【総合】新ジャンルでエロパロpart6【混沌】at EROPARO
【総合】新ジャンルでエロパロpart6【混沌】 - 暇つぶし2ch150:名無しさん@ピンキー
08/05/28 11:44:14 bLBd2mtb
男「褒め言葉ってあるだろ、2ちゃんに」
女「うん」
男「まず、『GJ』に『投下乙』、『GOD JOB』、あと『ベネ』なんてのもある」
女「ふんふん」
男「で順番で行くと俺的には…GOD→GJ→ベネ→乙になる」
女「うんうん」
男「でだ。俺はこの投下をした人に気持ちを伝えたい、だがどれを選ぶべきか?」
女「面白かった?」
男「ああ!!短い単発ネタの連続ながら、切れが良い」
女「でも神の領域じゃないわね」
男「しかし単なるいい仕事じゃないんだ」
女「……難しいわね」
男「…………」
女「……でもさ」
男「ああ?」
女「この人の投下って男のエッチに似てるね」
男「………え?」
女「いい仕事じゃ言い足りないけど、神クラスではないし」
男「……………」
女「連発で威力はあるけど一回一回は短いし」
男「……………」
女「そう、例えて言うならまるで………あれっ?男、どうしたの?膝なんか抱えて…」


新ジャンル「マシンガン」

という訳で>>149GJ!!

151:コイノロウ(1/15)
08/05/28 11:47:11 wqQgQYV0
どんどこどこどこ。
どんどこどこどこ。

その部屋は、異様としか言いがたい雰囲気で満たされていた。

まず、暗い。
カーテンはぴったり閉め切られていて、そこからは一筋の光さえ差し込まないようになっている。
ちゃんと蛍光灯があるのに何故か点けておらず、照明はゆらゆらと揺らめく蝋燭の火のみ。
頼りない灯りに照らされているのは、これまた不気味な内装だった。
天井から吊り下げられているのはボロボロに擦り切れた、ゾンビのぬいぐるみである。
一応ファンシーなデザインになっているものの、目玉は零れ口は縫い付けられ、
絞首刑のように首に紐を巻きつけられてぶらん、と揺れている。
壁には五寸釘の刺さったわら人形が磔にされ、さらに黄色地に赤い字の書かれたお札がぺたぺたと貼られていた。
豪奢な装飾の鏡は無残にも罅が入り、何の悪戯か紫のペンキがべったりと塗られている。
部屋の隅に立ち、眼球のない眼で虚空を見つめているのは、理科室によくある骨格標本だ。
いったいどこから調達したのか、棚の上にはカエルやネズミのホルマリン漬けが並び、
隣には場違いな北海道土産のまりも。あと自家製ピクルス。
その棚に並んでいるハードカバーの書籍は一冊の例外もなく、
『黒魔術』やら『幽霊』やら『呪い』やら、うさんくさいタイトルのものばかりである。
住人の趣味を思い切り疑ってしまう………いや、疑うまでもなく悪趣味な部屋に止めをさすように、
部屋のほぼ半分の面積を占めているのは――『祭壇』であった。

祭壇。

そうとしか形容できない。
真っ白な布の被さった台座の上には不気味なお香と生贄の血と肉。
どこからともなく地の底から響くような呪文が紡がれ、飢えた獣が悪魔のようにうなり声をあげる。
床に走る、蛍火のライン。それは曲線を描き、複雑に絡み合い、
太古の昔に滅びたという悪魔崇拝の一族の魔法陣を描いている。
魔法陣の中心、跪いているのは一人の少女である。
襟の大きな黒いマントと鍔の広いとんがり帽子、学園指定のハイソックス。
小さな身体に纏っているのはこれだけだ。ほとんど全裸に近い恰好だが、
それもそのはず、彼女はこの儀式のために先程沐浴をして禊を行ったばかりなのだから。
わざわざ余計なケガレを身につけることはできない。
彼女は、この儀式を失敗するわけにはいかないのだ。
少女の薄い唇から何事か呪文が口ずさまれていた。

「――ぎゃーてーぎゃーてーはーらーぎゃーてーはらそーぎゃーてーぼーじーそわかー」

どんどこどこどこ。
どどこどこどこ。

太鼓の音が高まっていく。
鋭い短剣を掲げると刃に手を添え、すぅ、と息を吸い込んだ。
そしてそのまま、きぇえ、と雄叫びをあげ、そのまま短剣を振り下ろす。
鈍く光る凶刃は違うことなく台座の中央に捧げされた人形を貫いた。
短剣に刺さったままの人形を蝋燭であぶる。ちりちりと嫌な臭いがして、
ぼう、と燃え上がるのに時間はいらなかった。
燃えていく。
人の形をしたものが、胸を貫かれたまま、声もあげずに。
その火を昏い、生気に欠けた瞳で見下ろして――少女は厳かに十字を切った。

「偉大なる邪神、我が主リュリルライア様――どうか、あのひとがぼくを好きになりますように」


152:コイノロウ(2/15)
08/05/28 11:47:41 wqQgQYV0
最後に、お願いします、と付け加えて。
少女は光沢の少ない眼でめらめらと燃える人形を高く掲げた。

この想い、炎より赤く。
この想い、炎より熱く。
届け、我が純情。
愛おしい、あのひとの元へ――。

焼けた人形から出る一筋の煙が、据え付けの火災報知機に触れた。
びー、と警告音が鳴り響き、少女は慌てて近くに置いておいたバケツに燃える人形を放り込んだ。



「……で?結局怒られたって?」
「うん」

友人の言葉に、少女――黒妻 呪々(くろつま じゅじゅ)はコクンと頷いた。
どう見ても義務教育課程にある、というか小学生くらいにしか見えない小柄な体型に、
サイズの合っていない、ぶかぶかな学園指定のセーラー服。
長い前髪の下からは隈で彩られた、生気のない瞳が覗いている。
よく見れば可愛らしい顔立ちをしているが、それはどこか作り物じみていて、
アンティークドールや日本人形を連想させた。
そんな不気味で妖しい容姿に違わず、彼女の趣味はオカルト全般。
それこそ、西洋の黒魔術から日本の神道、
中国の陰陽道やら南アメリカの精霊祈祷に至るまで節操なく手を出し、
最近ではそれらをRE-MIXしてオリジナルの儀式を開いてしまうほどである。
昨日はその儀式の最中ボヤ騒ぎを起こしてしまったというわけだ。

「邪神様がお怒りになったのかな」
「………それ、自分で考えた神様でしょ?」
「違うよ。異世界からの声を聞いたもの」

まぁ、要はうっかり拾ってしまったデムパが生み出した虚構である。
信者が一人しかいなくても宗教というのか。被害はないから放っておくけど。
呪々の数少ない友人、自称親友、面倒見がいいことで定評のある原衛 清芽(はらえ きよめ)は溜め息をついた。

「生贄の血と肉も用意したのに。使い魔もいたのに」
「トマトジュースと鶏モモ肉でしょうが。あと、飼い猫をヘンな儀式につき合わせるのはどうかと思うわよ」
「大丈夫」
「何が」
「大丈夫」

呪々は根拠もへったくれもなくうん、と頷くとお弁当のから揚げをもそもそと頬張った。
ちなみにこのから揚げ、昨日の鶏モモの成れの果てである。
彼女は生贄を無駄にしないエコロジーなオカルトマニアなのだ。トマトジュースもちゃんと飲んだし。
清芽はそのから揚げと自分の冷凍ミニハンバーグを交換しながら、やれやれと肩をすくめた。

「呪々さ、基本はいいんだからその、なんだっけ?舌噛みそうな神様」
「リュリルライア様」
「そんな、恋愛偏差値低そうな神様に祈らなくっても。普通に告白すればいいじゃない」


153:コイノロウ(3/15)
08/05/28 11:48:08 wqQgQYV0
呪々は途端、目をまん丸にするとぶんぶんと首を振った。
そして――ちらり、と窓際の、その席に座っている男子生徒の様子を伺う。
視線の先にいるのは、特に目立ったところのない短髪の男子生徒である。
前の席の男子の弁当に手を伸ばして、その小指を掴まれて極められている。
パンがなければお前の弁当を食べればいいじゃない、とか珍しい断末魔をあげて、彼は机に沈んだ。
どうやら弁当及び財布を忘れてきたらしい。
そんな彼の様子を盗み見て――呪々はほぅ、とため息をついた。
屍のように真っ白な頬に朱が差している。呪々は彼のことが好きなのだ。
昨日の儀式だって、彼と仲良くなりたいがために開いたのだった。

小岩井 幸太(おいわい こうた)。
呪々と彼の馴れ初めは丁度一年ほど前に遡る。
入学したての頃。まだクラスメイトたちが呪々の異様なオーラに慣れていなかった当時の話である。
彼は。
呪々の隣の席だった。
なんかいいな、と呪々は思った。
…………………。
……………。
………。
以上。
別に何らかのドラマがあるとか、そういうのはない。恋とは得てしてそういうものだ。
むしろ異常な状況下で覚えた恋は長続きしないと某アクション映画でも言ってましたよ!?

そんな、奇天烈なようで意外と普通っぽい乙女ちっくハートの持ち主たる呪々が、面と向かって幸太に告白する?

「……恥ずかしい」

呪々は俯いてしまった。
前髪で隠れた顔は、しかし見えなくても真っ赤になっているとわかる。
その様子は小動物のようで、ぶっちゃけめちゃくちゃ可愛かった。
恐るべし恋する乙女。恋をすると女の子は可愛いくなる、というが、
呪々は何せ基がいいのでその破壊力はメガトン級である。
こういう所を見せれば男なんて一撃必殺できるのになー、とか清芽はもぐもぐとから揚げを咀嚼しながら思った。

「ううん、じゃあ手紙とかは?時代遅れだけど信用度は変わらず高いラブレター」
「書いた」
「書いたの?やるじゃん!」
「でも出してない。恥ずかしいから」

呪々は周りのクラスメイトの目を気にしながら、鞄をごそごそと探ると真っ黒な封筒を取り出し

「待った。なにそれ?何その黒さ」
「黒い封筒が売ってなかったから自分で染めたの」
「いや、いいから。そういうのいいから。普通、ラブレターっていったら真っ白か薄い桃色の封筒で
 ハートのシールは鉄板でしょうが。え?なに?なんで黒?」
「おまじない。幸太くんがちゃんと読んでくれますようにっていう」
「抽選ハガキかよ。で、中身もなんかおどろおどろしいワケ?」
「ううん。中身はふつう」
「普通か!じゃあ封筒もそうしなよ!」
「………恥ずかしい」
「ああ、くそ可愛いなこいつ!!」

くわっと牙を剥く清芽。彼女は面倒見の良さには定評があるが、同時にツッコミにも定評があるのだ。

「原衛ェ、黒妻苛めてんじゃねーぞ」


154:コイノロウ(4/15)
08/05/28 11:48:34 wqQgQYV0
大声を出したので、周りから揶揄が飛ぶ。
無論、清芽を責める言葉ではない。清芽はだいたいいつもこんな感じだからだ。
黒く腐敗した毒沼のような近寄りがたいオーラの持ち主である呪々にとって、
世話焼きで交友範囲の広い清芽はクラスメイトとの重要なパイプ役だったりする。

「何騒いでんのお前ら。お前らっていうか原衛。……おー、黒妻のから揚げ美味そー」

――こんな風に。

「………………………!!!!」

呪々が猫のように固まる。
清芽も驚いた。呪々たちが囲む弁当を見つめてそう言ったのは、誰あろう小岩井 幸太その人だったからだ。
なんで、小岩井が、ここに――!?

「原衛。黒妻のから揚げ食っていい?」

そうだ、さっき幸太はクラスの男子に弁当を分けてもらおうとして(と、いうか盗み食いしようとして)
小指を間接とは関係ない方向に曲げられていた。
清芽が大声で目立っていたから様子を見てみた、そしたら何かから揚げが美味しそうだった。くれ。
別に不思議なことはなにもない。そういう流れだろう。
だが今、ここで、よりにもよって呪々のから揚げを欲しがるか。小岩井幸太。恐ろしい男である。
………っていうか。

「な、なんであたしに聞くかな?呪々に言えばいいじゃん」
「ん?だって原衛、黒妻の保護者だろ。黒妻、いいよなー?」

呪々は。

こくん、と。

頷いた。

「う、うん」
「おー、さすが。じゃ一個貰うから」

幸太はいともあっさりとから揚げを一つ摘み上げると、ひょいと口に放り込む。

「ンめぇ。何、これ冷凍じゃない?」
「呪々の手作り。この娘、こう見えて料理上手いんだから」
「へぇ。すげー、やるな黒妻」

ぱたん、と何かが――誰かが倒れる音がした。
呪々である。

「呪々―――ッッッ!!!?」

床に転がる呪々の顔は、どこか満足そうだった。
幸太に褒められたのが嬉しすぎてうっかり気を失ってしまったらしい。
何かと難儀な娘である。



155:コイノロウ(5/15)
08/05/28 11:49:04 wqQgQYV0
 
オカルトパゥワーだ。
目が覚めた呪々はそう確信していた。
だって、だって。
儀式を開いた翌日にたまたま幸太が弁当を忘れ、たまたま清芽に相談し、たまたま清芽が大声を出して、
たまたま幸太がこれを聞きつけて、たまたま呪々のから揚げを褒めてくれる。
――そんな偶然が!果たして起こり得るのだろうか!?いや、ない(反語)!!
………この際、似たような儀式っぽいことは何度もやってきたとか、
その時には今回のような奇跡は起きなかったとか、そういう細かい話は完全に無視である。
オカルト好きをナメてはいけない。
信じるものは都合のいいモノ。それが人生をより良く生きるコツなのだ。

呪々は感激してふるる、と小さな肩を震わせた。
正直、今まで呪々の身にこんな素晴らしいオカルトチックな出来事が起きたことなんてなかった。
オカルトマニアであることは自覚しているし、世の全ての摩訶不思議は存在すると思っているが、
どうにも呪々には霊感というものが皆無なようなのだ。
どんな恐ろしい怪談が語られるいわくの地に行っても幽霊なんぞ見たことはないし、
高いお金を出して買った水晶玉を何時間睨んでいても丸く歪んだ自分の顔しか映らないし、
走るのが苦手だから体育祭の前日決行した雨乞いも失敗したし、
テストの山勘も当たらなかったし。ちゃんと勉強したところしか解けなかったし。
そんな呪々が、初めて呪術の儀式に成功したのだ。
呪々のテンションは最高潮である。

「………呪々、大丈夫?」

保健室のベッドの上で、呪々は不気味に笑っていた。
いや、本人としては普通に微笑んでいるつもりなのだが、目をまったく細めずまん丸に見開いたまま、
口元だけ三日月のように歪めているその表情は無駄に怖かった。
そんな呪々に、放課後になって様子を見に来た清芽は心配そうに、恐る恐る声を掛ける。
清芽も呪々とつきあって長いが、この娘の笑顔は未だにちょっと怖い。

「ん。あ、清芽ちゃん」

しばしケタケタと殺人鬼の魂が宿った呪いの人形の如く笑っていた呪々が
親友の声に気付いてギギギと首だけこっちに向けた。
テンションが上がってますます不気味さが増している。すごく………怖いです。

「どうしたの?なんか嬉しそうだけど」
「うん」

呪々はコックリと頷いた。

「儀式がね、成功したみたいなの」
「儀式?」

清芽は小首を傾げた。この娘の言うところの儀式というと、話に聞くうさんくさいエセ魔術のことか?
しかし昨日はボヤ騒ぎを起こしたとか言ってなかったっけ。それって失敗じゃないか?

「幸太くんに褒められたのは邪神さまのおかげだよ。きっとぼくの呪いが奇跡を起こしたんだ」
「………………?」

奇跡を起こすならどっちかっていうと祈りの方が正しいんじゃないかとか思ったがそこには触れず、
清芽は傾げた小首を反対側にした。奇跡て。あの程度で?
そりゃあ幸太は呪々のから揚げを美味しいとは言っていたが………。
――あれ、多分普通にお腹がすいてたから摘んだだけだろ。
奇跡とは程遠い。ただの空腹な少年の行動だ。
から揚げが美味しかったのは邪神だか魔王だかのおかげではなく、
これまた普通に呪々の料理の腕によるものだろうし。


156:コイノロウ(6/15)
08/05/28 11:49:30 wqQgQYV0
色々とツッコミ所が多くてクエスチョンマークが頭の周りを舞っている清芽をよそに、
呪々はなにやらヤル気まんまんだった。

「……今度のお肉は牛ヒレ肉にしてみよう…………もっと効果が上がるかもしれない」

もちろんお弁当のことではない。生贄のことである。
呪る気と書いてやるきと読む。呪々の儀式の効果が証明された今、幸太と親しくなれるか否かは
ひとえにオカルトパゥワーにかかっているのだ。そりゃあ生贄も豪華になるってものである。

「ま、いいか……」

そんな呪々を見て清芽は肩をすくめ、優しく溜め息をついた。
クエスチョンマークはこの際丸投げでいいだろう。
いつも大人しくて引っ込み思案な親友が珍しくプラスの方向にテンションアップしているのだ。
この娘、趣味からは誤解されがちだが人畜無害だし。恋路に水を差すこともないだろう。

「頑張りなよ、呪々」
「うん。がんばる」

ぽんぽん、と頭を撫でてやる。
呪々も素直にこくん、と頷いた。



翌日。
止めておけばよかった。
清芽はセーラー服の上から熊っぽい毛皮を羽織り、幾重にも数珠やらドクロやらロザリオやらをさげ、
火のついたアルコールランプで蟹の甲羅を炙っている呪々を前にして後悔の念に駆られていた。
怪しい。呪々は不気味ながらも、世間一般の常識を持ち合わせていたはずなのに。
少なくともこんな、外に出た瞬間にお巡りさんに下半身タックルで職務質問されそうな
個性的な恰好はしなかったはずなのに。
ああ、ほら、いつもの呪々に慣れているはずのクラスメイトたちが若干いつもより遠い。
この学園はわりかし奇人変人が多いのだが、呪々はその中でもギリギリ
常人の範囲内にいた――なにせ学校での呪々は雰囲気が不気味なだけで
異能というほどのものではなかったので――はずなのに、今日のこの対応はどう見ても変人側のそれである。

「……黒妻さんの仮面、かわいいなぁ………」

しかも、いつも仮面をつけて決して素顔を晒さない謎のクラスメイト、
桐生(きりゅう)さんが仲間を見る目で呪々を見ている!
ちなみに今日の桐生さんの仮面は珍しく露出の多い蝶のアイマスクだ。
仮面の下から覗く肌の細やかさとか桃色の唇とか澄んだ瞳とか、素顔の彼女は結構な美人なんだろうけど。
触らぬ変人に祟りなし、がこの学園における暗黙の了解なので誰も彼女の素顔には触れない。
――そんな、奇異の目で見られるのが日常の変人ロードに入ろうとしている親友を見過ごしていいものか。
呪々は、そりゃあヘンな趣味はあるが――中身は普通の女の子なのである。

「あの……呪々?」
「あ、清芽ちゃんだ」

清芽に気付いた呪々はアルコールランプから蟹を下ろすと仮面を額まであげて微笑んだ。
なんだろう、おかしい。いつものようにまん丸なハイライト処理を忘れたような妙に光沢のない目で
チシャ猫を連想させる三日月口の笑顔なのに、いつもより可愛い気がする。
妙に嬉しそうで――頬も、少しだけ上気しているようだ。


157:コイノロウ(7/15)
08/05/28 11:49:59 wqQgQYV0
「………なんか嬉しそうだけど。どうしたの?」
「うん。呪いがね、順調だから」

呪々は上機嫌だった。
それもそうだろう。昨夜は気合を入れて呪いの儀式に明け暮れて、
いつの間にか疲れ果てて眠ってしまったのだが、なんと夢の中に幸太が出てきたのだ。

「………………………」
「…………………」
「……………」
「え?そんだけ?」
「ふふ」

にこにこしている呪々には悪いが、だからどうしたという清芽である。
って言うかそれ、呪いと何の関係もなくないか?

「それだけじゃないよ。朝ね、学校に来てミニ祭壇の準備をしてたら、幸太くんに挨拶されたの!」

幸太はよお、と、クラスメイトに普通に挨拶しただけなのだが――この恋するオカルトマニアにとっては
天にも昇るような出来事だったのだ。急に近くなった(気がする)幸太との距離。
これはもう、呪術の成果に違いない!というのが呪々的見解なのである。

……呪術の成果、ねぇ――。

清芽は軽い頭痛を覚えてこめかみを押さえた。
清芽的見解を言わせてもらえば、それらは単なる偶然。
というか、不思議なことなど何もないフツーのことに過ぎない。
おかしいのは今の呪々の方だ。明らかに暴走している。
今までは趣味の範囲内と見逃してきたが、教室にまでこんなモノ持ち込むのは常識ある人間のやることではない。
恋するオカルトマニアと優しく微笑んではいられない領域だ。
だいたい、こんな奇行を見せられたら幸太だってドン引きするんじゃあるまいか――。

と、ちらりと幸太の席のほうを盗み見て。

幸太が、なにやらぽぅっとこっちを――呪々を見つめているのに気が付いた。

「え?」

自然と声が出る。
幸太は清芽の視線に気が付くと、慌てたようにそっぽを向いた。
その横顔の、頬がなにやら染まっている。
これは――え?まさか。

「………………………なんで?」

呪々に目を落とす。
呪々は幸太の視線には気付いてないようで、
うんだばだーうんだばだーとわけのわからない呪文を口にしながら蟹を炙っている。
そりゃあこの怪しい女の子を見て気にならない者はいないだろうが
――それで頬を染めるというのはどうなんだろう。
可愛いくなってるといっても、付き合いの長い清芽にして始めて気付くような変化だ。
幸太のような普通の人間からすれば、少なくとも常識的な恰好をしていた
昨日までの呪々のほうが余程魅力的だろうに。


158:コイノロウ(8/15)
08/05/28 11:50:21 wqQgQYV0
………昨日までの幸太が呪々を意識していたなどという記憶はない。
良くも悪くもクラスメイトとして、遠ざけはしないが積極的に近づこうともしない距離にいたはずだ。
それが証拠に、昨日のお弁当の時は呪々を清芽の付属品みたいな言い方をしていなかったっけ。
それが、なんで今日になって。

「………………………呪い?」

呪々は混乱する清芽をよそに、一心不乱に蟹を炙っていた。
その焦げ目を見ながら、うん、と頷く。
亀甲占術。最古の呪術のひとつですね。
それは占いであって直接相手に影響をもたらす呪いとは微妙に異なるような気がしないでもないが、
呪々はなにやら満足そうに焦げた蟹を眺め回している。
そして、そんな呪々をちらちらと見つめる幸太。

「……………………………」

まさかね。



………………………まさかね。

清芽は今日、何度そう思ったかわからない。
幸太である。幸太の様子がヘンなのだ。
どのようにヘンなのかというと、それはまぁ今朝の通り。呪々に気を取られているというか、
呪々が気になっているというか――ええい、呪々を意識している。これに尽きる。

「呪々、あんた何かした?」
「誰に?」
「小岩井」
「………?」

呪々は質問の意図するところがよくわかっていないよう。
幸太の名前を出されてちらりと幸太の方を見て――幸太が、呪々と目が合ってびくっと大きく震えた。
慌ててそっぽを向き、関係ないような顔をしている。バレバレだ。
呪々はというと、幸太と目が合ったのが嬉しいのかちょっと頬を染めている。

「両思いになれますようにって呪いはかけてるけど」
「………いやそういうんじゃなくて」

呪々の『呪い』は人畜無害。それは清芽にはわかっていることだ。
よくテレビや何かだと呪いに見せかけて裏で工作をする、なんてサスペンスやミステリーがあるが、
そんな姦計を巡らせるような腹黒い女の子なら清芽は友達をとっくにやめているだろう。

しかし、その呪いの効果が出ているのは確かなわけで。

なんせ、幸太は授業中にもずっと呪々を目で追っていたのだから。
教科書を広げていても、頬杖をついた視線の先には呪々の姿。
ぼりぼりと頭を掻いて、物憂げにため息とくればこれはもう決まりじゃないか?

「そうなの?」
「あたしが見てた限りでは」


159:コイノロウ(9/15)
08/05/28 11:59:22 wqQgQYV0
それは清芽が授業中ずっと幸太を観察していたということに他ならないわけだが。
誰かに見られていたらそれはそれで誤解されるかも知れない。まぁ、それは置いといて。

「ホントに、何もしてないんだよね?」
「呪い」
「呪い以外で」
「………」

呪々は少し考え込んだ後、ふるふると首を振った。

「謎だ」

腕を組む清芽。幸太が急に呪々を意識し始めたのは知る限り今日からだ。
心当たりは……ない。
ないけど。

「なんだろ?何か忘れてるような」

清芽は首を捻った。
そして呪々はというと。

「………そっか。呪い以外でも頑張らなくちゃ」

なにやら胸の前で拳を固めている。
――そしてその間にも、幸太はぼうっと呪々を見つめていた。



うんうん唸って考えたあげく、放課後、呪々は思い切って幸太に挨拶することにした。
ばいばい、小岩井くん。
………それだけ。
呪々を責めないで欲しい。彼女はオカルトマニアだけど基本的に引っ込み思案で恥ずかしがりやなのだ。
それが証拠に、たった一言挨拶するだけなのに、呪々の小さな胸はこんなにも激しく脈打っている。
どくん、どくん、どくん、どくん。
耳元で鼓動が鳴り叫ぶ。あまりの音量に、幸太の耳にも届くのではないかと心配になるほどに。
恥ずかしい。でも、頑張れる。なにせ自分には呪いの力があるのだ。今、絶好調なのだ。
これから少しずつ仲良くなって、いつか――本当にいつか、好きだと言えるような関係になるのだ。

呪々は精一杯の笑顔をつくり、言った。

「ば、ばいばい――小岩井くん」
「……………………」

幸太は、一瞬だけ立ち止まると、

呪々と目も合わせずに、すっと行ってしまった。

「――――…………ぁ、え」

一瞬、何が起きたのかわからない。
目を瞬かせて、後ろを振り返って、幸太の後姿が廊下に消えていくのを確認して
――急速に全身の血が冷えていくのを自覚する。

160:コイノロウ(10/15)
08/05/28 12:00:31 wqQgQYV0
『無視された』。

その事実が、万物を凍結させる冷却材となって呪々の頭をぎりぎりと締め付けた。
何で?どうして?
清芽だって言っていた。
呪いはあんなにうまくいっていたのに――。
反動か?なんのリスクもなく呪いを使おうとしたのが間違いだったのか。
悪戯に運気を弄ぶような真似をしたから、罰が当たったのか。
わからない。

下校を促す鐘の音が、すごく、すごく遠くから聞こえた気がした。

傍から見れば、きっとなんてことない。
ほんの少しの、些細なすれ違い。
だが、恋するオカルトマニアにとって。
好きな男の子は世界の中心である。

「お待たせー、呪々。………呪々?どうしたの?」

用事を済ませて教室に戻ってきた清芽の声も、聞こえているのかいないのか。
呪々はただでさえ白い顔を蒼白にして、ふらふらと幽鬼のような足取りで家路についた。

「………?」

昼間でのはしゃぎようとあまりに差のある火の消えたような呪々の様子に、清芽は訝しげに眉をひそめた。



「………………………」

頭が痛い。
鉄でもガラスでも、熱した状態から急激に冷やすと罅が入るというが、人間の心もそうなのだろうか。
呪いが成功し、幸太とわずかでも触れ合うことができて高揚していた心が、たった一回の拒絶で反転している。
どこか自分に非があったのだろうか?知らない間に、幸太にとって不快なことをしていたのだろうか?
――わからない。
ぐるぐると思考が回る。螺旋を描くように、深く、深く地面を抉るように。
どうしよう。どうしようもない。どうすればいいかわからない。
建設的な考えは何も浮かばなかった。ただ、どんどん沈んでいくような感覚に立ち上がることもできない。

普段なら――こういうとき、何をどうして気を紛らわせたっけ。


呪いが実在するのかどうか――それについては、現代の科学をもってしても明確に答えることはできない。
だが、迷信、言い伝え、ジンクスと呼ばれるものならば。
つまらないものと切って捨てることは容易だが、その裏には結構信用に足る解釈が隠されているものだ。
たとえばエジプトの有名なピラミッド。王の財宝を荒らすものにはミイラの呪いが降りかかるとされる
アレなんかは、実のところピラミッドという密閉された空間に保存されていた
未知の――古代の病原菌によってもたらせられる病なのではないか、という説もある。
王の財宝を荒らすものに呪いあれ――。
それが言霊となって印象付けられることにより、盗掘者や考古学者たちは
『病気』ではなく『呪い』によって死んでいくと解釈されるというわけだ。

呪いの本質は言葉にある。


161:コイノロウ(11/15)
08/05/28 12:01:39 wqQgQYV0
呪いという言葉がプレッシャーとなり、降りかかる不幸を呪いと関連付けて考えるようになるのだ。
本当はなんでもないことなのに、これは呪いのせいだ、と受け取ることによって
その人にとってはけつまづいた自分の不注意ではなく、呪いの影響で運気が下がっていることになるのである。
それは『掛けられた側』ではなく『掛けた側』も同じであり、
呪った相手に不幸が訪れるとしめしめ、呪いが効いたなと思ったりする。
しかしそれが偶然の出来事なら別に呪わなくても相手は不幸になったろうし、
必然ならなおさら呪いなんか関係ない。
なのに呪いの成果と信じられるのは、つまるところ言葉によって思考が停止していることに他ならない。
それこそが呪いと名付けられた言霊の力なのである。

本質的な意味での『呪い』など、そんなものは存在しない。
念じただけで相手に影響を及ぼすような、そんな便利な能力があるわけがない。
意思はすべからく、行動によって始めて力と成す。
それが――少なくとも、呪々のような普通の人間の常なのだ。

しかし、呪々は信じていた。もともと不思議なこと、非科学的なことが好きなタチであり、
自分には男の子に好かれるような魅力などないという自虐が根底にあることも手伝って、
幸太が自分にしてくれることは全て呪いの成果によるものだと信じていたのだ。

それが良いことであろうと――、

――悪いことであろうと。

「―――………」

たとえ呪いの代償が我が身に降りかかってこようとも。
呪々に頼れるのはやはり、呪いしかないのだった。



漆黒のマントが翻る。
つばの広い、先っぽの折れたとんがり帽子。
脚には学校指定のハイソックス。

それが現在、呪々の身に着けているもの全てである。
嬉しい時は感謝を込めて、悲しい時は願いを込めて。
何度も何度も繰り返した儀式の礼装。
ただし、今回のそれは今までの儀式とは少し違っていた。
照明代わりの蝋燭に火が灯っていない。雰囲気を出すための小道具であるところのアロマも、
オリジナルの呪文を延々と吹き込んだデッキも今日はなし。呪々が生贄と呼ぶスーパーで買ってきた生肉も、
おどろおどろしさを演出する『生き血』のトマトジュースも、『祭壇』――布をかぶせた机の上には乗っていない。
あるのは呪々の身体ひとつ。
随分と投げやりで、手抜きの儀式であった。

「………………」

……だって、本当は呪々だって知っているから。
この行為には何の意味もない。
単なる気休めなのだということを。

「――ふぅ」


162:コイノロウ(12/15)
08/05/28 12:02:47 wqQgQYV0
ひた、と小さな手がすべすべとした肌の上を滑る。
幼さの残る肢体。呪々のコンプレックスでもある未熟さは、
しかし熱っぽく、指先が伝う度にぴく、ぴくと小さく震える。
目を閉じる。まぶたの裏に、大好きな彼の姿を幻視する。
明るくて優しい彼は、想像の中では呪々だけを見てくれていた。
その大きな掌で、呪々の心を包むように胸元をなぞる。
平らといってもいいほどの凹凸のないそこの中心、一際敏感になってしまっている突起に触れた。

「くぅっ」

思わず出そうになった声をかみ殺す。
いけないことをしている。やめなくちゃ――でも、止まらない。
まるでほんとうに、幸太に愛撫してもらっているようだ。恥ずかしくて死んでしまいそう。
瞳の端に涙を浮かべて、しかし呪々の手はどんどん動きが大胆になっていった。
こりこりと硬くしこってきた乳首を摘み、擦る。
痛みを感じるほどに引っ張って、指の腹で転がすようにさすって。
ぴりぴりとした快感が弾けて、自分の中で何かがどんどん高まっていくのがわかる。

熱い。
芯から、身体が熱くなってくる。
その熱はお腹の――下。女の子の大切なところに集まっていく。

「………はぁ、はぁ、は――」

呪々はまるで操り人形になってしまったような動きで、のろのろと自分の下腹部に手を伸ばした。
指を這わせた縦筋は、なんだかびっくりするくらい濡れていた。
身体が幼いなら性器も幼い。小学生半ばからほとんど成長のないこの身体は、
それでもしっかりと『女』を感じることができていて、こうして幸太を求めて恥ずかしい汁を垂れ流す。
そんなとき、想像の中の幸太は意地悪く笑って呪々をからかうのだ。
熱に浮かされた頭で、幸太が呪々のその部分から溢れた蜜を掬い、粘ついた液を見せ付けるところを想像する。
つうっと銀の糸が指と指とに橋をつくり、ぽたりと垂れてお腹の上に落ちた。

こうやって幸太と身体を重ねるところを想像して自分を慰めるのは初めてのことではない。
いや、実際のところ数えちゃいられないくらいの回数はこなしている――ように思う。
おかげで呪々の中の幸太は何をどうすれば呪々が切ない声をあげるのかすっかり知り尽くしてしまっていた。
かなり恥ずかしいが、まぁそれも仕方がない。
これは呪々なりのオリジナル呪法――と、いうことになっているのだから。
今日は気分が沈んでいたのでかなり準備が雑だったが、
本当は普段の儀式のように蝋燭に火をつけたりお香を焚いたりする。
ようは、幸太の生霊だかなんだかを呼び出して抱いてもらう――そして幸太の魂が身体に戻るとき
その記憶は消えてしまうのだけど、呪々を抱いた事実が深層心理に働きかけて呪々との距離を縮めることになる
――という面倒くさい設定を持った儀式なのだが、
言ってしまえば自慰という恥ずかしいことをする理由付けのようなものだ。
儀式なのだから仕方ない。その程度のものに過ぎない。

………でも、それもどうでもいい気分だった。
今はそんな建前など忘れて、ただ好きな男の子に愛されるユメを見ていたい。

僅かな毛さえ生えていない未熟な秘所を、何度も擦る。
その度に熱い吐息が声帯を震わせて、自然と喉の奥から生臭い声が漏れる。

幸太くん。
幸太くん。
幸太くん、幸太くん。
幸太くん、幸太くん、幸太くん幸太くん……。


163:コイノロウ(13/15)
08/05/28 12:04:01 wqQgQYV0
何度も何度も彼の名前を呼ぶ。
返事はない。想像の彼はにっこりと微笑んでくれるけど、優しく名前を呼んでくれるけど。
本当は――目の前に彼の姿はないし、鼓膜を震わせるものは寂しい少女のあられもない声だけだ。
愛しくて、寂しくて、呪々はますます小さくなってしまいそうだった。
呪々のから揚げを美味しいと言ってくれた幸太。
呪々の消しゴムを拾ってくれた幸太。
おう、おはよう黒妻と挨拶してくれた幸太。
教科書見せて、と授業中肩と肩が触れ合うくらいに近づいてきたときは、本当に死んでしまうかと思ったものだ。
どうして無視されてしまったんだろう?答えはない。その答えが何よりも恐ろしい。
常識で考えればわかることだ。こんな暗くて、ちんちくりんの女の子なんか嫌いになって当然だから。
ただ、それを――幸太に言われてしまったら、きっと、自分は生きていけないと思った。
だから今、こうして自分を慰めているのだ。
くだらない呪いに望みを託して、浅ましく快楽を貪っている。

胸がくるしい。
呪々は泣いていた。
泣きながら、自分を慰めていた。
恋するオカルトマニアはただの少女になって、
愛しいひとの名を呼びながら、果てた。

「――こうた、くん……」

その声が届かないことを、呪々はちゃんと知っていたけれど。



昆虫の羽音のような低いバイブ音が響き、くったりと弛緩していた呪々はびっくりして跳ね起きた。
携帯電話だ。
鞄の中に放り込んでそのままになっていたそれを――濡れた手はティッシュで乱暴に拭いて、つまみ上げた。
液晶画面に浮かび上がった相手の名前は――。

「……清芽ちゃん?」
『あ、もしもし?呪々?』

おせっかいで優しい、一番の友達のものだった。
コールに出てしまってから少しだけ後悔した。
呪々は今さっき自慰で果てたばかり。身体がだるくって何をするにも億劫な状態だ。
清芽のことは好きだけど、この元気さに付き合えるのも時と場合ってものがある。

「……ごめん、清芽ちゃん。ぼく、今」
『いや、すぐ終わるから!ちょっとだけ聞いて!』

なんだか清芽は興奮しているようだ。いつもより1.5倍くらいテンションが高い。
呪々は面倒くさそうに聞き返した。

「なに?」
『呪々さ。今日の帰り、小岩井にシカトされたんだって?』
「………………」

何も言わずに通話を切ろうかと思った。
そりゃあ事実だ。幸太に無視されてしまった。だから呪々は落ち込んでいるのだ。
恋するオカルトマニアの世界は好きな男の子の態度ひとつで簡単にくるくる表情を変えるのだから。
でも、その事実をわざわざほじくりかえすことはないんじゃないかなぁ?
だいたい、そのことを一体誰から清芽は聞いたのか。もちろん呪々は言ってない。


164:コイノロウ(14/15)
08/05/28 12:05:09 wqQgQYV0
………ん?と、言うことは。

『いや、呪々の様子がおかしかったから小岩井に電話してみたんだけどね。まぁ、ビンゴだったわけだけど。
 それで、呪々。話変わるんだけど、例のラブレター今持ってる?なくしたんじゃない?』

ラブレター?
呪々は少し考えて、すぐ気が付く。あの黒いラブレターのことか。
呪々が一生懸命書いて、呪いを込めて黒く塗りつぶして、でも恥ずかしくて渡せなかったあのラブレター。
……あれ?
そういえば、あれ、どこへやったっけ。
一番最後に見かけたのはこの間の昼休み、清芽に見せて――幸太がから揚げを褒めてくれて、呪々が倒れて。
………………………。
…………………。
……………。
………片付けた覚えがない。

『あれ、小岩井が拾ってたらしいんだわ。あたしが呪々を保健室に連れて行ったあと、
 なんじゃこりゃあって感じで』

――。

「えぇぇぇぇええええええぇぇぇぇぇ!!!?」

呪々は絶叫した。
あんまり大きな声が出せない呪々だけど、今回ばかりは絶叫した。
あれを?幸太が?拾った?ウソ。え、嘘!?

『で、裏に小岩井幸太くんへって書いてあったから、まぁ拾った手紙読むのもアレだったけど自分宛だし、
 興味が勝って結局その』
「………読んじゃったの?」
『うん』

呪々は気絶した。気絶して、二秒ほどして意識を取り戻した。
もう夏が近いとはいえ、限りなく全裸に近いこの恰好で朝を迎えたら風邪を引いてしまう。
それに気絶している場合ではない。
読まれた。あの、黒いけど内容は普通に恋を綴ったラブレターを。
………………。
ぷしゅう、と一瞬にして脳味噌が沸騰する。
赤くなったり青くなったりしている呪々を知ってか知らずか、清芽は続けた。

『――で、まぁそういうわけ。読んで、呪々のことが気になってたんだけど、
 面と向かって声かけられたのにびっくりしてつい、そのまま帰っちゃったんだって。
 悪かったって言ってたよ。ああ、それから明日、放課後ちょっと残って欲しいらしいんだけど。
 ――呪々、もちろん予定はないよね?』

清芽の声のトーンが若干高くなっている。にやにやとした顔が目に浮かぶようだが、
呪々にはそんなことを意識している余裕はなく、あまりの展開の飛びっぷりに目を白黒させている。


165:コイノロウ(15/15)
08/05/28 12:06:15 wqQgQYV0
待て待て待て待て。
と、いうことは、何か。
呪々は、幸太に嫌われたわけではなかったということか?
そして――なんだって?放課後?残ってくれ?
ラブレターで告白された相手にわざわざ――そんなことを伝えるということは。
え。え。え?
ど、どういうこと?

『………ま!ここから先は若いもん同士でよろしく!!って感じ?あたしからはそれだけ!
 それじゃあ呪々。明日、頑張りなさいよ!!』

それだけ言って、清芽は一方的に通話を切った。
と、思ったらメールが来る。女の子らしい、やたら顔文字の多い激励メールだ。
本当に、おせっかいで――優しい、親友だった。

「………………」

呪々は――目を瞬かせた。
未だに現状の把握ができていない。
どうしてこんな、奇跡のような出来事が起きたのか、さっぱりわからない。

わからない?

そんなことはない。
呪々はその原因を知っているはずじゃないか。
たとえ幸太に想いを伝えたのが、呪々が一生懸命書いたラブレターだとしても。
たとえラブレターを幸太が拾ったきっかけが、呪々のから揚げに釣られて空腹の幸太が寄ってきたことであったとしても。
たとえ幸太に惹かれたオカルトマニアが、ただの小さな女の子だったとしても。
奇跡なんかじゃない。不思議なことなんて何もない。どこにでもあるような恋の物語でも――。

これは――きっと、呪いがきいたのだ!
呪々の恋するオカルトパゥワーが奇跡を呼んだのだ!!
そうだ!そうだ!きっとそうに違いない!!!!

呪々は混乱の極みの中、握り拳をつくって立ち上がった。

ハイル・オカルト。
ジーク・オカルト。

とりあえず、明日の放課後は呪術礼装であるこの恰好で!!



              コイノロウ~新ジャンル「オカルトバカ」妖艶伝~ 完



166:名無しさん@ピンキー
08/05/28 12:39:45 bLBd2mtb
リアルGOD JOB!!!

しかし凄え、短編も長編もレベル高い……

あんたにならほら(ry

167:名無しさん@ピンキー
08/05/28 18:45:44 4qVxwQ8j
長編GUJ!短編GJ!

>>146
読みながらニヤニヤしてしまったw


168:名無しさん@ピンキー
08/05/28 21:30:51 Ush/MuQM
ジャブの嵐のあとに本命のストレートって感じだな
魔女ルックに靴下だけ装備する呪々のセンスにGJ!
そしてさりげなく出演してる某アサシンデレと某へっぽこ魔王にさらにGJ!

169:名無しさん@ピンキー
08/05/28 23:26:15 nTFUtX1K
久し振りにキターーーーーーーーーーーーーーーーー
無口オカルトの次は勘違いオカルトかい?
かわええのぉコノヤロウ!
そしてタイトルを『コノヤロウ』と読んだ俺の頬を音高くパンチしてくれ!

はぐぅっ

なかなかいいパンチじゃねぇかコノヤロウ…orz

要するにこう言いたいのさ
やられたぜGJ!



170:名無しさん@ピンキー
08/05/30 22:06:14 slRtkOh7
男「もぐもぐ……」
女「なに、アンタまたパンなの?」
男「うん。ツナサンド」
女「男のくせに小食ね!ほら!」
男「……なんだこの弁当」
女「あ、あげるわよ!」
男「えー、いいよ」
女「いいの!どうせ余っちゃったやつだから!か、勘違いしないでよね!
  朝、作りすぎちゃっただけなんだからねっ!」
男「いや、いいって。まだパンあるし」
女「………」
男「もぐもぐ……」
女「………」
男「もぐもぐ……」
女「………すん」
男「もぐもぐ……」
女「……な、泣いてなんかないんだからねっ!」
男「はぁ」


新ジャンル「報われないツンデレ」

171:名無しさん@ピンキー
08/05/30 22:17:35 slRtkOh7
追加


男「おーい、友ー」
友「ん?」
男「女が弁当余って困ってるんだって。食ってやれよ」
友「え?いいの!?」
女「な、ちょ……!何勝手に……」
男「え?作りすぎて余ってるんだろ?」
女「………あ、う……」
友「いやー、悪いね!ラッキー、飯代浮いたぜ!」
女「あ、あ……」
男「パン食ったし、図書室で昼寝でもしてくるわ」
友「もぐもぐ!」
男「口にモノ入れたまま喋んな」

ガララ ピシャン

女「………」
友「もぐもぐ」
女「………」
友「もぐもぐ」
女「………う…」
友「いやぁ、美味いよ!女ちゃん!」
女「………うわぁぁぁぁん!!」


172:名無しさん@ピンキー
08/05/30 23:18:31 TlxyT4to
>>170-171
全俺が泣きながら萌えた・・・(つд`*)

173:名無しさん@ピンキー
08/05/31 22:12:37 e5sw4H1C
いやー、でもツンデレってこんなもんじゃね?

174:名無しさん@ピンキー
08/05/31 22:16:32 CamhcvkE
だな。
リアリティー考えると、こういう感じになるだろうなぁ・・・。

次は是非新ジャンル「へこたれないツンデレ」で。

175:名無しさん@ピンキー
08/05/31 23:49:59 wJw+C8SI
ぼく、リアリティーのはなしをするひと、きらいだな

176:名無しさん@ピンキー
08/06/01 03:06:02 RIYq+fEr
豆田貴子が構える狙撃銃の、スコープ越しに写る少女の笑顔。
自分の愛する男の、双子の妹。将来は義妹となる彼女とは良好な関係を築きたいとは思っていたのだが…。
彼女に微笑みを向けているであろう少年の笑顔を想像し、嫉妬の炎を滾らせながら改めて標的を睨み付ける。
『春樹さん……。……ルカさん、覚悟!』
引き鉄にかけた指に力を込め、射撃する。
そしてサイレンサーを通じて音も無く放たれた弾丸は、いつも通りに標的を貫く………ハズだった。
「……何故?」
飛翔した弾丸はルカから大きく逸れ、通路を挟んだ向かい側の木の幹を微かに抉ったのみだった。
改めて狙いを付け直し、再発射するものの、今度は植木の葉っぱを打ち落とすのみ。
脳内に数多の疑問符を浮かべつつ、今度は適当な生垣の花を狙い発射。
今度は狙い通りに椿の花…しかも花弁を一枚のみを打ち落とせた。
『照準は狂っていない……。何故外れたのか判らないけど……これなら!!』
もう一丁用意しておいた突撃銃。
サイレンサーの具合を検め、セレクターレバーをセーフティーからフルオートモードに切り替え、斉射。
今度は春樹もろとも気絶させる可能性があるが、仕方ない犠牲と心の中で謝罪する。
まぁ姉の陽子と二人掛かりなら、春樹を連れてこの戦場を離脱することも可能だろう。
……しかし。
『…馬鹿な。』
1マガジン20発の麻酔銃を打ち込んだにも関わらず、何事もなかった様にいちゃついている二人。

認めなければならない…。何の手品か奇跡かは知らないが、標的の青山春香に対しては飛び道具は通じないようだ。
『そういえばダンボール愛好家の工作員が言ってた…。
 ……ライフルやグレネードすら通用しない、幸運の女神の名を持つ女戦士がかつて居た事を。』
しかし、今の相棒はなにより肉弾戦を得意とする者…。彼女なら、この戦局を打開できる。

『お姉ちゃん…。狙撃に失敗、接近戦を開始して。』
しかし、彼女からは返事は無い…。双眼鏡を姉の方に向けると…。
『…ね、寝てる?…!まさか、流れ弾で!』

これは見事に作戦失敗としか言いようがない。
…こんな所で爆睡している姉をこのまま放置しておけば、今回のデートを阻止できるだろう。
春樹が姉を連れて帰るという形で…。…それもそれで腹が立つ。
『…お姫様抱っこの二回目は無い。お姉ちゃんを回収して、出直す。』

しかし、撤退を行う前に一仕事だけはこなしておく。
撤退の合図の橙色の信号弾…。

「あれ?ハル、花火上がってない?」
「そうだな。でも、一体何なんだろうな?」

自分たちの連絡ですら、スウィートな話題の一環にされてしまうこの悔しさ…。
『春樹さん……。浮気する旦那様は、後でお仕置き………。』
「……ぅうう~ん。春樹ぃ~~。」
「………くっ!!」
額に青筋を浮かべながら、幸せそうに眠りこける姉を引きずりつつ退場する豆田貴子。
I'll be backと、堅く心に誓いながら…。

新ジャンル「Fotune 幸運の女神」新醤油学園野望編

177:名無しさん@ピンキー
08/06/01 03:08:37 RIYq+fEr
「せい!!」
遠山理菜の手元から放たれた飛び苦無。
「たぁ!!」
もっとも、黒田夕圭とて大人しく殺られるつもりもない。
ベルトに押し込んでいたトンファーでなぎ払う。
「へぇ~。貴女、得物も扱えるの?…なら私も!」
懐から忍び槍を取り出し、再度構えなおす理菜。
『豆田姉妹はあっさり撤退…か。…彼女達を過剰評価してたみたいね。
 距離をとってチマチマやるのも時間が惜しいし…。一気にカタを着ける!!』
一方の夕圭の方も、戦いを楽しむ余裕などまるで無い。
『真智子ちゃんに、豆田姉妹…。いつまでも彼女相手に手間取る訳には!!』
囲炉裏が春樹の布団で眠っていることも、豆田姉妹が撤退したことも今の彼女に知る由は無い。
裂帛の気合が周囲を包んだとき、少女たちは文字通り火花を散らしあっていた。

そんな殺伐とした空気とは全く無縁な二人の姿。
ルカお気に入りのスポットである池のあるエリアは、水鳥が優雅におよぐ平和そのものな光景であった。
そこでルカはとある提案をする。
「えへへへへ。お腹空いたし、そろそろお弁当にしようか?」
「ああ。そうだな。」
本日の昼食は珍しくルカ謹製のサンドウィッチ。
彼女も料理はできるのだが、如何せん朝に弱いために豆田姉妹のように早朝の台所に立つことができない。
そして放課後も部活に参加しているため、ルカが作った料理もかなり久しぶりだったりする。
それでも春樹は思う。これは良い仕事をしていると。
『ベーコンとレタスとチーズ…。定番だけど良い取り合わせだよな。
 こっちは鶏ハムに玉ねぎと春キャベツでマヨネーズの味付け…。…この組み合わせ、サラダで試させてもらうか。』
なにより自分と味の好みがほぼ完全に一致している。

やがて、二人前の弁当を二人で平らげると、春樹に擦り寄ってくるルカ。
「ねぇハル、膝枕、してあげよっか?」
春樹の方は戸惑うしかないだろう。
普段の休日は正午を廻らないと起きて来ない妹が目覚ましなしに目を覚まし、弁当の準備までこなしていたのだから。
しかも、何か妙に気合が入っている。普段から見慣れているルカの顔なのに、薄化粧している為かより可憐に見える。
「お、おい…。そこまでしなくてもいいぞ?そういうのは彼氏とか、大切なヤツが出来た時まで取っておいていい。」
しかし春樹の返答に、ルカの太陽のような笑顔は曇りだす。
「ハル…。何も判ってない…。」
「ルカ?」
「私の大切な人はハル一人だけなの!」
「お、おい?何を…むぐぅ。」
一気に距離を詰められ、ルカに抱きしめられる春樹。そして強引に唇で塞がれる口。
触れ合った頬の隙間を彼女の涙が伝った事で、春樹は妹の覚悟を思い知る。

「好きなんだ、ハル…。きっと、生まれた時からずっと…。それに、これから先もずっと好きだから…。」
唇を離し、そうつぶやくルカ。
血のつながった妹の、しかし男を誘う女の目をした彼女に対し、春樹は明確な返答を返せずに居た。

新ジャンル「ブラコン妹 突貫」新醤油学園野望編

178:名無しさん@ピンキー
08/06/01 11:26:28 qCVNquwG
急展開だけどとりあえずスネークに吹いたw

179:名無しさん@ピンキー
08/06/01 23:29:27 dyI9Xkp4
麻酔銃とはいかなる物なのか?

『麻酔薬の入った注射筒やダート(矢)を発射する銃。拳銃型とライフル型が存在する』
と某百科事典には記載されている。

失態に我を忘れたのか、弾の回収を怠った貴子。
麻酔薬は貴子特製の薬であり、後遺症なしにスッキリ目覚めの優れ物である。

ある意味、物凄く危険な置き土産。その内のひとつが、膠着状態の戦いに決着をもたらす…


忍び槍とトンファーで激しく打ち合う理菜と夕圭だったが、理菜が大きく跳んで距離を取る。
「奥儀・乱れ吹雪っ……はぁ―っ!!!!」
理菜は渾身の力を籠めて苦無を投じる、しかも八本も。
「くっ!!やらせるか!!」
が夕圭も達人級の腕前、全ての苦無をトンファーで弾き飛ばす。
「ちっ…あれをしのぐとは……。黒田夕圭…流石ね!!」
「そう言う貴女こそ……只者じゃないわ…」
お互いを認めあう二人の少女。戦いはまだ続くと思われた、その時。

「は、ハルぅ―!!」

公園内に響く少女の声。二人の戦っている、すぐ近くから聞こえてきたその声は……

「ルカの声!?まさか春くんに何か!?」
「春樹くんに!?」


一体、春樹に何がおこったのか?夕圭と理菜の二人が青山兄妹に駆け寄ってみると……

春樹が大の字になって倒れていた。


180:名無しさん@ピンキー
08/06/01 23:31:32 dyI9Xkp4
「ルカ!!春くんはどうしたの!?」
「理菜!?…それに夕圭ちゃんまで!?」
ルカの目が険しくなる。
「…どうして二人がここにいるのかな?」
「る、ルカちゃん…説明は後でするから…それより春樹くんが…」
「ああっ!?は、ハルがいきなり『痛え!!』と言って倒れて!!」
夕圭はざっと春樹の体を見渡す。
「えーと…わっ、たん瘤が出来てる…!!『首に針の痕!?』」
微かにうなじの所に針で刺した様な痕が残されている。
『呼吸、脈に影響は見られない。…となると麻酔薬か何かで眠っているだけか』

ふぅと夕圭はひとつ息を吐く。
「大丈夫みたいよ…ただ気絶してるみたい」
「でも何で春くんが気絶をしたの?」
「ああ、多分…」
「……これなぁに?」

ルカがあるものを発見した。
「あっ!!それ私の苦無じゃん、なんで…」
「…これが多分落ちてきたんだよね…となると……ハルが気絶したのは…理菜のせい?」

キギッ

首を理菜の方へ向けるルカだが…
「る、ルカ…さん?……ひょ、ひょっとして…」
「怒ってるわよ」
口許は歯を見せているものの、目が尋常じゃなく血走っている。
「あ、あの…わるいとは…思って…」
「許すと思う?」

次の瞬間。
猛ダッシュで逃亡する理菜と、陸上部エース・ルカの追跡劇が始まった。
「ひぃ――っ!!!!」
「待ちなさいよ――、オラァ――ッ!!!!!!」


その場に残された夕圭。
『おそらく、私が弾き飛ばした苦無が春樹くんの頭に落ちる
→痛みで春樹くんが下を向いた→麻酔弾が当たる→春樹くんが気絶…』
『ルカちゃんと遠山理菜は暫く戻らない。真智ちゃんも見当たらない』
『麻酔弾から豆田姉妹が近くに潜んでいるのは確実、場所を移動しないと春樹くんが…』
『そして、ルカちゃんにあげたシティホテルの券は、私も持っている』


夕圭の脳内で様々な情報が分析され、出した結論とは。

『ごっつぁんです』

夕圭は春樹を背中に背負い、足早にある方向を目指した。
シティホテルの方へ。


181:名無しさん@ピンキー
08/06/01 23:34:15 dyI9Xkp4
一方その頃。

「お姉ちゃん…じゃないトウバンジャン。後で必ず回収するから…」
豆田貴子は事態の経過を無視できず、倒れた姉を安全な場所に避難させ、再び公園へ戻る。
(本音は姉が重かったのと春樹が気になった)

「……あれは!?」

とっさに物陰に隠れた貴子の横を、逃げる理菜と追うルカが駆け抜ける。
「…いったい…何が?」
呟いた貴子だが、すぐ重要な点に気付く。
「…!!…春樹さんのそばには誰もいない!?」

貴子は知らない。自分の弾で春樹が眠ったこと、春樹のそばに「くされおっぱい魔人」
黒田夕圭がいることを。

「…私のチャンス…未来の旦那様に……ムチと…アメを…」

物騒な事を呟くと、貴子は疾走する。春樹というお宝奪取の為に。


シャー……

水の流れる音がする。
春樹は目を覚ました。
「…ん、……へんな夢を見たなぁ…ルカにマジ告白され……って俺の部屋じゃねぇ!?」

あわてて辺りを見渡す。
「…なんというか…ホテルっぽい部屋だ」
「あら?お目覚め?」
聴き覚えのある声。
「おう、黒田。ここはどこな…(ベフン!!)」
春樹の視線の先には夕圭の姿。ただし、バスタオル一枚纏っただけの。

「くくくくろだぁ!!!」
「ん?どうしたの、変な声だして」
「お前がそんな格好してりゃ出したくなる!!」


182:名無しさん@ピンキー
08/06/01 23:37:44 dyI9Xkp4
夕圭は自分の胸を見た後に春樹へと笑いかける。
「…春樹くんのエッチ」
「おまえがそんな格好してるのが悪い!!」
「…だって春樹くん背負って汗かいたし。仕方ないでしょ」
にやにや笑う夕圭。
「それともタオルが無い方が良かった?」
「おま…(タラリ)…あ、いかん鼻血が……」

経験値の低い春樹がピークに達し、鼻血が出てきた。ティッシュを探す春樹に夕圭が近付き…

じゅるっじゅるっ

「!!!!…ば、馬鹿!!な、何を!?き、汚いから辞めろ!!」

夕圭が春樹の鼻へ舌を伸ばし、鼻血を吸って舌で舐めとった。

「あは。しょっぱい」
「な、何を考えてるんだよっ!!汚いだろ、鼻血なんて!?」

「…汚くなんてないよ。春樹くんのだもん……」
「えっ!?」
夕圭の口許には笑みがあるが、目は真剣な色を浮かべている。
「私の…大事な人の物だもん。全然気にならないよ」
「黒田……」
夕圭はバスタオルから手を放し、春樹に抱きつく。
当然タオルは体からずり落ち、春樹の胸に夕圭の爆乳の感触がダイレクトに伝わる。

「だいすき。春樹くんになら………いいの」
夕圭は春樹の唇へそっと口付けをする。

「……二度目だけど。前のは事故だし…これが私の気持ちだよ…」
春樹の頭に霞がかかる。
『いい…におい…だ……もう…がまん……』

新醤油学園 青春編
「バトル決着!?」


183:名無しさん@ピンキー
08/06/02 20:04:28 lEQs9YtE
はるくんスッゲーハードなスケジュールだな

184:名無しさん@ピンキー
08/06/03 01:33:11 XtI8cR30
女「どうせ男はわたしの事なんとも思ってないんでしょ!」
男「いや…そういう事じゃないんだが」
女「嘘!あなたはわたしを女として見て無いわ!分かってるのよ!」
男「いやー…それは…そうだけど」
女「やっぱり!やっぱりそうじゃない!わたしが機械(マシーン)だからなのね!」
男「いや…お前ミシンだし」

新ジャンル「ぼくの彼女は裁縫具」


185:名無しさん@ピンキー
08/06/03 03:23:53 Lil4UXhS
男「昔……といっても10年かそこらの話なんだが、パラサイト・イヴというホラー小説があってな」
女「ゲーム?」
男「いや、小説。ゲームの元になったんだよ」
女「ふむふむ」
男「人間が細胞の中に持ってるミトコンドリアが、突然変異を起こして人間に反旗を翻すっていう話だった」
女「怖いね」
男「怖いって言うより、ピンと来なかった。専門用語満載だったし、ガキだった俺にはちょっと難しかったから。
  ――で、反乱を起こしたミトコンドリアは主人公の嫁さんの細胞だったんだが、
  劇中でそのミトコンドリアが主人公を襲うんだ。性的な意味で」
女「………へぇー」
男「反乱のミトコンドリアは人類の枠から外れて自分たちだけで繁栄しようとしたのさ。
  そして、進化の最後の胤(たね)として主人公を選んだ。逆レイプシーンなんか、圧巻だったなぁ。
  当時毛も生え揃ってなかった俺がどんだけお世話になったか」
女「ほぉ」
男「でもなぁ」
女「うんうん」
男「顕微鏡でしか見えない彼女はいらんわ流石に」
女「えー」

新ジャンル「ぼくの彼女は細胞」

186:名無しさん@ピンキー
08/06/03 03:33:34 Lil4UXhS
男「女ー、草だぞー」
女「ブモー」
男「美味いか。そーかそーか」
女「ブルル」
男「今日も女のツノは立派だなぁ」
女「ブモーブモー」
男「あっはっは。じゃれるなじゃれるな。死ぬ。マジ死ぬ」

新ジャンル「ぼくの彼女はサイ」

187:名無しさん@ピンキー
08/06/03 09:20:21 4crEPhlo
カオス過ぎてフイタwwwwww

188:名無しさん@ピンキー
08/06/03 18:24:56 ooT9pBAM
>>184
( ´w`)<わかります

189:守ってあげたい
08/06/04 23:35:55 +7GykXr/
「はぁ、はあ、はぁはぁ」

あなたの熱い吐息が聞こえる。
わたしの中であなたの体温を感じる
凄く熱い

あなたがわたしの中で暴れる度にあなたを感じる。
なんて激しい

あなたの所為でわたしの中はもうぐっしょりと濡れている。
あなたも感じるでしょう?
それともそれも感じないくらい昂ってるのかしら。

待ってた
あなたの様な人が現れるのをずっと待ってた
ずっと

今迄何人かの男達を受け入れて来た
でもみんな駄目だった

あなたこそ男
わたしが受け入れるべき男
わたしが包むべき男
わたしが守るべき男

だから安心して暴れて

あなたはわたしが守るから
あなたを傷つけるものから守るから

そうあなたは誰にも負けない



男「せぃっ!」
主審「一本!そこまで」
(歓声)
後輩「先輩!やりましたね!今回も全部一本勝ちですよ!」
男「はぁはぁ…ああそうだな」
後輩「あ、それ外しましょうか」
男「いや、このままでいい」
後輩「また例のジンクスですか?」
男「まぁな、これ着けてると負ける気がしない。それに…なんか妙に落ち着くんだこいつと居ると」
後輩「へぇ?まぁいいですけど…」

男(それにどうせ試合が全部終わるまで絶対に外れないしな、コイツ)


絶対に勝つ
わたしがあなたを守る限り

新ジャンル「僕の彼女は防具」


>>186に先に「サイ」をやられたのでお返しな(w



190:名無しさん@ピンキー
08/06/05 00:13:27 Beecpgck
女「……男が私に見向きもしてくれない」
男「当たり前だろ。俺にそんな趣味はない」
女「とか言って、実は責められると弱いくせにー」
男「……誰が責めるんだ? ん? お前責められるのか? あ?」
女「そこはやっぱり自慰で」
男「だから俺にそんな趣味はないって言ってるだろ!」
女「……男が私に見向きもしてくれない」
男「せめて穴になって来いよっ!」


新ジャンル「僕の彼女は棒具」

191:名無しさん@ピンキー
08/06/05 00:43:48 MY4gkLi+
酷すぎる流れだwwGJwww

192:名無しさん@ピンキー
08/06/05 01:17:15 xISKBMaF
俺こういう流れ嫌いじゃないよ
嫌いじゃないっていうか……好き……だよ。うん

193:名無しさん@ピンキー
08/06/05 19:36:12 z2smhw1/
男「なんだよもうこんなになってるのか」
彼女「いや、みないで」
男「なーにが『見ないで』だ、見せつけてるくせに。もうこんなに真っ赤でビンビンじゃねぇか、ほら!」
彼女「あっ、だめ、触らないで…ひゃうん!」
男「ほらほら、こうだ、ほれ」
彼女「ひゃ、ひゃうぅうん、ひゃだ、やめ…はぁん!」
男「まったく簡単乱れやがって…シコたら直ぐじゃねぇか、この淫乱。ほぉら!」
彼女「ひゃ、ひゃぅううううん!ひゃだっ、ひゃめで、ひき、ひっちゃふ!ら、めぇえそこらめぇええ!ひゃなはらめぇえええ!

ひ、ひぐうう!」ビクッビクッ

新ジャンル「僕の彼女は天狗(弱点は鼻)」



194:名無しさん@ピンキー
08/06/05 20:47:26 z2smhw1/
男「なんだよもうこんなになってるのか」
彼女「や、やめろよ」
男「なーにが『やめろよ』だ、してほしいくせに。もうこんなにビンビンじゃねぇか、ほら!」
彼女「あっ、よせ、触るなっ…!」
男「ほらほら、こうだ、ほれ」
彼女「う…くう…や、やめろ…やめろっば!ぁあはぁっ」
男「まったく簡単に乱れやがって…シコったら直ぐじゃねぇか、この淫乱。
ほぉらいくぜ!」
彼女「!…くっ…んはぁっ…おま…や…んんっ」
男「うっ、きついな、またくやらしい身体してやがるぜ、グイグイ締め付けやがる」
彼女「ふっ…ふぐっ、うう…うる…さ、んぁ!」


男「うういくぜ!」
彼女「っあーーーーー」
ビクッビクッ

男「よかったぜ、斉藤」
彼女「…ううっ」

新ジャンル「僕の彼女は斉藤君」

195:名無しさん@ピンキー
08/06/05 21:11:17 rzHKMvz1
男「なぁ、なにツンツンしてるんだよ?」
女「知らない!!自分の彼女をベタベタ他人に触らせるなんて!!」
男「…ふふん」
女「なによ!!」
男「…知ってるんだぜ。お前、触られてる間ずっとイキっ放しだったろ」
女「!!!!」
男「ほら、今だって」
女「ちょ、やめて!!」
男「ほら。こんなに糸引いちゃってさ」
女「い、いや!!やめて!!」
男「下の穴も寂しそうだな……入れるぜ」

女「あっ!!…あん!!」
男「ありゃ、入んねぇ。…ふん!!ふん!!」
女「はぁはぁ…は……てよ…」
男「ん?何だ?」
女「早く……入れてよ……我慢出来ないの……」
男「いや…俺も入れたいんだが…入らん」
女「道具使ってよぉ…」
男「…あれ好きじゃないんだが」
女「早くぅ!!もう限界なの!!」
男「……分かった」

(30分後)

男「はぁ……終わった」
女「あんた下手すぎ」
男「…雑巾くらいミシン使わせろよ」
女「だめ!!」

新ジャンル「僕の彼女は裁縫具」


横入りごめん。

196:名無しさん@ピンキー
08/06/05 21:12:50 rzHKMvz1
ごめん。裁縫具ネタは最初にあったのかorz

197:名無しさん@ピンキー
08/06/05 23:22:58 xISKBMaF
(・∀・)ニヤニヤ

198:名無しさん@ピンキー
08/06/06 00:30:26 aF4/xZ7e
>>196
ドンマイ!って言いたいとこだが…

ゴメン、素で>>195の状況がわからん
彼女は雑巾かと思ったんだか、それだと裁縫具じゃないし、ミシンでも無いんだよな?

>>193>>194
どっちも彼女にしたくないなWW

199:195
08/06/06 00:47:30 ZZYO62up
すまん。
彼女は「縫い針」のつもりだったんだ。

…確かに分からんなorz

200:名無しさん@ピンキー
08/06/06 09:42:22 L3GpuNQ/
いや、分かりやすい気もする

201:名無しさん@ピンキー
08/06/06 11:19:36 QOZ1k7ld
「道具使ってよ」に吹いたw
あれだろ。なんかエリザベス女王っぽい女の横顔が入ってる銀色のやつだろww

202:名無しさん@ピンキー
08/06/06 19:13:49 SROz+9Qc
>>201
なんかワロタ

203:あたしの名前はハートにDQN(1/14)
08/06/07 02:24:21 jgAjOp5J
放課後の教室。
あたしは、クラスメイトの稲井 啓太郎(いない けいたろう)に呼び出されて
ぼんやりと夕日を眺めていた。何の用かは、聞いてない。
こんな、誰もいない教室に二人っきりだなんて、あいつは人をなんだと思っているんだ。
そりゃあ、あたしは目つきは悪いし背は無意味に高いしガサツだしオマケに一部の下級生からは
同性愛のケがあると思われているらしいけど、あたしはユリ目ユリ科に属する多年草の一種じゃないし、
性別は一応雌である。『もしかして告白!?』なんて、甘酸っぱいことを考えなかったわけではない。
ええ。考えましたよ。そりゃあね。あたしだって花も恥らうオンナノコですから。
そういう、枕を抱えてごろんごろん転がるような1ページに、何?憧れ?みたいなもんは、ありますよ。
でもね、冷静になって考えてみるとね。そういうの、ありえないんですよ。

だって、あたしは――P子だから。

そう。あたしはみんなからP子と呼ばれる女。もちろん本名じゃない。これはあだ名だ。
本名は大杉(おおすぎ)――言いたくない。勘弁して欲しい。恥ずかしい。
あたしの両親はいわゆる………その、世間一般の常識とは少しばかりズレてるというか、
自由な人たちだったらしいので、赤ちゃん――つまり、あたしのことだが――が生まれたとき、
世の理に中指を立てるような恥ずかしい名前を採用したのだ。
こんな名前を付けられたせいであたしがどれほど迷惑を被ったかわかりゃしない。
もし両親が生きていたなら襟を掴んで吊るし上げてがっくんがっくん揺さぶってやるところだけど、
その両親は赤ちゃんのあたしがやっと立てるようになった頃交通事故で亡くなってしまった。
よって、両親の記憶はあたしにはほとんどない。
親が死んでしまったあたしだけど、あたしは幸せなことに独りというわけじゃない。
あたしはじいちゃんとばあちゃんに引き取られてそれなりに健康に暮らしている。
じいちゃんとばあちゃんは大好きだ。できるなら、じいちゃんとばあちゃんの子供に生まれたかったくらい。
それなら、こんなヘンな名前は付けられなかったろうし――。
………素敵な彼氏だって、いるはずだし。
ああ、そうだ。あたしは今まで男の子と付き合ったことがない。
なんというか、想像できないのだ。
あたしが男の子とお付き合いしている光景が。
だって、恋人同士っていったらお互いを名前で呼び合ったりするものだろう。
それまで苗字で呼んでいたものが、敬称無しの呼び捨てで名前を呼び合う。
そんなことが。できるはずがない。恥ずかしすぎて死ぬ。むしろ殺す。呼んだら殺す。オマエヲコロス。
と、いうわけで、そんなことを気にしていたらいつの間にか男の子が寄り付かなくなってきて、
目つきがどんどん悪くなってきて、背とかもにょきにょき伸びちゃって、
気が付いたら男の子より女の子にもてるようになっていた。
おまけに友人たちに次々と彼氏が出来始め、休日とか誰とも遊べなくてちょっと悲しくなってしまう。
気が付いたら14連鎖でサンダーしてたり。はぁ。
あたしだってね。そりゃあ欲しいですよ。彼氏。ええ。
でも………ねぇ。あーあ。

なんか、失敗してるなぁ。あたしって奴ぁ。


204:あたしの名前はハートにDQN(2/14)
08/06/07 02:25:12 jgAjOp5J
机に突っ伏して、大きく溜息を吐いた。
そんな時である。がらら、と教室の扉が開いた。
顔を向けると、そこに立っていたのはあたしを呼び出したクラスメイト。
仲間内からはKタローと呼ばれる男の登場だった。
っていうか、呼び出しておいて遅れるとはどういう了見だ。

「遅いぞKタロー」
「うむ。緊張しすぎてお腹が痛くなってな。トイレに篭っていたら時間が過ぎていたのだ」

文句を言うあたしに、当然の如く、といった偉そうな態度で返すKタロー。
パッと見て不遜とも取れるほど自信満々なのはこいつの特徴だ。
でもそれが中身にまで及んでいないのは少し喋ればすぐわかる。
それが証拠に台詞の内容は全然偉そうじゃないし。と、いうか弱そうだし。
あたしは少し拍子抜けした。なにが告白だ。シチュエーションに酔いやがって。馬鹿じゃないか?
こいつはKタローで、しかも相手はあたしだぞ。どこをどう押せば告白が出てくるんだ。
我ながら恥ずかしいったらありゃしない。
きっとKタローの顔が真っ赤なのも、夕日に染められているからに決まっている。………うん。

「で、何の用?」
「うむ。そのだな――」

Kタローは、Kタローには珍しい、少しばかり俯いて言いよどむと、
キッと顔をあげ、ずんずんと近づいてきた。
何だろう。っていうか止まれそこで。近い。近い。近いってば。

「大杉」
「な、なんでしょう?」

思わず敬語になるあたし。Kタローの迫力に気圧されてしまう。
Kタローは茹ダコのように真っ赤になった顔で、鼻先と鼻先がくっつくかのような距離で、
数秒間あたしを睨み付けたあと――言った。

「お前が好きだ」

目を瞬かせる。
今、なんと言った。
こいつ――え?あたしが……なんだって?
す、き………?

その言葉はゆっくりと、ゆっくりと鼓膜から脳味噌に到達し、その瞬間にあたしの顔面を真っ赤に染め上げ、
そして、あたしは――。


205:あたしの名前はハートにDQN(3/14)
08/06/07 02:26:07 jgAjOp5J
 
                  ☨☨☨

あめんぼあかいなあいうえお (水馬赤いなあいうえお)
うきもにこえびもおよいでる (浮藻に小蝦も泳いでる)
かきのきくりのきかきくけこ (柿の木栗の木かきくけこ)
きつつきこつこつかれけやき (啄木鳥こつこつ枯れ欅)
ささげにすをかけさしすせそ (大角豆に酢をかけさしすせそ)
そのうをあさせでさしました (その魚浅瀬で刺しました)
たちましょらっぱでたちつてと (立ちましょ喇叭でたちつてと)
とてとてたったととびたった (トテトテタッタと飛び立った)
なめくじのろのろなにぬねの (蛞蝓のろのろなにぬねの)
なんどにぬめってなにねばる (納戸にぬめってなにねばる)
はとぽっぽほろほろはひふへほ (鳩ポッポほろほろはひふへほ)
ひなたのおへやにゃふえをふく (日向のお部屋にゃ笛を吹く)
まいまいねじまきまみむめも (蝸牛ネジ巻まみむめも)
うめのみおちてもみもしまい (梅の実落ちても見もしまい)
やきぐりゆでぐりやいゆえよ (焼栗ゆで栗やいゆえよ)
やまだにひのつくよいのいえ (山田に灯のつくよいの家)
らいちょうさむかろらりるれろ (雷鳥寒かろらりるれろ)
れんげがさいたらるりのとり (蓮花が咲いたら瑠璃の鳥)
わいわいわっしょいわゐうゑを (わいわいわっしょいわゐうゑを)
うえきやいどがえおまつりだ (植木屋井戸換へお祭りだ)

―――演劇部発声練習『あめんぼの歌』より

                  ☨☨☨


「あれぇ?P子。今日はお弁当なんだ」

昼休みである。
学食にも行かずに突っ伏していると、不意に声を掛けられた。
顔だけあげてそっちを見る。そこにいたのは机の向きをがたがたと変えて
簡易テーブルを作っている女の子のグループ。その中の一人、原衛(はらえ)というクラスメイトだった。
あたしはひらひらと手を振って、ぞんざいに返事をする。

「まぁね」
「だったら一緒に食べようよ。一人飯ってアンタ、それでも女か?女はつるんでナンボでしょうや」


206:あたしの名前はハートにDQN(4/14)
08/06/07 02:26:51 jgAjOp5J
めちゃくちゃなことを言っている。放っておいて、と言うこともできたが、
原衛という女はこういうことを周囲への建前ではなく厚意で言えるようなヤツであり、
しかも突っぱねたら突っぱねたで余計な心配を掛けてさらに付きまとわれるのは明白だったので、
あたしは連中の仲間に入ることにした。実際、お腹すいてたし。
あたしは溜息をつきながら向かい合う机のひとつの席につく。
今日のご飯はおにぎりだ。ばあちゃん特製。
食欲はあんまりなかったから出かけにコンビニでパンでも買っていこうと思ったのだけれど、
格好つかないことに財布の中がだいぶ寂しいことになっていたのだ。

「……Pちゃん、おにぎりだけなんだー?」
「男らしいな。P子」
「うっさいな。ほっといて」

食欲がない――調子が出ない。ここ一週間ほどそんな状態が続いている。
風邪じゃあない。あたしは自慢じゃないが、医者の世話になったのは
生まれてこの方出生の時だけっていうような健康体だ。
それが、こんな。おにぎり二つしか喉を通らないほど弱っているなんて。
原因はわかっている。Kタローのバカのせいだ。あいつが、変なことを言うから――。
………………。
今思い出しただけでも顔が熱くなる。
放課後。夕日の教室。真っ赤に染まったKタローの顔。そして、告白。
告白……。

「う、うう………」

ぷしゅう、と頭が茹で上がるのを自覚する。ええい、なんなんだ。あいつは。
訳がわからない。あたしは――ヘンな名前で、自分のこの名前が嫌いで、
でも、あいつはあんなにまっすぐな目をしてあたしの名前を呼んで。

………嫌い、なのに。

それに、このあたしのどこに惚れたっていうんだ。
自慢じゃないが無愛想だし、目つき悪いし、身長だって無意味に高いし、かといって
スタイルがいいわけじゃないし。可愛い服見つけても全然似合わないから結局いつもジーンズだし。
ゲーマーだし。この前枝毛三本も見つけたし。それから――。
………ええと、自分でも悲しくなるくらいに惚れる要素がなかった。
とにかく、こんなあたしを好きだって?訳がわからない。不気味だ。

「どうしたのー?Pちゃん」

などと苦い顔をしていたら、サンドイッチをもきゅもきゅと
頬張っていた仲居戸(なかいど)が顔を覗き込んできた。



207:あたしの名前はハートにDQN(5/14)
08/06/07 02:27:36 jgAjOp5J
「調子悪いのー?」
「まさか。赤葉。P子はね、出生以来医者にかかったことがないっていうような健康体だよ?
 どーせおにぎりじゃ物足りないんでしょ」
「黙れ原衛」

ギロリと睨みつける。
原衛は笑い、そして一転してはぁ、とため息をついた。なんなんだ。

「あたしもさー、呪々のから揚げが恋しくてさ。くそぅ、小岩井のヤツめ。あたしの呪々を返せっていうのよ」
「あー」

行儀悪くお箸を咥えたままヨヨヨとくずおれる原衛に、なにやらコクコクと頷く仲居戸。
呪々……というと黒妻か。
確かあの娘は料理が得意で、信じられないことにお弁当を自分で作っていたはず。
あたしも前に摘んだことがあるけど、なるほど冷めても美味しい、
どこに出しても恥ずかしくないっていうかお金取れるんじゃないかっていうような出来だった。
………そういえば黒妻はどこ行ったんだろう。黒妻はちびっこくて大人しくて、
いつも原衛とセットになっているような娘である。朝見かけた覚えがあるから休んではいないようだけど、
そういえばこのグループに参加していないのはヘンだった。

「ところで、その黒妻は?」
「呪々?さぁ。中庭じゃない?」
「………なんで?」

確かに中庭で食べる生徒もこの学園には多いけど、あそこは芝生なのでシートを広げなきゃならない分
面倒くさいし、なによりカップルが多いために普通の生徒は寄り付かない。
あそこで男女が一緒にお弁当を食べることがこの学園の生徒たちの間では
『恋人になりましたよ宣言』だという暗黙の了解があるほどだ。
したがって、独りもんであるところのあたしには少し太陽が眩しい場所である。
黒妻も同様。あの闇属性があんな危険地帯に迷い込んだら
連中の石破ラブラブ天驚拳に当てられて消滅するんじゃあるまいか。

「あれぇ、Pちゃん知らないのー?呪々ちゃん、小岩井くんと付き合い始めたんだよー」

――などと考えていたら、仲居戸がにっこりと柔和な顔を綻ばせた。

………………………………………あ、そうなん?

初耳だったので少し驚いた。黒妻は誰かに告白されたり告白したりするタイプじゃないと思っていたから。
いや、中身は普通だってことは知ってるし、よく見れば結構可愛い顔してるんだけど。
その、何だ。オーラ的に?



208:あたしの名前はハートにDQN(6/14)
08/06/07 02:28:15 jgAjOp5J
「まぁ、呪々が嬉しそうだったから別にいいんだけどさ。
 ひとりもん同盟が減ったのはこっちとしては痛いわけですよ」
「あー」
「あー、じゃない。赤葉はいいわよねぇ。幼馴染みだっけ?そんな便利なイキモノがいてさぁ」
「え。で、でもでも、クロが幼馴染みじゃなくっても、あたしはクロを好きになったと思うよ?………えへー」
「ぐぁあ、しまったノロケられたぁ!P子、塩持ってきて塩!」

しかし……そうかぁ。黒妻がねぇ。男の子と付き合ってるんだ。
………………男女交際、かぁ。
あたしはもやもやと想像の霧を膨らませた。
休みの日には駅前とかに待ち合わせして。待った?いや全然待ってないよ、とかお約束な会話して。
見慣れた制服姿とは違う私服姿にドキドキしちゃったりなんかして。
まずは映画とか見ちゃって。薄暗い中、手を握る――ううん、
そっと重ねるだけで映画どころじゃなくなっちゃって。
その後、ファーストフード店でハンバーガー食べながらさっきの映画の感想とか話して。
でも、手を握った辺りでにドキドキして途中で二人して黙っちゃったり。
で、恋人らしく改めて手を繋いで、てくてくショッピングを楽しんだり。ゲームセンターに入って対戦したり。
UFOキャッチャーで思いのほか大きいぬいぐるみをGETして少し持ち運びに困って。
遊んで小腹がすいたら喫茶店に入って大きなパフェを二人で食べたり。
暗くなって――公園で休んでいこうか、なんて。気が付いたら周りはカップルだらけで、
ああそういえばあたしたちもカップルだったね、なんて少し笑って。
周りの真似して、キス、くらい――。

Kタロー。

「きぁあぁぁあああああああああああああ!!!!」

ぼん、と音がしたようだった。
あたしは真っ赤になって、慌ててその想像……妄想?のピンクのもやをばたばたとかき消す。
何を考えているんだあたしはッ!Kタローとはまだそういう関係じゃなくてですね。
いや『まだ』っていうか、それはいずれそういう関係になるって意味じゃなくて!
つまりは、あたしはその。ああああ。何なんだ、あたしはッ!あたしはP子だぞ?
P子がそういうの、ダメだろう!常識的に考えて!

「………何?どうしたの」

はっと気が付くと、原衛たちがびっくりした顔であたしを見ていた。
あたしは小さくなって、なんでもない、と返す。本格的にヘンだ。それもこれも全部Kタローのせいだ。
ええい、責任取れ。いや、そういう意味じゃなくて。

「P子、調子悪いなら保健室、行く?」
「Pちゃん無理しない方がいいよー?」


209:あたしの名前はハートにDQN(7/14)
08/06/07 02:29:00 jgAjOp5J
うう、なまじこいつらいい娘だから居心地悪い。そういうんじゃないのだ。
あたしはわたわたと手を無意味に動かした。ここは何か話題を変えて場を乗り切るべきだろう。
だけどもあたしは自分で思うより相当てんぱっていたらしく、

「そ、そういえばKタロー、最近学校休んでるけどどうしたんかね!?」

見事に墓穴を掘った。

そう――それもあたしの懸念のひとつ。
Kタローは最近、というかあたしに告白してきたその翌日から学校に来ていないのだ。
あたしは別にKタローを振ったわけじゃないし、いやまぁそりゃあウヤムヤにはしてしまったけれど
………そんなにショックを受けるのだろうか?あたしが原因だったとして、の話だけど。
そして時期的に考えてあたしが原因なのはまず間違い無さそうだけど。

「そういえばKタローくん、ずっと休んでるよね。どうしたんだろ?」
「んー、前に男子が話してるの聞いたんだけど、Kタロー、家に篭ってずっと滑舌練習してるらしいよ」
「………カツゼツ?」

なんだそれは。
聞き覚えのない言葉だったので、あたしは思わず聞き返した。

「演劇とかでさ、台詞を噛まないでハッキリ言えるようにする練習だよ。
 早口言葉とか。発声練習とか。それを延々繰り返してるだって」
「………なんで?」
「知らないわよそんなの」

Kタロー、訳がわからない。あたしに告白してきたと思ったら家に篭って演劇の練習?
どう考えても奇行としか思えない行動だ。この学園には確かに奇人変人が多いけど、
Kタローはそっち側の人間じゃなかったはず。
………もしかして。もしかするとだが。あたしはとんでもなく悪いことをしたんじゃないだろうか。
人が奇行に走るとき。その人の身に何か起きたんじゃないかと思うのが自然な考え方だ。
そして、その『何か』にあたしは嫌ってほど心当たりがある。いや、あたし自身は
気が付いてないけど――気が付いてないだけで、人を傷付けてしまうことだってよくあることだろう。
あたしみたいなガサツで、他人の細やかな心の機微に疎い人間ならなおさらだ。
あの日。夕日の教室で。Kタローに好きだと言われた。その対応が、間違ったものだとしたら?
そのせいでKタローはショックの余り家に引きこもって毎日早口言葉で一日を
浪費するような人間になってしまったのかも知れないのだ。
………相当嫌だなそんな一日。

「………あの、さ」


210:あたしの名前はハートにDQN(8/14)
08/06/07 02:29:41 jgAjOp5J
あたしはおずおずと、切り出した。
原衛と仲居戸がきょとんとしてそろってこっちに顔を向ける。
うう、言いにくい。でも、この娘たちは基本的に善人だ。ちょっとヘンなところはあるけど。
それに原衛はおせっかいで相談ごとには慣れているだろうし、仲居戸は彼氏持ち。
きっとあたしの話を真摯に聞いてくれるだろう。多分。


                  ☨☨☨

拙者親方と申すは、お立合いの中にご存知のお方もござりましょうが、お江戸を立って二十里上方、
相州小田原一色町をお過ぎなされて、青物町を登りへおいでなさるれば、欄干橋虎屋藤右衛門、
ただ今は剃髪なされて円斎と名乗りまする。元朝より大晦日までお手に入れますこの薬は、
昔ちんの国の唐人外郎と云う人わが朝へ来たり、帝へ参内の折から、この薬を深く籠めおき、
用ゆるときは一粒ずつ、冠のすき間より取り出だす、依ってその名を帝より「とうちんこう」と賜る。
すなわち文字には、「頂き、透ぐ、香い」と書いて「とうちんこう」と申す。ただ今はこの薬、
ことの外世上に弘まり、ほうぼうに似看板を出し、いや小田原の、炭俵の、さん俵のといろいろに申せども、
平仮名をもって「ういろう」と記せしは親方円斎ばかり、もしやお立ち合いの中に、
熱海か塔の沢へ湯治においでなさるか、または伊勢参宮の折からは、必ず門違いなされまするな。
お登りならば右の方、お下りなれば左側、八方が八つ棟、表が三つ棟玉堂造り、
破風には菊に桐のとうの御紋をご赦免あって、系図正しき薬でござる。

イヤ最前より家名の自慢ばかり申しても、ご存じない方には、正身の胡椒の丸呑み、白河夜船、
さらば一粒食べかけて、其の気味合いをお目にかけましょう。
先ずこの薬をかように一粒舌の上にのせまして、腹内へ納めますると、イヤどうも云えぬは、
胃、心、肺、肝がすこやかになりて、薫風喉より来たり、口中微涼を生ずるが如し。
魚鳥、茸、麺類の喰い合せ、其の他、万病速効あること神の如し。
さて、此の薬、第一の奇妙には、舌のまわることが、銭ゴマがはだしで逃げる。
ひょっと舌がまわり出すと、矢も楯もたまらぬじゃ。

(……以下略)


―――演劇部発声練習『ういろう売り』より

                  ☨☨☨


「………それで?」

夕日の教室での出来事を話したあと、原衛たちはずいっと身を乗り出してきた。
そう。
原衛たちにはうっかり告白の流れを丸々喋ってしまったけど、肝心なのはここからだ。

211:あたしの名前はハートにDQN(9/14)
08/06/07 02:30:25 jgAjOp5J
あたしが取った行動ひとつで、Kタローが奇行に走った理由がわかるかもしれないのだから。
Kタローに告白されて、あたしは――。

「――Kタローを殴って、逃げた」
「なんで!!!?」

昼休みの教室に原衛たちの、というか原衛の絶叫が響き渡った。
何事かと教室にいたクラスメイトたちがこちらを向く。
あの時はいいのが入ったなぁ。この拳がKタローの頬にめり込み、一瞬間を置いてから衝撃が弾けて
Kタローの身体がくるくる回りながら机の列に突っ込んでいくシーンなんて昔のカンフー映画みたいだった。
多分、あんなにいいパンチはこれからの人生でもそうそうないだろう。
でも、だって。あれは仕方なかったんだ。

「………恥ずかしかったし」
「馬鹿か―――ッッッ!!!?」

がっしゃーん、と想像のちゃぶ台をひっくり返す原衛。
そんなこと言われても。
あたしは想像の秋刀魚やら味噌汁やらを頭からかぶったまま小さくなった。
だって、男の子から告白なんてされたことなかったんだし。
しかも相手が毎日顔合わせてるクラスメイトのKタローだったし。あたしはP子だし。

「いやー、Pちゃん。最後のは理由になってないんじゃないかなー」
「全部理由になっとらんわ!告白したら返事に拳て!そりゃKタローも引きこもるわ!」

………いや、いやいやいや。返事じゃないぞ。アレはいわゆるひとつの照れ隠しというやつでして。

「いらないから!そんな攻撃的な照れ隠しいらないから!普通に振られるよりキツいわ!」
「………ふ、振った覚えはない……よ?」

そう、そうだ。
あの時は返事なんかする余裕はなかったし、翌日寝不足の頭で学校に来てみたらKタローは休みだったし。
――それから、ずっとKタローは学校に来ていない。
原衛情報だと家に篭って奇行に走っているみたいだけど。
ああ、そうだ。あたしはKタローを振ったわけじゃないのだ。

「殴った時点で振ったも同然だってヴぁ」

呆れたように溜息をつく原衛。そこに仲居戸が小首を傾げて、

「じゃあ、PちゃんはKタローくんとお付き合いするのー?」

と、独特のどこか気の抜けた口調で言った。

212:あたしの名前はハートにDQN(10/14)
08/06/07 02:31:07 jgAjOp5J
 
「………………………………………」

途端、硬直するあたし。
そうだ。告白された時点でもう、付き合うか付き合わないかの二択しかなく、
そして振っていないということは、Kタローが彼氏になるということになるんだ。
Kタローが。あたしの。彼氏に。
あたしの。
P子の?

「………いやぁ、それは」
「なんだ、結局振るんじゃない」
「………うぅ」

Kタローはいいやつだ。……と、思う。
考えてみたら、同じクラスにいながらあたしはKタローのことをほとんど何も知らないに等しかった。
ますますなんでKタローがあたしを好きだと言ってきたのか謎は深まるばかりだ。
でもKタローとクラスの男子とふざけあってるのはよく見る。
無邪気で、楽しそうで、男の付き合いってやつはあたしには時々、すごく魅力的だ。
友達も多いみたいだからヤな性格はしていないんだろう。
そりゃあ人間なんだから長所も短所もあってしかりだろうけど、
それを言うならあたしだってそうそういい娘じゃないし。っていうかP子だし。
あたしは頭を抱えた。どうしよう。
男の子と付き合うなんて、そんな大事件があたしの身に降りかかってこようとは
まさか思いもしなかったからどうしていいかわからない。
ああ、なんてこった。Kタローが学校に来ていないのをいいことに、
あたしはずっとその問題を保留にしてきてしまったのだ。
Kタローはクラスメイトだ。それ以上でもそれ以下でもない。恋人?彼氏?冗談。
あたしは人を好きになるってことがどんなことかもよくわかっていないP子なんだぞ。
そんなあたしが、Kタローの彼女をできるのか――そんなの、考えてみなくってもわかるってもんだ。
いや、でもなぁ……。

「わからないんだったらさ」

うんうん唸っているあたしを見て、原衛がぼそりと呟いた。

「付き合ってみればいいじゃん。そもそもアンタ、付き合うってよくわからないんでしょ?
 Kタローと付き合ってみて、一度経験してみればいいじゃん。彼女ってヤツをさ。
 Kタロー、あんたを好きだって言ってくれてるわけでしょ?幸せなことだと思うよ。それって。
 それに彼女になったからって絶対キスとかしなきゃなんないってワケじゃないんだしさ。でしょ?赤葉」
「………うーん、てゆーか考えてみたらあたしとクロって幼馴染みだから昔っから知り合いなんだけど、
 ちゃんとカノジョにしてもらったのはえっちしてからなんだよねー」


213:あたしの名前はハートにDQN(11/14)
08/06/07 02:31:57 jgAjOp5J
………超不安。
というか、虫も殺せなさそうな顔して何してやがりますかこの女は。
ぽわぽわしてる娘だと思ってたのにヤることはヤってんのかっ!あんまり知りたくなかったよそんな情報。

まぁ、それは置いといて。原衛の言うことももっともだと思う。
あたしだって――その、何だ。青春のナニガシに興味がないわけじゃないんだし?

「………でも、あたしはP子だしなぁ……」
「だーかーらーさー」

原衛がだぁあ、と天井を仰いで、

「P子だからなんだっていうのよ。あんたはね、ヘンなところで自信なさすぎ。あんたはあんたなんだし、
 そんなイジイジしてたらあんたに惚れたっていうKタローも浮かばれないでしょ?」

死んでない。
それに、自信があろうがあかろうがあたしがP子なのは疑いようのない事実なわけで。

「………あたしがなんでP子って呼ばれてるか、原衛だって仲居戸だって知ってるでしょうが」

P子というあだ名は――関係ないかも知れない。むしろP子と呼ばれるあたしは、まだP子でいられる。
問題は、あたしが何故P子と呼ばれているのか……そこにあるわけで。
あたしは、自分の名前が嫌いだ。ヘンだし。長いし。言いにくいし。
恋人っていうのは、友達より、もしかしたら家族より、あたしの内側に入ってくる人になるのだろう。
そんな関係の男の子に、あだ名ではなく本名で呼ばれる。
それはあたしの中にあるテンプレート的な恋人関係の行動になっている。
マンガやアニメの主人公に憧れるような、幼い願望とも言っていい。でも、それはきっと大切なことなのだ。
それを、あたしは容認できるのだろうか。
――あたしは、自分の名前が嫌いだ。

「P子……」
「Pちゃん……」

傍から見たら、きっとつまらないコンプレックス。
でもそれは、あたしが一生背負わなければいけない問題でもある。


『ポンポコピー子』


―――嫌だな。


214:あたしの名前はハートにDQN(12/14)
08/06/07 02:32:30 jgAjOp5J
「P子」

沈んでしまったあたしの愛すべきあだ名を、原衛は強く、呼んだ。

「あんたさ。やっぱりKタローと付き合うべきだよ」

………?
何を言ってるんだろう、原衛は。
そりゃあ原衛にとっては他人事だからいいけどさ。あたしは当事者ですからね。
そうそうお菓子を買うみたいに手軽にはいかないのだ。

「そうじゃないよ。Pちゃん。わかんないかな。Kタローくんは――」
「赤葉」

何か言おうとした仲居戸を、首を振って止める原衛。
何?Kタローがなんだというんだ。
あたしは気になって、伏せていた顔をあげた。

「大杉」


そこには。

学校をずっと休んでいたはずのKタローが。

まるで、あの日の再現みたいなまっすぐな眼で、あたしを見つめていた。


「………あ、え?」

頭が真っ白になる。
あれ?なんだこれ。幻?いやいや、教室のあちこちからざわざわと声がする。
Kタローだ。本物の。随分と久しぶりだった。やっと学校に来たみたい。
でも、なんで?なんで今。このタイミングで。
いやいやそれはいい。まだ頬に湿布が張られている。ああ、やっぱりあのパンチはいいところに入ったのか。
っていうかこいつ、部屋に篭って滑舌練習してたんじゃなかったのか?それはもういいのだろうか。
Kタローはしばらく無言であたしの顔を見てから、口を開いた。

「俺はお前に殴られてから、考えた。何故俺は殴られたのかと。
 好きだというチープな台詞がいけなかったのか?単純に俺のことが気に食わなかったのか?
 だが俺はお前ではない。答えはわからなかった」


215:あたしの名前はハートにDQN(13/14)
08/06/07 02:33:18 jgAjOp5J
以前と変わらない、偉そうな口調。でも、響きが違う。よく通るいい声になっていた。
ホントに家に篭って滑舌練習してたのか。馬鹿じゃないか、こいつ。
というか。
そもそもなんで。なんでKタローは滑舌練習なんかしてたんだ。
まるで、まるで――。
とてつもなく長くて言いにくい誰かのヘンな名前を、
すらすらと言えるようにするための練習だというかのように。

「そしてこう考えることにしたんだ。俺が殴られたのはきっと、苗字ではなくファーストネームで
 告白しなかったからだと!!そして淀みなく大杉の名を呼べたときこそ、
 大杉の心の呪縛を解き放ち、堂々と胸を張って大杉に好きだと言えるのだと!!」
「エスパーかお前は」

握り拳をつくって吼えるKタローに、原衛のツッコミが入る。
………本当、なんでそんなしあさっての方向に答えが出るのかわからない。
どうなってるんだ、こいつの頭は。
殴られたショックで脳味噌がズレたとしか思えない。殴ったのあたしだけど。
本気の本気でそんなくだらない理由に行き着いて、そんなくだらないことのために学校を休んで、
家に引きこもってアナウンサーも驚きの練習をしていたというのか。
そんなに本気で。
こんな、あたしなんかの為に。

馬鹿じゃないのか。むしろ馬鹿だろう。
でも、それは。今まであたしが知らなかった馬鹿で。
あたしの胸の奥で、不覚にも何かがぎゅぅっ、と締め付けられてしまった。

そしてKタローは言った。あたしの忌まわしい――両親が長く、幸せに暮らしていけるようにと
願いを込めてつけてくれた、大嫌いな名前を。

「寿限無寿限無五劫の擦り切れ 海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末 食う寝る処に住む処
 やぶら小路の藪柑子 パイポパイポ パイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ
 グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長子」


―――ああ。
       あたしの名前―――。


「……俺と、付き合ってくれ」



216:あたしの名前はハートにDQN(14/14)
08/06/07 02:34:06 jgAjOp5J
ずっと大嫌いだったあたしの名前。
それが、こんなにも。
心に、響いて。
あたしは――。


Kタローを殴って、逃げた。


「ええええぇぇぇぇえええぇぇぇぇぇぇえええええぇぇぇぇぇえええ!!!?」

教室中から絶叫があがる。
あたしの拳は違うことなくKタローの湿布の上、つまり前回殴った場所に食い込み、
Kタローの顔面を陥没させたかと思うと一気に弾け飛んでKタローを身体ごと吹き飛ばしていた。
Kタローがくるくると綺麗に回転して机の列に突っ込んでいく。
それを最後まで見届けることなく、あたしは走り出した。

「ちょ、ぴ、P子!?むしろポンポコピー子!!」

後ろから原衛の焦ったような声が聞こえた気がした。
でも気がしただけだ。今のあたしにはそんなことに構っている余裕はない。
胸が熱い。顔が熱い。
身体中、火照って仕方がない。
なんだこれは。なんなんだこれは。猛烈に恥ずかしい。苦しい。
でも、嫌じゃない。それがまたわからない。

あたしは走った。
きょとんとしている生徒たちを、教師たちを追い越して。
あたしは走った。
どこへ向かっているのか、ぐちゃぐちゃの頭ではわからない。

「胸が熱いのは走ってるせい……!顔が熱いのも走ってるせい……!」

そう自分に言い聞かせ。
どこまでも、あたしは走った。



              あたしの名前はハートにDQN~新ジャンル「DQNネーム」青春伝~ 完



217:名無しさん@ピンキー
08/06/07 04:40:50 YQsYUHbN
素晴らしいwww
GJ!

218:名無しさん@ピンキー
08/06/07 05:22:12 6UT8n4bL
いいなあ!歌舞伎十八番・外郎売まで引用したことに感動。
何かエロゲネタ板のハイテンション妹思い出しちゃったよw

219:名無しさん@ピンキー
08/06/07 21:58:59 uWW4Fbf5
何と言うGJ!!!!!

220:名無しさん@ピンキー
08/06/08 09:43:55 gbH4sWxx
何の意味もなく名前を音読したのは俺だけでいい

221:名無しさん@ピンキー
08/06/08 10:37:43 qVPUlj0T
ぐわーーーーーーーーーっ!
先に14/14をうっかりみてしまった俺のバカバカバカバカ!
だけど構成が効いててGJです!
エロシーンが無いと青春編になるのねw

そしてここに来て今迄の登場人物が!
流れは学園ものなのか!ww


222:名無しさん@ピンキー
08/06/08 23:01:50 oSuT0OWr
男「うっ・・・もうすぐ出すぞ!女」

女「うんっ、ああん!きてぇ、きてぇ!」

男「でっ、出るっ!外に出すからな!」

女「キング・クリムゾン!私以外の時間は消し飛び、行動の結果だけが残るッ!」

男「おおっ!ふー、出たで・・・なぜだッ!俺は抜いたはずだッ!」

女「ふふっ、男くんと私の赤ちゃん///」

男「お前!時を飛ばしたなッ!」


223:名無しさん@ピンキー
08/06/08 23:03:43 mdNsiCwy
なんつー使い方してんだwwww

224:名無しさん@ピンキー
08/06/08 23:05:02 oSuT0OWr
新ジャンル「ディアボロ」

225:名無しさん@ピンキー
08/06/08 23:12:10 McxpR16f
男「女、今日もするか?」
女「……うん♪」
男「今日もたっぷり可愛がってやるからな」
女「うーんと気持ちよくしてね」
男「じゃあ、どこでやる?」
女「……うーん……やっぱりあそこがいいなっ」
男「えぇ~? またあそこか?」
女「嫌なの?」
男「いや、別に嫌じゃないけどさ」
女「じゃあ、決まりっ♪」
男「けど、なんであそこでするの好きなんだ、女?」
女「だって、汚れても大丈夫だし、すぐに洗えるし」
男「そりゃそうだな」
女「浸かってやると……なんだか凄く温かくて気持ちいいし、ね」
男「ははは」
女「じゃあ、早速やりましょ♪ 待っててねー、愛しのお風呂ちゃ~ん♥」





新ジャンル「ディア風呂」

226:名無しさん@ピンキー
08/06/08 23:16:07 PS+jE9gK
俺、キングクリムゾンの能力をいまいちわかってなかったんだけど
今言葉じゃあなく心で理解した

227:名無しさん@ピンキー
08/06/08 23:18:43 oSuT0OWr
男「ハァハァ・・・かわいいなぁ、この子・・・むしゃぶりつきてぇ・・・」

男「ハァハァ・・・もう出ちゃうぜ・・・よーし、この子に決めた!」

男「うおおおおおお!ハァハァ・・・でっ」

女「キング・クリムゾン!私以外の時間は消し飛び、行動の結果だけが残るッ!」

男「出るーーー!・・・ってありゃ?射精感が・・・うおッ!グラビアに俺の精子が飛び散っているッ!」

男「いきなり賢者タイム突入だとッ!何処だッ!何処にいる、女ァ!」

新ジャンル「ディアボロ」

228:名無しさん@ピンキー
08/06/09 17:18:13 wQU0De4Z
>>227
男「女ッ!貴様、見ているな!」

229:名無しさん@ピンキー
08/06/09 20:18:43 y3x4efjO
>>227男「女ァ!!俺は童貞を捨てるぞォォォ!!」

230:名無しさん@ピンキー
08/06/09 23:28:38 5H7YRVyh
素直ヒートは静かに暮らしたい

231:名無しさん@ピンキー
08/06/11 02:54:44 rHQIO0vD
女『震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!』

232:名無しさん@ピンキー
08/06/11 07:04:37 0N8PgxLd
姉「あー疲れたー」
弟「姉貴」
姉「おー、弟よ。ただいまんこ」
弟「おかえりんこ………ん?」
姉「………」
弟「………」
姉「まんこ!」
弟「うっさい!」

新ジャンル「姉自重」

233:名無しさん@ピンキー
08/06/11 07:07:47 0N8PgxLd
姉「弟ー、風呂上りのお姉ちゃんにビールを出してくれないかい」
弟「そんくらい自分でしろよ……って姉貴、全裸で歩き回っちゃいけません!」
姉「いいだろー別にさー」
弟「恥らえ!」
姉「なんだ、弟。欲情したか?」
弟「するか!」
姉「しろよ!!」

新ジャンル「姉自重」

234:名無しさん@ピンキー
08/06/11 07:14:26 0N8PgxLd
弟「まったく、ウチの姉ときたら……ブツブツ」
姉「ひゃー、仕事帰りの風呂上り。冷えたビールが身体に染みるゥー」
弟「オッサンかよ」
姉「ときに弟。晩酌に付き合わない?」
弟「付き合わない!」
姉「えー」
弟「えーじゃない」
姉「でも、もう注いじゃったし」
弟「コップ、一個しかなかったろ……ってオイ!」
姉「さあ飲め!必殺わかめビール!!」
弟「カーペット汚すなよなー、もう」
姉「説明しよう!わかめビールとはッ!こう……正座した状態でできるふとももの」
弟「いらんわ!!」

新ジャンル「姉自重」

235:名無しさん@ピンキー
08/06/11 07:33:35 0N8PgxLd
姉「弟よー」
弟「なんだよ姉貴」
姉「彼女いないの?」
弟「いないよ」
姉「チッ」
弟「なんだよ」
姉「『昨日一緒に歩いてた女のひとは誰なのよ!』『あ、姉貴だよ!』
  『嘘吐き!あたし、キスしてるの見たんだからね!』ごっこはまだできないか……」
弟「うん、最後のセリフちょっとおかしいよね」

新ジャンル「姉自重」

236:名無しさん@ピンキー
08/06/11 07:49:31 1NJWS19R
姉自重wwwwww

237:名無しさん@ピンキー
08/06/11 12:29:45 hHrshKfp
(夜道、一人で帰宅途中の私に突然襲いかかって殴る蹴るの暴行を浴びせる
抵抗する気力を失わせ心も身体もボロボロになった私を無理矢理レイプ
処女膜を破瓜され激痛で失禁した私の映像を撮り誘拐監禁。
その様子をネットに流しレイプしたい奴を全国から募り全員一回ずつ中出しさせる。
私が俺君の名前を叫ぶが日に日に弱っていく姿をビデオに収め俺君に贈る。
お腹が大きくなり墜ろせなくなったら私を中国やタイの路上で全裸で縛り付け放置。そんな……)

俺(おいっ起きろって)

内気「…あ……なに」

俺「授業当てられるぞ」

内気「…すみません」

新ジャンル「内気な子の妄想」

238:名無しさん@ピンキー
08/06/11 19:54:59 DFZ/Tc2P
「どう見ても内気じゃねえええええwwwww
 しかし、姉自重も素晴らしいなw
 ここで逆転ホームラン!
 たまたま続けて投下されたこの二つを組み合わせた、
 内気な姉自重を誰か一つお頼み申す!」


新ジャンル「俺自重」

239:名無しさん@ピンキー
08/06/11 22:23:48 4gBTOozr
取り合えずこのスレには波紋使いとスタンド使いと自重しない人間が多い事は解ったw

240:名無しさん@ピンキー
08/06/12 10:07:13 MYeZRZBf
>>237
妄想過激だな

241:名無しさん@ピンキー
08/06/12 10:07:47 MYeZRZBf
>>237
妄想過激だな
しかも自傷的な妄想がまた

242:名無しさん@ピンキー
08/06/13 03:18:38 21JMr2tS
女「はー・・・男くん・・・」
女友「どうしたの?」
女「1組の男くんかっこいいなぁって・・・はふー」
女友「御三家か・・・アンタ勝ち目ないよ?」
女「御三家?」
女友「そう。同学年の男くん、俺くん、学年下の弟くん合わせて御三家」
女「あー、モテるもんねぇ・・・」
女友「やめときなって。ただでさえ、1組は美人の集まりなんだし。それに、男くんには三柱の護りが付いてるからね」
女「三柱のまも・・・り?」
女友「ツンさんでしょ、クールさんでしょ?あと、ヒートさん」
女「ミス学園の1位と2位・・・」
女友「そ。周りにはいつもその誰かがいるから、誰も近づけないし」
女「んー・・・」
女友「アンタもかわいいと思うけど、1組の奴らはもはや人外の集まりじゃない?」
女「うー、確かに理解できない趣味の人とかいるもんねー」
女友「1組ほどじゃないにしても、2組、3組だってそれに近しいものがあるから近づきにくいし」
女「女友ちゃん、詳しいね?」
女友「あー。私も、御三家に一度は恋しちゃったからね」
女「えっ!そうなの!?」
女友「男くんは三柱の護りが居た時点で諦めたし、俺くんには親衛隊いるでしょ」
女友「弟くんなんて、三年生と付属中学にファンクラブがあって、告白しようものなら呼び出し食らっちゃうもん」
女「ふーん・・・」
女友「ま、私たちは普通の恋しよ?その方が傷つかないって」

新ジャンル「神格化」

243:名無しさん@ピンキー
08/06/13 21:08:05 aCAfQ1tr
新ジャンルたちがオナラをしたようです

ツンデレ「わっ、わたしじゃないんだからねっ!」
男   「………ふぅん?」ニヤニヤ
ツンデレ「なっ!なによっ!しっ、仕方ないでしょ!生理現象なんだからっ!」
男   「わかってる、わかってるって。ほらほら、力むとまた」



ツンデレ「~~~~~~~~ッッッ!!////」

244:名無しさん@ピンキー
08/06/13 21:22:28 aCAfQ1tr
新ジャンルたちがオナラをしたようです・素直クール編

女「ああ、すまない。わたしだ」
男「ん」
女「男の前ではしたない、と思う一方、それだけ男に心を許してしまっている現われだと思うと
  感慨深いものがあるな。ああ、知っての通りわたしは人見知りが激しい方でな。
  家族以外の人間と一緒にいて気が休まるということは今までになかった経験だ。
  そういう意味ではキミは既にわたしにとって家族のようなもの、生活に、いや人生に於いて
  最も身近に感じる者の一人になっているのかも知れん。だが反面、女性としての奥ゆかしさは
  持ち合わせておきたいとも思う。特に、キミの前では。難儀なものだよ」
男「……っていうかオナラひとつでそこまで語るか」
女「……照れ隠しだ。察してくれ」


245:名無しさん@ピンキー
08/06/13 21:29:22 aCAfQ1tr
新ジャンルたちがオナラをしたようです・素直ヒート編

女「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
男「うっさいうっさい。何だよ一体」
女「聞いたか!?」
男「オナr――え?何を?」
女「とぼけるのが遅いぞ男ぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!」
男「うわ、悪かった。悪かったってば。っていうか別に気にしないぞ俺は」
女「そうじゃないッ!そういう問題じゃないんだぁぁぁあああ!!!!」
男「ヒート……そうか、お前にも人並の恥じらいというものが」
女「あんな小さな音しか出ないなんてッ!不覚ッッッ!!!!」
男「そっちかよ!!」
女「聞いてくれ男!わたしの実力はあんなものじゃないんだッ!
  今度は町中に響き渡ろうかという立派な音を出してみせるッッ!」
男「いいよ別に!そこ頑張らなくていいよ!」
女「うぉぉぉぉおおおおおお!!次こそはッ!次こそはぁぁぁぁぁああッッ!!!!」
男「……ヒートは元気だなぁ」


246:名無しさん@ピンキー
08/06/13 21:53:22 aCAfQ1tr
新ジャンルたちがオナラをしたようです・内気な子の妄想編

俺「ん?なぁ、なんか臭くね?」
友「……お前か」
俺「違うわ!」
友「諦めろ。この世には『いいだしっぺ』という言葉があってな」
俺「俺は無実だー!」

女(もし……わたしだってバレたら……)


俺『なんだオイ、臭すぎるだろ。なに食ってんだよお前』
友『はっはっは!鼻が曲がっちまうわなぁ!オラ、今度から人間様と間違えないように
  ケツにガス袋って書いといてやんよ!』
俺『分別はちゃんとしなきゃだもんなぁ!』
友『おーおーキレーなピンク色のケツ穴だこと。こっからあんな臭い屁が出たのかぁ?』
俺『オイ、しまりのねぇガス袋にゃあちゃんとフタしておかないとな!』
友『そりゃいいや。まさに臭いモンにゃ蓋ってなぁ!』


女「や、やだぁっ!そんなの入らない……入らないからぁ!」

友「え?何が?」
俺「……俺じゃないのに……」

247:名無しさん@ピンキー
08/06/14 01:01:52 Iy83n125
糞ワロタ
そして既に素直ヒートじゃねぇ、ヒート馬鹿だwww

248:名無しさん@ピンキー
08/06/14 01:06:24 eFHxrkBb
>>179
ごめんよ おそくなったけど、投下

自分の胸元にしなだれかかる少女。
彼女を包んでいたバスタオルは滑り落ちており、生まれたままの姿を少年の前に晒している。
『魔性』『妖艶』…。
男の級友たちの多くは彼女をそう評するが、その抗いがたい魔力は春樹の理性を蝕んでいた。
…しかも、つい今しがた、彼女の本心を打ち明けられた。
朴念仁の春樹と言えど、彼女に対して愛おしさを感じ、夕圭の肩に腕を回す。
濡れた髪の感触に、シャンプーの香り。
「…黒田。」
「ん~、50点。…どうせなら、夕圭って呼んで欲しいな。」
しかし、その瞳は愛情と信頼を湛えており、春樹は引き付けられるように黒田夕圭を抱き寄せる。
「…夕圭。」
承諾の返事として微笑みを浮かべ、目を閉じる夕圭。互いの唇が触れ合うまで残り5cm…。
そんな彼らの動きを止める電子音…。携帯電話の着信音のようだ。
「ご、ごめんね。少し待ってて。」
「あ、ああ…。」

あまりにタイミングが悪い…。内心毒づきつつ電話に出ると…。
『ゆかさん!どこにいるのですか!?おなかすきました!!』
…正直、吃驚した。囲炉裏の姿が見えなかったからこそ公園に出向き、これまでの騒ぎに巻き込まれたというのに。
『ど、どこって?…真智ちゃんこそ、どこに居るの?』
『居間でずっと待ってます!!なのにもう、ごご2じをまわってます!!はやく、おひるごはんたべたいです!!』

ため息と共に携帯電話の通話モードを解除する夕圭。
そして、申し訳なさ気な表情で、事情を春樹に告げる。…若干の脚色を加えて。
「…真智ちゃんからよ。
 熱も落ち着いて、ずっと寝てたから張り付いている必要はないかなと思って出てきちゃったけど…。
 お腹空いたってご立腹だったわ。」
真智子の体調が復調したためか、それとも良い雰囲気に水を差されたためか、軽くため息をつく春樹。
「そうか……。喜ばしいけど…何か残念な気もするな。」
どうやら、両方だったようだ。
「ふふふ。…きっと、子供に夜泣きされたらこんなのだよね。」

その、夕圭にとって何気ない一言は春樹にとって大層な衝撃だったようで…。
「…子供って…お前。」
その一言に、自分が何を言ったのかを改めて思い知る夕圭。
「…あ。」
…まるで、結婚後に子作りの相談をしている夫婦の話題そのものではないか。

お互い赤面しながら見詰め合っていたが、やがて夕圭が告げる。
「…ごめんね、春樹くん。先に帰るわ。」
「ああ、囲炉裏をよろしく頼むよ。お母さん。」
珍しい春樹の冗談…。…もっとも内容は、彼を慕う少女達…特に通い妻を自認している少女は憤死しかねないものだが。
「…もう。本気にしちゃうわよ、お父さん?………続きは帰ってからしましょ。
 あ、そうだ。…ルカちゃんもちゃんと迎えにいってあげてね?…お兄さんとして。」
『あと一歩だったけど…。…まぁこれでルカちゃんの願いは果たせるからいっか。』

夕圭の身支度も、それから5分とかからなかった。
やがて、少年と少女は部屋を後にする。

新ジャンル「夕圭 撤退」新醤油学園野望編



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