそこだけ笑っていないに違いない。
リオルを撃ち落とすための攻撃魔法をびゅんびゅんと放ち、リオルはそれをひょいひょいと躱しながら、
やがて二人は森の中に消えていく。

あとには肩を怒らせてビリビリと帯電しているローラ、
そして何やら真剣な顔で考え込んでいるピーターが残された。
ピーターははっとなる。ヒロトはリューを、ジョンはリオルを追いかけていってしまった。
これは、まずい。

「いけない!お嬢さん!」
「なんですの?」

413:ワンダーランドでつかまえて(6/19)
08/07/06 10:31:15 ErmhKk5D
 
ピーターの叫び声にローラは振り返った。まだ目が据わっている。ピーターは正直ちょっと怖かったが、
すぐにブンブンと首を振って気を取り直した。そうして、続ける。

「彼女たちはきっと操られているんです!」
「…………………………………………………はぁ?」

ローラは怒りも忘れて間抜けに口をぽかん、と開けた。

「おそらくは自分の命を狙う何者かの仕業でしょう。自分に近づいた貴方たちを自分の仲間だと思ったのか、
 同士討ちというこのようなこすい真似を……ッ!」
「あ、いえ。あの、それはないと断言できますわ……よ?」

ピーターはあずかり知らぬことではあるが、リオルはともかくリューにその手の呪いは一切通用しない。
精神操作であろうと身体破壊だろうと確率変動だろうと、リオルの持つ膨大な魔力が干渉しようとする『呪い』を
踏み潰してしまうからだ。毒も薄めれば無害となるのと同じ。彼女に呪いをかけようとするなら、
歴史に名を刻まれるような使い手がちゃんとした方陣、いや神殿を築いて三日三晩の詠唱を経て全魔力を費やして、
やっと石につまずいて転ぶくらいに運気(ラック)が下がる程度といったところか。
リューに魔法戦を挑もうなどというのはそれくらい、考えるだけでも馬鹿馬鹿しいことなのだ。

が、それをピーターに説明しようとするとこれが非常にややこしい。
だいたい人間にそんなレベルの魔法使いなんかいるわけないし。

「では、どうしてお仲間が貴方たちを殺そうとするのです!?」
「殺そうとって、あ、あー……」

普段のべらぼうにハイレベルな世界にいると結構慣れていたりするのだが、考えてみればそういう風に
見えなくもない。ローラはぽりぽりと頬を掻き、しかしまあ、別に気にすることもないか、と思った。
なにせ。

「――あの方に聞けば、きっと何かわかるでしょうし、ね」
「え?」

ピーターが振りかえる。
長い耳がゆらっ、と揺れた。
畑を囲う柵の上。
ほんの少ししか足場のないそこに、とん、とよろけもせずにまっすぐに。
静かな瞳でこちらを見つめて、彼女は立っていた。
ローラは知らず、ピーターは知っているその少女は件の魔獣。

ワーラビット。

ピーターの畑を荒らし、屋敷に忍び込んで盗みを犯した少女が、そこにいた。



内心めちゃくちゃにビビッていた。

(な、なんかまだいるですよぅ魔王サマぁ~ッッ!!)

リューとリオルが(勝手に)立てた『ワンダーランド・プロジェクト』の内容はこうだ。
ピーターのことが好きなアリスのために、ピーターとアリスを二人っきりにしてやるから、好きだって言え。
………。
身も蓋も中身もない作戦だった。

414:ワンダーランドでつかまえて(7/19)
08/07/06 10:32:07 ErmhKk5D
実はこの作戦、裏にリューとリオルもそれぞれ想いを寄せる相手と二人っきりになりたいという暗黒面があり、
むしろこっちが本命だったりするのだが、まぁそもそもオトメ経験値の低いくせにオトメちっくハートは
天災並みの局地的タイフーン壱號と弐號からマトモな案が出るわきゃあねぇのである。
しかもこのプロジェクトには誰が見ても明らかな落とし穴があり、それがローラの存在だった。
リューがヒロトを、リオルがジョンを引き付けるのはいいとして、それでは一人余るのは自明の理。
ちなみに二人はローラの存在を忘れていたわけではなく、お互いが
ローラを何とかするものだと思っていたというスレ違いが生んだ悲劇であることを明記しておく。
まぁ、どんな勝手きわまる作戦であろうと単なるワーラビットに過ぎないアリスにとって
魔王たるリューと火龍のリオルは見上げても霞んで見えないほどの上位魔族であり、
簡単に言えば『死ね』と命じられても二つ返事で死ななきゃ以下略。
つまり絶対服従、無条件降伏の相手だということである。
アリスに口を挟むなんて大それた真似、できる訳なかった。

かくして、哀れ『ワンダーランド・プロジェクト』の『白ウサギ』ことアリスは只今絶賛大ピンチ。
だってなんか残ってた女の人(ローラ)が金色のツインロールを帯電させてこっちを睨みつけている。
アリスは魔法もロクに使えない、正真正銘の下級魔族だ。
身体能力は一応人間のそれを凌駕してはいるものの、それは身の軽さ、すばしっこさに限った話。
腕力はといえば外見通り女の子の細腕に見合った分の力しかない。戦闘経験なんてもちろん皆無なので
常に逃げの一手である。それでもあの怖いビリビリ少女(ローラ)の放つ電撃から逃れられるかどうかわからない。

「――そうか。貴様か、ワーラビット」
「はぇ?」

心底帰りたい、と心の中でため息をついていたアリスは突然の殺気立った声に驚いて
思わずバランスを崩しそうになった。
声の主――低い、押し殺したような男の声。
考えなくてもわかる。この場に男は一人しかいないのだから。

「ピーターさん?」
「……お嬢さん。下がっていてください。このケダモノは、自分が相手をします……!」

ローラを手で制し、ざ、と一歩前に出た。その青年はピーター・ベンジャミン・キャロットという。
アリスが密かに想いを寄せていた彼が、今、アリスを仇敵を見るような視線で睨みつけていた。
アリスはもちろん、慌てて両手をばたばたと振る。

「ちょ、ちょちょちょ、ちょ!ちょっと待ってくださいよぅ!何ですかそのマジぶっ殺スな目はぁ!
 あたしはですね、ただ……」
「ただ――なんだというんだ?自分の客人を貶め、操り、同士討ちを狙うような悪党が。
 今さらなんの言い訳をする?」
「なぁっ………!?」

話がものすごくこじれているのを感じた。
断っておくがこの『ワンダーランド・プロジェクト』とやらの立案に於いてアリスはまったく、これっぽっちも、
魔王に誓って関与していない。というか、させてもらえなかった。する余地もなかった。気力も無ければ
根性もなかった。しかしそれでもアリスを責めないで欲しい。作戦を立てた相手を思えば詮無きことだろう。
それにリューたちの言う『呼び出し』がまさか魔力波や火炎球をぶっ放すことだとは夢にも思っていなかったのだ。
アリスの淡い恋を応援してくれるというから何かしらのサポートをしてくれるのかと思ったら、
むしろ積極的に破壊しているような気すらする。アリスは今や半泣きだった。

「誤解ですよぅ!あたし、そんなことはしませんってば!」
「問答無用だ!『メタル・ゴーレム』ギガントール――起動!!」


415:ワンダーランドでつかまえて(8/19)
08/07/06 10:33:16 ErmhKk5D
ピーターが鋭く叫ぶと、屋敷の隣、納屋の屋根を貫通して巨大な腕が突如として生えた。
ぱらぱらと破片が飛んでくる。突然のことにアリスとローラは声も出ない。
絶句していると、その腕はばきばきと納屋の屋根を破壊するように押し上げて、ぶん、と放り投げる。
茅葺きとはいえ、その重量は半端ではないはずの屋根は紙細工のように飛ばされてぐしゃっ、と潰れた。
そして――納屋に格納されていたそれは、ゆっくりとその身を起こす。

「――な、なぁっ!?」
「なんですのアレは……!?」

………それを、一体なんと形容すればいいだろうか。

巨大な、ゴーレムである。
ピーターが普段操っているゴーレムも大きかったが、これはさらにその三倍ほど大きい。
黒に近いほどに深い、青みがかった甲冑のような鋼鉄のボディからは無骨で逞しい手足が伸び、
顎とたてがみが目立つ頭部からは雪だるまに指したにんじんのような尖った鼻が突き出ていた。
見るからに鈍重そうな、しかし力強く、頑健なる鉄(くろがね)の巨人。

その暗い双眸が光を放ち、巨人――ギガントールは跳躍した。

「わ、わっ!?」

そしてピーターの背後に着地する。その衝撃ときたら、地面が揺れて傍にいたローラが
一瞬宙に浮いてしまうほどだった。アリスもとても柵の上に立っていられず、
たまらず地面にひっくりかえってそのままぺたん、と座り込んだ。

なんだアレは。

「ギガントール……できればお前はもう二度と起動することなく、納屋の中で眠り続けて欲しかった……」
「だ、だだだ、だったらずっと眠らせておいてくださいよぅ!!」

腰の抜けたアリスが必死に叫ぶ。

「それはできない。自分は今一度このメタル・ゴーレムを使って悪を討つ!」
「だからあたし何にも知らないんですってばぁ!!」

ローラはぽかん、と口を大きく開けて声も出ない。
それはそうだろう。こんな規格外のゴーレムが出てきたことにも驚きだが、それを操作しているのが
あのピーターなのだから。彼女の仲間たちが分析したピーターは半人前もいいところの魔導師で、
碌なゴーレムを操れなかった筈なのだ。
だが忘れるなかれ。彼のストーン・ゴーレムはあくまでも畑仕事のため、
しかも複数操作を前提とした石人形であることを。
それは両手で絵を描く行為に似ている。絵筆を持ち、右手と左手で同時に絵を描こうとすれば、
どうしてもその絵は雑になるか、単純なものになってしまう。慣れていないならなおさらだ。
そんな隠し芸のような真似をして描いた絵を見て、どうしてそれがその人が持つ画力の全てだと笑えるだろう?
ピーターが先程、素体のない状態で練り上げたクレイ・ゴーレムにも同じことが言える。もともとゴーレムは
その場で作り使役するものではなく、前もって人形を用意しておき、それに魔力を通して動かすのが常なのだから。

そう、たとえば。
魔道技術の先進国であるラルティーグの研究室で開発した機体があり。
彼の持つ全ての魔力を一点集中して注ぎ込めるのであれば。
もしかしたら、再現できるかも知れないではないか。


――かつてピーターの先祖たちが使役したという、27体のゴーレム。
戦火に飲まれ、侵略を受けたこの小国を見事に護り抜いたという、伝説の『鉄人』を――。


416:ワンダーランドでつかまえて(9/19)
08/07/06 10:34:06 ErmhKk5D
 
「往けギガントール!お前が28体目の『鉄人』となるんだッ!!」

ギガントールは大地を踏みしめ、ガタガタ震えるアリスに迫った。
ギガントールは見た目の通り、すばやく動くことができない。だが機動性がない分、その腕力は岩石さえも
軽く粉砕してのけるほど。術者ピーターの指示にもよるが、おそらくはドラゴンとさえ格闘し、
殴り倒すことが可能だろう。その鋼鉄の拳の前には腰を抜かしたワーラビットなど塵とも埃とも変わりない。

「………………………む」

ピーターは震えるアリスを憐れと思ったか、眉をしかめ、言った。

「ワーラビット。命が惜しければお嬢さんのお仲間たちにかけた術を解くんだ。
 今までの悪さを反省し、もうしないと誓うなら許してやる」
「あ、あぅ、あぅあぅあぅ」

アリスは歯の根が合わずに返事ができない。しかし、力の限りを振り絞ってブンブンと首を振った。
無理もない。アリスは本当に何もしていないのだから。そりゃあ今までは盗んだり落とし穴掘ったりはしたけど、
それだって、恋する女の子のおちゃめの範囲内だし。
それを知らず、決裂ととったピーターはギリリ、と奥歯を噛み締めた。

「……そうか。正義のためとはいえ、キミのような女の子を殺めることになろうとは――残念だ」
「あうぅぅうううぅぅ!!」
「――ギガントール!ハンマーパンチだ!!」

鋼鉄の巨人は主人の命令に従い、大きく腕を振り上げた。

「あ、ちょっ、待ってくださいまし!」

呆然としていたローラがはっと正気を取り戻し、静止の声をあげる。
が、もう遅い。ギガントールは文字通りの鉄拳を小さなアリスに叩き込もうと、全体重をかけて――


―――柔らかい畑の土に足を陥没させてすっ転んだ。


「ギガントォォォォォォォォォォォル!!!!」



ヒロトはついさっきまでリューにお仕置きの拳骨をくれてやるべく、森の中を疾走していた。
しかし気付いてみれば急に辺りに濃い霧が立ちこめてきてリューの背中を見失い、
それでも“豪剣”によって研ぎ澄まされた聴覚を頼りに何やら物音のする方向に来てみれば――。
森の木々が切れ、ちょっとした広場になっているそこには、椅子とテーブル、そして二組のティーカップと
ポットが用意されていたのだった。そしてヒロトを待っていたように――実際待っていたのだろう、
頬を少し赤く染めてリューがスラリ、と立っていた。

リュー。
リューである。
リューのはずだ。

炎のように鮮やかな朱い髪に緋色の瞳。その容姿には見覚えがある。
だが、その服装には見覚えがなかった。


417:ワンダーランドでつかまえて(10/19)
08/07/06 10:34:54 ErmhKk5D
暗闇が染み入る黒と鮮血が脈動する赤。彼女を表す二つの色を豪奢なドレスにして纏っている。
胸元と背中が大きく開きいてぴったりと身体のラインが目立つようなデザインになっており、
スカート部分にはそれこそ腰まで覗きそうな深いスリットが入っている。そこからスラリと伸びた美脚を
際立たせるのは濡れた鴉羽根のストッキング。踵の高い真っ赤なヒールを履いて、
天の羽衣のようにストールを羽織り、金色のティアラをつけたその姿はそれこそ、どこの令嬢かと見惚れるほどだ。
薄い化粧でもしているのか、ルージュを引いたような唇がフワリと緩み、微笑む。
百人の男がいれば九十九人が腰砕けになるような、妖艶さと無邪気さが絶妙に入り混じった笑顔だった。
豪奢で絢爛なローラとはまた違う。光を放つのではなく、吸い寄せるような。
一言も言葉を交わさぬうちに、既に掌の上でいいようにされているような。
そんな妖しい魅惑がそこにはあった。
これが、魔王の魅惑なのか。
いや、違う。そこに禍々しいものは感じない。
今のリューは、彼女は――

―――『クイーン・オブ・ハート』。

ヒロトは、そんな、心を蕩けさせるような美しい少女に誘われるようにふらふらと近づき、
とりあえず、拳骨をした。

「痛い!」

頭を押さえてうずくまるリュー。さっきの妖艶さはどこへやら、すっかりもとのリューに戻っている。
まあ、拳骨されてまだ妖艶な流し目なんかしてたら色っぽいどころか面白いけども。

「――リュー。危ないだろう、いきなり攻撃してきたら」

ヒロトはジト目でリューを睨みつけた。

「って、この恰好を見てまず第一声がそれか!!」

『ハートの女王』のリューが顔を真っ赤にして激昂する。
だがどんな恰好をしていようがヒロトはリューを叱るために追いかけてきたんだし、
まずそれを済ますのが順番として正しいというものだろう。
ヒロトがクソ真面目にそう言うと、ドレスアップ・リューは地面に抉りこむような深い溜め息をついた。

「………………とりあえず貴様の耳を引きちぎって逆さまにくってけてやりたいんだが」
「なかなか似合ってるんじゃないか?リュー」
「遅いわ!!」

カッ!と目を三角にして怒鳴りつける。ヒロトは少しだけ笑ったあと、改めてじー、とリューを見つめ始めた。
その眼差しに膨れていたリューはむむ、と唸り、ふん、とそっぽを向いてしまう。しかしこのドレスは
もともと『普段よりオシャレしてヒロトをドキドキさせよう』という計画で着ているので悪い気はせず、
頬が少し赤くなっているのを自覚する。

「………そのドレス、まさか買ったんじゃないだろうな」
「うぉぉおい!!」

心配そうに言うヒロトにツッコミが絶えないリュー。
リューは頭に漬物石が乗っているような鈍痛を覚え、こめかみを押さえながらひくひくと口の端を痙攣させる。

「………『変化』の魔法だ。服だけしか変化させてないから『変身』といった方がいいかも知れんがな。
 貴様のために!前々から温めていたデザインを出してきてやったんだぞ」
「へぇ。お前、なんでもありだなぁ」
「……………貴様……他に言いようはないのか……?」


418:ワンダーランドでつかまえて(11/19)
08/07/06 10:35:41 ErmhKk5D
ぐったりしているリューをよそに、ヒロトは辺りを見回した。
この空間だけ霧が切り取られているかのように途切れ、
その先は真っ白で何も見えない。なんとなくわかる。この霧もリューの魔法のひとつだろう。
そんなヒロトに気付いたリューは、ひらひらとおざなりに手を振って答えた。

「ああ、この霧は特殊な結界でな。内部と外部の位相をズラし、次元レベルで隔離している。
 ま、我が創った幻想空間といったところさな。いかにヒロトといえどここから出ることはできぬ。
 我が術を解くか、もしくは我を倒すかでもせん限り、な」
「………」

ヒロトは顔をしかめた。
リューがヒロトを誘い出したくて攻撃を放ったのはわかっている。あの魔力波は全然、本気じゃなかったからだ。
それ以前にリューが仲間を攻撃するなんてありえない話だし。ヒロトが弾くとわかって撃ったのである。
拳骨は、それでも危ないことは危ないことなのでお仕置きだ。
それにしても、普通に呼べばいいのになんて回りくどいことを――。

「――で?理由を聞こうか」

ヒロトは椅子に腰掛けると、リューの顔を覗き込んだ。
リューは微妙に唇を尖らせて、でも頬はこれまた微妙に赤くして、向かい側の椅子にどっかりと座った。
そして口を真一文字に結び、じー、とヒロトを凝視する。見つめあう二人。

「………リュー?」

リューはしばらくヒロトから目を離さずにいたが、やがて視線を彷徨わせると落ち着きなく手で宙を掻き、
ヒロトにティーカップを渡すと、ポットを傾けてトロトロとお茶を注ぎ込んだ。

「お茶会だ」
「はぁ?」

リオルは自分のカップにもお茶を注ぐと、じび、と音を立ててそれを啜った。

「――いや、何。とある女の恋路に協力してやっているのだよ」
「………?」
「我とリオルはお前に言いつけられて畑の周囲を探索していたろう。その時にだな――」

………………………。
…………………。
……………。
………説明終了。

「と、いうわけでお前たちをあの場から移動させる必要があったのだ」
「……ワーラビットのアリス、か。ならこっちの話も解決っぽいな。その娘がピーターの研究を邪魔していたのが
 好意の裏返しの結果だとすば、気持ちを伝えることでその必要はなくなるだろうし」

ヒロトはうん、と頷いて、

「しかし、それなら始めにそうと言えばいいのに。それに、俺をここに閉じ込める必要もないだろ?」

と、当然のように眉を寄せた。
そんなヒロトに、もうリューは言い返す気力もない。
べったりとテーブルに突っ伏して、恨みがましい半目でヒロトを睨み上げる。

(本当に、こいつは――……少しは我と一緒にいようと考えてくれたっていいだろうに……)


419:ワンダーランドでつかまえて(12/19)
08/07/06 10:36:28 ErmhKk5D
やっぱりローラのように山あり谷ありくびれありのスタイルでないと色気に欠けるのか、
とリューは寂しい胸元に視線を落としてさめざめとため息をついた。

「――ま、いいか。依頼されてた仕事はこれで解決。ピーターも邪なことは考えていない立派な人だし、
 キャロット家には後ろ暗いことはなさそうだと報告できる。ワーラビットもリューの方でなんとかしてくれた
 ようだから俺の出る幕はないし。――たまには、リューとお茶でも飲んでくつろいでるのも悪くない」
「……!!」

リューは顔をあげた。ヒロトはすました顔で静かにお茶を啜っている。
リューは何やら頬をむずむずさせると、ヒロトに向き直って自分のカップに口をつけた。
我ながらなんて単純な。しかし、ションボリしていた胸の内が火照ってくるのは止められない。
まったく、公平にはいかないものである。

「ところでドレスは自前として、この椅子とかカップとかはどこから調達してきたんだ?」
「アリスの住処――家からだ。茶葉も棚にあったから使わせてもらった」
「いいのか?このお茶も高価そうだが……っていうかこれもピーターの家から
 盗ってきたものじゃないのか?もしかして」
「さあな。もし仮にそうだとしても我にはあずかり知らぬこと。魔獣のモノは我のモノ。我のモノは我のモノ」
「………お前な」
「む。なんだその目は。ちなみにこのお茶は我が沸かしたモノだぞ。
 ふふん、どうだ。我も日々進歩しているのだよ」
「それはご馳走様だな。ピーターに後で謝っておかないと」
「おいこら、我には?我には何にもなしか!」
「アリスとやらにもちゃんと謝っておくんだぞ」
「そーじゃなくてだな!」

ヒロトは笑いながらもカップを傾け、リューは眉を吊り上げてばしばしテーブルを叩く。
そして自分のお茶を倒し、また騒ぐのであった。霧に包まれた小さな幻想空間(ワンダーランド)で、
二人っきりのお茶会は賑やかに、緩やかに過ぎてゆく。


一方、リオルの方はというと。

「………はい。マジスンマッセン。自分、調子乗ってました。ていうか、こいてました。ぶっこいてました」

オデコに大きなたんこぶをつくり、正座してジョンに説教をされていた。もともと追いかけたり襲い掛かったり
迎え撃ったりするのは得意でも、誘い出して罠にはめるのは不慣れなガチバトル専用少女リオル。
追う間隔や僅かな位置の差を変えて追いかけるジョンにまんまと逃げる方向を操作され、
飛びにくい森の中に誘導されたと思ったらジョンの攻撃、カマイタチ。
それを慌てて躱したかと思ったら、風でしなった木の枝が目の前に……。

で、とっ捕まって今に至るというわけだ。

「しかし、リューさんも素直なんだか意地っ張りなんだか……ヒロトさんその辺、
 上手くフォローできなさそうなヒトだからなぁ。あんまり期待しないほうがいいんじゃないですか?」
「うーん、でもリュリルライア様は秘策があるって言ってたよ?」
「秘策、ねぇ……」

あんまり期待できないなぁ、と溜め息をついて(正解)、ジョンはジロリとリオルをにらみつけた。
う、とリオルが目を泳がせる。説明は済ませてあるのだ。
『ワンダーランド・プロジェクト』も、ワーラビットのアリスのことも白状させられた。


420:ワンダーランドでつかまえて(13/19)
08/07/06 10:37:09 ErmhKk5D
「話はわかりましたが、そうなるとアリスさんを放任しすぎなのではないですか?
 けしかけたのは貴方たちでしょうに」
「うーん。でもこの計画、基本的な方針は『みんながんばれ』だからなぁ……」
「………かわいそうに」

ジョンは彼方を見上げて、会ったこともないワーラビットの少女に同情した。

「だいたいさー、それもこれもジョンがあんまあたしに構ってくれないから悪いんですよ主に夜!」

いや、それは違うでしょ。とジョンは思わないでもなかったが、そうとは口にせず、
キイキイ鳴きながらじたばた暴れるリオルをしばらく見つめて目を細めた。
そうしてリオルが暴れ疲れた頃、ジョンは膝をついてリオルと視線を合わせ、ぽんと頭に手を乗せた。

「ジョン……?」

その慈愛に満ちた瞳に、リオルがぽぉっとした表情で見つめ返す。
ジョンは、僅かに頭を垂れて謝った。

「すみませんでした、リオル」
「え?」
「どうあれ、リオルを不安にさせてしまったのでしょう?なら、ボクは謝らなくっちゃ。
 せっかく――その、魔力補充云々ではなく、恋人としてできるようになったんですからね」

照れたようにはにかむジョン。
そんなジョンにリオルは、リオルは、ああ、もう、リオルはぁぁぁぁ!!

「ジョォォォォォォォン!!!!」
「うわっ、なんです!?リオル、落ち着いて!ここ、外ですよ?ヒロトさんたちだってどこにいるのか!」
「でもそんなの関係ねぇー!」

おっぱっぴー、と奇声を上げて襲い掛かってきたリオルに、ジョンは慌てて

「“霊拳”!」

拳を打ち込んだ。
魔力を相手に注入し、呪いにも似た効果を発動させて一撃で意識を刈り取るジョンの必殺拳“霊拳”。
それは正確にリオルのみぞおちに食い込み、リオルはどこか幸せそうな顔をして倒れこんだ。
あやうく強姦されそうになったジョンは冷や汗の浮いた額をぬぐって呟く。

「とりあえず、夜までは我慢してください、リオル」

その声は、夢の世界(ワンダーランド)にいるリオルには届かなかったけれど。



「ひっく、えぐ、ううぅ」
「よしよし。怖かったですわね。でももう、大丈夫ですわ」

ローラは泣きじゃくるアリスを抱きしめ、その背中をさすっていた。
ピーターの持つ最強のゴーレム、ギガントールのハンマーパンチはギガントールがこけたために
不発に終わったものの、振り上げられた拳そのものはアリスがへたり込んでいた位置からほんの一歩だけ
ずれた場所にめり込んでいる。巨大な鉄鎚が己の身に迫る恐怖、それはどれほどのものだっただろう。
アリスは命拾いした安堵感から泣き出し、ピーターは凶悪犯だと思い込んでいたアリスが見せた
まったく無防備な表情に戸惑い、おろおろしている。そしてアリスがリューたちをどうこうしたのではないと
分かっているローラが、事情を聞くためにアリスを落ち着かせてやっているのだった。


421:ワンダーランドでつかまえて(14/19)
08/07/06 10:37:49 ErmhKk5D
「あ、あー……その、自分は」
「お黙りなさい。そしてこの娘に謝りなさい。誤解があったとはいえ、
 無防備な女の子に手をあげるとは何事ですか。この娘への追求はそれからです。
 それまで、ピーターさんはそこに正座!」
「はい」

ビリビリと稲妻を飛ばすローラの剣幕に、ピーターは大人しく正座した。志の高い魔導師なのに。
その隣で、身を起こしたギガントールが術師に同調して同じく正座する。再来した伝説の『鉄人』なのに。

「うぅっ、ううぅ、あたし、あたし……魔王サマたちの命令に従っただけなんですよぅ。信じてくださいぃ……」
「………ええ、まぁそれはなんとなく。はぁ。何をやっているのかと思えば本当に何をやっているのかしら。
 で?本当は貴方、何をさせられようとしていたのです?」
「………………………」

言われて、アリスは赤くなる。そしてちらちらとピーターを見つめて……俯いてしまった。
ピーター(と、ギガントール)はきょとんとしているが、ローラはなんとなく、その様子を見て気付いてしまった。
ヒロトのような疎いというより『無意識的にわざと考えないようにしている』ようなニブチンじゃあるまいし、
ましてやこっちは同じ想いに身を焦がすオトメちっくハートの持ち主だ。その瞳の揺らめきを知ったなら
なんとなくわかってしまうのは当然といったところだろう。

「あ、あー……なるほど?だからリューさんたちはヒロト様とジョンさんを遠ざけようとして……って私は?」

恋は盲目とはよく言ったもの、ということで。

「なんか釈然としませんわ……」
「あのぅ、その。あたしはこれからどうすればぁ……」

ローラの腕の中で、泣き止んだアリスがおずおずと尋ねる。潤んだ瞳で上目遣いにローラの顔を覗き込む
ウサギ少女はなかなか庇護欲がそそられるが、そんなもんローラには知ったことではない。
リューやリオルのように『魔族と人間の恋路を応援する』という名分も彼女にはないし。
――だからただ、これだけは聞いておく。

「どうしたいのです?」
「えぇ?」
「貴方は、どうしたいのです?ピーターさんと、どうなりたいのです?」
「………」

それは。

「……………」

ピーターと、仲良くなりたい。

できれば二人で――仲良く、にんじんを収穫したい。
思い浮かべるのはそんな幸せなイメージだ。この畑で一緒ににんじんを育てて、今日のようないい天気の日に、
見事に色づいたにんじんで籠を一杯にして。泥のついた顔で笑いあって、
その足元に子供たちがじゃれ付いたりして――。

できるなら、そんな。
夢のような、未来を。

「だったら」


422:ワンダーランドでつかまえて(15/19)
08/07/06 10:39:41 ErmhKk5D
アリスは何も言わなかった。しかし、そんなウサギ少女の表情を見てローラは微笑んだ。
そして立ち上がり、アリスも支えながら立たせてやる。

「その為になることをなさいな。今、ここで、想いを伝えるのが一番でなくてもいい。
 貴方の望む未来のためにはまず何をしなければいけないかを考えて、それをなさい。ね?」
「で、でも……魔王サマの命令には」

アリスは、魔族だ。しかもロクな魔力を持っていない、下級魔族。
そんな彼女が、魔王たるリューの命令に逆らえるわけがない。
そんなアリスにローラはやれやれと肩をすくめると、びっ、とその鼻先に人差し指を突き出した。

「私は貴方のことなんて名前も知りませんけどね。貴方の想いはそんなもの?ひとつだけ言っておきますけどね」

アリスは息を飲んだ。
アリスだって、この少女のことなんか名前も知らない。魔王の仲間――なのだろうか。
それにしては魔王にかしずいていないようだし。なんなのだろう。人間なのだろうか?
それすらアリスには曖昧に感じられた。
この少女、彼女の瞳から感じるこの感じは―――


「恋する乙女に、不可能はなくってよ?」


―――魔王。

いや違う。もっと別の『何か』。人間でありながら魔王でもある。アリスは怖いと思った。
小心な自分はこの得体の知れない少女に対し恐怖を感じると思った。しかし、何故だか怖くない。
その不思議な感覚にアリスは戸惑っていた。
アリスがまごまごしていると、ローラはきびすを返してピーターのところまで歩いていき、
まだ正座していた彼を立たせると、すたすたとそのままどこかに行ってしまう。

「あ、あのぅ!どこへ……?」
「リューさんを探しに行くのですわ。ヒロト様と二人っきりなんて、そんな抜け駆け放っては置けませんもの」

その背中に、アリスの声が響く。
ローラは肩越しに振り返って片目を瞑ると、今度こそ振り返らずに森の中へ消えてしまった。

あとには正真正銘、『ワンダーランド・プロジェクト』の予定通り、アリスとピーターの二人だけが残された。
アリスは頬を赤く染めてもじもじと手をせわしなく動かし、ピーターは脚が痺れたようで若干ふらふらしながらも
足についた土をぱんぱんと払っている。ちなみにギガントールはまだきちんと正座していた。

………。

「あー、それで、だな」

間がもたなくなったのか、ピーターはポリポリと頬を掻いた。

「なんとなく、自分の勘違いだったようだから……攻撃してしまったことは謝ろうと思う。すまない。
 ………しかし、それならキミはいったい何が目的なんだ?」


423:ワンダーランドでつかまえて(16/19)
08/07/06 10:40:29 ErmhKk5D
びく、とアリスは大きくその肩を震わせた。
身体の内に熱いものを感じた。その熱は胸の奥をちりちりと焦がし、アリスの身体を急かし掻き立てる。
アリスはその感覚に覚えがあった。
ピーターを遠くから見たとき。ゴーレムに指令を出して、失敗して。思い切り頭から土を浴びて、
小山の中から顔を出し。なかなかうまくいかないもんだ、なんて。彼が苦笑いしたとき。
ピーターのいつも寝ているベッドにばふっ、と倒れこんで、彼の匂いを胸いっぱいに吸い込んだとき。
彼が育てたにんじんをこっそりとひっこぬいて、一緒ににんじんを育てる未来を想像してしまったとき。
約束の時間に遅れそうでせかせかしているときのように、頭がかーっと赤くなってしまうのだ。
そんなとき、アリスはいつも逃げ出してきた。
溢れて零れそうな感覚のままに脚を動かして、こう、ばびゅーんと逃げ出してきた。

しかし。

今は、それができない。
アリスは火のつきそうな胸の鼓動とは裏腹に、背後に何か大きくて冷たいものがそびえ立っているのを感じていた。
それは燃え盛る炎のような、底の見えない暗い海のような。アリスのようなちっぽけなウサギには計り知れない、
とてつもない何か。それがアリスの頬をゆっくりと舐めるように撫で上げ、三日月のような口で笑う。

――そうだ、アリス。ピーターと二人っきりにしてやる。その時に、奴ニ想いヲ伝エレバイイジャナイカ――

そのときの魔王の言葉は何気ない、純粋に恋する少女を応援する言葉として発せられたのだろう。
しかし、それはアリスの小さな心臓に杭を刺す。足元が縫い付けられて動けない。ここでピーターに
背を向けるということは、あの言葉に背を向けるということ。それは彼女にとって自分の血流を
逆に回すことよりも、もっとずっと難しいことなのだ。

「あ、あたしは……!」

でも、今ここでピーターに告白する?そんな。
だって理由はどうあれ、アリスがピーターの畑を荒らしたのは事実で、ピーターの屋敷から家具や衣類や小物を
盗んで持ち去ったのは事実なのだから。そんな自分が、どの面下げてピーターに
『好きです』なんて言えっていうんだ。それよりも前に言わなくちゃいけないことがあるってものだろう。
そう、順番なら、こっちが先だ。告白なんかより、こっちが――。


――奴に想いを伝えればいいじゃないか――

――恋する乙女に不可能はなくってよ?――


「あ、あたしはぁっ……!」

アリスはぎゅっと目をつむり、


「色々悪いことして、ごめんなさいぃっ!!」


ぺこん、と頭を下げた。

「………え?」
「あ、いや、その。だから。ピーターさんの畑からにんじんを盗んだり、
 屋敷から色々持って行ったり……しました!あたしはっ!だから、だから………ごめんなさいっ!!」

ピーターは呆けたようになり、アリスは長い耳をぶんぶん振り回して何度も頭を下げる。
そう、悪いことをしたら謝るのが当たり前。そこをすっ飛ばして好きも何もない。
魔王サマたるリューは告白しろって言ってたけど……まず、アリスは謝らないといけなかったのだ。
謝って、罰を受けて、許してもらって、そこから。そこから、アリスは始めなければならない。
それが、アリスの想う一番の未来の、きっと一歩目なのだから。


424:ワンダーランドでつかまえて(17/19)
08/07/06 10:41:10 ErmhKk5D
「……あ、うん。謝ったのか。あー……なら、とりあえず自分の家具とか、返しなさい」
「………はい」

ピーターは戸惑っているのか、どこか視線を泳がせながらもアリスに命令する。
アリスは――そりゃあ、少しは残念だったけど、仕方ない。それに、それが当然。こくりと頷いた。

「それから……ああ、そうだな。自分の畑から盗った野菜は、どうせもう食べてしまったんだろう?
 だったら、仕方ない。ワーラビット。しばらく自分の畑仕事を手伝ってもらうっていうのはどうだ」
「はぇ?」

続くピーターの言葉に、アリスは驚いて顔を上げた。なんだって?さっきのが聞き違いでないなら、
それが本気なら、その意味は――。

「それで、今まで盗んできた分を返してもらう。素直に謝ったことだし、それで勘弁してやろう」

――願ってもない。ピーターと一緒にいられるってことじゃないか。

「なんだ。不満か?だが、キミがしてきたことは――」
「いいえ!あたし、一生懸命働きます!働きウサギになりますぅ!!」
「……そ、そうか。なら、えっと、とりあえず明日からだな――」

研究の予定を組みなおさないとな、なんて。
ボリボリ頭を掻くピーターを前に、アリスは花が咲いたように笑った。
ああ、夢にまで見た未来の『ワンダーランド』。

それは、明日の朝日と共にある。



――翌日、ヒロトたちはまたピーターの屋敷を訪れていた。
呼び鈴を鳴らす。ぴょこんと顔を出したのはアリスだった。
昨日各々『ワンダーランド』から帰ってきたヒロトたちはアリスの家にあったピーターの家具を運び出し、
届けたのだが、引越し状態でしっちゃかめっちゃかになってしまったのでとりあえずアリスは泊りがけで
ピーターと共にずっと整理をしていたらしい。ヒロトたちがキャロット家への報告のために
帰らなくてはならなくなった後も、ずっと。
そこで判明したのは、ピーターがこの屋敷を管理しきれていないということだった。
元々ピーターは贅沢を当然とする貴族じみた生活を嫌っていた上に、工房は必要でも広いリビングなど
必要ではない生真面目な魔導師であるために、キャロット家から与えられたこの屋敷を持て余していたらしい。
そこで、アリスが勇気を出して提案したのが――。

「………なるほど。それでその恰好というわけだ」

リューがきゅうっ、と目を細める。

「え、えへへぇ」

照れ笑う。アリスは、メイド服に身を包んでいた。
ようは畑仕事だけでなく、ピーターにとって広すぎるこの屋敷で清掃、洗濯、炊事を担当すると
言い出したという話。ピーターもそれならゴーレム使役のトレーニングに時間を裂けるので、
畑仕事のオート化も近づくだろうと受け入れたそうだ。うさみみメイドの爆誕である。

「しかも住み込みなんでしょ?すごいじゃん、頑張ったじゃーん」
「あ、ありがとうございますっ!」


425:ワンダーランドでつかまえて(18/19)
08/07/06 10:41:56 ErmhKk5D
にこにこしているアリス。その後ろから、ピーターが顔を覗かせた。

「ああ、皆さん。いらっしゃっていたんですか」
「あ、す、すみませんご主人サマ。お客様なのに……」
「ご主人サマ?」
「ご主人サマ……」

ぺこぺこ頭を下げるアリスの台詞を聞いて、リューとリオルが口元をひくつかせる。
ピーターは困ったように笑って、

「自分もどうかと思うのですが……アリス。それはやめてくれと言っただろ」
「ですが、ピーターさんはご主人様ですっ。ご主人様はきちんとご主人サマとお呼びしないとぉ!
 で、ですよねっ!?まお……リュリルライアさんっ!」
「………まぁな」

リューが肩をすくめると、アリスはほら!とピーターを見上げた。
ピーターは参ってしまって、頭を掻く。その様子がおかしくて、一同は笑った。
しばらく談笑した後、それじゃあ、とヒロトたちは二人に背を向けた。
その背中に、ピーターは声をかける。

「最後に聞かせてください!貴方たちは、本当は何者なんですか?」

ヒロトは立ち止まり、隣にいたジョンと顔を見合わせる。ジョンは、一息ついたあと、頷いた。
ヒロトも頷き返し――そして、荷物からマントを取り出してその背に羽織る。
ジョンもまた、荷物からグローブを取り出して手にはめた。

マントは紅。世界最高権力、聖堂教会の十字紋様を背中に背負う、ヒロトが翻す勇者の証。
ブローブは黒。世界最高権力、聖堂教会の十字紋様を手の甲に刻む、ジョンが握りしめる勇者の証。

ピーターは、もちろん知っている。
勇者ヒロト。彼はかの『はじまりの勇者』と同列に数えられるほどの武勲を生み出した、
歴代最強クラスの戦闘力を持つ生きる伝説であると。
そして、ピーターにとってはその伝説より遥かな憧れである、その小さな勇者。
勇者ジョン。ピーターが留学し、魔道の技術と在り方を学んだ技術大国ラルティーグの希望を背負う英雄だと。

ふたりの勇者はピーターに大きく手を振った。

「応援しています、ピーターさん!」

――それが、誰からも認められず、家族にさえ追放を受けたひとりの魔導師に、どれほど響いたことだろう。
世界を巡り、何人もの人を助け、様々な発見をした勇者たち。尊敬を集める彼らに支持された、
それがどれほどピーターの救いになったことだろう。『変人』と呼ばれた彼は知らず、涙した。


―――自分は、間違っていなかったのだ、と。


「あたしからも、聞いてもいいですかぁ!?」

アリスも叫んだ。ずっと気になっていたのだ。アリスに最後の――逃げ道を塞いでくれたのは
魔王リュリルライアだが、それとは別に――勇気をくれたのは、彼女だったから。
お礼は言ってもいいきれない。だから、これがお別れというのなら、聞いておかなくては。

426:ワンダーランドでつかまえて(19/19)
08/07/06 10:42:44 ErmhKk5D
 
「ローラさんはどこにいるんですぅ!?」

ヒロトたちは立ち止まった。
『ヒロトたち』――そこにいるのはヒロト、ジョン、リュー、そしてリオルの四人だけ。
ローラがいない。というか、昨日からずっといない。最後にローラを見たのはアリスたちであり、
それはアリスを勇気付けてヒロトたちを――というか、ヒロトを探しにいった後ろ姿だというのだ。
それを聞いたのはとりあえずキャロット家に報告に行って、もしかしたら宿に帰っているのかもと
いったん引き返して、でもいなかったからまたピーターたちの屋敷に戻って、そのときである。

なんとなく嫌な予感はそのときからしていたのだが……みんなで『ないない、それはない!』と
強引に思い込んで朝を迎え、それでも戻ってこないので今から探しに行くのである。
というか、迎えにいくのだ。

「……どこへですぅ?」

決まっている。


「ワンダーランドへだ!!」


………………………………。
………………………。
………………。


ローラは森を彷徨っていた。
森には深い霧が立ち込め、数歩先はもう真っ白で何も見えない。
いったいどのくらい歩いたのか、森に入ってどのくらい経ったのか。もうさっぱりわからなかった。
そもそも、この霧はヘンだ。強い魔力の塊であり、方向感覚も何もまったく狂わされてしまう。
ローラは知らない。リューがヒロトをいざなったあのとき。
森は異次元空間、魔の霧による特殊結界で覆われていたことなど。
無論、結界にはお茶会の相手、ヒロトにしか侵入できないのだが、リューとヒロトの逢引きを
邪魔しようと森に侵入したローラは強引に霧に入り込み、そのまま結界に干渉してしまったのだ。
げに恐ろしき乙女の執念。リューが『変化』と『幻想空間』の二つの魔法を同時に行っていたのが悪かったのか、
それとも恋する乙女に不可能はないのが悪かったのか。その二つが重なり合って、ローラはリューの作った
別位相に乗り込むことができたのだが、そこでまた最悪のタイミングでリューが結界を解いてしまったのだ。
もともと正式なゲストでもないローラは結果、霧の中――別位相に取り残されることになり、
しかし『そこにローラが存在する』以上、その別位相と元の世界の繋がりも消えてしまうことなく、
こうやって次元の狭間である霧の中を彷徨っているのだった。

出れる気配は、あんまりない。

「………………………私、今回恰好いいこと言いましたのに……」

リューが再び森の中に幻想空間を作り、ローラを救出するのは、彼女の体感時間ではまだ先の話である。



              ワンダーランドでつかまえて~新ジャンル「うさぎ」英雄伝~ 完



427:名無しさん@ピンキー
08/07/06 12:44:23 5hVGduMi
うさみみメイドかわいいようさみみメイド

…でも何気に鉄人28号も可愛かった件

428:名無しさん@ピンキー
08/07/07 22:36:54 ivTs1HRc
408-426
平凡ですがやはりこの言葉を

GJ!

相変わらずのいいお手並みです。

429:名無しさん@ピンキー
08/07/09 21:46:37 dMdKDj07
板垣死すとも新ジャンルは死なず

430:名無しさん@ピンキー
08/07/09 22:49:33 NyiO6qOm
?
板落ちてたの?

431:名無しさん@ピンキー
08/07/10 09:01:08 rmf1kcKj
オチテナイヨー

432:名無しさん@ピンキー
08/07/10 10:34:08 x2ZpWR8w
板垣退助の名言だぜ>>429

元は「板垣死すとも自由は死せず」だけどな

しかも板垣死ぬのかと思ったら国外逃亡しちゃったけどな

433:名無しさん@ピンキー
08/07/10 11:55:39 rmf1kcKj
女「上のケツからクソを垂れる前と後ろに『サー』を付けろ!」
男「サー!イエス!サー!」
女「今日から貴様はわたしの彼氏だ!」
男「サー!イエス!サー!」
女「地球で最高の生き物だ!両手一杯のダイヤモンド以上の価値がある!」
男「サー!言いすぎです!サー!」
女「彼氏の分際でわたしに口出しするな!」
男「サー!イエス!サー!」
女「わたしの傍から離れるな!できるだけぺたぺたしていろ!」
男「サー!イエス!サー!」
女「他の女に手を出してみろ!泣いたり笑ったりできなくしてやるからそう思え!」
男「サー!イエス!サー!」
女「わたしのことが好きか!?」
男「サー!イエス!サー!」
女「声が小さい!」
男「サー!!イエス!!サー!!」
女「えへへー」
男「………」
女「気に入った!ウチに来てわたしをファックしていいぞ!」
男「サー!イエス!サー!」

新ジャンル「ハートマンさん」

434:名無しさん@ピンキー
08/07/10 12:00:50 rmf1kcKj
少年「アヒルや犬と一緒に旅をしています」

新ジャンル「鍵っこ」

435:名無しさん@ピンキー
08/07/10 23:59:44 FRv1uPLI
>>433
ごめんよ 何か便乗してみた

女「まるで、そびえ立つクソだ 」
男「サー!自分の息子を捕まえて、幾らなんでもソレは!サー!」
女「心配するな!どっちにしても放送コードに引っかかる!」

女「クソまじめに努力するこたぁない!
  神様に任せりゃケツに奇跡を突っ込んでくれる!」
男「サー!どうせなら自分は突っ込みたいであります!サー!」
女「上出来だ、頭が死ぬほどファックするまでシゴいてやる!
  ケツの穴でミルクを飲むようになるまでシゴき倒す!」

女「じじいのファックの方がまだ気合いが入ってる! 」
男「…………え?」
女「こ、言葉の綾だ!!お、お前には、私の初めてをやっただろう!!」
男「サー!!イエス!!サー!!」

女「イクか? 私のせいでイクつもりか? さっさとイケ!」
男「サー!!イエス!!サー!!」

女「貴様は私を愛しているか?」 
男「生涯忠誠! 命懸けて! 闘魂!闘魂!闘魂!」 

女「えへへー」

新ジャンル「ハートマンさん弐」

436:名無しさん@ピンキー
08/07/11 07:39:47 eBjUXKoG
URLリンク(www.nijiura.com)
URLリンク(www.nijiura.com)

こんなのがあったな

437:名無しさん@ピンキー
08/07/11 11:37:45 +sbQoaJ3
>>434
今丁度やってて吹いた

438:名無しさん@ピンキー
08/07/11 22:23:47 EGPDOb0i
残り30KB
毎度ながら500はいきそうにないな

439:名無しさん@ピンキー
08/07/12 15:33:09 fG/PMn5a
>>403
某少年については、後述のある一点を除いて全く未定です。
名前他決めて貰えれば…
以下本文



妹の思わぬ裏切り行為に驚いた痴女クール校長こと千所玲だったが。
「…くっ。ははははっ!!あははははっ!!!!」
突然の姉の高笑いに妹たる舞は戸惑う。
「姉さん、何がおかしいんだ?」
「ははっ。いや大した決意だ、我が妹よ。しかし実力の差は考えていたのか?」
「見くびるな、私だって千所家の娘。むざむざやられるものか」
そう言って舞は戦いの構えを取る。低く腰を落とし、相手の攻撃を
受けつつも決定的なカウンターを狙う。

「さあ…来い!!」
「舞、それが甘い!!」
言葉と同時に投げつけられた幾本かの試験管、舞は辛うじてそれらをかわす。
「くっ!!薬物か!!」
「お前は真っ直ぐ過ぎなんだよ!!」
校長・玲は無駄なく妹との距離を詰め、矢継ぎ早に攻撃を繰り出す。まさに流水の如く滑らかに。

「オラオラ!!どうした!!口だけなのか!?」
「な、舐めるな!!」
玲の攻撃に対して時折カウンター攻撃を繰り出すも、舞の拳や蹴りは空を切るばかり。

時計の秒針が時計を五周した後、はっきりと差がつき始めた。
舞は全身傷だらけなのに対し、玲は涼しい顔でいやらしい笑みさえ浮かべている。
『ここまで実力差がついていたとは…しかも姉さんはまだ遊んでいる。
現に私が今、立っていられるのがその証拠だ』
『何か…気を反らす物があれば……いや…』

440:名無しさん@ピンキー
08/07/12 15:33:58 fG/PMn5a
肩で大きく息をつきながら、必死に舞は勝つ為の策を練る。

「舞、覚悟はいいか?」
「『来る!!』…ああ」

そこで舞は胸元に手を入れる。
「何だ、その構えは?」
「姉さんを倒すための秘策……さ」
シニカルな笑みを浮かべて姉に向き直る舞。
「気に入らないな…その笑い方は。あの女の笑いを連想する」

『あの女?』
肩の痛みに耐えて戦況を見守ってきた夕圭。
四天王でも情報通の彼女だが、校長が不快感をあからさまに示す女性の存在は初耳だった。

「では…!!」
正面から舞が突進する、しかし疲労が蓄積してか相手の虚をつく程のスピードがない。
「…終りだな、舞!!」
その時、玲へ舞の胸元に入れた手から何かが投げつけられる。

「…ぶ、ブラッ!?」

投げつけられた物体、舞の薄い水色のブラ(推定Eカップ)はフラフラと玲の顔面に張り付き。

バシュッ

舞渾身の右フックが玲のこめかみを打ち抜いた。

441:名無しさん@ピンキー
08/07/12 15:36:40 fG/PMn5a
「大丈夫か?黒田くん」
「舞先生…ほんと無茶しますね。私は肩だけ…」
「そういった意味では私の体の方が傷だらけか。…一応嫁入り前の身なんだが」
真顔でとぼけた事を言う舞がおかしく、夕圭はクスリと笑う。

「面白い人ですね、舞先生って。ちょっと手強いライバル出現かも」
「ははっ、お手柔らかにな。だが青山春樹を手に入れるのは…」
「あいたた…くぅ~、あっ夕圭、手前よくも!!」
長い気絶から目覚めた陽子が夕圭に食ってかかる。
「なによ、いきなり麻里愛を殴ったあなたが悪いのよ」
「あたしは夕圭が締め技食らってると思って!!」
「お馬鹿っ!!!!」
「馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞぉ!!!!この垂れ乳女!!!!」

安心感からか、つい軽口の応酬になる少女達。
その時だった。

「危ない!!」
強い力でいきなり突き飛ばされる夕圭と陽子。
「きゃっ!!」
「痛え!!何しや……こ、校長!!」

起き上がった二人の視線の先には、憤怒の表情の校長・玲とうずくまって肩を抑える舞の姿が。

「…痛かった、今のは痛かったぞ…舞いぃぃ!!」
妹の腰へ容赦なく二、三回ローキックを入れる玲。
「ぐぅっ!!」
「…この私がまさか拳を入れられるとは思わなかった。油断大敵だな…」
先程のキックで倒れこんだ舞の背中を足で踏みにじる。
「ぐぅぅ…!!」
「まあ、身内だからこの程度で許してやる。……しかしお前達は覚悟しておけ、四天王」
玲は両手を顔の高さまで上げて、指をわきわきと震わせる。
「この所欲求不満なんでな……たっぷり可愛がってやるさ、二人とも。
この先男に二度と興味が湧かなくなる位にな…」


442:名無しさん@ピンキー
08/07/12 15:37:37 fG/PMn5a
夕圭と陽子は思わず抱き合って震えだす。
「や、ヤバいぞ…」
「こ、怖いよぉ…」

ゆっくりと近付く玲。
「どちらに…よし。まずは…二人いっぺんだな。その後、失神するまでトウバンジャンを……」
ぶつぶつと妄想を口にしながら、鼻血を流す妙齢の女性。下手なホラー映画より恐い。

玲の手が夕圭の制服にかかるが、恐怖のあまりに夕圭の体は金縛り状態。陽子も同様だ。
「い、いやぁ…は、春樹くん…たすけ…」
「…は、春樹ぃ…」
「ふん、青山春樹も私がいずれ飼ってやるさ……安心してお前達も」

「…お取り込み中に悪いんだけどさ、千所校長。手を離して貰えるかな、二人からさ」
「…!!き、貴様!!遠山の!!何故ここまで!!」

慌てて玲は距離を取り、突然の来客に対する。
「えっ、と、遠山理菜!!なんであたし達を…?」
「…あんた達が襲われてるのを助けたんじゃないわよ。千所校長は私の敵だから」
「…何の用だ」
「春くんのピンチに颯爽と登場するのは、彼女だからよ!!(ピシッ)」
指を突きつけて主張する理菜へ、陽子が抗議の声を上げる。
「春樹はあたしの恋人だぞぉ!!」
「なに勝手な事を!!」
「まあまあ…三人とも。その話題は後でね」
「あっ、おばさま…(ギリギリ)…ギブギブッ!!」
「げぇ!?あ、青山夏実!!な、何故貴様まで!?」
玲の声に隠し切れない憎しみ、恐れ、妬みの感情が渦巻く。
「あらあら。久しぶりに会ったのに。でも元気そうね」
反対に夏実の声は平素と変わらず、のんびりとしたもの。
「…まあ、たまには母親らしくしないとね。秋くんに怒られちゃうし」
「くぅ!!!!!!」
玲の表情が一段と険しさを増す。


443:名無しさん@ピンキー
08/07/12 15:42:03 fG/PMn5a
「あ、あの…春樹のおばさ…じゃない青山先生…」
「何?陽子ちゃん」
「『秋くん』て誰?」
夕圭が呆れた表情で相方を見やる。
「あなたねぇ…青山秋彦さんよ。春樹くんのお父さんの事」
「なぁんだ…春樹の父ちゃんかよ……で何でウチの校長はあんな悔しそうなんだ?」
「さ、さあ?」
夕圭もそこまでの事情は知らない。
「んー昔ね、秋くんにそこの玲ちゃんがちょっかいかけて来てね。それ以来よ」
淡々と事情を語る夏実。もっとも握り締めた拳には相当の力が込められている模様。
「わ、私の方が先に知り合ってさえすれば!!貴様なぞに青山先生を!!」
「あらあら。秋くんに想いを気付いて貰えなかった女の台詞ではないわねー、仔猫ちゃん」


陽子、夕圭、理菜は共通の想いを抱いていた。

『夏実さん怖い!!そして春樹のニブチンは父譲りなのか!!』


先程までとはうって代わり、余裕のない表情の玲とのんびりした顔で笑う夏実。
二人の間である一つの決着がつこうとしていた…




新醤油学園 青春編
「クイーン登場」


444:名無しさん@ピンキー
08/07/12 15:44:26 fG/PMn5a
春樹への制裁を済ませた後に、ルカは真智子と相談を始めた。
「ハルは無事だったから良かったけどさ。豆田姉と夕圭ちゃんは一体どこへ?」
「…わかりません」
真智子としても首を傾げるしかない。すると、部屋の隅で(痛みから)頭を抱えていた貴子が口を開く。
「…それより…問題が」
「貴子ちゃん…ちゃんと反省してるの?」
ここは大人しく従った振りをしよう。貴子はそう判断し、深々とお辞儀する。
「…ごめんなさい」
「まめこ…わかってくれたですか」
貴子の手を握り締めて喜ぶ真智子。貴子は内心後ろめたく感じてしまう。
「わたしとはるくんのしんきょで、かせいふとしてやとってあげます!!」

この言葉の後、某埼玉の一家で有名なお仕置きがあり………

「…でここは危険て?」
えぐえぐ泣いている真智子を尻目に、ルカは貴子の意見を聞く。
「ここは密室…万一居所が判明すれば…」
「逃げどころがない…って事よね」
小さく頷く貴子。
「…問題はもうひとつ…追手の正確な数が掴めてない…」
「はるくんをねらうのはどこのわるものですか!!わたしがぎたぎたに!!」
「…まあ、過去にも例があるから…校長と…理菜が候補よね」
疲れた表情で呟くルカ。貴子も無言で首を縦にぶんぶん振る。
「がちゆりさん…!?このまえはにげられましたがきょうこそは!!」

445:名無しさん@ピンキー
08/07/12 15:47:06 fG/PMn5a
そんな会話がされている所とは別の場所で。
「ねぇレーファ。一応、僕は貴子様に任務を…」
「ふんふんふーん」
「それにまだ授業中なんだし、こうして脱け出してお茶するのは…」
陽子の直属の部下であり豆田家チャイナメイド、カナダからの留学生レーファ。
彼女は学園を脱け出し、相方兼恋人の少年と喫茶店でひとときを楽しんでいた。
「ねぇ…レーファ?」
「気にしないネ、こうして楽しみながら情報を集めてるのネ」
すっかり上機嫌のレーファに対し、相方の少年は落ち着かない様子。
「タマには息抜きも必要って陽子サマも言ってたシ、ダーリンとデートも久し振りネ」
『この前の買い出しの時も確かそんな事を言ってたよなぁ…』
疑問には思うが、目の前の楽しげな少女を見ていると心が和む少年だった。

そして少年は気付いていなかった。携帯へ入っていた、主人からの連絡メールに。

『指令変更。ポイントM0へ移動するので護衛を命ずる』
『指令無視とは…給料更に10%カット』

少年の仕送り額は更に減少の一途を辿っていくのであった。

新醤油学園 青春編
「巻き込まれ体質」

446:名無しさん@ピンキー
08/07/13 10:44:20 JCOEspMk
蛙の子は蛙
だが既に何人かから告白を受けてるはるくんは親父さんとは違うと思うんだぜ

447:名無しさん@ピンキー
08/07/13 23:18:33 63yseeJ5
>>432

女「板垣…?」
女友「退助、教科書に載ってるでしょ」
女「そだっけ?」
女友「ほらこーんなひげの、天理、前に変な中国人にしてたよね」
女「あーあれか、何した人だっけ?」
女友「自由民権運動」
女「自由…えーとエライ人?」
女教師「何言ってるだよ、エライに決まってるじゃん!お札になってんだよ、100円札!」
女「100円…」
女友「…札?」
女教師「うむ、板垣死すとも札残す!」(`・ω・´) シャキーン

女友「100円札って…明日香ちゃん幾つよ」
女教師「うむ、永遠の18才だっ!」(`・ω・´) シャキーン
女/女友「ちょ」
男「待て、それ以前にそいつ英国育ちだろ」


新ジャンル「板垣死すとも」


ゴメン、落しそこねたんだ…(´・ω・`)

448:名無しさん@ピンキー
08/07/14 17:15:41 EkcsUy9D
板垣死すとも自由は死せず

とは、ヤンデレ女さんに極限まで監禁され精神的にギリギリになった男くんが
幾たびの熱烈すぎる求愛を受け、それでも屈せずに放った言葉である
女さんは男くんに感服し、ますます虜になってしまったといわれている

449:名無しさん@ピンキー
08/07/15 02:34:42 jrhyUYrb
五月雨は 露か涙か 不如帰 
我が名をあげよ 雲の上まで

主人公、ヒロインである「男」「女」に対して、オチ要員の「友」
彼は己の切実な願いを込めて詠ったとされる

450:名無しさん@ピンキー
08/07/15 13:13:20 6P8m07qo
男「女の子の名器をみみず千匹というらしい」
女「曰く、膣内挿入時の感触があたかも千匹のみみずにねっとりと絡みつかれたようであるからだとか」
男「かずのこ天井という言葉もある」
女「曰く、膣内部に男性器を刺激する突起がかずのこのようにいくつも付いているからだとか」
男「と、いうわけで!古来より伝わりし双方を組み合わせた画期的なオナホールをつくってみました!」
女「わぁい!古来より伝わっててなんで画期的なのかイマイチわかんないけどわぁい!」
男「側面にかずのこを接着し、内部にはみみずを千匹!」
女「ぎゃぁぁぁぁああああ!!えんがちょぉぉぉおおお!!」
男「いやー、本当に千匹みみず捕まえるのには苦労しました」
女「いやぁぁぁぁああああ!!ちょっ!おまっ!こっち来んなぁぁぁ!!」
男「ふっふ。女である貴様にはわかるまい。これこそロマン!男の!ロマン!!」
女「死ね!」
男「なんとでも言え!レッツ!エレクチオン!!」




入院した

新ジャンル「名器」

451:名無しさん@ピンキー
08/07/15 14:31:56 6P8m07qo
男「Hになればなるほど硬くなるものってなーんだ?」
女「ちんこ」
男「……スッゲェきっぱり言うんだもんなぁ……」
女「え?あ、やだ!あたしったら……!」
男「うら若い乙女がちんことか断言すんなよな」
女「クリトリスの方?」
男「そっちかよ!どっちにしても下ネタじゃねーか!」
女「じゃあ何?乳首?乳首ならいいわけ!?」
男「なんで怒ってんだよ!そして下ネタの『下』は下半身のことじゃないからね!?
  上半身になったからって下ネタなのに代わりはないからね!?」
女「ニプル……?」
男「やっぱ乳首じゃねぇか!」
女「硬くなるもの……硬く……海綿体……」
男「鉛筆の芯だよ!BよりHBの方が硬いだろうが!」
女「HB……H本……?」
男「お前そればっかか!」


新ジャンル「なぞなぞ」

452:名無しさん@ピンキー
08/07/15 14:41:17 6P8m07qo
   ……ざわ……ざわ………
 ………ざわ…ざわ……

女「しっ、静かにしてくださ~い!」

……ざわ……ざわ…
  …ざわ……ざわ…

女「図書館ではー!静かにしてー!」

ざわ……ざわ………
 ……ざわ…ざわ………

女「う、うぅー……しずかに、静かにしてぇ……ぐす」

男「デター!女さん涙目の懇願!」
友「あんなに涙目が可愛い女の子もそうもいねェよなァ!」
男「これだからやめられねェぜ、図書館で騒ぐのはよォ!」

女「……死ねばいいのに……」ボソ

男「………」
友「…………」


新ジャンル「図書館喧騒」

453:名無しさん@ピンキー
08/07/15 21:21:17 c/lzc7vV
>>452
萌えたw

あと二つは男と女それぞれ自重せよ!
繰り返す、それぞれ自重せよ!

454:名無しさん@ピンキー
08/07/16 04:00:57 4yY0Jqi7
いや、いいぞもっとやれwww

455:名無しさん@ピンキー
08/07/16 07:06:59 VOBPFe1L
さっき覗いてみたんだけどさ、wikiの方、なんか更新されてんじゃん。いつの間にか。
毎回思うんだけどさ、マジGjだよな。いや、毎回っていってもアレだよ?
毎回更新してくれてる人かはわかんないよ?わかんないけど、まあ関係ねぇんだよそこはさ。
俺が言いたいのは、こっちでアホみたいに『更新しました~』って宣言しないで
『更新しましたけど何か?』的な?寡黙な職人みたいな?それってマジカッケーと思うわけ。
そんで、俺はそんなwikiをまとめてくれた人に、GJって言いたいわけ。

456:名無しさん@ピンキー
08/07/16 09:49:58 VOBPFe1L
女「男くーん」
男「んー?」
女「ぷにゅ」
男「………」
女「にこー」
男「振り向きざまにつっかえ棒って。お前さんは小学生か」
女「あはは、引っかかったー」
男「違うね。知ってたね。知ってた上でわざと引っかかったんだね」
女「えー、ウソウソ」
男「ウソじゃないもんね。ところで女、あれ何だ?」
女「え?何?」
男「………」
女「何?何?何もないじゃんか」
男「女」
女「んー?」
男「ちゅ」
女「………」
男「引っかかったー」
女「………」
男「女?」
女「男くん」
男「どうした?」
女「あ、あれ何だろうね!?」
男「バレッバレだな」
女「うー」
男「でもあえて引っかかる。何々?どれだよう」
女「ちゅー」
男「甘い!ちゅー返し!ちゅー」
女「返された!ちゅー返し返し!」
男「何くそー、ちゅー返し返しかえ」


友「いいかげんにしろ」


新ジャンル「デレデレ」

457:名無しさん@ピンキー
08/07/16 10:03:05 VOBPFe1L
男「もごもご」
女「男くん、何食べてるのー?」
男「飴。白みそ味」
女「へー。美味しい?」
男「白みその味がする」
女「へんなの」
男「いや、意外と美味いよ白みそ味」
女「ふーん」
男「もごもご」
女「………」
男「………なんだよ」
女「頂戴」
男「これ一個しかない」
女「口うつし」
男「ん」
女「ちゅー」
男「………」
女「もごもご」
男「どうよ」
女「微妙」
男「えー」
女「返す。ん」
男「ちゅー」


友「死ねばいいのに」


新ジャンル「デレデレデレ」

458:名無しさん@ピンキー
08/07/16 10:27:15 VOBPFe1L
男「女ってさ」
女「んー?」
男「可愛いよな」
女「え?や、やだーもう」
男「いや、違うんだよ。そういう意味じゃなくて」
女「どういうこと?」
男「いや、美人は三日で飽きるっていうだろ。慣れるんだよ。普通はさ」
女「ふんふん」
男「でも、不思議なことに女の可愛さは毎日見てもずっと可愛いままなんだよな。
  むしろずっと見ていたいくらいだ」
女「あ、それわたしもわかる」
男「わかんの?ナルシスト?」
女「いやそういうんじゃなくて。わたしも、男くんの顔ずっと見てたいって思うもん」
男「そうか……お前にも同じ症状が」
女「謎だね」
男「そうだな」
女「まあわたしが男くんのこと大好きだってことは置いておいても、これは解明すべき謎だね」
男「そうだな。俺が女のこと大々々々好きだってことは差し引いても無視できない謎だな」
女「どうしよう」
男「とりあえずキスだな」
女「だね」
男「ちゅ」
女「ちゅー」


友「日本が銃社会じゃなくてよかったと思うよ」


新ジャンル「デレデレデレデレ」


459:名無しさん@ピンキー
08/07/16 16:12:32 Pe1o5y0q
デレデレ二倍か

460:名無しさん@ピンキー
08/07/16 18:15:58 VOBPFe1L
友「よぉ、男。来たぞ~」
男「おう、友。まぁ上がってくれよ」
友「ん。じゃあ、おじゃまします、と」
男「あ、悪いな。酒、持ってきてくれたのか」
友「いーのいーの。一人暮らしだと節約しなきゃだろ?その点俺はホラ。
  まだ親元だからな。あー、でもいいなー一人暮らし。ゴチャゴチャ言われねぇしさー」
男「そういいもんでもねぇよ」
友「そなの?あー、でもそういう苦労を差っぴいても憧れるわー」
男「………」
友「……あー…で、どうしたの今日。相談事って?」
男「ああ。……お前さ。ここに来るとき、なんか視線感じなかった?」
友「視線?」
男「最近ヘンなんだよ。夜さ、深夜だよ?エロパロスレ覗いてたらどっかから俺のじゃない呼吸音とか聞こえてくるし」
友「………………」
男「バイトから帰ってきてさ。もちろん真っ暗のはずだろ?はずなんだよ。でも何故か電気ついてるんだよ」
友「…………」
男「んで極め付けに、だよ。記憶違いかな、勘違いかな、まぁいっかって寝ようとしたわけ。
  布団敷いて、横になって、ふっと天井見上げたんだよ。したらさぁ!」
友「……!!」
男「ちっちゃい穴開いてて、そこから俺のこと見てんの!」
友「………………夢か」
男「夢じゃねぇよ!!」
友「夢じゃねぇのかよぉぉぉおお!!」
男「夢じゃねぇよ。だって」
友「だって?」
男「……今も見てるもん」
友「オギャァァァァアア!!!!」
男「声がでかいよ!気付かれたらどうすんだバカ!」
友「帰る!俺帰る!相談ってそれかよ!知らねぇよそんなもんゴーストスイーパーじゃねんだよ俺は!」
男「帰るなよぉ頼むから!どうすればいい!?どうすればいいと思う俺!?」
友「幸せに暮らせ!」
男「だから幸せに暮らすためにどうすればいいかお前が考えろ!」
友「なんで命令口調なんだよ!ふざけんな俺を巻き込むな頼むから!」
男「巻き込むね!お前生きてこの部屋から出れると思うなよ!!」
友「おう上等だ殺やれる前に殺ったらぁ!!」
男「来いやぁぁぁああああ!!」

ガタガタ スタッ

女「お、落ち着いてください!喧嘩してる場合じゃないでしょう!?」

友「………………………」
男「……………………………」

女「愛しの男さんが幸せに暮らすためなら、不肖、あたしも一生懸命できることを」
男「出てけェェェェェエエエエエエエエエエエエ!!!!」


新ジャンル「天井裏の女」

461:名無しさん@ピンキー
08/07/16 19:57:35 yodhnbnC
だ、だから自重しろって言ってんじゃないのよっ!
べ、別にホントはもっとやってほしくて自重しろって言ってるわけじゃ・・・。

な、ナニよっ! 馬鹿ぁっ!

>>460
普通に怖いわw

462:名無しさん@ピンキー
08/07/16 20:20:14 QUaZGcuP
>>461
自重しろ
スレのKBも少ないし

463:名無しさん@ピンキー
08/07/16 20:21:32 yodhnbnC
>>462
おっとごめん。

464:名無しさん@ピンキー
08/07/16 20:57:43 VOBPFe1L
いや、反応もないのに淡々と投下するのは哀しいもんですぜ旦那

465:名無しさん@ピンキー
08/07/16 20:59:49 yodhnbnC
というか、そろそろ次スレ立ててもいいんじゃね?

466:名無しさん@ピンキー
08/07/17 17:24:44 kx0fiMBp
友「テレビ見るものないなー」
女「これは?夏の納涼スペシャル」
友「えー。これ怖いやつじゃん。やだよあたし幽霊とか苦手だもん」
女「そうだっけ?作り話だよこんなの」
友「そういうの関係ないの。フィクションだろうがノンフィクションだろうが怖いものは怖いの」
女「幽霊だよ?いるわけないじゃん」
友「何で言い切れるのよ」
女「見たことないもん。いるとしても感じないならいないも同じだよ」
友「怖いものなしかあんた」
女「そうでもないけど。でも存在するかしないかもわかんない幽霊(笑)より人間のほうが怖いと思うね、あたしは」
友「対人恐怖症?」
女「違うって。なんていうの?精神に異常をきたしたみたいな?サイコ系?」
友「あー」
女「幽霊よりかは『存在感』があるわけじゃん。人殺しだって人間なわけだしさ。あたしは人間が一番怖いと思うね」
友「なるほどなー。でも、そういう話してるとさ。何気ない隙間とか気になっちゃわない?」
女「そうだよね。なんか視線感じたりさ」
友「だから嫌なんだよね。誰もいないっていうのはわかってるんだけ……ど……………」
女「………?」
友「……………」
女「どしたの、友。顔色悪いよ?」
友「………………あ、あぁ、あの、なんでもない。なんでもないから」
女「でも」
友「そ、それより!あたしなんか……あの、コンビニ行きたくなっちゃった。ついてきてくんない?」
女「えー」
友「いいから!」
女「あ、ちょっと!痛、なんなのさー」
友「早く!!」
女「あたっ、ちょ、友ってば。離してってば。どうしてのいきなりー」
友「………か、いた……」
女「へ?」
友「さっき!あんたの部屋のベッドの下に!誰かいたの!」
女「………」
友「ど、どうしよう!?警察とか呼んだ方がいいよね!?女、こ、心当たりとかある?」
女「………それって……」

男「驚かせたみたいで。ごめんなさい」
女「暗くて狭いところが好きなんだよねー、男くんって」
男「落ち着くんです」
女「そんな彼が大好き!」
男「あはは、こいつゥー」

友「男癖悪ッッッ!!!!」


新ジャンル「ベッドの下の男」


467:名無しさん@ピンキー
08/07/17 17:47:16 kx0fiMBp
兄「ただいまー」
妹「おかえりー。どうしたの?今日は彼女の家に泊まるんじゃないの?」
兄「いや、彼女の友達が来て。今日は帰ってきた」
妹「あはは、フラれたんだ」
兄「人聞き悪いこと言うなよな。……あー、ベッドの下落ち着くわー」
妹「趣味悪いよ。ベッドの下って」
兄「いいだろ別に。それにお前が言うなよな」
妹「なによー」
兄「お前だって暗くて狭いところ好きだろうが」
妹「……ん。まぁね。でもあたしはお兄ちゃんと違ってベッドの下なんかに興味ないもん」
兄「天井に登るのって面倒くさいんだよ」
妹「ぐうたら」
兄「うるさいな。お前はなんとかとバカは高いところが好きって類だろうが」
妹「それ普通バカの方を隠すよね!?」
兄「そうかぁ?そういえば、お前の方はどうしたんだ?彼氏に会いにいくんじゃないのか?」
妹「ま、まだ彼氏じゃないよぅ。遠くから見てるだけだもん」
兄「そっかー。ま、ほどほどにな」
妹「ん」

母「あら。二人とも帰ってたの?」

兄「お袋。……どこ?」
妹「天井裏にはいないよ?」
母「ここよ。ここ。床板の下」
兄「お袋スーパーの帰りだろ。食いもんが汚れるような場所に潜るのやめろよな」
母「いいじゃない。落ち着くのよ」
兄「……この一家は、まったく……」
妹「お兄ちゃんが言うー?」
兄「俺はまともな方ですー」

父「ただいまー」

母「あらあなた。お帰りなさい」
妹「お父さんまた新しいダンボール拾ってきたの?」
父「あ、うん。なんかそそられるんだよ」
兄「それ何個目だよ。ウチは引越し業者じゃないんだぞ?」
父「い、いいだろ別に!被ってると落ち着くし、敵にも見つかりにくいんだから!」
兄「……この一家は、まったく……」
妹「だから、お兄ちゃんが言うかなぁそれを」
兄「俺は一般人だって!まだ趣味の範囲内!」
父「はー……暗くて狭いところ落ち着くなー」
母「そうねー」


新ジャンル「家族」


468:名無しさん@ピンキー
08/07/17 21:24:24 Ey3LIw1R
>>464
反応したいんだがどうも最近規制が多くってな(´・ω・`)…

469:名無しさん@ピンキー
08/07/17 22:28:42 a4rJ5wxr
まさか続き物だと思わなかった天井裏w

470:名無しさん@ピンキー
08/07/18 11:37:21 CeWUcC1S
>>467
親も親ならw

471:名無しさん@ピンキー
08/07/18 13:35:42 yjwvaYtM
よく考えてみろ


全員猫だとは思えないか?

472:名無しさん@ピンキー
08/07/18 20:49:02 opUUChK5
むしろゴキ(ry

473:名無しさん@ピンキー
08/07/18 23:32:58 0dKFEnqg
いや、一部スネークが混ざってるな

474:名無しさん@ピンキー
08/07/19 05:48:58 7u8JiYOH
男「子供の頃、将来の夢は?って聞かれてなんて答えてた?」
女「男くんは?」
男「お巡りさん」
女「あー」
男「まぁ、ありがちですよありがち」
女「あたしはねー、化石」
男「………」
女「化石」
男「え?」
女「恐竜とかさ、好きなんだよね」
男「それ大分将来だな。もう大人になったら、とかそんなレベルじゃなくね?」
女「ま、大人になったらお花屋さんになりたかったんだけど」
男「おう、それでいいじゃん。可愛いじゃん」
女「でもま、将来を視野に入れたら化石かなと」
男「どんだけ遠いんだよ視野。億単位じゃねーか」
女「それはアレよ。既に次のオリンピックを視野に入れてるアスリートみたいな」
男「次元が違う!」
女「でもさ、最近思うんだよね。ただ化石になってもアレかなって」
男「アレかなってなんだよ。………っていうか最近って。最近も思い描いてんの!?化石を!?」
女「うん」
男「目を醒ませ!」
女「目指す意義はあるでしょ!?時期知的生命体に人間の情報を伝える、みたいな」
男「お前は何に未来を託してるんだよ!今を生きろ今を!!」
女「でさ、ただ化石になるのも面白くないから、ポーズをつけてみようかなと!」
男「んん、まぁ色々言いたいことはありますけど。ポーズて何よ?」
女「恐竜にしてもそうじゃん。ありきたりでさ。みんな同じ。個性がない」
男「いや個性はいらないだろ。いいんだよありきたりで。修学旅行の写真じゃねぇんだから」
女「そうはいかないわ。時期知的生命体に『人間って個性ねーw』とか思われるのは耐えられない」
男「まぁ何でもいいけど。で、どんな化石になりたいわけ?」
女「幸せそうな化石」
男「………はぁ」
女「安らかで、温かで。見てるだけで胸がほっこりする……そんな化石に、わたしはなりたい」
男「そっか……なれるさ。お前なら。誰もが幸せというものを見て取れるような、そんな化石に」
女「男くん………きゅん」
男「きゅん、じゃねぇよ」


新ジャンル「化石」

475:名無しさん@ピンキー
08/07/19 21:29:04 7u8JiYOH
【総合】新ジャンルでエロパロpart7【混沌】
スレリンク(eroparo板)

ついカッとなって立てた
今では反省している

476:名無しさん@ピンキー
08/07/19 21:50:14 VjG7iMx4
>>474
こういう掛け合い大好きだw

>>475
そして乙

477:名無しさん@ピンキー
08/07/19 23:46:54 7u8JiYOH
女「はい、男!お弁当!べ、別にあんたの為に作ってきたわけじゃないんだからね!」
男「………」
女「あんたって本当にダメね!仕方なく!あたしが面倒見てあげるわよっ!」
男「………」
女「な、何見てるのよっ!用もないのにじろじろ見ないでよねっ!」
男「………」
女「か、勘違いしないでよねっ!たまたま!たまたま今日ヒマだったから付き合ってあげてるだけなんだからっ!
  べ、別にめいっぱいお洒落とかしてきてないわよ!むしろ部屋着よ!部屋着!」
男「………」
女「あ、ああああんたなんかに褒められたって、ち、ちっとも嬉しくないんだからぁっ!」

男「女」
女「何よ!」
男「ちゅ」
女「~~~~~~~~ッッッ!!!!」


男「この味は!……ウソをついてる『味』だぜ……女!」


新ジャンル「ツンデレ」(VSブチャラティ)

478:名無しさん@ピンキー
08/07/20 01:39:35 K3e4fHYu
あと4KBか・・・・・500KB行かなかったな・・・

479:名無しさん@ピンキー
08/07/20 02:00:04 xRXJq0QD
男「えっさ、ほいさ」
女「男くん、何やってるの?」
男「見ればわかるだろ。埋めてるんだよ」
女「あー」
男「これがなかなか骨の折れる作業でさ。女も手伝ってくれない?」
女「いいけど」
男「そういえば埋めるで思い出したけど、どっかの拷問に『穴を掘って埋める』っていうのがあるらしいな」
女「……なにそれ?」
男「文字通り。穴を掘ってはまた埋めて、掘っては埋めての繰り返し。延々続けると人間は発狂しちまうんだって」
女「眉唾だなぁ」
男「そうか?賽の川原っぽくて怖くない?」
女「ひとつ積んでは……ってやつ?」
男「そ。で、積みあがる直前に地獄の鬼に積んだ石を崩されんの。はじめっからやり直し」
女「あー、それはきついわ」
男「意味ないことを延々やってるのはキツいからなぁ」
女「と、いうことは男くんもいずれ発狂しちゃうの?」
男「………なんで?しないよ?」
女「だって男くんはいつも無意味にオナニーしてるじゃない!射精しても意味なんてないのに!」
男「失礼やなキミ!」


新ジャンル「埋め」

480:名無しさん@ピンキー
08/07/20 02:57:13 xRXJq0QD
女「実験器具って、なんかエロくない?」
男「……またこの人はヘンなこと言い出したぞ」
女「例えばこれ。ビュレット。何か発射してない!?ビュレっと!白くて生臭い何かを発射してない!?」
男「そんなん考えるのアンタだけだから!何その笑顔!」
女「あと漏斗。『漏れる』が入ってる時点で既に18禁よね。しかもマニアックだわ。お漏らしプレイなんて。卑猥!」
男「卑猥なのはアンタの頭ン中だよ!つーかソレ注ぐモノであって放出するものではないからね!?」
女「注ぐ……卑猥!」
男「そうそう、挿入することさえなく機械的に……ってバカ!」
女「マウスを使った実験で使用します。スキナー箱。……好きな箱。何が入ってるの!?何が入ってるの!?いやらしい!」
男「疑う余地もなくマウスだろ」
女「本命はこれよね。乳鉢。……完全に狙ってるわね」
男「おっぱいのことじゃなくて離乳食とかその辺りから来てるから。性的な意味じゃないからね」
女「甘いわ。それなら乳鉢とセットの乳棒。これはどう説明するの?」
男「いや同じ説明でいいだろ。すり潰して柔らかくして、赤ん坊に食べさせるんだよ」
女「乳に棒とくれば固くなるに決まっているじゃない!!」
男「何の話をしてるんだあんた!!」
女「個人的にはこれを推すわ。メスシリンダー」
男「どこに推すんだよ。誰に推すんだよ」
女「雌。尻。んだー。もう、何!?飲み会の三次会くらいじゃないと口にできないレベル!
  嫁入り前の娘に何を言わせようというの!?わからない!理科、わからない!」
男「わかんねぇのはお前の脳味噌だ!!」


新ジャンル「理系さん」

481:名無しさん@ピンキー
08/07/20 12:13:13 K3e4fHYu

    ∧__∧
`Π  ━  ━ 彡
|@|  ●  ● 彡
|_|  |   ) 彡
ニニニ/|  /  彡
  / (o o ) ヽ ヽ
  / /| ̄ ̄  | |
―(_ノ――-(⌒)-
((|_|))      ̄
__________


482:名無しさん@ピンキー
08/07/20 12:26:36 xRXJq0QD
女「……スレの終わりというものはいつも寂しいものね……」
男「そうだな。沈む夕日を見るようだ」
女「でも勘違いしないで。これは終わりじゃない。新しい始まりなのよ」
男「………」
女「砂浜の足跡が消えるように、このスレの細かな部分はきっと、忘れてしまうかもしれない」
男「………」
女「それでも、このスレがあったことは必ず残る。wikiという記録、そして私たちの思い出に」
男「………」
女「行きましょう。次のスレに。ありがとう、それだけを残して……」
男「これで500KB取れなかったら相当かっこ悪いな」
女「それは言わない約束よ」

新ジャンル「500」



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