08/11/22 18:31:15 B+khzt1g
─唇を離した。
ぼうっとした表情で、ボクへと視線を向ける。
「か、神様……キス……」
そんな表情で、そんなことを言うから、もう一度。
今度は、もっと長く。息が苦しくなるくらい。
さっきから、触れているのが苦にならない。現金なものだと我ながら思う。
「う、うー……」
これ以上は赤くはなれないだろう状態で、顔を離したボクを伺う。
もごもごと口を動かすだけで、何も言わない。
「……ボクがお前に言ったことは、理解できたか?」
何を言ったらいいかわからないエルシィに、方向性を与えた。
多少の時間をかけて、声を出した。
ボクがそれを待ちながら、抱き寄せたままの肩の感触を楽しみ終わった頃に。
「ヘンなヘルメットをかぶった人がドッキリとかいうことは……」
「ない」
誰だそれ。
「……じゃあ、本当に?」
「もう一回すれば、理解できるか?」
「し、信じます! だけど……」
身体を寄せるボクからわずかに逃げるようにしながら、言葉を続ける。
「だけど、……神様、私のことをスペック不足だって」
「そんなこと言ったか?」
「言いました! 美生さんの駆け魂を捕まえた次の日に」
「細かいことを覚えてるな」
「うー……」
睨んでくる。ちっとも怖くない顔で。
こいつは、そんなことを気にしてたのか。
キャラとしての純粋なスペックなら、どんな三次元より二次元のほうが
断然上なんだから、気にすることもないのに。
「……お前、ゲーム機の種類とか、知ってるか」
「知りません」
「PC-FXっていう、あまり売れなかった、ゲーム機があるんだ。
今のゲーム機に比べると、スペックはかなり悪い」
「は、はい」
「遅いし、能力は低いし、できることは少ないし、駄目なゲーム機だ」
「……」
「理由なんてない。だけど、ボクは、そのゲーム機が……一番大好きなんだ」
視線を逸らしたボクの腕を握ってくる。痛いほどに。
「げ、ゲーム機のことだぞ。誤解するなよ」
「……神様、これからも新しいゲーム機がいっぱいでてきますけど、
その駄目なゲーム機は、ずっと好きですか?」
「た、多分な……」