08/05/10 02:47:25 8s60158Q
この漫画ってヒロイン使い捨て漫画だからあゆみはもう出ないだろ。
つかキモオタメガネ死ね!
65:名無しさん@ピンキー
08/05/10 06:42:51 pUFvr9kC
だとしたら二次創作で妄想するのは正しい行動だ
実際にはもう一回くらい再登場してほしいが
66:名無しさん@ピンキー
08/05/10 16:26:16 84wj21rS
>>64
俺の桂馬に何を言いやる。
67:名無しさん@ピンキー
08/05/10 18:10:28 84wj21rS
> 「価値観を ふざけて囃し 最上川」
噴いたww
GJw
68:名無しさん@ピンキー
08/05/10 22:52:27 oJ/E99Qz
>>67
うんうん、コイツはいかにもって感じで非常に宜しかった。
神様ってのはいるところにはいるもんだ。
>>59様、続き期待してます。GJ
69:名無しさん@ピンキー
08/05/10 23:44:39 A81uhaeL
>>57-59 続き。これの続きは水曜日の後。
70:1/5
08/05/10 23:47:55 A81uhaeL
コーヒー牛乳を口にしながら、隣にいる現実の女を見る。
興味はないが、可愛いといっていいんだろう。
今も、屋上のベンチに座るボク達への好奇や敵意の視線を感じるし。
「エルシィちゃんてかわいいね。
なんか本当に妹って感じ。お姉さん気分満喫できそう」
「ふうん」
「今更転校してくるってことは、離れて暮らしてたんでしょ。
あんたからずっと離れようとしないもんね」
「ほう」
オムそばパンはなかなかうまい。具がこぼれないように
食べるのも集中力が必要で、話半分に聞くのに都合がいい。
こいつは質問で終わらないのがいいな。適当に相槌さえ打っていればすむ。
「あのさ。お風呂、一緒に入ってるって本当?」
「違う」
一言返してから、落ち着いて麺を飲み込む。
「そうなの? だって顔を真っ赤にして否定しなかったし」
「事実無根だ」
全面否定しろ、粗忽な奴だ。後が面倒だろ。
そうすれば、こいつのように、
「ふうん」
などと、ちょっと疑いを持ちながらも、それ以上つっこみようがなく、
パンを食べるのを再開してくれる。
「桂木は」
そこで言葉を区切られてしまう。手元にパンはもうない。
しょうがなく、続きを促すように歩美へと視線を向けた。
無言の時間なんて、二次元ならともかく現実には無用な時間だ。
「……あ、あの」
ボクの目を見ながら話を続けようとする。それでも言葉は続かない。
陸上部だというのに日常会話をハキハキ喋らない奴だな。
「ええと! 二人とも桂木だと紛らわしいね!
桂馬って呼んでいいかな?」
「……」
全然紛らわしくないだろ。桂木とエルシィでうまく使い分けてたよ。
「よくボクの名前なんて知ってるな」
「そ、それは知ってるって。クラスメイトだから」
少なくともこないだまでオタメガネとしか言われてないぞ。
「名字のままでいい」
「いいじゃん、そのほうがわかりやすいよ。
あ、じゃあ、名字と名前の一文字もかぶってるから、
桂ちゃんなら」
71:2/5
08/05/10 23:51:02 A81uhaeL
あきらかにテンションがおかしい。顔赤いし熱でもあるのかこいつは。
「け、桂ちゃんとエルシィちゃんで!
あ、KとLで隣あってるから兄妹なんだ! 英国的だね!」
「……少なくともボクは桂馬というとても日本的な名前だ」
というか、誰かこいつを止めて下さい。それだけが私の望みです。
少し笑ってしまった後、ボクは歩美へと続けた。
「桂ちゃんは断る。だったらまだ桂馬のほうがいい」
「うん、じゃあ桂馬で。私も名前で呼んでいいよ」
「……」
「あの、名前、知ってる?」
「いや、知らない」
歩美を見ないように、言う。
「そっか。じゃあ教えるよ。将棋の歩に、美しいで、歩美」
「ああ、わかった。食べ終わったし、もう行く。ご馳走様」
「あ、と」
立ち上がって扉へ向って歩く。呼び止めようとしていたようにも見えたが、
見なかった振りをする。けれど、
「桂馬」
歩美のボクを呼ぶ声に、しょうがなく立ち止まった。
「……その、ゲームで、質問があるんだけど」
「高原が?」
「私じゃなくて、その、弟が」
「どんなゲームを?」
「ええと、なんだっけ。ああ、うぐぅとか、がおとかいうやつ」
「口癖を馬鹿にするな!!」
「うわ、ごっ、ごめんなさい」
「まあ、いい。それで、どんな質問?」
「それが、ちょっと忘れちゃったんだ。だから、明日、またお昼に聞いてもいい?」
「昼に?」
「うん、少しでもいいから」
「……わかった」
今度こそボクは、屋上を後にした。歩美が後を追ってくることはなかった。
72:3/5
08/05/10 23:53:26 A81uhaeL
◆
─新品のスパイク。彼女自身で買ったものではない。
本来なら大事な大会に使うということはありえない。
けれど、なぜかそれを使った。そして、それだけで、プレッシャーを微塵も感じることはなかった。
綺麗に泥を落としたスパイクを指先でなぞり、歩美は考える。
なぞった指先とともに、右手を頬に当てる。自分の熱が感じられるだけのはず。
けれど、それだけですでにとくとくと心音は高い。目の前が柔らかく回りはじめる。
今日、右手を握った。女の子のように、やわらかく、熱く、細かった。
桂木桂馬のPFPを後ろから覗いたときに見えた落とし神という言葉。
検索サイト経由で見たそのページは、よくわからなかったが、力を入れて作られているのだけは
理解できた。きっと、これは桂馬が作ったものだと理解した。
そして、馬鹿馬鹿しくて誰にも相談できなかったことを送る。相談するならば、最も相応しい人に。
けれど、歩美は、相談したことなんて、本当はもうどうでもよくなっていた。
男の姿を脳裏へ思い描く。細身の姿。
桂馬がまとう服がなくなっていく。そのまま白い上半身だけがあらわになったころ、
歩美のその右手は自身の胸へ沈みはじめる。
下着から片側だけまろばせた乳を、桂馬が愛撫する。
ひどく優しく、焦らしながら。
上目遣いの歩美の視線を少年は優しく受け止める。
今日、見てしまった。
度があっていないせいなのか、普段はきつい目つきのそれが、柔らかく微笑むところを。
ぎゅうっと指先で強くつまむ。
ぴくりと動く肩先を、馬鹿にしたように見つめる男もいる。
厳しい視線を眼鏡越しにあやつる桂馬。
歩美は痛いぐらいに自分の胸をつまみ、息を荒くする。
「……あぅ……」
右手は股間を。左手は胸を。胎児のように体を丸くして、熱さを閉じ込め圧力を高めていく。
73:4/5
08/05/10 23:56:21 A81uhaeL
(淫乱な奴だな。恥ずかしくないのか)
背筋が震えるほどにきつく。
(歩美)
溜息が漏れるほどに甘く。
歩美の指は恥ずかしいほどに動き、太ももを湿らせながらちゅぷちゅぷと音を漏らす。
心の中で二人の桂馬に犯されていく。
細身の彼にふさわしくないほどの大きな性器が歩美の頬を突く。
歩美は自身の指先をいとおしく舐めまわす。
部活動に支障のないよう、綺麗に手入れしてあるピンク色の爪のなめらかさが
心を熱く飛ばす圧力になる。
優しく陰核をなで上げる。せつなく鳴く歩美を笑顔で見つめてくれている。
厳しく陰唇を摘み上げる。ひくひく動く歩美を笑顔で見下して眺めている。
「あ……ふぁ……」
口の端からは涎が垂れ、父親でさえも溶かしそうに淫蕩な表情。
二人の桂木桂馬が重なっていく。
右手のこぶしが股間を往復する。
ぴちゃぴちゃといやらしくぬめる花を左右に開きながら。
受け入れるために布団の中で股を開く。膝頭が割られるように開く。
柔軟性に満ちた体は恥じらいを持たずさらけ出された。
まだ男に見せたことのない箇所は、ぱくぱくと呼吸するように蠢き、待っている。
「あ……?」
脳裏の二人が重ならない。きっと好きだったはずなのに。
男はかきけすようにいなくなり、残るは自慰行為にふけった少女のみ。
乾いてしまった脳が、火照ったままの体にひどく不快を覚えさせた。
「う……うううううう」
濡れそぼった右手。徐々に冷えていくそこにもう昼の記憶はなくなっている。
こぼれた涙をなぐさめてくれる人の姿はもう現れることはなかった。
74:5/5
08/05/10 23:59:06 A81uhaeL
◇
「ただいま帰りましたー」
「ああ、おかえり。ききたいことがあるけど、入ってくるなよ。ボクがそっちへ行く」
エルシィの部屋に行く。こいつの部屋はきれいすぎて落ち着かないが仕方ない。
頭には、とくに変わったようには見えないドクロのアクセサリー。
「それ、何か変わったのか?」
「ええ、いろいろとできるようになったんですよ!
駆け魂の広域検索の範囲が広くなったりとか。
今度神様にも教えます」
「別にいらない」
すっぱりと話題を切る。本題はこれからだ。
「駆け魂を払った女が、攻略中の記憶を残しているってことはあるのか」
「それは、歩美様や美生様たちのことでしょうか?」
「そうだ」
「ええと、それはないはずです。でないと、駆け魂狩りを続けていくことが
難しくなってしまいますから」
「まぁ、そうだな」
今日の歩美の態度は明らかにヘンだった。まるで、ボクへの好きという気持ちが
残っているかのような。
「あの、でも」
「でも、なんだ」
「駆け魂が抜けた後に神様を好きになったり、そもそも駆け魂がついてない
場合に神様を好きになるのは別です。それは駆け魂とは全然関係ないことですから」
「……まぁ、それは関係ないな。現実の人間の女になんて興味はないし」
「げ、現実の、人間の女性、ですか!」
前から言っている事なのに、やけに声を荒げて繰り返す。
なんだその変なガッツポーズは。地獄で流行ってるのか。
「メールだよ♪」
エルシィがその音に振り返る。ボクのポケットのPFPから、着信音が流れていた。
75:名無しさん@ピンキー
08/05/11 00:29:14 jbQtI888
うおー、GJ!
続き期待してます
76:名無しさん@ピンキー
08/05/11 00:29:54 09lcYhWk
これは水曜日以降が楽しみでしょうがない。
77:名無しさん@ピンキー
08/05/11 10:42:52 TYGTz7/a
とりあえずは美生だ! 美生がどうなるか楽しみでしょうがない!
GJ。わくわくしてきたぞ。
78:名無しさん@ピンキー
08/05/11 12:08:10 /d78WDf8
なんだ、この美味しい展開
79:名無しさん@ピンキー
08/05/11 22:52:10 5b53DKma
原作:>>57
作画:若木
でやれば単行本15巻はイケる
80:名無しさん@ピンキー
08/05/13 15:21:31 p0GdDUMc
最近、落し神様を信仰してもいいような気がしてきた。
リアルはクソゲーって名言じゃね?
81:名無しさん@ピンキー
08/05/14 07:30:50 apARnMBt
>>80
キモいじゃん。
美尾もナギだし
82:名無しさん@ピンキー
08/05/14 07:36:39 7V3B7laI
>>81
逆に考えるんだ
「ナギの方がテンプレ通り」
そう(ry
83:名無しさん@ピンキー
08/05/14 17:24:34 Tq5GTipc
>>80
俺なんか一話目から崇め奉ってるぜ。
84:名無しさん@ピンキー
08/05/14 20:18:23 9evze1j3
>>70-74 続き。美生のネタバレを含まない。この次でラスト。
85:1/7
08/05/14 20:20:52 9evze1j3
こんばんは、落とし神様。ポーンです。
丁寧なメールの返事ありがとうございました。
今日、ゲームを少しすすめました。アドバイスどおりになりました。
これから、私が女の子の攻略をすすめなくてはいけないところに入ります。
かなり難しそうですが、頑張ります。
私はまだ、ゲームを進めるために、本気を出していませんでした。
これからは徹底的に行きます。
エンディングを迎えたら、またメールします。
……ふうん、そんなに熱くなれるゲームなのか。終わったらぜひ教えてもらわないと。
まあ、ボクにかかれば簡単に攻略してみせよう。ゲームばっかりやってるような
ヒロインの女の子が、ボクに対してどういう態度を見せてくれるか楽しみだ。
「神様?」
「ああ、悪い。
それで、頼みがある。明日、歩美と昼食を取ることになったんだ。
その時に、遠くから歩美を観察してくれ」
「はあ…… どうしてそうなったのかはさっぱりわかりませんけど、なぜです?」
「なぜかという、その理由を知るためだ」
横に座った歩美。昨日と違うものが二つある。
「目が赤いぞ。大丈夫か」
「うん、大丈夫、大丈夫。ちょっと睡眠不足なだけだって」
俊足を生かして、授業が終わると同時に飛び出し、ボクの分のパンも買ってきた。
昨日よりさらに早い。そのまま引きずられるように屋上へと連れ出された。
「髪、くくってるんだな」
「え? う、うん。よく気づいたね」
「まぁ、これだけ近いと」
部活でもないのに、パンを買いに行くためだけにわざわざくくったのか?
そんなに本気を出して走るほど、急ぐこともないのに。
「エルシィちゃんは、良かったかな」
「本人が、昨日の風邪でまだ昼飯を食べたくないらしいからしょうがない」
「でもなんだか、睨まれてなかった?」
「さあ」
パンを食べながら、エルシィを探してみる。
見つからないが、おそらくは高いところとか、どこかで監視しているんだろう。
昨日よりも一際多いボク達への敵意の視線にまぎれてよくわからない。
「屋上で食べる連中って結構多いんだな」
「私も時々友達と食べてるし」
「だから食べ物のゴミが多いのか」
「あ、そういえば。このあいだは、ごめん。一人で掃除させちゃって」
「─そういえばそうだった」
実際はあの時はエルシィに連れ去られて途中で終わったけど。
86:2/7
08/05/14 20:22:53 9evze1j3
「あの時期は本当にいっぱいいっぱいでさ。今は大会も終わってゆるいけど」
「じゃあ、今日の掃除は、高原が一人でやるか?」
「今日?」
「今日の掃除はまたボクと高原だろう?」
「あ、ああ、忘れてた……」
「おい、忘れて部活に行くとか帰るとかはもうやめてくれ」
「それはない! 今回は絶対大丈夫!」
「……なんでそんなに掃除が嬉しそうなんだ。
だったら、本当に一人でやってくれよ」
「ダメ。二人でやるのがルールだもん」
「お前がそれをいうか」
歩美が笑う。ボクもそれにあわせて笑う。
部活の話、授業の話。時間は意外なほどに早く過ぎ、予鈴が鳴った。
「戻る?」
「ちょっとトイレに寄るから、先に行ってくれ」
「うん、わかった」
軽やかに歩いていく。スキップ気味。くくった髪がぴこぴこと揺れる。
屋上にはボク一人が残る。
「エルシィ」
「なんすか」
ぶーたれた表情で茂みから顔を出す。昼飯を抜かされたのが腹立たしいようだ。
「どうだった?」
「いちゃいちゃしてました」
「そうじゃない。駆け魂の影響が変に出ているとか、記憶を消しそこねたとかそういうのは
見つからなかったか」
「そういうのはありません。今の歩美様は完全に普通の状態です。
それで、神様を好きになっちゃってます」
「お前が見て、そう思うか」
「誰が見てもそう思います。神様が一押しすれば、すぐですよ。駆け魂は出ませんけど!」
「ふうん」
「良かったですね! かわいい女の子から好きになられちゃって!」
「エルシィ」
「はい?」
「駆け魂がいなくても、記憶を消すってことはできるのか?」
87:3/7
08/05/14 20:24:49 9evze1j3
「え……」
「今の歩美から、ボクを好きだという記憶を消せるか、って意味だ」
「ど、どうしてですか。今の歩美様は、駆け魂とは関係ないんですよ!」
「だからこそだ。ボクから関係を断つよりも、そのほうが楽だ。面倒もない」
「で、でも」
「言っておくが、歩美だからじゃないぞ。相手が誰であろうと関係ない。
何度も言ってるだろう。ボクは現実の女子に興味はない。
それに、お前だってそのほうがいいんだぞ。もしボクが誰かと交際なんてしてみろ。
ろくに駆け魂がついた女の攻略もできなくなる」
「それはそうですけど……」
何も悩む必要なんてないだろうに、歯切れが悪い。
本鈴も近いのに。
「それで、できるのか。できないのか」
「うー……
で、できません! 今日は先に帰ります!」
「おい、まだ学校」
「風邪です! そう言っておいてください、お兄様!」
「こら! 空とぶなよ! 見つかるだろ!」
……なんなんだあいつは。脈絡もない。
しかし、できないとなると自分で断らなきゃいけないのか。
面倒だな。
好きだといわれる前に、嫌われるようにするか。
好きだといわれる前に、それを言わせない状況を作るか。
好きだといわれてから、情け無用に断るか。
好きだといわれてから、他に好きな奴がいるというふうにするか。
別に嫌われるのはどうだっていいが、なるべくボクが、楽な方法にしよう。
フラグは早く折るほうがいいだろうし。次のイベントの掃除まで、いい断り方を考えるとしよう。
ボクら以外に誰もいない屋上。それは別れ話をするにはおあつらえのシチュエーションだ。
88:4/7
08/05/14 20:28:45 9evze1j3
「え……?」
「嫌だって言ったんだ。聞こえなかったか」
「あ、明日は都合悪い? だったら、明後日でも、別の日でもいいよ。
桂馬の都合がいい日で」
「別にいつでも同じだ。お前と食事はもうとらないよ」
掃き掃除を終える頃、明日の約束を口に出した歩美。
用意した台詞を投げつけてやる。
「……私、なにか悪いこといった?」
「別に。昨日今日とたまたまだっただけだ。
だいいち、ゲームをする時間が減る」
「ちょっとだけでもいいよ。私がそばで見ているだけだって」
「うっとうしい」
歩美の表情が変わった。地のこいつは暴力的なところがある。
オタメガネとして接していたボクにそういわれることはきっと気に食わないはずだ。
けれどこらえた。表情を戻す。
「何か嫌なところがあったなら、直せるんなら、努力するよ」
「別にお前が嫌なわけじゃない。だから、直すこともない。
ボクが、現実の女子には興味がないだけだ。それに時間をとられたくない」
「……そういわれると厳しいけど」
なぜか歩美はしおらしいままだ。ボクを殴って屋上から出て行くと思ったのに。
「……だいたい、どうして突然ボクにからむんだ。
エルシィの話だったら、明日から本人にしてくれ」
「それは、あの、桂馬のことが……」
「ボクのことが?」
「……好きだから」
「ふうん」
他に方法がないからここで告白か。全然なってない。
今告白するのなんか、失敗しようとしているようなものだ。
「どこが、好きになったんだ」
「?」
「何か理由があるんだろう。ボクを好きになった理由はなんだ」
「……わかんない」
「わからない?」
「意外とかっこいいとか、あげられればあがるけど、本当の理由はわかんないよ」
エルシィの奴、本当にちゃんと観察したんだろうな。わからないけど好きってどういうことだ。
校庭で、自信をなくして、涙を流していた歩美。
それと同じような表情で、ボクの台詞を待つ。
「なるほど。良くわかった。理由はとくにないけど、ボクが好きになったと」
「……うん」
「だけど、ボクには好きになる理由がない」
正面から否定され、歩美は身体をちぢこませる。
「……その、理由は、なんで?」
「二次元じゃないから。だから、高原だからじゃない。現実の女子は好きにならない。
何度も言ってる」
「……じゃあ、ゲームの女の子みたいな行動をとればいいってこと?」
「わかってない。口癖や行動や表情や会話やリアクションをゲームと同じように
三次元でそれらしく演じられても、精度が低すぎる。
とても二次元の代わりになんかならない」
89:5/7
08/05/14 20:33:01 9evze1j3
「だから、ボクは、お前でも、誰でも、好きになんかならない」
……歩美は下を向いてしまっている。そのまま帰るか、ボクを何発か張り飛ばして帰るか。
それで終わりだ。
まったく、本当に面倒だ。現実ってやつは。
「……じゃあ、クラスで話しかけるのはいい?」
カチンときた。思い通りに動かないその女に。
「お前だったら、他の男にいけばいいだろう!
ボクにかかわろうとするなよ」
歩美は顔を上げる。泣いてはいなかった。
表情は落ち着いている。
「他の男にいけばいいだろうって?
あんたこそ、さっきから、二次元、三次元ばっかり。
言えばいいのに。高原歩美が嫌いだから、好きになんてなれないって」
腹が立った。どうしてここまで言われなければならない。
「なんでお前はそんなにしつこいんだよ!
これだから現実の女は」
「違う。私だけじゃない。
私だけじゃ、きっと泣いちゃうか、途中で諦めて、それで終わりだよ」
「……なんだ。誰かが裏にいるのか?」
「だれかじゃないよ。あんたが言ってくれたから」
……ボク?
「ボクが? ボクは何も言ってない」
「言ったよ。あんたには何気ない言葉だったのかもしれないけど。
私は、それで、昨日の夜だって、今だって頑張ってられるんだから」
何も言った覚えはない。混乱したボクに、歩美は声をなげかける。
「あんたが、応援してくれるなら。
きっと私は、一等をとることだって、なんだってできるんだから!」
90:6/7
08/05/14 20:36:17 9evze1j3
応援してくれるなら。二つの光景が思い浮かんだ。
「お前……ポーンって、高原が出したメールだったのか」
「ハッピーエンドになるよう応援しています、って言ってくれた」
正面からボクを見つめてくる。
「最初は、あんたが気になる理由さえわかればよかった。
でも、あんたがそう書いてくれた。だから、私は頑張らないといけないんだ。
なんでかはわからないけど、そうしなくちゃいけないと思ったから」
視線をそらせないようにボクに近づいてくる。
「だから、私は絶対桂馬を諦めない」
肩を落とした。
……やるな。高原歩美。
……そして、エルシィ。あのダメ悪魔め。
ちくしょう。あんなメールなんて無視すればよかった。
どうして2通とも返したんだ。そうすればこんなことにはならなかったのに。
落とし神なんて。
「……友達からだ」
「え?」
「言っておくが、ガールフレンドなんて生まれて初めてだからな」
くそ……顔が熱い。
「それに、ボクの攻略は、相当難しいぞ。譲歩は、ここまでだ」
「……うん、ありがと。がんばる」
ボクに笑いかけているらしい。見ていないから良くわからない。
「じゃあ、握手」
「?」
「友達になったから、握手」
ぷらぷらと右手を差し出す。横からボクを覗き込んでくる。
「ね?」
「……わかった」
握手をされた。たしか、4回目だったか。手の感触も覚えちまった。
小さな手のひらが、ぎゅっとボクの手を強く掴み、ボクの体に引き寄せられるように
近づいてきた。
91:7/7
08/05/14 20:39:01 9evze1j3
キスをされている。いつかのように。
いや、一つ違う。
舌が伸びている。それを舌と感じないまま、ボクは受け入れている。
くちゅくちゅと互いの舌が絡む。血流が全開だ。
心臓が躍り上がりそうなのに、舌だけは歩美を追っている。
身体中の血が下半身に流れ込もうとしている。
気取られる前に、必死の思いで体を離した。
「……友達なのに、キスしちゃダメだろ」
「じゃあ、もう友達の次だ」
口が回らない。口が回れば、こんな反則、いくらだって抗議できるのに。
身体は離しても、まだ繋いだままの手が歩美の手から熱を伝えてくる。
「女の子には武器があるんだよ。
男からじゃダメだけど、女の子からなら罪にならないの」
「……不穏当な発言は控えてくれ」
「だから、こんな台詞がゲームには出てきたよ。
据え膳食わぬは男の恥。
私、そんなに魅力ない?
わたしも、なにかしたほうがいいかな……
一回でいいの。忘れてもいいの」
「……迷惑な台詞ばっかりだ」
「迷惑って、わかっていってるんだよ。桂馬」
唇が目の前に迫る。三回目のキスと、押し付けられる身体。
その匂いと感触に、ボクは耐えられそうになかった。
92:名無しさん@ピンキー
08/05/14 20:44:28 qRViYLA5
リアルタイム遭遇
乙だぜ
途中に支援は入れた方がいいのか迷ったけど、とりあえず入れなかったがどうか
93:名無しさん@ピンキー
08/05/14 20:53:45 Tq5GTipc
落とし神が攻略されてどうするw
GJですよ。
94:名無しさん@ピンキー
08/05/14 20:58:32 Q7HNm/Ms
GJ!!
原作の雰囲気がよく出てるな。
95:名無しさん@ピンキー
08/05/14 21:10:32 NMwNTBK6
これは上手い! GJ!!
今週号並みにドキドキしちまったぜ
96:名無しさん@ピンキー
08/05/15 01:12:58 vzvN5hYF
>>91
落とさせ神さまGJ
あー、頭に漫画のコマが見えてくるなんてスゴいSSだ
97:名無しさん@ピンキー
08/05/15 06:12:11 ko7AiYYu
>>91
落し神様降臨
キャラしっかり掴んでるし、文章もまとまってるしスラスラ読める。
マジで続き期待。GJGJ!!
98:名無しさん@ピンキー
08/05/15 06:27:26 bdNmzHcZ
おおお。
これはすごい。こんな違和感のないSSは初めてだ。
この次でラストって、最終回って意味じゃないよね? 一区切りってことだよね?
続きも是非期待!
99:名無しさん@ピンキー
08/05/15 07:31:51 wsILC+kC
GJでした~
神様って…総受け体質だよね
100:名無しさん@ピンキー
08/05/15 22:47:36 oICbSQkt
原作がまだ5話なのに住人が結構多い気がするのは
原作が原作だけに、この板の存在を知ってる人が多いからかな
101:名無しさん@ピンキー
08/05/16 01:11:04 E+qnvfuA
>>100
作者がある意味注目されているせいかも
102:名無しさん@ピンキー
08/05/16 08:24:13 aBaWXk+L
なんだかんだでアルバスレにも人はいたし、
人は選ぶが良作っていう打ち切られる漫画の見本みたいな立ち位置と予想。
アンケ送らなきゃな…
103:名無しさん@ピンキー
08/05/16 08:28:55 Nr6bG9X4
アルバスレは倉庫のみでしか知らないが、
人いたのか。一スレだけだから過疎かと思った
104:名無しさん@ピンキー
08/05/16 11:37:51 HzDOhqzB
「桂ちゃん」の呼び名可愛くていいなあ・・・
105:名無しさん@ピンキー
08/05/17 13:49:27 6Fx/nkso
ほしゅります
106:名無しさん@ピンキー
08/05/17 14:26:49 DEzBSD91
まだ一日しかたってない
107:名無しさん@ピンキー
08/05/18 14:30:13 bzalqwR9
108:名無しさん@ピンキー
08/05/18 16:48:56 +vy2d1aC
>>85-91 続き。これでこのSSはおしまい。
109:1/12
08/05/18 16:51:00 +vy2d1aC
「ありがとうございましたー」
コンビニの店員の挨拶を背に、自動ドアを出る。少し離れたところで待っていた歩美は、
近づいてきて横に並んでくる。
「何、買ったの?」
「……」
すでに鞄にしまってはいたけれど、わかっていると言わんばかりの表情には何も返してやる気は
しなくて、ボクは無言でいた。
歩美もそれ以上は追及してこず、暮れはじめた道を歩く。
歩きなれている上に歩速の早い歩美に比べ、ペースが遅くなりがちなボクは無言で後ろについていた。
一般的な一戸建て。高原という表札には三人の名前が書かれている。
「誰もいないから、気にしないでいいよ」
「……おじゃまします」
知らない家の匂い。誰かの家に行くことも久しぶりで、少しくらりとする。
学校に比べ傾斜のきつい階段を上る。目の前にある太ももから視線をちらしながら。
画面上では何回見たかわからない女の子の一人部屋。
三次元のそれはそのどれにも似ているようで似ていなかった。
「今、飲み物もってくる」
小さな本棚。陸上の用具。意外にパソコンも備えている。
出窓のスペースには、ぬいぐるみと一緒に飾られている、ぴかぴかのスパイク。
綺麗に磨き上げられて宝物のように置かれていた。
これが原因なのか。消えない物を贈るのがいけなかったのか?
「それ、気になる?」
開いたままのドアから、2Lのペットボトルとグラスをもってきた歩美の声。
自分で淹れた紅茶とかお茶でないのがなんだかこいつらしい。
「いや」
「ふーん」
追求はしてこず、グラスに注意深く注いでいる。注ぎ終わるまで、待った。
「家族の方は?」
「お父さんもお母さんも帰り遅いよ、いつも。さっきメール入ったし」
「弟はどうした」
「そんなのいないよ。ひとりっこだから」
嘘だろうとは思っていたが、まったく悪びれもしない。
まったく、現実の女って奴は。
グラスに注がれたブレンド茶を飲みながら、そう思った。
「……あのさ」
「なに?」
「私から、無理にお願いしたんだけど」
「うん」
「もし、桂馬が、本当に嫌なら……」
110:2/12
08/05/18 16:53:54 +vy2d1aC
「それはない。
ボクも、高原としたくないわけじゃないから」
顔が赤くなった。面白い。さっきまで平気な顔をしていたくせに。
「だって、さっきからなんだか違うから。
静かだし、なんだかはっきりしないし」
「そうか?」
「普段は、もっときつい言い方する」
「多分困ってるんだろう。どうすればいいのか」
「……それは、私も初めてだけど」
なんだか勘違いをされたようだった。
黙ってしまった歩美から目をそらし、自分の考えに戻る。
……たしかに、いつものボクじゃない。なんでこんなにふんぎれないんだ。
許しを得てからなんて、みっともないとでも思ってるのか。
それとも、拒否されることでも怖がってるのか。
他のヤツからボクがどう見えるかなんて、今まで気にしたこともなかったのに。
どっちにせよ、もうタイムリミットだ。
一息ついて、精神を整えてからボクは首もとのスカーフに手を伸ばした。
少しそれを押し下げてから、目を丸くしている歩美へ近づく。
ボクのそれが良く見えるように。
「ちょ、ちょっと待って……そんな急に」
お約束なネタに付き合う気はせず、ボクの首にはまっているものに指を指した。
不思議そうな顔をして、その指された首輪に目をやった。
「これ……チョーカー?」
「それは呪いみたいなものなんだ。ボクの過ちの」
「呪い?」
「まず、最初にはっきりさせておく。
そのスパイクを贈ったのは、ボクだ。
でも、そのことを、キミは、覚えてない。忘れてしまっている」
「……やっぱり、そうなんだ」
「それと、昨日からのボクとキミの出来事は、もう忘れない。
昨日のことも、今日のことも、明日のことも、忘れることはない」
「本当?」
嬉しそうにする。その表情を見て、ボクもどうしてか少しだけ嬉しくなった。
ゆるんでしまった表情を整えて、大事な部分を続ける。
「キミと、友達以上の関係になったとして。
それでも、呪いのために、ボクは定期的に、決められた女の子と仲良くなる必要がある」
「は?」
「その女の子と仲良くなって、呪いみたいなものを解除したら。
その子の記憶も、周りの人たちの記憶も消去される仕組みだ。
これでわかっただろうけど、キミもその一人だった」
「……」
理解しているのだろうか。歩美はボクをただ見ている。
111:3/12
08/05/18 16:56:24 +vy2d1aC
「どうしてキミだけに記憶が残ったのか。そのスパイクのせいかもしれないけど、
詳しくはわからない」
「これから、他の女の子に手を出すボクを見て、そういう関係だったら、キミは傷つくだろう。
ボクを責めるか、別れるか。それはしょうがない。
ただ、問題は、それもまた忘れてしまうことだ。
そうすれば、ボクとキミは、また同じ関係になる。
当然だ。他の女の子がボクのそばにいたことなんて、初めからなかったんだから。
……だけど、その失われる記憶の中で、キミが傷ついてるのは確かだ。
忘れてしまうとしても、悲しむ時間があるのはかわりない。
それが一度だけじゃない。これから何回も続いていく」
乾いてしまった喉を潤すために、グラスに残っていた茶を飲んだ。
小さくなった氷がカラリと音を立てた。
「だから、それが嫌だったら、断ってくれ。
最初から言わなくて、ごめん」
歩美の反応を待つ。荒唐無稽な、どこかのゲームの話だと思うだろうか。
そうだったら、良かったのに。
歩美は頭の中で内容を整理しているらしい。嘘やジョークや浮気したいためのでまかせとは
思っていないようだ。まぁ、自分が一度経験してしまっているからな。
「一つ、気になるんだけど」
「なんだ?」
「桂馬は記憶を忘れないんだよね」
「ああ」
「じゃあ、桂馬は、何度も何度も、あらかじめいっておくけど、嫉妬する私から
責められるってことだ」
「うん」
「じゃあ、一番傷つくのは桂馬じゃないの?
桂馬じゃなくて、呪いのせいなのに」
「……」
「その呪いは解けないの?」
「いつか解ける。そのいつかはわからないけど」
「女の子に手を出す、っていうのは止められないの?」
「そうするとボクが死んでしまう」
ついでに、あいつも。
「それに、嫌だったら断ってくれ、って言ったけど。
私が、嫌じゃないっていったら、友達かそれ以上の関係を続けてくれるの?」
「うん」
「私が、そんな関係を求めなかったら元々そんなことにならなかったのに?」
「まあ、うん」
「どうして、まだ好きでもない私のために、そんなことするの?
さっき、無理矢理にでも断ればよかったのに……」
「絶対諦めないって言ったくせに」
「そ、そうだけど」
メガネを外す。
泣いてしまいそうな歩美を慰めるために。
112:4/12
08/05/18 16:58:28 +vy2d1aC
「理由は、ボクにもわからないよ」
唇を寄せる。歯に舌を触れさせる。唇を甘くくわえたり。
自分からしたキスは、また違う趣がある。ボクは、そんなことを初めて知った。
抱き寄せた身体は小さくて、細い。
服越しに胸に手を伸ばした。ふわりとした感触。
屋上でのそれよりも、よりなまめかしく感じられる。
直接触ったときは、どう感じられるのか。彼女の制服のボタンに手を伸ばした。
「ま、待って!」
強引に口を離し、絶え絶えな息の下、歩美は言葉を漏らした。
「本当にごめん。だけど、どうしても。
……シャワー、浴びさせてください」
「お待たせしました……」
仕切りなおし。
力が少し抜けて、なんだかボクも普通に戻れたように思う。
「ボクは入らなくて良いのか?」
「うん、大丈夫」
そんなやりとりの後、背中合わせで服を脱ぎ始めた。
カーテンの隙間から射す夕暮れの光はボクたちの影を映し出し、
スカートに手を伸ばす仕草を引き伸ばす。
下着だけになったボクの前に、純白の下着をつけた歩美が立っている。
毎日の練習にさらされていない箇所の肌は、見ただけで滑らかに白い。
それを指摘する前に、先に言われてしまった。
「色白だね」
「そうか?」
「肌も綺麗だし」
「外に出ないからな」
「細くて、いいな。私、筋肉あるから」
腕をあげて力瘤を出そうとする。下着姿での違和感がボクの目を奪う。
ボクが見る限り、彼女は十分に細い身体だが、優勝するくらいだ。
きっとしなやかに筋肉などがついているのだろう。
同じ部活の中で皆と比べたりしているのかもしれない。
不意に近づいていって、抱きしめた。細い首筋に唇をつけるように。
人の肌は暖かい。直接触れて、それがボクにもよくわかった。
遭難したときのイベントは、本当に意味があるんだな。
113:5/12
08/05/18 17:00:44 +vy2d1aC
「桂馬」
耳元で名前を呼ばれる。肌の匂いをかいでいて、反応が遅れた。
抱きしめた腕を少し強めることで先を促す。
「名前、呼んで?」
そんなことを言ってくる。
「多分……桂馬は絶対覚えてると思うんだけど」
そういわれたって困る。残念ながら、高原の名前なんか覚えてない。
「呼んで?」
互いに支えあっていた頭を起こす。匂いが遠くなってしまう。
下から見上げる視線。胸元の下着がボクの視線を吸い寄せる。
そっちじゃないというように、ほんの少し揺り動かされるボクの腕。
ちょっと怒ったような表情の、視線の無言の圧力がかかってくる。
それに耐えきれずに、ボクは口を開いた。
「あ……」
「うん」
「……あゆちゃん」
……ボクのこと、やっぱり忘れて下さい。
ごまかしに抗議しようとする歩美に唇をかぶせて、ベッドへ押し倒した。
胸元に手を伸ばし、さっきは止められてしまったそこへと手を伸ばす。
隙間から手を差し込み、滑らかに柔らかい全体に触れる。
比較するすべもないが、意外と、大きいほうなのか。
キスを止めた口から、熱い息を漏らしながら、歩美は言葉を漏らした。
「けち。……脱ぐからちょっと待って」
下着から開放されたそれが、ボクを誘っている。
手のひらで全体をおしあげるようにし、指の腹で乳首を撫ぜる。
部分部分で違う弾力が、ボクの手を不規則に押し返す。
「その、怖いから、強くしないで」
「うん」
小さな声に、緊張の度合いを知った。
それを和らげるためには、なんといえばいいのか。とりあえず笑っておこう。
しかし、見つめるそばから歩美の顔が紅潮を続けていくのはどうしてなのか。
114:6/12
08/05/18 17:10:48 +vy2d1aC
「……っ」
声を出すのを恥ずかしがるのか、ちろちろと舌先で転がしたりした時などの反応のたびに
唇を強く閉ざし、ボクに聞かせてはくれない。ぴくんぴくんと震える身体だけが正直だ。
それが少し不満ではあるが、ボクはその柔らかさと感触に、没頭した。
おなかをわかりやすく手のひらで撫でながら、指先をおへその先にすすめようとした。
慌てて歩美がそれを手で止める。
ボクの下から抜け出し、立ち上がり、息を整える。
それを見つめるベッドに座ったままのボクは、上下する胸元を観察していた。
「はじめてだから、痛かったら、言って」
膝をつき、ボクのトランクスのボタンを外そうとする。
今さらボクが恥ずかしがるわけにもいかない。
右止めのボタンに苦労しながら、反り上がるそれが歩美の目の前で揺れた。
赤い顔のまま、観察されている。やっぱり、これは恥ずかしい。
「な、なに?」
「あの、思ったより、小さいなって」
……
心が痛い。
心の底からボクは傷ついた。久しぶりの出来事だ。
そうか。ボクも、こんな小さな事でここまで傷つくというのか。
やっぱり二次元で生きていこう。もうこんなことに耐えられそうにない。
わかりやすくしおれていくそれを前に、歩美は慌てて声を大きくする。
「ちっ、違うよ!
想像してたのとか、お父さんの持ってたHなゲームに比べると!」
─こいつはアホか。いったい何をしてるんだ。
深呼吸をして、心を元の状態に戻そうとした。すぐにはうまくいかなかったけど。
「……お父さんには、決して気づかれないように返してあげろよ。
そしてボクをあんな連中と比べないでくれ。
あんなのとはりあえる日本人はシ○モダカゲキぐらいのものだ」
「そんな、お父さんだなんて、気が早いよ」
「……」
くいつくのはそこか。典型的だ。
「昨日、ほとんど寝ないで、桂馬のサイトにある中で、あんたが好きって書いてる
女の子のゲームをしてみたんだ。みんなPFPじゃなくて、パソコンのゲームだったけど」
ギャルゲーじゃないからな。
それにしても、なんだ。なんだか妙に恥ずかしくなってきた。
歩美はそこで言葉を切って、あらためて股間に顔を埋めていった。
115:7/12
08/05/18 17:13:26 +vy2d1aC
先端の部分を舌先でちゅくちゅくと舐められる。
突然のことにわずかに腰が引けてしまう。
カリだけを唇で噛むようにして、舌で触れられた。
右手が弱くボクをしごいている。
「っ……」
かすれ声だけが漏れてしまう。気持ちいい。ただ、気持ちが良かった。
舌の動きは止まらない。涎をまぶし、ぬるぬるにして敏感なところ全体を
触れつづけている。それに耐えるのに精一杯だ。
「すごく、かわいい顔だった」
一息ついた歩美は、そんな感想を聞かせてくれる。
何もそれに言い返せない。
嬉しそうに歩美は今度は全体を大きくくわえこもうとする。
ボクの性器は彼女の小さな口にほとんど隠れてしまった。
その中で、舌がからみついている。いやらしい音をわずかに漏らしながら、吸われている。
どういったらいいのか。何も言葉が出てこない。
腰の奥深くから引き出されていくように、ボクは限界を迎えた。
「出ちゃうから……口から離して」
いやいやをするように首を振る歩美。
しょうがなく、彼女の肩を抑えて、歩美の口の中から抜き取るようにした。
けれど、すぐに目の前で上下するそれを捕まえて、そのまま手で先端をくすぐってくる。
それに何の対処もできなかったボクは、歩美の手の中に、大量の精を撒き散らした。
手を掃除するインターバルの後。ボクのターン。
残った最後の一枚。歩美は横たえた身体から両脚をたかく上げられ、ボクと視線を合わせようとしない。
わずかに濡れた下着を、そのままで下着越しにすりすりとこする。
染み出した液体がくちょりと移り、その光景が、ボクを戸惑わせる。
「濡れてる」
「……口で言っちゃうんだ」
腰に手を伸ばし、するりと綺麗な脚からそれを取り去った。
薄い体毛がほとんどを隠すことなくボクへと晒す。
それは、凡百のCGをはるか遠く越えてボクの胸をむやみに打つ。
綺麗だ、と言おうとしたボクの口から、違う言葉が出た。
「ふうん」
「……ふうん、ってなに?」
「いや、意味なんてないけど」
さっきの仕返しというわけではないが。
「へ、変なのかな……」
「そんなことはない。すごく、綺麗だ」
116:8/12
08/05/18 17:16:31 +vy2d1aC
膝を閉じてしまう。隠れてしまったそれをもう一度見るために、こじ開ける。
まだ大事な部分は微妙に閉じているから。
「い、息かけないで」
近づかなきゃいけないからそうもいかない。
「あんまり見ないで」
見ないと何もできない。それに、今のままじゃ足りない。
きっと痛いに決まっているんだ。
それには、慣れていないボクだけでは攻撃の手が不足している。
「自分の手で開いて」
ボクの台詞に、ぷるぷると顔を俯けながら横に振る。
なぜか、どこかしら嬉しそうに見えるのは気のせいか。
「開いて」
ほんの少し口調を強くすると、おずおずと手を伸ばし、ボクの前に彼女のそれが花開く。
さきほどのお返しのように、舌先でくすぐる。
きらきらと光る糸をまとめて、クリトリスにかぶせるように。
「ひゃくっ」
縮んで奥へ行ってしまいそうなそれを鞘からかきだすように追いかける。
その間に指も中に忍ばせる。
「ずっ、ずっとしちゃダメっ」
止める気はまったくない。もう一本の手でくにくにと優しく鞘からも追い込んで逃がさない。
歩美のそれが充分に潤うまで。
泣きそうになるまで、ボクはそれを許すことはなかった。
荒い息の横で、裏面の説明書を見ながら、コンドームを装着した。
多分、これで、大丈夫だと、思う。手先は器用だし。
「いくよ」
「う、うん」
いまさら意思は確認する気はない。止める気もないし。
先端をあわせる。多少スムーズだったのは最初だけだった。
それ以上はきつく、緩慢な速度で抽送を繰り返し、受けいれてくれるのを待つしかない。
ボクはいい。正直、たまらなく気持ちがいい。腰に早くも重圧がのしかかってくるようだ。
歩美はひどく痛がっている。
歩美がそんな状況の中、無理矢理先を進めるのに罪悪感を持つ。
前後に動かす。ボクは気持ちがいい。すごく、気持ちがいい。
痛みに泣きそうな女の子がいて、快感を追いそうになる中を、
ゆっくりと、ゆっくりとかき回し、最後まで追い込んでいく。
わずかに柔らかくなっただろうか。
グラインドを混ぜながら、歩美につきこんでいった。
117:9/12
08/05/18 17:18:21 +vy2d1aC
「……っっ!」
腰と腰とが触れ合い、最後まで埋まったことを知らせた。
ボクももう、我慢の限界に近い。
そのままもう何回か、奥まで突くように前後する。
歩美はまだ歯をかみしめながらも、押し寄せる痛みにただ耐えているだけでなく、
わずかだが自分も腰を動かしてボクの動きにあわせようとしてくれている。
動きを止める。歩美は気を抜くように、一息声を漏らした。
おわり? と問うように、子どもみたいに首をかしげてボクを見る。
「─歩美」
おかしい。こんな状態なのに、どうして実際に名前を呼ぶだけでこんなに顔が熱くなるんだろう。
心の中やエルシィの前では何度だって口に出していたはずなのに。
それもこれも、目の前で馬鹿みたいに嬉しそうにしているこの現実の女のせいだ。
ああ、ちくしょう。悔しい。悔しいな。
なんで、ボクは自分が現実の世界の男であることを、嬉しがってなんかいるんだ。
「桂馬、好き」
なんだ、その単純な台詞。もうちょっと趣向を凝らせよ。そんなんじゃ、ボクは納得しないぞ。
「好き」
繰り返された言葉の後に唇を塞いだ。
どくん、どくんと、音を立てるかと思うほど歩美の身体へと放出する。
歩美の爪がボクの背に立つ。その痛みを覚えながら、避妊具が外れてしまったりはしないだろうかと
わずかに心配したりもする。
まったく、本当に。
ただ黙って抱きしめてもいられないなんて。現実はなんてクソゲーなんだ。
シャツのボタンをとめていると、
ベッドの中で裸のまま見ていた歩美の声が聞こえる。
「メガネ、他の人の前で、はずしたらダメだよ」
「どうして」
「どうしても」
「メガネなんだから、そうもいかないだろ。約束なんかできない」
「むう」
むうってなんだ。むうって。かわいいな。
「代わりになるかわからないけど。
外したところを見た女の子は、キミが初めてだ」
118:10/12
08/05/18 17:21:08 +vy2d1aC
「ただいま」
物音もしない。家の中の電気はついているのに。
母さんはまだ喫茶店のはずだ。
「エルシィ?」
二階にあがりながら呼びかけた。ドアの前に立って張り紙を見る。
『エッチなお兄様立ち入り禁止』
思い切り破り捨てて中に入った。
エルシィが部屋の隅っこに座っている。
「……お前、まさか見てたんじゃないだろうな」
「みっ、見てません」
ぶんぶんと顔を振る。赤いランプを振るみたいに残像が残った。
「……それはもういい。
そんなことより、歩美っ、は、やっぱりかすかだが記憶が残ってるぞ」
「歩美って言ったときに顔が赤くなりました」
「うるさい! 部屋にボクが贈ったスパイクがあったんだ。
物が残ってしまっているからとか、それが原因か?」
じと目でボクを眺めながら、机の上においてあった資料を持ち出す。
「たぶん、関係ないと思います。この新しくなったマニュアルを見ても」
エルシィの、バージョンアップになった時にもらったという書類なのだろう。
結構な量だが、日本語だ。どういう地獄なんだ、そこは。
その中に、何枚かの紙を綴じたぺらぺらの資料があった。
目を落とした1ページ目の表記を見て、それをボクは奪い取った。
*****************************************************************
法治省
Bug-ID 6434927
(日本語表記のため、用語、文章の翻訳が正確でないことがあります。
詳細は原文を参照してください)
駆け魂感知時から攻略終了時までの記憶を消去する際に、
対象者の協力者への好感度の値が駆け魂感知時に戻っていませんでした。
また、このために、その好感度を維持するための
重要な記憶の一部の消去にも失敗していました。
この問題は特定のロットのみに発生します。
対象者の好感度の値を駆け魂感知時に戻す処理を追加しました。
この問題の回避策はありません。
交換するか、バージョンアップにより対応してください。
また、この問題がすでに発生した場合の回避策もありません。
協力者による運用対処にて対応してください。
*****************************************************************
119:11/12
08/05/18 17:24:13 +vy2d1aC
がっくりと膝を落とす。
エルシィのドクロのロットナンバーを見るまでもない。
……まさかこんなところでもバグに悩まされようとは思わなかった。
だいたい、運用対処って、直らないからそっちでなんとかしてくれってことじゃないか。
なんだこのひどい対応は。
ボクの手元から落ちた資料を見たエルシィは恐縮してひたすらぺこぺこと頭を下げる。
「……やっぱり、私、何をやっても駄目なんです」
自分を責めるエルシィ。昨日、地獄から戻ってくれた時に気づいてくれたら、
何かが変わっていたかもしれない。
けれど、そんなことをいえば、昨日、ボクがメールに返信しなければ。
そもそも、一番最初のメールに返信なんてしなければ。
きっと今の状態にはなっていなかった。
メソメソしている妹の頭を撫でてやる。
「これは、お前が悪いわけじゃない。悪かったな。何度も疑って」
「……か、神様」
今更エルシィを責めたところで何が変わるというわけじゃない。
そう。
内容を見る限り、歩美だけじゃないってことだ。
……冗談じゃない。
いやいやながら、歩美の部屋で電源を切ったPFPを立ち上げた。何件かの新着メールがある。
はじめまして。落とし神さん。ブルマンといいます。
あるゲームで、見ていると胸がざわざわする庶民の女が、
屋上で、知らない男の子と、二人で親しそうに食事をしていました。
しかもオムそばパンを。
さらにその上、2日連続で。
主人公はずっと見ていたのですが、なんだかすごくいらいらしていました。
もし明日もそんなことになったら、割り込んでいく主人公が目に見えるようです。
その庶民の女を奪うには、どのような攻略が良いでしょうか。
教えて下さい。
見なかったことにした。明日は、エルシィも含めて教室で食べよう。
よし、次のメール。
淡い初恋消えた日はと申します。以後よろしくお願いします。
主人公が男性教師のゲームなんですが、授業中にまでゲームをしていた女生徒がいます。
友達もいなかったはずの彼女が、男子生徒と食事をとりはじめました。
それ自体は良いことだと思うのですが、主人公の気持ちがひどくもやもやしています。
このままでは生徒指導室で
ボクは何も見ていない。
その後の何通かのメールも飛ばす。
落とし神様。LCといいます。
こいつは隠す気すらないのか。
120:12/12
08/05/18 17:25:40 +vy2d1aC
私には血の繋がらない兄がいるんですが、ダメな人なんです。
たった一日、目を離しただけでもう攻略されています。
私に人間の女に興味がないといってから、ほんの一日です。
落とし神だなんてうたっていますが、落とされた神なんてかっこ悪すぎます。
落とされた神、ということは、堕天使ならぬ堕神です。
言葉の響きもかっこ悪いです。
堕ちた神なら素直に悪魔とでもくっついてろと思います。
逃げ出そうとするエルシィの羽衣を掴み、その場に留め置く。
最後に残った短い一通を読んだ。
落とし神様。ポーンです。
エンディングはまだですが、一度メールします。
ゲームと違って現実は先が長いです。
バッドかハッピーかは人によって色々と違うと思いますが。
とりあえずはこれからも、よろしくお願いします。
明日はお弁当作るよ、頑張っていこう、落とし神様!!
121:名無しさん@ピンキー
08/05/18 17:26:14 +vy2d1aC
以上。歩美は桂馬の嫁。
タイトルは、「神のみぞ知るporn」
綴り間違いではない。
次は、またエルシィか、美生を書くつもりだけど、書くペースは落ちる。
122:名無しさん@ピンキー
08/05/18 19:29:54 vRo7IRFy
GJ!!すごくらしさがあって良かったです!
次作にも期待してます
123:名無しさん@ピンキー
08/05/18 20:50:15 ChJaaKtQ
なんかもう神過ぎる。
GJとしか言いようが無い。
そしていつの間に落とされたんだ先生ww
124:名無しさん@ピンキー
08/05/18 20:55:55 koshr04s
>>121
あまりにもGJすぐる。
よくキャラクターを掴んでるよな。まさにパロディ。
今後の投下にも全力で期待させてください落し神様。
125:名無しさん@ピンキー
08/05/19 02:11:02 QvCH5k0I
森昌子かよ!
歳がバレるぞ先生w
126:名無しさん@ピンキー
08/05/19 02:52:38 +s4ctEw2
すごいなすごすぎるよ
原作よりおもしろかったって言っちゃだめかな?
127:名無しさん@ピンキー
08/05/19 07:16:56 8AyxfKMH
PCの前でニタニタしてる俺超キメェ。
つまりGJってことだ、続き、あるなら楽しみにしてるぜ。
128:名無しさん@ピンキー
08/05/19 11:33:53 o6RxCyKL
>>126
そういうこと言うと打ち切りに…
原作も応援していこうぜ
129:名無しさん@ピンキー
08/05/19 12:26:32 WpdVa8jY
語彙不足でこれ以外出てこないが、とにかくGJ!!
130:名無しさん@ピンキー
08/05/19 23:32:42 VLTTprkG
ラストのフラグたちまくりっぷりにワロタw
投下超GJ!
131:名無しさん@ピンキー
08/05/20 00:04:39 Ka1RgRpW
原作知らなかったから慌ててマンガ喫茶行った。
サンデー買うことにしました
132:名無しさん@ピンキー
08/05/20 01:02:32 d2DtWcJ3
オタメガネ死ね!
133:名無しさん@ピンキー
08/05/20 06:21:12 nJJS/kVB
┌─┬─┬─┬
│__│▽歩│__│
├─┼─┼─┼
│▽青│▲桂│▽先│
├─┼─┼─┼
│__│▽悪│__│
├─┼─┼─┼
つまり、こういう譜面ですね。わかります。
134:名無しさん@ピンキー
08/05/20 08:14:50 qH+y4BGW
動けないww
135:名無しさん@ピンキー
08/05/20 09:30:52 8fqfZFCF
詰んでるwww
136:名無しさん@ピンキー
08/05/20 14:58:33 Y9q19MPA
あまりにもわかりやすいwwあと4つ残ってるぜ!
137:名無しさん@ピンキー
08/05/21 08:11:25 OssEKFXG
今週は神様輝いていたなぁ……
138:名無しさん@ピンキー
08/05/21 09:51:14 UdFe9jWM
>ああ、ちくしょう。悔しい。悔しいな。
>なんで、ボクは自分が現実の世界の男であることを、嬉しがってなんかいるんだ。
こんな簡単に更正する落とし神と思ったか!
と言うほどに輝いてはいた
139:名無しさん@ピンキー
08/05/22 01:29:15 IsQ7YoBd
折角カラーページもらったのにこんなんでいいのかと心配するほど輝いていた
140:名無しさん@ピンキー
08/05/22 03:55:35 ahTK7LCn
今週はネタにならなそうだったな
141:名無しさん@ピンキー
08/05/22 06:19:45 YTvrex69
落とし神モードの桂馬がエルシィに千手観音愛撫をするという展開に。
142:名無しさん@ピンキー
08/05/22 17:49:18 zjZZUg70
奴のスペックならそれぐらいは軽いな。
143:名無しさん@ピンキー
08/05/22 21:08:06 IsQ7YoBd
終わったら神さまヘロヘロじゃないか
144:名無しさん@ピンキー
08/05/24 01:30:28 PaO5Okaa
スイーツ(笑)
145:1/4
08/05/24 14:11:35 1/Sfz8oR
「神様ありがとうございます!」
遠くからエルシィの声が、かすかに聞こえたような気がした。
美生からそっと唇を離し、荒い息をつく。最中は気づかなかった香水の匂いをかすかに感じる。
これにいつか慣れる日なんてくるのか。
胸元には抱きしめているというよりも、顔を埋めているような美生の姿。
ボクの息が多少落ち着いてくる頃に、目じりをこすってからゆっくりと見あげた。
「遅いから、帰ろう。送るから」
「……うん」
うなづいた頭がボクの胸に当たる。そのまま、頭越しにエルシィの姿を探した。
あいつはうまくやったんだろうか。
噴水の奥の、暗い木の影。闇に滲むようにエルシィの倒れた姿がそこに見えた。
「エルシィ!」
美生を残し、その場所へと駆け寄る。はきなれない革靴がもどかしい。
徐々に近づくその姿を見る限り、血などの外傷を思わせるものはない。
「エルシィ。おい、エルシィ」
身体は温かいし、呼吸も荒くはない。いびきもない。
だが、ぺしぺしと軽く頬をはたいても反応をする気配もない。
近くには、空の小さなビンがある。
駆け魂を回収するときになにか失敗でもしたのか?
病院……はまずい。こいつの正体がばれる恐れがある。
ビンをポケットに入れ、頭をボクの肩にあてるようにエルシィを抱え上げた。
そばには、不安そうな顔の美生が待っている。
「美生、一度家に行く」
「うっ、うん。大丈夫?」
「多分」
ボクらの服装に驚いているタクシーの運転手を急がせて、自宅へ戻る。エルシィに変化はない。
「すいません、彼女を家までお願いします。
美生、また学校で。ごめん」
「桂木!」
運転手に一万円札を渡して家の中へ向かう。美生の呼ぶ声にも振り向かなかった。
母さんに見つからないようにエルシィの部屋へと運び込む。
複雑な構造の、羽衣でつくられているとは思えないメイド服をひとつひとつ脱がせていく。
圧迫されていると良くないだろう。
ヘッドレストを外すときに頭もよく確認したが、こぶのようなものもない。
下着だけを残してすべて取り去り、とりあえずボクの寝巻きを着せる。
ベッドの上のエルシィはただ寝ているようにしか思えない。
熱もない。頭を冷やそうかとも思ったが、その必要もないようだ。
「はあ……」
ずるずると足を滑らせてベッドを背に座り込んだ。後はボクにできることはない。
メイド服もボクのスーツも羽衣に戻る気配もないということは、きっと美生のもそうだろう。
明日、ドレスをみて不思議がりはするだろうけど、エルシィが気づき次第回収させよう。
幸い、明日は日曜日だ。
146:2/4
08/05/24 14:15:47 1/Sfz8oR
「……神様」
「神様!」
肩を揺り動かされた。
─エルシィの声。あのまま寝ちゃったのか。
窓からはすでに明るい光が差し込んでいる。
ふう。一息ついてから、ベッドに向き直った。
「おはよう」
「おはようございます、神様。うー、それで、どうして私は神様のパジャマを着て、
神様は私の部屋で寝てるんですか?」
混乱した表情でボクを見る。とくに変わりはないように、感じる。
人騒がせなヤツだ。
「お前が、あの屋敷で倒れたからボクがわざわざ連れてきたんだよ。
身体はなんともないのか」
「た、倒れたんですか、私?」
袖の余った手をぐるぐるまわしたり、ベッドの中で足を曲げたり伸ばしたり。
「あーあー、あめんぼ赤いなあいうえおー」
発声練習の必要はどこにあるのか。
「とくになんともないみたいです」
「ふん」
だったらこんなところにいる必要もない。とっととこのちゃらちゃらしたスーツを着替えて
ゲームをしよう。
立ち上がろうとして、ふくらんだポケットに気づいた。
ああ、あのビンか。
「あー!!」
ポケットから出したそれを見てエルシィが騒ぎ出す。
「拘留ビンの中に駆け魂がいません!」
「拘留? 駆け魂ってのはこんな小さなビンの中に入るものなんだな。
昨日、お前のそばに転がっていたときから何も入ってなかったぞ」
「うぅー! 駆け魂が逃げちゃいました……」
……つまりアレか。捕らえるのに失敗して、空中から落ちたか何かで
気を失ってたってことか。
とことん役にたたないヤツだ。
「……すいません。神様」
「もういい。とっとと逃げた先か別のでも探しとけ。ボクはゲームをする」
頭を下げるエルシィを尻目に、ドアへ向かう。
なんのためにあれだけ苦労して美生を攻略したんだか。
「あれ?」
ドアを開けようとするその後ろで間の抜けた声が上がる。
メイド服に向けて左手を伸ばしている。
「……羽衣さんが、元に戻りません」
147:3/4
08/05/24 14:18:53 1/Sfz8oR
「美生のドレスがまだないからじゃないか。昨日あいつが着て帰ったから」
「いえ、別々にしたらそれごとに元に戻したりもできるんです」
うんうんうなりながら手を何度もメイド服に伸ばす。
……なんとなく、いやな予感がした。こういうパターンは、あれだ。
「ほうきを操ってみるか、空を飛んでみろ」
「は、はい」
当然のように、ほうきはただのほうきとなり、空も飛べない。どうせ、
「地獄との連絡も取れません!」
だろうな。
ああ、よくあるシチュエーションだ。現実になると非常に迷惑だが。
たまったゲームから泣く泣く意識を切り替え、エルシィの前にあぐらで座りなおした。
早く二次元に帰りたいなぁ。
「昨日、最後にあったことを思い出してみろ」
「……ええと、駆け魂が美生様から飛び出しました。その時に、
拘留ビンをつかおうとしたはずなんですが、それから記憶がないんです」
「駆け魂がお前に攻撃をしかけて、その力を乗っ取ったって事か?」
「いえ、そんな力はありません。駆け魂にできることは、人の女性の心のスキマに潜むことだけです」
「でも、お前は悪魔なんだろう。人間の女、だけじゃないってことか?」
「私も聞いたことはないです……」
人間の女。悪魔の力を失ったエルシィ。
「……とりつかれたら人間と同じになるからってことなのか?」
「うー……」
「……まぁ、わからないならそれは今はいい。
それで、悪魔であるお前にとりついたんだとしたら、どうなるんだ。
人間と同じく、転生しようとすると考えればいいのか」
「ごめんなさい、それもわからないです。
ただ」
「ただ?」
「関係あるのかわかりませんが、以前にお姉様に聞いたことがあります。
『7日以内に捕まえないと、地獄から駆け魂を狩りに来て、その町自体が火の海になる』
という話を」
「この舞島市が、ってことか?」
「はい、おそらく。人間ではそんなことにならないので。何か別のルールだと思います」
「何が起きるのか知らないが、そこまでして滅ぼす必要があるってことか。
はた迷惑な……」
「ううー、神様、どうしましょう!?」
どうしましょうも何も、そんなことをされたらボクの大切なゲームも燃えてしまう。
しかも、地獄との連絡がとれない以上、こいつのあやふやな記憶でもそれを前提として
対応しておくしかない。
「拘留ビンっていったな。それも使えないのか? それならお手上げだ」
「これは悪魔の力を使うわけではないので、人間でもできます。
駆け魂が空中に出たらふたをあけて、勝手に吸い込んだらまたふたをするだけです。
でも」
「また、でもか」
「悪魔の力が使えないので、駆け魂が見えません……」
天を仰ぐ。
148:4/4
08/05/24 14:23:41 1/Sfz8oR
「心のスキマを埋めて、キスをして駆け魂が出た瞬間に、勘だけで誰かにふたをあけて、
またふたをしめてもらわなきゃいけないってこと、か」
曲芸みたいな真似だ。しかも、それを第三者に任せる必要がある。
「ハードル高いな……」
その言葉で歩美のことを思いだしたが、関係のないあいつに頼む筋合いじゃない。
やってもらうとしたら母さんだが、
(母さん、エルシィとキスをするから、その時にこのふたをあけて、少ししたら閉めてくれ)
笑いながら轢かれそうだ。
「困ったな……。こんなことを頼めるヤツなんていないぞ」
すぐに思い浮かぶ相手がいない。誰か、頼めそうな人間。
「……あの、神様。私が言うのも大変申し訳ないんですけど。
前提をひとつ忘れてませんか?」
喋らないと思っていたら、もじもじと指の先をこすりあわせながらそっぽを向いて言う。
「……私が、神様を好きにならないと、いけないんですよ」
そんなことはわかってる。
すでに解決の道筋が立っているから後回しにしただけだ。
こいつの心のスキマがなんだかなんて今はわからないが、
押しかけ同居人で見かけ上妹で共通の秘密をもっていて共闘していて
駆け魂狩りを続けるためになんでもするとかとも言っていた。
多数の生死にかかわるという状況ですらある。
イベントはもう充分だ。
問題は、それをこいつも知っているということだが、こいつは粗忽だから
なんとかなるだろう。
「……なんだ、お前はボクのことを好きじゃなかったのか」
「そ、それは……」
「じゃあしょうがないな。攻略する方法を考え」
台詞の途中に、玄関のインターホンが重なった。なんだ、こんな早くに。
少しして、ボクの部屋のインターホンも鳴りだす。
「はい?」
「桂馬、お友達。玄関にいってあげなさい。早く」
……友達?
そんなのはいない。聞きなおしたかったがすでに切られている。面倒くさいな。
「ちょっと出てくる」
顔を赤くしたまま、うなづいたエルシィを背に、玄関へ向かった。
途中の姿見でまだ昨日のスーツ姿だったことにきづいたが、しょうがない。
玄関を開けた。そのまま少し視線を下げる。
少し顔を赤くした、青山美生が、そこにいた。
149:名無しさん@ピンキー
08/05/24 17:22:06 PaO5Okaa
わっふるわっふる
イイヨイイヨー
150:名無しさん@ピンキー
08/05/24 18:47:21 sonp4CAe
>>149
うおおおおお!新シリーズ来てる!
これは次回が楽しみだぜ
151:名無しさん@ピンキー
08/05/24 19:42:04 uFszA0jc
乙。落とし神モードの回の影響か桂馬の二次元志向が強化されてるw
152:名無しさん@ピンキー
08/05/24 20:44:40 IcwyY9oL
ど、どうなる。
これからどうなるんだ……。
くそう、わっふるわっふるしすぎて眠れなくなりそうだ!
153:名無しさん@ピンキー
08/05/24 22:30:48 CJXfosB7
これはまた続きが気になる新作が!
154:名無しさん@ピンキー
08/05/27 07:09:55 CFCqsWms
投下を願って保守
155:名無しさん@ピンキー
08/05/28 09:53:11 WLZ9yJoq
かのん、でリボンか。
156:名無しさん@ピンキー
08/05/28 14:53:26 s5wHtZVJ
安全なスタンガンに吹いたww
あのアイドル、出来ておる喃
157:名無しさん@ピンキー
08/05/28 15:06:27 pjPtIQmf
沖縄は今夜発売。
wktk
158:名無しさん@ピンキー
08/05/28 18:29:55 IzPc9bzf
>>145-148続き
159:1/5
08/05/28 18:32:37 IzPc9bzf
「……」
なぜ美生がここを、と思った瞬間に答えを思いついた。
そうだ。エルシィが悪魔の力が使えなくなったということは、記憶の消去を
行うこともできなくなってるのか。
「……どうして、ここに?」
「ドレスと、お釣りを返しにきただけよ。私じゃお釣りのお金が合ってるかどうかも
わからないし」
「あ、ああ、ありがとう。別に月曜日でも構わなかったけど」
ボクの台詞を聞いて、ちょっとむかついたような表情をする。
「この私がわざわざここまで歩いて持ってきてあげたのに、なに? 運転手のくせに!」
だから頼んでない。というか、なんで怒るんだ。
もう終わったことだけど、しょうがない、昨日までの続きと思って諦めるか。
「いえ、わざわざありがとうございます、お嬢様」
封筒とドレスがはいっているらしい袋をいただいて、うやうやしく頭を下げる。
頭を上げると、腕を組んでボクに向かって仁王立ちをしていた。
「なんで、まだ昨日のスーツを着てるの」
「昨日、このまま寝ちゃったから」
なんか漫符みたいに怒りのマークが見えたような気がする。
「……昨日の、メイドの女の子は大丈夫だった?」
「さっき気がついた。とくに悪いところはないらしい」
「そう、良かったわね。ちょうどいいから、ちょっと挨拶させて。私も心配だし」
「いや、別にいい。……別にいいってば。そこ、靴脱がなくていいから」
「お邪魔します。あの子はどこ?」
ずかずかと上がりこんでくる。性格はあまり変わってなさそうだ。
こいつ、これからまともに人生やっていけるかな。
「そっちは店。二階にいる。こっち」
「エルシィ、入るぞ」
一応ノックしてドアを開ける。もう一人の人物を見て声を上げた。
「みっ、美生様?」
「私のこと、知ってるんだ。桂木から聞いたの?」
「はっ、はあ、ええと」
「名前は?」
「なまえ?」
「あなたの、なまえ」
ボクにするよりはわずかに口調は大人しいが、語調は強めのまんまだ。
初っ端から勢いにおさっれぱなしのエルシィはまともに返せていない。
しょうがないので助け舟を出してやる。
「そいつは、桂木エルシィ。ボクの妹だ」
「……妹?」
160:2/5
08/05/28 18:34:55 IzPc9bzf
「なんだ、妹だったのか……」
ブツブツと小さく言葉を漏らす美生。エルシィから?マークが飛んでくる。
自分のことだというのになぜこいつはすぐ理解できないのか。
「お前がそうなってるから、まだ、消えてないんだろ」
ボクの頭を指差しながら、答えてやる。ああ、という表情で手を打ってから、
声を出さずにショックを受けた表情をする。
そんなやり取りの中に美生がボクを睨みつけてきた。
「桂木、妹にあんな格好させるなんて、お前やっぱりおかしいんじゃないの?」
「こいつがそうしたいと言ったんだ。ボクのせいじゃない」
「えぇー!」
今度は声を出した。ボクを責めるように。
「そうなの?」
「う、うー……はい」
「どうして?」
「み、美生様とおにーさまがうまくいくように……です」
「う、うまくいくってなにが!? こ、こんなのとなんてなんにもないんだから!」
わかりやすいな。
「神にーさまはこんなのなんかじゃありません! 訂正してくださっ!」
舌を噛んだらしい。口を押さえて涙ぐむ。ああわかりやすい。アホだ、こいつ。
「だ、大丈夫?」
気遣う様子を見せる。エルシィは涙を浮かべたまま返すこともできない。
美生は少し考えた様子で、立ち上がってから優しい口調で告げた。
「今日はこれで帰る。エルシィ、また。体に気をつけなさい」
ためらいもなく部屋を出ていく。
後を追うように、ボクも出た。
161:3/5
08/05/28 18:38:03 IzPc9bzf
「ごめんなさい」
階段を歩きながら謝られた。意外だ。
「何が」
「悪いところはないっていうけど、興奮させたらよくないから。
……お前の態度が昨日少し気になったんだけど、妹なら、仕方ないわ。
家族だし、心配でしょ?」
……ああ、そうか。こいつ父親を亡くしてるんだった。
「明日から、迎えに来なくていいから、直るまであの子の面倒をみてあげなさい。
私は、平気だから」
彼女の家と、ボクの家は結構離れている。タクシーで逆方向に一回通っただけで、
道順を覚え、歩きなれていないだろうにここまで来るのはきっと大変だったはずだ。
「その、昨日、送れなくてごめん」
「ううん。タクシーのお金、ありがとう。
今はお小遣いがないけど、今度、私の分は払う」
「……それはいらないから、かわりに今度、君が学校からボクの家まで、
送ってくれ。それでちゃら」
「自転車なんか、乗れない」
「運転手はボクの役目だよ。君は荷台でボクに掴まる役だ」
「……バカ庶民」
玄関に着く。腰を低くして彼女に肩を差し出す。普段と違う低い靴が履きやすいように。
ボクの肩を掴んで靴を履いた美生が、手を離して近づいた。
不意打ちのような唇だけの短いキス。芳しい香り。
「……次は、お前からしなさい」
顔を赤くして、ドアを開けて出て行った。
……まずい。デレが始まっている。
というか何をつきあってるんだボクは。
スーツを着ていたせいでつい流されてしまった。
呆けるように玄関を見つめていたボクが振り返ると、こっそり見てましたという
風情の母がいる。
口に手を当てたまま、ニヤついてフェードアウトしていった。
162:4/5
08/05/28 18:40:48 IzPc9bzf
「エルシィ!」
「な、なんでしょう?」
ボクの剣幕に、出していた舌をしまって、かしこまる。
「すぐになんとかするぞ。誰かなんてもう待ってられない。
ボクがビンを持つから、お前の判断でふたを外して閉めてくれ。
それなら二人でできるだろう」
「急にどうしたんですか、神様?」
「あんなのに明日からもつきあってたら、それこそボクのゲームの時間がなくなってしまう。
だからだ」
そばに置いてあった拘留ビンを手に取る。
「……するって、キスをですか」
「そうだ。お前に心のスキマなんてものがあるか知らないが、駆け魂を捕らえるために
埋めてくれ。ボクも今はお前のことを好きになるから」
ベッドへ腰を下ろす。エルシィのそばへ。
エルシィの頬に手を寄せる。こちらへ向けようとする力は強く遮られた。
「……神様は、私のこと、好きですか」
「ああ。それに、お前が駆け魂狩りを続けるためでもある」
わずかのためらいの後、力が抜けて、ボクを向く。目が怖い。何を怒ってるんだ。
ボクの利き手がビンを持ち、エルシィの利き手がふたを持つ。
逆の手で、エルシィの空いた手と重ねた。
つぶった両目の下で、頬が紅潮をはじめている。
右手が回り、ふたが開く。ボクは、エルシィに限りなく近づいた。
ベッドの下から、両手を伸ばしたエルシィが見えた。
……なんだ。今ボクは突き飛ばされたのか。
「……あの人の匂いがします」
慌てて唇に手をやった。というかその台詞は止めてくれ。
「か、」
「神にーさまなんか、だい嫌いですっ!!」
163:5/5
08/05/28 18:43:31 IzPc9bzf
……くそ、ボクとしたことが。
美生の奇襲と母さんのムカつく顔でつい大事なことを忘れてしまった。
二人目が 通用したのは 今昔 親友姉妹に 資源集中
一人がすでにフラグが立ちまくっている状態で別のヒロインに
手を出すのは愚の骨頂だ。それが通用するのは特殊な条件での
親友に姉妹、あとは親子ぐらいか。
完全にエルシィを怒らせてしまったらしい。あの後は一言も口を聞いてくれないし、
朝は勝手に行っちまってここでも休み時間のたびに逃げている。
あと、6日。
だいたい、何故ボクが苦労しないとならないんだ。好きでやってるわけでもないのに。
「痛っ」
「珍しくゲームをしてないのに授業を聞かない桂木君、この問題をやれ」
先生がボクの頭を叩いていう。今の時間は数学だったか。
黒板の内容を見る。
「≒3」
「ふん、正解」
クラスメイトの、へえ、という空気の中に、エルシィの視線を感じる。
そちらへ向けるとそれはすでに逸らされた後だった。
昼休み。
すでにエルシィの姿はなかった。
ゲームをしたいところだけど、面倒な現実のことをどうするか考えるか。
「おい、オタメガ。お出迎え」
「……は?」
クラスメイトの男がボクに向かって言う。
ドアの外には、まるで当然のように、
少し顔を赤くした、青山美生が、そこにいた。
164:名無しさん@ピンキー
08/05/28 18:47:35 pjPtIQmf
リアルタイムGJ!!
いいよいいよー。LCかわいいよLC
本編より続きが気になりすぐる…
165:名無しさん@ピンキー
08/05/28 19:02:45 b80VqtXl
GJ!
続きも期待してます
166:名無しさん@ピンキー
08/05/28 20:26:51 s5wHtZVJ
デレ期キター!!GJ!!
167:名無しさん@ピンキー
08/05/28 21:32:29 hvgSjPQs
あの人の匂いがするワロタw
これはいいエルシィ
168:名無しさん@ピンキー
08/05/28 23:12:17 AFJMosCI
こっからどうなるのか予想も付かんw
とにかくGJ。
169:名無しさん@ピンキー
08/05/29 10:50:33 0AiDi5R1
おおお、すげえwktkが止まらん、GJ!!
170:名無しさん@ピンキー
08/05/30 16:06:42 jU/uVeCF
単行本ないから古いサンデー
取っとく必要があるな
171:名無しさん@ピンキー
08/06/01 11:09:48 zl5UJI5p
URLリンク(kissho.xii.jp)
鮮やかに転載
これのエロゲーが出たらエロゲーどころかギャルゲーでさえやったことのない俺でも買う
172:名無しさん@ピンキー
08/06/02 07:17:19 PQrbQCwL
あれ、土日の投下は無かったのか。
次の投下はいつかね?
173:名無しさん@ピンキー
08/06/02 13:09:31 wVMj90Ed
現実というクソゲーの都合によるし、神のみぞ知る。
二次創作しやすそうな作品に思うけど、他に書く人がくるのは単行本が出てからかな。
174:名無しさん@ピンキー
08/06/04 07:46:02 1jsdDhOV
今週号見て思った
だんだん登場人物が人外の域に……
175:名無しさん@ピンキー
08/06/04 08:59:55 bz+045mA
ギャルゲーではよくあることだから(登場人物が人外)
リミット解除はいいんじゃねーの
176:名無しさん@ピンキー
08/06/04 21:32:32 O+EAGldM
あれは存在感が薄くなりすぎるってことを表してるんじゃね
いるけど存在感が薄すぎて見えないってのを漫画的に表したらそうなるんじゃないかなと
177:名無しさん@ピンキー
08/06/04 21:33:18 tjdRTtRI
さりげなくアイドルで書いてたが、来週のオチまで続き書けなくなってしまったな;
178:名無しさん@ピンキー
08/06/05 09:36:53 su3er569
今週の萌え所がわかんなかった
179:名無しさん@ピンキー
08/06/05 12:16:31 NnEwcGOB
>>178
罪悪感に苦しむ神様
萌えるだろう?
180:名無しさん@ピンキー
08/06/05 14:22:32 VPK80sUY
神様は一貫してクールを貫いてもらわないと困る
181:名無しさん@ピンキー
08/06/05 16:27:25 eyxJ/yLo
着ぐるみを着た神様が可愛かったからそれでいいや
182:名無しさん@ピンキー
08/06/05 16:35:11 u9t0tsYM
なんかアルバの時よりイキイキしてるような
183:名無しさん@ピンキー
08/06/06 18:57:36 73fx1ZV+
そりゃ本人曰く『利き手で投げてる』そうですから
184:名無しさん@ピンキー
08/06/06 19:37:26 /JOr2WTS
神様がゴミ子を、と妄想したが、高校生と中学生だった。
でも別にあの学校限定じゃないから問題ないのか?
185:名無しさん@ピンキー
08/06/07 19:30:52 G5na8wJf
>>184
駆け魂が入ってしまえば、それをLCが察知したなら、幼女だろうと老女だろうと口説かねば…と思ったが子供を産めない年齢の人間には入らんだろうな。
186:名無しさん@ピンキー
08/06/07 19:54:13 1u/5IsM0
>>185
世の中には5歳で出産したという事例もあってだな。
187:名無しさん@ピンキー
08/06/08 03:09:15 juqV7Ih8
上は82歳だったかな?
なんだ。幅広いじゃないか。
188:名無しさん@ピンキー
08/06/08 21:49:51 lAc/mX/s
>>159-163 続き。
189:1/5
08/06/08 21:52:34 lAc/mX/s
正直、行きたくなんかない。
とはいうものの、なぜか、横から背中から、クラスの連中の嫌な視線を感じる。
ふだんはそんなもの気にもならないが、今はなぜか妙に気になる。
あきらめてドアへと向かった。
「なに?」
「……パンの買い方がわからないから付き合いなさい」
南校舎の屋上。
ここへは出る階段が一つしかなく、不便なために、あまり人気がない穴場だ。
静かにゲームに没頭したいときはここがいい。今日も人がいない。
「ふうん、こんなところがあるんだ」
ボク達以外には。
「それにしても、またオムそばパンなのか」
「美味しかったんだから問題ないでしょ。たくさんあまってたのは、ママに捨てられちゃったし」
こいつ一人だったら、あれをまだ食べるつもりだったのか。
賞味期限とか知ってるのかな。それくらい、教えておけばいいのに。
ボクも同じくオムそばパンを食べながら、さっきの出来事を思い返して溜息をつく。
「……さっき教えたのは、覚えたのか。500円100円50円10円5円に1円」
「急に何? 覚えたに決まってるじゃない」
「63×10000÷3は?」
「210000」
「りすさんがりんご7ことみかんを3こかいました。
りんごはひとつ50円、みかんはひとつ20円です。
しはらうお金をここにある硬貨を3種類使ってあらわしなさい」
「……」
「わざとやってるんじゃないだろうな」
「うるさい!」
完全にアホの子相手の会話だ。
小銭でパンを買う方法を覚えるのはいいにしても、ボクがつきあわされるのは勘弁して欲しい。
そもそも、エルシィの駆け魂を捕らえることができれば、こいつの記憶は消去されるはずだ。
だったら、今つきあわなくたって問題なんてまったくない。
なるべく時間をとられないようにこいつから離れたいところだけど、どうするのがいいか。
ツンデレがデレになってから別れるっていうのは、ボクにもあまり経験がないからな。
190:2/5
08/06/08 21:55:14 lAc/mX/s
「そういえば、エルシィはいないの?」
「別のやつと食事でもしてるんだろう」
「だって、さっきお前を呼んでもらった男は、
『今日は珍しく妹と一緒じゃないな』って言ってた」
余計なことをいうヤツだ。エルシィがきてからたいして日がたっているわけでもないのに。
「別に四六時中一緒になんていない。倒れたのだって、なんともないって本人が言ってるし」
「そう……」
もふもふとパンを食べることに戻る。
それにしても、あいつもそうだけどどうしてこんなに食べるのが遅いんだろうな。
鞄からPFPを出す。電源を入れようとすると、きつい目で睨まれた。
「何をするの?」
「ゲームをしようかと」
きりきりきりと眉毛があがる。わかったからムチをだすのは止めてくれ。
諦めてボクの大事なPFPをしまう。別にもう出すつもりもないが、食べるスピードを
ずいぶんとあげて、ボクを睨んだまま食べ終わった。
そのまま、二人で意味もなくベンチに座ったままでいる。
「なにか喋りなさい」
「何を」
「普通は、こういうときはなにか気の聞いた話をするものでしょ」
気の聞いた話といっても何を話せばいいんだ。
こいつの趣味特性がわからない状態じゃ何を話題にするといいかの判断が難しい。
いや、そうじゃない。なんで三次元相手にそんなことを考えてるんだ、ボクは。
「ないのなら、別にお前の話でもいいわよ」
「ボクの話?」
「誕生日は?」
「6月6日11時29分35秒」
「……それ、なにか覚えていていいことあるの?」
「ひょっとして、ゲームに入力する必要があるかもしれない」
「……私は1月2日! 血液型!」
ゲームには性格設定を決める一因になるなどの理由付けがあるけれど、
現実で、献血でもないのに聞いて何になるんだろうな。こんなこと。
何度も繰り返される質問に答えてやる。
別に覚えるつもりもなかったが、美生のプロフィールも自動的にボクの頭に記憶されていく。
結婚したら何人子どもが欲しいかって、そんなもの常日頃から決めているものなんだろうか。
191:3/5
08/06/08 21:58:37 lAc/mX/s
質問する内容もつきてきたらしい。
美生は、今さらのように周りを大きく見回した。
「……ここ、本当に人がいないんだ」
「昼休みの最初の頃からならともかく、途中から来るやつは見たことないな」
その回答の後にまた黙り込んでしまう。
意味ありげにボクをちらちらと見るのは、何の真似だろう。
こっちは静かにゲームの世界にいたかっただけだったのに。
当然のようについて来るのを撒けなかったのがボクの敗因なのか。
静かになったボクの耳に、校庭や別の屋上からいろいろな声が響いて聞こえてくる。
そういえば、あいつは休み時間のたびにどこにいってるんだろう。
「─いないの」
「……なに? 聞いてなかった」
「その、誰もいないの」
繰り返しの言葉。
「ああ。誰もいないな」
「いないんだってば」
「だからなんだ」
美生に顔を向ける。あいかわらずのツリ目がボクを見つめている。
それが閉じられて、幼い表情で顎をあげた。
……おい。
「……学校で何をする気だ」
「二人きりなんだから……いいじゃない」
「そんなことできるわけがないだろ」
何を考えているかわからない。いくら二人きりとはいえ、もう少し恥じらいを持て。
ボクの発言をまったくとりあわず、片目だけをあけて続きを言ってきた。
「昨日、自分からするって約束した」
「捏造するな。次はお前からしなさいっていわれただけだ!」
「覚えてくれてるなら、おんなじ」
もう一度つぶって、ボクに身体を寄せてくる。かわりのようにボクが身体を引く。
「して」
「嫌だ」
「しなさい」
「断固断る」
冗談じゃない。三次元への歩み寄りなんかこれ以上するわけにはいかない。
ボクは負けないぞ。
「しないの……?」
「……今回だけだからな」
192:4/5
08/06/08 22:01:53 lAc/mX/s
なんて強引なやつなんだ。
こっちの都合も考えないで、まったく3D女は本当にろくなものじゃない。
ここで、一度キスをしてすますのは簡単だ。
だが、それだとこのままなしくずしに何度も要求されるのが目に見えている。
かといって頬やおでこなどへのキスは、ノーカウントといわれて一回損するのも目に見えている。
このまま帰ってやろうか、と考えたのはすでに見越されていて、ボクのズボンが握られている。
こいつに何かしてやる方法はないかと考えていると、ポケットの中にミントの飴があるのを思い出した。
これを口の中に送り込んでやれば、驚いて口を離すかもしれない。
ゲームの経験の中にはないが、ボクの抵抗を見せる必要がある。
「……早く」
口に飴をほうりこみ、顎に指をかけた。反射的に引こうとする唇を追いかける。
また、あの香水の匂い。3回目ともなるとさすがに少し慣れてきた。
じっと動かないままの美生。
そっと舌先を唇の隙間から差し込む。滑らかな感触が残った。
ボクの手には美生の反応。左手で動かないように肩を掴む。
少しだけあけられている前歯。このままじゃ入らない。
ノックするように、前歯に触れた後、舌を差し込んでいく。
……噛んだりするなよ。
広がっていく隙間。奥に隠れている舌らしきものと少しだけ触れ合った。
驚いたようにさらに奥まったところへ逃げてしまう。
一度戻り、飴をボクの舌にのせる。……うまく安定しない。
舌先に唾液を集めた。ころころと転がる飴を唾液のわずかな水溜りで止める。
今度は問題ない。
美生の口の中に再度侵入する。噛まれてはかなわないので、今度は唾液ごとそれだけを送り込んだ。
ぴくんと今まで一番大きな反応を返す。
けれど唇は外してくれない。自分の中でその異物を吟味しているらしい。
少しすると、美生の舌がボクの唇にふれてきた。くすぐったい。
くにゅくにゅと柔らかく押してくる。
小さいんだな。こいつの舌って。
前歯をボクは開けてやらない。今更返してもらっても困るというものだ。
表面をどうしようもなくなぞるだけの舌。
少しして、美生は実力行使に出た。
193:5/5
08/06/08 22:03:50 lAc/mX/s
単純にズボンの上からボクの太ももをつねってきた。なんて卑怯な真似をする。
だったら素直に自分の口を離せばいいのに。
痛い痛い。手加減てものを知らないのか。
しかたなく前歯を開く。待っていたといわんばかりの舌に、途中で前歯を閉めた。
それ以上は入ってこれないだろう。
馬鹿にするように舌先で美生の先端をつつく。
だから痛いって。つねるのは反則だ。
前歯を開く。美生が入ってくる。ボクの舌をみつけ、怒るように絡ませる。
唾液がボクの口へと送られる。雫が口の端から垂れたようだ。
思い出したように送りかえされた飴を押し返しながら、舌と舌とでそれを交換する。
わずかに聞こえる音がボクをなんだか昂奮させる。
息が苦しくなったのか、美生の唇は一度離れ、そのままもう一度塞いでくる。
美生の顔は赤くなり、隣り合っている身体はいつしかぐいぐいと
気づかないままボクに押し当てられている。
ドレスの時も思ったけれど、見た限り平坦な身体つきの美生。
けれど、そういうふうにされるとさすがに柔らかさを感じてしまう。
ボクの太ももからは美生の手の熱が伝わってくる。
曖昧な視界から見えるその手のそばにあるのは、短いスカートから見える彼女の同じ部位。
細い足だ。だというのにどうしてあんなにやわらかそうにみえるんだろう。
さすがに息が続かなくなったボクは、美生から口を離した。
離した口からぽとりと落ちた飴玉は、ボクらの唾液に塗れてすぐに転がりを止める。
わずかにひろがっていくコンクリートの上の水分が、とてもいやらしいものに見えた。
194:名無しさん@ピンキー
08/06/08 22:27:39 24iHsRe+
乙。盛り上がって参りました。
195:名無しさん@ピンキー
08/06/08 23:04:49 H7gVIyGe
あっさりと負ける桂馬がいい感じだぜwwww
乙です。次も楽しみに待ってます。全裸で
196:名無しさん@ピンキー
08/06/09 00:52:54 u3InVjpO
超gjです
197:名無しさん@ピンキー
08/06/09 08:16:25 IZJw7bmv
と言うか堕とし神さま?
なんか反撃だとか何とかツンデレ言うてはりますが、飴の交換キスなんてよほどのバカップルでもなかなかしないエロ行為な訳ですがその辺りどうお考えですかー!
いやあ、ツンデレカップルってほんとーにいいもんですねー
198:名無しさん@ピンキー
08/06/09 09:52:21 9pDnD1nJ
唾液がエロス。
GJ
199:名無しさん@ピンキー
08/06/10 07:40:12 hldE8vf/
神様それR指定(こどもはだめ)展開や!
いいぞもっとやれ!
200:名無しさん@ピンキー
08/06/10 13:20:43 O+V9LIvk
真昼間から耐えられん。
抜いてくる
201:名無しさん@ピンキー
08/06/10 23:13:00 GkjuMjsk
まて、浮気か落とし神よwww歩美はどうした。
202:名無しさん@ピンキー
08/06/11 04:34:13 vamWt/qX
流石神のスレ…。
エロいよ、神様エロいよ。超GJ!!
203:名無しさん@ピンキー
08/06/11 08:25:09 eveyhE0r
>>201
そこで問題だ! 歩美との関係はどのように解決されているのか?
三択 ― 一つだけ選びなさい
答え① クールで愛らしい神様は突如ハーレムルートに至るフラグを見つけだす
答え② 別ルート・並行世界の話なので影響しない
答え③ Nice boat.。現実は非情である
204:名無しさん@ピンキー
08/06/11 08:46:06 /DYPZ5Rp
>>201
見たところ本編からの派生だから、ポーンルートとは無関係だろう。
今 の と こ ろ は
205:名無しさん@ピンキー
08/06/11 16:16:41 HaJ+n/gy
>>203
個人的に3が見たい
206:名無しさん@ピンキー
08/06/11 22:00:10 Tv9YyINl
今週号見てても、神様って押しまくれば落ちそうだよな。
207:名無しさん@ピンキー
08/06/13 23:12:11 KqmqA3eO
ほしゅしようか、新しい職人さんが来ることを願って
208:名無しさん@ピンキー
08/06/15 21:08:02 zhjp4vYu
女の子じゃなくて神様をエロにもっていくのが大変というのがこの漫画らしい
209:名無しさん@ピンキー
08/06/15 23:07:53 HwC3yXrp
そういや性欲処理はどうしてんだろ
やっぱエロゲか?年齢的な問題があるけどw
210:名無しさん@ピンキー
08/06/15 23:20:09 S2kvm2Fx
神ぐらいになると6画面同時のキスシーンで処理も余裕ですよ。
211:名無しさん@ピンキー
08/06/16 13:56:57 7vX7aa+3
堕神様ありがとう
212:名無しさん@ピンキー
08/06/16 15:06:20 sFEUTfh5
頭の中で話を考えるのと、それをいかにうまく書いて提供するのとは本当に全く違うんだな。
すげえ難しい。
213:ROCO ◆VpKHzOu04Y
08/06/16 15:36:04 Mq1FEUxK
まだ攻略中の子ですが、かのんSS投下します。
一応神様逆レイプな内容ですから。
214:ROCO ◆VpKHzOu04Y
08/06/16 15:36:35 Mq1FEUxK
「ねぇ桂馬ク─ン、起きた?」
「……何だコレは??」
ボクが目を覚ますと、何処か分からないが、
どうやら暗くジメジメしてる狭い室内の中に閉じ込められていた、
しかもご丁寧に身体は、手足はもちろん胴体も縄で縛られ、
この折りたたみ椅子に固定されてる始末だ、
これでは身動き一つできないな、良くて倒れるくらいか…にしてもこれは一体。
だが犯人はわかっている、それは目の前の現実女だ。
「やだな~そんなにジロジロ見られたら照れちゃうよ~」
何処をどう見たら、今のボクの視線がそう見えるのやら、
この女…西原かのんは、一人舞い上がってボクを見下ろしている。
「あのな…ボクの記憶が確かなら、メールで呼び出されてやってきた筈だが…」
「うん、そうだよ…この撮影スタジオにね」
やはりそうか、どうやらそこまでの記憶に間違いはないようだ、
しかし…彼女を待とうとしたところで、何故か記憶がプツリと切れている。
あの後…ボクの身に何かが起きた、そして今…ここでこうなっている。
「何をしたんだ…お前?」
「ん~何の事?」
「いやだから、どうしてここで縛られているかをだな…」
「ねぇ桂馬くん…あの子、誰?」
ボクからの質問を遮断し、かのんは逆に質問をしてくる、
それも笑顔だというのに、異様な迫力を感じる表情で!
な、なんだ…背筋に寒気が!?
「あ、あの子?」
「ほら…女の子と一緒だったよね、見ちゃったんだ…スタジオの外で背中に抱きついてるのを」
…まさかエルシィの事か?遠くから呼び出されたから、人外であり飛べるエルシィに、
ここまで連れてこられたのだが…どうやら着地したとこを見られたらしい。
もちろん飛んできたのは分かってないようだが…
「え、エルシィの事か?それなら知ってるだろ?ボクの妹だ」
偽妹だがな、しかし妹という立場なら問題あるまい、
それに一緒に居るとこなら、これまでも何度も見て知ってる筈だが…
「ふ~ん…でも、妹さんでもとても仲が良いんだよね、あんなに強く抱きつくくらいだし…」
それはそうだ、空中から落とされたらたまらない、
だがそれが気に喰わないらしい、例え相手が妹でも…
「だけど駄目だよ…桂馬クンは、私だけを見てくれなきゃ」
「か、かのん?」
「ケ・シ・チャ・ダ・メ・・・ワタシヲ、ケサナイデ」
ゾクゾクゾクゾクゥゥゥゥ!!!
こ、これは!?背筋にさっきよりも鋭い寒気を感じてた、なんだ…この悪寒は!?
まさか嫉妬か!爆弾か!!しかしこれは普通の嫉妬イベントじゃない、
まるでそう…BADフラグ!マズイ…落とし神としての直感が、そう危険信号を出してる。
215:ROCO ◆VpKHzOu04Y
08/06/16 15:37:05 Mq1FEUxK
それに気のせいか、かのんの瞳からハイライトが消えてるように見える、
覚醒したかのよう…いやそうなのか、この現状からしてヤバイ感じが強まっていく、
そしてかのんの手が伸びてきた…
「桂馬クン…もっと見て、私を…ワタシだけを…」
「かのん…うっ!!」
さわっ…な、何だ?突如とボクは、不思議に強い刺激を感じていた、
これはまさか!?確認の為に視線をスッと下に下ろす、
するとだ…そこへと彼女の手が伸ばされてた。
触れている…この小さなかのんの手が、大胆にもボクの股間の上に、
握るかのように触れていたのだった!!
「な、何を…うぅ!!」
「刻んであげるね…私を…桂馬クンの心に…」
そう呟くと手に力が篭り、ギュッと握られていく!
ムギュッ…ギュッ…
「うぅっ!!や、やめろ…そ、それは…」
「ねぇ、気持ちいい桂馬クン?こんな事するの、桂馬クンが初めてなんだからね…」
「うっ!んんっ!!」
かのんの手が、リズムをつけてるように強弱をつけて、
股間を力強く揉み握り締めてくる、すると何だこれは…
また強い衝撃が駆け上がってくるのを感じたんだ。
波だ…強烈な波が、ボクの中に何度も襲ってくる!!
「あは…んっ、暖かい…桂馬クンのここ…んっ…」
「や、やめろ…それ以上揉むな…うわっ!!」
「もう…本当は気持ちよくて、もっとしてほしいくせに」
違う!よくわからないが…嫌な予感がする、
このまま続けられたら!ボ、ボクは…おかしくなってしまいそうな…うぅ!!
「桂馬クン…かわいい、じゃあ…やめるね」
「うっ…」
やっと手の動きが止まった、ふぅ…なんだかおもいっきり疲れた気分だ、
それに触れられ揉まれてた箇所は、酷く熱さを感じている。
するとだ…突如にそこに涼しい外気を感じたのは!?
それはつまり…
「次は直接してあげるからね」
「なっ!!」
いつのまにか、ズボンのファスナーを下げられて、
その内にあるものを晒されてしまっていた。
そう…股間に生やすボクの性器を…大胆にもかのんは、
その揉んでた手で、外へと取り出してしまったのである。
「ちょ!何をしてるのか、わかってるのか!?」
「わかってるよ、うわぁ…なんだか可愛いマイクみたいだね、桂馬クンの!」
「そ、それはどうも…」
本当にわかってるのか?かのんはまるで本当にそれをマイクのように、
その手で握り締めてくる、そして…口を近づけさせていた…って何!?
216:ROCO ◆VpKHzOu04Y
08/06/16 15:37:33 Mq1FEUxK
「おい…ま、まさか…」
「同じく初めてだから…上手じゃなかったらゴメンね…んっ」
「うぅっ!!お…おい…うあぁ!!!」
ビクビクビクゥゥゥ!!!こ…これはさっきまで以上に激しい衝撃が襲ってきてる!
まるでスタンガンをうけたかのようだ、まぁ衝撃の感じこそ違うが…激しさという意味では似てるぞ。
クチュッ…グチュッ…
「やめっ!うわぁぁっ!!!」
「桂馬クン…んっ…美味しい」
くぅ!感じてなんかいないぞ、現実女なんかに…
この落とし神たるボクが…二次元じゃないのに…
「うぅっ!!」
「桂馬くんの喘ぎ声…可愛いね、なんかドキドキしちゃう」
「も、もうこれ以上は…うぅ!!」
やばい…何て刺激だ!しかしこんな場所をよく舌で…
汚いところだというのに、口にまで含んで…うぅ!!
そうだ…かのんは、その自身の舌を伸ばし…露出したボクの性器部を舐めている、
それどころか小さな唇で挟み咥えもした、うぅ…温かくドロドロしたのに包まれ、
そしてヌメッとしたので這われ…ボクに強烈な衝撃を与え続けてる!!
「はぁ…んっ、固くなってきた…」
「馬鹿な…くぅっ!!」
「ドロドロも…んっ…出てきてるよ」
はぁ…あ…息が荒くなってくる、マズイ…このままでは、
今もすでにヤバイ状況だが、感じる…更にヤバイ感じを!
だがそれから逃げるのは…少し遅かったようだ。
「はぁ…そろそろいいかな?」
「何がだ?何をする気だ!」
「もう分かってるくせに、ここまでして寸止めなんてしないからね」
そう言ってかのんは、スッと立ち上がると、
自分のスカートの中に手を入れていく…そしてある物を擦り下ろさせてきた。
あのフリフリした薄地の布地は…まさか!!
「おまっ!?そ、それは!?」
「うふっ、可愛い下着でしょ~このフリフリのデザインがお気に入りなの」
なんて事だ…スカートの中から取り出し、
そして恥ずかしがりつつも大胆に見せてきたのは、
女物の下着…いわゆるパンティーだった。
つまりかのんは自らの手で、何も履いてない状態になったのだ。
「どう人気アイドルの生下着だよ、こんなレアなの見れてラッキーだよね」
「べ、別に…そんなのを見せられてもボクはだな…」
「へぇ~照れなくていいのに、興奮してるくせに」
な、そんなので誰が興奮するか!
そんな…ゲームの少女がチラッと見せる清純で綺麗な代物でなく、
少し染みがついてる卑猥な代物に…このボクが…
「ふふ、桂馬クン顔が真っ赤だよ~ほらほら視線を反らさないでちゃんと見てよ」
「いや、いいから…」
217:ROCO ◆VpKHzOu04Y
08/06/16 15:37:59 Mq1FEUxK
そうだ揺れるなボクの心…これは見え透いた罠だ、
万が一にも彼女の思い通りな行動をすれば…だが何だ?
まだ嫌な予感が消えない…それどころか増幅してるような気も!
その理由は直ぐに判明した、これはまだ強制イベントの真っ最中だったのだ。
「そっか…下着には興味ないんだね、それじゃ…」
何かがヒラッと床に落ちる、あれは横目でチラチラ見えてたかのんの下着!
あれを捨てたという事は…
「もう…ここまでサービスするの桂馬クンだけなんだからね」
いや、そんなサービスいらないから…って!
それを見てボクは仰天する、下着を棄てたという事で簡単に想像ついた付いた筈だというのに…
再び彼女を見た時…かのんはスカートをまたすそ上げし、
中を晒す…今度は何も隠してない股間部を!
当然にボクの目には焼き付いてしまっていた、二次元でもご法度な女性の恥部が!
「どうなってるかな、私のアソコ…濡れてる?」
「あ…あぁ…」
トロッ…と雫を垂らし、赤く充血してる性器部も見えていた…
そう、その部分こそ西原かのんの…
「はぁ…ん…熱い…さっきから疼いてたんだよ桂馬クン…」
「そ、そうなのか…」
「だからね…静めてほしいの、桂馬クンので…」
「え…それって、なっ!!」
グジュッ…
驚愕のイベントは止まらない、かのんは椅子に座らされているボクに近づくと、
その膝上に跨るように乗ってきて、露出した性器に…このボクのを密着させていく!
すでに先端が触れている…このかのんの熱くトロトロになってる場所に、
ボクのが…触れて、そして…
「いくよ…桂馬クン…んっ!あっ!!」
「ま、待て!早まる…うわぁぁぁ!!!」
ジュブゥゥゥゥゥゥゥ…
は、入っていく…かのんが腰を下ろし、その体重がかかって…
内部に入り込んでいくのだ、繋がっていく…ボクのとかのんのが!
「うぅっ!痛っ!」
「!!?ちょ…ま、まさか…」
とても熱くドロドロしたのに擦られていく、その刺激にボクは更に激しい衝撃を感じる、
意識さえ翻弄されてしまいそうな、激しい触感だった…
だがかのんの苦痛の呻きにハッと、正気を返り…ある事に気付かされた。
「血が…出てるぞ、まさか…」
「はぁ…あ…それはそうだよ、だって…初めてだもん」
「!!?」
初めて…つまり処女か!それなのに…こんな大胆な事をするなんて…
今更だがかのんの膜は完全に破かれてしまった…もうこんなに深く結合してるのだから。
218:ROCO ◆VpKHzOu04Y
08/06/16 15:38:31 Mq1FEUxK
「いいのか、その…ボクなんかで…」
「いいよ、それにね…これで確実に私の事、桂馬クンの中に刻まれたよね…ね」
くぅ!そこまでするのか、こいつは…必死に笑顔を保っているが、
痛々しさは感じられていた…それなのに。
「じゃあ…動くよ、んっ!」
「おい、無理をするな…うぅっ!あぁ!!」
腰を動かし、ピストン運動までし始めたのだ、
うぅっ…中で摩られる、ボクのに絡みついたかのんの膣が、
激しく擦らせ…ボクの中の何かを高めていく!やばい…
「こ、これ以上は…うぅ!つ、辛いんだろう?」
「大丈夫だよ…うっ!痛いけれど…でも…」
「で、でも…?」
すると震えるかのんの手が、ボクの顔に伸びてくる…
そして頭を掴んで自分の顔を近づけ…
「感じちゃうの、桂馬クンが私ので感じてくれてる顔を見るだけで…ドキドキしちゃってね」
「そ、そうなのか…うっ!くぅ…」
「もう限界?いいよ…ほら、このまま…あぁ!!」
!身体の中から熱いのが湧き上がってくる…これは!
まずい…しかしかのんはボクと繋がったまま離さない、
それどころかより深く結合させて…だ、駄目だ!
必死に湧き上がってくるのを我慢しようとするが、休む事無く衝撃を与え続けられて、
防ぎきれない…だから弾けてしまう!この…繋がったまま、
かのんの中で弾け出してしまうのだった!
「うわぁぁぁぁぁ─────!!!」
ドクゥッ!ドクドクドクゥゥゥゥゥゥ!!!!
「あぁぁぁぁぁんっ!!あ…あぁ…熱い…」
そして頭の中が真っ白になる…くっ…意識も…
深い場所で一気に放出したそれは、かのんの体内に飲み込まれていく、
ボクはただ呆然と一滴残さず搾られていくまで、そのまま弾けた感覚に浸されていたのだった。
「はぁ…入ってる、桂馬クンの…熱いのが…中に…」
聞こえるのは熱い吐息で幸せそうに呟くかのんの声…
だがその声も小さくなっていく…段々と薄れる意識の中で、
小さく小さくなって…そして闇に飲み込まれた。
「モウケシチャダメダヨ…ケサナイデネ…ケイマクン…」
「桂馬クン!」
「うわぁぁ!!」
な、なんだ!!突如とアップに映し出されたかのんの顔に驚いた!
だが他にも驚かされる、ここは…何処だ?
キョロキョロと辺りを見回すと…そうだ、ここは訪れた撮影スタジオの中だ。
219:ROCO ◆VpKHzOu04Y
08/06/16 15:39:01 Mq1FEUxK
「もう酷いな~待ち合わせに遅れちゃって駆けてきたら寝てたんだもん」
「寝てた?ボクがか?」
…ん?んんっ!?
確かにボクはスタジオ入り口にある待合席で寝てたようだが…
ふと、思い出した…さっきの出来事を、そうだ暗い室内に監禁され、
そこでボクはかのんと…あんな事を!
だがちょっと待て、それだと今の会話は不自然だ、
まるで今会ったばかり…つまりアレは無かったかのような。
「まさか…あれは夢だったのか?」
「ん?どうしたの?あっ!いけない…もう撮影が始まっちゃう!じゃあ、またね桂馬クン!」
「あ…あぁ…」
…ん?何で呼び出したんだ?と疑問はあったが、今はどうでも良かった、
そうだ…さっきの出来事が激しく印象が強くて、今はそれで頭がいっぱいだ。
しかし夢であんなはっきりとした感覚があるのだろうか…すると。
「神様~~!!!」
「エルシィ?」
かのんが行ってしまい、スタジオから外に出ると、エルシィが駆け寄ってくる、
何だか息があがってるな…どうしたんだ?
「もう何処に行ってたんですか、探したんですよ~突然に消えるから」
「消えた?ボクはずっと、あそこの座席で座って寝てたんじゃ…」
「いいえ、居ませんでしたよ」
「何?」
エルシィの話ではスタジオの中に入った後、少し目を離した隙に、
ボクの姿が消えたという、そして小一時間経った後…こうして出てきたとか。
と…いう事は、ま…まさか…
そういえば何だか激しい疲労感を感じる、走ってもいないのに、
こんなにも疲れてるなんて…はは、まさかな…
その夜、夕食時につけてたテレビで、かのんが出演してた番組をやっていた。
「見てください神にーさま、今日あのスタジオで収録してた番組ですよ」
「ああ…そうだな」
何だろうか、いつもよりも生き生きとした感じを感じるのは?
それに時々だが、かのんはお腹を触っていた…何故かうっとりした表情で。
その時だ、ふと今頃になってボクの頭の中で、忘れられていた記憶が少し蘇る、
そうだ…あの時だ、あのスタジオに入った瞬間…
『桂馬クン…見っけ!』
バチッ
背後からの声に振り向く間も無く、全身に強烈な電流が流された、
それも今までに受けた以上の威力のが!
そしてそれから…意識が遠ざかった、禍々しいスタンガンを手にしたかのんの姿を、
視界の片隅で見ながらに…
…なんというかエンディングが見えた気がする、BADエンディングだが。
「そういえば…駆け魂は隠れてる女の子供として生まれるのが目的だったな」
「そうですよ、それがどうしましたか?」
「エルシィ…万が一に当たった時は、その…すまない…」
「な、何が当たった時がすまないんですか!神にーさま!!」
今は夢という事にしておこう、あの出来事は…
この首が飛ばない間は…な。
【おわり】
220:名無しさん@ピンキー
08/06/16 15:49:52 zgKN3NsZ
孕神きてたぁぁっ!!
かのんかわいいよ。GJすぐる。
いずれガチHRが来そうな期待がいやに膨らむぜ…
221:名無しさん@ピンキー
08/06/16 20:59:05 YK5yVuvl
>>219
>この首が飛ばない間は…な。
怖すぎる! だがそれがいい。
222:名無しさん@ピンキー
08/06/17 00:19:23 WwgKqP6j
もし受精しちゃったらその時点でもう駆け魂をなんとかする手段はないのか?
なんとかできたとしても孕ませた事実は残っちまうかw
しかしGJなSSだった
223:名無しさん@ピンキー
08/06/17 01:16:07 DY7/hZwv
あまりにも心の隙間が大きくてキスしただけじゃあ駆け魂が出ていかなくて
「こうなったら神様の聖子で直接中から浄化するしかありません」という展開になる俺の妄想
224:名無しさん@ピンキー
08/06/17 22:58:15 +JbRTL5g
>>189-193 続き。
225:1/6
08/06/17 22:59:48 +JbRTL5g
◆
終業後の掃除の時間。
外廊下で掃き掃除をしているエルシィ。
普段であれば、鼻唄でも歌いながら楽しそうにしている時間だ。
しかし、その顔には、桂馬によるものとはまた別の原因による困惑が広がっていた。
「どうしたの、普段ならすぐ終わらせちゃうのに」
「……」
掃除のペアになることが多いクラスメイトの言葉。
とくにそこに不満などがこめられているわけではなく、普段の、よすぎるほどの
掃除の手際との違いを、ただ不思議に感じているだけの意味でしかない。
他意はない発言だ。
しかしそれは、現在の彼女に残った拠り所をさらに狭めるものだった。
気づかれないようにカチカチとホウキのダイヤルを回す。
けれどそれはまるで反応してくれようとしない。
似合わない溜息をついて、ただのホウキとして掃除を続けた。
普段よりも時間をかけて、掃除を終える。どうしても手を抜くことだけはできなかった。
急いで部活へ向かっていくクラスメイトの後姿へ、エルシィは大きく頭を下げた。
うつむいた顔を上げて、教室を見る。ホームルーム直後に声をかけてきた桂馬を
振り切ってきたのに、今さら居るわけがないのはわかっているけれど。
その想像のとおり、教室の窓には誰の姿も映ってはいない。
校門で待たれているかもしれない。そう思いながら、風呂敷をホウキにくくりつけ、
エルシィは普段使っている門へと向かった。その歩みはこころなしか普段より早く、
その期待は別の方向で正しかった。
「エルシィ」
「み、美生様?」
校門で待っている美生。
桂馬もいるのだろうかと周りを見回すエルシィに、美生から答えを伝えられる。
「その、桂木は、自転車をとりにいったから」
屋上でのテニスキスの後、コークスクリューブローを桂馬の腹に叩き込んでから
一緒に帰るかを聞いたときに、逃げるように後ずさる彼から引き出した答えだ。
家からよりも、学校からのほうがあの屋敷へ歩く距離が短くてすむという効率的な理由からでは、
美生もそう無理をいうわけにはいかなかった。
「……途中まで、一緒に帰ってもいい?」
照れた顔と口調にエルシィは驚く。彼女が桂馬と一緒に、攻略時に見ていたときには、
ほとんど見られなかった態度だ。
美生は、普段であれば男であろうと女であろうと庶民という立場での対応を取っていた。
今のエルシィへの態度は、複雑な思いがからみあい、現在のところはまるで優しくあろうとする
姉のような風情になっている。
「……ええと、はい」
「うん」