【総合】新ジャンルでエロパロpart6【混沌】at EROPARO
【総合】新ジャンルでエロパロpart6【混沌】 - 暇つぶし2ch350:にんじん畑でつかまえて(13/17)
08/06/26 23:28:34 d1p7Y7pA
人間のコソ泥ならまだわかる。ピーターの服や家具はキャロット家から追い出されたとはいえ上等なものだし、
写真だって貴重品だ。売れば結構な値がつくだろう。
……なんで、魔獣が?

「恐ろしく逃げ足の速いワーラビットです。自分をからかうのを生きがいにしている、
 悪魔のようなようなヤツです!きっと盗んだものをいいようにして、嘲笑っているに違いない!」
「悪魔……ですか。ぞっとしませんね」

つい最近悪魔に憑り殺されかけたジョンが口をへの字に曲げる。
しかし、魔獣と人間の諍い事なら黙ってはおけない。ローラはヒロトに目を合わせた。
ヒロトがこくんと頷き、ローラも頷き返す。

「――で、その魔獣はどこに住んでいるんです?」



畑からしばらく歩き、森にほど近いそこに、彼女の住んでいる穴はあった。
自分で掘ったのだというそこは入り口ににドアが取り付けてあり、中は小さな部屋となっている。
いかんせん地中であるため窓はないものの、ベッド、机、棚、箪笥まで用意してあり、
なかなか住み心地はよさそうだ。

「ほほう、ここが貴様の住処というわけだ」
「うう……住処、じゃなくて家って言って欲しいですう、魔王サマ」

部屋をぐるりと見回すリュー。
その隣では結局パチってきた野菜をぼりぼり齧るリオル。

「うぇ~、苦ッ。ねー、肉ないの肉」
「ご、ごめんなさい。お肉はないんですぅ、火龍サマ」
「馬鹿者リオル。こやつは草食。野菜しか喰わんベジタリアンというヤツだ。……あれ?魚がある」
「川から釣ってきて干物にしてあるんですぅ。ウサギだからって野菜ばっかり食べてるわけじゃないですよぅ」
「………チッ」
「え!?何ですかぁその舌打ち!?ごめんなさぁい!ベジタリアンじゃなくてごめんなさぁい!!」

ウサギ少女、アリス・ワーラビット・ネザーランドはぺこぺこ謝った。
あのあと気絶から目覚めたアリスは目の前にリューたちがいないことに気付いて夢だったんですねぇ~と安心し、
振り返ったら引っこ抜いたにんじんを物色しているリューたちを発見して再び気絶し、
さらに目覚めた後に無理矢理この洞窟・アリス邸に案内させられたのだ。

しかしリューとリオル。この二人、まったくいい客人とは言い難い。
なにせアリスはヌシでもない唯のワーラビットであり、一方相手は魔王と火龍。種族のレベルが違いすぎる。
魔族とは混沌から生まれし種族の総称だ。人間のように貴族と平民でも裸になれば同じ人間というわけではなく、
力の強い種族と弱い種族で露骨に差が生まれる。それでも知能すらない最下級の魔獣なら、愚かな鈍感ゆえに
上の者の『存在』に何のプレッシャーも感じないかも知れないが、残念ながらアリスはそうではなく、
普通の人間並の魔力しかない癖にレベルの差は感じ取れるという哀しい下級魔族だった。
そして目の前の二人は上級種『ドラゴン』と頂点たる『魔王』。
簡単に言えば、『死ね』と命じられても二つ返事で死ななきゃならないくらいのレベルの差がある。
これが良い客人になるわけがなく、さっきからの傍若無人っぷりで済んでいることが奇跡なのかも知れなかった。

――と、いっても、リューやリオルはヒロトたちとの旅でだいぶ考え方が『人間っぽくなって』丸くなった
魔王と火龍であり、いきなり無茶な命令なんかするわけがないのだが(傍若無人は二人の素である)。
………それを、アリスが知っているかと言うと、まぁ答えは言うまでもないだろう。

351:にんじん畑でつかまえて(14/17)
08/06/26 23:29:12 d1p7Y7pA
 
「そっかー、肉、ないのかー」

リオルは少し残念そうにしている。小腹がすいたのだろう。肉好きのリオルは取っておいたジャーキーを
食べようかなと思い、しかし今食べてしまうと『おやつのジャーキーを少しずつ取っておいて、
まとめてお腹いっぱいジャーキーを食べる大作戦』がまた遠のくなとも思った。
そしてふと、戸棚から何か取り出しているアリスに声をかける。

「アリスちゃん、なにやってんの?」

アリスが持っているのは黒い――火打ち石?
かきんかきんと打ち付けることによって火花が散り、火を熾すことができるアレだ。
もっとも現代では火の魔印を刻んだ『ジッポストーン』が普及しているため時代遅れのものとなっているが。
………しかし何故火打石?

「アリスちゃんなにやってんの!?」
「火龍サマに召し上がっていただくお肉は残念ながら持ち合わせておりません。
 ですから不肖、我が身、アリスめの身体をこんがりとぉ――!」
「待った!いいから!そんなんいいから!!」

くわッ!と手にした黒石を振り下ろそうとするアリスに飛び掛り、慌てて羽交い絞めにする。

「止めないでくださいぃ!アリスは月に!お月さまに逝くんですぅぅ!!」
「無理ー!無理だから!人身御供っても月面のクレーターが見せる影模様にはなれません!!」
「……リオル落ち着け。何を言っているのかまるでわからんぞ」

どったんばったんと暴れる二人から離れて、リューが顔をしかめた。
リューの細腕では獣人であるアリスと火龍の化身であるリオルを押さえつけるなど……実は簡単にできたりする。
筋力はないが魔力なら並ぶものなし、魔王リュリルライアは適当に緊縛の魔法でもかけて二人から
自由を奪ってしまおうか、でもこんなくだらないことにわざわざ我が動かなければならないというのもなー、
と面倒くさそうに溜息をついた。

「アリスはー!生まれ変わったらまた貴方と出逢いたいー!」

どんがらがっしゃ、と棚の上に立てかけてあった何かが崩れる。
それを何気なくひょいと拾い上げて、リューは眉をひそめた。

「……なんだこれ」

額縁に飾られた、恐ろしく精密な絵……いや、前に見たことがある。
写真とかいう人間が編み出した技術で写し出した『画像』だ。
一人の青年の姿が写っている。背景はどこかの観光地だろうか、
空色のチョッキに赤い蝶ネクタイの青年が恰好をつけて剣を掲げている――誰だこいつ。

「あー!ま、魔王サマー!駄目ですぅ、それは!」

気付いたアリスが声をあげるも、リオルに羽交い絞めにされているので動けない。
リューは小首を傾げ、きょろきょろと再び部屋の中を見渡した。
……そういえば、とひとつ疑問を抱いた。この部屋の装い。獣人の住処にしては異様に豪華だ。
戸棚や机は細かい模様細工が彫ってある高級品だし、羽ペンには銀の装飾まで施してあった。
ベッドに掛かっている毛布――いや羽毛布団は雲のようにふかふかしていそうで、
どんな宿屋にもそんな柔らかな寝床はないだろうという程。
そういえばアリスが腰にぶら下げている金時計だって見るからに高価そうなシロモノである。
っていうかなんでこんな僻地の魔獣が時計なんか持っているんだ?
そこでリューは気付いた。
写真の青年の服装と、アリスのそれが同じものだということに。


352:にんじん畑でつかまえて(15/17)
08/06/26 23:29:51 d1p7Y7pA
「なになに?どうしたんです、リュリルライア様!」

………………………。
なにやら目を輝かせているリオルとは対照的に心が冷えていくのを自覚する。
この女、まさか――。

「あ、あうぅ……」
「………この男を殺して装備を奪ったか。なるほど?魔獣の本性というわけだ。いやいやいや、構わんよ。
 ここで、魔王たる我が、貴様を糾弾することはできぬということはわかっているさ。
 だが――あいにくと今の我はある愚かな勇者と行動を共にしている身でな。
 ヤツの理想と真正面から対立するような貴様の所業を、――見過ごすわけにはいかんのだ!!」
「……え、ええぇっ!?」

リューの瞳がカッと見開く。そしてゴオッ!!と魔力の奔流が空気を掻き乱し、大風を巻き起こした。
さながら紅の海が波立ち逆巻き、全てを飲み込む時化となるように。先程アリスをからかったものなど
比べ物にならない。魔力の波動にただ居るだけで血潮が逆流し、皮膚を食い破って吹き出しそう。
狭い部屋の豪奢な家具が吹き飛ばされ、壁に押さえつけられてミシミシと嫌な音を立てた。
たまらず箪笥は衣類を吐き出し、戸棚もまた扉を開いて中のものをぶちまける。
台風さながらのリューの怒りの波動に、たまらず少女二人は悲鳴をあげる。

「ちょ、リュリルライア様!落ち着いて!抑えて下さい!」
「誤解っ、誤解ですぅ!あたしはピーターを殺してませぇん!!」

アリスの叫び声に、リューはピタリと魔力の放出――これだけの威力があって、未だ『放出しただけ』
――をやめた。どさどさと壁に縫い付けられていたアリス、そしてとばっちりのリオルが落ちてくる。

「痛た……もう、リュリルライア様ったら短気なんだから………」
「では何か。譲り受けた、貰いものだというのか?」

お尻をさすっているリオルをさりげなく無視して、リューはジト目でアリスを睨みつける。

「……あぅ、いえ、それは……違いますけど」
「なら、やはり『ニア 殺してでも奪い取る』ったのか!」
「違いますったら!なんでそう極端なんですかぁ!?」
「アリスちゃん、リュリルライア様はいつもだいたいこんな感じだよ」
「リオルは黙れ」

魔王の一瞥でリオルを黙らせてから、リューはアリスにずいと迫った。
アリスはこめかみから冷や汗を流しながら、思い切り目を逸らす。が、そこは魔王とワーラビットの
哀しいまでの種族的階級差。重圧に耐え切れるわけもなく、がくりと観念したように肩を落とす。

「………畑の向こうにピーターっていう人間の屋敷があるんですけどぉ」
「知っておる」
「………そこから、盗んできましたぁ」
「何故」
「………綺麗だし。便利だったからですぅ」

るるると泣きながら耳まで垂れてるアリスだが、リューは懐疑的な目でじろじろアリスを眺め回している。
そこへ、それまでお尻へのダメージを癒していたリオルがあっけらかんと言った。

「えー、ウッソだぁ」


353:にんじん畑でつかまえて(16/17)
08/06/26 23:30:44 d1p7Y7pA
え、とアリスが顔を上げる。リオルは足元に落ちていた写真――さっきの立てかけてあったものとは違う、
戸棚の中身がバラ撒かれた拍子に飛び出していたものだ――を拾い上げた。
ピーター。
これも、ピーター。
それも、ピーター。

「この写真全部同じ人のじゃん。ええと、この人ピーター・ベンジャミン・キャロット、でしょ?」
「あぅ……」

そこへ、何かを察したらしいリューがフムと頷く。

「……なるほど、そういうことか」

あると便利だった。豪華だったから。それもあるだろう。しかし、芯の部分は、違う。
それでは同じ人間の写真を何枚も持っている理由にはならない。そもそも、写真やペンや、時計――こんなもの、
盗んだってワーラビットであるアリスには何の使い道もないだろうに。
ならば答えはひとつ。アリスはこれが必要だから盗んだのではない。
これを手元に置いておきたかったから盗んだのだ。
つまりそれは、意中の男と常に一緒にいたいがために彼の持ち物を持ち出してしまうという
乙女ちっくハートの成せる行動。そう、アリスは――。

「アリス!貴様、ピーター・ベンジャミン・キャロットに恋をしているなッ!!」
「ギクぅッッ!!」

リューがビシィッ!と指を突きつけると、アリスは面白いくらいに肩を大きく跳ねさせた。
その顔が見る見るうちに真っ赤に染まる。わたわたと手を無意味に動かしたあと、
ふわふわで真っ白な耳まで赤くして、アリスはぷいと横を向いた。

「そ……そんなんじゃないですぅ」
「「ウソつけっっ!!」」

そのリアクションで十二分。二人のツッコミに部屋の端まで追い詰められたアリスは、しばらくうぅー、
とか唸っていたが、どうせ魔王の追求にウソはつけない。アリスはとうとう、両手両膝をついて告白した。

「その通りですぅ。わたしは……アリスは、人間をスキになっちゃったんですぅ」
「やはりな」
「わぁい」

フフンと何故か勝ち誇ったような顔をするリューと、これまた何故か嬉しそうに顔をほころばせるリオル。
アリスは目いっぱいに涙を浮かべると、悲痛なまでの声で叫んだ。

「魔族にあるまじきこととは存じておりますぅ……お叱りは何なりと受けますぅ!
 でもでも、ピーターは、あの人は何にも知らないんですぅ!ただ、わたしが勝手にスキになって、
 遠くから見てただけなんですぅ!お願いしますぅ!ピーターには手を出さないでくださいぃ!!」

魔王リュリルライアと灼炎龍リオルは――、

え、と顔を空白にさせた。

そしてこそこそと二人顔を寄せ合うと、秘密会議モードに突入する。

「………おいリオル。人間に恋をするのは魔族的にタブーだったのか?」
「さあ……。でもおとぎ話だと大抵悲恋に終わるっぽいですけど。確かに」
「ああ、鶴とか狐とかフタクチとかか?ふん、そんなものがどうした。ヒロトはそんなんじゃないからな!」
「ジョンだってそうですよぅ。ようは男と女の覚悟次第……これは人間どうしでもそうじゃないですかね?」

354:にんじん畑でつかまえて(17/17)
08/06/26 23:31:36 d1p7Y7pA
「であろう。だいたい我、っていうか魔王的にも自由恋愛を禁じた覚えはないし」
「じゃ、アリスちゃんは?」
「無論OK。オールOK」
「っていうかあたしらがブーブー言える立場じゃないですもんねぇ」
「ん、まぁな」

あっはっはと笑いあう魔王と火龍。アリスとしてはかなり不安な光景である。

「あ、あのぅ……お叱りは」

おそるおそる声をかけてみるアリスを振り返って、リューはぱたぱたと手を振った。

「ああ、そんなもん、いい。いい」
「はぁ?」
「それよりアリス。貴様、遠くから見ていただけと言ったな」

含みのある顔ではあるが、アリスをまっすぐに見つめる魔王リュー。アリスはまたもびくっ、
と竦みあがるが――その視線が威圧的なものでないことに気が付いて、かえって混乱する。

確かに言った。そして事実だ。アリスはもともとこの土地に棲んでいた魔獣であり、
ピーターを知ったのは彼の屋敷が建てられてからのことである。こんな僻地に家を建てるのも酔狂だと思い
こっそり様子を伺っていたら、ゴーレムを引き連れてきたのでとても驚いたのを覚えている。
もしや自分を討ちにきたのでは、しかし自分なんかやっつけたって何の得にもならないよぅ、
とびくびくしていたら、何故かゴーレムたちは畑を耕し始めたのだった。
それまで怖がっていた気恥ずかしさもあり、よくも驚かせたな、と毎日睨みつけるように様子を伺って――
で、気が付いたらそれがとても楽しみになっていた。
あとはリューたちの思った通り。家具や小物を盗んだのはピーターといつも一緒にいられるような気がするから。
畑の野菜を盗んだり、落とし穴を掘ったりしてイタズラするのは自分がいるというアピールのためである。
直接会ったり話したりしたことはない。向こうはアリスの名前も知らないだろう。

それは寂しいとは思うけど――別に、アリスは、それ以上は――。

「甘いッッッ!!」
「ひぃ!?」

ちょぴりセンチメンタルになっていたアリスを、腕組みで仁王立ちのリューが吹き飛ばした。
あまりの迫力に尻餅をついたままわたわたと後ろにさがろうとするアリス。しかし背中に、どん、と何かが
ぶつかり、それ以上の後退を許さない。見上げると――そこにはやはり、腕組みで仁王立ちのリオルが。

「魔族の女の子と人間の男の子の恋とあらば!あたしたちは見逃すわけにはいかないっての!!」
「その通り!!」

囲まれた。もう逃げられない。
アリスは異様なテンションの二人に迫られてガタガタ震えた。
頼むから。頼みますから。余計なことはしないでくださいぃ―――とは、言えない。
この二人の少女は上位種。それも魔王と火龍、ワーラビットなんぞメではない絶対的種族階級の支配者なのだ。
はっきり言って、『死ね』と命じられても二つ返事で死ななきゃならないくらいのレベルの差が――。

「往くぞリオル!アリスの恋を成就させるために!!」
「サー!イエッサー!!」


……………こうして、『変人』ピーターと『白兎』アリスの恋は。
半ば無理矢理に、始まることになるのでしあ。



              にんじん畑でつかまえて~新ジャンル「うさぎ」英雄伝~ 続



355:名無しさん@ピンキー
08/06/27 00:01:11 qZyLCKji
魔王キターwww
新シリーズはドタバタなラブコメですか
続きwktk

356:名無しさん@ピンキー
08/06/27 11:38:38 HRXr9Qo1
男「女ァ、そのウンコを爆弾にしたなッ!」
女「んー、どうだったかな?したかもしれないし、してないかもしれない」
男「ちゃんと質問に答えろォー!」
女「好きすぎず、かと言って嫌いでもなく!このポジションがいいのだ!」
男「ちくしょうッ!」
女「男くんと友達以上恋人未満・・・ちょうど幼馴染みたいな関係が私の心に平穏をもたらしてくれる!」
女「進展もせず、かと言って終わるわけでもなく!」
男「なら・・・なら、俺を女友さんとのデートに行かせてくれ!時間がないんだァー!」
女「このまま忠告に従っておとなしくしてるもよし・・・ウンコまみれになって、家に帰らなければならなくなっても」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

男「くしょう!ちくしょう!強行突破だッ!押させないぞ!」
女「いいや、限界だ!押すね!」

カチッ ドッグオオーーーーーン

男「ぶべらっ!」
女「これで今夜もグッスリ寝られる♪」

新ジャンル「心の平穏を求める女の子」

357:名無しさん@ピンキー
08/06/28 23:49:45 VQ7qhxQ1
友「お、ありゃあ女さんじゃねーか。隣にいるのは……男?おーい」

女「キュキュッキュッキュキュキュキュ♪キュキュッキュキュッキュ♪HEY!YO!友くんおはYO!YO!
  今日も朝からイイおten key!キミは毎日めっちゃ元気ィ!HEY!YO!」
男「おはよ、友」
友「女さん、なんかいつもにも増してHIP☆HOP育ちだな。なんかいいことでもあったのか?」
男「あ、バカ!」
友「?」

女「メーン!」

シュルルルルルル

友「アッー!女さんの鞄(学園指定)からッ!」
男「一枚のレコードが飛び出したーッ!!」

シュルルッ!ジャキーン!

友「そして女さんがいつも駅弁売りの人みたいなスタイルで持ち歩いているターンテーブルにON!!」
男「あのレコードはッ!まさか――ッッ!!」

 『キュキュキュッ♪キュッキュキュッキュ♪』
 『俺……女さんのことが好きなんだ!』『好き』『好き』『なんだ』『好』『好きなんだ!』

男「アッー!!やっぱり昨日の俺の告白だァ――ッッ!!」
友「お前ー!っていうかだから女さんは上機嫌だったのかーッッ!!」

女「YEAH!!」


旧ジャンル「DJ女」

358:名無しさん@ピンキー
08/06/29 00:25:20 3NqaqYHy
 
男 「なあ、じいさん。あんたは結局、何が欲しかったんだい?」
老人「………」
男 「金ならいくらでもあったろう?いくつも会社を経営して、そのどれもが巨大企業に成長した。
   妬む人もいなくなるくらいに、あんたは『成功』したんだ。あんたが望めば、
 それこそ国ひとつだって手に入ったはず。………なのに」
老人「………」
男 「あんたは結局、企業も、家族も、何もかも手放して……こんな貧乏人に最期を看取られている。
   なあ、金があればなんでも買えるんじゃないのかよ。俺は……それを信じて田舎から出てきたんだ」
老人「……はっ、ははは」
男 「……おかしいかい?」
老人「――ああ、おかしいね。まるで……昔の儂を見ているようだ」
男 「………昔の、あんた?俺が?」
老人「ああ。儂も坊主くらいの頃はそうだったさ。金、金、金……金さえあえば、何でもできる。手に入る……。
   そう、思っておったよ」
男 「違うのか?」
老人「――ああ。違ったよ」
男 「でも、金さえあればいくらでも食える。でかい家にも住めるし、時間だって、愛だって買える。
   そうだろう?違うとは言わせないぜ。あんたが世の中の贅沢の限りを尽くしたってことくらい、
   この国の人間なら誰だって知ってるんだ」
老人「贅沢……か」
男 「………」
老人「なあ、坊主。そんなもの、所詮、金があれば買えるものでしかないんだよ。
   ああ、儂は確かに、贅沢をしてきた。それだけの金があったからなぁ。
   だが、それが儂のものになったことなど一度もなかったよ。儂だから贅沢を許されたんじゃない。
   坊主、お前さんに同じだけの金があったなら、儂と同じ贅沢ができただろうさ」
男 「………」
老人「――そうさ。金で買えるものなど、その程度……。坊主。儂が、儂が本当に欲しかったものは……。
   うっ!ごほっ!ごほっ!!」
男 「じいさん!しっかりしろよ!」
老人「ふ、はは。坊主。金で変えないものはこの世に確かに存在するよ。それは――」
男 「それは……?」
老人「ごほっ!ごほっ!――だ」
男 「じいさん!じいさん!」
老人「ははは。は、はは。ああ、欲しかった、なぁ――」
男 「じいさん!じいさ……!」
老人「―――……」
男 「………………」

男 「……じいさん……。そりゃあ、金じゃ買えねぇわ……」


旧ジャンル「幼馴染み」


359:名無しさん@ピンキー
08/06/29 00:41:14 3NqaqYHy
男「粉塵爆発ってさぁ……」
女「え?何?」
男「粉塵爆発」
女「なにそれ?」
男「俺もよく知らないけど」
女「うん」
男「なんか、あるじゃん。粉」
女「粉?」
男「粉」
女「粉が?」
男「ぶぁーって、なるじゃん」
女「あー」
男「黒板消しとか」
女「黒板けしとか?」
男「うん」
女「それで?」
男「そこに火ィ付けると」
女「どうなるの?」
男「爆発する」
女「嘘だぁ」
男「いや、マジで」
女「チョークの粉?」
男「校舎半壊」
女「怖ぁ」
男「それが、粉塵爆発」
女「へー」
男「ん、でさ」
女「うん」
男「新しいオナホールってさ、付いてるじゃん」
女「………何が?」
男「粉」
女「そうなの?」
男「うん」
女「へー」
男「爆発しねぇのかな」
女「粉塵爆発?」
男「粉塵爆発」
女「吹き飛ぶオナホール」
男「焼け焦げたオナホール」
女「シュール」
男「な」


新ジャンル「粉塵爆発」


360:名無しさん@ピンキー
08/06/29 01:53:02 CTxU5czb
>>358
全米(ぜんよね)が泣いた

361:名無しさん@ピンキー
08/06/29 12:18:43 w6z2brld
新醤油学園高等部における第三会議室。
そこは一般教員及び生徒の立ち入りを禁止する、いわゆる聖域。
その内部とは?

「姉さん、いくらなんでもベッドを学園内に持ち込むのは…」
「構わん。私がルールを作る立場だし、第一これは自腹で購入したしな」
「…………」

第三会議室の中は巨大なベッド、半透明のガラスで仕切られたシャワー室に、栄養剤の詰まった
冷蔵庫に各種18禁な玩具、妖しい衣類。
どう見てもラブホテルですありが(ry

「もうすぐだ、もうすぐで青山春樹が…!!」
校長、千所玲の興奮度合いは相当の様だ。
『いいのか…これで?』
反対に妹、舞の表情は冴えない。
『私が望んだのは…』


中等部校舎の廊下。そこに、一人の少年がうつ向きかげんに歩いている。
「参ったなぁ…これ以上給料下がったら、母さんに仕送が…」
「どうしたネ、マイダーリン?」
少年に声を掛けた少女が一人。
「レーファ!?…いやなんでもない…」
「嘘ネ!!顔見ればすぐ分かるヨ…ワタシじゃ役立てないカ?」
「…ううん。でも貴子様から『給料ダウン』って言われちゃって…」
「?訳を話すネ」
「うん…」
少年は自分の相棒(兼恋人)に経緯を語る。
「成程ネ…貴子サマがそんな事ヲ」
「うん…」
レーファとしては恋人の役に立ちたい所だが。
『…陽子サマの信頼を裏切るのは…駄目ネ』

362:名無しさん@ピンキー
08/06/29 12:20:08 w6z2brld
桜吹雪女学園校長室。
一年華組遠山理菜は授業中に呼び出され、この校長室へと通された。
呼び出したのは、校長青山夏実、幼馴染み春樹の母親。しかし…
「………」
いつもとは違い、沈黙を保ったままの夏実に理菜は戸惑うばかり。
『…どうしたのかしら?おばさまが黙ってるなんて…』
「…理菜ちゃん。おばさまは禁止よ」

ギリギリ

「あだだだ!!ひ、人のモノローグ読まないで!!」

必殺アイアンクローから理菜を解放して、夏実は語る。
「さっき、新醤油の生徒会長さんから電話があったのよ」
「!!……豆田姉が!?」
「そう。…陽子ちゃん」
「ん?でも変ですね。豆田姉はお馬鹿ですけど、決して無能じゃ…」
「どうやら『仔猫ちゃん』が動き出したの」
『仔猫ちゃん』。聞いた限りでは、可愛らしい印象の言葉だが。
「!!!!新醤油学園校長がですか!!」
「そう…千所さんが」

実はこの二人、新醤油学園校長の千所玲にはそれぞれ因縁がある。
夏実は夫を狙われ、理菜は入学直前に新醤油学園を追われた。
「…ターゲットは春樹みたい、陽子ちゃんの話によれば」
「!!…ぶち殺す!!」
理菜の怒り、いや殺意は燃え上がる。
「…本来なら私一人で乗り込みたい所だけど……理菜ちゃんにも借りがあるでしょ、彼女に」
「当たり前です!!」
「では…」
「行きましょう!!新醤油学園へ!!」

新醤油学園 青春編
「出撃!!桜吹雪女学園」

363:名無しさん@ピンキー
08/06/29 12:23:13 w6z2brld
校内をあちこち探し回るルカ。
もっともサボりは後で春樹に怒られるので、休み時間のみの探索。
これでははかどらない事この上ない。
「ハルのばかぁ…一体どこ行っちゃったの?」
「るかさーん!!」
「あ、真智ちゃん…ってお菓子食べながら歩くなんて……」
真智子の口の回りには、様々なお菓子の食べかすが付着している。
「どんだけ食べたのよ…あーあ、こんなに口の周り汚して(ふきふき)」
「ありがとです。(もきゅもきゅ)でもしゅうちゅうして(もきゅ)さがすとおなかが…」
ルカとの会話中も食べ続ける真智子と呆れた顔で見つめるルカ。
すると……

『あにもえー♪すきすきまいぶらざー♪』

「な、なんですか!?」
「あ、メール。マナーモードにするの忘れてた」
「ちゃくしんおんがきになります!!」
「ま、まぁいいじゃ……豆田姉からだ」
「まめあね?」
「うん。えっ…『春樹が狙われ…(略)』って、どうゆーことなの!?」
「わ、わたしにも」
事情の分からない二人はうろたえるばかり。
「夕圭ちゃんならハル達の居場所が分かるみたいだけど…」
「ゆかさんとごうりゅうです!!」




364:名無しさん@ピンキー
08/06/29 12:24:28 w6z2brld
「…麻里愛、話ってなんなのかな?」
「夕圭にゃん、誰もいないし何時もの喋り方でいいんじゃないの?」
夕圭はとある建物の屋上で同僚である麻里愛と話していた。
「…ううん。決めたからもう……」
「?」
麻里愛の顔に疑問の色が浮かぶが、すぐにある事を悟り愕然とする。
「ま、まさか!?」
「うん…テンメンジャンでいるより、黒田夕圭として春樹くんに向き合いたいから…」
「で、でも!!四天王脱退って!!あなた奨学生としてなんだから!!」
「…学校は辞めて働くつもりなの。これ以上青山家に迷惑を…」

麻里愛は夕圭の意思の堅さを感じとったが、呼び出した本題で食い下がる。
「こ、今回は静観してなよ。トウバンジャンだってむざむざ…」
「ううん。陽子だけでは校長には勝てない。私と貴子ちゃんがいて勝てるかどうか…」
「わ、私も!!」
「駄目。麻里愛までいなくなったら、学園の守りはどうなるの?」
「………」
麻里愛は悲しげに溜め息をつく。
「ふぅ……ならひとつしか方法はないね」
「えっ?」
「…コード・グランドクロスよ」


365:名無しさん@ピンキー
08/06/29 12:26:41 w6z2brld
コード・グランドクロスとは?

現四天王結成時、痴女クール校長は四人を前にこう告げた。
『諸君らは私の配下となり働いて貰う、忠誠の見返りに十分な報酬と学園内での安全は保証しよう』
『だが、私の意に反する場合にも四天王の意思統一があれば、特権として覆す権利も与えよう』
『但し、その時は身を持って私に捧げる事も忘れないで貰おう』

つまり、校長の決定を覆すべく四天王の貞操を代償とする、ある意味諸刃の剣たる最強のカード。
なお、名前の由来は学園創設時に遡るらしいが、そこまでは彼女達も知らない。


「……なんでよ…?」
夕圭の声が震える。
「なんでそこまでしようなんて言うのよ!!」
「ん?当然でしょ」
麻里愛は気楽げに言い放つ、ただし若干の演技力を要して。
「私達、同志でライバルで戦友じゃない。仮に私が夕圭にゃんの立場なら、夕圭にゃん達も…」
「馬鹿……!!」
泣き出した夕圭を麻里愛は優しく抱きとめた。

366:名無しさん@ピンキー
08/06/29 12:30:34 w6z2brld
「…んだありゃ?夕圭と麻里愛じゃねーか?」
実妹貴子と対決するべく、部室棟の屋上へとやって来た陽子。
そこで彼女が目にしたのは。


「夕圭が…震えてる!?」
そう、夕圭は身を震えさせて泣いていたのだが。
「…!!…そうか…麻里愛に絞め技食らって!!」
相変わらずの早合点ぶりでそう判断した陽子。死角から一気に近付くと、

ザクッ

「ぎゃんっ!!」
「ま、麻里愛!?」

腹部への一撃で麻里愛を気絶させてしまった。

「ったく、危なかったな夕圭。麻里愛が校長に付くなんて…ってその握り締めた拳はなんd?」
「くぅおのぉ……お馬鹿ずん胴パ○パ○えぐれ胸!!!!(ドムッ)」
「ぐふぅっ!!」


気絶した二人の少女を前に夕圭は決意する。
『どうせ一度は身を捨てる覚悟はしたんだ』
『陽子を連れていき、油断した校長を倒し…あの人に全てを打ち明けよう…』


「…どこにもゆかさんいないですね…」
「携帯にかけてみよっ」

『もしもし?』
『夕圭ちゃん、今どこ?ちょっと…』
『ごめんね、今無理なんだ。また後で…』
『ちょ、ちょっと!!じゃあG08ポイントってどこにあるの!?』
『中等部の四階、空き教室の横よ。じゃあ』
夕圭の電話はそこで切れ、無機質な音が鳴るだけ。
「…でもさ、変な場所の示し方するのね。生徒会は」
「どうでもいいですよ、はるくんがいるなら!!」
「うん、行こ。真智ちゃん!!」


367:名無しさん@ピンキー
08/06/29 12:33:00 w6z2brld
真智子達が中等部へと向かう10分程前のこと…


授業を聞き流しつつも豆田貴子はPCを使い、春樹と姉の居所を探っていた。
勿論級友と教師は気付いてはいたが、何も言わない。
『豆田関わるべからず』
それが中等部一貫しての貴子への対応だった。
もっとも貴子は気にすることもなく、自分の作業を続行する。

『…馬鹿姉が春樹さんを連れて行く場所、それは高等部からはそう離れていない筈』
『しかし、チーマージャン配下の偵察隊には発見されない所…』
『…となればある地位以上の人間が知っている場所…隠し部屋…』
『…電力供給がいつも以上の所に二人はいる…』

ブゥーンブゥーン…

マナーモード中の貴子の携帯が振動する。

『メール…居所が?……いや…お姉ちゃん!?』

姉陽子からのメール。
『あたしは部室棟の屋上で待つ!!捕まえられるなら捕まえてみな!!』

しかし貴子は裏を読む。
『恐らく真実…でも逃走を考えれば、春樹さんとは別行動…ならば春樹さんを……!!』


そわそわと落ち着かない風で部屋を見回す春樹。
「しっかし…部屋もそうだが、この部屋の存在を知ってる豆田って一体…」
思わず『豆田』の名前を口に出した途端、春樹の顔が赤く染まる。
「豆田ともキスしちゃったよ…俺どうすればいいのか…」

ガチャガチャ…ピー

突然物音が部屋の外で起こり、扉の解錠が行われる。
「…豆田か?無事なのか?」
「………春樹さん」
「た、貴子ちゃん!?」
突然この部屋に現れた貴子に驚く春樹。
「ど、どうして…?」
「…………」
「あ、ああ。豆田が教えたのか」
「……違う!!」


368:名無しさん@ピンキー
08/06/29 12:36:05 w6z2brld
語気を強める貴子。
「えっ?じ、じゃあどうやって…」
「…春樹さんがどこに行っても私は……見つけます……私…の大切な人、だから…」
「貴子ちゃん…」
しばし無言になる二人。しかし…

シュルルル…

貴子が胸のネクタイをほどき、ブレザーを脱ぐ。
「ど、どうしたのさ!?」
春樹の問いかけには答えないまま、続いて貴子はシャツのボタンを外していく。
「た、貴子ちゃん!?」
「……春樹さんは…む、胸の小さい…子は嫌い……ですか?」
「へっ!?そ、そんな…」
「…答えて……」
「い、いや嫌いじゃ……ない…けど」
「…良かった」
答えにある程度の満足が得られたのか、貴子は滅多に見せない微笑を浮かべる。
何度見てもドキリとする春樹だった。
『か、可愛い笑顔…』
その間にも貴子の手は止まる事は無く。

スーッ……

ホックを外されたスカートが、白く細い腿を滑り落ちた。

「だ、駄目だよ…」
「…私を春樹さんだけ…のものに…して…」
正面からゆっくりと近付く貴子を、春樹はボンヤリと見つめるのみ。

『春樹さんは…頂いていく……ね』


新醤油学園 青春編
「貴子強襲」


369:名無しさん@ピンキー
08/06/29 17:55:23 hxCWlt7x
醤油学園の女の子の積極的姿勢、俺嫌いじゃないぜ

370:名無しさん@ピンキー
08/07/01 00:32:26 eimnN/ii
ああ、やっと追い付いた、読むのが..最近ホント規制が多くって…
>>338-354
相変わらずのテンポの良さでGJ。
つかリューとリオルがラブチェリースになっとる(w
あのー、念写のカメラはわりと普及してるって事いいんですよね?
魔術師はあまり使わないけど、ってニュアンスで。

371:名無しさん@ピンキー
08/07/01 02:18:28 eimnN/ii
女「…以上で本日の会議を終わります、みなさん、ご苦労様でした…書記は議事録を」

男「春日…これ」
女「会長。」
男「会長、議事録…」
女「『会長、議事録をもってきました』くらい言いなさい。」
男「う、」
女「返事は『はい』!」
男「はい…」

生徒1「会長キツいなぁ相変わらず」
生徒2「春日て普段誰にも人当たり良くってそんなにキツイ感じじゃないのに、あいつにだけキツいのな」
生徒1「まぁな、あの眉目秀麗、成績優秀で才気煥発、飛耳長目な才色兼備で謹厳実直、不撓不屈でありながら
性格は純情可憐、温厚篤実にして春風駘蕩、洒洒楽々、でも外柔内剛の人呼んで四文字熟語オンパレード、
マスターグレードの春日にしてみりゃあの絵に書いた凡俗エアーマンの登小路が身内ってのは流石にイライラ
来るんじゃ無いのか?」

生徒2「え?身内って、親戚?」
女生徒「そだよ」
生徒1「うわ、なんだよ静、来てたか」
女生徒「えー…迎えにきたのにー…遅いしー」
生徒1「遅いって、普段のお前の方がどんだけトロいと思ってんだよw。」
女生徒「えー…なにそれー…」
生徒2「ハイハイいつもながら仲のイイこって…つか御所、それホントなんか」
女生徒「うん…一緒に住んでるって…」
生徒2「えー!マジかよ!あんな美少女と一緒って」
女生徒「…春日さんチに…居候?って感じな…」
生徒1「立場的に家でも肩身狭そうだな」
生徒2「春日といえども帰ってもあれじゃ辛いかなぁ…」
生徒1「家でも家事とかやらされてそうじゃないかw」
生徒2「うわーツレー(笑」


男「…ただいま」
女「おかえりなさいまし!旦那様!御飯に致しますか、それともお風呂?それとも…(///)ポ」
男「…」
女「旦那様?この乃鹿、妻として何か粗相を致しましたでしょうか…」

男「妻って…勝手に親同士が決めた事だし」

女「いいえ!乃鹿はずっと興(はじめ)様の事をお慕い申しております、外では登小路家の当主として相応しく
なって頂くために厳しく教師の様に、家では一日の疲れを優しく癒す妻として一所懸命に御使えしようと…
今日も心を鬼にしてに興様に辛くあたりましたが、そう言いながら乃鹿は興様のことを思うと…
想うと…乃鹿のそそは…その…恥ずかしい事になって…(///)もう早く慰めていただきたいと…
なのに興様は一向に素振りも無く…乃鹿はいつになったら女にしていただけるのかと…」

男「乃鹿…あのさ…」
女「はい!なんでございましょう、旦那様!」
男「とりあえず何か着てくれないか…」
女「あらぁ着てますわ、妻の証しの首輪とエプロン!」

新ジャンル「内柔外剛(違)」


女「春日 乃鹿(かすがのじか)」
男「登小路 興(のぼりこうじはじめ)」


372:名無しさん@ピンキー
08/07/01 11:05:32 FQcDahfQ
男「内気ぃ悪いけどシャーペン貸してくれ」

内気「しゃ、シャーペンは…ないです」

男「じゃあ他に書く物ある?」

内気「ま…まごの手~…なんて」

男「ギャグはいいからその鉛筆貸しな」

内気(渾身の出来なのに…)


373:名無しさん@ピンキー
08/07/01 16:51:38 FQcDahfQ
TV『台風8号は勢力を強め〇〇県に移動
全壊した家は二十数件にも及び…』


男「昨日のニュースみたか?屋根が吹き飛ばされた家もあったんだって」

友「見た見た、家畜の鶏とかも飛んでったらしいぜ」

内気「屋根が、飛んだ…やぁねぇ~」



友「あれ反応したほうがいい?」

男「反応したら頭に乗るからほっとけ」


内気(今回のは…ちょっと古かった)

374:名無しさん@ピンキー
08/07/01 17:03:16 FQcDahfQ
先生「今日はエロパロ高校の見学です、みんな静かにしましょうね」

幼児「はーい」


男「懐かしいなー」

友「俺あそこの幼稚園卒業だぜ」

男「マジで?あの幼稚園って元貴族や王室の子供が通うとか聞いたけど嘘だったのか」

友「ちょw嘘じゃねーし」


内気「王様そろって…ハイキングぅ~」


友「クスッ・・・あっ」

内気「にぱー(・ω・*)」

男「久々にレベルが高いギャグなのに他人のネタも取り入れてんじゃねぇよボケ」

内気「シューンρ(_ _。)」

友「そんなに言ってやるなよ」

男「いやこのくらい言わなきゃ図に乗るからな」

新ジャンル『すべる内気っ子』

375:名無しさん@ピンキー
08/07/01 19:15:04 aUOPJhUC
内気www

男はツンデレだな、うん。

376:名無しさん@ピンキー
08/07/01 21:34:31 TMYKwww3
内気をギュってしたい

377:名無しさん@ピンキー
08/07/01 21:50:10 qcxOuGmA
奈良シリーズで新キャラでてる件と内気が可愛い件

……でもそれ以上に、内気さんが笑点の木久扇師匠を彷彿とさせる件

378:名無しさん@ピンキー
08/07/01 22:35:38 FQcDahfQ
男「奈良の1300年祭のマスコットに新キャラ登場だってよ」

友「まんと君だろw投票とはいえどうなのwww」

男「初めてせんと君見た時はアリエネェって感じだったけど慣れたら何ともないよなー」

友「慣れてきた頃合を見てまんと君出すって凄いな」


内気「せんと、みつお、ナラナラ…」




友「・・・今の何?」
男「多分『せんだみつおゲーム』だと思う」

内気「せ…せんと君はどこ?彼なら銭湯にいr」

男「口にガムテープ貼ってやろうかコラ」



379:名無しさん@ピンキー
08/07/01 22:51:11 FQcDahfQ
彼氏「ノートに何書いてんだー?」

彼女「あっ勝手に見ないでよバカバカ~」


男「・・・・」
友「・・・・」


内気「ρ(・-・`;)」カキカキ

男「何書いてんだ内気~」

内気「あっノート!返して、返してぇ」

男「えーとなになに?」

[布団がお山に吹っ飛んだ、おやまー]←自信あり
[バスケット選手がバス蹴っとる]←いつか使えるかも
[チーターが穴におっこちた]←これもいつか
[ネズミが宙を舞うっす]←本当に飛んだ時に


内気「ど、どう?」

男「オラオラオラー!!!」ビリビリビリ

内気「あぁ酷い(´□`。)!」


友「セールスマンが来た、うるせぇ留守だ」
男「せめて友くらいのレベルを作れ」

内気「うぅ…ぼろぼろ」

380:名無しさん@ピンキー
08/07/01 23:01:22 FQcDahfQ
2/14
彼女「はいこれ、自信作だよ」

彼氏「さすが料理研究部、かなり美味いぞこれ」


男「むかつくイベントだ」
友「同じく」



内気「お、おと、男君!こ…これ」

男「え?俺に!?・・・嬉しいなー」カパッ


チョコレート(チョコ頂戴、ちょこっとね)

内気「…どうかな?」

男「義理ならこの場で叩き潰す、本命なら作り直させる」

友「俺によこす選択肢はなしか?」

381:名無しさん@ピンキー
08/07/01 23:21:47 FQcDahfQ
内気「~~♪~~♪」ユサユサ

友「内気ってあんな胸あったっけ?」

男「大方寄せてあげるブラじゃね?」

内気「ちっ違うもん!し、証拠にホラ…」(男の手を胸に付ける)

友「この…役得な奴め!!」

男「…暖かい、てか熱い」

内気「正解は、肉まんでした~…」ホカホカ

男「気が利くな、一個受け取れ」

友「サンキュー内気」

内気「私の肉まんー…」

男「帰りに友と俺のフランクフルトやるから」

内気「…じゃあ、あげる・・・」


382:名無しさん@ピンキー
08/07/01 23:55:24 FQcDahfQ
内気「男君、約束の…フランクフルトは?」

友「・・・・」
男「・・・・ちょっとトイレまで来い」

内気「トイレ…で食べるの?」

友「買い食いはいけない事だからね」
内気「そっかぁ…」




男「ほれフランクフルト」

内気「うゎ!…これは違…」

男「ほら食べろよ」

友「二本もあるぞ」


内気「フ、ランクフルトと…ウィンナー…」
友「orz」
男「プ…」

男「・・・面白かったから本物買ってやる」

内気(助かった…)

友「俺の心の傷はどうするつもりだ」

383:名無しさん@ピンキー
08/07/02 12:21:20 z10V/Mod
もう内気でもなんでも無ぇじゃないか(笑)

384:名無しさん@ピンキー
08/07/02 12:22:57 kNnBD1gO
新ジャンル『すべりっ子』でいいんじゃね?

385:名無しさん@ピンキー
08/07/02 18:40:10 z10V/Mod
>>384
ソレダー!(σ・∀・)σ

386:名無しさん@ピンキー
08/07/02 18:43:22 JeYAKLlc
アレだろこの後フランクフルト食べつつ友をどっかにやって
内気「…男くんのも食べたい…」
男「な、おま……………ちょっと家に来ようか」

ってオチなんだろ?

387:名無しさん@ピンキー
08/07/02 18:56:34 I9HPnE32
なんかこう俺の胸にキュンキュンきてるw

そして男はやはりツンデレだと思うw

388:名無しさん@ピンキー
08/07/02 19:27:07 kNnBD1gO
>>387
なんていうかSだよな


389:名無しさん@ピンキー
08/07/02 20:51:21 I9HPnE32
愛のあるSだな。
ただ単に弄んでるだけなら、逸物まろびだして何事も
なかったかのように本物買いに行くとかありえないしな。

とりあえず、アレだ、こういう時に言う言葉は一つ。

GJ!

390:名無しさん@ピンキー
08/07/02 21:30:45 z10V/Mod
>>389
いやいや、お前のフォローの方ががGJ!だぜ(笑)。

391:名無しさん@ピンキー
08/07/03 00:01:25 uqHqIcdO
男「女…いいな?」
女「…(コクン)」
男「と、そのまえに…ん、…あれ?…おかしいな…」
女「…」
男「ええと…くそ…」
女「…男くん」
男「あ、いやちょと、ちょと待っててくれ…」
女「男くん、…あの、わたしが…」
男「え?いや、いいよ…これくらい」
女「いいの、大丈夫だからわたし」
男「え。でも」
女「いいの…男くんはそう…寝ててくれたらいいから」
男「いや、あの…うっ、お、女、おま、」
女「…(ペロ、ペロペロペロペロペロペロペロペロペロ)…どう?」
男「ふ、、ぁあ、ああ…き、気持ち言いよ、女…」
女「…よかった…(ペロペロペロペロペロペロペロペロペロ)」
男「ふぁああっ!お、女…さん、ああいい、いいよぉ!」

新ジャンル「なめる子」


男「ああ、ヤバかった…じゃ、今度こそ…いくよ?」
女「…(コクン)」
(あんなに緊張しちゃって可愛い、ホントに初めてだったのね。
わたしの舌だけでイっちゃいそうになっちゃって可愛いんだからっ(w)。
でも以外に大きいのにはびっくりしちゃった。
うふ、でもどこまで頑張れるかしら、ドーテー君(w

数分後

女「ああ!あひぃ、ひい、ひああああっ!、やっやっ、やぁああ、いやぁあ、あひゃぁあん!」
男「ハァ、お、女、ハァ、おんなぁハァ、ハァ、ハァ、まだ、まだぁ!ふんんんっ!」
女「ひ、ひくぅう!ひっっちゃふ、ひゃぁ、ひゃぁ、ひゃあああっ!もう、もうらめ、ひゃぁあああん!」
(もう、駄目、だめぇいいちゃう、またいっちゃふうう、こわれちゃうううううっ、すごいのぉお!)

新ジャンル「なめてた子」


男「いくぞ、女!」
女「まかせて!林業にはグラップルソー、解体作業に油圧粉砕ニブラー!狭い敷地でも安心の回転式フォーク!
そしてこれがクラス最大の作業半径16mを実現したホイール式スクラップローダァァァァァアアアア!」

新ジャンル「コベル子」


男「あれ?女?」
女「お。おーおとこくんやなぁ、おぼえてるでぇ」

韻ジャンル「つるべ子」

392:名無しさん@ピンキー
08/07/03 00:03:33 uqHqIcdO
女教師「大体さぁ、センとかマンとか、ヌル棒とかって名前からしてダメじゃん!」
女生徒1「はぁ?」
女教師「デザイン以前の問題だよねっ?」

女生徒2「そうかなぁ、わたしこの『まんとくん』は結構好きかも」
女生徒1「そう?その「まんと」って名前付けるトコがなんかイヤじゃん?わたしー、もう『ぬる坊』でいいと思うけど」
女生徒2「えー天理ってそんな趣味なん?」
女生徒1「えー、いいじゃん別に」

女教師「よかないヨ!大体ナンだよぬるぬる棒っていやーらしいよね?」
女生徒2「明日香ちゃん…ぬる坊だし…」
女教師「とにかく、名前がよくない!」
女生徒1「じゃぁ明日香ちんはどんなのがいいの?」
女教師「あんなヘンなのじゃなくてー!ナラには昔から「あすかちゃん」と言ういいキャラが居るのに!
何故あれを使わないかと小一時間…」

女生徒1&2「あーはいはい(さんざ引っ張ってそれか)」


新ジャンル「奈良キャラ」

たしか『あすかちゃん』と『たいしくん』ってのがいましたよね?
わたし個人的には「せんとくん」好きなんですがw


393:名無しさん@ピンキー
08/07/03 09:11:54 Hml0lbpE
男「おじゃましますー」

内気「部屋上だから…上がって」

男「部屋にエアコンとテレビだと?贅沢モノめ」

内気「あの…お、面白いTV番組がね、あるから…観よ」

男(こいつの面白いレベルだとイロモネアかヘキサゴンあたり・・・まぁいっか)

男「いいよ、観ようぜ」

内気「にぱー(・ω・*)すぐ用意するね!!」

男(しょうもなかったら帰ろ)

TV『エン〇の神様~今日も独特なキャラクターがエ〇タに舞い降りる~』

男(想像以上だった・・・)


男「で、三時間延々と〇ンタを観てた」

394:名無しさん@ピンキー
08/07/03 09:25:35 Hml0lbpE
男「例の番組見た?」
友「見た見た、『栃木のいい所はどこですか?』『ねぇんだよなそれが』www」

男「不良自重しろよな」

内気「栃木が…ちょっとちぎれる」




男「ちぎれちゃったら栃木の人どうなるんだよ、土地が千切れるって大災害だぞ?」

友「いやただのギャグだしそのくらいで…」

男「災害をギャグに例えて笑えだなんてお前は最低だな」

内気「うぅ・・・ごめんなさい」


新ジャンル「すべりっ子」になっちゃったんだね

395:名無しさん@ピンキー
08/07/03 09:43:15 Hml0lbpE
友「昨日は楽しかったな~」

男「ノリはよかったけど女はイマイチだったな」

内気「昨日…メール送ったけど…どこ行ってたの?」

男「合コン」

内気「まぁ酷い(ノ□`。)゜。」

男「酷い?何で?」

友「もしかして内気さんって男のこと好きなの?www」


内気「好きだよ」


友「・・・・マジで?」


内気「すき焼並に好き!」

男「なんだ大したことないレベルか、来週のセッティング考えとけよ」

友「こんな時にギャグはねぇよ」


内気「うぅ・・・ギャグが裏目に…」

396:名無しさん@ピンキー
08/07/03 14:12:40 Hml0lbpE
先生「今日の写生大会の舞台は動物園です、他人の迷惑にならないように行動し、写生してください」

友「射精大会ならよかったのに」

男「ウィンナーから飛ばすのか?かわいいな」

内気「アハハハハハハ!!」

男「おい内気どうした!?」

内気「写生大、会で射精とかアハハハハ( ゚◇゜)ケキョキョキョキョキョ!!」

先生「どうしたの内気さん、どうしましょう何かの発作かしら!??」
保健委員「こんな内気さん初めてだ、とりあえず救急車を…」

男「笑いの沸点が低いって損だな」

内気「と、止めてぇぇへへふひゃーハッハッハ」

397:名無しさん@ピンキー
08/07/03 14:18:51 Hml0lbpE
内気「し、死ぬかと…おも、思った・・・」

男「死んだらよかったのに」

友「俺鳥系描こうと思うんだけどいいのいるかな?」

男「そうだな、フラミンゴやフクロウ、飛ばない鳥ならペンギンとかは?」

友「もっとカッコいいやつ」

内気「コンドルが…壁に、めり込んどるー」



友「あ、やっぱライオンにするわ」

男「カッコいいっつったらライオンだよな」


内気「・・・・・・・冷たい」

398:名無しさん@ピンキー
08/07/03 19:44:32 8fp4wLlw
やっぱりもう内気じゃねえw
あれだな、内気とかいてないきと読むんだな。



399:名無しさん@ピンキー
08/07/03 20:50:38 Hml0lbpE
↑に新ジャンル『すべりっ子』の方がいいんじゃない?と指摘があったので滑り優先にしました

内気は名残です
オドオドした子が空気を和ませようと寒いギャグ飛ばす話です

400:名無しさん@ピンキー
08/07/03 21:30:45 PZ/ETxaz
おK、じゃ「内気すべりっ子」でいいんじゃね。
あれだ、ここVIPじゃないからここの書き方に合わせてくれた方がいいかな。
あなたの投下の仕方はあんまりSS板じゃ歓迎されないから。
まとめWikiとか過去ログも読んでな。

つーことで新シリーズだな(笑)

401:名無しさん@ピンキー
08/07/04 01:49:46 dAyjW/uC
うん、やっぱり内気をギュってしたい

402:名無しさん@ピンキー
08/07/04 10:20:22 04i3B81g
栃木がちょっとちぎれるにワロタ

403:名無しさん@ピンキー
08/07/05 11:17:46 CWPhl71n
新キャラのレーファの相方の名前とか決めておいでですかね?設定固めてたら教えて下さいな
以下本文


『蝶が蛹を脱ぎ捨てて、美しい姿を見せようとしている。』
眼前で広げられている光景を青山春樹は後にこう語った。

『…私を春樹さんだけ…のものに…して…』
彼にそう告げた少女、豆田貴子の身体を覆っているのは可愛らしい縞柄のブラとショーツのみ。
身体の線は女と呼ぶには余りにも幼い。
乳房と呼ぶにはまだ未成熟な青い果実。たわわに実った黒田や理菜とは対極であり、姉の陽子にも及ばない大きさ。
しかし、年少者の特権である肌理の細やかさはずば抜けて美しいことが見て取れる。
白磁のような横顔と、艶やかな黒髪の流れ。紅玉の唇と黒曜石の瞳を持つ少女は、まさに可憐だった。

彼女の腕は後ろに回されているから、ブラのホックが外されるのも時間の問題だろうか。
こんな閉ざされた空間に、今は可憐であり、やがては女として美しく成長するであろう少女と二人きり…。
知らず知らずの内に己の鼓動は速くなり、視界もぼんやりと霞みがかっているようにみえる。
…だから、きっと驚愕のあまり凍りつた表情を浮かべた妹と同居人が見えたのは気のせいだろう。
「ってルカに囲炉裏!?何でここに!?」

しかし、彼女たちから返事はない。瞬きすらせず、貴子を見つめている。
…妙にじとっとした視線で。
それはそうだろう…。
春樹が狙われているという通報でここに駆けつけたのに、目の前ではラブコメ展開で鼻の下を伸ばしている男。
当然怒りの感情は生まれるわけだし、その矛先も明らかになっている。

「……ちっ。」
見られている側の貴子は悔しげに舌打ちし、おもむろに脱ぎかけていた服を身に着ける。
『獲物を前に舌なめずり。三流のすることだな。』
どこかの組織の軍曹が言っていた台詞を思い起こし、臍を噛む。
リボンを結びなおし、身支度を整え終わったところで囲炉裏が彼女に声をかけてきた。
「なにをしていたのですか?まめこ。」

………2対1では不利。…しかも、相手にルカさんがいる。
囲炉裏一人なら倒せない相手ではないが、飛び道具の効かないルカとは圧倒的に相性が悪い。
海辺の温泉、黒田の看病イベントに加え、先日の公園でも敗れ続けているわけだし。
そして今も丸裸…というか全裸2歩手前の徒手空拳な状況では全くの勝ち目は無い。
なら、誤魔化すしかないか…。

「……はるきさんをたすけにきた。」
…ちょっと片言になっていたが、多分大丈夫。
「だったら服を脱ぐ必要ないでしょ!!」
……無理があったか。

春樹は一瞬前とずいぶん変わった状況を見つめていた。
視線の先では囲炉裏が貴子を羽交い絞めにした状態で、ルカが両拳を彼女のこめかみに押し付け捻じ込んでいる。
…春日部市在住の野原家の長男が母から受ける懲罰…いわゆるグリグリ攻撃という技だ。

「っ!?ぎぶぎぶぎぶぎぶ!!」
珍しく貴子ちゃん、本気で悲鳴を上げてるなぁ…などとどこか他人事のような心地で傍観している春樹。
貴子が倒れたら自分の番が廻ってくることは明白なのだが。
もっとも、自分がルカの追跡を振り切れないことも理解しており、まな板の上に乗せられた鯛は諦めて捌かれるのを待つだけだった。

新ジャンル「隠れ部屋でのお仕置き」新醤油学園野望編

404:名無しさん@ピンキー
08/07/05 11:19:13 CWPhl71n
「裏切り者のトウバンジャンを取り押さえました…。」
昏倒している陽子を引きずり、たどり着いた第三会議室。
テンメンジャンは、やがて訪れるであろう機会を待ちつつ、はやる心を落ち着かせる。
その標的である恥女校長こと千所玲。今は黒田夕圭と向き合う形で彼女の報告を聞いている。
「…それよりも青山春樹はどうした?」
「……単独で行動しているようです。私が会敵したのはトウバンジャンのみでした。」
「そうか。…下がっていいぞ。」
やがて踵を返し、机に向かうであろう校長。
その無防備な背中…とくに急所である延髄付近を狙って渾身のストレートを打ち込む夕圭だったが…。
「…甘い!!」
あっさりと避けられ、挙句には腕を取られて肩関節を極められる。
「ぐっ!!」
鈍い音に鋭い痛み…。容赦なしに肩関節を外されたようだ。
激痛のあまりに視界は霞み、脂汗は止まる気配も無い。
「不意打ちをやるなら殺気はもっと隠すべきだ。もっと鍛錬を積め。
 しかし、腕一本では屈さないか…。それでこそ四天王だ。及第点くらいならやってもいいぞ。」

退くわけにはいかない。外された関節を無理やりに押し込み、肩を戻す。
春樹を守護していたはずの陽子は、己の手で倒している。麻里愛も戦闘不能のであり、四天王で健在なのは自分と貴子のみ。
その貴子もこの場に居ない以上、自分一人でカタをつけるしかない。
囲炉裏とルカが春樹と接触している可能性もあるが、彼女ら二人も春樹と同じく『大切な人』。
全身全霊を賭けて、守りきってみせる。そして…。

「校長先生…。いえ、BB。貴女を倒す。…そして偽りの仮面を外した本当の私を春樹くんに見てもらうの!!」
「夢を持つのは結構だが、お前の力で実現できる事かよく考えろ!!この馬鹿弟子!!!」
校長の左ハイキックを右腕で流し、左のフックでカウンターを狙う。
しかし利き腕ではない一撃では、必殺の威力を期待できるはずもなく…。
「その程度か!!」
夕圭の拳を避けつつしゃがみこんだ玲の、さらにカウンターとなる八極拳の体当たり【鉄山靠】。
「っ!くはぁ……。」
勁を込めた一撃に吹き飛ばされる夕圭。その彼女の前に立ちふさがる影。
しかし、その影は追い討ちをかけに来た恥女校長ではなく…。

「そこまでだな。姉さん。」
「…舞。何のつもりだ?」

405:名無しさん@ピンキー
08/07/05 11:19:39 CWPhl71n
姉の行動を妨げる妹の姿…。

「姉さん。…私は姉さんのやり方が正しいとは思えない。」
「…舞。どういう事だ?」

ちらりと夕圭に視線を投げかけ、再び玲に視線を戻すと、舞はこう言い切る。
「性行為はこの場でするべきでない!」
「「はぁ!?」」
話はまるでつながらない…。…一体、何なんだ?
「いや、説明が不足していた。最初のデートは手を握るまで、3回目のデートを目安にキス。
 性行為に及ぶのは10回目のデートの帰りに、彼か自分の部屋でやるべきだ。ということで、ここで事に及ぶのは邪道だ。」

「…………舞先生?」
「…やれやれだ、舞。今時の小学生ですら、悠長な心構えではないぞ。
 大人の恋はスピーディーなモノだぞ。つまりは獲即食だ。」
「姉さんは黙っていてくれ。…ともかく、黒田くん。この場限りでは手を貸そう。
 そしてこの騒ぎが収まった後、私は青山春樹に交際を申し込み、最終的には私のものになってもらう!!」

予想外な寝返りに、思わず固まる恥女校長とテンメンジャン。
会議室での戦いが新たな局面を迎つつある頃、新醤油学園校門前には新たな2つの人影。

「おばさ…痛たたたたたたた!!す、すみません、校長先生!!
 だからアイアンクロー止めて下さい!!……………また、来ましたね。」
「ああ。新醤油学園だな。」

桜吹雪女学園からの刺客たち。青山春樹を巡る騒乱は、まだ終わらない。

新ジャンル「新醤油純情組」新醤油学園野望編

406:名無しさん@ピンキー
08/07/05 18:08:39 SdG53jBg
内気な子の妄想じゃなくなってるお(^ω^;)

今度から書きためて書くお

407:名無しさん@ピンキー
08/07/06 03:04:18 ErmhKk5D
あ、ロリっこって戦闘力あったんだ、と思いながら縞パンGJ
やっぱ縞パンはロマンだよね

>>406
なら内気じゃなくてもいいじゃない!色々やったらいいじゃない!!


>>370
普及はしているけど一家に一台(?)カメラがあるものでもない、
新聞社以外には写真屋さんくらいしかカメラは扱えないくらいなものだと思っています
わざわざそういう魔法を開発しなくても絵で描けばいいじゃん、
と大抵の魔法使いは思っている~みたいな。

408:ワンダーランドでつかまえて(1/19)
08/07/06 10:26:54 ErmhKk5D
魔獣と人間との問題解決は勇者に任命されたときからのヒロトの仕事である。
もっとも解決といってもその実態は人間に害をなす魔獣を倒すこと。死山血河を渡る命の奪い合いに
終始していたのだが、魔王と知り合ってからは交渉という平和的手段を取るようになった。
というか、平和的手段を取りたかったから魔王と知り合いになったという方が正しいか。
なにせ相手は魔獣。人間より強く、人間より高い種族である彼らには、基本的に人間の言葉は通らない。
言葉が通じない、という意味ではなく、聞く耳を持たれない、という意味で。こちらが交渉の相手たりえる、
魔獣並みの力を持っていると相手に分からせるには剣を使わなくてはならないし、そうなったらヒロトは
完全に外敵扱いだ。結局、話の通じる相手ではないのである。
なら話の通じる相手を連れてくればいい――と、そういうわけで彼は魔王と戦い、そして勝利したのだった。
種族によってその地位が露骨に変わるのが魔族という生き物だ。その頂点たる魔王を連れているとなると、
これはもう最強クラスの交渉カードである。逆らえるものなど誰もいない。最終的に従わせることは容易であり、
こっちは譲歩するだけでいい、とそれくらいの反則っぷり。
既に交渉というシロモノではない気もしないでもないが、一応ヒロトはこれまで上手くやっている方だろう。

それもこれも、魔王たるリューがヒロトと行動を共にしてくれているからなのだが。
………そのリューはどこに行ったのだろうか?

「畑の周りの探索を任せたから、遠くには行ってない筈だが……」

外に出ると、そこには相変わらず気の抜けるような青空が広がっていた。
ピーターの畑は、農業に関して素人な魔導師が無骨なゴーレムを使って耕したものであると知っているために
さっきより大分粗が目に付いてしまうが、それ以上にピーターの目的を教えられたために素晴らしいものだと
感じる。ゴーレムによる自動生産プラントの卵。天気によって、風によって顔色を変える畑を管理するのは
大変に難しいことだけれど、それを『術式』として確立できればどれほどの偉業となるだろう。
ピーターには是非頑張ってもらいたいところである。
が。

「その研究の邪魔をする不届きなワーラビットがいる、という話ですわよね」

そのワーラビットは畑を荒らすばかりではなく、ピーターが屋敷を離れている間にこっそり屋敷に忍び込み、
私物を漁ってこっそり持ち帰るというからまるっきり泥棒だ。
街道近くの森に棲み、旅人を襲って金品を奪うオークの盗賊団じゃあるまいし。
こんな辺鄙な場所じゃ魔族をも相手にするような商売根性逞しい商人の換金ルートも確保するのは難しい。
というか、羽毛布団くらいならまだわかるが……いったいワーラビットが
ピーターの写真を持っていって何に使うというのだろうか?
謎である。

「……ま、捕まえてみればわかることか」

ヒロトがじっ、と畑の彼方を睨みつけると、ピーターは静かにかぶりを振った。

「いえ、ヤツを侮ってはいけない。ヤツはこの辺じゃ『影無し』と呼ばれ恐れられているんです!」
「か……『影無し』……ですって?」
「その通り。ヤツは姿を見せた瞬間には既に彼方に逃げ去っているというほど逃げ足が速いんです……!」

こめかみに戦慄の冷や汗を流し、掠れた声で呟くピーター。その形相にヒロトたちも思わず息を飲む。

「………まあ、『影無し』というあだ名は今自分がつけたんですが」
「アドリブですか!」

ローラのツッコミに頬を照れながら掻くピーター。どこか気合の入らない青年だった。

「ですが……なるほど、確かにワーラビットといえば俊足の持ち主。臆病な性格で、
 その耳で戦士の足音を聞くや一目散に逃げ出すという魔獣です。ピーターさんのゴーレムはもちろん、
 ヒロトさんもあまり積極的に動くべきではないかも知れませんね」


409:ワンダーランドでつかまえて(2/19)
08/07/06 10:27:33 ErmhKk5D
ジョンが冷静な口調で言い、頷く。なるほど確かにごついストーン・ゴーレムや戦士の硬いブーツで足元を
固めているヒロトがあちこち動き回っては標的のワーラビットに警戒されてしまうことは避けられないだろう。
ということは、ワーラビットの捜索は軽装のローラとジョンの二人だけで行うということになるか。

「とんでもない!」

と、そこでピーターが声を上げた。何事か、と目を瞬かせるヒロトたちに、ピーターはもの凄く紳士的に胸を張る。

「自分は腐ってもキャロット家の魔導師、ピーター。女性ばかり働かせて自分は高見の見物などできません!
 ようはゴーレムを連れていなければいいのでしょう?ならば自分もお供しましょう。もとよりこれは
 自分の畑の問題で、皆さんは厚意で手伝ってくれているのですから、
 それに甘えっぱなしになるわけにはいきません。おらが畑はおらが護る!」

一同はおー、と思わず拍手しそうになるが、同時に首を傾げてしまう。女性ばかりって、ジョンは?
しかしすぐにあー、とうなじの辺りをぽりぽり掻きたくなった。というのもこのジョン・ディ・フルカネリ、
見た目が少女と見紛うばかりの美少年なのである。というか容姿といい、小柄な背丈といい、
齢14、15の女の子にしか見えない謎の生き物っぷり。そういえばクシャスの町で
温泉に入ろうとしたときも番頭さんに必死で止められたっけ。
まぁ実際のところ脱いでみれば一発で男性だということは証明できるのだが、
ここでそれをするのはかなり嫌だった。ローラもいるし、ジョンにそんな趣味はないし。

それによく考えてみればピーターはゴーレム使いの魔導師であり、
そのゴーレムを目立つために連れて行けないということはいったい彼がどれほど役に立つのだろうか。

「失敬な。自分はこれでもラルティーグで修行を積んだ魔導師ですよ!?確かにストーン・ゴーレムより
 性能は劣りますが、土に直接魔力を叩き込んで練り上げるクレイ・ゴーレムくらいは
 いつでも喚ぶことができるのです!」

ピーターは憤慨したように言うや否や、バッ、ババッ!と怪しい拳法じみた構えを取り、
しゅばばっと身をかがめて地面に掌をつけた。
その手がにわかに淡く発光し、めり、めりり、と地面が割れて地下からゴーレムが飛び出す。
ピーターの得意とするストーン・ゴーレムをそのまま小さくしたような姿の小型のゴーレムだ。
小型の………。
小型………。

「か、可愛いですわね」

ローラが困ったように口元を引きつらせるのも無理はない。
そのゴーレムは、ヒロトたちの中で一番小柄なジョンよりもさらに小さい。というか、ジョンの半分ほどの
大きさしかなかった。発案には素晴らしいものがあっても魔導師としてはどうしても腕利きとは言い難い、
というか平凡以下のピーターらしい。
しかし、ここで断っても変に正義感のあるピーターのこと、無理にでもついてくるに違いない。
ええい、面倒くさい。

「………よろしくお願いします」
「任されましょう!」

実際の戦力ではピーターが最下位につくのは間違いないだろうが、探している相手がワーラビットなら、
むしろジョン一人でもお釣りがくるだろうというものか。
………もっとも、戦うのと捕まえるのはまた別の話。一撃で相手を麻痺させるジョンの“霊拳”であろうとも、
当たらなければ意味がないし、足元を電磁力によって弾けさせて高速を得るローラの“雷刃”であろうとも、
あくまでも加速は一瞬であって、出会った瞬間背を向けて逃げられたら追いかける手段にはならない。
ワーラビットという魔獣の性質上、エンカウント&ランは十分ありえる話だった。

410:ワンダーランドでつかまえて(3/19)
08/07/06 10:28:35 ErmhKk5D
 
「と、いうことは。ワーラビットを探すというよりも、まず先にリューたちと合流する方がいいのかな」

ヒロトはさり気無くジョンの傍まで近寄って、そう囁く。ジョンも頷いた。
捕まえるのが困難なら、こっちから呼びつけてしまえばいい。幸いそれができそうな仲間が彼らにはいる。
魔王リュリルライア――彼女なら、ワーラビットに言うことを聞かせるくらい簡単なはずだ。リューとリオルが
今どこにいるか知らないが、手分けして探せば簡単に見つかるだろう。ピーターにまた適当な説明を
しなければならなくなるが――勇者であるというのならともかく、旅の仲間に魔王がいるというのはいかに
ピーターが気のいい青年であっても明かすことができる秘密ではないのだ。

「まだお仲間がいるのですか?」
「あ、ええ。あまり大勢で押しかけるのも迷惑でしょうから、この辺りで待つよう指示をしたのですわ。
 魔獣に詳しい魔法使いが一人と――ええと」
「――ボクの助手が、一人」

きょとんとしたピーターに、苦笑いしながらそう返す。ものは言いようだ。
確かにリューは世界で一番『魔獣に詳しい魔法使い』には違いないし、
リオルだって手伝うというより邪魔する方が得意であってもジョンの『助手』で間違いない。
ピーターはわかったようなわかっていないような顔をして、

「……もしかして、その方たちも女性では?」

と訊ねた。また紳士論を語る気だろうか。でも正直あのリューがいればそこらの魔獣や盗賊はおろか
聖堂騎士団の本隊が襲い掛かってきても返り討ちにしてボロ切れのようにしてしまうだろうし問題はないと思う。
一応頷いておくと、ピーターは予想に反してすいっと腕をあげると遠く、何かを指し示した。

「――先程から畑の向こうに赤い髪の女性が浮いているんですが、もしかしてその方でしょうか?」

赤い髪。というとリューか。
ヒロトたちは揃ってピーターの手が示している方向に目を向けた。畑の向こうに――ああ、いた。
遠いが目立つ、炎のような赤い髪をなびかせ見えない地面に立っているように仁王立ちになってこっちを見ている。
ニヤリと笑う、その少女には確かに見覚えがあった。リューである。

「………なにしてるのあの娘」

ローラが呆れたように呟いた。リューはニヤニヤとこっちを見ているだけで、全然動こうとしないのだ。
むしろ来いということか?とヒロトたちが思い始めた頃、リューはさらに笑みを深く――邪悪にして、
ばっと掌をこちらに向けた。
その空間が、ゆらっ、と波紋が広がるように歪む。
極限まで圧縮された魔力が空間を歪めることによって発生するその波紋は――名を“天輪”という、
魔王にのみ可能なほどの絶対攻撃……!

「なにしてるのあの娘!」
「伏せろ!」

ヒロトが叫び、いまいち飲み込めていないピーターを突き飛ばして背中の剣を抜き払う。
リューはきゅうっ、と唇の端を吊り上げ、そのまま魔力波をぴゅん、と放った。
光の矢のようなそれは触れれば辺り一面を焼き払う破壊の結晶だ。ヒロトはそれを弾き、打ち返す。
軌道を大きく変えられた魔力波はそのまま緑の平原の一角に落ちてゆき、――爆発を起こした。

「う、うわぁあ!?」

ピーターが驚いて声をあげる。それは驚くだろう。平原に大きなクレーターができてしまっている。
もし直撃すれば命はない。身体がばらばらになってしまう。


411:ワンダーランドでつかまえて(4/19)
08/07/06 10:29:34 ErmhKk5D
「リュー!」

ヒロトが咎めるように大きな声をあげると、リューはくるりと背を向けてふよふよと飛んで逃げていく。
なんなんだ、一体。

「……別行動をさせられた腹いせかしら」

ローラの呟きを聞いたのか聞いていないのか、ヒロトは剣を手にしたまま怒ったように言った。

「リューを追いかける。なんのつもりだ、あいつ」
「行ってらっしゃいませ。あ、私の分の拳骨は二発でお願いしますわ」

頷き、眉を吊り上げてヒロトは跳んだ。“豪剣”によって身体強化された脚は地面に足型を残し、
ひと蹴りで彼方まで跳躍する。その脚力にピーターは目を剥いたが、ジョンとローラは今さら
特に驚くことでもないので伏せた時についた土をぱんぱんと払っている。まったくもう、とか愚痴りながら。
……というか、直撃すれば明らかに即死するような攻撃を受けてなお平然としているローラたちの神経に
ピーターは驚いて声も出ない。それを弾き返したヒロトは、まあ彼はさっきピーターのストーン・ゴーレムを
あっさり斬ってのけたから只者ではないとわかっていたが、詠唱も何も無しであんな大穴を穿つほどの
攻撃魔法を放つ少女もピーターには計り知れない存在である。
っていうか、仲間じゃないのか?なんで殺そうとする?

混乱しているピーターをよそに、ぷりぷり怒っているローラたちは「あ、」と声をあげた。
その視線の先にいるのは――。

「うんうん、リュリル――じゃなかった。『ハートの女王』様はちゃんとヒロトを誘い出せたんだね」
「リオル?」

いつの間に近づいてきたのか、ミント・ブロンドの髪を持つ少女が畑を挟んだ向こう側にいた。
活発そうな容姿をした彼女は紛れもなくジョンの助手にして灼炎龍リオレイアの魂と賢者の石を
その身に宿すドラゴン娘、リオルである。
しかしどう見てもリオルなその少女は慌てたように首を振った。

「違う違う。今のあたしはリオルじゃなくて『ワンダーランド・プロジェクト』の『チェシャ猫』なんだよ!」

リオルは手をついて獣のような四足の体勢になると――ばさ、と翼を広げた。

「リオル!?」

龍化である。リオレイアの『肉体』――勇者ヒロトによって破壊されたリオル本来の身体と同じ
赤銅色の鱗を纏ったその姿は半人半龍、リオルの戦闘形態だ。魔力の消費が激しいために以前は
数十分も維持することができなかったその変身も、賢者の石が変質してからは自由にできるようになった。
……もっとも、大技を連発すればやっぱりすぐにバテてしまうのだが。

「リオルじゃないって!『チェシャ猫』!」

おとがいを反らし、ひゅうっ、と大きく息を吸い込んで――、

「明後日に向けて必殺!火龍烈火吼(デラ・バーン)!!」

――火球を放った。
うわ、と身を伏せるも、その軌道は勝手に逸れて遥か遠くで爆発した。


412:ワンダーランドでつかまえて(5/19)
08/07/06 10:30:31 ErmhKk5D
どどん、と地面を揺るがして立ち上る炎の柱にまたもピーターは愕然とした。ぱらぱらと破片が飛んできて
足元にぶつかる。冗談じゃない。さっきのヘンな恰好の少女もそうだが、
あんな攻撃魔法、ピーターのストーン・ゴーレムでさえ一撃で木っ端微塵だろう。
完全に、殺しにきている攻撃である。
間違いない。
ピーターは悟った。
彼女たちは仲間じゃない。
何かが、ローラたちの仲間に化けているのか――もしくは……。
まずい、このままでは全滅だ。
その前に。
元凶を倒さなければ。

「リオル!危ないじゃないですか!!」
「ひゃあ、違、違うってばジョン――じゃなくて。ええと?ふは、ははは。悔しかったら
 ここまでおいで――と。ああ、リュリルライア様。これってやっぱり無茶な気がしてきました!」

よくわからないことを口にして、リオルはばさばさと飛んで逃げようとする。

「ローラさん、電撃を!」
「了解ですわ!」

ジョンがこめかみをひくつかせてズレた眼鏡を直し、ローラも怒りを隠さない形相でギリギリと奥歯を鳴らした。
リューには絶対防御の魔法障壁があるためヒロトにしか相手はできないが、
相手がリオルでこの距離なら彼らにも『撃つ』手はあるのだ。
ジョンはぱきぱきと指を鳴らすとすっと手を重ねて逃げるリオルに向け、
ローラは腰に差している愛剣ボルテックを抜き払い、やはり切っ先をリオルに向ける。

「【閃き奔れ】!」
「“雷刃”!」
「わひゃぁ!?」

ジョン、そしてローラの放った二筋の稲妻は絡み合い一筋の光線(ビーム)となってリオルに――避けられた!

「くっ!ローラさん――いえ、ここに残ってください!ボクはリオルをとっちめますから!」
「任せましたわ!拳骨は三発で!」
「ええ!?ちゃんと外したじゃんかぁ!」
「帰ってきましたわ!“雷刃”!」
「危なッ!ローちゃん、掠ったよ今の!」
「チッ!ちょこまかと!」

ローラは目を三角にして怒り、ジョンはむしろ薄く笑顔さえ浮かべて追跡体勢に入り走り出している。
リオルはしばらくローラの稲妻に抗議していたが、すぐにわたわたと空中で手足をばたつかせて再び逃げ出した。
ジョンが怖い。口は三日月、眼鏡がキランと光って瞳が見えないがきっとそこだけ笑っていないに違いない。
リオルを撃ち落とすための攻撃魔法をびゅんびゅんと放ち、リオルはそれをひょいひょいと躱しながら、
やがて二人は森の中に消えていく。

あとには肩を怒らせてビリビリと帯電しているローラ、
そして何やら真剣な顔で考え込んでいるピーターが残された。
ピーターははっとなる。ヒロトはリューを、ジョンはリオルを追いかけていってしまった。
これは、まずい。

「いけない!お嬢さん!」
「なんですの?」

413:ワンダーランドでつかまえて(6/19)
08/07/06 10:31:15 ErmhKk5D
 
ピーターの叫び声にローラは振り返った。まだ目が据わっている。ピーターは正直ちょっと怖かったが、
すぐにブンブンと首を振って気を取り直した。そうして、続ける。

「彼女たちはきっと操られているんです!」
「…………………………………………………はぁ?」

ローラは怒りも忘れて間抜けに口をぽかん、と開けた。

「おそらくは自分の命を狙う何者かの仕業でしょう。自分に近づいた貴方たちを自分の仲間だと思ったのか、
 同士討ちというこのようなこすい真似を……ッ!」
「あ、いえ。あの、それはないと断言できますわ……よ?」

ピーターはあずかり知らぬことではあるが、リオルはともかくリューにその手の呪いは一切通用しない。
精神操作であろうと身体破壊だろうと確率変動だろうと、リオルの持つ膨大な魔力が干渉しようとする『呪い』を
踏み潰してしまうからだ。毒も薄めれば無害となるのと同じ。彼女に呪いをかけようとするなら、
歴史に名を刻まれるような使い手がちゃんとした方陣、いや神殿を築いて三日三晩の詠唱を経て全魔力を費やして、
やっと石につまずいて転ぶくらいに運気(ラック)が下がる程度といったところか。
リューに魔法戦を挑もうなどというのはそれくらい、考えるだけでも馬鹿馬鹿しいことなのだ。

が、それをピーターに説明しようとするとこれが非常にややこしい。
だいたい人間にそんなレベルの魔法使いなんかいるわけないし。

「では、どうしてお仲間が貴方たちを殺そうとするのです!?」
「殺そうとって、あ、あー……」

普段のべらぼうにハイレベルな世界にいると結構慣れていたりするのだが、考えてみればそういう風に
見えなくもない。ローラはぽりぽりと頬を掻き、しかしまあ、別に気にすることもないか、と思った。
なにせ。

「――あの方に聞けば、きっと何かわかるでしょうし、ね」
「え?」

ピーターが振りかえる。
長い耳がゆらっ、と揺れた。
畑を囲う柵の上。
ほんの少ししか足場のないそこに、とん、とよろけもせずにまっすぐに。
静かな瞳でこちらを見つめて、彼女は立っていた。
ローラは知らず、ピーターは知っているその少女は件の魔獣。

ワーラビット。

ピーターの畑を荒らし、屋敷に忍び込んで盗みを犯した少女が、そこにいた。



内心めちゃくちゃにビビッていた。

(な、なんかまだいるですよぅ魔王サマぁ~ッッ!!)

リューとリオルが(勝手に)立てた『ワンダーランド・プロジェクト』の内容はこうだ。
ピーターのことが好きなアリスのために、ピーターとアリスを二人っきりにしてやるから、好きだって言え。
………。
身も蓋も中身もない作戦だった。

414:ワンダーランドでつかまえて(7/19)
08/07/06 10:32:07 ErmhKk5D
実はこの作戦、裏にリューとリオルもそれぞれ想いを寄せる相手と二人っきりになりたいという暗黒面があり、
むしろこっちが本命だったりするのだが、まぁそもそもオトメ経験値の低いくせにオトメちっくハートは
天災並みの局地的タイフーン壱號と弐號からマトモな案が出るわきゃあねぇのである。
しかもこのプロジェクトには誰が見ても明らかな落とし穴があり、それがローラの存在だった。
リューがヒロトを、リオルがジョンを引き付けるのはいいとして、それでは一人余るのは自明の理。
ちなみに二人はローラの存在を忘れていたわけではなく、お互いが
ローラを何とかするものだと思っていたというスレ違いが生んだ悲劇であることを明記しておく。
まぁ、どんな勝手きわまる作戦であろうと単なるワーラビットに過ぎないアリスにとって
魔王たるリューと火龍のリオルは見上げても霞んで見えないほどの上位魔族であり、
簡単に言えば『死ね』と命じられても二つ返事で死ななきゃ以下略。
つまり絶対服従、無条件降伏の相手だということである。
アリスに口を挟むなんて大それた真似、できる訳なかった。

かくして、哀れ『ワンダーランド・プロジェクト』の『白ウサギ』ことアリスは只今絶賛大ピンチ。
だってなんか残ってた女の人(ローラ)が金色のツインロールを帯電させてこっちを睨みつけている。
アリスは魔法もロクに使えない、正真正銘の下級魔族だ。
身体能力は一応人間のそれを凌駕してはいるものの、それは身の軽さ、すばしっこさに限った話。
腕力はといえば外見通り女の子の細腕に見合った分の力しかない。戦闘経験なんてもちろん皆無なので
常に逃げの一手である。それでもあの怖いビリビリ少女(ローラ)の放つ電撃から逃れられるかどうかわからない。

「――そうか。貴様か、ワーラビット」
「はぇ?」

心底帰りたい、と心の中でため息をついていたアリスは突然の殺気立った声に驚いて
思わずバランスを崩しそうになった。
声の主――低い、押し殺したような男の声。
考えなくてもわかる。この場に男は一人しかいないのだから。

「ピーターさん?」
「……お嬢さん。下がっていてください。このケダモノは、自分が相手をします……!」

ローラを手で制し、ざ、と一歩前に出た。その青年はピーター・ベンジャミン・キャロットという。
アリスが密かに想いを寄せていた彼が、今、アリスを仇敵を見るような視線で睨みつけていた。
アリスはもちろん、慌てて両手をばたばたと振る。

「ちょ、ちょちょちょ、ちょ!ちょっと待ってくださいよぅ!何ですかそのマジぶっ殺スな目はぁ!
 あたしはですね、ただ……」
「ただ――なんだというんだ?自分の客人を貶め、操り、同士討ちを狙うような悪党が。
 今さらなんの言い訳をする?」
「なぁっ………!?」

話がものすごくこじれているのを感じた。
断っておくがこの『ワンダーランド・プロジェクト』とやらの立案に於いてアリスはまったく、これっぽっちも、
魔王に誓って関与していない。というか、させてもらえなかった。する余地もなかった。気力も無ければ
根性もなかった。しかしそれでもアリスを責めないで欲しい。作戦を立てた相手を思えば詮無きことだろう。
それにリューたちの言う『呼び出し』がまさか魔力波や火炎球をぶっ放すことだとは夢にも思っていなかったのだ。
アリスの淡い恋を応援してくれるというから何かしらのサポートをしてくれるのかと思ったら、
むしろ積極的に破壊しているような気すらする。アリスは今や半泣きだった。

「誤解ですよぅ!あたし、そんなことはしませんってば!」
「問答無用だ!『メタル・ゴーレム』ギガントール――起動!!」


415:ワンダーランドでつかまえて(8/19)
08/07/06 10:33:16 ErmhKk5D
ピーターが鋭く叫ぶと、屋敷の隣、納屋の屋根を貫通して巨大な腕が突如として生えた。
ぱらぱらと破片が飛んでくる。突然のことにアリスとローラは声も出ない。
絶句していると、その腕はばきばきと納屋の屋根を破壊するように押し上げて、ぶん、と放り投げる。
茅葺きとはいえ、その重量は半端ではないはずの屋根は紙細工のように飛ばされてぐしゃっ、と潰れた。
そして――納屋に格納されていたそれは、ゆっくりとその身を起こす。

「――な、なぁっ!?」
「なんですのアレは……!?」

………それを、一体なんと形容すればいいだろうか。

巨大な、ゴーレムである。
ピーターが普段操っているゴーレムも大きかったが、これはさらにその三倍ほど大きい。
黒に近いほどに深い、青みがかった甲冑のような鋼鉄のボディからは無骨で逞しい手足が伸び、
顎とたてがみが目立つ頭部からは雪だるまに指したにんじんのような尖った鼻が突き出ていた。
見るからに鈍重そうな、しかし力強く、頑健なる鉄(くろがね)の巨人。

その暗い双眸が光を放ち、巨人――ギガントールは跳躍した。

「わ、わっ!?」

そしてピーターの背後に着地する。その衝撃ときたら、地面が揺れて傍にいたローラが
一瞬宙に浮いてしまうほどだった。アリスもとても柵の上に立っていられず、
たまらず地面にひっくりかえってそのままぺたん、と座り込んだ。

なんだアレは。

「ギガントール……できればお前はもう二度と起動することなく、納屋の中で眠り続けて欲しかった……」
「だ、だだだ、だったらずっと眠らせておいてくださいよぅ!!」

腰の抜けたアリスが必死に叫ぶ。

「それはできない。自分は今一度このメタル・ゴーレムを使って悪を討つ!」
「だからあたし何にも知らないんですってばぁ!!」

ローラはぽかん、と口を大きく開けて声も出ない。
それはそうだろう。こんな規格外のゴーレムが出てきたことにも驚きだが、それを操作しているのが
あのピーターなのだから。彼女の仲間たちが分析したピーターは半人前もいいところの魔導師で、
碌なゴーレムを操れなかった筈なのだ。
だが忘れるなかれ。彼のストーン・ゴーレムはあくまでも畑仕事のため、
しかも複数操作を前提とした石人形であることを。
それは両手で絵を描く行為に似ている。絵筆を持ち、右手と左手で同時に絵を描こうとすれば、
どうしてもその絵は雑になるか、単純なものになってしまう。慣れていないならなおさらだ。
そんな隠し芸のような真似をして描いた絵を見て、どうしてそれがその人が持つ画力の全てだと笑えるだろう?
ピーターが先程、素体のない状態で練り上げたクレイ・ゴーレムにも同じことが言える。もともとゴーレムは
その場で作り使役するものではなく、前もって人形を用意しておき、それに魔力を通して動かすのが常なのだから。

そう、たとえば。
魔道技術の先進国であるラルティーグの研究室で開発した機体があり。
彼の持つ全ての魔力を一点集中して注ぎ込めるのであれば。
もしかしたら、再現できるかも知れないではないか。


――かつてピーターの先祖たちが使役したという、27体のゴーレム。
戦火に飲まれ、侵略を受けたこの小国を見事に護り抜いたという、伝説の『鉄人』を――。


416:ワンダーランドでつかまえて(9/19)
08/07/06 10:34:06 ErmhKk5D
 
「往けギガントール!お前が28体目の『鉄人』となるんだッ!!」

ギガントールは大地を踏みしめ、ガタガタ震えるアリスに迫った。
ギガントールは見た目の通り、すばやく動くことができない。だが機動性がない分、その腕力は岩石さえも
軽く粉砕してのけるほど。術者ピーターの指示にもよるが、おそらくはドラゴンとさえ格闘し、
殴り倒すことが可能だろう。その鋼鉄の拳の前には腰を抜かしたワーラビットなど塵とも埃とも変わりない。

「………………………む」

ピーターは震えるアリスを憐れと思ったか、眉をしかめ、言った。

「ワーラビット。命が惜しければお嬢さんのお仲間たちにかけた術を解くんだ。
 今までの悪さを反省し、もうしないと誓うなら許してやる」
「あ、あぅ、あぅあぅあぅ」

アリスは歯の根が合わずに返事ができない。しかし、力の限りを振り絞ってブンブンと首を振った。
無理もない。アリスは本当に何もしていないのだから。そりゃあ今までは盗んだり落とし穴掘ったりはしたけど、
それだって、恋する女の子のおちゃめの範囲内だし。
それを知らず、決裂ととったピーターはギリリ、と奥歯を噛み締めた。

「……そうか。正義のためとはいえ、キミのような女の子を殺めることになろうとは――残念だ」
「あうぅぅうううぅぅ!!」
「――ギガントール!ハンマーパンチだ!!」

鋼鉄の巨人は主人の命令に従い、大きく腕を振り上げた。

「あ、ちょっ、待ってくださいまし!」

呆然としていたローラがはっと正気を取り戻し、静止の声をあげる。
が、もう遅い。ギガントールは文字通りの鉄拳を小さなアリスに叩き込もうと、全体重をかけて――


―――柔らかい畑の土に足を陥没させてすっ転んだ。


「ギガントォォォォォォォォォォォル!!!!」



ヒロトはついさっきまでリューにお仕置きの拳骨をくれてやるべく、森の中を疾走していた。
しかし気付いてみれば急に辺りに濃い霧が立ちこめてきてリューの背中を見失い、
それでも“豪剣”によって研ぎ澄まされた聴覚を頼りに何やら物音のする方向に来てみれば――。
森の木々が切れ、ちょっとした広場になっているそこには、椅子とテーブル、そして二組のティーカップと
ポットが用意されていたのだった。そしてヒロトを待っていたように――実際待っていたのだろう、
頬を少し赤く染めてリューがスラリ、と立っていた。

リュー。
リューである。
リューのはずだ。

炎のように鮮やかな朱い髪に緋色の瞳。その容姿には見覚えがある。
だが、その服装には見覚えがなかった。


417:ワンダーランドでつかまえて(10/19)
08/07/06 10:34:54 ErmhKk5D
暗闇が染み入る黒と鮮血が脈動する赤。彼女を表す二つの色を豪奢なドレスにして纏っている。
胸元と背中が大きく開きいてぴったりと身体のラインが目立つようなデザインになっており、
スカート部分にはそれこそ腰まで覗きそうな深いスリットが入っている。そこからスラリと伸びた美脚を
際立たせるのは濡れた鴉羽根のストッキング。踵の高い真っ赤なヒールを履いて、
天の羽衣のようにストールを羽織り、金色のティアラをつけたその姿はそれこそ、どこの令嬢かと見惚れるほどだ。
薄い化粧でもしているのか、ルージュを引いたような唇がフワリと緩み、微笑む。
百人の男がいれば九十九人が腰砕けになるような、妖艶さと無邪気さが絶妙に入り混じった笑顔だった。
豪奢で絢爛なローラとはまた違う。光を放つのではなく、吸い寄せるような。
一言も言葉を交わさぬうちに、既に掌の上でいいようにされているような。
そんな妖しい魅惑がそこにはあった。
これが、魔王の魅惑なのか。
いや、違う。そこに禍々しいものは感じない。
今のリューは、彼女は――

―――『クイーン・オブ・ハート』。

ヒロトは、そんな、心を蕩けさせるような美しい少女に誘われるようにふらふらと近づき、
とりあえず、拳骨をした。

「痛い!」

頭を押さえてうずくまるリュー。さっきの妖艶さはどこへやら、すっかりもとのリューに戻っている。
まあ、拳骨されてまだ妖艶な流し目なんかしてたら色っぽいどころか面白いけども。

「――リュー。危ないだろう、いきなり攻撃してきたら」

ヒロトはジト目でリューを睨みつけた。

「って、この恰好を見てまず第一声がそれか!!」

『ハートの女王』のリューが顔を真っ赤にして激昂する。
だがどんな恰好をしていようがヒロトはリューを叱るために追いかけてきたんだし、
まずそれを済ますのが順番として正しいというものだろう。
ヒロトがクソ真面目にそう言うと、ドレスアップ・リューは地面に抉りこむような深い溜め息をついた。

「………………とりあえず貴様の耳を引きちぎって逆さまにくってけてやりたいんだが」
「なかなか似合ってるんじゃないか?リュー」
「遅いわ!!」

カッ!と目を三角にして怒鳴りつける。ヒロトは少しだけ笑ったあと、改めてじー、とリューを見つめ始めた。
その眼差しに膨れていたリューはむむ、と唸り、ふん、とそっぽを向いてしまう。しかしこのドレスは
もともと『普段よりオシャレしてヒロトをドキドキさせよう』という計画で着ているので悪い気はせず、
頬が少し赤くなっているのを自覚する。

「………そのドレス、まさか買ったんじゃないだろうな」
「うぉぉおい!!」

心配そうに言うヒロトにツッコミが絶えないリュー。
リューは頭に漬物石が乗っているような鈍痛を覚え、こめかみを押さえながらひくひくと口の端を痙攣させる。

「………『変化』の魔法だ。服だけしか変化させてないから『変身』といった方がいいかも知れんがな。
 貴様のために!前々から温めていたデザインを出してきてやったんだぞ」
「へぇ。お前、なんでもありだなぁ」
「……………貴様……他に言いようはないのか……?」


418:ワンダーランドでつかまえて(11/19)
08/07/06 10:35:41 ErmhKk5D
ぐったりしているリューをよそに、ヒロトは辺りを見回した。
この空間だけ霧が切り取られているかのように途切れ、
その先は真っ白で何も見えない。なんとなくわかる。この霧もリューの魔法のひとつだろう。
そんなヒロトに気付いたリューは、ひらひらとおざなりに手を振って答えた。

「ああ、この霧は特殊な結界でな。内部と外部の位相をズラし、次元レベルで隔離している。
 ま、我が創った幻想空間といったところさな。いかにヒロトといえどここから出ることはできぬ。
 我が術を解くか、もしくは我を倒すかでもせん限り、な」
「………」

ヒロトは顔をしかめた。
リューがヒロトを誘い出したくて攻撃を放ったのはわかっている。あの魔力波は全然、本気じゃなかったからだ。
それ以前にリューが仲間を攻撃するなんてありえない話だし。ヒロトが弾くとわかって撃ったのである。
拳骨は、それでも危ないことは危ないことなのでお仕置きだ。
それにしても、普通に呼べばいいのになんて回りくどいことを――。

「――で?理由を聞こうか」

ヒロトは椅子に腰掛けると、リューの顔を覗き込んだ。
リューは微妙に唇を尖らせて、でも頬はこれまた微妙に赤くして、向かい側の椅子にどっかりと座った。
そして口を真一文字に結び、じー、とヒロトを凝視する。見つめあう二人。

「………リュー?」

リューはしばらくヒロトから目を離さずにいたが、やがて視線を彷徨わせると落ち着きなく手で宙を掻き、
ヒロトにティーカップを渡すと、ポットを傾けてトロトロとお茶を注ぎ込んだ。

「お茶会だ」
「はぁ?」

リオルは自分のカップにもお茶を注ぐと、じび、と音を立ててそれを啜った。

「――いや、何。とある女の恋路に協力してやっているのだよ」
「………?」
「我とリオルはお前に言いつけられて畑の周囲を探索していたろう。その時にだな――」

………………………。
…………………。
……………。
………説明終了。

「と、いうわけでお前たちをあの場から移動させる必要があったのだ」
「……ワーラビットのアリス、か。ならこっちの話も解決っぽいな。その娘がピーターの研究を邪魔していたのが
 好意の裏返しの結果だとすば、気持ちを伝えることでその必要はなくなるだろうし」

ヒロトはうん、と頷いて、

「しかし、それなら始めにそうと言えばいいのに。それに、俺をここに閉じ込める必要もないだろ?」

と、当然のように眉を寄せた。
そんなヒロトに、もうリューは言い返す気力もない。
べったりとテーブルに突っ伏して、恨みがましい半目でヒロトを睨み上げる。

(本当に、こいつは――……少しは我と一緒にいようと考えてくれたっていいだろうに……)


419:ワンダーランドでつかまえて(12/19)
08/07/06 10:36:28 ErmhKk5D
やっぱりローラのように山あり谷ありくびれありのスタイルでないと色気に欠けるのか、
とリューは寂しい胸元に視線を落としてさめざめとため息をついた。

「――ま、いいか。依頼されてた仕事はこれで解決。ピーターも邪なことは考えていない立派な人だし、
 キャロット家には後ろ暗いことはなさそうだと報告できる。ワーラビットもリューの方でなんとかしてくれた
 ようだから俺の出る幕はないし。――たまには、リューとお茶でも飲んでくつろいでるのも悪くない」
「……!!」

リューは顔をあげた。ヒロトはすました顔で静かにお茶を啜っている。
リューは何やら頬をむずむずさせると、ヒロトに向き直って自分のカップに口をつけた。
我ながらなんて単純な。しかし、ションボリしていた胸の内が火照ってくるのは止められない。
まったく、公平にはいかないものである。

「ところでドレスは自前として、この椅子とかカップとかはどこから調達してきたんだ?」
「アリスの住処――家からだ。茶葉も棚にあったから使わせてもらった」
「いいのか?このお茶も高価そうだが……っていうかこれもピーターの家から
 盗ってきたものじゃないのか?もしかして」
「さあな。もし仮にそうだとしても我にはあずかり知らぬこと。魔獣のモノは我のモノ。我のモノは我のモノ」
「………お前な」
「む。なんだその目は。ちなみにこのお茶は我が沸かしたモノだぞ。
 ふふん、どうだ。我も日々進歩しているのだよ」
「それはご馳走様だな。ピーターに後で謝っておかないと」
「おいこら、我には?我には何にもなしか!」
「アリスとやらにもちゃんと謝っておくんだぞ」
「そーじゃなくてだな!」

ヒロトは笑いながらもカップを傾け、リューは眉を吊り上げてばしばしテーブルを叩く。
そして自分のお茶を倒し、また騒ぐのであった。霧に包まれた小さな幻想空間(ワンダーランド)で、
二人っきりのお茶会は賑やかに、緩やかに過ぎてゆく。


一方、リオルの方はというと。

「………はい。マジスンマッセン。自分、調子乗ってました。ていうか、こいてました。ぶっこいてました」

オデコに大きなたんこぶをつくり、正座してジョンに説教をされていた。もともと追いかけたり襲い掛かったり
迎え撃ったりするのは得意でも、誘い出して罠にはめるのは不慣れなガチバトル専用少女リオル。
追う間隔や僅かな位置の差を変えて追いかけるジョンにまんまと逃げる方向を操作され、
飛びにくい森の中に誘導されたと思ったらジョンの攻撃、カマイタチ。
それを慌てて躱したかと思ったら、風でしなった木の枝が目の前に……。

で、とっ捕まって今に至るというわけだ。

「しかし、リューさんも素直なんだか意地っ張りなんだか……ヒロトさんその辺、
 上手くフォローできなさそうなヒトだからなぁ。あんまり期待しないほうがいいんじゃないですか?」
「うーん、でもリュリルライア様は秘策があるって言ってたよ?」
「秘策、ねぇ……」

あんまり期待できないなぁ、と溜め息をついて(正解)、ジョンはジロリとリオルをにらみつけた。
う、とリオルが目を泳がせる。説明は済ませてあるのだ。
『ワンダーランド・プロジェクト』も、ワーラビットのアリスのことも白状させられた。


420:ワンダーランドでつかまえて(13/19)
08/07/06 10:37:09 ErmhKk5D
「話はわかりましたが、そうなるとアリスさんを放任しすぎなのではないですか?
 けしかけたのは貴方たちでしょうに」
「うーん。でもこの計画、基本的な方針は『みんながんばれ』だからなぁ……」
「………かわいそうに」

ジョンは彼方を見上げて、会ったこともないワーラビットの少女に同情した。

「だいたいさー、それもこれもジョンがあんまあたしに構ってくれないから悪いんですよ主に夜!」

いや、それは違うでしょ。とジョンは思わないでもなかったが、そうとは口にせず、
キイキイ鳴きながらじたばた暴れるリオルをしばらく見つめて目を細めた。
そうしてリオルが暴れ疲れた頃、ジョンは膝をついてリオルと視線を合わせ、ぽんと頭に手を乗せた。

「ジョン……?」

その慈愛に満ちた瞳に、リオルがぽぉっとした表情で見つめ返す。
ジョンは、僅かに頭を垂れて謝った。

「すみませんでした、リオル」
「え?」
「どうあれ、リオルを不安にさせてしまったのでしょう?なら、ボクは謝らなくっちゃ。
 せっかく――その、魔力補充云々ではなく、恋人としてできるようになったんですからね」

照れたようにはにかむジョン。
そんなジョンにリオルは、リオルは、ああ、もう、リオルはぁぁぁぁ!!

「ジョォォォォォォォン!!!!」
「うわっ、なんです!?リオル、落ち着いて!ここ、外ですよ?ヒロトさんたちだってどこにいるのか!」
「でもそんなの関係ねぇー!」

おっぱっぴー、と奇声を上げて襲い掛かってきたリオルに、ジョンは慌てて

「“霊拳”!」

拳を打ち込んだ。
魔力を相手に注入し、呪いにも似た効果を発動させて一撃で意識を刈り取るジョンの必殺拳“霊拳”。
それは正確にリオルのみぞおちに食い込み、リオルはどこか幸せそうな顔をして倒れこんだ。
あやうく強姦されそうになったジョンは冷や汗の浮いた額をぬぐって呟く。

「とりあえず、夜までは我慢してください、リオル」

その声は、夢の世界(ワンダーランド)にいるリオルには届かなかったけれど。



「ひっく、えぐ、ううぅ」
「よしよし。怖かったですわね。でももう、大丈夫ですわ」

ローラは泣きじゃくるアリスを抱きしめ、その背中をさすっていた。
ピーターの持つ最強のゴーレム、ギガントールのハンマーパンチはギガントールがこけたために
不発に終わったものの、振り上げられた拳そのものはアリスがへたり込んでいた位置からほんの一歩だけ
ずれた場所にめり込んでいる。巨大な鉄鎚が己の身に迫る恐怖、それはどれほどのものだっただろう。
アリスは命拾いした安堵感から泣き出し、ピーターは凶悪犯だと思い込んでいたアリスが見せた
まったく無防備な表情に戸惑い、おろおろしている。そしてアリスがリューたちをどうこうしたのではないと
分かっているローラが、事情を聞くためにアリスを落ち着かせてやっているのだった。


421:ワンダーランドでつかまえて(14/19)
08/07/06 10:37:49 ErmhKk5D
「あ、あー……その、自分は」
「お黙りなさい。そしてこの娘に謝りなさい。誤解があったとはいえ、
 無防備な女の子に手をあげるとは何事ですか。この娘への追求はそれからです。
 それまで、ピーターさんはそこに正座!」
「はい」

ビリビリと稲妻を飛ばすローラの剣幕に、ピーターは大人しく正座した。志の高い魔導師なのに。
その隣で、身を起こしたギガントールが術師に同調して同じく正座する。再来した伝説の『鉄人』なのに。

「うぅっ、ううぅ、あたし、あたし……魔王サマたちの命令に従っただけなんですよぅ。信じてくださいぃ……」
「………ええ、まぁそれはなんとなく。はぁ。何をやっているのかと思えば本当に何をやっているのかしら。
 で?本当は貴方、何をさせられようとしていたのです?」
「………………………」

言われて、アリスは赤くなる。そしてちらちらとピーターを見つめて……俯いてしまった。
ピーター(と、ギガントール)はきょとんとしているが、ローラはなんとなく、その様子を見て気付いてしまった。
ヒロトのような疎いというより『無意識的にわざと考えないようにしている』ようなニブチンじゃあるまいし、
ましてやこっちは同じ想いに身を焦がすオトメちっくハートの持ち主だ。その瞳の揺らめきを知ったなら
なんとなくわかってしまうのは当然といったところだろう。

「あ、あー……なるほど?だからリューさんたちはヒロト様とジョンさんを遠ざけようとして……って私は?」

恋は盲目とはよく言ったもの、ということで。

「なんか釈然としませんわ……」
「あのぅ、その。あたしはこれからどうすればぁ……」

ローラの腕の中で、泣き止んだアリスがおずおずと尋ねる。潤んだ瞳で上目遣いにローラの顔を覗き込む
ウサギ少女はなかなか庇護欲がそそられるが、そんなもんローラには知ったことではない。
リューやリオルのように『魔族と人間の恋路を応援する』という名分も彼女にはないし。
――だからただ、これだけは聞いておく。

「どうしたいのです?」
「えぇ?」
「貴方は、どうしたいのです?ピーターさんと、どうなりたいのです?」
「………」

それは。

「……………」

ピーターと、仲良くなりたい。

できれば二人で――仲良く、にんじんを収穫したい。
思い浮かべるのはそんな幸せなイメージだ。この畑で一緒ににんじんを育てて、今日のようないい天気の日に、
見事に色づいたにんじんで籠を一杯にして。泥のついた顔で笑いあって、
その足元に子供たちがじゃれ付いたりして――。

できるなら、そんな。
夢のような、未来を。

「だったら」


422:ワンダーランドでつかまえて(15/19)
08/07/06 10:39:41 ErmhKk5D
アリスは何も言わなかった。しかし、そんなウサギ少女の表情を見てローラは微笑んだ。
そして立ち上がり、アリスも支えながら立たせてやる。

「その為になることをなさいな。今、ここで、想いを伝えるのが一番でなくてもいい。
 貴方の望む未来のためにはまず何をしなければいけないかを考えて、それをなさい。ね?」
「で、でも……魔王サマの命令には」

アリスは、魔族だ。しかもロクな魔力を持っていない、下級魔族。
そんな彼女が、魔王たるリューの命令に逆らえるわけがない。
そんなアリスにローラはやれやれと肩をすくめると、びっ、とその鼻先に人差し指を突き出した。

「私は貴方のことなんて名前も知りませんけどね。貴方の想いはそんなもの?ひとつだけ言っておきますけどね」

アリスは息を飲んだ。
アリスだって、この少女のことなんか名前も知らない。魔王の仲間――なのだろうか。
それにしては魔王にかしずいていないようだし。なんなのだろう。人間なのだろうか?
それすらアリスには曖昧に感じられた。
この少女、彼女の瞳から感じるこの感じは―――


「恋する乙女に、不可能はなくってよ?」


―――魔王。

いや違う。もっと別の『何か』。人間でありながら魔王でもある。アリスは怖いと思った。
小心な自分はこの得体の知れない少女に対し恐怖を感じると思った。しかし、何故だか怖くない。
その不思議な感覚にアリスは戸惑っていた。
アリスがまごまごしていると、ローラはきびすを返してピーターのところまで歩いていき、
まだ正座していた彼を立たせると、すたすたとそのままどこかに行ってしまう。

「あ、あのぅ!どこへ……?」
「リューさんを探しに行くのですわ。ヒロト様と二人っきりなんて、そんな抜け駆け放っては置けませんもの」

その背中に、アリスの声が響く。
ローラは肩越しに振り返って片目を瞑ると、今度こそ振り返らずに森の中へ消えてしまった。

あとには正真正銘、『ワンダーランド・プロジェクト』の予定通り、アリスとピーターの二人だけが残された。
アリスは頬を赤く染めてもじもじと手をせわしなく動かし、ピーターは脚が痺れたようで若干ふらふらしながらも
足についた土をぱんぱんと払っている。ちなみにギガントールはまだきちんと正座していた。

………。

「あー、それで、だな」

間がもたなくなったのか、ピーターはポリポリと頬を掻いた。

「なんとなく、自分の勘違いだったようだから……攻撃してしまったことは謝ろうと思う。すまない。
 ………しかし、それならキミはいったい何が目的なんだ?」


423:ワンダーランドでつかまえて(16/19)
08/07/06 10:40:29 ErmhKk5D
びく、とアリスは大きくその肩を震わせた。
身体の内に熱いものを感じた。その熱は胸の奥をちりちりと焦がし、アリスの身体を急かし掻き立てる。
アリスはその感覚に覚えがあった。
ピーターを遠くから見たとき。ゴーレムに指令を出して、失敗して。思い切り頭から土を浴びて、
小山の中から顔を出し。なかなかうまくいかないもんだ、なんて。彼が苦笑いしたとき。
ピーターのいつも寝ているベッドにばふっ、と倒れこんで、彼の匂いを胸いっぱいに吸い込んだとき。
彼が育てたにんじんをこっそりとひっこぬいて、一緒ににんじんを育てる未来を想像してしまったとき。
約束の時間に遅れそうでせかせかしているときのように、頭がかーっと赤くなってしまうのだ。
そんなとき、アリスはいつも逃げ出してきた。
溢れて零れそうな感覚のままに脚を動かして、こう、ばびゅーんと逃げ出してきた。

しかし。

今は、それができない。
アリスは火のつきそうな胸の鼓動とは裏腹に、背後に何か大きくて冷たいものがそびえ立っているのを感じていた。
それは燃え盛る炎のような、底の見えない暗い海のような。アリスのようなちっぽけなウサギには計り知れない、
とてつもない何か。それがアリスの頬をゆっくりと舐めるように撫で上げ、三日月のような口で笑う。

――そうだ、アリス。ピーターと二人っきりにしてやる。その時に、奴ニ想いヲ伝エレバイイジャナイカ――

そのときの魔王の言葉は何気ない、純粋に恋する少女を応援する言葉として発せられたのだろう。
しかし、それはアリスの小さな心臓に杭を刺す。足元が縫い付けられて動けない。ここでピーターに
背を向けるということは、あの言葉に背を向けるということ。それは彼女にとって自分の血流を
逆に回すことよりも、もっとずっと難しいことなのだ。

「あ、あたしは……!」

でも、今ここでピーターに告白する?そんな。
だって理由はどうあれ、アリスがピーターの畑を荒らしたのは事実で、ピーターの屋敷から家具や衣類や小物を
盗んで持ち去ったのは事実なのだから。そんな自分が、どの面下げてピーターに
『好きです』なんて言えっていうんだ。それよりも前に言わなくちゃいけないことがあるってものだろう。
そう、順番なら、こっちが先だ。告白なんかより、こっちが――。


――奴に想いを伝えればいいじゃないか――

――恋する乙女に不可能はなくってよ?――


「あ、あたしはぁっ……!」

アリスはぎゅっと目をつむり、


「色々悪いことして、ごめんなさいぃっ!!」


ぺこん、と頭を下げた。

「………え?」
「あ、いや、その。だから。ピーターさんの畑からにんじんを盗んだり、
 屋敷から色々持って行ったり……しました!あたしはっ!だから、だから………ごめんなさいっ!!」

ピーターは呆けたようになり、アリスは長い耳をぶんぶん振り回して何度も頭を下げる。
そう、悪いことをしたら謝るのが当たり前。そこをすっ飛ばして好きも何もない。
魔王サマたるリューは告白しろって言ってたけど……まず、アリスは謝らないといけなかったのだ。
謝って、罰を受けて、許してもらって、そこから。そこから、アリスは始めなければならない。
それが、アリスの想う一番の未来の、きっと一歩目なのだから。


424:ワンダーランドでつかまえて(17/19)
08/07/06 10:41:10 ErmhKk5D
「……あ、うん。謝ったのか。あー……なら、とりあえず自分の家具とか、返しなさい」
「………はい」

ピーターは戸惑っているのか、どこか視線を泳がせながらもアリスに命令する。
アリスは――そりゃあ、少しは残念だったけど、仕方ない。それに、それが当然。こくりと頷いた。

「それから……ああ、そうだな。自分の畑から盗った野菜は、どうせもう食べてしまったんだろう?
 だったら、仕方ない。ワーラビット。しばらく自分の畑仕事を手伝ってもらうっていうのはどうだ」
「はぇ?」

続くピーターの言葉に、アリスは驚いて顔を上げた。なんだって?さっきのが聞き違いでないなら、
それが本気なら、その意味は――。

「それで、今まで盗んできた分を返してもらう。素直に謝ったことだし、それで勘弁してやろう」

――願ってもない。ピーターと一緒にいられるってことじゃないか。

「なんだ。不満か?だが、キミがしてきたことは――」
「いいえ!あたし、一生懸命働きます!働きウサギになりますぅ!!」
「……そ、そうか。なら、えっと、とりあえず明日からだな――」

研究の予定を組みなおさないとな、なんて。
ボリボリ頭を掻くピーターを前に、アリスは花が咲いたように笑った。
ああ、夢にまで見た未来の『ワンダーランド』。

それは、明日の朝日と共にある。



――翌日、ヒロトたちはまたピーターの屋敷を訪れていた。
呼び鈴を鳴らす。ぴょこんと顔を出したのはアリスだった。
昨日各々『ワンダーランド』から帰ってきたヒロトたちはアリスの家にあったピーターの家具を運び出し、
届けたのだが、引越し状態でしっちゃかめっちゃかになってしまったのでとりあえずアリスは泊りがけで
ピーターと共にずっと整理をしていたらしい。ヒロトたちがキャロット家への報告のために
帰らなくてはならなくなった後も、ずっと。
そこで判明したのは、ピーターがこの屋敷を管理しきれていないということだった。
元々ピーターは贅沢を当然とする貴族じみた生活を嫌っていた上に、工房は必要でも広いリビングなど
必要ではない生真面目な魔導師であるために、キャロット家から与えられたこの屋敷を持て余していたらしい。
そこで、アリスが勇気を出して提案したのが――。

「………なるほど。それでその恰好というわけだ」

リューがきゅうっ、と目を細める。

「え、えへへぇ」

照れ笑う。アリスは、メイド服に身を包んでいた。
ようは畑仕事だけでなく、ピーターにとって広すぎるこの屋敷で清掃、洗濯、炊事を担当すると
言い出したという話。ピーターもそれならゴーレム使役のトレーニングに時間を裂けるので、
畑仕事のオート化も近づくだろうと受け入れたそうだ。うさみみメイドの爆誕である。

「しかも住み込みなんでしょ?すごいじゃん、頑張ったじゃーん」
「あ、ありがとうございますっ!」



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