08/05/10 23:47:55 A81uhaeL
コーヒー牛乳を口にしながら、隣にいる現実の女を見る。
興味はないが、可愛いといっていいんだろう。
今も、屋上のベンチに座るボク達への好奇や敵意の視線を感じるし。
「エルシィちゃんてかわいいね。
なんか本当に妹って感じ。お姉さん気分満喫できそう」
「ふうん」
「今更転校してくるってことは、離れて暮らしてたんでしょ。
あんたからずっと離れようとしないもんね」
「ほう」
オムそばパンはなかなかうまい。具がこぼれないように
食べるのも集中力が必要で、話半分に聞くのに都合がいい。
こいつは質問で終わらないのがいいな。適当に相槌さえ打っていればすむ。
「あのさ。お風呂、一緒に入ってるって本当?」
「違う」
一言返してから、落ち着いて麺を飲み込む。
「そうなの? だって顔を真っ赤にして否定しなかったし」
「事実無根だ」
全面否定しろ、粗忽な奴だ。後が面倒だろ。
そうすれば、こいつのように、
「ふうん」
などと、ちょっと疑いを持ちながらも、それ以上つっこみようがなく、
パンを食べるのを再開してくれる。
「桂木は」
そこで言葉を区切られてしまう。手元にパンはもうない。
しょうがなく、続きを促すように歩美へと視線を向けた。
無言の時間なんて、二次元ならともかく現実には無用な時間だ。
「……あ、あの」
ボクの目を見ながら話を続けようとする。それでも言葉は続かない。
陸上部だというのに日常会話をハキハキ喋らない奴だな。
「ええと! 二人とも桂木だと紛らわしいね!
桂馬って呼んでいいかな?」
「……」
全然紛らわしくないだろ。桂木とエルシィでうまく使い分けてたよ。
「よくボクの名前なんて知ってるな」
「そ、それは知ってるって。クラスメイトだから」
少なくともこないだまでオタメガネとしか言われてないぞ。
「名字のままでいい」
「いいじゃん、そのほうがわかりやすいよ。
あ、じゃあ、名字と名前の一文字もかぶってるから、
桂ちゃんなら」