【総合】新ジャンルでエロパロpart6【混沌】at EROPARO
【総合】新ジャンルでエロパロpart6【混沌】 - 暇つぶし2ch126:名無しさん@ピンキー
08/05/21 23:08:50 rHCBAnRy
>>125
それは違うよ


127:名無しさん@ピンキー
08/05/21 23:21:34 IuWhIH5D
とある土曜日…。とある民家の玄関にて、一人の少女が一人の少年を誘う。

「えへへ…。ハル、行こ?」
「そうだな。囲炉裏に黒田、留守番頼んだぞ?」
ちなみに、彼らの父母も外出中だったりするため、そう同居人たちに声を掛ける。

そんな彼らを見送る同居人たち。
「……む~~~~~。」
「あ、あはははは。二人とも、行ってらっしゃい。」

凄い勢いで睨んでくる真智子と、乾いた笑みを浮かべている夕圭。
この状態の囲炉裏を置いていったら末代まで祟られそうな勢いではあるが…。
『二人だけで、公園に行くって約束したからなぁ…。』
もっとも先日の【貴子の看病を手伝ってもらったご褒美】という名目だけに、彼女との約束を反故にするわけにはいかない。
『そういえば、貴子ちゃんにもちゃんとお礼しないと…。
 頭撫でてるだけじゃ、不十分だよな。…あと豆田にも手伝ってもらってるしな。』
満面の笑みを浮かべる妹の顔を見ながら、もう一人の頼れる妹分、さらにはその姉の事をぼんやり考える春樹。

一方、夕圭とルカはアイコンタクトを交わす。
『ルカちゃん。できる限り、真智子ちゃんは私が抑える…。…だからGood luck!』
『夕圭ちゃん…。…ありがと。』
彼女らは、同盟の保持を選択しているようだ。
先日の【誠意の証】は、ルカの左肩に掛けられたバッグの中に厳重に収められている。
そして空いている右腕を春樹の左腕に絡ませ、幸せそうに寄り添う。

しかし、囲炉裏もそんな彼らを追ってはいけない己の事情に、改めて心で泣く。
『…囲炉裏だけ微熱が続くな。黒田も豆田も、ルカも治ったのに…。
 …黒田、迷惑を掛けるが看病頼む。お前の時ほどの熱じゃないが、何かあったら呼び戻してくれ。』
今朝、春樹によって【本日も静養】するよう通達された真智子。
…実は、囲炉裏にしてみれば、風邪など既に完治していた。
しかしながら、身体だけでなく体温まで子供規格な彼女。
加えて食事量が多く、代謝量が高い体質までが仇となってしまったようだ。
(反面、その体質ゆえに太らずに済み、さらに見た目と異なって身体能力は高い訳だが…)
それなりに楽しそうな夕圭とは対照的に、かなり沈んだ足取りで寝室へと向かう真智子。
『おのれ~~~。あいるびーばっくです!!』

128:名無しさん@ピンキー
08/05/21 23:22:16 IuWhIH5D
さらに別方向から、その玄関先の光景を苦々しげに見つめる一人の少女…。
遠山家が令嬢、理菜である。
…きつく歯噛みしているのか、唇の端からは血が滴っており、何気に鬼気迫る表情でひとり呟く。

「泥棒猫ばっかりに気を取られていたけど…。…貴女が獅子身中の虫になるなんてね、ルカ。」
先日は【仮病】という策を弄したものの、釣果は囲炉裏のみ。
挙句には誤食しかけた囲炉裏に倒され、自慢の胸に落書きされるという屈辱まで味わった彼女…。
そんな理菜からすれば、いまのルカはただただ嫉ましい。
まさに燎原の火の如く、燃え盛るは嫉妬の炎…。

そんな彼女は懐から小型無線機を取り出し、何者かに連絡を送る。
「豆田姉妹…。春くんとルカが動いたわ。」
【敵の敵は味方】
彼女たちは、一時停戦の道を選んだ。
当面の最大の障害であるルカを、全力をもって排除する…。
そしてその後は…春樹の覇権をかけてのガンダムファイト、レディーゴーである。
通信を終えた理菜は手早く身支度を整える。
飛び苦無に忍者槍、煙球に吹き矢を鞄に押し込み、目的地に向けて疾走する。
「春くん…。待っててね、今ルカから引き離してあげるから…。」

周囲の敵意に気づかず、手と手を取り合って仲睦まじく歩を進める兄妹。
そんな彼らが向かう公園正門にて、指関節を鳴らしながら待ち構えている少女。
「春樹!!ルカじゃなくてあたしと遊べ!!」
一方、茂みの中に身を潜める少女。
彼女のスコープは二人の姿を捉えている。…有効射程距離まであと150m。
「…ルカさん。…先日の借りは返す。」

公園という戦場にて、新たな戦いが始まる。

新ジャンル「総合公園の死闘 幕開け」新醤油学園野望編

129:名無しさん@ピンキー
08/05/22 21:02:31 TcZnUQze
新章期待

130:名無しさん@ピンキー
08/05/22 23:54:02 IDj5j6Lc
女「おとこくんのばか!!おとこくんなんてだいっきらい!!」
男「ぐすっ…ぐすっ…」
女「えっ!?な、なかないでよもー。……ほら」


男「学校行くぞ。ほら…起きろ」
女「わ、私一人で遅刻せずに学校行けるわよ!!幼馴染みだからって、馴れ馴れしくしないでよ!!」
男「はいはい」


男「ほら、式始まるぞ。いい加減化粧やめとけ」
女「わ、私は別にアンタと結婚したいわけじゃないんだから!!
け、結婚しないとお腹の子供が可哀想だし…アンタを野放しにできないし!!」
男「はいはい」


男「結婚10年目か、ほらこれプレゼント」
女「!!…う、嬉しくなんかないんだから!!」
男「涙流して喜んで…」
女「こ、これは…汁よ!!涙じゃないんだから!!」
男「はいはい」


男「先に逝かせて貰うよ…今まで有難う…」
女「…馬鹿、何で先に死んじゃうのよ…」
男「はは…ずっと楽しかったよ…君がいて」
女「……私は…」
男「楽しくなかった……かい?」
女「…楽しかったわよ」
男「……ははは」
女「な、な、なんで笑うのよ!!たまには私だって!!………男?…男!?………返事してよぉ!!」


旧ジャンル「ツンデレきれなかった女」


既出かもしれんが…

131:名無しさん@ピンキー
08/05/23 18:28:21 BBa6bcxG
女「おっ、男くんっ!」
男「ああ、女ちゃん。おはよう」
女「おはよう……はっ!ダメだからね!そんな笑顔でわたしを懐柔しようとしても!」
男「怪獣?」
女「ああっ!きっと漢字を間違ってるっ!訂正したいけどダメだからね!つーん」
男「なに言ってるかわかんないけど、学校行こうよ。もうこんな時間だし」
女「い、いちいち言わなくてもわかってるもん!ついてこないでよ!」
男「え?いつも一緒に登校してるじゃん。一緒に行こうよ」
女「だ、ダメなのっ!男くんなんか、嫌いなんだからねっ!」
男「……………」
女「………………?」
男「……………………ガフゥ」
女「男くーーーーーん!!」
男「女ちゃんに嫌われた女ちゃんに嫌われた女ちゃんに嫌われた女ちゃんに」
女「ち、違うの!これはツンデレで……ごめんね!ごめんね男くん!大好きだから!
  アナタノコトガー!チュキダカラーーー!!」
男「最期に……その言葉が聞けてよかっ………ガク」
女「男くーーーーーーーーーーーん!!!!」


友「遅刻するぞ」


旧ジャンル「ツンデレきれなかった女」

132:名無しさん@ピンキー
08/05/23 18:54:37 BBa6bcxG
『立て逃げだー!立て逃げだ出たぞー!』

女「フフッ、探してもムダよ。のろまな警察さん、貴方たちなんかに捕まる私じゃなくってよ」

男「………それはどうかな」

女「誰ッ!?」
男「やはり来てしまったんだな。立て逃げ……いや、女!」
女「刑事さん……いえ、男くん」
男「何故?何故キミがこんなことを」
女「女には秘密があってこそ。それを無理に訊くのは無粋というものよ」
男「………………」
女「でも……そうね。フフ、私を捕まえられたら、教えてアゲル」
男「今話すことは何もないということか。いいだろう。ならば――ここで逮捕だ、立て逃げ!!」
女「ゴメンだわ。立てて逃げることこそ私たちの妙技。その真髄、身をもって知るがいい!」

男「うぉぉーーーッ!!」
女「たぁぁーーーッ!!」

………………
…………
……

女「それじゃあね……男くん。また……どこかで」
男「ま、待てッ!くそッ!いつか、キミを捕まえてみせる!必ず……!」
女「………………」

    ―――そう、楽しみにしているわ―――

男「………」
 「刑事殿ーッ!ご無事ですか!?………ハッ!そのチンコは!」
男「ああ。見事に勃てられたよ。完敗だ……僕の」
 「しかしまだ遠くには行っていないはず!刑事殿はそのチンコでは走れますまい、休んでいてください!」
男「ありがとう。じゃあ、任せる」
 「はッ!」

男(………………)
男(……………………しかし、彼女が言っていた……『私たち』とは……?)
男「まさか、彼女の他にも立て逃げがいるというのか……?」

?『相変わらず甘ちゃんだなぁ……ねぇ、お姉ちゃん?』

To Be Continued...?

新ジャンル「立て逃げ」

133:名無しさん@ピンキー
08/05/23 19:05:46 fb9LspDt
>>130
ちょwww
汗じゃなくて汁なのかよwwwww

最後はホロリとくるな。ポロリじゃないぞ。

>>131
冷静な友にルネッサーンス!

>>132
最初「スレでもたて逃げするのか?」と思ってたら・・・w

134:名無しさん@ピンキー
08/05/23 20:02:32 BBa6bcxG
男「枕返し、という妖怪がいます」
女「えー……モノの本によると、ヒトが眠っている間に寝室に忍び込んで
  枕をひっくり返す悪戯好きな妖怪……とのことです」
男「そう!そして俺様はその枕返しの孫!妖怪・布団返しだァーーーッッ!!」
女「はぁ」
男「なんだその薄いリアクションは!もっと怖がれよ!」
女「いやぁ……具体的に何するひと?」
男「名前の通りさ。眠っている間に布団をめちゃくちゃに乱しておく。朝起きたら
  布団が足元でくちゃくちゃになってることあるだろ?あれは寝相が悪いんじゃない。俺の仕業だ」
女「へー」
男「どうだ!恐ろしいだろう!!」
女「別に……迷惑っちゃあ迷惑だけど恐ろしいかって言われたら………ん?」
男「……………どうした?」
女「枕返しの布団版っつった?」
男「ああ」
女「眠っている間に寝室に忍び込んで、布団を乱す?」
男「ああ」
女「昨日の夜、あたしんち来た?あたしの部屋入った?夜に。夜中に、女の子の部屋に」
男「ああ。そうそう、寝るときもブラをつけていないと形が崩れるそうだぞ?」
女「トェェェェイ!!」
男「痛い!!」

新裏ジャンル「妖怪」

135:名無しさん@ピンキー
08/05/23 21:18:43 fb9LspDt
ただの不法侵入者じゃねえかw

136:名無しさん@ピンキー
08/05/23 22:21:43 1s4wzFZE
「えへっ…ハルと二人でお出掛けなんて、久しぶりだね。天気も良いし」
「ああ。本当だ」
腕を組み、晴れた休日の下を歩く青山兄妹。
彼らを知らない人間が見たら、83%の確率で『バカップル』認定される仲良さげな二人である。

春樹の左腕はルカの右腕に抱えられており、そこから伝わってくる感触が。
『ルカ……胸が当たってるんだが…』
勿論ブラコン妹はわざと当てているのであって、抱える腕には力が篭っている。
『うふっ、ハルったら意識してる…まずはここまで順調ね』


○○市立総合公園。
そこは広大な敷地内に豊かな緑と綺麗な水辺を持つ、近隣でも有数のデートスポット。
だが、そこに待ち受ける刺客の影が。
「…しかし弱った。相手がルカだから、本気で殴る訳にもいかねぇ…」
「………」
小型無線機で会話をする陽子と貴子の豆田姉妹。
「貴、とりあえずあたしは足止めだけでいいんだな?」
「…お願い。私が麻酔銃で狙撃するから…」
豆田姉妹と遠山理奈の共同作戦とは、

1.陽子が春樹を足止め
2.貴子がルカを麻酔銃で狙撃する
3.デートを中断させ、春樹とルカは青山家へ戻る
4.陽子、貴子、理奈の三人で決闘し、勝者が…

という物だった。

「ま、遠山にはこの前の借りもあるしな。後で全てのケリを!!!!」

137:名無しさん@ピンキー
08/05/23 22:23:57 1s4wzFZE
しかし熱く闘志を燃やす姉とは対照的に、貴子は疑惑を抱いていた。
『…遠山理奈。彼女の最も得意なのは、地形的な利点を生かした強襲……この公園では不利?』
『…もし私が彼女なら…まず私がルカさんを攻撃した直後に私を無力化させ、後でお姉ちゃんを…?』
『…彼女を信頼できる?……無理。できない…』

貴子の中で一つの決意が固まった。
『…まずは彼女から』


「真智ちゃーん、ちょっと早いけど朝のおやつ…………あれ?」
夕圭がケーキとココアを持って真智子の部屋へ入ると、ベットで大人しく
寝ているはずの真智子の姿が見当たらない。
「まさか…春樹くん達の後を!?……抜け駆けな……じゃないルカちゃんの邪魔をさせる訳には!!」
慌てて身支度を整え、青山家を飛び出す夕圭。
しかし………

「ふにゃあ…はるくんのいいにおいですぅ」
当の真智子は春樹のベットに潜り込み、至福の時を味わっていた。
暫く掛け布団にくるまって、ゴロゴロと転がって楽しむ状態が続いていたが。
「なんだか…ねむく…」
やがて聞こえる静かな寝息の音。やはり体調は万全ではなかった様だ。


遠山理奈は疾走する。
『今度こそ全ての障害を乗り越えて、私と春くんはひとつになる!!』
ただその一念だけを胸に抱きながら。


新醤油学園 青春編
「総合公園の死闘 開始5分前」

138:名無しさん@ピンキー
08/05/23 22:26:36 1s4wzFZE
「着いた…さて…」
驚くべき足の早さで、遠山理奈は青山兄妹の訪れる入口とは別の入口に到着した。
「…豆田の姉は馬鹿だけど実力は確かだし、裏表は無さそう……ね。
となると警戒すべきは…妹の方。あと、ここに来るか微妙だけど…」

理奈の脳裏に二人の少女が浮かぶ。
「囲炉裏真智子と黒田夕圭……囲炉裏には恨みがあるけど…」
以前、訳の分からない痴女から夕圭には助けて貰った恩がある。
「…あの爆乳女…か」

道を急ぐ夕圭。
『真智ちゃんの事だから一直線に春樹くんへと向かうはず』
『しかし、私まで姿を現せばルカちゃんとの約束を破る事に…』
『事情からいって豆田姉妹には頼れないし、チーマージャン(芝村)は捕まらない…』

夕圭が考えている内に、公園が見えてきた。
しかし…

「…やはり来たのね」
「!?…遠山理奈!!『迂濶だわ…気配に気付かないなんて』」
夕圭の前に現れた理奈。
「…正直言えば、今貴女とは戦いたくはない。今日の私の敵はルカだけ」
「それは…有難いけど無理なの。私は同盟相手を裏切る趣味はないから」
「残念ね、交渉決裂なんてさ。仲良くなれたかもしれないのに」

口振りとは裏腹に、戦闘体勢に入る理奈。
「悪いけど、全力でいかせて貰うわ。私の敵は他にいるし…決着をつける相手もいるから」
「……私もやらなくちゃいけないのよ。真智ちゃんを止めないと!!」
夕圭も同じく戦闘体勢を取る。
『私達の幸せの為、今は遠山理奈を!!』


「ハルぅ、ほら公園だよ。早く入ろっ」
「おいルカ、そんなに引っ張るなよ…」
青山兄妹が公園まで10mの距離に近付いた。
入口の陰にいる陽子、更には茂みに潜む貴子にも、声がはっきりと聞こえる。
「(小声で)遠山は来ねえが…仕方ない。貴、頼んだぜ」
「…任せて」
貴子の目は、スコープ内のルカに注がれていた。
「……グゥレイトォ」
狙撃の際の祈りの言葉を口にし、引金へ指が触れる。
『…一発で仕留める』

新醤油学園 青春編
「総合公園の死闘 開始5秒前」

139:名無しさん@ピンキー
08/05/23 22:54:10 1s4wzFZE
女「コスプレHってあるじゃない」
男「べふっ!!…いきなり何を言い出す!?」
女「いやね、考えてみたら服装に興奮するのか、それとも着た人間に欲情するのか。
はたまた非日常性のシチュに萌えるのか?」
男「つまんない事をまた突き詰めるなぁ…」
女「最近、分析癖がついちゃってね。自分でも困ってるのよ」
男「…やってみるかw」
女「もう好き者なんだから!!男くんのエッチ!!」

男「とは言えウチにそんな衣装はなし…」
女「…これは?」
男「……学ラン着てやおいなんて俺は嫌だ」
女「どうしても?」
男「相手が女でも俺のナニが勃たねぇよ…」
女「あ、大丈夫よ」
男「?」



女「もうお尻弱いんだから…男くんてばぁ」
男「姉さん…俺…もうお婿行けないよぉ…」

新ジャンル
「アナリスト 痛(ツウ)」

140:名無しさん@ピンキー
08/05/25 00:59:46 WL4IjD/h
女「ワンクリックで助かる命か……」
男「ん?なんだそれ?」
女「あー、何でもワンクリックで発展途上国の子供にワクチンをって。……やろうかな?」
男「……あんまり勧められないな。詐偽の可能性もあるし」
女「そうか……」
男「なら自分で募金しろよ。そっちの方が確実で実感も湧くだろ」
女「そうだね。……じゃあ男も協力して」
男「うん、何を?」
女「男の特徴を考えて………うーん………」


男友「…でエッチの度にワクチン一回分の金額?お前も苦労するよなw」
男「ああ…」
男友「結局、幾ら募金したんだよ」
男「……女に感謝状と手紙が来てな」
男友「おう?」
男「ざっと1万通程」
男友「お前凄えぇ!!!!」


新ジャンル「ぼきん」

141:名無しさん@ピンキー
08/05/25 12:21:34 H6tQzwOS
安すぎるwwwww
男も男で鬼畜すぎだろww

142:名無しさん@ピンキー
08/05/25 20:08:28 2LF7xeFh
セックス1回で救える精子がある

143:名無しさん@ピンキー
08/05/26 22:02:58 v2vUgavp
セックス一回で生まれる生命もある

144:名無しさん@ピンキー
08/05/26 23:55:45 EnSJ2q37
セックス1回では収まらない性欲がある

145:名無しさん@ピンキー
08/05/28 01:05:02 wqQgQYV0
男「この世には音読すると死んでしまうという詩があるらしい」
女「あー、聞いたことある」
男「聞いたことあるの!?」
女「話に、ね。実際詩を聞いたって意味じゃないから」
男「そっか。セーフ」
女「セーフ」
男「で」
女「で?」
男「なんだっけ」
女「何が?」
男「タイトル」
女「詩の?」
男「詩の」
女「………あー」
男「ロ……ロミオ?」
女「いや、そんな煙突掃除でオコジョを相棒にしてる主人公みたいな名前じゃなかったと思う」
男「アミノ?」
女「人間に不可欠な栄養素っぽい名前でもなかったよ」
男「ドミノ?」
女「あー近い!限りなく正解に近いブルー!でも違う!もっと、こう……苗字っぽい名前!」
男「鈴木」
女「違う!遠い!天体に例えると地球と月だったのが地球とイクシオンくらい遠のいた!」
男「イクシオンとは太陽系で冥王星よりさらに遠いところにある星のひとつです」
女「……っていうか、正解思い出したから言っちゃっていいかな?」
男「だめ」
女「………なんで」
男「こわい」
女「………」
男「………」
女「トミ」
男「わー!!」

新ジャンル「トミノ」

146:名無しさん@ピンキー
08/05/28 01:28:21 wqQgQYV0
?「ぉぉぉおおおおおおお」

男「………」

?「にぃぃぃいいいいいい」

男「………」

?「ちゃぁぁぁぁああああん」

男「………ん?」

?「お兄ちゃんっっっ!!!!」
男「ゴふッ!!!?」
?「うわぁ!ほんの数十メートルから助走して抱きついただけなのにお兄ちゃんが死んだ!
  弱い、弱いよお兄ちゃん!これがわたしのお兄ちゃんの姿か!」
男「げほ、げほ……なんだ、誰かと思ったら女か。何?」
女「ううん、別に。用はないんだけど」
男「用もないのに人の腰にタックルしないように」
女「狙ったお兄ちゃんは逃がさない!」
男「俺限定かよ」
女「だって他の人だったら、死んじゃうじゃん!」
男「そして殺す気か!」
女「お兄ちゃんは死なないわ。わたしが守るもの」
男「今しがたお前に襲われたんだが」
女「じゃあ凶悪犯のわたしは捕まえなきゃ」
男「………」
女「お兄ちゃんが!」
男「だが断る」
女「なんと」

新ジャンル「ロケット少女」

147:名無しさん@ピンキー
08/05/28 03:17:21 wqQgQYV0
女「我輩は猫である。名前はまだない」
男「タマ、飯だぞ」
女「にゃー」

新ジャンル「我輩っこ」

148:名無しさん@ピンキー
08/05/28 03:49:35 wqQgQYV0
男 「あれ!?」
彼女「どうしたの?」
男 「い、いや!なんでもない!」

男 (ゴ、ゴムがねぇ……!おかしいな、確かにサイフの中に入れておいたのに)

彼女「男ぉ、もしかして……」
男 (やばい、ここで無いとかありえん……!折角ここまできたのに、気持ちが醒めてしまうじゃないかっ!)
彼女「コンドーム買い忘れた……とか?」
男 (………千手ピンチだ!!)

? 『はーっはっはっはっはっはっは!!』

男 「だ、誰だッ!?」

? 『地が呼ぶ、天が呼ぶ、男くんが呼ぶ!俺を助けてと私を呼ぶ!彼の危機にその影あり
   風のごとく駆けつけて、風のごとく去ってゆく!その名は女!スーパーヒロイン・女!トォ!!』

クルクルクルクルクルスタッ

女 「呼んだかね、男くん!」
男 「………」
彼女「……………」
女 「フフン」
男 「誰?」
女 「キミのピンチを察して駆けつける謎の美少女!スーパーヒロイン・女さ!」
男 「……いや、女さ!と言われても……」
彼女「へー。可愛い娘じゃない」
男 「うわぁぁぁ!人生で初めてできた彼女がなんか誤解してるぅぅぅ!!
   違うからね!?こいつなんか知らないからね!?関係ないからね!!?」
女 「おっとそりゃあ悲しいね。だがそれでも!私はいつでもキミの傍にいる!」
彼女「へぇ」
男 「ウェイ!お前何!?何しに来たの?」
女 「はっはっは、キミを助けに来たのさ!」
男 「帰れェェェ!!」
女 「そうはいかない。キミのために働くこと。それが私の喜びであり、存在意義なのだから……」
彼女「帰る」
男 「帰らんといてぇぇ!違うの!この女関係ないの!ほら、お前も言えよ!違うって!」
女 「見たところ避妊具がないんだろう?私なら生で中田氏OKだよ!……ぽっ///」
男 「帰れェェェェェェェ!!」
彼女「……最ッ低!!」

バッチィィィン!!!!

男 「あべし!」

………………
…………
……

男 「ううぅ……初めての彼女にビンタされてフラレた………」
女 「ふっふっふ。奇遇だね!私は今フリーなのだよ!………ぽっ///」
男 「出てけよぉぉぉぉぉ!!」


新ジャンル 「とりあえずピンチには駆けつける」

149:名無しさん@ピンキー
08/05/28 11:08:35 wqQgQYV0
ギュルルルル……

男 (はうっ!は、腹が……ッ!)

グルルル……

男 (へ、屁をこっそり出してやりすご………ダメだ!実が出る!まずい……これは非常にまずいぞ……!!)

乗客「………」ガタンゴトン
乗客「………」ガタンゴトン

男 (なんで朝ウンコしてきたのにまた腹痛くなるんだよぉ!?しかも満員電車の中でぇ!)

乗客「………」ガタンゴトン
乗客「………」ガタンゴトン

男 (うう……仕方ない!次の駅で降りてトイレに行くしか……また遅刻だよ畜生!
   しかし下手したら確実にバイオハザード……!俺、ピンチ!!)

? 『はーっはっはっはっはっはっは!!』

男 「だ、誰だッ!?」

? 『ひとーつ、惹かれあうのは運命なり!ふたーつ!二人の明日のため!
   みっつ!淫らに付きまとう!!すぅぱぁひろいん・ァ女ァァ!!』

ハイドイテクダサイ ココトオリマス

女 「よいしょ。やあ、男くん!お困りのようだね!」
男 「帰れェェェェエエ!!!!」
女 「はっはっは。遠慮することはない!お腹が痛いんだろう?」
男 「う……!なんでそれを……」
女 「言っただろ?キミのために働くこと。それが私の喜びであり、存在意義だと!」
男 「お前……。すまん、薬を持ってきてくれたのか?」
女 「ん?そんなものはないが?」
男 「はい?」
女 「スカトロは正直、趣味ではないが……キミが興奮するなら、
   私は甘んじてそれを受けよう!愛って素晴らしいね!さあ!」
男 「一遍死ね!氏ねじゃなくて死ね!!」

乗客『…ざわ……ざわ………』
乗客『………ざわ………ざわ……』

男 「ああーッ!なんかいらぬ誤解を受けているゥゥゥウ!!」
女 「こんなに人目が多いところで私を汚すというのかい?まったく変態だなキミは!」
男 「眼球取れろ!」


新ジャンル「うんこもれそう」

150:名無しさん@ピンキー
08/05/28 11:44:14 bLBd2mtb
男「褒め言葉ってあるだろ、2ちゃんに」
女「うん」
男「まず、『GJ』に『投下乙』、『GOD JOB』、あと『ベネ』なんてのもある」
女「ふんふん」
男「で順番で行くと俺的には…GOD→GJ→ベネ→乙になる」
女「うんうん」
男「でだ。俺はこの投下をした人に気持ちを伝えたい、だがどれを選ぶべきか?」
女「面白かった?」
男「ああ!!短い単発ネタの連続ながら、切れが良い」
女「でも神の領域じゃないわね」
男「しかし単なるいい仕事じゃないんだ」
女「……難しいわね」
男「…………」
女「……でもさ」
男「ああ?」
女「この人の投下って男のエッチに似てるね」
男「………え?」
女「いい仕事じゃ言い足りないけど、神クラスではないし」
男「……………」
女「連発で威力はあるけど一回一回は短いし」
男「……………」
女「そう、例えて言うならまるで………あれっ?男、どうしたの?膝なんか抱えて…」


新ジャンル「マシンガン」

という訳で>>149GJ!!

151:コイノロウ(1/15)
08/05/28 11:47:11 wqQgQYV0
どんどこどこどこ。
どんどこどこどこ。

その部屋は、異様としか言いがたい雰囲気で満たされていた。

まず、暗い。
カーテンはぴったり閉め切られていて、そこからは一筋の光さえ差し込まないようになっている。
ちゃんと蛍光灯があるのに何故か点けておらず、照明はゆらゆらと揺らめく蝋燭の火のみ。
頼りない灯りに照らされているのは、これまた不気味な内装だった。
天井から吊り下げられているのはボロボロに擦り切れた、ゾンビのぬいぐるみである。
一応ファンシーなデザインになっているものの、目玉は零れ口は縫い付けられ、
絞首刑のように首に紐を巻きつけられてぶらん、と揺れている。
壁には五寸釘の刺さったわら人形が磔にされ、さらに黄色地に赤い字の書かれたお札がぺたぺたと貼られていた。
豪奢な装飾の鏡は無残にも罅が入り、何の悪戯か紫のペンキがべったりと塗られている。
部屋の隅に立ち、眼球のない眼で虚空を見つめているのは、理科室によくある骨格標本だ。
いったいどこから調達したのか、棚の上にはカエルやネズミのホルマリン漬けが並び、
隣には場違いな北海道土産のまりも。あと自家製ピクルス。
その棚に並んでいるハードカバーの書籍は一冊の例外もなく、
『黒魔術』やら『幽霊』やら『呪い』やら、うさんくさいタイトルのものばかりである。
住人の趣味を思い切り疑ってしまう………いや、疑うまでもなく悪趣味な部屋に止めをさすように、
部屋のほぼ半分の面積を占めているのは――『祭壇』であった。

祭壇。

そうとしか形容できない。
真っ白な布の被さった台座の上には不気味なお香と生贄の血と肉。
どこからともなく地の底から響くような呪文が紡がれ、飢えた獣が悪魔のようにうなり声をあげる。
床に走る、蛍火のライン。それは曲線を描き、複雑に絡み合い、
太古の昔に滅びたという悪魔崇拝の一族の魔法陣を描いている。
魔法陣の中心、跪いているのは一人の少女である。
襟の大きな黒いマントと鍔の広いとんがり帽子、学園指定のハイソックス。
小さな身体に纏っているのはこれだけだ。ほとんど全裸に近い恰好だが、
それもそのはず、彼女はこの儀式のために先程沐浴をして禊を行ったばかりなのだから。
わざわざ余計なケガレを身につけることはできない。
彼女は、この儀式を失敗するわけにはいかないのだ。
少女の薄い唇から何事か呪文が口ずさまれていた。

「――ぎゃーてーぎゃーてーはーらーぎゃーてーはらそーぎゃーてーぼーじーそわかー」

どんどこどこどこ。
どどこどこどこ。

太鼓の音が高まっていく。
鋭い短剣を掲げると刃に手を添え、すぅ、と息を吸い込んだ。
そしてそのまま、きぇえ、と雄叫びをあげ、そのまま短剣を振り下ろす。
鈍く光る凶刃は違うことなく台座の中央に捧げされた人形を貫いた。
短剣に刺さったままの人形を蝋燭であぶる。ちりちりと嫌な臭いがして、
ぼう、と燃え上がるのに時間はいらなかった。
燃えていく。
人の形をしたものが、胸を貫かれたまま、声もあげずに。
その火を昏い、生気に欠けた瞳で見下ろして――少女は厳かに十字を切った。

「偉大なる邪神、我が主リュリルライア様――どうか、あのひとがぼくを好きになりますように」


152:コイノロウ(2/15)
08/05/28 11:47:41 wqQgQYV0
最後に、お願いします、と付け加えて。
少女は光沢の少ない眼でめらめらと燃える人形を高く掲げた。

この想い、炎より赤く。
この想い、炎より熱く。
届け、我が純情。
愛おしい、あのひとの元へ――。

焼けた人形から出る一筋の煙が、据え付けの火災報知機に触れた。
びー、と警告音が鳴り響き、少女は慌てて近くに置いておいたバケツに燃える人形を放り込んだ。



「……で?結局怒られたって?」
「うん」

友人の言葉に、少女――黒妻 呪々(くろつま じゅじゅ)はコクンと頷いた。
どう見ても義務教育課程にある、というか小学生くらいにしか見えない小柄な体型に、
サイズの合っていない、ぶかぶかな学園指定のセーラー服。
長い前髪の下からは隈で彩られた、生気のない瞳が覗いている。
よく見れば可愛らしい顔立ちをしているが、それはどこか作り物じみていて、
アンティークドールや日本人形を連想させた。
そんな不気味で妖しい容姿に違わず、彼女の趣味はオカルト全般。
それこそ、西洋の黒魔術から日本の神道、
中国の陰陽道やら南アメリカの精霊祈祷に至るまで節操なく手を出し、
最近ではそれらをRE-MIXしてオリジナルの儀式を開いてしまうほどである。
昨日はその儀式の最中ボヤ騒ぎを起こしてしまったというわけだ。

「邪神様がお怒りになったのかな」
「………それ、自分で考えた神様でしょ?」
「違うよ。異世界からの声を聞いたもの」

まぁ、要はうっかり拾ってしまったデムパが生み出した虚構である。
信者が一人しかいなくても宗教というのか。被害はないから放っておくけど。
呪々の数少ない友人、自称親友、面倒見がいいことで定評のある原衛 清芽(はらえ きよめ)は溜め息をついた。

「生贄の血と肉も用意したのに。使い魔もいたのに」
「トマトジュースと鶏モモ肉でしょうが。あと、飼い猫をヘンな儀式につき合わせるのはどうかと思うわよ」
「大丈夫」
「何が」
「大丈夫」

呪々は根拠もへったくれもなくうん、と頷くとお弁当のから揚げをもそもそと頬張った。
ちなみにこのから揚げ、昨日の鶏モモの成れの果てである。
彼女は生贄を無駄にしないエコロジーなオカルトマニアなのだ。トマトジュースもちゃんと飲んだし。
清芽はそのから揚げと自分の冷凍ミニハンバーグを交換しながら、やれやれと肩をすくめた。

「呪々さ、基本はいいんだからその、なんだっけ?舌噛みそうな神様」
「リュリルライア様」
「そんな、恋愛偏差値低そうな神様に祈らなくっても。普通に告白すればいいじゃない」


153:コイノロウ(3/15)
08/05/28 11:48:08 wqQgQYV0
呪々は途端、目をまん丸にするとぶんぶんと首を振った。
そして――ちらり、と窓際の、その席に座っている男子生徒の様子を伺う。
視線の先にいるのは、特に目立ったところのない短髪の男子生徒である。
前の席の男子の弁当に手を伸ばして、その小指を掴まれて極められている。
パンがなければお前の弁当を食べればいいじゃない、とか珍しい断末魔をあげて、彼は机に沈んだ。
どうやら弁当及び財布を忘れてきたらしい。
そんな彼の様子を盗み見て――呪々はほぅ、とため息をついた。
屍のように真っ白な頬に朱が差している。呪々は彼のことが好きなのだ。
昨日の儀式だって、彼と仲良くなりたいがために開いたのだった。

小岩井 幸太(おいわい こうた)。
呪々と彼の馴れ初めは丁度一年ほど前に遡る。
入学したての頃。まだクラスメイトたちが呪々の異様なオーラに慣れていなかった当時の話である。
彼は。
呪々の隣の席だった。
なんかいいな、と呪々は思った。
…………………。
……………。
………。
以上。
別に何らかのドラマがあるとか、そういうのはない。恋とは得てしてそういうものだ。
むしろ異常な状況下で覚えた恋は長続きしないと某アクション映画でも言ってましたよ!?

そんな、奇天烈なようで意外と普通っぽい乙女ちっくハートの持ち主たる呪々が、面と向かって幸太に告白する?

「……恥ずかしい」

呪々は俯いてしまった。
前髪で隠れた顔は、しかし見えなくても真っ赤になっているとわかる。
その様子は小動物のようで、ぶっちゃけめちゃくちゃ可愛かった。
恐るべし恋する乙女。恋をすると女の子は可愛いくなる、というが、
呪々は何せ基がいいのでその破壊力はメガトン級である。
こういう所を見せれば男なんて一撃必殺できるのになー、とか清芽はもぐもぐとから揚げを咀嚼しながら思った。

「ううん、じゃあ手紙とかは?時代遅れだけど信用度は変わらず高いラブレター」
「書いた」
「書いたの?やるじゃん!」
「でも出してない。恥ずかしいから」

呪々は周りのクラスメイトの目を気にしながら、鞄をごそごそと探ると真っ黒な封筒を取り出し

「待った。なにそれ?何その黒さ」
「黒い封筒が売ってなかったから自分で染めたの」
「いや、いいから。そういうのいいから。普通、ラブレターっていったら真っ白か薄い桃色の封筒で
 ハートのシールは鉄板でしょうが。え?なに?なんで黒?」
「おまじない。幸太くんがちゃんと読んでくれますようにっていう」
「抽選ハガキかよ。で、中身もなんかおどろおどろしいワケ?」
「ううん。中身はふつう」
「普通か!じゃあ封筒もそうしなよ!」
「………恥ずかしい」
「ああ、くそ可愛いなこいつ!!」

くわっと牙を剥く清芽。彼女は面倒見の良さには定評があるが、同時にツッコミにも定評があるのだ。

「原衛ェ、黒妻苛めてんじゃねーぞ」


154:コイノロウ(4/15)
08/05/28 11:48:34 wqQgQYV0
大声を出したので、周りから揶揄が飛ぶ。
無論、清芽を責める言葉ではない。清芽はだいたいいつもこんな感じだからだ。
黒く腐敗した毒沼のような近寄りがたいオーラの持ち主である呪々にとって、
世話焼きで交友範囲の広い清芽はクラスメイトとの重要なパイプ役だったりする。

「何騒いでんのお前ら。お前らっていうか原衛。……おー、黒妻のから揚げ美味そー」

――こんな風に。

「………………………!!!!」

呪々が猫のように固まる。
清芽も驚いた。呪々たちが囲む弁当を見つめてそう言ったのは、誰あろう小岩井 幸太その人だったからだ。
なんで、小岩井が、ここに――!?

「原衛。黒妻のから揚げ食っていい?」

そうだ、さっき幸太はクラスの男子に弁当を分けてもらおうとして(と、いうか盗み食いしようとして)
小指を間接とは関係ない方向に曲げられていた。
清芽が大声で目立っていたから様子を見てみた、そしたら何かから揚げが美味しそうだった。くれ。
別に不思議なことはなにもない。そういう流れだろう。
だが今、ここで、よりにもよって呪々のから揚げを欲しがるか。小岩井幸太。恐ろしい男である。
………っていうか。

「な、なんであたしに聞くかな?呪々に言えばいいじゃん」
「ん?だって原衛、黒妻の保護者だろ。黒妻、いいよなー?」

呪々は。

こくん、と。

頷いた。

「う、うん」
「おー、さすが。じゃ一個貰うから」

幸太はいともあっさりとから揚げを一つ摘み上げると、ひょいと口に放り込む。

「ンめぇ。何、これ冷凍じゃない?」
「呪々の手作り。この娘、こう見えて料理上手いんだから」
「へぇ。すげー、やるな黒妻」

ぱたん、と何かが――誰かが倒れる音がした。
呪々である。

「呪々―――ッッッ!!!?」

床に転がる呪々の顔は、どこか満足そうだった。
幸太に褒められたのが嬉しすぎてうっかり気を失ってしまったらしい。
何かと難儀な娘である。



155:コイノロウ(5/15)
08/05/28 11:49:04 wqQgQYV0
 
オカルトパゥワーだ。
目が覚めた呪々はそう確信していた。
だって、だって。
儀式を開いた翌日にたまたま幸太が弁当を忘れ、たまたま清芽に相談し、たまたま清芽が大声を出して、
たまたま幸太がこれを聞きつけて、たまたま呪々のから揚げを褒めてくれる。
――そんな偶然が!果たして起こり得るのだろうか!?いや、ない(反語)!!
………この際、似たような儀式っぽいことは何度もやってきたとか、
その時には今回のような奇跡は起きなかったとか、そういう細かい話は完全に無視である。
オカルト好きをナメてはいけない。
信じるものは都合のいいモノ。それが人生をより良く生きるコツなのだ。

呪々は感激してふるる、と小さな肩を震わせた。
正直、今まで呪々の身にこんな素晴らしいオカルトチックな出来事が起きたことなんてなかった。
オカルトマニアであることは自覚しているし、世の全ての摩訶不思議は存在すると思っているが、
どうにも呪々には霊感というものが皆無なようなのだ。
どんな恐ろしい怪談が語られるいわくの地に行っても幽霊なんぞ見たことはないし、
高いお金を出して買った水晶玉を何時間睨んでいても丸く歪んだ自分の顔しか映らないし、
走るのが苦手だから体育祭の前日決行した雨乞いも失敗したし、
テストの山勘も当たらなかったし。ちゃんと勉強したところしか解けなかったし。
そんな呪々が、初めて呪術の儀式に成功したのだ。
呪々のテンションは最高潮である。

「………呪々、大丈夫?」

保健室のベッドの上で、呪々は不気味に笑っていた。
いや、本人としては普通に微笑んでいるつもりなのだが、目をまったく細めずまん丸に見開いたまま、
口元だけ三日月のように歪めているその表情は無駄に怖かった。
そんな呪々に、放課後になって様子を見に来た清芽は心配そうに、恐る恐る声を掛ける。
清芽も呪々とつきあって長いが、この娘の笑顔は未だにちょっと怖い。

「ん。あ、清芽ちゃん」

しばしケタケタと殺人鬼の魂が宿った呪いの人形の如く笑っていた呪々が
親友の声に気付いてギギギと首だけこっちに向けた。
テンションが上がってますます不気味さが増している。すごく………怖いです。

「どうしたの?なんか嬉しそうだけど」
「うん」

呪々はコックリと頷いた。

「儀式がね、成功したみたいなの」
「儀式?」

清芽は小首を傾げた。この娘の言うところの儀式というと、話に聞くうさんくさいエセ魔術のことか?
しかし昨日はボヤ騒ぎを起こしたとか言ってなかったっけ。それって失敗じゃないか?

「幸太くんに褒められたのは邪神さまのおかげだよ。きっとぼくの呪いが奇跡を起こしたんだ」
「………………?」

奇跡を起こすならどっちかっていうと祈りの方が正しいんじゃないかとか思ったがそこには触れず、
清芽は傾げた小首を反対側にした。奇跡て。あの程度で?
そりゃあ幸太は呪々のから揚げを美味しいとは言っていたが………。
――あれ、多分普通にお腹がすいてたから摘んだだけだろ。
奇跡とは程遠い。ただの空腹な少年の行動だ。
から揚げが美味しかったのは邪神だか魔王だかのおかげではなく、
これまた普通に呪々の料理の腕によるものだろうし。


156:コイノロウ(6/15)
08/05/28 11:49:30 wqQgQYV0
色々とツッコミ所が多くてクエスチョンマークが頭の周りを舞っている清芽をよそに、
呪々はなにやらヤル気まんまんだった。

「……今度のお肉は牛ヒレ肉にしてみよう…………もっと効果が上がるかもしれない」

もちろんお弁当のことではない。生贄のことである。
呪る気と書いてやるきと読む。呪々の儀式の効果が証明された今、幸太と親しくなれるか否かは
ひとえにオカルトパゥワーにかかっているのだ。そりゃあ生贄も豪華になるってものである。

「ま、いいか……」

そんな呪々を見て清芽は肩をすくめ、優しく溜め息をついた。
クエスチョンマークはこの際丸投げでいいだろう。
いつも大人しくて引っ込み思案な親友が珍しくプラスの方向にテンションアップしているのだ。
この娘、趣味からは誤解されがちだが人畜無害だし。恋路に水を差すこともないだろう。

「頑張りなよ、呪々」
「うん。がんばる」

ぽんぽん、と頭を撫でてやる。
呪々も素直にこくん、と頷いた。



翌日。
止めておけばよかった。
清芽はセーラー服の上から熊っぽい毛皮を羽織り、幾重にも数珠やらドクロやらロザリオやらをさげ、
火のついたアルコールランプで蟹の甲羅を炙っている呪々を前にして後悔の念に駆られていた。
怪しい。呪々は不気味ながらも、世間一般の常識を持ち合わせていたはずなのに。
少なくともこんな、外に出た瞬間にお巡りさんに下半身タックルで職務質問されそうな
個性的な恰好はしなかったはずなのに。
ああ、ほら、いつもの呪々に慣れているはずのクラスメイトたちが若干いつもより遠い。
この学園はわりかし奇人変人が多いのだが、呪々はその中でもギリギリ
常人の範囲内にいた――なにせ学校での呪々は雰囲気が不気味なだけで
異能というほどのものではなかったので――はずなのに、今日のこの対応はどう見ても変人側のそれである。

「……黒妻さんの仮面、かわいいなぁ………」

しかも、いつも仮面をつけて決して素顔を晒さない謎のクラスメイト、
桐生(きりゅう)さんが仲間を見る目で呪々を見ている!
ちなみに今日の桐生さんの仮面は珍しく露出の多い蝶のアイマスクだ。
仮面の下から覗く肌の細やかさとか桃色の唇とか澄んだ瞳とか、素顔の彼女は結構な美人なんだろうけど。
触らぬ変人に祟りなし、がこの学園における暗黙の了解なので誰も彼女の素顔には触れない。
――そんな、奇異の目で見られるのが日常の変人ロードに入ろうとしている親友を見過ごしていいものか。
呪々は、そりゃあヘンな趣味はあるが――中身は普通の女の子なのである。

「あの……呪々?」
「あ、清芽ちゃんだ」

清芽に気付いた呪々はアルコールランプから蟹を下ろすと仮面を額まであげて微笑んだ。
なんだろう、おかしい。いつものようにまん丸なハイライト処理を忘れたような妙に光沢のない目で
チシャ猫を連想させる三日月口の笑顔なのに、いつもより可愛い気がする。
妙に嬉しそうで――頬も、少しだけ上気しているようだ。


157:コイノロウ(7/15)
08/05/28 11:49:59 wqQgQYV0
「………なんか嬉しそうだけど。どうしたの?」
「うん。呪いがね、順調だから」

呪々は上機嫌だった。
それもそうだろう。昨夜は気合を入れて呪いの儀式に明け暮れて、
いつの間にか疲れ果てて眠ってしまったのだが、なんと夢の中に幸太が出てきたのだ。

「………………………」
「…………………」
「……………」
「え?そんだけ?」
「ふふ」

にこにこしている呪々には悪いが、だからどうしたという清芽である。
って言うかそれ、呪いと何の関係もなくないか?

「それだけじゃないよ。朝ね、学校に来てミニ祭壇の準備をしてたら、幸太くんに挨拶されたの!」

幸太はよお、と、クラスメイトに普通に挨拶しただけなのだが――この恋するオカルトマニアにとっては
天にも昇るような出来事だったのだ。急に近くなった(気がする)幸太との距離。
これはもう、呪術の成果に違いない!というのが呪々的見解なのである。

……呪術の成果、ねぇ――。

清芽は軽い頭痛を覚えてこめかみを押さえた。
清芽的見解を言わせてもらえば、それらは単なる偶然。
というか、不思議なことなど何もないフツーのことに過ぎない。
おかしいのは今の呪々の方だ。明らかに暴走している。
今までは趣味の範囲内と見逃してきたが、教室にまでこんなモノ持ち込むのは常識ある人間のやることではない。
恋するオカルトマニアと優しく微笑んではいられない領域だ。
だいたい、こんな奇行を見せられたら幸太だってドン引きするんじゃあるまいか――。

と、ちらりと幸太の席のほうを盗み見て。

幸太が、なにやらぽぅっとこっちを――呪々を見つめているのに気が付いた。

「え?」

自然と声が出る。
幸太は清芽の視線に気が付くと、慌てたようにそっぽを向いた。
その横顔の、頬がなにやら染まっている。
これは――え?まさか。

「………………………なんで?」

呪々に目を落とす。
呪々は幸太の視線には気付いてないようで、
うんだばだーうんだばだーとわけのわからない呪文を口にしながら蟹を炙っている。
そりゃあこの怪しい女の子を見て気にならない者はいないだろうが
――それで頬を染めるというのはどうなんだろう。
可愛いくなってるといっても、付き合いの長い清芽にして始めて気付くような変化だ。
幸太のような普通の人間からすれば、少なくとも常識的な恰好をしていた
昨日までの呪々のほうが余程魅力的だろうに。


158:コイノロウ(8/15)
08/05/28 11:50:21 wqQgQYV0
………昨日までの幸太が呪々を意識していたなどという記憶はない。
良くも悪くもクラスメイトとして、遠ざけはしないが積極的に近づこうともしない距離にいたはずだ。
それが証拠に、昨日のお弁当の時は呪々を清芽の付属品みたいな言い方をしていなかったっけ。
それが、なんで今日になって。

「………………………呪い?」

呪々は混乱する清芽をよそに、一心不乱に蟹を炙っていた。
その焦げ目を見ながら、うん、と頷く。
亀甲占術。最古の呪術のひとつですね。
それは占いであって直接相手に影響をもたらす呪いとは微妙に異なるような気がしないでもないが、
呪々はなにやら満足そうに焦げた蟹を眺め回している。
そして、そんな呪々をちらちらと見つめる幸太。

「……………………………」

まさかね。



………………………まさかね。

清芽は今日、何度そう思ったかわからない。
幸太である。幸太の様子がヘンなのだ。
どのようにヘンなのかというと、それはまぁ今朝の通り。呪々に気を取られているというか、
呪々が気になっているというか――ええい、呪々を意識している。これに尽きる。

「呪々、あんた何かした?」
「誰に?」
「小岩井」
「………?」

呪々は質問の意図するところがよくわかっていないよう。
幸太の名前を出されてちらりと幸太の方を見て――幸太が、呪々と目が合ってびくっと大きく震えた。
慌ててそっぽを向き、関係ないような顔をしている。バレバレだ。
呪々はというと、幸太と目が合ったのが嬉しいのかちょっと頬を染めている。

「両思いになれますようにって呪いはかけてるけど」
「………いやそういうんじゃなくて」

呪々の『呪い』は人畜無害。それは清芽にはわかっていることだ。
よくテレビや何かだと呪いに見せかけて裏で工作をする、なんてサスペンスやミステリーがあるが、
そんな姦計を巡らせるような腹黒い女の子なら清芽は友達をとっくにやめているだろう。

しかし、その呪いの効果が出ているのは確かなわけで。

なんせ、幸太は授業中にもずっと呪々を目で追っていたのだから。
教科書を広げていても、頬杖をついた視線の先には呪々の姿。
ぼりぼりと頭を掻いて、物憂げにため息とくればこれはもう決まりじゃないか?

「そうなの?」
「あたしが見てた限りでは」


159:コイノロウ(9/15)
08/05/28 11:59:22 wqQgQYV0
それは清芽が授業中ずっと幸太を観察していたということに他ならないわけだが。
誰かに見られていたらそれはそれで誤解されるかも知れない。まぁ、それは置いといて。

「ホントに、何もしてないんだよね?」
「呪い」
「呪い以外で」
「………」

呪々は少し考え込んだ後、ふるふると首を振った。

「謎だ」

腕を組む清芽。幸太が急に呪々を意識し始めたのは知る限り今日からだ。
心当たりは……ない。
ないけど。

「なんだろ?何か忘れてるような」

清芽は首を捻った。
そして呪々はというと。

「………そっか。呪い以外でも頑張らなくちゃ」

なにやら胸の前で拳を固めている。
――そしてその間にも、幸太はぼうっと呪々を見つめていた。



うんうん唸って考えたあげく、放課後、呪々は思い切って幸太に挨拶することにした。
ばいばい、小岩井くん。
………それだけ。
呪々を責めないで欲しい。彼女はオカルトマニアだけど基本的に引っ込み思案で恥ずかしがりやなのだ。
それが証拠に、たった一言挨拶するだけなのに、呪々の小さな胸はこんなにも激しく脈打っている。
どくん、どくん、どくん、どくん。
耳元で鼓動が鳴り叫ぶ。あまりの音量に、幸太の耳にも届くのではないかと心配になるほどに。
恥ずかしい。でも、頑張れる。なにせ自分には呪いの力があるのだ。今、絶好調なのだ。
これから少しずつ仲良くなって、いつか――本当にいつか、好きだと言えるような関係になるのだ。

呪々は精一杯の笑顔をつくり、言った。

「ば、ばいばい――小岩井くん」
「……………………」

幸太は、一瞬だけ立ち止まると、

呪々と目も合わせずに、すっと行ってしまった。

「――――…………ぁ、え」

一瞬、何が起きたのかわからない。
目を瞬かせて、後ろを振り返って、幸太の後姿が廊下に消えていくのを確認して
――急速に全身の血が冷えていくのを自覚する。

160:コイノロウ(10/15)
08/05/28 12:00:31 wqQgQYV0
『無視された』。

その事実が、万物を凍結させる冷却材となって呪々の頭をぎりぎりと締め付けた。
何で?どうして?
清芽だって言っていた。
呪いはあんなにうまくいっていたのに――。
反動か?なんのリスクもなく呪いを使おうとしたのが間違いだったのか。
悪戯に運気を弄ぶような真似をしたから、罰が当たったのか。
わからない。

下校を促す鐘の音が、すごく、すごく遠くから聞こえた気がした。

傍から見れば、きっとなんてことない。
ほんの少しの、些細なすれ違い。
だが、恋するオカルトマニアにとって。
好きな男の子は世界の中心である。

「お待たせー、呪々。………呪々?どうしたの?」

用事を済ませて教室に戻ってきた清芽の声も、聞こえているのかいないのか。
呪々はただでさえ白い顔を蒼白にして、ふらふらと幽鬼のような足取りで家路についた。

「………?」

昼間でのはしゃぎようとあまりに差のある火の消えたような呪々の様子に、清芽は訝しげに眉をひそめた。



「………………………」

頭が痛い。
鉄でもガラスでも、熱した状態から急激に冷やすと罅が入るというが、人間の心もそうなのだろうか。
呪いが成功し、幸太とわずかでも触れ合うことができて高揚していた心が、たった一回の拒絶で反転している。
どこか自分に非があったのだろうか?知らない間に、幸太にとって不快なことをしていたのだろうか?
――わからない。
ぐるぐると思考が回る。螺旋を描くように、深く、深く地面を抉るように。
どうしよう。どうしようもない。どうすればいいかわからない。
建設的な考えは何も浮かばなかった。ただ、どんどん沈んでいくような感覚に立ち上がることもできない。

普段なら――こういうとき、何をどうして気を紛らわせたっけ。


呪いが実在するのかどうか――それについては、現代の科学をもってしても明確に答えることはできない。
だが、迷信、言い伝え、ジンクスと呼ばれるものならば。
つまらないものと切って捨てることは容易だが、その裏には結構信用に足る解釈が隠されているものだ。
たとえばエジプトの有名なピラミッド。王の財宝を荒らすものにはミイラの呪いが降りかかるとされる
アレなんかは、実のところピラミッドという密閉された空間に保存されていた
未知の――古代の病原菌によってもたらせられる病なのではないか、という説もある。
王の財宝を荒らすものに呪いあれ――。
それが言霊となって印象付けられることにより、盗掘者や考古学者たちは
『病気』ではなく『呪い』によって死んでいくと解釈されるというわけだ。

呪いの本質は言葉にある。


161:コイノロウ(11/15)
08/05/28 12:01:39 wqQgQYV0
呪いという言葉がプレッシャーとなり、降りかかる不幸を呪いと関連付けて考えるようになるのだ。
本当はなんでもないことなのに、これは呪いのせいだ、と受け取ることによって
その人にとってはけつまづいた自分の不注意ではなく、呪いの影響で運気が下がっていることになるのである。
それは『掛けられた側』ではなく『掛けた側』も同じであり、
呪った相手に不幸が訪れるとしめしめ、呪いが効いたなと思ったりする。
しかしそれが偶然の出来事なら別に呪わなくても相手は不幸になったろうし、
必然ならなおさら呪いなんか関係ない。
なのに呪いの成果と信じられるのは、つまるところ言葉によって思考が停止していることに他ならない。
それこそが呪いと名付けられた言霊の力なのである。

本質的な意味での『呪い』など、そんなものは存在しない。
念じただけで相手に影響を及ぼすような、そんな便利な能力があるわけがない。
意思はすべからく、行動によって始めて力と成す。
それが――少なくとも、呪々のような普通の人間の常なのだ。

しかし、呪々は信じていた。もともと不思議なこと、非科学的なことが好きなタチであり、
自分には男の子に好かれるような魅力などないという自虐が根底にあることも手伝って、
幸太が自分にしてくれることは全て呪いの成果によるものだと信じていたのだ。

それが良いことであろうと――、

――悪いことであろうと。

「―――………」

たとえ呪いの代償が我が身に降りかかってこようとも。
呪々に頼れるのはやはり、呪いしかないのだった。



漆黒のマントが翻る。
つばの広い、先っぽの折れたとんがり帽子。
脚には学校指定のハイソックス。

それが現在、呪々の身に着けているもの全てである。
嬉しい時は感謝を込めて、悲しい時は願いを込めて。
何度も何度も繰り返した儀式の礼装。
ただし、今回のそれは今までの儀式とは少し違っていた。
照明代わりの蝋燭に火が灯っていない。雰囲気を出すための小道具であるところのアロマも、
オリジナルの呪文を延々と吹き込んだデッキも今日はなし。呪々が生贄と呼ぶスーパーで買ってきた生肉も、
おどろおどろしさを演出する『生き血』のトマトジュースも、『祭壇』――布をかぶせた机の上には乗っていない。
あるのは呪々の身体ひとつ。
随分と投げやりで、手抜きの儀式であった。

「………………」

……だって、本当は呪々だって知っているから。
この行為には何の意味もない。
単なる気休めなのだということを。

「――ふぅ」


162:コイノロウ(12/15)
08/05/28 12:02:47 wqQgQYV0
ひた、と小さな手がすべすべとした肌の上を滑る。
幼さの残る肢体。呪々のコンプレックスでもある未熟さは、
しかし熱っぽく、指先が伝う度にぴく、ぴくと小さく震える。
目を閉じる。まぶたの裏に、大好きな彼の姿を幻視する。
明るくて優しい彼は、想像の中では呪々だけを見てくれていた。
その大きな掌で、呪々の心を包むように胸元をなぞる。
平らといってもいいほどの凹凸のないそこの中心、一際敏感になってしまっている突起に触れた。

「くぅっ」

思わず出そうになった声をかみ殺す。
いけないことをしている。やめなくちゃ――でも、止まらない。
まるでほんとうに、幸太に愛撫してもらっているようだ。恥ずかしくて死んでしまいそう。
瞳の端に涙を浮かべて、しかし呪々の手はどんどん動きが大胆になっていった。
こりこりと硬くしこってきた乳首を摘み、擦る。
痛みを感じるほどに引っ張って、指の腹で転がすようにさすって。
ぴりぴりとした快感が弾けて、自分の中で何かがどんどん高まっていくのがわかる。

熱い。
芯から、身体が熱くなってくる。
その熱はお腹の――下。女の子の大切なところに集まっていく。

「………はぁ、はぁ、は――」

呪々はまるで操り人形になってしまったような動きで、のろのろと自分の下腹部に手を伸ばした。
指を這わせた縦筋は、なんだかびっくりするくらい濡れていた。
身体が幼いなら性器も幼い。小学生半ばからほとんど成長のないこの身体は、
それでもしっかりと『女』を感じることができていて、こうして幸太を求めて恥ずかしい汁を垂れ流す。
そんなとき、想像の中の幸太は意地悪く笑って呪々をからかうのだ。
熱に浮かされた頭で、幸太が呪々のその部分から溢れた蜜を掬い、粘ついた液を見せ付けるところを想像する。
つうっと銀の糸が指と指とに橋をつくり、ぽたりと垂れてお腹の上に落ちた。

こうやって幸太と身体を重ねるところを想像して自分を慰めるのは初めてのことではない。
いや、実際のところ数えちゃいられないくらいの回数はこなしている――ように思う。
おかげで呪々の中の幸太は何をどうすれば呪々が切ない声をあげるのかすっかり知り尽くしてしまっていた。
かなり恥ずかしいが、まぁそれも仕方がない。
これは呪々なりのオリジナル呪法――と、いうことになっているのだから。
今日は気分が沈んでいたのでかなり準備が雑だったが、
本当は普段の儀式のように蝋燭に火をつけたりお香を焚いたりする。
ようは、幸太の生霊だかなんだかを呼び出して抱いてもらう――そして幸太の魂が身体に戻るとき
その記憶は消えてしまうのだけど、呪々を抱いた事実が深層心理に働きかけて呪々との距離を縮めることになる
――という面倒くさい設定を持った儀式なのだが、
言ってしまえば自慰という恥ずかしいことをする理由付けのようなものだ。
儀式なのだから仕方ない。その程度のものに過ぎない。

………でも、それもどうでもいい気分だった。
今はそんな建前など忘れて、ただ好きな男の子に愛されるユメを見ていたい。

僅かな毛さえ生えていない未熟な秘所を、何度も擦る。
その度に熱い吐息が声帯を震わせて、自然と喉の奥から生臭い声が漏れる。

幸太くん。
幸太くん。
幸太くん、幸太くん。
幸太くん、幸太くん、幸太くん幸太くん……。


163:コイノロウ(13/15)
08/05/28 12:04:01 wqQgQYV0
何度も何度も彼の名前を呼ぶ。
返事はない。想像の彼はにっこりと微笑んでくれるけど、優しく名前を呼んでくれるけど。
本当は――目の前に彼の姿はないし、鼓膜を震わせるものは寂しい少女のあられもない声だけだ。
愛しくて、寂しくて、呪々はますます小さくなってしまいそうだった。
呪々のから揚げを美味しいと言ってくれた幸太。
呪々の消しゴムを拾ってくれた幸太。
おう、おはよう黒妻と挨拶してくれた幸太。
教科書見せて、と授業中肩と肩が触れ合うくらいに近づいてきたときは、本当に死んでしまうかと思ったものだ。
どうして無視されてしまったんだろう?答えはない。その答えが何よりも恐ろしい。
常識で考えればわかることだ。こんな暗くて、ちんちくりんの女の子なんか嫌いになって当然だから。
ただ、それを――幸太に言われてしまったら、きっと、自分は生きていけないと思った。
だから今、こうして自分を慰めているのだ。
くだらない呪いに望みを託して、浅ましく快楽を貪っている。

胸がくるしい。
呪々は泣いていた。
泣きながら、自分を慰めていた。
恋するオカルトマニアはただの少女になって、
愛しいひとの名を呼びながら、果てた。

「――こうた、くん……」

その声が届かないことを、呪々はちゃんと知っていたけれど。



昆虫の羽音のような低いバイブ音が響き、くったりと弛緩していた呪々はびっくりして跳ね起きた。
携帯電話だ。
鞄の中に放り込んでそのままになっていたそれを――濡れた手はティッシュで乱暴に拭いて、つまみ上げた。
液晶画面に浮かび上がった相手の名前は――。

「……清芽ちゃん?」
『あ、もしもし?呪々?』

おせっかいで優しい、一番の友達のものだった。
コールに出てしまってから少しだけ後悔した。
呪々は今さっき自慰で果てたばかり。身体がだるくって何をするにも億劫な状態だ。
清芽のことは好きだけど、この元気さに付き合えるのも時と場合ってものがある。

「……ごめん、清芽ちゃん。ぼく、今」
『いや、すぐ終わるから!ちょっとだけ聞いて!』

なんだか清芽は興奮しているようだ。いつもより1.5倍くらいテンションが高い。
呪々は面倒くさそうに聞き返した。

「なに?」
『呪々さ。今日の帰り、小岩井にシカトされたんだって?』
「………………」

何も言わずに通話を切ろうかと思った。
そりゃあ事実だ。幸太に無視されてしまった。だから呪々は落ち込んでいるのだ。
恋するオカルトマニアの世界は好きな男の子の態度ひとつで簡単にくるくる表情を変えるのだから。
でも、その事実をわざわざほじくりかえすことはないんじゃないかなぁ?
だいたい、そのことを一体誰から清芽は聞いたのか。もちろん呪々は言ってない。


164:コイノロウ(14/15)
08/05/28 12:05:09 wqQgQYV0
………ん?と、言うことは。

『いや、呪々の様子がおかしかったから小岩井に電話してみたんだけどね。まぁ、ビンゴだったわけだけど。
 それで、呪々。話変わるんだけど、例のラブレター今持ってる?なくしたんじゃない?』

ラブレター?
呪々は少し考えて、すぐ気が付く。あの黒いラブレターのことか。
呪々が一生懸命書いて、呪いを込めて黒く塗りつぶして、でも恥ずかしくて渡せなかったあのラブレター。
……あれ?
そういえば、あれ、どこへやったっけ。
一番最後に見かけたのはこの間の昼休み、清芽に見せて――幸太がから揚げを褒めてくれて、呪々が倒れて。
………………………。
…………………。
……………。
………片付けた覚えがない。

『あれ、小岩井が拾ってたらしいんだわ。あたしが呪々を保健室に連れて行ったあと、
 なんじゃこりゃあって感じで』

――。

「えぇぇぇぇええええええぇぇぇぇぇ!!!?」

呪々は絶叫した。
あんまり大きな声が出せない呪々だけど、今回ばかりは絶叫した。
あれを?幸太が?拾った?ウソ。え、嘘!?

『で、裏に小岩井幸太くんへって書いてあったから、まぁ拾った手紙読むのもアレだったけど自分宛だし、
 興味が勝って結局その』
「………読んじゃったの?」
『うん』

呪々は気絶した。気絶して、二秒ほどして意識を取り戻した。
もう夏が近いとはいえ、限りなく全裸に近いこの恰好で朝を迎えたら風邪を引いてしまう。
それに気絶している場合ではない。
読まれた。あの、黒いけど内容は普通に恋を綴ったラブレターを。
………………。
ぷしゅう、と一瞬にして脳味噌が沸騰する。
赤くなったり青くなったりしている呪々を知ってか知らずか、清芽は続けた。

『――で、まぁそういうわけ。読んで、呪々のことが気になってたんだけど、
 面と向かって声かけられたのにびっくりしてつい、そのまま帰っちゃったんだって。
 悪かったって言ってたよ。ああ、それから明日、放課後ちょっと残って欲しいらしいんだけど。
 ――呪々、もちろん予定はないよね?』

清芽の声のトーンが若干高くなっている。にやにやとした顔が目に浮かぶようだが、
呪々にはそんなことを意識している余裕はなく、あまりの展開の飛びっぷりに目を白黒させている。


165:コイノロウ(15/15)
08/05/28 12:06:15 wqQgQYV0
待て待て待て待て。
と、いうことは、何か。
呪々は、幸太に嫌われたわけではなかったということか?
そして――なんだって?放課後?残ってくれ?
ラブレターで告白された相手にわざわざ――そんなことを伝えるということは。
え。え。え?
ど、どういうこと?

『………ま!ここから先は若いもん同士でよろしく!!って感じ?あたしからはそれだけ!
 それじゃあ呪々。明日、頑張りなさいよ!!』

それだけ言って、清芽は一方的に通話を切った。
と、思ったらメールが来る。女の子らしい、やたら顔文字の多い激励メールだ。
本当に、おせっかいで――優しい、親友だった。

「………………」

呪々は――目を瞬かせた。
未だに現状の把握ができていない。
どうしてこんな、奇跡のような出来事が起きたのか、さっぱりわからない。

わからない?

そんなことはない。
呪々はその原因を知っているはずじゃないか。
たとえ幸太に想いを伝えたのが、呪々が一生懸命書いたラブレターだとしても。
たとえラブレターを幸太が拾ったきっかけが、呪々のから揚げに釣られて空腹の幸太が寄ってきたことであったとしても。
たとえ幸太に惹かれたオカルトマニアが、ただの小さな女の子だったとしても。
奇跡なんかじゃない。不思議なことなんて何もない。どこにでもあるような恋の物語でも――。

これは――きっと、呪いがきいたのだ!
呪々の恋するオカルトパゥワーが奇跡を呼んだのだ!!
そうだ!そうだ!きっとそうに違いない!!!!

呪々は混乱の極みの中、握り拳をつくって立ち上がった。

ハイル・オカルト。
ジーク・オカルト。

とりあえず、明日の放課後は呪術礼装であるこの恰好で!!



              コイノロウ~新ジャンル「オカルトバカ」妖艶伝~ 完



166:名無しさん@ピンキー
08/05/28 12:39:45 bLBd2mtb
リアルGOD JOB!!!

しかし凄え、短編も長編もレベル高い……

あんたにならほら(ry

167:名無しさん@ピンキー
08/05/28 18:45:44 4qVxwQ8j
長編GUJ!短編GJ!

>>146
読みながらニヤニヤしてしまったw


168:名無しさん@ピンキー
08/05/28 21:30:51 Ush/MuQM
ジャブの嵐のあとに本命のストレートって感じだな
魔女ルックに靴下だけ装備する呪々のセンスにGJ!
そしてさりげなく出演してる某アサシンデレと某へっぽこ魔王にさらにGJ!

169:名無しさん@ピンキー
08/05/28 23:26:15 nTFUtX1K
久し振りにキターーーーーーーーーーーーーーーーー
無口オカルトの次は勘違いオカルトかい?
かわええのぉコノヤロウ!
そしてタイトルを『コノヤロウ』と読んだ俺の頬を音高くパンチしてくれ!

はぐぅっ

なかなかいいパンチじゃねぇかコノヤロウ…orz

要するにこう言いたいのさ
やられたぜGJ!



170:名無しさん@ピンキー
08/05/30 22:06:14 slRtkOh7
男「もぐもぐ……」
女「なに、アンタまたパンなの?」
男「うん。ツナサンド」
女「男のくせに小食ね!ほら!」
男「……なんだこの弁当」
女「あ、あげるわよ!」
男「えー、いいよ」
女「いいの!どうせ余っちゃったやつだから!か、勘違いしないでよね!
  朝、作りすぎちゃっただけなんだからねっ!」
男「いや、いいって。まだパンあるし」
女「………」
男「もぐもぐ……」
女「………」
男「もぐもぐ……」
女「………すん」
男「もぐもぐ……」
女「……な、泣いてなんかないんだからねっ!」
男「はぁ」


新ジャンル「報われないツンデレ」

171:名無しさん@ピンキー
08/05/30 22:17:35 slRtkOh7
追加


男「おーい、友ー」
友「ん?」
男「女が弁当余って困ってるんだって。食ってやれよ」
友「え?いいの!?」
女「な、ちょ……!何勝手に……」
男「え?作りすぎて余ってるんだろ?」
女「………あ、う……」
友「いやー、悪いね!ラッキー、飯代浮いたぜ!」
女「あ、あ……」
男「パン食ったし、図書室で昼寝でもしてくるわ」
友「もぐもぐ!」
男「口にモノ入れたまま喋んな」

ガララ ピシャン

女「………」
友「もぐもぐ」
女「………」
友「もぐもぐ」
女「………う…」
友「いやぁ、美味いよ!女ちゃん!」
女「………うわぁぁぁぁん!!」


172:名無しさん@ピンキー
08/05/30 23:18:31 TlxyT4to
>>170-171
全俺が泣きながら萌えた・・・(つд`*)

173:名無しさん@ピンキー
08/05/31 22:12:37 e5sw4H1C
いやー、でもツンデレってこんなもんじゃね?

174:名無しさん@ピンキー
08/05/31 22:16:32 CamhcvkE
だな。
リアリティー考えると、こういう感じになるだろうなぁ・・・。

次は是非新ジャンル「へこたれないツンデレ」で。

175:名無しさん@ピンキー
08/05/31 23:49:59 wJw+C8SI
ぼく、リアリティーのはなしをするひと、きらいだな

176:名無しさん@ピンキー
08/06/01 03:06:02 RIYq+fEr
豆田貴子が構える狙撃銃の、スコープ越しに写る少女の笑顔。
自分の愛する男の、双子の妹。将来は義妹となる彼女とは良好な関係を築きたいとは思っていたのだが…。
彼女に微笑みを向けているであろう少年の笑顔を想像し、嫉妬の炎を滾らせながら改めて標的を睨み付ける。
『春樹さん……。……ルカさん、覚悟!』
引き鉄にかけた指に力を込め、射撃する。
そしてサイレンサーを通じて音も無く放たれた弾丸は、いつも通りに標的を貫く………ハズだった。
「……何故?」
飛翔した弾丸はルカから大きく逸れ、通路を挟んだ向かい側の木の幹を微かに抉ったのみだった。
改めて狙いを付け直し、再発射するものの、今度は植木の葉っぱを打ち落とすのみ。
脳内に数多の疑問符を浮かべつつ、今度は適当な生垣の花を狙い発射。
今度は狙い通りに椿の花…しかも花弁を一枚のみを打ち落とせた。
『照準は狂っていない……。何故外れたのか判らないけど……これなら!!』
もう一丁用意しておいた突撃銃。
サイレンサーの具合を検め、セレクターレバーをセーフティーからフルオートモードに切り替え、斉射。
今度は春樹もろとも気絶させる可能性があるが、仕方ない犠牲と心の中で謝罪する。
まぁ姉の陽子と二人掛かりなら、春樹を連れてこの戦場を離脱することも可能だろう。
……しかし。
『…馬鹿な。』
1マガジン20発の麻酔銃を打ち込んだにも関わらず、何事もなかった様にいちゃついている二人。

認めなければならない…。何の手品か奇跡かは知らないが、標的の青山春香に対しては飛び道具は通じないようだ。
『そういえばダンボール愛好家の工作員が言ってた…。
 ……ライフルやグレネードすら通用しない、幸運の女神の名を持つ女戦士がかつて居た事を。』
しかし、今の相棒はなにより肉弾戦を得意とする者…。彼女なら、この戦局を打開できる。

『お姉ちゃん…。狙撃に失敗、接近戦を開始して。』
しかし、彼女からは返事は無い…。双眼鏡を姉の方に向けると…。
『…ね、寝てる?…!まさか、流れ弾で!』

これは見事に作戦失敗としか言いようがない。
…こんな所で爆睡している姉をこのまま放置しておけば、今回のデートを阻止できるだろう。
春樹が姉を連れて帰るという形で…。…それもそれで腹が立つ。
『…お姫様抱っこの二回目は無い。お姉ちゃんを回収して、出直す。』

しかし、撤退を行う前に一仕事だけはこなしておく。
撤退の合図の橙色の信号弾…。

「あれ?ハル、花火上がってない?」
「そうだな。でも、一体何なんだろうな?」

自分たちの連絡ですら、スウィートな話題の一環にされてしまうこの悔しさ…。
『春樹さん……。浮気する旦那様は、後でお仕置き………。』
「……ぅうう~ん。春樹ぃ~~。」
「………くっ!!」
額に青筋を浮かべながら、幸せそうに眠りこける姉を引きずりつつ退場する豆田貴子。
I'll be backと、堅く心に誓いながら…。

新ジャンル「Fotune 幸運の女神」新醤油学園野望編

177:名無しさん@ピンキー
08/06/01 03:08:37 RIYq+fEr
「せい!!」
遠山理菜の手元から放たれた飛び苦無。
「たぁ!!」
もっとも、黒田夕圭とて大人しく殺られるつもりもない。
ベルトに押し込んでいたトンファーでなぎ払う。
「へぇ~。貴女、得物も扱えるの?…なら私も!」
懐から忍び槍を取り出し、再度構えなおす理菜。
『豆田姉妹はあっさり撤退…か。…彼女達を過剰評価してたみたいね。
 距離をとってチマチマやるのも時間が惜しいし…。一気にカタを着ける!!』
一方の夕圭の方も、戦いを楽しむ余裕などまるで無い。
『真智子ちゃんに、豆田姉妹…。いつまでも彼女相手に手間取る訳には!!』
囲炉裏が春樹の布団で眠っていることも、豆田姉妹が撤退したことも今の彼女に知る由は無い。
裂帛の気合が周囲を包んだとき、少女たちは文字通り火花を散らしあっていた。

そんな殺伐とした空気とは全く無縁な二人の姿。
ルカお気に入りのスポットである池のあるエリアは、水鳥が優雅におよぐ平和そのものな光景であった。
そこでルカはとある提案をする。
「えへへへへ。お腹空いたし、そろそろお弁当にしようか?」
「ああ。そうだな。」
本日の昼食は珍しくルカ謹製のサンドウィッチ。
彼女も料理はできるのだが、如何せん朝に弱いために豆田姉妹のように早朝の台所に立つことができない。
そして放課後も部活に参加しているため、ルカが作った料理もかなり久しぶりだったりする。
それでも春樹は思う。これは良い仕事をしていると。
『ベーコンとレタスとチーズ…。定番だけど良い取り合わせだよな。
 こっちは鶏ハムに玉ねぎと春キャベツでマヨネーズの味付け…。…この組み合わせ、サラダで試させてもらうか。』
なにより自分と味の好みがほぼ完全に一致している。

やがて、二人前の弁当を二人で平らげると、春樹に擦り寄ってくるルカ。
「ねぇハル、膝枕、してあげよっか?」
春樹の方は戸惑うしかないだろう。
普段の休日は正午を廻らないと起きて来ない妹が目覚ましなしに目を覚まし、弁当の準備までこなしていたのだから。
しかも、何か妙に気合が入っている。普段から見慣れているルカの顔なのに、薄化粧している為かより可憐に見える。
「お、おい…。そこまでしなくてもいいぞ?そういうのは彼氏とか、大切なヤツが出来た時まで取っておいていい。」
しかし春樹の返答に、ルカの太陽のような笑顔は曇りだす。
「ハル…。何も判ってない…。」
「ルカ?」
「私の大切な人はハル一人だけなの!」
「お、おい?何を…むぐぅ。」
一気に距離を詰められ、ルカに抱きしめられる春樹。そして強引に唇で塞がれる口。
触れ合った頬の隙間を彼女の涙が伝った事で、春樹は妹の覚悟を思い知る。

「好きなんだ、ハル…。きっと、生まれた時からずっと…。それに、これから先もずっと好きだから…。」
唇を離し、そうつぶやくルカ。
血のつながった妹の、しかし男を誘う女の目をした彼女に対し、春樹は明確な返答を返せずに居た。

新ジャンル「ブラコン妹 突貫」新醤油学園野望編

178:名無しさん@ピンキー
08/06/01 11:26:28 qCVNquwG
急展開だけどとりあえずスネークに吹いたw

179:名無しさん@ピンキー
08/06/01 23:29:27 dyI9Xkp4
麻酔銃とはいかなる物なのか?

『麻酔薬の入った注射筒やダート(矢)を発射する銃。拳銃型とライフル型が存在する』
と某百科事典には記載されている。

失態に我を忘れたのか、弾の回収を怠った貴子。
麻酔薬は貴子特製の薬であり、後遺症なしにスッキリ目覚めの優れ物である。

ある意味、物凄く危険な置き土産。その内のひとつが、膠着状態の戦いに決着をもたらす…


忍び槍とトンファーで激しく打ち合う理菜と夕圭だったが、理菜が大きく跳んで距離を取る。
「奥儀・乱れ吹雪っ……はぁ―っ!!!!」
理菜は渾身の力を籠めて苦無を投じる、しかも八本も。
「くっ!!やらせるか!!」
が夕圭も達人級の腕前、全ての苦無をトンファーで弾き飛ばす。
「ちっ…あれをしのぐとは……。黒田夕圭…流石ね!!」
「そう言う貴女こそ……只者じゃないわ…」
お互いを認めあう二人の少女。戦いはまだ続くと思われた、その時。

「は、ハルぅ―!!」

公園内に響く少女の声。二人の戦っている、すぐ近くから聞こえてきたその声は……

「ルカの声!?まさか春くんに何か!?」
「春樹くんに!?」


一体、春樹に何がおこったのか?夕圭と理菜の二人が青山兄妹に駆け寄ってみると……

春樹が大の字になって倒れていた。


180:名無しさん@ピンキー
08/06/01 23:31:32 dyI9Xkp4
「ルカ!!春くんはどうしたの!?」
「理菜!?…それに夕圭ちゃんまで!?」
ルカの目が険しくなる。
「…どうして二人がここにいるのかな?」
「る、ルカちゃん…説明は後でするから…それより春樹くんが…」
「ああっ!?は、ハルがいきなり『痛え!!』と言って倒れて!!」
夕圭はざっと春樹の体を見渡す。
「えーと…わっ、たん瘤が出来てる…!!『首に針の痕!?』」
微かにうなじの所に針で刺した様な痕が残されている。
『呼吸、脈に影響は見られない。…となると麻酔薬か何かで眠っているだけか』

ふぅと夕圭はひとつ息を吐く。
「大丈夫みたいよ…ただ気絶してるみたい」
「でも何で春くんが気絶をしたの?」
「ああ、多分…」
「……これなぁに?」

ルカがあるものを発見した。
「あっ!!それ私の苦無じゃん、なんで…」
「…これが多分落ちてきたんだよね…となると……ハルが気絶したのは…理菜のせい?」

キギッ

首を理菜の方へ向けるルカだが…
「る、ルカ…さん?……ひょ、ひょっとして…」
「怒ってるわよ」
口許は歯を見せているものの、目が尋常じゃなく血走っている。
「あ、あの…わるいとは…思って…」
「許すと思う?」

次の瞬間。
猛ダッシュで逃亡する理菜と、陸上部エース・ルカの追跡劇が始まった。
「ひぃ――っ!!!!」
「待ちなさいよ――、オラァ――ッ!!!!!!」


その場に残された夕圭。
『おそらく、私が弾き飛ばした苦無が春樹くんの頭に落ちる
→痛みで春樹くんが下を向いた→麻酔弾が当たる→春樹くんが気絶…』
『ルカちゃんと遠山理菜は暫く戻らない。真智ちゃんも見当たらない』
『麻酔弾から豆田姉妹が近くに潜んでいるのは確実、場所を移動しないと春樹くんが…』
『そして、ルカちゃんにあげたシティホテルの券は、私も持っている』


夕圭の脳内で様々な情報が分析され、出した結論とは。

『ごっつぁんです』

夕圭は春樹を背中に背負い、足早にある方向を目指した。
シティホテルの方へ。


181:名無しさん@ピンキー
08/06/01 23:34:15 dyI9Xkp4
一方その頃。

「お姉ちゃん…じゃないトウバンジャン。後で必ず回収するから…」
豆田貴子は事態の経過を無視できず、倒れた姉を安全な場所に避難させ、再び公園へ戻る。
(本音は姉が重かったのと春樹が気になった)

「……あれは!?」

とっさに物陰に隠れた貴子の横を、逃げる理菜と追うルカが駆け抜ける。
「…いったい…何が?」
呟いた貴子だが、すぐ重要な点に気付く。
「…!!…春樹さんのそばには誰もいない!?」

貴子は知らない。自分の弾で春樹が眠ったこと、春樹のそばに「くされおっぱい魔人」
黒田夕圭がいることを。

「…私のチャンス…未来の旦那様に……ムチと…アメを…」

物騒な事を呟くと、貴子は疾走する。春樹というお宝奪取の為に。


シャー……

水の流れる音がする。
春樹は目を覚ました。
「…ん、……へんな夢を見たなぁ…ルカにマジ告白され……って俺の部屋じゃねぇ!?」

あわてて辺りを見渡す。
「…なんというか…ホテルっぽい部屋だ」
「あら?お目覚め?」
聴き覚えのある声。
「おう、黒田。ここはどこな…(ベフン!!)」
春樹の視線の先には夕圭の姿。ただし、バスタオル一枚纏っただけの。

「くくくくろだぁ!!!」
「ん?どうしたの、変な声だして」
「お前がそんな格好してりゃ出したくなる!!」


182:名無しさん@ピンキー
08/06/01 23:37:44 dyI9Xkp4
夕圭は自分の胸を見た後に春樹へと笑いかける。
「…春樹くんのエッチ」
「おまえがそんな格好してるのが悪い!!」
「…だって春樹くん背負って汗かいたし。仕方ないでしょ」
にやにや笑う夕圭。
「それともタオルが無い方が良かった?」
「おま…(タラリ)…あ、いかん鼻血が……」

経験値の低い春樹がピークに達し、鼻血が出てきた。ティッシュを探す春樹に夕圭が近付き…

じゅるっじゅるっ

「!!!!…ば、馬鹿!!な、何を!?き、汚いから辞めろ!!」

夕圭が春樹の鼻へ舌を伸ばし、鼻血を吸って舌で舐めとった。

「あは。しょっぱい」
「な、何を考えてるんだよっ!!汚いだろ、鼻血なんて!?」

「…汚くなんてないよ。春樹くんのだもん……」
「えっ!?」
夕圭の口許には笑みがあるが、目は真剣な色を浮かべている。
「私の…大事な人の物だもん。全然気にならないよ」
「黒田……」
夕圭はバスタオルから手を放し、春樹に抱きつく。
当然タオルは体からずり落ち、春樹の胸に夕圭の爆乳の感触がダイレクトに伝わる。

「だいすき。春樹くんになら………いいの」
夕圭は春樹の唇へそっと口付けをする。

「……二度目だけど。前のは事故だし…これが私の気持ちだよ…」
春樹の頭に霞がかかる。
『いい…におい…だ……もう…がまん……』

新醤油学園 青春編
「バトル決着!?」


183:名無しさん@ピンキー
08/06/02 20:04:28 lEQs9YtE
はるくんスッゲーハードなスケジュールだな

184:名無しさん@ピンキー
08/06/03 01:33:11 XtI8cR30
女「どうせ男はわたしの事なんとも思ってないんでしょ!」
男「いや…そういう事じゃないんだが」
女「嘘!あなたはわたしを女として見て無いわ!分かってるのよ!」
男「いやー…それは…そうだけど」
女「やっぱり!やっぱりそうじゃない!わたしが機械(マシーン)だからなのね!」
男「いや…お前ミシンだし」

新ジャンル「ぼくの彼女は裁縫具」


185:名無しさん@ピンキー
08/06/03 03:23:53 Lil4UXhS
男「昔……といっても10年かそこらの話なんだが、パラサイト・イヴというホラー小説があってな」
女「ゲーム?」
男「いや、小説。ゲームの元になったんだよ」
女「ふむふむ」
男「人間が細胞の中に持ってるミトコンドリアが、突然変異を起こして人間に反旗を翻すっていう話だった」
女「怖いね」
男「怖いって言うより、ピンと来なかった。専門用語満載だったし、ガキだった俺にはちょっと難しかったから。
  ――で、反乱を起こしたミトコンドリアは主人公の嫁さんの細胞だったんだが、
  劇中でそのミトコンドリアが主人公を襲うんだ。性的な意味で」
女「………へぇー」
男「反乱のミトコンドリアは人類の枠から外れて自分たちだけで繁栄しようとしたのさ。
  そして、進化の最後の胤(たね)として主人公を選んだ。逆レイプシーンなんか、圧巻だったなぁ。
  当時毛も生え揃ってなかった俺がどんだけお世話になったか」
女「ほぉ」
男「でもなぁ」
女「うんうん」
男「顕微鏡でしか見えない彼女はいらんわ流石に」
女「えー」

新ジャンル「ぼくの彼女は細胞」

186:名無しさん@ピンキー
08/06/03 03:33:34 Lil4UXhS
男「女ー、草だぞー」
女「ブモー」
男「美味いか。そーかそーか」
女「ブルル」
男「今日も女のツノは立派だなぁ」
女「ブモーブモー」
男「あっはっは。じゃれるなじゃれるな。死ぬ。マジ死ぬ」

新ジャンル「ぼくの彼女はサイ」

187:名無しさん@ピンキー
08/06/03 09:20:21 4crEPhlo
カオス過ぎてフイタwwwwww

188:名無しさん@ピンキー
08/06/03 18:24:56 ooT9pBAM
>>184
( ´w`)<わかります

189:守ってあげたい
08/06/04 23:35:55 +7GykXr/
「はぁ、はあ、はぁはぁ」

あなたの熱い吐息が聞こえる。
わたしの中であなたの体温を感じる
凄く熱い

あなたがわたしの中で暴れる度にあなたを感じる。
なんて激しい

あなたの所為でわたしの中はもうぐっしょりと濡れている。
あなたも感じるでしょう?
それともそれも感じないくらい昂ってるのかしら。

待ってた
あなたの様な人が現れるのをずっと待ってた
ずっと

今迄何人かの男達を受け入れて来た
でもみんな駄目だった

あなたこそ男
わたしが受け入れるべき男
わたしが包むべき男
わたしが守るべき男

だから安心して暴れて

あなたはわたしが守るから
あなたを傷つけるものから守るから

そうあなたは誰にも負けない



男「せぃっ!」
主審「一本!そこまで」
(歓声)
後輩「先輩!やりましたね!今回も全部一本勝ちですよ!」
男「はぁはぁ…ああそうだな」
後輩「あ、それ外しましょうか」
男「いや、このままでいい」
後輩「また例のジンクスですか?」
男「まぁな、これ着けてると負ける気がしない。それに…なんか妙に落ち着くんだこいつと居ると」
後輩「へぇ?まぁいいですけど…」

男(それにどうせ試合が全部終わるまで絶対に外れないしな、コイツ)


絶対に勝つ
わたしがあなたを守る限り

新ジャンル「僕の彼女は防具」


>>186に先に「サイ」をやられたのでお返しな(w



190:名無しさん@ピンキー
08/06/05 00:13:27 Beecpgck
女「……男が私に見向きもしてくれない」
男「当たり前だろ。俺にそんな趣味はない」
女「とか言って、実は責められると弱いくせにー」
男「……誰が責めるんだ? ん? お前責められるのか? あ?」
女「そこはやっぱり自慰で」
男「だから俺にそんな趣味はないって言ってるだろ!」
女「……男が私に見向きもしてくれない」
男「せめて穴になって来いよっ!」


新ジャンル「僕の彼女は棒具」

191:名無しさん@ピンキー
08/06/05 00:43:48 MY4gkLi+
酷すぎる流れだwwGJwww

192:名無しさん@ピンキー
08/06/05 01:17:15 xISKBMaF
俺こういう流れ嫌いじゃないよ
嫌いじゃないっていうか……好き……だよ。うん

193:名無しさん@ピンキー
08/06/05 19:36:12 z2smhw1/
男「なんだよもうこんなになってるのか」
彼女「いや、みないで」
男「なーにが『見ないで』だ、見せつけてるくせに。もうこんなに真っ赤でビンビンじゃねぇか、ほら!」
彼女「あっ、だめ、触らないで…ひゃうん!」
男「ほらほら、こうだ、ほれ」
彼女「ひゃ、ひゃうぅうん、ひゃだ、やめ…はぁん!」
男「まったく簡単乱れやがって…シコたら直ぐじゃねぇか、この淫乱。ほぉら!」
彼女「ひゃ、ひゃぅううううん!ひゃだっ、ひゃめで、ひき、ひっちゃふ!ら、めぇえそこらめぇええ!ひゃなはらめぇえええ!

ひ、ひぐうう!」ビクッビクッ

新ジャンル「僕の彼女は天狗(弱点は鼻)」



194:名無しさん@ピンキー
08/06/05 20:47:26 z2smhw1/
男「なんだよもうこんなになってるのか」
彼女「や、やめろよ」
男「なーにが『やめろよ』だ、してほしいくせに。もうこんなにビンビンじゃねぇか、ほら!」
彼女「あっ、よせ、触るなっ…!」
男「ほらほら、こうだ、ほれ」
彼女「う…くう…や、やめろ…やめろっば!ぁあはぁっ」
男「まったく簡単に乱れやがって…シコったら直ぐじゃねぇか、この淫乱。
ほぉらいくぜ!」
彼女「!…くっ…んはぁっ…おま…や…んんっ」
男「うっ、きついな、またくやらしい身体してやがるぜ、グイグイ締め付けやがる」
彼女「ふっ…ふぐっ、うう…うる…さ、んぁ!」


男「うういくぜ!」
彼女「っあーーーーー」
ビクッビクッ

男「よかったぜ、斉藤」
彼女「…ううっ」

新ジャンル「僕の彼女は斉藤君」

195:名無しさん@ピンキー
08/06/05 21:11:17 rzHKMvz1
男「なぁ、なにツンツンしてるんだよ?」
女「知らない!!自分の彼女をベタベタ他人に触らせるなんて!!」
男「…ふふん」
女「なによ!!」
男「…知ってるんだぜ。お前、触られてる間ずっとイキっ放しだったろ」
女「!!!!」
男「ほら、今だって」
女「ちょ、やめて!!」
男「ほら。こんなに糸引いちゃってさ」
女「い、いや!!やめて!!」
男「下の穴も寂しそうだな……入れるぜ」

女「あっ!!…あん!!」
男「ありゃ、入んねぇ。…ふん!!ふん!!」
女「はぁはぁ…は……てよ…」
男「ん?何だ?」
女「早く……入れてよ……我慢出来ないの……」
男「いや…俺も入れたいんだが…入らん」
女「道具使ってよぉ…」
男「…あれ好きじゃないんだが」
女「早くぅ!!もう限界なの!!」
男「……分かった」

(30分後)

男「はぁ……終わった」
女「あんた下手すぎ」
男「…雑巾くらいミシン使わせろよ」
女「だめ!!」

新ジャンル「僕の彼女は裁縫具」


横入りごめん。

196:名無しさん@ピンキー
08/06/05 21:12:50 rzHKMvz1
ごめん。裁縫具ネタは最初にあったのかorz

197:名無しさん@ピンキー
08/06/05 23:22:58 xISKBMaF
(・∀・)ニヤニヤ

198:名無しさん@ピンキー
08/06/06 00:30:26 aF4/xZ7e
>>196
ドンマイ!って言いたいとこだが…

ゴメン、素で>>195の状況がわからん
彼女は雑巾かと思ったんだか、それだと裁縫具じゃないし、ミシンでも無いんだよな?

>>193>>194
どっちも彼女にしたくないなWW

199:195
08/06/06 00:47:30 ZZYO62up
すまん。
彼女は「縫い針」のつもりだったんだ。

…確かに分からんなorz

200:名無しさん@ピンキー
08/06/06 09:42:22 L3GpuNQ/
いや、分かりやすい気もする

201:名無しさん@ピンキー
08/06/06 11:19:36 QOZ1k7ld
「道具使ってよ」に吹いたw
あれだろ。なんかエリザベス女王っぽい女の横顔が入ってる銀色のやつだろww

202:名無しさん@ピンキー
08/06/06 19:13:49 SROz+9Qc
>>201
なんかワロタ

203:あたしの名前はハートにDQN(1/14)
08/06/07 02:24:21 jgAjOp5J
放課後の教室。
あたしは、クラスメイトの稲井 啓太郎(いない けいたろう)に呼び出されて
ぼんやりと夕日を眺めていた。何の用かは、聞いてない。
こんな、誰もいない教室に二人っきりだなんて、あいつは人をなんだと思っているんだ。
そりゃあ、あたしは目つきは悪いし背は無意味に高いしガサツだしオマケに一部の下級生からは
同性愛のケがあると思われているらしいけど、あたしはユリ目ユリ科に属する多年草の一種じゃないし、
性別は一応雌である。『もしかして告白!?』なんて、甘酸っぱいことを考えなかったわけではない。
ええ。考えましたよ。そりゃあね。あたしだって花も恥らうオンナノコですから。
そういう、枕を抱えてごろんごろん転がるような1ページに、何?憧れ?みたいなもんは、ありますよ。
でもね、冷静になって考えてみるとね。そういうの、ありえないんですよ。

だって、あたしは――P子だから。

そう。あたしはみんなからP子と呼ばれる女。もちろん本名じゃない。これはあだ名だ。
本名は大杉(おおすぎ)――言いたくない。勘弁して欲しい。恥ずかしい。
あたしの両親はいわゆる………その、世間一般の常識とは少しばかりズレてるというか、
自由な人たちだったらしいので、赤ちゃん――つまり、あたしのことだが――が生まれたとき、
世の理に中指を立てるような恥ずかしい名前を採用したのだ。
こんな名前を付けられたせいであたしがどれほど迷惑を被ったかわかりゃしない。
もし両親が生きていたなら襟を掴んで吊るし上げてがっくんがっくん揺さぶってやるところだけど、
その両親は赤ちゃんのあたしがやっと立てるようになった頃交通事故で亡くなってしまった。
よって、両親の記憶はあたしにはほとんどない。
親が死んでしまったあたしだけど、あたしは幸せなことに独りというわけじゃない。
あたしはじいちゃんとばあちゃんに引き取られてそれなりに健康に暮らしている。
じいちゃんとばあちゃんは大好きだ。できるなら、じいちゃんとばあちゃんの子供に生まれたかったくらい。
それなら、こんなヘンな名前は付けられなかったろうし――。
………素敵な彼氏だって、いるはずだし。
ああ、そうだ。あたしは今まで男の子と付き合ったことがない。
なんというか、想像できないのだ。
あたしが男の子とお付き合いしている光景が。
だって、恋人同士っていったらお互いを名前で呼び合ったりするものだろう。
それまで苗字で呼んでいたものが、敬称無しの呼び捨てで名前を呼び合う。
そんなことが。できるはずがない。恥ずかしすぎて死ぬ。むしろ殺す。呼んだら殺す。オマエヲコロス。
と、いうわけで、そんなことを気にしていたらいつの間にか男の子が寄り付かなくなってきて、
目つきがどんどん悪くなってきて、背とかもにょきにょき伸びちゃって、
気が付いたら男の子より女の子にもてるようになっていた。
おまけに友人たちに次々と彼氏が出来始め、休日とか誰とも遊べなくてちょっと悲しくなってしまう。
気が付いたら14連鎖でサンダーしてたり。はぁ。
あたしだってね。そりゃあ欲しいですよ。彼氏。ええ。
でも………ねぇ。あーあ。

なんか、失敗してるなぁ。あたしって奴ぁ。


204:あたしの名前はハートにDQN(2/14)
08/06/07 02:25:12 jgAjOp5J
机に突っ伏して、大きく溜息を吐いた。
そんな時である。がらら、と教室の扉が開いた。
顔を向けると、そこに立っていたのはあたしを呼び出したクラスメイト。
仲間内からはKタローと呼ばれる男の登場だった。
っていうか、呼び出しておいて遅れるとはどういう了見だ。

「遅いぞKタロー」
「うむ。緊張しすぎてお腹が痛くなってな。トイレに篭っていたら時間が過ぎていたのだ」

文句を言うあたしに、当然の如く、といった偉そうな態度で返すKタロー。
パッと見て不遜とも取れるほど自信満々なのはこいつの特徴だ。
でもそれが中身にまで及んでいないのは少し喋ればすぐわかる。
それが証拠に台詞の内容は全然偉そうじゃないし。と、いうか弱そうだし。
あたしは少し拍子抜けした。なにが告白だ。シチュエーションに酔いやがって。馬鹿じゃないか?
こいつはKタローで、しかも相手はあたしだぞ。どこをどう押せば告白が出てくるんだ。
我ながら恥ずかしいったらありゃしない。
きっとKタローの顔が真っ赤なのも、夕日に染められているからに決まっている。………うん。

「で、何の用?」
「うむ。そのだな――」

Kタローは、Kタローには珍しい、少しばかり俯いて言いよどむと、
キッと顔をあげ、ずんずんと近づいてきた。
何だろう。っていうか止まれそこで。近い。近い。近いってば。

「大杉」
「な、なんでしょう?」

思わず敬語になるあたし。Kタローの迫力に気圧されてしまう。
Kタローは茹ダコのように真っ赤になった顔で、鼻先と鼻先がくっつくかのような距離で、
数秒間あたしを睨み付けたあと――言った。

「お前が好きだ」

目を瞬かせる。
今、なんと言った。
こいつ――え?あたしが……なんだって?
す、き………?

その言葉はゆっくりと、ゆっくりと鼓膜から脳味噌に到達し、その瞬間にあたしの顔面を真っ赤に染め上げ、
そして、あたしは――。


205:あたしの名前はハートにDQN(3/14)
08/06/07 02:26:07 jgAjOp5J
 
                  ☨☨☨

あめんぼあかいなあいうえお (水馬赤いなあいうえお)
うきもにこえびもおよいでる (浮藻に小蝦も泳いでる)
かきのきくりのきかきくけこ (柿の木栗の木かきくけこ)
きつつきこつこつかれけやき (啄木鳥こつこつ枯れ欅)
ささげにすをかけさしすせそ (大角豆に酢をかけさしすせそ)
そのうをあさせでさしました (その魚浅瀬で刺しました)
たちましょらっぱでたちつてと (立ちましょ喇叭でたちつてと)
とてとてたったととびたった (トテトテタッタと飛び立った)
なめくじのろのろなにぬねの (蛞蝓のろのろなにぬねの)
なんどにぬめってなにねばる (納戸にぬめってなにねばる)
はとぽっぽほろほろはひふへほ (鳩ポッポほろほろはひふへほ)
ひなたのおへやにゃふえをふく (日向のお部屋にゃ笛を吹く)
まいまいねじまきまみむめも (蝸牛ネジ巻まみむめも)
うめのみおちてもみもしまい (梅の実落ちても見もしまい)
やきぐりゆでぐりやいゆえよ (焼栗ゆで栗やいゆえよ)
やまだにひのつくよいのいえ (山田に灯のつくよいの家)
らいちょうさむかろらりるれろ (雷鳥寒かろらりるれろ)
れんげがさいたらるりのとり (蓮花が咲いたら瑠璃の鳥)
わいわいわっしょいわゐうゑを (わいわいわっしょいわゐうゑを)
うえきやいどがえおまつりだ (植木屋井戸換へお祭りだ)

―――演劇部発声練習『あめんぼの歌』より

                  ☨☨☨


「あれぇ?P子。今日はお弁当なんだ」

昼休みである。
学食にも行かずに突っ伏していると、不意に声を掛けられた。
顔だけあげてそっちを見る。そこにいたのは机の向きをがたがたと変えて
簡易テーブルを作っている女の子のグループ。その中の一人、原衛(はらえ)というクラスメイトだった。
あたしはひらひらと手を振って、ぞんざいに返事をする。

「まぁね」
「だったら一緒に食べようよ。一人飯ってアンタ、それでも女か?女はつるんでナンボでしょうや」


206:あたしの名前はハートにDQN(4/14)
08/06/07 02:26:51 jgAjOp5J
めちゃくちゃなことを言っている。放っておいて、と言うこともできたが、
原衛という女はこういうことを周囲への建前ではなく厚意で言えるようなヤツであり、
しかも突っぱねたら突っぱねたで余計な心配を掛けてさらに付きまとわれるのは明白だったので、
あたしは連中の仲間に入ることにした。実際、お腹すいてたし。
あたしは溜息をつきながら向かい合う机のひとつの席につく。
今日のご飯はおにぎりだ。ばあちゃん特製。
食欲はあんまりなかったから出かけにコンビニでパンでも買っていこうと思ったのだけれど、
格好つかないことに財布の中がだいぶ寂しいことになっていたのだ。

「……Pちゃん、おにぎりだけなんだー?」
「男らしいな。P子」
「うっさいな。ほっといて」

食欲がない――調子が出ない。ここ一週間ほどそんな状態が続いている。
風邪じゃあない。あたしは自慢じゃないが、医者の世話になったのは
生まれてこの方出生の時だけっていうような健康体だ。
それが、こんな。おにぎり二つしか喉を通らないほど弱っているなんて。
原因はわかっている。Kタローのバカのせいだ。あいつが、変なことを言うから――。
………………。
今思い出しただけでも顔が熱くなる。
放課後。夕日の教室。真っ赤に染まったKタローの顔。そして、告白。
告白……。

「う、うう………」

ぷしゅう、と頭が茹で上がるのを自覚する。ええい、なんなんだ。あいつは。
訳がわからない。あたしは――ヘンな名前で、自分のこの名前が嫌いで、
でも、あいつはあんなにまっすぐな目をしてあたしの名前を呼んで。

………嫌い、なのに。

それに、このあたしのどこに惚れたっていうんだ。
自慢じゃないが無愛想だし、目つき悪いし、身長だって無意味に高いし、かといって
スタイルがいいわけじゃないし。可愛い服見つけても全然似合わないから結局いつもジーンズだし。
ゲーマーだし。この前枝毛三本も見つけたし。それから――。
………ええと、自分でも悲しくなるくらいに惚れる要素がなかった。
とにかく、こんなあたしを好きだって?訳がわからない。不気味だ。

「どうしたのー?Pちゃん」

などと苦い顔をしていたら、サンドイッチをもきゅもきゅと
頬張っていた仲居戸(なかいど)が顔を覗き込んできた。



207:あたしの名前はハートにDQN(5/14)
08/06/07 02:27:36 jgAjOp5J
「調子悪いのー?」
「まさか。赤葉。P子はね、出生以来医者にかかったことがないっていうような健康体だよ?
 どーせおにぎりじゃ物足りないんでしょ」
「黙れ原衛」

ギロリと睨みつける。
原衛は笑い、そして一転してはぁ、とため息をついた。なんなんだ。

「あたしもさー、呪々のから揚げが恋しくてさ。くそぅ、小岩井のヤツめ。あたしの呪々を返せっていうのよ」
「あー」

行儀悪くお箸を咥えたままヨヨヨとくずおれる原衛に、なにやらコクコクと頷く仲居戸。
呪々……というと黒妻か。
確かあの娘は料理が得意で、信じられないことにお弁当を自分で作っていたはず。
あたしも前に摘んだことがあるけど、なるほど冷めても美味しい、
どこに出しても恥ずかしくないっていうかお金取れるんじゃないかっていうような出来だった。
………そういえば黒妻はどこ行ったんだろう。黒妻はちびっこくて大人しくて、
いつも原衛とセットになっているような娘である。朝見かけた覚えがあるから休んではいないようだけど、
そういえばこのグループに参加していないのはヘンだった。

「ところで、その黒妻は?」
「呪々?さぁ。中庭じゃない?」
「………なんで?」

確かに中庭で食べる生徒もこの学園には多いけど、あそこは芝生なのでシートを広げなきゃならない分
面倒くさいし、なによりカップルが多いために普通の生徒は寄り付かない。
あそこで男女が一緒にお弁当を食べることがこの学園の生徒たちの間では
『恋人になりましたよ宣言』だという暗黙の了解があるほどだ。
したがって、独りもんであるところのあたしには少し太陽が眩しい場所である。
黒妻も同様。あの闇属性があんな危険地帯に迷い込んだら
連中の石破ラブラブ天驚拳に当てられて消滅するんじゃあるまいか。

「あれぇ、Pちゃん知らないのー?呪々ちゃん、小岩井くんと付き合い始めたんだよー」

――などと考えていたら、仲居戸がにっこりと柔和な顔を綻ばせた。

………………………………………あ、そうなん?

初耳だったので少し驚いた。黒妻は誰かに告白されたり告白したりするタイプじゃないと思っていたから。
いや、中身は普通だってことは知ってるし、よく見れば結構可愛い顔してるんだけど。
その、何だ。オーラ的に?



208:あたしの名前はハートにDQN(6/14)
08/06/07 02:28:15 jgAjOp5J
「まぁ、呪々が嬉しそうだったから別にいいんだけどさ。
 ひとりもん同盟が減ったのはこっちとしては痛いわけですよ」
「あー」
「あー、じゃない。赤葉はいいわよねぇ。幼馴染みだっけ?そんな便利なイキモノがいてさぁ」
「え。で、でもでも、クロが幼馴染みじゃなくっても、あたしはクロを好きになったと思うよ?………えへー」
「ぐぁあ、しまったノロケられたぁ!P子、塩持ってきて塩!」

しかし……そうかぁ。黒妻がねぇ。男の子と付き合ってるんだ。
………………男女交際、かぁ。
あたしはもやもやと想像の霧を膨らませた。
休みの日には駅前とかに待ち合わせして。待った?いや全然待ってないよ、とかお約束な会話して。
見慣れた制服姿とは違う私服姿にドキドキしちゃったりなんかして。
まずは映画とか見ちゃって。薄暗い中、手を握る――ううん、
そっと重ねるだけで映画どころじゃなくなっちゃって。
その後、ファーストフード店でハンバーガー食べながらさっきの映画の感想とか話して。
でも、手を握った辺りでにドキドキして途中で二人して黙っちゃったり。
で、恋人らしく改めて手を繋いで、てくてくショッピングを楽しんだり。ゲームセンターに入って対戦したり。
UFOキャッチャーで思いのほか大きいぬいぐるみをGETして少し持ち運びに困って。
遊んで小腹がすいたら喫茶店に入って大きなパフェを二人で食べたり。
暗くなって――公園で休んでいこうか、なんて。気が付いたら周りはカップルだらけで、
ああそういえばあたしたちもカップルだったね、なんて少し笑って。
周りの真似して、キス、くらい――。

Kタロー。

「きぁあぁぁあああああああああああああ!!!!」

ぼん、と音がしたようだった。
あたしは真っ赤になって、慌ててその想像……妄想?のピンクのもやをばたばたとかき消す。
何を考えているんだあたしはッ!Kタローとはまだそういう関係じゃなくてですね。
いや『まだ』っていうか、それはいずれそういう関係になるって意味じゃなくて!
つまりは、あたしはその。ああああ。何なんだ、あたしはッ!あたしはP子だぞ?
P子がそういうの、ダメだろう!常識的に考えて!

「………何?どうしたの」

はっと気が付くと、原衛たちがびっくりした顔であたしを見ていた。
あたしは小さくなって、なんでもない、と返す。本格的にヘンだ。それもこれも全部Kタローのせいだ。
ええい、責任取れ。いや、そういう意味じゃなくて。

「P子、調子悪いなら保健室、行く?」
「Pちゃん無理しない方がいいよー?」


209:あたしの名前はハートにDQN(7/14)
08/06/07 02:29:00 jgAjOp5J
うう、なまじこいつらいい娘だから居心地悪い。そういうんじゃないのだ。
あたしはわたわたと手を無意味に動かした。ここは何か話題を変えて場を乗り切るべきだろう。
だけどもあたしは自分で思うより相当てんぱっていたらしく、

「そ、そういえばKタロー、最近学校休んでるけどどうしたんかね!?」

見事に墓穴を掘った。

そう――それもあたしの懸念のひとつ。
Kタローは最近、というかあたしに告白してきたその翌日から学校に来ていないのだ。
あたしは別にKタローを振ったわけじゃないし、いやまぁそりゃあウヤムヤにはしてしまったけれど
………そんなにショックを受けるのだろうか?あたしが原因だったとして、の話だけど。
そして時期的に考えてあたしが原因なのはまず間違い無さそうだけど。

「そういえばKタローくん、ずっと休んでるよね。どうしたんだろ?」
「んー、前に男子が話してるの聞いたんだけど、Kタロー、家に篭ってずっと滑舌練習してるらしいよ」
「………カツゼツ?」

なんだそれは。
聞き覚えのない言葉だったので、あたしは思わず聞き返した。

「演劇とかでさ、台詞を噛まないでハッキリ言えるようにする練習だよ。
 早口言葉とか。発声練習とか。それを延々繰り返してるだって」
「………なんで?」
「知らないわよそんなの」

Kタロー、訳がわからない。あたしに告白してきたと思ったら家に篭って演劇の練習?
どう考えても奇行としか思えない行動だ。この学園には確かに奇人変人が多いけど、
Kタローはそっち側の人間じゃなかったはず。
………もしかして。もしかするとだが。あたしはとんでもなく悪いことをしたんじゃないだろうか。
人が奇行に走るとき。その人の身に何か起きたんじゃないかと思うのが自然な考え方だ。
そして、その『何か』にあたしは嫌ってほど心当たりがある。いや、あたし自身は
気が付いてないけど――気が付いてないだけで、人を傷付けてしまうことだってよくあることだろう。
あたしみたいなガサツで、他人の細やかな心の機微に疎い人間ならなおさらだ。
あの日。夕日の教室で。Kタローに好きだと言われた。その対応が、間違ったものだとしたら?
そのせいでKタローはショックの余り家に引きこもって毎日早口言葉で一日を
浪費するような人間になってしまったのかも知れないのだ。
………相当嫌だなそんな一日。

「………あの、さ」


210:あたしの名前はハートにDQN(8/14)
08/06/07 02:29:41 jgAjOp5J
あたしはおずおずと、切り出した。
原衛と仲居戸がきょとんとしてそろってこっちに顔を向ける。
うう、言いにくい。でも、この娘たちは基本的に善人だ。ちょっとヘンなところはあるけど。
それに原衛はおせっかいで相談ごとには慣れているだろうし、仲居戸は彼氏持ち。
きっとあたしの話を真摯に聞いてくれるだろう。多分。


                  ☨☨☨

拙者親方と申すは、お立合いの中にご存知のお方もござりましょうが、お江戸を立って二十里上方、
相州小田原一色町をお過ぎなされて、青物町を登りへおいでなさるれば、欄干橋虎屋藤右衛門、
ただ今は剃髪なされて円斎と名乗りまする。元朝より大晦日までお手に入れますこの薬は、
昔ちんの国の唐人外郎と云う人わが朝へ来たり、帝へ参内の折から、この薬を深く籠めおき、
用ゆるときは一粒ずつ、冠のすき間より取り出だす、依ってその名を帝より「とうちんこう」と賜る。
すなわち文字には、「頂き、透ぐ、香い」と書いて「とうちんこう」と申す。ただ今はこの薬、
ことの外世上に弘まり、ほうぼうに似看板を出し、いや小田原の、炭俵の、さん俵のといろいろに申せども、
平仮名をもって「ういろう」と記せしは親方円斎ばかり、もしやお立ち合いの中に、
熱海か塔の沢へ湯治においでなさるか、または伊勢参宮の折からは、必ず門違いなされまするな。
お登りならば右の方、お下りなれば左側、八方が八つ棟、表が三つ棟玉堂造り、
破風には菊に桐のとうの御紋をご赦免あって、系図正しき薬でござる。

イヤ最前より家名の自慢ばかり申しても、ご存じない方には、正身の胡椒の丸呑み、白河夜船、
さらば一粒食べかけて、其の気味合いをお目にかけましょう。
先ずこの薬をかように一粒舌の上にのせまして、腹内へ納めますると、イヤどうも云えぬは、
胃、心、肺、肝がすこやかになりて、薫風喉より来たり、口中微涼を生ずるが如し。
魚鳥、茸、麺類の喰い合せ、其の他、万病速効あること神の如し。
さて、此の薬、第一の奇妙には、舌のまわることが、銭ゴマがはだしで逃げる。
ひょっと舌がまわり出すと、矢も楯もたまらぬじゃ。

(……以下略)


―――演劇部発声練習『ういろう売り』より

                  ☨☨☨


「………それで?」

夕日の教室での出来事を話したあと、原衛たちはずいっと身を乗り出してきた。
そう。
原衛たちにはうっかり告白の流れを丸々喋ってしまったけど、肝心なのはここからだ。

211:あたしの名前はハートにDQN(9/14)
08/06/07 02:30:25 jgAjOp5J
あたしが取った行動ひとつで、Kタローが奇行に走った理由がわかるかもしれないのだから。
Kタローに告白されて、あたしは――。

「――Kタローを殴って、逃げた」
「なんで!!!?」

昼休みの教室に原衛たちの、というか原衛の絶叫が響き渡った。
何事かと教室にいたクラスメイトたちがこちらを向く。
あの時はいいのが入ったなぁ。この拳がKタローの頬にめり込み、一瞬間を置いてから衝撃が弾けて
Kタローの身体がくるくる回りながら机の列に突っ込んでいくシーンなんて昔のカンフー映画みたいだった。
多分、あんなにいいパンチはこれからの人生でもそうそうないだろう。
でも、だって。あれは仕方なかったんだ。

「………恥ずかしかったし」
「馬鹿か―――ッッッ!!!?」

がっしゃーん、と想像のちゃぶ台をひっくり返す原衛。
そんなこと言われても。
あたしは想像の秋刀魚やら味噌汁やらを頭からかぶったまま小さくなった。
だって、男の子から告白なんてされたことなかったんだし。
しかも相手が毎日顔合わせてるクラスメイトのKタローだったし。あたしはP子だし。

「いやー、Pちゃん。最後のは理由になってないんじゃないかなー」
「全部理由になっとらんわ!告白したら返事に拳て!そりゃKタローも引きこもるわ!」

………いや、いやいやいや。返事じゃないぞ。アレはいわゆるひとつの照れ隠しというやつでして。

「いらないから!そんな攻撃的な照れ隠しいらないから!普通に振られるよりキツいわ!」
「………ふ、振った覚えはない……よ?」

そう、そうだ。
あの時は返事なんかする余裕はなかったし、翌日寝不足の頭で学校に来てみたらKタローは休みだったし。
――それから、ずっとKタローは学校に来ていない。
原衛情報だと家に篭って奇行に走っているみたいだけど。
ああ、そうだ。あたしはKタローを振ったわけじゃないのだ。

「殴った時点で振ったも同然だってヴぁ」

呆れたように溜息をつく原衛。そこに仲居戸が小首を傾げて、

「じゃあ、PちゃんはKタローくんとお付き合いするのー?」

と、独特のどこか気の抜けた口調で言った。


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