08/05/28 18:32:37 IzPc9bzf
「……」
なぜ美生がここを、と思った瞬間に答えを思いついた。
そうだ。エルシィが悪魔の力が使えなくなったということは、記憶の消去を
行うこともできなくなってるのか。
「……どうして、ここに?」
「ドレスと、お釣りを返しにきただけよ。私じゃお釣りのお金が合ってるかどうかも
わからないし」
「あ、ああ、ありがとう。別に月曜日でも構わなかったけど」
ボクの台詞を聞いて、ちょっとむかついたような表情をする。
「この私がわざわざここまで歩いて持ってきてあげたのに、なに? 運転手のくせに!」
だから頼んでない。というか、なんで怒るんだ。
もう終わったことだけど、しょうがない、昨日までの続きと思って諦めるか。
「いえ、わざわざありがとうございます、お嬢様」
封筒とドレスがはいっているらしい袋をいただいて、うやうやしく頭を下げる。
頭を上げると、腕を組んでボクに向かって仁王立ちをしていた。
「なんで、まだ昨日のスーツを着てるの」
「昨日、このまま寝ちゃったから」
なんか漫符みたいに怒りのマークが見えたような気がする。
「……昨日の、メイドの女の子は大丈夫だった?」
「さっき気がついた。とくに悪いところはないらしい」
「そう、良かったわね。ちょうどいいから、ちょっと挨拶させて。私も心配だし」
「いや、別にいい。……別にいいってば。そこ、靴脱がなくていいから」
「お邪魔します。あの子はどこ?」
ずかずかと上がりこんでくる。性格はあまり変わってなさそうだ。
こいつ、これからまともに人生やっていけるかな。
「そっちは店。二階にいる。こっち」
「エルシィ、入るぞ」
一応ノックしてドアを開ける。もう一人の人物を見て声を上げた。
「みっ、美生様?」
「私のこと、知ってるんだ。桂木から聞いたの?」
「はっ、はあ、ええと」
「名前は?」
「なまえ?」
「あなたの、なまえ」
ボクにするよりはわずかに口調は大人しいが、語調は強めのまんまだ。
初っ端から勢いにおさっれぱなしのエルシィはまともに返せていない。
しょうがないので助け舟を出してやる。
「そいつは、桂木エルシィ。ボクの妹だ」
「……妹?」